【城プロ】城娘達の日常
フランは俺の嫁
殿「……」
フランケンシュタイン城「喜んでもらえて嬉しいよ」
殿「……?」
フランケンシュタイン城「ん? この国の風習に従っただけだよ」
殿「……」
フランケンシュタイン城「私の故郷では男が女に花束を渡すのが普通だな」
殿「……」
フランケンシュタイン城「そんな顔をしないでくれ。私は主がいてくれるだけで幸せなんだ」
殿「……」
御城プロジェクト『ゲームプロモーションムービー』
殿「……」
フランケンシュタイン城「ああ。主は主のまま、どっしり構えてくれればいいさ」
殿「……」
フランケンシュタイン城「他にはか。日ノ本とは根本的に考え方が違うな」
殿「……」
フランケンシュタイン城「私の故郷では、女が男に愛の告白をする日ではない」
殿「……?」
フランケンシュタイン城「恋人や夫婦の日だな」
殿「……」
フランケンシュタイン城「だから今日は戦いのことは忘れて二人でのんびり過ごさないか?」
殿「……」
フランケンシュタイン城「ハッピーバレンタイン主」
殿「……」スタスタ
石山城「お、おや? こんな夜更けに奇遇ですな殿」
殿「……」
石山城「と、ところで。今日は誰かに、な何かを貰いましたかな?」
殿「……」
石山城「ほほう! そうですか! せっかくの記念日に何も貰えないとは!」
殿「……?」
石山城「ふっ。全く寂しいお方ですなぁ! 仕方がない……」
殿「……?」
殿「……」
石山城「哀れな殿に私が施しを与えましょうか! 感謝してほしいですな!」
殿「……?」
石山城「はっ! 嬉しすぎて言葉が出ないとみえる」
殿「……」
石山城「え……。今は丑一の時? しかも昨日みなに貰った!?」
殿「……」
石山城(し、しまったー!? 決心がつかず、ぐずぐずしてたら日がかわってしまった!)
殿「……」
殿「……」ヒョイ ガサガサ パク
石山城「な!?」
殿「……」
石山城「び、美味ですと! はっはは! この私が丹精込めて作ったのですから当然ですな!」
殿「……?」
石山城「ち、違う! これは知り合いの忍者に!?」
殿「……?」
石山城「忍者じゃなくて、えと武士……。じゃなくて! 大高坂山城どのが殿に作ってあげると喜ぶと! あ……」
殿「……」
石山城「あ、ああ……。うわーん」ピュー
殿「……」
石山城「来年こそは絶対に成功させてやるぅー!」
フランケンシュタイン城「やあ。ここは主の所領。私はフランケンシュタイン城だ」
鬼ヶ城「あ、あー。そうか俺は城娘になったのか」
フランケンシュタイン城「理解が早くて助かるよ」
鬼ヶ城「いきなりで悪ぃんだけど、一つ聞いていいか?」
フランケンシュタイン城「私に答えられる範囲なら」
鬼ヶ城「お前の肩にいる奴はなにもんだ?」
かいぶつ「……」フワフワ
フランケンシュタイン城「塔の巨人だ。私の塔は私自身が生み出した怪物、人造人間なんだ」
鬼ヶ城「へぇ。名前はなんてんだ?」
鬼ヶ城「は?」
フランケンシュタイン城「どうかしたのか?」
鬼ヶ城「名前がないって、お前おかしいだろ!?」
フランケンシュタイン城「そうなのか?」
鬼ヶ城「そりゃそうだろ!」
獅子巖「……」ウンウン
フランケンシュタイン城「うん? 君の盾は自我があるのか」
鬼ヶ城「おう! 俺の盾は獅子巖ってんだ、そんで名前はポチ!」
かいぶつ「……」
かいぶつ「……」ウンウン
フランケンシュタイン城「ふむ。どういったものが一般的なのか」
鬼ヶ城「チビとかタローとかじゃねえかな?」
かいぶつ「……」フルフル
フランケンシュタイン城「お気に召さないようだな」
鬼ヶ城「えーっと。ならコタロウはどうだ?」
かいぶつ「……」フルフル
フランケンシュタイン城「それもお気に召さないようだな」
鬼ヶ城「だー! ならタガマルはどうだ!?」
鬼ヶ城「あ! おい待て!」
かいぶつ「……」ピュー
鬼ヶ城「こらー! 逃げるんじゃねえ!」
フランケンシュタイン城「二人とも夕餉までには戻ってくるんだぞー」
終わり
殿「……」
石山城「ほう、駄目と?」
殿「……」
石山城「勘違いされては困りますな。これはお願いではなく要求ですぞ」
殿「……?」
石山城「くくっ」
殿「……」
石山城「要求が通らない場合は……」
殿「……」
殿「……」
石山城「私のガン泣きを舐めて貰っては困ります」
殿「……」
石山城「あの島原城どのが狼狽えるほどの破壊力!」
殿「……」
石山城「あ、待って殿。帰らないで下さい!」
殿「……」
石山城「こうなったら最後の手段」
殿「……」
殿「……」
石山城「私の地団駄は凄いですよ? 泣きながら地団駄を踏むのですぞ?」
殿「……」
石山城「その威力たるや、あの鹿児島城どのが狼狽えるほどの破壊力!」
殿「……」
石山城「あ、待って殿。帰らないで下さい!」
殿「……」
石山城「と、殿ー! 待ってぇー!」
東黒川館「吉田郡山城はどこですか!」ドタドタ
鹿野城「殿は黒川城さんたちと作戦会議中だし……」
矢留ノ城「うう……。私の下着……」シクシク
鹿野城「寂しいなぁ」
飛山城「下着を咥えたまま城壁をよじ登ってる姿を根城が見たらしいぜ!」アッチダ
鹿野城「はぁ」
大高坂山城「あ、鹿野城さん。ちょっとお願いできるかしら?」
鹿野城「え? どうしました?」
大高坂山城「殿の洗濯物が乾いたから持っていきたいんだけど……」
大高坂山城「今日のお料理担当だった根城さんが、吉田郡山城さんの捜索に駆り出されちゃって……」
鹿野城「そうなんですかぁ」
大高坂山城「私がお夕飯の準備もしなくちゃだめなのよ」
鹿野城「あ、はい。わかりました」
大高坂山城「それじゃあ、お願いねー」トテトテー
鹿野城「これが……。殿の」チラッ
不来方城「ったく! なんであいつは、いつもいつも俺たちの下着を奪っていくんだ!?」ドタドタ
鹿野城「誰も……。見てないよね?」チラチラ
三木城「あたしの下着もぬるぬるになって返ってきたし……」グゥー
殿「……」
鹿野城「Foooooo! Excellent!」
殿「……」
鹿野城「Oh! Wonderful! Yes! Great!」
殿「……」
鹿野城「Fantastic!」
殿「……」
鹿野城「ハッ! 殿!?」
殿「……」
殿「……」フルフル
鹿野城「……」
殿「……」
鹿野城「え? このお召し物をくれるんですか!? やっ……。って違います!」
殿「……」クルッ
鹿野城「殿! 違うんです! ちょっと待ってちが! あ……」
殿「……」スタスタ
上関城「今度は下着を咥えたまま天井に張り付いてる姿を脇本城が見たらしいぜ!」アッチダ
鹿野城「……」クンクン
東黒川館「こんのクソ幼児性愛者がー!」ドタドタ
鹿野城「Foooooo! Fantastic!」
蛸形兜「ハァ……吉田郡山城ニ投票シタカッタナ……」
桃形兜「オマエ、マダ言ッテルノカヨ」
砲撃式トッパイ形兜「デモ、楽シミダッタヨナァ?」
犬形兜「ガウガウッ……」
火焔形兜「シュゴ……シュゴ……」
古桃形兜「皆ハ誰ニ入レルカ決メテルノカ?」
蛸形兜「吉田郡山城ダ!」
古桃形兜「ナラ、モウ一度ヤラネエカ?」
桃形兜「オマエ何ヲ言ッテンダヨ……」
蛸形兜「オマエ天才カヨ!」
火焔形兜「シュゴッンゴッンゴゴゴゴゴォォォー!!」
砲撃式トッパイ形兜「ヨーシ! ヤルゾ!」
犬形兜「ガウガウッ……投票……ガウッ!」
桃形兜「……エ? 本当ニ、行ウノ?」
古桃形兜「前回ミタイニ、大勢デ集マルト殿ニ襲撃サレルカラ、一個分隊単位デ投票スルゾ」
桃形兜「ソレ、カナリ時間カカラネ?」
古桃形兜「犬形兜ヲ使ッテ集計スル」
犬形兜「ガウガウッ!」
蛸形兜「ソウ言エバコイツ、通信機能ツイテタヨナ」
桃形兜「前回ノ苦労ハ一体……」
福島正則「ヨウ、テメェラ。俺様ニ黙ッテ面白イ事ヤッテンジャネェカ」
桃形兜「マ、正則様!?」
福島正則「覚悟ハデキテンダロォナ?」
桃形兜「イ、イエ! ソノアノ……」
福島正則「……マア、イイ。好キニシロ」
古桃形兜「正則様。前回ノ失敗ヲ踏マエ、投票所ニ集マル人数ハ一個分隊マデトシマシタ」
福島正則「アン? ソレダト集計ニ時間ガカカリ過ギルンジャネェノカ?」
古桃形兜「各地ノ投票結果ハ犬形兜ヲ使イ、スグサマ集計致シマス」
福島正則「ホォ。前回ハ、クソ餓鬼共ノ邪魔デ台無シニサレチマッタガ……」
桃形兜「……」
福島正則「コレデ自他共ニ、俺様ノ亀居城ガ最高ノ城ッテノガ証明サレルナ!」
火焔形兜「亀居城シュゴ! ンゴッンゴゴゴォー!」
福島正則「オイ! テメェラ亀居城ニ入レナキャドウナルカ……。分カッテンダロウナ?」
桃形兜「ハ、ハイ!」
福島正則「結果ガ出タラ知ラセロ。マァ亀居城ガ一番ナノハ分カリ切ッテル事ダガナ!」
砲撃式トッパイ形兜(コッソリ……千代城ニ入レチャオ……)
蛸形兜(何ト言ワレヨウト、吉田郡山城ニ入レルネ!)
古桃形兜「遂ニ、結果発表ノ時ダナ」
火焔形兜「亀居城シュゴ! シュゴゴ!」
砲撃式トッパイ形兜(千代城ガ一位ニナラナイカナ)
蛸形兜「吉田郡山城!」
桃形兜「デハ、各地ノ集計結果ヲ発表スルゾ」
犬形兜「ガウガウ!」
桃形兜「エ? コレハ……」
福島正則「オイ来テヤッタゼ。早ク発表シロヤ」
桃形兜「一位ハ亀居城デス……」
福島正則「ハッ! 当然ノ結果ダナ!」
火焔形兜「シュゴ! ンゴッンゴゴゴォー!」
桃形兜「……」ササッ
福島正則「オイ……。何ヲ隠シヤガッタ?」
桃形兜「イエ、何モ隠シテマセン!?」
福島正則「ヨコセオラッ!」
桃形兜「ヒエエェ!」サッ
福島正則「アン? 何ダコリャ……」
一位 千代城
一位 吉田郡山城
・
・
・
・
・
一位 水口城
砲撃式トッパイ形兜(同士ガイタンダ)
蛸形兜(吉田郡山城サンニ抱キカカエラレタイ)
火焔形兜「シュゴ! シュゴゴゴォー!」
福島正則「フ……。フザケルナー!」
桃形兜「ヒエエェ!」
終
大高坂山城「私もお手伝いするわ!」
鹿児島城「あら~」
大高坂山城「鹿児島城さん、今日の献立は何かしら?」
鹿児島城「今日の一品目はさつま汁ですの~」
大高坂山城「わぁい! 体もあったまるし、お肉もたっぷりで精がつくわね!」
鹿児島城「まずは~。干し椎茸を洗って水に戻します~」
大高坂山城「戻した水は出し汁として、あとで使うのよね!」
鹿児島城「戻してる間に鶏肉をぶつ切りにして、サツマイモを輪切りにしますの~」
大高坂山城「美味しそう! ところで私は何をお手伝いすればいいかしら?」
鹿児島城「ニンジンと大根の皮をむいて乱切りにして欲しいですの~」
大高坂山城「分かったわ!」
大高坂山城「こんにゃくのもこもこした食感が特徴的よね!」
鹿児島城「鍋に出し汁を入れて、火にかけて~」
大高坂山城「煮立ったら具材を入れるのよね!」
鹿児島城「丁寧にあく取りをして、野菜が柔らかくなるまで煮込みますわ~」
大高坂山城「柔らかくなってきたわ!」
鹿児島城「具材が全部柔らかくなったら、ネギを入れて味噌も入れますの~」
大高坂山城「美味しそうな匂いがしてきたわ!」
鹿児島城「ここで隠し味ですの~」
大高坂山城「何を入れるのか楽しみだわ!」
大高坂山城「うんうん?」
鹿児島城「そこに殿どんの袖から出てきた茶屋の引き札と」
大高坂山城「え?」
鹿児島城「見知らぬ匂い袋をいれます」
大高坂山城「……」
鹿児島城「……」
大高坂山城「鹿児島城さん……」
鹿児島城「何か?」
大高坂山城「いえ、何もないです……」
鹿児島城「ふふふ」
終
殿「……」
黒川城「な!?」
やくも「殿さんの言う通りだに。皆仲良しが一番だに」
黒川城「しかし、規律を重んじ風紀を守らねば皆に示しがつきません!」
殿「……」
黒川城「私とて、何もしなかったわけではありません……」
殿「……」
黒川城「幾度も和解を申し込みました」
殿「……」
やくも「仙台城は気難しいところがあるけん」
黒川城「かんざしを持って行ったときは、地味と一蹴され」
やくも「ほ、ほら仙台城はいつも帽子被ってるけん……」
黒川城「和歌集を持って行ったときは、読むと眠くなる一蹴され」
やくも「え、えっと……」
黒川城「これも風紀のためと思い、頭を下げたこともありました」
やくも「……」
黒川城「それなのにッ!」
やくも「それは仙台城が悪いだに……」
黒川城「もう沢山です。実家に帰らせて頂きます!」スタスタ
殿「……」
やくも「……」
殿「……?」
やくも「黒川城……。うちで築城されたのに、一体どこにいくつもりだに……」
終
飛山城「おぉ~、殿! いい所に来てくれたなぁ~」
殿「……?」
飛山城「悪いけど、火ぃ貸してくれない?」
殿「……?」
飛山城「そうなんだよ。あたいも殿と同じ富山城印の紙巻煙草に変えたぜ」
殿「……」
飛山城「そんなん別にいいから、早く火ぃ貸してくれよ」
殿「……」
飛山城「煙草咥えてこっちに来いって?」
飛山城「何する気だ?」
殿「……」ピト
飛山城「んん!?」
殿「……」スゥー
飛山城「な、何すんだ!?」
殿「……?」
飛山城「確かに火はついたけど……」
殿「……」スタスタ
飛山城「あたいの心にまで火ぃつけてどうすんだよ……」
終
会津若松城「殿? こんな夜更けに、こんばんは」
殿「……」
会津若松城「……随分と酔っていらっしゃいますね」
殿「……」フラフラ
会津若松城「飲むなとは言いませんが、あまり飲み過ぎるとお体に障りますよ?」
殿「……」ヒョイ
会津若松城「ひゃあ!? と、殿ッ!」
殿「……?」
殿「……」
会津若松城「私は大将でも煮売居酒屋でもありません! 御城です!」
殿「……?」
会津若松城「そ、それは私の……」
殿「……」
会津若松城「私の……。何でもないです!」パシン
殿「……」ヒリヒリ
会津若松城「殿の馬鹿ー!」ドタドタ
終
殿「……」
宇都宮城「……聞かなかったことにするから、考え直せ」
殿「……」
宇都宮城「殿はみなに慕われておる。こんな婆でなくともよかろう」
殿「……」
宇都宮城「そうじゃな……。馬場城はどうじゃ?」
殿「……」
宇都宮城「まだ幼いが、将来は殿に相応しい立派な娘になろう」
殿「……」
殿「……」
宇都宮城「少々ヤンチャな面もあるが、一途な娘じゃて」
殿「……」
宇都宮城「なら……」
殿「……」
宇都宮城「まったく、殿は変わり者じゃ……」
殿「……」
宇都宮城「よかろう。この命が果てるまで、わしが一緒にいてやるわい」
終
龍王山城「わらわは大和国最大の城。龍王山城じゃ」
フランケンシュタイン城「やあ。私はフランケンシュタイン城だ。しかしよくできたな……」
龍王山城「何のことじゃ?」
フランケンシュタイン城「君はあり合わせの資源で築城したんだ」
龍王山城「……は?」
フランケンシュタイン城「本来は要石一個と金が一〇〇〇必要なのだが、手持ちがなくてな……」
龍王山城「……いくつ使ったのじゃ?」
フランケンシュタイン城「その辺の石とニンニク一個だ」
龍王山城「え……。はぁ!?」
フランケンシュタイン城「そうだったか、すまない。日ノ本の食べ物はまだよく分かってなくてな」
龍王山城「待つのじゃ! ラッキョウだろうとニンニクだろうと、どっちでもよい!」
フランケンシュタイン城「そうか。では所領内を案内しよう」
龍王山城「だから待つのじゃ!」
フランケンシュタイン城「何か質問でもあるのか?」
龍王山城「どう考えてもおかしいのじゃ!」
フランケンシュタイン城「石も金もただの依り代に過ぎないだろう?」
龍王山城「い、い……」
フランケンシュタイン城「い?」
龍王山城「そんなの嫌じゃー!」ビエエエエン
フランケンシュタイン城「そんなに嫌なのか?」
やくも「うちでも嫌だに……」
終
殿「……」
盛岡城(殿を見ていると、胸が熱くなり、筋肉が震えます)ピクピク
殿「……?」
盛岡城「え、あ。おはようございます殿」
殿「……」
盛岡城「ええ、雲一つない青い空ですね。こんな日は鍛錬にも身が入ります」
殿「……?」
盛岡城「どうぞ。自慢の上腕二頭筋です」ムキッ
殿「……」サワ
盛岡城「昨日の測定では、一尺八寸です」
殿「……」
殿「……」
盛岡城「最近凄い調子が良くて、二尺七寸まで育ちました!」ボコッ
殿「……」ジロジロ
盛岡城「もぉ~、殿ったら! 胸ばかりジロジロ見て!」
殿「……」
盛岡城「ちょっと恥ずかしいけど……。殿になら教えちゃいます」
殿「……」ドキドキ
盛岡城「……四尺八寸。です」ムキムキ
殿「……!」
盛岡城「も、もう! 誰にも言っちゃダメですからね!」ムキィ
殿「……」
殿「……?」
盛岡城「心配してくれるのはありがたいですが、日課ですので」
殿「……?」
盛岡城「体は痛みますが、痛みなくして進化なし。筋肉の痛みは蜜の味ですわ!」ムッキーン
殿「……」
盛岡城「それに、歩みを止めれば無に還ります。そう、まさに鍛錬とは人生です」
殿「……」
盛岡城「兜なんて怖くありません。一番の敵は自分自身の甘さです!」
殿「……」
盛岡城「はい! また構ってくださいね。では失礼します」ムキッ
殿「……」
盛岡城(今はまだ……。この想い、胸にしまっておきましょう)
殿「……」ニコッ
盛岡城「さあ、鍛錬よ。余計なことは忘れて!」ムキッムキッ
終
1寸=約3㎝
1尺=約30㎝
殿「……」
三木城「飴をくれるの!? わ~い。ありがとう。」
フランケンシュタイン城「やあ、三木城。主に飴を貰ったのか」
殿「……」
三木城「こっんなにたっくさんっうっれしいなっ! ありがとう殿!」パタパター
フランケンシュタイン城「三木城は確か」
殿「……」
フランケンシュタイン城「飢えに苦しんだ記憶を持つ城娘だったか」
殿「……」
フランケンシュタイン城「ふむ。主にケチをつけるわけではないが、飴玉でよかったのか?」
フランケンシュタイン城「そうなのか?」
三木城「あー! 鳥取城さんも飴食べる?」スッ
殿「……」
フランケンシュタイン城「そうだな。主の言う通りだ」
鳥取城「いいのですか? ありがたく頂きます」パクッ
殿「……」
フランケンシュタイン城「例え飴玉であろうと」
三木城「ねぇーねぇー! よっちゃんも一緒に飴食べる?」
フランケンシュタイン城「大事な仲間と共に食べれば最高のごちそうなんだな」
殿「……」ニコッ
終
殿「……」
三木城「あー。ずるい! あたしもかまって~」ダキッ
多賀城「むむむ……。殿!」
殿「……?」
多賀城「んー!」セノバシ
殿「……」スッ
多賀城「菓子が欲しい訳ではないのだ!」
殿「……?」ナデナデ
多賀城「子供扱いするでない!」ポリポリ
殿「……?」
黒川城「お殿様はもう少し女子の心を知るべきかと……」
三木城「確かにそれはないと思う」ポリポリ
盛岡城「私も同じ意見ですわ」ムキムキ
殿「……」
多賀城「今更ご機嫌取りに来ても遅いのだ! 許さないのだ!」
殿「……」ギュ
多賀城「な、何をするのだ!?」
殿「……」ナデナデ
多賀城「うぅ。殿はずるいのだ……」
殿「……?」
多賀城「はっはっはっは! わらわの寛大な心に感謝するのだ!」
殿「……」
殿「……?」
多賀城「おもわく橋なのだ……」ドキドキ
殿「……」
多賀城「そ、そうか! そうと決まれば、早速行くのだ!」パァ
殿「……」
多賀城「さあ殿! わらわに続くのだ!」タッタッタ
殿「……」
多賀城(わらわは負けぬ。誰にも負けぬのだ!)
終
窪田城「城主様、私の顔をじろじろ見てどうかしましたか?」
殿「……」
窪田城「斜めを向いた方がいい。ですか」
殿「……」
窪田城「その……。正面からだとお見苦しいでしょうか?」
殿「……」
窪田城「な!? 美しさが際立つなどと……。お戯れを」カァ
殿「……?」
窪田城「か、顔が赤いのは元々で、て、照れている訳では……」アセアセ
殿「……?」
窪田城「城主様が望むなら、この窪田城いつでも舞を披露しましょう」
殿「……」
窪田城「では、失礼しますね」
殿「……」ニコッ
窪田城(うふふっ。明日のために、たくさん練習しなきゃ)ニコッ
終
矢留ノ城「ううぅ……」ガクガク
大高坂山城「大丈夫!? 一体どうしたの!?」
矢留ノ城「ううぅ……。人形が……」
大高坂山城「大丈夫。あたしがついててあげるから」ギュ
矢留ノ城「ううぅ、うあああぁぁん!」
大高坂山城「何も怖くないわよ。大丈夫……」ナデナデ
矢留ノ城「ごめんなさい……。ううぅ」
大高坂山城「大丈夫。あたしがいればもう安心よ。だから怖がらなくていいのよ」
矢留ノ城「うう……。ごめんなさい。す、少し落ち着きました」
大高坂山城「そう、よかったわ。一体どうしたの?」ナデナデ
大高坂山城「人形? 人形がどうかしたの?」
矢留ノ城「厠に行きたくて廊下を歩いていたら……」
大高坂山城「うん」ナデナデ
矢留ノ城「その……。お内裏様が歩いてて……」
大高坂山城「え? お内裏様が?」
矢留ノ城「最初は何かの見間違いかと思ったんですけど……」
大高坂山城「お内裏様だったの?」
矢留ノ城「はい……。並んで歩いていたんです……」
大高坂山城「そう。でも大丈夫! あたしがいればもう安心よ!」
矢留ノ城「ほ、本当ですか!?」
大高坂山城「皆を守ってあげるんだからっ!」
矢留ノ城「ううぅ、助かります。怖くて一人じゃ厠に行けなくなるところでした……」
大高坂山城「まずは厠に行きましょうか。安心して。あたしも一緒について行ってあげるから」
矢留ノ城「はい……」
大高坂山城「不思議ね。所領内は神聖な気で満ちてるから、邪悪なものは入って来れない筈なのに」
矢留ノ城「す、済みました」
大高坂山城「お帰り。お部屋に戻りましょうか」
矢留ノ城「え、あの。歩く人形はどうするんですか……?」
大高坂山城「あたしが退治してあげるんだから!」
矢留ノ城「え!? 危ないですよ!」
大高坂山城「安心して。殿に声をかけて一緒に行くから大丈夫よ」
矢留ノ城「そうですか……。ううぅ。ごめんなさい」シクシク
大高坂山城「ぜーんぶあたしに任せなさい! だから泣かなくていいのよ」
矢留ノ城「はいぃ……。ありがとうございますぅ……」
大高坂山城「じゃあ、お部屋に戻りましょうか」
殿「……」
フランケンシュタイン城「Guten Abend。こんな時間に珍しい組み合わせだな」
矢留ノ城「ひゃ!」
大高坂山城「きゃぁ!」
殿「……」
矢留ノ城「フラン城さん……? と、殿」
大高坂山城「もう! びっくりさせないでよ!」
フランケンシュタイン城「はは、すまないな。ところで何かあったのか?」
矢留ノ城「ううぅ……」
大高坂山城「矢留ノ城が歩く人形を見たらしいのよ」
フランケンシュタイン城「あ」
殿「……」
矢留ノ城「……」
大高坂山城「……」
殿「……」
矢留ノ城「……」
大高坂山城「もう! 何か作ったなら、ちゃんとみんなに教えてよ!」
フランケンシュタイン城「はっはっは、すまない。今度からちゃんと教えるよ」
殿「……」
矢留ノ城「はぅ……。気が抜けたら腰も抜けちゃいました……」
大高坂山城「……手を貸すから一緒にお部屋に戻りましょう」
矢留ノ城「ありがとうございます……」
大高坂山城「歩くお内裏様の正体が人造人間だなんて、全く人騒がせね! 行きましょ!」テクテク
殿「……?」
フランケンシュタイン城「主。お内裏様というのは男女一対だったよな?」
殿「……」
フランケンシュタイン城「おかしいな。私が作ったのは女型の人造人間だけだぞ」
殿「……」
男雛「……」ニコッ
女雛「……」ニコッ
終
フランケンシュタイン城「ふむ。どこかに落としてしまったか」
大高坂山城「あらフラン城さん、こんにちは。何か困ったことでもあったの?」
三木城「フラン城さんこんにちは!」
フランケンシュタイン城「Guten Tag。ちょっとKugelschreiberを落としてしまったようでな」
三木城「くうげるしゅらいばあ?」
大高坂山城「分かったわ! あたしが見つけてきてあげる!」タッタッタ
三木城「あ、大高坂山城ちゃんまってー」テッテッテ
フランケンシュタイン城「確か日ノ本の言葉では……。と、行ってしまったか」
大高坂山城「くうげるしゅらいばあって何なのかしら?」
三木城「聞いたことないな~」
大高坂山城「でも、何だか凄そうな響よね!」
三木城「そうだね。美味しいごはんかな~?」
大高坂山城「分からないけど、それっぽい物を探しましょう!」
三木城「うん! 分かった!」
窪田城「くうげるしゅらいばあ? 申し訳ないですが、分かりませんね」
不来方城「なんだそりゃ? まあ、それっぽいものを見つけたらフラン城に渡しておくぜ」
矢留ノ城「す、すいません。よく分からないです……」
大宝寺城「ぶおおーん! ぶおおおーん!」
三木城「ないね~」
大高坂山城「ちょっとお外まで探しに行ってくるわ!」
殿「……」
フランケンシュタイン城「おお、主。見つけてくれたのか」
三木城「あれ? 失くしもの見つかったの?」
フランケンシュタイン城「ああ。三木城も手間をとらせてすまなかった」
三木城「なーんだ。これかなって思ったのに」つベートメンヒェン
フランケンシュタイン城「はは。Kugelschreiberは――」
矢留ノ城「あ、あのフラン城さん。落としたのってこれですよね?」つ馬鈴薯
フランケンシュタイン城「Kugelschreiberは――」
不来方城「おっす。探してたのってこれだろ?」つグリューネソーセ
フランケンシュタイン城「なぜ、みんな食べ物を――」
窪田城「これでしょうか?」つパイプ人形
フランケンシュタイン城「確かに私はドイツ出身だが――」
大宝寺城「ぶおおーん! ぶおおおーん!」
フランケンシュタイン城「君は法螺貝を吹――」
フランケンシュタイン城「せめて最後まで説明させ――」
大高坂山城「くうげるしゅらいばあって、この子のことよね!」
妖怪「……」
一同「……」
殿「……!」キッ
フランケンシュタイン城「な!?」
妖怪「……」
妖怪「……」ブルブル
フランケンシュタイン城「……随分と君に懐いてるようだな」
大高坂山城「この子、紀伊で迷子になって泣いてたのよ」ヨシヨシ
妖怪「……」プルプル
大高坂山城「フラン城さんとはぐれて、悲しくて泣いてるのかと思って」ナデナデ
フランケンシュタイン城「私の作品ではないな」
妖怪「……」
大高坂山城「大丈夫よ。怖くないし、もう寂しくないのよ」ヨシヨシ
妖怪「……」
殿「……」
大高坂山城「……ねぇ、殿。この子のお世話してもいい?」
殿「……」
大高坂山城「ちゃんとこの子の分のご飯も作るし、みんなに迷惑かけないから……」
殿「……」ニコッ
大高坂山城「やったー! ここで暮らしていいって!」
妖怪「ママァ……」
終
殿「……」
彦根城「どうやらお迎えが来たようですね」
殿「……」
彦根城「殿と過ごした日々は……夢のようでした」
殿「……」
彦根城「一緒に猫と遊んだり、お月見をしたり」
殿「……」
彦根城「時には、辛く苦しいこともありました」
殿「……」
彦根城「兜との戦い。それは決して楽な道ではありません」
殿「……」
彦根城「でも、殿。あなたがいたから……」
殿「……」
殿「……」
彦根城「私は決して忘れません。あなたと過ごした日々を……」
殿「……」
彦根城「ふふっ。ごめんなさい」
殿「……」
彦根城「私は頭が良くないので、これ以上説明できないようです」ニコッ
殿「……」
彦根城「でも、心配なさらないで下さい殿」
殿「……」
彦根城「殿には――」
馬場城「ただの風邪でしゅ」
殿「……」
彦根城「……」
富山城「さあ、この薬と」
馬場城「お注射でしゅ!」
彦根城「苦いのも痛いのも嫌ですー!」
終
黒川城「吉田郡山城はどこですか!」ドタドタ
金ヶ崎城「飴で千代城さんを誘ってたッス!」
黒川城「まさか千代城さんは!?」
金ヶ崎城「大丈夫ッス! 千代城さんは全力で逃げたッス!」
三木城「よっちゃん……」グゥー
久保田城「彼女の穢れは私に祓うことができません……」
矢留ノ城「うう……。私の下着……」シクシク
柳川城「また矢留ノ城さんの下着が!」
黒川城「またかー!」ドタドタ
飛山城「また下着を咥えたまま城壁をよじ登ってる姿を根城が見たらしいぜ!」アッチダ
富山城「これを機に褌をつけれいいんじゃないかな?」
柳川城「根本的な解決になってないです……」
馬場城「悪い子にはお注射です!」
村中城「それで治ればいいんだがな……」
黒川城「こんのクソ幼児性愛者がー!」ドタドタ
石山城「今日の吉田郡山城はぁ……異状なし!」
終
馬場城「うーん。うーん」
黒川城「馬場城さん、どうかしましたか?」
馬場城「最近、宇都宮のおばあちゃんの様子が変なんでしゅ……」
黒川城「私から見て特に変わった様子はありませんが」
馬場城「それが、夜中どこかに行ってるんです」
黒川城「夜中でしたら、普通に厠ではないですかね」
馬場城「多分違うと思います」
黒川城「ふむ。他に思いあたるのは……。夜間訓練ですか?」
馬場城「ニヤケながらは行かないと思いましゅ……」
黒川城「ニ、ニヤケながらですか……?」
馬場城「でしゅ」
黒川城「とにかく、本人に確認してみてはいかがですか?」
馬場城「それが、おばあちゃんに聞いてもはぐらかされるんでしゅ」
黒川城「無いとは思いますが、何かがあってからでは困るので調査してみますか」
馬場城「お願いしましゅ……」
宇都宮城「……」キョロキョロ
黒川城「宇都宮城さんですね」ヒソヒソ
馬場城「でしゅ」ヒソヒソ
黒川城「こんな時間に、一体何をするつもりなんでしょうか」コソコソ
宇都宮城「……」ニヤニヤ
黒川城「確かにニヤケてますね」
宇都宮城「……」スタスタ
馬場城「何処に行くんでしょうか」
黒川城「ついて行きましょう」
宇都宮城「……」スッ
馬場城「おばあちゃんが入っていったのって」
黒川城「使われなくなった古い蔵ですね」
馬場城「おばあちゃん一体何をするんですかね」
黒川城「そこの換気口から覗いてみましょう」
宇都宮城「ふぅ。やはりこれじゃな」
馬場城「え?」
黒川城「あれは――」
宇都宮城「む。何奴!」
馬場城「ひゃあ」
黒川城「あ」
宇都宮城「うん? 馬場城に黒川城? 一体何をしてるのじゃ」
黒川城「え、えーっと」
馬場城「あははは……」
黒川城「でも実際は」
宇都宮城「餃子を食べてただけじゃ」
黒川城「なぜ、こんなところで食べてたのですか?」
宇都宮城「それはじゃな」
馬場城「あ、あたしのせいかもしれないでしゅ……」
黒川城「どういうことですか?」
馬場城「あたしが、宇都宮のおばあちゃんに『ニンニクの臭いがする』っていったから……」
宇都宮城「食べぬ者にはこの匂いが臭く感じるらしくての、ここで食ってたのじゃ」
黒川城「なるほど。そういうことでしたか」
宇都宮城「こそこそ食べるのも恥ずかしくてな。ちゃんと教えなかったわしも悪い」
馬場城「うう……。ごめんなさい」
宇都宮城「否、馬場城は悪くない。悪いのはわしじゃ」
馬場城「おばあちゃん……」
黒川城「そういうことでしたら」
富山城「できたよ。これが匂いを抑える薬さ」
宇都宮城「おお、ありがたい。これで場所を気にせず餃子を食えるな」
馬場城「富山城のお姉さんありがとうでしゅ!」
黒川城「お二人とも、よかったですね」
富山城「薬といっても――」
宇都宮城「よし! これから餃子会じゃ!」タッタッタ
馬場城「あたしもたくさん食べるでしゅ!」タッタッタ
黒川城「行ってしまったようですね。ところで普通の薬とは違うのですか?」
富山城「茶葉と林檎の皮を粉末にしただけだから、翌日ならともかく……」
黒川城「ああ……」
宇都宮城「餃子じゃ! 餃子じゃ!」
飛山城「ババア臭ぇぞ!」
終
殿「……」
若松城「疲れてるのか? 無理しちゃいけないよ」
殿「……」フラッ
若松城「こっちこっち」チョイチョイ
殿「……?」ノソノソ
若松城「ほらほら。ここ」ポンポン
殿「……?」
若松城「膝枕だよ、膝枕」
殿「……」
若松城「遠慮するなって。ほらほら早く」
殿「……」スト
殿「……」
若松城「寝ちまったか。いつも頑張ってくれてるからな」ナデナデ
殿「……」スゥスゥ
若松城「殿さんの敵は、私が全部ぶっ壊してやる」
殿「……」
若松城(だからいつか……)
殿「……」スゥスゥ
若松城「戦いが終わったら二人で船旅もいいな」ナデナデ
終
殿「……」
千代城「……おや、来ておったのか? 御仏に祈ってたゆえ、気づかなんだ」
殿「……」
千代城「ご無礼許されよ」
殿「……」
千代城「仏様にお祈りをしていたのじゃ。毎日欠かさず、ずっと昔から」
殿「……?」
千代城「こほっこほっ。この世は無常じゃ」
殿「……」
殿「……」
千代城「その名のごとく末永く城主のそばに居る。というわけにはいかぬかも知れん」
殿「……」
千代城「仏様にお祈りをする。それが、わらわを助ける唯一の真実……」
殿「……」
千代城「なに? 心配には及ばぬ?」
殿「……」
千代城「どういう根拠でそのようなことを申すのだ?」
千代城「ふふっ。殿はまっすぐな人じゃな」
殿「……」
千代城「すまん。少し気弱になっていたようじゃ」
殿「……」
千代城「これからも、千代(ちよ)によろしくお頼み申す」
終
殿「……」
金ヶ崎城「あ、あの! 実はあたし殿に伝えたいことがあるッス!」
殿「……?」
金ヶ崎城「えっと、あたしは……!」
殿「……」
金ヶ崎城「あの、その……」
殿「……」
金ヶ崎城「あたしは、その……。殿のことが、えと……」
殿「……」
殿「……」
金ヶ崎城(色々考えてたのに、殿を前にすると……陳腐な言葉しか……。出てこない)
殿「……」
金ヶ崎城(でもこの体に、この魂から湧き出るこの想いを、なんて表現したらいいッスか……?)
殿「……」
金ヶ崎城「ううぅ……。ごめんなさい殿、やっぱり――」
殿「……」
金ヶ崎城「へ? えっと、はい。何ッスか?」
金ヶ崎城「あ」
殿「……」
金ヶ崎城「あははは!」
殿「……」
金ヶ崎城「そっか。なーんだ、簡単なことじゃないッスか」
殿「……」
金ヶ崎城「殿」
殿「……」
金ヶ崎城「あたし殿のことが――」
終
殿「……」
黒川城「こんばんは不来方城さん。まずはそこに掛けてください」
不来方城「よっと。んで、何の用だ?」
殿「……」
黒川城「いえ、御殿様……。私の口から言わせてください」
殿「……」
不来方城「一体どうしたってんだ?」
黒川城「今まで隠していましたが、貴女は縁日の宝引きで当てたのです」
不来方城「え? ちょっと待ってくれ。俺は召城の儀で現世したんじゃなかったのか?」
殿「……」
黒川城「殿も貴女に打ち明けようか、ずっと悩んでいたのです」
不来方城「そう……か」
黒川城「責めるのならば、私にしてください。私があの時ねだらなければ――」
不来方城「いや、別に責めねえよ」
殿「……?」
不来方城「正直ちょっとどころじゃない衝撃だったが……。俺は俺だ!」
黒川城「不来方城さん……」
不来方城「ところで、本当は何が欲しかったんだ?」
黒川城「本当は眼鏡が欲しかったんです……」
黒川城「南蛮製の可愛らしい眼鏡だったので、思わず御殿様にねだりました」
不来方城「へぇ。結局その眼鏡は手に入ったのか?」
黒川城「はい! 貴女が出たあと、すぐ手にはいりました」
不来方城「見せてくれよ」
黒川城「この星型眼鏡です」
不来方城「……」
殿「……」
黒川城「いつまでも騙し続ける訳にはいきませんからね」スチャ
不来方城「その眼鏡のセンスはちょっと追従出来ないなぁ……」
終
「全く。自己紹介のあと、殿から掛けられた言葉がそれだなんて」
「……」
「確かに胸の話を始めたのは私ですよ?」
「……」
「だからといって、普通そこまで直接的な言葉を使いますか」
「……」
「全く。殿は女子の心を知らないようで……」
「……」
「他の子にも似たようなことを、仰ってる訳はありませんよね?」
「……」
「……」
「殿。顔が真っ赤ですわよ?」
「……」
「駄目ですー。南部せんべいをくれないと許してあげませーん」
「……」
「うふふっ。では一緒に食べましょう」
そんな彼も今では私の旦那様です。
あの時のセリフを蒸し返すたび、赤くなってうつむくのが可愛いんですよ!
終
「……」
「全く殿は変人だね。あれだけ可愛い城娘たちに慕われながら、ボクを選ぶなんて」
「……?」
「ふっ、そうかもね。そんな殿に惚れたボクも変人だよ」
「……」
「一つしてみたいことがあるんだけど、いいかな?」
「……?」
「膝枕というのをしてみたいんだ」
「……」
「殿のために食事を作ったりはしてるけど、それは女中もするだろう?」
「……」
「……」
「え、ちょ。……あ」
「……」
「むぅー。ボクが殿にしてあげたかったんだけどな」
「……?」
「ふふ。これはこれで心地いいよ。少し眠くなってきたな」
「……」
「そうかい? ならお言葉に甘えて……」
「……」
「すぅーすぅー」
「……」
終
「……?」
「ええ、嬉しいわよ。私が温泉好きなのは知っているでしょう?」
「……」
「時々なら、兜の襲撃もいいかもね」
「……」
「……冗談よ。でも、頑張った甲斐があったわ」
「……」
「ねえ殿」
「……?」
「……」
「そういわずに。こっちにきて」
「……」
「はい」
「……?」
「ここに寝転んで」
「……」
「女に恥をかかせる気?」
「……」
「……」
「……どうかしら?」
「……」
「よかった。うふふ」
「……?」
「ううん。なんでもないわよ」
「……」
「また来たいわね」
「……」
「……」
「ええ。私たちで作らなきゃ」
「……」
「ねえ殿」
「……?」
「泰平の世が来て、もう一度私とここに来たら聞いて欲しいことがあるの」
「……?」
「今はまだ秘密」
「……」
「覚悟しておきなさい。沈勇の士といわれる私の力で必ず――」
終
「みなさーん、朝ですよ! 点呼を取るので集まってくださーい!」
「おはようございましゅ!」
「おはよう。馬場城は朝から元気じゃの」
「おばあちゃんも元気そうで嬉しいでしゅ!」
「ババァは朝が早いんだよ」
「こりゃ飛山城! 老人扱いするでない!」
「おっす。昨日も鬼はいなかったぜ」
「はいたーい」
「えっと、根城さんと大高坂山城さんは朝餉の準備で、吉田郡山城は土牢の――」
「福岡城がまだだぜ」
「また彼女ですか……。若松城さんお願いします」
「分かったぜー!」
「主よ。大所帯になったが、屋敷を建て替える気はないのか?」
「……」
「なぜだ?」
「……」
「ふふふ。主らしいな」
「……」
「ああ、引き留めてすまなかった」
「……」
「毎日お前たちの顔を見たいか」
「殿ー。おはようございましゅ!」
「おはよう、殿」
「お、殿。おはよーさん」
「おっす。今朝も鬼はいなかったぜ」
「はいたーい」
ぶおーん! ぶおおーん!
終
「……?」
「今ここで」
「……」
「はて、あの方向になにか……。っ!」
「……」
「背後から肩に手を……。つまり奇襲や敵を意表を突けというのだな」
「……」
「後ろから攻撃するのは簡単だ。だがそれは卑怯者の所業!」
「……」
「……」
「それでもし、仲間が討たれるようなことがあれば。……それこそ武士の名折れだ」
「……」
「ありがとう殿。目的のためなら手段を選ぶなということだな」
「……」
「では、失礼する」
「……」
坂戸城は知らない。
殿は自分に聞くより、向こうで訓練をしている黒川城に聞けと指をさしたことを。
彼女の肩にゴミがついていたので、払うため肩に手を置いたことを。
そして勘違いさせ、どうしようと困惑した笑みを浮かべたことを。
終
「やあ、石山城」
「フ、フラン城どの!?」
「君はまた変なことをしているのか?」
「い、いえ。何もしておりませぬよ!?」
「多少のことは目をつぶるが、ほどほどにな」
「む」
「度を超えたら……」
「……超えたら?」
「オヤツ抜きだ」
「な! 筆頭家老といえど、それは越権行為ですぞ!」
「ここに偶然きび団子がある」
「ぐぬぬ!」
「さて、どうしようか。丁度小腹がすいてきたんだが?」
「分かりました。分かりました! 罠は解除しておきます」
「分かればよろしい。では、失礼するよ」
「ぐぬぬぬ! オヤツで脅すとは卑怯者めー!」
終
「……」
「確かに最初は慣れないかもしれないけど」
「……」
「きっと病みつきになるはずだよ」
「……」
「よかったら、殿にも一枚あげるからどうかな?」
「……」
「そうか、分かったよ」
「……」
「ううん。ボクのほうこそ、無理をいってごめんね」
「……」
「でも、せめて何かを身に着けて欲しいなぁ」
終
「殿のお帰りを……。お待ちしておりました」
「……」
「お疲れのようですね。どうぞこちらに」
「……?」
「膝枕……。というものをしたいのですが、ご迷惑でしょうか?」
「……」
「はい。どうぞご遠慮なく」
「……」
「どうでしょうか?」
「……」
「そんな。ほめ過ぎですよ」
「……」
「ええ? 極上? 本当ですか? 嬉しいな」
「……」
「素晴らしい張り……。ですか? 自覚はないですが」
「……」
「おそらく、七難八苦による自己鍛錬の賜物かと」
「……?」
「ええ。よかったら、いつでもして差し上げますよ」
「……」
「そうですね」
「……」
「泰平の世のため。殿のため。鬼神のごとし働きを見せましょう」
終
「どうしたんですか大坂城さん」
「茶室の壺が欠けちゃったから、壺をさらにしようかなぁって思ったの」
「皿ですか」
「でも、あの部屋に合うのを持ってなくてどうしようかなーって」
「そうでしたか。ふむ」
「それに今から練習があるし、どうしよう」
「私が用意しましょうか?」
「え、いいの? ありがとう名古屋城ちゃん!」
「私も茶道には一家言を持っていますので、期待してくださいね」
「うん! 楽しみにしてるよ! じゃあ私これから練習だからまたねー」
「はい、また。では茶室に合う皿を見繕いますかね」
「大坂城さん、今からお茶でもどうですか?」
「お? いいねー。名古屋城ちゃんの選んだ茶器も興味あるし」
「期待してくださいね。秘蔵の一品ですから!」
「あれ?」
「ふふ。これは天下に名高い――」
(私はさらの壺を置きたいって言ったはずなのに……)
「一見地味で歪んだ模様のようですが――」
(何で皿なんだろ? いや、確かにいい品だけどさ)
「見る角度によって――」
(駄目だ)
「青の模様が――」
(気になって、名古屋城ちゃんの話が頭にはいってこない……)
終
「……」
「主が、この地獄の旅路を歩むようになった事件……」
「……」
「そう。関ケ原の兜襲来」
「……」
「しかし主は、歩き続け、考え続け、戦い続けてきた」
「……」
「志を失わず。何度も何度も傷つきながら、確実に強くなってきた」
「……」
「それに主は一人じゃない」
「……」
「運命に引き寄せられるように、主の危機を救った柳川城がいる」
「……」
「思いやりがあり、しっかり者の東黒川館がいる」
「……」
「どうやら主は、何かとても大きな運命を背負った殿のようだ」
「……」
「これから先の旅も、今まで以上に長く苦しいものになるだろう」
「……」
「……」
「私たちと兜。私たちが負けると主は思うか?」
「……」
「ああ。そして決して失ってはならないもの……。それは絆だ」
「……」
「苦しいことも辛いことも、山のようにあるだろうが」
「……」
「私たちは決して、主を裏切ったりしない」
「……」
「なんて……な。主にいってるようでいて……」
「……」
「その実、自分に言い聞かせている私は弱い存在なのだろうか?」
「……」
「はは、主らしい」
「……」
「そんな主だからこそ、私たちはついて行く」
「……」
「そんな主だからこそ、私たちは命を賭せる」
「……」
「そんな主だからこそ、私たちは――」
終
「……!?」
「壮麗にして優雅なたたずまい。日本三名城の熊本城!」
「……」
「殿! どうですかこの見事な曲線美を」
「……」
「ほら殿、もっと近くでご覧ください! そうです! 私の隅々まで! ええ。見所は満載なのですからっ!」
「……?」
「ううっ……」
「……」
「みなさん、私のことを影が薄いというんです……」
「……」
「……」
「戦闘力には自信があります!」
「……」
「特技だって強いです!」
「……」
「計略ですべての敵を薙ぎ払います!」
「……」
「顔だって、それなりに整ってます!」
「……」
「脚線美には自信があります!」
「……?」
「あ、それはさっきにいいましたね」
「……」
「……」
「悪いところはないけど?」
「……」
「え」
「……」
「『いつの間にかいた』ですって?」
「……」
「いえ、その……」
「……」
「う、うう……」
「……」
「うわーん!」
終
「……?」
「やくもさん顔色が優れないようですが、どうしたんですか?」
「招城の儀で新しい城娘がきてくれただに……」
「新しい仲間ですか! どんな御城でしょうね?」
「……?」
「あれ? ならどうして浮かない顔を?」
「それが……」
「俺は聚楽弟。長生不老の楽(うたまい)を聚(あつ)むる者だ」
「な!?」
「……!?」
「よろしくだに……」
「やくもさん、ちょっとこちらへ」
「分かっただに……」
「分からんだに。でも招城の儀で現世したのは確かだに」
「七尺(210㎝)四十貫(150kg)くらいあるのですが……」
「た、多分城娘だに」
「千狐さんはなんと?」
「聚楽弟の姿を見た瞬間逃げ出しただに」
「そ、そうでしたか……」
「もういいかい?」
「えっと、失礼しました。と、ところで聚楽弟さんの使う武器は何ですか?」
「これ(筋肉)しか能がない」
「あ、はい」
「……」
「ええ……。そうですね。夕刻みなで集まり歓迎の祝杯をあげましょうか」
「そ、そうだに。殿さんのいうように、みんなでご飯食べるだに」
「酒はダメなんで オレンジジュースください」
「そ、そうですか」
「……」
「烏龍茶も捨て難いですねぇ」
終
「は?」
「ヨロシク」
「え? 突撃式トッパイ形兜って、あの兜の?」
「ハイ」
「フラン城さん! 兜が!」
「安心していい。この兜は仲間だ」
「え? 仲間? か、兜が仲間!?」
「昨晩、主が所領を散歩していたら遭遇したらしいぞ」
「所領内に侵入されたんですか……」
「敵襲と思い刀を抜いたら、仲間になりたいと頼まれたから仲間にしたそうだ」
「そんな無茶苦茶な!?」
「何デ、殺シ合ワナキャイケネーンダロッテ思ッテ」
「和睦を申し入れにきたのですか?」
「イヤ。ソモソモ何デ戦シテルンダロウッテ」
「そこからですか!? いや、何で貴方は戦ってるんですか!」
「アニキガ戦エッテイウカラ……」
「えぇ……」
「俺ラ下ッ端ハ、アニキ達ノ命令聞カナキャ殺サレルシ」
「つまり、兜たちの中にも仕方なく戦っている者がいると?」
「ンー? 戦ウコトガ生キ甲斐ミタイナ奴モ多イケドナ」
「……」
「少ナクトモ俺ノ周リデ、俺ミタイナ考エノ奴ハイネーカナァ」
「コノママデイイノカナーッテ思ッタンダ」
「……」
「別ニ戦イ自体ハ嫌ジャネーシ、死ヌノモ殺スノモ怖クネエヨ。タダ……」
「ただ?」
「何モ分カラナイノハ嫌ダナッテ」
「私たちの仲間になれば、戦う意味が分かると?」
「ソコマデハ思ッチャイネエヨ」
「……」
「デモ、アッチニイルヨリハ、マシカナッテ」
「ましって……。フラン城さん、御殿様はなんと?」
「『邪気も敵意も感じない』とのことだ」
「御殿様の眼を信じぬわけではありませんが……」
「元同胞と殺し合うことになるが、覚悟の上だな?」
「同胞ツッテモ、同ジ兜ッテダケデ情ハネーヨ」
「ここまで言ってるんだ。多少は信じてもいいんじゃないか?」
「分かりました。しかし、少しでも不審な動きをすれば即刻切り捨てますからね」
「アア。覚悟ノ上ダゼ」
「御殿様に話があるので、失礼します。フラン城さんはその兜の監視をお願いしますね」
「ああ、任せてくれ」
「ジャアナ」
「ン?」
「時代も種族も問わず、男とは馬鹿なものだな」
「オ前モダロ?」
「はは、そうだな。この感情ばかりは錬金術をもってしても説明できない」
――ジャアナ桃形兜、火焔形兜。オ前タチトノ時間ハ楽シカッタゼ
終
「名古屋城。君は正気か?」
「……」
「私とおそろいの金鯱ですが、お気に召さなかったでしょうか……」
「……」
「気に入る気に入らない以前に、大きすぎる」
「そうでしょうか?」
「……」
「九尺(約2.7m)五十八貫(約214㎏)はどう考えても部屋に置くものではない」
「しかし、私の持つ最上級の物がこの金鯱なのです……」
「贈り物でなくとも、主の生誕を祝福する方法はあるのではないか?」
「む。困りましたね」
「……」
「本当ですか!?」
「主よ、私は反対したからな?」
「……」
「はい! 毎日磨いてやってくださいね!」
続く
「……」
「これを受け取ってくれ」
「……?」
「私の石垣の石だ」
「……」
「この石は私の半身。否、私自身といえよう」
「……」
「殿は私の石垣の石を受け取った。つまり私自身を受け取ったということだ!」
「……?」
「いいや、違わない!」
「……」
「殿、これから指月山でデートしないか? そうしなさい、そうしなさい!」
続く
「……」
「受け取ってください。私とお揃いの眼鏡です」
「……」
「度は入っていないので安心してくださいね」
「……」
「どうぞお付けになって下さい」
「……」
「わぁ……。とっても良く似合ってます!」
「……」
「御殿様」
「……?」
「結構古いお城ですので、お守りできるかどうか不安ではありますが」
「……」
「今後とも、末永くよろしくお願いしますね」
続く
「……」
「喜んでもらえて嬉しいよ」
「……?」
「これは賢者の石だ」
「……」
「何? 使わないのか?」
「……」
「これを飲みこめば、不老不死が約束されると言われているんだぞ」
「……」
「しかしそれでは……。私より先に……」
「……」
「私はまた一人ぼっちに……。なってしまうではないか」
「……」
「……」
「輪廻か……。でも、それではいつまた逢えるか……」
「……」
「ぷっ。くっはは! 兜になってでも逢いに来るとは、ははは!」
「……」
「ははは。ああ、そうだな。先のことを考えても仕方がない」
「……」
「今はただ、主と共に歩いていくだけだ」
「……」
「何だ主?」
「愛してるよフランケンシュタイン城」
城娘達の日常 完
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コメント一覧 (2)
-
- 2017年03月25日 22:33
- 名前出ただけっぽい公式ヒロインェ……
あ、いいssだったと思います
結構星1.2勢も出番あるとこに愛を感じた
しかし何故水口城はネタ枠なのか