妹「お兄ちゃん、美味しそうな匂いがする家があるよ!」兄「ホントだ!」
兄「ん?」
友人「今度の休み、みんなで近くの山までハイキングに行かないか?」
兄「ハイキングか……面白そうだな」
妹「あたしも行くー!」
幼馴染「私も行くわ!」
友人「決まりだな! よーし、四人でハイキングだ!」
―山―
友人「おっしゃ、みんな集まったか」
幼馴染「おはよ」
妹「おっはよー!」
兄「うーん……」
友人「どうした?」
兄「なんていうか……みんな軽装だな」
兄「本当にこんなんで山を登れるのかなぁ? やっぱりやめた方が……」
友人「大丈夫だろ。なにも富士山登るってわけじゃないんだから」
妹「そうそう! だいじょぶだいじょぶ! レッツゴー!」
幼馴染「適当に歩いてたら、ハイキングコースから完全に外れちゃったわね……」
妹「あたしたち、どうなるの? 死んじゃうの?」
兄「標高は低い山だし、落ち着いてどこかで休息してから山を下りれば」
兄「さすがに死ぬってことはないと思うが……」
兄「あんまり手こずると遭難だの救助だので、騒ぎになっちゃうかもな」
幼馴染「えぇ~、救助隊が出動すると、お金かなりかかるんでしょ?」
友人「……くそっ」
兄「次の休みとかじゃなく、何週間か、準備期間を設けるべきだった」
友人「なんだよ! オレが悪いってのか!?」
兄「……少なくとも責任の一端はあるだろうな」
友人「なんだとぉ!?」
幼馴染「ちょっと、こんな時にケンカなんてやめなさいよ!」
妹「そうだよぉ……とにかく今は休める場所を探さなきゃ!」
兄「そうだな」
友人「……すまねえ」
妹「あ!」
兄「どうした?」
妹「お兄ちゃん、あそこに美味しそうな匂いがする家があるよ!」
兄「ホントだ!」
兄「さあ……」
幼馴染「こんな山の中に住んでる人がいるとは思えないけど……」
妹「もしかして……仙人とか!?」
兄「まさか……」
友人「なんでもいいよ! とにかく行ってみようぜ!」
ザッザッザッ……
兄「なんだこの家? なにやら美味そうな匂いはするが、人のいる気配がない……」
幼馴染「なんだか、ヘンゼルとグレーテルの童話に出てくるお菓子の家みたいね」
妹「え!? ってことは、仙人どころか魔女が住んでるの? こわ~い!」
友人「バカバカしい、魔女なんかいるわけないだろ」
友人「きっとオレらみたいな遭難者用に建てられたログハウスかなんかなのさ」
友人「入ってみようぜ!」
兄「お、おい……」
シーン……
友人「返事がないな……だったら勝手に入るか」
幼馴染「いくらなんでも勝手に入っちゃまずいんじゃない?」
友人「大丈夫さ、入ろう!」ガチャッ…
友人「へぇ~、外から見るのに比べて中は結構広い家だな」
兄「ああ、それと気になるのが……」
兄「壁のいたるところに、うねうねとした線があるんだよな」
妹「うん……不思議な模様だよね。こんなの見たことないよ」
幼馴染「なんだか怖くなってきたわ」
友人「大丈夫だって! こんなとこに住んでる変わり者なんだ。インテリアだって変わってるのさ!」
兄「どうした?」
友人「こっち来てみろ! 風呂場がある!」
兄「風呂場? こんな山小屋に?」
幼馴染「ウソぉ!?」
妹「どれどれ……」
友人「これ……見てみろよ」
兄「浴槽の中に、お湯がたまってる……」
幼馴染「ってことは、この家には人がいるのかもしれないわね」
妹「疲れによく効く温泉かもしれないよ、入ってみる?」
兄「いや……お湯にしては妙に濁ってるし、やめといた方がいいだろう」
友人「下手すりゃ毒かもしれないしな……」
兄「他の場所へ行ってみよう」
兄「その“誰か”に関する手がかりはないな」
妹「お留守なのかな?」
幼馴染「キャーッ!!!」
友人「なにがあったんだ!?」
妹「どしたの!?」
幼馴染「こ、これ見て……」
兄「これは……肉だな」
友人「なんでこんなものが……?」
兄「ん?」
妹「怖いこといってもいい?」
兄「なんだよ?」
妹「もしかして、これって……人の肉なんじゃ」
兄「!」ゾッ…
幼馴染「キャーッ! やめてやめてやめて!」
友人「ハハ……まさか、そんなことあるわけないって! あるわけ……」
兄妹幼馴染「…………」シーン
友人「ア、アハハハ……」
兄「大丈夫か!?」
友人「いてて……なんかにつまずいちまった。なんだこりゃ……」ヒョイッ
友人「ヒッ!!!」
友人「これ、なんかの骨じゃねーか……!」
妹「えええええっ!」
幼馴染「いやぁぁぁぁぁっ!」
兄「……!」
兄「こ、今度はなんだ!?」
妹「こっちには……野菜があるよ!」
兄「野菜!?」
幼馴染「なんなのよ、この家は!? いい加減にして!」
妹「お兄ちゃん、どうしよう!?」
兄「もうこの家からは出た方がいいかもしれないな……」
兄「!」ハッ
兄「いつの間にか、友人が消えてる……」
幼馴染「ホントだ! さっきまでいたのに!」
妹「どうしてぇ~?」
兄「と、とにかく手分けして捜そう!」
妹「うん!」
幼馴染「分かったわ!」
妹「いなかったよ。お兄ちゃんは?」
兄「こっちもダメだった」
兄「ところで……幼馴染は?」
妹「わかんない……三人ともバラバラだったし……」
兄「ってことは、幼馴染も消えたってことか!」
妹「うん……」
兄(いや……“消された”の方が正しいのかもしれないけど……)
妹「さっきまであった骨と肉と野菜も、なくなってたよ」
兄「なんだと!?」
兄「なんなんだこの家は!? まるで家自体が生きてるかのような……!」
≪その通り……≫
兄妹「!?」ビクッ
妹「なに!? 今の声……!」
兄「さ、さあ……」
妹「やだっ! お兄ちゃん、周囲の壁から触手が生えてきた!」
兄「壁についてた線は、模様なんかじゃなく、触手だったのか!」
ニュルニュルニュルニュル…
兄「誰だ!? こんなことするのは誰だ!?」
ズルズル…… ズズズ…… ズズッ……
兄「な、なんだこの音……!」
妹「お兄ちゃん、助けてぇっ!」
兄「お前は……家か!」
兄「“家そのもの”か!!!」
≪はい……≫
ズズズッ…… ズルッ…… ズゾゾ……
ニュルルルルル…
妹「いやぁぁぁっ! 触手が絡みついてきたよぉ!」
兄「ぐっ……こっちにもだ!」
ニュルニュルニュルニュル…
妹「いやっ、はなしてぇ! お兄ちゃん、助けてぇ!」
兄「やめろっ! せめて妹だけは助けてやってくれ!」
ニュルルルルルル…
≪あまり騒がしいのは好きではありません。少し静かにしてもらいましょう≫
兄「うげぇっ! 口の中に触手が入ってきたぁ!」
妹「あたしにも!」
兄「たっ、助け……」モゴモゴ…
妹「おにいちゃ……」モゴモゴモゴ…
兄「――!?」
妹「お兄ちゃん、これ……!」
兄「ああ、この触手、うまい……! うまいぞ……!」
兄「コシがあって、コクがある……」
妹「それに滑らかだからスルスルと食べられちゃうよ!」
≪さあ、こちらへどうぞ≫
妹「さっきのお風呂場だ!」
友人「よぉー、二人とも! 先にいただいちゃってるぜ!」ズルズル…
幼馴染「これ、おいし~い!」ズズズッ…ズズッ
兄「お前たち!?」
妹「消えたと思ったら、お風呂場にいたんだ!」
≪満腹になって一休みされたら、安全に山を下りるルートをお教えしましょう≫
兄(そうか……俺たちを驚かせた触手は触手じゃなく――“麺”だったんだ!)
兄(そして、浴槽に満たされてるあの液体はお湯じゃなく、スープ!)
友人「このチャーシューがまたうまいんだよな!」モグモグ
幼馴染「このキャベツも!」シャキシャキ
兄(家の中に転がってた肉と野菜は具で……骨はダシをとるためのもの! おそらく鶏ガラ!)
兄「妹よ……」
妹「んー?」ズルズルッ
兄「俺はようやくこの家の正体が分かったぞ」
兄「この家の正体は――」
妹「なるほどー!!!」
< 終 >
元スレ
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コメント一覧 (4)
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- 2017年03月14日 01:45
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- 2017年03月14日 03:05
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- 2017年03月14日 18:48
- 草ァ!