少年「女だったらなぁ…」
少年「あ、よ、よう。…来たんだ」
少年「ていうか、遅いよ!4時に来いって言ったじゃん!もう10分過ぎてるんだけど」
少年「はあ?そんなの理由に入らないでしょ…。ま、いいや。ちゃんと来たんだし…」
少年「…」
少年「え?」
少年「話?あ、…えっと、うん、まあ、ある…けど」
少年「…」
少年「うるさいな、急かさないでよ」
少年「えーっと…」
少年「…」
少年「だ、大学は楽しい?」
少年「…」
少年「ふーん…そう…」
少年「友達とか…いっぱいできた?」
少年「へぇ…。良かったね…」
少年「…」
少年「じゃあ、彼氏とかは…?」
少年「いない!?」
少年「ははっ!そうだと思った!やっぱりね!大体あんた全然男受けしないんだよ!もうちょっと愛想よくしなきゃ」
少年「なんだーやっぱりかー。てかどんな気持ち?華の大学生で彼氏いないとか?」ニッコニッコ
少年「あ~出た出た…。モテない奴って必ずそう言うんだよね~」
少年「要らないんじゃなくて“できない”んでしょお?ははっ」
少年「あーおかしい…」
少年「…」
少年「ふう…」
少年「いや、待ってよ。まだ終わってないんだけど。何勝手に帰ろうとしてるの」
少年「えっと…」
少年「…」
少年「あ、そういえば…。参考書譲ってくれてありがとう…」
少年「まあ、僕には必要ない基礎レベルのものばっかりだったけど…。でもまあ、うん。ありがと…」
少年「…」
少年「いや、そうじゃなくって…。お礼が言いたかったんじゃなくて…。いや、お礼も言いたかったんだけど」
少年「ええっと…」
少年「…」
少年「は?別に具合悪くなんかないし…。てかキモっ、こっち見るなよ」
少年「こ、…」
少年「…」
少年「こ、これ!」バッ
少年「は?じゃないよ!さっさと受け取れ!」
少年「…」
少年「なにこれって、…えっと、お返しだよ。あれの…」
少年「参考書のお礼と…。それから、バレンタインのお返し…」
少年「ぶっちゃけあんたのチョコ甘ったるくてあんま僕の口には合わなかったけどね~」
少年「てか、彼氏にチョコも渡せない19歳とか可哀想すぎー!哀れだわ…」
少年「…えっと、まあそれはおいといて」
少年「まあ、うん。お返し。だから。…家に帰って、開けて…」
少年「待って!なんで今見るの!?渡した本人の前で開けるのは失礼だろ!?」
少年「帰ってから開けてよ!ほんっと常識ないなぁ!?」
少年「…よし。約束ね」
少年「ええと、じゃあ。僕、帰るから」
少年「…」
少年「じゃ…じゃあね」
少年「…」タタタ
少年「え?あ…ううん、いらない…。もう十分だよ」
少年「…」
少年「お母さん、僕…。えっと、勉強するから。部屋に入ってこないでね」
少年「うん。じゃあ」タタタ
バタン
少年「…」
少年「…」フー
少年「!」ビクッ
少年「わ、わ」タタタ
少年「…」
少年「ほ、ほんとに電話、きた…」
少年「…」ゴクリ
ピッ
少年「も、もしもし?」
少年「…あ、えと。うん、…。そう…。美味しかった?あっそ…」
少年「こんな夜中に一気に食べると、太るよ?ただでさえ魅力ないのに」
少年「…」ゴホン
少年「えっと、なんでもない。…それで、えーと…」
少年「手紙は…見たんだよね…?」
少年「そ、そう…」
少年「…」
少年「…」
少年「え…?え…?」
少年「な、なに。ごめんって…。は…?」
少年「ち、…ちょっと待って。あのさ、あんた…彼氏も好きな人もいないんだよね?」
少年「そ、そうでしょ?じゃ、別に……い、いいじゃん…」
少年「試してみるのも、いいでしょ…?ぼ、僕ほら、自分で言うのもなんだけど頭いいし、ルックスも結構…」
少年「…まさか、弟みたいだから恋愛対象にならないとか、…そういうくだらない理由じゃ…」
少年「え?違う?」
少年「…」
少年「…え、…?」
少年「今、なんて?」
少年「………」
少年「…それ、本当?」
少年「…女が、好きなの?」
少年「…」
少年「あ、あんたは女で、女が好きなの?」
少年「へ…」
少年「レズ…ビアン?っていう、やつ…?」
少年「…」
少年「そ、…そう、なの…」
少年「…」
少年「う、ううん。えっと、ごめんなさい。その、言いづらいこと言わせちゃって…」
少年「え?」
少年「ひ、引いてないよ!引くわけないじゃん!大丈夫だよ、ほら、最近そういう人も増えてるし、差別はしちゃいけないし…」
少年「…う、うん…。そっか…。それなら、仕方ないね…」
少年「そ、そう…。大丈夫、誰にも言わないから」
少年「…それで…。ええと…」
少年「え?友達?あ、…う、うん。そうだね。まあ、友達でいつづけてあげてもいいけど?」
少年「て、ていうかあれだよ?ドッキリだからね?あの手紙」
少年「いや~からかってやろうと思ったら予想の斜め上を行く展開だったよ」
少年「ぷっ。引っかかってやんの。だっさ」
少年「ま、とにかくあんたの弱みを1つ握れたってわけだよね~」
少年「分かった分かった分かったって!言わないって!うるさいなあもう」
少年「あー、はいはい。それじゃ僕忙しいし、切るね。それじゃまた」
ピッ
少年「…」
少年「………えぇ………」
少年「嘘ぉ…」
少年「…」
少年「……」
少年「…」ゴシ
少年「こんなのありかよ…」ゴシゴシ
少年「…」グスッ
少年「……」ゴシゴシゴシ
「さて今日の特集はー」
「男の子とも女の子とも少し違う?ちまたで話題の“男の娘”特集-!」
少年「…」ボー
「なんと最近では普通の男子が女子の格好をした、所謂“女装男子、男の娘”が急増中!」
「その魅力を余すところなくお伝えしますー!」
少年「…おとこのこ…」ボソッ
「まずは女装カフェ人気NO1の、Aさん!素顔のほうはというと~…」
「あ!やっぱり男性ですね!でも肌がとっても綺麗!触ってもいいですかー!?」
少年「…」ジー
「Aさんがメイクを施し、ウィッグを被ると…なんと!絶世の美少女に大変身!」
少年「へぇぇ…」
「ところでAさん、恋愛対象のほうは…?」
「あ、僕は完全に女性ですね。ただ女装が好きってだけで、ゲイではありません」
「そうなんですか?」
「もし理解のある女性とつきあえたら、一緒におそろいの服で双子コーデとかしてみたいですねー」
「わー、それ結構楽しそうですね!」
少年「…」
「それでは!次の男の娘は~」
少年「……」ピッ
少年「…」スタスタ
少年「おかあさーん」
少年「姿見どこ?あったよね?」
少年「二階?わかった」
少年「…」クル
少年「…」クル
少年「…」ヌギ
少年「……」
少年「いや、いやいやいやいや」
少年「無理があるでしょ」
少年「僕別に、そういう趣味ないし。あほくさ」
少年「…早いね。大学?」
少年「ふーん。大変だね」
少年「…」
少年「あのさあ、この間のことだけど」
少年「レズ…なんでしょ?」
少年「それってさ、やっぱ、タイプ?みたいなのあるの?」
少年「あ、あるんだ」
少年「どんな…?」
少年「年下系?あ、そ、そう。ふーーん」
少年「…そう…。結構フェミニンな感じの子がいいんだ…。スカートとか似合う人?」
少年「…」
少年「え、や、別に?聞いただけ」
ガチャ
少年「!」ビクッ
少年「ち、違うってねえちゃん!いや、勝手に入ったことは謝るけど!」
少年「あ、あれだよ。辞書貸してたじゃん?今必要になったから取りにきたの!」
少年「そうだよ!てか使ったら返せよ!ほんと迷惑なんだけど」サササ
少年「次からは気をつけてよ!?こんなの続くともう何も貸さないから!」
バタン
少年「…」
少年「あーびっくりした…」ドキドキ
少年側の言葉しか書いてないんや
相当やばいやんけ
少年「…」ペラ
少年「ゆるふわ愛されモテメイク…。おるちゃん…?ティント…?」
少年「ほんと女って面倒くさいなぁ…。同情するよ」
少年「…」
少年「メイクってここまで変わるのか…」
少年「なるほどねー…。目の上にラインを引いて大きく見せてるのか…」
少年「え、化粧って肌の上に直接やるんじゃないんだ…。下地?ふうん…」
少年「…」モクモク
少年「ねえ、ねえちゃん」
少年「僕ってさ、女っぽい?」
少年「何急にって。あんたいつもからかってくるじゃん」
少年「細いとかひょろいとか、顔が女っぽいとか、…」
少年「やっぱそうなんだ…」
少年「…」
少年「は?いや、別に?学校で言われたからちょっと気になった」
少年「い、嫌に決まってるでしょ!?僕男だよ?」
少年「ほんと…いやだなー…」
少年「ねえちゃーん」
少年「あのさ、学校の出し物があってさー」
少年「僕、役柄的に女装しなくちゃいけなくなって」
少年「それで…。なんか、要らない服とかあったら譲ってほしいんだけど」
少年「あ、それとメイク道具とかもちょっと貸してほしいかも」
少年「え?いいの?やった!」
少年「あ、勿論スカートだよ?ある?」
少年「それでいい!ちょうだい!」
少年「よし…」
少年「い、いや!本当は嫌なんだけどね?代役がいないしどうしてもってお願いされたから」
少年「…」スッ
少年「え?ポップティーンじゃなくてセブンティーン?しらないよそんなのー」
少年「表紙のモデルがちがう?僕わかんないんだけどー」
少年「知らないってばー。っていうか、電話で指示してないで自分で買えよー」
少年「もー、なんで僕がこんなことー」
少年「…」ピッ
少年「…」スタスタ
少年「す、すみません。これ…」
「ありがとうございます。720円になります」
少年「…」ホッ
少年「それで…ファンデーションね」パタパタ
少年「チークと、…アイシャドウと…リップ、と」
少年「…」プルプル
少年「あ!」ビッ
少年「うわ、はみ出た!」ゴシゴシ
少年「!?な、なんで消えないの!?」
少年「ちょ、なにこれ…」
少年「…」
少年「これはひどい…」
少年「練習しなきゃ…」
少年「…服は、と」
少年「…」モソモソ
少年「あ、入った」
少年「…なんか違うな」
少年「全体的に女装感が抜けないというか」
少年「あ、足か?内股にしたほうがいいのか」
少年「いたっ」グキ
少年「もー女っておかしいでしょ。なんでこんな体勢で生きてるんだよ」
少年「あ、でも…」
少年「うん、顔はあれだけどなんか遠くから見たらいけそう」
少年「…うん、いける。多分」
少年「…よし」ザパ
少年「…」
少年「えーっと、泡をつけて…。刃で傷つけないように剃る…」
ショリショリ
少年「…うわくすぐった」
少年「…よし、足はおっけー」
少年「…」ショリショリ
ガリッ
少年「」
少年「~~~~~~~~~!!?」
少年「いたたたたたたた!!いったい!!!」
少年「…」ホー
少年「女の足だ…」
少年「なーんだ、僕結構いけるじゃん。このままそういう界隈でデビューできるレベルじゃない?」
少年「てか、このモデルより足首細いし!鎖骨も綺麗に出てるし」
少年「~♪」
少年「ふふーん」クルクル
少年「…」パタパタ
少年「…」スッスッ
少年「…」クルン
少年「…」
少年「で、…」
少年「できた…」
少年「え、やばい。できた…できちゃった…!!!」
少年「すごーい!女!どっからどう見ても女の子じゃないこれ?」
少年「服もちゃんと合ってるし。内股も…まあ辛いけどできてるし。メイクも完璧…」
少年「あとは髪の毛か…。こればっかりはな…」
少年「…あ、でもショートも可愛いって言ってたな。似合うのは顔が小さい子だからって」
少年「…あ、じゃあカチューシャとかピンつけてみたらもっと女の子らしさ出るかも」
少年「…」
少年「僕ちょっとやばいかな…」
少年「…」
「いらっしゃいませー!」
少年「!」ドキッ
「何かお探しですか-?」
少年「あ、え、っと。あのっ」
「さっきからずっとワンピース見てますよね?これ、新作なんですよ!」
少年「そ、そうなんですね」
「このピンクのとかいいじゃないですか?お客様小柄だし、似合いますよ」
少年「…」
少年「わぁ…」
少年「で、でも…その…。短すぎるんじゃ…」
「そんなことないですよ!ミニ丈でも似合うじゃないですかー。足すっごく綺麗だし」
少年「…!」
少年「か、…買います」
少年「なんだ、誰も僕が男だって気づかないじゃん」
少年「ちょっろーい。なんだ、こんなに簡単だったんだ」
少年「駅で男の人に声かけられちゃったし。もちろん断ったけど」
少年「ぶっちゃけショップ店員より僕の方が可愛かったしー」
少年「ふふー」
少年「…んふふー」
少年「…」
少年「…あ、そうだ」
少年「よし、と」ポチポチ
少年「この子どう?…と」
ピ口リン
少年「お、食いついた」
『うわ!めっちゃ可愛いじゃんか…。モデルの子?』
少年「…」
少年「……」カァァ
少年「…」ポチポチ
『拾った画像だから知らないし。こういう子がタイプなわけ?』
ピ口リン
『欲を言うともうちょいお○ぱいが欲しい』
少年「…」
少年「なるほどね…」
少年「…」ツルン
少年「…」ペターン
少年「………」
少年「こればかりは生物学の壁だからなぁ…」
少年「…」
少年「どうしよう…」
少年「…」
少年「はぁ…」
「【悲報】俺氏、Aカップへとバストが成長する」
少年「!?」カチカチ
「1 :名無しさん@おーぷん
体重増加と毎日マッサージ感覚で揉んでたせいで育った模様
牛乳飲みまくってたのもあかん気がする
真面目にスポーツブラジャーの購入を検討中 」
少年「はー…」
少年「…ぷはっ」
少年「…きもちわるくなってきた…」
少年「おかあさん、お替わり!」
少年「…」
少年「…」モミモミ
少年(何やってんだろ…)モミモミ
少年「…」モミ
少年「…」フニュ
少年「……」
少年「これが限界か…」
少年「A…はないな。AAAくらいはあるかなぁ…」
少年「貧乳好きだったら楽だったのになぁ…。てか、贅沢言いすぎだっつの」
少年「胸くらい妥協しろっての。すけべ親父か」
少年「ったく…。ほんと…」
少年「…」
少年「よくやったよな-、僕…」
少年「で、だから何って話だよね」
少年「どんなに着飾っても綺麗にしても僕は男だし」
少年「ついてるものもついてるし。胸もないし」
少年「声だって…。いつかもっと低くなるし」
少年「…」
少年「女だったらなぁ…」
少年「…」
少年「はぁ…」
プルルル
少年「あ、もしもし。僕だけど」
少年「うん。ええと、明日時間ある?」
少年「友達と…?あ、…そう。いや、急にだからいいよ」
少年「じゃあ二日後は?」
少年「じゃあ、えっと、駅前で会わない?ちょっと教えてもらいたいことがあってさ」
少年「…明日、ちなみに…。何するの?」
少年「映画…。ふーん」
少年「いや、別に。聞いただけだよ。じゃあね」
少年「…」
少年「…」ゴロン
少年「…」
キャハハッ
少年「あ…」
少年「…」ジッ
少年「……」
少年(…なーんだ)
少年(友達、って。ほんとかな。デートじゃないの)
少年(でも、あの子。頑張って化粧してるけど本当は目小さいな)
少年(足だって僕より太いし。短いし)
少年(…)
少年(僕のほうが、可愛いし…)
少年「おはよ」
少年「…ちょっと遅刻したけど、別にいいよね?いつもはあんたが待たせるんだし」
少年「…」
少年「なに」
少年「僕だよ、僕」
少年「…」
少年「何そのマヌケ面。だーかーら、僕だってば」
少年「声で分かるでしょ?こんな格好してるけど、僕」
少年「…」
少年「ど、どう、かな?」
少年「…」
少年「え…」
少年「ほ、ほんと!?本当に!?可愛い!?」
少年「ちょ、ちょっと何笑ってるの!?なんで!?」
少年「え?いや別に僕は…。ゲイとかじゃなくって」
少年「単純に、女装してみたかったというか…」
少年「そう、それ。おとこ…の娘?それそれ」
少年「ふふーん、どう。やっぱ可愛いでしょ」
少年「…」カァ
少年「ま、あったりまえだよね-。元がいいし?やだなー女よりレベル高いと嫉妬されちゃいそう」
少年「ふふ、あはは」ニコニコ
少年「え?…」
少年「ぼ、僕はあんたがレズだろうが何だろうが引かないよ。別に」
少年「そ、そうだね。少数派どうし、共通点もあるかもね」
少年「…」
少年「…で」
少年「…あ、え?何か頼む?あ、えっと、じゃあ。ホットミルク」
少年「…そ、そうそう。最近牛乳に凝ってるというか…」
少年「…はは…」
少年「…」ゴクッ
少年「映画、楽しかった?」
少年「…そう」
少年「…ま、まさか彼女と行ったとかじゃないよねー?」
少年「…」
少年「…え、」
少年「何、何。ちょっと違う?は?どういうこと」
少年「…好きな人と?」
少年「…」
少年「は…?」
少年「あ、あんなのが?え?」
少年「服のセンスだって無かったし、メイクけばすぎだったし…。それに、足めっちゃ大根だったじゃん!」
少年「そ、それにすっごいうるさかったし!頭空っぽそうだった!」
少年「…え」
少年「あ、え、っと」
少年「たまたま、…見かけたんだ。本を買いに行こうとして、それで」
少年「…」
少年「あの子…も、レズなの?」
少年「へ?違うの?」
少年「…」
少年「じゃ、じゃあ。無理じゃん」
少年「絶対無理じゃん。好きになって貰えるわけがないよ」
少年「やめたほうがいいよ。友達まで失いたくないでしょ?」
少年「それより、ねえ」
少年「ぼ…僕、は、どうかな…」
少年「ほら、あの子より可愛いでしょ?その、…あ、あんたに好かれるように一生懸命努力したんだ!」
少年「胸は…。ごめん…。全然ないけど、でも…」
少年「足も、腰も、肩も…。華奢だし、顔だってあの女よりずっと良いし…」
少年「それにね、僕、あんたのことが好きだよ。ずっとずっと好きなんだ。だから、ノンケのあいつより…」
少年「…なんで、黙ってるの。ねぇ」
少年「い、一生懸命やったんだよ?全部あんたのためで…」
少年「もしかして、まだどこか足りない?髪の毛長い方がいいかな」
少年「伸ばすよ、僕。あ、ウィッグならいくつか持ってるんだ。伸びるまでそれで我慢…」
少年「…な、何か言って。お願い…」
少年「ど、どうすればいい?僕、どうやったらあんたに…」
少年「…え」
少年「男だから、って」
少年「だ、だから。でも、外見は完全に女でしょ?すっごく可愛いって…言ってくれたじゃん…」
少年「な、なんで?どうして駄目なの?僕、僕、頑張ったのに。なんで…?」
少年「ぼ、僕。あんたのためなら本当に女の子になってもいいよ!本気だよ!」
少年「落ち着いてるよ!」
少年「あんたが好きになってくれないなら、男でいたってしょうがないもん!だから、」
少年「は…?」
少年「私のためにそこまでやる必要ない?嫌ならやめたほうがいい?普通になったほうがいい?」
少年「何言ってるの?」
少年「嫌じゃないんだってば、だから、僕は」
少年「…普通の女の子を好きになったほうが…いいって…」
少年「…っ」
少年「ふざけんなよ…。あんたに言われたくない…。あんただって、おかしいじゃん…」
少年「…」ボロボロ
少年「も、…帰る…」
少年「…帰るっ!」ダッ
少年「…」
「おじょうちゃーん、何やってんのー」
少年「…」
「もう夜中だよー?おうちかえんないのー?へへ」
少年「…」
「あ、おじちゃん家来るかい?布団1つしかないけどー」
少年「…酒くさ」
少年「死ねよ。あんたみたいな男がいるから、あいつがおかしくなったんだ…」
「へ?」
少年「…」スタスタ
少年「…」クル
少年「…」クル
少年「…どうして…。どうして駄目なの…」
少年「…」ガリッ
少年「僕の方が好きなのに。僕のほうが綺麗なのに。僕のほうが知ってるのに」
少年「…」
少年「なんで、男に生まれたんだろ…」
少年「…」
少年「あ、ねえねえ」
少年「…」チラッ
少年「私、学生係に行きたいんだけど…。場所全然分かんなくて。教えてくれないかな?」
少年「時間大丈夫?え、一緒に行ってくれるの?ありがとう!」
少年「え、1年なんだー。一緒だね!私は理学部なんだけど…。そっちは?」
少年「経済…。あ、友達が1人いるよ!●●っていう子!」
少年「友達?ほんと?…あ、じゃあまさか、あなたが××ちゃん?」
少年「えー!よく●●から聞いてるよー!すごい偶然だねー」
少年「ね、この後講義ある?よければ一緒にちょっと話さない?」
少年「うん、ゆっくり話がしたいの…」
プルルル
少年「はーい、もしもしー」
少年「久しぶりだね。この間はごめんね?急に帰っちゃったりして」
少年「え、何?何の話?」
少年「あんたの友達…じゃなかった、好きな人に?」
少年「あー、会ったよ。予想どおり頭からっぽって感じだった」
少年「それで、振られちゃったの?」
少年「やっぱねー…。だって僕があんたがレズだって伝えたら、めっちゃ引いてたもん」
少年「最低だよね?あんなに仲良かったのに急に…」
少年「…なに。何怒ってるの?」
少年「いーじゃん、別に。不良物件だったってことだよ」
少年「勢い余って告白とかしないで良かったね?もっと傷ついてたかもしれないよ」
少年「…」
少年「なんで泣いてるの?」
少年「分かってるよ。その…非道いことしたって…。でも、泣かすつもりじゃ」
少年「だって…。あんたにに傷ついてほしくなかったんだもん…」
少年「恨んでる?誰を」
少年「…そんな。僕、あんたを恨んでなんか…。違うよ!嫌がらせなんかじゃない」
少年「ねぇ、落ち着いてよ…。僕が悪かった。本当にごめんなさい」
少年「でも、信じて欲しいんだ。僕、あんたに嫌がらせするつもりでやったんじゃない」
少年「気になって…。あの女が、どれくらい君のこと受入れられるか試そうと思って」
少年「…分かってる。頼まれてなんかないし、でも…」
少年「…」
少年「ねえ、僕本当に謝りたい。会って謝りたい」
少年「いいでしょ…?」
少年「ごめんね、わざわざ家まで来てもらっちゃって」
少年「…優しいよね。あんた…。もう二度と口聞いてくれないかと思った」
少年「…私も悪かった?……」
少年「…」フルフル
少年「悪いのは全部僕だよ。えっと、とりあえず上がって?ゆっくり話しよう」
少年「あ、うん。そうだよ。お母さんは友達と旅行」
少年「うーん、一週間は帰ってこないって言ってたけど」
少年「平気だよ。僕、ちゃんと自分のことは自分でできるし」
少年「おねえちゃんは…。彼氏の家に入り浸りかな。だらしないよね」クスクス
少年「何飲む?ジュースとコーヒーくらいしかないけど…」
少年「コーヒーだね。分かった」
少年「僕…。振られちゃったみたいだけど、それでもあんたのこと親友だと思ってるから」
少年「すごく長い付き合いでしょ?だから…その分、心配で」
少年「あんたが好きだって言っていた女、あまり良くない噂を聞くから」
少年「うん…。その、詳しくは言えないけど…。色々」
少年「だから、気になって。カマかけてみたんだ」
少年「それとなくあんたがレズセクシャルだって伝えてみたんだ。…約束破ってごめんなさい」
少年「きっと、友達だから理解してくれるんじゃないかって思ってた。けど…」
少年「すごく嫌そうな顔して…あり得ない、気持ち悪い、って…言われて」
少年「ごめんね。辛いよね。ごめん…」
少年「…ごめんね…」
少年「…勝手なことしちゃったよね。わざわざ友情壊すなんて」
少年「…え」
少年「もういい、って」
少年「…あの女とは絶交したの?ほ、本当?」
少年「それがいいよ!だって…。最低だもん…」
少年「…うん。…本当にごめんね。あんたの友達1人奪っちゃった…」
少年「…」
少年「ありがとう。その…。僕は、ずっとずっとあんたの友達だよ」
少年「あんたのこと、ちゃんと理解してあげる。向き合うよ」
少年「この間は…。かっとなって“おかしい”とか言って…。ごめんね」
少年「これからは2人でずっと秘密にしていこうね?もう絶対裏切らないから」
少年「約束。ね?」
少年「えへへ…。あんたってやっぱり、優しいなぁ」
少年「あ、そうだ!ねえ、今日はさ、女の子っぽいことしてみない?」
少年「僕、そういうの女友達どうしでやってみたかったんだよね!」
少年「服を決めて貰ったり、メイク教えてもらったり。がーるずとーく?してみたりさ」
少年「ね、僕の部屋来て!」
少年「すっごい高かった。でも発色がすごく良いんだよ?」
少年「モデルも使ってるし…。やっぱ、安いのとは全然違う」
少年「えー、あんたそういう所は手抜きなんだねぇ?」
少年「駄目だよー。折角かわい…」
少年「…」
少年「えっと、なんでもない」
少年「なんでもないってば!褒めたら調子乗るじゃんか!」
少年「あーもう、ほら!塗ってあげるから!特別だよ?」
少年「くち、んーってして。ほら早く」
少年「動かないでね…」キュ
少年「よし、できた」
少年「鏡見てごらんよ。すごく綺麗に発色してるよ」
少年「これ落ちにくいし。上にグロスとか重ねるともっと立体的になるんだよ」
少年「販売員みたいって…。あ、それいいかも。僕将来メイキャップアーティストにでもなろうかな」
少年「ふふ、じゃあグロスも塗ってあげる。ほら、これ。良いにおいでしょ?」
少年「もっかい、んーってして。いくよ」
少年「…」
少年「…」
チュ
少年「…」
少年「えへへー」
少年「…しちゃった」
少年「ん、どうしたの急に」
少年「何びっくりしてるの…?いいじゃん、別に。キスくらい」
少年「女の子同士じゃん。深く気にしないでよー」
少年「…ねえ、僕、女の子だよね?」
少年「そうだよね?女の子に見えるもんね?ちゃんと女の子だよね?」
少年「ねぇ、何か言ってよう…」
少年「ねえってば…」ギュウ
ドンッ
少年「!」
少年「いった…ぁ」
少年「ひどいよ…」
少年「僕はあんたのことちゃんと理解してあげたのに」
少年「あんたは僕のこと、男だって思ってるんだね…」
少年「そうじゃない?そうじゃん!そんな目で僕を見ないでよ!」
少年「論点ずらしてるって…。はぁ?何が…」
少年「…っ、僕、女の子だもん…。もう男じゃないもん…」
少年「ほら、ちゃんと見てよ!」ピラッ
少年「えへへ、見て。足、すべすべでしょ?触ってもいいんだよ。あんたになら触られてもいいよ…」
少年「女の子って大変だよね。一生懸命むだ毛の処理とかもしてさ、保湿もしてさ」
少年「でもね、全然嫌だって思わないよ。あんたが喜んでくれることなら何でもできるもん…」
少年「ほらっ、触って?あの女よりずっと柔らかいし、きれ…」
パチンッ
少年「…った」
少年「……痛いよ…。痛いよ……っ!!」
少年「男ってだけで見てもくれないの?どんなに努力しても?」
少年「結局あんたの中で僕は…」
少年「…」
少年「謝ってほしいわけじゃないよっ!!!!!」
少年「…ああ、」
少年「ああ、そうか」
少年「分かった。分かったよ」
少年「あんたが何にそんなにこだわってるのか、分かった」
少年「…」ヒラッ
少年「ここ?」
少年「これがあるからいけないんだよね?これがある内は、女の子じゃないんだね?」
少年「そっか。そっかぁ…。気づかなかったよ…」
少年「ん?なぁに?」
少年「何って、切るんだよ?いらないもん」
少年「いらないよぉ…。もう邪魔なだけ…」
少年「触らないでよ!」バッ
ガシャン!
少年「ほら、見てて。ちゃんと見ててね?今この邪魔なの取っちゃうから」
少年「これが終わったら、一緒に雑誌でも見ようね?僕、あんたと服買いにいってみたいんだ」
少年「それで、…今度こそ僕を好きになってね?」
少年「絶対だよ?だって、ここまでやるんだから。あんたのためにここまでやるんだから。あんたのために、あんたのために」
少年「…」
少年「好きだよ…」
ジャキッ
女「……」
同僚「そ、それで…どうなったの…?」
女「…無事だった」
同僚「…」
女「寸前で私が思いっきり体当たりして…。なんとかハサミ奪って」
同僚「それで…?」
女「…はっきり言ったの」
女「あなたをここまで変えたのは、私の嗜好のせいかもしれない。けど…」
女「けど、どんなにあなたが姿形を変えても、私はあなたを好きにならない」
女「…それはあなたが男だからとか、女じゃないから、とかじゃなくて…」
女「単純に、私とあなたがどうしようもなく…合わないだけだからなんだよ、って」
同僚「…」
女「…」
同僚「そう…なの…」
女「ううん…」
同僚「どうして?危ないかもしれないじゃない」
女「大丈夫。その言葉を聞いたとき、彼の目が…なんていうか…。変わった気がしたから」
女「意固地になってたのをやめた、っていうか。諦めた、みたいな」
同僚「…」
女「結局ね、彼は自分の本心から女性になりたいと思ってたわけじゃなくて」
女「単純に、私に恋愛対象として見てもらいたくてそうした」
女「…それって、正しいことかな?」
同僚「…」
女「ううん。正しくないと思う。私は…」
女「誰かのために自分を偽るなんて、駄目だと思う」
同僚「…そっか」
女「…うん」
同僚「…その後彼はどうなったの?」
女「普通になったわ。女装もやめて、大学にいって。就職して。今もどこかで男の人として暮らしてるんじゃないかな」
同僚「…そうだと良いわね」
女「なんであんなに彼が私に固執してたのかな、って。私なんかに…」
同僚「そんなことないよ。女さんは…」
女「あ、さん付け禁止じゃなかったっけ」
同僚「あ」
女「もう、野暮ったいなー。私が年上だからってさん付けはなし。いつになったら慣れるの」
同僚「え、えへへ…」
女「…」
女「…ま、とにかく聞いてくれてありがとう。すっきりしたわ」
同僚「そんな、私なんて」
女「…こんなこと、誰にも言えなかったから」コツン
同僚「…」
女「あなただけよ。こんなこと話せるの…」
同僚「う、…嬉しいな、それ」
女「ふふ」
同僚「へー。じゃ、なんで私と恋人になってくれたんです?」
女「あなたがトラウマを乗り越えてくるくらい魅力的な女の子だったからよー」
同僚「ふふ。そーですかー」
女「…ね、時間、大丈夫?」
同僚「女の話が長いから、終電逃しちゃったかもな」
女「…」クスクス
同僚「ふふ」
女「シャワーどっちが先に浴びる?」
同僚「女先に入っていいよ」
女「分かった」
同僚「なーに」
女「あなた、私と寝るくせにすっぴんは一度も見せないよね」
同僚「裸でうろちょろしない」
女「私、見たいなー。あなたの本当の顔」
同僚「えー、結構化粧化けするタイプだからなー」
女「いいじゃない別に。私、顔なんて気にしないわ」
同僚「ほんとかなー」
女「ほんとよ。あなたのこと大好き。全部、好きよ」
同僚「…もっと言ってほしいな」
女「同僚が好きよ。愛してる!」ギュッ
同僚「えへへ、嬉しすぎる」
女「…ん、また薬?」
同僚「うん」
女「大変ね…。持病、早く良くなるといいのに」
同僚「まあ、気長に待つしかないよ」ゴクン
同僚「なぁに?」
女「…」
同僚「ね、なーに。キス待ち?」
女「ううん…。似てるな、って思って」
同僚「?何に」
女「化粧の仕方」ボソ
同僚「誰の」
女「…」
女「ま、気のせいか。シャワー浴びてくるね!」
同僚「…うんっ」
バタン
同僚「…女って、やっぱ鋭いのね」
同僚「化粧の仕方、変えなきゃ」
おわり
元スレ
少年「女だったらなぁ…」
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1488848388/
少年「女だったらなぁ…」
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1488848388/
「男女」カテゴリのおすすめ
- 男「エスカレーターの手すりに股間をこすりつけると気持ちいい」
- 女「サービスしますので一ヵ月だけでも新聞取ってください!」
- 男「答えを出す能力ですか」悪魔「そそっ!」
- 男「完全容姿重視社会だと…!?」
- メリー「俺の名はメリー。今貴様の後ろにいる」
- 女「シュレーディンガーの猫って知ってる?」男「なにそれ」
- 保健の先生(32)「ふっ…またキミか……サボりも大概にな?」
- 男「せっかくだし不思議な話をしましょう」
- 男「モンハン4でヘビーボウガン使ってみたいんだけど」
- 女「好きな奴がいる」
- 娘「お医者さんごっこしよっか!?」
- 不良「俺たちが」秀才「事件を」オタク「解決しよう!」
- 女「記憶を消しにきた?」
- 幼馴染「おい、幼馴染料まだかよ」 男「体で支払います」
- 男「クラスの怖い女子が部室にきた」
- 先輩「女装……してくれないか?」後輩「除草ですか?」
- 女「工場での高給バイト?」
- 少女「すみません・・・少し血をいただきたいんですけど・・・」
- 女後輩「げっ、委員会一緒だったんですね」男「げっ、とは何だ」
- 男「まさか女さんがあんなにデレるとはな」幼「はぁ・・・」
「ランダム」カテゴリのおすすめ
- 提督「お姉ちゃん欲しい」
- 北上「望月を膝の上に乗せ続けるとどうなるか」
- アルミン「復讐のホモ団」
- 高森藍子「道明寺で合宿です」
- 芳乃と蘭子の黄昏歩き
- 理樹「リトルアフターズ!」
- 城島「これからが僕たちのはじまりや」
- 提督「ぽいぽい教?」 夕立「っぽい!」
- lain「third experiment」
- ナルト「そろそろヒナタと結婚して二ヶ月だってばよ」
- 【ガルパン】アキ「もう!ミカってば、クソSSスレばっかり立てて!」
- キョン「あ、ところで朝く、ハルヒ、今日の放課後」 ハルヒ「は?」
- チノ「精神病棟ラビットハウスへようこそ」
- P「音無さんをプロデュースします!」
- 友「俺が好きなのは美少女ちゃんだ」 男「ふーん」
- 【閲覧注意】J( 'ー`)し「今年も年賀状が沢山届いたわね」
- モバP「りーん」
- 杏「杏・輝子・小梅のシンデレラジオ 第28回」
- 幼馴染「既成事実さえつくればこっちのものですよ」
- モバP「飯の時間だあああああああああああ!!!!」
コメント一覧 (9)
-
- 2017年03月07日 23:25
- オチのつけ方がよかった
-
- 2017年03月08日 00:19
- こええよ
-
- 2017年03月08日 01:11
- 少年は大人になって女装癖に目覚めた
-
- 2017年03月08日 02:16
- ※3 目覚めたっていうか取ったんだろ
飲んでる薬は多分女性ホルモン的な何か
とんだヤンデレオチですよ
-
- 2017年03月08日 08:03
- また、難儀な恋愛を…
-
- 2017年03月08日 23:51
- ゾッとするね
-
- 2017年03月16日 01:12
- こわい
-
- 2017年04月09日 23:32
- こわいけどおもしろかった
-
- 2018年07月25日 02:25
- 怖い話とも、ヘビーなラブストーリーとも言えるね~
面白かった~