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美希「デスノート」【その5】

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美希「デスノート」【その5】






714:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 12:29:35.22 ID:os1nSVgL0

【一週間後・都内某所/会議室】


【アリーナライブまで、あと27日】


 ガチャッ

P「お、一番乗りか」

美希「前みたいに走らされて汗だくにならなくてよかったの」

P「前みたいにって……あれか、○×ピザのCMの件で弥さんに最初に挨拶した時か」

美希「なの」

P「なのってお前……あれもう半年以上前じゃないか。まだ根に持ってんのかよ」

美希「ミキはこう見えても結構粘着質なの。ねばねばなの」

P「納豆みたいに?」

美希「それはちょっと違うって思うな」

P「違うのか」

美希「なの」

 ガチャッ

吉井「おはようございます」

海砂「やっほー。ミサでーす」

美希「あ、海砂ちゃんなの」

海砂「美希ちゃん! あろは~」

吉井「こら、ミサ。ちゃんとご挨拶しなさい」

海砂「は~い。改めまして、弥海砂です! おはようございまーっす!」

P「おはようございます。前のCMの時以来ですね」

海砂「はい! あの節は大変お世話になりました!」

美希「海砂ちゃんがなんか大人ぶってるの」

海砂「大人ぶってるって……ひどっ!」

美希「あはっ」

吉井「お久しぶりですね。星井さん」

美希「はいなの。ご無沙汰しておりますなの。またよろしくお願いしますなの。吉井さん」

吉井「ありがとう。名前、覚えててくれて嬉しいわ」

美希「えへへ」

P「俺は……割と最近お会いしたとこですかね?」

吉井「そうですね。『眠り姫』のチケットを頂いた時以来かと」

P「ああ、そうでしたね」

吉井「あれは本当に素晴らしい映画でした。ミサにも早くああいう檜舞台に立ってほしいんですけどね……」チラッ

海砂「そ、そんな目で見られても……お芝居は一朝一夕で上手くなったりしないからね!?」

美希「あはっ。海砂ちゃんがなんか頑張って四字熟語使ってるの。ウケるの」

海砂「美希ちゃんも今日はえらく攻撃的ね!?」

P「…………」

 ガチャッ

出版社社員「おはようございます。皆さんもうお揃いのようですね」

一同「おはようございます!」

出版社社員「……では早速ですが、今回のご依頼内容についてご説明させて頂きます。今回の撮影は、今秋、弊社が発刊する予定となっております若年層の女性向けファッション誌の――」



715:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 12:45:35.19 ID:os1nSVgL0

出版社社員「――というコンセプトの下、星井さんと弥さんには――」

海砂「…………」チラッ

P「…………」

海砂(……765プロのプロデューサー……)





【一週間前(美希と海砂の共演の仕事が決まった日の夜)・海砂の自室】


(ベッドに寝転がっている海砂)

海砂「それにしても本当に驚いたなあ……こんなに早くお仕事が決まるなんて」

海砂「あ、そうだ。この事、ライトにも言っといた方がいいよね」ガバッ

海砂「当然、ライトももう知ってるんだろうけど……どっちにしても、一日一回は電話する約束だし」

 ピリリリッ

海砂「わっ。……ライト! 言ってる傍から……もう待ちきれなかったのね。しょうがないんだから」ピッ

海砂「もしもーしダーリン?」

月『ミサ。今いいか?』

海砂「もちろん! ミサも今ちょうどライトに掛けようと思ってたとこ!」

月『ならよかった。ミサ。今日、例の星井美希との共演の話がマネージャー経由で来ただろう?』

海砂「うん、来たよ。ミサもその事ライトに言おうと思ってたの。もちろんライトはもう知ってるんだろうけど」

月『ああ。当然知っている。だが僕がミサに言おうと思ったのはその事自体じゃない』

海砂「え?」

月『勿論、この事に関連はするんだが……実は今日、765プロのプロデューサーにも協力を取り付けたんだ』

海砂「えっ。765プロのプロデューサーって……あの人? ミサ、会った事あるよ。美希ちゃんと○×ピザのCMで共演した時に」

月『そう、彼だ。彼にも今回の作戦……星井美希と天海春香の二人からキラの能力を取り返すことについての協力を得た』

海砂「じゃああの人にも全部説明したってこと? その……ライトがキラだって事も」

月『ああ。ただ僕……夜神月という存在は伏せたうえで、だけどね』

海砂「そうなの?」

月『ああ。顔は見せないままキラとして通話し、説得を行ったんだ。流石に僕の素性を明かすのはリスクがあるからね』



716:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 12:57:23.82 ID:os1nSVgL0

海砂「へー。でもよく信じてもらえたね。顔も名前も明かさずに」

月『ああ。実は彼……765プロのプロデューサーも、キラの崇拝者だったんだ』

海砂「! そうだったの?」

月『ああ。だから『自分は今、星井美希と天海春香の二人にキラの能力を奪われている。ついては彼女達から能力を取り戻し、自らの手で犯罪者裁きを再度行えるようにしたい』と伝えるとすぐに協力を了承してくれたよ』

海砂「そうなんだ。まあ今どき別に珍しくないもんね、キラ信者も。ミサが言うのもなんだけどさ。でも、なんであの人に協力を?」

月『もちろん、ミサが星井美希の持つノートを押さえる際に、彼女が不用意に動かないよう見張っておいてもらうためだ。ミサの身の安全が第一だからね』

海砂「! ライト……」

月『なお、彼にも君の事は伝えてある。だがくれぐれも、僕の指示があるまでは独断で彼にこの件では話し掛けないようにしてくれ。また彼にも同じように言ってある』

海砂「うん。美希ちゃんに怪しまれないようにするためだよね。ミサだってそれくらい分かるよ」

月『ああ、その通りだ。偉いぞミサ』

海砂「……えへへ」

月『もっとも、ミサが実際に彼と顔を合わせるのは来週の打ち合わせの時になるだろうが……くれぐれも不自然な態度にならないようにだけ、気を付けておいてくれ』

海砂「うん。まっかせといて! ミサこう見えても……」

月『……女優路線も狙ってるんだろ? いつか行けたらいいな。ハリウッド』

海砂「! ……ライト……。うん。行くよ、ミサ。ハリウッド。……ライトのために」

月『ああ。その意気だ。ミサ』

海砂「えへへ……そのためには、早く美希ちゃんをキラの仲間に引き入れて、お芝居教えてもらわないとね」

月『彼女は秋にはハリウッド入りだもんな』

海砂「うん。だからミサも美希ちゃんに負けずに頑張らないと」

月『ああ。頑張れ。ミサ』

海砂「うん!」





【現在・都内某所/会議室】


海砂「…………」

P「…………」

海砂(この人、全然普通の様子に見える……とても事情を知っているようには見えない)

海砂(ある意味、演技派といえるのかも……)

P「…………」チラッ

海砂「…………」

P(……弥海砂……)



717:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 13:10:12.78 ID:os1nSVgL0

【一週間前(美希と海砂の共演の仕事が決まった日の夜)・プロデューサーの自室】


(ベッドの上で仰向けに寝転がっているプロデューサー)

P「…………」

P(今日は、あまりに色々な事が起き過ぎたな……)

P(冬馬達との再会……いや、それは良かったが……)

P(その後の黒井社長との再会。そして……)

P「…………」

P(本当に、美希と春香が……?)

P(俄かには信じ難い。いや……信じたくない)

P(しかし黒井社長を脅迫し、俺を765プロに移籍させたのがキラなら……いや、だがこれも確証があるわけではない)

P(黒井社長を脅したのが765プロの誰かだとしても、それだけでイコールキラとはならない。単にキラの名を騙っただけという可能性は残るからだ)

P(だが、そうだとしても……去年の765プロファーストライブの日に『心臓麻痺』で死んだという春香のファン)

P(そのすぐ後に事故死した轡儀さん。同じく事故や自殺で亡くなった他のアイドル事務所の社長や会長達。当時のヨシダプロの社長)

P(そしてキラ事件開始の直前に『心臓麻痺』で死んだ俺の前任の765プロのプロデューサー)

P(さらに、彼の死から二日後に『心臓麻痺』で死亡した当時の美希のクラスメイト)

P(……もちろん、これらはまだ全て“点”でしかない。全てが完全に“線”でつながっているわけではない。ないが……)

P「…………」

P(まだ、現時点の情報だけでは全ての真相は分からない)

P(美希と春香がキラなのか……または、全く別の者がキラなのか)

P(……だが、俺の中で確かなことが二つだけある)

P(それは、俺は美希と春香がキラなどではないと信じていること。そして自分の恩人である黒井社長を助けたいと思っていることだ)

P(だから今はLの言う通りにしよう)

P(今度、弥が押さえる手筈となっている『黒いノート』……ここから何も出なければ、一旦はそれで美希と春香の容疑は晴れるだろう)

P(まずはあいつらの容疑を晴らしてやること。それがあいつらのプロデューサーである俺の役目)

P(そしてその上で……まだ俺に出来ることがあればLに協力し、真のキラの逮捕に貢献することで黒井社長を助ける)

P(今日、黒井社長に言ったことだ)

P(俺に出来るのは、せいぜいそんな事くらいしかない)

P(だが必ず……やってみせる)

P「…………」

 ピリリリッ

P「! ……通知不可能? ってことは……」ピッ

P「Lか?」

L『Lで……はい。そうです』



753: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/08(日) 21:57:26.82 ID:FjQ2dBlA0

P「やっぱりか」

L『……よく名乗る前に分かりましたね』

P「今日の今日で、俺に『通知不可能』なんて設定で掛けてくる奴があんた以外にいるとは思えないからな。それで何の用だ? 今は家で他には誰もいないぜ」

L『……私からの確認事項を先出しで答えて頂いてありがとうございます。用件は弥海砂についてです』

P「弥がどうかしたのか?」

L『はい。先ほど弥とも通話し……彼女に対しては、あなたもキラ崇拝者だったので協力を取り付けることができた、ということにして説明しました』

P「……なるほど。つまり俺もキラ側……要は『美希と春香からキラの能力を取り返すための協力をする者』になったってことか」

L『はい。ご理解の通りです。ただし弥には、私の指示が無い限りはあなたにこの件では話し掛けないように言っています』

P「分かった。で、俺の方も同じ対応でいいんだよな? 昼にあんたから言われた通り」

L『はい。特にあなたから弥に何かしていただくことはありません。強いて言うなら、何食わぬ顔で普通に打ち合わせをしていただければそれで十分です』

P「なら話は簡単だ。何も知らないフリをして、普通に仕事の話を進めればいいだけ……それなら美希に不審に思われることもないだろう」

L『ええ。ですが、星井美希は勘の鋭い天才肌のアイドルとして有名です。くれぐれも油断だけはしないでください』

P「……あのな。今、その天才アイドルをプロデュースしてるのは誰だと思ってるんだよ」

L『それは失礼しました。ではよろしくお願いいたします』

P「ああ。じゃあまたな」ピッ

P「…………」





【現在・都内某所/会議室】

P「…………」

海砂「…………」

P(弥の方も特に問題は無さそうだな。見たところ態度に何の不自然さも無い)

P(ただ、俺までキラ信者ということにされてしまったのは心外だが……まあ状況が状況だ。やむを得ないか)

P「…………」

出版社社員「――という風に、お二人にはさまざまな“秋”を彩るファッションに身を包んで頂きたいと思っています」

吉井「なるほど。色んなジャンルのファッションが取り揃えられていて非常に興味深いですね」

海砂「うんうん。和洋揃ってて良い感じだね」

美希「でもミキ的には着物はちょっときつそうなの(胸のあたりが……)」

P「こら美希。ワガママ言うな」

美希「はーいなの」

出版社社員「……では、具体的に撮影のお日にちを決めさせていただきたいと思うのですが、何かご希望の日程などはありますか?」

P「あ、じゃあちょっといいですか」

出版社社員「はい。どうぞ」

P「……えっとですね。勝手ながら、私共の事務所では来月1日にアリーナライブというイベントを控えておりまして、その関係でかなり日程に制約がありまして――……」



719:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 13:39:47.93 ID:os1nSVgL0

【同時刻・やよいの自室】


(やよいの家庭教師をしている月)

月「そう。そこでこの公式を使うんだ」

やよい「……ふんふん。じゃあこうしてこうして……あっ、こうですか?」

月「ああ。正解だ」

やよい「やったぁ! えっへへー! じゃあ、ライト先生!」

月「ん?」

やよい「はいたーっち! いぇい!」

月「ああ。はい」

 パシン

やよい「えへへ……」

月「よし。じゃあ区切りも良いし、ここで休憩にしようか」

やよい「はいっ! じゃあ私、麦茶のおかわり入れてきますね!」

月「ああ、ありがとう」

(部屋を出て行くやよい)

月「…………」

月(今頃、ミサと星井美希、そして765プロのプロデューサーは例の仕事の打ち合わせ中か)

月(まあ表面上はただのファッション誌の撮影の仕事……普通にしている限り、ミサもプロデューサーもボロを出すことはないだろう)

月(ここまで来れば、後はもう既定のレールに乗せて進めていけばいいだけともいえるが……)

月(どうせならもう少し……やれることはやれるうちに……)

月「…………」

(お盆にお茶を載せて部屋に戻って来たやよい)

やよい「はいっ! どーぞっ!」

月「ありがとう、やよいちゃん」

やよい「えへへ……」

月「…………」

月(高槻やよい……星井美希や天海春香と同じく、765プロダクション所属のアイドル)

月(僕は天海春香と同様に、この少女の家庭教師も今年の4月から継続して行っている)

月(元々人懐っこい少女ではあったが……家庭教師を始めた頃の三か月前と比べると、僕との信頼関係もより一層成熟したといえるだろう)

月(つまり今なら……僕が多少踏み込んだ話をしても不信感を抱かれる可能性は低い)

月(また高槻やよい自身はもう完全にキラ容疑者からは外れている。よって今は僕も例の超小型マイクを着けていない)

月(つまりここで僕が独断でキラ事件の捜査を行ったりしても……後で父さんから何か咎められたりすることも無いということだ)

月(父さんは、未だに僕が踏み込んだ捜査をすることについては良い顔をしていないからな)

月(しかし、もう状況的にもそんな悠長な事を言ってはいられない。少しでも出来ることがあるならしておくべきだ)

月「…………」



720:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 13:57:07.39 ID:os1nSVgL0

月(天海春香……765プロダクション所属のアイドルであり、現在、星井美希と並んで最もキラとしての嫌疑が高い少女)

月(彼女にみられる傾向として、僕が家庭教師をしている際、僕に対して好意的な素振りを見せるということが偶にあるが……)

月(これは演技だ。間違い無い)

月(4月から家庭教師を始めて以降、今日に至るまで……僕は、例の映画『眠り姫』や大ヒットした舞台『春の嵐』は勿論……天海春香が出演しているドラマ、演劇等の全てに目を通し、彼女の演技を研究し尽くした)

月(そして彼女が演技をする際の挙動、表情、癖……それら全てを完璧に把握するに至った)

月(その結果、天海春香が僕に好意的な素振りを見せる時は、必ず演技をしている時と同じ癖が出ていることが分かった)

月(ほんの僅かな表情の強張り、極めて微妙な声音の変化……まず普通の人間ならそれと気付けないだろう)

月(しかし僕には分かる。演技をしている時の彼女と、素の時の彼女の両方を知っている僕には)

月(そこで次に考えるのは……ただの家庭教師である僕に対してあえてそんな演技をしている理由だ)

月(最初は一応、単に僕に取り入ることで家庭教師としてのモチベーションを上げさせ、自分の成績向上につなげようとしている可能性……というのも考えた)

月(だがアイドルは恋愛禁止……振りとはいえ、わざわざそれを破りかねないリスクを冒す理由としては弱い)

月(それよりは、もっと自分の利害に直結する理由があるとみるべきだ)

月(そうであるとすれば……もう答えは一つしかない)

月(天海春香は、僕を通じて父の事を探ろうとしている)

月(僕と竜崎の推理通りなら、彼女は、以前キラ事件の捜査で事務所に聞き取り調査に来た刑事『朝日四十郎』が夜神総一郎……つまり僕の父親であったことに気付いているということになる)

月(つまり僕を通じてキラ事件の捜査をしている父の事を探り……さらにはその先にいる“L”の正体を探ろうとしているという事)

月(またこの事は、彼女がキラとして黒井氏を脅迫し、『“L”の正体を明かせ』と命じているとする推理とも矛盾は無い)

月(ここまでピースが揃っていれば、後は……)

月(……よし。試してみるか)

月「…………」

やよい「どうしたんですか? ライト先生。難しい顔して……」

月「ん? ああ……実はちょっと、やよいちゃんに聞きたいことがあってね」

やよい「? 私にですか?」

月「ああ。……春香ちゃんの事なんだけど」



721:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 14:11:45.64 ID:os1nSVgL0

やよい「春香さんがどうかしたんですか?」

月「もうすぐなんだよね? アリーナライブ」

やよい「はい。来月1日です」

月「彼女……春香ちゃんはそのライブのリーダーって事らしいけど……やっぱりかなり大変なんじゃないかって思ってね。僕が家庭教師をしている時はいつも元気そうにしているけど、本当は陰で無理とかしてるんじゃないかなって……少し心配に思ってるんだ。やよいちゃんも知っての通り、彼女はすごく頑張り屋さんだからね。ついつい張り切り過ぎたりとかしてるんじゃないかと」

やよい「あー……確かに春香さんはリーダーなので、私達よりはちょっと大変かもです」

やよい「ライブに向けて自分のパートの練習をしていればいいだけの私達とは違って、いつもメンバー全員のことに気を配ってないといけないっていうか……ダンサー組の人達がちゃんとついてこれてるかとかも、常に見といてあげないといけないですし」

やよい「あと、プロデューサーや律子さんからの連絡事項を私達に取り次いでくれたり……逆に、私達の方から出た意見をとりまとめてプロデューサー達にお伝えしたりとか……そういうお仕事も、しないといけないですから」

月「へぇ、アイドルの皆からも意見が出たりするんだね。それはライブの演出とか、進行とかについてってこと?」

やよい「はい。先週も、私はその場に居なかったんですけど……春香さんと美希さん、あとダンサー組の子達の何人かが一緒にダンスを合わせていたらしくて……」

やよい「そのときに、ライブの全体曲のフォーメーションを一部変更した方がいいんじゃないか、って話が出たそうなんです。なんでも、今のままじゃ間奏中の移動が慌ただしくなって、お客さんにもアクションとかが出来ないからって……」

やよい「そしたら春香さん、練習が終わってからすぐにその事をプロデューサーに伝えてくれたみたいで……その日のうちに、プロデューサーの判断でフォーメーションが移動しやすいものに変えられたんです」

月「へぇ」

やよい「私、その話を聞いて……やっぱりリーダーが春香さんで良かったなぁって思ったんです。春香さんがすぐにプロデューサーに伝えてくれたおかげで、まだライブまで日があるうちにフォーメーションを変えてもらうことができたので……」

月「なるほど。じゃあライブのリーダーは大変そうだけど……春香ちゃんにとってはうってつけの役だったってわけだね」

やよい「そうなんです。春香さん以上にリーダーに向いている人は多分いないんじゃないかなーって」

月「……でもそうすると、やっぱりちょっと心配だな。春香ちゃんの事だ、見えないところで無理し過ぎたりしてないか……」

やよい「そうですね……私も、これからはもっと春香さんのフォローをするようにします!」

月「そうだね。やよいちゃんも大変だとは思うけど、できるならそうしてあげた方がいいね」

やよい「はいっ。プロデューサーが、そういうのすごく気が利く人だから、ついつい任せきりにしちゃったりするんですけど……そういうのって良くないですもんね。皆で助け合わなきゃ!」

月「……そんなによく気が利く人なの? その、プロデューサーさんって」

やよい「はい。プロデューサーは、なんていうか、スーパーマンみたいっていうか……私達がしてほしいって思ってること、こっちから言う前に全部……いえ、それ以上のことを当たり前のようにやってくれる人なんです」

やよい「あと、とにかく行動がすごく早いです。今回のフォーメーションの変更も、春香さんから話を聞いた、その日のうちに全部対応してくれたみたいですし……」

月「…………」

やよい「それに、春香さんをライブのリーダーに選んだのもプロデューサーですから。だからプロデューサーには、えっと、目……目……」

月「『人を見る目がある』?」

やよい「それです! 私達の中でライブのリーダーに一番合ってるのは春香さんですから。その春香さんをリーダーに選んだプロデューサーには、人を見る目があるんです!」

月「……なるほどね。まさに自慢のリーダー、自慢のプロデューサーってわけだ」

やよい「はい! そうです。お二人とも自慢なんです!」

月「…………」



723:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 14:27:05.02 ID:os1nSVgL0

月「そういえば、さっき今度のライブは来月1日って言ってたけど……」

やよい「はい」

月「確か、去年のライブも同じくらいの時期じゃなかった?」

やよい「あ、はい。偶然なんですけど、去年も同じ8月1日でした。……ライト先生、よくごぞんじですね?」

月「ああ。粧裕が当時騒いでいたような記憶があってね。『同じクラスのアイドルの友達がライブやるんだ』って」

やよい「なるほどー! 確かに、粧裕ちゃんはすっごく応援してくれてました! チケットもあげたかったんですけど、高校生以下の場合は保護者の方と一緒じゃないと渡せないってことになってて……そのこと粧裕ちゃんに言ったら、『親と一緒にライブなんて恥ずかしい』って断られちゃったんです」

月「はは……そうだったんだ」

やよい「そうだったんです。……あ! でも粧裕ちゃん、今年はライト先生と一緒なら大丈夫かも! 確か、大学生の方なら保護者としておっけーだった気がします!」

月「! …………」

やよい「って、ごめんなさい。ライト先生まで勝手に来てもらうことにしちゃって……迷惑ですよね」

月「……いや、そんなことないよ。僕も行けるものなら行きたいしね。やよいちゃんや春香ちゃんが出るライブなら」

やよい「! ほ、ホントですか?」

月「ああ」

やよい「じゃあ今度、チケットあげちゃってもいいですか? 粧裕ちゃんと二人分で……」

月「ありがとう。喜んで頂くよ」

やよい「うっうー! ありがとうございますー! 私、ライト先生に来てもらえるなんて、すっごくうれしいですー!」

月「それは良かった。……まあ、粧裕の保護者役っていうのは正直ちょっと気が重いけどね」

やよい「あー! そんなこと言っちゃ、めっ、ですよ! ライト先生! 粧裕ちゃんとってもいい子なのにー!」

月「ははは。冗談だよ」

やよい「もー! ……なーんて。えへへ……」

月「はは……。で、少し話を戻すけど……その去年のファーストライブって、大成功だったんだよね? これも粧裕から聞いた話なんだけど」

やよい「はい! 最初の方は、伊織ちゃん達、竜宮小町のメンバーが台風の影響で遅れちゃって、お客さんもあんまり盛り上がってなかったんですけど……後半、美希さんとかがすっごく頑張ってくれて……最後の方は会場中みーんな、大盛り上がりでした!」

月「そうか。……ところで、やよいちゃん」

やよい「? はい」

月「今から話す事は、ここだけの話にしておいてほしいんだけど……」

やよい「えっ。は、はい……何ですか?」

月「僕の父が刑事だというのは知ってるね?」

やよい「はい。粧裕ちゃんから聞いてます。ライト先生も、将来は刑事さんになりたいんですよね?」

月「ああ。それで実は……僕の父が、キラ事件の捜査をしている他の刑事さんから聞いたという話なんだが……」

やよい「…………?」

月「去年の、やよいちゃん達のファーストライブがあった日……春香ちゃんのファンの人が一人、心臓麻痺で亡くなったらしいんだ」

やよい「えっ!?」

月「…………」



724:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 15:29:42.44 ID:os1nSVgL0

月「……やよいちゃんはこの話、聞いたことある?」

やよい「な……無いです」

月「春香ちゃん本人からじゃなくてもいい。社長さんとかからでも」

やよい「いえ……一度も無いです。今初めて聞きました」

月「……そうか」

やよい「……あの、なんで今、そんな話……」

月「ああ……驚かせてしまったならごめんね。ただ、今や僕にとっても765プロは遠い世界の話ではないからね。ましてや春香ちゃんは僕の教え子だ。だから一応、765プロの中でもそういう話が出たことがなかったかどうか……確認しておきたかったんだ」

やよい「そう……ですか」

月「…………」

月(高槻やよいは嘘がつけない性格……この事は、家庭教師として早三か月、継続的に彼女に接してきた僕にとっては今更確認するまでもない既知の事実だ。今の発言は信用していいだろう)

月(そして高槻やよいが聞いていないということは、765プロダクションの他のアイドル――無論、星井美希以外の――も同様に聞いていないものと考えていいだろう)

月(勿論、ただのファンの不審死であれば、所属アイドルに不安を覚えさせないためにあえて伝えない……という会社側の判断もありうる)

月(しかし件の天海春香のファンの男は、少なくとも死亡した当日、天海春香の後をつけていた可能性が極めて高い。しかもその遺体の傍には、その男が自宅から持ち出したとおぼしき包丁まで落ちていた)

月(つまり考えようによっては、天海春香が殺されていてもおかしくない状況だったと推測できる。……もっとも、だからこそそこで彼女がキラの力を使った、というのが僕達の推理なわけだが……)

月(……この事実を765プロの立場で見た場合でも、やはり所属アイドルが極めて危険な状況にあった可能性が高いと判断せざるを得ないだろう。だとすれば防犯上の観点から、他のアイドルに対してこの件を伝えない理由は無い)

月(無論、天海春香の心情に配慮して……ということもあるかもしれないが、それなら彼女がいない場で個別に伝えればいいだけの話だ)

月(またファーストライブ以降、765プロ所属のアイドル達は日に日に人気が上昇していた……つまりいつこれと同様の第二、第三の事件が起きないとも限らなかったはずだ)

月(だから765プロ側がこの件を検知していたのであれば、それを他の所属アイドルに伝えない理由は無い)

月(しかし現実には、この件は他のアイドル達には伝えられていなかった。それは何故か?)

月(……答えは簡単。唯一、この件を認識していたはずの天海春香が……事務所の誰にも言わなかったからだ)

月(キラ事件の開始前だったということもあり、この件は警察からは事件性の無いものとして処理された。当然、警察がこの件で天海春香を事情聴取したという記録も無い)

月(つまり天海春香から言わない限り、765プロとしても検知しようがなかったというわけだ)

月(……これでもう間違い無い)

月(天海春香はこの件を事務所の誰にも告げなかった。それは他でもない、自分自身がその事件の犯人だからだ)

月(そうでなければ、天海春香がこの件を事務所の誰にも伝えず、自分の胸の内にだけ留めておこうとする理由が無い)

月(勿論、天海春香自身、この件を全く認識していなかったという可能性も一応は残る。彼女はこの件で警察から事情を聴かれたわけでもないのだから当然だ)

月(……しかし……)

月(元々天海春香の熱狂的なファンであった男が、天海春香の自宅の最寄り駅で、天海春香のほとんどすぐ後を追うような形で電車を降り、その直後、天海春香が全く関係しない状況下において心臓麻痺で死亡した……などという可能性が、現実的に考えて、果たしてどれほどのものか……)

月(もちろん、0%ではないだろう。……だからこそ、天海春香がキラでその男を殺したとする可能性も100%ではない)

月(あくまでも現時点では……だが)

月(やはり結局は、物的証拠を押さえない限りは決まらない。……だがこの局面に至ってもなお、状況証拠を少しでも多く集めておくことがマイナスになることは決してない)

月(出来ることは出来るうちに……少しでも多く)

月「…………」



725:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 16:11:48.11 ID:os1nSVgL0

やよい「……あの、ライト先生……」

月「ん?」

やよい「その春香さんのファンの人って……キラに殺されたのかも、ってことなんですか? キラ事件の捜査をしている刑事さんが、同じ刑事のライト先生のお父さんに話してたってことは……」

月「いや、そうとは限らないよ。ただ君も知っていると思うが、キラは直接手を下すことなく、遠く離れた相手でも心臓麻痺で殺すことができる……だから心臓麻痺で亡くなった人がいれば、それが犯罪者じゃなくともキラ事件と何か関係があるのかと警察が調べるのは当然の事だ」

やよい「…………」

月「ただそうは言っても、この人の場合、亡くなったのがキラ事件の開始より三か月以上も前だからね。キラ事件との関連性は無いと言っていいと思うよ」

やよい「…………」

月「だから今僕が言った事は、もう気にしないで。やよいちゃん。それに言うまでもないことだけど……これはたまたま、春香ちゃんのファンの人が心臓麻痺で亡くなったというだけで、このことで春香ちゃんが何か疑われているとか……そういうことも全く無いからね」

やよい「あ、あの」

月「ん?」

やよい「……実は、今までお話ししていなかったことがあるんですけど……」

月「? 何だい?」

やよい「実は、うちの事務所の前のプロデューサーも……心臓麻痺で亡くなったんです」

月「……そうなのか?」

やよい「はい」

月「……それはいつ頃の話?」

やよい「えっと、去年の11月の……半ばくらいです」

月「……キラ事件の開始と同じ頃か……」

やよい「そうなんです。だから……今年になってすぐくらいの頃に、キラ事件の捜査をしているっていう刑事さんが二人、前のプロデューサーの事を聞きたいって言って……うちの事務所に来たんです」

月「そんな事が……」

やよい「はい。……あの、これ、事務所の外の人には言うなって言われてるので、ここだけの話にしておいてほしいんですけど……」

月「ああ。安心して。誰にも言わないよ」

やよい「それに……」

月「?」

やよい「えっと、これも、他の人には言わないでほしいんですけど……」

月「ああ。言わないよ。何?」

やよい「その……亡くなった前のプロデューサーって……すごくひどい人だったんです」

月「ひどい人?」

やよい「はい。たとえば、お仕事とか、全然ちゃんとやってくれなくて。事務所でも居眠りとかばっかしてて……お仕事の予定、すっぽかしたりとかもしょっちゅうで」

月「…………」

やよい「しかも、それだけじゃなくて……私達アイドルにも、セクハラ……っていうんでしょうか。とにかく嫌なこと、たくさんしてきて……」

月「セクハラ?」

やよい「はい。その、私もそうだったんですけど、ほとんどの人の場合は言葉で何か言われるだけだったんですけど……春香さんと美希さん、あと雪歩さんは、身体もよく触られたりとかしてたみたいで……」

月「そんな事が……。その事、社長さんとかは知ってたの?」

やよい「……いえ。前のプロデューサーがそういう、セクハラっぽいことをするのは、社長とか、律子さんとか、小鳥さんがいない時だけで……。春香さん達の身体を触っていたのも、その相手と二人きりの時だけだったみたいで」

月「じゃあ皆……誰にも相談とかはしなかったのかい?」

やよい「はい。皆で話して……ただでさえ、社長達、前のプロデューサーがお仕事しない分のフォローを一生懸命してくれてるのに、これ以上負担を掛けちゃうのは良くないってなって……だからこの事を知ってるのは、私達アイドルだけなんです」

月「……そうか」

やよい「だから、その……ライト先生」

月「ん?」



726:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 16:24:35.46 ID:os1nSVgL0

やよい「私が……キラなのかもしれません」

月「……えっ」

やよい「さっき、ライト先生も言ってましたけど、キラは……遠くに居る人でも、心臓麻痺で殺せちゃうんですよね」

月「あ、ああ……」

やよい「それに私、テレビで見たんです。キラは、頭の中で念じるだけで人を殺せるのかもしれない、って」

月「……確かに、世間ではそのような説もよく唱えられているが……それでなぜ、やよいちゃんがキラってことになるんだい?」

やよい「だって、だって私……」

月「?」

やよい「……前のプロデューサーのこと、『こんな人、死んじゃえばいいのに』って思ったこと……ありますもん!」

月「!」

やよい「それも、一回や二回じゃないんです。春香さん、美希さん、雪歩さんから……『また身体を触られた』って聞くたびに……私、思ってたんです」

やよい「こんな人、死んじゃえばいいのにって! 消えてなくなっちゃえばいいのにって!」

月「やよいちゃん」

やよい「それに、他の皆さんも……私もですけど、ひどいこと、いっぱいいっぱい、言われてました。だから、だから私……『前のプロデューサーが亡くなった』って聞いた時……心のどこかで、ほっとしたんです。それがいけないことだってわかってても、正直言って……心のどこかで、喜んでいる自分がいたんです」

月「…………」

やよい「だ、だからっ……ま、前のプロデューサーを殺したの、わ、私かもしれない、って……」

月「…………」

やよい「本当は、今まで……心の中で、ずっとずっと……思ってたんです。私がそう願ったから、前のプロデューサーは死んじゃったんじゃないか、って……」

月「……やよいちゃん」

やよい「だ、だから……えぐっ。ライトせんせい、わ、私が……ひぐっ、き、キラ、なのかな、って……えっく」

月「……とりあえず、涙を拭いて」スッ

(やよいにハンカチを渡す月)

やよい「す、すみまぜん……えぐっ」

月「…………」



728:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 16:40:23.38 ID:os1nSVgL0

(月から渡されたハンカチで目元を拭いながら、嗚咽を漏らしているやよい)

やよい「……うぅっ……えっく……」

月「……やよいちゃん」

やよい「は、はい……」

月「やよいちゃんはキラじゃないよ」

やよい「! で、でもっ……わたし、前のプロデューサーのこと……」

月「じゃあ仮に、前のプロデューサーに対してはそういう思いがあったのだとしても……今もキラが裁き続けている犯罪者達についてはどう?」

やよい「……え?」

月「もちろん、中には一人くらい『こいつは死んだ方がいい』と思うような犯罪者もいたかもしれないが……まさかその全員に対して同じようなことを思ったり、頭の中で念じたりしたことなんか無いだろう?」

やよい「そ、それは……無い、ですけど……」

月「ね? だから君はキラじゃない。いや、君のような優しい心の持ち主がキラであるはずがない」

やよい「! ……ライトせんせい……ぐすっ」

月「安心したかな?」

やよい「……あの」

月「ん?」

やよい「ぎゅーって……」

月「え?」

やよい「……ぎゅーって、してほしい、です」

月「……分かったよ。……これでいいかな?」ギュッ

(やよいを正面から抱きしめる月)

やよい「……えへへ……ライト先生、あたたかいです」

月「よしよし。いい子だね」

やよい「えへへ……」

(一分ほど経ってから、自然に身体を離した二人)

月「……もう、落ち着いた?」

やよい「はい……すみません。ライト先生。私、ワガママ言って甘えちゃって……」

月「いいんだよ、これくらい。やよいちゃんはいつも頑張って弟さんや妹さん達の面倒を見てるからね。甘えたいときは甘えたらいい」

やよい「……はいっ! ありがとうございます!」



730:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 16:59:44.89 ID:os1nSVgL0

月「で、一応確認だけど……さっき僕が話したことは誰にも、特に春香ちゃんには絶対に言わないようにね」

やよい「はい」

月「キラ事件とは関係の無い話だとしても、『自分のファンが心臓麻痺で亡くなった』なんて……春香ちゃんが知ったところで不安を感じるだけだし、また他のアイドルの皆に言っても無用な動揺を与えるだけだから」

やよい「はい。大丈夫です。私、誰にも言いません」

月「ああ。いい子だ」ナデナデ

やよい「えへへ……」

月「…………」

月(大丈夫だ。もうこの子は僕の事を信頼しきっている。これでこの子から天海春香に何か伝わることは絶対に無い)

月(そして天海春香はもうキラ確定といっていいだろう。後は証拠……つまり『黒いノート』)

月(竜崎は星井美希のノートさえ先に押さえてしまえばそれで二人を逮捕できるという考え……すなわち、天海春香の持つ方のノートの押収はその後でもいいという考えだが……)

月(僕も基本的には同じ考えだが、もし今後、天海春香の家庭教師の際に直接ノートを押さえられるような隙があるのであれば……)

月(いや、流石にそれは危険過ぎるか……。それに殺人の手段がノートだとしても、所持しているのが一冊だけとは限らないし……もしかすると、ノートから切り取ったページや切れ端でも名前さえ書けば殺せるのかもしれない)

月(もしそうなら、いつでもどこでも殺せるということになる……。だとすると、下手な動きを見せればそれだけで即死のリスクがあるということにも……)

月(ならやはり、今は星井美希のみに焦点を絞った方が賢明か)

月(それに竜崎が『熱狂的な天海春香のファン』を演じている限り……天海春香が竜崎、あるいは僕を疑うという事はないだろう)

月(もっとも、星井美希についてはこの限りではないが……)

月「…………」

やよい「ライト先生? どうかしたんですか? また難しい顔になってますけど……」

月「……いや、大丈夫。何でもないよ」

やよい「そうですか?」

月「ああ。それよりごめんね。やよいちゃん。さっきは色々と辛い事を思い出させてしまって……」

やよい「いっ、いえ! それよりむしろ、なんていうか……ライト先生に『キラじゃない』って言ってもらえて……私、本当に安心しました!」

月「やよいちゃん」

やよい「私今まで、本当に『もしかして私がキラなんじゃ……』って、ずっと心のどこかで思っていたので……」

月「…………」

やよい「だから、だから本当に……どうもありがとうございました!」ペコリ

月「……そうか。それなら良かったよ」

やよい「えへへ……」

月「――よし。じゃあそろそろ勉強を再開しようか。教科書を開いて。さっきの続きからだ」

やよい「はいっ! よろしくお願いします! ライト先生!」



731:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 17:24:26.45 ID:os1nSVgL0

【同日夕刻・キラ対策捜査本部(都内のホテルの一室)】


(やよいの家庭教師を終え、その足で捜査本部に来た月)

 ガチャッ

月「お疲れ様です」

L「月くん。お疲れ様です」

月「竜崎。今日はもうお前だけか?」

L「ええ。ここ暫く休み無しでしたので……今日は皆さん早めに上がられました」

月「そうか」

L「月くんは、今日は高槻やよいの家庭教師でしたね」

月「ああ。それより打ち合わせの方は……」

L「はい。少し前……まだ皆さんが残っておられるときに、765プロダクションのプロデューサーから連絡がありました」

月「! どうだった?」

L「結論から申し上げますと、極めて滞りなく進行したようです。撮影日は今月の25日と26日に決まりました」

月「……アリーナライブの一週間前か。よくそんな時期にねじ込めたな」

L「プロデューサーがかなり巧妙に調整してくれたようです。やはり有能ですね、彼。勿論、いずれの日も星井美希の撮影中の天海春香の予定はオフにしてもらっています」

月「分かった。じゃあ後は僕の方から高田に指示しておけばいいな?」

L「はい。お願いします。私から指示しても良いのですが、やはり月くんの方が適任だと思いますので」

月「分かった。じゃあ天海春香が別の予定を入れてしまう前に、早く会う約束を取り付けさせた方がいいな」

L「そうですね。ただピンポイントで25日と26日だけ予定を聞くのも不自然に思われるかもしれませんので……高田には、今から伝えるダミーの日程もあわせて打診するようにさせてください。これはプロデューサーから提示してもらったもので、いずれの日も天海春香の予定は既に仕事で埋まっているとの事です」

月「分かった。じゃあ早速教えてくれ」

L「はい。13日、15日、17日、21日……」

月「……よし。分かった。すぐに指示しておくよ」

L「お願いします」

月「……それにしても」

L「? …………」

月「ライブの一週間前、か」

L「それがどうかしましたか?」

月「いや、なんでもないよ」

L「?」

月「…………」



973: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:54:27.54 ID:jizsduFN0

【同日夜・夜神家のリビング】


(TVを観ながら夕食をとっている夜神家)

粧裕「あっ。やよいちゃんが出てるCMだ」

幸子「ああ、確か……去年、粧裕と同じクラスだったアイドルの子ね」

粧裕「そうそう。かわいいでしょ?」

総一郎「765プロか。確かに最近よく見かけるな」

粧裕「…………」

幸子「…………」

総一郎「? な、なんだ? 二人とも変な顔して」

粧裕「いや、お父さんの口から『765プロ』なんて単語が出てくるなんて思わなくて……」

総一郎「!?」

幸子「ちょっと……というか、かなり意外なんですけど……え、あなた、そういうのに興味があったんですか?」

総一郎「! ち、違うぞ幸子。そうではなくてだな。えー、なあ? ライト」

月「何狼狽えてるんだよ、父さん……。765プロは今やこれだけ売れているアイドル事務所なんだ。いかに堅物の父さんでも、名前くらい知っていても別に不思議でもなんでもないだろ」

総一郎「そ、そういうことだ。何もおかしなことなどない」

粧裕「ふぅん」

幸子「まあそう言われてみればそうかも……ね?」

総一郎(た、助かった……。恩に着るぞ、ライト)

月(まったく、世話の焼ける……)

幸子「それにこの子って……確か今、粧裕の紹介でライトが家庭教師をしてるのよね」

粧裕「そうそう。今日ちょうどその家庭教師の日だったんでしょ? お兄ちゃん。どうだった?」

月「別にいつも通りだよ。ただやよいちゃんは相当な努力家だから、もうそろそろ粧裕を抜いてるかもな」

粧裕「えー。そんなこと言って焦らせないでよー」

幸子「何言ってるの、粧裕。あなたも受験生なんだからいい加減焦りなさい。お母さん、昨日塾の夏期講習申し込んでおいたからね」

粧裕「ぎゃっ! 何それ聞いてないんですけど!」

総一郎「なんだ。粧裕は高校に行かずに働く気なのか? それならそれで自立した社会人として……」

粧裕「お、お父さんまで! もう、わかったってば! ちゃんと勉強するから!」



733:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 17:51:46.69 ID:os1nSVgL0

月「……じゃあ、アリーナライブのチケット、粧裕の分は貰わない方がいいかな?」

粧裕「? 何の話? お兄ちゃん」

月「実は今度、やよいちゃんから僕と粧裕の分のライブのチケットを貰うことになったんだ」

粧裕「えっ! 何それ絶対欲しい! 行きたい! ……あれ? でもそれって確か、保護者がいないとだめなやつなんじゃ……?」

月「大学生以上なら保護者になれるそうだ。だから僕と一緒に行けば問題無い」

粧裕「ホント!? やったぁ! チョー行きたい! ありがとうお兄ちゃん!」

幸子「ちょ、ちょっとライト。粧裕に勉強するように言った傍から……」

月「大丈夫だよ。母さん。もし粧裕の期末テストの成績が悪かったら、その時は別の友達を誘って行くから」

粧裕「ぎゃっ! 何それひどい!」

月「それが嫌なら勉強しろってことだ」

粧裕「ぶー……」

幸子「そうねぇ。じゃあ、期末で学年50番以内なら行って良し、というのはどうかしら? ねえ、お父さん」

総一郎「うむ、そうだな。妥当なラインだ」

粧裕「えーっ! そんなの無理だよ。私最高でも80番くらいしか取ったことないのに!」

月「じゃあ諦めるか? やよいちゃんのライブ」

粧裕「うう……わかったよぉ。やればいいんでしょ、やればぁ! もー、お兄ちゃんのオニ!」

月「おいおい、オニって……条件を決めたのは母さんだろ」

粧裕「ふーんだ。もうこうなった以上、私の勉強もしっかり見てよね! お兄ちゃん!」

月「分かった分かった。それくらいならいくらでも付き合ってやるよ。じゃ、ごちそうさま」ガタッ

粧裕「わっ。はや」

月「…………」

月(ごめんな。粧裕)

月(おそらく……そのライブは中止になる)

月「…………」



734:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 18:13:51.28 ID:os1nSVgL0

(一時間後・月の自室)

月「…………」

 ピリリリッ

月「! 高田」ピッ

月「もしもし」

清美『私です。夜更けにごめんなさい』

月「ああ。構わないよ。さっきメールで頼んだ件かな?」

清美『ええ。早速天海さんに聞いてみたところ……すぐに二日とも了承の返事がもらえたわ』

月「! そうか。それは良かった。ちなみにどういう理由にしたんだ?」

清美『二日とも、都内であるクッキングスクールの体験入門よ。ちょうど二日間で完結するコースがあったから』

月「ああ、そういえば……君は前にも、天海春香の家で菓子作りを教わったと言っていたな。なるほど、それなら確かに自然な理由だ。特に怪しまれるということもないだろう」

清美『ええ。楽しみにしていると言っていたわ』

月「ありがとう。清美。竜崎には僕の方から伝えておくよ。今後はまた必要に応じて指示を出す。それまでは今まで通りに生活をしてくれて構わない」

清美『分かったわ。……ところで、夜神くん』

月「? 何だい? 清美」

清美『その……大丈夫……なのよね?』

月「大丈夫って?」

清美『だから、その……海砂さんが星井さんの持つノートを押さえることに成功して……その後、夜神くんがキラの能力を取り戻すことができたら……その時は……』

月「ああ。前に言った通りだ。そこで弥とはけじめをつけ、僕は君に想いを伝える」

清美『……夜神くん……』

月「清美」

清美『はい』

月「……力を合わせて創ろう。心の優しい人間だけの世界を」

月「僕はその新世界の神に。君は女神になるんだ」

清美『……ええ。その時を待っているわ。夜神くん』

(清美との通話を終えた月)

月「…………」

 ピリリリッ

月「? ……今度はミサか」ピッ

月「もしもし」

海砂『やっほーライト! ミサだよー!』

月「ああ。今ちょうど君に電話しようと思っていたところだよ」

海砂『ホント?』

月「ああ」



735:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/01(日) 18:27:39.28 ID:os1nSVgL0

海砂『でもライト、今話し中だったみたいだけどー?』

月「ああ、ごめん。大学の友達と話してたんだ」

海砂『ホント~? とか言ってー、ホントは他の女の子と話してたんじゃないの~?』

月「そんなわけないだろ。僕はミサだけだよ」

海砂『え~? ホントかな~?』

月「何だよミサ。さっきからホントホントって……そんなに僕の言う事が信じられないのか?」

海砂『な~んちゃって。ウソウソ。ミサがライトのこと信じてないわけないじゃん』

月「じゃあわざわざ疑うようなこと言うなよ」

海砂『あ~っ。ライトってば、なんかつめた~い。愛が足りないよ! 愛が!』

月「はいはい。愛してるよ。ミサ」

海砂『そ、そんなおざなりな言い方……でも嬉しいから許す……』

月(許すのかよ)

海砂『……あ、そうそう。えっとね、ライト。今日ミサ、例の仕事で美希ちゃん達と打ち合わせしたの。まずはその報告をしとこうと思って』

月「ああ、聞いたよ。随分自然な演技だったそうじゃないか」

海砂『あれ? なんで……あっ、そっか。765プロのプロデューサーさんから聞いたのね』

月「そういうこと。打ち合わせの後に彼から(竜崎に)連絡があってね。しかし……この調子で演技力が向上していったら、本当にハリウッドも夢じゃないんじゃないか? ミサ」

海砂『そ、そうかな……? えへへ。じゃあその時はライトも一緒に来てよね! ハリウッド!』

月「ああ。もちろん」

海砂『えへへへ~。楽しみ! あ、でも浮気しちゃだめだからね!』

月「……また疑うのかよ。するわけないだろ、浮気なんて」

海砂『だってハリウッドだよ? ボン・キュッ・ボーンがいっぱいいるんだよ? ミサ、ライトに変な女が寄り付かないか心配なんだもん』

月「……ミサ。この先何があっても……僕は君だけだよ」

海砂『! ……ライト……』

月「だから安心して、僕を信じて……ついてきてほしい」

海砂『……うん。信じるよ。ライトはミサの全てだもん』

月「ミサ」

海砂『ライトがミサの両親を殺した強盗を裁いてくれたときから……ライトはミサにとっては白馬の騎士……いわばナイトなんだよ』

月「…………」

海砂『だからこの先、何があっても……ミサはずっとライトのことを信じてるよ』

月「……ありがとう。ミサ。愛してるよ」

海砂『ライト……』

(海砂との通話を終えた月)

月「…………」

月「……本当に大丈夫なんだろうな」

月「……海外留学」



755:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/08(日) 22:05:56.47 ID:FjQ2dBlA0

【六日後・都内レッスンスタジオ】


【アリーナライブまで、あと21日】


(プロデューサー立会いの下、全員揃って律子のダンスレッスンを受けているアイドル・ダンサー一同)

律子「――はい、そこまで!」

アイドル・ダンサー一同「…………!」ハァハァ

律子「今日で本番まで後ちょうど残り三週間になるけど……うん! 全体的に、かなり良い感じに仕上がってきているわ!」

アイドル・ダンサー一同「…………」ハァハァ

律子「ただそうは言っても、前日のリハーサルを除くと、全員が揃って出来る練習は本番の二週間前と一週間前の後二回だけだからね。くれぐれも、全体で合わせる感覚を忘れないように」

アイドル・ダンサー一同「はい!」

律子「よし。では今日はここまで。各自、クールダウンは念入りにね」

アイドル・ダンサー一同「ありがとうございました!」

(練習後、ダンスの確認やストレッチなど、思い思いに時間を過ごしているアイドル・ダンサー一同)

可奈「…………」

(冷えたドリンクを志保の頬にくっつけようと、その背後に忍び寄る可奈)

可奈「――はい。志保ちゃんっ」ピトッ

志保「ひゃっ! か……可奈!? もう、何するのよ!」

可奈「えへへ~。ひんやりして気持ちいいかなーって」

志保「びっくりするでしょ! ……もう」

可奈「ごめんね……怒った?」

志保「……怒ってないわよ。ありがとう。頂くわ」スッ

可奈「えへへ……」

奈緒「なんや、二人ともすっかり熟年夫婦みたいになったな」

志保「ぶっ!」

可奈「きゃっ! 志保ちゃんきたない!」

志保「あっ。ご、ごめん。可奈」フキフキ

(可奈の顔に掛かったドリンクをタオルで拭いてあげる志保)

志保「ど、どうかしら?」

可奈「んー。もうちょっと。このへんも」

志保「こ、ここ?」フキフキ

可奈「うん」

志保「……こんな感じかしら?」

可奈「うん。ばっちり! ありがとう。志保ちゃん」

志保「いえ、今のは完全に私が悪いわ。本当にごめんね。可奈」

可奈「ううん。私の方こそ『きたない』なんて言ってゴメンね。志保ちゃんの噴き出したドリンクが汚いわけないのに」

志保「は、はあ!? も、もう、何言ってるのよ。……馬鹿」

可奈「えへへ……」

奈緒「……な、なんか、ほんまにお邪魔みたいやな……はは……」



756:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/08(日) 22:10:41.94 ID:FjQ2dBlA0

春香「本当、すっかり仲良くなったよね。可奈ちゃんと志保ちゃん」

美希「うん。なんだかんだで名コンビみたいになってるの」

千早「……私は、すごく良いことだと思うわ」

春香「千早ちゃん」

千早「合宿の時の北沢さんは、矢吹さんだけでなく、他人に対してまるで関心が無いみたいだった。……昔の私みたいに」

美希「千早さん……」

千早「でも今の彼女は、望んで他人との距離を縮めようとしているように見える。だからそれはすごく良いことだと思うの」

春香「……それも、今の自分に重ねて言ってる? 千早ちゃん」

千早「……さあ。それはどうかしらね」

春香「もう、そうやってすぐ肝心なところははぐらかすんだからー。もっとオープンにいこうよー。千早ちゃん」

千早「あら。私はもう十分春香に心を開いているつもりだったのだけれど。どうやら春香にはあまりそれが伝わっていなかったみたいね。残念だわ」

春香「ええっ! ち、違うよぉ! そういうことじゃなくて……」

千早「……ふふっ。冗談よ。春香」

春香「も、もー! 千早ちゃんのイジワル!」

美希「あはっ。ミキ的には、千早さんはもう十分オープンになってるって思うな」

春香「……まあ、ね。冗談を言って人をからかうなんて、昔の千早ちゃんからは考えられなかったし」

千早「そうね。正確には人を、じゃなくて春香を、だけどね」

春香「私限定なの!?」

美希「春香はいじりがいがあるってことだから大丈夫なの」

春香「何のフォローにも慰めにもなってない!」

P「おーい。千早」

千早「あ、はい。何でしょうか。プロデューサー」

P「これ、頼まれてたチケット」スッ

千早「! こんなに早く……どうもありがとうございます」

P「何、これくらいお安い御用さ」

春香「? チケット?」

美希「もしかして……今度のライブの?」



757:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/08(日) 22:15:18.34 ID:FjQ2dBlA0

P「ああ。関係者席を1枚欲しいって頼まれててな」

春香「そうなんですね。ちなみに誰を呼ぶの? 千早ちゃん」

千早「……母親を招待しようと思って」

春香「! そうなんだ」

美希「…………」

千早「優の事があってから、ほとんど碌に会話もしていないし……顔を合わせても喧嘩ばかりだから。これを機に、少しでもお互いに歩み寄れたらいいなって」

春香「うんうん。千早ちゃんならできるよ!」

千早「春香。ありがとう」

P「……春香と美希はどうだ? 渡したい相手がいるようなら聞いておくけど」

春香「うーん……私は特には……美希は?」

美希「ミキも別に……あっ」

春香「?」

美希「…………」

美希(当たり前だけど、アリーナライブ当日はミキも春香もほとんどずっと動けない)

美希(もしそのタイミングを狙って、またLが何か仕掛けてくるとしたら……)

美希(そしてミキの考え通り、竜崎がLなら……)

美希(……念の為、手を打っておいた方がいいの)

P「どうした? 美希」

美希「プロデューサー。ミキもチケット欲しいの」

P「ああ、いいぞ。何枚だ?」

美希「えっとねー、4枚!」

P「4枚? ご家族か? なら関係者席で取れるけど……」

美希「ううん。友達なの」

P「うーん、友達の場合は一般席になるから……4枚は流石にちょっと多いかな。本来ならファンの為の席だし……」

美希「えっ」

P「一応、社長からは一人2枚を目安にって言われてるんだよ。すまん」

美希「えー……そんなぁ。なんとかしてなの。プロデューサー。ぶー」

P「そう言われてもな……はは」



758:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/08(日) 22:23:39.09 ID:FjQ2dBlA0

春香「ねぇ、美希。4枚って……もしかして『竜ユカ』?」

美希「うん。そうだよ」

P「?」

千早「リュウユカ?」

春香「確かに皆には来てもらいたいもんね。じゃあ私と2枚ずつで貰う?」

美希「! いいの? 春香」

春香「もちろん。じゃあすみません、プロデューサーさん。私と美希、それぞれ一般席を2枚ずつでお願いします。それならいいですよね?」

P「あ、ああ。それならいいけど。……なんだ? お前ら、同じグループの集まりにでも入ってるのか?」

春香「はい。実は、私と美希と、ヨシダプロの弥海砂さんと……あと、私の家庭教師をやってくれている大学生の方と、そのお友達の方とで……ちょくちょく集まって遊んでるんです」

P「……へぇ。そういえば春香も弥さんとよく一緒に遊んだりしてるって言ってたもんな。そういう集まりだったのか」

春香「はい。実はそうだったんです」

P「分かった。じゃあ春香と美希で2枚ずつな」

春香「ありがとうございます。プロデューサーさん」

美希「ありがとうございますなの」

P「…………」

P(弥をライブに……? いや、元々美希と弥は○×ピザのCMで共演して以来の友人関係……そして美希経由で春香も友人になったということだ。特段おかしなことでもないか)

千早「大学生と一緒に遊んでるなんて……何て言うんだったかしら。この、り、リア王じゃなくて……」

春香「リア充?」

千早「そう、それだわ。春香と美希はリア充だったのね」

春香「多分だけど千早ちゃんはすごく大きな誤解をしてると思う」

美希「…………」



759:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/08(日) 22:34:55.45 ID:FjQ2dBlA0

春香「あ、でも今更だけどさ。美希」

美希「ん?」

春香「海砂さんは普通に来てくれると思うし、竜崎さんなんかはむしろ先行抽選で既に通ってそうだけど……ライトさんや清美さんは来るかな? 正直言って、アイドルのライブなんてあんまり興味無いんじゃ……」

P「!」

P(……『清美』? ……それも、春香の家庭教師をしている大学生の友人……)

美希「んー。ライトくんは来るんじゃない? 竜崎を海砂ちゃんのライブに連れて来てたくらいだし……。高田さんは正直ちょっとよく分かんないけど、まあ皆が来るなら来るんじゃないかな」

P(! 『高田』……ということはやはり『高田清美』……。確かに、春香とは友人だと言っていたな。それに今の話からすると美希とも親交があるみたいだ)

P「…………」

千早「どうしました? プロデューサー。バッタがシャツと背中の間に2~3匹入った時のような顔になってますけど」

P「何それ気持ち悪!? 千早、お前のそのよく分からんセンス何なの……」

千早「駄目でしょうか」

P「いや、駄目ではないけどね」

やよい「あの……」

春香「ん? どうしたの? やよい」

やよい「さっき、ライト先生の名前が聞こえた気がして……もしかして、ライブのチケットの話でしょうか?」

春香「ああ、うん。今ね、私と美希でライトさんとか、他の友達……あっ。やよいは東大の学祭に来てたから知ってるよね。あそこで仲良くなった人達……海砂さんとか、清美さ……高田さんとかに、ライブのチケットを渡そうって話をしてたの」

やよい「あー、そっか! 春香さんと美希さん、ライト先生とか、あの時のメンバーの皆さんと一緒にちょくちょく遊んでるって言ってましたもんね」

美希「そういうことなの」

P「ライト先生……って、春香とやよいの家庭教師の先生の事か?」

やよい「あ、はい。ライト先生っていうんです。夜神月先生。『夜』に神様の『神』に『月』って書いて『ライト』って読むんです」

P「へぇ。そりゃまた変わった名前だな」

春香「それで? やよい。ライブのチケット関係で何かあるの?」

やよい「あ、はい。実は、ライト先生には私からチケットあげるってもう言ってあるんです」

春香「え? そうなの?」

やよい「はい。先週の家庭教師の時に、粧裕ちゃんの分と一緒にあげるっていう約束を……」

春香「そうなんだ。じゃあライトさんの分はやよいから渡してもらえばいいかな?」

やよい「はい。できればそれでお願いしたいです」

春香「オッケー。じゃあすみません、プロデューサーさん。やっぱり私の分は1枚でお願いします」

美希「ミキの分は2枚のままでよろしくお願いしますなの」

P「ん、分かった。春香が1枚、美希が2枚な」

春香・美希「はい(なの)」



760:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/08(日) 22:44:17.03 ID:FjQ2dBlA0

やよい「あ、プロデューサー。私の分も今頼んでしまっていいですか?」

P「もちろんいいぞ。何枚だ?」

やよい「一般席2枚でお願いします」

P「分かった。ちなみに高校生以下の場合は保護者が必要になるけど、そこのところは大丈夫か?」

やよい「あ、はい。1枚は私の学校の友達の分なんですけど、その子のお兄さんがさっき話したライト先生で……大学生なので」

P「オーケー、じゃあそのライト先生が保護者役ってことな」

やよい「はい」

P「了解。今ちょうど事務所に20枚くらい残ってたはずだから、この後すぐにでも渡せると思う」

春香・美希・やよい「ありがとうございます(なの)!」

P「…………」

P(弥海砂に『高田清美』……そして春香の家庭教師の『夜神月』……か。さっきの春香とやよいの会話からするに、東大の学祭がきっかけで春香と美希はこのメンバーとよく遊ぶようになったみたいだな)

P(とすると、さっき春香と美希の会話で名前が出ていた『竜崎』とやらもおそらくは東大生で……高田・夜神の友人ってところか)

P(……まあ俺がここでそれを詮索するのも変だし、いずれにしてもこの集まり自体はキラ事件とは直接の関係は無さそうだ。あえてLに報告するほどの内容でもないだろう)

P「ああ、そうだ。聞き忘れてた。席の位置の希望とかはあるか?」

美希「もちろん前の方希望なの! あとできれば、今チケットを頼んだ5人は全員近くに固めてほしいな」

P「分かった。皆同じグループってことだな。春香とやよいもそれでいいか?」

春香「はい。よろしくお願いします。プロデューサーさん」

やよい「よろしくお願いしますー!」

美希「…………」

美希(前の方の席であればあるほど、ステージ上のミキからも動向が確認しやすくなる。それに一緒にいる人数が多ければ多いほど、竜崎も自由に動けなくなるはず)

春香「…………」

春香(美希がこんなに積極的に『竜ユカ』の皆を誘うなんて意外だなぁ。海砂さんとは前から大分仲良しだったみたいだけど、他の人とはまだそんなに親しくなってなさそうなのに)

春香(まあでも、美希だってアイドルだもんね。折角の晴れ舞台だし、少しでも多くの人に観てもらいたいって思うのは当然だよね)

春香(よぉし。私も負けずに頑張ろうっと!)

春香「じゃあ、美希。ちょうど明日の午後に『竜ユカ』があるから、ライトさん以外の三人にはそこで渡そうか」

美希「うん。そうだね」

美希「…………」

美希(これ以上、Lの好きにはさせない)

美希(春香は必ず、ミキが守るの)

美希「…………」



974: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:56:44.77 ID:jizsduFN0

【同日夕刻・キラ対策捜査本部(都内のホテルの一室)】


L「月くん。明日の例の会合に備えて、念の為にプロデューサーに星井美希と天海春香の近況を聞いておこうと思いますが……月くんの方から何か聞いておきたいことはありますか?」

月「いや、僕は特に無いよ。大丈夫だ」

L「分かりました。ではワタリ、プロデューサーの携帯に掛けてくれ」

ワタリ『承知しました』

松田「……会合って言っても、行き先は遊園地なんですよね……現役のアイドル三人にミス東大候補まで加えて一緒に遊園地……」

L「捜査上必要な行動です。ここで急に付き合いを悪くしたら星井美希・天海春香から不信感を抱かれるおそれがありますので」

松田「まあ理屈としては分かりますけど……しかし何だろう、この釈然としない気持ちは……」

相沢「お前だってほぼ毎日、そのアイドルのうち二人を俺と交代で尾行してるじゃないか。似たようなもんだろ」

松田「いや、流石に尾行と遊園地を同列に見れるほど僕のメンタルは強くないっすよ相沢さん」

ワタリ『――竜崎。こちらから掛けようとしたのとほぼ同じタイミングで、プロデューサーの方から着信が』

L「分かった。ではそのままつないでくれ」

ワタリ『はい。どうぞ』

L「Lです」

P『俺だ。今いいか?』

L「はい。大丈夫です。どうかされましたか?」

P『たった今、例のファッション誌の撮影のスタジオが決まったと出版社から連絡があった』

L「!」

P『多分、あんたの方で色々と準備を整える必要があるだろうから、早めに知らせた方がいいだろうと思ってな。今、こっそり事務所を抜け出して来たところだ』

L「ありがとうございます。大変助かります。では早速、そのスタジオの住所と建物の名前を教えてください」

P『ああ。住所は東京都渋谷区――』

L「……ありがとうございました。ちなみに星井美希が使用する控室、または更衣室のようなものの位置や数などは分かりますか?」

P『いや、悪いがそこまでは分からない。出版社に聞けば分かるとは思うが、あまり細々とした事を尋ねるのもかえって怪しまれると思ってな』

L「そうですね。では後はこちらで調べた上で、必要な準備を進めるようにします」

P『ああ、よろしく頼む』

L「それと、私の方からも○○さんにお聞きしたいことがあったのですが、今、もう少しお時間よろしいでしょうか」

P『ああ、構わないが……何だ?』

L「前回の打ち合わせから数日経っていますが……星井美希の様子に何か変わりはありませんか? それと、天海春香の方にも何か気になる動きがあれば」

P『そうだな……これといって特には……ああ。そういえば』

L「?」

P『キラ事件には直接関係しなさそうだったから、あえてあんたには報告しなくてもいいだろうと思っていたんだが……今日、美希と春香から『アリーナライブのチケットを友達にあげたい』と言われたので渡したよ』

L「! それは……何枚ずつですか?」



762:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/08(日) 23:18:32.51 ID:FjQ2dBlA0

P『春香が1枚、美希が2枚だ。あと関係しそうなので一応言っておくと、やよいも2枚』

L「高槻やよい……ですか? 関係しそう、とは?」

P『どうもこの三人が渡す相手が全員同じグループになるらしくてな。できれば前の方の席で全員固めてほしいと言われたんだ』

L「! ……では、その通りの席のチケットを渡したんですか?」

P『ああ。ちょうどいい席があったからな。全員、ステージ中央部前方の、いわゆるアリーナ席ってやつだ』

L「……なるほど。ちなみに、誰に渡すのかは分かりますか?」

P『ああ。まず春香の分は『高田清美』だ。あんたの言っていた、今回の作戦の協力者だな』

L「! ……他は?」

P『美希の分が弥海砂と『竜崎』という人物だな。『竜崎』の方が誰かは分からないが、俺が詮索するのもおかしいので詳しくは聞いていない』

L「…………」

P『そしてやよいの分が『夜神月』という大学生とその妹だそうだ。『夜神月』は春香とやよいの家庭教師をしているという例の東大生らしいから、あんたも名前くらいは知っているんじゃないか?』

L「……ええ。勿論知っています。大変優秀な学生のようですね」

月「…………」

P『ちなみに、元々はこの『夜神月』の妹とやよいが友達同士だったことから、『夜神月』がやよいと春香の家庭教師をすることになったそうだ』

L「……なるほど。そういうつながりでしたか」

月「…………」

P『まあ美希と春香の口から弥や『高田清美』の名前を聞いた時は少し警戒したが……今は全員、『夜神月』やさっき名前が出た『竜崎』なる人物も含め、よく集まって遊ぶ仲だそうだから……これ自体は特に警戒すべき事でもないだろうとは思う』

L「……そうですね。ただ一応、アリーナライブ自体、非常に大きなイベントですので……今後、これに関して星井美希ないし天海春香に何らかの動きがあるようであれば、随時報告するようにしてください。今回のようにキラ事件と直接関係しそうにないものでも構いませんので」

P『ああ、分かった。今後はそうするよ。他には特に無いか?』

L「そうですね……では、そのメンバーにチケットを渡したい、と最初にあなたに言ってきたのは星井美希と天海春香、二人一緒にでしたか? あるいはどちらかだけでしたか?」

P『ああ、それなら……最初に言ってきたのは美希だけだったな』

L「! …………」

P『ただ俺が『一人に4枚も渡せない』と言うと、春香が『それなら自分と美希で2枚ずつ貰いたい』という提案をした』

L「…………」

P『だが結局、『夜神月』にはやよいの方からも渡す約束をしていたとかで……最終的にはさっき言った通りの内訳になった』

L「……分かりました。ありがとうございます」

P『ああ。他は大丈夫か?』

L「はい。大丈夫です。どうもありがとうございました」

P『おう。じゃあまたな』

(プロデューサーとの通話を終えたL)

L「…………」

L(やはり、星井美希……か)



763:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/08(日) 23:30:06.58 ID:FjQ2dBlA0

月「アリーナライブへ招待……それも中央部前方の席……」

月「僕達を見張るつもり……か?」

L「……可能性はありますね。一応」

月「だが作戦の実行日はライブの一週間前だ。そこで全てが終わるなら特に気にする事でもないとも言えるか」

L「……そうですね。ワタリ」カチッ

ワタリ『はい』

L「さっきプロデューサーが言っていたスタジオの内部構造をすぐに調べてくれ」

L「そしてその後、建物内全体にわたっての監視カメラの設置を頼む。控室、更衣室、ロッカールーム等、星井美希が使用する可能性のある部屋については盗聴器もだ」

L「またロッカーであれ金庫であれ、星井美希が私物を一時的に保管する可能性のあるものについては全て、物理鍵であればマスターキーの複製、暗証番号方式であれば解錠ロジックの解明を速やかに行ってくれ。くれぐれも絶対に誰にも気付かれないように」

ワタリ『分かりました。この後すぐに取り掛かります』

L「よろしく頼む」カチッ

星井父「…………」

L「星井さん。捜査の必要上、必然的に娘さんの更衣場面等も監視することになりますがご容赦ください。撮影の内容上、完全に裸になることは無いと思いますが」

星井父「……ああ。勿論分かっている。前にも『気の済むまで娘を捜査してほしい』と言ったはずだ。あの言葉に偽りは無い。たとえ娘が裸になることがあったとしても、目を背けることなく監視してくれ」

L「ありがとうございます。ご理解いただき感謝します」

総一郎「星井君……」

星井父「…………」

松田(辛いだろうな……係長)

相沢(もうここまで来ている以上、仕方の無いことではあるが……)

模木(係長……)

月「……いよいよだな。竜崎」

L「はい」

L「…………」

L(星井美希……どこまで私を疑っている?)



771:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/21(土) 19:45:47.68 ID:oEF7p+LC0

【翌日朝・星井家のリビング】


【アリーナライブまで、あと20日】


美希「おはよーございますなの」

星井母「おはよう。美希」

菜緒「おはよー」

星井父「……おはよう」

美希「なんか久しぶりだね。皆揃って朝ごはんって」

星井母「そういえばそうね」

菜緒「美希は大体いつも寝てるからね」

美希「別にそんなことないの。ミキも学校やお仕事があるときはちゃんと起きてるし。そういうお姉ちゃんこそ結構お寝坊さんだって思うな」

菜緒「大学生は忙しいんですうー」

美希「ミキだって女子高生とアイドルの両立は大変なの」

星井母「はいはい。もう朝から言い争わないの。早く食べましょ」

菜緒「はぁい」

美希「はいなの」

星井父「…………」

星井母「どうしたの? あなた。ボーっとして」

星井父「え? ああ、別に……」

星井父「…………」

(以前のLとの会話を思い返す星井父)




【十八日前(765プロダクション合宿最終日)・キラ対策捜査本部(都内のホテルの一室)】


L「―――なのでむしろ、合宿中のメールが不自然に思われないように……これからは娘を思いやる父親として、今まで以上に愛情を持って美希さんに接して下さい」

星井父「! …………」

L「『合宿中は心配するようなメールを送っていたのに、合宿から帰って来た途端に素っ気ない態度になった』……これではあまりに怪しい……その態度のギャップから、合宿期間中のメールの真の意図に気付かれないとも限りません」

星井父「……ああ。分かった」




【現在・星井家のリビング】


星井父「…………」

星井父(……そうだ。俺がすべきことは何も変わらない)

星井父(たとえこの先、美希の身に何があろうとも……)

星井父「…………」



772:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/21(土) 19:53:52.68 ID:oEF7p+LC0

星井父「……美希は今日も仕事か? 学校の方はテスト休みらしいけど」

美希「そうだよ。今日は午前中にラジオの収録なの。でも午後は久しぶりのオフだから友達と遊園地に行くんだ」

星井父「遊園地って……まさか、例の竜崎君と行くんじゃ……?」

美希「ぴんぽんなの」

星井父「な……じゃあお前、それ……デートってことか?」

美希「ううん。他にも春香とかアイドル友達の海砂ちゃんとかもいるし、全然そんなんじゃないの」

星井父「そ、そうか。それならいいが……」

菜緒「竜崎君? って……あの?」

美希「うん。あの」

星井母「? 誰?」

菜緒「えっと、ちょっと前に美希が家に連れて来てた……友達? だよね。私とはほとんど入れ違いで帰っちゃったんだけど……」

美希「うん。そうだよ」

星井母「ふぅん。どんな子なの?」

美希「なんでママもそんなに興味津々なの」

星井母「そりゃあ気になるわよ。美希が男の子を家に連れて来たことなんて今まで一度も無かったもの」

菜緒「うーん、男の子っていうか……男の人、だね。どう見ても私より年上だったし」

星井母「え? そうなの?」

菜緒「うん。多分20代半ばくらい。なんか独特の雰囲気の人で……あ! あとそうだ、座り方がすごく変わってるの」

美希「!」

星井母「座り方?」

菜緒「うん。こういう風に……椅子の上に体育座りみたいにして座ってた」

(椅子の上でLと同じ座り方をして見せる菜緒)

星井父「……ああ、そうそう。確かにそんな座り方だったな」

星井母「な、なんか随分変わった人なのね……」

菜緒「まあ一見して普通な感じではなかったわね」

美希「…………」

菜緒「あっ。美希。ごめん。別に彼の事を悪く言うつもりは……」

美希「……ううん。大丈夫なの。竜崎が変なのは本当の事だし」

星井母「やっぱり変な人なのね……」



773:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/21(土) 20:05:48.24 ID:oEF7p+LC0

美希「…………」

美希(……気付かれた?)

美希(いや……大丈夫)

美希(一応、パパも『竜崎が変な座り方だという認識はしている』という演技はしているけど……)

美希(ミキが竜崎を家に連れて来た時に『初めて竜崎の座り方を見た』という演技をしていなかったことにまでは気付いていない)

美希(それもそのはず。もはやパパにとって竜崎のあの座り方は『当たり前』の事……今更特別視なんてできるわけがない)

美希(そしてパパが気付いていない以上、この事がLに伝わることも無い)

美希(それに仮にパパに気付かれ、Lに伝わったところで……今更そんなことでミキがキラだと特定できるわけでもない)

美希「…………」

美希(それよりも気になるのは……合宿以来、明らかにパパがミキに対して話し掛けてくる回数が増えていること)

美希(元々パパはミキには甘々だったから、そこまで大きな違和感は無いけど……)

美希(でも合宿の前……より正確に言うと、ミキが事務所で刑事さん達に聞き取りをされてから、合宿までの間は……それまで以前に比べて、明らかにパパがミキに話し掛けてくる回数は減っていた)

美希(避けられている、とまでは思わなかったけど……それまでに比べて、どこかよそよそしい態度だったの)

美希(それなのに、『合宿後』というタイミングでまた前みたいな態度に戻った……)

美希「…………」

美希(これならむしろ、誰かがパパに……『合宿中のミキにメールを送るように』、そして『その合宿中のメールが特別怪しまれたりすることのないように、合宿後もミキに親しく接するように』という指示を出している……って考えた方がすっきりするの)

美希(そうすると次に考えないといけないのは、パパにそんな指示を出しているのは誰かってこと)

美希(パパに対する指示だけなら、パパの上司で刑事局長でもある夜神総一郎の可能性もあるけど……)

美希(例の合宿中の犯罪者裁きの報道操作の件もあわせて考えたら……もっと大きな権限を持った人が、全体としての捜査指揮を執っている中で、パパにも指示を出している……って考えた方がしっくりくるの)

美希(とすると、そんな権限を持っているのは……L)

美希(つまり、竜崎)

美希「…………」



774:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/21(土) 20:13:27.74 ID:oEF7p+LC0

【同時刻・キラ対策捜査本部(都内のホテルの一室)】


(星井父が身に着けている超小型マイクが拾う音声をリアルタイムで聴いているL)

菜緒『うん。こういう風に……椅子の上に体育座りみたいにして座ってた』

星井父『……ああ、そうそう。確かにそんな座り方だったな』

L「! …………」

L(そうか。あの時、私の座り方……)

L(確かに、星井菜緒は私の座り方を凝視していた)

L(そして今でこそ、私の座り方に何の違和感も抱いていない捜査本部の面々も……最初に見た時は皆、少なからず驚いた反応をしていた)

L(つまり、それが本当の初対面時ならあるべき反応……)

L(だがあの時、星井係長と事前にその点までの打ち合わせはしていなかった)

L(結果、星井係長は私の座り方には特に何の反応も……)

L(盲点だった)

L(勿論、星井美希がそこまで考えて行動していたとは限らないが……)

L(しかしもし仮に、星井美希がその点のみに焦点を当てていたのだとすると……)

L(私と星井係長を対面させたこと……そしてそれにもかかわらず、いざ対面させた後は私にも星井係長にも特にこれといって踏み込んだ質問はせず、ほとんどずっと他愛も無い内容の雑談ばかりしていたことも……全て説明がつく)

L(そしてこの『仮に』が成り立つのならば……気付かれている)

L(私と星井係長が初対面ではなかったこと。にもかかわらず、そのことを星井美希に対して隠していたこと)

L(ここまで来れば、もう私がキラ事件の捜査本部に居るということにも……いや、それのみならず)

L(私の本名も既に知られている可能性が高い以上……端的に、こう疑われているとみるべきだろう)

L(『竜崎は、Lである』と)

L「…………」



775:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/21(土) 20:23:59.37 ID:oEF7p+LC0

【同日午後・都内某遊園地入口前】


(先に着いていたL、月、海砂、清美に合流する美希と春香)

美希「皆ー、やっほーなの」

春香「お待たせしちゃってすみません」

海砂「美希ちゃん、春香ちゃん。……うーん、変装してるとはいえ、やっぱ765アイドルが二人揃うとオーラ半端無いわ」

清美「本当。やはり本物のアイドルは一味違いますね」

海砂「いや、一応私も本物のアイドルですからね? 清美ちゃん?」

L「……今日の春香さんはコーラルピンクのワンピースですか。春香さんらしい色味で大変良くお似合いですね」

春香「そ、そうですか? ありがとうございます。えへへ……」

L「あと美希さんもなんか良い感じですね」

美希「雑って思うな」

月「よし。じゃあ全員揃ったことだし、中に入るとしようか。春香ちゃんと星井さんはあまり長居はできないそうだしね」

春香「すみません。無理を言って」

月「いや、いいんだよ。アリーナライブももうすぐだしね」

美希「あっ。そうそう。これ、皆にあげるの」

(鞄からライブのチケットを取り出す美希)

L「! ……これは……」

海砂「アリーナライブの……チケット?」

清美「……いいんですか?」

美希「うん。皆は大切なお友達だから特別なの。あ、ライトくんはやよいからもらってね。粧裕ちゃんの分と一緒に」

月「ああ。今日はちょうど午前中にやよいちゃんの家庭教師だったから、もうもらったよ」

美希「ならよかったの」



975: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 15:00:29.75 ID:jizsduFN0

春香「あの、竜崎さんは……もしかしてもう自分で購入されたりとか、してます……?」

L「いえ。大丈夫です。45口応募しましたが全落ちでした。完全に諦めていたので本当に嬉しいです。どうもありがとうございます。それもこんなに良い席を」

春香「そうですか! それならよかったです!」パァア

海砂「……いや、その前に『45口応募』にツッコもうよ……」

美希「竜崎と話してる時の春香は完全にアイドルモード入っちゃってるから、それは無理な相談なの」

月「しかもやよいちゃんから聞いたけど、皆、近くの席で固めてくれたんだって? なんかごめんね。気を遣わせちゃったみたいで」

美希「いーのいーの。ミキと春香にとっても『竜ユカ』の皆はトクベツな存在だから!」

海砂「美希ちゃん……」

清美「ありがとうございます。星井さん。春香ちゃん」

春香「えへへ……私たち、精一杯歌って踊って頑張っちゃいますから、どうか楽しみにしていてくださいね! じゃあ、行きましょうか」

L「春香さん」

春香「あ。はい。何でしょう? 竜崎さん」

L「私はこのライブに命を懸けて臨みます」

春香「竜崎さんが言うと冗談に聞こえないんですけど!?」

月「…………」

月(星井美希は相変わらずノート大の物なら十分入る大きさのトートバッグ……か。一方、天海春香は小さなショルダーポーチのみ……どう見てもこれにノートは入っていないだろう)

月(もっとも、切り取ったページや切れ端でも殺せるのなら、ノート本体を持っていないとしても安心はできないが……)

海砂(今日はとりあえず普通に『竜ユカ』を楽しめばいいのよね。後は園内を回るルートとかを事前に四人で打ち合わせた通りにするようにだけ気を付けて……)

海砂(あ、あとそうだ。ライトとの距離感にも気を付けとかないと。あくまでも友達モードで)

清美(あまり余計な事は考えない方が良いわね……私も決して演技に自信があるわけではないし。あくまでも自然体、自然体で……)

春香(ふふっ。皆、チケット喜んでくれたみたいでよかったぁ)

春香(やっぱり観に来てくれる人がいてこそのライブであり、ステージだもんね! 私も期待に応えられるよう頑張らなきゃ!)

美希(……竜崎……)

L(……星井美希……)

美希・L「…………」



787:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/29(日) 23:51:05.52 ID:LfuphVCx0

(遊園地内に入った六人)

月「さて、じゃあどこから回ろうか。といっても……乗り物系は待ち時間があるから微妙だな」

海砂「ふっふっふ……そこは『竜ユカ』代表幹事・弥海砂に任せなさい! ちゃ~んと、皆が時間を無駄にすることなく楽しめるプランを考えてきてるんだから!」

月「へぇ。流石海砂さん」

L「頼りになります」

清美「素晴らしいです」

海砂「いやぁ~、それほどでも~」

海砂(……って、ミサは事前に四人で打ち合わせた通りに喋るだけなんだけどね……)

美希「で、最初はどこに行くの? 海砂ちゃん」

海砂「よく聞いてくれたわ、美希ちゃん。最初はね……なんと!」

春香「やっぱり定番のジェットコースターとかですかね!」

海砂「え」

月「……春香ちゃん、僕の話聞いてた?」

春香「えっ。あ、ああ、そっか。乗り物系は待ち時間が……でしたね。たはは……」

月「試験ではそういう注意不足から思わぬ失点をすることもあるから気を付けるようにね」

春香「はうっ……ら、ライトさん、今日だけは受験の事は忘れさせて下さい……」

月「はは。ごめんごめん。春香ちゃんと話してるとつい、ね」

海砂「……あのー。そろそろ話進めていい?」

春香「はっ! ご、ごめんなさい海砂さん! お話遮っちゃって! どうぞ!」

海砂「おほん。えー、では発表します。我々、『竜崎と愉快な仲間達』の最初の行き先は……お化け屋敷です!」

美希・春香「!」



788:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/29(日) 23:54:02.64 ID:LfuphVCx0

L「お化け屋敷……ですか」

月「なるほど。確かに夏の遊園地の定番スポットでもある。流石海砂さん」

海砂「でしょー? ふふん、もっと褒めてくれてもいいよ。ライトくん」

清美「別にそこまで得意気になるようなことでは……」

海砂「何か言った? 清美ちゃん?」

清美「いえ。別に何も」

春香「うぇえ……お化け屋敷かぁ……」

美希「あれ? 春香ってお化けダメだっけ?」

春香「いやー、お化け自体はそうでもないんだけど、お化け屋敷はちょっとね……昔家族で遊園地行った時に超怖くてガン泣きしたトラウマが……」

美希「あー。でもそれって子供の頃の話でしょ? さすがにもう大丈夫なんじゃないのって思うな。春香も一応高3なんだし」

春香「一応って何!? 正真正銘高校三年生ですよ! 高校三年生!」

L「……大丈夫ですよ。春香さん」

春香「竜崎さん?」

L「何があっても、春香さんは私が守りますから」

春香「! あ、ありがとうございます。えへへ……」

海砂「はーい。じゃあペア決めのグーチョキパーするよー」

L「! ちょ、ちょっと待って下さい。ミサさん。春香さんは私と」

海砂「駄目です。いかなる理由であれ例外は一切認めません」

L「…………」

月「元気出せよ。竜崎」ポン

L「……ありがとうございます。月くん」

春香「あ、あはは……」

海砂「よーし、じゃあ皆いい? いくよ~。グーチョキパーで――」



789:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/29(日) 23:58:47.17 ID:LfuphVCx0

(ペア決めのグーチョキパーの結果、一組目が美希とL、二組目が春香と月、三組目が海砂と清美となった)

(六人はお化け屋敷入口前の入場者列に並んでいる)

L「…………」

美希「そんな露骨に落ち込まないでほしいの」

L「別に落ち込んでないです」

美希「目に見えてテンション下がってるの」

L「そんなことないです。『はー、春香さんと一緒にお化け屋敷回りたかったなー』なんて微塵も思ってません」

美希「やっぱり思ってるの!」

春香「あ、あはは……また次、ペアになれたらいいですね。竜崎さん」

L「! 春香さん……ありがとうございます。今の春香さんの一言で一縷の希望が見えてきました」

美希「つまりミキとのペアには絶望しかなかったってことなの」

L「別にそういう意味ではありません。今のは言葉のあやです」

美希「限りなく本音に近い声が漏れ出ていたようにしか思えなかったけど……まあいいの」

月「でも、春香ちゃんも僕とのペアじゃ新鮮味が無いよね。家庭教師で週一で会ってるのに」

春香「いっ、いえ! そんなことないです。逆に普段と違うライトさんが見られそうで楽しみです!」

月「はは。まあお手柔らかにね」

海砂「私は清美ちゃんとかー。……ふふっ」

清美「? な、何ですか? その笑い」

海砂「いやあ、清美ちゃんってお嬢様っぽいし、あんまりこういうの耐性無いんじゃないかなーって思ってね。可愛い声で『キャー』とか叫んじゃったりして」

清美「は、はあ? 何言ってるんですか。お化け屋敷なんて所詮子供騙しでしょう」

海砂「いやいやー、ここのお化け屋敷はかなりガチで怖いらしいよ。テレビでもよく取り上げられてたし」

清美「……そうなんですか? ま、まあ期待しないでおきます」

海砂「あれあれ? 清美ちゃん。ちょっと顔が青くなってきてるわよ?」

清美「な、なってません! からかわないでください!」

海砂「あはは」

月「…………」



791:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/30(月) 00:22:16.12 ID:2EPnu4ik0

月(一見、ただの偶然で決まったようにしか見えないこの三組のペア……)

月(だがこれは全て―――計画通り)

月(三日前……僕、竜崎、ミサ、高田の四人で今日の遊園地巡りについての詳細な打ち合わせを行った)

月(その主眼はただ一つ。『星井美希と天海春香の挙動を観察する事』)

月(天海春香だけなら、僕が毎週の家庭教師の際に見ているが……それでも『家庭教師』という決まった枠の中では観察できる範囲にも限界がある)

月(また星井美希については、この会合以外で僕や竜崎が直接的に観察できる機会が無かった。もっとも、竜崎は一度だけ彼女と一対一で会っているが……そこでも特に目ぼしい情報は掴めていない)

月(そういう意味では、今回の遊園地巡りはまさに絶好の機会。星井美希を至近距離から直接観察できるとともに、天海春香についても、普段と違う場所での彼女の新たな一面を見られる可能性がある)

月(だが常に六人まとまって行動していたのではやりづらい……どうにかしてスポットごとにグループを細分化し、かつその組み合わせも自然に入れ替えることはできないかと考えた)

月(ここで幸運だったのは、星井美希と天海春香にはスケジュールの都合上、時間的な制約があったことだ。そのためこの会合も3~4時間程度しか時間が取れなかった)

月(となると当然、待ち時間のかかる乗り物系はカットせざるを得ない……必然的に巡回型のアトラクションを中心に回ることになる)

月(ここまで来れば後は簡単だ。巡回型の中でもペアで入場するのが自然なアトラクションだけを選び……事前に『グーチョキパー』でペアを決めようとミサに発案させればいい)

月(そして星井美希と天海春香をより観察しやすいペアとなるよう……つまり僕と竜崎のいずれかが星井美希と天海春香のいずれかを観察できるように組み合わせを操作する。ミサと高田は二人でペアになってもらうようにすればいい)

月(後は僕達四人で予め決めていた手を出せばいいだけだ。一回目は僕がグーで竜崎がチョキ。ミサと高田はパー同士でペア)

月(こうしておけば星井美希と天海春香が何を出そうが、こちらの思い通りの組み合わせになるか、人数が合わずにやり直しとなるしかない)

月(やり直しとなった場合の手も事前に決めておいた通りに出すだけだ。僕がチョキで竜崎がパー。ミサと高田はグー同士でペア)

月(後はペアが決まるまで各自がグー→チョキ→パーの順で手を変えていけばいいだけ)

月(このようにした場合、ミサと高田の二人は常に同じ手を出し続ける形になるが、ペアが上手くできない時は必ず三人以上が同じ手を出していることになる。殊更ミサと高田の出す手だけが注目されることはない)

月(またそもそもただのペア決めのグーチョキパーをそこまで注意して観察するはずがないし……)

月(それに今回は二回目ですんなりペアが決まった。これで何か怪しめという方が無理がある)

月(大丈夫だ。全てこちらの思い通りに事が運んでいる)

月「…………」

係員「――では次の二名様、どうぞ」

海砂「あ、もう竜崎さんと美希ちゃんの順番ね。じゃあ頑張ってね。二人とも」

美希「ありがとうなの。海砂ちゃん」

L「……行ってきます」

(係員に促され、お化け屋敷の中の暗闇に消えていく美希とL)

春香「うぅ~っ。……いざ自分の順番が近付いて来ると、やっぱり緊張しますね……」

月「一応言っておくけど……怖くなっても、歌を歌って誤魔化すのは無しだよ。それでバレたら大変だ」

春香「えぇっ! いざとなったらそれで乗り切ろうと思ってたのに……」

月「……冗談で言ったつもりだったんだけどね」

係員「――では次の二名様、どうぞ」

月「あ、はい。じゃあ行こうか。春香ちゃん」

春香「は、はいっ!」

海砂「いってら~」

清美「お気を付けて」

月「ありがとうございます。海砂さん。高田さん」

春香「うぅ……行ってきまふ……」



792:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/30(月) 00:25:52.90 ID:2EPnu4ik0

(お化け屋敷内の順路を進んでいる美希とL)

美希「わー。真っ暗なの」

L「怖くありませんか?」

美希「うん。ミキはこういうのは結構大丈夫なの。貴音とかは苦手みたいだけどね」

L「四条さんがですか? なんか意外ですね」

美希「うん。貴音はああ見えて結構かわいいところが……」

(突然、美希とLの前に上から骸骨の人形が落ちてくる)

美希「きゃっ!」

L「!」

(咄嗟にLの腕にしがみつく美希)

美希「……び、びっくりしたの」

L「流石に今みたいなのには驚くんですね」

美希「まあ……ああいうビックリ系はまたちょっと違うの」

L「なるほど」

美希「…………」

L「ところで美希さん」

美希「? 何?」

L「胸が当たってます」

美希「!」

 バシンッ

(反射的にLの頭をはたき、Lから身体を離す美希)

L「……痛いですよ」

美希「竜崎が変な事言うからなの」

L「すみません。ですが……」

美希「?」

L「非常に良い感触でした」

美希「――――」

 ズビシッ

(Lのふくらはぎにローキックをかます美希)

L「……痛いですよ」

美希「ミキキックなの」

L「……自分から当てといて」

美希「当てたんじゃなくて当たっただけなの!」

L「当たっただけなら怒るのは理不尽だと思いますが」

美希「むぅ……それでも女の子にとっては大事な事なの! 竜崎はちょっとデリカシーが無さすぎるって思うな」

L「すみません」

美希「……まあ分かればいいの。今回だけは許してあげるの」

L「ありがとうございます」

美希「…………」

L「…………」



793:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/30(月) 00:31:16.79 ID:2EPnu4ik0

L「……ところで、美希さん」

美希「何?」

L「美希さんは恋をしたことはありますか?」

美希「へ? 恋?」

L「はい」

美希「……ノーコメントなの」

L「無いんですね」

美希「ノーコメントなの!」

L「おそらくそうではないかと思っていましたが、読み通りでした」

美希「ミキを無視して勝手に話を進めないでほしいな」

L「美希さんは派手目な外見とは裏腹に純粋であり純情……俗っぽい言い方をすれば初心です」

美希「何か唐突に語り出したの」

L「おそらくは恋愛経験はおろか、男性と手を繋いだりしたこともないのでは?」

美希「……ノーコメントなの」

L「肯定の回答として受け取っておきます」

美希「もー! とにかく全部ノーコメントなの! 大体アイドルは恋愛禁止なんだから、そういう質問すること自体マナー違反だって思うな!」

L「それもそうですね。どうもすみません」

美希「大体竜崎が好きなのは春香でしょ? なんでミキの恋愛経験なんか気にするの。どうせ大したキョーミも無いくせに」

L「そんなことはないですよ? 確かに私にとって春香さんは女神にも等しい存在ですが……美希さんも含め、他の765プロのアイドルの皆さんの事も大好きですから」

美希「とうとう春香が女神になっちゃったの。まあ一応好きって言ってくれたことについては御礼を言っておくの」

L「あっ。でも好きとは言いましたが、私は美希さんとはお付き合いできませんので。そこだけはすみません」

美希「……もう一回ミキキックしようか?」

L「からかい過ぎました。ごめんなさい」

美希「分かればいいの。今回だけは許してあげるの」

L「美希さんって結構チョロいですね」

美希「聞こえてるの!」



794:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/30(月) 00:38:37.66 ID:2EPnu4ik0

L「……あ、もう出口のようですよ」

美希「本当だ。とりあえず竜崎の数々の蛮行は後で全部春香にチクることにするの」

L「いくら払えばいいんですか?」

美希「冗談なのにそんな真顔で口止め料の交渉を持ち掛けられても困るの」

L「冗談でしたか。なら良かったです」

美希「ミキの懐の広さに感謝してほしいって思うな」

L「ありがとうございます。心の底から感謝します」

美希「なんか凄まじく浅そうな心の底なの」

L「そう言われましても。……おっと、ここで終わりですね。じゃあ外に出て後ろの皆さんを待ちましょう」

美希「そうだね」

(お化け屋敷を出たLと美希)

L「…………」

L(どこまでが素でどこからが演技かの見極めは難しいが……)

L(恋愛云々のくだりについては嘘は言っていないように思える)

L(つまり天才アイドルといえど、まだ恋は知らない)

L(なら上手くすれば、星井美希も弥や高田同様、夜神月の虜に……)

L(……いや、いずれにせよもう計画の実行日は今から十三日後と決まっている。後はそれまでに気取られなければいいだけ……今は下手に動かない方が良いだろう)

L(後は、弥と高田の夜神月に対する恋心……もしそれに勘付かれたりすれば面倒だが……)

L(少なくとも今の星井美希の様子からはそれも無いだろう。彼女の恋に対する関心はまだ薄い。それに二人とも一応の演技はできている……これで気付かれるとも思えない)

美希「…………」

美希(やっぱり、あまりにも完璧過ぎる……)

美希(まるで『こんな抜けた人間がLのはずが無いですよ』と言わんばかりの演技をしているような……そんな気がしてならないの)

美希(でもまだ、確証といえるレベルではない)

美希(あと一歩。あと一歩なのに……『彼がLだ』とする確証まで……届かない)

L・美希「…………」



796:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/30(月) 00:51:41.48 ID:2EPnu4ik0

(お化け屋敷内の順路を進んでいる春香と月)

(春香は屋敷内の仕掛けが発動する度に驚いており、いつの間にか月の腕にしがみつく形になっている)

春香「きゃっ! こ……こんにゃく? びっくりしたぁ……」

月「へぇ。結構手が込んでるんだね」

春香「ら、ライトさんは怖くないんですか? こういうの……」

月「まあ、いきなり飛び出してきたりするのは多少びっくりするけどね。ホラー系自体は別に苦手じゃないかな」

春香「……そうなんですね。ライトさんって、何か苦手な物とか無いんですか?」

月「うーん、苦手な物か……特には無いかな」

春香「そうですか……流石は天下無敵のイケメン主席東大生様ですね……」

月「……今日の春香ちゃん、なんか時々おかしくない?」

春香「そっ、そんなことないですよ? まあ久々のオフだからちょっとテンション上がってるっていうのはあるかもしれないですけど!」

月「そう? それならいいけど……」

月「…………」

月(今は限り無く素に近い状態だな。僕に好意があるように振る舞う風でも無い)

月(そしてこの様子を見る限り……やはり現状、天海春香が僕や竜崎を特に強く疑っているとは思えない)

月(無論、父の事があるから完全に無視はできないだろうが……)

月(今はそれよりも、20日後に迫ったアリーナライブの事で頭がいっぱいってところだろう)

春香(あー、なんか楽しいなー。ふふっ。あ、でもそういえば清美さんはライトさんの事好きなんだよね……気を利かせてペア代わってあげればよかったかな? いや、でもそんなことしたら流石にバレバレか……)






(春香と月の数メートル後ろで、お化け屋敷内の順路を進んでいる海砂と清美)

海砂「きゃあっ!」ガシッ

清美「ちょっ! み、海砂さん? これ、ただのこんにゃくですよ……」

海砂「うぅ……怖い……ここまでガチで怖いやつだったなんて思ってなかったよぉ……清美ちゃん……ミサを置いてかないでぇ……」ガタガタ

清美「……はいはい。置いて行きませんから。それにもうすぐ出口ですよ」

海砂「えっ! 本当!?」

清美「いえ。適当ですけど」

海砂「台無し!」

清美「まあどのみちそう遠くはないでしょう。ほら、行きますよ」

海砂「うぅ……」

清美(夜神くんと竜崎さんはどんな感じなのかしら? 二人の様子を上手く観察できているといいけど……)

海砂(ちょっとマジで怖いんですけど……うぅ……こんな事なら打ち合わせの時、別のアトラクション提案すればよかった……)



797:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/30(月) 00:58:31.53 ID:2EPnu4ik0

(お化け屋敷を出たところで合流した六人)

月「皆、お疲れ様。見た感じ、そこまで怖かったという人はいないようだね。……一人を除いて」

海砂「……わ、悪かったわね。言い出しっぺが一番怖がってて……」

美希「あはっ。海砂ちゃんまだちょっと涙目でかわいいの。よしよしなの」

海砂「うぅ……五歳下の子によしよしされる私って……」

L「ミサさんの醜態はさておき、あまり時間も無いので次のアトラクションに行きませんか?」

月「そうだな」

海砂「醜態って……ひどっ」

清美「次はどこに行くんですか? 海砂さん」

海砂「よ……よし。じゃあ気を取り直して……次は~……ここです! じゃん! 巨大迷路!」

美希・春香「!」

L「迷路……ですか」

海砂「まあ、折角東大生様が二人もいることですし? ちょっと頭脳系のアトラクションがあってもいいかなって思ってね」

月「頭脳ってほどでもなさそうだが……まあ、面白そうではあるな」

清美「……東大生って関係あるのかしら?」

海砂「いや、そんな真面目に考え込まれても……ノリよ、ノリ。清美ちゃん」

春香「あっ。そういえば私、前に出たバラエティ番組で似たようなのやったことあります」

月「そうなの?」

春香「はい。メインの出演者は芸人さんだったんですけど、アイドル枠みたいな感じで私も呼ばれて」

美希「あー、春香はアイドルの中の芸人枠だもんね」

春香「いや違うからね!? 普通のアイドルだからね私!?」

L「では早速ペア決めですね。今度こそ春香さんは私と……」

海砂「はーい皆。グーチョキパーするよー」

L「…………」

月「元気出せよ。竜崎」ポン

L「……ありがとうございます。月くん」



798:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/30(月) 01:28:02.94 ID:2EPnu4ik0

(ペア決めのグーチョキパーの結果、春香とL、美希と月、海砂と清美がそれぞれペアとなった)

L「……春香さん」

春香「よ、よろしくお願いしますね。竜崎さん」

L「私はもう今日死んでも」

春香「だからその死にネタやめてくださいってば!」

月「……念願叶って良かったな。竜崎」

L「ありがとうございます。月くん」

美希「あ、でもまた海砂ちゃんと高田さんのペアになっちゃったね」

海砂「あー、そういえば」

春香「決め直します?」

清美「そうね……でも……」チラッ

L「……決め直すんですか? 春香さん」ズイッ

(春香の眼前に迫るL)

春香「あ、いや……えぇっと……」

海砂「……このままでいきましょ」

清美「……そうですね」

美希「なの」

L「このままだそうです。というわけで改めてよろしくお願いします。春香さん」

春香「は、はい。よろしくお願いします。竜崎さん」

月「…………」

月(さっきと同じ『グーチョキパー』でのペア決め……今回は三回目で確定した)

月(今日は運も良い。もしお化け屋敷の時が『竜崎・天海春香』のペアで、今回が『竜崎・星井美希』のペアだったら……今の状況では、ミサか高田が適当に理由を付けて二回連続となる『ミサ・高田』のペアを維持しなければならなかった。しかし実際には『竜崎・天海春香』が今回のペアとなったことで、決め直しを拒む竜崎の言動が至極自然なものとなった……これなら不審に思われる余地は全く無い)

月(そしてこの組み合わせは……これまで星井美希とはあまり接触していなかった僕にとっても、彼女の様子を直接観察できる絶好の機会となる)

美希「よろしくね。ライトくん」

月「ああ。よろしく。星井さん」

美希「ミキでいいよ。春香のことも下の名前で呼んでるでしょ? それにミキも勝手に『ライトくん』って呼んでるし」

月「分かった。じゃあよろしくね。美希ちゃん」

美希「はいなの」

美希「…………」

美希(夜神月……彼がLとは考え難いけど、彼も竜崎同様、捜査本部に居る人間であることはほぼ間違い無い……)

美希(つまり彼もLにつながっている人間という事。だからもしここでミキが何かボロを出せばそれが即Lにも伝わる)

美希(万に一つも……下手を打つわけにはいかないの)

月(お手並拝見といくか……星井美希)

美希・月「…………」



805:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/05(日) 23:45:27.38 ID:Ruc1O12z0

(巨大迷路のスタート地点)

月「スタート地点からは三つのルートに分岐しているみたいだから……それぞれ別々のルートで行こうか」

L「そうですね。では私と春香さんは左側のルートにしましょうか。いいですか? 春香さん」

春香「はい! 私、こういうのあんまり得意じゃないんで……竜崎さんにお任せします」

L「お任せされました」

海砂「私達はどうする? 清美ちゃん」

清美「どこでもいいんじゃないですか?」

海砂「そんなどうでもよさそうに……んじゃ、ミサ達は右側のルートで」

美希「じゃあミキ達は真ん中のルートだね。ライトくん」

月「よし。じゃあ、それぞれゴールを目指して出発しよう」

春香「競争ですね、競争!」

月「競争は良いけど、走って転ばないようにね。春香ちゃん」

春香「は、走りませんよ! そんな子どもじゃないんだから……」

L「大丈夫ですよ。春香さんが転んでも私が必ず抱き止めますから」

春香「りゅ、竜崎さん……」

海砂「竜崎さん、むしろ春香ちゃんに転んでほしいって思ってない?」

L「…………そんなことはないです」

海砂「間」

清美「ほら、行きますよ。海砂さん」

海砂「あぁっ! ま、待って! 清美ちゃん!」

L「では私達も行きましょうか。春香さん」

春香「はーい」

月「僕達も行こう。美希ちゃん」

美希「はいなの」

月「…………」



806:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/05(日) 23:51:10.54 ID:Ruc1O12z0

(巨大迷路を進んでいる月と美希)

月「結構複雑だね。この迷路」

美希「うん。もう既に今どの辺に居るのかよく分からなくなってるの。次にどっちに行けばいいのかもさっぱりなの」

月「そうだな……多分、次は……こっちかな?」

美希「ライトくん。よくぱっぱって判断できるね」

月「まあほとんど勘だけどね」

美希「でもライトくんが選んだ道なら合ってそうな気がするの。何と言っても東大生だし」

月「それ、海砂さんも言ってたけど本当に関係無いと思うよ……」

美希「そういえば、全然話変わるけど……ライトくんは好きなアイドルとかいないの? 765プロ以外も含めて」

月「うーん。もちろん、こうやってよく会ってる美希ちゃんや春香ちゃん、あと家庭教師で教えてるやよいちゃんなんかは個人的に応援してるつもりだけど……竜崎が春香ちゃんに抱いているような……ああいうファン特有の熱情みたいなのはちょっと無いかな」

美希「えー。じゃあライトくんはミキや春香のファンじゃないんだね……」

月「……いや、応援してるのは間違い無いからファンはファンで良いと思うんだけど……」

美希「むー。でもミキ的には、もっとこう、アツい気持ちを持ってほしいって思うな」

月「そう言われてもな……」

美希「あはは。なんてね。大丈夫。ミキ、ちゃんとわかってるの。ライトくんはどう見てもそういうタイプじゃないもんね」

月「……分かってるならからかうなよ」

美希「ごめんなさいなの。でも応援してくれてるのはすっごく嬉しいよ? それと今度のアリーナライブも、粧裕ちゃんの保護者役とはいえ、観に来てくれるのは嬉しいし」

月「ああ。ライブは僕もすごく楽しみだよ。もちろん粧裕の付き添いっていうのもあるけど、それを抜きにしてもね」

美希「えへへ。そう言ってもらえると嬉しいな。ミキ、一生懸命頑張るね」

月「うん。期待してるよ」

月「…………」



807:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/06(月) 00:03:54.16 ID:zoZxJUzL0

月(こうして見ていると、本当にただのアイドル……いや、顔立ちの整ったごく普通の女子高生にしか見えないな)

月(だが彼女はキラ……この屈託の無い笑顔の裏には、神を気取って犯罪者を裁き、世の中を正そうとする稚拙な正義心が隠されている)

月(ただそうは言っても、キラの能力の正体が確定していない以上、この場でそれを暴くことなどはできないし……また彼女も天海春香同様、女優としての演技力にも定評のあるアイドル……不用意にボロを出すようなこともまずないだろう)

月(しかし気になるのは……今朝ここに来る前に竜崎から聞いた、竜崎の椅子の座り方の件)

月(星井美希が本当にそこまで考えた上で竜崎を星井係長と対面させたのだとしたら大したものだが……しかしそうだとすると、彼女は竜崎が捜査本部の関係者であることについてはほぼ確信を抱いていることになる)

月(そうなると、竜崎と話を合わせていた僕も当然疑われていることになる。それに父の事もある。加えて僕が将来警察志望だということも既に知られている……)

月(だが現状、僕も竜崎もまだ生きている……殺せば足がつくからか? それとも……)

月(キラ……星井美希はこれまで、前任のプロデューサーとクラスメイトの男子を除けば、犯罪者以外……それも、悪意をもって人を殺した者以外は殺していない)

月(最初期に殺した犯罪者以外の二人については、キラの能力――僕達の推理を前提にするならば、ノートの効力――を試すために、身近な人間……それも、彼女が少なからず嫌っていた人間の名前を書いた可能性が高いと考えられる)

月(星井美希がどういう経緯でノートを手に入れたのかは分からないが……もし何者かから譲渡を受け、『これは名前を書くだけで人を殺せるノートだ』などと説明を受けたのだとしても……常識的に考えて、俄かには信じ難いだろう)

月(むしろ『そんなことあるはずが無い』と考える方が普通だ。だからこそ、何の気無しに……身近にいた自分の嫌いな人間――自分に日常的にセクハラをしてくるプロデューサー――の名前を書いた)

月(でも一人だけなら偶然という事もある。ゆえに、その翌日にはたまたま生中継で報道されていた、人質を取って立て篭もっていた新宿の通り魔を殺し……)

月(さらにその翌日には、常日頃から自分に卑猥な言動を浴びせていたクラスメイトの男子をも殺害した)

月(だがおそらく、ノートの効力自体は最初の二人を殺した時点でほぼ確信していたはずだ。そう考えると、三人目のクラスメイトは……『自分が人を殺してしまった』という事実に恐怖・狼狽し……半ばやけになって殺してしまったのかもしれない)

月(そして結果的に三人もの命を奪ってしまった星井美希は、自身の精神の安定を求めるべく……自己の行為を正当化した)

月(たとえばそう、『世の中には死んだ方が良い人間がいる。だからそいつらを殺すことは正義であり、それが社会に生きる善良な人達にとっての救済となる』……などと考えて)

月(……大方、自己正当化の思考過程はこんなところだろう。……自己正当化、自己暗示、自己欺瞞……そうして『キラ』は生まれた)

月(勿論、これらは今までの状況証拠の積み重ねから推理した結果でしかない。だがもしこの推理が正しければ……星井美希は、自責の念から逃れるために、今も自分の良心を欺きながら犯罪者を殺し続けていることになる……実に哀れな少女だ)

月(だが、たとえその本質は自己欺瞞であるとしても、星井美希が一応の信念をもって犯罪者裁きを行っているのだとすれば――つまり彼女が、『悪意をもって人を殺した者以外は殺さない』という信念を貫いているのだとすれば――それこそが、僕や竜崎がまだ殺されていない真の理由なのかもしれない)

月(そうだとすると、彼女がその信念を歪めてでも、僕や竜崎を殺さなければならないと判断したとき……それが僕達にとってのデッドライン)

月(ミサに星井美希のノートを押さえさせるのは十三日後。その時までに、星井美希によって僕と竜崎が『信念を歪めてでも殺すべき者達』と判断されるかどうか……)

月(つまりもう、未来は二択にまで絞られているといえる)

月(僕達が死ねばキラの勝ち)

月(ノートを取れれば僕達の勝ち)

月(その全ては、今日から十三日以内に……決する)

月「…………」



808:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/06(月) 00:15:53.82 ID:zoZxJUzL0

美希「…………」

美希(夜神月……こうして間近で観察していても……正直言って、底が見えない)

美希(態度や振る舞いに不自然な点が全く無いのは竜崎と同じ……そうだとすると、彼もまた『完璧過ぎる』)

美希(正直、誰がLかさえ特定できれば……いや、『竜崎がLだ』という確証さえ得られたら……竜崎を消すことで捜査本部は形骸化出来ると思っていた)

美希(そうすれば、もう誰もキラを追わなくなるだろうと)

美希(でも、『夜神月』……この人が、竜崎……Lの死を目の当たりにしてもなお、Lの遺志を受け継ぎ、キラを追い続けようとする可能性はある……かもしれない)

美希(能力は間違い無く優秀。おまけに父親は現職の刑事局長だし、本人も将来は警察志望……)

美希(……生かしておくのは危険、か……)

美希(でも竜崎一人だけならともかく、この人まで殺してしまうと……死因をどう操作しようが、キラ……ミキか春香による殺人としか考えられない)

美希(ミキ一人が捕まるだけならまだいいの。でも、春香が……春香が捕まるようなことだけは……)

美希(駄目。それだけは……それだけは絶対にダメなの)

美希(春香はトップアイドルになって、キラキラに輝いて……そうじゃなきゃ、ううん。そうならないとダメなの)

美希(……まあでも、夜神月の場合は竜崎と違って素性もはっきりしてるし、その気になればどうとでも……あんまり姑息な手は使いたくないけど、彼の家族……夜神総一郎や粧裕ちゃんを殺されたくなければ……みたいに脅迫してもいい)

美希(だとしたら、やはり……『竜崎』)

美希(彼がLだとする確証を得た上で、殺す)

美希(そしてミキはこれからもずっと犯罪者を裁き続ける。皆が笑って過ごせる世界をつくるために)

美希(それがミキの理想であり、キラとしての完全)

美希(それを邪魔するL……竜崎には、可哀想だけど消えてもらうしかないの)

美希(ごめんね。竜崎)

美希「…………」

月「さて、次は……こっちに行ってみようか」

美希「うん」

(月の指差す方向に曲がる二人)

(その瞬間、月と美希は出会い頭に二つの人影と鉢合わせた)

月「! 竜崎」

L「おや」

美希「あ。春香」

春香「美希」

月・L・美希・春香「…………」



809:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/06(月) 00:23:11.70 ID:zoZxJUzL0

(数分前・巨大迷路を進んでいるLと春香)

L「次は……こっちに行ってみましょうか」

春香「はい」

L「大丈夫ですか? 春香さん。足が疲れているようでしたら遠慮せずに言って下さい」

春香「お気遣い頂きありがとうございます。竜崎さん。でも大丈夫です。鍛えてますから! ……なーんて。えへへ……」

L「アイドルは日々レッスン、レッスンの繰り返しですもんね」

春香「はい! まあ今はライブ前だから、っていうのもあるんですけどね」

L「もう後20日ですもんね。本当に楽しみです。それに、あんなに素晴らしい席までご用意頂いて……もうなんとお礼を申し上げたらいいのか」

春香「いえいえ……私の方こそ、竜崎さんには本当に感謝していますから」

L「? 私に……ですか?」

春香「はい」

L「……すみません。私は毎日春香さんに感謝の祈りを捧げていますが……私の方が、春香さんに感謝をして頂くような何かをした覚えは残念ながら無いのですが……」

春香「か、感謝の祈りって……ああ、えっと、すみません。なんていうか、私が一方的にそう思っている、っていうだけなんですけど……」

L「…………」

春香「ほら、竜崎さん、最初にお会いした時……一年くらい前に、CDの手売りをしていた私の姿を偶然見かけて、自殺しようとしていたことも忘れて……私のファンになってくれた、って言ってくれたじゃないですか」

L「はい。私が命を繋ぎ止めた瞬間です」

春香「その話を聞いて、私……思い出したんです。元々、私はそういうアイドルになりたかったんだ、って」

L「そういうアイドル……ですか?」

春香「はい。なんというか、そういう風に……自分以外の誰かに、少しでも元気とか……ちょっとおこがましい言い方ですけど、生きる希望とか……そういうものを与えることができて……それで、少しでも多くの人を笑顔にすることができたらいいなって。そんなアイドルになりたいなって」

春香「私はずっとずっと……そう思ってたんです」

L「…………」

春香「でも最近は、お仕事もすごく忙しくなって……一人一人のファンの人とじっくり向き合うような機会もなかなか持てなくなって……もちろん、目の前のお仕事には全力で取り組んでいたんですけど、でもそのもっと根幹というか……私を、『アイドル・天海春香』を支えている根っこの部分を……ちょっと見失いかけていたのかもしれなくて」

L「…………」

春香「そんな時に、竜崎さんに出会って、私がデビューして間もない頃の話を聞かせてもらえて……私は、自分の原点を……『アイドル・天海春香』としての初心を……思い出せたような気がするんです」

L「……春香さん」

春香「それと同時に、こうも思ったんです。デビューしてから今まで……いえ、きっとデビューする前からも含めて……私が今まで出会ってきた、沢山の人達。それに経験してきた色々な出来事。それら全部が積み重なって、組み合わさって……今の『私』をつくってるんだって」

春香「それで初めて、『アイドル・天海春香』なんだって……そう思えたんです」

L「…………」

春香「そして、そう思えるようなきっかけを私に与えてくれたのは竜崎さんだから……感謝してるんです。本当に、本当に……どうもありがとうございました」ペコリ

L「……恐縮です。でも……そうですね」

L「確かに、今までの全部で……春香さんなんだと」

L「私も、そう思います」

春香「えへへ……はい! 天海春香は今までの全部で出来ています! だから、これからも―――応援、よろしくお願いしますね!」ニコッ

L「……もちろんです。春香さん。私は春香さんに人生の全てを捧げた身ですから」

春香「そ、それは流石にちょっと重いですけど……でも、そこまで言っていただけるのは本当に嬉しいです! えへへ……」

L「…………」



810:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/06(月) 00:34:43.90 ID:zoZxJUzL0

L(とても嘘をついているようには思えない……やはり天海春香は生粋のアイドル。いや、アイドルになるために生まれてきたような少女だ)

L(それに星井美希が私を疑っている可能性が高い以上、天海春香も同様に私の素性に疑問を抱いているとすれば……私は、あるいは夜神月も……とうの昔に殺されていておかしくないはず)

L(もちろん、天海春香も星井美希同様に私の事を疑っているものの、私がLであるとする確証がまだ得られていないために殺していない、という考え方も一応はできるが……)

L(天海春香は元々、犯罪者でなくとも、自分達を……765プロダクションを陥れようとする者達は容赦無く殺害していた。つまり彼女は765プロダクションに対し、それほどにまでに深く……偏執的といっていいほどの愛着を有している)

L(だとすれば……たとえ確証が得られずとも、765プロダクションそのものか、またはその仲間達に害をなしうると判断した者については……一切の例外無く排除しようと考えるはず)

L(そういう意味では、一応は凶悪犯罪者に的を絞って裁きを行っている星井美希――勿論、今は天海春香もこれに協力しているのだろうが――とは、殺すべき対象の基準が根本的に異なっていると考えた方が良いだろう)

L(そう考えると……今まさにキラとして裁きを行っている、765プロダクション所属アイドル・星井美希。……天海春香にとって、そんな彼女を捕まえようとしている“L”は……『765プロダクションの仲間に害をなしうる者』以外の何者でもない)

L(現時点で顕在化している危険度は星井美希より低いが……少しでも疑われた時点で即詰みだ)

L(いずれにせよ、紙一重……か)

L「…………」

春香「竜崎さん? どうかしましたか?」

L「……いえ。少し、次に進む道を迷っていまして……でも考えていても答えが出るわけじゃないですしね。適当に行きましょうか」

春香「はい。迷うのも迷路の醍醐味ですしね」

L「そうですね。ではこちらに行ってみましょう」

(Lの指差す方向に曲がる二人)

(その瞬間、Lと春香は出会い頭に二つの人影と鉢合わせた)

月「! 竜崎」

L「おや」

美希「あ。春香」

春香「美希」

月・L・美希・春香「…………」



820:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/12(日) 09:47:23.81 ID:GggDIy6u0

L「……まあ、ここで出会ったのも何かの縁ですし、この先は四人で一緒に行きましょうか」

月「そうだな。なんだかんだでもう半分くらいは進んだだろうし」

美希「じゃあこのまま四人でレッツゴーなの」

春香「なんかそのうち、清美さん達とも会ったりしてね」

月「…………」

月(一見、ただの偶然で出くわしたようにしか見えないこの四人……)

月(だがこれも全て―――計画通り)

月(三日前の打ち合わせの際にこの迷路を回ることを決めた後、すぐに竜崎がワタリに頼んで迷路の内部構造図を入手してくれた)

月(その後は僕と竜崎でその構造図を完全に頭に入れておき……当日はそれぞれ、予め決めていた通りの経路を歩く時間を確認しながら進むだけ。……そうして、ごく自然に見える形で予定通りの箇所で合流したというわけだ)

月(そしてこの四人で集まったことの目的は……それまでより一層、素に近い状態が出やすいであろう状況における天海春香の態度・振る舞いを観察することで、彼女が僕と竜崎に疑いを抱いていないことを確認すること)

月(女同士というのは、得てして無意識のうちに互いに対する遠慮や緊張、距離感を生じさせやすいもの……とりわけ天海春香はその傾向が強いといえる。ゆえに年上の同性であるミサや高田がいない状況の方が、天海春香がより素に近い状態となる可能性が高いだろうと考えた)

月(後は僕がこの目で天海春香の態度・振る舞いが素か演技かの見極めをするだけ……大丈夫だ。無駄に三か月も彼女の家庭教師を続けていたわけではない。この見極めは僕が誰よりも正確に行うことができる)

月(もちろん、星井美希に対してもこの場でより精緻な観察が出来ればそれに越したことはないが……僕も竜崎も、星井美希と直に接した時間はそう長くはない。素か演技かの見極めについて天海春香ほどの確実性は持てない)

月(……まあいい。今は天海春香の僕達に対する猜疑心の有無を確認することに専念しよう)

月「…………」



821:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/12(日) 09:54:46.15 ID:GggDIy6u0

春香「次はどっちですかね?」

L「右……でどうでしょうか。春香さん」

春香「はい。じゃあ、右で」

L「ありがとうございます。では皆さん、春香さんがお選びになった右の道に進みましょう」

美希「思いっきり誘導しといて『お選びになった』もないって思うな」

L「大丈夫です。春香さんは我々ファンにとっては神に等しい存在ですから。春香さんがお選びになった進路が間違っているはずがありません」

美希「話がすり替えられてるの。ていうか、神って……もう竜崎は春香教を立ち上げた方がいいんじゃないかなって思うな」

L「それは名案ですね。美希さん。礼拝は一日五回、765プロダクションの事務所の方角に向かって……」

春香「も、もう! 何の話をしてるんですか! 竜崎さん! ほら、早く行きましょ!」

L「すみません。つい熱がこもってしまいました」

月「…………」

美希「どうしたの? ライトくん」

月「ん? ああ……何でもない。早く行こう。もう今頃、海砂さん達はゴール地点に着いているかもしれないしね」

美希「なの」

月(……やはり星井美希の様子に大きな変化は見られない……が、天海春香の方は……ほんの僅かな違いでしかないが、ミサや高田がいる時よりも幾分表情が弛緩している)

月(僕が知る限り……これまで見てきた中でも、おそらく最も素に近い状態だ)

月(今のこの場における態度、振る舞い、声音……全てにおいて何の違和感も無い)

月(……信用、いや信頼している。僕を。そして竜崎を)

月(これならまず天海春香は大丈夫だろう。とするとやはり気を付けるべきは……)

春香「……ねぇ、美希。ふと思ったんだけどさ、こういう遊園地みたいな所でゲリラライブとかやったら面白そうじゃない?」

美希「あー。確かに面白そうだけど、お客さんが殺到して大混乱になっちゃうんじゃないかな」

春香「じゃあさ、仮面とかで顔隠して誰か分からないようにするとか」

美希「歌う曲でバレるんじゃないの?」

春香「そこで新曲ですよ! 新曲!」

美希「新曲を仮面ゲリラライブで初披露、それも遊園地で……か。うん。それはいいかもなの」

春香「でしょ? で、歌い終わってから、最後に皆で一斉にバッて仮面を取って正体を明かすんだけど、何故か響ちゃんだけ上手く仮面が取れなくて、結局最後まで誰か分からないまま退場するの。どう?」

美希「春香は響に恨みでもあるの」

月「…………」

月(星井美希……か)



822:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/12(日) 10:02:52.14 ID:GggDIy6u0

(迷路のゴール地点に到着した美希、春香、L、月の四人)

(同地点では既に海砂と清美が待っていた)

海砂「あ、やっと来た。……って、皆一緒?」

月「途中で偶然一緒になって。二人とも早かったんですね」

海砂「へっへー。どうやら東大生対決は清美ちゃんの勝ちみたいね」

清美「勝ちって……私達もついさっき着いたばかりじゃないですか」

海砂「勝ちは勝ちだもん」

海砂(……とか言って、ライトと竜崎は自然な形で四人で合流するために歩く時間を調整して、合流した後も美希ちゃん達を入念に観察するためにわざとゴールまでの道を遠回りすることになってたから……遅くなるのは当然なんだけどね)

清美(夜神くん達、本当に迷路の構造を完全に頭に入れた上で計画通りに歩き、かつ二人から怪しまれないよう、自然に見える形でルートを選びながら合流したのね……すごいわ)

月「さて、時間的にはもうそろそろだけど……どうします? 海砂さん」

海砂「フフフ……よく聞いてくれたわねライトくん! 今回の『竜崎と愉快な仲間達』の締めのイベントは……あれよっ!」

(園内の観覧車を指差す海砂)

春香「あ! 観覧車! いいですね!」

美希「確かに締めには丁度いいの」

海砂「でしょ? じゃあ早速行きましょ。あ、でもここの観覧車、二人用みたいだからまたグーチョキパーで三組のペアに……」

月「……ちょっと待って下さい。海砂さん」

海砂「ん? ……まさか今度はライトくんが春香ちゃんとペアになりたいとか……?」

月「いえ、そうじゃなくて。流石に観覧車となると、僕や竜崎が春香ちゃん、美希ちゃんと二人きりで乗り合わせるのはまずいと思うんです。いくら変装しているとはいっても、どこに変なゴシップ誌の記者が潜んでいるか分からない。望遠カメラですっぱ抜かれでもしたら……」

海砂「あー。それもそうね」

L「それなら一応、ミサさんも気を付けておいた方がいいでしょうね。一応」

海砂「一応言い過ぎだから。じゃあライトくんと竜崎さんはペア確定ね」

月「……あの、それなら僕達は下で待っていますので、女性陣だけで乗って来て下さい」

海砂「え? 乗らないの?」

月「いやだって、何が悲しくて男二人で観覧車に……なあ? 竜崎」

L「私は別に構いませんが」

月「…………」

L「まあでも、月くんがそう仰るなら下でアイスでも食べながら待っておきます。女性陣の皆さんはどうぞ存分に楽しんできてください」

海砂「そう? じゃあさくっと乗っちゃいますか。ねぇ、美希ちゃん一緒に乗らない? 今日まだあんまり喋ってないし」

美希「うん。いいよ」

清美「じゃあ春香ちゃんは私とね。いいかしら?」

春香「はい。もちろんです清美さん!」

海砂「じゃあ行ってくるね~お留守番よろしく!」

月「ええ。いってらっしゃい」

L「お気を付けて」

月「…………」

月(これでいい。十三日後……計画の実行予定日である7月25日は、星井美希とミサ、天海春香と高田の接触がそれぞれ肝になる。今のうち、警戒心は可能な限り緩めておいた方が良い)

L「月くんもアイス食べますか? 私は今から買いに行きますが」

月「……いや、僕はいいよ」



823:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/12(日) 10:09:07.04 ID:GggDIy6u0

(美希と海砂が乗る観覧車の中)

海砂「わー! 高い高い!」

美希「あはっ。なかなか良い眺めなの」

海砂「あー、今日は本当に楽しかった! ……でも、ごめんね美希ちゃん。ライブ前の忙しい時期なのに」

美希「ううん。ミキもすっごく楽しかったの。巡るアトラクションとか、色々考えてくれてありがとうなの。海砂ちゃん」

海砂「いやいや、全然だよ。それとチケット本当にありがとうね。ミサすごく楽しみ! あー、去年のファーストライブを思い出すな~」

美希「あ、そっか。海砂ちゃん来てくれてたんだよね。それで……」

海砂「うん。前にも言ったけど……そこで美希ちゃんのパフォーマンスを観たからこそ、今の私があるんだ」

美希「…………」

海砂「本当、あの時美希ちゃんに出会えていなかったら、私は今頃どうなっていたか……。だから、美希ちゃんには本当に感謝してるよ」

美希「……ありがとう。ミキも、去年のミキに負けないように頑張るの」

海砂「うん。頑張ってね。美希ちゃん。……でも、さらにすごいことされちゃうと、ますますミサにとって美希ちゃんが遠い存在になってしまうというジレンマが……」

美希「あはっ。大丈夫なの。海砂ちゃんすっごくカワイイし、きっとすぐ売れるようになるって思うな」

海砂「……うん。ありがとう。なんか会う度にそう言ってもらってるような気もするけど……まあでも、今は目の前のお仕事を一つ一つ着実にやっていくしかないよね」

美希「そうだね。あ、お仕事といえばライブの前にはあれもあるよね。ファッション誌の撮影」

海砂「ああ、25日のやつね」

美希「うん。久しぶりの海砂ちゃんと一緒のお仕事だから今からすっごく楽しみなの」

海砂「ミサもだよ。改めてよろしくね! 美希ちゃん」

美希「はいなの! 海砂ちゃん」

海砂「…………」



824:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/12(日) 10:16:37.40 ID:GggDIy6u0

海砂(そうだよね。美希ちゃんにしてみれば、ファッション誌の撮影なんて特別意識することもないごく普通の仕事……)

海砂(でもそこで、ミサは……)

海砂「…………」

海砂(それにしても……)

美希「わあ。もう人があんなに小さくなってるの」

海砂「本当だ。あ、いつの間にかもうすぐてっぺんだね」

美希「なの」

海砂(……本当に今、この美希ちゃんがキラとして裁きをしているのかな……全くそんな風には見えないんだけど……)

海砂(でも、元々キラとして裁きをしていたライトがそう言ってるんだから間違い無いよね。そもそもライトがミサに嘘つくはずないし)

海砂(それにミサにとっても、美希ちゃんはアイドルとしての憧れであり大事な友達……だから美希ちゃんがキラの仲間になってくれるのは大歓迎)

海砂(それに早く、ミサもライトと公然とイチャイチャできるようになりたいし)

海砂(……よーし。見ててね、ライト。ミサ、ライトの期待に応えられるよう、頑張るからね!)

美希「…………」チラッ

海砂「ん? どうかした?」

美希「ううん。なんでもないの」

美希(……海砂ちゃんは言っていた。自分の両親を殺した強盗がキラに裁かれたとき……『天にも昇る心地だった』って)

美希(『神様はちゃんと見てるんだ』……そう思った、って)

美希(海砂ちゃんだけじゃない。ネットで軽く検索しただけでも……『キラの裁きで救われた』と語る人達のサイトはごまんと出てくる)

美希(そういった人達にとって『キラ』は神であり正義。それはもう揺るぎない事実)

美希(ミキは別に神様になりたいわけじゃない。ミキのしていることが絶対的な正義だと強弁するつもりもない)

美希(でも……この世界には、こういう人達がまだまだ沢山いる。心無い犯罪者によって家族や恋人、友人の命を奪われ……しかし法律によっては救われず、今なお苦しんでいる人達)

美希(だからミキはこういう人達を救う。もうこんな悲しい想いをする人達をいなくする。そして皆がいつも笑顔で……心の底から楽しく過ごすことのできる、そんな理想の世界をつくる)

美希(だからまだ『キラ』は止まるわけにはいかないの)

美希(キラの……いや、この世界に生きる人達皆の……理想の世界を実現する、その日まで)

美希「…………」



825:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/12(日) 10:19:50.00 ID:GggDIy6u0

(春香と清美が乗る観覧車の中)

春香「わー! すごいですね! 清美さん! もうこんなに高いところまで……」

清美「ふふっ」

春香「? 清美さん?」

清美「あ、いえ……ごめんなさい。春香ちゃんが、その……子どものようにはしゃいでいるのを見て、つい」

春香「あぅ……す、すみません……」

清美「いいのよ。どうせここは空の上……私達の他には誰もいないわ」

春香「清美さん……」

清美「ね?」

春香「意外にポエミーなんですね」

清美「そ、そこ?」

春香「あはは。すみません。……あ、でもすみませんといえば……もう一つ」

清美「? 何かしら?」

春香「えっと、その……ごめんなさい。今日のこの集まり、私と美希の都合でお昼過ぎからの短い時間になってしまって……清美さん、今日はまだあんまりライトさんと話せていないのに、もう時間が……」

清美「ああ。それはもういいのよ」

春香「え?」

清美「それよりもライブのチケット、本当にありがとう。私、今までライブになんて行ったことが無かったから、とても楽しみだわ」

春香「あっ、は、はい。そうなんですね。私、一生懸命頑張りますので! よろしくお願いします!」

清美「ええ。頑張ってね」

春香「はい!」

春香「…………」

春香(『もういい』ってどういう意味なんだろう……?)

春香(はっ! ま、まさか清美さん……)

春香(もしかして、ライトさんにフラれちゃったのかな……?)

春香(だとしたら私、なんて空気の読めない発言を……!)

清美「……どうしたの? 何か思い詰めたような顔して」

春香「いっ、いえ! 何でもございません!」

清美「そう? ならいいけど」

春香「あ、あはは……」



826:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/12(日) 10:29:36.33 ID:GggDIy6u0

春香(と、とにかく話題を変えないと……)

春香「あ、そういえば……お誘いいただきありがとうございました。クッキングスクールの体験入門」

清美「ええ、こちらこそ付き合ってくれてありがとう。でもあれ、ライブの一週間前くらいだったけど……本当に良かったの? それも二日連続……」

春香「大丈夫ですよ! ライブが近いって言っても適度な休息は必要ですし……それに直前に根を詰め過ぎて、ライブ当日に疲れが溜まっちゃったら元も子も無いですから」

清美「そう。それなら良かった。楽しみにしてるわね」

春香「はい! 私も楽しみです! あ、そうだ。ちなみにその二日間、美希は海砂さんと一緒にファッション誌の撮影なんですよ」

清美「あら。そうなの?」

春香「はい。美希と海砂さん、前にも一度テレビCMで共演してて……それが評判良かったから、また共演することになったみたいです。正直、今度は私がやりたかったんですけどねー……海砂さんとの共演」

清美「……じゃあクッキングスクールも、本当は私じゃなくて海砂さんと一緒に行きたかったかしら? 春香ちゃんとしては」

春香「い、いえ! 決してそういう意味では」

清美「ふふっ、冗談よ」

春香「も……もう! 清美さんってば!」

清美「…………」

清美(やはりこの子がキラの裁きをしているとは……ちょっと思えないわね。まあそれは星井さんも同じだけど……)

清美(それにしてもこの子は純粋だわ。これなら夜神くんがキラとして行っていた犯罪者裁きに共感し、同調したとしても不思議ではない)

清美(今は騙しているようで少し心苦しいけれど……夜神くんが無事にキラの力を取り戻すことができれば、この二人も晴れて私達の仲間となるわけだし……それまでの辛抱ね)

清美(そしてやがて完成する。キラの……夜神くんの創造する、心優しい人間だけの世界)

清美(夜神くんはその世界の神に……そして私は女神になる)

春香「…………」

春香(うぅ……まずいこと言っちゃったかなぁ。でも清美さんもライトさんも普通に見えたし、私の一方的な勘違いなのかもしれないけど……)

春香(まあ、これ以上考えても仕方ないか。とりあえず今後、この話題は出さないようにしよう)

清美「……そろそろ、私達が一番上になるわね」

春香「あ、本当ですね! わぁ、良い眺め~」



827:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/12(日) 10:45:07.39 ID:GggDIy6u0

(観覧車の入場口の傍にあるベンチに並んで座っているLと月)

(Lは棒付きのアイスを食べており、月は缶コーヒーを飲んでいる)

L「……で、どうでしたか? 月くん。今日、二人を直に観察してみて」

月「そうだな。やはりというべきか……天海春香の方は僕達の事を疑っている気配は無い。特に迷路の後半、四人で行動していた時がおそらく最も素に近い状態だったと思うが……僕達の事を信頼しているようにしか見えなかった」

L「やはりそうでしたか。また特に月くんに好意があるような素振りも見せていませんでしたね」

月「ああ。今はアリーナライブが彼女にとっての最優先事項だからな。そのような些細な演技をすることまで気が回っていなかったと考えられる」

L「であれば目下、我々が警戒するべきは……」

月「星井美希……だな」

L「はい」

月「僕は今日、初めて彼女と二人きりで話したが……どうも掴みづらいというか、底が見えづらい印象を持ったよ。流石に三か月間も家庭教師をしている天海春香と同じようにはいかないな」

L「無理もありません。私もまだ星井美希については測りかねている部分があります。ただ、今朝お伝えした件ですが……」

月「ああ。……今もしている、その座り方の件だな」

L「はい。これは私の失敗でした。もし最悪の可能性を前提にするなら……星井美希は、既に私達がキラ事件の捜査本部に居る者達であるということに気付いていることになります」

月「さらに踏み込んで考えれば、僕と竜崎のいずれかがLであるというところにまで予測が及んでいてもおかしくはないな」

L「そうですね。ただそう考えた場合、月くんは素性がはっきりし過ぎていますから……普通に考えて私の方が疑われやすいと思います」

月「確かに。だが星井美希が『Lである可能性がある者は全て排除する』と考えた場合は同じ事だ。どのみち僕も助からない」

L「はい。しかしその考えを採るなら、私も月くんもとっくにこの世にいないはずですから……おそらく星井美希はLが誰なのかを特定し、かつその確証を得た上でLだけを殺すつもりなのでしょう」

月「そうだな。そして殺すとしても死因は心臓麻痺ではなく事故死や自殺とする……そうすれば捜査本部としても必ずしもキラによる犯行とは断定できない」

L「しかし残された捜査本部のメンバーに対しては事実上の抑止力になる。それを見越してのLの殺害……」

月「ああ。普通の人間なら『Lでさえ命を落としたのだから、次は自分かもしれない』などと考え……捜査をそれ以上進めることに躊躇してもおかしくはないからな」

L「はい。……なので月くん。これまで何回も言ってきましたが、その時は月くんがLの名を……」

月「……竜崎。それはあくまでも『Lがキラに殺されたら』の話だ。そしてその仮定は現実のものとはならない。キラとの勝負は今日から十三日後に決する。そうだろう?」

L「……はい。そうですね。しかしだからこそ、この十三日間が勝負になります。幸いにも、まだ星井美希は我々……いえ、もう私に絞っていいと思いますが……私がLであるとの確証は得ていない。繰り返しますが、今もこうして私が生きていることがその証左となるからです。ですが逆に、その確証さえ得られたらすぐにでも私を殺害する腹でしょう」



828:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/12(日) 10:50:09.71 ID:GggDIy6u0

月「つまり、僕達がノートを押さえるのが先か……」

L「星井美希が私がLであるとの確証を得るのが先か……」

月「その勝負というわけだな」

L「はい」

月「でも勝算はあるんだろう? 前にも『正義は必ず勝つ』と言っていたわけだし」

L「そうですね。……ただ実のところ、私は自分のしていることが絶対的な正義だとまでは思っていないんですよ」

月「……正義か悪かなんて、所詮相対的な問題だからな。言い方が違うだけとも言えるが」

L「そうなんです。キラ自身は勿論、キラを支持し、崇拝している者達から見れば……キラこそが正義であり、そのキラを捕まえようとしている私は間違い無く悪です」

月「…………」

L「ですから私は、自分が信じた正義を貫くこと……それこそが真の正義なのだと考え、行動しています」

月「そうだな。キラは大量殺人犯……悪。それも事実。そのキラを支持している人間も多い。それも事実……」

L「…………」

月「だがキラが悪か正義かなんて僕達が考える事じゃない。そんな事は世間や思想家にやらせておけばいい」

L「…………」

月「正義……悪……結果が全てになるくらいに考えるべきだ。キラを捕まえればキラは悪。キラが世界を支配すればキラは正義。……今、僕達に言えるのはそんな事くらいだろう」

L「そうですね。そしてキラを捕まえることが今の我々の正義……それもまた間違いの無いことです」

月「ああ。そうだな。竜崎」

L「…………」



829:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/12(日) 10:57:30.44 ID:GggDIy6u0

L「……ところで、月くん」

月「? 何だ?」

L「前々から、少し月くんに聞いてみたいことがあったんですが……今、聞いてもいいですか?」

月「構わないよ。何?」

L「月くんはキラをどう思っていますか?」

月「キラを? ……今の正義か悪か、の話ではなくか?」

L「はい。キラが正義か悪かは我々が考える事ではありません。それは今月くんが言ったとおりだと思います。ですのでそれとは別に、月くん個人としてはキラをどう考えているのか、ということをお聞きしたいんです」

月「僕個人として?」

L「はい。別に正義だの悪だのというカテゴライズをしていただく必要もありません。今の立場を離れた、月くんの率直な考えが知りたいんです」

月「一応聞くが……何のために?」

L「好奇心です」

月「…………」

L「後は、キラ事件の後も月くんにはお世話になることがあろうかと思いますので……月くん個人の考え方というものを理解しておきたいという気持ちもあります」

月「……分かった。それなら話そう。あくまでも僕個人としての考え、という前提でだが」

L「ありがとうございます。よろしくお願いします」

月「そうだな……『犯罪者を裁き、善良な人間だけの世界を作る』……おそらくキラの考えはそんなところだろうが……僕個人としては、正直分からなくはない」

L「と、言いますと?」

月「僕も犯罪者の報道を目にする度、『こんな奴は死んだ方が世の中のためだ』と考えることは少なくない。しかしそういう者達が皆、須らく極刑を下されるわけではない……そこに司法の限界を感じることもある」

L「…………」

月「他方、キラはこれまで、悪意をもって人を殺した者に対してはほぼ例外無く裁きを行っている……もし僕がキラなら同じ裁き方をするだろう」

月「そういう意味では、キラの考えは分からないではない……ただ、そうであるからといって、キラの殺人が正当化されるわけでは勿論ない。法律上は言うまでもなく、僕の中でもね」

L「…………」

月「だから僕はキラを捕まえる。それが僕にとっての正義だ」

L「……ありがとうございます。月くんの考えが大変よく分かりました」

月「もういいのか?」

L「はい。今の発言で、月くんがキラではないと確信できましたので」

月「……僕がキラだって?」

L「はい。すみません。実はちょっとだけ疑ってたんです」

月「…………」

L「でももし月くんがキラなら、今のように『もし自分がキラなら』などという仮定の話をLである私にするはずがない……よって月くんがキラではないと確信できました」

月「……試していたのか? 『僕の考えを理解したい』とか言っておいて……」

L「いえ。その気持ちも本当です。月くんが大学を卒業して警察に入れば、きっと私とは長い付き合いになると思いますので」

月「でも、僕がキラかどうかを確かめたい気持ちもあった……いやむしろ、そっちの方がメインだったんだろ?」

L「それはまあ……はい。すみません」

月「…………」



830:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/12(日) 11:09:30.70 ID:GggDIy6u0

月「……最初に大学で会った時に『僕がキラである可能性は0.01%未満』と言っていたが……じゃああれは嘘だったのか?」

L「いえ、あの時は本当にそれくらいにしか思っていませんでした。ただこうして一緒に捜査をしているうち、月くんがキラ事件に対し適切な事を言い過ぎるので、いつしか『もし月くんがキラだったら』という空恐ろしい想像が脳裏を掠めるようになっていたんです」

月「…………」

L「もし月くんがキラだったら、星井美希や天海春香よりも遥かに手強い相手になる……だからこそ、その可能性を私の中で完全に否定しておきたかったんです」

月「……僕がキラなら捜査本部の情報は筒抜けだしな。それに今、星井美希が欲してやまない『竜崎がLである』という確証も既に得ている」

L「はい。その通りです」

月「ただ僕は竜崎の本名は知らない。だからまだ殺すことはできないが……もしその点さえクリア出来れば、竜崎……Lを殺し、Lの座を奪った上でのキラになることも可能」

L「! …………」

月「もし僕が……夜神月がキラならそう考える。それに竜崎自身、『自分が死んだらLの名を継いでほしい』と僕に言っていたしね。そうなれば……Lと同等の地位を得て警察等も自由に動かせる立場にあり、裏ではキラ……最強だな」

L「……すごいですね。それは私が想像していた中でも最悪のパターンです。よくそこまで正確に……」

月「伊達に三か月も一緒に捜査していない。これくらいは容易に想像がつくよ」

L「流石ですね。そしてまた今の考えを私に話してくれたことで、月くんがキラであるという可能性は私の中で完全にゼロになりました」

月「僕がキラならそんな計画を竜崎の前でばらすはずがないからな」

L「はい。試すようなことをしてすみませんでした」

月「いや、いいよ。僕も僅かとはいえ、自分への疑いがあったのならそれを解消できて何よりだ」

L「はい。しかし本当に……月くんがキラでなくて良かったです。もし月くんがキラだったら、こんなに早くはキラ容疑者として特定できなかったと思いますしね」

月「……それは褒め言葉として受け取っておけばいいのかな」

L「勿論です」

月「まあ確かに……僕がキラなら、少なくとも自分の足取りにつながるような身近な人間は殺さないだろうしね。ノートの効力を試すにしても、無関係な第三者を事故死か何かで殺すだろう」

L「ノートそのものはどうしますか? 星井美希のように常に携帯しておくのも一つの自衛手段だとは思いますが……」

月「……そうだな。確かに常に携帯しておけば第三者に盗まれたりするリスクは低減できる……が、だからといって万全というわけでもない。どうしても物理的にノートから離れざるを得ない状況は生まれるし、そこを狙われたら一巻の終わりだ。現に今、僕達がそうしようとしているようにね」

L「では……どこかに隠しておきますか? 第三者に容易には発見されないような場所に」

月「そうだな……ただ隠すにしても、出し入れに手間が掛かるような場所は逆効果だ。裁きは毎日行うわけだし、もしノート本体から切り取ったページや切れ端に名前を書いても効果があるのだとしても……定期的にはノート本体を取り出す必要があるだろう。その隙を狙われる危険が増加するのであれば意味が無い」

L「切り取ったページや切れ端……ですか。なるほど、その可能性は想定していませんでした。しかしそうなると、第三者に容易には発見されず……それでいて所持者本人は簡単に取り出すことのできる場所でなければならないということですね」

月「そういうことになる。取り出すのに手間と時間が掛かれば掛かるほど、その分第三者に見つかる隙が大きくなり、必然的にノート発見の危険も高まるからね。だからもし僕がノートを隠すとしたら……そうだな。自分の机の引き出しを二重底にしてその隙間に入れ……決まった手順で取り出さなければ引き出しごと発火するような装置を作る……とかかな」

L「……なるほど。二重底であれば一見しては分からないし……万が一それを怪しむ者がいたとしても、その者が無理やりノートを引き出しから取り出そうとすると……」

月「ああ。ノートは引き出しごと燃えて灰になる。キラの証拠も消えるって寸法だ」

L「…………」

月「? 竜崎?」

L「この後念の為、月くんの部屋の机を調べさせてもらってもいいですか」

月「……お前な」

L「冗談です」

月「全く。まあ別にいくら調べてもらっても構わないが……」

L「大丈夫です。今の発言でまた月くんがキラである可能性は減りましたので」

月「……さっきの時点で既にゼロになっていたんじゃなかったのか?」

L「では……マイナスという事で」

月「適当だな……」



831:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/12(日) 11:26:41.50 ID:GggDIy6u0

月「……そういえば、竜崎。星井美希関連で一つ気になっていることがあるんだが……」

L「はい。何でしょう」

月「前に聞いた、監視カメラ設置の件だが……その監視期間中、星井美希にはキラとしての行動は全く見られなかったんだよな?」

L「はい。何も」

月「なので、その間の犯罪者裁きは星井美希に代わって天海春香が行っていたと考えられる……ここまでは分かる。解せないのは……」

L「……何故、星井美希はカメラの設置に気付くことができたのか……ですか?」

月「そうだ。どうしてもそこだけが引っ掛かる」

L「確かに、私もその点はずっと気になっていましたが……現時点では漠然とした推測しかできないところですね」

月「…………」

L「星井美希は天才気質のアイドル……何か第六感のような力が働いて勘付いたのかもしれませんし……それにカメラの設置自体には気付けなくとも、その可能性を予測しての行動だったとも考えられます」

月「…………」

L「カメラを設置したのは、時期的には夜神さんと模木さんに765プロダクション関係者への聞き取り調査を行って頂いた日から十日後でしたから……聞き取りによって、自身に捜査の手が及んでいる、あるいは及ぶことを察知して……自発的に対策を講じたのかもしれません」

L「いずれにせよ、星井美希のキラとしての証拠は自室へのカメラの設置では見つけられないと考えた方が良いと思います。再度取り付けたところでボロは出さないでしょうし、カメラの方が先に見つけられてしまうでしょう」

月「それはまあ……そうだな」

L「ですが、星井美希自身が全く想定も想像もしていない場面でノートの現物を押さえることができれば……それがキラとしての証拠となる。そう考えた上で今回……十三日後に我々が実行するのが例の計画です」

月「……ああ。それは勿論分かっているよ」

月「…………」

月(竜崎はノートさえ押さえてしまえばそれで良しとする考え……確かにそれは僕も同じ考えだ)

月(ノートが殺人の道具だと特定出来れば、当然それを所持していた星井美希はキラ……そして星井美希との間でノートの受け渡しを行っていた天海春香もキラの共犯)

月(その他の状況証拠も揃っているしそれで終わりだろう)

月(だがそれはそれとしてもやはり気になるな……星井美希のキラとしての行動が何故監視に引っ掛からなかったのか……)

月(やはり竜崎の言うようにカメラ設置の可能性を疑っていたからなのか? いや、だが……)

月(監視が終わってから二日後に、天海春香は星井美希から預かっていたとおぼしきノートを星井美希に返している。南空ナオミが目撃したのがそれだとすると……)

月(……やはり変だ。竜崎の言うように、聞き取り調査があったことからカメラの設置自体は予測できたとしても……撤去のタイミングまで予測できるとは思えない。しかし天海春香がノートを返したタイミングは星井美希がカメラの撤去に気付いたからとしか思えない……)

月「…………」

月(また竜崎から聞いた話によると、星井美希の部屋に付けられていたカメラの数は全部で64個にも及んだとの事)

月(つまり、星井美希がカメラの撤去に気付くことができたのだとしたら……必然的に、64個全てのカメラの位置を撤去前に把握していたということになる)

月(しかし、星井美希の監視映像は僕も全て見せてもらったが……彼女がカメラを探すような行動などは全く映っていなかった)

月(そうだとすると、星井美希は監視映像に全く映ることのない方法で、カメラの位置を全て探り当てていたということになるが……)

月(……無理だ。そんな方法などあるはずが無い)

月(64個ものカメラのどれにも映ることなくその全てを見つけることなど……人間には不可能だ)

月「…………」



832:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/12(日) 11:51:16.78 ID:GggDIy6u0

月(人間……か)

月(『名前を書くと書かれた人間が死ぬノート』『顔を見れば名前が分かる能力』……この時点で既に僕達人間の常識など超えているともいえる)

月(ならば次は……『監視カメラを探さなくても見つけられる能力』……か?)

月(いや、そんな都合の良い能力なんて……)

月(……待てよ。『ノートに名前を書くと書かれた人間が死ぬ』として……『ノートに名前を書く行為』と『書かれた人間の死』の間をつなぐ、何か中間的な要素は無いのか?)

月(そもそもなぜ、星井美希と天海春香の二人はノートを手に入れる事ができた?)

月(ノートの効力についての僕達の推理が正しかったとして……こんな非科学的なものが都合良くその辺の道端に落ちているとも思えない。先ほども少し想像したが、何者かから譲渡を受けたとみるのが自然……)

月(もしこれが漫画か何かなら……そうだな。よくあるパターンだが……異界の者から授かるとかだろうか)

月「! …………」

月(異界の者……? そうだ。そもそも『名前を書くと書かれた人間が死ぬノート』だの『顔を見れば名前が分かる能力』だの……どう見たって異世界、異次元の類の話だ)

月(僕達が認識しえない異世界、異次元からやって来た者が、『名前を書くと書かれた人間が死ぬノート』を人間に渡す……いかにもありそうな話じゃないか)

月(ならばその異界の者は、さしずめ……そうだな。人を殺せるノートを渡すんだ。人を殺す……悪魔か死神のような存在)

月(そう考えれば……『ノートに名前を書く行為』と『書かれた人間の死』の間をつなぐものも……それかもしれない)

月(ノートに名前を書けば、その悪魔か死神……まあ人の命を奪うんだ。死神の方が適当か。その死神が対象者を殺す)

月(そしてその死神はノートを持った者にしか認知できない存在なのだとしたら……)

月(星井美希の部屋のカメラを見つけたのも、カメラに映らない、星井美希にしか認知できない死神……これならどうだ?)

月(少し都合の良すぎる考えのような気もするが……だがそうでも考えないとカメラの件は説明がつかない)

月(それに死神の概念を応用すれば、『顔を見れば名前が分かる能力』の正体も解けそうな気がする)

月(たとえば、そう。もし殺したいのに名前が分からない者がいたら……死神がその人間の名前を教えてくれる)

月(それが『顔を見れば名前が分かる能力』の正体……)

月(……いや、それは少し変か)

月(間違った名前で報道された犯罪者がすぐには裁かれなかったことから、少なくとも初期のキラは顔と名前の両方が必要だったはずだ。死神がそんな手伝いをしてくれるなら最初からしていたはず……)

月(それに……改めて考えてみると、仮に死神との契約か何かなのだとしても……死神に殺してもらう人間の名前をわざわざノートに書くというのも迂遠だな。端的に死神に『あの人間を殺せ』などと命じるほうが直截だろう)

月(だがそれならノート自体には何の意味も無いことになる……星井美希がノートを常に持ち歩いていることの説明がつかない)

月(仮に『ノートを持ち続ける』ことが死神との契約内容なのだとしても、それ自体に意味が無いノートを持たせ続けるというのは不自然だし……そもそもノートとは無関係に、第三者には姿の見えない死神が対象者を殺してくれるのなら、殺人の証拠は何も残らずキラを追うLを殺そうとする理由も無いはず……)

月(……いや、待てよ)

月(ノートを人間に渡したのが死神でも、その死神が直接人を殺すわけではないのだとしたら?)

月(やはり人が死ぬのはノート自体の能力で、死神はただそれを与えただけ。つまり『ノートに名前を書く行為』と『書かれた人間の死』の間をつなぐものは何も無い……)

月(そして『顔を見れば名前が分かる能力』も死神との契約か何かで事後的に手に入れたものだとすれば……天海春香はその契約をしたが星井美希はしなかったで一応通る……)

月(……いや、駄目だ。そうなると今度は監視カメラの説明で行き詰る)

月(『人を殺せるノートは渡すが、人を殺すための直接的な手伝いはしない』『でも部屋に仕掛けられた監視カメラは探してくれる』……)

月(……そんな都合の良い死神が存在するなんて馬鹿げている)

月(そもそもこれは『星井美希が全てのカメラの位置を把握していた』という結論を根拠付けるために後付けで考えた理屈だ。そのために仮定した死神という概念が、単にその結論にとって都合の良いだけの存在になってしまっている……それでは何の意味も無い。トートロジー……一つの結論を導くために同じ結論を言い方を変えて根拠としているだけだ)

月(そうなるとやはり、星井美希が64個ものカメラの位置をどのような方法によって把握したのか……結局、ここだけは分からないままか)

月(……まあいい。それでもノートを先に押さえさえすれば僕達の勝ちだ。その事だけは確かだ)

月(今は、それでいい)

月「…………」



833:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/12(日) 11:57:46.89 ID:GggDIy6u0

L「……どうかしましたか? 月くん」

月「え?」

L「私が変な想像をしたので怒ってるんですか?」

月「想像?」

L「さっきお話しした、もし月くんがキラだったら……という想像の話です」

月「……そんなことで怒るわけないだろう。僕が今していたのもただの想像……いや、下らない空想だ。あえて話すほどのものでもないよ」

L「? そうですか?」

月「ああ。気にしないでくれ。……あ、もう皆戻って来たみたいだな」

L「本当ですね。行きましょうか」

(ベンチから立ち上がり、観覧車の退場口から出てきた美希達四人の方へ向かうLと月)

海砂「乗って来たよーん。あー、楽しかったー。ライトくんと竜崎さんも乗ればよかったのに」

月「はは……とにかく皆さん、お疲れ様でした」

L「春香さん。大丈夫でしたか? 観覧車酔いなどしてませんか」

春香「竜崎さん。ありがとうございます。大丈夫です」

美希「観覧車酔いって」

L「美希さんにも一応聞きますが大丈夫ですか。大丈夫ですよね」

美希「だから雑なの」

清美「ではもう良い時間ですし、そろそろお開きかしら?」

海砂「そうだね。今日は皆、本当にありがとう! 特に美希ちゃんと春香ちゃん、ライブ前の忙しい時期にごめんね」

美希「ううん。ミキとっても楽しかったの。すごく良い気分転換になったって思うな」

春香「私もです! ライブに向けてエネルギーチャージできました!」

海砂「それは良かったわ。でも、次にまたこうやって皆で集まれるのはライブ後かな。ライブ当日は……流石にちょっと美希ちゃん達に会ってお話するのは難しいよね」

美希「そうだね。でも皆の席、かなり前の方だからミキ達からもよく見えると思うの。だから見つけたら目線送るね」

海砂「あはは。ありがとう。楽しみにしてるね。……よーし。じゃあ皆、退場ゲートまで競争よ!」

美希「むりなの」

海砂「はやっ! いやまあ、本気で走ろうとは思ってないけどさあ……」

美希「それに折角だしゆっくり帰りたいな。今海砂ちゃんも言ってたけど、次に皆とこうやって会えるのはライブ後になっちゃうと思うし」

海砂「美希ちゃん……」

美希「あ、でも海砂ちゃんとは再来週のお仕事で会えるから特に感慨深くも無かったの」

海砂「なんか最近の美希ちゃん妙に冷たくない!? ミサに対して!」

美希「きっと気のせいなの。あはっ」

海砂「いや、あはって……」

L「…………」



834:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/12(日) 12:12:38.86 ID:GggDIy6u0

(遊園地の外に出た六人)

L「――では、春香さん。美希さん。改めてライブの成功をお祈り申し上げます」

春香「ありがとうございます。竜崎さん」

美希「ありがとうなの。竜崎」

月「春香ちゃん。大変だとは思うけど、家庭教師は来週も再来週もあるから予習を忘れないようにね」

春香「はぐっ……ら、ライトさん……今日だけは受験の事は忘れさせて下さいって言ったじゃないですかぁ……」

月「はは。ごめんごめん。……美希ちゃんとは、次に会うのは少し先になるね。ライブ、頑張って」

美希「うん。ライトくんもありがとうなの」

海砂「じゃあ、今日はこれにて解散! 美希ちゃん、春香ちゃん。頑張ってね~」

清美「体調管理に気を付けて、万全の状態で臨んで下さい」

美希「ありがとうなの。海砂ちゃん。高田さん」

春香「お二人とも、ありがとうございます」

L「……春香さん」

春香「あっ。はい。何でしょう? 竜崎さん」

L「春香さんの全てを、見届けさせて頂きます。……頑張って下さい」

春香「……はい!」

L「……では、私達もこれで。行きましょう。月くん」

月「ああ」

美希「……じゃあ、ミキ達もレッスン行こっか。春香」

春香「うん。ライブまで後20日……頑張ろうね! 美希」

美希「なの!」




L「…………」

美希「…………」




L(今日一日で何かが変わったとも思えない……が、それでもまだ油断はできない。星井美希……その内心はまだ見通せない)

美希(…………)

美希(あと、ひとつ)

美希(竜崎がLだとする、その確証)

美希(それを得るためには……)

美希「…………」



857:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 20:48:29.36 ID:tLtWDwpq0

【六日後・都内レッスンスタジオ】


【アリーナライブまで、あと14日】


(プロデューサー立会いの下、全員揃って律子のダンスレッスンを受けているアイドル・ダンサー一同)

律子「――よし! じゃあ今日はここまで!」

アイドル・ダンサー一同「…………」ハァハァ

律子「もうダンス自体の完成度はかなりのレベルに達しているわ。後は怪我にだけは注意して、これからの練習は量よりも質を重視するように」

アイドル・ダンサー一同「はい!」

律子「それと本番までのスケジュールも意識して、各々がベストコンディションでライブ当日を迎えられるようにすること。……プロデューサーからも、何かありますか?」

P「……そうだな。もうほとんど律子に言われちゃったけど……やっぱり体調管理を最優先にな。そして繰り返しになるが、常に全体の動きを意識しながら練習すること。ライブは一つのステージを全員で作り上げる共同作業だ。一体感を大切にしていこう。……俺の方からはそれくらいだ」

律子「では、今日はこれで解散。自主練は各自に任せるけど、くれぐれも無理だけはしないように。いいわね?」

アイドル・ダンサー一同「はい! ありがとうございました!」

(伸びをしている美希)

美希「……んーっ」

春香「お疲れ様。美希」

美希「春香。お疲れ様なの」

春香「皆、大分良い感じに仕上がってきたね」

美希「そうだね。ダンサー組もほとんど遅れなくなってきてるし」

春香「いよいよ見えてきたね。私達の目指す先……トップアイドルが」

美希「……うん」

可奈「天海先輩! 星井先輩!」

春香「わっ。可奈ちゃん」

美希「じゃ、そういうことでまた明日なの」

可奈「うわーん! なんで私の顔見るなり帰ろうとするんですかー! 星井せんぱーい!」

美希「だって可奈、どうせまたダンス見てほしいって言うんでしょ。ミキ今日はもう疲れ……」

可奈「おにぎり、ありますよ? 私のお母さんお手製の」

美希「……まあ、少しくらいなら見てやらなくもないの」

可奈「やった! ありがとうございます! 星井先輩!」

春香(ちょろいなぁ)

美希「じゃあ可奈。まずは最後のステップ、もう一回やってみて」

可奈「え? 最後の……ですか? どうせなら最初から通した方が……」

美希「さっき、最後に全員で合わせた時に半歩遅れてたでしょ。身体が覚えてるうちに修正しといた方が良いの」

可奈「そ、そんなにしっかり私の事見ててくれたんですか……星井先輩!」

美希「たまたま目についただけなの」

春香「流石だね美希。私は自分の事で手一杯で微塵も気付かなかったけどね!」グッ

美希「春香は春香で自主練した方が良いって思うな」



858:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 20:56:39.16 ID:tLtWDwpq0

(三十分後)

美希「……うん。まあこんなとこかな」

可奈「ど、どうでしょうか? 私……」ハァハァ

美希「合宿の時に比べると、遥かに良くなってるの」

可奈「星井先輩……! ありがとうございます!」

春香「やったね! 可奈ちゃん!」モグモグ

可奈「はい! 天海先輩!」

美希「春香はおにぎり食べながら応援してただけだったけどね」

春香「だ、だって私は応援担当だもん! いいじゃんか!」プクー

美希「まあいいけどね。あー、それにしてもお腹空いたの。ねぇ可奈、ミキにもおにぎりちょうだいなの」

可奈「はい! たくさんどうぞ!」

美希「……本当にたくさんあるね」

可奈「お母さんに頼んで30個作ってもらいましたから!」

美希「さ、30個て……。じゃあありがたく頂きますなの。……あむ。……うん、美味しいの!」

可奈「あはっ、よかったです!」

志保「……可奈。自主練終わった?」

可奈「あ、志保ちゃん! うん。今終わったところだよ。ということで、はい! 志保ちゃんもおにぎりどーぞ!」

志保「お、おにぎり? 何でまた……」

可奈「お母さんに頼んで、皆の分作ってもらったんだ~。だから志保ちゃんもたくさん食べて! ね?」ニコッ

志保「じゃ、じゃあ一つだけ……ありがとう」スッ

春香「志保ちゃん、可奈ちゃんの事待ってたの?」

志保「え? い……いえ。私は私で、水瀬さんにダンスを合わせてもらっていましたので……」

春香「伊織に?」

伊織「まあ、一言で言えば可奈の自主練が終わるまでの暇潰しよ」

志保「!? み、水瀬さん?」

春香「なんだ。じゃあやっぱり可奈ちゃんの事待ってたんじゃない」

志保「ち、ちがっ……その、私は……」

美希「志保と何か約束してたの? 可奈」モグモグ

可奈「はい! この後、私の家で一緒に期末テストの勉強するんです!」

志保「ちょっ、可奈!」

可奈「はれっ? 言っちゃダメだった?」

志保「だ、ダメじゃないけど……その、なんか……恥ずかしいじゃない」

可奈「へ? なんで?」

志保「な……なんとなくよ」

美希「二人、相変わらず仲良いね」モグモグ

志保「! べ、別にそんなこと……!」

可奈「……え?」

志保「あっ。ち、違うのよ、可奈。そうじゃなくて、ええと……」

伊織「ハイハイごちそう様ごちそう様」

志保「み、水瀬さん!」

伊織「にひひっ」

美希「あー、おにぎり美味しかったの。ごちそう様。……って、あれ? でこちゃんも食べてたっけ?」

伊織「……そういう意味じゃないわよ。それとでこちゃん言うな」



859:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 21:06:51.57 ID:tLtWDwpq0

【レッスンスタジオからの帰路】


可奈「では先輩方、今日はこの辺で失礼します! お疲れ様でした!」

志保「お疲れ様でした」

春香「お疲れ様ー。二人とも、テスト勉強頑張ってね!」

美希「バイバイなの。可奈。志保」

伊織「イチャイチャばっかしてないで、ちゃんと勉強しなさいよ?」

可奈「? いちゃいちゃ?」

志保「み、水瀬さん! 何言ってるんですか! もう!」

伊織「にひひっ。じゃあまたね」

(可奈達と別れ、帰路を歩く美希、春香、伊織)

春香「……なんか珍しくない? 伊織が歩きって」

伊織「ん。この後近くで雑誌の取材があるから、歩いて行くことにしたのよ。それが終わったらまたすぐ近くのスタジオで竜宮のラジオ収録だしね」

美希「ふぅん。でこちゃんってば、もうすっかり売れっ子アイドルってカンジなの」

伊織「……あんた、ハリウッドデビュー決まってる身でよくそんなこと言えたもんね……」

美希「でもでこちゃんが売れっ子アイドルなのは間違い無いって思うな」

伊織「まあ売れっ子かどうかはともかくとしても、去年の今頃に比べれば、随分遠い所まで来た……って感じはするわね」

春香「……うん。確かにそうだよね。去年の今頃って言ったら……あれだよね。大運動会で優勝したりしてさ」

美希「ああ、懐かしいの。真くんのリレーごぼう抜きとかあったよね」

春香「あったあった。……でもさ、伊織はもう既に竜宮で結構売れてたよね? あの頃って」

伊織「まあね。でも今に比べればまだ全然だったわ。やっぱり去年のファーストライブが転機になったのかしらね」

春香「……うん。そうだね」

美希「…………」

伊織「それに偶然だけど、今年のアリーナライブも去年のファーストライブと同じ8月1日に開催って、なんだかちょっと縁起が良い感じしない?」

春香「あれ? 伊織ってそんなゲン担ぎみたいなの信じる方だっけ?」

伊織「良いやつだけ信じるのよ。悪いやつは信じない」

春香「あはは。なるほど」

美希「実にでこちゃんらしいの」

伊織「……っと。じゃあ私はこっちだから。またね。春香。美希」

春香「うん。またね、伊織」

美希「バイバイなの。でこちゃん」

春香「…………」

美希「…………」



860:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 21:23:53.50 ID:tLtWDwpq0

(伊織と別れ、二人で帰路を歩く美希と春香)

春香「……そうだよね。もう一年になるんだね……去年のファーストライブから」

美希「…………」

春香「あの頃……ファーストライブの前、つまりちょうど去年の今頃……私はずっと悩んでいた。当時、黒井社長が首謀者となって行っていた“765プロ潰し”の件で」

美希「……春香」

春香「ただそうは言っても、社長さんからは『今はとにかくファーストライブに全力を注いでくれ』って言われていたし、現実的な問題としても、当時の765プロはまだ黒井社長が例の投資会社にさせていた出資に頼らなければ経営がたちゆかない状況だったから……結局、私にできることなんて何も無かったんだけどね」

美希「…………」

春香「でもファーストライブがあった日の夜……逆上したファンの人に殺されそうになった私を、ジェラスが助けてくれた」

春香「そしてレムがジェラスのノートを私にくれた」

レム「…………」

春香「ねえ、レム」

レム「何だ? ハルカ」

春香「レムはさ、私の幸せのためにノートを使わせてやってほしい、っていうジェラスの遺志を尊重して、私にデスノートを渡してくれたって言ってたけど……」

レム「……ああ。そうだ」

春香「勿論それは、本当にそう思った上でそうしてくれたんだろうけど、それとは別に……レム自身としても、私がずっと“765プロ潰し”の件で葛藤を抱えていたのを見ていたから……ジェラスのノートを私にくれた。そうなんでしょ?」

レム「! …………」

春香「あとは、前のプロデューサーさんのセクハラの件も……かな。私も美希と同じように、よく身体を触られていたから」

美希「春香」

レム「……ああ。その通りだ。ハルカ。あまりお前の重荷になってはいけないと思い、今まで話していなかったが……そこまで察していたのなら否定しない」

レム「私がお前にノートを渡した理由はジェラスの遺志だけではない。私は私で、少しでもお前の助けになればと思ってノートを渡した」

春香「やっぱりそうだったんだ。レムは本当に優しいね」

レム「今ハルカも言っていたが、私もずっと見ていたからね。“765プロ潰し”計画の存在を知った後のハルカの苦悩、葛藤……。加えて、前のプロデューサーから日常的に受けていたセクハラ。それによる精神的苦痛」

春香「…………」

レム「しかしお前達も知っての通り、ハルカの本来の寿命は去年のファーストライブの日に尽きるはずだった。だから私もジェラスも、ハルカの余命に影響を与えるような介入は避けていた」

レム「だがファーストライブの日、ジェラスの命を代償にハルカの寿命は延長された」

春香「…………」

レム「私は思ったよ。これは辛いセクハラにも耐え続け、常に765プロの仲間の身を案じ、一人悩み続けていたハルカに神が与えたもうた報奨……恩恵なのだとね」

春香「レム……」

リューク「ククッ。神を語る死神なんて初めて見たぜ。レム。お前、神父にでもなった方が良いんじゃないか?」

レム「……だから迷いは無かった。ジェラスの遺志としても、そして私自身の意思としても……『ハルカを助けてやりたい』。ただその一心で、私はジェラスの遺したデスノートをハルカに託した」

レム「勿論、前にも言ったように、ノートを本当に使うかどうかの判断はハルカ自身に委ねたがね」

春香「……そしてその後、私はレムからもらったデスノートを使い……私達765プロに害をなす者達を一掃した」

美希「…………」

春香「すると今度は、そんな私の様子を死神界から観ていたリュークが、『デスノートを人間に使わせること』に興味を持ち……美希にまた別のデスノートを渡した。前のプロデューサーさんに対する殺意を募らせていた、美希に」

リューク「ああ。懐かしいな」

美希「…………」



861:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 21:42:49.47 ID:tLtWDwpq0

春香「だから……前にも同じ事言ったけど、やっぱり全部つながってるんだよ。ジェラスが私を助けてくれたことも、レムが私にジェラスのノートをくれたことも」

春香「そして美希がリュークからノートを渡され……『キラ』になったことも」

美希「…………」

春香「これまでの事、全部含めて……それで初めて、今の私であり、私達なんだ」

春香「今、私はそう思ってる。だから私は今が最高に幸せなんだって思うんだ」

美希「……春香……」

春香「ああ。そういえば、この前の『竜ユカ』で竜崎さんにも同じような話をしたよ」

美希「竜崎に?」

春香「うん。私は、これまでの全部で私なんだって」

美希「……そっか。だから竜崎、別れ際に『春香さんの全てを見届けさせて頂きます』とかって言ってたんだ」

春香「そういうこと。あそこまで言ってくれている人がいるんだもん。アリーナライブ、絶対に成功させないとね」

美希「…………」

春香「ん? どうかした? 美希」

美希「いや……もしかして、さ」

春香「うん」

美希「……春香って、竜崎の事好きなの?」

春香「いや、それはないけど」

美希(それはないんだ……)

春香「でも、ファンとしてはもちろん大切に思ってるよ。デビューして間もない頃からずっと私を応援してくれている人だし……」

春香「それに、ちょっとおこがましいけど……アイドルの活動をしている私を見て、竜崎さんは命を繋ぎ止めてくれたわけで……それは、私がアイドルを目指そうと思った理由そのものでもあるからさ」

美希「春香がアイドルを目指そうと思った理由?」

春香「うん。私は……自分以外の誰かに、元気とか、生きる希望とか……そういうものを与えられるような存在になりたくて……それで、アイドルを目指すようになったんだ」

美希「……そうだったんだ」

春香「だから、そういうアイドルとしての初心を思い出させてくれたっていう意味でも、竜崎さんには本当に感謝してるし……その期待には最大限応えたいって思ってるよ」

美希「……信頼してるんだね。竜崎の事」

春香「まあね。確かに最初は名前の件があったから少し警戒したけど……話を聞いて、純粋な私のファンだって分かったしね」

美希「…………」

春香「あと最初は、ライトさんとの関係も少し気になったけど……『竜ユカ』での二人の様子を見ている限り、特に怪しい感じはしないしね」

美希「……じゃあ春香的には、ライトくんも特にマークしなくて良さそうな感じ?」

春香「そうだね。ただお父さんがキラ事件の捜査本部に居るわけだから、正直そこは気になるけど……ライトさん個人は普通に私を応援してくれてるだけだと思うし……うん。そういう意味では竜崎さんと同じかな」

美希「……そっか」

春香「あとはもちろん、竜崎さん達と一緒にライブに来てくれる、清美さんや海砂さんの期待にも応えなきゃね」

美希「……うん。そうだね」



862:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 22:01:46.30 ID:tLtWDwpq0

春香「しかしキラ事件といえば……相変わらずLの動きも特に無いままだね。もう諦めたのかな?」

美希「…………」

春香「まあ無理も無いか。世間でもキラ支持の動きがかなり広がってるしね。もう既に今の世の中ではキラが正義になりつつあるのかも」

美希「……そうなのかもね」

春香「それならそれで、現状、私達がLに対して特に何かすることも無いね。まあ実際には、Lの手がかりなんてまだ何も無いから何かしようにもできないんだけど」

美希「……そうだね」

春香「…………」

春香(こう言っておけば、美希は一応安心するだろう。Lが今もキラを……美希を追っているであろうこと、ゆえに私が今もLの正体を探ることを諦めていないことを知れば、きっと美希は私を心配する)

春香(……そう。Lはまだキラを捕まえることを諦めていない。現に今も尾行はついている)

春香(ただ現実的に、Lへの手がかりをどう掴むか……黒井社長はもう使えないし……)

春香(清美さんからライトさんへ探りを入れてもらう……っていうのも今はちょっと無理そうだよね。清美さん、ライトさんにフラれたのかもしれないし……)

春香(……まあいい。今はとにかくライブに集中しよう。Lの事はその後じっくり考えよう)

美希「…………」

美希(ミキの手前、春香は『現状、Lに対しては何もしないし、できない』って言ってるけど……実際は、まだLの正体を探ることを諦めてはいないはず……)

美希(それは、言うまでもなく……)

美希「…………」

春香「? 美希、なんかさっきからテンション低くない?」

美希「……別にそんなことないの」

春香「そう? ならいいけど。それと後は……ああ、そうだ。少し前にも話したけど、黒井社長はちゃんと殺しておかないとね」

美希「! 春香。それは……」

春香「分かってるって。前に話した通り、殺すのはライブが終わってからにするから。ライブ前にLに嗅ぎ付けられたら面倒だからね」

美希「…………」

春香「それにあれから私も、Lの事を抜きにしても……黒井社長はライブ後に殺した方が良いって考え直したんだ」

美希「? 何で?」

春香「多分……今回のアリーナライブが大成功に終われば、私達765プロはもう名実ともにトップアイドルになれると思うんだよね」

美希「…………」

春香「もしそうなったら、黒井社長にとっては最高に悔しい状況だと思わない?」

美希「それはまあ……そうだろうね。黒井社長はミキ達765プロを完全に否定したいが為に“765プロ潰し”なんてことを目論んでいたわけだし」

春香「でしょ? だったら、黒井社長にトップアイドルになった私達の姿を見せつけてから――つまり、自分の惨めな復讐が完全に失敗に終わったことを心の底から実感させ、この上ない最高の屈辱を味わわせてから――殺した方がずっと良い、って思い直したんだ」

美希「…………」

春香「黒井社長に課している“償い”はどんな形で終わらせるのが良いのか……どうすれば、彼を最大限に苦しめた上で殺すことができるのか。それをずっと考えてたんだけど……やっぱり、“完全なる敗北を突き付けた上での、死”。……これが“償い”としては最高の形だと思うんだ。どうかな?」

美希「……そうだね。良いんじゃないかな」

春香「でしょ?」

美希「……でも一応、殺す前にはミキに教えてね。春香」

春香「うん、もちろん!」

美希「…………」



864:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 22:26:48.20 ID:tLtWDwpq0

春香「ああ、それとさ。美希」

美希「? 何? 春香」

春香「黒井社長はどのみち殺すとしても……私達がトップアイドルになったら、また私達を実力以外の手段を使って陥れようとする人達が必ず出てくると思うんだよね」

美希「それはあるかもね。むしろ黒井社長がいなくなったら、961プロ以外の事務所がそれまでより勢いづきそうな気もするし」

春香「でしょ? でも……『今度は』もう何も心配要らないよ」

美希「? 『今度は』?」

春香「そんな人達は、全て私が殺すから」

美希「! …………」

春香「一年前の私は無力だった。“765プロ潰し”計画の存在を知っても……何もすることができなかった」

春香「でも今の私にはデスノートがある。死神の目もある」

美希「…………」

春香「もう何も迷う必要は無い。私達に害をなそうとする奴は片っ端から殺してやる」

春香「私達765プロを陥れようとする者は全て悪。その罪は死をもって償わせるしかないんだ」

美希「…………」

春香「とまあ、そんな感じで……765プロの敵は私が遍く排除するからさ。美希には、余計な事は何も考えず、これまで通りに犯罪者を裁いて……キラの理想の世界を実現してほしいんだ」

美希「春香」

春香「私も、見てみたいからさ。キラの……美希のつくる、皆が幸せに生きていける世界を」

美希「……うん。わかったの。春香」

春香「えへへ。約束ですよ! 約束!」

美希「うん。約束するの」

春香「……アリーナライブを成功させて、765プロの皆と一緒にトップアイドルになる。これを果たすことが、私の使命」

美希「……この世界から犯罪者を一掃し、皆が幸せに生きていける世界をつくる。これを実現することが、ミキの理想」

春香「お互い、後もうちょっとだね」

美希「うん」

春香「最後まで一緒に頑張ろうね。美希」

美希「もちろんなの。春香」

春香「…………」

美希「…………」




春香・美希(でも、そのためには……)




春香(美希の理想を妨げようとする者は、私が必ず排除してあげないといけない。つまり――)

美希(春香の使命を妨げようとする者は、ミキが必ず排除してあげないといけない。つまり――)




春香(美希を守るためには、Lを殺すしかない)

美希(春香を守るためには、竜崎を殺すしかない)




春香・美希「…………」



874:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/25(土) 17:35:48.98 ID:OM0DcLng0

【同日夜・美希の自室】


美希「…………」

リューク「で、どうするんだ? ミキ」

美希「どうするって?」

リューク「決まってるだろ。竜崎の事だ」

美希「……ああ」

リューク「お前が『竜崎がLである可能性が一番高い』って言ってからもう結構経つが……あれから特に何もしていない。例のメンバーで遊園地に行ったくらいだ」

リューク「まだこのまま、何もせずに様子を見る気か?」

美希「……そうだね。もうそろそろいいかな」

リューク「? そろそろ?」

美希「うん。ミキの対竜崎大作戦。はつどーなの」

リューク「…………」

美希「……どういう作戦なのか聞かないの?」

リューク「どういう作戦なんだ?」

美希「竜崎がLだってことの確証を得るための作戦なの!」

リューク「いや、それはなんとなく分かるが……具体的に何をする作戦なんだ?」

美希「それは後のお楽しみなの」

リューク「……いつ思いついてたんだ? そんな作戦」

美希「んーと。この前、遊園地に行ったすぐ後くらいかな」

リューク「? じゃあなんですぐにやらなかったんだ? あれ一週間くらい前だっただろ」

美希「まあすぐやってもよかったんだけど……一応、念の為にね」

リューク「念の為?」

美希「うん。ライブの二週間前くらい……つまり今くらいがちょうどいい頃かなって」

リューク「?」

美希「まあ見てて。リューク」

(スマホを操作する美希)

美希「……もしもし。プロデューサー? ミキなの」

リューク「! …………。(プロデューサー? 何でまた……?)」

美希「うん。夜遅くにごめんなさいなの。実はちょっとお願いしたいことがあって――」

リューク「…………」



875:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/25(土) 17:43:08.02 ID:OM0DcLng0

【同時刻・キラ対策捜査本部(都内のホテルの一室)】


(他の捜査員の帰宅後、二人だけで捜査本部に残っているLと月)

L「! ……これは……」

月「? どうした? 竜崎」

L「……見て下さい」スッ

月「これは……星井美希からのメール? ……! 今度の日曜、二人きりで会えないか、だって……?」

L「…………」

月「もし来れるなら、15時に駅前で待ち合わせ……」

L「どうやら、またデートのお誘いのようですね」

月「な……何故このタイミングで? 遊園地の時に何か約束でもしていたのか? 竜崎」

L「分かりませんししていません。しかしこれは行くしかありません」

月「……そうだな。この日は作戦実行日の三日前……極力余計な接触は避けたいところではあるが―――“竜崎ルエ”が断るのは不自然だ」

L「と、いうよりは……」

月「そうなるように仕向けている……か」

L「はい」

月「…………」

L「星井美希は私達がキラ事件の捜査本部に居ることに気付いている。つまり私の嘘も見抜いている。それでもなお、あえて私と二人きりで会おうと持ち掛けている―――これはもう、一つしかありません」

月「竜崎がLであることの確証を得ようとしている……か」

L「はい」

月「しかし……どうする気だ? まさか面と向かって『あなたがLですか』などと聞くわけでもないだろう。第一そんなことを聞いたら自分がキラだと言うようなもの……」

L「それは私にも分かりません……が、殺されるリスクを考えたら行くしかありません。月くんも言っていたように“竜崎ルエ”がこの誘いを断る理由はありませんし……むしろここで断れば、その事実をもって私をLとして確定し……即殺すつもりなのかもしれませんから」

月「……ああ。そうだな」

L「? どうしました? 月くん。また何か引っかかりが?」

月「いや……確かに、これまでの情報から一番『Lっぽい』のは竜崎だろうが……そこに『星井美希からの誘いを断った』という事実を加えたとしても、それだけで即L確定とまでなるか? と思ってね」

L「…………」

月「むしろ本当にLとして特定されるとすれば……もっと何か、決定的な要素が要るはず……」

月「たとえばそう、僕も知らないような情報……竜崎の本名とかね」

L「! …………」

月「それなら僕は知らないが……星井美希は天海春香の能力によって既に知っている可能性が高い」

L「…………」

月「って、まさか本名が『L』ってわけでもないだろうし……知られたところでLとして特定されるはずもないか」

L「…………」

月「……竜崎? お前、まさか……」

L「ノーコメントです」

月「…………」



876:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/25(土) 17:54:19.95 ID:OM0DcLng0

ワタリ『――竜崎』

L「ワタリ。どうした?」

ワタリ『本日をもちまして、例のスタジオの館内全域および全部屋の監視カメラ設置、更衣室等はそれに加えて盗聴器の設置、並びに館内全てのロッカー・金庫の物理鍵複製および暗証番号の解錠ロジック解明――全て完了しました』

L「! そうか。よくやってくれた」

ワタリ『はい。民家の場合と異なり常に人の出入りがあるため、通常よりは時間を要しましたが……』

L「いや、十分だ。では早速765プロダクションのプロデューサーにつないでくれ」

ワタリ『はい。接続と同時にそちらのマイクに転送しますので、向こうが出たらそのまま応答して下さい』

L「分かった」

ワタリ『では、掛けます』

(捜査本部内にコール音が数回響く)

P『……はい』

L「Lです」

P『丁度良かった。俺も今あんたに電話しようと思ってたところだ』

L「? 何かあったんですか?」

P『ああ、報告事項が二つほどあるが……どちらも緊急性がある話じゃない。先にあんたの話を聞くよ』

L「分かりました。本日、例のスタジオの事前準備が全て完了しました。後は一週間後の実行を待つのみです」

P『! ……そうか。分かった。こちらも予定通りにいけると思う。今のところ、撮影スケジュールについては特に変更の予定は無い』

L「分かりました。もし予定が変わりそうになったら連絡して下さい」

P『分かった。すぐに伝えるよ』

L「ありがとうございます。では報告事項をお願いします」

P『ああ。ではまず一つ目。今日、その撮影の件で出版会社の担当者、ヨシダプロの吉井氏と軽く打ち合わせをしたんだが……』

P『撮影当日、本来はスタイリストが二人に全ての衣装を着せる予定だったところ、俺が『着こなし方もアイドル自身のセンスに任せた方がより個性が出るんじゃないか』と提案し……着物など、一人で着るのが難しい衣装以外は全て自身で着てもらうことにした』

L「! …………」

P『つまり、更衣室に出入りする人間はほぼ美希と弥の二人だけになる。その方が何かと『都合がいい』だろ?』

L「……あなたは本当に優秀な方ですね。この事件が終わったら正式に私の下で働きませんか?」

P『冗談はよしてくれ。これでも俺は今の仕事を天職だと思ってるんだ』

L「そうですか。それは大変残念です……が、その理由は私も全面的に同意です」

P『はは。ありがとう』



877:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/25(土) 17:59:14.38 ID:OM0DcLng0

L「では、二つ目の方をお願いします」

P『こっちはあまり大した内容ではないが……前にあんたから、『アリーナライブに関して美希か春香に何らかの動きがあれば報告するように』と言われていたから、一応伝えておくよ』

L「? 何ですか?」

P『ついさっき、美希から『次の日曜日にアリーナライブの会場の下見をさせてほしい』と言われた』

L・月「!」

L「次の……日曜ですか」

P『ああ』

L「それで、どうしたんですか?」

P『特に断る理由も無かったから許可したよ。ライブももう二週間後に迫ってる事だしな』

L「……行くのは星井美希一人ですか?」

P『ああ。『一人でステージを観たい』と言っていた』

L「……行く時間は?」

P『15時頃に行きたい、と言っていたが』

L「! ……分かりました」

P『俺の方からはそんなところだ』

L「ありがとうございます。ではまた何かあればご連絡をお願いします」

P『分かった。じゃあまたな』

L「はい。ありがとうございました」

(プロデューサーとの通話を終えたL)

L「…………」

月「竜崎。これは……」

L「はい。間違い無く……私をライブ会場に連れて行く気ですね」

月「しかし、何故? 何のために……?」

L「……行ってみないと分かりませんね」

L「…………」

L(私と二人きりで、アリーナライブ会場に……?)

L(星井美希……一体何を考えている……?)



878:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/25(土) 18:12:46.03 ID:OM0DcLng0

【同時刻・美希の自室】


美希「あっ。竜崎からOKの返事なの」

リューク「……ククッ。まさかライブ会場に連れて行かれるなんて夢にも思ってないだろうな」

美希「まあ別に前もって言っておいてもいいんだけど……会場内に捜査本部の人達を張られたりしたらやりづらいからね。ただいつもミキを尾行している人の様子からしたら、少なくとも顔は隠すんだろうから……どのみちそんなに多くの人は配置できないと思うけど」

リューク「確かに。マスクとサングラスの奴ばっかりたむろしてたら怪し過ぎるもんな」

美希「うん。逆にそれくらいわかりやすかったらそれはそれでLの確証になりそうだけど……でも、流石にそんな下手を打つこともないだろうしね」

リューク「だが竜崎に前もって行き先を教えないってのは……それ以外にも何か意図があるってことだろ?」

美希「まあね」

リューク「…………」

美希「とにかく、これでミキと竜崎……いや、キラとLとの一騎討ちなの」

美希「今思えば、リンド・L・テイラーがTVで『キラ』を挑発した時から……これはキラとLとの一対一の戦いだったの」

美希「それが今、ようやく終わる」

美希「ミキは逃げも隠れもしない。真正面からL……竜崎と対峙する」

美希「そこでミキは、竜崎がLであるとの確証を得るの」

リューク「ククッ。結構長い戦いだったが……いよいよこれで終幕ってわけか」

美希「…………」

美希(竜崎がLであるとの確証さえ得られたら―――ミキは竜崎……“ L Lawliet ”を殺す)

美希(竜崎が死に、ミキ達はトップアイドルになる。それが最高の形!)

美希(そしてLがいなくなれば、世界は一気にキラに傾く)

美希(始まる)

美希(完全なるキラの世界!)



890:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/03(日) 19:15:13.13 ID:4VPzDTYB0

【四日後・某駅前】


【アリーナライブまで、あと10日】


L「…………」

美希「竜崎! お待たせなの」

L「美希さん。いえ、私も今来たところです」

美希「そう? じゃあ早速行こっか」

L「はい。ちなみに今日はどちらへ?」

美希「そ・れ・は~……行ってみてのお楽しみなの! あはっ」

L「分かりました。ではお楽しみにしておきます」

美希「あ、一応言っておくけどサプライズで春香登場! とかは無いからね」

L「…………そうですか」

美希「そんな露骨にテンション下げないでほしいの」

L「大丈夫です。今日も朝から春香さんのライブBDを鑑賞して春香さん成分は十分補充しておきましたから」

美希「じゃあミキと会ってミキ成分も補充できるからますますばっちりだね!」

L「…………?」

美希「そんな心底不思議そうな顔で見られても困るの」



891:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/03(日) 19:38:22.44 ID:4VPzDTYB0

(十分後・大きな建物の前で立ち止まった美希とL)

美希「じゃーん! 今日の目的地はここ……アリーナなの!」

L「! ……アリーナ……」

美希「あはっ。驚いた?」

L「……今日の待ち合わせの駅からほど近い位置にあることは、当然知っていましたが……」

美希「えー。なーんだ。つまんないの」

L「ですが、まさかここが目的地だったとは予想だにしませんでした。そういう意味では驚きました」

美希「そう? えへへ、ならよかったの」

L「……でも、美希さん」

美希「ん?」

L「目的地と言っても……当然、中には入れませんよね?」

美希「入れるよ?」

L「! 本当ですか」

美希「本当だよ。ミキ、ちゃーんとプロデューサーから許可もらってるもん。そうじゃなきゃここに来る意味無いの」

L「……まあ、美希さんはライブの出演者ですしね。でも流石に私は無理ですよね? 完全な部外者ですし……」

美希「大丈夫だよ。裏手にある関係者用扉の暗証番号教えてもらってるから。そこから一緒に入ればいいの」

L「でも中に人がいるのでは?」

美希「警備員さんとか、イベントのスタッフさんとかはいるかもしれないけど……一旦中に入っちゃえば関係者としか思われないから大丈夫なの。竜崎のその出で立ちも、見ようによってはやり手のディレクターとかに見えなくもないしね」

L「……どうして美希さんは、そこまでして私とともにアリーナの中へ?」

美希「それは入ってのお楽しみなの。あはっ」

L「…………」



894:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/03(日) 20:29:53.62 ID:4VPzDTYB0

【同時刻・春香の自宅】


 ピンポーン

春香「はーい」

 ガチャッ

月「こんにちは。春香ちゃん」

春香「こんにちは! ライトさん」

(春香の自宅に上がる月)

月「お邪魔します」

天海母「あら、いらっしゃい。夜神先生。暑い中ご苦労様ねぇ」

月「ありがとうございます。お母さん。でも大丈夫ですよ。まだ7月ですし」

天海母「そう? まあまだお若いものねぇ。夜神先生は」

月「はは……」

天海母「あ、そうそう。夜神先生、今度の春香のライブにも来て頂けるんですって? 本当、何とお礼を申し上げたらいいのか……」

月「いえ。春香さんのご活躍をこの目で見られるのは、僕としても嬉しい事ですから」

天海母「いやだわぁ。そんなご活躍だなんて。この子ったらテレビなんかではまあまあしっかりしてるように見えますけど、家では本当にだらしがなくて……」

春香「お、お母さん! もういいでしょ! もう!」

天海母「はいはい。じゃあまた後でおやつの時にね~」

(手を振りながらリビングに戻っていく天海母)

春香「……もう。なんか、いつもいつもすみません……」

月「いやいや、僕もなんだかんだでいつも楽しみにしてるからね。お母さんと話すの」

春香「それなら良いんですが……」

月「よし。じゃあ今日も頑張ろうか。ライブ前の家庭教師はこれが最後だしね」

春香「はい! 天海春香、ライブも勉強も頑張ります!」

月「その意気だ。ライブも成功! 大学も合格! ……だね。春香ちゃん」

春香「はいっ! ライトさん! じゃあ私お茶淹れてきますので、先に部屋に行ってて下さい」

月「ああ、ありがとう」

(リビングに入っていく春香)

月「…………」

月(今頃、竜崎は星井美希とアリーナか)

月(星井美希が何を考えているのかはまだ分からないが……対策は既に打ってある)

月(今日は、普段とは逆に竜崎が超小型マイクを身に着け、そこで拾われる星井美希との会話の音声を捜査本部に居る星井係長が聴く形になっている)

月(星井美希の言動、態度、声色。それらの中に普段と違う点……違和感は無いか。それを星井美希の実父である星井係長に見極めてもらうためだ)

月(勿論、星井係長だけでは完全に中立的な視点での判断ができるという保証は無い。だが捜査本部には父さんも居る。星井美希の言動に不審な点があれば必ず検知できる)

月(また、実際に星井美希と相対する竜崎の“竜崎ルエ”としてのキャラクター作りも完璧だ。ゆえにそこからボロが出るということも無い)

月(作戦の実行はもう三日後。それまでに『竜崎がLである』との確証を星井美希が得られなければ……)

月(僕達の勝ちだ)

月「…………」



895:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/03(日) 21:13:31.47 ID:4VPzDTYB0

【同時刻・アリーナ内】


(ステージの中央部に立ち、無人の観客席を見渡している美希とL)

美希「……どう?」

L「すごい……ですね」

美希「うん。すっごい……広いの」

L「美希さんも初めて来たんですか?」

美希「そうだよ。……客席、あんな高いところまであるんだね」

美希「ここにお客さん入ったら、どうなっちゃうんだろう」

L「…………」

L(今日も、星井美希の持っている鞄はノート大の物が入る大きさのもの)

L(今なら完全に二人きり……そしてこのホール内には警備員もいない。ここで鞄もろとも取り押さえてしまえば……)

L(……いや、まだノートの効力に確証は無い。『念じるだけで殺せる』という可能性もまだ……)

L(それに天海春香もいる。もし仮にノートの効力がこちらの推理通りであり、それをこの場で取り押さえることができたとしても……携帯電話での発信等、星井美希が一瞬で何らかの合図を送り……それを受けた天海春香がすぐにノートに名前を書くという可能性もある)

L(もっとも今は夜神月が家庭教師をしているはずだから、仮にそのような事態になっても即時には対応できないだろうが……)

L(……まあいい。いずれにせよ三日後には作戦の実行だ。あえて今、リスクを冒して行動を起こすのは得策ではないだろう)

L(とすれば、この場で私がすべきことはただ一つ……“竜崎ルエ”のキャラクターを完璧に演じ切ることのみ)

L(星井美希が何を考えているのかは分からないが……私の演技の隙を突き何らかのボロを出させ、私がLであることの確証を得ようとしているのは間違い無い)

L(ならば突かれるような隙を与えなければいいだけの事)

L(……大丈夫だ。“竜崎ルエ”としての態度、応答はあらゆる事態を想定した上で完璧に準備をしている。私がここから尻尾を掴まれることはない)

L(また作戦の実行日までに、私が星井美希と直接接触するのはおそらくこれが最後だろう)

L(つまり今日、私がLであるとの確証を星井美希が得られなければ……)

L「…………」



896:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/03(日) 21:38:58.29 ID:4VPzDTYB0

美希「―――ねぇ、竜崎」

L「はい。何でしょう。美希さん」

美希「ミキね。アリーナライブの前に竜崎にどうしても聞いておきたいことがあるの」

L「! …………」

美希「だから今日はこんなところまで来てもらったんだけど……」

美希「聞いても、いいかな?」

L「……もちろんです。私に答えられることかは分かりませんが」

美希「ありがとう。じゃあ聞くね」

L「…………」

美希「もし春香がここに立ったら、どんなことを思うと思う?」

L「! ……春香さんが、ですか?」

美希「うん」

美希「このステージに立ったとき、春香が何を思うのか。また、ミキはそれと同じことを思えるのか」

美希「ミキはそれが知りたいの」

L「……すみません。美希さん。いまいち、質問の意図がよく分からないのですが……」

美希「ミキ、前に聞いたよね。春香のファンの竜崎から見て、ミキはどういう風に見えてるのかって」

L「ええ。もちろん覚えています」

美希「あの質問をした理由も同じなの。要するに、ミキと春香を比べて見たらどうか、ってことが聞きたかったの」

L「美希さんと春香さんを比べて……ですか?」

美希「うん」

美希「ミキは春香に勝ちたいの。アイドルとして」

L「! …………」

美希「ミキね。去年の冬にシャイニングアイドル賞の新人部門を受賞したの。だからミキ、その時は間違い無く『春香に勝ってる』って思ったの」

美希「アイドルとして同じ条件で勝負して、ミキの方が上にいけたと思えたから」

L「…………」

美希「でもその後……共演したミュージカル『春の嵐』で、春香に主役を取られちゃったの」

美希「ミキも主役をもらえるよう、一生懸命頑張ったのに」

L「…………」

美希「しかも春香はその『春の嵐』での演技が評価されて、アイドルアワードまで受賞しちゃったの」

美希「ミキもミキでハリウッドデビューが決まったけど……正直言って、春香には同じ土俵で勝ってる感じがしなかった」

美希「はっきり言って悔しかったの」

美希「確かに、出てるCMの数なんかはミキの方が多いし、CDとかもミキの方が売上は良いみたいだけど……なんていうのかな。アイドル力そのもの? みたいな……」

美希「とにかくミキは、春香にアイドルとしての根本的な部分で勝てていない。だから勝ちたい。……そう思うの」

L「……何故、そこまで春香さんに勝ちたいと思うんですか?」

美希「だって、春香はミキのライバルだから」

L「! ……ライバル……」



897:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/03(日) 22:04:23.48 ID:4VPzDTYB0

美希「うん。ミキにとって、春香は大の親友であり一番のライバルなの」

美希「春香のコト大好きだけど、同時に絶対負けたくないって思ってるの」

L「…………」

美希「だからミキは知りたいの。春香がこのステージに立った時に何を思うのか」

美希「ライブのリーダーとして。そして一人のアイドルとして」

美希「春香の思いを、気持ちを知らなきゃ……春香は絶対に超えられないって思うから」

L「……なら、春香さんに直接聞いた方が良いんじゃないですか?」

美希「そんなの、ヤ」

L「…………」

美希「春香本人に聞くのは、なんか負けを認めちゃうみたいで悔しいもん」

L「だからって私に聞いても、それが春香さんの考え通りとは限りませんよ?」

美希「そんなのわかってるの。でもミキ的には、春香がデビューして間もない頃からずっと、春香を一途に追い続けてきた竜崎なら……かなり春香本人に近い考えが出せるって思うの」

美希「だから……聞かせてほしいの」

美希「このステージに立った時に春香が抱くであろう思い。気持ち。……その全てを」

L「…………」

L(なるほど……)

L(私が最後まで“竜崎ルエ”を演じ切れるかどうか……天海春香の思考をどの程度トレースできるかで探ろうということか)

L(それに建前としても一応の筋は通っている。同じ事務所の仲間であっても、同時にライバルでもあるという考えはプロである以上当然の事)

L(また以前に私を呼び出した際の理由付けにもなっている……もっとも、流石にあの時からこうすることまで想定していたわけではないだろうが)

L(何より、星井美希と真に親しい友人でもある天海春香だからこそ……彼女に対し、ライバルとしてより強い対抗心を持っている、というのは極めて説得的だ)

L(ならば……)

L「……分かりました」

美希「竜崎」

L「春香さんならこう考えるであろう、という程度の私なりの推測にしか過ぎませんが……それでもよろしければ、お話しさせて頂きます」

美希「ありがとう。それで十分なの。よろしくお願いしますなの」

L「……では……」



899:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/03(日) 22:25:55.19 ID:4VPzDTYB0

L「彼女は……春香さんは、ライブの時は必ず『後ろの席まで、ちゃーんと見えてるからねー!』と客席に向かって声を掛けます。ソロでも、全員のライブでも」

美希「…………」

L「これは、春香さんがその時々で立つステージの広さを身に染みて感じているからこその言葉なのだと思いますが……」

L「でも同時に、彼女は一人ではありません」

L「彼女の今いる場所は、今までの全部で出来ているはずです」

L「水瀬さん、菊地さん、萩原さん、高槻さん、我那覇さん、四条さん、三浦さん、双海さん姉妹、如月さん、秋月さん、プロデューサーさん、事務員さんに社長さん」

L「そして……美希さん」

美希「! …………」

L「他にも、たくさんの人と出会って……彼女はアイドルとして、このステージに立つことができるのだと思います」

L「つまりこのステージは、誰か一人でも欠けてしまったら辿り着けなかったはずの場所」

L「皆さんと出会って、今一緒にいるということは、彼女に……春香さんにとって、それくらい大事なことのはずです」

L「彼女は今、美希さん達、アリーナライブのメンバーのリーダーですが……その前にやっぱり『天海春香』ですから」

L「だからきっと彼女がこのステージに立ったら、こう思うのだと思います」

L「『全員で走り抜きたい。今の全部で、このライブを成功させたい』……と」

L「なぜなら彼女は、天海春香ですから」

美希「…………」

L「? 美希さん?」

美希「――――え?」

(美希の瞳から一筋の涙が零れる)

L「!?」

美希「あ、あれっ。やだ、ミキ……」

L「…………」



900:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/03(日) 22:32:41.58 ID:4VPzDTYB0

美希「あ、あはっ? な、何で……」

(目元を指で拭う美希)

L「…………」

美希「ご、ごめんね。急に……」

L「……いえ」

美希「でも、ありがとう」

L「…………」

美希「おかげで、すっごくよく分かったの。……春香の思い。春香の気持ち」

L「……ですが、美希さん。最初にお断りしたように、これはあくまでも―――」

美希「うん。大丈夫。それはもちろん分かってるの。今のはあくまでも竜崎の推測。……でも」

美希「ミキはきっと、春香もそうなんだって思う」

L「…………」

美希「もし春香がこのステージに立ったら、今、竜崎が言ってくれたようなことを……きっと思うんだろうなって」

美希「だから……ありがとうなの。竜崎」

L「……お役に立てたようなら、何よりです」

美希「あはっ。……じゃあ、そろそろ出よっか」

L「……そうですね」

美希「…………」

L「…………」



901:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/03(日) 22:40:53.99 ID:4VPzDTYB0

(十分後・駅前に戻って来た美希とL)

美希「今日は本当にありがとうね。竜崎」

L「いえ。美希さんもライブ頑張って下さい」

美希「うん。春香に勝てるかどうかはまだ分かんないけど……でも、春香の見ている景色は今日、ミキにも見えたような気がするの」

L「それは何よりです」

美希「ライブ、一生懸命頑張るから……ミキのコト、ちゃんと最後まで観ててね。約束なの」

L「はい。約束します。必ず最後まで全力で応援させて頂きます」

美希「ありがとう。……じゃあまたね。竜崎」

L「ええ。……ではまた。美希さん」

(去って行くLの背中を見送る美希)

美希「…………」

リューク「ククッ。流石はハリウッド映画出演決定アイドル……見事な演技だったな」

美希「? 演技?」

リューク「ああ。まさか涙まで流すとは恐れ入ったぜ」

美希「何言ってるの? リューク。あれは演技なんかじゃないの」

リューク「えっ」

美希「あれは演技でも何でもないの。ミキ思わず泣いちゃったの」

リューク「…………?」

美希「だってミキね。すごく嬉しかったの。心の底から感動したの」

美希「竜崎がこんなにも春香のコト……わかってくれてるんだって」

リューク「…………」

美希「本当に嬉しくて、うれしくて……」




















美希「―――殺してあげちゃいたいくらい、うれしかったの」



912:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 13:24:47.94 ID:wrBROp5y0

【同時刻・春香の自宅前】


月「じゃあ、僕はこれで。ライブ頑張ってね」

春香「はい! 天海春香、ライブ全力で頑張ります!」

月「そしてライブが終わったら、いよいよ天王山の夏だね」

春香「あ、あはは……あの、そうしたいのはやまやまなんですが……ええと、その……」

月「なんてね。分かってるよ。8月いっぱいは『春の嵐』の追加公演があるんだろ?」

春香「……すみません。そうなんです。もちろん毎日じゃないんですけど」

月「じゃあ8月は勘を鈍らせない程度にして……本格的にエンジンをかけ始めるのは9月以降かな」

春香「そうですね。プロデューサーさんにも受験の事は伝えてあるので、秋以降はお仕事少なめにしてもらう予定です」

月「それはよかった。……あ、そういえば美希ちゃんがハリウッドに行くのも9月だっけ?」

春香「はい。9月の半ば過ぎには向こうに行くって言ってました。それもあって『春の嵐』の追加公演も8月だけになったんです」

月「そうか……寂しくなるね」

春香「……はい。でも美希は美希で、自分がやれることをやるはずですから。私も私がやれることをやるまでです」

月「ああ。そうだね。その意気でアイドルも受験も頑張って」

春香「はい!」

月「……それじゃ、またね。春香ちゃん」

春香「……ええ。ではまた。ライトさん」

(春香と別れ、駅へと向かって歩く月)

月「…………」

月(竜崎と星井美希の様子が気になるな……)

月(とりあえず今のところ、捜査本部からの緊急連絡などはきていないが……)

月(……まあここで考えていても仕方ない。早く本部へ向かうとしよう)

月「…………」



913:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 13:31:21.70 ID:wrBROp5y0

【二時間後・キラ対策捜査本部(都内のホテルの一室)】


 ガチャッ

月「戻りました」

L「月くん。遅かったですね」

月「ああ。何せ、天海春香の自宅からだからな……これでも大分急いだ方だよ」

L「それはお疲れ様でした」

月「それより竜崎。無事だったんだな。良かった」

L「ええ。……今のところは」

月「……?」

総一郎「――さて。竜崎。ライトが戻って来たところで聞かせてもらおう」

月「父さん?」

松田「月くん。竜崎が僕達皆に話しておきたいことがあるって」

月「えっ」

相沢「それで皆、月くんが来るまで待ってたんだ」

月「……一体何なんだ? 竜崎」

L「分かりました。お話しします。……が、その前に今日の私と星井美希との会話の録音を、月くんにも聴いて頂きたいんですが……よろしいですか? 月くん」

月「ああ。それは是非聴かせてくれ」

L「では、今から再生します。他の皆さんも改めてよく聴いてみて下さい」カチッ

星井父「…………」




(Lと美希の会話の録音を聴き終えた捜査本部一同)

月「……なるほど」

月(一通り聴いた限り、特に……いや、全く違和感は無いな)

月(しかし、だからこそ……)

月「…………」

L「では、月くんにも録音を聴いて頂いたところで……私の考えをお話しさせて頂きます」

一同「…………」

L「星井さん」

星井父「……何だ? 竜崎」

L「もし近日中に私が死んだら娘さんがキラです」

星井父「! ……元々、美希を99%キラだと疑っていたんじゃなかったのか?」

L「はい。そうです。なので私が死んだらその疑いが100%になるということです」

星井父「…………」

模木「係長……」

総一郎「竜崎。それは今再生した……今日の星井美希とのやりとりを通じてそう確信したということか?」

L「はい」

星井父「…………」



914:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 13:36:05.07 ID:wrBROp5y0

総一郎「しかし……竜崎。ライトが来る前にも言ったが……今聴いた会話には何の違和感も不自然さも無かった。特に、最後の方で星井美希が泣いた場面があったが……それも極めて自然だったように思う」

L「そうですね。それは私も同意見です」

総一郎「ならば一体何故、星井美希がキラだという確信を?」

L「…………」

松田「まあでもハリウッドに行くようなアイドルっすからね……ミキミキをウソ泣きする子だなんて思いたくはないですけど、これくらいの演技なら余裕で……」

相沢「松田」

松田「はい。すみません」

総一郎「竜崎。あなたの意見に異を唱えるつもりはないが……もう少し具体的に説明してくれないか?」

L「そうですね……ではその前に、星井さんはいかがですか?」

星井父「! …………」

L「今日の娘さんの態度や言動から……何か不審に思われたことなどはありませんでしたか?」

L「特に、今夜神さんも仰っていた……娘さんが泣いた場面に関して」

総一郎「…………」

星井父「まあ、ここで俺が何を言おうが何の信用度も無いとは思うが……」

L「…………」

星井父「俺は、竜崎の身に着けたマイクを通じて……二人の会話をここで局長達と一緒にリアルタイムで聴いていたが……」

星井父「美希が泣いた場面についての所感は、最初に聴いた時から変わらない」

星井父「正直言って……とても演技とは思えない。鼻を少しすするような声。無理に笑って誤魔化そうとする癖。……ずっと小さい頃から、美希が泣くときに見せる特徴だ」

L「…………」

星井父「信用してくれとは言わない。だが俺には今日の美希の泣き方が……嘘や演技のそれとは思えない」

相沢「係長……」

模木「…………」

月「“だからこそ”なんじゃないですか?」

L「! …………」

総一郎「? ライト?」

松田「どういう意味だい? 月くん」

月「星井さんの言う通り……星井美希は本当に泣いていた。嘘でも演技でもなく、本当に」

月「“だからこそ”……竜崎は言いようもない不安を覚えた。……そういうことなんじゃないのか? 竜崎」

L「はい。その通りです」

星井父「…………」



915:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 13:46:42.66 ID:wrBROp5y0

松田「え? でもそれならむしろ、ミキミキがキラじゃないって方向になるんじゃ? だって泣いたのは演技じゃなかったってことなんですよね?」

相沢「まあ普通に考えたらな……」

松田「じゃあ普通に考えない方が良いってことですか? 相沢さん」

相沢「普通に考えて竜崎や月くんと同じ思考ができると思うか? お前……」

松田「……思わないっすね」

相沢「だろ?」

L「夜神さん」

総一郎「……何だ? 竜崎」

L「私が死んだらその後の事は夜神さんにお願いします。ワタリを自由に使える様にしておきます」

総一郎「! ……しかし……」

星井父「…………」

L「すみません。論理的な説明はできません。言うなればただの直感に過ぎません」

L「星井美希は演技ではなく素で泣いていた……それは私の演技を演技と思っていなかったから。……そう思うのが自然です。松田さんの仰る通りです」

松田「竜崎」

L「しかし月くんの言う通り……“だからこそ”私は今、言いようもない不安を覚えています」

月「…………」

L「私にも私の本心が分かりません。こんな事は今までなかった……正直言って大ピンチです。ですから自分を冷静に分析できなくなっているのかもしれません」

L「ですが……夜神さん」

総一郎「…………」

L「それでも今、私が殺されたらキラは星井美希だと断定してください。ワタリにも断定させます」

総一郎「……分かった」

星井父「! …………」

総一郎「私はあなたの直感を信じよう。竜崎」

L「……ありがとうございます。夜神さん」

月「僕も同意見だ」

総一郎「ライト」

L「月くん」

月「理由はどうあれ、今このタイミングで竜崎が死ぬようなことがあれば……もはやそう判断するしかないだろう」

月「大切なのは僕達が全滅しないこと……そのために必要なのは、常に最悪のシナリオを想定した上で、一つ一つの判断を慎重にしていくことだ」

総一郎「うむ」

L「月くん。ありがとうございます」

相沢「まあ……そうだな」

松田「死んだら元も子もないっすからね……いや、今してる話が竜崎が死んだ場合が前提っていうのは分かってるんですけど……」

模木(係長……)

星井父「…………」

総一郎「星井君も、辛いだろうが分かってくれ」

星井父「…………はい。大丈夫です」

星井父「…………」

星井父(……美希……)

星井父(……お前は、本当に……)

星井父「…………」



916:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 13:58:16.09 ID:wrBROp5y0

【同日夜・美希の自室】


美希「…………」

リューク「なあ、ミキ」

美希「…………」

リューク「ミキ」

美希「ああ……リューク、いたの。すっかり忘れてたの」

リューク「ひどいの」

美希「ミキのマネしちゃ、ヤ」

リューク「ククッ。なんか久しぶりだな。このやりとり。……で、帰ってからずっとだんまりだが……もうそろそろ教えてくれてもいいんじゃないか?」

美希「何を?」

リューク「何をってお前……今日で竜崎がLってことの確証は得られたんだろ? 『殺してあげちゃいたいくらい……』って言ってたくらいだし」

美希「ああ……うん。その確証は得られたの」

美希「100%間違い無く―――竜崎がLなの」

リューク「ククッ。そりゃ良かったな。で、どこでそう判断したんだ?」

リューク「今日の竜崎とのやりとりを見る限り、今までのそれと大した違いは無かったように見えたが……それを聞かせてくれよ」

美希「そんなの一つしかないの」

リューク「? だから何なんだ? それは」

美希「ミキが感動したから」

リューク「…………」

美希「…………」

リューク「え? それだけ?」

美希「うん」

リューク「いや、もうちょっと具体的に……」

美希「えー」



917:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 14:05:08.38 ID:wrBROp5y0

美希「もう。リュークったら物分かり悪いの」

リューク「そう言うなよ。で、ミキが感動したっていうのは分かったが……それで何で竜崎がLってことになるんだ?」

美希「んー。何でって言われてもリクツじゃないの」

リューク「えっ」

美希「竜崎の演技は今日も完璧だったの」

美希「ミキが『今日の目的地はアリーナ』って言った時の反応もすごく自然だったし……その後もずっと完璧に“竜崎ルエ”を演じていたの」

リューク「でもそれだけだとこれまでと変わらないじゃないか」

美希「そうだよ。……それだけならね」

リューク「だからそこで“感動”ってことか?」

美希「そう。……竜崎はこれまでずっと嘘をついていたの。ミキや春香と出会った時からずっとね」

リューク「…………」

美希「でもミキはもうそれが嘘だってことに気付いてる」

美希「だから本来なら……その“嘘”でミキを“感動”させることなんてできるはずがないの」

美希「……“普通の人”にはね」

リューク「あー。つまりそれができた竜崎は……」

美希「そ。キラ事件の捜査本部に居る人で、“普通じゃない人”……つまり、Lってことなの」

リューク「なんか、分かったような分からんような話だが……じゃあ結局『ミキを感動させられるかどうか』がミキの判断基準だったってわけか?」

美希「そういうことなの。だからミキは一芝居打って、自然な形で竜崎に春香の気持ちを代弁させてみたってワケなの」

リューク「なるほどな。じゃあこれでめでたく『竜崎=L』の確証も得られたわけだから……後は竜崎を殺すだけか」

美希「…………」



918:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 14:19:59.37 ID:wrBROp5y0

リューク「で、いつ殺すんだ? ミキ」

美希「……実はそれをずっと考えてたの」

リューク「ほう。だからずっとだんまりだったのか」

美希「いや、それは単にリュークの存在を忘れてたからだけど」

リューク「…………」

美希「で、いつ竜崎を殺すかだけど……」

リューク「おう」

美希「名前を書くのは今から一か月後……8月の終わり頃にするの」

リューク「! …………」

美希「そして死ぬ日はそこから23日後。死因は事故死」

美希「だからもし8月31日に書くとしたら、『20××年9月23日 犯罪者を捕まえる事なく事故死』……これで決まりなの」

リューク「…………」

美希「いくらなんでも、ミキが竜崎と一対一で会った直後に殺したりしたらミキがキラだと言うようなものだし……」

美希「それに、死の状況を確実に操れるのは23日間だけだからね。病死なら死の時期をもっと後にできる可能性もあるけど……それをこっちで指定できないんじゃ意味無いし」

リューク「……ミキ。確かに今すぐ殺すと怪しまれるっていうのは分かるが……でも名前を書くのが一か月後で、死ぬのがそこからさらに23日後って……いくらなんでも遅過ぎないか?」

美希「…………」

リューク「それにお前、その時期設定だと……竜崎が死ぬ頃にはもうハリウッドに行ってるだろ?」

美希「…………」

リューク「ん? もしかしてアリバイ工作ってことか? いや、でもデスノートで殺すんだからアリバイも何も……」

美希「……本当は、アリーナライブの前に殺したかったの」

リューク「! …………」

美希「竜崎がLであるとしたら、合宿の時みたいに……ライブ中に何か仕掛けてくる可能性は十分あるからね」

美希「だからアリーナ席のチケットあげて、ライブ中も可能な限り監視できるようにはしたんだけど……でもそんなの、その気になればどうとでもできるしね」

リューク「まあ極端な話、当日風邪でも引いたことにすればいいだけだしな」

美希「そういうことなの」

リューク「だが……ライブまでまだ後10日ある。今から9日後に殺してもそこまで怪しまれないんじゃないか?」

美希「…………」

リューク「いや、待てよ。そもそも23日間は死の前の行動を操れるわけだから……今名前を書いておいて、今日から23日後に死ぬように死の時期を指定しておけばいいんじゃないか? ……さっきのミキの例でいえば、『20××年8月14日 犯罪者を捕まえる事なく事故死』……みたいに」

リューク「そうすればライブ当日に竜崎に何かされることはないし、仮にされたとしてもミキやハルカが捕まることはない。デスノートは絶対だからな」

美希「…………」



919:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 14:25:41.94 ID:wrBROp5y0

リューク「ミキ?」

美希「…………」

リューク「お前まさか……今になって同情を感じてるのか? 竜崎に」

美希「……それはないの。竜崎は春香のファンのフリをしたミキのうわべの友達。Lはキラの敵なの」

リューク「じゃあ……もしかして、ハルカに疑われるのを恐れているのか? 『ミキが竜崎を殺した』って」

美希「…………」

リューク「ハルカは竜崎の事を全く疑っていない。そしてミキが竜崎を疑っていることも知らない。だからまさかミキが竜崎を殺すなんて夢にも思っていない」

美希「…………」

リューク「しかしそれでも、今竜崎が死ねば……死因が何であれ、ハルカはミキを疑うだろう。名前の件があるからな」

美希「……そこについては、そんなに心配してないの」

リューク「? そうなのか?」

美希「確かにリュークの言う通り、春香も一度はミキを疑うかもしれないけど……心臓麻痺ならともかく事故死だからね。たとえ疑われても『ミキじゃない』とさえ言えば、春香はきっと信じてくれるの」

リューク「まあ確かに、ハルカならお前の……いや、お前ら765プロの仲間の言うことなら何も疑わずに信じるか」

美希「うん。それが春香だからね」

リューク「じゃあ何が理由なんだ? 何故竜崎を殺すのを先延ばしにする?」

美希「……春香の……」

リューク「? やっぱりハルカ絡みなのか?」

美希「春香の悲しむ顔は、見たくないから」

リューク「えっ」

美希「…………」



920:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 14:42:08.20 ID:wrBROp5y0

美希「今、リュークも言ってたけど……春香は竜崎の事を全く疑っていない」

美希「それどころか、自分の事を最も深く理解してくれているファンの一人として……絶対的な信頼を寄せているの」

美希「そんな春香が、『竜崎が死んだ』なんて知ったらどれほどの悲しみに襲われるか……」

美希「想像したくもないし、見たくもないの。そんな春香の姿なんて」

リューク「……ああ、なるほど」

リューク「だから……自分がハリウッドに行ってから竜崎が死ぬよう、死亡時期をそこまで遅らせるってことか」

リューク「ハルカの悲しむ顔を見なくて済むように」

美希「…………」

リューク「ククッ。矛盾してるじゃないか。ミキ」

美希「…………」

リューク「お前はハルカを守るためにL……竜崎を殺すんだろう?」

リューク「なのに、そのハルカの悲しむ顔を見たくないから殺さない、なんて」

美希「……別に矛盾じゃないの。何も未来永劫殺さないってわけじゃないんだから。……ただ、その時期を少し後にずらすだけなの」

リューク「まあ、何でもいいけどよ。だが……ミキ」

美希「…………」

リューク「最近のお前は、L……竜崎を殺すこと自体には何の躊躇も見せていなかった。奴は犯罪者ではないにもかかわらず、だ」

美希「…………」

リューク「だから俺はてっきり……ミキも遂に、自分の目的の為なら誰でも、何の感情も持たずに殺すことができるような……そんな、およそ普通の人間からはかけ離れた思考と感覚を身に付けることができたんだろうと思っていたんだが――……」

リューク「何の事はない」

リューク「やっぱり、お前はまだ人間だ」

美希「……そんなの、当たり前なの」

美希「ミキは人間なの。神様でもなければ死神でもない」

美希「ミキは人間として、人間の為にデスノートを使っているの」

リューク「ククッ。ああ、そうか」

美希「…………」



921:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 15:21:00.23 ID:wrBROp5y0

リューク「だがいいのか? ノートに名前を書きさえすればその後の行動は制約できるが……書くまでは何の保証も無い」

リューク「つまり今から名前を書くまでの一か月間は……お前もハルカも、今までの状況と何も変わらない。いつL……竜崎に捕まるか分からない状況のままなんだぞ」

美希「……いいの。竜崎と知り合ってからもう二か月以上になるけど、まだ今すぐにミキ達が捕まりそうな状況とも思えないし……それがあと一か月でどうこうなるとも思えない」

美希「それに……そもそもどんなに疑われようと、デスノートを押さえられない限りは絶対に捕まらないの」

美希「ノートはいつも肌身離さず持ってるし……現状、竜崎がノートの存在に気付いている素振りも全く無いの」

リューク「まあ……まさかノートが殺人の道具だなんて思いもしないだろうしな」

美希「そういうことなの。なら今殺そうが一か月後に殺そうが同じことなの」

リューク「…………」

美希「……ただ……」

リューク「? ただ?」

美希「もし、春香が竜崎に捕まりそうになったら……その時は、もうとやかく言ってられないの」

美希「迷わず竜崎を―――Lを、殺すの」

リューク「……なるほどな」

リューク「…………」

リューク(皮肉だな)

リューク(『ハルカを守りたい』という一心で、ようやくLの正体についての確証を得たっていうのに……)

リューク(今度は『ハルカの悲しむ顔を見たくない』なんていう理由で、Lを殺すのを先延ばしにせざるを得ないとは……)

リューク(俺には全く理解できない価値観、考えだが……)

リューク(ククッ。やっぱり……)

リューク(人間って、面白!)

(階下から星井母の声が聞こえる)

星井母「美希ー。もうすぐごはんだから降りてきなさーい」

美希「あ、はーいなの!」

美希「…………」

美希(……ごめんね。春香)



925:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 15:38:26.17 ID:wrBROp5y0

(星井家のリビング)

美希「あー、お腹空いたの」

菜緒「美希。あんたもお皿運ぶの手伝いなさい」

美希「えー。ミキ、レッスンで疲れてるのにー」

菜緒「そんなこと言ったら私だってバイトで疲れてるもん」

美希「むー」

星井母「はいはい。もういちいち言い合わないの。ほら美希。これパパのとこに持ってって」

美希「はーいなの」

星井父「…………」

美希「はい、パパ」

星井父「……おお、ありがとう。美希」

美希「パパも今日お仕事だったんだよね? 日曜日なのにお疲れ様なの」

星井父「あ、ああ……まあ、たまにはこういう日もあるよ。……美希も今日はずっとレッスンだったのか? 大変だな」

美希「うん。朝からお昼過ぎまでレッスンでー、その後アリーナの下見に行ってー、戻ってからまたレッスンだったの。だからもうくたくたなの」

星井父「……アリーナの下見って、事務所の皆で行ったのか?」

美希「ううん。実は竜崎と二人で行ってたの。皆には内緒でね」

星井父「! ……また、あの竜崎君か?」

美希「うん」

菜緒「ちょ、ちょっとちょっと。何? 美希。あんたやっぱりあの竜崎って人と付き合ってんの?」

美希「ないの」

菜緒「否定早! いやでもそれ、事務所の人に内緒でって……要は二人でお忍びデートってことでしょ?」

美希「そんなんじゃないの」

菜緒「じゃあ何なのよ?」

星井母「そうよ、美希。デートじゃなければ何だっていうの?」

美希「なんでママまで興味津々なの」

星井母「そりゃあ気になるわよ。美希が事務所の人達に黙ってまで、男の子……いえ、男の人と一緒に出掛けるなんて只事じゃないもの」

星井父「…………」

星井父(もし本当に美希がキラで、竜崎の正体を探ろうとしていたのだとしたら……それを、こんなにあっさりこの場で話すか?)

星井父(仮にも、以前キラ事件の捜査本部に居たことになっている俺の前で……)

星井父(いや、だが竜崎から聞いた話が正しいと仮定すれば……美希は竜崎の座り方の件から、竜崎と俺が顔見知りだったことに気付いていることになる)

星井父(ならば当然、竜崎と俺が通じている可能性を考慮し、隠すとかえって怪しまれると判断した……ということか?)

星井父「…………」



926:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 15:50:10.83 ID:wrBROp5y0

菜緒「ちょ、ちょっとパパ。大丈夫?」

星井父「……え?」

菜緒「ショックなのは分かるけど、そんなに深刻な顔しなくたって……」

星井母「そうよ、あなた。ついに私達も美希の成長を認めて受け入れる時が来たのよ」

美希「だからなんでそういう方向に話が進んでるの」

星井父「あ、ああ。いや……そういうわけじゃないが」

星井父「……だが、美希。デートでないのなら、何故竜崎君と二人で? しかも事務所の人達に内緒で……」

菜緒「そうそう。結局何だったわけ?」

美希「うん。ミキね。竜崎にアドバイスもらおうと思ったの。アリーナライブに向けて」

星井父「! …………」

菜緒「アドバイス?」

美希「そ。ミキがライブでキラキラするためにね」

星井母「でも何でまたその……竜崎さんに?」

美希「竜崎はね、一応は春香のファンだけど……ミキ達765プロのアイドル全員の事についても、すっごくよく知ってるの。だからきっと、すごくためになることを言ってくれるんじゃないかなって思ったんだ」

星井父「……でもそれなら何故、事務所の人達に内緒で?」

美希「そりゃあいくら下見とはいえ、ライブ会場に部外者の人を入れちゃうのはダメだからね」

菜緒「でもさ、アドバイスもらうだけならわざわざ会場に行かなくても良くない? そのへんの喫茶店とかでも」

美希「ミキは形から入りたいタイプなの。それに竜崎も、実際に会場に来た方がインスピレーション湧くかなって思って」

星井母「で、実際どうだったの? 竜崎さんから良いアドバイスはもらえたの?」

美希「それは……ライブ当日のミキのパフォーマンスに乞うご期待、ってカンジかな。あはっ」

菜緒「あー、なんか誤魔化したー! 美希、あんたやっぱり本当は……」

美希「だから違うの」

星井父「…………」



927:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 15:55:43.37 ID:wrBROp5y0

菜緒「ほら! またパパが深刻な顔になっちゃったじゃん!」

星井父「え、あ、いや……」

星井母「はいはい。とりあえずもう食べましょう。せっかくの料理が冷めちゃうわ」

菜緒「ちぇっ。いただきまーす」

美希「いただきますなの」

星井父「…………」

星井父(美希は嘘はついていない……)

星井父(それに美希の性格なら……親友に対して密かに抱いていたライバル心なんて、わざわざ家族の前で口にしないだろう)

星井父(そう。何も矛盾は無い。何も……)

星井父(それでも本当に、この美希が……?)

星井父「…………」

美希「…………」








【同時刻・キラ対策捜査本部(都内のホテルの一室)】


(一人捜査本部に残って、星井父の身に着けたマイクが拾う星井家の会話の音声を聴いているL)

L「…………」

美希『――うん。ミキね。竜崎にアドバイスもらおうと思ったの。アリーナライブに向けて』

菜緒『アドバイス?』

美希『そ。ミキがライブでキラキラするためにね』

星井母『でも何でまたその……竜崎さんに?』

美希『竜崎はね、一応は春香のファンだけど……ミキ達765プロのアイドル全員の事についても、すっごくよく知ってるの。だからきっと、すごくためになることを言ってくれるんじゃないかなって思ったんだ』

L「…………」

L(……星井美希……)



941:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 23:32:06.59 ID:vwImDyU70

【翌日・961プロダクション本社ビル内/応接室】


【アリーナライブまで、あと9日】


P「じゃあ、これ。前に約束してたアリーナライブのチケット」

翔太「へへっ、サンキュー! ○○ちゃん!」

北斗「ありがとうございます」

冬馬「……フン」

北斗「冬馬」

冬馬「……この目で見させてもらうぜ。あんたが育てた……765プロの連中の実力をな」

P「ああ。是非見届けてくれ」

翔太「ったく、もう。ホント素直じゃないんだから。冬馬君ってば」

冬馬「は、はぁ!? 翔太お前、何言ってやがる!」

北斗「しかしわざわざこちらにお越し頂かなくとも、言ってもらえれば取りに行きましたのに」

P「何、どのみち用事があったからな」

冬馬「……また黒井のおっさんか?」

P「ああ。まあな」

冬馬「この前といい今回といい……一体何をこそこそやってんだ?」

P「まあ、色々とな」

冬馬「色々って……」

北斗「あまり詮索するなよ。冬馬」

翔太「そうだよ冬馬君。オトナのジジョーってやつかもしんないじゃん?」

冬馬「……フン。まあ何でもいいけどよ」



942:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 23:40:11.82 ID:vwImDyU70

北斗「そういえば……もうすぐ一年になりますね」

P「ん? 何がだ?」

北斗「轡儀さんが事故で亡くなってから、です」

P「! ……ああ。そうか。もうそんなになるのか」

翔太「轡儀ちゃんは本当に残念だったけど……でも不思議だったのは、その後に他のアイドル事務所の社長さんや会長さんも、次々と同じように死んじゃったんだよね」

北斗「ああ。当時はワイドショーとかでも結構取り上げられていたよな。入れ代わるようにキラ事件が起こってからはすっかり報道されなくなったけど」

P「…………」

翔太「本当、何だったんだろうね? 全部ただの偶然の連続だったのかな?」

冬馬「……そんなの俺達に分かるわけねぇだろ。ただあの頃の事を思い出すと、今でも気分がすっきりしねぇ」

P「あの頃はアイドル業界全体が暗く……陰鬱な雰囲気に包まれていたからな」

P「だが……今はもう違う」

冬馬・北斗・翔太「!」

P「アイドル事務所関係者の連続死亡事案……そして今も続いているキラ事件」

P「世の中全体にまだ暗い空気が立ち込めているのは事実だが……それでも俺は、アイドル業界はもう十分に息を吹き返したといえると思う」

北斗「……そうですね。そしてそれは他ならぬ、765プロのアイドル達が大いに躍進した結果……つまりあなたの功績によるところが大きい」

P「俺は何もしてないさ。うちのアイドル達が日々成長しているのは事実だが……それを言うならお前達もだろ」

P「今や、男性アイドルの中では“不動の王者”とまで言われていた流河旱樹を完全に抑え……誰もが認めるトップアイドルの地位にある」

冬馬・北斗・翔太「…………」

P「結成初期から一年弱―――そんな短い期間しかプロデュースしていない身で、とても偉そうなことは言えないが……それでもこれだけは言わせてほしい」

P「お前たちは、俺の誇りだ」

翔太「○○ちゃん……」

北斗「ありがとうございます。その言葉は俺達にとって……この上ない賛辞です」

冬馬「……でも、俺達はまだ真のトップにはなってねぇ」

P「冬馬」

冬馬「あんたが育てた765プロ―――それを倒して、俺達は本当の頂点に立つ」

P「! ……ああ。そうだな」

P「それでこそジュピターのリーダーだ。冬馬」

冬馬「フン。せいぜい首洗って待っていやがれ」

P「ああ、そうさせてもらうよ。……さて、黒井社長が待ってる。そろそろ行くよ」

翔太「うん。またね。○○ちゃん」

北斗「ライブ、期待していますよ」

P「ありがとう。翔太。北斗。……じゃあ、またな」



943:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 23:54:37.69 ID:vwImDyU70

(プロデューサーが去った後、応接室に残っているジュピターの三人)

冬馬「……しかし本当に何だってんだ? あいつと黒井のおっさんが、この短期間に二回も……」

北斗「何だ冬馬。お前まだ気にしてたのか?」

冬馬「だって実際気になるだろ。あいつが移籍してからもう半年以上も経つのに、何で今更になって……」

翔太「まあ確かに……全く気にならないと言ったらウソになるよね。そもそものところからいえば、何でクロちゃんが○○ちゃんを765プロに移籍させたのかも未だに謎のままだしさ」

翔太「建前上は『765プロの前のプロデューサーが急死したから、昔馴染みでもある765プロの社長を助けることにした』ってことなんだろうけど……でもそれまではクロちゃん、765プロを目の敵にしてたんだから……絶対他に理由があるはずだよ」

北斗「それはまあ……そうだな」

冬馬「……なあ」

北斗「ん?」

翔太「何? 冬馬君」

冬馬「まさかあいつ……黒井のおっさんの変な悪巧みか何かに巻き込まれてんじゃねぇだろうな」

北斗「……いや、流石にそれは無いだろ。確かに、黒井社長は一年くらい前までは裏で色々やってたみたいだけど……最近はそういう話もぱったり聞かなくなったし」

翔太「ちょうど轡儀ちゃんが死んじゃった頃からだよね。そういう話を聞かなくなったのって。多分だけど、轡儀ちゃんがいなくなって会社が大変な状態になったから、クロちゃんも裏で変な事してる余裕が無くなったんじゃないかな?」

北斗「確かにそれはあるかもな。あとそれと、そもそも○○さんはそういう話には最初から関わってなかったんじゃないか? 彼の、そういう黒い噂みたいなのは一度も聞いたことが無かったしな」

翔太「それもそうだね。轡儀ちゃんなんかは、昔からクロちゃんの指示で色々やってたみたいだけど……」

冬馬「…………」

北斗「? 冬馬?」

翔太「どうしたの? 冬馬君」

冬馬「いや……ちょっと思い出してたんだが……あれは今年の……2月くらいだったか」

北斗「?」

翔太「何が?」

冬馬「……二人組の刑事が、俺らのとこに来て……あいつの……○○の事とか、何か色々聞いてきたことがあったよな?」

北斗「ああ、そういえばあったな。そんなこと」

翔太「うん。相原刑事と松井刑事だね」

冬馬「お前……よくそんな名前とか覚えてんな」

翔太「まあ一応、何かあったときにすぐに訴えられるようにね。なんか最近多いじゃん? 警察の不祥事とかって」

冬馬「お前ちょっとガチで怖いわ」



944:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/04(木) 00:24:04.50 ID:XOdzZU3n0

冬馬「でもあれ、結局何だったんだ? 何で警察があいつの事を?」

北斗「さあ……『極秘捜査なので今日の事は絶対に誰にも言わないように』とは言われたけど、何の事件の捜査かは教えてくれなかったからなあ」

翔太「それにちょっと変な事も聞かれたよね。確か、○○ちゃんが移籍する前に、765プロの関係者と既に何らかの接点を持っていたかどうか……とか」

冬馬「あー。そういやそれも聞かれたな。段々思い出してきた」

北斗「それで確か、俺達が765プロのリボンちゃん・歌姫ちゃんと歌番組の収録で共演した事がある、って話をしたんだっけな」

冬馬「……天海春香と如月千早な」

翔太「で、その後は……○○ちゃんと今のプロデューサーとを比べてどう思うか、とか……なんかそんなことも聞かれたよね」

北斗「ああ。だが結局、俺達のところへ警察が来たのはあれきりだったし……その後、当の○○さんと会う機会も無かったからすっかり忘れていたけど……今思い返すと、確かに不思議な出来事だったな。聞かれた内容が内容だけに」

冬馬「……警察の目的なんて、俺達が考えて分かるもんでもねぇんだろうけどよ。でも現にああして警察が動いてたって事は……やっぱりあいつ、黒井のおっさん絡みで何か変な事に……」

翔太「うーん。でもそうは言っても、あれからもう五か月くらいは経ってるわけだしね。もし本当に○○ちゃんに何かあるなら、とっくにアリーナライブどころじゃなくなってるんじゃない?」

冬馬「あー……。それはまあ……そうか」

北斗「それに○○さんにやましいことが無いであろうことは、彼が育てたエンジェルちゃん達の輝かしい姿を見れば明らかともいえるしな」

翔太「そうだね。僕もあのお姉さん達の輝きは本物だと思うよ」

冬馬「…………」

北斗「だとすれば今、俺達にできることは……今まで通り、アイドルとしてファンのために全力を尽くすことだけ……か」

翔太「うん。僕もそれでいいと思うよ」

冬馬「……そうだな。結局、俺達のやることは何も変わらねぇ」

北斗「冬馬」

翔太「冬馬君」

冬馬「今まで以上の全力で――……あいつの育てた765プロを倒すだけだ」

冬馬「――見てやがれ、765プロ!」



945:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/04(木) 00:31:28.17 ID:XOdzZU3n0

【961プロダクション本社ビル内/社長室】


黒井「そうか……いよいよ明後日か」

P「はい」

黒井「……で、どうなんだ? 実際のところは……」

P「と、言いますと?」

黒井「星井美希と天海春香だ」

P「! …………」

黒井「Lからこの二人がキラ容疑者として特定されていることを聞かされてから……早一か月弱」

P「…………」

黒井「この間、お前はずっと見てきたのだろう? この二人のアイドルを」

P「……はい」

黒井「ならば今、お前はどう思っているのか。この二人がキラなのか、違うのか」

P「…………」

黒井「別にお前がどう思っていようと、それは明後日に実行される作戦とは無関係なのだろうが……一応、その前に聞いておきたくてな」

黒井「無論、言いたくなければあえて言う必要は無いが……」

P「……そうですね。黒井社長にとっては、望ましくない回答であると思いますが……」

黒井「…………」

P「やはり俺には、二人がキラとは思えません」

黒井「…………」

P「いや、というより……」

P「美希と春香がキラであるはずがない」

黒井「…………」

P「確かに理屈で言えば、Lの推理は極めて合理的だし説得力もある」

P「ですが俺は、美希と春香のプロデューサーです」

黒井「…………」

P「たとえ世界中の人間が美希と春香をキラだと断じたとしても……俺だけはそれをしちゃいけない」

P「それが“アイドル”にとっての“プロデューサー”なのだと」

P「俺はそう思うんです」

黒井「……そうか」

P「はい」



946:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/04(木) 00:53:50.73 ID:XOdzZU3n0

P「だからこそ……Lの捜査には全力で協力する」

P「二人の何を調べてもらっても構わない。あいつらから、キラの証拠なんて出るはずが無い……俺はそう確信しているからです」

黒井「…………」

P「俺はそうすることで、Lに対して二人の潔白を証明する」

P「そして真のキラの逮捕にも協力し……あなたの命を救ってみせる」

黒井「! …………」

P「おこがましいかもしれませんが……それが今の俺の気持ちです」

黒井「……そうか」

P「はい」

黒井「……なあ。○○」

P「? はい」

黒井「キラ事件が解決したら――……うちに戻ってくる気は無いか?」

P「! …………」

黒井「キラが誰であれ……キラが捕まれば私が殺される危険は無くなる」

黒井「それはつまり、お前を765プロに移籍させておく理由もなくなるということだ」

P「……すみません。黒井社長」

黒井「…………」

P「今の俺は、もう……765プロダクションのプロデューサーです」

黒井「! …………」

P「確かに最初、あなたから『765プロへ移籍してくれ』と言われたときは戸惑いました。ジュピターも育成途上でしたしね」

黒井「…………」

P「でも経緯はともあれ、765プロへ移籍して……765プロの、あいつらのプロデューサーになって……毎日、しゃにむに頑張るあいつらの姿を見ているうちに……いつの間にか、あいつらの“ファン”になっている自分がいたんです」

黒井「…………」

P「美希と春香だけじゃない。千早も、伊織も、真も、雪歩も、やよいも、響も、貴音も、あずささんも、亜美も、真美も……」

P「皆……どこに出しても恥ずかしくない、自慢のアイドル達なんです」

黒井「…………」

P「それに何より……皆が日に日に成長し、どんどん上のステージへ登っていくのを、一番近くで見ていたからこそ……思ったんです」

P「俺も一緒に上を目指したい。皆をもっと上のステージへと連れて行きたい……って」

P「俺は今、心の底からそう思っているんです。キラ事件とか、移籍の経緯とか……関係無しに」

黒井「……そうか」

P「はい。……ご期待に応えられず、すみません」

黒井「いや、いいんだ。……分かっていたことだ」

P「黒井社長」

黒井「……ならばせめて、この頼みだけは聞いてくれるか?」

P「? 何ですか?」

黒井「キラ事件が解決したら……一緒に、轡儀の墓参りに行ってくれないか」

P「……ええ。それは……是非に」


美希「デスノート」【その6】



元スレ
美希「デスノート」 2冊目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443343964/
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