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美希「デスノート」【その3】

関連記事:美希「デスノート」【その2】





美希「デスノート」【その3】






11:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/04(日) 15:30:59.79 ID:Y7ASGwEH0

【765プロ事務所/執務室】


 ガチャッ

P「社長。春香と美希、連れて来ました」

社長「おお、すまんね」

春香「わ、ホントに皆いる」

亜美「もー! 遅いよー! はるるんにミキミキー!」

真美「真美達チョー待ちぼうけだよー」

美希「ねぇ、一体何なの?」

真「それがボク達もまだ聞いてないんだ」

雪歩「これから社長さんから発表されるみたいだよ」

美希「ふぅん」

春香「何だろう?」

美希「さあ……」

P「よし。じゃあ二人も来たことだし、全員注目! ……それでは社長。お願いします」

社長「うむ。えーではまず……天海春香君」

春香「! は、はい」

社長「おめでとう! アイドルアワード、受賞決定だ!」

春香「えっ!」

美希「!」

伊織「あ……アイドルアワード!」

真「春香が!?」

雪歩「すごいよ春香ちゃん!」

亜美真美「はるる~ん!」ギュッ

春香「わっ」

やよい「あの、アイドルアワードって?」

響「えっと……全アイドルが対象で、ファンの投票によって選ばれる……とにかくスゴイ賞だぞ!」

やよい「そうなんだぁ。すごいです! 春香さん!」

春香「私が……アイドルアワード……」



12:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/04(日) 15:52:14.97 ID:Y7ASGwEH0

律子「最終候補には皆も入ってたのよ」

伊織「じゃあどうして春香なの?」

P「やっぱり舞台での評価じゃないか」

律子「『春の嵐』は話題になりましたしね」

貴音「あれは素晴らしいみゅーじかるでした」

雪歩「私もすごく感動したから……」

あずさ「私も泣いちゃったわ~」

伊織「まあ、それは異論無いけど……」

亜美「おやおや~。なんだか不満気ですなぁ、いおりん~」

真美「やっぱり『なんで私じゃないのよ!』とか思ってるのカナ~?」

伊織「べ、別にそうは思ってないけど……でも、悔しい気持ちを持つのは当然でしょ。私達は仲間だけど、ライバル同士でもあるんだから」

春香「伊織……」

伊織「まあでも、それはそれとして……春香」

春香「! う、うん」

伊織「アイドルアワード、受賞おめでとう!」

春香「!」

伊織「でも、負けないからねっ!」

春香「……うん! ありがとう! 伊織」

社長「改めておめでとう。天海君」

小鳥「うぅ……おめでとう……春香ちゃん」グスッ

春香「社長さん。小鳥さん。ありがとうございます」

千早「春香」

春香「千早ちゃん」

千早「おめでとう。本当にすごいわ。ずっと頑張ってきたものね」

春香「ううん。千早ちゃんの……皆のおかげだよ。どうもありがとう!」

美希「春香」

春香「美希」

美希「……おめでとう」

春香「……ありがとう」

美希「あはっ」

春香「ふふふっ」

千早「?」



13:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/04(日) 16:00:47.84 ID:Y7ASGwEH0

社長「ウォッホン。えーでは続いて……星井美希君」

美希「! はいなの」

社長「おめでとう! ハリウッドデビュー決定だ!」

美希「えっ?」

伊織「は……ハリウッド!?」

真「って、あのハリウッド……ですよね?」

P「ああ。とある超有名映画監督から直々にオファーが入ってな。ヒロインに起用したいとのことだ」

雪歩「す、すごいよ美希ちゃん……! は、ハリウッドだなんて……」

響「春香のアイドルアワードも驚いたけど……美希は美希でまたスゴイことになってるな……」

美希「ミキが……ハリウッド……」

春香「美希」

美希「! 春香」

春香「……とりあえず、ちょっと歯ぁ食いしばろっか」ニコッ

美希「なんで!?」

春香「いやだっていきなりハリウッドデビューとか普通に腹立つし……」

美希「そこはもうちょっとオブラートに包んでほしいの!」

春香「あはは。なーんて、冗談はさておき……おめでとう! 美希!」

美希「春香」

春香「私も、美希に負けないように頑張る!」

美希「……うん! ありがとうなの! 春香」



14:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/04(日) 16:15:48.15 ID:Y7ASGwEH0

社長「うむ。互いに切磋琢磨し、高めあう……これこそが、私が理想とするアイドル像そのものだ。他のアイドル諸君も、天海君と星井君に負けないよう、これからも精進していってくれたまえ」

伊織「よーし! 負けてられないわ! 次は私が世界に羽ばたいてやるんだから!」

亜美「いよっ、出ました! いおりんの負けず嫌い!」

伊織「う、うるさいわね。別にいいでしょ! 負けず嫌いでも!」

真美「うんうん。それでこそ我らがいおりん! ってカンジだよねー!」

伊織「何で『我らが』なのよ……」

響「でも美希って英語できるのか?」

美希「んーん。中学英語ですら怪しいよ?」

真「最近高校受験終わったばかりとは思えない台詞だね……」

やよい「あ、じゃあ美希さんもライト先生に教えてもらったらいいんじゃないかなーって! きっとすごく丁寧に教えてもらえますよ!」

春香「!」

美希「あ、ああー……例のイケメン東大生の」

やよい「はい! ね、春香さん?」

春香「! そ、そうだね。うん、良いと思うよ。あはは……」

美希「ま、まあ、ちょっと考えとくの。あはは……」

やよい「?」

響「美希ってば、受験終わったばっかなのにまた勉強なんて嫌だって思ってるんだろー?」

美希「え? あ、あー……うん。まあね」

亜美「ミキミキは相変わらずのマイペースだねぇ」

真美「ま、それがミキミキの良い所だけどね」

千早「美希。何なら私が教えてあげましょうか?」

美希「ち、千早さん。……とりあえず、その気持ちだけありがたく受け取っておくの」

 アハハ…

P「――よし。では皆、春香と美希に続いていけるよう、これからもより一層、力を合わせて頑張っていこう!」

アイドル一同「はい!」



15:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/04(日) 16:22:00.26 ID:Y7ASGwEH0

【同日夜・765プロ事務所からの帰路】


(他のアイドル達と別れ、二人で帰っている春香と美希)

春香「はあ……なんかまだ夢みたいだよ」

美希「…………」

春香「まさか私がアイドルアワードに選ばれて……美希は美希でハリウッドデビューなんて」

美希「…………」

春香「このままいけば私達、本当のトップアイドルに……って、美希?」

美希「え?」

春香「もう。何ボーっとしてるの?」

美希「え、あ。いや……」

春香「分かった。まだ実感湧かないんでしょ?」

美希「…………」

春香「まあ分かるよ。なんせハリウッドだもんね」

美希「…………」

春香「あーいいなぁ。私も行きたいなーハリウッド!」

美希「……春香」

春香「? 何? 美希」

美希「いいんだよね……これで」

春香「え?」

美希「ミキは、デスノートを使って沢山の人を殺してきた……いや、今も殺している」

春香「美希」

美希「でもそれは、皆が平和に暮らせる世界をつくるため……皆が幸せに生きていける世界をつくるため」

春香「…………」

美希「その『皆』の中には……ミキも入っていて、いいんだよね。ミキも幸せになって……いいんだよね?」

春香「……何言ってるの? 美希」

美希「えっ」

春香「そんなの、当たり前じゃん」

美希「……春香……」



17:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/04(日) 16:43:39.77 ID:Y7ASGwEH0

春香「美希にだって当然、他の皆と同じように……幸せになる権利がある。きっと今回のハリウッドデビューは、いつも犯罪者裁きを頑張っている美希に神様が与えてくれたご褒美なんだよ」

美希「……ご褒美……」

春香「それに、ずっと前から言ってることだけど……私には私の使命がある。765プロの皆と一緒に、トップアイドルになるっていう使命がね」

美希「! …………」

春香「そしてその『皆』の中には、当然美希も入っている。だから美希のハリウッドデビューは、私がこの使命を果たすことにもつながっているんだよ」

美希「……うん」

春香「美希も、他の皆も、そしてもちろん、私自身も……それぞれがより大きな舞台で活躍できるようになって……いつか765プロのアイドル全員が、誰からも認められるトップアイドルになる」

春香「それが私にとっての使命であり、幸せでもある」

美希「…………」

春香「ねぇ、美希」

美希「! 何? 春香」

春香「美希の目指す『皆が幸せに生きていける世界』の『皆』の中には……私も入ってるんだよね?」

美希「それは……うん。もちろんなの」

春香「なら、何も気にすることは無いじゃない。美希のハリウッドデビューは、美希自身の幸せにも、そして私の幸せにもつながっている。つまりそれは、美希の目指す『皆が幸せに生きていける世界』の実現にもつながっているということ」

美希「……うん。そうだね。……これで、いいんだよね」

春香「これでいい。これでいいんだよ。美希」

美希「春香」

春香「もしそれでもまだ不安があるのなら、私は何回でも……いや、何百回、何千回でも美希に言ってあげる。『これでいいんだよ』って」

美希「……春香……」

春香「『765プロの皆と一緒にトップアイドルになる』という私の使命」

春香「『皆が幸せに生きていける世界をつくる』という美希の理想」

春香「そのどちらも、もう実現間近のところまできている」

春香「だからこのまま、最後まで……力を合わせて、一緒に頑張っていこう! 美希」

美希「……はいなの! 春香」



22:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/04(日) 17:34:59.61 ID:Y7ASGwEH0

春香「でも、こうやって考えていくと……実は全部つながっていたのかも、って思えるんだよね」

美希「? どういうこと? 春香」

春香「うん。遡れば……元々私は、去年のファーストライブの日に死ぬはずだった」

美希「……うん」

春香「でもそこを、ジェラスに……私のファンに救ってもらった」

春香「もしジェラスが私のファンになってくれていなかったら……死神界から、私を見つけてくれていなかったら……今ここにいる私はいない」

美希「…………」

春香「でもそのジェラスは、私の寿命を延ばしたために死んでしまった」

春香「すると今度はレムが、ジェラスの遺したデスノートを私に渡してくれた」

レム「…………」

春香「その結果、私は、当時、961プロとそれに追随する複数のアイドル事務所により行われていた“765プロ潰し”計画……その主要人物のほとんどを殺害することができ、その所為もあってか、私達に対する妨害工作はほぼ無くなった」

春香「もし私がノートを持つことが無ければ、今でも黒井社長達による私達への妨害は続いていただろうし……何より、黒井社長が送り込んだスパイだった、前のプロデューサーさんを美希が殺すこともなかった」

美希「! …………」

春香「だから、もし私がノートを持つことが無ければ……私と美希が『春の嵐』に出演することも、私がアイドルアワードを受賞することも、そして美希がハリウッドデビューすることも……全部無かったと思うんだ」

リューク「……だが、ミキは俺の落としたノートを使って前のプロデューサーを殺している。ならどのみち、ハルカがノートを持つかどうかに関係無く、ミキはそいつを殺していたことになるんじゃないのか?」

春香「……とぼけないでよ。リューク」

リューク「えっ」

春香「私がノートを持つことが無ければ、リュークが美希にノートを渡すこともなかった……そうでしょ?」

リューク「! ……お前、気付いていたのか?」

春香「そりゃあね。だってこんな身近にデスノートの所有者が二人もいるなんて、普通に考えてそんな偶然ありえないし……リュークの性格を考えたら、元から仲間同士だった私達に各々ノートを持たせる形にして、互いにどう動くのかを見て楽しもうとしたとしても全然不思議じゃないしね」

リューク「ククッ。まさかそこまで読まれていたとはな。大したもんだ」

春香「……でも動機はどうあれ、感謝はしてるんだよ? リューク」

リューク「? 感謝?」

春香「うん。だってリュークが美希にノートを渡してくれたおかげで、美希が前のプロデューサーさんを殺してくれたわけだし」

美希「! …………」

春香「まあ仮に美希があのタイミングで殺していなくても、そのうち私が殺していただろうとは思うけど……でも、やっぱりあのタイミングで殺してくれたのはベストなタイミングだったと思う」

美希「……春香……」

春香「あのタイミングで美希が前のプロデューサーさんを殺してくれたからこそ、そのすぐ後に、私が黒井社長を脅迫して今のプロデューサーさんを961プロから移籍させ、彼が元々持っていた業界のネットワークのおかげもあって私達がより多くのお仕事をもらえるようになり、それが結果的には『春の嵐』、私のアイドルアワード受賞、美希のハリウッドデビューにもつながっていったわけだからね」

春香「だから私は、最初から全部がつながっていたように思えるんだ。ジェラスが私を見つけてくれた時から、今日までの事全部が……。ねぇ? レムもそう思うでしょ?」

レム「ああ……そうだな。それはきっと、ハルカに夢と希望を託して死んでいったジェラスの願いでもあっただろうからね」

リューク「レム。お前、死神のくせに随分ロマンチックな事言うんだな」

レム「…………」

リューク「まあ、俺は面白いものが観られれば何でもいい。さっきハルカも言っていたが、たとえばミキとハルカが仲違いをして、互いに殺し合うようになったりすれば最高なんだがな」

美希「! …………」



23:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/04(日) 17:59:44.32 ID:Y7ASGwEH0

春香「……悪いけど、その期待には応えられないよ。リューク」

リューク「ほう」

春香「確かにデスノートの力はすごいけど……それ以上に強い力を持つものが、私達765プロにはあるからね」

リューク「へぇ。一体何なんだ? それは」

春香「私達765プロをつないでいる“絆”だよ。これだけは、デスノートだろうと何だろうと、絶対に引き裂くことはできない。……ね? 美希」

美希「……うん。春香の言うとおりなの」

リューク「“絆”ねぇ……。俺達死神には到底理解できない概念だな。なあ? レム」

レム「いや、私はそうでもないがね」

リューク「あれっ」

レム「私はジェラスと一緒に、ハルカを……いや、ハルカだけでなく、ハルカと共にアイドル活動に励むミキや、他の765プロのアイドル達の姿もずっと見てきたからね」

美希「! ……レム……」

レム「そうやって、頑張る彼女達を見てきたからこそ、ハルカの言う“絆”という不思議な力を持つものも、現実に存在するのだろうと思えるよ」

リューク「……いっそのこと、お前が765プロのプロデューサーになった方がいいんじゃないか? レム」

レム「…………」

春香「あはは。レムがプロデューサーか。うん、それいいかも!」

美希「確かに。少なくともリュークがなるよりは千倍良いって思うな」

リューク「千倍ってお前」

春香「じゃあ、また明日ね。美希。これからも気を緩めずに頑張っていこう! お互いの目標に向かって!」

美希「はいなの! 春香。それじゃあまた明日」

(春香と別れた美希)

リューク「……ククッ。それにしても、流石は天才アイドルだな」

美希「え?」

リューク「日々、犯罪者裁きに精を出していながら、本業では早くもハリウッドデビュー……案外お前の方が、ハルカより先にトップアイドルになったりしてな」

美希「……どっちが先とかは無いの。ミキがトップアイドルになるときは、春香や、他の皆と一緒なんだから」

リューク「あくまでも『皆と一緒に』ってわけか。まあいい。そのスタイルをいつまで貫き通せるか、見届けさせてもらうぜ。ククッ」

美希「…………」

美希(皆と一緒に……トップアイドルに……)

美希(そして皆が平和に、幸せに暮らせる世界……)

美希(春香の言うとおり、どっちももうすぐそこまできている)

美希(今のまま……このままいけば……)

美希(大丈夫。うん……大丈夫なの)

美希(きっと……)

美希「…………」



49:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/10(土) 15:45:06.88 ID:wexKWUTh0

【翌日・春香の自室】


(勉強休憩中の月と春香)

月「アイドルアワード?」

春香「はい。正式な発表はまだなんですけど……昨日、事務所に連絡があったみたいで」

月「すごいじゃないか。確か……全アイドルが対象で、ファン投票によって選ばれる賞だよね?」

春香「そうです。ライトさん、よく知ってますね」

月「ああ。この手の話は粧裕のやつがうるさいからね。確か、去年は流河旱樹が受賞したんだっけ?」

春香「ええ」

月「そうか……でもそうすると、春香ちゃんはもうトップアイドルになったってこと?」

春香「い、いえ! そんな、私なんてまだまだです」

月「そうなの?」

春香「はい。トップアイドルっていうのは、なんていうか、もっとこう、誰からもその実力を認められる存在っていうか……」

月「なるほど。まだまだ鍛錬が必要ってわけだ」

春香「はい!」

月「でもそれはそれとして、勉強の方も鍛錬しないとね。じゃあそろそろ再開しようか」

春香「はぁ~い」

月(今日は、前みたいに父の仕事の事について聞いてくる素振りは無いな)

春香(ライトさんと前に事務所に来た刑事さんが親子ってことは分かったけど……お父さんの事は前に結構聞いちゃったから、今日は少し様子を見よう。あんまり聞き過ぎてもかえって怪しまれるだけだしね)

月(僕の方からも『父が何の事件を担当しているかまでは分からない』と言ってあるから、これ以上は聞きようがないともいえるが……しかし)

春香(でも、ライトさんのお父さんがLと一緒にキラ事件の捜査をしているのは間違いない)

月(もし本当に天海春香と星井美希の二人がキラの能力を持っているとすれば……少なくとも、天海春香は星井美希から『“L”が警察と共にキラ事件の捜査をしている』という情報を連携されている可能性が高い。もちろん、星井係長がその情報を自分の娘である星井美希に話したことがある、という前提での話にはなるが)

春香(そしてもし警察志望のライトさんが、お父さんからある程度キラ事件の捜査状況を聞いているとした場合……)

月(そして警察官である僕の父は……僕の年齢から逆算すれば、現在それなりの地位と役職に就いていると推測することは可能だろう)

春香(ライトさんが『お父さんがLと一緒にキラ事件の捜査をしている』という事実を知っている可能性は十分にある)

月(そう考えれば、『父が捜査本部で直接Lと顔を合わせている』ということまでは分からなくとも、『父がLについての何らかの情報を持っている』という可能性に辿り着くことは十分ありえる。そうであるとすれば……)

春香(その場合、ライトさんは私に嘘をついていることになるけど、Lが美希をキラとして疑っていたことからすれば、美希と同じ事務所に所属している私に対し、それくらい警戒していたとしても不自然ではない。ならば今、下手に動くことはかえって命取りになりかねない。しかしやはり、そうであるとしても……今……)

月(天海春香が僕に提案してくる事は――)

春香(私がライトさんに言うべき事は――)

月(僕の父と接触できる機会を求める事)

春香(ライトさんのお父さんに会わせてもらう事)



51:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/10(土) 16:12:17.74 ID:wexKWUTh0

月(だがもし実際に天海春香が父と顔を合わせるようなことになれば、当然、天海春香には父が以前事務所に来た刑事……すなわち、“L”と共にキラ事件の捜査をしている刑事だということが分かってしまう。さらには父が偽名を用いていたことも)

春香(なぜなら、たとえそれが危険を伴う行為だとしても……もしそれが実現すれば、私は当然の疑問を口にできるから。『あれ? 以前事務所に来られた時、違う名前を名乗っていましたよね?』と)

月(そのような事態は当然避けなければならない。もしそれがばれるようなことがあれば、偽名を使ってまでキラ事件の捜査をしていた父……さらにはその息子である僕さえも殺される危険が生じる)

春香(警察官が一般市民に対して偽名を使って行った聞き取り調査……単に『キラ事件捜査の為』などというだけでは十分な説明とはいえない。偽名を使ったことの理由・背景……そこまで含めて十分に説明してもらう必要がある)

月(しかし黒井社長に対する脅迫の内容から考えると、キラは“L”の正体を知ること……すなわち“L”を殺すことにかなりこだわっているものと考えられる。そうであるとすれば、キラとしても、“L”の正体を知る前に、安易に“L”につながる者を殺すとは思えない。……よって天海春香がキラなら、父がキラ事件の捜査をしているということを知ったとしても、すぐに父や僕を殺すのではなく、むしろ“L”と共にキラ事件の捜査をしている父を通じて……)

春香(その説明内容から、私は現在のキラ事件の捜査状況をある程度知ることができる。そしてそこから、現在その捜査指揮を執っている者……すなわち)

月・春香(“L”に至る手がかりを掴む!)

月(キラなら必ず)

春香(それを目指す)

月「どうかな? 解けた?」

春香「えっと……こうですか?」

月「そう。正解だ」

春香「えへへ。やったぁ!」

月(だが現状、今の天海春香の立場から、いきなり一家庭教師に過ぎない僕の父親に会わせてほしい、などと申し出るのは不自然)

春香(そのためには、まずは私が『ライトさんのお父さんに会わせてほしい』と言っても不自然じゃない程度の状況を作り出す必要がある。そして、そのためには……)

月(それを自然にする為に最もとりやすい手段としては……)

春香(ライトさんに対する好意・好感……それを自然に抱いていくようにみせること)

月(まずは僕に対する積極的な好意を示していくこと)

春香(粧裕ちゃんと私は既に友達になっている。その状況なら、『いつも家庭教師をして頂いてお世話になっているので、ライトさんのご両親にもご挨拶させて下さい』などと申し出たとしても、そこまでおかしくはないはず)

月(そして粧裕とはもう友人関係になっていることから……後は僕の父……だけでは不自然なので、母も含め……家庭教師の礼も兼ねて両親に挨拶したい、とでも言い出す気だろう)

春香(今すぐにとはいかないけど、そう遠い日ともいっていられない)

月(しかしそれならそれで、そのような申し出をしてくるようなら、天海春香に対するキラとしての嫌疑は一層強まる。それにそうやって向こうから距離を縮めてくるようであれば、それを逆手に取って暴いてやるまでだ)
  
春香(なるべく早く、でも決して焦らずに……。絶対に、逆に暴かれるようなことがあってはならない)

月(キラの能力を)

春香(キラの正体が)

月「……じゃあ、次はこの問題を解いてみて」

春香「はい!」



963: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:14:33.94 ID:jizsduFN0

【一週間後・アイドルアワード授賞式会場】


(記者達のフラッシュが瞬く中、春香はトロフィーを胸に抱き、壇上の中央に立っている)

司会『それでは天海さん。受賞のコメントを一言お願いします』

春香『ファンの皆と、事務所の皆のお陰です。本当に……ありがとうございました!』ペコリ

司会『ありがとうございます。天海春香さんでした』

 パチパチパチパチ……

春香「…………」

春香(アイドルアワード……私が、この手で……!)

春香(もう目の前まできている。私が使命を果たす、その瞬間が)

春香(見ててね。ジェラス)

春香(あなたのくれた命、決して無駄にはしないから)

春香(あなたの望んだ、夢見てくれた理想のアイドルに―――絶対になってみせるから)

春香(美希と、765プロの皆と一緒に……必ず)

春香「…………」



53:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/10(土) 16:40:18.82 ID:wexKWUTh0

【一時間後・765プロ事務所】


P「いやあ、それにしても、皆よく遅刻せずに集まれたな」

春香「えへへ……自分達で時間調整するの、慣れてきちゃいました」

真「うちの事務所は未だに、プロデューサー二人体制ですからね」

P「ああ、皆には助けられてるよ。美希と千早は、もう準備を進めてるのか?」

千早「はい」

美希「バッチリなの」

響「なになに? もしかしてハリウッド行きの話?」

やよい「千早さんはニューヨークにレコーディングですよね?」

千早「ええ」

真美「いいなあ。真美もハリセンフォードと握手したいよぅ」

亜美「りっちゃーん。亜美たちもニューヨークでセレブなモーニングを食べたいよ~」

律子「それ、全然仕事とは関係無いじゃない……」

P「そうだ。春香の方はどうだった? アイドルアワードの授賞式。ついさっきだっただろ?」

春香「はい。つつがなく終えてきました!」

P「そうか。それならよかった」

亜美「とか言いつつもはるるんのことだから、つい壇上で転んじゃったりとか~?」

真美「うんうん。それでこそのはるるんだよねー」

春香「残念でした。つまづくことすらなく、しっかりきっちりやり遂げてきましたよ」

亜美「ちぇっ。なーんだ。つまんないのー」

真美「でも確かにはるるん、最近めっきり転ばなくなったよね」

貴音「重心を固定させる術を体得したのでしょうか」

春香「貴音さん。私を何者だと思ってるんですか」

美希「…………」

 ガチャッ

社長「皆、集まったようだね」

P「社長」

社長「えー、諸君。今更言うことでもないが、星井君のハリウッド映画への抜擢、如月君の海外レコーディングをはじめ、アイドル諸君には日々目覚ましい活躍を見せてもらっている。そこでだ。皆には、そろそろ次のステップに進んでもらっても良い頃だと思ってね」

アイドル一同「次のステップ?」



54:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/10(土) 16:46:35.27 ID:wexKWUTh0

社長「うむ。では頼むよ、君」

P「はい」

アイドル一同「…………?」

P「――皆、アリーナだ! アリーナライブが決定したんだ!」

アイドル一同「アリーナ!?」

春香・美希「! …………」

P「ああ。今から四か月後、8月の開催だ。最高に暑い季節に、最高に熱いライブをするんだ!」

亜美「うわー! やっぱり夏ライブだったんだー! 亜美の予想大当たりっしょー!」

真美「でもまさかアリーナとはね~。真美達も遂にここまできたってカンジだね」

律子「それに今回のアリーナは、765プロにとって過去最大のライブになるわ。皆にとっても、次につながる大切なライブになるわよ」

響「そう言われると……なんか緊張するな」

貴音「真、気を引き締めて臨まねばなりませんね」

P「そこでだ。今回のライブは合宿を組みたいと思っているのと、さらに新しい試みが二つあるんだ」

貴音「試み……ですか?」

P「ああ。まず一つ目に、今回はバックダンサーを取り入れたステージにしてみたいと思っている」

真「ダンサー……すごい! 広いステージでも、派手に見えますよね!」

P「ああ。スクールに通っているアイドル候補生に頼むことになると思うが、皆はアイドルの先輩として、支えてあげてほしい」

あずさ「あらあら、にぎやかになるわね」

やよい「えへへ……先輩って、なんかかっこいいかも!」

雪歩「うぅ、ちょっと緊張しちゃうなぁ……」

P「それから二つ目だ。今回初めて、皆の中にリーダーを立てようと思う。リーダーを中心に、まとまっていってほしい」

伊織「リーダー?」

真美「そういえば、今までいなかったよね?」

響「ねえ、誰がリーダーになるの?」

(互いに見つめ合い、頷き合うプロデューサーと律子)

P「色々と考えたんだが……」

アイドル一同「…………」



56:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/10(土) 17:08:45.23 ID:wexKWUTh0

P「リーダーは……春香。お前に任せたいと思うんだ」

春香「……え、えぇ!? わ、私がリーダーですか?」

P「どうだ? この半年間、俺なりに皆を見てきた結果なんだけど」

春香「えっ、と……」

(他のアイドル達を見回す春香。春香に向けて微笑む他のアイドル達)

春香「……はい! 天海春香、リーダー頑張ります!」

アイドル一同「おおー!」

 パチパチパチパチ……

真「よろしく、リーダー」

千早「頑張って。春香」

春香「うん! ありがとう。真、千早ちゃん」

美希「春香」

春香「美希」

美希「おめでとう。これからもよろしくね、リーダー」

春香「うん。ありがとう。美希」

美希「……あはっ」

春香「……ふふっ」

真・千早「?」

P「よし、皆。新しい試みで不安もあるだろうけど、全員で力を合わせて成功させよう! 最高のステージを俺に見せてくれ!」

アイドル一同「はい!」

伊織「っていうか、なんであんたのためなのよ?」

亜美「そうだそうだー!」

P「あ、あはは……えっと……」

春香「…………」

春香(アリーナで、ライブ……)

春香(そして私が、リーダー……)

春香「…………」



57:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/10(土) 17:26:04.90 ID:wexKWUTh0

【765プロ事務所の屋上】


(二人で屋上のベンチに腰掛けている春香と美希)

春香「アリーナでライブができるってだけでも夢みたいなのに……まさか私がリーダーに選ばれるなんて」

美希「春香」

春香「生きてて良かった」

美希「……その台詞、春香が実感込めて言うとすごく重いの」

春香「まあこの前も言ったけど、私本来なら一年前に死んでたからね」

美希「だから重いの! あえてまた言わなくても分かってるの!」

春香「はぁ……なんか私、アイドルアワードのあたりから幸運が続き過ぎてて、ちょっと怖いくらいだね」

美希「……でも、ミキ的には『当然』って思うな」

春香「美希」

美希「春香は他の誰よりも、アイドルとして頑張ってきたと思うから……だから全部幸運なんかじゃなく、当然の事だって思うの。アイドルアワードの受賞も、アリーナライブのリーダーに選ばれたのも」

春香「……美希……」

美希「うん」

春香「……でもそれ、ハリウッドデビューが決まってる美希に言われても嫌味にしか聞こえないんだけど」

美希「えっ」

春香「なーんちゃって。ウソだよ、ウソ。ありがとうね。美希」

美希「……もー。春香ってば、驚かさないでなの」

春香「あはは。ごめんごめん。でもこれで後は……」

美希「? 何? 春香」

春香「……いや、とにかく今は目の前のお仕事に集中しよう」

美希「……Lの事?」

春香「……うん。正直言って、やっぱり気にはなるけど……でも今のところ、特にその手がかりも掴めそうにないしね。暫くはこのまま様子見かな」

美希「そうだね。例の『救世主キラ伝説』の掲示板にも、今のところそれらしい書き込みは無いし」

春香「うん。それに私の目標はあくまでも美希や他の皆と一緒にトップアイドルになることだからね。それが果たされるのであれば、そこまでLにこだわる必要も無いかなって」

美希「…………」



58:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/10(土) 17:44:41.60 ID:wexKWUTh0

春香「? どうしたの? 美希」

美希「ううん。なんでもないの」

春香「そう? ならいいけど」

美希「…………」

美希(春香……口ではそう言ってるけど、本心ではまだきっと、Lの事を……)

春香「…………」

春香(気付かれたかな? 美希ってば、妙に勘が鋭いとこあるからなぁ……)

春香(まあでも、仮に美希に気付かれたとしても、私がやることは何も変わらない)

春香(たとえ今は何も仕掛けて来ていないとしても、そう遠くないうちに、Lは必ずまた私達の前に立ちはだかる)

春香(一時的とはいえ、美希の部屋にあそこまでの数の監視カメラを付けたほどの者が、そんなに簡単に、キラを捕まえることを諦めるはずがないからだ)

春香(だから私は……必ずLを殺さなければならない)

春香(それが美希の為であり……いずれトップアイドルとなる私達の、765プロ全員の為になるのだから)

春香(もうここまできたんだ。絶対に負けるわけにはいかない)

春香(そのためにも、まずは夜神月……そして彼からその父親である夜神総一郎、そしてLへと……必ず辿り着いてみせる)

春香「……さて、そろそろ戻ろっか。もうお昼休憩終わりだし」

美希「……うん。そうだね」

美希(春香……今、何を考えているの?)

春香(美希……もう少しだよ。もう少しで……私達の理想とする世界がつくれる!)



84:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/14(水) 22:35:37.77 ID:77yDZusS0

【二週間後・キラ対策捜査本部(都内のホテルの一室)】


L「…………」

L(夜神月のコミュニケーション能力を活かしての接触が期待できそうな、星井美希と天海春香以外の765プロダクション所属アイドル……)

L(現時点での最有力候補は……やはり既に夜神月が家庭教師として接点を持っている高槻やよいか)

L(彼女も含め、星井美希と天海春香以外の765プロダクション所属アイドルについては、まだ765プロダクション側に顔の割れていない相沢と松田とで手分けして尾行捜査をしてもらっているが……)

L(やはり皆、今を時めく人気のアイドル……一般人が簡単に接触できそうな隙は見付けられない)

L(だが同時に、捜査としての進展もあった)

L(夜神月が直接接触している高槻やよいを含め……現時点で、星井美希と天海春香以外に特に怪しい動きのあったアイドルはいない)

L(南空ナオミからの報告にあった萩原雪歩の一人焼肉も、どうやら彼女にとっては日常の一コマのようだし……)

L(また765プロダクション全体が、組織的に犯行を行っているという可能性もあったことから、夜神局長と模木に、765プロダクションという組織全体に何か不審な点が無いか、という観点からの調査もしてもらっているが……)

L(こちらの方も現状、特に不審な点は無い。確かに黒井氏が言っていたとおり、961プロダクションおよびそれに追従していた他のアイドル事務所が765プロダクションを陥れようとしていた事実はあったようだが、この件についての765プロダクション側は完全に被害者……形式的には765プロダクション側に非や落ち度があったこともあったようだが、それらも実際は全て765プロダクションの前任のプロデューサー……黒井氏が送り込んだスパイであった者によるもの。つまり結局は全て961プロダクション側の自作自演であり、765プロダクション側には何ら帰責性は無かった)

L(結論として、組織体としての765プロダクションはクリーンと言っていい。また社長の高木順二朗氏をはじめ、その他所属従業員にも特に不審な点は無い)

L(キラ……いや、天海春香によって961プロダクションから移籍させられたと思われる現プロデューサーも、現時点では、プロデューサーとしての仕事以外に不自然な行動はみられない)

L(とすると、やはりこの事件……組織体としての765プロダクションとは無関係に、天海春香・星井美希の両名が順次、何らかのきっかけで殺しの能力を得て、今は二人で連携を取りながら行っているものとみるのが自然)

L(そうであるとすれば、765プロダクション内においても、この二人以外の者はこの事実を知らないものと考えられる)

L(また星井係長の録音捜査からも、今のところ特に星井美希との会話から有益な情報は得られていない)

L(もっとも、星井係長から星井美希には『キラ事件の担当からは外れた』と伝えてあるとのことなので、星井美希からも星井係長に対しては探りを入れようがない状況であるとはいえるが)

L(だとすれば、現状ではやはり、高槻やよい……彼女しかいないか)

L(夜神月が今後、家庭教師を通じて彼女とより懇意になることで、そこから星井美希または天海春香の情報を得る……)

L(幸いにも、現在、高槻やよいは夜神月をまるで兄のように慕っており、二人の関係性は極めて良好)

L(ただそうは言っても、同じ事務所の他のアイドル仲間との関係性に比べれば、まだまだ表面的なものに留まっているとはいわざるをえない)

L(なら今はもう少し、二人の信頼関係が熟すのを待つべきか……)

L「…………」



85:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/14(水) 22:52:13.66 ID:77yDZusS0

月「どうした? 竜崎。少し疲れているように見えるが」

L「月くん。そうですね……確かに捜査自体は着実に進展しているものの、現状、少し行き詰まってきたようにも感じています。疲れて見えるのはそのせいかと」

月「まあ、予想はしていたがやはりそう簡単にはキラの尻尾は掴めないな。根気よくやるしかない」

L「そうですね。……そういえば先週に続き、今週も天海春香の家庭教師はお休みですか」

月「ああ。アリーナライブのリーダーになった関係で、スケジュールが色々動いたらしい」

L「なるほど。まあ仕方無いですね」

総一郎「……竜崎」

L「はい。何でしょう。夜神さん」

総一郎「たまには竜崎も休みを取ってはどうだ? 我々はある程度交代で休んでいるが、竜崎はずっとこの捜査本部に篭りきり……それでは疲れが溜まるのも当然だ」

L「ありがとうございます。でも今は事件の事を考えているときが一番落ち着きますので」

松田「すごいっすね、竜崎は……世間はゴールデンウィークで浮かれてるっていうのに」

L「別に松田さんも外で浮かれて頂いて構いませんよ? 今日は星井さんと相沢さんも休まれていることですし」

松田「えっ。そ、そうですか? それじゃあお言葉に甘えて……」

L「もっとも、模木さんは今朝からずっと、黙々と765プロダクションの各アイドルの尾行データを集約してくれていますけどね」

模木「…………」カタカタカタカタ

松田「はい。僕も手伝います。そもそもそれ、僕が尾行した分のデータも含まれてますしね……」

月「……さて。すみませんが、僕は今日はこのへんで失礼します」

松田「おっ。月くん、もしかしてデート?」

月「違いますよ。これから大学の学祭を回る予定なんです。友人達とその待ち合わせをしていて」

総一郎「そうか。東大の学祭は5月と11月に二回やると言っていたな」

月「そう。それで今日はその一回目の方ってわけ。そういうわけで申し訳無いけど、後はよろしく頼むよ。父さん」

総一郎「何、お前はまだ大学生になったばかりの身なんだ。何も遠慮することなく、存分に楽しんできなさい」

月「ああ。そうさせてもらうよ」

L「……大学の学祭、ですか」

月「竜崎」

L「楽しそうですね。羨ましいです」

月「なんなら、竜崎も行くか?」

L「えっ」

月「ほら」スッ

(学祭のパンフレットをLに渡す月)

L「…………」パラパラ

月「といっても、『顔を見るだけで人を殺せる』能力を持ったキラがどこに居るか分からないんだ。流石に無理か」

L「……そうですね。残念ですが…… ! 」

月「?」

L「……月くん」

月「? 何だ? 竜崎」

L「私も……行きたいです」

月「え?」

L「連れて行ってもらえませんか? ……学祭」



86:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/14(水) 23:15:04.14 ID:77yDZusS0

【一時間後・東応大学キャンパス】


(賑わうキャンパス内を二人で歩いているLと月。Lは、東応大学の入学式の日に着けていたのと同じ、ひょっとこのような面を着けている)

L「気を遣わせてしまってすみません。月くん。せっかくご友人達と回る予定だったところを、別行動にさせてしまって」

月「いや、それは別にいいが……。(流石に、友人達をこんな変な面を着けた奴と一緒に歩かせるわけにはいかないからな……)」

L「? 何か言いましたか?」

月「いや、なんでもないよ。それより竜崎。なんでわざわざ、またそんな面を着けてまで学祭に来る気になったんだ?」

L「……どうしても、会っておきたい人物がいまして」

月「? 会っておきたい人物? 一体誰だ?」

L「……彼女です」スッ

月「え?」

(人だかりの向こう側、屋外のステージ上でライブをしている女性アイドルを指差すL)

月「……? アイドルのライブイベントか? どれどれ……」パラパラ

(学祭のパンフレットを捲る月)

月「……弥海砂? ……知らないな」

L「まだデビューして半年と少しくらいですからね。月くんが知らないのも無理は無いと思います」

月「……彼女に会いに来たってことは……あのアイドルのファンなのか? 竜崎は」

L「いえ、そういうわけではありません。キラ事件の捜査で星井美希を調べていたら、彼女に辿り着いたんです」

月「えっ」

L「覚えていますか? 月くんを初めて捜査本部にお連れした日に、私が『星井美希と接点のある、他の事務所所属のアイドルに接触してもらおうと考えて月くんをこの捜査本部にお呼びした』と言ったこと……」

月「ああ……そういえば言っていたな。じゃあそれがこのアイドル……弥海砂ってことか?」

L「はい。星井美希の身辺を洗っていたら行き着きました。二人は昨年、○×ピザのCMでコラボ出演して以来親交があり、今ではプライベートでもよく遊ぶ仲だそうです」

月「よくそんなことまで分かったな」

L「はい。ワタリが調べた情報なので確かです。しかし、こんな所に来る予定があったとは知りませんでした。……最近は、765プロダクションの方ばかり調べていて、弥海砂の方はほとんどチェックしていませんでしたので」

月「僕が既に天海春香と接点を持っていた以上……今、僕が両者に対して同時に接触するのはやめておいた方がいいだろう、という話になったからか」

L「はい。ですが、こんな所に来ていたとなれば話は別です。この状況なら、上手くやれば極自然な形で弥海砂との接点が作れる……東応大学の学祭に来ていたのは弥海砂の方なのですから、この大学の学生である月くんとこの場で偶然知り合いになったとしても、何らおかしくありません」

月「それはまあ、そうかもしれないが……では、僕が彼女……弥海砂に近付き、そこから星井美希を探っていくということか? 竜崎が元々考えていた計画を実行するとしたら」

L「はい。月くんの卓越したコミュニケーション能力なら十分可能だと思います」

月「……竜崎。家庭教師の件以外に、僕に危害が及びかねないような捜査は頼まないって言っていなかったか? 捜査本部では」

L「それはそれ、これはこれです。月くんだって、キラを捕まえたいという気持ちは私と同じのはずです」

月「答えになってないぞ、竜崎……。まあ僕は別に構わないが、父への説明と説得は後でちゃんとしておいてくれよ」

L「はい。勿論です。夜神さんも誠意を込めて説明すればきっと分かってくれると思います」

月「じゃあそれは任せるが……しかし実際問題、仮に上手く接触できたとしても、そこからキラの情報を掴むというところまでいけるか? 単に星井美希と交流があるというだけのアイドルだろ?」

L「もちろん、ただのアイドル友達というだけなら難しいでしょう。……ですが、私が弥海砂に着目したのは、単に星井美希と交流関係があるからというだけではありません」

月「? というと?」



87:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/14(水) 23:43:06.72 ID:77yDZusS0

L「実は……彼女は今から一年半ほど前に、両親を強盗に殺されています」

月「!」

L「そしてその犯人は……それから約一年後に、キラによって裁かれています」

月「! ……そうだったのか……」

L「はい。これは彼女のファンサイトに書かれていた内容ですが……ワタリに裏を取らせた情報なので確かです」

月「なるほど……つまり弥海砂にとっては……キラは両親の仇を討ってくれた恩人、というわけか」

L「はい。ゆえに、彼女は完全にキラ肯定派……いえ、もはやキラ信者といってもいいくらいのレベルです。今でもブログやSNSではキラ肯定をほのめかす発言をしばしば行っていますし、『キラに会いたい』など内容が過激過ぎて削除されたものすらあります。おそらく事務所側からストップがかかったんでしょうね」

月「そんなことまで調べていたのか」

L「はい。キラに付け入るのであれば、キラ信者は最適ですから」

月「なるほど。ちなみに、弥海砂は星井美希とプライベートでも親交があるとのことだが……現時点で、キラ肯定派であることを打ち明けているのか?」

L「残念ながらそこまでは分かりません。ですが、元々親交のあった弥海砂がキラ肯定派であることを打ち明ければ……星井美希がキラだった場合、何らかの形でキラのヒントを掴める可能性は高いと思います。むしろ場合によっては、キラの支持者として犯罪者裁きの手伝いを要請されるという可能性も」

月「まあそこまでいけば出来過ぎなくらいだが……しかしその前提として、まずは僕が弥海砂に接触しないといけないんだろう?」

L「はい。ですが間違っても、キラを追っているということを気付かれてはなりません。キラ信者である弥海砂にそんなことを気付かれたら最後、ネット上に顔と名前をアップされてキラに殺されてしまうかもしれませんので」

月「……お前、そんな危険な事をよく平気で人にさせようとするな」

L「もちろん、月くんならそんな事態にはならないと確信しているからです」

月「まあいいが……しかしそうすると、当然の事ながら、こちらがキラを追っていることは隠し……いやむしろ、いっそキラ肯定派であるかのように振る舞う……」

L「はい。その方が、弥海砂も早い段階で心を許す可能性が高くなると思います」

月「そしてある程度、弥海砂との距離が縮まった段階で、『キラはアイドルの星井美希かもしれない』と伝える……」

L「はい。『キラに会いたい』とまで言っていた弥海砂なら、その手の話には確実に興味を持つ。そしてそれが自分の親しい友人となれば、本当にキラかどうかを必ず確かめたいと思うはずです」

月「そうなれば、弥海砂を通じて、星井美希からキラに関する情報を得られるかもしれない……ということか」

L「はい」



88:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/15(木) 00:10:41.23 ID:8JGFnBIo0

月「……だが問題は、この状況からどう弥海砂との接点を作るか……」

L「なんとかなりませんか? 月くん」

月「なんとかって言われてもな……同じ大学の学生ならまだしも、単に学祭のイベントに呼ばれただけのアイドルとなると……」

L「たとえば、あの司会らしき女性を介して……などはどうでしょうか」

(海砂がライブをしているステージの脇で、マイクを持って立っている女性を指差すL)

月「司会?」

L「はい。彼女はおそらくこの大学の学生ではないかと思うのですが……月くんと、面識があったりしませんか?」

月「ああ……彼女は確か……高田清美、といったかな」

L「! ご友人ですか?」

月「いや……ミス東大の呼び声高い新入生だ。現に、秋の方の学祭で開催される『ミス東大コンテスト』に出場するよう、実行委員会から早くも声を掛けられていると聞いた。自分で言うのも何だが、全科目満点で首席入学した僕と並んで注目の新入生だ」

L「そうでしたか。では、彼女との面識は……」

月「残念ながら、直接は無いな。まあ向こうも、そういう事情でおそらく僕の存在は知っているとは思うが」

L「ではなんとかなりそうですね。同じ大学の注目の新入生同士……一方が他方に声を掛けても全く不自然ではありません」

月「まあ高田清美はそれでもいいが……そこから弥海砂につながるかはなんともいえないな。今のところ、弥海砂は学祭のイベントに呼ばれただけのアイドルで、高田清美はそのイベントの司会というだけだろう」

L「イベントの後に打ち上げに行ったりしないでしょうか? 関係者同士で」

月「それはあるかもしれないが……普通に考えて、ゲストに呼ばれたアイドルまでは参加しないんじゃないか?」

L「そういうものですか……あ、歌が終わりましたね」

月「…………」



89:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/15(木) 00:29:55.32 ID:8JGFnBIo0

海砂『はーい。というわけでミサの新曲、『もっとキラキラにして♪』を聴いて頂きました~! どうもありがとうございまーす!』

 ワァアアアア……

清美『弥さん、ありがとうございました。ではここで、会場の皆様にも参加して頂けるコーナーに移らせて頂きたいと思います』

海砂『…………』ジー

清美『? あ、弥さん?』

海砂『ずっと思ってたけど……あなた、すごい美人ね。ミス東大候補ってカンジ?』

清美『は、はぁ!? わ、私はミス○○だとかうわついた物は嫌いです』

海砂『えー? でもなんかまんざらでもなさそうだけどー?』

 ドッ アハハハハハ……

清美『も、もう! 進行もあるんだから、あんまり台本に無いことを言わないで下さい!』

海砂『はぁ~い』

清美『ええと、では会場の皆様の中から、何人かステージの方へ…… ! 』

清美(……あれは……)

海砂『? どうしたの?』

清美『…………』

L「……あの司会の女性……高田清美……でしたか。何か、我々の方を見てませんか?」

月「? そうか?」

清美『…………』

清美(間違い無い。あれは……今年度の入試を全科目満点で合格したという……主席入学者の夜神月!)

清美(……ちょうどいいわ。彼とは一度話をしてみたいと思っていたし……それに私と並んで注目の新入生。ステージの盛り上げ役としても最適でしょう)

清美『おや? あそこにおられるのは……今年度の首席入学者、夜神月くんではないでしょうか?』

観客一同「!?」ザワッ

L「!」

月「なっ……」

海砂『首席入学者?』

清美『……どうやら、そのようですね! では、今年度の東応大学の入学試験を全科目満点で突破された天才・夜神月くん! ここで巡り合わせたのも何かの縁です。どうぞステージの方へ!』

 ワァアアアア……

月「! …………」

L「月くん。絶好のチャンスです」

月「竜崎」

L「場も盛り上がっていますし、是非ステージに上がって、弥海砂と接点を」

月「……分かったよ」

清美『えっと、そのお隣の……ユニークなお面を着けておられる方はお友達でしょうか?』

L「え?」

清美『ではせっかくですので、お友達の方もご一緒にステージへどうぞ!』

 ワァアアアア……

L「…………」

月「……どうせだ。お前も来い、竜崎。その面を着けていれば大丈夫だろ」

L「……はぁ。仕方ありませんね」



90:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/15(木) 00:47:42.38 ID:8JGFnBIo0

(ステージに上がった月とL。二人は両隣を清美と海砂に挟まれる形で立っている)

清美『……というわけで、今年度の東応大学の首席入学者、夜神月くんと、そのお友達の……』スッ

(マイクをLに向ける清美)

L『……竜崎です』

清美『はい、竜崎さんですね。ところで竜崎さんは、どうしてそんなお面を着けていらしてるんですか?』

L『えー……これはですね……』

月「…………」

海砂「…………」チラッ

海砂(この首席入学者の人……すごくカッコイイ……ぶっちゃけタイプかも)

海砂(ってことは、もしかして……友達のお面の人も、素顔はすごくイケメンだったりするのかな?)

海砂(だったらちょっと見てみたいかも……)

海砂(……よし。それにどうせなら、場も盛り上がった方が良いしね)

月「…………」

月(それにしても妙な事になったな……)

月(まあでも、確かにこの状況ならこのアイドル……弥海砂と接点を持つのも容易に……ん?)

海砂「…………」コソコソ

(音を立てずにLの背後に忍び寄る海砂)

月(……何を……?)

清美『魔除け……ですか?』

L『はい。それと他には……』

海砂(……よし。全く気付かれてない。今だ!)

月「! ま、待て……」

海砂「えーい!」バッ

L「!」

(背後から海砂に面を外されたL)

清美「あっ」

L「…………!」

月「なっ……!」



91:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/15(木) 01:17:45.63 ID:8JGFnBIo0

海砂『もう、せっかくのステージなのに、こんなの着けてちゃ盛り下がっちゃうでしょー』

 アハハハハ……

清美『あ、弥さん! お客さんに対して勝手にそんな……』

海砂『ん~? でもあなた、結構個性的で素敵なお顔じゃない。お面なんて着けてない方が全然いけてるじゃん』

L「…………」

清美『ひ、人の話を聞きなさい!』

 アハハハハ……

海砂(あー、こういうタイプだったかぁ。ミサ的にはあんまりタイプじゃないかな? まあ嫌いじゃないけど……)

L「…………」

月「りゅ、竜崎……」

L「……まあ、学祭のプログラムは事前に全てチェック済みです。今日のイベントに765プロダクションのアイドルは誰も呼ばれていませ……」

「海砂ちゃーん!」

海砂『あっ、美希ちゃん!』

L「!」

月「えっ」

美希「ちょっと遅れちゃったけど、来たの!」ブンブン

(ステージ近くの観客席から手を振っている美希)

海砂『来てくれたんだー! ありがとー!』

L「……星井、美希……」

月「な、何でここに……?」

「……あれ? ライトさん?」

月「えっ」

春香「……なんで、ライトさんがステージに?」

月「! …………」

粧裕「ホントだ。何やってるの? お兄ちゃん」

やよい「あーっ! ライト先生だー!」

(美希の横に春香、粧裕、やよいの三人が並んで立っている)

月「……な……」

L「……あま、み……はるか?」

月「! 竜崎」

春香「…………」

美希「えっ? もしかして……あのステージにいる人が『夜神月』って人なの? 春香」

春香「…………」

美希「春香?」

春香「…………」

春香(ライトさんの横にいる人の、名前……)

春香(…… L Lawliet ……?)

春香「…………」



141:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 15:58:12.36 ID:D8YXYo200

【一週間前・美希の自室】


美希「さて、今日の分の裁きも終わったし、そろそろ寝ようかな」

リューク「しかし大変だな。ハリウッド行きの準備もしながら、犯罪者裁きもこれまで通りにこなさないといけないってのは」

美希「まあね。でも今のところは全然大丈夫なの。ハリウッドも実際に行くのはアリーナライブが終わってからだし、まだ大分余裕あるからね」

リューク「なるほど。ちなみに、アメリカに行ってる間はアメリカの犯罪者を中心に裁くのか?」

美希「……そんなあからさまな事したら、ミキがキラだって言ってるようなものなの」

リューク「それもそうか」

美希「当面の間はこれまで通り、日本の犯罪者を中心に裁いていって、他の国の犯罪者も、世界的に報道されるような凶悪なのは裁くようにするの」

リューク「ふむ」

美希「まあでも将来的には……他の国の犯罪者も、偏り無く裁けるようにするのが理想かな。日本だけが平和になっても、本当の意味で『平和な世界』とはいえないしね」

リューク「じゃあミキは世界全体を平和にしたいんだな」

美希「そうだよ。だからミキは最初からずっと、そう願ってデスノートを使ってるの」

美希「世界中の人が皆、平和に幸せに暮らせたら、それが一番良いに決まってるの」

リューク「なるほどな。(……言ってることは立派だが、やってることは人殺し……。やっぱり人間って面白!)」

美希「? 何か言った? リューク」

リューク「いや、別に」

美希「むー。……あっ。電話だ。……海砂ちゃん?」ピッ

美希「ミキなの」

海砂『ミサだよー。美希ちゃんまだ起きてた?』

美希「うん。ちょうど寝ようとしてたとこだったの」

海砂『あ、ごめん。じゃあ明日にした方がいいかな?』

美希「ううん。大丈夫なの。何? 海砂ちゃん」



142:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 16:09:44.09 ID:D8YXYo200

海砂『うん。実は来週の日曜日、東大の学祭でライブイベントをするんだけど……もしよかったら観に来てくれない?』

美希「行くの!」

海砂『即答ありがとう。流石美希ちゃん』

美希「海砂ちゃんのライブって観たことなかったから、すごく楽しみなの」

海砂『ミサも美希ちゃんに観に来てもらえると思うとやる気が出るよ。あ、じゃあよかったら765プロの他の友達も誘っておいでよ。ミサも仲良くなりたいし』

美希「わかったの! じゃあ皆に声掛けてみるね」

海砂『あ、でも流石に765プロのアイドルが何人も集まったら大騒ぎになっちゃうかもしれないから……美希ちゃん以外に一人か二人くらいの方が良いかな?」

美希「わかったの。じゃあそんな感じにするの」

海砂『ごめんね。誘っておきながら注文多くて』

美希「ううん。誘ってくれてありがとうなの。本当に楽しみなの」

海砂『そう言ってもらえると嬉しいな。じゃあ詳しい場所や時間はメールで送るね』

美希「らじゃーなの」

海砂『じゃあそういうことでよろしくね。おやすみ』

美希「おやすみなさいなの」ピッ

美希「……そっか。海砂ちゃんライブやるんだ。しかも東大で……ん? 東大?」

リューク「それって確か、『夜神月』ってやつが通ってる大学じゃないのか? 今、ハルカの家庭教師をしてるっていう」

美希「……うん。そうだね」

リューク「どうするんだ? ミキ。じゃあやっぱり、ハルカを誘うのか?」

美希「…………」

美希(……春香……か)

美希(でも確かに、良い機会かもしれない)

美希(最近、春香の考えてる事がよく分からないときがあるし……)

美希(少し開放的な場所で、二人でゆっくり話ができれば……)

美希「そうだね。春香を誘ってみるの」

リューク「おっ」

美希「…………」ピッ

春香『――もしもし。美希?』

美希「ミキなの。まだ起きてた? 春香」

春香『うん。何か用事?』

美希「えっとね。前に話してた、弥海砂ちゃんって覚えてる? ミキと○×ピザのCMでコラボ出演したことのある……」

春香『あー、確か……ヨシダプロの人だっけ?』

美希「そうそう」

春香『その人がどうかしたの?』



144:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 16:27:37.49 ID:D8YXYo200

美希「うん。実は今連絡があって、来週の日曜、東大の学祭でライブイベントやるんだって」

春香『! 東大で』

美希「うん。で、よかったら観に来ない? って誘われたから、ミキは行くつもりなんだけど……もし予定が合えば春香も一緒にどうかなって思って」

春香『あー……そういうことね』

美希「あっ。もしかして、もう予定入ってた?」

春香『いや、そういうわけじゃないんだけど……』

美希「?」

春香『ほら、東大ってことは……ライトさんも来てるかもしれないでしょ?』

美希「? それがなんかまずいの?」

春香『いやほら、アリーナライブのリーダーになった関係でスケジュールが色々動いたから、今週と来週、家庭教師お休みにしてもらったって言ったでしょ?』

美希「ああ、うん。そういえば言ってたね」

春香『なのに、普通に学祭に遊びに来てたらなんか感じ悪いっていうか……好感度下がらないかな? 『お前、家庭教師休みにしといて……』みたいな』

美希「うーん……ミキ、その人のこと直接知らないから分かんないけど……フツーに考えて、それくらい別に大丈夫なんじゃない? 別にウソついて休みにしてもらったわけでもないし」

春香『まあそうかもしれないけど……でも私、ライトさんにほのかな恋心を抱きつつある少女を演じているところだからなあ……。あんまりそのイメージを崩すような行動は……』

美希「じゃあ行かないの?」

春香『……いや、正直行きたい。他のアイドルのライブってそんなに観る機会無いから、純粋に勉強したい……アリーナライブも控えていることだしね』

美希「じゃあどうするの?」

春香『……分かった。行くよ。まあ東大って言っても広いから、そうそう会うことも無いだろうしね。それにライトさんがアイドルのライブイベントに足を止めるとも思えないし』

美希「じゃあ行くってことでいいんだね」

春香『うん』

美希「わかったの。詳しい時間や場所はまたメールするね」

春香『はーい』

美希「じゃあそういうことで。また明日ね、春香。おやすみなさいなの」

春香『うん。誘ってくれてありがとうね、美希。じゃあおやすみ』

美希「はいなの。それじゃあね」ピッ

美希「…………」

美希(……電話やメールでは、デスノートやキラについての話はしないようにしているとはいえ……)

美希(……なんか、すごくいつも通りの春香だったな……)

美希(ミキの考え過ぎだったのかな?)

美希「…………」

リューク「なあ、ミキ」

美希「? 何? リューク」

リューク「学祭って、リンゴ飴売ってるかな」

美希「……売ってたとしても買わないの」

リューク「…………」



145:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 16:41:38.74 ID:D8YXYo200

【現在・東応大学キャンパス内/屋外ステージ前の観客席】


美希「…………」

美希(今日はまだ、二人で落ち着いて話はできていない)

美希(大学に着いて割とすぐに、たまたまこの学祭に遊びに来ていたやよいと粧裕ちゃん……例の『夜神月』って人の妹さん……とばったり会って)

美希(そのまま四人で話し込んじゃって……海砂ちゃんのライブイベントの開始時間過ぎちゃって)

美希(慌てて走ってここまで来たけど……)

美希「…………」

春香「…………」

美希「……ねえ、春香ってば」

春香「え? ああ、うん。何? 美希」

美希「いや、何じゃなくて。あれが春香の家庭教師の『夜神月』って人なの? って」

春香「あ、ああ……うん。そうそう。ライトさんがこんな所にいるなんて思わなくて、つい……ね。あ、あはは……」

美希「…………」

美希(……めちゃくちゃ怪しい……)

美希「ねえ、春香」

春香「な、何? 美希」

美希「……何かあったの?」

(小声で春香に尋ねる美希)

春香「! …………」

美希「…………」

春香「……流石美希。鋭いね」

美希「もう。これくらいミキにはお見通しなの」

春香「あはは……参ったな。……でも今はちょっとまずいから、また後で話すよ。二人きりの時に」

美希「……ん。分かったの」

やよい「何話してるんですか? 春香さん、美希さん」

春香「ん? ああ……あれがライトさんだよ、って。美希に」

やよい「あっ、そうか。美希さんはライト先生と会ったことないですもんね」

美希「うん。噂通り、すごいイケメンの先生だね。でも何でステージの上にいるの?」

やよい「さあ……? 粧裕ちゃん、何か知ってる?」

粧裕「いや、全然……。ホント何やってんだろ? お兄ちゃん……」



146:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 17:02:11.69 ID:D8YXYo200

清美『……ええと、弥さん?』

海砂『ん? 何?』

清美『今、『美希ちゃん』って言ってましたけど……それってもしかして、あの765プロの?』

海砂『うん、そうだよ。765プロの星井美希ちゃん。実はミサと美希ちゃんは大の仲良しなの。だから今日は個人的に『観に来てくれない?』って声掛けてたんだー』

観客一同「!?」ザワッ

「えっ。じゃああそこにいるのってミキミキ……?」

「つーかその横の子、よく見たらはるるんっぽくないか?」

「やよいちゃんらしき子もいるぞ……」

 ザワ…… ザワ……

美希「あ、やばい。ばれたかな」

春香「いやばれたも何も、今普通に『765プロの星井美希ちゃん』って言われたからね」

やよい「うーん、大丈夫でしょうか?」

粧裕「な、なんか周りの人が皆、私達の方を見ているような……」

(ステージの上に立たされたままの月とL)

月「りゅ、竜崎……」

L「そうですよね……アイドルとしては呼ばれていなくても、普通に友達としてなら呼ばれている可能性はありますよね……。残念ながら、生まれてこの方友達というものができたことのない私には、その発想が全く思いつきませんでした」

月「…………」

L「いえ、違いますね。一点訂正します」

月「? 何だ?」

L「今言った、『私に友達ができたことがない』という点です。……月くんは私の初めての友達ですから」

月「……ありがとう。僕にとっても竜崎は気が合う友達だよ」

L「どうも」

月「だから二人で考えよう。この状況をどう乗り切るか……いや、むしろ逆に……」

L「はい。この状況を……」

月・L「どう利用するか」

海砂「何二人でこそこそ喋ってるのー?」ヒョコッ

月「! …………」

L「……弥さん。とりあえず」

海砂「はい。何でしょう」

L「殴っていいですか」

海砂「何で!?」

L「人の面を勝手に取るのは重罪ですから」

海砂「い、いやいや! そりゃ確かに勝手に取ったのは悪かったと思うけど!」

L「一回は一回です。さあ歯を食いしばって下さい」グッ

海砂「一回は一回って! ちょっと目がマジなんですけど!? っていうかその拳下ろして! 怖い!」

月「……もうそのへんでやめとけ。竜崎」ポン

L「月くん」



147:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 17:15:14.55 ID:D8YXYo200

月「お前の冗談は冗談に聞こえないんだよ。見ろよ、本気で怖がってるじゃないか」

海砂「じょ、冗談……?」

L「はい。もちろん冗談です。まさか弥さんは、私が本気で女性に手を上げるように思いますか? そんな人間に見えますか?」

海砂「思います。見えます」

L「月くん。やっぱりこの人殴っていいですか?」

海砂「ひっ」ビクッ

月「……だからやめとけって。それに……」チラッ

L「?」

月「……それどころじゃないみたいだぞ。観客席の方は」

清美『み、皆さん! 落ち着いて下さい!』

観客A「ねぇミキミキ、この後空いてる? もしよかったら俺と……」

観客B「いや美希ちゃん、ここはこの僕と!」

観客C「いやいや俺と!」

美希「ちょ、ちょっと……もう! 押さないでほしいの!」

観客D「やよいちゃんもあのアイドルの子……え~っと、ミカちゃん? と仲良いの?」

やよい「え? み……ミカちゃん?」

観客E「春香さん! 踏んで下さい!」

春香「ふ、踏みません! どさくさに紛れて何言ってるんですか! もう!」

観客E「ありがとうございます!」

観客F「君もアイドル? 可愛いね~」

粧裕「へっ? わ、私はそんなんじゃ……」

 ワイワイ…… ガヤガヤ……

L「……今を時めく765プロダクションのアイドルが三人も集まれば、まあ普通に考えてこうなりますよね」

月「ああ。それにさりげなく、粧裕までアイドル扱いされてるしな……」

海砂「むぅ……このステージの主役である私を差し置いて……っていうかミカって誰よ! ミカって!」



148:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 17:25:38.61 ID:D8YXYo200

L「……司会の方」

清美『えっ。あ、はい』

L「すみませんが、ちょっとマイクを貸してもらえませんか?」

清美『? は、はあ……』スッ

(清美からマイクを受け取ったL)

月「? 竜崎? 一体何を……」

L『えー……ではここで、追加でステージに上がって頂く方のお名前を発表したいと思います』

清美「えっ」

月「!」

海砂「へっ?」

L『弥さんからご招待されていたという星井美希さん、そしてそのお友達の天海春香さん、高槻やよいさん、夜神粧裕さん。どうぞ皆さんまとめてステージの方へ』

美希「!」

春香「えっ」

やよい「私達がステージに……ですか?」

粧裕「な、何で私まで!?」

清美「ちょ、ちょっと、何を勝手に……」

L「このまま観客席が混乱したままですと、イベントの進行に支障をきたします。ならいっそ全員まとめてステージに上げてしまった方がよろしいかと」

月「! ……竜崎……」

清美「で、でもこの後のコーナーは、そんなに大勢の人数で行う想定では……」

L「それくらいアドリブでなんとかして下さい。東大生の知能をもってすれば造作も無いはずです」

清美「そ、そんな簡単に……大体これは弥さんのライブイベントであって……」

海砂「いいんじゃない? 別に」

清美「! 弥さん」

海砂「私も美希ちゃんや、他の765プロの人達と共演してみたいし。……てゆーか、私の事そっちのけで観客席で盛り上がられてる方が腹立つしね」

清美「腹立つって……」

海砂「というわけで……コホン」

海砂『はい! では今呼ばれた四名の方、速やかにステージの方へどーぞー!』

 ワァアアアア……

美希「! 海砂ちゃん」

やよい「えっと……どうしましょう?」

春香「まあ確かに、このままだともみくちゃにされちゃいそうだし……それならいっそ行った方がいいかもね」

美希「よーし、じゃあ皆で行くの! 海砂ちゃんの待つステージへ!」 

粧裕「えっ? これってやっぱり私も行く流れなの!?」



149:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 17:52:33.31 ID:D8YXYo200

(ステージに上がった美希、春香、やよい、粧裕)


海砂『ごめんねー美希ちゃん。せっかくお客さんとして来てもらってたのに』

美希『ううん。大丈夫なの。ミキ的にはこっちの方が面白そうだし。あはっ』

清美『星井さんは、弥さんとはいつ頃お友達になられたんですか?』

美希『んっとねー。○×ピザのCMでコラボ出演した時だから、去年の――……』

粧裕「うぅ……何で私まで……」

月「粧裕」

粧裕「お兄ちゃん」

月「何で、お前までここに……。それにやよいちゃんと春香ちゃ……天海さんも」

やよい「ライト先生! 私、びっくりしました。まさかこんな所でお会いできるなんて」

春香「あはは……ちょっとご無沙汰してます……」

月「ああ……皆で一緒に来てたのか?」

粧裕「ううん。私とやよいちゃんは元々学校の子達と遊んでたんだけど、東大で学祭があるってお兄ちゃんから聞いてたのを思い出して……それで折角だから皆で行ってみようってなったんだ」

月「じゃあ天海さんと……あと星井さんとは、偶然会ったのか?」

粧裕「うん。色々回ってるうちにアイドルのライブイベントがあるって知って、私とやよいちゃんはこれ観に行こうってなって。でも他の皆は別のイベント観たいって言うから、一旦別行動にして……」

月「粧裕は知ってたのか? この弥海砂ってアイドルのこと」

粧裕「ううん。知らなかったけど……アイドル好きとしてはチェックしとかなきゃって思って。それにやよいちゃんも、他のアイドルのライブを観る機会はあんまり無いから是非観たいって言って。で、私とやよいちゃんがこのステージに向かっている途中で、同じようにこのステージに向かっていた春香さんとミキミキ……美希さんとばったり会ったってわけ」

月「そうだったのか」

粧裕「私、まさかミキミキ……美希さんに会えるなんて思ってなかったから、すごく興奮しちゃって。それで色々話し込んでる間に、肝心のライブイベントの時間過ぎちゃってたの。だからさっき急いで来たんだ」

月「……そういえばお前、僕が家庭教師を始める前に天海さんとやよいちゃんと四人で会った時もすごく興奮してたな」

粧裕「うん。だって私、春香さんに会ったのはあの時が初めてだったんだもん」

海砂『なになに? もしかしてその子、あなたの妹さんなの?』ヒョコッ

月「……ええ、まあ」

海砂『へーっ。そうなんだ~可愛いね! 私、弥海砂。ミサミサって呼んでね』ニコッ

粧裕「は、はい。(か、カワイイ……)」



152:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 18:16:44.53 ID:D8YXYo200

春香「あ、あの……ライトさん」コソッ

月「……春香ちゃん。それにしても驚いたよ。まさかこんな所で会うなんて」

春香「私の方も驚きました。まさかライトさんがこんな所でステージに立っているなんて」

月「はは……本当にね」

春香「ええと……ちなみに、怒ってます?」

月「? 怒る? なんで?」

春香「いや、その……私の都合で二週も家庭教師お休みにしてもらったのに、こんな所で遊んでて……」

月「ああ……でもそれはやむを得ないスケジュール変更だろ? そんなことで怒る理由は何も無いよ。それにアイドルであれ受験生であれ、息抜きの時間は必要だからね」

春香「……ライトさん。よかったぁ。私、てっきり怒られちゃうのかと……あっ。ところで……」

月「? 何?」

春香「その……そちらの方、なんですけど……」

(月の隣にいるLの方に目をやる春香)

月「! …………」

L「…………」

春香「……ライトさんの大学のお友達……ですか?」

月「ああ……えっと……」チラッ

L「……私は……」

清美『えー、なんだか非常に賑やかになって参りましたが、これから、今ステージに上がって頂いたこちらの皆さんと弥さんとで、いくつかのゲームをしてもらおうと思います』

春香「あっ」

L「…………」

清美『本当はもっと少ない人数で行う想定だったのですが……まあ、なんとかなるでしょう』

 アハハハハハ……

清美『では、改めて……といっても、半分くらいの方は既に説明不要かもしれませんが……まあ折角ですので、会場から参加して頂いた皆さんに、順次自己紹介をして頂こうと思います』

清美『それでは、こちらの方から順番にお願いします。はい、夜神くん』スッ

(マイクを月に渡す清美)

月「…………」



153:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 18:33:38.87 ID:D8YXYo200

月『……東応大学一年、夜神月です。よろしくお願いします』

 パチパチパチパチ……

L『……竜崎ルエ。オンラインゲーム内で夜神くんと知り合ったネトゲ廃人の27歳無職童貞です』

 ドッ アハハハハハ……

月「…………」

粧裕「無職……何?」

やよい「さあ……?」

美希「…………」

美希(……変な人……)

春香「…………」

春香(……“りゅうざき るえ”……?)

春香(でも見えてる名前は“ L Lawliet”だから……“りゅうざき るえ”は偽名……ってことだよね?)

春香(それに、いかにもデタラメっぽいプロフィール……)

春香(まあこんな所で本名や素性を晒すのは抵抗あるって人も珍しくはないだろうけど……)

春香(…………)

春香「…………」

美希「春香」

春香「え?」

美希「次。春香の番なの」

L「…………」

(春香に向けてマイクを差し出しているL)

春香「あ、ああ……す、すみません」サッ

L「いえ」

春香『え、ええと……コホン』

春香『……765プロダクション所属アイドル・天海春香です! トップアイドル目指して頑張ってます! どうぞよろしくお願いします!』ペコリ

 ワァアアアア…… パチパチパチパチ……

美希『ミキだよ。よろしくね。……はい、やよい』スッ

海砂『美希ちゃんマイク回すの早っ!』

美希『だって今日はお仕事じゃないし……ミキはあくまで自然体でいくの。あふぅ』

海砂『でもなんか普段の美希ちゃんとあんまり変わらない気もするけど……』

美希『そう?』
 
 アハハハハ……

やよい『うっうー! 高槻やよいでーっす! 会場の皆さん、はいたーっち! いぇい!』

 ウォオオオオオオ!!!!

粧裕『ひっ。す、すごい歓声……え、えっと。夜神粧裕、です……。アイドルでもなんでもなくて、えっと、お兄ちゃ……じゃなくて、そっちにいる、夜神月の妹です……』

 アハハハハハ…… パチパチパチパチ……

清美『はい。皆様どうもありがとうございました。それでは早速、最初のゲームですが――……』



154:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 18:54:06.75 ID:D8YXYo200

【三十分後・東応大学キャンパス内/屋外ステージ上】


清美『――はい。ではこれにて、本日の弥海砂さんのライブイベントは全て終了となります。会場にお越し頂いた皆様、そして私達と一緒にこのステージを盛り上げて頂いた飛び入りの参加者の皆様、本当にありがとうございました』

 パチパチパチパチ……

海砂『皆ー! これからも弥海砂をよろしくねー! もしどこかで見かけたらミサミサって呼んでねー!』

 ワァアアアア…… 

海砂「……ふぅ。皆、今日は本当にありがとね! すごく楽しかったよ」

美希「あはっ。それならよかったの」

春香「いきなりステージに呼ばれた時はどうなることかと思ったけど……」

やよい「意外となんとかなりましたね! ね? 粧裕ちゃん」

粧裕「あ、あはは……まあ、私はもういいかな……」

やよい「あっ! 大変!」

粧裕「? どうしたの? やよいちゃん」

やよい「粧裕ちゃん、他の皆との待ち合わせの時間、もうとっくに過ぎちゃってる!」

粧裕「ぎゃっ! ホントだ! メールもすごく溜まってる」 

やよい「えっと、じゃあ私達、このへんで失礼しますね! 美希さん春香さん、また明日! ライト先生もまた次の授業、よろしくお願いします!」ペコリ

美希「うん。また明日なの。やよい」

春香「バイバイ、やよい」

粧裕「じゃあもう行くね。お兄ちゃん」

月「ああ。二人とも気を付けて」

(ステージを降り、駆け足で去って行くやよいと粧裕)

海砂「……さて、と」

清美「お疲れ様でした。弥さん。色々台本と変えてしまってごめんなさい」

海砂「ううん。こっちの方が盛り上がったし、すごく良かったと思う! まさか765プロの皆が飛び入り参加してくれるなんて夢にも思わなかったし」

清美「そう言ってもらえて良かったです」

海砂「これも全部、あなたの機転の利いた司会のおかげね。本当にありがとう!」

清美「いえいえ、そんな……恐縮です」

海砂「…………」

清美「…………」

海砂「…………」チラッ

海砂(それにしても、あの夜神月って人……やっぱりすごくカッコイイ……。なんとかしてお近付きになれないかな……)

清美「…………」チラッ

清美(夜神くん……前々から一度話してみたいとは思っていたけど、今回折角こうして接点ができたのだし、連絡先でも……)

月「?」

L「…………」



155:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 19:10:40.25 ID:D8YXYo200

春香「じゃあ美希。私達も帰ろっか」

美希「ん。そーだね」

春香(……早く美希に話しておきたいこともあるしね)

美希(そういえばステージに上がる前に春香が言ってたこと、まだ聞いてないの。早く聞かないと……)

L「あの」

春香・美希「!」

海砂・清美「?」

L「……せっかく一つのステージで共演した仲ですし、もし良かったらこの後軽くお茶でもいかがですか? 皆さん」

月「! 竜崎」

海砂「えっ」

清美「! …………」

L「もちろん皆さんお忙しいでしょうし、無理にとは言いませんが……」

海砂「ミサは良いよ。皆のお陰ですごく良いイベントになったから、そのお礼も兼ねて」

清美「わ、私も……やぶさかではありませんが」

L「ありがとうございます。天海さんと星井さんはいかがですか?」

春香「……私は……」

美希「どうする? 春香」

春香「……大丈夫です。行きます」

美希「じゃあ、ミキも行くの」

L「ありがとうございます。月くんも大丈夫ですよね?」

月「……ああ」

L「では皆さん、そういうわけでよろしくお願いします」













【三十分後・東応大学近くの喫茶店】


月「…………」

L「…………」

海砂「…………」

清美「…………」

春香「…………」

美希「…………」

月(……竜崎……)

L(…………)

海砂(これは願っても無いチャンス……! なんとしてでも彼……夜神月くんとお近付きに……!)

清美(夜神くんとはいくつか同じ授業も取っているし、今ここでどうこうということも無いけれど……でも連絡先くらいなら……)

春香(……竜崎ルエ…… L Lawliet ……)

美希(お腹すいたの)



165:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/25(日) 03:35:33.35 ID:dh41byBJ0

(歓談をしている月、L、海砂、清美、春香、美希)

月「へぇ。高田さんはアナウンサー志望なんだ」

清美「ええ。それで今回の弥さんのイベントでも、学祭の実行委員の方にお願いして司会をやらせてもらったの。早いうちに、マイクを持って人前で話すことに慣れておいた方が良いと思って」

海砂「そうだったんだ。じゃあマイクで喋ったのも今回のイベントが初めてだったの?」

清美「ええ。だから本当に緊張しました」

月「それにしては見事な司会ぶりだったね。いきなりステージに呼ばれたときは焦ったけど」

清美「あれは……ごめんなさい。有名人の夜神くんの姿が見えたものだから、つい」

春香「? ライトさんって大学内では有名人なんですか?」

清美「それはもう。入試を全科目満点で合格した首席入学者ですもの。今やうちの大学では知らない人の方が珍しいわ」

春香「全科目満点って……東大の入試で!? まあ全国模試一位って聞いてたからそこまで驚きはしないですけど……いややっぱり驚きますけど!」

月「流石に盛り過ぎだよ、高田さん……。それに高田さんだってミス東大の呼び声高い注目の新入生じゃないか」

清美「わ、私はミス○○だとかうわついた物は嫌いです」

海砂「そのネタもう二回目よ。清美ちゃん」

清美「ね、ネタとかじゃないですから! っていうか清美ちゃんって……」

海砂「だってその方が呼びやすいし。あ、ミサのこともミサって呼んでいーよ?」

清美「……では、これからは海砂さんとお呼びしますね」

海砂「うーん。まあいいけど、なんかカタいなー」

清美「だってあなたの方が年上ですし」

海砂「まあ、アナウンサー志望ならそれくらいの方がいいのかもね。なんかNHNとか似合いそう」

清美「そう言っていただけると嬉しいですね。私も第一志望はNHNなので」

海砂「へーっ。今の時点でもう第一志望の放送局まで決めてるんだ。流石東大生、意識高いわ」

清美「べ、別にそんな大層なことでは……。あ、そういえば」チラッ

月「?」

清美「……夜神くんは、将来はどうするつもりなの? やっぱり官僚志望? それとも法曹関係かしら?」

月「ああ、官僚は官僚だが、警察庁に入りたいと思っているよ」

海砂「へーっ。ライトくんは警察志望なんだ。でもなんで警察?」

月「父が現職の刑事なんです。幼い頃から刑事として働く父の背中を見て育ってきたので、その影響で」

海砂「あー、そういうことね。あ、ライトくんも私のことはミサって呼んでくれていいよ」

月「……では僕も、高田さんにならって海砂さんと」

海砂「むー、だからカタいってばー。まあ東大生らしいけど」



166:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/25(日) 03:54:04.47 ID:dh41byBJ0

春香「でもすごいですね。アナウンサー志望に警察志望……お二人とも、私と一つしか違わないのに、ちゃんと将来の事を考えていて……」

月「何言ってるんだよ。春香ちゃんはもう既にプロのアイドルとして第一線で頑張ってるじゃないか」

春香「ライトさん」

月「それにアイドル活動だけじゃなく、ちゃんと学生の本分としての勉学にも勤しんでいる。これはなかなか出来ないことだと思うよ」

春香「そ、そう言われると照れちゃいますけど……でも、勉強の方は完全にライトさん頼りだし……」

海砂「? ライトさん頼りって? っていうか、二人は前からの知り合いなの? なんか話し方とかそんな感じするけど」

春香「あっ、そっか。まだ言ってませんでしたね。実は私、今年の4月からライトさんに家庭教師してもらってるんです。あとさっきまで一緒にステージにいた、やよいも」

海砂「えっ!」

清美「!」

L「……………」

美希「……………」

海砂「そうだったんだ。どうりで……」

春香「はい。実はそうだったんです。説明してなくてすみません」

清美「でも、なんでまた夜神くんに? お二人は、もっと前からのお知り合いだったということですか?」

春香「あ、そうじゃなくて……。実は、やよいと、これまたさっきまでステージにいた、ライトさんの妹の粧裕ちゃんが同じ中学の友達同士だったんです。で、私はやよいから、学校の友達ですごく頭の良いお兄さんがいる子がいるって聞いていて……」

海砂「あー。だからさっき全国模試一位とか言ってたんだ」

春香「はい」

清美「では、今日あなた達があのイベントの場で出会ったのは偶然だったんですか?」

春香「そうですね。実は先週から、私の都合で家庭教師をお休みにしてもらっていて……ライトさんとも連絡を取っていなかったので」

月「ああ。だから今日、春香ちゃんに会って本当に驚いたよ」

春香「私もです。まさかライトさんがステージに立っているだなんて思いもしませんでした」

月「はは。それは僕自身も思いもしなかったけどね」

清美「……その節は本当にごめんなさい」

月「あっ。ごめん高田さん。そういう意味じゃなくて……」

海砂「でもホント、こんな偶然ってあるもんなんだね。ミサも、美希ちゃんに『765プロの友達を誘って来て』とは言ったけど、特に誰を、とかは指定しなかったのに」

美希「……うん。ミキ的にはたまたま春香を誘っただけだったんだけど、まさかこんなことになるなんて思わなかったの」



167:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/25(日) 04:01:35.98 ID:dh41byBJ0

春香「でも今にして思えば、誘ってくれた美希には感謝だよ」

美希「春香」

春香「だってそのおかげで……こうやって海砂さんや高田さんとお話ができて、仲良くなることができたんだし」

海砂「えへへ。そう言ってもらえると嬉しいな。ミサも、春香ちゃんと話せて……ううん、友達になれてよかった!」

春香「海砂さん」

清美「私も同じ気持ちです。将来アナウンサーとして働くことを望んでいる私にとって、既にプロとして芸能界で働かれている天海さんや星井さんとお話できたことは大変貴重な経験となりました」

春香「高田さん。ありがとうございます。そう言って頂けると光栄です」

美希「うんうん。ミキも友達が増えて嬉しいの」

海砂「ちょっとー清美ちゃん。私はー?」

清美「まあ一応、海砂さんも」

海砂「一応て!」

美希「あはっ。海砂ちゃんのツッコミ面白いの」

月「…………」

L「…………」

春香「あっ。ご、ごめんなさい。なんか私達ばっかで盛り上がっちゃってて……」

月「え、ああ……いいんだよ、春香ちゃん。気にしないで」

L「…………」

海砂「そういえば……あなた。竜崎さんだっけ?」

L「! ……はい」

海砂「元はといえば、あなたが『お茶でもいかがですか』ってミサ達を誘ったのに……いざお店に入ったらちっとも喋らないのね」

L「…………」

海砂「ステージの時は結構饒舌だった気もするけど……もしかして、実は内気なタイプだったりするの? なんか座り方も妙に独特だし」

L「…………」



168:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/25(日) 04:10:29.06 ID:dh41byBJ0

月「あ、ああ……多分彼は緊張しているんですよ」

海砂「? 緊張?」

L「…………」

月「ええ。無理も無いでしょう? 現役のアイドル三人に、ミス東大候補の女子大生……こんな華やかなメンバーに囲まれて、緊張しない方がおかしいですから」

清美「や、夜神くん。だから私はミス○○だとか――……」

L「……はい。そうです」

一同「!」

L「私は今、非常に緊張しています。なぜなら――……」

一同「…………?」

L「――自分がずっとファンだったアイドルが、今目の前にいるのですから」

月「!」

海砂・清美・春香・美希「!?」

月「…………」

月(竜崎……ずっと黙っているから何か考えているんだろうとは思っていたが……これは……)

海砂「ずっとファンだったアイドル? 誰なの? それ……」

L「…………」ジッ

(無言のまま、春香の顔を見つめるL)

春香「え?」

L「―――あなたです。天海春香さん」

春香「……え?」

L「私は……ずっと前からあなたの……アイドル・天海春香の大ファンです」

春香「!」

月「! …………」



169:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/25(日) 04:42:39.74 ID:dh41byBJ0

月「…………」

月(やはりそうきたか……)

月(昨年の765プロのファーストライブの日に天海春香のファンだった男が心臓麻痺で死んだ件、そして黒井氏に対する『“L”の顔写真だけでも入手してほしい』という脅迫の内容から……天海春香は、『顔を見ただけで人を殺せる能力』を持つキラである可能性が高い)

月(その天海春香に竜崎が顔を見られてしまったことで、どう対策すべきかとずっと考えていたが……)

月(竜崎の考えもおそらく……いやほぼ間違い無く、僕と同じだ)

月(天海春香は、偏執的と言ってもいいほどに、765プロに対して強い愛着を持っている。そしてそれは演技でも何でもない……それこそがたった一つの彼女の行動原理であり、嘘偽りの無い本心)

月(そうであるからこそ、彼女は765プロの利害に直結する形でキラの殺しの能力を行使し、また黒井氏を脅迫している……)

月(そんな彼女に対し、竜崎が“L”であることを悟られず、それどころか、キラを追っているということさえ気付かれないようにするための唯一にして最大の防御策……)

月(それは――……天海春香の持っているであろう『アイドルとしての良心』に訴えかけること)

月(『アイドルとしての良心』……それが何であるかはいうまでもない。アイドルとして、ファンの存在を何よりも尊重し、ファンの為にただひたすら尽くすという献身の心だ)

月(天海春香がキラであり、その能力を行使して何人もの人を殺めてきたとしても、その一点だけは彼女の中で唯一折れ曲がることのない絶対の信念、正義)

月(そうでなければ、彼女が今キラとしてここまでリスクの高い行動を取り続けている理由が無い)

月(だからこそ、そこを攻めれば……こちらに対する害意を最大限に取り除くことができるうえに、逆に相手の懐に一気に飛び込むことのできる可能性すら生じる。まさに一石二鳥の策)

月(しかし逆に、少しでもボロを出せば、嘘を見抜かれれば……即座に殺されてしまう危険が生じる諸刃の剣でもある)

月(ここが正念場だな……。竜崎にとってはもちろん、僕にとっても)

月(竜崎の嘘がばれれば、その友人として接点がある僕も当然疑われることになるだろう)

月(もちろん、竜崎の嘘がばれても彼が“L”であると看破されるわけではない……竜崎は捜査本部以外ではどこにも“L”として自分の顔は晒していないのだから当然だ)

月(だがそれでも、つく必要のない嘘をついていたと分かれば確実に怪しまれる。そして天海春香は765プロに害をなす者、あるいはなそうとしている者は容赦無く殺している……それがたとえ犯罪者でなくとも)

月(つまりそれは、僕や竜崎が765プロに害をなす者、あるいはなそうとしている者と見做されれば即座に殺される可能性があるということ)

月(加えて、現職の警察官である僕の父は『“L”の情報を持っている可能性がある者』と思われていてもおかしくはない。だとすれば、その息子で警察志望である僕も、父からその情報を得ていると推測される可能性は十分にある)

月(“L”の情報を持っている可能性がある僕と、その友人と名乗り素性を偽っていた謎の男・竜崎……もしここまで条件が揃ってしまった時、天海春香がどのような行動に出るか……)

月(まず考えられるのは、今も黒井氏に対してしているように、“L”の情報を明かすようにキラとして僕達二人を脅す……そしてその情報が得られなければ当然に、また得られたとしても用済みとなればやはり殺す……といったところか)

月(現状、黒井氏はまだ殺されてはいないようだが……だからといって、僕達も同様に殺されないなどという保証はどこにも無い。むしろ、これくらいの最悪のケースは当然想定しておかなければならないだろう)

月(またもう一人のキラ……星井美希も、自分の事務所の前任のプロデューサーとクラスメイトの男子……いずれも犯罪者でない者を二人も殺している)

月(星井美希は天海春香ほど765プロそのものには固執していないと考えられるが……それでもどんな行動に出るかは読めない)

月(いや、そもそも現時点ではこの二人は連携してキラとしての活動を行っている可能性が高い……だとすれば、二人の行動を切り分けて予測することにあまり実益は無い)

月(もはや、この二人のいずれかに少しでも怪しまれたら僕も竜崎も殺される……そこまで考えて動かなければ駄目だ)

月(そのためにも、竜崎……)

月(今からお前がするであろう、この二人に対する最初の説明が全ての鍵を握る)

月(打ち合わせなどはしていないが、これからお前が言うであろうこと、また彼女らに思わせようとしているであろうことは大体予測がつく)

月(あとは竜崎を信じ、この二人に怪しまれないよう、極力自然な演技をすること……)

月(大丈夫だ……僕ならできる。いや、やってやる!)

月「…………」



171:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/25(日) 09:35:48.07 ID:n3I0tP0I0

春香「え、えっと……」

L「天海さん」

春香「は、はい」

L「あなたがいなければ、きっと今頃私は、この世界に生きてはいなかったでしょう。そういう意味で、あなたは私に生きる喜びを教えてくれた、この世で最も尊ぶべき存在……」

春香「え? そ、それってどういう……」

L「……少し長い話になりますが、いいですか?」

春香「は、はい」

L「……他の皆さんもよろしいでしょうか?」

(無言で頷く月、海砂、清美、美希)

L「ありがとうございます。では……」

L「……私は、幼い頃に両親と死別しました。交通事故です。以来私は、ずっと祖父の下で育てられてきました」

海砂「! …………」

L「ただ、見ての通り、私は決して印象の良い見た目の人間ではありません。目はぎょろっとしていますし隈も深い……はっきりいって『キモイ』と揶揄されるタイプの外見の人間です」

春香「そ、そんなことは……」

L「いえ。いいんです。客観的な事実ですから」

春香「…………」

L「それゆえ、私は幼少期からずっといじめに遭ってきました。幼稚園でも小学校でも……常に『キモイ』『死ね』『ゴミクズ』などと罵られ続けていました。また殴られたり蹴られたり、持ち物を壊されたり隠されたりといったこともしょっちゅうでした。小学校の六年間で上履きを便器の中に放り込まれた回数は優に100を超えるでしょう」

美希「! …………」

L「それでも小学校まではなんとか耐えていましたが……中学に上がるともう無理でした。言葉の暴力も身体への暴力も益々エスカレートしていき……はっきりいって殺されかけたことすら何度もありました」

海砂「ひどい……」

美希「…………」

L「やがて心身ともに限界を感じた私は、中学二年の途中くらいから学校に行かなくなり……自分の部屋に閉じこもるようになったのです。ただ幸いにも、祖父は私にはとても優しかったので、学校に行かなくなった私を咎めたりはしませんでした」

L「祖父は私の唯一の理解者だったのです」

L「しかし私が中学を卒業するくらいの年齢になったとき、祖父が急死しました。祖父は元々持病もあり身体は決して良くなかったのですが……それはあまりに突然の別れでした」

L「私は絶望しました。私の唯一の理解者であった祖父の死は、私がこの世界で誰ともつながらなくなったということと同義だったのです」

海砂「…………」

L「ただ不幸中の幸いといいますか……祖父は、自分がいつ死んでもおかしくないと分かっていたのでしょう。私が一人になっても困らないよう、多額の預金を遺してくれていました」

L「そのおかげで、私は生活に困ることはなかったのですが……朝起きてから夜寝るまでずっと家の中に引きこもり、誰とも一言も会話をしない日々……。祖父の死後、当然の事ながら、元々低かった私の会話能力、コミュニケーション能力は一層低下していきました」

L「また家に居る間はずっと自分の椅子の上で体育座りをしていたため、それ以外の座り方だと情緒に不安をきたすようにもなってしまいました。だから今もその座り方をしているという次第です」

清美「…………。(それでこんな奇妙な座り方をしていたのね……)」



378:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/21(土) 11:37:11.30 ID:BTrwrj0k0

L「それでも、全く外に出ないというわけにはいきません。人間である以上、生活必需品を購入するための外出は避けられないからです。しかし、祖父が死んでから一週間ほどが経ったある日……いざ外に出ようと思い、家のドアを開けようとすると……身体が、全く動かなくなったんです」

L「思えば、学校に通うのをやめてから、私は一歩も家から外に出ていませんでした。必要な買い物は全て祖父がしてくれていたからです」

L「そのため、いつの間にか私は、一人では外に出ることのできない身体になってしまっていたのです。また外に出たとき、かつて私をいじめていた者達がいたら……そんなことまで脳裏をよぎり、尚の事、動こうにも動けなくなってしまったんです」

美希「…………」

L「しかしそのとき、私はふと、祖父の遺品を整理していた時に、昔縁日で祖父に買ってもらったとある物を見つけたことを思い出しました」

清美「? とある物?」

L「はい。それが……これです」スッ

(ひょっとこのような面を皆に示すL)

海砂「! それって……」

春香「?」

美希「ひょっとこの……お面?」

L「ああ……天海さんと星井さんは知らなかったですね。私は今日、途中までこの面を着けていたんです」

春香「えっ」

美希「そうだったの?」

L「はい。……学祭のステージに上がった直後に、弥さんによって外されてしまいましたが」

海砂「う」

月「…………」

清美「そのお面が……昔、おじいさまから買ってもらった物……ということですか?」

L「はい。おぼろげな記憶ですが……まだ小さかった私は、縁日の出店で見かけたこの面を何故だか無性に気に入り、祖父にねだって買ってもらいました」

L「今思えば、何故こんな物を……とも思いますが、とにかく私は、祖父から買ってもらったこの面をしばらく大切にしていました」

L「しかし、子どもというものは得てして飽きっぽいもの……いつの間にか私はこの面の存在を忘れ、その後ずっと思い出すことも無く、日々を過ごしていました」

L「そんな中、祖父が死に……その遺品の中からこれを見つけたんです。幼い私がとっくに飽きて見向きもしなくなった物でも、祖父はちゃんと大事に取っておいてくれていたんですね」

L「私は昔から感情の起伏が乏しく、自分の欲しい物を口に出すこともほとんど無かった……。おそらく、祖父に何かをねだって買ってもらったのもこの面くらいだったと思います」

L「だからきっと、祖父も嬉しかったんでしょうね。私からこの面を買ってほしいとねだられたことが……。そんな想いがあったからこそ、祖父はずっとこの面を取っておいてくれたのだと思います」

L「恥ずかしい話、私は祖父が死んで初めてその想いに気付きました。そしてそのとき、ふと思ったんです。『この面を着ければ、また祖父が自分を守ってくれるのではないか』と……」

L「そうして私は、祖父に買ってもらったこの面を着けて外出することにしたのです」

海砂「そうだったんだ……」



176:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/25(日) 10:11:02.77 ID:n3I0tP0I0

清美「じゃあ……今日のステージ上で、私が面を着けている理由を尋ねたとき、『魔除け』と答えていらしたのは……」

L「はい。祖父が私を守ってくれている……そんな想いからの回答です」

清美「そうだったんですね……」

L「はい。そして結果的に、面を着けることで私はなんとか外出することはできるようになりました。もっとも、それはそれで、道行く人から奇異の視線を向けられはしましたが……しかしそれでも、素顔を晒して歩くことを考えれば、私の精神状態は遥かに安定していました」

月「…………」

L「しかし外出はできるようになっても、私の中の根本的な問題が解決したわけではありませんでした。他人と一切接すること無く、ただずっと一人で家に引きこもるだけの日々……祖父の遺した財産を食いつぶすだけの無意味な人生」

L「私は何のために生きているのか? 何のために生まれてきたのか? そんなことを考え続けたまま、気が付けば十年以上の歳月が流れていました」

L「そんなある日、私はふと『もう死のう』と思い立ちました」

春香「! …………」

L「もうこれ以上生きていても、自分の人生には何の変化も無いし楽しみも無い。生きる意味も喜びも見い出せない。そう悟った時、『こんな無意味な現世には早く別れを告げて、祖父の待つあの世へ行こう』……自然とそう思ったのです」

清美「…………」

L「その頃の私は、朝起きて無感動に食事をし、暇潰しでオンラインゲームをプレイし、眠くなったらそのまま寝る……ただそれだけの日々を繰り返していました」

L「誰が見たって、とても有益とは思えない人生。そのことは誰よりも私自身が一番よく分かっていました」

月「…………」

L「そしてその日……今からちょうど一年前くらいのある日です。私は『もう死のう』と思い、自分の死に方を考えながら、いつものように面を着けて街に出ました」

L「私の中でもう死ぬこと自体は決まっていて、後はどう死ぬかを決めるだけ……飛び降り、首吊り、電車への飛び込み……様々な方法を考えました」

海砂「…………」

L「そんな時でした。まあ一番簡単な飛び降りにでもするか……そう思った時、私はあなたに出会ったんです。……天海春香さん」

春香「……え?」



177:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/25(日) 10:27:16.84 ID:n3I0tP0I0

L「……商店街のCDショップの前で、事務員らしき女性と、手売りでCD『太陽のジェラシー』の路上販売をしていたあなたに」

春香「! ……それって……」

美希「小鳥が律子の代わりにヘルプで入った時? 確か何回かあったよね。そういうの」

春香「うん……まだ私がデビューして間もない頃……本当に駆け出しの時……」

L「はい。後から調べて分かりましたが、その頃の天海さんはデビューしてからまだ数ヶ月しか経っていない新人アイドル……文字通りの駆け出しアイドルそのものでした」

L「しかし……私はその時、電撃にも似た衝撃を感じたのです」

春香「えっ?」

L「天海さんの弾けるような笑顔、『天海春香をよろしくお願いします』という元気に満ち溢れた張りのある声……その全てが私の世界の光となりました」

春香「! …………」

L「私はつい数秒前まで自分が死に方を考えていたことも忘れ、ただじっと天海さんを見ていたんです」

春香「そうだったんですか……全然気付かなかったです」

L「無理もありません。天海さんは本当に一生懸命CDを販売されていましたし、私も少し離れた物陰から見ていたに過ぎませんので」

L「とにかく、私は天海さんに見蕩れていました。こんなに魅力的な人がこの世にいたなんて俄かには信じられなかった」

春香「…………」

L「そして出来ることなら、私はその場でCDを買いたかった。天海さんの前に立って、直接面と向かって『頑張って下さい』と言いたかったんです」

L「でも……そのときの私にはそれができなかった。そもそもこんな面を着けたままでは天海さんも警戒するでしょうし、かといって面を外す勇気も無かったからです」

L「またもし天海さんに自分の素顔を晒して『キモイ』とでも言われたら……いや言われなくとも、そう思われたらと思うと……どうしても行動には移せなかったんです」

春香「……そんな……」

L「そうして私は、結局天海さんのCDを買うことも面を外すこともできず……そのままその場を立ち去りました」



180:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/25(日) 10:50:58.08 ID:n3I0tP0I0

L「しかしその時から、私の頭から天海さんの姿が離れることはありませんでした。その日、天海さんと出会った後、ほとんど無意識のうちに帰宅していた私は、自分が死のうとしていたことなど完全に忘れていました」

L「そしてそのことを思い出したのは、それから何週間も経ってからのことです。その時には、もう私の中で『死にたい』などという気持ちは完全に消え去っていました」

春香「! …………」

L「ですので……少し大げさな言い方になりますが、あなたは私にとって命の恩人……今日もこうして私が生きていられるのは、あなたのおかげなんです。天海さん」

春香「そ、そんな……」

L「急にこんな話をされても困惑されると思います。当然の事です。しかしあの日、あなたに出会わなければ私は確実に死んでいた……それは紛れもない事実なんです」

春香「…………」

L「話は戻りますが……天海さんの姿を見かけた日の翌日、私は再度、天海さんが路上販売をしていたCDショップを訪れ、念願の『太陽のジェラシー』を購入しました」

L「そして家に帰り、早速その歌声に身を委ね……私はまたも激しい衝撃を感じました」

L「天海さんの透き通るような歌声……それを聴いているだけで、私はあたかも、自分が本当に夏の白浜に立っているかのような錯覚に陥りました。音楽でここまで心を、いや魂を揺さぶられたのは生まれて初めての事でした」

春香「! …………」

L「そこから私は、のめり込むように天海さんのファンになりました。グッズもCDも、天海さんのものは全て買いました」

L「しかし毎日、天海さんの歌声を聴き、写真や映像を観ているうち……またもう一度、本物の天海さんの姿を見たい、との想いが湧きあがってきました」

L「ですが、私がそう思うようになった頃には、天海さんは既に人気アイドルとなっていました。昨年の夏……ちょうど765プロのファーストライブが終わった頃です」

春香「…………」

L「もうこの頃の天海さんは、地元の商店街でのイベントなどは行っていませんでしたので……生の天海さんの姿を見るには、ライブに足を運ぶくらいしかありませんでした」

L「もちろんライブにも興味はありました。生の天海さんの姿を見ながら、生の天海さんの歌声を聴く……それはまさに至高のひと時と言えるでしょう」

L「ですが、やはり私にはその勇気が無かった。引きこもりの自分があんなに多くの人が集まるところに行くということがまず想像できなかったですし、また仮に行けたとしても、面を着けたままライブに参加していいのかどうかも分からなかったからです」

L「しかしそれでも私は、CDで天海さんの歌声を聴き、ライブのBDや写真集で天海さんの姿を見ているだけで十分幸せでした」

春香「…………」

L「そんな日々の中……私は暇潰しにプレイしていたオンラインゲーム内で、とある人と出会いました」



181:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/25(日) 11:07:18.39 ID:n3I0tP0I0

清美「……とある人、って……」

L「はい。今日のステージでの自己紹介でも言いましたが……月くんです」

月「! …………」

L「私は元々、暇潰しにプレイしていただけだったので、碌にシナリオも進めず、ただフィールドをぶらぶらと歩いていただけだったんですが……」

海砂「あれ? でもあなた確か……その自己紹介の時、自分の事ネトゲ廃人って言ってなかった?」

L「あれは嘘です。流石にあんな公衆の面前で『四六時中天海春香さんの事ばかり考えている者です』と正直に言うわけにはいかなかったので」

海砂「な、なるほど……」

春香「…………」

L「ともあれ、そんな私が奇異に映ったのか、あるいは自分と同じような雰囲気を感じ取ったのか……ゲーム内のチャット機能を使って、月くんが私に話し掛けてきました」

L「これまで、ゲーム内でも私に話し掛けてくる人など一人もいなかったので、最初は私も警戒していたのですが……月くんとチャットで会話をするうち、彼には何の悪意も害意も無いということはすぐに分かりました」

L「そして話を聞けば、月くんも受験勉強の合間に暇潰しでログインしている程度だったらしく……自分と同じように、ほぼ初期状態の装備のままフィールドをウロウロしている私を見て、なんとなく親近感を覚えて話し掛けてみたそうです。……そうでしたよね? 月くん」

月「……ああ。そうだったな。懐かしいな」

L「そうしてお互いの事を色々と話すうちに……私は今まさに自分が夢中になっているアイドル……天海春香さんの事を月くんに話しました」

春香「!」

L「さっきも言いましたが、当時の天海さんはかなり売れ始めていたアイドルでしたので、当時高校生だった月くんなら名前くらいは聞いたことがあるかもしれない……そう思って話してみたのですが……驚きました」

L「月くんは天海さんを知っているどころか、彼女と同じ事務所のアイドル……高槻やよいさんが、自分の妹の粧裕さんと同じクラスで友達だというのです」

春香「! …………」

L「そして月くんは、私が天海さんのファンだということを知ると、高槻さん経由で会わせてもらえないか、粧裕さんに頼んでみようかと言ってくれたのです」

L「私の心は激しく揺れました。何といっても天海さんは、私がもう一度会いたいとずっと切望していたアイドル。その夢が今叶うのかもしれない、と思うと……」

春香「…………」

L「……しかし結局、やはり私には勇気が無く……お断りしました。いくらなんでも面を着けたまま会うのは失礼だと思いましたし、かといって面を外して会う勇気もまだ持てなかったからです」



183:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/25(日) 11:31:35.77 ID:n3I0tP0I0

L「しかし折角の申し出に気の無い返事をしたにもかかわらず、月くんは変わらず私と会話を続けてくれ……」

L「私が『もう十年以上も人とまともに話していない』『面を着けないと外出ができない』ということを正直に打ち明けるや、月くんは『なら一度僕と会おう』と言ってくれたのです」

L「『このままずっと今の生活を続けていては、いつか精神に異常をきたすかもしれない。少しずつでも克服していった方が良い』……と」

L「自分も受験勉強で大変なはずなのに、こんな申し出をしてくれるなんて……と、私は感動にむせび泣きました」

L「そして私は思いました。ここまで言ってくれている月くんの厚意を無駄にはできない、と。そして月くんが『面を着けたままでも良い』『口頭での会話が難しければその場でメールで話してもいい』とまで言ってくれたので……私は意を決して月くんに会うことにしました」

L「これが昨年の秋頃の話です」

月「…………」

L「そのすぐ後に、私は事前に言っていたとおり、面を着けて月くんと会いましたが……驚くほど自然に、自分の口で会話をすることができました。もちろん、十年以上もまともに人と会話をしていなかったので、最初は今のようには話せず、相当ぎこちなかったのですが……」

L「それでも、出会って一時間も経つ頃には、私は大分自然体で会話をすることができるようになっており……私は『彼なら自分を拒絶することは無い』と確信し、月くんの前で面を取りました」

L「案の定、月くんは私の素顔を見ても顔色一つ変えることなく、それどころかむしろ、それまでより好意的にさえ接してくれました」

L「以来、私と月くんはしばしば会う仲となり……私も月くんの前では面を外して会話をするのが普通になりました。もちろんそのときは、通行人など、月くん以外の人からも素顔を見られる形にはなるのですが……不思議なことにほとんど気にはなりませんでした」

L「おそらくこれは、月くんという、自分の存在の全てを認め、受け容れてくれる人が傍にいたからだと思います」

月「…………」

L「ただそうは言っても、人が多い状況……たとえば今日の学祭の場などでは、やはり面を着けていないと不安な気持ちに襲われるんです」

L「だから今日も、最初は面を着けた状態で学祭に来ていたんです」

海砂「そうだったんだ……ごめんね。そうとは知らず、私……」

L「いえ。気にしないで下さい。結果的に、そのおかげで私はこうして天海さんとも面を着けずに話ができるようになったのですから」

春香「…………」



184:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/25(日) 11:54:09.15 ID:n3I0tP0I0

L「こうして月くんと会い、話をするようになったことで、私は他人との会話にも慣れ、今ではある程度普通の会話ができるようになりました。ただ、まだ内面の感情を表情に表すのは苦手ではありますが……」

月「…………」

L「そんな中、今年の1月頃……月くんから、天海さんの家庭教師をしてくれないかと妹さん経由で頼まれ、そして引き受けたという話を聞きました」

春香「!」

L「この話を聞いた私は、率直に『羨ましい』と思いました……が、しかしそれよりも、月くんを介して、間接的に自分が天海さんとつながれたような気がして嬉しかったんです」

春香「…………」

L「また月くんは気を利かせて、『これで自分は天海さんと直接の知り合いになるだろうから、会える勇気が出たらいつでも声を掛けてくれ』とも言ってくれました。私は本当に嬉しかったです。もちろんまだ天海さんに会う勇気は持てませんでしたが……いつか私が、面を外して天海さんとも堂々と会えるような心境になった時には、改めて月くんに頼んでみよう……そう思いました」

月「…………」

L「そして、今から一週間ほど前……月くんは、自分の大学の学祭でアイドルのライブイベントがあるから一緒に行かないか、と私を誘ってくれました。ここでライブというものに慣れれば、いつかは765プロのライブにも行けるようになるかもしれないから、と……」

L「私もまた、どこかで今の自分を変えなければならないとはずっと思っていましたので、意を決してこれに行ってみることにしました。そして今日、実際に学祭のライブイベントに行き……まだ人が多い中で素顔を晒す勇気は無かったので、面を着けてはいたものの……月くんがずっと一緒に居てくれたため、私の精神状態は非常に安定していました」

L「そんな中……成り行きで、私は月くんと共にイベントのステージに上がるよう、司会を務めていた高田さんから呼び掛けられました」

清美「! …………」
  
L「大変驚きましたが、面も着けているし、また月くんも一緒なので大丈夫だろうと思い、私は承諾しました」

L「すると……ステージに上がった直後、私は弥さんによっていきなり面を外されました」

海砂「う」

L「私は予想もしていなかった事態に頭の中が真っ白になりかけましたが……直後、面を取られたことなど一瞬で頭の中から消え去るような出来事が起こりました」

L「天海さんが……夢にまで見た、あの天海春香さんが私の眼前に現れたのです」

春香「! …………」

L「その瞬間、私の脳裏には……一年前、CDを手売りしていた時の天海さんの姿が思い起こされ……その時の天海さんの姿と今の天海さんの姿とがぴったりと重なり合いました」

L「ただしばらくの間は、私は放心のあまり、茫然とその場に立ち尽くすことしかできませんでしたが……」

L「しかしその後、ようやく現状を認識した私は、今私がすべきこと、取るべき行動を考え……今ここで勇気を出さなかったら、自分は一生天海さんと話すことなどできないだろう。またこれまでの自分を変えることもできないだろう……そう考え、高田さんからマイクをお借りし、天海さんを含めた四名の方をステージに呼んだのです」

清美「そうだったんですか……」

L「はい。そしてその後のゲームも、天海さんがすぐ近くにいると思うと緊張で死にそうになりましたがなんとかやり終え……イベント終了後、このまま天海さんとお別れしたくないという想いから、皆さんをお茶にお誘いしたという次第です」



185:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/25(日) 12:08:01.21 ID:n3I0tP0I0

春香「…………」

美希「…………」

清美「…………」

海砂「…………」

月「…………」

L「…………」

海砂「……いいなあ。春香ちゃんは」

春香「えっ?」

海砂「だってさ、ここまでファンの人に想ってもらえるなんて……アイドル冥利に尽きるってもんじゃん。ミサもこれくらい、ファンの人から熱烈に想ってもらえるようになりたいよ」

春香「あ、ああ……そ、そうですね……」

美希「心配しなくても、海砂ちゃんならすぐにそうなれるって思うな」

海砂「うーん、ハリウッドデビューまで決まってるスーパーアイドルの美希ちゃんに言われてもイマイチ説得力無いなあ……」

美希「あはっ」

L「……天海さん」

春香「えっ。あっ、はい」

L「すみません。一方的に思いの丈をぶちまけてしまって……やはり気持ち悪かったですよね……」

春香「い、いえ! そんなことは全くありません! な、なんていうか、その、すごく驚いてしまって……」

L「? そうなんですか?」

春香「は、はい。まさか竜崎……さんが、そこまで私の事を想ってくれているファンの方だったなんて思わなくて……あとライトさんからも、特にそういう方がお友達にいるって話も聞いたことがなかったですし……」

月「……ああ。さっき竜崎自身も言っていたが、実際に会う勇気はまだ持てていないと聞いていたからね。竜崎がその勇気を持てるようになる時までは、春香ちゃんにも彼の存在は伝えるべきではないと思っていたんだ」

春香「……そうだったんですね」

月「ああ」

L「月くん。お気遣い頂きありがとうございます」

月「構わないよ。竜崎」

春香「……えっと、竜崎……さん」

L「はい」

春香「私の事をすごく想っていて下さったこと……本当に嬉しく思います。私がデビューして間も無い頃から、ずっと応援して下さっていたあなたのためにも……私、これからも精一杯、トップアイドル目指して頑張ります!」

L「……天海さん。そう言って頂けると、私も今日まで生きていて良かったと心から思えます。あの日自ら命を絶たなくて、本当に良かったと……」

春香「竜崎さん」

L「あなたに出会えて、私は自殺をせずに済んだ……それどころか、今もあなたを応援することで、私は日々の生きがいを感じることができている。……天海さん。さっきも言いましたが……比喩でも何でもなく、私にとってあなたは命の恩人です」

春香「そ、そんな……私、そこまで大したこと……」

L「いえ。これが私の嘘偽りの無い本心です」

春香「…………」

L「あと、せっかくこうしてお会いできたことでもありますので……もしよかったら、今後は『春香さん』と下の名前で呼ばせて頂いてもよろしいでしょうか」

春香「……ええ、それはもちろん。あ、じゃあ私も『ルエさん』と下の名前でお呼びした方が?」

L「あ、いえ……私は『竜崎』の方が慣れていますので、すみませんがこちらでお願いします」

春香「分かりました。では竜崎さん、で」

L「はい。改めてよろしくお願いします。春香さん」



189:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/25(日) 12:57:24.56 ID:n3I0tP0I0

海砂「ところで……竜崎さんの下の名前、“ルエ”って随分変わった名前だね」

L「はい。といっても、これは本名ではありません。オンラインゲームで使っていたアカウント名です」

春香「!」

海砂「えっ。そうなんだ。じゃあ本名は何て言うの?」

L「本名は……すみません。本名で呼ばれると、学校でいじめられていた頃の事を思い出してしまうので……」

春香「! …………」

海砂「あっ。そ、そうなんだ……ごめんなさい」

L「いえ。そういう理由で、月くんにも私の本名は教えていません」

月「! …………」

春香「そうなんですか? ライトさん」

月「……ああ。元々ゲーム内で会った時から『竜崎』と呼んでいたから、その方が違和感無く呼べるしね。それに本名が何であれ、竜崎は竜崎だ。僕はそれでいいと考える」

春香「…………」

美希「まあアイドルでも芸名使ってる子は結構いるしね。ミキ達は本名そのままだけど」

清美「そうなんですね。いわゆるタレントとか芸人の方はともかく、アイドルの方は皆本名だと思っていました」

美希「ほら、本名だとファンの人が通ってた学校の名簿を調べたりして、家に来ちゃったりすることもあるから」

清美「ああ、なるほど」

春香「…………」

春香(竜崎“ルエ”……“エル”……“L”……)

春香(そして彼の本名は“L Lawliet”……)

春香(また彼はライトさんと友達関係にあり……そのライトさんのお父さん……夜神総一郎は、Lと共にキラ事件の捜査をしている刑事……)

春香(これらが全て偶然とは……)

春香(いや、でも……もし彼……竜崎さんがLなら……美希をキラではないかと疑い、その部屋に64個ものカメラと盗聴器までをも仕掛けた人物ということになるけど……)

春香(そんなLが、キラとしてそこまでの疑いを掛けていた……いや、今も掛けている可能性が十分にある美希の前で……“ルエ”なんてあからさまに怪しい偽名を使うだろうか?)

春香(それに、そもそも本名の一部が“L”なんだから、それをもじったアカウント名をゲーム内で使っていても別に不自然ではないし……)

春香(また名前が“L”というだけなら他にいくらでも……たとえばLの身代わりとしてTV出演させられていたリンド・L・テイラー……彼の本名は、死神の目で確認したけど同じ名前だった。そういう意味では、彼も“L”だったといえるわけだし……)

春香(だとすると、とてもこの人がLとは……)

春香(それにいくらLでも、美希ならともかく、キラとしてそこまで疑っていないはずの私の情報をあそこまで正確に把握しているとはとても思えない)

春香(そう考えると、やはりこの人の話は本当で、この人は純粋な私のファン……そうみる方が自然……)

春香(それに、この人がした話……どこかで聞いたことがあるような……)

春香(まだ私がデビューして間も無い頃から、ずっと私の事を想ってくれていたファン……それもただ一方的に見守るだけで、自分の存在は私に気付かれなくてもいいと……)

春香(! そうか……この人……)

春香(……ジェラスに……似てるんだ)

春香(私に対する想い、ファンとしての姿勢、考え方、その全てが……ジェラスにそっくりなんだ)

春香(もちろん私は、レムからジェラスの話を聞いただけで、本物のジェラスとは会ったことも見たことも無いけど……)

春香(ジェラスは結局、私の前に姿を現すことはなく、私の命を助け……私の寿命を延ばして死んでしまった)

春香(そしてこの人……竜崎さんは、自殺を考えていたときに、私と出会ったから死なずに済んだと言っている)

春香(この話が本当なら……驕った考えかもしれないけど、ジェラスが私の命を救ってくれたように、私もこの人の命を救ったといえるのかもしれない)

春香(そして……神様が、結局ジェラスとは出会うことのできなかった私のために、気を利かせて……私とこの竜崎さんを出会わせてくれたのかもしれない)

春香(なんて、ちょっと都合良く考え過ぎかもしれないけど……)



192:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/25(日) 13:17:03.30 ID:n3I0tP0I0

春香「…………」

美希「…………」

清美「…………」

海砂「…………」

月「…………」

春香(うん。今は信じてみよう。竜崎さんのこと)

春香(確かに、本名の件は少し気になるけど……でも、ファンを信じないアイドルなんてアイドルじゃないもんね)

春香(それに……こんな風にファンの人と面と向かって話をしたのって、すごく久しぶりのような気がする)

春香(それこそ、CDを小鳥さんや律子さんと一緒に手売りしていた頃は、一人一人のファンの人とももっと向き合っていたけど……)

春香(昨年のファーストライブの後くらいから、お仕事の数が一気に増えて……特に最近では、『春の嵐』の成功に始まり、アイドルアワードの受賞、アリーナライブのリーダーに選ばれたりと……色々な事が立て続けに起こり過ぎて、正直、そのへんの意識が少し疎かになっていたかもしれない)

春香(アイドルは、ファンあってこそのアイドルなのに……。そういう初心を思い出させてくれたって意味でも、竜崎さんには感謝しないとね)

美希(この人……竜崎さん……今でこそ、春香に出会えて生きがいを感じることができているみたいだけど……)

美希(でも元はといえば、この人は学校でひどいいじめを受けたせいでずっと苦しんでいたんだよね)

美希(どうして世の中には、こんなに腐った人間が多いんだろう……)

美希(犯罪者を裁くだけじゃ足りないのかな……? なら、もっと裁きの範囲を広げて……いや、でも流石にそれはまだ早いか……)

清美(人は見かけによら……いや、この場合よるのかもだけど……色んな背景があるものね)

清美(アナウンサーに求められるのは公平・中立な視点……そのために必要なのは、社会に存在する多様な価値観や考え方、また社会に生きる人達それぞれが置かれている立場や境遇を十分に理解しておく事……)

清美(私も、将来の為にもっと社会勉強をしておかないといけないわね)

海砂(この人、淡々と語ってたけど……両親と死別してるんだよね。ミサと同じに……)

海砂(お面、無理やり取っちゃったの本当に悪いことしたな……後でもう一回、ちゃんと謝っておこう)

月(こいつ俳優にでもなった方がいいんじゃないか)



210:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/01(日) 20:52:21.08 ID:AFPol+V20

(三十分後・喫茶店前の路上)

L「今日は本当に楽しかったです。こうして折角お知り合いになれたことですし、よかったらまたこのメンバーで集まりませんか?」

海砂「うん。もちろん!」

清美「私も是非お願いしたいです」

春香「私も、また呼んでもらえたら嬉しいです」

美希「ミキもまた皆と会いたいの」

月「良かったな、竜崎。ずっと前からファンだった春香ちゃんに会えたばかりか、こんなに友達が増えて」

L「はい。今日は人生最高の一日です」

春香「そんな大げさな」

L「大げさでもなんでもありません。春香さん。これは私の本心ですから」

春香「そ、そうですか……」

海砂「あの……竜崎さん」

L「何でしょう? 弥さん」

海砂「その……本当にごめんね。ステージの時、いきなりお面取っちゃって……」

L「それならもう大丈夫です。多分私はもう、月くんと出会い、面を外して話すようになったことで……外で素顔を晒すことに対する、自分の中の恐怖心はほとんどなくなっていたんだと思います。現に今もこうして、皆さんとは面を着けずにお話しすることができているわけですし」

海砂「竜崎さん」

L「なので、もう気にしないで下さい。弥さん。それに今となっては、弥さんが面を取ってくれたおかげで、私はこうして皆さんと知り合うことができた……そのことに感謝したい気持ちの方が大きいですから」

海砂「……分かった。じゃあ、改めてこれからもよろしくね。竜崎さん」

L「はい。よろしくお願いします。弥さん」

海砂「ミサでいいよ。もう友達だしね」

L「分かりました。ではよろしくお願いします。ミサさん」

清美「あ、あの……」

月「? どうしたの? 高田さん」

清美「えっと、その……多分、私以外の皆さんは、それぞれ、元々知り合いだったりすると思うんですが……」

月「?」

清美「あ、ですからその……たとえば夜神くんは天海さんと、海砂さんは星井さんと……それぞれ知り合いだったわけでしょう?」

月「ああ、そうだね」

海砂「知り合いっていうか、友達だけどね。ミサと美希ちゃんは」

美希「なの!」

清美「そしていうまでもなく、夜神くんと竜崎さんは友達同士、天海さんと星井さんは同じ事務所の仲間同士……」

月「? 高田さん?」

清美「つ、つまり……元々知り合い、または友達同士、仲間同士だった皆さんは……当然の事ながら、既にお互いの連絡先を知っていますよね?」

月「ああ、それはもちろん……?」 

清美「え、えっとですね。だから、その……」

月「……! そういうことか」

清美「…………」

月「じゃあ、僕と連絡先を交換しよう。高田さん。そうすれば僕から春香ちゃん、春香ちゃんから星井さん、星井さんから海砂さんへとつながる」

清美「! ……夜神くん。ありがとう」

L「あの、私が入ってないんですが……」

月「竜崎。心配しなくても、後でちゃんと皆の連絡先を送ってやるよ」

L「ありがとうございます。月くん」



211:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/01(日) 21:06:20.41 ID:AFPol+V20

(互いに連絡先を交換した六人)

海砂「よし、じゃあこれで私達全員つながったね。……って、なんかこれってサークル? みたいだね」

春香「確かに。でもそうなるとサークル名を考えないといけませんね」

美希「春香が意外とノリノリなの」

春香「だってなんか面白そうじゃん。こういうの」

美希「まあね。ちなみに春香はどんな名前が良いの?」

春香「えっ。う、うーん……そうだね……何が良いかな……」

海砂「はいはいはーい!」

美希「海砂ちゃん。はいどうぞなの」

海砂「えっとねー。『竜崎と愉快な仲間達』とか、どう?」

一同「…………」

L「ミサさん。いくらなんでもそのセンスは無しです」

海砂「えぇ!? 折角あなたを立てた名前にしたのにその言い草!?」

L「それについては感謝しますがサークル名の決定は別の話です」

海砂「むぅ……」

月「まあ名前なんて何でもいいじゃないか。それよりこうして連絡先も交換できたわけだし、また皆で集まろう」

L「はい。それ自体は大賛成です」

海砂「なんか微妙に納得いかないけど……まあ、うん。今日は皆に出会えたことに感謝するよ」

清美「ええ。今日は本当に素晴らしい一日でした。また是非近いうちに」

春香「私も楽しかったです。色々な驚きもありましたし……」

美希「ミキもお友達がたくさん増えて嬉しいの。これからもよろしくなの。あふぅ」

月(竜崎の迫真の演技の甲斐あって、とりあえず最悪の事態は免れたか……? だがまだ油断はできないな。この後すぐに捜査本部に戻って、早急に今後の対策を立てなければ……)

L(正直、天海春香と星井美希に私の顔を見られた時はどうなることかと思ったが……私がここまで詳細に自分の素性を捏造した以上、現職の刑事を父に持つ夜神月との接点を考慮したとしても……流石に現時点で私がL、またはLの関係者と推測することはできないだろう。今はそれよりも、二人との直接の接点を作れたことを良しとすべき。そして後は一刻も早く、捜査本部に戻って今後の対策を検討すること……)

海砂(ふふふ……これでライトくんの連絡先ゲット! いきなり二人で会うのはハードル高いかもだけど、またこのメンバーで同じように集まるのなら全然不自然じゃない。このチャンスを逃す手は無いわね……!)

清美(まさか夜神くんが直接私の連絡先を聞いてくるなんて……もしかして、夜神くんって私の事……? いや、流石にそれは無いか……あれはあくまでもこの中で唯一誰とも連絡先を交換していなかった私に対する配慮……でも結果的に、夜神くんと連絡先を交換することができたわ……!)

春香(竜崎さんはLじゃない……いや、Lであるはずがない。それを確かめるためにも……)

美希(今日は色々と考えさせられたの……ん? 何か忘れてるような……)

美希「あっ」

春香「? どうしたの? 美希」

美希「あ、ああ……うん。何でもないの」

春香「?」

月「―――じゃあ皆さん。今日はこのへんで。また近いうちにお会いしましょう」



212:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/01(日) 21:17:29.59 ID:AFPol+V20

(月、L、海砂、清美と別れた後、並んで家路を歩いている美希と春香)

美希「ねぇ、春香」

春香「うん」

美希「さっき思い出したんだけど……あれ、何だったの?」

春香「え?」

美希「ほら。ステージに上がる前に、『後で二人きりになった時に話す』って言ってた……」

春香「……ああ。あれね」

美希「うん」

春香「えっとね。実は……」

(死神の目で見たLの名前を美希に教える春香)

美希「…… L Lawliet ……?」

春香「そう。それがあの人……竜崎さんの本名なの」

美希「そ、それって……」

春香「……まあ、美希の言いたい事は分かるよ。端的に言って、竜崎さんがLなんじゃないかってことでしょ? 私達がずっとその正体を知ろうとしていた……」

美希「まあ……うん。安直だとは思うけど、でもあの夜神月って人とのつながりも考えると……」

春香「うん。最初は私もそうかもと思ったんだけどね。でも……」

美希「でも?」

春香「色々考えたんだけど……私にはどうしても、彼……竜崎さんがLだとは思えないの」

美希「春香」

春香「……聞いてもらってもいい? 私の考え」

美希「うん」

春香「まずこれまでの前提として……今、私達765プロのメンバーの中で、Lから一番キラとしての疑いが掛けられているのは……やっぱり美希だと思う」

美希「……前のプロデューサーの件と、クラスメイトの男子の件があるからだね」

春香「そう。短期間で二人も、美希と関わりのあった人が心臓麻痺で死んでいる……しかもこの二人の死は、時期的にキラ事件が始まった時期とも近接している。Lが美希をキラではないかと疑う理由としては十分過ぎる……」

美希「…………」

春香「ただ、Lが美希の部屋に監視カメラを設置していた間、新たに報道された犯罪者が、美希がその情報を得ないうちに裁かれた……このことによって、Lは少なくとも美希一人だけをキラ容疑者として疑うことはできなくなったはず。だけど、それだけで美希に対する疑いを完全にゼロにしたとは思えない」

春香「つまり次に考えられるのは、美希はキラの能力を持っている可能性があるが、その能力を持つ者は美希以外にも存在していて……」

美希「その人がミキと協力して裁きをしている……という可能性」

春香「うん。そこまでは予想できてもおかしくない。でもそこで行き詰る」

美希「…………」

春香「もし仮に、前のプロデューサーさんの件から、私を含めた765プロ関係者全員が疑われているとしても、動機は私達全員に同程度にある……だからどうやっても、そこから先へ絞り込むことはできない。ましてや、私一人だけが特に強く疑われたりするはずもない」

美希「…………」

春香「例のアイドル事務所関係者の件は、全て心臓麻痺以外で殺しているから、そもそもキラと同じ能力によるものだとは気付かれていないだろうし……また万一これが怪しまれて、その背景にあった事情まで調べられていたとしても……被害者が全員“765プロ潰し”計画の主要人物である以上、彼らを殺そうとする動機が765プロ関係者の全員に等しくあるのは変わらない。だからこの点からも、やはり私だけが特に強く疑われる理由は無い」

春香「さらに言えば、一介の所属アイドルに過ぎない私なんかより、たとえば社長さんとかの方が……765プロを守ろうとする動機は強いだろうと考えられるしね」

美希「……そうだね」



213:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/01(日) 21:37:55.08 ID:AFPol+V20

春香「またアイドル事務所関係者の件を別にすれば、私達765プロのメンバーが疑われる理由は、①キラの能力を持っている可能性がある美希と接点がある②キラ事件の開始に近接した時期に、身近に心臓麻痺で死んだ者が一人いる、ということだけ……この条件なら、たとえば、『クラスメイトの一人が心臓麻痺で死んだ』という当時の美希のクラスメイトの人達なんかも、私達765プロのメンバーと全く同じ条件になる。とすれば、『美希と協力して裁きをしている可能性のある者』の範囲はもっと広汎に及んでいてもおかしくない」

美希「…………」

春香「だから尚の事……Lが私だけを特定して疑っているとは考えられない。現に、美希の部屋には付けられていた監視カメラも、私の部屋には付けられてないしね」

美希「? 確かめたの? どうやって?」

春香「簡単だよ。定期的に、自分の部屋に入った時に、何も言わずにレムに目配せして合図を送るの」

美希「合図?」

春香「そう。何でもいいんだけど、私の場合は、右目を二回ウィンクした時は『カメラを探して』、四回ウィンクした時は『カメラを探して、もしあった場合はそのまま壊して』、っていう風に決めてるよ」

美希「へー。そんなことしてたんだ」

春香「うん。美希の部屋にカメラが付けられたって聞いてから……大体、週に一回くらいはやってもらってるかな。このやり方なら、もし本当にカメラがあったとしても問題無く対処できるからね」

美希「死神はカメラに映らないもんね」

春香「そう。それに死神は自分の意思で自由に人間界の物体に干渉できるから、壊そうと思えばすぐに壊せる」

美希「あー。確かにリュークも普通にリンゴ食べてるもんね」

リューク「まあな。……しかし、そこまで人間に尽くす死神がいるとは驚きだな。レム、お前ちょっとハルカに入れ込み過ぎなんじゃないのか?」

レム「……別に、私がしたいからそうしているだけだ。元々、私がハルカにノートを与えたのはジェラスの遺志を汲んだからであって、そのジェラスがファンだったハルカを守るのは私の意地のようなものだ」

リューク「その価値観が俺にはさっぱり理解できないがな……まあ別に好きにすればいいとは思うが」

春香「……で、今言ったように、実際に私の部屋にカメラを付けられたりはしていないということからも……やっぱり、私が765プロの他の皆や当時の美希のクラスメイトの人達よりも強く、ましてや美希と同程度にまで……Lからキラとして疑われているとは思えないんだ」

美希「…………」

春香「そうであるとすれば、『美希と協力して裁きをしている可能性のある者』として疑いが掛けられているのは、私を含めた765プロ関係者全員と、当時の美希のクラスメイト全員……全部合わせれば50人以上にはなるはず。そして疑いの度合が全員同程度である以上、この人数の中で、Lが私に関する情報だけをあそこまで詳細に調べているとはとても思えない」

春香「たとえば、私がデビューして間も無い頃に商店街のCDショップの前でCDの手売りをしていたこととか……ね」

美希「だから……それを知っている竜崎……さんは、ただの熱烈な春香のファンで……Lじゃないってこと?」

春香「うん。まあ、Lが個人的に私のファンだった……っていう可能性も考慮するなら、まだ一応、彼がLだという可能性も残るけどね」

美希「…………」

春香「ご、ごめん。冗談にしてはつまらなかったね……」

美希「ううん。そうじゃないの」

春香「え?」

美希「ただ……」

春香「?」



214:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/01(日) 21:52:50.42 ID:AFPol+V20

美希「いや……そうだね。確かに本名が“ L Lawliet”っていうのは気になるけど……でもそれだけで彼がLだって決めつけるのは無理があるよね」

春香「でしょ? それに、普通に考えて本名の一部の“L”をそのまま通名にするとはちょっと思えないし……もし本当に彼がLなら、竜崎“ルエ”なんてあからさまな偽名を使うとも思えない。……キラとして一番疑っているはずの、美希の前で」

美希「? “ルエ”……あっ、“エル”ってことか。単純過ぎて逆に気付かなかったの」

春香「うん。私も先に“ L Lawliet”っていう本名の方を見てなかったら気付かなかったかも」

美希「まあ確かに……彼がもし本当にLなら、わざわざミキにこんなヒントを与えるような偽名は使わないような気がするの」

春香「うん。それにそもそも本名の一部が“L”なんだから、ゲーム内でのアカウント名が“ルエ”でも別におかしくないしね」

美希「そうだね」

春香「あとは、さっき美希も言っていたように、お父さんがLと一緒にキラ事件の捜査をしている、ライトさんとのつながりだけど……」

美希「うん」

春香「でもそれも、彼がLであるとする確たる証拠になるわけじゃない。……ライトさんとつながっているからといって、ライトさんのお父さんとも当然につながっているということにはならないわけだし」

美希「それはまあ……その通りなの」

春香「そう。だから彼はLじゃない……いや、Lであるはずがない……」

美希「…………」

春香「それに……今はLよりもアリーナですよ! アリーナ!」

美希「? 春香?」

春香「だってさ、アリーナライブまでもうあと三か月しかないんだよ? 正直言って、もうここまできたら、Lなんて放っておいても私達はトップアイドルになれそうだし……もうそれでいいんじゃないかなって」

美希「春香」

春香「私の目標は、あくまでも765プロの皆と一緒にトップアイドルになることであって……Lの正体を突き止めることじゃないからね」

美希「……わかったの。春香」

春香「美希」

美希「ミキ的にも、リーダーの春香にはライブに集中してもらわないと困っちゃうしね」

春香「あはは。そうでしょ? それにアリーナライブは、私達の今後にとっても大事なライブになるだろうしね。……律子さんの受け売りだけど」

美希「そうだね。あと『眠り姫』の撮影もいよいよ大詰めだしね」

春香「うん。きっとこれからもっともっと忙しくなるよ、私達は。Lの相手なんてしてる場合じゃないって」

美希「わかったの。じゃあミキも、裁きはこれまで通りに続けるけど、Lの事はもうあんまり考えないようにするの」

春香「うん。それでいいと思うよ。……で、私は当面の間はお仕事の方に集中かな。……あっ」

美希「? 春香?」

春香「……受験勉強もやらなきゃいけないの、忘れてた……はぁ」

美希「あはっ。春香ったら一気にテンション下がってるの」

春香「だってぇ……。はぁ、まあ愚痴っても仕方ないか。頑張るしかないよね。お仕事も、受験勉強も」

美希「うん。頑張ろうなの。春香」

春香「そうだね。じゃあ美希。また明日ね」

美希「はいなの。また明日。春香」



964: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:16:54.24 ID:jizsduFN0

(美希と別れた春香)

春香「…………」

レム「いいのか? ハルカ」

春香「? 何が?」

レム「Lの事だよ。本当にこのまま無視を決め込むのか?」

春香「……まさか」

レム「! ……じゃあお前、本当はあの竜崎って男を……?」

春香「ううん。彼の事は本当に疑ってないよ。そういう意味では、さっき美希に話したのは私の本心。あそこまで私の事を事細かに知っているような人が……Lであるはずがない」

レム「…………」

春香「確かに、彼の本名の事や、ライトさんとのつながりのことが多少引っかかるのは事実だけど……でも、それも大した問題じゃない」

レム「? どういうことだ?」

春香「竜崎さんはLじゃなくても……本物のLは今も必ずどこかにいる」

レム「…………」

春香「つまり本物のLの正体を突き止めさえすれば……竜崎さんがLではないということが証明される。それで何の問題も無い。そうでしょ? レム」

レム「まあ……それはそうだな」

春香「それにさっきも言ったけど、Lは今も、美希をキラだと疑っているに違いない。Lは美希の部屋に64個もの監視カメラを取り付けたほどの者……今度こそ、どんな手段を取ってくるか分からない」

春香「だから……美希の為にも、私は早く本物のLを見つけ出さなければならない」

レム「…………」

春香「そして本物のLを見つけることができた暁には……必ず、殺す」

レム「!」

春香「そうすれば、美希に対する危険は完全に除去できる。美希を守ることができる」

春香「もう美希にあんな怖い思いはさせない……絶対に」



216:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/01(日) 22:20:41.13 ID:AFPol+V20

レム「……なら、少なくともミキには、お前がそう思っているということは言っておいてやった方が良いんじゃないか?」

春香「ううん。それは言えないよ」

レム「? 何故だ?」

春香「美希は優しい子だから……私がまだLの正体に拘っていると知れば、きっと心配する。私がまた何か危険な事をするんじゃないかって」

レム「…………」

春香「でも私はこれ以上、美希に余計な心配は掛けたくないの。美希には、余計な事は考えず、自分の理想とする世界をつくることに専念してほしいから」

レム「ミキの理想とする世界……犯罪者のいない、心優しい人間だけの世界……ってやつか」

春香「うん」

レム「……まるで夢物語だな」

春香「そう。まるで夢……。でも美希は、本気でそれができると信じ、その信念の下……今もデスノートを使い続けている。なら私にできることは、その美希の夢、理想が叶うよう……できる限り協力してあげること」

春香「だからそれを邪魔しようとする者がいるのなら……私が美希に代わってでも、その者を排除してあげないといけない」

レム「……それが、お前がLを消したいと思う本当の理由なのか? ハルカ」

春香「うん。もちろん、それが『765プロの皆と一緒にトップアイドルになる』っていう私の使命ともつながっているから、っていう理由もあるけどね。美希のいない765プロなんて考えられないし」

レム「……分かった。お前がそうしたいと思うなら、そうすればいい。私は私で、これまで通り、お前の応援を続けるだけだ。ハルカ」

春香「レム」

レム「あの竜崎という男が言っていたのと同じように……私も、ハルカのファンだからね」

春香「……ありがとう。レム」

春香「…………」

春香(そう。私のやることは何も変わらない)

春香(今後、夜神月に対する好意を装い、自然な形でより距離を縮めてゆき――……)

春香(ゆくゆくは、彼の父親である夜神総一郎を通じて……必ずLの正体を掴んでみせる)

春香(―――美希を、守るために)



217:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/01(日) 22:36:10.69 ID:AFPol+V20

【同日夜・美希の自室】


美希「……ねぇ。リュークはどう思う?」

リューク「ん? 何がだ?」

美希「……あの竜崎って人が、Lなのかどうか」

リューク「さあ? そんなの俺が知るわけないだろ」

美希「そんな身もフタも無い言い方しないでほしいの」

リューク「じゃあお前はどう思うんだ? ミキ。ハルカと同じように、お前もあの竜崎って奴の言うことを信じてるのか?」

美希「……正直言うと、春香ほどには信じられないの」

リューク「ほう」

美希「確かに春香の言うことは、一応筋は通ってると思うけど……お父さんがLと一緒にキラ事件の捜査をしているっていう、あの夜神月って人の友達で……それで本名が“ L Lawliet”だなんて……正直、偶然にしてはできすぎって思うな」

リューク「それはまあ……そうだな」

美希「それに偽名の方の“竜崎ルエ”だって……確かに、春香の言うように『本物のLなら、キラとして疑っているミキの前でこんな偽名を使うはずがない』とはいえると思うけど……でも逆に、『だからこそこの偽名にした』ともいえると思うの」

リューク「なるほどな。そう読まれることを承知で、あえてその裏をかいたっていう可能性か」

美希「うん。で、そうやって考えていったら、結局どっちとも取れるわけで……裏の裏のそのまた裏、とか読んでいったらキリがないの。それならむしろ、こうやってミキを混乱させることが狙いで名乗った名前……って考えた方がすっきりするくらいなの」

リューク「まあLなら、それくらいしてきてもおかしくないかもな。……以前、この部屋に異常な数のカメラを付けてきたことからしても、常識では考えられないようなことをしてくる奴だしな」

美希「でしょ?」

リューク「……だが、そう考えるとやっぱり変だな」

美希「えっ?」

リューク「ミキでさえここまで疑ってるっていうのに……なんでハルカは、あんなに安易に竜崎って奴の言うことを信じたんだ?」

美希「……ミキでさえって言うのはひどいって思うな」

リューク「いや、だって今までも……ハルカはお前よりずっと用心深く行動していただろう? アイドル関係者殺しの時もわざわざ心臓麻痺以外で殺していたし……黒井って奴に脅迫する時も、絶対に自分に足がつかないように相当工夫していた」

美希「…………」

リューク「それに今日話していた、自分の部屋にカメラが付けられていないかの確認の仕方にしたってそうだ。ハルカはとにかく、少しでも自分が怪しまれることがないように、常に細心の注意を払って行動していたはずだ」

美希「それはまあ……うん。その通りなの」

リューク「そこまで用心深かったハルカが、あの竜崎って奴の事は全然疑おうとしない……誰だっておかしいと思うだろ」

美希「それは……」

リューク「それは?」

美希「……春香が、誰よりもアイドルだからだよ」

リューク「? どういうことだ? ミキ」



218:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/01(日) 22:54:09.25 ID:AFPol+V20

美希「春香は誰よりもアイドルだから……いつだって、何よりもファンの事を大切に思ってるの」

美希「アイドルは、ファンあってこそのアイドルだから」

リューク「つまり、あいつが自分のファンだって言ったから……だから無条件に信じるってことか?」

美希「うん」

リューク「いや、でも流石にそれはおかしいだろ。そのファンってこと自体が嘘かもしれないんだから」

美希「……そうだね。だから多分、これは春香の願望でもあるんだって思うの」

リューク「願望?」

美希「そう。『竜崎さんがLであるはずがない』って、春香は言ってたけど……多分より正確に言うと、『竜崎さんがLであってほしくない』だと思うの」

リューク「『Lであってほしくない』……?」

美希「うん。『ここまで自分の事を知ってくれている人が、実はLだったなんて思いたくない。信じたくない』『今日、彼から聞いた話が全部嘘だったなんて思いたくない』……どこまではっきりと意識してるかは分からないけど、多分こういうことなんじゃないかな。……春香の気持ち的には」

リューク「……なるほど。まあこれも、俺には到底理解しがたい感情だが……。しかし本当によく分かるんだな。ハルカの事」

美希「当然なの。春香は仲間で……何よりも、ミキの大切な友達なんだから」

リューク「ククッ。そうか、そうか」

美希「…………」

美希(でも……もし彼……竜崎……さんが、Lなら……)

美希(春香の言うとおり、何で春香の情報をそこまで詳しく知っていたのか? っていうのは確かに疑問なの)

美希(まさかLが元々春香の大ファンだったとも思えないし……)

美希(いや、でも……)

美希(春香の言うように、『Lが春香だけを765プロの他の皆やミキの当時のクラスメイトよりも特に強く疑っているはずがない』……そういう前提で考えれば、確かに『Lが春香の情報だけを詳しく知っているはずがない』っていえるのかもしれないけど……)

美希(……もし、そのそもそもの前提が間違っていたとしたら?)

美希(春香だけを、765プロの他の皆やミキの当時のクラスメイトよりも、特に強く疑うだけの理由があるとしたら……?)

美希(もしそうだとしたら、Lが、春香についてだけ……極端に細かい情報まで調べたりしていてもおかしくはない……。それこそ、デビューして間も無い頃に、商店街のCDショップの前でCDの手売りをしていたこと、みたいな……)

美希(でも……それだけの理由って、何かあるのかな? 春香だけが特に強く疑われるような、理由……)

美希(たとえば、そう……他の人には無くて、春香にだけあるような……何か特別な事情)

美希(……そんなの、一つしかない)

美希(デスノートを持っている事)



219:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/01(日) 23:04:08.60 ID:AFPol+V20

美希(でもそれがばれているはずはない……というか、それがばれていたらとっくに捕まっているはずだし……)

美希(でも何かあるとしたらそれしか……)

美希(逆に、春香が他の皆と同じ条件だったのはデスノートを拾う前まで……拾ってからは……)

美希(……ん?)

美希(デスノートを……拾った……?)

美希(春香がデスノートを拾ったのは……去年のファーストライブの日……逆上したファンの人に殺されそうになって……)

美希(それを見ていたジェラスって死神が……そのファンの人を……)

美希「――――!」

美希「リューク!」

リューク「うおっ。何だ? いきなり」

美希「春香を……春香を助けて死んだ、ジェラスって死神のことなんだけど……」

リューク「ああ。そいつがどうかしたのか?」

美希「そのジェラスって……春香を助けたとき、どうやって相手の人を殺したのかな?」

リューク「? どうって、そりゃデスノートに名前を書いて……」

美希「じゃなくて! 死因!」

リューク「死因?」

美希「うん。やっぱり心臓麻痺? それとも別の……」

リューク「ああ……そりゃ、普通に考えて心臓麻痺だろ。レムから聞いた話だと、ハルカはそいつに殺される寸前だったってことだから……そんな状況で下手に死因なんて書いたら、そこから少なくとも6分40秒は待つはめになる。その間にハルカが殺されたら元も子も無いからな」

美希「……うん。やっぱりそうだよね」

リューク「? それがどうかしたのか?」



221:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/01(日) 23:23:25.27 ID:AFPol+V20

美希「……レムから聞いた話によると、その人は春香のすぐ後を追う形で、春香の家の最寄駅で降りた」

美希「その直後、春香に声を掛け……プロポーズをしたけどあえなく断られた。そして逆上して春香を殺そうとしたところで……ジェラスに名前を書かれ、心臓麻痺で死んだ」

リューク「ああ。確かにそう言っていたな」

美希「……リューク。そもそも何で、Lはミキをキラだと疑ってるんだと思う?」

リューク「? そりゃお前……今日自分でも言ってたように、事務所の前のプロデューサーとミキのクラスメイトの奴が心臓麻痺で死んだからだろ」

美希「そう。『心臓麻痺』。その死因で死んだ人が身近に二人もいたから……ミキはLに疑われたの」

美希「そして……例の春香のファンの人も、『春香の家の近くで』心臓麻痺で死んでいる……」

リューク「…………」

美希「もしLが、ミキの部屋に監視カメラを仕掛けた結果、『ミキの他にもキラの能力を持つ者がいるかもしれない』と思ったのなら……」

美希「そしてそれが、ミキと協力ができるような、ミキの身近にいる誰かだと思ったのなら……」

美希「とりあえず、ミキの身近な人の周りで、『心臓麻痺』で死んだ人がいなかったかどうか……過去に遡って調べていくんじゃないかな」

リューク「! ……そういうことか」

美希「そういうことなの。例の春香のファンの人が、『春香の家の近くで』ジェラスによって『心臓麻痺』で殺されたのは、キラ事件の開始から三か月前くらいのこと……すぐに見つかってもおかしくない」

美希「その人が春香のファンだったことは調べればすぐに分かるだろうし、また当日も春香のすぐ後を追っていたのなら、駅の防犯カメラなんかには春香とほとんど同時に映っているはず……だとすれば、『この人は死ぬ直前に春香と接触していた可能性が高い』……こう推理するのが一番自然……」

美希「そしてその推理を前提にすれば、『死ぬ直前に春香と接触していた可能性が高い人』が『心臓麻痺』で死んだことになるから……」

リューク「ハルカの周囲で心臓麻痺で死亡した人間がいたということになり……ハルカが、ミキと協力して裁きをしている可能性のある者として、他の奴らより特に強く疑われるだけの理由があることになる……ってわけか」

美希「うん。……まあ実際にはこのファンの人はジェラスが殺したわけだから、春香にとっては完全に濡れ衣なんだけど……」



222:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/01(日) 23:49:11.09 ID:AFPol+V20

リューク「なるほどな。しかしそう考えると、ハルカもミキと同じくらいのレベルでLから疑われている可能性があるってことになるな」

美希「うん。そしてもしそうなら、Lが春香についての情報を特に詳しく調べていてもおかしくない」

美希「……たとえば、デビューして間も無い頃に商店街のCDショップの前でCDの手売りをしていたこと……とかね」

リューク「ククッ。じゃあやっぱりそこまでの情報を持っていた……あの竜崎がLってことか?」

美希「流石にまだそこまでの断定はできないけど……」

リューク「で、早くハルカに教えてやらないのか? ミキ。Lがハルカをミキと同じくらいのレベルで疑っている可能性がある、って。そしてそのLはやっぱりあの竜崎って男かもしれない、って」

美希「……うん。春香には言わないでおくの」

リューク「? 何でだ?」

美希「さっきも言ったけど、春香はアイドルとして……竜崎……さんが、自分のファンであってほしいと願ってる。Lなんかであってほしくないって願ってるの」

リューク「…………」

美希「でも多分、春香もきっと、心のどこかでは……『でも、もしかしたら』って思ってるの」

美希「そんな中で、ミキが今のようなことを話したら、その『もしかしたら』の部分がもっと大きくなる。そしたら春香はきっと、それを否定できるだけの理由を早く見つけようとする」

美希「そして春香にとって、『本物のLが別にいる』ことさえ分かれば、それはイコール竜崎……さんが、Lでないことの証明につながる」

美希「だからそうなった場合、きっと春香は、Lの正体につながる可能性のある、あの夜神月って人に必要以上に近付いて……少しでも早く、Lの正体を突き止めようとすると思うの。今だって、Lの正体を探るために、夜神月に恋心を抱きつつあるような演技をしてるって言ってたし」

リューク「ああ、そういえば言ってたな。まあ『あくまでもそういうチャンスがあったら』という程度の言い方ではあったが」

美希「今は本当にそうだとしても……もしミキが今の話を伝えたら、春香は絶対、もっと強硬な手段に出る。それはつまり、それだけ春香が危険な目に遭う可能性が高くなるってこと……。だから、ミキの方から、今の話を春香に伝えるようなことはしない……いや、したくないの」

リューク「……なるほどな」

美希「でも、あの竜崎が本当にLなら……そして春香の情報を徹底的に調べ上げるほどにまで、もう春香の事を疑っているんだとしたら……今、ミキが春香に何も言わなかったとしても……いずれ、春香が本当に危険な状況に追い込まれてしまう可能性が高い」

リューク「…………」



965: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:19:01.22 ID:jizsduFN0

美希「――そんなの、絶対に嫌なの」

リューク「!」

リューク(ミキの目の色が……変わった)

美希「思えば、ミキは今まで……ずっと春香に助けられてきたの」

リューク「…………」

美希「事務所に二人組の刑事さん……そのうちの一人は夜神月のお父さんだったけど……が来て、クラスメイトのAが心臓麻痺で死んだことを言わざるを得なくなって」

美希「それで、身近な人間が二人も心臓麻痺で死んだのがミキだけになって……もうキラ容疑者はミキだけに絞られるって思って……」

美希「もうどうしようもないくらい精神的に追い詰められてた時に……春香がミキを救ってくれた」

美希「それまでのこと、全部教えてくれて……ミキを守ってくれたの」

美希「それからずっと……ミキは春香に甘えっぱなしだった」

美希「黒井社長への脅迫とかも、全部春香に任せきりで……Lの正体を探ることについて、ミキはこれまで積極的に何かをしようとはしてこなかったの」

リューク「…………」

美希「でも、もうこのままじゃダメなんだって思うの」

美希「春香がミキと同じくらいLから疑われている可能性がある以上……そしてLがあの竜崎である可能性がある以上……」

美希「ミキが春香を守ってあげないといけないの」

リューク「……じゃあ殺すのか? あの竜崎を」

美希「殺さないよ」

リューク「あれっ」

美希「今は……ね」

リューク「? 今は?」

美希「いくら怪しいって言っても……まだあの竜崎がLって決まったわけじゃないから」

リューク「なるほどな。じゃあもし本当に奴がLだと確定したら、その時は……」

美希「それでも……まだ今の段階で殺すつもりはないの。たとえあの竜崎がLでも、彼は犯罪者ってわけじゃないからね」

リューク「…………。(女子中学生の部屋を盗撮するのは犯罪のような気がするが)」

美希「何か言った? リューク」

リューク「いや、なんでも」

美希「? ……でも……」

リューク「でも?」

美希「もし彼が、本気で春香を疑い、捕まえようとしたなら、その時は……」

リューク「! …………」

美希「まあでも、それは彼がLかどうかを確かめてからの話なの」

リューク「……なるほどな。ククッ」

美希「…………」



224:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/02(月) 00:15:27.67 ID:7guxwNQE0

リューク「…………」

リューク(これまでLに対してはずっと受け身のスタンスだったミキが、遂に自らの意思で動き出した)

リューク(思えば、俺がデスノートを765プロのどのアイドルに渡すべきかで迷っていたとき……決め手になったのは、ミキが天才アイドルと呼ばれている所以たる性質そのものだった)

リューク(普段はあまりやる気が無くマイペースだが……一度何かのきっかけでスイッチが入ると、常識では考えられないほどの集中力や人並み外れたパフォーマンスを発揮する)

リューク(俺はミキのこの性質に着目し、デスノートを使わせる人間として選んだわけだが……どうやら、俺の目に狂いは無かったらしい)

リューク(今まさに、仲間であり親友でもあるハルカの危機が、ミキにとってのスイッチとなった)

リューク(ミキが今演じている映画の役になぞらえて言うなら……さしずめ『眠り姫の覚醒』ってところか)

リューク(面白くなってきたぜ。……ククッ)

美希「…………」

美希(もう、ミキがやるしかない)

美希(たとえどんな手を使ってでも、あの竜崎がLなのかどうか……この目で確かめてみせる)

美希(―――春香を、守るために)













【同時刻・キラ対策捜査本部(都内のホテルの一室)】


L「! …………」

月「? どうした? 竜崎」

L「月くん。これはいわゆる『モテ期』というやつでしょうか?」

月「? いきなり何を言ってるんだ?」

L「……今を時めくアイドルから、デートに誘われました」

月「! まさか、天海春香か!?」

L「いえ」

月「! じゃあ……」

L「はい。―――ミキミキこと、星井美希からです」



254:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/22(日) 01:15:03.79 ID:MnCwb6NF0

【一週間後・都内某スイーツ店】


(店内の一角のテーブルで向かい合って座っているLと美希。Lは特大のチョコパフェを、美希はいちごババロアを食べている)

美希「竜崎……さんって、意外と甘いもの好きなんだね」ムシャムシャ

L「ええ、まあ。意外ですか?」パクッ

美希「うん。ぱっと見、全然そういうイメージ無かったから。……あ、でもそういえば、前の喫茶店の時もコーヒーに砂糖たくさん入れてたね」

L「……よく見ていますね」

美希「まあね。で、竜崎……さんは……」

L「……“さん”付けが苦手のようでしたら、“竜崎”と呼び捨てにして頂いて構いませんよ? どのみち本当の名前じゃありませんし」

美希「そう? じゃあお言葉に甘えてそうさせてもらうの。で、竜崎は……」

L「はい」

美希「ミキのコト、どう思ってるの?」

L「えっ」

美希「だって前の時、春香のことはすごく熱く語ってたのに、春香と同じ事務所でアイドルやってるミキのことは完全スルーだったの。正直ちょっとひどいって思うな」

L「……はあ」

美希「あ。別に春香のファンってことに怒ってるわけじゃないんだよ? ただミキのことはどう思ってるのかなって、それがちょっと聞きたかったの」

L「それが今回、星井さんが私をデートに誘った理由ですか?」

美希「そうだよ。あ、ミキのことはミキでいいよ」

L「分かりました。では美希さんとお呼びします」

美希「別に呼び捨てでいいけど」

L「私はこちらの方が呼びやすいですので」

美希「わかったの。で、どう思ってるの? ミキのこと。あ、もちろんアイドルとしてって意味でね」

L「それは……今後のアイドル活動の参考にしたいとか、そういった理由からですか?」

美希「そうだね。ミキのファンの人はミキのことを認めてくれて、応援してくれているけど……他のアイドルのファンの人からミキがどう見られてるのかって、今まであんまり意識したこと無かったし、そもそもそういう人と知り合う機会も無かったから。一度、そういう人の声も聞いてみたいって思ったの」

L「なるほど。そういうことでしたらいくらでもお話ししますが」

美希「ホント? じゃあキタンの無い意見を聞かせてほしいの」

L「分かりました。では……」

L「…………」

L(星井美希……こいつはいまいち何を考えているのか読みづらい)

L(そもそも何故いきなり私と一対一で会おうなどと言い出したのか)

L(まさかこの前のやりとりだけで、私が“L”であると勘付いたはずもないだろうが……)

L(…………)



255:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/22(日) 01:29:16.82 ID:MnCwb6NF0

【一週間前(東応大学の学祭があった日)・キラ対策捜査本部(都内のホテルの一室)】


(喫茶店での美希、春香、海砂、清美との会合を終え、捜査本部に戻ってきたLと月)

 ガチャッ

L「ただいま戻りました」

月「戻りました」

総一郎「ああ、お疲れ。竜崎……って、ライトも一緒なのか? お前、今日はそのまま家に帰るはずじゃ……?」

月「……ああ。ちょっと事情が変わってね。父さん、模木さん、松田さん。今から少しいいですか?」

総一郎「? 何だ?」

模木「……?」

松田「何かあったのかい? 月くん」

月「ええ。実は――……」

L「…………」

(海砂のライブイベント以降の出来事を三人に説明する月)

総一郎「……天海春香と星井美希の二人と接触……」

L「はい。完全に想定外でしたが」

松田「うわあ、いいなあ。はるるんにミキミキにやよいちゃん……一気に765プロのアイドル三人と知り合いになった上に、ミサミサとまで」

L「……松田さんは弥海砂を知っているんですか?」

松田「ええ、もちろん。まだデビューして間も無い子ですが、僕の中ではイチオシのアイドルですよ。ヨシダプロでは一番の成長株ですね」

L「なるほど。ですが松田さん。今日はツッコミ役の相沢さんが不在なので無用なボケは控えて下さい」

松田「はい……」

月「ともあれ、竜崎の迫真の演技によって最悪の状況は回避することができたが……まだ油断できない状況であることに変わりは無い。だから今後の対策を練るため、急遽ここに戻って来たんだ」

総一郎「なるほど……。しかしまさか、そんなことになっていたとは……」



256:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/22(日) 01:51:03.99 ID:MnCwb6NF0

松田「それにしても、よくそこまで咄嗟に話を作れましたね。竜崎」

L「はい。ここ最近、765プロダクション所属アイドルの情報……特にキラ容疑者の最有力候補である天海春香と星井美希の二名については、デビューして間も無い頃の活動も含め、関係するあらゆる情報を徹底的に洗っていたのが役立ちました」

松田「でも竜崎……竜崎“ルエ”っていう、あえて“L”を匂わせる名前をミキミキやはるるんの前で名乗ったのは何故です?」

L「嘘をつくときの常套手段です。全てを嘘で固めてしまうより、ある程度真実性を織り交ぜた方が怪しまれないし説得力も増す……またおそらく天海春香は、自分がそこまで“L”に疑われているとは思っていないと考えられますが、星井美希は十中八九それに気付いている」

松田「? ミキミキが? そんな話ありましたっけ?」

総一郎「私と模木がキラ事件の捜査として765プロの事務所に聞き取り調査に行った際に、クラスメイトの件を話さざるを得なくなったからだな。それで自分がキラ容疑者として最も疑われるようになったと……」

L「はい。またその前提として、星井美希が父親である星井係長から『警察は“L”と一緒にキラ事件の捜査をしている』という情報を聞いていたとしたら……あの時事務所に来た『朝日四十郎』と『模地幹市』という二名の刑事は“L”と一緒にキラ事件の捜査をしており、“L”の指示で事務所に来た……そう考えるのが自然です」

L「とすれば、自分が二名の刑事に話したクラスメイトの件はすぐに“L”にも伝わり……その結果、“L”は自分をキラではないかと疑うようになる……星井美希の立場に立って考えれば、当然このように推測するでしょう」

L「…………」

L(さらに、これに加えて監視カメラの件……星井美希が何らかの方法によりカメラの設置に気付き……いや、気付いていなくとも、その可能性を疑い、夜神局長らの聞き取り調査があった日からしばらくの間は、裁きを天海春香に代行させていたという可能性……)

L(このことも、星井美希が今述べた推測をしていた可能性を補強しうるものといえる……。といっても、カメラ設置の事実については、この場でそれを知っているのは私と夜神局長だけ……。今ここで皆に説明するわけにはいかないが……)

L(ただ、今後捜査を進めていく上でも夜神月にだけは伝えておく必要がある……後で適当なタイミングで伝えるとしよう)チラッ

月「? どうした? 竜崎」

L「いえ、なんでもありません。ともあれ、“L”が自分をキラではないかと疑っている……そのような状況で、“L”が“ルエ”などというあからさまな偽名を用いて、キラとして疑っている自分の前に姿を現すはずがない……」

L「星井美希がキラならおそらくそう考える。……そういう理由もあって、私は二人に対して“竜崎ルエ”と名乗ったんです」

松田「なるほど……」



260:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/22(日) 08:44:19.48 ID:TpqiNf8v0

L「仮に、もう少し違う条件……たとえば『キラが殺しを行うには顔と名前の両方が必要』という当初の前提のままなら、そもそもの接触方法として、キラ容疑者である星井美希と天海春香の両名に対し、正面から堂々と『私がLです』と名乗り出て、その反応を観察する……という方法もあったんですけどね。流石に『キラは顔だけで殺せる可能性がある』ということまで推測できている現段階において、それをするのはリスクとして高過ぎるため、実行に移すことはできませんでした」

月「だが現実には、偶然の連続とはいえ、結果として竜崎の顔を星井美希と天海春香の二人に見られてしまった。そして星井美希はどうか分からないが、少なくとも天海春香は、これまでの捜査の結果から『顔を見ただけで人を殺せる能力』を持っている可能性が高い」

L「はい。それはつまり、私がいつ殺されてもおかしくない状況になったということを意味します」

一同「…………」

L「しかし『顔を知られている』というだけなら、夜神さんと模木さんは『“L”と共にキラ事件の捜査をしている刑事』である『朝日四十郎』および『模地幹市』として、既に顔を知られているわけですから……星井美希・天海春香からすれば、むしろこちらの方を先に標的とする可能性が高いとも考えられます」

総一郎・模木「…………」

L「また月くんも『父親が現職の警察官』であることは既に知られていますし、月くんの年齢から逆算すれば、その父親は警察庁でもそれなりの地位と役職に就いている人間であろうことは十分想像できます。さらに月くん自身の優秀さをも勘案すれば、その推定は一層強く働くでしょう」

松田「確かに……月くんのスペックからすれば、そのお父さんも相当すごい人なんだろうなって誰でも思うでしょうしね」

月「…………」

L「そして星井美希および天海春香が『警察は“L”と一緒にキラ事件の捜査をしている』という情報を得ているとの前提に立てば、今述べた推定から、『夜神月の父親が“L”に関する情報を持っている可能性がある』と推測してもおかしくはないですし……さらにその息子で警察志望である月くんにも、父親からその情報が伝えられている可能性がある……そこまで読んでいる可能性も十分考えられます」

月「そうだな。僕も“L”につながりうる者……そう思っているからこそ、天海春香も僕に対して好意的に振る舞っている。そう考えるべきだろう」

総一郎「……では、今ここに居る者の中では……」

松田「最悪の場合でも、僕だけは殺されずにすみそうっすね」

一同「…………」

L「松田さん。今日は無用なボケは控えて下さいと言ったはずです」

松田「はい……」

総一郎「となると現状、既に顔を知られている者の中で……一番殺される危険性が低いのは竜崎では? 設定上、ただのライトの友人というだけだからな」

松田「そうですね。捏造した話にも不自然な点は無いですし……何より、実際にあったはるるんのアイドル活動の話を入れたのは大きいっすよ。それも、本当のファンじゃないと知りえないような、デビューして間も無い頃の話ですからね」

総一郎「うむ。それで一気に話の信憑性が増したといえるな」

松田「それに元引きこもりっていう設定も、竜崎の外見なら不自然じゃないですしね」

L「…………」



261:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/22(日) 09:24:59.25 ID:TpqiNf8v0

松田「あ、でも竜崎。なんでミキミキじゃなくてはるるんのファンってことにしたんすか? 単なる好みとか?」

L「単純に、彼女の方がアイドルらしいからです」

松田「アイドルらしい?」

L「はい。星井美希がそうでないとは言いませんが……天海春香のアイドルに懸ける情熱、想いはある種独特……半ば狂気じみてさえいます」

松田「まあ……自分の事務所を守るために他の事務所の関係者を殺しちゃうくらいですもんね。いや、もちろんまだ100%そうって決まったわけじゃないっすけど……」

L「はい。そしてそれは、彼女のアイデンティティがアイドルという存在そのものと強く結びついていることを意味します。そしてそうであるならば、自分のファン……とりわけデビュー当初からの熱烈なファンなどは、彼女にとって最も尊重すべき存在となるはず……」

総一郎「だから、竜崎がそのようなファンを演じている限りは殺されない……ということか?」

L「はい。より厳密に言うと『殺す対象になりえない』でしょうか。もちろん絶対の保証などはありませんが……正直言って、私の顔を二人に見られてしまったあの状況から事態を好転させるには、これしか手がありませんでした。事前に何の打ち合わせもしていなかったので、月くんを驚かせてしまったかもしれませんが……」

月「いや、僕もあの場面ではそれ以外の手は無いと思っていたところだよ。竜崎」

月「それに、殺されるリスクが完全にゼロになったわけではないが、少なくともこれで、天海春香のみならず星井美希とも、直接接触して探りを入れられるようになった。また結果的に、竜崎が接点を持ちたがっていた弥海砂とのつながりもできた」

L「そうですね。二人に対する接触自体は我々も直接できるようになりましたが……現時点で唯一、星井美希と天海春香の二人がキラであることの物的証拠となる可能性のある『黒いノート』……いざ実際にこれを押さえるという段になれば、やはり弥海砂に協力を要請することは必要不可欠です」

月「ああ。キラ信者とまでいえるレベルのキラ肯定派であり、かつ星井美希の友人でもある……そんな彼女の協力を取り付けない手は無い。といっても、『黒いノート』を押さえるための具体的な方法については別途考えないといけないが」

L「はい。まさかキラ信者の彼女に『キラを捕まえたいから協力してくれ』などとは口が裂けても言えませんので……捜査であることを伝えず、悟られず、なおかつ星井美希と天海春香の両名からも絶対に怪しまれることなく、目的の『黒いノート』を押さえる……そんな方法を考えなければなりません」

松田「あ、あるんすかね? そんな方法……」

L「正直、現時点ではまだ何も思いついていません。が、今はとにかく弥海砂を協力者とすることです。ノートの具体的な押さえ方はそれから考えましょう」

月「そうだな。まずは弥海砂の協力を得られるような状況を作らなければ始まらない」

L「ということでよろしくお願いします。月くん。当初の計画通り、弥海砂と親密な関係になって下さい」

月「……竜崎。お前も既に彼女と接点があるんだから、別に当初の計画にこだわらず、お前が自分で彼女と親密になってもいいんじゃないか?」

L「いえ。女性を味方につけるのであれば私よりも月くんの方が圧倒的に適任です。それについては皆さん異論無いはずです」

松田「それはまあ……そうっすね」

月「…………」



262:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/22(日) 09:55:34.07 ID:TpqiNf8v0

総一郎「いや、待て。竜崎。ライトをこの捜査本部に加える条件として『天海春香の家庭教師の件以外にライトに危害が及びかねないような捜査は頼まない』としていたはずだ」

L「あ、はい」

総一郎「弥海砂はキラでなくとも、キラ信者……そうであれば、万が一、ライトがキラ事件の捜査をしていることに気付かれたら、どんな行動に出られるか分からない」

L「そうですね。既に月くんにもお話しした内容ですが……たとえば、ネットに月くんの顔写真を『キラを捕まえようとする者』としてアップし、キラに裁いてもらおうとするとか……十分ありえますね」

総一郎「! …………」

L「また、アイドル事務所関係者を殺した方のキラ……つまり天海春香は、犯罪者でなくとも、自分の邪魔になる者は殺すとみてまず間違いありません」

L「自分の事務所を陥れようとしていた他の事務所の関係者を軒並み殺しているくらいですから、自分を捕まえようとする者にも容赦はしないでしょう」

総一郎「…………」

L「ただ現状、警察官として顔を知られている夜神さんと模木さんが殺されていないのは、単にまだ星井美希・天海春香の二人がそこまでの脅威を警察および“L”に感じていないから、というのもあるでしょうが……一番大きな理由は、今殺してしまうと足がつくことは避けられない、と考えているからでしょう」
  
L「夜神さん達が警察官として顔を出して聞き取り調査を行ったのは、765プロダクションの関係者と星井美希の当時のクラスメイトだけですから」

L「しかしネットに『キラを捕まえようとする者』として顔が晒された者であれば話は別です。その時点で晒された者の顔は万人に周知の情報となるわけですから、殺したところでそこから足はつきません。キラ……こちらは今犯罪者裁きをしている方、つまり星井美希ですが……彼女がこれまで行ってきた犯罪者裁きと同じです」

L「つまり月くんにはそれだけのリスクを負ってもらうことになります。ただもちろん私は、月くんならそのリスクが現実化するような事態にはなりえないと確信していますし、またそうであるからこそ、『弥海砂との接触』という重要な役割を月くんに担ってもらいたいと考えているわけです」

総一郎「いやだが竜崎……それだけでは何の保証にも……」

月「父さん」

総一郎「ライト」



263:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/22(日) 10:19:59.81 ID:TpqiNf8v0

月「今のこの状況……竜崎までキラ側に顔を知られてしまった以上、捜査を長期間に及ぼすのは危険だ」

総一郎「…………」

月「確かに竜崎の言うように、今は足がつくことを恐れ、父さんや模木さんを殺していないのだとしても……現実的に、自分達のすぐそばにまで捜査の手が迫っているということを知れば、たとえそれによってより疑いが強まることになるとしても……自分達を追う者は躊躇せずに殺すだろう」

月「キラにとっては、捕まればその瞬間に自分の死が確定するからだ」

総一郎「うむ……」

月「そうであれば、キラ……星井美希と天海春香が、自分達のすぐそばにまで捜査の手が迫っているということに気付かないうちに……勝負をつける必要がある」

月「そのためには、キラ信者とまでいえるレベルのキラ肯定派であり、さらに星井美希と友人でもある弥海砂の協力を得ることは必要不可欠……すなわち、彼女と一定の信頼関係を築くことが急務」

月「そして僕がその役割を担うことで捜査が進展し、キラ逮捕につながるのなら……僕は全力でその役目を果たしたい」

総一郎「ライト……」

月「頼む。父さん。キラ事件の早期解決……その為には、危険を承知でも僕が動くしかないんだ」

総一郎「……分かった」

月「父さん」

総一郎「ただし、捜査の状況は常に皆に伝えるようにしろ。絶対に、お前一人の判断だけで行動するな」

月「ああ。もちろんだよ。父さん」

L「ご理解いただきありがとうございます。夜神さん」

松田「いいなあ、月くん。はるるんとやよいちゃんの家庭教師に加えて、ミサミサとも親密になる役目だなんて……」

L「松田さん」

松田「はい。すみません」



264:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/22(日) 11:01:34.21 ID:TpqiNf8v0

L「では今後、月くんには家庭教師として天海春香への接触を続けることと並行して、弥海砂とも一定の信頼関係を築いてもらいたいと思います」

L「そして月くんと弥海砂との信頼関係が熟したと判断できれば、弥を協力者とし、星井美希と天海春香のいずれかが所持しているであろう『黒いノート』の現物を押さえる……現時点ではまだそのノートがキラとしての活動に関係するものであるという確証はありませんが、他に物的証拠となりそうなものが無い以上、まずはそこからあたります」

L「その他、今後の捜査の振り分けの詳細は明日、星井さんと相沢さんも来られた時に伝えることにします」

L「特に星井さんとは、私と月くんが星井美希の直接の知り合いとなった以上、綿密に打ち合わせをしておく必要があります。……ワタリ」

ワタリ『はい。何でしょう。竜崎』

L「今日、星井係長が着けている超小型マイクが拾った星井美希との会話の中で、何か不審なものは無かったか? 特に、星井美希が東応大学の学祭から帰宅した後、現在までの間でだ」

ワタリ『今のところ、特に不審な会話はされていません。星井美希から星井さんに対し、『学祭が楽しかった』程度の事は話していましたが』

L「分かった。だが今後、二人の会話にはより一層の注意を払って耳を傾けるようにしてくれ。星井美希が『自分の父親は以前キラ事件の捜査をしていた』という認識を持っている以上、いつ彼女が、“竜崎”と名乗る男に心当たりは無いか、などと星井係長に尋ねないとも限らない」

ワタリ『分かりました』

松田「いや、でも竜崎……現時点で、ミキミキがそのようなことを係長に尋ねる理由は無いのでは? さっき局長も言っていましたが、竜崎は設定上、月くんの友人というだけ……流石にこの段階では『竜崎=“L”』という認識は持ちようがないでしょう」

L「今はそうかもしれませんが……もし星井美希が何かのきっかけで私の正体を疑い始めた場合、警察官を父に持つ月くんとのつながりを考えると、『竜崎は“L”かもしれない』という推測はできなくとも、『竜崎はキラ事件の捜査に関係している者かもしれない』と考える可能性はゼロではありませんから」

松田「ああ、なるほど……」

L「まあでも、もし星井美希がそのような探りを星井さんに入れるようなことがあれば、もうその時点でキラ確定ですけどね……彼女がキラでないのなら、私の正体を確かめるような質問を『以前キラ事件の捜査をしていた』星井さんにする理由は無いですから」

月「確かにな。つまりその場合、星井美希に対する99%以上の疑いが――……」

L「はい。100%になります」

総一郎「…………」

L「……と言いたいところですが、まあ物的証拠が何も無い状況である以上、100%とまでは言い切れませんね。せいぜい99.9%といったところでしょうか」



381:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/21(土) 11:50:19.69 ID:BTrwrj0k0

L「このように、星井さんに対する星井美希からの接触には十分に注意を払っておく必要がありますが……それ以外の場面においても、今後はいつどこでどんな状況に陥っても適切な対処ができるように準備をしておかなければなりません」

L「もし私の正体が二人に疑われるようなことになれば、それは月くんへの不信にもつながりかねませんし……そこから『キラ事件の捜査に関係していると思われる者達が自分達の身近に迫っている』などと勘付かれた場合……最悪、既に『“L”と共にキラ事件の捜査をしている刑事』として顔を知られている夜神さんと模木さんも含め、少しでも不審な点がある者は全員殺されてしまう可能性があります」
 
L「そのような事態を避けるためにも、まずは私の嘘を完全な真実として擬制しておく必要があります。……なのでこれから、私は徹底的に“竜崎ルエ”のキャラクターを作り込みます。あらゆる状況を想定し、どんな方向から突かれても矛盾が出ないようにする」

総一郎「そうだな。今後も定期的に二人と顔を合わせることになるのであれば、対策は早めに打っておくに越したことはない」

L「はい。それでは、今日のところはこのへんで解散としましょう。少し早いですが、明日からまた忙しくなると思いますので、今日は皆さん家に帰って英気を養って下さい」

総一郎「分かった。だがあまり無理はするなよ、竜崎」

L「はい。お気遣いいただきありがとうございます。夜神さん」

松田「あー、僕もアイドルと親密になりたかったなー」

模木「明日からも全員で力を合わせて頑張りましょう」

松田「……模木さんの優しいスルーが心にしみるなあ……」

L「月くん」

月「? なんだ? 竜崎」

L「すみませんが、月くんも少し残って“竜崎ルエ”のキャラクター設定の構想を手伝っていただけませんか? 今後、二人と直接接触していくことになるであろう我々の間で認識の齟齬が出るとまずいですので」

月「ああ、分かった。じゃあ一緒に考えよう」

L「ありがとうございます。ではまず、“竜崎ルエ”の生い立ちからですが――……」



266:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/22(日) 12:00:05.12 ID:TpqiNf8v0

【現在・都内某スイーツ店】


(アイドルとしての美希の魅力について語り続けているL)

L「……他には、そうですね。美希さんは歌唱力も目を見張るものがあります。『歌姫』と称されている如月千早さんに勝るとも劣らない力強く伸びのある歌声……」

L「それでいて、『ふるふるフューチャー』などの可愛らしい楽曲についても、曲にマッチした甘めの歌声で見事に歌い上げている……アイドルとしての天性の才能を感じます」

美希「ふむふむ」

L「……とまあ、大体こんなところでしょうか」

美希「ふ~ん。竜崎って、春香のファンなのにミキのことも結構よく知ってるんだね」

L「別に、美希さんだけというわけではないですよ? 765プロの他のアイドルの方についても同程度には知っているつもりです。他ならぬ、春香さんの同僚にあたる方達ですので」

美希「なるほどね」

L「…………」

美希「ねぇ、竜崎。この後まだ時間ある?」

L「? はい。ありますが、何か?」

美希「もしよかったら、ミキのおうちに来ない?」

L「! ……いや、流石にそれは……まずいです」

美希「? なんで?」

L「いくらなんでも、今を時めく売れっ子アイドルの美希さんの家になんて……いえ、そもそもそれ以前に、家に二人きりというのは……」

美希「ああ、それなら大丈夫なの」

L「?」

美希「今日はおうちに、パパがいるから」

L「! …………」



285:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/02(水) 19:45:10.70 ID:yU525wgR0

【三十分後・美希の自宅】


(Lを連れて帰宅した美希)

 ガチャッ

美希「ただいまなのー」

L「お邪魔します」

美希「さあ、上がってなの」

L「ありがとうございます。……ちなみに今、家におられるのはお父上だけなんですか?」

美希「うん。ママは高校の同窓会だし、お姉ちゃんは友達に会いに行ってるの」

L「そうですか」

星井父「――ああ、お帰り、美希。って……え?」

L「……どうも」

星井父「えっと……美希? こちらさんは……?」

美希「ああ、うん。竜崎っていうの。ミキの友達」

星井父「友……達……?」

美希「うん」

星井父「えっと、美希の友達……といっても……高校生? じゃないです……よね?」

L「あ、はい」

星井父「一体どういう友達……って、まさか」

美希「?」

星井父「……まさか、美希の彼氏ってんじゃ……」

美希「違うよ?」

L「はい。違います」

星井父「じゃ、じゃあ……一体どういう関係のお友達なんだ? 美希……」

美希「まあそのへんはおいおい話すとして……とりあえず中入ろ。はい竜崎、スリッパ」サッ

L「どうも」

星井父「…………」

(リビングに入る三人)

美希「立ち話も何だし、座ってなの」

L「ありがとうございます」

(テーブルの前の椅子に座るL)

星井父「……で、二人は一体どこで知り合いに……?」

美希「…………」

(Lの正面の椅子に星井父、Lの隣の椅子に美希がそれぞれ座る)

L「……私と美希さんは、先週の日曜日、東応大学の学祭で知り合いました」

美希「そうなの」

星井父「学祭で? ……まさか、うちの娘をナンパしたんじゃ……」

美希「違うの」

L「違います」

星井父「…………」



382:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/21(土) 11:53:38.07 ID:BTrwrj0k0

美希「学祭のイベントでミキの友達の海砂ちゃんって子のライブステージがあって、たまたまそこに竜崎が来てたの。それで知り合ったんだ」

星井父「何? じゃあ竜崎……さんも、アイドルなんですか?」

美希「違うの」

L「違います」

星井父「…………」

美希「えっとね、竜崎は友達の東大生の人と一緒に学祭に来てて。で、その友達の人が東大生の中ではちょっとした有名人だったから、そのライブイベントの司会の人からステージに上がるように呼ばれたらしいの」

星井父「ほう」

美希「で、そのとき一緒にいた竜崎もついでにステージに呼ばれて、そのすぐ後にライブ会場に着いたミキや春香達もまとめてステージに呼ばれちゃって……そこで知り合ったってワケ」

星井父「……なるほど。ということは、君も東大生なのか?」

美希「違うよ?」

L「はい。違います」

星井父「…………」

美希「それでライブが終わった後、ステージに上がった皆と、海砂ちゃんと、あとその司会の高田さんって人も一緒にお茶したの」

星井父「じゃあそこで本格的に友達になったってことか?」

美希「そうなの」

L「はい。決して怪しい関係ではありません」

星井父「まあ経緯は分かったが……しかし今日は二人で会っていたのか?」

美希「そうだよ」

星井父「それは……デートってことじゃ……?」

美希「そうだね」

星井父「いや、そうだねってお前……」

L「…………」



287:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/02(水) 20:07:03.19 ID:yU525wgR0

美希「っていっても、別にミキと竜崎の間にどうこうなんてないの。そもそも竜崎が好きなのはミキじゃなくて春香だし」

星井父「春香? ……って、天海春香さんか? 美希と同じ事務所の……」

L「はい。その天海春香さんです。といっても、今美希さんが言った『好き』というのは、いわゆる恋愛感情という類のものとは少し違います。私はあくまで、アイドルとしての春香さんのファンですので」

美希「そうなの。それも、春香がデビューしたての頃からの大ファンなの」

L「はい。大ファンです」

星井父「じゃ、じゃあその天海春香さんの大ファンの君が、何故今日はうちの娘と二人で……?」

L「それは……」

美希「ミキが竜崎を誘ったの。『今度の日曜、二人でゆっくりお話ししない?』って」

星井父「じゃ、じゃあ美希……まさかお前の方がこの竜崎……さんを?」

美希「ううん。それも違うの。ミキはただ、春香の大ファンの竜崎が、ミキのことをどう思ってるのか聞いてみたかっただけなの。もちろん、アイドルとしてのミキのことを、って意味でね」

星井父「他のアイドルのファンの人から、自分がどう見られているのか知りたかった……ってことか?」

美希「うん。今までそういう人の意見って聞いたこと無かったし、ちょうどいい機会かなって」

星井父「なるほど……そういうことか」

美希「そうなの。だからやましいことなんて何も無いの」

L「はい。断じて何もありません。どうかご安心下さい。お父さん」

星井父「……分かった。信じるよ。しかし、今日会ったばかりの娘の友人から『お父さん』と呼ばれるのはちょっと……」

L「いけませんか? ではパパさんと」

星井父「……いや、お父さんでいい」



288:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/02(水) 20:34:33.90 ID:yU525wgR0

美希「あ、そうだ。まだ言ってなかったけどね」

L「? 何ですか?」

美希「ミキのパパはね、刑事さんなの」

L「! ……そうだったんですか」

星井父「ええ、まあ」

美希「あっ。そういえば、あの人……夜神月さんのお父さんも、刑事って言ってたよね?」

L・星井父「!」

美希「ねぇパパ、夜神さんっていう刑事さん、知ってる?」

星井父「あ、ああ……刑事局長の夜神さんか? もちろん知っているが……」

美希「刑事局長って、確かすっごく偉い人だよね?」

星井父「ああ。警察庁の中で、長官と次長の次に偉い人だ」

美希「へー、やっぱりすごい人のお父さんはすごいんだね」

星井父「美希。お前、もしかして夜神さんの息子さんと知り合いなのか?」

美希「うん。さっき話した、学祭に来てた竜崎の友達の東大生っていうのが、その人なの。名前は夜神月。東大の入試をトップで通過した超天才で、しかも今は春香の家庭教師をしてるんだよ」

星井父「……そうだったのか。なんともまあ、世間は狭いというかなんというか」

美希「ねぇパパ、ちなみにその夜神月さんのお父さんって、すごくイケメンだったりする?」

星井父「え?」

L「…………」

美希「あのね、その夜神月さんって、頭良いだけじゃなくて、そのままアイドルできちゃいそうなくらいのイケメンなの。だからそのお父さんもやっぱりイケメンなのかなって思って。ね、どう?」

星井父「ああ、そういうことか。まあ確かにイケメン……というか男前な感じかな。ダンディというか、精悍な顔つきというか……」

美希「そうなんだ。じゃあやっぱりある程度遺伝してるのかもね」

星井父「……というか、美希」

美希「? 何? パパ」

星井父「お前まさか、もしかしてその夜神さんの息子さんに気があるんじゃ……」

美希「ううん。ミキ、カッコ良すぎるヒトって苦手なの。なんか浮気とかされそーだし」

星井父「そ、そうか。うん。それならいいんだ。それなら……」

美希「もー、パパったらちょっと心配しすぎって思うな」

星井父「いや、そりゃ普通心配するだろ……まだ高校生になったばかりの娘が、そんな次から次へと男の知り合いばかり増やしてたら……」

美希「別にそんなに増やしてないよ? せいぜい竜崎とその夜神月さんくらいだし。しかもミキ、夜神月さんとはまだほとんど話してないしね」

星井父「そうなのか? まあそれならいいが……」

L「…………」

L(星井美希……一体何を考えている……?)



289:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/02(水) 20:55:05.89 ID:yU525wgR0

【一週間前(東応大学の学祭があった日)・キラ対策捜査本部(都内のホテルの一室)】


(総一郎、模木、松田の帰宅後、二人だけで捜査本部に残っているLと月)

月「星井美希の自宅に監視カメラと盗聴器を設置……か。よくあの父がそんな捜査を許したな」

L「はい。もちろん最初は難色を示されましたが……」

月「まあ相手が相手だ。ある程度は仕方が無いだろう。これが冤罪なら大問題だが……」

L「はい。ですが星井美希はキラです。99%間違いありません。またカメラ等は仕掛けていませんが天海春香も同様です」

月「ああ、それは僕も同意見だ。だがその残り1%を埋めない限りは……」

L「はい。だからこそその1%を埋めるための努力を今しているというわけです」

月「そうだな。ちなみにその監視カメラ設置の件は、僕達以外では父とワタリしか知らないということでいいんだな?」

L「はい。くれぐれも他の方には他言無用でお願いします。特に星井さんにはご内密に」

月「そうだな。下手をすると竜崎が星井さんに殺されかねない」

L「ええ。私も命は惜しいですので」

月「だがそれよりも、今はキラに殺されないための方策を練らないとな。……で、これからどうする? もう“竜崎ルエ”の設定はほぼ完成したが……」

L「はい。とりあえずはこの設定を完璧に頭に入れておき……星井美希、天海春香のいずれから探りを入れられた場合にも問題無く対応できるように準備しておきましょう」

月「そうだな。さっき竜崎も言っていたが、やはり僕達の間で認識の齟齬が出てしまうことが一番まずい……もしそれが出てしまい二人に怪しまれるようなことになれば、最悪僕達二人まとめて、などということも……」

L「! …………」

月「? どうした? 竜崎」

L「月くん。これはいわゆる『モテ期』というやつでしょうか?」

月「? いきなり何を言ってるんだ?」

L「……今を時めくアイドルから、デートに誘われました」

月「! まさか、天海春香か!?」

L「いえ」

月「! じゃあ……」

L「はい。―――ミキミキこと、星井美希からです」

月「星井美希だと? 一体何故……」

L「分かりません。とりあえずこれだけが送られてきました」スッ

(月に携帯の画面を見せるL)

月「どれどれ……」


--------------------------------------------------
From:星井美希
To:竜崎ルエ

件名:ミキなの。


ミキなの。

今日あんまりお話しできなかったから、
今度の日曜、二人でゆっくりお話ししない?

お返事お待ちしておりますなの。


みき

--------------------------------------------------



290:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/02(水) 21:10:08.01 ID:yU525wgR0

月「…………」

L「まさかとは思いますが、今日のやりとりだけで……私が“L”だと勘付いたのでしょうか?」

月「いや、いくらなんでもそれは無いだろう。“L”どころか、そもそもキラ事件の捜査に関係している、またはしていた者であるとすら疑われる理由は無いはず……」

L「そうですよね。では単に私個人に興味を持ったということでしょうか?」

月「確かにそういう可能性もあるな……一応……」

L「…………」

月「だがいずれにせよ、これはチャンスといえばチャンス……。今日のメンバーでの再度の会合を待つまでもなく、星井美希に直に探りを入れられる……」

L「そうですね。向こうから誘ってきているわけですから、これに応じても何ら不自然ではないですし……逆に断る方が怪しまれかねません」

月「ああ。何といっても向こうは売れっ子アイドルだからな……デートの誘いを受けて断る男なんてまずいない。それに“竜崎ルエ”は天海春香の大ファンだが、765プロの他のアイドルに対しても当然愛着・愛情はある……」

L「はい。さっきそういう設定にしたばかりですからね」

月「ならば、“竜崎ルエ”としての答えは……」

L「はい。一択です」

月・L「……行くしかない!」



291:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/02(水) 21:32:49.97 ID:yU525wgR0

【その翌日・キラ対策捜査本部(都内のホテルの一室)】


L「……というのが、昨日までの捜査状況です」

相沢「そんなことになっていたのか……」

星井父「…………」

総一郎「まさか昨夜のうちに星井美希から竜崎にアプローチがあったとは……」

松田「でも月くんならともかく竜崎って……。ミキミキの好みのタイプっていったい……?」

L「…………」

松田「あっ。す、すみません竜崎」

L「……いえ」

星井父「…………」

模木「……係長……」

星井父「え? あ、ああ……何だ? 模木」

模木「いえ、その……大丈夫ですか? 顔色がかなり優れないようですが……」

星井父「あ、ああ……大丈夫だ」

L「星井さん」

星井父「……竜崎。すまない。まだちょっと頭の整理が追いついていない……」

L「心中お察しします……が、もうここまで来てしまった以上、いよいよ覚悟を決めて頂くべき時が来たのかもしれません」

星井父「…………」

L「現時点では、美希さん……いえ、星井美希がどういう意図を持って私を誘い出したのかは不明ですが……彼女がキラであるとすれば、私の素性について何らかの不信感を抱き、それを確かめるためにアプローチをしてきたとみるのが最も自然です」

星井父「…………」

L「警察官を父に持つ月くんとのつながりを怪しんだのか……あるいは、私のした身の上話のどこかに引っ掛かりを感じたのか……」

L「そこのところはまだ分かりません。流石にまだ『キラ事件の捜査に関係している、またはしていた可能性がある』というレベルで疑われているということは無いと思いますが……」

L「しかしそうはいっても、こうして現実に向こうからアプローチが仕掛けられてきている以上……これには応じるほかありません」



293:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/02(水) 22:04:14.26 ID:yU525wgR0

総一郎「……そうだな。星井美希の意図が何であれ、ここで竜崎が会うのを拒むのはむしろ不自然であるし……逆に、彼女に直接探りを入れるにはこの上ない絶好の機会ともいえる」

L「はい。私もそう考えています。ですのでとりあえず、私は一週間後の接触の際に、星井美希の様子をできるだけ精緻に観察します」

L「私を誘い出した真の理由、背景、思惑……彼女を直接観察することで、それらを可能な限り見極めたい」

星井父「…………」

L「そしてそのためには……星井さん」

星井父「……何だ? 竜崎」

L「この捜査にはあなたの協力が必要不可欠です」

星井父「! …………」

L「先ほど私は、流石にまだ『キラ事件の捜査に関係している、またはしていた可能性がある』というレベルで疑われているということは無いと思う、と述べましたが……それも100%そうだとまで断言できるものではありません。断言できるだけの論拠が無いからです」

L「なのでもし今、万が一……星井美希が、何らかのきっかけにより『竜崎はキラ事件の捜査に関係している、またはしていた者かもしれない』などと考えているとすれば……そしてその場合に彼女がとりうる、それを確かめるための最も確実なやり方は……」

星井父「…………」

L「私と星井さんを、不意打ち的に対面させること」

星井父「! …………」

L「星井美希の認識では『星井さんはキラ事件の捜査をしていた』ということになっているわけですから……私と星井さんとを対面させ、双方の反応を観察することで、私と星井さんが既知の関係かどうか……すなわち、私がキラ事件の捜査に関係している、またはしていた者かどうかを見極めようとするのが最も簡単です」

星井父「……確かに……」

L「ですので星井さん。今度の日曜は捜査は結構ですのでご自宅に居て下さい」

星井父「! …………」

L「そしてそのことは星井美希には言わずに……もし今日以降、彼女から『今度の日曜は家に居るか』と聞かれたら『居る』と答えて下さい」

星井父「……分かった」

L「そして言うまでもありませんが、今後もこれまで同様、この捜査本部以外の場所では常に超小型マイクを身に着けておくようにして下さい」

星井父「……ああ。今まで同様、しっかり身に着けておく」



294:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/02(水) 22:28:57.06 ID:yU525wgR0

L「よろしくお願いします。では、星井美希の家庭内での言動については、これまで通り星井さんのマイクを通じて常に把握することとして……その他の捜査の振り分けについて、今からご説明します」

L「まず月くんですが……昨日もお伝えしたとおり、引き続き家庭教師を通じての天海春香への接触と、弥海砂との信頼関係の構築をお願いします。……と言いたいところですが……天海春香はいいとしても、弥海砂の方はちょっと様子を見てからの方がいいかもしれませんね」

月「そうだな。星井美希がいきなり竜崎にアプローチを仕掛けてきたということは……先ほど竜崎自身も言っていたが、竜崎の素性について何らかの疑念を抱いている可能性が高い。そのような状況で僕が弥海砂に接触を図れば、弥からその友人である星井美希にもそのことが伝わり、僕の正体についても同様に不信を抱かれてしまう可能性がある……」

L「はい。まあ弥海砂もアイドルですし、月くんが出会ってすぐに口説きに掛かったとしてもそこまで不自然ではないかもしれませんが……急いては事を仕損じるとも言いますし、一旦今は天海春香との接触のみに専念して下さい」

月「分かった」

L「またこれまでの765プロダクション関係者全員に対する捜査結果からも、キラ容疑者としてはもう星井美希と天海春香の二人のみに絞り込んでよさそうですので……まだ二人に顔が割れていない相沢さんと松田さんは、今後は手分けしてこの二人の尾行捜査をお願いします。ただし絶対に気付かれることがないように」

相沢「ああ。分かった」

松田「任せて下さい」

L「特に、彼女らが二人だけで行動している時は、例の『黒いノート』の授受が無いかにつき、注意して観察しておいて下さい。また授受が無くとも、二人の外出時の携行品……特にノート大の物が入るサイズの鞄を所持しているかどうかの確認もお願いします」

L「ただしもし仮に『黒いノート』らしき物を視認しても、絶対にその場で取り押さえたりなどはしないこと」

L「これまで何度も言っていることですが、キラの能力、殺し方がまだ何も判明していない以上……こちらがキラを追っているということに気付かれた瞬間、現時点で顔を知られている者は即皆殺しにされてしまう危険性がある……最早それくらいに考えて行動しなければなりません」

L「だからこそ、これも以前から言っていることですが……絶対に二人には我々が追っているということに気付かれることなく、キラとしての証拠を押さえる……それしかありません」

相沢「うむ……」

松田「ぼ、僕達も竜崎みたいに面を着けて尾行しますか? なんて……ははは」

相沢「…………」

松田「はい。すみません」



295:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/02(水) 22:50:02.68 ID:yU525wgR0

L「そして……星井さん」

星井父「……ああ」

L「先ほど私は『覚悟を決めて頂くべき時が来たのかもしれません』と言いましたが……もうここまで来た以上、今後は星井さんにも私情を排して捜査に当たって頂かなければなりません。私と月くんが星井美希の直接の知り合いとなった以上、彼女の一挙手一投足を詳細に観察してもらう必要がある……」

星井父「ああ、分かっている。要は、美希が竜崎や月くんのことで俺に探りを入れてくることが無いかどうか……ということだろう?」

L「はい。もちろん星井美希と星井さんとの会話はこれまで同様、全てリアルタイムで録取させて頂きますが……実際の会話の際の彼女の表情、挙動などはその場に居る星井さんにしか分かりません。また父親の目から見て、彼女の普段の様子や態度に違和感が無いかどうか、といった点についても細心の注意を払って観察して頂きたい」

L「さらに今後、星井さんには星井美希を観察する機会をなるべく多く持ってもらいたいですので、これからは原則として土日のいずれかは終日自宅に居るようにして下さい。既にご家族には『キラ事件の捜査は外れた』と説明してあるとのことですから、辻褄は合わせやすいはずです」

星井父「……ああ、分かった。出来る限り注意深く、それでいて不自然にならないよう、娘の動向を観察する」

L「はい。よろしくお願いいたします。そして夜神さんと模木さんは、星井美希と天海春香の尾行データの集約および二人の行動パターンの解析をお願いします。これは最終的に『黒いノート』の現物をいつ、どこで、どうやって押さえるかの策を練るための下準備です。ただ作業量が多くて大変だと思いますので、適宜ワタリにも手伝わせます」

総一郎「分かった。ではとりあえず私は星井美希についてのデータを集約しよう。模木は天海春香の方を頼む」

模木「はい」

L「そしてこれは昨日、月くんも言っていたことですが……キラ側に我々捜査員の大多数の顔を知られてしまっている今の状況を鑑みると、このまま捜査を長期に及ぼすのは決して得策ではありません。短期決戦、早期解決を目指し……皆で一丸となって引き続き頑張っていきましょう」

一同「はい!」



296:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/02(水) 23:11:42.21 ID:yU525wgR0

【その五日後・キラ対策捜査本部(都内のホテルの一室)】


L「星井さん。念のための確認ですが……今のところ、美希さんから明日の在宅の有無については特に聞かれていませんね?」

星井父「ああ。家での美希との会話はマイクを通して聴いてもらっているとおりだ。もっとも、今までも俺の休みなんて特に気にして聞いてくることも無かったから、別に不自然でもないが……」

L「そうですね……」

L(これはやはり、まだ現時点では私の事を『キラ事件の捜査に関係している、またはしていた可能性がある者』というレベルでは疑っていない……ということか?)

L(いや、だがあえて聞かなくとも、どうせ明日……当日になれば、星井係長が家に居るかどうかは星井美希には分かる……)

L(ならば不必要に疑われるのを避けるため、最初から事前の確認はしないつもりだった、とも……)

L「……星井さん」

星井父「何だ? 竜崎」

L「現時点での美希さんの思惑は分かりませんが……一応、明日は私が美希さんに星井さんのご自宅に連れて行かれる可能性もあるものと思っておいて下さい」

星井父「ああ。分かっている。そして実際にその状況になった場合の対応は打ち合わせの通りでいいんだな?」

L「はい。星井さんはあくまでも『娘がいきなり見ず知らずの男を家に連れて来た時の父親』……その役を演じることのみに徹して下さい」

星井父「それなら大丈夫だ。この五日間、嫌というほどシミュレーションしてきたからな」

L「ありがとうございます。そして美希さんがしてくる可能性のある質問、振ってくる可能性のある話題についても、全て事前に打ち合わせた通りのご対応をお願いします」

星井父「ああ。任せてくれ」

L「また、明日は私も例の超小型マイクを身に着けた状態で美希さんと会うようにします。私と美希さんとの会話の音声はリアルタイムでこの本部および別の場所にあるワタリのPCに転送されるようにしておきますので、もし美希さんから『今から家に行こう』などと提案された場合には、すぐに本部に居る皆さんまたはワタリから星井さんにその旨連絡してもらうようにします」

星井父「……分かった」

L「では、そういうことでよろしくお願いいたします」



298:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/02(水) 23:44:01.13 ID:yU525wgR0

【その翌日(現在)・美希の自宅】


(歓談している美希、L、星井父の三人)

L「……お父さんが心配されるお気持ちは分かります。ただでさえ売れっ子アイドルの娘さんですからね。学校でもさぞ人気者でしょうし」

星井父「美希が高校に入ってからはまだ特にそういった類の話は聞いていないが……そうなのか? 美希」

美希「ううん。別にそんなことないの。高校でミキに告白してきた男の子の数もまだ30人くらいだしね」

星井父「さ、30人!? 聞いてないぞ、美希……。というかお前、高校入ってまだ一ヶ月とちょっとくらいじゃないか」

美希「うん。だってミキが男の子からよく告白されるのは昔からのことだし、別に今更言うことでも無いかなって」

星井父「いやいや、そりゃ中学までの男子なんて文字通りただのガキでしかないが、高校に入るや否や急に色気づく奴とかが出て来たりしてだな……」

美希「そうなの?」

星井父「そうなの。……一応聞くけど美希、まさかOKしたりなんかしてないよな?」

美希「当たり前なの。そもそもアイドルは恋愛禁止なの」

星井父「そ、そうだよな。良かった……。い、いや、もちろん俺は美希を信じていたが……ははは」

L「…………」

L(ここまでの星井係長の対応は全て事前にしていた打ち合わせの通り……何の違和感も不自然さも無い)

L(しかし、星井美希……私と星井係長をわざわざ対面させたのだから、もっと踏み込んだ質問をして、揺さぶりを掛けて来るものとばかり思っていたが……)

L(今のところ、星井美希から振った話題で、キラ事件に関係しそうなものは夜神局長の事のみ……)

L(しかしそれも、最近知り合った夜神月の父親が自分の父親と同じ職業だったから、という極自然な理由によるもの……こちらとしても当然予期していた内容……そしてそれ以外はいずれも他愛も無い内容の雑談ばかり……)

L(もしや、私と星井係長の最初の対面時の反応がまさに初対面時のそれだったから、それだけでもうこれ以上私を疑う必要は無いと判断したのか?)

L(それとも……直接的な会話からではなく、私の挙動や表情、仕草などから何かを探り取ろうとしているのか?)

L(確かに星井美希は『天才アイドル』と称されているとおり、努力型というよりは天才型……理屈よりも本能や感覚にもとづいて行動しているのかもしれない)

L(そしてもし、彼女のそのような特性がアイドルとしての活動にとどまらず、あらゆる分野においても通用しうるものであるとすれば……)

L(この星井美希……天海春香以上に危険な存在かもしれない)

L(だとすれば……やはり一刻も早く、この星井美希または天海春香から、キラとしての直接的な証拠を押さえなければ……)

L(今日の星井美希は少し大きめのハンドバッグを携帯していた……そしてそれは今も自分の膝上に置いている……ノート一冊程度なら十分入る大きさ……)

L(入っているのか? このバッグの中に……『黒いノート』が……)

L(しかしここで下手な動きを見せれば、その時点で私はもちろん……父親である星井係長すらも殺されてしまいかねない)

L(やはりこれから必要となるのは、星井美希または天海春香本人に気付かれることなく、彼女らの所持品を直接探ることのできる状況を作り出すこと……)

L(その為には……)

L「…………」



299:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/02(水) 23:59:43.50 ID:yU525wgR0

星井父「…………」

星井父(正直、本部に居る局長から『もうすぐ美希が竜崎を連れて家に来る』と連絡を受けた時は覚悟を決めたつもりでいたが……)

星井父(今のところ、美希は特にキラ事件や“L”の正体を探るような質問は何もしてきていない……また俺や竜崎に対する態度にも何ら不自然な点は無い)

星井父(美希は元々、好奇心旺盛な性格……単純に『天海春香のファン』と名乗った竜崎に興味が湧き、会おうと持ち掛け、特に深い考えも無いまま家に呼んだだけとも……)

星井父(確かに、これが家に二人きりとなるような状況なら問題だが……今朝の時点で、俺は美希に『今日は休みなのでずっと家に居る』とは言っていた……だからこそ、美希も安心して竜崎を家に連れて来たという可能性も……)

星井父(……いや、分かっている。こんなのは全部、俺の願望でしかないということは……)

星井父(しかしやはり俺には、どうしても……この娘が……美希がキラとは……)

星井父「…………」

美希「…………」

 ガチャッ

菜緒「ただいま~」

L・美希・星井父「!」

菜緒「……って、あれ? お客さん?」

星井父「あ、ああ……。えっと、美希の友達の……」

L「……竜崎です」ペコリ

菜緒「……ど、どうも……。あ、美希の姉の菜緒です」ペコリ

L「どうも」

星井父「菜緒……お前、今日は遅くなるって言ってなかったか?」

菜緒「あ、ああ……うん。友達と会う予定だったんだけど、その子、急にバイトのシフトが変更になったらしくて流れちゃったの」

星井父「そうか」

菜緒「……うん……」ジッ

L「…………」

(Lを凝視する菜緒)

美希「…………」

L「……では、あまり家族団欒のお時間の邪魔をするのも悪いですので……私はこのへんで」

菜緒「えっ、ああ、そんな。お気遣い無く……」

L「いえ。いずれにせよ、そろそろお暇しようかと思っていたところですので」

美希「あっ。じゃあミキ駅まで送って行くの」

L「いえ。大丈夫ですよ。道は覚えていますし……それに美希さんがご自宅の近くを見知らぬ男と二人でうろついていたとか……変な噂になってもいけませんので」

美希「そう? ミキは別に気にしないけど……まあ、竜崎がそう言うならそうするの」

L「それでは、私はこれにて失礼いたします」

星井父「ああ。碌にもてなしもできずにすまなかったね」

L「いえ。こちらこそ、急に押しかけてしまってすみませんでした」

美希「あ、じゃあせめて玄関まで送って行くね。竜崎」

L「ありがとうございます。美希さん」

美希「…………」



301:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/03(木) 00:07:54.53 ID:Ho7DKdfV0

【同日夜・美希の自室】


美希「…………」

リューク「で、どうなんだ? ミキ」

美希「……どうって?」

リューク「あの竜崎って奴の事だ。やっぱりあいつがLなのか?」

美希「…………」

リューク「って言っても、今日のやりとりだけじゃ分かるわけないか……ミキの父親とも初対面っぽかったしな」

美希「……確かに今日のやりとりだけじゃ、竜崎がLかどうかは分からなかったの」

リューク「まあ、そりゃそうだよな」

美希「でも」

リューク「ん?」

美希「竜崎がLかどうかまでは分からなかったけど……一コだけ、分かったことがあるの」

リューク「? 何だ? それは」

美希「……竜崎はL本人か、またはLとつながりがある人なの」

リューク「! ……本当か? ってことは、やっぱり竜崎とお前の父親には面識があったってことか?」

美希「うん。ま、100%とまでは断言できないけどね」

リューク「じゃあ何%くらいなんだ?」

美希「……99%ってトコかな」

リューク「ほぼ確信してるってことじゃないか」

美希「まあね」

リューク「でもミキ……一体どこでそう判断したんだ? 俺もずっと見ていたが、竜崎がお前の父親と面識があるようには見えなかったぞ」

美希「…………」
     
リューク「そもそもの作戦としては、竜崎とお前の父親を対面させて、二人の反応から面識があるかどうかを見ようとしてたわけだろ?」

美希「まあ作戦っていっても、本当は今日はただの様子見だけにして、竜崎をパパと会わせるのはもう少し先にするつもりだったんだけどね。でも今朝になって、パパが今日一日ずっと家に居るって分かったから、急遽予定を変更して会わせることにしたの」

リューク「だがその結果がアレだ。今日の二人の会話には全く不自然な点は無かった……一体どこで、あの二人に面識があるって判断したんだ?」

美希「確かにリュークの言うとおり、竜崎とパパの『会話』には何も不自然なところは無かったの。ミキがいきなり、あんな一見して怪しげな風貌の男の人を家に連れて来たら、パパならまず間違い無くああいう反応になる……」



302:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/03(木) 00:22:28.08 ID:Ho7DKdfV0

リューク「そうだろ? じゃあなんで……」

美希「……リュークは、竜崎と会うのは……いや、竜崎を『見る』のは今日が二回目だったし、何とも思わなくても無理は無いの。それに今日だけでも、家に来る前にスイーツ屋さんで既に『見て』たしね」

リューク「? 何の話だ?」

美希「……ミキはね、リューク。最初から、竜崎とパパの会話の内容なんかで、二人に面識があるかどうかを判断するつもりは無かったの」

リューク「?」

美希「会話の内容なんて、その気になれば事前にいくらでも打ち合わせられる……もし元々竜崎とパパの間に面識があって、かつそのことをミキに対して隠そうとしていたのなら、まず間違い無くそうするはずなの」

リューク「まあ、確かにそれはそうかもしれないが……」

美希「だからミキが見ていたのは、そんなうわべの部分なんかじゃなく、もっと別の部分なの」

リューク「だから一体何なんだ? それは。いい加減もったいぶらずに教えてくれよ。ミキ」

美希「もう、リュークったらせっかちなの。せっかちな男はモテないんだよ? あはっ」

リューク「…………」

美希「なんて、冗談はさておき……ミキが見ようとしていたのは、たった一つだけなの。それは……」

リューク「……それは?」

美希「――竜崎の椅子の座り方に対する、パパの反応」

リューク「竜崎の椅子の座り方? ……あっ。……そういうことか」

美希「そういうことなの。竜崎の椅子の座り方はすごく独特……椅子の上に体育座りのような姿勢で座る。ミキは今まで十五年以上生きてきたけど……子どもならともかく、大人で椅子にあんな座り方をする人は見たことが無かったの」

美希「だから先週、喫茶店で竜崎があの座り方で椅子に座ったのを見たときはすごく驚いたの」

美希「声にこそ出さなかったけど、思わずじぃっと見つめちゃったの」

リューク「……なるほどな。つまりそれが……」

美希「そう。パパが本当に竜崎と初対面だったとしたら……それが本来あるべきはずの反応なの」

美希「でもパパは、竜崎のあの座り方に対して何の反応もしていなかった。まるで『竜崎はああいう座り方をする』ということをあらかじめ知っていたかのように」

リューク「! …………」

美希「さらにこれはミキにとってはラッキーだったんだけど……後でお姉ちゃんが帰って来て、竜崎の姿を見た最初の一瞬こそ、その怪しげな風貌に少し驚いていたようだったけど……その直後は、明らかに竜崎自体よりもその座り方の方に注目してたの。喫茶店の時のミキと同じように、すごくじぃっと見てたから」

美希「でも、それが普通の反応のはずなの……本当の初対面ならね」

リューク「つまり、ミキ……お前はそれを確かめるために、竜崎と父親を対面させたってことか?」

美希「そういうことなの。ミキが確かめようとしていたのは、『初対面なら無いはずの反応があるかどうか』ではなく、その逆……『初対面ならあるはずの反応が無いかどうか』だったの」



307:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/03(木) 00:43:27.24 ID:Ho7DKdfV0

美希「そしてパパは、竜崎があの座り方をしても何の反応もしなかった。それはつまり、パパと竜崎は今日が初対面なんじゃなくて、もっと前からの知り合いだった……ってことを意味するの」

リューク「ククッ。なるほど。まさかそんなところで判断していたとは……大したもんだな。ミキ」

美希「そしてさらに……パパと竜崎が知り合ったのは、ほぼ間違い無く……キラ事件の関係でなの」

リューク「……ん? いや、待てよ。ミキ。……流石にそれは飛躍じゃないか?」

美希「…………」

リューク「いくらお前の父親がキラ事件の捜査をしていたといっても……当然、キラ事件以外の事件……いや、それどころか警察とは全く無関係な場面で知り合っていた可能性だってあるだろ」

美希「ううん。それは無いの」

リューク「何でそう言い切れるんだ?」

美希「だって、もしキラ事件に関係無い場面で知り合っていたのなら……そのことをミキに対して隠す理由が無いの」

リューク「! ……そういうことか」

美希「そういうことなの。キラ事件に関係する場面で知り合っていたからこそ、パパと竜崎は、今、キラとして疑っているミキの前で……そのつながりを隠そうとしたの」

リューク「…………」

美希「だからきっと二人は、ミキが竜崎を家に連れて行き、パパと対面させる可能性があるということまで想定して……実際にそういう状況になった場合の会話の内容については、事前にすごく綿密に打ち合わせをしていたと思うの。でも竜崎の『椅子の座り方』に対するパパの反応をどうするか……っていうところまでは気が回らなかった」

美希「それは、竜崎のあの独特な座り方が……竜崎自身にとってはもちろん、パパにとっても既に『当たり前の事』になってしまっていたから」

リューク「なるほどな。しかしそうなると、お前の父親がキラ事件の捜査をしていた以上は……」

美希「うん。竜崎はほぼ間違い無く……キラ事件の捜査に関係していた人か、または今もしている人のどっちか、ってことになるの」

美希「パパが『キラ事件の捜査をしていた』……いや、これはもう『キラ事件の捜査をしている』でもいいのかもしれないけど……まあもう今更そんなことはどっちでもいいの」

美希「要は、リュークが今言ったとおり、少なくともパパが以前『キラ事件の捜査をしていた』のは間違い無いわけだから……そのパパと『キラ事件に関係する場面で知り合っていた』以上、それは『キラ事件の捜査に関係する場面』以外にはありえない」

美希「だから竜崎は、キラ事件の捜査に関係していた人か、または今もしている人のどっちかなの」

リューク「なるほどな。……だが、ミキ。まだそれだけじゃ、最初にお前が言った『L本人か、またはLとつながりがある人間』とまではいえないんじゃないか?」

美希「…………」

リューク「それこそお前の父親や、夜神月の父親みたいに……まあこいつらが、実際にLとどの程度までつながっているのかはわからないが……竜崎はあくまでも普通の日本の警察官でしかなく、L本人でもなければ、特にLとつながっているわけでもない、っていう可能性も十分にあると思うが」



383:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/21(土) 11:55:32.75 ID:BTrwrj0k0

美希「それはもっとカンタンなの」

リューク「?」

美希「あのね、リューク。日本の警察官になれるのは、日本の国籍を持っている人だけなの。“ L Lawliet”なんて名前……どう考えても日本の国籍の人じゃないよね」

リューク「! ……なるほど」

美希「ただもちろんそれでも、たとえばアメリカのFBIとか、どこか外国の警察官って可能性はあるけどね。でもその場合でも、カンカツ? か何かの問題があって、簡単に日本では事件の捜査ができないの」

リューク「へぇ。随分詳しいんだな。ミキ」

美希「だってミキのパパは現役の刑事さんなんだよ? これくらい知ってて当然って思うな」

リューク「そういうもんなのか」

美希「そういうもんなの。……って言いたいところだけど、まあ本当の事を言うと、パパは昔からこういう話をするのが大好きで、ミキもお姉ちゃんも子どもの頃からよく聞かされてたの」

リューク「そういや、キラ事件の捜査の事とかLの事とかも、結構ペラペラお前ら家族に喋ってたもんな。お前の父親」

美希「そうなの。おかげでミキは特に興味も無い警察関係のお話を小さい頃からたくさん聞かされて……まあでもそれがこんな形で役に立つんだから分からないものだけどね」

リューク「確かにな。でもだからといって、それだけで『竜崎はL本人か、またはLとつながりがある人間』ってことになるのか?」

美希「もちろん、ちゃんとした手続きさえ踏めば、外国の警察官でも日本で事件の捜査はできると思うよ。でもね、リューク。ちょっとこれ観て」

リューク「ん?」

(PCを操作し、動画を再生する美希)

リューク「これは……ああ、懐かしいな。まだミキが犯罪者裁きを始めてすぐの頃にTVで流れてたやつか」

美希「そう。リンド・L・テイラー……通称“L”の全世界同時生中継。……まあ実際は、地域ごとに時間をずらして放送してたみたいだけどね」

リューク「? そうだったのか?」

美希「うん。後でネットの書き込みとかを見て分かったんだけどね。多分、最初の放送の時にミキがこの人を殺さなかったから、色んな地域で順番に流していったんじゃないかな」

リューク「……ああ、なるほど。それで生放送中にこいつが死ねば、そのとき放送を流していた地域にキラがいる……ってことになってたわけか」

美希「多分そういうことなの。まあその時はそんなこと全然分からなかったけどね。今思えばその場でこの人の挑発に乗らなくてよかったの」

リューク「ククッ。本当にな」



310:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/03(木) 01:13:39.68 ID:Ho7DKdfV0

リューク「で、この生中継の映像がどうかしたのか? ミキ」

美希「ああ、うん。ちょっとここ聴いてみて」

リューク「?」

(動画の再生ポイントを特定の場面に合わせる美希)

PC『……私は全世界の警察を動かせる唯一の人間、リンド・L・テイラー。通称“L”です』

リューク「全世界の警察……」

美希「そ。Lは『全世界の警察を動かせる人間』……だとしたら、もし竜崎がどこかの外国の警察官だったとしても、『全世界の警察を動かせる人間』であるLによって、キラ事件の捜査の為に日本の捜査本部に呼ばれ、ミキのパパや夜神月のお父さんと一緒にキラ事件の捜査をしていた……または、今もしている……って考えたら、しっくりこない?」

リューク「確かに」

美希「それにもちろん、竜崎……“L Lawliet”がL本人なら、当然のように日本でキラ事件の捜査ができるだろうしね。『全世界の警察を動かせる人間』が、日本の警察の中にあるキラ事件の捜査本部に入れないわけがないから」

リューク「なるほど。……いやだが、そもそもLが本当に『全世界の警察を動かせる人間』かどうかは分からないんじゃないか?」

美希「まあね。でもこの生中継自体、『警察はほとんど関わってなくてLが独断でやった』ってパパは言ってたし……それくらいのことができる人なら、本当に『全世界の警察を動かせる人間』でもおかしくはないんじゃないかなって」

リューク「ああ……まあそれもそうか」

美希「それにもちろん、竜崎が警察の人じゃなくても、Lが自分の身代わり……っていうか、影武者みたいにするつもりでどこからか呼んできた人、っていう可能性もあるしね」

リューク「このリンド・L・テイラーって奴みたいにってことか? 実際、こいつはLの身代わりだったわけだろ?」

美希「うん。まさにそういうことなの」

リューク「なるほど。確かにそれはあるかもな。……でも結局、このリンド・L・テイラーって奴は何者だったんだ? それこそどこかの国の警察官か何かだったのか?」

美希「さあ……パパもそこまでは話してくれなかったし、それは分からないの。まあでも今となっては、もうそんなことはどうでもいいの。大切なのは、竜崎はリンド・L・テイラーみたく、Lの身代わり……もとい、影武者の可能性があるってこと」

リューク「ふむ」

美希「さらに言うと、竜崎も、リンド・L・テイラーと同じで、本名に“L”って入ってるからね。そういう意味でも影武者っぽいの」

リューク「確かにな。……そして竜崎がLの影武者の場合でも、当然、『Lとつながりがある人間』ということにはなるってわけか」

美希「うん。だから竜崎は、『L本人か、またはLとつながりがある人』なの」

リューク「……ククッ。なるほどな」



384:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/21(土) 11:57:59.96 ID:BTrwrj0k0

リューク「で、どうするんだ? ミキ」

美希「……どうする、って?」

リューク「殺さないのか? 竜崎を」

美希「…………」

リューク「奴がL本人にせよLの影武者にせよ、もうここまで確信があるのなら、早めに殺しておいた方がいいような気がするが」

美希「……うん。まだ殺さないの」

リューク「……『まだ』?」

美希「うん。だって今、ミキと個人的に会ったばかり……それも、ミキが竜崎とパパを対面させたばかりっていう、このタイミングで竜崎が死んだら……彼がLの影武者だった場合は当然、本物のLに……また彼が本物のLだった場合でも、今、キラ事件の捜査をしている他の人達……たとえば夜神月のお父さんとかに……間違い無く疑われるの。ミキが竜崎を殺したって」

リューク「まあそれはそうか。……いや、なら事故死か何かで殺したらどうだ? L側はまだ心臓麻痺以外でも人を殺せるってことは知らないだろ」

美希「確かにそれはあるけど……でも、去年のファーストライブの日に春香のファンの人が死んだ件が調べられてるとしたら……そのほとんどすぐ後に発生した、アイドル事務所の関係者の人達が事故死や自殺で死んだ件も、Lに怪しまれてる可能性があるの」

美希「あの時死んだ人達の中に765プロの関係者はいないし、また同じ時期にミキ達765プロのアイドルの人気が急上昇していたことからすると……Lがファンの人が死んだ件で春香を疑っているとした場合……このアイドル事務所関係者の件についても、春香が何か関係しているんじゃないか、って疑っていてもおかしくないの」

美希「もしそうなら……L側が『キラは心臓麻痺以外でも人を殺せる可能性がある』ということに気付いていてもおかしくない……」

美希「そうだとすれば、今、竜崎を事故死や自殺で殺したとしても同じこと……結局、ミキが疑われることには変わりないの」

美希「だから竜崎を殺すとしたら、そうやって疑われるのを覚悟の上でも、そうしないといけないとき……つまり」

美希「春香が捕まりそうになったとき」

リューク「! …………」

美希「もしそういう状況になったら、もう四の五の言ってられないの」

美希「春香を守るためなら、竜崎がL本人であれ、Lの影武者であれ……殺すしかない」

美希「それが春香を守ることのできる、唯一の方法なら」



313:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/03(木) 01:51:30.45 ID:Ho7DKdfV0

リューク「…………」

美希「? どうしたの? リューク」

リューク「いや……今思えば、初めてだと思ってな」

美希「何が?」

リューク「ミキが、『皆が笑って過ごすことのできる世界をつくる』と言って犯罪者裁きを始めてから……犯罪者以外の人間に対して、殺意を明確に示したのは」

美希「! …………」

リューク「ミキは今までずっと、『犯罪者じゃないから』っていう理由で、Lを殺そうとはしていなかったからな」

美希「……もちろん、ミキだって殺さずに済むならそれが一番良いと思ってるの」

美希「でも、もし竜崎が春香を捕まえようとするなら……それは春香を殺そうとするのと同じ事なの」

美希「キラとして捕まれば当然死刑……もしそうならなくても、一生牢屋の中なのは間違い無いの」

美希「だからもし、春香がそんな目に遭いそうになったら……ミキは、他の何を犠牲にしてでも春香を守るの」

美希「たとえ自分の信念を、理想を、夢を……全部諦めることになったとしても」

リューク「! …………」

美希「だって、春香はミキの―――大切な友達だから」

リューク「…………」

美希「だからその時は……迷わずデスノートに竜崎の名前を書くの」

美希「たとえその結果、ミキがLに、または警察に……パパに、捕まることになるとしても」

美希「――そしてミキが、死刑になるとしても」

リューク「……つまり、自分の命より仲間の命の方が大切ってわけか? ククッ」

美希「うん。そんなの当たり前なの。それの何がおかしいの? リューク」

リューク「いや、別に……」

リューク(正しいことを言っているようで、実のところはただのエゴ……自分の都合で生かす命と殺す命を選別しているだけ)

リューク(それでもこいつは……ミキは、自分のしようとしていることの正当性を微塵も疑おうとしていない)

リューク(まるでそれが絶対の正義であるかのように確信し切っている)

リューク(……ククッ。やっぱり、人間って面白!)

リューク(覚醒した『眠り姫』がこれからどう動いていくのか……最後まで見届けさせてもらうとするぜ)

美希「…………」

美希(大丈夫だよ。春香)

美希(Lだろうと竜崎だろうと……春香を捕まえようとする人は、ミキが全部殺してあげるから)

美希(だから何も考えず、春香はトップアイドル目指して頑張ってね)

美希(ミキ、本当に応援してるの)

美希(……あ、でももしミキが捕まって死刑になっちゃったら……そのときは、ミキが出るはずだったハリウッドの映画、春香に代わりに出てほしいな)

美希(約束なの。あはっ)



324:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/06(日) 16:15:31.62 ID:beH6hcZv0

【二週間後・東応大学講義室】


(講義前の休憩時間)

月「…………」

月(竜崎と星井美希が一対一で会ってから二週間……)

月(今のところ、あれから特に大きな動きは無い)

月(星井係長も自宅で竜崎と顔を合わせることになったものの、事前の打ち合わせ通りに対応でき、特に問題は無かったようだし……)

月(これはもう、星井美希の竜崎に対する疑念は晴れたものとみていい、ということか……?)

月(いや、だがまだ二週間……あまり高い頻度で接触すると怪しまれると考え、暫く様子を見ているだけとも……)

月(だが星井美希としても、早く“L”との決着をつけたいとは思っているはず)

月(だとすれば竜崎のみならず、その友人ということになっている僕に対しても……何らかのアプローチを仕掛けてくる可能性は十分にある。いつどんな形で接触されてもいいように、警戒は常に怠らないようにしておかなければ……)

月(そしてまた僕の方も、天海春香の家庭教師は続けているが……特に決定的な何かを掴めているわけではない)

月(もっとも、まだ星井美希が竜崎を疑っている可能性がある以上……僕としても、天海春香に不用意に探りを入れることはできない)

月(もし竜崎のみならず、僕の素性・正体についても天海春香、または星井美希から疑念を抱かれるような事態になれば……最悪、僕も竜崎もいつ殺されてもおかしくないからだ)

月(そのような事態になることだけは絶対に避けなければならない……たとえ僅かでも疑念を生じさせることの無いよう、慎重に行動しなければ……)

月(一方、星井美希とは対照的に……天海春香の方は、今のところ特に僕に探りを入れてくるような気配は無い)

月(一応、僕に好意があるかのような素振りを見せてきてはいるが……それも、あくまでほのめかす程度にとどめている)

月(また相沢さんと松田さんの尾行捜査によると、星井美希および天海春香は、いずれも外出時の行動には不審な点は無い)

月(事務所から二人で一緒に帰ることも珍しくはないが、その際も特に怪しい動きは無く普通に帰っている)

月(そしてもちろん、その際に『黒いノート』を授受している様子なども無い)

月(ただ星井美希については、外出時は常に少し大きめのバッグ――ノート大の物なら十分入る大きさのもの――を所持しているとのこと)

月(しかし、これも不自然なほどの大きさのものなどではないし……これだけで何かが決まるというものでもない)

月(やはりこのまま膠着状態が続くようなら……僕が個人的に弥海砂に接触し、信頼を取り付け……こちら側の協力者として引き込むしか……)

月(もっとも、星井美希の友人である弥海砂に対して積極的に接触するのは、天海春香に対してそれをするのと同様のリスクがある……)

月(竜崎からも『一旦は天海春香との接触のみに専念するように』と言われているところではあるし……)

月(だがこのまま何もしないでいるというのも……)

月「…………」

「あの……夜神くん?」

月「? ……ああ、高田さん。この講義、取ってたんだ」

清美「ええ、まあ。……隣、いいかしら?」

月「ああ、もちろん」

清美「ありがとう。ではお言葉に甘えて……失礼します」スッ

月「…………」

清美(……や、やった……やったわ!)

清美(夜神くんと初めて会話してから早三週間……彼と同じ講義に出る度、話し掛けようとするも結局話し掛ける勇気が出ないまま講義が終わってしまうことの繰り返しだったけど……でも今、遂に……!)

月(……そうだ。このまま何もしなくても今より安全になるわけでは決してない……ならばやはりここは一か八か、弥海砂に接触を図るべき……)

清美(でも今の反応からするに、夜神くんの方は、私も同じ講義を取っていたことに気付いていなかったようね……。私は一回目の講義の時から気付いていたのに……)

月(確かにリスクはあるが……しかしこちらから攻めなければ勝てないのも事実……)

清美(まあ、いいでしょう。一度こうして隣同士の席で講義を受ければ、次回以降も同様に隣り合わせても不自然ではないし……それに他の講義でも……)

月(……やるしかないな。弥海砂に接触し味方に引き入れ、なおかつ星井美希にはそのことを決して気付かれないようにする……)

清美(大丈夫……私ならできる。いえ、やってやる!)

月(大丈夫だ……僕ならできる。いや、やってやる!)



325:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/06(日) 16:25:57.64 ID:beH6hcZv0

(隣同士の席で講義を受けている月と清美)

教授「――したがって、近代民法の祖であるボアソナードが……」

清美「…………」カリカリ

月「…………」カリカリ

清美(さて、どうしようかしら。この講義の後は……)

清美(もし夜神くんが四限入れてないようなら、少しお話でも……)

月(しかし接触といっても、仮にも弥海砂はアイドル……いきなり一対一で会うというのも難しいかもしれない)

清美(でも何の話をすれば……やはり定番だけど趣味の話とかかしら?)

月(ならばとりあえずはまた前のメンバーで集まるように持ち掛けた方が良いか……。元々『またこのメンバーで集まろう』という話にはなっていたことでもあるし……)

清美(あっ。……趣味といえば、夜神くんはオンラインゲームであの人……竜崎さんと知り合ったと言っていたわね。でも私はやったことがないし、あまり話を膨らませられないかも……)

月(それにあのメンバーで集まれば、星井美希と天海春香の両名を同時に観察できるというメリットもある……また星井美希の竜崎に対する態度を観ることで、彼女がどの程度竜崎の素性を怪しんでいるのかも推し量ることができるかもしれない)

清美(でも夜神くんも『受験勉強の合間に暇潰しでやっていた』という程度だったそうだし……そこまでのめり込んでいる趣味というわけでもないのでしょう。きっと)

月(よし。念のため竜崎にも相談した上で……特に問題無ければ今日中にも集合の連絡を入れよう)

清美(まあいいわ。本人に聞いてみるのが一番ね。それに話題としても一般的だし何ら不自然さは無いわ)

教授「――では、今日はここまで」

月「…………」ガタッ

月(幸い、今日の講義はこれで終わりだ。このまま本部へ……)

清美「あ、あの、夜神くん」

月「? どうしたの? 高田さん」

月(ああ、高田清美……そういえば隣にいたんだったな。というか、この女も例のメンバーに入ってるんだったな……すっかり忘れていたが)

清美「え、えっと……その」

月「?」

清美(な、何まごついてるのよ私。同じ大学の学生同士、講義後に少しお話しするくらい何もおかしくはないじゃない)

月「高田さん?」

清美(いけない。これ以上言い淀んでいたら怪しまれる……言え、言うのよ! 清美!)

清美「……ちょ、ちょっと、その……お話でもしていきませんか?」

月「え?」

清美「あ、ああ、その……もしこの後、四限の講義が無ければ、だけど……」

月「今日の講義はもうこれで終わりだけど」

清美「! ……じゃあよかったら、その、少し……お話を……」

月「……ああ。構わないよ」

清美「あ……ありがとう。夜神くん」

清美(よ、よかった……ちゃんと言えたわ)

月「…………」

月(早く本部に行きたいのはやまやまだが……この女も例のメンバーに入っている以上、あまり無下に扱うわけにも……今は余計な軋轢を増やしている暇はないしな)



326:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/06(日) 16:39:13.70 ID:beH6hcZv0

【東応大学キャンパス内・中庭】


(中庭にある二人掛けのベンチに腰掛けている月と清美)

月「……でも、こうして大学内で普通に話すのは初めてだね」

清美「ええ、そうね。この前はちょっと特殊な状況だったし……」

月「ああ。正直言って意外だったよ」

清美「意外?」

月「うん。高田さんのことは知っていたけど、なんとなくああいう場に出るようなタイプじゃないように思っていたから」

清美「そ、そうかしら?」

月「でも、将来の志望を聞いて納得したよ。高田さん自身も言っていたけど、アナウンサー志望なら確かにああいう経験は大事だもんね」

清美「ええ。就職活動でもアピールできますし」

月「ははは。結構打算的なんだね」

清美「それほどでも。……なんてね」

清美(よかった。夜神くんの話が上手いおかげでもあると思うけど、結構自然に盛り上がっているような気がするわ)

月(早く本部に行きたいな……後十分くらい適当に会話して切り上げるとするか)

清美「あっ。そういえば……夜神くんは何か趣味とかってあるの?」

月「趣味? うーん、難しいな。中学まではテニスをやっていたけど」

清美「そうなの?」

月「ああ。こう見えても全国大会で優勝したこともあるよ」

清美「! ぜ、全国大会で優勝!? すごい……夜神くんって文武両道だったのね」

月「それほどでもないよ」

月(しまった。予想以上に食いつかれてしまった……少し早いが、もうこのへんで切り上げた方が良いな)

月「……っと。ごめん、高田さん。そろそろ……この後ちょっと用事があって」

清美「えっ。ああ……そうだったのね。ごめんなさい」

清美(夜神くん、用事があったのね。せっかく良い感じに盛り上がっていたのに……残念だけど仕方ないわね)

月「じゃあ、また」

清美「ええ。また……」

清美(……いえ、だめよ。折角こうして二人きりで話せたんだから、少なくとも、次に会う約束くらいは取り付けておかないと……)

清美「あ……ま、待って。夜神くん」

月「え?」クルッ

清美「え、えっと……」

月「……?」



327:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/06(日) 16:51:41.44 ID:beH6hcZv0

清美「…………」

月「…………」

清美(な、何押し黙ってるのよ、私。早く次に会う約束を……)

清美(でも約束って言っても……何て言えばいいのかしら?)

清美(『またお話ししませんか?』……いえ、駄目ね。内容が抽象的だし目的が不明確だわ)

清美(もっと具体的かつ明確に約束内容を示さないと……)

清美(でもどう言えば……そもそも私、今まで一度も男の人にこんなこと言ったことないし……)

清美(『また今度会いませんか?』……だめね、これでもまだ会う目的が曖昧なままだわ)

清美(もっと端的に、かつこちらの意図が正確に伝わるように……)

清美(そもそも私は夜神くんとどうしたいのか……どうなりたいのか……)

清美(……そうよ。それを考えれば答えは簡単)

清美(私は夜神くんと……もっとずっと一緒に居たい)

清美(なぜなら、私は夜神くんのことが――……)

月「? 高田さん?」

清美「…………」

清美(そうよ。なら端的に、ストレートに言えばいいのよ)

清美(『今度、私とデートしてくれませんか?』……って)

清美(少し直球過ぎるような気もするけど……でもこれなら趣旨も意図も確実に伝わる)

清美(よし。そうと決まれば後は実行あるのみ)

清美(……言え。言うのよ。……清美!)

清美「あ、あの……夜神くん」

月「うん。どうしたの? 高田さん」

清美「好きです。私と付き合って下さい」

月「えっ」

清美「えっ」



330:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/06(日) 20:09:15.41 ID:ml2hNrKL0

月「…………」

清美「…………」

清美(い、今、私……普通に告白した!?)

月「……えっ、と……」

清美「…………」

清美(ど、どうしよう……単にデートのお誘いをするだけのつもりだったのに……思わず本心が口を……)

清美(いえ、でも……これが私の嘘偽らざる本心なら……今ここで夜神くんの答えを聞こうが、一週間後、一か月後……あるいは一年後に聞こうが同じ事)

清美(ならば今、この機に……聞くべき!)

月「ごめん。高田さん」

清美「…………え?」

月「気持ちは嬉しいけど……僕達、こうしてちゃんと話すのもまだ今日で二回目で、お互いの事もよく知らないし……」

月「だから今はとりあえず……友達から、ってことでもいいかな?」

清美「……は、はい……」

月「ありがとう」

清美「…………」

清美(ふ、振られた……こんなにあっさり……何の溜めも無く……)

清美(い、いえ。でもある意味、当然といえば当然の結果……夜神くんの言うとおり、私達がまだお互いの事をほとんど知らないのは事実なんだし……)

清美(そうよ。それならまだ……チャンスはあるわ)

清美(まずは友達から入り、親交を深め……お互いの事がよく分かるようになってから、その時にもう一度……)

清美(そうよ清美。落ち込むのはまだ早いわ。むしろこれまで『一度話しただけの知り合い』程度の関係だったのが『友達』になれたのだから……まずはその事を喜ぶべき)

清美(そして告白自体は断りつつも、『とりあえず友達から』と言ってくれた夜神くんに……ちゃんとお礼を言うべきだわ)

清美「……夜神くん。確かにあなたの言うとおり、私達はまだお互いの事をよく知らないわ。だからまずはお友達になってくれてありがとう」ニコッ

月「え? い、いや……そんなお礼を言われるほどの事じゃ……」

清美(そうよ。勝負はまだ始まったばかり……頑張らなくちゃ!)

月(……どうでもいいから早く本部に行きたいんだが)



331:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/06(日) 20:41:06.62 ID:ml2hNrKL0

清美「え、えっと、夜神くん。じゃあ折角なのでもう少し、夜神くんのことを聞かせてほしいのだけど……って、ごめんなさい。用事があるんだったわね」

月「……いや、いいよ。もう少しくらいなら」

清美「! 本当?」

月「ああ」

清美(やったわ。ここで話が盛り上がればまだ十分可能性が……)

月(面倒だがやむを得ない……またあのメンバーで集まるとなるとこの女とも顔を合わせることになる。キラ事件以外の部分でまで不必要に気を遣う関係を作りたくはない)

清美「えっと、ああ、そうだわ。中学の時とはいえ全国大会優勝なんて……すごく上手なのね。テニス」

月「ははは。昔の話だよ。高田さんは何かスポーツの経験は?」

清美「私はこれといって特に……」

月「そうなんだ。でもアナウンサー志望なら、多少はスポーツにも興味を持っておいた方が良いかもね。スポーツニュースの担当になったりするかもしれないし」

清美「そうね。今よりもっと勉強する分野を広げるようにしないといけないとは思っているのだけど、なかなか実践できていなくて……」

月「今より……ってことは、もう既にアナウンサーになるための勉強を始めてるの?」

清美「ええ。といっても、まだそんなに大したことはしてなくて……。せいぜい、世間で注目されているニュースを自分なりに研究したりとか……それくらいだけど」

月「へぇ。それでも十分すごいよ。ちなみに、たとえば最近ではどんなニュースを研究してるの?」

清美「最近では、もっぱらキラ事件関連ね」

月「! ……まあ、そうだよね。……現在、最大の社会問題でありながら、未だに犯人も見つからず、それどころか犯行方法すらも解明されていない、世界規模の大量殺人事件……」

清美「ええ。いくら研究しても謎だらけだわ」

月「…………」

清美「? どうかしたの? 夜神くん」

月「……高田さん」

清美「? はい」

月「……世間的には、もう『キラ』という呼称が定着して久しいけど……そもそも『キラ』なんて本当にいるのかな?」

清美「え?」

月「だって『心臓麻痺で人を殺す』なんて……どう考えても馬鹿げているじゃないか。非科学的だし、その殺人方法が直接証明されたわけでもない」

清美「確かに……もう結構前になるけど、キラ事件が起こった当初……TVでキラを挑発した人がいたけど、その人も殺されなかったものね」

月「ああ、あれか。リンド・L・テイラー……通称“L”だっけ」

清美「ええ。よく覚えているわね。夜神くん」

月「これでも一応警察志望だからね。大きな事件の動きは常に追うようにしているんだ」

清美「流石ね。でもさっきの言い方からすると、夜神くんは『キラ』はいないものと思っているの?」

月「いるかいないかと聞かれたら『分からない』としか答えようがないが……でもやっぱり、俄かには信じがたいからね。『直接手を下すことなく、心臓麻痺で人を殺せる』なんて」

清美「……じゃあ、『犯罪者が心臓麻痺で死んでいる』という報道自体が実は嘘で、本当は政府が秘密裏に犯罪者を抹殺している……とか?」

月「ほう。でもそれなら、あえて『犯罪者が心臓麻痺で死んでいる』という嘘の情報を流す必要までは無いんじゃ?」

清美「確かにそうね。……では、こう考えることはできないかしら? 政府は、将来的な犯罪抑止まで視野に入れた上で、『罪を犯せば何者かによって裁かれる』という意識を国民に根付かせるべく、『犯罪者が心臓麻痺で死んでいる』という嘘の情報を流している……」

月「なるほど。それなら現在報道されている情報についても合理的に説明ができる。流石は高田さん。目の付け所が違うね」

清美「そ、そんな……これくらい、誰でも思いつくようなことだわ」



332:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/06(日) 20:56:53.34 ID:ml2hNrKL0

月「しかし世間では、『キラ』なる者が存在しているということが、まるで自明の事実であるかのように謳われている……今ではそのことを前提に、『キラ賛成派か、キラ反対派か』なんて議論がTVでもネットでも毎日されているような状態だ」

月「無論、そのような議論の報道自体、政府による世論操作という可能性もあるが……そんなことまで疑っていったらキリが無いので、ここでは一旦そのような可能性は捨象して考える」

清美「そうね……。そういえば、夜神くんはお父上が警察におられるということだったけど……何かそういう話は聞いていないの? たとえば、表向きは警察もキラを追っている形を取っているが、実際はそんな捜査は何もしていない……何故なら『キラ』が実在しないことは初めから分かっているから……とか」

月「さあ……それはちょっと分からないな。父は昔から、そういった捜査情報のような類のものは僕達家族にも絶対に話さないからね。自分がどんな事件を担当しているのかといったことも含めて」

清美「まあそれはそうよね。今のご時世、どこから情報が漏洩するか分からないものね」

月「ああ。……話は戻るけど、世間ではもう『キラ』という犯罪者裁きをしている者がこの世界のどこかに存在している……もうそのことが当然の前提のように語られていて、今ではそのこと自体に異論を差し挟む者はほとんどいない」

月「まだその実在性も証明されておらず、殺人の方法も解明されていないのに、だ。それに『直接手を下すことなく、心臓麻痺で人を殺せる』なんて非科学的な能力を持っている者がこの地球上のどこかに存在している……などと考えるよりは、さっき高田さんが言っていたような、政府の陰謀論などの方がまだよっぽどか現実的だし信じやすい……」

月「なのに何故、世間ではそのような考えよりも、『キラ』が実在していることを前提とする考え方の方が主流なのか……なんて、ちょっと気になってね。もしよかったらこの点について、キラ事件関連のニュースを研究している高田さんの考えを聞かせてもらえないかな?」

清美「……そうね。あくまでも私個人の考えだけど……」

月「ああ」

清美「それはきっと……世の人々の『願望』なんじゃないかしら」

月「……『願望』?」

清美「ええ。多分、この世界に生きているほとんどの人が、凄惨な事件や理不尽な犯行を伝えるニュースを耳にした際……一度や二度はこう思ったことがあると思うの。……『こんな奴、死んでしまえばいいのに』って……」

月「…………」



335:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/06(日) 21:56:27.85 ID:ml2hNrKL0

清美「かくいう私もその一人……幸いにも、まだ自分や自分の周りの人がそういう事件に巻き込まれたりしたことは無いけど……弱者をいたぶるような犯罪や、何の罪も無い人が犠牲になるような事件の報道を見る度に思うの」

清美「『なんでこんなにひどいことをした人が、まだ平然と生きているんだろう』……って」

月「…………」

清美「もちろん、中には本当に死刑になる極悪人もいる……でも全員が全員そうなるわけじゃない……」

清美「おかしいと思わない? なんで平気で人を傷つけたり、殺したりした人が……まだ生きていることを許されているのか……」

清美「だから多分、今までそういう思いを抱えて生きてきた人たちにとって、『キラ』は……まさに自分が思っていたことを実現してくれている……いわば、救世主のような存在」

清美「だから世の人々は『キラ』に存在していてほしいと、そう願っている……つまりそれが……」

清美「『キラ』の存在を自明の事実たらしめている……世の人々の『願望』」

清美「――私は、そのように考えているわ」

月「! …………」

月(この口ぶり……感情の入り方……間違い無い)

月(この女……キラ崇拝者だ。それもかなりの……)

月(キラに付け入るにはキラ信者は最適……そしてこの女……高田清美はもう既に星井美希・天海春香の双方と接点を持っている)

月(ならばさっきの告白……受けておいた方が良かったか? いや、だがこの女の持つ星井美希・天海春香との接点はまだ小さい)

月(あの学祭の日の翌日から、相沢さんと松田さんが手分けして星井美希・天海春香を対象とした尾行捜査を行っているが……今のところ、この二人のいずれかが高田と接触した形跡は無い)

月(だとすると、高田と星井美希・天海春香との接点は僕や竜崎と同程度……いやむしろ、僕と天海春香、または竜崎と星井美希の方が接点としては強いだろう)

月(それに今、この女と本格的に交際を始めると……僕の行動が大幅に制限されてしまう可能性がある。今後、僕が弥海砂にも積極的に接触していかなければならないことを考えるとそれはデメリットでしかない)

月(ただそうは言っても、キラ信者という特性はいずれ利用できるかもしれない……本命はあくまで弥海砂だとしても、この女もいざという時のための予備として……動かせる駒は多いに越したことは無い)

月(つまり今必要なのは、この女の好意を保持したまま、いざという時には利用できるように一定の信頼関係を築いておくこと……大丈夫だ。それくらい、僕にとっては造作も無い)

月(正直、女性の好意や好感といった感情を利用することに抵抗が無いわけではないが……今の現状……僕や竜崎、そして父さんすらもいつキラに殺されるか分からないという状況を考えると……最早手段を選んでいる余裕は無い)

月(あとはこの女との信頼関係を維持したまま、弥海砂にも早めに接触を……ん?)

月(……メール……? 誰からだ?)ピッ



336:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/06(日) 22:16:31.13 ID:ml2hNrKL0

月「! ……これは……」

清美「? どうしたの? 夜神くん」

月「ああ。メール……海砂さんからだ。高田さんにも来てるよ」

清美「! 本当だわ。どれどれ……」


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From:弥海砂
To:星井美希、天海春香、高田清美、夜神月、竜崎ルエ

件名:第2回『竜崎と愉快な仲間達』開催のお知らせ


ミサだよー!

皆、元気にしてた?

前に皆と会ってからもうすぐ一ヶ月になるし、
またそろそろ皆で集まらない??

で、何をするかというと……これ↓

765プロダクションオールスターズ出演映画『眠り姫』鑑賞会!!

実はミサのマネージャー(ヨッシーっていうの)が、
美希ちゃんや春香ちゃんの事務所のプロデューサーさんと昔からの知り合いらしいんだけど…
なんと今回、そのよしみで↑の映画のチケットをただでもらえたんだって!^^

ちょうど6人分あるから、皆で観に行こー!
美希ちゃんや春香ちゃんの晴れ姿を皆で拝むのだ☆

じゃあそんな感じで、皆の都合とかまた教えてねー!
よろしく♪


ミサミサ@映画はまだ出演オファー無し。。。

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338:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/06(日) 22:39:11.50 ID:ml2hNrKL0

月「…………」

月(いいぞ、弥海砂……これで僕の方から集合を持ち掛けるまでもなく、自然な形で接触することが可能になった)

清美「『眠り姫』……って、確か今、観客動員数がすごいって話題の映画よね?」

月「ああ。このままのペースでいけば、今年度最高動員数となるのはほぼ間違い無いだろうって言われてる」

清美「そんなすごい映画に出演しているような人達と、当の映画を一緒に観に行くなんて……なんだかすごく不思議な感じね」

月「本当にね。まあでもタダ券があるようだし、行かない手は無いね」

清美「ええ、そうね。海砂さんにはよく御礼を言っておかなくちゃ」

月「そうだね……ん?」

清美「? どうしたの?」

月「……ごめん。何でもないよ」

清美「? そう?」

月「…………」

(自然な仕草で携帯の画面を確認する月)


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From:弥海砂
To:夜神月

件名:ライトくんへ


えへへ

さっきは一応皆にお誘いしたけど、
ミサが今一番会ってお話ししたいって思ってるのは実はライトくんなんだよ
これっていったいどういう意味なんだろうね?笑


……なーんて、続きは会ってからのお楽しみねっ!


ミサミサ@アイドルは恋愛禁止?そんなの関係ねぇ!笑

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339:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/06(日) 23:00:45.01 ID:ml2hNrKL0

月「…………」

清美「夜神くん? あ、そういえば用事って……」

月「……ああ、そうだった。流石にそろそろ行かないと……ごめんね。高田さん」

清美「いえ、こちらこそ引き留めてしまってごめんなさい」

月「それとさっきは、貴重なご意見ありがとう。とても勉強になったよ」

清美「いえ、そんな……あれは前置きしたように、あくまで私個人の考えでしかないから……」

月「いや、流石はキラ事件関連のニュースを研究している高田さん……とても説得力のある意見で、大変参考になったよ。……ああ、それと……」

清美「? 何?」

月「もしよかったら、今後もまた、高田さんの隣で講義を受けさせてもらってもいいかな?」

清美「えっ?」

月「もちろん、お邪魔でなければ……だけど」

清美「! そ、そんな……お邪魔なんて、そんなことあるわけ……こ、こちらこそ、よろしくお願いします」

月「ありがとう。ではこれからも、お互いの目標に向かって頑張っていこう。じゃあまた明日」

清美「は、はい! また明日」

(清美と別れ、東応大学を後にする月)

月「…………」

月(この僕個人宛のメール……間違い無い。弥海砂は既に僕に好意を持っている)

月(これならもうすぐにでも……それも僕の方からアプローチをするのではなく、弥海砂からということであれば……)

月(仮にこのことが星井美希に伝わっても何ら問題は無い。弥の方から僕にアプローチをしてきている以上、この状況で僕の方が弥に探りを入れようとしているなどと疑えるはずもない)

月(そして高田清美……いきなり告白してきたのは多少面食らったが……あの女と今後も大学で定期的に接触できるのは都合が良い)

月(かなりプライドの高そうな女ではあるものの……自分が認めた相手には従順に尽くすタイプとみえる。そうであれば、ああして僕の方から今後も接点を持ち続ける意思を示した以上、告白を断られたこと自体はさほど気にはしていないだろう)

月(弥海砂、そして高田清美……最終的には、キラ信者という特性を持つこの二人のうちのいずれか、または双方を意のままに動かし、キラ……星井美希と天海春香から、キラとしての直接的な証拠を得る……!)

月(僕や竜崎、父を含め……捜査本部の大多数の者がいつキラに殺されてもおかしくない状況にある以上、後はもう時間との戦い……)

月(大丈夫だ……僕ならできる)

月(キラに殺される前に、キラを捕まえてみせる)

月(……必ず!)



347:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/13(日) 11:33:03.51 ID:PRfG2Ch90

【一週間後・春香の自室】


(勉強休憩中の月と春香)

月「合宿?」

春香「はい。ライブに向けての全体練習に特化した合宿で、バックダンサーをやってくれるアイドル候補生の人達ともダンスを合わせる予定なんです」

月「へぇ。いつ行くの?」

春香「再来週の水曜から四泊五日で行く予定です」

月「じゃあ学校も休んで行くんだね」

春香「はい。……で、またまたで申し訳ないんですけど、その週は家庭教師をお休みにして頂けないかと……その週は他の日もお仕事で埋まっちゃってまして……」

月「ああ、それはもちろん。仕事優先でいこう」

春香「なんかすみません……こんなのばっかりで」

月「いやいや、気にしないで。4月から家庭教師を始めてもう二か月になるけど、春香ちゃんの学力は着実に上がってるしね」

春香「! 本当ですか?」

月「ああ。この調子なら、当初の志望より大分上のランクの大学にも手が届くと思うよ」

春香「やったぁ。よーっし。じゃあ今から一層頑張っちゃいますよ!」

月「その意気だ。今日は午後からのお楽しみもあるし、集中してあと一時間頑張ろう」

春香「はい!」

月(合宿、か……そこまで尾行……は流石に危険か。場所にもよるだろうが……)

月(まあ今はいいか。とりあえずは今日この後――……)

月「…………」

春香(はぁ……今日も進展は無いなあ。やっぱり警戒されてるのか、隙が無いなぁ)

春香(まあでも仕方無いか。私もキラ容疑者の一人に入ってるのは間違い無いだろうし……多分お父さん……夜神総一郎からそう聞いてるんだろうな)

春香(だからこそ、私としてはそこからLの正体を探りたいんだけど……)

春香(今のところ、ライトさんから何か情報を得るのは難しそうだし……ちょっと違う方法を考えた方が良いかな……)

春香「…………」



348:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/13(日) 11:44:18.78 ID:PRfG2Ch90

【同日午後・都内某映画館前】


美希「あれ? 竜崎」

L「こんにちは。美希さん」

美希「もう来てたの? 随分早くない?」

L「いえ。つい一時間前に着いたところです」

美希「ミキ的には十分早過ぎって思うな」

L「なんといっても春香さんの晴れ姿を拝める機会ですからね。精神統一の為に必要な準備時間です」

美希「……一応ミキも出てるんだけどね。それもけっこーなメインどころで」

L「もちろん知っています」

美希「なら許すの」

L「ありがとうございます」

美希「あっ、そうそう。あれからね、パパが竜崎のことすごく気に入っちゃって」

L「えっ」

美希「是非ミキのお婿さんに来てほしい、って」

L「!?」

美希「なんてね。ウソなの。あはっ」

L「…………」

L(しまった。二人の間でそんな会話がされているはずが無いことは分かっていたのに……不意打ち過ぎて少し動揺してしまった)

L(しかし今の揺さぶり……まさか父親との会話を聴かれていることを見抜いた上で……? いや、いくらなんでもそれは無いか)

L(これもやはり『天才アイドル』ゆえの天性の嗅覚というところか……)

L(本当に読めないな……星井美希)

L(だがここはとりあえず“竜崎ルエ”として相応しい反応をしておかなくては……)

L「……良かったです」

美希「え? なんで?」

L「私は春香さんのファンですから。申し訳ありませんが美希さんと結婚することはできません」

美希「今ミキ生まれて初めてフラれたっぽいの」



349:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/13(日) 11:59:00.53 ID:PRfG2Ch90

海砂「やっほおー」

清美「こんにちは」

美希「海砂ちゃん。高田さん。こんにちはなの」

L「こんにちは」

美希「二人は一緒に来たの?」

海砂「うん。駅の改札出たとこで会ってね。清美ちゃん女王様オーラあったからすぐ分かったわー」

清美「じょ、女王ってなんですか! 失礼な……」

海砂「えー。褒めたつもりだったのに。で、ライトくんと春香ちゃんはまだかな?」

美希「うん。午前中が春香の家庭教師だから、その後一緒に来るって」

海砂「! つまり同伴……!」

L「発想がやらしいですね。ミサさん」

海砂「な、何よ! あなたこそヤキモチやいてるんじゃないの? 春香ちゃん、ライトくんに取られちゃってさ」

L「いえ。二人はただの家庭教師と生徒の関係ですし、私の無二の親友である月くんとアイドルである春香さんとの間に間違いなど起こるはずもありませんので」

海砂「あ、ああ……そう……」

美希「…………」

清美「でも二人で一緒にいるとマスコミとかメディアに嗅ぎ付けられたりしないのかしら? アナウンサー志望の私が言うのも何ですけど……」

美希「それは多分大丈夫なの。変装してたら結構ばれないし」

海砂「確かに……私達は見慣れてるからすぐ美希ちゃんって分かるけど、知らない人から見たら案外分からないかもね。今日みたいに帽子と眼鏡姿だと」

美希「あはっ。伊達眼鏡だけどね、これ」クイッ

清美「そういえば、海砂さんは変装しなくて大丈夫なんですか?」

海砂「えっ? ミサ? ミサはほら、まあなんていうかその場その場でアイドルオーラ消したりできるし?」

L「ミサさんはまだ春香さんや美希さんほどには売れていないのでそこまでする必要が無いということです」

海砂「はっきり言わないでよ!」

清美「あ、その……ごめんなさい」

海砂「清美ちゃんも謝らなくていいから! かえって傷付くから!」



350:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/13(日) 12:59:25.04 ID:PRfG2Ch90

春香「こんにちはー」

月「もう皆来てたんだ」

海砂「もー! ライトくん遅いよー!」

月「すみません。思ったより時間が掛かってしまって」

L「家庭教師が長引いたんですか?」

月「いや、予定通りに終えたつもりだったんだが……電車の乗り換えの度に少しずつ遅れていったのかも」

美希「春香の家は遠いから仕方無いの」

清美「そうなんですか?」

美希「うん。都内まで電車でだいたい二時間くらい」

海砂「二時間!?」

清美「それはまた大変ですね……」

春香「いやまあ、慣れたらそうでもないですよ? 朝早い時間だと電車も混んでなくて座れますし……」

美希「ミキならよゆーで寝過ごしちゃうの」

春香「美希は立ってても普通に寝そうだもんね」

美希「春香はミキのことバカにし過ぎって思うな」

海砂「はーい。じゃあ全員揃ったことだしチケット配るよー」

美希「あはっ。なんか海砂ちゃん、遠足の時の学校の先生みたいなの」

春香「でも今更だけど……これ、私達がもらってもいいのかなあ? 元はプロデューサーさんが海砂さんのマネージャーさんにあげた物らしいけど……」

美希「まあいいんじゃない? そこはあんまり深く考えなくても」

海砂「そうそう。どうせ誰かが観に行くんだしさ。気にしない気にしない」

春香「うーん……分かりました。海砂さんにそう言って頂けるのなら」

清美「それにしても楽しみです。今一番話題の映画を、まさかそれに出演している方達と一緒に鑑賞できるなんて」

春香「い、いえ、そんな……今日は私も一観客のつもりで来ていますので……」

美希「そうそう。ミキも春香も、今日はただのお客さんなの」

海砂「でも二人とも、映画館で観るのは今日が初めて、ってわけではないんでしょ?」

春香「あ、はい。事務所の皆とはもちろん、両親や、学校の友達とかとも観に行きましたし……なんやかんやで五回くらいは観てますね」

海砂「へー、やっぱりそれくらいは観てるんだ。美希ちゃんも?」

美希「んーと。ミキも学校の友達とも観たりしたから……今日で三回目かな」

清美「やっぱりそれなりに観てるんですね。ごめんなさい、私は今日が初めてで……」

春香「いやいや、高田さん。それが普通ですから」



351:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/13(日) 13:22:06.98 ID:PRfG2Ch90

海砂「まあまだ公開して二週間くらいだしね。ミサも今日が初鑑賞だし……ヨッシーからもらったこのチケットで皆と観に行くつもりだったからだけど」

美希「竜崎は? 春香の大ファンなんだし、もう四、五回くらいは観てるとか?」

L「私は今日で十七回目です」

美希「!?」

春香「じゅ……え?」

海砂「想像の斜め上をいくわね……てかそれ一日一回以上観てる計算になるじゃん……」

L「はい。ちなみに舞台挨拶があった回にも四回行っています。そのうち春香さんとは二回、美希さんとは一回お会いしています」

春香「そうだったんですか……全然気付いてなかったです」

L「無理もありません。いずれも大きな映画館でしたし、私は後ろの方の席でしたから」

美希「ていうか、それなら前もって言っておいてくれたらミキ達も探せたのに」

L「それも考えましたが、私はあくまで春香さんと、あと一応美希さんの一ファンとして映画館に赴いていましたので……お二人との個人的なつながりを使うのはファン道に反するような気がしてやめました」

美希「……一応って……」

清美「じゃあ夜神くんも竜崎さんと一緒に観に行ったの?」

月「ああ、最初の一回目だけね。竜崎はまだ人の多い場所は苦手だろうと思ったから、念の為についていったんだ。そしてもちろん僕自身、春香ちゃんと星井さんの晴れ姿を早く見ておきたいという気持ちもあったしね」

清美「そうだったのね」

月「でも不安は杞憂に終わり……結果的に、前の学祭の時に、ステージの上で海砂さんに面を取られ、大勢の人達の前で素顔を晒したのが荒療治になったんだろうね。もう竜崎は人の多い映画館でも、面を着けなくても至って普通に過ごせるようになっていたよ。だからその後は特に付き添いはしていない」

海砂「なるほどね。……で、竜崎さんはそこからさらに十五回も観に行ったと……」

L「はい。おかげでほぼ全てのシーンの台詞を暗唱できるまでになりました」

春香「な、なんか……ありがとうとしか言えないのがもどかしいですけど、ありがとうございます」

L「私には勿体無いお言葉です。春香さん。むしろお礼を言わなければならないのは私の方です。こんなにも素晴らしく感動的な映画を――……」

海砂「はいはい、ここにはまだ観てない人もいるんだから、そういう内容に踏み込んだやりとりは観終わった後で! ね?」

L「それもそうですね。すみません」

春香「あはは……」

美希「…………」

海砂「よーし。じゃあ、早速中に入りましょっ!」



352:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/13(日) 13:58:35.89 ID:PRfG2Ch90

【映画館/シアター内】


(映画『眠り姫』を鑑賞している六人)

(劇中)美希『みんな消えちゃえばいいって思うなっ!!』ドォオオオオン

(劇中)千早『あれが、アイドルの力だというの!?』

海砂(美希ちゃんの演技、すごっ……こりゃハリウッドに呼ばれるのも納得だわ)

清美(すごい迫力……演出の効果もあるんでしょうけど、このゆるい感じの子がこんな演技をするのね)チラッ

美希「…………」

(劇中)美希『待ってたよ、春香……』

(劇中)春香『帰ろう? 美希。ここは私たちの居ていい所じゃない』

海砂(いよいよクライマックスかな)

清美(天海さんの演技も光っているわね)チラッ

春香「…………」

(劇中)伊織『一体、アイドルって何なのよ……』

リューク「なあ、レム。俺もミキの撮影の時からずっとこの映画観てるけど、未だによく分からないんだよな。結局この映画でいう『アイドル』って何なんだ?」

レム「人が真剣に観てる時に急に話し掛けて来るなよ……。順にストーリーを追っていれば普通に分かるだろう」

リューク「それが分からないから聞いてるんだろ。ていうかお前も飽きるほどこの映画観てるはずなのによく今更真剣に観れるな」

レム「……ハルカのアイドル活動を見届けるのは私にとっては使命のようなものだからな」

美希(普通にアイドル映画談義する死神ってシュール過ぎるの)

春香(聞こえてないふりしないといけないせいもあってか、なんか妙に気恥ずかしい……)

(劇中)美希『この力……! お前もアイドルの器を持っているというの!?』

(劇中)亜美真美『だめ! 新たな眠り姫が生まれてしまう!』

海砂(亜美真美ちゃんもかわいいなー)

清美(765プロの子達って皆普通に演技もできるのね……すごいわ)

(劇中)春香『千早ちゃんなら、大丈夫』

(劇中)千早『春香。私、アイドルになるわ!』

(劇中)千早『私、あなたのこと忘れない……!』

リューク「なあ、レム。コレって、ハルカとチハヤが合体したってことでいいんだよな?」

レム「厳密に言うと少し違う。ハルカのアイドルとしての存在がチハヤの内に取り込まれたんだ。ほら見ろ、チハヤの目の色が片方だけハルカのイメージカラーである赤色に変わっているだろ」

リューク「あっ。ホントだ。お前よくこんなの気付けるな」

レム「つまりこれはハルカのアイドルとしての力をチハヤが取り込み、新たなアイドルとしてデビューしたということを意味しており……」

美希(もうレムは映画評論家にでもなればいいって思うな)

春香(むしろ何でレムは死神やってるんだろう)

月「…………」

月(弥海砂はもうすぐにでもこちら側に引き込めるとして……後はタイミングとシチュエーション)

L「…………」

L(二人とも、やはり大人数で集まっている時にはボロを出さないな……。しかし相沢と松田の尾行捜査にも限界がある)

月(いずれにせよ)

L(早く決着をつけなければ……)

月・L「…………」



353:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/13(日) 14:22:33.38 ID:PRfG2Ch90

【映画『眠り姫』上映終了後・映画館近くの喫茶店】


海砂「あーっ! すごい良かった~。ミサ、絶対あと三回は観る!」

清美「私も……一回観ただけだとよく分からなかった所が結構あったから、もう一回は観たいですね」

海砂「あっ。じゃあ清美ちゃん、私と一緒に行く?」

清美「…………前向きに検討させて頂きます」

海砂「何その間!?」

清美「でも本当に素晴らしい映画でした。天海さん、星井さん」

春香「ありがとうございます。高田さん。そう言って頂けると嬉しいです」

美希「ありがとうございますなの」

海砂「同時上映の『ハム蔵のだいぼうけん』も面白かったしね。あとこれ、『光る! おにぎりエンブレム』! もすごくかわいーし」

美希「でしょ? ミキもお気に入りなの」

海砂「あっ。でもこれ、竜崎さんはもう十七個目……?」

L「はい。全部ちゃんと家に飾っています」

海砂「そ、そうなんだ……」

清美「でも何でおにぎりなのかしら?」

美希「ミキがおにぎり好きだからなの」

清美「えっ。そんな理由で?」

美希「そうなの」

春香「普通に考えたら主人公の千早ちゃんなんですけどね……でも千早ちゃんってこれといって分かりやすい好物が無いから」

海砂「なるほどね。でもそれなら準主人公的なポジションの春香ちゃんでも良さそうだけど」

春香「私も特にそういう好物って無いので……作るのは好きなんですけどね。お菓子とか」

月「ああ。春香ちゃんのお菓子は絶品だからね」

海砂「えっ! ライトくん食べたことあるの?」

清美「! …………」

月「ええ。家庭教師の時、勉強の合間の休憩中に頂いてます」

海砂「あ、ああ……そういうことね」

清美(手作りのお菓子……! そうか、そんな手もあるのね……!)



354:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/13(日) 14:42:54.96 ID:PRfG2Ch90

L「……春香さんの手作りのお菓子を頂いているなんて羨ましいです。月くん」

海砂「あ、そこは普通に羨ましがるんだ」

L「私は春香さんの手作りのお菓子が食べられるなら死んでもいいとさえ思っていますから」

春香「竜崎さんにそれ言われると重いんですけど!? ていうか、お菓子くらいなら今度作って持って来ますよ」

L「! 本当ですか」

春香「はい。でも死んだらだめですからね?」

L「はい。大丈夫です。春香さんの手作りのお菓子が食べられるなら絶対に死にません」

月「お前、さっきと言ってることが……いや、まあいいが……」

美希「…………」

海砂「どうかしたの? 美希ちゃん」

美希「ううん。なんでもないの」

海砂「そう? じゃあ春香ちゃんがお菓子作って来てくれるんなら、次は皆でピクニックにでも行こうか! あ、それか遊園地とかの方がいいかな?」

月「どちらもいいですね。是非行きましょう」

海砂(そしてその時までにミサはライトくんと……!)

清美(手作りお菓子……ピクニック……遊園地……夜神くんと……)

春香「あ、でも私と美希はライブに向けての合宿があるから……その後くらいの時期でもいいですか?」

海砂「もちろん! ていうか合宿なんてあるんだ。すごいね。どこ行くの?」

春香「福井です」

美希「民宿に泊まって、練習はすぐ隣にある市民会館でやるの」

海砂「いいな~楽しそう!」

清美「全体の総仕上げのような形でやるんですか?」

春香「そうですね。あと、バックダンサーの人達ともダンスを合わせる予定なんです」

海砂「そっか。今回のライブはバックダンサーも入れるって言ってたもんね。いいなあ、ミサもバックダンサーでいいから呼んでくれないかなあ」

L「……この前の学祭のライブを観る限り、ミサさんはダンスの方はそんなに得意そうには見えませんでしたが」

海砂「地味に傷付く!」

月「まあ海砂さんのダンスはさておき、話を『眠り姫』に戻そうか。折角今回こうして皆で一緒に鑑賞できたわけだし、各自の好きなシーンを順番に挙げていくっていうのはどうかな?」

海砂「ライトくんもひどい!?」

L「そうですね。では早速ミサさんからお願いします」

海砂「……ぐすん、いいもん。ちゃんと言うもん。えっと、ミサの好きなシーンはね……うん。やっぱり、『眠り姫』だった美希ちゃんが目覚めた後のバトルシーンで――……」



355:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/13(日) 14:59:31.36 ID:PRfG2Ch90

【三十分後・喫茶店前の路上】


月「では今日はこのへんで。海砂さん、また次のセッティングもお願いします」

海砂「はーい! まっかせといってー! 『竜崎と愉快な仲間達』の代表幹事・弥海砂にお任せあれ!」

L「……結局、サークル名はそれになったんですね」

美希「ミキ的にはまあ何でもいいんじゃないかなって思うな」

L「美希さんももう少し関心を持って下さい」

美希「ミキは細かい事にはこだわらないタイプなの」

春香「まあこれはこれで、慣れてきたらしっくりくるような気もするけどね」

海砂「でしょ? 流石春香ちゃん。違いの分かる女だわ」

L「皆さんがそれでいいなら私も別に構いませんが」

海砂「おっと。もうそろそろ事務所戻んないと……この後CM撮影なのに、またヨッシーに怒られちゃう」

美希「海砂ちゃんお仕事頑張ってなの」

海砂「ありがとう美希ちゃん。またお茶しよーね」

美希「はいなの!」

L「では私達も行きましょうか。月くん」

月「ああ。そうだな」

清美「じゃあ夜神くん。また明日、講義で」

月「うん。よろしく。高田さん」

清美「あ、それと……天海さん」

春香「? はい。何でしょう。高田さん」

清美「あ、えっと……その……」

春香「?」

清美「あ、後で、その……メールを送らせて頂いてもいいですか?」

春香「? メール……ですか?」

清美「ええ」

春香「はい。それはもちろん」

清美「! 良かった。それではよろしくお願いしますね」ペコリ

春香「? え、ええ。……えっと、じゃあ途中まで一緒に帰ろっか。美希」

美希「うん」

清美(やったわ。これで……)

海砂(よーし。早速今日の夜にでもライトくんに……)

清美・海砂(……ふふふ……)

月「…………」



356:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/13(日) 15:22:07.56 ID:PRfG2Ch90

(L、月、海砂、清美と別れた後、並んで家路を歩いている美希と春香)

春香「それにしてもすごいよね。竜崎さん」

美希「……え?」

春香「だって十七回だよ? 事務所宛てのファンレターでも『十回観ました』って書いてきてくれた人はいたけど」

美希「……あー」

春香「それに皆が『あのシーンが良かった』って言うと、すぐに『それは誰々がこの台詞を喋っていたシーンですね』って言って、台本通りの台詞喋っちゃうし」

美希「…………」

春香「多分竜崎さんって、普通の人より記憶力が良いんだろうね」

美希「…………」

春香「普通、いくら十七回観たっていっても、あそこまで完璧には覚えられないもの。私達だって何十回も台本読んでるけど、流石に他の人の台詞をあそこまで正確には覚えてないしね」

美希「…………」

春香「美希? どうかしたの?」

美希「……春香」

春香「? 何? 美希」

美希「…………」

美希(違うの。春香)

美希(竜崎が台詞を完璧に覚えるくらいにまでミキ達の映画を観ているのは……ミキと春香をキラとして疑っていて、その捜査をしているから)

美希(ミキと春香に探りを入れるために、“竜崎ルエ”というキャラクターを演じているからなの)

美希(だからね、春香)

美希(竜崎は――……)


――春香のファンなんかじゃ、ないの。


美希「……なんでもないの」

春香「? 変な美希。まあ、なんでもないならいいけど……」

美希「…………」

春香「じゃあ今日はこのへんで。合宿も近いし、頑張ろうね! 美希」

美希「うん。頑張ろうね。春香。じゃあまた明日」

美希「…………」

美希(あの学祭の日以来、Lの事についてはほとんど話していない)

美希(春香はもう竜崎の事をほとんど疑っていない……しかもそれは今日の件で一層強まったような気がする)

美希(こんな春香に『やっぱり竜崎はLかもしれない』なんて言ったら……)

美希(それを否定するために……否定するための根拠を探すために……どんな無茶な行動に出るか分からない)

美希(だからこのことは春香には言えない)

美希(ミキが……ミキが一人で、なんとかするしか……)

美希「…………」



377:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/20(日) 20:50:32.61 ID:J78b089C0

(春香と別れた後、家路を歩いている美希)

美希「……ところで、リューク」

リューク「ん? 何だ? ミキ」

美希「……今日は、どう?」

リューク「……ああ。昨日までと同じ……だな」チラッ

リューク「……かなり距離を取ってはいるが、相変わらずつけてるな」

美希「……同じ人?」

リューク「多分な。……とはいっても、これも昨日までと同じ、帽子を目深にかぶった上にサングラスとマスクのフル装備……これなら正直言って、似たような背格好の奴なら入れ替わっていても分からない」

リューク「それにここまでされちまうと、流石に俺の死神の目にも名前も寿命も映らない。……もっとも、仮に名前が見えたところで、俺はそれをミキに教えることはできないわけだが……」

美希「…………」

リューク「……それにしても……」

美希「? 何? リューク」

リューク「いや……こうしてミキがつけられていることに気付いてからもう一か月近くになるが……正直言って、いい加減ウンザリだと思ってな。そいつに俺は見えていないが、いつも見られてる気分だからな」

美希「……ワガママ言わないの。顔さえ見えてれば、春香の死神の目で名前を見てもらうこともできなくはないけど……顔が見えない以上はそれもできない。今のままじゃ、どうやったって殺せないの」

リューク「……ククッ」

美希「? 何?」

リューク「いや……最近のミキは、犯罪者以外に対しても普通に『殺す』って言うようになったなあ、って思ってな」

美希「…………」

美希(ただそうは言っても、実際のところは……顔が見えていようが見えていまいが、今の状態でミキをつけている人を殺すわけにはいかない)

美希(もし今そんなことをしたら、『ミキがキラです』って言うようなものなの)

美希(だからどちらにしても、今のミキには何もできない。ただ普通に、何も知らないふりをしたまま行動するしかない)

美希(ただでも、気になるのは……ミキをつけている人が『顔を隠している』ということ)

美希(前に事務所に聞き取り調査に来た刑事……夜神月の父親の、夜神総一郎。……そしてもう一人の大柄な体格の刑事……春香が死神の目で見た名前によると『模木完造』っていうらしいけど……)

美希(この二人は偽名を使ってはいたものの、普通に顔を晒して、ミキ達の前に『キラ事件の捜査をしている刑事』として姿を現した)

美希(これは『キラが人を殺すには顔と名前が必要』と考えていたから……つまり『顔を見られても名前が偽名なら殺されない』と考えていたからとみるのが自然)

美希(しかし今、ミキをつけている人は顔を隠している……)

美希「…………」

美希(春香が殺したアイドル事務所の関係者の中には、芸名で活動していて、本名がすぐには分からない人もいた)

美希(それに去年のファーストライブの日に死んだ春香のファンの人も……普通に考えて、春香がその時に名前を知ることができた可能性が高いとはいえないはず……)

美希(だからもしLが、この人達も『キラの能力によって殺された可能性がある』と考えていたとしたら……この人達は『本名が分からなかった可能性があるにもかかわらず、キラの能力によって殺された人達』ということになる……)

美希(だとしたら……Lが『キラは顔だけでも人を殺せる』ということに気付いている可能性は十分にある)

美希(そう考えれば、今ミキをつけている人が顔を隠していることや……キラ事件の捜査をしているであろう竜崎が、最初は面を着けた状態で東大の学祭に来ていたらしい、ってこととも辻褄が合うの)

美希「…………」



378:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/20(日) 21:07:24.68 ID:J78b089C0

リューク「でもミキにこれだけずっと尾行がついてるってことは……普通に考えて、ハルカにもついてるよな?」

美希「そうだね。ミキの推理が間違ってなければ、春香もミキと同じくらいにはLから疑われてるはずだから」

リューク「じゃあやっぱり、ハルカにも『尾行がついている可能性がある』って教えてやった方がいいんじゃないか?」

美希「ううん、それはいいの。春香がミキと同じくらいの頃から尾行されてるとしたら、もう一か月近くになるわけだし……だとしたら、春香自身は気付けなくても、レムは絶対気付いてると思うの。それでレムの性格なら、気付いた時点ですぐに春香に伝えてると思うの」

美希「リュークでさえ『見られているような気がして気持ち悪い』って気が付いたくらいなんだし……レムはリュークとは違って、純粋に春香の事を心配してるからね」

リューク「……でさえ、ってお前……。それに前にも言ったが、俺はミキの敵でも味方でもないからな」

美希「だから……それならあえて、ミキの方から春香に伝える必要は無いし……それにミキがそんなことを伝えたら、春香はきっと『ミキも尾行に気付いていて、不安になっている』って思って、またミキの事を心配しちゃうの」

美希「もうこれ以上、春香に心配は掛けられないからね」

リューク「じゃあ逆に、ハルカがミキに尾行の事を伝えてこないのも同じ理由か? 『ミキにも尾行がついているかもしれない』なんて言おうものなら、またミキが不安になるから、っていう……」

美希「多分ね。実に春香らしいの」

リューク「……なるほどな」

美希「それにミキ的には……尾行よりも心配なことがあるの」

リューク「? 何だ? それは」

美希「尾行はミキも……そしてきっと春香も……既にそれに気付いている以上は、どうやってもボロは出さないの」

リューク「まあそうだろうな。外でデスノートを使ったり、つけてる奴を殺したりしない限りはまず大丈夫だろう」

美希「うん。だからそれは大した問題じゃなくて……ミキが気になってるのは……夜神月の事なの」

リューク「? 夜神月? 竜崎じゃなくてか?」

美希「うん。竜崎はキラ事件の捜査をしている……まあ正確には『していた』かもしれないけど……でも今日の映画の件からしても、あそこまで“竜崎ルエ”というキャラクターを完璧に演じようとしているところからすると……今も『している』とみてほぼ間違いないと思うの。……彼がL本人かどうかは別にしてもね」

美希「そして夜神月は……その竜崎と『完璧なまでに』会話を合わせている。つまり普通に考えて―――竜崎と夜神月は、グルなの」



379:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/20(日) 21:27:16.35 ID:J78b089C0

リューク「……いや待てよ、ミキ。竜崎が身分を偽って夜神月に接触したっていう可能性もあるんじゃないか? お前やハルカに対してそうしたみたいに。つまり夜神月は何も知らないってことも……」

美希「ううん。それは無いの」

リューク「? 何でだ?」

美希「竜崎がキラ事件の捜査をしているのなら……同じくキラ事件の捜査をしている、夜神月の父親の夜神総一郎とも既に顔見知りだった可能性が高いの」

美希「キラ事件の捜査本部に居たミキのパパと竜崎が顔見知りだったのと同じようにね」

リューク「ああ、確かに」

美希「だとしたら、普通に考えて……既にキラ事件の捜査の関係で知っている人の息子に、わざわざ『キラ事件の捜査をしている』ということを伏せて接触したりすると思う?」

リューク「…………」

美希「もちろん、リュークがさっき言ったように、竜崎からみれば、『既にキラ事件の捜査の関係で知っている人の子ども』っていう、ほとんど夜神月と同じ関係にあたるミキに対してはそうしたわけだけど……でもそれは、ミキをキラとして疑っていたから」

美希「だから竜崎が夜神月もキラとして疑っているなら、ミキに対してしたのと同じように、身分を偽って接触してもおかしくないのかもしれないけど……現状、特に夜神月が疑われる理由は無いはずなの。まあ実際、彼はキラじゃないんだから当たり前なんだけど」

リューク「……じゃあ、何で竜崎は夜神月に接触したんだ? わざわざややこしい嘘の片棒を担がせてまで」

美希「あはっ。リュークったら、もうほとんど自分で答えを言っちゃってるの」

リューク「?」

美希「『わざわざややこしい嘘の片棒を担がせてまで』、竜崎が『既にキラ事件の捜査で知っている』夜神総一郎の息子に接触する理由……そんなの、一つしか考えられないの」

美希「――それはつまり、『夜神月にもキラ事件の捜査に協力してもらう』って事なの」

リューク「! …………」

美希「元々、東大を首席で合格するくらい頭の良い人だし……その上、将来は警察志望。それに何と言っても、既にキラ事件の捜査本部に入っている刑事局長の息子さんなワケだから、素性も確かだしね」

美希「ここまで条件が揃えば、竜崎じゃなくても目を付けるのがフツーなんじゃないかなって思うな」

リューク「……じゃあ夜神月も竜崎と同じく、既にキラ事件の捜査本部に居て……ミキやハルカをキラとして疑っているってわけか」

美希「うん。おそらくね」

リューク「……待てよ。じゃあ夜神月がしているハルカの家庭教師はどうなるんだ? あれもキラ事件の捜査の一環ってことか?」

美希「ううん。あれはやよいと粧裕ちゃん経由で春香の方から頼んだはずだから、偶然の一致だとは思うけど……でも夜神月からしたら、その偶然を利用して春香に探りを入れようとしているのはまず間違い無いと思うの」

美希「だからミキ的には、尾行よりもこっちの方が心配なの。……まあそうは言っても、竜崎の件を言えない以上、夜神月の事も春香には言えないんだけどね」



380:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/20(日) 21:49:38.30 ID:J78b089C0

リューク「……なるほどな。でもそうすると、現状で分かっている範囲では……竜崎、夜神総一郎、夜神月、そしてお前の父親……が、キラ事件の捜査をしている連中、ってことになるのか」

美希「うん。まあパパは今もそうなのか分かんないけどね。あと、夜神総一郎と一緒に事務所に来た模木って人もその中に入るの」

リューク「ああ、そうか。そしてこの中にLがいるのか、または全然別の奴がLなのか……ってことか」

美希「流石にパパがLってことは無いだろうけど……でも、夜神月がLっていう可能性は意外とあるかもね。今リュークに言われて気付いたけど……彼の方が竜崎よりも先に捜査本部に居たっていう可能性も、それはそれで十分にあるの」

リューク「……ククッ。まあ誰がLであろうと、今言った奴らはもう全員顔も名前も分かってるんだ。いっそ皆殺しにしちまったらどうだ? 今ミキをつけている奴だって、既にミキに顔を知られているからこそ隠しているのかもしれないだろ?」

美希「……そうだね」

リューク「えっ」

美希「……なんてね。もしそんなことして、今言った人達の他に、ミキが顔も名前も知らない人が捜査本部に居たら一発アウトなの。だからそんな危険な事するわけないの」

リューク「…………」

美希「? どうしたの? リューク」

リューク「……いや……」

リューク(てっきり『何があっても自分の父親は殺せない』とでも言い出すのかと思ったが……いや、以前のミキなら確実にそう言っていただろうが……)

リューク(今はそこまで現実的な問題として考えていないだけだとしても……しかしいずれ、そう遠くない未来に……)

リューク(父親の命と仲間の命……そのどちらかを選ばざるを得なくなった時……)

リューク(こいつは一体、どういう選択をするのか)

リューク(映画はもう見飽きたが……現実の方の『眠り姫』はまだまだ見応えがありそうだぜ。……ククッ)



381:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/20(日) 22:19:49.57 ID:J78b089C0

(美希と別れた後、家路を歩いている春香)

春香「……どう? レム。今日もいる?」

レム「ああ。いるね。いつもと同じ、帽子にマスク、サングラス……明らかに不審者って出で立ちの男がハルカをつけている。相変わらず、距離はかなり取っているがね」

春香「……そっか。まあ私もキラ容疑者の一人ではあるからね。仕方ないっちゃ仕方ないね」

春香(でも美希は別にしても、それ以外のキラ容疑者って765プロの関係者全員と……後は美希の去年のクラスメイトの人達……だよね)

春香(それだけの人数を相手に毎日尾行を……ってなると、キラ事件の捜査本部って実は相当大所帯なのかな……?)

春香(まあいずれにしても……特に不審な動きをしない限り、私は『その他大勢』に埋もれたままだろうし……そこまで気にすることでもないけど)

レム「なあ、ハルカ」

春香「? 何? レム」

レム「ハルカがLに疑われる理由があるとすれば、前のプロデューサーの件だけ……そんなハルカにまで尾行がついているってことは、当然、ハルカ以上にキラとしての疑いを掛けられているであろうミキにも……」

春香「うん。ついてるだろうね」

レム「……いいのか? そのこと、ミキに教えてやらなくて……」

春香「いいよ。前の監視カメラの設置から四か月以上が経って、美希もようやく普通に日々を過ごせるようになってきてるのに……ここでまた『美希にも尾行がついていると思うから気を付けて』なんて言ったら……また美希を不安にさせちゃうからね」

レム「そうか。それならいいが……いや、待てよ。ミキ自身が気付いていなくても、リュークの方が先に気付いていて、既にミキに伝えているという可能性はあるか……?」

春香「ううん。それは無いよ」

レム「? 何でだ?」

春香「もしそうなっていたら、美希は不安を覚えて必ず私にそのことを伝えに来ているはずだからね」

春香「それが無いということはリュークも気付いていないか……または気付いていても美希にはそれを教えていないってこと」

春香「リュークは前々から『自分は美希の敵でも味方でもない』って言ってたからね。後者の可能性も十分あると思う」

レム「なるほど」

春香「それに美希だって、尾行に気付いていないとしても、外で不用意にノートを出したりなんかするはずが無いしね。結局のところ、こっちが普通に行動している限りはキラとしての証拠なんて掴まれるわけないんだから……わざわざ不安を煽る必要は無いよ」

春香「もうこれ以上、美希を不安にさせたくはないからね」

レム「……分かった。お前がそこまで考えているのなら、私はもう何も言わないよ。ハルカ」

春香「うん。ありがとう。レム」



384:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/20(日) 22:46:49.22 ID:J78b089C0

春香「ん? ……メールだ」

春香「高田さんから? ああ、そういえば『後でメール送ります』とかって言ってたっけ。何々……『今度、お菓子作りを教えてもらえませんか』……?」

レム「そういえば今日話題になっていたな。ハルカの作る菓子のこと」

春香「…………」

春香(高田さん……ライトさんと同じ大学の人……)

春香(そういえばライトさん、今日の別れ際……高田さんに『また明日、講義で』って言ってたな。あの二人、実は結構仲良いのかもしれない)

春香(だとしたら、高田さんからライトさんに探りを入れてもらうよう、それとなく仕向けてみる……?)

春香(ただそうは言っても、私の最終目的はLの正体を掴むこと……そしてその足がかりはライトさんじゃなくてそのお父さんなわけだから、大分遠回りにはなるけど……)

春香(でも正直なところ、今の家庭教師の時間だけじゃ、なかなか私からライトさんに今以上には踏み込めそうにないし……)

春香(……うん。今はLにつながる可能性があるルートは少しでも多く確保しておくべき)

春香(それにLの件は別にしても、アナウンサー志望の高田さんと今のうちに親交を深めておくことは……私自身にとってはもちろん、765プロ全体にとってもプラスになるだろうしね)

春香「……よし。そうと決まれば……『もちろんいいですよ』……っと。送信! えへへっ」

レム「楽しそうだな。ハルカ」

春香「……まあね。もちろん、美希の為にも……『早くLの正体を掴みたい』とは思ってるけど……」

レム「…………」

春香「そのことを別にしても……最近、すごく充実してるんだよね。『眠り姫』が大ヒットなのはもちろん嬉しいし、アリーナライブに向けての合宿ももうすぐだし……」

春香「もうここまで来たら、私達765プロが名実共にトップアイドルになれる日も、そう遠くないんじゃないかなって……そういう実感もあって」

レム「……そうか」

春香「後は……そうだね。やっぱり竜崎さんに出会えたことが大きいかな」

春香「あそこまで真摯に、アイドルとしての私をずっと見てくれていたファンの人がいたんだって思うと……今までアイドルやってきて、本当に良かったなって」

レム「…………」

春香「もちろん、今までにもファンの人と触れ合うイベントは沢山やってきたし、ライブでもいつもすごく盛り上げてもらっているけど……」

春香「やっぱり、ああいう『生の声』っていうか……直に伝わる想いって、素直に嬉しいんだ」

春香「まあ竜崎さんの場合、直球過ぎてちょっと気恥ずかしいけどね」

春香「でも彼のおかげで、私は『アイドルの原点』っていうのを思い出せたような気がするんだ。だからそれもあって……私は今、すごく楽しいの」

レム「……そうか。良かったな。ハルカ」

春香「うん。だから見ててね? レム」

春香「私はこのままアリーナライブまで一気に駆け抜けて……必ずトップアイドルになってみせるから。765プロの皆と一緒に!」

レム「……ああ。頑張れ。ハルカ」

春香「うん!」

春香(見ててね。ジェラス。もうすぐそこまで来てるから)

春香(私が私の使命を果たし……そしてあなたの夢を叶える、その瞬間が!)



385:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/20(日) 23:20:35.01 ID:J78b089C0

【同日夜・キラ対策捜査本部(都内のホテルの一室)】


(他の捜査員の帰宅後、二人だけで捜査本部に残っているLと月)

L「弥海砂から……ですか?」

月「ああ。おそらく今日中か……遅くとも二、三日中には向こうから連絡が来ると思う」

L「すごい自信ですね」

月「こう見えても僕は結構モテるんだよ。竜崎」

L「…………」

月「で、一応確認だが……もしそうなった場合は当初の予定通りに動いて問題無いな?」

L「……そうですね。月くんからならともかく、弥の方からということであれば……その結果、月くんと弥が親密になり、その事実が星井美希に伝わったとしても……月くんが疑われることはまずないと思いますので」

月「分かった。ではそこは問題無いものとして……後は具体的に弥海砂に動いてもらうシチュエーションだが……」

L「それは大丈夫です。私の中ではもうほぼ構想は固まっています」

月「! そうなのか?」

L「はい。相沢さんと松田さんが尾行捜査を頑張ってくれており、またその捜査結果の分析を夜神さん達が詳細に行ってくれているおかげです。ただ……弥海砂に動いてもらう前に、最後の確認を行いたいと思っています」

L「それをいつ、どこで、どうやってするかについて、ずっと考えていたのですが……今日ちょうど、絶好の情報を入手しました」

月「? 今日?」

L「はい。再来週の水曜から四泊五日で行くという……765プロダクションの合宿です」

月「! …………」

L「そしてその合宿地は福井……となると、普通に考えて移動は飛行機……ですよね?」

月「? まああれだけ売れている事務所だし、そうだろうとは思うが……?」

L「では一応、次の家庭教師の時にでも、天海春香にさりげなく確認しておいてもらえませんか」

月「ああ、それは別に構わないが……。しかし何故…… ! 」

L「…………」

月「……なるほど。それで『最後の確認』ってわけか」

L「はい」

月「……分かった。聞いておくよ」

L「ありがとうございます。それが私の思い通りなら……合宿後、すぐにでも計画を実行に移したいと考えています」

月「ああ。そのつもりで心構えをしておくよ」

L「それから、高田清美の方ですが……少し前に月くんからお聞きしていた話を前提にすると……弥海砂と同様、彼女についても……こちらの思い通りに動いてもらえる、と考えていていいんでしょうか?」

月「ああ、それは大丈夫だ。高田も既に僕に好意を持っているし、何よりキラ崇拝者でもある……条件としては十分過ぎる。もっとも、高田と星井美希・天海春香との接点は今のところ例の会合くらいしかないから、あくまでメインは弥海砂とし……高田はそのサブ、という位置付けにはせざるを得ないだろうとは思うが」

L「分かりました。それで十分です。私の構想でも、サブがいた方がより安全に計画を実行できるだろう、という程度ですので」

月「よし。ならそれでいこう。……ん? メールか……」

月「! …………」

L「? どうしましたか? 月くん」

月「……竜崎。どうやら、僕の方が先に『思い通り』になったようだ」

L「! と、いうことは……?」

月「ああ。―――弥海砂から、デートのお誘いだ」



398:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/27(日) 00:05:01.81 ID:imGXCCiu0

【一週間後・都内某駅/改札口前】


海砂「あっ。ライトくん!」

月「海砂さん。どうも」

海砂「ごめんね、急に誘っちゃって」

月「いえ」

海砂「……むー」

月「? どうしたんですか?」

海砂「やっぱりカタいよ! その話し方!」

月「そう言われても……僕の方が年下ですし」

海砂「年下って言っても一コしか違わないじゃん! ね、今日だけ……ううん、これから二人だけのときは『ミサ』って呼んで! あと、丁寧口調もナシで!」

月「え、でも……」

海砂「いいじゃん別に。その方が話しやすいし。ね? いいでしょ?」

月「……分かったよ。ミサ」

海砂「!」

月「でも君だってアイドルなんだ。こんな風に男と親しげに話しているところを誰かに見られでもしたら……」

海砂「いいのいいの! どうせまだミサそんなに売れてないし」

月「……自分で言うか? それ」

海砂「いいのいいの。ちゃんとそのうち売れるようになるから! 前に美希ちゃんからも『海砂ちゃんならすぐ売れるようになる』って言ってもらったし!」

月「まあ、それならいいが……」

海砂「ねっ。それより早くいこっ! ミサ、前から行ってみたいお店があったの」

月「ああ、いいよ」

海砂「あ、それから……」

月「? 何?」

海砂「ミサも、二人だけのときは『ライト』って呼んでもいい?」

月「……どうぞ、ご自由に」

海砂「むー。なんかどうでもよさげー」

月「別にそんなことはないけど」

海砂「フンだ。いいもん。じゃあ勝手に呼んじゃうもーん。ほらいこっ。ライト!」ガシッ

月「わっ。急に引っ張るなよ」

海砂「えへへー」

月「…………」

月(想定以上だな……これなら思ったよりも早く……)

海砂「? どうしたの? ライト」

月「いや、なんでもないよ。早く行こう」

海砂「うんっ!」



399:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/27(日) 00:14:09.32 ID:imGXCCiu0

【同日夜・都内の公園】


海砂「は~、遊んだ~っ」

月「はは、お疲れさま。はい。ジュース」

海砂「あっ。ありがとう! ちょっと待ってね。お金……」

月「いいよ、これくらい」

海砂「……えへへ。ごめんね、ありがとう。いただきます」

月「こちらこそ、今日はありがとう。ショッピングに水族館にカラオケ……なんかあべこべな取り合わせだったけど楽しかったよ」

海砂「えへへ……ごめんね。ミサが行きたいとこばっか連れ回しちゃって」

月「いや、おかげですごく楽しかったよ。是非また行こう」

海砂「! ほ、ホント?」

月「ああ」

海砂「そ、それって……『また二人で』ってコト……だよね?」

月「うん。もちろん」

海砂「…………」

月「? ミサ?」

海砂(また二人で会ってもいいってコトは……それって、つまり……)

海砂(……よし。こういうのはタイミングが勝負! 本当はもう後一、二回デートしてからって思ってたけど……)

海砂(ダメ。もう抑えられない。この気持ち……)

海砂「……ライト」

月「?」

海砂「……もし、ライトがよかったら、なんだけど……」

月「…………」

海砂「彼女にしてください」

月「! …………」

海砂「…………」



400:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/27(日) 00:29:45.34 ID:imGXCCiu0

月「……ああ。いいよ」

海砂「! ホント?」

月「うん。僕も今日一日、君と過ごしてすごく楽しかったしね。こちらこそよろしくお願いします」

海砂「……ライト!」ギュッ

(月に抱きつく海砂)

月「わっ。おい」

海砂「えへへ……嬉しい! ありがとう。ライト……」

月「ったく……もしこんな所、誰かに見られでもしたら……って、『まだ売れてないからいい』って言ってたな……自分で」

海砂「えへへ、そういうこと! でもホント、まだ売れてなくてよかったぁ……もしミサが美希ちゃんや春香ちゃん達くらい売れちゃってたら、外でこんなこと絶対できないし……」

月「…………」

海砂「だからミサが、それくらい売れるようになるまでは、こうやって外でも思いっきりライトとイチャイチャしたいな~。なんちゃって。えへへ……」

月「…………」

海砂「? ライト?」

月「ミサ。ちょっと聞いてくれ」

海砂「? 何?」

月「僕も君とこうしていたいのはやまやまなんだが……実は少し事情があって……次にこういう風に君と会えるのは少し先になりそうなんだ」

海砂「え? 少しって……どれくらい?」

月「今からだと……そうだな。二週間後くらいかな」

海砂「えーっ! 付き合ったばかりなのに二週間も会えないの? しかも事情って何? はっ。まさか……」

海砂「……今既に付き合ってる彼女がいるから、その彼女と縁を切るための時間が要るとか……?」

月「違うよ」

海砂「じゃあ何? 事情って……」

月「それも二週間後にはちゃんと全部話すから」

海砂「むぅ……わかった……」

月「それと次に会う時まで、僕と付き合っていることは絶対に誰にも言わないでくれ。絶対にだ」

海砂「え? な……なんで?」

月「なんでもだ。これについても、理由は次に会った時にちゃんと話すから。……頼む」

海砂「……わかった。なんでかわかんないけど、ライトがそこまで言うなら……そうする」

月「ごめんね。あともし、どうしても僕に会いたくなった時は電話してくれ。会えるようになるかは分からないが、努力はするから」

海砂「……うん」

月「だから間違っても、いきなり僕の大学に来たりするのだけはやめてくれ。いくらまだそこまで売れていないとはいっても、前の学祭のライブの影響で、少なくとも東応大学内ではミサの知名度はかなり上がっている。突然来て騒ぎになるとまずいし、君の事務所にも迷惑が掛かる」

海砂「うん。わかった。ありがとう。ライト。そんなことまで心配してくれて……」

月「いや、いいよ。これくらい、彼氏として当然の事さ」

月(……これで突然大学に来たりすることはないだろう。今、ミサと二人でいる所を高田に見られたりしたら面倒な事になるからな……)



401:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/27(日) 00:41:39.60 ID:imGXCCiu0

月「よし。じゃあ今日はこのへんで……」

海砂「え!? 何? まだ七時じゃない。恋人の時間はこれからでしょ?」

海砂「二週間も会えないっていうなら、せめて今日くらいは……二人でゴハン食べに行ったりとかして、その後がいよいよ本番って感じで……」

月「…………」

月(正直、あまりこういう手は使いたくなかったが……仕方ない)

月「ミサ」

海砂「ん? …………ッ!?」

(海砂にキスする月)

月「…………」スッ

海砂「ライト……」

月「いいな。今日は帰るんだ」

海砂「はい……」

月「さっきも言ったが、どうしても僕に会いたくなった時は必ず事前に連絡するように。いいね」

海砂「はい……」

月「じゃあ帰ろう。駅まで送って行くよ」

海砂「はい……ありがとう……ライト」

月「…………」

月(これでもうミサはいつでも動かせる……。後は高田……だが、こっちは『確認』ができてからだな。今下手に動き過ぎるのは危ない)

月(大丈夫だ。全て予定通りに……事は進んでいる)



402:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/27(日) 00:54:51.50 ID:imGXCCiu0

【一時間後・キラ対策捜査本部(都内のホテルの一室)】


L「! 月くん。お疲れ様です」

月「ああ。お疲れ様。他の皆は?」

L「私以外の方は皆帰宅されました」

月「そうか。なら都合が良い」

L「! ということは……」

月「ああ。今日、弥海砂と付き合うことになった」

L「! ……ということは……随分早かったんですね」

月「ああ、向こうから告白してきたからな」

L「いえ、そういう意味ではなく……せっかく恋人同士になったのに、随分早く解散されたんですね、と」

月「……彼女と付き合うことにしたのは、あくまでもキラ事件の捜査の為だ。その為に必要なことであればするが、必要でないことはしない」

月「今必要なのは、ミサをこちらの思い通りに動かせるようにしておくこと……そのためには僕に心底惚れさせておけば十分だ。過度に好意を示して期待をさせるのは彼女を傷付けるだけだし、何より人道に反する」

L「流石月くん。お父さん譲りの正義感ですね」

月「……それよりも竜崎。具体的にミサに動いてもらう方法についてだが……この前、『もうほぼ構想は固まっている』と言っていたな」

L「? はい」

月「それでその後、僕なりに……『おそらく竜崎はこう考えているのではないか』というレベルまで考えてみたんだが……今、それを聞いてもらってもいいか?」

L「ええ。もちろんです。ではまず月くんの考えをお聞きし、その後で答え合わせをしましょう」

月「ありがとう。では、僕の考えとしては――……」



404:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/27(日) 01:06:38.20 ID:imGXCCiu0

月「――……というのが、僕の考えだ」

L「…………」

月「どうかな? 当たらずといえども遠からず、といったところだろうとは思うが……」

L「……月くん」

月「ああ」

L「素晴らしいです」

月「! ……ということは」

L「はい。答え合わせをするまでもありません。私の構想と完全に一致……百点満点です」

月「そうか。なら良かった。では後はこれを明日、父や他の皆にも説明して了承を得る……という流れだな」

L「そうですね。具体的に動き出すのは765プロダクションの合宿後になるでしょうが……その為の準備や根回しの段取りについては、もうすぐにでも始めておいた方が良いでしょう」

月「ああ」

L「……それにしても」

月「ん?」

L「まだほとんど具体的な話をしていなかったにもかかわらず、私と完全に同じ発想をしていたなんて……」

L「これなら、もし私が死んでも……月くんがLの名を継いでいけるかもしれません」

月「何も縁起でもないことを。まずは明日、今話した内容について父達の了承を得……その後、必要となる準備を進めつつ、765プロの合宿の際に『確認』……そして『計画』の実行。……ここからが勝負だろ」

L「……はい。そうですね。頑張りましょう」



966: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/06(土) 14:23:28.29 ID:jizsduFN0

月「――……というのが、僕の考えだ」

L「…………」

月「どうかな? 当たらずといえども遠からず、といったところだろうとは思うが……」

L「……月くん」

月「ああ」

L「素晴らしいです」

月「! ……ということは」

L「はい。答え合わせをするまでもありません。私の構想と完全に一致……百点満点です」

月「そうか。なら良かった。では後はこれを明日、父や他の皆にも説明して了承を得る……という流れだな」

L「そうですね。具体的に動き出すのは765プロダクションの合宿後になるでしょうが……その為の準備や根回しの段取りについては、もうすぐにでも始めておいた方が良いでしょう」

月「ああ」

L「……それにしても」

月「ん?」

L「まだほとんど具体的な話をしていなかったにもかかわらず、私と完全に同じ発想をしていたなんて……」

L「これなら、もし私が死んでも……月くんがLの名を継いでいけるかもしれません」

月「何を縁起でもない事を。まずは明日、今話した内容について父達の了承を得……その後、必要となる準備を進めつつ、765プロの合宿の際に『確認』……そして『計画』の実行。……ここからが勝負だろ」

L「……はい。そうですね。頑張りましょう」



417:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 03:26:10.24 ID:/kKmakxG0

【翌日・キラ対策捜査本部(都内のホテルの一室)】


L「……というのが、今後の捜査方針になります。何か質問のある方はいますか?」

総一郎「竜崎」

L「はい。どうぞ。夜神さん」

総一郎「確かに以前、ここで、危険を承知でライトが弥海砂に接近するということを了承したが……しかし、この案はあまりに……」

月「父さん」

L「夜神さんのお気持ちはよく分かります。しかし、最終的に弥海砂に動いてもらうためにはこれ以上の案は無いと思います」

総一郎「うむ……それは理解できるが……」

月「父さん。この程度は想定されたリスクの範囲内とみるべきだ。それに今の状況のまま大人しくしていても、僕達が殺される危険性が減るわけではない」

総一郎「……しかし、百歩譲って弥の方はまだ良いとしても、もう一人……お前の同級生の、高田清美……という女性に対しても、同様の作戦を取るというのは……」

月「それも大丈夫だ。高田もミサ同様、僕の言うことなら絶対に信じる」

総一郎「…………」

松田「さ、流石月くん。すごい自信っすね……」

相沢「まあいずれの女性も、出会ってからほとんど間も無いうちに月くんに告白してきたということだ……二人とも相当月くんに惚れ込んでいるというのはまず間違い無いだろう」

L「はい。そういう意味では、現在、弥海砂と高田清美の二人は我々にとって最も信用できる存在といえます。この二人は何があっても月くんを裏切ることは無いでしょう」

総一郎「…………」

月「頼む。父さん。僕達捜査本部のメンバーが誰一人欠けることなくキラ事件を終結させるためだ」

総一郎「……分かった。今まで何度こういうやりとりをしてきたか分からんが……もうここまできてしまっていることでもある。やむを得んだろう」

月「父さん」

L「夜神さん。ありがとうございます」



419:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 03:48:40.18 ID:/kKmakxG0

L「……ただ、これはあくまでも765プロダクションの合宿の際に『確認』がこちらの思惑通りにできた場合の話ですので……まずはこちらの準備から進めましょう」

松田「えっと……とりあえず、765プロの皆が飛行機で福井まで行く、っていうのは間違い無いんですよね?」

L「はい。一昨日の家庭教師の際に、月くんが天海春香に確認してくれたとおりです。もちろん、当日は念の為に……これまで同様、相沢さんと松田さんには星井美希と天海春香の両名を尾行してもらいますが」

相沢「だがそれも空港の……765プロ一行が飛行機に搭乗するまでで良いんだな?」

L「はい。これも月くんが天海春香から聞き出してくれた情報ですが……765プロダクションの合宿地はかなり僻地のようですので、そんな所まで尾行を続けたら流石に気付かれる可能性が高いと思います」

L「また、そもそもこの合宿の際の我々の目的は『確認』ですので、空港までの尾行で十分です」

L「そして765プロダクション一行が飛行機に搭乗した後、速やかに警察から空港に連絡を入れてもらいます。その手筈は夜神さんに一任させて頂きたいと思いますが、よろしいでしょうか」

総一郎「ああ。大丈夫だ。空港には事前に話を通しておき、当日は速やかに対応してもらえるようにしておく」 

L「ありがとうございます。そして『確認』の結果、我々の思惑通りなら……すぐに次の対応に入ります」

L「対象期間は765プロダクション一行が合宿に行っている間……来週の水曜から日曜までの五日間。そして星井美希および天海春香に怪しまれることのないよう、対象とする犯罪者の数は一日一人程度……合計四、五人くらいでいいでしょう」

L「これも各報道機関には事前に話を通しておき、対象期間中に滞りなく対応してもらうようにしておく必要があります。この準備については星井さんと模木さんでお願いします」

星井父「……ああ」

模木「分かりました」

L「そしてまた合宿最終日にも、初日と同様の『確認』を行いますので……その際は、相沢さんと松田さんには福井の空港に先回りしてもらうことになります」

相沢「ああ。分かった」

松田「任せて下さい」

L「そして二回目の『確認』の結果も我々の思惑通りであれば、いよいよ『計画』を実行に移します」

L「まずはその第一段階として、月くんから弥海砂と高田清美の両名に対し、先ほど説明した作戦を遂行してもらいます。勿論、私もサポートします。月くん、よろしくお願いします」

月「ああ。任せてくれ」

L「その後も、特に大きな支障が無い限りは予定通りに『計画』を進めていきます」

L「ただ、これはあくまで現状から立案したものに過ぎませんので……状況が動き次第、随時変更していくことは当然あり得ます。その際は、都度速やかに連絡します」



420:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 04:12:34.85 ID:/kKmakxG0

L「そして……星井さん」

星井父「ああ」

L「星井美希……美希さんが、アイドル活動で長期の合宿に行くのはこれが初めてですね?」

星井父「そうだな。仕事のロケでも、一週間近く家を空けることは今まで無かった」

L「では、あくまでも娘を気遣う父親として……毎日、夜にメールを送って下さい。またその送信時刻は日によって適当にばらけさせてください」

星井父「? 別にいいが……何のためにだ?」

L「……これまで裁かれた犯罪者は、ほとんど例外無く、報道された日の夜10時までには裁かれています。そして美希さんも、ほぼ毎日、夜10時までには就寝している……そうでしたよね?」

星井父「! ああ……少なくとも、美希が夜10時以降にリビングなどをうろついていることはほとんどない。流石にいつ寝ているかまでの確認はしていないが……」

L「ただ合宿となると、普段と違う生活リズムとなり、就寝時刻がずれる可能性は十分にあります。普段より早くなるかもしれないし、遅くなるかもしれない」

L「そしてもし合宿中の美希さんの就寝時刻がずれた場合に、それと裁きの時刻との間に矛盾が生じなければ……」

星井父「! ……そういうことか」

L「はい。もちろん、メールが返ってこなかったからといって寝ているとは限りませんし、また返ってきたとしても起きていたとは限りません。寝ているところをそのメールで起こされた、ということもあるでしょうから。これはあくまでも念の為です」

星井父「……分かった。ただ前者はともかく、後者の可能性は無いな。美希は一度寝入ったら余程のことが無い限り朝まで起きることは無い」

L「そうですか」

L(もっとも、『キラは死の時間をも操ることができる』という可能性がある以上、これだけで何かが決まるというものでもないが……)

L(しかしこれまでずっと固定されていた裁きの時間帯が、たまたまこの『765プロダクションの合宿期間中』というタイミングに限ってズレたりするようなことがあれば……それは十分、星井美希に対する嫌疑をより強める事情といえるだろう)

L「では、皆さん。これまでの捜査を引き続き行うのと並行して……まずは来週の水曜日、765プロダクションの合宿の初日……この日までに各自、必要な準備を進めておいて下さい」

L「これは、遂に我々がキラの活動に関する物的証拠を押さえることとなるかもしれない、その捜査の端緒です。くれぐれも慎重に、かつ確実に遂行しましょう」

一同「はい!」

星井父「…………」



421:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 04:20:34.34 ID:/kKmakxG0

【三日後・都内某カフェ】


海砂「ごめんね美希ちゃん。急に呼び出しちゃって」

美希「ううん全然。ミキも久しぶりに海砂ちゃんとお茶できて嬉しいの」

海砂「最近は『竜ユカ』でしか会ってなかったもんね」

美希「う、うん。そうだね。(『竜ユカ』……『竜崎と愉快な仲間達』の略か……流石海砂ちゃん。すごいセンスなの)」

海砂「でね。今日呼び出したのは、もちろん久々に美希ちゃんと二人きりで話したいなっていうのもあったんだけど……」

美希「?」

海砂「実はね、ミサ……美希ちゃんにお礼が言いたかったの」

美希「お礼? ミキ、海砂ちゃんに何かしたっけ?」

海砂「うん。具体的にはまだ言えないんだけど……実は最近、すごくいいことがあってね」

美希「ふーん?」

海砂「それに、そのことだけじゃなくて、それ以外にも……ここ一年くらいの間に、私の周りでいろんな出来事があったんだ」

海砂「そしてそのどれもが、私にとっては、人生のターニングポイント? っていうか……とにかく、すごく大切な、意味のあることばかりで」

美希「…………」

海砂「それもこれも……振り返れば、全部美希ちゃんのお陰だなって思って」

美希「? どういうことなの?」

海砂「……実は、ミサが最初に憧れたアイドルは、美希ちゃんだったんだ」

美希「え?」

海砂「一年前の、765プロファーストライブの日……あの会場に、私もいたんだよ」

美希「!」











【同時刻・春香の自宅】


 ピンポーン

春香「はーい」

 ガチャッ

清美「こんにちは。天海さん」

春香「こんにちは! 高田さん」


美希「デスノート」【その4】



元スレ
美希「デスノート」 2冊目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443343964/
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