葉隠「強くてニューゲーム……って、俺がだべ!?」【後半】
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葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠(……そして俺はそれを聞いてからずっと自室に籠っていた)
葉隠(叶うことなら、モノクマの報告すら聞くのも嫌だった)
葉隠(今は何もしたくない)
葉隠(だって……俺が動いたせいでみんなは死んでいったのだから…………)
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
葉隠「………………」
ピンポーン
ピンポーン
葉隠「………………」
ピンポーン
葉隠「………………」
ピンポーン
葉隠「………………」
ピンポーン
葉隠「………………」
ピンポーン
葉隠「………………」
ピンポーン
葉隠「………………」
ピンポーン
葉隠「………………」
ピンポーン
ピンポーン
葉隠(何もしたくなかったけど……さすがに我慢が出来ない)
ピンポーン
葉隠(……一体誰だべ……?)
ピンポーン
葉隠「………………」
ピンポーン
葉隠「………………」
ピンポーン
葉隠「…………しょうがない」
ピンポーン
葉隠「……おっと」
葉隠(ずっと座るか寝るかの生活で立ち上がった瞬間よろめいてしまった)
葉隠(ノロノロと扉のところまで向かい開ける)
葉隠(するとそこには)
霧切「……ようやく開けたわね。全く、葉隠君の癖にここまで手間をかけさせるなんて生意気よ」
葉隠「……霧切っち?」
霧切「あなたに見せたいものがあるの。黙ってついてきて」
葉隠(霧切っちらしい、本題を告げない端的な言葉)
葉隠(いらいらしている雰囲気も相まって、いつもなら慌てて頷いていたところだが……)
葉隠「…………嫌だべ」
霧切「どうしてかしら?」
葉隠「……もう俺は何もしないって決めたんだべ」
霧切「………………」
葉隠「俺が頑張る度に物事は悪い方向に進む……それならもう何もしない方がいいんだべ」
霧切「石丸君と大和田君のことが堪えているのね」
葉隠「………………」
霧切「それは分かるし、あなたがそう思うのも勝手だけど……それは傲慢よ」
葉隠「傲慢……?」
葉隠(そう思ったけど、口にするのも面倒になって来た)
葉隠「………………」
霧切「………………」
葉隠「………………」
霧切「……分かったわ。本当に少しだけ付き合って」
霧切「さっきも言った通り見せたいものがあるの。それを見て尚、何もしないって言うなら私も諦めるわ」
霧切「だから……お願い」ペコリ
葉隠「…………!」
葉隠(霧切っちが頭を下げた)
葉隠(その珍しい姿に霧切っちの本気を感じて……)
葉隠「……少しだけだべ」
葉隠(俺はその申し出を了承するのだった)
葉隠(連れて来られたのは脱衣場だった)
葉隠(ここに連れて来られた時点で、前周回の出来事から何となく想像できていたが、そこには現在生き残っている者全員が揃っていた)
朝日奈「不二咲ちゃんも連れてきたよ」
不二咲「………………」
葉隠(俺と同じように絶望に侵されている不二咲っちもいる)
苗木「みんな呼び出して、霧切さんは何の話をするつもりなのかな? 楽しみだよ」
葉隠(狛枝化が進んだ苗木っちもいる)
霧切「今日集めたのはある物を披露するためよ」
葉隠(……これも一緒に想像できていた)
霧切「というのも……」
葉隠(予想通り、霧切っちはロッカーからノートパソコンを取り出す)
十神「図書室にあったノートパソコンか」
霧切「そうね。……そしてこの中に不二咲さんが作ってくれたのが――」
不二咲『あれ、今日はたくさんいるねご主人タマ』
霧切「アルターエゴよ」
葉隠(作った本人である不二咲っちが説明しないのは絶望中だから)
葉隠(霧切っちは先にアルターエゴのことを不二咲っちから聞き出して、色々と仕様を把握したらしい)
葉隠(記憶にあるのと同じ説明。……いつもなら驚く演技をしないといけないところだったが)
葉隠(絶望中の今は演技をする必要もないし、する気も起きない)
葉隠「………………」
葉隠(霧切っちはこれを俺に見せて何をしたかったんだろうか?)
霧切「それでこれからが本番なのだけど……お願いできる?」カタカタ
葉隠(霧切っちがノートパソコンを操作してアルターエゴに指令を出す)
不二咲『あ、うん。分かったよ。切り替わるね』
霧切「……葉隠君、ノートパソコンの前に」
葉隠「………………?」
葉隠(霧切っちに呼ばれるままにノートパソコンの前に立つ)
葉隠(それと同時に、ノートパソコンに映っていた不二咲っちの顔が消えて――)
大和田『おう、しけた面してんな、葉隠』
葉隠「っ………………!?」
葉隠(前周回で石丸っちを石田っちに変えたそれが……今ここで……?)
大和田『それにしても聞いたぜ。現実の俺が殺されたんだってな』
葉隠「っ……!!」
大和田『詳しい状況もそっちの女に聞いた』
葉隠(そっちの女……たぶん霧切っちのことだろう)
葉隠「……すまなかった」
葉隠(霧切っちがここに連れてきた理由が分かった)
葉隠(俺に懺悔の機会を与えたかったのだろう。それで少しでも心が軽くなればと……)
葉隠「俺の……俺のせいで大和田っちは……石丸っちは……」
大和田『ああん……何言ってるんだ?』
大和田『まさかお前……モノクマの言い分を信じてるんじゃないだろうな?』
葉隠「だって……二人が死んだのは俺の……」
大和田『……ったく。馬鹿だな、おまえは』
葉隠「……大和田っちに言われたくないべ。自分が死にかけだと誤解した……」
大和田『それだよ、それ。まさか俺が自分が死ぬか死なないかの判断さえ、できないなんて思ってないだろうな?』
葉隠「……どういうことだべ?」
大和田『ケンカ慣れしている俺が、自分の体のダメージを把握できないわけないだろ』
葉隠「……だったら」
大和田『理由か。それは言い分通りだ。……俺じゃこのコロシアイ学園生活を生き残れない。だから兄弟に卒業してもらって外の世界で頑張ってほしいってな』
葉隠「それは……自分の命が無くなりそうだったから。このままじゃクロになる石丸っちに無駄に死んで欲しくなかったからじゃ………」
大和田『んなわけねーだろ。大体、本当に死にかけで兄弟を生き残らせたければ俺は自殺していた。それくらいの覚悟はあるぞ』
大和田『つーわけで、俺は自ら死ぬことを選んだんだ。そこにおまえの行為は何ら絡んでねえ』
葉隠「でも……それでも!」
葉隠「俺があんなところにダンベルを置いてなければ……!」
石丸『それは違うぞ!』
葉隠「……!? 石丸っち!」
葉隠(画面に映されている顔が切り替わった)
石丸『ダンベルを食らいそうになったのは……あれは自分が不注意だっただけだ』
葉隠「けど、不安定な場所に置いたのは俺だべ!」
石丸『……それはそうだな。だけど、床に置いていたって僕が足を引っ掛けて転んだ可能性はあった。……つまり、どこに置いていても事故になる可能性はあったんだ』
石丸『それに僕はダンベルに気を付けることだってできたはずなんだ。だからやっぱり……僕の不注意なんだよ』
葉隠「でも石丸っちは俺のせいで……」
石丸『死んだって言うのか?』
葉隠「………………」
石丸『それは傲慢な考え方だぞ』
葉隠「……え?」
大和田『そこまで俺たちのことを気にかけてくれたのは嬉しいが』
石丸『それを自分のせいだとは思わないでほしい』
大和田『俺は自分で死ぬことを選んだんだし』
石丸『僕は自分で兄弟を殺して卒業することを決めたんだ』
大和田『だから、おまえが自分のせいだって言うのは、俺たちの意志を汚した傲慢な考え方だ』
葉隠「それは……」
大和田『俺たちの意志を尊重するなら気に病むな』
石丸『それでも君の気が晴れないというのなら……この事態を作った、モノクマを倒して欲しい』
大和田『ああ、そうだな。それが一番俺たちの手向けになる』
葉隠「二人とも…………」
朝日奈「おお、葉隠が……!」
大神「ようやく戻ったか」
山田「良かったですぞ」
セレス「あらあら、意外と立ち直りが早かったですね」
腐川「ま、まあ、良かったんじゃないの」
十神「…………フンッ」
霧切(モノクマが石丸君のおしおきをした後に、あの事実を話したのはこうなることが分かっていたから)
霧切(石丸君じゃ絶望しないだろう、と葉隠君を標的にしていたのね)
霧切(……アルターエゴがあって良かったわ)
霧切(これで葉隠君は完全復活……)
霧切「次は…………」
葉隠「……俺は二人の分までモノクマを――」
苗木「でもさあ」
苗木「その言葉を信じていいのかな?」
大神「……どういうことだ?」
苗木「みんなはさあ、今の二人の言葉をまるで死人が蘇って話しているように扱っているけど」
苗木「でもこれってアルターエゴによる模倣だよね?」
苗木「確かに不二咲さんが作ったアルターエゴはすごいけどさ」
苗木「それと本物は別だよね?」
霧切「っ……苗木君。あなた……!」
苗木「焦ってるね、霧切さん」
苗木「霧切さんも分かっていてアルターエゴを使ったんでしょ?」
苗木「これで本当に解決したわけじゃないけど、とりあえず葉隠君を立ち直らせたいがために目をつむった」
苗木「そういうことでしょ?」
霧切「…………くっ!」
苗木「関係あるんだよね、それが」
苗木「だってこれで死人の気持ちを確かめたつもりになっているけどさ」
苗木「本当は石丸君はダンベルをあんなところに置いた葉隠君を恨んでいるかもしれないよ?」
苗木「大和田君だって、きっかけをつくった葉隠君を憎んでいるかもしれない」
苗木「そしてそれを確かめる機会は永遠に来ない……」
苗木「死っていうのはそういう恐ろしい物なんだよ」
セレス「……苗木君、あなたは何が目的なのですか?」
セレス「希望のためといいながら、こうやって絶望に落とす」
セレス「矛盾しているのではないですか?」
苗木「違うよ、これも真なる希望の為さ」
苗木「葉隠君にはちゃんとこの絶望と向かい合って欲しいんだよ」
苗木「簡単な方法で乗り越えて欲しくないんだ」
苗木「それに打ち勝ってこそ本当の希望に近づくって信じているからね」
十神「……やっぱり、おまえは落ち込んでいるよりそうしている方が面白いぞ」
苗木「あはっ、お褒めに預かり光栄だよ」
苗木「分かったかな?」
葉隠「……ああ、そうだべ」
霧切「葉隠君!? 苗木君の言葉を真に受ける必要は……!」
葉隠「大丈夫だべ、霧切っち。俺は分かったんだべ」
霧切「え……?」
苗木「何が分かったのかな? 二人の本当の気持ちが一生分からないことかな?」
苗木「自分のしでかしたことの大きさかな?」
苗木「それとも……」
葉隠「俺が分かったのは……苗木っちが俺のことを全く理解していないってことだべ」
葉隠「俺は……本来自分のことさえ良ければいいっていうクズなんだべ」
葉隠(最近はコロシアイを止めようと頑張っていたから忘れていたその本質)
葉隠「だから本当の石丸っちと大和田っちがどういう風に思っていようと」
葉隠「アルターエゴが言っていたことが本当だと勝手に決めつけることができる……」
葉隠「だってそれが自分にとって一番都合がいいからな!!」
朝日奈(クズだ)
セレス(クズですね)
大神(葉隠……)
山田(ここまで開き直るといっそ清々しいですな)
葉隠「だから俺はもう二人のことで思い悩まずに、前だけを見て進むべ!」
苗木「そう……これも一つの希望のあり方なのかな?」
苗木「本当にそう思い込めてるなら……だけど」
葉隠「……何が言いたいんだべ?」
苗木「いやいや、何でもないんだ。……じゃあ葉隠君は立ち直ったということだね」
苗木「そうだけど……霧切さんも残念だったね。君の思惑通り進まなくて」
霧切「……? 何を言っているの? 葉隠君がもう一度絶望しなかったのはあなたの目論見が外れたってことでしょう?」
苗木「それはそうだけどさ……霧切さんはアルターエゴを使ってもう一人救おうって思ってたよね。さっき『次は……』って呟いてたことだし」
霧切「それは…………」
苗木「今まさにその目論見は外れようとしているよ?」
霧切「っ……!」
葉隠(慌てて振り返る霧切っち)
葉隠(それにつられて俺たちもその方向を見る)
葉隠(そこにはさっきからの会話に参加せずにノートパソコンと向き合っていた――)
大和田『だから、おまえも気にすんな。不二咲』
不二咲「………………」
葉隠(不二咲っちがいた)
葉隠(不二咲っちの方の理由は、強さの象徴であった大和田っちが無残に殺されたから)
葉隠(加えてそれを見て何も出来ずに逃げてしまった自分の弱さに辟易してだ)
葉隠(大和田っちの言葉で治ってくれればいいが……)
不二咲「うん……うん……やっぱり大和田君はそう言ってくれるんだね」
大和田『当たり前だろ』
不二咲「さすがだね……僕のプログラムした通りだ」
葉隠「…………」
葉隠(雲行きが……)
不二咲「大和田君ならこう言うだろうってインプットした通り……」
不二咲「けど……僕は本当に大和田君のことを理解できていたのかな?」
不二咲「大和田君が強いって信じて……隠していた弱さに気付けなかったのに……」
不二咲「そんな僕が作ったものが……本物の大和田君にどれだけ届いているんだろうね……?」
葉隠「不二咲っち……」
不二咲「あ、ごめんね。葉隠君のことを悪く言うつもりは無いんだ」
不二咲「僕の作った大和田君と石丸君を信じてくれて嬉しいよ」
不二咲「だけど……やっぱり僕は信じられないんだ」
不二咲「どうしても自分が作ったもの、っていうイメージから離れられないから……」
不二咲「………………」
朝日奈「不二咲ちゃん……」
セレス「そうですか……」
大神「そこまで思い詰めなくても……と言っても無駄なのであろうな」
山田「不二咲殿……」
苗木「不二咲さんはそういう結論を選んだか」
苗木「……いいね、いいよ!」
苗木「そうやって悩んだ先に本当の希望はあるんだ!」
葉隠(みんなの落ち込んだ様子)
葉隠(それと対照的な苗木っち)
葉隠(そういう結末を持ってその場は解散した)
葉隠(不二咲っちが立ち直らないまま数日が経った)
葉隠(色々話をしたりと解決を目指していた俺だが、効果は得られなかった)
葉隠(しかし……だからといってコロシアイ学園生活は待ってくれない)
モノクマ「先生は君たちがどうして殺人を犯さないのか考えました……」
モノクマ「そしたら……やっぱり動機が必要なんだって気づいたんだよ」
朝日奈「また動機なの……」
大神「今度は何を……」
モノクマ「今回は人が殺人を犯す理由でもポピュラーな……」
モノクマ「お金です!」
モノクマがそう言うと、札束が壇上に出現する。
モノクマ「百・億・円----!!」
モノクマ「卒業した生徒にはこれを上げたいと思います!!」
葉隠(第三の動機の発表……今回の要注意人物は……)
セレス「………………」
葉隠(セレスっち……!!)
C H A P T E R 3
欲 望 迷 宮
(非)日常編
<葉隠自室>
葉隠(第三の動機……百億円)
葉隠(前周回では夢のためにセレスっちが石丸っちと山田っちを殺した)
葉隠(……しかし、石丸っちが既に死んでいる以上同じ展開になることは無い)
葉隠(加えて苗木っちの狛枝化だったり、生き残った不二咲っちとイレギュラーはたくさんあるけど……)
葉隠(やっぱり一番のクロ候補は変わらずセレスっちで変わらないべ)
葉隠(セレスっちの犯行方法は……)
葉隠(山田っちと共犯で石丸っちを殺し、死んだふりだとか散々利用した後山田っちを殺す)
葉隠(そして俺に罪を擦り付けて卒業を計ったんだべ)
葉隠(今回も殺す人間を変えて――例えば不二咲っちとかに――そして同じ方法を取るとしたら)
葉隠(俺が呼び出しに応じなければいい)
葉隠(それで俺に罪を擦り付ける方法は破綻する)
葉隠「……何だべ。今回の犯行を防ぐの楽勝だべ!」
葉隠(――なんて、少し前までの俺なら思っていただろう)
葉隠(そもそも自分で気づいていたじゃないか)
葉隠(既に前周回との違いが多すぎる……と)
葉隠(そんな状況で同じ犯行に及ぶ可能性は……あまり考えない方がいいだろう)
葉隠(前周回の記憶はほとんど当てにならない)
葉隠(けど、前周回の知識は当てになる)
葉隠(未だにこの生活に順応すればいい、と言うセレスっちが一番卒業したいことを知っているのは俺だけ)
葉隠(セレスっちに警戒できるのは俺だけだべ)
葉隠(そうやって臨機応変に立ち回って、今回こそ殺人を防ぐ)
葉隠「………………」
葉隠「今回こそ…………」
葉隠(……苗木っちには見破られてたな)
葉隠(本当は俺は立ち直れていない)
葉隠(今だって、石丸っちや大和田っちが俺を恨んでいるんじゃないかって恐れている)
葉隠(みんなに心配されないようにあそこでは道化を振る舞ったけど……)
葉隠「………………」
葉隠(それに俺が動くことでまた事態が悪化するのではないかと……その危惧は消えない……)
葉隠(それでも俺は……みんなを救いたいんだべ)
葉隠(この俺が二周目なんてのを体験しているのは、そのためだって思っているんだから………………)
葉隠「………………」
葉隠「今日はもう寝るべ」
葉隠(この日からは不二咲っちを立ち直らせるために頑張りつつ、セレスっちを警戒する日々が始まった)
葉隠(その合間に、三階が解放されたときに見つけた奇妙な写真の話も聞いた)
葉隠(死んだはずの石丸っちと大和田っちと桑田っちが窓に鉄板の無い教室で仲好さそうに映っている写真……)
葉隠(前周回と死んだ人物が違うのに合わせてか、写真も不二咲っちと石丸っちが入れ替わっている)
葉隠(……これもモノクマによる疑心暗鬼の種のばらまきだろう)
葉隠(真実を知っている俺には全く効かない)
葉隠(本当はみんなに解説して心配するなと言いたいところだが、そしたら何故知っているのかという話になるのは分かっていたので止めた)
山田「初めてなんですよ、こんなに優しくしてもらえたのは」
葉隠(山田っちは今周回もアルターエゴにハマったようだ)
葉隠(脱衣場に頻繁に出入りしたことで、霧切っちに注意を受けていた)
不二咲「葉隠君、いつもありがとね。……だけど、僕は……」
葉隠(肝心の不二咲っちは回復の兆しを見せない)
葉隠(どうしても自分が弱いという思いから逃れられないようだ)
セレス「早くロイヤルミルクティーを持ってきなさい、このブタが!」
山田「ひ、ひいっ……!!」
葉隠(セレスっちはいつもと変わりなく過ごしているように見える)
葉隠(……けど、前周回もそんな様子を見せることなく殺人を実行したからやっぱりまだ警戒は必要だ)
葉隠(そして……少し予想外な出来事が起きた)
葉隠「アルターエゴが無くなっている……?」
霧切「ええ、そうよ」
朝日奈「どうせ山田でしょ! だってあんなにアルターエゴのことを気に入ってたんだし!」
山田「気に入っていた……なんて軽い気持ちでは無いですぞ!!」
山田「ボクはアルタンのことを愛しているのです!」
腐川「き、きもいのよ……二次元に恋をするとか」
大神「ならば尚更だろう。愛しているが故に、ずっと一緒にいたいと思った……と」
霧切「いいえ、それは無いわ。アルターエゴには山田君が来たら悲鳴を上げるように言っていたの」
霧切「私はいつも部屋の扉を少し開けていたから、聞き逃したはずが無いわ」
葉隠(どうしてだ……? それは起こるはずが無いって思っていたのに)
葉隠(これは……もしかして、またセレスっちが?)
セレス「どうしましたか、葉隠君。そんなにこちらを見て?」
葉隠「……いや、何でも無いべ」
朝日奈「じゃあ、苗木じゃないの! 何か今の苗木なら『希望のため……』とか言ってしそうだし!」
苗木「ひどいなあ、朝日奈さんは。僕がそんなことするわけないのに」
霧切「……認めたくは無いけど、苗木君の言う通りよ」
霧切「私はアルターエゴに苗木君が来ても悲鳴を上げるように言っていたから」
不二咲「あとモノクマもだね。……監視カメラの無いこの脱衣場に気付いているとは思えないけど、一応」
霧切「……苗木君、またあなたは」
苗木「でも事実でしょ?」
霧切「まあ…………」
セレス「そういえば十神くんがいませんね……もしかして彼が……」
朝日奈「確かに十神なら……」
腐川「ど、どうして白夜さまがそんなもの取らないといけないのよ……!」
山田「そんなものとはアルタンに失礼ではないでしょうか!!」
葉隠「みんなやめるべ! そんな言い争ってもいいことはないべ」
大神「葉隠の言う通りだ」
霧切「……とりあえずここを出ましょう。こんなに大勢で長く脱衣場にいては、モノクマに怪しく思われるわ」
葉隠(アルターエゴが盗まれた……)
葉隠(一周目でもあった出来事…………だとしたら、やっぱりセレスっちが盗んだのか?)
葉隠(その理由は……山田っちに協力を取り付けるため……)
葉隠(これだけのイレギュラーがあったというのに、やっぱりブレずにセレスっちは殺人を犯すつもりなんだべ)
葉隠(だったら最初に考えてた通りだ。俺が呼び出しに応じなければ計画は破綻する……)
葉隠(破綻するが……)
葉隠「やっぱりそれだけじゃ怖いべ……」
葉隠(ここまでの計画は同じでも、ここからが一周目と変わるかもしれない)
葉隠(それに俺が呼び出しに応じなくても、どうにかする方法をセレスっちが考えているかもしれない)
葉隠(……やっぱり確実性を取るなら、セレスっちに働きかけるしかない)
葉隠(今回俺はセレスっちに警戒するだけで、接触はしていかなかった)
葉隠(何故大和田っちの時のようにしなかったのか?)
葉隠(その理由は簡単。セレスっちが説得に応じるとは思えなかったからだべ)
葉隠(舞園っちのときと同じように、確固たる信念を持って殺人を行った以上、俺なんかの説得が通じるはずが無い)
葉隠(それは今このときでも一緒だろう)
葉隠(だからこれから俺がするべきことは…………)
葉隠「……」
葉隠「…………」
葉隠「………………」
葉隠(思いつく限りは……あれが一番だべ)
葉隠(うまくいく可能性は低いけど……とりあえずセレスっちに接触をしてみるべ)
葉隠(部屋を訪ねたところいなかったので、探していたらようやく見つけた)
葉隠(娯楽室を外から覗いてみると……セレスっちと一緒に苗木っちがいる)
葉隠(どうして苗木っちと一緒に? ……とにかく入ってみるべ)
セレス「もう一回ですわ!!」
苗木「駄目だってセレスさん。超高校級の幸運なんてゴミみたいな才能だけど、それでも僕が唯一自信を持っている才能なんだよ」
苗木「コイントスなんて運だけで決まるゲームで僕に勝てるわけないでしょ?」
セレス「ですが……っておや、葉隠君ですか」
葉隠「二人とも……何してるんだべ?」
苗木「コイントスだよ、コイントス。超高校級の幸運と超高校級のギャンブラーが戦ったらどっちが強いのかって議論になってね」
セレス「……先に煽ったのはそちらでしょう、苗木君?」
苗木「あはっ、そうだったかな?」
セレス「コイントスでは単純すぎますわ。ギャンブラーとしての腕前を十分に発揮できる種目とは思えませんの」
苗木「そう言われてもね……って、あ!」
葉隠(何か嫌な予感がするべ)
苗木「ちょうどいいよ……本当にちょうどいい!」
セレス「……何がですか?」
苗木「もう一つ気になってたんだよ、超高校級の幸運と超高校級の占い師のどちらがすごいのかって!」
葉隠「えっと……」
セレス「それって比べられる物なのですか?」
苗木「例えばさっきやっていたコイントスだって、超高校級の幸運なら二分の一なんて確率ものともしないだろうし、占い師なら表か裏かを占いで当てられるでしょ?」
葉隠「まあ……言われてみれば……」
セレス「で、それがどうかしましたか?」
苗木「鈍いなあ。……だから今、ここに集まっている三人の才能で誰が一番すごいのか競ってみないかってことだよ!」
苗木「もちろん種目はセレスさんの希望のものでいいよ」
セレス「私の……」
苗木「まあ、なるべくみんなの才能が発揮される部分があるものにしてね」
苗木「え、逃げるの? ……白けるなあ」
葉隠(うぜえ……狛枝化した苗木っちがここまでとは)
葉隠(………………けどそう言われてみればこれはチャンスかもしれない)
葉隠「……やっぱり、俺も参加するべ」
苗木「お、やる気になってくれたんだね」
葉隠「ただ一つ条件がある……勝負が長くなって夜まで続く可能性も考えて、移動しないか?」
苗木「それはいい考えだけど……どこかいい場所はあるの?」
葉隠「俺の自室……って言いたいところだけど、散らかっているし……」
セレス「でしたら、私の部屋でいいですわ」
葉隠「……!」
セレス「そして種目も決まりましたの」
苗木「へえ、何で勝負するの」
セレス「これですわ」
葉隠(そう言ってセレスっちが見せたのはトランプカード)
セレス「まず賭けごとである、ということでギャンブラーの才能が活かされる」
セレス「良い役が出来るか、ということで幸運の才能が活かされる」
セレス「そして相手の手を占って勝負に出るか出ないかを決定できる、ということで占い師の才能が活かされる」
セレス「そんな種目――ポーカーで勝負ですわ」
葉隠(場所をセレスっちの部屋に移して、そしてポーカーが始まった)
葉隠(全員がチップを最初30枚持っての奪い合い。そして対等な立場で勝負をしたいということで親だとかの取り決めは無し)
葉隠(場代として全員が一枚のチップを出してから配り始める)
苗木「へえ…………」
セレス「そうですか」
葉隠「うーむ……」
葉隠(最初に配られた手札を見ると……ハートの2、スペードの2、クラブの2、ダイヤのK、ハートのQ)
葉隠(スリーカードが確定している。……中々に良い手だべ)
セレス「では最初に葉隠君から交代をどうぞ」
葉隠「俺は二枚交代するべ」
葉隠(定石通りスリーカードを構成している2以外の二枚を交代。ちなみに手札交換は一回まで)
葉隠(結果は……ダイヤのQとクラブの7。……Kだけ交代しておけばフルハウスだったか……)
セレス「では私は一枚だけ交代しますわ」
葉隠(セレスっちが一枚だけ交代)
セレス「………………」
葉隠(交代したカードを見ても全く表情を変えない。さすがのポーカーフェイスだべ)
苗木「じゃあ僕は交代なしで行くよ」
葉隠「…………!?」
苗木「まあね」
葉隠(交代しない……最初から強い役が出来ていれば当然の判断だが…………)
葉隠(超高校級の幸運が良い役を呼び寄せたのか……?)
葉隠「じゃあみんな交代終えたし……俺はチェックだべ」
セレス「私もチェックですわ」
苗木「……まあ、最初だしね。無難にチェックしておこうか」
葉隠(三人がチェックを選択したことで勝負が成立。全員手札をオープンする)
葉隠「スリーカードだべ」
セレス「フラッシュですわ」
苗木「フルハウス……僕の勝ちだね」
葉隠「!? 交換無しでフルハウス……!?」
セレス「さすが超高校級の幸運……と言ったところでしょうか」
葉隠(それにしてもフルハウスもすごいが……セレスっちのフラッシュも中々に良い役だ)
葉隠(やっぱり二人の運はかなりすごいと考えてかかるべきだべ……)
葉隠29枚 苗木32枚 セレス29枚
葉隠(次のカードが配られる)
葉隠(出来ている役はツーペア。……まあまあな役だが、二人の運には勝てるか……)
葉隠「一枚交代するべ」
セレス「私は三枚ですわ」
苗木「僕も二枚交代しようかな」
葉隠(役は変わらずツーペア……勝負はきついか……)
葉隠「チェックだべ」
苗木「僕もチェックだね」
セレス「そうですか。では私は一枚ベットを」
葉隠(既に出してあるチップにさらに一枚重ねるセレスっち)
葉隠「……積んでくるか」
葉隠(三人が合意したところで勝負が始まるが……)
葉隠「俺は降りるべ」
葉隠(ツーペアでは勝負にならないと判断してフォールド)
苗木「じゃあ僕はコールかな」
葉隠(セレスっちと同じ枚数、一枚のチップを出す苗木っち)
葉隠(良い役が出来たのか……それともセレスっちのベットをブラフと呼んだか……)
セレス「そうですか……ではもう一枚ベットですわ」
葉隠「…………っ!?」
葉隠(ベットは一回の勝負で上限に達するまでは何回でもOK。だとしてもこんな序盤で三枚勝負は……かなり自信があるのか?)
苗木「……随分と強気だね」
葉隠(俺は既に勝負から降りているから、苗木っちがこれにコールをするか降りるかだけ)
苗木「………………」
セレス「どうなさいますか」
苗木「じゃあ僕もコールしようかな」
葉隠(三枚目を載せる苗木っち)
葉隠「それは…………!」
葉隠(涼しげな顔で更に二枚のチップを重ねるセレスっち)
葉隠(合計五枚の勝負って……いや、もしかしたらこのまま苗木っちがコールする限りベットし続けるんじゃないか?)
葉隠(恐らく……上限の十枚になるまで……)
苗木「………………」
葉隠(苗木っちも同じことを感じたのだろう。さすがに悩んでいる……)
苗木「……」
苗木「…………」
苗木「………………さすがに序盤でチップを失いすぎるわけにはいかないからね。フォールド」
葉隠(苗木っちが勝負から降りた……これでこの回はセレスっちの勝ち)
葉隠(それにしても十枚勝負も辞さないって……セレスっちの役はどれだけ……)
葉隠「俺はツーペアだべ」
苗木「僕はスリーカード。……もうちょっと強い手札だったら勝負したんだけどね」
セレス「そうですか。……私はブタですわ」
葉隠・苗木「………………っ!??」
葉隠(セレスっちが自分の手札を公開する)
葉隠(内容は……数字もスートもバラバラ。役が出来ていない……)
苗木「……あちゃー、やられちゃったな」
葉隠「よくこれで勝負しようと思ったな」
セレス「ギャンブラーとしての勘が行けると告げていたのですわ」
葉隠(苗木っちが受けていたら、大量にチップを失っていたのに……大した自信だべ)
チップの枚数
苗木29枚 葉隠28枚 セレス33枚
葉隠(苗木っちが場に出していた三枚、そして俺が場に出していた一枚をゲットしたセレスっちがトップに立つ)
葉隠(場代としてチップを一枚出して……そして配られた手札を見る)
葉隠「うーむ…………」
葉隠(配られた手札で出来ているのはワンペア。となるとここは……)
葉隠「三枚交換するべ」
苗木「僕も三枚かな」
セレス「私は二枚ですわ」
葉隠(……お。スリーカードが出来たべ。まあまあ強い役だな)
葉隠(といっても勝負するほどではないし……)
葉隠「チェックだべ」
セレス「チェックですわ」
苗木「……じゃあ一枚ベットしようかな」
葉隠(苗木っちが仕掛けてくる)
葉隠(苗木っちのことだ。どうせまた良い役が出来たんだろうし降りるのが無難――――)
葉隠「コールだべ」
葉隠(――って、あれ? 気が付いたら受けている自分がいる)
セレス「私もコールですわ」
苗木「……じゃあもう一枚ベットしようかな」
葉隠(もう一枚チップを重ねる苗木っち。やっぱり手札に自信があるんだべ)
葉隠(今度こそ降りるのが……)
葉隠「コールだべ」
セレス「私もコールですわ」
苗木「……さすがにそろそろやめようかな。チェック」
葉隠「チェックだべ」
セレス「チェックですわ」
葉隠(三人がチェックする。これでオープン勝負)
苗木「あーあ、仕掛けミスったかな……ツーペア」
セレス「私もツーペアですわ」
葉隠「スリーカード……俺の勝ちだべ!!」
葉隠(苗木っちとセレスっちのチップ合計六枚をもらっていく)
チップ枚数
苗木26枚 葉隠34枚 セレス30枚
セレス「苗木君は甘いのですわ。今のタイミングじゃブラフだって簡単に分かりましたわよ」
苗木「……そういいながら、セレスさんだって負けてるじゃないか」
セレス「たまたまですわ」
苗木「……それにしても葉隠君も結構臆さずに勝負して来たね」
葉隠「あ、ああ。……そうだな」
葉隠(あれが俺の才能……なのか……? 感覚で苗木っちが弱い手札だと分かって勝負に挑んでいった……ってことなんだろう)
葉隠(ちょっと自分でも驚いているべ)
チップ枚数
苗木23枚 葉隠21枚 セレス46枚
葉隠(あれから数回の勝負が会って現在の状況はこれ)
葉隠(苗木っちはときどき目を剥くような役を見せるが、上手くベットが決まらずチップの枚数を伸ばしきれていない)
葉隠(俺も判断は結構いいと思うが、そもそも良い手札が来なくて勝負行きにくいことが多い)
葉隠(結局賭け事に慣れているセレスっちが優勢だった)
セレス「さあさあ、もうちょっと頑張ってくれませんと楽しくありませんよ」
苗木「調子に乗って……」
葉隠「次で挽回して見せるべ!」
セレス「では次の勝負……の前に、すいません」
セレス「少々お花摘みに行ってきて参りますわ」
葉隠(そしてシャワールームへの扉を開けて入るセレスっち)
苗木「はあ、ちょっと休憩だね」
葉隠「そう………………じゃないべ!!」
葉隠(ポーカーに白熱して忘れていた。俺がこの部屋に来たのはある目的を持ってのことに)
葉隠「苗木っちは分かってないな。俺たちは女子の部屋に招かれたんだべ。そしてその部屋主が席を外している……となれば」
苗木「まさか部屋の物色……なんてことは言わないよね?」
葉隠「そのまさかだべ!!」 ガバッ!
葉隠(壁際のタンスを開ける。……中にあったのは普通の服)
葉隠「どうやらここは下着じゃないみたいだべ」
苗木「……はあ。超高校級の才能を持っているのにここまでクズだなんて……」
葉隠「それは違うべ!」 パリーン!
苗木「……え?」
葉隠「異性のことが気になるのは才能の有無に関わらず当たり前のことだべ!」
苗木「それは……」
葉隠「だったら苗木っちが思い描いている真の希望っていうのは、全く異性のことが気にならない人物のことなのか!?」
苗木「………………」
葉隠「そんなの人間としておかしいべ!!!」
苗木「……確かにそれはちょっと違うかもしれないね」
葉隠「そうだべ! だから今、俺がこうやって物色しているのも仕方ことが無いんだべ!!」
苗木「それはちょっと暴論じゃないかな……」
葉隠(……もちろん俺の目的はセレスっちの下着なんかではない)
葉隠(俺の目的はアルターエゴだ)
葉隠(前周回では裁判の後、アルターエゴを隠していた脱衣場のロッカーのカギを霧切っちがもらっていた)
葉隠(だから今回もそこに置いてあるかと思ったが、さっき探したところカギの閉まっているロッカーは無かった)
葉隠(……それもそのはず。まだ犯行を行っていないのだからアルターエゴが見つかってはまずいし、アルターエゴが無くなったとなれば真っ先に探すのが脱衣場だからだ)
葉隠(だったら今はどこに閉まっているのか……と考えたところ)
葉隠(やっぱり可能性が高いのは自分の部屋の中という結論に達した)
葉隠「さーて、ここは違うかな……っと」
葉隠(ノートパソコンの隠せそうな場所を片っ端から探していく)
葉隠(……一応シャワールームに隠しているという可能性もあるけど、そういう湿気の多いところに放置するというのも考えにくいし)
葉隠(そもそも今セレスっちがトイレで入っているので探すことができない)
葉隠「今度こそ……だべ!!」
葉隠(見つからない……どこに隠してあるんだ?)
苗木「……けどさ、葉隠君の目的って本当にセレスさんの下着なの?」
苗木「その反応……やっぱり合ってたんだね」
葉隠(まさか苗木っちにバレて……)
苗木「だって葉隠君ってそういうことにあんまり興味無さそうだもんね」
葉隠「……そ、そんなこと無いべ。お、俺はムッツリスケベで……」
苗木「声が震えてるよ。……いいんだよ、分かってるって」
苗木「葉隠君がセレスさんの部屋を物色している本当の理由は――」
葉隠「……………そうだべ、アルター」
苗木「金目の物が無いか探しているんだよね?」
葉隠「エゴ…………え?」
葉隠「………………」
苗木「セレスさんもギャンブラーだから結構お金を持ってそうだもんね」
葉隠「………………」
苗木「だから高そうな物か、それとも直接へそくり的な物が無いのか探している……そうでしょ?」
葉隠「そ、そそそうだべ!」
葉隠(……ふう、焦ったべ。どうやらバレてないみたいだな)
葉隠(確かに俺みたいなやつが部屋を物色していたら……そう思うよなあ……)
葉隠(って、よく考えたら苗木っちにバレても関係ないし、どうして俺は焦ってたんだ?)
苗木「いいよ、それが君の希望だっていうなら探すのは止めないよ」
葉隠「希望って……」
苗木「だってもしかしたら君のその才能は、そのクズさと引き換えに貰っているものかもしれないからね」
苗木「君の才能を落とす可能性が少しでもあるなら、僕はその行為をしたくないんだ」
葉隠(俺がクズなのはこの占いの才能を持っているからって……そんな非科学的なことあるわけないべ)
葉隠「………………」
葉隠(あるわけないよな?)
葉隠(しかし)
葉隠「……ない」
葉隠(アルターエゴが見つからない)
葉隠(どうしてだ、脱衣場に無いならばここにある可能性が高いはずなのに)
葉隠(それとも……もしかしてセレスっちが盗っていない?)
葉隠(まあ元々前周回と違う事態になっているとは予想していたが……だとしたら)
葉隠「………………」
葉隠(山田っちと苗木っちはアルターエゴに警戒されていて、俺はもちろんセレスっちも除くとすると)
葉隠(十神っち、霧切っち、朝日奈っち、オーガ、不二咲っち、腐川っち……)
葉隠(この中の誰がアルターエゴを盗んだんだ?)
セレス「お待たせしましたわ。勝負の再開といきましょう」
苗木「ようやくだね……ここから挽回してみせるよ」
葉隠「……そうだべ」
葉隠(その後トイレから戻って来たセレスっちとポーカーを続けたが、アルターエゴのことが気がかりだった俺は散々だった)
葉隠(俺が早々に脱落した後、一騎打ちでセレスっちが苗木っちを下していた)
葉隠(誰がアルターエゴを盗んだのか……)
葉隠(前周回ではセレスっちが盗んだ。だから今周回でも可能性が高いと思っていたのに……)
葉隠(…………って、あれ?)
葉隠(ちょっと待てよ。これまで俺の絡んだこと以外は前周回と同じ出来事が起きている)
葉隠(アルターエゴに関しては俺の影響がそこまであるとも思えない。ということはセレスっちが盗んだのでなければ……)
葉隠(イレギュラーの存在……)
葉隠(本当は死ぬところを生き延びた不二咲っちか、もしくは狛枝化した苗木っち)
葉隠(もしくはその二人に影響された誰か)
葉隠(という風に候補を絞ると……)
十神「……葉隠か」
葉隠「あ、十神っち。……にしても珍しいべ。朝食会に来るなんてな」
霧切「そうね、同意するわ」
葉隠(今日はいつもと比べて集まりが悪いと思ったら、代わりに十神っちが来るとは)
十神「朝食…………ちっ、やっぱりそうか」
葉隠「………………?」
十神「今日の日付を答えろ、葉隠」
葉隠「……どうしたんだべ、十神っち?」
十神「いいから早くするんだ」
葉隠「今日の日付は……」
葉隠(いつも以上に余裕のない十神っちに今日の日付を教える)
十神「ということは一日か。……だとしても十分だな」
葉隠「何を言っているんだべ?」
十神「……今言っても意味が無い。俺の予想が当たっていれば、どうせすぐに忙しくなるからな」
葉隠「………………?」
葉隠(十神っちの自己完結している発言はいつものことだが…………それにしても忙しくなる?)
葉隠「それはどういう――」
『ピンポンパンポーン』
『死体が発見されました。一定の捜査時間の後、学級裁判を開きます』
葉隠「……え?」
葉隠(今のは死体発見アナウンス……!?)
葉隠(前周回はジャスティスロボを見かけた一連の騒動の途中で鳴ったはずなのに…………どうしてこんな早朝に!?)
葉隠「………………」
葉隠(……いや、そんなの分かっている)
葉隠(やっぱり今回もイレギュラーが…………!?)
十神「くそっ、やっぱりか……」
葉隠「十神っち! 何か知っているのか!?」
十神「……いや、その逆だ。俺は何も知らないに等しい」
葉隠「何を言っているべ!! 今、やっぱりって……!」
霧切「しっ。まだ続くようよ!」
葉隠「……え? 続くって――」
『ピンポンパンポーン』
『死体が発見されました。一定の捜査時間の後、学級裁判を開きます』
葉隠(ということは犠牲者が二人……)
葉隠(くそっ……そこは前周回と変わらないのか……!)
十神「二回目のアナウンス……考えられる可能性は二人死んだってことか……?」
霧切「とにかく探すわよ。葉隠君と十神君は校舎を、私は宿舎を確認するわ!」
十神「ちっ、命令するな……と言いたいところだが、そんな場面でもないな」
葉隠「分かったべ!」
葉隠(捜索を開始してすぐ)
葉隠(俺は三階の物理室のところで床に膝をついているオーガを見つけた)
葉隠(その奥にある二つの死体も……)
葉隠(俺はすぐにみんなを呼んで部屋の中に入った)
<物理室奥>
葉隠「オーガが死体を発見したのか?」
大神「………………」
霧切「状況を見る限りそのようね」
葉隠(……目を背けたい惨状になっている部屋の奥)
葉隠(だけど逃げるわけには行かない。俺はそちらをもう一回見直して――)
不二咲「………………」
葉隠(頭部から血を流して倒れている不二咲っちと)
山田「………………」
葉隠(同じ状況の山田っちを確認する)
葉隠(折角生き残ったっていうのに……どうして……)
葉隠(そして山田っち……)
葉隠(前周回でもこの三回目の事件で被害者となったが……)
葉隠「………………」
葉隠(どうして二人が死なないといけなかったんだべ……)
葉隠「連続殺人事件……」
セレス「悲惨な現状ですわね」
ジェノ「あらあら刺・激・的~!!」
十神「うるさいぞ」
葉隠(血を見たせいか腐川っちとジェノサイダーが入れ替わっている)
霧切「クロはどうして二人も……? 卒業には一人でいいはずなのに……」
苗木「……ん? 何を言っているの霧切さん?」
苗木「あはは、どうやら印象が最悪みたいだね」
苗木「だけど間違った発言を気にするのは仕方ないことでしょ?」
霧切「間違った……? 何を言いたいのかしら?」
苗木「それは……ほら、あっちを見てよ」
霧切「……大神さん?」
葉隠(苗木っちの指した方向にはオーガがいた。……そういえば俺たちが入って来るときからいたべ)
葉隠(それにしても全く話に加わってこないでどうしたんだ?)
霧切「大神さ…………っ!!」
葉隠(オーガの肩を叩こうと近づいた霧切っちの動きが固まる)
葉隠「どうしたんだべ、霧切っち……」
霧切「……そうだったわ。まだあの校則が……」
葉隠(らしくない動揺した姿を見せる霧切っち)
葉隠(その理由はすぐに俺も知ることになった。……そして同時に俺はあることを思うのだった)
絶望は止まらない、と。
『ピンポンパンポーン』
『死体が発見されました。一定の捜査時間の後、学級裁判を開きます』
十神「三回目……だと?」
ジェノ「なになに、もしかしてオーガちんが死んだの?」
ジェノ「オーガちんを殴打ちん……ってww」
セレス「……いえ、彼女の肩は上下していますわ。呼吸をしているってことは生きているということでしょう?」
葉隠「だったら誰が…………」
葉隠(……いや、俺は気づいている)
葉隠(オーガが生きているなら、未だこの場に姿を見せていない最後の一人……)
葉隠「………………」
葉隠(俺はオーガのところまで近づく)
葉隠(オーガが覆いかぶさるようにしていたため、今まで見えていなかった死体……)
葉隠(それは――)
葉隠「朝日奈っち……」
朝日奈「………………」
葉隠(頭から血を流している朝日奈っち……)
葉隠(三つ目の死体……)
葉隠(前周回では起きなかった事態)
葉隠(どうして……? 校則で一度のクロが殺せるのは二人までと決められているはずじゃ……?)
モノクマ「うぷぷっ、ようやく三人目まで気付いたみたいだね」
霧切「モノクマ……」
葉隠「……っ!」
葉隠「モノクマ、どうしてだべ!!」
モノクマ「どうして……って何が?」
葉隠「とぼけるなっ!! ここに三つの死体があるのはおかしいはずだべ!!」
モノクマ「そう言われても……何を根拠にそう言うのかな?」
葉隠「根拠ならあるべ! 校則で一度のクロが殺せるのは二人までって決まって……!!」
モノクマ「……えっと、それは言いがかりだよ、葉隠クン」
葉隠「何を……!!」
モノクマ「だって――」
モノクマ「そんな校則存在しないよ?」
葉隠「……は?」
葉隠「……」 バッ!
葉隠(モノクマの言葉に従って、電子生徒手帳の校則の欄をタッチ。項目をスクロールする)
葉隠(しかし……)
葉隠「無い……?」
モノクマ「でしょー。もう変な言いがかりつけないでよね」
葉隠「どうして……。…………あっ!!!」
葉隠(そうだ……)
葉隠(あの校則は……最初からあったものじゃない)
葉隠(二回目の捜査開始時に追加されたもの……)
葉隠(だけど、どうだ?)
葉隠(今周回では捜査開始時の様子が変わって、そのアナウンスはされていない)
葉隠(すっかり忘れていたし……もし、覚えていても気にすることでも無いと思っただろう)
葉隠(その結果がこれだ)
葉隠「…………朝日奈っち」
葉隠(朝日奈っちが死んだというのも俺の心に重たいものを残していた)
葉隠(朝日奈っちは前周回最後まで生き残った中の一人)
葉隠(あの超高校級の絶望、江ノ島っちと直接戦った一人)
葉隠(それだけに仲間という意識が強かった)
葉隠(それに……言い方が悪いが、今までのみんなは一回死んだ姿を見ている)
葉隠(だけど朝日奈っちは見たことがない)
葉隠(その事実がショックを上乗せする)
葉隠「………………」
葉隠(それにしても誰なんだ……?)
葉隠(不二咲っち、山田っち、朝日奈っち)
葉隠(卒業するためとはいえ……三人も殺したというのも信じられないが)
葉隠(それを行ったクロがこの中にいるというのがもっと信じられない)
葉隠(……駄目だべ。この前の裁判以上に、全く見当が付かない……)
葉隠(霧切っち、十神っち、苗木っち、セレスっち、オーガ、腐川っち……俺を除いた生存者。この中の誰かだとして)
葉隠(一体クロは誰なんだ……?)
C H A P T E R 3
欲 望 迷 宮
非 日 常 編
モノクマ「今回も裁判楽しみにしてるからね。それじゃ!」
モノクマファイルを渡して消えるモノクマ。
葉隠「やるしか……無いんだよな」
霧切「……そうね」
葉隠(ここで絶望したら前に進めない)
葉隠(……前周回、率先してこれを毎回やっていた苗木っちは本当にすごいべ)
葉隠「じゃあ早速モノクマファイルを見てみるべ」
被害者 不二咲千尋
死亡推定時刻 昨夜十時ごろ
後頭部を鈍器で殴られたことが死因
モノクマファイル3(2)
被害者 山田一二三
死亡推定時刻 昨夜十時ごろ
後頭部を鈍器で殴られたことが死因
モノクマファイル3(3)
被害者 朝日奈葵
死亡推定時刻 今朝六時ごろ
後頭部を鈍器で殴られたことが死因
霧切「あなたの目は節穴なの?」
葉隠「え?」
霧切「死因はみんな同じだけど、朝日奈さんの死亡時刻だけ違うでしょう?」
葉隠「……確かに」
葉隠(最初二人は大体同じで、朝日奈っちだけ違う)
葉隠(これは……)
葉隠「どういうことなんだべ?」
コトダマ『モノクマファイル3×3枚』ゲット!
大神「朝日奈……うっ……」
葉隠「オーガ……」
葉隠(朝日奈っちと一番仲が良かったのはオーガだ)
葉隠(それだけに辛いのだろう)
霧切「大神さん。辛いでしょうけど……」
大神「……分かっている。やらねば我も死ぬのだと。だが……」
大神「………………」
葉隠(オーガの目から落ちる一筋の涙)
葉隠(……これが鬼の目にも涙なのか、という笑えない冗談を思いついたそのとき)
ピチャン!
朝日奈「ううっ……」
葉隠(オーガの涙が朝日奈に落ちるとともに朝日奈が目を開けた)
十神「何だと!?」
セレス「……っ!?」
ジェノ「奇跡の復活ww」
苗木「……これはすごいね」
葉隠(朝日奈っちの復活にみんなが湧く)
葉隠・霧切「………………」
葉隠(――いや、正確には俺と霧切っち以外が)
朝日奈「……さくらちゃん」
大神「朝日奈!!」
朝日奈「私たち…………昔から会っていたんだね」
葉隠(……やっぱりか)
大神「な、何を言って……」
朝日奈「私たちはみんな友達だったんだよ……」
大神「………………」
葉隠(これは前周回の山田っちと同じパターンだろう……)
葉隠(一時的に蘇ってその後は……)
十神「記憶の混乱が起きているのか」
ジェノ「そうだ朝日奈? おまえ、誰に殺されたんだww?」
朝日奈「私? ……そういえば、朝ダイエットするために二階に来て……」
朝日奈「そしたら何か物音が……聞こえて。三階に登って……」
朝日奈「……物音の発信源の…………ここを覗いたら二人が……」
朝日奈「そこで……後ろから…………殴られて……」
大神「朝日奈! もう無理をするな! ……急いで保健室に連れていくからな!」
朝日奈「さくらちゃん……」
大神「朝日奈……」
朝日奈「……………………ごめんね」
大神「朝日奈……朝日奈っっっ!!」
葉隠(朝日奈っちはその言葉を最後に力尽きたように動かなくなった)
葉隠(親友の腕の中で逝けたのは……この絶望の中の、ささやかな幸福だっただろう)
葉隠(黙りこくる一同。だが、このままではいけないと思ったのか霧切っちが口を開く)
霧切「大神さんには悪いけれど、いつまでも落ち込んではいられないわ。このまま捜査をしなければ、クロが卒業して私たちはおしおきされるのだから」
葉隠「……そうだべ」
霧切「ということでまずはこの現場の見張り役を置きたいのだけど……大神さん以外で誰か」
大神「……遠慮するな、霧切よ」
霧切「大神さん……あなた辛いんじゃ……」
大神「それでもこの現場の見張りくらいは出来る。……いや、それより今は朝日奈の元を離れたくない」
霧切「そう……分かったわ。ではもう一人の見張り役は……」
ジェノ「それなら私がww ……って、チョー受けるww 殺人犯が殺人現場の見張りとかww」
霧切「……少し不安だけど、腐川さんに任せましょう」
霧切「…………朝日奈さんのためにも、絶対にクロは見つけてみせるわ」
大神「おりがとう、霧切よ」
葉隠(こうして見張り役が決まって本格的に捜査を開始することにしたが……)
葉隠(もしかしたらあの朝日奈っちの最後の言葉が役に立つかもしれないべ。一応メモっとくべ)
コトダマ『朝日奈の証言』ゲット!
葉隠「そうだな」
山田と不二咲が倒れている近くに移動する二人。
葉隠「改めて見ると……酷いな……」
葉隠(どっちも後頭部を殴られて出血している……)
葉隠(……って、あれ二人とも何か持って)
山田、不二咲、共に倒れた体の下敷きになっていたため近くで見ないと分からなかった。
二人ともが持っていたのはハンマー。
葉隠(……前周回でジャスティスハンマーとして使われたあれか?)
葉隠(にしてもどうして二人とも持って……)
苗木「殺し合ったんじゃないかな、二人で?」
葉隠「て、苗木っち……」
葉隠(後ろから苗木っちに声をかけられた)
霧切「……何の話、葉隠君?」
苗木「二人が凶器を持っていたんでしょ?」
葉隠「ああ、そうだべ」
葉隠(苗木っちと霧切っちの方からは自分が邪魔になって見えていなかった凶器を見せる)
霧切「……そういうことね」
葉隠(納得している霧切っち)
葉隠「やっぱり二人で殺し合ったのか……?」
霧切「それくらい自分で考えなさい」
葉隠「えー……」
葉隠(ぴしゃりと霧切っちに言われる)
葉隠(考えろって言われても……どっちのハンマーにも血が付いているし、凶器には違いない)
葉隠(殺し合ったとしか考えられないのに……どうして霧切っちはあんな言い方を……?)
コトダマ『二つの凶器』ゲット!
葉隠「何だべ……メモ?」
霧切「不二咲さんが持っていたものよ」
葉隠(ちゃんと読んでみる……)
『不二咲へ アルターエゴのことで話し合いたいことがあるとは本当ですか? モノクマに見つかるとまずいので、九時半に物理室で待っています。 山田』
葉隠「ふっふっふ……」
霧切「どうしたの葉隠君?」
葉隠「謎は全て解けたべ!!」
霧切「……あまりいい予感はしないのだけど、一応聞いておこうかしら」
葉隠「今回の事件は不二咲っちを呼び出した山田っちが隠し持っていた凶器で殺害しようとしたけど、不二咲っちも護身用に持っていた凶器で応戦してその結果二人とも死んだんだべ!!」
葉隠(現在分かっている情報を全て繋げたこの推理……我ながら自分の頭脳が恐ろしくなるべ)
葉隠「へ? 霧切っち驚かないのか?」
霧切「呆れているわ。……まあ、そんな葉隠君にも一つヒントを上げときましょう」
葉隠「ヒントって……もう謎も解けたのにヒントなんて……」
霧切「山田君はみんなをどういう風に呼んでいたのかしらね?」
葉隠(無視して続けられた……霧切っち酷いべ)
葉隠(それにしても呼び名って……何か関係あるのか?)
コトダマ『呼び出しメモ』ゲット!
葉隠(って、死体に触るのに抵抗が無くなって来た自分が怖いべ……)
葉隠(それより……二人とも全体的に少し濡れている?)
葉隠(どうしてだべ……?)
コトダマ『濡れた死体』ゲット!
霧切「それでは……大神さん、ごめんだけど朝日奈さんを見せてもらえるかしら」
大神「……ああ」
霧切「……他の二人と特に変わらないわね。後頭部に打撃痕……」
霧切「けど、凶器は持っていないわね。……そして、朝日奈さんを殴ったと思われる凶器も無い」
霧切「そんなところね」
葉隠「ふーん」
コトダマ『朝日奈の死体』ゲット!
葉隠「アリバイ……二人が死んだ昨夜の十時ごろっていうと……」
葉隠「俺はちょうどセレスっちの部屋でポーカーをしてたべ」
葉隠(正確にはアルターエゴ求めてセレスっちの部屋を捜索していたあたりか)
霧切「ポーカー……? セレスさんと二人で?」
葉隠「苗木っちと三人でだべ」
霧切「そう。なら三人にはアリバイがあるということで……」
霧切「私もちょうどそのころは腐川さんと会っていたわね」
葉隠「腐川っちとか?」
霧切「ええ」
腐川「……私? 確かに昨日の夜は霧切さんに会ったような会ってないような……」
葉隠(いつの間にかジェノサイダー翔から戻っていた腐川っち。なるべく死体の方を見ないようにしている)
腐川「……ああ、そうよ! 白夜様の姿が昨日の昼くらいからずっと見えなかったから、それで探していて」
霧切「私が宥めてどうにか部屋で寝るように言ったのよ。それがちょうど十時くらいだったわね。結構宥めるのに時間がかかったからアリバイとしては十分だと思うわ」
葉隠「だったら二人もってことか」
大神「我も朝日奈と話していた……」
大神「こんなことになるなら……太るからってドーナツを食べるのを止めさせるべきじゃなかった……」
葉隠「オーガ……」
霧切「……ええ、それは私も腐川さんとの会話が終わった後に見たわ。二人もアリバイがあったということでしょう」
葉隠「ということはアリバイが無いのは……」
霧切「十神君だけということになるわね」
葉隠(十神っち……そういえば死体発見アナウンスが鳴る前もおかしなことを言っていたし、話を聞く必要はあるな)
コトダマ『午後十時のアリバイ』ゲット!
葉隠「俺は寝てたべ」
大神「我も寝ていた」
腐川「私もよ」
霧切「私も……ってことはみんなアリバイが無いみたいね」
葉隠「まあ、そうだろうな」
霧切「捜査に出ているセレスさん、苗木君、十神君には後で聞いておきましょう。……まあ、みんな無いって言うでしょうけど」
コトダマ『朝六時のアリバイ』ゲット!
葉隠「じゃ他のところに行くか」
<美術室>
葉隠(同じ三階の美術室にやって来た)
葉隠(目的は山田っちと不二咲っちが持っていたと思われるハンマーが気になったから)
葉隠(そして)
葉隠「やっぱりないな……」
葉隠(ハンマーが二本無くなっていることを確認する)
葉隠(それ以外にも濡れているハンマーもあって……これが朝日奈っちを殺した凶器なんだろう)
葉隠(メモっておくべ)
コトダマ『美術室のハンマー』ゲット!
葉隠(食堂で十神っちを見つけた)
葉隠「十神っちこんなところで何をしてるんだべ?」
十神「葉隠か……俺を貶めたやつの尻尾を探している」
葉隠「貶めた……?」
葉隠(何を言っているんだべ?)
葉隠「……あ、それより、昨夜のアリバイについて教えてくれないか?」
十神「アリバイ……そうだな、俺にアリバイは無い」
葉隠「じゃあ十神っちがクロだべ。他は全員アリバイがあるからな」
十神「……ちっ、やっぱりそういうことになるのか」
葉隠「………………?」
葉隠(やっぱり十神っちの様子がどこかおかしい)
十神「……昨日、俺は誰かに監禁されていた」
葉隠「監禁……っ!?」
葉隠「そ、それってどういうことだべ!」
十神「あの不自然な眠気……誰かに睡眠薬を飲まされたな。それで寝ている間に縛られたのか……」
葉隠「ちょ、ちょっと待つべ! 最初から説明してくれ!」
十神「……まあいいだろう」
十神「昨日の昼のことだ。俺はここで紅茶を入れて、午後の読書をたしなもうとしていた」
十神「だが、紅茶を飲んだ直後。猛烈な睡魔に襲われて眠ってしまった」
十神「その後一回起きたが、どこか暗い場所に縛られたまま転がされていることに気付いた。どうしようもない俺は、薬の効果が残っていたのかまた寝てしまい」
十神「そして起きたら、宿舎の共用トイレの中にいたってわけだ」
葉隠「だから朝あんなことを?」
葉隠(朝、十神っちは朝食という言葉に反応していたし、日にちを聞いていた)
十神「そうだな。日の光が全くなかったことや、ずっと眠らされていて時間間隔が掴めなかった」
十神「だから朝であるかも把握できなかったし、一日経ったのかそれとも二日経ったのか、それともそれ以上経っていたのか分からなかった」
葉隠(そういうことか)
コトダマ『十神の証言』ゲット!
葉隠「それでどこで監禁されていたのか分からないのか?」
十神「……部屋が真っ暗で全く見えなかった」
葉隠「まあ、窓が鉄板で打ち付けられているし、用意すれば真っ暗な部屋は簡単に作れるよなあ」
十神「そういうわけだ」
葉隠(…………けど)
葉隠「十神っちが睡眠薬を飲まされたなんて信じられないべ。あれだけ周りを疑っていたんだから、そんな薬が仕込まれてそうな食べ物を貰うなんてことするわけが無いべ」
十神「……だからここを探しているんだろう?」
葉隠「………………?」
十神「俺が眠気を覚えたのはここで入れた紅茶を飲んでからだった。だから睡眠薬を仕込んだとしたら、ここしか考えられない」
葉隠「だからさっきからポットを調べているのか?」
十神「ああ。茶葉に仕込んでたらさすがの俺でも入れるときに気付くからな」
十神「何も見つからなかった。……そもそも一日も経っているんだ。証拠は隠滅してるだろう」
葉隠「ところで十神っちはその薬を持ったのは誰だと思っているんだべ?」
十神「……今回のクロだ」
葉隠「クロ……」
十神「俺を監禁することで誰とも会わせず、アリバイを作らせないようにした。全ては罪を俺に押し付けるために」
葉隠「………………」
十神「もともと一人で行動しがちな俺は恰好のターゲットだったんだろうな」
葉隠「そういうことか……」
葉隠(しかし俺はこれが全て十神っちの演技だっていう可能性も考えている)
葉隠(現実に十神っち以外アリバイがあるわけだし、苦し紛れにこんな嘘を付いている可能性はある)
葉隠(それにやっぱり睡眠薬を十神っちに飲ませるタイミングが難しい)
葉隠(ここの食堂はみんなが使うし、ポットも数個あるのを誰がどれをいつ使うのかなんて決まっていない)
葉隠(昨日も朝日奈っちやオーガ、霧切っちやセレスっちなどここのポットを使った人はたくさんいるのに、誰も眠ったなんて話は聞いていない)
葉隠(そんな中狙って十神っちだけに睡眠薬入りのポットを使わせるなんて不可能だべ)
葉隠(……不可能だよな?)
コトダマ『食堂のポット』ゲット!
葉隠(そもそも睡眠薬なんて存在するのかを確認しに来た)
葉隠(あるとしたら四階の科学室が解放されていない以上、ここ保健室だろう)
葉隠(数分の捜索の結果……)
葉隠「あったべ……」
葉隠(即効性の睡眠薬を見つける。……これを飲むだけでスッキリ熟睡、って)
モノクマ「何々、葉隠クン。睡眠薬使うの?」
葉隠「モ、モノクマ……!?」
葉隠(いきなりモノクマが現れた)
モノクマ「ストレスが溜まって寝られない、とかあるの?」
葉隠「いや、そんなことは無いけど……」
モノクマ「だよねー、君って一番ストレスって言葉から無縁そうな人だもの」
葉隠「うるさいべ」
モノクマ「……まあ、睡眠薬を使うなら自分の部屋で使うことをオススメするよ」
葉隠「どうしてだべ?」
葉隠「校則……ああ、『就寝は宿舎の部屋で行いましょう』ってやつか?」
モノクマ「それそれ。部屋以外で睡眠薬を自分の意志で飲んだ場合は、自らの意志での就寝ってみなして罰を与えるからね」
葉隠「そうか……」
葉隠(そんなルールになっていたとは…………って、待てよ?)
葉隠「なら人に睡眠薬を飲まされた場合はどうするんだべ?」
モノクマ「それはしょうがないよ。自分の意志じゃないんだから、罰するわけにはいかないよ」
葉隠「良心的なんだな」
モノクマ「まあね。これでも優しい優しい学園長って評判だから!」
葉隠「はいはい」
モノクマ「………………まあ許すのは、睡眠薬を飲まされた場合のみだけどね」
葉隠「……?」
モノクマ「それじゃあね」
その言葉と共に消えるモノクマ。
葉隠「……今のは何だったんだ?」
葉隠(気になるんだが……モノクマの気まぐれってことで済ませていいのか?)
コトダマ『保健室の睡眠薬』ゲット!
コトダマ『モノクマの証言』ゲット!
葉隠(捜査のためといって全員の私室も解放された)
葉隠(なので今一番疑わしい十神っちの部屋に何か証拠が無いかと探す)
葉隠「どうして……これがここに?」
葉隠(それはすぐに見つかった)
葉隠(電源を入れるとすぐに反応する)
アルターエゴ『どうしたの、葉隠君?』
葉隠(ノートパソコンがここにあるっていうことは……)
葉隠「アルターエゴを盗んだのは十神っち……?」
コトダマ『アルターエゴの行方』ゲット!
<赤い扉の部屋>
葉隠「捜査も終了か……」
霧切「葉隠君」
葉隠「……何だべ、霧切っち」
霧切「いえ、一応報告しておこうと思って」
霧切「アリバイの話だけど改めて苗木君、セレスさん、十神君の三人に聞いたところ、やっぱり朝六時のアリバイは無いそうよ」
葉隠「予想している通りだったべ」
コトダマ『朝六時のアリバイ』アップグレード!
葉隠「………………」
葉隠(報告が終わったから離れていくのかと思いきや、そのまま動かない霧切っち)
葉隠「霧切っち……」
霧切「……言いたいことは分かるわ。けど、今は目の前の裁判に集中しましょう」
葉隠「そう……だな」
葉隠(霧切っちに抱いているある疑い。それを見透かされて先に止められる)
葉隠(そうだな……この裁判でクロを突き止められなければ死んでしまう。そうなっては全てに意味は無くなるんだべ)
全員が揃いエレベーターに乗る。
そして葉隠は九回目となる裁判場に降り立った。
<裁判場>
葉隠(裁判場……ある意味クロとシロのコロシアイが行われるこの場所……)
葉隠(だけど今回俺が思っているのは生き残るってことだけじゃない)
葉隠(怒っているんだべ)
葉隠(卒業するためとはいえ山田っち、不二咲っち、朝日奈っちの三人も殺した非道な行為……)
葉隠(それを成したクロを突き止めて……絶対に罪を償わせるんだべ!!)
命がけの裁判……
命がけの騙し合い……
命がけの裏切り……
命がけの謎解き……命がけの言い訳……命がけの信頼……
命がけの……学級裁判……!!
『モノクマファイル3×3枚』
山田、不二咲、朝日奈の分の三枚。三人とも死因は後部を殴打されてのもの。山田と不二咲は午後十時、朝日奈は午前六時が死亡時刻。
『朝日奈の証言』
朝、ダイエットをするために来た二階で物音を聞いて三階に。物音の発生源である物理室を覗こうとして、そのとき後ろから誰かに殴られたようだ。
『二つの凶器』
不二咲と山田がそれぞれ持っていたハンマー。どちらにも血が付いており凶器と見られている。
『呼び出しメモ』
不二咲が持っていたメモ。内容は『不二咲へ アルターエゴのことで話し合いたいことがあるとは本当ですか? モノクマに見つかるとまずいので、九時半に物理室で待っています。 山田』
『濡れた死体』
不二咲と山田の死体は少し濡れているようだ。
『朝日奈の死体』
他の二人と違って近くに凶器は見られない。
『午後十時のアリバイ』
葉隠と苗木とセレスは三人でポーカー。霧切と腐川は廊下で会話。朝日奈と大神は食堂で会話。十神にはアリバイがないようだ。
『朝六時のアリバイ』
全員寝ていたということで、アリバイのある人物はいない。
『美術室のハンマー』
二つのハンマーが無くなっている。一つのハンマーに洗われた形跡がある。
『十神の証言』
犯行のあった日十神は誰かに睡眠薬を飲まされ、体を縛られ監禁させられていたようだ。
『食堂のポット』
複数個あり、誰がいつどれを使うかは決まっていなかったようだ。
『保健室の睡眠薬』
保健室には即効性の睡眠薬があった。
『モノクマの証言』
睡眠薬を飲まされた場合は校則に違反しない模様。だが、睡眠薬を飲まされた場合のみのようだ。
『アルターエゴの行方』
十神の部屋からノートパソコンが見つかった。
モノクマ「皆さんの中には殺人を犯したクロがいます。今から話し合いでそれが誰なのかを決めてもらいます」
モノクマ「その結果正しいクロを指摘できればクロだけがおしおき」
モノクマ「指摘できなければクロ以外がおしおき。そしてクロは卒業できます」
モノクマ「というわけでよろしく!」
セレス「さて、まず何から話し合いましょうか?」
大神「そうだな……」
葉隠「………………」
葉隠(そう……か。いつも議論を引っ張ってくれた石丸っちはもういないのか)
葉隠(余計な発言が多かった山田っちも、事態を理解しきれていない質問で裁判を止めていた朝日奈っちもいなくて)
葉隠(俺も二周目ということで少しは真面目になったから、裁判が横道にそれることも少なくなった)
葉隠(それは……いいことなのかもしれないけど……やっぱり寂しさを感じるな……)
苗木「時系列順に考えて、まずは山田君と不二咲さんの件から考えるべきかな?」
腐川「二人とも物理室で死んでいたのよね?」
大神「ああ。我が第一発見者だ」
十神「死亡時刻は昨日の夜十時か……」
セレス「二人はどうしてそんな場所にいたんでしょうか? 『分かりませんね』」
葉隠(いや、二人があの場所にいた理由は……)
コトダマ『呼び出しメモ』セット!
葉隠「それは違うべ!」 パリーン!
葉隠「二人があの物理室にいたのは、山田っちが不二咲っちを呼び出したからだべ!」
セレス「呼び出した、ですか? どうしてそれが分かったんでしょうか?」
葉隠「不二咲っちが呼び出しのメモを持っていたんだべ」
呼び出しメモを見せる葉隠。
セレス「……そういうことでしたか」
苗木「そのメモにはちょっと気になるところがあるけど……まずは呼び出されてどうなったかを考えるべきかな?」
大神「それは簡単だ。呼び出した方、呼び出された方どちらも死んでいるのだ。なら『第三者が殺した』と見るべきだろう」
葉隠(それはあの証拠から考えにくい……)
コトダマ『二つの凶器』セット!
葉隠「それは違うべ!」 パリーン!
葉隠「二人とも血が付いたハンマーを持っていたんだべ!」
セレス「そんなものが……」
葉隠「だから『二人は殺し合った』んだべ!」
(全く……こんなのところでつまずいてちゃ希望は見れないから、手伝ってあげるか)
コトダマ『モノクマファイル3×3』セット!
苗木「それは違うよ!」 パリーン!
葉隠(また議論の攪乱に……)
苗木「葉隠君が言っている二人が殺し合ったっていうのが本当だと、少しおかしなことがあるんだ」
葉隠「おかしなこと?」
苗木「モノクマファイルの内容を見てよ。二人とも後頭部を殴られて死亡ってなっているでしょ?」
葉隠「そうだべ」
苗木「だとしたらさ、二人が殺し合ったのにどちらも後頭部を殴られたっておかしくない?」
葉隠「それは……」
大神「そうだな。後頭部に一撃入れたなら、入れた方が有利になるはずだ。それなのにどっちも後頭部に攻撃を食らっているのはおかしい」
セレス「どちらも前頭部を殴られたのならまだ分かるのですけどね」
十神「そんなのちゃんと捜査していれば分かることだろ」
霧切「葉隠君、捜査中それは違うって言ったわよね?」
葉隠「………………」
葉隠(これじゃ俺が議論を攪乱してる側だべ)
大神「……ふむ、何かあるだろうか?」
霧切「山田君はみんなを名前+殿で読んでいたはずよ。なのにこのメモでは」
『不二咲へ アルターエゴのことで話し合いたいことがあるとは本当ですか? モノクマに見つかるとまずいので、九時半に物理室で待っています。 山田』
葉隠「あ、付いてないべ」
霧切「そういうこと。つまりこれは……」
苗木「考えられる可能性としては……そうだね、二人を殺した真のクロが捏造したってとこかな。二人にハンマーを持たしたのも同じ」
苗木「殺し合ったと見せかけて、自分だけ卒業する算段だったんだろうね」
セレス「だとしたらクロも杜撰ですわね。そもそも今回の事件では朝日奈さんも殺されています」
十神「二人が殺し合ったなら、今日の朝誰が朝日奈を殺したのか、ってことになるな」
霧切「それもそうだけど……ちょっといいかしらモノクマ」
モノクマ「うん、なになに?」
モノクマ「ああもう、一気にしゃべられても困るなあ!」
モノクマ「そもそも今回の事件のクロは一人だからそんなこと考える必要ないって!」
霧切「……そう、それが聞ければいいわ」
モノクマ「はっ、しまった!」
葉隠(モノクマを手玉に取る霧切っち。流石だべ)
葉隠「……って、クロが一人ってことは」
霧切「二人が殺し合ったという可能性は無いわ。殺し合ったことでクロが二人、そして朝日奈さんを殺したクロで合計三人になるから」
大神「分かりやすくはなったが……この中に三人も殺したクロがいるのだな」
葉隠「………………」
葉隠(そうだべ……そんな悪意を持ったやつがこの中にいるのか?)
葉隠「朝日奈っちか……」
セレス「朝日奈さんは、二人のように凶器が近くに見つかりませんでしたけど、どうやって殺されたんでしょうか?」
葉隠(それはきっとあれだべ)
証拠を提示せよ!『美術室のハンマー』
葉隠(これに違いないべ!)
葉隠「朝日奈っちの凶器は美術室にあったハンマーに違いないべ!」
セレス「ハンマー……ですか?」
霧切「そうね、一つだけ洗われたハンマーがあったわ。朝日奈さんを殺した後、血を洗い流したのでしょうね」
葉隠「他にも美術室からは二つのハンマーが無くなっていたべ! きっと不二咲っちと山田っちが持っていたものに違いないべ!」
霧切「三人とも傷が似ていたから、同じような凶器で殺されたようだし間違いないと思うわ」
大神「そうだったのか……」
苗木「と、なったら次はアリバイを調べるべきかな?」
大神「アリバイというとモノクマファイルに書かれていた死亡時刻は……」
霧切「不二咲さんと山田君は昨日の夜十時、朝日奈さんは朝の六時よ」
霧切「ちなみに朝の六時に誰もアリバイが無かったことは確認しているわ」
苗木「となると昨日の夜十時のアリバイを調べるべきだけど」
セレス「私たちはそのころポーカーをしていましたわね」
十神「ポーカー? 誰とだ?」
葉隠「俺と苗木っちの三人でだべ。苗木っちが三人の才能で誰が一番強いのかって疑問に思って始まったんだべ」
苗木「惜しくもセレスさんに負けたけどね」
大神「それでは三人にはアリバイがあるのだな」
腐川「ええそうよ。白夜様を探している途中に会ったわ」
苗木「一途だね、腐川さんは」
十神「茶化すな、苗木」
大神「我は朝日奈と会っていたな」
セレス「朝日奈さん? ですが彼女は死んでいますし、アリバイとしては弱いですわね」
霧切「それなら大丈夫だわ。私がその後大神さんの姿を見ているから」
苗木「そう、なら大丈夫だね」
葉隠「ということは……」
葉隠(これまでの話に上がってこなかった人物。そちらの方を見る)
葉隠「十神っちにはアリバイが無かったってことになるな」
十神「………………」
腐川「びゃ、白夜様がそんなことするわけないでしょ!!」
セレス「そうでしょうか、彼ならそんなことをしてもおかしくない危うさを持っているように思えましたが」
苗木「今の状況をゲームに例えたくらいだしね」
十神「………………」
葉隠(確かに十神っちは怪しい)
葉隠(卒業のため、と割り切れば三人くらい殺してもおかしくない)
葉隠(アリバイから言っても怪しい……けど)
葉隠「………………」
葉隠(本当に十神っちがクロなのか……?)
裁判中断!!
モノクマ「というわけでモノクマ劇場の始まり、始まり~!」
モノクマ「いや~、今回の裁判も盛り上がっているね~」
モノクマ「二人が殺し合ったんじゃないか、という葉隠君の予想があっさりと否定されて、アリバイの無い十神君が疑われているけど」
モノクマ「はてさて、本当は誰がクロなんだろうね?」
モノクマ「って悩んでいる人に大ヒント~~!!」
モノクマ「コトダマだけじゃなくて、捜査のシーンにも重大なヒントが隠されているって話だよ」
モノクマ「特に前半の捜査を見直すといいんじゃないのかな?」
モノクマ「……っと、これ以上はつまらなくなるね。じゃ、続きを――」
モノクマ「どうぞっ!!」
十神「俺にアリバイが無い……か」
葉隠(みんなの注目が集まる中、十神っちが語りだす)
十神「確かにそうだろうな」
大神「認めるのか。……それは貴様がクロだからか?」
十神「だとしたらそうやって素直に認めるわけが無いだろう?」
十神「俺にアリバイが無かったのは……クロに睡眠薬を飲まされて監禁されてたからだ」
セレス「監禁……ですか」
腐川「びゃ、白夜様を監禁なんて……! で、でも身動きを取れない白夜様なら……」
十神「気持ち悪い想像は止めろ」
苗木「でもさ、あれだけ警戒していた十神君に睡眠薬を飲ませるなんてできるのかな?」
十神「そんなの知るか。飲まされたものはしょうがないだろう。……それに俺はアリバイが無いだけで、事件に関わった『証拠は無い』」
葉隠(その発言は、あれがあった場所と矛盾する……!)
コトダマ『アルターエゴの行方』セット!
葉隠「それは違うべ!!」パリーン!
十神「何だと……!?」
葉隠(驚く十神っち。寝耳に水の情報だったようだ)
大神「アルターエゴが十神の部屋に……」
セレス「アルターエゴを盗んだのは十神君でしたか。……ですが、それと事件に何の関わりが?」
苗木「いや、あるよ。不二咲さんを呼び出したメモにはアルターエゴのことでと書いてあった。……アルターエゴを作った本人だし、そうすれば呼び出しに応じると思ったんだろうね」
苗木「そしてたぶん山田君を呼び出したメモにもアルターエゴのことが書いてあったんじゃないかな? 彼はアルターエゴに心酔していたから」
苗木「山田君を呼び出したメモが見つかっていないのは、山田君が呼び出して二人が殺し合ったと見せかけるために処分したんじゃないかな?」
苗木「まあつまり、二人を呼び出すエサにするために、十神君はアルターエゴを盗んだんだよ」
葉隠「そういうことだべ!」
腐川「な、何であんたが偉そうにしているのよ……」
十神「朝は食堂にすぐに行ったし、死体の捜索の後はすぐに捜査だ。……自分の部屋を見ておくのを忘れていたとはな」
葉隠「言い訳が苦しいべ! 全部作り話なんだろう! おとなしく認めたらどうだべ!!」
葉隠(あくまで自分は被害者だと言わんばかりの十神っちに迫る)
苗木「……それに誤魔化されたけど、結局十神君が睡眠薬を飲まされた理由も分かってないからね」
葉隠「そうだべ! あれだけ人が作る料理に毒が入っていないかって疑っていた十神っちだべ!」
葉隠「『睡眠薬を飲まされたはずが無いんだべ!!』」
葉隠(って、あれ? ウィークポイントが……)
コトダマ『食堂のポット』セット!
霧切「それは違うわ!」 パリーン!
葉隠(どうして霧切っちが反論を……って、こんな展開前もあったべ)
霧切「……そろそろ茶番は終わりにしてもらおうかしら」
葉隠(霧切っちが冷たい目つきで睨む)
葉隠「ひ、ひぃっ!! ごめんなさいだべ!!」
セレス「びびりすぎですわね」
葉隠(罵倒される前にあわてて謝る……が)
霧切「今のは葉隠君に言ったわけじゃないわ」
葉隠「へ? ……だったら、誰に……?」
霧切「私が言ったのは――」
霧切「あなたよ、苗木君」
苗木「へえ……」
苗木「茶番ってどういうことかな?」
霧切「今この状況の全てよ。順を追って説明するわ。……まずは十神君が睡眠薬を飲まされた件だけど」
霧切「それは食堂のポットに睡眠薬を仕込んだのよ」
十神「待て、霧切。確かにそれは俺も考えたが……」
十神「百歩譲って俺が毎回同じポットを使っていたならその方法もありえただろう。……だが、俺だって警戒して毎回使うポットを変えていた。それは不可能だ」
霧切「いえ、それが不可能ではないのよ……彼ならね」
葉隠「……? どういうことだべ?」
霧切「忘れたの? 苗木君の才能を?」
葉隠「才能って……それは」
十神「超高校級の幸運……つまり、おまえは苗木が俺の使うポットを運で当てたっていうのか!?」
霧切「そうよ」
霧切「誰も一回でなんて言ってないわ」
葉隠「え?」
霧切「十神君に睡眠薬を飲ませるのは、今回の事件で一番初めにクロが行ったこと……それだけにミスっても取り返しがきくのよ」
十神「……つまりこういうことか? 今日俺が睡眠薬入りのポットを使わなくても、明日また睡眠薬を入れて俺が飲むまで繰り返す。そして運よく俺が睡眠薬を飲んだら計画を実行する……ってことか」
霧切「恐らく他の人が睡眠薬を飲んでも知らぬ存ぜぬで押し通すつもりだったんでしょうね。ターゲットはあくまで他の人とのつながりが薄くてアリバイが無くてもおかしくない十神君だけだったはず」
葉隠「だけど、苗木っちの運が一日目から十神っちに睡眠薬を飲ませることを成功させた……」
霧切「運に自信は持っているけど、それに頼り切るつもりはなかったみたいね」
苗木「……い、いやおかしいよ!! た、確かにその理屈だと僕は十神君に睡眠薬を飲ませることが出来たけどさ! でもそれは他のみんなにも当てはまることだよね!?」
葉隠(そうだべ。運に頼り切らないなら、苗木っちの幸運じゃなくても出来たはず……苗木っちを糾弾するには証拠が足りないように思うが……)
霧切「言ったでしょう。まずは、って。睡眠薬の件以外にも、あなたが怪しいって証拠は上がっているのよ!」
苗木「証拠って……」
霧切「迂闊だったわね、苗木君。自ら墓穴を掘るとはね」
葉隠「墓穴?」
霧切「死体発見アナウンスを見つける前のことよ。苗木君、あなたは私がどうしてクロが二人も殺したのか、って発言をしたとき否定した」
葉隠(ええと>>670と>>671のときか……?)
苗木「そうだけど……」
霧切「どうしてあなたは大神さんの体に隠れて見えなかったのに、朝日奈さんの死体がそこにあるって分かったのかしらね?」
葉隠(霧切っちがオーガに近づいてようやく見えたのだ、あのときの苗木っちの立ち位置じゃ見えなかったはず)
大神「言われてみればそうだな……」
苗木「そ、それは……」
十神「先に死体を見つけていたとしても、クロじゃないなら黙っておく理由も無いはずだ」
霧切「葉隠君、あなたは山田君と不二咲さんの死体の下から、凶器のハンマーを見つけたわよね」
葉隠「そうだべ」
葉隠(>>696と>>697のときのことだろう)
霧切「あのときも苗木君と私の方からは葉隠君が邪魔して見えなかったはずなのに、見つけたのが凶器だと当てて見せた」
霧切「二人の下敷きになっていて近づかないとハンマーを持っているのは分からなかったはず」
霧切「……なのに苗木君、あなたは凶器だと分かった。どうしてかしらね?」
苗木「そ、それは……」
葉隠(うろたえる苗木っち)
十神「決まりだな」
セレス「そのようですわね」
霧切「今回の事件のクロが行ったのは、まず十神君に睡眠薬を飲ませてどこかに監禁することだった」
霧切「最終的に十神君に罪を押し付けるつもりだったのね」
霧切「そしてそれに成功してからアルターエゴを盗み出して、同じく眠らせた十神君から盗んだカギで十神君の自室にそれを置く」
霧切「これも罪を押し付ける一環ね」
霧切「そして夜になって山田君と不二咲さんを呼び出して、不意をついて殺した」
霧切「その後で二人が殺し合ったかのように現場を整える」
霧切「そして今日の朝、また現場に来たクロはそこで朝日奈さんと鉢合わせした。そこでまずいものを見られたのかは分からないけど、クロにとってよっぽどの不都合が生じたから二人が殺し合ったと見せたのも放棄して朝日奈さんを殺した」
霧切「これが今回の事件の真相よ」
霧切「そしてそれが出来たのはクロでしか知りようのなかった数々の情報を知っていた――」
霧切「苗木君、あなたがクロよ!!」
葉隠(霧切っちに指された苗木っちは無言だ)
腐川「な、何か言いなさいよ……」
セレス「あらあら、ナイト候補でしたのに残念でしたわね」
十神「興が冷める。何とか言ったらどうだ?」
苗木「……そうだね。さすがにここまでバレたら誤魔化すのは無理かな?」
大神「……っ!? 苗木……まさか、貴様が……!!」
苗木「そうだよ」
苗木「僕が山田君、不二咲さん、朝日奈さんを殺したクロだ」
苗木「あーあ、おしゃべりが過ぎちゃったかな。事件とは関係ないところでバレるなんてね」
苗木「二人を殺し合ったと見せかけて、十神君が殺したと見せかける。……これでみんなの目を欺ける自信があったんだけどなあ」
セレス「どうしてこのような犯行をしたのでしょうか?」
苗木「あ、それは君たちの希望の踏み台になればと思ってね。そのために誰かの希望を犠牲にしないといけなかったのは惜しかったけど……」
苗木「まあ最近アルターエゴにハマって希望らしさを見失っている山田君と同じく希望らしさを失っている不二咲さんに犠牲になってもらうことにしたよ」
大神「……だったら、どうして朝日奈は……」
苗木「朝日奈さん? ……ああ、最初は殺すつもりは無かったんだよ。だけど、今日の朝もうちょっと現場を整えようとしてるところを見られてね。しょうがなくだったんだよ」
大神「しょうがなく……だと!?」
葉隠(今にも苗木っちに飛びかからんとしているオーガ)
霧切「止めて、大神さん。こんな人のためにあなたが拳を振るう必要は無いわ」
大神「だが! あいつのせいで朝日奈は……!」
霧切「気持ちは分かるけど、こんなクズを殴ってはあなたの拳まで汚れるわ」
苗木「クズ……って、ひどいなあ」
霧切「黙りなさい。これ以上しゃべらないで」
霧切「今のあなたを見ていると、私の大切な思い出が穢れていくようで不愉快なのよ」
葉隠(感情をむき出しにしているとは霧切っちらしくないべ。……それにしても思い出って、やっぱり……)
霧切「さあ、早く投票タイムに行って、モノクマ」
モノクマ「もう、クマ使いが荒いなあ。……分かったよ、もう議論は終わりってことでいいんだね」
葉隠「ああ、投票に………………」
葉隠(………………行っていいのか?)
葉隠(どうしてそんな風に思ったのかは分からない……。分からない……けど、霧切っちが結論を出したんだべ。投票に行って問題ないだろう)
葉隠(……だけど、今の霧切っちはいつものらしさが無い)
葉隠(思えば苗木っちを糾弾している間も、いつも以上に感情を表に出している感じだったし……苗木っち憎さが出ている?)
葉隠(俺の推測が当たっていれば、今の苗木っちに感情が揺れるのは分かるけど……)
葉隠(それで視野が狭くなっていたとしたら……)
霧切「どうしたの葉隠君?」
葉隠(俺は……どうするべきだ?)
葉隠「何にも無いべ!」
霧切「もう……煩わせないでほしいわね」
モノクマ「じゃあ意見も揃ったし、投票タイムと行くよ。クロだと思う人のスイッチを押してね」
葉隠(苗木っちのスイッチを押す……)
葉隠(前周回から合わせてずっと正解を導き続けた霧切っちのことだべ。間違っているはずが無いだろう)
モノクマ「投票が終わったみたいだね……じゃあ結果発表ーー!!」
葉隠(モノクマの声が裁判場に響きわたる。それと共に始まった)
みんなの顔の移ったスロットが回る……回る。
そして徐々に遅くなっていき――
????????の顔のところでスロットは止まった。
モノクマ「不正解--!!」
霧切「……え?」
モノクマ「みんなの連勝もここまでだね。超高校級って期待されてたけど、この程度だったなんて」
十神「な……この俺が負けただと……!?」
腐川「びゃ、白夜様が負けるわけが無いわよ! 嘘でしょう!!」
モノクマ「いいえ、そんなことありませんよ」
セレス「……っ!? ってことは、苗木君あなたまさか……!?」
葉隠「そうだべ……!」
葉隠(罪を認めた苗木っちがクロじゃないってことは……!?)
大神「いやそんなことがあり得るはずが……」
苗木「………………」
葉隠「どういうことだべ……苗木っち!!!」
苗木「…………………………………………」
========================
霧切「どうしたの葉隠君?」
モノクマ「ねえ、もう投票タイムに行っていいの?」
葉隠(どうやらまだ投票タイムの前みたいだけど……だったら今のビジョンは一体……?)
葉隠「………………」
十神「何をぐずぐずしている」
腐川「そうよ、白夜様のお手を煩わせないでよね……!」
葉隠(理由は無い。だけど……俺の直感からすれば今のビジョンは正しい……)
葉隠(もしこのまま投票タイムに行って、苗木っちをクロだって言ったらあれ通りのことが起きる……気がする)
葉隠(けど……そんなことみんなに言っても信じてもらえると思えないし……)
セレス「優柔不断な男はモテませんよ」
大神「何を迷っているのだ、葉隠。早くこの苗木に正義の鉄槌を……」
苗木「まあまあ、みんなちょっと待ってあげようよ」
苗木「相変わらず手厳しいね。……だけどさ、葉隠君は気になることがあるんでしょ?」
苗木「例えば……そうだね」
苗木「十神君が監禁されていた場所か、それとも死体発見アナウンスか……もしくは濡れていた死体とかかな?」
裁判中断!!
モノクマ「というわけで始まりましたモノクマ劇場パート2!!」
モノクマ「……まあ、目ざとい人は今回の裁判が前半後半じゃなくて、パート1、パート2って言ってるところで、この展開を予測できたんじゃないかな」
モノクマ「というわけでこじれだした裁判だけど……」
モノクマ「ヒントは苗木クンがしゃべったから特にいうことは無いかな」
モノクマ「というわけで短いけどモノクマ劇場は終わり!」
モノクマ「続きをお楽しみにーー!!」
裁判再開!
葉隠「監禁されていた場所……死体発見アナウンス……濡れていた死体……?」
霧切「そんな戯言気にする必要は無いわ、葉隠君」
苗木「戯言……か。まあ、それならそれでもいいんだけど」
葉隠(苗木っちが追い込まれたこのタイミングでは、何を言ってもただの時間稼ぎにしか思えない……)
葉隠(けど、本当にそうなのか……?)
十神「どうした、葉隠?」
葉隠「………………」
葉隠(追い詰められた苗木っちがどうしてヒントのようなものを口走ったのかは分からない……)
葉隠(けど、さっきのビジョンもあることだし、苗木っちがクロじゃない可能性も含めて一回考えてみるべきだべ)
葉隠(十神っちの証言によると、一階の共用トイレの中で目が覚めたという話だった)
葉隠(だから無意識にそこで監禁されていたと考えてたけど……改めて言われるとそれはおかしい)
葉隠(一度目が覚めた時の真っ暗な部屋というのも、電気さえ消せば成り立ちそうだが……そんないつ誰が来るか分からない場所で監禁をするのか?)
葉隠(昨日の昼から今日の朝まで、っていう長時間を?)
葉隠(クロにとって十神っちは最後に罪を被ってもらうための重要な存在だべ。見つかったら計画が破綻してしまう)
葉隠(つまり……最初はどこか違う場所で監禁しておいてからトイレに運んだ。この可能性が高いだろう)
葉隠(となると気になるのは……)
葉隠「なあ、モノクマ?」
モノクマ「なになに、葉隠クン?」
葉隠「捜査の時なんかおかしなことを口走っていたよな、睡眠薬のことについて」
十神「何だ、それは?」
葉隠「『就寝は宿舎の部屋で行いましょう』って校則の話だべ。それが睡眠薬を飲まされた時に適用されるのか、されないのか」
モノクマ「睡眠薬を飲まされたのは故意の就寝じゃないからね。罰するわけにはいかないよ」
十神「そういうことか。おまえは俺が嘘をついていないかを確認したんだな」
葉隠(……そんな意図は無かったけど……まあいいか)
葉隠「そしてもう一つ言ってたよな、適用されないのは睡眠薬を飲まされた場合のみって」
モノクマ「言ってたねえ」
大神「……どういう意味だ、それは?」
十神「くくっ……そういうことか」
十神「葉隠、つまりおまえはこう言いたいんだろう?」
十神「俺は監禁中一回起きてそこが真っ暗な場所であることを確認してから、もう一回寝てしまった……」
十神「このとき俺は校則を破ったことになるのか、ということだ」
葉隠「……そういうことだべ」
葉隠(これに対する答えは二つ……十神っちが嘘を付いているのか。それとも……)
十神「どうなんだ、モノクマ?」
モノクマ「んもう、こういうルールは推理の補助をするために課しているんじゃないんだけどなあ……」
モノクマ「まあ、聞かれたことには答えるよ」
モノクマ「その場合は校則違反になるね、自分の意志で寝たんだししょうがないよ」
大神「……っ! つまり十神は嘘を……!」
葉隠「いいや、可能性はそれだけじゃないべ」
腐川「だ、だったらどういうことなのよ?」
葉隠「もう一つの可能性……それは十神っちがに宿舎の部屋に監禁されていた場合だべ」
腐川「白夜様は自分の部屋に……?」
葉隠「いや、そうとは限らないべ。この校則は宿舎の部屋なら、自分の部屋じゃなくても大丈夫なはずだべ」
十神「まあ、アルターエゴが置かれていたことといい、俺の部屋で監禁されていてもおかしくはないがな」
大神「……自分の部屋だと、夜時間のアナウンスが鳴るはずだ。十神はそれを聞いた覚えはあるのか?」
十神「それは聞いたおぼえは無いな」
葉隠「その点、考えられるのはシャワールームに監禁された場合だべ。あそこなら遮音性も高いはずだからな」
セレス「一応シャワールームも自室……確かに考えられますわね」
葉隠(と、ここまで考えたけど結局は絞り切れていない)
葉隠(シャワールームに監禁されていた場合筋が通るけど……理由は分からないにしろ十神っちが嘘を付いている可能性もあるのだ)
葉隠(これ以上考えても確定はできない……なら他の方向から考えて――――)
霧切「だからどうしたっていうの?」
霧切「葉隠君、あなたの推理が間違っているとは言わないわ」
霧切「だけど……無駄なのよ」
霧切「苗木君は自分がクロだって認めているのよ? これ以上何を考えても意味が無いじゃない」
葉隠「そうだな。卒業できるのがクロ一人だけという条件を考えれば、霧切っちの考えが正しい」
霧切「そういうことよ」
葉隠「だけど……相手は狛枝化した苗木っちだべ」
霧切「……それがどうしたのよ?」
葉隠「そんな常識が通じる相手だと思うか?」
葉隠「苗木っちが言っていた二つ目。死体発見アナウンス。それについて考えてほしいんだべ」
霧切「今さら考えたところで…………っ!?」
葉隠(霧切っちも気づいたみたいだな)
葉隠「今回のアナウンスは山田っちと不二咲っちの分はオーガが見つけたときに鳴った。そして朝日奈っちの分は霧切っちが見つけたときに鳴った」
葉隠「死体発見アナウンスの条件、クロ以外の三人が見つけたときに鳴るっていうのが今回も変わっていなければ…………」
モノクマ「ああ、はいはい。今回もその条件で鳴らしましたよ」
モノクマ「全く……だからこれは推理の補助じゃないんだって」
葉隠「ということだから、山田っちと不二咲っちの時の三人は苗木っちがクロだとした場合」
葉隠「オーガ、そして証言から朝日奈っちは死ぬ前に二人の死体を見て――」
葉隠「そしてもう一人は誰なんだ?」
葉隠「同じことは朝日奈っちにも言える」
葉隠「今度の朝日奈っちは被害者だから、見た人物はオーガと霧切っち」
葉隠「こっちでも一人足りないんだべ」
十神「……一応聞いておこう。誰か死体を見て黙っているやつはいないよな?」
一同「………………」
十神「決まりだな。これでも言い出すやつがいないということは、前回の不二咲のように偶然見て黙っているパターンではないだろう」
腐川「つ、つまり…………」
大神「あまり考えたくないことだが……」
セレス「そうですね、この中にいるということでしょう」
葉隠「そうだべ――クロに命がけで協力する共犯者が」
葉隠(信じられないといった表情の霧切っち……俺だって信じたくはないけど……それしか考えられないのだ)
葉隠「そして共犯者がいると考えると苗木っちがクロである可能性は少ない」
十神「そうだろうな。このゲームで共犯するメリットの一つは一方が自分がクロだと言い張ることで、真のクロが卒業しやすいことだ」
十神「現在クロだと認めている苗木が本当にクロであるんだったら、わざわざ共犯者を用意する必要が無い」
葉隠「どうだべ、苗木っち!!」
葉隠(黙って成り行きを眺めていた苗木っちに指を突きつける)
苗木「………………」
苗木「ふふっ…………」
苗木「ふふふふふっ…………」
苗木「すごいね!! 本当にすごいよ!!」
苗木「僕が設置したトラップをここまで見破るとはね!!」
苗木「さすが超高校級の才能を持つ者たちだよ!!」
葉隠(認めた……!!)
葉隠(やっぱり苗木っちはただの共犯者で……クロではない。つまり――)
苗木「霧切さんが自信満々に僕をクロだって言った辺りで勝ったと思ったんだけどね」
霧切「どう……して……」
葉隠(霧切っちの推理は間違ってたんだべ)
葉隠(霧切っちは理詰めで物事を考えていくタイプ……)
葉隠(苗木っちがクロでしか知りえない情報を知っていた時点で、苗木っちがクロだと決めつけてしまった)
葉隠(普通に考えれば死ぬのにクロに協力するなんて考えられない)
葉隠(それに苗木っちに対する思いだったり色々が重なって……そこで思考が止まってしまったんだべ)
葉隠「………………」
葉隠(まあ、俺だってそんなに偉そうに言えた立場じゃない……苗木っちがあんなヒントを出さなければ……)
葉隠(……っと、そういえば)
葉隠「苗木っち、一つ聞いていいか?」
苗木「何かな、葉隠君?」
葉隠「どうしてあんなヒントを出したんだべ?」
葉隠(死体発見アナウンスのことを言わなければ、俺だって苗木っちがクロじゃないことに気付けなかっただろう)
葉隠「苗木っちに限って、あの土壇場で命が惜しくなったってわけじゃないよな?」
葉隠「………………」
苗木「そんなこと気にしている余裕はあるの?」
葉隠「え……?」
苗木「確かに葉隠君の推理は見事だったよ」
苗木「だけど、それは僕がクロじゃないって見抜いただけ」
苗木「――僕が協力した真のクロを見抜いたわけじゃないよね?」
葉隠「っ……!」
葉隠(確かにそうだが……)
苗木「結局その真のクロを見抜けなければ、みんなおしおきは免れない」
苗木「果たして山田君、不二咲さん、朝日奈さんの三人を殺したクロは誰だろうね?」
葉隠「………………」
苗木「一難去ってまた一難」
苗木「存分に足掻いて見せてよ! その先にこそ真なる希望は存在するはずなんだから!!」
裁判中断!
モノクマ「モノクマ劇場パート3の始まり、始まり~」
モノクマ「……ん、まさかパート3が来るとは思わなかったって?」
モノクマ「実を言うとね、ボクだって思ってなかったんだよ。だけど思ったよりも裁判が長くなったみたいだね」
モノクマ「それにしてもいやあ、苗木君が本性を発揮しているね」
モノクマ「裁判も盛り上がって来たけど……このパート一回もロンパしていないことは内緒だからね」
モノクマ「さて、次のパートで長かった裁判も終わりみたいだね」
モノクマ「……本当に終わるのか、って声も聞こえてくるけど気にしない気にしない」
モノクマ「それじゃ続きをお楽しみにーー!!」
裁判再開!
葉隠「真のクロ……」
葉隠(苗木っちに罪を被ってもらうだけでなく、三人も殺した悪意の塊のようなクロ……)
葉隠(それがこの中に……)
大神「何を悩んでいるのだ、葉隠」
葉隠「え?」
大神「真のクロなど分かりきっている」
葉隠「っ……!? そ、それは誰だべ!!」
大神「十神だ」
セレス「そうですわね、それが一番考えられます」
葉隠「ど、どういうことだべ!?」
葉隠(得心顔のセレスっちに聞く)
セレス「簡単なことですわ。この中で昨夜十時のアリバイが無いのは十神君だけ」
セレス「だけど、それを苗木君が監禁していたからクロじゃないって結論でしたわね?」
葉隠「……そうだったな」
セレス「ですけど、苗木君は共犯者。つまり彼は監禁したと嘘を付いた……それが一番考えられる可能性じゃないですか」
大神「アリバイ作りのようなものだな」
葉隠「確かに……そうは考えられるな」
葉隠(元々十時に自由に動けたのは十神っちだけ。他のみんなにアリバイがある以上、それ以外の可能性は無い)
葉隠(……そうか、このために十神っちは嘘をついていたんだな)
苗木「さあ? 僕の口からは何も言えないよ」
セレス「分かりきっていることを認めないで、往生際が悪いのですね」
苗木「そう言われても……ヒントはもう出し終えているし、サービスタイムは終わりかなって思ってね」
腐川「びゃ、白夜様!! う、嘘ですよね! 三人も殺したなんて!!」
十神「そうに決まっているだろう。俺は正真正銘監禁されていた」
十神「大体、俺がもし本気で卒業を狙うなら、こんなやつと組むはずが無いだろう?」
セレス「そうでしょうか、あなたなら使えるものは何でも使いそうな気がしますが」
腐川「そ、そうよ……! 白夜様が私じゃなくて、苗木を共犯に選ぶわけが無いじゃない……!」
十神「お前だけはありえん。絶対だ」
葉隠(議論が割れる)
葉隠(十神っちが嘘をついている可能性は考えてたし、理屈も通っている……)
葉隠(ただ……何かが引っかかる)
葉隠(何か、まだ見落としていることが……)
葉隠(こういうときは)
葉隠「霧切っち、何か気になることは無いか?」
葉隠(霧切っちが落ち込んでいる。超高校級の探偵として、推理を外したのがよっぽど堪えているのだろう)
葉隠「仕方がないことだべ。人間なんだから間違うことだってある」
霧切「だけど……」
葉隠「間違ってばかりの俺が言うんだから、間違いないべ!!」
霧切「………………」
霧切「ふふっ……そうなのかもしれないわね」
葉隠(霧切っちがほんの少しだけど笑みを見せる)
霧切「分かったわ、私もさっきまで苗木君に翻弄されていたから新たな推理を構築できてはいない」
霧切「だけど、一つ気になることがあるのよ」
葉隠「それは何だべ?」
霧切「苗木君が言っていた最後のヒント……濡れていた死体のことよ」
霧切「普通に考えれば濡れていたからどうした、って思うもしれない」
霧切「だけど勝手に死体が濡れることが無い、ていうのも分かるわよね?」
葉隠「そうだな」
霧切「つまり死体が濡れていたのには理由があるはずなんだけど……それは私にもまだ分からないわ」
葉隠「分かったべ、霧切っちサンキューな」
葉隠(さて、俺も考えてみる)
葉隠(死体が濡れているというこの状況)
葉隠(……)
葉隠(どうしたら、そんなことが起きる?)
葉隠(犯行があったのは夜十時。この内夜時間になると閉められる食堂の厨房は無いと考えてもいいと思うが……)
葉隠(だけど、残ったどれも三階の物理室からは離れている)
葉隠(これではそもそも濡れるはずが無いような……)
十神「ええい、だから俺はクロではないと言っているだろう!」
セレス「ではその証拠は?」
腐川「そ、そんなの悪魔の証明よ! 出来るわけが無いじゃない!」
大神「だったら十神がクロ……それだけだ」
苗木「ははっ、面白くなってきたね」
霧切「十神君は嘘を付いていたか、監禁されていたかのどっちかのはず。だけどその決め手が……」
葉隠(このままじゃ十神っちがクロになりそうだべ……)
葉隠(だけど、十神っちがクロじゃないっていう俺の直感を頼るとすると)
葉隠(霧切っちが言ってたように十神っちが監禁されていた話になるし)
葉隠(……けど、あの十神っちが監禁か)
葉隠(さっきの結論じゃ、どこかのシャワールームに監禁されていた可能性が高いって話だったけど………………)
葉隠「シャワールームに……監禁……?」
葉隠(シャワールームに監禁ってことは…………)
何かに気付いた葉隠の中でばらばらの断片だった情報が組み合っていく。
葉隠(これがこうなって…………あれが……そしてあのルール…………もしかしてクロは……)
葉隠「………………」
苗木「ん、どうかしたの葉隠君? さっきから黙ってばっかりだけど」
葉隠「いいタイミングで聞いてくれたな、苗木っち」
苗木「タイミング? どうかしたの?」
葉隠「それは……今回のクロがちょうど分かったところだべ!」
大神「本当か!?」
腐川「だ、誰なのよ、それは……」
十神「面白い、聞かせてみろ」
霧切「葉隠君……」
葉隠(みんなの注目が集まる中)
葉隠「山田っち、不二咲っち、朝日奈っちを殺し、苗木っちに共犯までさせて卒業しようとしたクロ。それは――」
葉隠(俺は自らの推理で導き出したクロを指さした)
怪しい人物を指名せよ!!
葉隠「セレスっち……だよな」
セレス「……わたくし、ですか?」
腐川「ほ、ほら、白夜様はクロじゃなかったのよ……!」
セレス「随分と面白い冗談……のつもりじゃないようですわね」
葉隠「ああ、そうだべ」
セレス「いいでしょう、では理由を聞きますわ」
十神「………………」
霧切「………………」
苗木「………………」
葉隠(十神っち、霧切っち、苗木っちが黙ったまま聞いている。俺の推理を聞くためだろう)
葉隠(一周目の裁判を引っ張っていた三人に見られるのは緊張するけど……)
葉隠(それでもやってみせるべ!!)
葉隠「というよりクロが一人だと明言された以上、今回の事件はこれだけがネックだったんだべ」
葉隠「十神っち以外全員のアリバイがある。どう考えても十神っちしかクロだと思えないこの状況」
セレス「そうですわね。分かっているじゃないですか……今からでも主張を変えても――」
葉隠「でも、厳密に言うとアリバイが無いのがもう一人いるんだべ」
セレス「っ……」
大神「誰なのだ、それは?」
葉隠「それは……察しの通りセレスっちだべ」
腐川「だ、だけどそれはあんた自身がアリバイの証人じゃないの……!」
葉隠「ああ、そうだべ。……そう、勘違いしていたんだべ」
葉隠「昨夜、俺と苗木っちとセレスっちは確かにポーカーをしていた」
葉隠「……けど、犯行時刻の十時はちょうど休憩をしていたんだべ」
腐川「休憩?」
葉隠「ああ。セレスっちがトイレに行くって言ってシャワールームに入って行ってな」
大神「そうなのか」
葉隠「だからその間セレスっちが何をしていたのかは分からないんだべ」
腐川「……ちょ、ちょっと待ちなさいよ。それは分かったけど、シャワールームにいたからって何が出来るのよ。へ、部屋の外と通じているわけでもないし」
葉隠「そんな必要はない。――だってセレスっちはシャワールームの中で二人を殺したんだからな」
葉隠「おかしいこと言っている自覚はある。けど、それ以外に考えられないんだべ」
腐川「だ、だけどどうして二人がそんな場所に……」
十神「監禁……か」
葉隠(さすが十神っち。理解が早い)
大神「監禁? ……まさか!」
葉隠「そうだべ。セレスっちとそして共犯の苗木っちは、シャワールームに罪を被せる十神っちの他に山田っちと不二咲っち……合計三人を監禁していたんだべ」
霧切「二人なら十神君と違って警戒心も少ない。睡眠薬を飲ませるのは簡単だったでしょうね」
十神「ふんっ、一人監禁するなら三人監禁しても手間は変わらないだろうな」
葉隠「だけど、三階の物理室なんて遠い場所まで運ばれては結びつけることも出来なかった」
十神「死体運搬の問題も今回のクロには共犯者がいる」
十神「セレスと苗木、どちらも力がある方ではないが、二人で協力すれば山田の死体だって運べるだろう」
霧切「睡眠薬を飲んだ十神君を図書室から運んだ時も、一人が見張り、一人が運搬ってこなせば何とかなりそうね」
霧切「……もしくはここでも苗木君の幸運が発動したのかもしれないけど」
葉隠「アリバイ作りには苗木っちが共犯者だとバレたときの為に二人の他にもう一人必要……そのために俺が利用されたんだべ」
葉隠「何か他にも考えはあったんだろうけど、わざわざ俺から話しかけてきて二人からすればカモがネギをしょってきたように見えただろうな」
十神「と、色々おまえがクロでも問題無さそうに思えてきたが……どうだ、セレス。反論は無いのか?」
セレス「……大有りに決まっていますわ」
葉隠「なら、言ってみるべ」
セレス「結局十神君でもそれは実行可能なのでは? ということですわ」
セレス「けれど、それが十神君が実行不可能なことを証明することにはなりません」
セレス「やはり苗木君という共犯者を一番上手く利用するなら、監禁していたという嘘でアリバイを作るのが効果的ですもの」
セレス「だからクロは十神君なのです。みなさん騙されないでください」
葉隠(やっぱりそう反論してくるか……。だけど……!!)
葉隠「だったら死体が濡れていた件はどうやって説明するんだ?」
葉隠「死体が勝手に濡れるなんてことはあり得ない。そこには必ず理由が存在する」
葉隠「セレスっちがクロなら、犯行現場はシャワールームの中だべ。水にいつ濡れてもおかしくない」
葉隠「だけど、十神っちがクロなら死体を濡らす必要は無いんだべ!!」
セレス「そうとも限りませんわ。十神君だって二人をシャワールームに監禁していた可能性がありますもの」
セレス「条件は同じですわ」
葉隠(いや、そうじゃない。……これで決着をつけるべ!!)
「ビチクソがあああ!!」
「私がクロなんてありえませんわ!!」
「超高校級のギャンブラー、セレスティア・ルーデンベルクですの!」
「わたくし、ロイヤルミルクティーしか飲みませんの」
「早くこの環境に適応するのをおすすめしますわ」
「いいから早く持って来い、このブタがぁぁぁ!!!」
「やすひろ? 誰ですかそれ?」
「この腐れラードがああ!!」
「餃子? ええ、好きですけど」
『十神君が二人をシャワールームに監禁した。そこで濡れたに間違いありませんの』
△男子
ルール□ ○の
×部屋
『男子部屋のルール』
葉隠「これで終わりだべ!!」 パリーン!
COMPLETE!!
セレス「……っ!!」
大神「そういえば……そんなルールがあったな」
葉隠「もし十神っちと苗木っちが協力していたら、どっちも男子。水の出るシャワールームは使えないんだべ!」
葉隠「どうだべ! これで参ったか!!」
セレス「……」
セレス「…………ふふっ」
セレス「………………ふふふふふふふふふふっ」
大神「ど、どうしたのだセレス……?」
セレス「参ったのか……ですって?」
セレス「そんなわけねえだろうが!!!!!!!!!!!」
葉隠(セレスっちの豹変……ようやくここまで追い詰めたか)
セレス「ビチクソがああああああ!!! まだだっつーの! みんな騙されているんですわ!」
葉隠(さて、ここからどうやってセレスっちに負けを認めさせるか)
葉隠(おそらくセレスっちは他の女子が監禁していたんだ、って言ってくるはずだべ)
葉隠(そうなったら、他の女子が犯行の時間いたのは全員部屋の外。この理由で論破して――――)
苗木「ねえ……セレスさん。そろそろ終わりにしない?」
苗木「僕が協力したのは君なんだからさ」
その場にいた苗木以外が黙り込んだ。
彼らの頭の中で思い浮かんでいたのは、言葉は違えど意味は同じ。
葉隠(共犯のはずなのに……どうして今バラしたんだべ!?)
葉隠(思えば苗木っちの行動には矛盾が多すぎる。共犯してセレスっちを卒業させたいかと思えば、途中のヒントや今の暴露だったりセレスっちを追い込んでいる)
葉隠(苗木っちの目的は一体……?)
苗木「みんないろいろ気になってるだろうけど……まずは裁判を終わらせようか」
苗木「モノクマ。投票タイムに入ってよ」
モノクマ「らじゃー! それじゃお手元のスイッチでクロだと思う人を指名してください!」
セレス「………………」
葉隠(仲間だと思っていた苗木っちに裏切られて、セレスっちが茫然自失中だ)
葉隠(可哀想だと思うけど……同情はしないべ)
葉隠(だってセレスっちは三人も殺したクロなんだから)
みんなの顔の移ったスロットが回る……回る。
そして徐々に遅くなっていき――
セレスティア・ルーデンベルクの顔の所でスロットは止まった。
裁判終廷!!
葉隠(ようやく決着がついた……)
葉隠(最初の二人が殺し合ったと推理したところから、十神っち、苗木っち、そしてまた十神っち……クロ候補が二転三転してやっと正解に辿り付けた)
葉隠(あのビジョンみたいな未来にならなくて良かったべ)
モノクマ「うぷぷっ、これで三連勝だね。今回こそは間違えるんじゃないかって思ってワクワクしていて……」
モノクマ「……まあみんなの絶望は見られなかったけど、セレスさんの絶望は見れたから良しとしようか」
セレス「………………」
葉隠(セレスっちはあれから一言も発していない)
霧切「それで、苗木君。ちゃんと説明してもらえるのでしょうね」
霧切「今回あなたがしたことについて」
苗木「あ、覚えてたんだ」
霧切「…………」
苗木「冗談だよ、冗談。ちゃんと説明するって」
大神「その前に、苗木……貴様には聞きたいことがある」
大神「朝日奈のことだ。……どうして朝日奈は殺されないといけなかった?」
大神「今までの説明を聞いたところ、貴様たちが殺す必要があったのは二人だけだったはずだ」
大神「朝日奈を殺したことで二人を殺し合ったと見せかける策も破綻した……どう考えても蛇足だ」
苗木「ああ、それか」
葉隠(そういえばそれに触れないで裁判終わらせてしまったな)
苗木「朝日奈さんを殺した理由なんだけど……まあ一言でいえば、しょうがなかったからかな」
大神「しょうがなかった……だと?」
苗木「うん。昨日は一日中気を張ったりして疲れたからね。葉隠君とのポーカーが終わった後、仮眠を取って死体の運搬は早朝に行ったんだ」
苗木「それ以外にもみんな夜型の生活が多いって理由もあるかな? 深夜よりも早朝の方が死体の運搬も気づかれにくいって思ったんだ」
苗木「それで設置が終わったころになって、朝日奈さんが近づいてくる音が聞こえてね。……隠れる時間も場所も無かったし、仕方なく殺したんだ」
苗木「僕らにとっても、朝日奈さんにとっても不幸な出来事だったんだよ」
大神「そんな理由で……」
霧切「今から苗木君の話を聞かないといけないし……それに」
大神「目の前のこいつを殴っても朝日奈は帰ってこない……」
霧切「ええ……そういうことよ」
大神「分かった。やめにしよう」
大神「……それにもし朝日奈がここにいたら、止めるだろうからな」
大神「苗木……貴様は朝日奈に助けられたのだぞ。感謝するんだな」
苗木「……助かったのかな? さすがに超高校級の格闘家である大神さんと戦って無事でいられる自信は微塵も無かったからね」
苗木「コロシアイ学園生活のルールから殺されることは無いと思ってたけど、半殺しは覚悟していたよ」
苗木「…………ほんと、あの会話を聞いた時から悪い予感はしていたけどまさか当たるなんてね」
葉隠(俺の方から見ながらつぶやく苗木っち。どういうことだべ……?)
霧切「そのペラペラよくしゃべる口は慎みなさい」
霧切「あなたが今話していいことは事件に関することだけよ」
苗木「……霧切さんも怖いなあ。分かったよ、話すからその冷たい目は止めてもらえる?」
霧切「まず、どうしてあなたはセレスさんに協力したのか……それからよ」
苗木「そこからか……長くなりそうだね」
苗木「いいよ、一つずつ説明していこう」
苗木「僕がどうしてセレスさんに協力したのかって話だけど……それはこの前も言った通り、真なる希望を生み出さんがためだよ」
苗木「学級裁判を乗り越えて、君たちの希望が一段と輝くことを狙って、ってことだね」
苗木「セレスさんに協力したのは……一番彼女が卒業したいと思っていたからかな」
腐川「け、けどセレスは一番この環境に適応しなさい、ってって言ってたじゃない……」
苗木「そうだね、事あるごとにそう言ってた」
苗木「だけど、僕は前から疑問に思ってたんだよ。それをわざわざ何回も口に出すなんて……まるで自分に言い聞かせているみたいじゃないか」
苗木「本当は一番自分がそう思っていないんじゃないかってね」
セレス『それで話っていうのは何ですの、苗木君?』
苗木『話ね……それはセレスさんの方がしたいんじゃないかな?』
セレス『……呼び出しておいてその態度。礼儀がなっていませんね』
苗木『ごめんごめん。いや、セレスさんは僕に確かめたいことがあるんじゃないかなと思ってね』
苗木『この前の裁判の後に言った、僕のクロに協力するって発言について』
セレス『……っ!?』
苗木『あの動機が発表されて、セレスさんの希望が大きくなった気がしてね。……大金を持って卒業したいんでしょ?』
セレス『………………』
苗木『違うかな?』
セレス『……はあ。そこまで見抜くなんて……あなた何者ですか?』
苗木『僕なんてそんな大した人じゃないよ。ただちょっと運がいいだけの高校生さ』
苗木『死を厭わない共犯者がこのコロシアイ学園生活でどれだけ有利になるかはセレスさんなら分かるでしょ?』
セレス『ええ、そうですわね』
セレス(少なくとも今思いついている共犯者を最後に殺す策よりよっぽど裁判を生き残れる可能性は高い……)
苗木『どうかな?』
セレス『お願いしますわ……と、言いたいところですが』
苗木『……?』
セレス『あなたが私に協力すると言っているのは、私に協力したいという理由からではない』
セレス『確か絶対的な希望を生み出すためって理由からでしたわよね』
苗木『そうだね。複雑な謎を持った学級裁判を乗り越えることで、超高校級のみんながまた一段と輝けると思うんだ』
セレス『……ですけど、私にはその目的が理解できない。だからこそ』
セレス『苗木君。その希望を生み出すためって理由であなたが途中で裏切るのではないか、という危惧が浮かぶのも分かりますわよね?』
セレス『それに気が変わって、自分が生き残りたくなったって私を吊し上げる可能性もありますし』
セレス『そんな爆弾を抱えながら行動するくらいなら、私一人でやりますわ』
セレス『というわけでこの話は無かったことに……』
苗木『ちょっと待って。その結論は早計じゃないかな?』
セレス『……何が言いたいんですか?』
苗木『いやいや、僕が信じられないから協力が出来ない……つまりセレスさんはそう言いたいんでしょ?』
セレス『そうですわ』
苗木『だったら……それに見合うだけの覚悟を示せばいいよね?』
セレス『何を……?』
苗木『モノクマ』
モノクマ『はいはい。さっき話してたものは用意したよ』
モノクマが取りだしたのはリボルバー式の拳銃だった。
セレス『リボルバー式の拳銃。……となると思いつくのは』
苗木『あはっ。超高校級のギャンブラーとなれば一回くらいやったことがあるのかな?』
苗木『今からするのはロシアンルーレットだよ』
セレス『……覚悟を見せるはずだったのに、ロシアンルーレットとは……どうもちぐはぐな気がしますが』
苗木『あ、そうだね。ちゃんと説明しないとね』
苗木『ロシアンルーレットと言っても、セレスさんにそんなことさせるつもりは無いし……撃つのも一回だけだから』
セレス『……?』
苗木『まあ、詳しくはこの銃を見れば分かると思うよ』
セレス『はあ…………って、これは!?』
装弾数六発の拳銃に、五発の弾が込められている。
苗木『そうだよ。僕が今からこれを一発自分に撃つ。それで死ななかったら、セレスさんに協力させてくれないかな?』
セレス『私に協力するため……それだけのために命を捨てるつもりですか!?』
苗木『何を言ってるの? 協力するからには僕は死ぬんだよ? 死ぬ気の覚悟なんてあたりまえじゃないか』
葉隠(六発中五発の当たりのロシアンルーレット……六分の五で死ぬ……)
葉隠「ほ、本当に苗木っちはそんなことをしたのか……?」
苗木「もちろんだよ。……あっ、仕込みとか何もしてないからね。それもそこのモノクマに聞いてみれば分かると思うけど」
モノクマ「苗木クンに渡したのは本物の拳銃だよ。あれはさいっこうにスリリングな催しだったね」
十神「結果は……聞くまでも無いか」
苗木「そうだね。僕がここに立っていることがそのまま結果だよ」
苗木「六分の一も引けないようじゃ、幸運なんて名乗って無いって」
葉隠(……狂っている。やっぱり苗木っちは一周目に比べておかしくなったべ)
苗木「そうやってセレスさんに協力することを取り付けた僕は自分が思いついていた計画をそのまま教えたんだ」
霧切「……やっぱりあなたが今回の事件を計画したのね」
苗木「セレスさんも同じように連続殺人は考えてたんだけどね。最終的には僕の計画に納得してくれたよ」
葉隠(セレスっちが考えてたっていうのが、前周回起こされた事件だろう)
葉隠(今周回は苗木っちが主導して事件が起こされたから、前回と大きく変わったんだべ)
霧切「死ぬ覚悟まで見せておいて……裏切るなんて」
苗木「霧切さんは勘違いしているよ」
霧切「勘違い……?」
苗木「セレスさんも同じように勘違いしていて……まあ都合がいいから放置していたけど」
苗木「僕が見せた覚悟っていうのはね」
苗木「セレスさんのために死ぬ覚悟じゃなくて、希望のために死ぬ覚悟だよ」
葉隠「……つまりセレスっちの不利になる様な発言も希望のためっていうことか?」
苗木「そうだよ。さすがに超高校級のみんなでも、死を覚悟した共犯者の存在は反則過ぎたのかな」
苗木「あっさり僕がクロで決着しそうになったところで気づいてしまってね。……条件をなるべくフェアに戻そうと思って、あんなヒントを出したんだ」
苗木「あんな決着じゃ絶対的な希望も生まれないからね」
葉隠「……?」
苗木「濡れていた死体のことだよ」
霧切「それは……他も何も、あなたが出したヒントじゃない」
十神「……いや、違うな。濡れていたこと自体がヒントだったってことか」
苗木「さすが十神君。気づくのが早いね」
葉隠「どういうことだべ?」
十神「考えても見ろ。死体が濡れていたのは水を使えるシャワールームにあったから、って推理をおまえはしていたが」
十神「どうして死体がある状況で水を出したんだ?」
十神「まさか死体がある状況でシャワーを浴びるようなことをするわけないだろう」
葉隠「……それは」
十神「水を出す理由があったとしても、だったら一緒に監禁された俺だけが濡れていないのもおかしな話だ」
十神「つまり……あの二人だけ濡らしてシャワールームという連想をさせるのも、苗木のヒントだったってわけだ」
苗木「やりすぎかなと思ったけど、結果的には活きたし良かったよ」
葉隠(この裁判……ずっと苗木っちの手玉に取られてたんだな)
苗木「……あともう一つの用意したヒントは……まだ使うから駄目か」 ボソッ
葉隠「ん? 何か言ったか苗木っち?」
苗木「いや、何でもないよ」
苗木「それで聞きたいことは他にあるかな?」
霧切「じゃあ最後に一つ。どうして裁判の最後、あなたはセレスさんと協力していたってバラしたの?」
霧切「まだ諦めるのは早かったように思えたけど」
苗木「いや、あのタイミングで十分だよ。あんな自暴自棄になったセレスさんじゃ、絶対的な希望に辿り付けるなんて思えなかったからね」
霧切「……そう。もういいわ」
モノクマ「うぷぷ、話は終わったみたいだね。じゃ、そろそろお待ちかねのおしおきタイムと行こうか!!」
葉隠「セレスっち……」
葉隠(セレスっちの今の心境はどんななのだろうか? 死ぬ覚悟を持って協力してくれたと思った苗木っちに裏切られて……そして夢への道が断たれる)
葉隠(三人も殺したのは許される行為ではない。でも……この決着は……)
モノクマ「あらあら、まだ抜け殻なの?」
モノクマ「絶望はしているんだけど……これじゃあ面白くないなあ」
葉隠(いや、考えても無駄だべ……)
葉隠(俺たちが生き残るためには……これしか方法が無かったんだから)
モノクマ「でも、ボクは仕事をこなすクマだってことで有名だからね」
モノクマ「やることはちゃんとやるよ!」
モノクマ「それでは張り切っていきましょう!!」
『セレスティア・ルーデンベルクさんがクロに決まりました。おしおきを開始します』
迫る足元の火も気にせず行っていたのは――後悔だった。
セレス(私としたことが……目が曇っていましたわね)
――――――――――――
ガチャン!!
セレス『…………………』
セレス『まさか……本当に成功させるなんて』
六分の五ロシアンルーレット。正気の沙汰とは思えないそれを、苗木は成功させた。
苗木『これで分かったかな? 僕は今死んでもおかしくなかった』
苗木『そんなことをしてまでセレスさんに協力したいってことは……つまり共犯者として死んでもいいってことなんだよ』
セレス『…………ええ、分かりましたわ。それにこれは私にメリットしかない契約です』
セレス『喜んでお受けするとしましょう』
苗木『そうか。……ありがとね』
――――――――――――
セレス(なんて言ってたけど……)
セレス(結局根本的な問題は解決していないことなんて分かっていましたわ)
セレス(苗木君の目的は私を助けることではなくて、絶対的な希望を見つけること)
セレス(それはロシアンルーレットをしたところで変わらない事実でしたのに)
セレス(私のために死の覚悟を見せてくれた……)
セレス(死んでもいいっていう忠義……まるでナイトみたいではないですか)
セレス(だから盲目的になって……)
―――――――――――――
セレス『それでは死体を運びましょうか』
苗木『うんそうだね……っと』
シャワールームの中、バランスを崩した苗木。そして手を付いたのはシャワーの取っ手だった。
セレス『きゃっ! 水が……』
苗木『あっ! ごめん、セレスさん!』
セレス『……いいですわ、それよりも早く運んでしまわないと』
―――――――――――――
セレス(あれも死体を濡らしてヒントにするための演技だったのですね)
セレス(全く……)
セレス(私は本当にこの環境に適応出来てなかったんですね)
セレス(コロシアイ学園生活のルール。クロは他の人に犯行がバレないようにすること)
セレス(それなのに共犯者というのを作った時点で……このルールに適応できてなかった)
セレス(負けたのもしょうがなかったということですわ)
セレス(まあ後悔してばかりではいけませんね)
セレス(来世では絶対に私の夢を……)
セレス(たくさんのイケメンをかしずかせる退廃的な生活を送って見せますわ)
最後の最期で後悔を振り払ったセレス。その顔は晴れやかだ。
セレス(しかし後悔ではないですが……気になることが残りましたね…………)
――――――――――――――――
セレス『今すぐ死体を運ばないんですか?』
苗木『そうだよ。今から仮眠を取って早朝に運んだ方が見つからないと思うんだ』
セレス『理屈は分かりますが……死体をここに置いて安眠なんて出来ませんし、全て片づけてからの方が……』
苗木『必要なことなんだ。だから、お願いセレスさん』
セレス『え、ええ……』
――――――――――――――――
セレス(苗木君があんなに死体を朝運ぶことに執着していたこと)
セレス(それと……)
苗木『まさか朝日奈さんがここに来るなんて……』
セレス『後ろから気絶させましたし、おそらく顔は見られていませんね』
苗木『だけど死体は発見されたんだ。殺すべきだね』
セレス『ですが……苗木君。ここは朝日奈さんをそのまま放置した方がいいのではないでしょうか?』
セレス『ここで朝日奈さんを殺しては、二人が殺し合っていないことがすぐにバレてしまいます』
セレス『最初の計画ではバレてもそのために十神君、いざというときの苗木君のクロ候補を用意してましたが』
セレス『朝日奈さんが二人を殺したんだって見せかけてもいいのではないでしょうか?』
セレス『気絶させてる朝日奈さんにハンマーを持たせれば……そうですね、葉隠君あたりならそう言ってくれそうですし』
苗木『――いいや、駄目だね』
セレス『……っ!』
苗木『ここで朝日奈さんを生かしては計画が破綻する。……気絶している時間も短くない。早く殺さないと』
―――――――――――――
セレス(朝日奈さんを殺すことを強行させたこと)
セレス(苗木君を疑わずにいましたが……この二つの行為もヒントとして行われたのでしょうか……)
セレス(……だとしたらさっきシャワールームのと一緒にみんなに明かさなかったのは何故……?)
セレス(他に何か理由があるとしたら……この二つにどんな意味が――――――)
ガッシャアアアアアン!!!!!!!!!!!!!!!!
葉隠「………………」
霧切「………………」
十神「………………」
モノクマ「あれあれ、みんな元気ないね?」
モノクマ「今までだったら怒ったり、悲しがったりしてたのに」
モノクマ「……あ、もしかして、おしおきされたのがセレスさんだからなの?」
モノクマ「三人も殺した彼女はもう自分たちの仲間なんかじゃない……だから」
葉隠「モノクマ……そこらへんにしておけ」
モノクマ「うわあ怖い怖い。少なくとも葉隠君は怒りすぎて何も言えないってことなのかな?」
葉隠「………………」
モノクマ「しょぼーん。無視されちゃった」
モノクマ「ああもう。これ以上いても面白くないから今日は帰るね」
そしてその場から消えるモノクマ。
腐川「びゃ、白夜様! お供します!」
十神「付いてくるな。目障りだ」
大神「……我も帰るか。これ以上苗木を見ていて自分を抑えられそうにない」
苗木「何ともすがすがしいほどに嫌われたね」
霧切「………………」
葉隠「………………」
葉隠(六人……か。随分と減ったな)
葉隠(裁判を勝ち抜いた達成感もこの光景を見ては薄れてしまう)
葉隠(全員で生きて帰るって決めたのに……こんなことになって……)
葉隠(霧切っちが俺の横を通り抜ける)
葉隠「ああ、そうだな……ん?」
葉隠(俺とぶつかるすれすれを通る霧切っち。交差するその瞬間、手に何か握らせて来る)
霧切「なら、さっさと帰るわよ」
葉隠(握らされたのは何かの紙か……? 開こうとすると霧切っちが急かしてくる)
葉隠(つまり……ここでは開くなってことか?)
葉隠(モノクマの監視カメラがあるだろうこの場所では)
葉隠「分かった。俺も帰るべ」
葉隠(裁判が終わって夜。俺は脱衣場を訪れる)
葉隠(そこには……俺を呼び出した先客が既に来ていた)
霧切「遅かったわね」
葉隠「すまなかったな」
葉隠(霧切っちが裁判後に渡したメモは『夜になったら脱衣場に来て。監視の目が無い場所で話し合いたい』とのこと)
葉隠(その呼び出しは俺にとってもちょうど良かった。裁判前に約束していた通り俺だって霧切っちに聞きたいことがあったから)
霧切「………………」
葉隠「………………」
霧切「どうしたの? 聞きたいことがあったんじゃないかしら?」
葉隠「それは……呼び出した霧切っちに先は譲るべ」
霧切「遠慮はいいわ。あなたの話からした方が私も話しやすいから」
葉隠(断定する口調。俺なんかが考えていることお見通しって訳か)
葉隠「分かった。じゃあ聞くけど――――」
葉隠「霧切っちも一周目の記憶を持っている。つまり、このコロシアイ学園生活は二周目なんじゃないか?」
葉隠(一周目だとか二周目だとかいう言葉に反応しなかったところで、俺の予想は当たっていたということなんだろう)
葉隠(それでも推理を聞くのは……探偵だからなのか?)
葉隠(まあいいか……。説明するとしよう)
葉隠「俺が霧切っちを二周目だと判断した理由は三つあるべ」
葉隠「まず一つ目は二回目の裁判の時だべ」
葉隠「その反応だと覚えてないようだな」
葉隠「霧切っちが俺に対して反論をしていたときのことだべ」
――――――――――――――――
霧切『言っておくけど、睡眠薬などを飲ませてから殴ったというのは無しよ。保健室は封鎖中だし、四階の科学室も開いていない……薬品を手に入れる術がないわ』
――――――――――――――――
霧切「そういうことね……まさかそんな失言をしていたなんて」
葉隠(理解が早いな)
葉隠「もし霧切っちが一周目なら、二階までしか解放されていない今の状況で四階に科学室があるということは分かるわけが無い」
葉隠「つまり霧切っちは四階まで解放された希望ヶ峰学園にいたことがあるということだべ」
――――――――――――――――
霧切『……そうだったわ。まだあの校則が……』
――――――――――――――――
葉隠「この『まだ』という発言。……それはいつと比較しての言葉だ?」
霧切「……どうやらまた失言だったようね」
葉隠「そういうことみたいだな」
霧切「それで三つ目は何かしら?」
葉隠(三つ目の理由……それは霧切っちも認めたがらないだろうが)
葉隠「最後は苗木っちに対する態度だべ」
葉隠「ああ。霧切っちは苗木っちのことを気にかけすぎなんだべ」
葉隠「俺の記憶じゃ、前の周回最初の内は苗木っちと霧切っちにはあまり接点が無かった」
葉隠「そして今周回は最初の裁判の時から、苗木っちは舞園っちを庇おうと自分からクロだと言い出したり狂っていた」
葉隠「加えて霧切っちは冷徹な人間だべ」
霧切「……誰が冷徹ですって」ギ口リ
葉隠(そういうところがだべ)
葉隠「まあつまり、霧切っちがあの狂った苗木っちを見た場合どう考えても見限るはずなんだべ」
葉隠「それなのに霧切っちは今の苗木っちに対して感情的になりすぎている」
葉隠「その理由は……前周回の苗木っちとの記憶にあるからじゃないか?」
霧切「………………」
霧切「…………」
葉隠「…………」
霧切「勘違いもよしてちょうだい。私が苗木君のことで感情的になるわけないでしょう?」
葉隠「え、だけど――」
霧切「まあ、あなたの推理は正解だわ」
葉隠「いや、ちょっと待つべ、霧ぎ――」
霧切「私もこのコロシアイ学園生活は二周目よ」
葉隠「…………」
葉隠(衝撃の事実のはずなのに……しまらないな)
霧切「変な邪推はしないでちょうだい」
葉隠「な、何も考えてないべ!!」
霧切「本当にそうなのかしら」
葉隠(相変わらず鋭い)
葉隠「……にしても霧切っちも二周目だったとはな」
霧切「それを言うなら私もよ。葉隠君が二周目だったとはね」
葉隠「霧切っちも最初から一周目の記憶はあったのか?」
霧切「ええ。……あなたが今までの犯行を止めようと頑張っていたことは理解しているわ」
霧切「だから、こう思うのでしょうね。どうして私も犯行を止めようと動かなかったのか……と」
葉隠「まあそうだな」
霧切「その理由だけど……私も私でこの事態をどうにかしようと動いていたのよ」
葉隠「どういう意味だべ? さっき言ってたことと矛盾してるぞ」
霧切「いえ、矛盾しないわ。私はこのコロシアイ学園生活より外」
霧切「どうして私たちがこんな二周目という奇怪な事態に陥っているのかを調べていたのよ」
霧切「最悪、みんなを助けることが出来ても三周目なんて事態になったら目も当てられないでしょう?」
葉隠「っ! それでどうして俺たちは……!」
霧切「残念ながら成果は出ていないわ」フルフル
葉隠(……霧切っちにも分からないのか。どうして俺たちがコロシアイ学園生活二周目に来ているのか)
霧切「大体、私たち二人だけ二周目っていうのもおかしいのよ。一周目生き残ったメンバーというくくりなら他の三人も記憶を持っているべきだけれど、そのような反応は見られない」
霧切「どういう理由で私たち二人だけ選ばれているのか見当も付かないわ」
葉隠「こうして二人通じることが出来れば色々と出来ることも増えるだろうし」
霧切「……そんな呑気なことも言ってられないわ」
葉隠「?」
霧切「まずはあの狂ってしまった苗木君。彼がいる限り私たちの一周目の記憶はほとんど役に立たない」
葉隠「それは……そうだな」
葉隠(事実三回目の裁判は全く違った形になった訳だし)
霧切「そしてモノクマが静かすぎる」
葉隠「……? いや、モノクマは一周目とほとんど同じ動きだべ?」
霧切「いいえ。その同じ動きだからおかしいのよ」
葉隠「……?」
霧切「一回目の裁判も占いって形で誤魔化しているけど捜査の前に苗木君のことをクロだって当てているわけだし」
霧切「それにことごとく犯行を阻止しようとしていることも監視カメラを通してばれているはずだわ」
葉隠「…………」
霧切「つまりモノクマにとって、あなたは占いなのかは分からないけれど、毎回犯行が起きそうな場所にいてそれを止めようとしている存在」
霧切「つまりこのコロシアイ学園生活を進めるうえで邪魔な存在なのよ」
葉隠「……で、でも、モノクマが直接俺たちに危害を加えることは出来ないはずだべ」
葉隠「このコロシアイ学園生活は外の世界の希望を持った人間たちを絶望に染めるために行われている」
葉隠「俺たち超高校級の才能を持った希望側の人間が殺し合うことを生中継することによってな」
葉隠「だからこそモノクマ自身が動くことは絶望が負けたことを意味して――」
霧切「モノクマ自身が動かなくても邪魔する方法はあるでしょう?」
霧切「現に私は一周目でそれを食らったじゃない」
葉隠(一周目、五回目の裁判。戦刃むくろの死体を使って引き起こされた裁判はマスターキーを持って学園内を調べていた霧切っちを狙い撃ちするためのものだった)
葉隠(そうだ。モノクマはルール内で俺たちを妨害する方法を持っている)
霧切「これも一周目には無かった出来事だから予想は出来ないけれど、用心はしておくべきね」
葉隠「分かった」
霧切「まあ、もしものときは私も協力するわ。モノクマにとって葉隠君に比べれば私は目立たない存在のはずだし、そこから動けることもあるはずだもの」
葉隠「よろしくだべ!」
一周目と大きく変わるものの、何とか乗り切った三回目の裁判。
三人の被害者。一人のクロ。合計四人の仲間を失うことになったが、一周目の記憶を持った霧切という頼もしい仲間も出来た。
狛枝化した苗木。モノクマの介入。
不安が増える中、果たして葉隠はこの先のコロシアイ学園生活を乗り切ることが出来るのだろうか。
C H A P T E R 3
欲 望 迷 宮
E N D
―――――――――――――――――
生存者残り 6名
TO BE CONTINUED
………………。
…………。
……。
<苗木の部屋>
苗木「残念ながら今回の裁判じゃ絶対的な希望は生まれなかったみたいだけど……まあみんなの希望を高めることは出来たみたいだし」
苗木(………………)
苗木(……? どうして僕は絶対的な希望なんて追い求めているんだろう……?)
苗木「……ま、いっか。次の仕込みも完璧だし――」
――――――――――――――――
<前日昼>
苗木(十神君を首尾よく監禁することも成功したし、山田君に睡眠薬を飲ませるのはセレスさんだけでも大丈夫だろう)
苗木(だから僕は僕ですることをしないとね)
苗木「やあ、朝日奈さん」
朝日奈「あ、苗木。どうしたの?」
苗木「………………」
朝日奈「……?」
苗木「えっと言いにくいことなんだけどさ……」
朝日奈「なになに?」
苗木「朝日奈さん太った?」
朝日奈「えっ!? ……やっぱり見て分かった?」
苗木「うん」
朝日奈「ううっ……最近ドーナツがおいしくてさ。食べすぎなのかな?」
朝日奈「0.5キロも太っちゃったよ」
苗木(けどそこは年頃の女子。そういうのには敏感だ。そこからコントロールして……)
苗木「たぶんみんな気付いてたんだろうけど、朝日奈さんを気遣って何も言わなかったんだと思うよ」
苗木「まあこんな監禁生活だし、食べることがやっぱり一番の楽しみだよね」
朝日奈「……さくらちゃんも気づいていて言わなかったのかな?」
苗木「だろうね」
朝日奈「………………」
苗木「………………」
朝日奈「よしっ! 私ダイエットする!」
苗木「といっても朝日奈さんって普段から運動しているよね?」
朝日奈「そうだよ。……まあそれでも太るくらいドーナツを食べ過ぎなんだけど」
苗木「……もしかして、ドーナツを食べる量を減らしてダイエットするつもり?」
朝日奈「え? そうだけど?」
苗木「それは駄目だよ。食べるものを減らすダイエットは体に良くないんだ。リバウンドもしやすいし、ストレスもたまりやすいし」
朝日奈「へえ、そうなんだ」
苗木「うん、だから今の運動量を増やす方針で行った方がいいと思うよ。例えば――」
苗木「朝にプールで泳ぐとかはどうかな?」
朝日奈「それいいね! さくらちゃんも誘ってみようかな!」
苗木「いや、大神さんに内緒でダイエットしてびっくりさせるっていうのもいいんじゃない?」
朝日奈「あ、それもそうだね。じゃあ一人で泳ごうかな。……さくらちゃんきっと驚くだろうな」
苗木「思い立ったが吉日。早速明日から始めてみたらどう?」
朝日奈「うん。こういうのは後回ししたらいけないからね!」
――――――――――――――――
苗木(朝日奈さんが三階の物音に気付くかは賭けだったけど……早朝の静かな学校内だったし、なるべく大きく物音をたてることで対処できた)
苗木(……ほんと、順調すぎて笑えて来ちゃうよ)
苗木「ふふっ……ふふふふっ……」
苗木「はーははっはあははははははははははは!!!!!!」
<第一の事件の夜>
桑田「俺の中に残っている記憶……」
桑田「それと同じ呼び出しメモ……」
桑田(つまりこの呼び出しに応じた先で、舞園ちゃんに殺されかけるっていうのか?)
桑田「……舞園ちゃんがそんなする訳ないだろ」
桑田(だけどここまで鮮明な記憶……?)
桑田「うーん……まあ危ない橋を渡るわけにはいかねえし、断ることに……」
桑田「いや、待て待て」
桑田(今をときめくアイドルからのお誘いだぞ?)
桑田(それを断るなんて……それこそもったいないオバケが出てしまう)
桑田(記憶の方は……気のせいだろ、気のせい)
桑田(それに夜に男を部屋に招くってことは……)
桑田「………………」
桑田「……行くか、大人になりに!!」
………………
…………
……
『死体が発見されました。一定の捜査時間の後、学級裁判を行います』
霧切「………………」ペラッ
カーペットの裏をめくる。
霧切「何も無いわね……」
霧切「………………」パカッ
鍋の蓋を開ける。
霧切「ここもね……」
霧切「………………」ズズッ
棚の裏を探る。
霧切「何も……ん?」
モノクマメダルを手に入れた!!
霧切「………………」
霧切「ここにも無いわね……この世界がループしている原因」
キャラ崩壊注意。
最初の自己紹介。
舞園「あれですよね、ローターを入れながらステージに立つと気持ちいいですよね!」
苗木「同意求められても困るよ」
霧切「私は探偵よ」
苗木「え、もう自覚しているの?」
霧切「その気になれば何でも調べられるわ……苗木君あなたのオナ○ーの回数だろうとね」
苗木「怖っ」
タエコディア・ルーデンベルク「私の名前はセレスティア……って、←の名前はどういうことですのっ!!?」
苗木「出落ちだね」
苗木「出落ちその2だね」
葉隠「俺の占いは3割当たる」
葉隠「つまり逆の目は7割で当たるということだべ」
葉隠「俺はその才能を生かして、逆占いを行い好評を得ているんだべ」
葉隠「二つの選択肢が50%と50%だったら、それを70%と30%に変えられるんだべ」
葉隠「特に重大な決断をしないといけないという大企業の社長からは良く重宝を……」
苗木(何だろう今までで一番真面目な人だけど……)
苗木(すっごい違和感が……)
不二咲「僕の名前は不二咲千尋! こう見えて男の娘なんだ!」
苗木「へ、へえ」
不二咲「かわいい女の子だと思ったのに残念? だけど安心して、苗木君! 僕は男だけど……どっちでも行けるクチだから!!」
苗木「そんな心配してない」
苗木「女子はみんな下ネタ言わないといけないのかな?」
大神「見た目は男、性別は乙女! その名も大神さくらよ!」 キャルーン!!
大神「よろしくね!!」 ニャン!!
苗木「……」←何も言えない
腐川「腐川冬子よ。……な、何よ気持ち悪い。あっち行ってよね」
苗木(何だろう……謎の安心を感じる)
石丸「石丸清多夏だ! 趣味はスカート捲りだ! よろしく頼む!!」
桑田「桑田怜恩です。夢はプロ野球選手です」
苗木(なんだろうな……とりあえずキャラの性格反転させればいいや、という雑な意図が……)
ヤマダ「んんっww 我の名前はヤマダですぞww」
ヤマダ「なみのりww ありえないww」
ヤマダ「ハイドロポンプに決まっているww」
ヤマダ「確率なんて、運の悪い雑魚の言い訳ですぞww」
苗木「論者乙」
江ノ島「ん、アタシ―?」
江ノ島「アタシの名前は」
霧切「あら戦刃さんどうしたの?」
舞園「戦刃さん、化粧上手くなりましたね」
ヤマダ「戦刃殿ww その恰好どうしたでござるかwww」
江ノ島「な、何言ってるのか分からないなー!? 私の名前は」
噛ませメガネ「戦刃だろ」
タエコディアルーデンベルク「あら、戦刃さんどうされましたか?」
江ノ島「だから、私の名前は!!」
江ノ島「いく」
「「「………………」」」
江ノ島「江ノ島盾子に決まってるだろ!!!」
苗木「頑張れ、残姉」
苗木(そんなこんなで始まったコロシアイ学園生活)
苗木「護身のための武器?」
舞園「はい、探してもらえませんか?」
<体育館前>
苗木「あ、奥の模擬刀とかいいんじゃないかな」
舞園「………………」
苗木「ん、どうかしたの、舞園さん?」
舞園「いえっ、その苗木君が下ネタを言うなんて思わなくて」
苗木「下ネタ……? 言ってないけど」
舞園「え? ですけど今『僕の模擬刀(意味深)とかいいんじゃないかな』って」
苗木「空耳だからね」
妹『お兄ちゃん元気ー?』
父『誠がしっかりやってるのか心配だぞ?』
母『大丈夫ですって』
苗木(久しぶりに見る三人の映像……だけど画面が切り替わって)
苗木(映るのはめちゃくちゃになった家のリビング)
苗木「な、何なんだこれは……っ!?」
苗木「あ、また画面が切り替わって……『この答えは卒業の後で!!』だって!? ふざけてるのかモノクマは!?」
苗木「くそ絶対に卒業しないと……!」
『はい、カット!』
苗木「………………?」
『あ、撮影お疲れ様でした!』
『希望ヶ峰もおかしなことするのね』
『それでこの後どうすればいいんだい?』
『あ、はい。このあと人類史上最悪な事件が起こるので保護シェルターに……』
苗木「………………」
江ノ島「残姉に撮影させたけど……ミスってないよなあ……?」
苗木「舞園さん!!」
苗木(動機のビデオを見た舞園さんが部屋を飛び出す)
苗木(追いかけた先で舞園さんが泣いているのを見つけた)
苗木「大丈夫?」
舞園「苗木君……」
舞園「私は……絶対に卒業しないと……!」
苗木(この反応……僕のビデオみたいに残念ではなかったんだろうな)
苗木「えっと……ビデオがどんな内容だったか聞いていい?」
舞園「その……私のグループの他のメンバーが……」
苗木「まさか……!? 殺されたとか!?」
舞園「いえ……」
苗木「あれ……?」
舞園「私がいない方が売れるよねーと口々に愚痴を言っていて……」
苗木「うーん……?」
苗木(何か……地味だな)
舞園「苗木君、いいですか?」
苗木「どうしたの、舞園さん」
舞園「部屋の交換をお願いできますか?」
苗木「どうして?」
舞園「あ、そそれは……」
舞園(マズい……理由を考えていなかった)
舞園「そ、その! 苗木君がの部屋にエ口本が無いかチェックするためです!」
苗木「よくその理由が通ると思ったね」
舞園「全く、どうして苗木君は嬉しそうじゃないんですか、女子の部屋ですよ、女子の部屋」
舞園「言っておきますけど、私の下着が入っている棚は左の一番上ですからね」
苗木「……えっと、どうしてそんなことを教えるのかな」
舞園「え、だって男子高校生が女子の部屋を自由にしていいとなったら漁りますよね?」
苗木「穿った見方だね」
舞園「あんまりぐちゃぐちゃにされるのも困るので、先に教えてあげるというやさしさ……これぞアイドルですよ!」
苗木「そんなアイドル誰も求めていない」
舞園「ティッシュが切れたら、右の棚の下に替えは置いていますので」
苗木「ねえ、何でティッシュが切れると思ったの? 教えてもらえるかな?」
舞園「……アイドルにそれを言わせようなんて、苗木君エッチですね」
苗木「ひどい横暴を見た」
舞園「大体原作はおかしいんですよ。私の部屋に入った苗木君が何もしないで寝るなんてそんなはずがありません!」
苗木「そこー原作とか言わない」
舞園「まあ18禁じゃないから描写されていないだけで、暗転したそこでは苗木君はきっと――」
苗木「ああ……頭の頭痛が痛い」
『死体が発見されました、一定の捜査時間の後学級裁判を行います』
苗木(そして舞園さんの死体が発見され、気を失い、学級裁判の説明を受けて、捜査時間である)
<苗木の部屋・シャワールーム>
苗木「舞園さん……」
苗木(どうして彼女が殺されないといけなかったんだ……)
苗木(彼女はあんなにいい人……いい人……)
苗木「いい人だったかなあ?」
苗木(モノクマが言うには僕たちの中の誰かが殺したって話だけど……)
苗木(その人物にも……この状況を作ったモノクマにも僕は憤っている)
霧切「苗木君、気力が充実しているわね」
苗木「あ、霧切さん」
霧切「分かるわ、憤っているんでしょう?」
苗木「……っ!?」
苗木(普段変なことを言っていても……やはり探偵。洞察力は優れて――)
霧切「どうしてシャワールームで殺されたのに、舞園さんは裸ではないのか……ってことよね?」
苗木「うん、全然そんなこと無かった」
霧切「レ○ププレイね」
苗木「胸に包丁が」
霧切「包丁プレイ……?」
苗木「後ろの壁にダイイングメッセージが」
霧切「死姦プレイかしら」
苗木「……一応聞くけど、霧切さんこの状況から何か分かった?」
霧切「クロは……着衣プレイとレ○ププレイと包丁プレイと死姦プレイが好きということね!!」
苗木「はいはい」
苗木(霧切さんが部屋の中で屈んで、床を見ている)
霧切「どうしたの、苗木君? 残念ながらその角度からではパンツは見えないと思うのだけど」
苗木「うん、捜査しようね」
霧切「それよりもこの部屋おかしいわよ」
苗木「え……何が?」
苗木(期待しないで聞いておこう)
霧切「苗木君、あなた綺麗好きかしら?」
苗木「まあ、そこそこには」
霧切「だとしてもこの部屋にいんも……陰毛一本すら落ちていないのはおかしいとは思わない?」
苗木「なんで言い直さなかったの?」
朝日奈「あ、苗木どうしたの?」
苗木「捜査しているんだけど、何か情報ない?」
朝日奈「情報……あ、そういえば昨日の夜食堂で舞園ちゃんを見かけたんだけど」
―――――――――――――――
朝日奈『あれ、舞園ちゃんかな。……何かモジモジしながら食堂入って来たけど』
朝日奈『舞園ちゃん、今日ってもしかしてあの日?』
舞園『え!? ……ええ、そうですけど』
―――――――――――――――
朝日奈「ていうことが」
苗木「話す必要あった?」
ヤマダ「んんっww 苗木殿どうかしたでござるかww」
苗木「ちょっと捜査にね、ここで何か分かったことは無い?」
ヤマダ「それがですなww 何と火が付きっぱなしなんですぞww」
ヤマダ「最後に使った時にはきちんと消したはずなのにww もしかして妖精のせいww」
苗木「……うーん?」
苗木(これは重要かもしれない……周辺を調べてみるか)
ヤマダ「服の燃えカスだったり、水晶玉の破片が無いですぞww 原作と違うではないかww」
苗木「どうしてそんなピンポイントなもの探しているの?」
苗木(まあ、確かにヤマダ君の言う通りだ。焼却炉の近くには何も無くて……)
苗木「あれ? これは……何かの棒かな?」
葉隠「模擬刀の後攻攻撃だべっ!」
大和田「ふええっ……凶器はナイフじゃないのぉ?」
江ノ島「そういや私死んでないけど大丈夫なの?」
苗木(白熱した裁判は佳境を迎える)
――犯人を指名せよ!!――
苗木(今までしてきた議論……クロはあの人しかいない……!!)
苗木「犯人は君――」
霧切「犯人はあなたよ、桑田怜恩君!!」
苗木「えー、被せて来ないでよ」
苗木(確かに……霧切さんは見当違いな捜査ばかりしていると思ったのに、どうやって桑田君に辿り付いたんだ?)
苗木(まさか……あれは演技?)
霧切「ふふっ、この証拠が決め手だわ!」
苗木(霧切さんが見せたのは……何かの本?)
霧切「『ダンガンロンパ 完全攻略』……この本にあなたの犯行は全て書かれているのよ!!」
苗木「攻略本……っ!?」
苗木(うん、確かに僕もそう思う)
桑田「言い訳はよしなさい。ダイイングメッセージがあなたを示しているのも、トラッシュルームを使うためにガラス球を使ったのも全部――」
苗木「あー、霧切さん、ちょっと言いづらいんだけど」
霧切「何よ……苗木君」
霧切「本編では『分かるわよね、苗木君』しか言えなかった分、ここでは探偵らしく推理を披露しても」
苗木「いや、攻略本見てるなら推理ちゃうやろ」
苗木「それに……桑田君はクロじゃないよ」
霧切「………………え?」
苗木「それは原作の攻略本でしょ。キャラの性格が変わっているのに、同じことが起こるわけがない」
苗木「単純に言って、今の真面目な桑田君は舞園さんの誘いに乗るはずが無いんだよ」
霧切「だったら……誰が!?」
苗木「それは……この世界で舞園さんの誘いに乗りそうな軽い人間」
苗木「トラッシュルームに落ちていた棒みたいなものから推理するに……」
苗木「石丸君、犯人は君だよね」
石丸「……っ!」
苗木(圧倒的違和感……っ!)
苗木「ごほんっ……えっと、それは指し棒だよ」
苗木「石丸君は超ロング指し棒を持っていて、それを使って鉄格子の外から焼却炉のスイッチを押したんだ」
苗木「そして指し棒の先に服をかけて焼却炉に放り込む……までは良かったんだけど、最後の最後焼却炉のスイッチを消す際に指し棒が折れてしまった」
苗木「結果現場に証拠が残ったんだよ」
石丸「くっ……そこまでバレているとは」
モノクマ「さてっ、じゃあ投票に行きましょうか!」
モノクマ「うぷぷっ、大正解! 舞園さやかさんを殺したのは石丸クンでしたー!!」
苗木(何とか裁判を終えた……だけど、まだ釈然としないところがある)
苗木「どうして……どうして彼女を殺したんだ!!」
石丸「舞園君を殺した理由……」
苗木「…………」
石丸「それは……アイドルなのにあんな下ネタばっかり言ってて幻滅したからだよ!!」
苗木「ああ(納得)」
霧切「それで、二人のことはどうするの苗木君?」
苗木「僕は舞園さんも、石丸君のことも全部引きずって生きていく……!」
霧切「そう」
苗木「ところで霧切さん、どうして僕が二人のことを考えてるって……」
霧切「エスパーだから」
苗木「……え?」
霧切「冗談よ」
コロシアイ学園生活の幕は開けたばかり。
僕たちの戦いはこれからだ。
終わり、てか終われ。
葉隠「強くてニューゲーム……って二スレ目だべ!?」
元スレ
葉隠「強くてニューゲーム……って、俺がだべ!?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1402841268/
葉隠「強くてニューゲーム……って、俺がだべ!?」
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