輿水幸子「うまくいかないもの、ですね」
「ありがとう」
ボクは輿水幸子。アイドルです。
このちょっと冴えない男の人は、ボクの担当プロデューサー。
そして、彼は明日、結婚します。
「そうか?」
「まさかアナタみたいな人が、あんな美女とお付き合いして結婚までできるなんて」
「ひどい言われようだな」
「全部ボクのおかげですから、感謝してくださいね」
「なんでだよ」
彼はそう言って笑いますが、考えれば自明のことでしょう。
ボクがボクのカワイさで、アイドルとしてがんばったおかげで、あの人に出会えたんですよ。
そう、新婦さんもアイドルなんです。……元アイドル、になるのかもしれませんね。結婚した後も続ける人は、少ないですから。
「ありがとう」
「当然のことですよ、ボクのプロデューサーともあろう人が、不幸せな結婚生活を送るなんて許されません」
「そういうものか」
「そうです」
幸せになってほしい。……そう心から思えたらよかったのに。
でも、それを言うわけにはいかないから……。こうして、ボクはいつも通りのボクのフリをしています。
……なんて、おかしいですね。
なら、どうしてこんなところにPさんを呼び出して、二人だけで話なんかしているんでしょう。
本当に臆病な、ボクは……カワイくないです。
「……なんです?」
「お前の気持ちを……言葉にしてもらっても、構わない」
……この人は、何でもお見通しです。そう、これまでと同じです。
ボクが隠し事をできたことなんて、一度もありませんでした。
でも。
「…………バカですね」
「そのくらいの覚悟はある」
「……全部っ、全部言いますよ?」
「……いいよ」
それなら。
今だけは、みっともなくてもいい、カワイくなくてもいい、本音を言おうと思います。
そうしたら、何かが変わるんでしょうか? そう信じずにはいられませんでした。そう信じたかった。
だから、ボクは言います。
「けど。アナタに一番ふさわしい人じゃ、ありません」
「もっと、もっとふさわしい人がいます」
「それはボクです。輿水幸子です」
「……」
「どうして? どうしてなんです、どうしてボクじゃダメだったんです……。ボクが、14歳だからですか?」
「もっと早く生まれたかった……もっと、遅く出会いたかった……」
「ボクが、子供じゃなくて、アナタと並んでいられる大人になってから、アナタのアイドルになりたかった……」
「……」
「あは、そうですよね。……ボクなんか、あんな綺麗な人に比べたら……」
「悔しい……。どうしてボクはあの人じゃないんですか……アナタに選んでもらえる、あの人じゃないなんて……」
「……」
「結婚なんかしないで……。ずっと、ボクの側にいて……。あと、少しだけ待っていて……ボクだって、あと少しで結婚できるんです……お願いします……。なんでもします……」
「……みっともない……ぐすっ、ほんと、こんなのだからアナタは愛想を尽かしたんですよね。ボクみたい、な、ボクみたいなのじゃ……」
「……」
「もっと早く言えばよかった」
「……あの人とアナタの距離が縮まっていくの、わかっていたのに。でも、怖くて……何もいえなかった」
「もしも……」
「もしも、もっと早く言っていたら……」
「ボクと……」
「……」
「終わった話です」
「ボクは、まだアナタが好きだけど……」
「……諦めます」
「……明日からは、いつもの輿水幸子です」
「……」
「だから、今日だけは……」
「ボクの……こ……」
「……………………」
「ボクの、…………」
「プ、プロデューサー、で、いて」
「……ああ」
「…………ぁあ……」
「…………やだ……」
「……でも…………」
「………………でも」
「……あり……と……」
「……うぁああああ……」
ボクはずっと泣いて、泣いて。
あの人は、そんなボクの側にいてくれました。
……それでも、ボクは翌日、ちゃんとあの人の結婚式に行きましたよ。エラいでしょう?
健気なボクはカワイイですね。
不思議と、新婦さんと並んでいるあの人を見ても、心がそこまで痛みません。
……ボクは、気持ちを全部ぶつけました。
そして、あの人は何も言わず、聞いてくれた。受け止めてくれた……きっとそうだと思います。
みっともなくて、カワイくない……ボクと。
ずっと、あの人と一緒に歩いてきた、カワイイボクが。
だから……。きっと、さびしいだけじゃありませんよね。
……ね、そうですよね……?
こうして、ボクの一生に一度の恋は終わりました。
重たいですか? でも、本気だったから。仕方ないですよね。
……本気だったんだもん……。
ボクの目から、また涙がこぼれます。
でも、ボクは笑顔が一番カワイイから。……そう、貴方が言ってくれた事を覚えているから。
涙を流しながら、けど、笑ってあなたを見送ります。
ご結婚、おめでとうございます。
……私の、プロデューサー。
おわり
もう少し落ち着いて書けばよかったなと思います
拙いssをそれでも読んでくださった方、ありがとうございます
元スレ
輿水幸子「うまくいかないもの、ですね」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1474906696/
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コメント一覧 (30)
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- 2016年10月04日 15:21
- まあ現実に幸子はいないし、俺は独身の童貞なんですけどねwww
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- 2016年10月04日 15:26
- 結婚したのか!?俺以外のやつと…
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- 2016年10月04日 15:28
- ※2で草生えた
なんという瞬発力
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- 2016年10月04日 15:35
- 幸子ォ!良い女だぞ幸子ォ!
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- 2016年10月04日 15:36
- ※2ふぁっ!?なんだこのおっさん!(驚愕)
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- 2016年10月04日 15:55
- 幸子のことなら安心するといい。彼女の『成功』は、保証しよう。←幸せは保証してない
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- 2016年10月04日 16:11
- 覚えてろマクギリス……地べたを這い泥水をすすってでもギャラルホルンに戻ってきてやる……
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- 2016年10月04日 16:15
- 傷心の幸子を慰めれば俺にもワンチャンある!
辛かったよな、今日は好きなところに連れて行ってやるぞぉ!
大丈夫、14歳はストライクゾーンど真ん中だぁ!!
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- 2016年10月04日 16:19
- ※7
じゃけん仮面付けましょうね~
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- 2016年10月04日 16:22
- ずっとプロデュースされてきたのに14歳なのか・・・
あれ、どうしたんですかちひろさry
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- 2016年10月04日 16:22
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よっしゃ!傷心の幸子と合体すんべ(ボロロン)
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- 2016年10月04日 16:22
- 俺は大好きだよこういうの
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- 2016年10月04日 16:48
- 幸子が勝つには殲滅包囲陣しかないな
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- 2016年10月04日 16:48
- 凛「ごめんねプロデューサー貰っちゃって、えーと名前何だっけ?」
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- 2016年10月04日 16:53
- 「あの人」は美優さんだと思ってる
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- 2016年10月04日 16:54
- 幸子のこういうところが好きだわ
切ない系のssでの幸子は本当にいい味出してると思う
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- 2016年10月04日 17:01
- ※14
ふふっ・・・幸子ちゃんが14歳という事は凛ちゃんは15歳。結婚できませんねぇ
やはり16歳のまゆしかありえませんよぉ
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- 2016年10月04日 17:13
- Pと結婚するあの人って多分あの人だろ。ほら、名前を呼ぶことすら憚られる例の蛍光緑の……
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- 2016年10月04日 17:17
- ※18
ドン・サウザンドリバー「我がお前の記憶を書き換えたのだ…あと貯金額も」
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- 2016年10月04日 18:06
- ※18
ネタコメントをドヤってる所の悪いけどせめてSSを読んでからコメントしようね
学校とか会社でもお前そんな感じなんだろ?
それじゃ世の中やってけないよ
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- 2016年10月04日 18:07
- アイドルはアイドルを引退した時に止まってた時間が一気に流れるからね
だから…ナナさんはアイドルを続けるしか道が無かったんだ…
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- 2016年10月04日 18:20
- いっこ上のSSで「結婚できる年齢の女はババア」っていってたわ
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- 2016年10月04日 19:44
- 人生は上手く行かないもの。
わかってはいるけどね…。
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- 2016年10月04日 19:57
- 幸子「くたばっちまえ」
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- 2016年10月04日 22:09
- ※25
アーメン
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- 2016年10月04日 23:01
- 幸子ぉ、さっきさ何でもしますって言ったよね
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- 2016年10月05日 00:42
- このあと幸子ちゃんがさびしく孤独に生き、
プロデューサーの葬儀が終わると後を追うように死んでしまう続きください
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- 2016年10月05日 01:07
- ずっと って…
14のままなら精々10ヶ月程度じゃん
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- 2016年10月05日 01:21
- 完全にホモだこれ※2
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- 2016年10月05日 03:16
- 14歳からプロデュースしたとは限らないんじゃね?
まあゲームの設定準拠ならそうなるけど