カトレア「ここがイッシュ地方・・・!」
カトレア「ええ。」
コクラン「旦那様からお許しが出たのは喜ばしいことですが、私はやはり―」
カトレア「心配してくれてありがとう。でもアタクシもいつまでもアナタに甘えてばかりいられないわ」
コクラン「・・・お嬢様」
カトレア「それにアタクシ、今うれしくって笑顔になってしまうほどなの。恥ずかしいけどね」
コクラン「そうですね。ポケモントレーナーの旅はお嬢様の夢でもありましたからね」
カトレア「コクラン、今までありがとう。ワタクシの代わりにキャッスルバトラーとしてその任を全うしてくれて」
コクラン「いえ、当然でございます。お嬢様の望むバトルをお見せできるのならばそれ以上私は何も」
カトレア「アナタのおかげでアタクシもたくさん学べたの。だから今度はアタクシの力を試しに行くの」
カトレア「大丈夫よ。アタクシにはこの子達がついている。」
コクラン「お嬢様・・・」
カトレア「それに、シロナさんが最近研究で足を運んでいるそうなの。向こうに着いたらいろいろ教えて頂くわ」
コクラン「わかりました。くれぐれもご無理をなさらずに」
カトレア「ありがとう。」
「間も無く出航いたします―」
コクラン「お嬢様!なるべく旦那様と奥様にお手紙をお願い致します!」
カトレア「わかってるわ!お父様、お母様によろしく!そしてコクランも元気で!」
コクラン「良き旅を――!」
テレパシーでポケモンと心を通わすことでバトルにおいてその力を遺憾なく発揮し
みるみるその才能を開花させた
しかし、まだ幼かったカトレアはあるバトルで感情の昂ぶりを制御できず、未熟なままの力を操りきれず暴走させてしまった。
それ以来ポケモンバトルの禁止――
大好きなバトルができず、コクランの戦いを見ることしか許されなかった
未熟さを痛感し、それを克服するための血の滲む努力の日々
自分の大切なポケモンと一緒にバトルをしたい、その一心で鍛練を重ね・・・
コクラン「お嬢様・・・本当に大きくなられて」
コクラン「心配していないと言えば嘘になりますが・・・」
デンジ「コクランさんじゃないか」
コクラン「――これは、デンジ様。こんにちは」
コクラン「そうです。カトレアお嬢様の門出でございましたね」
デンジ「そうか、行ってしまったか・・・少し残念だな」
コクラン「私も同じ気持ちではありますが、デンジ様のそれとは少々違う形でございますね」
デンジ「ふっ、どうせなら一回戦ってみたかったな。強いんだろ・・・?」
コクラン「左様でございます。お嬢様は・・・お強いですよ」
デンジ「だろうな・・・あのトレーナーと戦って以来全然強い奴が来やしない。俺も彼女みたいに旅してみようかな」
デンジ「貪欲だな・・・だからこその強さか・・・」
コクラン「デンジ様もいかがです?クロツグ様、ネジキ様、猛者が勢ぞろいですよ?」
デンジ「そうだな・・・暇があったら行ってみるか。もしかしたらあいつとまた戦えるかもしれないしな。」
コクラン「お越しいただければお茶をお出しいたしましょう」
デンジ「わかった」
ミカン(アカリちゃん元気かな・・・)
カトレア「すごい・・・こんなにもビルが建ち並んで・・・初めて見る景色だわ・・・!」
カトレア「ここから・・・アタクシの旅が始まるのね・・・!」
初めて踏みしめるイッシュの大地、感じる風、香る潮
その全てがカトレアの心を揺り動かす
アーティ「おや、なんだかすごいインスピレーションを感じるねぇ」
カトレア「・・・?どなた?」
アーティ「僕はアーティ、ここヒウンシティのジムリーダーさ」
カトレア「ジムリーダー・・・」
カトレア(ちょっとわけがわからない・・・)
カトレア「それで・・・アタクシになにか?」
アーティ「特に用ってわけじゃないんだけど、ちょっと僕、これからヤグルマの森で創作活動のインスピレーションを芸術的に感じに行こうと思ってね」
カトレア「ヤグ・・・森・・・?」
アーティ「知らないのかい?スカイアローブリッジを渡ってすぐの・・・あ、」
アーティ「君はイッシュ地方は初めてかい?」
カトレア「ええ、シンオウ地方・・・南の方から来たの」
アーティ「シンオウ・・・聞いたことあるねぇ」
カトレア「インスピレーション?」
アーティ「ちなみに、自然にふれて得られるインスピレーションもそうだけど、君のように麗しく純粋なハートのトレーナーからもいい芸術が生まれるんだよ」
カトレア「・・・アタクシがトレーナーだと、知ってるの?」
アーティ「知ってるというか、そう感じるんだよねぇ。僕ジムリーダーとしてたくさんのトレーナーと戦ってるし。ジムに挑戦しに来たのかい?」
カトレア「アタクシはまだまだそんなものじゃないわ・・・それにアタクシは新しいポケモンに出会うために旅を始めるの」
アーティ「ふぅん、旅ね。いいねぇ、ひたむきに自分の道を探しながらも仲間と共に力を合わせ苦難を乗り越える・・・!純情ハートが刺激されるねぇ!」
カトレア「・・・」
アーティ「うん、なかなかいいインスピレーションだ!早速自然の調和を元にさらに練りこみに行くとしよう!」
カトレア「?」
アーティ「これはささやかなお礼だよ。はい」
カトレア「タウンマップ・・・?」
アーティ「まだこの地方わかんないところばかりでしょ?旅をするには必需品さ!」
カトレア「ありがとう・・・早速使わせていただくわ」
アーティ「この地方は純情ハートが刺激されるポケモンでいっぱいさ。君にとってベストなパートナーがきっと見つかるよ!」
アーティ「あーそーだねーキミー、むしポケモン使いなよ」
カトレア「結構ですわ」
アーティ「・・・ポケモン達との出会いを繰り返していい青春を送るんだよ!」
カトレア「ええ」
自身の能力に誘われるよう、新しいポケモンとの出会いを求めヒウンを発ち
北へと進むカトレア
カトレア「ヒウンとは違った賑やかさね・・・」
カトレア「・・・・・感じる」
カトレア「街の外れ・・・5番道路かしら・・・」
カトレア「アタクシのインスピレーションが――」
カトレア(インスピレーション・・・彼のが移ったかしら・・・)
カトレア「まぁいいわ、早速準備を」
旅支度を整えるためポケモンセンターへ
旅の疲れを癒す者、遠くの人と通信をする者、ポケモンの情報交換をする者
たくさんのトレーナーが集い、ジョーイさんやタブンネが織り成す和やかな雰囲気に浸るカトレア
シンオウより唯一連れてきたパートナーのいるモンスターボールに語りかける
カトレア「ここでのサービスを受けてみるのも悪くないかもね・・・」
カトレア「ちょっと休んでいく?」
カトレア「そう」
テレパシーで通わし、返答を聞く
タブンネ「タブンネ~♪」
カトレア「この子をお願い」
ジョーイ「預からせていただきますね。しばらくしたらお呼びいたします♪」
カトレア「ありがとう」
パートナーを預け、旅支度に取り掛かる
カトレア「ひとまず・・・モンスターボールと薬をいくつかね」
商品をカゴに次々と運ぶ
カトレア「これくらいで・・・いいかしら」
カトレア「足りなくなればまた頂に来ればいいしね」
カトレア「・・・・・ちょっとカバンに入りきらない・・・かしら」
その光景を目撃したショップの店員が慌てて駆け寄る
店員「ちょ、ちょっと、お客様!困りますよ!」
カトレア「え?」
店員「レジを通されてからにしてくださいよ!」
カトレア「あの・・・なにか?」
店員「え、いや、ですから、まずお金を払っていただいてから、そのですね」
カトレア「あら、そうなの?そういうことなのね。ごめんなさい」
店員「・・・?なんですこれ?」
カトレア「カードでよろしいかしら?」
店員「カード・・・すいません、これ・・・なんですか?」
カトレア「ですから、クレジットカードですわ。これでお支払いができるんでしょう?」
店員「あぁ・・・クレジットでのお支払いはできますが・・・すいませんが、このカードは使えないんですよ」
カトレア「どういうこと?お父様はこれを普通に使ってましたわ。使えないことはないはずよ」
カトレア「どういうことですの?」
困惑する店員と同じく状況がいまいち理解できないカトレア
カトレアの身なりや雰囲気で、お金がないからやっているわけではないとわかっているが故に対応に困る店員
そのめずらしいちょっとしたやり取りがいつの間にか周りの人間の目を集めていた
その騒動に気づいた少女が渦中のカトレアに近づく
カトレア「どうしてもダメなのですか?」
店員「ですから、決まりといいますか、使えないものは使えないので・・・」
???「じゃ、これならいいでしょ?」
急に現れた少女からカードを渡される店員
一瞬わけがわからなかったが、手元にあるカードは十分支払い可能なカードであった
店員「確かに使えますが・・・あの・・・」
怪訝な表情を浮かべる店員
それもそのはずだ
いきなり現れたカトレアとは関係のない人間からカードを渡されるのだ
いくら支払いができるからといって怪しさは拭えない
ましてや少女とはいえ、ハンチングを深く被り大きなサングラスをかけているのだからなおさらだ
店員「ですが・・・」
店員の煮え切らない態度の理由に気づいた少女がカトレアに投げかける
???「妹の代わりに払うんだもん。別に良いでしょ?」
サングラス越しに目配せを受け、とっさに返すカトレア
カトレア「え、ええ・・・お姉様」
店員「・・・はぁ」
腑に落ちないながらも会計を受け付ける店員
騒動が終わりいつもの様子に戻ったポケモンセンターのロビーに腰をかける二人
店員以上に困惑を隠しきれず、カトレアが尋ねる
カトレア「あの・・・」
???「ん?」
カトレア「さっきは・・・ありがとうございます」
???「ふふっ、いいのよあれくらい、それよりも」
カトレア「?」
???「あなたって面白い人ね!」
???「振る舞いは上品なのになんか抜けてるというか・・・休憩中なんだけどつい手を貸したくなっちゃったわ」
カトレア「抜けてる・・・」
???「ふふっ、可愛いってことかな」
カトレア「あの――」
タブンネ「タブンネ~♪」
ポケモンの回復が終わり、丁寧にボールを返しに来るタブンネ
???「あら、あなたのかしら?」
カトレア「はい」
???「あなたもトレーナーだったのね」
カトレア「そうです・・・けど、まだまだですけど」
???(この娘・・・なかなか強そうね・・・!)
???「シビレちゃいそう―(ボソッ」
カトレア「・・・?」
???「あぁ、なんでもないわ。それじゃ、わたしそろそろ戻ろうかな」
カトレア「そうですか。さっきは本当にありがとうございました」
カトレア「はい・・・」
???「ふふっ、じゃあね♪」
カトレアに見送られポケモンセンターを後にする少女
???「ジムリーダーか・・・」
???「ジムリーダーになったらさっきの娘みたいな強い人とシビれるようなバトルができるのね・・・!」
―――
カトレア「・・・確かに感じる」
カトレア「アタクシの新しいポケモン・・・」
ライモンより西の道路にたどり着いたカトレア
ある特定のポケモンが放つテレパシーをひしひしと感じ確信する
――ここで出会えると
そのポケモンの元へ感覚を元に歩を進め――
カトレア「そろそろかしら・・・」
期待に胸を躍らせ、待ちきれないのか既に捕獲用のモンスターボールを右手に握り
今か今かと思いを馳せるカトレアの目に飛び込んできたのは意外なものであった
ポケモンを駆使し、バトルに熱中する少年
たんぱん「そこだ!イシズマイ!!」
イシズマイ「ズマー!」
カトレア(特訓かしら・・・邪魔しては失礼ね・・・別の場所へ)
ユニラン「ニィー!!!」
カトレア「あ――!」
カトレア「――少しいいかしら」
たんぱん「ァァァァクロ―――あぁ?」
急に声をかけられ指示が途切れる少年
自分の主人の声が途絶えて技を中断するイシズマイ
そして・・・
満身創痍のユニラン―――野生のポケモンだ
たんぱん「なんだよ?今忙しいんだけど!」
カトレア「ごめんなさい、せっかくの特訓中に」
たんぱん「なんか用?」
傷だらけのユニランに目配せし一言
カトレア「あのポケモンアタクシにくださる?」
たんぱん 「 は ? 」
イシズマイ「 マ ? 」
青天の霹靂
予想だにしなかった言葉に唖然とするたんぱんこぞう
と、その下僕
カトレア「わかってるわ。でも無理は承知でお願いしてるの」
たんぱん「無理無理!もうすぐコイツ進化するくらいまで来てんの!それにこんな珍しい奴倒したらかなり強くなりそうだしさ!」
カトレア「そうね・・・でも」
野生のポケモンとのバトルやその捕獲
一対一で行われることに他者が介在することは基本ありえない
少々世間知らずなカトレアでさえもわかっている事だ
野生のポケモンを倒して経験値を得ることもまたトレーナーがポケモンを育成する上で大切なことである
野生ポケ側が自ら飛び出してこようとも、仮に野生ポケをトレーナーが追い詰めて倒すとしても同じ
しかし、目の前で傷ついているポケモンを助けたい―という気持ちがないわけではないが、引き下がらない理由は別にあった
たんぱん「はいぃ??」
ユニラン「ユ・・・ニィィ」
カトレアの力に呼応するように特殊な念波を送っていたユニラン
姿が見たい、出会いたい、助けてほしい、仲間にしてほしい
いろんな想いが詰まったテレパシーを受けたカトレアはなんとしてでもユニランを仲間にしたいと思った
だからこそ、暗黙のルールを外れてまでもたんぱんに食い下がる
たんぱん「そんなの関係ねぇ!俺が先に見つけたんだから俺の獲物だ!」
イシズマイ「ズマー!ズマー!」
主人に感化されるように気性が荒くなるイシズマイ
カトレア「そう・・・」
カトレアのパートナーの力で無理にでもことを済ますことはできる
しかし、それをしてしまっては本当に道を外れてしまう
それこそ各地方で暗躍していた○○団なる活動集団に等しくなってしまう
カトレア「でもね・・・」
たんぱんこぞうにやさしく語りかける
カトレア「その子を倒すことが果たしてあなたたちのためになるのかしら?」
たんぱん「あ?」
カトレア「アナタのポケモン、見たところ・・・物理的な攻撃が得意なようね」
たんぱん「だからなんだよ・・・!」
言葉を使い
たんぱんこぞうを説得すべく――諭す
でもね、育て方一つでポケモンの強さの方向性は大きく変わってしまうの。たとえば今アナタが倒そうとしているそこの緑のカワイイ子。
見たところ特殊な力が強そうね。ポケモンは生まれながらに持っている力が様々なの。ポケモン同士の戦いは相手の長所を強く影響されるの。
だから戦いが終わったら相手の強いところの力が育つ、つまりすばしっこいポケモンを倒せばすばやさが、力強いポケモンを倒せば攻撃力が育つの。
今アナタが緑の子を倒してしまうとその力に影響されて特殊の力が上昇するわ。けれど、アナタのポケモンは特殊力よりも物理的な力を伸ばすほうが強くなりそうよ
つまり、攻撃と防御、それかすばやさを伸ばす育て方をしたほうがその子の長所を生かせる――そして強くなると思うの。
まぁ、アナタがちょっと変わった育て方そしてありきたりな読みをするトレーナーを一泡吹かせたいと言うのならば話は別だけど
それに、ポケモン達には限界もあって、生涯に訓練で伸びる力は限られてくるのだからどこの力をどれだけ伸ばすか、その采配によってトレーナーの真価は問われるわ
でも、さっき“シザークロス”を命令したということは少なくとも物理をメインに据えた戦闘スタイルでこれまでやってきたのでしょう?
基本に忠実に育成することは何も悪いことじゃないわ。ポケモンの一長一短な強さは仲間のポケモンで補えるの。だからアナタのそのポケモンは
基本的な育成をしてパーティのアタッカーとして頑張ってもらうとそのポテンシャルを発揮するはずよ。アタクシの勘だけど、その子とても強力な技を覚えそうよ
攻撃と素早さを爆発的に上昇させる、そんな技。だからそれを踏まえたうえでも攻撃と素早さをメインに伸ばす育成をお勧めするわ。
自由にポケモンを育てることは別に悪いことじゃないわ。でもね、真に勝利を欲し、ポケモン達と高みを目指すのならば効率的な育成は絶対に必要になってくるわ。
だから、アナタが今ここでその緑の子を倒すことは、その高みへの階段を踏み外すことになるの。アナタがポケモンを強くしたいのならばもっと他にやるべきことがあるはずよ
アナタ強くなりたいの?なりたくないの?どちらなの?」
たんぱん「強く・・・なりたいです・・・!」
カトレア「そう、よかったわ。なら、今すぐロメやウブの実をその子に食べさして、一から力を伸ばしてあげなさい」
たんぱん「うん!わかった!!」
カトレア「健闘を祈るわ」
たんぱん「よし!膳は急げだ!行くぜイシズマイ!」
イシズマイ「ズマー!!」
とある菌に感染していないイシズマイがユニランの1匹や2匹を倒したところでまったく影響はない
しかし、多少強引でもたんぱんこぞうを説得するのが最優先であったカトレアにとって、多少の方便は免れなかった
カトレア「あの子・・・強くなれるといいわね・・・」
カトレアにポケモンの育成の何たるかを教わり、
考えが変わったたんぱんこぞうが役割論理と出会い
その道のエキスパートになるのは
また別のお話――
ユニラン「ニィィ・・・」
カトレア「まずは・・・」
傷だらけのユニランを傷薬で癒す
ユニラン「ユニィ!」
カトレア「ふふっ、元気になったわね」
ユニラン「ユニユニィ!」
カトレア「アタクシをずっと呼んでいたのね・・・本当にお待たせしたわ」
ユニラン「ニィ!」
カトレア「アタクシのイッシュで初めてのパートナーになってくれる?」
ユニラン「ユーニィ♪」
カトレア「そう・・・ありがとう」
モンスターボールに吸い込まれ、しばらく揺れた後静止し・・・
中心が光る――
カトレア「・・・・・!」
カトレア「ユニラン、ゲットしましたわ・・・!」
カトレア(やっぱり、ちょっと恥ずかしい・・・)
イッシュで初めてポケモンをゲットし、これまでにない充実した気持ちに浸るカトレア
旅は始まったばかりだが、やはり新しい仲間との出会いは一入だ
カトレア「これからよろしくね、ユニラン♪」
ユニランゲットの一部始終を見ていた者一人―――
???「ひひっ、コイツにしよう・・・!」
その眼光がカトレアを狙う
―――
???「ちょっと待ちなぁ!!!」
カトレア「――?何か用かしら?」
暴走族「ヒャッハー!!用ったらひとつしかねーじゃねーか!!」
カトレア「・・・?」
暴走族「トレーナーはなぁ・・・!目が合ったらなぁ・・・!ポケモンバトルだろーがぁ!!!」
カトレア「ポケモンバトル・・・」
暴走族「おうよ!!さぁ、さっさとポケモンを繰り出しナァ!!バトルだっぜぃ!!」
暴走族「ダーメー!ダメだねぇ!!ポケモントレーナーたるものバトルの申し出は断らない!!当たり前ぇだろうが!!」
カトレア「そうね・・・」
暴走族「ヒャッハー!!もちろん負けたら金出すんだぜ!!これも常識だろうガァ!!」
カトレア「・・・・・」
暴走族(ひっひっひ!見たところかなりいいとこの嬢さん!がっぽり金ふんだくれるぜぃ!!俺のおまもりこばんが火を噴くぜぃ!!)
暴走族「さぁ、さっき捕まえたザコポケ繰り出しナァ!!叩き潰してやるゼェェイ!!」
暴走族「うるせー!!ボール持ってポケモン従えてりゃ出すしかねぇん!だ!よ!ぐずぐずしてっと俺からイックゼ!!!」
暴走族「いけっ!!ギガイアス!!!」
ギガイアス「ギィィィガァァァ!!!」
着地と同時に轟音を響かせ
岩石の化身が現れる
暴走族「ヒャッハー!!どうだ!俺様のギガイアスはぁぁ!!」
カトレア「・・・・・」
暴走族「怯えて声も出ねぇかぁぁ!?でもひねり潰しちゃうもんねー!!」
暴走族「観念したかァァ!!??さっさとその緑虫を出しナァァァ!!ペチャンコにしてやんぜ!!」
カトレア「先に謝っておくわ・・・ごめんなさい」
暴走族「はぁぁ!!??先だろうが後だろうが謝っても無理だねー!!お金ふんだくっちゃうもんねー!!」
カトレア「そうじゃなくて、アタクシまだこの地方のポケモンについて知らないことばかりなの・・・」
暴走族「だからなんなんだよってー!?」
カトレア「だから・・・そのアナタのポケモン、どれだけの力でお相手すればいいか・・・正直わからないの」
暴走族「あぁぁん?御託はうぜぇからさっさとポケモン出しナァ!!」
カトレア「でも、アタクシもポケモントレーナー。受けた勝負は全力でお相手します。」
暴走族「ひひひっ!!恐怖で思考が吹っ飛んだかよ!!てめぇの緑虫の全力!!見せてもらおうかっひゃっひゃっひゃ!!」
ボールに語りかける
カトレア「久々だものね・・・アタクシも・・・うれしい」
相手がどうであれバトルはバトル
長い間禁じられてきたポケモンバトルができる喜び
つい顔がほころぶ
暴走族(笑った―――!?恐怖でイッちまったか!?)
カトレア「さぁ・・・ポケモンバトル・・・!始めましょう!!」
暴走族「ひゃっはー!!!」
カトレア「行きなさい!」
高らかにパートナーの名を叫ぶ―――
暴走族「!!??」
無機質で重轟な体が宙を歩き
大地に轟音と共に降り立つ―――!!
メタグロス「グゴゴォォ!!」
暴走族「――――!!??」
カトレア「ふふっ、そんなにはしゃいじゃダメよ」
メタグロス「グォッ!」
久々のバトルに高揚するメタグロス
その昂ぶりを肌と心で感じるカトレアも同じ感情を共有する――
暴走族(はぁぁぁぁ!!??なんなんすか!!??わけわかんないんですけど!!??)
ユニランという吹けば飛ぶような弱小ポケモンをサクっと倒し
カトレアから大金を巻き上げる気満々だった暴走族にとって
たった今ボールから放たれたポケモンは予想外―――
加えて究極的な強さのオーラを溢れんばかりに放っている
初めて見るポケモンとはいえその暴力性を直感で感じる
暴走族「・・・・・ダメだぁ」
本音が漏れる
ギガイアス「ギィィガァ・・・」
その強固な体に似合わない弱々しい声が漏れる
主人ともども戦意を喪失し、ただその終わりを待つばかりだ
メタグロス「グゥゥロロ・・・!!」
以心伝心――
カトレアの指示を声に現れる前に読み取るメタグロス
その強靭な腕を一層硬質化させ―――
破壊力を極限まで高め―――
暴走族(拝啓お母様・・・見ていますか?今僕は青空の下、かわいいお嬢さんから飛び出してきた鉄の塊に消されます―――)
その必殺技を放つ―――!!
メタグロス「グォゴォォォォ!!!」
暴走族「おかあああああああさあああああああああん!!!!」
ギガイアス「ゴガァサァァァァン!!!」
全てを包み込む閃光―――
全てを飲み込む爆音―――
そして・・・静寂―――
メタグロス「グゥロォォ!!」
最強の攻撃力から放たれたコメットパンチは大地をえぐり
メタグロスを中心巨大なクレーターを生んだ
さながら爆心地の如きクレーターの端にたたずむ暴走族
暴走族「ひゃ・・・はぁ・・・」
メタグロスと同じくクレーターの中心にたたずむギガイアス
ギガイアス「・・・・・」
あまりの衝撃に気絶をしている
メタグロス「グゥ・・・」
カトレア「外れるのがたまに傷ね」
ユニラン「ニィ・・・!」
“外れた”の?“外した”の?とその場で飛び跳ねてカトレアに尋ねるユニラン
カトレア「ふふっ、どちらかしら」
暴走族「あ・・・あぁ・・・・」
カトレア「アナタのポケモン、多分ダメージを受けていないようだけど」
カトレア「バトル・・・続ける?」
暴走族「無理っすぅー」
カトレア「そう・・・」
しかし、戦意を喪失した相手を倒して勝利をしてもそれ自体は望ましいことではない
カトレア「アナタが満足する相手は・・・ジムリーダーくらいかしら」
メタグロス「ググ・・・」
ふいに港で出会ったアーティの顔がよぎる
カトレア「でも目的はそうじゃない・・・ユニラン、アナタのようにエレガントな仲間を増やすこと」
ユニラン「ユニィ!」
カトレア「まず、それが最初」
カトレア「あぁ、アナタ、まだいらしたの?」
暴走族「はい!いてスイマセン!これ、賞金っス!!」
財布に入っていたありったけのお金を差し出す
本来払う以上の金額になっているのは畏れ所以か
カトレア「・・・ありがたいけど、アタクシは結構よ」
暴走族「いいえ!これは僕の気持ちッス!ポケモンバトルの奥深さを教えていただいた授業料ッス!!」
カトレア「でも・・・」
暴走族「僕、ギガイアスが重量系最強だと信じていました!!でも世界は広いッスね!こんな強いポケモンがいたなんて知らなかったっス!!」
メタグロス「ググ・・・!」
カトレア「どういたしまして」
暴走族「僕の気持ち・・・受け取って欲しいんすけど・・・ダメッスか?」
カトレア「ええ、アタクシお金とかそういうものは別段必要ないの・・・」
暴走族「そうッスか・・・あ―――!!」
カトレア「?」
暴走族「でしたらこれあげるッス!!」
懐から手持ちサイズの機械を取り出し差し出す
カトレア「これは?」
カトレア「いいの・・・?」
暴走族「いいッスいいッス!!これ先輩から貰ったやつッス!!姐さんの役に立てるんなら最高ッス!!」
カトレア「ありがとう・・・大切に使わせてもらうわ」
暴走族「これでさらに高みを目指してください!!」
カトレア「ふふっ」
暴走族「それじゃ僕集会あるんで失礼します!!また会ったらそん時はよろしくッス!!」
カトレア「こちらこそ」
早速図鑑み目を通し、イッシュのポケモンについて学ぶ
図鑑は穴だらけだが、お目当てのエスパータイプのポケモンがいくつか判っただけでも十分な収穫だ
カトレア「次は・・・ゴチム。この子をゲットしようかしら」
ユニラン「ニィ!ニィ!」
カトレア「ふふ、アナタも望んでるの?わかったわ」
カトレア「ソウリュウシティね・・・少し遠い道のりだけど・・・ユニラン」
ユニラン「ニィ!」
カトレア「その道のりでアナタを強くしてあげるわ」
ユニラン「ニィニィ!!」
旅をすることで仲間が増える
そんな当たり前を繰り返してきたトレーナーをこれまでたくさん見てきたカトレア
コクランに敗れながらも互いの信頼を見せ付けてきたトレーナー
そんな尊いものを生み出すポケモンの旅――
カトレア「これが・・・アタクシの夢・・・」
長年夢見てきた旅を今自分がしていることへの喜び
そして感じる心地よい浮遊感
確かに不安なことだらけだが
ポケモンがそばにいる
それだけで全てが満たされる――
力強く歩を進め
カトレアは目指す――
ソウリュウシティへ――!!
カトレア「ところでソウリュウシティってどうやっていくのかしら」
ユニラン 「ズコー」
メタグロス「ズコー」
―――
――
―
「ソウリュウシティ?申し訳ございません、ソウリュウシティ行きの電車は運行しておりません」
カトレア「そう・・・」
「ふはは!自然と一体化するはポケモンレンジャー!・・・ここがどこかって?ここはヤグルマの森だよ。けど、そんなことは置いといて勝負だ!」
「ぐ・・・強い・・・。ソウリュウシティ?確かここから北の方にある街だよ。大分遠いけどね」
カトレア「そう・・・」
「今は力をつける時・・・!我々プラズマ団の悲願達成のためにもこのポケモンの完成は絶対――!」
「誰だ!?・・・え?ソウリュウシティ?君はここがP2ラボと知って言っているのかい?」
「ヒウンシティで船に乗り間違えたね、それ」
カトレア「そう・・・」
アデク「こんなところで人に会うなんて珍しいの・・・ソウリュウシティ?ここは古代の城だぞ。しかも最深部だ」
アデク「一度ヒウンシティに戻って・・・」
カトレア「そう・・・」
アデク「それと、一つ疑問だったんだが」
カトレア「?」
アデク「君の後ろにいるシンボラーは・・・君のポケモンかい?」
カトレア「いえ、ここに来たときからずっと着いてくるの。せっかくだから仲間に、と思ったけどボールを切らしてしまって・・・」
カトレア「ありがとうございます。」
シンボラー「シィィ・・・」
カトレア「沢山ボールを下げてますけど、ここでポケモンを捕まえているのですか?」
アデク「あぁ、この首のか。これはみなわしの大切なポケモンたちだ!」
カトレア「6個以上ありますけど・・・」
アデク「これな、パソコンに預けろだ弟子や孫から言われるがの、わしよく使い方がわからんのだはっはっは!」
カトレア「そう・・・」
アーティ「む!以前よりなかなか青春を謳歌しているようだね!いいねぇ!前にも増してインスピレーションっが!」
アーティ「ソウリュウシティ?ここからライモンシティへ、そしてホドモエ、フキヨセシティへ行けばいいよ」
アーティ「仲間も増えているようだね、ところでむしポケモ――」
カトレア「結構です」
道中、様々なトレーナー、野生のポケモン達との戦いを繰り広げ、旅の醍醐味を満喫し、ポケモンも成長した
カトレア自身も様々な刺激を受け成長した(主に方角的な意味で)
お嬢様「すごい!あなたのダブランサイコショックを覚えているのね!」
お嬢様「サイコショックって実際に使うとどんな感じなのかしら」
お嬢様「もちろんあなたならステキに使いこなせますわね♪」
カトレア「ふふっ、機会があればお見せいたします」
お嬢様「それにしてもすごいですわね。私と歳も変わらないのにお一人で旅だなんて」
カトレア「いえ、頼もしい仲間達のおかげです」
カトレア「ええ」
恐らく正規のルートを通る以上に既に厳しさを味わったであろうカトレア
お嬢様「ここホドモエの北西の街、フキヨセシティに行きましたら飛行機で行けますが・・・」
お嬢様「その途中にある電気石の洞穴を通らなければ行けませんの」
カトレア「電気石の洞穴?」
お嬢様「その名の通り電気タイプのポケモンが生息しています。加えて人が出入りするには危険なところでもあります」
カトレア「そう・・・この子達の修行にはうってつけね」
お嬢様「あなたほどのお方なら特に心配はないと思いますが・・・」
カトレア「怪しい人?」
お嬢様「何かの宗教団体かわかりませんが、同じ格好をした方々が何かしらしているそうで」
カトレア「トレーナーならありがたい話ね」
お嬢様「まぁ、頼もしい言葉で」
カトレア「お話ありがとうございます。アタクシはこれでお暇しますわ」
お嬢様「ご武運を」
お嬢様の差し出すハートのウロコを受け取りいざ電気石の洞穴へ向かうカトレア
お守りも手に入れ、仲間のポケモン達も頼もしく育ち、期待に胸を躍らせる
初めて見るポケモンの生態を知ってついはしゃいでしまったり
民家にお邪魔し住人とたわいもない会話をしたりで
気づけば電気石の洞穴に到着していた
カトレア「着いたわ・・・」
お嬢様の助言通り、入り口の穴からは磁場に混ざり危険な匂いが漂ってくる
カトレア「心してかからないとね・・・行きましょう・・・!」
ダブラン「ダァブ!」
電気ポケモンに加え、鉄の性質を持つポケモンも多く生息する洞穴
エスパー技を主軸とするダブラン、シンボラーにとって手ごわい相手だ
カトレア「野生のポケモンのバトルでも退屈しない・・・喜ばしい限りね・・・!」
洞窟を進みしばらくたつが、怪訝そうにあたりを見渡すカトレア
カトレア(トレーナーが一人もいない・・・あの方の言っていた怪しい人もいない・・・)
カトレア(杞憂なのかしら・・・?)
洞窟に入る前に心構えをしていたトレーナーの件
お嬢様からの忠告が確かなら怪しい人間がいるはず
それに一般の人間でも危険と知っている場所に入るのだから必ず脇にはポケモンが控えているはずだ
カトレア「残念ね・・・」
しかも場所が場所だ、ポケモンを連れていたらそれなりの実力者の可能性がある
一番期待していたことがなかったことになって少し落ち込むカトレアに
「何が残念なの・・・?」
少年の声が飛び込む
カトレア「――!?」
急な声に一瞬の驚き
と同時に人がいたというちょっとした安心
「僕・・・?」
存在が虚ろで儚く、それでいて美しさを感じる少年が答える
N「僕の名前はN」
カトレア「N・・・さん?・・・それでアタクシに何の用かしら?」
N「用か・・・トモダチと気分転換にきていたところに、面白い声が聞こえたから何かと思って来てみたんだ」
N「あぁ、ごめん、キミじゃないんだ。キミのポケモンの声さ。初めて聞く声だからついね」
カトレア(ポケモンの声・・・?この人・・・もしかしてアタクシと同じ・・・?)
N「なかなか機械的な声だね。へぇ・・・シンオウ地方?そんな場所があるのか」
カトレア「――!?」
自分の出身を一言も言っていないにもかかわらず出てきた“シンオウ地方”という単語
Nの言っていた“声を聞く”それがポケモンに対するものであると理解したカトレア
N「・・・!?アナタ“も”?・・・キミ、もしかしてトモダチ達の声がわかるのかい?」
カトレア「ええ、声を聞くというより感じる・・・ようなものだけど」
N「すばらしい!キミのような完璧に近い人がいるんだ!」
カトレア「完璧ってほどじゃないわ・・・現にアタクシはこの力で失敗をしているのだから」
N「それでもいいさ!キミなら、キミならばボク達の理想の世界を創れる!」
カトレア「理想の世界・・・?」
N「そう!トモダチ・・・ポケモン達を開放し、真に理解しあえる世界さ!」
N「モンスターボールに閉じ込められている限り、ポケモンは完全な存在にはなれない。ボクはポケモンというトモダチのため、世界を変えねばならないんだ」
カトレア「モンスターボールで閉じ込めている・・・それが完全じゃないって・・・?」
N「ポケモン達はボールで支配されてそれで本当にシアワセだと思うかい?」
カトレア「ごめんなさい、わからないわ・・・アタクシのポケモンたちは少なくとも幸せを感じてくれてると思うの」
N「トモダチの声を聞けるキミでもそう言うのかい・・・?わかってくれないのかい・・・?」
カトレア「確かにポケモンを無下に扱う人はいるかも知れない、でも、アタクシのみて来たトレーナーは皆ポケモン達と強い絆を持った方々ばかりでしたわ」
N「・・・」
カトレア「アナタの気持ちもわからなくはないけど、全てがそうとも言い切れないから―――」
N「もういい・・・」
カトレア「―――」
N「ボクは、ダレにもみえないものがみたいんだ。ボールの中のポケモンたちの理想、トレーナーという在り方の真実、そしてポケモンが完全となった未来」
N「キミも見たくはないのかい?」
カトレア「残念だけどアタクシはまだそんな未来に興味はないの・・・」
周囲のポケモンの気配が一層強まる
臨戦態勢を感じ、瞬時にカトレアはパートナーを放つ
カトレア「ダブラン!」
ダブラン「ダァァッブ!!」
N「健気だね・・・」
見たところNはモンスターボールを持っていない
どこからポケモンが襲ってくるか、それに備え一層気を引き締めるダブラン
N「ははっ、そんなに警戒しなくてもいいよ・・・卑怯な手は使わない」
N「さぁ、頼むよ!ドテッコツ!」
ドテッコツ「ドッゴォ!!」
その豪腕で鉄骨を振り回しながら現れるは――
カトレア「ドテッコツ・・・格闘ポケモンね」
相性的に明らかに不利なポケモンの繰り出し
ドテッコツのほうが素早いとしても決定打をダブランに与えられるかは定かでない
カトレア(ドテッコツには特殊な特性や技はないはず・・・まずは・・・素直に攻める!)
カトレア「ダブラン!」
N 「ドテッコツ!」
互いの声が呼応し、
互いのポケモンが身を構える!
N 「あくのはどう!!」
カトレア「―――!?」
ドテッコツの周囲に漆黒のオーラが発生し――
黒き波動がダブランに襲い掛かる!!
ダブラン「ダァァブ!?」
カトレア「ダブラン!!」
漆黒に包まれ大打撃を受けながらも、なんとか持ち堪えたダブランが決死の念波をドテッコツに放つ―――
が――
ドテッコツ「・・・・・?」
その体をすり抜け―――
虚しく空を切る
目の前の信じがたい光景に困惑を隠せないカトレア
N「ははっ、どうしたの?呆けているのなら次行くよ?」
今にも倒れそうなダブランの体制を立て直すべく即座に指示を出す――
カトレア「ダブラン!自己再生!!」
N「遅い・・・!」
ドテッコツ「ドォォォッティ!」
再び襲い掛かる悪の波動に耐え切れず――
ダブラン「ダァァァ・・・・ブゥ・・・」
力尽きるダブラン
カトレア「あぁ・・・ダブラン・・・」
カトレア「お疲れ様。よくやってくれたわ・・・」
N「これでお終いってわけじゃないだろ?」
カトレア「そうね・・・」
本来覚えないはずのあくのはどうを
不一致かつ特殊技にも関わらず高威力に放ったドテッコツ
カトレア(何か・・・裏があるわね・・・!)
疑惑を残したまま次のポケモンを繰り出す
カトレア「お願い!シンボラー!」
シンボラー「シィィィ・・・」
N「ははっ、いいね、シンボラー。なかなか数式的な感じがするポケモン・・・好きだよ」
カトレア「シンボラー!」
シンボラー「シィィィ!!」
シンボラーの周りに気流が生じ――
カトレア「エアスラッシュ!!」
ドテッコツ「―――!!」
ドテッコツの体を切り裂く刃となる――!!
ドテッコツ「ドテェェ・・・!」
飛行技は格闘タイプに抜群だ
しかしドテッコツに与えたダメージは期待していたより軽度
カトレア「やはり何かがおかしい・・・!あ――!?」
ドテッコツの体を黒いもやが包み――
N「いまだゾロア!バークアウト!!」
ゾロア「シッシ!!」
今まで強固な肉体の格闘ポケモンだったそれが
シンボラー「!?」
かわいい狐に変わっていた
可愛くも騒がしいゾロアの声に驚き、そして萎縮してしまうシンボラー
バークアウトによりうまく念力を操れなくなったシンボラー
自ずと特殊攻撃に陰りが生じる
カトレア「ゾロア・・・?」
N「キミほどのトレーナーでも見抜けなかったんだね、ははっ、どうだい?ボクのトモダチの力は!」
カトレア「初めて見るポケモン・・・面白い戦いをするのね・・・!」
N「メタモン・・・?食べ物かい?」
エスパー技を無効化されたことでゾロアが悪タイプであると理解したカトレア
エスパーポケモンが苦手とする悪ポケモンを相手にするという気構えが遅れてやってきたこと
後手に回ってしまったことを弥が上にも認めざるを得ない
カトレア「でも・・・まだです!」
ゾロア「クゥ!」
カトレア(さっきはシンボラーが先制した・・・次も先に攻撃するのは相手もわかっている・・・)
カトレア(悪タイプだというのなら・・・次に来る攻撃は・・・!)
N「これでトドメだよ!」
ゾロア「シャ!」
N「 ふ い う ち ! ! 」
相手の攻撃の隙をつくふいうち
素早さが負けていても一瞬の間を攻められれば攻撃に転じられる悪ポケモンの必殺技だ
だが、攻撃の隙をつけなければ空を切ることになる
ゾロア「クゥゥ・・・!」
N「攻めきれない・・・!?」
カトレア「やはり当たりましたね・・・!」
万全に待ちの体制のシンボラー
相手を待ち受けている状態のポケモンにふいうちは仕掛けられない
攻めあぐねているゾロアに向け――
シンボラー「シィィィィ!!!」
ゾロア「――!!」
体全体を使い強風を生み出すシンボラー
その風をありったけゾロアにぶつけ――
N「ゾロア!」
文字通り吹き飛ばす!
ゾロア「キュゥゥゥ・・・・・!!」
フィールドから消え去ったゾロア
開いた席を埋めるように瞬時に参上する本物のドテッコツ
飛ばされたゾロアを気にしつつドテッコツに戦闘を告げるN
ゾロアからの「大丈夫」という声を耳にし、しっかりカトレアを見据えるN
N「驚いたよ・・・手の内を読まれるなんてね」
カトレア「ふいうちは悪ポケモンの常勝手段・・・これくらいはアタクシでも知っていますわ」
N「さすがだね・・・」
シンボラー「シィィ!!」
N「そうだけど・・・本物の強さ・・・見せてあげるよ!」
ドテッコツとシンボラーの対峙
エスパー技、飛行技の圧倒的有利な状況にようやく動揺から立ち直るカトレア
カトレア「いきます!」
シンボラー「シッ!!」
再びシンボラーが風を操り――
N「ドテッコツ!」
ドテッコツ「ドォォ!」
真っ向から迎え撃つ体制のドテッコツに――
カトレア「エアスラッシュ!!」
シンボラー「シュゥゥァ!!」
風の刃を叩き込む――!!
シンボラー「シィィ!!」
抜群の攻撃を受けひとたまりもない
はずだった――
N「 ス ト ー ン エ ッ ジ ! ! 」
シンボラー「シィ・・・!」
大地を叩き割る轟音――
と同時にシンボラーに襲い掛かる鋭く尖った岩石の破片――!!
シンボラー「―――!!」
こうかはばつぐんだ!
シンボラー「シィィ・・・・・ィ」
シンボラー戦闘不能
カトレア「そんな・・・!」
N「危なかった・・・」
そこには傷を負いながらもしっかりとその足で大地を踏みしめているドテッコツが
カトレア「シンボラーの攻撃を耐え切るなんて・・・」
N「ゾロアのおかげだよ、彼のバークアウトでシンボラーの特攻を下げてくれたからね」
カトレア「シンボラーよくがんばってくれたわ・・・ゆっくり休んで・・・」
N「ふぅ・・・で、まだ終わりじゃないんだろう・・・?」
カトレア「・・・・・」
ベストパートナーのメタグロスが控えている
ボール越しでもバトルで起こる熱気を感じ、今か今かと出番を待ち続けているその大切なパートナーが
しかし――
N「・・・・・正気かい?」
カトレア「えぇ・・・」
ポケモンの声を聞くことができるNにとって、メタグロスの闘志溢れる声は常に耳にし続けていた
それをカトレアが受け取っているのも知っている
だのにその闘魂とは真逆の答えを聞き、一瞬言葉を疑った
N「嘘を・・・ついているわけじゃないね・・・」
悔しさ滲む顔を見せないよう俯きつつも返答するカトレアに
それ以上言葉をかける必要はないと判断したN
吹き飛ばしから戻ったゾロアがNに寄り添う
N「次・・・会えるのを楽しみにしているよ」
再会を匂わす言葉を告げ
N達は洞窟の奥の暗闇に消えていった
カトレア「うぅ・・・っく・・・」
メタグロス(グゴォ・・・・)
カトレアの悔しさ
降参した辛さ
伝わった想いが自分も感じているものだと知ったメタグロスは
ただ黙した・・・
カトレア「あなぬけの・・・ひも・・・」
瞬時に洞窟から脱したカトレア達
その道筋には悔し涙が続いていた――
「あらあら、ポケモンたちが傷ついている・・・少し休んでいきなさい」
「ありがとうございます・・・」
電気石の洞穴の麓の民家にまたお世話になるカトレア達
十分休めたので少しの談笑の後民家を去った
体力は回復できたが、心は浮かないままだった
カトレア「ごめんね・・・みんな」
カトレアの謝罪に返事をするダブラン、シンボラー
カトレア「アナタ達のせいじゃないわ・・・ありがとう・・・」
自分達の力のなさをカトレアに謝罪するが
気持ちは皆同じだった
メタグロス「ググ・・・」
イッシュで初めて仲間にしたダブラン、シンボラー
彼らを一から育てたが、Nとの一戦でまだ育てが足りないことを痛感した
そして、それがイッシュでのカトレアの実力でもあった
カトレア「アナタの力を借りれば・・・もしかしたら勝てていたかも・・・けど・・・」
過去の事件のフラッシュバックだ――
カトレア「今は・・・大丈夫・・・だけど・・・少し怖かった・・・」
メタグロス「ゴォ・・・」
カトレア「あのまま気分も高まっていろいろ感じてしまうと・・・またあの時みたいになるのが怖かったの・・・」
カトレア「それが実際のアタクシの実力・・・」
カトレア「それは・・・認めないと・・・」
メタグロス「ゴゴォ・・・!」
カトレア「うん・・・ありがとう・・・!」
幼少時より共にすごしてきたメタグロスの慰め
そして理解ある言葉にただ自然に感謝の言葉が漏れる
ダブラン「ダァァッブ!」
シンボラー「シィッィ!」
カトレア「アタクシ、強くなります・・・そして・・・」
メタグロス「ゴゴ!」
カトレア「頼もしい仲間に出会いに行きましょう・・・!」
新しい仲間
ポケモンたちも望んでいる共に戦い続ける仲間
再び洞窟の入り口に立ち
カトレア「新しい仲間に――!」
心構え十分にその一歩を踏み出――
???「あ!あなた!」
カトレア「・・・へ?」
急に呼び止められ
振り返るとそこには
軽く被ったキャップから綺麗な金髪をのぞかせている
見た目だけでも綺麗さを感じさせる少女が――
しかし、見覚えがない
カトレア「あの・・・どちら・・・様?」
???「ん~覚えてない?ライモンシティのポケモンセンターで会った!」
キャップとサングラスの印象で随分違って見えるが
声や背丈を思い出すと・・・
ようやく
???「そうそう!」
カトレア「その節は・・・お世話になりました」
深々と礼
???「いえいえこちらこそ」
釣られて礼
カトレア「またお会いできるなんて・・・」
???「そうね!あ、そういえばあの時名前聞いてなかったよね?わたしはカミツレ」
カミツレ「カトレアちゃんね。かわいい名前」
カトレア「あ、りがとうございます・・・」
少々の照れ
カミツレ「ここに用があるの?」
カトレア「ええ、この洞窟を抜けてフキヨセに向かおうと・・・」
カミツレ「そうなんだ!だったら途中まで一緒に行かない?」
カトレア「いいの・・・?」
カミツレ「もちろん、わたし、この子達が好きな場所だから遊ばせるのと・・・ちょっとした訓練にね」
中から閃光と共にポケモンが繰り出された
エモンガ「エ~モ~♪」
カトレア「・・・・・かわいい」
カミツレ「ふふっ、クラクラしちゃうでしょ?」
エモンガ「エモエモ!」
少しの談笑を交え
カミツレ「じゃあ、行こっか!」
カトレア「ええ・・・!」
いざ電気石の洞穴へ――
カトレア「一から旅をしてみたいと思って」
カミツレ「旅かぁ、うらやましいなぁ。わたしも仕事なかったら自由に旅をしてみたいな」
カトレア「仕事?」
カミツレ「わたし、モデルの仕事をしているの」
カトレア「そう・・・」
モデルと言う言葉を聞いてプロポーションの良さに合点がいった
(一部を除いて)特に体に悩みのないカトレアでも少しうらやましいと感じてしまうほどだった
カミツレ「わたし、輝くもの、光がすきなの。だから昔から電気タイプのポケモンにシビレちゃって」
カミツレ「それ以来この子みたいな電気ポケモンで強くなりたいなって思って」
カトレアも同感だ
自分のフィーリング、インスピレーションによってポケモンを選ぶことを
カトレアのように特殊な力を持っていると特にエスパーポケモンとのフィーリングが合う
それが心地よくもあり、トレーナーとしての一つの道であると感じる
カミツレと言葉を交わしてカミツレを理解する
綺麗な見た目と裏腹に芯がしっかりしていると
目標を決めて強い思いで追いかけると
それだから感じた陰
先の出来事のあったカトレアだからより感じた陰
カトレア「何か・・・悩みでもあるの・・・?」
カミツレ「え・・・?」
一瞬の間
それが図星をつかれたものだと互いが理解した
カミツレ「そうね・・・」
カトレア「ここに来たのもそれが理由なのかしら・・・」
カミツレ「アナタ・・・すごいね。なんかいろいろ見透かされちゃってるような」
カトレア「たまたまです・・・」
何か悩みがあると電気石の洞穴でポケモンと共に過ごす
暗くも輝く電気石を見ていると心が落ち着く
昔からの習慣もあったが、会って日の浅いカトレアに見破られ
観念したというよりは畏怖の念を持って口を開く
カトレア「まあ・・・!」
ポケモントレーナならば一度はあこがれる存在
ジムリーダー
実力はもちろんのこと、名声や実績も選出の材料となるジムリーダーは
一つのステイタスでもある
そんなジムリーダーになるということはカミツレが相当の実力と実績があるのだと瞬時に理解した
カミツレ「まぁ・・・“仮”だけどね」
カトレア「それでも素晴らしいことね」
カミツレ「一応バトルの試験みたいなものがあるのだけれど・・・」
カトレア「勝負は不安じゃない・・・?」
カトレア「他に気になることが?」
カミツレ「わたしモデルやってるって言ったでしょ?」
カミツレ「実際にそういう声が上がってるのだけど・・・」
カミツレ「ジムリーダーとモデルを両立できるのかなって・・・」
カトレア「それ心配なのね」
ライモンシティを中心に支持を集めイッシュ地方のカリスマモデルへの階段を上っているカミツレ
そんな時に舞い込んだジムリーダーの話
ポケモン自体もカミツレの性格とフィーリングも相まって相当の力をつけてきた
実力も名前も申し分ないと判断された
売名だ、ジムリーダーはちゃらちゃらするものじゃない
といった否定的な声も上がっていた
カミツレ「いろいろ言われはしたけれど、正直そういうのは気にしてないわ」
カミツレ「モデルになって自分の顔と名前で売っていくと決めたときから覚悟はしていたもの」
カトレア「そう・・・」
芯の強さはその覚悟から来るものなのだと理解したカトレア
しかし、そんな強さを持つ彼女でも迷うのだと
同時に不思議に感じた
カミツレ「それにジムリーダーとしてたくさんシビれるようなバトルをしたい、そしてたくさんのトレーナーにポケモンバトルの楽しさを知ってもいらいたい」
熱心に語るカミツレの一言一言に耳を傾けるカトレア
カミツレ「欲張りかな・・・?」
カトレア「いいえ・・・素晴らしいと思うわ」
カミツレ「でもそうすると仕事は忙しくなるだろうし、そうしたらジム戦が疎かになるし・・・」
カミツレ「両方をやろうとして結局どっちも中途半端に終わってしまうと・・・私のやりたいことも無駄になっちゃうのかなって・・・」
一番の不安がもれる
二兎追うものは一兎をも得ず
確かにそうなってしまう懸念はある
カトレア「両立・・・ね・・・」
両方を何とかしようと焦っている状態では絶対にうまくいかない
カミツレの気負いも理解できるカトレアは
カミツレ「辞退するしかないのかな・・・」
やさしく語りかける
カトレア「両立しないといけないこと?」
カミツレ「え?」
カトレア「初めてジムリーダーになる人が最初からあれもこれもできなくてもいいと思うの」
カミツレ「うん・・・」
話を聞いていたカトレアも
その思いの丈をカミツレに告げる
でも最初から全てを完璧にする必要はないはずよ。例えば、各地方にいるジムリーダー達の全員が全員最初から完璧だった訳ではないわ
ジムリーダーをやりつつ自分の道を探したり、自分の夢を達成させるためにジムリーダーをしたり人それぞれよ
それにジムリーダーに対し強い想いがあることは十分わかるわ。でも、肩の力を抜くことも大切よ
ジムを任されるという大任でそう感じてしまうのかもしれないけど、意外とジムリーダーというものは自由なものよ
実際、アタクシのところのジムリーダーは個性豊かで自由奔放な方ばかりですの。
炭鉱で働いている方、怖がりな方、華奢なのに腕力随一な方、仮面を被り放浪している方、外国のダンサーの方、穴掘りに命をかける方
ポケモンもオシャレも恋愛も全部気合で頑張っている方、暇を見つけてはジムを改造し街を停電させ皆を困らせている方
本当に様々な方がいるの。特に最後の方なんて気分が乗らないからってジムを一時期閉鎖したり本当に自由なものよ。
でもやっぱりジムリーダーと言うのは一つの街のシンボルでもあるの。いてくれるだけでそれが街の誇りと思ってくれる人もいる。
だから自由な人でも支持されてきたのだと思うの。アナタも不安に感じること、失敗を恐れること、たくさん迷うことがあると思うわ。
でも、ジムリーダーに選ばれる、それだけでアナタが街の人々に信頼されている証なの。それにモデルとしてのアナタのファンもたくさんいるはず
ジムリーダーとして何か失敗があったとしてもそういった人たちが支えてくれるわ。アナタが強く、大きく成長することも望んでいるはず。
一人で全部抱え込まなくても大丈夫よ。アナタにはポケモン達が、街の人が、ファンがついている。何も心配することはないわ。
それに最近ポケモンジムの改装が流行っているのだから、いっそファッションショーができてジム戦もできるそんなジムにしてみると面白いかもね
だから道は一つじゃないし、道を支えてくれる人たちがいる。少し甘えるのも大切なことだと思うわ」
カミツレ「うん・・・そうね・・・!」
一人で何でも抱え込み、考えすぎていたのだと自覚をした
自分ひとりじゃ到底できないことでも周りの支えがあれば進んでいける
自分の信じるポケモンたちがいればなおさらだ
カトレアの言葉が胸に落ち、スッキリしたカミツレ
カミツレ「わたし、ジムリーダーになるわ!」
カミツレ「何かあってもこの子達と――」
エモンガ「エ~モ~」
カミツレ「街のみんなとかわいいファンの子たちがいるものね!」
カトレア「ふふっ」
カミツレ「それにしても・・・」
カトレア「・・・?」
カミツレ「さっきのジムリーダーの話何?面白いんだけど」
晴れ晴れとした笑顔で話すカミツレ
カトレア「デンジさんのこと・・・?」
カトレア「彼はアナタと同じ電気タイプの――」
最初とは違った
互いが楽しく
互いが笑顔に
話に花を咲かせていた
楽しい時間は早く過ぎるもので
気づけば電気石の洞穴の出口付近にたどり着いていた
カトレア「いえ、カミツレさんのジェットコースターもなかなか」
カミツレ「ははっ」
カトレア「ふふっ」
共通の話で盛り上がったおかげで
思い出し笑いが止まらない
カミツレ「ホント、あなたに会えてよかったわ」
カトレア「アタクシもです」
エモンガ「エモ~♪」
カトレア「ふふっ」
カミツレ「そこの出口を出てすぐの街がフキヨセシティよ。新しいポケモンに出会えるといいわね」
カトレア「はい!」
カミツレ「じゃあ、元気でね!・・・次はジムで会いましょう!」
カトレア「こちらこそ・・・!そのときはよろしくお願いします」
カミツレに見送られながら電気石の洞穴を抜けるカトレア
カトレア「まぶ・・・しい・・・」
電気の光と違った輝かしい太陽の日差しに目を細める
木々の香りが漂い心地よさを感じる
カトレア「あそこが・・・フキヨセシティ・・・!」
目と鼻の先に街と空港が――
カトレア「さぁ、いきましょう・・・!」
仲間と共に
大空の街へ歩を進める――!
その周辺にはたくさんのビニールハウス
取れたて野菜を直送する貨物機が出入りをしている
カトレア「大っきい・・・」
大空を飛び立つ飛行機に見蕩れるカトレア
間近で見るそれは本当に圧巻だ
ダブラン「ダッブゥ!」
カトレア「ふふっ、アナタも楽しみなのね」
空を飛べることを知ったポケモンたちも興奮を抑えきれない
カトレア「さて・・・と、あとは受付・・・かな」
だが
「ソウリュウシティ?申し訳ございません、ただいま旅客機については運航しておりません」
「唯一の機体が整備中でして、予定では2週間後の再開となります」
「そもそも、ここは貨物による運送がメインでして、旅客も最近始まったサービスなんですよ」
カトレア「そう・・・」
「ソウリュウシティでしたらここからネジ山を抜けて、セッカシティを越えたところにありますね」
カトレア「・・・わかりました」
説明を受け施設を後にするカトレア
カトレア「仕方ないわ、こればかりは」
ダブラン「ブゥ・・・」
カトレア「また鍛練を積みながら地道に行きましょう」
一つの山、一つの街を越える道のり
また大変な旅になることはわかっているが
カトレア「アタナ達がいれば心配ないわ」
メタグロス「ゴゴ・・・!」
頼もしいポケモンたちがいればそれも楽しいものになる
7番道路を通りネジ山を目指す
途中落ちてしまいそうな細い一本橋に戸惑いながら
トレーナー達と戦いながら
民家で暴風雨を起こすポケモンの話を聞いたり
カトレア「一本橋を渡ればもうすぐなんだけど・・・」
ダブラン「ブゥ・・・!」
カトレア「アナタ達も・・・感じるのね?」
シンボラー「シィ・・・!」
メタグロス「ゴゴ・・・」
カトレア「ここから・・・北西のあたりかしら・・・?」
ようやく見方も覚えたタウンマップを広げ
場所を確認する
カトレア「タワーオブ・・・ヘブン・・・」
タワーオブヘブン
亡くなったポケモンたちの魂の眠る塔
頂上の鐘の音がその魂を鎮めるという・・・
カトレア「呼んでいるのかしら・・・」
カトレア「少し感じる・・・悲しみ・・・」
ダブランと出会ったときのように感じる何か
気づいてくれる人に向けて送るテレパシー
カトレア「ごめんなさい・・・少し寄り道をしてもいいかしら?」
ダブラン「ダァブ!」
どうしても気になるカトレアは目的地をタワーオブヘブンへと変更する
しかし、ポケモンたちも気になっており
皆で足並みそろえて行くことに
カトレア「うぅ・・・」
受け取るテレパシーの性質故か
少し苦しみを覚えるカトレア
メタグロス「グゴ・・・!」
カトレア「大丈夫・・・私は大丈夫よ・・・」
少しの苦しさを我慢してでも突き止めたい理由
カトレア「どうして・・・こんなに悲しい声を上げているの・・・?」
場所が場所だけに一回は魂のものを疑ったが
生命に満ち溢れ力強い声だ
しかし・・・悲しみに溢れる声
あまりの悲しみに自分に何ができるのかわからなくなってしまったが
それでも何とかしてあげたい
ポケモンを思いやる気持ち、ただその一心で塔へと向かう
カトレア「はぁ・・・はぁ・・・」
入り口につくころにはいっそう足取りが重くなっていた
ダブランも感じる声
カトレアが苦しんでいる理由もわかるが、それ以上に心配の眼差しをカトレアに送る
カトレア「大丈・・・夫・・・少し、休めば・・・」
胸を押さえふらつくカトレア
今にも倒れそうだ
シンボラー「シィィ!」
カトレア「はぁ・・・あ・・・」
重力に誘われるように体が後ろへ倒れていく瞬間――
「大丈夫?」
厚い手袋に覆われた手で肩を支えられた
カトレア「あぁ・・・はい」
支えられるまま振り向き力なく応えるとそこには
フウロ「気分悪いの?」
可愛いパイロトスーツを来たプロペラ上のリボンが特徴の少女が
カトレア「そうです・・・けど、少し休めば・・・」
そう言うと木陰に置いてあるカバンを取りに行くフウロ
フウロ「効くかわからないけど、はい、薬」
カトレア「ありがとう・・・ございます・・・」
薬を飲み一息つくカトレア
薬のおかげかフウロの介抱のおかげか落ち着きを取り戻すカトレア
カトレア「いえ、ちょっと気になることがあって」
フウロ「そう・・・場所が場所だから、よくここにお参りに来る人でね、昔を思い出して泣いちゃったり、気分を崩しちゃったりする人がいてね」
フウロ「アナタもそんな感じだったのかなって」
カトレア「お気遣い・・・ありがとうございます・・・アタクシは――」
少し特殊な力があること
ポケモンの声を辿ってきたこと
そしてそのポケモンの声が悲痛なものであったこと
素直にフウロに伝えるカトレア
話を聞いて疑うことなくむしろ何か納得をした様子のフウロ
フウロ「もしかして・・・アナタの聞いた声って・・・“ムシャーナ”かもしれないわ」
カトレア「ムシャーナ・・・?」
フウロ「実はアタシ、ムシャーナの件で今日ここに来たの」
ムシャーナ
夢を司るポケモン――
頭から出る煙には夢を現実化させる力があると言われ、とある施設で研究がされている
フウロ「頂上に見慣れない影が見えたの」
フウロ「よく見たらそれがムシャーナだったの」
フウロ「でも、ここはムンナの生息地じゃないし、ムシャーナの近くにはトレーナーらしき人もいなくて」
フウロ「なんだか気になって何回かここに来て調べたんだけど・・・結局見つけられず・・・」
フウロ「今日を最後にしようと思って来て見たらアナタがいて・・・」
フウロ「そしてアナタの話を聞いて確信したの。ムシャーナはいるって!」
カトレア「そんなことが・・・」
カトレア「わからないわ・・・けれど、実際に会って確かめて見たいのは・・・確か」
フウロ「アタシもそれがいいと思うけど・・・大丈夫?話を聞くとアナタが倒れちゃうくらいのテレパシーなんでしょ?」
カトレア「アタクシが我慢すれば・・・いいの」
フウロ「でも心配よ」
カトレア「それにアタクシにはシンボラーがいるわ・・・!」
シンボラー「シィィィ!!」
カトレアの声に呼応し、シンボラーの体が光り―――
放つ光で障壁を形成した
カトレア「この子の力を借ります・・・!」
フウロ「なんだか頼もしいね!準備したら早速行きましょう!」
念のためのポケモン達も含めた薬等を準備し――
カトレア「大丈夫です・・・!」
フウロ「さぁ、行きましょう!」
タワーオブヘブンへ――!
「ココハ タワーオブヘブン・・・ タマシイガ ネムル バショ・・・」
フウロ「いつもお疲れ様です!」
「ハイ」
入り口の警備員に挨拶をし、上を目指す一行
フウロ「声は・・・どう?聞こえる?」
カトレア「はい、壁で抑えてありますが・・・まだ遠くに聞こえます」
フウロ「もっと上ね・・・もしかしたら頂上の鐘にいるのかも!」
カトレア「恐らく・・・」
フウロ「わかったわ!散策しつつ頂上を目指しましょう!」
カトレア「はい・・・!」
「キヲツケテ・・・キヲ・・・ネム・・・イ・・・」
「zzz・・・・・」
階を進むカトレア達
その名の通りポケモンたちのお墓が並び、不思議な雰囲気を漂わせている
カトレア「・・・・・」
フウロ「ポケモンを大事にしていると少しつらい場所かもね・・・」
カトレア「はい・・・」
フウロ「でも、ポケモン達も一つの命。始まりがあれば終わりがあるの」
カトレア「・・・・・」
今まで深く考えたことのなかったポケモンの死
自分の大切なパートナーの永遠の別れ
想像しただけでも胸が張り裂けそうになる・・・
そして、フウロの話を聞いて感じた感情が一つの答えを導いた
カトレア「この声の子・・・死に触れた悲しさ・・・それを叫んでいる・・・!」
フウロ「そうなの・・・そう・・・」
フウロ「大切な誰かを失った未練でこんな所まで来たのかな・・・」
カトレア「・・・・・」
神妙な面持ちで歩を進めていた一行だが
ある異変に気づく
フウロ「あ!人が倒れている!」
カトレア「あ・・・!」
サイキッカー「zzzzz」
フウロ「眠って・・・る?」
カトレア「こんなところでなぜ・・・」
カトレア「あそこにも・・・!」
ミニスカート「zzzzz」
やまおとこ「zzzzz」
フウロ「おかしい・・・!」
カトレア「誰かの・・・仕業・・・!?」
刹那――
ダブランが何かを察知する――
カトレア「どうしたの・・・!ダブ―――!!」
遅れてカトレアも事態を把握する
カトレア「空間が・・・!?」
フウロ「え?なになに?なにー!?」
シンボラー「シィィ!!」
臨戦態勢に入るポケモン達
フウロ「うっそー!?」
部屋のあちこちに生じる歪み
重い空気
ポケモンが作り出した異空間に閉じ込められたカトレア達
カトレア「いつの間に・・・こんな・・・!」
フウロ「ポケモンの仕業・・・!ムシャーナなの!?」
カトレア「同じ力を感じます・・・!声の主に間違いありません・・・!」
フウロ「何が目的かわからないけど・・・!受けて立つわ!」
腰に控えたボールに手をかけ高らかに叫ぶ
ポケモンを繰り出そうと発した声が力なく落ちる
フウロ「あ・・・れ・・・おかしいな・・・?」
カトレア「フウロさん・・・!」
フウロ「ねむい・・・zzz」
何らかの力で眠らされ
その場に倒れこむフウロ
カトレア「く・・・!」
シンボラーとダブランに異変はない
シンボラー「シィィィ・・・!」
そしてさらに気づけば紫の煙が辺りを覆い始める
カトレア(この煙・・・!危ない!?)
シンボラー「シィィィ!!」
危険を察知し煙を吹き飛ばさんがため風を巻き起こすシンボラー
が――
シンボラー「シィィィ・・・・・zzz」
地にゆっくり落ちていく
ダブラン「zzzzz」
カトレア「こうなったら・・・!お願い!メタ―――!?」
急激に襲われる瞼の重み
カトレア「アタクシ・・・も・・・」
カトレア「メタ・・・グロ・・・」
ゆっくり倒れ――
カトレア「くっ・・・・ぅ・・・・zzzz」
その身を床に預ける――
その様子を確かめるように一匹のポケモンが現れた
ムシャーナ「ムゥゥゥシャ・・・・」
――――
―――
――
「すごいぞ!カトレア!お前にこんな才能があったなんて!!」
「ダンバルなんて難しいポケモンを操れるとは・・・将来はリーグチャンピオンですかな!」
「いえいえさすがにそこまでは・・・」
「いやいや、子供の可能性は無限大ですぞ!有望ですな!」
「ん?お友達とバトルかい?いいぞいいぞ!だが、少しは手加減してあげなさい。お前は強すぎるんだからな」
「カトレア・・・不思議な力があるとわかった時は心配だったけど」
「ポケモンと心を通わせるなんてなんて純粋なんだ!素晴らしい力じゃないか!」
「うふふ、親バカが入ってません?」
「はっはっは!」
「どうした?コクラン。そんなに慌ててお前らしくもない」
「だ、旦那様!お嬢様が!お嬢様が!!」
「カトレアがどうしたって言うの!?」
「大変なことに!!」
―――
――
カトレア「―――!?」
覚醒――
カトレア(夢・・・?)
覚醒――
カトレア(夢・・・?)
不思議な空間に浮遊しているカトレア
カトレア「どうやら・・・まだ眠っているのかしら」
カトレア「それにしても・・・さっきの・・・夢・・・」
過去のトラウマ
人もポケモンも傷つけ
バトルを禁じられた事件――
不意に背中にあたる柔らかい感触
振り向くと――
カトレア「アナタ・・・ムシャーナ?」
ムシャーナ「ムゥゥシャ!」
カトレアに寄り添うムシャーナ
それはどこか優しく、暖かいものだった
カトレア「慰めてくれるの・・・?」
ムシャーナ「ムゥゥ・・・」
そばを離れないムシャーナ
カトレア「アナタの仕業・・・?どうしてこんなことを」
ムシャーナ「ムゥゥ・・・」
悲しく顔を背けるムシャーナ
カトレア「フウロさん・・・みんなはどこ?」
ムシャーナ「シャァ・・・ムゥ・・・」
頭の中にムシャーナから映像が送られる
自分を含め塔のフロアで眠っている皆の姿が
ムシャーナ「ムゥゥ!!」
カトレア「くぁ・・・!?」
急に感情が高ぶるムシャーナ
その発する気に宛がわれ、一瞬苦しむカトレア
カトレア「アナタ・・・どうしてそんな声・・・を・・・」
ムシャーナ「ムゥゥゥゥッシャ・・・!!」
カトレア「お願い・・・アタクシに・・・教えて・・・?」
ムシャーナの額に自分の額を添える
カトレア「怖がらないで・・・・・」
ムシャーナ「ムゥゥゥ・・・」
一瞬の閃光――
そして大量に流れてくる映像――
ムシャーナの過去―――
――
―
「まず・・・その箱を開けてごらん」
「うん・・・」
「わぁ!これって!」
「モンスターボールだよ」
「だ、だしていいの!?」
「うふふっ、もちろんよ」
「わぁ!!ムンナだ!!パパ!!ママ!!ムンナだよ!!ムンナだよ!!」
「そんなにはしゃいじゃって、ミーちゃんったら」
「これから新しい家族になるんだぞ!」
「やったぁ!パパ!!ママ!!だいすき!!」
「はははっ」
「ムゥゥンナァ♪」
――
「ムンナ・・・やわらかぁい!」
「ムンナ!かんらんしゃだよ!!いっしょにのろうよ!」
「ムンナ!きゃはは!!くすぐったいよ~!」
「たいへんママ!ムンナがねつをだした!!」
「ムンナ・・・だいじょうぶ?」
「ムンナ・・・ごめんね・・・zzz」
「ムンナ!?パパ!!ママ!!ムンナがげんきになったよぉ!!」
「どうしたの?ムンナ?ママ!ムンナのようすが!!」
「え・・・?しんか!?」
「ムシャーナ・・・だいすき!!ずっと・・・いっしょだよ?」
「やくそくだよぉ?」
「ムシャーナ・・・あいしてる!」
「ふふふっ」
「ムシャーナ!ムシャーn・・・・・
――
「今回は・・・本当に残念なんことに・・・」
「可愛そうに・・・まだあんなに小さいのに・・・」
「事故だそうよ・・・一人で森に遊びに行って・・・川で溺れたって・・・」
「ご両親・・・さぞお辛いわね・・・」
「う・・・私・・・見ていられないわ・・・」
「本当に・・・かわいそう・・・」
―――
――
「うぅ・・・っひぐ、そ、そうよ・・・」
「ミーはな・・・お前の大好きなオボンの実をたくさん採りに行くんだって、言ってたんだ・・・」
「ムシャーナ・・・うぅ・・・アナタを驚かせたかっ・・・たの・・・よ・・・」
「ムシャーナ・・・ごめんな・・・俺達がもっとしっかりしていれば・・・」
「うぅぅ・・・うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ムゥ・・・・・・ゥ・・・・シャ・・・・・」
―――
――
「あれから一週間たったけど、大丈夫かしら」
「特に奥さん・・・見ていられないわ・・・」
「日に日にやつれて・・・」
「自分の娘が亡くなったら・・・それは仕方ないわ・・・」
「でも・・・あのまま奥さんも・・・体を壊して・・・そのまま・・・」
「心配だわ・・・」
――
「気持ちはわかるが・・・お前がそうやってやつれていって・・・体を壊したら・・・ミーだって悲しむぞ・・・」
「・・・・・・・・・・ええ」
「おかゆ作ったんだ・・・な?少しだけでも食べような?」
「・・・・・・・・・・ええ」
「・・・・・頼むから・・・お前までいなくなったら・・・・」
「ムシャー・・・!」
「パパ、ママどうしたの?」
「「――――!?」」
「どうしてそんなにおどろいてるの?」
「あ・・・あぁ・・・・!ミー・・・ちゃん!?」
「あ、っちょと、ママ・・・くるしいよぉ・・・!」
「どうして・・・これは・・・?」
「ムッシャァ!」
「煙・・・?ムシャーナ・・・お前の力・・・なのか?」
「ミーちゃん!!あぁ!!ミーちゃん!!!」
「ママ・・・いたいよぉ」
「はっはは・・・ミーが・・・いる・・・」
「ムシャムシャァ!」
―――
――
「ええ、昨日もショッピングセンターで会いましたわ」
「笑顔で挨拶していただいて。ようやく立ち直れたのね」
「その話だけど・・・知ってる?」
「何が・・・?」
「あの奥さん・・・死んだ娘さんの話をよくするのよ」
「昔話じゃなくって、昨日綾取りをしたとか、一緒にお菓子を作ったとか!」
「え・・・それってどういう・・・」
「なんか気味が悪いわ・・・」
「心配だわ・・・」
―――
「パパとママにたべてもらいたくてがんばったの!!」
「ありがとうなぁ」
「ムッシャー!」
「ん?来客か?」
「すいません警察です」
「はい・・・何か」
「近隣の方から相談がありまして」
「相談?」
「ママーあれだれ?」
「ミーちゃん、あの人はジュンサーさんよ、お仕事中なのね」
「・・・・?今何て・・・?」
「あ、娘が・・・」
「ムッシャー!」
「この怪しい煙は・・・あのポケモンのものなの!?」
「なんなのこれは!?」
「ママー!こわーい!!」
「あぁ、ミーちゃん!大丈夫よ!!」
「死んだ娘の幻を見ているの!?」
「あの煙!!あのポケモンが操っているのよ!!」
「違うんです!これは!!」
「そうした?何か騒がしいぞ」
「今、悪いポケモンがこの人たちを操っているの!!」
「ムシャ!?」
「この怪しい煙か!!なんて奴だ!」
「お、落ち着いてください、状況を確認しますから!」
「どうした?」「何かあったのか?」「事件!?」
「うわ!煙を出しやがった!!」
「これで俺たちまで操る気か!!」
「バケモノめ!」
「こんな悪い奴は追い払ってやる!!行け!!シュバルゴ!!」
「俺も加勢する!!行け!!ガマゲロゲ!!」
「ママー!!ママ・・・ァ・・・」
「ムッシャ・・・ァァ!!」
「シュバルゴ!!メガホーン!!」
「ムシャ!?ムシャァァァァァ!!」
「よし!!直撃だ!!よくやったシュバルゴ!!」
「ムシャ・・・ァァァ!!!」
「ガマゲロゲ!!ハイドロポンプ!!」
「ちっ!逃がすか!!行け!ココロモリ!!」
「ムシャアアア!!!」
「煙が!!」
「―――あ!!・・・くそぅ、逃げられたか!」
「血のあとが続いているな!」
「そう遠くへ行っていないはずだ!探すぞ!!」
「「おお!」」
「あぁ・・・ミーちゃん・・・」
「ムシャーナ・・・あぁ・・・」
―――
――
気づけば大量の涙が目に溢れていた
カトレア「そんな・・・そんなことって・・・」
決死の思いで逃げきった後も
拠り所となる場所もなく放浪の日々
野生のポケモンから縄張りを追われ
物珍しさからトレーナーからも追われ
心休まることなく逃げ続けた数年・・・
奇しくも、死者の魂を沈めるここタワーオブヘブンにたどり着き
ようやく最低限の安らぎを見つけた・・・
ムシャーナ「ムゥゥゥ・・・」
カトレア「辛・・・かった・・・のね・・・」
あまりの悲劇にかける言葉がない
それによって憔悴する家族を見続け
夢を見せて元気にさせようとしても誤解による迫害
「わたし・・・わるいの?」
目の前に現れる幼女――
カトレア「アタナは・・・何も・・・」
「かぞくをよろこばせることがわるいことなの?」
ムシャーナの心を代弁する
「でもいいの・・・ここにいて、みんなのゆめのちからがあれば、いつでもみんなにあえるもの」
カトレア「人間の・・・夢の力を・・・?」
「ここにいればだれもいじめない・・・いつでもすきなときにみんなにあえるもの」
カトレア「でも・・・それは・・・そのままじゃ・・・」
「わたしのゆめ・・・ほんとうにここちいいの・・・あのときのたのしかったおもいで・・・みんなのえがお・・・たいせつなもの」
カトレア「あなたの叫び・・・アタクシに届いたあの声は・・・」
「・・・・・」
カトレア「本当はわかっているのでしょう・・・?本当は気づいてほしかったんでしょう・・・?」
「わたしは・・・」
「さみしかったの・・・」
カトレア「・・・・・」
「なのに・・・ここにくるみんなやさしい・・・こえがかなしい・・・けどやさしい・・・」
「わたしのかぞく・・・やさしい・・・だいすき・・・わたし・・・ほんとうは・・・」
「にんげんと・・・ポケモン・・・」
カトレア「違った生き物同士だから生まれる絆・・・本当に尊い絆・・・」
カトレア「アナタが愛した人たちとの絆・・・!」
「あなたのポケモンたちもおなじきもち・・・」
カトレア「ムシャーナ・・・」
優しく母性に溢れた抱擁がムシャーナを包む――
カトレア「もう一度・・・人を・・・好きになってくれる・・・?」
ムシャーナの頬を涙が伝う――
カトレア「すぐには無理かもしれない・・・けれど・・・」
ムシャーナ「ムシャァァ・・・ナァ・・・!」
カトレア「アタクシ達と・・・一緒に・・・ね?」
ムシャーナ「ムシャァァァ!!」
辺りの煙が晴れる――
「ありがとう・・・」
「わたしのだいすきなムシャーナ・・・」
「これからよろしくね・・・」
カトレア「ええ・・・」
煙が晴れる一瞬
聞こえた声はムシャーナの夢か・・・魂の声か・・・
塔の最上階――
目の前には大きな鐘が
フウロ「スワンナ!!ブレイブバード!!・・・んにゃ・・・」
隣でまだ寝ているフウロが叫ぶ
ダブラン「ダブゥ・・・」
シンボラー「シィィ・・・」
目を覚ますポケモン達
そばにはいつの間にか出ていたメタグロスと・・・
ムシャーナ「ムゥゥゥ!」
柔らかく寄り添うムシャーナが
カトレア「みんな・・・新しい仲間のムシャーナよ」
ムシャーナ「ムゥゥシャァァ・・・!」
メタグロス「グロゥ!」
ダブラン「ダァブ!」
シンボラー「シィィ!!」
大きくうなずくポケモン達
フウロ「ふっふっふ!雨状態のぼうふうは必中技!!これでアタナもおしま―――」
フウロ「ごめんなさい!かみなりはやめてぇぇぇぇ―――ふぇ!?」
フウロ覚醒――
ばつが悪そうにしている
カトレア「フウロさん・・・もう大丈夫です」
フウロ「そう」
起こったことの一部始終を告げるカトレア
カトレア「フウロさんのおかげでこの子に会えました・・・ありがとうございます」
フウロ「いろいろあった子だけどアナタのパートナーなら大丈夫そうだね!」
ムシャーナ「ムシャ!」
フウロ「さてと・・・」
カトレア「・・・?」
フウロ「あの鐘を鳴らしたらどう?」
フウロ「タワーオブヘブンの鐘はポケモンの魂を鎮めるの。しかも鳴らす人の心根が音色に反映される・・・」
カトレア「そうね・・・」
紐に手を伸ばすカトレア
ゴォォォォ・・・・・ン
鐘の音色があたりに鳴り響いた・・・
フウロ「いい音色・・・カトレアさんは優しくて強い人・・・そんな音色・・・」
カトレア「ありがとう・・・」
フウロ「ふぅ、問題もひと段落したし・・・街に戻ろうかな!」
カトレア「今日はありがとうございました」
カトレア「ジムで・・・?」
フウロ「うん、アタシ、フキヨセシティのジムリーダー!でも、今野菜の収穫期で貨物機フル稼働しててね、そっちが忙しくて休んでるの」
カトレア「そう・・・残念ね」
フウロ「あ、で、カトレアさん、これからまた旅をするの?」
フウロ「へぇ~ソウリュウシティか・・・大変な道のりねぇ」
カトレア「そうね」
フウロ「んん・・・」
しばらく思案するフウロ
フウロ「ねぇ、貨物機乗ってみない?」
カトレア「え・・・?」
カトレア「いいの・・・?そんなことして大丈――
フウロ「大丈夫だって!アタシからおじいちゃんに頼んでおくから!」
カトレア「そう・・・ありがとう・・・!」
ムシャーナによる煙もはれ、トレーナー達も目を覚まし
少し明るい雰囲気を見せていた
フキヨセシティに着き早速フライトの準備をするフウロ
ソウリュウイキの貨物船に次々と野菜入りのコンテナが運ばれる
カトレア「え・・ええ・・・!」
興奮を抑えきれず顔がにやけてしまうカトレアに問いかけるフウロ
フウロ「もうすぐ準備が完了するわ」
カトレア「・・・・!」
期待の最終チェックを済ませ
気象状況の確認のあと―――
フウロ「さぁ!!準備オッケー!!ソウリュウシティまでぶっ飛ぶわよ!!」
カトレア「はい・・・!!」
鼓動の高鳴り
未知への期待
いろんな思いを胸に秘め
――9番道路――
ゴチミル「――――?」
ゴチミル「ゴチミィール♪」
保守いただいたかた本当にありがとうございました。
一旦ここで終わりにします
また暇があったら適当に立てて続きつらつらとやらせて頂きまッスー
元スレ
カトレア「ここがイッシュ地方・・・!」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1344501001/
カトレア「ここがイッシュ地方・・・!」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1344501001/
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- モバP「日本一になるって言っただろ? お前昔を思い出せよ!」
- 教室に死体を隠して3ヶ月間、誰も気付かなかった話をしようと思う
コメント一覧 (7)
-
- 2016年07月30日 13:50
- ぺろぺろぺろぺろぺろぺろ
-
- 2016年07月30日 14:25
- ぺろぺろぺろぺろぺろぺろ
-
- 2016年07月30日 15:37
- コクランでアイドルを真っ先に連想してしまった…
-
- 2016年07月30日 23:04
- カトレアさん
中々強敵でしたね
でも初見のシロナさんに比べたら…もぅ
-
- 2016年07月31日 07:50
- めっちゃ早口で言ってそう
-
- 2016年07月31日 12:32
- パルフェかと思ったぞ
-
- 2016年07月31日 17:08
- あ、武器屋の方では無いのね