就活生「私の志望動機は……」成歩堂「異議あり!!!」
裁判長「これより、ある就活生の面接を開廷いたします」
御剣「検察側、準備完了しております」
成歩堂「弁護側、準備……」
成歩堂「…………」
成歩堂『異議あり!!!』
裁判長「おや、どうしました成歩堂君? しょっぱなから飛ばしてきますなあ」
真宵「なるほどくん、序盤からはりきりすぎるとバテちゃうよ!」
成歩堂「……すみません。異議を唱えずにはいられませんでした」
成歩堂「あの……≪面接≫というのはどういうことでしょうか?」
成歩堂「御剣検事……!」
御剣「弁護人……今さら何をいっている。開廷前にちゃんと説明したではないか」
御剣「今この国の民間企業は、不況により採用人数を絞らねばならない状況にある」
御剣「そのため採用面接においては、万一にも失敗は許されない」
御剣「そこで我々のような法曹関係者に、採用面接が委託されるケースが増えてきたのだ」
成歩堂「はぁ……」
成歩堂(なんていうか、メチャクチャな話だよなぁ……)
成歩堂(ぼくがいる業界って、裁判長も検事も助手もみんなメチャクチャだし……)
裁判長「コ、コラッ! なんてことをいうのですか、弁護人!」
御剣「一番メチャクチャなのはキサマではないか……!」
真宵「そうだよ! このメチャクチャ弁護士!」
成歩堂「す、すみません!(くそっ、みんなしてぼくの心を読みやがって!)」
裁判長「成歩堂君の処分は、面接が終わった後にじっくり行うとして……」
裁判長「御剣検事、面接を受ける学生を呼んできていただけますか?」
御剣「承知した」
就活生「就活生男(しゅうかつ なまお)、無盟大学の4年生です」
裁判長「これより採用面接を行います」
裁判長「こちらからいくつか質問しますので、リラックスして答えて下さい」
就活生「はい、分かりました」
成歩堂(本当に始まっちまったぞ……法廷で民間企業の採用面接が!)
成歩堂(だけど委託されたからには、こっちもプロだ……全力で面接しよう!)
裁判長「ではまず、弊社を志望した≪志望動機≫についてお答え下さい」
~ 御社を志望した理由 ~
就活生「私が御社を志望した理由は、御社の事業に将来性を感じたためです」
就活生「御社の事業に携わることは、この国の未来を築くことと同じであると存じます」
就活生「また、御社に入社することは子供の頃からの夢でもありました」
就活生「私の熱意があれば、必ずや御社の発展の役に立つことができると思います」
就活生「そのとおりです」
裁判長「いいことをおっしゃいますなぁ」
就活生「ありがとうございます」
成歩堂(裁判長……今の発言にずいぶん好感触を持ったようだな)
真宵「なるほどくん、今の志望動機よかったねー」
真宵「≪倉院流霊媒道≫の採用面接だったら、今のだけで合格にしてるかも」
成歩堂(そんなに簡単になれるのか……霊媒師)
御剣「…………」
成歩堂(御剣もなにかをいうつもりはないようだな……)
成歩堂(だけど……ぼくは誓ったばかりだ。この面接に全力で取り組むって!)
成歩堂(だったら……!)
裁判長「では、次の質問に――」
成歩堂『待った!!!』
成歩堂「裁判長……弁護側は、今の彼の発言に対し……≪尋問≫を要求します!」
裁判長「じ、尋問……!」
成歩堂「彼の発言にムジュンがないかどうか……確かめさせて下さい!」
就活生「ええっ!?」
裁判長「御剣検事……いかがですかな?」
御剣「≪尋問≫は弁護人の当然の権利といえる。検察側に異論はない」
裁判長「分かりました。では弁護人、尋問をお願いします」
就活生「そ、そんな……ッ!」
成歩堂(よし……!)
成歩堂(そういえば、さっき裁判所の係官から面接で使う資料をいくつかもらったよな)
成歩堂(今のうちにちゃんと確認しておかないと……)
~ 証拠品ファイル ~
弁護士バッジ…ぼくの身分を証明してくれる、大切なバッジだ。
就活生の作文…小学生だった頃の作文。タイトルは「将来の夢はサンタさん」
就活生の写真…本人と父母、祖母の四人が写っている。
バイト先の同僚の証言書…“就活生男は足手まといだった”と書かれている。
~ 人物ファイル ~
綾里真宵(19)…ぼくの助手。倉院流霊媒道の使い手。今もなお修行中。
御剣怜侍(26)…検事局ナンバー1の実力を誇る、ぼくの古い友人。
就活生男(22)…無盟大学の4年生。現在、就職活動中。
~ 御社を志望した理由 ~
就活生「私が御社を志望した理由は、御社の事業に将来性を感じたためです」
就活生「御社の事業に携わることは、この国の未来を築くことと同じであると存じます」
就活生「また、御社に入社することは子供の頃からの夢でもありました」
成歩堂『異議あり!!!』
成歩堂「今、あなたはこうおっしゃいましたね」
成歩堂「“御社に入社することは子供の頃からの夢だった”と……」
就活生「ええ……それがなにか?」
成歩堂「しかし、こちらの資料をごらんください」
裁判長「これは……作文ですな。どれどれ……」
裁判長「ふむ、“ぼくは将来サンタさんになりたい”ですか。微笑ましいですなぁ」
裁判長「私も学生時代、裁判官になるかサンタさんになるか、散々迷ったものです」
成歩堂(裁判長のサンタクロース姿……似合いそうだな)
裁判長「ところでこれは、どなたが書かれた作文ですか?」
成歩堂「今そこでぼくらが面接をしている……彼の作文ですよ」
裁判長「ええっ!?」
成歩堂「先ほどの志望動機では“御社に入るのが夢だった”といっている!」
成歩堂「これは明らかにムジュンしています!」
就活生「ぐう……ッ!」
真宵「やったね、なるほどくん!」
成歩堂「ああ!(よし……! さっそくウソを暴いてやったぞ!)」
就活生「あ、いえ……これはその……あの、なんというか……」
就活生「えぇと……その……説明すると長くなるのですが……」
裁判長「やれやれ、もう結構です」
就活生「あ……はい……」
裁判長「それでは次の質問をします。簡単に≪自己PR≫をして下さい」
就活生「は、はいっ!」
~ 私はこういう人間です ~
就活生「私は噛めば噛むほど味が出るスルメのような人間です」
就活生「また、潤滑油のような人間でもあります」
就活生「さらに、スポンジのような人間でもあります」
就活生「このような長所を生かし、御社のために役立ちたいと思っています」
真宵「…………」
御剣「…………」
裁判長「…………」
「…………」
御剣「……なんだろうか」
裁判長「その……私には、彼のいってることがさっぱり分からなかったのですが」
御剣「……心配ない、私もだ」
御剣「というわけで、ここは弁護人の手腕に期待したいと思う」
成歩堂「ええっ!?」
真宵「頑張ってね、なるほどくん!」
裁判長「期待してますぞ!」
成歩堂(みんな、ぼくに丸投げかよ!)
成歩堂(仕方ない、とにかく片っぱしからゆさぶっていくしかないか……)
~ 私はこういう人間です ~
就活生「私は噛めば噛むほど味が出るスルメのような人間です」
成歩堂『待った!!!』
成歩堂「噛めば噛むほど味が出るスルメ……どういう意味ですか?」
就活生「え、その、それは……」
就活生「一緒に仕事をすればするほど、良さが出てくるというか……」
就活生「長く付き合えば付き合うほど、好きになってもらえる人間ということです」
成歩堂(そういう人ってたしかにいるよな)
裁判長「つまり、私のような人間だということですな!」
成歩堂(あなたはむしろ、噛めば噛むほどボロが出る、といった感じだろう……)
成歩堂「なるほど、よく分かりました。発言を続けて下さい」
成歩堂『待った!!!』
成歩堂「潤滑油のような人間……どういうことでしょう?」
真宵「油のようによく燃える、ってことかな?」
裁判長「まさか……あなたは放火魔!? ダメですぞ、放火は!」
就活生「いえいえいえ! 違います!」
就活生「私は人間関係を円滑にする潤滑油のような存在だ、と申し上げたのです」
成歩堂「人間関係を円滑にする、とは?」
就活生「たとえば集団で、この人がいるとまとまるって人っていますよね」
就活生「ケンカの仲裁が上手いとか、冗談で場を和ますとか……」
裁判長「ふむ、つまり私のような人間だということですね!」
成歩堂(裁判長……あなたはむしろ、場を混乱させる側の人間な気が……)
御剣「では、先を続けてもらおうか」
成歩堂『待った!!!』
成歩堂「スポンジのような人間……説明をお願いしたいのですが」
真宵「うーん、キレイ好きってことかな?」
裁判長「スポンジのようにふわふわしたいい加減な人間、とも考えられますぞ!」
就活生「いえ! そうではなく……」
就活生「知識をどんどん吸収する、という意味でスポンジという言葉を使いました」
裁判長「おお! つまり私のような人間であると!」
成歩堂(あなたは知識を吸収どころか、記憶を定着させておくことすら怪しいんじゃ……)
成歩堂「分かりました、どうもありがとうございます」
裁判長「自己PRについては内容がよく分かりました。成歩堂君、ご苦労様です」
成歩堂「いえいえ、とてもゆさぶりがいがある発言でした」
真宵「なるほどくん、水を得た魚のように生き生きしてたもんね」
裁判長「しかしなぜ、あんなに分かりにくいたとえ話をしていたのですか?」
就活生「そ、それは……」
御剣「おおかた、就職面接のマニュアルに載ってる文章をそのまま丸暗記したのだろう」
就活生「!」ギクッ
御剣「しかし、採用面接は自分の言葉で話さねば意味がない。よく覚えておくことだ」
就活生「す、すみません……!」
成歩堂(くそっ、御剣のヤツにおいしいところを持っていかれた……)
裁判長「弁護人がおいしいところを持っていかれたところで、続いての質問です」
裁判長「≪アルバイトの経験≫などがあれば、お答え下さい」
~ 私のアルバイト経験 ~
就活生「私は飲食店でアルバイトをしておりました」
就活生「やがて、店長から認められて、バイトリーダーに任命されました」
就活生「忙しい職場でしたが、大変やりがいのある仕事でした」
就活生「ここで学んだ経験を、御社でも役立てたいと思っています」
真宵「倉院の里における“家元”ともいえるね」
御剣「検事局における“検事局長”ともいえるだろう」
成歩堂(ここは負けてられないな……ぼくもなにかいっておくか)
成歩堂「法律事務所における“所長”ともいえますね!」
裁判長「それは違うと思いますな」
御剣「うむ、それは違う」
真宵「もっとホンシツを見ようよ、なるほどくん」
就活生「今のたとえは、少しズレているかと」
成歩堂(なんだよ、みんなして!)
裁判長「では、ズレている弁護人、くれぐれもズレない尋問をお願いします」
~ 私のアルバイト経験 ~
就活生「私は飲食店でアルバイトをしておりました」
就活生「やがて、店長から認められて、バイトリーダーに任命されました」
成歩堂『待った!!!』
成歩堂「“店長から認められて”……これは仕事ぶりを、ということですか?」
就活生「ええ、もちろんです」
裁判長「ではお手数ですが、発言に加えていただけるでしょうか」
就活生「承知しました」
成歩堂『異議あり!!!』
就活生「な、なんですか!?」
成歩堂「こちらに……あなたのバイト先の同僚の“証言書”があります」
就活生「え……ッ」
就活生「!」ギクッ
成歩堂「足手まといをバイトリーダーにする店長がいるとは思えません」
成歩堂「なにせバイトリーダーの重要性は、法律事務所の所長にも匹敵するのですから」
成歩堂「つまり、今の彼の発言は真っ赤なウソなのです!」
就活生「ぐはァァァ!」
ザワザワ…… ドヨドヨ……
裁判長「静粛に! 静粛に!」カンッカンッ
就活生「す、すみません……」
就活生「バイトしていたのは本当ですが、リーダーではありませんでした……」
裁判長「ふーむ、またウソをついていたのですか……」
裁判長「発言は正確にお願いしますよ」
裁判長「だんだんあなたという人物が、怪しく見えてきます」
就活生「も、申し訳ありません……」
真宵「またしてもいいツッコミだったね、なるほどくん!」
成歩堂「うん、またひとつ≪真実≫をつかむことができた!」
裁判長「では、次の質問に移ります。あなたの≪趣味≫を教えて下さい」
就活生「は、はい……!」
~ 私の趣味 ~
就活生「私の趣味は、特撮番組を見ることです」
就活生「アルバイトの時間と重なった時も、録画をして見るようにしています」
就活生「特撮番組の影響で、体を鍛えることもしています」
就活生「こうして鍛えた体を、御社でも役立てたいと思っています」
成歩堂(大学生にしてはちょっと幼いかなって気もするけど……)
真宵「…………」
御剣「…………」
成歩堂(ぼくの身近にも特撮大好きな人間がいるし、余計なことはいわないでおこう)
裁判長「では弁護人、尋問をお願いします」
~ 私の趣味 ~
就活生「私の趣味は、特撮番組を見ることです」
成歩堂『待った!!!』
成歩堂「特撮番組ですか……たとえば、どのような?」
就活生「私が一番好きなのは、謎のエスニックヒーローであるオニャンコポンですかね」
就活生「あとは……キャプテン・サイパンも毎週楽しみにしています」
御剣『異議あり!!!』
御剣「トノサマンは……トノサマンシリーズは、どうなのだろうか?」
就活生「トノサマンですか?」
就活生「一応見てますけど……ハッキリいってあまり好きじゃないですね」
就活生「ビジュアルがかっこよくないですし、ストーリーもイマイチ……」
御剣『異議あり!!!』
御剣「キサマ……なんということをッ!」
真宵「そうだよ! ユーザイだよ、タイホだよ!」
就活生「そ、そんな……」
成歩堂(なにやらとんでもないことになってきたぞ……止めないと!)
成歩堂「御剣、落ち着くんだ! いつも冷静なお前らしくないじゃないか!」
成歩堂「お前は今は検事なんだ! トノサマンのことは今は忘れよう!」
御剣「ここで異議を唱えられぬのであれば……誰が検事などやるものかッ!」
成歩堂「ぐわああああああっ!!!」
裁判長「時間を? なぜですかな?」
御剣「私から彼に、トノサマンについて講義をしてやりたいのだ」
裁判長「ええっ!? しかし、今は面接中ですし……」
御剣「お願いするッ!!!」
裁判長「わ、分かりました……検察側の主張を認めます」
御剣「感謝する」
成歩堂(認めるなよ!)
真宵「御剣検事、あたしも手伝うよ!」
御剣「頼む、真宵君」
就活生「あわわ……」
……
……
……
御剣「トノサマンの素晴らしさ、分かっていただけただろうか?」
就活生「と、とてもよく……分かりました……」
就活生「もうオニャンコポンなんか見ません……トノサマン一本でいきます……」
成歩堂(気の毒に……すっかり洗脳されちゃってるぞ……)
裁判長「えぇと……では気を取り直して、面接を再開します」
裁判長「最後の質問です。なにか他に≪頑張ってきたこと≫があれば、教えて下さい」
~ おばあちゃん思い ~
就活生「私は祖母の介護に力を入れておりました」
就活生「私の祖母は病気で、長い間寝たきりになっていました」
就活生「そのため、私も自宅にいる時は、なるべく祖母の世話をしておりました」
就活生「祖母は亡くなりましたが、亡くなる直前、感謝しているといってくれました」
就活生「こうした経験を、御社に入社しても役立てたいと思ってます」
成歩堂(なにがなんでも“御社の役に立つ”に繋げようって姿勢は大したもんだと思う)
御剣「糸鋸刑事の調査によると、たしかに彼には長年同居していた祖母がいたようだ」
真宵「イトノコ刑事、就活生の調査をするなんて、よっぽどヒマなんだねー」
成歩堂「もしかしたら、まともな仕事を回してもらえなくなったのかもね」
成歩堂(イトノコ刑事が就活に励むようになる日も近いのかもしれないな)
御剣「半年ほど前に亡くなられたようだが、な……」
裁判長「ふむう……分かりました。それでは弁護人、尋問をお願いします」
~ おばあちゃん思い ~
就活生「私は祖母の介護に力を入れておりました」
成歩堂『待った!!!』
成歩堂「祖母……つまり、あなたのおばあさまは介護が必要な状態にあったわけですか」
就活生「はい、なぜなら……」
就活生「私の祖母は病気で、長い間寝たきりになっていました」
成歩堂『待った!!!』
成歩堂「ご病気について……差し支えなければ教えていただけますか」
就活生「足の病気でした。なので、自力で歩くことも困難だったのです」
成歩堂「よく分かりました。発言を続けて下さい」
成歩堂『待った!!!』
成歩堂「しかし、あなたは特撮番組を見るのが趣味だったはずでは?」
就活生「私が特撮番組を見るのは、たいてい夜の遅い時間帯なんです」
就活生「一方、祖母の就寝時間はとても早かったので……」
成歩堂(うーん、筋は通っている。これはムジュンとはいえないな)
就活生「しかし、結局……」
就活生「祖母は亡くなりましたが、亡くなる直前、感謝しているといってくれました」
成歩堂『待った!!!』
成歩堂「おばあさまは、どこでお亡くなりに……?」
就活生「祖母は亡くなる少し前、入院することになり、その病院で亡くなりました」
就活生「≪堀田クリニック≫という名前だったと記憶しています」
成歩堂(あそこか……。どうもぼくはあの病院とよく縁があるな……)
成歩堂『待った!!!』
成歩堂「具体的にどのように役立てたいとお考えですか?」
就活生「たとえば、会社内の仲間や会社の取引先がなにかトラブルにあった時は」
就活生「祖母に接した時のように、親身になって解決に奔走いたします」
成歩堂「なるほど……(くそっ、つけいるスキがないぞ! この発言!)」
裁判長「弁護人、どうやら今の発言には特にムジュンは見られなかったようですな」
成歩堂「は、はい……」
真宵「はい、って……! このままじゃ、あの人の発言が認められちゃうよ!」
成歩堂「分かってるよ!」
成歩堂(どうする……! このままじゃ、あの就活生に逃げられてしまう!)
成歩堂(だけど、彼の発言の≪真実≫を見つけ出す方法なんか……あるわけない!)
成歩堂(ここまでか……!)ガクッ
裁判長「どうやら、今回ばかりは逆転できなかったようですね」
御剣「成歩堂……」
就活生「そりゃそうですよ。なにしろ祖母はもう亡くなっているんですから……」
就活生「この発言のウラを取る手段なんてあるわけがない」
成歩堂「…………!」
成歩堂(待てよ……こういう時こそ発想を≪逆転≫させるんだ!)
成歩堂(真実を証明できる人が亡くなってるから証明できない、と考えるんじゃなく……)
成歩堂(たとえその人が亡くなっていても真実を証明できる方法、を考えるんだ!)
成歩堂「…………」
成歩堂(ある! 一つだけその方法があるじゃないか!)
裁判長「なんですかな?」
成歩堂「弁護側は、彼の発言の真実をたしかめる方法を提示できます!」
成歩堂「ある人物に、ある証拠品を≪つきつける≫ことによって!」
裁判長「ふむう……それでこそ私たちの成歩堂君です」
裁判長「ですが、例によって例の如く“チャンスは一回きり”とさせていただきますぞ」
御剣「うム……ではまず人物から答えてもらおうか」
成歩堂「それは……今ぼくの隣に座っている人物です」
真宵「ええっ、あたし!?」
裁判長「では続けて答えてもらいましょう。つきつけるべき証拠品はなんですか?」
成歩堂『くらえ!!!』
御剣「≪写真≫だな。今面接中である彼と両親、そして亡くなった祖母が写っている……」
御剣「なるほど、そういうこと、か……」
成歩堂「そういうことです」
成歩堂「真宵ちゃん、その写真を使って、彼のおばあちゃんを霊媒してくれ!」
真宵「うん、分かった! やってみる!」
就活生「れ、霊媒……!? なんだよ、それ!」
「たしかにナマオはあたしの面倒をよく見てくれましたよ。本当にありがとうねえ」
「とはいえ、亡くなる寸前に“感謝している”と伝える機会はありませんでしたねえ」
「あたしは死ぬ時は、ベッドの上でポックリいっちまったからねえ……」
「ちょいと話を盛りすぎじゃないかねえ……?」
「孫に悪気はなかったんです。どうか許してやって下さいな」
……
就活生「ぐ……ッ! こんな……霊媒なんてものが実在するなんて……!」
成歩堂「君は自分の介護体験を、より劇的なエピソードとして面接の場で話すために」
成歩堂「話に“真実ではないこと”を盛り込んでしまった」
成歩堂「つまり、ウソをついたのです!」
成歩堂「ナマオ君、君の発言は……ウソだらけじゃないか!!!」
就活生「うぐ……ぐ……ぐ……」
就活生「ぐ……ぐぐ、ぐぐぐ……ぐ、うぐぐ……ぐ……ぐ……グ……ググ……」
就活生「就活ォォォォ説明会ォォォォォォ履歴書ォォォォォォ面接ォォォォォォ!!!」
就活生「お祈りお祈りお祈りお祈りィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!」
就活生「無い内定ォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」
就活生「もう……ウソをつくのは……」
就活生「イヤだあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
……
就活生「ぼくは本当は……面接で胸をはって話せることなんて何一つない……」
就活生「冴えない学生です……」
就活生「友人たちが次々に内定をとる中、一人だけなかなか内定をもらえず……」
就活生「面接の中でどんどんウソをつくようになってしまいました……」
就活生「ついには……大好きだったおばあちゃんまでもダシにして……!」
就活生「ごめんよ……おばあちゃん……!」
……
裁判長「……長かったこの面接も、ようやく閉廷の時が来たようです」
成歩堂「…………」
御剣「…………」
真宵「…………」
裁判長「判決を聞く準備はよろしいですね?」
就活生「はい、おかげでスッキリしました。あとはいさぎよく結果を受け入れるのみです」
採 用
ワァァァァ……! ヒューヒュー……! ピーピー!
就活生「……え!?」
就活生「ぼくがウソばかりのロクデナシって、皆さん分かったはずなのに!」
裁判長「ええと、まあ……“不採用”だと三文字で、どうも落ち着きませんからな」
成歩堂(オイオイ、もうちょっとマシな理由はなかったのか……)
御剣「もちろん、理由はそれだけではない」
成歩堂「御剣……!」
御剣「たしかに君はウソばかりついていた。あのままでは不採用は確実だっただろう」
御剣「だが、最後に見せてくれた君の真実の姿は……我々の心にも響いた」
御剣「この面接で成長した君ならば、立派に社会人としてやっていけると判断したのだ」
裁判長「さすが御剣検事です。私のいいたいことを全て代弁してくれました」
成歩堂(ウソつけ!)
就活生「!」
御剣「人生の先輩として忠告しておく。就職はあくまでも通過点、ゴールではない」
御剣「これから君を待っているのは、就職活動とは比べ物にならぬほど厳しい道だ」
御剣「それをゆめゆめ忘れないでもらいたい」
就活生「は……はいっ……! ありがとうございます、検事さんっ……!」
真宵「御剣検事、面接では色々と厳しいことをいってたけど」
真宵「ちゃんとあの人のことを思いやってくれてたんだねー」
成歩堂「う、うん……(悔しいけど、ちょっとかっこいいぞ……)」
真宵「なるほどくんも、なにかアドバイスしてあげたら? 人生の先輩として」
成歩堂「そうだね。ようし、ぼくも――」
成歩堂「ピンチの時ほどふてぶてしく笑うこと。これはとても大切なことだから」
就活生「はいっ、弁護士さん!」
成歩堂「あとはまあ……いざとなればハッタリかませばなんとかなるよ、なーんて……」
裁判長「なにをヘラヘラ笑ってるのですか、弁護人」
真宵「ウソはよくないって話をしてたのに、ハッタリを勧めてどうするの!」
御剣「“反面教師”にはちょうどいい弁護士だ。キサマは」
成歩堂「うう……(やっぱりいわなきゃよかった……)」
裁判長「では、本日はこれにて閉廷!」カンッ
真宵「ふう、一時はどうなることかと思ったけど、どうにか無事に終わったねー」
成歩堂「うん……ナマオ君もきっと、受かった会社に貢献できる人材になると思うよ」
真宵「そうだね、面接が始まった時と終わった時じゃ顔つきが全然違ってたもん」
真宵「ところで、なるほどくんもお姉ちゃんの事務所に入る時に」
真宵「当然、面接をしてもらったんだよね?」
成歩堂「う、うん、まあね……」
成歩堂(千尋さんの面接……厳しかったよなぁ……。あまり思い出したくない……)
真宵「よーし、じゃあこれからミソラーメンでもおごってもらいながら」
真宵「お姉ちゃんとの面接がどうだったか、じっくり聞かせてもらおうかな」
成歩堂『異議あり!!!』
成歩堂(今回の彼もそうだけど、就職活動に苦労している学生は多いようだ)
成歩堂(きっと就活中に何度も『待った』や『異議あり』を受けることになるんだろう)
成歩堂(だけど、どんなにツラくなっても、くじけず頑張って欲しい)
成歩堂(諦めなければ、必ずどこかで≪逆転≫するチャンスが巡ってくるから……!)
― おわり ―
元スレ
就活生「私の志望動機は……」成歩堂「異議あり!!!」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1464784235/
就活生「私の志望動機は……」成歩堂「異議あり!!!」
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- 岡部「最近ラボが臭い……」
コメント一覧 (31)
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- 2016年06月02日 02:27
- 第二話はブラック企業を法廷に呼ばなきゃ…(義務感)
-
- 2016年06月02日 02:31
- ※2呼びました? (渡邉 美樹)
-
- 2016年06月02日 02:32
- 脳内再生余裕だわ
-
- 2016年06月02日 03:20
- 嘘をつきすぎて自分と言う存在がわからなくなった内定0のワイ
-
- 2016年06月02日 03:21
- そのときはあの骸骨みたいなワタミ社員も一緒に証人側として出してほしい、見た目で異議出せそう
-
- 2016年06月02日 03:31
- ※3
ラスボスは第四話とみせかけて第五話での出演お願いしますね
-
- 2016年06月02日 03:55
- 第二話は就活生が自さつしてブラック企業を裁く普通の裁判になるんだろ?
-
- 2016年06月02日 04:58
- 綺麗にまとまってた。
-
- 2016年06月02日 06:11
- 小さい頃の作文くらい多目にみてやれよ
-
- 2016年06月02日 06:36
- まんま本家のノリだったなー
面白かった
-
- 2016年06月02日 07:31
- 面白かった
-
- 2016年06月02日 09:09
- 楽しめた
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- 2016年06月02日 09:49
- おばあちゃん容赦なくバラしていくなww
それにしてもこうして読むとサイバンチョ無能すぎてやばい
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- 2016年06月02日 10:09
- ※14
通称が「移り気で浮気な裁判長」だからなwwwww
また、最後には正しい判決するから「フシギでブキミな裁判長」とも言われている
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- 2016年06月02日 10:38
- 何故嘘をつく必要があるのか
自分にプライドはないのか
なにも考えずに生きてきたのか
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- 2016年06月02日 12:38
- ※16
噓は噓だが誇張の延長だな
大学生が四年間で何か特筆すべき経験をしたり能力を開発したりできる方がまれだからね
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- 2016年06月02日 13:26
- ※16
ちょっとでも良く見せたほうが採用される可能性は高いだろ?
女の化粧と同じ
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- 2016年06月02日 13:54
- ナマポ君に見えて仕方なかった
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- 2016年06月02日 16:22
- 「なまお」より「いくお」の方が良かったんじゃないかw
そういえば昔、やる夫AAの派生で見学会いく夫というのが瞬間的に流行ったな……
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- 2016年06月02日 16:55
- 将来の夢はサンタでくそ笑った
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- 2016年06月02日 19:39
- 再現度高いな
面白かった
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- 2016年06月02日 21:01
- お菊さんがいうように大学生は四年間寝たきりやから
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- 2016年06月02日 21:41
- 最初のは小さいころから将来性感じてたんかいって事かと思った
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- 2016年06月02日 21:42
- 最後の犯人はっちゃけがごちゃ混ぜ過ぎて吹いた
アクロとオートロを混ぜるなよwww
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- 2016年06月03日 00:56
- 子供のころから社畜目指してたとかこっちからお断りだろ...
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- 2016年06月03日 01:37
- ホントにノリがまんまだな、すげぇ
今でこそ弁護士に復帰してるけど、このすぐ後に自身も職を失う事になるとは夢にも思ってなかっただろうな…
来週が楽しみだ
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- 2016年06月03日 06:49
- 御剣検事が就活生のついたウソを罪状として並べて、ナルホドくんがそれでも逆転して採用を勝ち取る話かと思った。その方が弁護人っぽいし。
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- 2016年06月04日 01:29
- 逃がす気なくて草
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- 2016年06月09日 09:13
- 面白かった
しかし逆転裁判6は買わん
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- 2017年08月07日 17:30
- 脳内再生余裕でワロタ
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〆もいい話っぽいし