俺「虫とりの季節がやってきたぞ!」友「……は?」
- 2016年05月27日 03:10
- SS、神話・民話・不思議な話
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俺「虫とりの季節がやってきたぞ!!!」
友「…うん、わかった。虫が好きすぎて頭がおしゃかになっちまったんだな」
俺「失礼なやつだな……俺の頭のどこがおかしいいというんだ」
友「あのな、今未だ五月。ok?」
俺「いやわかってて言ってるんだが……」
友「……虫とりって普通さ……七月とかだよな?」
俺「いや俺カブトよりクワガタ派なんだ」
友「あれー……?会話が成立してないなぁー?」
友「少ないも何も……」
俺「カブトはすぐ死んじゃって虚しくなるからな……その分クワガタはうまく飼えば数年生きる。だから俺はクワガタ派だ」
友「そこの説明じゃねぇよ!!」
俺「………?じゃあどこの説明だ」
友「何で!まだ五月なのに!!虫とりの季節なんですか!!!」
俺「……あー、そこか。そりゃあターゲットをクワガタに絞るからだ」
友「……へ?」
俺「はい、友君!何故かわかりますか!」
友「わかりません!」
俺「素直でよろしい!減点5!」
友「よろしいのに減点すんの!?……てか正解なんなんだよ」
俺「まぁ、クワガタは涼しい時期の方を好むというのもあるが……やっぱりカブトがまだいない事がでかいな」
友「んー?カブトがいるとどうなるんだ?」
俺「餌場がっ!!占領されるっ!!!」
友「……あー…」
俺「あいつらこのご時世で全盛期と変わらねぇんじゃねーのかってぐらいいるからな……少数派のクワガタ達は俺らの入り込めないような奥の方の餌場においやられちまう………まぁ地域によって差があるから言い切る事は出来んのだがな……」
友「うっす」
俺「……つっても正直ちょっと早すぎたかなぁ感は否めんが」
友「…うん、だよな」
俺「だがっ!虫はな、ただ早朝にクヌギ林に突撃してとれるようなものではない……最近は数も減ってるしな………だから!下準備が必要なんだよ」
友「具体的に言うと?」
俺「あ、その前に言っておくが、虫とりを朝行うのはあまりオススメ出来んぞ」
友「…俺的には朝のイメージがあったんだが…」
俺「朝の利点としては視界がしっかりしている、という事だろうだが欠点もある。第一に、スズメバチの活動時間と被る、そして、時間が経てば経つほど虫がとれなくなる……って事だな」
友「……あー、夜はその逆って事か?」
俺「ああ。だが夜の欠点の視界が悪い、というのは下準備で補う事が出来るぞ」
友「んー、あ、下見か」
俺「そう!下見でおおまかな地形を把握する……そして樹液の出てる木も探しあてられれば完璧だな」
友「おう、長袖長ズボンだっけ?」
俺「……良かった、半袖半パンとか言い出したらどうしようかと……」
友「流石にそこまで馬鹿じゃねーよ、んな服装にしたら蚊の格好の獲物だろうが」
俺「そうだ。……まぁでも森の奥に入る前までは別に半袖でもいいから」
友「うーっす……じゃ上着着て…っと、じゃあ行くか」
俺「馬鹿野郎ォォォオオオオ!!」バキィッ
友「いってぇ!!?何すんだよ!」
俺「それだけで良いはずがねぇだろ!」
友「うぇ?」
俺「首!剥き出しだろーが!!」
友「うぐ、確かに……」
俺「それと手首!そして足首!」
友「うぐぐ……で、でも虫よけスプレーがあれば……」
俺「んなもん気休めだバッキャロー!!」
友「じゃあどうすればいいんだよ」
俺「まずは首にはちゃんとタオルを巻く!そのタオルに虫よけスプレー!」
友「…ほえー……」
俺「そうすりゃ汗かいても効果が落ちる心配をしなくていい……だがな、蚊から我が身を守る上で最も大切なのは、如何に肌を露出させないか…だからな」
友「お、おう………で、手首と足首は?」
俺「手首!軍手をつけて、その中にきっちり袖の先を入れる!」
俺「んで足首も裾を靴下の中に入れる!」
友「……なんか恥ずかしいなこの格好」
俺「いや別に今やんなくても現地で出来るやん」
友「てめぇ………!」
友「なんかお前の靴ゴツいな……」
俺「ん?ああ、これか。トレッキングシューズだ。虫とりやるならコレがオススメだぞ」
友「富士登山の時もその靴だったよな」
俺「おう。虫とりの時の格好の方が富士登山の時よりゴツいという……」
友「…確かにな……富士山は途中から蚊とかいなくなるしな………」
俺「蚊って怖い………さてと、そんじゃ準備も出来たし行くか」
友「おう!」
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ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
俺「うっし、到着」
友「おー」
俺「さ、今から森の奥に入るわけだが……大丈夫か?」
友「ふっ……完全武装してあるぜ。抜かりはないっ!」
俺「そうか……あ、ハチとか刺激すんなよ?」
友「んな事するわけないだろ」
俺「フラグだな」
友「やめろよ………本当にやめろよ………怖くなってきた…」
俺「まぁ、ハチも理由がなけりゃむやみに襲ってはこねーよ。俺らの方がでけーんだがらドーンと構えとけ」
友「だ、だよな!」
俺「………まぁ、良いか……じゃ、森の中、突入しますかね」
友「おう」
友「んー……おっ、奥に一際でけー木があるぞ!」タッタッタ…
俺「お、おい!あんま走るなって!」
友「おぉー!樹液出てるぞぉーー!!」
俺「……!わかったから動くな!」
友「あぁ?何で……」
スズメバチ「…」ギロリ
友「……う、うっす……はは………」
スズメバチ「……」ブィィーン!!
友「うわぁああああ!!!?す、すいませんでしたぁぁああああ!!!」
俺「馬鹿野郎が!……とにかくハチを寄せ付けるな!一匹ならまだ何とか……」
友「うぉぉおおああああ!!!死ぬ!マジで死ぬってぇ!!」
スズメバチ「…」ブィーン
俺(……!友の異常な動きを警戒して様子見してやがる………)
俺「…やるしかねぇだろ!」ブンッ
ポフッ
スズメバチ「……!?……!!」
俺「ふぅー……アミ持ってて良かったぁ………」
友「……本気で死を覚悟した」
俺「二度目はないと思え」
友「…うっす………で、そいつどうすんの」
俺「悪いが、俺も友も命が惜しい……」スッ
グチャッ
俺「……ハァ…二度とさせんな、こんな事」
俺「…別にはしゃいでも良いが周りをちゃんと見ろ」
友「………すまん」
俺「だが、まあ……この木を見つけたのはお手柄だ。地形把握、樹液の出る木の発見……ノルマは達成か」
友「この木が見つからなかった時はどうするつもりだったんだ?」
俺「あぁ……これを吊るしとく予定だった」スッ
友「……バナナ?」
俺「あぁ。酒ぶっかけたバナナだよ」
友「……そりゃあ…すげー臭いがしそうだな」
俺「虫にとっちゃ匂いなんだろ」
友「ドヤ顔やめい」
友「なんでノコギリ限定?」
俺「いやあいつら個体によっちゃ昼間でも行動してたりするから…」
友「ふーん」
俺「そんじゃま、家に一旦帰って夜また来ようかね」
友「わかった」
俺「時間帯は9時から11時頃になる……予定とか大丈夫か?」
友「大丈夫だぞー」
俺「……暇なんだな………」
友「おい待てや何だその目………ってかお前に言われたかねーよ!!」
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友「ただいまー」ガチャ
友「………本当に暇だった…」
プルル… プルル…
友「うっす、友です」ガチャ
俺『おー、いい忘れてた事があってなー』
友「おう。何だ?」
俺『虫を飼えるようにどっかのホームセンターで色々買っとけー』
友「……あー、一応あるぞ?」
俺『さっすが!家でゴキを放し飼いにして奴は違うねー』
友「してねぇわ!!あいつらの方から勝手に来るんだよ!!」
俺『……え、また出たのか』
友「……うん」
友「どういう事だソレ!?」
俺『…まぁ、お前の汚部屋の話は後でするとして……プラケースはあるって事か?』
友「おう。ってかゼリーとか土もあるぜ」
俺『その土とゼリーは捨てろ』
友「え?もったいなくね?」
俺『お前の家が汚い理由がわかった気がするわ……あのさぁ……土、ちゃんと密封してる?』
友「いや一回使ったから……」
俺『じゃあ、駄目だ。小バエに産卵されてるかもしんねぇし。あと古いゼリーはあんま良くねえ。長生きさせたいなら新しいの買え、以上』ガチャ
プー プー……
友「……はぁー…じゃあ買いに行くか………」
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友「さぁ、やって来たぜホー○ワイド!…近所にはここしか無いしな!」
プルル… プルル…
友「ん?……もしもーし」
俺『おう、心配になってな。思わず電話した………なんかわからん事があったら電話して聞け。以上』ガチャ
プー プー…
友「………俺どんだけ信用無いんだ…」
友「ペット関係………そこらへんか?」スタスタ…
女「……うわ」
友「うげっ」
女友「……?どったのー?知り合いー?」
女「いや、ただのクソ野郎よ」
友「あまりにも酷くねぇ!?」
女「………で?何しにきてんの」
友「…お前こそ」
女「私は女友ちゃんの飼ってる犬のペット用品買うのの付き添いだけど」
友「あっそ……そんじゃ」スタスタ
女「てりゃあっ!」ゴスッ
友「ぬぐぁっ!?何お前!?前より狂暴になってね!?」
友「………ゼリーとか土とか買おうと思ってな」
女「え、あんた土食うの……」
友「どういう解釈!?ちげーよ!虫飼うんだよ!」
女友「……あ!もしかしてこの人があの虫好きの……」
女「いやこいつはそいつの被害者筆頭よ」
友「……まぁな」
女「でも八割くらいはこいつの自業自得」
友「ちきしょう!否定出来ねぇ!」
女「で?今日は何?あいつのパシリ?」
女「ふーん……ちょっとあいつに電話してみてくんない?」
友「…いいけど……何でだ?」
女「いいからはやく!」
友「わかった、わかった……」プルル…
ガチャ
俺『もしもーし』
女「かしなさい」ガシッ
友「ぬわぁっ!?お、おい!」
女「…わたしだけど」
俺『新手の詐欺か』
女「違うわよ!……わかってるんでしょ?」
俺『あぁ、その勘に触る声はお前しかいねぇ』
女「…くそっ!今すぐ殴り飛ばしたい……!」
俺『電話で良かったわ……で?用件は?』
俺『嫌だ』ブツッ
プー… プー…
女「……………!!!」ブルブル
女友「…うわ、女ちゃん激おこだよ……!」
友「に、逃げてぇ……!でも俺の携帯とられたまんまだ……」
女「あの野郎……!!!」ゴゴゴ…
友「あ、あの……俺の携帯……」
女「……!!そうだ、あんたがいたわね」ニヤリ
友「………うぇ?」
女「吐いてもらうわよ……あんたらの集合場所…!」
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ーーーーーーーーー
ーーーーーーー
俺「悪いなー、ハエトリグモたんとイチャついてたら遅れ……た………」
女「良い度胸ね……こっちの話も聞かず断って……!!」
友「すまない、俺も頑張ったんだけど怖くて」
女友「そうそう、女ちゃん怖すぎだよー」
俺「知らん人までいるし…………ったく」
女友「あ、私、女友っていいます!今日はよろしくおねがいしますー」
俺「……よろしく…」
俺「……えーっとな、女」
女「何よ」
俺「お前、何故半袖で来てしまったんだ」
俺「もうやだこの子ぉ………」ガクッ
友「お、俺は止めたんだぞ!」
俺「……わかってる…わかってるさ……」
女「虫よけスプレーもかけたし大丈夫だと思うけど」
俺「それだけかよ……お前あんま森なめてっと…」
女「それだけじゃないわよ!ほら!この腕輪!」
俺「あぁー、なんか虫の嫌う臭いを放つやつだっけ?」
女「そうそう!ほら!見た目もおしゃれだし!」
俺「無いよりはマシ……か」
女友「女ちゃーん、森を舐めちゃいけないんだよー?」ジトッ
女「うっ………てかあんた結構ガチな服装なのね……」
俺「ガチもクソもあるか、この服装が基本だぞ………まぁ、良い…とりあえず森に入るぞ」
友「おう、んじゃ俺がカゴ持つわー」
俺「おう、サンキュ」
女「……ん……あれ?皆、懐中電灯持ってるの?」
俺「え?逆になんでお前は持ってないの?」
女友「やっぱり………はい」ヒョイッ
女「お!懐中電灯!ありがとね、女友ちゃん!」
女友「別にー。予測済みだったしー」
俺(こやつ、できる………!?)
友「うーっす」
俺「はぐれんようにな………特に女」
女「はぁっ!?あんたねぇ…」
女友「私に任せて下さいっ!」フンスッ
俺「さすが女対策会筆頭……!」
友「筆頭いすぎィ」
俺「ん?………お、ちょっと待ってろ」スタスタ…ガサガサ
友「え?……まぁ待つけど」
俺「うむ……ノコギリのメスか」
友「おお!もう捕まえたのか」
俺「……よし、お前ら付近の木探せ」
女「何で?」
俺「こりゃ経験によるものなんだが………メス単体でいる、っつーのはかなり少ないんだよ。大概は近くにオスもいる。ってなわけで探せ」
友「おー!やっぱオス欲しいしな!探してくるわ!」ガサガサ…
俺「あんま離れすぎんようにな!」
女「私が一番に見つけるわ…!」
女友「女ちゃん、闘志の燃やし所ズレてない?」
友「おっしゃ!いたぜぇ!」
俺「でかした!」
友「どーよ?コイツでかくねぇ?」
俺「おお……この滑らかなアゴのライン………」ウットリ
女「……ッチ」
女友「女ちゃん!?ここは皆で喜ぶ所だよ!?」
俺「……いかん、いかん…あまりの美しさに目を奪われてた……さっさと樹液が出てる所に向かうか」
友「そうだな」
俺「ん?」
友「クワガタのメスって種類分かりにくいよな」
俺「あぁー……国産のクワガタならある程度見分けられるが」
友「…ほう、教えてくれよ」
女「何!?何!?」ズイッ
女友「……」ハァ
友「……おー、本当だ」
俺「ちょいポチャノコギリたんかわゆす!」
友「……うん、それすると長くなるからやめようね?」
俺「……そうだな。俺には既にハエトリグモたんという妻が………ッ!浮気、駄目!絶対!」
友「お、おう……」
俺「んー、そうだな。ミヤマは分かりやすいぜ」
友「そうなのか?」
俺「おう、最近はめっきり数が減ってなかなかお目にかかれんがな………裏が黄色くなってるんだよ」
友「……はぁー……そりゃ分かりやすいな」
俺「だろ?……んで、次に見分けやすいのはオオクワかな」
友「そうなのか?」
俺「おう」
友「ほー……他は?」
俺「コクワ、ヒラタの見分けね………んー、あ、コクワのメスのアゴは先が他より心なしか鋭利なような……」
友「……急にふわふわした感じだな」
俺「うっせー…そこらへんは勘でやってるからな………あとさっきも言ったがクワガタは番でいることが多いから付近にいたオスの種類と同じ、ってな判断でも良いぞ」
友「ほえー………お、ついたな」
女「む……!こいつとかは!?」ガシッ
女友「お、女ちゃん…スイッチ入ると躊躇が無いね……」
女「まあね!……おーい、捕まえたわよー」
俺「いやそれカナブン」
女「へー、どういうクワガタ?」
俺「いやクワガタじゃねーから!」
友「ん?…お、あいつか?」パッ
俺「ちょおまっ!!」
コクワ「…!」ピュー ポト
友「うげぇっ!?逃げられた!?」
俺「そこら辺に落ちたぞ!探せ!」
友「ちきしょー、マジかよ……!」ガサゴソ
俺「クワガタはああいう風に急にライトを当てるとたまに地面に落ちて逃げたりするんだ。ここらへんは下草が凄いからぶっちゃけ見つかる可能性はかぎりなくゼr…」
女「見つけたわよー」
俺「なん……だと……!?」
女「まあね!」フフン
俺「ぬおぉ……本当にコクワだ……しかも落ちたやつじゃない………」
友「奇跡おこしすぎだろ………」
俺「……まあいい。どうする?このコクワ。女が飼うか?」
女「んー……ちょっと家が寂しくなってたし、飼う事にするわ」
俺「そうか。了解……さて、他の樹液の出てる所は……っと」スッ
ヒラタ「……!」
俺「落ちさせねぇよ!!」ガッ
ヒラタ「……!……!」ジタバタ
俺「ふむ……小振りだが良い型だな」
友「おー、かっこいいなソイツ」
友「いいのか?」
俺「まあ家に一匹いるからな……責任持って飼えよ?」
友「そりゃ勿論!」
俺「…そうか。よし、じゃあ後は女友ちゃんの分を…」
女友「あー……私、犬飼ってるから……」
俺「んー、そうか……んじゃ俺の分を探しますかね……」スタスタ
友「ん、どこ行くんだ?」
俺「昼間にクワガタが好みそうな木の穴をチェックしといた」スタスタ
友「マジか」
俺「まぁいても取れない事の方が多いわけだが……」
女「私がとってあげるわ」フンスッ
女友「…女ちゃん。木の皮を剥ぐのは駄目だよ?」
女「え?そうなの?」
俺「当たり前だろ!!」
俺「うっし、この木だな」
友「この穴かー?……なんだこの黒いの」
俺「ん……お、クワガタだな」
友「どーすんだ?」
俺「とりまケツつついてみるかな…んで指を噛ませる」
友「正気かお前」
俺「…まぁピンセットとかも一応持ってきてるわけだが」
友「それ使えや」
俺「……そりゃそうか」ガサゴソ
俺「……むむ…」グイグイ
友「どうだ?」
俺「…むずいな……コレは……」
俺「おらぁっ!!とったりぃっ!!」グイッ
オオクワ♀「……?」ヒョコッ
俺「……リリースか…」
友「え?何で?」
俺「俺は基本メスはリリース派でな……メスとっちまうと森のクワガタの絶対数が減っちまうし………てかノコギリの番とってたしもうええかな、と」
友「そういやそうだったな」
俺「……うむ、そろそろ切り上げるかね…」
友「おう」
ーーーーーーーーー
ーーーーーーー
プルル… プルル…
俺「もしもーし」ガチャ
女『ねぇ!飼い方がわかんないんだけど!!』
俺「……今どうしてんの」
女『紙コップに入れてる』
俺「うん。そんな事だろうと思った………はあ、俺がよく買いに行くとこまで案内してやるよ」
女『ふーん。お金はいくらぐらい?』
俺「二千円もありゃなんとかなるが……一応、三千円はもっとけ」
女『わかったー』
俺「……はぁ、ハエトリグモたんと一日中イチャつく予定が……」
ハエトリグモ「そんな予定は俺には無いぞ」
俺「んあはぁん!ハエトリグモたんったら辛辣ぅ!」クネクネ
ハエトリグモ「その動きは何なんだよ……」
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ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーーーー
俺「…」ピンポーン
「はーい」
俺「俺だー。準備出来てるかー?」
女「はいはい……三千円でいいのよね?」ガチャ
俺「おう。もっと時間かかるかと思ってたが……」
女「財布を用意するのにそんな時間かかるわけないでしょ!!」
俺「普通のやつはな」
ーーーーーーーーー
ーーーーーーー
俺「到着だ」
女「ここペットショップじゃない?」
俺「……虫もペットだろうが」
女「いや、そういうつもりは無いんだけど……なんというか……」
俺「…まぁ、言いたい事はわからんでもないがな……だが何を飼うにせよ命の責任を負うってのは重大な事だ。それを肝に命じておけよ?」
女「…わかったわ」
俺「…よし。それじゃあ行くぞ」ウィーン
女「……ええ」
店員(なんか凄い深刻そうな顔した人達が入ってきた……)
女「そうね。あんまり大きいと置場所に困るし」
俺「…あ、置く場所はなるべく温度変化の少ない場時にしろよ?…玄関とかは日によると冷えすぎたりするからあんまり良くない」
女「わかったわ」
俺「さて、次は土だな……あ、霧吹きあるか?」
女「あるような無いような」
俺「無いな。買っとくぞ」
女「むう…」
俺「土の選び方だが……あまり良くない店だと去年のをそのまま置いてたりするんだ」
女「どうやって見分けるの?」
俺「古い土には小バエの幼虫が入ってたりする事が多い……まあ俺はこれを利用してハエトリグモたんの餌を確保するわけだが」
俺「で、次に買うものは…」
女「ほえー…角が三本……」
俺「……迷子になるなよ」
女「……!失礼ね!!なってないわよ!!」
俺「ていうか何見てたんだ……ああー、外国産のカブト・クワガタコーナーか」
女「そうそう!見なさいよコレ!角が三本よ!」
俺「うん。わかったから騒ぐのやめような……アトラスか…懐かしいねぇ」
女「あんたはこういうの買わないわけ?」
俺「虫とりにまだ行ってないような歳の頃はこういう所で買ってもらってたもんだよ」
女「ふーん……あ、オスメスで別売りになってる……やっぱオスの方が高いのね……」
女「なんで?」
俺「こうやって売ってる虫は二種類あってだな………野外採集個体と養殖個体だ……ワイルドとブリード、なんて言い方もあるが」
女「で?なんでメスの方が価値が高いと思うわけ?」
俺「野外採集個体だった場合……メスはかなりの確率でもう交尾をすましていて、オスと一緒にしなくても勝手に卵を産んでくれる場合が多い」
女「ふーん、で、こいつらはその……ワイルドなの?ブリードなの?」
俺「それは店員に聞かんとわからんな」
女「店員さぁーんっ!!」
俺「早速呼んじゃうのね……」
女「この虫ってワイルド?ブリード?」
店員「…えっと……」
俺「お前な……そういう専門用語使うのは専門店の時だけにしとけよ……」
俺「えーっとですね、聞きたかったのはこれが野外採集個体か養殖個体かっていう事でして……」
店員「……ああ!そうですね、確かここのコーナーはほぼ全部、野外採集個体だったと記憶しておりますが…」
俺「なるほど……ありがとうございます」
店員「いえいえ。また困った事があったらお聞きください」
俺「はい………親切な人で助かったな」
女「……」ジーッ
アトラス♀「……?」
俺「お、おい……?」
女「私、決めたわ」
俺「……」
女「この子、気に入ったからかうわ!!」
俺「…さいですか」
女「とりあえず土入れたケースに入れれば増えるのよね?」
俺「………それも教えなきゃならんのか……くっ……俺はいつになったらハエトリグモたんとイチャつけるんだ……!?」
女「……?」
俺「……まぁ、その反応は予想してたわ………とりま買うぞ」
女「わかったわ」
俺「……っとと、ゼリーと餌皿忘れるとこだった…」
女「しっかりしなさいよ」
俺「誰のためにやってると思ってんだ……っと、あぶねー、シートも買うんだった」
女「何よソレ」
俺「ハエだとかダニの侵入を防ぐシートだ。俺は家に大量に予備があるからな……普段は買わんし忘れるとこだったよ」
女「ふーん……ん、餌皿ってこんなの?」スッ
俺「おお、それだ……後はこの餌皿の穴と同じサイズのゼリーを探すぞ……お、コレか」スッ
俺「おう……まぁ足りない物があったら俺のをやるよ」
女「わかったわ」
俺(ふー、やっと家でハエトリグモたんとイチャつける……!!)グッ
ピロン♪
俺「…メール?」カチャッ
From:友
物を買ったは良いけどこれからどうすればいいかわからん。やばい
俺「………」
俺「……おう」
女「あー、あのさ、物を買ったは良いけどどうすればいいかよくわからないんだけど」
俺「………ぐぉお……マジですか……!」
女「…何、頭かかえてんの」
俺「お前らさては普通に仲良いだろ……!」
女「はあ?何の話?」
俺「……っだぁああっ、しゃーねー!まとめて教えてやっから友の家行くぞ!」
女「……はあ……いいけど」
ーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ピンポーン……
友「はーい」ガチャ
俺「俺だ。あがるぞ」
女「私よ。あがるわよ」
友「………うえぇっ!?ちょ、ちょい待てって!!」
俺「そんな時間はない」スタスタ
女「外で待つなんて嫌」スタスタ
友「いや待てって!!今マジ汚いから!!」
俺「四六時中汚ねぇだろ。何言ってやがる」
女「見栄を張るのも大概にしなさい」
友「いや何でお前ら揃いも揃って不機嫌なの!?てか何しに来たんだよ!?」
俺「……はぁ、クワガタ入れるケースのセットアップ手伝いにきたんだよ……女のもついでにお前ん家ですます」
友「お、おう……わかった、ケースとかとってくるわ」
友「不要な電気はつけない派なんだ」ヌッ
俺「四六時中部屋が薄暗いとか何それゴキブリ的にポイント高い」
友「え゙……そういうとこかぁ……ゴキがすぐ増えるんだよ」
俺「もう人の家と呼べるのか怪しいレベルだな」
女「空き巣も扉をそっ閉じするレベルね」
友「ねぇお前ら俺をディスりにきたの?違うよね?はやく本題にはいってくれないと泣くよ?」
俺「……はぁ、じゃあとりまケース出せ」
友「よいしょっと」
女「コレね」
俺「……さて、ここでお前らに質問だ」
女「ケースに入るだけ入れるんでしょ?」
俺「違いますぅー!てかそんなに土入れてどーすんだよ!?餌皿置くスペースすらねーぞ!?」
友「……クワガタ一匹分くらいの深さ?」
俺「浅すぎるわバカヤロー」
友「えぇー……」
俺「せめてケースの五割くらいは入れろ!」
友「土もったいなくね?」
俺「もったいなくねーよ!!このための土だろーが!!ケチったってどーせ使わんのだろうがっ!!」
女「この汚部屋の原因の一つをかいまみた気がするわ」
友「サ、サーセン……」
友「おお……意外とあっさりだな」
俺「おう……あとは餌は完食してなくても一日ごとに入れ換えてやるのと、霧吹きを忘れずにな」
友「了解!」
俺「さてと……本題にうつるかね……」
友「……………は?」
アトラス♀「……?」モゾモゾ
俺「アトラスのメスだ」
友「お、おう…」
俺「さ、セットアップにかかるぞ」
友「ちょっと待てや」
俺「何だよ」
友「…俺の家でする必要がn…」
女「私の家でしたら汚れちゃうじゃない。私の家が」
友「…あれ?お前のじゃないのか?」
俺「いつ俺のだと言ったんだ」
友「…ていうか俺の家は汚れてもいいのな」
俺「だってこれ以上汚れようがないし…」
友「どういう意味だソレ!?」
女「そのまんまの意味でしょ」
俺「ほいほい。んじゃ土をケースの…そうだな、八割くらいまで入れてくれ」
友「結構多いんだな」
女「よいしょ…っと。出来たわよ」
俺「おう。あとは餌皿と餌。…あ、やべ。さっき言い忘れてたんだが、転倒防止用にコレ入れてくれ」
友「何だコレ。…木の皮?ってか転倒するのかクワガタ」
俺「ああ。転倒したまま長時間起き上がれなかったりすると目に見えて弱る。要注意だぞ」
女「入れたわよ」
俺「おう。んじゃ産卵した時の手順を説明していくぞ」
俺「まず、産卵したら卵をケースから取り出す」
友「えっ、いいのソレ」
俺「ああ。全部同じケースに入れてたら色々めんどくさい事になるからな」
俺「あー…んじゃ、ビンでも使うか。俺は幼虫飼育はあんまやらねーから余ってるのやるよ」ゴトッ
友「ビンか…大丈夫なのか?」
俺「そりゃサイズは皆小さめになっちまうけど、とくに問題はないぞ」
女「小さいほうが可愛いからかまわないわ」
俺「わかる。やっぱサイズが大きいのもロマンがあっていいがちっこいのの可愛さもなかなか…」
女「あんたと一緒にしないで」
俺「あれー?」
友「ふーん。地域によって違うのか」
俺「ああ。生き物の管理だし失敗は許されんだろう?」
友「それもそうだな」
女「んじゃ帰っていい?もうこの家いたくない」
俺「奇遇だな。俺もだ」
友「やかましいわ!さっさと帰れ!」
俺「言われなくても帰るっての……あ、そこの袋の中、なんかゴソゴソ動いてるし後で処理しとけよ」
友「へ…?}
俺「そいじゃなー。お邪魔しましたー」
友「え、ちょっと待てって…え?」
友「ちょ、ちょっと待ってぇええええ!!!」
俺「二度目だし手伝わんぞ。自分で処理しろ」ガチャッ
バタン
―――――――――――
―――――――――
友「今年も夏が終わるな」
俺「…ああ」
友「目に見えて落ち込んでるな」
俺「まあな。冬の間は家でハエトリグモたんを愛でる事ぐらしか……あれ、充分じゃねソレ」
友「お、おう…」
俺「さすがに九月じゃもうクワガタはとれない…」
俺「と言うとでも思ったのか?」
友「…は?」
友「な、何ィーッ!」
俺「日本にはコクワ、ヒラタ、ミヤマにノコギリ、オオクワ…これだけしかいないとでも?」
友「ま、まだいるってのか…!?」
俺「スジクワガタ、アカアシクワガタ…それに、ヒメオオクワガタだ」
友「ば、馬鹿な……そんな種類聞いたこともなかったぞ…」
俺「まぁもうちょっといるけど他は大体、特定の場所にしかいないしな…」
友「ああ…そういやお前、キンオニクワガタとってくるって言って対馬まで行ってたっけか」
俺「ははは!まあな!………このテンション疲れたからもうやめていい?」
友「せやな。やめようか」
友「えっ」
俺「どうする?もっかい富士山でも行くか?」
友「いやちょっと勘弁」
俺「まぁこんな事もあろうかと近所の山の標高を調べてある!この中から選べ」
友「なんで俺行く前提なんですかね…」
俺「いや別に俺一人でもいいんだけど」
友「…行かせてください」
俺「素直でよろしい」
友「ほえー。クヌギじゃねぇのか」
俺「ああ。どうだ?ワクワクしてくるだろう?」
友「…正直、見てみたい」
俺「だよなぁ!?毎年この時期は用事がドタドタ入ってなかなか行けないんだよなぁ…」
友「今年はいけそうなのか」
俺「勿論。行けなかったらこんな話してねーっての」
俺「明日だ」
友「了解。予定空けとくわ」
俺「元からあいてるくせに白々しい…」
友「…おっしゃる通りです」
―――――――――――――
―――――――――――
―――――――――
―――――――
友「想像以上に山だった…」
俺「今は数が減ってるからなぁ…山奥にでも行かんと厳しいんだよ」
友「さいですか……てかさ」
友「昼間だけど取れるのか?」
俺「……一応まだ午前だから朝といえば朝だぞ」
俺「あぁー、言い忘れてたがヒメオオクワだとかアカアシは昼間にとるんだよ」
友「マジかよ」
俺「マジだ。こうやって昼間にヤナギの高枝を見て……」スッ
俺「…見つけて取るわけさ。ほら見ろ、いつもより網が長いだろ?……あ、あとコイツがアカアシな」
友「会話の中で流れるようにクワガタをとりやがった……!」
友「ん?……あ、あれクワガタか?」
俺「おう」
友「っしゃあ!俺もとるぜ!!」バッ
アカアシ「…!」ビクッ …ブイ-ン……
友「あっ」
俺「……まぁ、よくある事だ。気にすんな」
友「……うっす」
―――――――――――
―――――――――
―――――――
俺「んー、アカアシしかとれねぇなぁ」
友「だな。もしかしたら見逃してるだけかもしんねぇけどさ」
俺「んー……腹も減ったし一旦休憩するかぁ」
友「…あ、俺、飯何も持ってきてねぇ……」
俺「…ふっふっふ、そんなことだろうと思ったぜ……見よッ!このおにぎりをッ!!」
友「な、何ィッ!!まさかお前、俺の分も…ッ!」
俺「いや無いけど」
友「無いの!?」
友「…申し訳ねぇ」
俺「昼飯は買うか弁当作るかしとけって言っといたんだがなぁ」
友「……申し訳ねぇ…」
俺「…はぁ、ほらよ。中身は鮭な。別にアレルギーとかはねぇだろ?食えよ」
友「……ッ!申し訳ねぇッ!」
俺「さっきからそれしか言わねぇな」
俺「いやぁ、やっぱ山はいいな」モグモグ
友「だなぁ……前の虫取りの時は真っ暗で景色はまるで楽しめなかったけど…」
俺「そう!そうなんだよ!…そこが良いとこなんだよな、ヒメオオクワ採集はさ」
友「まだ取れてないけどな」
俺「そうなんだよなぁ……まぁアカアシ取れたし、もう帰ってもいいかなぁと若干諦めムードだわ」
友「んー……まぁ、もうちょっと探してみようぜ」
俺「そうだな」
―――――――――――
―――――――――
―――――――
俺「さて!探索再開しますか!」
友「っしゃぁ!取るぞヒメオオクワ!」
俺「…だがまぁ、時間帯的にあと30分以上は粘っても無意味だろうな」
友「…マジか。…んじゃもう下山しながらでいいんじゃねぇの?」
俺「んー……いや、それだと上を見ながら下ることになる。危険だ」
友「…あー、そっか」
俺「……ん?あれは…」
友「どうした?」
友「でも微妙な位置の枝のとこにいるぞ。網がギリ届かねぇ」
俺「……しかたねぇ、乗れ」
友「……え?」
俺「作戦:肩車しようぜ!」
友「…いやいやいや!!俺結構重いぞ!?」
俺「お前がさっと取れれば問題ない」
友「……責任重大ですやん…」
俺「はやく乗れ。逃げられる前にはやく」
友「…わかったよ」ヒョイ
俺「…ぐぅっ!?」ズシッ
俺「…山登り(虫取り)で鍛えたこの足…この程度じゃ揺らぎはしないッ!」
友「……そうか。んじゃ遠慮なく派手に動かせてもらうぜ」
俺「それはやめて」
友「あっ、ハイ…」
俺「…てかはやく取れよ、お前の脚で首がちょっと締まって苦しい」
友「すまん……そぉいっ!!」バッ
俺「ぐふぅっ!!?」
友「あ、すまん!!いやでも取れた!!取れたぞ!!」
俺「そ、そうか……じゃあはやく降りろ。俺死んじゃう」
俺「…ふぅー……息が出来るって素晴らしいな」
友「…あ、ああ…」
俺「んで?ヒメオオクワだったか?見せてくれよ」
友「…これ」
きまわり「…」
俺「…ごみむしだまし科のきまわりか」
友「あー…なんというか……うん、ごめん」
俺「いやよくあることだ。まぁ俺きまわりも好きだし」
友「え、飼うのか?」
俺「いや飼いはしねーけど……きまわりがコケを食べてる動画は定期的に見て癒されてるぞ」
友「そ、そっすか…」
俺「気になる人は、キマワリ 菜食 で検索だっ!」
友「誰に向かって言ってんだよ……」
俺「…んー、何か取れる気しねーしもう下山しちまうか?」
友「…だな……疲れたし」
俺「そんじゃ下山開始ー」
友「おー…」
―――――――――――――
―――――――――――
―――――――――
―――――――
俺「しゃーねぇよ。こういう事もある」
友「アカアシ取れたしゼロよりゃマシか」
俺「そうそう。………んぁ?」
友「どうした急に変な声出して」
俺「あの溝に落ちてるのってよ……もしかして」
友「はぁ?………おおおお!!!」
俺「…上ばっか見過ぎてたってわけか」ヒョイッ
ヒメオオクワ「…!」ジタバタ
友「よっしゃあああああ!!!」
俺「……んー、見事な体格……」
友「いやぁ、これでスッキリした気分で帰れるな!」
俺「……そうだなぁ」
ーーーーーーーーー
ーーーーーーー
俺「たっだいま~」ガチャ
ハエトリグモ「おかえりっ!」ピョ-ン
俺「あぁ……ハエトリグモたんの可愛さで心がとろとろになりそう」
ハエトリグモ「なんか表現が気持ち悪い……」ヒキッ
俺「あぁん!!そんな目で見ないでぇっ!!」ビクンビクン
ハエトリグモ「えぇ……」ドンビキ
俺「たとえドン引きされようと俺のハエトリグモたんへの愛は変わらない」キリッ
ハエトリグモ「う……そ、そんな事よりっ!虫取り行ってきたんだろ!?後輩達に会わせろよっ!俺が先輩だってのをビシッと……」
俺「あぁん!先輩風吹かせたがるハエトリグモたん可愛いよぉおおお!!!」クネクネ
ハエトリグモ「う、うっせえっ!!そんなんじゃねーからっ!!」
俺「うおっ!?ビックリした……え、喋れるの?」
ヒメオオクワ「はぁ、まぁ……ここに来てからどうやら喋れるように……」
ハエトリグモ「俺がハエトリグモ先輩だっ!」ピョン
俺「夫の俺です」
ハエトリグモ「なっ!?ち、違うからなっ!!騙されるなよ!?」
ヒメオオクワ「は、はい……」
ヒメオオクワ(なんか変な人に捕獲されちゃったなぁ………)
コクワ「…という事は?」
ヒラタ「今夜は歓迎会www」
コクワ「ふぉーwwwww」
アシダカグモ「お前らただ騒ぎたいだけだろ……」
俺「……つーわけだ。行ってこい」カパ
ヒメオオクワ「えぇ……」
俺「まぁ何も考えず騒いどけ。思考すんのは後まわし、な?」
ハエトリグモ「よっしゃー!俺の武勇伝を聞かせてやるぜー!」
俺「何ソレ俺も聞きたい」
俺「ちょっと待って、その駄目っ///ってやつもっかい。耳に焼き付けるから」
ハエトリグモ「や、やだよっ!」
俺「……ごちそうさまでした」
ハエトリグモ「今のでもいいの!?」
俺「うむ。というかハエトリグモたんの動作ならなんでも」
ハエトリグモ「うう………さ、さっさと寝ろぉっ!!」
俺「これは手厳しい……んじゃ俺はそろそろ」ガチャ
ハエトリグモ「あっ!」
俺「ん?」
ハエトリグモ「……おやすみ」
ハエトリグモ「おう!」
ギィ… バタン
俺「…ふー……楽しかったな…今日は」
俺「ったく、これだから虫取りはやめられない」
完
俺「…………うげ、食材少なっ」
ハエトリグモ「どうしたんだー?」
俺「ん?いやぁ、ハエトリグモたん可愛いなぁって」
ハエトリグモ「ば、ばーか!///」プイッ
俺「可愛いなぁもう…………友でも誘って外食すっかな」
プルル……
友『おっす』
俺「お、友?今から飯行かね?」
友『あぁ?……まぁいいけど』
俺「ん?」
友『今度ゴキブリの駆除……』
俺「……ゴキブリの家にお前が湧いてる可能性出てきたなコレ」
友『俺が湧くって何!?』
俺「やかましい……とりあえずお前ん家向かうわ」
友『ほい……あ、俺が飯作ろうか?』
俺「異物混入乙」
友『おまっ…………さ、さすがにそれはねぇよ』
俺「……とりあえずどっかで外食するぞ、今日はそういう気分になってんだ」
友『……はいはい、了解』
ブツッ
ツー…… ツー……
俺「……あの反応は絶対に1回は異物混入させてんな…」
ハエトリグモ「うぇっ!?な、何で?」
俺「いや友と外食」
ハエトリグモ「……そ、そっか」
俺「ハエトリグモたんは寂しがり屋だなぁ」
ハエトリグモ「う、うるせー!……あんま帰り遅くなったら怒るからな」
俺「……怒られるのもまた一興……」
ハエトリグモ「ほ、ほんとに怒るぞ!!」
俺「……それはそれで魅力的だが……ハエトリグモたんを寂しがらせるわけにはいくまい………大丈夫、早めに帰るから」
ハエトリグモ「ならいい」フンスッ
俺「じゃ、いってきます」
ハエトリグモ「いってらっしゃい」フリフリ
ガチャ…… バタン
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
俺「……」ピンポーン
友「ういー」ガチャ
俺「てっきりゴキブリの方が先に出てくるかと」
友「……勘弁してくれ」
俺「それはこっちのセリフなんだよなぁ……」
友「んで、どこに食いにいくんだ?」
俺「……そうだな……ラーメンでも行くか」
友「おっ、いいじゃん」
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
友「辛っ!?何じゃこれ!!?」ブハッ
俺「…食い方きたねぇなお前」
友「辛いなら辛いって言えや……」
俺「この真っ赤でドロドロなスープ見て辛くないと判断したお前にドン引きだよ」
友「いやピリッとくる程度かと思って」
俺「軟骨うま」モグモグ
友「おいきけや」
俺「聞いてる聞いてる」
友「……ったく」ズルズル
俺「……この際だからきくけどよ」
友「ん?」ズルズル
俺「……女がお前の事恨んでるのって、何でだ?」
友「………んー」
俺「いや、話したくねぇなら話さなくていい」
友「別に話したくない……って訳じゃねぇけどよ」
俺「……」ズルズル
友「……お前普通に食うなや……」
俺「……気にせず続けろ」ズルズル
友「…まぁいいや…………いや、なんつーか……うん……」
俺「…恋愛絡み、か?」
友「……まぁ、そうだな」
友「俺……さ、昔……ある人を好きだった事があって」
俺「……ふむ」
友「…んで、さ……何とか惚れて貰おうと色々とアピール作戦を練ってな」
俺「……」ズルズル
友「……でも、いきなりその人に色々アプローチすんのは……気が引けてな……いつも一緒に居る女さんに……こういう言い方をしちゃ悪いが……練習台つうか……」
俺「……」ズルズル
友「例えばなんかあげる時とか最初に女さんに渡してから本命の娘にも渡す、みたいな……あ、流石に同じ物あげたりはしてねぇぞ?」
俺「……煩わしいな…言い訳してねぇで結論言えや」
友「……最終的によ、女さんに告白……されてな……全部、正直に話しちまったんだ」
友「いや……今はあの2人組だけどよ……俺が女さんフッたせいで負い目感じたらしくて……」
俺「……」ズルズル
友「啜る音で相槌すんのやめてくんない?」
俺「…はいはい……しっかし、拗れてんなぁそりゃ」
友「まぁ、お前がめちゃくちゃなお陰で今はそこそこ関係が改善されたけどよ」
俺「いやめちゃくちゃなのは女だ。俺珍しくあの時常識人やってたと思うぞ」
友(どっちもどっちだろ……)
俺「お前の家の方がめちゃくちゃだと思うんだが」ズルズル
友「…あのなぁ………はぁ、とりあえず食うか」
俺「……俺もう食い終わったけど」
友「……やっぱお前めちゃくちゃだよ」
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
俺「お前食うの遅過ぎだろ……店主が心なしか睨んでたぞ」スタスタ
友「……お前がゴキブリの話しだしたからだろ」スタスタ
俺「家主を呼び捨てかよ」スタスタ
友「ちげぇから!」
友「……ところで、さ」ピタ
俺「あん?」
友「……お前にだけは言っとくかな」
俺「…ほう、言ってみろ」ワクワク
友「………俺今、女さんが好きなんだ…」
俺「……拗れてんなぁ」
友「言うな……自分の屑さ加減はわかってんだよ……でもよ……」
俺「……んー……今日俺ん家泊まってくか?なんかまだ話したそうだしよ」
友「…相談に乗ってくれるのか?」
俺「……相談、ね……うーん、まぁ……」
友「…な、なんだよ」
俺「俺、虫の話しか出来ないと思うが大丈夫か?」
友「……お前さぁ……」
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
俺「ただいまー」ガチャ
友「おじゃましまーす」
ハエトリグモ「お!おかえり!」ピョーン
俺「紹介します。うちの自慢の嫁です」
友「うん知ってる」
ハエトリグモ「な、何恥ずかしい事言ってんだよっ!」パタパタ
俺「あ~^」
友「うわ帰りてぇ……」
友「……いや、今に始まった事じゃないしな、うん」
俺「ま、とりあえず……居間にでも」ガチャ
友「おう」
俺「よっこいせ……と」
俺「んで?お前どうしたいの?」
友「……どう、って……」
俺「女さんと、だよ」
友「……そうだな……」
俺「……ま、そんなもんか」
友「…そういや、虫の話しかできねぇつってたよな」
俺「ん?まあな」
友「……虫における恋愛とかってどんなもんなんだ?……いや、参考になるかもしんねぇしよ」ハハッ
俺「あぁん?なんでてめぇ上から目線なんだ」
友「俺へのあたりキツくないですかね……」
ハエトリグモ「んー?何がー?」
俺「うちの嫁にお前のドロドロした恋愛事情を語るのはやめてもらおうか」
友「ひでぇ言い草だなオイ」
俺「まぁいい。虫の話なら得意だ……聞かせてやるよ。参考になるかは置いといて、な」
友「……あ、ああ。頼む」
俺「……まぁ、フェロモンだろうな。恋愛、と称せる物と言えば」
俺「ああ。そうだな、お前にも馴染みやすいようにゴキブリの性フェロモンを用いて説明してやろう」
友「すんげぇ心外なんだが……」
俺「お前ん家みたいにゴキブリが群れるのも集合フェロモンだとか性フェロモンの影響だってのは知ってるか?」
友「……まぁ、一応な。自分で頑張って調べて駆除しようとした事もあるし」
俺「それでアレかよ……」
俺「いや、あながち嘘ってわけでもねぇぞ?」
友「え?」
俺「まぁ、実際は建物だとか川だとかで遮蔽物があるから無理なんだろうが……それを抜きに考えりゃそのくらい集まったって不思議ではねぇ」
友「うわぁ…」
俺「でも街中のゴキブリがお前ん家に集まってる気がするのは俺の気の所為?」
友「やめてくれよ……」
友「そりゃな……」
俺「そうだな、ファーブル昆虫記は読んだ事あるか?」
友「小さい頃に……フンコロガシだったかな?」
俺「ああ、まぁ……それもあるんだが……」
俺「蛾のメスをカゴに入れていたら、次の日雄が寄ってきていたって話なんだかな……」
俺「それがキッカケでフェロモンを発見したわけだが……蛾の雄は、どのくらいの量のフェロモンが触覚に触れれば感知が可能だと思う?」
俺「いいや?分子数百個分だ」
友「ぶ、分子ぃ?」
俺「そう。そのくらい過敏に反応する事ができる」
友「……と、なると」
俺「街中のゴキブリが集められる、というのも完全に嘘ってわけじゃなくなってくるだろ?」
友「……そうだな」
俺「すげぇだろ?ニューロン数は人間の約100000分の1しかないってのにな」
友「……難しい言葉使わないでくれよ……」
俺「……難しくないと思うんだが……」
友「……なるほど」
俺「そうだ、スーパーコンピュータが人間の脳の性能にどれだけ迫ってるか知ってるか?」
友「……わかんねぇ」
俺「100万個のニューロン数に匹敵する性能のスーパーコンピュータなら、既に存在している」
友「おお……?人間のニューロン数ってどのくらいなんだ?」
俺「10の12乗」
俺「……よく考えろ。俺はさっき、虫のニューロン数は人間の何分の一だと言った?」
友「……あ」
俺「察したか……その通りだ。“理論上”ではもう、虫の脳の完全再現できるんだよ」
友「じゃあ誰かが既に再現してたり……」
俺「それがまだ無理なんだ。わかって無い事が多すぎてな。研究者が集まって、カイコガがフェロモンを発見した時の脳の働きを再現するのが精一杯だ………いやそれを再現出来たのもとんでもなく凄い事なんだが」
俺「まぁ、更に詳しく知りたいなら『サイボーグ昆虫、フェロモンを追う』っつー書籍がオススメだ」
友「えっ、あっ、はい」
友「持ってるんだな……」
俺「そりゃ勿論」
俺「……ま、結局俺が言いたい事はな」
友「……ん?おう」
俺「研究者が必死に実験を繰り返して……まぁ俗っぽい言い方をすると、虫の恋愛について調べて、やっとこさ成果が上がり出してるわけだ」
友「おう」
俺「で、だ。それよりも複雑であろう人間の恋愛をよ……そうやってうじうじ悩んで何かしらの成果が出せると思うのか?」
俺「行動しろ……思考も絶えず行いつつな。俺は生憎恋愛経験がたいしてねぇから、こういう観点でしかアドバイス出来ない」
友「……すまん。そうだよな……ありがとう」
俺「ちっとは参考になったか?」
友「ああ」
俺「……なら結構。そろそろ寝るぞ……お前床な」
友「たしか敷布団ありましたよねぇ!?」
俺「なら自分で準備しろ」
友「ほいほい」
俺「さっさと寝ろよ……じゃ」ガチャ
バタン
ハエトリグモ「……お話、終わったのか?」
俺「……ああ。慣れない話だったからかな。少し疲れた」
ハエトリグモ「……えらい、えらい」
俺「……これは嫁ですわ……」
ハエトリグモ「だ、だから!恥ずかしい事言うなって!」
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
友「んじゃ、またな」
俺「おう……まぁ、なんだ…その……」
友「……頑張れよ、ってか?大丈夫、大丈夫」
俺「楽観的すぎなのもどうなのかね……」
友「……昨日はアドバイスありがとよ」
俺「あんま当てになるようなもんじゃねーけどな」
俺「……おう」
アシダカグモ「……不安そうだな?」
俺「……あぁ……やっぱ人間の事考えるのって疲れるな」
アシダカグモ「お前も人間だろが……」
俺「そりゃそうだ。だからこそ、な……」
ガチャリ
バタン
一応、これでこのSSは完結……です。
まぁすぐ蜘蛛たんについて延々と語るSS立てるだろうけど(ボソッ)
では、この世に少しでも虫好きが増える事を祈って。
元スレ
俺「虫とりの季節がやってきたぞ!」友「……は?」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1431518477/
俺「虫とりの季節がやってきたぞ!」友「……は?」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1431518477/
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