西住みほ「堕ちていくほど、美しい」
- 2016年05月27日 03:40
- SS、ガールズ&パンツァー
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名ばかりの七光りとはならぬようにと努力するうちに、愛してやまぬはずの戦車は鉄の檻のように感じられるようになり、私は不安に陥ってしまいました。
崖道を走行中に、後輩の乗るIII号戦車が川に滑落し、水没したのです。
私は我知らず、己の居るフラッグ車から走り出してしまい、結果として我が校は敗れ、10連覇は喪われました。
III号に乗っていた後輩はみな死にました。
伸ばした手をつかんだのに。
当然私自身も無事とはいかず、しばらくの入院を余儀なくされました。
敗けたこと、III号の後輩がみな死んだことは、病床で逸見さんから聞いたことです。
後輩たちがどんな思いで落ちていったかも、きっとわかったはずです。
それについては、私は何とも申し上げることはできません。
尋ねる人は不在でした。
ぼんやりと天井を眺めるまま、私も死んでいれば、と思いました。
何を食べる気にもなれず、点滴の世話になりました。
1週間程度で、私はすっかり痩せました。
そうして退院するころには、まるで餓鬼のようでした。
迎える人も、不在でした。
もしかしたら、姉が迎えにきてはくれないかと期待もしたのですが、戦車で来られでもしたら卒倒していたでしょう。
私はひとりで、わずかな荷物を傍に抱えて家路につきました。
家で私を待っていたのは、恥辱であり、面罵であり、地獄でした。
私が玄関先で何も言えないで、変にもじもじしているのを一瞥した母は、
「入りなさい」
と短く言いました。
暗がりを歩くようにおっかなびっくりと家に入る時は、とても敷居が高く感じられました。
眼前に座る母は、和室の戦車柄の襖も相まって閻魔様のように見えました。
その傍に座っている姉でさえ、まるで地獄の悪鬼悪霊と見まごうほど恐ろしく感じられるのです。
いつになく険しい顔で、一文字に結んだ口を開こうとはせず、私を睨んだままでいます。
「...え、っと」
「貴女が助けに行こうと行くまいと、どのみちあの子達は死んでいたわ」
「っ...ぁ」
「犠牲無くして勝利は得られないのです」
私は眼の前が暗くなりました。
がくりと項垂れ、全身をわなわなと震わせることはできても、なお言葉は出ず、身体も動きません。
それではまるで戦争ではないか。
できることなら、母の言葉を否定しとうございました。
できることなら、母の喉笛に飛びかかってやりたいところでした。
無論そんなことはできようはずもなく、唖のように黙り、瞽のように何も見ていない私を、姉が連れ出してくれました。
部屋で私は、ぼこられ熊を抱きしめて、固まっておりました。
声は出ず、ただ涙だけが頬を伝います。
姉は私を見下ろしているばかりです。
夢なら覚めてほしいと願いました。
お姉ちゃん、と声が漏れました。
痩せこけた心が絞り出した悲鳴でした。
「私はもう、お前の姉ではいられないよ」
気づけば、私は熊本の生家から、大洗に転がり込んでおりました。
戦車から逃げ出したのに、また戦車に追い込まれるとは、思いもよらない出来事でした。
手記を持つ手が震えていた。
私は頭がおかしくなりそうだった。
あの子が何を思っていたのかなど、私は知る由もなかった。
自分の言葉が、あの子にどんな意味を持ったのかもわかっていなかった。
その結果がこれだ。
笑い話にさえなるものか。
私はそうあろうと努めてきたし、それ以外の道を知らぬまま生きてきた。
あの子は、何を求めていたのだろう。
あの子は、救いを求めていたのだろう。
傍にあったウォトカを少し呷ると、私は震える手で次の頁をめくることにした。
素面では、正気を保てそうにない。
大洗はよい町でした。
大きくはないけれど、素朴な人々が美しい町でした。
何よりも友人がいました。
沙織さんがいて、華さんがいて、優花里さん、麻子さんがいました。
教室で、誰と話すこともなく、席にいて、ペンを落とし、消しゴムを落とし、拾おうとして机に頭を打つ醜態をさらしていた時、声をかけてくれたのは沙織さんと華さんでした。
食卓を3人で囲むうちに、仲良くなりました。
心臓がどきりと跳ね、命の危機を訴えます。
この時に私のところにきた3人は、生徒会の役員の方だとあとで聞きました。
「は、はい」
「大洗にようこそ。戦車道とってね~」
石のように固まった私を、二人が心配してくれました。
「みほさん、大丈夫ですか」
「大丈夫...大丈夫だから」
「顔色悪いよ?保健室行こっか?」
「いいんです、いいんです」
「...何かあったのですか?」
そして同時に、ようやくできた友らしい友を喪いはしないかと畏れました。
「大丈夫だよ。なにか不安なら、言って」
戦車道という規範など無くても、沙織さんのような女性ならばきっと良妻賢母となるでしょう。
私は意を決して、経緯を告白したのです。
戦車道の試合中に、後輩のⅢ号が川に落ちたこと。
助けようとフラッグ車を放り出して、その結果黒森峰は敗れたこと。
そしてⅢ号に乗っていた後輩は死に、私も重体になったこと。
そうした責任や戦車道を棄てて逃げてきたこと。
今度は友人を喪った。そう思いました。
ところが背を向けて去ろうとすると、二人は私を引き止めるのです。
幸せなことに、二人は私を案じてくれました。
行かずともよい、と言ってくれました。
もし生徒会が何か言ってきたら、直談判してあげるとまで言ってくれました。
二人のおかげで、かりそめとはいえ安心が得られました。
ウォトカの瓶が転がっている。
一つや二つではない。
吐き気を催すほど、身を抉られるほど、読むのが辛い。
私がここにいること、今生きていることさえもが、あの子を苦しめていたように思える。
頭を抱えてうずくまっていると、声がした。
振り返ると菊代さんであった。
目を背けるわけにはいかない。
それは許されない。
その日の放課後に、生徒はみな体育館に集まるようにと放送がありました。
行ってみれば何のことはなく、戦車道のプロパガンダ映画の上映でした。
規範。
戦車とはもとより、戦争のための兵器です。二度の世界大戦でも用いられ、今日では武道です。
人を殺すための道具であるにも関わらず。
それすら不安な時だってあるのですから。
昨年の全国大会で命を落とした赤星さんたち後輩のことは、無かったことにされたのです。
願わくば、少なくとも二人には戦車道などという恐ろしいものには触れもせずに生きていて欲しいと思っていたのです。
私は既に、戦車道で近しい人を喪っていたからです。
蛇が蛙を睨むように、私は履修登録用紙に睨まれていました。
逃げることは容易いのでした。
けれども、一人でその道を行く勇気は無いのでした。
私は胸のつかえが取れたようでした。
これで少なくとも、やっとできた友人を、また戦車で喪うことはないと思えたからです。
死の宣告をされた気分でした。
取り落とした箸が情けなく転がって行き、体はどうしようもなく強張っています。
幸いなことに、二人が寄り添ってくれました。
そのおかげで、なんとか生徒会室にはたどり着けました。
鉄塊の様な扉を開けると、生徒会の方が揃い踏みでした。
案の定、何故戦車道を選択しないのかと詰問されました。
「私、戦車道が嫌で、この学校に...」
「取ってくれなきゃ困るんだよねぇ」
駄々をこねる子供を見るような調子で、私を横目に見ながらそう言うのです。
けれども、二人はそれほど戦車道に抵抗を示しているわけではないのでした。
何故生徒会が私にそこまでこだわるのかはのちにわかるのですが、この時はまだそんなことおくびにも出ず、私は混乱し怯えるばかりでした。
事情もわからず渦中に放り込まれるほど、心にのしかかるものはありません。
本当はどこかで戦車道をやりたいと思っているであろう二人に申し訳なくなり、私は我知らず、やります、と口走っていました。
これが良いことだったのかは、未だに答えを出せずにいます。
今思えば、なんと愚かだったことか。
*
夜が明けていた。
暗い家の中に、青白い光が浮かび上がっている。
足取りはおぼつかないけれど、顔を洗うことにした。
顔を上げて鏡を見た。
写っていたのは、まるで死者だった。
私が最後に見たあの子の姿は、どんなだっただろう。
振り向いて、家の中を見回してみても、記憶は浮かんでこないのだ。
考えてみれば、まほの笑った顔も覚えていない。
私さえ、笑った記憶がない。
娘としてでなく、西住流の後継者としてしか見ていなかった。
今更悔やんでも、悔やみきれない。
私が戦車道を取るとなってからは早いものでした。
総勢22名が集められ、目の当たりにしたのはガラクタの様なⅣ号戦車1輌でした。
経験者ではない私以外も、これだけかと疑問を口にしています。
「書類上はまだ残っているはずだ。捜せ」
河嶋さんはそう言い、会長は愉快そうに笑っているだけでした。小山さんは力なく首を振っています。
大洗の戦車道は、戦車の調達から幕を開けたのです。
けれども、まずⅣ号の装甲に触れてみれば、まだまだ活きの良いもので、整備さえすれば戦闘は可能な車輛でした。
単砲身の威力は些か心許ないですし、錆など長い間放置されていたらしき傷が心配でしたが、自動車部の皆さんが一晩で修復してくださいました。
しかし、1輌では試合など夢想に過ぎません。
皆さんの懸命な捜索活動により、Ⅲ号突撃砲、八九式中戦車、38t、M3リーを発見することができました。
沼に沈められていたものもあったり、森に棄てられていたようなものもありましたが、一人一人の協力と自動車部の皆さんの尽力でどうにか全ての戦車が完璧に修復されたのです。
戦車道の経験はないとのことでしたが、経験不足を補って余りある知識と洞察力は、経験者のほぼいない大洗にとっては願ってもないアドヴァイザーでした。
何より、数少ない私の友人でした。
それから、遅れて登校した日に、綿毛のようにふらついていた女生徒に出会いました。
それが麻子さんでした。
あまりにふらふらしているので、肩を貸したことを覚えています。
聞けば、低血圧ゆえに遅刻ばかりしているとのことです。風紀委員長の園さんが憤慨なさっていました。
何日か後、陸自の教官を招いて指導を請うと聞きました。
その日、輸送機から落下傘で投下された10式は、学園長の車を破壊してから私たちに向かってきました。
44トンの重量は軽量な部類といえど、車を潰すには充分です。
しかしそんなことは皆、意に介さない様子でした。
しかし、その後の経験はあの時以来の恐ろしいものでした。
基礎訓練もままならぬのに、教官はいきなり実戦を指示したのです。
危険ですと言っても、大丈夫だと言って聞かぬのです。
そうして、なし崩し的に模擬戦が始まったのです。
戦車に乗ったこともない素人をいきなり戦車に乗せて戦わせるということは、子供に銃を持たせるほど危険なことなのに。
問題なのはそれだけではありません。
私は戦車に乗ると、動悸と頭痛に悩まされるようになっていたのです。
ひとまず通信手は置かずに模擬戦が始まりました。個人の殲滅戦です。
操縦手の華さんは、無理もありませんが初めての操縦にまごついています。
砲手の優花里さんは、沙織さんとは反対に初めての戦車に高揚していました(一種のcombat highでしょうか)。
その時、演習場だというのに草っ原で昼寝している麻子さんがいたのですから、全く肝の冷える思いがしました。
不覚にも、そのすぐそこにはⅢ突がいたのです。
目をやれば、華さんがぐったりと横たわっていて、失神したのだと直ぐに合点がいきました。
私はどうなっても構いませんが、この人たちをここに沈めてはならない。
覚醒した麻子さんが説明書を片手に、まるで手足のようにⅣ号を乗りこなしています。
「西住さんには借りがある。ここは任せてくれ」
これなら、と感ぜられました。
「優花里さん、あのⅢ突を破ってください」
「はい」
冷静に、教えてもいないシュトルヒ計算を淡々とこなし、一撃でⅢ突を撃破したのです。
味方である私さえ恐れを抱くほどに、鮮やかな砲撃でした。
背後で橋を渡り終えた八九式も、すぐに撃破してくれました。
それでも、私は年端もいかぬ頃から戦車に乗ってきましたから、持ち合わせている情報と西住流仕込みの経験で戦力の差を埋めることを必死に考えました。
待ち伏せはあらゆる戦いにおいて基本中の基本ですし、真っ先に警戒すべき点の一つです。
流派はどうあれ、その程度の作戦ならば容易く撃ち破る力を持ち合わせた高校が、Saint. Glorianaという強豪なのです。
その上当時の私たちには、作戦を完遂するだけの戦車も練度もありませんでした。
案の定と言うべきか、結果は河嶋さんを激昂させただけでした。
「黙れ。私に文句があるならお前が隊長をやれ」
未経験者ばかりの中で、河嶋さんは年長者として、隊を率いていかなければならない重圧もあったのでしょうが、私には青天の霹靂みたいな大声でした。
私は、マチルダⅡやチャーチルが列を成して大洗の町へと下って行くのを眺めながら、なんとなく胃の痛い思いにふけっていました。
やはり戦車の中に入ると、あの時の光景が脳裏に浮かぶのです。
そして私は、一人で誰にも見られない部屋に篭り、会長に頂いたセルシンを腕に注射しました。
今になってから思いますけれど、これは明瞭な選択の誤りでした。
それでも、クスリのおかげかなんとか平静は保てました。
それが我が身を蝕んでゆくとも知らずに。
顔色が悪い、と指摘されることさえも頭痛の種になるようです。
幻聴があった時には、もう限界だと思いました。
会長は、いい医者がいる、とだけ答えられました。
この時になってようやく、この人は、私がどのような経緯でここに来たのかをわかった上で、私がこうなることをわかった上で、私に戦車道を強いたのだと悟ったのです。
覚醒剤やなんかとは違って簡単にできるし合法だから、辛い時に使いなよと言われました。
38tは黄金色に、M3リーは桃色、Ⅲ突は派手な色に車高の低さを打ち消すような4本の幟。
八九式に至っては、バレー部復活を願う語句がアカのデモ隊みたいな書体で車体に書き込んでありました。
ですから、もう何も言わぬことにしました。
幸いにもあちらのご厚意で、こちらよりも少し多い程度の編成で試合をしてくださるとのことでした。
私たちの現在位置を知る良い機会ですから、無駄にしてはなりません。
先に指定位置でⅣ号以外を待ち伏させ、私たちは偵察に出ました。
ですから、そこを腕と頭で補わねばなりませんでした(この時点ではそうする間もありませんでしたが)。
見下ろした崖からチャーチル、マチルダⅡを確認し、おびき寄せるために一発、撃てと指示をしました。
ぎこちなくはありますが、華さんは着実に一角の砲手に大成しつつあるようでした。
当てられませんでしたと申し訳なさそうにしていましたが、どのみちあの距離と単砲身では当たったところで擦り傷になるかならないかですから、気にしないように言ってから離脱しました。
沙織さんが無線で砲撃準備を指示し、敵戦車をキルゾーンへ誘導したと思ったら、次の瞬間には味方から砲撃されていました。
マチルダⅡとチャーチルの猛攻に恐れをなしたのか、M3リーの一年生たちは戦車から飛び出して行きました。
キューポラから見えたその背中に向かって、外に出てはだめですと叫びましたが、既に遅く、あの子たちは逃げて行ってしまいました。
カーボンで守られているのは車内だけですから、外に生身を晒せば何があるかわかったものではありません。
逃げた生徒のすぐ近くに着弾したときにはもう、クスリを打っていなければ卒倒していたでしょう。幸いにも、みな無事ではいてくれましたけれど。
浅い窪地なら履帯さえ直せば這い出すことはできますし、市街地まで退いてから遭遇戦に持ち込む以外に取るべき道はありません。
五体満足なⅢ突と八九式を従え、私たちは大洗の町へと下りました。
私以外はみな多かれ少なかれ大洗ないし茨城県の出身ですから、私よりも土地勘があります。
Ⅲ突のエルヴィンさんと八九式の磯辺さんの頼もしい返答を聞いてから、私たちも市内へと身を潜めました。
けれども、その直後に被撃破報告を聞いたときには、背筋の凍る思いでした。
残っているのは私たちだけです、と優花里さんが溢しました。
そこに、こちらへ向かってくるマチルダⅡとチャーチルが見えたのです。
しかし、折り悪く中断した工事現場に追い込まれてしまいました。
報告よりも1輌多いように見えましたが、よく見れば1輌は燃料タンクが破損しているのみです。
ふと、チャーチルから金髪の女性が姿を現しました。
こんな格言を知っているかと問うのです。
「英国人は恋と戦争では手段を選ばない」
これは恋でも戦争でもない、と叫びたくなるような気持ちでした。
一発、砲撃が響きました。
砲弾は虚空を舞い、返答が4つ。
38tは虚しく敗れ去りました。
すれ違いざま、38tを陰にマチルダⅡを1輌撃破しました。
道の突き当たりから顔を出した他のマチルダⅡも2輌撃破し、残るは私たちとチャーチルだけになりました。
皆さんを信頼し、チャーチルの側面に回り込むように指示を出しました。
あれほど嫌だった戦車に乗った後で、なぜ幸せを感じるのでしょう。クスリのせいでしょうか。
ぼんやりしていると、Saint. Glorianaの方々がいらっしゃいました。
しかし誤魔化す訳にもいかず、名を名乗りました。
楽しかった、と一言残し、Saint. Gloriana の皆さんは帰って行きました。
するとなにやら、一年生たちが勢ぞろいでした。
逃げ出したりして申し訳ない、と言うのです。
そこに居合わせた会長からは、次から作戦は西住ちゃんに一任すると言われ、一つ、籠を手渡されました。
貴女のお姉さんよりも面白い試合だったわ、と書いてありました。
そうして、大洗の初の実戦は幕を閉じました。
けれども、フラッグ戦であることと、試合毎の車輌数制限を鑑みれば勝つことが全くの不可能ではありません。
「...副隊長?」
お前が殺したんだ。
フォークを落としたことにも気づかずに、私は石のように固まっていたようです。
あの時の西住殿は間違っていませんでした、という優花里さんの言葉は心を撫でるようで、胸に刺さるようでもありました。
姉の顔には表情と呼べるものが浮かんでいませんでした。
けれども、去り際に、逸見さんがばつの悪そうな顔で言った言葉はまだ覚えています。
逸見さんは、あんなこと言って悪かった、と告げたのです。
そして最後は、華さんの一射で勝利を掴み取りました。
一見すると大洗のそれよりも貧弱な戦車群で、非常に上手な戦いをするので思わず感心したのを覚えています。
もし彼女たちの作戦が本当の意味で成功していれば、私達も危うかったことでしょう。
流派や名前ではなく、人として、戦車道を往く者として純粋に、私を評価してくださったからです。
そうした喜びとは裏腹に、クスリの量は緩やかに増えていきました。
夕食のお誘いでした。
何を問うても、皆さんは鍋を勧めるばかりでしたから、机を叩きそうになりました。
その刹那、会長の目には怯えの色が浮かんだのです。
その声の震えも、間違いではありません。
私だけが、総てを台無しに出来るから。
私の胸は、どす黒い劣情に満たされていました。
可愛らしい猫が可愛らしさ故に石を投げられるように、私は嗜虐的な愛おしさを会長に見出していました。
クスリの作用か気が大きくなっていた私は、ぞくりと沸き立つ悍ましい慾望を、会長に向けたのです。
無数の注射痕を前に、彼女は益々震え上がり、さながら天敵に追い込まれた小動物のようでした。
興が削がれるような気がしたので、手近にあったタオルで彼女の身体を縛ってから、私はこう囁きました。
言ってくれないと、酷いことしちゃいますよ、と。
そしてついに、彼女は告白したのです。
一度でも敗ければ大洗は廃校になることを。
それから、彼女は啜り泣き始めました。
行為の後、人形のようにぐったりした彼女を抱きかかえて浴室に行くときに、鏡に写った私の姿が見えました。
堕ちた雌犬の、醜い有様がそこにありました。
戦車道という規範から見れば、私は忌むべきものであり、人間ですらないのだろうと思います。
しかしどうやら、人は堕ちていくほど美しいようなのです。
その夜、私は会長を、これまでぬいぐるみにそうしてきたように抱き締めて眠りました。
酷いことをしてすみません、と謝ると、会長は何も言わずに抱きしめる力を強めました。
追い込まれたはずの戦車道で、いつしか私は自ら退路を断ち、自発的に戦車へと足を向けるようになっていました。
それから私は、クスリを絶ちました。
Ⅳ号を旧部棟で発見された長砲身に換装し、さらに山中で発見されたルノーB1bisと風紀委員の方3名が戦列に加わり、多少の戦力も増強することができました。
上がりきっていた士気を下げることもあるまいと思い、短期決戦に舵を切ることになりました。
後になってからそれが仇となるのですが、この時はまだそんなことは思いもよらないのでした。
試合開始の前、Pravdaの隊長であるカチューシャさんと副隊長のノンナさんにお会いし、挨拶を交わしました。
カチューシャさんは去り際、あんな勝ち方は望んでいなかった、本当に済まなかった、と申し訳無さそうに言いました。
今度は正々堂々、道に恥じぬ戦いをすると誓う、と言いました。
皆概ね戦車に慣れ、雪原であってもよく走れていましたが、三回戦が初参加かつ初の実戦である風紀委員の方々(鴨チームと呼んでいました)は、雪の坂道を上がりづらそうにしていました。
ですが、麻子さんの手ほどきを経てからは見違えるようでした。
しばらく進むと、敵戦車が3輌のみ、こちらに背を向けて鎮座していました。
敵もすぐにこちらに気づいたようで、砲撃が始まりました。
長砲身の優位を活かすならば今だ、と思い、砲撃用意に移らせ、河馬チームのⅢ突と鮟鱇のⅣ号でそのうちの2輌を撃破しました。
けれども、これほど容易く撃破されるのは、精強なPravdaらしからぬことです。
その戦果は、どうやら皆さんを浮つかせたようでした。
残された1輌を追うと、フラッグ車を含む6輌ほどが確認されました。
心理的に、二兎を得た者は三兎を得ようとさらに追おうとするものです。
敵は明らかに指向性のある動きをしています。
廃村に差し掛かり、背後に迫るT-34に気づいた時、違和感は確信に変わりました。
しかし、些か手遅れのようでした。
撤退が可能なルートは既に抑えられていました。
周りはすべて敵だったのです。
追い込まれたまま闘ったところで蹂躙されるだけですし、籠城以外に取るべき道はありません。
入り口付近で転輪ごと履帯を破壊されたⅢ突をⅣ号で押し込んだところで、砲撃の雨はひとまず止んだようでした。
曰く、"勝負は決した。これ以上無駄な争いは無用。降伏せよ"とのことでした。
三時間、返答を待つ、と言い、彼女たちは帰って行きました。
これが、道に恥じぬ闘いか。
カチューシャさんは、あの一件を畏れ、臆病になりすぎているが故にこのような手を使ったのです。
力を見せつけて、抵抗の意思を挫くことは、平和的な手段としては最良の部類に入るでしょう。
しかし、これは戦争ではありません。
己の道に背き、自ら負けを認めさせようなどというやり方など言語道断です。
敗ければ廃校になるなどということは、感情の昂るあまり頭から抜け落ちてしまっていました。
華さんが何度も私の名を呼んでいたことさえも、気づいていなかったのです。
外は零下の寒さですが、私は地獄の火よりも熱くなりすぎていたようです。
なぜこんな目に遭わなければならぬのだ、と目が訴えていました(考えてみると、廃校の事実は私と生徒会の方々以外は知らないようでしたから、そのことでかなり苦労なさったのでしょう。初めて会ってからの態度にも納得がいきました)。
皆立ち尽くしているか、膝から崩れ落ちているかです。
これでは打開など望むべくもありません。なにか具体的な策を取らなくては。
しかし、元来力押しを是とする彼女ならばそこに私たちを誘い込むのが狙いに違いありません。
すぐに動くには情報があまりにも不足しており、また皆さんは策に嵌められたという悔しさと、これまでの勝利に舞い上がってしまったことへの後悔がいささか見てとれましたから、先ずは士気を上げ、そして偵察を徹底して行う必要に迫られました。
けれども、なによりも問題なのは皆さんの心の方でした。
私は隊を率い、この大洗という学舎の存亡を背負う第一人者として皆さんを支える責任がありました。
赤星さんたちを喪ったときの私は、きっと今の皆さんのような顔をしていたに違いありません。
あの時に私が必要としていたのは、ひとえに共感と救済でした。
私がクスリを断つことができたのは、皆さんに対し、幼少の頃から抱えてきた不安をぬぐい去る程の信頼を抱くようになっていたからです。
「三つ、話があります」
「一つ、私はここに来る前、黒森峰にいました」
「去年の全国大会の決勝で、後輩の乗っていたⅢ号が川に落ちて、後輩が五人、皆死にました。助けに行ったのに、手を掴んだのに、助けられなかったんです。後輩が、西住先輩、西住先輩、助けてください、と言っていたのは覚えています。私は、死なずにいました。それから、ぜんぶ捨てて大洗に逃げてきました」
「二つ、大洗は廃校の危機に立たされています。文科省で、実績のない校は予算の都合で解体が決まっているのだそうです。大会で一度でも敗れれば、私達は母校を失うことになります」
「三つ、皆さんには私を信じてほしい」
「大洗という学校は、町は、皆さんにとっては、帰るべき家であり、心強い拠り所でしょう。失いたくないのは、私も同じです。追われるように逃げてきた私を、受け入れてくれたからです。私は、命を懸けて、大洗を護るつもりです。死んでも構わないと思うほど、心に決めているのです」
「私についてきてください。死中に活を見出して、大洗を護り通してみせます」
皆さんの目に、強い意志を宿すことができたようでした。
やりましょう、まだいけます、と皆が口を揃え、まるで島津の武士の如き闘志が燃え始めました。
そして、審判の時がやってきました。
降伏はしない、と言い、私達は戦闘の用意に入りました。
それはまるで、今生の別れのように聞こえました。
けれどもそれは、これからの道を誓う祈りでした。
カチューシャさんの作戦を打ち破るのであれば、取るべき作戦はただ一つ、意図的に開けられた西側の穴を無視し、真正面の、厚い戦車群の壁に穴を穿つのみです。
前方から新たな敵が4輌視認され、後方からも4輌ないしそれ以上という報告を受け、挟撃される前に10時の方向へ旋回を指示したところで、38tが庇うように躍り出ました。
そのようなことを言って生還した者を、未だかつて見たことはありませんでしたが、すぐさまお願いします、と言えるくらいには彼女を信頼していました。
それはまるで、夜叉でした。
あとは頼む、と言葉を残し、生徒会の皆さんは戦線を離れました。
残された私達は、敵の追撃を振り切るため、2時方向へと舵を切りました。
しかし予想に反し、砲弾ではなく機銃の、それも曳光弾の波が夜空へと、オーロラめいて放たれて行きました。
この時点で追撃に来ていたのは6輌程度で、雪の坂を越えればやり過ごすことはできる数でした。
暴露るのを避けるため、あまり撃ち返さないように言ってからⅣ号とⅢ突を控えさせ、フラッグ車を含む皆さんを先行させました。
目論見が外れたとなれば、恐らくカチューシャさんはとにかく物量を以って早い段階で戦闘を終わらせようとするでしょう。
ひどく盲目的に、シベリアの熊のようにフラッグ車だけを追うに違いありません。
そして間違いなく、自軍のフラッグ車だけは、敵はおろか自分たちからすらも遠くに隠しておくことでしょう。
キューポラに直立する程度では見えないので、優花里さんにお願いし、偵察に出てもらいました。
快く飛び出して行ってくれた優花里さんを見送り、私達は先行させた本隊を追いました。
無線により、IS-2の砲撃でM3リーが撃破されたことがわかりました。
私は皆さんに全幅の信頼を置いていましたが、実際のところ、私達はそう長く逃げ続けるわけにもいきません。
冬に慣れていない私達には、長くなればなるほど不利でしかないからです。
眼前に立ちふさがるKV-2を河馬チームのⅢ突と鮟鱇のⅣ号で破り、さらに歩を進めたところへ、鴨チームの被撃破報告が届きました。
家鴨チームの八九式が丸裸にされたのです。
勝敗の決するところまでは、もって4分でした。
けれども、走り回る対象に、走りながら砲撃を当てるのは至難の技です。
ならば、と優花里さんに管制を指示し、河馬チームを伏させました。
家鴨チームの皆さんには、あと少しだけ持ちこたえてください、と言うほかありませんでした。
そして、敵フラッグ車をキルゾーンへと誘い込み、雪中からⅢ突の主砲が火を噴いたのと、無線から轟音が響き渡ったのは同時でした。
右の履帯を失いながらも、八九式は持ちこたえてくれたのです。
ともあれ、私達は、この長き戦いの果てに勝利を収めたのでした。
何か言うことはありますか、と問うと、下を向いて黙りこくってしまいました。
「今回の作戦は、私が無理を言ったんです。怖かったんです。あの時も、カチューシャが庇ってくれて、...甘えていました」
「あのⅢ号を沈めたのは、私なんです。ずっと、どうしたらいいか、...謝っても、謝りきれなくて、...」
彼女は泣き崩れ、カチューシャさんは、何も言わずに項垂れました。
崖崩れだと思っていました、と呟くことしかできず、心の中を戸惑いだけが満たしていました。
何かを喪っていたのは、私だけではなかったのです。
彼女はたんに、正攻法で戦っていたのです。
それが人を死に至らしめるなどとは、思いもよらない結果だったでしょう。
私がその立場だとしたら、どうしても彼女を責めることはできません。
彼女はあの時、人命と、信じてきた戦車道とをいっぺんに喪っていたのです。
かつて怨敵だと思っていたひとは、私と同じく苦しんできたのです。
「私は、聖職者ではありませんから、赦しを与えることはできません。けれども私は、守るべきもののためにどこまでも争い、太陽のように生きるつもりです。どうかあなた方も、あなた方の闘いをたたかい続けてくださいまし」
そしていつしか、親の仇のように降っていた雪は鳴りを潜め、静かな宵闇が眠るように流れて行きました。
特に不思議ではありませんし、覚悟はした上でことに臨んでいましたけれども、実際問題、黒森峰の重戦車群にどう対処するかは悩みの種でした。
姉や逸見さんはティーガーを駆るでしょうし、パンター、ヤークトパンター、ラングなど、ドイツ戦車見本市のような布陣を敷いてくるに違いありません。
戦車の歴史をなぞるかのような趣はこちらも同じですが、まず数で、次に火力で劣っていました。
しかし大洗とて、伊達に3回戦までを戦ってきたわけではありません。
これまでにそうしてきたように、陽動、撹乱、待ち伏せ、そして遭遇戦に持ち込めば、決して勝てなくはないのです。
ただ、少しばかり足りないものがありました。
先日発見されたポルシェティーガーの修復が完了した、とのことでした(実を言うと、Pravda戦の直前に既に発見されていましたが、学園艦の奥深くという場所が場所だけに搬出が難航し、また構造の複雑さ故に修復に時間がかかってしまいました)。
これは願ってもない、と私達は校庭へ駆け出しました。
私自身、戦車には長いこと触れてはきましたが、実際にポルシェティーガーをこの目で見、そして共に戦おうというのは初めてのことでした。
足回りの弱さとエンジンの燃えやすさは懸念事項でしたけれど、それでも主砲の88mmは大洗にとっては頼もしい存在でした。
それに、対処法がないわけではありません。
会長が手配してくださった(事務手続き等は小山さんがしてくださったようですが)シュルツェンをⅣ号に装着し、カラーリングも変えてH型仕様にしました。
もとより、歩兵支援車両のD型を改造したものですから、装甲の薄さは相変わらずですけれども、この状況では破格の戦力と言えました。
ともあれ、合計で8輌になった大洗の戦車隊は、Saint.Glorianaとの一戦から大きな成長を遂げ、未来を掴み取る舞台へと赴く用意も終えることができました。
自動車部の皆さんと戦車の最終チェックをする最中、Saint. Glorianaのダージリンさんとオレンジペコさんがいらっしゃいました。
次いで、これまでに鉾を交えた皆さんが応援に駆けつけてくださいました。
私は戦った人皆と仲良くなる、と言いました。
4本足の馬でさえつまづく、という諺で、強さは永遠ではない、という意味なのだそうです。
ダージリンさんの言わんとするところが黒森峰の斜陽を意味していたのか、大洗の終焉を意味していたのかは、神のみぞ知るところです。
あとは戦車にて語るべし、とその目は告げていて、さながら武士のようでした。
Pravdaとは対照的に、1輌ごとの火力が高い点は特筆すべきでしょう。
まずは有利な場所へ急行し、長期戦を展開せねばなりません。
私達と敵との距離が縮み切らないうちに、移動を完了する必要がありました。
開始直後に207地点への移動を指示し、乗車始めの号令を発し、大洗の行く先を決める闘いが幕を開けました。
西住殿は間違っていなかったんですよ、と微笑んでくれました。
私は、自分がどうなっても、助けてあげたかったんです、と言いました。
森を重戦車で横断するなどとは、猪突猛進な黒森峰らしい戦い方と言えるでしょう。
おそらく、私達が作戦に入る前に叩き潰す腹積もりに違いありません。
ジグザクに動きながら、前方へと逃げるように指示しました。
丘へ上がろうとする最中、三式がⅣ号の盾となって落伍してしまいました。
猫田さんが、ごめんね、と言いました。
3名とも無事なのは幸いでしたが、被撃破報告というものは、いつ聞いてもぞっとしないものです。
ある程度走ったところで、こちらが用意した煙幕を展開しました。
そして中腹に差し掛かったところで、比較的軽く足の速い、八九式とルノーB1bisに煙幕を展開しながらジグザク走行をするよう指示し、同時に麓に待機させておいたヘッツァーに陽動を開始させました。
丘の頂点に到着し、陣地を構築完了したとの報告を受けてから、射撃用意の号令を発しました。
ドイツ重戦車史の一端を担うヤークトティーガーは、やはり巨人のような趣で、甲冑のような硬さでもってこちらへゆっくりと進んで来ています。
黒森峰の有り方をその身に写すようなヤークトティーガーへ、幾重にも砲撃を重ねるものの、正面からではなす術もありません。
流石に、西住流を継ぐ者たる姉らしく、私の意図は見抜かれていたようです。
しかし、現状二輌程度削ることができれば、この段階では御の字でした。
重戦車級の大きな車輌ばかりを主だって運用する黒森峰は、小さな戦車で懐に入り込まれるのを大の苦手としているからです。
中には固定砲塔も多く、また回転砲塔でも長砲身ならばすぐ近くの敵を撃つことは、相打ち無しにしては至難の技でしょう。
特に、隊列を組んで攻めることを主とする黒森峰には。
そしてヘッツァーに気を取られ、横を向いたラングを河馬チームのⅢ突が仕留めました。
次いで本隊も再び射撃を始め、慌てふためいた黒森峰の隊列は伸びきっていました。
パニックに陥るのも無理はありません。
鈍重で足回りが弱いポルシェティーガーでも、下り坂ならば巡行戦車並みの早さでした。
そこに至るルートには大河が横たわっていて、越えられない川ではありませんが、軽い戦車では流される恐れがありました。
そのため、ポルシェティーガーを上流に、八九式を下流に置いて、私達は川渡りを急ぎました。
ところが、半ばまで来たところで、一年生たちのM3リーは動きを止めたのです。
そして恐るべきことに、かつての記憶が、それに起因する不安が、動悸が、じわじわと蘇り始めたのです。
「行ってあげなよ。こっちは私達が見るから」
戦車は横に並んでいますから、跳べないことはありません。
これは、私が何のために逃げ出した戦車道へと再び舞い戻り、私達が何のために戦っているのかを、再考する瞬間でもあったのです。
その間、6時方向に視認された敵は、不思議と砲撃はせず、その上私たちが川を渡り終えるまでは近寄りもして来ないのでした(この点に関しては、紳士的だと思います)。
ほかにもポルシェティーガーのエンジンを走行しながら修復していたりと、レオポンチームの皆さんは私が思う以上に逸材揃いだったようです。
砲塔が長く、鈍重な重戦車中心の編成である黒森峰には、これ以上ない有効な一手であり、現状私達が取りうるほぼ唯一の正攻法です。
廃墟の陰から顔を出したⅢ号を追いかけ、私達は団地群へと入って行きました。
次の瞬間、驚愕とも畏怖ともつかぬ感情が私達を支配しました。
重戦車偏重主義もここに極まれりか、と思わず舌打ちが出るほどでした。
ネズミの名に不釣り合いな巨体から放たれた砲撃の至近弾だけで、ヘッツァーが吹き飛ばされかけましたから、その火力は絶大です。
直後に反撃を試みたルノーB1bisが撃破され、マウスの進撃が始まったのです。
後退するこちらの反撃も意に介さぬかの如くⅢ突が破られ、私はどうしようもない焦りと、危機感に襲われました。
しかし、迫る敵の本隊が合流する前に、沙織さんの素朴な感想で、この巨大なマウスを撃破するための策を思いつくことができたのは僥倖でした(市街戦でカタをつけるにはマウスはどうしようもない障壁でしかないからです)。
もはや荒唐無稽な作戦ですが、捨て身の精神を持った皆さんとならば、不可能ではありません。
後戻りはできないという逆境が、大洗をこれほどまでに強くしてきたのです。
それからM3リーとポルシェティーガーによる挑発で砲塔を向けさせ、最後の仕上げに八九式をマウスの上へ登らせたのです。
亀チーム(生徒会の皆さんをそう呼んでいました)の皆さんと、兎チームの皆さんと、レオポンチーム皆さんの度胸、そして八九式の家鴨チームの皆さんの練度(それも、マウスの車体程度の狭い範囲を動きまわれるほどの)なくしては、この策は成功し得なかったでしょう。
少しの間踏ん張ってくださいと言ってから、Ⅳ号で背後へと回り込み、車体後部のスリットを華さんが射抜き、ついに猛鼠は息絶えたのでした。
ですから、この戦果は黒森峰を多少なりとも揺るがすに違いありません。
同時に、私たちの士気を上げる結果にもなりました。
そしてそれは、この学舎の行く末を定める刹那でした。
我々の役目はここで終わりだ、あとは頼む、と言葉を残し、勝利の地での再会を約束して、私達は別れました。
はなから、互いの狙いはフラッグ車以外にないのです。
敵フラッグ車との一騎打ちをうかがうべく、敵の戦力を可能な限り分散するように指示を出し、レオポンチームの協力を仰ぎました。
脅威は後続のヤークトティーガー、エレファントの火力でしたが、その足止めに兎チームの皆さんが手を挙げてくれました。
かつてSaint. Glorianaとの一戦で逃げ出してしまったあの子達は、大きな成長を遂げていたのです。
鮟鱇とレオポンチームだけを残すのみとはなりましたが、事は目論見通りに運ばれて行きました。
やはり姉は西住流の者であるらしく、私の誘いには乗ってくれたようで、自らの駆るフラッグ車だけで廃校の中庭へとやってきてくれたのです。
レオポンチームの皆さんには、勝敗が決するまでの間、邪魔を入れないようにしてもらう必要があったからです。
そしてそこまでは、既に成功を収めています。
「西住流に逃げるという道はない」
これまで機械のように口を閉ざしていた姉が、初めて声を発しました。
それは、お前に勝てるのか、という挑戦状であり、西住流の矜持を、誇りを、未来を背負う者の覚悟でした。
「受けて立ちます」
一瞬の静寂を、Ⅳ号とティーガーⅠの咆哮が破りました。
おそらく姉以外では、逸見さんがすぐに私のやらんとするところを見抜くでしょう。
ポルシェティーガーの装甲とて、それほど長くはもちません。
勝敗の決するところまでは、長くても5分が精々でした。
しばらくして響いた音は、徹甲弾ではなく榴弾のそれでした。
一瞬の間を置いて、道が破壊されていることを確認すると、全速で後退し、背後に迫るティーガーⅠに車体をぶつけることで辛くも一撃は避けることができました。
ティーガーⅠの88mmは、こちらを正面からでも瞬殺できる威力を秘めているのですから、一発でもまともに喰らうことは避けねばなりませんでした。
しかし度重なる砲撃でシュルツェンは徐々に剥がされて行き、徐々に丸裸に近づいています。
このまま一進一退を繰り返すだけでは、無様に負けるのを待つのと同義です。
かといってティーガーⅠの正面装甲をⅣ号で抜くことは不可能に近い所業ですから、ひとつ賭けに出ることを選んだのです。
装填速度を速めることはできますか、と尋ねると、優花里さんは二つ返事で、可能ですと言ってくれました。
華さんは、行進間射撃でも可能ですが、0.5秒でも停止してくだされば確実に射抜きます、と言ってくれました。
全速で正面から背後まで一気に肉薄できますか、と尋ねると、麻子さんはひとこと、できると言ってくれました。
今度は逃がさない。
そして正対するティーガーⅠへ、私達は駆け始めました。
回りこむ直前、互いに一撃を交わし、転輪も履帯をも引き千切りながら、吸い込まれるように私達はティーガーⅠの背後へと回り込み、砲撃の音が重なって轟きました。
白旗は、ティーガーⅠから上がっていたのです。
試合後、勝利の喜びに浸る皆さんを置いて、私は姉のもとに走りました。
私はどうしても、姉の言葉に関して、真意を問わねばならなかったのです。
そして、母のことも同様でした。
姉は私を振り返ると、優勝おめでとう、と一言言いました。
そして、ごめんね、と言いました。
ここでも、Pravda戦での一件のような、驚くべき事実が明らかにされたのです。
「...あの時は、とにかくみほを熊本と戦車道から引き離す必要があった。事後処理をする間、みほに色々なものの矛先が向かないようにするためだ。へんに慰めを言うよりも、突き離した方がいいと思っていたんだ...済まなかった。」
ただ少し、言葉足らずで、不器用でした。
そして私は、どうしようもなく脆かったのです。
「お母様をあまり責めないでやってほしい。赤星たちの死に、心を痛めていないわけじゃない。決して、人死を肯定などはしていないよ。お母様は、戦車道で誰かが亡くなったことを受け入れ難かったんだ。自分の道が、人を死に至らしめうるものであるとは、思いたくなかったんだろう。」
起きてしまった結果は、信じてきた己のたたかいの果てにある報いとしては、あまりに残酷です。
私はとたんに、母を憎いと思う気持ちを喪い、むしろ同情すら抱くようになっていました。
顧みると、人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳でした。
あとには、大洗が護られたという事実だけが残りました。
今でさえ、折に触れて、赤星さん達が死んだときに私も死んでいるべきだった、という思いが頭をよぎります。
けれども、後に残されるみなさんのことを考えるといかにも不憫です。
そのうえ、また決勝で相見えることをエリカさんと約束していましたから、そのまま死ぬ訳には行かずに、ずるずると今日まで生きて参りました。
私が生きたかったのは、立ち塞がるものを薙ぎ倒して往く戦車の道ではなく、己の足で歩んで行く人の道だったのです。
守りは固く、進む姿は乱れ無し。
鉄の掟。
鋼の心。
しかし、普遍的な家族愛とかいったものをもたらしてはくれません。
赤星さんたちの死は誰のせいでもないという事実が、やりきれぬ無念となって私を塗り潰して行きました。
私は今になって、人の業というものを強く思い知らされたのです。
それからもう一年が経つでしょうか。
明日は大洗女子学園と黒森峰女学園との決勝戦です。
エリカさんとの約束のあとは、もうやり残したことはありません。
伝えるべきことはすべて、大洗のみなさんに伝えました。
私が大洗で見出した戦車道が、しっかりと受け継がれていくことを願うばかりです。
私がいなくても、一切は過ぎて行きます。
私がいなくなっても、大洗女子学園の行く先に心配が無いのは幸いです。
願わくば、私を産んだ私の過去が、もう誰の身にも決して起こらぬようにしてください。
それが叶ったとき、喪い続けてきた私の一生は、本当の意味で救われることになるのです。
考えてみると、私は、悔いるばかりで、悼むことを忘れていましたから。
この手記を書き終えたみほは、その翌日の黒森峰との再戦を終え、姿を消した。
方々、手は尽くした。
私自身も各地へと出向き、ひたすらにあの子を捜した。
それでもなお、みほの行方は杳として知れなかった。
あの子は、どこかへと消えた。
どうしようもない後悔と、茫漠たる虚無だけが残された。
彼女は大洗女子学園を出てから、現在は陸自で10式の教練を受けているのであるが、どうしても聞かねばならないことを聞くために、無理を言って都合をつけてもらった。
というのは、あの手記は彼女が私に手渡したものだったからだ。
もっと早く行くべきだという思いを抱えていながら、踏ん切りをつけられずに既に2年が経っていた。
その中の応接室らしき場所に通され、私たちは顔を合わせた。
私自身は、大洗優勝の一報を聞いた時に見た写真で彼女の顔は知っていたし、向こうも私の顔くらいは知っているはずであったけれど、実際に膝を向けて話をするのはこれが初であった。
「ええ、初めまして…西住しほです」
「はい、存じ上げます」
「今日ここへ来たのは、伺いたいことがあるからなのです」
「…はい」
「はい。これは、まず西住殿が私に、このノートと写真と、小さなぬいぐるみの小包を送ってきたものです。黒森峰との、最後の試合があった数日後です。差出人は、西住殿本人に決まっているのですが、名前も住所もありませんでした。西住殿がいなくなってから、全部読んでみて、…」
「結局、私たちが何をしても、大洗がどうなろうと、西住殿は、消えてしまうつもりだったのかな、と悲しくなりました。どうして、…私たち、まるで、捨てられたみたいに、…もう、生きているかどうかも…」
彼女は、泣きはらした顔を上げた。
「じぶんで、したことは、そのように、はっきり言わなければ、かくめいも何も、おこなわれません。じぶんで、そうしても、他のおこないをしたく思って、にんげんは、こうしなければならぬ、などとおっしゃっているうちは、にんげんの底からの革命が、いつまでも、できないのです」
彼女は最後に、貴女は、貴女の闘いをたたかい続けてください、と言った。
そしてこう付け加えた。
「私たちの知っている西住殿は、とても素直で、よく気が利いて、…天使みたいないい人でした」
元スレ
西住みほ「堕ちていくほど、美しい」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1459516250/
西住みほ「堕ちていくほど、美しい」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1459516250/
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コメント一覧 (67)
-
- 2016年05月27日 04:10
- 引き込まれた。大洗の日々を余生と捉えていたのが何ともやるせない。
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- 2016年05月27日 04:31
- こういうのがかける人になりたい
-
- 2016年05月27日 04:41
- みほが一年生のときの事故なのに後輩って
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- 2016年05月27日 04:42
- 太宰治をベースに全く別の物語に仕上がっている。書いた作者の力量が凄い
-
- 2016年05月27日 04:46
- なんともいえない
-
- 2016年05月27日 04:58
- 濃厚なみほ杏ホント好き
-
- 2016年05月27日 05:07
- 悲しいなぁ。こんなガルパンSSを読んで、ぼかぁ悲しいよ。だからガルパン観てくるね。
-
- 2016年05月27日 05:28
- 多分、今現在存在するガルパンSSの中で一番の出来だな
元がハートフル・タンク・ストーリーだからこそ、本編にない現実味のある闇のエッセンスを加える事で、かえって本家の良さが際立つな
蛸壺屋ガルパンとはまた違うリアリティが良かった
-
- 2016年05月27日 05:40
- 文の所々に人間失格を引用されてるのですね。最後の秋山殿の言葉なんて特に。懐かしい...
-
- 2016年05月27日 05:51
- なるほど賞賛されるだけあって面白かった
しかし前提が改変されているから何とも言えない消化不良感が否めなかった
-
- 2016年05月27日 06:13
- 途中で闇のみほ杏最高や!と思って歓喜してたのに、そこからほぼ何もなくて悲しい。
でも面白かった。
-
- 2016年05月27日 06:48
- 始まりと終わりが人間失格そのものだから人間失格のオマージュだと思ったけど他にも何かあるのか?
コテハンの津島は太宰治の本名津島修二のことだと思う多分
しかし、面白いね
-
- 2016年05月27日 07:36
- 救いは!救いは無いのですか!
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- 2016年05月27日 07:55
- 人里離れた山奥で尼僧見習いとか修道士見習いになるとかあったりするんでせうか
-
- 2016年05月27日 08:04
- 序盤のトラウマの描き方が上手くて引き込まれるだけに中盤以降の何もなさが残念でならない
ヒトを数しといてフツーに戦車道続けてるノンナといい、人死にを雑に扱いすぎ
-
- 2016年05月27日 08:05
- もっと堕として。毒が足りない
-
- 2016年05月27日 08:06
- 試合展開が本編とほぼ同じなら、省略して合間の心理描写を徹底してほしかったかも
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- 2016年05月27日 08:08
- 「英国人は恋と戦争では手段を選ばない」
これは恋でも戦争でもない、そして貴方達は英国人ですらないと叫びたくなるような気持ちでした。
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- 2016年05月27日 08:49
- ※19
安斎千代美さんこと名誉イタリア人ドゥーチェの悪口はやめてさしあげろ
-
- 2016年05月27日 08:59
- 改変と太宰的な独白は良いんだが
堕ちて、堕ちたことを実感したと思ったら堕ちるのを止めてしまって
なんか中盤から〆に繋げるみほの心理がしっくりこない
-
- 2016年05月27日 10:12
- 久しくガルパンで名作と呼べる物に出会えた。
-
- 2016年05月27日 10:13
- みほ杏は光も闇もいいものだ
ラストでしょんぼりなのです
-
- 2016年05月27日 10:33
- 怪作いや傑作か
中盤以降失速した気がしたが
引き込むには充分
ホントにいいSSに出会えた
-
- 2016年05月27日 10:56
- 赤星達が死んでる。みほが薬をやってる(た)。会長と関係を持った点以外は基本本編通りじゃん。会長との関係にしても一夜の誤りみたいで本筋に絡んで来ないし。
オリジナリティがない=駄作、というわけではないが、コレを見て現存するSSの頂点ないしトップクラスとはとてもじゃないが言えんわ。
-
- 2016年05月27日 11:07
- ハッピーエンドじゃないと認めないお子ちゃまはアニメだけ見てればいいのに
-
- 2016年05月27日 11:35
- 太宰読んだことないからぶっちゃけ蛸壺的な発想の暗い二次創作としか感じられなかった
-
- 2016年05月27日 11:44
- 面白かったけど、話の支点を一つに絞って欲しかった。
みほ杏の闇が出てきた時は個人的にガッツポーズしたんだが、締めにはあまり関係してこなくて残念。
二人で堕ちていくのもええんやで。
-
- 2016年05月27日 11:55
- やっぱ文体は太宰だよなあ
決勝戦で杏かみほが死ぬのかと思ったがそんなことはなかった
-
- 2016年05月27日 12:12
- 悪くはなかったけど中途半端やね
-
- 2016年05月27日 13:28
- みほ杏の部分だけこの文体で詳細に書いてほしいです
-
- 2016年05月27日 13:56
- 作者はセンスの塊ですね(確信
-
- 2016年05月27日 15:23
- ただガルパンと太宰治の作品を勝手に合わせただけなものを持ち上げるのが滑稽すぎる。
面白いのはガルパンであり太宰治作品でありssなんぞでは決してないのに。
-
- 2016年05月27日 15:30
- みほの学年があやふやになってるところは気になった
-
- 2016年05月27日 17:26
- ※26
というかこれの場合、安易にバッドエンドと言われても仕方ないまであるぞ
序盤のしほ視点で期待を高めてるだけに
-
- 2016年05月27日 17:35
- ふじ・きりおさんの「あれから」と言う作品を思い出しました。
ピクシブにアップされてるガルパンの創作作品なのですが、こちらでも西住殿が精神を病んで・・・
-
- 2016年05月27日 18:13
- 赤星以下搭乗員達は最低でも同学年以上じゃなかろうか
1年生時点での事故だし
あとやっぱこんだけアニメ本編と変わらない展開というか描写が多いと所々ざっくりカットした方がよかったのでは
-
- 2016年05月27日 19:55
- こういう薄暗いのも面白いなぁ
-
- 2016年05月27日 20:50
- もっとしほやメルバーの後日談もあったらなお良かったかも。発想はすごく面白いと思う。
-
- 2016年05月27日 20:59
- 死んだの?赤星さん死んだの?
-
- 2016年05月27日 23:53
- 赤星の矛盾としほの前半の独白からの結末の「…えっ?」感がなぁ…太宰読んだ事なくて純粋に普通のオリssとして見てただけに残念だった
ただトラウマの描写は上手いなと思った
-
- 2016年05月28日 00:15
- ちょっと手間をかけてこの評価だから、そりゃ蛸壺屋が調子乗るのも当たり前ですわ
-
- 2016年05月28日 03:41
- 太宰風の文体を楽しむ話と思えばいいのではと思ったけどガルパンとしてみれば先に書かれている通り蛸壺屋と大した違いはないな
-
- 2016年05月28日 13:47
- みほの手記が原作をただなぞる部分が半分以上あるのは惜しいと思う
話の大筋がある二次創作でよくあることだけど原作と相違点が特に無い箇所をだらだらと書くのは良くない
-
- 2016年05月28日 17:47
- 絶賛してるのはお子様かな?
題材はいいし太宰風の文も面白い。ただいかんせんブツ切り感が否めない。会長との関係もそうだし途中立ち直ってるのに最後失踪するし。
会長と共に闇堕ちエンドでまとめるべきだったかなーと思うわ。
-
- 2016年05月28日 23:43
- ※45
クッソつまんなそうで草
-
- 2016年05月29日 14:29
- 前半の期待感に対して最後の尻つぼみ感は残念
-
- 2016年05月30日 04:47
- いいホモSSだった
みほはどこに消えたんだろう
参考にしたいので教えてくれますか
-
- 2016年06月02日 03:30
- 素晴らしい、ただそれだけです
-
- 2016年06月02日 06:55
- 特徴的な文体で評価されてるようだが、内容は特に目新しくないから、へぇーという感じ
だったら杏と終盤まで、互いに勝利の陰で「背徳的」関係を続け、優勝して目的が無くなったから二人で消えた…という結末が良かったなぁ
-
- 2016年06月02日 07:19
- 裏に想いがあったにせよ、入院の時点で屍状態だった我が子を追い詰め、人道を否定する武芸はどうなの?
更に云うなら、競技中に複数の死者を出し、果てには娘が失踪したのに、西住流は「由緒正しい」戦車道家元として存続出来るのかな?
文体ばかりに拘り、無理矢理ダークな内容に当てはめたように見えました
-
- 2016年06月03日 01:19
- こういう雰囲気の好き
-
- 2016年06月04日 18:29
- 面白かった
だが辛い
-
- 2016年06月05日 00:17
- 内容はどうあれ、文体がどうあれ、この文章に引き込まれたのは事実。
ガルパンも太宰も知らんが、読めるものには違いない。
面白いか否かなら、面白かった。
-
- 2016年06月08日 07:47
- 最初の引き込まれる感じが中盤にまったく感じなかった
ラストは好きな感じだったけど中盤の展開もう少し重く締め付けられる内容でよかったんじゃないかな
クスリ使ってたんだし
-
- 2016年06月09日 23:53
- 会長絡めたなら心中エンドでよかった気もする
-
- 2016年07月27日 01:45
- タイトルは映画「人間失格」のキャッチコピーなんですね。
太宰治もガルパンも好きだから、出会えて本当に良かったです。
素晴らしい作品でした。
-
- 2016年09月09日 02:47
- 前半が面白かっただけに後半の息切れ感だけが残念でした。
プラウダ戦のノンナ達と話したあとに何かぶち込めた気がしないでもないです
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- 2016年10月15日 23:13
- これ読んだ後、一話と七話を視直したら、感慨が半端無かった。
SSをよんで、ここまでの読後感を味わったのは、初めてだ。
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- 2016年11月02日 11:36
- 読んでて胸が辛かった。それは物語が真に迫っているからなんやけど、面白いのに読み進めるのが辛い。自分のなかで記憶に強く残るSSとなるやろなぁ
フェイトの桜ルートや、メタルギア4のように主人公がどんどんボロボロになっていく様は本当引き込まれる。
あ、百合豚的にも濃厚な闇みほ杏は最っ高にビンビンきました(大声)
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- 2017年01月16日 10:29
- こういう暗いのも好きなので面白かったです。
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- 2017年01月20日 20:19
- プラウダの当たりでみほが二人を赦すって展開じゃなくてノンナの懺悔に対して自身が会長に持った下卑た快感をもう一度感じてノンナも堕とそうとしたところを秋山殿あたりに止められて自身がもうすでに手遅れになってしまったことに気づき絶望するみたいな展開も見てみたいなと思った
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- 2017年03月27日 02:03
- 文体のコピーすげーな
みほ杏だけ別に買いて欲しい
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- 2017年04月28日 23:42
- もう少し後半を突き詰めて欲しかった
勿体無い所は多々あるが、面白かったです
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- 2017年10月04日 13:00
- 米15
ワイは手紙投函後に富士樹海行きに1票
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- 2017年12月12日 18:58
- ※16
どこをどう読んだらフツーに続けてるように読めるんじゃい
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- 2018年06月11日 04:25
- 何度見ても良いな
大平洋戦争の時の軍人さんの遺書のような文体が味出してるわ
元ネタが太宰らしいけど
コテハンで人間失格かと思ったんだがちょっとちがうっぽいし
やっぱり赤星さんがNO.1ってことですね!