渋谷凛「アイドルの日常」 池袋晶葉「ひとやすみも大切だな」
2作目 渋谷凛「アイドルになった」 水本ゆかり「一緒にがんばりましょう」
3作目 渋谷凛「アイドルデビュー」 池袋晶葉「歌を歌うぞ!」
4作目 渋谷凛「アイドル、邁進中」 桐生つかさ「トップしか見てないんで」
5作目 渋谷凛「アイドルに必要なもの」 木場真奈美「強靭な肉体と鋼の精神だな」
6作目 渋谷凛「アイドル、上昇中?」 小関麗奈「テーマは悪!」
7作目 渋谷凛「アイドルの可能性」 水本ゆかり「新しい自分を見つけましょう」
の、続きです
過去作を先に読んでいただけると、より話がわかりやすいかと思われます
ある日の事務所 朝
凛「おはようございます」
晶葉「凛か。おはよう」
凛「おはよう、晶葉。ふう……」
晶葉「なんだかだるそうだな。夏休みだから、最近学校はないだろう?」
凛「朝から暑いし……来るだけで疲れちゃった」
凛「喉渇いたから、何か飲み物……ゆかりー」
晶葉「ゆかりは今日は休みだ」
凛「あ、そうだっけ。じゃあ自分で持ってこないと……」
晶葉「……最初は申し訳なさそうにしていたのに、今ではすっかり飲み物を淹れてもらうことに抵抗がなくなっているみたいだな」
凛「あ……うん、そうかも。慣れって怖いね、我ながら」
晶葉「私も人のことは言えないが、感謝の気持ちを忘れてはいけないな」
凛「……年下に説教されてしまった」
麗奈「あっつー!!」
麗奈「ゆっかりー! お茶ー! あとお菓子ー! 10秒以内に持ってきなさい!」
凛「………」
晶葉「………」
麗奈「あ、あれ? なによ、ふたりとも」
凛「感謝の気持ちを忘れるとこうなるんだ」
晶葉「浅ましいというやつだな」
麗奈「な、なんだかバカにされてるっ!? 来て早々このアタシをコケにするなんていい度胸ね!」
麗奈「勝負よ、勝負っ!」
凛「勝負? いつもつかさとやっているやつ?」
麗奈「そう! 今日はこれよ!」
晶葉「これは……なんだ、レイナえもん」
麗奈「桃太郎電鉄~♪」チャラララッチャラー
麗奈「って、変な調子で言わせるな! どっちかっていうとドラえもんはアンタでしょーが」
晶葉「ふむ。面と向かって褒められるのはいい気分だ」
麗奈「褒めてないわよ!」
凛「なんか漫才みたいになってる」
麗奈「99年?」
凛「レッスンまで『少し』なんだけど」
麗奈「はいはい。わかってるわよ」
晶葉「これはWiiのソフトか。本体は」
麗奈「この部屋にあったはずよ。前にWiiのゲームで遊んだし」
麗奈「確か、こっちの棚に……ええっと」ガサゴソ
麗奈「……あれ? 前遊んだときはこの辺に置いてなかったっけ?」
凛「見つからないの?」
麗奈「見つかんない。アンタたち、知らない? 誰かがどっかに片づけたとか」
晶葉「普段、部屋の整理をしているのは……ゆかりだな」
凛「今日はいないね」
麗奈「はあ? ゆかり来ないの? じゃあ電話でもして」
晶葉「今日は家族と一緒にのんびり過ごすと言っていたぞ。ゲームごときで邪魔するのはどうなんだ?」
麗奈「む……しょうがないわね。桃鉄は諦めるわ」
凛「この辺の空気を読むところ、全然悪党っぽくないかも……」
麗奈「甘いわね! 悪はむしろ空気を読むのよ!」
麗奈「ヒーローの名乗りは基本的に待ってあげてるでしょ」
凛「なるほど」
晶葉「人生ゲームか。そういえば、この前みんなで遊んだな」
麗奈「あの時はつかさに勝ち逃げされたから、今日こそは!」
凛「で、人生ゲームはどこに置いてあるの」
麗奈「それは――」キョロキョロ
麗奈「………」
麗奈「ゆ、ゆかりが知ってるんじゃない?」
晶葉「………」ジトーー
凛「ジュース飲もうかな。あとお菓子も」スタスタ
麗奈「ちょっとぉ!」ウガーッ
晶葉「む? 昨日使っていたドライバーはどこに置いたっけ」
麗奈「アンタ、ゆかりに片づけてもらってなかった?」
晶葉「ああ、そういえばそうだった。どこに片づけてもらったんだったか……」
晶葉「あと、余ったネジは」
凛「ゆかり」
晶葉「……その他必要な道具とパーツ」
麗奈「ゆか」
晶葉「………」
麗奈「ずーん」
晶葉「ずーん……」
真奈美「……どうしたんだ? 朝から二人とも元気がないようだが」
凛「ちょっと自己嫌悪に陥っているみたい。まあ、私も人のことは言えないんだけど」
凛「アイスコーヒー淹れるのに相当手間かけちゃったし」
真奈美「?」
がらっ
ゆかり「おはようございます」
晶葉「おはよう」ススッ
麗奈「おはようっ!」シュバッ
ゆかり「あ……お、おはようございます。晶葉さんも麗奈さんも、いつもより早いですね」
晶葉「ああ。ちょっと部屋の掃除をしていたからな」
ゆかり「お掃除ですか? 確かに、床がぴかぴかになっているようですけど」
麗奈「さ、ゆかり! 肩でも揉んであげるからそこ座って!」
ゆかり「え?」
麗奈「ほら、早くしなさいよ」
ゆかり「え、えっと。また、いつものいたずらですか?」
麗奈「今回は違うわ! たまには将来の部下をねぎらってあげないとね!」ニコニコ
晶葉「私は飲み物を持ってくるぞ!」
ゆかり「は、はあ……?」
つかさ「……なんだあれ」
真奈美「今まで甘えすぎていたぶん、ゆかりにお返しだそうだ」
つかさ「へえ。心がけとしては悪くないじゃん」
晶葉「お菓子も食べるか? 何個か種類が残ってるから、好きなのを言ってくれ」キラーン
ゆかり「あ、はい」
つかさ「極端すぎて気持ち悪いけど」
真奈美「麗奈も晶葉も、そういうところは純粋で加減を知らないからな」
真奈美「だが、いいんじゃないか? ほら」
つかさ「ん?」
麗奈「どう? レイナサマのマッサージは」
ゆかり「はい。とても気持ちがいいですよ」
麗奈「ふふん、当然ねっ」
晶葉「すぐ調子に乗るな、麗奈は」
麗奈「なによーなんか文句あるわけ?」
晶葉「べつに」フフ
ゆかり「くすくす」
真奈美「三人とも、楽しそうだ」
つかさ「……かねぇ」
真奈美「君も、私をねぎらってくれていいんだぞ? いつもトレーニングに付き合ってやっているんだから」
つかさ「走るぞーって言って付き合わされてるのはこっちなんですけど」
真奈美「はは、冗談だ。真奈美流ジョークだ」
つかさ「……真奈美さんの笑いのツボ、どっかずれてんだよなあ」
P「今度の仕事は海での撮影だ。うちのメンバー6人、全員で行くことになる」
つかさ「水着?」
P「もちろん水着もある」
麗奈「ビーチ貸し切り?」
P「全体は無理だけど、一部分はね」
P「普通にやれば自由時間ができるはずだから、その間は遊べる予定」
麗奈「そうこなくちゃね! 褒めてあげるわ、P!」ワーイ
凛「水着か……ちょっと、恥ずかしいな」
真奈美「いつもの撮影よりも露出が多くなるだろうからな。だが凛のスタイルなら心配することもないだろう」
凛「そうかな……?」
ゆかり「私も水着でのお仕事は初めてなので、少し緊張しますね。お互いがんばりましょう」
凛「準備?」
麗奈「準備って、ダイエットとか?」
晶葉「ダイエットなら、先日完成した『食事制限くんインフィニティ』を使えば」
つかさ「違う。撮影まで日もないし、今から痩せようなんて無理無理」
晶葉「しかし、これを使えば理論上は3日で10キロまでは落とせるぞ」
凛「明らかに物理法則無視してそうだけど大丈夫なの?」
晶葉「心配無用だ。使用者の命に危険は生じないはずだから」
凛「そういう但し書きがついてる代物は例外なくおっかないモノだと思うんだけど」
晶葉「むう。凛は手厳しいな」
つかさ「うちのツッコミ担当だからな。こいつがボケだしたら終わりだ」
凛「勝手に変な役割押し付けないでよ……」
つかさ「水着姿を撮られることはわかってるんだから、イケてる姿を作れるようにイメージ膨らませとけってこと」
麗奈「なんだ。そのくらいならアタシもやってるわよ」
つかさ「まあそうだろうけど、一度口に出して宣言しとくってのは結構ポイントなわけ」
ゆかり「あ……わかるような気がします。言葉にするということは、しっかりとそれを意識することにつながりますから」
ゆかり「私も、ライブや演奏会の本番前には、教わったことを小さな声でつぶやくんです。もう一度、最後の復習って」
真奈美「個人差はあるが、口にしたり紙に書きだしたりする行為は確かに効果があると言われているな」
P「紙に書きだす、か……」
凛「どうかした? プロデューサー」
P「いや……なんでもない。ちょっとな」
凛「?」
凛「………」ムニムニ
つかさ「おい、凛」
凛「………」ムニムニ
つかさ「おいって。スルーか?」
凛「……あ、ごめん。なに?」
つかさ「次のライブ、アタシらはユニットとして参加だろ。そのことでちょっと話があったんだけど……」
凛「けど?」
つかさ「今は、お前が夢中で自分のふくらはぎをムニムニしていた事実のほうが気になる」
凛「あ、うん。これ?」
つかさ「それ」
凛「えっと……最近、脚に肉がついてきたような気がして」
つかさ「デブった?」
凛「そういう肉じゃなくて」
つかさ「ストレスでやけ食いしたくなる気持ちはわかるけど、アイドルは食事の量と質にも気を遣わなきゃなー」
凛「だから違うって」
つかさ「つーことで、ストレス発散したいなら野菜をぬかに漬けろ。心が清らかになる」
凛「隙あらばぬか漬けを薦めてくるのやめない?」
つかさ「ジョークだ、ジョーク。桐生流ジョーク」
凛「……語呂悪いね」フフ
つかさ「ははっ、言えてるな。これはバズらないわ」
凛「がっしりってまではいかないけど、ちょっと固くなったかも」
つかさ「ふーん」
凛「やっぱり、レッスンとかで足腰が鍛えられたのかな」
つかさ「それプラス、真奈美さんによく走らされてるからな。あれもデカいだろ」
凛「かな」
凛「ということは、私と同じくらい走ってるつかさも」
つかさ「お互い、あんまり肉が付きすぎないように気をつけないとな」
つかさ「どれどれ。ちょっと脚見ていいか?」
凛「うん、いいけど」スッ
つかさ「……へえ。確かに引き締まってそうだな、これ」サワッ
凛「ひゃっ!?」
凛「ちょ、ちょっと。いきなり触らないでよ」
つかさ「はは、悪い悪い」
凛「特に意識してることはないけど」
つかさ「マジか。それでこのクオリティかよ……いや、割とやべえぞ」サワサワ
凛「つ、つかさ? くすぐったい……」
ゆかり「ただいま戻りました」
晶葉「ジュースを買ってきたぞ」
麗奈「アタシもトクベツに手伝ってあげたんだから感謝しなさい! この辺の変な味がしそうなジュースは特にじっくり味わって……」
麗奈「……なにしてんの?」
つかさ「お前らもこっち来て触ってみろ。凛の脚、中毒性あるぞ」
凛「ちょっ」
晶葉「うん? どれどれ……おお、すべすべだ。しかも割合がっしりしている」
つかさ「だろ」ドヤ
凛「だろ、じゃなくてさ。そろそろやめ」
麗奈「こしょこしょこしょ!」
凛「ぶふっ!」
麗奈「アーッハッハ! このレイナサマの前に無防備に脚をさらしたことを後悔するがいいわ!」
凛「ふふっ……麗奈、アンタね……!」
ゆかり「………」
ゆかり「こしょこしょこしょー」
凛「ひゃっ!? ゆ、ゆかりまでっ!?」
ゆかり「あ、えっと……ごめんなさい、つい」ウフフ
つかさ「ゆかりすら狂わせるとは……やっぱ中毒性あるわ、うん」
凛「絶対そういう問題じゃないから!」
P「ちょっと混ざりたいと思っていませんか」
真奈美「思っている」ドーン
P「男らしい素直な返事だ」
ゆかり「はい、どうぞ。このあいだ、親戚の方からいただいた和菓子です」
卯月「ありがとうございますっ♪」
卯月「わあ、甘くておいしい」モグモグ
ゆかり「お口にあったようでよかったです」
卯月「なんだか申し訳ないですね。この部屋にお邪魔するたび、いろいろいただいちゃって……」
卯月「今度は私も何か持ってきますね。えへへ」
ゆかり「ふふ、楽しみにしています」ニコニコ
凛「……ふう」
凛「この二人のそばにいるだけで、レッスンで疲れた心が洗われる気がする……」ホワホワ
ゆかり「それで、凛さん。昨日のドラマのお話の続きですけど……」
凛「あ、うん。私が感想言ってる途中だったっけ」ホワホワ
麗奈「ククク……凛、そんなだらしない顔してられるのも今のうちよ!」
晶葉「またなにかよからぬことを考えている顔だな」
晶葉「ああ……そういえば以前、あの二人のそばに放り込まれて骨抜きにされていたな」
麗奈「晶葉。アンタとは付き合いもそこそこあるし、知ってると思うけど」
晶葉「なにを?」
麗奈「アタシは、受けたくちゅじょくは百倍返しにしてやるのよっ!」
晶葉「噛まなかったか?」
麗奈「噛んでない!」
晶葉「しかし、くちゅじょくと聞こえたような」
麗奈「噛んでないったら噛んでない!」
麗奈「でもせっかくだからもう一回言ったげる! 受けた屈辱は百倍返しにしてやるのよっ!」
晶葉「やっぱり気になって言い直したな」
麗奈「いちいち細かいことを気にするんじゃないわよっ」
晶葉「科学者は細かいことを気にするのが仕事だ」メガネクイッ
麗奈「ちょっとかっこいい! むかつく!」
晶葉「手だてはあるのか?」
麗奈「当然っ」
麗奈「まず何食わぬ顔をして近づくでしょ? そうして油断させたところで、背中に隠していたレイナサマバズーカをゼロ距離でお見舞いしてやるのよ!」
晶葉「おお、それは私が威力据え置きでサイズを縮小してやったものじゃないか」
麗奈「この大きさなら隠すのも簡単だわ。ふっふっふ」
麗奈「さあ、あの幸せ空間をぶっ壊してやるわよー♪」フンス!
晶葉「輝かしい笑顔だが、内容はひどい」
晶葉「……というか、待て。前回の結果からして、まずあそこに近寄る段階で――」
ゆかり「あ、麗奈さん。お菓子食べますか?」ホワホワ
卯月「こんにちはっ」ホワホワ
麗奈「ほわほわ~」
晶葉「もうダメだな、あれは……麗奈は特別あの空気に影響を受けやすいらしい」
晶葉「しかし、あの空間の力は恐るべきものだ……本格的に研究して、『アンチほわほわフィールド発生メカ』でも作ってみるか」
ゆかり「キャンディーもありますけど、こっちにしますか?」
麗奈「食べるー」ホワーン
卯月「ふふっ、麗奈ちゃんは素直でかわいい子ですね」
凛「いつもはこうじゃないんだけどね」
海での撮影当日
凛「……ちょっと、プロデューサー」
P「どうした?」
凛「この水着……着てみたけど、やっぱり黒って大人っぽすぎないかな」
凛「下がショートパンツなのはいいんだけどさ」
P「いや、十分着こなせてるよ。凛みたいなクール美人系には、そういう色がよく似合う」
凛「そうかな? プロデューサーがそう言うのなら、信じてみるけど」
P「自信をもって、堂々とカメラに映れば大丈夫だ」
凛「……わかった。やってみる」
P「自分からセクシーポーズ提案してもいいんだぞ?」
凛「それはやらない」
P「ははっ、そうか」
凛「ちょっと散歩してくるね」
P「ああ」
凛「セクシーポーズ、か……」
凛「………」ソワソワ
凛「こう……前かがみになって、バストを強調するような感じで」ズイ
ゆかり「凛さーん。なにをしているんですか?」
凛「うひゅっ!?」
ゆかり「うひゅ……?」
凛「ゆ、ゆかり……なんでもないから。なんでも」
ゆかり「はあ。そうですか」
凛「あ、うん。ありがとう」
凛「ゆかりも、きれいだよ。似合ってる」
ゆかり「ふふ、うれしいです。少しほっとしました」
凛(清楚なお嬢様って感じだし、やっぱりパレオがぴったりだよね。ゆかりの場合)
ゆかり「普段着るものよりも、少し布の面積が小さめで……ちょっとだけ、恥ずかしかったんです」
凛「………」ジーー
凛(私も、そんなに小さいほうじゃないと思ってるんだけど……バストは、負けてるっぽい)
ゆかり「凛さん?」
凛「ううん。なんでもない」
凛「他は……」キョロキョロ
麗奈「くらえっ! レイナサマ印のスペシャル水鉄砲!」キャイキャイ
晶葉「つめたっ! やったな、この~っ!」キャイキャイ
凛「……うん。さすがにあのへんには勝ってる……よね」
つかさ「身長補正かけると微妙だったりして」にゅっ
凛「いきなり出てきて独り言に割り込んでこないでよ」
つかさ「凛の独り言は意外とデカいんだよ。気づいてないかもしれないけど」
凛「え……そうなの?」
つかさ「わりと」
凛「気をつけよう……」
つかさ「スレンダーはスレンダーで立派な武器だ。誇って磨いたほうが、嘆くよりもよっぽどコスパ良好」
ゆかり「つかささんは前向きですね」
つかさ「ま、アタシは普通に胸あるけどな」
凛「最後の一言で台無しだけど……でも、あんまり気にしてもしょうがないか」
凛「もうすぐ撮影だし、ないものを嘆いたって――」
真奈美「やあ、待たせたな」ボイン
凛「………」
ゆかり「わあ。大きい……」
つかさ「いや、クールになれ。身長補正かければそこまでのサイズじゃ……」
真奈美「ふふ……さて、水着を着るのは久しぶりだ。やるからには、カメラマンを本気で魅了しなければな」
P「気合い入ってますね」
真奈美「P。君のことも、私以外目に入らないようにしてしまうかもしれないぞ?」
P「はは……気をつけます」
真奈美「ははっ。ああ、せいぜい気をつけておいてくれ」
つかさ「ダメだ。立ち居振る舞いでバストが実質プラス5cmくらいされてるわ」
ゆかり「私も、あのように色気を振りまけるようになれるでしょうか……」
凛「ゆかりは、まだそのままでいてほしい」
カメラマン「凛ちゃんお疲れー!」
スタッフ「よかったよー!」
凛「ありがとうございます」ペコリ
P「お疲れさま。何か飲む?」
凛「ん……麦茶」
P「渋いな。せっかくの海なのに」
凛「ないの?」
P「いや、あるけど」ホイ
凛「ん。ありがと」
凛「なんとか、だけどね。他のみんなは、もう撮影終わって遊んでるし」
ゆかり「ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いしますね」
真奈美「それはかまわないが……私が本気を出したら、セクシーポーズだけでは済まないぞ?」ニヤリ
ゆかり「さ、さらにその上が……不安ですが、ばっちこいですっ」
真奈美「その言葉が聞きたかった!」
麗奈「ビーチバレー対決!」
晶葉「ゆくぞ麗奈! やるからには勝とうじゃないか」
つかさ「……おい。そっちは人間ふたりなのに、こっちはアタシひとりと晶葉ロボなんか」
晶葉「心配無用だ。食事制限くんインフィニティはスポーツもそれなりにできる」
食事制限くんインフィニティ「ビビビ、マワリ、スベテテキ。ハイジョ、ハイジョ」
つかさ「スポーツはできても意志疎通が明らかにできないクチだろ、こいつ」
麗奈「足引っ張るんじゃないわよ、晶葉!」
晶葉「たまには、自分の作った発明に自分の力で立ち向かう経験も必要だな!」
つかさ「……ま、遊びはある程度気楽にやるのがベターか。本気は出すけど」
つかさ「凛が来るまではお前がパートナーだな。よろしく」
食事制限くんインフィニティ「我が名はインフィニティ。無限のメモリーなり」
つかさ「……晶葉ロボは毎回AI周りが弱くね?」
P「凛も自由時間だから、あっちに混ざっていいんだぞ。やることはやったんだから」
P「自信がないって言っていたセクシーポーズも、最後はちゃんとこなしていたし」
凛「……うん」
凛「負けたく、なかったから」
P「負けたくなかった?」
凛「みんなちゃんとカメラマンの言う通りにできてるのに、私だけ遅れるのは嫌だったから」
凛「だから、なにくそって感じで……うん、やっぱり負けたくなかったんだ。私」
凛「アイドルになって気づいたことなんだけど、私って結構、負けず嫌いだったみたい」
P「……そうか」
凛「……どうして笑ってるの」
P「いや。最初に思った以上に、凛がアイドル向きだと感じているからだよ」
P「俺の担当している子は、みんな気が強いからな。うまく磨きあえると思う」
凛「みんな? ゆかりも?」
P「強いだろう」
凛「……強いね。ふふっ」
P「頑張れば、できるさ」
凛「頑張るって、どのくらい?」
P「………このくらい?」
凛「両手を広げられても、どのくらいかよくわからない」
P「えっと、それじゃあ……」
P「うーん」
凛「……ふふ、冗談だよ。どのくらい頑張ればいいかなんて、今の段階でわかるわけないもん」
凛「私は、行けるところまで行きたいって思ってるから。だから、頑張れるだけ頑張るつもり」
凛「……ちゃんと、見ててよ。私をスカウトしたのはプロデューサーなんだから」
P「凛……」
P「もちろんだ。できるだけ目を離さずに見ている」
凛「………」
凛「ふーん。『できるだけ』なんだ」ジトー
P「あ、いや。担当が6人もいると、さすがに片時も目を離さないっていうのは難しくてだな」
凛「……まあ、わかってるけど。プロデューサーは正直だよね」
P「ごめん」
凛「謝るところじゃないよ」
凛「私も、プロデューサーを見習って、正直に頑張るから」ニコ
ある日の居酒屋
真奈美「そうか。凛も頑張っているんだな」
P「最近は、これまで以上に生き生きしているように見えますから」
真奈美「エンジンのかかりは遅めだが、一度かかるとすごいタイプなのかもしれない」
P「ですね」
P「つかさも、最近は凛に刺激を受けているみたいですし」
真奈美「ユニットの相方だから、思うところもあるんだろう」
P「ゆかりは……相変わらず、好奇心旺盛ですね」
真奈美「彼女の真っすぐなチャレンジ精神は、つくづく強さだと感じるよ」
P「晶葉と麗奈は、最近一緒にいることが多いですね。何か相談しているみたいですけど」
真奈美「近々、面白いものが見られるかもしれないな」ハハハ
真奈美「………」ジッ
P「なんです?」
真奈美「いや。私の話題はないのかと思ってね」
P「え、真奈美さんですか?」
P「真奈美さんは、前からいつも通りしっかりやってくれていますし、頼りになるから……取り立てて言うべきことは」
真奈美「………」
P「真奈美さん?」
真奈美「P」
P「は、はい」
P「………」
真奈美「………」
P「こうして定期的に二人で飲んでいるのは、かまっているうちに入らないんでしょうか」
真奈美「……それもそうだな」
真奈美「いや、むしろ私が一番贅沢をしているじゃないか。君とふたりで盃を交わすことは、他のみんなにはできないことだから」
真奈美「独占は、大人の特権だな。はははっ」ニコニコ
P「結構酔ってます?」
真奈美「かも、しれないな」
P「……俺のほうも、特権と言えば特権なのかもしれませんね」
真奈美「ちなみにもうすぐ私の誕生日だが、期待してかまわないか?」
P「またえらく唐突ですね……一応用意はしてますけど、あんまりハードルあげないようにしてくださいね」
真奈美「わかっているさ。ほどほどに期待しておこう」
真奈美「さて、P。グラスが空のようだから入れてやろう」
P「いや、俺は今日はもう」
真奈美「遠慮するな! ははは!」
P「……じゃあ、もう一杯だけ」
真奈美「おはよう……ん?」
晶葉「おはよう、真奈美。どうかしたのか」
真奈美「ゆかり達はどうして制服なんだ? まだ夏休みのはずだが」
晶葉「ああ。あれは制服の交換会だ」
真奈美「交換会?」
ゆかり「やっぱり、つかささんの制服を私が着ると、少し丈が長いですね」
凛「でも、似合ってると思う。グレーだから、いつもよりクールな感じ」
つかさ「これが凛の学校の制服か」
つかさ「まあ、悪くないかな」キリッ
凛「なんかむかつくんだけど」
ゆかり「凛さんも、私の制服を着るとイメージが変わりますね。丈が短くなっちゃいますけど」
凛「これだと、ちょっと動くとすぐにへそが見えちゃうかも。でも、他の学校の制服っていうのは新鮮かな」
真奈美「私も、サイズさえあえば、あそこに混ざってもまだまだイケると思うんだが」
晶葉「真奈美のような学生がいたら、間違いなく注目の的だぞ」
真奈美「照れるな」
晶葉「今のは別に褒めているわけではないぞ」
真奈美「わかっているさ。ここはボケるべきところだと思ったのでね」フフッ
晶葉(笑いのポイントが微妙にズレている……)
真奈美「まあなんにせよ、学生のうちにやりたいことはやっておくべきだな」
真奈美「やりたいことを決めて、それを行動に移す。若いうちにやっておかないと、後で後悔することになる」
晶葉「大人としてのアドバイス?」
真奈美「そんなところだ」
P「そういうわけで、今からみんなで今後の抱負を書いてみよう」にゅっ
晶葉「抱負?」
P「言葉にして、それを目に見える形で残すのも大事だと思ってさ」
P「この前のつかさと真奈美さんの言葉で、ぴんと来たんだ」
真奈美「抱負か……いいじゃないか。付き合おう」
晶葉「私は『科学と私で頂点を獲る』だな」
真奈美「ふむ……『克己』としておこうか」
つかさ「『最強』」
麗奈「『最強』」
つかさ「おい、被ってるぞ」
麗奈「アンタ変えなさいよ」
つかさ「なんでアタシが。最強目指すだけなら二人一緒でもいいだろ」
麗奈「……確かに」
麗奈「でも、最終的に最強の悪になるのはこのレイナサマなんだから!」ビシッ
つかさ「それなりに期待しとくよ」フフッ
P「凛は書けたか?」
凛「うん。一応」
P「どれどれ……へえ、いいじゃないか」
凛「まずは、これまでの自分に。それから先は、先輩たちに」
P「大丈夫大丈夫。目標は大きいくらいがちょうどいい」
P「この抱負、守れるように頑張ろう」
凛「……そうだね」
凛「ちゃんと『勝つ』。できるように、やってみせるから」
おしまい
久しぶりだったわりに話としては小休止で進んでなくてごめんなさい。いつもたいして進んでないですが
過去作もよければどうぞ
的場梨沙「パパにプロポーズする」 二宮飛鳥「また突飛な話だね」
渋谷凛「泉を極限まで甘やかす?」
モバP「なっちゃんと春休み」
元スレ
渋谷凛「アイドルの日常」 池袋晶葉「ひとやすみも大切だな」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1463670518/
渋谷凛「アイドルの日常」 池袋晶葉「ひとやすみも大切だな」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1463670518/
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コメント一覧 (12)
-
- 2016年05月23日 06:18
- 今回も良かった
-
- 2016年05月23日 07:55
- >過去作を先に読んでいただけると、より話がわか りやすいかと思われます
なぜに「思われます」なのだ?
読む必要があるのか、作者ですら判断出来ないの?
-
- 2016年05月23日 08:11
-
※2
読む読まないは読者の自由だし、前作を読んでしっかり理解して読みたい奴とただ新しいモバマスSSが上がったから読む奴とかあるからな。
後、語気強くして前作読まなきゃ分かんねーぞって言うとイチャモンつける小さい奴とかいる。
現にお前みたく思われますと書いただけで指摘だぞ、どないせっちゅーねん可哀想やわ。
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- 2016年05月23日 08:14
- 神龍につかさのヒモになりたいって願いかけたいんだが、大昔買った龍玉のスーパーボール5つしかないんだよ。
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- 2016年05月23日 08:29
- 今回も面白かった
この人が書く凛は良いね
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- 2016年05月23日 08:30
- ついに1日に1度あらゆる食事を無効にして破壊する食事制限くんインフィニティが来てしまったか…
次は何だ?銀河眼の食事制限竜か?
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- 2016年05月23日 12:50
- ちょくちょく入る遊戯王ネタ好き
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- 2016年05月23日 16:11
- 原宿と池袋、東京の地区名コンビか。いいね
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- 2016年05月23日 22:35
- この人のSS、ほんま俺にとってピッタリ合う。登場アイドル皆好ましく思える。いや、別に嫌いなアイドルがいるわけじゃあないが
ガハハな木場さんや小悪党というより悪ガキなレイナサマとか、他ではあまり見られない貴重なキャラクターしてるわ
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- 2016年05月24日 05:48
- このシリーズ好き
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- 2016年05月24日 23:17
- この事務所すき
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- 2016年05月25日 08:07
- 社長やゆかりをそれらしく書いてくれる貴重なSS
それにしても※2のクレーマーっぷりに苦笑せざるをえない
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