【艦これ】円卓の鬼神の海戦記【エスコンZERO】【その2】
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サイファー「ああ。ターゲットがいればいいんだが…」
ピクシー『そりゃお前の運を信じるしかねぇだろ』
サイファー「そうだな」
ピクシー『しっかしこう作戦で飛んでると昔を思い出すな』
サイファー「あまり海上での作戦はなかったがな」
ピクシー『けど、今度ばかりは相手が相手だ。俺は攻撃には役に立たねぇからしっかりお守りを頼むぜ』
サイファー「相手が確認出来ていて落とされるタマか?お前は」
ピクシー『へっ!片翼が吹っ飛ばされても落ちねぇよ』
サイファー「二つ名に偽りなしだな、まったく」
赤城『こちら第1艦隊、目標地点に到着しました。次の指示を!』
ピクシー『っと、艦隊が到着したみたいだな』
サイファー「赤城は彩雲を発艦させて索敵だ!龍驤、扶桑も艦載機を発艦させて直衛に回せ。奇襲に備えろ!」
赤城『了解です!』
サイファー「第2艦隊、聞こえているな!?敵を発見次第空母は直衛を。他は空母とあきつ丸の護衛だ」
あきつ丸『了解であります!』
サイファー「ターゲットはいたか?」
赤城『はい。敵部隊に北方棲姫の姿を確認しました』
サイファー「よし。敵の艦載機の火力は強力だ。艦載機からの攻撃の回避を優先しつつ、回りの護衛を叩け!」
赤城『了解です!』
ピクシー『こいつはラッキーだな。それとも敵さんは自信があるのかねぇ』
サイファー「見た目とは裏腹にかなりのスペックだと聞いているからな。自信云々というよりもその地点を守るために元々居ると考えたほうがいいだろうな」
ピクシー『その先に何があるのかが気になるところだぜ』
サイファー「だが今は敵艦載機の鹵獲が目的だ。ミッション終了と同時に離脱する!」
ピクシー『目的を見失ったら終わりだからな。あきつ丸!撃墜した艦載機を見逃すんじゃねぇぞ!』
あきつ丸『了解であります!ピクシー殿もお気をつけて!』
ピクシー『わぁってんよ!』
サイファー「こちらも行くぞ!」
流星妖精「対空戦なら烈風が一番優れていますからお任せしますよ」シュゥン
彩雲妖精「けど全部粉々にしたら作戦失敗だから扱いには気をつけてね」シュゥン
彗星妖精「いつも冷静だけど案外頭に血が上ると容赦無いもんね~」シュゥン
<System Pixy Standby>ピピッ!
サイファー「火気管制はこちらが握っているからな。スイッチの信号無視してミサイル使うなよ!?」
烈風妖精「そんな無茶苦茶出来るわけないでしょ。私をなんだと思っていて?」
サイファー「なんでもありなお前らなら出来そうな気がしてな。さて、ミッション開始だ!」
――――――
赤城「敵部隊がこちらを認識したようです。攻撃準備を!」
扶桑「北方棲姫は一旦無視よ!瑞雲、発艦!」ブゥゥゥン
赤城「こちらも行きます!第1次攻撃隊、発艦してください!」ブゥゥゥン
―艦載機同士の空中戦を展開するも、互角の勝負となり制空権を完全に掌握することは適わなかった。そして撃ちもらした艦載機が艦隊に迫る―
龍驤「あかん!制空権完全には取れへんかったで!撃ちもらし来るで!」
那智「総員迎撃準備!こちらに被害が無いと判断できるやつは無視でいい!」
摩耶「全滅させちゃいけねぇってのは殲滅より難しいけどやってやらぁ!」ダダダダダ
時雨「残念だったね!僕達はサイファー提督との訓練をしてるから対空には強いんだよ!」ダダダダダ
―撃ちもらした艦載機を機銃で迎撃するも、それでもなお残った機体が攻撃を仕掛け離脱していった―
赤城「各員、損傷は!?」
扶桑「かすり傷程度よ。上手く避けれたみたい」
那智「こちらも問題無い!」
龍驤「装甲薄いうちと時雨は食ろたらアウトやからなぁ」
摩耶「扶桑さんに被弾したけど、ダメージがそんなになくて助かったぜ」
時雨「扶桑、あえて三式弾を使わなかったんだね?」
扶桑「そうよ。もし全機撃ち落したら任務失敗ですもの。それは避けなくてはならないわ」
那智「狙いは北方棲姫を護衛してるやつらだな」
扶桑「護衛要塞は三式弾で狙います!みなさんは重巡と駆逐を!」
摩耶「任せとけって!いっくぜぇ!」ドォンドォン
時雨「まずは駆逐艦から殲滅するよ!」ドォン
那智「逃がしはしない!1撃で沈めてみせる!」ドォンドォン
―砲撃により駆逐ロ級2隻を撃沈。その間に護衛要塞より艦載機が発艦される―
龍驤「艦載機の皆、お仕事の時間やでぇ!こっちにこさせたらあかんでぇ!」ブゥゥゥン
赤城「敵艦載機多数!龍驤の艦載機の援護に回って!」ブゥゥゥン
―敵艦載機を相手にするも、やはり撃ちもらしが出てしまう。そして撃ちもらしが再び艦隊に迫る―
龍驤「あかん!こっち来るで!」
―撃ちもらした艦載機を機銃で迎撃するも…―
ドォン
摩耶「ってぇ…。くっそぉ、見てろよぉ!」
―艦載機の攻撃により重巡摩耶が中破―
那智「摩耶!?」
時雨「摩耶さんが被弾!?大丈夫ですか!?」
摩耶「撃ち落しきれなかったぜ。くそったれが!」
扶桑「摩耶は下がって!これ以上損傷させるわけにはいかないわ」
摩耶「扶桑さん、まだやれます!対空戦がメインなのにあたしが引っ込むわけにはいかねぇ!」
―そこに重巡からの砲撃が迫る。その砲弾に龍驤が被弾する―
龍驤「あ、あかん!こりゃちょっと計算外やで!」
龍驤「飛行甲板がやられてもうて発艦不可や!こんな時にホンマにスマンでぇ!」
扶桑「機動性の高い重巡から沈めます!撃てぇ!」ドォンドォン
―扶桑の主砲の砲撃により重巡リ級が撃沈―
那智「リ級撃沈確認!」
時雨「けど三式弾を装填するまで扶桑を護衛しないと」
―そこに再び北方棲姫からの艦載機が迫る―
龍驤「たこやきが来るで!皆回避や!」
時雨「サイファー提督の動きに比べればこれぐらい…!」ダダダダダ
扶桑「三式弾装填完了!これで…!」
那智「ダメだ!今それを撃つべきではない!」
摩耶「なめるなぁ!」ダダダダダ
―再度機銃で応戦するも…―
ドォン
時雨「この僕をここまで追い詰めるとはね。けどまだやるさ」
時雨「これじゃ魚雷も撃てない。けど対空だけでも!」
―時雨、被弾により大破―
摩耶「くっそぉ!サイファー提督はまだなのかよ!」
扶桑「まだよ!持ちこたえるのよ!けど、このままじゃダメね。三式弾装填!目標護衛要塞!撃てぇ!」ドォンドォン
―扶桑の放った三式弾装填での砲撃は護衛要塞に直撃するも撃破に1歩及ばず―
扶桑「少し距離が足りなかったみたいね」
赤城「追撃します!爆撃機!目標護衛要塞!止めを刺してください!」
―赤城の追撃により護衛要塞を1つ撃破―
扶桑「残り2隻よ!」
赤城「敵艦載機来ます!」
那智「摩耶と時雨が損傷している以上はこの那智が全て撃ち落してみせる!」ダダダダダ
―対空特化の摩耶、時雨をほぼ欠いた状態で艦載機を迎えるも、あえなく突破される―
那智「くそっ!ダメか!?」
ドォォォン
赤城「くっ!一航戦の誇り…。こんなところで失うわけには…!」
那智「赤城がやられた!?」
扶桑「赤城、下がって!あなたのその状態では発艦は不可能よ!」
―そこに応戦してルートを外れていた敵艦載機の追撃が迫る―
那智「対空戦ではぐれていたやつが戻ってきたのか!?」
扶桑「三式弾装填完了!撃ちます!」
那智「それは護衛要塞に使う予定の弾薬だ!撃っては…!」
扶桑「今撃たないと全滅です!主砲、装填弾薬三式弾!撃てぇ!」ドォォォン
―空中で花火の様に弾け、艦載機を撃墜していく三式弾。しかしそれでも尚残った敵艦載機が迫る―
扶桑「全部落としきれなかったわ…」
那智「まずい!あの艦載機が向かっているのは…!」
扶桑「!?赤城…!?」
―敵艦載機が赤城に爆撃を行おうとしたその時…―
ドォォォォン ドォォォォン
赤城「ミサイル!?」
扶桑「やっと来てくださいましたね」
那智「ずいぶん遅い到着じゃないか」
ピクシー『よぅ嬢ちゃん達、まだ生きてるか?』
サイファー『よく踏ん張ってくれたな。あとは俺達に任せてくれ』
摩耶「ったく、ホント遅ぇっての」
龍驤「危うく沈むとこやってで、ホンマ」
時雨「けど本当に心強い味方が来てくれた。これでいけるね」
サイファー『那智!損傷した者を全員下がらせろ!扶桑、三式弾の残弾はどうだ!?』
扶桑「三式弾は極力温存していたのでまだあります!」
那智「了解した!損傷した者達はこの那智が先導して離脱する!」
サイファー『なら護衛要塞に向かって三式弾を発射だ!発射したら即離脱しろ!再装填はしなくていい!』
ピクシー『第2艦隊、聞こえてるな!?那智が先導して下がってくるからそっちに敵が行くかもしれねぇぞ!』
扶桑「了解しました!三式弾、再装填開始!」
あきつ丸『了解であります!』
サイファー『反撃開始だ!』
――――――
サイファー「方角からして発艦してきたやつじゃなく、艦載機とやりあってた戦闘機タイプだろう」
ピクシー『みたいだな。北方棲姫は方位330の位置で距離もあるしな。どう出るよ?』
サイファー「引き付け、頼めるな?」
ピクシー『あいよ。んじゃしばらくたこやきと鬼ごっことしゃれ込むとするか!さぁこっちに来な!』ゴォォ
サイファー「扶桑!三式弾はどうだ?」
扶桑『装填…完了しました!いつでも撃てます!』
サイファー「ピクシーが射線上から引き離す。タイミングを合わせて狙え!」
扶桑『了解です!』
サイファー「ピクシー!」
ピクシー『わぁってんよ!扶桑!こっちの動きも大事だけど敵から目ぇ離すんじゃねぇぞ!』
扶桑『わかりました!タイミングを合わせます!ピクシーさんも巻き込まれないように注意してください!』
ピクシー『誰に言ってんだよ!心配なさんなって!』
彩雲妖精「サイファー、9時の方向からも来るわ!」
サイファー「赤城!最初に攻撃してきたタイプは爆撃機か?それとも雷撃機か?」
赤城『雷撃機タイプでした!それに摩耶がやられました』
サイファー「ということは比較的低い高度を保つということか」
サイファー「1機でも手に入ればそれでいいからな。識別は出来るか?」
烈風妖精「ええ。私達には区別はつくわ」
サイファー「ならやることは理解出来てるな?」
烈風妖精「当たり前でしょ。既にロックオンは出来てるわ」
サイファー「編隊を分散させるぞ!AMRAAM Fire!」バシュゥゥン
―サイファー機から放たれたAMRAAMは編隊の先頭の機体を捉え命中、爆散する。先頭の機体が撃墜されたのを受け編隊が左右に別れる―
烈風妖精「編隊が分散したわ。どちらを追うのかしら?」
サイファー「第2艦隊、聞こえるな?そちらに雷撃機が向かう可能性がある。迎撃の準備はしておけ!」
あきつ丸『了解であります!』
加賀『私に任せてくれればいいわ。1機残ればいいのよね?』
サイファー「そうだ。もし鹵獲可能な状態で撃墜出来るなら落としきっても構わん」
加賀『難しい相談ね。けど、やれるだけのことはやるわ』
サイファー「当てにはしておく。烈風!残りを追うぞ!」
烈風妖精「既に捉えてるわ。機銃で行くのね?」
サイファー「ああ。接近するぞ!」
――――――
扶桑『はい!こちらで確認している限り、ピクシーさんを追っている機体だけではありません』
ピクシー「なら決まりだ!A/Bを使って加速する。俺を追っている艦載機ごと落とせ!」
扶桑『了解しました!』
ピクシー「カウント開始だ!3!」
扶桑『2!』
ピクシー・扶桑『1!』
ピクシー「A/B点火!」ゴォォォォ
扶桑『装填弾薬三式弾!主砲!副砲!撃てぇ!』ドドドォォォン
ピクシー「目くらましついでに持っていきな!GBU-31投下!」ヒュゥゥゥン
―ピクシー機から投下されたGBU-31はレーザー誘導に従い護衛要塞に命中。当然ながらダメージは与えられないが三式弾に対する防御を遅らせることに成功。艦載機諸共撃破された―
ピクシー「よぉし!これで残りは北方棲姫だけだな」
扶桑『ピクシーさん!新たな艦載機がピクシーさんを追っています!』
ピクシー「母艦からおいでなすったか!扶桑は離脱しろ!さぁて楽しい鬼ごっこといこうぜ!」
――――――
サイファー「こっち側はあらかた片付いたか」
彩雲妖精「母艦から新たな機体が発艦されたわ!爆撃機タイプみたいよ!」
サイファー「方角は…第2艦隊の方角か!」
ピクシー『よぅ相棒!このままじゃ爆撃機が全部向かっちまうぜ!』
サイファー「戦闘機タイプはお前が引き付けているな。加賀!雷撃機タイプはどうだ!?」
加賀『こちらでなんとかしているわ。ただ1機残せっていうのは難しいわね』
サイファー「なら俺が向かうまで攻撃のチャンスを与えないように追い回すんだ!隼鷹!爆撃機もそちらに向かっている。向かう機体は最小限に留めるが向かった分はお前が対処するんだ!」
隼鷹『任せときなって!こう見えてあたしけっこうやれるんだからさぁ!ただの飲ん兵衛じゃないってところ、見せてやるって!』
サイファー「当てにさせてもらうぞ。流星!」
流星妖精「ついに北方棲姫を狙うんですね!?」
サイファー「ああ。いけるな?」
流星妖精「ミサイルはいつでもいけます。彩雲!」
彩雲妖精「捉えてるわ!」
―北方棲姫に向かってASM-3を発射。その軌道は確実に北方棲姫を捉える軌道であったが…―
彩雲妖精「爆撃機タイプが北方棲姫の前方に集結!」
サイファー「盾になる気か!?」
―北方棲姫を守る様に終結した爆撃機タイプに命中し爆発。盾となった艦載機はその爆発の威力により全機撃墜となった―
サイファー「まさか盾になるとはな。完全に想定外だったぜ」
彗星妖精「母艦(主)を守るために…かぁ」
サイファー「ならば接近して直接…うっ!」
ピクシー『な、なんだ!?頭ん中に直接声が聞こえて!?』
北方棲姫『……カエレ…!』
ピクシー『へっ!言われなくたってミッションが終われば帰るっつうの!』
サイファー「よほどこの先に大事な何かがあるようだな。だが今用があるのはお前の持っている艦載機だ!」
ピクシー『おいおい!いくらなんでもちと多くねぇかこれよ?』
サイファー「ピクシー、頼めるか?」
ピクシー「当たり前だろ、相棒!向こうに向かった爆撃機を減らしに行くんだろ?」
サイファー「ああ。落とされるなよ?」
ピクシー『なるべく早く頼むぜ。A/B使ってっから長期戦は無理だぜ』
サイファー「わかっている。頼りにしてるぞ」
ピクシー『ああ。さぁ艦載機ども!落とせるもんなら落としてみな!俺は片翼吹っ飛んでも落ちねぇぜ!』
烈風妖精「戦闘機タイプがこちらにも向かってるわ」
サイファー「A/Bを点火して振り切る!爆撃機タイプの追撃を優先する!」ゴォォォ
―A/Bを点火し音速を突破。戦闘機タイプを振り切り爆撃機を捉える―
サイファー「そう簡単にあっちに行かせるわけにはいかんのでな!」ドガガガガ
―爆撃機をわずかに残し撃墜し、シャンデルの軌道で旋回。ターゲットをピクシーを追撃している戦闘機に向ける―
サイファー「烈風!」
烈風妖精「わかってるわ」
烈風妖精「対空は私の十八番なのよ。04式ミサイル発射!」バシュバシュゥゥン
―04式空対空誘導弾がピクシーを追っていた戦闘機を2機撃墜。ピクシーを追っていた戦闘機の統制が乱れ始めた―
サイファー「邪魔だ!落ちろ!」ドガガガガ
彗星妖精「サイファーを警戒して距離を取り出したよ」
サイファー「もう遅い!相手の戦力を見誤ったのがお前達の敗因だ!」ドガガガガ
―続いてサイファーを追っていた戦闘機を機銃で全て撃墜する―
ピクシー『相変わらずえげつねぇ戦い方しやがるぜ』
サイファー「ピクシー、燃料はまだ大丈夫か?」
ピクシー『ああ。サイファーの仕事が早いおかげでまだ余裕があるぜ』
北方棲姫『…カエレ!ココヲ火ノ海ニ変エル気カ…!』
北方棲姫『コナイデ…ッテ…イッテル…ノ……!』
ピクシー『サイファー!』
サイファー「わかってる。せめて1撃で終わらせる!」
―ピクシー機がインメルマンターンで旋回し北方棲姫の方を向く―
ピクシー『どうすりゃ完全な平和になるかなんて誰にもわかんねぇけどよ、次に生まれてくる時は平和になってるようにやってみるから今は休みな!』
サイファー「烈風!彗星!」
烈風妖精「わかってるわ。邪魔なあれね」
彗星妖精「こちらもロックオン完了です!」
ピクシー『当たるかわかんねぇけど目くらましぐらいにはなるだろ!ASM-3 Fire!』バシュゥゥン
サイファー「射線上のやつを落とす!AMRAAM Fire!」バシュゥゥン
―サイファー機の放ったAMRAAMはピクシーのミサイルの射線上の艦載機を撃墜。続いてピクシー機の放ったASM-3が北方棲姫に命中。比較的距離が近く、彩雲妖精からもたらされるレーダーの位置情報が命中に一役買った結果だった―
サイファー「今度は平和な時代に生まれてくるんだ。ASM-3 Fire!」カチッ
彗星妖精「目標最終補足!ASM-3発射!」バシュゥゥン
―サイファー機の放ったASM-3が北方棲姫を捉え命中。しかし防御姿勢を取ったのかかろうじて撃沈とならなかった―
サイファー「これでもまだ沈まないのか!?」
サイファー「そうだな。彗星、いけるな?」
彗星妖精「うん。これで終わらせるよ」
サイファー「頼んだ。GBU-31投下!」カチッ
彗星妖精「次は平和な時に会おうね。その時までバイバイ」ヒュゥゥゥン
―ASM-3の直撃を喰らい虫の息になっていた北方棲姫に誘導爆弾が命中し北方棲姫は轟沈した―
北方棲姫『イツカ…楽シイ海デ……いつか……また……平和に…』
彗星妖精「北方棲姫の撃沈を確認。残りの任務を遂行しないとね」
サイファー「ああ。まだミッションは終わってない。完遂させるんだ」
ピクシー『おい、なんか艦載機共の動きが鈍くなってるぞ』
サイファー「母艦が沈んで弱体化したからだろう。撃墜して任務を終わらせるぞ」
ピクシー『そうだな。さっさと終わらせて帰るか』
サイファー「第2艦隊、聞こえてるな!?北方棲姫は撃沈した。これより艦載機を全て落とす。回収出来るやつは全て回収しろ!」
あきつ丸『了解であります』
―――――
―――
―
―作戦を終え、新型艦載機の鹵獲に成功したサイファー達を、先に帰投していた伊勢達第3艦隊が出迎えた―
伊勢「サイファー提督おかえりなさい。作戦は成功したみたいね」
サイファー「ああ。新型艦載機は戦闘機、爆撃機、雷撃機全てのタイプの鹵獲に成功した。そっちはどうだ?」
伊勢「もちろん、バッチリもらってきたわよ!」
利根「伊勢は注意散漫で、日向は考え事をしてフラフラしおって危なっかしい航海だったがのぅ」
日向「そういう利根は真っ直ぐすぎて航路を間違えかけてたではないか」
利根「なっ!あれはあっちの方が早いと思ったからなのじゃ!そうであろう筑摩!?」
筑摩「ええ。でも安全に運ぶ必要があったのであれはダメですよ」
利根「ちくま~!」
筑摩「でも利根姉さんは頑張りましたよ。任務も無事に終わりましたし、間宮さんの所に行きましょうね」
利根「おお、そうじゃ!作戦の成功の前祝じゃ!あいすくりぃむを食べに行くぞ!」
筑摩「ええ、そうしましょう。では私達は失礼しますね」
利根「なにをしておるのじゃ筑摩!早ぅ行くぞ!」
筑摩「はい、直ぐに行きますよ」
ザッザッザッザ…
日向「前祝は作戦前に行うことなんだが、利根のやつわかってるのだろうか」
時津風「猪さんか闘牛さんみたいだね~。筑摩さんはマタドールさんかな~」
伊勢「お!時津風中々上手い事言うねぇ」
サイファー「…で、受け取ってきた物は第2艦隊に渡し終えているんだな?」
日向「勿論終わっている。既に鹵獲した艦載機は収容されているはずだ」
サイファー「そうか、なら結構だ。航海中何かトラブルは無かったか?」
伊勢「特に何も無かったわよ。戦闘自体も無く皆無事よ」
サイファー「そうか。ならあとで報告書をまとめて提出してくれ」
雪風「サイファー司令の方はどうだったんですか?」
サイファー「第1艦隊は大破、中破した者がいるが全員無事生還している。第2艦隊も損傷はしているがいずれも軽微な者ばかりだ」
時津風「そうじゃなくてサイファー司令自身のことを聞いてるんだと思うよ~」
サイファー「いや、特に被弾はしていない。もしかしたら多少はかすり傷があるかもしれんがな」
伊勢「流石は円卓の鬼神というか、相変わらずバケモノ染みてるわねぇ。北方棲姫相手に無傷で生還とか信じられないわよ」
サイファー「物量押しは戦力として多大だが、それならそれで戦い方がある。状況を見極めて必ず存在する穴を的確に突けばいいだけだ」
日向「そんな簡単に見つけられる物ではないんだがな。今度サイファー提督の機体にカメラを付けさせてくれないか?」
サイファー「映像なんか撮ってどうする気だ?」
日向「サイファー提督の操縦を参考に瑞雲の運用方法を見直してみたくてな」
サイファー「速度差も武装も違いすぎるだろ」
時津風「酔い止め薬いくつ飲めばいいんだろうね~」
サイファー「とにかく無事に作戦は終了だ。皆よく頑張ってくれたから作戦の成功を祝うパーティを行う。間宮たちには通達しているからそれまで各自休んでおけ」
伊勢「やった!さっすがサイファー提督わかってるねぇ!」
日向「そうと決まれば汗を流してくるとするか」
時津風「雪風ぇ、わたしたちも行こうよ」
雪風「ではサイファー司令、雪風達も失礼します!」
サイファー「遅れないようにな」
ザッザッザッザ…
サイファー「さてと、俺もシャワー浴びてくるとするか」
―――――
―――
―
―作戦成功の祝賀パーティが終わり、サイファーは自室に戻っていた―
サイファー「作戦成功…か。これは俺1人では到底出来なかっただろうな」
サイファー「騒ぎ足りない奴はまだ騒いでるが、今日ぐらいは大目に見てやるとするか」
knock knock
サイファー「誰だこんな時間に?入っていいぞ」
ガチャ
ピクシー「よう相棒。まだ生きてるか?」
サイファー「ああ。飲ん兵衛共の猛攻はかわし続けたからな。アルコールは残っているが問題無いレベルだ」
ピクシー「そうか。俺は少し被弾しちまったよ。油断したぜお前ん所の艦隊によ」
サイファー「そいつは災難だったな。ところでこんな時間に何の用だ?」
ピクシー「ああ。今回の戦果を報告したんだがな、鹵獲した艦載機の運搬とサイファーの機体とデータを持ち帰るために俺はこの基地を離れることになってな」
サイファー「元々は震電Ⅱのライセンス教官として来たんだからな。任務が終われば次の任務があるだろう」
ピクシー「そういうこった。で、その報告に来たってわけだ」
ピクシー「1週間後だ」
サイファー「輸送船の到着を考えるとそれぐらいか」
ピクシー「それとお前には朗報だぜ」
サイファー「なんだ?」
ピクシー「任務成功の報酬として輸送船にはF-15を積荷として持ってきてくれるってよ。ただし、対艦戦を想定してE型、それも近代化改修されたやつがな」
サイファー「J型ではなくE型のストライクイーグルか。システムが起動してるときはいいが、通常時だとコックピットが少し狭かったから複座は助かるな」
ピクシー「軍部もサイファーを信頼していたのか、カラーもサイファー機用に塗装済みだ。ガルム隊の部隊章は付いてないがな」
サイファー「ウスティオ所属じゃないんだぞ。当たり前だろ」
ピクシー「C型じゃねぇが、これで円卓の鬼神の復活だな」
サイファー「円卓の鬼神だったのは昔の話だ。今はこの基地の司令官だ」
ピクシー「そういうことが聞けるってことはこの基地に腰を据える覚悟を決めたってことか?」
サイファー「バカ言え。俺はあくまで前提督の依頼を引き受けただけだ。後継が来れば明け渡すつもりだ」
ピクシー「本当にそれでいいのか、相棒?」
サイファー「良いも何も俺は傭兵だ。そういう生き方しか知らんからな」
サイファー「どういうことだ?」
ピクシー「もうお前は立派なこのブイン基地の司令官だってことだよ。お前の指揮で動くし、お前の指揮を信頼している。この基地にとってサイファーはなくてはならない存在になってるってことだよ」
サイファー「それは後継者が来ても同じだろう」
ピクシー「そうじゃねぇんだよなぁ。っかーったく!ホンットお前はこの手の話には鈍いというか、ズレてるというか…」
サイファー「何が言いたい?」
ピクシー「もうこの基地の嬢ちゃん達は相棒の指揮以外ではまともに動かねぇって言ってんだよ!最前線で飛んで一緒に戦う司令官なんてどこにも居やしねぇからな。絶対的な信頼を持たれてるって言ってんだよ」
サイファー「戦場の仲間意識ってことか」
ピクシー「…はぁ。もうそれでいい。とにかくそういうこった」
サイファー「お前、被弾したダメージが酷くなってないか?」
ピクシー「かもな。とにかく伝えることは伝えたからよ。詳しいことは明日報告書にまとめて提出すっから」
サイファー「水と薬はいるか?」
ピクシー「いらねぇよ。俺も部屋に帰って寝るからよ。んじゃまた明日な。あと1週間よろしく頼むぜ」
サイファー「ああ。帰る途中で捕捉されるなよ」
ピクシー「全力で逃げ切るさ。んじゃな」
バタン
サイファー「震電Ⅱとピクシーが去ってイーグルが来る…か」
サイファー「しかしあまりにも用意が良すぎる気がするな。何かの餌と考えるべきだろうか…」
―――――
―――
―
―震電Ⅱと鹵獲した艦載機を輸送する輸送船がストライクイーグルを載せてブイン基地へやってきた―
オーラーイ!オーラーイ!
ヨシイイゾー!
漣「お~!これこれ!この機体にこのカラーリング!正に円卓の鬼神そのものですね~!ご主人様の完全復活ktkr!」
青葉「サイファー司令官さん、後でストライクイーグルと並んでもらえますか?これはいい画になりますよ!」
長門「完全な円卓の鬼神が揃った姿を目の当たりにすると言葉を失うな」
阿賀野「でもガルム隊の部隊章は書かれてないね」
能代「そりゃそうよ。ガルム隊はウスティオの部隊なんだから」
摩耶「やべぇな。いざ目の当たりにするとやばそうな雰囲気がこれでもかってぐらい伝わってくるぜ。こんなのぜってー相手したくねぇよ」
曙「あたし、本当にクソ提督呼ばわりしてて大丈夫なのか不安になってきた」
夕立「機体から伝わってくるプレッシャーが凄いっぽい!」
大和「そうは言いましても、実物を目の当たりにする機会なんてまずありませんし、伝説のような存在ですから仕方ないと思いますよ」
サイファー「俺の愛機はエメリアで落とされてるんだがな」
妙高「それでも本人がここにいて、ちょっと型が違いますけど使っていた機体もここにあるとなればなにか感じるものがあるんじゃないでしょうか」
サイファー「そんなもんか?俺にはよくわからんが。ところでピクシー、もう1機ストライクイーグルが降ろされてるがありゃなんだ?」
ピクシー「ありゃ予備機だ。対艦戦も想定した戦闘機はバイパーゼロで実績があるとはいえ、ストライクイーグル自体は運用実績が無いから何か不具合が起きた時用に寄越してもらってんだ」
サイファー「カラーはノーマルのままか」
ピクシー「予備機にカラーリングまで要求すんなよ」
サイファー「まぁいい。出航は明日だったな。震電Ⅱは今日で、鹵獲した艦載機は明日積み込むんだったな」
ピクシー「本当は一度に積み込んでしまいたいところだけど、最悪の事態を想定してもう1日面倒見てもらうつもりだ」
サイファー「それがいいだろう。あきつ丸には手土産にこの基地で保管されている烈風を渡しておこう」
ピクシー「助かるぜ。流石に海上で再起動とかされちゃ、俺じゃどうしようもねぇからな」
サイファー「まぁそういうことになるな」
夕立「じゃあ夕立が乗ってもいいっぽい?」
サイファー「ライセンスが無いだろ。1から航空力学勉強してライセンス取得する気か?」
夕立「う~、飛行機の勉強は苦手っぽい~」
雷「じゃあ私が勉強してライセンス取るわ!そしたらサイファー司令官の役に立てるんでしょ?」
サイファー「兵装と一体化する妖精が他にいないだろ」
雷「そこは他の烈風さんたちと相談して上手くやれば…」
サイファー「艦娘辞めて司令官になるんなら可能だろうな」
雷「あ、そっか。そうなっちゃうのよねぇ」
朧「今あるスーパーホーネットはどうするんですか?」
サイファー「あのストライクイーグルになんら問題が無ければ予備機になるだろうな」
瑞鳳「ねぇサイファー提督、妖精さんに機体を艦娘用に小型化出来たりする子っていない?」
サイファー「そんなのは聞いたことないな。仮に出来たとしてどうする気だ?」
瑞鳳「そりゃあもちろん私が運用するのよ」
サイファー「飛行甲板燃えるぞ。それに蒸気カタパルトもスキージャンプも無い、滑走距離も足りんのにどうやって飛ばす気だ?」
瑞鳳「…妖精さんの力で…かな?」
サイファー「無茶と無理は違うぞ」
サイファー「ああ、頼む。予備機のストライクイーグルも入れておいてくれ」
烈風妖精「わかったわ。運び終えたらインストールの作業に入るから他の作業は手伝えないから覚えておいて」
サイファー「わかってる。予備機のストライクイーグルはすぐに作業は行わなくていい。それとAARGMが搭載されるから彗星にはよく言っておいてくれ」
烈風妖精「わかったわ。震電Ⅱは一応私達が使えないようにアンインストールしてるからそのまま引き渡して大丈夫よ」
サイファー「わかった」
ピクシー「さて、あとは震電Ⅱの積み込みだな」
サイファー「そうだな。妖精達(あいつら)のシステムはアンインストール済みだからもう積んでもらってもいいぞ」
ピクシー「消しちまったのか。ちと勿体ねぇな」
サイファー「どっちにしろ俺にしか使えねぇ代物だ。問題ねぇだろ」
ピクシー「まぁな。それもそうだな」
サイファー「この後、この基地の艦娘主催でピクシーとあきつ丸とまるゆの送別会が開かれるそうだ」
ピクシー「お!嬉しいねぇ」
サイファー「お前は主役の1人だから身嗜みは整えとけよ」
ピクシー「パイロットスーツでいいのか?」
サイファー「もうボケが始まったのか?」
ピクシー「冗談だよ、相棒。ちゃんと整えるっつうの」
サイファー「ったく、変な恥かかせんなよ?」
ピクシー「わかってるっつうの。せいぜいガルム隊の時の暴露話ぐらいでいいか?」
サイファー「お前、何を知っている!?」
ピクシー「さぁな」
サイファー「勘弁してくれよ。ったくよぉ」
―――――
―――
―
大和「それではこれより送別会を始めます。まずあきつ丸さんから挨拶を」
あきつ丸「短い間でしたが色々勉強になったであります!特に艦載機の運用を教授してくれた空母の方々には感謝の言葉しかないであります。ありがとうございました」
大和「まるゆちゃんどうぞ」
まるゆ「あまり戦闘能力が高くないまるゆに色々教えてくれた皆さんには感謝しています。ここで教えてもらったことを活かせるように本土に戻っても頑張ります!」
大和「最後にピクシーさん、どうぞ」
ピクシー「短い間だったけどこの基地での生活は楽しませてもらった。サイファーはああいう奴だがこれからもあいつに付いていってやってほしい」
ピクシー「ガルム隊に所属してたときも戦闘になりゃああだったが、基地に戻って任務が無い時なんかだとあいつはよk」
ザワザワ
<ピクシーさんレーザーサイトで狙われてるー!
<スナイパーがいるの!?
<誰が狙ってるの!?
ピクシー「あん?レーザーサイト?」クル
サイファー「………」ゴゴゴゴゴ
ピクシー「…銃を向けるなよ、相棒。冗談だっての。とにかくこの基地の全員のおかげで震電Ⅱのデータが取れたと言ってもいい。このデータは震電Ⅱの完成に必ず役にたつ」
ピクシー「所属は違うが目指すところは同じと思っている。また機会があれば会おう。それまで生きのびろよ」
大和「あ、ありがとうございました!では乾杯の音頭をサイファー提督、お願いします」
サイファー「陸軍、海軍と所属こそ違えど平和を共に目指す者同士として共に頑張っていこう。互いのこれからの健闘を祈って乾杯!」
『かんぱーい!』
ワイワイ
摩耶「うんめぇー!最高だなおい!」
高雄「大和さんと武蔵さんのフルコースメニューも入ってるわね」
羽黒「凄い豪勢な料理ですね。大和さん達に教えてもらおうかな」
鈴谷「料理まで完璧にしてハグハグどこまで高みに登る気なの?」
伊58「まるゆちゃん、陸軍に戻っても頑張ってくだち」
まるゆ「はい。皆さんに教えてもらったことを忘れないように頑張りますね」
伊168「兵装のスペックが全てじゃないってのはサイファー提督が一番証明してくれてるからね。海のスナイパー魂があればやっていけるわ」
大鯨「困った時はまたいつでもこのブイン基地に戻ってらっしゃい。私達はいつでも歓迎するわ」
まるゆ「ありがとうございます!」
暁「レディとしての品格…。よ、よし!熊野さん、暁にレディとしての嗜みを教えてください!」
響「そんなに力んでたらダメだと思うよ。もっとリラックスしないとさ」
陽炎「それにせっかくのパーティなんだから難しいこと考えないで楽しんだほうがいいんじゃないの?」
吹雪「変に背伸びするより身なりに合った楽しみ方をしたほうがいいと思うよ」
暁「そ、そんなことないし!一人前のレディとしてパーティを楽しむだけだし!」
熊野「あらあら、そんなに肩の力が入っていたらダメですわよ。まだ暁ちゃんには早かったかしら」
暁「く、熊野さんまでぇ…」
加賀「サイファー提督から烈風を渡されるそうよ。無いとは思うけど海上で艦載機が再起動したらあなたが鍵になることを頭に入れておいて」
あきつ丸「はい!全力を持って護衛するであります!加賀殿や赤城殿から教わった艦載機の運用方法、無駄にはしないであります!」
翔鳳「本来は無駄になるほうがいいんだけど」
赤城「爆撃機や雷撃機の運用はともかく、戦闘機の運用は問題ないですから、自信を持ってくださいね」モグモグ
龍驤「せめてしゃべる時ぐらい食べるの止めぇや。せっかく良えこと言っとるのに台無しやで」
あきつ丸「ここで教わったことを踏まえてにピクシー殿から戦術を教わるであります。次に会った時は驚かせてやるであります!」
翔鶴「その意気ですよ。これからもお互い頑張りましょうね」
瑞鶴「ま、こっちもサイファー提督さんがいるから次会った時はこっちも同じじゃないわよ」
あきつ丸「負けない!のであります!」
サイファー「俺から提案したわけじゃない。感謝するなら艦娘達(あいつら)に言ってくれ」
ピクシー「許可出したのはお前だろ?にしたってこの雰囲気は良いな。作戦成功の時もそうだったが、全員が活き活きとしてる」
サイファー「兵器だとか色々言われてはいるが、意思を持っているならばそれは人と変わりはないからな」
ピクシー「それだけお前が司令官として優秀だってことだろ。ただの兵器として見てたならこんなに全員活きた顔してねぇよ」
サイファー「さぁな。少なくとも俺だけの力じゃねぇよ。ところでピクシー、少し気になることがあるんだが」
ピクシー「なんだ?ようやく気になる艦娘(子)でも見つけたか?」
サイファー「違ぇよ。作戦成功の報酬としてストライクイーグルが来たのはいいんだが、やけに準備が良すぎると思ってな。お前一体どんなやりとりしたんだ?」
ピクシー「別に何か特別なやりとりをしたわけじゃねぇよ。確かに前もって交渉はしていたが、それに関しては俺も引っかかってたところだ」
サイファー「普通、戦闘機の準備となれば時間はかなり要するはずだからな」
ピクシー「それもハープーンを使えるように近代化改修されたモデルとなればなおさらな」
サイファー「おまけに予備機としてもう1機寄越してきた。普通では考えにくいことだ」
ピクシー「何か裏がありそうだってことだろ?」
サイファー「ああ。流石に手放しで喜べるほど俺も間抜けじゃない。使えるものは使うが、これが何かの餌か、はたまた別の目的の為の目くらましか」
ピクシー「サイファーの戦績は確かに凄まじいが、あまりにも大盤振る舞いすぎるからな。本土に戻ったら俺も少し調査してみよう」
サイファー「頼む。こっちでも情報を掴んだら知らせる」
サイファー「来やがったな、アル中軽空母1号!」
隼鷹「な、なんだそりゃ?ま、いいや。ピクシーさんもいるなら丁度いいぜぇ!眉間にしわ寄せて話し込んでちゃパーティが台無しだぜ!」
ピクシー「まぁ確かにそうだな」
サイファー「まともなことは言っているな」
千歳「というわけで、ささ、飲みましょう飲みましょう!」
サイファー「2号まで来やがったな。だが、今回は抜かりは無い!」
ピクシー「こんなこともあろうかと事前に打ち合わせはしておいたからな」
隼鷹「お?なになに?飲み比べ勝負でもしちゃう系?」
サイファー「対隼鷹迎撃システム飛鷹!Fire!」
ピクシー「対千歳迎撃システム千代田!Fire!」
飛鷹「ちょっと!私達はミサイルじゃないわよ」
千代田「ASM-3発射みたいに呼ばないでください」
隼鷹「ゲッ!飛鷹!」
千歳「千代田まで!なんでそっちにいるの!?」
飛鷹「隼鷹の絡み酒対策ですって。あんまり大騒ぎしてると、部屋に隠してる大吟醸没収するわよ!」
隼鷹「そりゃないぜぇ!それだけは勘弁してくれよぉ!な?な!?」
千代田「千歳お姉も。あんまりバカ酔いしてると、この前沖縄から取り寄せたって言ってた泡盛没収しますよ」
千歳「あ、あれけっこう高かったのよぉ!それだけは許してぇ!」
サイファー「飛鷹、千代田、あとは頼めるな?」
飛鷹「任せておいて。さ、今日は飲んでもいいとは言われてるけど、ちゃんと節度ある飲み方を叩き込むからね!」ガシッ
千代田「千歳お姉も。あんまり無茶飲み続けるようならいつぞやの川内みたいになっちゃうからね!」ガシッ
隼鷹・千歳「そんなぁ~」ズルズル
サイファー「やれやれだ」
ピクシー「生きてるか?っていつも聞いてる俺が撃墜されて生きてるか?って聞かれる立場にされちゃたまんねぇからな」
サイファー「Yo buddy. You still alive?」
ピクシー「まだ大丈夫だっつうの」
漣「ところでピクシーさん、挨拶の時はご主人様に銃で狙われて止めましたけど、あれ何を言おうとしてたんですか?」
ピクシー「ああ、あれか。ありゃベルカ戦争の時に俺達がウスティオに所属してたのは知ってるな?そんときにサイファーが任務が無い時にこっそりやってたことをな」
青葉「ちなみにどんなことをしてたんですか?」
愛宕「気になる引き方をしたから聞きたいわぁ」
ピクシー「嬢ちゃんたちには少し刺激的かもしんねぇなぁ」
漣「それって…もしかして…?」
青葉「スクープの予感ですねぇ。明日の一面は決まりですかねぇ」
陸奥「みんなお酒入っちゃってるし暴露しちゃってもいいんじゃない?」
酒匂「ぴゃん!サイファー司令の秘密知りたい!」
ピクシー「ありゃあ1度目のB7Rの攻防が終わった後の話なんだけどな、ウスティオ国内も被害が少ないところは当然あってな、当然そこには色んなもんがあるわけよ」
漣「ほうほう、それでそれで?」
ピクシー「ただのオフを過ごすんなら基地周辺でもそんな困らねぇんだが、サイファーはよく基地から外出して…」肩ガシッ
ピクシー「あん?」クル~
サイファー「ドーモ、片羽の妖精=サン。サイファーです」
『アイエエエ!?鬼神!?鬼神ナンデ!?』
ピクシー「ちょっと待てって相棒!まだ何も言ってねぇって!」
サイファー「やはりあの時(ベルカ戦争末期)に殺しておくべきだったようだな」
ピクシー「だからって今殺そうとすんなよ!冗談じゃねぇ!」ダッシュ!
サイファー「あ!待てコラー!」ダッシュ!
酒匂「サイファー司令、口調がちょっとおかしくなってたね」
陸奥「あらあら、酔ってるのかしら。でもどこで覚えたのかしら、あれ」
漣「あ~、多分漣のせいかもしれませんねぇ」
愛宕「何やったの?」
漣「いえ、ほらよく外国人の人たちって漫画とかアニメから日本語に入る人って結構いらっしゃるじゃないですか。だから鳥海さんや大和さん達みたいなTHE日本語って本よりもと思いまして」
青葉「どんな本を渡したんですか?」
漣「元々オーシアで小説になってたやつを翻訳して漫画にしたやつなんですけどね」
漣「外国の小説でしたし、もしかしたら原作読んで知ってるかなぁって思いまして」
酒匂「ぴゃん。それってかなり間違った日本の認識をしてる本じゃないの?」
漣「あながち間違ってないとは思ったんですがねぇ」
<やめろ相棒!実弾じゃないっつっても痛ぇって!
<ザッケンナコラー!スッゾコラー!
<いいぞー!やれやれー!
<あー!惜しいですサイファー提督!もっと狙って!
<ピクシーさんもっと動かないとやられますよー!
<サイファー、Fox2!Fox2!
<痛ててててて!俺が悪かったから止めてくれー!
漣「う~ん、なんというワザマエ」
愛宕「とりあえず漣ちゃんはあとでちょ~っとだけお説教かしら?」
漣「\(^o^)/」
―こうしてパーティは終始盛り上がり幕を閉じた。そして翌日、別れの時がやってきた―
―――――
―――
―
―ピクシー、あきつ丸、まるゆを見送るため、サイファーと艦娘達は輸送船の前まで来ていた―
ピクシー「今日でこの基地ともお別れか。長かったようで案外短かったな」
サイファー「お前と再会したのが一番の驚きだったぜ。試作機で戦うなんて滅多に無い機会だったし、色々充実した毎日だったな」
ピクシー「一番恐ろしいのはその試作機ですらお前の空戦能力が変わらねぇことだったけどな」
サイファー「ストライクモデルが作られりゃもう少し違った戦い方が出来るんだろうがな。量産機F-3の完成、楽しみにしてるぜ」
ピクシー「まだデータをまとめてからだからこれからだがな。俺達が現役で空を飛んでる間に完成することはないだろうな」
サイファー「だろうな」
大和「ピクシーさんはこれからまた教官として各地を回るんですか?」
ピクシー「たぶんな。詳しい事はまだ聞いてないが、しばらくは鹵獲した艦載機と震電Ⅱのデータの為に報告書だのなんだのをまとめなくちゃなんねぇからな」
大和「そうですか。教官の任務の大変ですね」
ピクシー「俺以外にも教官はいるんだが、今回に関しては艦載機の鹵獲っちゅうおまけまでついてるからな」
摩耶「いっそ憲兵隊にでも転属してここに勤務すりゃいいんじゃねぇのか?」
ピクシー「そりゃいいな。色々サイファーに仕返しが出来るかもな」
サイファー「何をするつもりだ、何を」
ピクシー「冗談だよ、相棒。他にも教官はいるっつってもまだまだ教えなくちゃなんねぇことがあるからな」
吹雪「ライセンス発行して即実戦とか、普通じゃ中々考えられませんよ」
電「それについていったサイファー司令官さんも凄すぎる気がするのです」
サイファー「伊達に傭兵家業をやってたわけじゃねぇからな」
ピクシー「相手がサイファーだから急ピッチで進められただけだからな。普通じゃこんな教習カリキュラムは組まねぇって」
足柄「けどピクシーさんの教え方は参考になったわ。新人教習には是非参考にさせてもらうわ」
金剛「ピクシー式レッスンをやったら新人が即日エスケープするネー」
ザッザッザッザッザッ
あきつ丸「ピクシー殿、艦載機の搬入、および固定作業が終了したであります」
ピクシー「お、そうか」
まるゆ「それとまもなく出航するとのことです。ピクシーさんも乗船してください」
ピクシー「わかった。短い間だったけど楽しかったぜ。ありがとうな」
サイファー「こっちこそ、いい経験になった。それとストライクイーグル、ありがたく使わせてもらうぜ」
サイファー「そっちこそな。何か困ったことがあったらいつでもここに来い」スッ
パァン!
―互いに手を挙げ気持ちの良い炸裂音を鳴らすハイタッチするサイファーとピクシー。そしてピクシーは輸送船へ向かって行く―
大和「これでお別れですね」
阿賀野「凄い人だったね」
瑞鶴「結局ピクシーさんから艦載機の運用技術を盗めなかったなぁ」
加賀「あなたはムラがあるからまだ無理よ。覚えたければまずはどんな状況でも揺るがない集中力を身に付けることね」
瑞鶴「なっ!私だってやれるわよ!ね?サイファー提督さん!」
サイファー「妖精を殺しかねない動きを覚えるのはやめておけ。お前達にはお前達の戦い方がある」
加賀「基本こそが大事なのよ。この後みっちり叩き込んであげるわ。あとで練習場にいらっしゃい」
サイファー「日々の基本の繰り返しは重要だ。よかったな、瑞鶴」
瑞鶴「うへぇ…。サイファー提督さ~ん」
ボォォォォォォォォ……
バッ
―輸送船が汽笛を上げ、離岸していく。完全に離岸し出航を確認したところで敬礼解除を伝令した―
サイファー「よし、総員解散だ。今日はもう自由にしていいぞ」
妙高「あら、サイファー提督?どちらに行かれるおつもりですか?」
サイファー「俺はストライクイーグルの飛行テストも兼ねた防衛ラインまで輸送船の護衛だ」
青葉「さっそくイーグルが飛び立つんですね!?飛び立つ姿を写真に収めてもいいですか?」
サイファー「構わんが、外部に出回るようなことはするんじゃないぞ」
青葉「勿論ですよ。さっそくカメラと望遠レンズを用意しなくっちゃ!」
サイファー「大淀、直ぐに出るから管制を頼むぞ」
大淀「了解しました」
―――――
―――
―
サイファー「インストール作業は終わってるな?」
烈風妖精「ええ、問題なく使用出来るわ」
彩雲妖精「今回は輸送船の護衛なのよね?」
サイファー「そうだ。ストライクイーグルの飛行テストも兼ねているから、何か不具合が出たら報告してくれ」
彩雲妖精「わかったわ」
彗星妖精「サイファー、やっぱり元相棒とのお別れは寂しい?」
サイファー「別に今生の別れじゃないからな。お互い生きていればまた会える」
流星妖精「震電Ⅱが来た時のように…ですか?」
サイファー「そうだ。生きていれば何処かで機会はあるもんだ」
彗星妖精「ひとまずのお別れだね。次に会ったときに司令官になってたら面白いかもね~」
サイファー「…あいつにゃ似合わねぇな」ククッ
サイファー「大淀!周辺の状況はどうだ?」
大淀『基地周辺を飛行する航空機はありません。いつでも発進どうぞ!』
彩雲妖精「それにしてもギャラリーが多いわね」
流星妖精「型こそ違えど円卓の鬼神の完全復活の証であるイーグルが飛ぶとなれば多いでしょう」
彗星妖精「サイファー、緊張してF-15E(この子)のおしり擦っちゃダメだよ~」ケラケラ
サイファー「そんな凡ミスするわけないだろ」
大淀『周辺に異常無し!サイファー機、高度制限を解除します。お気をつけて』
彩雲妖精「それじゃ私達もテストしましょうか」シュゥン
烈風妖精「実戦テストにならなければいいけど」シュゥン
流星妖精「まぁ実戦テストの方がデータは取れるんですが…」シュゥン
彗星妖精「何事も無いのが一番だよね~」シュゥン
<System Pixy Standby>ピピッ!
サイファー「ちなみに聞くが、火気管制の類はどうなるんだ?」
烈風妖精「ほぼ従来通りよ。副座のシステムがこちらで動かせる分、ミサイルの切り替えはやりやすくなったけど」
サイファー「意思の疎通のみで完全に切り替えれるということか」
烈風妖精「そういうことよ。状況次第で最適だと思ったものに私達だけで切り替えることも可能よ」
サイファー「AMRAAMからサイドワイダーみたいにスイッチで切り替える必要が無くなったのは大きいな。空戦がより有利になる」
彗星妖精「やっぱり相変わらずの空戦バカだね~」クスクス
サイファー「やはり俺は空を飛んでいる方が性に合ってるってことだ。彩雲、輸送船付近に敵影は無いな?」
彩雲妖精「大丈夫よ。周囲に敵影無し。本土からの護衛艦隊も既に合流地点にいるわ」
―機体を加速させ、輸送船に近づく―
サイファー(お前と飲む酒、楽しかったぜ。また飲み交わそうぜピクシー。それまで生き延びろよ)
―輸送船の方を向き、敬礼をしながら真横を通過していく。甲板には見送るようにストライクイーグルに向かって敬礼をしているピクシーがいた―
ピクシー(お前と過ごした毎日、楽しかったぜ。生き延びてまた飲み交わそうぜ、相棒)
キィィィィィィィン………
―――――
―――
―
扶桑「お帰りなさいサイファー提督」
妙高「無事に送り届けれたようですね」
サイファー「ああ。本土からの護衛艦隊との合流ポイントまでの護衛任務、終了だ」
青葉「久しぶりのイーグルでの飛行はどうでしたか?やっぱり震電Ⅱやスーパーホーネットとは違いますか?」
サイファー「C型よりは速度や旋回性能は若干劣るが、やはりイーグルはいいな。体によく馴染む」
青葉「C型は単座式ですけどストライクは副座ですよね。やりにくくなったとか無いんですか?」
サイファー「そのための妖精だ。むしろ単座式でやっていたミサイルの切り替えが楽になった分、タイムロスが短くなってやりやすくなったな」
青葉「つまり円卓の鬼神のパワーアップになったということですか?」
サイファー「そう捉えてもらっていい」
青葉「ふむふむ。ありがとうございました!よ~し!これで明日の一面は決まりですよー!」
サイファー「新聞を作るのはいいが、誇張表現をしすぎるなよ。そのせいで俺の所にちょくちょくクレームが来るんだからな」
青葉「?嘘は書いてませんよ?」
サイファー「時々表現が過激だと言ってるんだ。この前は矢矧が怒ってお前に対艦ミサイルを撃ちこめって言ってきたぞ」
青葉「……あ~!あれですかぁ」
サイファー「面白おかしくするのもほどほどにしとけ。でないとその内、俺のいないところでハープーンでも撃ちこまれるぞ」
青葉「あはは…。まぁ気をつけますね」
サイファー「まぁ兵装システムは妖精達(あいつら)が管理するからただ乗るだけなら問題は無いが」
夕立「ぽい~!だったら夕立も乗ってみたいっぽい!サイファー提督さんと一緒に飛びたいっぽい!」
時雨「サイファー提督、僕も乗ってみたいな」
雷「私も乗ってみたいわ!むしろ兵装システムを任せてくれてもいいのよ?」
サイファー「ストライクイーグルはおもちゃじゃねぇんだぞ」
榛名「榛名、全力でサイファー提督をサポートいたします!」
金剛「サイファーテートクの後ろに座るのはワタシデース!」
翔鶴「円卓の鬼神の飛行を後ろから見られるなんて滅多にありませんから。よろしかったら是非私も乗せていただけませんか?」
愛宕「フレアを使ってぱんぱかぱ~ん!ってちょっとやってみたかったのよねぇ」
サイファー「お前らなぁ…」
妙高「はいはい。サイファー提督が困ってますからその辺にしておいてくださいね」
サイファー「助かるぜ、妙高」
サイファー「妙高、お前もか!」
扶桑「ふふっ、それだけ円卓の鬼神の伝説が凄まじい証拠ですよ」
サイファー「だからってストライクイーグルをおもちゃにされちゃたまんねぇよ」
烈風妖精「サイファー、ストライクイーグルはハンガーに入れて整備するけど、この状況どうにかしときなさいよ。使うなら予備機でやってね」
サイファー「やらねぇっつうの。ほらお前ら、ストライクイーグルはこの基地に配備されていつでも見られるんだから散れ散れ!」シッシッ
金剛「Boo!サイファー提督はケチデース!」
サイファー「燃料代、お前の給料から差っ引くぞ」
金剛「Oh!それは困るネー」
雷「次にストライクイーグルでの出撃の時は私に声かけてね!」
青葉「記者特権で青葉も乗せてくださいね!」
サイファー「んなもんねぇよ!ほら帰った帰った!烈風達がこれから整備するんだから邪魔だろ」
―烈風妖精達がハンガーに運び入れる機材を出したのを目にした艦娘達は冗談交じりな文句を言いながらも解散していった―
彩雲妖精「慕われてる証拠よ。艦娘がジェット戦闘機に興味を示すなんてまず他の基地じゃ無いことよ」
サイファー「それでおもちゃ扱いされちゃ堪んねぇんだけどな」
烈風妖精「それだけサイファーが興味を持たれてるってことよ。慕われてよかったんじゃなくて?」
彗星妖精「F-15E(この子)もまるで人気者になったみたいって内心喜んでるみたいだよ~」
流星妖精「悪い気はしないって感じですね」
サイファー「…やれやれ。とにかく初飛行だったから整備はいつもより念入りに頼むぜ」
烈風妖精「わかったわ」
―――――
―――
―
―震電Ⅱのテスト任務を終えて2ヶ月を過ぎたある日、ある噂がサイファーの元に伝わった―
サイファー「バーサーカー…なぁ。なんなんだいったい」
鳥海「ある海域で最近たまに出現すると言われている正体不明の敵ですね」
サイファー「鹵獲任務の時に出た北方棲姫みたいな強力な深海棲艦なのか?」
鳥海「いえ、それが相手は敵味方問わず攻撃をしてくるそうです」
サイファー「正に狂戦士(バーサーカー)そのものということか。正体は判明してないのか?」
鳥海「戦闘機ということは判明してはいるんですが、バーサーカーが出現したら最後、艦娘も深海棲艦も全て撃沈されてしまって正体が不明なんです」
サイファー「その情報はどこから得た情報だ?」
鳥海「先日演習した他の基地の艦娘から得た情報です」
サイファー「しかしそれだけ被害が出ているなら大本営からなんらかの通達があってもいいはずなんだがな」
鳥海「大本営も調査中とのことみたいです。出くわしたら最後、撤退の余地も無く撃沈されてしまうらしく情報があまり入手できないようです」
サイファー「出現位置は特定出来ているのか?」
鳥海「大体は特定は出来ているのですが、完全な特定は出来ていませんね。出現位置が移動しているみたいでして」
サイファー「出現の予見が難しく、かつ逃げられない…か。ステルス機かもしれんな」
鳥海「しかし、艦娘はともかくとしましても、深海棲艦まで撃沈するのは通常の戦闘機では難しくありませんか?」
サイファー「確かにな。俺も妖精達(あいつら)のサポートが無ければまともに戦うのも困難だからな」
サイファー「謎が謎を呼ぶ事件だな。第3勢力が出てきたと考えるべきか…」
鳥海「アークバードやストーンヘンジでもあればそうなのかもしれませんが、相手は戦闘機であったという情報がありますのでなんとも…」
サイファー「核ミサイルか。いや、核なら真っ先に判明するな。それに核を使用したとなればどの国も黙っていないはずだ」
鳥海「あくまで噂ですが、出現位置が徐々にこのブイン基地に近づいているみたいです」
サイファー「ここが目的地なのか、それとも通過点なのか。どちらにせよ防衛ラインに来るならば迎撃行動に移らんといかんな」
鳥海「基地周辺の防御を固めますか?」
サイファー「そうだな。念には念を入れておいたほうがいい。俺のストライクイーグルもいつでも発進できるようにしておこう」
鳥海「それこそ危険ではありませんか?相手は敵味方問わず攻撃してくる得体の知れない敵ですよ」
サイファー「だからこそだ。戦闘機を相手にするなら戦闘機だ。艦娘も深海棲艦も撤退の余地も無く沈められる相手ならば俺が相手をしたほうがいい」
鳥海「確かに今回の事件は戦闘機が相手ですし、サイファー司令官さんが一番適任ですね」
サイファー「それになにやら嫌な予感がするんでな。もしかすると俺の機体と同じ、もしくは似たシステムを使っているのかもしれんからな」
鳥海「本当はサイファー司令官さんには出撃してほしくないんですよ」
サイファー「本当にどいつもこいつも俺が出撃することには反対するんだな」
鳥海「それは当たり前ですよ。基地司令官なんですから」
サイファー「一応自覚はしているさ。けど今回ばかりは俺以外に適任者がいないな」
鳥海「…落とされないでくださいね」
サイファー「当たり前だ。傭兵は生き延びてなんぼだ。基地司令官のポジションにいてもそれだけは忘れるこたぁねぇよ」
knock knock
サイファー「入れ」
ガチャ
大淀「失礼します!サイファー提督、出撃していた艦隊が戻りました!損害は全員大破。相手は謎の戦闘機だったとの報告です!」
サイファー「バーサーカーか」
大淀「既にサイファー提督のお耳にも届いていましたか。十中八九バーサーカーで間違いないかと」
サイファー「しかし無事に帰投出来たのは不幸中の幸いだ。高速修復剤の使用を認める。全員をここに呼び出せ。事情を聞きたい」
大淀「了解しました。直ぐに使用し、召集します」
バタン
鳥海「恐れていたことが現実になってしまいましたね」
サイファー「そうだな。しばらくは出撃は控えさせ、防衛ラインの守備を固める。それより外の範囲の索敵は俺が行う」
鳥海「了解しました。各員に伝達します」
サイファー「頼んだ」
―――――
―――
―
翔鶴「はい。たまたま彩雲から目視で発見したとのことでしたので」
サイファー「よく逃げ切れたな」
青葉「もう必死でしたよ。たまたま近くに無人島がありまして、そこの森に全員身を隠してなんとか逃れました」
サイファー「艦娘でないと出来ないことだな。よく機転を利かせたな」
瑞鶴「もう少しで轟沈するところだったわ。ダメコン積んでなかったら確実に今頃海の藻屑ね」
古鷹「全員ミサイルの直撃を受けてしまいましたから。噂を聞いて念のためにと大和さんが用意してくれなかったら危なかったです」
夕立「すっごく痛かったっぽい」
サイファー「ちなみに発見した彩雲はどうなった?」
翔鶴「残念ながら全機撃墜されてしまいました」
サイファー「そうか。有力な情報は得られず…か」
翔鶴「申し訳ありません。しかし敵機の正体が判明しました」
サイファー「相手は何だ?ワイバーンか?それともファルケンか?」
翔鶴「それが…」
サイファー「なんだと!?震電Ⅱの量産型であるF-3はまだロールアウト以前の段階のはずだ!それがなぜ…」
能代「恐らくサイファー提督も搭乗した試作型ではないかと」
サイファー「だろうな。どれだけ試作機を用意したのか問い合わせる必要があるな。いつ作られたのが使用されているのかが判明すれば大きな手がかりになる。よくやってくれた」
翔鶴「いえ、彩雲達が必死に情報を送ってくれたおかげですから」
サイファー「ちなみにその時、付近に深海棲艦はいたか?」
瑞鶴「いたわ。彩雲はそれを発見して翔鶴姉の所に戻ってる最中に震電Ⅱに出くわしたのよ」
サイファー「深海棲艦は…どうなったか聞くまでもなさそうだな」
古鷹「相手も全員轟沈していました。レーダーに反応が完全に無くなってましたから」
サイファー「正に敵も味方も区別無しの狂戦士(バーサーカー)…か。しばらくはこの基地からの出撃は控え、基地の防衛に専念する。詳しい事は鳥海から聞いてくれ」
翔鶴「了解しました。後ほど今回のことをまとめた報告書を提出します」
サイファー「頼む」
瑞鶴「まさかとは思うんだけど、サイファー提督さん出撃する気?」
サイファー「今すぐにスクランブル発進というわけではないがな。相手が震電Ⅱとなればなお俺が相手をしないとダメだろうな」
青葉「流石に今回は誰も止められませんね。震電Ⅱを知り尽くしたサイファー司令官じゃないと相手にするのはちょっと難しいですね」
夕立「こればっかりは仕方ないっぽい~。でもサイファー提督さん、絶対に撃墜されたらダメっぽい!」
能代「せめて全力でサポートいたします。だから必ず無事に帰ってきてくださいね」
サイファー「ありがとうな。俺だって落とされるつもりなんてこれっぽっちもねぇからな」
瑞鶴「サーンキュ!ありがたく頂くわね」
翔鶴「すみませんサイファー提督。お気を使わせたみたいで」
サイファー「なに、気にするな。たまたまとはいえ他の基地では撃沈された者も出ているんだ。無事に帰ってきた祝いとでも思って受け取れ」
夕立「ぽい~!サイファー提督さん、ありがと~!」
バタン
サイファー「バーサーカーの正体が震電Ⅱとはな。まさか…いやそんなはずはないと思うが…」
―――――
―――
―
サイファー「そうか。…ふむ……了解した。また何かわかったら連絡をくれ」ガチャン
長門「何かわかったのか?」
サイファー「ああ。嫌な予感の一つが当たっちまったよ」
長門「嫌な予感の一つ?なんだそれは?」
サイファー「バーサーカーが乗っている震電Ⅱだ。そいつが俺が実戦テストで使っていた震電Ⅱで間違いないんだとよ」
長門「なっ!?しかしあれはテストで得たデータを取るために製造元に送り返されたのではなかったのか!?」
サイファー「妖精達を搭載して深海棲艦に対抗した唯一の震電Ⅱだからな。飛行データ以外のデータを取得するために研究機関に送られたんだとよ」
大淀「しかし、システム自体はアンインストールしたとおっしゃっていませんでしたか?」
サイファー「ああ。どうやって復旧したのか、それとも別の似たようなシステムを構築したのかはわからんが、送られた先が鹵獲した艦載機を解析している機関だとな」
長門「だとするともしかすると…」
サイファー「当たってほしくはないんだがな。俺が使えるのはあいつらと意思の疎通が出来るからだからな」
大淀「大本営は研究機関に問い合わせているんでしょうか」
サイファー「それが報告を受けて調査してから問い合わせているらしいが、のらりくらりとかわされているんだとよ」
長門「だったら直接監査に行けばいいのではないのか?」
サイファー「管轄が違って一筋縄ではいかんようだ。国家機関ともなると『はいそうですか』とすんなりいかんもんだからな」
長門「っええい!なんともどかしい!」
サイファー「落ち着け。情報が内閣にまで正確に伝われば政府から直々に監査命令が下るだろう。それまでは俺達に出来ることをやるだけだ」
長門「くそっ!我々は何も出来んというのか…」
knock knock
サイファー「入れ」
ガチャ
鳥海「防衛部隊から入電です!基地の沖合いで空戦が行われている模様!編隊は味方識別信号を出しているのとことです!」
サイファー「編隊が相手しているのは特定出来ているのか?」
鳥海「詳しくはわかりませんが、1機を追撃しているようです。恐らくは…」
サイファー「大淀、この付近で演習が行われる予定はあったか?」
大淀「いえ、そのような予定があることはこちらには情報として入ってきていません」
サイファー「バーサーカーが出てきたか。防衛に回っている艦隊を下げろ!ストライクイーグルで出る!」
大淀「了解しました!」
サイファー「対空特化の艦娘は艤装を完全対空仕様に換装後、最終防衛ラインで待機!他の者は港で待機だ!」
長門「了解した!全員に通達する!サイファー提督、気をつけてくれ」
サイファー「ああ。出撃するぞ!」
―――――
―――
―
烈風妖精「急いだほうがいいわね。高度制限解除と同時にシステム起動するわよ」
サイファー「ああ、頼む。もう1つ嫌な予感がするからな。ただの戦闘機を相手するなら俺だけでいいが…」
大淀『サイファー提督、防衛ラインにいた部隊は全て帰投しました!』
サイファー「疲れているところ悪いが、艤装を換装後に即待機させてくれ」
大淀『了解しました!』
サイファー「離陸開始地点到達。大淀!」
大淀『進路クリア!サイファー提督、発進どうぞ!』
サイファー「ストライクイーグル、出るぞ!」ヒュィィゴォォォォォ
サイファー「わかっている…が、ここは無理をするタイミングだな」
<System Pixy Standby>ピピッ!
彩雲妖精「さっきから気になることがあるわ」
サイファー「なんだ?」
彩雲妖精「同化前だからよくわからなかったけど、敵機の反応が増えたり減ったりしてるのよ」
サイファー「敵は1機じゃないということか?」
彩雲妖精「わからないわ。けど私達に感知出来るものだから普通とは違うなにかでしょうね」
サイファー「何かを隠し持っている可能性があるということか。急ぐぞ!」
―――――
―――
―
流星妖精「まだパイロットは存命かもしれません。基地のみんなに救護を要請しましょう!」
サイファー「そうしたいのはやまやまだが、今あいつの近くに来させる訳にはいかん。犠牲が増えるだけだ」
流星妖精「しかし…!」
烈風妖精「サイファーの言うとおりよ。ここで艦娘を前に出せば今度こそ撃沈されかねないわ」
流星妖精「見捨てるしかない…んですね」
サイファー「上手くベイルアウト出来ていれば戦闘終了までは持ちこたえられる。問題はベイルアウトするだけの余裕があったかだがな」
彩雲妖精「サイファー!ミサイルの射程内よ!」
サイファー「ここでみすみす逃がしはしない!AMRAAM Fire!」バシュゥゥン
―サイファーの発射したAMRAAMはバーサーカーの震電Ⅱを目標に捉えるも回避された―
烈風妖精「ダメね。避けられたわ」
サイファー「震電Ⅱの機動性を考えればこの距離からなら避けられるだろうな」
烈風妖精「有視界戦闘は避けたかったわね」
バーサーカー『わざワざ出向いテくれたノかい?サイファー、いヤ円卓の鬼神さんヨ』
サイファー「俺の使ってた震電Ⅱで何故味方を殺す!?何が目的だ!?」
バーサーカー『理由?ハッ!んナもん気持チ悪ぃからに決マってんだロウが!』
サイファー「そんな個人的な理由で戦場を引っ掻き回してるって言うのか!?」
バーサーカー『あアそうダ!海の上ニ人が立ってんダぜ?人間じャねぇだろぅガよ、深海棲艦モ艦娘も!だカら化物退治しテンだよ!』
サイファー「どうやって深海棲艦まで撃沈した!?あれは通常では不可能なはずだ!」
バーサーカー「お前ハ妖精を味方に付ケテ戦ってルんだったな。だったラ判るんジャねぇのか?」
―その時、1機の戦闘機が本土方面からバーサーカーに向かって飛来してきた―
ピクシー『ようやく見つけたぜ!てめぇが敵味方お構いなしに殺しまわってるバーサーカーだな!?』
サイファー「ピクシー!?」
ピクシー『よぅ相棒、まだ生きてるか?生きてるならこいつをさっさと落としちまおうぜ!』
サイファー「お前、その機体を何処で!?」
―レーダーに映るピクシー機はADFX-02と表示されていた―
ピクシー『ちょっくらツテでな。こいつは悪さをしすぎだ。こいつにゃこれぐらい必要と判断したから持ってきたんだ』
バーサーカー『まサか片羽の妖精まデ出てくるトはな!丁度いイ、何故俺ガ深海棲艦マで沈めらレるか見せテヤるよ!』
―モルガンから散弾ミサイルが発射されバーサーカーの震電Ⅱを襲う。しかしバーサーカーは高度を上げようともせず、避けようともしない―
バーサーカー『お前ラのおかげで俺はこノ力を手ニ入れた!感謝すルゼぇ!』
彩雲妖精「!?サイファー、ダメ!急速旋回して!」
彗星妖精「ちょっとこれはシャレにしては笑えないよ!?」
<Warning! System Elf Sensed>ピピッ
サイファー「システム…エルフ!?」
バーサーカー『サあ、俺を守レ艦載機ドも!』
―震電Ⅱの通常爆弾の投下口から投下された爆弾がクラスター弾のように炸裂。中からは小型の爆弾ではなく深海棲艦の艦載機が多数現れ、震電Ⅱを守るように位置を取った―
ピクシー『なんだと!?深海棲艦の艦載機を持ってやがるのか!?』
―空中で炸裂したMPEMはそのまま震電Ⅱから発射された艦載機に命中。深海棲艦の艦載機に守られ震電Ⅱは無傷に終わる―
サイファー「離脱しろピクシー!やつの機体からシステムエルフを感知した!恐らくだがそれが深海棲艦まで沈めたシステムだ!」
―続けざまに艦載機を発射する震電Ⅱ。発射された艦載機がピクシーを目掛けて飛行する―
ピクシー『下から!?この俺とモルガンを舐めんなっ!TLS Fire!』カチッ
―モルガンから照射されたTLSが向かってくる艦載機を落としていくが、それでもなおピクシーに向かって飛来する―
ピクシー『こいつら、避けようとしねぇ!まさかカミカゼアタックする気か!?』
サイファー「くそったれ!烈風!」
烈風妖精「全ては落としきれないわ!」
サイファー「それでもあいつのダメージを最小限に食い止めるんだ!サイドワインダー、Fire!」バシュバシュゥゥン
彩雲妖精「サイファー!ロックされてるわ!」
バーサーカー『余所見してタらお前が落チるぜ、円卓の鬼神さんヨォ!』バシュゥゥン
サイファー「ちぃっ!」グィィ
―震電Ⅱから発射されたミサイルを寸でのところで回避に成功。一方、発射されたサイドワインダーが艦載機を捉え撃墜するも残りがモルガンに向かう―
ピクシー『ざっけんじゃねぇぞぉ!』ドガガガガ
―TLSの連続照射時間が終わり、機銃で対抗するも艦載機はモルガンに体当たり。そのダメージは右翼を破壊するまでに至りモルガンはバランスを崩し高度を下げていく―
ピクシー『くそっ!翼ふっ飛ばしやがった!流石にこいつはやべぇな』
サイファー「ピクシー!そのままブイン基地の方角へ飛べ!最終防衛ラインには艦隊が居るから拾ってもらえ!」
サイファー「お前の相手は俺だ!」ドガガガガ
バーサーカー『…当てテきやガったな!流石だゼ。それでコそ倒し甲斐がアるってもンだ!』
サイファー「摩耶!聞こえてるな!?ピクシーが被弾してそっちに向かっている!ベイルアウトしたピクシーを救出してブイン基地に運ばせろ!」
摩耶『ピクシーさんだって!?わ、わかった!基地にも連絡しとくぜ!』
ピクシー『悪ぃな、嬢ちゃんたち。戻ってきて早々また世話になるぜ。出来ればこのモルガンも運んでくれると助かるんだがな』
摩耶『やってみっけど、あんまし期待すんじゃねぇぞ』
―ピクシー撃墜により戦線離脱。サイファーとバーサーカーの一騎打ちとなった―
バーサーカー『お前にハこういう使い方は出来ネぇだろ!?行け、艦載機どモ!』
サイファー「あんまり俺を舐めるなよ!?サイドワインダー、Fire!」バシュゥゥン
―――――
―――
―
大和「ピクシーさん、大丈夫ですか!?」
ピクシー「ああ、なんとかな。しかしあいつはやっかいだぞ!まさかモルガンで落とされるとは思ってなかったぜ」
大鯨「すぐに手当てをします!こちらに!」
ピクシー「いや、大丈夫だ!この程度なら問題ねぇ!それよりハンガーに行かせてくれ!」
鳳翔「なにをなさるつもりですか!?」
ピクシー「あいつのストライクイーグルと同時に配備された予備機を使わせてもらう!」
大鯨「ダメですよ!その怪我で戦闘をするのは無茶です!」
ピクシー「やつは爆弾の投下口から艦載機を発射させやがった!サイファー機には無ぇシステムだ!このままじゃあいつが不利だ!」
鳳翔「ではせめて正規空母の皆さんに応援を要請します。ですからピクシーさんは治療を受けてください」
ピクシー「艦娘は出すのはダメだ!やつのミサイルの餌食になるだけだ!」
鳳翔「しかし…!」
大和「…わかりました。ストライクイーグルの使用を許可します」
ピクシー「サンキュー。悪ぃな、面倒かけちまってよ」
大和「しかしそのままでは許可出来ません。せめて応急処置だけは受けてください。それが条件です」
ピクシー「…わぁったよ。急いでくれ」
大和「鳳翔さん、大鯨さん、手が空いている艦娘(ひと)達も呼んで至急ピクシーさんの応急処置をお願いします」
鳳翔「わかりました」
大鯨「すぐに治療しますので待っていてくださいね」
ザッザッザッザッザッ
ピクシー「ん?」
―ピクシーが足音のする方向に目を向けると、そこには4人の妖精がいた―
ピクシー「なんだ?監視か?ちゃんと応急処置は受けるから心配すんなって」
紫電妖精「…このまま再出撃なさる気ですか?」
ピクシー「どういう意味だ?」
天山妖精「相手はサイファーと正反対ながら同じようなシステムを搭載してるんだよね?」
瑞雲妖精「このまま向かってもまた餌食になるだけよ。もうあのモルガンみたいにレーザーは撃てないんだから」
ピクシー「艦載機は相手できねぇかもしれねぇけど、本体なら相手は出来るはずだ。深海棲艦の艦載機でもなんでもねぇ、まぎれもねぇ震電Ⅱだからな」
景雲妖精「到達出来れば落とせるでしょう。けどそれには艦載機の壁が立ちふさがるわ」
ピクシー「なにもしねぇよりはマシだ。このままバーサーカーをほっとくわけにはいかねぇからな」
紫電妖精「陸軍としての意地…ですか?」
ピクシー「いや、そんなんじゃねぇ。あいつは危険すぎるんだ。艦娘と深海棲艦にだけに牙を剥いている存在に終わるとは到底思えねぇ」
瑞雲妖精「今度こそ死んじゃうかもしれないわよ!それでもいいの!?」
ピクシー「俺の命と引き換えにあんな危なっかしいやつを倒せるんなら安いもんだろ?それにここにはサイファーもいる」
ピクシー「ああ」
紫電妖精「なら私達が力をお貸します」
天山妖精「サイファーを司令官として認識してるから成功するかわかんないけどね」
景雲妖精「このまま見殺しにしたら夢見が悪いもの」
ピクシー「俺に…使えるのか?相棒と同じ力が…?」
瑞雲妖精「やってみないとわからないけどね。どうするの?」
ピクシー「…乗ったぜ、その賭け。頼む!」
紫電妖精「わかりました。手を出してください」
ピクシー「ああ。これでいいか?」スッ
天山妖精「ちょっとフワッとするかもだけど集中してね」
カッ!
武蔵「な、なんだ!?なんの光だ!?」
陸奥「ピクシーさんのいる方角からよ!?」
羽黒「あの光ってもしかして…」
伊168「嘘っ!?だってここはサイファー司令官が提督やってるのよ!?」
―覚悟を決めたピクシーの平和への信念が奇跡を起こした。ピクシーもまたサイファー同様、妖精に認められ提督としての資質を完全に開花させた―
瑞雲妖精「なんとかなったわね。成功よピクシー、いやフォルク提督、おめでとう!」
天山妖精「案外なんとかなるもんだねぇ!正直ビックリだよ」
ピクシー「フォルク提督…か。むず痒いな。相棒の気持ちがよくわかったぜ。俺のことはピクシーでいいぜ」
タッタッタッタッタッ
大鯨「な、なんの光ですか、さっきのは!?」
明石「ピクシーさん、何か異常事態でも!?」
ピクシー「いや、大丈夫だ。俺も妖精達(こいつら)に認められたってことだ。それより早いこと応急処置を頼むぜ」
鳳翔「ピクシーさんもサイファー提督と同じ力を得たんですね」
ピクシー「そうなるんだろうな」
景雲妖精「ピクシー、ストライクイーグルは烈風達もほとんど手を付けてなかったからシステムが構築されてないわ」
紫電妖精「ですからスーパーホーネットを使います。あれならすぐに使えますので」
ピクシー「わかった、用意しておいてくれ。すぐに発進するからな」
紫電妖精「了解しました!」
ピクシー「鳳翔、すまねぇけど大和に伝えておいてくれねぇか。イーグルじゃなくてホーネットを使うってな」
鳳翔「わかりました。お伝えしておきますね」
ピクシー「わりぃな。ってててて!もうちっと優しくやってくれてもいいんじゃねぇか?」
夕張「ごちゃごちゃ言わないの!提督になったんだったらこれぐらい我慢して!」
ピクシー「扱い悪くねぇか?」
明石「我慢してください。っと、出来ました!あくまで応急処置ですので無理はなさらないでくださいね。それと帰投したらきちんと治療を受けてくださいね」
ピクシー「わぁったよ。ありがとな!少しはマシに動けるぜ!」
大鯨「それとこちらの痛み止めを飲んでおいてください。眠くならないタイプですから」
ピクシー「何から何までありがとうな。ラリー・フォルク、出撃する(出る)ぞ!」
――――――
烈風妖精「流石にこれは私達も想定外ね。けど現実は現実ね。なんとかしないとジリ貧よ」
サイファー「ミサイルは節約しないと…な!」ドガガガガ
―震電Ⅱから発射された艦載機を機銃で撃墜していくサイファー。しかしその間にもバーサーカーから狙われ続ける故に全てを落とすわけにはいかなかった―
彩雲妖精「照準を受けてるわ!」
サイファー「ちっ!」クィ
バーサーカー『いツマで逃げ回れるカ?そンなに振り回しテタら燃料がもタネぇぞ?』
彩雲妖精「!?サイファー、方位210に反応が!」
流星妖精「これは…深海棲艦です!」
サイファー「やっかいなタイミングで現れてくれるな。艦種はわかるか!?」
彩雲妖精「空母がヲ級1、ヌ級1、重巡リ級1、軽巡ト級2、それと…空母棲鬼よ!」
サイファー「空母棲鬼だと!?何故こんなことろに!」
彩雲妖精「深海棲艦から発艦が確認されたわ!こっちに来るわよ!」
サイファー「バーサーカー!今は俺達がやりあってる場合じゃない!深海棲艦が来やがったぞ!」
バーサーカー『ハンッ!あいツラが到達すル前にお前を落トスまでだ』
サイファー「聞く耳持たずかよ!」
―深海棲艦側から発艦された艦載機が戦闘距離に近づいた―
サイファー「本体から沈める!彗星!」
彗星妖精「対艦ミサイルは節約するんだよね?SLAMで行くよ~」
サイファー「1発で決めろ!SLAM Fire!」バシュゥゥン
―発射された対地ミサイルSLAMは艦載機群を抜け空母ヲ級に向かい、命中。空母ヲ級を撃沈する―
彩雲妖精「艦載機、来るわ!」
サイファー「邪魔だ!落ちろ!」ドガガガガ
彗星妖精「ちょっとまずいね。フレア、使うよ~!」
―深海棲艦側の艦載機がサイファーに立ちはだかる。しかし一部はバーサーカーにも向かっていった―
バーサーカー『邪魔すンな!艦載機どモ、こいつラヲ相手しテやれ!』
流星妖精「同士討ち!?艦載機同士が闘りあってますよ!」
サイファー「露払いしているだけだろう。烈風!」
烈風妖精「今狙っていいのかしら?」
サイファー「深海棲艦なら艦娘でも相手は出来る!なら奴から落とすまでだ!」
烈風妖精「わかったわ。照準をお願い」
烈風妖精「行きなさい、AMRAAM」バシュゥゥン
バーサーカー『こノ状況でよクやるっ!雷撃機発射ダ!』
―爆弾投下口から投下された爆弾から雷撃機タイプが出現。チャフの代わりとなりAMRAAMの直撃を受け全機爆散―
バーサーカー『あ~ア、もっタイねぇなァ。お前ラのせイデ変なタイミングで使っチマっただろうがよ!化物は化物らシク沈んでロヨなぁ!』バシュバシュゥゥン
烈風妖精「深海棲艦に向かって発射した!?本当に深海棲艦の味方じゃないのね」
サイファー「こっちの味方でもないのが辛いところだが…な!」ドガガガガ
―震電Ⅱから発射されたASM-3とALFIREが深海棲艦に向かって発射され、軽空母ヌ級が撃沈。空母棲鬼が大破した―
空母棲鬼『返セッ!オ前達ガ奪ッタ我々ノ、ソシテホッポカラモ奪ッタ艦載機ヲ返セッ!』
バーサーカー『しブテぇな!そんナに北方棲姫が恋しイナら同じ所に送っテヤるよ!』
サイファー「お前が余所見をしている場合ではないぞ!」ドガガガガ
バーサーカー『チッ!左翼に被弾しタか。流石ハ円卓の鬼神だな。よく見エてやガる』
サイファー「引けっ!深海棲艦ども!今俺とバーサーカーを相手したところで無駄死にするだけだ!」
――――――
紫電妖精「高度制限を解除と同時に機体にアクセスします。上手くいけば即座にシステムが起動出来るはずです」
ピクシー「相棒の機体だからな。案外頑固かもしれねぇぜ」
天山妖精「けどその本来の持ち主がピンチだから力は貸してくれると思うよ」
ピクシー「頼りにしてるぜ。離陸開始地点到達、大淀!」
大淀『滑走路クリア!離陸開始よし!ピクシーさん発進どうぞ!』
瑞雲妖精「初陣よ!かっこよく決めちゃって!」
ピクシー「初陣…か。そういやそうなるんだな。今行くぜ、相棒!ピクシー、スーパーホーネット、出るぞ!」ヒュィィゴォォォォォ
大淀『ピクシー機、高度制限を解除します!ピクシーさん、サイファー提督をお願いします!』
ピクシー「あぁ、任しときな!」
紫電妖精「…アクセス完了!いけます!」
瑞雲妖精「流石サイファーの機体だけあって、期待を裏切らないわね」シュゥン
景雲妖精「持ち主に似るものよ。サイファーは恐ろしいまでに戦況を見極めるもの」シュゥン
紫電妖精「全面協力してくれるみたいです。ピクシーさん、間違ってもこの子を落とさないでくださいね」シュゥン
<System Pixy Standby>ピピッ!
ピクシー「こんな表示がされるんだな。なんか名前を呼ばれてるみたいな気分だぜ」
景雲妖精「あなたは片羽の妖精でしょ?システムとTACネームが一緒だからって本当に片羽を落とさないでちょうだいね」
ピクシー「んなつもりはねぇっつうの。急ぐぞ!」
―――――
―――
―
烈風妖精「無力化しただけでは弱体化は始まらないわ!機銃で応戦するしかないわ!」
サイファー「しかしやつは恐らく司令塔になっているはずだ!引かせるためにも沈めるわけには…」
バーサーカー『うっとオシいハエ共が!そんナに落ちタきゃ母艦を沈メてやるヨ!』
彗星妖精「ダメ!サイファー、バーサーカーが空母棲鬼を狙ってる!」
サイファー「やらせるかよ!サイドワインダー、Fire!」バシュゥゥン
彩雲妖精「サイファー!直上!」
サイファー「ちっ!」クィ
―直上にいた艦載機からの機銃攻撃。これを回避するが、機体にわずかな損傷を受ける―
サイファー「右翼に掠ったか!?だがこの程度なら!」
流星妖精「サイファー、大丈夫ですか!?サイファーが被弾するなんて」
サイファー「俺だって人間だ。回避しきれないものぐらいはある。だがこのままではまずいな」
バーサーカー『鬼神まデとことん邪魔をすルか。だったら…』
―震電Ⅱに爆弾投下口が開き、艦載機の発射準備に入る―
バーサーカー『まとメテ片付ケろ!行け、爆撃機どモ!』
―艦載機が入ったクラスター爆弾が投下された。艦載機が発射のために破裂しようとしたその時…―
フォォォォォン
ドォォォォン
サイファー「対空ミサイル!?誰だ!?」
ピクシー『いい狙いだったぜ。完璧なタイミングだ』
サイファー「ピクシー!?お前、そのスーパーホーネットは…」
ピクシー『よぅ相棒、まだ生きてるか?ちょっと機体借りてるぜ』
バーサーカー『死に損ナいの片羽が!やツを落トせ!』
サイファー「お前じゃ艦載機の相手をするのは無理だ!離脱しろ!」
ピクシー『まぁ見てなって。紫電!よぉく狙えよ!?AMRAAM Fire!』バシュバシュゥゥン
―AMRAAMを2発発射し艦載機を撃墜。続けざまに機銃を発射し戦闘機タイプの艦載機を撃墜していく―
サイファー「紫電だと!?お前、まさか…!?」
ピクシー『俺もお前みたいに認められたってこった。艦載機と深海棲艦の相手は俺がする!サイファーはバーサーカーを!』
サイファー「ああ。頼んだぞ!」
サイファー「!?奴の口調が…?」
ピクシー『大方完全に意識が乗っ取られたってところだろうよ。深海棲艦の力なんか無暗に使うからこうなるんだ』
サイファー「使い方を間違った武力などただの暴力に過ぎんというのに!」
ピクシー『ギャラリーにはご退場いただこうぜ!天山!狙いはわかってるよな?ハープーン、Fire!』バシュゥゥン
―ピクシーの放ったハープーンミサイルが重巡リ級に命中し撃沈。軽巡2隻に撃沈寸前の空母棲鬼はもはや勝ち目が無いと理解したのか、戦意は喪失していた―
サイファー「!っここだ!烈風!」
烈風妖精「確実に当てるわ!」
サイファー「サイドワインダー Fire!」バシュゥゥン
―サイファーの放ったAMRAAMがバーサーカーの尾翼に命中。震電Ⅱはバランスを崩し高度を落としていく―
バーサーカー『オノレッ!オノレェェェェ!!』
ピクシー『艦載機共は粗方片付いたぜ!あとはそいつだけだ!』
ピクシー『バーサーカーの動きがさらに鈍くなってやがる!?』
サイファー「俺達と闘りあう前にも戦ってたんだ。恐らく燃料切れだ。力に溺れ自分自身が見えなくなったツケが回ってきただけだ!」
ピクシー『だからってこのまま見逃すわけにもいかねぇよな』
サイファー「当然だ。償いは受けされる!烈風!」
烈風妖精「意図は理解してるわ」
サイファー「なら良し!AMRAAM Fire!」バシュゥゥン
―サイファーの放ったAMRAAMは震電Ⅱのエンジン部を直撃。機体は制御を完全に失い墜落していく―
ピクシー『バーサーカーは片付いたな。けどあいつらはどうする?』
サイファー「聞こえているなら今は引け!もはや勝ち目はないことは見えているだろう!?」
空母棲鬼『コレデ勝ッタト思ウナ!私達ハオ前達ノシタ事ヲ忘レハシナイ!覚エテイロ、人間ドモ!』
―空母棲鬼はそう言い残すと軽巡ト級2隻を引き連れて戦線を離脱していった―
ピクシー『やれやれ。これで一段落だな』
サイファー「いや、まだだ。最終防衛ラインの艦隊全員に告ぐ。震電Ⅱが墜落した場所の周辺を捜索だ!パイロットを見つけ次第拘束し、基地に連行しろ!」
摩耶『りょ、了解!戦闘は終わったのか!?』
サイファー「ああ。一先ずはミッション終了だ。だがまだやることが残っている。奴から情報を引き出す必要がある」
時雨「サイファー提督は無事なのかい?」
サイファー「少し被弾したが問題無い。周辺の警戒は俺とピクシーで行う。艦隊は全員前進だ!」
『了解!』
―――――
―――
―
大和「お疲れ様でしたサイファー提督。お怪我はありませんか?」
サイファー「ああ。俺は問題無い」
雷「機体に少し傷があるわ。まさか被弾したの!?」
サイファー「避け切れなくて少しな。掠った程度だ」
扶桑「そんな…!サイファー提督に当てる相手だったなんて」
サイファー「あの状況じゃ完全に避けようとすればGで意識が飛びかねんかったからな。最低限のダメージに抑えるしかなかったんだ」
阿賀野「どんな修羅場潜り抜けたのよ、サイファー提督さん」
サイファー「機体は壊れても直るんだ。肉を切らせて骨を絶つと言うだろ?」
那智「切らせた肉が物凄く浅い気がするがな」
矢矧「サイファー提督が敵だったら本当に洒落にならないわね」
大和「ところでピクシーさんはどちらに?」
サイファー「まだ周辺の警戒に当たっている。俺は燃料の関係で先に帰投せざるえなかったからな」
タッタッタッタッタッ
大淀「サイファー提督!艦隊が無人島の浜で震電Ⅱを発見したとのことです!」
サイファー「そうか。震電Ⅱを引っ張ってこれるなら持って帰ってこさせてくれ。残りは引き続きパイロットの捜索を続けされるんだ」
サイファー「パイロットがどうした?」
大淀「パイロットはベイルアウトせずに震電Ⅱのコックピットに残っているそうです」
サイファー「ベイルアウトは出来るように落としたはずだ。狙いがわずかにずれたか?」
烈風妖精「それはないわ。あの位置に命中したらベイルアウトは可能のはずよ。寸分の狂いも無く命中させたもの」
大淀「パイロットの意識は不明。どうされますか?」
サイファー「…現場の人数を増員して基地まで運べ。空母の連中とピクシーで空から、残りは周辺から警戒しつつ運ばせろ」
大淀「了解です!」
タッタッタッタッタッ…
扶桑「どう思われますか?サイファー提督」
サイファー「奴は深海棲艦の艦載機に意識を乗っ取られた。これ以上無様な姿を晒すならいっそ死を選んだのかもしれん」
サイファー「普通なら海面に叩きつけられて即死だ」
潮「そんな…。どうにかならなかったのですか?」
サイファー「普通ならエンジンが止まって高度が落ちて墜落すると判明した時点でオートで作動するはずなんだがな。奴のシステムがそれを許さなかったのかもしれんな」
高雄「…悲しいですね」
サイファー「力に溺れ暴走した者の末路といったところだろう。自分の正義を信じることと、自分の正義を振りかざして巻き込むことは一見すると似ているが意味が違う」
大和「私達もこの力に溺れないようにしないといけませんね」
サイファー「当然だ。武器は相手を殺すための道具だが、使い方さえ間違えなければいくらでも助ける道具に変わる。それを今一度よく頭に叩き込んでおけ。そして絶対に忘れるな」
『はい!』
―――――
―――
―
―震電Ⅱを引き連れた艦隊が帰投し、港に震電Ⅱが引き上げられた―
サイファー「確かに中にパイロットがいるな」
ピクシー「引っ張ってる最中も全く動く気配は無かったぜ。流石にベイルアウトせずに墜落したんだ。生きちゃいねぇだろうな」
サイファー「……」
ピクシー「お、おいサイファー!」
大淀「き、危険です!近寄っては…!」
カチャッ…ピッ プシュー
サイファー「電気系統はまだ生きていたな」
大和「サイファー提督!離れてください!何が起きるかわからないんですよ!?」
流星妖精「大丈夫です。サイファーは直感で感じ取ったのだと思います」
彗星妖精「もうこの震電Ⅱ(子)に何かを仕掛ける力は残ってないってね」
バーサーカー「…ゴホッ!…ゲホッ!」
サイファー「!?」
ピクシー「おいおい、嘘だろ!?」
武蔵「なんという生命力だ」
妙高「普通じゃありえませんよ」
霧島「なんてことなの!?これだけの損傷を受けるほどの衝撃を受けてまだ生きているなんて!」
サイファー「お前がバーサーカーで間違いないな?」
バーサーカー「ああ…。間違いなく…お前と闘ったパイロット…だ…」
サイファー「とりあえず医療機関で治療を受けてもらう。尋問はそれから始めさせてもらう」
バーサーカー「へへっ…。残念だが…ゴホッ!…そうもいかねぇみてぇだ。流石に…限界だ。なんで生きてんのかすらわかんねぇんだ」
サイファー「…どうして艦娘を沈めた?」
バーサーカー「だってよ…。悔しいじゃねぇか。ゲホッゲホッ!俺達大の大人の男が年端もいかねぇような女に守られてんだぜ?」
サイファー「だから沈めたというのか!?」
バーサーカー「沈める気なんて無かったさ。けどよ、頭ん中にずっと聞こえ続けんだぜ?あれは敵だ。沈めるべき敵だってよ」
サイファー「艦載機の声…か」
サイファー「何故深海棲艦の技術を転用しているとわかっていて、なおこの震電Ⅱに乗り続けた?」
バーサーカー「俺は力が欲しかった…。艦娘に…ゲホッ!艦娘に頼らねぇで国を守れる力を…」
サイファー「制御しきれない力とわかってもか?」
バーサーカー「深海棲艦を沈めることに成功して浮かれちまったんだ。その結果が…これだ」
サイファー「お前の業が招いた結果か」
バーサーカー「そう…だな。俺がやっちまったことだな。サイファー、上層部に気をつけろ。あいつらは俺達も艦娘も…ゴホッ!ゴホッ!ゲホッ!」
サイファー「お、おい!しっかりしろ!」
バーサーカー「研究所の奴らはまだなにかをやるつもりだ。頼む…。やつらを止めてくれ。円卓の鬼神のあんたなら出来るだろ?」
サイファー「…わかった。約束しよう。俺がそいつらの陰謀を止めてみせる」
バーサーカー「頼んだぜ…。俺が出来なかったことを…あんたに…」ガクッ
バーサーカー「」
サイファー「………」
ピクシー「サイファー…」
サイファー「」フルフル
ピクシー「そうか…」
大淀「了解しました。身元の調べ、手続きしておきます」
サイファー「明石、夕張、この機体は証拠になる。厳重に保管の上、暴走しないよう封印しておけ」
明石「了解です!」
夕張「武装の類は全部外しておくわ。妖精さん達の手も借りるわね」
サイファー「頼んだ」
大和「結局、彼も犠牲者だったのでしょうか…」
サイファー「そうとも言えるし、そうでないとも言える。結局は己自身を見失って暴走した結果だ。自分を見極めていればどちらにもならなかったかもしれん」
扶桑「彼も国民を守りたいと想っていた戦士だったのでしょう」
サイファー「しかしそれは道を踏み外さない限りだ。踏み外してしまえばただの殺戮者だ」
愛宕「報われないわね」
サイファー「だからこそ自分自身を見極めることが大切だ。何が正しくて、何が間違っているのか、それをしっかりと見据えるだけの視野が必要不可欠だ」
阿賀野「…もし私達が暴走したら、サイファー提督さんはどうするの?」
サイファー「全力で止めるまでだ。それが本当に正しいのか、その答えが間違っていないかを見極めさせる」
響「それでも止まらなければ?」
サイファー「その時は俺が力を持って相手をする。それが司令官の役目であり、俺自身がやるべきことだと思っているからな」
サイファー「さぁ、今日はもう全員休め。負傷した者が居れば順次修復に入れ。それ以外の者は補給を受けてこい」
『了解!』
―その場からサイファーとピクシーを残し、全員立ち去っていった―
サイファー「その根本たる原因を作った奴らを叩き潰す必要があるな。幸い証拠になる震電Ⅱがこちらにある」
ピクシー「ここからはカードを切るタイミングが重要だな」
サイファー「ああ。ところでお前、ベイルアウトは成功してるとはいえ大丈夫なのか?」
ピクシー「実はさっきから色々と痛みがな…」
サイファー「お前が一番負傷してんだろうが。さっさと治療を受けて来い!」
ピクシー「わぁってんよ。それとよ、一つ頼みがあるんだが」
サイファー「なんだ?」
ピクシー「この基地にある予備機のストライクイーグル、あれ俺が使ってもいいか?」
サイファー「予備機だしな、構わんぞ。スーパーホーネットもあるし。モルガンはどうする気だ?」
ピクシー「ありゃあ特殊な機体だからな。修理はするが、簡単にはパーツは届かねぇだろうな。ま、気長に直すさ」
サイファー「上げられた機体を見たが、よくあれだけの損傷で済ませたな」
ピクシー「ま、それも腕の内ってこった。んじゃ俺も治療を受けてくるとすっか。機体は俺のパーソナルカラーに塗らせてもらうぜ!」
サイファー「ああ、好きにしろ」
サイファー「あいつも妖精に認められた存在…か」
サイファー(しかし上層部に注意しろと言っていたな。イーグルで俺を飼いならしたつもりだろうが、噛み付かれることもあるってことを教えてやる必要があるな)
サイファー(ガルム隊の部隊章が神話の番犬に由来するものだってことをわからせてやるか。鎖を持っているのはお前達ではないということを…)
―――――
―――
―
TV<政府は開発メーカー側と調査を進め事故原因を調べて…
摩耶「あの事件、事故扱いになってんのかよ。クソが」
鳥海「そりゃそうよ。パイロットの暴走なんて正直に報道したら混乱を招くわ」
摩耶「けどよ、他の基地では沈められた艦娘もいるし、それにサイファー提督だってあれだけ戦ったんだぜ?」
サイファー「政府としては妥当な判断だろう。バカ正直に発表していたら国民が不安に陥るだけだからな」
雷「サイファー司令官はそれでいいの?あれだけ戦ったのに」
サイファー「逆に聞くぞ。深海棲艦の艦載機に意識を乗っ取られて、開発中の最新鋭機が暴走したなんて聞いたらどう思う?」
漣「う~ん、間違いなく政府フルボッコの大パニック不可避ですねぇ」
矢矧「下手に真実を発表すれば国民の不安を煽るだけね」
サイファー「水面下では調査が進められているだろう。震電Ⅱの開発はともかく、研究機関には調査の手が入っているはずだ」
高雄「ところでピクシーさんはどうなるんですか?」
サイファー「さあな。あいつの所属は陸軍だ。怪我の治療はここで行ったが、完治すれば戻るんじゃねぇか?」
ピクシー「いや、ところがそうでもねぇぜ」
サイファー「ピクシー!?どういうことだ?」
羽黒「ピクシーさん、怪我はもうよろしいのですか?」
ピクシー「ああ。心配かけたな。ま、着水時の打撲程度だったからな」
ピクシー「またしばらくはこの基地でやっかいになるってこった。表向きは憲兵隊への配置変更といったところだけどな」
サイファー「真実を知っている者を本土に戻して無駄な混乱を避けるためといったところか」
ピクシー「そういうこった。今回の事件のレポートは提出したが、相手は深海棲艦の研究機関だ。何処かで政治的な息がかかった連中がそうしたんだろうな」
曙「それって実質の左遷ってことじゃない!それでいいの!?」
ピクシー「結果としてまたサイファーと飛べるんだ。俺としては別にかまわねぇよ」
酒匂「ぴゃん!ピクシーさんはこの基地の配属なんですね」
潮「てっきり妖精さんに認めれたから他の基地の司令官さんになるかと思いました」
ピクシー「一応陸軍の所属だからな」
愛宕「傭兵から基地司令官のトップにいきなり座らされた人もいるわよ」
サイファー「俺のときはそもそも日本の軍自体に所属してなかったからな」
大和「指揮系統はどうなるんですか?」
ピクシー「従来通りサイファーが行うんだろ?俺は提督の資質があるっつっても陸軍だしな」
サイファー「てっきり少し長期休暇でも取れると思ったんだがな」
ピクシー「ま、相棒がなんらかの要因で基地を離れている時は代理で指揮することもあるかもしれねぇがな」
サイファー「変な指揮して沈められることはないだろうが、燃料と弾薬がぶっ飛びそうだからやめてくれ」
榛名「サイファー提督はお休みが欲しいのですか?」
サイファー「碌に観光らしいこともしてないからな。少しぐらい日本を楽しんでもバチは当たらねぇだろ」
サイファー「…おい」ギロッ
ピクシー「冗談だっての」
利根「本当にサイファー提督が何をしておったのか気になるのじゃ。のぅ筑摩?」
筑摩「突っ込んで良いことと悪いことがありますよ。この場合は後者の方だと思います」
利根「ぬぅ、いつか聞き出してみせるのじゃ!」
サイファー「ところで、お前に力を分け与えた妖精は誰なんだ?」
ピクシー「ああ。紫電、瑞雲、天山、景雲だ」
日向「瑞雲が付いたのか。さぞ特別な瑞雲なんだろうな」
ピクシー「特別かどうかはわかんねぇけどな。サイファーの彗星の役割に当たる爆撃を担当してるぞ」
明石「あ、こちらにいらしたんですね。ピクシーさん、ストライクイーグルの塗装が終わりましたよ」
ピクシー「お!やっとか。どれどれ、見に行くとするか」
サイファー「本当に塗ったのか?」
ピクシー「まぁな。せっかくのイーグルだしな」
朧「ガルム隊の揃い組みですね」
阿賀野「私達も見に行こうよ!」
比叡「レアな光景ですよ!本物のガルム隊が見られるなんて!金剛お姉様、私達も行きましょう!」
サイファー「またいらん騒ぎが…」
ピクシー「いいじゃねぇか、別によ。行こうぜ」
―――――
―――
―
金剛「ワ~オ!凄い迫力ネー!」
扶桑「これが…、本物のガルム隊なんですね」
雪風「ピクシーさんの機体は右の翼だけが赤いんですね」
時津風「モルガンもそうだったけど、こう揃ってると強そうだね~」
明石「どうですか?一応要望どおりに塗装はしましたけどこれでよろしかったですか?」
ピクシー「ああ、バッチリだ!」
夕張「私達は一足先に揃った状態を見たけど、実物を見ると震えが止まらなかったわ」
明石「伝説のガルム隊が目の前に揃ってるんですからね。そうそうお目にかかれない奇跡ですよ」
サイファー「…おい、あの部隊章はいいのか?」
ピクシー「ん?ああ、あれか。ウスティオに問い合わせたが使うのには問題無いってよ」
サイファー「よくウスティオも許可を出したな」
ピクシー「俺とサイファーの名前を出したら一発だったぜ」
ピクシー「使用許可が出たんだ。かまわねぇだろと思ってな」
<部隊章まで再現されてるよ!
<凄~い!本物のガルム隊だ!
<伝説の部隊ここにありね!
<ある意味最強の基地になったんじゃない?ここ
サイファー「着任早々なんつぅことやってくれてんだよ」
ピクシー「期待に応えたと言ってほしいね。ベルカ戦争を書面とかでしか知らねぇ連中には大ウケすると思ったんだがな」
サイファー「またいらん騒ぎになるだろうが」
ピクシー「そう言うなって、相棒。塗装変更も終わったことだし、ちょっくらデモンストレーションと行くか!」
<なになに?ガルム隊のデモ飛行!?
<いきなりビッグイベントじゃない!
<私サイファー提督の後ろに座りたーい!
<私はピクシー機に乗ってみたーい!
サイファー「ほら見ろ、いわんこっちゃない」
ピクシー「ハッハッハッ!まぁちょっとぐらい付き合えよ」
サイファー「ったく。これからが不安になるぜ。ほらお前ら、離れろ!ハンガーから出すぞ!」
―震電Ⅱと深海棲艦の艦載機の暴走事件はサイファーとピクシーの手によって収拾した。だが、この事件はまだ終わってはいなかった―
―――――
―――
―
knock knock
サイファー「入れ」
ガチャ
間宮「失礼します」
サイファー「間宮が執務室にくるなんて珍しいな。どうした?」
間宮「はい。ちょっとご相談がありまして」
サイファー「なんだ?」
間宮「甘味関連の予算の方を増額していただきたいんです」
サイファー「甘味の予算をか?何かあるのか?」
大和「ああ。もうそんな時期なんですね」
間宮「ええ。そうなんですよ」
サイファー「ん?どういうことだ?」
大和「ハロウィンですよ。この時期は子供にお菓子を配るからその手の予算を割いているんですよ」
サイファー「ハロウィン?ああ。あれか」
間宮「サイファー提督はハロウィンはどうされるんですか?」
サイファー「俺には馴染みのないイベントだからな。普通に仕事してんじゃねぇか?」
大和「サイファー提督はそうかもしれませんが、駆逐艦の子たちからすればサイファー提督にお菓子をもらうことを楽しみにしてる子もいると思いますよ」
サイファー「そんなもんか?」
大和「備えておかないとサイファー提督自身が痛い目を見させられるかと」
間宮「ありがとうございます。サイファー提督はどうされますか?」
サイファー「なにがだ?」
間宮「お菓子ですよ。サイファー提督が配られる分の物は用意しておきますか?」
サイファー「う~ん、そうだな。まだ期間はあるな。少し考えさせてもらおうか」
間宮「わかりました。けどなるべく早くご決断していただくようお願いしますね」
大和「サイファー提督だけじゃなくて戦艦や空母、重巡、軽巡、潜水艦組も用意するでしょうから、この時期は間宮さんも伊良湖さんも忙しくなってしまいますので」
間宮「それにサイファー提督の元にやってくるのは駆逐艦の皆さんだけとは思えませんので」
サイファー「おいおい!まさか戦艦の連中まで菓子をねだりにやってくるとか言わねぇだろうな?」
大和「…多分、大丈夫…とは思いますが…」
サイファー「なんだその間は?…やれやれ。ちょっくらピクシーと相談するか」
間宮「では私は用意がありますので失礼します」
サイファー「ああ。予算のほうは必ずどうにかしておく」
間宮「ありがとうございます。では失礼します」
バタン
サイファー「大和はどうするんだ?」
大和「私ですか?私はアイスがありますので」
サイファー「ああ、そうだったな。大和と武蔵にはそういう武器があるんだった」
大和「武器じゃないんですけど…」
サイファー「やれやれだ…」
―――――
―――
―
サイファー「ああ。俺には馴染みのないイベントだからな。お前がどうするのか参考にさせてもらおうと思ってな」
ピクシー「まぁ来た連中には配れるだけの数は確保しておくつもりだったぜ。今や日本でも凄ぇ騒ぎになるイベント事だしな」
サイファー「どうなるのか全く見当が付かんのだが」
ピクシー「ざっくり言や仮装パーティだな。特にここは人数も多いからそれなりに用意しておかねぇとやべぇことになるんじゃねぇの?」
サイファー「軍ってなんなんだろうって思えるぜ、ここにいるとよ」
ピクシー「締まりっぱなしじゃ息苦しくなっちまうからいいんじゃねぇか?」
サイファー「それはそうなんだが…。まさか財布がミサイル攻撃喰らうハメになるとは想定してなかったぜ」
ピクシー「いっそ盛大にばら撒いてやりゃいいんじゃねぇか?」
サイファー「お前なぁ…。ばら撒く…か。あっ!」
ピクシー「なんだ?いい案でも浮かんだのか?」
サイファー「まぁな。戦闘機のパイロットらしくやれる方法をな」
ピクシー「なんだそりゃ?」
サイファー「ああ。ちょっと思いついたんだがな…」
―・―・―・―
ピクシー「そりゃ面白ぇな!乗ったぜ、その案!」
サイファー「決まりだな!俺達も用意するか」
ピクシー「ああ!」
―――――
―――
―
暁「司令官!トリックオアトリートよ!」
電「トリックオアトリートなのです!」
サイファー「ふむ、第6駆逐隊全員だな」メモメモ
雷「なにメモ書きしてるの?」
サイファー「ああ、ちょっと必要なもんだ。菓子はあとで配るから少し待っていろ」
響「ダメだよサイファー司令官。言われたらすぐに渡さないとイタズラされるんだよ」
サイファー「そう言うな。ちょっと思考を凝らしたやり方で配ってやるからよ」
電「どんな配り方なのです?」
サイファー「それは後のお楽しみだ。まぁ待ってろ」
――――――
漣「トリックオアトリートですよ!さぁお菓子を寄越しやがれください!」
ピクシー「なんだそりゃ?まぁ待ちな。ちょっと面白ぇ配り方してやっからよ」
曙「またろくでもないこと考えてるんじゃないでしょうね」
ピクシー「心配すんなって。ちゃーんと配ってやっからよ」
朧「何をなさる気なんですか?」
ピクシー「それは後のお楽しみってな」
潮「サイファー提督にも言われたんですが、お二人でなにかなさるつもりなんですか?」
ピクシー「ま、そんなところだ」
漣「ま、いいですけど。すぐに貰えないならいたずらですね!覚悟を決めてください!」
ピクシー「まぁ待てって」
――――――
トリックオアトリート!トリックオアトリート!トリート、トリート、トリトリートォ!
ピクシー「お!いたいた!相棒、そろそろいいんじゃねぇか?」
サイファー「どれぐらい来た?」
ピクシー「ざっとこれぐらいだ」
―ピクシーは自身の元にやってきた艦娘のリストを書いた用紙をサイファーに見せ、またサイファーもピクシーに同様の用紙を見せた―
サイファー「いいだろう。そろそろ実行に移すか!」
ピクシー「ああ。そうだな!でないとこのままじゃ俺達がやべぇぜ!」
サイファー「歳が離れているからといって駆逐艦だけじゃなく他の連中まで押し寄せてきやがったからな」
ピクシー「そろそろ誤魔化すのも限界だからな」
サイファー「頃合だ。ハンガーに急ごう」
ピクシー「ああ。って、来やがったぜ、相棒!」
サイファーテートクゥ!トリックオアトリート!
ピクシーサントリックオアトリートデスヨー!
トリックオアトリート!トリックオアトリート!トトトットッ、トットトリート ボン!
サイファー「機体は既にスタンバイ出来ているはずだ!行くぞ!」ナンダイマノバクハツ?
ピクシー「おう!」ムツカタイホウジャネ?
―――――
―――
―
彗星妖精「まさかこんなことに駆り出されるとはね~」
サイファー「思い浮かんだのがこれだったからな。この任務にはお前の的確な爆撃が頼りだ」
彗星妖精「まぁいいけどね~。私の分はあるんだよね?」
サイファー「ちゃんと用意してあるから心配するな。烈風達の分も用意してある」
彗星妖精「それならいいけどね」
――――――
ピクシー「悪ぃな、こんなこと頼んじまってよ」
瑞雲妖精「しっかしよくこんなこと思いついたわねぇ。普通は思いついても実行しないわよ」
ピクシー「幸い俺とサイファーには妖精が付いてくれてっからな。レーダーやカメラだけじゃない補正が付つから出来る離れ業が可能だって踏んだんだよ」
瑞雲妖精「そう言われると悪い気はしないけど。だからってストライクイーグル引っ張り出すのはどうかと思うわよ」
ピクシー「モルガンならもっと手っ取り早く出来るんだが、あいにく修理中なんでな」
瑞雲妖精「そういうこと言ってるんじゃないんだけど…」
サイファー「離陸開始地点到達!ガルム1、出るぞ!」ヒュィィィゴォォォォォォ
――――――
ピクシー「相棒が離陸したな。続けてガルム2、出るぜ!」ヒュィィィゴォォォォォォ
――――――
彗星・瑞雲「それじゃお仕事しますか!」シュゥン
<System Pixy Standby>ピピッ!
サイファー「…よし、手はずどおり全員グラウンドに集まっているようだ」
ピクシー『んじゃ、いっちょ爆撃と行こうぜ!』
キィィィィィィィィン…
―――――
―――
―
―サイファーとピクシーが離陸する少し前、ハロウィンを楽しんでいた艦娘達はグラウンドに全員集められていた―
加賀「こんなところに全員集めてなにをする気なのかしら」
翔鶴「なんでもサイファー提督とピクシーさんの指示だそうですよ」
高雄「あの二人で何を企んだんでしょうか」
鬼怒「ガルム隊の2人でやることだからパナイことになりそう」
金剛「それよりこの足元に敷かれたシートが気になりマース」
羽黒「これ、なんのためのシートなんでしょうか」
飛鷹「かなり広範囲に敷かれてるわねぇ」
時雨「あ!サイファー提督が離陸したよ!」
夕立「続けてピクシーさんも離陸したっぽい!」
酒匂「ぴゃん!!旋回してこっちくるよ!」
榛名「何をなさるつもりなんでしょうか?」
霧島「まったく見当つかないわね」
――――――
彗星妖精「バッチリだよ~!高度もピッタリ!」
サイファー「よし!ピクシー!」
ピクシー『こっちもOKだ!やろうぜ!』
サイファー・ピクシー『クラスターキャンディー、投下!』ヒュゥゥゥン
―2機のストライクイーグルからM31が投下された。炸裂した中身は小型の爆弾ではなく、ぎっしりと詰まった子包装されたキャンディが上空からばら撒かれた―
――――――
陸奥「ちょっと、あれって!」
瑞鶴「クラスター爆弾じゃなくてクラスターキャンディってこと!?」
吹雪「これが本当の飴霰ってことですか?」
『…あっ!』
―そう。クラスター爆弾同様、クラスター弾を使用する場合、上空で炸裂される必要があるため当然ながら高度を取る必要がある。グラウンドに全員集め、範囲を狭めたとはいえ、ある程度高度を取っているので当然降ってくるキャンディは重力加速に従って速度を上げながら降ってくる―
<皆逃げてー!
<屋根のある場所に大至急避難よー!
<あの空戦バカ2人覚えてなさーい!
<痛たたたたた!なんで基地で味方機から爆撃されなきゃいけないのよー!
――――――
サイファー「高度を取りすぎたか?目標エリアに着弾させるにはピッタリのはずなんだが」
彗星妖精「いくらキャンディーでもこの高度から降ってくれば痛いんじゃないかなぁ?」
サイファー「高度をもっと下げたほうがよかったってことか?」
彗星妖精「それだとM31の親の破片が降ってもっと危ないよ」
ピクシー『よぅ、今更思うんだが、これ作戦自体に無理があったんじゃねぇか?』
サイファー「と、トリックオアトリートで通じるか…?」
彗星妖精「お菓子がもらえなかったからイタズラしたじゃ流石にダメだと思うな~」
サイファー「説教か?」
ピクシー『何時間コースだろうな…』
サイファー・ピクシー(お、降りたくねぇ…)
――――――
<コラー!降りてこーい!
<なんて危ないことするんですかー!サプライズで恐怖とか無しですよー!
<あ!着陸姿勢に入った!
<滑走路に急げー!
―もちろんこのあとサイファーとピクシーはきっちりお説教されたそうな―
―――――
―――
―
妙高「ダメです!これは全員で決めた罰ですから」
ピクシー「いくらなんでもこの歳でこれはねぇんじゃねぇの?」
長門「2人はやりすぎだ!いくら腕の良い伝説級のエースパイロットと言えど限度がある!」
サイファー「だからって…」
ピクシー「なぁ…」
サイファー・ピクシー「このコスプレは無しだろ!」ガルムワンコ衣装
<かわいいですよ2人とも!
<写真1枚いいですか?
<私も私も!
<くっくっくっ!こ、これはなかなか…。あっはっはっはっ!
<わ、笑っちゃダメですよ!くくくっ!
<そっちも笑ってるじゃないですか!あははははは!
サイファー・ピクシー(やるんじゃなかった…)
―ちなみにわざわざ取り寄せたM31クラスター弾分の予算も割いたことで二重でお説教を喰らったそうな―
―――――
―――
―
隼鷹「今日も任務終わりで酒が美味い!ヒャッハー!」
千歳「隼鷹、今日は西宮から取り寄せたいい日本酒が手に入ったわよ!」
隼鷹「お!マジの宮水仕立てじゃん!んじゃあたしはこいつを出すかぁ!」
千歳「あ!それ広島の地酒じゃない!そんなの隠し持ってたの?」
隼鷹「呉に寄った時にちょ~っとね!」
千歳「いい酒にいいおつまみ!仕事のあとはやっぱりこれよね~!」
隼鷹「だよなぁ!たまんねぇよなぁ!」
カンパ~イ!
ヒャッハー!
飛鷹「またあの二人は…。まったくもぅ、隼鷹!ほどほどにしときなさいよ!」
千代田「千歳お姉も!介抱するのも大変なんだから!」
隼鷹「わかってるって!飛鷹も飲むか?超美味ぇぜ、この酒!」
千歳「千代田も飲む?疲れが飛ぶわよ」
飛鷹「潰れたら誰が面倒見てると思ってるのよ」
千代田「ほどほどにしてくれるなら付き合うけど、いっつもほどほどじゃ済まないんだから」
千歳「ねぇ、せっかくだから武蔵さんでも呼んでくる?」
隼鷹「いいねぇ!んじゃ、あたしは那智でも呼んでくるかな」
隼鷹「いいじゃねぇかよぉ!せっかくいい酒があるんだぜ?」
千代田「それでしっちゃかめっちゃかにされたらサイファー提督に怒られるわよ」
隼鷹「う~ん…。そうだ!サイファー提督も巻き込めばいいんじゃん!」
飛鷹「もっとダメに決まってるでしょ!」
千歳「多分サイファー提督はピクシーさんと飲んでらっしゃると思うし、せっかくのいいお酒なんだからおすそ分けしないとね」
千代田「そうかこつけてどんちゃん騒ぎしようって魂胆でしょ!?あの二人はきちんと大人の飲み方をしてるんだから!」
隼鷹「う~ん…そうだ!飛鷹、これ新作のつまみなんだけどさ、ちょっと味見してくんね?」
飛鷹「変なもの入ってないでしょうね?」
隼鷹「入ってない入ってない!なんならあたし達も食べてんだしさ、変なもの入ってたらあたしらもダメージ喰らってるって!」
飛鷹「…確かにそれもそうね。じゃあちょっとだけ」
千歳「千代田も食べてみたら?」
千代田「千歳お姉が言うなら…」
飛鷹「…うん…美味しいわね。ホントつまみを作ることに関しては天才的ね」
千代田「確かに美味しい!」
隼鷹「だろ!?んでちょ~っとだけこの酒飲んでみな?」
飛鷹「そんなこと言って……うん、この風味と日本酒の組み合わせは良いわね」
千代田「少し油っこい感じを日本酒独特のスッキリ感と辛さで流す感じね。洋酒ではちょっと合わない感じかな」
隼鷹「だろ!?いけてんだろ!?」
飛鷹「ちょっと今度レシピ教えてくれる?これ普通に使えるわよ」
千代田「そういえばなにか仕込んでたわよね」
千歳「新鮮なアオリイカが手に入ったから一夜漬けを作ってみたの」
飛鷹「アオリイカ?甘さ重視で仕上げたの?それとも辛さ?」
千歳「そりゃあもちろんお酒に合わすために辛さ重視よ」
千代田「普通に食べるとアオリイカは凄く甘いから……うん、これも美味しい!」
飛鷹「甘いのも美味しいんだけど、これはこれでありよね」
千歳「お酒無しでも辛さ重視で漬ける人もいるぐらいだし、新鮮なのを使うと美味しいのよねぇ」
隼鷹「モイカとかコウイカでも美味しく出来るんだけど、アオリイカは甘味が強いからどっちもありだよなぁ」
飛鷹「確かにアオリイカは他のイカより甘味が強いから調理も色々出来るわね」ニホンシュチビッ
千代田「漁師さん達になにか頼んでたと思ったらこれだったのね」ニホンシュチビッ
隼鷹(ふっふっふっ、飲みだしたな)
千歳(このおつまみスパイラルからは逃れられないわよ)
―――――
―――
―
飛鷹「んぁ…もう飲めない…ん~」
千代田「ちょっとこのお酒強すぎじゃなぁい?…ん~」
隼鷹「へへへ。これで邪魔者は潰れたな」
千歳「それじゃ私達も出撃しますか」
飛鷹「ん~?隼鷹、どこ行くの~?」
隼鷹「ちょ~っとおつまみの仕込みだよ。これ置いてくから飲んでなって!」
飛鷹「ん、ありがと…」
千代田「千歳お姉もどこいくの~?」
千歳「ちょっとお酒を追加しにいくだけよ」
千代田「そう…。なるべく早く戻ってきてね~」
隼鷹・千歳「それじゃ行ってきま~す!」
バタン
千歳「それはもちろん…」
隼鷹・千歳「サイファー提督でしょ!」
隼鷹「けど普通に行ってもピクシーさんと大人の対応されるだけだよなぁ」
千歳「なら逃げられないように囲えばいいのよ」
隼鷹「なら援軍が必要だよなぁ。よし!んじゃこの酒で釣ってくるかぁ!」
千歳「手分けして援軍になりそうな艦娘(人)達を呼んできましょうか!」
隼鷹「んじゃ30分後にバーで合流な!」
千歳「了解!」
―――――
―――
―
―仕事を終えたサイファーとピクシーはバーで静かに、しかし楽しそうに酒を飲み交わしていた―
ピクシー「しかしあれだな」
サイファー「なんだ?」
ピクシー「俺達は戦闘機に乗ってるから対艦戦と対空戦はいけるんだけど、対潜戦はどうにもならねぇよなぁ」
サイファー「確かにな。アスロックでも撃てりゃ話は変わるんだが、流石に対潜哨戒機のライセンスは持ってねぇからな」
ピクシー「ライセンス取らねぇのか?」
サイファー「どこで使うんだよ、どこでよ」
ピクシー「違ぇねぇ」
ハハハハハ…
千歳「目標発見!」
隼鷹「いくぜぇ!突撃する!」
隼鷹「いよぉ~う、サイファー提督ぅ!」
千歳「ピクシーさんもこんばんは。2人で飲んでらっしゃるんですか?」
サイファー「なんだお前ら。ここはバカ騒ぎする場じゃねぇぞ」
ピクシー「流石にこの空気をぶち壊すのは無しじゃねぇか?静かに飲むってのも悪くねぇぜ」
サイファー「そう言ってバカ騒ぎするのが目的だろう?あっち行ってろ」
千歳「まぁまぁ、そう言わずに。本当に美味しいんですから」
ピクシー「悪ぃが、お前ら2人には痛い目を見させられてるんでな。退場しねぇとハープーンだぜ?」
???「まぁそう固いこと言うな。隼鷹も千歳も中々の物を持ってきているぞ」
サイファー「武蔵か。お前、隼鷹達に釣られたのか」
武蔵「釣られたとはずいぶんな言い方だな」
那智「ワインやウィスキーにも種類があるように、日本酒にも種類がある。飲んでみるのも一興ではないか?」
足柄「珍しいお酒ってわけじゃないけど、ちょっと高い日本酒よこれ」
ピクシー「那智に足柄まで釣られやがったのかよ」
サイファー「飛鷹と千代田はどうした?ストッパー役がいないのは何故だ?」
隼鷹「あの2人なら潰れてんじゃねぇの?強めのやつを飲ませたから案外早かったぜぇ」
ピクシー「なんてこったよ。壁ぶっ潰してきやがったってのか」
サイファー「…長居は危険だな。撤収するか」
武蔵「そう言うな。せっかくの酒だ。味わってから帰るのも悪くあるまい」
サイファー「それで明日がしんどくなるんだよ」
那智「我々艦娘にも勉強になることも多々あるだろうからな」
ピクシー「戦場での勘なんてのは場数踏むしかねぇんだけどな」
千歳「せっかくですから色々教えてくださいよ。ささ、どうぞどうぞ!宮水仕立てのいい日本酒ですよ」
サイファー「勝手に注ぐんじゃねぇよ」
隼鷹「いいじゃねぇか。特にあたしらは空母なんだしさぁ。航空機の運用は参考になるんだし」
ピクシー「…うん、悪くねぇなこれ」
サイファー「なにしれっと飲んでんだよ、ピクシー」
ピクシー「いや、確かに悪くねぇぜこれ。この3人を釣っただけはあるな」
サイファー「自分で逃げ道塞いでどうする…」
武蔵「中々わかってるじゃないか。さぁもう1杯どうだ?」
サイファー「…ったく」
―――――
―――
―
妙高「おはようございます、サイファー提と…ってどうなされたんですか!?顔色悪いですよ?」
サイファー「ああ。軽空母2、重巡2、戦艦1にやられてな」
妙高「はぁ…。つまり飲まされたということですか?」
サイファー「ああ。ストッパーの飛鷹と千代田がやられたらしく、俺とピクシーの所に仲間引き連れて直行してきやがった」
妙高「お薬と水をご用意しますね」
サイファー「頼む。頭痛ぇ…最悪だ」
妙高「しかし、サイファー提督ともあろうお方が回避出来なかったんですか?」
サイファー「あの2人だけならなんとかなるんだがな。妙高の妹2人と武蔵に囲まれてな」
妙高「那智と足柄ですか。あの2人には言ってきかせておきます」
サイファー「ああ、頼む。しかしあの2人、あの手この手で絡んできやがるな」
妙高「一度明確な罰を与えてはどうでしょうか」
サイファー「罰なぁ。禁酒…というわけにはいかんだろうしなぁ」
妙高「ある意味モチベーションの高さを維持するために必要な物でしょうし。過度な摂取は考え物ですが」
サイファー「…一度本当に痛い目を見てもらうか」
妙高「何かお考えが?」
サイファー「ああ、ちょっとな。“あれ”はまだ余裕があったな?」
妙高「“あれ”と申されますと?」
サイファー「ああ、ちょっとこの作戦には必要なものだ」
―――――
―――
―
―数日後、サイファーとピクシーは隼鷹と千代田を食堂に呼び出していた―
隼鷹「なんだよぅサイファー提督。今日はもう仕事は終わりだろ?」
サイファー「お前らは俺達に酒を薦めてばかりだからな。たまには俺達からいい酒を飲ませてやろうと思ってな」
千歳「え?サイファー提督とピクシーさんからですか?」
隼鷹「マジか!?ヒャッハー!今日は公認で飲めるのかぁ!いいねぇ!」
ピクシー「たまには日本酒や焼酎ばかりではなく、洋酒を飲むのも悪くねぇぜ。俺からはこいつだ」
隼鷹「こいつは…ドンペリじゃねぇか!こんな良い酒隠し持ってやがったのかよ!」
サイファー「お前、案外良い酒持ってたんだな。俺からはこいつだ」
千歳「ロマネ・コンティじゃないですか!?なんでこんな凄い高いワインを!?」
サイファー「俺達は元傭兵だからな。金はそれなりに稼いできている」
ピクシー「戦闘機1機に比べりゃ安いもんだ」
隼鷹「こんな良い酒が…目の前に…!」
千歳「いいんですか!?流石にこれはちょっと身が引けるんですが…」
サイファー「遠慮するな。いつもお前達は俺達に持ってきてばかりだっただろ?だからそのお返しだ」
ピクシー「つまみも大和と鳳翔に頼んで作ってもらった1級品だ。よく合うぜ」
隼鷹「いっただっきま~す!…ん~良い香りだぜぇ!」
サイファー「まだ他にもあるからな。遠慮なく飲め」
ピクシー「つまみだってあるぜ。なんなら俺達がウスティオで重宝してたのだって作ってやるぜ」
千歳「サイファー提督とピクシーさんは飲まれないんですか?」
サイファー「俺達も飲んでるぞ」
ピクシー「今日はお前達2人が主役だ。俺達に気を使うこたぁねぇよ」
隼鷹「ん~!さっすが大和さんに鳳翔さん!超美味ぇ!」
千歳「お酒ともよく合いますね!ありがとうございます、サイファー提督、ピクシーさん!」
サイファー・ピクシー「なぁに、いいってことよ」ニヤリ
―――――
―――
―
千歳「zzz…」クー
サイファー「ようやく潰れたな」
ピクシー「しっかし強ぇなこいつら。薬混ぜてなかったらまだ落ちてなかっただろうぜ」
サイファー「大和と鳳翔には感謝だな。薬の違和感を出すことなく料理を作り上げてくれたしな」
ピクシー「それと明石だな。この薬凄ぇな。ちっともアルコールを摂取した感がねぇぜ」
サイファー「アルコールを即時分解する薬みたいだからな。ちょっと怪しいが作戦実効には不可欠だったからな」
ピクシー「何処でもそうなんだが、明石って本当に何者なんだ?いろんなことに精通しすぎだろ」
サイファー「なんでも妖精のフォローが入ってるらしい」
ピクシー「あ~なんか納得できる理由だぜ。科学者の妖精とかいてもおかしくねぇもんな」
サイファー「さて、それじゃあ実行に移るか。飛鷹!千代田!」
千代田「かなり無茶な作戦ですけど大丈夫なんですか?」
サイファー「そのための“こいつ”だ」
飛鷹「…あ~。正直無茶なんですね」
千代田「まぁ一度痛い目を見てもらうためには致仕方無しですね。あまり賛成は出来ませんけどこれも千歳お姉のためですし」
飛鷹「一度本気で痛い目を見ないとこの手のバカは直らないわよね」
サイファー「そういうことだ。ここで1回キッチリと締めとかねぇといざって時に困るからな」
ピクシー「んじゃ運び出すか。飛鷹、千代田、用意は出来てるよな?」
千代田「はい。こちらに」
サイファー「よし、作戦開始だ」
―――――
―――
―
ピクシー『よぅ相棒、機体のバランスは大丈夫か?』
サイファー「ああ、問題ない。この程度ならバランスを崩すことなく飛べるだろう」
飛鷹『妖精を連れて行かなくて大丈夫なの?』
サイファー「別に深海棲艦と闘りあうわけじゃないからな。この程度なら補正は必要ない」
千代田『目標の設置は完了しています。サイファー提督、離陸時に擦って千歳お姉を傷つけないでくださいね』
サイファー「心配すんな。そんなヘマはしねぇよ」
サイファー「離陸開始地点到達」
隼鷹「んぁ?うるせぇなぁ。何時だと思ってぇぇぇぇぇぇぇ!」
千歳「なんなのこの轟おぉぉぉぉぉぉぉ!」
ピクシー『おい相棒、隼鷹と千歳が起きたみたいだぞ』
サイファー「問題ない。このまま離陸する。スーパーホーネット、出るぞ!」ヒュィィゴォォォォォ
隼鷹「なになになに!?くぅぅぅ!離陸してる!?」
千歳「体が…後ろに…!」
ピクシー『サイファー機、高度制限を解除だ。いっちょやってこい相棒!』
隼鷹「なんなんだよこれ!?体がしばられてんじゃん!?って千歳!?」
千歳「なんで私戦闘機の翼にぶら下がって…!?って隼鷹!?」
隼鷹「なんで千歳ミサイルなんかに縛られてんのさ!?」
千歳「そっちこそなんでミサイルにぐるぐる巻きにされてんの!?」
隼鷹「そりゃあたしが聞きたいっての!」
隼鷹・千歳(ジェット機のエンジン音で全然聞こえないけど多分こう言ってるよね?)
サイファー「起きたか2人とも。気分はどうだ?」
千歳『サイファー提督!?これはいったいどういうことなんですか!?』
隼鷹『なんであたしらミサイルに縛り付けられてんのさ!?』
サイファー「お前らは日頃から酒癖が悪すぎるからな。皆に協力してもらってお前ら2人にお仕置きを実行することになった」
隼鷹『飛鷹は!?飛鷹は止めなかったのかよ!?』
千歳『ていうか、寒いぃ!高度と速度で風が冷たい!』
サイファー「せっかくの空の旅だ。もう少し楽しんでもいいんだぞ」
隼鷹『ミサイルに縛り付けられて楽しめるわけねぇじゃんよぉ!』
千歳『まさかと思うけどこのまま撃ち出すなんてことしませんよね!?』
サイファー「ああ。こっちはいつでも発射可能だ」
隼鷹『発射って…マジ!?』
千歳『ごめんなさいサイファー提督!もうお酒は止めるから撃沈処分は許してください!』
隼鷹『話せばわかるって!な、サイファー提督!?だから発射するなんて止めようぜ、な!?』
サイファー「レーダー照射確認。目標を確認した」
隼鷹『悪かったって!もう絡みに行かねぇから許してくれよぉ!』
千歳『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!』
サイファー「マグナム、Fire!」カチッカチッ
隼鷹『うわぁぁぁぁぁぁぁ!』バシュゥゥン
千歳『いやぁぁぁぁぁぁぁ!』バシュゥゥン
―隼鷹と千歳を縛り付けたAGM-88 HARMが発射。レーダーを発信している目標物に向かって飛来していく―
隼鷹「ぶ、ぶつかるぅぅぅぅ!」
千歳「死ぬのはイヤぁぁぁぁぁ!」
ブチッブチッ…ブチンッ!!
隼鷹「へ?」
千歳「え?」
ドポォォォン…ザンッ…ダァン…ドッポォォン…
ドォォォォン…
―・―・―・―
明石「このロープは特殊な繊維で出来てまして、強度はワイヤー並みなんですが、水を被ると極度に強度が落ちる特性になってます」
サイファー「つまりシースキミングの軌道でミサイルを撃ち出せば目標に到達する前にロープが切れて落とせるんだな?」
明石「そうなりますね。ただし、高度が高すぎれば水を被ることがありませんので高度の計算だけはしっかりとお願いします。流石にダメコンごと木っ端微塵になってしまってはどうしようもありませんので」
サイファー「わかっている。流石にミサイルの直撃で塵にするつもりはないからな。それにそれでは躾にならん」
―・―・―・―
千代田『千歳お姉はちゃんと生きてますよね!?』
サイファー「ダメコンの作動を確認した。2人とも無事だ」
飛鷹『よかったぁ!木っ端微塵に吹き飛んだらどうしようもないものね』
サイファー「2人とも、これに懲りたら無駄絡みは控えて正しく酒を飲むように勤めることだ。いいな?」
隼鷹「」チーン
千歳「」チーン
サイファー「…気絶してやがる。千代田、飛鷹、回収に行ってやれ」
飛鷹・千代田『了解!』
―――――
―――
―
飛鷹「ちょっと隼鷹!明日も出撃があるんだからそれぐらいにしときなさいよ!?」
隼鷹「いいじゃねぇかよ、もうちょっとだけだからさぁ」
飛鷹「それで失敗したら今度はダメコン無しで飛ばされるわよ?」
隼鷹「うぎっ!わ、わかったよ。これでおしまいにするからなぁ」
飛鷹「まったく。ちゃんと片付けておきなさいよ」
隼鷹「はいよっと」
――――――
千代田「千歳お姉、明日は遠征に出るんだからそれぐらいにしないと…」
千歳「大丈夫よ、これぐらい」
千代田「それで成功しなかったら今度は直撃させられるかもしれないよ?」
千歳「うっ!わ、わかったわよ。これ飲み干したら終わりにするから」
千代田「ならいいけど。明日も頑張ろうね、千歳お姉!」
千歳「は、は~い」
――――――
ピクシー「だいぶ効果あったみたいだぜ、相棒」
サイファー「そりゃ対レーダーミサイルに縛り付けられて音速の1歩手前まで加速して目標を視認して落水したんだからな」
ピクシー「生きた心地はしねぇよな」
サイファー「おかげで無駄絡みが無くなった分、快適に飲めるようになったんだ。それに千代田も飛鷹も楽になったって喜んでたしな」
ピクシー「音速を突破して酸欠で死ぬことは想定してたのか?」
サイファー「一応それも想定してダメコンは3つ装備させていたぞ。何があるかわからんからな」
ピクシー「お仕置きにしちゃあ大奮発だな。ところで相棒、お前ロマネ・コンティなんて隠し持ってたんだな」
サイファー「お前だってドンペリ持ってたじゃねぇか。しかもありゃロゼだろ?」
ピクシー「今度俺にも飲ませてくれよ」
サイファー「また大規模な作戦が成功した時でもな」
ピクシー「お前の部屋を漁ったら何か出てきそうだな」
サイファー「やめてくれ。それに俺は酒の収集癖はねぇよ」
那智「お、サイファーにピクシーじゃないか。また2人で飲んでいるのか」
足柄「なんでも隼鷹と千歳にかなり良いお酒出したそうじゃない!私達にも飲ませなさいよ!」
サイファー(しまった。こいつらを忘れてた)
ピクシー(また財布がぶっ飛ぶとか勘弁してくれよ)
サイファー・ピクシー「はぁ…」
足柄「なにため息ついちゃってるのよ」
那智「ため息を吐いていると幸運が逃げるというぞ。すまんが、ニッカを頼む」
―――――
―――
―
大和「サイファー提督、この要望書の山なんとかなりませんか?もう毎回毎回凄く多いんですよ」
サイファー「そんなに多い要望があるのか?」
大和「はい。最初は遊び感覚で出してるのかと思ってこちらの独断で却下してたんですが、どうも一向に勢いが収まらないので…」
サイファー「そんなに不満をかかえている事があるのか。一体なんだ?事次第では早急に対処するが」
大和「それが…サイファー提督にしか出来ないことなんです」
サイファー「俺に?見当もつかんが…」
大和「前にストライクイーグルが納入されましたよね。ストライクイーグルは副座ですから是非後ろに乗りたいと希望する者が多くて…」
サイファー「おいおい、戦闘機はおもちゃじゃないんだぞ。何考えてやがんだよ」
大和「バーサーカー事件の時は一時的に収束を見せたんですが、サイファー提督がバーサーカーを撃墜してからまた増えだしたんです」
サイファー「おおかた駆逐艦か、もしくは取材と称して乗りたがる青葉辺りか?」
大和「それが…ほぼ全艦種なんです」
サイファー「は?ほぼ全艦種?」
大和「はい。駆逐艦はもちろんのこと、巡洋艦、戦艦、空母、潜水艦もなんです」
サイファー「本当にほぼ全艦種だな。いないのは明石か間宮、伊良湖ぐらいか」
大和「付け足すなら鳳翔さんに大鯨さん、それに大淀さんですね」
サイファー「ちょっと待て。ということは武蔵や長門は勿論、妙高や鳥海、扶桑も該当してるのか?」
大和「そうなりますね」
サイファー「なんであいつらまで出してやがんだよ。戦闘機が1回出撃したらどれだけ費用がかかるか知ってるだろうによ」
サイファー「なんだ?」
大和「私も…出してるんです」
サイファー「大和、お前もか!」
大和「あはは…。いや、円卓の鬼神の操縦する戦闘機に乗れるなんてまず無いことですから」
サイファー「あ~、頭痛くなってきやがったぜ」
大和「やっぱり…ダメ…ですよね?」
サイファー「ピクシーの手を借りたいところだが、こいつは流石に無理か。仕方ねぇな。大和、その要望書全部寄越せ」
大和「あ、はい。シュレッダーも用意しますか?」
サイファー「必要ない。…にして本当に多いな。何考えてんだ」
大和「あの、サイファー提督?」
サイファー「順次時間が空き次第要望に応える。このままじゃ埒があかん」
大和「え?じゃあ…!」パァァ
サイファー「時間との相談になるが、順次呼び出して対応していく。ただし1回限りだ。それを徹底した上で再度まとめて要望を出させろ」
大和「はい!了解しました!」
サイファー(燃料足りっかな…。戦闘まで希望してるやつもいやがるし、弾薬もか。あいつら相談しとくか)
―――――
―――
―
サイファー「仕方ねぇだろ。バーサーカー事件の時は一時的に収まったとはいえ、毎度毎度乗せろ乗せろって要望が多いんだ」
彩雲妖精「まぁ円卓の鬼神の操縦する戦闘機に同乗出来るってなれば歴史を知ってる子からすれば願っても無いチャンスよね」
流星妖精「燃料も弾薬もタダではないんですが。サイファーも少しお人好しすぎませんか?」
サイファー「自分でもそう思ってるっての。だが、このまま放っておくのは得策じゃないと考えてな」
彗星妖精「なんで?放っといても問題なさそうな気がするけどね~?」
サイファー「これを見ろ」スッ
烈風妖精「なにかしら?」
―サイファーが出したプリントにはそれぞれ要望を出した艦娘の名前とその回数をまとめ記載したものだった―
彗星妖精「ありゃ~1回とかそういう次元じゃない子もいるね~」
流星妖精「これ、計算するとほぼ毎週出してる子もいますね」
彩雲妖精「戦闘を希望してる子も1人2人じゃないわね」
サイファー「今までは秘書艦の独断で却下してたらしいんだが、いい加減うんざりしてるみたいでな」
烈風妖精「その秘書艦自身が出してちゃ身も蓋も無い気がするけど」
サイファー「そこはつっこんでやるな。俺だって盛大にツッコミ入れたいぐらいなんだ」
彩雲妖精「で?サイファーが私達に相談ってのは整備の回数が増えるから頼むって言いに来たの?」
サイファー「それもあるのはあるが…」
サイファー「察しが良くて助かるぜ。下手したら深海棲艦見つけたら勝手にミサイルをいじりそうでな」
流星妖精「発射管制はサイファーが握っているとはいえ、意図しないミサイルを発射されても困りますからね」
彗星妖精「ていうか、私達が乗らないと戦えないけどね~」
サイファー「そういうことだ」
烈風妖精「…わかったわ。けど燃料と弾薬はどうする気?出撃回数が増えればそれだけ消費も比例して大きくなるわよ」
サイファー「無策と言われればそれまでだが、なんとかやりくりするしかないだろう。その辺は追々大淀辺りと相談しながらだな」
ザッザッザッザッザッ
ピクシー「お困りのようだな、相棒」
サイファー「ピクシー。聞いてたのか?」
ピクシー「ああ、一部始終だがな。要はイーグルでの出撃が増えるから燃料と弾薬がいるってこったろ?」
サイファー「ああ。なにかいい当てがあるのか?」
ピクシー「まぁ無いことはないな」
サイファー「聞かせてくれ」
サイファー「それがどうして燃料と弾薬の問題解決に繋がるんだ?」
ピクシー「テストならどうしても燃料と弾薬は必要になるだろ?運用テストなら軍部からの支援が受けられるってわけだ」
サイファー「そんなにすんなり事が運ぶのか?」
ピクシー「震電Ⅱの実戦テストでそれなりのデータは得られたとはいえ、データってのはあって困らねぇもんだからな。海戦データならなおさらだ」
サイファー「しかしストライクイーグル自体は他国で運用実績がある。そんなに簡単にテストするからと言って支援が受けられるとは思えんが」
ピクシー「俺を誰だと思ってんだよ、相棒」
サイファー「…つまり深海棲艦との空対艦戦データを渡す代わりに燃料と弾薬を寄越す交渉をするってわけか」
ピクシー「そういうこった」
サイファー「出来るか?」
ピクシー「任しときなって、相棒」
サイファー「とりあえず当面の問題は解決しそうだな」
烈風妖精「で、誰から乗せる気?」
サイファー「そうだな…」
―――――
―――
―
暁「やっと乗せる気になったのね!まったく、れでぃを待たせるなんてじぇんとるまん失格よ」
電「サイファー司令官さんも忙しいから仕方ないのです。それでも乗せてくれてありがとうなのです」
サイファー「中々時間が空かなくてな。それに燃料と弾薬の問題も解決する必要があったからな」
響「ということは、燃料と弾薬の問題は解決したってことかい?」
サイファー「当面はな。あとでお前達には同乗して気づいたことをレポートして提出してもらうぞ」
雷「任せて!少しでもなにかあったら報告するわ!」
サイファー「いや、報告じゃなくて書面に起こして提出してくれ」
電「報告じゃなくて書類なのはなにか理由があるのですか?」
サイファー「一応このストライクイーグルを飛ばすのは実戦運用でのテストが名目だ。故にレポートが必要になる」
暁「それって震電Ⅱで十分だったんじゃないの?」
サイファー「日本ではストライクイーグルの運用実績がないからな。苦肉の策だがピクシーがなんとかしてくれてな」
響「かなり無理のある理由を通したんだね。了解、レポートは必ず提出するよ」
サイファー「頼んだ。で、誰から乗るんだ?」
雷「そりゃもちろん私よ!私が色々観察していいレポート出してサイファー司令官の負担を軽くしてあげるわ!」
暁「なに言ってんのよ!ここは長女の私よ!レディで長女の私が一番よ!」
雷「なんでよ!?」
暁「なによ!?」
電「はわわわわっ!ケンカはダメなのです!」
暁・雷「なんでそうなるのよ!?」
響「いいのかい?」
サイファー「暁と雷は少々浮かれすぎだ。戦闘にも入る可能性もある。電は逆におじけづいている。先に冷静な者を乗せて一呼吸置いてやるのばベストだと考えたまでだ」
暁・雷「浮かれてなんかないわよ!」
響「Спасибо(スパスィーヴァ)。期待には応えるよ」
サイファー「じゃあ乗ってくれ。あとで妖精も乗り込む。ベルトを締めたのを確認したらキャノピーを閉じる。それから離陸だ」
響「了解」
暁・雷「むぅぅぅ~!」
サイファー「暁、レディなら他者に譲ることも必要だ。雷も世話を焼きたがるのもいいが1歩引いた目線から見るのも重要だ。戻るまでにどちらが先か相談して決めろ」
サイファー「電、もう少し自信を持て。お前にはお前にしか見えない世界があるんだ。乗るまでにそれをよく考えておけ」
電「…はいっ!了解なのです!」
サイファー「出撃する!」
―――――
―――
―
響「ほぅ、中はこうなってるのか」
サイファー「高度制限解除と同時にシステムを起動する。それまでは少し狭いが我慢してくれ」
響「震電Ⅱやスーパーホーネットではサイファー司令官は離陸までこうやって妖精を抱え込んでたんだね」
サイファー「まぁな。システムが起動すれば兵装と一体化するから気にならなくなるんだがな」
響「常時起動していてはダメなのかい?」
サイファー「こいつらが疲れるんだとさ」
烈風妖精「システム起動時はどうしても気が強制的に張り詰めるから疲れるの」
彗星妖精「要は戦闘準備状態に入るわけだからね~」
響「なるほど」
サイファー「離陸開始地点到達。大淀!」
大淀『進路クリア!発進どうぞ!』
サイファー「ストライクイーグル、出るぞ!」ヒュィィィゴォォォォォォ
響「くっ!これは…なかなか凄いGだね」
大淀『サイファー機、高度制限を解除します』
サイファー「よし、頼んだぞ!」
烈風妖精「了解」シュゥン
<System Pixy Standby>ピピッ!
―――――
―――
―
プシュー
カンッカンッ
スタッ
電「響ちゃん、おかえりなのです!」
響「ただいま」
暁「どうだった?円卓の鬼神と飛んだ感じは?」
響「Хорошо(ハラショー)!中々貴重な体験だったよ」
雷「深海棲艦とは戦ったの?」
響「いや、戦ってない。そこまで距離を伸ばしたわけではないから」
電「響ちゃんは楽しかったですか?」
響「ああ。それに流石はサイファー司令官だ。安心して命を預けられる」
サイファー「さて、次は誰が乗るんだ?」
暁「次は私よ!」
サイファー「暁か。わかった」
雷「その次が私で、最後に電よ」
サイファー「きっちり順番が決まったようだな。じゃあ行くか」
―――――
―――
―
サイファー「大丈夫か?飛行機酔いしてないか?」
暁「だ、大丈夫よ!ちょっと離陸の時の加速Gにビックリしただけなんだから!」
サイファー「ならいいが。速度を上げるぞ」ゴォォ
暁「んっ!っと、これがミサイルの管制システムね。えっと空対艦はこれかしら」カチッ
暁「?あれ?あれ??なんで反応しないの?」カチッカチッ
暁「ちょっと!サイファー司令官、これ壊れてるんじゃないの?」
サイファー「むやみやたらに兵装システムをいじりまわされんように妖精側からロックしてるんだ。押してもなにも反応しないぞ」
暁「どういうこと!?私は一人前のれでぃなんだから戦況判断ぐらいできるわよ!」
流星妖精「ちなみに今押してたのは対艦ミサイルじゃなくて対空ミサイルです。軽空母や駆逐艦程度ならともかく、戦艦や空母を相手にするにはちょっと距離と威力が」
暁「し、知ってたし!邪魔な随伴艦から倒そうと思っただけだし!」
サイファー「空対艦ってハッキリ言ってただろうが。兵装システムを触ろうとするんじゃない。あと少し飛んだら帰るぞ」
暁「むぅぅ!って、きゃあああああ!海面にぶつかっちゃうぅぅ!」
サイファー(うるせぇ…)クイッ
暁「あ~ビックリした…。もう!海面スレスレを飛ぶならもっと相撲とに飛んでよね!」
サイファー「スマートに、だろ?実戦ならこんなもんじゃないぞ」
暁「わ、わざと間違えただけよ!」
サイファー「やれやれ…」
―――――
―――
―
暁「い、一人前のれでぃならこれぐらい余裕だし」フラフラ
響「フラフラになってるじゃないか。サイファー司令官、なにやったんだい?」
サイファー「別に響を乗せた時と変わらんぞ。敵影も無かったからほとんど同じ飛び方をして帰ってきただけだ」
電「暁ちゃん、大丈夫?」
暁「さ、流石は円卓の鬼神ってところね。けど一人前のレディになるためならこれぐらい…」
サイファー「無理すんな。響、電、暁を明石の所に連れて行ってやってくれ」
響「了解」
電「了解なのです」
サイファー「雷、次はお前だったな」
雷「任せて!う~んっと役に立ってみせるわ!」
サイファー「あんまり気を入れすぎられても困るんだがな」
―――――
―――
―
雷「なるほどなるほど。本物はこうなってるのね」
サイファー「どうしたんだ?本物はってどういうことだ?」
雷「サイファー司令官の役に立つために勉強してきたのよ!この機体って副座で兵装システムを触るんでしょ?」
サイファー「確かにその通りだが、システムは妖精側からロックしてるぞ」
雷「どうして!?もっと私を頼っていいのに」
サイファー「意図したミサイルと違うのを発射するほうが問題だからな」
雷「!?サイファー司令官!レーダーに反応が!」
サイファー「…彩雲!」
彩雲妖精「大方偵察に来た駆逐艦ってところね。どうするの?」
サイファー「ただで帰すわけにはいかんな。沈めるぞ!」
雷「了解!てことは対艦ミサイルね!」
サイファー「いや、彗星!」
彗星妖精「はいよ~!」
雷「え?対艦ミサイルじゃないの!?」
サイファー「狙えるな?」
彗星妖精「任せて。1回で全部沈めるよ~」
サイファー「雷、よく覚えておけ。なにも対艦ミサイルだけが敵舟艇を沈める手段ではないということをな。GBU-31、GBU-39発射!」カチッカチッ
彗星妖精「あらほいさっさ~っとね!」ヒュゥゥバシュゥゥゥン
雷「え?滑空爆弾を海上で使うの!?」
彩雲妖精「敵駆逐艦に命中!撃沈確認よ!」
彗星妖精「ま、ざっとこんなもんっしょ」
サイファー「よし、他に敵影は無いな。帰るぞ」
―――――
―――
―
サイファー「ミサイルというよりは滑空爆弾だがな」
雷「う~ん、航空戦術も奥が深いわ。サイファー司令官の役に立つならもっと勉強しないとダメね」
響「戦闘したのかい?」
雷「戦闘もなにもこっちが敵影を捉えて、私は対艦ミサイルを用意しようとしたんだけど、爆弾だけであっという間に終わったわ」
サイファー「戦闘機での戦いの基本は相手に見つかる前に相手のレンジ外から撃破することだからな」
電「だとすると余計に対艦ミサイルじゃないのですか?」
サイファー「確かにハープーンの射程距離を考えればそうだが、相手の装甲と射程距離を把握していたから過剰と判断したまでだ」
雷「流石は円卓の鬼神ね。けどなんでも1人でこなされると少し寂しいわ」
サイファー「単独飛行ってのはそういうもんだ。己の判断が全てになる。それにこの基地を運営できてるのはお前達が遠征で支えてくれているからだ。いつも当てにさせてもらってるさ」
雷「他のことでももっと頼ってもいいのよ!」
サイファー「そん時はそうさせてもらうさ。さて、最後は電だな」
電「お願いします!ちょっと緊張してるのです」
サイファー「なに、ただちょっと空を飛ぶだけだ。行くぞ」
電「はいなのです!」
―――――
―――
―
サイファー「さっきは偵察部隊がいたが、流石にもういないだろう」
電「この辺りだったのですか?」
サイファー「きっちり撃破したから大丈夫だとは思うが…」
電「サイファー司令官さん!あれ!」
サイファー「レーダーに反応!?まだいやがったのか。彩雲!」
彩雲妖精「敵は駆逐艦1隻だけど、その前方に小型艇か何かの反応があるわ」
電「人が深海棲艦に襲われているのです!サイファー司令官さん!」
サイファー「精度と威力を考えると滑空爆弾と対艦ミサイルは使えんな。烈風!流星!」
烈風妖精「わかったわ。流星、アシストをお願い」
流星妖精「了解です!AMRAAMスタンバイ!」
烈風妖精「ロックしたわ」
サイファー「外すなよ、AMRAAM、Fire!」バシュゥゥン
電「小型艇の前にも敵がいるのです!」
サイファー「よく気づいたな。A/B点火!距離を詰めてこちらに引き付ける!」ゴォォ
彩雲妖精「さっきの駆逐艦は撃沈を確認したわ!」
電「小型艇のみなさん、今助けるのです!」
サイファー「烈風!民間の小型船には当てるなよ!」
烈風妖精「そんなミスはしないわ」
電「サイファー司令官さん!」
サイファー「心配するな、きちんと助ける。お前の相手はこっちだ!」ドガガガガ
―――――
―――
―
響「ハードポイントからミサイルが発射されてる。また戦闘があったんだね」
電「ただいまなのです!暁ちゃん、もう大丈夫なのですか?」
暁「あ、あれぐらい平気よ!ちょっとだけ疲れただけよ」
雷「あの位置に付いてたのは…空対空ミサイルね!空戦でもあったの?」
サイファー「いや、深海棲艦の駆逐艦がいやがったが、民間の小型船がいたからな。精度と威力を考えてAMRAAMを使用しただけだ」
響「雷も電も戦闘を経験したのか。少し羨ましいな」
サイファー「戦闘なんて無いに越したことはないんだがな。電もよく民間船を見つけてくれたな」
電「出来れば敵も助けたいのですけど、人を助けるのが一番の役目なのです」
響「サイファー司令官、出来ればもう一度乗せてほしいな。戦闘を経験してみたい」
サイファー「馬鹿を言うな。1回限りの約束だ。それにA/Bを使用したから燃料ももう無いしな」
響「そうか。残念だけど仕方ないね」
サイファー「さて、今日はもう終わりだ。戻ってよく休め。機体を振り回したから変なところが筋肉痛になるから風呂入ったら念入りにマッサージしておけよ」
暁「どうして筋肉痛なの?」
サイファー「普段なら絶対に使うことの無い部分が旋回Gで強制的に使わされているからな。明日は下手したら全身筋肉痛になるぞ」
雷「サイファー司令官は大丈夫なの?」
サイファー「伊達に傭兵をやってきたわけじゃないからな。俺は問題ない」
電「お風呂でよく揉んでおくのです!」
サイファー「そうしておけ。じゃあ俺は機体をハンガーに入れるから、お前達は戻ってゆっくり休め」
『はい!(なのです!)』
―――――
―――
―
漣「漣の番ktkr!やっと飛べるんですね、ご主人さま」
曙「ずいぶん待たせてくれたじゃないの、このクソ提督!」
潮「曙ちゃん、サイファー提督は忙しい中で時間を作ってくれたんだから感謝しなきゃ。サイファー提督、今日はよろしくお願いします」
朧「サイファー提督、お忙しい中ありがとうございます」
サイファー「まぁ軽く飛ぶ程度しか出来んがな。少し空の旅を味わってもらおう」
漣「漣は一応戦闘も希望してるんですがねぇ」
サイファー「敵がいれば嫌でも戦闘になるが、わざわざ最前線に出向くほどのことでもないだろ」
曙「名目は機体のテストらしいし、ヘマしたらこっちまで被害を受けるから当然ね」
朧「しかしただ飛ぶだけではないのでしょう?」
サイファー「ああ。一応実戦に近い空戦軌道を取るつもりだ。要はお前達は俺がどう戦っているのかを見たいということだったからな」
潮「空の上からはどう見えてるのか、私達にはわかりませんから」
サイファー「で、誰から乗るんだ?もう順番は決まってるのか?」
朧「あ、まだ決めてませんでした」
曙「潮、あんた行ってきなさいよ。楽しみにしてたんでしょ?」
潮「え?私からでいいのかな?」
朧「(これは…!)じゃあ朧から行かせてもらいます!」ノシ
潮「(あれだよね?)じゃあ潮から…」ノシ
漣・朧・潮「………」ジー
曙「な、なによ!?」
サイファー(なんだこれ?)
漣・朧・潮「………」ジーー
曙「じ、じゃああたしから…」ノシ
漣・朧・潮「どうぞどうぞ!」
曙「なんなのよ、あんたたち!潮までどういうことよ!?」
漣「おりょ?行かないの?ぼのピーあんなに楽しみにしてたのに。じゃあ漣から!」ノシ
朧「朧から!」ノシ
潮「う、潮から!」ノシ
曙「もういいわよ、そのくだり!」
サイファー「お前らはなにをやってんだ?」
漣・朧・潮「………」ジーーー
曙「うっ…!じゃああたしから」ノシ
漣・朧・潮「どうぞどうぞ!」
曙「うがー!なんっなのよ、あんたたちはー!」ギャース
漣「はい!ぼのピーから乗せてあげてください、ご主人さま」
曙「ま、まあいいわ!燃料と弾薬に余裕がある内に乗せてもらうわ。少なくなってヘマされても困るからね」
朧「漣、翻訳」
漣「『やった!最初に乗れるってことは色んなことが経験出来る!燃料にも余裕があるからちょっとぐらい我侭言えるかも!』ですかねぇ」
曙「誰もそんなこと言ってないわよ!いい加減にしなさい!」
サイファー「なんでもいいから曙、乗るなら乗ってくれ」
曙「わ、わかったわよ!けどヘマだけはしないでよね!」
サイファー「わかったわかった。ところでさっきのはなんだったんだ?ジャパニーズギャグか何かか?」
漣「いわゆる『お約束』ってやつですよ、ご主人さま」
サイファー「よくわからんな。まぁいい、出るぞ」
―――――
―――
―
曙「せ、戦闘機ってこんな速度で戦ってるの!?」
サイファー「まだそんなに速度を出してないんだがな」
曙「凄い軌道で飛びまわってるのは見るけど、実際に乗ると目が…追いつかない!」
サイファー「一昔前のレシプロ機全盛期の時代ならともかく、現代のジェット機での戦闘はレーダーを見るもんだ。肉眼で確認して戦闘するもんじゃない」
曙「敵に見つかる前に敵のレンジ外からミサイルで攻撃する…だったわよね」
サイファー「そうだ」
曙「じゃあ接近戦になったらどうするのよ?」
サイファー「有視界戦闘のために機銃と短距離空対空ミサイルってのがあるんだ。そいつを使う」
曙「零戦虎徹みたいな動きもするの?」
サイファー「確か背面飛行からの急降下アタックだったか?こういう感じの」クイッ
曙「うぅわぁぁぁ!ちょっと!急に背面にならないd」
サイファー「で、こうだな」グイッ
曙「へ?きゃぁぁぁ!」
サイファー「このぐらいで騒ぐなよ。暁かお前は」
曙「せ、せめてやるならやるって言いなさいよ!ビックリしたじゃないの!」
サイファー「なら戦闘速度でやるぞ。舌噛んだり吐いたりするなよ」ゴォォ
曙「ちょっ!音速超えてるって!」
サイファー「まずはバレルロールだな」グイッ
曙「なんで…この速度で機体振り回して平気な感じでしゃべってるのよ!嘘でしょ!?」
烈風妖精「サイファー、あんまりいじめたらダメよ」
サイファー「そんなつもりはないんだがな…」
―――――
―――
―
曙「あんたも乗ればわかるわ。エースパイロットって呼ばれる人間がどんなに狂ってるかがね」
朧「サイファー提督、なにやったんですか?」
サイファー「別に大したことはしてないぞ」
曙「よく言うわよ!なによあれ!なんで岩山と岩山の間の機体幅ギリギリのところをマッハで通過出来るのよ!」
サイファー「空戦体験したいと言ったのはそっちだろうが。敵を振り切るなら使える環境は使うもんだ」
漣「あ~、そりゃあ生きた心地しないでしょうねぇ」
潮「少し怖くなってきちゃいました」
サイファー「空戦は兵装だけでなく3次元的に使える環境を駆使して行うもんだ。別に珍しいことじゃないぞ」
朧「次は朧ですがサイファー提督、お手柔らかにお願いします」
サイファー「次は朧か。まぁ状況次第ってところだろうな」
漣「円卓の鬼神であるご主人様ですから墜落はしないでしょうけど…」
潮「あまりの状況にこっちが意識飛んじゃいそうです」
曙「あたしもなんで意識保ってられたのか不思議なぐらいよ」
漣「もしかしてぼのピー、ちょっとちびっちゃいました?」
曙「そんなわけないでしょ!…ちびりそうになったけど」ボソッ
潮「曙ちゃん、最後なんて言ったの?」
曙「な、なんでもないわよ!」
サイファー「何を言い合ってるんだ?まあいい、朧出るぞ!乗り込め」
朧「了解です」
―――――
―――
―
朧「あ、曙はこんな体験したんですね」
サイファー「まぁ実戦でやってる空戦軌道の基礎的なことを速度を上げてやったぐらいだがな」
朧「応用になるとどうなるんですか?」
サイファー「まぁロールを入れたり急旋回を入れたり様々だな」
朧「凄いですね。サイファー提督はいつもこんな強烈な環境で戦ってらしたんですね」
サイファー「まあ実際に会敵したら頭で考えるよりも体で動いてることが多いがな」
彩雲妖精「サイファー!敵を発見よ!相手は…潜水艦が4隻よ!」
朧「せ、潜水艦…!?」
サイファー「よく見つけたな。しかしなぜこんなところに潜水艦が?輸送船でも狙いに来たか」
朧「どうなさるんですか?」
サイファー「どちらにしても見つけたからには放ってはおけん。彗星!」
彗星妖精「潜られる前に叩けってことだよね?もう少し高度を落としてくれる?」
サイファー「わかった」クィッ
朧「さ、サイファー提督、これでは速度が速すぎませんか!?」
サイファー「潜られてしまっては対潜兵器では無い以上、威力が半減してしまうからな。浮上している間に仕留める!」
彩雲妖精「敵がこっちに気づいたみたいよ!」
サイファー「もう遅い!彗星!」カチッカチッ
彗星妖精「は~いよ~っと!」ヒュゥゥゥン
―爆撃で潜水カ級2隻撃沈。すぐさま上昇、ループし下降と同時に残りをロック。そして…―
サイファー「流星!やつらの頭からぶち抜け!サイドワインダーFire!」カチッカチッ
流星妖精「了解です!サイドワインダー発射!」バシュバシュゥゥン
―さらにサイドワインダーで残りを撃沈。この間1分と満たない戦闘であった―
朧「は、早い!もう終わったんですか!?」
サイファー「彩雲、他に敵影はあるか?」
彩雲妖精「ないわ。どうやら小隊で通商破壊が目的だったみたいね」
サイファー「そうか、ならいい。補給が必要になったな。朧、基地に戻るが構わんな?」
朧「は、はい!大丈夫です」
サイファー「帰投するぞ」
―――――
―――
―
朧「凄い光景を見せられた。戦闘機ってあんな早い戦闘が出来るんだってビックリした」
曙「だから言ったでしょ?エースパイロットはみんな変態なのよ」
漣「おりょ?ミサイルが減ってますね。戦ってきたんですか?」
サイファー「たまたま潜水艦を見つけてな」
曙「あの位置に付いてたのは空対空ミサイルよね。まさか空対空ミサイルで撃沈したってこと!?」
朧「通常爆弾と空対空ミサイルだったよ。一瞬の出来事で何が何だかわからない内に戦闘が終わっちゃった」
漣「接近して爆撃からの上昇して下降モーションからミサイル撃ちこんだってところですかねぇ」
サイファー「よくわかったな」
潮「浮上していたんですか?」
サイファー「そうだ。潜られる前に片をつけなければならなかったからな」
曙「まさに電撃戦ね。まさか円卓の鬼神に見つかるなんて、あたしは潜水艦は苦手だけど少し同情するわ」
漣「ユーク軍のシンファクシ級みたいに散弾ミサイルとか艦載機なんて装備できませんから、浮上してる時に見つけられたら撃沈不可避ですねぇ」
サイファー「まぁ見つけたのはたまたまだったが被害が出る前でなによりだ。次は誰が乗るんだ?」
漣「はいはいは~い!漣行きますよ~!」
サイファー「次は漣か。少し補給をするから補給が済み次第出撃だ。いいな?」
漣「アッハイ。じゃなくて、燃料が足りなくなったんですか?」
サイファー「そんなところだ。思った以上に燃料を使ってしまってるからな」
漣「ほ~ぅ、ぼのピーにおぼろんはご主人様にどんな要求したんですかねぇ」
曙「別に変わったことは要求してないわよ」
朧「朧は頼む前に戦闘に入ったから特には」
サイファー「とにかく補給が先だ。ついでに使用した弾薬も補給する。今のうちに自分の装備を再チェックしておけ」
漣「了解ですよ~」
―――――
―――
―
漣「いや~ありがとうございますご主人様。漣の希望を聞いてくれて」
サイファー「まぁ1回限りだがな。それより何故この方角なんだ?」
漣「それはですねぇ…」
彩雲妖精「サイファー、敵艦隊発見!正規空母1、軽空母2、重巡1、輸送艦2よ!」
サイファー「輸送艦隊と出くわしたか。ん?まさか…漣、これが狙いか!?」
漣「やっぱりガチ空戦を体験したいんですよねぇ。まさか本当にガチ艦隊に出くわすとは思ってなかったんですけど」
サイファー「お前、あとで戻ったら始末書だからな。流星!」
流星妖精「ハープーン発射準備OKです!」
サイファー「狙いはわかってるな!?ハープーン、Fire!」バシュバシュゥゥン
漣「この距離からもう狙えるんですか!?」
サイファー「むしろこの距離だからこそ狙うんだ。やっかいなやつから叩くのは戦闘の鉄則だ」
彩雲妖精「空母ヲ級、重巡リ級に命中!撃沈確認よ!」
漣「長距離空対艦ミサイルが簡単に命中しちゃってますね。ご主人様ってホントに人間ですか?」
サイファー「ずいぶんと失礼な事を言ってくれるな」
漣「いやいや、おかしいでしょ。妖精さん達の補正があるって言っても深海棲艦にハープーンをこの距離でぶち当てるとか、意味不な状況すぎて草生えそうですよ」
彩雲妖精「敵軽空母から艦載機発艦を確認!サイファー、来るわよ!」
サイファー「頭を押さえる!烈風!」
烈風妖精「この距離ならAMRAAMね。いけるわ」
サイファー「編隊が整う前に落とす!AMRAAM、Fire!」バシュバシュゥゥン
彗星妖精「サイファー、こっちも捉えたよ~」
サイファー「なら確実に当てろよ!マーヴェリック、Fire」バシュバシュゥゥン
彩雲妖精「AMRAAM命中!爆発の余波で敵機は残りわずかに減ったわ!」
漣「はにゃあ!まだ有視界で会敵もしてないのにもうこれだけの戦果ですか、そうですか」
彩雲妖精「続いてマーベリック命中!軽母ヌ級2隻撃沈よ!」
サイファー「残りの艦載機と輸送艦を叩く!接近するぞ!」ゴォォ
漣「なんでしょう、この…なんだろ…?」
―――――
―――
―
サイファー「クソはともかく変態はやめてくれ。あらぬ誤解を生みそうだ」
漣「いや~、おぼろんが言った意味がよくわかりましたねぇ」
朧「ミサイルが減ってる。戦闘があったの?」
サイファー「漣がどうしてもと言うからお前達とは別の方角に飛んだんだがな、そうしたら輸送艦隊と鉢合わせてやり合うハメになってな」
曙「あんた、それ狙ってやったでしょ?」
漣「せめて軽巡ぐらいと鉢合わせるかなぁって思ってた程度なんですが、まさかヲ級を含んだ艦隊と鉢合わせるとは想定外でしたねぇ」
潮「それで、どうなったんですか?」
サイファー「鉢合わせた以上は見過ごすわけにはいかんからな。きちんと撃破してきたぞ」
漣「しかも無傷の完全勝利。有視界に入る前に輸送ワ級と発艦してた艦載機以外全滅。円卓の鬼神になるには人類を卒業しないとダメなことがよ~くわかりました」
サイファー「おかげで補給が必要になった。潮、すまんが補給が済み次第の出撃になる」
潮「は、はい。大丈夫です」
漣「しかも残ってた艦載機も機銃と空対空ミサイルであっという間に殲滅、落としてる間に爆弾で輸送ワ級も撃沈しちゃって、状況に頭がついていきませんでしたよ」
曙「ホント化物染みてるわね。本当に人間かどうか怪しくなってくるわよ」
朧「朧の時もそうだったけど、艦隊を相手にしても早かったんだね」
漣「体感で5分ぐらいしかかってなかったんじゃないですかねぇ」
曙「早すぎるわよ、それ」
潮「あの…潮は普通でいいですから。漣ちゃんの時みたいに前線に出向かなくても大丈夫ですので」
サイファー「当たり前だ。いくら燃料と弾薬の目処が立っているとはいえ、そう何度も戦闘を行っていいわけじゃないからな」
漣「漣はラッキーだったのかアンラッキーだったのか。てっきり3Dシューみたいに飛びまわってドンパチやるもんだと思ってたんですがねぇ」
サイファー「空戦ってのは本来そんなもんだ。お前達が船舶そのものだった時代のレシプロ機での戦闘ならともかくだがな」
朧「相手が鬼級でも容赦なく速攻で終わりそうな気がする…」
曙「やっぱり変態よ、この変態提督!」
サイファー「だから変態は止せ。潮、補給の間に装備をチェックしておけ。終わり次第出るぞ」
潮「りょ、了解です!」
―――――
―――
―
潮「あの、サイファー提督」
サイファー「どうした?」
潮「確か皆のときは高度制限が解除されたらシステムを起動させてたんですよね?」
サイファー「ああ。やっぱり少し狭いか?」
潮「いえ、それは大丈夫なんですけど、どうしてシステムを起動させないのかと思いまして」
サイファー「だいたい漣のせいだ。このイーグルもスーパーホーネットも補給作業は主にこいつらが主体で行っているからな」
潮「それに漣ちゃんとどういった関係が?」
サイファー「朧の時は仕方ない状況だったが、漣の時は艦隊と真正面からやり合うハメになったからな。それだけ補給作業で疲労がたまってるようでな」
烈風妖精「ごめんなさいね。システムを起動させると気が張り詰めてしまうから少しだけ休憩がほしいの」
潮「いえ、大丈夫です。気にしないでください」
サイファー「どうしても我慢できなくなったら言ってくれ。烈風達も理解してくれるはずだ」
潮「いえ、平気です。それに妖精さんたち可愛いですから」
彗星妖精「おんや?褒められちゃったね~」
流星妖精「そう言っていただけるとは思ってませんでした」
彩雲妖精「あら、烈風照れてるの?」
烈風妖精「そんなことないわ。けど、悪い気はしないわね」
ザザッ
ピクシー『よう相棒!まだ生きてるか?』
サイファー「ん?ピクシーか。本土から戻りか?」
ピクシー『ああ。用事を済ませて今戻ってきたところだ。ところで今副座に座ってるのは誰だ?』
潮「潮です。妖精さんたちも一緒です」
ピクシー『そうか。で、どうだい?サイファーとの空の旅をしてる気分は』
潮「凄いですね。なんていうか…安心して命を預けられるというか」
ピクシー『ということはまだ無茶をやらかしてないってことか』
サイファー「別に変わったことはやってねぇよ。どいつもこいつも人をなんだと思ってやがる」
ピクシー『ハッハッハッ!あんまりお前のガチの飛び方をやってやるなよ。んじゃ俺は一足先に戻ってるぜ』
サイファー「ああ、了解した」
潮「ピクシーさん、お気をつけて」
潮「やっぱりピクシーさんと仲がいいんですね」
サイファー「元々は傭兵仲間だったが、今じゃもはや腐れ縁だな」
潮「サイファー提督もピクシーさんと話されてる時は楽しそうですから」
サイファー「…そうだな。戦友ってのはそうなのかもしれねぇな。お前達も仲良くやれよ」
潮「はい!」
―――――
―――
―
潮「楽しかったよ!色んな飛び方してもらったけどなんだか安心して命を預けられる感覚だったかな」
曙「よくこの変態パイロットの飛行を体験してそんな言葉が言えるわね」
サイファー「だから変態は止めろっつってんだろうが。俺としては朧と漣の時は戦闘があったが、別に変わったことは特にやってねぇぞ」
漣「うっしーは気が弱そうで案外肝が据わってますからねぇ」
サイファー「お前は肝が据わってるというより悪ふざけがすぎるだけだがな。始末書は明日までに提出だからな」
漣「あ、やっぱり逃げられませんか」
サイファー「当たり前だ!どれだけ弾薬を使用したと思ってやがる」
曙「バカね。変な注文しなけりゃレポートだけで済んだのに」
漣「うへぁ。うっしー手伝って~」
潮「流石に漣ちゃんが悪いと思うな。妖精さんも疲れてたし」
漣「助けておぼろも~ん」
朧「自業自得でしょあれは。レポートは明日までじゃないんだから頑張って始末書書かないと」
漣「ぼ~のぴー!」
曙「ちょっ!あたしに振らないで!ていうかぼのぴー言うな!」
サイファー「戦闘機はおもちゃじゃないんだ。少しは悪乗りを反省しろ」
漣「おぅふ!メシマズです。なんてこったい」
サイファー「さて、今日はもう終わりだ。朧、潮、曙、漣が始末書作成をサボらないように監視しておけ」
朧・潮・曙「了解!」
―――――
―――
―
夕立「あなた~にポイを~して~みました~♪」
時雨「なにそれ?歌詞少し違うよね」
時津風「夕立嬉しそうだねぇ」
雪風「みんなサイファー司令と乗れるのを楽しみにしてるから夕立ちゃんなりの表現なんだろうね」
サイファー(こりゃまたなんというか、犬っぽいのが3人にハムスターっぽいのが1人。なんつう選定基準だこりゃ)
サイファー「今日はお前達か。事前に受けた説明は頭に入ってるな?」
時雨「大丈夫だよ。きちんと覚えてきたから」
雪風「ちゃんと装備の使い方も覚えてきました!」
サイファー「夕立はずいぶん浮かれてるな」
夕立「あぁそれは~あ~それはポイーッ!の魔法ね~♪」
時津風「夕立なりの喜びの表現じゃないかなぁ?ずいぶん楽しみにしてたみたいだしねぇ」
サイファー「それで大丈夫なのか?」
夕立「ちゃんと覚えてきたから大丈夫っぽい!」
サイファー「ならいいんだが。で、誰から乗るんだ?」
夕立「はーい!夕立から乗るっぽい!」
サイファー「…なんか不安を覚えるが、まあいい。装備のチェックは大丈夫だな?」
夕立「さっきちゃんと手順どおりにやったっぽい!だから問題ないっぽい!」
サイファー「ぽいじゃ困るんだがな。まあいい、乗ってくれ」
夕立「ぽ~い!」
サイファー「お前達も待機中に装備のチェックをしておけ。出るぞ!」
―――――
―――
―
夕立「妖精さん達って実際に戦闘しながらこの難しそうな装置をいじってるっぽい?」
サイファー「まぁ各々分担で作業してるがな」
夕立「どんな風に役割分担してるの?」
サイファー「烈風が主に対空、流星が対艦、彗星が対地、および陸戦型への攻撃と防御全般、彩雲がアビオニクス全般だ」
夕立「こんなにミサイルの種類があったら一人で選ぶの大変っぽい」
サイファー「慣れだな。実際あいつらと出会うまでは一人でやっていたことだしな」
夕立「間違えて撃ったりとかしたことないっぽい?」
サイファー「無いと言えば嘘になるな」
烈風妖精「今は私達が副座のシステムと同化してるからスイッチをいちいちいじらずに直結で作業してるからまだ楽な方よ」
流星妖精「スーパーホーネットや震電Ⅱの時はサイファーが色々操作してましたけどね」
夕立「ふぅん。音声認識っぽく切り替えが出来るっぽい?」
サイファー「まぁ感覚的にはそんな感じだな」
夕立「じゃあ夕立もやってみていい?」
サイファー「おいおい、ミサイルはおもちゃじゃないんだぞ」
烈風妖精「発射管制はサイファーが握ってるんだし、切り替え程度なら大丈夫じゃなくて?」
サイファー「お前にしては珍しくサービス精神旺盛だな。まぁいいだろう」
夕立「よぉし!…今はAMRAAMだから…ハープーンスタンバイ!」
ピピッ
夕立「おぉ~!切り替わったっぽい!凄い凄~い!じゃあマーベリック!」
ピピッ
夕立「わぁぁ!サイファー提督さん!これ楽しいっぽい!」
サイファー「…そりゃなによりで。まさかお前達までノッて遊ぶとは想定してなかったんだがな」
彗星妖精「発射はしないんだからいいんじゃないの~?」
サイファー「そういう問題じゃないだろうに…」
―――――
―――
―
夕立「もうすっごい楽しかった!妖精さん達も協力してくれて凄い面白かったっぽい!」
時津風「戦闘はしてないんだねぇ」
サイファー「会敵しなかったからな」
雪風「妖精さんたち、ちょっと疲れてませんか?」
サイファー「夕立に付き合ってあれこれやったからな。ほどほどにしときゃいいものをな」
時雨「夕立、なにやったんだい?」
夕立「ミサイルの切り替えとか色々やってもらったっぽい」
サイファー「流石にHUDの表示まで触られた時は少し焦ったがな」
夕立「でもすっごい楽しかったっぽい!ビューン!って飛びながらミサイル切り替えて戦術考えて飛ぶのって難しいけど面白いっぽい!」
時津風「ソロモンの悪夢モードかな?」
夕立「夕立もうちょっと大きくなったらライセンス取ろっかなぁ」
サイファー「ライセンスの取得は構わんが、基礎航空力学の時点でギブアップしてるようじゃまだまだ先の長い話だな」
夕立「う~!これからピクシーさんにゆっくり教えてもらうっぽい!」
雪風「ピクシーさんは香取さんや鹿島さんよりきびしいと思うけど…」
時津風「笑いながら凄く難しい問題を出した上に、採点基準もきびしいと思うなぁ」
時雨「この前、香取さんと鹿島さんがピクシーさんに何か相談してたね」
サイファー「ピクシー式レッスンは色々怪しいんだがなぁ。まあいい。で、次は誰だ?」
時津風「次は時津風だよ~」
サイファー「そうか。装備の最終チェックをしたら乗ってくれ。補給はせずにそのまま離陸する」
時津風「了解了解~」
―――――
―――
―
サイファー「A/B使わなくてもマッハの1歩手前までは加速できるからな」
時津風「最高速度だとどれぐらいだっけ?」
サイファー「カタログスペック上はマッハ2.5だ。当然高度なり搭載兵装などで左右されるがな」
時津風「ちょっと体験してみたいなぁ」
サイファー「まぁ燃料の補給は必要になるがいいだろう。A/B点火」ゴォォ
時津風「わぁ!凄い加速G!引っ張られる引っ張られるぅ!」
彩雲妖精「ん?サイファー、敵艦を発見したわ!駆逐艦が2隻よ!距離53000!」
サイファー「周囲に他の敵影はどうだ?」
彩雲妖精「無いわ。偵察部隊かしらね」
サイファー「なら一撃離脱だ。流星!」
流星妖精「この距離ならAMRAAMで行きます!」
時津風「こんな速度出てて当てられるの?」
サイファー「問題ない。それに当てられる当てられないではない。当てるんだ」
時津風「こりゃ確かにサイファー司令に狙われたらアウトってみんな言うよねぇ。射程外の遠くから撃たれてこんな速度で逃げられるんじゃどうしようもないねぇ」
流星妖精「敵艦ロック完了!いつでもいけます!」
サイファー「発射と同時に離脱するぞ!AMRAAM Fire!」バシュバシュゥゥン
―――――
―――
―
時津風「すっごい楽しかったよ~!音速の壁も超えてくれたし、ミサイル発射の瞬間も見れたしねぇ」
夕立「ミサイルを使ったっぽい!?あ!ホントだ!AMRAAMが2発無いっぽい!」
時雨「相手は軽巡か駆逐かな?戦艦だと対空ミサイルは耐えそうだし」
サイファー「駆逐が2隻だ。それと時雨、空対空ミサイルでも当て方次第では戦艦だろうが空母だろうが沈めることは可能だ」
雪風「確かにサイファー司令なら空対空ミサイルのみの搭載でも問題なく片付けそうですけど」
夕立「円卓の鬼神の2つ名は伊達じゃないっぽい」
時津風「今更だけどよく摩耶さん達はサイファー司令と演習して平気な顔してられたねぇって思ったかなぁ」
時雨「本気のサイファー提督を相手にしたら流石に生きた心地はしなかったと思うよ。僕も参加してたけど何も出来ずに撃沈判定にされたから」
夕立「そういえば時雨はサイファー提督さんとの演習に参加してたっぽい」
時雨「僕がまだ未熟なのかもしれないけど、それでも伝説のエースパイロットは『遠い』って思ったよ」
サイファー「あれは震電Ⅱの機体の性能チェックもあったからな」
雪風「それで完全勝利してるんですからやっぱり凄いですよ」
夕立「でもいいなぁ。時津風は戦闘を経験したんだし、夕立も経験してみたいっぽい」
時津風「経験したって言っても音速超えた状態からミサイルを2発撃って一撃離脱しただけだから経験したって言うのかなぁあれは」
雪風「それで撃沈はしたの?」
時津風「見事命中の撃沈だったよ~!本当にサイファー司令は凄いねぇ」
サイファー「相手が脆い相手だったからな。さて、次は誰だ?」
雪風「次は雪風です!装備の点検は完了してます!」
サイファー「そうか。だがA/Bを使用してしまったから燃料だけ補給をする。その後に出るぞ」
雪風「了解しました!」
―――――
―――
―
雪風「わぁ!やっぱり戦闘機って速いですね!あっという間に基地が見えなくなりました!」
サイファー「雪風も駆逐艦だからそれなりの速度で海上を航行してるだろ」
雪風「それはそうですけど、やっぱり戦闘機とでは速度が違います。少し島風ちゃんの気持ちがわかった気がします」
サイファー「お前まで島風みたいに速さを求めるようにはならんでくれよ」
雪風「それは大丈夫です。流石にあの速度は雪風ではどう頑張っても出ませんし」
サイファー「しかし、お前達は戦闘機に乗るのを怖がらんな。少しはあれかと思ってたんだがな」
雪風「敵の戦闘機は怖いですけど、サイファー司令が操縦している戦闘機ですから怖くないです」
サイファー「そういうもんかねぇ」クイッ
―ぼやきながらスプリットSの軌道を取るサイファー―
雪風「お、おお?おおお!?」
雪風「今のも戦術機動なんですよね?なんていう飛び方なんですか?」
サイファー「スプリットSだ。インメルマンターンの逆向きのパターンだ」
雪風「シャンデルってどうやるんですか?」
サイファー「シャンデルか。こうやってな」クイッ
雪風「斜めに上がるとこんな感覚なんですね」
サイファー「で、ここで姿勢を戻すんだ」クイッ
雪風「これで敵の姿は見えるんですか?」
サイファー「死角は当然ある。だからレーダーと勘を頼るんだ」
雪風「なるほど!」
サイファー「えらく熱心に聞いてくるな。ライセンスでも取る気なのか?」
雪風「そこまでは考えてないですけど、こういった空戦機動を覚えておいたら今後役立つかなぁって」
サイファー「確かに空戦機動を覚えれば相手の動きが読みやすくなるからな」
雪風「次はバーティカルローリングシザースをやってみてもらえますか?」
サイファー「わかった」
―――――
―――
―
雪風「色々勉強になったよ!やっぱり実際に乗って体験するのと見るのとでは違ったし」
夕立「サイファー提督さんとなら安心して飛んでられるっぽい」
雪風「サイファー司令!ありがとうございました!勉強になりました!」
サイファー「ああ。だが元々被弾の少ない雪風がここまで勉強熱心に聞いてくるのは予想外だったな」
雪風「いつまでも幸運だけで避けているとは思われたくありませんから」
時雨「それはある意味で僕にも当てはまるんだけど…」
夕立「でも時雨はサイファー提督さんとの演習で1発でやられたっぽい」
時雨「相手が悪すぎるんだって。夕立だってサイファー提督と戦って無事で済むと思うかい?」
夕立「う~ん、たぶん速攻で勝負を決められるっぽい」
時津風「鬼神は怖い怖い」
サイファー「さて、最後は時雨だったな。装備のチェックはどうだ?」
時雨「大丈夫。チェックは終わってるからすぐにいけるよ」
サイファー「そうか。なら乗り込んでくれ。補給は無しでそのまま出るぞ」
―――――
―――
―
時雨「なるほど、こんな感覚だったんだね」
サイファー「なにがだ?」
時雨「安心して命を預けられるってことさ。何も不安が伝わってこない」
サイファー「慣れ親しんだ機体ってのもあるが、そんなに無茶な飛び方をするつもりがないってのもあるな」
時雨「そうじゃくて、何か別の…そう、絶対的な安心感がサイファー提督から伝わってくるような」
サイファー「そうか?俺は特別何かをしてるわけじゃないんだがな」
時雨「だからかもしれないね。まるで日常のような、手足を扱うような感覚だから不安を感じないのかもしれないね」
サイファー「イーグルは俺にとって手足みたいなもんだからな。使い慣れた機体ってのはそれだけいいもんだ」
時雨「僕も、艤装を完全に手足のように扱えるようになるかな」
サイファー「それは訓練次第だ。確かにお前達艦娘は状況に応じて艤装を変えているが、結局のところ一番自信の持てる艤装を使い倒せば自ずと他の艤装でも出来るようになるんじゃねぇかと思うぜ」
時雨「そうだね。自分の長所、得意な部分を伸ばせばそれだけ応用が利くようになるね」
サイファー「そういうことだ。自分自身をよく見つめなおせば自ずと見えてくるはずだ」
時雨「そうだよね。…ところでサイファー提督、さっきから岩山の凄くギリギリを通過してるけど何か意図があるのかい?」
サイファー「一応実戦を考慮した飛び方を見せるのが名目だからな。地形を利用した飛び方をしてるんだ」
時雨「そっか。墜落しないとは思うけど、少しビックリするね」
サイファー「…お前は肝が据わってるな。曙なんかはギャーギャー騒いでたぞ」
時雨「激突はしないって思ってるけど、凄いスリルだねとは思ってるよ」
サイファー「最後にあの岩山のトンネルを潜り抜けたら帰投するぞ」
時雨「え?あのトンネル潜れるのかい?」
サイファー「機体幅的には問題ない」
時雨「墜落はしないとわかってても下手なジェットコースターよりはよっぽど怖いとは思うよ、やっぱり」
サイファー「突入するぞ」
―――――
―――
―
時雨「うん。操縦技術って突き詰めるとここまで出来るんだって思ったよ」
時津風「曲芸飛行でもやったのかなぁ?」
時雨「ある意味曲芸の域なのかもしれなかったかな」
雪風「なにやってきたんですか?」
サイファー「地形を利用した飛び方をしてきただけだ。しかし時雨は肝が据わってるな。少しぐらいはビビるかと思ってたんだがな」
時雨「正直ビビりはしてたよ。けど安心の方が大きかったから」
時津風「わかるわかる」
夕立「サイファー提督さんとなら安心できるっぽい」
雪風「円卓の鬼神は伊達じゃないです!」
サイファー「暁と曙がなんだったのかと思えるな」
夕立「?…チキンハート?」
時津風「七面鳥七面鳥!」
時雨「それだと某正規空母さんが怒ると思うよ」
雪風「陸上で爆撃されたくありません」
サイファー「まぁいい。今日はこれで終わりだ。俺はこのストライクイーグルをハンガーに入れてくるからここで解散だ」
雪風「了解しました!」
時雨「サイファー提督、今日はありがとう。凄く楽しかったよ」
時津風「中々出来ない体験だったねぇ」
夕立「夕立、ちょっと本気で航空力学勉強してみるっぽい!」
サイファー「楽しかったなら良しだな。風呂に入ってしっかり全身マッサージしておけよ。じゃあな」
―――――
―――
―
―バーサーカー事件から数日経ち、事態を重く見た軍上層部は調査の末に研究機関の上層部の人間を逮捕。事実上の機関の解体を行っていた。そんなある日のこと…―
サイファー「う~ん…」
大和「煮詰まってらっしゃいますね。コーヒーをお入れしました。どうぞ」
サイファー「サンキュー。どうにもなぁ」
大和「震電Ⅱの件ですか。確かバーサーカーの遺体は本土に搬送されて司法解剖が行われたんですよね」
サイファー「ああ。だが機体そのものはこの基地に残っているからな。システムエルフなんてもんが積まれた機体なんて明石や夕張だけで解析させるのはあれだからな」
大和「明らかに解析するための人材と機材が足りてませんね」
サイファー「そうだ。だからと言って大本営にすんなり渡すわけにもいかん。曲がりなりにも軍部と繋がっている機関がやらかしたことだからな」
大和「大本営と製造元の人材をこちらに派遣してもらうわけにはいかないんですか?」
サイファー「一応その方向で考えてはいるんだが、そうなってくると今度は基地の運営に支障が出かねんからな」
大和「一応最前線の基地ですからね、ここは」
サイファー「研究、解析をしようもんなら大掛かりな機材と大人数であれこれやることになるのは目に見えてるからな」
大和「それにブラックボックスを開けることにもなりますから、私達の立ち入りも制限されてしまいますね」
サイファー「そういうことだ」
大和「難しい問題ですね」
サイファー「ああ。ここまでくるとピクシーの権限だけでどうにかなる問題でもないしな」
大和「サイファー提督とピクシーさんに付いている妖精さん達に頼むことは出来ないんですか?」
サイファー「それは明石や夕張に解析作業させるより危険な事になりかねん」
大和「というと、どういうことですか?」
サイファー「やつらは機体と『会話』が可能な存在だ。故に深海棲艦の技術が組み込まれた機体と『会話』を行ってしまうと、逆に精神汚染されかねん」
大和「機体そのものに近づける存在だからこその危険があるということですか」
サイファー「そうだ」
大和「八方塞ですね」
サイファー「頭痛ぇぜまったくよぉ」
サイファー「可能なら機体を本土に送ってくれだとよ。んでNoを突きつけたらせめて人材と機材を派遣させてくれってよ」
大和「現状でサイファー提督のお考えと合致してますね」
サイファー「ああ。だがさっきも言った問題が発生しかねん。それも伝えてはいるんだがな」
大和「普通なら命令に従わない場合は反逆罪を問われてもおかしくないんですが」
サイファー「事件を解決した当事者が相手な上に、陸軍で元ISAFのピクシーまで噛んでいる。おまけに当事者は元傭兵。下手に動けば誤魔化しが利かなくなるのを危惧してるんだろうな」
大和「つまりサイファー提督とピクシーさんがイレギュラーな存在で、軍部も強硬手段に出れないということですか」
サイファー「そういうことだろうな。ただ単に理解が深いだけならありがたいんだがな」
大和「その線は…捨てたくありませんね」
サイファー「ああ。軍部とて一枚岩じゃないことは重々承知してはいるがな」
knock knock
サイファー「入れ」
ガチャ
大淀「第1艦隊より入電です。敵艦隊撃破なるも大破が3名。どうされますか?」
サイファー「帰投に問題は無いか?」
大淀「はい。撤退命令を出しますか?」
サイファー「ああ、頼む」
大淀「了解しました。艦隊に伝えます」
バタン
サイファー「そうでもねぇよ。いくら艦隊の運用、作戦の立案をやっても海上で砲雷撃戦ってのはイメージし辛ぇもんだ」
大和「サイファー提督の戦っていた戦場では砲よりもミサイルが主武装でしょうから、それは致し方ないかと」
サイファー「まぁな。それに俺はどうあってもやはりパイロットだからな。どうしても空からの目線になりがちだ」
大和「でもそれはそれで今までに無い戦略を組まれていらっしゃいますし、空からの目線で作戦を行うのは決して悪いことではないと思います」
サイファー「…ありがとうな。さて、艦隊が戻ってくる前にドックと補給の準備をするか」
大和「はい」
―――――
―――
―
サイファー「ああ、確かに。今回翔鶴は被弾しなかったのか?」
翔鶴「いえ、被弾はありましたが比較的軽微なダメージでしたので」
サイファー「こんなこと言ってはあれだが、正直珍しいな」
翔鶴「いえ、そう思われても仕方ありません。私自身も少し驚いているぐらいですから」
サイファー「逆に大破したのが時雨に雪風、それに瑞鶴か」
翔鶴「こうもいつもと立場が逆転していると少し困惑してしまいます」
大和「敵の主力は空母だったんですか?」
翔鶴「はい。ただ、あまり見ないタイプの空母だったような…」
サイファー「どういうことだ?」
翔鶴「見た目は空母ヲ級なんですが、どうも何か違和感を覚えるといいますか…」
サイファー「なんでもいい。気づいたことを言ってくれ」
翔鶴「はい。確かに見た目は空母ヲ級で、遠目から見ただけではなんら区別はつかないんです」
大和「遠目から?つまり接近戦を試みたんですか?」
翔鶴「いえ、ただ帰艦した艦載機の子たちが言うんです。あれは何か違うって」
大和「青目の改Flagshipと呼ばれるタイプではなくですか?」
翔鶴「はい。赤目のEliteと呼ばれるタイプに見えたんですが、私と瑞鶴なら制空権を最低限有利に持っていけるところを奪取されなかったものの不利に持ち込まれたんです」
翔鶴「はい。他に軽巡ホ級に駆逐ロ級が2隻でした」
サイファー「確かに妙だな。装備している艦載機を考えると不利に持ち込まれる理由が見当たらん」
大和「何か新型の深海棲艦でしょうか」
翔鶴「哨戒任務だったとはいえ、万全の状態で出撃した上でこうですから、もしかしたらその可能性もあるかと」
サイファー「いや、それにしても妙だ。深海棲艦の勢力圏はある程度狭まっているはずだ。もし新型を投入してくるなら制海権を奪取したエリアよりも先に自身の制海権でテストしてからのはずだ」
大和「確かにそうですね。新型の空母ヲ級を目撃した報告は一切入ってませんから、そう言われると妙ですね」
サイファー「翔鶴、他に気づいた点はないか?なんでもいい」
翔鶴「そうですね。…こちらの動きを読まれているというか、そんな風に感じました」
サイファー「読まれている?制空権を奪取されたのは物量押しではなかったのか?」
翔鶴「はい。航空機の数で言えばこちらが上でした。普通に考えれば制空権は取れるのですが、こちらの艦載機の運用方法を熟知されているといいますか…」
大和「深海棲艦側もこちらを研究しているということでしょうか」
サイファー「そりゃ敵を知るのは重要なことだ。だがそれだけで片付くことにも限度はある」
knock knock
サイファー「入れ」
ガチャ
瑞鶴「サイファー提督さん!高速修復剤ありがとね!あれ?翔鶴姉ぇなにやってんの?」
翔鶴「瑞鶴ったら。今日は私が旗艦だったから報告に来てるのよ」
瑞鶴「あ、そっか。てことはサイファー提督さん、いつもとおかしかったことを聞いたんだよね?」
サイファー「ああ。それで今色々聞いていたところだ。瑞鶴も何か気づいた点は無いか?」
瑞鶴「う~ん、なんていうかなぁ、こっちの考えてることを読まれてるって感じがしたぐらいかなぁ」
瑞鶴「なんていうか、サイファー提督さんみたいに先を読まれてるって感じじゃなくて、こっちの戦術をまんま返されてるって感じかな」
翔鶴「私達が普段やろうとしている戦術を、その対策方法で向かってこられた感覚ですね」
瑞鶴「しかも全弾撃ちこむチャンスをよく作る時雨と雪風から狙って、あからさまに夜戦で力を発揮するタイプから削りに来てたし」
サイファー「時雨や雪風、それに瑞鶴といえど被弾することはあるだろう。それが珍しいこととは思わんが」
瑞鶴「そりゃ私だって被弾するけど、そうじゃなくてあからさまに狙いを定めてたってことなのよ」
大和「随伴していた羽黒さんと矢矧は損傷が軽微でしたね」
瑞鶴「だから妙なんですよ。明らかにこっちの意図を知っているような、そんな感じ」
サイファー「それでよく撃破出来たな」
瑞鶴「まぁね。翔鶴姉と羽黒と矢矧が頑張ってくれたし」
サイファー「ふむ…。他のメンバーからも事情を聞いたほうが良さそうだな」
大和「そうですね。こちらの戦術を知られているとしたら、一度作戦を練り直さないといけませんし」
knock knock
サイファー「また来客か。入れ」
ガチャ
ピクシー「よう、相棒。それに嬢ちゃんたち」
サイファー「ピクシーか。どうした?」
ピクシー「ちょっと相棒に見てもらいたいもんがあってな」
サイファー「なんだ?」
サイファー「艦娘がいると何か不都合なことか?」
ピクシー「不都合っつうわけじゃねぇんだけどよ、ちょっと機密レベルが高ぇことでな」
大和「わかりました。終わりましたらお呼びください」
翔鶴「では私達も失礼します」
瑞鶴「時雨たちにも私達から色々聞いておくね」
バタン
サイファー「で、なんだ?あいつらを退席させるほどのことだ、何か特別なことでも掴んだのか?」
ピクシー「ああ。お前も知ってると思うが、ケッコンカッコカリのことを少しな」
サイファー「そんなことだったらわざわざあいつらを退席させてまで言うことじゃないだろうが」
ピクシー「冗談だって、相棒。こいつを見てくれ」
―ピクシーは1枚の航空写真を取り出し、サイファーに見せた―
サイファー「これは…なんだ?この航空写真がなにかあるのか?」
ピクシー「この航空写真が取られたのはこのポイントだ」
―ピクシーそういって海図を指す―
サイファー「この場所は…!」
サイファー「それにここは、かつて深海棲艦に制海権を奪取されたときに無人島になったはずだ」
ピクシー「それがいつのまにか人が入り込んでいる。それもなんらかの強固な建物まで建ててな」
サイファー「まるで研究所のような…まさか!」
ピクシー「多分その考えで合ってると思うぜ」
サイファー「しかし深海棲艦がこの付近で出現して艦隊に大打撃を与えてきた報告が上がったばかりだ。どういうことだ?」
ピクシー「あいつらは深海棲艦の技術を転用して震電Ⅱにとんでもねぇ装備を付けやがった。もしかしたら艦載機を解析した情報を元にクローンでも作りやがったのかもしれねぇ」
サイファー「確かにあの研究機関の人間は全員が全員逮捕されたわけではないが。しかしどうやってこの航空写真を撮ったんだ?」
ピクシー「なぁに。オーシアのツテを頼んで軍事衛星からパシャリとな」
サイファー「…そうだったな。お前は色々とツテがあるんだったな」
ピクシー「まぁな。伊達に国境無き世界やISAFで戦ってきたわけじゃねぇからな。それにMPのネットワークを使って水面下では常にこいつらの動向は追っていたしな」
サイファー「助かる。だが翔鶴達からの証言とこの航空写真だけでは証拠が薄いな」
ピクシー「確かにな。撃破したヲ級でも駆逐ロ級でもサンプルが取れりゃよかったんだが、それどころじゃなかっただろうしな」
サイファー「直に見に行く必要があるというわけか」
ピクシー「そうなるな」
ピクシー「確かにな。艦娘に偵察に行ってもらうにしても、こちらの戦術が完全に把握されてるんじゃあゴリ押すのも一苦労だ」
サイファー「…俺が出る必要がある…か」
ピクシー「そうだな。やつらにとっての想定外はサイファーという存在だ。それも単機で出なきゃいけねぇだろうな」
サイファー「しかし、ストライクイーグルではステルス性に難があるな。かといってスーパーホーネットでも限度はある」
ピクシー「そうなるだろうと思って、1機良いのを借りる手配をしてるぜ」
サイファー「何処から何を借りるんだ?」
ピクシー「エメリアからラプターを1機な」
サイファー「エメリアから!?しかもラプターだと!?」
ピクシー「そん代わりこっちも情報をくれてやることになったがな」
サイファー「なんの情報を渡すんだ?」
ピクシー「ケッコンカッコカリシステムの情報だ」
サイファー「…確かにエメリアにはリットリオとか言った艦娘がいたな」
サイファー「まさか、そのラプターは…」
ピクシー「円卓の鬼神によろしくと言っといてくれってよ。あと『俺の大事なラプターに傷付けんじゃねぇぞ』ってな」
サイファー「あいつ…。そうか、あいつはエメリアで司令官やってんのか」
ピクシー「到着は10日後の予定だそうだ」
サイファー「そうか、わかった。ならラプターの使用を踏まえた作戦を練っておこう」
ピクシー「俺も協力すっからなんでも言ってくれ」
サイファー「頼りにさせてもらうぜ」
ピクシー「あぁ。任せときな」
バタン
サイファー「やはり一筋縄で解決とはいかなかったか。だが今度こそ叩き潰す」
―――――
―――
―
瑞鶴「あ!サイファー提督さん!今から夕飯?」
サイファー「ああ、そうだ。執務も粗方区切りのいい所までは片付いてたしな」
瑞鶴「じゃあ一緒に食べようよ!翔鶴姉も一緒よ」
サイファー「構わんか?」
翔鶴「ええ、是非」
サイファー「では俺は大鯨に頼んでくる。取ってきたら同席させてもらおう」
ザッザッザッ…
瑞鶴「にしてもサイファー提督さん、ピクシーさんと何話してたんだろうね?」
翔鶴「私達を退室させるほどのことだから重要なことでしょ」
瑞鶴「う~ん、サイファー提督さんから聞けないかなぁ」
翔鶴「瑞鶴ったら。ダメよ、そんなこと聞いちゃあ」
瑞鶴「ダメかなぁ。でも気にならない?」
大和「ダメに決まってますよ。私達が触れられないほどの機密だったらどうする気なんですか?」
翔鶴「あ、大和さん。お疲れさまです」
瑞鶴「お疲れさまです。大和さんも聞かされてないんですか?」
大和「ええ。一切聞かされてないですね。憲兵隊のピクシーさんが絡んでるとなるとぼんやりとは想像出来るんですが」
翔鶴「何か思い当たる節でもあるの?」
瑞鶴「いや、サイファー提督さんってこれだけ艦娘が揃ってるのに浮いた話一つも聞かないじゃない?まさかこっそり駆逐艦の子たちに…」
加賀「なにをバカなことを言ってるのよ。その手の話ならピクシーさんが出てくることはないわ」
赤城「確かに浮いた話一つも聞きませんが、サイファー提督がそんな目で私達艦娘を見てるとは到底思えませんしね」
瑞鶴「あはは…。やっぱ…違うか。加賀さんに赤城さんお疲れさま」
翔鶴「それにしても他の鎮守府だとケッコンカッコカリとかそういった話はあるけど、サイファー提督は本当にそういう話は無いわね」
大和「烈風妖精さんたち曰く『サイファーは空戦バカだから女っ気一つもないのよ』だそうですが」
加賀「確かにサイファー提督は他の提督とは違う目で私達を見てる気がするわ」
赤城「兵器としてでも女性としてでもなく、戦友としてって感じですね」
大和「ピクシーさんに対してのそれとは違う戦友としての目線でしょうけど」
瑞鶴「う~ん…。そうだ!加賀さんか翔鶴姉がサイファー提督さんにアプローチしてみるってのはどう?」
加賀「なんでそうなるのよ」
翔鶴「瑞鶴ったら。急に何を言い出すのよ」
瑞鶴「だって、翔鶴姉と加賀さんって他の鎮守府だとダントツの人気って言うじゃない?どっちかがサイファー提督にアプローチしてみたらサイファー提督がどういった趣向してるのかわかるし」
大和「う~ん、サイファー提督がそれでどうなるとは思えないですけど」
加賀「赤城さん、意外と乗り気で考えてない?」
赤城「戦闘以外の事も考えるのは楽しいことよ。いつも気を張り詰めてたら参ってしまいますしね」
瑞鶴「そっかぁ。確かに翔鶴姉と加賀さんだけじゃサンプルが足りないわねぇ」
翔鶴「だからどうしてそっちの方向で話を進めようとしてるのよ」
ザッザッザッ…
サイファー「待たせたな。いつの間にか人数が増えてるな」
瑞鶴「あ、サイファー提督さん。今日は何にしたの?」
サイファー「カレイの煮付けにカサゴのミソスープ、それに竜田揚げだ」
赤城「カサゴの味噌汁なんてありましたっけ?」
サイファー「ああ。なんでも比叡と村雨と曙が釣ってきたらしい。テトラポットに餌を付けて落とし込むだけで簡単に釣れたそうだ」
加賀「穴釣りね。カサゴは漁では捕り辛い魚種だから高級品よ」
大和「私もカサゴ汁頼んだらよかったかなぁ。美味しいんですよねぇ」
赤城「ちょっと行ってきます!」ガタッ
サイファー「早ぇな相変わらず。お前達はいいのか?」
大和「私もいただいてきますね」
瑞鶴「私はこれでいいかなぁ」
加賀「大和さん、よければ私のも取ってきていただけるかしら?」
大和「はい。いいですよ」
翔鶴「ところでサイファー提督、ピクシーさんとなにを話されていたんですか?」
サイファー「ああ、ちょっとな。近々借り物だが戦闘機が搬入されるんでな」
翔鶴「戦闘機ですか?いったいどんな機体なんですか?」
サイファー「F-22ラプターだ。急遽必要になってな」
加賀「借り物って言ったけど、どこからそんな最新鋭のハイテク機を借りれたのかしら?」
サイファー「エメリアだ。俺自身のツテもあってピクシーが手配してくれていてな」
瑞鶴「ラプターって、あの超高性能なステルス機でしょ!?何に使うの?」
サイファー「そいつはまだ公表するわけにはいかん。悪いがこればかりは機密事項でな。お前達を信用していないわけではないが、細心の注意は払っておきたいんでな」
瑞鶴「ラプターまで持ち出すなんて、どんなヤバイことをしようとしてるのよ」
サイファー「悪いがそいつも無理だ。俺の機体ならともかく他国の機体だからな。むしろよく借りれたもんだと思うぐらいだ」
加賀「そう。ならそのラプターを出す時までは厳重に管理する必要があるわね」
翔鶴「そうですね。流石に分別は付くでしょうけど、それでも見学したいと申し出る者はいるでしょうし」
赤城「戻りました!ん~カサゴのいい出汁!で、何を話してたんですか?」
サイファー「容器でけぇな。そんなに入れてこなくてもいいだろうに…」
大和「戻りました。はい、加賀さんの分です」
加賀「ありがとうございます」
サイファー「近々借り物の戦闘機が搬入されるって話をな」
瑞鶴「ラプターが来るんですって」
赤城「ラプター?あの凄いステルス性を持っているっていう機体ですか?」
大和「よくそんなもの借りれましたね。B-2スピリットほどではないにしても1機が物凄く高い機体ですし」
大和「ピクシーさんと話されていたのはその件でしたか」
サイファー「まぁな。公表できるようになればラプターの使用目的も話す。それまでは悪いが教えることは出来ん」
大和「そうですか。まぁ仕方ありませんね」
瑞鶴「遠目から見るぐらいはいいのよね?」
サイファー「まぁそれはいいだろう。というより搬入の時点で見られる話だからな。ある程度の距離から見る分には仕方ないだろう」
翔鶴「いつまで借りるんですか?」
サイファー「その使用目的を達成するまでだ。まぁ数日だがな」
赤城「けっこう短いんですね」
サイファー「元々他国の軍事機密に触れてるようなもんだからな。そうそう長い間借りれる代物じゃない」
サイファー「さて、じゃあ俺は食い終わったから執務室に戻るぞ。大和も飯食い終わって一息ついてからで構わんからな」
大和「了解です」
―――――
―――
―
―サイファー達はエメリアからの輸送船が到着し、ラプターが降ろされるのを待っていた―
輸送船搭乗員「ではここにサインをお願いします」
サイファー「……よし、これでいいな?」
輸送船搭乗員「…はい、結構です。では作業を開始します」
サイファー「頼んだ」
ピクシー「着いたか。にしても、お前がラプターに乗るのを目にする日が来るとはなぁ」
サイファー「乗るっつっても俺のになるわけじゃねぇし、それに真正面から対艦戦やるために借りるわけじゃねぇがな」
ピクシー「確かにな。それにラプターじゃ対艦戦にはちーっとばかし不安を覚えるしな」
サイファー「対艦ミサイルの運用とかはOS上は出来るんだろうけどな」
ピクシー「マルチロール機っつっても、元々陸のある空で戦うことを前程とされて作られた機体だしな」
サイファー「今回はラプターの最大の武器であるステルス性を存分に使わせてもらうだけだ」
ピクシー「頼むから傷入れてくれるなよ。今回は陸軍が主体で色々回してるっつってもラプターの修理代なんてなったら凄ぇ額ぶっ飛ぶんだからよ」
サイファー「努力はする。だが保証は出来んな」
ピクシー「勘弁してくれよ。信用してるぜ、相棒」
サイファー「ああ」
ザッザッザッザッザッ
???「Chi non muore si rivede. Cypher」
サイファー「ん?お前は…」
イタリア「ヴィットリオ・ヴェネト級2番艦リットリオ、改めイタリアです。本当にお久しぶりですね」
サイファー「あの時俺達を助けてくれた艦娘か。あの時はろくに感謝も言えずにすまなかったな」
イタリア「気にしなくていいですよ。これを私達のAdmiralより預かってきました」
サイファー「手紙…か。後で読ませてもらおう」
ピクシー「へぇ、この嬢ちゃんがエメリアの艦娘か。護衛の艦娘は1人なのかい?」
イタリア「私の他にローマ、それにリベッチオが同伴してます」
ピクシー「艦種はなんだ?」
イタリア「ローマは私と同じヴィットリオ・ヴェネト級戦艦の4番艦、リベッチオはマエストラーレ級の駆逐艦です」
サイファー「戦艦が2、駆逐艦が1の護衛艦隊か」
イタリア「エメリアも人手不足ですから。本当は航空戦力も欲しかったところですけど、エメリアの防衛もありますので」
イタリア「Grazie.あ!ローマ、リベッチオ!こっちこっち!」
ザッザッザッザッザッ
ローマ「なに、姉さん?」
リベッチオ「な~に?あれ?この人誰?」
イタリア「こちらの方がこの基地のAdmiralよ」
ローマ「あぁ、あの円卓の鬼神と呼ばれた伝説のエースパイロットの…」
リベッチオ「わぁお!この人が本物の鬼神さん!?」
イタリア「で、こっちが私の妹のローマとリベッチオです」
サイファー「わざわざ遠くから来てくれてありがとう。ブイン基地を代表して感謝する」
ローマ「よろしく」
リベッチオ「よろしくね!」
サイファー「今夜は歓迎の用意をさせてもらっている。滞在中は客室を使ってくれ」
ローマ「ありがとう。けど私はもう少し残るわ」
イタリア「なんで?」
ローマ「姉さん、私達の任務はあのラプターの輸送よ。いくら取引で貸し出しとはいえ、どこで軍事機密が漏れるかわからないのよ」
サイファー「特別?どういうことだ?」
ローマ「それを教えるわけにはいかないわ」
イタリア「ローマ、あなたAdmiralから聞いてなかったの?あのシステムは元々サイファー提督が使っていたシステムなのよ」
ローマ「そうなの?私は聞いてないけど」
リベッチオ「リベでも聞いてたよ。Admiralはローマさんが任務を確認したらすぐ退室したから話せなかったとか言ってたけど」
ローマ「私としたことが…。ということはSystem Pixyを使いこなしているということ?」
サイファー「あいつも妖精と共に空を飛んでいるのか?」
ローマ「その言葉は使いこなしているということね。わかったわ」
イタリア「それにラプターの警備なら輸送船の乗組員さんに任せても大丈夫よ。それより私達の部屋はどこかしら?」
サイファー「客室に案内させよう。扶桑!」
ザッザッザッ
扶桑「お呼びになりましたか?」
サイファー「エメリアからの来客の案内を頼む」
扶桑「了解しました。さ、こちらです」
イタリア「Wao!何て芸術的な…」
ローマ「これが…噂に聞くパゴダマスト」
扶桑「どうかしました?」
リベッチオ「本物だぁ!そのマスト、触ってみてもいいですか!?」
扶桑「ええ、いいわよ」
イタリア「私も触ってみたい!」
ローマ「…私も…いいかしら?」
扶桑「ええ、構いませんよ」
ツンツン…ツンツン…
イタリア「本当に倒れない!凄い!」
ローマ「日本の建築…いやこの場合は造船かしら?技術はどうなってるのよ」
リベッチオ「Artistico!見ることが叶わないと思ってた現物を見れるなんて最高だよ!」
扶桑「ふふっ。なら山城も呼んでこようかしら」
サイファー「なんでもいいから早く案内してやってくれ。施設周りの説明も頼んだぞ」
扶桑「はい。了解しました。ではみなさん私に付いて来て下さい」
ザッザッザッザッザッ…
ピクシー「また面白ぇのが増えたな」
サイファー「……~…~…」
ピクシー「どうした相棒?なんか小難しい顔してよ」
サイファー「いや、なんというか…艦娘ってどこに価値観が向いてるんだろうかと思ってな」
ピクシー「はあ?どういうことだ?」
サイファー「いや、なんでもない」
―――――
―――
―
サイファー「ふぅ…。やれやれ」コキッコキッ
鳥海「ずいぶんお疲れでいらっしゃいますね、サイファー司令官さん」
サイファー「ああ。このところ飛ぶ機会が多いからな。艦隊とやり合ってるわけじゃねぇけどよ」
鳥海「やっぱり飛行すると疲れるんですね」
サイファー「そりゃあな。シートにガッチガチに固定されるわ、見る物も多いわだしな」
鳥海「確かにコックピットって色んな計器が付いてますからね。よくあれだけの情報量を1人で見て判断出来ますね」
サイファー「妖精達(あいつら)のサポートが付いてるっつってもあくまで飛ばしてるのは俺だからな」
鳥海「それにここ数日は要望に応えて艦娘を乗せて飛んでらっしゃいますしね」
サイファー「まさかここまで多いとは思ってなかったってのが本音だ。鳥海も出してたんだろ?」
鳥海「すみません。まさかこんなことになるとは想定外でした」
サイファー「まぁいい、今更だ。それに断ろうと思えばいくらでも断れたが、俺自身が引き受けたことだしな」
鳥海「次は誰を乗せるおつもりなんですか?」
サイファー「そうだなぁ。駆逐艦…と言いたいところだが、阿賀野姉妹からの要望が多かったしなぁ」
鳥海「では次は阿賀野4姉妹を乗せるということですか?」
サイファー「まぁ順当に行けばそうなr」
金剛「Hey!サイファー提督!おはようございマース!」
榛名「おはようございます、サイファー提督」
サイファー「おはよう。相変わらず元気だな、金剛は」
鳥海「それが金剛さんの良いところですよね」
榛名「すみません。少々騒々しかったでしょうか」
サイファー「いや、構わん。元気が無いよりはあったほうがいい」
金剛「当然デース!ところでサイファー提督、ワタシ達の番はいつデース?」
サイファー「なんのことだ?」
金剛「とぼけてもダメデース!ワタシ達がストライクイーグルに乗れるのはいつと聞いてるデース!」
サイファー「ああ、そのことか。戦艦組はもう少し後のつもりだが」
榛名「やはり駆逐艦の子たちや軽巡の子たちを優先されるのですか?」
サイファー「まぁ普通に考えてそうだろう」
金剛「Wait!駆逐艦も戦艦も乗りたい気持ちは一緒デース。ワタシも乗りたいネー」
榛名「金剛お姉様、サイファー提督もお考えがあってのことですから、あまり無理を言ってはサイファー提督のご迷惑になります」
金剛「見た目年齢だけで決めてるだけに決まってマース!そんなのイーブンじゃないネー」
金剛「サイファー提督?何か言ったネー?」ニッコ~リ
サイファー「(ゾッ)い、いや、なんでもないぞ。うん、なんでもない」冷汗タラー
金剛「だったらいいネー」
榛名(地雷を音速で踏み抜く勢いでしたね)
鳥海(それもB61核爆弾を片手に持った勢いで)
金剛「何か2人変なこと考えてないカナ?」ニッコー
榛名・鳥海「いいえ、なんでもないです!」
金剛「ならいいネー」
サイファー・榛名・鳥海(こ、怖ぁ~)
金剛「そんなことより早くストライクイーグルに乗りたいネー!Hurry!Hurry!!」
サイファー「あ~わかったわかった!ちょっとスケジュールいじりなおすからそれまで待ってろ。結論は早めに出してやる」
金剛「Year!それでこそ円卓の鬼神ネー!」
榛名「よろしいのですか?」
サイファー「遅かれ早かれ乗せることに変わりは無いんだ。そのスケジュールがちょっと変更になった程度だ」
榛名「なにか…すみません」
サイファー「気にするな。お前はいい子だな。だがいい子過ぎるのも考え物だ。金剛ほどとは言わんが、少しは自分を前に出してもいいとは思うぞ」
榛名「…はい!」
金剛「Boo!まるでワタシがワガママ放題みたいな言い方デース」
サイファー「気のせいだ。鳥海、悪いが要望書のまとめをもう一度出力しておいてくれ。再度目を通しておきたい」
鳥海「わかりました」
―――――
―――
―
金剛「Year!ヤットワタシ達の番ネー!」
比叡「金剛お姉様の願いを叶えるために、要望を出した甲斐がありました!」
榛名「半ば無理矢理スケジュールを変えてもらったようなものですが…」
サイファー「まぁかまわん。実際に要望回数が多かったのも事実だしな。しかし意外な人物からの要望が多かったのは少々驚いたがな」
比叡「私ですか?確かに出しましたけど、そんなに多かったですか?」
サイファー「いや、比叡じゃない。一番多かったのは霧島だ」
金剛「What's!?」
比叡「え?霧島が?」
榛名「そうなの?霧島」
霧島「わ、私そんなに多かったですか?」
サイファー「少なくとも戦艦の中ではダントツだ。てっきり日向か金剛辺りがトップと思っていたんだがな」
金剛「これはちょっとSurprisingネー」
比叡「そんなにイーグルに乗りたかったの?」
榛名「そういえば霧島は習慣のように決まった曜日に要望書を提出してたわね」
霧島「た、確かに決まった曜日に提出してましたが、ダントツになるほどでしたか?」
サイファー「ああ。頭3つぐらい飛びぬけて要望が出てたぞ」
霧島「わ、私の想像以上の状態です。こんなことになるとは…」
サイファー「規則正しい性格が提出を習慣づけてしまったんだろう、気にするな。で、誰から乗るんだ?」
金剛「う~ん、ワタシから…と言いたいことろデスが、ここは霧島に譲りマース」
比叡「私も金剛お姉様に異論ありません!」
榛名「そうですね。霧島、いってらっしゃい」
霧島「わ、私からですか!?」
サイファー「姉妹の内で決まったようだな。帰ってくるまでに次の順番を決めておけ。霧島、装備のチェックが終わったら乗り込め」
霧島「了解!」
―――――
―――
―
霧島「ふむふむ…なるほど…飛行中はこんなデータが出るんですね」
サイファー「副座と俺の場所とは表示されるものは違うがな」
霧島「この機体は近代化改修されたストライクイーグルでしたね?」
サイファー「その通りだ」
霧島「AIM-120にAGM-84、AGM-84K、まさに空、海、地問わず使える機体ですね」
サイファー「汎用性が高く状況を問わずに使えるのがイーグルの利点だ」
彩雲妖精「サイファー、敵輸送部隊を発見したわ!軽空母2駆逐2輸送船2よ!」
霧島「私のほうではなにも感知できないんですが」
彩雲妖精「私はこの機体のアビオニクスと同化してるからより広範囲の索敵が出来るんですよ」
霧島「それは彩雲に乗っていた時よりも…かしら?」
彗星妖精「最新技術との融合だね~」
霧島「凄いわね。私もこの技術を転用できないかしら」
サイファー「そいつは無理だろ。イージス艦にでもなるつもりか?彩雲、目標からはまだ捉えられてないな?」
彩雲妖精「気づかれてないわ」
サイファー「ならやることは1つだ。流星!」
流星妖精「ハープーンスタンバイ!いつでもいけます!」
サイファー「ターゲット軽空母!ハープーンFire!」バシュバシュゥゥン
―――――
―――
―
霧島「私の想像以上の戦いでした。流石円卓の鬼神、データがまったく役に立ちませんでした」
金剛「戦ってきたデース?」
比叡「本当だ!ミサイルが使われてます!」
サイファー「輸送艦とその護衛を発見したんでな。先手必勝で戦ってきた」
金剛「う~!やっぱりワタシが1番に行けばよかったデース」
霧島「そ、そんなこと言われましても…」
比叡「空対艦戦ということは金剛お姉様と榛名が経験したみたいに飛びまわったということでしょうか」
榛名「あれはある意味一方的な演習でしたけど…」
霧島「いえ、ほとんど敵の射程外から1発で、有視界で戦ったのは輸送ワ級だけでした」
榛名「で、そのワ級も爆撃で…かしら」
霧島「ええ、その通りです」
比叡「ヒエー!一方的じゃないですか!」
サイファー「敵のレンジ外からの攻撃は基本中の基本だ。で、次は誰だ?」
金剛「次はワタシデース!」
榛名「その次が比叡お姉様、最後が私です」
サイファー「わかった。金剛、補給が済み次第出撃する。それまでに装備のチェックをしておけ」
金剛「チェックならOKネー」
サイファー「なら良し。補給が終了次第出るぞ」
―――――
―――
―
金剛「Foo!凄いスピードネー!これが円卓の鬼神の見てる世界ネー?」
サイファー「まぁそうだな。恐怖は感じないか?」
金剛「No problem!サイファー提督となら安心ネー」
サイファー「そうか。なら少し戦術機動を取るぞ」クイッ
金剛「O、Oooooooh!体が引っ張られるデース!」
サイファー「で、このままこうだ」クイッ
金剛「Wow!回ってるネー!」
サイファー「…楽しそうだな」
金剛「トッテモ楽しいネー!サイファー提督、ワタシ達と演習した時に榛名とワタシを撃沈判定にしたあの動きを再現してほしいネー」
サイファー「あの時は確か…」
―高度を落とし低空へ。ロールを加えたハイ・ヨーヨーに入る―
サイファー「で、背後から撃たれてたからそれを避けるように動いてた…な」クイックイッ
金剛「き、機内はこんな感じだったんデスカー!?」
サイファー「んで、下降と同時にロックして撃沈判定…と」
金剛「なんでそんなに冷静なんデスカ?ワタシ達を撃沈判定にしたときも今みたいな感じだったんデスカ?」
彩雲妖精「今ほどではないけどけっこう冷静に判断してたのは覚えてますよ」
金剛「う~!やっぱり余裕でやられてたネー。しかしよくストールしないネー」
サイファー「最悪ストールするなと思ったらハイ・ヨーヨーに入る前にA/Bで加速はする。一応マニュアルで限界は把握していたがな」
金剛「やっぱり円卓の鬼神は底が深いネー」
―――――
―――
―
金剛「改めて円卓の鬼神の実力を思い知らされたネー」
霧島「サイファー司令の空戦能力は異常の域ですから、それを間近で体感すればそうなりますね」
榛名「具体的になにをなされたんですか?」
サイファー「なに、空戦機動をな。それと演習の時に榛名と金剛を撃沈判定にした動きをな」
金剛「あんなに余裕こかれてたとは予想外ネー」
サイファー「あそこまで余裕ぶってねぇよ」
榛名「機内はどんな感じだったんですか?」
金剛「人間の動きじゃないネー。あれでPerfectにワタシ達の攻撃を避けてたんだからおかしいネー」
霧島「映像で見る限りでも異常でしたが、機内はもっと凄い光景だったのでしょうね」
比叡「完全に人間離れした動きでしたからね。レーダーではなく目が機外に付いてるとしか思えませんでしたし」
金剛「榛名も体験してみたらいいネー」
榛名「はい!サイファー提督、榛名の時もお願いできますか?」
サイファー「構わんぞ。次は比叡だったな。装備のチェックはどうだ?」
比叡「はい!いつでも!いけます!」
サイファー「なら乗ってくれ。補給は無しですぐに出るぞ」
―――――
―――
―
比叡「ヒエー!こんなギリギリのところをなんで平気な顔して通過出来るんですか!?ヒエー!」
サイファー「いや、別に速度を落としてるからこれぐらいは難しくないぞ。多分この程度なら空軍の連中でも出来ると思うぞ」
比叡「速度が落ちてるのはわかりますけど、機体幅ギリギリすぎませんか!?」
サイファー「そうか?あと1mぐらい余裕あるだろ」
比叡「たった1mしかないじゃないですかー!何キロ出てると思ってるんですか!?」
サイファー「…500km/hちょいだな」
比叡「やっぱりサイファー司令は異常ですよ。普通じゃやらないですよ」
サイファー「別に目標を撃破するわけじゃないからな。撃破するんであればもう少し速度の緩急はあるが」
比叡「サイファー司令ならなんでも簡単にこなしそうですね」
サイファー「そんなことはないぞ。例えばコブラやクルビットみたいなフランカーやラプターじゃないと出来ないマニューバはこいつじゃ無理だ」
比叡「それってどんな空戦機動なんですか?」
サイファー「水平飛行中に進行方向と高度を変えずに機体姿勢を急激にピッチアップして迎角を90度近く取ってから、そのまま水平姿勢に戻るのがコブラだ。そのまま後ろに1回転するのがクルビットだ」
比叡「どうしてこのストライクイーグルでは無理なんですか?」
サイファー「ラプターやフランカーは強力なポストストール能力を持っているからだ。こいつにはそれがない」
比叡「やってみたことはないんですか?」
サイファー「やってやろうか?確実にストールして墜落する可能性が高いがな」
比叡「それはやめてください!あ、遠征から帰ってきた艦隊がいますね!」
サイファー「あいつらが戻ってきたか。ちょっと挨拶に行くか」
比叡「はい!おかえりなさいの挨拶にフレアを使いましょう!」
サイファー「防御用の物をそんな使い方するやつがあるか!」
―――――
―――
―
比叡「いやぁ、改めてサイファー司令はバケモノ染みてますね」
霧島「遠征に出ていた艦隊からストライクイーグルを見たと連絡がありましたが」
サイファー「たまたま近くを飛んでいたからな。挨拶がてらにちょっと曲芸飛行してきたが」
榛名「サイファー提督の曲芸飛行ですか。近くで見れたなんて少し羨ましいです」
サイファー「榛名はこれから乗り込んで体験するだろうが」
比叡「しっかし、サイファー司令にも出来ないことがあるなんて思いませんでしたよ」
サイファー「コブラ系のマニューバは機体性能で可不可が左右されるからな」
霧島「ちなみに可能な機体ならその空戦機動は可能なんですか?」
サイファー「ああ、出来るぞ。あまり使うことの無い飛び方だがな」
金剛「スーパーホーネットなら出来るデスカ?」
サイファー「いや、スーパーホーネットでも無理だ。ポストストール能力が足りん」
榛名「ちなみにその空戦機動をストライクイーグルで行ったらどうなるんですか?」
サイファー「間違いなくストールを起こして失速。最悪墜落するな」
霧島「けっこう危ない空戦機動なんですね」
サイファー「今でこそ出来る機体があるがな。昔はドラッグシュートで姿勢を戻してたと聞いている」
比叡「技術の進歩って凄いですねぇ」
サイファー「航空機に限らず、な。最後は榛名だったな。燃料の補給を済ませたらすぐに出るぞ。装備のチェックをしておけ」
榛名「はい!装備のチェックは既に大丈夫です!」
サイファー「そうか。なら補給が済み次第出るぞ」
―――――
―――
―
榛名「はぁ~。榛名達が撃沈判定をもらった時って、機内はこんな風に見えてたんですね。というよりほとんど見えてないですね」
サイファー「レーダーで位置は確認していたし、それにミサイルや追尾式のロケット弾みたいに弾が追いかけてくるわけじゃなかったから後は勘で避けてたようなもんだ」
榛名「やはりその勘は長年の経験からのものなんですか?」
サイファー「そうだな。オートであろうがマニュアルであろうが、最終的にトリガーを引くのは人だからな」
榛名「凄いですね。戦術勘といいますか、人の動きまで読むその視野の広さに榛名は驚かされてばかりです」
サイファー「こればかりは経験を積むしかないからな」
彩雲妖精「ん?敵部隊を見つけたわ。駆逐艦が2、軽巡が1ね。また偵察部隊かしら」
サイファー「距離は?」
彩雲妖精「77000ってところね」
サイファー「AMRAAMの射程外か」
榛名「どうされるんですか?ハープーンをお使いになられるんですか?」
サイファー「いや、射程距離まで近づいて発射する。流星、捉えておけよ」
流星妖精「了解です!」
榛名「J-SOW…は置いてきてるんですね」
サイファー「あんなでかい対地ミサイルを使う事態にはならんだろうと思ってたからな。それに偵察部隊に使うには火力が過剰すぎる。ハープーンもだがな」
彩雲妖精「敵、AMRAAM射程範囲に入ったわ!」
サイファー「流星、ちゃんと追ってるな!?AMRAAM Fire!」バシュバシュゥゥン
榛名「この距離から当たるんですか!?」
サイファー「敵は警戒こそしているが、こちらに気づいた様子はないからな。A/B点火!接近して残りを叩く。彗星、マーヴェリック用意しとけよ」
彗星妖精「了解だよ~」
榛名「んんー!体が…後ろに引っ張られてしまいます…」
サイファー「下手にしゃべると舌を噛むぞ。マーヴェリックスタンバイ!射程に入り次第発射する!」
―――――
―――
―
榛名「ええ。正に一方的と言えるな戦闘でしたが…」
金剛「敵のアウトレンジから気づかれる前に撃てるのは戦闘機の強みネー」
比叡「しかもそれを確実に命中させるんですから、サイファー司令と妖精の組み合わせは最強ですね」
サイファー「あいつらのサポートが無いと出来んことだ。深海棲艦相手だと俺1人ではどうしようもない」
霧島「今度はどのような敵だったんですか?」
サイファー「恐らく偵察部隊だろう。軽巡を旗艦に駆逐が2だったからな」
比叡「やっぱりまだこの鎮守府を狙ってるんでしょうか」
サイファー「機会があれば狙うだろうな。だが、今回はいつもよりも離れた距離で発見した。向こうも慎重になっているんだろう」
榛名「このまま平和へと進めばいいですね」
サイファー「そうだな。そのために俺も、お前達も頑張らなんといかんな」
金剛「YES!もっと頑張るから、サイファー提督もワタシ達から目を離しちゃNo!なんだからネ!」
サイファー「わかってる。お前達のことは当てにしている」
比叡「ご期待に沿えるよう頑張ります!」
霧島「艦隊の頭脳としてこの霧島、お役に立ってみせましょう」
榛名「榛名も、もっと頑張って、サイファー提督の強さに近づけるよう頑張ります!」
サイファー「俺のようになるのだけは止めておけよ。お前達はお前達ならではの強さを見つけ、それを伸ばしていけ」
『はい!』
金剛「とっても楽しかったネー!できればもう1回乗りたいネー」
比叡「今度はサイファー司令の戦術論を教えてください!」
榛名「サイファー提督、今日はありがとうございました。とても勉強になりました」
霧島「今日はデータ以上の事を得られました。サイファー司令、また色々教えてくださいね」
サイファー「有意義な時間になったなら幸いだ。お前達は戦艦といえど戦闘機のGに振り回されたんだ。戻ったら風呂でしっかりと全身を揉み解しておけよ」
金剛「ちなみにマッサージしなかったらどうなるデース?」
サイファー「頭のてっぺんから足の先まで筋肉痛になるぞ。文字通り全身な」
比叡「金剛お姉様は私が気合!入れて!マッサージします!」
サイファー「ではこれで解散だ。じゃあな」
―――――
―――
―
大和「意外でしたね。私達の番がこんなに早かったなんて」
陸奥「サイファー提督も何か考えがあってでしょうね」
長門「そうだな。普通に考えれば軽巡や重巡の後と考えるのが妥当だからな」
武蔵「ま、なんにせよ。こんなに早く乗せてもらえるのはありがたい。感謝するぞ」
サイファー「まぁお前達は特に旗艦になる機会が多いからな。俺が立案する空からの目線の戦闘をより理解してもらおう思ってな」
サイファー(言えねぇ。金剛姉妹(戦艦)を乗せたカムフラージュに順番を早めたなんて言えねぇ)
大和「そういうお考えでしたか」
長門「確かに。作戦を伝えられれば実行は出来るが、どうしてもピンとこない部分はあったからな」
武蔵「何か考えはあるのだろうとは思っていたが、実際に見るのとではまた見方が変わるだろうな」
陸奥「てっきり金剛姉妹を乗せたから、その後に軽巡の子達に戻すと変なクレームが来るから誤魔化すためかと思っちゃったわ」
大和「いえ、まだ決めてないですね」
武蔵「そうだったな。まだ乗る順番が決まってなかったな」
陸奥「そうねぇ…。長門、あなたから行ってきたらどうかしら?」
長門「それは構わんが、いいのか?」
大和「私は別に大丈夫ですよ」
武蔵「ふむ、私も構わんぞ」
陸奥「決まりね。長門の後の順番は長門が飛んでる間に決めておくわ」
サイファー「長門からで決まりのようだな。装備のチェックはどうだ?」
長門「私からとは思っていなかったのでこれから最終チェックをする」
サイファー「チェックが済み次第乗ってくれ。出るぞ」
―――――
―――
―
長門「お、おおおおぉぉ!こんなに加速するものなのか」
サイファー「比較的加減速に対する応答性が高い機体だからな」
長門「こんな速度で逃げられては追撃が出来んな。射程外から撃たれ、射程外に逃げられるのでは手の打ち様がないな」
サイファー「確かにミサイルの迎撃は難しいことだ。ハイテクを駆使して実行するのが基本だからな」
長門「だが最終的にそれを実行するのは人だと言うことだろう?」
サイファー「そうだ。敵の砲弾しかり迎撃するのはお前達自身だ。どこから撃たれ、どのように対応すればいいか、水平から見るのと上空から見るのでは手段も変わってくるだろう」
彩雲妖精「サイファー、敵部隊を発見したわ。サイファーの予想通りよ」
サイファー「艦種はわかるか?」
彩雲妖精「重巡が2、駆逐が3ね」
長門「どう出る気だ?」
サイファー「…まずは旗艦から狙う。そして隊列の最後尾の駆逐艦を同時に狙う」
長門「それはどういう意図だ?」
サイファー「中央に穴を開けるのも有効だが、前後をやることによってどう飛んでくるのかを予測させにくくするのが狙いだ」
長門「なるほど…な。そのあとはどうするんだ?」
サイファー「レンジ外からミサイルを撃つのも有効だが、接近して爆撃する。敵がどう動いてくるかをしっかり目に焼き付けておけ」
長門「わかった。サイファー提督の戦い、しかとこの目に刻ませてもらおうか」
サイファー「流星、いけるな?」
流星妖精「目標最終捕捉完了!ハープーンスタンバイ!いつでもどうぞ!」
サイファー「外すなよ。ハープーンFire!」バシュバシュゥゥン
―――――
―――
―
長門「実に有意義な時間だった。改めて円卓の鬼神の底の深さを思い知らされた」
大和「戦闘を行ってきたんですね」
サイファー「最初に言っただろう?空からの目線での戦闘がどういうものかより理解してもらうとな」
武蔵「私達にも見せてもらえるんだろう?」
サイファー「そのつもりだ。妖精達(あいつら)には少々苦労させてしまうがな」
大和「なんだか少し申し訳ないですね。けど、とてもありがたい機会です」
サイファー「次は誰が乗るんだ?」
武蔵「私だ。長門が満足するぐらいだ。期待させてもらうぞ」
サイファー「武蔵か。補給が済み次第出るぞ。それまでに装備のチェックをしておけ」
武蔵「了解した。しかし…パイロットスーツというのは少々窮屈だな」
サイファー「…言いたい事はなんとなく想像つくが、我慢しろ。普段の格好で空を飛べば大変なことになる」
武蔵「それはわかってはいる。だがやはり少々…な」
大和「武蔵、それあなたからのセクハラになってるわよ」
武蔵「そうか?」
陸奥「自覚が無いってのは質悪いわね。気持ちはわかるけど」
長門「なに、空に出れば気にならなくなる。それまでの辛抱だ」
武蔵「そうか。まぁいい。楽しみにさせてもらうぞ」
―――――
―――
―
武蔵「あっさりと終わったな。被弾が無いとは流石だな」
サイファー「相手の行動を読むのが大事だ。それに加え、相手に選択肢を多く与えないのも重要なことだ」
武蔵「確かに。あの状況では手段が選べないだろうな」
サイファー「選択肢がそれしかない状況に追い込めば、対応もより楽になる。どんな状況でも必ず糸口はあるものだ」
武蔵「あれだけ機銃の弾丸に囲まれても突破口を見出せるとはな。流石だとしか言えんな」
サイファー「それが可能な状況を最低限の行動で不可能にする。これほど有効でかつ効果が高いことはないもんだ」
サイファー「これは何も空からの状況に限った話ではない。海上で戦っているお前達にも言える話だ」
武蔵「確かにそうだな。しかしサイファー提督の操縦技術は凄まじいな」
サイファー「場数を踏めば誰でも出来ることだ」
武蔵「普通なら絶対にこないであろうと考える岩山の僅かな隙間を、機体を90度傾けて通過して眼前に現れてこられれば私とて対応は遅れるぞ」
サイファー「丁度いい具合に敵が逃げ込もうとしてたからな。地形を利用できると判断したまでだ」
武蔵「あれには驚いたぞ。おもわず声を上げてしまうほどだ」
サイファー「逆に武蔵が声を上げたのにこちらが驚いたぐらいだ。てっきり時雨みたく肝が据わりきっていると思っていたからな」
武蔵「あんな想定外の動きをされて驚かないほうがどうかしているさ。今更だが敵に少々同情するな」
サイファー「相手の対応を遅らせられるとは想定していたが、そこまでのことか?」
武蔵「私達が艦船であった時代のレシプロ機ならともかく、ジェット機であるこいつでやられてはな」
サイファー「そんなもんか?」
烈風妖精「サイファーが異常なのよ」
サイファー「可能だからやっているだけなんだがな」
武蔵「なんにせよ、有意義な時間だったな」
サイファー「満足してもらえたようでなによりだ。帰投するぞ」
―――――
―――
―
武蔵「ああ。とても充実した時間だった」
陸奥「あらあら、武蔵まで満足するなんて。これは次の私も期待していいのかしら?」
長門「期待していいと思うぞ。新たにわかることがとても多い時間になるだろう」
サイファー「あまりプレッシャーをかけてくれるな」
武蔵「確かにサイファー提督が言ったように空からの目線と水平からの目線では見方が変わるな。私は装甲に任せ耐える戦いをするタイプだが、今回で新たな戦略の幅が広がったぞ」
サイファー「そいつはなによりだ。敵を引き付け、耐えるのも重要ではあるが、そもそも敵に仕事をさせなければこちらの選択肢は増えるからな」
武蔵「やはり底が見えんな。私はそこまでのレベルに到達するのにはまだ時間がかかるだろうな」
サイファー「これから時間をかけてやっていけばいい。次は陸奥だったな」
陸奥「ええ。長門と武蔵を満足させた空の旅、期待させてもらうわよ」
サイファー「補給が済み次第出る。が、あまり過剰な期待はしないでもらえるとありがたいな」
陸奥「あらあら、そんなこと言ってると最後の大和はもっとプレッシャーがきつくなるわよ」
大和「期待はしてますけど、そこまでプレッシャーをかける気は…」
サイファー「まぁ俺はいつも通りやるだけだ。装備のチェックはしておけよ。終わったら出るぞ」
―――――
―――
―
陸奥「ふぅ~ん。ここで空対空ミサイルを使うのね」
サイファー「最悪行動不能に出来ればいいからな。サイドワインダーFire!」バシュゥゥン
彩雲妖精「対空機銃来るわよ!」
サイファー「わかっている。だがこの位置には撃てんはずだ。味方を巻き込むことを躊躇しなければな」
陸奥「立ち回りも完璧。確かにこの位置で撃てば味方に損害が出かねないわね」
流星妖精「軽空母撃沈確認!続けてAMRAAMスタンバイ!」
サイファー「いや、このまま爆撃で沈める。彗星!」
彗星妖精「目標はあの重巡だね~?」
サイファー「そうだ。敵が躊躇している間に沈める。外すなよ!」カチッ
彗星妖精「は~いよ~っと!」ヒュゥゥゥン
彩雲妖精「対空砲くるわよ!」
サイファー「ふん、この程度なら避けるのは容易いことだ」クイッ
陸奥「これだけ縦横無尽に立ち回られたら手段が限られるわね」
サイファー「敵に仕事をさせないというのはこういうことだ。ラストだ。AMRAAM Fire!」バシュゥゥン
陸奥「この角度で狙えるの!?ていうかもう発射しちゃってるし」
流星妖精「敵艦の撃沈を確認しました!」
彩雲妖精「周囲に増援は無いわね。戦闘終了よ」
陸奥「凄いわね。これじゃ確かに長門も武蔵も満足するわけね」
サイファー「陸奥は満足できなかったのか?」
陸奥「いいえ、十分よ。改めてサイファー提督の凄さを思い知ったわ」
サイファー「期待に応えれたようでなによりだ」
陸奥「…敵の潜水艦を発見!」
サイファー「…は?そんな反応はないぞ?」
彗星妖精「ダメだね~サイファーは」ケラケラ
彩雲妖精「そこは『ダメだ!』って答えるところよ」
サイファー「なんの話だ?」
陸奥「サイファー提督に不満点があるとすればユーモアがもう少しあると良いってところかしら」
サイファー「……???」
―――――
―――
―
陸奥「ええ、とても満足よ」
サイファー「最後のあれは…なんだったんだ?」
大和「なんの話ですか?」
サイファー「いや、最後に陸奥が俺にユーモアが足りんと言ってきたんでな」
武蔵「何をやったんだ?」
陸奥「ちょっと冗談を言っただけよ」
サイファー「こっちは思わず対地ミサイルを構えたんだがな」
長門「陸奥、何を言ったんだ?」
陸奥「敵の潜水艦を発見!」
武蔵「ダメだ!」
大和「ダメだ!」
長門「ダメだ!」
サイファー「だからなんなんだそれは」
陸奥「お約束…かしらね」
サイファー「漣も言っていたが、そのお約束ってのはなんなんだ」
武蔵「サイファー提督にも今度見せてやったほうがいいんじゃないか?」
長門「私も駆逐艦の子達に見せてもらって知ったが、あとから笑いがこみ上げてきたな」
大和「日本の笑いの部分も勉強してもらう必要あるかもしれませんね」
サイファー「それ、いるか?まぁいい。最後は大和だったな」
大和「はい」
サイファー「補給が済んだら出るぞ」
大和「了解しました!」
―――――
―――
―
サイファー「艦載機を落とす!烈風!」
烈風妖精「ロックしたわ。いつでもいいわよ」
サイファー「邪魔だ!落ちろ!」ドガガガガ
流星妖精「サイドワインダー、射程内です!」
サイファー「よし、ターゲット戦艦ル級!サイドワインダーFire!」バシュバシュゥゥン
彗星妖精「この高度ならいけるよ~」
サイファー「狙いはわかってるな!?GBU-24投下!」ヒュゥゥゥン
大和「す、凄いです。常に狙える敵を狙って攻撃してますね。改めてサイファー提督の視野の広さに驚かされます」
サイファー「航空機と艦船では戦闘可能時間が違うからな。長期戦になればこちらがジリ貧になってしまう」
大和「全ての敵が見えているんですね。さっきからこちらは1発ももらってませんし」
サイファー「戦局を見るというのはそういうことだ。全てを把握し、最適な判断を下す。お前達が旗艦として出た時に最も求められていることじゃないのか?」
大和「確かにそうですけど。サイファー提督は判断が早いといいますか。戦闘が速いといいますか…」
サイファー「有利なうちに事を進めるのは鉄則だろ。母艦を沈める。流星!」
流星妖精「ハープーンスタンバイ!いつでもどうぞ!」
大和「あのヲ級から艦載機が発艦しようとしてます!」
サイファー「もう遅い!ハープーンFire!」バシュゥゥン
―サイファー機から発射されたハープーンミサイルが空母ヲ級を捉え撃沈。しかし僅かに艦載機が発艦されてしまった―
彩雲妖精「僅かに艦載機が飛び立ったみたいね」
サイファー「残った駆逐艦ごとケリを付ける。彗星!」
彗星妖精「こっちはOKだけどもうちょっと接近してくれるかな~」
サイファー「わかっている」
大和「どうなさるおつもりですか?」
サイファー「お前達が三式弾を使うのと一緒のことをするだけだ」
彗星妖精「距離、高度OKだよ~」
サイファー「これで終わりだ!M31クラスター弾投下!」ヒュゥゥン
―――――
―――
―
武蔵「おかえり大和。どうだったか?サイファー提督との空戦は」
大和「やっぱりおかしいとしか言えないわね。視野の広さが異常よ」
長門「空から見ているというのもあるのかもしれんな」
陸奥「それだけでは済まされない何かがある気がするけど」
サイファー「そこまで難しいことはやってないつもりなんだがな」
武蔵「大和は満足できなかったのか?」
大和「いいえ、十分満足よ。ただ、圧倒されて言葉を無くしたぐらいね」
長門「サイファー提督だけは敵に回したくないな」
陸奥「戦艦棲鬼より数段質悪いわね、敵だったら」
武蔵「摩耶達がやったみたいに私も演習を申し込んでみようか」
サイファー「これ以上俺の仕事を増やすのはやめてくれ」
長門「空から見た後にサイファー提督と演習すればより効果があると思うが?」
サイファー「言いたい事はわかるが、それじゃあ俺がもたん」
武蔵「それもそうか。残念だが、仕方ないな」
大和「サイファー提督、今日はありがとうございました。とても良い経験になりました」
武蔵「有意義な時間だった。感謝するぞ、サイファー提督」
長門「大変勉強になった。陸奥、このあと少し戦術について話さないか?」
陸奥「あら、いいわよ。サイファー提督、今日はありがとう。とっても楽しかったわ」
サイファー「楽しめたようでなによりだ。しっかり体を休めとけよ」
武蔵「ところで、このパイロットスーツはどうしたらいいんだ?」
サイファー「それぞれのサイズに合わせて発注したものだからある意味一点ものだ。そのまま持っていてくれてかまわん」
大和「では記念にありがたく頂いておきますね」
サイファー「好きに扱ってくれていい。じゃあな」
―――――
―――
―
サイファー「ふう…。やれやれ、これで今年の分は終了か」
扶桑「お疲れ様でした。今日は晩ご飯はみんなでお蕎麦を頂くことになってますけど、サイファー提督もいかがですか?」
サイファー「ソバヌードルか、悪くないな。しかしこの今年最後の日にわざわざソバヌードルなのか?」
妙高「日本では年越し蕎麦と言いまして、今年一年の災厄を断ち切るという意味で食べられているんですよ」
サイファー「ほぅ。つまり縁起物ということか。しかし何故ソバなんだ?」
鳥海「蕎麦は他の麺類よりも切れ易いことからそういう意味で食べられているんですよ」
大和「その起源を辿ると江戸時代まで遡るとも言われてますね」
サイファー「江戸?サムライの時代からある風習なのか」
陸奥「完全に『年越し蕎麦』として定着したのは大阪から始まったとも言われてるわね。諸説は色々あるでしょうけど」
サイファー「中々奥が深い風習だな。まぁいい、俺も頂くとするか」
大和「それがよろしいかと思います」
扶桑「ところで、今日から明日にかけての夜間警備ですが、誰が担当することになっているんですか?覧には空白になっていて誰が出るのかわからないんですが」
サイファー「俺とピクシーでやる。せっかくの年越しだ。たまには全員休め」
鳥海「そんな…!サイファー司令官さんとピクシーさんでやることはありませんよ」
妙高「そうですよ。それなら私が行きますよ。今からでも那智たちに相談してきますから」
サイファー「いや、構わん。それに戦闘機ならスクランブルが発生してもすぐに急行できる。ピクシーも承諾済みだ」
陸奥「それは…そうだけど…」
サイファー「機体のレーダーで確認出来るから十分だ」
扶桑「妖精さん達はよろしいのですか?」
サイファー「あいつらにも承諾を得ている。問題は無い」
大和「はぁ…。こうなったらサイファー提督は聞いてくれないでしょうね。わかりました。ただし私も待機しておきますね」
サイファー「大和も休んでおいてくれて構わんぞ」
扶桑「私も待機しておきます。サイファー提督だけにお仕事をさせるわけにはいきませんから」
サイファー「扶桑もか。俺はお前達は休んでいていいと…」
陸奥「あら、私も待機するわよ」
鳥海「私も待機しておきますね」
妙高「みなさんが待機されるのでしたら那智たちに声をかけなくて済みそうですね。私だけで済みそうで助かります」
サイファー「お前らなぁ」
扶桑「サイファー提督が私達の知らないところでお仕事をされようとしたのですから、私達も独断で仕事をさせてもらうだけですよ」
大和「私達艦娘を気遣うのはありがたいですけど、サイファー提督も私達を当てにしてくれていいんですよ」
陸奥「何も一人で全部背負い込むことはないのよ」
サイファー「一応ピクシーもいるんだが…」
knock knock
サイファー「どうぞ」
ガチャ
ピクシー「おぅ相棒。今日のことだけどよ…って嬢ちゃんたちもいるのか」
サイファー「構わん。俺たちのスケジュールはたった今把握されたところだ」
ピクシー「マジかよ。まさかとは思うけど、それ聞いて待機するなんて言い出してる…なんてこたぁねぇよな?」
サイファー「残念ながらその通りだ」
ピクシー「おいおい。せっかくセッティングしたのに台無しじゃねぇか」
サイファー「すまんな」
ピクシー「まぁなっちまったもんはしょうがねぇか」
大和「サイファー提督とピクシーさんだけにお仕事をさせるわけにはいきませんから」
ピクシー「嬢ちゃんたちは年頃の女だろうに。新年を迎える時ぐらい羽を休めてもいいんだぜ」
陸奥「あっちこっち飛び回って仕事をしてるサイファー提督とピクシーさんの方が羽休めしてもいいと思うけど」
鳥海「パイロットの負担は大きいですから、新年ぐらいはお休みされてもよろしいかと」
サイファー「少しぐらいはもらうさ。ただ、新年明けた後だがな」
ピクシー「そうだぜ。俺達いい歳したおじさんにはそれぐらいでいいんだ」
妙高「ですので、今日から明日にかけての夜間警備は私達で担当させてもらいます」
ピクシー「…~~。やられたぜ。まいったまいった」
サイファー「そこまで言うなら仕方ない。ただしあくまで基地防衛の為に待機だ。スクランブル対応は俺達で行う、いいな?」
大和「了解しました!」
陸奥「ちょっと腑に落ちないけど、ま、この辺が落としどころかしら」
扶桑「それよりそろそろいい時間です。年越し蕎麦を食べに行きませんか?」
サイファー「そうだな。皆は先に行っていてくれ。俺はピクシーと少し話がある」
妙高「私達に仕事をさせない算段はなさらないでくださいね」
サイファー「そうじゃないからいらん心配すんな」
鳥海「では、私達は先に食堂に行ってますね」
サイファー「ああ。俺たちもすぐに行く」
扶桑「では後ほど」
バタン
ピクシー「で、話ってなんだ?」
サイファー「ちょっとな…」
ピクシー「??」
―――――
―――
―
サイファー「燃料の補給は済んだか?」
ピクシー『ああ、バッチリだ。ついでにあれもきっちり搭載してきたぜ』
サイファー「ならよしだ。ガルム1、出るぞ!」ヒュィィゴォォォォ
ピクシー『続いてガルム2、出るぜ!』ヒュィィゴォォォォ
烈風妖精「あれを用意してくれなんていうから何事かと思ったけど」シュゥン
彩雲妖精「ま、そういうことなら全力でサポートしてあげるわ」シュゥン
流星妖精「戦闘以外で本気出す機会なんて滅多にありませんが」シュゥン
彗星妖精「ま、たまにはこういうのもいいよね~」シュゥン
<System Pixy Standby>ピピッ!
ピクシー『おい相棒、練習無しの1発勝負だ。ミスるんじゃねぇぞ』
サイファー「そっちこそな。きっちり仕事してくれよ」
――――――
扶桑「何か意図があるんでしょうか」
陸奥「何か企んでるんじゃないかしら?」
鳥海「ちょっと外に出て確認してみましょう」
妙高「いたずら…というわけではなさそうですが」
山城「姉様、こちらにいらしたんですか?」
扶桑「あら、山城。どうしたの?」
山城「姉様こそなになさってるんですか?」
扶桑「私達は夜間警備の待機よ」
山城「そんな!姉様がしてらっしゃるなんて。なんで私は気づけなかったのかしら」
扶桑「気にしないで、山城。これは私達が独断でやっていることだから」
山城「ではせめて私も加わります!姉様だけに苦労を背負わせるわけにはいきませんから」
扶桑「山城ったら…いいのに。けどありがとう」
―・―・―
武蔵「お、大和。こんなところにいたのか。なにやってるんだ?」
大和「夜間警備の待機よ。サイファー提督とピクシーさんだけにやってもらうわけにはいかないから」
武蔵「そうか。その言葉から察するに、独断でやっているようだな」
大和「ええ。元々サイファー提督とピクシーさんが2人だけでやろうとしてたから」
武蔵「まったく、あの2人は変なところで我々艦娘を気遣うな。いいだろう、私も加わろう」
大和「武蔵は休んでていいのよ。武蔵まで仕事をすることはないわ」
武蔵「ここにいるメンツだけに仕事をさせていたほうが夢見が悪い。初夢ぐらいはいいものを見たいからな」
大和「武蔵…。ありがとう」
―・―・―
那智「妙高姉さん」
足柄「こんなところにいたのね」
羽黒「私達も合流します」
妙高「あら、みんな…」
―・―・―
高雄「鳥海だけに仕事を押し付けるわけにはいかないわ」
愛宕「一言私達に相談してくれてもよかったのに」
摩耶「水臭ぇよなぁ、鳥海もよ」
鳥海「姉さんたちまで…」
―・―・―
長門「一言声をかけてくれてもよかったんじゃないか、陸奥よ」
陸奥「長門まで…」
―――――
―――
―
ピクシー『おい相棒!なんか嬢ちゃん達が外で集まってんぞ。お前なんか言ったのか?』
サイファー「いや、何も言ってないぞ」
ピクシー『なんだってあんなことになってやがんだ…?』
サイファー「さぁな。もしかしたら2機同時に出撃して何事かと様子を見に出てきたのかもしれんな」
ピクシー『まぁ意図してないとはいえある意味好都合だな』
サイファー「そうだな。…時間だ、やるぞ!」
ピクシー『よし来た!』ピッ
サイファー「いくぞ!」ピッ
――――――
大和「何故基地周辺で編隊飛行をしてるんでしょうか」
陸奥「何か確認しているような動きね」
長門「何をやろうとしてるんだ、サイファー提督とピクシーは」
高雄「あ!サイファー機とピクシー機が分かれました!」
羽黒「戦闘機から煙が!」
那智「しかし、飛行に問題が無いように見えるが…」
扶桑「…A……H…A…」
鳥海「…W……Y…E…」
武蔵「…2…0…1…6…?」
《A HAPPY NEW YEAR 2016》
大和「A HAPPY NEW YEAR 2016!?」
長門「スカイライティングで新年を祝うとは、中々粋な事してくれるな」
<ワー!あれ見て!凄い凄い!
<サイファー提督とピクシーさんがやったのね!
<こんなサプライズなんて聞いてないわよ
<やっるぅ、サイファー提督にピクシーさん
<かっこいいー!
扶桑「鎮守府にいるみんなも喜んでいるようですね」
陸奥「夕食前に話し合ってたのはこれだったのね」
鳥海「事前打ち合わせのみで練習無しの1発勝負でこれだけの芸当が出来るなんて凄いですね」
足柄「まだ何かやる気みたいよ」
――――――
ピクシー『案外なんとかなるもんだな』
サイファー「さて、最後の仕上げだ」
ピクシー「おうよ。タイミングは合わせるぜ」
サイファー「いくぞ。3!2!1!」
サイファー・ピクシー『フレア射出!』カチッ
―サイファー機とピクシー機からフレアが発射。それは夜空を彩る花火のようにスカイライティングの文字に花を添えるものとなった―
――――――
愛宕「ぱ~んぱかぱかぱかぱかぱかぱ~ん!」
山城「綺麗ですね、姉様」
扶桑「そうね。こんなプレゼントがあるなんて、今年はいい年になりそうね」
大和「サイファー提督…ありがとうございます。全員整列!」
ザッ!
大和「サイファー提督とピクシーさんに敬礼!」
バッ!
キィィィィィィィィィィン…
―――――
―――
―
サイファー「これがゾウニスープか」
大和「お餅を喉に詰まらせないように気をつけてくださいね」
サイファー「そんな間抜けじゃないぞ」
陸奥「あら、それでも年間に必ず数人はお餅を喉に詰まらせて亡くなってる人がいるのよ」
ピクシー「美味そうだな。んじゃ、頂くとするか」
モグモグ…ングッ!?ゲッホゲホ!
大和「だから言ったじゃないですか」
鳳翔「落ち着いて食べてください。お餅は逃げませんから」
矢矧「2人してなにやってるのかしら」
漣「典型的(?)なダメ外国人じゃないですかやだー」
サイファー「ゲホッゲホッ!…なるほど、これは美味いが危険な食べ物だ」
ピクシー「油断したぜ。俺は去年も食ってるんだがな」
烈風妖精「バカばっかりね」
―――――
―――
―
大和「哨戒任務…ですか?」
サイファー「そうだ。数日前に翔鶴達が大破したあの海域を調査に出てもらう」
大和「あの海域ですか。確かにあの海域は少し気になるところがありますね」
サイファー「旗艦は加賀、随伴艦に蒼龍、大和、愛宕、矢矧、時雨だ。指令書はこれだ。決して無理をするなよ」
大和「おまかせください。では、私は準備してまいります」
サイファー「頼んだ」
サイファー「さて…」
knock knock
サイファー「どうぞ」
ガチャ
ピクシー「よう相棒、そっちの準備はどうだ?」
サイファー「艦隊の出撃準備は終了だ。あとは艦隊が問題の海域に近づくタイミングだけだ」
サイファー「ありがとうな。イタリア達はどうしてる?」
ピクシー「ラプターの所にいるぜ。相棒お付の妖精達と仲良くやってるようだ」
サイファー「そうか。ならいい」
ピクシー「こっちで手に入れたレーダーセキュリティの図面、頭に入ってるだろうな?」
サイファー「当然だ。いくら高性能なステルス機といえど、地上のレーダーセキュリティシステム全てを掻い潜れるわけではないからな」
ピクシー「かなり危ねぇ飛行になりそうだな」
サイファー「だが、それだけのリスクを背負うだけのものがあるはずだ」
ピクシー「そうあってほしいような、そうであってほしくないような…だな」
サイファー「確かにな」
ピクシー「帰りの支援はこっちに任せときな。お前は証拠を掴むことだけに集中してくれればいい」
サイファー「助かる。じゃあ俺もそろそろハンガーに行ってくるぜ」
ピクシー「頼んだぜ、相棒」
バタン
ピクシー「頼むぜ、相棒。お前だけが頼りなんだからよ」
―――――
―――
―
ローマ「来たわね。この機体を使うのね」
サイファー「あぁ」
リベッチオ「大切な機体なんだから傷付けちゃダメだよ」
サイファー「わかってるさ。あいつがこの機体を大事にしていたのはよく知っているからな」
イタリア「兵装のほとんどを外してますけど、いいんですか?」
サイファー「今回の任務には必要無いものだ。あれば心強いが、今回の場合はデッドウェイトにしかならんからな」
ローマ「それでこのラプターを傷つけられては困るんだけど」
サイファー「そんなつもりは毛頭無い。きっちり無傷で返してやるさ」
イタリア「あら、ローマはAdmiralの機体をずいぶん心配してるのね」
リベッチオ「ツンデレって言うんだって。昨日漣が教えてくれたよ」
ローマ「ち、違うわよ!この機体はエメリアの物よ。それを傷つけられたら困るって言ってるだけよ」
イタリア「ふ~ん」ニヤニヤ
リベッチオ「へ~」ニヤニヤ
イタリア「はいはい」ニヤニヤ
リベッチオ「わかりましたよ~っと」ニヤニヤ
ローマ「まったくもう」
サイファー「…時間だ。ラプターを出すぞ」
イタリア「わかりました。サイファー、気をつけてくださいね」
サイファー「ありがとうな。このラプターは必ず無傷で返す。ありがたく使わせてもらうぜ」
リベッチオ「頑張ってね!」
サイファー「ああ」
―――――
―――
―
サイファー「システムは使えるか?」
烈風妖精「問題無いわ」
彗星妖精「この子、私達のことを覚えていてくれたみたい。嬉しいね~」
流星妖精「今回は私達は彩雲のサポートしか出来ません。サイファー、気をつけてくださいね」
サイファー「わかっている。彩雲、頼むぞ」
彩雲妖精「任せて。サイファーこそ、レーダーに引っかかっちゃダメよ」
サイファー「そんなヘマをするつもりは無い」
大淀『滑走路クリア。周辺空域に異常無し。サイファー提督、発進どうぞ!』
サイファー「よし!ラプター出るぞ!」ヒュィィゴォォォォォォ
彗星妖精「わっ!この子離陸早いねぇ!もう地面から離れちゃった」
流星妖精「最高峰のSTOL機ですからね」
彗星妖精「さぁて、鬼が出るか蛇が出るかだねぇ」シュゥン
流星妖精「本当はどちらも出てほしくないんですが」シュゥン
烈風妖精「ここで証拠を掴まないと、人と人同士で争う火種になるわ」シュゥン
彩雲妖精「サイファー、頼んだわよ!」シュゥン
<System Pixy Standby>ピピッ!
サイファー「確実に証拠を掴んでみせるさ。これ以上無駄な犠牲を出すわけにはいかんからな」
―――――
―――
―
蒼龍「けど本当なんでしょうか。見た目はエリートタイプの普通じゃないヲ級なんて」
大和「私もにわかに信じがたいことではあるんですが…」
加賀「流石に練度不足…とは言えないわね。エリートタイプと見て慢心したと考えるのが普通ね」
時雨「けど、瑞鶴さんが慢心していたとは思えないですよ。エリートタイプとはいえヲ級が3隻だったので本気でやっていたように見えましたし」
愛宕「あ、そっかぁ。時雨ちゃんはその時の随伴艦だったのよね」
時雨「うん。油断が無かったといえば嘘になるかもだけど、普通じゃありえない場所でありえない艦隊に遭遇したから全力を出したはずだし…」
矢矧「本当に不可解な出来事ね。確かにこの辺りは制海権を奪取して最前線は上がっているはずだから、いきなり新戦力を全力投入してくるとは考えにくいわね」
蒼龍「それにしてもサイファー提督も思い切った編成を考えましたね」
大和「どういうことですか?」
蒼龍「まさか大和さんまで投入するとは思わなかったってことですよ。単に哨戒任務なら大和さんまで出す必要は無かったんじゃないかなぁって」
大和「確かに私は消費も多いですからね。それだけサイファー提督は事態を重く見たと考えるのが妥当かと」
加賀「それだけじゃないと思うわ」
矢矧「と言うと、どういう理由でしょうか?」
加賀「ステルス性の高いラプター、それに重装甲の大和さん、ここから考え出される答えは恐らくより長く、より多くの敵を引き付けろってことじゃないかしら」
時雨「つまりサイファー提督は単独で偵察に飛ぶんじゃないかっていうことですか?」
加賀「そう考えるのが妥当でしょうね」
大和「だからこそ、自身が発見されるリスクを下げるために私達を出したということでしょうね」
愛宕「何をしようとしてるのかはわからないけど、こっちに敵の気を引いておかないとダメってことね」
加賀「そうね。偵察機を出すわ。彩雲、行ってちょうだい」パシュン
蒼龍「さて、何が出てくるやら」パシュン
ブゥゥゥゥン
大和「…矢矧、海中からは何か反応ある?」
矢矧「いえ、何も。潜水艦の反応はありません」
大和「そう。このまま順調に何事も無く終わればいいのだけど…」
加賀「そうもいかないみたいね」
蒼龍「海面で何かを発見したみたい…。え?なんだって!?そんなのって…!」
加賀「彩雲を戻すわ。相手がこちらに来るわよ」
大和「蒼龍さん、いったい何を見つけたんですか?」
蒼龍「いえ、それが…」
加賀「信じられないことかもしれないけど、相手は…」
愛宕「敵艦発見よ!相手は…あい…て…は…嘘でしょ!?」
時雨「こんなことって…」
加賀「相手は………」
―――――
―――
―
サイファー「大丈夫だ。索敵網は頭に入ってる」
ピクシー『そっちに敵の姿はあんのか?』
サイファー「こちら側にはいない。恐らくレーダー索敵網の敷ける小島が密集している分、セキュリティを信用して艦隊の配置をしていないのだろう」
ピクシー『ただし、セキュリティに引っかかればスクランブルですっ飛んでくるってわけだな』
サイファー「そういうことだろう。だが引っかからなければ問題ない」
ピクシー『そのためのラプターだしな』
サイファー「そういうことだ。まもなく抜けるぞ。島に突入する!」
ピクシー『流石の腕だな、相棒。簡単にレーダー網を抜けちまうとはな』
サイファー「簡単じゃねぇよ。それなりにひやひやした飛行になったぜ」
ピクシー『おい相棒!嬢ちゃん達が会敵したぞ!』
サイファー「敵艦隊はなんだ?艦種の報告も上がっているだろう?」
ピクシー『ああ。だが相手が…』
サイファー「なんだ、ハッキリ言ってくれ。相手はなんだ?」
ピクシー『相手は…』
ピクシー『…艦娘だ』
――――――
大和「何故…何故あなた達がこんなところにいるんですか!?」
愛宕「ここは未確認の深海棲艦が出た海域よ!あなた達は何故あの島の方角から来たの!?」
矢矧「答えによっては戦わなくてはいけないわ」
時雨「ただこの辺りを迷って来てしまったって言ってほしいよ。そうすれば戦わなくて済むんだ」
加賀「聞かせてくれるわね?あなた達がこんなところに居る理由を」
大和「答えてください!何故あなた達がここにいるのかを!答えなさい!」
大和「ビスマルク!」
ビスマルク「……ふっ」
――――――
【艦これ】円卓の鬼神の海戦記【エスコンZERO】【その3】
元スレ
【艦これ】円卓の鬼神の海戦記【エスコンZERO】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1435985096/
【艦これ】円卓の鬼神の海戦記【エスコンZERO】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1435985096/
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