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P「僕の千早は胸がある」

1: ◆Xz5sQ/W/66 2016/03/28(月) 19:38:56.45 ID:xBharFQc0


※ このssにはオリジナル設定やキャラ崩壊が含まれます。

===

 早速で悪いが、一つばかり訂正せねばならないことがある。
 
 如月千早には確かに胸があったが、彼女自身は別に僕の所有物でもなんでもない。
 
 なので、「僕の千早」というのは、誤りだ。ここに訂正を宣言する。



2: ◆Xz5sQ/W/66 2016/03/28(月) 19:40:57.62 ID:xBharFQc0

 
「ふふっ、見てください……可愛いですね」

 透明なビニールの中は水で満たされ、その小さな世界を、二匹の金魚が悠々自適に泳いでいた。
 
 それを見る千早は、丸い。
 
 そう、胸が大きくなってからというもの、なんだか千早が丸っこい。
 優しいのだ、ほんわかしているのだ、余裕ができたと言うべきか。
 
 胸の大きさが母性の大きさを象徴すると言っていたのは
 どこの口リコンだっただろうか。少なくとも、僕ではない。
 
 折りしも、夏祭りの夜である。



6: ◆Xz5sQ/W/66 2016/03/28(月) 20:22:24.92 ID:xBharFQc0

===

「なんだか、人生の半分を損していたような気がします」

 いつもの長髪を二つに結わえて、着物姿の彼女が笑う。
 屋台に吊り下げられた提灯や、街灯の安っぽい明かりを受けて、深蒼色の着物が妖しくその色を変えていく。
 
 角のとれた微笑で綿飴を口の端につける彼女を見れば、その言葉にも妙な説得力を感じるのだから面白い。
 
 それはまな板と揶揄されて、小さな胸を締め付けるように伏せていた頃からは、考えられないほどの丸さだった。
 
 川のほとり、花火を待つ人の群れにまぎれて、千早が言う。



7: ◆Xz5sQ/W/66 2016/03/28(月) 20:23:09.69 ID:xBharFQc0

 
「……怒ってますか?」

「なにが」

「胸を、大きくしたことです」

「それで千早が良いのなら、僕に言えることは何も無いよ」



8: ◆Xz5sQ/W/66 2016/03/28(月) 20:24:22.05 ID:xBharFQc0


 そうして僕は思い出す。
 
 あの日、いつものように事務所にやって来た彼女の胸には、隠しきれない存在感を放つ乳房がついていた。
 
 一体全体、どこの魔女と契約を交わしてきたのか、良い塩梅の代物と引き換えに、彼女が対価として支払った物。
 

 それが「歌」だ。
 

 彼女は自分の「歌声」と引き換えに、その丸い母性を手に入れていたのである。



10:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/28(月) 20:54:05.66 ID:+Noe9wHZo

それでいいのか千早…



13: ◆Xz5sQ/W/66 2016/03/28(月) 21:21:15.25 ID:xBharFQc0

===

 「歌」という物は、それまでの千早にとっての全てであった。
 
 歌うために生きており、歌のために生かされている。
 
 彼女は、自らの歌声に自分を混ぜて歌っていた。だからこそ、彼女の歌は人を打つ。

 
 だが、それは同時に千早自身を曖昧にしていく。
 
 歌に溶け出した千早に残るのは、空っぽの身体だけ。
 
 どこかのカナリアが歌うことを忘れたように、誰かが、そこに千早を注ぎ足す必要があった。
 
 そしてそれは、他でもない、千早自身の役割だったのだ。



14: ◆Xz5sQ/W/66 2016/03/28(月) 21:22:08.85 ID:xBharFQc0


 どん、と。川面を震わせて花火が鳴った。
 四散した火の粉が、夜空にぽんと死んでいく。
 
「うわぁ……綺麗……」

 隣に立つ千早が、およそ千早らしからぬ表情で見上げている。

 僕の知る彼女はいつも不機嫌で、無愛想で、他人との距離を明確に取っている、そんな女性である。
 
 それがどうだ、ここにいるのはまるで幼い……あぁ、なるほど。そういうことか。



15: ◆Xz5sQ/W/66 2016/03/28(月) 21:22:45.03 ID:xBharFQc0

 
「千早」

「なぁにー?」

「祭りは、楽しいかい?」

「うん! 楽しいっ!」



16: ◆Xz5sQ/W/66 2016/03/28(月) 21:25:03.50 ID:xBharFQc0


 どうかしていたのは、どうやら僕の方だったらしい。
 
 苦笑する僕の顔を、隣に立つ幼い少女が笑顔で見上げていた。



19: ◆Xz5sQ/W/66 2016/03/28(月) 22:33:16.19 ID:xBharFQc0

===

 丸はとても居心地の良い物だが、得てしてそういう場所には何かしらの裏があるものだ。
 
 千早の居座るその場所も、つまりはそういう場所の一つであった。
 
 花火が終わり、祭りも終わる。
 あれほど人で溢れていた川沿いに、今は寂しい夜風が吹く。
 
 僕と千早はそんなところで、ぼぉっと川面に映る提灯の明かりを眺めていた。



20: ◆Xz5sQ/W/66 2016/03/28(月) 22:34:16.14 ID:xBharFQc0

 
「そろそろ、帰ろうか」

「……やだ」

「風も冷たい。このままじゃ、風邪を引いてしまう」

「平気、寒くないもん」

「千早」

「嫌っ! やだったらヤダっ!!」



21: ◆Xz5sQ/W/66 2016/03/28(月) 22:36:15.94 ID:xBharFQc0


 幼い千早は丸に抱かれ、涙目で僕に訴えかける。つまるところ、丸は卵なのだ。
 
 卵の中は居心地が良い。それはある意味、母性の塊。
 
 空っぽになってしまった千早にとって、そこはとても良いところなのだ。
 
 打つ手なし。
 
 僕に出来るのは、自然と卵が孵るのを待つことだけで……いや、待てよ?



22: ◆Xz5sQ/W/66 2016/03/28(月) 22:38:27.14 ID:xBharFQc0

 
 ふんふんふふん、ふんふふん。
 
 夜風によって音程の飛ばされた僕の鼻歌が、夜の空気に吸い込まれ。
 
 あの曲、この曲、そんな曲。
 思いつく限り、うろ覚えのメロディがふらふらゆらゆら流れていく。

 それは本当に酷いもので、どれも元の曲とはかけ離れていたのだが。
 へたくそなメロディはしかし、彼女の耳にも届いたようだ。



23: ◆Xz5sQ/W/66 2016/03/28(月) 22:40:29.78 ID:xBharFQc0

 
 突然、すぅっと通るような音がした。
 音は次第に歌になり、夜風に乗った歌声は、どこまでも空を飛んでいくようだった。
 
 たっぷりと一曲分、歌った彼女が僕を睨む。

 
「……担ぎましたね」

「人聞きが悪いな。僕はただ、退屈を紛らわせただけだよ」

 こつんこつんと、彼女が内側から丸を叩く。とはいえ、今の今まで丸かったのだ。
 
「手伝おうか?」

「……お願いします」


 僕はどこからともなくスコップを取り出すと、彼女を覆う丸にかつん、とその先端を突き立てた。
 
 ぴしりと、小さなヒビが生まれ、そうしてそこを中心にして、ぱらぱらと形を失くす丸。
 
 後に残るのは、着物を着た如月千早そのものである。



24: ◆Xz5sQ/W/66 2016/03/28(月) 22:41:36.33 ID:xBharFQc0

 
「お帰り」

「はぁ……短い、夢でした」

「でも、楽しかっただろう?」

「それは、まぁ、否定はしませんけど」



25: ◆Xz5sQ/W/66 2016/03/28(月) 22:42:11.88 ID:xBharFQc0


 いつものように、彼女が素っ気無く言い放つ。
 
 その胸は小さく萎み、どうやら悪い呪いは解けたようだった。
 
「それじゃ、今度こそ帰ろうか」

「嫌です」

 月明かりに照らされて、千早がふっ、と息を吐く。



26: ◆Xz5sQ/W/66 2016/03/28(月) 22:43:01.23 ID:xBharFQc0

 
「もう一曲、歌わせてください」

 歌の中のカナリアは、結局歌を思い出したのだろうか。
 
 川沿いに、久しぶりに聞く彼女の歌声が響く。
 
 それはとても、人を打つ歌だった。



27: ◆Xz5sQ/W/66 2016/03/28(月) 22:43:33.99 ID:xBharFQc0

===

以上。お読みいただき、ありがとうございました。



28: ◆Xz5sQ/W/66 2016/03/28(月) 22:45:02.38 ID:xBharFQc0

こちらちなみに、前作となります。よろしければ、ご一緒にどうぞ。

P「ここの事務所は二人きり」



元スレ
P「僕の千早は胸がある」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1459161536/
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    コメント一覧

      • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月28日 23:48
      • ・・・?
      • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月28日 23:51
      • P「ここの事務所は二人きり」と同じ奴か
      • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月28日 23:59
      • 曖昧すぎる
      • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 00:34
      • 丸の中に入った所が分かりづらい 理解できそうで出来ない
      • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 01:30
      • 今回も声を大にして言わせてもらうぜ!
        訳がわからないよ!!!!
      • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 01:31
      • この作品はスコップ販促SSです、作者がスコップの持つ無限の可能性を我々に提示してくれます。
      • 7. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 01:35
      • 1 頭おかしい
      • 8. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 01:36
      • 幸せって何だっけ?
      • 9. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 01:36
      • クラムボンがかぷかぷ笑ったりやれやれ射精したりしてそう
      • 10. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 01:57
      • 世界の法則が乱れた後のお話?
      • 11. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 02:34
      • 冒頭で気持ち悪すぎてギブアップ
      • 12. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 03:05
      • ※10
        確実に存在する…ゼノグラシア次元も!
      • 13. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 03:11
      • あれだな。
        作者は悪い方向に凝りすぎたんじゃないかな。
        背景描写を曖昧に表現するSSは作者の力量がかなり問われるから初心者には向いていない。一歩間違えると悪い癖がついてしまうことが多いので。

        霞をかけるような背景描写は小説家しか描けない表現の一つだが、それ故に難易度が極めて高い。描き慣れたプロでさえも下手すれば酷評される。
        曖昧にせず、はっきり描いた方が受けは良くなる。
      • 14. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 03:13
      • タイトルを見て、最初にkinkikidsの僕の背中には羽があるを思い出した。
      • 15. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 06:16
      • 人魚姫は声と引き換えに脚を手に入れた……

        千早は歌と引き換えに乳を手に入れた……
      • 16. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 06:23
      • 1 前置きだけでコメ欄直行余裕です
      • 17. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 07:13
      • 今回も良く分かったです
        前回はちょっとあれだったけど
      • 18. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 07:53
      • わかったなら解説してよ
      • 19. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 08:07
      • わかる俺カッケーが出来るSS、ブラックコーヒーに似ている
        そいつらには見た目さえお洒落に整えられていれば味がどうだろうと関係無い
      • 20. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 08:09
      • 「透明なビニールの中は水で満たされ」
        ここだけ読んで豊胸かと思った
      • 21. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 08:32
      • 球体の中に隠れている…つまりティンダロスの猟犬から逃げだs

        ああ、窓に、窓に!
      • 22. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 08:39
      • ※13
        現実を詩的に描いた訳じゃなく単に夢の中みたいな不思議空間だと思ったのだけど
        まあ、なんでもいいですけれど
      • 23. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 09:50
      • ※14
        だよな
      • 24. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 10:13
      • 前作よりは分かりやすくなってたけど、文芸かぶれな臭いがぷんぷんする。
        こういうのはS速より支部向けじゃね?地の文で書いてるんだし向こうの方がまだ文芸かぶれな同類も居るだろ。需要と合ってない感じ
      • 25. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 11:39
      • ※16
        同じく
        何だろう生理的に受け付けない
      • 26. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 17:05
      • 僕の千早じゃないということは一体誰の千早なんだ?

        …そう


        僕だ!!!!
      • 27. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 18:39
      • 14
        俺だけじゃなかったか
      • 28. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 18:40
      • いっそキンキの替え歌でうまくまとめてくれたら評価した
      • 29. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 21:14
      • 長谷川哲也先生に漫画化してもらえ
      • 30. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月29日 22:42
      • 5
        良かった
      • 31. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月30日 00:30
      • 1 良くなかった
      • 32. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月30日 00:40
      • >>1がもう臭すぎて無理
        西尾維新を読んで影響を受けた中学生かと思った
      • 33. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月30日 09:11
      • 2 よくわからん
      • 34. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月31日 05:52
      • 2 俺も昔似たような文章書いたよ
        書いた本人はお洒落で暗示的で文学的にかけたと大満足自信満々なんだけど、雰囲気だけで書いてるから中身も薄いしなんだかよくわかんないんだよね
        >>1も数年後読み直して顔真っ赤にして頭抱えるのに賭けてもいいわ
        まさに文学かぶれの厨二病の見本
      • 35. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年03月31日 11:26
      • ヘッタクソだなぁ

    はじめに

    コメント、はてブなどなど
    ありがとうございます(`・ω・´)

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