卯月「プロデューサーさんって何者なんですか?」
それはまるで、嵐のようで。
しかし……。引き際も同様であった。
事務所内、人間関係の不和。すれ違い。
それに巻き込まれる形となった彼らは、解散を余儀なくされた。
それはまるで……嵐のようで。
閃光、稲妻……。
青い稲妻のように、彼らは一瞬の光で世を照らし、そして儚くも消えていった。
そして現在――彼らのその後の人生を知る者は少ない。
未央「ま、プロデューサーのおかげってやつだねぇ」
凛「ちょうどツアーも終わったところだしね」
未央「そうそう!」
未央「いやー、大成功だったね!!」
卯月「そうだねっ!」
卯月「……」
卯月「本当に……良かった……」
凛「卯月……泣いてる!?」
卯月「な、泣いてないよっ!!」
未央「最終日のしまむーったら、『本当に良かったですぅ』って号泣してたもんね」
卯月「そ、そう言う未央ちゃんだって……!!」
未央「は、泣いてないしー! これはあくびだしー!」
凛「みんな、ほんとに出し切ったね」
凛「な、泣いてないよ」
未央「もう、しぶりんったら。意外と情にもろいですなぁ!」
凛「意外ってどういうこと? 普段は冷徹な人間――みたいな言い方やめてよ」
卯月「あははっ!」
凛「ちょっと、卯月も酷いよ」
卯月「ち、違う違う……!!」
卯月「ほんとに――最高のライブだったなーって」
未央「そうだね」
未央「ずっとあのステージに立っていたかった」
凛「うん……」
卯月「ここまで来れたのもみんなのおかげだよ……」
凛「ちょっと、解散するわけじゃないんだから」
未央「そうそう! 一息入れたらまたスタートだよ」
未央「そのセリフはトップを取ってから言わないと」
卯月「そ、そうだよね!!」
卯月「明日からまた頑張ろうね!!」
凛「もちろん」
未央「そのつもりだよ!」
卯月「みんなのおかげ――そしてプロデューサーさんも」
未央「そうだねー」
凛「私たちが無名の時から……あっという間にここまで引き上げてくれたし」
未央「プロデューサーって凄いよねぇ」
卯月「そうだね……」
卯月「プロデューサーさんって……何者なんだろう」
凛「どういうこと?」
未央「確かに」
未央「ただ者じゃないことは確かだよ」
卯月「うん……」
凛「確かに……。私たちってプロデューサーのこと、あんまり知らないような気がする」
未央「……」
未央「本人に聞いても教えてくれないよねー」
卯月「うん、『俺のことは別にいいだろぉー』って教えてくれないよね」
凛「……」
未央「しぶりん……!?」
未央「もしや、何か知ってますな君!!」
卯月「えぇ!? 凛ちゃんだけずるいよぉ」
凛「そ、そんなんじゃないよ!」
未央「ただ?」
凛「去年の末、私たち……歌番組に出たじゃん」
卯月「えっと、『アイドル――カバーの祭典』だよね?」
未央「緊張したよねー、生放送だったし」
凛「それで――私、客観的な意見が欲しくて」
凛「番組で歌う課題曲の練習をした後、プロデューサーに意見を聞きに行ったんだ」
未央「うんうん」
凛「そしたら……」
卯月「そしたら?」
凛「プロデューサー、『俺に歌の技術とか聞かないでくれるかな』って」
未央「えぇ!?」
卯月「ひ、酷くないですかぁっ!?」
凛「うんうん、そうじゃなくて……。ふふっ……」
未央「しぶりん? どうしたの?」
凛「プロデューサーったら、『俺、音痴だから歌のことわかんねぇーよー』だって」
未央「それホントに!?」
卯月「い、意外とお茶目な部分もあるんだねー……」
凛「そうじゃなくて、『客観的にどう見えていたか教えて欲しい』って言ったら」
凛「ちゃんとアドバイスくれたけどね」
未央「実は私もー」
凛「Howeverって曲だよ」
未央「ああ! そうだったー」
未央「GLAYってバンドの曲だっけ」
未央「私としまむーはデュオだったのに」
未央「しぶりんだけソロで、しかも注目をさらっていったからねー」
未央「ズルいズルい」
凛「そ、そんなんじゃないよ」
凛「そんなこと言ったら、卯月と未央の方が注目されてたし」
卯月「そ、そうかなー……。えへへ」
凛「息もピッタリだったしさ。かわいい曲歌っちゃって」
未央「あれ? もしかしてしぶりんってキュート路線がいいの?」
未央「実は乙女だったんだねー、かわいいよしぶりん!」
卯月「で、デレリン……?」
未央「アハハッ!!」
未央「デレリンデレリン!!」
凛「や、やめてよ……!!」
凛「そうそう……」
凛「プロデューサー、アドバイスくれて」
卯月「アドバイス?」
凛「うん。実際に、あるパートを『こういう方がいいんじゃねぇーの』って歌ってみせてくれたんだ」
未央「どうだった?」
凛「い、意外と……うまくてビックリした」
卯月「ほんと!?」
未央「それは気になりますなぁー」
未央「その一」
未央「プロデューサーは意外と歌がうまい」
卯月「私はー……」
卯月「あ! そういえば」
未央「ほうほう!」
卯月「私、去年ドラマに出演した時――」
凛「えーと、『セーラー服とモーゼル銃』だっけ?」
未央「おもしろかったよねぇ!」
凛「卯月、アクションバリバリだったよね」
卯月「本当に大変だったなぁー……」
卯月「それで――シリアスな場面があったんだ」
卯月「ちょうど私の見せ場って感じのシーンで」
卯月「でも、シリアスな演技が難しくて……」
未央「それで、プロデューサーに相談した……とか?」
卯月「うん」
凛「そしたら?」
卯月「プロデューサーさんが実際に演技して教えてくれたんです……」
未央「マジ!?」
凛「ど、どうだった?」
卯月「凄い……演技、上手でビックリしました」
未央「え、えぇー……」
卯月「プロデューサーさんのおかげで、なんとか要領を掴めて」
卯月「無事、撮影を終えることができました……」
凛「……」
凛「その二、プロデューサーは演技がうまい」
未央「んー、私はそういうビックリするのはないけど」
未央「いや……。あった」
卯月「え!?」
凛「なに?」
未央「プロデューサーって凄いダンスうまいよね」
卯月「ほ、ほんとに!?」
凛「私は……見たことないかな」
卯月「私も!」
未央「えーと、あれはいつだったか忘れちゃったけど」
未央「まだこの世界に入って間もない頃かなぁ」
未央「ダンスでどうしてもしっくりこない部分があってさ」
凛「そんなことあったっけ?」
卯月「未央ちゃんダンス上手だし、全然気が付かなかったよー」
未央「えへへ……。いやー、照れますなぁ!」
凛「それで未央も、プロデューサーに相談した……とか?」
未央「その通り!」
卯月「そしたら……?」
未央「これも、実際に踊って見せてくれたんだ」
凛「ほ、ほんとに!?」
卯月「えぇっ!?」
未央「そしたらねー」
凛「凄い、うまかった……?」
未央「そのまさか――まさかよ」
凛「えぇー……」
未央「すっごいキレッキレでさ。ほんとビックリした……あれは」
卯月「もう……。プロデューサーさんって」
卯月「一体何者なんですかぁ……」
凛「ここまで聞くと完璧超人だよね」
未央「確かに」
卯月「その三、プロデューサーさんはダンスがうまい」
未央「謎は深まるばかりですなぁ」
凛「気になるね……」
未央「そうだ――ねえ!」
卯月「どうしたの?」
未央「こうなったら、プロデューサーの正体を暴いてやろうよ!」
凛「えー、いいのかな……?」
卯月「プライベートなことはさすがにまずいんじゃ……」
未央「うーん」
未央「それじゃ、こういうのはどう?」
未央「他の娘にも何か聞いてみようよ!」
卯月「な、なるほど……」
凛「うん……。プロデューサーにも知られたくないこととか……あるかもしれないし。あまり深入りしないなら」
未央「ま、あのプロデューサーのことだから……他の娘にもそういうのは教えてないでしょ」
未央「それじゃ」
未央「さっそく、オフが明けたら始めるぞー!」
凛&卯月「「お、おー?」」
卯月「幸子ちゃんもお疲れ様です!」
卯月(そうだ、幸子ちゃんに聞いてみよう)
卯月「あのー、幸子ちゃん」
幸子「なんですか?」
卯月「幸子ちゃんって――プロデューサーさんと仲が良いよね」
幸子「ななな、何ですか急に!?」
卯月「冗談とか気軽に言い合ってるから……仲が良いなと思って!」
幸子(え? これはまさか……卯月さんはプロデューサーさんのことが……)
卯月「そんな幸子ちゃんに尋ねたいことがありますっ」
幸子(もしや――ライバル登場ですか!?)
卯月「プロデューサーさんの正体を教えてくださいっ!」
幸子「――へ?」
卯月「いやー、あのね……」
卯月「――ということがあって」
幸子「あ、あー……。なるほど……」
幸子(勘違いした自分が恥ずかしいです)
幸子「なるほど」
幸子「確かに完璧なボクはプロデューサーさんと仲は良いですが」
幸子「実際、どんな人なのかはまだ掴めてないっていうのが本音です……」
幸子(完璧なボクとしたことが……)
卯月「うーん」
卯月「完璧な幸子ちゃんでさえ分からないとなれば……お手上げかなぁ……」
幸子「……」
幸子「そ、そうです! 完璧なボクでさえ分からないとは!」
幸子「だいたい、プロデューサーさんは自分のことを全然話してくれませんっ!」
卯月「それ、分かりますっ!」
幸子「まったく……。ボクたちのことはお節介ってくらいに細かく面倒見てくれるのに」
卯月「うん……」
幸子「あ、でも一つだけ――」
幸子「はい……」
幸子「今でさえパーフェクトなボクですが」
幸子「恥ずかしいですけど、『こんな自分でいいのか』って迷っていた時期がありました」
卯月「う、うん……」
幸子「そんな時期にバラエティー番組へ出演することが決まって」
幸子「どうやって自分を表現すればいいか迷っていた時」
幸子「プロデューサーさんへ相談してみたんです」
卯月「そしたら……?」
幸子「お前はそのままでいい――って言ってくれましたね」
卯月「そのままでいい……?」
幸子「はい、『番組のスタッフさん、プロデューサーさん、司会者さんに進行は任せとけ』って」
幸子「そして『向こうがお前に振ってくれるから、お前はお前のままで、そのままで自分を表現しろ』って言ってくれました」
幸子「何もかもやろうとしなくていいから」
幸子「自分の番が来るまではドッシリ構えてろって」
卯月「バラエティー番組とか、どうすればいいか焦るからねー……」
幸子「はい」
幸子「でも、その言葉のおかげで……ボクは今のボクのようになれました」
幸子「路線が定まったというか……」
卯月「それは……。プロデューサーだし、業界のことは隅々まで知っていると思うけど……」
幸子「はい」
幸子「だけど……。アイドルのプロデューサーさんなのに、司会者の事情とか進行とか妙に知っているなーと思いまして」
幸子「実際に番組の流れとか、『こう振られたときはこう返せ』みたいなコツも教えてくれましたし」
幸子「芸人みたいに」
幸子「確かに業界人なら知っていて当たり前のことなのかもしれませんが……」
卯月「うーん、謎は深まるばかり……だね」
幸子「あの人は何者なんでしょうか……」
幸子「自分のことはほんとに教えてくれないんですよねー」
卯月「……」
卯月「その四、プロデューサーさんは司会業や番組進行について妙に詳しい」
楓「凛ちゃん――お疲れ様です」
楓「凛ちゃんは、今日はもう上がりですか?」
凛「はい、ちょうど帰るところでした」
凛(待って……。楓さんならプロデューサーのことを)
凛「あの……。楓さんも今日はお仕事終わりですか?」
楓「はい、全て終わりましたー。早く飲みに行きたいです」
凛「あはは……」
凛「あの、すみません。一つだけ……いいですか?」
楓「もしかして凛ちゃんも飲みに行きたいですか?」
凛「あの、私……未成年です」
楓「冗談です。ふふっ」
楓「それで、どうかしましたか?」
凛「早く飲みに行きたい……ですよね?」
凛「すみません」
楓「あー、いいんです」
楓「凛ちゃんなら問題ありません」
楓「どうぞどうぞ」
凛「すみません……。あの」
凛「楓さんって……プロデューサーのことについて」
凛「何か知っていることはありますか?」
凛「はい」
凛「実は……」
凛「――ということがありまして」
楓「なるほど……」
楓「秘密は」
楓「みっつまでなら」
凛「三つ?」
楓「秘密――秘みっつ」
楓「なんちゃって」
凛「……」
凛「ふへっ――」
楓「あ、凛ちゃん今ウケました?」
凛「いや、ウケてません」
凛「こほん――秘密、知っているんですか?」
楓「ごめんなさい、さっきのはダジャレですから」
楓「でも……秘密ではないですけど」
楓「不思議に思ったことならありますねー」
楓「はい」
楓「あれは――私が初めて旅番組のレポーターに選ばれた時です」
凛「レポーターですか?」
楓「はい。私はこんな感じですから」
楓「他の方々のように、上手にレポートできる自信がありませんでした」
楓「そんな時、プロデューサーが声を掛けてくださったんです」
凛「声を……?」
楓「はい」
楓「私らしく、見たこと聞いたことを何でも喋ってみればいいって」
凛「何でも……」
楓「まあ、さすがに『放送できる範囲内で』と釘を刺されましたが」
楓「その番組を見たとき、視聴者はどんなことが知りたいか」
楓「それを自分の言葉でまとめて、自分らしく表現すること」
楓「うまいことを言えた方がいいけれど、私は別に狙う必要などない」
楓「いつもの私で――そう言って下さいました」
凛「なるほど……」
楓「そのおかげで、私は私らしくレポートすることができました」
楓「そして今では、レポーターとしてお声を掛けて下さる機会も増えました」
楓「全てプロデューサーのおかげ、です」
楓「そんなところで、長くなりましたが――ここで不思議に思ったことがあります」
楓「プロデューサーが私のレポートの練習に付き合ってくれたんです」
楓「練習するか――って感じで声を掛けてくださって」
楓「その時でした」
凛「い、一体何が……」
楓「プロデューサーがレポートの見本を見せてくれたんです」
凛「見本……?」
楓「はい、『それじゃ、この弁当をレポートしてみるか』って」
凛「プロデューサーのレポート……どうでした?」
楓「――完璧でした」
凛「えぇ……」
凛「完璧……?」
楓「はい」
楓「何と言い表せばいいのか……。その瞬間、まるで人が変わったようにレポートを始めて」
楓「色んな言葉がスラスラと出てくるんですが、どれも分かりやすく」
楓「しかも面白い、共感できる――そんなレポートでした。完璧です」
凛「人が変わったように……ですか」
楓「はい。元々レポーターだったか、そのような経験があるのか……という具合で」
楓「アイドルのプロデューサーなのに」
凛「なるほど……」
楓「そんなことがありましたね」
楓「プロデューサーは一体何者なのでしょうか」
凛「……」
凛「その五、プロデューサーはレポートがうまい」
美嘉「お、未央じゃん。お疲れー★」
未央「美嘉ねぇも上がり?」
美嘉「うん、そうだけど♪」
未央(美嘉ねぇなら――)
未央「ねー、美嘉ねぇってさ」
美嘉「ん? どうしたの?」
未央「プロデューサーのことよく知ってそうだよね」
美嘉「なな、どういうことっ!?」
未央(これは何か知ってますなぁ)
美嘉(未央、一体どういうつもり!?)
美嘉(アタシがプロデューサーのこと――いやいや!)
未央「いやー、美嘉ねぇなら色んな世界を知ってそうだしさー」
美嘉「いいい、色んな世界っ!?」
未央「だから尋ねたいことがあるんだけど」
美嘉「い、一体どういうこと!?」
未央「それは……プロデューサーの正体を教えて欲しいんだよねー」
美嘉「――へ?」
未央「実はさ」
未央「――ということがあって」
美嘉「そういうことか……」
美嘉「な――!! それは内緒だし!!」
未央「そっか――まあ、そういうことなんだー!」
未央「何か正体を掴める情報がないか、と思いまして」
美嘉「正体、ねえ……」
美嘉(そう言われるとアタシ、プロデューサーのこと全然知らないカモ)
美嘉「だいたい、あの人自分のこと全然話してくれないじゃん……」
美嘉(アタシたちのことはうるさいくらい気に掛けてくれる癖に)
未央「そうだよねー」
未央「美嘉ねぇでもダメだったか……」
美嘉「あっ――」
未央「お! 何かあった感じですか!?」
美嘉「正体は知らないケド」
美嘉「二つくらいは知ってるかな」
未央「なになに!?」
美嘉「一つは――スポーツができるってことかな」
未央「あー、確かに」
未央「ダンスもできるし」
美嘉「だよねー」
未央「ファン感謝祭――アイドル大運動会?」
美嘉「そそ。それを控えてた、ある日」
美嘉「ちょうど仕事と仕事の合間、結構な空き時間ができてね」
美嘉「その時に、プロデューサーに『ファン感、楽しみだなー』って言ったらさ」
未央「言ったら……?」
美嘉「そしたら、『懐かしいなー』って呟いてた」
未央「懐かしい……? どういうこと?」
美嘉「反射的に呟いちゃったみたいでさ。その後は口を濁して……結局は教えてくれなかったんだけど」
美嘉「そして何故か、『そうだ、キャッチボールやろうぜ!』って誘ってきたんだよね♪」
未央「なるほど、懐かしい……ねぇ」
未央「まさか――アイドルだったとか!?」
美嘉「フフッ、それはさすがにないっしょ!」
未央「それで、キャッチボールとやらは――その場にグローブとボールがあったことに驚きだけど」
美嘉「ああ、その時はここにいたから」
美嘉「ほら、あそこにグローブとボール置いてあるっしょ?」
未央「あ――ホントだ」
未央「なるほどねえ……。それでそれで、どうだった?」
美嘉「凄い意地悪だった」
未央「――へ?」
美嘉「なんか野球が好きみたいで、過去にやってたみたい」
未央「ほほう。野球経験者ってことですか」
未央「新たな情報をゲットしましたよ……」
美嘉「最初の内はアタシに合わせてくれてたんだけど」
美嘉「急に速いボール投げ出してさー、凄いプロ野球のウ○チクも言ってきたんだよねー」
未央「なるほどなるほど。プロ野球にも詳しい……と」
美嘉「凄い体裁きとかキレッキレだったかんね! マジウケる」
美嘉「そーそー」
未央「あと一つは?」
美嘉「あと一つは――ふふっ」
未央「美嘉ねぇ? どーしたの?」
美嘉「あと一つは――歌が下手」
美嘉「ってことかな」
未央「んん?」
未央「それ、ほんと?」
美嘉「うん。マジだよマジ♪」
未央「おっかしいなぁー……」
美嘉「ん? どういうこと?」
未央「しぶりんの話だと、結構歌上手かったって」
美嘉「そうなんだ……」
美嘉「でも、アタシの時は下手だったよー」
未央「具体的には何があったの?」
美嘉「えーと」
美嘉「あんね――ふふっ!」
未央「……?」
美嘉「ついこの間なんだけど」
未央「ほうほう」
美嘉「ちょうどツアーの最終日……ライブの全てが大成功に終わった、その後なんだけど」
美嘉「アタシたちが撤収する前、プロデューサーが一人きりで武道館の連絡通路にいたのを見つけたんだ」
美嘉「覗き見は悪いと思ったけど……。ちょっとだけ様子を見て、その後出て行けばいいかなーと思ってさ」
未央「そ、そしたら……?」
美嘉「プロデューサー、何やってたと思う?」
未央「何って……。歌が下手ってことは……」
美嘉「あんね……!! ふふっ!!」
未央「ちょっと美嘉ねぇ、早く教えてよー!」
美嘉「思い出すと……ヤバくて……!! ごめんっ……!!」
美嘉「ふぅー……。あのね」
美嘉「その通り、一人で歌ってたんだ」
美嘉「しかも『お願い! シンデレラ』を」
未央「え、えぇ……!?」
美嘉「それがさー、ふふっ!!」
美嘉「フリも完璧で、踊りながら歌ってるの……!!」
美嘉「ヒーッ……!! 腹が……!!」
未央「その歌が、下手だった……?」
美嘉「そそっ……!! あのハスキーな声で……!! 音程が……!!」
美嘉「もうダメ……!! 腹筋が……!!」
未央「そうかー」
未央「でもおかしいねー。しぶりんの時は『歌は意外と上手い』って話だったけど」
美嘉「それね」
美嘉「ま、凛の時は調子良かったんじゃない?」
美嘉「ふぅ」
美嘉「まぁ、大成功で……プロデューサーも嬉しかったんだろーね」
美嘉「でも、成功できたのもプロデューサーのおかげだし」
美嘉「色々と分かち合いたいのに……。本人は自分のことは教えてくれないし」
未央「だねー……」
未央「ま、とりあえずいくつか新しい情報をゲットできたから良しとしますか……」
未央「その六、プロデューサーは野球経験者。そして歌は上手い時もあれば下手な時もある」
凛「ますます謎になってきた……」
未央「とりあえず、集めた情報をまとめてみますかっ!」
卯月「まず――」
凛「意外と歌が上手くて」
卯月「そして、演技も上手い」
未央「ダンスもできる」
凛「司会や番組進行についても妙に詳しくて」
未央「レポートもできて」
卯月「野球経験者で……歌は下手」
未央「そこから導きだされる答えは――!?」
卯月「……」
凛「……」
三人「「「これ、もう分かんないよ」」」
卯月「プロデューサーさんは一体何者なの!?」
凛「かえって謎は深まるばかり……だね」
未央「こうなったら――」
卯月「どうしたの?」
未央「――ちひろさんに聞いてみるしかない」
三人「「「お願いします、ちひろさん」」」
ちひろ「あら、プロデューサーさん本人に聞けばいいじゃない」
卯月「それが――」
凛「教えてくれないんです」
ちひろ「ふふっ。みんなプロデューサーさんのことが好きなのね♪」
凛「そ、それは……!!」
未央「みんなプロデューサーのことは大好きだよっ」
未央「ねっ?」
凛「う、うん……!」
卯月「はい!」
未央「だから、どんな人か知りたいんですけど……。本人は教えてくれないんですよー」
卯月「もしかして――以前は俳優さんだったんですか!?」
ちひろ「どうでしょうねー♪」
凛「それじゃ……ダンサー!?」
ちひろ「さぁー♪」
未央「まさか――アイドルとか!?」
ちひろ「どーでしょー♪」
未央「あー! ちひろさん、実は知ってますよね!?」
卯月「ちひろさんだけズルいですっ!!」
凛「少しくらいは教えて欲しいです」
ちひろ「世の中には、秘密にしておいた方が面白いこともあるのよ?」
卯月「ううっ……。いじわるですよぉ」
ちひろ「プロデューサーさんはどんな人間なのか」
ちひろ「それは、あなたたちから歩み寄っていけば分かるのかもしれないわね♪」
未央「そうしてるのに、教えてくれないんですよぉー」
ちひろ「それじゃ、もっと……もっと歩み寄ってみるとか?」
凛「そんな無茶な……」
ちひろ「まぁ、その内――来るべき時が来たら」
ちひろ「少しずつ教えてくれると思うわよ?」
卯月「来るべき時……?」
ちひろ「えぇ。例えば――打ち上げがまだだったわ」
凛「打ち上げ……」
未央「あっ、そういえばツアーの打ち上げ」
未央「みんな忙しくて、スケジュールが合わなくて」
未央「まだやってないよね!」
卯月「……!!」
凛「ということは――」
ちひろ「まあ、打ち上げが近い内にあるのは確実なのだし」
ちひろ「その時に、何かしら分かるのかもしれないわね?」
卯月「ど、どういうことですかぁ!?」
ちひろ「それは、当日のお楽しみよ――」
ある日、その打ち上げが盛大に行われた。
喜びを噛み締め、分かち合うアイドルたち。
宴の中で絆はより強固なものへ変わり、彼女らはまた明日を生きていく。
トップの座を掴む、その日まで――
P「それじゃー、俺から余興を一つ!!」
美嘉「アハハッ!! プロデューサー酔っぱらってる!!」
P「お゛ーね゛がい゛ー、シン゛デレ゛ラ゛ァ゛―」
P「ゆ゛め゛はゆ゛ーめ゛で――」
ちひろ「あの、プロデューサーさん、そろそろ……」
P「……」
P「あぁ……」
一同「――?」
P「ったく、しょうがねぇーなぁー」
ちひろ「皆さん、頑張ってくれた皆さんのために」
ちひろ「プロデューサーさんからお礼の出し物があるそうですよー?」
卯月「ま、まさか……」
未央「何が始まるんです!?」
凛「いつの間にかカラオケのセットが用意されてる……?」
おおー!! やったれ!! プロデューサーかっこいいよー!!
卯月「みんな、凄い盛り上がりだね!」
未央「何を見せてくれるんだろーね!?」
凛「歌を歌ってくれるのかな?」
P「お前ら、今回もよくやってくれた」
P「でも、まだまだこれからだぞ!!」
P「頑張ってくれたお前らへ、俺から一曲――」
美嘉「下手だったら許さないかんねー!!」
P「うっせ!!」
P「それでは――聞いてください」
ある時代、若者世代を席巻したアイドルグループがあった。
しかし、突如として彼らは解散を宣言する。
現在、彼らのその後を知る者は少ない。
グループの一人、ある男はこう言った。
手ごたえも、生きがいも、やりがいも……。この三つは大事にしていることなんです。
その言葉の通り、彼は彼なりの道を見つけたらしい。
http://www.pideo.net/video/youku/e9053605082d840b/
完。
キ○タク「こんな未来ダメだろ!!」
キ○タク「やっぱ俺がタイムリープして解散食い止めねぇと!!」
完。
元スレ
卯月「プロデューサーさんって何者なんですか?」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1454534603/
卯月「プロデューサーさんって何者なんですか?」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1454534603/
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コメント一覧 (67)
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- 曲者だァァァァ
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- 2016年02月04日 20:49
- そうだと思ったよ畜生wwww
-
- 2016年02月04日 20:53
- SMAPの中居がモデルかなと思ったら中居だった
-
- 2016年02月04日 20:55
- 青い稲妻の辺りで気付いた
マジだった
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- 2016年02月04日 20:56
- こいつは驚き桃の木山椒の木だよ!
-
- 2016年02月04日 20:57
- ブラバラまたやってくんねえかなあ
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- 2016年02月04日 20:58
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- 2016年02月04日 21:00
- おもろかった!
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- 2016年02月04日 21:02
- 最初の音痴と口調で特定余裕でした
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- 2016年02月04日 21:06
- どの程度見た目を変えているのか知らないけど、20以上は気付くだろ
-
- 2016年02月04日 21:08
- 美嘉のでようやく気付いたわ
しかし例のCM、打ち切りになったのかと思いきや、ほとぼりが冷めた途端にしれっと再開しやがった
あれがマネージャーの最後の徒花になったんだなと思って、妙な感慨を覚えてたのに…
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- 2016年02月04日 21:08
- 最初のポエムでSMAPの誰かかな?と思って
しぶりんの証言で中居はないなと思ってたのに
中居だった
やきうの話で確信したわ
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- 2016年02月04日 21:10
- ハスキーで でようやく気づいたよw
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- 2016年02月04日 21:16
- 流石トップアイドルなだけある
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- 2016年02月04日 21:17
- 最後のオチで腹筋やられたwwwwww
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- 2016年02月04日 21:22
- 以外に歌がうまいって言われたら中居は外すよなw
でも司会できてダンスうまいアイドルって中居しかしらんから迷った
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- 2016年02月04日 21:27
- まさかアイドルやめた後農業家になる奴らなんて居ないよなぁ?(チラ
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- 2016年02月04日 21:33
- お願いシンデレラで中居と確信
*17 TOKIOの職業はアイドルじゃない、TOKIOというのが職業なんだ!
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- 2016年02月04日 21:34
- くっそwwwラストwww
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- 2016年02月04日 21:36
- 頼むキムタク!過去を変えて、俺とみりあが結ばれる未来にしてくれ!!
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- 2016年02月04日 21:38
- キャッツのモデルチームのことを考えると
ユッキとの野球の語りあいが厚いんだろうな
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- 2016年02月04日 21:43
- 中居P爆誕!
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- 2016年02月04日 21:46
- 知 っ て た
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- 2016年02月04日 21:58
- 自演を指摘されると真っ赤になって長文で否定しだすやーつ
文体変えても直後に擁護してたらバーレバレ
普通の人は他人の喩え方なんていちいち気にしねーよw
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- 2016年02月04日 22:04
- ※24
つ鏡
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- 2016年02月04日 22:18
- お願いシンデレラが下手で気づいた
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- 2016年02月04日 22:20
- 菜々さんは知ってそう
そのアイドルグループが六人だったことも知ってそう
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- 2016年02月04日 22:24
- 青い稲妻あたりであーってなった
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- 2016年02月04日 22:25
- しょっぱなの音痴と語尾で一発だわ
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- 2016年02月04日 22:42
- ※25
そいつはマルポだ、相手にすんな。あ、SSはSMAP嫌いなんで感想は勘弁して下さい。
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- 2016年02月04日 22:50
- 絶対に許さないP
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- 2016年02月04日 23:03
- こないだモバマス全然関係無いスレで『あんなアイドルは何とかってやつのCMさせられて中居可哀想だな』みたいなレスがあったのを思い出した
やっぱオタ(萌え豚)向けソシャゲのCMっていうと世間的には汚れ仕事なんかねぇ
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- 2016年02月04日 23:05
- SPAM大好きな沖縄県民としては当時は気が気じゃなかったわ
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- 2016年02月04日 23:22
- 最初中居だなと思ったけど歌が上手いで他の誰かかと思い野球やダンスでやっぱり中居じゃないかな?と思っていたらやっぱり中居だった
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- 2016年02月04日 23:33
- オリ設定かな?と思ってSMAPの可能性すら考えてなかった俺www
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- 2016年02月04日 23:47
- ※27
ウサミン星にはSMAPが6人だった頃のポスターが貼ってあるよ(シンデレラジオ感
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- 2016年02月04日 23:48
- ダンスがうまい時期もあったかもしれないが今は見る影もない
練習なんてしてないの丸わかりなテキトーなステージ、毎週テレビで披露しようなんてよくも思えるもんだよ
早く一線から退いた方がいい
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- 2016年02月04日 23:51
- ガラガラハゲShine
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- 2016年02月05日 00:26
- 地味に凛と未央にため口な卯月って久々に見た気がする
次にジャニーズから出るのは坂本リーダーかな?
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- 2016年02月05日 00:39
- お願いシンデレラで気づいたわw
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- 2016年02月05日 00:48
- 元事務所が業界に関わる仕事はさせないと思うけどな
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- 2016年02月05日 00:51
- 野球でようやくわかったw
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- 2016年02月05日 01:34
- こういうの嫌い!
なはずなのに、面白かった。
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- 2016年02月05日 02:07
- くっそwww全然気付かんかったわwww
でもよくよく見ると一応ヒントはあったんだな
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- 2016年02月05日 03:07
- 完全に騙された。この世界戦を観測できたやつがいたなんて思わなかったよ…
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- 2016年02月05日 03:46
- 個人的には面白かったw
だから他の4人のバーションも見てみたいな
書いてくれないかなぁ…
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- 2016年02月05日 03:49
- お願いジンデレラまで気づかなかった
嗤えよ……
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- 2016年02月05日 06:13
- Pヘッドなんだろ言わせんな
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- 2016年02月05日 06:29
- TOKIOならアイドルを産むとこからやってた
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- 2016年02月05日 07:51
- 幸子のキャラが響と混ざってるのが気になった(小並感)
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- 2016年02月05日 07:55
- 冒頭の青い稲妻でほほぼ予測できたが、意外と歌うまいのミスリードに引っ掛かったわ
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- 2016年02月05日 08:36
- 割と早めに中居君を元にしたオリP設定かなと思ったが以外に上手いでじゃあ違うかとまんまと騙されたわw
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- 2016年02月05日 13:30
- 中居ィィ
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- 2016年02月05日 13:45
- いつものPの自分語り系のSSかと思いきやまさかの中居=モバPSSとは…。
完全にしてやられたわw
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- 2016年02月05日 14:24
- サンキューキムタック
吾郎ちゃんとシンゴー!が大麻使用しない世界線も目指してくれ
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- 2016年02月06日 13:51
- なんか感動した
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- 2016年02月06日 15:35
- やっぱりPヘッドな中居じゃねーか!
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- 2016年02月07日 06:47
- 冒頭の青い稲妻でSMAP特定→木村かな?
凛の喋り真似の口調で特定→中居かよw
意外と歌が上手い→アィエッ?!
やきうずき&やっぱり歌が下手→中居じゃねーか!
このSSにあるヒント、野球云々とおねシン除けば概ね他のSMAPメンバーにも当てはまるから推理が二転三転して困ったw
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- 2016年02月09日 16:29
- 青い稲妻と口調で中居だったけどやっぱ歌うまいで「んん????」ってなるよな
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- 2016年02月13日 07:32
- 仲居確信から歌上手いで戸惑うヤツ多すぎィ!
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- 2016年02月15日 16:35
- う↑ご↑き↑はじーめてるー↓
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- 2016年03月21日 14:14
- 歌うまいで引っかかるやつ多すぎワロタ
人のことは言えんけどね(笑)
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- 2016年09月02日 14:37
- 事務所内、人間関係の不和。すれ違い。
それに巻き込まれる形となった彼らは、解散を余儀なくされた。
予知かな?
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- 2016年09月10日 11:30
- 完全に未来予知されてて笑う
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- 2016年11月24日 02:07
- 出てきたアイドル全員フェス限…
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- 2017年10月28日 02:30
- 改めて 現実に...
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- 2018年11月01日 23:40
- SMAPからデレマスに入った者として嬉しかったし感動したし良いSSでした。ありがとうございます