酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった5【前半】
関連記事:酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった4【後半】酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった5【前半】
≪簡単なキャラ紹介≫※簡単だよ。
--主人公パーティ--
○ツインテ:ツインテールな男の娘。右腕が義手だよ。15歳。
○アッシュ:残念なイケメン。異臭発してるよ。14歳。
○ポニテ:大食いカニバリ元気っ娘。脳筋だよ。13歳。
○レン:眼鏡をかけた白猫亜人。にゃんにゃんだよ。16歳。
○サム:強いキャラはホモってことが多いよね。こいつバイだけど。28歳。
あとほかにもいっぱいいるよ。
≪簡単な世界観紹介≫※ネタバレじゃないよ。
勇者と魔王の関係が密接だよ。あとどこでも温泉湧いてるよ。地震どうなってるんだろう。
≪簡単な地名紹介≫※いらない知識だよ!
○王国:まんなからへんの国。中央王国に名前変えようかとおもったんだけど最初王国って言っちゃったからもうそのまま使ってます。
○東の王国:和風な王国。去年は災難な目にあったよ。
○西の王国:闘技場とかギルドとかなんか目にしみるくらい脳筋くさい。
○南の王国:南国っぽいの。亜人いっぱいいるよ。ケモナー推奨だよ。
○北の王国:寒い。
≪簡単な用語紹介≫※かなりいらない知識だよ!
○三技:戦闘に使われる三つの戦闘手段。スキル、魔法、奥義からなってるよ。設定崩壊したよ。
○魔法属性:一般的なのは6つ。相性のサイクルは下記の通り、火は風に強くetc...
火→風→氷→土→雷→水→火
○欠陥属性:今のところ毒のみ登場してるけど実はちらちら出してるかもしれないというかもう忘れたよ。
そんなかんじのssです。
ゆっくりしていってね!!!
--南の王国近辺の村--
ヤミ(……)
気配を消して柱の影に隠れているヤミ。
ヤミ(やれやれ……そう言えば喰ってやる約束を交わしていたな)
ヤミは遠い過去を思い出すかのように天井を見つめる。
ヤミ(……まだお前は幸せには足りないだろう)
ヤミはそっとその場を離れた。
--南の王国近辺の村--
ブゥン
ヤミ(……)
部屋に戻ろうかと廊下に出ると、
アッシュ「……」
アッシュが腕を組んで姿を現した。
ヤミ「なんだお前も盗み聞きか。姿を消し気配も消せるとは便利な技だな」
アッシュ「お前……人を、喰うのか?」
--南の王国近辺の村--
ヤミ「?……あぁ」
アッシュ「……」
ヤミ「……」
アッシュ「ッ……」
ヤミ「……用が無いなら俺は寝るぞ」
アッシュ「……もし」
ヤミ「?」
アッシュ「俺の仲間を襲うような素振りを見せたら」
--南の王国近辺の村--
ヤミ「」
アッシュ「俺が殺す」
ヤミ「……ふはは」
ヤミはにやりと笑う。
ヤミ「……お前では俺を倒すことは不可能だ」
ヤミはしばらくアッシュと対峙したあと自分の部屋に帰っていった。
アッシュ「……くそ!」
ギュッ
サム「……」
--南の王国近辺の村--
サム「はいはい修行を始めますよでござるよ」
ツインテ「……」
アッシュ「……」
ポニテ「なんか二人のテンションがびみょ~」
レン「……なんかあったのかにゃ。ツインテ部屋に帰ってこなかったし」
ポニテ「何かって、夕飯までは二人は普通だったんだよ?もしその後に何かあったのなら……」
レン「!!」
--南の王国近辺の村--
ポニテ「そういえば今日のツインテちゃん、メガ腫れぼったいんだよね、まるで一晩中泣いていたみたいな」
レン「メガ腫れぼったいってなんだかやばそうな響きにゃ」
ポニテ「……アッシュ君もなんか寝てなさそうな顔してるし」
レン「……二人して起きていたのかにゃ?……それでツインテは一晩中泣いていた……と」
ポニテ「……」
レン「……」
妄想モード!
--南の王国近辺の村--
もわんもわんもわーん
ツインテ『あ、いやっ、アッシュくん……も、もうボクだめですぅっ!!』
ポロポロ
アッシュ『はっ、はっ……ツインテ……』
もわんもわんもわーん
ポニテ「……なるほど。ツインテちゃんは一晩中アッシュ君に泣かされていたと……」
レン「……ぶち殺すぞヒューマン」
レンは眼球が飛び出るほどの殺意を込めて、アッシュを睨んでいる。
--南の王国近辺の村--
アッシュ(……背中が寒い)
サム「今日の修行終わりでござっしゅ」
アッシュ「はっ、はっ……ポニテとレンの連携がよくなっている……そしてなぜか俺には辛い気が……」
ツインテ「……」
ポニテ「ふふ」
レン「にゃにゃ」
ブラ「皆さんご飯ですよ」
高校生メイド「ふん。仕方なく恵んでやるから早く手を洗って来いでございます」
サム(やれやれ~でござるぜる)
--東の王国--
剣豪「おう、どうした東の王。お前から出向いてくるなんて嫌な予感しかしねぇな」
東の王「書簡が届いた。南と戦争が始まる」
剣豪「ふん……バカだぜ。十何年も前に味わっただろうに……」
東の王「よほど強気になれる何かがあるのだろう」
剣豪「あの時は魔王化しかけた勇者がいた。あっちはただの勇者だと思っていただろうが。今回もそれレベルの何かがいるってか?」
東の王「さぁな」
東の王は目をつぶり、そして開く。
東の王「……何はともあれつぶすしかあるまい。亜人には下にいてもらわなくては困る」
--南の王国--
アヒル亜人「人間を倒し!今度こそ平和を勝ち取るグァ!」
亜人達「「「おおお!!」」」
蜂隊長「攻撃的になるフェロモンは順調に効いているみたいブーン」
占隊長「やれやれこうでもしなきゃやれないだなんて、見かけのわりにおとなしい連中なんですね」
筋隊長「がはは!戦は漢の花だと言うのにのぅ」
むきっ
鷲隊長(これもこの国のため……)
--南の王国--
忍隊長「国の数が一対四……本来なら勝てる相手ではないが」
鯱亜人「ひゅー、ひゅー、わ、我らが首領、ひゅー、ひゅー、鬼姫様がひゅー、ひゅー、いれば」
占隊長「あー!干からびかかってる!もう誰よ今日の鯱登板!」
蜂「俺じゃないぶーん」
筋隊長「わしは昨日やったがはは」
鷲隊長「え?あ、じゃあ私ですね。鯱隊長、水浴びいきますよ」
鯱隊長「ひゅー、ひゅー、血の海を泳ぎたい」
--南の王国近辺の村--
ほーほー
ツインテ「……」
ツインテはまんまるの月の下で瞑想している。
ツインテ(……イメージするんだ。みんなの役に立てるくらい強い自分を!)
ほーほー
ツインテ(イメージするんだ。どうすればもっとみんなの役に立てるのかを!)
ほーほー
ツインテ(……駄目だ……どうやっても、ボクは……攻撃に出ることが出来ない)
--南の王国近辺の村--
ツインテは目を開く。
ツインテ(ボクはどこまで言っても補助タイプ、性格も、攻撃には向かない)
ほーほー
ツインテ(色んな人を守りたい。それには攻撃する力は必須なのに……ってあれ)
ほーほー
ツインテ(守るのに攻撃は必須……どうしてだろう)
--南の王国近辺の村--
ヒュンヒュンヒュイン
アッシュ「ふっ!」
シャシャシャシャ!
アッシュは汗だくになりながらナイフを振るい続ける。
アッシュ(1レベルでも、1経験値でも!)
シャシャシャシャ!
アッシュ(今より高く!強く!)
--南の王国近辺の村--
ぶーん
アッシュの周りに羽虫が近寄ってくる。
じわぁ
アッシュはナイフに毒をしたたらせ、
アッシュ「ふっ!」
ぴぴっ!
羽虫目がけて毒液を飛ばした。
アッシュ(……ち、一匹し損じたか)
--南の王国近辺の村--
レン(レンの体を変える……ゴーレムを作っていく過程で得た知識とホムンクルス製造方を使って)
ばちばち
レン(レンは肉体であって物になる。最速最良の錬金術を行うための工房に。その側面を体に宿す)
レンの周りをエーテルが漂っている。
レン(材料はこの身のみ。実験出来ないのが少し不安にゃが……)
しゅるしゅる
レン(やると決めたんにゃ!!)
--南の王国近辺の村--
ポニテ「んがーんごー。むにゃむにゃもう肉まんは食べれないよー」
高校生メイド「それは私の乳でございます」
ポニテは寝ていた。
がぶしゅっ
高校生メイド「!!?」
--南の王国近辺の村--
ほーほー
ブラ「……」
月を見ているブラ。
ヤミ「寝れないのか?」
ブラ「あ、ヤミ様」
ヤミはゆっくりブラの傍に歩いていく。
ブラ「……はい。なんだかもったいなくて」
ヤミ「……」
--南の王国近辺の村--
ほーほー
ヤミ「生きる上で別れは必定だ」
ブラ「はい」
ヤミ「死ぬと決まったわけではない」
ブラ「はい」
ヤミ「若いのだからなおさら夢が必要なのだ」
ブラ「はい」
ヤミ「俺は実は女だ」
ブラ「はい」
ヤミ「聞けよお前人の話」
--南の王国近辺の村--
伝書梟「ほうほう」
サム「すまんでござるな。木の実でござる」
バサバサ
サムは受け取った手紙に目を通す。
サム「やれやれ、いよいよ始まってしまうかでござる。レベル3にすらいかなかった……か」
サムはボリボリと頭をかいた。
サム「いっそ何も知らせずに戦火の及ばない場所にまで……いやいやそれだと、後にツインテ殿達が後悔の念に捉われてしまいそうでござるな」
ほーほー
サム「……死なせたくないなぁ」
ほーほー
サム「拙者の身一つですめばお釣りなんていらないんでござるけど……」
ほーほー
サム「ま……なるようにしかならんでござるな」
--草原--
数十万の屈強な兵士が地平を埋め尽くしている。
東の王「諸君……久しぶりである」
東の王が中央の台座に立つ。
東の王「またしても諸君らの力を頼る時が来た」
ざわ
北の王(いやー昨日飲み過ぎて頭痛いですわぁ)
東の王の横に立っている北の王は、ふらふらと安定していない。
--草原--
東の王「十数年前は、逃げた魔族を匿い」
西の王「……」
東の王「今回は様々な条約を一方的に破棄し、我々に敵意の姿勢を向けてきた」
新王(やっぱりこうなってしまうか)
東の王「奴らには……人の世界の掟というものが通用しない。まるで獣のように、本能のままにやりたい放題だ」
ざわ
東の王「獣は躾るものだ。ここで……我らが躾ねば、奴らはどこまで増長するかわからぬ」
--草原--
剣豪(やれやれ、いつまで人を斬るのかね)
東の王「諸君らに聞こう!!諸君らは最強の兵士達か!?」
兵士達「「「然り!然り!然り!」」」
東の王「諸君らは人の未来を憂える兵士達か!?」
兵士達「「「然り!然り!然り!」」」
東の王「癌は!?」
兵士達「「「……しこり!しこり!しこり!」」」
東の王「ゆっかりーん!!」
兵士達「「「世界一可愛いよー!!」」」
オタ芸を始める兵士達。
--草原--
東の王「えー、それでは本日のためにわざわざお越し頂きました、ゲストを紹介します」
ざわざわ
東の王「みんなのアイドルゥゥゥ!!魔導長だぁぁぁ!!」
魔導長「はーーいっ☆」
兵士達「「「うおぉぉぉ!!」」」
魔導長「みんなーっ!今日は集まってくれて、ありがとーーっ!!」
兵士達「「「うおぉぉぉ!!」」」
魔導長「可愛いって言って欲しいです!」
兵士達「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」
まさかのライブが始まった。
--草原--
東の王「えー、素晴らしい曲でした、私感極まっております。それではもう一人のゲストを紹介しましょう。みんなのおぉぉぉ兄貴いいいい!!」
腕を組みながら馬に乗った兄貴が現れる。
兄貴「レッツパーリィだぜぇえ!!ほっほぉー!!」
兵士達「「「うおぉぉぉ!!」」」
兄貴「いくぜ野郎どもぉぉ!!」
兵士達「「「へっ、へっ!!」」」
兵士達は足軽ダンスで答える。
東の王「……ふん。士気は十分なようだな!!よろしい、ならば開戦だ!!」
兵士達「「「あんたのリーダーいいち○こですかーい!!」」」
--南の王国近辺の村--
サム「や……見事でござる。まさかこの土壇場でレベル2をクリアするとは……」
ポニテ「うっしゃー!!新技結構使えるよー!!」
レン「レンも中々うまくいったにゃ」
アッシュ「く……お前ら器用だな。そんな簡単に新技なんて編み出せねぇ」
一つのことを磨き続けるタイプのアッシュ。
ツインテ「ほんと、すっごいじゃん!」
いつの間にかサイドテールになっているツインテ。
サム(レベル3にまで、きたかでござる)
サムは立ち上がり手をはたく。
サム「おみごと。じゃあまあ今日の修行はこのくらいにしておくでござるよ」
--南の王国近辺の村--
サム「やれやれ、きっかけを掴んでしまえば一瞬でレベルアップとは。これだから若さは怖いでござる」
アッシュ「……」
サム「それでは飯でも食べに行こうかでござる」
アッシュ「まてサム」
サム「なんサム?」
レン「語尾にしやがったにゃ」
アッシュ「……お前いつまでこんなことを続けるつもりだ」
ポニテ「え!?」
--南の王国近辺の村--
アッシュ「俺をバカだと思ってるのか?サム、貴様は俺ら四人を鍛えて連携の修行をしているが、それは四人の連携だ。貴様が入っていないじゃないか」
ポニテ「……あ」
ツインテ「私はサム君ほどの手だれなら、すぐに合わせられるもんなんだと思ってたけど」
レン「動き方にゃ」
ツインテ「動き方?」
アッシュ「あぁ、レンの言う通りだ。サムの動き方は個人で戦うことに特化された動きだ。そうでなければこれほどまでに、俺らの攻撃を凌げるはずがない」
サム「ほほぉ……案外気付くもんでござるな。感心感心」
--南の王国近辺の村--
アッシュ「サム!貴様……」
サム「いやいやそんな怖い表情向けられては困るでござる」
アッシュに険しい表情を向けられてあごひげをいじるサム。
サム「そうすなぁ……。まぁいいかもう言っても。これが終わったら、拙者の役目は終わりなんでござるよ」
ツインテ「え」
ポニテ「へ?何言ってるの……」
サム「ツインテ殿達をちゃんとスタートラインに立たせる。それが拙者がこのパーティで出来る最初で最後のことなのでござる」
--南の王国近辺の村--
レン「……」
アッシュ「!何を言ってやがる!」
サム「自分で教えておいて何でござるが、拙者、単独行動しかできんでござるゆえ」
ツインテ「……え」
サム「ははは、お恥ずかしながら拙者ずぅぅっと一人で戦ってきたでござる。ぼっちでござる、十年以上ずっと……。あ、心配めされるな、拙者自身連携は出来ずとも、戦いの中で何度もパーティの強さを目の当たりにしたでござる。拙者的に手強く感じた戦法をツインテ殿達に教えているので、教えに間違いは無いかと」
アッシュ「そんな心配はしていない!……お前」
レン「成長限界……かにゃ」
サム「ご明察でござるよレン殿。拙者すでに今をもって全盛期。これ以上強くなることはできんでござる」
--南の王国近辺の村--
ポニテ「べ、別に強くならなくたっていいじゃん!今のままだって十分強いよ!!」
ツインテ「……なるほど。パーティスキルかな」
ツインテは口に手をあてる。
ツインテ「パーティスキルはパーティ人数によって効力が変動するのよね。中には五人でないと発動できないスキルもあったはず」
サム「うむ。しっかり勉強しているでござるなぁ」
ポニテ「え?え?わけがわかんないよ!!だからサムっちもパーティで連携すればいいんでしょう!?」
アッシュ「……」
ツインテ「……」
--南の王国近辺の村--
レン「ポニテ。サムはもう完成してるのにゃ」
ポニテ「わかるよ!すごいことじゃん!?それの何がいけないの!?」
サム「拙者にはもう、振れるスキルポイントが無いのでござるよ」
サムは優しく微笑んだ。
サム「拙者はパーティスキルを使用することは出来ないでござる。だからパーティとしてはカウントされてもパーティスキルのメンバーにはカウントされないのでござるよ」
ポニテ「そんな、の……そんなの……」
--南の王国近辺の村--
サムは空を仰ぐ。
サム「ずっと……一人で戦うために全てを費やしてきたのでござる。一人でも戦えるように。だからいまさらパーティプレイは出来ないのでござる」
アッシュ「……ち」
アッシュはサムに背を向けて家に入って行った。
サム「拙者、ツインテ殿達にはどうしても最高のパーティスキルを手に入れて欲しいのでござる。魔王を倒すというのが本気なのであれば」
ツインテ「……サム君」
サム「だからこれが終わったら、拙者の役目は終わりなんでござるよ」
--南の王国近辺の村--
パートのおばちゃん「いやぁ悪いわね!この間は急に変わってもらっちゃって!」
ブラ「いえ、気にしないで下さい。困った時はお互い様ですから」
パートのおばちゃん「今日は私が代わりにやっておくから少し早めに帰ってね!はいお土産の黒虎の肉!」
どさり
ブラ「こんなにたくさん……あれ、海産物のような匂いが」
パートのおばちゃん「黒虎だもの!」
ブラ「黒虎ですね!」
高校生メイド(何言ってるでございます)
--南の王国近辺の村--
ブラ「ではお先に失礼します」
パートのおばちゃん「はいよ!子供たちに美味しい料理食べさせてあげてね!」
ブラ「はい!」
高校生メイド「失礼するでございます」
ガララ
パートのおばちゃん「ほんっといい子たちよねぇ!」
パートのオバサン「ホントよぅ。ブラちゃんにメイドちゃん、二人とも若いのによく働くわぁ」
パートのおばちゃん「お子さんはどちらの子供なのかしらね。肌の色からするとメイドちゃんなのかしら」
ガララ
高校生メイド「……」
--南の王国近辺の村--
忘れ物を取りに来たメイド。
高校生メイド「わ……」
パートのおばちゃん(あらあらあら)
パートのオバサン(まぁまぁまぁ)
高校生メイド「私処○なのにっ!でございます!!」
バシュッ
泣きながらスキル雷動を使って走っていくメイド。
パートのおばちゃん、オバサン「「あらあらあら!!」」
二人のあらあら。
--南の王国近辺の村--
パートのオバサン「あらあらだとするとブラちゃんの子供なのかしら。いずれにせよなんだか複雑そうよねぇ。あ、聞きました?今子供三人連れた男が今ブラちゃんの家に居候してるらしいのよ!」
パートのおばちゃん「あらいやだ!もしかしてあれかしら、昔の男ってやつかしら。だとすると外で働きもせずに家庭内暴力を働く夫、その夫から逃げ出そうとするのだが子供一人しか連れていけず……って話かしら!」
パートのオバサン「そぅよぉ!きっとそぅよぉ!!自分で養えないからブラちゃん達を探しにきたんだわ!きっと優しいブラちゃん達だもの!子供のつらそうな顔を見たら受け入れざるを得なかったのよぉ!」
パートのおばちゃん「あらあら!!だとするとメイドちゃんは処○だって言うから、ブラちゃんに四人も孕ませたのねあのひげの男!」
パートのオバサン「あらあら!!あんな若いのにあんな年の子がいるなんて……犯罪よね!?手を出したのは相当前よね!?」
パートのおばちゃん「あらあら!!とするとメイドちゃんは今の女なのかしら!?一緒に連れてきちゃったのかしら!?でも手を出してないのよね……」
--南の王国近辺の村--
パートのオバサン「あらあらまぁまぁまぁ!!いや奥さん、もしかすると特殊な性癖かもしれないわよ!?いやだわぁ!!」
サム「あの、オレンジジュース……欲しいんですけど」
オレンジジュースを持ったままレジの前に立っているサム。
パートのおばちゃん、オバサン「「あらあらあら!!」」
サム「ひ、ひっ!?」
実はずっと聞いていたサム。
パートのおばちゃん「この人がブラちゃんとメイドちゃんをてごめに……」
パートのオバサン「嫌がるブラちゃんを無理矢理おしつけてその自慢のスピリットオブソードを……」
--南の王国近辺の村--
じりじり
おばちゃん達はサムに近づいてくる。
サム「あ、あの、な、何か勘違いをしておいでではないでござるか?」
おばちゃん達「「NO! NO! NO! NO! NO!」」
サム「そこでNO!?こ、これはまさか……」
おばちゃん達「「NO! NO! NO! NO! NO!」」
サム「何も聞いていないのに!!この流れはまさか……?」
おばちゃん達「「YES! YES! YES! YES! Y E S !」」
サム「もしかしてあらあらですかーッ!?」
客のじいさん「YES! YES! YES! "OH MY GOD"」
おばちゃん達「「アラララアラアラアラアラアラアラアラアラアラアラ」」
--南の王国近辺の村--
同時刻。
?「ここか……」
数十人の騎士たちが南の王国近辺の村に接近していた。
??「響かせてあげるわ」
--南の王国近辺の村--
高校生メイド「ほぅ」
出店に並ぶ服に目を奪われるメイド。
ブラ「どうかしましたか?メイドさん」
高校生メイド「!あ、いやなんでもないでございます!」
ブラ「お洋服……。メイドさんいつもメイドの服ばかり着てたからずっとそれがいいものだとばかり思っていたけど……もしかして」
高校生メイド「は、はぁ!?あ、あんな服興味ないしぃ?私ぃ、メイド服さいっこーだと思ってるしぃ!?」
語尾の消失、落ち着かない視線、スカートの裾を握り締める手。
--南の王国近辺の村--
ブラ(うわ、ばればれだ……ふふっ)
高校生メイド「ほ、本当に違うでございます!」
ブラ(あの頃のメイドさんからは想像もつかなかった……)
ブラはかつてのメイドを思い出す。
ブラ「ふふっ、買いにいきましょう!」
高校生メイド「……へ?」
ブラ「思えば一緒に働いてくれるようになったというのに、メイドさんにはまだ何も買ってなかったですね。これは当然の報酬ですよ」
にこりと笑うブラ。
--南の王国近辺の村--
高校生メイド「……ほ、本当にで、ございます?」
ブラ「えぇ女の子なんですもの」
ぱぁぁ、とメイドの表情が明るくなる。
ブラ「さぁ行きましょうメイドさん、ヤミ様達を驚かせてしまいましょう!」
ブラは手を差し出した。
高校生メイド「ございます!!」
--南の王国近辺の村--
ぱからぱから
?「……」
ローブをまとった大男が、同じく巨大な馬に乗って町中を歩いている。
?(まさかここまで発展していようとは。難民の寄せ集めばかりだと思っていたのに)
大男は辺りを見渡しながら思う。
ぱからぱから
?(……)
--南の王国近辺の村--
わーわー
町の中を駆け回る子供たち。
?(……やはり亜人もまざっているか)
広場の中央に差し掛かった所で、
耳長少年「あー!うまにのってるひとがいるー!」
短パン少年「ほんとだー!かっこいー」
?(……)
わらわらと集まる子供達。
--南の王国近辺の村--
?「見せ物では無いぞ。近寄るな」
赤靴少女「わたしおうまさんはじめてみた」
手を伸ばす少女。
ひひん、と馬は鳴く。
?「……く」
すっかり子供達に囲まれてしまう。
わいわいきゃっきゃっ
?(……)
--南の王国近辺の村--
大男ははしゃぐ子供達を見る。
きゃっきゃっ
?(……普段見ているものとなんら変わりない子供達……生まれた場所が、生活している場所が違うだけで……)
きゃっきゃっ
大工のおじさん「あぁすみませんなぁ旅の方。この子達、馬が珍しいようで……こら通してあげなさい」
ボンボンの少女「やだーもっとみたいよー」
少女はおじさんに手を引かれて馬から離される。
?(……)
--南の王国近辺の村--
?(……しっかりしろ青騎士。貴様は役目を果たすだけの一本の槍なのだ。情はいらぬ)
わいわいきゃっきゃっ
大男はローブを取って顔を出すと大きく息を吸った。
?改め青騎士「我は青騎士!遥か遠くの北から、砂漠を越えてやってきた!!」
びくりと驚く子供たち。青騎士は広場全体に向けて言葉を続けた。
青騎士「辺境の地ゆえ、まだ情報が入っていないかもしれないが、これから南の地で大規模な戦争が始まる!」
大工のおじさん「!?」
--南の王国近辺の村--
ざわざわ
青騎士「我が王国連合と南の王国との戦争だ!そしてここは南の王国近くに存在しているため、我々はお前達を疑っている!!」
ざわざわ!
青騎士「肌の色、亜人率の高さ、どれをとっても小規模な南の王国だ!!よって我らは……」
赤靴少女「あ、う……」
青騎士「お前たちに無条件降伏を望む!!」
ざわざわ!
--南の王国近辺の村--
青騎士「戦火は少しでも小さくしなくてはならぬ!だが疑わしきをそのままにしておくことは決して出来ぬ!ゆえに我らは恩情を持って告げる!速やかに降伏し、この地を明け渡せ!」
大工のおじさん「そ、そんな」
花屋のおばちゃん「冗談じゃないわ!私達はやっとのことでこの生活を手に入れたのよ!?それをはいそうですか、なんて言えないわよ!」
キツツキ亜人「そうだそうだ!!横暴だ!!」
青騎士「黙れ!私は冗談で言っているのではない!!」
ビリビリ
青騎士の怒鳴り声が響く。
--南の王国近辺の村--
ブラ「……広場の方が騒がしい?」
高校生メイド「やーん、これも可愛いでございます~ん」
あれもこれも取り敢えず合わせてみるメイド。
ブラ「すいませんメイドさん、広場で何かあったみたいなので少し見に行ってきます。お金渡しておくのでいいもの選んで下さいね」
ブラはお金を渡すと広場の方に駆けだしていった。
たたた
ブラ「ぶー。二人で見るから楽しいのにでございますのに」
--南の王国近辺の村--
服屋のおばちゃん「ブラちゃんが行ったらケンカだろうとなんだろうと、すぐさま治まっちまうからね。全くあの歳で大したもんだよ」
店の奥からおばちゃんがやってきてメイドに話しかける。
高校生メイド「えっへんでございます」
服屋のおばちゃん「いやあんたのことじゃないんだけど」
高校生メイド「わかっているでございます。……………………友達を誉められたから、ついうれしくなってしまったでございます」
くるりと後ろを向くメイド。
服屋のおばちゃん「ははは、そうかいそうかい」
おばちゃんはニコニコと笑う。
--南の王国近辺の村--
高校生メイド「む、これもいいでございますがちと私には荷が重い値段でございます」
高校生メイドはいったん服を広げてみるが、一度自分に合わせてみると畳んで棚に返した。
服屋のおばちゃん「へ?貰ったお金で買える範囲じゃないか」
高校生メイド「いやいや、全部使うなんてもってのほかでございます。ただでさえ食費が増えて大変だというのに」
服屋のおばちゃん「」
服屋のおばちゃんは優しい笑顔をメイドに向ける。
服屋のおばちゃん「気にすることないさ……私の旦那もブラちゃんに蘇生してもらったし、あんたたちにはこの村を助けてもらった……感謝してるのさ。そんくらいただにしてやるよ」
高校生メイド「まじで!?」
服屋のおばちゃん「我が村のアイドル兼まとめ役に免じてね」
--南の王国近辺の村--
青騎士「……お前達にも考える時間は与えよう。一時間だ。それで決めろ。ここで死ぬか、違う地で生きるか」
青騎士は険しい表情で告げた。
ざわざわ
広場に集まっていた人達は困惑し、それぞれ近くにいた人と相談していた。
武器屋のじいさん「そんなことが……まかりとおってなるものか!」
じいさんは店の剣を持ってきて投げ付けようとする。
武器屋のじいさん「でていけぇ!!」
--南の王国近辺の村--
ぱし
しかしその手は止まる。
武器屋のじいさん「っ!誰じゃ!邪魔をするのは!?」
その手を握って止めたのは、
ブラ「……」
武器屋のじいさん「!ブラちゃん……」
大工のおじさん「ブラちゃん」
短パン少年「ブラお姉ちゃん」
ざわざわ
--南の王国近辺の村--
青騎士(……?)
ざっ
青騎士(……空気が変わった……)
ブラは青騎士に近寄って行った。
ブラ「……私達は……あなた方と違ってどこにでも居場所があるわけではないんです」
青騎士「……」
ブラ「私達には住む場所がなかったから、私達は住む場所を作ったんです」
青騎士「……」
ブラ「ここにいる者は皆、あなたたちに決して迷惑をかけません!……ですからお願いです。私達から家を取り上げないで下さい!私達は南の王国とは何も関係ありません!」
--南の王国近辺の村--
青騎士(……勇気のある少女だ。中々出来ることではない)
青騎士は自分をじっと見つめる少女を見て思う。
青騎士「……勇ましいな。まるで聖女のようだ」
ブラ「!……私は、そんなに綺麗じゃありません。聖を頂くほどの人間ではありません」
ざわざわ
青騎士「……ふ」
かちゃ
青騎士(しかし)
青騎士は仮面を外す。
--南の王国近辺の村--
青騎士「……いくら声高に叫ぼうとも証拠はあるまい。否、こんな情勢になってはもはや証拠も必要としないのだ」
ブラ「ッ!」
青騎士「少しでも疑わしき者がいるのならそれを排除する。部下達の不安材料を残すわけにはいかない」
ブラ「……ひどい」
青騎士「承知の上だ。戦いに情などいらぬ」
果物屋の兄さん「さっきから聞いていればふざけるなぁ!!」
ざわざわ
周りで聞いていた男が青騎士に向かって怒鳴る。
--南の王国近辺の村--
床屋のおっさん「それでも赤い血が流れてるのか!?えぇ!?」
青騎士「調べるまでもないだろう?……立ち退け。それが譲歩だ」
ブラ「み、皆さん、好戦的になってはいけません!!」
魚屋のおっさん「もう……我慢ならねぇ」
ダッ
おっさんは包丁片手に飛び出した。
青騎士(愚かな。そんな包丁で鎧を貫けるはずがないというのに)
スチャ
青騎士は剣を抜く。
ブラ「だめ!!」
--南の王国近辺の村--
高校生メイド「ふぅ。いっぱいおまけしてもらったでございます」
ほくほくな顔で紙袋を抱き抱えているメイド。
高校生メイド「えへへ。幸せでございます」
わーきゃー!
高校生メイド「ん、そういえばブラは広場が騒がしいとか言ってたでございますね。……これは騒がしいってレベルじゃないでございま」
ピチャッ
青騎士が剣で貫き掲げているのは、
ドサッ
メイドは荷物を落とす。
飲み屋のお姉さん「きゃああああああ!!」
ポタポタ
ブラ「」
ブラだった。
--南の王国近辺の村--
魚屋のおっさん「あ、あぁぁ」
青騎士(割り込んでくるとは……しかしこの娘はこの村の精神的支柱のようだな。上手くことがいったかもしれんな……)
ブラ「」
ポタッ
青騎士(すまぬ少女よ。これで犠牲が少なくなる)
ばっ!
青騎士「聞け!この少女は、お前達が敵意を持つ行動をしたがゆえにこうなった!!なんという軽率さよ!!」
ざわ
--南の王国近辺の村--
青騎士「もしその男の刃が私に届いていたならば、この村は私の率いる部隊によって全滅していたのだぞ!?」
ざわざわ
青騎士「それが彼女には分かっていたのだ!!わかれ!我らは抵抗されたら武器を使うしかない!」
ざわざわざわ
青騎士「だが……我らはむやみな暴力を振るうために、ここにきたのではない……」
ざわざわざわざわ
青騎士「立ち退け……今なら……もう誰も傷つけずにすむのだ」
ざわざわざわざわざわ
--南の王国近辺の村--
青騎士「さぁどうする!?この娘の、体を張った行いを無駄にする気か!?もう一度だけ問おう!!」
ざわざわざわざわざわ!
青騎士「立ち退くか全滅か!!さぁ!!」
青騎士は貫かれたブラを全方位にかざした後、
ブン
ビチャ
広場の真ん中にブラを放り捨てた。
ざわ
--南の王国近辺の村--
食器屋の少年「ブラおねぇちゃあぁん!!」
村人はわらわらとブラに駆け寄った。
バチッ
青騎士(ッ!魔力反応……)
ザッ
酒屋のおばさん「め、メイドちゃん」
洗濯屋のおじさん「メイドちゃん……」
ザッザッ
--南の王国近辺の村--
メイドはゆっくりとブラに近づいていく。すると村人は左右に別れて道を作った。
高校生メイド「……」
高校生メイドはブラに近づいて上半身を起こす。
ブラ「けほっ……メイド、さん?……しくじっちゃい……ました」
高校生メイド「ブラ!」
ブラ「……難しいですね……どういう選択が……この場合、正しいの……でしょうか、ね」
ブラは苦痛に震えながらも、にこりと笑って、生き絶えた。
--南の王国近辺の村--
高校生メイド「ッ」
ざわざわ
青騎士「……」
高校生メイド「選択……?」
1、右ストレートでぶっ飛ばす。
2、ブラのためにも拳をおさめる。
3、仕方ないので舌打ちする。
--南の王国近辺の村--
バチッ
高校生メイド「」
メイドの全身が光ったかと思うと、
ゴッ
メイドの拳が青騎士をとらえていた。
青騎士「ッ!」
どじゃああ!!
青騎士が気付いた時には、馬上から吹き飛ばされていた。
高校生メイド「……ぶっ飛ばす以外に選択肢があるものかでございます!!」
--南の王国近辺の村--
青騎士「……残念だな」
青騎士が静かに立ち上がる。
高校生メイド「お前は、私の手で殺す……スキル、雷動!!」
ギャアン!!
誰も反応することの出来ないメイドだけの時間。雷速の攻撃が青騎士の胸部を叩く。
≪ごわぁぁん≫
高校生メイド(っ?なんだこの感、じっ!)
どぶしゃぁ!!
--南の王国近辺の村--
高校生メイド「がっ!?」
メイドの胸部が弾け飛び、強制的にスキルが解除される。
ふるちん男子「!?メイド姉ちゃん!!」
高校生メイド「……がふ」
メイドは血を吐きながら倒れ込む。
どさり
高校生メイド(な、なんで私、が)
--南の王国近辺の村--
??「あらひっかかったみたい。私の接触攻撃対応魔法が発動したわ」
???「……結局こうなっちゃうのか。いくぞ我が赤騎士部隊、準備せよ!」
騎士達「「「おぉぉ!!」」」
??「演奏家部隊は後方から援護します……私は中行きますけどね」
騎士達「「「はっ!」」」
???改め赤騎士「……できることなら非戦闘員は斬りたく無い。投降するようなら受け入れろよ?」
??改め演奏家「それくらいわかってるわよ。さぁて……響かせてみましょう」
--南の王国近辺の村--
ぴくっ
ヤミ「……」
子犬「きゃんきゃん」
ヤミ「……メイドがやられた?」
ガタッ
ヤミは家から飛び出した。
ヤミ「行くぞ犬畜生」
ダッ!!
子犬「きゃんきゃん」
--南の王国近辺の村--
ぽつーん
ツインテ「あれ、ヤミ君達どっか行っちゃったんだけど」
ポニテ「あうー!!おーなーかー減ったー」
椅子の上でダダをこねるポニテ。
ヤミ「サムもブラ達を探しに行くとか言ってどっか行っちまったし」
レン「空腹過ぎてきもいにゃ」
--南の王国近辺の村--
高校生メイド「くっ……」
メイドはガクガクと震えながら立ち上がろうとする。
果物屋お姉さん「メイドちゃん!!」
青騎士「?胸部を吹っ飛ばされているのに即死しない……?」
ざっ
青騎士はゆっくりと馬にまたがる。
ざわざわ
青騎士「しかし……俺への攻撃は成立した。悪いが滅んでもらうぞ」
--南の王国近辺の村--
ピィィ
青騎士が指笛をすると、
……ヒヒィィン!!
高校生メイド「!」
馬に乗った騎士達が村に押し寄せてくる。
だからっだからっだからっ!!
わーきゃー!!
高校生メイド「く、そ」
メイドはやがてくる脅威を睨みつける。
高校生メイド(せっかく……せっかくヤミ様が幸せに生きられる場所が出来たのに!)
--南の王国近辺の村--
ばしゅる
高校生メイドは失った箇所を修復するために、体を構成しているもので代用した。
しゅるる
高校生メイド改め中学生メイド「ん」
そのため姿が一回り小さくなってしまった。
青騎士(自己修復!?いやこれは……)
青騎士は剣を構える。
青騎士「貴様……魔族か?」
--南の王国近辺の村--
ざわっ
イカ息子「!?メイドちゃんが魔族……そんなわけ、ないでゲソ!!」
中学生メイド「……」
ざわわ
料理屋のおばあさん「め、メイドちゃんは私達を助けてくれたとてもいい子じゃ」
スッ
中学生メイド「……」
中学生メイドは無言で立ち上がる。
--南の王国近辺の村--
青騎士(人側についた魔族?……それとも、町に潜入して何かを画策している?)
中学生メイド「もはやどうでもいいことでございます……」
ばち
青騎士「!」
中学生メイド「私はヤミ様の従者にしてブラの……友達。それ以外のことはどうでもいいでございます!!」
ばちっばちち!
青騎士(体が一回り小さくなり、魔力量も少なくなっている。無理をしているのが見え見えだ)
チャキ
--南の王国近辺の村--
中学生メイド「……」
じり
青騎士(とはいえ俺にあの速度はとらえられないな)
ひゅんひゅん
青騎士「スキル、カウンター」
中学生メイド「スキル、雷動」
ばち
メイドの雷動は先ほどより速度が落ちていた。しかしそれでも誰も対抗出来る速度ではない。
--南の王国近辺の村--
ぎりりり
中学生メイド(首を切断する!!)
メイドは跳躍し手刀を繰り出した。
ぴく
その時、
ゆらり
中学生メイド「!?」
雷速の世界で、青騎士の右腕が動いた。
ひゅ
中学生メイド「ばかな!!」
ズ
中学生メイドの頭部が
ブシャアア!!
深く、切り裂かれた。
--南の王国近辺の村--
中学生メイド「」
ばちっ
スキルは解除され中学生メイドは地に落ちた。
青騎士「ぐっ!」
斬った青騎士は激痛に顔を歪める。
青騎士(なんとかカウンターで捕らえきれたか……しかしあまりに無理な速度だったので体が悲鳴をあげている……!)
びきっ
青騎士は剣を握る力も無くなりつつある右手から、剣を左手に持ちかえた。
ブラ「ひゅー、ひゅー、め、メイド、さん」
中学生メイド「が……が」
わーきゃー!
広場を悲鳴と恐怖への叫びが支配する。
--南の王国近辺の村--
ずる
青騎士(……!?あの娘、生きているだと?確実に殺した筈だが……まさかスキル……自動蘇生)?
ず、ずる
ブラは少しずつメイドにはい寄って行く。
青騎士(……)
ぎゅ
青騎士はブラに確かな恐怖を感じた。
青騎士(自動蘇生持ち……それは確か、災厄の兆しではなかったか?その力を持ったものが現れると、世界は大きな転換期を迎える……と)
--南の王国近辺の村--
わーきゃー!
ずる
ブラ「メイド、さん、聞こえ、ます?」
中学生メイド「ごぼ」
メイドは血を吐いて息も絶え絶えである。
ずる、ずる
ブラ「……メイドさん、私を、食べてください」
--南の王国近辺の村--
わーきゃー!
中学生メイド「ゅ……」
ごろ
中学生メイドの眼球がブラを探す。
ずる
ブラ「わた、しも、もう限界、です。だから……メイドさん、私を食べて、みんなを、助けて下さい」
ブラはメイドの傍まで這っていった。
わーきゃー!
--南の王国近辺の村--
ずる
青騎士「……」
ブラはメイドの手を握る。
がし
ブラ「メイド、さん」
中学生メイド「いやでございます」
わーきゃー!
ブラ「なん、で……」
中学生メイド「……友達は、……食べれ、ないでございます」
--南の王国近辺の村--
ブラ「……」
わーきゃー!
青騎士「……」
中学生メイド「ごめん、なさい……私じゃ、守れません、でした」
ざっ
中学生メイド「友達を、こんなめにあわせた奴に、勝てな、かった」
ぎりっ
中学生メイドは歯を食いしばり、一筋の涙を流す。
--南の王国近辺の村--
ざっざっ
中学生メイド「私達、の、この町、を……」
ブラ「……あ」
ざっざっざっ
中学生メイド「守って……下さい、でございます」
中学生メイドは震えながら右腕を上げる。
ぱしっ!
ヤミ「任せろ」
ヤミはその手を力強く握り締めた。
--南の王国近辺の村--
ブラ「ヤミ、様」
子犬「ううう!!わん!」
青騎士(……また子供……)
ヤミ「貴様か。我が友と従者をいたぶったのは」
じゅっ
青騎士「!?」
ヤミが青騎士を睨むと、ヤミの激しい怒りがほとばしる。
青騎士(!!……違う……断じてただの子供などではない……この魔力量)
--南の王国近辺の村--
ヤミ「番犬よ!!」
子犬「!」
ヤミ「敵はこいつだけではないはずだ。お前はこの村の者を守れ!!」
ヤミは手のひらを子犬にかざし、魔力の供給を開始する。
ぼん!
すると子犬の体型が一緒で変化し、
ずしゃっ
子犬改め番犬「!!……仰せの通りに。我が主、ヤミ様」
--南の王国近辺の村--
ばしゅ!!
番犬は跳躍して民家の上に立つと疾風のように駆けていく。
絆創膏少年「わ、わんちゃんが……かっこいい!!」
ヤミ「……さて」
青騎士「!」
ヤミ「我が所有物を傷つけた罪は重いぞ」
わーきゃー
青騎士「……お前も歯向かうのか」
--南の王国近辺の村--
ポニテ「なんか外騒がしいね」
アッシュ「確かに。何を昼間からこんなに」
レン「いや、この騒がしさ、ただごとじゃないにゅ」
ツインテ「まるで侵略者から逃げ惑う人々みたいな声だねー」
小学生メイド「そんなまさかでごじゃいましゅ」
あっはっはっはっ
バタン!
サム「いやまさしくその通りでござる」
--南の王国近辺の村--
アッシュ「な、なんだってー!?」
ポニテ「それは本当なのか!?」
サム「うむでござる。確認してきたが奴らは正規の兵でござった」
レン「兵……なぜそんなやつらがここに攻め込んでくるにゃ?」
ツインテ「……情報リンク」
ぽぅん
ツインテは魔力でわっかを作り出すと、庭まで歩いていき空に放った。
ばしゅ
--南の王国近辺の村--
サム「……?」
ツインテ「んー」
レン「ツインテ?何しているのにゃ?」
ツインテ「んー……ん?あれ?言い忘れてたっけ?」
アッシュ「何をだ?」
ツインテ「サイドテールの私は情報戦特化なんだよね」
ツインテの輪が空で巨大化する。
ポニテ「情報戦……?」
--南の王国近辺の村--
ツインテ「うん。……南の王国で戦争?」
サム「!」
アッシュ「何!」
ツインテ「……ッ!ブラちゃん達が襲われてる!」
レン「なんにゃって!」
サム(まさか人格ごとに特性が違うのでござるか……?)
アッシュ「てゆうか情報戦特化のくせに鞭による攻撃強くね?」
--南の王国近辺の村--
ツインテ「それは情報戦特化だからだよ。私だって自分で自分の身を守らなきゃならない。でも戦闘力にそんなに力を割いていられないじゃない?」
レン「なるほどにゃ。鞭にのみ力を集めているのかにゃ」
ツインテ「うん。鞭にのみ力を込めているおかげで、そこそこ攻撃力高いのよ。まぁ総合的戦闘力ではロングの私にはかなわないんだけど」
サム(治癒、戦闘、情報……ツインテ殿は人格ごとに役割が違うのでござるな)
ポニテ「よくわからないけどブラちゃん達が襲われてるんでしょ!?助けに行こう!!」
アッシュ「お、おう!」
サム(……違和感を感じる……それじゃあまるで……まるで、他の人間を必要としていないような)
--南の王国近辺の村--
ツインテ「広場だよ!急ごう!!」
ダッ
サム(まるで……自分一人で魔王を倒すつもりだったような……)
レン「サムも早くこいにゃ!!」
サム「わ、わかったでござる!」
ダッ
サム(……ツインテ殿は……だとするなら人格は)
ダダダダ
ツインテ「……」
--南の王国--
鬼姫「来るっす。迎え打つっすよ」
鬼姫は、地平線が真っ黒に染まっていくのを見て兵達に声をかけた。
鷲隊長「私が偵察に行きましょうか?」
鬼姫「いや止めるっす。一人で突っ込んだら打ち落とされるっすよ、いくら鷲ちゃんでも」
鷲隊長「……」
鬼姫「!……へぇー。この戦い、中々楽しめそうな奴がいるっすね」
鬼姫は地平線を見ながらにやりと笑う。
鷲隊長(スキル地獄感覚シリーズですか。相変わらず射程が長いことです)
--草原--
剣豪「……視線を感じるぜ」
選抜兵「へ?何がです?」
通信兵「完全に見られてますね。あの距離から……信じられない」
医師「更に言うと魔法でも無さそうです。ありえない……」
剣豪(なんだ……?竜か鬼でもいるのか?)
聖騎士「ぶるぅあぁぁぁぁ!!なぁぁにぃものだかしらぁぁぁんがぁぁ……この我に狙いをつぅぅけてやがぁぁるぅぅ。べぇぇぇりぃぃぃめぇろぉぉぉんんん!!」
東の王(相変わらずあいつうるさいな。こんだけ離れていても聞こえてくる)
--南の王国--
鬼姫「予定どおり、最初は忍隊長に任せるっす。この戦争に勝てるか勝てないか、初っぱなで決まっちゃうっすからね」
忍隊長「お任せ下さい我が主」
筋隊長「数で圧倒的に負けているのだからこうでもせんとなぁがっはっはっ!」
占隊長「占いしましたが、ちゃんと成功しそうです」
--草原--
秘書「私は王の側を離れられません。全ては貴方達にかかっているということをお忘れなく」
槍兵「へーへー。人使いが荒いお嬢さんだぜ」
秘書「私は貴方より歳上ですよ坊や」
変化師「お、おで」
キュイ
テンテン「変化師大丈夫か?まだ完全に治りきってないのだろう?」
変化師「お、おでだけ休むわけには、いかない」
包帯女「え!……私昨日組み手して負けたんだけど!」
義足「魔法瓶足りないかなぁ」
--南の王国--
蜂隊長「毒針がもうビンビンだブーン!早く刺して出したいブーン!」
弓女「うっわ」
斧女「最低……」
鯱隊長「……」
盾男「う、うわぁぁぁ!!鯱隊長が完全にひからびちゃってるぞ!!」
干物になりつつある鯱隊長。
鯱隊長「いっぺん死んでみる」
--草原--
北の王「はぅあぁ~……あ、頭痛い。ほな後は頼みましたで~」
兵達に手を振ると屋根のある本陣の中に入って行く北の王。
召喚士「全くこの人はでやんす」
人形師「相変わらずですねぇ」
弓兵(ちっ、めんどー)
--南の王国--
亜人王「!!あいつが来ているのですか……ならば、私も出なくてはならないようですね」
狐男「亜人王様が……出るコン?」
虎男「それは心強いがお!」
犬娘「にゃん」
--草原--
新王「昔を思い出しちゃいますねぇ。今思うとよく生きていられたなぁ」
妃「えぇ~。あの頃とは逆の立ち位置ですね~」
吟遊詩人「ららら~圧倒的戦力差~」
絵師「ぎゃははは!無謀すぎる!」
軍師「……ねむーい」
そして戦争は始まった。
--草原--
人造魔王「ボクワスレラレガチー」
いじける人造魔王。
--南の王国近辺の村--
ヤミ「はっ、はっ」
ポタタッ
垂れた血が地面を湿らせる。
青騎士「……」
チャキ
左腕の千切れたヤミは、剣を構えた青騎士と向かい合っている。
青騎士(自分の体を使いこなせていないのか?……魔力には驚いたがこけおどしだったのか?)
--南の王国近辺の村--
ピッキーン
村への入り口には氷の壁が出来ている。
演奏家「ちょ、ちょっと聞いてないわよ……」
番犬「ぐるるるる」
赤騎士「こいつは……この強さは魔族か!!」
番犬は氷の台座の頂に立っている。
番犬「我が主の命により、この村に害なす者を淘汰するバウ」
--南の王国近辺の村--
アオーン!
名も無き騎士「うっ」
番犬の遠吠えを受け、騎士達は一歩退いた。
赤騎士「やれやれ……兵士達じゃどうにもならなさそうだ」
演奏家「みたいね」
番犬(引くバウか?こちらもまだ本調子ではないバウ。出来ることならそれが好ましいバウよ)
番犬は冷気漂う息をはく。
--南の王国近辺の村--
赤騎士「赤騎士部隊は右から回り込んで村に入れ」
演奏家「演奏家部隊は左からよ」
騎士達「「は、はっ!」」
番犬「ッ!」
騎士達は隊長の命令を受け、左右に別れて進み始めた。
だからっだからっだからっ
--南の王国近辺の村--
番犬「くっ!!」
番犬は左右に首を振る。
演奏家(どうにも腑に落ちないのよね。なんでその氷魔法を私達にうたないで威嚇と壁なんかに使ったのか……)
赤騎士(最初から殲滅するのが目的ならば威嚇など必要ない。見た所一滴の血も流したくないというほどの聖人君子には見えないわけだし、ようは威嚇するだけで精一杯なのだろう……)
番犬「……人間め」
ギリッ
演奏家「まぁ命令を受けた以上、どのみち最後までやるしかないしね」
赤騎士「三隊長に上がるための功績になってもらおうか魔族」
--南の王国近辺の村--
わーきゃー!
ヤミ「ッ。番犬め。敵を通したのか」
ぱからっぱからっ!
わーきゃー!
村が武装した騎士達に襲われていた。
果物屋の娘「きゃあああ!!」
逃げ惑う村人。
ヤミ「」
ドクン
--南の王国近辺の村--
ズバシッ
武器を持ったものから優先的に切り伏せていく騎士達。
ヤミ「……なんだ?」
ドクン
靴屋の子供「うあぁぁん!!あぁぁぁぁん!!」
砂塵が舞う。
青騎士「!おい、やりすぎるな!」
ヤミ「……見たことが、あるぞ」
ドクン
--南の王国近辺の村--
フォン
ヤミ「!」
ガシィン!!
ヤミは鎌で青騎士の攻撃を受ける。
ギリギリ
青騎士(くそ!俺も早く指揮に戻らねば!)
キィンキィンガキィン!!
ヤミ「俺はかつて、これを、この光景を、見た」
--東の遺跡--
ナビ子『!』
同時刻、東の遺跡。
ナビ子『……』
ナビ子は何かを感じ取った。
ナビ子『いよいよ……取り戻すのですか……』
ナビ子の声のトーンが下がっていく。
ナビ子『それを思い出すのは、ヤミ様と私達にとっていいことなのでしょうか……それとも……』
--南の王国近辺の村--
キィン!ガキィン!!
ヤミ「焼かれた大地、けちらかされる命、怒号のような悲鳴……」
虚ろな瞳で取りつかれたようにヤミは喋る。
キィン!ズバッ!!
ヤミ「黒煙が、のぼる」
キギィン!!
青騎士(ッ!この少年!!ダメージを与えているのに!!)
ズバッ!!ガギィン!!
青騎士(ひるむどころか強くなっていく!?)
--南の王国近辺の村--
キィンキィン!!
青騎士(くっ!!止めだ!!)
ブォン!!!
ヤミ「」
青騎士の必殺の一撃をヤミはかわす。
青騎士「!!?」
ヤミ「そうあれは……」
グジャッ!!
ヤミの鎌が青騎士の胴体を貫いた。
ヤミ「我が、守るべき、王国」
--南の王国近辺の村--
番犬「ブァアオウウ!!」
ドゴオオン!!
演奏家「きゃっ!このわんちゃん早すぎ!」
赤騎士「ふんっ!」
ギィアン!!
番犬「ギャオン!!」
赤騎士の剣は硬い番犬の体皮を裂いた。
赤騎士(あの人は一人で魔族を倒したと聞く。ならば私もそれくらいできなくてはあの人に追いつけない!)
番犬(面倒バウ!なまじレベルが高いせいで使えるスキルも魔法も消費魔力の高いものばかり……今の状態じゃろくな行動ができないバウ!)
ドクン
番犬「!?」
--南の王国近辺の村--
ドクン
中学生メイド「がふっ」
ブラ「ひゅー……メイド、さん?」
ブラは死んでは生き返るという地獄の狭間の中で、息を吹き返すメイドを見た。
中学生メイド「……ま、まさか」
ブラ「めいど、さん?」
中学生メイド「……ダメ」
ブラ「え……」
中学生メイド「ダメですヤミ様……思い出しては」
ヤミ「」
--過去、滅ぼされた王国--
ゴオオオオオオオオオオオ
木々は燃え尽き
ゴオオオオオオオオオオオ
家は破壊され
ゴオオオオオオオオオオオ
川には血が流れ
ゴオオオオオオオオオオオ
道には人の死体が転がっている。
?「……」
地獄と化した地で、ボロボロのマントを羽織った青年は女性を抱きかかえていた。
--過去、滅ぼされた王国--
ゴオオオオオオオオオオオ
がっしゃがっしゃがっしゃ
??「ダメです……他に生存者はいませんでした……死霊使いの奴も……」
がしゃ
甲冑を付けた髭の男が青年に駆け寄って膝をついた。
??「死体が増えたら困るからあいつ、真っ先に狙われたんだ……!」
がばっ
???「申し訳ありませんでございます!!私が!……私が部屋を離れていなければ奥方様は……」
血で赤く染まったメイド服を着た女性が、青年に対し頭を下げている。
?「…………お前達のせいではない」
青年は女性を抱きしめている。
--過去、滅ぼされた王国--
??「……くっ」
???「う、うぅ!!」
二人の従者は悔し涙を流す。
ズキッ
??「やつらめ……!!我らに土地を与えるのが惜しくなったのだ……!!」
???「私達を利用するだけ利用しておいてこの始末!!あいつら本当に人間でございますか!!」
?「……」
青年の腕の中の女性には下半身が無かった。
?「……」
ザっ
青年は立ち上がる。
--過去、滅ぼされた王国--
??「!!五代目勇者様……」
???「五代目勇者様……」
ズキッ
?改め五代目勇者「……憎い」
五代目勇者は静かに涙を流す。
五代目勇者「憎い……憎い憎い憎い!!」
ズキズキッ
???「五代目、勇者様」
五代目勇者「これが、これが同種のやることかッ!?これではッ!!これでは魔王の方がまだましだったではないか!!」
五代目魔王『はん、お前もすぐこっち側だ、ぜ』
魔王の今わの際の言葉が蘇る。
ズキズキズキっ!!
??「!?この感覚は!!」
五代目勇者「俺達の人生にオケル戦いハ、まだオワッテハいなカった!!」
--南の王国近辺の村--
青騎士「ゴフッ!!……な、なんだその姿は……」
青騎士と戦っていたヤミは、突如黒いモヤに包まれた。
そして、
ガシャッ
青騎士「その、姿は」
ガシャッ
モヤの中から長い金髪と整えられた髭の男が現れた。
その男は、黒い甲冑を着ている。
青騎士「お前は何者、だ」
ドブシュッ
黒い甲冑の男が振るった鎌によって、青騎士は血の海に沈む。
???「……」
中学生メイド「思い……出してしまわれたのですね……」
???「……我は……五代目勇者にして六代目魔王」
ブラ「!?」
中学生メイド「ヤミ様……」
???改め五代目「虐げる者は全て滅す!!」
--南の王国近辺の村--
どどん!!
五代目「……」
ざわざわ
隣のおばちゃん「あ、あれがヤミちゃんなのかい?」
五代目「……」
泥騎士「!!青騎士隊長がやられたぞ!!」
チャキッ
湿布騎士「!!」
五代目が大鎌を構えると、騎士達は一斉に身構えた。
--南の王国近辺の村--
中学生メイド(ヤミ様……鎌は……黒いままなのですね)
出っ歯騎士「油断するな!各自お互いにカバーできる距離を保て!」
カチャカチャカチャ!!
スッ
五代目「……スキル、ライフドレイン」
ずりゅ
隻眼騎士「」
五代目が静かに鎌を振るうと、
赤鼻騎士「こ、これは!?」
たれ目騎士「体から、力が抜けて……」
--南の王国近辺の村--
ドサドサ
騎士達はその場に倒れこんでしまった。
五代目「盗賊は全てを奪う。財も、力も、命でさえも」
五代目は冷めた目で自分の鎌を見つめている。
ブラ「……ヤミ……様」
五代目「!ブラ!」
ガララン
五代目は鎌を捨ててブラに駆け寄った。
--南の王国近辺の村--
五代目「ブラ!どうすればいい!?俺は治癒には詳しくない!!」
ブラは目も開けることが出来ずに死の淵をさまよっている。
ブラ「魔力……さえあれば……なんと、か」
五代目「わかった!魔力供給レベル2!」
ぎゅん!
ブラ「ひゃっ!」
ブラに流し込まれた魔力の量は多く、一瞬でブラの許容値限界まで蓄まる。
ブラ(す、ごい……)
--南の王国近辺の村--
番犬「ぐあああるうう!!」
ずばしゃああ!!
赤騎士「ふんっ!!」
赤騎士の大剣が番犬の体を切り裂く。
番犬「ぎゃわあああああああ!!」
演奏家「ふんふーん。楽曲、脚切り狼~」
ぶしゅっ!!
番犬の全ての脚に切れ目が入り、
どずん!
番犬は地面に倒れ込む。
--南の王国近辺の村--
赤騎士「やれやれてこずらせてくれる」
演奏家「弾き終わるまでガードしてくれてありがとぉ」
番犬「ぐ、貴様ら……!!」
番犬は垂れ流す血の中でのたうちまわる。
赤騎士「……確実に仕留めておくか」
赤騎士は腰から石を取り出した。
演奏家「!魔石。こんな死にそうな魔族にそこまで使うんだ?」
--南の王国近辺の村--
赤騎士「念には念を。だ」
赤騎士は魔石を五つ取り出して宙に投げると、剣で切りつけた。
番犬「!!」
カンカンカンカン
赤騎士「水の魔石、雷の魔石、風の魔石、土の魔石、氷の魔石」
カン
番犬(その、技はまさかバウ!!)
じゅっ
全ての魔石を斬り終わると、大気を震わせるほどの力が出来上がった。
--南の王国近辺の村--
赤騎士「全属性複合攻撃魔法、六色剣」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
演奏家「すごい……初めてみる。最強の魔法」
番犬(たかが人間が、この技をバウ!!)
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
赤騎士「さらばだ魔族。あの人が最も得意としたこの技で逝くがいい」
赤騎士は振りかぶり、
ドッギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!
振り下ろした。
--南の王国近辺の村--
中学生メイド改めメイド「……」
メイドは自分の腕を見ている。
メイド「すごい。一瞬で……100%に……でも」
メイドの顔は曇っている。
ブラ「ありがとう、ございます」
五代目「よい。仲間を助けるのは当たり前のことだ」
アッシュ「はっ、はっ……」
そこにツインテ達が到着した。
--南の王国近辺の村--
ポニテ「ここに来る途中の兵士達は倒してきたけど」
ツインテ「よかった。ここも大丈夫みたいだね」
サム「……」
レン「にゃ。そこの鎧誰にゃ」
五代目「お前達無事だったか」
五代目は安心したような表情を向ける。
アッシュ「……お前、ヤミか?」
--南の王国近辺の村--
ツインテ「!」
レン「!」
ポニテ「!?」
サム「……」
五代目「よくわかったな」
アッシュ「……お前……まさか人を食ったのか」
ブラ「!?」
五代目「……だったらなんだというんだ?」
--南の王国近辺の村--
レン「!?そんにゃ!」
ポニテ「ばかにゃ!!私以外にもカニバリズムリストが!?」
メイド「五代目様!!」
す
五代目はメイドを制止する。
アッシュ「……お前がもし力を手に入れるために人を食ったというのなら……」
チャキ
アッシュはナイフに手を伸ばす。
アッシュ「俺がお前を殺すぞ」
--南の王国近辺の村--
ツインテ「あ、アッシュ君!?今はそんなことをしている場合じゃないでしょ!?」
サム「そうでござるよ。それにアッシュ殿ではやつには勝てぬでござる」
アッシュ「ッ!なんだと!?」
レン「にゃー。レンも思うにゃ。それどころか……」
ミシッ
ポニテ「……そうだね。あの後ろで控えてる、メイドちゃんに瞬殺されちゃうよね」
メイド「……」
メイドのメイド服は
ぎゅるるる
白から黒に変わる。
--南の王国近辺の村--
六色剣の爆心地には巨大なクレーターが出来ていた。
赤騎士「……」
演奏家「ひゃー。おっそろしい威力だこと。しかしこれなら魔族といえどイチコロ……」
赤騎士「……馬鹿な」
番犬「」
ギンッ!!
番犬は剣の下から赤騎士を睨んだ。
赤騎士「ッ馬鹿な!!!」
--南の王国近辺の村--
番犬「アオオオオオオオオオオオオオおオオオオオオオオオオオオオ!!!」
ドオオオオオオン!!
番犬の咆哮とともに無数の氷塊が辺りを攻撃する。
ドガドガドガドガドガドガ!!
赤騎士「ちっ!!」
赤騎士は後ろに跳躍しながら大剣ではたき落とす。
演奏家「わっとと!!」
しゅううううう
番犬「……」
--南の王国近辺の村--
番犬「……やれやれ。目覚めしてしまったのかバウ……我が主よ」
番犬は空を見上げながら呟いた。
赤騎士(この魔力……先ほどとはケタが違う……まさか手を抜いていたのか?いやそんなはずはない!)
演奏家(急に、恐ろしいまでに、強くなった……ありえなーい)
番犬「ッ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
赤騎士「!!」
演奏家「!?」
番犬から発せられるプレッシャーに退いてしまう二人。
--南の王国近辺の村--
演奏家「ねぇ……あのわんちゃん色が黒くなってない?」
赤騎士「……あぁ。それが何を示しているのかわからないが」
カチャ
赤騎士はポーチをまさぐると、
がぶ
演奏家「あ、魔力の実。私にも頂戴よー」
赤騎士「……自分の分はしっかり用意しておけよ」
ぶん
赤騎士は演奏家に食べかけの実を投げる。
--南の王国近辺の村--
演奏家「げぇ、食べかけー?」
赤騎士「火属性攻撃力上昇魔法レベル4、そして火属性付加」
ボッ!!
赤騎士の大剣が勢いよく燃えあがる。
演奏家「じゃり。よぉし、パーティステータス全体強化レベル1!」
きゅいいいいいいん!!
二人はまぶしいほどの光に包まれている。
番犬「……」
赤騎士「参る」
演奏家「猛犬退治といきますかー!!」
--南の王国近辺の村--
しゅうううううう
番犬「……口ほどにも無いバウ」
赤騎士「げふっ……お、俺は……こんなところでやられるわけには……勇者様……がはっ」
赤騎士は血を吐いて地面に倒れ込む。
演奏家「う、うそ、だぁ……動きは見えないし、強化した私達を、いちげ、き」
番犬「……元々我の職業は守人だった。今も昔も変わらず、誰かを守る職業バウ」
赤騎士「……」
演奏家「……」
番犬「我が職業の特徴は、守るべき対象の量によってステータス補正がかかるのだバウ。ただでさえフルパワーだというのに……今やこの村の住人全てを背負っているのだ」
番犬は二人に背を向ける。
番犬「……負ける道理がどこにあるバウ」
言ってももう無駄だろうが、と呟き、
ダンっ
番犬は跳躍して広場に向かった。
--南の王国--
おおおおおおおおおおおおおお!!!!
黒い地平線が近づいてくる。
鬼姫「ふぅむ。まともにやりあったらさすがに分が悪いかんじっすねー。そいじゃぁ作戦通り、忍隊長」
忍隊長「はっ、おまかせあれ我が主君」
シュタタタタタタタタタ!!!
忍隊長は風のような早さで最前線にまで走って行く。
連合軍北兵士「!!黒づくめの何かがくるぞ!!」
連合軍東兵士「ああああああああああ!!!」
タンっ
忍隊長は兵士の攻撃をかわして跳躍する。
--南の王国--
蜂隊長「あんまり無い奥義だブーン」
筋隊長「がっはっはっ!普通はそんなものを奥義にしたいだなんて思わないからなぁ!!」
鷲隊長「でもだからこそ、対策など打ちようがないですな」
占隊長「それではみなさん、占った通りのところに行く準備を!」
鯱隊長「かひゅーかひゅー」
--草原--
ばち、ばちち
忍隊長「……奥義、アカム」
すとっ
忍隊長が着地と同時に地面に手をついた。すると、
ッッッドッガアアアアアアアアアアアアアアアドゴガアアアアアアアアアアアアアアン!!!!
轟音とともに大地が裂け、地面が隆起する。
ゴッドゴオオガッ!!
西兵士「うわあああああああああああああああ!!!!」
王国兵士「ぎゃあああああああああああああああ!!!!!!」
亜人王「地形変化、地形効果の奥義とは……」
恐ろしいまでの自然の力、それは容易く兵達の陣形をブチ壊した。
鬼姫「さぁーて、楽しい楽しい戦争の始まりっすヨ」
--草原--
聖騎士「ぬぅぅぅぅぅ!?」
何も無かったはずの草原が、
ゴゴゴゴゴガァァン!!
うわーきゃー!
恐ろしいパワーとスピードで、起伏の激しい地形に変化していった。
東の王「……」
ゴッドオガガガァン!!
軍師「ひゅぅ……やーるぅ」
--草原--
ドガガッドゴッ!
選抜兵(くっ!陣形が崩されるだけじゃすまされないぞ!!)
ガゴッゴガガ!
ぎゃー!うわー!
狩人(おいおい……兵士の何割かもってかれるぞ)
ゴガゴガガガァァン!!
吟遊詩人(るりら~。嫌な流れだねぇ、僕達主力も誘導されているような)
吟遊詩人は迫りくる岩や、裂ける大地を華麗にかわしている。
--草原--
ギシッギシシっ
鬼姫は口笛を吹きながら脚を伸ばしてストレッチをしている。
占隊長「そろそろおさまる頃ですよ」
鬼姫「うん」
鬼姫は立ちあがった。
鬼姫「それじゃぁいくっすよ。……よーい、どんっ!」
ダン!
鬼姫と部隊長達は一斉に走りだす。
ザザザザっ!!
未だ荒れ狂う大地に降り立つと、それぞれ戦場に散っていった。
--草原--
聖騎士「ぬぅぅん……あやつが動きだしおったぁぁ。ゆくぞ竜騎士部隊ぃぃ!わぁれにぃぃつづけぇぇ!!」
バサッ
竜騎兵「おおおおおおおおおおお!!」
バササッ
ドラゴンにまたがった騎士達が一斉に飛び立つ。
大ドラゴン「んぁああああああああああああああああ!!」
中ドラゴン「ふにゃあああああああああああああああ!!」
小ドラゴン「きゅぴいいいいいいいいいいいいいいい!!」
聖騎士「かわいッ!!」
--南の王国近辺の村--
番犬「五代目様、敵はあらかた排除しましたばう」
スタッ
広場の空気を察してか、番犬はツインテ達と五代目達の間に着地する。
五代目「あぁご苦労だった」
サム(くっ……予想以上でござる。魔王の側近の魔族は、たった一体で勇者パーティに相当する力を持つと言うでござるが……)
サムの表情は険しい。
サム(これでは逃げることも厳しいでござる)
メイド「……」
番犬「……」
--南の王国近辺の村--
ブラ「……あ、あの」
ピリピリとした空気をどうにかしようと、ブラが勇気を振り絞り声を出した瞬間。
ワッ!
広場が歓声に包まれた。
ツインテ「!?」
わーきゃー
八百屋のおばちゃん「ありがとうヤミちゃん達ぃぃ!!」
文房具屋のおっさん「またブラちゃん達のおかげで助かったぞぉぉ!!」
アッシュ「!!」
ワァァァァ!!
--南の王国近辺の村--
ポニテ「わ、わ」
魚屋のお兄さん「ブラちゃん!うちの妹がやられちまったんだ!!助けてくれ!!」
肉屋のおじいちゃん「うちの家内もじゃぁ。頼むよブラちゃん!!」
ブラ「あ、わかりました!では出来る限り広場に近づかせて下さい!!」
アッシュ「……」
アッシュはそれでも臨戦態勢のまま。
サム「アッシュ殿」
サムはアッシュの肩を叩く。
アッシュ「あいつは……倒さなくちゃいけない」
--南の王国近辺の村--
すっ
すると五代目達の前に村人達が集まって来た。
服屋のおっさん「……お客人、まさかあんたら、うちらのブラちゃん達に何かするつもりなのかい?」
レン「……」
ぞろぞろ
小物屋のお姉さん「やめておくれよ!ヤミ君達はこの村の救世主なんだよっ!?」
洗濯屋のおばあちゃん「そうじゃそうじゃ!!」
アッシュ「!……だがそいつらは人じゃない!!」
ポニテ「」
--南の王国近辺の村--
しーん
広場は、静まり返った。
メイド「!」
番犬(ちぃ……歴史は繰り返すバウか……?)
五代目「……」
ブラ「そんなこと……ない」
ブラは俯きながら、消え入りそうな声で呟いた。
五代目「……」
五代目の脳裏に、まだ勇者だった頃の光景がよぎる。
--南の王国近辺の村--
八百屋のおばぁちゃん「だったらなんだと言うんだい」
アッシュ「……!?」
思いがけないセリフにアッシュは驚きを隠せない。
眼鏡屋のオカマ「そうよ……そんなこと関係ないのよ」
ブラ「!?」
ざわざわざわざわ
村人達は一斉に喋りだした。
自宅警備のおっさん「ヤミ達の種族がなんだろうとかまわねぇ!!だってこいつらは俺達を助けてくれたんだ!!大事な俺達の家族と場所を守ってくれたんだ!!」
耳栓屋の娘「そうよ!人じゃないことの何が問題なのよ!!ブラちゃん達は私達の仲間なの……!同じ村に生きる大事な大事な人達なんだからっ!」
スッ
鹿亜人「……種族がなんであれ、ここでは関係ありません。それが例え魔王と魔族でも」
五代目「」
--過去--
男町民「あいつ、自分達の国を滅ぼしたらしいぜ」
女町民「怖いわぁ。魔王が勇者様を殺してその皮を被っているって噂、本当なんじゃないの……?」
ひそひそひそひそ
五代目は広場に張り付けられていた。
古の王「ごほん!皆の衆、よく聞け!この男は我が盟友の国である、砂漠の王国を滅ぼした張本人だ!」
ざわざわ!
細町民「?……あの男は勇者様じゃないのか?」
古の王「財宝目当てに我が偉大なる友を騙し、ありとあらゆる略奪を行い滅ぼした!残念なことに勇者の死も確認している……。そしてあろうことか勇者の名を語り、我が国をも破滅させようと動いていた!!」
ざわざわざわざわ!
五代目「……」
--過去--
老婆町民「ひどいことをするよぉ……一体どうしてそんなことをするんだろうねぇ……」
女性町民「あの人を返してよぉ!!一緒に、一緒に砂漠の王国に住むはずだったのにぃ!!」
五代目「……」
その光景を二人の従者は屋根の上から見ている。
??「ッ!家政婦……今俺は腸が煮えくり返っているぞ……!なぜだ、なぜこうも簡単に人を裏切れる!?貶められる!?これが人のすることか!?五代目様とは友人だったのだろう!?」
???改め家政婦「守人押さえて……あいつは、約束を守った五代目様にあんな辺境の地しか与えなかったでございます……それでも、五代目様は嫌な顔一つしなかった……。しかし過酷な地であっても、民衆は五代目様について行きたがった……それがあいつには気に食わなかったのでございましょう」
??改め守人「そんなことでかつての自分の民ごと皆殺し……」
家政婦「人の業……でございます」
二人は血の涙を流している。
--過去--
町民「「「殺せッ!殺せッ!殺せッ!」」」
五代目「……」
町民「殺せッ!殺せッ!殺せッ!」
古の王「それでは処刑を開始する」
さっ
五代目「……もうよい」
古の王「?」
五代目「疲れた」
五代目は力なくうなだれた。
古の王「……ふん。処刑しろ!」
五代目は懐に入れたままだった杖を見ている。
--過去--
処刑兵「はっ!」
ブオン!
処刑兵が振り下ろした刃は、
ズブッ
処刑兵「!?なっ!!」
五代目の首に少しめり込むだけだった。
五代目「……」
ズル、ズルルッ
そしてその時、五代目の頭部から立派な角が生えだした。
古の王「!?ひっ!」
五代目「……さらばだ。死ね」
頭部から流れた血か、それとも血の涙か。
五代目の頬は濡れている。
--南の王国近辺の村--
わーきゃー!
五代目「……」
ぽたっ
五代目は
ぼたた
涙を流していた。
メイド「!!ご、五代目様……」
番犬(……無理もないバウ……あれだけ人に忌み嫌われてきた五代目様バウ……。こうなってしまうと魔王化後のことや、東の王国でのことが悔やまれるバウ……)
五代目「……」
五代目は自分の掌を見つめていた。
--南の王国近辺の村--
ブラ「あ、アッシュ君……お願い、ナイフをしまって」
ツインテ「……うん、やめよアッシュ君。人と対立するのは勇者のやることじゃないよ?」
ポニテ「そうだよ!!それにヤミ君達が良い奴だってことは、一緒に生活してきたアッシュ君もわかってるはずでしょ!?」
アッシュ「……ぐ」
サム「……気持ちはわかるでござるが、ここは……」
レン「にゃー」
アッシュ「……良い奴だなんてことは、言われなくても、わかってる……」
ちん
アッシュはナイフをしまった。
--南の王国近辺の村--
ポニテ「ほっ」
アッシュ「だが」
五代目「……」
アッシュ「人格の話をしているんじゃない……」
アッシュは苦痛に顔を歪めた。
アッシュ「もし……もし自分の意志とは関係なく罪を犯してしまうのなら、生命活動を維持するのに人を必要としているのなら……そしてそのことで苦しんでいるのなら、ここで殺してしまうべきだ……!」
レン「にゃ?」
メイド(……アッシュ)
五代目(……なるほど。お前は俺をそう解釈したのか)
五代目は口だけ笑った。
--南の王国近辺の村--
メイド「……五代目様」
番犬「五代目様」
ブラ「……ヤミ様」
五代目「アッシュ」
アッシュ「……なんだ」
五代目「全てが終わってから……俺は罪を償うと約束しよう」
メイド「!?」
番犬「五代目様に罪などありませぬバウ……」
あるとすれば、と番犬。
--南の王国近辺の村--
アッシュ「それまで見逃せと?」
五代目「あぁ」
果物屋のおばちゃん「何言ってんだい!!ヤミちゃんに罪なんてあるもんかい!」
村人「「「そうだそうだ!」」」
わーきゃー
五代目「……」
アッシュ「……わかった。お前を、信じてやる」
アッシュは戦闘態勢を完全に解いた。
ポニテ「ふー。全く余計なところでひやひやさせられちゃったよー!ぷんぷん!」
ツインテ「なんだかよくわからないけどやれやれ……。さてこれからどうする?私達」
サム「戦争が始まってしまったでござるからなぁ。しかも拙者達が向かおうとしていた南の王国で」
--南の王国近辺の村--
アッシュ「」
ツインテ「?」
ポニテ「」
レン「」
サム「ん?どうしたでござる?みんな驚いた表情なんかしちゃって」
アッシュ「いや……そういや俺らは一刻も早く南の王国に行くべきだったんじゃなかったか、と」
レン「亜人問題にゃー」
ポニテ「あはは……」
五代目「なんだ、お前ら南の王国に用があったのか」
ブラ「でも今は戦争してて危ないんですよね。行くのはやめた方が」
五代目「俺が行って止める」
アッシュ「!?」
五代目「このままではまたこの村に飛び火する。そうなる前に叩く。南の王国側に付いて、な」
ツインテ「……確かに宣戦布告をしたのは南の王国だけど、それでも連合の方がひどいよね。奴隷なんか嫌だ!解放してくれって言っただ
けで、力でねじ伏せようとしてるんだから」
五代目「お前達は……どっち側につくんだ?まさか勇者を名乗っておきながらスルーするわけじゃあないだろ?」
アッシュ「俺は……」
①「連合側につく」
②「南の王国側につく」
それでは本日の更新はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m
~ここから見始めた人のための補足~
○第一章・勇者募
┗外伝・盗賊~
┗番外編・踊子~
※勇者募がこのssシリーズの核に相当していて、やりたいことのほとんどはすでにここで出つくしてたりします(ぶっちゃけたー)。
○第二章・酒場募
┗番外編・魔法使い
※勇者募で語りきれなかったことや、勇者募とは毛色が違う話運び、ssでしか出来ないようなことを試しています。この酒場募でこのssは完全に完結する予定です。
……なのになぜか構想はある第三章
○第三章・募部
二パターン考えてあって、両方とも全てが決着した後の話です。
両方とも世界観は引き継ぎますが世界観はぶっこわれます(イミフ)。まぁやれないと思いますが。
初代~大勇者(八代目)までの話もやれないですしねぇ。
悩むが、2かな。ブラと争いたくないし。
貧乳勇者と同じ選択をして欲しい
そして2
2が無いのはこのssにとってお約束になっていきそうです!!
それでは投下します
--南の王国近辺の村--
②「南の王国側につく」
アッシュ「……南の王国を見捨てることなどできない……」
五代目「そうか。なら」
アッシュ「だが勘違いするな。俺は今のこの情勢が気に食わないだけであって、お前と共に戦うわけじゃない」
ポニテ「!南の王国側につくのは賛成!でもなんでヤミ君達と一緒に戦ったらいけないんだよっ!」
アッシュ「黙れ。お前は知らないんだ」
ポニテ「知らないさ!だから説明してよっ!」
レン「二人とも黙るにゃ」
アッシュ、ポニテ「「なんだと!?」」
--南の王国近辺の村--
ツインテ「……」
アッシュ、ポニテ「「あ」」
サム「拙者達が南の王国側についたら、ツインテ殿は自分の両親を敵に回すことになるのでござるよ?」
ポニテ「あ、う……」
アッシュ「それを言ったら……ちっ」
ブラ「……ツインテちゃん」
ブラは心配そうにツインテの傍に寄る。
バシュッ
ブラ「!?」
その時、ツインテのリボンが復活し、元のツインテール状態に戻った。
--南の王国近辺の村--
アッシュ「ツインテ……」
ポニテ「ツインテちゃん……」
レン「ツインテ」
サム「……」
ツインテ「話は、ちゃんと聞いていました。ボクも……南の王国側についたほうがいいと思います」
五代目「!!」
ツインテ「だって、おかしいです……よ。人が人を見下したり虐げているなんて」
ブラ「ツインテちゃん……」
--南の王国近辺の村--
ツインテ「それにお父さんもお母さんも言っていたんです。迷ったら自分の道を行け、自分の正しいと思う選択をしろって。後で後悔するにしてもそっちの方が絶対にいい、って」
いつのまにか村人達も静かになり、ツインテの話を聞いていた。
ツインテ「社会的に間違ってるかどうかなんて関係ない、自分自身が納得出来さえすればいいんだ、って。だからボク……お父さん達とも戦えます!」
社会のしがらみに捉われずに、愚直に行動出来るのがボク達子供の特権なんですから、とツインテは強気な笑顔で言った。
ぱち、ぱち
ぱちぱちぱちぱち
--南の王国近辺の村--
アッシュ「くそ……立派になりやがって」
ポニテ「かっこいいよツインテちゃん」
レン「失禁レベルにゃ」
サム「ほんとそう」
泣きながら拍手している三人だった。
レン「誰をカウントしなかったにゃ!?」
アッシュ「くぅ!初期の頃のツインテと見比べてやって欲しいぜ。くわしくは酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった、の1~2スレくらいを見るといいんじゃないか?」
ポニテ「宣伝入れたー!!」
五代目「……よし、ならば向かうぞ戦場へ。子供の正しさをわからずやの大人達に教えてやろう」
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった
第四部
亜人解放戦争
--草原--
秘書「面倒なことになりましたね」
西の王「あぁ、まさかこんな面倒な技を持っているとは……」
人造魔王「ネェーママー」
秘書「なんですか人造魔王。今は戦争中なのですよ?」
人造魔王「ワカッテルヨー、ネーボクモイッテイイ?」
秘書「戦場にですか?そんなにわくわくしちゃって……」
人造魔王「ウンッ!ナンカツヨソウナノイッパイイル!」
秘書「いっぱいって、あなたの相手が出来そうな人物がいるとは思えませんが」
--草原--
北の王(これが噂の人造魔王でっか……並じゃない威圧感もってますなぁ)
人造魔王「イルノ!ヤバイノイルノ!!」
北の王(何より……)
秘書「……そうですね、わかりました。許可します、暴れて来なさい」
人造魔王「ヒャホーーーイ!!」
むぎゅ
北の王(でかい)
秘書「その方が本陣の邪魔にはならなさそうですから」
--草原--
秘書「あぁそれと」
人造魔王「ムイ?」
秘書「人型形態になりなさい」
人造魔王「エー?」
秘書「えー、じゃありません。友軍の陣形も乱れます」
西の王「もう乱れてるがな」
人造魔王「ムーワカッタヨー」
ぐちょ、ごききん
人造魔王のフォルムが変化していく。
--草原--
東の王「……」
北の王「うわわ。なんか、すごい見させられてまんなぁ」
新王「……!?」
妃「!!これは~……」
人造魔王「ふぅ。あまりパワーを圧縮するのは好きじゃないんだけど」
ぺた
そこには、尻尾の生えた裸の少女が。
東の王「この顔……どこかで見たことがあるな」
新王「ゆ、勇者……さん?」
--草原--
北の王「あー!思いだしましたよって!ってあれ?魔族じゃなかったんでしたっけ?」
新王(!!あまりあの頃のことを言うのは自分の首を絞めることになるか。いやでも、これは)
妃(勇者さん……勇者さん、なの?)
秘書「……」
秘書はマントを用意させると人造魔王にかぶせる。
秘書「裸はダメです」
人造魔王「はいママー」
人造魔王は笑顔でマントで体を包む。
北の王「ってか女の子だったんでしたかいな」
--草原--
秘書(やはりこの二人はこの姿を知っている……今はあまり事情を言わないほうがいいですね)
西の王「では戦列に加われ人造魔王。変化師を探し当てろ」
人造魔王「はーい。じゃあいってきまーす」
人造魔王は戦場に向かってかけていく。
新王「……」
妃「……」
秘書(超聞きたい。って感じの顔ですね。この二人わかりやすい)
--草原--
狩人(みんなとはぐれてしまったな……前もって地面に結界でも張ってたのかぁ。探知能力が、お)
ザっ
虎男「……」
狩人の前に虎男が立ち塞がる。
狩人「確か南の三強の」
虎男「南の王国三獣の虎男。押して参る」
ダッ!!
狩人(なるほど、一体一体個別に倒してこうってのか。でも)
狩人は弓を構える。
狩人(元々俺は個人戦が得意なんだぜ?)
--草原--
絵師「ぎゃはは!!ほらお前らしっかりしろ!!」
血まみれ兵士「すいません絵師様……」
絵師は実体化させたらくがきで兵士達を運んでいた。
こーん
その時、どこからか狐の声が。
絵師「?狐?」
ボボッ!!!
絵師「!?」
兵士やらくがきが青い炎で燃やされる。
絵師「青エク!?」
狐男「こーん。君は僕がやっちゃうこーん」
--草原--
蜂隊長「まったく損な役回りだぶーん」
テンテン「蜂?蝿?」
蜂隊長「毒針の刺さらない奴を相手にしなきゃいけないだなんて。ま、それは鬼姫様のおれっちに対する信頼の証、ってことぶーん」
テンテン「どっちにしろ排除する」
空を飛べるテンテンに地形変化はほとんど効果は無い。ゆえの飛行能力持ち同士。
蜂隊長(しかしそれならそれで封印してしまうのもありかぶーん)
--草原--
義足「……」
包帯女「ね、ねぇ」
鯱隊長「み、みず」
びちっびちちっ
包帯女「あんた大丈夫……?」
義足「なぁ包帯女。そんなやつほっておいて本隊に合流しよう」
包帯女「だね……」
鯱隊長「お、奥義」
ごぽっ
包帯女「?」
ざぱぁあん
鯱隊長「ウォーターワールド」
--草原--
鷲隊長(似ている……いやそんな彼が生きているわけが!!)
変化師「す、スキル飛拳!!」
どごぉ!!
鷲隊長「ぐっ!!」
変化師「む、む」
変化師の拳の衝撃波をガードする鷲隊長。
鷲隊長「わ、私です!!十五年前をお覚えではありませんか!?」
変化師「む、む?」
--草原--
盾男「くっ!!」
弓女「そ、そんな」
斧女「……大会ではここまで強くなかったはずなのに!」
ひゅんひゅん
槍兵「おいおい。大会の俺と戦場の俺を同じだと思ってると痛い目見るぜ?」
槍兵はくるくると槍を回しながら三人に近づいていく。
盾男(三体一だぞこっちは……!!これが三本角)
槍兵「なーんかお前らの策に乗せられてるみたいだからよぉ。さっさと他のやつらを助けに行きたいんだわ」
ひゅ
どっ!!
斧女「!!」
槍兵の弓が斧女の腹部を貫く。
槍兵「だからさっさとどいてくれや」
--草原--
聖騎士「ぶるっるるっるるっるるるっるあぁああああ!!」
どがああああああああああああん!!
聖騎士が竜とともに戦場に降り立つと、その衝撃波で辺りが吹き飛ぶ。
八重歯亜人「うわああああああああああああああ!!」
聖騎士「弱者弱者弱者共がああああああああああああ!!」
聖騎士が槍を振り回すと雷が戦場を襲う。
ばちばちばちばちいいい!!
北の王国兵士「あ、ありがとうございます聖騎士様!!」
聖騎士「ぶるぁああああ!!礼にはおよばぁああああん!!」
ばさっ
再び飛びあがる竜。
--草原--
西の王国兵士「ば、化物だ……百人近くの兵士を、一瞬で」
鬼姫「はぁー。準備運動にもなりゃしないっすよ」
血だまりの中に鬼が立つ。
鬼姫「まぁでもこれで少しは動きやすくなったはずっす」
緑茶亜人「助かりました鬼姫様!!」
鬼姫「気を引き締めてかかるっすよ。猛者がごろごろしてるっすからね」
ぐしゃっ
鬼姫は西の兵士の首を潰して笑う。
--草原--
聖騎士「見えた、あれかああああ」
鬼姫「きたっすか、聖騎士さん」
聖騎士「どおおおおおおおおおうううりゃああああああ!!!!」
ががあああああああああああああああああああああん!!!
聖騎士は挨拶とばかりに槍から雷を放った。
鬼姫「」
どっごおおおおおおおん!!
鬼姫はそれを真正面から受けてしまう。
鬼姫「ぺっぺっ、っていうか避けられねぇっす」
聖騎士「む?」
けろっとしている鬼姫を見て眉をしかめる聖騎士。
しゅ
鬼姫「じゃあ、お返しっす」
地面から数十メートル離れた聖騎士の所まで一瞬で移動する鬼姫。
ががあああああああああああん!!!
聖騎士「!!!」
鬼姫の拳は聖騎士の槍で防がれる。
--草原--
人造魔王「さーて、いっぱい遊ぶぞー!!」
マントを羽織った勇者似の少女が戦場を駆ける。
蚯蚓亜人「!?こんなところに5歳くらいの少女がいるにょろ!?」
人造魔王「きゃはっ!」
たんっ
蚯蚓亜人「!!」
軽い跳躍で30メートルもの距離を一瞬で詰める人造魔王。
ヌキャッ!!
蚯蚓亜人の顔が容易く引きちぎられてしまう。
--草原--
パピヨン亜人「パピッヨンッ!!」
鷲団員「新手か!?なんてやつだ!!」
人造魔王「んっふっふー!」
パピヨン亜人「よくも同胞を……火属性対単体攻撃魔法、レベル3!!」
ゴォォォ!!
パピヨン亜人が放つ火の魔法は、その射線上にいるもの全てを燃やしながら人造魔王へ。
ドッボオオオオオオオオオオッ!!!
人造魔王「あちちっあちちっ!!」
鷲団員「ほ、ほとんど効いていない!?」
--草原--
人造魔王「マント燃えちった。もー!よくもやったなー僕怒ったぞー」
ギュンッ!!!!!
パピヨン亜人「!?」
鷲団員「!?」
人造魔王が構えた掌に膨大な魔力が集約される。
ジッジジジッ
パピヨン亜人「ば、ばかな!!大地が震えるほどの力が!?」
鷲団員「そ、そんなもの受けることが」
人造魔王「六色ほー」
ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!
--草原--
人造魔王「更にーぐるぐるー」
ギャギャギャッギャギャギャ!!!
人造魔王は六色砲を放ちながらそのまま回転、
東の槍使い「!?」
西の道化師「なっ」
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!
人造魔王「あははははははははは!!!」
人造魔王の攻撃は無差別に戦場を破壊する。
人造魔王「やっぱ戦いって、楽しーなぁ」
裸の人造魔王は、嬉しそうにくるりと回る。
--草原--
ざしゃああ!!
占隊長「くっ!!」
隠蔽兵(!避けられた?姿を隠している僕の攻撃がわかるのか?)
占隊長(スキル占いで前もって攻撃を予見しているんだけれど、使う度に誤差が生じてる……)
ブゥン
隠蔽兵は剣を担いだ状態で占隊長の目の前に現れた。
占隊長「!!」
隠蔽兵(なんらかの手段で攻撃を読まれているのなら姿を隠していても意味が無い)
占隊長(魔剣の効果を切った?)
隠蔽兵「風属性移動速度上昇レベル3」
バシュッ
隠蔽兵「反応出来ない速度で叩くまで」
--草原--
キィンギィン!!
サム「む、これはまたとんでもないことになっているでござるな」
とても草原とは思えないありさまを見てサムは思う。
レン「大地がこんなになっても、殺し合ってるのかにゃ」
ポニテ「……ん」
アッシュ「それが人間だ」
ツインテ「……こんなことに力を注がなくたっていいのに」
アッシュ「……止めるぞ。連合軍の主力を一体ずつ倒していく」
ポニテ「一対多とかひきょーな感じするけど、まぁしょーがないよねー」
--草原--
虎男「ぬぅん!!」
ガガガガガガっ!!!!
虎男をラッシュで飛んでくる矢を全て叩き落とし、
虎男「がおっ!!」
ドゴオオン!!
地面を殴り、弾丸のように石を飛ばして狩人を攻撃してた。
狩人(野生動物のような身体能力……これだから亜人ってのは恐ろしいよ)
ドドッ!!
狩人「ッ!!」
石が狩人に命中する。
虎男「好機!!」
--草原--
虎男はここぞとばかりに駆けだした。
トンっ
右拳を振り被って跳躍、
虎男「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
石を食らいよろめいている狩人に
虎男「」
その時虎男の脳裏に、ある一つの疑問が浮かんだ。
虎男(防御が薄い職業である狩人には必須とも言われるスキル、見切りがあったはず。こんな飛んできた石に当るものなのだろうか?)
虎男は何気なく見た着地地点に嫌なものを感じた。
虎男「!?スキル虎咆哮!!」
がおおおおおおおおおおおおお!!!
口から放つ息の砲弾。それは虎男の勢いを消した。
狩人(ちぇっ、罠に気付いたか)
虎男(ぬかったがお。すでにここら一帯に罠を貼りめぐらせていたのかがお!!)
--草原--
絵師「ぎゃははは!!よくもやりやがった狐やろー!!」
絵師が空に描いたのは雨雲。
狐男「む?」
雨雲は一気に巨大化し、雨を降らし始めた。
ザーザー
狐男(雨なんか降らしてどういうつもりコン?水の量が増えるならぼくのほうが有利コンよ?)
狐男は掌に水の弾丸を生成してる。
ぴかっ
狐男「」
ガガアアアアアアアアアアアアアアアン!!!
雷が狐男に直撃する。
--草原--
狐男「な、この職業、属性とか関係なしで……コンか」
どしゃっ
絵師「ぎゃはははは!!油断したな!?」
ぱしゃっ
絵師「!?」
倒れた狐男の体は水に変わる。
狐男「分身だコン」
ドジャッ!!
絵師の後ろから現れた狐男。その右腕が絵師の腹部を貫いた。
絵師「がふっ!!??」
--草原--
蜂隊長「あ、相性悪すぎるぶーん……最強の部隊長であるこの俺が……」
すでにボロボロの蜂隊長。
テンテン「どうした?もう終わりか?」
ガシャコっ
テンテンは右腕を銃器に変換し蜂隊長に向けた。
テンテン「投降するか?むやみに命を散らすこともあるまい」
蜂隊長「……ふ。そうぶーんね」
蜂隊長は手を挙げたまま近づいてきた。
蜂隊長「……でも意地があるぶーん。意地も通せないんじゃ生きてても仕方ないぶーん」
テンテン「そうか。なら死ぬといい」
蜂隊長「スキル、援軍要請」
ぶーんぶーんぶーん
蜂隊長がスキルを発動すると、大量の蜂が蜂隊長のもとにあつまってきた。
--草原--
ごぽ、ごぽぽぽ
義足(しまった……!!)
戦場に、巨大な水で出来た球体が出現している。
包帯女(完全にあいつの空間になっちゃった!!)
鮫隊長「……はぁあ。生き返ったぁあ」
義足(!?先ほどと体積が全然違う!?)
包帯女(嘘!?3メートルくらいあるんじゃないの!?)
鮫隊長「ふぅ……あまりに辛くていきなり奥義つかっちまったピチ……まぁ仕方ないピチ」
義足(……こりゃ、仕方ないな)
包帯女(奥義使わせて消費させただけでよしとするか……)
義足と包帯女は水の中で構える。
義足、包帯女((無事蘇生されたらまた会おう))
--草原--
どががっががが!!
鷲隊長「……!!やはり私がわからないのですか!?」
変化師「さ、さっきからおまえ、なにをいってる!!」
ぎゅるる!!
変化師の鞭に変化した左腕が鷲隊長を捕える。
鷲隊長「くっ!!」
変化師「お、おまえつよい。い、いけどりはむりそうだ。だ、だからわるくおもうな」
変化師は右の拳に力を込める。
変化師「つ、土属性攻撃力上昇魔法レベル4」
変化師の右腕に鉱石が集まり、まるでダイヤモンドのように光り輝く。
鷲隊長「記憶を失ってしまったのか傀儡になってしまったのか……」
--草原--
槍兵「げほっごほっ!!」
槍兵は口から血を流している。
槍兵「思ったよりやるじゃねぇのお前ら」
弓女「くそう!!斧女をよくも!!」
盾男「前に出るな!!」
弓女「!!!」
左腕を無くし、左脚から大量に出血してる盾男が叫ぶ。
盾男「後続のために少しでもこいつを削る……それが俺達の役目なんだ!!」
弓女「ッ!」
槍兵(いやぁ……もう随分仕事されちゃってるがなぁ。……でもまぁここまで魂見せられちゃ、答えないわけにもいかねぇな)
ずっ
盾男「!!やっと魔力を使うか」
槍兵「じゃあぁなお前ら。今度は違うとこでやろうや」
--草原--
ガガガアアアアアアアアアアン!!
聖騎士「ぬぅ……!!」
鬼姫「っはぁ!」
灰竜「ぐおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
空を飛んでいる灰竜の体を足場に高速で移動する鬼姫。
聖騎士「我があぁあああ灰竜ををををおお足蹴にぃ!!」
フォンっ!!
視界から音速で飛んでくる鬼姫。
聖騎士「ぬあああああああああああああああ!!!」
ギギャアアアアン!!!
それを槍で弾く聖騎士。
鬼姫「ひゅぅっ!!今のまでしのぐすか!!」
--草原--
聖騎士「ぬあああああああああ!!はあああああいりゅううううううう!!はああくのだあああああ!!」
灰竜「ごおおおおおおお!!」
灰竜は聖騎士に言われて灰色の炎を鬼姫に吐いた。
鬼姫「」
ゴオオオオオオオ!!!
空中で成す術も無く鬼姫は炎に飲み込まれる。
聖騎士「あれだけではやつはしなあああああああん!!目をこらせえぇえ灰竜うぅぅぅ!!」
灰竜「ぐおおおおお」
--草原--
ドっ
鬼姫「あちちち。やっぱ最強種は伊達じゃないっすね」
鬼姫は地面に着地し、火のついた髪を手で払う。
聖騎士「む!そこぉぉぉかぁあああ」
ばち、バチバチバチバチバチバチ!!
聖騎士は地上の鬼姫に槍を向けると、その先に魔力を集める。
鬼姫「ん」
バリバリバリバリバリバリ!!!!!!
空間が集約するほどの恐ろしい力。
鬼姫「これはちときついっすね」
聖騎士「雷属性対単体攻撃魔法ぅぅぅ、れええべぇぇぇるうぅう、5!!」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!
--草原--
ばりっ、ばりりっ
聖騎士「ぬぅぅぅ……」
聖騎士の放った魔法の威力は強大で、地面には巨大なクレーターが出来ていた。
聖騎士「やぁあつめぇ、避けおったわぁ……」
……ひゅん
聖騎士「!」
直径何十メートルもある巨大岩が、聖騎士に向かって飛んできていた。
聖騎士「ぬううううう!!」
どっがああああああああああああああん!!!
--草原--
鬼姫「あれでさすがにノーダメージは無いはずっすよねぇ」
ゴゴゴゴゴゴゴ……
鬼姫(砂煙で中が見えないっすが……地面に落ちた音はしない。ってことは)
バリバリバリバリ!!!
鬼姫「っ!!」
ドッガアアアアアアアアアアアアアアン!!
砂煙の中から、凶悪な威力を持つ雷が四方八方に放たれた。
南の細兵「ぎゃああ!!!」
王国の剣兵「ぐあああああああああ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴ
鬼姫「やれやれ、辺り構わずっすか」
--草原--
ドッギャアアアアアアン!!!
ギャアアアアアアン!!!
うわああああああああああ!!
きゃあああああああああああああ!!
アッシュ「い、一体何がおきてやがんだこれは!」
どぎゃああああああああん!!!
ポニテ「やたら強い雷魔法が暴れまわってるみたいだけど」
どがん、どがあああああああああん!!
サム「これは……!!しまった、いかん!!」
レン「にゃ?」
ぴか
ツインテ「あ」
ドッガアアアアアアアアアアアアン!!
--草原--
ゴゴゴゴゴ
戦場の遥か上空に、箒にまたがった三人の姿があった。
迅雷「……ひどい」
疾風「うわぁ。もうしっちゃかめっちゃかやぁ」
魔導長「やれやれなの」
迅雷「魔導長……私達は参加しなくていいの?」
魔導長「うーん。私達の国がまだ国家として認められてないから参戦することもできないの。したらむしろまずいことになるの」
疾風「はぁ。指くわえて見てるしかないなんて……いつになったら認めてくれるんやろか」
--草原--
ツインテ「ん……んぅ」
ざら
聖騎士の魔法を受けて吹き飛ばされたツインテは、砂土の中で意識を取り戻す。
ツインテ「……!!み、皆さん!!」
ツインテが目を開けると仲間の姿は無く、
剣豪「ん?お前確か王国の」
ツインテ「!?」
他者の血を纏った剣豪が立っていた。
--草原--
アッシュ「くそ!なんなんだいきなり!ツインテ達は……」
槍兵「か~、聖騎士の旦那、好き勝手暴れやがって……あれ?お前東の王国で見たな」
アッシュ「!!槍兵……」
槍兵「……なんで戦場にガキがいやがるんだ。巻き込まれたのか?」
アッシュ「……」
槍兵「違うのか。じゃあ………」
ひゅっ
アッシュ「!?」
ギィン!!
槍兵「敵ってことでいいんだな?」
--草原--
レン「んにゃにゃにゃ……っ!ツインテ大丈夫かにゃ!?」
がばっ
レンはあの荒れ狂う魔法攻撃の中、しっかりと誰かの腕を掴んでいた。
ざらざら
レン「ツイ、っ!?」
ポニテ「えへへ……ポニテちゃんでしたー。なんて……」
レン「にゃー!?ツインテどこにゃー!ツインテー!!」
レン発狂。
ザっ
吟遊詩人「気やすくその名を~呼ぶな~」
--草原--
ポニテ、レン「「!!」」
ポニテとレンの前に吟遊詩人が現われた。否、彼は最初からそこにいた。
吟遊詩人「開戦の時に我らの陣地にいなかった者がなぜこの戦場に~」
ポニテ「こ、この戦争を止めに来たんだよ!」
レン「にゃー!」
吟遊詩人は演奏をぴたりと止める。
吟遊詩人「は?」
ぞくっ
--草原--
ポニテ「ッ」
吟遊詩人「……わけのわからないことを言う……戦争を止める?君たち程度の実力で?……まさか君たち、それにツインテを巻き込んでいないだろうね~」
レン「……」
無言が何よりの答えだった。
吟遊詩人「……処刑してやる」
ズズズズズ
吟遊詩人の体から膨大な魔力があふれ出る。
吟遊詩人「ツインテを危険に合わせるものは……全て」
ポニテ「ッ!やるしかない!」
ポニテは二本の剣を引き抜いた。
--草原--
ガガガガ!
選抜兵「な、なんでお前がこんなとこにいんだよ!」
サム「パーティの意向ゆえやむなく」
選抜兵が投げ付けるカードを全て叩き落とすサム。
選抜兵(くそ、悔しいが俺一人じゃこいつは無理だ……通信兵)
選抜兵はテレパシーで通信兵に連絡を取った。
通信兵(わかってます。今軍師さんの騎士達を誘導します)
サム「やれやれないしょ話はいやでござるよ」
--草原--
選抜兵(!?こいつ!感知で電波を)
ドバッ!!
サムの一振りで選抜兵の右腕が飛ぶ。
サム「……拙者ツインテ殿達を探しにゆかねばならぬゆえ、さっさと終わらせてもらうでござるよ」
選抜兵「こ」
ズシャッ!!
選抜兵「」
サム「両手が無ければお得意のドローは出来ぬでござろ?」
--草原--
びちゃちゃっびちゃっ
選抜兵「……ぐっ……」
サム「……自陣に戻るでござる。こんなとこで死んでしまっては蘇生が難しいでござるよ」
選抜兵「……情けのつもりかよ」
サム「無論」
選抜兵「むかつくぜその余裕が!!」
ばっ
選抜兵は靴を脱いで裸足になると、左足の太ももにくくりつけてあるデッキケースから、器用にカードを掴んだ。
選抜兵「スキル、ファイナルドロー!」
--草原--
サム「!」
選抜兵「腕が無けりゃカードがひけねぇと思ったかよ」
ぶぅん
選抜兵のカードが光る。
サム「……むぅ」
選抜兵「確かに俺じゃ……お前を足止めさせることすら出来無さそうだよ」
ばいぃぃん!!
カードは魔法陣へと変貌し、空中に円を描く。
サム「!!」
--草原--
選抜兵「だがお前はここで終わりだ!!」
ぶぅん
魔法陣から
銀馬「ひひひぃぃん!!」
三体の騎士が現れた。
ダカラッ
サム「……」
銀河「あいつを倒せばいいのかい?」
風雲「なら早めに終わらせようか」
雷鳴「wow!!」
--草原--
犬娘「ぐ……な、なんだこいつ、わん」
犬娘は血まみれになりながら地面に横たわる。
陸王もこもこ「グルるるるるぅ」
人形師「おや貴女は討伐戦に参加していませんでしたかぁ。こいつはめちゃくちゃ強かったんでどさくさに紛れて拾って来ちゃったんですよぉ」
陸王もこもこによって、辺り一帯の兵士達は全て死体にされてしまっている。
犬娘「……な、なんでも人形に出来るのかわん」
人形師「えぇえ。意識が無ければねぇ。人形師は人形を操ることしかできませんからぁ」
人形師が見えない糸を振ると、
フォン、グシャ
陸王もこもこの巨大な腕で犬娘が潰された。
--草原--
剣豪「やれやれめんどくせぇな。他にも仕事があるんだよ俺には」
スパスパスパスパ!!
ツインテ(!!触手が!!)
ダンっヒュッ!!
剣豪はするすると距離を縮めるとツインテの頸動脈を斬った。
ぶしゅっ
ツインテ「」
剣豪「抵抗されるとめんどいからよ、とりあえず死んでおいてくれや」
ぶしゅーーーー!!
--草原--
茶色の大地をツインテの赤い血が染め上げていく。
ツインテ「~~~が!!」
ツインテのリボンが両方とも弾けた。
ばつん!!
剣豪「!」
ツインテ「づ!!おらぁ!!」
ストレートになったツインテは左手を傷口に当てると、触手をドリル状に変化させ剣豪に攻撃を加えた。
ヒュヒュヒュヒュ!!!!
剣豪「ちっ、人格変えが」
--草原--
スパスパスパスパ!!!!
剣豪「だがこんな鈍い動きじゃ俺にはきかねぇぞ」
ざっ
ツインテ(あぶねぇ……もう少し血を失ってたら終わりだったぞ)
剣豪(ほう、今の一瞬で治療か。精度速度共に中々大したもんだな)
ツインテ「……東の三強の剣豪ね……まぁ強くなった俺様の相手としちゃぁ上等だぜ」
ビシッ
ツインテはグローブを付けた左手で剣豪を指差した。
剣豪「……ほう」
--草原--
ひゅっ
ツインテ「!」
ギィン!!!!
ツインテ「ぐっ!!」
剣豪の激烈な打ち込みにかろうじて反応したツインテだったが、
ドンっ!!
ガードごと弾かれ体が宙に浮く。
どっがああああああああん!!!
ツインテ(片手でこれ、かよ!!)
--草原--
剣豪「……」
ツインテは大地を転がされながら体勢を立て直す。剣豪ほどの実力者であれば、その隙を見逃さず、追撃を加えることも可能だったはずなのだが、剣豪はじっとツインテを見ていた。
剣豪(ほぉ……今の攻撃に反応しやがった)
ツインテ(?なんで攻撃してきやがらねぇ……まさか手を抜いてるんじゃねぇだろうな)
ドッ!!
ツインテは魔力を放出し、斬られた触手の数を5本から8本に増やす。
ツインテ「俺様をなめやがる奴は誰であれ万回ぶっ殺す!!」
剣豪「はっ、いきがってないで来いよがきんちょ」
スッ
ツインテ「ッ」
剣豪の構えから何やら異様な雰囲気を感じ取るツインテ。
--草原--
ツインテ(……いや迷ってても仕方ねぇ……!!)
ダッ!!
ツインテは真正面から猛然と剣豪に向かっていった。
剣豪「スキル、砂塵剣」
じゃっ!!
剣豪は刀を地面につけたかと思うと、円を描くように振り抜いた。
ぶわっ!!
ツインテ「!!砂が」
舞い上がった砂が剣豪の姿を隠してしまった。
ツインテ(くそ!!ガードだ)
す
ズバシャアッ!!
--草原--
ツインテ「ぎっ」
触手と腕によるガードはギリギリ間に合ったのだが、それでもその全てを断ち切られてしまう。
剣豪「む」
ぶしゃああ!!!
ツインテ「がああああ!!!」
完全に体を両断したと勘違いした剣豪は、ツインテの腹部がまだ繋がっていることに驚き一瞬の隙を生んだ。それを見逃さなかったツインテの左拳が剣豪の頬を捕えた。
ゴッっ!!!
剣豪「ッ!!」
ズザザー!!!
ツインテ「くそ!!水属性回復魔法、レベル2!!」
ぽわわぁあん
ツインテの両腕は無事接着し、腹部の傷も完全に治癒する。
--草原--
バツン
今度はリボンの片方だけが復活する。
ツインテ「ふぅ、全くあの子は脳筋なんだから!」
サイドテールのツインテは触手を束ねて鞭を作る。
ツインテ(あの勇者斬りの剣豪相手に接近戦だなんて、勝ち目がないに決まってるじゃない!)
剣豪「なんだまた人格変えやがったのか」
剣豪は口についた血を拭う。
剣豪「……久々だぜ。人間に傷を付けられたのはな」
ツインテ「……」
ひゅんひゅん
ツインテは鞭を唸らせてタイミングをはかっている。
ツインテ「おじさん、ドエムなら私の鞭を食らってみませんか?」
--草原--
ドガガガガガ!!
ヒュヒュヒュヒュ!!
ガがガガガ!!
ツインテ(!!嘘っ……私の鞭が捌かれ、るっ!!)
ズバババ!!
数百にも渡る刀と鞭の衝突。その衝撃破によって地形が変わるほどの凄まじい攻防戦。
ズ
ツインテ「」
しかし、それでもあっさりと鞭を掻い潜ってきた風の刃がツインテの太ももを切り裂いた。
ブシャッ!!
--草原--
ツインテ「~~ッ!!」
ブチブチブチ、ガクッ
ドシャっ
剣豪「……残念だな、経験も修行もまるで足りてねえ」
ツインテは地面に崩れ落ちた。
ツインテ「あっ、く……」
ツインテは涙目になりながらも、ちぎれた左足に手を伸ばす。
--草原--
剣豪「時間が圧倒的に足りてねぇ」
ザッ
剣豪は刀を肩に担いでツインテに近寄った。
剣豪「おしまいだ。お前はちゃんと殺してから連れ帰させてもらうぜ」
剣豪はそう言うと、一切の躊躇なく刀を振り下ろした。
ズパ
まるでバターでも切るかのように滑らかに振り下ろされた刀。
剣豪の一振りを受け損ね、ツインテは自らの赤き血によって大地を濡らす。
ボタッボタタ
ツインテ「……ッッぐ!!」
余りに深く切り裂かれてしまった。
左斜めからの袈裟斬りは肩甲骨を叩き割り、いくつかの重要な臓器を切り裂いた。
--草原--
ブシャーー!!
ツインテ「~~」
剣豪「……悪いな」
チン
剣豪は血を払った後、その刀を鞘へ収める。
ビクッビクッ
剣豪「……やれやれ。こんな幼いガキを斬るはめになるとは……。仕事とはいえやるせねぇな」
ビクッビクッ……
剣豪「……」
ツインテの生命活動が停止した。
--草原--
剣豪「……」
ザっ
剣豪はツインテが死んだことを確認してから、ツインテを担ぐためにしゃがみこんだ
途端、
ズギャッ!!
剣豪「ッ!?」
小さな触手のドリルが剣豪の肩を僅かにかすめた。
……ドクン
剣豪「バカな!確実に死んだはずだ!」
ドクン、ドクン
ツインテ「」
ツインテが上半身を起こした。
--草原--
バサッ!!
まるで触手が羽のように一斉に広がった。
ドクン!ドクン!
ある触手はツインテの左足を掴み、ある触手は左足と本体との接合を始め、ある触手はドリル状に変化し剣豪を襲った。
ビョッ!!
剣豪「っ!」
シャシャシャシャ!
至近距離からの不意打ちだったにも関わらず、剣豪は右へ左へと華麗に交わす。しかし量があまりにも多く、ついに回避不能の攻撃が剣豪に伸びた。
剣豪「じっ!」
--草原--
バシバシ!
剣豪は右手で触手を弾き落とすしかなかった。
剣豪「ちっ……」
ポタポタ
剣豪が刀を握ることが出来る最後の手での防御。
ポタポタ
剣豪に刀を抜く暇を与えないほどの猛攻は、ついに剣豪の生命線を侵した。
ユラ
ツインテ「……くくくっ。お互い不便だよなぁ。腕が一本じゃよ」
ツインテのリボンはいつのまにか二つとも外れている。
--草原--
剣豪「……お前……自動蘇生者か……」
剣豪は哀れみとも蔑みとも取れぬ表情でツインテを見た。
ツインテ「……ち。サイドテールの野郎、今ので気絶しやがったか」
剣豪「?」
ツインテは身体中の傷を修復しながら立ち上がる。
ツインテ「奥義、絶対回復領域」
ブゥン
ツインテの魔力がドーム型の空間を作り上げた。
--草原--
剣豪「……」
剣豪は無言で刀の束に手をやる。
ツインテ「どうだ?俺様の魔力の中にいる気分は。暖かくて心地よくて羊水の中みたいだろ?」
剣豪「……残念だが、お前はここできちんと殺さなきゃいけないようだ」
苦虫を噛み締めたような顔で剣豪は、刀を抜いた。
ツインテ「はっ。そう簡単に負けるかよ。いくらてめぇが三強の代表格っつったってよぉ!」
剣豪「……」
剣豪の集中力が研ぎ澄まされていく。
ツインテ「……ち」
--草原--
ギギギギギガン!!!
槍兵「ひゅうっ。へへへ、お前中々やるじゃねぇか」
自分の刺突を弾かれて笑みを浮かべる槍兵。
アッシュ「はっ!はっ!はっ!」
ドクドクドク
腹部から流れ出る大量の血が、アッシュの未来を如実に語っている。
槍兵(それだけにもったいないな。最初の打ち合いでの甘さがよ。まだまだ心のエンジンの掛け方がぬるい)
アッシュ(くそっ)
--草原--
確かな実力差に加えて決定的なダメージ。
ガガガ!!
アッシュ「ぐ!!」
槍兵「そらそらそらそら!!」
ギギギガガガァアアン!!!!
本来ならばこの戦いは既に決着のついたはずなのだが、
槍兵(うーむ……)
シャガガガガ!!
この後の戦いを考えての安全策。ダメージは最小限に、魔力消費を最小限に。
アッシュ「ぐあああ!!」
そんな槍兵の考えが時間を引き延ばしている。
--草原--
アッシュ「毒属性範囲攻撃魔法、レベル2!!」
ブシュー!!
槍兵「!」
アッシュの体から毒の霧が出現し、周囲に広がって行く。
槍兵(まぁこれを通しちゃどう考えてもよろしくないよな)
槍兵は槍をくるくると回し始め、毒の霧を押し返した。
ブワッ
アッシュ「!!」
槍兵(まだめんどくさい技もあるかもしれないな。出し惜しみももうやめるか)
スチャ
槍兵は視界が毒の霧に覆われたアッシュに狙いを定める。
槍兵「スキル、一の突き」
--草原--
ガズン!!!
槍兵「ん」
槍兵の槍が貫いたのは、岩。
シャッ
ギィン!!
槍兵(幻覚?いやタイミングをずらされたのか?)
槍兵は不意打ちをなんなく処理すると距離を開けた。
アッシュ(ち、今の避けるなよ……)
アッシュのナイフが銀色の毒がぽつりと地面に落ちる。
--草原--
槍兵「……」
槍兵は槍を回しながら間合いを取っている。
槍兵(なーんかやりづらいな。別に大した使い手ってわけでもねぇんだけど。なんかどっかでこれを知ってるような……)
アッシュ「スキル、飛毒」
ぶぅん
アッシュはナイフに毒を乗せると、そのまま振り抜き斬撃として放つ。
槍兵(まぁ、避けるよな)
ひゅっ
ざざざ
槍兵はアッシュに対して円を描くように移動する。
--草原--
シャシャ!
槍兵「……」
ひゅっひゅっ
槍兵(こんな遅いもの当るわけねぇだろ。一体何を考えて)
ず
槍兵「」
槍兵の足元が槍兵の体重によって崩れ始める。
がらがら!!
アッシュ(かかった!!毒罠魔法!!そのまま腐れてしまえ!)
--草原--
槍兵「ちっ」
槍兵の足が毒に触れようかという瞬間、
槍兵「スキル、状態異常無効」
アッシュ「!?」
ジャポン
槍兵「はー。やれやれ」
じゃぽじゃぽ
なんでもないかのように毒の沼から這い上がる槍兵。
アッシュ「ぐ」
槍兵「欠陥属性ね。珍しいし場合によっちゃ強力だけどよ。対処するのは結構簡単なもんだぜ」
--草原--
アッシュ「く……」
槍兵「さぁどうする?属性はもう意味がないぜ。次は攻撃速度でも試すか?移動速度か?まさかそのなりで耐久力に自信があるわけじゃねぇよな」
槍兵はじりじりと近づいていく。
アッシュ「……くそ」
ぼたぼたっ
アッシュの出血が未だに止まっていないことに加え、自身の体内から毒という形で射出した水分。
アッシュ「ぜ、ぜ……」
アッシュは限界ぎりぎりにまで追い込まれていた。
--草原--
アッシュ「く」
満身創痍でありながらも構えをとるアッシュ。
槍兵「……なんでそこまできばってるのかわからねぇけど、まぁ無理すんなよ。運が良けりゃ誰かが死体を見つけてくれるだろうさ」
ずぶっ
アッシュ「」
槍兵の槍はその淡々とした喋りとは裏腹に、雷のような速度でアッシュの胸を貫いた。
アッシュ「ッ!ガっ!!」
ブシュッ!
槍兵「あばよがきんちょ。またいつか会えたら会おう」
ざっ
槍を抜き取り血をはらうと、アッシュに目をくれることもなくその場から去っていった。
--草原--
…………ひゅー
槍兵「……ん?」
立ち去るはずだったのだが、槍兵はありえない感覚を背中に感じ、振り返った。
アッシュ「」
ズズズ
そこには血濡れたアッシュが立っていた。
槍兵「!?な……!お前、今のは確実に心臓を」
アッシュ「」
ぼたぼたぼた
槍兵(あの傷、まさか直前で体を捻ってかわしたのか?いやもうそんなことができるほどの体力は残って)
その時
グルん
アッシュの目玉がひっくり返った。
--本陣--
秘書「ッ」
西の王「?どうした秘書」
突如秘書は顔を押さえてよろめいた。
秘書「いえ……些細なことです」
そう言うと秘書は何事も無かったかのように、またいつものように背筋をぴんと伸ばす。
秘書「あの子が私のあげた目をようやく使ったようです」
西の王「……そうか」
秘書ボソっ「全く、ちゃんとヤれているのかしらあの子は」
--草原--
ズズズ
槍兵「な、なんだその眼は」
アッシュ「」
アッシュの眼球はまるで血のように赤い色をしている。
まるで焦点が合っていないその眼は、見る者を恐怖にいざなった。
アッシュ「すすす、スキル、hい、人殺し、発動」
--草原--
ざっざっ
吟遊詩人「どこへ行こうと言うのかね~」
ポニテ「……」
レン「……」
竪琴を引きながら歩く吟遊詩人と、盛り上がった土の影に隠れている二人。
ザッ、ザッ
ポニテ(せっかく……せっかくあんなに修行したのにみんなで戦うことが出来ないなんて)
ポニテは出血している左腕を押さえていた。
レン(この人レンが今までに戦ってきた中でぶっちぎりに強いにゃ……。だからこそのチャンス。レンの力がどこまで通用するのか、調べ
てやるにゃ!)
そしてレンは胸に手をやった。
--草原--
ぱあぁ
青く光る錬金術の反応光。
吟遊詩人「!」
ポニテ(レンちゃんの個人修行は完成したのかな? ……よぉし、私も成果を見せなくちゃ)
ポニテは流れ落ちる血に魔力を注ぐ。
ぐに、ぐにに
吟遊詩人(魔力反応で居場所はわかった~。変なことをさせる前に)
ぽろん
吟遊詩人が弦を弾くと無数の魔力の球体が出現し、
ドガガガガ!!!
ガトリングのように岩を蜂の巣にした。
--草原--
バッ!!
間一髪で岩陰から離れる二人。
吟遊詩人「!」
右に飛んだポニテと左に飛んだレン。
吟遊詩人(二手に別れて的を絞らせないつもりなのか~?)
タッタッ!!
ポニテは岩の壁を駆け、一気に跳躍する。
ポニテ「はーーー!!!」
吟遊詩人(まず仕掛けてくるのはこっちか~)
ヒュオ!!
交差したポニテの二つの剣が吟遊詩人に迫る。
--草原--
吟遊詩人(バカ正直に真正面からだなどと~、ん)
剣が自分の首に到達するまでの、ほんの少しの時間で策を看破する。
ぽろん
ガシィン!!
ポニテ「!?」
ポニテの物理の剣は魔力の球体で、魔法を裂く剣は素手でそれぞれ防がれてしまう。
ギシッ
吟遊詩人(中々高い防御力を持っていたが、零距離ならば~)
ボロン
先ほどのものよりも大きな魔力の球体がポニテを打ちすえる。
ドッゴオオン!!
--草原--
ビチャッ
ポニテ「ぎゃはっ!!」
血を吐きながら吹き飛ばされるポニテ。
吟遊詩人(む? まだ浅い? ならば)
ポロロロン
ポニテ「!?」
百を越える魔力の球体がポニテを取り囲んでいることに気付きポニテは青ざめた。
吟遊詩人「魔法歌、蜂の巣ラプソディー」
ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!
レン「……」
--草原--
ドシャシャーーーーー!!!
吟遊詩人「ふぅ……フェミニストな僕にとってはちょっとこたえるかな~」
吟遊詩人は次の標的であるレンに視線を向けて言った。
……がら
吟遊詩人「ッ」
ポニテ「あ、くぅ……い、いたぁい……」
吟遊詩人「!? た、耐えた~?」
血だらけのポニテはがくがくと震えながら立ち上がろうとしていた。
ポニテ「……あ。剣が両方とも折れちゃった……かたっぽはレンちゃんが作ってくれたやつなのに」
吟遊詩人「……」
--草原--
ざっ
レン「ありがとうにゃポニテ」
吟遊詩人(! しまった、この子に気を取られてる隙に)
レンの体全体が青く光り輝いている。露出した胸元には青い球体が埋め込まれていた。
レン「ポニテが時間を稼いでくれたから準備完了出来たにゃ」
ポニテ「もー、おっそいよー。私ボロボロになっちゃったー」
ポニテが笑うとレンもつられて笑った。
吟遊詩人(なんですかこれは~見たことのない技っぽいですね~)
ポニテ「まぁ私も……時間を稼ぎながら準備してたんだけどね」
吟遊詩人「!?」
ぐにぐにぐに
ポニテがまき散らした血がまるで生き物かのように動いていた。
--草原--
レン「じゃあ行くにゃ……人体工房モード」
宣言したレンが眼鏡を外すと、それがスイッチになったのかレンの瞳から光が消える。
吟遊詩人「人体、工房?」
レン「……」
レンが両手でなんらかのポーズを取ると、地面から無数の巨大な鎌が生えてきた。
吟遊詩人「!? 詠唱無しだと?」
ぱし
レンの体が放つ光が強さを増していく。
ポニテ「じ、人体工房モード!? 何それカッコイイ!!」
--草原--
吟遊詩人(驚いた……けど魔力の使用量が今までの比ではないね~。その分ではすぐに枯渇してしまうはずさ~)
レン「……羽、展開」
レンの呟きを合図とし、レンの背中から巨大な蝶々の羽が出現した。
バサッ!!
ポニテ「わ……鱗粉が雪みたいで、綺麗……」
レン「……」
羽が動く度に振り落ちる白く発光する鱗粉。それと青く輝くレンの姿とあいまって幻想的な光景を生み出していた。
吟遊詩人(……なぜか……彼女の魔力量がどんどん膨れ上がっている~)
ゴゴゴゴゴ
--草原--
レンは、時間という難題をクリアした時に、また一つの問題に気付いた。
“例え素早い錬成が出来るようになったとしても、作れる物の質と量がそのままなのであれば、今と戦力にそう変わりないのではないか”
いつの時代でも求められる、質と量と速さ。
そのどれもが技術力の向上次第で、ある程度までは上を目指すことが出来る。
難解なものを短時間で仕上げるには確かな技術力が必要だし、材料がなんであるかよりも作り上げる人の力のほうが完成品の質に大きく関わってくるのは当然のこと。
より精度の高いものを作る上で、余りを極力出さずに作れるのならば、限られた材料でも完成品の量が変わってくるに違いない。
ゴキョゴキョ
技術でカバー出来ることは非常に多い。
あるもので何とかしなければならないという状況は、これから幾度となく味わうことになるはずだ。それゆえ技術は生きている限り磨き続けねばならない。
ゴキョゴキョ
--草原--
しかし、所詮は技術なのだ。
いくらそれが大事なファクターだとしても、質と量、共に大幅に上回る敵が現われた場合、レン達は為す術もなく打ち倒されるだろうと予測していた。
所詮、工夫でどうにかなるのは実力が拮抗した相手とのわずかな差のみだと、レンは痛いほどに理解していたから。
ゴキョゴキョ
だからレンは量を欲した。
完全なる物量を。
物量の凶悪さは質も速さも上回る。
脆弱な人間がモンスターや魔族より多くの土地を所有しているという事実がこの世の摂理を物語っている。
ゴキョゴキョ
--草原--
無論、質と速さをないがしろにするわけじゃない。
レンが自分に一番足りてないと思うものを、技術によって手に入れようとしているだけ。
ゴキョゴキョ
物量の元となるは魔力。この世界において最も用途の多いエネルギー。それをレンは求めた。
単純に考えて、精巧に作られた名剣よりも、しこたま魔力を込めあげて作っただけの棒の方が数倍強いのがこの世界。
それだけの爆発的な力が魔力にはある。
ゴキョゴキョ
レン「……」
この蝶々の羽のようなものがレンの求めた最強の力。
--草原--
レンの背中の左側に生えている羽は大地、水脈から魔力を吸い上げ、レンの波長に合った魔力になるように変換する仕組みを持ったアーティファクト。
レンの背中の右側に生えている羽は魔力を貯蔵する役目と、供給過多になり体への負担にならないよう調整する力を持つアーティファクト。
ゴキョゴキョ
この煌く羽は、地属性と水属性、そして物体の声を聞く白雪の特性あってこそ成しえたもの。
ゴキョゴキョ
レンの羽は大地から魔力を吸い上げる。
それはつまり、
大地がある限りレンの魔力が尽きることは無くなったということ。
レン「……」
バサッ
レンは大地を手に入れた。
--草原--
ポニテ「く、くおぉ~!! かっこいいーーー!! しキレー!! こうなりゃ黙ってられないよ!! 私も新技お披露目するしかないよね!!」
ぐに
ポニテの体から離れた血がぶるぶると動きだし、それぞれが形をなしていく。
ポニテ「キバおねーちゃんからもらった命、そして技!!」
血は全て杭の形になり、そして燃える。
ボッ
吟遊詩人「!!」
吟遊詩人の胸に付着したポニテの血すら燃え始めた。
ポニテ「いくよ。全軍とっつげきー!!」
ゴッ!!
--草原--
ヒュヒュン!!
吟遊詩人「!」
ガガガガガ!!!
吟遊詩人(この胸の血を目がけて飛んでくる~?なるほど、ただやられていたわけではないと~)
四方八方から迫る燃える血杭。
ヒュヒュヒュ!!
吟遊詩人(裂けてなお追尾)
グシャっ
顔に迫る杭を蹴りで破壊するも、
ぐにゃ
吟遊詩人(破壊されてもなお再生、とは~)
蹴りに使った足に血が棘のように刺さっていた。
--草原--
しゅん
吟遊詩人「!!」
巨大な鎌を雨霰と放つレン。
ドガドガドガガッドガッーン!!
吟遊詩人「くっ!!」
ポニテ「!! 私の攻撃も両方交わすなんてすごい!!」
吟遊詩人(これは……今のうちに摘むしかないね~)
ギリィン
吟遊詩人が弦を弾くと
しゅるり
魔力が剣士の姿に変化する。
吟遊詩人「魔法歌、剣士の突撃~」
--草原--
ドンっ!!
魔力で実体化した剣士は、ポニテとレンの攻撃を掻い潜りレンに詰め寄った。
レン「……」
高速で振り下ろされる剣がレンに触れるより早く、
しゅ
鎌がゴーレムに変化し、剣士の攻撃を受けた。
ガギイイイイイイン!!!
吟遊詩人(!! 早い、思考の速度での錬成~……更に魔力は無尽蔵……~)
--草原--
ばしゅばしゅばしゅ
全ての鎌がゴーレムに変わる。
吟遊詩人(離れた物体もあっさりと!)
ゴーレム「ぐもおお!!」
ドガドガッン!!
吟遊詩人に次々に襲いかかるゴーレム。
ポニテ(くー! ゴーレムちゃんがいっぱいいると私の血が動かしにくいなー、私そこまで精密にうごかせないし)
吟遊詩人とゴーレムの戦いを離れた所から観察しているポニテは、血の杭を自分の元に集結させる。
吟遊詩人「?」
ポニテ(う、やっぱ血を操るのは簡単じゃないな。貧血になりそ)
--草原--
ぐちぐちぐちゅちゅ
ポニテの右手の掌に集まった血は一つにくっつき、更に魔力を吸って大きく変貌していく。
吟遊詩人(血の……大剣?)
ぼっ
ポニテが手にしたのは、燃える血の大剣。
吟遊詩人(!! かなりの魔力を練り込んでいる……。さっきと同じ特性をもっているのなら形状も自在に変化するのだろうし、めんどくさいな)
バキン!
吟遊詩人「!」
しかし、血の大剣は二つに分かれる。
あくまで双剣がポニテの戦闘スタイル。
ポニテ「さぁて二体一なんだし、勝たせてもらうよ!!」
--草原--
ガガガガガ!!
銀河「くっ!!こいつ」
サム「思ったよりしぶといでござるなぁ。名も無い騎士と思っていたでござるの、に!」
ギィン
サムの切り上げで銀河の鎧が切り裂かれる。
ブシャッ
銀河「がっ!!」
風雲「銀河!!おのれ!!」
ぱからっぱからっ
風雲は馬とともにサムに向かう。
サム「……邪魔でござるっ!!」
--草原--
ガギィアァン!!
雷鳴「s、shit!!」
馬と足を斬られた雷鳴はサムと二人の騎士の戦いを見ていることしか出来なかった。
ギギギギン!!
銀河と風雲の馬上からの剣撃をサムは刀一本で捌き続ける。
ガガガガン!!
サム「ぬぅ!!」
ドシュッ!!
銀河の刃がついにサムの肩を裂く。
--草原--
銀河「良し今だ!!」
サム「ッ!! させるかでござる!!」
ガァアン!!
サムの一振りは銀河を馬から落とすことに成功する。
銀河「ぐ!!」
風雲「うおおおおおお!!」
風雲は槍を回転させてサムに斬りかかった。
風雲(傷つき、体勢も崩れた今ならば!!)
シャッ!!
風雲「!?」
風雲の槍がサムに届こうかというその時、一瞬早くサムの刀が風雲の体を両断した。
ズシャアアアアアア
サム「スキル、逆境剣にござる」
--本陣--
ぴく
軍師「……なかなかやるもんだぜぃ」
軍師は一人、うんうんと頷いていた。
軍師「自ら三強の道を絶った臆病者と噂に聞いていたが、話が違うだぜぃ」
妃「関心している場合では無いですよ軍師~。それでも貴方がちゃんと指揮していればすぐに終わることですよね~?」
すりすり
妃は自分のまるまるとしたお腹を撫でている。
軍師「いや~……なにぶん戦場で任されている箇所が多すぎて、これでもいっぱいいっぱいなんですだぜぃ」
妃「泣き言は聞きません~。辛くてもこなすのが三騎士の仕事です~」
軍師「はぅあ……剣も持てないのに騎士なんて称号はほど遠いだぜぃ」
--本陣--
東の王(……こいつか)
東の王は座禅を組んでいる軍師を見て思う。
東の王(王国のジョーカー……その力は)
軍師「あ、E9制圧だぜぃ」
軍師は地図にチェックをいれる。
東の王(兵への作戦指示。何気ない指示ですら効力を発揮し、兵のステータスを上昇させる……)
軍師「筋肉質な女性騎士の君、ちょっと鼻毛出てるだぜぃ」
妃「……最低な指示~」
--本陣--
東の王(そんなことでもあがるのか……しかし警戒すべきだな。なにせこいつが指示するだけで、普通の兵の戦闘力が三強レベルにまで跳ね上がるかもしれんのだ)
東の王は眉間に皺を寄せる。
通信兵(東の王様、テレパシーで失礼します)
東の王(どうした? 何かあったか?)
通信兵(探ってみた所、やはりツインテ様のパーティがこの戦場にいるようです)
東の王(そうか。ツインテが東の王国を出た時に、侍も一緒にいたという情報は本当であったか)
通信兵(どうしますか?)
東の王(確保しろ。つつく材料になる)
通信兵(はっ)
--本陣--
軍師「……」
軍師はうっすらと目を開けていた。
軍師「妃殿、私は侍の担当から降りるだぜぃ」
妃「……は~?」
軍師「侍一人を倒すために全ての指揮力を使うならまだしも、このままじゃ消耗するだけだぜぃ。ちょっと力をくわえなきゃいけないとこも出来そうなんで降りますだぜぃ」
妃「……」
軍師の真剣な表情を見て、妃も考える。
妃「ならどうするのですか~? 野放しはまずいでしょう~?」
軍師「三強クラスを数人投入しちゃうだぜぃ」
--本陣--
通信兵「!」
東の王「バカな……」
軍師「それなら指揮なんかしなくても余裕のよっちゃんってもんだぜ」
妃「……わかりました~。通信兵ちゃん? まわせそうな三強をまわしてくださいな~」
通信兵「あ……東の王様」
通信兵は困ったような顔で東の王を見る。
東の王「く……確かに野放しはできん男だ。あれの出自は我が国だしな。通信兵、どうにかして二、三人向かわせろ」
通信兵「は……」
軍師「……」
--草原--
ザシュッ、ズブ
雷鳴と銀河に止めを刺したサムは額の汗を拭う。
サム「ふぅ……さて、すぐ見つかってくれればよいのだ、が……」
召喚師「自分の死に場所をでやんすか?」
サム「!」
召喚師は無数の蜂を従えて参上する。
サム「召喚師殿……また面倒くさい人が現れたものでござる……」
召喚師「む、面倒くさいとはなんでやんすか! せっかくこちとら持ち場を放棄して来てやったでやんすよ!」
サム(……そういう所も含めて面倒なんでござるよ)
--草原--
サムは左手で刀の鞘を持ち、集中力を高めている。
サム(古くからの戦人。キャリアは長く経験豊富。その戦略は多岐に渡り様々戦局に対応できるとか。……噂しか知らないでござるが)
ザッ!!
絵師「ふぅー!! 手間取っちゃったギャハハ!! てかダルい相手だから押し付けて逃げてきちった!!」
獣のように四足歩行で現れた絵師。
サム「絵師殿……まさか三強が二人も来るとは豪華でござるな……」
さすがのサムも冷や汗を垂らす。
召喚師「それだけ警戒しているということでやんすよ。出来るなら乱暴にしたくないでやんす、無抵抗で捕まってくれると嬉しいのでやんす」
--草原--
サム「……せっかくでござるが、拙者何も悪いことしてないゆえ、捕まるわけにはいかんのでござる」
サムはきっぱりと召喚師の目を見ていった。
絵師「ギャハハ!!」
召喚師「はぁ。堅いとことかお父上にそっくりでやんすなぁ」
召喚師は困ったように笑う。
ゆらっ
サム「」
その時サムは、視覚や聴覚では感知出来ない大気の僅かな揺れを感じとった。
す
そしてその場所へ音も無く刀をふるう。
ギィン!!
隠蔽兵(!! 接近に気付かれたか!)
--草原--
サム(もう一人……! だがこれは誰でござる……?)
ブゥン
剣を弾かれた隠蔽兵はその姿をあえて見せる。
サム「……」
隠蔽兵「侍様ほどの人に名乗らないのは失礼ですね……私は東の王国の隠蔽兵と申します。もしかしたらもこもこ討伐の際にお会いしたか
もしれませんが」
隠蔽兵はビシッと背筋を伸ばしサムに名乗りあげる。
サム(ツインテ殿達とさして変わらぬ少年(少女?)だというのにこの戦場に……)
隠蔽兵「もし侍様に東の王国に戻る意志が無いようならば」
隠蔽兵の瞳が暗くなっていく。
隠蔽兵「ここで倒してしまえ、との命令を私は受けています」
--草原--
サム「!?」
サムの反応速度を持ってしても、隠蔽兵が接近することに気付かなかった。
サッ
ギィン!!
サム「……!!」
隠蔽兵「! ……やはり弾かれますか、今のはやれたと思いましたが」
プシッ
サムの頬が裂ける。あと一瞬遅かったら……
サム(……ここにもいたか)
召喚師「さて手早く終わらせるでやんすよ」
絵師「自ペイント、カラーリングギャハハ!!」
絵師は自分の腕に絵を書き始める。
隠蔽兵「いきます」
サム(ツインテ殿達と同じく天賦の才を持つものが)
--草原--
ガガガ!!!
剣豪「ちぇいッ!!」
ツインテ「」
ドパッ!
全ての触手をかわした剣豪はその勢いのままツインテの首をはねた。
が、
ツインテ「~~かははっ!そんなのこの中じゃ意味ねぇんだよ!!」
瞬時に元通りになるツインテは振り向きざまに触手を放つ。
シャ
しかし剣豪はすでにツインテに触れられるほど近くに来ていた。
ガズン!!
--草原--
ツインテ「ぐッ」
剣豪「……どんな傷も治し、どんな死からも帰ってくると言うんならよ」
剣豪は胸に突き刺した刀をねじり、ツインテの上半身を両断する。
ブシッ!!
ツインテ「げっ」
剣豪「その魔力が尽きるまで痛め付けてやる」
ブシャーー!!
ツインテの血を浴びながら次の一撃に備える剣豪と、再生しながら剣豪に反撃しようと動くツインテの触手。
剣豪「奥義、」
ミシッ
剣豪の放つ闘気によって世界が止まる。
--草原--
ツインテ「やっ」
剣豪「天翔牙突六連ッッ!!」
ツインテ「」
キィン……ズッガガガガガガガガガガァァァァァァァァン!!!!
高速の突きの乱れ打ち。
それはいともたやすくツインテの肉体を粉微塵に変えてしまった。
剣豪「……」
じゅる、じゅるる
それでも、ツインテの体は一つに戻ろうと再生を始めている。
剣豪「……は」
剣豪の頭上をツインテのパーツが飛んでいる。
ツインテ「ま、まけ」
ばちん
ツインテ「負けられ、ない」
剣豪「……!」
グシャ!
--草原--
ガギギギギキィン!!
槍兵(な、なんだこれはよぉ!!)
ズシャ!
アッシュ「」
アッシュの猛烈な攻撃の嵐。思わず一歩退いた槍兵は太ももを裂かれる。
槍兵(ちっ……タイミングが取れねえし、気配が読めねぇ。こいつはまさか……)
アッシュ「ぎ。ぎ。ぎ。ぎ」
アッシュはぽたぽたと血を垂らしながら槍兵に走り寄る。
槍兵「……へ、わっかんねぇなぁ。どうしてそこまでして戦うかね」
槍兵は槍を強く握り締めた。
--草原--
ギギンギギギン!!!
槍兵「ほっときゃ後一時間もしないで死ぬ傷だぜ?そいつは」
ぽたぽた
アッシュ「ぎ。ぎ。ぎ。ぎ」
・
音もないアッシュの踏み込み。
槍兵「」
ギィガァン!
槍兵「ッちぃ!」
ガッギギッ、ガガガガ!
槍兵は小回りの効かないはずの槍で華麗に弾いていく。
槍兵(……やべぇ、ちっと楽しいじゃねぇか)
--草原--
ガゴッ!
槍がアッシュの肩を薙ぎ払い、容赦無用に骨を叩き折る。
アッシュ「」
どさっ
槍兵「しぇいっ!!」
バランスを崩したアッシュに渾身の力を込めた槍が迫るも、
しっ
アッシュは体を捻るだけでそれを避けて、
てっ、てっ
槍兵「ッ!」
がちぃん!!
ナイフで槍兵に斬り付けた。
--草原--
槍兵「はっふへぇ(危ねぇ)!」
ナイフを歯で受け止めた槍兵を見て、アッシュはもう片方のナイフで
ドガッ!!
アッシュ「ぎ」
斬ろうとするがそれよりも一瞬早く、槍兵がアッシュの腹部を蹴りあげた。
槍兵「べっ」
カラン
槍兵が吐き捨てたナイフ。それには毒も混じっていた。
槍兵(……スキルかけてなきゃとっくのとうにやられてるな……三強がなんてざまだ)
--草原--
くるん
槍兵が槍を回して最善の攻撃態勢に入る。すると、
アッシュ「~~」
槍兵「……?」
アッシュが何かをぶつぶつと呟いていた。
アッシュ「~~つは」
槍兵「……」
アッシュ「……あ、いつは……ずっと……俺たちに、気を使って、いた」
アッシュは肺を絞りだすように喋った。
--草原--
サム「……」
ぽた、ぽた
召喚士「プライドが傷つくでやんすね……三強が二人なんでやんすよ?こっちは」
頭部や腕から流血しているサムはじっとチャンスを待っている。サムは三人の猛攻をギリギリの所で耐えていた。
絵師「ぎゃははは!強いなぁ兄さん!」
サム「いやいやそんなことは……」
ギィヤン!
突然背後に向かって剣を振るったサム、そこには隠蔽兵が。
隠蔽兵「ぐっ!」
--草原--
サム「おや、今のはさすがに首を貰えたかと思ったのに……残念でござるなぁ」
隠蔽兵(ジャミング、だぞ?姿を隠すのとは違うのに!)
ガッギガ!!
打ち合いに押され隠蔽兵は後ろに後退していく。
召喚士(集中狙いはまずいでやんすよ)「二頭巨象!!」
二頭巨象「ぱぉぉん!!」
サム「!」
どがぁん!!
--草原--
サム(く、重く範囲の広い攻撃。少々やっかいでござる……やはり三人はきついでござるぜ)
どぉんどがぁん!
絵師「……ぎゃははは!いいや!奥義使っちゃうか!あんたはそれに値する敵だ!」
召喚士「!?」
体力と魔力を大量に消費することの多い奥義、それを使うということは戦線離脱もやむを得ないという意味である。戦争は一人倒せば終わるわけではない。どんな敵とこの後鉢合わせるかわからないのだ。
絵師「ぎゃははは!召喚士さん!本陣までエスコート頼むよ!」
召喚士「……わかったでやんすよ」
サム「」
その時サムは、表情を少しも変えることなく、笑った。
--草原--
絵師「ぎゃははは!いくぜ奥義!」
ず
奥義発動の構えを取ろうとした絵師。決して油断していたわけではなく、発動までのラグもないのだが、
サム(それを待っていたのでござる)
がずん
絵師「」
誰にも反応出来ぬ早さで、サムの突きが絵師の喉を貫いた。
ぷしっ
絵師「げひゅ!」
--草原--
召喚士「!?」
サム「対奥義、奥義崩し」
ぶしゃぁぁぁ!!
召喚士「なっ!?」
隠蔽兵(早い!カウンターゆえの速度補正か!)
隠蔽兵が剣を構えた時、
隠蔽兵「!」
隠蔽兵は何かを感じ取った。
--草原--
隠蔽兵「この威圧感……」
隠蔽兵は遥か彼方の戦場に意識を向ける。
ドクン
脳裏に浮かぶのは、人が干からびるまで全てを吸い尽くしていたあの外道達。
隠蔽兵「……見つけた」
ダッ
召喚士「!?どどどどこいくでやんす少年!?」
隠蔽兵はあっという間に戦場に消えた。
サム「……おやおやこれはこう都合でござるなぁ」
召喚士「……」
--草原--
ポニテ「はっ、はっ、はっ……ぐぅ」
剣を杖がわりに立ち上がるポニテ。まさしく満身創痍だった。
レン「……、……」
白い頭髪が赤く染まったレン。それでも表情は機械的な無表情のまま。
変化師「ふ、ふーっ」
吟遊詩人「たらららぁん」(……ヘルプが無ければ危なかったかもしれないな~)
変化師「す、スキル身体変化」
ポニテ「!」
変化師はポニテ目がけて飛んだ。
変化師「た、虎兎!」
右腕は虎の頭に、左腕は兎の頭にそれぞれ変化する。
ブシャァ!!
--草原--
ポニテ「ぐ、あっ!!」
ポニテの双剣では受けきれない動作。
変化師「も、もうやめろ。お、おでは君たちを殺したくなんてない」
ポニテは新たに出血した血を動かそうと試みるが、
ポニテ(ガス欠……)
レン「ッ」
レンは一瞬で巨大な槍を錬成し、同じく錬成したゴーレムに投げ飛ばさせようとするが、
バキャッ!
吟遊詩人「おいたはここまでだお嬢ちゃん~」
吟遊詩人の何らかの攻撃で粉砕されてしまう。
--草原--
ぼたっ、ぼたぼた
ポニテ「はーっはーっ」
レン「……」
ぱきぃん
レンの背中の羽がガラスのように割れる。その直後、
レン「ごぷっ」
レンは大量の吐血をして倒れた。
吟遊詩人「でしょうね~あれだけの常軌を逸した力……何かしらの反動が無いほうがおかしいね~」
ポニテ「れ、レンちゃん!」
ぐ
変化師のポニテを押さえ込む力が強くなる。
変化師「も、もうやめろ。わ、悪いようにはしないから」
--草原--
ポニテ「ッ……」
ポニテは涙を貯めた目で変化師を見る。
ポニテ「……でも……私達が戦わなかったら……亜人のみんなは助からない」
変化師「!!」
ポニテは大粒の涙を溢す。
ポニテ「私達が戦わなきゃ、誰も亜人の味方がいなくなっちゃうじゃんか」
変化師「……」
ポニテ「私嫌だ。亜人のみんなが差別されて、それを横目に裕福な暮らしをしたって、ちっとも幸せじゃない……!」
--草原--
吟遊詩人「……」
ぽた、ぽたぽた
ポニテ「これ以上……亜人の扱いがひどくなったら、きっとレンちゃんも……そうしたら私達は離れることになる……! それは、絶対に嫌!」
ばち
ポニテは自分の肉が引きちぎれることを承知で変化師の腕を振り払う。
ぶちぃっ!!
変化師「!」
ぽたぽたたっ
ポニテ「……レンちゃんは、ずっとよそよそしかったんだ……」
--草原--
あれから幾度となく剣豪の刃はツインテの息の根を止めた。だが、
うじゅるぶじゅる
剣豪「……」
悪臭を放つ肉が何度も寄り添って人の形を成す。肉が幾重にも積み重なり、大地に流れた血液が本体目がけて逆走する。それはまるで終わらない呪いのようだった。
北の弓兵士「……」
南の歩兵「……」
結界の外からツインテ達の戦いを見ていた兵士達は、そのあまりに凄惨な戦いに釘付けとなって、戦闘を放棄していた。
ちわわ亜人「これが……戦い」
初級兵「や、やだ……もう戦いたくない……」
周辺にいた者達は、戦意を根こそぎ喪失していた。
--草原--
剣豪「……もうやめろ」
ぐちゅるぶちゅる
剣豪「やめろ……」
にちゅるむちゅる
剣豪「……俺をここに束縛し続けるお前の目的は、もう十分に果たされただろ……?」
ぐじゅ
ツインテ「……くそ、何が六連だ。しこたま突いてきやがって」
頭部だけのツインテが悪態をつく。
剣豪「この空間を満たす魔力は枯渇しようとしている。もう戦闘は長引かない……痛みを我慢し続ける必要も、ない」
--草原--
ツインテ「……あぁ?まだ俺は終わって」
剣豪「嬢ちゃん」
ツインテ「ない……ぞ」
ツインテの言葉を遮るように言い放ち、ツインテの髪の結び目を交互に指差した。
そう、ツインテのリボンは二つ。
ツインテ「ま、まだ、俺は、戦える」
震える。
剣豪「死に貧するほどのダメージならば、お前の中の人格を気絶させられることはわかった」
ツインテ「!……」
--草原--
剣豪「だから途中で男口調のやつが気絶したのも知っている。そして女口調の奴があれから現れていないことから察するに、精神のダメージは簡単には治せないようだな」
ツインテ「あっ、う……」
剣豪「……かまだよ。もう少し秘密を守る表情作りを修行しないとな」
ツインテ「」
会話の途中で、ツインテの体は修復しきる。
剣豪「なんにせよ見上げた精神力だ。いや、異常なほどだ。何度も繰り返される死のダメージに、お前は、たった一人で耐え続けた。俺とて短時間にこれだけ殺されてはわからない。……見事だ」
剣豪はツインテに賛辞を送る。
剣豪「だがそれだけに気になるな。なぜそうまでして亜人の味方をするのか」
周囲の人間も固唾を飲んで見守っていた。
剣豪「人と国に決別してまで亜人が大切なのか?」
--草原--
ざわざわ
ツインテ「……」
ビキッ
ツインテはボロボロになった義手を無理やり引きちぎって捨てる。
ガシャ
ツインテ「……ボクは亜人さん達だけの味方というわけではありません」
ざわ
剣豪「なに……?」
ツインテ「ボクが今ここで戦っているのは、この戦いを止めたいから、です」
ざわ、ざわ
ツインテ「本当は、差別もいじめも、人の争いごとをみんな止めたい……。戦わなきゃダメなこともあるのかもしれませんが、ボクは戦争が嫌いです。お互いが傷つくだけに決まってます」
剣豪「……」
ツインテ「みんな無理してるんです。傷つける側だって辛いはずなんです」
--草原--
ざわざわ
ツインテ「剣以外でもきっとわかりあえる」
剣豪「そのためのこの奥義か。終わらない戦い、そして会話をするための」
ツインテ「……はい。この際時間を稼ぐために言ってしまいますけど、他には感覚区域の増大があります」
剣豪「?」
ツインテ「簡単に言うと、この中で戦った相手の戦法とか癖や動き方を学習してその対抗策や弱点を練るための領域でもあります」
剣豪「……!」
ツインテ「治すためにダメージ履歴を強引に閲覧したり、修復する際に体の構造を理解したり」
剣豪「!」
ぞく
剣豪(こいつ……)
--草原--
ツインテ「更に言えば、相手の体を修復した時に僕の魔力を付着させて、相手の位置情報が常にわかるようにすることも出来ます。そして極め付けに僕は、魔力暴発も扱える」
剣豪(……ただの修復だけの力だけではない……心を折ることが出来なかった場合、相手が説得に応じなかった場合、その敵を始末することも勘定に入れているのか?)
ツインテ「……」
びゅううん
そう言ったツインテは絶対回復領域を解いた。
剣豪「……瞬時に回復したから定かじゃねぇが、一撃か二撃、貰ってたのか?」
にっ
ツインテ「……さぁ、僕にはわからない」
--草原--
アッシュ「レンは、仲間である、俺達にも、しばらく、猫語尾を、使わなかったんだ」
槍兵「?は?」
アッシュ「あいつは、フードをかぶり、亜人の特徴を、隠そうと、していたんだ」
--草原--
ポニテ「最初は一緒にお風呂に入るのすら嫌がった……それだけレンちゃんは今まで迫害されてきたんだ……」
吟遊詩人「?」
--草原--
ツインテ「……」
剣豪(錯覚か?今何か……)
ツインテ「……ボク達の仲間にも亜人がいることは知っていますよね?」
剣豪「?いや、しらん」
ツインテ「え?そう、ですか」
--草原--
ツインテ「ボク達にはレンさんという亜人の女の子の仲間がいるんです。レンさんは、最初会った時は亜人だってことを隠していました。それはきっとレンさんが今まで辛い日々を過ごしてきたからに違いありません」
剣豪「……」
--草原--
アッシュ「だが、心のかべ、なんてもの、は、同じ釜の飯を食う、うちに、なくなった」
--草原--
ポニテ「一緒に旅をしていくうちに、私達は本当に友達になれた……」
--草原--
ツインテ「ボクたちは家族も同然の」
アッシュ「かけがえのない、仲間に」
ポニテ「仲間に、なったんだ!」
--草原--
吟遊詩人「……」
ツインテ「貴方達の決断は間違っている……ボク達でも仲良くなれたんだから、貴方達が仲良くなれないわけなんてないんです!」
--草原--
アッシュ「だという、のに、その手段を、考えず、安易に、武力で制圧、しようと、する、キサマラを」
--草原--
ポニテ「止めないわけにはいかない……私は亜人だけの味方じゃないよ。そんな差別はしない。私は、虐げられし者達を助ける。ただ単純に理不尽な暴力を許せないんだ!」
--草原--
ツインテ「だからボクは……ボクたちは、不条理を断ちます」
剣豪「……」
--草原--
アッシュ「そのためならば、人とだって、戦おう」
--草原--
ポニテ「私の未来の友達候補をいじめるのなら、私は戦う!」
--草原--
ツインテ「みんなが仲良くなれる時が来るまで……ボク達は戦う……!!」
きっといつかは魔王とだって、仲良くなれる。
剣豪は、最後にツインテがそう付け足した気がした。
--草原--
五代目「……」
伊達男(強い……まがまがしいオーラを感じるのに、なぜか心地よい。こんな感覚は初めてだ……)
メイド「五代目様、この守り、我ら三人おれば十分でございます」
番犬「ばう。他の兵はここにはいらないばう。巻き添えに巻き込むだけばう」
五代目「ふむ……というわけだ。兵を下げて休ませるか、一気に攻めるか、好きに選択するがいい」
鼠亜人「ちゅ、ちゅー!?いや、でもいくら助太刀してもらったからって、そこまで信用するわけにゃいかないちゅ……」
五代目「む、確かに」
守りの彼らが裏切ればたちまち城は落とされてしまうのだから。
--草原--
メイド「五代目様が信じられないでございますか!?」
番犬「お前達が邪魔なことにはかわらないバウよ……?」
鼠亜人「ちゅ、ちゅー……」
おほん、とわざとらしく咳をする伊達男。
伊達男「ではこれでどうでしょうか?私のスキル、約束で行動を制限してみては?」
鼠亜人「?へ?」
伊達男「一個の約束をさせてこの手錠をつけるのです。手錠をつけられた人物は約束を反古に出来なくなります。破れば、死」
メイド「!な、なんで善意で助けてやってるのに五代目様がそこまでしなきゃならんのでございますか!!」
--草原--
鼠亜人「……た、確かにそこまでされたら信じるしかないちゅが……」
五代目「……」
五代目は鼠亜人の顔を見る。
五代目「そんなことでいいのか。なら頼む」
番犬「!?」
メイド「五代目様!?」
伊達男「……よろしいので?」
五代目「あぁ。構わない。俺は弱きを守り、あの村を守り、そこにブラとともに住むのだ。そんなことで信用を得られるなら」
五代目は腕を差し出した。
--草原--
伊達男「鼠亜人さん。約束の文脈は貴女が決めてください」
鼠亜人「じゃ、じゃあ、私が戻るまでこの場所に留まり戦って欲しい」
伊達男「スキル約束、発動」
バシュッ
メイド「……それあなたが戻って来なかったらどうなるでございます?」
鼠亜人「ちゅ?」
伊達男「解除されませんね。でもその場合は約束相手が死ねば解除されますし、私が直に解除しますよ」
番犬「お前も死んだらどうなるバウ?」
伊達男「……その時も解除されますね」
ギラついた番犬の眼だった。
--草原--
五代目「ふ、しかと約束、引き受けた」
鼠亜人「う、うん、頑張ってちゅ。私達は少し休んだ後前線で頑張ってくるちゅ」
南の兵士を引きつれて城壁の中に入る鼠亜人。
メイド「……はぁ。全く人がよすぎでございます。そのせいで人に裏切られたことを忘れたのでございますか?」
五代目「……あれはあれこれはこれだ。過去は過去だ」
五代目はメイドと番犬を見て笑みを浮かべた。
?「あれはあれ……?これはこれ……?」
五代目「!」
メイド「!この感覚は以前にも味わったでございます!」
--草原--
番犬「!!屋敷でかバウ!」
スッ
?改め隠蔽兵「……」
五代目「連合の兵士か……見たところ随分と若いな」
メイド(そっか、五代目様はこいつを見たわけではないでございます)
隠蔽兵「……また、人を食らいに現われたのか……」
五代目「……いや」
隠蔽兵「……ふざけた奴だ」
ミシシッ
隠蔽兵は拳を強く握りしめる。
--草原--
ぽたぽた
隠蔽兵「人を……村を壊滅させておいて、過去は過去……だと」
メイド「……!」
番犬(あの頃の五代目様と今では!)
隠蔽兵「貴様は、俺が始末する!」
ガギィャアン!!
激烈な飛び込み。その気迫は圧倒的な実力差のある五代目さえ押されてしまう。
五代目「む……」
ピキ
受けた鎌にひびが入る。
--草原--
メイド「貴様!」
五代目「やめろメイド」
それを五代目が制止。
五代目「……成る程、あの村の生き残りか。それなら俺を憎むのもわかる」
隠蔽兵「ふっう!!」
五代目「あの時は記憶が曖昧だったんだ、すまん」
隠蔽兵「」
五代目はあっけらかんと、謝罪の言葉を口にした。
ぎり
隠蔽兵(何を、言ってるんだこいつは、あれだけのことをしておいて)
風が巻き起こる。
隠蔽兵「何を……言ってやがんだてめぇはぁぁぁぁ!!」
--草原--
槍兵「……」
--草原--
変化師「……」
--草原--
剣豪「……」
剣豪はツインテを見つめたまま思い出に浸るように喋り始めた。
剣豪「……竜亜人の伝説というものがある」
--草原--
剣豪は言葉を噛み締めるように声を発する。
剣豪「今から……そうさな、60年くらい前か?前の前の魔王が死んですぐに事件があったんだ」
--草原--
槍兵「竜亜人という伝説の亜人の生き残りが引き起こした大量虐殺だ。その時に犠牲になった人間は推定不能。魔王から受けた被害をはるかに上回る凄まじい事件だった」
アッシュ「!」
--草原--
変化師「と、当時の権力者が根回ししたのか、その事件を目の当たりにして生きていたものが少なかったせいなのかはわからないが、お、公の記録に残ることは無かった、とされている」
--草原--
ポニテ「……」
吟遊詩人「この世に地獄を再現した竜亜人は~、一部の亜人を率いて世界征服を開始したという~。もっともその後すぐに、竜亜人は亜人王と鬼亜人によって仕留められるんだけどね~」
レン「……」
--草原--
剣豪「これが記録に残らなかった闇の事件だ。記録には残らなかった分人々の記憶に強く残ったがな」
ツインテ「そんな歴史……知らないです」
剣豪「そりゃそうだ。三強以上の立場になると開示される情報の一つだからな。あの時代から生きていない限りまず知らないだろう」
--草原--
剣豪「今でも脳裏に焼き付いて離れねぇ血の記憶。亜人と関わると自然とそれを思い出してぎこちなくなり、話したわけでもねぇのにそのしこりが子供に伝わりどうしようもない壁が作られる」
今のじじいばばぁしか直接には経験のないことなのによ、と剣豪。
ツインテ「……!」
剣豪「少しでも亜人がらみの事件があるとそれを連想しちまうんだ。次はどこであれが起きる?その前に全力で押さえ込んで止めなきゃならない、と」
かちん
剣豪は刀を鞘にしまった。
剣豪「俺らは、亜人が怖いんだよ。あのモンスターと見分けのつかない生物が」
剣豪は言った。
--草原--
剣豪「人は臆病で脆弱なんだ。敵だかなんだかわからないものを、野放しに傍においては置けない」
剣豪は言った。
剣豪「だから仕方のないことだろう?これは侵略でも抑圧でもない、ただの防衛なんだ」
剣豪は言った。
ツインテ「……仕方ない、なんてこと、あるわけないじゃないですか」
ツインテは言った。
ツインテ「先人のやったことを、今の子供たちにまで押し付けるなんて、間違ってる……」
剣豪「……」
ツインテ「そんなの、犯罪者の家系は全員ダメだって、言ってるようなものじゃないですか……」
--草原--
剣豪「……犯罪者の家族はその負い目から決して武器を持たないだろう。怪しい行動をすればすぐに糾弾される。……追い詰めない限り、やつらは無害だ。だが亜人は違う」
ツインテ「……生まれながらに強いから、ダメなんですか?」
剣豪「あぁ。あいつらの握力なら子供であっても、簡単に首をねじ切る。子供同士で遊んでるのを見るとひやひやするぜ」
ツインテ「……モンスターと見分けがつかないから、ダメなんですか?」
剣豪「あぁ。そもそも亜人とモンスターを明確に分ける手段すらない」
ざわ
ツインテ「……それなら……悪人と善人だって外見だけじゃわからないッ」
ざわ
剣豪「……」
--草原--
ツインテ「……はっ、はっ」
ざわ、ざわ
剣豪「……生粋のお姫さまなんだな。さすがは言うことが違う。清廉潔白そのものだ……」
ツインテ「ボクは……お姫さまなんかじゃないです。それと……清廉潔白でも、ない」
剣豪「……」
ツインテは俯きながら声を弾く。
ツインテ「ボクは弱い……本当なら戦いなんて、したくはなかった」
ざわ
ツインテ「そんなボクがなんで……戦場に立って、東の王国最強の剣豪様と対峙しているのか……今でも正直不思議です」
--草原--
ざわざわ
ツインテ「いつの間にか、ボクの拳も武器になってました……自分以外の血に濡れたりもしました……」
ざわざわ
ツインテ「……自分のふがいなさのせいで友達が傷つくことになっちゃったし、ボクも腕を失った……。いつからボクの手は人を殴るためのものになったんだろう……」
ざわざわざわ
ツインテ「本当なら、クッキーでも作って、みんなと紅茶でも飲んでいたかったのに……」
剣豪「……」
ツインテ「でも外にでなくちゃこんなことはわからなかった。こんなにも間違った世界だなんて……思わなかった」
ざわざわざわざわ
ツインテ「意志の通じる同胞を、差別して当たり前だと言い張る世界だなんて!」
ざわざわざわざわ!
--草原--
ツインテ「意志を通すには力しか……ない。もうボクの手はクッキーを作らない。この拳は戦うために!」
ツインテは全ての魔力をその拳に集中させた。
ツインテ「勇者仮パーティ勇者候補その三、ツインテ。……参ります」
--草原--
アッシュ「過去のせいで、今生きてる者達を、殺させる、わけには、いかない」
アッシュが腰を沈めた。
アッシュ「勇者仮パーティ勇者候補その二、アッシュ、裂く」
--草原--
ポニテ「平和に終わらせるために……戦争をするよ!!」
ポニテは血の大剣を構えた。
ポニテ「勇者仮パーティ勇者候補その二、ポニテ……行くよ」
--草原--
しゅううう
聖騎士「ぬぅぅぅ……中々ぁぁ楽しませてくれるではぁぁないかぁぁ」
服がボロボロになった聖騎士と鬼姫。
鬼姫「そりゃ、どうもっす」(やれやれ、一人対一人と一匹というハンデはあるっすが、少し押され気味っすね……)
鬼姫は構えを崩し深呼吸。
鬼姫(けど竜の羽は壊れたっす。地を這う程度ならあんまし怖くはないっす)
灰竜「ぐおるるるるううう」
聖騎士「……ぶるるるあぁあぁあっ!!久しぶりぃぃだぁああ!!この我えぇぇがぁああ本気で闘えるのはぁあなぁああ」
ざっ
聖騎士が地面に立つ。
鬼姫(竜から降りた?聖騎士が乗り物からおりるなんてどういうことっすか)
聖騎士「我は騎士でもあるがぁなぁあ。我は、単体のほうがぁ強いのよ」
ひゅ
鬼姫「」
鬼姫の反射速度をもってしても、捉えきれない速度で、
ゴッ
聖騎士の拳が鬼姫の顔面を打つ。
聖騎士「ふぅう……竜人モオオオオオドオオォ」
聖騎士の尻から尾が、頭部から角が生えた。
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった5【後半】
元スレ
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった5
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1326724911/
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった5
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1326724911/
「勇者・魔王」カテゴリのおすすめ
- 女騎士「絶対に死んでたまるか!!絶対にだ!!」
- 少年「勇者に選ばれたんだ」幼馴染「どゆことー!?」
- 女騎士「警備というのも、ヒマなものだな」オーク「まったくだ」
- 皇帝「このクソブスが!」皇后「お、勝負すっか!?」
- 女騎士「くっ、殺せ!」オーク「わかった」ザシュッ
- 魔王「病んでれ?」
- メカ僧侶「ユウシャサマ カイフク ヲ スイショウシマス ピピッ」
- 姫「どこだ、ここは?」
- FPSジャンキー「このゲームのロビーは酒場なのか」 店主「ん?」
- 勇者「魔王、お前が死んで3年か」
- 鍛冶師「人里離れた所でひっそりと暮らしてる」
- 勇者「エロい僧侶とエロい魔法使いをください」
- 女騎士「オークとは200回以上性交しています」
- 女勇者「伝説の武具を売って欲しいって?」商人「おねしゃす!」
- 女勇者「強くてニューゲームっ♪」
- 魔法使い「あっ!」
- 魔王「貴様誰だ!」スネーク「武器を捨てて両手を頭の後ろに回せ!」
- 勇者「まずは仲間を集めなくてはならんぞこれしかし」
- 勇者「結婚してください!」スライム娘「え!?」
- 勇者「共に歩み、共に生きる」
「ランダム」カテゴリのおすすめ
- 跡部「あーん?ポケモンだぁ・・・?」
- 俺「あー妹をデートに誘いたいなぁ」 妹「ん?」
- 兄「日本衰退の原因について考えるぞ!」姉・妹「はーい!」
- ゴジラ「スカイツリー」ガメラ「最初に誰が」ウルトラマン「壊すのか」
- 菜々「へぇ、みんなもウサミン星出身なんですか」
- モバP「ホワイトデーだから、皆にお返ししちゃうぞ」
- あかり「ちなつちゃんとキスしちゃった…」
- さやか「ふーん、悪魔の癖にスカートめくられるのが嫌なんだ…」
- モバP「雫はどこまでしてくれるのか」
- シャーリー「ルルは女の子の気持ちを理解してない!」ルルーシュ「」
- 俺「もしや、貴様!……『内定者』か!?」
- モバP「……アイドルのお仕事、ですか」ちひろ「はい!」
- モバP「臨時の事務員」
- 妹「姉と風呂入るくらいならお兄ちゃんとSEXする方がマシ」 姉「」
- 愛「反抗期だよー!」 舞「ふーん?」 愛「げえっ! ママ!」
- 織姫「黒崎くんが私を無視するの……」チャド「……む。井上もか」
- 鬼「千川ちひろっているじゃん?」悪魔「うん」
- 春香「千早ちゃんっ♪」 千早「なに? 春香」ブンブン
- リュウ「安価で俺よりも強い奴に会いに行く」
- 千早「今日は雪がすごいわね。雪歩……ぷふっ」 雪歩「えー……」