酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった4【後半】
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--中央荒れ地--
ダンッ!
人造魔王「火属性対単体攻撃魔法レベル4」
人造魔王は巨大な炎の球体を放った。
ゴオオオ!!
剣豪「!馬鹿野郎が……」
陸王もこもこ「がああああ!!」
ヒュンヒュン
それをなんなくかわす陸王もこもこ。
人造魔王「ア、アリ?」
人造魔王が頭を捻っている間にも陸王もこもこは接近してきている。
--中央荒れ地--
剣豪「今のあいつの速度だったら対単体魔法は当たらん。雷ならかろうじていけたかもしれんが」
剣豪は、恐ろしい速さで駆けてくる陸王もこもこに向かって走りだした。
剣豪「やるなら範囲攻撃魔法だ、わかったか?」
ガキィン!!
踏み込んだ一撃。
剣豪「ッ!?」
だが剣豪の刀は爪によって弾かれる。
剣豪(もはや技でどうこうできる威力じゃない!)
--中央荒れ地--
陸王もこもこ「」
陸王もこもこの爪が振り下ろされた。
ス
剣豪(一歩下がれば致命傷は避けられるか?いや無理だな、これは擦っただけで致命傷だ。例え一度避けても追撃でやられちまうし。ちっ、惜しいとこまでもってったのによ……ってスローモーションになってやがる。死ぬ直前だってことか?……死ぬのは久々だな……ここで死んだら蘇生は無理かもしれねぇな。あのクソ息子は……)
ザンッ
剣豪「」
陸王もこもこ「」
爪が剣豪に触れるか触れないかというギリギリのタイミングで、
ギィアン!!
侍「」
--中央荒れ地--
侍の刃が陸王もこもこの腕を弾いた。
侍「……かったいでござるなぁ。本当に防御力落ちてるんでござろうか」
ドガァン!
そらされた陸王もこもこの右腕が地面にめり込む。
陸王もこもこ「がる!?」
剣豪「……やっと来たか」
チン
侍は刀を鞘に戻す。
--中央荒れ地--
侍「別にあんたの為に来たわけではないでござる」
剣豪「だろうな」
侍「別に国の為に来たわけではないでござる」
剣豪「だろうな」
侍「……全ては我が主君の命により」
剣豪「はん。古風な奴だなお前。誰に似たんだか」
侍「少なくともあんたじゃないでござる」
剣豪「知ってらぁ。お前は母親似だ」
人造魔王「オオー、ゾウエンダー」
--中央荒れ地--
陸王もこもこ「がるるるる……」
侍「……」
侍と陸王もこもこは対峙する。絶対の強敵を前にしているというのに、侍は普段と何ら変わらずしまりの無い表情を浮かべていた。
陸王もこもこ「がるるぁぁ!!」
陸王もこもこは飛び付くも、
バジィン!!
攻撃に繰り出した前脚を叩かれる。
人造魔王「ナニアレー、メッチャハエー」
超高速の居合い抜き。それは激昂状態の陸王もこもこですら捌き切る速度を持っていた。
--中央荒れ地--
ス
そしてまた納刀。
陸王もこもこ「がるるぁぁ!!」
バジィン!!
侍(……重いでござる……防御力が下がっていなければ到底弾くことかなわず……いや今のままでさえあと何度弾けるか)
侍は右腕が痺れていることに気付く。
剣豪「おい青二才、さっさと決めねぇと先にくたばっちまうぞ」
侍を横目に、刀片手に剣豪は走る。
侍「む……まだ試したいことがあるでござるに。とはいえ厳しいのは事実、早めに決めるか」
剣豪「おいお前」
人造魔王「ボク?」
剣豪「そうお前だ。お前俺達に魔力供給出来るか?」
人造魔王「ヤッタコトナイカラワカラナイケド、タブン」
剣豪「よぉし、じゃあやれ」
人造魔王「ウン、ワカッター」
剣豪「くく……久しぶりだぜ。裏奥義をプレゼントしてやるよ」
--湿地帯、ファクトリー--
変化師「……」
紫もこもこ「司令官型に話があってきたもきゅ」
側近もこもこ「話……?」
紫もこもこ「そうもきゅ。直接口で話さなきゃいけないレベルの話もきゅ」
変化師(そ、そんな理由で納得するのか?)
側近もこもこ「……ワカッタ。ハイレ」
変化師(ま、まじか)
変化師と紫もこもこは中の部屋に入っていった。
側近もこもこ「……」
ぬちゃぬちゃと音を立てる足下。暗くて何かの体液だろうことしかわからない。
--湿地帯、ファクトリー--
ぬちゃぬちゃ
そして、ついに到着した。
紫もこもこ「……司令官型もこもこ」
司令官型もこもこ「キサマラ、ナニヲシニキタ」
司令官型もこもこは山羊を捻って、山羊の体液を絞り飲んでいた。
紫もこもこ「ちょっとうちらだけで話したいことがあるもきゅ。護衛を下げてもきゅ」
司令官型もこもこ「護衛ヲ?ククク……」
司令官型もこもこは笑い始める。
--湿地帯、ファクトリー--
司令官型もこもこ「護衛ヲサゲロ……ネ」
変化師(……こ、これは)
ザッ!
護衛が変化師達を取り囲む。
紫もこもこ「……どういうこともきゅ」
司令官型もこもこ「バカメ、キサマラノコウドウハスベテツツヌケナノダ!ソイツガハラカラヲコロシタコトモ」
司令官型もこもこは変化師を指差す。
変化師「!!」
紫もこもこ「そんな!もこもこちゃんねるにはそんなこと一度も……まさか」
司令官型もこもこ「キサマラノヨウナナニカヲウミダスシカカチガナイヤツラニ、アレヲツカワセルカ。キサマラガミレテイタノハニジソウサクイタダケダッタノヨ」
紫もこもこ「な、なんだってー!?」
--湿地帯、ファクトリー--
ザッ
司令官型もこもこ「サァ……侵入者トモドモ……コロセ!」
変化師「ッ!」
変化師は変身を解除しながら司令官型に突っ込んでいった。
護衛もこもこ「キサマッ」
司令官型の前に立ちらそれを槍で迎撃しようとする護衛もこもこ。
ヒュッ
変化師「!変化!」
グニャッ
--湿地帯、ファクトリー--
変化師は槍に当たる瞬間に体をスライム状に変化させ、護衛の横を擦り抜ける。
護衛もこもこ「!?コイツ!」
変化師「く、食らえ司令官!!」
ズグシャ!!
変化師「ッ!!」
槍型もこもこ2「ハッ……ハハハッ!!」
変化師のわき腹に刺さる一本の槍。
カン、カラララン
変化師「が」
ボタタ
変化師の血が床を塗りつぶしていく。
--湿地帯、ファクトリー--
変化師「ぐあ、あっ」
そう、槍型もこもこの一体は槍を投げていたのだ。
司令官型「……フハハハ!!バカメ!!キモヲヒヤシタワ!!」
大量の血液を流しながら変化師はもがいている。
紫もこもこ「変化師!」
司令官型もこもこ「ダマレウラギリモノ!!クイコロセ!!」
槍型もこもこ「ラジャー」
紫もこもこ「ひっ」
--湿地帯、ファクトリー--
ガブシュ
紫もこもこ「ぎ、ぎぎ」
紫もこもこは頭部から食われ始めた。
ガブ、ブシャッ
変化師「あ、あぁ」
護衛達はわらわらと集まっては、肉を引き裂いて口に運ぶ。
紫もこもこ「ぎ、ぎぃ!」
変化師「お、お前……」
変化師は目の前で食い散らかされる紫もこもこを見ている。
--湿地帯、ファクトリー--
司令官型もこもこ「コイツモクッテシマエ」
ゾロゾロ
変化師(い、嫌だ……こんなとこで死にたくない!!)
槍型もこもこは醜悪な口を広げ、変化師の太ももに噛り付いた。
グシュッ!
変化師「がっ!!」
ブシュッ!
変化師(こ、志半ばで死ぬなんていやだ!と、闘士おじさん!)
ズチュッ!
--湿地帯、ファクトリー--
変化師「がぁぁぁぁ!!」
変化師は引き裂かれる痛みの中で火事場のクソ力を発現させる。
変化師「お、奥義、身体強化!獣化、銀獅子!!」
ブクッ!
変化師の身体が膨張していく。
司令官型もこもこ「ナ、ナンダコレハ」
ズズゥン!!
変化師『ぐる、る』
変化師は体長三十メートルはあろうかという化け物に変化した。
--海--
ポニテ「いくよー!」
ダッ
ポニテが地面の氷を蹴った衝撃で、足元が砕ける。
ヒュン
海王もこもこ「!」
ザシュッ
繰り出された攻撃、しかし高い防御力を誇る海王もこもこには大したダメージはないようだ。
ポニテ「ありま」
海王もこもこ「ぐじゅる!」
海王もこもこは触手でポニテを叩きつけた。
ドガァン!!
キバ「!!ポニテちゃん!」
--海--
がらがら
ポニテ「大丈夫大丈夫。というかキバお姉ちゃん達、もっと離れておかないと危ないんだけど」
召喚師「え?」
ポニテ「5キロとか離れて欲しいな」
虎男「……MAP兵器搭載型がお?」
ポニテ「んー、よくわからないけど、危ないと思うよ」
キバ「……そうみたいですね」
キバは自分の血を海に垂らして船を作り始める。
召喚師「!?何やってるでやんす!!ただでさえ力を使いすぎてるって言うのに、血まで大量消費して……本気でまずいでやんすよ!?」
キバ「だって……私しか航行能力無さそうなんですもん……」
--海--
召喚師「く!……確かにおいら空と海の召喚獣を呼び出せるほど魔力残ってないでやんす」
虎男「がお……」
キバ「作るだけ作ったら……私寝ます。だから漕ぐのは、男の仕事ですよ?」
キバは死にそうな表情で笑う。
召喚師「……はぁ。よそ様の女じゃなかったらよかっでやんすのに」
キバ「え……?」
そうこう言っているうちに小さな船は完成し、三人は乗り込んだ。
虎男「くくく……ここまで根性を見せられて黙っていたのでは男が廃るというもの……どれ我輩がかっ飛ばすがお」
ぬぅん、と虎男は拳に力を込め、
虎男「スキル、虎張り手!!」
ボッ
張り手を繰り出した。
ボシュウウウウ!!
その反動で船はすごいスピードで海を行く。
召喚師「あとは頼んだでやんすよおおぉぉぉ」
瞬く間に見えなくなっていく三人を乗せた船。
--海--
ポニテ「あの速度なら大丈夫かなぁ」
海王もこもこ「ぐじゅるぐじゅる」
ポニテに迫る海王もこもこ。もはや足場となる氷、海王もこもこを束縛していた氷はほとんど残ってはいない。
ポニテ「じゃあ、やろうか」
シャリン
ポニテは二つの剣を鞘に仕舞うと、腐的に笑った。
ゴゴゴ
海王もこもこ「……じゅ」
ポニテから発せられる異様なオーラを感じ取った海王もこもこは、涎を垂らして後ずさり。
ポニテ「じゃあ……いくね」
ボッ!!
ポニテの背中から魔力でできた羽が出現する。
バサァッ!!
赤い赤い羽が展開し、ポニテは宙に浮く。
ポニテ「奥義、死の光、炎の翼」
ボボボボボ
血のように真っ赤な炎がポニテの背中で燃えている。
--海--
ボボボボボ
海王もこもこ「ぐじゅる……」
じゅっ
海王もこもこ「!?」
じゅぅぅ
海王もこもこは自分の身体が焼けただれ、溶けていくのに気付く。
ぼと、ぼととっ
海王もこもこ「ぐ、ぐじゅる!?」
ポニテ「……全部見境無しに燃やしちゃうからなぁこれ」
バサッ!!
炎の翼が死を振りまいている。
--海--
プカッ
海面に次々と魚の死体が浮かんでくる。
海王もこもこ「ぐ、ぐじゅる」
ぼたっ、ぼた
海王もこもこ「ぐじゅ」
じゅう
海王もこもこは次々に自分の触手が海に落ちていくの見て、はっきりと恐怖の感情を見せた。
ポニテ「私の翼は全てを燃やしつくす。肉も骨もその魂でさえも」
--海--
じゅ、じゅじゅじゅ
海王もこもこ「ぎぇっ、ぎぇー!!」
四本の触手が既に機能を失い、まだ動いている触手は徐々に丸まっていく。
ポニテ「……おっきいたこ焼きができそうだね」
じゅじゅじゅ
海王もこもこ「ぎゃ、ぎゃあああああ!!」
海王もこもこは目の前の小さな太陽に触れようと触手を伸ばすが、
ぐらっ、ざっぱーん
ポニテ「……」
その触手がポニテに届くことはなく、その巨体は海に叩きつけられる。
--海--
ポニテ「はぁっ!はぁっ!く、魔力を使い過ぎちゃった、早くこのたこ食べちゃわないと」
ぼそっ
ポニテの翼が燃えカスのように真っ黒く変色していく。
しゅん
ポニテ「あ」
ぼて
ポニテの翼は完全に燃え尽き、ポニテは海王もこもこの死体の上に落下した。
ポニテ「うー……早く食べ、ないと……う」
ポニテは震える体で口をあけ、
ドサッ
倒れこんだ。
ポニテ「やば……いかも」
--中央荒れ地--
ギャアン!!
陸王もこもこは凶悪な破壊力を持った腕をふるう。
陸王もこもこ「ぎゃるああああああああ!!」
ドッガアアアアン!!
地面に当たれば地面をえぐり、岩に当たれば砕け散る。攻撃能力に特化した破壊の象徴のような存在。
ギャリ、ギャリン!!
侍「ッ!」
それを侍は一度足りともしくじることなく、陸王もこもこの攻撃を叩き潰している。
--中央荒れ地--
陸王もこもこ「ぎゃる……ぎゃるおあぁ!!」
怒りに怒りを重ねる陸王もこもこ。鬱血している前脚の痛みなどものともしない。
ヒュッ、ドガアアアアアン!!
剣豪「……」
侍が一瞬たりとも気を抜けない戦いを繰り広げている中、剣豪は眼を瞑って精神を集中させていた。
剣豪(剣豪家の家系は代々、何かに使えるほど魔力量を練りだせない、タラズ。それゆえに武術に逃げるしかなかったわけだが)
ギン
開眼。その眼には魔力の光が宿っている。
剣豪(魔力を使用する技を使えないわけじゃねぇんだぜ)
--中央荒れ地--
剣豪は自分の刀に魔力を練り込んで巨大な刃にしていく。
剣豪(魔力さえ供給されさえすれば、俺は)
陸王もこもこ「!?」
バッ
陸王もこもこは剣豪の刀の威圧感に気付いた。
陸王もこもこ「ぎゃ、がるうるるる」
激昂状態だというのにもかかわらず、陸王もこもこはそれを危険と判断し警戒していた。
ジリっ
--中央荒れ地--
剣豪「おい、どいてろバカ息子」
剣豪は顎で侍に指図する。
侍「……時間稼ぎしてやってたというのに、全くひどい親でござる」
ヒュッ
侍が陸王もこもこから離れるのを確認すると、剣豪は両目を閉じた。
陸王もこもこ「ぎゃる……ぎゃあああああ!!」
ダッ!!
陸王もこもこはものすごいスピードで駆けだした。剣豪が何かする前に殺すために。
--中央荒れ地--
剣豪「自分から突っ込んでくるとは馬鹿めが。限定条件発動裏奥義!!」
陸王もこもこ「があああああああ!!」
ヒュッ
剣豪「挫刀一!!」
ドジャッ!!
陸王もこもこ「」
剣豪が刀を振り抜いた。
ブシャァァァア!!
認識する間もない一閃。まだニ十メートルほど離れていた陸王もこもこだったが、距離も、硬度も意味を成さないかのように両断され、大量の血を吹き出しながら荒地に沈んだ。
--中央荒れ地--
ズズゥン
人造魔王「スゲー!!アイツ一発トカスゲー!!」
侍「……」
剣豪「……」
侍「その技そんなに強かったっけ?でござる」
剣豪「いや……供給された魔力の質とかが関係してくるんかな。これ実戦でやったの二回目だし」
人造魔王「ヤベー!ヤベー!」
侍「……むぅ。強敵があっさり死んでしまうとなんかこう……」
剣豪「バカ野郎。あれ一応威力高いんだぞあれ」
--東の王国、作戦室--
ダダダダダっ、バタンっ!
ツインテ「東の王!」
東の王「む?……誰かと思えば王国の第一王女か。まさかあの性格で呼び捨てにしてくるとは思わなかったぞ」
ツインテ「うっせぇ!んなこと言ってる場合じやねぇんだよ!!魔法障壁の使い手を集めろ!!城の上にだ!!」
東の王「やだツインテちゃんぐれちゃった……」
通信兵「……東の王様?」
ツインテ「早く!!あの黒い空に行った奴が攻撃してくるんだ!!」
東の王「!!空に登って行った奴か。今更……いやなぜそんなことがわかる?」
ツインテ「……情報提供者がいた」
--東の王国、作戦室--
東の王「誰だ?そいつを連れてこい。詳しく聞き出す」
ツインテ「奴はもう消えた。この城にはいない」
東の王「?……通信兵」
通信兵「わかりません。今は各部隊との通信に力を入れてるので、索敵まで力をまわせません」
ツインテ「……」
東の王「ふむ……まぁ嘘で言うはずは無いか。だがこの城にもこもこが侵入し、嘘の情報を流しているのかもしれん」
ザザッ
通信兵「荒れ地から通信です!!」
--東の王国、作戦室--
東の王「!どうした!?」
通信兵「東の王様!荒地での戦いに勝利しました!敵王級、完全に沈黙しました!」
東の王「でかしたぞ……!」
ツインテ「それもいいが東の王!時間が無いんだ!」
東の王「……」
ひどく焦っているツインテを見て東の王は顎を触る。
東の王(……そうだな。例えガセであっても、聖騎士の宴会につき合わせているよりかは有意義か)
--東の王国、作戦室--
ツインテ「東の王!」
東の王「通信兵、新王殿にすぐに連絡だ。防御魔法部隊を連れて城最上階へ」
通信兵「了解しました」
ツインテ「!」
東の王「戦局は勝利に傾き始めている。不安材料は少しも残したくはない。とすればこの行動は当たり前だろう?それに君も行ってくれるな?ツインテ」
ツインテ「あぁ。あ、それと城の防御能力あげておいた方がいいぞ」
東の王「……?城のだと?」
ツインテ「俺達だけじゃ防ぎきれないかもしれないからな」
--衛星軌道上--
宇宙王もこもこ「……」
真っ暗な空間に、宇宙王もこもこは巨大な羽を広げ漂っていた。
そして宇宙王もこもこの周囲をぐるぐると周回する二つの帯、それは第二世代のもこもこ達で作り上げたリング。
宇宙王もこもこ「……」
そのリングが回転し始める。
宇宙王もこもこ「……」
赤く発熱し、更に加速していく。
宇宙王もこもこ「……」
宇宙王もこもこの口が開かれ、赤々と光る炎が出現。リングの回転と比例して、それはどんどん巨大になっていく。
そして。
--東の王国、城内--
タッタッタッ!
新王「それは……本当なのかい?」
ツインテ達は城の階段を駆け上がっている。
ツインテ「あぁ、確かに奴はそう言った。おいこらハゲ!てめぇフォーテが旅立ったことをなんで黙ってたんだよ!!」
障壁兵(ハゲ……)
新王「う。……フォーテちゃんのことでツインテちゃんに心配かけたくなくて……」
ツインテ「はぁ!?アイツが野に放たれたなら、いつか俺に接触してくるに決まってんだろ!?なんなのバカなの死ねよ!!」
障壁兵(娘に死ねとか……)
障壁兵の胸を言葉がえぐる。
--東の王国、城内--
新王「そう、だけど何かが起きる前に連れ戻そうと思ったんだよ」
ツインテ「ばっかじゃねーの?ミスがばれる前にミスをもみ消そうとしてたってか!?小学生か!!東電か!!」
障壁兵(一国の王がここまで言われるだなんて……)
タッタッタッ
しょんぼりとした顔でツインテの後ろを走る新王。
ツインテ「……フォーテの目的はなんだ?」
新王「……あの子は昔からお姉ちゃん大好きっ子で真似しんぼさんだから」
ピタっ
ツインテ「……まさか」
--東の王国、城内--
フォーテは足を止めて新王を振り返った。
新王「お姉ちゃんが勇者になるなら、フォーテは魔王になるっ、て」
ツインテ「真似てねー!!」
ツインテは叫んだ。
ツインテ「全然まねてねーじゃねーか!!むしろ真逆じゃねーか!!」
新王「これがフォーテちゃんなりのツインテちゃんのマネなんだよ。まぁそうならないように一刻も早く連れ戻そうと努力してる。だから安心してツインテちゃん」
ポン
ツインテの肩に手を置く新王。
ツインテ「うわ!きたねぇからさわんじやねーよくそオヤジ!!」
障壁兵(娘を持つ気持ちでここまで共感できるとは……)
--湿地帯、ファクトリー--
変化師『ぐるあぁ!!』
変化師は巨大な拳を振り下ろす。
どがぁん!!
司令官型もこもこ「グアっ!!コ、コンナチカラガアルトハ!!」
側近もこもこ「コイツッ!」
ズガッ!!
側近もこもこは変化師の足を攻撃する。
変化師『ぐあぁ!』
変化師は痛みに苦しむものの、その強固な毛のおかげで大ダメージには至らない。
--湿地帯、ファクトリー--
側近もこもこ「コイツ……カタイ!!」
変化師『うおおおおお!!』
ぎゅーん
変化師の右腕に魔力が集結する。
側近もこもこ「!!司令官殿!!アブナイ!!」
変化師『ス、スキル、獅子拳!!』
ドッゴオオオオオオン!!
司令官型もこもこは側近もこもこに連れられて回避し、少し離れた場所から変化師を見た。
司令官型もこもこ「マルデ巨人ノ一撃……ダガデカイ程度ナラドウトデモナル……ヤレッ!!」
--東の王国、実験部屋--
医師「やった……んですかね?」
アッシュ「これで無理ならもう後はないぜ」
レン「ぷぴゅー」
医師「いえ……きっと完成したに違いないです。二人とも、お疲れ様でした」
アッシュ「ふん。もう遅いんじゃないか?ほとんど終わってる気がするぜ」
レン「成功するといいな」
医師「成功……させましょう」
--西の王国、事務室--
ガチャ、バタン
ドアが開き現れるテンテン。
秘書「ノックを忘れていますよテンテン」
テンテン「ミス秘書」
秘書「……どうかしましたかテンテン」
テンテン「東の地にて危険な力を感知、これより排除に向かいたいと思う」
--西の王国、事務室--
秘書「危険な力?それはどういうことですか?」
テンテン「あまり詳しいことは言えない。だが、人が持っていてはいけない力だ」
秘書「なるほど……却下です」
テンテン「では……え?な、なぜだ」
秘書「貴女までいなくなったらこの国を守る三角がいなくなるじゃないですか」
テンテン「……いやいやそんなレベルの話では」
秘書「そんなレベルとは何ですか!」
テンテン「えー、いきなり怒ったー(´・ω・`)」
--西の王国、事務室--
秘書「貴女はこの国を守るために存在しているのですよ!?そこんところちゃんとわかってるんですか!?」
テンテン「えー(´・ω・`)デモデモ……」
秘書「お黙りなさい。例え貴女の言うように危険な力だとしても、この国が危険なわけではないのでしょう?」
テンテン「……直ちに影響がでるわけではない」
秘書「ならばそれまでに対策を立てればいいことです。知っている情報を全て出しなさい。危険な力も理解してしまえば有効な力になるかもしれません。……というか他国のせいで自分達がピンチになっては意味がありません」
テンテン「で、でもでも(´;ω;`)」
秘書「この会話は終わりです。貴女は明日までにその力についてレポートを出しなさい。わかりましたね?」
テンテン「……ハイ(´;ω;`)ウッ」
--海岸--
キバ「……」
キバ達三人は既に海岸に到着し、海の向こうを見つめている。
召喚士「なんか……恐ろしく嫌な光だったでヤンス。あれがお嬢ちゃんの奥の手……」
虎男「あの歳で末恐ろしいがお」
ザバーン
キバ「……」
キバは自分の胸を苦しそうに抑えていたが、
キバ「!」
--海岸--
キバ「私ちょっとポニテちゃんのこと見てきます!!」
召喚士「ん!行くってそんな体力残ってないでやんしょ!?すぐに兵士達を呼んでくるから待つでやんす!!」
キバ「まだ、大丈夫です。戦闘さえしないなら」
バサッ!
言うが早いかキバは羽を生やし、ポニテが戦っていた場所へ飛んで行った。
ゴオッ!!
虎男「……女は強いがお」
召喚士「……」
--海--
バサッ、バサッ!!
キバ「確かここらへんだったはずなんだけど……海はどこも風景が変わらないから。あ!」
バキバキっ
キバは氷が溶けたせいで少しずつ沈んでいっている海王もこもこを発見する。
キバ「ポニテちゃんは……いた!ポニテちゃ」
じゅ
キバ「!?熱っ!!な、何これ……」
接近しようとしたキバは、ポニテを中心としたこの空間が異常な温度であることに気付く。
--海--
キバ「まさか……」
ぎゅるる
キバは全身を血の鎧で固め、ポニテに近づいた。
ポニテ「……はっ、はっ……」
キバ「!!そんな……」
キバは驚きの声をあげる。
ジュジュ
キバが見たポニテの姿は、人では無かった。
--海--
ボゥ
青く発光するポニテの体。
キバ「これは……魔力体?そうか、体を魔力体に変化させることで、ポニテちゃんはあの熱の中でも何ともないのね」
キバはポニテの手に触れると、
ボソッ
キバ「!?」
消し炭のように黒くなって散った。
ボソボソソッ
--海--
キバ「そんな……魔力を使いすぎたせいで、魔力体のコントロールができなくなっているの!?」
ポニテ「はぁっ、はぁっ」
キバ「……まずい。ポニテちゃん、自分自身を燃料に変えちゃってるんだ!エネルギーが足りないから……」
キバは血でナイフを作り海王もこもこの肉をカットし、自分の口に放り込む。
ぐちぐち
キバ(硬い……ポニテちゃんが飲めるように噛み砕かなきゃ)
ぐちぐち
ポニテ「はぁっ、はぁっ」
キバ(……こんなになるまで力を使わせてしまったんだ……大人が子供を犠牲にするなんて、最低だよね)
--海--
ぐちぐち
キバ「……」
キバはポニテに口移しでタコを流し込む。
ポニテ「はぁっ、はぁっ」
キバ「……ダメだ。こんなんじゃとてもじゃないけど間に合わない」
ボソッ
キバはボロボロと散っていくポニテの体を見つめている。
キバ「……」
--過去--
キバ『はい!私は人を護るための力欲しさに志願しました!』
受付『……貴女は元々東の救護部隊に所属していたと聞きましたが』
キバ『はい!配属先は辺境の地です!そこで二年間任務にあたらせていただきました!』
受付『なるほど……大賢者様がスカウトしてきたのだから実力はあるのでしょう』
受付は書類を見ながら会話している。
キバ『……いえ』
受付『?』
キバ『逆です。私にとってこの二年間は、自分の無力さを思い知るための時間でした』
--過去--
受付『……』
キバ『私の配属先は辺境の地ということもあり、完全に武装した兵士は一人もいません』
受付『……』
キバ『それどころか村の規模に比べて、明らかに兵士の数が足りていない状況でした。だからモンスターに襲われた人が私達のとこに運ばれてくる時は既に……』
キバは視線を床に落とす。
受付『続けて下さい』
キバ『……っ。いつも穴ばかり掘っていました。救護部隊なのに、人を救うことよりもシャベルを握っている時間の方が長かったかもしれません』
--過去--
キバはとりつかれたように喋り続ける。
キバ『最初からダメだった時もありました。一度に大量に運び込まれて治癒が追い付かない時もありました。私一人では……絶望的に数が足りなかった!』
受付『……』
ペラ
受付は書類をめくる。
受付(辺境の地の救護部隊員数は、彼女一人……)
キバ『……けど途中からそうは思えなくなってきたんです。単純に私に力が無いのが原因なんじゃないか、って』
丁度手のひらにたこが出来始めた頃、とキバ。
--過去--
キバ『でもどうしても怪我人や死者の数は減らないし、私の治療スピードが劇的に早くなることはありませんでした』
※第一章、勇者募集してたから~、時では、回復魔法の技術革新以前なので、治癒、蘇生魔法にかなりの時間がかかっていた。
キバ『だから、私。力が欲しいんです。誰かが傷つく前に助けてあげられるような。誰かが傷ついても漏れなく救ってあげられるような!』
受付『……ふ』
受付は、笑った。
受付『素晴らしい熱意と決意です。ですが、人造勇者の改造手術は簡単ではありませんよ?屈強な男でさえ泣き叫ぶような施術、訓練が何カ月にも渡って行われます。そしてそこまでの苦行を耐えても勇者因子が適合しなければ確実に死に至ります。それでもやる覚悟はありますか?』
内心、勇者因子と言う単語を出してしまいドキドキしている受付。
--過去--
キバ『……ッ』
キバは一瞬たじろいだ。受付の眼は嘘を言うような眼ではなかったからだ。
キバ『……』
リスクを払っても力が手に入るかわからない。
今まで戦闘訓練をしていないキバにとって、その可能性は限りなく低いものかもしれない。
キバ『……』
キバは自分の両手を見つめた。
そこには血が滲んだ包帯でぐるぐる巻きになっている少女の手があった。
キバ『はい。私に、人を救うチャンスを下さい!』
--海--
ザザーン
キバ「……ふふ。青かったなぁあの頃」
ポタ
キバ「結局力があってもなくても、助けられない人は助けられない」
そんなことに気付かされるくらいなら無力のまま穴を掘っていた方がましだったかもしれない。
キバ「あの後……色んなところに行ったなぁ」
ポタ、ポタ
キバ「魔法使いと二人。色んな所で人を守って、色んな人の怪我を治して」
--海--
キバ「……色んな人に恨まれて疎まれて」
曲がり鼻男『助けてくれたことには感謝する……だが早くこの村から出てってくれ……!あんた、あの姿は……』
キバ「……」
ポタ、ポタ
キバ『力が、制御できな、ぐ!』
赤い服の少女『どうしたのお姉ちゃん?どこか痛いの?』
魔法使い『!?キバ!やめろ!』
キバ「……」
ポタ、ポタタ
--海--
裸足の少年『なんですぐ来てくんなかったんだよ!!隣の村ばっかひいきしてさ!!』
キバ『け、警備隊が来るまで離れるわけには、いかなくて……』
裸足の少年『バカ!バカァ!!』
裸足の少年は上半身だけの父親とおぼしき人に抱きついて泣いていた。
キバ「……力があっても、結局守れる範囲がちょびっと増えただけだった。いや、力があるせいで傷つけた人は、増えたかもしれない」
ポタッ
キバ「私……ずっと後悔してた。私みたいな生半可な覚悟で、こんな力を手に入れちゃったことを。勇者がどれだけ大変なのか、わかっていなかった」
ポタッポタタッ
キバ「悲しみを私への憎しみにすることで救われた人はいるのかな?それとも悲しみで終わらせてあげた方がよかったのかな」
いまだに答えはでないや、とキバは呟く。
--海--
キバ「……誰かを守れたわけじゃないし、いっつも迷惑かけてばかりだし」
キバは申し訳なさそうにはにかんだ。
キバ「でも……人造勇者になれてよかった。初めてかもしれない。こんなふうに思えたの」
ポニテ「ん……」
キバ「ポニテちゃんを救えるし、それに……」
ポタタ
キバ「生きて、ポニテちゃん。死んじゃだめ……きっと君にはまだやることがあるから」
キバは血で無数の管を作り、ポニテにエネルギーを供給していた。
それでは本日の更新はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m
一発芸
盗賊「一発芸やりまーす」
そう言うと盗賊は自分の右目をナイフでくりぬいた。
ボウ
盗賊「タナトスの声を聞け」
盗賊の両目の眼窩から、魔力が火のように揺れている。
闘士「おい、俺のオリオンをなぞれよ」
--湿地帯、ファクトリー--
変化師『ぎ、ぎ……』
変化師は身体中がボロボロになりながらも、数十体のもこもこと戦い続けていた。しかしさすがに限界のようで、変化師は膝をついたまま立ち上がることができない。
側近もこもこ「ククク……モハヤコレマデノヨウダナ」
ズラッ
変化師を包囲するもこもこの群れ。
変化師(だ、だめだ……奥義でもこいつらには通用しない……)
--湿地帯、ファクトリー--
司令官型もこもこ「キサマハ改造シテワレラノ奴隷ニシテクレル!」
じりっ
変化師(か、かくなる上は)
変化師は魔力砲を地面に向かって放つ。
ドガァン!!
司令官型もこもこ「ッ!メクラマシ……!フン!キサマラ、ワタシヲマモルノダ!」
側近もこもこ「ハッ!!」
ザッ
司令官型もこもこを中心に、円状の陣形が組み上がる。
--湿地帯、ファクトリー--
司令官型もこもこ「アノデカイ図体ダ。コノ砂埃ノ中デモウゴケバカナラズ感知デキル。キヲヌクナ!!」
側近もこもこ「ハッ!!」
ジリ
司令官型もこもこ(サァ、ドウクル?時間ヲカケタトテワレラニ隙ハウマレンゾ?時間ヲカケレバカケルホド出血デ体力ヲウバワレヨウ……)
ジリジリ
司令官型もこもこ(長引ケバソレダケデ有利!ヨロコンデ持久戦ニモチコマセテモラウ!)
側近もこもこ達は蟻一匹通さぬほどの完璧な守りを見せ、それを一瞬足りとも崩さなかった。
司令官型もこもこ(サァ……サァサァ!!)
--湿地帯--
ドッ
変化師『はっ!はっ!』
ドッスンドッスン
変化師は巨体のまま沼地を駈けていた。
変化師(く、くそ!沼地だからぬかるんで思うように走れない)
ズヌチョズヌチョ
変化師『はっ!はっ!』
変化師は東の王国を目指して逃げていたのだった。
--湿地帯、ファクトリー--
司令官型もこもこ(中々ガンバルジャナイカ……サスガノコイツラモ集中力ガキレカカッテイル……ククク、サッサトコイ特大ノカウンターヲミマッテクレル)
もこもこ達はただひたすら変化師の攻撃を待っていた。
--東の王国、作戦室--
東の王「何?キバと連絡が取れないだと?」
通信兵「はい。海上で戦っていた所まではこちらでも把握していたのですが、今は何故かほとんどの電波が狂っていて、海周辺の事情はわかりません」
東の王「電波が?……一体何が起きているのだ?」
伝令兵「ご報告申し上げます。海を除くほとんどの部隊が無事帰還しました」
東の王「うむ。主要人物は休ませてやれ。他国の戦士であろうと失うわけにはいかん」
通信兵「主要人物って」
--東の王国、屋上--
ツインテ「!!」
ツインテは、遥か上空に巨大な力があることを感知、すぐに臨戦体勢の構えを取る。
ツインテ「やべぇ……思った以上だ。おいお前ら早く配置につけよ!!」
ザザッ
新王「そう言わないであげてくれツインテちゃん。彼らは竜に似たもこもこからの攻撃を防ぐために、かなり無理をしているんだ」
ツインテ「うるせぇよ。だからなんだ!やる気がねぇなら来んなっつぅんだよ!!」
新王「ええー」
--東の王国、屋上--
ツインテ「……ちっ!奥義、絶対回復領域!!」
ぎゅいーん
ツインテを中心に魔力フィールドが展開される。
しゅわしゅわ
障壁兵「!!傷が治っていく……」
しゅわしゅわいーん
老障壁兵「魔力も供給されているぞ!」
新王「……ツインテちゃん」
ツインテ「うるせぇ。俺の作る障壁よりおまえらの方ができがいい。そんだけの話だろ!」
--東の王国、屋上--
ゴゴゴ
ツインテ「!!来た!!」
シュ
一瞬で辺りが暗くなる。
ゴゴゴゴゴゴ
太陽を覆い隠す巨大なエネルギーが迫ってきていた。
ツインテ「く!早く障壁をだせ!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
--東の王国、屋上--
障壁兵「つ、土属性範囲障壁魔法レベル4!!」
若障壁兵「水属性範囲障壁魔法レベル4!!」
ワーワー
各々の最強障壁魔法が宙に展開され、弾けて交ざる。
ギィィン!!
ツインテ「多重属性障壁、六色盾……あとは魔力量の問題か」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
--東の王国、作戦室--
東の王「!本当であったか」
通信兵「!!超強力なエネルギー反応……そんな……攻撃魔法に換算するとレベル12相当です!!」
東の王「ッ……もはやそれがどんな威力なのか理解できんな」
通信兵「かつて勇者討伐戦争で観測した、魔王の一撃とほぼ同等のようです」
東の王「……」
東の王は十数年前を思い出す。
東の王「あれか……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
東の王「もはやあの親子に全てを託すしかないのか」
--東の王国、屋上--
ツインテ「!!」
恐ろしい唸りを立てて接近してきたそれが、
ゴ
障壁と接触した。
ギャギャギャギャギャギャァァン!!!!
障壁兵「う、うああぁぁ!!」
絶叫しながら腕を上げ、支える障壁兵。
ツインテ「くそ!もっと踏張りやがれ!!」
ギャギャギャァァン!!
--東の王国、屋上--
新王(魔力暴発……は駄目か。あれは魔力じゃないしな。出来てもこんな近くで爆発させたらこっちも甚大な被害を受けるよね)
新王は右腕を上に、左腕を下に向けていた。
障壁兵「う、うおおぉ!!」
バチチ
障壁が支え切れず、零れた少量のエネルギーが城の庭を焼く。
ドガァン!!
ツインテ「!!」
バチチ、バチチバチチ!
ドガァンドガァン!
--東の王国、屋上--
新王「障壁の外側の魔力量が甘いですよ!崩れ始めている!!」
バチチ、バナナバチチ!!
ドドガァン!!
城の周囲は壊滅に等しいダメージを受けている。
聖騎士「ぶるぅぅぅああぁぁぁ!!なにやらたのしそーぅなぁ、ことをやっているではないーくぁぁ……」
ツインテ「!?アイツは」
聖騎士「横槍ィィごぉぉむぇぇぇぇええん!!」
聖騎士はエネルギーに向かって雷撃を放つ。
ビシャシャシャシャ!!
--東の王国、屋上--
新王「!!聖騎士様!!エネルギーの軌道がそれてしまっては!!」
聖騎士「わぁかってーおるわぁぁ。ちゃんと加減してぇ威力を削るにとどめてぇおぉるのよぉ」
ギャギャギャ!
障壁兵「く、くっ!あとちょっと!!」
ギャギャギャ!
ツインテ「踏張れー!!」
新王「うおおお!!」
ぶりぶりぶりぶり!!
--東の王国、屋上--
ギャキャァン!!
障壁兵「……や、やった」
エネルギーは、
障壁兵「しのぎ切ったぞぉぉ!!」
ワアァァ!!
ツインテ「……」
ドサッ
ツインテは思わず倒れこんだ。
ツインテ「……くそめちゃくちゃしんどかったぞ」
ツインテは息を荒げてい顔を赤く染めてちょっと体をくねらせている。
--東の王国、屋上--
新王「お疲れ様ツインテちゃん、よくやったね」
回復と魔力供給を同時に、しかも範囲でやるなんて、と新王。
ツインテ「うっせぇクソじじぃ。さっさと便所行ってこい」
ツインテは悪態を付き新王の顔を見ようともしない。
新王「……あははばれてたか。そうします」
ツインテ「……ふん」
タシッ
ツインテは屋上の床を足で叩く。
ツインテ(あれだけの衝撃なのに城には全くダメージがない……オヤジが支えてたのか)
ツインテは空を見上げた。敵の攻撃のせいで空にはぽっかり穴が空いている。
ツインテ(足場が崩れてたら……一瞬でアウトだった。……チッ)
--東の王国、医務室--
選抜兵「治療兵!治療兵!」
バタバタバタ!!
医務室に選抜兵が慌ただしく入ってきた。
治療兵「選抜兵?……新しい怪我人ね?どこ!?」
選抜兵「理解が早くて助かる。城壁だ、そこに」
--東の王国、城壁--
隠蔽兵「僕は、い、いいですから、早く変化師様を……」
隠蔽兵は苦痛に顔を歪めながら倒れこんだ。
変化師「……」
城壁兵「こ、これが変化師、様?」
ボロボロに毛の抜けた無残な獅子の姿がそこにあった。
--宇宙--
宇宙王もこもこ「……」
宇宙王もこもこは自分の攻撃が失敗したことを認知すると、自分の身体の周りのリングをパージした。
宇宙王もこもこ「……」
それは燃えカスになったもこもこの残骸。
宇宙王もこもこ「……」
そして宇宙王もこもこの身体にへばりついていた次のリングが準備に入った。
--東の王国、作戦室--
ざわざわ。
司令部には戦線から戻った兵達も踏まえての話し合いが行われていた。
東の王「しかしあれを何度も受けることはできんな」
通信兵「先ほどの一撃で、我が城の紋章魔法による防御力は30パーセント以下にまで低下、障壁兵達にも犠牲が出ています」
東の王「……次の発射までどれくらいかかる?」
通信兵「わかりません……私の探査能力の遥か外なので。ですが、十一時間以内に攻撃されたら防ぎ切れないと思います」
剣豪「……」
吟遊詩人「障壁兵達を優勢させて治療しても無理か~らら~」
人形師「しゃべり方うっざ!」
--東の王国、城内--
だだだだ
魔法使い「キバ!どこだキバ!」
魔法使いは片っ端から部屋を開けては叫ぶ。
魔法使い(治療棟に送ったと召喚師が言っていたが……くそ!)
魔法使いは治療棟を駆け回る。
魔法使い(どこだ!どこなんだ!!)
魔法使いは次のドアに手を掛けた。
バキッ、ガララ!
魔法使い「キバ!」
キバ「え?」
ポニテ「あ」
魔法使い「キバ!よかっ……」
魔法使いが見たものは、
キバ「……」
ポニテ「……」
着替えかけでほぼ全裸の二人だった。
ポニテ、キバ「「きぃーやー!!」」
魔法使い「ドゥフフwwwサーセンwww」
--東の王国、城内--
ガララ
急いでドアを閉める魔法使い。
ガチャ
魔法使い「ふぅ。やれやれ……」
ポニテ「中に入ってドアしめやがった!!」
キバ「逆だろ普通!!」
体を隠す二人。
--東の王国、城内--
魔法使い「お前達が鍵かけていないのが悪い。ことにしたい」
ポニテ「かけてたし!バキッってやって壊したんじゃん!!」
魔法使い「……口リ乳首めが」
ポニテ「!?」
ガバッ!
魔法使い「キバ……お前」
魔法使いはキバを凝視する。
キバ「あの、早く出てってもらえませんかね」
--東の王国、城内--
魔法使い「お前……」
魔法使いはキバの存在が希薄になっているのを感じていた。
キバ「……これしか無かったんだ。だからこれでいいんだよ」
キバは儚げな笑顔を魔法使いに向けた。
魔法使い「……」
儚い。
ポニテ「早く穿かないと」
--東の王国、作戦室--
聖騎士「我のぉ……灰竜でさえあの空間には行けぬであろぅなぁ……あそこはこの世界の生き物がぁ、決して生きられぬ特別な空間だぁぁ」
東の王「く……。ならどうする……守っているだけでは勝てぬ。司令官暗殺が失敗した今となっては……」
槍兵「……あいつならいけるかも」
狐男「あいつ?」
槍兵「うちの新しい戦力でテンテンってのがいるんだ。よくわかんねぇやつなんだが、少なくともいきものじゃあないぜ」
通信兵「……開示された情報を見ると、確かに鉄人形と書かれていますね。飛行能力も有しています」
東の王「ふむ……西の王国に連絡を取るぞ!」
--東の王国、作戦室--
秘書『なるほど。事情はわかりました』
東の王「うむ。すまないが至急テンテンを送って欲しい」
秘書『申し訳ありませんが、それはできません』
東の王「!?なぜだこの緊急時に!」
秘書『緊急時であればこそです。確かにテンテンを使えばあるいは可能かもしれません』
テンテン『せんぱーい。宇宙とかマジよゆーっすよ。むしろ私の庭もが』
秘書『……しかしです。現在の時点で、そちらにはかなりの戦力をお渡ししています』
--東の王国、作戦室--
東の王「数が問題ではない!テンテンでなければ出来ぬことなのだ!」
秘書『我が国の戦力を潰すおつもりですか?』
東の王「な!?」
秘書『槍兵。変化師はどこにいるのですか?』
槍兵「……はっ。現在集中治療を受けています」
秘書『容体は?』
槍兵「魔法の力を持ってしても、今後後遺症が出るかもしれない、と」
秘書『……』
--東の王国、作戦室--
東の王「……すまないとは思っている。このミッションでのテンテンへのダメージも少なくはないだろう」
秘書『……残念ですが』
西の王『これは貸しです東の王』
秘書『!』
西の王『これは国の存亡をかけた戦い、テンテンもやると言っていることですし、すぐに向かわせます』
東の王「本当か!恩にきる!」
秘書『王さま!それでは!』
西の王『いい、何も言うな。しかし変化師達を無事にこの国に返していただきたく』
東の王「もちろんだ」
西の王『よろしい。それでは皆様方、ご武運を』
ブツッ
--東の王国、作戦室--
東の王「よし……とりあえずは対抗手段を確保だ」
通信兵「お疲れ様でした」
剣豪「うまく刺さるといいがな」
絵師「出し惜しみするだなんてなんて人!ギャハハ!」
アッシュ「国の最高戦力を他国のために全部投入する方がおかしいだろ」
絵師「ぶち殺すぞ、ガキが」
アッシュ「えっ!?」
--西の王国--
秘書「さぁテンテン、早く行きなさい。装備品はすでに用意してあります」
テンテン「え?あれ?なんかあっさりしているな」
秘書「西の王様が決めたことですよ。それに放っておけば我が国の槍兵、変化師、人造魔王、その他兵達が死ぬではないですか」
テンテン「……じゃあなんでさっき否定していたのだ」
秘書「駆け引きです」
テンテン「……それはいるのか?私と二人だけで話していた時は?」
秘書「あなたの言っていることがあまりに不明瞭だったので」
テンテン「……」
--東の王国、作戦室--
医師「あ、一ついいですか?」
東の王「なんだ?」
医師「もしかしたらですがこの戦いを終わらせることが出来るかもしれません」
槍兵「!?」
新王「どういうことですか!?」
医師「はい。私はもこもこの性質を逆に利用しようと思うんです」
東の王「性質……?」
医師「皆さんも既にご存知かと思いますが、もこもこには情報を共有するネットワークが存在します。それゆえもこもこは私達の行動にすぐさま対処してきました。このネットワークの仕組みはわかりませんが、体質や身体の部位を変形させることすら可能なようです」
--東の王国、作戦室--
人形師「わたぁしの人形のナイフも、すぐ効かなくなりましたからねぇ。目に見えて硬くなってましたぁ」
絵師「ギャハハ!私の絵画攻撃をかわすために羽生やしたやつもいたしね!!しかも一斉に!」
医師「はい。これらのことからもネットワークは情報だけでなく、身体と密接的な関係にあると推測されます。仮説ですが、ネットワークに対抗手段の入ったプログラムのようなものを誰かがあげる。そしてそれを他の仲間がダウンロードをすることで身体の構造を変化させるのでは、と」
東の王「ふむ」
狐男「zipか」
虎男「そりゃ条件反射でダウンロードしてしまうがお」
絵師「え……」
--東の王国、作戦室--
吟遊詩人「読めたよ~そこにダミーのプログラムを流すわけだ~」
医師「正解です。彼らのネットワークに介入し、人間に牙を剥かない、生態系を狂わすようなことを出来ない生物に作り替えます」
召喚士「それが本当なら一匹残らずどうにかできそうでやんすね。でもどうやってそんな情報……zipを流すんでやんす?」
医師「ウィルス。つまり毒を流します。ダウンロードしたもこもこ達の脳に、慎ましく生きるようにと自粛させる毒を」
ツインテ「だからそいつらを使ってたのか」
アッシュ「俺の奥義、ポイポイポイズンならいかような効果を持つ毒でも生成できるからな」
ツインテ「なんだそのネーミングセンスはァ!!」
--東の王国、作戦室--
レン「それを私が微調整してサポートしたにゃ。これでこの毒を受けたものは、人間に対する恐怖心を知り、戦意を喪失するにゃ」
医師「エニグマ。恐怖を増大させる毒薬です。名付けて井戸に毒作戦!」
人造魔王「ワーイ非人道的ー!」
東の王「ふむ……じゃあテンテンいらんくね?」
剣豪「……家出てからじゃ悪いから早めに断りの電話いれようぜ」
--西の王国--
テンテン「テンテン、いっきまーす」
どひゅーん
テンテンは自作の滑走路を走り抜け、大空へと飛び立った。
秘書「西の王様大変です。テンテンがエチケット袋を忘れて行きました」
西の王「それ必須なの?」
--東の王国、城内--
魔法使い「……」
キバ「そんな心配そうな顔しなくて大丈夫だよ」
魔法使いはベッドに横たわるキバの手を握っている。
ポニテ「おじさんとお姉さんは、親子?」
魔法使い「違う」
ポニテ「歳の差カッポォー?」
魔法使い「……それも違う気がする」
キバ「けほ」
咳き込むキバ。
キバを横向きにして背中を擦る魔法使い。
--東の王国、城内--
ポニテ「……」
キバ「えへ。私は大丈夫だから二人はみんなの所に行って。大事な戦いの最中なんだから」
魔法使い「……俺はもうこの戦いから降りると宣言した」
キバ「え」
魔法使い「もう昔のように身体は動かなくて役に立てなかったんだ。お前もこんなだし……もう戦闘には耐えられまい」
キバ「……魔法使いが役に立たないなんて、嘘っぱちだよ」
魔法使い「事実だ」
ポニテ「……」
--東の王国、城内--
魔法使いは顔をあげる。
魔法使い「お前はもう行け。お前はもう傷もないのだろう?」
ポニテ「ん……そだね。邪魔しちゃ悪いし」
そう言うとポニテはドアに向かって歩いていく。
ポニテ「あ、そだ」
魔法使い「?」
ポニテ「ありがとうお姉さん。意識は無かったけど助けてくれたのはお姉さんだよね?」
キバ「……わかる?」
ポニテ「なんかあったかかったから」
--東の王国、城内--
キバ「……変なの」
魔法使い「キバを運んできてくれて感謝する」
ポニテ「うん」
ガララ
ポニテ「……」
ポニテはドアを開けた所で立ち止まった。
キバ「?」
魔法使いとキバは手を握りあっている。
ポニテ「リア充は死ねッ!」
魔法使い、キバ「「今は言うなよ」」
--東の王国、城内--
てってってっ
魔法使い「……ん。あ、おいお前の両親て」
魔法使いは思い出したように声をかけるが、既にポニテは走り去った後だった。
魔法使い「……まぁいいか」
キバ「けほっこほっ」
魔法使い「……帰ろう。俺達の家に」
キバ「ふふ……占拠してるだけだけどね」
--東の王国、廊下--
タッタッタッ!
ポニテは城内を走る。
ポニテ(……感じる。私の中にお姉さんの力を感じる)
ポニテは階段を一気に駆け上がる。
ポニテ(力強くて、優しくて暖かい)
ポニテは城内を走る。
ポタッ
ポニテ「……ふぇ」
ポタッポタッ
ポニテ(私は)
ポタポタッ
ポニテ(お姉さんの命を食べたんだ……!)
--南の王国近辺の村--
南村人「はんにゃらーだー」
南でぶ「おろしーだれー」
大きな台座の上に座る、きらびやかな衣装に身を包んだブラ。
南おっさん「さーたーあんだぎー」
それを取り囲む特殊な衣裳を身に纏った村人達。それはまるで何かの儀式のようだった。
肥大化鶏「ごけー!!」
ダンッ!!
鶏の首を切断し、生き血を器に注いでいく。
どっぽどっぽ
南司祭「きぇーぇ!!」
ばっさばっさ
ブラ「……」
というか完全に儀式だった。
ヤミ「むしろ宗教だった」
--南の王国近辺の村--
ヤミ「よかったではないか。ブラよ、お前すっかり神様扱いだ」
中学生メイド「まったくヤミ様を差し置いて神様扱いとか、でらむかつく~」
ヤミ「あ、そこのブドウ取ってくれ中学生」
中学生メイド「は?自分で取ればって話なんですけど~」
中学生メイドはそう言いながらもヤミにブドウを差し出す。
ヤミ「……反抗期?」
小学生メイド「わたちたちも神官あつかいで面白いでごじゃいましゅ!」
アウストラロピテスク「うほ、うほほ」
ヤミ「もはや番犬の片鱗も無い件について」
--南の王国近辺の村--
ブラ「……まぁそこまで私の歌声を聞きたいというのなら……仕方ありませんね」
ブラは変な衣裳を纏い、立ち上がった。
ザッ
ブラ「……てめぇら、準備出来てんだろうなぁ」
ヤミ「あ、はい」
中学生メイド「はいはいうざいって感じ~」
小学生メイド「オッケーでしゅ」
アウストラロピテスク「どんどこどんどこどこどどん」
ブラ「いくぜ……我は脳髄叩き割る」
狂乱の宴……!
--東の王国、作戦室--
砲台もこもこ「……」
選抜兵「現在こいつは仮死状態にしています。だからもしかしたらネットワークと繋がってないのかもしれませんが」
選抜兵は身体中をがんじがらめにされたもこもこを連れてきて、東の王達に説明する。
医師「いや大丈夫でしょう。生きてさえいれば、いや死んでいても有効かもしれません。死体から情報を得るくらいのこと、もこもこならやってのけそうです」
アッシュ「じゃあ、いくぞ。奥義、ポイポイポイズン」
じゅわ
アッシュの手のひらから染み出た、タールのように真っ黒な毒がナイフを伝ってもこもこに垂らされた。
ぽたっぽたっ
砲台もこもこ「……」
砲台もこもこの口とおぼしき穴に、アッシュの体液が侵入する。////
--東の王国、作戦室--
砲台もこもこ「!!」
ビグン!!
電流が走ったかのように、砲台もこもこは体を捩らせる。
アッシュ「ほーれほーれ」
ぽたっぽたっ
砲台もこもこ「ンンンーーッ!!」
体液が垂らされる度に砲台もこもこは過剰な反応を見せた。
ぽたっぽたっ
砲台もこもこ「ふーっ!ふーっ!」
涙ぐんだ瞳でアッシュを見上げる砲台もこもこ。
医師「くくく」
ぽたっぽたっ
砲台もこもこ「ふぐんっ!!」
砲台もこもこは思い切り仰け反ったかと思うと、荒い呼吸を繰り返していた。
ポニテ「誰得だよ」
ほんと。
--もこもこちゃんねる--
765 :VIPにかわりましてmokomokoがお送りします(巣なう)[sage]:2011/07/18(月) 17:13:50.12 ID:hewV
うあー……さっきまじやばかったわー。まさかこんなところまで潜入してくるとは思わなかったわー。
766 :VIPにかわりましてmokomokoがお送りします(荒れ地)[sage]:2011/07/18(月) 17:34:34.79 ID:AJ873
陸王もこもこ死んだwww……まじかよ……
767 :VIPにかわりましてmokomooがお送りします(お空) [sage]:2011/07/18(月) 17:35:10.41 ID:eewT
こっちも空王もこも様殺されたお……今逃げてるお……あれ?なんか下からとんでk
768 :VIPにかわりましてmokomokoがお送りします(荒れ地)[sage]:2011/07/18(月) 17:35:53.01 ID:9ku
>>767殉職チーン 今どんな状況になってるの?やっぱ全体的に押されてるのか?
769 :VIPにかわりましてmokomokoがお送りします(海もこ)[sage]:2011/07/18(月) 17:36:03.01 ID:jwse
かなりやべーよ。楽観視してるのは司令官とか上のやつらだけだよ。
770 :VIPにかgわりsdfましてmokomoakoがお送りします(巣er98なう)[sag3ghe]:2011/07/d18(月h) 17:38:4d6.82 ID:Igds3ws
zip
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2205400.zip.html
俺の愛
771 :VIPにかわりましてmokomokoがお送りします(荒れ地)[sage]:2011/07/18(月) 17:39:36.13 ID:vS4g2
うわー。超うさんくせー。おいみんな、絶対にダウンロードねーぞーあ09w84gはおいrへが
772 :VIPにかわりましてmokomokoがお送りします(海もこ)[sage]:2011/07/18(月) 17:40:59.29 ID:HsegmW
はん、わかってるっつーas8e9ug23あ8えいhが3
773 :VIPにかわりましてmokomokoがお送りします(巣なう)[sage]:2011/07/18(月) 17:41:01.51 ID:mK46P
あおw8え4ゆごあkdが
774 :VIPにかわりましてmokomokoがお送りします(海もこ)[sage]:2011/07/18(月) 17:41:57.86 ID:H3rmW
あおlしうが83うぃえ4が
--東の王国、作戦室--
アッシュ「……成功したのかどうやって証明するのさ」
医師「捕獲しているもこもこの行動次第ですね」
レン「にゃー」
ぐに
東の王「む、見てみろ形状が変わっていく」
砲台もこもこは体が変形し、鹿のような姿になった。
人形師「これが彼らなりの、人間に対する敵意がないというアピールですかぁ?」
人造魔王「オイシソー」
砲台もこもこ「きゅーん、きゅーん」
東の王「確認しろ」
--東の王国、作戦室--
通信兵「はっ。……そうですね。どの地域でももこもこの姿は変わっています。鹿やウサギ……草食動物が多いですね」
選抜兵「まじか……あんだけ苦労したってのに」
通信兵「はい、みんな森に逃げて行っていますね……え!?」
東の王「どうした通信兵。何があった」
通信兵「超強力なエネルギー反応感知……恐らく黒い空のもこもこが……再充電を開始しました」
東の王「なんだと!?」
東の王「どういうことだ!やはりお前の推論が間違っていたということか!?」
医師「……黒い空はもこもこのネットワークの範囲外なのかもしれません」
新王「範囲外……?」
医師「はい。言わば圏外」
召喚士「圏外なら仕方ないでやんす」
--東の王国、作戦室--
医師「もしくは……ネットワークにつながっていないもこもこもいるのかもしれない」
槍兵「まじかい……」
東の王「障壁隊は直ちに城の屋上に行け!二撃目に備えるぞ!!」
新王「東の王様」
東の王「なんだ?」
新王「前回は城の防御魔法と合わせてなんとか耐えることが出来ました。ですが今城の力が下がっています。次は受けきれません」
通信兵「今我が城の防御結界の出力は三分の一にも満たない状況です。怪我人の治療に使われる魔力を止めても半分にすら程遠いかと……」
東の王「――く」
東の王は険しい表情で腕を組む。
東の王「予想される発射時間は?」
通信兵「……わかりませんけど、先ほどの状況で考えるなら、最速で41分後です」
--東の王国、作戦室--
東の王「ここに直撃した場合はどうなる?」
通信兵「……城を中心に半径5キロが焦土と化します」
東の王「!そんな時間では民衆を逃がすことも出来ぬ!!」
剣豪「金持ちは昨日からみんな逃げてっけどな」
聖騎士「ぶるぅぅぅあぁぁ!!」
狐男「こん!?」
ツインテ「……うっせーな」
聖騎士「さっきから聞いておぉればぁ……なぁにを軟弱なことをぉ……敵にぃ尻を向けて逃げるだとぉ?」
東の王「!……受けとめることが出来ないのでは仕方があるまい!!民や兵を無駄死にさせるわけにはいかん!!」
聖騎士「こわっぱがぁ!!」
レン「くわっぱ」
--東の王国、作戦室--
聖騎士「民にぃ……危険だから国から出ていけなどとぉ……王ぉぉのすることではないぃぃわぁ!!」
東の王「!?」
聖騎士「王はぁ……民を守る者だぁ……むぁぁもぉる者だぁぁ!!」
アッシュボソボソ「王相手に説教とか……何者だ?」
選抜兵ボソボソ「知らないのか?聖騎士様のこと」
アッシュボソボソ「全く」
選抜兵ボソボソ「うそー。これもジェネレーションギャップ?聖騎士様はな」
聖騎士「敵は全てぇ打ち貫くぅ……我が国の領土を脅かす侵略者は全てぇ……打ち砕かねばならぁぁぬぅ!!」
選抜兵ボソボソ「先々代の勇者、大勇者様の兄であらせられるぞ」
アッシュボソボソ「うぇ……まじで?」
選抜兵ボソボソ「まじで」
--東の王国、作戦室--
アッシュボソボソ「一体何才だよ……あんなガチムチで黒光ってんのに」
東の王「そこまで言うのなら何か策はあろうな聖騎士」
聖騎士「ふははは。力には力ぁ!!地上から迎え放てばよいぃ」
東の王「どうやって!」
聖騎士「我がやる」
東の王「!!」
聖騎士「我がドラゴン軍とぉ我がいればぁ簡単に跳ね返せるぅわ」
虎男「まじかお……」
東の王「……通信兵。行けると思うか?」
通信兵「えっと……そうですね。今の障壁で耐えられるくらいには、威力を削ることが出来るかもしれないです」
--東の王国、作戦室--
東の王「……迎撃で威力を落とし、障壁で耐える……か」
聖騎士「んん?何を言っておる。我が跳ね返し、空の敵も打ち落とぉぉす」
通信兵「あれを跳ね返す威力とか……人に出せるとは思えないですが」
聖騎士「我のスキルとぉ、我の宝であるぅ、魔王の骨を見くびるなぁ」
新王「魔王の骨?……」
聖騎士「おぅともよぉ」
東の王「そんなものに手を出していたのか……」
槍兵「超レアアイテムじゃないか」
新王「……」
--東の王国、作戦室--
選抜兵「それでもやはり足りないような」
聖騎士「渇!!」
全員「「「!?」」」
聖騎士「我がやるとぉ……言っておるのだぁ……ぐだぐだ言わずにぃ、我に任せておけばぁよい!!」
東の王「ぐ」
聖騎士「別にぃ貴様らは逃げておればよいわぁ。我と勇敢なぁぁる、ドラゴン族の皆ぁぁでぇ……後はぁぁ片付けておくぅぅ」
剣豪(さすがにあいつも聖騎士が相手では押されるはな……俺らにとっちゃあ兄みたいなもんだから)
アッシュ「むちゃくちゃだな……」
レン「同じ脳みそ積んでるとは思えにゃい」
侍「ござる」
--東の王国、作戦室--
ツインテ「……俺はそのオッサンに乗るぜ」
虎男「!」
ツインテ「避け続けても受け続けても勝てねぇんだよ。攻めなきゃいつか負ける」
ダンッ
ツインテはテーブルに足を乗せる。
ツインテ「第一アイツが何を目標に打ち込んで来ているのかわかんねーだろ」
通信兵「!……なるほど。あれだけ距離があるのに一撃目でこの城に当ててきた……ということは何か長距離からでも確認出来る目標がある?」
ツインテ「信号だろう」
アッシュ「信号?」
ツインテ「俺の右肩に残ってるやつや、あんたの中にいるやつ目がけて打ち込んでいるんだろうな」
通信兵「!?私、ですか?」
--東の王国、作戦室--
ツインテ「俺はもこもこの力のかけらみたいなもん持ってるからな。わかるんだよ、その足の切断面に」
通信兵「!……潜んでいたのか」
東の王「……だから城内にまで攻め込まなかったのか……あの戦いは俺達を外に逃がさないように囲むためのもの」
召喚士「……実力で防げていたと思いたいでやんす」
ツインテ「だから逃げても俺らをホーミングしてくるかもな。だが城に照準を合わせてる可能性も捨てきれない」
東の王「く……」
ダンッ
ツインテ「……やろうぜ?せっかく友達呼んだんだろ?」
ツインテは不敵に笑う。
ツインテ「なめた真似した奴は皆ぶっ殺!!」
レン「ぺろぺろぺろぺろぺろぺろ!!」
侍「ぺろぺろぺろぺろぺろぺろ!!」
--東の王国、作戦室--
聖騎士「ほぉ……中々見所のあるやつがいるではないぃかぁ」
新王「ツインテちゃんはなんとしても守らなくちゃいけない……我ら王国は聖騎士様の案に乗ります」
東の王「!新王殿……」
槍兵「俺はあんま役に立てねぇけど……今回まともに勝ってねぇからな俺、負けっぱじゃ帰れねえよ」
人造魔王「ソウイヤ役タタズダネ今回!」
召喚士「ぶっちゃけおいら達は逃げたいんでやんすけど……」
人形師「そうは言えないようですしぃ」
狐男「そういや一度でも攻撃されたら発信機的なのが付いてる可能性もあるこん?」
虎男「む……じゃ逃げたら逆にまずいがお」
剣豪「さぁどうする国王殿」
--東の王国、作戦室--
選抜兵「東の王様」
通信兵「東の王様……」
東の王(ツインテめ……人を焚き付けることのなんとうまいことか……もしや王スキル、王の言の片鱗か?……ふん)
東の王は立ち上がる。
東の王「よろしい、ならば戦争だ」
--どっかの空--
テンテン「すっごい飛んでるよ!!」
--東の王国、城庭--
障壁兵「魔方陣組み上がりました!」
通信兵「了解、全員配置に付いていますか!?魔力班!!」
ツインテ、人造魔王、召喚師、吟遊詩人、槍兵、虎男+その他大勢「「「捻出しまーす」」」
ドラゴン「ぎゃお」
通信兵「結界班!!」
新王「多分大丈夫かな」
医師「多分て……」
新王、医師、狐男、東の王+その他大勢。
--東の王国、城庭--
通信兵「調整班!」
アッシュ「そんな大事なところ俺らでいいの?まじで」
レン「アッシュ達はレンのサポートしてたらいいにゃ」
ポニテ「調整に向いてるのがレンちゃんで、レンちゃんと一番連携取れるのが私達だからって……どうなの大人」
絵師「ぎゃはは!」
通信兵「応援班!」
剣豪「うっせぇ殺すぞ!!」
侍「こればっかりは何もできんでござる。ちゃんとチアコスはしてるでござるよ」
通信兵「全班確認!聖騎士様!!」
聖騎士「いつでもいけぇぇる」
通信兵「それでは……最終ミッション、スタート!!」
テンテン「あの……私何したらいい?」
発光する何かがおどおどしながら降りてきた。
--東の王国、城庭--
テンテン「バーカバーカ!狙いも付けれないくせにいきなり撃っちゃおうとしてたの!?バーカバーカ!!」
通信兵「ぐ……一応攻撃時のエネルギー砲の角度から、位置を逆算して狙いつけてますもん……」
テンテン「確実じゃないくせに全てをぶつけようとしてたんだ!?バーカバーカ!!」
通信兵「ぐぬぬ……」
槍兵「わりぃな……なんか祭りに遅れた感じみたいになって拗ねてるんだわ」
アッシュ「めんどくせー……」
聖騎士「ならお前ならぁ、なんとかなると言うのかぁ?」
テンテン「ふふん、私の索敵能力を嘗めないで欲しいな。この星の隅から隅まで把握することなど、造作もないことだ」
東の王「ほう」
テンテン「ん……」
ポニテ「どうかしたの?」
テンテン「いや目標のエネルギー充電が終わり、発射態勢に入っただけだ」
一同「「「……」」」
テンテン「ほう、中々のエネルギー量だ。かつて母船に打ち込んできたのを思い出す。お前達、準備しなくていいのか?辺り一帯が消し炭になるぞ?」
一同「「「早く言えー!!」」」
--東の王国、城庭--
ツインテ「くそ!!魔力供給開始!!」
人形師「ふぇっふぇっ。いくらか実で回復しましたが、どこまで出せますかねぇ」
ツインテ「吟遊詩人!」
吟遊詩人「はーい。僕が歌で魔力を回復させていくよ~」
召喚師「供給しながら歌を?なんとも器用な奴でやんす」
虎男「歌は魔力使わないスキルなのかがお」
槍兵「……つまりずっとこの苦しみが続くってか」
--東の王国、城庭--
レン「にゃにゃにゃにゃにゃにゃ!!」
レンは集めた魔力を調整し聖騎士に送り込んでいく。
アッシュ「く、こ、これきついぞ」
ポニテ「私細かい作業苦手なのに!」
レン「だからアッシュ達を選んだにゃ!パーティスキル、共有!」
アッシュ「パーティスキル……ってなんだ」
ポニテ「さー、私に聞かれても、って、わわ!凄い!私作業出来ちゃってるよ!」
アッシュ「!!なんだこれは」
レン「みんな使わないからなんでかと思ってたけど知らんかったんかにゃ」
レン達は高い技術が求められる作業をこなしていく。
レン「人の長所にしてパーティを組む最大の理由にゃ。パーティを組んでる仲間とのみ使えるスキルにゃ」
アッシュ「……レンの技術力を共有しているのか」
レン「他にもあるけどにゃ。人は単体より群れの生物なのにゃ」
亜人だって、とレンは付け足す。
ポニテ「……」
--東の王国、城庭--
剣豪「……本気でやるのか?」
侍「我らにはほかにやれることがないでござる。ほらしゃきっとするでござるよ剣豪殿」
ボンボンを持ったチアガール衣装の変態が二人いる。
剣豪「おまっこれっ……やべぇだろ。せめて学ランで漢らしく応援するっていう選択肢があっただろ」
侍「学ランでむさ苦しい応援されるよりもチアガールに応援される方がいいに決まっているでござろう!?」
剣豪「ガールならな!!」
剣豪の生足。
剣豪「これなんてほらパンツちらちらってかワカメちゃん状態じゃねぇか」
苺柄のパンツが見える。
侍「……サービスでござる」
侍は一護柄のパンツを見せて言う。
剣豪「……これしくじったら全員死ぬっていうのに……」
侍「素晴らしき死に装束にござる」
剣豪「勇者すら斬って捨てた英雄なんだけどな俺」
--東の王国、城庭--
聖騎士「ふむぅ……中々心地よい魔力よぉ」
レン「いくら聖騎士と言えど魔力の保有限界はあるにゃ!だから一辺に聖騎士に送り込んじゃだめにゃ」
アッシュ、ポニテ「「おう!!」」
テンテン「ふむ……」
聖騎士「うるぁぁ!貴様らぁ!!もっと魔力をださぁぁんかぁぁ!!」
ドラゴン達「「「ガオオオ」」」
剣豪「レツゴーレツゴー!!L・O・V・E!!」
侍「うわ、まじでやってる……」
剣豪「殺すぞ!!」
--東の王国、城庭--
テンテン「!敵が発射するぞ」
聖騎士「!お出ましかぁ……ならばこちらもはなぁぁつまでよぉぉ!!おおおぉぉぉ!!」
バリバリバリバリバリ!!
レン「ぐ!力が分散されたらもったいないにゃ!アッシュ!」
アッシュ「わかっ、てる!!」
ギギギギ!!
膨大な魔力を聖騎士の槍一点に止めるよう、矯正するアッシュ。
ギーン
聖騎士「……ふはははぁ。うまくぅ形になったよぉだなぁ……」
ピカッ
その時宙が光る。
--東の王国、城庭--
聖騎士「!来たかぁ。迎えうううつ!!」
ギーンギーンギーンギーン!!
聖騎士の槍は纏った魔力で歪んで見える。
テンテン「……ん?迎え打つ?」
アッシュ「あ!?なんだよ迎え打つに決まってんだろ!」
ポニテ「あんな攻撃受けたら私達一瞬で蒸発だよ!!そっちレンちゃんお願い!!」
聖騎士「くぅらぁええ!!超雷槍ぅぅぅ!!」
ドッバーアアアア!!
地上から打ち出された極太の雷が天に昇る。
テンテン「……いや私のせいではないぞ」
ぶつぶつ言うテンテン。
--東の王国、城庭--
テンテン「だってほら私、聞かされてなかったし?」
アッシュ「あぁ!?さっきから何言ってんだお前!こっちは忙しいんだから話しかけんじゃねぇよ」
テンテン「いやな?……この角度は敵に攻撃するための角度であって、あのエネルギー砲にぶつけるための角度じゃないわけで」
ピタッ
その発言で、全員が固まった。
ギューン!!
敵のエネルギー砲と、
ドッバー!!
聖騎士の魔力ビームは、
スカッ
空中ですれ違った。
--東の王国、城庭--
聖騎士「……」
アッシュ「……」
ポニテ「……」
レン「……」
テンテン「……あーあ」
一同「「「あーあじゃねぇよ!!」」」
ツインテ「ど、どどどどーすんだあれ!!」
新王「おっ、おっ、お、おおおちおちっ、おち落ち着いて」
涙鼻水よだれゲロおしっこおう○こ垂れ流しながらにこりと笑う新王。
ゴゴゴゴゴ
猛烈な速度で
テンテン「いやだってあれと当たったら相殺されて大気圏の敵を倒す威力にならないからてっきりなんらかの手段に受けきるものとばかり」
アッシュ「……」
ポニテ「……」
レン「……終わったにゃ」
--東の王国、城庭--
三人はがくりと膝をつく。
ゴゴゴゴゴ。
聖騎士「ぬぅぅ……先程の一撃に全てを出し尽くしたからなぁ……」
恨めしそうに空の熱源を見る。
テンテン「あ、今大気圏の敵に着弾した。無事敵を撃破したよ」
アッシュ「……俺らが死ぬんじゃ意味ないことだ」
ポニテ「……」
ゴゴゴゴゴ
テンテン「……私の最大シールドでもこれは無理だしな……」
大地が揺れる。
ツインテ「……くそ……くそぉぉぉ!!」
?「諦めないでっ!お姉ちゃんっ!」
--東の王国、城庭--
パインッ
ツインテ「!?」
空中に、四つの結び目を持つ、珍しい髪型の少女が出現した。
ツインテ「フォ、フォーテ!?」
?改めフォーテ「うふふ。あ、違うかっ!全知全能たるお姉ちゃんが絶望するわけないよねっ!絶望するふりして遊んでるだけなんだよね!クスクス!」
ゴゴゴゴゴ
ツインテ「ッ!」
フォーテ「やっぱりフォーテのお姉ちゃんは凄いなぁっ!最高っ!女神様っ!……そのお姉ちゃんの邪魔をするなんて……」
ゴゴゴゴゴ!!
エネルギー砲が
ドガァァァァァァァァン!!!!!!
フォーテに着弾する。
--東の王国、城庭--
バヂバヂバヂバヂ!!
着弾時の衝撃波で辺り一帯が歪み、聖騎士達は吹き飛ばされる。
聖騎士「ぐぅおぉおお!!」
レン「にゃあああ!!」
ジジッ、ジジジジ!!
槍兵「あ、あのお嬢ちゃん……受けとめてるってのか!?」
吟遊詩人「フォーテ様……!」
ユラリ
フォーテ「ふざけてるよねっ、これっ!」
バヂィィン!!!!
信じられないことに、
聖騎士「なっ!」
フォーテはそのエネルギーを押し返した。
--東の王国、城庭--
ギャギャギャギャ!!
召喚士「やんすぅ……」
虎男「ば、ばかな!!」
しゅ~
フォーテ「ふうっ!汗かいちゃったっ!」
ツインテ「フォーテ……お前」
フォーテ「えへっ!心配しなくても大丈夫だよお姉ちゃんっ!フォーテ貧弱だけどダメージはないからっ!」
ふいー、と汗を拭うフォーテ。
フォーテ「受けとめた時に反転の呪いをかけたんだーっ。後は上に勝手に帰っていくよっ!」
ズ、ズズ
--東の王国、城庭--
アッシュ「離れているせいでツインテと何を喋っているのか……全くわからないが」
アッシュは足が震えて立つことが出来ない。
ポニテ「ば……化物……だ」
ズズズズズズズズ
ポニテは地面に這いつくばって空のフォーテを見上げた。
レン「ここにいる全員の魔力を足しても……及ばないほどの魔力量……」
レンは全身の毛が逆立っている。
聖騎士「……ふ、ふは、ふはぁはははぁぁ!!おもしろぉいではないかぁあ!!」
--東の王国、城庭--
ツインテ「お前……なんで封印牢を出た」
フォーテ「んっ?お姉ちゃんがお外に行ったって聞いたからっ!」
にっこり笑顔なフォーテちゃん。
ツインテ「……」
新王に目線をやるツインテ。
新王「……」
黙って首を横に振る新王。
フォーテ「なになにっ!?隠し事はやめてよお姉ちゃん!!それとも神の領域にすら到達したお姉ちゃんには深い考えがあるのかなっ?」
ツインテ「いや、別にそうじゃねぇ……それよりお前、何が目的で」
<○><○>
フォーテの顔から
表情が消えた。
--東の王国、城庭--
たったそれだけのことでその場にいた者全ての背筋が凍りつく。
ゾクッ!!
人形師(!?なんですかこのプレッシャー!!)
画家(や、やばい!)
新王「!?ツインテちゃん!!」
新王は後れて失態に気付く。
フォーテの右腕がゆっくりとあがり、人差し指がツインテの右側を指した。
フォーテ「……ちょっと待って……お姉ちゃん……その右腕……どうしたの……」
ツインテ「!?しまっ」
ツインテは右腕を衣装で隠していたのだが、それがはだけて露わになっていた。
フォーテ「なんで……なんでお姉ちゃんの右腕が……この星の全ての命より尊いお姉ちゃんの右腕が……」
ズ、ズズズズズズ
一同「「「!!!!!!」」」
全員の全身を強烈な悪寒が包み込む。
まだ捕食者の胃袋の中の方がマシだと思わせるほどの強烈な……。
--東の王国、城庭--
ズズズズズズズズ
フォーテ「なんで……お姉ちゃんの右腕が……無いの?」
殺意。
ツインテ「お、落ち着けフォーテ!!これには理由があるんだ!そ、そうちゃんとした理由で俺は」
フォーテ「ミギウデ」
ぐるん
フォーテは首を曲げ、レンを見た。
フォーテ「……あの子からお姉ちゃんの匂いがする……」
ツインテ「!?よせ!!」
ツインテは触手を展開し、同時にフォーテを捕まえようと左腕を伸ばす。
--東の王国、城庭--
フォーテ「」
フォーテの腕にツインテの手が触れるか触れないかというところで、
ぱか
フォーテは離れた位置にいるレンの眼の前に瞬間移動、そしてたい焼きを割るように顔を割った。
フォーテ「」
アッシュ「」
アッシュが気付いたのは横にいたレンが血飛沫を上げて崩れ落ちようとした時。
アッシュ「」
アッシュは思考よりも早くナイフを抜き、そしてレンの中を探るフォーテに切り掛かった
ボン
瞬間アッシュの頭部は破裂する。
--東の王国、城庭--
ぐちゃ
フォーテがレンの顔の中に手をいれようとすると、近くまで接近してきていた吟遊詩人と画家が一斉に飛び掛かる
ばんっ
も、地面から一ミリ浮いた瞬間二人の頭部が破裂した。
フォーテ「」
ツインテ「」
バシャバシャバシャ!!
音が大気を震わすことすら許さぬ速度。
ぐちゃぐちゃ
フォーテ「あ、これお姉ちゃんの匂いがするっ!」
レン「」
びくん、びくん
その間に作られた血の海。
--東の王国、城庭--
ポニテ「あ……あ」
ポニテは一歩も動けない。本能が全身の力で自分の体を押さえ付けている。
ウゴケバ
シヌ。
パンッ
否、動かなくても死んだ。
バシュー
ポニテは頭部の無い人形と化し、血の海を増やすために血を噴出し続けた。
フォーテ「あはっ☆」
--東の王国、城庭--
東の王「な、なんだ……何者だあいつは……!!」
ザっ
剣豪「なんて理不尽な力だ」
通信兵「っごく」
選抜兵「まるで悪鬼……」
医師「一難去ってまた一難……ですね」
四人は東の王を守るように構えを取るが、台風を眼前に控える藁の家のようなものだと理解する。
新王「フォーテ、ちゃん……!」
ツインテ「」
ざわっ
--東の王国、城庭--
フォーテ「お姉ちゃんっ!こいつから取り戻したよ!!お姉ちゃんの右腕の部品っ!!」
バシュン
ツインテのリボンがツインテの髪を結うと、ツインテは普段のツインテールの状態に戻った。
新王「!!」
ツインテは、がくがくと体を震わせている。
ツインテ「……フォーテちゃん!!!!」
フォーテ「!?」
ツインテは叫んだ。
ツインテ「そういう、こと、は、しちゃ、だめですっ……」
目いっぱいに涙を溜めこんで、ツインテは言葉を吐きだした。
フォーテ「」
ドクン
--東の王国、城庭--
フォーテ「ご、ごめんねお姉ちゃんっ!でもフォーテ、高貴なお姉ちゃんの体がこの薄汚い猫に奪われたんだと思ったのっ!!だからフォーテっ!」
ツインテ「レンさんには、ボクから、あげたんです!!だからそんなことをする必要なんてない!!みんなボクの大事な仲間なんだから!!」
フォーテ「……大事?」
ズズ……ズズズズズズズ
東の王(!?これだ……この得たいの知れない無限に広がって行く闇のようなもの!!)
剣豪(ち、見てるだけで不安になってくるぜ!!)
フォーテ「お姉ちゃん……お姉ちゃんのその大事って言うのは……フォーテと……どっちが大事……?」
ズズズズズズズズズ
ア゛ァ……アア゛ァアア゛ア
聖騎士(?……闇の中から亡者のうめき声のようなものが)
フォーテ「ねぇ……ツインテお姉ちゃん」
--東の王国、城庭--
ツインテ「っ」
ツインテはつばを飲み込んだ。
フォーテ「ねぇ……」
ツインテ「ふぉ、フォーテちゃんの方が大事に、決まってます」
フォーテ「……」
ツインテ「……」
フォーテ「……えへ」
ズズズ
フォーテは、笑顔になった。
フォーテ「よかったー!!そうだよねっ!!フォーテはお姉ちゃんのことが一番好きなんだもんっ!!ツインテお姉ちゃんもフォーテのこと好きに決まってるよねっ!!」
フォーテはまるで興味の無いがらくたのようにレンを捨てた。
びしゃ
フォーテ「そっかっ!!これとかもツインテお姉ちゃんの考えではどこかで使う大事な道具なんだねっ!?それとは知らずに壊しちゃってごめんなさいっ!!」
ぺこりと謝るフォーテ。
フォーテ「今っ、治すからっ」
ズズズ
ツインテ「!!」
--東の王国、城庭--
フォーテの足元から血だらけの腕が何本も出現し、アッシュ達の破片に触れる。
新王「!!いけないフォーテちゃん!!」
フォーテ「?なんでなのパパっ?フォーテ、壊しちゃったから治すだけだよっ?」
ツインテ「くっ」
ツインテは眼をそむけた。
侍「?……」
腕がレンの体に触れた瞬間、
ビクン!!
腕がアッシュの体に触れた瞬間、
ビクビクン!!
ごぼ、ごぼぼぼ
死体は首から血を垂れ流す。
フォーテ「えへへへっ」
--東の王国、城庭--
アッシュ「ア゛ァ……アア゛ァアア゛ア!!」
ポニテ「ア゛ア゛ァアア゛ア」
レン「ア゛ァア゛ァアア゛ア」
ぐちゃ、ぐちゃぐちゃ
選抜兵「お、おえっ!!なん、だこの魔法は!!」
人形師「腕が、死体をこねくり回していますねぇ……」
新王「……フォーテちゃんの回復や蘇生魔法だ……。フォーテちゃんの蘇生魔法は対象に触れた時点で意識が戻る。どんだけばらばらな状況であっても」
通信兵「!?じゃあ今の彼らは!!」
新王「死ぬほどの苦痛の中で蘇生を続けられている……ひどい話だ」
フォーテ「ねーツインテお姉ちゃんっ!!フォーテも……お姉ちゃん欲しいなっ」
ツインテ「!?」
--東の王国、城庭--
フォーテ「だってそうでしょっ?この人達にはお姉ちゃんの体の一部をあげたのにっ、一番大事なはずのフォーテは何も貰ってないんだよっ?おかしいよねっ?」
ツインテ「ッ!!……そう、だね」
新王「!ツインテちゃん!」
ツインテ「……おいでフォーテちゃん」
フォーテ「!うんっ!!」
てけてけと嬉しそうに笑いながら走るフォーテ。
ア゛ァ……アア゛ァアア゛ア
それに引きずられるように闇が追う。治し途中の肉を掴んだまま。
--東の王国、城庭--
フォーテ「なにくれるのっ!?なにくれるのっ!?」
ツインテ「……」
ツインテは左拳に魔力を込めると、
ツインテ「ッ」
バキっ!!
フォーテ「!?」
ツインテは自分の頬を殴った。
新王「ツインテちゃん!?」
ツインテ「げ、げほっ!!」
ツインテはよろけて倒れこんでしまう。
フォーテ「えっ!?えっ!?何してるのお姉ちゃんっ!?大丈夫っ!?」
--東の王国、城庭--
ツインテは口に手を当てると、
ツインテ「……これ」
血に濡れた奥歯を差し出した。
フォーテ「あぁああ!!これ、フォーテにっ!?」
ツインテ「」
こくっとツインテは頷く。
フォーテ「うわーい!!お姉ちゃんの歯だー!!嬉しいなーっ!!」
フォーテは眼をうるませて喜んだ。
フォーテ「ありがとうお姉ちゃんっ!!フォーテ大事にするねっ!?」
フォーテは嬉しそうにツインテの歯を掲げた。
フォーテ「あ。お姉ちゃんの血……」
ツインテ「……?」
レロッ
--東の王国、城庭--
槍兵(こ、こいつはまじでやばい……)
狐男(やりたい放題しているというのに……我らが一歩も動けないコン)
テンテン「……」
新王(……やはりか。この数の三強クラスでもフォーテちゃんを止めることは出来ない……この世界でツインテちゃん以外には……)
フォーテ「えへへっ!お姉ちゃんの血おいしいなぁっ!」
ツインテ「ッ……ね、ねぇフォーテちゃん?」
フォーテ「?」
ツインテ「このまま、大人しく王国に帰らない?」
フォーテ「やっ」
ズズズズズズズズズズズ
新王(!!またこの流れか!!)
--東の王国、城庭--
ツインテ「……なんで?ボクがいないから?」
フォーテ「それももちろんあるよっ。でもねっ、フォーテ目標を見つけたのっ」
フォーテはにこにこしながら言った。
フォーテ「フォーテの目標はね、この世界で一番キレイで一番優しくて一番強いツインテお姉ちゃんと戦ってみたいのっ!お姉ちゃんが勇者でっ、フォーテは魔王っ!!ねっ!!素敵でしょっ!?」
東の王(魔王、だと!?)
新王(くっ!!)
ツインテ「ふぉ、フォーテちゃん!」
フォーテ「フォーテ色んな本を読んだよっ!でも一番おもしろい話はいつも勇者と魔王のお話なのっ!作品にもよるんだけど、勇者と魔王が恋したり勇者と魔王が殺し合ったり勇者と魔王が手を組んだり勇者と魔王が殺し合ったりっ!!」
嬉々として語るフォーテ。
フォーテ「フォーテ気付いたのっ。勇者と魔王は何よりも硬い絆で結ばれてるんだって!!だからねっ!フォーテはお姉ちゃんとそんな関係になりたいのっ!!」
ツインテ「……!!」
フォーテ「ねっ!?だからお姉ちゃん。フォーテと殺し合おうっ!?」
--東の王国、王の間--
三時間後。
東の王「一体どういうことだ!?あれは貴殿の娘なのか!?公的な書類には王国の王女はツインテ一人となっているではないか!!」
新王「……」
東の王「しかも……あれは何かの冗談か……?あれはすでに人の域を越えている!!因子補正を抜けば、魔王とて単騎で打ち倒せる!!」
新王「……フォーテは……生まれながらに三強クラスを凌駕する力を持っていました……。書類上は存在しないことになっています……」
--東の王国、待合室--
ツインテ「……」
無表情で窓から外を眺めているツインテ。
ポニテ「つ、ツインテちゃん」
レン「やめるにゃポニテ」
アッシュ「……」
侍「ござる」
--東の王国、待合室--
槍兵「やれやれ、とんでもないのに眼を付けられてんだなお譲ちゃんも」
虎男「がおがお」
テンテン「さーて、仕事も済んだみたいだし帰るか。乗ってけ槍兵送ってくぞ」
召喚士「!こいつろくに立たなかったくせして一番最初に帰るとかふざけてるでやんす!!」
テンテン「何を言う。私がいなければ大気圏にいる敵に攻撃を当てることなどできなかったぞ」
人形師「うるせぇですねぇ」
テンテン「……というか貴方達が宇宙空間でそのまま闘えばよかったではないか」
剣豪「ばーかそんなことができるなら苦労しねぇってーんだよ」
通信兵「黒い空に行った生命はすぐ死ぬといわれていますよ。常識です」
テンテン「……そんなはずはないんだがなー……」
--東の王国、待合室--
レンボソ「この流れはまずいと思うにゃ」
ポニテボソ「え?」
侍ボソ「なんでござる?」
アッシュ「……」
レンボソ「ツインテのことにゃ、あんだけの強敵につけ狙われていると知ったら……どうすると思うかにゃ?」
ポニテボソ「……パーティ抜けるってこと?私たちに迷惑がかかるから」
侍ボソ「ありうるでござるな……」
アッシュ「……」
レンボソ「さっきだって……ツインテはあれを自分のせいだと思ってるかもしれないにゃ」
三人は血の臭いでむせ返る蘇生を思い出した。
ポニテボソ「う……血の海に溺れて……脳の芯にまでひびくような激痛……思い出したくもないよ」
--東の王国、待合室--
ガタっ
アッシュは立ちあがった。
アッシュ「おいツインテ」
ツインテ「?」
ツインテはびくっと肩を震わせて少しだけ振り返る。
ポニテボソ「あ、ばか!!」
レンボソ「今はまだその時期じゃないにゃ!」
アッシュ「……」
ツインテ「……」
アッシュ「……お前俺のこと足手まといと思ったか?」
ツインテ「へ?」
--東の王国、待合室--
アッシュ「あんな奴に成す術も無くフルボッコにされた俺を見て足手まといと思ったのか?って聞いてるんだ!」
シーン
ツインテ「え?、え?」
召喚士「はー……」
人形師「そりゃそうに決まってますよねぇ」
アッシュ「うるせぇ!!俺はツインテに聞いているんだ!!」
ツインテ「……」
ポニテ「ツインテちゃん……」
ツインテ「……思ってません」
アッシュ「本当か?」
ツインテ「……はい」
槍兵「んなわけねーべー」
--東の王国、待合室--
アッシュ「本当の本当にそう思ったんだな!?」
ツインテ「は、はい」
アッシュ「じゃあツインテ、俺らはまだお前の仲間でいいんだよな?」
ツインテ「!」
アッシュ「足手まといじゃないんならいいんだろ!?ずっと一緒にいても!!旅を続けても!!」
ポニテ「アッシュ君……」
アッシュ「危険だからもう俺らと一緒にいれないとか言わないよな!?ツインテェ!!」
ツインテ「それ、は……」
アッシュ「なめるなよ!!次は……俺があいつを倒す!!」
シーン
--東の王国、待合室--
狐男「……ぶっ」
吟遊詩人「くくく」
虎男「くっくっ」
画家「ぎゃはははははは!!んなことできるわけないってば!!ぎゃははははは!!」
待合室は爆笑の渦に巻き込まれる。
槍兵「ひーっ!ひーっ!あっおいねぇ……いやーお兄さん感激したぜぇ」
ばんばんとアッシュの肩を叩く槍兵。
アッシュ「俺は本気だ」
ぱしっ
その手を振り払うアッシュ。
槍兵「そのようだな。眼をみりゃわかるよ」
選抜兵「やめな餓鬼。無様だ」
アッシュ「!!」
選抜兵「今この部屋にいのは、世界の強豪を集めたオールスターなんだよ。そのメンバーでさえ、あの場で……誰一人として動こうとしなかった。動けなかった」
先走った一部を除いて、と選抜兵。
--東の王国、待合室--
通信兵「どういう経緯であれだけの力を持つに至ったのか、それはわかりませんがあれを倒すのは不可能でしょうね」
アッシュ「!!きさまら」
通信兵「私の見立てでは、君はきっと三強クラスになれるでしょう」
アッシュ「!?」
通信兵「それにポニーテールの子と猫亜人の子、もちろんツインテ王女も。みんな恐ろしいまでの才能を持っています。恐らく十年……もしかするとそれよりも早く三強クラスの域に達すると思います」
槍兵「更にそれから十年も修業を積めば、世界最強の五柱の仲間入り、っとくらぁ」
ポニテ「……?」
通信兵「つまり、ここにいる私達は、誰も君達を過小評価していませんよ」
レン「!!」
通信兵「その上で言っているんです。無理、だと」
--東の王国、待合室--
召喚士「……世の中は、どんなやつとも闘って勝たなきゃいけないってわけじゃないでやんす。君子危うきに近寄らず。別に闘わないで逃げてたらいいのでやんす」
ツインテ「!……」
虎男「触らぬ神に祟りなし。逃げるのも人生がお」
子供達を見る大人達の視線は、世界のあり方を語っていた。
ツインテ「……でも……でもそれじゃ」
アッシュ「それじゃあいつが救われねぇ!!」
ツインテ「!?」
槍兵「……は?」
アッシュ「そうしたらフォーテは救われないままだ……そしてきっと、色んな人が犠牲になるんじゃないのか?」
通信兵「……」
剣豪「……は」
剣豪はニヤリと笑う。
--東の王国、待合室--
聖騎士「よおおおおおおおおおくぞいったあぁあああ少年んんんん……。それでこそぉぉ戦っ士……よぉ」
ポニテ「おじちゃん」
聖騎士「こんな多少強くなったくらいでぇえ……なにもかもわかった気になっているような大人の言うことをぉぉ聞くべきではぬああああいい!!」
通信兵「せ、聖騎士様!?」
聖騎士「いいかぁあ少年んん!!大人の言う常識というのはぁああ、数多くの出来そこないが作りだした見えないボーダーよぉぉぉ」
ダンっ
聖騎士はテーブルを叩く。その衝撃で腕をテーブルに投げ出していた画家は軽く浮く。
聖騎士「常識というものがそもそもいかんのだぁああ。たかだか八割だか九割の人間がそうだと言ったところでぇえそれが正しいわけではあるまあぁあぁあいい!?」
アッシュ「……」
聖騎士「自分ではないぃ、大衆が見出した答えを自分にもあてはまる答えだと思うなぁああ……答えは自分で見つけるぅぅぅものなのだぁあ……」
アッシュ「……」
--東の王国、待合室--
聖騎士「お前の限界は周りが決めるのではなぁい!!自分が決めるのだぁ!!他人の意見なぞ聞くもんではないいぃぃぃぃぃ!!」
剣豪「かっかっかっ!極論すぎる!」
アッシュ「……他人の意見が駄目ならおっさんの言うことも聞けないことになるな」
聖騎士「む?……むぅ……」
ツインテ「……大丈夫ですよアッシュ君」
ツインテは後ろからアッシュに近づいて、手を握る。
ツインテ「ボク達ならきっと……なんだって出来ます。一人じゃ無理でも、みんななら……フォーテちゃんを倒すことだって」
ツインテは微笑を浮かべる。
ツインテ「だってボク達は、勇者じゃないですか」
アッシュ「ツインテ……」
ツインテ「あ、そ、そう言えば今って休業中なんでしたっけ?あ、あれ?」
--東の王国、待合室--
アッシュ「……」
ふ、とアッシュは笑う。
アッシュ「いや、その通りだツインテ」
ポニテ「うん!私達ならどんな敵でも倒せるよ!!魔王だってちょろいっだよ!!」
レン「四人揃えば無敵にゃ」
侍「拙者を忘れないでほしいでござる」
わいわい
槍兵「……」
剣豪「……ん?若さと未来がうらやましいか?小僧」
槍兵「……そんなんじゃないっすよ。致命的な敗北を知らないってのは幸せだなぁと思って。俺もまだまだ若いですから……もっと強くなります」
剣豪「かっ。致命的な敗北ってのも、自分の受け取り次第だぜ」
虎男「……」
召喚士「しかしあのパーティに一人おっさんに近いやつまじってるでやんす」
--薄暗い洞穴--
フォーテ「がはっ!!ぎ、がががあああああ!!」
蝙蝠が飛び交う洞窟の中でフォーテは血を吐きもがき苦しんでいた。
???「何度見ても可哀そうコン……効果が効果だけに代償が大きいコン」
??「狐娘、薬草を取ってきてください。あれが終わったら飲ませてあげるんですから」
???改め狐娘「お、わかったコン」
????「わしらも何かすることあるアル?花師」
??改め花師「えっと、そうですね。風水師と占星術師は水を汲んで来てください」
????改め風水師「わかったあるー」
?????改め占星術師「わかったのよ」
フォーテ「えへ、えへへ……お姉ちゃんに歯、もらっちゃった……えへへ!!げぼっ!!」
花師(……呪術……恐ろしい力ですね。今回の代価は2週間の断食と3日間の激痛……普通なら肉体もそうですが、まず精神が持たないでしょうに)
フォーテ「あぁああお姉ちゃんんんんんっっ!!」
--森--
三日後。
深い深い森の奥。
そこには擬態化したもこもこ達が集まっていた。
もこもこ「……」
がさっ
もこもこ「!?」
びくっ
草の動く音に跳びはねて驚くもこもこ。
もこもこ(ニンゲン……コワイ!!)
遺伝子に植えつけられた恐怖は、もこもこを臆病な性格に変えた。
そして、
もこもこ達はそれ以来、人前に姿を現すことは無くなった。
ガサガサ
もこもこは一つの動物に変わり、
ドシュ!
鹿もこもこ「きゅい」
がさがさ
狩りのおっさん「おう、これはいい鹿だぁ。今日はうまい鍋が食える!!」
人間に気付かれることなく、その一生を過ごす。
こうして一つの戦いが終わった。
--沼地--
赤もこもこ「ふいー。いきなりみんな狂っちゃった時はびびったもきゅね」
青もこもこ「きっともこもこちゃんねるに怪電波でも流されたに違いないもきゅ」
黄もこもこ「ふにゃー。うちらは旧もこもこちゃんねるで助かったということもきゅね?」
茶もこもこ「まぁなにはともあれどっかでまたゆっくりやっていこうもきゅ。今回は焦り過ぎた感があったもきゅよ」
灰もこもこ「そうもこね。中々どうして人間つえーし」
てくてくてくてく
--東の王国--
アッシュ「よし、出発するか」
選抜兵「なんだよ東の王国の復興手伝ってってくれないのかよー」
侍「それは自国の問題でござる。こんな若い子達に背負わせるべきではないでござるよ」
選抜兵「お前は残れよ……」
ポニテ「やれやれ。随分長いことここにいた気がするよ……始まりは砂上船。そしてリボンちゃん……」
レン「……にゃあ?」
ツインテ「……落ち込んではいられないですよ?ボク達にはやることがあるんですから」
ポニテ「……うん。やっぱりツインテちゃん強くなってる気がする」
ツインテ「そうですか?」
ポニテ「うん」
侍「じゃあ行くでござるか。次なる物語を求めて!!」
アッシュ「……仕方ねぇ、こいつのニックネームを決めちまうか」
侍「え?」
ポニテ「さんせーい!一人だけ漢字とか感じ悪いもんね!!」
1.ケンシン
2.サム
3.ライ
侍「はいはいはい!!カッコイイから3番がいいです!!」
--東の王国--
2.サム
アッシュ「じゃあこれからお前の名前はサムな」
侍改めサム「強制イベント!?」
ポニテ「和風な名前だったのに一気に外国人風になってしまった件」
レン「無様にゃ」
アッシュ「よしじゃあ行くぞ!!南の王国!!」
ツインテ「はい!!」
ぴっち『あ、あの~』
ポニテ「あれ?ぴっちじゃん。随分久しぶりだね!どうしたの?」
ぴっち『あの~……僕らちょっと急用があるのでここでお別れというわけにはいきませんかね?』
ツインテ「え?急用なんですか!?さびしいです……」
ぱっち『そうなんっぱ!』(怖いツインテ様がいない今、別れるのに絶好のチャンスっぱ!!)
アッシュ「……まぁやる気がねぇんじゃ付いてこられても足ひっぱるだけだしな」
ぴっち『そうっぴ!!』
ポニテ「うえ~?非常食がぁ……」
レン「……疑わしいけどアッシュの言うとおり。わかった」
ツインテ「はい、お元気で!ぴっちさんにぱっちさん」
ぴっち、ぱっち((しっしっしっ))
こうして五人は南の王国に向けて旅だった。
選抜兵「やれやれ……気を付けてな」
--丘の洋館--
キバ「げほ、こほ……」
魔法使い「大ww丈ww夫wwかww?キバwwwwww」
キバ「大丈夫じゃない状態でもそんな笑い方されたら絶対ギャグになっちゃうよね!」
魔法使い「だってwwwwwずっとシリアスだったからぷぎゃーーwwwwww」
キバ「……ふふ」
キバは二コリと笑う。
魔法使い「?」
キバ「本当に君は、楽しそうに笑うねw」
魔法使い「ん?ww」
キバ「私、君と生きれてよかった」
魔法使い「……ん?」
--丘の洋館--
キバ「私ね……やっぱり魔王になっちゃうっぽいんだ」
魔法使い「衝w撃w的w事w実w発w覚wwwwwww」
キバ「ぶっ!!」
こらえ切れず笑いだすキバ。
キバ「あははは……そんな笑い方されたら悩みもなんも吹っ飛んじゃうよww」
魔法使い「まじかwwww」
キバ「うん」
魔法使いはキバのグラスにりんごジュースを注いだ。
キバ「そうだ、まだ味の感想聞いて無かったよ?」
魔法使い「ほむ?」
キバ「りんごジュース。美味しかったんでしょ?あれから何回も飲んでるもんね」
--丘の洋館--
魔法使い「んー?wwwんーwww……美味しwwww」
キバ「あはっ!よかった!げほっ!!」
魔法使い「!!」
キバが咳き込むとシーツに血がついた。
キバ「……あー……今飲んだらトマトジュースだねこりゃ」
魔法使い「……ww」
キバは魔法使いの眼を見つめる。
キバ「私ね、人造勇者になれてよかった」
魔法使い「?……」
キバ「私ね、実は何度も後悔したんだ。君には内緒で」
魔法使い「別に?wwwそんくらい内緒でもいいだろwww」
--丘の洋館--
キバ「でも毎回やっぱり行きつく結論は、人造勇者になれてよかった、ってことなの。自己満足かもしれないけれど、自分の手で、自分の目の前で困っている人を助けることができるようになって嬉しかった」
魔法使い「大天才魔法使い先生とその助手キバwwwww色んな人を助けて旅してきたからなぁwww」
キバ「ふふ」
魔法使い「ww……wwww」
キバ「一番の理由教えてあげよっか?」
魔法使い「べ、別にいいしwww?きょーみねーしwwww」
キバ「もし人造勇者じゃなかったら、あの戦場に立つことはなく、君と会うこともなかった。から」
魔法使い「」
キバ「……ふふ。本当だよ」
魔法使い「」
キバ「だって、もう嘘をつく必要もないし」
魔法使い「」
キバ「ごめんね。魔法使いにとってその笑いは仮面だったんだよね?」
魔法使い「……w」
キバ「私のために無理に笑わないで?」
--丘の洋館--
キバ「私は、もう押さえきれないと思う。だから、もう」
魔法使い「っ」
がばっ
キバ「!!ま、魔法使い?」
魔法使い「……よく耐えたな」
キバ「!!………………うん!」
キバは我慢を越え、涙声になった。
キバ「でも辛いことばかりじゃなかったよ。魔法使いがずっと一緒だったから」
魔法使い「……」
キバ「ありがとう。幸せな15年間だった」
魔法使い「……!!」
--丘の洋館--
キバ「最後に、ポニテちゃんを助けることができて、本当によかった……」
魔法使い「……あぁ!」
キバ「私達、怖くて、怖くて、子供出来なかったけど……最後に子供を持てた気分だったよ」
魔法使い「……あぁ!」
しゅる
キバの背中が割れ始め、そこから血の翼が出てこようと蠢いている。
キバ「もう……限界、カモ……」
キバは苦痛を押さえて無理やり笑う。
キバ「魔法使い……お願い、ポニテちゃんを」
魔法使い「いや」
魔法使いはりんごジュースを手に取った。
魔法使い「俺も共に行く」
--丘の洋館--
キバ「……え」
魔法使い「ん」
魔法使いは自分のグラスに入ったりんごジュースを飲みほした。
魔法使い「……ん……」
キバ「……もしかして」
ツー
魔法使いの口から、赤い液体が線を引く。
魔法使い「何、ただのトマトジュースだ」
邪悪な笑みを浮かべる魔法使い。
キバ「……馬鹿……」
しゅる、しゅるしゅる
キバ「なら……こっちもそういうことで、いいんだよね」
魔法使い「……あぁ」
--丘の洋館--
キバ「本当、馬鹿なんだから……」
魔法使い「何、好きな女と心中できるのも、悪くは、ないぞ」
ごほっ、と咳き込む魔法使い。
キバ「……」
くいっ
キバ「……ふふ」
魔法使い「……はは」
キバ「ふふふふ」
魔法使い「ははははは」
キバ「あはは!!」
魔法使い「プギャーwwwwwww」
カラン
--砂上船--
ざざーん
アッシュ「しかし、砂漠の風の女が言っていた、いいことが起こるっていうのは……なんだったんだ?」
レン「確かにひどい目にあった記憶しかないにゃ。ツインテの腕は治らなかったし。はいツインテ!!ねこにゃんアーム3号!!」
ツインテ「あ、ありがとうございますレンさん!わ!前より軽いし動きやすいです!!」
ポニテ「確かに砂上船でぶっ殺されて、幽霊屋敷で怖がらされて、ぶっ殺されてぶっ殺されてぶっ殺されて……痛い記憶しかないにゃ」
レン「その語尾はレンの!!」
ツインテ「ま、まぁきっとサムさんを仲間にできるって意味だったんですよ!!」
サム「その言葉を待っていたでござるよラブリーマイエンジェルツインテたん!!」
アッシュ「だぁあ!!よるんじゃねぇくそ変態が!!」
サム「別に拙者はアッシュ殿でも構わんのでござるぞ?」
アッシュ「ひっ!?」
ポニテ「いけー!!やっちまえー!!」
アッシュ「ふ、ふざけ、うぎゃああああああああ!!!」
わいのわいの。
風に髪をなびかせて、ツインテは空に眼をやった。
ツインテ(現状と目標を知れた……それがきっといいことだったんだ)
ざざーん
砂上船は未来に向かって走る。
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった
第三部
もっきゅー。もきゅきゅ?もきゅ!
完
--王国、地下牢--
影月「……絶対俺のこと忘れてるやろ」
--南の王国近辺の村--
ダンダカダンダカダカダダン!!
仮面人「フォアー!!」
仮面女「オアッオアッオアッオー」
パチパチ
ツインテ「……」
張り付けられているツインテ達。足元には爆ぜる火が。
サム「サッムー知ってるよ!これ生け贄だってこと!」
仮面人「ファイアー」
仮面人がサムの十字架に火を灯す。
サム「す、全てを委ねますー!!」
アッシュ「うっせぇ!一人で楽しんでるんじゃねぇよ!!」
--南の王国近辺の村--
仮面人「生贄にされたくなくば……歌を捧げよ」
サム「ござる?」
仮面人はサムの口にマイクを突き付けた。
アッシュ(なんだこいつら……歌だと?)
ポニテ(歌えば助かるの?)
レン(歌……)
--南の王国近辺の村--
ツインテ「!!」
ツインテは青ざめた表情で下を見た。
ツインテ(……ぼ、ボクオンチなんですけど)
アッシュ、ポニテ「「!?」」
レン「にゃー」
アッシュ「それは……いいね。ほら、是非歌ってごらんよ……」
ツインテ「オンチだって言ってるのに!?」
ポニテ「ぶっちゃけ上手い奴の歌は最初の方は盛り上がるけど、後半はハイハイって感じだからね。下手な人が一生懸命歌ってるほうが面白いし楽しいよね!」
レン「ただしイケメン、美少女に限るにゃ」
--南の王国近辺の村--
ツインテ「や、やです!そんなんじゃないですから!本当にオンチですから!」
ポニテ「どんくらい?」
ツインテ「……声帯兵器と呼ばれるくらい……」
アッシュ「喜んで虐殺されよう」
レン「レン、頑張って合いの手入れる!」
サム「何この既に完成されたグループの輪。拙者全く入り込めないでござりんぐ」
--南の王国近辺の村--
仮面人「ハリーハリーハリー!」
サム「くっ!ならば歌わせてもらうでござる!!」
サッ
歌おうとした瞬間、仮面をつけたバンドマン達が構える。
サム「ラブストーリーは突然死」
仮面バンド達は確認を取るかのように頷くと、
かっ、かっ、かっ、かっ
演奏を始めた。
--南の王国近辺の村--
サム「だかだーん!ちゃーらーら……あ、演奏してくれるのでござる?」
ポニテ「前奏も歌う気だった!」
だかだーん!ちゃーらーらー、らーらーらー、らーらーらー、らーらーらー、らーらーらー、らーらーらー、らーらーらー、らーらーらーらー、るー、るーるーるー、るーるーだんだんだんだんだんだんだんだんだんだんだんだんだんだんだー
サム「誰かが、あ」
仮面人「……」
女仮面人「……」
サム「……」
仮面人は火のついた松明をそっとサムの十字架に。
ボッ
サム「全てを委ねますー!!」
アッシュ「やりたい放題か!」
--南の王国近辺の村--
アッシュ「くそ!ただでさえ選曲が古くてわからないんじゃないかって言うのに!!」
ポニテ「ポニテ生まれてなーい」
レン「レンもー」
ツインテ「歌うのはいや歌うのはいや歌うのはいや歌うのはいや歌うのはいや歌うのはいや歌うのはいや歌うのはいや歌うのはいや」
ポニテ「じゃあはい!次は私が行くよ!!」
仮面人「何を歌う?」
ポニテ「まぁ予想はついているだろうけど……ポニーテールを死守!!」
--南の王国近辺の村--
ざわざわ
アッシュ「……確かにそれ以上お前に合う曲はないかもしれん」
サム「頑張るで、ござ、る」
炭化したサムの応援。
ちゃっちゃっちゃちゃっちゃー、ちゃっちゃちゃっちゃー、ちゃっちゃちゃっちゃーちゃーんちゃーんちゃーんちゃーん、ちゃー、ちゃららちゃーちゃちゃーん、ちゃーらーらーらーらーらーらーらーらーだんっだだんっだんっだんっだだんっちゃらららだんっだだんっだんっだんっだだんっちゃららら
--南の王国近辺の村--
ポニテ「カーーレンージャーよーりー早くー♪シャーーツのーそーでーぐーちーまくってー♪」
アッシュ「く……カラオケだと無性に声作って上手くなるよな女……認めたくないがこいつも女だったということか……」
中々上手いポニちゃん。
仮面人「……」
仮面人は映写機のようなもので夜空に映像を映す。
サム「まさかのPV!?」
レン「出てくる女の子のキャラ全部ポニテの顔にゃ。きもいにゃ」
--南の王国近辺の村--
まさかの技術力仮面人。
ポニテ「ポーニーTERUー♪」
アッシュ、サム「「ゆーらしーながらー!」」
ツインテ「!?」
ポニテ「かーぜのー中ー」
アッシュ、サム「「ハイッ!ハイッ!ハイッ!ハイッ!」」
ポニテ(……?)「きーみがー走るー♪」
アッシュ、サム「「ぼーくがー走るー」」
ポニテ、アッシュ、サム「「「砂ーのうぇwwwwー」」」
レン「ちらほら映像にアッシュ達の顔が出現するようになったにゃきもいにゃ」
--南の王国近辺の村--
ポニテ(こいつら……うぜぇ!)「ポーニーTERUー♪」
アッシュ、サム「「ゆーらしーながらー!!」」
ポニテ「振ーり向ーいたー」
アッシュ「ハイッ!」
サム「ハイッ!」
アッシュ「ハイッ!」
サム「ハイッ!」
ポニテ「きーみのー江川ー♪」
アッシュ、サム「「ぼーくの江夏がー!!」」
ポニテ、アッシュ、サム「「「はじーまるー!!」」」
ツインテ「……」
アッシュ、サム「「ポニテちゃーん!!世界一可愛いよー!!」」
レン「なんだこのノリ」
--南の王国近辺の村--
ポニテ「さぁどうだ!正直かなり自信あるぞ!!」
仮面人達「ひそひそひそひそ」
ツインテ「会議してますね……」
アッシュ「ふん。ポニテのやつめやるじゃないか。中々の歌唱力だ。悔しいが俺の歌う番が来る前に決着がつきそうだ」
仮面人「アウトー」
--南の王国近辺の村--
アッシュ「なんだとっ!?」
ポニテ「納得いかないよ!なにが悪かったのか説明を求めるんだよ!」
仮面人「周りが煩かったので」
ポニテ「理不尽過ぎる!!」
そして火を灯された。
ボッ
ポニテ「す、全てをユニバァァァス!」
アッシュ「委ねろ!そしてごめんね!!」
--南の王国近辺の村--
レン「じゃあ次はレンの番にゃ。『ぬこにゃんたんす』やるにゃ」
アッシュ「なっ!?それは卑怯というものだレン!!」
サム「まじもんのぬこにゃんがぬこにゃんたんすとは……レン殿、ここで勝負を決める気でござるな」
ツインテ「は、話についていけません……」
ポニテ「お腹すいたー」
炎を食べるポニテ。
仮面人「!?」
割愛。
--南の王国近辺の村--
仮面人「アウトー」
アッシュ「なぜだ!?今回は俺ら邪魔をしなかったぞ!?」
サム「鼻息荒くして聞いていただけにござる!!」
仮面人による採点は非常であった。
仮面人「振り付けがなかったので」
「!!!!!」
アッシュ「くっ!!……確かにぬこにゃんダンスの最大の見せ場はお尻フリフリ……!」
サム「ルールを逆手に取られたでござるよ!!」
レン「拘束されてる今の状態でやれると思うのか」
--南の王国近辺の村--
仮面人「というわけで点火」
ボッ
レン「す、全てをゆ……にゃー!!」
アッシュ「面白いこと言おうとして考えつかなかった!!」
ツインテ「ひ、火あぶりなのに皆さん大丈夫なんですか!?」
ポニテ、レン、サム「「「ギャグ……頑張れば耐えられんこともない」」」
ツインテ「……はぁ」
アッシュ「ならば俺がいこう。曲は、ポイズン!!」
レン「まんまにゃ!」
--南の王国近辺の村--
仮面人「あー……今ちょっとポイズンは切らしてるんで違うのでお願いします」
アッシュ「え、えー……?じゃあ……夏野日野一九九九三で」
ポニテ「切らしてるってどゆことー」
ちゃーん、ちゃーんちゃーちゃちゃーん、ちゃーん、ちゃーんちゃーちゃちゃーん、ちゃーん、ちゃーんちゃーちゃちゃーん、ちゃーん、ちゃーんちゃーちゃちゃーん
アッシュ「ふっくーのうーえかーらわー、さわーれなーいねーあーあー」
ポニテ「そんな卑猥な歌だっけ!?」
--南の王国近辺の村--
アッシュ「ナインティナインスリャー!恋をしたー!うおうー!君にうちゅーう!」
ツインテ「?」
アッシュはちらちらツインテに視線を送る。
アッシュ「ふつうーのっ!なかまーとっ!おもおっていーたけーど!ラーブ!きがちーがいー?うおー!そーじゃないーyo!」
ちらちら
ツインテ(??合いの手をいれろってことなんですか?ごめんなさい……ぼ、ボクこの歌わからないです……)
アッシュ「とつぜーん!ラヴしーてっ!しまぁったよーっ!ツイーンテーなきーみにー!」
ポニテ「ちなみに夏野君と日野君によるボーイズでラヴな歌だよ☆」
割愛。
--南の王国近辺の村--
アッシュ「はぁ、はぁ……どうだ。これなら文句のでようもあるまい」
ヒソヒソ
仮面人「アウトー」
アッシュ「な、なんやて!?」
ポニテ「い、一体何がダメだったというのさ!」
仮面人「割愛した二番ですが、貴方ほとんど歌詞通りに歌ってしまったので、ほら」
ジャス(ry「……」
レン「ひぃぃぃ!?」
仮面人「お怒りですよ。点火」
ボッ
アッシュ「そんなつもりじゃああああ!!」
レン「……残るはツインテのみにゃ」
ポニテ「これは……ゲームオーバーかも」
アッシュ「選択肢を間違えたのか」
サム「ござる……」
身も心も消し炭になりつつある勇者パーティ。
--南の王国近辺の村--
ツインテ「……!ボク!歌います!」
アッシュ「!……あんなに嫌がっていたのに」
ツインテ「こんなところで終わりなんて嫌です!それにみんなを失いたくない!」
みんな(((すでに真っ黒こげだけどね)))
ツインテ「歌います……曲は」
・ズズズ選択肢・
1、オタク製造アニメOP、プラ○ナ
2、熱いアニメのOP、レックレスファ○ア
3、ホラー映画、リングのテーマ曲
※ズズズ選択肢とは、しくじるとフォーテちゃんが召喚されてしまいます。
アッシュ「こんな下らない選択肢で!?」
--南の王国近辺の村--
2
2
ズ、ズズズ3
アッシュ「選択肢が勝手に!?」
ポニテ「ひでぇ!!」
レン「最近こればっか」
ツインテ「えっと、じゃあ」
ズズズ
アッシュ「……嫌な気配がする」
ポニテ「あの血の臭いだ……」
--南の王国近辺の村--
ズズズズズズ
レン「闇が」
サム「こ、これは」
呪
呪
呪
呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪
フォーテ「あはははははっ!!」
ゲームオーバー
--南の王国近辺の村--
ガバッ
ツインテ「はっ!?ゆ、夢?」
アッシュ「夢……」
真っ黒こげなアッシュ達。
ポニテ「一体どこから夢だったのか……」
ブラ「あ、気が付きましたか?」
ツインテ「あ」
濡れタオルを持ってきたブラが立っていた。
--南の王国近辺の村--
ブラ「すいません。今回は本当に申し訳ないことを……」
アッシュ「申し訳ない?」
ポニテ「?あの仮面被った人の中にお姉さんいなかったよね?」
クンクンとブラの匂いを嗅ぐポニテ。
レン「誤解されそうな文字列にゃ」
ブラ「いえうちの村の人達が、って意味です」
ブラはタオルをツインテ達に渡す。
--南の王国近辺の村--
ブラ「……最近この村では音楽が大ブームになっていまして、旅人が近くを通ると捕まえてあんなことを」
サム「おいはぎ以上でござるな」
恐ろしい村人だ、とサム。
ブラ「今回ばかりは度が過ぎています。厳重に私の方から注意させていただきます。なのでこんなことをお願いできる立場じゃないのですが、なんとか許していただけないでしょうか……」
炭化した4人は頭を下げるブラを見た。
サム「まぁ火あぶりにされた程度でござるしな」
頭を下げているのでブラの谷間を見るサム。
--南の王国近辺の村--
レン「にゃ。アイテムも燃えちゃったけど別に困るほどではないにゃ」
ポニテ「これで私達も珪素生物になれたと思えば」
アッシュ「許せるかー!!許す方向に持っていくなー!!」
ツインテ「ぴっ!?」
アッシュ「アホかきさまら!!何器の大きいところアピールをしようとしてやがる!!」
ポニテ「またまたアッシュ君。たかがはりつけにされて火あぶりにされたくらいで」
アッシュ「なんなの!?別に対したことなかったから許してあげようよみたいな!!歴史上で火あぶりにされて死んで行ったもの達に謝れ!!」
--南の王国近辺の村--
サム「まあまあ落ち着いてアッシュ殿。別に死んだわけじゃないんでござるし」
アッシュ「死ねよ!!」
ブラ「うわ……火あぶりくらいでキレる男性て」
アッシュ「えぇぇ!?俺は悪くない!!」
はぁはぁと息を荒げるアッシュ。
ガチャリ
ヤミ「どうしたのだブラよ。何か怒鳴り声のようなものが聞こえたが」
--南の王国近辺の村--
ツインテ、アッシュ、ポニテ「!!」
ブラ「あ、いえなんでもありませんヤミ様。ちょっと談笑していただけです」
柴犬「あんあん」
ツインテ(なん……だろう。体の芯が熱い)
アッシュ(あいつが来た途端に何か空気が変わった。何者だ?)
ポニテ(よくわかんないけど、なぜか戦いたくなっちゃう)
レン「?どうしたにゃツインテ」
--南の王国近辺の村--
高校生メイド「あ、こらそっちにいっちゃダメでございます!」
幼女メイド「きゃははでごじゃいましゅー!」
サム「おっひょ!パン一幼女がおっひょ!」
レン「い、犬嫌にゃ」
ツインテにくっつくレン。
アッシュ(レンとサムは何も感じてないのか?……感覚にすぐれているこの二人が何も感じていないのなら錯覚か)
ブラ「み、皆さん!お客様の前なんですからどたばたしないで下さい!!」
--南の王国近辺の村--
ヤミ「……ふむ。ブラよ。そろそろ腹が減った。食事にしよう」
高校生メイド「!?ヤミ様!私も最近ブラに料理教えてもらってるんだから!」
まだ下手でございますが、と両手の人差し指をつつきあう。
幼女メイド「わーい!おなかしゅいたでごじゃいましゅ!」
柴犬「あんあん!」
ペロペロ!
ツインテ「きゃっ!?このわんちゃん変なところ舐め、あっ」
アッシュ「アッシュも舐める!!」
ぐしゃ!
レンは一瞬でハンマーを作ってアッシュの頭部をかちわり、高校生メイドは一瞬で距離を詰め柴犬の胴体を踏み砕いた。
--南の王国近辺の村--
レン(この人……めちゃくちゃ早いにゃ)
高校生メイド(瞬時に武器を作り上げたでございます?)
ツインテ「ぴぃっ!?も、もー仲良くしてくださいよぉ!」
ブラ「うるさい人はご飯抜きです!」
ぴたっ
全員の動きが止まる。
ヤミ「お、俺は別に騒ごうなどと考えちゃあいないぞ?」
サム「そうでござる!せっしゃちょっとこの幼女と触れ合いたかっただけでござる!」
幼女メイド「あう~?」
--南の王国近辺の村--
とんとんとん
ブラ「すいません料理手伝わせちゃって」
ツインテ「いいんですボク料理好きですし。それにお世話になりましたから」
ブラ「そんな!元はと言えば私達が……」
ツインテ「ブラさん達がしたわけじゃないですし。気にしないで下さい」
ブラ「……ありがとうございます」
ツインテ「いえ、こちらのセリフです。助けていただきありがとうございました」
気が合いそうな二人。
--南の王国近辺の村--
柴犬「ペロペロペロペロ!!」
レン「こ、こいつなんかおかしいにゃ!舐める場所が明らかに狙い定まってるにゃ!」
そろそろダークネスな犬と猫。
サム「拙者もぺろぺろしたいでござる」
幼女メイド「ぺろぺろでごじゃいましゅ?」
幼女を膝の上に乗せた侍(変質者)。
高校生メイドボソ「……私も台所立ちたかった……」
ポニテ「つまみ食いしたい……」
異なる想いで台所を見つめる二人。
--南の王国近辺の村--
ヤミ「……」
アッシュ「……」
そして無言の少年達。
ヤミ「……お前」
アッシュ「……俺か?なんだ」
ヤミ「お前遊戯王出来るか?」
アッシュ「悪いが俺はギャザ派だったんでな」
ヤミ「うわー出ましたー。中学生になると『遊戯王とか子供のカードだろ?やっぱギャザのがかっこいいっしょ!』とか言っちゃう奴だったろお前」
アッシュ「!!べ、別に!?そんなんじゃねーし!俺昔からギャザ一筋だし!?」
--南の王国近辺の村--
ヤミ「デュエルマスターズがギャザやらなくなってショックだったよな。ミミちゃんが使ってたからマスティコアがめっちゃかっこよく見えた」
アッシュ「あいつはゆるさん。いくら事情があったからとはいえ、梯子かけて外したようなもんだろ。てかマスティコアは元々かっこいい」
ヤミ「コミックガッタ」
アッシュ「やめろ!」
ヤミ「仕方ない……じゃあ遊戯王しよう」
アッシュ「結局遊戯王か」
ヤミ「あぁ」
スッ
アッシュ「……これカードダスの方じゃねぇか」
--南の王国近辺の村--
ヤミ「こっちのブルーアイズの方がかっこいいだろ」
アッシュ「正直な。ブラックマジシャンも原作絵だし」
高校生メイド(あれ?ヤミ様ずっと封印されてたんじゃ……)
アッシュ「というか俺遊戯王持ってないから勝負出来ないじゃん」
ヤミ「異種格闘技戦と行こうぜ」
アッシュ「ざけんなよ。パワー違い過ぎるだろ」
ヤミ「全員速攻とトランプル持ちだしな」
アッシュ「クリボー出された時点で詰むわ。オーバーキルもいいとこだ」
--南の王国近辺の村--
ヤミ「タップと判断するか守備表示と判断するかは難しいところだな」
アッシュ「いややんねえよ?そんな異種格闘技戦」
ヤミ「やろうよ。毎日ブラの買い物に付いていって、荷物持つことを条件に、一日一回しか出来ないガチャガチャでここまで貯めたんだぞ」
アッシュ「ガチャガチャって言うな」
ヤミ「たまに違うガチャガチャに興味がいっちゃうんだ。でも100円だけですよ、ってブラが言うから入念に選ぶしかないんだ……断腸の想いだった」
アッシュ「む……欲しいのに限って200円だったりしてな」
ヤミ「最初からムリゲーだよな。かと思えば何回もやってるガキとかいるし。マジ泣きそうになった」
アッシュ「まぁ気持ちはわかるけど」
--南の王国近辺の村--
ヤミ「やったはいいけど、後々になってなんでやったんだろう……。っておもったガチャガチャがこれらです」
スッ
アッシュ「うわ!水に入れるとでっかくなる人形だ!懐かしい!まじ一回やったら終わりだよな!」
ヤミ「でもなんでか欲しくなっちゃうんだ」
アッシュ「入れ歯ババア……これなんに使うんだよ」
ヤミ「消しゴムとして使うのだ」
アッシュ「……昔のガチャガチャからは夢が出てきたよな」
ヤミ「あぁ。今のガチャガチャは出来はいいが高いし」
アッシュ「今は夢じゃなくてエ口が出るからな」
--南の王国近辺の村--
ことっ
ヤミ「なっ!?そ、それは!!」
あーん
アッシュ「ちょっとえっちなガチャガチャだ」
ヤミ「ばかな!どっからどうみても18禁ではないか!!いくらしたのだ!このクオリティ……到底100や200ではだせまい」
アッシュ「それは聞いちゃあいけねぇ……」
アッシュはあーんな人形をヤミに渡す。
アッシュ「とっておけ」
ヤミ「!?な、なんだと!?俺にくれると言うのか!?」
アッシュ「……ツインテ達が世話になった礼だ。それに……お前悪い奴じゃなさそうだしな」
ヤミ「お前……」
--南の王国近辺の村--
アッシュ「くれぐれもかけて喜ぶような外道にはなるなよ」
ヤミ「あぁ!当たり前だ!!」
ガシッ!
熱い握手をかわす二人。
レン「……」
高校生メイド「……」
ポニテ「……」
幼女メイド「……」
サム「……」
柴犬「ペロペロ」
この一連の流れが周囲の視線の下で行われたという事実。
ブラ「ぼっしゅーと」
ヤミ「あぁ!返してママ!!」
--南の王国近辺の村--
サム「二次元とかフィギュアとかバカでござるよアッシュ殿は!!三次元を愛せ!!三次元の幼女を愛せ!!」
アッシュ「幼女はだめだろ!」
ヤミ「生きた人間に興味はありません」
ざわ
ポニテ(三次元に興味はありませんと言いたかったのか?……これではまるで……)
レン(死体じゃなきゃだめと言っているように聞こえるにゅ)
高校生メイド(死ねばヤミ様に愛してもらえるのかしらでございます……)
自分の胸に手を突き刺して心臓をわしづかみしてみる高校生メイド。
ブラ「とりあえずご飯ですよ」
ツインテ「ははは……」
--南の王国--
亜人王「……っ……我が国の……亜人の犠牲がこんなにも……」
虎男「申し訳ございませんがお……王よりお借りした兵……無事に返すことは出来ませんでした……」
広場では紙が張り出されている。戦死者の張り紙。広場はそれを見に集まった人々でいっぱいになっていた。
うああぁぁ
確認したものから泣き崩れる。悲しみで塗り潰される広場。
亜人王「……お前のせいではない……あの戦いで負けたからだ。そして……亜人だからなのだろう」
狐男「亜人王様!オイラ悔しいコン!なんで亜人ばかり死ななきゃいけないコン!」
亜人王「……亜人だろうと人だろうと一つの命には違いない。人より亜人が死んだからとはいえ、人間に恨みを抱くのは間違っている……」
代わりに人間が死ねばよかったとは言ってはならぬ、と亜人王。
--南の王国--
狐男「!!……で、でもこれは不当な扱いが生んだ結果コンよ!」
亜人王「かもしれぬ……だが証明はできぬ。彼らの言い分通り、我らが人以上の身体能力を持つのはたしかなのだ。犠牲を最小に押さえるという意味では最善策、むしろ人間と亜人の負担を平等にしてくれと頼んでは、こちらから差別を望むようなもの……」
虎男「……」
?「そうやってむしゃぶりつくされて滅ぼされるのをただ待つつもりすか?」
狐男、虎男「!?」
王の間の扉の外から女性の声が聞こえた。
亜人王「……誰だ?」
ギィ
--南の王国--
狐男「お、お前はコン!?」
コツコツ
?「お初にお目にかかるっす亜人王」
亜人王「……金の髪に赤い瞳……!!まさか……鬼人の忘れ形見か?」
?「よかった。外見でわかってくれると思ってたっす」
亜人王「……風の噂では砂漠の風の頭領は鬼だと聞くがもしや」
?改め鬼姫「えぇ、あたしのことっすよ」
--南の王国--
亜人王「……この国に復讐しにきたのか?危険だと言ってそなたたちを追い出したこの国に」
狐男「……」
鬼姫「別になんとも思っちゃいないすよ。恨むように育てられなかったっすから。それにあなたは父の友人として最善を尽くしてくれたそうで。父は感謝してたらしいっすよ」
亜人王「……鬼人……そなたの父が、この国から追放されてすぐに死んだという噂を聞いた時は耳を疑った……あれほどの男が、と」
鬼姫「まぁその時は母の中にあたしがいたっすから」
虎男「……」
--南の王国--
亜人王「……それで要件は?」
鬼姫「ん、そうだったっす。亜人王、力を貸すっす」
亜人王「?なんだかよくわからないが我々も大変で力を貸すことは……」
鬼姫「違うっす。力を貸すっすって言ってるっす」
狐男「っすっすうるせー」
亜人王「……我らに力を貸す、と?どういうことだ?」
鬼姫「どうもこうも無いっすよ」
ザッ
--南の王国--
王の間に六人の部隊長が足を踏み入れ、整列する。
虎男「!!やすやすと踏み入れていい場所ではないぞ!!」
虎男は立ち上がり部隊長達を威嚇する。
占隊長「ふふ。怖い怖い」
鬼姫「今、しがらみから解放される時っす」
虎男を無視して話を進める鬼姫。
鬼姫「亜人王さん、亜人解放戦争をしようっす」
--南の王国--
亜人王「!……」
狐男「亜人……解放……」
鬼姫「そのために私は砂漠の風の首領になったっす。色んな場所で虐げられて、居場所を作ることが出来なかったもの達の集まり。それが砂漠の風っす」
ザン!
広場に出現する砂漠の風の隊員達。その数約三百名。
ざわざわ
--南の王国--
亜人王「……気持ちはありがたいがそれだけでは四国を相手取ることは無謀すぎる」
亜人王は首を横に振るう。
鬼姫「まずあたしが一国っす」
鬼姫が人差し指を立てる。そして次に亜人王を指差す。
鬼姫「亜人王さんが一国」
次に鬼姫は後ろの部隊長達を指差す。
鬼姫「彼らで一国」
虎男「何を言ってるんだがお……?」
鬼姫「残りの一国は兵達と隊員達と三獣の二人でやってもらうっす」
--南の王国--
狐男「……!?ひ、一人で一国分の兵力とやる気だったコン!?」
亜人王「……」
鬼姫「十分行けるはずっすよ」
亜人王「……可能性があるだけだ……。可能性のために兵士の命を賭けることはできない……どれだけ犠牲がでるか想像もつかない」
鬼姫「決断の時っすよ亜人王さん。案外すんなりいけそうだと思うっすがね。亜人って色んな所にいるっすから、きっと各地で反乱が起こるっす」
鬼姫はにこりと笑う。
鬼姫「どうせ行き着く先がどん詰まりなら、やれる体力があるうちに思い切ってやっちゃった方がいいっすよ」
亜人王「……」
鬼姫「それにもう書簡だしちゃったし」
亜人王「え」
--東の王国--
東の王「……この忙しい時に!」
東の王は書簡をぐしゃぐしゃに握り潰す。
剣豪「やれやれ今年は厄日だな。魔王がいた時のほうが全然楽だったぜ。それでどうするんだ王」
東の王「いくしかあるまい!!行かねば各国からなめられる……それにここで叩かねばどこまで手を伸ばしてくるかわからんからな」
剣豪「はぁ。まぁ、そうなるわなぁ」
やれやれとため息をつく剣豪。
--北の王国--
北の王「あーもー次から次へとめんどくさいことばっかおきますなぁ」
北の王は窓から外を見る。
北の王「仕方ありまへん。可哀想でっけど、ちぃとばかり痛い目見てもらうしかないでんな。ったく、なんでもっとおとなしくしてられないんやろ亜人さんは。わいが頃合いになったら便宜はかってやろおもてたのに」
--西の王国--
西の王「……」
秘書「わかっているとは思いますが西の王様。我々だけ動かないなんてことは出来ません」
西の王「……あぁ。まだ我が国は南の王国の力がいる」
植民地としての、と呟く西の王。
--王国--
大臣「何を躊躇なされておるのですか新王様!!きっと各国が兵を出して止めにいくはずですぞ!」
新王「わかっています……しかし、彼らは植民地にされるほどのことをしてきたわけではない」
大臣「魔族をかくまい、あれだけの被害を生み出した南の王国の罪をお忘れか!?……あぁそういえば新王様は魔族に操られておいででしたな」
妃「かっちーん。随分と口がご達者すぎませんかね~ハゲ!!」
新王はそっと自分の頭に手をやる。
大臣「……私はいつも歯痒く思っていたのです。新王様はもっと王らしくしていただかねばならない!貴方の意志は貴方のためにあるのではない!全ては国民のためなのです!」
新王「……」
妃(正論だけにプラチナむかつく~)
--南の王国近辺の村--
サム「それではお腹がいっぱいになったことでござるし、食休みもしたことでござるし、優雅に修行を始めるでござる」
ポニテ、レン「「「オス!」」」
アッシュ「ふん」
ツインテ「お、おすっ」
ちちち
天気のいい昼下がり。5人は動きやすい格好をして庭に立っていた。
サム「ここまでツインテ殿達がゲームオーバーにならずにこれたのは本当奇跡でござるよ。例えるなら、運転したこともない人間が公道を150キロのスピードで走るようなもんでござる」
--南の王国近辺の村--
五人の様子を家から眺めているヤミ。
ヤミ「やつらは何を始めたのだ?」
高校生メイド「恐らくは修行でございましょう。才能の無い人間が血のにじむような努力をして、人並みの力を得るための儀式だと言われているでございます」
ブラ(そんなんじゃないような……)
あはは、とブラ。
高校生メイド「む、ブラ。行きますでございますか?」
ブラ「はい。用意ができました」
ブラは何やら鞄を持っている。
高校生メイド「それではヤミ様、気を付けてお過ごしくださいでございます。私達はお仕事に行ってきますでございます」
セミ「む。そっちこそ気を付けるがいい」
--南の王国近辺の村--
サム「じゃあさっそくサムのブートキャンプを始めるでござるよ」
アッシュ「なんだって?」
サム「ではレッスンレベル1。四人がかりで拙者に決定打を与えること」
ポニテ「!?四人がかり!?」
レン「舐めすぎなのにゃ」
サム「決定打を与えられたら次のレベルに行くでござる。全部でレベル4まで考えているので、ぜひがんばって欲しいでござる」
--南の王国近辺の村--
ツインテ「ぼ、ボク達は何をしてもいいのですか?」
サム「もちろんでござる。戦況を読み、自分が今何をすることが一番正しいのか。持てる力の全てを出し尽くしてかかってきて欲しいでござる」
アッシュ(そりゃこいつは俺らの中で一番強いが……舐めやがって)
サム「あ、そうそう。レベル1では拙者は武器は使わないでござるから」
アッシュ「!?」
ポニテ「そ、そんなの無茶苦茶だよ!!」
サム「武器は使わないけど刀は使うでござる」
レン「とんちかにゃ?」
--南の王国近辺の村--
アッシュ「キレたぜ」
ダッ
アッシュはナイフを引き抜くとサムに向かって走る。
アッシュ「子供扱いしやがってえええ!!!」
サム「!」
サムはナイフをするりと交わし、
ドッ!
アッシュの喉に手刀を叩きこんだ。
--南の王国近辺の村--
アッシュ「げはっ!!」
ポニテ「!!なるほど、武器は使わないけど刀は使うっていうのはこういうことだったんだね!?よぉおし!!」
ジャリン
ポニテは二本の剣を抜き、サムに向かっていった。
レン「!ポニテ待つにゃ!」
ポニテ(所詮手刀でしょ?闘士とか武道家みたいな職業でもないんだから、覚悟してればなんとかなるさ!)
ポニテはそう考えつつも手刀の範囲の外から攻撃に出る。
ポニテ「おりゃー!!」
ボッ!!
--南の王国近辺の村--
どふっ!!
ポニテ「!?」
しかしポニテの目測は外れ、ポニテの腹部をサムの側刀が貫いた。
どさり
ポニテ「げほっごほっ!!」
レン「蹴り?……側刀かにゃ!」
サム「やれやれ、全く持ってダメでござるな。パーティなのにパーティらしい戦いしてないでござる」
サムはため息をついた。
サム「なまじ才能もあるし中途半端に実力があるせいか、個人プレイに走り過ぎでござるぜ」
--南の王国近辺の村--
カーカー
アッシュ「はっ、はっ……」
くきゅるるる
ポニテ「だめぇ……お腹すき過ぎて力出ない……」
レン「結局……」
ツインテ「かすり傷一つ……与えられなかった」
カンカン
ブラ「ご飯出来ましたよー」
サム「ふむ。今日はこのくらいにするでござる。各自復習しておくように」
--南の王国近辺の村--
むしゃむしゃ
ヤミ「うむ。このポテトサラダ美味いな」
高校生メイド「あ、ヤミ様!こぼれていますよ、行儀悪いです」
ヤミ「む、すまぬ」
幼女メイド「ごじゃいましゅー」
柴犬「きゃんきゃん!」
カチャ
ツインテ「……」
--南の王国近辺の村--
ブラ「あの……お口に合いませんでしたか?」
ツインテ「へ?……あ!そ、そんなこと無いです!とても美味しいです……」
ずーん
アッシュ「……」
ポニテ「……」
レン「……」
サム「美女のお手製料理はぁはぁ!!」
ガツガツ食べているサム。それ以外の勇者パーティの面々は、心ここにあらずといった有様だった。
--南の王国近辺の村、過去--
サム「……思った以上にダメダメでござるな。拙者一緒に戦ってないのでわからなかったでござるが、よくもこもことの戦いで生き伸びられたものでござる」
アッシュ「!!」
ポニテ「わ、私はおっきなもこもこだって倒せたんだから!」
サム「一人でだから、でござろう?」
ポニテ「?そうだよ!」
サム「周囲に仲間がいない状況でのみ使える技なんて、微妙でござるよ」
ポニテ「!?」
--南の王国近辺の村、過去--
サム「敵味方区別無く攻撃する強力な技……おそらく、使えば自分もただではすまないでござる」
ポニテ「う、うん」
サム「仲間を範囲から遠ざけてドカン。その後伸びた自分を仲間に回収を頼むでござる?」
ポニテ「……」
サム「まぁ爆弾みたいな運用も悪くないと思うでござるけど、いいとは言えないでござる」
ポニテ「な、なによ!私以外にあのたこ倒せるやつなんていたの!?」
サム「非常に難しいでござる。単騎で倒せるのは聖騎士殿くらいでござろうか。まぁあの時は最善策だったでござるな」
でも、とサム。
--南の王国近辺の村、過去--
サム「これからはそうとは限らないでござる」
ツインテ「……」
サム「アッシュ殿もでござる」
アッシュ「……?」
サム「おそらくアッシュ殿も味方を巻き込むような技を持っている。更に言えばそれを持っているがゆえに単騎で戦おうとする。おごり高ぶり」
アッシュ「!」
--南の王国近辺の村、過去--
サム「一撃必殺はいいでござるけど、それしかなくて、しかも回数打てないようなら戦場だとすぐやられちゃうでござるからね」
アッシュ、ポニテ「「ぐぬぬ……」」
サム「レン殿はまぁまぁ仕事しているようにみえるでござる」
レン「にゃ」
サム「が、よおく見ているとその動作はツインテ殿を主体に考えた動き方をしているでござる」
レン「!」
サム「敵や前衛であるアッシュ殿達の動きから考えて行動していかなきゃいけないのに、後衛のツインテ殿の動きに合わせた行動ではよくないでござる」
レン「……」
サム「あ、やっぱ嘘。後衛主軸の戦法にするならそれはそれでいいのでござる。ただケースバイケースであり、常にそれではいけないということでござる」
--南の王国近辺の村、過去--
レン「にゃ……」
サム「最後にツインテ殿」
ツインテ「は、はい」
サム「自信無さすぎでござる」
ツインテ「ぴぃっ!」
サム「自分の身の丈をちゃんと理解しないことには存分に力を発揮することは出来ないでござる。過大評価も過小評価も命取りでござる」
ツインテ「うぅ……」
サム「ツインテ殿の実力ならば出来ることなのに、自分で出来ないと決め付けて、一歩を踏み出せないでいたら仲間が無駄死にしてしまうかもしれんござるよ」
ツインテ「ご、ごめんなさい……」
--南の王国近辺の村--
サム『アッシュ殿とポニテ殿はワンマンプレーに走りすぎないこと、もっと仲間を頼ること。レン殿はツインテ殿だけじゃなく、知覚能力を生かしてもっと周りを見ること。ツインテ殿は自分を理解することから始めるでござるよ』
ちゃぷん
ポニテ「おんせーん!」
レン「この世界どこにでも温泉あるにゃきもいにゃ」
ツインテ「ぶくぶく」←女子風呂もう慣れた。
ブラ「温泉気持ちいいですよね。疲れ取れますから」
--南の王国近辺の村--
高校生メイド「あ、こら動くなでございます!」
幼女メイド「きゃははでごじゃいましゅー!」
かぽーん
ポニテ「んー!……はぁ。まぁそう気い落とすなよツインテちゃん。あれは怒ってるわけじゃないんだからさ」
ツインテ「あ、はい。でも……」
レン「サム、普段はおまぬけな癖に戦いのこととなると真面目だったにゃ。よくあるスポーツ少年みたいにゃ」
ポニテ「ねー!」
--南の王国近辺の村--
かぽーん
アッシュ「くそ……」
アッシュは苛立ちながら湯に使っている。
ヤミ「む。そんな感情で温泉に入ってはだめだ。湯がささくれだつ」
柴犬「きゃん!」
サム「一体どういう表現でござる?」
誰得男湯描写。
--南の王国近辺の村--
アッシュ「くっ!おいサム!お前最初に俺と戦った時と比べて随分と実力に開きがないか!?」
ざぱ
アッシュは立ち上がる。
アッシュ「確かにあの時も完敗だった!だがお前は武器を使っていたし、何より一対一だった!……なんぼなんでも四人がかりで傷一つ与えられないほどの差は感じなかったぞ!!お前はあの時手加減していたのか!?」
サム「……そんなことはないでござる。そうでござるなぁ。もし弱く感じたのでござれば、あの時は死なない様に安全に立ち振舞っていたのが理由の一つとでも申すでござる」
サムはあごひげをかく。
--南の王国近辺の村--
サム「あとは直感で中々の実力者、と見抜いたものの、子供の実力者というのがあまり経験が無かったでござるから、様子見に拍車がかかったのでござろう」
アッシュ「曖昧なこと言いやがって……」
サム「両方とも本気であることは間違いないでござるよ。立ち振舞いが違うだけで。モードと言うべきか」
アッシュ「……モード?」
サム「全力で攻撃するモード、護りのモード、様子見削りモード。戦い方は一つでないでござろう?」
アッシュ「……ぐ」
--南の王国近辺の村--
ヤミ「やれやれ何やらめんどくさい話をしているな。何も考えずに浸かればいいものを」
ヤミは頭にタオルを乗せて気持ちよさそうに目をつむる。
アッシュ「ん。ヤミ殿の言うとおりでござるよ。怒りが悪い感情とは言わないでござるが、休む時には不要でござる。今は全力で休むに徹するでござるよ」
ざぱ
そう言って立ち上がったサムは全力でおっきしていた。
--南の王国近辺の村--
ポニテ「でねー」
脱衣場できゃっきゃっと話す女性陣。
ツインテ「……」
ツインテは一人浮かない顔だった。
サム『ツインテ殿はまず自分を理解することから始めるでござるよ』
サムの台詞がツインテの脳裏によみがえる。あれから何度も。何度も。
ツインテ「……」
--南の王国近辺の村--
ツインテ「ふぅ」
ため息とともに、ぱさりとパンツが手から落ちる。
ツインテ(何よりも……自分のことが一番……理解出来ないのに)
ポニテ「あっ!ツインテちゃんがまだノーパン」
レン「にゃっ!?」
ツインテ「へ?」
ポニテ「うふふこれは私達に穿かせろと、そういう意思表示なのかな?」
ツインテ「最近発想が飛躍しすぎでは!?」
--南の王国近辺の村--
ポニテ「うひひ!」
わきわきと指を動かして近づくポニテ。
レン「だ、ダメにゃ!ツインテの操はレンのものなのにゃ!」
レンはそう言いながらも涎を垂らしてツインテに近づいていく。
ツインテ「ひぃ!?」
ブラ「あらあら」
高校生メイド「いじめはよくないでございますよ?」
幼女メイド「遊び?遊び?でごじゃいましゅー」
--南の王国近辺の村--
ツインテ(だ、だめ、ブラさん達もいるのに、こ、今度はばれちゃう……!ど、どうしようどうしよう)
ポニテ「うーへーへー」
レン「にゃーはーはー」
ツインテ(!!贅沢は言ってられない!えい!)
むにゅ
ツインテは自分の○○○○を股で挟んだ。
バツン
ポニテ「……あ」
弾けるリボン。
レン「……サイドテール」
--南の王国近辺の村--
フワっ
纏めていた一塊の柔らかな髪が自由になる。そしてツインテはくるりと回って見せた。
ツインテ「アルティメット美少女、ツインテちゃん参上!!」
ででーん
ブラ「……な、なんか感じが変わりましたね……」
高校生メイド「二重人格?」
幼女メイド「びしょうじょっ!」
--南の王国近辺の村--
ツインテ「ということであの子も休ませなきゃいけないから、しばらく私が前面に出ることになったよ!よろしくねアッシュ様」
ツインテはべったりとアッシュにくっついた。
ポニテ「はうあ!!ツインテちゃんがアッシュ君にベタぼれだぁ!!これは両想いなのかぁ!?」
アッシュ「や、やめろくっつくな!!俺はツインテ一筋なんだ!!」
ツインテ「えぇー?私もツインテですょー?」
上目遣いツインテちゃん。
アッシュ「ち、違う!お前はツインテじゃない!!」
レン「意味がわからんにゅ」
ポニテ「てゆーかツインテ一筋とか言っちゃってるし!アッシュ君ったらっ!」
--南の王国近辺の村--
わーきゃー
ヤミ「何故あの二人はじゃれ合っているのだ?」
高校生メイド「さぁ、発情期なんじゃないでしょうかねでございます。……はいヤミ様終わりました。逆向いて下さい」
ヤミ「ん」
高校生メイドに膝枕で耳掻きされているヤミ。
サム「なんて羨ましい!!女子高生の!風呂上がりでほかほかすべすべの太ももを!!」
ポニテ「めっちゃ声出てるよ」
--どこか--
東の憲兵「!!む……この反応……待っていろよ犯罪者め!!」
--南の王国近辺の村--
ツインテ「……この人誰?」
レン「あれ、このツインテはサムに会ったことなかったかにゃ?」
アッシュ「?そうだったか?正直もう覚えていない」
ツインテ「……このパーティの平均年齢から一人だけ逸脱してる感が」
サム「がはっ!?……ちょ……ちょっと気にしてたのに」
涙ながらに吐血するサム。
ツインテ「……加齢臭が」
--南の王国近辺の村--
サム「げはっ!!たとえ臭って無くてもその言葉は嫌ぁぁ!!この歳になってくると敏感に反応しちゃうんだから!!」
そう言ってサムは脇の臭いを確認した。
幼女メイド「ごじゃいましゅー?」
幼女メイドの。
ツインテ「……」
アッシュ「……」
ポニテ「……」
レン「……」
サム「……冗談でござる」
幼女メイド「冗談じゃねーよ」
--王国、地下牢--
新王「全く次から次へと……」
影月「なんや、色々大変そうやなぁ新王さん」
新王「あぁ、わかります?もう最近ろくに寝ることもできないんですよ」
影月「あぁわかりますわかります苦労が滲みでてますもん。頭に」
サッ
頭に手を当てる新王。
新王「……色々心労が溜まってましてね……大事な娘達は無茶をしているし、妻は妻でやりたい放題だし……大臣にはぐちぐち言われたりで……」
--王国、地下牢--
影月「やー、なんか想像つきますわー。新王さん、もう見るからに幸が“薄そう”ですもん」
サッ
頭に手を当てる新王。
影月「で、今日は何しにここまでいらしたんですか?まさか世間話の相手が欲しかったてことないですやろ?」
新王「……うん。僕がこの国を離れている間に人造勇者の一人がこの国に来たらしいんだ」
影月「……わかってました。なんせ俺らには互いを感じ合う力が備わってますんで。……Jのやつですやろ?」
--王国、地下牢--
新王「色々証言を聞いてみたけど、間違いないと思う。誰が見ても一目瞭然の特徴、巨人だったという話だからね」
影月「誰が、処理したんでっか?」
新王「僕の妻が」
影月「なるほど。あの人容赦なさそうやもんなぁ」
影月はかっかっと笑う。
新王「……君の言うことは実証された」
影月「だから最初から言うてたやないですか。もう人造勇者は限界に来てます、って」
--王国、地下牢--
新王「……」
影月「だから何するかわからへん。用心するに越したことあらへんのや」
新王「……君らのリーダーの……えっと」
影月「カブト?」
新王「そうカブト。彼は……何を企んでいると思います?」
影月「……わかりませんなぁ。あまり付き合いがあったわけじゃ無いですし。むしろ新王さんのほうが一緒にいた時間長かったんやないすかね?あいつこの国でしばらく働いとったんちゃいます?」
新王「なんだけど、大臣直属の人間だったんで話をしたことすら無いんですよ」
--王国、地下牢--
影月「ふむ……まぁ、クールなんだかネクラなんだか曖昧な性格しとったしなぁ。俺もろくに会話せんかったんですわ」
新王「なるほど……」
影月「ただ……最後に会った時は、『お前はどちら側につくつもりだ?人か人造勇者……』って言っとりました。数人の人造勇者を率いて」
新王「……!」
影月「どっちにもつかんって答えたらこの有様ですわ」
ははは、と笑う影月の両腕は、潰されていた。
影月「治癒不可なんてえげつないですわー。やっぱネクラやな」
新王「……」
--南の王国近辺の村--
サム「ほっ」
ドドッ!
アッシュ、ポニテ「「ぐっ!!」」
同時に吹き飛ばされる二人。
レン「錬成、石板!!」
レンは一度に大量の石板を作り上げ、サムに向けて放つ。
ひゅひゅひゅひゅ!!
--南の王国近辺の村--
サム「ん」
どかかかかかっ!!
サムは飛んできた石板を手刀と側刀で粉砕する。
どどどどっ!!
サム「……なるほど」
気付けばサムの周囲は石板でうめつくされていた。
サム「拙者に向けて飛ばしてきたのは注意を引き付けるためでござったか。本命の石板でその間にバリケードを作ると……」
サムの全方位を、叩き壊していない石板が壁を作っている。
--南の王国近辺の村--
サム「しかも迷路のように計算された配置。いいでござるよレン殿」
ぱぁぁ
ツインテ「ふぅ」
サム(……その間にしっかり回復もしていると。ふむふむ)
サッ、ササッ
石板と石板の間を二つの影が移動する。
サム(……でも)
ポニテ(!もらった!!)
サムの死角から飛び込むポニテ。
--南の王国近辺の村--
サム「ふん」
ドゲッ!!
それを容易く迎撃するサム。
サム(まだぎこちない。まだ個人能力にものを言わせているでござる)
ぬちゃ
サム「?」
--南の王国近辺の村--
ポニテを攻撃したサムの右手が紫色に変色する。
ザっ!
アッシュ「ふははは!どうだ致命打を与えたぞ!名付けてポニテ毒爆弾!!」
ポニテ「ふふふ……毒も中々……美味しかったです……がくり」
サム「!……」
レン「やったにゃ!レベル1クリアにゃ!」
サム「……」
ポニテの喉を確認すると、毒液を蓄めた小さな疱瘡があった。
--南の王国近辺の村--
アッシュ「ふ、右腕を使用不可能にしたんだ。致命打だろ?まさかまだ闘えるとか強がりを言わないよな」
サム「……そうでござるね」
サムは
ミシッ
自分の右腕を引きちぎった。
アッシュ「!?」
--南の王国近辺の村--
ツインテ「!!」
ポニテ「だー」
レン「な、なにをやってるにゃ」
サム「レベル2を開始するには、この腕は邪魔でござる。ほっておくと動けなくなるでござるし」
そう言うとサムは自分の荷物の場所に行くと木で作った刀を取り出した。
--南の王国近辺の村--
アッシュ「馬鹿か!?出血で数分と保たないだろうが!!ツインテ!!」
ツインテ「うん!」
サム「無用でござる」
サムはピシャッと言い放つ。
サム「……先程の妙手、見事でござった。各上の相手を倒す技としては、良い手であると認めるでござる」
ツインテ(とりあえずポニテちゃんだけでも解毒しとこ)
--南の王国近辺の村--
サム「だが」
ピリッ
場の空気が張り詰める。
サム「仲間を犠牲にした戦術で勝って何の価値がある」
ズッ
アッシュ「!!」
ポニテ「!!」
ツインテ「!!」
レン「!!」
ヤミ「!!」
--南の王国近辺の村--
その場に加わっていなかったヤミも思わず跳びはねる。
ヤミ「はっ、はっ……」
サムが放つ殺気はその場にいた全員を硬直させた。
サム「……」
スッ
アッシュ「!」
ズガギャッ!!
--南の王国近辺の村--
アッシュ「っ!!なっ」
接近も太刀筋も見えず、振り下ろされた木刀によって、たやすくアッシュの肩胛骨は叩き割られた。
アッシュ「が……!!」
サム「そんなのは……下の下でござる」
ポニテ「は」
バキャッ!
ポニテは一瞬早く気付きガードをするが、サムの攻撃はガードを擦り抜けた。
--南の王国近辺の村--
サム「拙者がツインテ殿達に望むのは、そういった強さではないのでござる」
レン「れ、錬成、お」
サム「スキル空振り」
ヒュッ
ドギャアア!!
レン「!!」
離れた位置にいたレンの両腕を斬撃が襲った。
サム「……仲間を道具の様に使ったのでは、それでは倒すべく悪と同じであろうが!!」
--南の王国近辺の村--
もくもくもくもく。
無言の食卓。
ツインテ「……」
アッシュ「……」
ポニテ「……」
レン「……」
サム「もぐもぐもぐだん」
--南の王国近辺の村--
カチャ
お皿に箸を伸ばそうとして躊躇するブラ。
ブラ「……なんか空気が悪いですね……」
ヤミ「修行とやらだ」
ブラ「はぁ……」
ヤミ(……しかしこいつ……中々強いな。久々に高ぶってしまった……明日から俺も入れてもらうか)
サム「後ろの穴のことなら明日と言わず今日にでも」
高校生メイド「読心すんなーでございます!!」
--どこかの山奥--
ザッザッ
ピチュロロロロ
目元深くまでローブを被った二人組が、緑の濃い山奥を歩いている。
バサッバサッ
??「あ、伝書ワイバーン」
伝書ワイバー「きゅるるるるる」
バササッ
--どこかの山奥--
?「ワイバーン……。一番高い伝書モンスターじゃないか。あいつら俺達の活動資金をなんだと思っているんだ」
??「あはは……」
ローブを被った女性はワイバーンから荷物を受け取るとワイバーンに魔力を流し込んだ。
伝書ワイバーン「くるっぴー!」
??「ありがと。またよろしくね」
バサッバサッ
ワイバーンはあっという間に遥か彼方に飛んでいく。
--どこかの山奥--
?「なんて書いてあるんだ?」
ローブの男は手頃な石を見つけ、そこに腰を降ろした。
??「えっと……」
女性は一枚の何も書かれていない紙に魔力を通す。
スッ
??「ん……映らない。私の魔力照合に反応しないなんて……まさかダブルプロテクト?」
--どこかの山奥--
?「ダブル?そこまで重要な内容なのか?」
??「もしくは危険が迫っているか……」
?「……」
男は立ち上がり女性が持つ手紙の端を持つ。
ブ
二人の魔力を感知したことにより、手紙はようやく文字を映し出した。
--どこかの山奥--
??「戦士からだね。えっと……え!?」
?「シノビが捕まった……?」
『ので、これから僧侶と二人で奴らのアジトに乗り込むつもりだ。何、心配せずともシノビは俺達で必ず助けだす』
??「戦士と僧侶……二人で大丈夫かしら」
?「厳しいな」
『むしろ問題なのはその後だ。俺達はまだ一つしか魔王の骨を収集出来ていないのだが、これは俺達の手に余る。予想以上だ。これを悪用しようという奴の気がしれん』
--どこかの山奥--
??「わかる……これとずっとそばにいると頭がおかしくなるもの」
女性は荷物の袋に入っている杖を見て言った。
『なので集合を早めたい。こちらの一方的な都合で悪いのだが、そちらも早く済ませてもらいたい。集合場所は』
??「2ヶ月後の」
?「草原にて」
手紙はそこで終わっていた。
??、?「「アバウトすぎるだろ」」
--どこかの山奥--
がささ!
??「!?」
『ps.シノビが情報を洩らすわけがないと思うが、もし奴らに記憶を読むようなやつがいるなら、そちらにも奴らが現れるかもしれない。気をつけろ』
がさがさがさ!
???「みぃつけたきー!!」
??「……無事だといいねシノビ」
?「……あぁ」
--どこかの山奥--
????「お前か我らの敵は……」
???「どうするきー?どっちやるきー?」
????「アマゾンは女をやれ。俺は男をやる」
???改めアマゾン「きぃ!」
????「行くぞ勇者よ」
?「問答無用で実力行使か……いいだろう、それもこの世のことわりだ」
????「人造勇者X……参る」
ガキィン!!
--南の王国近辺の村--
サム「はいしゅーりょーでござる」
ツインテ「はっはっ……」
アッシュ「……くそぉっ!!」
ポニテ「……木刀なのにぃ……四対一なのにぃ」
レン(こんなに……違う……。同じたった一歩でも決定的に違う……足の些細な角度、踏み込む時の力加減、タイミング……今まで積み上げてきたものの厚みがまるで違う)
--南の王国近辺の村--
サム「ほらほらさっさと立つでござる。ご飯たべるのも修行でござる。食堂にたどり着けないならご飯抜きでござる」
レン(違いがあるということに気付けただけでも強くなった。でもきっとまだまだ違いはあるんだ……今のレン達じゃ直すレベルにまで至らない)
サム(やはりこの四人センスがいい……それだけにもったいない。スムーズに出来ている部分もあるから余計に欠点が目につくでござる)
サムは一人さっさと家に入る。
--南の王国近辺の村--
サム(……時間が惜しい……3年もあれば彼らを一流にすることができるでござるのに……これでは旅の中でできた悪い癖を取り除くだけで精一杯でござる)
サムは窓からツインテ達を見る。
サム(きっとまた彼らはイベントに呼ばれる。それだけの覚悟と運命を背負っているでござる。……口惜しい)
せめて癖がプラスに作用するようになれば、とサムは呟いた。
ツインテ「ご、ごはん~」
ずりずりずり
四人は這うようにして部屋に入ると、さらりと食事を平らげて風呂場に向かった。
--南の王国近辺の村--
サム「やれやれ……」
ヤミ「なぁサム」
食事を終えたヤミが話し掛ける。
ヤミ「あいつらの修行とやらでお前自身は退屈だろう?どうだ?俺と喧嘩してみないか?」
ブラ「!」
高校生メイド「……」
--南の王国近辺の村--
ヤミはニヤニヤとサムの返答を待つ。
サム「……ご遠慮したいでござる」
ヤミ「ふん、連れないな。ホストの誘いだぞ?」
高校生メイド「や、ヤミ様のホスト!?」
鼻血たらり。
サム「む……ならルールを決めた上での一本勝負、というのならば。拙者もこうみえて疲れているのでござる」
サムは自分の肩を揉んで見せる。
高校生メイド(ほっ……それなら大事にならずにすみそうでございます)
--南の王国近辺の村--
ヤミ「まぁ無理を言っているのはこちらだからな。よかろう。で、ルールとは?」
サム「お互い木刀を使って、先に相手に一撃いれた方の勝ち。というのは?」
高校生メイド(攻撃手段を減らしたでございますね)
ヤミ「武器は使いなれていないのだが、それもまた面白い。いいだろう、表に」
ヤミは立ち上がる。
サム「……」
サムはヤミから何かを感じ取っていた。
サム(この胸騒ぎ、確証とするにはあまりに不明瞭な感覚……一度手合わせしてみるのもよいかもしれないでござるな)
--南の王国近辺の村--
サム「多少は武器の変更も認めるでござるよ?槍や斧や盾や弓。どれでもいいでござるが、全部木製にさせてもらうでござる」
ヤミ「ほう、ならば鎌を使いたい」
サム「鎌?まぁいいでござるよ。ごちそうさまでござった。非常に美味でござった」
サムは手を合わせてお辞儀すると、椅子から立ち上がってヤミについていった。
ブラ「……」
高校生メイド「念のため私が見てくるでございます」
ブラ「あ、お願いします」
--南の王国近辺の村--
カカカッ
サムは刀を用いて木材を斬り、彫り、削り、瞬く間に木製の鎌を作り上げていく。
ヤミ「ほう、大した手先だ」
加工している木材は一度も地面に触れることなく空中で刃とともに踊っていた。
ごとん
サム「削り終了でござる。後はここを組み合わせてと、よっ」
サムは接合部を組み合わせ、
ヒュンヒュン
鎌を振るい、出来を調べている。
--南の王国近辺の村--
サム「どうでござろう?」
サムが差し出した鎌は草を刈る鎌。
ヤミ「見事。ただすまん、俺の言葉が足りなかった。俺は大鎌がいいのだ。まるで死神が持つような」
サム「あー成る程。わかったでござる」
サムは大きめの木材を二つ手に取ると、空中に放り投げて削りだす。
シャカカカ
サム「ふむ」
ごとん
サム「……今度はどうでござろう?」
--南の王国近辺の村--
ヤミ「うむ。いいな」
ブン、ブン
ヤミは手にした木製の大鎌を振り回す。
ヤミ「ありがとう」
素直にお礼がでるヤミ。
サム「なんの」
サムは真剣を木に立て掛けて、代わりに木刀を手に取る。
サム(考えすぎ……か?)
ヤミ「よし、夜も遅いことだ。早々に始めるとしよう」
ザっ
サム「では一本勝負でござる」
--王国、会議室--
東の王「止めるしかあるまい。今南の国を自由にしては、どのような結果にせよ悪い方向にしか転ばぬ」
西の王「……」
北の王「あったり前でんがなー。というか東のさんは今年色々トラブルあったから、植民地なくなるわけにはいきまへんわな。被害も少なくないんでっしゃろ?」
東の王「ッ!きさまっ!」
北の王「!?あぁ、堪忍しておくんなまし!そういうつもりじゃないんでっせ!」
新王「まぁまぁ……話が進みませんから」
--王国、待合室--
剣豪「進んでねぇんだろうなぁ会議」
剣豪は将棋盤の前で胡坐をかいている。
秘書「早くに結論が出るに越したことはありませんが、筋道の通った正答を出していただくのが何より重要なことだと思います」
秘書は無表情で椅子に座っている。
剣豪「そりゃそうだ、っと」
パチ
--王国、待合室--
人形師「やれやれぇ。なんでまたわたしが護衛なんですかねぇ。まったく人使いが荒い人ですよぉ。前回もわたしがんばったのにぃ」
槍兵「それを言うなら俺もっすよ。やれやれ、今年はこれでゆっくりできると思ってたのに」
はぁ、とため息をつく二人。
ガチャ
妃「は~い暇を持て余しているみなさ~ん。仕方がないのでお茶菓子でもてなしてあげます~。感謝しながら頬張ってくださいね~」
剣豪「けっ、客にする態度じゃねぇぞ」
パチ
--王国、待合室--
?男「丁度これで詰みだぜぃ。いやーお腹すいてたからナイスタイミングだぜぃ」
剣豪「む……む」
剣豪の前で背筋を伸ばしている男。
剣豪「……確かに厳しい一手には違いねぇが、まだ終わっちゃいねぇだろ」
?男「最短で四十二手後、最長でも六十五手後には詰みですだぜぃ」
男はにやり笑った。
--王国、待合室--
剣豪「……さすがの俺もそこまでは読めねぇ……お前菓子が食いたいからでたらめ言ってんだろ!」
?男「違うだぜぃ。この後銀をこうするだぜぃ?すると桂馬がここにあがるだぜぃ。そんで」
剣豪「……ちょっとまて、俺がそうするとは限らないだろ」
?男「え?今までの打ち方から想像してみたまでなんだぜぃ。じゃあ飛車が成るために突っ込んだとするなら」
妃「その子馬鹿だから相手にしないほうがいいですよ剣豪さん~。ほら軍師、手伝いなさい~」
?男改め軍師「えぇ!?ひどいだぜぃ」
--南の王国近辺の村--
サム(ふむ、なかなか連携にぎこちなさが無くなってきたでござるな)
ガガガ、ギィン!
アッシュ(!!)
サム(体捌きも見事)
ドガ!
アッシュ「がはっ!」
アッシュは腹部を蹴りあげられて木に突っ込んだ。
--南の王国近辺の村--
アッシュ「げほっごほっ」
ポニテ(……結局……)
ツインテ(この一週間……)
レン(一度もダメージを与えられなかったにゃ)
サム「……さぁて」
サムは涼しげな顔で木刀を振るう。
サム「どうするでござる?終わりにするでござるか?」
--南の王国近辺の村--
ヤミ「あいつやるなぁ」
ヤミは外に専用の椅子を設け、ツインテ達の修行を観察する毎日を送っている。
高校生メイド「……ルールに縛られていたとはいえ、まさかヤミ様が負けるとは思わなかったでございます……」
高校生メイドは紅茶の入ったカップをテーブルに置く。
ヤミ「いやルールなど些末な問題だ。ルール無しで戦っても俺は負けていただろう」
高校生メイド「そんな!」
--南の王国近辺の村--
ヤミ「……なぁメイド」
高校生メイド「はい?」
ガンガン!!
ヤミはツインテ達の修行を見続けている。
ギィン!ボゥっ
ヤミ「……人は磨き上げればあれほどまでになれるのだな」
高校生メイド「!!……その力も、ヤミ様なら」
--南の王国近辺の村--
サム「ほらほらぼーっとしてちゃダメでござる。パーティは常に全員いるとは限らないでござる。四人の時もあれば二人に分断される時もあるのでござるよ?」
ズガッ!!
剣で木刀を受けるポニテ。
ギシギシギシッ!!
ポニテ(し、痺れるー!なんでこんなに一撃が重い、っの!)
ツインテ「!!ポニテちゃん!」
--南の王国近辺の村--
サム「その時その場で出来る最善の連携をすぐさま構築するでござる。人は群れで狩りをする動物でござれば」
アッシュ「はぁ!」
ヘルプに向かったアッシュ。
ガキィン!!
背後からの一撃をたやすくいなすサム。
サム「っと。……いい一撃でござった。自分の攻撃が仲間の次の動作に繋がる動きならなおよしでござる」
ズゴッ!!
アッシュ「ごほ!」
--南の王国近辺の村--
ズザザー
木刀で突かれたアッシュは地面を転がっていく。
ポニテ「ツインテちゃん!全員に水の保護を!」
ツインテ「!オッケー!水属性防御魔法レベル3!!」
シュウン!!
四人の体の周りを水の防御膜が覆う。
サム(……?)
ポニテ「いっくよー!!右手だけ魔力体化!!」
--南の王国近辺の村--
レン「!試すのかにゃ!」
ボッ!!
ポニテの右手が太陽のように輝き始める。
ジュッ!!
サム「!」
ポニテ(くっ!!押さえこまなきゃ!!みんなにまで被害が及ばないように!!ぐっ……!みんなは、大事な大事な仲間なんだから!!)
ジュー
ポニテ「みんなと、一緒のフィールドで闘うんだっ!!!!」
--南の王国近辺の村--
ツインテ「すっごい熱量、水の保護膜があってもこんなに熱いなんて」
しゅぅぅう
ヤミ「む……さすがにこっちも熱いな」
高校生メイド「えぇ……人間の身でありながらここまでの熱量を発現させるとは。それもあの歳で。なかなかできることではないでございます」
サム「ふむ……」
じゅぅぅぅ
ポニテの右手はかろうじて原形をとどめているように見える。
--南の王国近辺の村--
サム(力の制御も大分上手くなってきたでござるな。かかせぬイメージトレーニングのたまものといったところでござろうか)
サムは木刀を水平に構える。
サム(出来ると思わねば何も出来ぬ。自分を信じてやらねば誰が信じる。ポニテ殿、すばらしいでござるよ……)
きゅいぃぃ
ポニテ「!!安定してきた!」
サム「が、スキル、魔力切り!」
シュン
サムは離れた位置から木刀を振るった。
--南の王国近辺の村--
ずばっ!!
ポニテ「づっ!?」
離れた位置だったのにもかかわらず、その斬撃はポニテに到達、その右手を吹き飛ばした。
ポニテ(いっつ!!遠距離斬撃!?しかも魔力体の腕を斬った……)
ぼてっ
ポニテの魔力体の右手は切断され、地面に落ちると元の肉に戻った。
サム「残念。いかに強力な技であろうと、準備に手間取っているようじゃ簡単に攻略されるでござるよ」
--南の王国近辺の村--
アッシュ(!魔力も自在に斬りやがるのかこいつは……)
ツインテ「……」
たたた
ブラ「あの、そろそろ食事の時間にしようと思います。皆さん手を洗って食堂に来てください」
ヤミ「ふむ。中々いいものが見れた」
がたっ
高校生メイド「……」
サム「ほい!それじゃあ今日はここでおしまいでござる。各自ストレッチとイメージトレーニングを欠かしてはだめでござるよ」
スタスタとサムは食堂に向かう。
--南の王国近辺の村--
ツインテ「……待てよ」
ざわ
ポニテ「……まさか」
レン「この感じは……」
アッシュ「や、やめろツインテ!!」
バツン
ツインテのリボンが二つとも弾け飛ぶ。
しゅぅぅううう!!!!
--南の王国近辺の村--
ツインテ「……ふう。こんなに楽しそうなことを俺抜きでやってんじゃねーよ」
ポニテ「最近でてこなかったねー」
くいくい
ツインテ「補講やろうぜサム。俺とタイマンでな」
ヤミ「おっ、見てみろ、ツインテまた感じが変わったぞ」
高校生メイド「身体の中にいくつも魂を入れているのでございましょうか。あの団体にはレアな人間が多いでございますね」
サム「ん、男らしいツインテ殿でござるか……」
ツインテ「刀を抜け。本気でやろうぜ?」
にゅる
ツインテは触手を展開する。
サム「……」
サムは頭をかく。
サム「今日は疲れたのでござるが……仕方ないでござるね」
--南の王国近辺の村--
カチャ
サムは木刀を手に取った。
サム「ただし使うのは木刀のみでござる」
ツインテ「ッ!……てめぇなめやがって」
サム「それとルールは一本勝負、相手に」
ダンッ!!
サムが言い終わるより早くツインテは跳躍した。
ツインテ「ルールはデッドオアアライブ!!そんだけで十分だ!!」
ドッガァンンンン!!
--南の王国近辺の村--
サム(ッ……戦闘の才能はツインテ殿の中で、ストレートツインテ殿が一番でござるな)
ズガガガ!!
触手と両手による猛ラッシュ!
ツインテ「おらおらおら!!防戦一方か!?」
アッシュ「……あのパンチ……あの程度しか威力なかったか?」
アッシュは首を傾げた。
ガガガっ!!
--南の王国近辺の村--
ツインテ(ちっ……魔力暴発で威力が上ってるパンチを……こいつ)
ガガガガガ!!
アッシュ「賭博師の身体を、まるで肉まんのように粉砕していたパンチを……」
サム(ふむ)
ひゅっ
ツインテ「!!」
ツインテの乱打攻撃を掻い潜り、サムは不敵に笑う。
サム「威力だけの考え無しでは単調すぎるでござる」
--南の王国近辺の村--
ドギャッ!!
ツインテ「ッ!!」
ズザザザー!!
サム「む」
近距離からの振り抜き。ツインテの防御力程度では耐え切れぬはずの一撃。
ツインテ「……ち」
にゅる
ツインテは咄嗟に触手を操作して、身体に巻き付けていた。
--南の王国近辺の村--
ぽた
ツインテの口から血が滴れる。
ツインテ「……成る程な、そういうからくりかよ」
手の甲で口元を拭う。
レン「からくり……?」
ツインテ「魔法、ダメージ履歴」
ぽぉう
空中に文字が浮かび上がる。
--南の王国近辺の村--
サム「!」
アッシュ「ダメージ履歴?そんなものを見て一体何がわかるっていうんだ……?」
ポニテ「……ダメージの種類?」
ツインテ「やはりな……俺の身体の三日間のダメージを調べてみた。その全てがクリティカルダメージになっている」
アッシュ「クリティカル……!!成る程!だから軽い振りにも関わらず、あれだけの威力をだせていたのか」
サム「軽い振り……」
少し複雑な表情のサム。
--南の王国近辺の村--
レン「クリティカル……ダメージ二倍。クリティカル率を操作するスキルかにゃ」
レンは顔をくしくしぺろぺろしている。
サム(……以外と冷静でござるねストレートツインテ殿……略してツイスト殿。まさか簡単に看破されてしまうとは思わなかったでござる。しかし)
ツインテ「……まぁわかったところで有利になるわけじゃねぇけどよ」
サム(然り)
ツインテ「ただこれからはどんな攻撃にも用心する必要が出来たってことだ。どこに一撃必殺の力が込められているのかわからねぇ、外見に惑わされることなく、常に気を払い、全身全霊を持って戦いに挑め……と言うことか?」
--南の王国近辺の村--
サム「然り!いやはや素晴らしいでござる。ツイスト殿は頭のキレも違うでござるな!」
ツインテ「っけんじゃねぇ……」
ジジジ
アッシュ「!!」
ぐにゅう
ポニテ「か、身体が重い!?」
レン「!ツインテの魔力で空間が埋まろうとしているにゃ……?」
--南の王国近辺の村--
サム「これは……」
ツインテ「俺はなぁ」
ツインテの身体を覆う魔力があまりに濃密すぎるために、靄がかかったかのようにツインテの姿を見ることが出来ない。
アッシュ「すごい魔力量だ」
ポニテ「改めて見てみると、あのフォーテって子と似た感じだよね……魔力の質が」
ツインテ「そうやって見下されたり謀をされるのが一番きれぇなんだよ!!」
ぶわっ
魔力が空間を埋め尽くす。
--南の王国近辺の村--
ツインテ「奥義、絶対回復領域!お前は万回死ぬまで逃がさねぇ!!」
サム(……だってそういう修行なんだもん……)
顎鬚をいじるサム。
サム(しかしツインテ殿の奥義……絶対回復領域?)
ぐぐ
サムは腕を動かしてみる。
サム(……重い。これは大気を魔力で満たしているせいでござるな。これでは移動に支障が出るでござる)
ツインテ「覚悟しやがれ!!」
--南の王国近辺の村--
ダッ!!
サム(!成る程。当然ながら自分自身には悪影響は無いでござるか)
グ
サム(魔力切りでどうにか出来そうもない……)
ツインテ「はぁっ!!」
サム(試しに味わって見るでござるか)
ツインテの拳がサムの眼前に迫る。
サム「とも思ったが拙者が負けたんじゃ教える立場として申し訳が立たないでござる」
ヒュッ
--南の王国近辺の村--
ツインテ「!」
ツインテの拳を紙一重でかわすサム。
ツインテ(なんだと!?)
サム「スキル、居合い斬り」
ズババァン!!
ツインテ「がっ!?」
--南の王国近辺の村--
サム(手応えが浅い……この魔力の層が緩衝材の役目を果たしているのでござるか)
ツインテ「いっ、てぇなぁ!!魔力暴発レベル2!!」
耐え抜いたツインテはその場で踏みとどまり、右拳を突き出す。
ズゴォン!!
サム「ッッ!!」
至近距離からの魔力暴発パンチは、サムのガードを吹き飛ばして腹部に強烈な一撃を与えた。
サム(っっづ!!こ、れは……!)
--南の王国近辺の村--
アッシュ「!?入った!?」
ポニテ「ひゃっほーぅ!さすがツインテ様!!」
レン「領域の中で更に威力が上がっている……致命打にゃ!」
ズズ
ツインテ「はっ、まさかこの程度で終わりじゃねぇよな」
サムは片膝を付いている。
サム「……やれやれしくじったでござるな。シングル戦の補講なんて受けなければよかったでござる」
ツインテ「はっはっはっ。負け惜しみか?情けないぞひげ」
--南の王国近辺の村--
サム「完全に負け惜しみでござる。しかしこのままじゃしまりがないのでなんとか格好がつくようにあがいてみるのでござる」
ツインテ「……最初から言ってるだろ?本気で来いと」
サム「うむ。一人の武人としてあまりにも礼節を欠いた言動だったでござる。許してくれ」
サムは頭を下げた。
ツインテ「んなことはいい。さっさと刀を取りにいけ」
サム「ではこれからは……」
サムが手をかざすと、
バシッ
その手に刀が飛んでくる。
サム「第二ラウンド……いや死合でござるよ」
--北の王国近辺の村、地下倉庫--
ゴォオン……
ぱらぱら
北村の幼女「……ねぇ、お父さん!もう音しなくなったよ?」
北村のおっさん「む……確かにあの爆音の戦闘音が聞こえなくなったな」
北村のお姉さん「も、もしかして旅のお方が負けてしまわれたのでは……」
北村のじいさん「あの二体は……化物じゃったからの……」
北村の少年「でも、あのお姉ちゃん達なら勝てる気がするよ」
北村のおっさん「……あんな線の細い5人組でか?……」
北村の少年「だって俺……あの二体の魔王より、あの女の子の方が怖かったんだ」
少年はがくがくと震えている。
--北の王国近辺の村--
ゴオォォォ!!
村が燃えている。
フォーテ「くすくすくすくす」
疑似魔王スカイ「……ぎ」
燃える大地に立っているフォーテは、その少女のような柔らかい手でスカイの頭部を掴んでいる。
疑似魔王ZO「ま、魔王化した我々が、このような、こむす、めに」
傍らに原形をとどめていないZOが横たわっている。
フォーテ「なぁぁんだ。やっぱりおじちゃん達はにせものの魔王なんだねっ!ちょっと触っただけでこんなになっちゃうなんてっ!」
けたけたけた
--北の王国近辺の村--
花師「……相手になるわけもねぇか」
花師はわかりきった結果にうんざりといった所。
ぐしゃっ!
スカイは握りつぶされ、ZOは踏み砕かれた。
たたた
北村の村人「あ、ありがとうございます!!なんとお礼を申し上げたら!」
フォーテの前に来て跪く村人。
--北の王国近辺の村--
北村の村人「村はこんなことになってしまいましたが、村人さえ残っていればどうとでもなります……!本当にありがとうございました!!」
フォーテ「……」
フォーテはきょとんとした顔でそれを見ている。
フォーテ「……にへへへへ」
ミシッ
北村の村人「ぎゃ、ぎひ!?」
村人の顔面が捻れ始める。
フォーテ「まだ残ってたんだっ!?じゃあ大掃除だねっ!?」
廃村の村人「な、なぜこのような、あが、あがきゃっ!!」
ぱしゅっ
--北の王国近辺の村--
風水師「この下っぽいあるよー」
手で○を作っている風水師が何もない地面を見て言った。
狐娘「けふっ。人間の焼ける臭いはくちゃいコン。髪の毛に染みつかないか心配コン」
狐娘は自分の長いもふもふした髪の毛を触っている。
占星術師「眠いのよ」
大きなあくびをしている占星術師。
彼らの後ろには無数の死体が山のように積まれていた。
--北の王国近辺の村、倉庫--
ぱら
北村のおっさん「ちょっと俺上見てくる」
北村の幼女「え!おとうさんいくならわたしもいく!」
北村のおっさん「お前はここで待ってなさい。じいさん、この子を頼んだ」
北村のじいさん「あぁ、気を付けてな」
がた
おっさんが扉を開けて外に出ようとすると、
ひゅっ
何かに吸い込まれるかのように消えた。
北村のお姉さん「……な、なんか今変じゃなかった……?」
ぎぃ
白くきれいな手がドアを掴む。
北村の少年「ひっ!?き、きた!!」
ドアからぴょこっと出した顔。
縦にならんだ二つの無垢な瞳。
フォーテ「みーつけたっ」
にゅる
--南の王国近辺の村--
ほーほー
夜。
ツインテ「っくそ……」
ぱしっ
ツインテは拳を叩く。
ツインテ「この俺様が……負けるだと……?」
ツインテは苦虫を噛んだような表情。
ツインテ「……認めねぇ……認めねぇ……くそ!」
--南の王国近辺の村、過去--
アッシュ『……ッ!』
ポニテ『ど、どういうことなの?』
レン『ツイ……ンテ』
ツインテ『はぁーっ、はぁーっ』
ツインテは四つんばいでサムを睨む。
サム『なるほど……それがツインテ殿の固有スキルでござるが……にわかには信じがたい……』
ゴゴゴゴゴゴゴ
ツインテ『ッ!』
ズバッ!
立ち上がろうとしたツインテを両断するサム。
--南の王国近辺の村、過去--
アッシュ『奥義を解除する奥義……それがサムの奥義……』
絶対回復領域は展開されていなかった。
ズズズ
ポニテ『それもすごいけど、あれ……』
ズズズ
レン『なんでツインテの奥義は解除されたのにツインテは……蘇生するのにゃ……』
ズズズズズズ
サム『名を付けるなら、スキル、自動蘇生でござろうか。魔力がある限りオートで蘇生するとは……』
このツインテ殿あって、フォーテ殿あり、か、とサムは呟いた。
--南の王国近辺の村--
ほーほー
ポニテ「やっぱりみんな奥の手を持っているんだなぁ……」
ポニテは両の手に魔力を込める。
ポニテ「今ある力だけじゃ私、置いていかれちゃうかもしれない……新しい技を編み出さなきゃ」
ぷつ
ポニテの腕に出来ていたかさぶたが剥がれ、そこから血が垂れる。
ふわ
その血は地面にまで到達せず、空中で踊り始めた。
ポニテ「よし」
--南の王国近辺の村--
ほーほー
レン(レンは一瞬で状況を理解して、一瞬で有効な武具道具を作らなきゃいけないにゃ)
レンは工房を出して考えている。
レン(とはいえレンの錬成速度はかなり早いほうだと自負するにゃ。あれ以上は簡単には早められない。限界まで早めても今と1秒もかわらないはず、なら精度を……)
その時レンは何かに気付く。
レン(……よぉく考えてみると詠唱時間が勿体にゃいにゃ……毎回必ず時間を食う部分だし。いやでも詠唱しなけりゃ精度と強度が落ちるにゃ……。とはいえ詠唱くらいしか削るとこないにゃよにぇ)
レンはくしくしぺろぺろ毛繕い。
レン(……詠唱時間をすっとばしたら……光の早さで錬成出来るかにゃ?妨害もされず、何が錬成されるのかもわからせず、やりたい放題できるにゃ……にゃ、にゃ、)
くしゅっ!
鼻に自分の毛が入ってくしゃみをしてしまう。
--南の王国近辺の村--
レン(にゃん……まぁ誰でも考えているはずにゃね。今までだってたくさんの人が気付いて、考えて、それでもやらなかったことに違いないにゃ。ほいほいレンに出来るわけないにゃ)
コロン
レンは錬成道具をいじる。
レン(……ん?)
レンは工房と道具について考える。
レン(もし仮に、工房が常に展開していたら、開くまでのプロセスが短縮されるわけにゃ。でも普段から出してたんじゃ移動に不便だし魔力も食うにゃ。……けどこの体が工房だったらどうにゃ?)
レンは自分の体を見る。
レン(自分の体を、戦闘時だけ工房にする……いけるかにゃ?……道具は指……例えば人差し指にビーカーの概念を被せれば……ビーカーの形をしていなくてもビーカーの役割を果たしてくれる……?)
にゃんにゃんの夜は更けていく。
--南の王国近辺の村--
ほーほー
アッシュ(俺の持ち味は速度だ。そして一撃必殺の毒。完全なヒットアンドウェイタイプでチームプレーなど足枷にしかならない)
アッシュは星を見ている。
アッシュ(だがやはり仲間は……いる。もし毒の効かない相手でも現れるようなら俺はかなりの苦戦を強いられる……それに何より俺はあいつらと……)
アッシュはナイフを引き抜き振るう。
ひゃっ
アッシュ(……くそなんで俺が悩まなくちゃならない!)
--南の王国近辺の村--
ほーほー
深い森の中。
サム「やれやれ。また睡眠時間が削られちまったでござる」
ちんっ
魔族残党「か、かかか、か」
サムに斬られた魔族の死体が、森の中に転がっている。
--南の王国近辺の村--
サム「そろそろあきらめて欲しいでござるよ。彼らには拙者がついて守っているのでござるから」
くあぁあ、とサムは眠そうに欠伸を一つ。
魔族残党「く、く、そ」
サム「……」
サムは完全に動かなくなるまで魔族を見ていた。
ほーほー
木々の隙間から見える月は銀色に輝いている。
サム「……時間が惜しい」
--南の王国近辺の村--
一週間後。
ががが
ヤミ「よくも飽きずにやるものだ」
高校生メイド「もうトータルで三ヶ月ちょいでございます……てゆうかあいつら滞在費払えでございます。最近物価が高いから食費もばかにならないのにでございます!」
ブラ「……」
ブラは思う。
人を殺すことになんの躊躇いもなかったメイドが、今は我が家の財政のことを気にして苛立っている。
--南の王国近辺の村--
お金を気にしているということは、結局のところ人との関わりを大事にしているということだ。
ブラ「……ふふ」
『必要なら殺して奪えばいい』。というメイドの考えは、一緒に生活しているうちに変化してなくなったのだ。
ブラ(人は……変われる)
自分の腹部をさする。
ブラ(生まれながらの悪なんて、いない)
そう思えてしまうから、少しだけ、世界を許せてしまう。
高校生メイド「あいつら殺せば食費浮くでございますよね?ヤっていいでございますよね?」
ブラ「!?」
--南の王国近辺の村--
ぱんぱん
サム「では今日の修行はこんなもんでござる。ささ飯食うでござるよ」
ポニテ「ふぃー。もうおなかペコペコだよ~」
アッシュ「ち……また決定打を与えられなかった」
レン「そろそろ新スタイルに変えてみようかにゃ」
ツインテ「もうちょっと早く終わればブラさんの料理手伝えるんですけどね……」
ぞろぞろ
--南の王国近辺の村--
サム(うむ。スタミナは増大したでござるな。無駄な動きも減ったから尚更効果ありでござる)
サムは四人の後ろ姿を見ている。
サム(たくましい子たちでござる……まことに。まことにいいパーティでござるな)
サムは四人の尻をなめ回すように見ていた。
サム「くっくっくっ」
ポニテ(視線が怖いよ)
アッシュ(無視だ無視)
レン(これがなきゃ完璧なのににゃきもいにゃ)
ツインテ(……)
--南の王国近辺の村--
ことっ
ヤミ「うむ。美味であった」
ポニテ「ごちそうさま!美味しかったー!」
ブラ「ふふ、お粗末さまです」
ツインテ「あ、洗い物はボクにも手伝わせてください」
たたた
アッシュ(ツインテールなツインテはほんまにいい子やで……)
表現が難しい。
--南の王国近辺の村--
ブラ「はい、じゃあお願いしますね」
ヤミ「おいアッシュ、今日こそ決着をつけるぞ」
カードを取り出すヤミ。
アッシュ「ったく、復習とイメトレがあるんだから長くは……はっ!」
ポニテ「にやにや」
レン「にゃにゃ」
周りのみんながにやにやしながらアッシュを見ている。
高校生メイド「天才な俺には復習など必要ない!……そう、いつも言っていたくせにでございますのに」
ずずず、とお茶を飲みながらメイドは言った。
--南の王国近辺の村--
アッシュ「あ、当たり前だ!い、今のは言葉のあやだ!」
ツインテ(いつも一人でしてたのバレバレでしたけど……)
レン(なんでみんなに気付かれてないと思ってるのにゃ。きもいにゃ)
じゃー
ブラ「ふぅ……」
ツインテ「ブラさんお疲れですか?後はボクがしますから休んでいてくださいっ」
ブラ「本当……ですか?じゃあお言葉に甘えて」
ブラは椅子に座って少し休むことにした。
--南の王国近辺の村--
ツインテ「いえいえ気になさらないでくだ……」
ツインテは沈黙した。
ブラ「?」
ツインテ「というかそもそもここに居候させて頂いているのだから家事をやるのは当たり前というか、むしろこんなことぐらいじゃ恩を返せるわけもないというか……」
ツインテはパニックに陥る。
ツインテ「あ、あわわわわ!!ごめんなさい!泊めていただいた分、食べてしまった分、ちゃんとお支払しますから!!」
ブラ「……」
ツインテはぺこぺこと頭を下げている。
--南の王国近辺の村--
それを見たブラは何かを思いついたのか、
ブラ「……ふふ。そうですねぇ。色々こちらも苦しい家計ですし?五人分増やして料理するのは手間がかかるわけですし?」
ツインテ「ぴ!!は、はい!」
あわあわしてるツインテ。
ブラ「少なく見積もっても……そうですね」
ツインテの耳元でごにょ。
ツインテ「そ、そんなに!!……す、すぐには払えませんが必ず、必ず払いますからぁぁ!!」
ブラ「ぷっ」
ヤミ「やれやればか正直な奴だな」
--南の王国近辺の村--
アッシュ「む、お前今ツインテをばかと罵ったか!?」
高校生メイド「こっちの方がばかでございます」
わーきゃー
ツインテ「え?な、なにが……」
ブラ「あはは。冗談ですよ、そんなに焦らないで下さい。私達が好きでツインテちゃん達に居てもらっているんです。お金なんていりません」
ツインテ「え!いや、でも!」
ブラ「ツインテちゃん達には私がお金を求めるようなけちんぼさんに見えていたんですか?私ショックです」
高校生メイド「ぐ!……」
けちじゃないもん、と消え入りそうな声のメイド。
--南の王国近辺の村--
ツインテ「えぇ!?そ、そんなこと思ってませんよ!!恩義には恩義を持って返せとお父さんに教わったから、ばっ」
ばふっ
ツインテを抱きしめるブラ。
ブラ「あはは。なんでも本気にしちゃって、ツインテちゃんたら本当に可愛いんですから!」
ツインテ「もがもっ」
ポニテ「そりゃあツインテちゃんは可愛いよ!今までの旅で一体何人落としてきたことか!」
アッシュ「ドキッ」
レン「ドキにゃん」
サム「ドキござる」
--砂漠--
盾男「ドキッ」
--西の王国--
変化師「ドキッ」
--渓谷--
賭博師「ドキッ」
調教師「?」
--東の王国--
東の王「ドキッ」
--東の王国、修練所--
選抜兵「ドキッ」
--南の王国--
虎男「ドキッ」
--魔王城--
マッスルひげ「ドキッ」
--南の王国近辺の村--
ヤミ「尺を稼ぐな」
--南の王国近辺の村--
ブラ「へぇ。そりゃあこれだけ可愛くて性格もこれなら誰でも好きになっちゃいますよね」
ブラの胸でぐいんぐいんされるツインテ。
ツインテ(うぅ……恥ずかしい!でもなんだか……いい匂い……)
ヤミ「これブラ。そろそろツインテを解放してやれ。苦しんでいるぞ」
ブラ「え……あっ、大丈夫?ごめんなさい無理やり」
ツインテを解放したブラ。
--南の王国近辺の村--
ツインテ「ぷはっ。だ、大丈夫です。いえ、嫌じゃありませんでしたし。なんだか……お母さん……みたいな雰囲気で」
照れるツインテ。
ブラ「」
ポニテ「嫌じゃなかったって、ツインテちゃんえっちぃ~!」
ツインテ「ぴ!?」
わーきゃー
ブラ「……」
アッシュ「そういえばサムの奴はどうしたんだ?」
--南の王国近辺の村、女湯--
ごくごくごくごく
サム「ぷはぁ!女湯うめぇwwww」
--南の王国近辺の村--
ほーほー
テラスでイメージトレーニングをしているツインテ。
ツインテ「ふぅ……自分が上手く行動しているイメージか……難しい……」
イメージトレーニングをしながらも魔力を練っているツインテ。
ブラ「ツインテちゃん、お邪魔でしょうか?」
そこに梨を持ったブラが現れた。
--南の王国近辺の村--
ツインテ「あ、ブラさん。どうかしたんですか?」
ブラ「洗い物手伝ってもらっちゃったし、少しお話の相手が欲しくて。梨嫌いですか?」
ツインテ「嫌いじゃありません、好きです!お話、ですか?かまいませんよ」
ブラ「よかった」
コト
ブラ「この梨、向かいのおじさんが作っているんですが本当に美味しいんですよ。たまにかごにどっさり持ってきてくれるんです」
しゃり
--南の王国近辺の村--
ツインテ「本当だ。甘くてみずみずしくて、ひんやりしててとても美味しいです!」
ブラ「でしょう?井戸で冷やして食べるのが最高の食べ方です」
あまり夜遅くに食べると体重が不安になっちゃうんですけど、とブラ。
ツインテ「あはは……。えと、それで一体何のお話でしょうか?」
ブラ「あ……」
ツインテ「あ、すいません。ブラさんが何気ない話をしに来ただけには見えなかったもので……。ブラさんの表情には、何か覚悟めいたものがあった感じがしたんです」
ブラ「……さすが旅をしてきただけあって、そういう所は敏感みたいですね、ツインテちゃん」
ツインテ「いえそんなことはないですよ」
--南の王国近辺の村--
ブラ「……」
ツインテ「……あの……ブラさん?」
ブラ「……私の身体には二つの命がある。多分ツインテちゃんは、気付きましたよね」
ツインテ「――はい。なんとなく感覚で、ですけど」
ブラ「……ツインテちゃん、妊娠魔法っていう魔法があるのを知っていますか?」
ツインテ「妊娠魔法……確か何らかの要因によって、子供をつくることが出来ない人達のために作られた魔法ですよね。魔力の波で遺伝子をデータ化するとか」
ブラ「その通りです。性行為することなく、自分の遺伝子データを母体に書きこむ魔法です。さすがツインテちゃん、よく勉強していますね」
--南の王国近辺の村--
ツインテ「いえ……」
もう、
ブラ「ならその魔法がどうなったか、知っていますか?」
わかってしまった。
ツインテ「発表されて僅か1週間で……禁術に指定されました」
ブラ「うん」
ツインテ「……」
ブラ「発表当時、と言ってもその時はまだ私生まれていないんだけれど、世間では革命的な魔法だと称賛されていたらしいの。精神的、肉体的な問題から子供を作ることが出来なかった人達が子孫を残せるようになったんですもの、当たり前かもしれないですよね」
繁殖手段に選択肢が出来たのは、種としてとても大きなことだもの、とブラ。
--南の王国近辺の村--
ツインテ「……でも」
ブラ「禁術になった。恐らく全ての魔法の中で最も早く」
あの悪名高きダークダイブボンバーよりも早く。
ブラ「母体に遺伝子データを直接送るこの魔法は、発動条件に女性の承諾を必要としなかった」
ツインテ「……」
ブラ「もちろんそれは法で犯罪とされていたけれど、そんな柵を乗り越える手段はいくらでもあった……」
ツインテ「……」
--南の王国近辺の村--
ブラ「それはある意味強○より防ぎようの無いこと。魔法の素養が高いものは、数百メートル離れていても、対象に遺伝子を刻めるのだから」
ツインテ「……」
ブラ「ゆえに禁術。でもね、悪いものってちゃんと残るものなのよ。使い手は……この現代にも」
ツインテ「!……」
ブラ「私の両親は南の王国出身、それは私の肌の色を見れば一目瞭然だと思うんだけれど。それで二人は音楽家だったのね、父と母は世界を音楽で平和にしたい、といつもにこやかに笑っていたわ」
……絵空事ね、と小さくブラは呟いた。
ツインテ「……」
徐々にブラの話し方や表情が変わっていくのをツインテは気付いていた。
--南の王国近辺の村--
ブラ「世界中を旅した。小さかった私を連れてね。たまにショーで歌ったこともあるわ。でも生活はとても厳しかった。南の王国出身者という肩書きは、決してアドバンテージにはならなかった」
ツインテ「……」
ブラ「どんどん収入が減って、生活が困窮して、夢が見えなくなって代わりに現実が見えて。二人は目に見えて余裕を失っていった」
ツインテ「……」
ブラ「そして……魔族を連れて逃げた勇者達を南の王国がかくまったあの日から、それ以上の比ではないほどの辛い生活が始まった」
ツインテ「!……」
ブラ「町を離れるにもお金が無い。私達はそこまで追い詰められていた。差別を受け迫害を受け暴力を受け、言われの無い罪で父が投獄された時には、もう母は壊れてしまっていた」
ツインテ「……」
--南の王国近辺の村--
ブラ「母は私を残して自害した。私を殺す勇気だけは、壊れていてもついぞ持つことは出来なかったと。母はごめんなさいと言ってナイフで……」
ツインテ「ッ」
ブラ「父は数週間で帰ってきた。ドアを開けてさぞ驚いたことでしょう。家の中には、家に残ったわずかな食べものと母の死肉で食いつないだ私と、誰かに葬られることもなく床に放置されたままの母の死体があったのだから」
ツインテ「!……!」
ブラ「父は……幽霊のように私の手を取ると外へ出て、丁度町に来ていたサーカス団に私を売ると、二束三文のお金を受け取ってどこかに消えた」
……故郷に帰る資金になったのかな?とブラ。
--南の王国近辺の村--
ブラ「……ごめんね、いきなりこんな話をして」
ツインテ「い……いえ」
ブラ「でももう少し続くの。だって、地獄はここからだったから」
ツインテ「ッ」
いつもにこやかだったブラとは、とてもだが同一人物だと思えない。
ブラ「朝の四時に起きて雑用。下水処理。動物の世話……は、まぁ楽しかったかな。色々やったし色々覚えさせられた。そのせいで病気になったりもしたのだけれど」
ツインテ「……」
--南の王国近辺の村--
ブラ「こう言うのはおかしいけれど、私は南の王国の人間にしてはまだましな外見をしていたらしいの。彼らからしたらね。だから団長はいい使い方が出来るまで私を取っておいた」
ツインテ「……」
ブラ「そしてあの日が来た。いつもご贔屓にしてくれる大臣クラスの人が、ある本を持ってきたの」
ツインテ「禁術……本」
ブラ「そう。団長曰く、結構簡単に会得出来たらしいの。魔法にあまり精通していない団長でさえそれなのだからよっぽど簡単に取得できる魔法なんでしょう」
ツインテ「……」
ブラ「そして私は十字架に張り付けられて観客の前に出された。禁術の的として」
ツインテ「!!」
--南の王国近辺の村--
ブラ「いつの時代でも、きっと好きなのよ。人間は人体実験が。自分と実験対象の立場の差にでも愉悦を感じるのかな?その日は、見たことの無いほどの観客数だった。いつもの三倍はあったかもしれない。団長は、私を禁術の的にして、そして同時に賭けの対象にすることを思いついたの」
ツインテ「賭け……?」
ブラ「……どの人間の子を孕むか」
ツインテ「!!??」
ブラ「団長と、いつも私をこき使っていた団員七人。それと何度も足を運んでくれている政府のお偉いさんが五人」
ツインテ「ッ!」
ブラ「恐らく味わうことがないだろうから教えてあげるね……。あの魔法を受けるとね、お腹が熱いの。まるで体の芯が熱した鉄にでもなったかのように」
--南の王国近辺の村--
ブラは、熱に浮かされたように喋り続けた。
ブラ「熱かった……熱かった熱かった熱かった。禁術だからか、それとも使い手の実力のせいなのかは知らないけれど、お腹の筋肉が引きつったかのように震えるの」
ツインテ「あ……」
ブラ「ナイフで背骨に名前を書かれるような苦痛。それと同時になぜか、快楽を感じてしまう」
ツインテ「……うぁ」
ブラ「一人につき10分くらいそれは続く。最初の方は歯を食いしばって耐えていたんだけど、そのうち筋肉が痙攣して力が入らなくなる……ふ……糞尿をもらして悶え苦しみ続けるの……」
ツインテ「ッ!」
ブラ「人としての尊厳を全て奪われた。憎かった。悔しかった。殺してやりたかった。でもそれ以上に死にたかった……。それからは……何日も感情も無く過ごした。何も食べずに死のうと思った。でもそれすら許されない。団員が毎日やって来て、私の口にパンを押し込んでいく。私は抵抗する力も無くしていた……」
ツインテ「……」
--南の王国近辺の村--
ブラ「そんな時に、メイドさんが来たの」
メイド『また一匹見つけたでございます。今日は大収穫でございます』
ブラ『……あ』
壁を壊して、月光と共に現われたメイドさんを天の使いと見間違えたわ、とブラ。
メイド『さぁ行くでございますよ女。闇の主の一部となる大役をお前にやるでございます』
ブラ(この人が、噂の吸血鬼……)
ツインテ「……それが」
ブラ「そう。ヤミ様やメイドさんや番犬さん、ちびメイドちゃんとの出会い」
--南の王国近辺の村--
ほーほー
ツインテ「……」
ブラ「……」
静寂。
ツインテ「……あ」
ブラ「……」
ツインテ「……な、なんで……そんな、過去の話を、ボクにしたんですか?」
ブラ「……私は、人間が嫌いです」
ツインテ「!?」
ツインテの問いかけを丸で聞いていないかのようにブラは呟いた。
ブラ「嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い!!あんなことがあって好きになれるはずなんてない!!みんな優しそうな顔をしても裏は真っ黒!!みんなして私を……!……だから私はヤミ様に……私を食べて欲しかったっ!!」
ブラは頭を抱えて声を荒げる。
--南の王国近辺の村--
ブラ「はーっ、はーっ」
ツインテ「ブラさん……」
ブラ「死にたかったのに!もう苦しいのは嫌だったのに!でもヤミ様は私を食べて下さらなかった!!食べるのは、私が……私が幸せになってからだって……」
ツインテ「……!」
ブラ「こんなに人間のことが嫌いなのに、人間側に立った言葉をヤミ様達に言ったわ、人を食べてはダメだって。人なんかどうだっていいのに、それでも無意識に人間の道徳心を重んじる自分が最高に憎たらしかった」
ツインテ「……」
ブラ「でも……こっちに移り住んで……みんなに料理を作って、みんなでご飯を食べて、みんなで一緒に寝るようになって……そんな家族ごっこをしているうちに……今の生活に幸せを感じはじめてしまった……」
ツインテ「……」
ブラ「そしてツインテちゃん達も一緒になって……この三ヶ月は、私の人生で最も楽しい時間でした……」
ツインテ「……」
ブラ「人間は嫌いです……でも全部が悪い人じゃない……そんなことはわかっています。でも今後貴方達の前に現れる人間の全てが、いい人である保障なんてない!」
--南の王国近辺の村--
ブラ「貴方達が強くなったからって夢が叶うとは限らない!夢は叶えられる人間のほうが少ないのだもの!」
ツインテ「……」
ブラ「誰かに騙されて夢も何もかも打ち砕かれてしまうより、今見たいな生活を続けることのほうが何倍もいいにきまっているんです!!」
ブラはツインテの方を向く。
ブラ「ツインテちゃん、ここでずっと暮らしましょう?」
ツインテ「え!?」
ブラ「外は……危険な世界です。いつまた私のような、いえそれ以上の目に合うかわからない!」
ツインテ「……ブラさん……」
ブラ「ここに……ずっといてください。こんな何も得られないような生活でさえ幸せなんだと、貴方達はまだ気付けないでしょう……。でも、魔王だなんて、勇者だなんて、そんなのは若い貴方たちが背負うものじゃない!きっと他の誰かがやってくれます!」
ブラはツインテの両手を握る。
ブラ「ッ……」
ブラは気付かれないようにとふるまっていたのだが、体温を感じない片方の手を再認識してしまい、涙がこぼれた。
ブラ「ふっ!」
ツインテ「……ブラさん」
ブラ「うっ……う」
ツインテ(もしかして……自分の辛い過去を明かしてまで……ボク達を引きとめようとしてくれていたの……?)
ボク達の身を案じて。
--南の王国近辺の村--
ブラ「ひっ……うぅ」
ぎち
ツインテ(確かにこの腕も……他人からしたら……そう思うのかもしれないよね)
せき止められなくなった涙がぼろぼろと落ちている。
ブラ「いくら強くなっても、きっと、淘汰されて、しまいます……一番強いのは、弱くも強くもない人間達なんですから」
ぽたっ、ぽたっ
ツインテ「……」
ぎゅっ
ツインテ「……ボクも、昔はそう考えていました」
ブラ「……え?」
ツインテ「誰よりも自信が無くて、誰よりも自身を信じられなくて。臆病で泣き虫で弱虫で。きっとボクがしなくても誰かがやってくれる。むしろボクなんかよりしっかりやってくれる。だから……ボクが旅に出なくてもいいんじゃないか、って。ずっと思っていました」
ブラ「……」
ツインテ「でも……何度折れそうになっても、みんなが支えてくれるんです。もうやめたいのにやめれない。最初の方は、いえ、最近までそれが辛かったんですけどね」
ブラ「ツインテ……ちゃん」
ツインテ「でも、段々それじゃダメなんだって思って来たんです。みんなが自分の出来ることをやろうと頑張っているのにボクだけしないわけにはいかないんです。だって……みんながボクに期待してくれるんです、それに答えないわけには……いかないじゃないですか」
ブラ「」
ツインテ「ブラさん、心配してくれてありがとうございます。でも、嫌なことを誰かに押しつけるのは間違ってますよ。そのしわ寄せは誰かを苦しめる……。それと今ボクはいやいやこの旅を続けているんじゃないんです」
ブラ「え」
ツインテ「ボクも一人の人間だったみたいで我が……でてきたようなんです。みんなを、この手で助けたい!!」
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった5【前半】
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酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった4
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