妹「くちゃくちゃくちゃ」
妹「くちゃくちゃくちゃくちゃ」
兄「……」
妹「今日これから雨降るんだって 」
妹「早めに帰ったほうがいいんじゃないの?」クチャクチャ
兄「……その、さ」
妹「なに?」クチャクチャ
兄「……飯食うときはきちんと口を閉じて食べろよ」
兄「お前、よく舌噛むしさ」
妹「……わかったから早く帰ってよ」クチャクチャ
兄「……そうだな。濡れるのイヤだし早めに帰るわ。 夜の病院ってこわいし」
兄「また明日、大学の帰りにこっち寄るわ」
妹「はいはい」クチャクチャ
兄「じゃあまた明日」
妹「はいはい、おやすみ」
◇
母「アンタもたまには早く帰ってきたら?」
母「毎回、面会時間ギリギリまで病院にいられるとむかいにいくのも億劫だからさ」
兄「あー、そうだね」
母「それで? あの子の様子はどう?」
兄「特に変わった様子もなんにもない。薬もきちんと飲んでるみたいだし」
母「……そう」
母「はあ……いつになったらもとに戻るのかな」
兄「知らん。それにまだ三ヶ月もたってないしな。気長に待つしかないよ」
母「わかってる。そんなことはわかってるの」
母「たださ、いいかげんにあの子の顔が見たいから……」
兄「いずれはもとに戻って母さんにも顔見せるだろ、たぶん」
母「まあたしかに。今の様子だとわたしとは会ってくれないよね……」
兄「……会いに行けば?」
母「こわいから遠慮する」
兄「冗談抜きで会わない? 」
兄「最近はアイツも落ち着いてきたし、もしかしたら……」
母「そりゃあわたしもあの子には会いたいよ」
母「でもわたしの顔見たらあの子の症状がまた悪化するかもしれないからさ」
兄「そっか」
母「まあ、あの子の病が完治したらまた会うよ」
兄「……」
母「明日は朝、早いんでしょ? アンタも早く寝なよ」
兄「うん……おやすみ」
母「おやすみ」
◇
妹『いやあ、兄ちゃんは最高にダメ人間だな』
兄『うるせー』
妹『将来社会に出たらどうすんだよ? 勉強もしないでそんなおバカ高校入っちゃってさ』
母『オマケにもと女子高で地元でも評判最悪だしね』
兄『いいんだっつーの。人間の価値は学校じゃないだろ?』
妹『まあそうかもね』
妹『でもそんな学校じゃあ、まともな大学も入れないかもしれないし、将来マジでどうすんの?』
兄『お前みたいな頭いいやつと違って将来のことなんざ考えてない』
妹『胸張って言うことじゃないわ』
妹『こりゃあ兄ちゃんの代わりにわたしがいい大学出て、立派な社会人になって家を支えてあげなきゃなあ』
兄『じゃあ俺はニートになるわ』
母『働かないやつは家から出てけ』
兄『いいじゃん。将来的にはこの立派な妹が稼いでくれるって言うんだから』
妹『少しはがんばれよ』
兄『はあ……どうせおバカな高校なんだからがんばったところで知れてるよ』
母『おバカなお兄ちゃんは置いとくとして、アンタは来週が高校受験だもんね』
妹『余裕で合格するからまかせておいてよ』
母『頼もしいねえ。どっかの誰かも見習ってほしいわ』
兄『ごっつぁんです。さて、寝ようっと』
妹『寝る前に勉強は?』
兄『睡眠学習だから大丈夫だよ』
妹『兄ちゃんのばーか』
◇
兄「……夢か」
友「講義終わったと同時に目ぇ覚ますのな」
兄「……家に帰るわ」
友「なにお前? 昼休みで帰るの?」
兄「おう」
友「お前、最近昼に帰ってばっかで午後の講義あんまり受けてねーじゃん」
兄「俺みたいな馬鹿にはこの大学の講義はつらすぎるんだよ」
友「ああ、お前は推薦でここに入ったんだもんな」
兄「まともに勉強したことないわりにいい大学入っちゃったから苦労してんだよ」
友「出席しないと余計についていけなくなるぞ」
兄「じゃあ明日から本気出すわ」
友「もう留年しちまえ」
兄「うるせー。っと、こんな時間じゃん。先に帰るわ。じゃあね」
友「おつかれ。明日もきちんと来いよ」
◇
兄「どうもこんにちわ、看護師さん」
看護師「こんにちは。今日も妹さんの様子見にきたの?」
兄「まあ、そんなところですわ。妹はどうですか?」
妹「特に変化はないよ」
兄「……そうですか」
看護師「たぶん、妹さんは寝てると思うけど、寝てたら起こさないほうがいいと思う」
兄「わかりました。ありがとうございます」
看護師「いえいえ」
兄「よっ。遊びに来たぞー」
妹「……」スースー
兄「って、看護師さんの言ったとおりだな。寝てらぁ」
兄「もうちょっと後に来たほうがよかったかな。今日は少し早めに来たのに」
妹「……」スースー
兄「ちょっと前だったらお前が昼間に寝てるなんてありえなかったよな」
兄「俺が休日の昼間とかから寝てるとお前、よく俺を叱ったよな」
兄「勉強しろだの、バイトしろだの。お前は母ちゃんかっつーの」
兄「他にもお前が中学生の頃、俺が勉強しなかったらわけのわからん教材を買ってきたりな」
兄「なんていうか、今でも信じられないんだよ。お前が……」
妹「その話まだ続くの?」
兄「……起きてたのか」
妹「さっきまで寝てたよ。でも兄ちゃんの声がでかいから目が覚めちゃったんだよ」
兄「ああ、その……ごめん」
妹「めずらしいね」
兄「なにが?」
妹「わたしに謝るなんて。いつもてきとうにはぐらかすじゃん」
兄「……たまには潔く謝るのもいいかな、と思って」
妹「ふうん」
兄「……」
妹「……」
兄「……」
妹「ねえ」
兄「なに?」
妹「わたし、死んだほうがいいかな?」
兄「……」
妹「正直さ、今のわたしってかなり迷惑だよね」
兄「そんなことは、ない」
妹「じゃあなんで?」
兄「……?」
妹「じゃあなんで昔の話ばかりしてたの? 」
兄「それは……たまには昔を振り返るのもいいかな……と思ったんだよ」
妹「ウソ。どうせ、今のわたしなんか死ねばいいと思ってるんでしょ? 」
妹「鬱病のわたしなんか……!」
兄「……」
妹「ぶっちゃけ前から兄ちゃんはわたしのことウザいって思ってたんでしょ?」
兄「……ごめん」
妹「意味わかんない。なんで謝んだよ。
そんなにわたしとしゃべるのが面倒なわけ?」
兄「ちがう、そういうわけじゃ……」
妹「そうだよね。どうせ、わたしなんてさっさと死ぬべきなんだよね」
妹「百人が百人みんなそう言う。そう言うに決まってる」
兄「……」
妹「なんでわたし生きてんだろ。入院なんかしちゃってさ 」
妹「やっぱり死んだほうがいいよね……」
妹「……」ブツブツ
兄「……なんか言ったか?」
妹「ニートなんてなったらダメだって思ってたし口にも出してたけど、だったら今のわたしもニートみたいなものだから……」ブツブツ
兄(またブツブツ言い出したか)
兄(鬱病になってからたまに、突然ブツブツ言い出すんだよな……)
妹「死ななきゃダメ……でもどうやったら死ねるんだろ……首吊り……」ブツブツ
兄「おい」
妹「……」ブツブツ
兄「……くそっ」
看護師「お昼ご飯、回収に来ましたよー」
看護師「もう下げちゃっていいかな?」
妹「……」コクリ
看護師「はい、じゃあ持ってくね」
兄「あ、あの看護師さん」
看護師「ん、どうしたの?」
兄「あー、その、ちょっと話したいことというかなんていうか、とにかくちょっといいですかね?」
看護師「まっ、べつにいいよ。そのかわりちょっとだけだよ?」
◇
看護師「それで? 話ってなにかな?」
兄「その……あとどれくらいたてば妹の病気はなくなるんですかね?」
看護師「早ければ半年もいらないよ」
看護師「長ければもっと時間かかるかなあ。それこそ一年とかね」
兄「そんなに……」
看護師「まあ鬱病もなにがきっかけで治るかとかは、いまだに完璧にはわからないしね」
兄「こころの病だからですか?」
看護師「ていうかわたしってばあんまり頭よくないからわからないの、難しいことはさ」
兄「それなのに看護師になれたんですか?」
看護師「めずらしいことでもないって」
看護師「こんな奴でも看護師になれるんだ、みたいな人間なんてたくさんいるから」
兄「へえ」
看護師「なに、その目は?」
兄「……いや、なんにもです」
看護師「まあ、こんなわたしにでもできるアドバイスもあるけどね」
兄「なんですか?」
看護師「とにかく普通に接してあげること」
兄「普通に?」
看護師「普段と同じように接してあげるの」
看護師「病人として扱われることは鬱病患者には辛いからね」
兄「……」
看護師「あと、もうひとつ」
兄「まだあるんですか?」
看護師「うん。もっと大事なこと」
看護師「昔の話は極力出さないようにすること」
兄「……そう、ですか」
看護師「妹さん、早く治るといいね。お金も月十万はくだらないでしょ?」
兄「えっと、詳しくは知らないですけど。それぐらいかかるんですかね?」
看護師「おそらくね。保険も半分も効かないしね、鬱病の場合」
兄「…………なんか看護師さんって絶対鬱病にならなさそうですね」
看護師「看護師なんて基本的にみんな図太いよ 」
看護師「わたしなんて患者が一番来る月曜に有給をとったりするから影でボロクソに言われてるよ」
兄「はあ」
看護師「ほかにもわたしの先輩なんか、この前患者を叱りたおして泣かせてたしね」
兄「看護師さんってこわいんですね」
看護師「まあね」
看護師「んじゃ、そろそろわたし戻るわ。うるさいのがいるし」
兄「あ、はい」
兄「……わざわざ話を聞いてくださって……その、ありがとうございます」
看護師「いいよいいよ。わたし人一倍仕事しないし」
看護師「あ、そうそう。わたしらからも言ってるけど、妹ちゃんに運動するのすすめといて」
看護師「朝の準備体操とか、散歩とかさ」
看護師「運動したほうが少しは病気にいいからさ」
兄「あ、はい」
看護師「それじゃあね」
◇
兄「おーい、戻ったぞ」
妹「……」ゴクリ
看護婦「はい、じゃあお昼の分は全部飲みましたね」
兄(べつの看護師さんだ。薬飲んでるのか)
看護師「じゃあ失礼します。また夜にうかがいますね」
妹「ん」
兄「……」ペコリ
看護師「こんにちは」ペコリ
兄「こんちわ」
◇
看護師『普段と同じように接してあげるの』
兄(普段と同じように、か)
兄「あのさ、薬ってうまいの?」
妹「知らない」
兄「ふうん。えっと……」
妹「なに?」
兄「たまには俺と一緒に運動しない? 」
兄「運動するとイヤなこと忘れられるし、いい汗もかけるし一石二鳥だぞ
兄「それにお前、運動好きだろ?」
妹「……めんどくさいからいい」
兄「……」
兄(そういえば……)
妹『たまには兄ちゃん運動したら? なんならわたし、つきあうし』
兄『イヤだ。めんどくさい』
妹『兄ちゃんって家にいるときってたいてい、ネットしてるかゲームしてるか、ゴロゴロしかしてないじゃん』
兄『俺は学校では生徒会長として働きまくってるから、家でくらいゆっくりしたいの』
妹『いつか豚になるよ?』
兄『もう半分なりかけてる。ほら、腹見てみろよ』
妹『うわ、ぷよぷよだ』
兄『とにかく俺は休日、家にいるときは寝るの』
妹『勉強は?』
兄『勉強なんてテスト前に適度にやっときゃいいんだよ』
妹『志がひくいなあ』
兄『お前みたいに頭のいい学校ってわけでもないし』
兄『学年でも時々トップテンに入ったりするわけじゃないからいいの』
妹『せめて運動ぐらいしなよ』
兄『お前みたいにマラソン大会でトップになったりしないからいいわ』
妹『このダメ人間』
兄『ははは、なんとでも言え』
兄(あんな話をしてたのに、今じゃ……)
兄「……なんかジャマみたいだな、俺」
妹「……うん」
兄「そんじゃ帰るわ」
妹「うん、早く帰って」
兄「……明日もまた来るわ」
妹「……」
◇
兄『ああ死にたい……』
妹『そう簡単に死にたいとか言わない。産んでくれたお母さんに失礼でしょ』
兄『だってぇ』
妹『なにがあったの?』
兄『いや、実は俺が高校の生徒会長になったんだよ』
妹『冗談でしょ?』
兄『マジだって。 ほら、表彰状と会長バッジ』
妹『……うわ、マジだ。どうやって会長なんかになったの? 』
妹『ていうか、生徒会なんかに立候補してたなんて言ってなかったよね?』
兄『まあな。なんかてきとうに一発芸したら当選しちゃったんだよ』
妹『あっそ』
兄『ああ、マジどうしよ。俺、会長なんて無理だよ』
妹『そもそもなんで会長に立候補したの?』
兄『クラスの奴らと昼休みに麻雀してたんだけどそれで負けてさ 』
兄『賭けしてたんだけど金払えなかったんだわ』
兄『そんで会長に立候補する代わりに賭け金チャラにしてもらったんだわ』
妹『学校で麻雀って……』
兄『ああ、死にたい』
妹『でもよかったじゃん』
兄『なにがだよ。なにもいいことねえよ』
妹『だって、生徒会とかに入っておくと大学の推薦とかに有利でしょ?』
兄『……俺の成績じゃあ知れてるよ』
妹『それだけじゃないよ。会長なんて立派なお仕事だし責任感も身につくかもよ?』
兄『……ときどき思うんだけどさ、お前って本当に俺の妹?』
妹『あはは、わたしもときどき同じこと思うよ?』
妹『まっ、応援してるからがんばりなよ』
兄『お前こそ、俺の代わりにいい大学入れよ』
妹『言われなくても入るってば』
◇
母「起きなくていいの?」
兄「……今何時?」
母「9時過ぎてる」
兄「ていうかなんで俺の部屋にいんの?」
母「べつに。ただアンタの卒業文集読みたかっただけ」
兄「ふうん。ていうか今日学校あるわけねえじゃん、日曜日だぞ」
母「そうだっけ。まあいいや」
母「今日もあの子のところに行くの?」
兄「うん。暇だしな」
母「前から気になってたんだけど、アンタ友達いないの?」
兄「いるけどあんまり仲良くないから休日までは会わない」
母「なんじゃそりゃ」
兄「……」
母「なに、わたしの顔そんなにジッと見て。金ならあげないよ」
兄「そうじゃなくてさ。たまには一緒に病院行かない? 」
母「……」
◇
兄「よっ。今日も暇なお兄ちゃんが遊びにきたぞ」
兄「……あれ? アイツいないじゃん」
兄「……」
兄(おかしいな。アイツ、病室から出るなんてまずないのに)
兄(便所か?)
兄(まあ、とりあえず待つか)
兄「もう15分はたったよな?」
兄「腹でも壊したか?」
兄「……いや、まさかな。電話してみるか」
プルルル
兄「!?」
兄「アイツ、ケータイ部屋に置いてきぼりかよ」
兄「ちょっと待て。真面目にどこ行っちまったんだよアイツ……!?」
兄「と、とりあえずナースコールを……」
兄「すみません、305号室のものですが、はい」
兄「妹はどこにいるか知りませんか? ……はい?」
◇
看護師「ほら、お兄ちゃん来たよ?」
妹「あっ、兄ちゃん」
兄「……」
妹「兄ちゃん、どうしたの? 顔色悪いよ?」
兄「心配したんだよ。外散歩するならメールのひとつやふたつ送れよ 」
妹「……ごめん」
兄「あ、いや、まあべつにいいんだ。無事だったんだし」
妹「……うん」
兄(いけね。勢いにまかせて怒ってしまった)
看護師「お兄ちゃんも来たし、そろそろ部屋に戻ろっか?」
妹「……はい」
看護師「あ、キミはあとからわたしのとこに来て。いつものとこでいいからさ」
兄「はあ……なんか用でもあるんですか?」
看護師「ちょっとね」
◇
兄「それでこんなとこに呼び出してなんですか? 」
兄「ていうか、僕も聞きたいことがあるんですよね」
看護師「先に話聞いてあげる。なに、聞きたいことって」
兄「看護師さんってうちの妹の担当じゃないですよね?」
兄「なのになんで妹を散歩に連れ出してたんですか?」
看護師「そのことか。そうだね。気になるところだよね、キミからしたら」
兄「昨日、看護師さんから聞いた話を思い出したらちょっと不安になったんで」
看護師「たしかにわたしはいいかげんな女だからね。その気持ちはわかるよ」
兄「……」
看護師「たまたまだよ。ちょっと野暮用があって妹ちゃんの部屋を通りかかったんだ」
看護師「で、様子見たら散歩に連れていってほしいって言うから」
兄「それで連れていったんですね」
看護師「うん」
看護師「少し心配なこともあったしね」
兄「心配なこと?」
看護師「これだよ」
兄「これって……」
看護師「ビタミン剤だね。一日二粒のやつ」
兄「べつに健康のためのものだからよくないですか? 」
兄「ていうか、これって妹から盗んだんですよね?」
看護師「当たり前でしょ。もし、その袋の中身を全部飲んだらどうなると思ってんの?」
兄「あ……」
看護師「キミの妹ちゃんはわりと高い頻度で死にたがってるみたいだからね」
兄「そういう薬はもたさないほうがいいよ」
兄「……はい」
>>48
ミス訂正。
兄「そういう薬はもたさないほうがいいよ」
↓
看護師「そういう薬はもたさないほうがいいよ」
看護師「で、わたしの聞きたいこと、聞いてもいい?」
兄「あの、その前にもうひとつ。いいですか?」
看護師「まだあるのー? なによ?」
兄「看護師さんってヒマなんですか?」
看護師「んー、まあ暇じゃないと言えば暇じゃないし、暇といえば暇かなあ」
兄「曖昧ですね。けど、僕としゃべってていいんですか?」
看護師「いいんだよ。基本的には暇だし」
看護師「暇じゃないっていうのは、べつの部署の手伝いをしてるからなんだわ」
看護師「MEがどっか行っちゃったらしいんだよ。それを探してくれって……」
兄「えむいー?」
看護師「メディカルエンジニアの略。まあ、そんなことはどうでもいいわ」
看護師「質問する前にひとつ」
看護師「イヤだったら答えなくていい。でも怒らないでね」
兄「ぼくが怒るような質問をするんですか、看護師さんは」
看護師「もしかしたら、ね」
兄「いいですよ。どうぞどうぞ、怒らないから質問してください」
看護師「なんか投げやりだね」
兄「最近、なんだか疲れてしまって」
兄「あー、でも僕って人と話すのはそんなにキライじゃないんです」
兄「あまり友達はいないんですけどね」
看護師「まあいいや。遠慮なく質問するから」
看護師「なんで妹ちゃんが鬱病になったか原因わかる?」
兄「……」
看護師「やっぱり聞かないほうがよかった?」
兄「というか、普通こういう質問をしますかね?」
看護師「まずしないね。普通の神経してたらね」
看護師「ただわたしってば、めちゃくちゃ神経図太いからさ」
兄「そういう問題じゃないと思います」
看護師「そうかもね」
看護師「それで、真面目な話。わかるの? わからないの?」
兄「……なんとなく」
看護師「なんとなく?」
兄「心当たりは……あります」
看護師「話してみてくれない?」
兄(この人は、いったいなにを考えて……)
兄「話してもいいですよ、べつに」
兄「大した話でもないし。でも、時間いいんですか?」
看護師「べつの部所の手伝いができるくらい暇だから大丈夫」
兄「給料泥棒」
看護師「あ?」
兄「なんにもです」
看護師「そんで、早く話してよ」
看護師「暇とは言っても、あんまり立ち話してると同僚の視線がイタいからさ」
兄「……」
兄「なんか身内自慢みたいになってイヤなんですけど、僕の妹、すごく優等生なんですよ」
看護師「へえ。確かに優等生っぽいかも」
兄「逆にこれは自虐になるんですけど、僕は全然勉強もできないし、部活もやらないグータラ野郎で」
看護師「うん、見た目からして覇気とかオーラとかがないよね」
兄「……まっ、兄である僕がこんなんだから親とか親戚も、妹ばかり褒めるんですよ」
看護師「はは、わたしも一個上の兄が優秀だからキミの気持ちはよくわかるよ」
兄「うれしくないです」
兄「妹はぼくとは対照的で、両親や親戚の期待にきっちり応えるタイプでして」
兄「実際、いい高校に通ってたし部活とかでも表彰されたりもしてたんです」
兄「ただ、あるときからちょっとずつ妹は変わってたんですよ 」
兄「悪い方向に」
看護師「なんで?」
兄「……ぼく高校二年の頃生徒会長やってたんですよ」
看護師「へえ、似合ってないね」
兄「……自覚はありますよ。先生や友達にもわりとボロクソに言われましたから」
看護師「まっ、面白いじゃん」
兄「僕、勉強はできなかったんですけど人一倍運がよかったんですよ」
看護師「百万円でも拾った?」
兄「百万円はむしろ捨てちゃいました」
兄「生徒会やったおかげで、かなりいい大学に入れたんですよ」
看護師「生徒会やってるといい大学に入れるの?」
兄「と言うよりは、本来なら受けることができなかった大学に推薦で受験できるようになったんです」
看護師「で、受けたら合格しちゃった、みたいな?」
兄「はい、そんなところです。私立なんですけどね」
看護師「どこの大学なの?」
兄「――です」
看護師「わおっ! めっちゃ頭いいところじゃん。」
看護師「馬鹿高校に通ってたわたしでも知ってるよ」
兄「実際、僕がそこに受かったって言ったらみんな卒倒しそうなぐらい驚いてましたよ」
兄「とにかく運がよすぎたんですよ」
兄「僕の担任は受験の神様って呼ばれてる人だったし」
兄「受けた学部はたまたまその年は受験者数も少なかったし」
看護師「ふうん。高校は?」
兄「――です」
看護師「わたしが通ってた高校じゃん!」
看護師「ていうか、あそこは女子校のはずなんだけど」
兄「七、八年前から共学になったんですよ」
兄「最近じゃあ少しはレベルも上がったみたいです」
看護師「あのおバカ宗教学校がねえ」
看護師「……それで、キミがいい大学受かったのと妹ちゃんの鬱病は関係あんの?」
兄「……僕が受かった大学、アイツが入りたがってた大学なんですよ」
看護師「キミの妹って何歳だっけ?」
兄「18です。僕とはふたつ違います」
看護師「妹ちゃんは本当なら今年から大学生だったんだね」
兄「ええ。だけどアイツは……」
看護師「大学、落ちちゃったんだ」
兄「はい。がんばりすぎて体調くずしちゃったんですよ」
看護師「本当に真面目なんだね」
看護師「それで鬱病に?」
兄「それだけが原因じゃないと思います」
兄「妹は女のくせに愚痴ったりするタイプじゃなくて溜め込むタイプだったし」
看護師「女のくせにって言い方は感心しないなあ」
兄「……ごめんなさい」
看護師「ほかには?」
兄「イロイロあると思います。うちの両親十年以上も前に離婚してて」
兄「ぼくらは母親に引き取られたんですけど、父親のくれる金だけでは足りなかったんです」
兄「それで昔はけっこう辛い生活でした」
兄「妹はなにかある度に、将来はいい仕事について金持ちになるって言ってて……」
看護師「なんか聞けば聞くほど重くなるね、話が」
兄「六年前に母が再婚してからは生活もラクになったんですけどね」
兄「でも、妹はそれで自分の目標や信念を失うような怠け者じゃありませんでした」
看護師「キミは……って聞くまでもないか」
兄「僕のことはどうでもいいんですよ」
看護師「はいはい、それでそれで?」
兄「……ぼくも詳しくは知らないけど妹はホテルのコンサルティングとやらの仕事を将来はしたいと言ってて」
看護師「へえ、わたしも詳しくは知らないけどプランナーみたいなもんでしょ?」
兄「おそらく」
兄「アイツ、一時期は留学もしてたんでそれも関係してるんだと思うんですけど」
看護師「聞けば聞くほど、キミの妹ちゃん、すごいね」
兄「自慢の妹ですよ」
看護師「ようするに原因はイロイロとあるわけね」
兄「僕がうっかりイイ大学に入ったせいで、妹に対する周囲の期待もより大きくなってましたしね」
兄「妹は今まで、きちんと周囲の期待に応えてきたら余計にプレッシャーを感じたんだと思います」
看護師「……妹ちゃんの周りの環境と妹ちゃん自身の相性が悪かったのかもね」
兄「どういう意味ですか?」
看護師「んー、そうだな。たとえばさ、キミはここの病院のことどう思う?」
兄「立派な病院だと思います」
看護師「そだね。少なくとも外装とか内装とかはちょっとしたホテルみたいだよね」
看護師「それじゃあ質問その2」
看護師「この病院に患者はいっぱいいると思う?」
兄「……あんまりいないと思います」
看護師「そう。実際ここに来る患者の数なんて大したことないんだよ」
看護師「やたらめったら広いわりにね。なんでだと思う?」
兄「わかりません」
看護師「答えはいい医者がこの市民病院にはいないからなんだよ」
兄「いい医者がいない?」
看護師「うん、全然いないよ」
看護師「それに毎年この病院のせいで市は30億ぐらいの借金を背負うらしいしね」
看護師「外装や内装ばかりで中身が全然しっかりしてないのにね」
兄「……」
看護師「借金ばかりだから医者や看護師の待遇も並のところより悪いし」
看護師「患者もあんまりいないから仕事が少ない」
看護師「それどころか本来の仕事すらできない人もいるし」
兄「本来の仕事?」
看護師「MEのこと、話したでしょ? アイツら本当は機械いじりが仕事なんだけどさ」
看護師「大して機械は使わないし、たいてい業者側がほとんどやっちゃうから仕事がないの」
兄「じゃあその、えむいーはなにやるんですか?」
看護師「中材で雑用。しかも安月給でね」
看護師「おかげでうちのMEはやる気ゼロで、毎日一回はどっかにサボりにいくんだ」
看護師「そんでわたしがソイツらを探しに行くわけだ」
看護師「最初に来たころはアイツら、めちゃくちゃ目ぇ輝かせてたのにね」
看護師「今じゃただの雑用。せっかく専門学校にまで通ったのに、おバカなことこの上ない」
兄「……」
看護師「そのMEも自分たちが働く環境をきちんと知ってりゃ、またちがったのにね」
兄「そう、かもしれませんね」
看護師「人間は周囲の環境や人で決まる」
看護師「キミの妹ちゃんの現状も、そういう周りの色んなものに左右された結果なのかもね」
看護師「……って、お話よ」
看護師「おっと、そろそろわたし行くわ」
兄「あ、はい。……がんばってください」
看護師「キミもさ」
兄「はい?」
看護師「あまり思い詰めないほうがいいよ」
看護師「鬱病の人の側にいると、側にいるその人までおかしくなることがあるから」
兄「……気をつけます」
看護師「んじゃ、また今度お話する機会があったらしようね。バイバイ」
兄「さよなら」
兄(周囲の環境。妹にとってそれは、母さんや……俺、か)
◇
兄『……』クチャクチャ
妹『……』モグモグ
兄『この肉じゃがうめーな』クチャクチャ
妹『ねえ、兄ちゃん』
兄『なんだよ? 肉はやらねえぞ』
妹『そうじゃなくて。くちゃくちゃうるさいってば』
兄『くちゃくちゃ?』
妹『うん』
妹『食べてるときに口をきちんと閉じて噛まないから、くちゃくちゃ言うんだよ』
兄『……』モグモグ
妹『……』
兄『あ、本当だ。口を閉じたら音しないな』
妹『でしょ?』
兄『でも、こんなの誰も気にしないだろ?』
妹『はあ~』
兄『なんだよ、その深いため息は?』
妹『兄ちゃんって彼女いたことないでしょ?』
兄『関係あるのか、それ?』
妹『女の子と遊んだことあるなら食べ姿とか普通気にするもん』
兄『そうなの?』
妹『そうなの』
妹『前から思ってて、あえて言わなかったけど。兄ちゃんは食べ姿が汚すぎるよ』
兄『う、うるせぇな。そこまで食べ姿なんて女の子は気にしないって』
妹『気にするよ! わたしは兄ちゃんの食べてる姿を見てると気分悪くなるもん』
兄『そこまで?』
妹『うん。とにかくものを食べるときは、もうちょっとキレイに食べてね』
兄『へいへい』
妹『返事は?』
兄『……はい』
◇
妹「……」クチャクチャ
兄「……モグモグ」
妹「……」クチャクチャ
兄「なあ、妹?」
妹「……なに?」
兄「その……」
兄(こんなこと注意するべきじゃないのかもしれないけど)
妹「なに? 言いたいことがあるならはっきり言ってよ」
兄「ご飯」
妹「ご飯?」
兄「ご飯食べるときは口をきちんと食べたほうがいいぞ」
兄「音もクチャクチャ鳴らないし」
妹「……」
妹「……っ」ドン
兄「ど、どうした……?」
妹「もうご飯なんていらない」
兄「……食べないのか?」
妹「いい。いらない。捨てて」
兄「……」
兄「……ごめん」
妹「……」
兄「病院の飯ってまずいよな? なにか買ってきてや……」
妹「いらないって言ってるでしょ」
兄「そ、そうか」
兄「それじゃあちょっと散歩でも行くか?」
妹「めんどくさい」
兄「……」
妹「もう寝るから」
兄「でもまだ全然食べてないだろ……看護師さんに叱られるぞ?」
妹「じゃあ代わりに食べてよ」
兄「そういう問題じゃないだろ」
妹「そうだね」
兄「……今日はもう帰るわ」
妹「……うん」
◇
妹『兄ちゃん、食べ物の好き嫌いよくないよ。』
妹『それに残したらお母さんに怒られるよ?』
兄『じゃあお前が代わりに食ってよ』
妹『そういう問題じゃないでしょ。なにより食べ物に失礼だよ』
兄『……』
妹『いいから食べなよ。兄ちゃんは背、ひくいんだし』
兄『うるさいしめんどくさい』
◇
兄「ただいま」
母「あれ、今日はえらい中途半端な時間に帰ってきたね」
母「ていうか、むかえの電話くれた?」
兄「ううん、歩いて帰ってきたよ」
母「歩いてって……かなりかかったでしょ?」
兄「2時間ぐらいだよ」
母「アホ。2時間も散歩するならバイトのひとつやふたつしてほしいね」
兄「ごめん」
母「明日は?」
兄「え?」
母「明日は病院行くの?」
兄「……いや、行かない」
母「ここ最近、かなり足しげく通ってたのに」
母「明日はなにか用事でもあるの?」
兄「べつに。
たまにはアイツもひとりになりたいんじゃないかなって思ってさ」
母「そう。まあ、いいんじゃない」
兄「……なあ、母さん」
母「なに?」
兄「俺が大学受かったとき、母さんはうれしかった?」
母「今さら聞くことでもないでしょ」
母「覚えてないの? お父さんと一緒にはしゃいでたの」
兄「そうだったね」
母「それがどうかしたの?」
兄「いや……」
兄「べつに。ただ聞きたかっただけなんだ」
母「変なの」
兄「変?」
母「普段、アンタからわたしに質問なんてほとんどないから。」
兄「……もうひとつ質問」
母「まだあるの?」
兄「うん」
母「なに?」
兄「アイツが大学落ちたってわかったとき……悲しかった?」
母「……」
兄「母さん?」
母「今から話すこと、あの子には言わないでほしいの」
兄「……」
母「正直に言うとね、あの子が大学落ちたってわかったとき悲しくなんてなかったの」
母「どっちかって言うとかわいそうだなって思った」
兄「かわいそう?」
母「だってあの子はずっと努力してきたんだよ」
兄「そうだな。俺がアイツの立場だったやる気なんて完璧になくしちまうわ」
兄「それでも最初は浪人するって言ってがんばろうとしてた。アイツはすげーわ」
母「ホントにね。神様はなんであんなにがんばってた妹を……」
兄「……」
母「っと、べつにアンタが悪いわけじゃないから、そこは勘違いしないでよ」
兄「わかってるよ」
母「まだご飯にはしばらくかかるから、その間勉強でもしたら?」
兄「そうだな。たまにはしようかな」
母「……あのさ」
兄「なに?」
母「なんか疲れてるように見えたから言っておくけど。アンタまで無茶して、その……」
兄「わかってるって。ていうか、大丈夫だよ」
兄「俺みたいないいかげんなグータラ男はさ」
母「……」
◇
友「今日はきちんと昼からの講義も出てるんだな」
兄「ていうか、お前が言うほどサボってないからな」
友「それよりお前、就活とかいいの? 周りはけっこうドタバタしてるぞ」
兄「……就活、か」
友「お前、ホントにそんなチョーシで大丈夫なの?」
兄「就きたい職業とかねえしなあ。お前だってべつにないだろ?」
友「はあ? バカにしてもらっちゃあ困るわ」
兄「あんの?」
友「いや、ない。やりたくない仕事ならけっこう浮かぶけど」
兄(……そういえば、アイツも夢について色々語ってたな)
◇
兄『パソコンでなにしてんの?』
妹『日本のことについて勉強してんの』
兄『日本のことなんて調べてどうすんだよ? 宿題?』
妹『……わたしさ、将来はコンセルジュになりたいんだ』
兄『なにそれ?』
妹『簡単に言うとホテルのプランナーかな。外国人向けのね』
兄『それが日本のこと調べんのと関係あんの?』
妹『外国の人に日本のこと聞かれたときとかきっちり答えれるようにしたいし』
妹『その地域の特色を知っておくことは、この仕事において大事なことなの』
兄『よくわかんねーけどすげーな、お前』
妹『まあね。兄ちゃんは夢とかないの?』
兄『ないな。全然ない。ニートになれるなら是非なりたいわ』
妹『ニートになるなら家から出てってね』
兄『お前が養ってくれなきゃニートできねえよ』
妹『妹に依存するとか終わってる』
兄『まあ俺の分までがんばれってくれ。心の片隅で応援してるから』
妹『兄ちゃんは人のことより自分のことでしょ』
兄『吹き抜けの2階建ての一軒家が欲しい』
妹『仕事につかなきゃローン組めないからね』
兄『じゃああきらめるわ』
妹『情けないなあ。そんなんじゃあ大学も受からないよ』
兄『べつに、地元のおバカ大学行くからいいよ』
妹『ダメだこりゃ』
◇
兄(今日は行かないつもりだったんだけどな)
兄(気づいたらまたここに来てしまった)
看護師「毎日毎日、ご苦労だねえ」
兄「どうも。ちょうど夜ご飯終了の時間ですか?」
看護師「うん。ちなみにキミの妹ちゃんなんだけどさ」
兄「妹がどうかしましたか?」
看護師「あの子、昨日の夜からご飯に手をつけてないんだよ」
兄「……!」
看護師「なに、なんか心当たりでもあるの?」
兄「いえ……」
看護師「まっ、鬱病になって食欲がなくなるのはめずらしいことじゃない」
看護師「それから一つ忠告しておくわ」
男「なんですか?」
看護師「わたしが言うのもなんだけど、うちの病院はいいかげんだから気をつけたほうがいいよ」
看護師「半年前にも手首の骨を折った患者の対応が悪くて、手首が半分しか動かなくなった人もいるし」
兄「それ、裁判ざたなんじゃ?」
看護師「まあね」
看護師「その患者さんは訴えたりしなかったから、表立って問題にはなってないんだけど」
兄「……」
看護師「とにかく、妹さんのことは極力気にかけたほうがいいよ」
兄「わかりました」
◇
兄『やあやあお二方。いい話があるんだけど聞いてくれない?』
妹『気持ち悪いぐらいニヤニヤしてるね』
母『百万円でも拾った?』
兄『ちがうんだなあ。ある意味それよりすげえことが起きたんだよ』
妹『百万円拾うよりすごいことなんてあるの?』
兄『それがあるんだって』
兄『なんと、大学受かっちゃいました!』
母『マジで?』
妹『ウソでしょ?』
兄『ウソじゃない。これを見てみろ』
母『……ほ、ホントに合格してる!』
妹『に、兄ちゃんがわたしの目標にしてる大学に合格した……!』
母『超バカでグータラのアンタがこんな有名大学に合格するなんて……!』
兄『信じられないよなあ?』
妹『……うん』
母『……』カチカチ
兄『なにしてんだよ、母さん』
母『お父さんにアンタが受かったってメールしてんの』
母『メール見て仕事中にたおれたりしてね』
兄『うはは、明日学校の奴らにも自慢してやらなきゃな』
母『今日はご飯、いつもよりがんばって作っちゃおうかな』
妹『……』
妹『わたしも兄ちゃんに負けないようにがんばらなきゃな』ボソッ
兄『どした? お前も俺をもっと敬え、讃えろ、褒めちぎれ』
妹『調子のりすぎだし。……まあ、今日ぐらいはいっか』
妹『兄ちゃん、大学合格おめでとう!』
◇
兄『大学に落ちた? アイツが?』
母『……うん。まさか落ちるなんて思ってなかったからわたしもビックリしちゃって』
母『あの子、相当ショック受けてるみたいだから』
母『部屋から出てきたら励ましてあげて』
兄『……わかったよ』
妹『誰がショック受けてるって?』
兄『うわっ!? いつのまにいたんだよ?』
妹『大げさだなあ。前期は落ちちゃったけど、まだ後期だってあるんだよ?』
兄『それもそうだな。お前なら今度こそ余裕で受かるだろ』
母『まあ、どっかの誰かと違っていつもがんばってるからね』
兄『うるせえなあ』
妹『まかせなさいって。それに……』
兄『ん?』
妹『……後期が落ちたとしても浪人すれば……』
兄『え?』
妹『なんにも』
妹『さてと! こんなとこで兄ちゃんとダベってないで勉強しなきゃね』
兄『おう。がんばれよ』
◇
兄(でも、アイツは結局大学には落ちてしまった)
兄(そして一ヶ月も経つころにはおかしくなった)
兄(大学に落ちたからアイツはおかしくなった……?)
兄(いや、きっとそれだけじゃないんだろうな)
兄「おーい、入るぞー」
兄(あれ? 誰かいる?)
兄「……え?」
母「……」
兄「母さん?」
母「今日は来ないんじゃなかったの?」
兄「いや、その、ヒマでヒマで……来ちゃった」
母「そう。じゃあアンタが来たんならわたしは帰るよ」
兄「……そうか」
母「じゃあね。アンタもあんまり帰り時間が遅くならないように」
兄「……うん」
◇
兄「……」モジモジ
妹「……」
兄「……昨日は……その、ごめん」
妹「……」
兄「昨日のことはお前がわざわざ気にすることじゃないから。忘れてくれよ、な?」
妹「ねえ」
兄「……なんだ?」
妹「お母さん呼んだの、兄ちゃん?」
兄「……いや。母さんが勝手に来ただけだろ」
妹「……ふうん」
兄「母さんとなにか話した?」
妹「……」
兄「なにもしゃべってないのか?」
妹「……うん」
兄「そ、そういえばお前、ご飯食べてないんだって?」
妹「……」
兄「べつに怒ってるわけじゃないんだ。ただ、お前のことが心配で」
妹「ごめんなさい」
兄「謝んなくていいよ。だからご飯だけはしっかり食べてくれ」
兄「ちゃんと栄養とらないと元気になれないぞ?」
兄「そうだ、今からお前の好物でも買ってきてやろうか? ほら、あの……」
妹「食べたくない」
兄「どうしてだよ?」
妹「だって……クチャクチャ言って兄ちゃんを不快にさせるから」
兄(……! やっぱり俺の言葉を気にしてたのか……)
兄「……昨日はちょっと気分が悪かったんだよ。それでつい」
兄「普段の俺は、あんなこと全然気にしないよ」
妹「気分が悪かったのはなんで?」
兄「べつに理由なんかはない」
妹「わたしのせいでしょ?」
妹「わたしが兄ちゃんの気分を悪くさせるんでしょ? そうなんでしょ?」
兄「ちがう。そんなことはない」
妹「ウソだっ!」
妹「ホントはわたしのお見舞いだってイヤでイヤで仕方ないんでしょ!?」
兄「……めんどくさかったらお見舞いなんかしねえよ!」
妹「……!」ビクッ
兄「あっ……」
兄「ご、ごめん。ちがうんだ。怒鳴るつもりなんてなかったんだ」
妹「……うぅ……っ……」
兄「……」
妹「わたしなんて……わたしなんていないほうがいいんだ……」
兄「そんなことないだろ」
兄「今日だって母さんはお前のこと心配して見舞いに来たんだ」
妹「……」
兄「お前に早く元気になってほしいって、ずっとそう思ってんだよ」
兄「俺も、お前に早く元気になってほしい……」
妹「……どうして?」
兄「え?」
妹「どうして、お母さんはわたしを叱らなかったの……?」
兄「……?」
妹「わたし、お母さんの期待を裏切っちゃったんだよ……? 」
妹「なのに……なんでわたしを怒らなかったの?」
妹「わたし、受験落ちちゃったのに……!」
妹「お母さんたちの期待を裏切ったのに。普通なら怒るでしょ?」
兄「それは……」
妹「意味わかんないよ……。わかんないんだよ……」
兄「……怒らなかったのは、母さんや父さんはお前が人一倍努力してたのを知ってたからだよ」
妹「……ちがうよ。どうせそんな理由なんかじゃない」
兄「ほかにどんな理由があるんだよ?」
妹「兄ちゃんがわたしの志望大学に受かったから……」
兄「……」
妹「だから。だから、わたしのことなんてどうでもよくなったんだよ……」
兄「そんなわけないって。そんなことでお前のことを……」
妹「……だから、じゃあ、なんで、わたしを……わたしを叱らなかったの!? 」
妹「失望したんでしょ!?」
妹「自分の目標も達成できない娘なんかどうでもよくなったんでしょ!?」
兄「そんなわけっ……!」
妹「……イヤだよぉ……もうわけわかんないよ……ツライんだよぉ……」
兄「……」
妹「生きてると……起きてると……ツライんだよぉ……」
兄「……」
◇
医者「これでしばらくは大丈夫だと思います」
兄「……ありがとうございます」
医者「薬の効果で妹さんは眠ってますが、意識を取り戻したら万が一のこともあります」
医者「一応看護師に見させておきます。ですから今日は帰っていただけますか?」
兄「……はい。ホントにすみませんでした」
兄(結局、あのあと自暴自棄になって暴れだしたアイツをおさえることが俺にはできなかった)
兄(医者を呼んで、なんとか妹を落ち着けることができた)
◇
兄「ただいま」
母「おかえり」
兄「今日飯はいいわ。風呂入ってさっさと寝たい」
母「……さっき、病院から連絡があったよ。しばらく妹には会えないって」
兄「……ごめん」
母「アンタまで謝んないでよ」
兄「……」
母「あのさ、アンタには話さなかったことなんだけどね」
母「あの子が受験に落ちたときの夜のこと」
母「あの子、わたしの部屋まで来て、急に泣き出してね」
兄「……」
母「『受からなくてごめんなさい』って泣きながらずっと謝ってきたの」
兄「……母さんはどうしたの?」
母「なにもできなかった」
母「あの子の頭を撫でることしか、わたしには」
兄「それは……仕方ないだろ。ほかになにができたんだよ」
兄「大学に受からなかったからって叱るのかよ」
母「でも、あの子は下手な慰めの言葉なんかよりそっちを望んでいたのかもね」
兄「……」
母「わたしは受験に受からなかったからって叱るのは間違いだと思う」
母「でも慰める以外にも、もっとなにかできたんじゃないかって……最近になって思うの」
母「それに……」
兄「?」
母「わたし、アンタが志望校に受かった時点で大学受験のことなんてどうでもよくなってたのかも」
兄「それはどういう……」
母「ごめん。これ以上は言いたくない」
兄「……そうか」
母「ただ、賢いあの子はわたしがなにを思っていたのか、わかっていたのかもね」
兄「……」
母「わたしもご飯食べたら早く寝る」
母「今日はなんにもしてないのに疲れちゃった」
兄「……」
◇
妹『へへ、兄ちゃんこれ見て!』
兄『なにその賞状? 皆勤賞かなんか?』
妹『残念ながら今年はインフルエンザにかかったから皆勤賞はとれてないんだなあ』
兄『じゃあなんだよ、その賞状』
妹『英検二級合格の賞状だよ』
妹『たしか兄ちゃんもこの前、受けてたよね?』
兄『俺は一次試験すら受かってないけど』
兄『ん? お前って今何年生だっけ?』
妹『妹の学年ぐらい知っておいてよ。 ピチピチの高校一年生だよ』
兄『高3の俺が取れなかった英検を……』
妹『ちなみに一発合格です』
兄『そ、それくらいで自慢するな』
兄『世の中には八歳で英検二級に合格する子供だっているんだぞ』
妹『そんなすごい人と比べられても』
妹『ていうか、兄ちゃんが威張ることじゃないでしょ?』
兄『……なんかお前ってさ』
妹『うん』
兄『挫折とか知らなさそうだよなあ』
妹『んー、確かに諦めたことはないかも』
兄『おかしいなあ。俺はささいなことでもしょっちゅう蹴つまずくのになあ』
兄『いいところは全部お前に持ってかれたか?』
妹『あははは、かもねー』
◇
看護師「……で、なんでキミは来るなって言われたのに、また病院に来たのかなあ?」
兄(たしかに言われた。でもまた来てしまった、病院に)
看護師「妹ちゃんが大好きなのはわかるけどさ」
看護師「キミの妹ちゃんは誰とも会いたくないって言ってるし」
看護師「あの子の担当医師も、なるべく人との関わりを減らしたほうがいいと申されたよ」
兄「看護師さん、妙にうちの妹について詳しいですね」
看護師「昨日の事件はあっという間に病院中に広まったんだよ」
兄「……さいですか」
看護師「とにかく、キミは妹ちゃんとは会えないから帰ったら?」
兄「……看護師さんはもう帰るんですか?」
看護師「今日は早番だったの。おわかり?」
看護師「まっ、わたしは定時と同時に堂々と帰るからね。残業なんてゴメンだし」
兄「なんか看護師さんって図太いですよね」
看護師「よく言われるし自分でもそう思う」
兄「看護師さんは一生鬱病とは縁がなさそうですね」
看護師「どうかな。わたしもあるとき急になってるかもよ?」
兄「想像したくないですね」
看護師「わたしも。鬱病になった自分なんて想像したくないよ」
兄「……」
看護師「まあわたしからすれば、キミこそ鬱病とかにならなさそうだけどね」
兄「……そうですか?」
看護師「うん。なんていうか、最初から色々と諦めてる、みたいな? 」
看護師「なんつうか、ギラギラしたものを感じないんだよね」
兄「僕、自分で言うのもなんですけどたしかにがっついたりはしないですね」
看護師「キミ、彼女いないでしょ?」
兄「い、いますよ」
看護師「いないね。いたらわたしの今月の給料全額あげる」
兄「……いません」
看護師「ほらね。がっつかない」
兄「……そうみたいですね」
看護師「鬱病になる人って目標があったり意思の強い人のほうが多いわけ」
兄「……なるほど」
看護師「キミの妹さんも目的や目標のあるタイプの人間だったみたいだねえ」
兄「ええ。アイツはいつでも目標に向かってがむしゃらにがんばってましたよ」
看護師「だから派手に転んで、そのまま病気になったわけだ」
兄「……」
看護師「目標や夢がないキミやわたしみたいな人間は、本当の意味での挫折がほとんどないからね」
兄「……そうですね」
兄「ぼくは仕事場でけちょんけちょんにされて憂鬱になっても、夢に挫折して鬱病になったりはしないでしょうね」
看護師「……わたしもさ、昔はすごい漠然としてたけど、夢があったんだよ」
兄「なんですか?」
看護師「ナイチンゲールみたいな看護師になりたかったんだよ」
兄「漠然というか、てきとうですね」
看護師「ははっ、わたしの性格をそのまま表したかのような夢だよね」
兄「でも、ナイチンゲールの部分を除けば夢は叶ってるじゃないですか」
看護師「看護師になるなんて車の免許とるのと大差ないよ」
兄「そんなことはないでしょ」
看護師「バカ看護師、略して『バカンゴシ』って言われてるわたしが言うんだ、間違いない」
兄「でも、きちんと働いてるだけでもすごいと思いますよ」
兄「僕なんて就活すらまともにしてないし」
看護師「ヤバくない、それ?」
兄「はい。このままだとニートかフリーターかの二択です」
看護師「なんなら今から専門行って看護師目指したら? 」
看護師「看護師は需要あっていいよ」
看護師「あ、ただし勤務先だけはめちゃくちゃ吟味したほうがいいよ」
兄「妹が5歳ぐらいの頃は『看護婦さんになる』とか言ってたなあ」
看護師「看護婦とか懐かしい響きだね」
兄「ぼくは看護婦って響きのが好きですけどね」
看護師「前から気になってたんだけど、キミってシスコンなの?」
兄「なんでぼくがシスコンなんすか?」
看護師「だってねえ?」
兄「心外ですよ。ぼくはただ……」
看護師「ただ?」
兄「……すみません」
兄「それっぽいことを言おうと思いましたけど、言葉が浮かばないんでやめます」
看護師「やっぱりシスコンなんじゃん」
兄「いや、だから……」
看護師「昼すぎにはここにいること多いし」
看護師「それとも大学の授業って昼からはないとか?」
兄「そういう場合もあります。ありますけど」
看護師「基本的にはサボってるんでしょ」
兄「なんて言えばいいんだろ。僕にとってアイツっていうのは……」
看護師「恋愛対象?」
兄「人が真剣に話そうとしてるんだから茶々を入れないでくださいよ」
看護師「ごめんごめん。続けて」
兄「だから、アイツはぼくにとって……光みたいなもの……なのかな?」
看護師「光?」
兄「ぼくが見てきたアイツは、なんていうか……生き様がカッコイイっていうか……」
看護師「……」
兄「そう、ずっと見守っていきたい。そんなヤツなんですよ」
看護師「でもキミの妹さんは」
兄「はい。今のアイツは以前の面影すらありません。 だから……」
看護師「なんでそこで間を置くんだよ」
兄「あ、いや、ちょっと言うのが恥ずかしくなってしまいまして」
看護師「言え。先が気になって気分が悪い」
兄「……だからアイツの笑顔を、取り戻したい、みたいな?」
看護師「……そっか」
兄「自分勝手な考えだとは思います」
兄「結果的にアイツを苦しめることになっちゃいましたし」
看護師「いいんじゃない?」
看護師「キミの行為じたいは褒められるもんじゃないけど」
看護師「キミの妹ちゃんに対する思いは、たぶん本物だと思うんだ」
兄「……ありがとうございます」
看護師「でも、キミの妹ちゃんには色々つらかったんだろうね」
看護師「キミの思いが重かったんだろうね」
兄「どういうことですか?」
看護師「……わたしさ、高校の頃、好きな男子がいたの」
兄「はい?」
看護師「まあ聞けって」
看護師「わたしの惚れた人、超イケメンだったからわたしは近づけなかったの」
看護師「そしたら友達がわたしのために、やらかしちゃってくれてさ」
兄「友達はなにをしたんです?」
看護師「わたしの寝てるときの写真をそのイケメンに送りつけやがったの」
兄「あらら」
看護師「そりゃ、もうわたしは暴れたね。送った写真は一番ブサイクな寝顔だったし」
看護師「友達は絶対にいい、とか言い出したけどありえないってね」
兄「……」
看護師「たぶんキミが見舞いに来てなにかを言うたびに、妹ちゃんはすごいストレスを感じてんじゃない?」
兄「なんで?」
看護師「一番見られたくないところを見せなきゃならないのは、誰だってつらいだろ?」
兄「……」
看護師「まっ、もっとうちの医者がしっかりしてりゃあまた、ちがったのかもね」
兄「……」
看護師「とりあえず、しばらくは妹ちゃんをひとりにしてあげたほうがいい」
兄「ぼくにできることはなにかないんでしょうか?」
看護師「見守ることじゃないの?」
兄「それしかできないんですかね?」
看護師「できないんじゃない?」
兄「くやしいですね」
看護師「仕方ないよ。こういう病気は自分とのたたかいだからね」
兄「……」
看護師「下手に励ましたり慰めたりするのもよくないし」
兄「テレビで見たことあります」
兄「励まされたりすると、その反動でかえって病気が悪化するらしいですね」
看護師「不思議なことにね」
看護師「病気の最中はポジティブなものがネガティブなものに変わっちゃうらしいね」
看護師「とりあえずさ、今日は帰ったら? やれることなんてないし」
兄「そう、ですよね」
看護師「できることと言えば、あとは考えることだね」
兄「なにをですか?」
看護師「自分になにができるか」
兄「なにができるんですか、今の僕に……」
看護師「自分で考えなよ。それはわたしが考えることじゃない」
兄「……」
◇
兄「ただいま」
母「どこに行ってたの?」
兄「どこでもいいだろ」
母「まさか、また病院に行ったの?」
兄「……」
母「はあ……アンタ、しばらくは会えないって言われたでしょ?」
兄「会えなかったよ」
母「あの子のことも大事だけど、自分のことはいいの?」
兄「どういう意味だよ?」
母「アンタの同級生の子……名前忘れたけど……もう就活してるらしいじゃない」
母「わたしは大学行ってないから詳しいことは知らないけど、アンタも就活しないとまずいんじゃないの?」
兄「そうだね」
母「そうだね、じゃないでしょ」
母「アンタはいつも行動が遅いんだから」
兄「いつも行動が遅い、か」
兄(同じこと言われたな、アイツからも)
◇
妹『兄ちゃん、今度旅行に行くんだってね』
兄『明日からな』
妹『明日!? まだなんにも準備してないじゃん』
兄『明日から旅行なんだから明日の朝、用意すりゃいいだろ?』
妹『ダメだよ。旅行の準備は早めにしとかないと』
兄『なんでだよ?』
妹『もし足りないものがあったら直前じゃ、買うこともできないでしょ?』
兄『ふーん』
妹『兄ちゃんは行動がとにかく遅すぎるんだよ』
妹『友達にもどんくさいって普段から言われてるんじゃない?』
兄『よくわかってるな』
妹『兄ちゃんのことならなんでもわかるよ』
兄『キモいこと言うな』
妹『もしかして照れてる?』
兄『お前相手に照れるとかないわ』
妹『はいはい。さっさと旅行の準備しなよ』
兄『ていうか、お前は俺のことわかるかもしれないけど、俺はお前のことなんて全然わかんねーからな』
妹『兄ちゃんはニブいもんね』
兄『なんとでも言え』
◇
兄(そうだ。俺は結局アイツのことなんてなにひとつわかってなかったんだ)
兄(アイツは一生挫折なんてしないと思ってた)
兄(そうだと思ってなんにも考えなかった)
母「アンタも自分のことをがんばりなさい」
母「あの子のことはわたしたちがなんとかするから……」
兄「……母さん。俺からひとつ提案があるんだ」
兄「というか、お願いなんだけど……」
母「……なに?」
◇
看護師「これはこれは。久しぶりじゃない?」
兄「久しぶりって言っても、一週間ぶりぐらいですけどね」
看護師「ほとんど毎日来てた人の顔を一週間も見なかったら、久しぶりって感じるもんよ」
兄「そんなものですかね」
看護師「そんなもんだよ」
兄「それで……アイツは?」
看護師「あんまり変化はないね。相変わらずあんまり食べないし」
兄「……」
看護師「でさ、また会うの?」
兄「……」
看護師「鬱病はなにかがきっかけで急によくなったりすることなんてまずない」
看護師「時間をかけてゆっくりと治していくしかない」
兄「わかってるつもりです」
看護師「わたしから言われることじゃないよね、今さら」
兄「……」
看護師「まっ、あの子もキミと会ってもいいって言ってくれたら面会はオッケー」
看護師「でも、言動にはマジで気をつけたほうがいいからね」
兄「はい」
看護師「まあ、どちらにしてもこれでキミとはもう会わなくなるだろうね」
兄「寂しいですね」
看護師「またまた冗談を」
兄「僕、友達少ないんですよ」
看護師「わたしもキミにお友達としてカウントされてるの?」
兄「看護師さんみたいに優しい人が友達だったら僕、知り合い全員に自慢しますよ」
看護師「わたしって優しいんだ?」
兄「なんだかんだ、看護師さんのおかげで今回の決断にも踏み切ることができましたから」
看護師「……あっそ。じゃあ、後悔しないようにがんばんなよ」
兄「はい!」
◇
兄「よっ」
妹「……久しぶり」
兄「お医者さんから話は聞いてるよな?」
妹「うん」
兄「来週から病院を移る。お前はなんにも心配しなくていいよ」
妹「……兄ちゃん」
兄「……なに?」
妹「どうして兄ちゃんはこんなにわたしのためにがんばってくれてるの?」
兄「ぶっちゃけわからん」
妹「……」
兄「それにひとつ言うなら、俺はお前のお見舞いに来てるだけだよ」
兄「顔見てしゃべって帰ってるだけ」
兄「病院の費用は母さんとオヤジが出してるし」
妹「……うん」
兄「ああ、そうそう。これ、パッセルのプリン」
兄「お前、好きだろ?」
妹「……」
兄「あのさ。俺とお前って特別仲いい兄妹ってわけじゃなかったよな」
妹「……うん。ケンカとかはあまりしなかったけどね」
兄「いつもお前が一方的に怒ってるだけだしな」
妹「そうだっけ?」
兄「そうだよ」
妹「そっか」
兄「……俺、たぶん、お前に憧れてたんだよ」
妹「……」
兄「お前を見て、いつもすげーなって思ってたんだ」
妹「……そうかもね。兄ちゃんとちがってわたしってば基本、なんでもできたしね」
兄「俺のが兄ちゃんなのにな」
妹「でも、大学は兄ちゃんが受かった」
兄「……」
妹「わたしは……落ちちゃった」
兄「それが俺の唯一自慢できることだよ」
妹「……ダサいね」
兄「まあな」
兄「俺、前からお前に頼みたいことがあったんだ」
妹「今のわたしにできることなんてなにもないよ……」
兄「今から頼むことはお前にしかできないことだよ」
妹「……」
兄「もっとさ、お前の思ってることを話してよ」
兄「お前って人のことばかりで、本当に大事な自分のことを話さないんだからさ」
妹「……ごめん」
兄「謝るなっつーの」
妹「……」
兄「これ、いつも俺が思ってることなんだけど」
兄「案外、人が人に求めてるもんなんてそう多くないと思うんだ」
妹「……どういうこと?」
兄「お前、前に言ってたよな?」
兄「母さんや親父の期待を裏切っちゃったって」
兄「でも実際はそんなことねえと思うんだ」
妹「……もとから期待してなかったってこと?」
兄「ちがう。……お前、俺になんか期待したことあるか?」
妹「……あんまり」
兄「だろ? 同じだよ」
兄「母さんやオヤジはそんなに多くのこと、お前に望んじゃいないよ」
妹「……じゃあ、なにをわたしに?」
兄「元気で毎日すごしてくれることだと思う」
妹「わたし、それすらできてないよ……」
兄「今はな。でも、お前が受験に落ちたとき、母さんはお前を攻めなかった」
妹「それは……」
兄「お前は、母さんがお前に失望したからだと言ったけど、母さんは心配だったんだよ」
兄「お前のことが。心の底から」
妹「……」
兄「受験の前に無理して、お前ってば風邪ひいたろ」
兄「あんとき、母さんずっとお前の体調のこと心配してたんだ」
兄「俺が試験の心配しろよって言ったら、キレたんだぞ」
妹「……お母さん……」
兄「だから、さ……っ……」
妹「兄ちゃん……?」
兄「俺……その……っ、うぅ……」
妹「兄ちゃん? なんで泣いてるの?」
兄「わかんねえよ。ただ、俺、お前とまた一緒に飯が食べたいんだよ……」
妹「兄ちゃん……」
◇
妹『ゲホッゲホッ!』
母『ホントに大丈夫? あんまり体調が悪いようなら……』
妹『大丈夫だよ。ちょっと熱があるくらいだから』
兄『ちょっとって……38度も熱あったんだろ?』
妹『試験が終わったらきちんと安静にするから』
母『無理はしないでね。もしなにかあったら電話して』
妹『お母さん、今日は仕事でしょ?』
母『アンタのことが心配で手につかないだろうから休んだの』
妹『心配性だなあ……ゲホッゲホッ……』
母『アンタのことが心配なの』
妹『大丈夫だよ、お母さん。わたし、本番に強いからさ』
母『そういう問題じゃないんだけど』
兄『てか、早く家を出なくていいのか?』
妹『本当だ! じゃあ行ってきます』
母『試験がんばってね』
母『でも無理はしないでよ!』
妹『はい! 行ってきます!』
◇
妹「……兄ちゃん……お母さん……お父さん……」
妹「わたし……どうしたらいいか……わからないよぉ」
妹「苦しいよ……意味わかんないよぉ」
妹「こんな……こんな気持ちやだよぉ」
妹「生きてるとずっと……ずっとこんな気持ちのままなの……?」
妹「うぅぅ……死にたい……」
妹「こんなのなら死んだほうが……マシ……」
妹「ごめんなさい……兄ちゃん……もうイヤなんだよぉ……」
妹「迷惑かけてごめんなさい……」
妹「心配かけてごめんなさい……」
妹「死ぬから……死ぬから許して……」
妹(どこか……どこからか……飛び降りれば……どこかで……)
妹「……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
母『試験がんばってね』
母『でも無理はしないでよ!』
妹「お母さん」
兄『俺、お前とまた一緒に飯が食べたいんだよ……』
妹「……兄ちゃん」
妹「わたし……まだ……生きてたいよぉ……」
看護師「どうしたんですか!? 大丈夫ですか!?」
妹「……」
看護師「しっかりしてください!」
妹「……です」
看護師「……?」
妹「……大丈夫、です」
妹「わたしは、まだがんばります」
◇二年後
看護師「あれ? なんか顔つき変わった?」
兄「いや、まず僕の顔の前に久しぶりとかあいさつが先でしょ?」
看護師「はは、久しぶりだね」
兄「お久しぶりです。今日は、わざわざありがとうございます」
看護師「ホントにせっかくの休日なのにねえ」
看護師「でもまあ、そろそろ会いたいと思ってたしべつに構わないよ」
兄「どうも」
看護師「で、妹ちゃんはどうなったの?」
兄「……」
兄「その、なんですか……」
看護師「早く言えっつーの」
兄「すみません」
看護師「こんなことをもったいぶってどうするんだよ」
兄「まあ結論から言うなら……」
兄「無事に鬱病は治りましたよ」
看護師「……よかった」
兄「看護師さんが紹介してくれた病院で、一年間すごしてアイツは無事退院しました」
看護師「安心したよ。正直に言うと少し、不安だったんだ」
兄「不安だったんですか?」
看護師「わたしがすすめた病院でキミの妹ちゃんに万が一のことがあったら……って考えたらさ」
兄「まあ、イロイロあっちの病院に行ってからもありましたけどね」
看護師「そりゃあそうだろうね」
看護師「病院変えただけで病が治るなら誰も苦労しないよ」
兄「おっしゃるとおりです」
看護師「それで? 妹ちゃんが治ったのはいいけどキミはどうなのかな?」
兄「そんなにニヤニヤしながら聞かないでくださいよ」
看護師「ん? キミの人生はうまく言ってんの?」
看護師「たしか二年前の時点では就活すらしてなかったよね?」
兄「よく覚えていらっしゃる」
看護師「もしかして、今はフリーターとかやっちゃってたりする?」
兄「おかげさまで無事に就職できましたよ」
看護師「へえ。がんばったじゃん」
兄「今回も色々とついてたんですよ」
看護師「ふうん」
兄「ああ、そういえば看護師さんも転勤したそうですね?」
看護師「あれれ? なんで知ってんの?」
兄「直接病院に行ったら看護師さんがいなかったから、ほかの方に聞いたんです」
兄「それで看護師さんが転勤したことを知りました」
看護師「そういうことね」
兄「転勤してたんなら教えてくれてもよかったじゃないですか?」
看護師「キミだって妹ちゃんが治ったこと、今日になってようやく教えてくれたじゃない」
兄「それは……色々忙しくて。あと直接会って言いたかったんです」
看護師「ふーん」
兄「そういえば、ぼくが看護師さんにお礼を言いたいって言ったら、ほかの看護師さん驚いてました」
看護師「だろうね。言ってなかった? わたしってば基本的にはサボり魔だって」
兄「なんか意外です」
看護師「そう? むしろわたしからしたらキミの評価のほうが意外だよ」
兄「看護師さんは僕ににアドバイスしてくれたり、妹の世話をしてくれたりしたじゃないですか」
看護師「まあ、それはたぶん」
兄「?」
看護師「わたしとわたしのアニキと。キミとキミの妹の関係を重ねちゃったからかもね」
兄「え?」
看護師「とか言っちゃったりして」
看護師「キミはただたんに運がよかったんだよ」
兄「そうなんですかね……」
看護師「そうなんだよ、きっと」
看護師「それより、今日はけっこうオシャレな店に来てるけど奢ってくれたりする?」
兄「まだ社会人としてヒヨッコの僕に奢らせるんですか……」
看護師「冗談だよ」
看護師「妹ちゃんの快気祝いとキミが社会人になれたことを祝して奢ってあげる」
兄「ありがとうございます」
兄「ていうか、僕の話ばかりですけど看護師さんはどんな調子なんですか?」
看護師「今働いてるとこは忙しいところだよ」
看護師「狭いわりに患者がいっぱい来るんだよ」
兄「大変ですね」
看護師「大変だよ。でも前よりずっとイイと思う」
看護師「働いているような、生きてるような、そんな気分になる」
看護師「キミはどうなの?」
兄「慣れないことだらけで毎日辟易としてますけど、まあ、悪くないです」
看護師「悪くないって、可愛いげのない言い方だね」
看護師「それから……妹ちゃんは今はなにしてるの?」
兄「妹は…… ゆっくりと毎日をすごしていますよ」
◇
看護師「今度会うことがあったら奢ってね」
兄「もちろん」
看護師「まっ、しばらくはお互い忙しいだろうから会えないだろうけど」
兄「あ、そうだ。看護師さんってぶっちゃけ今何歳なんですか?」
看護師「キミの高校にある何年か前の卒アル見てみれば?」
兄「たぶん、見た目どおりそこまで僕と差はないんですよね」
看護師「当たり前だろ」
看護師「……とは言っても三十路の足音は確実に近づいてるけどね」
兄「……えっと、それじゃあまた」
看護師「ああ。また会いましょう」
◇
兄「ただいまっ!」
妹「あ、おかえりー。思ったより早かったね」
兄「おう。それから出迎えサンキュー」
兄「……ん? なんかいいにおいするな」
妹「わたしがご飯、作ったんだ。 簡単なやつだけどね」
兄「そうか。ソイツは楽しみだな」
妹「ある程度は期待していいよ」
兄「オヤジと母さんは?」
妹「久々にデートだって。深夜には帰ってくるってさ」
兄「ラブラブだなあ」
妹「ラブラブだよね」
◇
妹「どう? わたしが作ったご飯はおいしい?」
兄「うん、うまい。お前も母さんに似てご飯うまいよな」
妹「まあねー」
兄「……お前、今日はなにしてんだ?」
妹「んー、映画見て昼寝してただけ。いつもどおりだよ」
兄「そっか……」
兄(妹の鬱病はたしかに治った)
兄(でも)
兄(鬱病が治ってから一年が経過して、妹は以前とは別人のように変わった)
兄(目標を立てて、夢をがむしゃらに追っていたあの頃の妹はもういない)
兄(母親のように俺をいちいち注意したり叱ったりする妹も)
妹「ぼうっとしちゃって、どうかした? 」
妹「あ、もしかして足りなかったらおかわりあるよ?」
兄「うん? ああ、そうだな」
兄(妹の鬱病はたしかに治った。それでも妹はこの病と一生つきあっていくことになる)
兄(でも、その分俺ががんばろうと思う)
兄(過去にがんばってきた妹の分まで)
兄(そして今の妹の分まで)
兄「じゃあ、おかわりしようかな」
妹「はあい」
お わ り
過去作
男「自殺するっていうならその前に僕に抱かれませんか?」
女「デスノートを使って好きな人を振り向かせてみせる」
自分は鬱病の知識などほとんどないのでこの話も半分以上想像で書いてます
元スレ
妹「くちゃくちゃくちゃ」
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1442149033/
妹「くちゃくちゃくちゃ」
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1442149033/
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コメント一覧 (24)
-
- 2015年09月16日 03:45
- 鬱病治ったぜー!みたいな人って、いるんかな?
-
- 2015年09月16日 03:45
- 内容は全然違うのに、何故だか半月を思い出した。
と言うか、この作者の過去作の片方読んだことあるわ。
あれは中々良いものだったな。
-
- 2015年09月16日 03:51
- 妄想甚だしい内容だよ
実際の鬱とかはこんなんじゃない
ある意味もっと悲惨だよ
程度にもよるけどな
そもそも鬱や精神疾患を理解出来ていない
-
- 2015年09月16日 03:58
- これ治ってないな……沸々と無意識下にたまってふとした拍子にフラッシュバックするパターンだ
兄の言動の大半が悪手で草も生えない
-
- 2015年09月16日 04:08
- 鬱病って元々後ろ向きな人がなるんじゃねえの?
もちろんdisってる訳でもないし俺も人のこと言えるような性格してないけど。
そもそもとしてそれなりにネガティブだから、鬱が治っても元気一杯になることはないってイメージ。
元々前向きな人は、一度二度躓いたくらいじゃ鬱まではならないって感じはするな。
まあ、別にSSにリアリティを求めてる訳じゃない。
内容はけっこうよかった
-
- 2015年09月16日 04:56
- むしろ元々ネガティブな人はネガティブが平常だから落ち込んでも鬱病とまでは行きづらいような
明るく振る舞う人ほど一度落ちると弱くないか
正義感強いやつほど闇堕ちするみたいな
-
- 2015年09月16日 05:29
- 医者にメンタルの強弱やポジティブネガティブの問題じゃなく、なるときはなる、って言われた。あと本には脳自体の栄養不足とも。一度なったら他の人よりまたなりやすくなる可能性も無きにしも非ず
-
- 2015年09月16日 08:41
- それまでは人生楽しんでたと思うけど
色々あって病院にお世話になって死のうかと思ったけど何だかんだ今生きてるわけで
でもやっぱり前みたいに体調も良くないし今でも悩まされてるけど生きてます
-
- 2015年09月16日 08:44
- この作者は2011年に一度同じ作品を書いています
-
- 2015年09月16日 09:08
- ※9
やっぱそうだよな
数レス見た所で既視感あって米欄来た
月並みな台詞だが鬱に関してはどういう人がなるとかは一概に言えん
明るかろうと暗かろうと、ポジティブだろうとネガティブだろうとなるときゃなる
心の風邪とはよくいったもんだよ
さあ今日も元気にカウンセリングしに行ってくるよ
-
- 2015年09月16日 10:00
- 考えさせられるな
-
- 2015年09月16日 10:50
- 前と同じもの書いて、一体何がしたいの?
意味がわからん
-
- 2015年09月16日 11:09
- 抑鬱は悲惨
躁鬱はもっと悲惨
さぁ、貴方ならどちらを選ぶ?
-
- 2015年09月16日 12:35
- 数年前に鬱が治った(仮)と言われた私が来ましたよっと鬱のこと勉強して書きましたーって感じの反吐が出るSSだったね
-
- 2015年09月16日 12:39
- ※14
でもお前ADHDじゃん
-
- 2015年09月16日 13:01
- 抑鬱は悲惨
躁鬱はもっと悲惨。どちらを選ぶ?
A.抑鬱から統合失調症に格上げで暴れて一発病院ツモ
やったぜ...
-
- 2015年09月16日 16:29
- ※16に安らぎを
-
- 2015年09月16日 18:18
- ※7
うつ病の原因はいろいろあるからな
本人の自覚が無い軽度のシックハウス症候群が原因だった症例もあるし
-
- 2015年09月16日 23:47
- 特殊な例としてはコリンエステラーゼの働きを阻害する作用のある農薬によって
欝症状を示す、なんてものがあったが、何しろ脳とか神経系の話なんで消化器官
みたいに、「切って」「見る」とか簡単にできないし(内臓も切って見るとかその昔は
できなかったことを考えると時代は進歩したなあ、脳とかそのへんも進歩しねえかなあと
思ったり)。
-
- 2015年09月17日 04:29
- 実際の鬱は〜っていうやつ絶対鬱関連のやつに沸くよな
でもSSの鬱が鬱っぽくないのはマジ
-
- 2015年09月17日 15:37
- まあSSの鬱病患者には若干の萌描写が含まれてるからな
リアルな鬱病患者の救えない痴態なんて誰も見たくないし
-
- 2015年09月17日 16:32
- 『鬱病』と『うつ病』は別の病気です。医療上で明確に分類されています。
『鬱病』は脳神経系、脳分泌系の病気であり、発症のメカニズムは解明されていません。
ですが血液など幾つかの検査の結果、セロトニンやノルアドレナリン等のストレス緩和物質の分泌が止まっていることに起因するという仮説が有力で、実際にそれに基づいた治療によって回復に向かう患者が多数となっています。
近年になってアメリカの医療チームによる特効薬の研究と臨床が進んでおり、将来的には完治が容易になることが期待されています。
『うつ病』は厳密には病気ではありません。精神的負荷による過労症状の一種です。
問題は『うつ病』と医師に診断された際、最初から依存性の高い精神薬が処方されることにあります。
わざわざ同音異義の病名を定めることにより、患者は『うつ病』を『鬱病』と同一として疑わず、処方された薬を使用することで即席の「薬物依存症患者」となり、半ば強制的に通院または入院することになります。
これが『うつ病』の実態です。『新型うつ』も同様です。
-
- 2015年09月18日 21:32
- 環境やら何やらに左右されるってのは一理くらいはあるんじゃないかな
-
- 2015年09月23日 00:18
- 面白かったよ、前作品も好きだったしね。
俺は身近に鬱病に関わる人がいないからこういう感想だが、
身近にいたら本来のものと比較して騒ぎ出す人がいるのも当然かもね。