黒井「961プロの日常」
この話は
美希「961プロの日常」
貴音「961ぷろの日常」
響「961プロの日常」
の続き的なものですが、たまには彼の名前をちゃんと思い出してあげてください
第十話
PM11:00(Sat)
北斗「こんばんわ、エンジェルちゃんたち」
北斗「せっかくのお休みの日なのにこんなに夜更かししてるなんて……悪い子だ」
北斗「でも夜遅くまで起きてると、少しいつもより大人になった気がするよね」
北斗「そんな大人になりたいエンジェルちゃんたちに、今日も俺からのプレゼント……」
北斗「サタデーナイトクロイー始まるよ、チャオ☆」
北斗「さて、今週も始まりましたサタデーナイトクロイー、でもみんなそろそろおねむかな?」
美希「あふぅ、ミキは現在進行形でおねむなの……」
冬馬「今日も朝10だからな、俺もちょっと眠いぜ」
北斗「こらこら、撮った時間がわかるからやめろよ二人とも」
北斗「今週のスタジオ組は冬馬と美希ちゃん、ということで最初のコーナーはこちら!」
『響チャレンジ!』
北斗「響ちゃんと冬馬が交代で完璧を目指していくこのコーナー、先週の冬馬チャレンジは残念ながら失敗だったが……」
冬馬「ポイ一個で金魚十匹は流石にきつかった……」
美希「今週は響が挑戦するの!その内容はこちら!」
『天ヶ瀬冬馬の家からエロ本を探せ!』
冬馬「!?」
冬馬「ちょっちょちょちょちょちょちょおままままま」
北斗「やはり冬馬も思春期の男だからな、あって当然だろう」
美希「問題はどの辺にしまってるかなの」
冬馬「いやいやいやいやおかしーだろ!」
北斗「え、持ってないのか?」
冬馬「俺!アイドル!これテレビ!全国!羞恥!」
美希「あ、響にはただの宝探しゲームと伝えてたの。でも家探しには変わらないからきっと過程で見つかったと思うな」
冬馬「聞けぇーーーー!!!」
北斗「ほぼ撮って出しだから俺たちも見てないし、響ちゃんと冬馬もまだ絡んでないので結果は知らないんだよな」
美希「ふふふ、この後の打ち合わせが楽しみなの」
北斗「それじゃあさっそくVTR、チャオ☆」
冬馬「やめろぉ!」
―――――――――
響「はいさい!自分我那覇響!」
響「今日は制限時間内に冬馬の部屋に隠してある『当たり』が書いた紙を探すんだぞ!」
響「ふっふっふ、自分にかかれば余裕さー!これでまた冬馬に一つ差をつけるぞ!」
響「じゃあスタート!」ガチャ
―――――――――
美希「わ、フィギュアがいっぱいあるの」
北斗「種類もすごいな、萌えから特撮まであるぞ」
美希「あ、ヨーダのフィギュアがあるの。ヨーダの部屋にヨーダのフィギュア……」
冬馬「いいだろうが別に。あと俺の名前は冬馬だ」
北斗「あれ、随分大人しくなったじゃないか冬馬」
冬馬「録画に暴れても無駄だろ、諦めたぜ」
北斗「しかし響ちゃんフィギュア棚はスルー、まあ箱が透明だから当たりの紙はないだろうしな」
―――――――――
響「んー、意外と綺麗だな……でもこれならもっと簡単だぞ」
響「やっぱり本の隙間とか本棚の後ろが怪しいよね」
響「雑誌と漫画が多いけど、ちょっとどかして、と」
響「んー」ガサゴソ
響「ないなぁ」
―――――――――
北斗「まあそんな見つかりやすいところにはないよな」
美希「急に友達が来ても大丈夫なところじゃないと危ないの」
北斗「ありえるとしたら机の引き出しとかベッドの下とか天井裏とか……」
美希「どこかのカバンの中にまとめてる可能性とか……」
北斗「でも冬馬は結構素直だからな、やっぱりありがちなところだろうか」
冬馬「そういうのさ、裏で話そうぜ」
―――――――――
響「おおー、大きなテレビだぞ」
響「下の棚はこれDVDかな?けっこうあるんだな」
響「……!ふっふーん、自分、ピンと来たぞ!」
響「紙だって言われたからその辺に貼ってあるかと思ったけど……」
響「そう思わせておいてDVDケースの中に入ってるんだろ!」
―――――――――
北斗「そうか、冬馬はDVD派か」
美希「時代は古き良きアナログからデジタルへ移り変わるの」
冬馬「勝手に推測すんな、あと星井はバリバリデジタル世代だろうが」
―――――――――
響「じゃあオープン!」パカッ
響「……ん?何だろう、アニメのDVDかな?」
響「な、なんだこれ……すごいムキムキのアイドルたちだぞ……」
―――――――――
北斗「あれは……『THE iDOLM@SCLETER』じゃないか。もうBD出てたんだな」
美希「しかも初回限定盤が3つもあるの。とんだ無駄遣いなの」
冬馬「いいだろ別に、俺の金で買ったんだから」
―――――――――
響「棚じゃないとしたら……」
響「……!ふっふーん、自分、今度こそピンと来たぞ!」
響「紙だって言われたからその辺に貼ってあるかと思ったけど……」
響「そう思わせておいてこの小型冷蔵庫の中に入ってるんだろ!」
響「まさか紙を冷やしてるなんて誰も思わないはずさ、この自分以外はね!」
―――――――――
北斗「冷蔵庫か、流石に盲点だったな」
美希「そう?美希の友達の彼氏は冷凍庫に入れてたって聞いたことあるよ?」
冬馬「冷たくて持てなくなりそうだなそれ」
―――――――――
響「オープン!」ガチャ
響「……水と牛乳と栄養ドリンクがいっぱいあるぞ」
響「あと小型なのに野菜も結構入ってるし……」
響「なんていうか、冬馬って健康にも気を使って真面目なんだな……」
―――――――――
冬馬「そりゃプロだからな」
美希「ホントは?」
北斗「身長だろ?無理しなくていいんだぞ」
冬馬「う、うるせぇ!北斗だって180ちょいじゃねえか!」
美希「でも詰めが甘いの。牛乳はやっぱりアメリカ産じゃないと」
冬馬「あれ高ぇんだよ」
―――――――――
ピーーー
響「え、タイムアップ?」
響「うがー、結局見つからなかったぞ……」
響「残念ながら、今週の響チャレンジは失敗……でも次は絶対成功するぞ!」
響「それじゃあまた次回!」
―――――――――
北斗「見つからなかったか……残念だ。俺たち的にも失敗だな」
美希「本当に思春期の男の子なの?」
冬馬「酷い言われようだぜ……だいたい俺はアイドルなんだからそんなもん買う暇も読む暇もねーっつーの」
冬馬(そういうデータは全部USBメモリに入れて肌身離さず持ち歩いてるから見つかるわけなかったけどな!)
冬馬(ま、ちょっと慌てといたほうがこいつらの目も欺けるだろ……今度は企画じゃなく本気で家探しされそうだし)
美希「それじゃあCMのあとは、なぜか人気のあのコーナーなの!」
北斗「チャオ☆また会ったね、エンジェルちゃんたち」
北斗「今週も悩める仔猫ちゃんたちの恋愛の悩みを解決していくよ」
『北斗のチャペル・ラブアドバイス』
北斗「今週の一通目はこちら、ペンネームやーりぃ(黒帯取れました!)ちゃんから」
北斗「『私は女子高に通っているのですが、よく周りの女性から告白されてしまいます。もっと普通の恋愛がしたいのに!どうしたらいいでしょう?』」
北斗「なるほど、やーりぃちゃんは女性にとてもモテるんだね、でもそれは本意じゃないと……」
北斗「でも、俺はこう考えるんだ。異性に好かれることよりも同性に好かれるほうが難しいってね」
北斗「同性は恋愛感情だけじゃなく、本当に人としての魅力がないと惹きつけられないんだ。だから、やーりぃちゃんのその魅力は絶対に異性にも伝わるよ」
北斗「こんなに可愛いやーりぃちゃんに惹きつけられない男がいたら、それはもう罪だから投げ飛ばしてしまえばいいさ、チャオッ☆とね」
北斗「続いて二通目、ペンネーム雛鳥ちゃんから」
北斗「『職場に出会いがありません。職場には女性が多く、男性が二人いるのですが一人は中年でもう一人は素顔を見たことすらありません。どうしたらいいのでしょう』」
北斗「なるほど、義務教育の学校とは違って職場だと男女比率が酷いこともあるよね」
北斗「でも諦めることはないよ、例えば日曜日に街をぶらついてごらん、君みたいな魅力的な女性はすぐに声がかけられるに決まってるさ」
北斗「あるいは同窓会で運命の出会いが待っていたり、友達が紹介してくれたり」
北斗「ひょっとしたら幸せの青い鳥みたいに、実はその職場の人が運命の人かもしれない」
北斗「顔を見たことがないというなら一度会ってみればいいよ、好みのタイプかもね?」
北斗「それともまさかずっと被り物してるから顔が見れないとか……なんて、冗談だよ、そんな人いないよね☆」
北斗「それでは本日はここまで」
北斗「このチャペルがエンジェルちゃんたちの安らぎの場となりますように……チャオ☆」
北斗「サタデーナイトクロイー、今週もお別れの時間となってしまいました」
美希「番組では観覧者募集中なの!スタジオに見に来てくれた人に抽選で事務所に転がってた何かをプレゼント!」
冬馬「来週は冬馬チャレンジ、星井の激烈ビフォーあふぅター、そして企画潰しの異名をとる翔太の五回目の新コーナー『踏み込め芸能界!』をお送りするぜ!」
北斗「今度のは何回続くかな?ちなみに翔太の新コーナーの記念すべき最初のゲストのヒントは『ぎゃおおおん』です」
美希「それじゃあみんな、また来週なのー!あ、エンディングの後は貴音の占いのコーナーだからそっちも見てね?」
『ぷりんせす・たかーねのそこそこ当たる占星術』
貴音「星は人を導き、月は人を惑わす……同じ夜にありながらその行いはまるで正反対、真、夜とは面白きものです……」
貴音「ごきげんよう皆様、私の占いの時間でございます」
貴音「今週は二位から十一位までは特筆すべきこともないほどいまいちぱっとしないので、省略いたします……なんでしょうかその目は」
貴音「文句のある方は生年月日を書いたうえで当番組までお送りください。向こう二ヶ月最下位にさせていただきます」
貴音「というわけで今週の一位の方は双子座のあなた。当人が双子だとなおよしです」
貴音「金運恋愛運健康運は良好、ただし食べ過ぎに注意、らっきーらぁめんは味噌です」
貴音「最下位は天秤座のあなた。天秤というほどですので体重にご注意を。らっきーらぁめんはニンニクアブラヤサイマシです」
貴音「それではまた来週、夜が皆様を楽しませてくれますように」
終わり
第十一話
~961プロ、社長室~
プルルガチャ
黒井「ウィ、黒井だ……テレビ局の、ふむわかった、繋ぎたまえ」
黒井「お電話かわりました、芸能事務所961プロダクション社長の黒井でございます。いつもお世話になっております」
黒井「はい、はい、いえいえこちらこそ、先週のサタデーナイトクロイーも好評でしたか、それはよか……え、御手洗はまたコーナー変更?ええ、私も放送を見てましたが同感です」
黒井「はい、それでは今後ともよろしくお願いします、失礼します」ガチャ
黒井「…………ふぅ……」
黒井(いまやあいつらも看板番組持ちか……いつの間にか大きくなったものだ、事務所も、あいつらも……)
黒井(出会ったころはどいつもこいつも世間知らずのひよっこだったのにな……懐かしいものだ……)
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~数年前~
北斗「おらぁっ!」バキッ
冬馬「ぐあっ!」ドサッ
北斗「はっ、口ほどにもねぇ……いいか、これにこりたら俺のシマでもう余計なことすんじゃねえぞ」
冬馬「く、くそ……」
翔太「えー?もっとやっちゃってよ北斗さん、二度と立ち上がれなくなるぐらいにさ!」
北斗「黙れ翔太、元々お前が当たり構わず女に声かけるからこんな正義面したのが寄ってくるんだろうが」
北斗「今回はてめえの頼みだからわざわざ出向いてやったが、次から自分でやるんだ。いいな?」
翔太「はーい、いいかお前、もう北斗さんのシマで余計なことすんじゃねーぞ!」
北斗「それは今俺が言っただろうが……行くぞ、じゃあな」
翔太「じゃーねー、二度と僕たちの前に顔出さないでよ」
冬馬「くそっ……ちくしょう……」
冬馬(身体はそんなに痛くねえ……骨も無事だ……だが……)
冬馬(太刀打ちできなかった……全然、全く、これっぽっちも……!)
冬馬「ううっ……ちくしょう……うううっ……」
「力が欲しいか?」
冬馬「!?誰だてめぇ……!くそ、逆光で顔が見えねえ……」
「ノンノン、それは私の問いへの答えではない。私は『力が欲しいか?』と聞いたのだ」
ウィ ノン
「『はい』か『いいえ』で明確に答えたまえ、少年。望むならくれてやろう、富、名誉、権力、知識、あるいはもっと直接的な力でも、だ」
冬馬「……力が欲しいか、だと……?そんな問い、答えなんて決まってるだろうが……」
冬馬「俺は…………!」
~数日後~
翔太「ねーねーお姉さん、僕とお茶でもしない?」
少女「うわっ、なんだ君は!?悪いけど私こっちで一番美味しいっていうラーメン屋に並びたいからそんな暇ないぞ!」
翔太「ラーメンなんていつでも食べれるじゃん、それより、ね、ちょっとだけでもいいから!」
少女「うわっ、ちょ、ちょっと離して!都会の人はこんなに強引なのか!」
北斗「その辺にしておけ翔太、でないとまたこの前みたいなのが現れるぞ…………と、言ってるそばから」
冬馬「…………」
翔太「あれ?僕たちの前に姿を現さないでっていったよね、忘れたの?それとも殴られ過ぎてバカになったの?」
北斗「おい小僧、今すぐ尻尾巻いて逃げだすってんなら見逃してやる。とっとと家に帰るんだな」
冬馬「…………」
北斗「……ほう、あれだけやられといて立ち向かう気になるとはいい度胸だ。お前を勇敢だというやつもいるだろう……だが」
北斗「俺から見ればただのバカだ!」ブンッ
冬馬「!」ヒュンッ
北斗「ほう、俺の拳を避けるとは、確かに前よりは成長しているようだな」
北斗「だが、それもいつまで持つかな……おらっ!」ブンブンッ
冬馬「ふっ……はっ……!」ヒュンヒュンッ
北斗「……チッ」イラッ
冬馬「どうした、お前の力はそんなもんか?」
北斗「この糞ガキが……!」
北斗「おらおらおらおらおらおらぁ!」ブンブンブンブンッ
冬馬「はっ……!」ヒュンヒュヒュンヒュヒュヒュンヒュヒュンッ
北斗「ええい、ちょこまかとうっとおしい……!」
翔太「嘘でしょ、北斗さんの攻撃が全然当たらない……あいつ、なんて素早い身のこなしなんだ」
少女「違うぞ、あれは避けてるんじゃない……踊ってるんだ」
翔太「え、どしたのお姉さんいきなり」
少女「あいつの足や手の動き、華麗なターン、繊細なリズム……凄いぞ、こんなところにここまで高次元のダンサーがいるなんて、上京した甲斐があった……」
北斗(チッ、何があったかしらんが避けるのは随分うまくなったようだな……だが)
北斗「おいおい、避けてばかりで俺が倒せるとでも思ってんのか?」
北斗(まともなダメージを与えようとする攻撃の瞬間は地を踏みしめなければならない……すなわち足が止まる)
北斗「言っておくが俺はこれから一時間殴り続けてもスタミナ切れしないぞ、だがお前はどうかな?」
北斗(その瞬間に相打ちでも当たれば一発で動きを止めてやる!)
北斗「ほらどうした、かかってこいよ!」
冬馬「……」スッ
北斗(動きを止めた……来るか!?)
冬馬「お前を殴る……そんな力に頼った解決法などくだらないな」
北斗「なんだと……?じゃあなんだ、お前は俺を倒す気もなくわざわざ殴られに来たのか!それこそくだらないな!」
冬馬「お前の罪を裁くのは力ではない……」
冬馬「正義だ」
~~~~~~~~~
冬馬「俺は…………ただ与えられた力なんていらねえ!俺は、俺の正義に生きる!」
「ほう、ならば少年よ、その力なき正義を振りかざし何ができる?」
冬馬「俺の正義は、迷える人々を魅了し、勇気を与えることだ。そこに力は必要ない!そして、今はその方法を模索しているところだ」
「くっくくくっ……ふははははっ!いいな、実に愉快だ!若く、青く、力と夢に溢れ、失敗を恐れない!」
「そして同時に経験がなく現実も見えていない……だが、今はそれでいい。人々に夢を与えるものが一番夢を見ているというのも面白かろう」
「少年よついて来い、私がお前の正義を後押ししてやろう。一週間でこの街全てを魅了できる男にしてやる」
「お前はアイドルになるのだ」
~~~~~~~~~~~~~~~
冬馬「お前が行った数々の悪逆非道、もはや裁かれる以外に赦される道無し!裁く力が人に無いなら、俺が代わりにそれを為す!」
ギルティ アリス
冬馬「お前の罪、俺の正義で裁かせてもらう!」♪Alice or Guilty
北斗「なんだ!?どっから曲が!?」
翔太「あ、あれだ!あの人!逆光で顔が見えないけどラジカセ持ってる!」
~~~~~~~~~~~~
「やはり決め台詞がほしいところだな」
冬馬「い、いいぜそれは、恥ずかしいだろ」
「とかいってちょっと嬉しそうに見えるが?」
冬馬「ま、まあな、やっぱ一度はそういうの憧れたもんだからな」
「ではどういうのがいいか……『貴様ら、許さんぜよ!』などか?」
冬馬「なんで訛ってんだよ……『星に代わってお仕置きだぜ!』とか?」
「そもそも星はお仕置きしてくれないがな……うーむ、ここはやはりお前の言った『正義』というフレーズを入れて」
冬馬「じゃあじゃあ、『お前の罪は正義が裁く!』とか」
「良いセンスだ。しかし正義にもいろいろあるからな。ここはダークヒーローっぽく少々独善的なところを取り入れて『俺の正義』にしよう」
冬馬「『お前の罪は、俺の正義が裁く!』」
「だいぶ形になってきたな、ついでに横文字のルビもふってみるか」
冬馬「とりあえず直訳してみるか。『お前のギルティは、俺のジャスティスが裁く!』」
「む、ギルティに比べてジャスティスがちょっとくどいな。何か代案は……」
冬馬「じゃああれだ、女の名前付けようぜ。愛用の武器とか戦闘機とか付けてるとカッコいいだろ」
「一理ある。三文字とか四文字程度のシンプルな名前が良いな……マリー、ケイト、リンダ……」
冬馬「あ、アリスってどうだ、少女っぽいだろ?」
「さらば青春の時か……懐かしいものだ」
冬馬「何言ってんだおっさん?」
「なんでもないさ。とにかくこれで決め台詞は完成だな!」
冬馬「まさか決め台詞決めるだけで二日もかかるとは……」
「よし、では決め台詞を言うシーンのリハをするぞ。ポーズを考えておけ、タイミングが重要なのだ」
冬馬「いいからそろそろダンスか歌でも教えろよ!まだアイドルっぽい練習何もしてねーだろうが!」
~~~~~~~~~~~~~~
(曲のタイミング完璧だな、流石私だ……!)
北斗「わけのわからねえことしやがって……くらえ!」ブンブンブンッ
冬馬「はあっ!」ヒュヒュヒュンッ
翔太「すごい、さっきより動きが良くなってるし、しなやかかつ滑らかだ……!」
少女「ああ、さっきまでは踊りながら金髪の攻撃を避けてるようだったけど、曲が流れてからは逆に踊っているあいつに合わせて金髪が拳を突きだしてるようだ!」
翔太「凄い……これがアイドルってやつなの……?僕こんなの初めて見たよ……!」
少女「でも、このままじゃさっきと同じで避けてるだけだ。どうやって正義で裁くつもりなんだ……?」
K察「すみませんこの辺で殴り合いがあるって通報があったんですけど」
翔太「えっ」
少女「えっ」
K察「あ、あの二人か!こら!今すぐやめなさい!」ピピーピピピピッ
北斗「えっ」
冬馬「ふぅ……正義の勝ちだ」
K察「あんね、K察も暇じゃないわけ。君らみたいな高校生ぐらいのがケンカするたびに仲裁してたら人がいくらいても足りないの。わかる?」
北斗「あの、俺一応大学……」
K察「あそう?でもおじさんからみればまとめて子供だよ子供。とにかくケンカもいいけど仲良くスポーツでもしてもっと若いうちを楽しみなさい、いい?」
「ウィ。なぜ私まで怒られているのだろうか」
K察「あんたのは別件だよ、街中で大音量で音楽鳴らしたから住人から迷惑だって電話がきた」
「くそ……防音対策も出来ん庶民どもめ……」
K察「今回はケガ人いなかったから注意で終わっとくけど、次見かけたらしょっぴくから気を付けるんだよ!」パープーパープー
北斗「……『俺の』正義じゃねえのかよ」
冬馬「『俺→街の人』+『K察→街の人の正義のために働く』=『K察→俺の正義』」
北斗「はっ……はははっ、なんだそれ、ははははははっ」
北斗「ったくよぉ……おかしなこと言うし、おかしなことやるし、そのくせ俺の拳を全部避けるし・・・」
北斗「それ全部お前の正義だってんなら、ああ、認めるよ、俺の負けだ」
冬馬「俺の正義を感じてくれてうれしいよ、えっと……」
北斗「伊集院北斗だ。北斗でいい」
冬馬「天ヶ瀬冬馬だ」
翔太「僕は御手洗翔太!」
北斗「翔太、お前さっきまでどこにいたんだ?おかげで俺と冬馬とあのおっさんだけ叱られたんだぞ」
翔太「だって僕ケンカしてないし。それよりねえねえ、さっきの凄かったね冬馬君!あの凄いダンス僕にも教えてよ!」
北斗「ああ、いきなりで図々しいかもしれんが、俺にも教えてもらえるかな、俺の拳を全部避けたあのステップを」
冬馬「ああいいぜ。おっさんに話しといてやる」
北斗「悪かったなそこの女、こんなことに巻き込ませちまって。ほら翔太も謝れ」
翔太「ごめんねお姉さん」
少女「いや、いいもの見せてもらったから気にしてないぞ!それより、私にもあのダンス教えてほしいんだけどいいかな?運動神経には自信があるぞ!」
冬馬「ああ、これからよろしくな!えっと……」
少女「あ、ごめん自己紹介してなかったね。私の名前は……」
貴音「四条貴音!都会は初めてだけどよろしくね!」
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冬馬「んなわけあるかぁ!」
黒井「はぅあっ!?」ドキーン
北斗「どうも、ついさっき戻りました」
翔太「フェアリーの人たちもさっき玄関にいたよー」
黒井「な、何だお前たち帰ってたのか。ノックぐらいしろ」
冬馬「したけどおっさんが妄想に夢中で効いてなかったんだろうが。しかもなんか呟いてると思ったら無いこと無いことベラベラと……ツッコミどころ多すぎて相手してらんねーぜ!」
黒井「馬鹿め、これは今度出版予定のお前らのサクセスストーリーの草案だ。挫折と復活と意外性に満ち溢れた大スペクタクルでトリプルミリオン間違いなしだぞ」
北斗「百歩譲って俺たちの出会いは良くても貴音ちゃんがそれはちょっと……」
翔太「『銀髪の女王』は作ったキャラですってプロダクション側が暴露するなんて大胆すぎるんじゃない?」
黒井「ええいうるさいうるさいうるさい、それより何の用だ」
冬馬「何の用だって……午後の仕事おっさんも同行するんだろ、忘れたのかよ」
黒井「む、そうだったか……すまん、少しだけ待っててくれ」
北斗「時間はまだ余裕ありますから大丈夫ですよ」
翔太「クロちゃんが予定忘れるなんて珍しいねー、やっぱ歳?」
黒井「聞こえてるぞ翔太よ……っと」クラッ
冬馬「おいおい立ちくらみか?マジでおっさん大丈夫か」
黒井「馬鹿め、まだまだ私は現役……で……」グラァッ
ドサッ
冬馬「…………え?」
翔太「ちょ、クロちゃん……マジで?え?冗談でしょ?ねえ!」
北斗「慌てるな翔太!翔太は下の階の社員を呼んで来い!冬馬は救急車!俺は応急処置をする!早く!」
冬馬「お、おう!」
翔太「はい!」
終わり
第十二話
~病院~
コンコン
黒井「どうぞ」
北斗「お邪魔します」
響「おー、広い個室だな、流石セレブだぞ」
冬馬「よ、よう、元気かよおっさん」
黒井「なんだ冬馬、辛気臭い顔をしおって」
冬馬「いや、だってよ……その、酷い病気だったら……」
医者「ご安心ください、ただの過労です。ただ少しお年であるのと、日頃お忙しいということで検査も含めて一週間ほど休養の意味でも入院していただいているだけです」
黒井「ふん、芸能プロダクションが忙しくなくてやっていけるかというのだ。まあ健康診断もサボっていたからついでに調べてもらおうと思ってな」
冬馬「そうか、じゃあ別にガンとかそういうのじゃないんだな……よかった……」
響「あれ、冬馬泣いてるのか?」
冬馬「う、うるせぇ!これは汗だよ!」
北斗「くれぐれもご自愛くださいよ社長、社長あっての俺たちですから」
黒井「そう思うならもう少しお前たちも出来ることをやれるようにしておけ。特に響ちゃん、フェアリーの事を頼むぞ」
響「任せるさー!自分完璧だからな!」
冬馬「我那覇にあの二人は抑えられないだろ」
北斗「人選ミスですよ社長」
響「う、うがー!出来るぞ!自分一人でフェアリーをまとめられるって言ってるんだぞ!」
黒井「ほう、では響ちゃんにはフェアリーのまとめ役になってもらおう」
響「え!?自分がフェアリーのまとめ役に!?」
冬馬「無限ループが始まるからやめてくれ」
響「じゃあまた来るからゆっくり休むんだぞ社長!」
黒井「来なくてよい、すぐ退院だからそんな暇があったらレッスンをしておけ」
冬馬「素直じゃねーなおっさんも」
北斗「連絡だけは入れますから、何かあったら返信お願いしますね」
黒井「ウィ、早く帰れ、私は寝る」
冬馬「思ってたより元気そうでよかったな」
響「冬馬の思ってたってのはどれぐらい酷かったの?」
冬馬「そりゃもう全身管と酸素マスクと集中治療室のような……」
北斗「流石に発想が飛びすぎだろ……ただ、やっぱり働きすぎだよな社長」
響「社長も765みたいにプロデューサーおけばいいのに」
冬馬「765のプロデューサーもよく元気でいられるよな、あんだけアイドルの管理しといて……っと、悪ぃ、トイレ行ってくる。先に車のところ行っといてくれ」
響「遅いな冬馬、何やってるんだ?」
北斗「まさか迷ってるなんてことはないと思うが……あ、来た」
冬馬「…………」
響「どうしたの浮かない顔して?トイレに携帯でも落とした?」
北斗「いや、ファンの看護師がいたはいいが名前を間違えられたとかそんなとこだろ?」
冬馬「……二人とも、話がある。とりあえず車に乗ろう」
響「う、うん」
北斗(冬馬が名前ネタに乗ってこないだと?これは普通じゃないな……)
バタンブロロロロロ
冬馬「あのさ……二人とも、おっさんの様子どう見えた?」
響「どう見えたって……思ったより元気そうで安心したぞ」
北斗「いつもの社長の素直じゃないところも見れたし、第一ただの過労だろ?どう見えるも何も……」
冬馬「その、さ……本当に過労だと思うか?」
北斗「……どういう意味だ?」
冬馬「俺、さっき聞いちまったんだよ、あの医者の会話を……」
~~~~~~~~
冬馬「う~トイレトイレ」
冬馬(今トイレを求めて病院を彷徨う俺はいたって普通の男子。しいて違うところを上げればアイドルってとこか)
医者「……から……長くは……」
冬馬「ん?あれはさっきの医者……?」
看護師「ですから、あの黒井社長さんはあとどれぐらいでしょうかって……」
医者「そうだな……長くても三ヶ月ぐらいだろうか」
看護師「まあ、だったら早いところ伝えないと、きっと皆さん後悔しますよ」
医者「ああ、だがタイミングが大切だからな……」
冬馬「……!?」
~~~~~~~~
響「そんな……!」
北斗「おい冬馬、本当に医者はそう言ったのか?聞き間違えとか他の黒井さんとかじゃないのか?」
冬馬「間違いなく聞いた!それに他に病院に黒井って患者がいないかも聞いた!」
北斗「今の話聞く限り、黒井社長の余命……少なくとも健康でいられるのは三ヶ月ってことか……」
響「嘘だ!だってあんなに元気そうだったのに!一昨日だって散歩に付き合ってもらったのに!」
冬馬「俺だって嘘であってほしいと思ってるよ!」
北斗「この事、他の皆には……」
冬馬「伝えないわけにはいかねーだろ……」
響「自分だけ知らないなんて嫌だし、それに美希ならきっとすぐ気付いちゃうから、先に話しておこうよ」
冬馬「くそっ……チクショウ……!」
北斗「…………」ギリッ
~961プロ~
美希「社長が?」
貴音「余命幾ばくもない……と?」
冬馬「ああ、確かに聞いた」
美希「ミキ、そういう嘘はつまんないと思うな」
冬馬「こんな下らねえ嘘つくかよ!」ドンッ!
美希「っ!」ビクッ
北斗「冬馬落ち着け!ここで物に当たっても仕方ないだろ!」
冬馬「北斗はどうなんだよ!車の中からずっと澄ました顔しやがって何とも思わねえのか!」
北斗「……俺だって……」
北斗「俺だって悲しいに決まってんだろ!でも俺は一番大人だから何かあったらお前らの支えになれって、そう言われてんだよ!その俺が慌てちまったら社長にどんな顔すればいいんだよ!」
冬馬「言われたって……いつだ?」
響「・・・冬馬が車に戻ってくるちょっと前に、メールが来たんだ」
『お前たちは皆まだ子供だが、北斗はもう21だから、何かあったらこれからのためにもお前が精神的に支えてやってくれ。それでもどうしても大変だったら765の高木でもこき使うがよい』
北斗「……まさかその何かがこんなに早くやってくるなんて」
貴音「北斗殿、手の平から血が……もしや、ずっと拳を握りしめて……」
北斗「俺だって悔しくて、悲しくて、信じたくなくて、ずっと車の中で拳を握ってたよ……そう、俺もだよ冬馬」
冬馬「ごめん、北斗。俺ちょっと頭ん中ごちゃごちゃで、どうしていいかわかんなくなっちまって……」
北斗「いいんだ、それが普通だよ。そのために俺がいるんだから」
貴音「嘘や戯れの類でないことは理解いたしました……が、やはり何かの間違いであってほしいところです」
響「でも、それならどんな間違いが?」
美希「直接聞いてみればはっきりするの。医者の人か社長に」
冬馬「でもよ、そういうのって医者は家族以外には言わないもんじゃねえのか?」
北斗「社長に家族がいるとは聞いてないけどな……」
美希「じゃあ社長を問い詰めるの。そしたらはっきりするでしょ?」
貴音「しかし残念ながらお見舞いに行く時間はなさそうですね……退院予定日は来週でしたでしょうか」
冬馬「……わかった。じゃあその時に、俺が責任を持ってはっきり聞こう」
北斗「大丈夫か?辛いなら、俺が聞いてもいいんだぞ」
冬馬「いいんだ、ありがとう北斗。でも、どんな答えでも直接聞きたいんだ……後悔したくないから」
~数日後~
冬馬「追加入院……?」
北斗「ああ、この際全身丸ごと健康診断しておくとかなんとかで、もう一週間入院するって連絡があった」
美希「でもそれって、本当は」
冬馬「少しでも延命できるように精密検査……ってことかよ……」
北斗「俺たちが想像している以上に状況は良くないのかもしれない。みんな、これからの毎日は今まで以上に大切なものだと意識していこう」
北斗「もちろん、仕事だっておろそかにするんじゃないぞ。社長がそういうのを嫌うのは知ってるだろう」
冬馬「ああ、やりきってやるぜ!」
~さらに数日後~
北斗「黒井社長、退院おめでとうございます!」
美希「おめでとうなの!」
響「お、おめでとう!」
黒井「なんだ貴様ら大げさな……たかだか二週間程度ではないか」
冬馬「翔太は長期海外ロケでいないけど、フェアリージュピターでスケジュールあわせて退院パーティやろうって、そう決めてたんだ」
冬馬「……ひょっとして、迷惑だったかよ……退院したばかりで忙しいときに……」
黒井「……ふん、バカ者め。退院したばかりなのに山積みになっている仕事の処理と、わざわざ集まって準備してくれたこの時間……」
黒井「どちらに優先度を高くするか、その程度はわかっているつもりだ。それに、その、些細なことでも、お前らに祝ってもらって嬉しくないわけがあるか……」
北斗「やったな冬馬、社長がデレたぞ!」
黒井「ええいやかましい!」
ワーワーギャーギャー
冬馬(おっさん……気のせいか、以前より随分対応が柔らかくなってる……)
冬馬(ひょっとして、自分でも気づいてんのかよ……もうあまり長くないってことに……)
~一ヶ月ぐらい後~
北斗「なあ冬馬、最近社長の様子はどうだ?」
冬馬「最近たまに仕事中抜け出してるだろ、あれさ……」
響「やっぱり病院に行ってるのかな……」
美希「社長、最近食事の後薬飲んでるよね」
貴音「そういえば、この前黒井殿にサインを求められましたが」
美希「貴音も?」
冬馬「俺らもだよ。色紙に一枚ずつ」
北斗「何でですかって聞いても教えてくれないんだよ」
冬馬「俺が聞いたとき、『病院に……』までは口走ってたからな……病室に飾る気なんだろう」
北斗「ってことは、再入院までもうそんなに遠くないってことか」
冬馬「あと二ヶ月……俺たちはおっさんのために何が出来るんだろう……」
黒井「どうしたお前たち、こんなところでこそこそと」
冬馬「うぇっ!?お、おっさんいたのかよ……って、何だその荷物」
黒井「ああ、ちょっと今日は泊りがけで出かけてくるつもりだ」
北斗「どこに行くんですか?」
黒井「ん……ええと……そうだな、まあなんと言えばいいか、切って取ってくるというか……」
冬馬「……本当に、帰ってこれるのかよ……」
北斗「おい、冬馬」
冬馬「ちゃんと、俺たちのところに戻ってこれんのかよ!なあおっさん!」
黒井「どうした冬馬、大げさな……ひょっとして、どこに行くか気付いているのか?」
冬馬「わかるよ!今までのあんたの様子見てたら気付くだろ!」
黒井「むむ……気付かれないようにしていたつもりだったが……まあいい」
黒井「いいか冬馬、私はこの事務所の社長だ。たとえ私がどこに行こうと、誰と何をしようと、どうなろうと」
黒井「永遠に帰ってこないなど、ありえん。だから安心して帰りを待っていろ、いいな?」
冬馬「おっさん……」
北斗「はい、社長は安心して行ってきてください」
美希「帰ってきたら、また一緒におにぎり食べるの!」
貴音「高槻やよいについて語り足りぬことがあるのです。無事にお戻りください」
響「来年こそは沖縄に行くって、そう約束したよね!絶対約束守ってよ!」
黒井「う、うむ。では、ちゃんとスケジュールに気を付けておけよお前たち」ガチャバタン
冬馬「……今日が手術だったのか」
北斗「『切って取って』まで言ってたからな、間違いない」
美希「成功したら帰ってくるんだよね!」
貴音「失敗など、あり得ません」
響「絶対、大丈夫だぞ!」
冬馬「ああ、それでまた前みたいに、おっさんとジュピターとフェアリーで過ごすんだ」
冬馬「特にドラマも感動も必要ない、だけどそこに居たいって思える、961プロの日常を……!」
冬馬「そうだ、たしか今日サタデーナイトクロイーが生放送ゴールデン進出枠だったよな?」
北斗「ああ、ひょっとして冬馬、お前……」
冬馬「多分時間もちょうどいいぐらいだろ、届けようぜ応援を!俺たち全員で!」
北斗「翔太は海外ロケだけどな」
~スタジオ~
北斗「それではサタデーナイトクロイー特別編、そろそろお別れのお時間です……でも、その前に、ちょっとだけ俺たちの個人的な話をさせて下さい」
冬馬「実は今日、俺たちの大切な人が手術を受けています。命に関わる手術です」
貴音「その方は、そっけない振りをしながらもいつも私たちのことを気にかけ、それとなく支えてくれました」
響「いつも、ひぐっ、た、助けられて、ぐすっ」
美希「もう、響ったら泣き虫なの。その人はミキたちが仕事を休んで自分の付き添いをすることは望んでないと思ったから、ミキたちはちゃんと仕事してるの」
冬馬「だから、代わりにここからエールを送らせてもらうぜ!みんなもお願いします!せーのっ!」
皆「黒井社長!頑張れー!」
~某所~
高木「黒井、無理せず休んだほうがいいんじゃないか」
黒井「ふん、いくら体力がないとはいえ、そんなにすぐにくたばったりはしないさ。それにもう私には時間がない」
P「ですが、もう薬だってほとんど残ってないでしょう?」
黒井「構わん。どうせ今となっては飲んでる時間も惜しい」
高木「……負けるなよ、黒井」
黒井「ふん、貴様には言われたくないさ……うっ」ドサッ
P「ああ!ヤバい、黒井社長の身体が麻痺してる!早く!早く薬を……!」
高木「……いや、駄目だ。もう……」
P「…………そう、ですか」
P「黒井社長…………お疲れ様でした」
961プロの日常 CAST
黒井 崇男
天ヶ瀬 冬馬
伊集院 北斗
御手洗 翔太
星井 美希
四条 貴音
我那覇 響
高木順二朗
P
~三ヶ月後~
響「うぅ、寒いぞ……こんな寒さじゃ雪降るかな」
北斗「もう十二月だからな、でもこの辺じゃ雪なんて滅多に降らないだろ」
翔太「僕がいったところだと、道路の右と左に5mぐらいの雪の壁があるとかザラだったけどね」
美希「じゃあ久しぶりに集まったし、そろそろ行くの。…………お墓参りに、ね」
貴音「月日が流れるのはあっという間ですね、もうあれから三ヶ月とは」
翔太「僕はあの時ちょうどいなかったけどさ……結構後悔してるよ」
北斗「でも翔太だよな、事務所の裏にお墓を作ろうって提案したの。俺たちはなんだかんだでやっぱりごちゃごちゃしてたから、そういう発想は出なかったよ」
響「そうやって最初にやることが決まったおかげで、よし、一つずつ片付けて行こう、って気になれたもんね」
美希「ほら、お墓についたの。じゃあみんな、手を合わせて……」
『鬼ヶ島羅刹の墓』
響「まさか鬼ヶ島羅刹が墓入りするとはなあ」
北斗「俺もピピンの方が先だと思ってたんだけど」
美希「あ、これでちょうど50個目の墓入りなの。おめでたいね!」
冬馬「あっ、やっぱりここにいやがったかお前ら!」
貴音「おや、ご本人登場ですか」
黒井「全く、こんなに寒い中で何をやっているかと思えば……」
北斗「もう戻りますよ、カフェで温かいものでも飲みましょうか」
美希「ミキはイチゴババロア食べるの」
黒井「しかしよく続いてるな、あんな下らんこと」
美希「ファンレターに書かれなくなった名前を供養するのは大事なことだって思うの」
黒井「確かに冬馬の名前が多いのは色々大変だが、何も墓まで作らんでもよかろうに」
北斗「まあ……ちょっとした仕返しですから。なあ冬馬」
冬馬「……何だよ、そりゃ確かに悪かったけどさ……」
翔太「『クロちゃん余命三ヶ月事件』だっけ。あれ結局どんな話だったっけ?」
美希「最初は冬馬が早とちりしたことから始まったの」
北斗「医者があと三ヶ月ぐらいって言ったのを勝手に余命と思い込んで広めただろ」
貴音「結局、通院三ヶ月というだけでしたし」
翔太「医者の人が『皆後悔する』とか『タイミングが大事』って言ってたのは?」
響「なんでも、医者の家族が自分たちのファンだったみたいで、サイン貰うタイミングを計ってたみたいだぞ。言い出しにくいけど、もらわなかった方が後悔するって」
冬馬「明らかにまぎらわしいだろうが!主語つけて話せってんだよ!」
黒井「うむ、お見舞いに来た患者の知り合いにサインをねだるような、公私混同はあまりよろしくないからな」
美希「とかいってその人の代わりにサイン集める社長も甘々なの」
冬馬「星井だっておっさんが飲んでる薬を病気の薬と思い込んでたじゃねえか」
美希「そりゃ病気だって聞かされればそうもなるの。結局ただのサプリメントだったけど」
黒井「過労で倒れたわけだからな。健康と栄養素に気を付けようと思っただけだ」
冬馬「健康に気を付けてる人間が泊りがけでモンハンしてんじゃねーよ!しかも765プロのところで!」
黒井「ぐっ……仕方なかろう、入院中は暇だったのだ。聞けば高木もやってるというから、暇つぶしに始めたらハマってしまって」
北斗「765プロの社長とプロデューサーと、徹夜でモンハンするまでになった、と」
黒井「ウィ。あの時の私は体力管理の意識も回復薬グレートの在庫も少なかったが、今ならちゃんと途中でキャンプで休む大切さも知っているぞ」
響「狩りの誤魔化し方が『切って取って』なのは正直どうかと思うぞ、っていうか誤魔化さなくてよかったのに」
黒井「765プロの連中と遊びまわっていることについて少しぐらいは後ろめたかったのだよ。そしたら冬馬が私が765プロの人間になるんじゃないかと思ったようで詰め寄ってくるから、安心させようと色々言ったのだが」
北斗「まあそれも勘違いですれ違いだったんですけどね」
黒井「そんなこんなで色々勘違いしたお前らが生放送の電波まで使って私の名前を叫ぶから、もうどれだけ後処理が大変だったことか」
北斗「大変でしたね、電話は来るわ取材は来るわ週刊誌があることないこと書きたてるわ」
貴音「危うく事務所の株が大暴落するところだった、と後にお聞きしました」
美希「冬馬の勘違いのおかげでミキたちの事務所が無くなるところだったの」
冬馬「俺だって責任感じてるよ!だから墓まで建てられても文句言ってねーだろうが!」
翔太「あーあ、なんで僕はその時海外にいたんだろう……絶対ここでリアルタイムに体験してた方が楽しかったのに」
北斗「そう思えるのは翔太だけだな多分」
黒井「おっと、もうこんな時間か。私は部屋に戻るぞ。お前らも時間管理はしっかりしておけ」
美希「じゃあミキは食堂に行ってくるの」
貴音「私も行ってきます」
冬馬「食いすぎんなよお前ら、また俺らが自転車通勤になっちまう」
響「自分はハム蔵と遊ぶぞ!最近忙しくて時間とれなかったからな!」
北斗「…………」
響「どうしたんだ北斗、ハム蔵に何かついてる?」
北斗「いや……電池パックがあるかと一瞬思ってしまって」
響「あ、うん、あの時はごめん……」
翔太「はいもしもし、え、また海外ロケ?僕もう何ヶ月もサタデーナイトクロイーのスタジオ収録に参加してないんだけど……」
~社長室~
黒井「ふう……やれやれ、若いなあいつらは」
黒井「アイドル事務所を立ち上げてもう何年経つか……色々なアイドルを見てきたが」
黒井「あんなに私に絡んでくるアイドルも、ここまで私がアイドルと絡むことも初めてだよ」
黒井「まさか私が高木のような接し方をすることになるとは……む?高木から電話だ」
黒井「なんだ?……なに?私のドラクエⅢのデータを消しただと!?今度という今度は許さんぞ貴様ぁ!!」
黒井「もしもし、私だ!大至急屋上にヘリを持って来い!用意が出来たら呼べ!以上!」
黒井「はあ、はあ……くそ、高木め、いつもいつも……」
黒井「思えば高木のようにアイドルと接してから、いつもこのように面倒事が舞い込んでくる!」
黒井「あっちからジュピターが、こっちからフェアリーが、何かしら抱えて私のところへやってくる!正直処理しきれん!……だが、まあ」
黒井「無駄な体力を使い、いらぬ心労を抱え、振り回されるような毎日だが……あいつらには口が裂けても言わんが……」
黒井「意外に悪くないものだな。こういう日常も……」
961プロの日常 終
黒井社長誕生日おめでとうございました
名義大供養
小鳥さんついに出なかった
元スレ
黒井「961プロの日常」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1441554751/
黒井「961プロの日常」
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コメント一覧 (10)
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- 2015年09月07日 05:53
- 黒ちゃんの妄想の少女を完全に響だと思い込んでたから、ちょっとびびった
-
- 2015年09月07日 06:52
- 流石にあのキャラは読めなかった…
-
- 2015年09月07日 07:49
- なんだこれ? 色々寒いわ
-
- 2015年09月07日 08:46
- できらぁ!
-
- 2015年09月07日 09:39
- っていうか、あのマッチョのも同じ人かよ笑
-
- 2015年09月07日 12:15
- 北斗の応急処置ってなんなんですかねぇ…ピヨォ(ゲス顔)
-
- 2015年09月07日 14:43
- 普通に面白かった
-
- 2015年09月08日 01:48
- 響「え!?自分がフェアリーのまとめ役に!?」
響「できらあっ!」
1作目の甘ダレヨーダがピークの作品
-
- 2015年09月10日 04:15
- ジュピターどころかアイマスのアイドルで最も不憫な翔太に、誰か救いの手を差し伸べてやってはくれないか。
俺には無理だわ(諦観)
愛されキャラだなぁ