漫画主人公「作者に頼まれて名言を生み出すことになった」
作者「やぁ」
主人公「あ、どうも! お久しぶりです!」
主人公「あなたがここに来るなんて……何年ぶりですかね」
主人公「たしか、よほど集中しないとここには来れないはずじゃ……」
作者「うん、そのとおり」
作者「実は困ったことになってね。キミに相談をしに来たんだ」
主人公「困ったこと? いったいなんですか?」
作者「この漫画は、悪の大帝国に挑むレジスタンスの戦いがテーマだ」
作者「そしてキミはレジスタンスの集団に新兵として参加し」
作者「メキメキ頭角をあらわしている」
主人公「そのとおりです」
主人公「この間も俺の活躍で、帝国基地を一つ潰しましたしね」
主人公「もちろん、あなたがやらせた(描いた)ことなんですが……」
主人公「そしていよいよ、帝国軍精鋭との戦いが始まろうというところです」
主人公「物語としては、ここからが本番ってところですね」
作者「そう、そのとおり……ストーリーはどんどん盛り上がっている」
主人公「もしかして、困ったことというのは、今後の展開に悩んでいるのでは?」
主人公「俺はだいぶ強くなったといってもまだまだ発展途上だし」
主人公「逆に帝国はあまりにも強大……。どうすればいいんだ、と」
作者「いや、そうじゃない」
作者「ボクが悩んでるのはもっと単純……いや、基本的なことなんだ」
主人公「基本的?」
作者「実は、読者の意見の中で……『この漫画には名言がない』ってのがあったんだ」
主人公「名言……ですか」
主人公「『天は人の上に人を造らず』とか『青年よ、大志を抱け』みたいな?」
作者「いや、なにも立派なことをいう必要はないんだ」
作者「名言というより、“印象に残るセリフ”といいかえてもいいかもしれない」
作者「この作品といったらこのセリフ、みたいなやつさ」
主人公「印象に残るセリフ……」
主人公「たしかに……あまりないかもしれないですね」
作者「ボクとしても、設定やストーリーを考えるので精一杯で」
作者「セリフ回しはあまり練ってこなかったからねえ」
作者「そうしてできあがった名言を、今度使わせてもらうからさ!」
主人公「ハァ!?」
主人公「な、なにいってんですか!」
主人公「それを考えるのは、作者であるあなたの仕事でしょう!?」
作者「う~ん、だけどボクも色々と忙しいしさ」
作者「ここは一つ“キャラクターが勝手に動いた”ってやつに委ねてみようと思ってね」
主人公(相変わらず勝手なヤツだ……。だけど逆らうわけにもいかないし……)
主人公「分かりました……やってみます」
作者「もしいい名言ができなかったら、主役交代させてもらうから」
作者「キミには戦死してもらって、別のキャラで第二部ってね」
主人公「え!?」
作者「それじゃ!」
主人公「あ、ちょっと待って……!」
主人公「……行っちまった。ホントひどい作者だ」
友「よう、こんなとこでなにやってんだ?」ザッ
主人公「あっ、実は──」
主人公「どうすりゃいいかな?」
友「他ならぬ親友の頼みだ。半日だけ時間をくれ」
友「外の世界に干渉して、他の作品の名言ってやつがどんなもんか調査してみるから」
主人公「え、なんでお前そんなことできんの!?」
友「…………」ギロッ
主人公「わ、分かった、なにも聞かない」
主人公「じゃあ……頼むよ」
友「ああ、任せときな!」
友「ただいま」
主人公「おお、どうだった? 名言ってどういうもんか分かったか?」
友「名言っていっても色んなタイプがあるから」
友「名言とはこういうものだ、って一言でいうのは難しいな」
友「だけど“名言の法則”みたいなもんは、なんとか分かったような気がするよ」
主人公「すげえ! ぜひ教えてくれよ!」
友「んじゃさっそく、講義を始めるぞ」
主人公「目的か……俺だったら帝国を倒す、かな?」
友「まぁ、そうなるだろうな」
友「代表的なのはワンピースのルフィの『海賊王におれはなる!』なんてのがある」
主人公「!」ビビッ
主人公「お~、いいねえ。今ビビッときたよ」
主人公「ここは海でもなんでもないのに、潮風の匂いがしたよ」
友「明確な目的がある主人公の方が、読者ものめり込みやすいだろうしな」
1.目的を告げる
主人公「キレイごとを否定……」
主人公「人は愛があれば生きていける、みたいのを全否定すればいいわけか」
友「そうそう」
友「例としてはカイジの『金は命より重い……!』なんてのがある」
主人公「すげぇな、いいにくいことをいい切っちゃってるところがすげえ」
友「だろ? 思っててもなかなかいえねぇよ、金は命より価値があるなんて」
2.キレイごとを否定
主人公「ふうん、たとえば?」
友「ダイの大冒険の『閃光のように……!』とかだな」
友「人間の一生は短いけど、だから閃光のように生きてやるっていうセリフだ」
主人公「熱いな……」
主人公(俺、閃光のように生きられてるかな……せいぜい線香花火だ)
3.命の素晴らしさを説く
主人公「自己紹介が名言? どういうことだよ?」
友「名探偵コナンの主人公のコナンはこうやって自己紹介するんだ」
友「『江戸川コナン、探偵さ』ってね」フッ…
主人公「おぉ~、かっけえな。キザだけど、悔しいけどかっこいいや……」
4.自己紹介
主人公「比喩? 炎のように熱い俺のハート、みたいな?」
友「ちょっと普通すぎるな。それじゃ名言にはなりにくいよ」
主人公「ぐ……!」
友「ジョジョの奇妙な冒険にはこんなセリフがある」
友「『コーラを飲んだらゲップが出るっていうくらい確実じゃッ!』ってな」
主人公「ぶふっ! す、すげえ……」
主人公「確実とゲップをつなげるなんて……どんな発想だよ……」
5.面白い比喩
友「たとえばブリーチって漫画だと」
友「『なん……だと……』って言い回しが何度も何度も出てくる」
友「そのおかげで、ブリーチといえば『なん……だと……』っていうファンも多い」
主人公「なん……だと……」
主人公「うん、これはたしかに使いやすい」
友「使いやすい……だと……」
主人公「応用した……だと……」
6.同じフレーズ
主人公「何気ない仕草が?」
友「バスケ漫画のスラムダンクの『左手はそえるだけ』ってのは」
友「別に特別な技でもなんでもない、ジャンプシュートの時のコツなんだけど」
友「このセリフが、いざという時に使われるとグッとくるわけだな」
主人公「ジャンプシュートのコツが、ものすごい感動を生むわけか……」
7.何気ない仕草
友「“変わった語尾”なんかも印象に残りやすいな」
主人公「語尾?」
友「NARUTOの主人公のナルトは『ってばよ』って語尾を使うんだが」
友「おかげでこいつのセリフ回しは記憶に残りやすくなってる」
主人公「語尾かぁ……ちょっと工夫してみるかなってばよ」
友「パクるなってばよ」
8.変わった語尾
友「ヘルシングって漫画で敵のボスが『諸君、私は戦争(クリーク)が好きだ』って」
友「延々と戦争について演説をかますシーンがあるんだが」
友「あまりに強烈なので、作品知らない人でもこの演説は知ってるレベルになってる」
主人公「長いセリフは得意じゃないけど……やってみる価値はありそうだな」
9.長いセリフ
友「ドカンとでかい数字でインパクト出してやりゃ、それだけで名言になる」
友「ドラゴンボールのフリーザの『わたしの戦闘力は530000です』とかな」
友「それまで戦闘力数万でやりあってたところに、53万だからな」
友「イヤでも印象に残るってもんよ」
主人公「数字ってのは分かりやすいもんなぁ」
10.大きい数字
友「あとはおまえ次第だ」
主人公「ありがとな……。俺、やってみるよ! 名言、生み出してみせるよ!」
友「がんばれよ」
友「この漫画から、名言が生まれりゃオレだって嬉しいんだからさ」
主人公「ああ、任せてくれ!」
主人公(必ずすごい名言を作って、作者をギャフンといわせてみせる!)
主人公(ああでもない、こうでもない……う~ん……)
主人公(くそっ、なかなかいい名言ができないな……)
主人公(ただでさえ、帝国軍との戦いで忙しい時に……)
主人公(ええい、今夜は徹夜だ!)
………………
…………
……
作者「やぁ」
主人公「ど……どうも」クラッ…
作者「昨日ボクがいった宿題、名言は作ってきたかな?」
主人公「……バッチリです! 自信作です!」
作者「よし、じゃあさっそく聞かせてもらおうか。キミの“名言”を!」
主人公「はいっ!」
俺は帝国を絶対にブッ倒す! ドミノ倒しをするようにな……!
ククク、もちろんブッ倒すって思ってれば報われるとは限らない……!
だが、俺のちっぽけな命を燃やせば大帝国だって倒せるはずだ!
ククク、剣を持つ時は両手で握り締めるだけ……。
俺が本気を出せば帝国兵700000人くらい余裕で倒せるぜ。
ククク、やってやるでヤンス!」
2.キレイごとを否定 「思ってれば報われるとは限らない」
3.命の素晴らしさを説く 「ちっぽけな命を燃やせば大帝国だって倒せる」
4.自己紹介 「俺は主人公で帝国反乱軍の一員だ」
5.面白い比喩 「ドミノ倒しをするように」
6.同じフレーズ 「ククク」
7.何気ない仕草 「両手で握り締めるだけ」
8.変わった語尾 「ヤンス」
9.長いセリフ 「176文字」
10.大きい数字 「700000」
PERFECT!
主人公(き、決まった……!)
主人公「え?」
作者「やたら無駄に長いわ、内容は支離滅裂だわ、しかもヤンスってなんなんだよ」
作者「響くものがなんにもなかったよ」
作者「散々期待させといてこれかよ……ガッカリだわ」
作者「悪いけど、キミもういいや」シッシッ
作者「適当なところで死んでもらって、新しい奴を主役にすっから」
作者「じゃあな」スタスタ…
主人公「…………」
主人公(せっかく人が一生懸命考えたってのに……)
主人公(だいたい、漫画のセリフなんてもんは作者が自分で考えるもんだろがよ)
主人公(それをよりによって自分のキャラクターにやらせて、なにがガッカリだよ……)
主人公(好き勝手、ほざいてんじゃねえ……)
主人公「…………」ブツブツ…
作者「?」
主人公「好ききゃって、ほざいてんじゃねェェェェェッ!!!」
作者「!!!」ビビビッ
作者「おおっ、い、今のはよかったよ!」
主人公「へ?」
作者「心の底からの叫びって感じで、なんかこうビビビッときた!」
作者「“勝手”を噛んじゃって“きゃって”になってたのもちょっと面白い!」
主人公「え、え、え?」
作者「ボクが求めてたのは、そういうセリフだよ! ぜひ使わせてもらう!」
主人公「ど、どうも……」
主人公(なんか知らんが、どうやら名言が生まれたようだ……)
帝国将軍『国が民の命や財産を奪い取ってなにが悪い?』
主人公『好ききゃって、ほざいてんじゃねェェェェェッ!!!』
読者A「なんだこれ? 誤植か?」
読者B「いや、それだけ主人公がブチキレてるって表現だろ? すげえよ」
読者C「この漫画、絵やストーリーはいいのにセリフ回しはイマイチだったからな」
読者D「ようやくこの漫画にも、名言が生まれたな」
読者E「俺、このコマでコラ作ろっと」
友「例の名言、外の世界じゃずいぶん好評みたいじゃんか」
主人公「思いっきり噛んでるから、ちょっと恥ずかしいけどな」
主人公「お前の調査やアドバイスも役に立ったよ。どうもありがとう」
友「苦労したかいがあったよ」
主人公「だけど、読者の心に響く“名言”を生み出す上で一番大切なのは」
主人公「こういうセリフがウケるからこうしよう、とかいうことじゃなく」
主人公「いいたいことを心の底からズバッという、ってことなんじゃないかなと思うよ」
おわり
転載元
漫画主人公「作者に頼まれて名言を生み出すことになった」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1428929217/
漫画主人公「作者に頼まれて名言を生み出すことになった」
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コメント一覧 (21)
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- 2015年04月14日 01:13
- 思ったより盛り上がらなかったな
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- 2015年04月14日 01:36
- このssの作者は発想や例示は上手いんだけど台詞がイマイチ、パッとしなかったよな。
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- 2015年04月14日 01:47
- 好ききゃってが別に名セリフじゃないな
お前はトリコ?みたいな面白さがない
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- 2015年04月14日 02:00
- トリコ()笑
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- 2015年04月14日 02:32
- 編集「好ききゃって?先生、誤字ってるよ。仕方ない写植する前に訂正しとくか。」
てなこともあり得る。
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- 2015年04月14日 02:49
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最後にもう一捻りって感じだ
それと列挙が過多じゃね。話を一旦下げるのに必要なのは分かるが、例えば語尾のくだりはあってもなくても変わらないと思う
10個並べてキリがいいのも分かるけども、8個とかでも十分キリはいい
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- 2015年04月14日 07:30
- 名言って「この発言を俺の作品の代名詞になるくらいにしてやろう」みたいに作るもんじゃないよな
正直場面やキャラと合わせて初めて産まれるもんだと思う
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- 2015年04月14日 08:01
- お前はトリコ?は当時は普通だったけど、後のインフレのせいで改めてみるとクソ笑える
あれは台詞より絵の方が優秀
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- 2015年04月14日 08:12
- 全然整理も網羅もできてないしオチも…
もうちょっと練ってからにすりゃ良かった
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- 2015年04月14日 08:26
- 狙ってポンポン名言を生み出すのは神に近い気がする…
ブリーチは本当に作者が天才だと思った。名言一巻に一個は必ずあるし、ポエムも付いてくる。同じセリフなのはなん……だと……?と、うそ……だろ……?の2つだけ。
後者は敵にすら嘘だろはこっちのセリフだって言われてたから作者はわざと無能描写を描いているって確信した。
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- 2015年04月14日 09:05
- 確かみてみろ
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- 2015年04月14日 12:24
- まそっぷ!
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- 2015年04月14日 12:31
- これを面白いと思って書いたんなら相当残念なヤツ。
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- 2015年04月14日 12:41
- NARUTOに登場する台詞のこなれてない感は異常
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- 2015年04月14日 19:16
- お体に触りますよ…
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- 2015年04月15日 00:01
- こういうのは名言じゃなくて決め台詞って言うんだよ
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- 2015年04月18日 07:25
- アハハハ!ざまぁないぜ!!
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- 2015年04月18日 12:16
- ただしその頃にはあんたは八つ裂きになってるだろうけどな
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- 2015年04月18日 17:13
- ※1
boyを訳しただけだからどっちでもいいだろ
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- 2015年05月21日 04:14
- なん‥‥だと‥‥?がなん…だと…?になってる‥‥だと‥‥?
何だろう、この物足りない感じ。
と言うか、青年よってなんだよ。
少年よ、だろ。