【東京喰種】 永近英良「カネキ・・・いいかげんにしろよ」【前半】

1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/17(火) 23:04:59.77 ID:hBxJmoIW0

東京喰種のssです
:reの内容は含みません
東京喰種のss書くのは初めてなのでゆっくり書いていきたいと思います。
初心者なので暖かく見守っていただけると幸いです。

・下ネタ注意
・キャラ崩壊注意



2:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/17(火) 23:05:50.39 ID:hBxJmoIW0

♯001 [眼鏡]


ヒデ 「で、どの子だ?」

カネキ「いや、今日は居ないみたい」

ヒデ 「あの子とか結構可愛いじゃん?」


トーカ「―――奥の席にどうぞー・・・」


カネキ「いや、ダメだ。メガネかけてない」

ヒデ 「・・やっぱりか」


カランカラン・・

カネキ「あ」

ヒデ 「・・・あの子だろ」

カネキ「うん、あの黒縁メガネ」

ヒデ 「お前・・いい加減にしろよ。メガネしか見てねーじゃねーか」

カネキ「いやだって、メガネかけてるか、かけてないかで雲泥の差だろ!」

ヒデ 「あの子、メガネ取ったら化けるぞ」

カネキ「何言ってるんだヒデは。むしろメガネかけてるから魅力的なんだろ?!」

ヒデ 「分かった!分かったから大声出すな。出禁にされるぞお前」



3:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/17(火) 23:10:28.15 ID:hBxJmoIW0

数日後。

ヒデ 「え?あの子とデート行く約束した?!」

カネキ「ああ・・ついてるよ僕は」

ヒデ 「お前、まさかナンパしたのか?」

カネキ「まさか。たまたま彼女が読んでた本を僕も読んでてね」

ヒデ 「ふーん・・お前本好きだもんな。何の本?」

カネキ「高槻泉の『黒山羊の卵』だよ」

ヒデ 「ああ、最近有名な作者だよな。名前だけ知ってる」

カネキ「内容も素晴らしいけど、なんとヒロインがメガネかけてるんだよ・・!」

ヒデ 「左様ですか」

カネキ「いやー楽しみだなー。夢の本屋デートと眼鏡屋デートができるって考えると夜も眠れないよ」

ヒデ 「・・その二つとも俺には分からないデートだけどな。とりあえず警察のお世話にはならないでくれよ」



4:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/17(火) 23:14:45.50 ID:hBxJmoIW0

デート当日。

リゼ 「・・高槻さん面白いですよね」

カネキ「ハイ!・・ところでこの後、眼鏡屋行きませんか?」

リゼ 「え?眼鏡屋さん??」

カネキ「はい。実はちょっとメガネ探したいなって思ってて。リゼさんてセンスいいのかけてるんで一緒に探してもらえたらなって・・ダメですかね?」

リゼ 「別にいいですよ。カネキさんは普段はコンタクトなんですか?」

カネキ「いえ、視力は悪くないですよ」

リゼ 「あら?それじゃあ伊達メガネ?」

カネキ「ええ、まあ」

リゼ 「そうなんですか。私結構目悪いから、羨ましいな」

カネキ「いえ!そんな素敵なメガネをかけられるリゼさんのが羨ましいですよ!!」

リゼ 「??」

***



5:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/17(火) 23:15:45.80 ID:hBxJmoIW0

リゼ 「もう暗くなっちゃいましたね」

カネキ「そうですね」

リゼ 「・・私、この先のアパートに住んでるんですけど、最近・・喰種の事件あったじゃないですか・・私・・怖くて」

カネキ「よければ送っていきますよ?」

リゼ 「本当ですか?!よかった!ありがとうございます!」

カネキ「い・・いえ//」

リゼ 「でも・・なんだか不思議ですね」

カネキ「え?」

リゼ 「私たち年も同じ、読書の趣味も同じで・・なんだか共通点多いですね」

カネキ「え・・あ・・そうですね」ドキドキ

リゼ 「カネキさん・・私・・//」

カネキ「え・・//」

リゼ 「あなたが・・私のこと見てるの・・気づいてたんです//」

カネキ「ぼっ・・僕//」

リゼ 「私も・・あなたを見てたから!!」
がぶ

カネキ(え?)



6:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/17(火) 23:23:59.37 ID:hBxJmoIW0

リゼ 「うふふふふふ・・・気づかなかったでしょ・・私がまさか『喰種』なんてぇ!!」
ゴキゴキ・・ズグゥゥゥウウウ!!

カネキ「・・・」

リゼ 「・・・」

カネキ「・・・はぁ・・」

リゼ 「・・え?」

カネキ「せっかく・・・最高のメガネ美人と知り合えたと思ったのに・・・」

リゼ 「・・ハイ?」

カネキ「僕に・・・触手属性は無いッッッ!!」


リゼ 「・・えっと」

リゼ 「私・・喰種なんだけど・・」

カネキ「・・でしょうね。目赤いし、触手出てるし」

リゼ 「いえこれは、赫子って言ってね、これでアナタを殺して食べるのよ?」

カネキ「・・・いや確かにポーやマシスンは、究極の愛の形についてカニバリズムをあげてるけど、僕らまだそこまで進んでないし」

リゼ 「・・・・ていっ」
ザシュ

カネキ「ぐえ」



7:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/17(火) 23:28:40.25 ID:hBxJmoIW0

リゼ 「ウフフ・・と・・とりあえず私カネキさんみたいな体型の人好きよ。おいしそうで」

カネキ「う・・まって・・」

リゼ 「あら、命乞い?」

カネキ「いや、メガネ落ちてますよ」

リゼ 「は?」

カネキ「どうせ殺すんなら、ちゃんとメガネかけた顔を見せてくださいよ!」

リゼ 「なんて精神力の強い変態なのかしら」

ズウウウ・・

リゼ 「?」

ドガアアアアン!!

リゼ 「ぐ・・アアアア・・・!!」
ぐちゃ

カネキ「うっ・・僕は・・・グロ属性も・・無い」



ピーポー ピーポー・・・・



8:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/17(火) 23:35:27.91 ID:hBxJmoIW0

それから何日か経って。


嘉納 「経過は順調だよ」

カネキ「はぁ・・そうですか」

嘉納 「退院しても免疫抑制剤を忘れずに飲むようにね」」

カネキ「・・はい」

嘉納 「それとナースから聞いたんだけど、好き嫌い多いみたいだね」

カネキ「え・・いや。前はそんな事なかったんですけど・・なんか食事が全然おいしく感じないんです」

嘉納 「ふむ・・・臓器移植を受けた後、食べ物の指向性が変わってしまうことがあるからね」

カネキ「そうなんですか」

・・・

ヒデ 「退院オメ!ビックガール行こうぜ!!おごるぞ!!」

カネキ「・・うん。ありがとうヒデ」



9:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/17(火) 23:38:05.51 ID:hBxJmoIW0

ヒデ 「なんていうかさ・・残念だったな。リゼさん・・だっけ?」

カネキ「あー・・うん」

ヒデ 「?」

カネキ「いい子だったよ」

ヒデ 「・・そっか」

カネキ「でも触手属性持ってたからなぁ・・」

ヒデ 「・・は?」

・・・

ヒデ 「え・・?リゼさんて・・喰種だったのか?!」

カネキ「うん」

ヒデ 「それってお前・・かなりヤバかったんじゃねーの?」

カネキ「うーん・・確かに殺されかけた気がする」

ヒデ 「ある意味・・死んじゃってよかったのかもな」

カネキ「いや、別にあの子が僕のこと食べようとしなければ僕は構わなかったんだけどな」

ヒデ 「え?・・だって喰種だろ?」

カネキ「まあそうだけど見た目変わんないし、ていうか見た目(メガネ)は僕の理想にかなり近かったし」

ヒデ 「・・なんていうかお前ってホントすげえ奴だな」

カネキ「そう?」



10:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/17(火) 23:44:17.78 ID:hBxJmoIW0

店員 「お待たせしましたー!!」

ヒデ 「お・・来た来た!」

カネキ「・・・」

ヒデ 「にしてもやっぱりビックガールは女の子のレベルも高いな」

カネキ「そう?メガネが居ないよ」

ヒデ 「相変わらず徹底してるな」

カネキ「さ、食べようか・・・う」

ヒデ 「ん?どうした?」

カネキ「これ・・ちゃんと焼けてる?全然おいしそうな匂いしないけど」

ぱく
ヒデ 「いや、俺のはフツーにうまいぞ?生焼けなら石で焼いたら?」

カネキ「ん・・そうする」

ジュウウウ・・

パク
カネキ「うっ・・!!」
豚の内臓?!いやこれは栄養障害で死んだ肥育牛の胃内容物を啜っているかのような悪臭ッ!!

ヒデ 「え?どうした?」

カネキ「ヒデ・・めっちゃまずい」

ヒデ 「嘘?」

カネキ「・・臓器移植を受けてから指向性変わっちゃったみたいでさ」

ヒデ 「そういうことってあるんだな・・」

カネキ「めっちゃマズイけど我慢して食うよ。ヒデが奢ってくれたものだし。それに栄養学的に考えて食べないと体に悪いから」

もぐもぐ・・おええ

ヒデ 「泣きながら食ってる・・」



18:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/18(水) 21:51:50.15 ID:wBmGi8aS0

#002 [高槻]


テレビ パチッ

小倉 『・・・おまけに喰種は舌の作りが我々と異なり、食べ物がメチャクチャまずく感じる・・』

カネキ「・・・(なんか僕みたいだな)」

小倉 『・・人前では我慢して食べるけど、食べた後は強い吐き気に襲われるだろうね・・』

カネキ(まさか・・・リゼさんの臓器を移植されたから僕の体も喰種に・・?)

カネキ「・・腹減ったな・・」

カネキ「・・・」


冷蔵庫ガチャ

もぐっ

カネキ「まずっ!!」

カネキ(でもヒデにおごってもらってから何も食べてない・・)

もぐもぐ・・まずっ!

**


プルルルル・・

ガチャ

カネキ『もしもし?』

ヒデ 『おーカネキ。お前体調大丈夫?』

カネキ『うんなんとか』

ヒデ 『そうか?だったら大学来いよ』

カネキ『うん。明日は行くよ』



19:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/18(水) 21:52:30.10 ID:wBmGi8aS0

ヒデ 『ところでさ、今日駅前の本屋で、お前が好きな高槻ナントカのサイン会やってるらしいぞ』

カネキ『そうなんだ』

ヒデ 『元気出すためにも行ってみたらどうだ?・・まあ体調良かったらだけど』

カネキ『うん、ありがとう。行ってみるよ』


**

【高槻泉先生サイン会 会場】

カネキ「あ、まだやってた」

・・・

カネキ「あ、まだ大丈夫ですか?」

塩野 「あ、ついさっき終わっちゃたんですよー」

カネキ「あー・・そうでしたか」


衝立の向こうの声「こらこら塩野くん」

塩野 「・・はい?」

「まだいいじゃあないか。私はここにいるんだし」

塩野 「しかし・・もう1時間以上押してますよ」

「時間は大事だが、多くの人と触れ合うことによって作家は新たなインスピレーションを得るのだよ」

塩野 「はぁ・・」

「という訳でこれはもはや仕事なのだよ。という訳で次の人こっち来てくださーい!」



20:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/18(水) 21:53:10.15 ID:wBmGi8aS0

カネキ「あ・・なんかすいません」

高槻 「いやいや。お兄さんとこうやって話すことで私も得るものがあるんですよ。で、お名前は?」

カネキ「あ、カネキケンです。曜日の“金”“木”で、名前は研究の“研”です」

高槻 「ふむふむ。カネキさんっと・・そういえば太宰治の出身地が金木町ですね」

カネキ「ああ、そういえば」

高槻 「いいですねえ」

カネキ「いえ・・伊勢大和の芥川が流れる高槻市のがいいですよ」

高槻 「ふむ・・古典お詳しいですねぇ」

カネキ「あ・・いえ、僕大学の国文科なので」

高槻 「ほうほう、さすがですね」

カネキ「いえ、先生の作品素晴らしいです。最初の『拝啓カフカ』から全部読んでます」

高槻 「それは嬉しいですね」

***



21:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/18(水) 21:53:38.35 ID:wBmGi8aS0

高槻 「それにしてもカネキさん・・顔色悪いけど大丈夫です?」

カネキ「あ・・いえ大丈夫です。最近あんまり食欲わかなくて」

高槻 「ふーん・・コレ食べます?」ごそごそ

カネキ「大福・・ですか」

高槻 「お嫌いです?」

カネキ「そんな事なかったんですが・・なんか匂い嗅ぐだけで吐き気がするんですよね」

高槻 「ふぅん・・」

塩野 「先生・・さすがにそろそろお時間が・・」

高槻 「おっと、もうこんな時間か・・・カネキさん」

カネキ「はい?」

高槻 「コレ、私の名刺です」

カネキ「え?」

高槻 「ズバリあなた、面白そう!」

カネキ「はい?」

高槻 「今度もう少しゆっくり話しましょう」



22:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/18(水) 21:54:13.02 ID:wBmGi8aS0

カネキ「え?・・僕と?」

高槻 「はい。文学知識もあるし、なんだか浮世離れした雰囲気をお持ちです」

カネキ「はぁ・・そうですかね?」

高槻 「これは私の取材を兼ねたお願いなので、カネキさんの都合のいい時間と場所で結構ですよ」

カネキ「そうですか・・じゃあ大学の無い時がいいので後で連絡するんでいいですか?」

高槻 「ええ、もちろん」

カネキ「あ・・それと・・」

高槻 「?」

カネキ「高槻先生って、昔メガネかけてませんでした?」

高槻 「え?ああ、拝啓カフカの時はメガネでしたね。今はコンタクトですが」

カネキ「メガネのがッ・・似合いますよ!」

高槻 「はぁ・・そうですかねぇ」

・・・

高槻 「じゃあ連絡待ってますよー」

カネキ「どうも」

**


高槻 「“メガネフェチ”っと」



23:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/18(水) 22:32:44.41 ID:wBmGi8aS0

次の日、上井大学にて。

ヒデ 「おーなんか久しぶり」

カネキ「うん」

ヒデ 「でもなんか顔色悪いぞ」

カネキ「いや・・あれ以来食事がなにもおいしくなくてね」

ヒデ 「・・・」

カネキ「ん?どうしたの?」

ヒデ 「いや・・何でもない」

カネキ「そういえば、高槻先生のサイン会行ったよ」

ヒデ 「お、そうか!どうだった?」

カネキ「なんか取材したいって名刺渡された」

ヒデ 「・・・お前は相変わらず俺の予想の斜め上を行くな」

カネキ「でも・・・少し残念だったよ」

ヒデ 「どうした?」

カネキ「高槻先生ってさ、デビューの時メガネだったんだよ。なのに今はコンタクトだった・・・」

ヒデ 「少しはブレろ」



24:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/18(水) 22:33:32.71 ID:wBmGi8aS0

カネキ「ヒデは最近なんかあった?」

ヒデ 「学園祭実行委員に誘われてさー」

カネキ「・・それって楽しいの?」

ヒデ 「相変わらずバッサリだなー、お前は」

カネキ「本当ヒデって行事ごと好きだよね。僕と違って」

ヒデ 「カネキもやれば楽しいぞ」

カネキ「僕はやめておくよ」

ヒデ 「だろうなー・・・あー・・しゃあ無いな。今回は俺もやめとくわ、実行委員」

カネキ「え?別に僕に合わせなくていいよ」

ヒデ 「バカお前、どう考えてもお前の取材の方が面白そうだろ」

カネキ「えー・・たぶん同席はできないと思うけどいいの?」

ヒデ 「おう!」



25:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/18(水) 22:34:08.62 ID:wBmGi8aS0

ヒデ 「で、いつ取材なの?」

カネキ「あーこっちから日時場所指定していいって話だからまだ決まってないんだ」

ヒデ 「ほー・・でいつにすんの?」

カネキ「とりあえず大学無い土曜かなー」

ヒデ 「場所は?」

カネキ「うーん・・あ」

ヒデ 「?」

カネキ「実はコーヒーはおいしいって感じるんだよ」

ヒデ 「・・は?」

カネキ「いや、味覚の嗜好性変わったって言ったじゃん」

ヒデ 「ああ」

カネキ「だからどこかコーヒーショップとか」

ヒデ 「ならさーあそこはどうだ?」

カネキ「?」

ヒデ 「お前がリゼさん見つけた喫茶店」

カネキ「・・いいね」

ヒデ 「じゃあ決まりだな。俺も違う席座ってていいだろ?」

カネキ「ツッコミは無しだよ」

ヒデ 「まあ、お前が法に触れなければな」



26:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/18(水) 22:36:09.23 ID:wBmGi8aS0

カネキ「じゃあ高槻先生にメールしようかな」

ヒデ 「おう」

カネキ「えっと・・」
ピッ・・ピッ・・・



~♪
高槻 「おっ・・ケンカネ君から早速メール!」

『この間のお話ですけど、今週土曜日13時に20区の喫茶店“あんていく”でどうですか?』

高槻 「マジか」



ヴー・・ヴー・・
カネキ「あ、返信」

カネキ「・・・OKだって」

ヒデ 「おし!」

カネキ「とりあえずさ、今日授業の後、あの喫茶店行かない?」

ヒデ 「いいけど何すんだ?」

カネキ「いや、あそこのコーヒー飲みたいだけ。またメガネ美人に出会えるかもしれないし」

ヒデ 「・・・お前って本当にリゼさんに殺されかけたんだよな?」

カネキ「え?うんたぶんそうだけど」

ヒデ 「うん・・まあいいや。今更」



34:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/20(金) 00:59:40.70 ID:CzPKoOuq0

#003 [変化]


カランカラン

トーカ「い・・・!いらっしゃいませ」

カネキ「えーっと・・」

トーカ「奥のお席にどうぞ」

カネキ「あ、待ち合わせなんで」

トーカ「あ・そうですか。失礼しました」


ヒデ 「あ、霧嶋さん、そいつこっちです!」

トーカ「あ・・えっと、ハイ」

カネキ「あ、ヒデ。遅れてごめん」

ヒデ 「別に大丈夫だけど、どうしたんだ?」

カネキ「ちょっと本屋に寄っててさ」

ヒデ 「そうか・・・で、そのメガネは何だ」

カネキ「え?伊達メガネだよ」

ヒデ 「そういうことを聞いてるんじゃない」



35:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/20(金) 01:00:25.62 ID:CzPKoOuq0

カネキ「コレ、デートの時にリゼさんに選んでもらったんだ」

ヒデ 「ああ・・そうなんだ」

カネキ「うん。いいセンスでしょ?」

ヒデ 「お前さ・・なんだかんだ言ってリゼさんのこと好きだったのな」

カネキ「うん。理想的なメガネだったよ」

ヒデ 「もう少し本体も見てあげてください」


カネキ「そういえばさっき店員の子の名前呼んでたけど知り合い?」

ヒデ 「うんにゃ、さっき名前聞いた」

カネキ「ナンパ?!変な事するなよ」

ヒデ 「カネキに言われたくないな」



トーカ「・・・」



36:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/20(金) 01:00:59.77 ID:CzPKoOuq0

ずず・・
カネキ「ふー・・」

ヒデ 「ん?」

カネキ「あのさ・・ヒデに相談があるんだけど」

ヒデ 「珍しいな。どうした?」

カネキ「実はさ・・・臓器移植受けてからちょっと変なんだ」

ヒデ 「・・・ああ」

カネキ「明らかに移植受ける前と変わったことがあって」

ヒデ 「おう」

カネキ「・・・まずこれ見てくれる?」

ヒデ 「本?」
パラパラ・・

ヒデ 「!・・・おまえコレ」

カネキ「そう、BL小説だよ」

ヒデ 「・・俺、本読まないけどコレが危険物だってことは分かるぞ」

カネキ「僕もそう思ってたよ」



37:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/20(金) 01:01:43.35 ID:CzPKoOuq0

カネキ「これってさ、基本的には書き手も読み手も女性で、しかも特殊な思考の持ち主のものだと思う生んだ」

ヒデ 「ああ、たぶんそうだろうな」

カネキ「僕、本は何でも読むけどこのジャンルには全く興味なかった」

ヒデ 「ああ」

カネキ「でも、最近このジャンルもアリかなって」

ヒデ 「・・・・・」

カネキ「勘違いしないでほしんだけど、僕はゲイじゃないし、現実世界にそういうの求めてない」

ヒデ 「そうであることを願うよ、俺も」

カネキ「いや、僕が言いたいのは、以前の僕なら興味なかったのに、移植受けてからそういう嗜好が出始めたってこと」

ヒデ 「・・そうなのか?」

カネキ「臓器移植技術が確立されてからしばらく経ったころ、それを題材にした本が多数出たんだけど、その中に、『臓器は意志を持っていて移植を受けるとドナーの性格がレシピエントに移ることがある』っていうのがあったんだ」

ヒデ 「ん・・?それってつまり・・」

カネキ「つまり僕が推測するに、リゼさんはBL小説を嗜んでいた」

ヒデ 「えー」



38:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/20(金) 01:02:23.59 ID:CzPKoOuq0

カネキ「現に喰種であるリゼさんの臓器移植されて、僕の体も喰種になってるみたいだし」

ヒデ 「いや、でもそれとこれとは・・・ん?!」

カネキ「ん?どうしたの?」

ヒデ 「お前・・さらっと何言ってんの?!」

カネキ「え?BLのこと?」

ヒデ 「じゃなくて、お前の体が喰種って!!」

カネキ「え?だって普通の食べ物食べると吐き気がして、コーヒーだけ飲めるってどう考えても喰種でしょ?」

ヒデ 「いや・・でも・・」

カネキ「それに、この前包丁で体を傷つけてみたけど刃が通らなかったし、若干人間がおいしそうに見える」

ヒデ 「・・・お前、それでよくそんな平常心保てるな」

カネキ「まあ、なってしまったものはしょうがないし、そもそも移植受けてなけりゃ死んでたから。死ぬよりは全然マシ」

ヒデ 「はあああ・・・心配して損したわ」

カネキ「?・・ああ、やっぱりヒデは気づいてた?」

ヒデ 「あー・・・まあなんとなく疑ってはいた」

カネキ「やっぱりヒデは鋭いなぁ」



39:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/20(金) 01:03:04.94 ID:CzPKoOuq0

ヒデ 「だけどさ、実際どうするんだよ。飯食えないんだろ?」

カネキ「いや、気合で食ってるよ。不味いけど」

ヒデ 「そ・・そうか」

カネキ「でも他の人にバレるのはやっぱりまずいよね」

ヒデ 「まあ・・喰種対策法・・だっけ?たしか喰種ってヒトとして扱わないって法律あったよな」

カネキ「うん。たしか捜査官に捕まえられるんだよね」

ヒデ 「そうそう。だからばれたらお終いだぞ」

カネキ「まあ、バレない様に頑張るよ。それに僕の場合は不可抗力でなったわけだし、犯罪行為しなければ不問にしてもらえるかもしれない」

ヒデ 「そう、うまくいくか・・?」


ヒデ 「ていうか、俺に言って良かったのかよ」

カネキ「うん、たぶん隠してもばれるし。それにヒデは僕の味方だって分かってるから」

ヒデ 「あ・・ああ。そうだけどさ」

カネキ「それよりも問題はBL趣味が追加されたことだよ。世間では腐男子って言うみたいだよ。僕のこと」

ヒデ 「お前の心配事の優先順位は明らかに間違っている」

カネキ「まあ、読める本の幅が広がったって思えばむしろウェルカムなんだけどね」

ヒデ 「ポジティブが過ぎるぞ」



40:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/20(金) 01:03:39.87 ID:CzPKoOuq0

トーカ(どういうことだ・・・あのメガネかけてる男。確かリゼが狙ってたはずだよな)

トーカ(ここ最近リゼの奴来ないし、死んだって噂が流れてる)

トーカ(そして、そのリゼが狙ってた奴が普通に来たってことは・・)

トーカ(アイツ・・・リゼを殺ったのか?)

トーカ(まさか・・・白鳩?!)


***


ヒデ 「あのさ」

カネキ「ん?まだ誘い受けの説明の途中だよ?」

ヒデ 「・・もう勘弁してくれ」

カネキ「しょうがないなぁ・・」

ヒデ 「・・お前土曜日にインタビュー受けるんだったよな」

カネキ「うん、そんな大層なものじゃないと思うけど」

ヒデ 「気を付けた方がいいと思うぞ」

カネキ「何を?」

ヒデ 「お前が喰種になってるってことばれない様にだよ」

カネキ「あー・・やっぱりそう思う?」

ヒデ 「そりゃそうだろ!」



41:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/20(金) 01:04:16.77 ID:CzPKoOuq0

カネキ「うーん・・・頑張るよ」

ヒデ 「ばれたらたぶん通報されるぞ」

カネキ「そうかなぁ」

ヒデ 「当たり前だろ」

カネキ「そうだね」

ヒデ 「ばれちまったら・・俺ももう何も出来ねーから」

カネキ「うん・・ありがとう。気を付けるよ」

ヒデ 「ああ」

カネキ「ヒデ」

ヒデ 「ん?」

カネキ「ありがとう」にこっ

ヒデ 「あ、ああ」

ヒデ (現実世界ではBL求めてないって話、本当だよな?)



49:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/20(金) 22:51:49.67 ID:CzPKoOuq0

#004 [親子]


土曜日、“あんていく”にて


カネキ「先生遅いなぁ・・」

トーカ「・・マンデリン、お待たせしました」

カネキ「あ、ありがとうございます」


トーカ(・・・こいつら、また来てる・・しかも二人離れて座ってる・・)


トーカ「ラテお待たせしました」

ヒデ 「ありがと!霧嶋さん!!」

トーカ「い・・いえ」

ヒデ 「ラテアート、可愛いネコだね!」

トーカ「あ・・ありがとうございます(ウサギのつもりなんだけど・・)」

ヒデ 「~♪」

トーカ「あ・・あの!」

ヒデ 「ん?」



50:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/20(金) 22:52:27.36 ID:CzPKoOuq0

トーカ「きょ・・今日はあちらの方と一緒じゃないんですね」

ヒデ 「ん?・・ああカネキのことか」

トーカ「え?あ、ハイ(“カネキ”って言うのかァ・・)」

ヒデ 「うん、今日はね、あいつにお客さんだから。俺は一人で霧嶋さんのラテアート見に来ただけ!」

トーカ「あ・・アハハ」


カヤ 「トーカ、ちょっとこっち手伝ってくれない?」

トーカ「あ、ハイ」


・・・


カラン カラン

高槻 「・・・えーっと、あ、居た。お・く・れ・て・ごめんね~」


芳村 「!!!」


高槻 「ゴメン、ゴメン。道に迷ってしまいまして~」

カネキ「・・・」

高槻 「ん?どした?」

カネキ「・・いえ、別に何でもないです(メガネキターーーーーー!!)」

高槻 「あー店員さん、私ブレンドでー。あとカネキさん鼻血出てますよ」



51:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/20(金) 22:53:12.87 ID:CzPKoOuq0

高槻 「さて、カネキさん、早速いいですか?」

カネキ「はい・・ていうかどんな感じでやればいいのか全然わからないんですが・・」

高槻 「いえいえ、コーヒー飲みながらお話しましょうってだけですよー」

カネキ「はぁ・・そうですか」


トーカ「あ、ブレンドです」

高槻 「お、どうもです」


カネキ「・・あれ、先生のコーヒーカップ、なんかアンティーク調で可愛いですね」
高槻 「ん?おや、カネキさんのとは違いますね。いろんなカップで提供しているんでしょうか」

カネキ「うーん・・僕何回か来てるんですがそのカップは初めて見ましたよ」

高槻 「ほー、そうですか」



古間 「お疲れサマ」

トーカ「あ、コマさん。お疲れです」

古間 「・・なぁトーカちゃん、店長何かあったの?」

トーカ「え?別に何もないと思いますが・・」

古間 「ボクの見間違えじゃなければバックヤードで泣いてたんだけど・・」

トーカ「何それ見たい」



52:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/20(金) 22:54:05.40 ID:CzPKoOuq0

高槻 「・・カネキさんはご家族は?」

カネキ「あ、両親とも亡くなってます」

高槻 「あ、そうですか・・すみません」

カネキ「いえ、もうずいぶん前のことですし」

高槻 「・・・差し支えなければ、どんな方だったか教えてもらえます?」

カネキ「ええ、いいですよ」


カネキ「・・・という訳で母は過労で亡くなり、僕はその叔母のところでやっかいになることになったんです」

高槻 「・・・気軽に尋ねてしまってごめんね」

カネキ「え?・・ああ、別に大丈夫ですよ」

高槻 「カネキさんはそういった経験を経て、その達観したような雰囲気をお持ちになったんですね」

カネキ「うーん・・たぶん違うと思いますよ。僕ってもともとこんなでしたから」

高槻 「そうですか?」

カネキ「母はよく自己犠牲を貴ぶよう僕に教えてくれましたが、僕的にはそれは一つの意見でしかないなぁと思ってましたし」

高槻 「ほぅ」



53:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/20(金) 22:55:27.46 ID:CzPKoOuq0

高槻 「・・では今はその叔母様のところで同居を?」

カネキ「いえ、今は一人暮らししてます」

高槻 「叔母様が母親代わりになったんですねー」

カネキ「ええ、最初はそうだったんですが、僕の成績が叔母さんの息子の成績を越え始めるとだんだん険悪になってしまって」

高槻 「・・・」

カネキ「夕食なども、千円渡されるようになりました」

高槻 「それは・・お辛かったですね」

カネキ「まあ最初は。でもその千円で食材を買ってきて僕が夕食を作るようになってら関係は改善しました」

高槻 「え?」

カネキ「で、そのイトコに勉強教えて彼も志望校に合格したので」

高槻 「・・・」

カネキ「まあでも僕は一人の方が気が楽なので一人暮らししてますが」

高槻 「・・・カネキさんは生活力ありますねー」

カネキ「そうですか?」

高槻 「ええ。でもそろそろ鼻血拭かないと貧血になりますよ」



54:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/20(金) 22:56:16.78 ID:CzPKoOuq0

高槻 「あ、そういえば最近はちゃんと食べてますかー?」

カネキ「いえ・・相変わらずですね」

高槻 「何か切っ掛けとかあったんですか?」

カネキ「いや、少し前事故にあって、臓器移植を受けたんですよ。それからですね」

高槻 「・・・カネキさんはもはや自叙伝でも出した方がいいんじゃないんですかね?」

カネキ「?」

高槻 (臓器移植・・ね)



芳村 「・・・」キュッキュッ

カヤ 「店長」

芳村 「・・・」キュッキュッ

トーカ「あの、店長?」

芳村 「・・・」キュッキュッ

古間 「芳村さーん」

芳村 「・・・」キュッキュッ

トーカ(今度は笑顔でカップを磨き続けてる・・・)



55:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/20(金) 22:57:06.39 ID:CzPKoOuq0

高槻 「ねえカネキ君」

カネキ「え?あ・・ハイ」

高槻 「これは相談なんだけど」

カネキ「?」

高槻 「私のところでアルバイトしない?」

カネキ「ええ?」

高槻 「君、国文科でしょ?知識もあるし、ちょっと普通じゃない考え方。ぜひアシスタントに欲しい!」

カネキ「はぁ・・でも僕アルバイトとかしたことないですし・・」

高槻 「・・実は君みたいに臓器移植の後、食欲が出なくなった人も食べられる食事のアテがあるんだよ」

カネキ「え?!それは嬉しいですけど・・(ていうかたぶん人の肉じゃないとダメなんじゃないか?)」

高槻 「それと、これからはコンタクトやめてメガネにしようかと思うんだけど」

カネキ「これからよろしくお願いします」



56:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/20(金) 22:58:15.42 ID:CzPKoOuq0

ヒデ 「お、話し終わったみたいだな」

ヒデ 「・・・つーかあの先生結構きれいな人だな」

ヒデ 「・・まあアイツは完全にメガネしか見てなかったな・・・」


高槻 「とりあえず明日は大学無いでしょ?」

カネキ「あ、ハイ」

高槻 「ならばとりあえず私の仕事場に来ない?」

カネキ「今からですか?」

高槻 「ええ、例の、ゴハンでも」

カネキ「まあ、先生が大丈夫なのであれば(なんか変な展開になってきたな・・ヒデにはあとで連絡だな・・)」

高槻 「じゃあ行こうか、私の家に」←比較的大きい声


ヒデ 「えっ?!」


芳村 「・・・」ピキィ・・!


高槻 「ごちそうさまー」

カヤ 「あ、ハイお勘定ですね・・・・店長、赫眼仕舞ってください・・」



68:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 14:19:20.29 ID:1z9h/kK30

#005 [宿泊]


高槻 「カネキ君、好きな食べ物って何?」

カネキ「うーん・・以前はハンバーグが好きだったんですが・・」

高槻 「ハンバーグ・・!」

カネキ「この前お店で食べたんですが、やっぱりまずく感じちゃって・・」

高槻 「ふむふむ・・しかし私秘伝の味付けならばいけるかもしれませんよ?」

カネキ「はぁ・・」

高槻 「実績もあります」

カネキ「じゃあお願いします・・でも、食べられなかったらゴメンナサイ」

高槻 「いいって!実は私も好き嫌い比較的多いですからねー」

カネキ「そうなんですか」

高槻 「とりあえずスーパーに行きましょう。挽肉無いので」

カネキ「はい」


ウイーン(スーパーのドア音)


ヒデ 「・・・スーパーに入った・・なんで取材受けてスーパーで買い物することになってるんだ??」



そのころ“あんていく”では・・

芳村 「・・・・」そわそわそわそわ

ヨモ 「・・・・トーカ・・何があった」

トーカ「私が聞きたいですよ」

ガチャン!!
芳村 「・・・」そわそわそわそわ

カヤ 「あ・・また割った」

古間 「・・魔猿クリーニングサービス通りまーす」



69:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 14:19:51.52 ID:1z9h/kK30

ウイーン

高槻 「よし、じゃあ行こうかー」

カネキ「はい」


ヒデ 「カネキが買い物袋を持って出てきた・・・これ以上ついてくのはよそう・・」


***


カネキ「お邪魔します」

高槻 「どうぞー」

カネキ(ここが高槻先生の仕事部屋か・・さすが本だらけだな・・)

高槻 「ハハハ・・あんまり掃除してないから汚いけどねー」

カネキ「いえいえ」

高槻 「じゃあ早速作ってみるよ、ハンバーグ」

カネキ「え?もう?」

高槻 「だってもう5時だし、夕食として」

カネキ「ホントすいません」

高槻 「よかったらその辺の本でも読んでておくれ」

カネキ「じゃあお言葉に甘えて・・」



70:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 14:20:23.56 ID:1z9h/kK30

ジュー・・・


カネキ(・・・ハンバーグ焼いてる・・・あれ?なんか嫌な吐き気起きないな・・)

高槻 「~♪」

カネキ(・・・なんか・・懐かしいな・・母さんを思い出す・・)

カネキ(・・でも結局その後自分で使った方がおいしくできたんだよなぁ・・)

高槻 「さて」

カネキ「え?」

高槻 「あとは蒸らすから休憩ー」

カネキ「あ、そうですか」

高槻 「何読んでるんですかね?」

カネキ「・・あ」

高槻 「“真夜中の相棒”」

カネキ「いえ・・たまたま手に取ったんですよ」

高槻 「・・私の書いた“ルサンチメンズ”に出てくる男性同士の気わどめの友情あるじゃないですか」

カネキ「・・ええ」

高槻 「あれ書くための参考にいくつか読んだんですよー」

カネキ「そ・・そうですか」

高槻 「作家としてはあらゆる方向にアンテナを張ってなければいけないと思いますのでー」

カネキ「スバラシイデスネー」


※“真夜中の相棒”は比較的有名なBLの雰囲気の強い小説です



71:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 14:21:01.96 ID:1z9h/kK30

カネキ「・・・という訳で、臓器移植後そういう本を読むことにも抵抗なくなったんです」

高槻 「ほー」

カネキ「・・・・信じてませんね」

高槻 「いえいえ。そういう事あると思いますよー味覚と同じで」

カネキ「ええ」

高槻 「でも、それだけ変わり者のカネキ君ですからねー今更そういう属性があっても驚きませんけどねー」

カネキ「アハハハハハ(空笑)」

高槻 「では、ハンバーグ食べましょうか」

カネキ「・・ええ」


・・・


ぱくっ

カネキ「・・・あれ、吐き気起きない」

高槻 「どうですかぁー?」

カネキ「ええ、なんというか、食べられます」

高槻 「おいしくはないですかー」

カネキ「いっ・・いえ、僕移植の後、味覚相当バカになってるので。それで普通に食べられるってことは、これは相当おいしいってことですよ」

高槻 「そうですかねぇ」



72:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 14:21:43.43 ID:1z9h/kK30

カネキ「あのーコレの味付けの仕方教えてもらえません?」

高槻 「うーん・・・ダメ教えない」

カネキ「え?」

高槻 「だって教えたらカネキ君自分で作るでしょう?」

カネキ「ええ・・そのつもりですが」

高槻 「食べたくなったらうちに来てくださいな」

カネキ「え」

高槻 「こんな面白いアシスタント、手放したくないので」

カネキ「はぁ・・」

高槻 「それに、私自身カネキ君に興味あるので」にっ

カネキ「・・え」ドキ

高槻 (すごく興味あるよ、ケンカネ君♡)
高槻 (君は今気づいてないけど、君の左目すごく綺麗だよ・・フフ)

高槻 「それにしても、今まで吐き気して何も食べてなかったんですか?」

カネキ「いえ、普通に食ってました。気合で」

高槻 「・・・・そーですかー」

カネキ「そういえば先生は食べないんですか?」

高槻 「あー食べますよ。一緒に食べようかと。よっと」
ゴトッ(ハンバーグ皿)


カネキ「はい・・・え?」

高槻 「・・・いや、食べるときはメガネ取りますよ、曇るので」

カネキ「そ、そーですよねー(チクショウそれがいいのに)」



73:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 14:22:33.09 ID:1z9h/kK30

高槻 「さて、この後今日特に予定無ければアルバイトお願いしたいのですが」

カネキ「え?まあ特に予定はないですが・・」

高槻 「実はもう少しで新作を出すつもりなんですが、その最終チェックをしてほしいんですよー」

カネキ「えっ?!新作出るんですか?!」

高槻 「ええ」

カネキ「あ・・すいません。で、チェックって何を?」

高槻 「ここに原稿があるので文法の誤りとか誤字がないかのチェックをお願いします」

カネキ「分かりました・・・なんか新作を一足先に読めるって嬉しいですね。今さらですが、大ファンなので」

高槻 「アハハ・・嬉しいけど仕事目線でお願いねー」

カネキ「あ、はい。スイマセン」


・・・

高槻 「私は隣の部屋で次の作品考えてるから。眠くなったらそこのベッドで寝ていいよー」

カネキ「え?」

高槻 「じゃあねー」

パタン

カネキ「・・・まいいや。ゆっくり読もう」



74:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 14:23:32.82 ID:1z9h/kK30

チュン チュン・・

カネキ「ん・・・あ、しまったいつの間にか寝てた・・(毛布が掛けられている・・)」

高槻 「おはよー」

カネキ「あ、おはようございます」

高槻 「読み終わった?」

カネキ「はい、えっと・・」

高槻 「あー朝ご飯食べながらにしよう」

カネキ「あー了解です」

・・・


高槻 「じゃあ食べようか」

カネキ「はい(パン、味噌汁、ソーセージ、それとコーヒーか・・)」

高槻 「ん?やっぱり食べられそうにないかい?」

カネキ「えっと・・大丈夫です」
もぐっ

高槻 「・・・」

カネキ「うっ・・・もぐもぐ」

高槻 「あー・・無理して食わんでいいよー」

カネキ「いえ、大丈夫ですから・・・ん?」

高槻 「どした?」



75:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 14:24:33.83 ID:1z9h/kK30

カネキ「えっと・・ソーセージいけますね」

高槻 「おや、違いが分かる男ですねカネキ君は」

カネキ「?」

高槻 「それは通販で買ったお取り寄せなんですよー(嘘)」

カネキ「へー・・それ教えてく」

高槻 「教えません」

カネキ「ですよねー」

・・・

カネキ「あ、で、新作の“吊るしビトのマクガフィン”ですが」

高槻 「あ・どうでした?」

カネキ「43章と64章と182章、セリフの前後にある文法の間違いは、囚人の心理を表すためにワザとってことでいいんですよね?」

高槻 「ええ」

カネキ「“こうよう”って言葉を“高揚”と“昂揚”の二種類で書いてるのもわざとですよね?」

高槻 「ええ、ええ」

カネキ「それと・・これは間違いとかじゃないんですが、看守長のオオタキミオは『塩とアヘン』のタニザキ捜査官の叔父ですか?」

高槻 「いやー・・さすがですねー。塩野君とは大違いですなー」

カネキ「?」

高槻 「いえいえ、前は出版社のヒトに見てもらってたんですがねー、的外れのことばかり言われてたのでー」

カネキ「ハハハ・・」



76:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 14:26:16.47 ID:1z9h/kK30

高槻 「さて、じゃあ今日のアルバイトはおしまいです。ありがとうございました」

カネキ「いえ・・じゃあ僕は帰りますね」

高槻 「ハイハイ。あ・それと一応言っておきますが読んだ内容は発売まで内緒ですよー」

カネキ「ええ、もちろんです」

高槻 「よろしい。ではまた今週末にお願いできますかね?」

カネキ「僕、特にサークルとか入ってないんで、いつでもいいですよ。授業無い時とテスト前なら」

高槻 「おっけー。じゃあメールするねー」

カネキ「はい」

高槻 「ではでは」

ガチャ


***

カネキ「あ・・ヒデにメールするの忘れてた・・」

ピッ・・ピッ・・ピッ・・


ヒデ 「霧嶋さん今日のラテアートのネコ、耳長いね?」

トーカ「え・・そうですか・・ハハ(だって・・ウサギだもん・・)」

~♪

ヒデ 「ん?カネキからだ・・」

『おはよう、結局先生の家で泊まりこみのバイトだったよ。昨日は連絡しないでゴメン』

ヒデ 「ぶばっ!!」



77:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 14:27:22.74 ID:1z9h/kK30

ピリリリリリリリ

カネキ「あれ?ヒデから電話だ」


カネキ「もしもし?」

ヒデ 「おまっ・・朝帰りかよ?!」

カネキ「え?まあ結果的にそうかな」

ヒデ 「・・本当にただのバイトか?」

カネキ「え?バイトだけど。あ・夕食と朝食はご馳走になった」

ヒデ 「夕食と朝食ご馳走?!・・って言うか先生と二人きりだったんだろ?ふつうそこまでするもんか?」

カネキ「うーん・・まあでも(新作発売までは)詳しくは言えないけど役得だったよ。このバイト、サイコーだよ」

ヒデ 「役得って・・・お前・・大人になったんだな・・・」

カネキ「ヒデ・・なんか勘違いしてない?」

ヒデ 「・・・とりあえず詳しくは月曜にも教えてくれ」

カネキ「え・・うん、教えられる範囲までなら」

ヒデ 「・・・・」

ピッ



78:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 14:27:58.58 ID:1z9h/kK30

ヒデ 「・・・・」
ズズ・・

ヒデ 「・・・ごちそうさま」

トーカ「え・・あ、ハイ」

ヒデ 「カネキ・・お前は俺の手の届かないところに簡単に行ってしまうんだな・・」

トーカ「え・・(カネキって・・たしかあのリゼを殺ってかもしれない・・)」

ヒデ 「・・お代ここに置いときます」

カランカラン・・

トーカ「あ・・・また聞けなかった・・」

カヤ 「トーカ!ドアCLOSEにして!!」

トーカ「え?ハイ・・?」

古間 「芳村さん落ち着いて!赫子しまって!!」

芳村 「・・・・」ズズズズ・・・!!

古間 「よしむ・・えぶしッ!!」

トーカ「入見さん・・私には無理です」



85:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 22:45:40.95 ID:1z9h/kK30

#006 [永近]


月曜日、上井大学にて。


ヒデ 「あ、カネキ先輩おはようございます」

カネキ「うん、やっぱ完全に誤解してるね、ヒデ」

・・・

ヒデ 「はー・・そういう事か」

カネキ「そうだよ全く・・・確かにいいメガネだったけどね」

ヒデ 「・・・はぁ・・」

カネキ「それにしてもさ、さすがだよ先生は」

ヒデ 「何かあったのか?」

カネキ「僕のメガネ嗜好も、BL嗜好もバレてしまった。さすがの洞察力だよ」

ヒデ 「いや結構分かりやすいからな」

カネキ「それでさ、僕考えたんだけど」

ヒデ 「ん?」

カネキ「いずれ、僕が喰種ってこともバレてしまうかもしれない」

ヒデ 「・・・気を付けろよ?」

カネキ「うん・・でも万が一がある。だから」

ヒデ 「?」

カネキ「学校以外で・・・ヒデとはもう会わない方がいいかもしれない」

ヒデ 「えっ?」



86:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 22:46:43.27 ID:1z9h/kK30

カネキ「バレたとき、ヒデに迷惑がかかる」

ヒデ 「俺は・・大丈夫だぜ?」

カネキ「喰種対策法、僕もちゃんと読んだよ。喰種を喰種として匿った場合、どれだけ重い罪になるか知ってる?」

ヒデ 「だけどさ・・」

カネキ「僕にとってヒデは本当に大切な友達だよ」

ヒデ 「カネキ・・」

カネキ「だから・・・さ」

ヒデ 「・・・」

カネキ「でも、学校では普通に今まで通り接してよ?」

ヒデ 「・・・・あたりめーだろ」

カネキ「・・まあたまには一緒に食事もしたいな。むしろいきなり接点無くなるのも不自然だし」

ヒデ 「・・・そうだな」

カネキ「頻度を減らそうってこと」

ヒデ 「・・・あ、でもお前、飯食って大丈夫なのか?その・・吐き気とか」

カネキ「あ、それは平気。気合でカバーできるから」

ヒデ 「そ・・そうか」



87:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 22:47:24.11 ID:1z9h/kK30

ヒデ 「あ・・それならさ、あの喫茶店にしようぜ」

カネキ「あんていく?」

ヒデ 「おう。霧嶋さん、結構俺のタイプなんだよなー!」

カネキ「・・・・ヒデ」

ヒデ 「?」

カネキ「僕さ、喰種になって分かるようになったことがあるんだ」

ヒデ 「え?」

カネキ「例えばさ、ヒデはおいしそうな匂いがするんだよ」

ヒデ 「怖えこと言うなよ」

カネキ「いや、食ったりしないよ。常識的に考えて」

ヒデ 「まあ・・分かってるけどよ」

カネキ「でさ、高槻先生もそれなりにおいしそうな匂いがする」

ヒデ 「?」

カネキ「同じ講義受けてるみんなもおいしそうな匂いがする・・・でも」

ヒデ 「・・・」

カネキ「“あんていく”の店員さん、全然そういう匂いがしない」

ヒデ 「・・え?」

カネキ「霧嶋さん・・だっけ?それに他の店員さんも、おそらく喰種だよ」

ヒデ 「マジ・・・か?」

カネキ「リゼさんがよく来てたのも納得できるし、そう考えると他のお客も喰種が多いかもしれない」

ヒデ 「・・・冗談だろ?」

カネキ「だからあそこにはもう行くのやめよう。ヒデが危ない」



88:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 22:48:09.32 ID:1z9h/kK30

カネキ「じゃあ僕は帰るよ。また明日大学で」

ヒデ 「・・・ああ」


ヒデ (・・・・・馬鹿野郎)

***


ヒデ 「・・・霧嶋さん・・ホントに喰種だったのか・・・?」

ヒデ 「・・・あー考えてもしょうがねぇな」

ヒデ 「カネキ・・・」

『学校以外ではもう会わない方がいいかもしれない』
『僕にとってヒデは本当に大切な友達だよ』

ヒデ (アイツはドライだけど・・たぶんアイツなりに悩んだ答えなんだろうな・・)

ヒデ (なら・・・俺れも出来る限りのことをカネキのためにしてやりたい・・)


ヒデ 「ん・・・待てよ?」



89:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 22:48:54.10 ID:1z9h/kK30

嘉納総合病院。


看護師「永近さーん、永近英良さーん」

ヒデ 「へーい」

ガチャ

嘉納 「で、今日はどうしました?」

ヒデ 「実は最近食べ物を見ると吐き気がして・・」

嘉納 「ほう・・・」


・・・

嘉納 「うーん・・特に異常はないですからストレス性のものかもしれませんね」

ヒデ 「そうですか・・ところで嘉納先生」

嘉納 「ん?」

ヒデ 「先生って・・例の臓器移植を執刀した先生ですよね?」

嘉納 「・・・ああそうだよ・・・倫理的ににね、よくない事なのは確かだったよ。ニュースで言ってることは正しいよ」

ヒデ 「でも、そうしなきゃ、カネキを助けられなかったんですよね?」

嘉納 「ん?」

ヒデ 「カネキは、俺の友達です」



90:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 22:49:25.15 ID:1z9h/kK30

嘉納 「・・・そうか。彼、最近検査に来てくれなくてね。よかったらまた来るように言ってもらえないかな?」

ヒデ 「はい。言っておきます。でも大丈夫なんじゃないですかね?」

嘉納 「ん?」

ヒデ 「むしろ前より体丈夫になったようですし、相変わらず元気ですよ。ただ、食べ物を見ると吐き気がするみたいですけど」

嘉納 「・・・・君は」

ヒデ 「Rc値」

嘉納 「・・・」

ヒデ 「カネキの検査してる先生なら当然分かってますよね?」

嘉納 「永近君」

ヒデ 「はい」

嘉納 「ここでは何だから、後でゆっくり話そうじゃないか」

ヒデ 「そうですね」

嘉納 「よければ私の家でゆっくり話そう。迎えに行くが、明日は空いてるかね?」

ヒデ 「大学の講義の後なら」

嘉納 「よろしい」



91:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 22:50:18.00 ID:1z9h/kK30

次の日。


ブロロロロロ・・・

嘉納 「さ、ここだ」

ヒデ 「広い家ですね」

嘉納 「かつて私の友人の家だった。彼が喰種に殺されたのち、私が買い取って別荘にしている」

ヒデ 「・・・・」

ガチャ


嘉納 「この部屋で待っていてくれ。今、私の大切な実験体達がお茶を出す」

ヒデ 「?・・どうも」

・・・

シロ・クロ「「お茶です、どうぞ」」

ヒデ 「あ、どうも」
ズズ・・

ヒデ (双子かな?)


嘉納 「お待たせ」

ヒデ 「いえ」



92:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 22:50:53.79 ID:1z9h/kK30

嘉納 「で、私に話したいことがあるんじゃないのかね?」

ヒデ 「ええ」

ヒデ 「なんで、カネキの体を喰種に変えたんです?」

嘉納 「・・・・不可抗力だった」

ヒデ 「?」

嘉納 「事故に遭って亡くなった少女が普通でないことは、すぐに分かった。しかし、移植をしなければ彼を助けることはできなかった」

ヒデ 「そうですか・・・でも、カネキは悩んでいます。もっと早くカネキに教えるべきだったんじゃないですか?」

嘉納 「・・一か八かだったからね。喰種の臓器を移植された人間が喰種になるかなんてわからなかった」

ヒデ 「・・・」

嘉納 「君は友達思いだね」

ヒデ 「いえ・・」

嘉納 「しかし、不思議に思わないかね?」

ヒデ 「え?」



93:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 22:51:38.84 ID:1z9h/kK30

嘉納 「喰種の臓器は、人間のそれと同じなんだよ」

ヒデ 「そうなんですか」

嘉納 「君も本を読んでRc細胞のことを知ったんだろ?」

ヒデ 「はい」

嘉納 「実はごく微量だがRc細胞は普通の人間にもある」

ヒデ 「え?そうなんですか?」

嘉納 「人間と喰種の違いってのはね、その多い少ないの違いだけなんだよ」

ヒデ 「はぁ・・」

嘉納 「じゃあなんで人は喰種を区別するのか」

ヒデ 「あ・・れ・・」

嘉納 「そもそも、喰種はどうして生まれたのか」

ヒデ 「なんか・・寝、むく・・」

嘉納 「・・・それを知っていたら、誰だって私と同じことをするさ」

どさ

嘉納 「睡眠薬が効いた。シロ、クロ運ぶのを手伝ってくれ」

シロ・クロ「「はい、パパ」」



94:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 22:52:15.50 ID:1z9h/kK30

・・・

・・・・・

・・・・・・・


ヒデ 「・・・・あれ・・ここは?」

シロ 「おはよう」
クロ 「目が覚めた?」

ヒデ 「あれ・・・あ・・さっきの双子」

シロ 「暴走してないね」
クロ 「じゃあ成功だね」

ヒデ 「?何言ってんだ・・・ん?なんか背中痛てえ・・」

シロ 「お兄さんは手術を受けた」
クロ 「私たちより先に」

ヒデ 「手術・・・?」

シロ 「お兄さんは喰種になった」
クロ 「お兄さんの友達と一緒」

ヒデ 「ぐ・・喰種・・?」



95:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 22:52:52.78 ID:1z9h/kK30

シロ 「どんな感じ?」
クロ 「どんな気持ち?」

ヒデ 「・・・君らも手術受けるのか・・?」

シロ・クロ「「うん」」

ヒデ 「なんで?」

シロ 「パパとママを殺した奴に」
クロ 「復讐するため」

ヒデ 「・・・人間?」

シロ・クロ「「喰種」」

ヒデ 「・・・じゃあなんで喰種になるんだ?」

シロ 「本当の意味で殺したのは喰種じゃない」
クロ 「CCGとシステムを作った奴」

ヒデ 「・・・そっか」

シロ・クロ「「・・・」」

ヒデ 「だったら別に喰種になる必要ねーんじゃないのか?」

シロ・クロ「「喰種になってパパを助ける。それが近道」」

ヒデ 「パパ・・?・・・もしかして嘉納先生?」

シロ・クロ「「そう」」

ヒデ 「・・・・ははは」



96:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 22:53:46.76 ID:1z9h/kK30

シロ・クロ「「なんで笑う?」」

ヒデ 「嘉納先生、君たちのこと何て呼んでるか知ってる?」

シロ・クロ「「・・・」」

ヒデ 「実験体」

シロ・クロ「「・・・嘘だ」」

ヒデ 「嘘じゃねーぞ」

シロ・クロ「「・・・・うそだ」」

ヒデ 「・・・別の方法もあるんじゃねーの?」

シロ・クロ「「えっ?」」

ヒデ 「復讐・・が正しいのか俺には分かんねーけど、別に喰種にならなくてもその道はあるんじゃねーの?」

シロ・クロ「「・・・」」

ヒデ 「CCGがダメなら他にもあると思うぜ。俺は・・どうやら喰種にされたんだろ?・・だから人間も喰種も受け入れてくれそうなとこ行くから」

シロ・クロ「「そんなとこ無い」」

ヒデ 「あるよ・・・たぶん」

シロ・クロ「「・・・お兄さんは、どこ行くの?」」

ヒデ 「20区の“あんていく”。君らも行く?」

シロ・クロ「「・・・行かない」」



97:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 22:54:32.89 ID:1z9h/kK30

ヒデ 「・・よっと・・動けるな・・」

シロ・クロ「「行くの?」」

ヒデ 「おう。嘉納先生はもういないのか?」

シロ・クロ「「・・・東京に戻った」」

ヒデ 「あっ!そういえば道分からん!!」

シロ・クロ「「・・家の外まで送ってあげる。道なりに歩けばバスが通る通りに出る」」

ヒデ 「そっか。サンキュー」

・・・

シロ 「・・あんまり驚いてないね」
クロ 「喰種になったこと」

ヒデ 「うーん・・まあ若干は覚悟してた!」

シロ・クロ「「・・なんで?」」

ヒデ 「親友と・・気になってる子のため」

シロ・クロ「「単純だね」」

ヒデ 「ひでーな」

シロ・クロ「・・・じゃあ私たちはここで」

ヒデ 「ああ。ありがとう・・・よく考えた方がいいぞ喰種になること」

シロ・クロ「「・・・」」

ヒデ 「なんなら俺は君らの味方になるぜ」

シロ・クロ「「バカじゃないの?」」

ヒデ 「ハハハ・・」



98:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/21(土) 22:55:28.38 ID:1z9h/kK30

**********


カラン カラン・・

トーカ「いらっしゃいませー」

ヒデ 「こんちわ、霧嶋さん」



108:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/22(日) 18:34:49.53 ID:2SotlbJO0

#007 [笛口]


亜門 「6998ッ!!  6999ッ!!  7000ッッ!!!」

亜門 「ハァッ!!・・・ハァッ!!」


亜門 「ふう・・」

男の一人暮らしには似つかわしくない、全身が写るサイズの鏡に己の肉体を映しながら亜門はつぶやいた。

亜門 「・・・今日も僧帽筋は歌っている・・美しい・・」

ごくごくごくッ!!

プロテインを一気飲みし、掌にチョークを付ける。

個人邸宅、しかもマンションにあるということを考えれば狂気の沙汰である、としか言いようのない懸垂吊り輪に手をかける。

亜門 「ふんッツ!!」

十字懸垂である。

ギシ・・・ギシ・・・

天井が軋む。

亜門 「なのになぜッ!!!」

亜門の目から涙が毀れる。

亜門 「なぜ私がッッ・・・二位なのだああああ!!!」

『ボディビル選手権2位』と書かれた杯が部屋で光る。


亜門 「おおおお!!この世界は間違っているううううぅぅぅ!!!」



109:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/22(日) 18:35:16.51 ID:2SotlbJO0

CCG本部。

真戸 「亜門くん、ちょっといいか?」

亜門 「どうしました、真戸さん」

真戸 「我々の新配置が決まった。20区だそうだ」

亜門 「20区?あそこはそこまで危険な喰種は居なかったと思いますが」

真戸 「それがね、“フエグチ”のつがいが逃げ込んだって情報が入ったのだよ」

亜門 「ほう・・・」

真戸 「私のクインケもつがいに会いたがっているようだよ・・フフフ」

亜門 「相変わらずですね、真戸さんは」

真戸 「キミも相変わらずワイシャツの下のタンクトップが透けているよ。タンクトップがそこまで似合うのはフレディ・マーキュリーかキミくらいのものさ」

亜門 「フフ・・ありがとうございます」

真戸 「さて・・私は士気を高めてくるよ。君も準備をしたまえ」

亜門 「またクインケでオ●ニーですか?娘さんにバレても知りませんよ」

真戸 「ふふ・・そのスリルが私の勘を高めるのだよ」



110:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/22(日) 18:35:49.36 ID:2SotlbJO0

CCG20区支部。


ざわざわ・・・

「おい・・あれが噂の・・」

「ああ・・そうらしい」

「・・しかし、一人なのか?」

「分からん・・」


20区支部は、本局からの捜査官の派遣によりざわついていた。
それは、20区が比較的喰種の活動が静かであり、捜査官派遣が稀であるということだけではなかった。
今回派遣されてきたのが局内でも有名な変態職員コンビだからである。

亜門 「すみません、私とともに真戸上等捜査官が来る予定だったんですが、所用で今日は来られなくなってしまいました」

中島 「あ、そうですか」

亜門 「とりあえず今回のミーティングは私だけで」

草場 「はい、わかりました」

ブチッツ!
亜門 「・・おっとすみません。ボタンがはじけ飛んでしまいました。お気になさらず」

中島・草場「・・・・」


――――――――――そのころ真戸家。

アキラ「・・父よ、何度言ったらわかる?家でそういう事をするのはやめてもらいたい」

真戸 「ふっ・・成長したなアキラ」

アキラ「規則もあるだろうから私はそのクインケに触れることはしない、というか触れたくもないが、次家でそのようなことをしたら、燃えないゴミの日に出すぞ」

真戸 「ハハハ・・アキラはどんどん微に似ていくな」



111:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/22(日) 18:36:20.84 ID:2SotlbJO0

少し時間はさかのぼり、“あんていく”にて。


トーカ「おいクソ新人、そのカップはそこに仕舞うんじゃねーよ」

ヒデ 「あれ?そうだっけ?めんごめんご、トーカちゃん!」

トーカ「・・・ったく。店長ももう少し注意してください」

芳村 「ふふ・・トーカちゃん、彼はこう見えて物覚えがいいよ。コーヒーの淹れ方もどんどん上手くなっている・・・それに私は嬉しいんだ。人間であった彼が、私たちとともに働いている」

トーカ「・・・ふん。まあ確かに上達は早えよな」

ヒデ 「いやーありがとうございます!店長、トーカちゃん!」

トーカ(・・・軽い)

芳村 「そうだ、永近君。ちょっと聞きたいことがあるんだ」

ヒデ 「?なんすか?」

芳村 「前キミが人としてウチに来ていた時、よく一緒に来ていた青年居ただろう?たしか・・・カネキ君と言ったかな?」

ヒデ 「ああ、カネキがどうかしたんですか?」

芳村 「・・・じっくり聞きたい。二階に来てくれるかな?」

ヒデ 「え?いいですけど・・」

芳村 「じゃあトーカちゃん、古間君あとはお願いするよ」ギンッ

トーカ・古間「!!は・・・い・・」


トーカ「・・・コマさん」
古間 「言うな・・・ヒデ君が無事帰ってくることを祈ろう」



112:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/22(日) 18:37:14.04 ID:2SotlbJO0

ヒデ 「・・・ってわけで、あいつも俺と同じで元人間の喰種なんですが、色々あって素性を隠しながら大学行ってます。で、最近作家の・・えっと・・なんて名前だっけ・・」

芳村 「高槻泉」

ヒデ 「そうそう、その高槻先生ってヒトのとこでバイトしてるみたいですよ。でもその人にも喰種ってこと隠してるから、いずれバレた時俺に迷惑がかかるかもしれないって言って、今は大学以外ではあんまし会ってませんが・・」

芳村 「ふむ・・・・そうか」

ヒデ 「?・・まあアイツは俺よりもずっと冷静でドライなやつなんで心配はしてないですけど」

芳村 「・・・うんそうか。彼・・カネキ君は君が喰種になったことは知ってるのかい?」

ヒデ 「いえ、言ってないです」

芳村 「ふうむ・・・」

ヒデ 「?」

芳村 「言った方がいいかもしれないね。彼、カネキ君は君の友達なんだろう?」

ヒデ 「・・・そうっすね」

芳村 「・・私はね、君たちのような存在が、いつか喰種と人間の関係を良好にすることに繋がるんじゃないかと思ってるんだ」

ヒデ 「・・店長は、喰種なんですよね?」

芳村 「そうだよ」

ヒデ 「それなのに店長は、人間との共存を考えてるんですか?」

芳村 「・・そうありたいね。それに、君だってそう考えてるんじゃないのかい?」

ヒデ 「ハハハ・・そうっすね」



113:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/22(日) 18:38:18.28 ID:2SotlbJO0

芳村 「私自身、カネキ君にはぜひ会ってみたいからね。よかった今度連れておいで。ぜひ会ってみたいからね」

ヒデ 「ええ、もちろんっす(なんで二回言ったんだ?)」


コンコン

トーカ「店長、リョーコさんとヒナミが来てますよ」

芳村 「うん、お通しして」

ヒデ 「あ、お客さんっすね」

芳村 「うん、まあそんなところだよ」

ヒデ 「?」


ガチャ

リョーコ「店長さんお久しぶりです」

芳村 「お久しぶりです、リョーコさん。それにヒナミちゃんも大きくなったね」

ヒナミ「こ・・・こんにちは」

リョーコ「あなたは新人さんかしら?」

ヒデ 「あ、ハイ。永近っていいます。よろしくっす!」

リョーコ「ふふ・・よろしく。ほら、ヒナミもご挨拶なさい」

ヒナミ「あ・・・あの・・ヒナミです・・」

リョーコ「もうこの子ったら人見知りで、すみませんね」

ヒデ 「いえいえ」



114:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/22(日) 18:38:47.93 ID:2SotlbJO0

ヒデ 「トーカちゃん、あの人たちって店長の知り合い?」

トーカ「お客だよ」

ヒデ 「?なんで二階に?」

トーカ「・・・荷物受取に来ただけだから」

ヒデ 「荷物?」

トーカ「・・・肉だよ。アンタと同じで自分で狩れないから」

ヒデ 「あー・・・そっか」

トーカ「・・・」

ヒデ 「ダンナさんは居ないの?」

トーカ「・・・・白鳩に殺られた」

ヒデ 「・・・そっか」



芳村 「じゃあ取ってきますね。ちょっと待っててください」

リョーコ「いつもすみません」

ガチャ



115:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/22(日) 18:39:16.20 ID:2SotlbJO0

ヒデ 「あの」

リョーコ「?どうしたの?永近さん」

ヒデ 「リョーコさんたちは20区に住んでるんですか?」

リョーコ「ええ、今はね」

ヒデ 「あ、そうっすか。いや、働く前から“あんていく”はよく来てたんですけど、初めてお会いするなーって思って」

リョーコ「うん・・・夫のお墓がこの近くにあるの」
ヒナミ「・・・・」

ヒデ 「・・・すいません、余計な事聞きました」

リョーコ「いいんです・・・私も、ヒナミも、もうあの人に縋って生きていてはいけないから」

ヒデ 「・・・俺に出来ることがあったら言ってください」

リョーコ「うん、ありがとう。大丈夫よ。もう、お墓に通うのはやめようと思うの。夫の・・マスクもお墓に埋めて・・・・私ったら初対面の人に何を話してるのかしらね・・ごめんなさいね」

ヒデ 「いえ」


ヒナミ「・・・・」ぐすっ

トーカ「・・・」

トーカ「ヒナミ、こっちおいで、一緒に本読もう?」

ヒナミ「うん・・お姉ちゃん」



116:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/22(日) 18:39:54.05 ID:2SotlbJO0

ガチャ
芳村 「お待たせしました、どうぞ。またなくなったら言ってください」

リョーコ「ありがとうございます」

ヒデ 「・・・」

リョーコ「・・店長さん」

芳村 「どうしました?」

リョーコ「ごめんなさい、私のせいで白鳩をおびき寄せてしまって」

芳村 「・・・ヒナミちゃんのためにもあまり目立つ行動をしない方がいいですよ」

リョーコ「ええ。今彼と話していたんです」

ヒデ 「あ、ハイ」

リョーコ「主人のマスク、お墓に埋めて、それであの人に縋らずに生きていこうって」

芳村 「そうですか」

ヒデ 「あの・・ちょっといいですか」

リョーコ「え?」
芳村 「?」

ヒデ 「辛い事聞いてすみません・・あのお墓ってお寺とかにあるんですか?」

リョーコ「・・いえ、林の中です」

ヒデ 「・・余計なお世話かもしれないんですけど、そこにマスク埋めるの危険じゃないっすか?」

リョーコ「え?」



117:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/22(日) 18:40:22.89 ID:2SotlbJO0

ヒデ 「えっと・・喰種捜査官はリョーコさんたちを追ってるんですよね?て事は外出してるときマークされてるはずですよね。それなのに今まで直接リョーコさんを捕まえに来ないっていう事は、捜査官も今はリョーコさんが喰種か確信できてないって事なんじゃないっすか?」

リョーコ「!」

ヒデ 「・・で、その疑ってる人が山の中にある墓に喰種のマスク埋めたら、リョーコさんが喰種だって確信に変わりません?」

芳村 「・・・確かにそうかもしれないね」

リョーコ「・・・でも、私、主人のマスクが手元にあったら・・・あの人のこと思い出してしまって・・」

ヒデ 「・・・もしよかったらそのマスク、俺にくれませんか?」

リョーコ「え?!」

ヒデ 「俺、まだマスク持ってなくて・・・それに、別にダンナさんのこと忘れなくてもいいじゃないですか。俺は・・ダンナさんの代わりはできないっすけど、出来るだけみんなの役に立ちたいんです。だから俺がそのマスク受け継いで、ヒナミちゃんや、リョーコさんや、店の皆を守れるように頑張りますから」

リョーコ「・・・・永近さん・・!」


ガチャ
トーカ「店長ー辞書ってありましたっけ・・・ってなにリョーコさん泣かせてんだクソ新人!!」

芳村 「トーカちゃん・・・大丈夫だよ」

トーカ「え?」

芳村 「辞書は一階にある。行こうか?」

トーカ「え?え?」

芳村 「・・・永近君は大した男だよ」
ガチャ



128:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/23(月) 21:25:12.81 ID:GR+QuI160

#008 [暴露]


高槻 「あー・・・行き詰ったなぁー」

カネキ「なんです急に」

高槻 「カネキ君」

カネキ「はい」

高槻 「取材行こう!取材!!」

カネキ「え・・・どういう事です?」

高槻 「今週の金曜の夜から日曜の夕方まであいてる?」

カネキ「まぁ特に予定はないですね」

高槻 「おっけ!」

カネキ「?」



カネキ「・・・ていう訳で、今週末また泊まり込みでバイトになりそうなんだよね・・」

ヒデ 「マジか・・結構ハードだな」

カネキ「うん。だから今週はやめとくよ」

ヒデ 「そっか」



129:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/23(月) 21:26:09.65 ID:GR+QuI160

ヒデ (はー・・・大学でいきなり“実は俺も喰種になったんだ”なんていう訳にもいかねーし・・)

ヒデ (なんか店長もカネキに会いたがってたから“あんていく”に連れてって、そこで打ち明けようと思ったんだけどなー・・)

ヒデ (また来週にすっか)


・・・

ヒデ 「つーワケで、カネキを週末にでも連れてこようと思ったんですけど」

芳村 「・・・」

ヒデ 「店長?」

芳村 「いや・・何でもないよ。そうか、まあ急に出なくても良い。時間が合うときに来てくれればいいんじゃないかな」

ヒデ 「そうっすね」


リョーコ「永近さんこんにちは」

ヒデ 「あ、リョーコさん。“荷物”取りに来たんですか?店長今『少し一人にしてほしい』とか言って地下行っちゃったんですよね・・」

リョーコ「あ、そうじゃないの今日は」

ヒデ 「?」

リョーコ「・・・マスク持ってきたの」

ヒデ 「・・・はい」



130:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/23(月) 21:26:43.20 ID:GR+QuI160

金曜日。


カネキ「ふー・・授業終わったね」

ヒデ 「おう。あれ、お前今日の夜からバイトだったよな?」

カネキ「うん。いったん家帰って着替え持ってから行くつもり」

ヒデ 「なんつーか。ホント大変だな」

カネキ「いや、もう慣れたよ」

ヒデ 「それにしても高槻先生・・だっけ?結構綺麗な人なのな」

カネキ「うん、メガネが引き立つよね」

ヒデ 「・・・まあ敢えて今更突っ込まねーが、あんな綺麗な人の家に泊まり込みでバイトってなんか問題起きねーのか?先生独身だろ?」

カネキ「いや、泊まり込みって言っても殆どの時間文章呼んでるだけだし。ヒデの期待するようなことは何もないよ(基本的には)」

ヒデ 「ふーん」

「ねえねえカネキ君」

カネキ「え?」くるっ

ぶに←高槻先生の人差し指がカネキのほっぺにささる音

カネキ「えっ?!高槻先生?!」

高槻 「ゴメンねー時間無くて大学まで来ちゃったー」

カネキ「え?」

高槻 「新幹線の時間あるからー」

カネキ「はい?」

高槻 「ホラ行くよー乗り遅れちゃう」

カネキ「ちょっと意味が分かりません」

高槻 「とにかく遅れるから早く!駅までタクシーで行くよー温泉が待ってる!!」

カネキ「ちょっ!手引っ張らないで!!今行きますから!!・・ごめんヒデまた来週!!」

ヒデ 「」



131:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/23(月) 21:27:16.70 ID:GR+QuI160

新幹線の中。

高槻 「ふー・・間に合ったぁ」

カネキ「・・・説明をお願いします」

高槻 「え?取材に行くって言ったでしょ?」

カネキ「・・さっき“温泉”とか言ってませんでした?」

高槻 「取材先の近くに温泉があるからねー入らないわけにいかないじゃないですかー」

カネキ「はぁー・・・ってこのまま泊まりですか?!」

高槻 「え?そうだけど?」

カネキ「僕、着替えとか何も持ってきてませんよ・・」

高槻 「下着くらいどっかで買えるよ」

カネキ「・・・まあもういいですけど。すでに電車乗っちゃいましたし」

高槻 「うむうむ」


カネキ「で、取材って何ですか?僕は何をすればいいか全くわからないんですが」

高槻 「うん、実はね次の作品なんだけど“喰種”をテーマにしようと思うのだよ」

カネキ「・・・“喰種”ですか」

高槻 「どした?」

カネキ「あ・・いえ、なんか怖いなって」

高槻 「ははは、大丈夫。喰種とお話しするわけじゃないから・・まあお話しできたら一番いいんですがねー」

カネキ「そうですか」



132:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/23(月) 21:28:03.64 ID:GR+QuI160

高槻 「CCGって知ってる?」

カネキ「ええ、まあ。喰種を捕まえたりする人たちですよね」

高槻 「うん、これから取材に行くのはね、そのCCGと関係のある会社なのだよ」

カネキ「・・・つまり捜査官サイドから書いていくってことですか?」

高槻 「それはまだ分からないけど。でもCCGにとって有益な情報は得られるかもしれないと思ってね」

カネキ「?」

高槻 「本当はCCGに直接取材したいんだけど、あそこセキュリティ厳しいんですよー」

カネキ「でしょうね」

高槻 「だからCCGに有益な情報をゲットして、タレコミの名目でCCG捜査官とお話しする機会を得る!」

カネキ「なるほど」

カネキ(・・・でもCCGか・・・バレないようにしなきゃな、僕のこと)

高槻 「ついでに温泉にも入るのだよ」

カネキ「・・そっちメインではないですよね?」

高槻 「取材の時は私がお話をするので、特に何かしなくていいですよ。ただ、気づいたことや、違和感など感じたことがあったら後で教えてください」

カネキ「はあ・・・わかりました。」



133:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/23(月) 21:28:50.71 ID:GR+QuI160

***

高槻 「ふいーお疲れ様」

カネキ「お疲れ様です」

高槻 「じゃあ宿行こうかねぇ」

カネキ「はい」

・・・

高槻 「で、何か気づいたことあった?」

カネキ「・・・なんていうか先生、そもそも喰種を溶かした溶液の話とかってどこから聞いてたんです?」

高槻 「知り合いの社長さんから」

カネキ「・・・さすが人脈広いですね」

高槻 「で、どうでした?」

カネキ「うーん・・・取材に答えてくれた人、何か隠してる感じがしましたね」

高槻 「ほうほう」

カネキ「特に社長さんのこと聞いたとき、目が泳いでました」

高槻 「さすがだねワトソン君」

カネキ「いや、だって辻褄合わないじゃないですか。CCGとの契約で溶液を販売するっていうのは言うなれば硬い売買ですよね?それを特に理由なく契約解除して、しかもその社長は事故死って」

高槻 「うん。まるでよくできたミステリー小説だよねぇ」

カネキ「ええ」



134:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/23(月) 21:29:29.90 ID:GR+QuI160

高槻 「という訳でここで出来る仕事はお終いですねー」

カネキ「?」

高槻 「社長の事故死の件はこれ以上会社に聞いても答えてくれないですよ。あとは東京に帰ってからの作業ですね」

カネキ「はあ・・・あ、じゃあ明日帰ります?」

高槻 「何言ってるんですか!今日中に取材が終わったおかげで明日一日オフですよ!温泉入ったりしないと!!」

カネキ「・・・やっぱりそっちメインなんじゃないですか?」



高槻 「でも今日はさすがに疲れました。温泉は明日の朝に入るとして、今日は部屋についているお風呂に入って寝ます」

カネキ「そうですか」

高槻 「カネキ君は大浴場行ってきていいですよ」

カネキ「いえ、僕も疲れたので部屋の風呂に入ります。先生先入っていいですよ」

高槻 「そうですか?ではお言葉に甘えて」

・・・

ガチャン

カネキ(・・・)

カネキ(先生・・・・無防備すぎますよ)ニヤァ



135:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/23(月) 21:30:19.38 ID:GR+QuI160

カネキ(そもそも、アシスタントだからって一緒の部屋に泊まるってどうかしてますよ)

カネキ(先生はその辺の常識皆無ですね)

カネキ(家にお邪魔するときも、いっつも思うんですが、風呂入るとき身に着けていたもの部屋に脱ぎ散らかして行くの、やめた方がいいですよ)

カネキ(僕だって、健康な男子なんですから)

カネキ(だからそれが僕に使われても)

カネキ(仕方 
     ないよ 
  ね?)


ごそごそ・・・・






ガチャリ

カネキ「!!」

高槻 「オーケーそこまでだ」

カネキ「なっ・・・!!」



136:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/23(月) 21:30:54.65 ID:GR+QuI160

高槻 「・・ワトソン君、君は二つのミスを犯した」

カネキ「・・・ミ・・スだって?」

高槻 「一つ、いつも私は、君が仕事をしている部屋から一つ隔てた私の仕事部屋に、着ていたものを脱ぎ散らかして行く。だが今日は同じ部屋でさすがに君のいる前で服を脱ぐ訳にはいかず必然的に私はバスルームで服を脱ぐ」

高槻 「そうなると、さすがにバスルームに入ってくるわけにはいかず、君はまだ着ていない下着を拝借するために私の荷物を漁ることになる!」

カネキ「・・・くっ」

高槻 「二つ、普段私は着替えのパジャマをバスルームの前のスペースに置いている。しかし今日は急いで出てきたため、パジャマは無く、旅館備え付けの浴衣を着るしかない」

高槻 「その浴衣はどこにある?」

カネキ「ハッ・・・布団の上に置いたまま・・!」

高槻 「そう。いつもと勝手が違うため、うっかり布団の上に置き忘れた私が戻ってくるということに気付かなかった!!」

カネキ「・・・・ふっ」

高槻 「さあ観念しなさい。そしてその右手に隠しているものを見せるんだ!」

カネキ「・・・ふっ・・・はっはっはっ!!」

高槻 「何が可笑しい?!」

カネキ「ええ・・いいですよ?お見せします。僕が右手に持っているものでしたよね・・・ほらァ!!」

高槻 「下着・・・じゃない!!それは・・私のメガネッ!!」



137:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/23(月) 21:31:26.15 ID:GR+QuI160

カネキ「そうですよ。メガネです。メガネがどうかしました?!確か先生・・・僕の聞き間違えじゃなければ“下着”とかなんとか言ってましたよね?」

高槻 「・・・くっ!!」

カネキ「どうしたんです?ホラ。メガネですよ?コレがなんだっていうんですかァ?!」

高槻 「・・・」

高槻 「でも、使ったよね?」

カネキ「・・・へ?」

高槻 「私がお風呂から出るといつもスッキリした顔してたけど」

カネキ「え?あの」

高槻 「試しに一回、私がお風呂入ってるときのトイレの音声を録音したことがあるんだけど聞く?」

カネキ「・・・・・えっと」

高槻 「・・・ていうかカネキ君、声大きいからいつも結構聞こえてるけど」

カネキ「・・・あの」

高槻 「『先生、すごくいいメガネですッ!!』」

カネキ「えー・・・・・・・・・ごめんなさい」



138:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/23(月) 21:32:23.42 ID:GR+QuI160

高槻 「・・・・」じー

カネキ「・・・そ・・そんなに見つめないでください」

高槻 「・・・・」じとー

カネキ「・・・あの・・・・・あっ!!」


・・・・先生の瞳の中に映る僕の左目は、赤く染まっていた。


カネキ「・・・っ!!」

とっさに左目を手で覆った。

バレた。

間違いなくバレた。

どうする?

どうする?


高槻 「知っていたよ」


カネキ「・・・え?」



139:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/23(月) 21:32:58.73 ID:GR+QuI160

高槻 「別にカネキ君が喰種だからって私としては構わないんだけど、それに私が気づいてるって知ったら、逃げちゃうんじゃないかと思ってね」

カネキ「あー・・・・僕と同じ考え方ですね」

高槻 「ていうか、ホントのこと言うとカネキ君から取材したかったんだけどねー」

カネキ「それってたぶん無理ですね。僕、元は人間なので」

高槻 「ん?」

カネキ「実は・・・・」


・・・


高槻 「へー、喰種から臓器移植されると喰種になるのか。ほー」

カネキ「絶対そうなのかは知りませんけど」

高槻 「それ、面白いね。ネタにしよう」

カネキ「えっ?!やめてくださいよ。それこそCCGとかにばれたら日常生活困難になるじゃないですか」

高槻 「えーじゃあ実名出さないし、設定色々いじるからさー」

カネキ「うーん・・・」

高槻 「それで今回の件を不問にしてあげてもいいのだが」

カネキ「存分にネタにしてください」



149:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/24(火) 00:01:55.37 ID:ZK6XRrrJ0

#009 [仮面]


高槻 「はー取材お疲れ様ー」

カネキ「まあ後半は温泉入ってただけでしたけどね」

高槻 「カネキ君だって温泉入りまくってじゃない」

カネキ「まぁあったら入りますよ。常識的に考えて」

高槻 「欲望に忠実なのは素晴らしいよね。よし、昼ご飯を食べて今日は解散としよう」

カネキ「先生の家行くんですか?・・・ってちょっと待ってください」

高槻 「ん?」

カネキ「・・・今まで先生が僕に作ってくれたゴハンって・・もしかして人間の肉ですか?」

高槻 「そうだと言ったらどうする?」

カネキ「・・・まぁもう食べてしまったので今までの分はしょうがないですが、倫理的にも今後はやめたいですね。僕、気合で普通のゴハン食べられますし」

高槻 「うーん・・私が集めた情報によると喰種は気合でも普通のゴハンで空腹を満たすことはできないはずなんだけどなぁ・・・・まあ、違うよ。人間の肉じゃないから安心して食べ給え」

カネキ「・・・本当ですか?」

高槻 「本当だとも。もし嘘だったら、私を食べていいよ」

カネキ「恐ろしいこと言う人ですね、先生は」

高槻 「ほれほれ噛みついてごらん」

カネキ「まったく先生は・・まあ信じますよ」

高槻 「じゃあ今日もハンバーグにするかね」



150:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/24(火) 00:02:30.89 ID:ZK6XRrrJ0

カネキ「ごちそうさまです」

高槻 「はいはい」

カネキ「じゃあ僕そろそろ帰りますね」

高槻 「うん・・あっちょっと待って」

カネキ「なんですか?」

高槻 「知ってるかい?巷では喰種は“マスク”を付けてるらしいよ?」

カネキ「マスク?花粉症か何かですか?」

高槻 「いやいや、マスクって言っても仮面みたいなものだよ。CCG捜査官と戦うときに顔がバレないように着けるようだよ。それにその赤い目を隠せるからじゃない?」

カネキ「へー・・先生詳しいですね」

高槻 「だってCCGのホームページに書いてあるし」

カネキ「あーそうですかー」

高槻 「だからさ、カネキ君もマスクつけてみてよ」

カネキ「はい?」

高槻 「考えてみてよ。喰種のつけるマスク作ってる人ってどんな人?」

カネキ「あー・・・喰種でしょうね」

高槻 「でしょー?だからマスクを作る傍ら、潜入捜査をお願いしたいのだよ」

カネキ「でも僕そんなお店知りませんよ」



151:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/24(火) 00:03:10.66 ID:ZK6XRrrJ0

高槻 「ふっふっふ・・実はもうアタリを付けてあるのだよ」

カネキ「まあそういう流れになることは大体想像してました」

高槻 「場所は4区。お店の名前は“HySy ArtMask Studio”。来週のヒマな時にでも行ってみてよー」

カネキ「はぁ・・分かりましたよ」

高槻 「さすが私の見込んだ変態有能アシスタントだね」

カネキ「変態ではありません。美学です」

高槻 「ずいぶんと大きく出たね。じゃあこれを前にしても平常心でいられるかね?」
すっ

カネキ「・・・そのメガネどうしようっていうんです?」

高槻 「君が望むならあげようか?」

カネキ「いえ、いりません。早急にかけてください」

高槻 「なん・・だと?」

カネキ「美しいメガネは美しい人がかけてこそです」

高槻 「・・・ま、いいでしょう」すちゃっ

カネキ「じゃあ、帰ります。マスク屋さん、出来る限り来週行きますから。行ったら連絡しますので」

高槻 「あ、ウン」

カネキ「それじゃ、おつかれさまでした」
ガチャ

高槻 「・・・」



152:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/24(火) 00:03:54.13 ID:ZK6XRrrJ0

上井大学にて。

ヒデ 「おーっす」

カネキ「おはよう、ヒデ」

ヒデ 「・・・温泉行ったのか?」

カネキ「え?ああ、行ったよ。取材の後」

ヒデ 「はあ・・羨ましい奴」

カネキ「いや・・なんというか・・大切なものを失った気がするよ」

ヒデ 「・・・お前、まさかッ」

カネキ「?・・・まあでもこのバイト、何もしてないときは本読んでること多いしすごい楽しいよ。ヒデはバイトとかしないの?」

ヒデ 「あ、俺もバイト始めたんだぜ」

カネキ「へー。何?」

ヒデ 「喫茶店のアルバイト」

カネキ「ヒデなら何でも上手くいくと思うよ」

ヒデ 「そうか?・・・じゃあさ、俺がバイトしてる店、来てみねー?」

カネキ「あー・・行きたいけど今日はちょっと行かなければいけないとこあるから」

ヒデ 「そっか・・もしかしてまた高槻先生関係?」

カネキ「うん。さすがヒデは鋭いね」

ヒデ 「いや・・・なんていうか・・・最近お前高槻先生とずっと一緒にいるだろ・・・」

カネキ「言われてみればそうかも」

ヒデ 「・・・前は俺とばっか一緒に遊んでたのにな・・」

カネキ「・・・あれ?ヒデもBL理解し始めた?」

ヒデ 「断じて違う」



153:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/24(火) 00:04:27.98 ID:ZK6XRrrJ0

カネキ「じゃあ、近いうちに必ずヒデのバイトしてるお店遊びに行くよ・・・あ、そこコーヒーあるよね?」

ヒデ 「もちろんあるぜ」

カネキ「よかった・・・・あ授業始まる」

ヒデ 「おう」


・・・


ヒデ 「じゃ、俺バイト行くから。また明日な」

カネキ「うん」


カネキ「さて、4区だったよね」


――――――――――“HySy ArtMask Studio”

カネキ「ここかぁ・・・雰囲気怪しすぎるなぁ・・まあいっか」
ガチャ

カネキ「こんにちはー」

・・・・

カネキ「人いないのかな?」

カツ  カツ・・・

カネキ(店内にはマスク、髑髏・・・)

カネキ(まあ確かに4区ってこういう雰囲気のお店多いけど)

カネキ(店主の人、バカなのかな?これじゃ喰種ってバレるでしょ)


バサッ!!
ウタ 「・・・きみ、誰?お客さん?」

カネキ「あ、そうです。マスク作ってほしくて来ました」

ウタ 「・・・・」

カネキ「?どうしました?」

ウタ 「いや・・ちょっと驚かそうと思って隠れてたんだけど・・・驚かないね、きみ」

カネキ「え?・・ああそうだったんですか。すいません」

ウタ 「いや・・きみが謝ることじゃないよ。まあいいや・・ぼくは店主のウタです。こっちに来てください」

カネキ「はい」



154:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/24(火) 00:05:06.30 ID:ZK6XRrrJ0

ウタ 「きみ、どこの区に住んでるの?」

カネキ「20区です」

ウタ 「20区か・・・平和でいいよね。ここ座って。サイズ測るから」

カネキ「あ、ハイ」

・・・

ウタ 「名前、聞いてもいいかな?」
カネキ「カネキケンです」

ウタ 「いいね・・名前にキケンが隠れてる」
カネキ「はぁ」

ウタ 「うーん・・きみ喰種だよね?」
カネキ「そうですけど」

ウタ 「不思議な匂いがするね。よかったら赫眼見せて?」
カネキ「あ、ちょっと待ってください」

カネキ(カクガンってあの赤い目のことかな?・・しまったどうやれば目が赤くなるのかわかんないや・・まずいな、このままじゃ色々とばれちゃうかもしれない・・)

ウタ 「あれ?もしかして赫眼出せない?」
カネキ「あ、ちょっと待ってください」

カネキ(そうだ、この前の旅行の時のこと思い出せば・・・)

カネキ(メガネメガネメガネメガネメガネメガネメガネメガネ・・・)

ギンッ

ウタ 「!きみ・・・片目なんだね」

カネキ「え?・・・ああそうです。珍しいですか?」
ウタ 「うん・・初めて見たよ」

カネキ(そうなんだ)

ウタ 「きみ・・・もしかして・・隻眼の梟・・・じゃないよね?逆だし」
カネキ「?なんです?それ?」

ウタ 「・・・・」
カネキ「?」



155:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/24(火) 00:05:55.91 ID:ZK6XRrrJ0

ウタ 「うん・・・なんとなくイメージ降りてきたかな・・」
カネキ「そうですか」

ウタ 「なにか、要望ある?」
カネキ「要望・・ですか?」

ウタ 「うん・・このデザイン入れてほしいとか」
カネキ「あ・・・それなら」

ウタ 「?」
カネキ「これ、何かに使えませんか?」

ウタ 「眼鏡?・・・伊達メガネだね。どうしたのこれ?」
カネキ「僕の友達が選んでくれたものです」

ウタ 「ふうん・・大切な友達?」
カネキ「ええ、まあそんな感じでした」

ウタ 「・・・うん分かった」

・・・

ウタ 「じゃあ出来たら連絡するから連絡先教えてもらってもいいかな?」

カネキ「はい」

ギーーッ

イトリ「よっ!ウーさん・・・ってあれお客さんいたか」

ウタ 「もう終わるよ」

カネキ「あ、もう帰りますんで」



156:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/24(火) 00:06:51.72 ID:ZK6XRrrJ0

ウタ 「どうしたの、今日は」

イトリ「いやーたまにはさ、ウチで飲まない?って思ってー」

ウタ 「うん、いいよ。もう今日は終わりにするから」

イトリ「おっし!蓮ちゃんも呼ぶかぁ!来るかなーアイツ?」

カネキ「・・じゃあ僕はこれで失礼します」

イトリ「・・・ん?キミ・・人間・・じゃないよね?」

カネキ「・・・えっと」

ウタ 「大丈夫だよ、カネキくん。このヒトも喰種だから」

イトリ「やっぱ喰種だよね?変わった匂いしてるなぁー?」

カネキ「僕、そんなに変わってる匂いします?」

イトリ「うん。喰種なのに半分人間みたい。ちょっとおいしそう」

カネキ「怖い事言わないでくださいよ」

イトリ「ハハハっ!ねえ、キミ、キミも一緒に飲まない?」

カネキ「僕未成年なんで、お酒はちょっと」

イトリ「おー純だねぇー大丈夫アルコールじゃないよ」

カネキ「うーん、だったらお邪魔してもいいですか?(なにかネタになる情報が得られるかもしれないし)」

ウタ 「ぼくも嬉しいね。今日会ったばかりだけど、カネキくんには僕も興味あるし」

イトリ「へー。ウーさんがそう言うなんて、期待しちゃうなー!よし、れっつごー!」



162:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/24(火) 22:27:42.49 ID:ZK6XRrrJ0

#010 [交換]


――――――――――“BAR Helter Skelter”

イトリ「わが店へようこそ!えっと・・・名前なんだっけ?」

カネキ「カネキです」

イトリ「カネキチ君かぁー!どこ住んでるの?」

カネキ「20区ですよ」

イトリ「ふーん・・“あんていく”のとこか」

カネキ「・・・(やっぱり“あんていく”は喰種の店なのかな)」

ウタ 「ねえ、せっかくお店来たんだから何か飲もうよ」

イトリ「おっとそうだった!血酒“ワイン”でいい?」

ウタ 「うん」

カネキ「僕、水かコーヒーで」

イトリ「釣れない事言うなよー!!飲もうぜ!!お姉さんが奢ってあげるから!」

ウタ 「イトリさん、彼困ってるよ?」

イトリ「おっとすまんすまん。いや、若いコが店に来てくれて嬉しくてさー・・・ね、ちょっと飲まない?無理にとは言わないわ」

カネキ「うーん・・じゃあちょっとだけ」

ごくごく

カネキ(飲める・・ていうか美味い・・・やっぱりコレ人の血だよなぁ)

イトリ「おっ、意外といけるんじゃない?」



163:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/24(火) 22:28:16.43 ID:ZK6XRrrJ0

イトリ「おや?」

カネキ「?」

イトリ「ちょ・・・ちょっとカネキチ君!キミって隻眼なの?」

カネキ「?ああ、この目のことですか?ええ、そうですね」

イトリ「初めて見たワ・・でも左か・・確か“あんていく”にもいるって聞いたけど」

ウタ 「らしいね。僕も会ったことないけど」

カネキ「あの・・コレってそんなに珍しいんですか?」

イトリ「珍しいも何も!隻眼てのは人と喰種のハーフじゃなきゃならないって聞いてるけど!」

カネキ「はあ・・そうなんですか」

イトリ「でも噂によると“あんていく”の奴はちょっと違うみたいだけど」

カネキ「?」

ウタ 「カネキくんは、やっぱりハーフなの?」

カネキ「えっと・・・よくわかりませんが、母は人間でした。父は僕が物心ついたときは居なかったので・・(とでも言っておこう・・)」

イトリ「じゃあパパが喰種だったんだねー!“隻眼の梟”もそうなのかなー」

カネキ「隻眼の梟?」

イトリ「知らないの?」

カネキ「ええ、お恥ずかしながら」

イトリ「隻眼の梟ってのは・・まあ噂なんだけど、白鳩も恐れる最強の喰種だよ」

カネキ「へー」



164:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/24(火) 22:29:04.23 ID:ZK6XRrrJ0

カネキ「そういえばさっき言ってた“蓮ちゃん”て人も4区の人なんですか?」

ウタ 「蓮示君は20区だよ。“あんていく”に行けば運が良ければ会えるかもね」

カネキ(じゃあ前に会ってるかもな・・)

イトリ「そうそう。あんていくで一番小汚い服着て、無精ヒゲの奴!」

カネキ(会ってないな)

ウタ 「ひどいなイトリさんは」

イトリ「だってホントじゃん」

ウタ 「イトリさんだって。・・・今日は履いてる?」

イトリ「・・・・」

ウタ 「女の子なんだから下着は履いた方がいいよ」

カネキ「・・・・??」

ウタ 「ホラ、カネキくん引いてるし」

イトリ「これは健康法!健康法なのよ!!」

ウタ 「人間の世界では“露出狂”って言うんだよ、それ」

ウタ (まあ4区で白鳩狩ってたとき散々色仕掛けやらせちゃったからそのせいなんだろうなー)

カネキ「・・・・・・・・・・」

ウタ 「ちなみにカネキくん」

カネキ「・・・はい」

ウタ 「蓮示君、ちょっとソッチの気があるから、もし会うことがあったら気を付けてね?」

カネキ「え?ソッチ?」

ウタ 「うん。彼、血酒飲んだ時なんかすごい絡んでくるし、ボディタッチすごいよ」

イトリ「んな事言ったらニコのがガチオカマじゃん」

ウタ 「うん、でも蓮示君の風貌で攻められる方が怖くない?」

イトリ「あーそうかも」


・・・この時カネキは“マジかよ3次元でBL?!超見てみたい!!”と思った。
そして実際に蓮示とニコを見て、“そういうの求めてないから”と吐き気を催したという。



165:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/24(火) 22:30:10.26 ID:ZK6XRrrJ0

30分後。

ウタ 「・・・ぼく、もう、ちょっと限界かな・・」

イトリ「にゃにおー!ウーさん弱すぎぃ!かにぇきち君だってまだ平気にゃ顔してんのにー!」

ウタ 「・・イトリさん、呂律、まわってないよ」

カネキ「これ、おいしいですねー」
ごくごく


ウタ 「蓮示君も来ないみたいだし、ぼくは帰るね」

カネキ「え、ちょっとウタさん・・」

イトリ「うたさんばいばーい☆かにゃきちは帰らないよねー?☆」

ウタ 「キミのが強そうだし、イトリさんお願いね?出るときはCLOSEにして出れば大丈夫だから」

カネキ「・・・・」


***


カネキ「もう・・イトリさん、大丈夫ですか?」

イトリ「うーい」

カネキ「はぁ・・・」



166:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/24(火) 22:31:12.36 ID:ZK6XRrrJ0

イトリ「・・・ハッ!!」

カネキ「あ、眼覚めました?」

イトリ「今・・・何時?」

カネキ「えっと・・23時半ですね」

イトリ「イテテ・・ごめんよカネキチ君・・ってかキミ強いねー」

カネキ「そうですか?初めて飲みましたが」

イトリ「暇なときウチでバイトしない?」

カネキ「あー・・結構忙しいんでやめときます」

イトリ「っち残念・・・ってあれ?私に上着かかってる・・かけてくれたの?」

カネキ「ええ・・風邪ひいちゃいますよって思って」

イトリ「・・・・そう。あんがと」

カネキ「いえ」


カネキ「あ、そういえば聞きたいことあるんですが」

イトリ「ん?何?」

カネキ「さっき言ってた20区の“あんていく”って店員さんはみんな喰種なんですか?」

イトリ「あれ?知らないの?」

カネキ「はい・・、それと“あんていく”にも隻眼の喰種がいるって言ってませんでした?」

イトリ「おや、意外と聞いてるね・・・うーんそうねぇ。交換条件てのはどう?」

カネキ「交換条件?」

イトリ「情報ってのはすごい価値のあるもんなのよ?だからカネキチ君が“喰種”のレストランについて調べてきてくれたら、私も教えてあげるよ」

カネキ「“喰種のレストラン”ですか・・・」



168:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/24(火) 22:32:17.34 ID:ZK6XRrrJ0

数日後。

カネキ「お邪魔します」

高槻 「どうぞー」

カネキ「マスク、出来ました」

高槻 「ほう!どれどれ?」

高槻 「・・・」

高槻 「伊達メガネがはめ込まれて、左目だけ見えるようになってるね」

カネキ「はい」

高槻 「コレ作った人はカネキ君をよく分かってますなー」

カネキ「そうですか?」

高槻 「で、喰種とは接触できた?」

カネキ「はい、2人だけですが」

高槻 「どんなだった?!」

カネキ「えっと・・・一人はピアスにタトゥーで赫眼出しっぱなし。もう一人は露出狂。その二人の話で、少なくとも2人の同性愛者が出てきました」

高槻 「待って、意味わからない」



169:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/24(火) 22:32:47.81 ID:ZK6XRrrJ0

***

高槻 「なるほどねー。喰種は本能に忠実なのかなぁ?」

カネキ「いや、会った人が偶々そういう人たちばっかってだけかもしれないですよ」

高槻 (いや、君もなかなかだけどね)

カネキ「で、そのバーの主人に交換条件を持ち掛けられました」

高槻 「ふむふむ。どんな?」

カネキ「“喰種のレストラン”について調べてきてくれたら“あんていく”のことを詳しく教えてくれると」

高槻 「ああ、“喰種のレストラン”なら知ってるよ」

カネキ「知ってるんかい」

・・・

高槻 「ってわけでこのレストランは普段は喰種相手に食事出してるみたい。たぶん人間を捕まえて料理してるんじゃないかな?ここに取材に行ってその後行方不明になった人いるみたいだし」

カネキ「それは怖いですね」

高槻 「だからいずれここにもカネキ君に行ってもらおうと思ってたの」

カネキ「ええ?!」

高槻 「だって喰種なら食べられないでしょ?」

カネキ「・・まあそうかもしれませんけど」

高槻 「“あんていく”については私もよく知らないから助かりますねー」

カネキ「はぁ・・やっぱり行かなきゃダメなんですね」

高槻 「いやー優秀なアシスタントが居て助かるわ」

カネキ「もう、わかりましたよ。じゃあそのレストランでバーの人と食事してきますよ。嫌だなー人間食べるの・・・」

高槻 「・・・・」



170:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/24(火) 22:33:36.80 ID:ZK6XRrrJ0

高槻 「カネキ君、ちょっと待って」

カネキ「なんです?」

ごそごそ
高槻 「コレ」

カネキ「・・・肉?」

高槻 「キミにいつもご馳走してる材料だよ」

カネキ「・・・何の肉ですか?」

高槻 「なんだと思う?」

カネキ「人・・ではないですよね?」

高槻 「違うよ。でもとっても珍しい動物の肉だよ。なんの動物かはヒミツ」

カネキ「へーまあ人間じゃなきゃいいですけど」

高槻 「この肉を持っていってレストランの人に調理してもらいなさいな」

カネキ「それって可能なんですか?」

高槻 「情報によれば、そういった事してる喰種も居るみたい」

カネキ「そうなんですか?まあ一応試してみます」

高槻 「一回、一人で行ってみたら?いきなりその人と一緒に行って失敗したらアウトだし」

カネキ「まあそうですね」

***



171:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/24(火) 22:34:19.96 ID:ZK6XRrrJ0

――――――――――7区“喰種のレストラン”

カネキ「ここでいいのかなぁ・・」

カネキ「レストランって言うから一応正装できたけど・・」


高槻 『会員制レストランのようだけど強気に行けば意外と入れるかもしれませんよー』


カネキ「先生・・・だいぶ適当なこと言ってたな・・・ま、入ってみよう」

カネキ「こんにちはー」

・・・

ガチャ
店員 「・・・はい?」

カネキ「レストランだって聞いてきたんですが」

店員 「・・申し訳ありませんが当店は限られたお客様にのみご提供する会員制のレストランとなっておりますので」

カネキ「会員制ですか・・こちらは一流の料理を出すって聞いてきたんですが」

店員 「ええ、希少な素材を使用する場合も多ございます。ですから会員制という立場を取らせていただいております」

カネキ「へえ・・・じゃあこの食材、なんだかわかります?」

店員 「・・・これは・・」

カネキ「分からないんですか・・・はぁ・・一流のお店でありながらそんな事も分からないんですね。残念です・・・食事、出来なくて却ってよかったかもしれませんね。それでは僕はこれで」

店員 「・・・」

「待ちたまえッ!!」



172:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/24(火) 22:35:48.53 ID:ZK6XRrrJ0

カネキ「あなたは?」

月山 「僕はMM。もちろん本名ではないよ。このレストランではそう呼ばれているってことさ」

カネキ「店員さんですか?」

月山 「Non!僕はこの店の会員さ・・・でもさっきのやり取りを見ていて思ったよ。もうこの店の会員などやめた方がいいかもしれないってね」

店員 「え・・MM氏?」

月山 「この彼の言う通りじゃないか?この食材が分からないなんて・・君は本当にこのレストランの店員かい?!」

店員 「・・・申し訳ありません」

月山 「どうだろう、僕にもこの食材をご馳走してもらえないかな?代わりと言っては何だが僕の紹介で会員にしてもらうようお願いしてあげるよ。いいだろ?店員君」

カネキ「いいですよ」

店員 「もちろんMM氏の紹介であれば」

月山 「決まりだね!」

カネキ「すみません、ありがとうございます」

月山 「いや、いいんだ。君のように一流の味を知る人と知り合え、語り合うことができることこそ僕の喜びだからね!」

カネキ「ははは・・ぼくも嬉しいです」


***


月山 「ところでその食材・・どこで手に入れたんだい?」

カネキ「そうですね、それは秘密です」

月山 「・・・!僕としたことが・・お互いのプライベートについてはSecretだったね。許してくれるかい?」

カネキ「ええ。MMさん(あんまりあなたに興味ないですし)」ニコッ



173:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/24(火) 22:36:28.27 ID:ZK6XRrrJ0

月山 「中ではマスクをつける決まりになっているんだ。持っているかい?」

カネキ「ああ、そうですか」すっ

月山 「Verres(メガネ)・・・キミ、ここでの名前はまだ無かったね。その独特のマスクからVE君と呼んでいいかい?」

カネキ「ええ。(なんでも)構いませんよ」

店員 「お待たせしました」

月山 「Impatiemment(待ちかねたよ)!」



カチャ
月山 「・・・これはッ!!甘味・苦味・酸味が混ざり合う複雑な味わい・・・!!ただ甘いだけの肉に慣れた下賤なものはきっとこの複雑な味わいを不味いと断じるだろう・・しかし僕には解る!この味わいに隠され得難き幸福が!!」

カネキ「・・・ふーん」

月山 「VE君・・まさか・・・お気に召さないかい?」

カネキ「いえ、そんな事ないですよ。ただ・・いつも食べてる料理の方が美味しいですね」

月山 「なっ・・・なんと!!君は・・自身でも料理をするのかい?!」

カネキ「いえ、作ってもらっているんですが」

月山 「ふむ・・・なるほどね」

カネキ「?」



174:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/24(火) 22:37:43.24 ID:ZK6XRrrJ0

月山 「主婦は常にCafeの香りに責任を持たねばならず、主人は吟味に抜かってはならないという・・・キミに料理を作ってくれる人とはそんな方なのかな?」

カネキ「“味覚の生理学”ですか?別にそういう訳じゃあないと思いますが・・」

月山 「フフ・・なんにせよ素晴らしい」


・・・

店員 「VE様、本日は失礼いたしました。次回からはご自由にお越しくださいませ」

カネキ「素晴らしい料理でした。僕こそ無礼な物言い、失礼いたしました。次回はこの素晴らしい料理を友人にも食べていただきたいので、二人で来ても構いませんか?」

店員 「勿論でございます」


カネキ「今日はありがとうございました」

月山 「こちらこそ素晴らしい時間をありがとう。今度は僕のからご馳走したいな。よければまたご一緒できないかな?」

カネキ(めんどうだなぁ・・)

カネキ「ええ、じゃあまたこのレストランで会いましょう。あなたとは、示し合せなくてもまたここで会える気がしますね」

月山 「エクセレント!」

カネキ(よし、連絡先教えないで済んだぞ)


***


カネキ「先生、おかげでレストランの会員になれました」

高槻 「マジで?!」

カネキ「・・・やっぱりテキトーな事言ってたんですね・・」



175:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/24(火) 22:38:23.64 ID:ZK6XRrrJ0

カネキ「・・・という訳で近く、イトリさんとレストラン行ってきます」

高槻 「うん・・・ん?イトリさん?」

カネキ「あ、バーのマスターですよ」

高槻 「ああ。女性なんだ?」

カネキ「ええ」

高槻 「ふーん」

カネキ「?」

高槻 「カネキ君、相手は喰種とはいえ女性なんだからちゃんとエスコートするんだよー?」

カネキ「エスコートって言われてもよくわかりませんが・・まあ頑張ります」

高槻 「ウン」



186:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/25(水) 23:34:29.34 ID:fkXFghVW0

#011 [逢引]

数日後。


ギーッ
イトリ「いらっしゃーい」

カネキ「こんにちは、イトリさん」

イトリ「おっカネキチ君。こんな早い時間にまた飲みに来たかー?」

カネキ「いえ、ちょっとイトリさんに用事があってきました」

イトリ「ん?」

カネキ「今日、これから時間あります?」

イトリ「え?何急に?」

カネキ「デートしません?」

イトリ「ふえっ?!」

カネキ「時間無いならまた今度でいいですけど」

イトリ「拒否する選択肢は無いってか・・カネキチ君意外と強引なんだね。いいよ今日はもう店終わり!」

カネキ「大丈夫です?」

イトリ「こんな誘われ方して行かないなんて女じゃないよ!」



187:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/25(水) 23:35:06.47 ID:fkXFghVW0

カネキ「こんにちは」

店員 「いらっしゃいませVE様」

イトリ「え・・?ここって・・」

カネキ「レストランです。一緒に食事でもと思いまして」

イトリ「ここって、まさか」

カネキ「ええ」


・・・

イトリ「それにしてもカネキチ君には驚いたわ」

カネキ「何がです?」

イトリ「まさかカネキチ君がすでに喰種のレストランの会員だったなんて」

カネキ「いえ、イトリさんに言われた後、会員になりました」

イトリ「え?・・・それってそんな簡単になれんの?」

カネキ「いえ、多少強引になりました。大丈夫ですよ、会員から紹介されればなれるみたいなので、イトリさんは会員になれると思いますよ」

イトリ「強引って・・・カネキチ君って見た目の割に意外と狂暴なのかな?」

カネキ「狂暴?言われたことないですけどね」

イトリ「ふーん・・」



188:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/25(水) 23:35:39.45 ID:fkXFghVW0

店員 「お待たせいたしました。本日は特別な食材を使用いたしました」

カネキ(あ、そういえば人の肉食べなきゃいけないんだろうなぁ・・)

店員 「前回VE様がお持ちいただいた食材を、今回は我々の方で用意させていただきました」

カネキ「そうですか(あ、人の肉じゃないみたいだ、ラッキー)」


イトリ「・・カネキチ君てホントは常連じゃない?」

カネキ「今回が二回目ですよ」

イトリ「本当侮れないわねぇ」

カネキ「とりあえずいただきましょうよ」

イトリ「そうね、いただきます」もぐっ

もぐ
カネキ(うーん・・やっぱり高槻先生の味付けのが美味しいなぁ・・)

イトリ「・・・・」

カネキ「あ、イトリさんどうです?」

イトリ「あ、うん。変わった味。おいしいよ」

カネキ「よかったです」



189:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/25(水) 23:36:32.15 ID:fkXFghVW0

イトリ「はー・・・いや本当参ったわ。約束だから“あんていく”のことで私が知ってること教えてあげる」

カネキ「ありがとうございます、でもそれは後にしましょう」

イトリ「え?」

カネキ「今はイトリさんとの食事を楽しみたいですし」

イトリ「なっ・・・//」

カネキ(ふぅ・・・デートってこんな感じかな?思ってもいないこと言うのって疲れるなー)

イトリ「・・・お、お姉さんをからかっても何も出ないわよ」

カネキ「?」


***

イトリ「ねえカネキチ君」

カネキ「なんです?」

イトリ「キミさ、私たちの仲間にならない?」

カネキ「私たちって・・ウタさんとかですか?」

イトリ「うん。ウーさんもそう。あと何人かいるんだけど・・まあ4区からの腐れ縁連中よ」



190:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/25(水) 23:37:15.52 ID:fkXFghVW0

カネキ「僕、とりあえず今は20区に住んでますし、人の大学に通ってるんですが」

イトリ「マジか!・・キミは知れば知るほどミステリアスだね」

カネキ「そういうもんですか」

イトリ「で・・・仲間になるってハナシ、どう?」

カネキ「仲間って具体的に何をするんです?」

イトリ「うーん・・そう言われると困るんだけど・・・まあ一緒に楽しいことするだけだよ」

カネキ「はぁ・・」

イトリ「キミの掴めない感じと不思議な雰囲気、そして隻眼!たぶん歓迎してもらえるよ・・・それに私ももっとキミと話したいし」

カネキ「うーん・・(仲間ってたぶん喰種の仲間だよなー・・面倒だなぁ・・)」

イトリ「ダメ?」

カネキ「少し考えさせてください。これから何回かイトリさんのお店に通って、他の仲間の方と会ってから考えたいですね」

イトリ「ん・・正論だね」

カネキ「それと、下着は履いてください」


イトリ「実を言うとさぁ、この喰種のレストラン調べてって言ったのもちょっとした悪ノリだったんだよねぇ・・」

カネキ「悪ノリ?」



191:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/25(水) 23:38:13.72 ID:fkXFghVW0

イトリ「ここってさ、噂によれば不定期で人間解体ショーが行われるらしいのよ」

カネキ「それは踊り食い的な感じですか?」

イトリ「たぶんそうじゃない?」

カネキ「悪趣味ですねぇ」

イトリ「ふふっ・・でね、ハーフ喰種の君がそれ見たらどんな反応するかなーって思ったのよ」

カネキ「それは僕が半分人間だからって意味ですか?イトリさんもだいぶ悪趣味ですね(そういえば僕、ハーフってことになってるんだったな・・)」

イトリ「アハハ・・ゴメンゴメン!」

カネキ「まったく・・」

イトリ「私たちの仲間はね、そうやってお互いタチの悪いジョークを言い合うの」

カネキ「なんか急にそのグループに入りたくなくなってきましたね」

イトリ「冗談通じないなーカネキチ君は・・・まあでも・・・仲間に入るのが嫌だったらさ・・それどもいいけど、それとは別に・・私とは・・・・その友達でいてよ」

カネキ「え?・・・まあそれならばいいですよ?ってかもうすでに友人じゃないですか?こうやって一緒にご飯食べてるし」

イトリ「そっ・・・そうね!」

カネキ「あ、あと下着は履いてくださいよ」

イトリ「・・・・」





エト 「・・・」



192:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/25(水) 23:38:44.87 ID:fkXFghVW0

カネキ「ふぅ・・ごちそうさまです」

イトリ「ねぇカネキチ君、この後さ・・・ウチの店で飲まない?」

カネキ「え?これからですか?」

イトリ「うん。だって“あんていく”の情報教えなきゃ」

カネキ「ああ、そうでしたね」

イトリ「ね?いいでしょ?貸し切りにするよ」

カネキ「・・なんか悪いですね」

イトリ「何言ってんの!他でもないカネキチ君のためだもの!!それに情報交換持ち掛けたのは私だし、これでこちらだけ情報もらったままなんてのは情報屋としてあるまじき行為だわ」

カネキ「・・じゃあちょっとだけお邪魔します」

イトリ「おーし!じゃあ準備しなきゃな!私は一足先に帰って準備するよ」

カネキ「そこまでしなくてもいいですよ」

イトリ「いいからいいから!・・まあでもちょっとだけ一緒に外歩こうよ」

カネキ「え?」

イトリ「だって・・・デートなんでしょ?」

カネキ「あ、うん。そうですね」



193:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/25(水) 23:39:14.39 ID:fkXFghVW0

店員 「VE様、またのお越しをお待ちしております」


・・・

イトリ「ふふ・・デートだから手、繋ごうか?」

カネキ「そうですね」
ぎゅっ

イトリ「・・・・//」

カネキ「夜景でも見ましょうか?」

イトリ「あ・・うん」

・・・

カネキ「あのタワー、完成してからしばらく経ちますね。登りました?」

イトリ「まだ、登ってないよ。人間てすごいわねぇ。あんなでかい建物作るんだから」

カネキ「そうですね」

イトリ「カネキチ君は登ったの?」

カネキ「いや、僕も登ってはいないです」

イトリ「・・じゃあ今度登るか!人間のフリして!」

カネキ「ハハ・・そうですね」



194:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/25(水) 23:39:52.58 ID:fkXFghVW0

カネキ「夜景綺麗ですね」

イトリ「夜景見てるとさ・・思い出すんだよね。4区にいたころのこと」

カネキ「4区は都会ですからね」

イトリ「ウーさんってさ、前は4区のボスだったんだよ」

カネキ「へーそうなんですか」

イトリ「でね、ある日蓮ちゃんが来てウーさんとケンカしだしたのよ」

カネキ「最初は仲悪かったんですね」

イトリ「まあ蓮ちゃんもツンデレだからねー・・でね・・ある日4区にCCGの死神がやってきた」

カネキ「CCGの死神?」

イトリ「おや、知らないの?有馬って奴だよ。噂では蓮ちゃんのお姉さんを殺したとか」

カネキ「強いんですか?」

イトリ「ウンすごく。で、結局その時は蓮ちゃんとウーさんが一緒に戦ったんだけど勝てなくてね」

カネキ「・・」

イトリ「蓮ちゃんにとってはお姉さんのカタキだからさ、無謀にも突っ込んでいきそうになったのよ」

カネキ「よく無事でしたね」

イトリ「直前で、ある喰種が蓮ちゃんを助けたの。その喰種が今の“あんていく”の店長よ」

カネキ「へー(あのおじいさんかな)」



195:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/02/25(水) 23:40:27.09 ID:fkXFghVW0

イトリ「結局その後、蓮ちゃんはその喰種・・“芳村店長”と一緒にあんていくの一員となったの」

カネキ「あれ?蓮さんて人は仲間じゃないんですか?」

イトリ「違うよ。トモダチではあるけどね」

カネキ「ふーん・・じゃあウタさんの他ってどんな人です?」

イトリ「芳村店長があんていくの店長になる前に仲間だった奴とか、あと今はアオギリってチームに身を置いてる奴とか」

カネキ「結構ゆるいんですね」

イトリ「まあ、そういう緩いのもウリだからね・・・ハハハ」

カネキ「?」

イトリ「私ったら何喋ってるんだ。情報は命よりも重いのね・・・とりあえず今喋ったことはナイショね」

カネキ「ええ、わかりました」

イトリ「・・そろそろ私は店に帰って準備するよ。1時間ぐらいしたら来て」

カネキ「スイマセン」

イトリ「ふふ、じゃあまた二時間後に」


***

イトリ(はぁ・・・私なに浮かれてるんだろ)

イトリ(・・このイトリ様をこんな気持ちにさせた責任はとってもらわなきゃね)

イトリ(・・・・下着・・履くかぁ・・)





ピピピピピピピピピピ・・ピッ

イトリ「・・え?」

ズオォォォォン!!



207:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/01(日) 01:04:07.30 ID:cFsZTpO20

戻りました。再開します

それと>>195のイトリの最後のセリフは
×「二時間後に」
○「一時間後に」
でしたすみません



208:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/01(日) 01:04:44.88 ID:cFsZTpO20

#012 [現実]


ヒナミ「あ・・・これはなんて読むの?」

ヒデ 「ちょっと待ってな・・・えっと・・これは『驟雨(しゅうう)』で意味は“急に降って来て、しばらくすると止んでしまう雨”だって。へーそんな言葉あるんだなー」

ヒナミ「ふふ・・お兄ちゃんも知らない言葉いっぱいでヒナミとおんなじだね」

ヒデ 「おう!自慢じゃねーが俺は漢字を知らないぞ!」

リョーコ「こらヒナミ、教えてくれるヒデさんにそんなこと言わないの!」

ヒデ 「ははは、いーんすよ。俺、本当にあまり本読まなかったので・・・友達にもよく“活字に触れろ”って言われます。最近ヒナミちゃんと一緒に勉強しててもっと本読もうかなーって思います」

リョーコ「うふふ・・じゃあ良ければ私の読んでる本お貸ししましょうか?ヒナミの読んでいる本ももともとは私の本なんです」

ヒデ 「これは“虹のモノクロ”・・・ああ高槻先生の本ですね」

リョーコ「ご存じなんですか?」

ヒデ 「ああ、さっき言ってた俺の友人が好きなんですよ。この人の本」

リョーコ「そうなんですか。その方にもお会いしてみたいですね」

ヒデ 「あー・・・・あいつに会うときは眼鏡かけてた方が好感度上がりますよ」

リョーコ「?」



209:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/01(日) 01:05:16.51 ID:cFsZTpO20

コンコン
トーカ「おい、新人」

ヒデ 「あれ、どうしたの?トーカちゃん」

トーカ「どうしたのって、交代の時間なんだけど」

ヒデ 「あっゴメン!・・じゃあ俺下に行くんで!」

リョーコ「はい。いつもありがとうございます」

ヒナミ「お仕事、いつ終わるの?」

ヒデ 「あ、シフト夜までだから今日はもう無理かも。ゴメンね!」

トーカ「じゃあ私と一緒に本読もう、ヒナミ」

ヒナミ「うん!」

ヒデ 「じゃあ行ってきまーっス!」


ガチャン

トーカ「全く、アイツ軽いんだから・・」

ヒナミ「・・・お姉ちゃん、ヒデお兄さんのこと嫌い?」

トーカ「あ、イヤ!そういう訳じゃないよ。なんかアイツ軽いだろ」

リョーコ「・・・でもヒデさんは私たちやあんていくの皆さんのために一生懸命ですよね」

トーカ「・・まあそうなんですけどね」

ヒナミ「ヒデお兄さん、優しいから好きだよ」

トーカ「・・・まあ悪い奴じゃないよ。それに案外気が利く奴だし・・」

リョーコ「ええ・・私たち、ヒデさんのおかげで救われている気がするんです」

トーカ「そうですね」

リョーコ「・・・はい///」

トーカ(あれ?)



210:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/01(日) 01:05:45.29 ID:cFsZTpO20

ヒデ 「スイマセン遅れました」

古間 「ヒデ君、お勉強は終了かい?」

ヒデ 「はい。ヒナミちゃん結構難しい本読んでて、俺も読めない漢字があったりするんすよねー」

古間 「うん・・・ところでヒデ君はどちらかというと年上好きなのかな?」

ヒデ 「え・・?何のことっすか?」

カヤ 「コラ、猿男。今日は店長お休みなんだから真面目に仕事しなさい」


**

ヒデ「ふう・・そろそろ終いかな」


カランカラン・・

ヨモ 「・・・英良」

ヒデ 「あ、ヨモさん。どうしました?」

ヨモ 「・・仕事終わったら話がある」

ヒデ 「?」



211:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/01(日) 01:06:15.48 ID:cFsZTpO20

ヒデ 「で、どうしたんすか?」

ヨモ 「お前・・上井大学だったな?」

ヒデ 「はい。そうっすけど」

ヨモ 「西尾錦という奴を知っているか?」

ヒデ 「上井の学生ですか?・・・うーん知らないですね」

ヨモ 「薬学部の2年生だそうだ」

ヒデ 「いやー!学部違うし先輩なんてわかりませんよー」

ヨモ 「・・そういうものか」

ヒデ 「で、その西尾さんて人がどうしたんすか?」

ヨモ 「・・実はそいつがリゼの喰場だったところを荒らしている・・それ自体はそこまで問題ではないが、数が多い・・このままでは・・」

ヒデ 「・・・ハトをおびき寄せるってことっすか」

ヨモ 「そういう事だ」

ヒデ 「俺、その人に会ってみますよ」

ヨモ 「・・・すまないな」

ヒデ 「いえ、皆のこと守れるなら俺は・・」

ヨモ 「・・・」

ヒデ (・・ヨモさんってなんか距離近いんだよなぁ・・)



212:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/01(日) 01:06:54.36 ID:cFsZTpO20

上井大学にて。

ヒデ 「えっと・・この部屋だって聞いたな」

コンコン

ヒデ 「しつれいしまーっす」
ガラガラ

西尾 「・・ん?誰オマエ」

ヒデ 「あ・・えっと国際学部1年の永近っす。あの・・実はお願いがあってきたんですけど」

西尾 「?」

ヒデ 「俺“あんていく”で働いてます」

西尾 「・・・ふーん。で?」

ヒデ 「ヨモさんから聞きました。西尾さん、最近食べ過ぎだって」

西尾 「・・・」

ヒデ 「このままだとハトを呼びかねないから・・」

西尾 「・・・あーそうだな。悪い悪い」

ヒデ 「?」

西尾 「いや、俺が悪かったよ。ホント。今後は気を付けるよ」

ヒデ 「あ・・えっと、スイマセン。ありがとうございます」

西尾 「いや、謝るのは俺の方だって」

ヒデ (ヨモさんの話と違って意外と話せる人なのか?)

西尾 「・・お詫びと言っちゃなんだけどさ、今日夜ヒマか?」

ヒデ 「え?」

西尾 「そうそう。“俺ら”でも行ける飲み屋あってさ」

ヒデ 「飲み屋っすか・・(人の肉出てくんのかよ・・)」

西尾 「そうそう。奢るよ?」

ヒデ (好意を断るのは良くねーな・・)
ヒデ 「そうっすか?じゃあぜひご一緒させてください」



213:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/01(日) 01:07:30.57 ID:cFsZTpO20

***


西尾 「こっちだから着いて来いよ」

ヒデ 「はぁ・・なんか裏路地みたいなとこにあるんすね」

西尾 「ああ、だって裏路地のがいいだろ?」

ヒデ 「確かにそうっすね」

西尾 「裏路地の方が糞うるせーお前の悲鳴が聞こえないで済むしよ」

ヒデ 「え?」

西尾 「オラァァァァアア!!」

バシイイイイン!!

ヒデ 「グッ!!」

西尾 「俺さーオメーみたいな年下の糞生意気なガキに指図されんのスゲームカつくんだよ」

ヒデ 「にしお・・せんぱ」

西尾 「オラァ!」
ドゴッ!!

ヒデ 「ぐアッツ!」

西尾 「ん?お前片目だけ赤いのかよ、気持ちわりーな。つーかヨモに言っとけよ。あそこは俺の喰場だから文句言うなっての・・・ま・・言えねーか。お前ここで殺すからよ」
ヒュンッ!

ザシュッ!!
ヒデ 「あ・・・ぐ・・」

西尾 「お前、スゲー弱いのな。人間並みに柔らかいんじゃねーの?」



214:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/01(日) 01:08:25.55 ID:cFsZTpO20

ヒデ 「西尾・・先輩・・。なんで最近食う量増えたんですか・・?月に1回も狩れば十分なんじゃないんですか・・?」

西尾 「内臓出しながら喋ってんじゃねーよ。ウゼー。てか赫子も出せねーのかよ」

ヒデ 「しかも・・全部食わずに少しだけ食って死体を捨ててる・・まるで憂さ晴らしに殺してるみたいだって・・・何かあったんですか?」

西尾 「・・・ウゼー・・・死ねよ」
ヒュンッツ!

・・・


ヒデ 「・・・」

ヒデ (・・・俺・・死ぬのかな・・)

ヒデ (・・内臓でまくって・・・喰種になってなけりゃー、即死だな・・)

ヒデ (俺が死んだら・・・・カネキ・・悲しむかな・・いや、アイツは一人でも大丈夫かもな)

ヒデ (・・・・)


『夫のマスクです。永近さんのおかげで私たちは先に進めそうです』

『お兄さん、早く帰って来て、またヒナミと一緒に本読もうね』

『ふんっ・・・クソ新人のくせにラテアート上手いじゃねーか』

『君が私たちと一緒に働いてくれていることが、とても嬉しいよ』


『僕にとってヒデは本当に大切な友達だよ』


ヒデ (・・俺、ここで死んだら誰のことも守れねーじゃねーか!)
ズグッ



215:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/01(日) 01:09:08.44 ID:cFsZTpO20

西尾 「ッチ・・・ウゼーこと思い出させやがって」

ズグンッ!!

西尾 「え」

ズギュウンンン!!

西尾 「な・・・グアアアアアアア!!!」

ヒデ 「・・・・」

西尾 「テメッ・・・赫子をッ!!ギャアアアアアア!!!」

・・

西尾 「バカなッ・・・・俺が・・・っ」

ヒデ 「・・・うっ・・ぐっ・・」
ドサッ

西尾 「死・・・ミ・・き・・・・すま・・・」


***



216:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/01(日) 01:09:48.40 ID:cFsZTpO20

――――――――――20区“あんていく”


ヨモ 「・・すまない。俺が見つけた時はもうこの状態だった・・・人工呼吸と応急処置をしたが・・」

トーカ「くそッ!!」

芳村 「・・赫子が出たことで少しだけ体の再生が行われたようだ・・しかし栄養が足りないためか目が覚めないのかもしれない」

ヨモ 「・・俺が西尾のことを言わなければ・・」

芳村 「ヨモ君のせいではない・・それに今は永近君が回復する方法を考えよう」

トーカ「・・コイツはついこの間まで人間だった。人間の医者に見せるのはどうですか?!」

芳村 「それはできない。医者が見れば彼が喰種であることがばれてしまうだろう。それに喰種である彼の体には針やメスなどは刺さらない」

リョーコ「あのっ!針が刺されば助かるんですか?!」

芳村 「・・人で言う“点滴”をすれば手っ取り早く栄養を摂取できるからあるいは・・」

リョーコ「・・・なら私、心当たりがあります!」


***


――――――――――11区某所

リョーコ「あの、すみません」

ヤモリ「ん?誰?」

リョーコ「私、笛口アサキの妻です」

ヤモリ「・・ああ」



217:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/01(日) 01:10:31.89 ID:cFsZTpO20

リョーコ「お願いがあってきました。夫が作った喰種に使う医療機器を分けてもらえないでしょうか?」

ヤモリ 「なんで?」

リョーコ「知り合いの方がケガをしたんです。でも普通の機器では喰種には使えないので・・」

ヤモリ「・・・ふーん」

リョーコ「お願いですっ!」

ヤモリ「いいよ。別に」

リョーコ「ありがとうございます!!」

ヤモリ「でももう僕の前に現れないでくれる?面倒だからさあ」


・・・


ニコ 「アラ?よかったの?タダであげちゃって」

ヤモリ「ウン。アサキは便利なやつだったけど死んじゃったし。それにすごく弱そうだったじゃん今の奴。弱いだけのもの壊してもつまらないよね」

ニコ 「ふーん今日はなんだかクールなのね・・そんなヤモリもステキよ♡」

ヤモリ「ぜんぜん嬉しくなーい」



218:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/01(日) 01:11:06.22 ID:cFsZTpO20

リョーコ「これで・・・ヒデさんがっ・・・」

「すみません」

リョーコ「え?」

「ちょっとお聞きしたいんですが」


***


ぴくっ
ヒナミ「・・・?!」

トーカ「ん?どうしたの、ヒナミ」

ヒナミ「・・・私・・お母さんをお迎えに行く」

トーカ「え?・・・あ、おい!」

カランカラン!



219:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/01(日) 01:11:39.43 ID:cFsZTpO20

ヒデ 『カネキ・・トーカちゃん・・入見さん・・古間さん・・ヨモさん・・店長・・リョーコさん・・ヒナミちゃん・・・みんな・・』

『こんにちは』

ヒデ 『・・・誰?』

『・・・失礼ね』

ヒデ 『あ・・・カネキが気になってた眼鏡の人』

『本当に失礼ね、あなたたち』

ヒデ 『あ・いえ・・カネキがあんまりメガネメガネ言うもんでそのイメージになっちゃって』

『まったく、あの変態メガネフェチは』

ヒデ 『ハハハ・・・的確な表現っすね』

『あの子、自我が強固すぎて私の問いかけガン無視するから、アナタの方に会いに来たの』

ヒデ 『はぁ・・そうっすか』

『なによ、その乗り気じゃない感じ』

ヒデ 『いや・・・だって俺、あなたのことよく知らないんで』

『・・・確かにそうね。でも今はもう私とアナタは一体なんだから』

ヒデ 『?』



220:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/01(日) 01:12:23.14 ID:cFsZTpO20

『アナタの中で、ずっとあなたを見てたわ』

ヒデ 『はあ』

『アナタ、大変ね。変態に振り回されて』

ヒデ 『いや、アイツは変態だけど、頭いいし冷静ででいい奴ですから』

『アナタだって頭いいじゃない?それなのにわざとチャラい言動で周りに嘘ついてる』

ヒデ 『別に嘘ついてる訳じゃないっすよ。俺は・・なんつーか勘は鋭い方かもしれないけど頭良くはないんで』

『そうね、そうやって勘が鋭いから、色々と先のことや隠されたことに気付いちゃって苦労する』

ヒデ 『ハハ・・』

『なのに最近のアナタの言動は少し変よね?医者のとこに行けば殺されるか、あるいは喰種にされる可能性、気づいてたでしょ?』

ヒデ 『いや・・まさか本当に喰種にされるとは思ってなかったっすから』

『・・寂しかったんでしょ?お友達は違う世界に行っちゃって、気になってた子も違う世界の住人だった』

ヒデ 『・・』

『アナタは昔から社交的で誰とでも仲良くなれる。でも俯瞰的に物事を見つめられるからこそ、“主体”が曖昧で心から信じることができる友達は居ない・・いえ、カネキ君くらいしかいない』

ヒデ 『・・』

『彼、常軌を逸した言動とるから、もう一周してヘタに気を回す必要がないものね』

ヒデ 『・・・』

『それに、退屈だったんでしょ?彼以外は大体“予測”できてしまうこの世界が』

ヒデ 『俺は・・・平和が一番だと思いますよ』

『フフ・・そろそろ起きたら?あなたのお気に入りのトーカちゃんが、心配してるわよ?』

ヒデ 『・・トーカちゃん』

『それに、“退屈じゃない”現実も待ってるわよ』

ヒデ 『・・・え?』


・・・

ぱち
ヒデ 「あれ・・・?俺・・」

トーカ「!」



228:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/02(月) 00:19:27.00 ID:b6Vz3DOE0

#013 [白鳩]


亜門 「真戸さん・・723番、あれ以来“石碑”に通う様子もなく特に目立った行動も見られませんね・・やはりシロなんでしょうか?」

真戸 「クク・・どうだろうねぇ。何とも言えないが結論を出すのは早い。私の勘では696番との関連はともかく、クロのような気がするがね」

亜門 「そうですか・・真戸さんの勘は当たりますからね」


篠原 「おーい、ちょっといいかい?」

亜門 「あっ篠原さん!」

篠原 「ようムキムキ亜門。あ、いちいち上腕二頭筋を強調するポーズ取らなくていいぞ」

亜門 「すみません、つい」

真戸 「で、どうした?」

篠原 「ああ、真戸。実はマルちゃんから二人に要請があってさ」

亜門 「丸手・・特等から?」

篠原 「ああ。アイツさ、今“11区特別対策班”の指揮官サマやってるみたいなんだよね」

亜門 「ああ、11区は最近物騒ですからね」

篠原 「でさ、二人には20区の担当と一緒に11区の捜査の助けをしてほしいんだと」

真戸 「ほう・・」



229:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/02(月) 00:20:11.93 ID:b6Vz3DOE0

亜門 「具体的に何をすればいいんですか?」

篠原 「それは後でマルちゃんから直接聞いてよ。ちなみに俺も同じこと言われたから後で一緒に行こう」

真戸 「ふむ。じゃあ早速行こうか」


**


ガチャ
篠原 「うっす来たぞー」

丸手 「おおー篠原、真戸ォ良く来たな」

真戸 「クク・・あなたが呼んだんでしょうが。で、具体的に我々は何を?」

丸手 「おっとそうだったな。実はな、知っての通り最近11区がホットだ。そんで近く奴らのアジトと思しき場所を襲撃することになると思うんだが、まだ情報が少くねぇ。そこでお前たちで11区の喰種共の情報収集をしてもらいたいんだ」

亜門 「情報収集・・ですか」

丸手 「おぅ。主要な喰種の情報と敵戦力の量だな・・・それにしても相変わらずでけえなぁ・・」

亜門 「ふふ・・そうですか?毎日の筋トレの賜物ですよ」

丸手 「の割には去年の選手権、2位だったそうじゃねーか」

亜門 「・・・(昔からこの人の一言多いところが嫌いだ)」

丸手 「ま・そういう訳で、情報収集終了後はアジト突撃となるが、そん時はお前らも特別対策班として協力してもらうからな」



230:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/02(月) 00:20:53.52 ID:b6Vz3DOE0

什造 「・・・情報収集しながら、いっぱい殺してもいいですか?」

丸手 「おう殺せ殺せ!喰種ならな!・・そういやお前が鈴屋だっけ?積極的でいい奴じゃねーか、さすが総議長推薦ってか?・・けど女みてーな外見だなぁ」

什造 「・・・・」ニヤァ

篠原 「ま・・マルちゃん、鈴屋は置いといて、他に声かけてる奴いるの?」

丸手 「おう、あとは黒磐班にも声かけたぜ」

篠原 「ああ、新しく2人加わったんだろ?」

丸手 「そうそう。黒磐んとこはとりあえずはお前らとは別行動だ。襲撃んときは一緒だがな」

真戸 「クク・・アジト襲撃か・・新しいクインケが手に入りそうだ・・」

丸手 「真戸・・“玩具”で遊ぶのも大概にしろよ」

真戸 「クックック・・・さて士気を高めてくるかな」

丸手 「だからそれを止めろって言ってんだよ」



231:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/02(月) 00:22:02.83 ID:b6Vz3DOE0

美郷 「・・という訳で私たちは引き続き13区の捜査をしながら11区の喰種集団の情報を集めることとなった。分かったか奈白、黒奈」

クロ 「私が黒奈」
シロ 「私が奈白」

美郷 「あっすまない」

クロ・シロ(見分けつくように服の色変えてるのに分かんないのかな、この人)

黒磐 「うむ、そういう訳でとりあえずは13区の捜査に当たる。13区は狂暴な喰種が多い。安久達は十分注意するように」

クロ・シロ「「はい」」


***


――――――――――20区“あんていく”


シロ 「・・今日も休みだね」

クロ 「そうだね」

シロ 「あの人、ここに行くって言ったよね?」

クロ 「うん、言ってた」

シロ 「・・・」
クロ 「・・・」

シロ 「また今度にしようか」

クロ 「うん」



232:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/02(月) 00:22:57.23 ID:b6Vz3DOE0

篠原 「・・なあジューゾー」

什造 「なんです?シノハラさん」

篠原 「お前、どう思う。“大食い”の件」

什造 「どうって何が?」

篠原 「あれだけの捕食数を誇っていたにも関わらず、最近は忽然と姿を消している・・」

什造 「うーん、ダイエットですかねぇ?」

篠原 「ハハ・・それは考えてなかったな」

什造 「早く捕まえて僕のクインケにしたいです」

篠原 「うーん・・・できたらいいんだけどさ。もしかしたらもう死んでるかもよ」

什造 「えー?!それじゃあ僕のクインケは・・」

篠原 「しばらくはサソリちゃんだな」

什造 「ぶー・・こんなちっこいナイフだけなんて嫌ですぅ」

篠原 「とにかくさ、“大食い”の足取りもう一回追ってみようよ」

什造 「はいです」



233:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/02(月) 00:24:13.77 ID:b6Vz3DOE0

亜門 「真戸さん、ちょっといいですか?」

真戸 「あッツ・・・亜門君、今いいところだ。後にしてくれないか?」

亜門 「真戸さん・・怪我しないように気を付けてくださいよ」

真戸 「クク・・大丈夫だよ」


亜門 「さて、真戸さんがオ●ニーしてる間に俺は筋トレかな」



丸手 「おい亜門」

亜門 「丸手特等、どうしました?」

丸手 「13区の喰種集団について“神父”に知ってることは無いか聞いて来い」

亜門 「・・・」

丸手 「気が進まんのかもしれんが、これは命令だ。拒否権は無え」

亜門 「・・承知しました」

丸手 「・・・あと、局内の廊下で突然スクワットを始めるな・・新人が怖がる」

亜門 「拒否します」




――――――――――23区“喰種収容所コクリア”


ドナート「鋼太郎・・いとしい我が息子」

亜門 「黙れ変態ロリコン野郎」



234:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/02(月) 00:25:12.66 ID:b6Vz3DOE0

ドナート「父親に対してなんて口の利き方だ。それにお前は変態筋肉野郎だろ」

亜門 「筋肉をバカにするな」

ドナート「ふっ・・・そういえばお前のパートナーはどうした?あの死神のような男だ」

亜門 「答える義務はない」

ドナート「そうか、またクインケオ●ニーか」

亜門 「・・・」

ドナート「相変わらずだな・・この私でもドン引きするよ」


**

真戸 「ふぅ・・・おや亜門君?」

丸手 「終わったか・・ファブリーズしとけよ。亜門は“神父”のところに向かわせた」

真戸 「なるほど・・情報収集のためか」

丸手 「ああ・・奴は筋金入りの変態だからな。勝手を知っている亜門に行かせる方が情報を聞き出せる可能性が高い」

真戸 「確か“小児喰い”のドナート」

丸手 「そうだ。肉が柔らかいからかは知らんが小児を好み喰っていた。女児に関しては二つの意味で喰っていた」

真戸 「クク・・変態だな」

丸手 「どの口が言うか」



235:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/02(月) 00:25:53.95 ID:b6Vz3DOE0

ドナート「で、今日は何を聞きに来た?」

亜門 「11区の喰種についてだ」

ドナート「11区か。最近は色々と物騒らしいな。以前“ハギ”という喰種が治めていたころは比較的穏やかだったが、そいつが殺されてからは権力闘争が激しいようだ」

亜門 「・・・現在11区を治めているのは?」

ドナート「さぁてな・・・私もずっとこの中にいる。そこまでのことは知らん」

亜門 「・・では有力な喰種は?」

ドナート「ふん・・・鋼太郎、自分で考えたらどうだ?」

亜門 「黙れ・・お前はただ質問に答えれば良い」

ドナート「ふふ・・まあいい。では逆に聞くが、以前の11区リーダーを殺ったのは誰だと思うね?」

亜門 「・・・」

ドナート「11区を現在治めてる奴が誰かは私も知らん。だがな、11区の元リーダーを殺した奴が、現リーダーでないなら、それは何かカラクリがあるということだ」

亜門 「・・・」

ドナート「それで質問は終わりか?」

亜門 「いや・・もう一つ」



236:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/02(月) 00:26:52.45 ID:b6Vz3DOE0

亜門 「ある喰種の夫婦のうち夫が駆除された」

ドナート「ほう」

亜門 「妻の喰種はしばらく夫の墓に通っていたとする」

ドナート「うむ」

亜門 「だがある日突然、墓に通わなくなったとしたら・・その理由は何だ?」

ドナート「ふふ・・お前らしいな。正解に近づいてはいるが経験不足からたどり着くことができていない」

亜門 「・・なんだと?」

ドナート「新しい男ができたんだろう。童貞のお前には難しいかもしれんがな」

亜門 「ど・・童貞ちゃうわ!!」



ドナート「以上で終わりか?」

亜門 「・・ああ。お前の欲しがっていたものはここに置いておく」

ドナート「助かるよ」

亜門 「しかし・・このコミックエルオーとはどんな雑誌なんだ?」

ドナート「鋼太郎・・お前は知らなくてもよい」



237:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/02(月) 00:27:42.25 ID:b6Vz3DOE0

真戸 「お帰り、亜門君」

亜門 「あ、真戸さん。スッキリしましたか?」

真戸 「ああ。ずいぶんと士気も高まった。それでは早速11区に行ってみようじゃないか」

亜門 「はい、そうですね」



――――――――――11区、某所

亜門 「・・あの建物が11区喰種のアジトですか?」

真戸 「ああ、そうらしい」

亜門 「かなりの広さですね・・ん?誰か出てきましたよ」

真戸 「・・・おやおや」

亜門 「あれは・・・723番?!」

真戸 「ククク・・・亜門君我々はツイているようだよ」

亜門 「ええそうですね。真戸さん」

真戸 「行こうか。クインケの準備はいいかな?」

亜門 「はい」



246:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/03(火) 00:51:11.99 ID:f8kf67u20

#014 [均衡]


カネキ「・・・そろそろ一時間経つな」

カネキ(一応食事ご馳走になるし、お土産持参した方がいいだろうと思って急ぎ買い物も済ませた・・・そろそろ行くか)



――――――――――14区“BAR Helter Skelter”

コンコン
カネキ「イトリさん、カネキです」

・・・

カネキ「あれ?返事がない・・・」

カネキ「・・・うーん・・」
ガチャ

カネキ「あれ、空いてる・・・・おじゃましまーす」



・・・・・バーカウンターには血まみれで横たわるイトリの姿があった。

カネキ「うわ、イトリさんが死んでる」

イトリ「・・・生きてるよ・・アホ」

カネキ「え・・でも片腕ないですけど・・」

イトリ「・・フフフ・・・」

イトリ「このイトリ様が・・・まさかこんなカタチで殺られるとはなぁ・・」

カネキ「え・・?」

イトリ「カネキチ・・・私、赫包をやられたから・・もう時間がない・・・だから生きてるうちに君に“あんていく”のこと、教えるわよ」

カネキ「救急車呼びますよ」

イトリ「アホか・・・こっちも情報屋のプライドがあるからね・・時間無いからしっかり聞きな」

カネキ「・・・」



247:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/03(火) 00:51:46.09 ID:f8kf67u20

イトリ「“あんていく”は20区の喰種の喰場を管理している・・・従業員はすべて喰種だ。しかも皆かなりの手練れだよ」

カネキ「前言ってた店長ってお爺さんですか?」

イトリ「・・・ああ。芳村店長は20区では並ぶものが居ないほど強力な喰種。でもあの人は今は争いを好まない」

カネキ「“今は”?」

イトリ「かつて・・・“V”という集団が居た・・・芳村店長はVの殺し屋だった。Vは人間と喰種の均衡を保つ役割を担っていて、その均衡を壊すものを消していたんだ」

カネキ「あの人殺し屋だったんですか」

イトリ「うん・・・だがある時芳村さんは人間の女性に恋をし、二人の間に子供が生まれた。子供は半喰種だった・・と言われている。君と同じ」

カネキ「・・・それがこの前言ってた隻眼の梟?」

イトリ「アタリ・・・あくまで噂だけど」

カネキ「“あんていく”にも隻眼の喰種が居るって言ってませんでした?」

イトリ「うん。それは隻眼の梟とは別。なんでも事故で死んだ喰種から臓器移植を受けた元人間らしいわ」

カネキ(あれ?・・・それって僕だぞ??)

イトリ「・・実はその事故は仕組まれたものだったのよ」

カネキ「え?」

イトリ「20区にさっき言った“均衡”を壊す可能性のある喰種が現れた。その喰種は他の喰種と比べ奔放で、束縛を嫌い、各区の喰種集団の作ったルールを守らなかった」

カネキ「各区の喰種集団が決めたルールを守ることが“均衡”を保つことなんですか?」

イトリ「・・・・」

カネキ「・・・イトリさん無理しないでください」

イトリ「大丈夫よ・・・この先を聞いたら君は“均衡”を壊そうとするかもしれない・・・そしたら、私みたいに狙われるかもしれない・・・」

カネキ「・・大丈夫ですよ」

イトリ「カネキチ・・・私・・カネキチには生きていて欲しいから・・」

カネキ「ええ、約束します」



248:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/03(火) 00:52:24.06 ID:f8kf67u20

イトリ「・・・うん、わかったよ」

イトリ「・・・私たち喰種は白鳩に狩られないように、いくつかの集団を作って生活している」

カネキ「・・ええ」

イトリ「だから私たちは各集団でルールを作り、目立つほどには人を食わないようにしている・・“あんていく”もそう」

カネキ「はい」

イトリ「私たちが目立った行動をとらないから、白鳩も私たちを狩りつくすことはできない」

カネキ「・・・」

イトリ「・・わかった?それが均衡」

カネキ「それじゃあ、CCGは自分たちの仕事がなくならない程度に適度に喰種を狩ってるってことですか?」

イトリ「まぁ・・白鳩側からすればそうかな・・・でもねそれだけじゃない。もしCCGが無くて、私たちが好き放題に人間を食い続けたらどうなる?」

カネキ「人間は居なくなりますね・・・そうか、そしたら喰種はいずれ全滅する」

イトリ「そ。・・・だからお互いが滅びないようにバランスをとってる奴らが居るの。それがCCGとV」

カネキ「よくできたハナシですね」

イトリ「でしょ?・・・ホント悪い冗談よね・・・」

カネキ「・・・ん?待ってください、イトリさんはそのバランスを壊そうとしたんですか?」

イトリ「・・そのつもりは無かったけどさぁ・・・でもカネキチに出会って少しだけ考えが変わった」

カネキ「?」



249:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/03(火) 00:52:55.40 ID:f8kf67u20

イトリ「芳村店長の奥さんはねVの正体を追うジャーナリストで・・Vの正体に気付いてしまった。だからVによって消された・・・・消したのは芳村さん自身」

カネキ「え?なんで??」

イトリ「“ケジメ”を付けさせられたのよ」

カネキ「ヤクザじゃあるまいし」

イトリ「とにかくね、それがきっかけで芳村さんはVを抜け、20区で“あんていく”を始めた。自分の子供は24区に預けて」

カネキ「24区?」

イトリ「この東京の地下に張り巡らされた広大な迷宮の最深部よ。私も詳しくは知らない」

カネキ「はぁ」

イトリ「でね、・・・これは私の予想だけど、20区で芳村さんは有力な喰種を集め、奥さんとは違った方法で“均衡”を崩そうとしている」

カネキ「・・・それは?」

イトリ「人間と喰種の和解」

カネキ「・・そんな事出来るんですか?」

イトリ「私も無理だと思ってたけど・・君の存在を見てその可能性が見えた・・・・私も・・・それが出来るなら・・君と一緒に・・・」

カネキ「・・・」

イトリ「私は直接見てはいないんだけどね、そういう訳で“あんていく”にも隻眼が居る。彼が、元人間の喰種なんて言う、アブナイものを手中に置いてるのはそういう理由があるんだと思うの」

カネキ「店長さんの子供は?」

イトリ「さぁ?・・・一緒には居ないみたい。仲悪いのかもね」



250:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/03(火) 00:53:25.34 ID:f8kf67u20

イトリ「・・・・く」

カネキ「・・・イトリさん」

イトリ「ヤバ・・・目が霞んできたわ・・・」

カネキ「・・・・・イトリさん」

イトリ「そういえばさ・・・“カネキ”って苗字でしょ?・・・ナマエ・・あるの?」

カネキ「・・僕の名前はカネキケンです」

イトリ「あのさぁ・・・ケン、お願いがあるんだけど」

カネキ「え?」

イトリ「・・・私を喰べてくれない?」

カネキ「・・はい?」

イトリ「・・・知ってるよ。キミ・・・共喰い・・・するんでしょ。レストランで・・出てきた肉・・・・喰種のものだったじゃない」

カネキ「・・え?」

イトリ「お願い・・私が・・・・・死んだら・・・私を・・・・・」

イトリ「・・・ここに置いてかれる・・より・・・ケンと・・一緒に・・」


カネキ「イトリさん・・・あ・・そういえば、僕、イトリさんにプレゼント買ってきたんです。手ぶらじゃ悪いと思って」

イトリ「・・・・え?」

ごそごそ
カネキ「・・コレ」

イトリ(・・・なんでメガネ?)

カネキ「似合うかと思って」

イトリ「・・・よく・・わかんないけ・・ど・・・ありがと・・・かけさせて」

カネキ「はい」

そっ
イトリ「・・・け・・ン・・・・」



251:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/03(火) 00:53:55.84 ID:f8kf67u20

赤ぶちの眼鏡は、思った通りイトリさんにとても似合っていた。

僕の手の中で、イトリさんの鼓動が止まった。

僕はイトリさんの願いを叶えるため、イトリさんの首筋に噛みついた。

イトリさんの肉の味は、いつも高槻先生が僕のために用意してくれた料理の味だった。




イトリさんは予想に反して、下着を着けていた。



252:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/03(火) 00:54:27.11 ID:f8kf67u20

ガチャ
カネキ「こんにちは」

高槻 「おや、カネキ君。情報収集は進んだ?」

カネキ「ええ、かなり。でもその前に先生に聞きたいことがあります。」

高槻 「ん?何?」

カネキ「先生が僕に食べさせてくれてた肉って、喰種の肉だったんですか」

高槻 「そうだけど?」

カネキ「即答かよッ!!」

***


高槻 「だって、喰種は人の食べ物は食べられないって言うからね」

カネキ「だからって喰種の肉ですか」

高槻 「だって人の肉は嫌でしょ?」

カネキ「まあそりゃ嫌ですけど」

高槻 「だったら喰種の肉が落としどころかな、と」

カネキ「・・ていうかどこから手に入れてるんですか、喰種の肉なんて」

高槻 「この間取材した“スフィンクス”って会社で喰種の肉売ってますよ」

カネキ「もうスフィンクスめっちゃ怪しいじゃん!!」

高槻 「だから取材したんですよ」

カネキ「よく取材受けてくれたな、スフィンクス」



253:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/03(火) 00:54:57.73 ID:f8kf67u20

高槻 「まあ正確には、スフィンクスはある機関にのみ喰種の肉体を売っているようですね。それを先に突きとめたので、横流しをしてもらっていました」

カネキ「・・・売り先はどこです?」

高槻 「CCG」

カネキ「もうスフィンクスもCCGも真っ黒だろ!!」

高槻 「まぁまぁ落ち着いてください。カネキ君らしくないですよ」

カネキ「ああ、僕としたことが。取り乱しました」

高槻 「はい、落ち着いたところで、取材の成果を教えてください」

カネキ(・・・“均衡”の話はやめた方がいいな。僕の命もそうだけど、高槻先生も狙われるだろうな。この人の性格からいってVに直撃取材を敢行するだろうし)

カネキ「まず、“あんていく”は20区の喰種集団を取り仕切っているようです」

高槻 「なんと!」

カネキ「そして従業員は全員喰種で、しかも全員かなりの手練れだそうです」

高槻 「ほうほう」

カネキ「そして、最近僕と同じように喰種から臓器移植を受けた元人間の喰種がいるそうです」

高槻 「・・・・」

カネキ「ん?どうしました?」

高槻 「いや、何でもないよ(・・・それは知らなかったなぁ)」

カネキ「?」

高槻 「ウン、じゃあ次の仕事は決まりだね!」

カネキ「はぁ・・・“あんていく”行ってきますよ。先生も一緒に来てくださいよ」

高槻 「怖いからイヤ」



254:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/03(火) 00:55:47.97 ID:f8kf67u20

次の日。

カネキ「・・・・結局今日もヒデ大学休みだったな・・・風邪ひいてんのかな?」

カネキ「ま、いいや。さっさとバイト終わらそう」




――――――――――20区“あんていく”

カネキ「あれ?」

『CLOSE』


カネキ「定休日かなぁ・・いや前は休みじゃなかった気がするけどなぁ・・まあいいや。今日は無理ってことだから高槻先生に電話して、そのままどっか遊びに行こう」


ピッ ピッ・・・

カネキ「・・・という訳でお休みだったので、またにします」

高槻 『そっか残念。これからどうするの?』

カネキ「11区の図書館で本でも読もうかと思います」

高槻 『ああ、11区の図書館多きいもんねー分かった。じゃあまたー』

ピッ


カネキ「さて、久しぶりにゆっくり本読むか」

カネキ「・・・BLコーナーも充実していることを祈ろう」


***



255:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/03(火) 00:56:29.10 ID:f8kf67u20

カネキ「ふっ・・・タニス・リーは天才、天才だよ・・・・三島はなぁ・・・何というかガチすぎるんだよなぁ・・・」


モブA「・・・ちょっと・・・あの人・・」

モブB「馬鹿・・見んなって・・・ちょっと趣味がアレなんだろ・・・」


カネキ「ずいぶん遅くなったな・・人通りも少ないし、そろそろ帰るか」

カネキ「ん?」



リョーコ「や・・やめてください・・私はただ友人のために・・」

真戸 「ククク・・・ならば私たちと一緒に来てくれますかァ?」

亜門 「そのバッグの中身、見せてもらえませんか?」



カネキ「痩せこけた中年男性と筋肉隆々の青年・・・この組み合わせは下剋上のない王道だな。おそらくあの中年は敬語攻めで・・マッチョはツンウルかなぁ・・・」

カネキ「じゃなくて、あれ完全に暴漢に襲われてるね、あの女の人」




亜門 「真戸さんッこれは・・!!」

真戸 「これは喰種用の機器・・ククク・・やはり貴様喰種だなァ!」

リョーコ「い・・いやッ」

真戸 「逃がすか、クズめッ」
バシッ!!

リョーコ「ああッ・・」
ドサッ



カネキ「うわ殴った。ていうか血めっちゃ出てる。警察に通報だな。常識的に考えて」



256:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/03(火) 00:57:22.52 ID:f8kf67u20

カネキ「もしもし警察ですか?11区の○○交差点の近くで女性が二人組の暴漢に襲われています。至急来てください」

警察 『わかりました、すぐに向かいます!時間を稼いでください!!』ガチャ

カネキ「えっ?時間稼ぐ?」



真戸 「ククク・・・さて帰ってゆっくりと解体しようかねぇ・・亜門君」

亜門 「そうですね真戸さん・・・ん?」

ヒナミ「ぁ」

真戸・亜門「?」


ヒナミ「ぁ・・・ぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!」
ギンッ!

亜門 「赫眼ッ!!」

真戸 「クク・・どうやらこのメスの子供ですかねぇ!!」



カネキ「・・あれ?あの子・・喰種??」

カネキ「・・・えーっと・・」

カネキ「つまりあの暴漢は捜査官で、あの女性は喰種・・」

カネキ「警察呼んじゃった」



ヒナミ「うわああああ!!おああさああああん!!」

真戸 「死ねゴミめっ!!」

ズオオオッ!!

真戸 「ん・・・?消えた?」

亜門 「真戸さんッ後ろです!!」



257:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/03(火) 00:58:01.49 ID:f8kf67u20

真戸 「・・貴様、新手のゴミか?」

カネキ「・・・(あーあ・・間一髪助けちゃった。どーしよマジで)」

ヒナミ「・・??お・・・かあ・・さん・・」
ガクッ

カネキ「はぁ・・・(一応仮面したけど・・)」


真戸 「纏めて死ねぇぇぇ!!」

ヒュンッ

真戸 「・・・・」
ドサッ

亜門 「真戸さんッ!!!」

カネキ「あれ?」

亜門 「くそッまた新手か!!」


エト 「・・・・」

カネキ「・・・キミは?」

エト 「・・・ナカマ」

カネキ「・・殺したの?」

エト 「・・ミネウチ。子供、貸して」

カネキ「え?うん」

エト 「・・大人の方はムリ・・・キミも逃げな」
ヒュン

カネキ「あ・逃げた」



258:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/03(火) 00:58:35.04 ID:f8kf67u20

亜門 「真戸さん!!貴様ァァァ!!」

カネキ「うわ危なっ!!」
ヒュッ

亜門 「くそッ!!」

カネキ「・・・」
ヒュッ

亜門 「・・なぜ当たらん・・クッ」

カネキ(冷静さを失ってるな。攻撃が単調すぎる)


亜門 「はぁ・・はぁ・・」

カネキ「あの・・」

亜門 「・・?!」

カネキ「ぼくそろそろ帰るんで」

亜門 「?!!?」

カネキ「いや、攻撃とかしませんよ。傷害罪ですから」

亜門 「き・・貴様の言ってることが分からん」

カネキ「いや、常識ですよ・・・では」
スタスタ・・


亜門 「・・・・眼鏡の・・喰種」


ファン ファン ファン


・・・この後、警察に暴漢と間違えられた亜門はその風貌も相まって、一度警察署まで連行された。



269:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/04(水) 00:44:48.15 ID:j6r35Rsa0

#015 [旗折]


・・・では次のニュースです。

本日の夕方、11区の○○交差点付近で大捕物がありました。
2人組の男が女性を暴行しているとの住民の通報を受け、警視庁○○警察署が現場に急行しました。
現場では女性一人と男性一人が倒れており、現場にいた男性一人を緊急逮捕しました。

しかしながら、その後の調べで倒れていた女性は喰種であり、男性二人は喰種捜査官であったことが判明しました。

近隣住民がインタビューに答えてくれました。

『いやー私はね、男性が叫ぶ声がしたんで驚いて道路出てったんだけどねー、私が見た時は二人倒れてて、立ってた男の人はすごい筋肉した人でね。とても怖かったわよー』

『警察が来た後どうでしたか?』

『なんかそのムキムキの人が大声で“マドサーン”とか叫びながら上半身裸になって筋肉見せるようなポーズとり出してね。私はなんか薬でもやってんじゃないかと思ったわよー。警察もその男の異常な行動を見てね、増援が続々来て・・・ええ15人くらい居たかしらねぇ』

・・・




・・・・部屋の中ではテレビが点けっぱなしになっていた。

さっき起こったことが喰種がらみだったから、僕はさっさと報告しておこうと高槻先生の部屋に向かった。

ニュースキャスターの声が響く部屋には、さっき僕の前に現れた包帯を全身にまいた喰種が立っていた。

ピキィ・・
僕の左目は、初めてメガネの呪文を唱えることなく自分の力で赫眼となった。



エト 「・・・『勇気』って言うのは“困難や危険を恐れない勇ましい意気”のこと。でも君のは『蛮勇』。事の是非や理非を考えてない無謀な行動」

カネキ「・・キミは何故ここに?」

エト 「はぁ・・・この子、連れてくとこ無いから、ここに連れてくるしかないじゃないの」

カネキ「?」


そう言うと、その喰種の包帯がしゅるしゅると解けていった。



270:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/04(水) 00:45:32.36 ID:j6r35Rsa0

エト 「ほら見て」

カネキ「せ・・先生」

エト 「キミは左目、私は右目。まるで鏡みたいだね」

カネキ「ちょっ・・せっ・・先生!!」

エト 「・・さすがの君も驚いたんだね」

ブバァアア!!
カネキ「」

エト 「え?鼻血?!」

カネキ「せ・・・先生・・・おっぱい丸出しですから!」

エト 「・・・」
エト 「・・・///」

エト 「た・・確かにそうだけど、このシリアスなシーンでその反応はおかしいだろうがっ!!///」






ヒナミ「・・・ん・・」

ヒナミ(・・どこだか分からない部屋でヒナミは目が覚ましました)

ヒナミ(目を覚まして最初に見たこうけいは、じょうはんしんがはだかの女の人が、私を助けてくれたお兄さんをビンタしてるこうけいでした)

ヒナミ(こういうのってたしか“ちわげんか”っていうんだよね)



271:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/04(水) 00:46:20.75 ID:j6r35Rsa0

カネキ「先生・・・なぜ・・?」

高槻 「・・・作家である“高槻泉”と喰種である“エト”が同一人物だってことを知ってる人は少ないの。ばれたら作家続けられないでしょ?だから隠してたの」

カネキ「そうじゃないッッ!!」

高槻 「え?」

カネキ「なぜ・・・何故ッ!さっきメガネかけててくれなかったんですかッッ!!あの姿でメガネかけてればッッ!!僕の記憶に永久に保存されたのに!!!」

高槻 「あ、左もビンタしてほしいですかね?」

カネキ「・・・先生も隻眼なんですね。まさか先生が“隻眼の梟”なんですか?」

高槻 「・・・」

高槻 「そうだよ・・・隠してもどうせバレるから言っちゃうけど」

カネキ「じゃあ先生は“あんていく”の店長の子供?」

高槻 「・・・そうかもね」

カネキ「やっぱり親子仲悪いってのは本当なんですね」

高槻 「・・・」

カネキ「そういうのも含めて他の人には秘密ってことでいいんですね?」

高槻 「・・・助かるよ。何も言わなくても私の言いたいこと分かってくれて」

カネキ「この短期間にどれだけ先生にツッコんだと思ってるんですか」

高槻 「心の中では私もだいぶカネキ君にツッコんでるけどね」



272:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/04(水) 00:47:19.97 ID:j6r35Rsa0

高槻 「・・・そういう訳だから。私のこと誰にも言っちゃダメよ。もう起きてるんでしょ?」

ヒナミ「びくっ」

高槻 「怖がらなくても大丈夫だよ」

ヒナミ「あの・・・お姉さんは・・たかつきせん先生なんですか?」

高槻 「そうだよー。キミの名前は?」

ヒナミ「ふえぐちひなみ」

高槻 「ヒナミちゃんかー。よろしく」

カネキ「僕はカネキ。よろしくね、ヒナミちゃん」

ヒナミ「カネキ・・・さん?」

カネキ「ん?・・・そうだけど?」

ヒナミ「・・・ヒデお兄さんが・・言ってた人?」

カネキ「え?!」


高槻 「?」




――――――――――20区“あんていく”二階


トーカ「ヒデッ!!」

ヒデ 「トーカ・・ちゃん?」

トーカ「お前ッ・・・大丈夫か?」

ヒデ 「うん・・あ・・ちょっと腹減ってるかも」

トーカ「!・・ま・・待ってろ!!」
どたどた・・ガチャン!!


ヒデ 「あれ?・・・・えーと・・・俺なんで寝てたんだっけ?」

ヒデ 「あ!そうだ!確か西尾先輩に急に攻撃されて・・・・あ・・俺・・」


ガチャン!

トーカ「これ食え!!」

ヒデ 「あ・・うん。サンキュー」

・・・



273:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/04(水) 00:48:00.21 ID:j6r35Rsa0

ヒデ 「・・・トーカちゃん」

トーカ「・・ん?」

ヒデ 「俺、どれくらい眠ってた?」

トーカ「4日」

ヒデ 「そんなに?!」

トーカ「・・・うん」

ヒデ 「俺・・・西尾先輩って人と・・・戦ったんだよな?」

トーカ「みたいね」

ヒデ 「・・・その・・西尾先輩は?」

トーカ「・・・」


ガチャ

ヨモ 「英良・・・起きたか」

ヒデ 「ヨモさん・・・心配かけました」

ヨモ 「・・・・・トーカ」

トーカ「?」

ヨモ 「・・・すまないが少し席をはずしてくれ」

トーカ「・・・・うん」

ガチャン


ヨモ 「・・・・」

ヨモ 「・・・・英良」

ヒデ 「・・はい」

ヨモ 「西尾は死んだ」



274:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/04(水) 00:48:37.48 ID:j6r35Rsa0

ヒデ 「・・・・え?」

ヨモ 「西尾は・・お前を殺そうとした・・・だからお前が気に病む必要はない」

ヒデ 「・・・俺・・・」

ヨモ 「西尾は・・・人間の恋人がいた」

ヒデ 「・・・え?!」

ヨモ 「だがお前と出会う2週間ほど前に、その恋人を捕食したようだ」

ヒデ 「・・・・う」

ヨモ 「・・・西尾は・・おそらく後悔をした・・・そしてやり場のない気持ちを他の人間たちにぶつけていた」

ヒデ 「・・・・」

ヨモ 「・・・過ちを犯すことは誰にでもある・・・芳村さんは、西尾をここで働かせたいと考えていた」

ヒデ 「だから・・俺に説得に行かせたんすか?」

ヨモ 「そうだ・・・・すまなかった、ヒデヨシ」

ヒデ 「・・・・少し・・一人にしてもらえますか?」

ヨモ 「・・・ああ」


ガチャン


・・・



芳村 「ヨモ君・・・永近君は?」

ヨモ 「・・・一人にしてくれと」

芳村 「・・・そうか・・・リョーコさんとヒナミちゃんのことは・・・今は言うのはよそう」

ヨモ 「・・はい。トーカにも言っておきます」

芳村 「・・・すまないね」



275:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/04(水) 00:49:14.73 ID:j6r35Rsa0

***

ヒナミ「・・・ヒデお兄さんは・・私と一緒に本を読んでくれたし・・・それに・・・」

ヒナミ「お母さんもヒデお兄さんと話してると楽しそうだった」


カネキ「・・・ゴメン、ヒナミちゃん。僕が気づいた時には・・」

ヒナミ「・・うっ・・・うっ・・おかあさん・・・」

高槻 「・・・」

カネキ「・・・」


高槻 「ヒナミちゃん、眠ったみたい」

カネキ「・・そうですか」

高槻 「・・・それにしても君の友達・・だっけ?」

カネキ「ええ、ヒデが喰種だったって言ってましたよね、ヒナミちゃん」

高槻 「実はあなたに隠してたってだけでもともと喰種だったってことは?」

カネキ「うーん・・・そうれは無いですね。食事も普通に食ってましたし」

高槻 「いずれにしろ“あんていく”で取材した方がいいね」

カネキ「そうですね・・・ていうか学校で会うんで」

高槻 「おや、そうでしたね」



276:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/04(水) 00:49:59.62 ID:j6r35Rsa0

カネキ「ああそういえば」

高槻 「なんです?」

カネキ「先生の家庭の事情もあると思うので“あんていく”は僕が取材に行きますけど、その他の喰種関連は先生行ってくださいよ。先生だって喰種なんですから」

高槻 「えーせめて一緒に行こうよ」

カネキ「その間ヒナミちゃんはどうするんですか」

高槻 「お留守番」

カネキ「薄情だなぁ」

高槻 「だからって喰種だらけのところに連れてくのは危険ですよ」

カネキ「まあ確かにそうですけど・・・あ、ていうか“あんていく”に帰ってもらった方がヒナミちゃん的にもいいんじゃないですか?」

高槻 「それはやめた方がいいですね。カネキ君のお友達のためにも」

カネキ「?」

高槻 「喰種がマスクをする意味を忘れたんですか?」

カネキ「あー・・確かに捜査官に見られてますね、ヒナミちゃんの顔」

高槻 「ええ。なので、ヒナミちゃんがずっと“あんていく”にいれば、CCGに“あんていく”は喰種の巣窟ですと教えてるようなものですから」

カネキ「はー・・確かに」


高槻 「それはそうとカネキ君」

カネキ「今度は何です?」

高槻 「今夜はもう遅いので泊って行ったらどうですか?アルバイトとは関係なく」

カネキ「いえ、明日の大学のしたく持ってないので帰ります」

高槻 「そ・・そうですか」



ヒナミ(トイレに行きたくなって目を覚ますと、お兄ちゃんとたかつき先生がおはなしをしていました)

ヒナミ(わたしは、トーカお姉ちゃんやヒデお兄さんにめいわくをかけないために、もうあんていくには帰らないほうがいいのかもしれません)

ヒナミ(あと、さいごにお兄ちゃんがフラグを折っていました)



285:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 00:51:01.41 ID:7v0/6crp0

#016 [再会]



――――――――――20区“上井大学”


カネキ「ヒデ遅いなぁ・・・今日も来ないつもりかなぁ」

カネキ「・・・」



―――昨日の夜、トイレに起きてきたヒナミちゃんが僕に言った。

ヒナミ『お兄ちゃん・・・ヒデお兄さんには私の事言わないで』

カネキ『え?なんで?』

ヒナミ『私が・・・生きてるって知ったらみんな私に“あんていく”にきていいよって言ってくれるかもしれない・・・でも・・それじゃあ・・・みんながハトに狙われちゃうから・・』

カネキ『・・・・』

ヒナミ『・・・お願いします』

高槻 『・・ちゃんヒナはいい子だね』

ヒナミ『・・・もう・・誰にも居なくなってほしくないの・・・』ぐすっ



カネキ「・・・・ヒナミちゃんの事隠してって言われてもなぁ・・・じゃあどうして僕がヒデの事知ってるんだって話になるよなぁ・・・」

カネキ「うーん・・・」


ガラガラ
ヒデ 「・・・・」


カネキ「あ・来た」



286:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 00:52:06.47 ID:7v0/6crp0

ヒデ 「・・・よ。カネキ」

カネキ「ヒデ、一週間ぶり。風邪でも引いてた?」

ヒデ 「ああ・・・まあそんなんとこ」

カネキ「先週の授業で僕とかぶってるやつは出席カード出しといたよ」

ヒデ 「・・すまん」

カネキ「ヒデ」

ヒデ 「ん?」

カネキ「今日、授業の後ヒマ?」

ヒデ 「え?・・ああ」

カネキ「キャンパスでコーヒー飲みながらダベろうよ」

ヒデ 「ああ、いいぜ」


****


カネキ「おーい、こっち!」

ヒデ 「お、すまん」

カネキ「はい、ヒデのコーヒー」

ヒデ 「お、サンキュ・・お前そんな薄着で寒くないのか?」

カネキ「え?そんな寒い?コーヒー飲んでるからそんなに寒くないよ」

ヒデ 「そうか?」



287:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 00:52:48.19 ID:7v0/6crp0

ヒデ 「お前、今日はバイトないのか?」

カネキ「うん。休み」

ヒデ 「そっか」

カネキ「ヒデは?喫茶店でバイト始めたんでしょ?」

ヒデ 「いや・・辞めた」

カネキ「え?!なんで?」

ヒデ 「いやー・・・なんか忙しくて」

カネキ「ふーん・・・」

ヒデ 「・・・」

カネキ「ヒデさぁ・・今日授業全然聞いてなかったよね?」

ヒデ 「え?・・そう見えたか?」

カネキ「ヒデってさぁ、うわの空で考え事するとき手のひらを頬にあてて頬杖つく癖あるよね?」

ヒデ 「マジか・・確かにやってたかもしれん」

カネキ「・・・」

ヒデ 「・・・」

カネキ「じゃあさ、僕の方から重大発表するね」

ヒデ 「へ?」

カネキ「高槻先生に僕の正体がバレました」

ヒデ 「ええ?!!」



288:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 00:53:37.96 ID:7v0/6crp0

カネキ「バレたけど、別に気にしないって。むしろ次は喰種モノ書きたいと思ってたからってちょうどいいってさ」

ヒデ 「マジか・・・なんつーか、お前と同じ匂いがするぜ」

カネキ「でさ、僕が喰種なのを良いことに、喰種が屯する場所に取材に行かせるんだよ」

ヒデ 「そりゃひでえな」

カネキ「・・・当然さ、“あんていく”にも取材行くつもりで準備してたんだ」

ヒデ 「え・・・・そうか・・・・・バレてたか」

カネキ「・・・うん」

ヒデ 「あー・・・・じゃあ俺の方からも重大発表するわ」

カネキ「うん」

ヒデ 「カネキを手術した医者のとこ行ったら、俺も喰種にされました」

カネキ「ええ?!」

ヒデ 「あ、そこまでは知らなかったか」

カネキ「え?だって・・・え?嘉納先生が??」

ヒデ 「お前なぁ・・・能天気すぎるだろ・・お前嘉納先生のとこで検査とか受けてるんだろ?それでその人がお前の変化に気付かないはずないだろが」

カネキ「確かに言われてみればそうかも・・・でもなんでヒデまで?」

ヒデ 「いや詳しくは俺も分かんねーよ。ただあの医者が人を喰種にする方法知ってるって事だけは確かだろ」

カネキ「あー・・ゴメン僕のせいでヒデまで喰種に」



289:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 00:54:12.52 ID:7v0/6crp0

ヒデ 「いや、別にもういいって」

カネキ「食事とかどうしてるの?」

ヒデ 「いや・・“あんていく”で貰ってる」

カネキ「へー・・“あんていく”ってそんなこともしてるんだね」

ヒデ 「俺も『こう』なって分かったけどよ・・・喰種の中にも人を殺してりしないで平和に生きたいって人もいるみてーなんだよ。そういう人に肉を配ってるみたいだぜ」

カネキ「え・・じゃあ“あんていく”の人は定期的に人間殺してるって事?」

ヒデ 「いや・・自殺者の肉を拾ってる」

カネキ「・・・なるほどね」


イトリ『芳村店長は今は争いを好まない・・・人間と喰種の和解を目指してる』


カネキ(イトリさん・・・本当にそうなのかもしれませんね・・)


ヒデ 「ん?カネキ?」

カネキ「ああ、何でもないよ」



291:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 00:54:56.50 ID:7v0/6crp0

ヒデ 「・・・なあカネキ」

カネキ「ん?」

ヒデ 「お前はどう思う?・・人を殺さない・・温厚な喰種も駆除すべきだって思うか?」

カネキ「・・・まあ僕はもう喰種だからね。喰種を全部駆除するって話になると僕も駆除されちゃうから」

ヒデ 「ハハ・・俺もそうだな」

カネキ「でも僕はそう思わないな。そもそも喰種になる前から、別に僕のこと食べようとしなければ眼鏡美人はウェルカムだし」

ヒデ 「ああ・・・お前はそういう奴だったな」

カネキ「・・・・」


ヒデ 「・・・あのさ」

カネキ「ん?」

ヒデ 「俺、喰種に襲われた」

カネキ「え?」

ヒデ 「相手は俺のこと殺すつもりだったらしい・・・俺は無我夢中になって・・逆にその喰種を殺しちまった」

カネキ「・・・しょうがないんじゃないの?」

ヒデ 「俺、“あんていく”でさっき言った温厚な喰種に会った。俺、その人は喰種だけど生き方は正しいと思った・・・・だけど・・殺しちまった俺はもうその人みたいに生きることはできないかもしれねぇ」

カネキ「ヒデ、刑法第36条だよ」

ヒデ 「え?」



292:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 00:55:37.13 ID:7v0/6crp0

カネキ「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防御するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。」

ヒデ 「あー・・正当防衛ってことか?」

カネキ「うん。だってヒデ殺されかけてたんでしょ?」

ヒデ 「・・まあな」

カネキ「それならしょうがないでしょ」

ヒデ 「・・・」

カネキ「僕だって今のところ殺しはやってないけど、仲良くなった喰種が殺されたり、人間解体ショーやるレストラン行ったり、CCGと戦ったりして色々と大変だったよ」

ヒデ 「なんか俺が悩んでるのがバカらしくなった」

カネキ「とにかくさ、あと3週間で試験だしそろそろ勉強した方がいいよ」

ヒデ 「お前・・いきなり現実に引き戻すなよ」

カネキ「だって事実だし」

ヒデ 「はぁ・・・・あ、そうだお前に聞きたいことあったんだ」

カネキ「ん?何?」

ヒデ 「お前さぁ、先々週旧食堂で大盛りカレー食ってたじゃん。あれって食ったふりで、やっぱり後で吐き戻してたのか?」

カネキ「え?吐き戻し?なんで??不味いけど普通に気合で食ってたよ?」

ヒデ 「・・・ホント尊敬するわ」



293:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 00:56:10.18 ID:7v0/6crp0

カネキ「あ、そういえば“あんていく”のバイト本当に辞めちゃったの?」

ヒデ 「あー・・気持ちの整理着くまで無期休暇ってことにしてもらってる」

カネキ「ふーん・・じゃあヒデが復帰したら今度こそ僕も行くよ、取材もかねて」

ヒデ 「取材?・・まあ、店長お前に会いたがってたぜ」

カネキ「え?なんで?」

ヒデ 「さあ?でも、俺もカネキも、人間であり、喰種でもある存在だからじゃねーの?あの人喰種だけど人間と和解する方法模索してるみたいだし」

カネキ「やっぱりそうなんだ」

ヒデ 「やっぱり?」

カネキ「ああ、知り合った喰種の情報屋からそういう情報をもらったから」

ヒデ 「お前のバイトって何だったっけ?」



294:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 00:56:53.04 ID:7v0/6crp0

****


カネキ「・・・という訳で、“あんていく”の取材は試験明けに行きますから」

高槻 「そうですか」

カネキ「にしても、人間の医者が人を喰種に変える意味ってあるんですかね?」

高槻 「うーん・・たぶん再現実験してるのかな?」

カネキ「?」

高槻 「ま・いいや。私はその嘉納という医者について調べますか」

カネキ「はぁ」

高槻 「そういえば今更ですが、私ある喰種のグループに属してるんですよー」

カネキ「は?」

高槻 「勿論そこでは“高槻泉”の正体は隠して」

カネキ「なぜです?」

高槻 「だって取材のために所属してるなんて言ったら追放されそうですし」

カネキ「ホント、先生って逞しいですね」

高槻 「でね、カネキ君もその喰種集団に属してもらおうかと」

カネキ「面倒なので嫌です」

高槻 「うわっ!即答!!」

カネキ「だって本当に面倒そうですし。それに僕元人間ですから間違いなくハブられますよ」



295:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 00:57:36.39 ID:7v0/6crp0

高槻 「いや実はね、その集団の中でもね、元人間で喰種から臓器移植受けた隻眼の喰種が居るって噂になってたんですよー」

カネキ「完全に僕のことじゃないですか」

高槻 「でもね、その元人間は20区にいる・・20区なら“あんていく”にいる可能性が高い・・・ってハナシになってたんですよ」

カネキ「はぁ・・・あ、それヒデだと勘違いされるんじゃ」

高槻 「その通りだよ!」

カネキ「つまり、元人間の喰種はヒデだって思われてるから僕は大丈夫だと?」

高槻 「そうそう、お父さんが喰種だったって言えば誤魔化せますよ」

カネキ「・・・はぁ・・・で、先生のことはどこまで知ってるんですか、その喰種達は」

高槻 「物分かりがよくて助かりますなぁ」

カネキ「だってすでにそこまで考えてるなら、もう絶対強引に来るでしょ」

高槻 「いやぁー私はアシスタントの意思を尊重しますよー」

カネキ「とんだブラックバイトだぜチクショウ」

高槻 「そういう事言うとコンタクトに戻しますよ?」

カネキ「“隻眼の梟”であることは皆さん知っているんですか?」

高槻 「・・・」



296:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 00:58:21.45 ID:7v0/6crp0

高槻 「基本的にはナイショ。普段はこの前みたく包帯巻いてるから。ていうかリーダーは、とりあえずは存在しない“隻眼の王”って言う喰種だってことになってるから」

カネキ「それって完全に先生がリーダーですね」

高槻 「幹部ではあるけど、とりあえずリーダーではないよ。それと私が喰種の格好してる時は“エト”って呼んでね」

カネキ「はぁ・・ぼくはマスクつけてればいいですか?」

高槻 「ウン。キミのことは“ケン”って呼ぶよ。喰種の時は」

カネキ「ああ、それと一番重要な事だと思うんですが、僕はその組織に属して何をすればいいんですか?」

高槻 「喰種の視点から、人間、喰種、CCGなんかのことを分かる範囲で調べてほしいのよ。ただし、他の喰種達に無理に個人的な事聞かないようにね。嫌がる奴や隠してる奴も多いから」

カネキ「なんかすごくデンジャラスな匂いがするんですが・・」

高槻 「まあ・・・カネキ君なら平気だよ!」

カネキ「また根拠のない適当な事言ってますね」

高槻 「アハハハー何のこと?」

カネキ「まったくもう・・・とりあえず僕、今日はヒナミちゃんの勉強を見て、その後自分の勉強しますんで」

高槻 「了解ですわ」




――――――――――20区“あんていく”

シロ 「あ、開いてる」
クロ 「うん、そうだね」

シロ 「入ろうか?」
クロ 「うん」


カランカラン・・



305:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 22:33:48.22 ID:7v0/6crp0

#017 [青桐]


シロ・クロ「「カフェラテを」」

トーカ 「あ・・えっとカフェラテ2個でいいですか?」

シロ・クロ「「はい」」

・・・

シロ 「おいしいね」

クロ 「うん、おいしい」

シロ 「この顔なんだろう?」

クロ 「イヌ・・・かな?」


トーカ(う・・さぎ・・なのに・・)



シロ 「でも・・居ないねあの人」

クロ 「うん・・お休みかな」

シロ 「困ったね」

クロ 「とりあえず店員さんに聞いてみようか」

シロ 「そうだね」


シロ・クロ「「すみません」」

芳村 「どうしました?」



306:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 22:34:25.77 ID:7v0/6crp0

シロ・クロ「「永近さんって男性はこちらにいますか?」」

芳村 「ん?・・君たちは?」

シロ・クロ「「私たち、前に永近ヒデヨシさんに親切にしていただいたことがあって、一言お礼が言いたくて来ました。こちらで働いていると聞きましたので」」

芳村 「・・・そうですか。彼は今お休みです。もしよければ彼が来た時にお伝えしておきますが?」

シロ・クロ「「・・・」」

シロ・クロ「「永近さんが出勤される日って教えていただけますか?」」

芳村 「・・・彼は今、長期休暇中なんですよ。彼自身が納得した時戻ってきますので、いつになるかは分からないんです」

シロ・クロ「「・・・そうですか」」


トーカ「・・・・」



シロ・クロ「「ご馳走様でした。また来ます」」

芳村 「はい、お待ちしています」

カランカラン

シロ 「お店の人、全員喰種かな?」

クロ 「そうかもね。あの人も言ってたし」

シロ 「あのお爺さん、いい人だったね」

クロ 「うん、そうだね」

シロ・クロ「「・・・」」

シロ 「・・また来ようね」

クロ 「うん、私たちは私たちのできることをしようね」



307:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 22:34:57.76 ID:7v0/6crp0

トーカ「・・・店長」

芳村 「なんだい?」

トーカ「私・・アイツと話してきます」

店長 「トーカちゃん、彼の問題は彼が解決しなければならないよ」

カヤ 「トーカ、時間が経てばヒデは必ず帰ってくるわよ」

トーカ「でも・・アイツ・・ここに来なければ食事もできないのに・・・」

トーカ「食事だけでもしに来るよう言ってきます!!」

カランカラン

カヤ 「あッ・・・まったくもう」

古間 「青春だねぇ・・ヒデ君もトーカちゃんも」

カヤ 「・・・でも大丈夫かしら、あの子」

古間 「ヒデ君が、かい?」

カヤ 「ええ・・・彼が西尾の事、乗り越えることができたとしても・・・フエグチさん達のこと知ったら・・」

芳村 「・・・」



308:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 22:35:41.01 ID:7v0/6crp0

カネキ「ヒナミちゃん、じゃあ今日は算数の勉強しようか」

ヒナミ「さんすう・・ヒナミさんすう苦手・・」

カネキ「うん、だからやらないとと思って」

ヒナミ「うー・・頑張る!」

カネキ「うん、偉いぞ」

高槻 「二人とも、もうご飯出来るからお勉強は後にしましょう」

ヒナミ「やったぁ!」

カネキ「先生もたまにはヒナミちゃんの勉強見てあげてくださいよ」

高槻 「現役大学生が教えた方が効率いいにきまってますよ。なので私は家事全般を」

カネキ「なんか所帯じみてきたなぁ・・」


***

高槻 「ところで今日の夜、例の集会に行こうかと思うのですが」

カネキ「え?・・ああ。今日ですか。いいですよ、金曜ですし」

高槻 「じゃあキマリですね」



309:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 22:36:14.46 ID:7v0/6crp0

ヒナミ「先生・・どこか行くの?」

高槻 「ウン、今日は遅くなりそうだから、ちゃんヒナは先に寝ててね」

ヒナミ「先生・・ちゃんと帰って来てね?」

高槻 「アハハ、何言ってるの。大丈夫だよー」

ヒナミ「・・うん」

高槻 「そのうち、カネキ君もここに住み込みになるから寂しくないよ」

ヒナミ「ほんと?!」

カネキ「いや・・何適当なこと言ってるんですか」

高槻 「もうすぐ大学お休みでしょ?そしたら泊まり込みでバイトしてください」

カネキ「ムチャクチャ言ってるわ、この人」

高槻 「でなければ、ちゃんヒナを“アオギリの樹”に連れて行かなければならなくなりますよ?」

カネキ「・・・それは“アオギリの樹”のヒトたちを見てから僕が決めます」

高槻 「まぁ毎日とは言いませんから、泊まり込みバイトをお願いしますよ。今後のこととか色々決めていきたいので」

カネキ「なんですか今後のことって・・僕国文科の大学一年生ですよ」

高槻 「あれ?そうだっけー?!」

カネキ「最初それを口実に僕をバイトに勧誘しましたよね?」



310:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 22:36:42.85 ID:7v0/6crp0

高槻 「それじゃあ、行ってくるね」

ヒナミ「はい、行ってらっしゃい。先生、お兄ちゃん」

高槻 「行ってきます」

カネキ「早く寝るんだよ」

***



――――――――――11区“アオギリの樹”アジト


エト 「こんにちは、タタラさん」

タタラ「エトか・・・横の奴は誰だ?」

エト 「このヒトはね“ケン”。私のトモダチでうちに入りたいって言うから連れてきたよ」

カネキ「言ってない言ってない」

タタラ「・・そうか・・強いのか?」

エト 「ウーン・・ある意味ね」

タタラ「?」

カネキ「あー・・ケンです。よろしく」

タタラ「・・・ふん・・眼を見せてもらっていいか?」

カネキ「?・・ああ赫眼ですか?いいですよ」

カネキ(メガネメガネメガネメガネかけた高槻先生のおっぱい・・)

ギンッ

タタラ「・・・・(なんて冷めた目をしてるんだ)」

タタラ「・・不坏・・・よろしく、ケン」

カネキ(ん?チャイ語?)

カネキ「请多关照」

タタラ「你能说汉话吗?!」



311:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 22:37:17.41 ID:7v0/6crp0

ノロ 「・・・」

エト 「え?・・ウン、あんなに楽しそうに喋るタタラさん初めて見たね」

ノロ 「・・・」

エト 「え?なんて言ってるの?って?」

エト 「えっとね・・タタラさんが上海にいたころのことずっと喋ってるんだと思うよ・・たぶん」

ノロ 「・・・」

エト 「ウン、中国語喋れる人いなかったからよっぽど嬉しかったんだろうね」




タタラ「哈哈哈哈・・!研、你喜欢戴眼镜的人吗?哈哈!!」

カネキ「你喜欢戴面具的人吗?」

タタラ「笨蛋。我不同你」

カネキ「哈哈」


アヤト「た・・タタラさんが談笑してる・・」



312:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 22:37:56.77 ID:7v0/6crp0

エト 「ねえ、二人とも。そろそろ他の人紹介したいんだけど」

タタラ「啊、对不起。じゃあケン、またあとでな」

カネキ「ええ、今度はタタラさんの性癖の話しましょうね」

タタラ「哈哈・・・エト、最高の奴を連れて来てくれたな。心が躍るよ」

タタラ「~♪」

エト 「・・・」


**

カネキ「エト、タタラさんって冗談も通じるし面白い人ですね」

エト 「・・・そう思うのはケンだけだと思うけどね」

カネキ「?」

エト 「あ、あとエトって呼ぶときは敬語やめて。トモダチって設定なんだから」

カネキ「あ、うん。了解」

エト 「それにしてもケン、中国語喋れたんだんね」

カネキ「ああ、第二外国語、チャイ語とってるんで。ネイティブと喋るのが一番勉強になるよ。あの人僕の練習台にちょうどいいな」

エト 「タタラさんがかわいそうだから、本人の前でそういう事言わないであげてね」



313:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 22:38:35.66 ID:7v0/6crp0

エト 「あ、アヤト君」

アヤト「・・・エト・・その人は?」

エト 「私のトモダチ。名前はケン」

アヤト「そ・・そうか。アンタ、タタラさんとも知り合いなのか?」

カネキ「いや、初対面だよ。面白い人だね、タタラさんって。僕はケン。よろしくね」

アヤト「あ・・・ああ。よろしくお願いします」

カネキ「そんな畏まらなくてもいいよ・・・ん?前にどっかで会ったことあったっけ?」

アヤト「え・・?・・いや・・無いと思います・・が?」

カネキ「そうかな・・?まあいいや。よろしくね」ニコッ

アヤト「は・・ハイ(笑顔が逆に超怖え・・)」



カネキ「アヤトくんて中学生?すごく礼儀正しい子だね」

エト 「・・うん・・そうだね・・一応、タタラさんもアヤト君も幹部だよ」

カネキ「へー・・・あんな子供も。なんだか平和で楽しそうな集団ですね。アジトが廃ビルだからちょっと怖かったんですが、なんか安心しました」

エト 「ウン・・ケンがそう思うならそれでいいんじゃないかな?」



314:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 22:39:50.65 ID:7v0/6crp0

ビン弟「兄ィ・・知らない奴がいるぞ」

ビン兄「ん?エトか。そいつは誰だ?」

エト 「このヒトは(以下略)」

ビン兄「そうか・・お前も賛同者か。王のために働くんだな」

ビン弟「よろしく、ケン」

カネキ「よろしくお願いします。お二人はご兄弟ですか?」

ビン兄「そうだ」

カネキ「なるほど」



カネキ「なんか普通な人たちだね。お兄さんの方はちょっと喋り方が中二病ぽいけど・・“賛同者”てwww」

エト 「ケンは時として辛辣だね」

カネキ「そう?・・・あと幹部の人っているの?」

エト 「さっきタタラさんの横にいたデカい人がノロさん。あと今日居ないみたいだけどヤモリさんって人がいるよ」

カネキ「ヤモリさん・・ぷ・・可愛い名前ですね」

エト 「キミは本当に恐れを知らないね」



315:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 22:40:18.61 ID:7v0/6crp0

エト 「私、タタラさんとお話ししてくるから好きに歩いてきて」

カネキ「うん」

・・・


カネキ「ん?建物の外に誰かいるな」

カネキ「おーい!何してるんですかー?」

バンジョー「!!!やべえバレた!!みんな走れ!!」

カネキ「??」

カネキ「あ、結構いっぱいいた・・なんだろう森の方向かって行っちゃった・・・何かあるのかな?僕も行ってみよう」


・・・

ヤモリ「こらこら君たち」

バンジョー「ヤ・・モリ・・なんで」

ヤモリ「あんまり僕たちを舐めない方がいいよ」

ニコ 「うふふ♡」



316:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 22:40:49.04 ID:7v0/6crp0

バンジョー「た・・頼む・・モクとテツを離してやってくれ・・俺が代わりに・・」

ヤモリ「はぁ・・キミ立場分かってる?」

モク・テツ「バンジョー・・さん・・」

がさがさ

カネキ「ん?」

ヤモリ「ん?」

バンジョー「ん?」

ニコ 「アラ?」

・・・


ヤモリ「キミ、誰?」

カネキ「あ、ケンです」

ヤモリ「いや・・名前聞いてもしょうがないよね。ウチの構成員だっけ?」

カネキ「ああ・・エトに連れられて今日初めて来ました。何やってるんです?」

ヤモリ「・・・」

ニコ 「・・・♡」

ヤモリ「ハハハ・・やだなぁちょっと演習をね」

カネキ「演習?」



317:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/05(木) 22:41:21.76 ID:7v0/6crp0

ヤモリ「そ、演習だよ。僕らもいつ白鳩に襲われるか分からないじゃん。だからこうやって定期的に演習してるんだよ・・・ね、バンジョー君」ギンッ

バンジョー「はッ・・・はい」

ヤモリ「ね。で、今日はもう終わりだから」

カネキ「あー邪魔しちゃってスイマセン」

ヤモリ「いいって、いいって!じゃあさ、君たちはもう帰っててよ・・・・ねェ?」

バンジョー「・・・ッ」

ニコ 「じゃあ、一緒に帰りましょうか♡」

・・・


ヤモリ「ケン君、この後時間あるかな?」

カネキ「え?今このアジトの中を探検してたんですが」

ヤモリ「あーそれならボクが案内してあげるよ」

カネキ「え?ホントですか?助かります」

ヤモリ「ははは・・僕はヤモリ。よろしくね」

カネキ「ああ、幹部の。よろしくお願いします」

ヤモリ「ふふふ」ニィ



326:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/06(金) 23:39:37.84 ID:qKNmSja60

#018 [帰巣]


ズズ・・
ヒデ 「・・・苦ぇな・・」


トーカ「はぁ・・・はぁ・・・」

トーカ「・・・ヒデ」


ヒデ 「・・・トーカちゃん?」


***


ヒデ 「どうしたの?大学まで来て」

トーカ「・・・別に・・ちゃんと食ってるかと思って」

ヒデ 「ハハ・・心配してくれてんだ。サンキュー!」

トーカ「そっ・・そんなんじゃねぇ!!・・・でもお前・・自分で狩らないだろ?」

ヒデ 「・・・」

トーカ「?」

ヒデ 「トーカちゃんはさ・・・・・いっつも自分で狩ってるんだよね?」

トーカ「・・・」

ヒデ 「あ・・ごめん」

トーカ「・・・いいよ」



327:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/06(金) 23:40:12.89 ID:qKNmSja60

トーカ「私がまだ子供だった頃、お母さんとお父さんが居た」

ヒデ 「ん」

トーカ「お母さんが・・・白鳩に殺されてからは、お父さんと弟と3人で暮らした。その時はお父さんがご飯を作ってくれた」

ヒデ 「・・」

トーカ「ある日・・お父さんが帰ってこなかった・・・だから私と・・弟が生きるために、初めて自分で狩りをした」

トーカ「・・・・店長と出会うまでは弟と二人で狩りをしてた」

ヒデ 「生きるため・・・か」


トーカ「お父さんは変わったヒトでさ、喰種のくせに近所の人間と仲良くして、人間のご飯貰って、自分で作った人間のご飯近所に配って・・・」

トーカ「・・・・」


ヒデ 「・・・弟居たんだ」


トーカ「店長にさ、学校行けって言われたんだよ。で、学校で人間のトモダチもできた。でも弟・・アヤトは・・そんなの間違ってるっていって出ていった」

ヒデ 「・・・」

トーカ「まあ・・今でも狩ることはあるよ・・・でも・・分かんねぇんだ・・・人間のトモダチ出来て・・・人間は何だろうって・・私は人間とどう付き合っていけばいいのかって」



328:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/06(金) 23:40:56.95 ID:qKNmSja60

トーカ「ヒデが悩んでるのは正しいと思う・・だってアンタは人間だったんだし」

ヒデ 「・・・・トーカちゃん」

トーカ「・・ん?」

ヒデ 「・・サンキュー」

トーカ「あ?・・・な・・何言ってんだよ・・//」

ヒデ 「俺、正直・・自分で・・人間狩ることできないし、西尾先輩のこと・・まだどうすればよかったのか答え出ない」

トーカ「・・・」

ヒデ 「でも、今は・・新しく出来た仲間、“あんていく”の皆のために出来ることするよ」

トーカ「・・・ヒデ」

ヒデ 「・・俺いつかさ、喰種と人間が和解させて・・・トーカちゃんの悩みを解決できたらなって思うんだよ。前店長に言われたんだ、それができるのは人間でもあり喰種でもある俺だけだって」

トーカ「・・・・・・じゃあ期待しないで待ってるよ」

ヒデ 「ハハハ・・ひでー!・・・それにそろそろ“あんていく”帰んないとリョーコさんにも笑われそうだしなっ。マスク預かっといて何してんだって!」

トーカ「・・・そーだな・・」



329:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/06(金) 23:41:29.16 ID:qKNmSja60

―――――――――――20区“あんていく”

カランカラン

ヒデ 「ちわっス!スイマセン遅くなりました」

芳村 「・・・うん、お帰り永近君」


***


芳村 「そういえば、君が休んでる間に双子の女の子が君のことを訪ねてきたよ」

ヒデ 「双子?」
ヒデ (もしかして・・嘉納先生のトコにいた)

古間 「ヒデ君は隅に置けないねぇ・・トーカちゃんに飽き足らず謎の双子の女の子まで」

ヒデ 「い・・いやそんな事無いっすよ」

トーカ「・・・・チッ」

ヒデ 「え゛っ・・なんで舌打ち?!」

古間 「僕が20区で暴れてた頃はそれこそ、街を歩けば女の子たちが気絶したもんだけど、そろそろヒデ君に譲って引退かな?」

カヤ 「黙れエロ猿」ドゴォ!

古間 「グエッ!!」



330:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/06(金) 23:42:10.48 ID:qKNmSja60

――――――――――23区“喰種収容所コクリア”

亜門 「・・・本来なら貴様を生かしておくという判断はされなかった。だが、貴様にはまだ聞きたいことがある」

リョーコ「・・・」

亜門 「貴様には娘がいるな・・名前は何という」

リョーコ「・・・いません。私に娘なんて」

亜門 「・・・では質問を変えよう。貴様が11区で出入りしていた建物。あそこには仲間がいるのか?」

リョーコ「・・仲間などいません」

亜門 「貴様が持っていた器具は喰種用の医療器具だった・・かつて我々が駆逐した696番・・確か“アサキ”という喰種は、喰種の医者だったそうだ」

リョーコ「・・・・っ」

亜門 「・・喰種も・・喰種を治療するのか?」

リョーコ「・・・知りません・・・私は喰種です・・・あなたはCCGの捜査官で私たちを殺すことが仕事なんでしょう?」

亜門 「そうだ・・・この世界を歪めているお前たちを滅ぼすのが仕事だ」

リョーコ「・・・・ならばもう殺してください・・私は・・仲間などいません。私はあなた方に話せる有益な情報を持っていません」

亜門 「・・・・」


シロ・クロ「「亜門一等」」



331:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/06(金) 23:42:54.92 ID:qKNmSja60

亜門 「・・どうした安久」

シロ・クロ「「私たちも喰種に質問してよろしいでしょうか?」」

亜門 「ああ」

シロ・クロ「「ありがとうございます」」


リョーコ「・・・」

シロ 「お姉さん」

リョーコ「・・・」

シロ 「あなたは捕まるとき戦闘をしなかったと聞いていますが、それはなぜですか?」

リョーコ「・・・」

クロ 「赫子を使って戦闘をしたことはありますか?」

リョーコ「・・・」

シロ 「・・では質問を変えます。人間を捕食するときは赫子を使っていますか?」

リョーコ「・・・」

クロ 「もしあなたに仲間がいないなら、あなたは食事のために自分で人間を狩っているはずですよね?」

リョーコ「・・・・あなた達に言っておきたいことがあります」

亜門 「?」
シロ・クロ「「・・・」」

リョーコ「私たちは人しか食べられないから、人を食べます。でも、喰種のすべてが人間を殺して食べているわけではありません」

亜門 「・・・」

リョーコ「人を殺すことを避け、必死に生きている喰種も居る。例えば自殺した人間の肉を食べて」

亜門 「?・・・なんだと?」

シロ・クロ「「・・・」」



332:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/06(金) 23:43:30.98 ID:qKNmSja60

リョーコ「もし・・あなた達が・・・これから先そういう喰種に会ったら・・ただ殺すのでなく、彼らの話を聞いてほしい。彼らはただ喰種だっただけで、それ以外はあなた達と同じだから」

亜門 「・・ふざけるな」

リョーコ「・・・私の話は以上です。もう、私が言う事はありません」

亜門 「・・・・・行くぞ安久」

シロ・クロ「「はい」」


***


亜門 「・・・」

シロ・クロ「「・・・亜門一等」」

亜門 「・・なんだ」

シロ・クロ「「今日は何故私たちを連れてきたのですか?真戸上等は・・?」」

亜門 「真戸上等は・・士気を高めている」

シロ・クロ「「?」」

亜門 「いや・・お前たちが優秀であることは知っている。アカデミーでは目立っていたからな。黒磐特等にお前たちを連れて行けと言われたんんだ・・勉強のためにな」

シロ・クロ「「・・・そうですか、光栄です」」


亜門 「安久、先に帰っていてくれ。俺はもう一体と話す」

シロ・クロ「「私たちもついていってはいけませんか?」」

亜門 「・・・いや、ダメだ。SSレートの危険な喰種だ」

シロ・クロ「「・・・承知しました」」



333:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/06(金) 23:44:07.42 ID:qKNmSja60

亜門 「・・・」

ドナート「待っていたよ、いとしい我が息子」

亜門 「黙れ変態LO野郎」

ドナート「ふふ・・・私への差し入れを覗いたな。悪い子だ」

亜門 「無駄口を叩くなロリコン」

ドナート「ハハハ・・・で、何が聞きたい?」

亜門 「・・・・人を殺さない喰種も居るのか?」

ドナート「ふふ・・聞こえていたよ。先ほどの尋問・・いや、オハナシかな」

亜門 「・・・」

ドナート「今日の昼食、お前は何を食った?」

亜門 「ふざけるな。質問に答えろ」

ドナート「真剣だよ、鋼太郎。大事な話をしてるんだ」

亜門 「・・・カレーだ」

ドナート「ふむ・・そのカレーには豚肉か鶏肉が入っていただろ」

亜門 「・・・」

ドナート「その肉をお前は食った・・・だがお前はその豚や鶏を殺したかね?」

亜門 「・・・」

ドナート「何も変わらんよ、それと」

亜門 「・・だが貴様は殺して食っただろう」

ドナート「屠殺をする人間は肉を食わないのか?」

亜門 「・・・」



334:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/06(金) 23:44:37.98 ID:qKNmSja60

ドナート「いいことを教えてやろう・・・私がドイツにいたころの話だ」

亜門 「・・・」

ドナート「私が幼かった頃、ドイツに喰種は少なかった」

亜門 「・・?」

ドナート「私も含め、少ない喰種達は自分たちが“喰種”であると知らなかった」

亜門 「・・・?何の話だ?」

ドナート「私の周りにいた人間たちも、誰も私を喰種とは気が付かなかった」

亜門 「・・・言っている意味が解らない」

ドナート「違いなど、人しか食えないか、そうでないかだ」

亜門 「・・・だが貴様は仮に人間であったとしても犯罪者だ。このロリコン野郎」

ドナート「・・・ふふ。話は終わりか?」

亜門 「・・・」

ドナート「・・・?」

亜門 「・・貴様は・・カズキを喰った・・ユウスケも・・アキエも・・!」

ドナート「・・・懐かしい名前だな」

亜門 「なのになぜ・・・何故俺を喰わなかった!・・なぜ俺をその後もそばに置いていた?!!」



335:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/06(金) 23:45:16.68 ID:qKNmSja60

ドナート「個人的な質問だな・・そんなことを聞いていいのか?悪い子だ」

亜門 「・・・」

ドナート「・・・何故だろうな?・・フフ・・こうして未来に親子の会話を楽しむためかもしれんな」

亜門 「・・ふん・・聞いた俺が馬鹿だった」

ドナート「あ、そうそう、今度から差し入れはコミックiにしてくれないか?」

亜門 「それがなんだか現時点で俺は知らないが、とりあえず言っておく。死ねロリコンジジイ」

ドナート「・・・鋼太郎」

亜門 「・・なんだ」

ドナート「最近は和姦もいいと思うんだが、どう思う?」

亜門 「ぶっ殺すぞ」



***


亜門 「・・・終わりました」

灰崎 「ああ・・なにか情報を聞き出せたか?」

亜門 「いえ・・723番は・・何も知らないのかもしれません。すみません俺の勘はあてにならないです」

灰崎 「・・・そうか?一応真戸上等にも報告しておけ」

亜門 「はい」

亜門 (・・・眼鏡の喰種・・奴は何故あんなことを・・)



336:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/06(金) 23:45:52.46 ID:qKNmSja60

――――――――――11区“アオギリの樹”アジト

ヤモリ「ここが僕たちが食事をする場所だよ」

カネキ「なるほど(不衛生極まりないな・・後で掃除しよう)」

ヤモリ「まあ、みんな勝手にいろんな場所で食事するからあまり使わないけど」

カネキ「そうですか(やっぱりやめよう)」

カネキ「ん?階段がありますけどこの上があるんですか?」

ヤモリ「ああ、この上は懲罰房があるんだ」

カネキ「え?何に使うんですか?」

ヤモリ「悪いことした奴にお仕置きをね。多少の規律は必要だろう?」

カネキ「まあ、そうかもしれませんね・・・なんかここ暑いですね」
ぬぎっ

ヤモリ「・・・」

ヤモリ(コイツ意外と頑丈そうな体してる・・確かエトの友達とか言ってやがったなァァァ!我慢・・今は我慢だ・・何かしら理由を付けて俺の部下にして・・楽しむのはそれからァァァ!!)

カネキ「ヤモリさん?」

ヤモリ「ん?・・ああゴメンゴメン。次行こうか」

カネキ「はい」



337:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/06(金) 23:46:27.56 ID:qKNmSja60

ヤモリ「ここは集会場。いつもここで会議をするんだよ」

カネキ「ふーん・・あの、会議って何を話すんです?」

ヤモリ「ん?食料のこととか、白鳩のこととかだよ。僕は幹部だけど基本的な方針はタタラとかが決めてるみたいだよ」

カネキ「そうですか(そういえばイトリさんが言ってたな・・各区の喰種達は小さなグループを作って規律に従って行動してるって)」

カネキ「ん?」


ぞろぞろ

カネキ「ずいぶん大勢のヒトたちが来ましたけど?」

ヤモリ「ああ、ちょうど会議の時間だね」

・・・


タタラ「・・・さて、始める」

ノロ 「・・・」
エト 「・・・」
アヤト「・・・」
ビン 「「・・・」」

タタラ「・・・白鳩たちの動きは予定通りだ・・そろそろ動き出すころかもしれない」

タタラ「“動き”が確認できた時点で俺とエトは予定通りあっちに行く」

エト 「ウン」

カネキ「?」


ヤモリ「なぁちょっといいか?」

タタラ「・・どうした?」

ヤモリ「今日、このケンって奴加わったんだろ?」

タタラ「ああ、そうだった。紹介しよう。俺の朋友、ケンだ」


エト (私が連れてきたんだけどなぁ・・・)



338:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/06(金) 23:47:04.93 ID:qKNmSja60

カネキ「あ、皆さんどうも。ケンです、よろしく」

タタラ「过一会、我引导建筑物中(あとで俺が中を案内するよ)」ニッコリ

カネキ「啊、刚才我请壁虎先生引导了(あ、もうヤモリさんに案内してもらいました)」

タタラ「・・・ヤモリ、余計なことをするな」

ヤモリ「え゛?!」


アヤト「笑顔怖えぇ・・マジ怖えぇ・・」ブルブル

エト 「・・・」


その他の喰種「・・・」ブルブル・・


ヤモリ「あ・・エト、このケンってお前の友達なんだろ?」

エト 「ウン」

ヤモリ「ちょうど俺、部下が居なくなっちゃってさぁ・・ケンに俺の仕事手伝ってもらいたいんだけど」

タタラ「ダメだ。ケンは俺と23区に行く」

ヤモリ(なんでタタラが??)


エト 「・・タタラさんも、ヤモリさんも。ケンは私が連れてきたんだよ?だからしばらくは私と一緒に行動するよ」

タタラ「む・・・そうか・・」

ヤモリ「・・・ッチ」



340:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/06(金) 23:49:17.17 ID:qKNmSja60

――――――――――CCG

シロ 「・・あのコクリアの喰種、資料読んだ?」

クロ 「うん。突然現れた片目を隠した“眼鏡の喰種”と“包帯の喰種”に襲われて、子供を取り逃がした」

シロ 「片目を隠した喰種・・・」

クロ 「・・・うん、そうかもしれないね」

シロ 「今日、仕事終わったら行ってみよう」

クロ 「うん、行ってみよう」

・・・


黒磐 「安久達、勉強になったか?」

シロ・クロ「「はい」」

黒磐 「うむ・・・明日は美郷と3人で13区の見回りをしてもらう。クインケの扱いにはもう慣れたか?」

シロ・クロ「「はい」」

黒磐 「良し。ではまた明日」

シロ・クロ「「お疲れ様でした、黒磐特等」」



***


――――――――――20区“あんていく”


カランカラン

ヒデ 「いらっしゃいませーッ!!」

シロ・クロ「「いた」」

ヒデ 「・・あれ?」



352:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/07(土) 13:50:13.56 ID:JXAHVY1Y0

#019 [試験]


ヒデ 「あの時の・・?」

シロ 「私は安久奈白」
クロ 「私は安久黒奈」

シロ・クロ「「嘉納先生のところではお世話になりました」」

ヒデ 「あ、やっぱり」


***


ヒデ 「・・・で二人は・・その手術受けたのか?」

シロ・クロ「「受けなかった」」

ヒデ 「!・・そっか!」

シロ 「・・お兄さんのおかげです」
クロ 「・・ありがとう」

ヒデ 「い・・いや。ハハ・・」

シロ・クロ「「でも、私たちはパ・・嘉納先生の考えがすべて間違えだとは思わない」」

ヒデ 「・・・」

シロ 「だから私たちは・・」
クロ 「私たちのやり方で復讐をする」

ヒデ 「・・・そっか」

シロ・クロ「「・・・お兄さん」」

ヒデ 「ん?」

シロ・クロ「「・・私たちは、CCGに戻った」」

ヒデ 「え?」



353:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/07(土) 13:50:42.95 ID:JXAHVY1Y0

シロ 「CCGの中に敵がいるのは確か」
クロ 「だからそいつに近づくために私たちは捜査官になった」

ヒデ 「・・・うん」

シロ・クロ「「・・・お兄さんを狩りたくない」」

ヒデ 「・・・」

シロ 「私たちは13区と11区を担当してる」
クロ 「だからお兄さんが何もしなければ、私たちも何もしないですむ」

ヒデ 「俺は・・何もしねーよ」

シロ・クロ「「・・この間11区で女の喰種捕獲を邪魔したのはお兄さん?」」

ヒデ 「?よくわからんが俺じゃないと思うぞ」

シロ 「片目を隠したメガネのマスクを付けた喰種と、全身包帯を巻いた喰種が・・」
クロ 「女の喰種捕獲を邪魔し、子供の喰種を逃がした」

ヒデ 「・・・あー・・それは俺じゃないけど俺の知ってる奴かもしれない」

シロ・クロ「「?」」

ヒデ 「とりあえずそいつに会ったら言っとくよ」

シロ 「うん・・・CCGでは“眼鏡の喰種”って呼ばれてる」
クロ 「眼鏡の喰種は・・人を殺さない喰種なの?」

ヒデ 「ああ・・俺が思ってる奴で合ってるなら人を殺したりする奴じゃねーよ」

シロ・クロ「「・・・・そう」」

ヒデ 「?」



354:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/07(土) 13:53:39.56 ID:JXAHVY1Y0

シロ・クロ「「・・・“あんていく”は?」」

ヒデ 「え?」

シロ・クロ「「“あんていく”は本当に人間も喰種も受け入れてくれた?」」

ヒデ 「ああ・・店のお客さんは人間も喰種も居るぜ・・もちろん人間は知らないけどよ」

シロ・クロ「「・・・」」

ヒデ 「それに、俺がここでバイトしてるのが何よりの証拠だろ?」

シロ・クロ「「・・・そうかもね」」

ヒデ 「CCGになっちまったシロクロちゃんには難しいかもしれないけどさ、俺とか“あんていく”みたいな喰種に会ったら、ただ駆除するんじゃなくてそいつらのハナシしっかり聞いてやってくんねーかな・・・俺、ここで人を殺さずに平和に生きようとするヒトと会ってきたから」

シロ・クロ「「・・・」」

シロ 「・・お兄さんはこの間捕まった女の喰種とおんなじこと言うね」
クロ 「・・あの女の喰種・・確か“フエグチ”って言ったっけ?アイツも人を殺さない平和を望む喰種なのかな・・」

ヒデ 「・・・え?」

シロ・クロ「「?」」

ヒデ 「捕まった・・喰種?・・なんて名前だって?」

シロ 「?・・・確か“フエグチリョーコ”だったと思うけど」
クロ 「お兄さんの・・・知り合い?」


ヒデ 「・・・ウソ・・だろ・・?」



355:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/07(土) 13:54:11.27 ID:JXAHVY1Y0

――――――――――11区“アオギリの樹”アジト


エト 「ねえ、ケン」

カネキ「ん?」

エト 「どうだった?“アオギリの樹”」

カネキ「うん、幹部の人たちも特に変な人いないし、見た目の割に普通でしたね・・あ、ビンさんは中二病ですが・・ププ」

エト 「うん・・見事なカネキフィルターだね」

カネキ「?」

カネキ「あ、そういえばさっき会議の時言ってたタタラさんが言ってた“あっち”ってどこ?」

エト 「ああ・・23区だよ」

カネキ「?なんで23区に?」

エト 「アオギリはね、都内に何か所かアジトがあるんだよ。で、近く23区でやることがあるから私とタタラさんはそっちに行くってハナシ」

カネキ「ふーん・・意外と大きな組織なんですね」

エト 「ウン。私その大きな組織の幹部なんだよ。すごいでしょ」

カネキ「あー・・ハイハイそうですね」

エト 「うわっ・・適当な返し!」



356:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/07(土) 13:54:51.33 ID:JXAHVY1Y0

カネキ「だって取材のために潜入してるんでしょ?それで幹部になっちゃうってどうなの?もっと目立たずに動いた方がいいんじゃないの?」

エト 「ハハ・・その言葉はキミにそっくりお返ししますよ」

カネキ「え?僕は目立たずに行動してるよ」

エト 「・・・今日の集会で11区の構成員は全員ケンのことを覚えたと思うよ?」

カネキ「それはそうと23区でなにするんですか?」

エト 「23区に“コクリア”ってのがあるの知ってる?」

カネキ「なんですそれ?ジブリ映画ですか?」

エト 「ウン、コクリコではないよ。CCGが捕まえた喰種の収容所があるんだよ」

カネキ「ふーん・・刑務所みたいなものですか」

エト 「ちょっと違うかな」

カネキ「?」

エト 「CCGは喰種を捕まえた場合ほとんどその場で殺しちゃうよ」

カネキ「野蛮ですね。アメリカンポリスですか」

エト 「でも、情報を持っていそうだったり、無抵抗で捕まった喰種なんかはその“コクリア”に一時収容しておくの」

カネキ「一時?」

エト 「結局は殺しちゃうから」

カネキ「怖いなぁ」



357:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/07(土) 13:55:30.13 ID:JXAHVY1Y0

エト 「で、そこに潜入して捕えられてる仲間を開放したりするのが目的なんだよ」

カネキ「スパイ映画状態ですね。日本でそんなことが現実に行われてたんですか」

エト 「コクリア潜入は今回が初めてだよ。たぶんアオギリ側にもかなりの被害者が出ると思う」

カネキ「ちょっと、僕そんなのに加わるの嫌ですよ。先生だってやめてくださいよ」

エト 「“エト”でしょ、今は・・・ふふ心配してくれるのかな?」

カネキ「い・・いやエトが死んだらヒナミちゃんとかどうするの?」

エト 「・・・まあ大丈夫だよ。コクリア潜入班にはあまり被害は出ないよ」

カネキ「?」

エト 「実はコクリアの警備を手薄にするため、最近ここ11区でCCG捜査官狩りを大々的に行ってるの」

カネキ「捜査官狩りって、殺し?」

エト 「ウン」

カネキ「ダメだよ。殺人罪に問われます」

エト 「喰種は『喰種対策法』で人間と認められていないから問われないよ?」

カネキ「うーん・・」

エト 「それに私たち喰種は生きるために人間を食べなければいけませんからね。なんの罪もない一般人を殺して食べるより、喰種を殺そうとしてる捜査官を食べた方が心情的にも納得できるでしょ?」

カネキ「・・・ちょっと待ってください、確認したいんだけどエトって時々大福とか食べてるよね?」

エト 「・・・ウン」

カネキ「エトは人間食べなくても平気なんじゃないの?」



358:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/07(土) 13:56:17.62 ID:JXAHVY1Y0

エト 「キミと同じだよ。私は半喰種だからどっちもいけるの」

カネキ「吐き気とかは?」

エト 「これはここだけのハナシにしてほしいんだけど」

カネキ「・・ええ」

エト 「・・喰種は体の中に“赫包”という器官があるの。喰種は、赫子の元となるRc細胞の多くをここに蓄えていて戦うときなどにそこから出して赫子を形成します」

カネキ「ああ、あの触手」

エト 「私は、たぶん半喰種だからだと思うんだけど、この赫包のRc細胞の全てを取り込むことができるんですよ。だからその時は赫包以外の体は人間と同じなの」

カネキ「へー・・だからその時は普通のゴハン食べられるんですね」

エト 「ウン。たぶん半喰種は体のつくりが人間に近いからなんじゃないかな?ケンもそうでしょ?普通の喰種は人間の食事なんて絶対に食べられないし、無理して食べたら体調不良起こすよ」

カネキ「うーん・・意識はしてないけど・・でも確かに吐き気も最初のころに比べてしなくなってきたなぁ。僕は単に慣れたのかと思ってたけど」

エト 「ん?・・普通のゴハンも食べてるの?」

カネキ「ええ。学食で」

エト 「・・・相変わらずすごい精神力だね」



359:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/07(土) 13:56:54.19 ID:JXAHVY1Y0

エト 「・・で、コクリア潜入だけどケンも一緒に来ない?」

カネキ「嫌だ。面倒」

エト 「・・・ですが、ケンの事がお気に入りなタタラさんは、ケンと一緒に行く気満々ですよ」

カネキ「お気に入りって・・今日会ったばかりですよ?」

エト 「キミは主人公属性があるね」

カネキ「?」

エト 「まあいいじゃないですか、第二外国語の勉強と思って」

カネキ「えー・・でも最悪CCGの人、殺すんですよね?」

エト 「その辺はタタラさんとか23区アジトの人に任せるから。それに、私も救出活動に専念したいので取材が疎かになりそうなんですよ。写真撮影とかお願いしたいんですよー」

カネキ「はぁ・・しょうがないですね」

エト 「やった!」

カネキ「これからは食事の時もメガネかけててくださいよ」

エト 「曇るんだよなぁ・・」

カネキ「だから、それが見たいの!!」

エト 「なんでもいいけどなんで上半身裸なの?風邪ひくよ?」


タタラ「・・・ケン、エト」



360:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/07(土) 13:57:29.67 ID:JXAHVY1Y0

エト 「ん?どうしたのタタラさん」

タタラ「23区入りの件だ・・来週アタマにしようと思うがどうか?」

エト 「ウン、私はいいよ」

タタラ「ケンは?」

カネキ「あ、来週から試験だから、僕パスで」

タタラ「・・・明白了。では再来週は?」

カネキ「再来週の月曜結果発表なので、それで追試なければいいですよ」

タタラ「好。・・・考试努力」

カネキ「谢谢」

エト (ケンの都合で日程があっさり変わるアオギリってどうなんだろう・・・)


***

カネキ「じゃあ僕はこれで。帰って試験勉強の続きするので」

エト 「ウン。わたしも帰る」

・・・

ガチャ
ヒナミ「・・・あ、先生お帰り!」

高槻 「ただいまーまだ起きてたの?」

ヒナミ「うん・・先生とお兄ちゃんが心配で眠れなかったの・・・お兄ちゃんは?」

高槻 「ケンは来週から大学の試験だから自宅に帰って勉強するって」

ヒナミ「うん・・・ケン?」

高槻 「あ、カネキ君が」

ヒナミ「・・・先生って・・お兄ちゃんと“こいびとどうし”なの?」

高槻 「・・ちゃうよー」

ヒナミ「ふーん・・」



361:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/07(土) 13:58:24.08 ID:JXAHVY1Y0

ガチャ
カネキ「ただいまー・・・・ん?」

カネキ(ヒデから着信が入りまくってる・・時間遅いけどかけた方がいいかな?)


ピ ピ ピ・・


ヒデ 『・・・カネキ』

カネキ「ごめんバイト中で電源切ってたよ。どうしたの?」

ヒデ 『・・・フエグチさんて知ってるか?』

カネキ「?」

・・・

ヒデ 『・・・という訳なんだが』

カネキ(・・・たぶんヒナミちゃんのお母さんだな・・ヒナミちゃんのことは黙ってるって話だったし・・さてどうしたものか・・)

カネキ「とりあえず今日は遅いから明日にしない?」

ヒデ 『あ・・おう。すまん』

カネキ「じゃあ大学の食堂に10時でいい?」

ヒデ 『了解』

ガチャ

***



――――――――――20区“上井大学”


カネキ「あ、おはよう。ヒデ」

ヒデ 「・・よ」

カネキ「顔色悪いけど大丈夫?」

ヒデ 「ああ・・大丈夫だ。・・・で」

カネキ「うん。たまたまこの間僕が助けようとした人だと思うよ」

ヒデ 「リョーコさんは・・無事なのか?」

カネキ「・・正直分からないよ。僕が助けに入った時は女性は倒れてて、女の子は逃げたから」

ヒデ 「・・・あの人たちは、人を殺したりしない平和を望む人たちだ・・なんでこんなことに・・・」



362:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/07(土) 13:59:02.50 ID:JXAHVY1Y0

カネキ「・・で、ヒデの知り合いの捜査官によるとその“リョーコさん”て人は収容所に
入れられたって事?」

ヒデ 「・・そうらしい」

カネキ(・・・たぶん先生が言ってたコクリアだな)

ヒデ 「・・俺・・出来ることならリョーコさんを助けたい・・」

カネキ「・・・ヒデ」

ヒデ 「・・え?」

カネキ「これは僕の知り合いの喰種から聞いたことなんだけど来週の月曜の夜以降に、大勢の喰種がその収容場を襲って、囚われてる仲間を助けようとするらしい」

ヒデ 「・・マジか?!」

カネキ「うん。確かな情報だよ。でもそのリョーコさんて人は彼らの仲間じゃないから救助隊対象外だと思うけど・・・」

ヒデ 「でも、収容所って警備厳重だろ?」

カネキ「それに向けて色々と準備してるみたい。その時には手薄になる予定だって。そのために今わざと11区で暴れて、CCGの捜査を11区に向けさせてるみたい」

ヒデ 「・・・マジか・・・俺・・」

カネキ「・・行くの?」

ヒデ 「ああ」

カネキ「十分気を付けてよ。僕はヒデが居なくなったら悲しいよ」

ヒデ 「ああ・・サンキュー」

カネキ「それと、僕らが来週の定期試験を追試なしで突破しないと、その襲撃は行われないから」

ヒデ 「・・・は?」

カネキ「という訳で勉強するよ。一旦戻って勉強道具持って午後にココ集合ね」

ヒデ 「・・マジかよ」



373:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/08(日) 13:26:54.37 ID:GyF135vm0

#020 [参戦]


月曜日。

カネキ「・・どうだった?ヒデ」

ヒデ 「セーフ!CあるけどDは無い!!」

カネキ「良かった。これで安心して襲撃に参加できるね」

ヒデ 「あ・・ああ。俺は若干、この会話の意味わからないけどな」

カネキ「ん?・・ちょっと待ってて。僕、教務課寄ってくるよ」

ヒデ 「?・・ああ・・また成績優秀者で呼び出されてるのか・・」

カネキ「10分くらいで済むから」

ヒデ 「早くしないと先に行くぞー」


***

カネキ「あ、そうだ。連絡しとかなきゃ」

ピピピ・・


ヴーヴー・・
高槻 『お疲れー。いやさすがですね』

カネキ「いえ、ただの定期試験ですし」

高槻 『そうそう、カネキ君に伝えておかなければならない事がありまして』

カネキ「なんです?」

高槻 『昨日の夜、11区に“あんていく”の人が来たんですよー』

カネキ「ん?ヒデではなく?」

高槻 『ええ、“イリミ”という女生と“ヨモ”という男性でした』

カネキ「はぁ・・何の用で?」



374:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/08(日) 13:27:42.11 ID:GyF135vm0

高槻 『先週、ヒデ君という方がコクリア行くのに参加するって話を聞きましたが、どうやら彼らはそのサポートをするそうで』

カネキ「なるほど」

高槻 『カネキ君つながりという事を言ったらタタラさんもオッケー出したので』

カネキ「それは良かったです」

高槻 『まぁ彼らは基本的に別行動とるみたいですが、我々とは利害が一致するということでとりあえず共同戦線をはるということになりそうですね』

カネキ「そうですか」


ヒデ 「・・ん?俺のこと話してる?」


カネキ「あ、ヒデ。えっと・・今収容所に襲撃する人たちと電話でしゃべってるんだけど、どうやら“あんていく”のイリミさんて人とヨモさんって人がヒデのサポートをするらしいよ」

ヒデ 「・・・マジか」

高槻 『カネキくーん』

カネキ「あ・ハイハイ」

高槻 『カネキ君は今お腹すいてる?』

カネキ「え?なんでですか?まあそこそこすいてますが」

高槻 『いえね、タタラさんがカネキ君のために満漢全席を作ってるみたいなんですよ』

カネキ「いや・・ちょっと意味分かんないです」

高槻 『たぶんタタラさん的にはカネキ君が科挙的な試験に受かったと思ってますね』

カネキ「襲撃の準備はいいのか」

高槻 『ちょっとは食べてあげてね。鼻歌歌いながら笑顔で料理を作るタタラさんをずっと見てる私からすると不憫でならないので』

カネキ「はぁ・・いい人なのは分かるんだけどさぁ・・」



375:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/08(日) 13:28:30.22 ID:GyF135vm0

カネキ「ヒデ、じゃあ僕一旦帰って支度するから」

ヒデ 「あ、おう。じゃあ俺も一旦帰って“あんていく”に行くわ」

カネキ「僕もヒデの手伝いしたいけど、取材もあるし」

ヒデ 「いや、大丈夫だ。“あんていく”のみんながサポートしてくれるなら心強いぜ(取材?)」

カネキ「じゃあ、気を付けて。情報によればCCGの捜査官はあんまりいないと思うけど、彼らは喰種見つけたらすぐ発砲するアメリカンポリスみたいな奴等らしいから」

ヒデ 「お、おう。カネキも気を付けてな」

カネキ「うん」

***


カネキ「さて、着替えてアジト行くかぁ・・一応液キャベ飲んどこう・・はぁ」


***


ヒデ 「リョーコさん・・必ず助けますから・・」



376:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/08(日) 13:29:14.95 ID:GyF135vm0

――――――――――11区“アオギリの樹”アジト



エト 「あ、ケン」

カネキ「お疲れ。ヒナミちゃんは?」

エト 「お留守番」

カネキ「まあそうだよね」

エト 「タタラさん、まだ調理中だから。終わったら声かけるって」

カネキ「そうですか」

エト 「夜まで特にすることないし、アジトの中ぶらぶらしてくれば?」

カネキ「うん、そうする」


・・・

カネキ「ん?地下に続く階段がある・・行ってみよう」

カン カン カン・・

カネキ「なんか牢屋みたいな造りだなぁ・・」

カネキ「ん?」


バンジョー「うわっつ!!」

カネキ「あれ?あなた確か・・ヤモリさんと防災訓練してた人たち」

バンジョー「・・あ・・・アンタ・・無事だったのか?」

カネキ「無事?・・ああ試験は無事追試なしでしたよ」

バンジョー「??」

カネキ「??」



377:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/08(日) 13:30:17.15 ID:GyF135vm0

・・・

カネキ「え?“アオギリの樹”から抜けようとしてたんですか?」

バンジョー「・・ああこいつら全員そうだ。アオギリのやり方には賛同できねぇ・・」

カネキ「んー・・僕入って日が浅いけどそんなに野蛮な事してる印象ないけどなぁ・・むしろCCGって結構非道なんだなぁって思ったけど」

バンジョー「・・・アンタみたいな・・強い喰種には居心地いいのかも知れねぇが・・俺たちみたいな弱い喰種は虐げられるだけなんだ・・」

カネキ「え?バンジョーさんめっちゃ強そうじゃないですか。逆に僕は特に戦った事無いですし」

バンジョー「いや・・俺は見た目だけだ・・赫子も未だに出せねぇし」

カネキ「あ、僕も出したことありませんよ」

バンジョー「へ?そうなのか??」

イチミ「・・バンジョーさん、それってつまり赫子出すまでもないって事なんじゃないっすか?」

ジロ 「・・タタラのあの様子見る限りケンさんの強さは半端ないと思いますよ」

サンテ「そうそう、バンジョーさんの弱さは半端ないですし、それと比べるのは失礼っすよ」

バンジョー「お前らぁ・・・まあ、ホントのことだけどよ」

カネキ「アハハハ」


ガチャ
アヤト「おい、お前らァ!」

ケイ 「きゃぁっ」


カネキ「ん?」



378:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/08(日) 13:30:51.19 ID:GyF135vm0

アヤト「・・・あ・・ケン・・さん。何してるんですか、こんなとこで」

カネキ「あ、アヤト君。ヒマだからバンジョーさん達と話してたんだよ。アヤト君は?」

アヤト「あ、いや・・もうすぐ白鳩どもと戦うことになるってタタラさんから聞いたんでこいつらに配置を伝えようと・・」

カネキ「ああ・・アヤト君はココに残るんだ?」

アヤト「あ・・ハイ。ケンさんは?」

カネキ「コクリアの方についてくよ」

アヤト「・・・・」

カネキ「?」

アヤト「ケンさん!俺、ケンさんやタタラさんみたいな強い喰種の戦いが見たいんです!だからコクリアの方ついて行っちゃダメですか?!」

カネキ「え?それは僕が決めることじゃないんだけど・・タタラさんに聞いてみる?ていうか僕強くないと思うよ」

アヤト「いや・・・あんな(気持ちの悪い)タタラさん見たこと無ぇ・・ケンさんの強さはあのタタラさんの様子見れば分かります。お願いです、タタラさんに聞いてみてください!」

カネキ「うーん・・・まぁいいけど・・あ、そうだこのバンジョーさん達ってアヤト君の仲間なの?」

アヤト「え?ああ・・こいつら俺の部下なんですけど脱走を企てやがったんですよ。だからそろそろ処分してやろうかと考えてて」

バンジョー「・・クッ」

カネキ「(処分?懲戒的な?かわいそうだなぁ・・)じゃあさ、アヤト君がコクリア行けることになったら、彼らに僕の仕事手伝ってもらっていい?」

アヤト「え?まぁ別にいいですけど・・そいつら使えないですよ」

カネキ「大丈夫、いい考えがあるんだ」ニコッ

アヤト「」ビクッ

バンジョー「」ビクッ



379:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/08(日) 13:31:30.82 ID:GyF135vm0

バンジョー「・・・」

ウス 「バンジョーさん・・・あの人・・信じていいんでしょうか?」

バンジョー「分からねぇ・・・だがこれで俺たち、アヤトの部下じゃなくなるかもしれねぇな・・」

・・・


カネキ「エト」

エト 「あ、丁度いいところに。料理出来たって」

カネキ「あ、うん。じゃあ僕食べてる間に、取材用カメラをあと9個くらい用意できない?」

エト 「9個?!」

カネキ「うん、上手くいけば9人くらい取材スタッフが仲間になりそうだから」

エト 「・・よくわからないけど一応用意しておくよ」

カネキ「ありがとう」


***



タタラ「请你吃吃吧。(さあ、食ってくれ)」

カネキ「すげえ量」

タタラ「恭喜恭喜。我想必须我盛大地祝福吧。(めでたいことだ。盛大に祝わなければと思ってな)」

カネキ「ハハ・・」





(すいませんが変換大変なので、以下日本語にします)



380:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/08(日) 13:32:05.99 ID:GyF135vm0

カネキ「すごい美味しいですね。タタラさんは料理上手なんですね」

タタラ「ふ・・お世辞を言うな。以前上海にいたころイェンという仲間がいてな。そいつから習った・・・料理上手なやつだった・・白鳩に殺されてしまったがな・・・」

カネキ「・・・そうですか・・・大切な仲間だったんですね」

タタラ「ああ・・・だが日本に来て新たな仲間もできた・・・むろんケンもそうだ」

カネキ「いや・・嬉しいです。でもこんなに料理上手ならアオギリの他の人にも作ってあげればいいのに」

タタラ「・・・それは俺のキャラじゃない」

カネキ「そうですか?アヤト君なんかタタラさんの事慕ってるみたいですし、喜ぶと思いますよ」

タタラ「む・・・そうか」

カネキ(口元が緩んでる・・きっと嬉しいんだな)

カネキ「あ・そういえば」

タタラ「ん?」

カネキ「そのアヤト君ですが、今回のコクリア救出作戦に加わりたいって言ってましたよ。タタラさんの戦いぶりを近くで見たいって」

タタラ「・・確かにコクリアに着いて来たいとは言っていたが・・・俺の戦いを見たいなどとは一言も言っていなかったな・・」

カネキ「アヤト君、まだ子供ですし、シャイだから面と向かって言うの恥ずかしかったんじゃないですか?」

タタラ「・・・そ・・そうか・・フフ」

カネキ(すっげぇ嬉しそう)



381:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/08(日) 13:33:02.28 ID:GyF135vm0

ガチャ!
ビン兄「タタラ・・白鳩が動き出した。コクリア班は移動を開始した方がいい」

タタラ「ビン・・貴様・・(俺とケンとの楽しい時間を)邪魔をするな・・」ギン

カネキ「まぁまぁ・・タタラさん仕事優先で行きましょうよ」

タタラ「しかし・・まだ全然食っていないではないか」

カネキ「こういう事もあるかと思って、タッパを大量に持ってきましたから。持って帰って食べますよ」

タタラ「フフ・・ケンは本当に準備がいい」

カネキ「ハハ・・(コレ食いきれないし、おいしいから帰ってヒナミちゃんにあげよう)」

ビン兄「・・・」


***


集会場。

タタラ「・・・という訳で、俺と、エト、それにアヤトは23区に移動する。後は任せたぞノロ」

ノロ 「・・・」

アヤト(・・・すげぇ・・本当に俺コクリア行けるみたいだ・・ケンさんパネェ・・)


エト 「ケン、カメラ君の分もあわせて10台用意したよ」

ケン 「ありがと(よし!これで僕の負担がだいぶ減るぞ)」

エト 「じゃあ突入はタタラさんとアヤト君がするから、私たちは救助活動と取材に専念しましょう」

ケン 「ええ。エトもくれぐれも気を付けてよ」

エト 「ウン、ケンもね」



382:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/08(日) 13:33:41.30 ID:GyF135vm0

――――――――――20区“あんていく”


ヒデ 「カヤさん、ヨモさん、本当にありがとうございます!」

カヤ 「いいのよ。あなた一人じゃ不安だし」

ヨモ 「・・・」

芳村 「任せたよ、永近君」

ヒデ 「・・ハイ」


トーカ「・・・店長」

芳村 「?」

トーカ「・・私も行く!」

芳村 「・・・“アオギリ”によれば、今回の潜入は危険を伴う可能性は低い。だがCCGの内部に潜入することには変わりない・・危険かもしれないよ?」

トーカ「・・・私は、リョーコさんが出ていくのを止められなかった・・ヒナミも・・。今度こそ・・・私が・・・!」

ヒデ 「トーカちゃん・・・」

トーカ「・・それにクソ新人が一人で先走って無茶しないかちゃんと見ないといけないし・・//」

古間 「・・・」
カヤ 「・・・」
芳村 「・・・」

ヨモ 「・・英良は俺もしっかり守る・・安心しろ」

トーカ「・・・それがちょっと心配ってのもあるし」

ヒデ 「?」


・・・

ヴー ヴー・・
ヒデ 「ん?カネキ?・・・!店長、CCGが動き出したみたいっす!」



399:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/09(月) 22:01:12.60 ID:gORs9KSs0

#020 [惨骸]



――――――――――11区“アオギリの樹”アジト


亜門 「・・・おかしいですね」

真戸 「そうですねぇ・・」

亜門 「確かに喰種は多いですが・・幹部クラスと思われる奴が居ない」

真戸 「同感です。私のクインケの材料に値する奴が居ませんねぇ」


***


黒磐 「うむ・・このあたりの喰種はほぼ一掃したな」

美郷 「ハイ!」

黒磐 「しかし・・うーむ・・篠原」

篠原 「いわっちょ」

黒磐 「ボスがおらんな・・そっちがまだ探索してない場所は?」

篠原 「一番奥の4棟と8棟だね」

黒磐 「うむ・・鈴屋は?」

篠原 「一人で先に行っちゃったよ・・はぁ」

黒磐 「・・・うむ」


シロ・クロ((お兄さん・・この中にいないよね?))



400:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/09(月) 22:01:44.56 ID:gORs9KSs0

黒磐 「ん・・・待て」

美郷 「ハイ!安久、待機だ」

シロ・クロ「「ハイ」」


ヤモリ「・・・雑魚ばっかでつまらないでしょ?」

黒磐 「・・・美郷、“ジェイソン”だ。SS級配置をとれ」

美郷 「ハイ!!」

篠原 「あの子どこ行っちゃったのかねー・・とりあえずいわっちょに加勢するよ」

***


ビン兄「・・・白鳩」
ビン弟「兄ィ・・何番で行く?」


亜門 「・・・ん?」

真戸 「おやおや・・・ずいぶんと出てきましたね・・真ん中は幹部でしょうか?」

亜門 「真戸さん、奴ら全員赫子使えるみたいですね」

真戸 「ああ・・クク・・久々に腕が鳴るよ・・」


***


什造 「あれ?アナタ“アオギリ”ですか?」

ノロ 「・・・」

什造 「何か言わないと殺しちゃいますよー?」

ノロ 「・・・」
バゴォ・・!!

什造 「おっと」
ヒョイ

什造 「・・・」ニヤァ



401:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/09(月) 22:02:20.99 ID:gORs9KSs0

――――――――――23区“コクリア”


タタラ「・・・行くぞ、アヤト」

アヤト「ハイ」

ガチャリ


監獄長「ん?誰だおまえた」

監獄長の首「・・・ち」
・・ゴロン


タタラ「この下か」

アヤト「・・みたいですね」

タタラ「アヤト・・・お前の技はデカい音が出る・・・静かに殺るんだ」

アヤト「・・ハイっ!」

・・・


エト 「ケン、私たちも行くよ」

カネキ「ええ。じゃあバンジョーさんたち、写真撮影お願いしますね」

バンジョー「お・・おう」

コウト「お母さん、この機械どうやって使うの?」

ケイ 「ええと・・このボタンを押せばいいのかしら」

バンジョー「ここで、覗いて、このボタンを押すんだぜ」

カネキ「バンジョーさん達は上の階の方をお願いします。出来るだけたくさんの写真を撮ってください」

バンジョー「おう、任せてくれ!!」



402:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/09(月) 22:02:58.22 ID:gORs9KSs0

カネキ「ん?どうしたの、皆止まって」

エト 「どうやら強い人間がいるみたい。攻撃すると大きな音が出てバレそうだから、作戦を考えてるんだよ」

カネキ「ふーん・・・」

アヤト「ケンさん・・・アイツ倒せませんか?!」

タタラ「倒すのは簡単だ・・しかし仲間を呼ばれるのはやっかいだからな・・」

カネキ「うーん・・OKちょっと待ってて」

カネキ「エト、リョーコさんの時みたいなミネウチって誰にでもできる?」

エト 「え?・・まあスキがあれば」

カネキ「それとCCGの人って役職の名前は会社と同じなの?係長とか、課長とか」

エト 「え?確か一番下が三等捜査官、二等、一等って上がっていって、その上は上等、準特等、で一番上が特等捜査官だったよ・・でもそれが?」

カネキ「じゃあスキ作るからミネウチお願い」

エト 「・・いいけどアイツにスキ作れるの?」

カネキ「うん、やってみる」

アヤト(ついにケンさんの戦いが見られる・・)ゴクリ

カネキ「・・・」ジィィィィィィィイイ

エト 「きゃっ!なんでチャック全開に?!」

カネキ「僕がアヘ顔ダブルピースしたらミネウチをお願いします」

エト 「え?・・え?!」



カネキ「あ・・スイマセン」

喰種一同(えええーー??!マスクもつけずに普通に話しかけたぁぁぁ??!)



403:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/09(月) 22:03:37.51 ID:gORs9KSs0

灰崎 「ん・・・お前は?」

カネキ「あ、新任の佐々木三等捜査官です。コクリアを見学するように言われて来ました」

灰崎 「??報告は受けていないが??」

カネキ「え??入口に居た方には連絡いってたみたいですけど・・・?」

灰崎 (・・・監獄長、また伝達を怠ったな・・まあ監獄長のセキュリティーチェックを通過したのなら大丈夫だろう)

灰崎 「いや・・そうか、ご苦労。お前は配属はどこだ?」

カネキ「13区です(適当)」

灰崎 「13区か・・あそこは危険な喰種が多いからな・・黒磐のところか?」

カネキ「はい!(誰?)」

灰崎 「そうか・・黒磐も立て続けに新人が入って大変だな」

カネキ「いえ、とても勉強になります!」

灰崎 「ん?・・佐々木・・その・・社会の窓が開いているぞ」

カネキ「え?あ・・スイマセン」v(^o^)v

灰崎 「???なぜ突然、変顔をォ」
どさっ

エト 「・・・ミネウチ完了」

カネキ「よし、行こう」

エト 「・・・ケン、一瞬キミの方をミネウチしようかと思ったよ」

カネキ「ひどいなぁ」



404:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/09(月) 22:04:09.55 ID:gORs9KSs0

エト 「・・にしてもケン、度胸ありすぎ」

カネキ「だってこの間、コクリア潜入は初めてって言ってたよね?だからまさか喰種が攻めてくるなんて考えてもいないだろうと思って」

エト 「そのためにわざわざスーツ着てきたのね・・顔、見られたけど平気?」

カネキ「考えても見てよ。チャック全開でアヘ顔ダブルピースを決めた人のことをそれ以上覚えてると思う?情報過多で、このヒト僕が適当に言った“佐々木”って名前しか覚えてないよ。一応監視カメラには背を向けたし、あとで監視カメラ壊しておけば問題ないでしょ」

エト 「・・・まあでも、もうチャックは上げた方がいいんじゃないかな?」

タタラ(・・・さすがだ、ケン)
タタラ「・・アヤト・・静かに殺るとはああいう事だ・・」

アヤト(・・・ケンさん、パネェ・・・俺にはとても真似出来ねェ・・)



カネキ「じゃあタタラさん、アヤト君、あとはお願いします」

タタラ「・・ああ」
アヤト「ハイっ!!」


エト 「・・じゃあ取材はお願いしますよー」

カネキ「うん、このヒト(灰崎)の私物はゲットしたので、あとは監視カメラ壊したら写真撮りまくるよ」

エト 「ウン」



405:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/09(月) 22:04:40.76 ID:gORs9KSs0

カヤ 「・・・アオギリの潜入確認・・・トーカ、ヒデ、準備して」

トーカ「はい!」
ヒデ 「うっす!」

ヨモ 「・・・俺は一足先に潜入する・・万が一アオギリがしくじった場合は連絡する・・」

ヒデ 「はいっす!」


カヤ 「ヨモは無事潜入したみたい・・コクリアは危険な喰種ほど深部に収容されている・・おそらくリョーコさんは上層に収容されてるはず」

トーカ「・・リョーコさんの収容されてる部屋はどこだか分からないですか?」

カヤ 「・・残念ながら私はそこまで分からないわ・・・でもさすがアオギリね・・かなり深部まで侵入してるようだけどCCGが騒いでいない・・よほど頭の切れる奴が指揮を執ってるようね」

ヒデ 「・・・じゃあ片っ端から部屋を散策するしかないですか?」

カヤ 「残念ながらそうね。とりあえず誰も居ない部屋は分かるからそこは除外していきましょう・・・・一階は入口から3番目、8番目、12番目は空。地下1階は4番目、5番目、7番目、11番目が空。地下2階は1番目16番目が空ね。それより下はアオギリが探索中よ。ヨモも地下3階にいる」

トーカ「じゃあとりあえず地下2階までを探すかっ!」

ヒデ 「ああ、そうだな!」

・・・


トーカ「おかしいな・・・どの房にも居ない」

ヒデ 「うん・・もっと下の階かな・・?」

ヨモ 「英良」

ヒデ 「あ、ヨモさん!」

ヨモ 「・・この下には居ないようだ・・S級と書かれた先は“アオギリ”達が探索している・・そこには居ないだろう・・」

ヒデ 「・・・おかしいな」



406:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/09(月) 22:05:19.28 ID:gORs9KSs0

ヒデ 「入見さんの見立て間違ってたのか?」

トーカ「いや・・カヤさんの探知は外れないと思うけど・・」

ヨモ 「・・・すでに“アオギリ”が侵入してかなりの時間が経つ。とりあえずまだ探索していない部屋を確認して、発見できなければ一度撤退すべきだ・・」

ヒデ 「・・・リョーコさん・・」

ヨモ 「俺は地下二階をを見てくる・・トーカは地下一階、英良は一階を確認しろ」

トーカ「はい」
ヒデ 「うっす」


***


ヒデ 「・・・カヤさん誰も居ないって言ってたけど・・とりあえず見てみるか・・・ん?」

ヒデ 「!!リョーコさん!!」

リョーコ「」

ヒデ 「リョーコ・・さ・・・ん?」



“フエグチリョーコ”だったものは静かに床に横たわっていた。

壁には、血とも汚れとも分からない、どす黒いシミができていた。

暗くてよく見えなかったが、目を凝らしてみると、躰は夥しい数の痣と、破れ爛れた皮膚が見て取れた。

閉じられた眼の端は、掠れた血の跡と乾いた涙の跡で汚れていた。

英良が彼女の躰を抱き上げると、四肢の骨格が破壊されていたのか、だらりと手足が曲がった。

両手足の指先は、剥された爪の跡が、まるでマニキュアのように染まっていた。


抱き上げたリョーコの残骸を見る視界が赤黒く濁っていくのを感じた。



407:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/09(月) 22:05:54.29 ID:gORs9KSs0

ヒデ 「うああああああああおおおあおああおあおああおおあ!!!!!」


ヨモ 「?」

トーカ「?!ヒデッ?!」

カンカンカン!!

トーカ「?!」

トーカが英良の異常を感じて急いで階段を駆け上がった時最初に見た光景は、コクリアの異変を察知していち早く駆けつけた23区局職員を喰いちぎり、ブラウン運動のように暴れまわるヒデの姿だった。

ヒデの背中には鱗赫の喰子が4本踊っていた。

トーカ「ヒ・・ヒデ!!」

ヨモ 「トーカ・・ダメだ。下がってろ」
ズモモモモ!!


ドオオオォォォン!!!

ヒデ 「あああああああああ!!」

トーカ「さ・・再生してる・・」

カヤ 「ちょっと!何なのアレは!!」

ヨモ 「・・英良が暴走している・・・三人の赫子で同時に攻撃して動きを止めるしかない」

トーカ「でも!」

ヨモ 「・・アイツの再生力は異常だ・・・ここで俺たちがアイツを止めなければ白鳩にやられる」

トーカ「・・・くそッ!!」
ゾオオオオオオオ・・

カヤ 「・・・英良・・死なないでよ」
バキキキキ・・・・


***



408:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/09(月) 22:06:35.45 ID:gORs9KSs0

――――――――――11区“アオギリの樹”アジト


什造 「アハハ・・アナタ、どうして死なないです?」

ノロ 「・・・」

什造 「おかしいですねぇ・・お腹の中身ぶちまけるとこ切ったんですがねぇ」

ノロ 「・・・・」

ピピピピピピピピピピピピピピ!


什造 「ん?なんです?」

ノロ 「・・・」
ピッ

ノロ 「・・・」
シュン!

什造 「あ・逃げるな僕のクインケ!!」


**


亜門 「こいつら・・コンビネーションで・・!」

真戸 「クク・・幹部ですか。中々骨がある・・・いいクインケになりそうだぁ!!」

ビン兄「食らえッ!!」

亜門 「ふんッ!!」
ドンッ!!

ビン弟「なっ!!兄ィの赫子を素手で?!」

真戸 「おやおや、私を忘れてますね」
ザザン!!

ビン弟「がっ・・・!!」

ビン兄「貴様ッ!!」

亜門 「終わりだッ!!」
ザシュッ!!


**


黒磐 「うむ・・効いとらんな・・」

篠原 「さすがッ・・・半赫者は堅いね・・・いわっちょ」

黒磐 「・・・やるか?」

篠原 「・・いや、まだヒラが居る」



409:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/09(月) 22:07:17.21 ID:gORs9KSs0

ヤモリ「ふぅー・・ふぅー・・・グハハ・・・どうしたハトォォォ・・!!」

篠原 「行くよ、いわっちょ」

黒磐 「うむっ!」

ガギイイン!!

ヤモリ「きかねええええよォォォオオ!」


ザシュ!!

ヤモリ「?!」

平子 「・・・・」


篠原 「さすが上手いね!赫子の隙間をついた」

平子 「・・いえ」

黒磐 「・・・後ろ!!」


平子 「・・・っ!!」
ヒュン!!


ノロ 「・・・」

篠原 「な・・どこから現れた・・?!」


ノロ 「・・・・」

ヤモリ「・・・ち・・時間か」

黒磐 「?」


ノロ・ヤモリ「・・・」
トンッ・・

ヒュン!!

篠原 「・・・逃げた・・のか?」

黒磐 「・・・・うむ」


とことこ
什造 「・・・アレ?皆さん・・僕のクインケの材料見ませんでした?」

篠原 「はぁ・・・」



424:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/10(火) 23:02:22.33 ID:+HTqmZI90

#022 [変態]



ピー ピー
篠原 「ん?マルちゃんから連絡だね」

篠原 「・・・・な!」


黒磐 「?」

篠原 「・・・やられたよ」

黒磐 「どうした?」

篠原 「コクリアが襲撃されてる・・・ココは囮だったみたいね」

黒磐 「・・・・うむ」


亜門 「あ、篠原さん!」

黒磐 「お、ムキムキ。ちょうどいいとこに」

亜門 「?」

黒磐 「お疲れのとこ悪いけど、コクリアに直行ね」

亜門 「?」


***


亜門 「・・・幹部が少なかったのはそういう訳ですか」

真戸 「ふっ・・通りでね・・・我々も行きますかね亜門君」

亜門 「はい」

黒磐 「・・まぁ先に近くにいた有馬が向かったみたいだから着いた時やること無いかもだけどね」

真戸 「しかしコクリアか・・ふむ・・やはりあの喰種、このことを知っていたのかも知れないですねぇ」

亜門 「?・・・ああ723番ですか」

真戸 「ええ。結局何も喋りませんでしたよ」

亜門 「・・・そうですか。真戸さんでも何も聞き出せませんでしたか」

真戸 「しかも赫子も出さなかったのでクインケにも出来なかった・・まったくただのゴミになってしまったよ」

亜門 「・・・」



425:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/10(火) 23:03:23.77 ID:+HTqmZI90

――――――――――23区“コクリア”


エト 「・・・驚くほど人間居ないね」

タタラ「・・ケンのおかげだ」

エト 「そうだね・・・やり方はともかく」

タタラ「・・・ん?この先はSS級か」

エト 「私、行く?」

タタラ「いや、エトはS級を頼む」

エト 「ウン」

タタラ「アヤト」

アヤト「ハイ」

タタラ「お前は念のため入口に戻って待機してもらえるか?白鳩が来たら知らせてくれ」

アヤト「分かりました!」


パシャ
カネキ「なんかこのあたり同じ景色ばっかりで写真撮るに値しないなぁ・・」

オオオオ・・

カネキ「ん?・・今なんか上で聞こえたような・・・」



426:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/10(火) 23:03:58.70 ID:+HTqmZI90

アヤト「あ、ケンさん!」

カネキ「あ、アヤト君。上行くの?」

アヤト「ハイ。入口で白鳩来ないか見張ります」

カネキ「そっか、気を付けてね。なんか変な音聞こえたから」

アヤト「ハイッ!!」

アヤト(ケンさんなんで写真撮ってるんだ??・・・まあケンさんのことだからスゲェ作戦があるんだろうな)

カン カン カン・・


アヤト「ん・・・お前らァ」

バンジョー「げっ!!」

アヤト「・・・なんでお前らまで写真撮ってるんだ?」

バンジョー「くっ・・・ケン・・さんに頼まれたんだよ・・」

アヤト「・・・・そうか・・がんばれよ」
カン カン カン・・・


バンジョー「・・・へ?」

バンジョー一味「・・・」


アヤト(確かに・・アイツら弱くて使い物になんねェって思ってたけど・・・弱い奴は弱い奴なりに使い道はあるってことか・・・さすがだぜ・・ケンさん)




アヤト「・・・・ん?・・・アレは・・・!!」



427:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/10(火) 23:04:35.68 ID:+HTqmZI90

アヤト「トーカァ・・!てめーこんなとこでなにしてんだ?ああ?」

トーカ「・・アヤト?!」

アヤト「テメーみてーな弱い奴が来るとこじゃねェ・・・何なら俺が殺してやろうかァ?」


カヤ 「トーカ!よそ見しないで!!」

トーカ「ハイッ!!」
トーカ「うっさいアヤト!!後にしろ!!今大変なんだよ!見て分かんねーのか!!」

アヤト「へ?」



ヒデ 「アアああああああああアアあ!!!」

アヤト「・・・・(なんだアレ)」



ヨモ 「・・・決めるぞ・・!」

トーカ「ハイッ!!」
カヤ 「ええ!!」

ドオオオオオン!!!

ヒデ 「う・・・ううぐ・・」
・・ドサ

ヨモ 「・・運ぶぞ」

トーカ「ハイ!」
カヤ 「危なかったわね・・」



アヤト「・・・・・・あ・・とーかァ・・・・・行っちゃった・・」



428:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/10(火) 23:05:06.66 ID:+HTqmZI90

タタラ「エト、ノルマは達成した」

エト 「ウン、こっちも」

タタラ「そろそろ行くか」

エト 「そうだね」

アヤト「・・・」

タタラ「アヤト、白鳩は来ていなかったか?」

アヤト「いや・・・トーカが・・いやなんて言うかよく分かんないけど白鳩は居なかったです」

タタラ「?・・そうか。まあいずれにしろ潮時だ」

エト 「ウン・・・まさかコクリア班は被害ゼロとはね」

タタラ「11区の奴らは概ねやられただろうな」

エト 「そうかもね」

***


カネキ「あれ?もう撤収?」

エト 「そうだよ。そろそろ逃げないと怖い奴来ちゃうから」

カネキ「まだSS級の階の写真撮ってないんだけど」

エト 「・・・じゃあ私着いてくからさっさと済ませて」

タタラ「俺も残ろう」

エト 「タタラさんは入口に居て。すぐ行くから」

タタラ「そ・・そうか」(´・ω・`)

アヤト「あ、俺もタタラさんと一緒にいます」

タタラ「うむっ!」(`・ω・´)



429:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/10(火) 23:05:45.42 ID:+HTqmZI90

バンジョー「あー・・ケン」

カネキ「あ、バンジョーさん達」

バンジョー「とりあえず写真撮り終わったぜ」

カネキ「あ、どうもありがとうございます。先帰っててください」

バンジョー「・・・俺達アオギリには帰りたくねぇ!!」

カネキ「え?じゃあどうするの?」

バンジョー「このまま・・・東京の外にでも逃げようかと思うんだが・・・ダメか?」

カネキ「・・せっかく懲戒処分なしに出来そうだったのに・・」

バンジョー「?」

エト 「お取込み中悪いんだけどさ」

バンジョー「うわっ!!」

バンジョー(コイツたしか幹部のエト・・・ヤバい・・逃げること聞かれた・・・!!)

エト 「たぶん11区のアジト、白鳩に襲撃されてるから、帰ったら死ぬよ?」

カネキ「ええ?イモリさん・・じゃなくてヤモリさんとか中二病兄弟とか大丈夫?!!」

エト 「・・分かんないけど、とりあえず11区アジトには帰んない方がいいよ。タタラさんも別のアジトに行ったと思うし」

バンジョー「・・・くっ」

カネキ「うーん・・じゃあさ光が丘駅の出たとこにあるLIVINのフードコートにいて。僕もバイト終わったら行くから」

バンジョー「・・へ?」

カネキ「ん?・・・ああお金持ってないか!じゃあハイ、5000円渡しとくから。みんなの電車代とコーヒー代。足りるよね?」

エト 「9人だと微妙だよ」

カネキ「そっかぁ・・はい、じゃあもうあと5000円」

バンジョー「え?・・・えーと・・」

エト 「早く行って。信じられないかもしれないけど、ケンはいたって真面目だから」

カネキ「?何言ってんの?」

バンジョー「・・・あ・・ああ。じゃあ行ってます・・・?」

カネキ「都営大江戸線だから間違えないでねー」



430:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/10(火) 23:07:18.99 ID:+HTqmZI90

・・・

エト 「そろそろいいんじゃない?」

カネキ「そうだね。だいぶ写真撮ったし、色々とアイテムも拾ったよ」

エト 「まあ内容は後で確認するとして、タタラさん達待ってるから急ごう」

カネキ「うん」

***


タタラ「終わったか?」

カネキ「ハイ。ありがとうございました」

アヤト「・・トーカが・・変な喰種が・・・」

カネキ「・・アヤト君大丈夫?」

アヤト「あ・・ハイ・・・多分大丈夫です」

タタラ「さっきからこの調子だ・・・何か見たようだが説明が要領を得ない」

カネキ「?・・たぶん上階のほうの様子は撮影隊の皆が写真撮ってるから、あとで確認できますよ」

タタラ「・・・さすがだ、ケン」


エト 「・・・で、タタラさんはどこ行くの?」

タタラ「とりあえず23区アジトに行く。アヤトも連れていく」

エト 「じゃあ私とケンは一旦、私たちのアジトに戻るから」

タタラ「・・・そうか。後で合流だな」



・・・・エト・カネキとタタラ・アヤト・その他の喰種達が別れた直後であった。

死神の声が聞こえた。


『・・・・IXA』


エト 「・・しまっ・・!!」



431:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/10(火) 23:08:26.98 ID:+HTqmZI90

背を向けたタタラたちは認識することができず、タタラたちの方を向いていたカネキも認識することができなかった。

カネキに向かって伸びる死神のクインケを。

唯一その死神の手に気付いたエトは、とっさにカネキを押し飛ばした。

ドサッ!!
カネキ「うわっ・・!」


ザシュゥゥゥウウ!!
エト 「・・・ッ!!」


カネキ「いてて・・・エト?」

エト 「・・・くっ」

とっさの出来事で赫子を出すことが間に合わなかった。
ほとんど人間に近い状態の体でIXAの攻撃を受けたエトは利き腕を吹き飛ばされていた。


カネキ「・・・・え?」

カネキの脳裏には血まみれのイトリの姿が浮かんだ。

カネキ「・・先生・・左腕が・・」

エト 「・・・アイツ・・・そっか・・これじゃ分かんなかったか・・・・・・・油断したよ」

カネキは背中に燃え上がるような熱いものを感じた。




カネキ「・・・僕の」


カネキ「僕のメガネっ子になんてことするんだァァ!!!」



432:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/10(火) 23:09:22.04 ID:+HTqmZI90

有馬 「・・・アオギリ本隊か・・・ずいぶんと多いな・・」


カネキ「・・・・」ヒュンッ!!

有馬 「?・・・IXA防御モード・・」

ガイィィィン!!

有馬 「?!」

ドサッツ!!

飛び込んでくる見慣れぬ喰種から身を守るため、クインケで防御した有馬の体は、10メートル以上弾き飛ばされた。


ピシィ・・
有馬 「・・・IXAの防御壁を・・」


カネキは突然現れたCCG捜査官から、負傷したエトを遠ざけるため、ありったけの力で突進した。
突進しながらカネキは感じた。
今までの人生で感じたことのない加速を。

感情の昂ぶりが、カネキの体内に蓄えられたRc細胞を目覚めさせた。


エト 「・・・・・ケン・・逃げて」




アヤト「エト!ケンさんっ!!」

タタラ「行くなアヤト・・・“有馬”だ。お前では勝てない」

アヤト「・・でも!!」

タタラ「最初に決めたルールを守れ・・奴が来たら逃げる・・・目的は果たした」

アヤト「クッ・・!」



有馬 (・・・他の喰種達が逃げていく・・)

有馬 「・・・!」

カネキ「・・・お前の相手は僕だ」

有馬 「・・・そうか」

カネキ「・・ひとつ言っておく」

有馬 「・・・なんだ」

カネキ「そのメガネ、全然似合ってない!!」

有馬 「・・・」



433:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/10(火) 23:10:22.25 ID:+HTqmZI90

篠原 「おっと・・有馬が居るな。間に合わなかったかな?・・・・・・ん?!皆止まれッ!!!」

黒磐 「む?!」

篠原 「なんだ・・・アイツは」


篠原は目を疑った。

“CCGの死神”とまで言われた男が膝をつき、見慣れぬ喰種がそれを見下ろしていることを。

しかしそれ以上に、その喰種の風貌の異様さに言葉が出なかった。



ズググググググ・・・
カネキ「・・・・」

カネキの背中から延びる赫子の数は見えるだけで10本以上。
しかも様々な形状をしていた。
そしてそれらの赫子がスーツを着た体を覆っていく・・・。

ズググググググググググググ!!!


篠原 「か・・・赫者・・いや・・・9/10赫者・・位?」

亜門 「・・・・眼鏡の喰種」

真戸 「ほう・・奴が・・」

亜門 「眼鏡・・・貴様は・・・」

什造 「アハハ♪新しいクインケの材料になりそうですねぇ」

がしッ!
什造 「?!」

先走る什造の体を篠原が掴んだ。

什造 「篠原さん?何するですっ?!」

篠原 「・・ダメだ・・・一人で飛び込めば死ぬ」

什造 「・・・・・ぶぅー」



434:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/10(火) 23:10:58.76 ID:+HTqmZI90

シュウウウウ・・
カネキ「・・・・」

カネキ「行きますよ?」

有馬 「・・・・」

・・・


有馬とカネキは、特等捜査官たちでも目で追うのがやっとの動きで動き回り、幾度となく衝突した。

有馬 「・・・・ナルカミ」
バチチチチ!!

カネキ「おっと」
ヒョイ

有馬 「・・なっ!」


亜門 (有馬特等の顔に何度も手を伸ばしては戻している・・・奴は・・何をしてるんだ?)


カネキ「・・・ふう・・・じゃあ、もう終わりましてんで。さようなら」

有馬 「くっ・・・ナルカミ!」
バチチチチチ!

カネキ「おっと」
ひょい

カネキ「・・・言っときますけどアナタ許しませんからね」
シュン!

有馬 「・・・」


篠原 「逃げるぞ!」

真戸 「ん?・・奴、仲間を負ぶっていきましたね・・」

亜門 「・・・・」


黒磐 「大丈夫か、有馬」

有馬 「・・・ええ」

黒磐 「・・・有馬・・そのメガネ・・レンズに文字が」

有馬 「・・・・・ええ」

『そのメガネ全然似合ってねーよ!バーカバーカ!!!』


篠原 「子供か」



435:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/10(火) 23:12:50.09 ID:+HTqmZI90

・・・

“特等捜査官会議”


和修吉時「・・・アオギリという喰種集団もそうだが今回は新しく確認された喰種の情報共有を行おうか・・篠原くん説明をお願いするよ」

篠原 「あぁ・・ハイ・・・新しく確認された“赫者”はコクリアを襲撃したアオギリ本隊の構成員と思われます。赫包は10個以上、レートはSS~・・・力量から言ってあるいはアオギリのリーダーかもしれませんね」

宇井 「赫包10個以上?!まさか・・!どんな奴なんですか?!」

丸出 「報告書をちゃんと見ろ!宇井」

宇井 「え・・でも報告書には外見などの情報がありませんよ」

黒磐 「・・・うむ」

篠原 「なんつーか・・女性の安浦さんもいるし・・」

安浦 「?なんですか・・?私が女性であるからと言って遠慮するのはやめていただきたいですね」

和修 「・・・篠原くん、説明をお願いできるかな」

篠原 「えー・・・新種の赫者の外見は・・上半身はネクタイを締めたスーツ状のものにフードがついたような赫子が覆っており、顔は巨大なメガネをかけたようなマスクで左目だけが見えるようになっています。下半身は・・・腰付近から出たおそらく鱗赫と思われる赫子がトレンチコートのように下に広がっております。ただし、局部は露出」

安浦 「・・・・は?」

篠原 「もう一度言いますが、戦闘中局部は露出状態でした。そのため11区で遭遇した“ジェイソン”のような半赫者あるいは9/10赫者かと思われましたが、実際に戦った有馬によると、局部のみ赫子が透明であり、窓のように外から見える仕組みになっていたそうです」

和修 「・・・・」
田中丸「・・・・」
宇井 「・・・・」
安浦 「・・・・・ヘンタイ」

篠原 「・・・まあ完全に変態ですが実力だけ言えば有馬と同等以上ですから・・奴は有馬の攻撃を躱しながら、有馬の眼鏡に油性マジックで落書きをしたそうです・・・外見と嗜好から我々は奴のことを“変態眼鏡”と呼ぶことにしました」

丸出 「変態の喰種か・・・色んな意味で厄介な奴だ・・・で、なんでその有馬が出席してないんだよ」

篠原 「いやぁ・・有馬の奴、お気に入りの眼鏡落書きされて、無表情だったけど相当怒ってたみたいで、急いで新しい眼鏡造りに行っちゃったよ」

丸出 「子供のケンカか」



452:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/11(水) 22:13:31.70 ID:XiaqWXuf0

#023 [添寝]



ガチャ

カネキ「先生・・!」

高槻 「・・カネキ君、そんな大声出したら・・近所迷惑ですよ」

カネキ「そんな事言ってる場合じゃないですよっ・・・!」


ヒナミ「お帰りなさい。お兄ちゃん、先生・・・・先生?!」

高槻 「おー・・ただいま」

ヒナミ「い・・・イヤ・・先生!!」

高槻 「ちゃんヒナも・・大丈夫だよ。赫包やられてないし、もう血は止まったから、命に別状はないよ」

ヒナミ「でもっ!」

カネキ「とりあえずベッドで安静にしてください!」


・・・


カネキ「・・・ヒナミちゃん眠りました。泣き疲れたみたいです」

高槻 「そっか」

カネキ「・・・本当に命に別状はないんですか?」

高槻 「ウン。左腕やられただけ。カネキ君が戦ってる間自分で止血したから」

カネキ「・・そうですか」

高槻 「・・にしてもカネキ君、強いんだね」

カネキ「そんな事無いです・・・あの時は我を忘れてしまって・・・今、あの時の力出せって言われても、たぶん無理です」

高槻 「・・・その割には攻撃はしなかったね」

カネキ「え?だって暴行罪になるでしょ?」

高槻 「・・・相変わらず君の判断ラインは謎ですね」



453:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/11(水) 22:14:52.11 ID:XiaqWXuf0

カネキ「・・・でも先生、利き腕が無くなって・・・文字を書いたりとか・・これからいろいろと大丈夫なんですか?」

高槻 「・・・」

カネキ「僕に出来ることは何でもしますよ」

高槻 「ホント?」

カネキ「ええ」

高槻 「・・実は来週、“吊るしビトのマクガフィン”が発売されるんですよ」

カネキ「あ・・そういえばそうでしたね」

高槻 「で、それに合わせてサイン会を行う予定なんですが」

カネキ「いや・・そんな事してる場合じゃないでしょ」

高槻 「そういう訳にもいかないの。ファンの方との交流は大事ですよー。君と出会ったのもサイン会だったでしょ?」

カネキ「・・・まあそうですが」

高槻 「だからサイン会は行かなければいけないのです」

カネキ「・・・わかりましたよ。手伝いますよ。だから無理しないでください」

高槻 「ウン」



454:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/11(水) 22:15:29.96 ID:XiaqWXuf0

高槻 「・・・とりあえず疲れたから今日はもう寝ようかな」

カネキ「そうですね。僕も疲れました。そろそろ帰ります」

高槻 「・・・帰っちゃうの?」

カネキ「え?」

高槻 「傷ついた女性を置いて帰ってしまうんですか。ほー」

カネキ「はぁ・・・わかりましたよ」

高槻 「カネキ君はホント押しに弱いですね」

カネキ「帰りますよ」

高槻 「嘘嘘!!」

カネキ「・・・ったく。まあ僕をおちょくる元気があるなら大丈夫そうですね」

高槻 「・・・えと、早速お願いがあるんですが」

カネキ「ん?なんです?」

高槻 「・・・背中が洗えません」

カネキ「・・・・・・はい?」

高槻 「片手だとお風呂で背中が洗えません。何度イメージしても洗う方法が思い浮かびません」

カネキ「いや・・・ちょっとそれは・・」

高槻 「そもそもブラもつけられませんし、服も上手く着るのは難しいです」

カネキ「・・・・」

高槻 「・・・いや、つけてますよ。小さいですが」

カネキ「僕なにも考えてないよ!」



455:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/11(水) 22:16:23.00 ID:XiaqWXuf0

ヒナミ「・・・ん・・・といれ」

・・・

ヒナミ(あれ・・・お兄ちゃんも先生も居ない・・・お兄ちゃんは帰ったのかな?)


ジャー・・・

ヒナミ(・・・・お風呂?)



『せっ・・先生、動かないでください』

『動いてないですよ・・意外と下手っぴですね』

『だって僕初めてなんで』

『私だって初めてですよ』


ヒナミ(はわわわわわわわわわわわっ!!!)

ヒナミ(一緒におふろ入ってる!!)

ヒナミ(・・・やっぱり“こいびとどうし”だったのかな?!)

ヒナミ(気になるけど寝よう・・・お兄ちゃんも先生も“おとな”なんだね・・・)




高槻 「本当にへたくそですね。髪の毛引っ張らないでください」

カネキ「だって人の背中洗うなんて初めてなんですから!しかも髪長い人のなんて!髪の毛どうしておけばいいんですか」

高槻 「右手で胸を隠してるので私が髪を持つのは無理です。そこにあるクリップで止めてください」

カネキ「あ、これそうやって使うんですか・・・よいしょ」かち

高槻 「・・・一応確認するんですが、さっきから流れまくってる赤いのはカネキ君の鼻血ですよね?」



456:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/11(水) 22:17:21.41 ID:XiaqWXuf0

高槻 「ありがとうございました」

カネキ「ええ、先生こそずっと眼鏡かけてくれててありがとうございました」

高槻 「カネキ君は本当に正直者だね」

・・・・


高槻 「かねきくーん!」

カネキ「なんですか?」

高槻 「お風呂でました」

カネキ「そうですか」

高槻 「背中拭いてくれませんか?」

カネキ「ああ、ハイ」

ガラガラ

カネキ「・・・」

高槻 「いや、さすがにお風呂上がりには眼鏡外してますよ」

カネキ「ええ、分かってます」
ふきふき

高槻 「・・・えっと、髪の毛も拭いて?左側がうまく拭けないの」

カネキ「はい、いいですよ」
ごしごし

・・・・


高槻 「ありがとうございました。カネキ君も入るでしょ?」

カネキ「ええ」

高槻 「では、行ってらっしゃい」

カネキ「はい、お借りします」



457:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/11(水) 22:18:16.49 ID:XiaqWXuf0

***


高槻 「おかえり。ずいぶん長かったですね」

カネキ「ええ、世界からなぜ争いが無くならないのかを考えていたら長くなってしまいました」

高槻 「・・・・そうですか」

カネキ「ええ。やはり教育の拡充により貧困を無くすことが争いを無くす近道だと思いますね、僕は」

高槻 「・・・・」


***


高槻 「さて・・そろそろ寝ようかと思います」

カネキ「そうですね、もう12時まわってますし」

高槻 「では、一緒に寝ましょうか」

カネキ「突然何言ってるんですか」

高槻 「考えたんですが」

カネキ「ええ」

高槻 「私、物心ついたころから誰かと一緒に寝たことないんですよ」

カネキ「そうなんですか」

高槻 「幼い頃、24区に捨てられたので」

カネキ「24区って・・東京大地下ですか」

高槻 「ご存知でしたか」



458:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/11(水) 22:19:07.46 ID:XiaqWXuf0

カネキ「前にイトリさんから聞きました」

高槻 「なるほど」

カネキ「結構ハードなとこだって聞いてますけど」

高槻 「ウン。いつか教えてあげるよ。24区のこと」

カネキ「・・・ええ」

高槻 「でね、私いつも思ってるんですが、新たな体験は作品に新たな切り口を与えるのではないかと」

カネキ「まあ確かに“居は気を移す”なんて言いますからね」

高槻 「ええ、なので一緒に寝ましょう。次回作に新たな側面が生まれそうです」

カネキ「あの、先生、一応言っておきますが僕は健康な男子ですよ」

高槻 「ええ、そのうえ露出狂でメガネフェチの変態ですね」

カネキ「まあ、今更否定しませんが。知りませんよ、僕に襲われても」

高槻 「いえ、大丈夫ですよ。今のカネキ君は賢者なので」

カネキ「アハハ・・・何のことでしょうか?」

高槻 「・・・」

カネキ「・・・・ハイハイ、わかりましたよ」

もぞもぞ



459:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/11(水) 22:19:42.23 ID:XiaqWXuf0

高槻 「・・・・//」

カネキ「暑いですか?」

高槻 「・・・そうですね。お風呂上りですし」

カネキ「ええ・・僕も暑いです」

高槻 「あ、だからって脱がないでくださいよ」

カネキ「・・・くっ」

高槻 「カネキ君・・私、腕枕してもらって寝たことないんですよー」

カネキ「ええ。僕もだれかに腕枕して寝たことないですね」

高槻 「・・・」

カネキ「しょうがないですね」

高槻 「・・・カネキ君、朝までちゃんと一緒にいてくれますか?」

カネキ「え?・・ええ。まあトイレとか行くかもしれませんが、ちゃんと戻ってきますよ」

高槻 「ホント?」

カネキ「ええ。逆にもう今更布団出るの面倒ですし」

高槻 「そっか・・・よし」ギンッ

カネキ「え?赫眼?」



460:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/11(水) 22:20:15.75 ID:XiaqWXuf0

高槻 「はっ・・!」ぐぐぐ・・!

カネキ「え?!」

シュウウウ・・・
高槻 「・・ふう」

カネキ「・・・なんで腕が生えるんですか」

高槻 「回復強い喰種は赫子出せば欠損した部位も回復できますよ・・・ただし“食事”をしないといけませんが」
がぷ

カネキ「痛い」

高槻 「ん・・・ごくん・・・ウン、やっぱりおいしいね、君は」

カネキ「予告なくいきなり食べないでください」

高槻 「でも、ほら見て」

カネキ「ん?・・・あ」
シュウウウウ・・

高槻 「ほら回復した」

カネキ「・・・ホントだ」

高槻 「君も回復力強いんだね」

カネキ「そうなんでしょうか」



461:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/03/11(水) 22:20:59.33 ID:XiaqWXuf0

高槻 「さて、五体満足になってところで寝ますか」

カネキ「はぁ・・なんか化かされた気分ですね」

高槻 「あ・・・そういえば」

カネキ「ん?なんですか?」

高槻 「私は・・・ケンのものなんですか?」

カネキ「・・はい?」

高槻 「“僕のメガネっ子に何てことするんだ”」

カネキ「・・・・いやあれは」

高槻 「おやすみ、ケン」

カネキ「・・・」


***


LIVIN店員「あの・・お客様、申し訳ありませんがフードコート閉店のお時間ですので・・・」

バンジョー「お・・・おう!」

イチミ「・・・」
ジロ 「・・・」
サンテ「・・・」

バンジョー「・・・」

ウス 「・・・まさかケンさん・・忘れ・・」

バンジョー「そんな訳ねぇ!!きっと・・・色々忙しいんだ・・もしかしたらCCGと戦ってるのかもしれねぇ・・!!」

モク 「でもこれからどこ行きます?」
テツ 「・・・えっと・・残金4000円ちょっとですね」

バンジョー「・・・コウトとケイさんはマンガ喫茶・・俺たちはコンビニだ」

ケイ 「す・・すみません」
コウト「お母さん、まんがきっさて何?」


【東京喰種】 永近英良「カネキ・・・いいかげんにしろよ」【後半】



転載元
【東京喰種】 永近英良「カネキ・・・いいかげんにしろよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1424181899/
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