ヤムチャ「プーアル!俺はプロレス団体に就職して頑張るぞ!」【前半】
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居酒屋ーー
ヤムチャ「う~っす。お疲れ様~っす」
ダン「う~っす。姉ちゃん、いつもの焼酎くれや」
サガット「おっ、ヤムチャ君とダンさんも来たみたいだな」
バルログ「さぁさぁ、ヤムチャ君もダンさんも、プーアル君も座って座って……楽しい反省会の始まりですよ」
バイソン「ガハハ! 今日の試合は良かっただろ!? 別に反省する事なんて特にねぇだろ!」
さくら「ヤムチャさん、今日の試合見てたけど、よかったっすよ!?」
ヤムチャ「えっ、そう……?」
さくら「ヤムチャさん、うちの団体と契約して三試合したっすけど、そろそろプロレスにも慣れてきたんじゃないっすか?」
ヤムチャ「う~ん……まぁ、ボチボチって所かな……?」
バルログ「ヤムチャ君、慢心してはいけませんよ……? 今日の試合のラストの失敗……覚えているでしょう……?」
ヤムチャ「あっ、それは……すいませんでした……」
ダン「まぁまぁ、いいじゃねぇか、バルログよぉ?」
バルログ「いや、でもダンさん……」
ダン「こいつも、リュウとケンにこっぴどく叱られて、わかってるみたいだからよぉ? なっ、ヤムチャ?」
ヤムチャ「あっ、はい……リュウさんとケンさんに、こっぴどく叱られたっす……」
ダン「こいつだって、次からはもう失敗なんてしねぇよ! 散々叱られた後に、ここでも叱られたんじゃ美味ぇ酒が飲めねぇよ!」
バルログ「まぁ、ダンさんがそう言うなら……ヤムチャ君、次からは気をつけて下さいね……?」
ヤムチャ「うっす……! わかりましたっ……!」
ダン「だから、終わった事をウジウジ言うなって。ホラ、ヤムチャ! とりあえず飲め飲め! ホラ、プーアル君もよぉ!」
プーアル「あっ、僕、お酒飲めないんで、プーアル茶でお願いします!」
ヤムチャ「プーアル、馴染むの早いよね……あっ、ダンさん……どもっす……」
ヤムチャ「そういや、ダンさん……?」
ダン「ん……? どうした……?」
ヤムチャ「俺達『空手軍団』……つまり、俺とリュウさんと、ケンさんは『ベビー』でやってるじゃないっすか?」
ダン「おう、そうだな。『ベビーフェイス』……つまり、『正義の味方』だ!」
ヤムチャ「で、『シャドルー軍団』のサガットさん、バルログさん、バイソンさんは『ヒール』じゃないっすか?」
ダン「おう、そうだな! 『ヒール』……つまり、悪者だ!」
ヤムチャ「俺、リュウさん達に『ベビー』の人間が『ヒール』みたいな汚い手段を使うなって怒られたんですよ」
ダン「……ほう」
ヤムチャ「多分、反則攻撃とかするなって事だと思うんですけど……」
ダン「……そうだな。おめぇの立場で反則攻撃するのは、マズい事かもしれねぇな」
ヤムチャ「……そもそも、プロレスの反則って何ですかね? 何か、ルールブックみたいな物ってあります?」
ダン「……あぁ? そんなもん、ねぇよ」
ヤムチャ「……へ?」
ダン「まぁ、強いて言うなら、俺がルールブックだな! 全ては俺のさじ加減一つって事だ!」
ダン「まぁ、反則を具体的に言うと……拳で殴ったり、目潰し、金的……後は、凶器攻撃なんかだな……この辺が反則だ」
ヤムチャ「……って、事は俺はそういう事をしちゃいけないんですね?」
ダン「……おめぇ、バカな事、言ってんじゃねぇよ!」
ヤムチャ「……へっ?」
ダン「だったら、おめぇの狼牙風風拳、封印するのか!? あの技、使えなくなっちまってもいいのか!?」
プーアル「あっ……そういや狼牙風風拳って、拳で思いっきり殴ってますよねぇ……?」
ヤムチャ「あれ……? でも、バイソンさんが拳で殴ってる時、ダンさん反則だって止めてませんでした……?」
ダン「だから、それは俺のさじ加減一つだっての! そんな事、言うならよぉ? リュウの昇竜拳だって、サガットのタイガーアッパーカットだって、みんな拳で殴ってるじゃねぇか!?」
バイソン「ダンさんダンさん! 俺のバイソン式アックスボンバーと、ギガトンブローも、拳で殴ってますよ!」
ダン「バイソン、おめぇを例に挙げたら、ややこしくなくから、ちょっと黙ってろ!」
バイソン「……は~い」
ダン「ヤムチャ……そもそも、なんで格闘技に反則があるかわかるか?」
ヤムチャ「そりゃ、やっぱり……ある程度ルールを縛らないと、本気の殺し合いになっちゃうからじゃないですか?」
ダン「そうだな。10カウントダウンで負け……三回のノックアウトで負け……そういう試合の終わり方を決めておかないと、試合が終わらねぇ」
ヤムチャ「……でも、プロレスには3カウントがあるじゃないですか」
ダン「それに、後頭部は殴っちゃダメ……肘打ち、頭突きはダメ……そういう事も決めておかないと、相手の格闘人生を終わらしちまう可能性だって、出てくる……」
ヤムチャ「……えぇ」
ダン「……でもよぉ、プロレスにそういう事は必要か?」
ヤムチャ「……えっ?」
ダン「おめぇらは、年間150試合をハードなスケジュールを成立させるために、相手に怪我をさせないように、気を使いながらやってるし……そもそも試合の勝ち負けは最初から決まってるじゃねぇか?」
ヤムチャ「……そういえば」
ダン「俺達にとって重要なのは、勝ち負けの決まってる試合をどうやって、盛り上げるか……どうやって、そこにドラマを作るかだろ?」
ヤムチャ「はい」
ダン「その為だったら、別に何したって、構わねぇんだよ。相手に怪我さえさせなけりゃ、目潰し、金的……それに、凶器攻撃……なんでもありだ」
ヤムチャ「……でも、ダンさん、バイソンさんの拳の攻撃は反則って止めてましたよね?」
ダン「よ~し……じゃあ、先ずは凶器攻撃の説明をしてやるか!」
ヤムチャ「……凶器攻撃?」
ダン「おめぇも何度かサガット達に、凶器攻撃をされただろ? その時……何で攻撃された?」
ヤムチャ「パイプ椅子っす」
ダン「そうだ、パイプ椅子だ。サガット達は、わざわざパイプ椅子でお前を攻撃したんだ」
ヤムチャ「わざわざって……どういう事っすか……?」
ダン「おいおい……パイプ椅子なんかよりも、もっと使いやすい凶器なんて、いくらでもあるだろう? 考えてみろよ?」
プーアル「木刀とか、メリケンサックとか、ありますよね?」
ダン「そうだ。お利口に攻撃するなら、そういう物を使うだろうな……メリケンサックは痛ぇぞ? あんな物で殴られたら、ひとたまりもねぇ」
ヤムチャ「そうですよね……パイプ椅子で殴るなんかより……メリケンサックの方が、強いだろうですし……レフェリーにも、バレにくいですよねぇ……?」
ダン「そう、『バレにくい』そこがポイントだ」
ヤムチャ「……バレにくい?」
ダン「勝敗が最初から決まってる試合で……おまけに、相手に怪我をさせねぇように、気を使いながらやっている……そんな中でよぉ?」
ヤムチャ「はい」
ダン「俺や、お客さん達にバレないように……メリケンサックを使う……そんなもん、なんの意味があるんだよ?」
ヤムチャ「え~っと、え~っと……あれ……? 特にないかな……?」
ダン「反則攻撃ってのは、大袈裟にやらねぇと、意味がねぇんだよ。反則攻撃も、スープレックスと同じ、技の一つだ」
ヤムチャ「……技?」
ダン「あぁ、お前らは会場の後方のお客さんにも一目でわかるような、派手な投げ技なんかを必殺技にしてるだろ?」
ヤムチャ「はい」
ダン「反則攻撃だって同じだ。会場の後方にいるお客さんにも、一目で反則攻撃をしている……なんてわかってもらわなきゃいけねぇ」
ヤムチャ「なるほど……その為に、メリケンサックみたいな小さな物ではなく、パイプ椅子みたいな大きな物を使うって事ですね?」
ダン「勿論、今自分はメリケンサックで反則攻撃をしてますよ……なんて、後方のお客さんにもわかるような事が出来るなら、使えばいい。だが、難易度は高ぇぞ?」
ヤムチャ「う~ん……確かに、トラースキックを覚えたばかりの俺には、難易度が高いかもしれませんねぇ……」
ダン「まぁ、基本的に、プロレスには反則はねぇ……ここまでは、わかったか?」
ヤムチャ「そうっすね……そういや、サガットさん達も、パイプ椅子で殴る時は……背中とか、なぐべくダメージの軽減される場所を狙ってくれてました」
ダン「……だが、それでも俺は反則攻撃をしているお前達を制止する事がある。何度もリング上で見ただろう?」
ヤムチャ「そういや、そうっすねぇ……あれ、どういう事だ……?」
ダン「それは……サガット達が卑怯な手段を使って、お前達を痛めつけている……と、いう意思を持って攻撃してるからだ」
ヤムチャ「……ほう」
ダン「そういう意思を感じた時に……俺は反則と認定する訳だな。適当な理由をつけてな?」
ヤムチャ「……適当な理由って」
ダン「まぁ、そこはサガット達も考えてくれてるからよぉ? パイプ椅子で攻撃してもいいですよ……なんてルールは流石にねぇだろ」
ヤムチャ「……確かに」
ダン「さぁ~て、次は拳で殴る事の説明だな……」
ヤムチャ「……はい」
ダン「プロレスってのは、格闘技で見れないような、派手な投げ技や、飛び技で……試合を盛り上げていくもんだろう……?」
ヤムチャ「はい。俺もトラースキック教わりましたしね……」
ダン「拳で殴る事の強さは誰もが知ってる事じゃねぇか……? なっ、そうだろ?」
ヤムチャ「……はい」
ダン「拳で殴るってのは……ダメージはある攻撃なんだが、地味……結構、プロレスでやるには使い所が難しいワケなんだな……」
ヤムチャ「……ふむ」
ダン「勿論、リュウの昇竜拳や、サガットのタイガーアッパーカット……それに、お前の狼牙風風拳みたいな派手な見栄えだったら、技として成立するよ」
ヤムチャ「ほうほう」
ダン「アレは、お前達の必殺技として使ってるから、反則じゃないわけだ」
ヤムチャ「……なるほど」
ダン「……だが、今日の試合のバイソンの、マウントポジションのパンチと、バイソン式アックスボンバーは違う」
ヤムチャ「……あれは技じゃないんですか?」
ダン「あれは、反則技として使っているんだ……なっ、バイソン、そうだろ?」
バイソン「うっす! その通りっす!」
ダン「今日のマウントポジションからのパンチだったら、拳で殴る事の見栄えの悪さを逆手にとった反則技だ」
ヤムチャ「……ほう」
ダン「まぁ、理由をつけるなら、素手で殴るのは骨が折れる可能性もあるし、危険だから……って所かな? だけど、バイソンはおめぇのガードしてる所ばかり、殴っててくれただろ?」
ヤムチャ「確かに……あれ、しばらく殴られてましたけど……いいのはもらいませんでしたねぇ……」
ダン「バイソンがやりたかったのは、反則攻撃で長時間お前を痛め続けている……という、試合展開だ。だから、あの攻撃は反則。お前にダメージがなかったとしても、反則」
ヤムチャ「……なるほど」
ダン「バイソン式アックスボンバーもそうだな。あれは、バイソンが反則技で、形成逆転をする……なんて試合展開を作りたい時にする技だ」
ヤムチャ「……ほうほう」
ダン「普通に殴れば、手っ取り早いのに、わざわざ、変なモーションで殴ってるんだ」
ヤムチャ「確かに……なんかアレ、手をL字に曲げて殴ってますねぇ?」
ダン「アックスボンバーって肘をぶつける技があるんだけどよぉ……? わざわざ、バイソンはその型を作ってから、拳で殴ってるんだ」
ヤムチャ「アックスボンバー……ですか……」
ダン「まぁ、バイソンはあの技を、ズル賢い反則技って……設定で使ってるんだろうな」
サガット「ヤムチャ君や、リュウ君達は、お客さんの声援が最高潮になった時に、大技を仕掛けるだろう?」
ヤムチャ「はい、そうっす」
サガット「それは、ヤムチャ君達が『ベビー』だからだ。だが『ヒール』の俺達は違う」
バルログ「我々は悪役なので、浴びるのは声援ではなく、ブーイングですからね」
サガット「俺達は、そういう卑怯な手段で、お客さんのブーイングを煽って煽って……」
バルログ「そして、ブーイングが最高潮になった時に……大技を仕掛ける……というワケです……」
ヤムチャ「……なるほど」
バイソン「その為に、反則攻撃をしてるワケだな! 俺達には、目潰し、金的、なんでもありだぜ!」
ヤムチャ「う~ん……でもまぁ、ダメージないんだったら、いいのかなぁ……?」
ダン「ヤムチャ……? リュウやケンにサガット達みたいな汚い手段を使うなって言われたんだろ?」
ヤムチャ「あっ、はい……」
ダン「まぁ、実際……ベビーとヒールだからな……そこらの違いはお前らにはあるだろうな……」
ヤムチャ「そうっすよね……」
ダン「でも、ルールなんて、あってないようなもんだからねぇ……どうしたものか……」
ヤムチャ「う~ん……どうしたらいいですかねぇ……?」
ダン「ただよぉ……? 今のお前みたいに、アレはしてはいけない……コレはしていけない……なんて、自分自身を縛っちまう事はよくねぇと思うな」
ヤムチャ「……えっ?」
ダン「それよりも、どうやったら『ベビー』として……『正義の味方』としての格好いい戦い方が出来るのかを、考えた方がいいと思うわ」
ヤムチャ「……格好いい戦い方かぁ」
ダン「蹴りでも、投げでも……コーナーで待機してる時でも……『正義の味方』らしい行動ってのは、どういった行動なのかを、一つ一つ考えていった方が近道なんじゃねぇかな?」
ヤムチャ「……なんか俺、毎日課題が出てくるような気がしますよ」
ダン「おめぇは新入りなんだから仕方ねぇだろが! 明日、道場でサガット達にシゴいてもらえや!」
ヤムチャ「ま~た、特訓かよ……俺、最近特訓ばかりしてるなぁ……」
プーアル「ヤムチャ様、文句を言わないっ! これは今までサボって来た分のツケです!」
ヤムチャ「まぁ、頑張るか……明日も試合あるんだからな……もう、怒られたくねぇし……」
翌日、道場ーー
ヤムチャ「うるぁ! ジャスティスキックっ!」シュッ
バイソン「……くっ!」
ヤムチャ「そして……ジャスティスボディスラムっ……!」ググッ
バイソン「う、うおっ……」
ヤムチャ「うおおぉぉっ……! うるあぁっ!」ドシーンッ
バイソン「……ぐえっ」
ヤムチャ「さぁっ! とどめはジャスティストラースキックだっ! いくぞ!」ググッ
バイソン「ねぇねぇ、ヤムチャ君、ヤムチャ君……何か、やりにくいよ……さっきから言ってる、ソレ何……?」
ヤムチャ「……えっ?」
ヤムチャ「いやぁ、昨日ダンさんに言われた『正義の味方』らしい戦い方を俺なりに考えてみたんですけどね……?」
バルログ「あぁ、だから技の名前にジャスティスとかつけてるんですね」
ヤムチャ「ど、どうっすかねぇ……?」
バイソン「正直、やり辛いよ……笑い堪えるの大変だよ……」
ヤムチャ「えっ、 マジっすか……? やっぱり、こういう事はじゃないんですかねぇ……?」
バルログ「えぇ、そういう事ではないでしょう……サガットはどう思います……?」
サガット「う~ん……そうだな……」
サガット「言葉を発する事によって、ヤムチャ君の行動に変化が出るのなら、俺は構わないと思う」
ヤムチャ「……はぁ」
サガット「だが、今の攻防を見る限りでは、何も変わっていないな……」
ヤムチャ「……」
サガット「技の名前を変えたのにもかかわらず、実際にやっている技は、昨日と何も変わってはいないだろう?」
ヤムチャ「そ、そうっすよね……」
サガット「ジャスティスキックと言うのなら……それなりの蹴りにしなくてはな……ボディスラムもまた、同じだ……」
ヤムチャ「やっぱり、もっと技をキチンとしなきゃ、いけねぇのかな……」
サガット「そもそもヤムチャはそれでいいのか? 蹴りに『ジャスティスキック』なんて名前をつけて、その技と一生付き合っていく気があるのか?」
ヤムチャ「あっ、いやっ……そ、それは、俺も嫌かな……?」
サガット「その場凌ぎの行動では、『正義の味方』らしい戦い方は身につかんと思うぞ。俺は」
ヤムチャ「……はぁ~い」
サガット「重要なのは、どういったタイミングで技を出すか……どう、行動するかだろうな……」
ヤムチャ「……タイミング」
サガット「俺達だって、そうだ。ここぞというタイミングで反則技や、行動を起こしている」
ヤムチャ「……ふむ」
サガット「『正義の味方』だったら、ここできっと、こういう行動をするんじゃないかな……? なんて事を考えてみるといい」
ヤムチャ「でも、それって……実戦じゃないと見につかないんじゃないですかねぇ……?」
サガット「そうかもしれんな……だが、意識するだけで、何かが変わるんじゃないかな?」
ヤムチャ「……確かに」
サガット「俺達は試合慣れしているから、ヤムチャ君がアドリブを仕掛けても、上手く対処してやる……例え、実戦だとしてもヤムチャ君は、好きに行動してくれても構わんよ」
ヤムチャ「うっす、ありがとうございます! でも、下手な事したらリュウさんやケンさんに、怒られそうだなぁ……」
プーアル「皆さ~ん、ザンギエフさんから、今日の予定表貰ってきましたよ~」
サガット「おっ、プーアル君、いつも気が利くじゃないか。ありがとう」
ヤムチャ「よっしゃ、早速見てみるか! どれどれ、今日の試合は~っと……」
本日の予定試合
第一試合(10分決着)
×ガイ ー ソドム◯
第二試合(10分決着)
◯ダルシム ー ディージェイ ×
第三試合(15分決着)
T・ホーク ー ユン ◯
×フェイロン ヤン
第四試合(20分決着)
×キャミィ ー 春麗 ◯
第五試合(20分決着)
×ヤムチャ ー バイソン
ケン サガット◯
第六試合(25分決着)
×リュウ ー 豪鬼◯
サガット「ふむ……今日は、ザンギエフも思いきったな……」
バルログ「えぇ、ザンギエフさんとベガさんが休みで……リュウ君がメインですか……」
バイソン「それに、女子部を第四試合に持ってきてるな……まぁ、春麗のシングルだし、ベルトかかってるんだろうな」
ヤムチャ「おいおい、ちょっと待てちょっと待て……今日の俺達の試合、三対三じゃねぇぞ!?」
プーアル「……ヤムチャ様、自分が負け役の事にはつっこまないんですかね?」
ヤムチャ「いや、それはもういいよ……それより、今日は俺達、二対二の試合になってますよね!?」
サガット「ん……? あぁ、リュウ君はメインで豪鬼さんと戦うからな。リュウ君が連戦するワケにもいかんだろう……?」
ヤムチャ「おいおい……今日はケンさんと二人っきりかよ……何か怖ぇな……」
ヤムチャ「これ、やっぱり……俺の出番増えるって事ですよねぇ?」
バルログ「そうですね。20分決着だから……まぁ、10分前後はヤムチャ君に戦ってもらう事になるでしょう」
ヤムチャ「うわっ……前より、倍の時間になってるじゃねぇか……」
バイソン「おいおい、ヤムチャ君……若手のコーディやガイだって、10分戦ってるんだぜ? ヤムチャ君も頑張ってくれよ」
ヤムチャ「いやぁ……そう言われたら、そうっすけど……」
サガット「……ヤムチャ君、考え方によってはこれはチャンスだぞ?」
ヤムチャ「……チャンス?」
サガット「あぁ。今日はリュウ君がいない状況でヤムチャは、10分前後戦う事になる……」
ヤムチャ「はい……」
サガット「その分、ヤムチャ君にも注目が集まる。なんせ、今日は三人じゃなくて、二人なんだからな」
ヤムチャ「いやぁ……それはそうっすけど……」
サガット「さっき言ってた『正義の味方』らしい戦い方をするには、いいチャンスじゃないか? 出番も長いんだ」
ヤムチャ「いやぁ、俺はその出番の長さが心配なんですけどね……」
サガット「まぁ、そこは俺達がなんとかしてやる。さぁ、打ち合わせをしようか……」
ヤムチャ「そうっすね……じゃあ、打ち合わせを……って、ちょっと待った、ちょっと待った……!」
サガット「……ん、どうした?」
ヤムチャ「いやぁ……自分の試合の打ち合わせをする前に、他の試合の事も確認しておこうと思いましてね……?」
サガット「……ほう」
ヤムチャ「ほら、昨日言ってたじゃないですか? 他の人達が、どういうドラマを作っているのかを、確認する事も大事だって」
サガット「ふむ、いいな。ヤムチャ君、飲み込みが早いじゃないか」
ヤムチャ「前の試合に比べて、変化があったのは……第三試合と第四試合ですね……?」
サガット「ふむ、そうだな……今日は、タッグベルトの試合が第三試合にいって、代わりに女子部の試合が第四試合に上がってるな」
ヤムチャ「……これは、どういった理由で?」
サガット「タッグベルトはガイルとナッシュのコンビが持っていただろう?」
ヤムチャ「え~っと……それが、前の試合でユンさんとヤンさんに負けて移動したんですよね……?」
サガット「あぁ、だがユンとヤンは、ガイルとナッシュのタッグに比べて人気の方がな……」
ヤムチャ「あっ……人気がないから、第三試合に落ちちゃったと……」
サガット「おいおい、その言い方は少し失礼だぞ、ヤムチャ君……」
ヤムチャ「あっ、すいません……」
サガット「人気がなければ、タッグのベルト自体を巻く事なんて出来んさ。ただ、ガイルとナッシュに比べて物足りない……そういう事だよ」
バルログ「……サガット、フォローしているつもりでしょうが、何気に毒吐いてますよね?」
バイソン「まぁ、仕方ねぇよ! あいつらも、頑張って第四試合で防衛戦が出来るぐらいまで、人気上げねぇとな!」
サガット「そして、その代わりに、女子部の試合が第四試合に上がってきたという訳さ」
ヤムチャ「この二人は、ヤンさんとユンさんより、人気があるんですね?」
サガット「まぁ、春麗は人気があるからな……あいつなら、第四試合でも大丈夫だろう」
ヤムチャ「確か、女子部の人気ナンバーワンの人でしたよね?」
サガット「あぁ、女子部のチャンピオンだ。だから、今日は第四試合でベルトを賭けて試合をするのだろう」
ヤムチャ「……あれ? でも、女子部の人気ナンバーツーって、さくらさんじゃありませんでしたっけ?」
サガット「あぁ、女子部の人気ナンバーツーは、さくらだ」
ヤムチャ「だったら、対戦相手はさくらさんがいいんじゃないんですかね? なんでまた、このキャミィさんって人に……?」
サガット「キャミィは、最近、人気急上昇中でな……恐らく、この第四試合をきっかけに、もっと上に登ってもらおうという目論見なんじゃないかな?」
ヤムチャ「そういや、この前の試合に出てたような……え~っと、どんな人だったっけ……?」
サガット「ヤムチャ君……ケツだよ、ケツ……あの、ケツを思い出せ……」
ヤムチャ「……ケツ?」
サガット「ほら、いただろう? あの、エロいプリッとしたケツをした女が」
バルログ「……サガット?」
サガット「レオタードをケツに食い込ませて……男を誘うようなエロいケツをした、いやらしい女がいただろう?」
ヤムチャ「あぁ、いたいた! エロそうなケツをした女がいました!」
バイソン「……ヤムチャ君?」
サガット「そいつが、キャミィだ。最近、セクシー路線で人気急上昇中なんだよ」
ヤムチャ「へぇ~、ケツで人気が出るのか……確かに、あのケツ、エロかったもんなぁ~」
サガット「勿論、キャミィは上手い選手だぞ? ケツのエロさだけじゃなくて、実力もあるさ」
ヤムチャ「やべぇ……あの人の試合思い出そうとしているけど、ケツしか思いだせねぇ……」
サガット「まぁ、気持ちはわかるがな……俺も、あいつの事は、顔より先にケツが浮かんでしまうよ」
バルログ「……いつまで、ケツケツ言ってるんです。キャミィさんの事はもういいでしょう」
サガット「お、おう。そうだったな……まぁ、今日の試合の変化はこんなもんだ……自分達の試合に集中しようか……」
ヤムチャ「あっ、はい……そうっすね……」
ケン「お~い。シャドルーにヤムチャ……やっぱり、ここにいたか……」
ヤムチャ「あっ、ケンさん……」
サガット「お前が、道場に来るなんて珍しいな……? 一体、どういう風の吹き回しなんだ……?」
ケン「いやぁ、リュウの奴、豪鬼さんとのメインイベントがあるからよぉ……? 二人で飯食いに、行っちまって……まぁ、暇なんだわ」
サガット「……そうか」
ケン「まぁ、だから今日ぐらいは、打ち合わせに参加してやろうと思ってな……?」
ヤムチャ「あっ、ケンさんも参加してくれるんですか! よかったぁ……今日、俺心配だったんですよ……」
ケン「俺だって、心配だよ、おめぇと二人はよぉ……? まぁ、だから、今日ぐらいは付き合ってやるよ……」
サガット「いい心がけだが……『今日ぐらい』ではなく、毎日参加してもらいたいものだな……」
ケン「うるせぇ! 参加してやってるのに、文句言うんじゃねぇ! とりあえず、打ち合わせ初めんぞ!」
ケン「え~っと、先ず、バルログ……お前は出るの……?」
バルログ「私は、どっちでもいいんですけどねぇ……ケン君が望むなら、セコンドで場を荒らしますよ?」
ケン「う~ん……リュウと二人だったら、そうしてもらった方が、ありがてぇんだけどなぁ……」
バルログ「……今日はヤムチャ君が負け役ですしねぇ?」
ケン「まぁ、ヤムチャ相手だったら、いらねぇんじゃねぇか? 今日ぐらい、身体休めておけや。おめぇは、ピョンピョン跳ねすぎなんだよ」
バルログ「では、今日の試合はサガットとバイソンに任せる事にしましょう……」
ケン「よし、じゃあ、今日はバルログ抜きの二対二だ。何か異論はあるか?」
サガット「まぁ、俺はそれで構わん」
バイソン「まぁ、リュウ君抜きの空手軍団に、三人でいくのもどうかと思うしね……俺もそれでいい」
ヤムチャ「……」
ケン「おい、 ヤムチャ! おめぇはどうなんだよ!? 返事ぐらいしろや!」
ヤムチャ「えっ、あっ、はい……俺もそれでいいっす……!」
ケン「よ~し……じゃあ、次は試合展開を具体的に決めていくか……また、ヘマされたら困るしよぉ……」
ケン「なぁ、サガット……ヤムチャはアドリブ、ほとんど出来ねぇよなぁ……?」
サガット「あぁ、今までの試合は、打ち合わせ通りの攻防をしてもらっていたな……」
ケン「って事は……先発で行かせて……まぁ、ある程度頑張ってもらうかね……?」
サガット「……ラストの交代はどうする? ヤムチャ君が負け役だから、再びヤムチャ君に交代するタイミングが必要だぞ?」
ケン「まぁ、あまり小難しい事はできねぇだろ……俺がギリギリまで粘って交代するから、後はそっちが決めてくれや」
サガット「わかった。では、ヤムチャ君に変わった時点でフニッシュの攻防を仕掛けるよ」
ケン「とりあえず、頭の部分をどうすっかなだな……まぁ、まだ時間もあるし、バイソンとやらせてみっか……」
サガット「……そうだな。ヤムチャ君の場合は、ガッツリ決めすぎという事もないだろう」
ヤムチャ(おうおう……何か、ケンさんって……ちゃんとした人だったんだな……ちょっと、見直したぞ……?)
ケン「よし、ヤムチャ……じゃあ、バイソンと戦え!」
ヤムチャ「……えっ?」
ケン「7分で、ダメージを受けて、俺に交代すればいい……だから、先ずはその7分の攻防を作れ」
ヤムチャ「う、うっす……!」
ケン「バイソンにある程度、ダメージを与えるのも忘れんなよ!? 今日は俺とおめぇの二人なんだからよぉ?」
ヤムチャ「あれ? ケンさんが俺にそういう事言うの珍しいっすね? 普段、そういう事言わないのに……」
ケン「仕方ねぇだろ、 今日は二人なんだから! 俺一人で、バイソンとサガットにダメージ与えろってのか? 無茶言うんじゃねぇ」
ヤムチャ「あっ、はい……じゃあ、バイソンさん……よろしくお願いします……」
バイソン「よ~し、じゃあ7分間の攻防だね……? ヤムチャ君、本番でやる事なんだから、しっかり覚えないとダメだよ?」
ヤムチャ「うっす!」
ーーー
ヤムチャ「……うるぁっ!」ググッ
バイソン「……う、うおっ」
ヤムチャ「おらっ! ボディスラムだっ!」ドシーンッ
バイソン「……ぐっ!」
ケン「……ハイ、ストップ」
ヤムチャ「……ん?」
バイソン「あれ? ケン君、どうしたの……?」
ケン「……なぁ、サガット? 改めて見ると、こいつのボディスラム、酷ぇなぁ?」
サガット「う~ん……」
ケン「大丈夫かコレ……? もっと別の技、やった方がいいんじゃねぇの……?」
サガット「だが、ヤムチャ君はそこまで技を覚えていない……」
ケン「う~ん……だったら、まぁ誤魔化し誤魔化し、やっていくしかねぇか……」
サガット「ボディスラムとバックドロップがモノに出来れば、きっと技のバリエーションも増えるはずだ……」
ケン「……バックドロップもこの前、お前に仕掛けたヤツだろう? 大丈夫なのかよ?」
サガット「……う~ん」
ヤムチャ「え~っと、ケンさん……とりあえず、俺はどうしたらいいですかねぇ……?」
ケン「あぁ、バイソンと続けろや……気になった所は、また止めて指示するからよぉ?」
ヤムチャ「うっす! じゃあ、バイソンさん……続けましょうか……?」
バイソン「ボディスラムの続きからだね? じゃあ、続けようか?」
ーーー
バイソン「……ふんっ!」ドゴッ
ヤムチャ「……ぐわっ!」
ケン「……やられっぷりは、絵になってるんだよな、コイツ」
バイソン「……で、ここでダンさんと揉めるから」
ヤムチャ「俺は、このタイミングで、ケンさんに交代って……事ですね……? どうっすか、ケンさん……?」
ケン「う~ん……まぁ、一応はなんとかなったかな……?」
ヤムチャ「じゃあ、本番はこんな感じで……」
ケン「……本番ではもっと、技を綺麗に見せろよ? さっきみたいな技だったら、お前、ブーイング食らっちまうぞ?」
ヤムチャ「えっ……? 俺、別に『ヒール』じゃないっすよ?」
ケン「ヒールじゃねぇけど……おめぇの技は面白くねぇんだよ! 派手さがねぇんだ。地味だ、地味!」
ヤムチャ「……だったら、狼牙風風拳も攻防に加えましょうか?」
ケン「それしたら、試合が終わっちまうだろうが! バカかおめぇは!」
ヤムチャ「す、すいません……」
サガット(フッ、ケンの奴……思っていたより、育てるのが上手いじゃないか……これは、ヤムチャ君の成長にも繋がるかもな……)
第四試合ーー
春麗「……はぁっ!」シュッ
キャミィ「……くっ!」
実況「さぁ、春麗の蹴りがキャミィに炸裂っ! キャミィがダウンしたぁ!」
春麗「……」
キャミィ「……く、くっ!」ブルブル
実況「さぁ、慎重に春麗がキャミィの起き上がるタイミングを見ている! ここで仕掛けるのか!? そして、キャミィが片膝をついたぁ!」
ケン「……やっぱり、キャミィの奴、エロいケツしてやがるよなぁ?」
ヤムチャ「でも、それ言うなら、春麗さんの太腿もエロくありません?」
ケン「……あれ、お前、そういうのがタイプなんだ? 足フェチなの?」
ヤムチャ「いや……そういうワケじゃないっすけど……」
プーアル「ヤムチャ様……? ケンさん……? 何処見てるんですか? 試合見ましょうよ」
春麗「……はぁっ!」ダッ
キャミィ「!」
実況「さぁ、ここで春麗が仕掛けたっ! 片膝をついているキャミィに向かって、猛ダッシュ!」
春麗「はああぁっ……! たあっ!」
キャミィ「……くっ!」
実況「そして、キャミィの膝を踏み台にしての……!」
春麗「!」ツルッ
キャミィ「!」
実況「シャイニングスピニングバードキックだぁ! ん……?」
春麗「ううっ……! くっ……!」
キャミィ(春麗さんっ……!)
実況「いやっ……! これは、キャミィが上手くブロックしたんですかね……? 春麗のシャイニングスピニングバードキックは不発に終わりましたっ!」
元「……何か、変な落ち方したねぇ? 春麗君も、足抱えて苦しんでるみたいだし」
ダン「おいっ……! 春麗、大丈夫か!?」
春麗「くっ……! ううっ……」
ダン「バカ、何やってやがる……仕方ねぇ、キャミィ、終わらせろっ……!」
キャミィ「……イエッサー!」ダッ
実況「おっと、ここで、キャミィがロープへと走ったっ!」
春麗「まだ出来るっ……! 私はまだ出来るっ……!」
ダン「無茶すんな! おめぇ、変な落ち方して……ソレ、足やっちまってんだろがっ……!」
春麗「……くっ!」
ダン「ほれ、キャミィが来るから……早く、構えやがれっ……!」
春麗「ううっ……くっ……!」
キャミィ「……はあぁぁっ!」
実況「そして、ロープの反動をつけたキャミィが、春麗に狙いを定めたぁっ!」
キャミィ「スパイラルアローっ!」シュッ
春麗「……ぐっ!」
実況「決まったぁ! スパイラルアローっ! 回転を加えた低空飛行のドロップキックを春麗にブチ当てたぁ!」
元「……ちょうど、ダウンしている春麗君の顔に当てましたね。いいですよ」
キャミィ「……はぁっ!」シュッ
春麗「くっ……」
実況「さぁ、そしてキャミィが春麗の左腕を取って……お、おっと……! いや、これは……!?」
元「ラ・マヒストラルですね。丸め込みにいきましたね」
キャミィ「……レフェリー! カウントを!」
ダン「おうっ! 任せろっ!」
実況「キャミィの素早い丸め込みっ! レフェリーが今、カウントを取ります!」
ダン「ワンっ……!」
キャミィ「……」
ダン「ツーっ……!」
春麗「……くっ」
ダン「……スリーっ!」
実況「おっと……!? ここで、スリーカウントだ! 試合が決まってしまったぁ!」
元「あらぁ……キャミィ君、一瞬の隙を上手くつきましたね……?」
実況「なんという番狂わせでしょうか、なんという番狂わせ! なんと、キャミィの不意打ちで……五分程の試合時間で決着です!」
ザワ……ザワ……
実況「会場がざわめいております! 突然の展開に会場が、まだざわめいております! いやぁ、これは驚きの展開ですねぇ、元さん?」
元「そうだね、春麗君をこんな短時間で倒すなんて……でも、僕、キャミィ君は上手く立ち回ってたと思うよ。チャンピオン相手に」
実況「これで、ベルトはキャミィが手にする事になります! しかし……驚きです! 実に驚きです! こんな結末を予想出来た人がいたでしょうか!?」
ヤムチャ「あれ……? おい、プーアル……ちょっと、予定表の所、見てくれねぇか……?」
プーアル「あっ、はい……ヤムチャ様、どうしたんですか?」
ヤムチャ「第四試合の所……これって、春麗さんの勝ちだったよなぁ?」
プーアル「え~っと……そうですね、春麗さんの勝ちになってます」
ヤムチャ「決着時間も20分じゃなかったっけ……? もう、20分経ったのか? いや、絶対まだ経ってねぇと思うぞ……?」
プーアル「……まだ、五分ぐらいしか、試合してないんじゃないんですかね?」
ヤムチャ「そうだろ……? あの、ケンさん、これって、どういう事なんですかね……?」
ケン「……あの、糞馬鹿! 何、トチってやがるんだっ!」
ヤムチャ「……ん?」
ケン「くそっ、よりによって、こんな日に面倒起こしやがって……」
ヤムチャ「あの~、ケンさん……?」
ケン「おい、ヤムチャっ! よく聞けっ!」
ヤムチャ「……ん?」
ケン「打ち合わせはなしだ! 今日、決めた打ち合わせの内容は忘れろっ!」
ヤムチャ「……へ?」
ケン「今日の俺達の試合は、完全アドリブの試合になるっ! だから、打ち合わせの内容は忘れろ!」
ヤムチャ「アドリブ……? ちょ、ちょっと、待って下さいよ……それって、どういう事……」
ケン「恐らく、俺達の試合時間を10分か、15分伸ばす事になる……とりあえず、現場監督の指示を待とう……」
ヤムチャ「はぁ……!? 試合時間伸ばす……!?」
さくら「ケンさ~ん! ヤムチャさ~んっ!」
ケン「……おっ、どうやら指示が来たみてぇだな」
ヤムチャ「あっ、さくらちゃん……」
さくら「監督の指示っす! ケンさん達は、試合時間を10分伸ばして欲しいっす!」
ケン「10分でいいんだな……? 残り5分は、豪鬼さんとリュウの試合ってワケか……」
さくら「そうっす。サガットさん達には、今ベガさんが伝えに行ってるっす」
ケン「くそぉ、10分か……ヤムチャを、どう動かしたらいいかね……」
さくら「ケンさん……ヤムチャさん……女子部のせいで、申し訳ないっす……」
ケン「……ったく、 春麗の野郎に言っておけ! トチるぐらいだったら、毎日飲みに言ってるんじゃねぇよってな!」
さくら「……申し訳ないっす」
ヤムチャ「え~っと……とりあえず、何かが起こってる事まではわかったけど……これって、どういう事なの? さくらちゃん?」
さくら「春麗さんが、試合の途中で失敗して……多分、何処かを怪我しちゃったんすよ……」
ケン「……足だ、足」
ヤムチャ「はぁ、怪我……」
さくら「それで、多分、このまま試合を続ける事が難しいと判断したから……キャミィさんが、強引に試合を終わらせたんっすね……」
ヤムチャ「あっ、だから……春麗さんの勝ちなのに、キャミィさんが勝っちゃんたんだ……」
さくら「でも、その結果……20分で終わるはずの試合が……5分で終わってしまったっす……」
ヤムチャ「……15分、短くなっちゃったっすねぇ」
さくら「だから、その15分間……それを、ヤムチャさん達と、豪鬼さん達に穴埋めしてもらいたいっす……」
ヤムチャ「……へ?」
ケン「俺とお前とサガット達で10分……リュウと豪鬼さんで5分……それで、15分だろ?」
ヤムチャ「えっ……? 俺達、10分も試合伸ばさなきゃ、いけないんですか!? ちょっと待って下さいよ、打ち合わせは20分の予定で……」
ケン「だから、それはさっき言っただろが! 今日は、打ち合わせの内容は忘れろって! とにかく、30分のアドリブだ!」
ヤムチャ「アドリブって……俺、いきなりそんな事、言われても……まだ、四試合目っすよ!?」
ケン「ウダウダ言っても仕方がねぇ……とにかく、やるしかねぇんだ、ヤムチャ」
ヤムチャ「いや、でも……」
ケン「とにかく、困った事があったら、俺に交代しろ……自分の攻防に限界が来たと思ったら、タイミング見計らって、俺に交代したらいいからよぉ?」
ヤムチャ「タイミングって……俺、上手くできるかなぁ……そんな事……」
ケン「30分の試合になるから……お前には15分前後は動いてもらわなくてはならねぇ……」
ヤムチャ「15分……! 俺、そんなに持ちませんよ!? 技だって、ボディスラムとバックドロップと、トラースキックしかねぇのに!」
ケン「15分って考えるな。交代して上手くやれば、7分と8分の攻防や、5分の攻防三回でいけるんだからよぉ?」
ヤムチャ「……な、なるほど」
ケン「自分の攻防に限界が来たと思ったら、俺にタッチすればいいからよぉ? そうしたら、俺がそこから、また上手く持っていって、お前にまた繋いでやる」
ヤムチャ「それで、そこから……また、一からやり直しと……」
ケン「サガット達も、お前に合わせてくれるだろう……とにかく、なんとかしてくれや」
ヤムチャ「うっす……! 頑張ってみます……!」
ケン「……それから」
ヤムチャ「?」
ケン「今日の試合は、狼牙風風拳も使っていいぞ……」
ヤムチャ「えっ……? 狼牙風風拳も使っていいんですか!?」
ケン「流石に……ボディスラムとバックドロップとトラースキックだけじゃ、おめぇも持たねぇだろう……」
ヤムチャ「……そうっすね」
ケン「でも、忘れんなよ? 狼牙風風拳は、お前の必殺技なんだ……」
ヤムチャ「……はい」
ケン「狼牙風風拳を使うって事は……試合を終わらせるか……もしくは、試合が終盤に差し掛かってる状況じゃねぇといけねぇ……」
ヤムチャ「……はい」
ケン「間違っても試合の頭に使ったり、するんじゃねぇぞ? その後、お前やる事なくなっちまうからよ?」
ヤムチャ「わかりました……狼牙風風拳は、試合の終盤ですね……」
ケン「あぁ、試合の終盤で……お前がどうしていいかわからなくなった時の、切り札の為に残しておけ……プロレスの必殺技ってのは、そういうもんだ」
ヤムチャ「うっす、わかりました! 俺、頑張ります!」
さくら「……ケンさん、ヤムチャさん。そろそろ、第五試合が始まるっす」
ケン「よし……まぁ、なんとかやるしかねぇか……ヤムチャ、頑張ってくれよ……?」
ヤムチャ「うっす……!」
プーアル「ヤムチャ様……大変な事になってるみたいですけど……頑張って下さいね……?」
ヤムチャ「あぁ……なんとか、やってみるよ……」
ケン「……不安そうな顔すんじゃねぇ。お客さんに感づかれるだろが」
ヤムチャ「あっ、はい……すいません……」
ケン「お前のフォローは、俺達に任せておけばいいからよ……もっと、ビシッとした顔しろや」
ヤムチャ「……うっす!」
ケン「よ~し……その顔だったらいい。そろそろ、出番だ……ヤムチャ、行くぞ……?」
ヤムチャ「うっす!」
プーアル「ヤムチャ様、頑張って下さい!」
さくら「ケンさん、ヤムチャさん……よろしくお願いします……」
ーーー
ダン「さぁ、試合はいよいよ第五試合……空手軍団対シャドルー軍団……スペシャルタッグマッチです!」
ワー、ワーワー
ダン「その拳の力を見せれるか……空手軍団……ケン選手、ヤムチャ選手の入場ですっ!」
キャー、キャーキャー
ケン「よしっ! ヤムチャ、行くぞっ!」
ヤムチャ「うっす!」
キャー、キャーキャー
実況「さぁ、第五試合! 空手軍団対シャドルー軍団! 因縁のスペシャルタッグマッチです! 今、ケンとヤムチャが入場しております!」
ケーン! ガンバッテー!
ケン「あぁ、任せておけっ! 今日いい所、見せてやるからよぉ!」
キャー、キャーキャー
実況「さぁ、先ずはケン! いやぁ、今日も女性人気が高い高いっ! いやぁ、羨ましいっ! 実に羨ましいっ!」
ヤムチャー! オマエモ、ガンバレヨー!
ヤムチャ「うっす! 頑張りますっ!」
実況「そして、三番弟子のヤムチャ! 鋭い打撃攻撃が特長的な男だぁっ!」
ワー、ワーワー!
実況「さぁ、今! 空手軍団の二人がリングインっ!」
ーーー
ダン「続きましては……プロレス界から世界征服を狙う……シャドルー軍団……」
ダン「サガット選手、バイソン選手の入場ですっ!」
サガット「……」
バイソン「ガハハっ! 今日は空手軍団の雑魚二人みてぇだな!? よっしゃ、一丁ボコボコにしてやるとするか!」
ブー、ブーブー
実況「さぁ、続いては、大ブーイングに包まれながら、シャドルー軍団、サガットとバイソンの入場ですっ!」
バイソン「今日はリュウがいねぇんだからよぉ? お前らの大好きなケンの野郎を、思う存分ボコボコに出来るってもんだ! あいつも歯抜け野郎にしてやるから、よく見ておくんだな!」
ブー、ブーブー
実況「さぁ、バイソンはいつものように、お客さんに噛みつきながらの入場です! そして……今、サガットとバイソンの二人がリングインっ!」
実況「では、解説の元さん、よろしくお願いします」
元「はい、よろしくお願いします」
実況「さて、本日の第五試合……空手軍団対シャドルーのスペシャルタッグマッチ! 元さんはどういった点に注目されますか?」
元「う~ん、そうだね……やっぱり、ケン君とヤムチャ君のコンビネーションに注目したいかな?」
実況「ほう、コンビネーション?」
元「そうだね。サガット君とバイソン君のタッグは何度か見ているけど、ケン君とヤムチャ君のタッグは、今回が初めてじゃない?」
実況「そうですね! 今日はリュウ抜きでのシャドルーとの戦いですからね!」
元「やっぱり、一番強いリュウ君抜きって事をカバーする為に……二人のコンビネーションや、連携攻撃が重要になってくるんじゃないかな?」
実況「なるほど、わかりました!」
サガット「フッ、今日はお前達二人か……」
バイソン「ヘイヘイ、お前ら雑魚二人で大丈夫か、おい?」ニヤニヤ
ケン「……あぁ? おめぇら、舐めてると痛い目に合うぞコラ」
ダン「おい、お前ら……まだ、試合前なんだから落ち着けって……」
実況「お~っと、早速両者が激しく睨み合っております! 本日も波乱の一試合となりそうですねぇ!?」
元「……まぁ、僕はルールの中でやってもらえれば、それでいいんだけどね」
サガット「ケン、ヤムチャ君……話は聞いたよな……? わかってるな……?」ボソッ
ケン「あぁ、なんとかやるしかねぇ……サガット、バイソン……お前らも頼むぞ……?」
ケン「よっしゃっ! じゃあ、ヤムチャ……行ってこいっ!」
ヤムチャ「うっす!」
実況「さぁ、空手軍団の先発はヤムチャぁ! ヤムチャが先発だぁ!」
バイソン「よし、こっちは俺が行くぜっ!」
ヤムチャ(先ずは、バイソンさんとアドリブを5分……いや、状況次第では7分ぐらい挑戦してみよう……)
実況「対する、シャドルーの先発はバイソンっ! バイソンが行きます!」
サガット「いや、待て、バイソン……」
バイソン「……ん?」
サガット「今日は俺が行こう……俺が先発で出る……」
ヤムチャ(……えっ、いきなりサガットさんが出るの?)
サガット「こいつには、前回の試合での借りがある……俺に行かせてくれや……」
バイソン「まぁ、サガットがそうしてぇなら、俺は構わねぇけど……」
実況「おぉ~っと、これはこれは……!?」
元「あら、サガット君が先発で出るんだね……」
実況「先発で行こうとしたバイソンを制止して、サガットが出ます! シャドルー軍団の先発はサガットだぁ!」
ヤムチャ(そもそも、打ち合わせでは、バイソンさんが奇襲攻撃を仕掛けてくれるはず……やっぱり、展開が変わってるんだよな、コレ……)
サガット「おい、小僧……? 前回の試合では舐めた真似をしてくれたな……? 覚悟は出来てんだろうな……?」
ヤムチャ(何で、バイソンさんが先発の予定だったのに、サガットさんが出るんだ……? サガットさんの意図を考えなくては……)
ヤムチャ(……ケンさんに、先に出てもらえって事かな?) チラッ
ケン「おい、ヤムチャぁ! ビビんじゃねぇぞ、アイツはただガタイがでかいだけの見かけ倒し野郎だ! 遠慮せずにやっちまえっ!」
サガット「フッ、好き放題に言ってくれるな……まぁ、弱い犬程よく吠えると言うからな……」
ケン「なんだと、この野郎……オイ、ヤムチャぁ! この木偶の坊に目にもの見せてやれやっ!」
ヤムチャ「あっ、うっす……!」
実況「さぁ、先発の二人が揃いましたかね……? どうやら、ヤムチャ対サガットで試合はスタートしそうですっ!」
ヤムチャ(ケンさんは俺の事煽ってるし、出る気がなさそうだな……って事はやっぱり、俺対サガットさんで試合を始めろって事か……)
サガット「フッ、かかって来い……小僧よ……」
ヤムチャ(何で、バイソンさんじゃなく、わざわざサガットさんが出てきたか……くそぉ、サガットさんの意図がわからねぇ……)
実況「さぁ、今……ゴングが鳴らされ、試合開始ですっ!」
ヤムチャ(とりあえず、下手な事は出来ねぇ……様子を伺ってみるか……)
サガット「……」
実況「さぁ、試合が始まりました! 先ずは、ヤムチャがサガットを中心に円を描くような動きをしながら、様子を伺っております!」
ヤムチャ(サガットさん、動かねぇな……コレ、攻撃仕掛けて来いって事かな……? いや、まだそう判断するのは早ぇか……」
サガット「……」
実況「さぁ、対するサガットは……微動だにしませんっ! 不敵な笑みを浮かべながら、ヤムチャの様子をただただ、眺めているっ!」
ヤムチャ(くそっ……コレ、どうしたらいいんだよ……やべぇ、まだ1分も経ってないのにテンパってきたぞ……)
サガット「……」
実況「さぁ……緊張感がこちらにも伝わってきそうですっ! ここから、どういった攻防を見せるのかぁ!?」
元「結構、体格差があるからね……ヤムチャ君、慎重に攻めた方がいいと思うよ? サガット君は、テクニックもあるし、下手に仕掛けたら返り討ちだからね……」
サガット「オイコラ、チビ助がぁ!」
ヤムチャ「!」ビクッ
実況「おぉ~っと、サガットが吠えたっ! サガットが吠えたぞ!?」
サガット「どうしたどうした!? チンタラチンタラしやがって……ビビってんのか、あぁ!?」
ヤムチャ(あれ……? コレ、本気のダメ出しされてんのかな……?)
サガット「俺に仕掛けるのが怖ぇのか!? だったらよぉ……ホラ……?」
ヤムチャ「……ん?」
オー、オー
実況「おぉ~っと、ここで、サガットが両腕を開き、胸を張ったぁ! 完全に誘っているぞ!? これは自分の胸に打ち込んで来いと、誘っているっ!」
ヤムチャ(……サガットさん)
サガット「ほらほら……ここに隙だらけの部分があるぞ……? わかりやすい、隙だらけの部分がよぉ!?」
サガット「ほら、来いよ……それとも、何か……? 空手軍団ってのは、相手の周りをぐるぐる周るだけの、貧乏臭え集団なのか!?」
ヤムチャ(誘ってる……完全に誘ってくれてる……)
サガット「オラオラ、かかって来いや! おめぇみたいなゴミ野郎、怖くねぇんだよ!」
ケン「おい、ヤムチャっ! 好き放題言われてんじゃねぇぞ! その木偶の坊、ぶっ飛ばしちまえやっ!」
ヤムチャ(……ケンさん) チラッ
ケン「ここまで舐められた真似されちゃあ、我慢出来ねぇ……ヤムチャ、いけっ!」
実況「さぁ、サガットはかなり、舐めてかかっているようです……これはヤムチャにとって屈辱的な行為か!?」
元「コーナーのケン君もかなり怒ってますね」
サガット「おらおら、ここだよ、ここ……ほれ、打ってこいやぁ!」
イケー、ヤムチャー! ヤッチマエー!
実況「さぁ、空手軍団のファンの皆さんも、これには怒っているのか!?」
元「えぇ、怒ってますねぇ……」
実況「サガットへのブーイングと、ヤムチャへの声援っ! 様々な声会場から飛びかっていますっ!」
ヤムチャ(凄いな、サガットさん……ただ、胸を突き出しただけなのに……)
サガット「オラオラ、来いやぁ! まだ、ビビってんのかぁ!?」
ヤムチャ(でも、ありがとう……これでやるべき事が、はっきりとわかったよ……)
実況「おぉ~っと……ヤムチャ! 正面から、サガットに近づいて……」
ヤムチャ「てめぇ、舐めてんじゃねぇぞっ! この木偶の坊がぁっ!」バチーンッ
実況「張ったぁ張ったぁ! ヤムチャが張ったぁ! 強烈な逆水平チョップをサガットの胸板にお見舞いだぁ!」
ヤムチャ「……どうだっ!?」
サガット「フッ、効かねぇな……」
ザワ……ザワ……
実況「おぉ~っと、しかしサガット……ビクともしません! まだまだ、余裕の表情だっ!」
ヤムチャ「……くそっ!」
サガット「もっと打ってきてもいいんだぞ……? お前のヘボチョップなんて、効かねぇんだよ、こっちは……」クイクイ
実況「さぁ、再びサガットが誘っている! ヤムチャを誘っているぞ!?」
ヤムチャ「この野郎……舐めやがって……うおおぉぉっ!」バチーンッ
サガット「……フンっ!」
実況「さぁ、ヤムチャのチョップっ! だが、サガット……これも、また耐えるっ!」
サガット「ほらほら……どうしたどうした?」
ヤムチャ「くそっ、舐めんじゃねぇ……いくぞっ、うおおぉぉっ!」バチーンッ
サガット「……フンっ!」
実況「さぁ、またもヤムチャが仕掛けるっ! だが、やはり体格差のあるサガットにはダメージが与えられないか!?」
元「そうだね……うまく、サガット君にしてやられてると思うよ、僕は……」
実況「……してやられている?」
サガット「どうしたぁ! そんなもんかぁ!?」
ヤムチャ「くそっ……まだだ、うおおぉぉっ!」バチーンッ
サガット「……フンっ!」
元「やっぱり、体格差がある二人じゃない……?」
実況「確かに、二人の身長差……勿論、体重差をあるでしょうね」
元「ヤムチャ君は始めに、正面からぶつかるのは危険と判断して、様子を伺ってたじゃない?」
実況「確かに……! ヤムチャは慎重にサガットの様子を伺ってましたね!」
元「なんとか、サガット君の隙をつこうとしてたと思うんですよ……でも、サガット君はそういう戦いを好まなかった……」
実況「……好まなかった?」
元「うん。今みたいに、正面からぶつかった方が、自分の体格差で有利な部分を使いやすいからね?」
実況「なるほど……確かに、チョップを打ってるヤムチャだって、スタミナは消費されるでしょうね……」
元「わざと自分から、隙を作って……裏の取り合いじゃなくて、正面からのぶつかり合いの戦いを仕向けたんだよ、きっと……」
実況「しかし、どうなんですかね……? あのような、舐められた態度を取られたら、やはりレスラーとしては向かって行きたくなるもんなんじゃないですかねぇ?」
元「そりゃ、当然だよ! 僕だっていくよ! でも、早く、サガット君にダメージを与えないと……痛いお返しが帰ってくるような気がするな……」
ヤムチャ「うるぁっ!」バシーンッ
サガット「……どうしたぁ!? そんなもんかぁ!?」
ヤムチャ「くそっ……舐めやがって……」
イケー! ヤムチャー!
実況「さぁ、ヤムチャが張っている、張っているっ! しかし、サガットはピクリともしていないっ!」
ヤムチャ「くそっ、もう一発だ……うるあぁっ!」バシーンッ
サガット「フッ……やはり、こんなものか……」
ヤムチャ「く、くそっ……! こいつ、効いてねぇ……」
サガット「あぁ、お前のヘボチョップなんて、俺には効かんよ……どうする? まだ、続けるかな……? それとも、ロープの反動でも利用してみるかな……? まぁ、無駄な事だけどな……」
ヤムチャ「うるせぇっ……! 舐めてんじゃねぇぞ、この野郎っ……! うおおぉぉっ……!」バシーンッ
実況「さぁ、ヤムチャの攻撃はまだ続く! サガットにダメージを与える事が出来るのか!?」
サガット(なる程、チョップで来るのか、ヤムチャ君……だったら、こっちは……上手く対応してくれよ……?)
ヤムチャ「……うるあぁっ!」
サガット「フッ、ヤムチャ君……ダメだよダメ……打ち方がなっちゃいないなぁ……?」
ヤムチャ「……あぁ?」
サガット「正しいチョップの打ち方を、俺が教えてやるよ……準備はいいかな……?」
ヤムチャ(おっ……? サガットさんが……仕掛けてくるのか……?)
サガット「いくぞっ! うおおおぉぉっ!」バシーンッ
ヤムチャ「!」
実況「おお~っと! ここで、今度はサガットがヤムチャに打ち込んだぁ!」
ヤムチャ「うおっ、 痛ぇっ……! マジで痛ぇっ……!」
サガット(……少し、強くやりすぎたかな? まぁ、下手に耐えられても困るからな。ごめんよ、ヤムチャ君)
ヤムチャ「ううっ……痛ぇな、この野郎……」
サガット「フッ、チョップとはこうやって打つんだよ……わかったかな? ヤムチャ君……?」ニヤニヤ
実況「さぁさぁ、サガットの重い重い一撃だ! ヤムチャ……苦しんでおりますっ!」
ヤムチャ(……ったく、わかってますよ。 サガットさんの攻撃でダメージを喰らえって事でしょ?)
サガット「……ほらほら、次はヤムチャ君の番だ。打って来いよ?」
ヤムチャ(ちゃんと、痛がりますって……何も、本気で打たなくてもいいでしょ、サガットさん……俺だって、それくらいわかってますよ……)
サガット「……どうした? 俺の攻撃が?それほど効いたのかい?」ニヤニヤ
ヤムチャ「うるせぇっ! ニヤついてんじゃねぇぞ、この野郎っ! うおおぉぉっ……!」バシッ
サガット「……フンっ!」
実況「さぁ、今度はヤムチャが張ったぁ! 体格差はあるが……それでもヤムチャはチョップで攻めるっ!」
元「ヤムチャ君にも意地があるだろうからね……ここで逃げるわけにはいかないでしょ」
サガット「う~ん、違うなぁ……ヤムチャ君……チョップの打ち方は、こうするんだよ……?」
ヤムチャ(うわぁ、また来るや……でも、下手に避けてサガットさん混乱させる訳にもいかないし……そもそも、避けた後、どうしていいかわかんねぇし……)
サガット「……うおおおぉぉっ!」
ヤムチャ(くそっ……受けるしかねぇっ……! 痛いの覚悟で、受けるしかねぇっ……!)
ヤムチャ「……ぐわあっ!」
実況「さぁ、決まったぁ! サガットの重い重い一撃っ! ヤムチャ、苦しんでおります!」
サガット「フッ、どうだ……? 勉強になったかな……?」
ヤムチャ(……あれ?)
サガット「ほらほら、次はお前の番だ……打ってこいよ……?」
ヤムチャ(……さっきみたいに痛くねぇぞ? サガットさん、手加減してくれてる?)
実況「さぁ、ヤムチャは苦しんでいます……やはり、サガットのチョップは一撃一撃が重いっ!」
元「でも、休んじゃダメだよ……手を休めたら、もっと痛い攻撃が飛んできちゃうからね……」
サガット「……どうした、ビビってるのか? ホラ、打って来いよ?」
ヤムチャ(俺が、ちゃんとダメージ受けれたから……今度は手加減してくれたのかなぁ……?)
サガット(……ヤムチャ君、これが合図だ。俺の意図に気づいてくれ)
ヤムチャ(まぁ、とにかく……しばらくは、チョップの打ち合いするしかねぇか……交互の打ち合いだし……これなら俺でも5分ぐらいはいけるだろうな……)
ヤムチャ「うおおぉぉっ……! 舐めんじゃねぇっ!」バシッ
サガット「フン、効かんな……次はこっちの番だっ……! うおおおぉぉっ……!」バシーンッ
ヤムチャ「……ぐっ!」
サガット「どうしたどうした……? 空手軍団の力はそんなものか……?」
ヤムチャ(やっぱり、手加減してくれてる……そんなに痛くないヤツだ……)
サガット「ほらほら……打ってこいよ……?」
ヤムチャ「うるせぇっ……! 空手軍団舐めんじゃねぇっ! うおおおぉぉっ!」バシッ
サガット「……フンっ!」
実況「さぁ、チョップとチョップのぶつかり合いっ! いやっ……! これは男と男の意地のぶつかり合いだっ!」
元「そうだねぇ、ここまで来ちゃ……もう、引けないよ……」
サガット「そんなもんかぁ!? オラァ、いくぞっ! うおおおぉぉっ……!」バシーンッ
ヤムチャ「ぐっ、舐めんじゃねぇ……! うおおおぉぉっ……!」バシッ
サガット「効かねぇな、おいっ……! うおおおぉぉっ……!」バシーンッ
ヤムチャ「……ぐわっ」
ヤムチャー! マケルナー!
ヤムチャ「あぁ、わかってるぜ……うおおおぉぉっ!」バシッ
サガット「効かんっ……! うおおおぉぉっ……!」バシーンッ
ヤムチャ「……ぐわっ」
実況「やはり、ここ体格差は厳しいか!? 少しヤムチャが押されているように見えますねぇ、元さん?」
元「意地だよ、意地……ヤムチャ君、根性見せましょう……お客さんに応援されてるんだから……」
ヤムチャー! ガンバレー!
ヤムチャ「あぁ、任せてくれっ……! うおおおぉぉっ……!」バシッ
サガット「フンっ……! 効かんっ……!」
ヤムチャ「く、くそぉ……」
サガット(よし、そろそろか……ヤムチャ君……次は強いのをいくぞ……? いつまでも、チョップの攻防を続けるわけにもいかんからな……)
ヤムチャ「きやがれっ! デカ物野郎っ!」
サガット「いくぞっ! うおおおぉぉっ……!」バシーンッ
ヤムチャ(痛ぇっ……! うおっ、何だよオイ……! 最初の痛いヤツが、またきたよ……)
実況「おっと……激しい音が鳴り響きましたっ! サガットの重い重いチョップが、ヤムチャの胸板に突き刺さるっ!」
ヤムチャ(何だよ、サガットさん……わざわざ痛いの打たなくたって、俺のちゃんとやりますって……くそっ、俺も次痛いの打ってやろうかな……ん……?)
サガット(次は、もうないっ! そろそろ次の攻防だっ! ヤムチャ君、気づくんだっ!) ギロリ
ヤムチャ(あれ……? サガットさんの様子が違うような……? コレ、俺に何か、合図を送ってくれてるのかな……?)
サガット(合図はもう、送ったっ! 『痛み』としてな! だから、俺の意図に気づいてくれっ!)
ヤムチャ(え~っと、え~っと……ひょっとして……あれ? もしかして、俺ここで、やられなきゃいけなかったのかな……?)
実況「さぁ、次はヤムチャがサガットに向かって……」
ヤムチャ(や、やべぇ……チョップ打ってる場合じゃねぇ……! 俺、ダウンしねぇと! 多分、倒れるのがコレ、正解だわっ!)
ヤムチャ(やべぇ、倒れねぇと……あっ、でも、もうチョップの構えしちまった……)
ヤムチャー! イケー!
ヤムチャ(お客さんの声援もあるし……いきなり、ここで倒れるのは、おかしいよなぁ……)
サガット「……」
ヤムチャ(どうするどうする……? とにかく、倒れないとマズい……でも、倒れたりなんかしたら、おかしいよなぁ……?)
サガット「……」
ヤムチャ(……だから、ここは) ヨロッ
実況「さぁ、ヤムチャがサガットの胸板に……いやっ、ヤムチャが、よろけたぞ?」
ヤムチャ「ううっ……ぐっ……!」ガクッ
実況「そして、片膝をついてしまったぁ! ヤムチャ……チョップにいけませんっ……!」
元「重いチョップを、沢山もらったからねぇ……足に来たんでしょうね……」
ヤムチャ(ダウンはしなかったけど……自然に片膝をつきましたよ……)
サガット「……フッ」
ヤムチャ(だから……ここからは、サガットさんがなんとかして下さい……お願いします……)
サガット「……バカが、この帝王に正面から挑んで勝てるとでも思ったのか」
ヤムチャ「……くそっ」
サガット「どうやら、もうスタミナ切れのようだな? だった、止めにしてやるとするか……」グイッ
ヤムチャ「う、うおっ……」
実況「おぉ~っと! ここで、片膝をついているヤムチャの身体を、サガットが強引に持ち上げたぁっ!」
サガット「虫ケラは……虫ケラらしく……地面に這いずっているのが、お似合いだ……」
ヤムチャ「う、うおっ……おおっ……」
実況「そして、ボディスラムの構えで高々と抱え上げるっ! ヤムチャの身体を、天高く抱え上げるっ!」
サガット「……いくぞっ! 叩きつけてやるっ!」
ヤムチャ「くっ、くそっ……離しやがれっ……!」
サガット(試合時間を伸ばさないといけないからな……いつもより、多めに溜めておくか……)
実況「さぁ、サガットがヤムチャを抱え上げ、長い長い溜めを作るっ!」
サガット「いくぞ、ヤムチャっ! おおおぉぉぉっ……!」
ヤムチャ「……う、うぐっ!」ドスーンッ
キャー、キャー
実況「そして、今叩きつけるっ! サガットのハイアングルボディスラムだっ! 場内からは悲鳴が巻き起こるっ!」
ヤムチャ(おぉ……上手く、ダウン出来たな……でも、この後どうしたらいいんだろ……?)
サガット「……よしっ、行くぞっ!」
ヤムチャ(ん……サガットさんが動いたな……? 多分、俺に攻撃を仕掛けてくれるんだろうな……)
実況「さぁ、そして……サガットがゆったりとした動きで、ロープの反動をつけて戻ってきたぁっ!」
サガット「……ふんっ!」
ヤムチャ「うおっ……! ぐえっ……!」
実況「そして、そのまま仕掛けたぁ! ギロチンドロップ! ヤムチャに体重を浴びせていきますっ!」
元「あんな巨体がのしかかってきたら……う~ん、ヤムチャ君……苦しんでますねぇ……」
ヤムチャ「ゴ、ゴホっ……! くそっ、よりによって、首元にきやがって……この眼帯野郎め……」
サガット(おっ、いいリアクションじゃないか……? これは次の攻防がやりやすい……ヤムチャ君、いいぞ……)
ヤムチャ(……みたいな感じで苦しんでいれば、大丈夫かねぇ?)
サガット「なんだなんだ、この糞雑魚は! 相手にならねぇぞ、えぇっ!?」
ブー、ブーブー
実況「おぉ~っと……ここで、サガットはヤムチャに暴言でも吐いているにでしょうかねぇ? お客さんから、大ブーイングです!」
サガット「チッ、この間の借りを返すつもりで出てきたが……やはり、この帝王とは格が違いすぎるっ……! 相手にならねぇ……」
ヤムチャ「く、くそっ……この野郎……」
サガット「やはり、空手軍団で楽しめそうなのはリュウぐらいのものか……こんなリュウのいない試合に興味はない……とっとと終わらせるか……」グイッ
ヤムチャ「ん……? う、うおっ……!」
実況「おぉ~っと、ここでサガットがヤムチャの左足を取り……そして自分の胸元へと引き寄せたぁっ!」
元「アンクルロックですね」
サガット「うおおぉぉっ! ここで仕留めてやるっ……!」グイッ
ヤムチャ「ぐ、ぐわああぁぁっ……!」
実況「さぁ、サガットがヤムチャの足を締め上げるっ! スタンディングのアンクルロックだっ!」
ヤムチャ(痛い痛い痛い……! サガットさん……マジで、痛いって……! また、マジで技仕掛けてるよ、この人……)
サガット(……まっ、とりあえず、こんなものかな?)
ヤムチャ(あっ、ちょっと、締めるの緩めてくれたや……あっ、なる程ね……これは、こうやって足にダメージを与える技だって、教えてくれてるのかな……?)
サガット(む……? こら、ヤムチャ君……気を抜いてるんじゃないぞ、まだ試合中だぞ……?) グイッ
ヤムチャ(痛い痛いって……! また、締め付けてきやがった……! あっ、これ……休むなって怒られてるんだな……!)
実況「さぁ、サガットはヤムチャの足に狙いを定めたぁっ! アンクルロックでダメージを与えていきますっ!」
元「う~ん……ちょっと、苦しい展開だねぇ……」
サガット「オラオラっ……! お前なんか相手にならねぇんだよ、早くギブアップしやがれっ!」グイグイ
ヤムチャ「く、くそっ……諦めてたまるかよっ……!」
ダン「オイ、ヤムチャっ! ギブアップか? ギブアップするのかっ!?」
ヤムチャ「ノーだ、ノー! ギブアップなんかしてたまるかよっ!」
サガット「……フン、下手な意地を張るのは、やめておく方が賢明だぞ?」グイグイ
ヤムチャ「ぐわああぁぁっ……! くそっ、舐めてんじゃねぇぞ、この野郎……」
実況「さぁ、ヤムチャはレフェリーに首を振って、大丈夫だとアピールしているようですが……」
元「うん……やっぱり、長時間喰らい続けるのは危険だよね……後々に尾を引く事になるからね……」
ダン「オイっ、ヤムチャっ! 大丈夫か? ギブアップするのかっ!?」
ヤムチャ「だから、しねぇってのっ! 俺は大丈夫だっ!」
ダン「ロープまで、逃げる体力は残ってるか? 大丈夫か? まだ、出来るんだな?」
ヤムチャ(……ほう)
ヤムチャ(そういや……関節技はロープまで逃げれば、オッケーだったんだな……ダンさん、教えてくれたんだな……)
ダン「ヤムチャ……! ロープまで行けるか!? 大丈夫か!?」
ヤムチャ(しかも、ロープはすぐそこにあるじゃねぇか……コレ、サガットさんは計算して投げてくれたんだろうな……」
サガット「……うおおぉぉっ!」グイグイ
ヤムチャ(って事は……これは、二人して俺にこのままロープまで行けって言ってくれてるんだな……よし、じゃあ、その通りに……)
実況「さぁ、サガットのアンクルロックでヤムチャの足には、徐々にダメージが蓄積されていきますっ!」
ヤムチャ(ん……? いやっ……待てよ……!?)
ヤムチャ(待て、落ち着け……これって……今、凄くいい状況じゃないのか……?)
サガット「……うおおぉぉっ!」グイグイ
ダン「ヤムチャ、ギブアップか? ギブアップするのか!?」
ヤムチャ(試合時間を伸ばさないといけない状況で……皆に少しずつ、ダメージを与えていかなきゃいけない状況で……)
実況「さぁさぁ、サガットはヤムチャの足を締め付けるっ! 締め付けるっ!」
元「ああいう攻撃って、試合が長引くと引きずる事になるんですよ……飛んだり走ったり出来なくなりますからね……」
ヤムチャ(俺、一人がジワリジワリとダメージを受けている……この状況って、実は凄くいい事なんじゃないのか……!?)
サガット「……うおおぉぉっ!」グイグイ
ヤムチャ(……まだ、動くには早いっ! 少し、様子を見てみよう!)
サガット「……うおおぉぉっ!」グイグイ
ヤムチャ「ぐっ、くそっ……! ずっと、足ばっかり、攻撃してんじゃねぇよ……」
ダン「オイ、ヤムチャっ! ギブアップするのか?」
ヤムチャ「くそっ、しねぇよ……痛ぇけど……ギブアップはしねぇよ!」
実況「さぁ、ヤムチャの捕まってる時間が長くなってきましたかねぇ……?」
元「足への長時間のダメージはマズいよ……? 試合後半に響いてくるからね……」
サガット「オラオラっ! 早く、ギブアップしやがれっ!」グイグイ
ヤムチャ「くそっ、舐めんじゃねぇ……舐めんじゃねぇよ、この野郎……」
ケン「……よし、いいぞ。 そろそろ、俺も動くかね?」
ケン「おいっ、ヤムチャっ! しっかりしろっ! そんな木偶の坊に好き放題やられてんじゃねぇよ……!」
サガット「……ぬ?」
実況「おぉ~っと、ここでコーナーいるケンが声を張り上げました!」
ケン「しっかりしろっ! 空手軍団の意地見せてみろ、おいっ!」
ヤムチャ「ぐっ……ケンさん……」
ヤ・ム・チャ! ヤ・ム・チャ!
実況「おぉ~っと! ここで、場内からの大ヤムチャコールっ!」
ヤムチャ(……来たっ! このタイミングだっ! このタイミングで動く!)
ケン(おめぇなりに、試合を引き延ばす事を考えたって訳か……でもまぁ、ここらが潮時だろ……ほれ、煽ってやったから、とっとと逃げな……)
ヤムチャ「……うおおぉぉっ!」ググッ
サガット「……ぬっ?」
実況「おぉ~っと、ここでお客さんの声援に応えるように、ヤムチャが動いたぞっ!?」
ヤムチャ「ぐっ……ロープまで、ロープまで、逃げるんだ……」ズルズル
サガット「くっ、こいつ……しぶとい奴め……」
実況「サガットに足を掴まれているが……上体だけで、這いずるように、ロープまで這いずっていくっ!」
ケン「よしっ、いいぞっ! ロープまで、あと少しだっ! 根性見せろっ!」
ヤ・ム・チャ! ヤ・ム・チャ!
ヤムチャ「よ、よしっ……! これで……ロープだっ……!」ガシッ
サガット「くっ……こ、こいつ……」
実況「さぁ、ここでヤムチャがロープを掴んだぁ! ロープブレイクっ! ロープブレイクですっ!」
ワー、ワーワー
ダン「ロープブレイクだっ! サガット、手を離せっ!」
サガット「……」
ダン「おい、聞いてんのか!? ロープブレイクだから、手を離せって言ってんだよ! 反則負けにするぞ!?」
サガット「……チッ、わかったよ」ブンッ
ヤムチャ「う、うおぉ……」
実況「さぁ、ここで、ロープブレイクで逃げたヤムチャの足を、サガットがかなり乱暴に振りほどいていきます!」
元「ルールなんだからさ、ちゃんと離そうよ……? 僕、ああいうの、あんまり好きじゃないなぁ……」
ヤムチャ「くそっ、しつこく、足締め付けやがって……でも、まぁとりあえずは大丈夫そうかな……?」ムクッ
実況「さぁ、そして今、ヤムチャが立ち上がりましたが……少し、足を気にしている様子ですねぇ、元さん?」
元「う~ん……でもまぁ、とりあえずは大丈夫なんじゃない? ヤムチャ君、やる気満々みたいだし……」
ヤムチャ「よしっ! この眼帯野郎……舐めてんじゃねぇぞ……」
サガット(ヤムチャ君、いいタイミングで逃げてくれたな……よく頑張ったじゃないか……とりあえず、最初はこんなもんだろう……)
サガット「……」ビシッ
ヤムチャ「……ん?」
実況「おぉ~っと、ここでサガットは、コーナーにいるケンに向かって、指を指しました!」
サガット「……」クイクイ
ケン「ほ~う、俺を指名ってワケか……調子に乗ってるんじゃねぇぞ……?」
実況「おっと……そして、ケンに向かって手招きしているっ! お前が出てこい! お前が出て来るんだケンと、言わんばかりの挑発だコレは!」
サガット「リュウ相手だったら、楽しめるんだが……このヤムチャという奴相手では、少しも楽しむ事が出来ん……」
ヤムチャ「……あぁ?」
サガット「まぁ、ケンならば、少しはマシだろう……俺も強い奴と戦いたいからな……ほら、ケン……出てこいよ……」
ケン「まぁ、おめぇが俺より強いって勘違いしているって事に目を瞑れば、格好いい台詞じゃねぇか? サガットちゃんよぉ?」
ケン「おい、ヤムチャ、交代しろっ! 俺が行ってやるよ!」
ヤムチャ「……えっ、ここで交代?」
実況「さぁ、ここでケンはヤムチャを自分の元へ呼び寄せ……交代するように指示しますが……これは、ヤムチャにとっては屈辱的ではありませんかねぇ?」
元「まぁ、相手はシャドルー、ナンバーツーのサガット君だからね……リュウ君でも苦戦するような相手だし……」
ヤムチャ「……あの、ケンさん」
ケン「……五分ご苦労だったな。 頑張ってたじゃねぇか?」ボソッ
ヤムチャ「……えっ?」
ケン「納得出来ねぇ気持ちは……ラストの五分にぶつけろ……ラストの五分にもう一度、お前とサガットでやってもらうから……」ボソッ
ヤムチャ(あっ……今のサガットさんとの攻防……五分経ったんだ……)
ケン「後二回、出番がある……大技は、そこで見せればいい……とりあえず、俺に交代しろ……」
ヤムチャ「……うっす、わかりました」
ケン「よっしゃ、次は俺の番だぜ! 準備はいいかい、サガットちゃんよぉ……?」
キャー、ケーン
実況「さぁ、ここで試合権はヤムチャからケンへと移ります!」
ケン「ヘイヘイ、びびってんじゃねぇぞ……サガットちゃんよぉ……?」
サガット「……フッ、御託はいいから、さっさとかかってこい」
ケン「言われねぇでも……仕掛けさせてもらうぜっ……! いくぞっ……!」
サガット「……来いっ!」
実況「おぉ~っと! ここで、ケンが仕掛けたっ!」
ケン「……うるあぁっ!」シュッ
サガット「……フンっ!」
ケン「……どうだっ!?」
サガット「フッ、軽いな……」
実況「さぁ、先ずは……ケンが得意の蹴りを仕掛けていきます……サガットに先ず、一発お見舞いだ……」
サガット「お前らの攻撃は、基本的に軽い……まぁ、その体格なら仕方のない事だと思うがね……」
ケン「ヘイヘイ……ご指導、ありがとうございますね……まっ、じゃあ、もう一発いかせてもらいましょうかね……?」
サガット「フッ、構わんよ……?」
ケン「いくぜっ……! オラァっ……!」シュッ
サガット「……フンっ!」
実況「さぁ、そして、もう一発っ! 軽い身のこなしでケンが、リズム良くサガットに打ち込んでいくっ!」
ケン「まだまだっ……! もう一発っ……!」シュッ
サガット「フンっ……! そんな軽い蹴りで俺を倒せるとでも思ってるのか……?」
ケン「……数打てば、まぁ、なんとかなるんじゃねぇかな?」
サガット「そうだな……数打てば、何とかなるかもしらんな……数を打てればな……」ニヤニヤ
ケン「ニヤついてんじゃねぇよ……気持ち悪ぃんだよ……オラァっ……!」シュッ
サガット「……フンっ!」
実況「さぁ、三発……そして、四発とサガットに蹴りを打ち込んでいくっ! だがしかし、サガットはまだまだ、余裕の表情だっ!」
サガット「ケン君……正しい、蹴りってのを教えてやるよ……?」
ケン「……あぁ?」
サガット「蹴りってのは……こうやって打つんだよ……うおおおぉぉっ!」シュッ
ケン「!」
実況「おぉ~っと! ここで、サガットが仕掛けたっ! 今度はサガットの蹴りだっ!」
ケン「うおっ……! よっと……!」ヒョイ
サガット「……ぬ?」
実況「おぉ~っと、これは……!? ケンがサガットの蹴りを交わしたぁっ!」
元「いい反応してますね。いいですよ」
ケン「へっ、遅ぇよ……今度はこっちの番だっ……! うるあぁっ!」シュッ
サガット「……フンっ!」
実況「そして、間髪入れずに、サガットに蹴りをぶち当てるっ……! ケン、攻撃が的確ですっ!」
ケン「ほれ、次はおめぇの番だぜ……? 正しい、蹴りの打ち方ってのを、教えてくれよ……?」
サガット「舐めやがって……いくぞっ……! うおおおぉぉっ!」ブンッ
ケン「……うおっと!」ヒョイッ
ケン「当たんねぇよっ……! うるぁっ!」シュッ
サガット「……ぐっ!」
ケン「あれっ……どうしたの、サガットちゃん……? ひょっとして……ダメージとかあったのかなぁ……?」
サガット「くっ、こいつ……舐めやがって……」ワナワナ
実況「さぁ、またもケンがサガットの蹴りを避けて……カウンターで蹴りをぶち当てていきますっ!」
ケン「ほらほら、打ってこいよ……サガット……おめぇの蹴りは確かに威力はあるかもしれねぇけどよぉ……?」
サガット「……くそっ」
ケン「鋭さがねぇんだよ……遅ぇんだよ……そんな蹴り、何発打ったって、俺には当たんねぇよ……」
サガット「……舐めやがって」
ケン「正しい蹴りの打ち方ってのを、教えてやるよ……おめぇの蹴りとは違う……鋭い蹴りの打ち方をなぁ?」
サガット「調子に乗ってるんじゃねぇぞ、小僧っ! うおおおぉぉっ……!」ブンッ
ケン「……よっと!」ヒョイ
サガット「……くそっ!」
ケン「遅ぇよ……蹴りってのは……こうやって打つんだよっ……!」シュッ
サガット「……ぐっ!」
キャー! ケーン! イイゾー!
実況「さぁ、ケンがまたも避けるっ! サガットの蹴りを避けて、的確に蹴りを打ち込んでいくっ!」
ケン「頭に血がのぼって……大振りになってるぜ、サガット……? そんな蹴りじゃ、俺には当たらねぇよ……」
サガット「くそっ、舐めやがって……うおおおぉぉっ……!」ブンッ
ケン「よっと……遅ぇよっ! 蹴りってのは……こうやって打つんだっ……! うるぁっ!」シュッ
サガット「……ぐっ!」
実況「さぁ、ケンが避ける避ける避けるっ! サガットの蹴りを避け……そして自分の蹴りをぶち当てていくっ!」
元「同じ蹴りの打ち合いだけど……サガット君は、力で……ケン君は技で攻めてるね……」
実況「ほう、力と技……?」
元「サガット君は、自分の体格を利用した、威力の高い攻撃で攻めるじゃない?」
実況「確かに……あの体格の人間と、真正面からぶつかっていったら、勝つのには苦労しそうですねぇ……?」
元「さっきのヤムチャ君がそうだったよね……? 正面から、チョップの打ち合いをして……返り討ちにされちゃったね」
実況「ヤムチャも頑張っていたんですがねぇ……確かに、返り討ちでしたっ!」
元「だから、ケン君はサガット君の蹴りを避けて……サガット君程の威力ではないけど、確実にダメージを与えていく、素早い蹴りで攻めているね……」
実況「それが、技で責める……と、いう事ですか?」
元「ヤムチャ君は正面から挑んで、サガット君に屈辱的な扱いを受けちゃったからね……こういう戦い方もあるんだぜ? なんて、弟弟子に教えてるんじゃないかな……?」
実況「なるほど……兄弟子が実戦で弟弟子に教えてる……と、いうワケですね!?」
元「まぁ、わかんないけどね……ヤムチャ君の正面からのぶつかり合いを見て……危険だから、こういう戦い方にしてみよう……な~んて、思ったのかもしれないよね?」
実況「まぁ、真相はどうであれ……ケンとヤムチャ! これなら、コンビネーションも期待できそうじゃないですかねぇ!?」
サガット「……うおおおぉぉっ!」
ケン「遅ぇよ、そんな蹴りなんて……当たんねぇよっ……!」ヒョイ
サガット「くそっ……! 何故だ……何故、当たらんっ……!」
ケン「まっ、でかい図体で威力はある蹴りだけどよ……こういう戦い方もあるんだよ……勉強になったかな……?」
サガット「くそっ……! ケンっ……!」
ケン「そろそろ、フラついてきたんじゃねぇか……? 大人しく寝てな……サガット……!」
サガット「……ぐっ!」
ケン「うおおおぉぉっ……! いくぜっ……!」シュッ
サガット「!」
実況「おぉ~っと、 ケンの蹴りが炸裂っ! そして、サガット、ここでダーウンっ!」
元「ケン君、サガット君相手に、上手く立ち回ってますね……いいですよ」
ケン「……オラっ! くらいやがれっ!」ドスッ
サガット「……ぐっ!」
実況「さぁ、ここでダウンしたサガットに、エルボードロップっ! 強烈な肘をお見舞いだっ!」
ケン「よしよし、サガット相手だからな……長期戦になる事も考えておかねぇと……」グイッ
サガット「……ぬっ?」
実況「さぁ、そして……ここで、ケンがサガットの足を取るっ! アキレス腱固めに入ったぁっ!」
元「うん、先ず、足にダメージを与えにいきましたね」
ヨーシ! イケー! ケーン!
ケン「あぁ、任せろっ! こいつの足に先ず、ダメージ与えて……本物の木偶の坊にしてやるぜっ!」
サガット「このサガットに、関節技を仕掛けるとはな……どうやら、身の程がわかってないみたいだな……」
ケン「……うるあぁっ!」グイッ
サガット「ぐっ……! だがしかし……!」
実況「さぁ、ケンが締め付ける締め付けるっ……! サガットの足にダメージを与えていきますっ!」
ダン「おい、サガット! ギブアップか? ギブアップするのか!?」
サガット「……冗談だろ? この程度の技、痛くも痒くもないさ」
ケン「強がってんじゃねぇぞ……? うおおおぉぉっ……!」グイッ
サガット「ぐっ……! うおっ、あまり悠長にしている場合ではないな……とっとと、逃げさせてもらうか……」
実況「さぁ、ケンのアキレス腱固め……これ、技の入り具合はいかがですか、元さん?」
元「うん、いい感じに入ってると思うよ?」
ケン「完全にロックしてるぜ……おめぇはもう、終わりだ……サガット……」
サガット「フン、ロックしてようが、していまいが……この帝王には関係ない……」
ケン「……あぁ?」
サガット「……フンっ!」ズルッ
ケン「う、うおっ……!」
サガット「ロープまで、逃げればいいんだろう……? フンっ……フンっ……!」ズルズル
ケン「う、うおっ……こいつ、なんて力だ……無理矢理、ロープまで逃げる気か……」
実況「おぉ~っと、ここでサガットが力強い動きで、無理矢理ケンを引きずりながら、ロープへと逃げようとしています!」
サガット「……このサガットが、関節技の達人と呼ばれているのは、テクニックだけではない」
ケン「……なんだと?」
サガット「俺の体格で関節技をかけると……この恵まれた体格のおかげで、ロープまで逃げる事が困難になる……」
ケン「く、くっ……」
サガット「そんな小さな体格だったら……こうやって、簡単に逃げられてしまうぞ……? なぁ……? 軽いぞ、ケン……」ズルズル
ケン「……くそっ、デカ物め」
実況「さぁ、サガットが無理矢理ケンを引きずって、ロープブレイクを狙っております……ロープまで、後30センチだっ!」
サガット「……よし」ガシッ
ケン「……くっ」
実況「さぁ、サガットがロープまでたどり着きました! ロープブレイク、ロープブレイクですっ!」
サガット「……レフェリー、ロープを掴んだぞ? この馬鹿を止めてくれや」
ダン「ケン、ロープブレイクだ……その手を離しやがれ……」
ケン「……チッ、わかったよ」
実況「さぁ、そして今、ケンが技をときます……サガット、ロープに助けられました」
元「相手がロープブレイクしても、技かけ続けるような人なのに……自分はちゃ~んと、ロープの助けを借りるんだね……」
サガット「ケン君……思ってたより、やるじゃないか……? 少しは楽しめそうだな……」
ケン「……くそっ、舐めてんじゃねぇぞ?」
実況「さぁ、サガットがロープブレイクで逃れ……再び両者が向かい合います!」
サガット「フッ、さぁ、かかって来い……ケンよ……」
ケン「まぁ、いい……おめぇの攻略法は、もう出来上がってるんだからな……」
サガット「……フッ」
ケン「行くぜ、サガット……うるあぁ!」シュッ
実況「さぁ、ケンの鋭い蹴りっ! フットワークを軽くしたケンが、再び蹴りを打ち込んでいくっ!」
元「ケン君は、スピードでかく乱する作戦ですかね?」
ケン「いやぁ、でけぇ図体してるから、当てやすいぜ……うるあぁっ!」シュッ
サガット「……ぐっ!」
ケン「おらおら、どうしたどうした……? もう一丁いくぜ……おらあぁっ!」シュッ
実況「さぁ、ケンが打っていく打っていくっ!」
ケン「……うるあぁっ!」シュッ
サガット「……ぐっ!」
実況「ケンの素早い攻撃に、サガットはなす術なしかぁ!? 防戦一方だぁ!」
ケン「頑丈な野郎だな……だが、これだけ打ってりゃ、流石に効くだろう……なぁ……?」
サガット「グッ……! お前の小便臭い蹴りなど、何発喰らっても効かんわ……」
ケン「ヘッ、強がりが顔に出てるぜ、サガットちゃんよぉ……? おらっ、もう一発だっ! 喰らえっ!」シュッ
サガット「……ぐっ!」
ケン「ほらほら、やっぱり効いてるじゃねぇか……? どうしたどうした……強がってんじゃねぇぞ……?」
サガット「ぐっ……だが、今だっ……!」
サガット「……うおおおぉぉっ!」
ケン「……何っ!?」
実況「おぉ~っと! ここで、サガットが……強引にケンを掴んだっ! ケンの首を掴んだぞ……!?」
サガット「……ようやく、うるさい蝿を捉える事が出来たぞ?」ググッ
ケン「ぐっ、ゴホッ……くそっ……離しやがれ……」
サガット「いいや、離すわけにはいかん……ここでお前を逃すと、また厄介な事になるだろうからな……」
ケン「ぐっ、ゴホッ……くそっ、首締めてんじゃねぇよ……タコが……」
実況「さぁ、サガットが片腕でケンの首を捉えて逃がしませんっ! これには、少しケンも苦しそうか!?」
ブー、ブーブー
ダン「おい、サガット! 首締めんのは反則だぞ!? わかってんのか!?」
サガット「……あぁ、わかってるよ」
ダン「だったら、とっとと離せって……! お前、反則負けにするぞ!」
サガット「大丈夫だ……これは、捉えているだけだ……首を締めるだけだなんて、みみっちい攻撃をこの帝王がする訳ないだろう……?」
ダン「……あぁ?」
サガット「このまま……こいつをぶん投げるっ……! 覚悟はいいか、ケンっ!?」
ケン「何っ……!? こいつ、まさかっ……!」
サガット「その通りだっ! このまま喉輪落としを決めてやるっ……! うおおおぉぉっ……!」グイッ
ケン「うっ……! ガッ……グッ……ゴホッ……!」
実況「おぉ~っとっ! そして、サガットがケンの首を掴んだまま、ケンの身体を高々と持ち上げたっ!」
元「喉輪落としですね」
サガット「……死ねええぇぇっ!」ドスーンッ
ケン「……ぐえっ!」
キャー、ケーン
実況「そして、そのままケンの身体をマットに叩きつけるっ!」
サガット「フン、手こずらせやがって……」
ダン「お、おいっ……! ケン、大丈夫かっ……!?」
ケン「くっ、大丈夫だ……それより、レフェリー……!」
ダン「……ん、どうした?」
ケン「……うるぁっ!」シュルッ
サガット「……ぬっ?」
実況「おぉ~っと、ここで投げられたケンが……下から、サガットの足と腕を……自分の両足の中へと丸め込みましたっ!」
元「おっ……? 下から、三角締めにいきましたね……?」
ケン「このままこいつを仕留めるっ……! 早く、ギブアップさせてやりなっ!」グイッ
サガット「ぐっ、こいつ……ケン……お前、狙っていたなっ……!?」
ケン「当然だよ……俺がただで技を受けてやるとでも思ってたのか……?」
サガット「ぐっ……くそっ、こいつ……離しやがれっ……!」
ケン「離すわけねぇだろうがっ……! この体勢だったらよぉ……さっきみたいに簡単にはロープには逃げられねぇからなっ……!」
サガット「くっ、確かに……この中腰の体勢では、力が入らん……くそっ、誘われていたという訳か……!」
ケン「……うるあぁっ! 締め付けてやるぜっ!」グイッ
サガット「ぐっ……ぐわあぁぁっ……!」
実況「さぁさぁ、ケンの下から纏わりつくような三角締めっ! サガットの頸動脈を締め付けていくっ!」
元「いいですね。 これは、サガット君、逃げにくいんじゃないですか?」
ダン「おい、サガット! ギブアップか? ギブアップするのかっ!?」
サガット「くそっ……! ノーだっ! ギブアップなどせんっ……!」
ケン「強がってんじゃねぇぞ……うるあぁっ……!」グイッ
サガット「……ぐわあぁぁっ!」
ダン「おい、サガットっ! ギブアップか!?」
サガット「ノーだっ! ノーっ!」
ケン「まぁ、このままジワジワといこうじゃねぇか……サガットよぉ……?」グイグイ
サガット「く、くそっ……こいつ……」
ヤムチャ「ケンさ~んっ! いいっすよ~! そのまま、決めちゃって下さいっ!」
ケン(……ん?)
ケ・ン! ケ・ン!
実況「さぁ、会場からは溢れんばかりのケンコールっ! ケン……このままサガットを仕留める事が出来るのかっ!?」
ヤムチャ(……って、感じで煽ればいいのかね? 俺、間違ってないよな?)
ケン(おうおう……一丁前に煽ってくれたってワケか……)
ヤムチャ(今日、コーナーに誰もいねぇから、俺一人で不安なんだよなぁ……指示貰えねぇんだよ……)
ケン(まぁ、アイツなりに考えてやってるって事か……しかし、あの不安そうな顔はなんだよ……仕方ねぇ、応えてやるかね……?)
ヤムチャ(大丈夫だよな……? 俺、今のトチってねぇよな……?)
ケン「任せろ、ヤムチャっ! このまま、こいつを……仕留めてやるぜっ……!」グイッ
サガット「……ぐぐっ」
ヤムチャ(おっ……? ケンさんが俺の方を見て、叫んだな……? って、事は合ってたのかね……?)
ケン「うるあぁっ……! サガット……このまま、仕留めてやるぜっ……!」グイグイ
サガット(……ふむ。ヤムチャ君も頑張ってるみたいだな)
ケン「オラオラっ……! どうしたどうした、サガットよぉ!?」グイグイ
サガット「………ぐ、ぐぐっ」
実況「さぁ、サガットはなかなかケンの三角締めから抜け出す事が出来ません! じわりじわりと体力を奪われていくっ!」
ダン「サガット、ギブアップかっ!? ギブアップするのかっ!?」
サガット「ぐっ、ノーだっ! しつこいぞ、レフェリー!」
ケン「まっ、いつまで続くかね……? うおおおぉぉっ……!」グイッ
サガット「……ぐっ!」
実況「さぁ、この攻撃にはサガットも苦しんでいます!」
元「いいですね……かなり、ケン君に有利な展開になってきますよ」
ケン「サガット……確かに、俺はお前程のパワーはねぇかもしれねぇが……テクニックは負けてねぇつもりだぜ……?」
サガット「……何?」
ケン「こうやって、テクニックで責めてりゃ……怪力馬鹿のおめぇを仕留める事だって出来るだろう……」グイグイ
サガット「この程度のテクニックで……この帝王を仕留めた気になっているなんて……甘い男だな……」
ケン「……あぁ?」
サガット「真の技という物は力があるからこそ生き……そして、真の力という物は技があるからこそ生きるのだっ……!」
ケン「へいへい……まぁ、強がりは程々にしておくんだな……」
サガット「上手く、テクニックを使ったつもりだが……貴様には、肝心の力が足りていないっ……! なら、返す方法はあるっ……!」
ケン「だったら、やってみろよ……? ほれほれ……」
サガット「よかろう、見せてやる……うおおおぉぉっ……!」ググッ
実況「おぉ~っと! ここでサガットが、三角締めを仕掛けているケンを……無理矢理、持ち上げたぁっ!」
元「……強引にいきましたね」
ケン「う、うおっ……!」
サガット「テクニックで、上手く仕留めたつもりになっている所、悪いが……貴様の身体は軽い……だから、こうやって簡単に持ち上げる事が出来るぞ……?」ブルブル
ケン「う、うおっ……この怪力野郎……」
サガット「お前と俺との違いはここだ……いくら、お前が同等のテクニックを使った所で……体格差は埋められない……だから、こうやって簡単に持ち上げる事出来る……」
ケン「……くそっ」
サガット「このまま……叩きつけてやるっ……! うおおおぉぉっ……!」
ケン「!」
実況「おっと! そして、無理矢理サガットがケンの身体をマットに叩きつけていったぁ!」
サガット「……おらあぁっ!」ドシーンッ
ケン「……ぐっ!」
キャー! ケーン!
実況「さぁ、ケンの身体がマットに打ち付けられたぁ! 場内からは、悲鳴が飛び交います!」
元「……あぁ、流石にケン君、ロック外しちゃったね。いい所までいってたんだけどねぇ」
サガット「ふぅ……やっと、手を外してくれたか……手こずらせやがって……」
ケン「……くそっ、怪力馬鹿め」
サガット「しかし、思ってた以上に苦しめられてしまったな……仕方ない……」
実況「なんとか、ケンの攻撃返したサガットですが……少し、首の辺りを気にしているようですかねぇ?」
元「まぁ、結構、長時間喰らい続けてたからね……」
サガット「ここは、一度引いて……休ませてもらうか……オイッ、バイソンっ!」
バイソン「……おうっ!」
サガット「交代だっ! お前が行ってくれっ!」
バイソン「おう、任せろってんだ! サガットは休んで、スタミナ回復しておいてくれや!」
実況「そして、サガットはそのまま自軍コーナーへと戻り……バイソンへと交代しますっ!」
バイソン「よっしゃ、よっしゃっ! 行くぜおいっ!」
サガット「バイソン、任せたぞっ! 奴を倒せっ!」
バイソン「任せとけってんだっ! 今から、あいつらの面を……ボッコボコのイケメンフェイスに整形してやるからよぉ?」
ケン「へっ、好き放題言ってくれてんじゃねぇか……」ムクッ
バイソン「ヘイヘイ、バイソン様のお出ましだぁっ! おめぇら、よ~く見ておけよっ!」
ケン「よしっ……来やがれ、バイソンっ……!」
バイソン「おい、ケン……? おめぇ、サガット相手にフットワークで立ち回ってたみてぇだけどよぉ……?」
ケン「……ん?」
バイソン「このバイソン様相手に……あの程度だったら、通じないぜ……? なんたって、俺は元ボクサーだからな……」
ケン「へぇ、そいつは楽しみだな……?」
バイソン「おめぇのフットワークなんて、元ボクサーの俺からしたら、ゴミみてぇなもんだ……本物のフットワークってのは……こんな感じだよ……?」シュッシュッ
ケン「……ん?」
実況「おぉ~っと、素早いっ! バイソンがケンの目の前で……シャドーボクシング始めたぞっ!」
元「……いいフットワークをしてるとは思いますよ?」
バイソン「シュッ……フッ……シュッ、シュッ……!」シュッシュッ
ケン「おうおう、なかなか早ぇな……やるじゃねぇか、おめぇ……」
バイソン「さっきみてぇな遅ぇ動きなら……このバイソン様を捉える事はできねぇぜ……ケン……?」シュッシュッ
ケン「……試してみるかい?」
実況「さぁ、バイソン……自分の素早い動きを見せつけて、ケンを挑発していますっ! 元ボクサーらしい、挑発ですかねぇ、これは」
元「スピード勝負を……ケン君に挑もうというわけだ……」
バイソン「まぁ、俺のパンチとお前の蹴り……どっちが早ぇか試してみようぜ……? なぁ、ケン……?」
ケン「面白ぇ……やってやるよ、バイソンっ……!」
ケン「いくぞっ! バイソンっ!」
バイソン「よし、いくぞ、ケン……うおおぉぉっ……!」シュッ
ケン「ん……? 頭……?」
バイソン「おらぁっ! ヘッドバッドだ、ゴルァっ!」ゴチーンッ
ケン「う、うおっ……! ガッ……!」
実況「おぉ~っと、おぉ~っと! バイソンが……なんと、ヘッドバッド……頭突きを繰り出しましたっ!」
バイソン「どうだ!? 俺様の、素早い頭突き……見たかコラっ!」
ケン「う、うおっ……バイソン……おめぇなぁ……」ヨロッ
実況「ちょっと待てちょっと待て! さっきのシャドーボクシングは何だったんだバイソンっ! お前は、ケンにスピード勝負を挑もうとしてたんじゃないのか!?」
元「……ボクシングで頭突きは、反則でしょ? なんで、あんな事するのかね、あの人」
実況「それでいいのか、バイソンっ!? お前には、プライドという物がないのか、バイソンっ!?」
バイソン「ガッハッハ、なんとでも言えっ! これがバイソン様のやり方だぜ、オイっ!」
ケン「痛ぇ……くそっ、石頭め……おめぇの話をまともに聞いた俺が馬鹿だったぜ……」ヨロッ
ブー、ブーブー
実況「さぁ、バイソン……悪びれる素振りもなく高笑いっ! 勿論、会場からは大ブーイングです!」
バイソン「まぁ、ケン……そう、怒んなよ……? 今から、スピード勝負しようぜ……? なっ……?」
ケン「おめぇは、よくもまぁ、そうぬけぬけと……」
バイソン「細かい事は気にするんじゃねぇよっ! ほら、バイソン様の素早いパンチ攻撃、受けてみな! オラオラオラっ!」シュッシュッ
ケン「くっ……! くそっ……!」
実況「さぁ、そしてここでバイソンがケンに仕掛けるっ! これは打撃の連続攻撃か!?」
バイソン「バイソンパーンチ!」ガスッ
ケン「……くっ!」
バイソン「もう一丁っ! バイソンパーンチっ!」ガスッ
ダン「おい、バイソン……拳で殴るのは、反則だからよぉ……?」
バイソン「……バイソンエルボー」ガスッ
ダン「んっ……? あれ……?」
バイソン「……もう一丁、バイソンエルボー」ガスッ
ダン「あぁ、何だ……ちゃんと、肘で攻撃してるじゃねぇか……大丈夫だな……」
バイソン「バイソンパーンチっ!」ガスッ
ケン「……ぐっ!」
バイソン「次は……バイソンエルボーにしておこうかな……?」
ダン「なぁ、バイソン!? おめぇ、ちょくちょく拳で殴ってねぇか? 拳で殴ってるよな、それ!?」
バイソン「……何、言ってるんっすか? ちゃんと肘で攻撃してますよ! ほら、エルボーしてるじゃないですか!」ガスガス
ダン「い、いや……そうだけど……そうだけどよぉ……?」
実況「さぁ、バイソンの連続打撃攻撃……ですが……」
バイソン「オラオラっ! ケン、くたばりやがれっ!」ガスガス
ケン「……ぐっ!」
実況「これ、元さん……? 拳で殴ってませんかねぇ……?」
元「……うん、ちょくちょく入れてるね? エルボーとパンチを混ぜながらやってるよ」
バイソン「オラオラっ! どうしたどうした、ケンっ!」ガスガス
ダン「おい、バイソン……おめぇ、やっぱり、拳で殴って……」
バイソン「何言ってるんすか!? 肘ですよ?肘っ! よく見て下さいよ!」
ダン「いやぁ……今は確かに肘だけどよぉ……?」
バイソン「オラオラっ! 元ボクサーのパンチはどうだ!? 思い知ったか、ケンっ!?」ガスガス
ケン「ぐっ……くそっ……!」
ダン「ほら、今、自分でパンチって言ったよなぁ!? パンチって言ったじゃねぇか!?」
実況「いやぁ、巧みに反則攻撃を混ぜているので……どうやら、レフェリーも制止しにくいようです……戸惑ってます!」
バイソン「オラっ! 腹ががら空きだぜ、ケンっ!」ゴスッ
ケン「……ぐおっ!」
実況「おぉ~っと、バイソンのボディブロー! ケンの腹部にお見舞いしましたっ!」
元「あちゃ、いいの入っちゃいましたね……ケン君、苦しんでますよ……」
ブー、ブーブー
バイソン「へへ、ブーイング上等上等っ! さぁ~て、そろそろ止めにしてやるか……」グルグル
ケン「ぐっ……くそっ……」
実況「さぁ、ここでバイソンが腕を回してアピールしていますっ! この構えはっ……!」
元「ショートレンジ、バイソン式アックスボンバーですね……反則技ですけど……」
バイソン「……行くぜっ! ケンっ!」
ケン「!」
バイソン「うおおおぉぉっ! バイソン式アックスボンバーだっ! その顔面をぶん殴ってやるっ!」ブンッ
ケン「……舐めてんじゃねぇぞっ!」グイッ
バイソン「……ん?」
実況「おぉ~っと、ここでバイソン式アックスボンバーにきたバイソンの腕をケンが捉えたっ!」
ケン「さっきからボカスカボカスカやりやがって……この野郎っ……!」ヒョイッ
バイソン「う、うおぉっ……!」
実況「さぁ、そして、そのまま……ケンがバイソン飛びついたぁっ!」
ケン「おらぁっ! 喰らいやがれっ!」グルンッ
バイソン「うおおぉぉっ……! なんだ、なんだっ……!? おおぉっ……!」ゴロンッ
実況「そして、片足をバイソンの首へと持っていき……飛びついた勢いのまま、バイソンを丸め込んだぁっ!」
元「おっ、飛びつき式腕ひしぎ逆十字固めですね」
ケン「……うるぁっ!」
バイソン「うおおっ……どうした、どうしたっ……!?」
実況「さぁ、アッと言う間ですっ! ケンがスタンディングのバイソンの飛びつき、そのままの勢いで丸め込んだぁっ!」
元「いいですね。上手いですね」
実況「そしてそして……アッと言う間にグラウンドでの腕ひしぎ逆十字固めの形へと持ち込んだぁっ!」
バイソン「おぉ……なんだ、なんだ……どうなってやがるっ……!?」
ケン「悪さすんのは、この腕か……? えぇ、バイソンよぉ……?」
バイソン「……えっ?」
ケン「だったら……二度と悪さが出来ねぇように……キツいお仕置きをしなくちゃ、いけねぇよなぁ……?」
バイソン「お、おいっ……ちょっと待て……ちょっと待てよ、ケンっ……!」
ケン「折れても泣きわめくんじゃねぇぞ……? うおおぉっ……!」グイッ
バイソン「!」
イケー! ケーン!
実況「さぁ、そしてここでケンがいったぁ! 腕ひしぎ逆十字固めだっ!」
ケン「……おらあぁっ!」グイッ
バイソン「あだだだだっ! 痛っ……痛ぇって……! お、おぉっ……!」
実況「さぁ、ロックの具合はどうでしょうかねぇ、元さん……?」
元「うん、いい感じに入ってるんじゃない? バイソン君、かなりきつそうだね」
バイソン「痛っ……痛ぇってのっ……! 折れる……折れるって……! やめろよっ……!」ジタバタ
ダン「おい、バイソン、ギブアップか?」
バイソン「ギブはしねぇよっ! あだだだだっ……! くそっ、そこ退けよっ……! ロープまで邪魔してんじゃねぇよ、この野郎っ……!」
ダン「お、おう……悪ぃな……」
バイソン「くそっ、ロープまで……ロープまで、逃げるんだ……」
ケン「……うるあぁっ!」グイッ
バイソン「あだだだだっ……! 痛ぇ……! 痛ぇってのっ……!」
実況「さぁ、バイソンが苦しんでいますっ! なんとかロープブレイクを狙おうと、必死に暴れています!」
バイソン「あだだだだっ……! くそっ、くそぉ……」ジタバタ
ケン「おめぇはサガットみてぇな怪力馬鹿じゃねぇからよぉ……?」
バイソン「……あぁ!?」
ケン「ロープまでの道のりは、遠いぞ……? 無事、辿り着けるかな……バイソン……?」
バイソン「おめぇ、調子に乗ってんじゃねぇぞ……? おめぇなんか、このバイソン様の手にかかれば……」
ケン「……うるああぁっ!」グイッ
バイソン「うおっ、痛ぇ痛ぇって……! ごめんなさいごめんなさいっ……! 調子に乗ってんは俺でしたっ! ケン君、ごめんなさいっ!」
ケ・ン! ケ・ン!
実況「さぁ、会場からは溢れんばかりのケンコール! ケン……このままバイソンを仕留める事が出来るかっ!?」
バイソン「くそっ……ロープまでの、道のりが遠いっ……! ちくしょうっ……!」
ケン「へっ、サガット相手じゃなくて、よかったぜ……」
バイソン「くそっ……くそっ……!」
ケン「さぁ、バイソン……このまま、腕を折られて、選手生命を終わりにするか……それとも、ギブアップするか……どっちだっ!?」
バイソン「ぐっ……! くそっ……絶対にロープまで、逃げてやるっ……!」
ケン「その意地が、何処まで続くかな……? うおおぉぉっ!」グイッ
バイソン「……ぐわああぁっ!」
実況「さぁ、バイソンはかなり苦しんでいますっ! ロープまでの道のりが遠いっ!」
ダン「おい、バイソンっ! ギブアップすんのかっ!?」
バイソン「……うるせぇっ! ノーだ、ノーっ! ギブアップなんかしてたまるかよっ!」
バイソン「おい、ケン……マジでいい加減にしろよ……? おめぇ、このままじゃ本気で折れちまうって……! いでで、いででで……」
ケン「……だったら、ギブアップしろよ? 腕は折れずに済むからよぉ?」
バイソン「ちくしょう……この野郎め……」
サガット「……チッ、バイソンの奴、何をしてやがる」
ダン「おい、バイソンっ! どうすんだ、ギブアップすんのか!?」
バイソン「ダンさん、この腕ひしぎ反則っすっよ……! ケンの奴を止めて下さいよ!」
ダン「見た所、何も問題はない……限界なのか? だったら、ギブアップでいいんだな……?」
バイソン「あっ……違いますって……! ギブはしませんってばっ! ただ、ダンさんはケンを止めてくれればいいんですよ!?」
ダン「お前ギブアップを宣言するなら、止めてやるぞ……? どうすんだ……?」
バイソン「ダンさんは話がわからない人っすねぇ……! いだだ、いだだだっ……!」
サガット「チッ、バイソンの腕にダメージを与えられ続けても困る……助けに行ってやるか……」
実況「おっと、ここで、サガットが動いたっ……!バイソンの救出に向かいます!」
ケン「……チッ、邪魔者が来やがったか」
バイソン「お、おうっ……サガット、助けてくれっ……! こいつを止めてくれっ……!」
サガット「……フン」
実況「さぁ、今……ゆったりとした動きで、サガットがバイソンの救出へと向かっています!」
ダン「おい、サガット……今、おめぇに試合権利はないんだぞ……? わかってるのか……?」
サガット「カットしに来ただけだ……すぐ帰るさ……邪魔だ、そこを退け……」
ダン「お、おう……わかったよ……」
ケン「くそっ、こうなりゃ……ギリギリまで、こいつの腕にダメージを与え続けてやる……腕を痛めつければ、こいつの攻撃力は半減するだろ……」
バイソン「お、おい……サガットっ……! こいつを止めてくれっ……! 早く……早くっ……!」
サガット「……」ジーッ
実況「さぁ、バイソンの救出に来たサガットですが……焦る事なく、ジッとケンとバイソンの二人を見下ろしています! これは、どうした事なんでしょうか?」
サガット「……フンっ!」
ケン「……えっ?」
バイソン「……おっ」
実況「おぉ~っと! ここで、サガットが高くジャンプして……」
サガット「……おらあぁっ!」ドスッ
ケン「……ぐえっ!」
バイソン「いいねぇ、サガット! ナイスナイスっ!」
実況「そのままケンとへとギロチンドロップっ! 巨体でケンの身体を押し潰しますっ!」
ブー、ブーブー
ダン「お、おいっ……! サガット……おめぇ、何、技仕掛けてんだよっ……!?」
サガット「これは、俺なりのカットだ……ダメージを与えつつ……バイソンを助ける……なかなか、いい戦法だろ……?」
ダン「……あのなぁ?」
サガット「まぁ、もう、用は済んだ……邪魔はせず、大人しくコーナーに控えさせてもらうよ……」
バイソン「いやぁ、サガットがいると心強ぇな! なんとか、助かったぜ!」
実況「さぁ、ここで先ずはバイソンが起き上がりました……が……」
バイソン「しかし、腕、かなりやられちまったなぁ……? 大丈夫かね……これ……?」
実況「少し、腕を気にしている様ですっ! 長時間の腕への攻撃で……やはり、ダメージが蓄積されしまったかっ!?」
ケン「く、くそっ……サガットの野郎……」ムクッ
実況「さぁ、ここでケンも起き上がりましたっ!」
ケン「折角、いい感じに攻めてたのによぉ……邪魔しやがって……」
実況「ケンも先程のサガット攻撃のダメージを気にしてるようですっ!」
バイソン「よっしゃ、それじゃあ、ケン君! フットワーク勝負を始めましょうっ! あっ……言っておくけど、反則攻撃なしだよ?」
ケン「……おめぇが言うんじゃねぇよ」
ケン「バイソン……悪いが、おめぇは俺より格下だ……」
バイソン「……あぁ?」
ケン「今、ここで無茶する必要もねぇ……サガットの糞野郎に邪魔されちまったし……俺は、少し休ませてもらうぜ……」
バイソン「勝手に人を格下呼ばわりして、自分は逃げるってどうなの? ねぇねぇ、それってどうなの?」
ケン…おめぇごときは、ヤムチャで十分だよ……ヤムチャに勝てたら、俺様が直々に相手してやるよ……」
バイソン「ふ~ん……まっ、いいけどさ……どうせ、お前ら二人ともボコボコにするつもりだったしさ……」
ケン「よし……ヤムチャ、交代だっ! アイツは今なら、まだ腕にダメージが残ったままだ……おめぇが、仕留めちまえっ!」
実況「おっと、ここで、ケンはコーナーに引き下がり……ヤムチャ交代しますっ!」
元「スタミナ温存してきましたね」
ヤムチャ(……来たっ!)
ケン「よし、二回目だ……頑張れよ……ヤムチャ……」
ヤムチャ「う、うっすっ……!」
実況「さぁ、ここで試合権利はヤムチャに移りました! ヤムチャが今、リングインしますっ!」
バイソン「よ~しっ! 次はおめぇか……ボコボコにしてやるから……覚悟するんだな!?」
ヤムチャ(ここから、5分……また、5分アドリブで攻防作らなくちゃいけない……)
バイソン「ヘイヘイ、ヤムチャ君~! かかってきなさ~いっ!」
ヤムチャ(次にケンさん交代する時……どういった状況で繋げるか……それを少し考えてみるか……)
実況「さぁ、ヤムチャがリングインして……これは、間合いを測っているのでしょうかねぇ、元さん?」
元「そうだね。打撃スタイルみたいだし……間合いを測ってるんじゃないかな?」
ヤムチャ(お、おっと……! やべぇ、じっくり考えてる暇なんてねぇや……仕掛けねぇと……!)
ヤムチャ(とりあえず蹴り打って、前の試合みたいにガードしてもらおう……いくぜっ!) シュッ
実況「さぁ、先ずはヤムチャが蹴りを仕掛けますっ!」
バイソン「おぉっ……! ぐわぁっ……!」
ヤムチャ(えっ……? ちょっと待てちょっと待て……バイソンさん、ガードしてくれよ……)
実況「さぁ、バイソンにヒットォ! ヤムチャ……得意の打撃攻撃でバイソンにダメージを与えていきますっ!」
ヤムチャ(おいおい、ちょっと待てよ……なんで、バイソンさんガードして……)
バイソン「くそっ、この野郎……やるじゃねぇか、おい……」
ヤムチャ(やべぇぞやべぇぞ……どうするどうする……とりあえず、もう一発打ってみるか!?)
ヤムチャ「……うるぁっ!」シュッ
バイソン「……ぐっ!」
実況「さぁ、そして、もう一発っ! ヤムチャが攻めます!」
イケー! ヤムチャー!
ヤムチャ(おいおい、お客さんの声援が始まっちまったぞ……? これって、俺が攻めなきゃいけねぇ、雰囲気か……?)
バイソン「くそっ、この野郎……」
ヤムチャ(と、とりあえず……蹴りだ……やべぇ、考えが追いつかねぇ……) シュッ
バイソン「ぐっ……! うおっ……!」ヨロッ
実況「おぉ~っと、ここでバイソンが少し、フラついたかぁ!?」
元「チャンスですね。一気に攻めましょう」
ヤムチャ(やべぇぞやべぇぞ……バイソンさんと意思疎通が出来てねぇ……! 俺はガードしてもらいたいのに、バイソンさんは受けてくれてる……)
バイソン「くそっ……チョロチョロ蹴飛ばしやがって……」ヨロヨロ
ヤムチャ(とにかく、相手はフラついてんだ……! このタイミングは……仕掛けなきゃおかしいだろっ……!)
バイソン「……ん?」
実況「おぉ~っと! ここで、ヤムチャがバイソンに素早く近づいて……」
ヤムチャ「……うおおおぉぉっ!」グイッ
バイソン「う、うおっ……!」
実況「強引に抱え上げていったぁっ!」
ヤムチャ「うるあぁぁっ! ボディスラムだぁっ!」ドシーンッ
バイソン「……ぐっ!」
実況「そして、強引に落としていくっ! ヤムチャの荒々しいボディスラムだっ!」
ヤムチャ(くそっ、やっぱり、ボディスラムじゃお客さんの声援はこねぇな……やっぱり、見栄えがよくねぇって事なのか……)
バイソン「くそっ……舐めやがって……」
ヤムチャ(仕方ねぇ……ここはトラースキックを仕掛けて……)
実況「さぁ、ヤムチャがバイソンをダウンさせました!」
元「ここから、どう仕掛けていくんですかね」
ヤムチャ「よしっ……! トラースキックの構えに入って……」
バイソン「ううっ……だが、この程度の投げだったら……まだまだ大丈夫だぜ……」
ヤムチャ(いや、待てっ……! まだ、1分も経ってねぇんじゃねぇか……? ここで、トラースキック打って……バイソンさんにダメージ与えて大丈夫なのかっ……!?)
ヤムチャ(トラースキックを打つって事は……バイソンさんに大ダメージを与えるって事だよな……?)
バイソン「……くそっ、俺もそろそろ行かせてもらうかね?」
ヤムチャ(大ダメージを与えるって事は……バイソンさんは、サガットさんに交代しちまうんじゃねぇか……? まだ、1分も経ってねぇのに、交代していいのか!?)
バイソン「へっ……よし、じゃあ、そろそろ起き上がって……」モゾモゾ
ヤムチャ(やべぇ、 バイソンさん、動いてる……! これ、起き上がろうとしてんじゃねぇか? こっちはまだ、考えが纏まってねぇのに……!)
バイソン(……ヤムチャ君、トラースキックの構えしてないなぁ。 何か、違う技する気なのかな? じゃあ、とりあえず起き上がってみるか)
ヤムチャ「や、やべぇ……! とりあえず、エルボードロップだっ! うおおおっ!」ドスッ
バイソン「うおぉっ……ぐっ……!」
実況「さぁ、ここでエルボードロップっ! ダウンしたバイソンに肘を落としていきますっ!」
ヤムチャ(くそっ、とにかく、トラースキックは今はまだ、早いっ……!)
バイソン「ぐっ……くそっ……蹴りに肘……! おめぇ、ボクシングの世界だったら、反則王だぞっ!」
ヤムチャ(ここまでの攻防で、バイソンさんはあまりダメージを食らってねぇから……俺のトラースキックでダメージ与えて、交代させるのが、一番ベストだろっ……!)
実況「さぁさぁ、ここからヤムチャ……どう攻めるっ!?」
ヤムチャ(トラースキックを打つにはまだ早い……今は、別の技で攻めよう……!)
バイソン「くそっ、こいつ、調子に乗ってやがるな……ちくしょう……」
ヤムチャ「おいっ、バイソンっ! 起きやがれっ!」
バイソン「……ん?」
実況「さぁ、ここでヤムチャがバイソンを引きずり起こしますっ!」
ヤムチャ「……よっとっ!」
バイソン「……ぬっ!?」
実況「さぁ、そして……そのまま、バイソンの背後を捉えたっ!」
ヤムチャ「……バックドロップで攻めるっ! うおおおぉぉっ!」グイッ
バイソン「うおおっ……おおぉぉっ……!」
実況「そして……そのままバイソンの身体を、荒々しく持ち上げて……」
ヤムチャ「……うるあぁぁっ!」ドシーンッ
バイソン「……ぐっ!」
実況「そして、そのまま強引に落としていったぁ!」
元「バックドロップ……ですかね……?」
ヤムチャ(くそっ、くそっ……何でだよ……どうしてだよ……)
バイソン「……うぐっ」
ヤムチャ(俺、凄い技したじゃねぇか……どうして、お客さんが湧いてくれねぇんだよ……)
実況「さぁ、ヤムチャが再び、バイソンをダウンさせました!」
元「いい感じに攻めてるんじゃない? ここから、どう行くかだね」
ヤムチャ(くそっ……やっぱり、お客さんはトラースキックを待ってるって事なのか……!?)
バイソン「……ちくしょう。好き放題やりやがって」
ヤムチャ(だけど……ここで、打つにはまだ早ぇよなぁ……? くそっ、何かいい方法はねぇか……)
ヤムチャ「と、とりあえず……」ドスッ
バイソン「……ぐっ!」
実況「さぁ、そしてここで再び、エルボードロップ! ダウンしたバイソンに追い討ちしていきます!」
ヤムチャ「ううっ……くそっ……! バイソン、起きやがれっ!」
バイソン(ヤムチャ君、どうする気なんだろ……? とりあえず、付き合ってみるか……)
実況「さぁ、そして……再び、バイソンを引きずり起こしたぁっ!」
ヤムチャ「……うるぁっ!」
バイソン「……んっ?」
実況「そして、再びバイソンの背後を捉えるっ! さぁ、ここからどう攻める!?」
ヤムチャ(とにかく……お客さんに、凄ぇ技って、思われねぇと……)
バイソン(えっ……? また、バックドロップするのかな……?)
ヤムチャ「……うるあぁぁっ! もう一発、行くぜオイっ!」
バイソン「……ん?」
実況「おっと、ここで、ヤムチャが声を張り上げたぁ!」
ヤムチャ(よし、今度はお客さんを煽ってみよう……一発でダメでも、二発三発って連続で打てば……) グイッ
バイソン「うおおっ……おおっ……!」
実況「さぁ、そして……ここで再び、ヤムチャがバイソンの身体を強引に持ち上げたぁっ!」
ヤムチャ(お客さんは凄ぇ技だって、思ってくれるだろっ……! これが俺の新必殺技……『連続バックドロップ』だっ!) ドスーンッ
バイソン「……ぐっ!」
実況「そして、再び、叩きつけるっ! ヤムチャの強引なバックドロップ、二連発っ!」
ヤムチャ(くそっ、まだ声援はねぇか……だがっ……!)
バイソン「……うぐぐ」
ヤムチャ「……うるあぁぁっ!」ドスッ
バイソン「……ぐっ!」
実況「さぁ、ダウンしたバイソンに……またも、ヤムチャがエルボードロップで追い討ちをします!」
ヤムチャ「よっしゃ、 もう一発だっ! バイソン、起きやがれっ!」
バイソン「……う、ううっ」ヨロッ
実況「そして……再び、ヤムチャがバイソンを引きずり起こしますっ……!」
ヤムチャ「よっしゃ、三連発だっ! 行くぜオイっ!」
バイソン「……ぬっ?」
実況「そして、再びバイソンの背後を捉えたぁ!」
ヤムチャ「……うおおおぉぉっ! 行くぜっ!」ググッ
バイソン(ちょっと、待ってよ……また、バックドロップ!? ヤバいな……少し、ヤムチャ君を泳がせすぎたみたいだな……)
ヤムチャ「行くぜ、三発目だっ……! うおおおぉぉっ!」
バイソン(交代したばかりだから、いい所作らせてあげようと思って、技受けてたけど……流石にこれはやりすぎだよ、ヤムチャ君……)
実況「そして……今、ヤムチャが三発目を仕掛けようと……」
バイソン「同じ技を何度も何度もしやがって……攻めが単調なんだよ! バイソン様を舐めんじゃねぇっ!」
ヤムチャ「……ん?」
バイソン「……うるぁっ! フンっ!」ガスッ
ヤムチャ「えっ……? うおっ……ぐっ……!」
実況「おっと……ここで、バイソンが背後を取っているヤムチャに対してエルボーバット! 流石に、三度目にはいかせませんっ!」
バイソン「オラオラ、 邪魔だっ! 背後霊みたいに張り付いてんじゃねぇよっ! 鬱陶しいだよっ!」ガスガス
ヤムチャ(お、おおっ……これはロック外せって事かな……? バイソンさんが俺を攻めてくれるのかな……?)
実況「おぉ~っと! バイソンのエルボーバットの連続で……たまらず、ヤムチャはロックを外してしまったぁ!」
バイソン「……ったく、調子に乗りやがって」ズガズガ
ヤムチャ「……ん?」
バイソン「……うるぁっ! 俺の石頭を喰らいなっ!」ゴチーンッ
ヤムチャ「う、うおっ……!」ヨロッ
実況「さぁ、そして、バイソンはそのままヤムチャに近づいて、ヘッドバッド! 硬い硬い石頭をヤムチャにぶつけます!」
ヤムチャ「お、おおっ……」ヨロヨロ
バイソン「いい具合にフラついてくれたな……よし、いくぜ……」ダダッ
実況「さぁ、石頭の攻撃フラつくヤムチャ! バイソンはそれを尻目にロープへと走ったっ!」
ヤムチャ(おう……バイソンさん、攻撃仕掛けてくれたのか……でも、出来ればバックドロップ、もう一発打ちたかったなぁ……)
バイソン「よっしゃ……このまま決めてやるぜ……」
実況「そして、バイソンはロープの反動を利用して、勢いをつけて帰ってきたぁっ!」
ヤムチャ(よし、何か、技か来るんだな……上手くやられるぞ……)
バイソン「……うおおおぉぉっ! バイソン式アックスボンバーだっ!」
ヤムチャ「ぐ、ぐわああぁぁっ……!」
実況「決まったぁ! バイソン式アックスボンバーっ! これを食らってヤムチャ……大きくダーウンっ!」
元「……痛いの貰っちゃいましたね」
実況「確認しておきますが、これは反則技ですっ! バイソン式アックスボンバーとは……ただの反則技でございますっ!」
ヤムチャ「ぐわっ……」バターンッ
バイソン「へへ、どうだっ! 見たかっ!」
ブー、ブーブー
実況「場内からは大ブーイング! バイソンに対して大ブーイングでございますっ!」
バイソン「ブーイング上等上等っ! オラオラ、続けて行くぜっ! お前ら、よく見ておけよ!?」
ヤムチャ(おっ……バイソンさん、また、攻撃してくれるんだな……)
バイソン「よし、ダウンしてる今がチャンスだっ……! 行くぜっ……!」ダダッ
実況「おっと、バイソンそのままコーナーへ!」
バイソン「へへ、行くぜぇ……」
実況「さぁ、そして……そのままバイソンが、コーナーポストへとのっそのっそと登り……」
元「トップロープからのダイビング攻撃……狙ってますね……」
ヤムチャ(う~ん……何ていうか、ね……)
ブー、ブーブー
バイソン「うるせぇっ! 今からダイビング攻撃するんだからよぉ……もう、ブーイングはいいんじゃねぇか? なぁ?」
ヤムチャ(俺が攻撃して、お客さん沸かせようとしても……全然上手くいかないのに……バイソンさんは、あっさりブーイング貰えてさぁ……)
バイソン「よし、ヤムチャ……行くぜ……」
ヤムチャ(こういうの負け犬根性って言うのかね……攻撃するより……攻撃されてる方が楽だわ……)
バイソン「よし、いくぜっ……! うおおおぉぉっ……!」
実況「さぁ、バイソンがコーナーポストから跳んだあぁっ!」
バイソン「うるああぁっ!」ドスッ!
ヤムチャ「……ぐっ!」
実況「決まったぁ! バイソンのダイビングヘッドバッドっ! コーナーポストから跳んで、そのまま自分の頭をヤムチャに叩きつけるっ!」
バイソン「へへ、どうだっ! この野郎っ!」
ヤムチャ(くそっ、くそっ……勝敗が決まってるのに……バイソンさんは攻撃を受けてくれてるのに……)
バイソン「よっしゃ、よっしゃ……このまま続けていくぜ……」
ヤムチャ(俺は何も出来ない……ここでも、何も出来ず、負け犬になってしまうのか……)
実況「さぁさぁ、バイソンの大技二連発っ! 流れを自分に引き寄せますっ!」
元「う~ん……ちょっと、ヤムチャ君、苦しい展開だねぇ……」
ヤムチャ(いや、そんな事はねぇ……! バイソンさんは、攻撃を受けてくれるんだから……! きっと、後一度や二度は反撃のチャンスが来るはずだっ……!)
バイソン「へへ、ほらほら……起きやがれ……」
ヤムチャ「……ううっ」
実況「ここで、一度バイソンがヤムチャを引きずり起こします!」
バイソン「オラオラっ! 土手っ腹に連続で行くぜっ!」ゴスゴス
ヤムチャ「う、うおっ……!」
実況「そして、腹部にボディブローの連打を与えていきますっ!」
バイソン「ヘイヘイ、耐えれるか~い? ヤムチャ君~」ゴスゴス
ヤムチャ「ぐっ……ぐぐっ……」
バイソン「オラオラっ……連続ボディブローからの……」クルッ
ヤムチャ「……ん?」
バイソン「……裏拳だあぁっ!」ガスッ
ヤムチャ「……ぐわっ!」ヨロッ
実況「おっと、ここで裏拳っ! バイソンが自らの身体をくるっと一回転して、その勢いのまま、ヤムチャに拳を与えていきましたぁ!」
バイソン「ヘイヘイ、どうした、ヤムチャ君~! 相手になんねぇぞ~!」
ヤムチャ「ううっ……くそっ……」
実況「さぁ、バイソン、余裕綽々でありますっ! ヤムチャを挑発していくっ!」
ブー、ブーブー
バイソン「ブーイング上等っ! ホラ、行くぜっ……!」ブンッ
ヤムチャ「……くっ!」
バイソン「オラっ! もう一丁っ!」ブンッ
ヤムチャ「……ん?」
実況「そして、ここでナックルパートっ! バイソン、打撃攻撃で攻めていきますっ!」
バイソン「オラァっ!」ブンッ
ヤムチャ(バイソンさん……やけに大振りで、殴ってくるなぁ……)
バイソン「……フンっ!」
ヤムチャ(これって……ひょっとして、俺に反撃のチャンス与えてくれてるんじゃ……)
バイソン「……うおおぉっ!」
実況「さぁさぁ、バイソンのナックルパート攻撃! ヤムチャ、防戦一方ですっ!」
バイソン「……おらぁっ! とどめは、裏拳だぁ!」クルッ
ヤムチャ(もし、反撃の隙を与えてくれてるんだったら……これは避けなきゃ……)
実況「おっと、そして……バイソンが再び身体を回転させて……」
元「裏拳に行きましたね」
ヤムチャ(でも、避けたら……俺も大技をしなきゃ……どうするどうする……!? いっそ、この裏拳、喰らっちまうか!?)
バイソン「……うるああぁっ! 死ねぇぇっ!」
ヤムチャ「……くそっ!」
バイソン「うおっ……何っ……!?」スカッ
実況「おっと、ここはヤムチャが上手く身体を屈めて避けたぁ!」
元「いいですよ! よく、見てますっ!」
ヤムチャ(くそぉ……こうなりゃ、破れかぶれだ……どうしていいかわかんねぇけど……やるしかねぇっ……!)
イイゾー! ヤムチャー!
ヤムチャ(お客さん声援を送ってくれてるんだ……だったら、連続バックドロップしたら、きっと声援もらえるだろ……)
バイソン「うおおっ……おっと……」ヨロッ
ヤムチャ(何もしないで、ただただやられるなんて格好悪い真似なんて出来るかよ……! 俺は負け犬なんかじゃねぇ……狼だっ……!)
ヤムチャ「……うるあぁっ!」ググッ
バイソン「……うおぉっ!」
実況「さぁ、そして、無防備になったバイソンの背後をヤムチャが掴んだっ!」
ヤムチャ「バックドロップっ……! 先ずは、一発目……うおおぉぉっ……!」ググッ
バイソン「おおっ……うおおぉぉっ……!」
実況「そして、そのまま強引に持ち上げたぁっ!」
ヤムチャ「……うるあぁぁっ!」ドシーンッ
バイソン「……ぐっ!」
実況「そして、そのまま落としていくっ! ヤムチャの強引なバックドロップっ!」
ヤムチャ「そして……エルボードロップっ……! うおおぉぉっ!」ドスッ
バイソン「……ぐっ!」
実況「そして、バイソンにエルボードロップっ! 肘を落としていくっ!」
ヤムチャ「オラ、バイソン……起きやがれっ……!」
バイソン「あのさ……! ヤムチャ君……トラースキック仕掛けてもいいんだよ……!?」
実況「そして、ダウンしたバイソンを引きずり起こし……」
ヤムチャ「いや、考えがあるんですよ……バイソンさん、付き合って下さいっ……!」
バイソン「えっ……? ヤムチャ君、ジャーマンとか覚えたっけ……? ここから、どうするつもりなの……?」
実況「再び、バイソンの背後を捉えたぁっ!」
ヤムチャ「うるぁ! 二発目行くぜ、オイっ!」
バイソン「二発目……? って、事は……やっぱり……」
ヤムチャ「うおおぉぉっ……! 連続バックドロップ……」ググッ
バイソン「違う違うっ……! 連続バックドロップってのは、そうじゃない……ヤムチャ君……ダメだって……!」
実況「そして、再びバイソンの身体を強引に持ち上げたぁっ!」
ヤムチャ「二発目だあぁぁっ! うおおおぉぉっ!」ドシーンッ
バイソン「……ぐぐっ!」
実況「そして、再び強引に落としていくっ!」
ヤムチャ「……よしっ! こうなりゃ、お客さんの反応があるまで、やってやるぜっ!」
観客「ヤムチャ~!」
ヤムチャ「おっ……? やった……もう、来たぜ、お客さんの反応が、二発目で来たぜっ!」
観客「おめぇ、同じ技、何度もやるつもりなんだよ~! しょっぺぇんだよ~!」
ヤムチャ「……ん?」
観客「違う技見せろっ! 違う技をよぉっ!」
ヤムチャ「あれ……? あっちのお客さんも……」
観客「狼牙風風拳仕掛けろや! 狼牙風風拳をよぉっ!」
ヤムチャ「あれ……? あっちのお客さんまで……な、なんだよ……この反応……」
狼牙風風拳っ! 狼牙風風拳っ!
実況「おぉ~っと! ここで場内から、狼牙風風拳コールっ!」
元「そうですね。もう、仕掛けてみてもいいんじゃないですかね?」
ヤムチャ「ちょっと待て……俺が想像してた反応と違う……なんだよ、コレ……」
狼牙風風拳っ! 狼牙風風拳っ!
ヤムチャ「お、おい……待ってくれよ……何で、お客さん、狼牙風風拳期待してんだよ……」
バイソン(あぁ、くそっ……やっちまったなぁ……どうするどうする……)
ヤムチャ「ここで、俺に狼牙風風拳打てってのか……待てよ、まだトラースキックも打ってねぇんだぞ……」
実況「さぁ、会場の声援がヤムチャを後押ししますっ!」
狼牙風風拳っ! 狼牙風風拳っ!
ヤムチャ「くそっ、これは狼牙風風拳打つのが正解なのか……? でも、それやったら、最後の5分はどうすればいいんだよ……」
バイソン(くそっ、どうする……俺が、反則技で何か上手く、流れを変える方法……あるか……?)
ヤムチャ「あぁ、くそっ……間が空いちまう……と、とりあえず……」
ヤムチャ(連続バックドロップは中止だ……! ここでバックドロップ打つのは、大失敗の予感しかしねぇ……だからっ……!) ググッ
バイソン(くっ、考えが固まってねぇのに、ヤムチャ君が構えちまった……くそっ、仕方ねぇ……)
実況「おぉ~っと! ヤムチャが構えたぞっ! 出るのか、狼牙風風拳っ!」
オー! イケー、ヤムチャー!
元「いや、コレ、トラースキックキックでしょ……狼牙風風拳とは、構えが違うね……」
実況「おっとっ……私、勇み足でした! これは、トラースキックキックですね? ヤムチャは、バイソンの起き上がりに、合わせてタイミングを計っているっ!」
ヤムチャ(……ここは、トラースキックからだっ! 狼牙風風拳は、まだ早いだろっ!)
バイソン(くそっ、トラースキックか……どうするどうする……)
実況「さぁ、ヤムチャがバイソンの起き上がりを待ち……」
バイソン「……ううっ」ムクッ
ヤムチャ「今だっ……! うおおおぉぉっ……!」
バイソン「……何っ!?」
ヤムチャ「うるあぁぁっ!」スパーンッ
バイソン「……ぐわああぁっ!」
実況「トラースキックを打ち当てたぁっ! バイソン、激しく吹っ飛び、大きく転がるっ!」
ヤムチャ(ど、どうだっ……!? トラースキックは、俺出来てるんだろ!? これで、お客さんは声援をくれるはずっ……!)
観客「舐めてんじゃねぇぞ、ヤムチャ~!」
ヤムチャ「!」
観客「狼牙風風拳を見せろって行ってんだよ! 聞こえてんのか、コラァ!」
ヤムチャ(お、おい……待ってくれよ……トラースキックは俺の中で見栄えのいい技なのに……)
ブー、ブーブー
ヤムチャ(ブーイング……!? 嘘だろ……? 俺、ヒールじゃないぜ……?)
バイソン(やっぱり、こうなったか……だが、このタイミングで……)
実況「おっと……激しく、吹っ飛んだバイソンが……」
バイソン「……うおおおぉぉっ」ゴロゴロ
実況「そのまま、転がりながら、サガットのいるコーナーの元へっ!」
バイソン「サガット、悪ぃ……トチっちまったよ……なんとか、流れを変えてくれ……」
サガット「任せろ。俺が場を荒らしてやる……お前も準備しておけ……」
実況「そして、ここでサガットにタッチだっ! ダメージを食らったバイソンは、一目散に逃げ出しましたっ!」
ヤムチャ(試合前にケンさんが言ってた、ブーイングを食らっちまうって……こういう事だったのか……)
ブー、ブーブー
実況「これには、お客さんも大ブーイングっ!」
元「お客さんも狼牙風風拳煽ってたからねぇ……まぁ、バイソン君はそれを感じて逃げ出したんだろうね……」
バイソン(ふぅ……上手く、ブーイングのタイミングと、逃げ出すタイミングが合ってるといいな……)
実況「さぁ、ここでリングにはサガットが出ます、が……」
サガット「……いくぞ」
ヤムチャ「……ん?」
実況「片足を上げた構えで……これは、空手スタイルでしょうか? 打撃勝負を挑もうというのか?」
元「いや、ムエタイスタイルでしょう。まぁ、打撃勝負でいくんじゃないかな?」
サガット「いくぞっ……! 先ずは蹴りだっ……!」シュッ
ヤムチャ「うおっ……早っ……! ぐっ……」
サガット「……はあぁっ!」
実況「……おっと、早いぞっ! 鋭い蹴りがヤムチャに突き刺さりますっ!」
ヤムチャ(痛ぇっ……! サガットさん、また痛いの打ってきてるよ……怒ってんのかなぁ……)
サガット(今、この流れで……半端な蹴りを打つ事は命取りだ……だから……)
ヤムチャ「痛ぇ……くそ……」
サガット(悪いが、本気で行かせてもらうっ……! うおおぉぉっ……!) シュッ
ヤムチャ「うおっ……ぐっ……!」ヨロッ
実況「さぁさぁ、サガットの鋭い蹴りヤムチャをロープ際へ押し込んでいくっ!」
サガット(ヤムチャ君はセルゲームにも参加してたんだろう……? 得体の知れない宇宙人とも戦ったんだろう……? そんな奴に比べれば、俺の蹴りなど、ゴミみたいなものだろう……)
ヤムチャ(うおっ……来るのわかって受けるって、怖ぇな……まぁ、見切れねぇ事はないから……急所だけは避けるか……)
サガット(ヤムチャ君、少しの我慢だ……わかって受けてくれっ……!) シュッ
ヤムチャ(くっ、また来たっ……! まぁ、耐えれねぇ事はねぇけどさ……それでも、痛ぇもんは痛んだってっ! サガットさん、ゴメンってっ!)
実況「さぁさぁ、サガットの鋭い蹴りだっ! 鋭い蹴り技を連続でヤムチャに見舞う!」
元「いい蹴り持ってますねぇ……サガット君、元ムエタイだったからかな?」
サガット「……オラオラっ!」ゴスゴス
ヤムチャ(うおっ、凄ぇ攻めて来てるなぁ……ん……?)
サガット「……うおおおぉぉっ!」
ヤムチャ(あっ、やべぇ……ロープ際まで押し込まれちまった……この後、どうしよう……そろそろダウンしようかな……?)
実況「おっと、ここでヤムチャロープ際まで押し込まれてしまったぁっ!」
サガット「よし、腹に行くぞ……うおおおぉぉっ……!」
ヤムチャ(……よし、これ喰らってダウンするか)
サガット「……うるあぁぁっ!」ガスッ
ヤムチャ「……ぐわああぁっ!」ガクッ
実況「おっと、ここで鋭い蹴りがヤムチャの腹に入ったぁ!」
サガット「……まだだっ! まだ寝かさんっ!」グイッ
ヤムチャ「……ん?」
実況「おっと、ここでサガットがヤムチャの身体を掴み……」
サガット「場外戦だっ!落ちろ、ヤムチャっ!」ググッ
ヤムチャ「おぉっ……うおおぉぉっ……」
実況「そのままヤムチャを、強引に場外に落としていったぁ!」
ダン「場外か……よし、カウントとるかね……」
サガット「よし、ヤムチャ……そのまま場外仕留めてやるっ……!」
ダン「ん……? お、おい、サガットっ……!?」
実況「そしてサガットも、場外にヤムチャを追いかけに行ったぁっ!」
元「シャドルーの場外戦って……嫌な予感しかしないけど……まぁ、仕掛けて来ましたね……」
サガット「おいっ! お前、シャドルーのTシャツ着てるな!? だったら、椅子寄こせっ!」
男「うっす! 使って下さい、サガットさんっ!」
サガット「よし……お前はファンの鑑だな! ありがとな!」
実況「おっとおっと、早速ですっ! 早速、サガットが椅子手にしました!」
ヤムチャ「ううっ……ぐぐっ……」
サガット「いくぞ、死ねっ……! うおおおぉぉっ……!」ビターンッ
ヤムチャ「……ぐわああぁっ!」
実況「そして、パイプ椅子攻撃をヤムチャにお見舞いだぁ!」
ダン「おいっ!サガット、何やってんだよっ! 椅子はやめろ、椅子は!」
ヤムチャ(よかったぁ……サガットさん、今度は加減してくれてるや……そんなに痛くねぇ……)
サガット「うおおおぉぉっ! もう一発っ!」ビターンッ
ヤムチャ「……ぐわああぁっ!」
サガット「よし、そうだな……次は……」
ヤムチャ(パイプ椅子攻撃より、蹴りの方が痛いってどういう事だよ……サガットさん、気分屋なのかね……)
実況「さて、場外でヤムチャがサガット反則攻撃に苦しめられていますっ!」
元「シャドルー軍団は、凶器の使い方が上手いからね」
ケン「くそっ、サガットの野郎……好き勝手にしやがって……」チラッ
バイソン「……おっ?」
ケン「待ってろ、ヤムチャ……! 今、助けに行ってやるっ……!」
キャー! ケーン!
実況「おっと、ここでケンが動く! ヤムチャのピンチにケンが動く!」
バイソン「簡単行かせてたまるかよっ! うおおおっ……!」ダダッ
ケン「……ん?」
実況「おっと、だがしかし、バイソンも動いたっ! 素早い動きでリングインしtて……」
ケーン! ウシロー!
ケン「何っ……!? バイソンっ……!」
バイソン「……うおおおぉぉっ!」
実況「そして、そのままケンに突っ込んで行ったぁ!」
バイソン「……おらあぁっ!」ガスッ
ケン「ぐっ……! う、うおっ……!」
実況「そして、そのまま攻撃を仕掛けていったぁ!」
元「おっと、危ない……縺れるようにして、二人共場外へ落ちましたね……」
サガット「オラっ! 起き上がれ、ヤムチャっ……!」
ヤムチャ「……ううっ」ムクッ
実況「おっとおっと……サガットが、ヤムチャを引き起こし、何かをしようとしているぞ……!」
サガット「鉄柵に叩きつけてやるっ……! 行くぞっ……!」
ヤムチャ(鉄柵……? あっ、お客さんの前に設置されてるフェンスか……あれにぶつけるつもりなんだな……)
サガット「うおおぉぉっ……いくぞ、おらああぁぁっ……!」ブンッ
ヤムチャ「う、うおおっ……おおっ……」
実況「そして、サガットがヤムチャを鉄柵目掛けて、振ったぁ! パイプ椅子攻撃の次は鉄柵攻撃か!?」
元「……反則攻撃のオンパレードですね」
ヤムチャ「……う、うおっ!」ガシャーンッ
キャー! キャー!
実況「そして、ヤムチャは鉄柵に激突っ!」
ヤムチャ(くそっ……これだけ目の前で鉄柵にぶつかれば、お客さんは反応してくれるな……)
サガット「……よしっ! 行くぞ、うおおぉぉっ!」ダダッ
ヤムチャ(でも、俺は……技を打って、反応してもらいてぇんだよ……)
実況「さぁ、そしてサガットはヤムチャ目掛けて、猛ダッシュっ!」
サガット「……おおおぉぉっ!」
ヤムチャ(くそっ、どうすればいいんだ……どうしたら、いい所を見せてお客さんに反応してもらえるんだ……)
サガット「……うるあぁぁっ!」ゴスッ
ヤムチャ「……ぐっ!」
アブネェ! コッチ、クルカモシレネェゾ!
実況「さぁ、そして、そのままヤムチャにビックブーツ!」
元「下手したら、観客席の方へ転がっちゃうよ……も~う、危ないねぇ……」
実況「ゆったりした動きながらも、打点の高い正面蹴りをヤムチャに見舞っていきます! 肩口辺りにヒットしたかっ!?」
ヤムチャ「……ぐっ!」
サガット「フッ、言い様だな……ヤムチャ……」
ヤムチャ「ぐっ、くそっ……」
サガット「だが、まだだ……まだ、終わらんぞ……」
バイソン「オラオラ、場外戦だぜっ! 覚悟はいいか、ケン君よぉ!?」
ケン「ぐっ、くそっ……バイソン……」
バイソン「ヘイヘイ、起きろ起きろっ! ケン君よぉ!」
ケン「うるせぇ、おめぇは引っ込んでろ……おめぇなんて眼中にねぇんだよ……サガットの所に行かせろや……」ムクッ
ダン「お~い、バイソン、ケンっ! おめぇらまで場外でやり合うんじゃねぇよ! 何やってんだ!」
バイソン「ヘイヘイ、ケン君……そうは、行かないぜ……オラっ! バイソンパンチだっ!」ガスッ
ケン「……う、うおっ!」
バイソン「オラオラっ……! もう一丁っ!」ガスッ
ケン「……ぐっ!」
ダン「おいっ! お前ら、話聞いてんのかよぉ!? それに、パンチを使うなバイソンっ!」
バイソン「オラオラっ! くたばりやがれ、ケンっ……!」ガスガス
ケン「……ぐっ、ううっ」
ケーン! ガンバッテー!
バイソン「ホラホラ、ケン君、頑張ってっ! 頑張らないと……その自慢の顔が、とんでもない事になっちゃうかもね!?」ガスガス
ケン「くそっ……こいつ、舐めやがって……」
バイソン「……オラっ! ボディブローっ!」ゴスッ
ケン「……ぐっ!」ヨロッ
バイソン「よ~し、いい具合に、ふらついてくれたな……それじゃあ、鉄柵にでもぶつけてやるとしましょうかね……」
ケン「……くそっ」
バイソン「オラ、ケン……鉄柵まで……行ってこいやぁ!」ブンッ
ケン「……う、うおぉっ!」
ダン「お、おいっ! バイソン、おめぇ何処に投げてんだよっ! お客さんが危ないだろうがっ!」
ケン「……うおっ!」ガシャーンッ
キャー! ケーン!
バイソン「おうおう、派手にぶつかってるねぇ……いやぁ、いい眺めだわ……」
ダン「おいっ、バイソン! 勝手に暴れてんじゃねぇよ! いい加減にしやがれっ!」
バイソン「何、言ってるんですかダンさん……場外戦もプロレスの醍醐味でしょう……」
ダン「そもそもお前らは今、試合権利を持ってねぇだろが! 大人しくしておけや!」
バイソン「へいへい……わかりました、わかりましたよ~っと……」
ダン「……おっ、わかってくれたか! バイソン!」
バイソン「じゃあ、最後に……バイソン式アックスボンバーだけやらせて下さいね……」グルグル
ダン「今すぐ戻れって言ってんだよ! おめぇ、話聞いてんのか!?」
バイソン「いやいや……もう、予告アピールしちゃいましたよ……それに、今大チャンスなんっすよ!?」
ダン「おめぇらが大人しくしとかねぇと、サガット達の場外カウント取れねぇだろうが!」
バイソン「あっ、俺達は構わずカウント取ってくれても構いませんよ? それじゃ、行ってきますっ……! うおおおぉぉっ……!」ダダッ
ダン「おい、バイソン! 待て、行くな、バイソン! くそっ……アイツ、何も理解してねぇじゃねぇか……」
バイソン「ヒャッハァー! 死にやがれ、ケンっ!」ダダッ
ケン「真正面から、突っ込んで来やがって……牛みてぇな奴だな……」
バイソン「行くぜっ! バイソン式……アックス……」
ケーン! シッカリシテー!
ケン「わかってるよ……! うるぁっ! カウンターだ、喰らえっ!」ガスッ
バイソン「ん……? う、うおっ……!」ヨロッ
キャー! ケーン!
ケン「ったく……正面から真っ直ぐ突っ込んで来やがって……動きが単調なんだよ……おかげで、簡単に蹴りを顔面に打ち込めぜ……」
バイソン「あだだだ……顔が……顔がぁ……」
ケン「よくも好き放題やってくれたな……? 鉄柵にぶつけられて……痛かったぞ、おい……?」
バイソン「あだだだ……ちょっと、待って……今はタイム……タイムだよ、ケン君……」
ケン「タイムは無しだ、お返ししてやるよ……今度は、おめぇが鉄柵に行ってこいや、バイソンっ! うおおおぉぉっ……!」ブンッ
バイソン「う、うおおっ……! おおぉっ……!」
バイソン「……ぐっ!」ガシャーンッ
ヨーシ! イイゾー、ケーン!
バイソン「あだだだ……鉄柵にぶつけるなんて酷い事しやがって……アイツ、人の心持ってるのかよ……?」
ケン「オラオラ、バイソンっ! 休んでるんじゃねぇぞっ!」ダダダッ
バイソン「……ん?」
ケン「いい的だなぁ……? 行くぜっ……!」
バイソン「う、うおっ……やべぇ、アイツ突っ込んで来やがったっ……!」
ケン「行くぜっ……! ランニングドロップキックだっ……! うるああぁぁっ!」ドスッ
バイソン「ちょっと待て……こんな場所でそんな技食らったら……う、うわあぁ!」
ガシャーン
ダン「やべぇ! バイソンの野郎、鉄柵乗り越えて倒れちまったっ! なんの為の鉄柵だよ……あいつが乗り越えてちまったら意味ねぇじゃねぇか……」
ワー、ワーワー
ダン「くそっ、パニックになる前に……俺がアイツらを止めに行かねぇと……!」
サガット(四角いリングの四方に観客席はある……)
ヤムチャ「ううっ……」
サガット(場外で鉄柵に振る事で、観客席の目の前を横切り、お客さんに場外乱闘を見せる事が出来る……)
ヤムチャ「くそっ……」
サガット(ヤムチャ君……バイソン……ケン君……それぞれが、場外を走り回る事で、三つの方角の観客席の目の前で場外乱闘を起こす事が出来た……)
実況「さぁ、今……ゆっくりとサガットがヤムチャを引きずり起こし……」
サガット(一人のミスは、皆でカバーせんとな……残りの方角は、ここだけだ……これで、さっきの嫌な流れは、場外乱闘の混乱にかき消されるだろう……)
ヤムチャ「う、ううっ……」ヨロッ
サガット「今度はこっちだっ……! オラァ、鉄柵にぶつけてやるっ……!」ブンッ
ヤムチャ「うおっ……うおおっ……!」
実況「そして、再び鉄柵へと振り投げたぁ!」
ヤムチャ(なんだよなんだよ……場外、走り回されてるぞ、俺っ……!)
ヤムチャ「……ぐっ!」ガシャーンッ
キャー! キャー!
実況「そして再び、ヤムチャが鉄柵に激突っ! お客さんの悲鳴が聞こえるっ!」
サガット「まだだっ……! いくぞっ……!」ダダッ
ヤムチャ「……ん?」
実況「そして、サガットがヤムチャに突っ込むっ!」
サガット「オラァっ! 今度は顔面だぁっ!」ゴスッ
ヤムチャ「……ぐわあぁっ!」
実況「そして、再びビックブーツっ! 強烈な前蹴りが、ヤムチャ顔面にヒットしたかっ!?」
ヤムチャ「ぐっ……くそっ……」ガクッ
サガット(おっ、いいリアクションをしてくれたな、ヤムチャ君……それじゃあ、そろそろリングへ戻る準備でもするか……)
サガット「オラ、ヤムチャっ……! いくぞっ……!」グイッ
ヤムチャ「うおっ……おおっ……」
実況「さぁ、膝からガクっと崩れ落ちたヤムチャをサガットが担ぎあげたぞっ!」
元「場外でハイアングル・ボディスラムを仕掛けるつもりだね……酷いなぁ……」
サガット「フッ、場外でボディスラムは……リングと違って、痛いぞ……?」ノッシノッシ
ヤムチャ(うわっ、この前の場外で喰らった時とは違って、ここには一応マット敷いてるけど……それでリングで喰らうより痛ぇんだろなぁ……)
実況「サガットはヤムチャを抱えたまま、ノソノソと歩いていますっ! 自分の怪力を見せつけるように、抱えて溜めているっ!」
サガット「よし、いくぞ……うおおおぉぉっ……!」
ヤムチャ「!」
実況「長い溜めを作って……サガットが投げたぁ! 場外でのハイアングル・ボディスラムっ!」
ヤムチャ「うおっ……! やっぱり……痛ぇっ……!」ドシーンッ
オー、サガット、スゲー
サガット(よし、お客さんの空気もいい感じになってきたな……これならリングに戻っても大丈夫そうだ……)
ヤムチャ「くそっ……くそっ……」
サガット(よし……それなら、リング上に戻って、ヤムチャ君とケン君を交代してもらおうか……そろそろ、フニィッシュへ向かう攻防を作らないといけないが……ヤムチャ君にそこまで求めるのは酷だからな……)
実況「さぁ、今……サガットがヤムチャを引き起こし……」
サガット(バイソンとケンは、まだ場外か……ダンさんもリングにはいないな……二人を追いかけていったか……)
ヤムチャ「……ううっ」ヨロッ
サガット(という事は、俺が皆を呼び戻さないといかんな……よし、とりあえずリングに入れ、ヤムチャ君っ……!) グイグイ
ヤムチャ「う、うおっ……」
実況「そして、そのままヤムチャをリングの中へと押し込みます! 戦いの舞台はリングへと戻りますっ!」
元「本当は、ずっとリングで戦わないといけないんだけどね」
ケン「オラオラっ! 調子に乗りやがって……」ガスガス
バイソン「く、くそっ……!」
ダン「おい、お前らやめろってっ! いい加減にしろっ!」
実況「さぁ、場外でのケンとバイソン戦いは、まだ続いている模様です!」
元「……レフェリーの人もいるじゃない? なんで、あんな所にいるの? リングにいなさいよ」
サガット「おいっ! お前ら、よく見とけっ! これで終わりにしてやるっ!」スーッ
ヤムチャ「……うぅ」
実況「おぉ~と! 一方、リング上ではサガットがゆっくりと首を掻っ切るポーズをして……フィニッシュ宣言! フィニッシュ宣言ですっ!」
元「おっ……ここで、決めにいく気ですね」
ザワ……ザワ……
実況「サガットのフィニッシュ宣言で会場も騒めいておりますっ! さぁ、サガット……何を仕掛けるかっ!?」
サガット「起きろ、ヤムチャっ! これで終わりにしてやるっ……!」ググッ
ヤムチャ(フィニッシュ……? いや、まだ30分経ってねぇだろ……技受けて、2カウントで返せって事だな……)
実況「さぁ、今、サガットがヤムチャを引き起こし……」
サガット「おらぁっ……! ロープに走れ、ヤムチャっ……!」ブンッ
ヤムチャ「う、うおっ……!」
実況「そして、ロープに振って……返って来るヤムチャに狙いを定め……構えたぁっ!」
元「タイガーアッパーカットですね」
ザワ……ザワ……
サガット「いくぞ……ヤムチャ……!」ググッ
ヤムチャ「!」
サガット「うおおおぉぉっ! タイガーアッパーカットだっ!」ズガアァァ
ヤムチャ「ぐ、ぐわあぁっ……!」
実況「決まったぁっ! タイガーアッパーカットっ! ロープから返って来るヤムチャに狙いを定めて……カウンター気味に食らわせてたぁ!」
ザワ……ザワ……
ヤムチャ(ちくしょう……サガットさんは、技打ったらお客さんに反応してもらえて、羨ましいなぁ……) バターンッ
実況「さぁ、流石にこの技には、ヤムチャもダーウンっ! これは、決まってしまったかぁ!?」
元「でも、スリーカウントにいきたいけど、リングにレフェリーがいないじゃない? これじゃあ、フォールにいけないよ」
サガット「フッ、そんな事はわかっている……だが、俺には体格を生かした間接技がある……」ググッ
ヤムチャ「……ん?」
実況「おっと、ここで、サガットがヤムチャの片脚を取り……そのまま、ヤムチャの身体を裏返し、うつ伏せに!」
サガット「無理に、スリーカウントを取る必要などない……タイガーアッパーカットを仕掛けたのは、こいつにダメージを与え、逃げられる可能性を潰す為だっ……」ググッ
ヤムチャ「う、うおっ……!」
サガット「この間接技で終わりにしてやる……うおおぉぉっ、 STFだぁ!」
実況「そのまま、ヤムチャの足を両足でロックして、両腕で顔を締め上げるっ! これはSTF! サガットお得意のグラウンドの間接技、S・T・Fだぁ!」
サガット「……うおおっ!」ググッ
ヤムチャ(痛い痛い痛いっ……! やめてって……! サガットさん、本気で締めるのはやめてって……!)
サガット「……」ググッ
ヤムチャ(ここにダメージ与える技って教えてくれるのはいいんだけどさぁ……この技、顔……腰……足っ……! 色んな部分が痛ぇよっ……!)
実況「さぁ、サガットがSTFでヤムチャの身体をどんどん絞っていきますっ!」
元「結構、がっつり入ってるね……やっぱり、長身のサガット君だから、あそこまで、ロックをガッツリかけれるのかな……?」
サガット(さて、このままダンさん達が、戻ってくるのを待つか……)
ヤムチャ(おっ、よかった……サガットさん、ちょっと力、弱めてくれたや……)
実況「さぁ、ヤムチャ……苦しんでいますっ……! このまま、決まってしまうのか!?」
ヤムチャ(あれ……? そういや、ダンさんがいねぇぞ……? これって、ギブアップも出来ねぇし……どうしたら、いいんだろ……?)
サガット「……」
ヤムチャ(あれ……? ひょっとして、これって俺……何かしなきゃいけない……!?)
実況「さぁさぁ、サガットは間接技で、じわじわとヤムチャ体力を奪っていくっ!」
サガット(好きに動いてくれて構わんよ、ヤムチャ君……俺が一方的にヤムチャ君にダメージを与え続ける、『空手軍団』にとって不利な展開なんだ……)
ヤムチャ(えっと……えっと……)
サガット(ヤムチャ君が何もしなくても……その内、ケンが助けにくるだろうな……そうしたら、ダンさんも戻ってくる……)
実況「さぁさぁ……これは苦しいかぁ!? ヤムチャ!」
元「う~ん……まだ、意識はあると思うけど……」
サガット(勿論、ヤムチャ君がここでロープに逃げてもいい……ロープブレイクすれば、ルール上では……俺は技を解かなくてはならない……)
ヤムチャ(ダンさんがいないし……ここは、ロープまで逃げるか……!?)
サガット(だが、ヤムチャ君がロープブレイクした所で……俺は、技を解かない……技かけ続けるぞ……?)
ヤムチャ(でも……サガットさん、ロープブレイクしても、技解かない人だよなぁ……? じゃあ、意味ねぇんじゃねぇの……?)
実況「さぁさぁ、ヤムチャは苦しい! 苦しい!」
サガット(ヤムチャ君がロープブレイクしても……俺が技を解かない……そういう状況が続けば……きっとお客さんも、俺に対してブーイングするだろう……)
ヤムチャ(……これは、このままケンさんの助けを待てって事なのか?)
サガット(そのブーイングを聞けば……ケン君やダンさんは、この状況を止める為に、助けに来ざるを得ないだろうな……)
ヤムチャ(レフェリーがいないから、ギブアップも出来ねぇし……どうすれば、いいんだ……?)
実況「さぁさぁ、どうなるどうなるっ!?」
サガット(さぁ、ヤムチャ君……どう、動く……? これは俺からのクエスチョンだ……君のアドリブを見せてみろ……)
ヤムチャ(やべぇ、テンパってきたぞ……ひょっとしてサガットさん、俺が技から抜け出すのを待ってるんじゃ……)
サガット「……」ググッ
ヤムチャ(いや、でも……うつ伏せの俺の背中に覆いかぶさるように乗って……おまけに足までロックされてる……こんな状況で、自然な流れで技から抜け出すなんて無理だよなぁ……?)
実況「さぁさぁ、サガットのSTFはガッチリ決まっているっ!」
ヤムチャ(くそっ、わかんねぇ……でも、この状況で俺が出来る事といったら……) ググッ
サガット「……おっ?」
実況「おっと! ここで、ヤムチャが動いたっ! 動いたぞっ!」
ヤムチャ(このまま……サガットさんに覆いかぶされたまま、這いずってロープまで逃げるしかねぇ……!) ズルズル
実況「さぁ、ヤムチャが這いずってロープまで逃げるっ!」
元「……でも、サガット君もリングのど真ん中で仕掛けてるからねぇ」
実況「ロープまでの距離は遠いが……ヤムチャ! ここで踏ん張れるか!?」
ヤムチャ(これで、正解なのか……? それとも、ケンさんの助けを待つのが正解だったのか……?) ズルズル
サガット「ほう……コイツ、俺の技を受けながら、ロープまで逃げる気か……」
ヤムチャ(声援も……ブーイングも……まるで聞こえねぇ……! この行動が正解なのか、不正解なのか全くわかんねぇよ……!) ズルズル
実況「さぁさぁ、ヤムチャ……ロープまで、辿り着けるか!?」
ヤムチャ(くそっ、ロープまで遠い……だが、慌てて急いでロープまで逃げてはいけねぇ……! 俺は今、プロレスをしているんだ……!) ズルズル
ヤムチャ(サガットさんみたいな巨体の人間に覆いかぶさられて……怪力で技を仕掛けられているんだ……本気でやられれば、移動する事すら難しいだろ……)
サガット「くそっ、この野郎……しぶといな……」ググッ
ヤムチャ(だから、慌てずに……ゆっくりだ……ゆっくり、ロープまで向かうんだ……) ズルズル
実況「さぁさぁ、徐々にヤムチャがロープまで近づく! 残り、30センチっ!」
ヤムチャ「……うおおぉぉっ! 絶対、ロープまで逃げてやるっ!」ズルズル
サガット「逃がしてたまるか……! もっと締め付けてやるっ……! お前はここで終わりだ!」ググッ
ヤムチャ「ぐ、ぐわぁっ……! くそっ……!」
実況「おっと、ここでサガットが力を振り絞る! ロープまで逃すまいと力を入れてヤムチャを締め上げる!」
元「……ロープまで、もう少しなんだけどねぇ」
ヤムチャー! シッカリシロー!
ヤムチャ「……ん?」
サガット「……おっ?」
イジミセロー! ロープマデニゲロヤー!
ヤムチャ(これは、声援……? それとも、野次……? どっちだ……?)
サガット「……フッ」
ヤ・ム・チャ! ヤ・ム・チャ!
実況「おぉ~っと、ここで場内からヤムチャコール!」
ヤムチャ(声援……声援だ、これはっ……! お客さんが俺を後押ししてくれてる……!)
サガット(フッ、アドリブで自分への声援を作る事が出来たじゃないか、ヤムチャ君……後は、ロープまで逃げるだけだ……頑張りなよ……)
ヤムチャ(お客さんの声援が来たのなら……もう、迷いはねぇ……! このままロープまで逃げる……! この行動が正解だ……!)
サガット「……くそっ、しぶとい奴だ」ググッ
ヤムチャ「うおおぉぉっ……! 後少しなんだっ……! あと少しでロープなんだっ……!」ググッ
実況「おっと、ここで顔を沈めて苦しそうな表情をしていたヤムチャが、顔を上げてしっかりと、ロープを目に捉えたっ!」
ヤムチャ「うおおっ……後、少しなんだ……絶対、逃げきってやるっ……!」ズルズル
サガット「くそっ……この糞ガキめ……」
ヤ・ム・チャ! ヤ・ム・チャ!
実況「お客さんの声援がヤムチャの力へとなったか!? ロープまで、後20センチ……! 10センチ……!」
ヤムチャ「……うるぁっ! ロープブレイクだ! ロープを掴んだぞ!」ガシッ
ワー、ワーワー!
実況「そして、ここでロープブレイク! ヤムチャ、なんとかロープまで逃げきった!」
サガット「……フンっ」ググッ
ヤムチャ(……あれ? ロープブレイクしたのに、サガットさん離してくれない)
実況「おっと……? だがしかし、サガットは技を解かない……技を解かないぞっ!?」
サガット「レフェリーがいないおかげで……やりたい放題出来るなぁ……ロープブレイク……? 俺の辞書にそんな言葉はないぞ、ヤムチャ君……?」ググッ
ヤムチャ(お、おいっ……! ロープブレイクですよ、サガットさん……技解いて下さいよ……!)
ヤムチャ(そうだよ、ロープブレイクしても……結局、ダンさんがいないから、サガットさんを止める事が出来ねぇじゃん……!)
サガット「ほらほら……くたばりやがれ……」ググッ
実況「サガットはレフェリーがリング上にいない事をいい事に……技を解きません! これは、いけない! 反則行為です!」
元「も~う、レフェリー、何してるのよ……折角、ヤムチャ君頑張ったのに……」
ヤムチャ(やべぇ、ロープ逃げるのは間違いだったか……!? 他の事をしなきゃ、いけなかったのか……!?)
サガット「……フンっ!」ググッ
ヤムチャ(やべぇ……どうするどうする……? 下手したら、またブーイングが飛んでくるぞ、コレ……!?)
ブー、ブーブー
ヤムチャ(……って、言ってる側から、来ちまったよ! ブーイングがよぉ!)
実況「さぁ、ここで……なかなかロープブレイクをしないサガットに対して、場内から大ブーイングだぁ!」
ヤムチャ(やべぇやべぇ……どうするどうする……!?)
サガット(よし、これでダンさんも戻ってくるな……)
サガット、イイカゲンニシロー!
ヤムチャ「……ん?」
サガット「フン、ブーイングなど……しるか……」ググッ
ロープブレイクダロ! ロープブレイク!
ヤムチャ(あっ……コレ、サガットさんへのブーイングか……なんだよ、ブーイング恐怖症になっちまってるな、俺……)
サガット「ロープブレイクなどしるか……うおおぉぉっ……!」ググッ
ヤムチャ(え~っと……って、事は……この後、どうすればいいんだ……?)
実況「さぁさぁ、場内のブーイングが徐々に酷くなってきています!」
ケン「オラっ! 舐めんじゃねぇっ!」ガスッ
バイソン「ぐっ……くそっ、ケンの野郎……」
ダン「おめぇら、いい加減にしろよっ! こんな所でやり合うな! お客さん危ねぇだろが!」
オイ、レフェリー! サガットヲトメロー!
ダン「ん……? サガットがどうしたって……?」
サガットガ、ハンソクシテンダヨ!
ダン「……何?」クルッ
ケン「サガットが……反則……?」クルッ
バイソン「へへへ、俺を気をとられすぎてたみてぇだな……甘ぇよ……」
サガット「……うおおぉぉっ!」ググッ
ヤムチャ「ぐっ……ぐわぁっ……!」
実況「さぁさぁ、ルール無用のシャドルー軍団! ロープブレイクなど、お構いなしだっ!」
ダン「ん……? あれ、ヤムチャはロープブレイクしてねぇか……? でも、サガットは技かけ続けて……」
ケン「おい、レフェリー! お前、何してんだよ!?」
ダン「……えっ!?」
ケン「ヤムチャが反則攻撃食らってんじゃねぇかよ!? おめぇ、なんであれ止めねぇで、こんな所にいるんだよ!?」
ダン「おめぇらが、場外で争うからだろが! 勝手な事言ってんじゃねぇぞ!」
ケン「くそっ、ヤムチャ……今、助けに行くぜ……待ってろよ……!」ダダッ
ダン「あっ、おい……待てよ、ケンっ……! そういうのは、レフェリー俺がやるからよぉ!?」ダダッ
実況「おっと……ここで、騒ぎに気付いたケンが、ヤムチャに向かいますっ!」
サガット「……フンっ」ググッ
ヤムチャ「ぐっ……ぐわああぁっ……!」
ケン「てめぇ、サガット……何してやがるっ……!」
サガット「遅い、到着だったな……ケン……」
ケン「うるせぇ! うらぁっ! 離しやがれっ!」ゴスッ
サガット「……ぐっ!」
実況「さぁ、ここでケンリングインして、サガットに一発お見舞いしたぁ! ヤムチャを救出しますっ!」
サガット「まぁ、一発ぐらい構わんよ……こいつはもう、虫の息だ……」ムクッ
ケン「……一発で済むとでも思ってんのか? 好き放題しやがってよぉ?」ググッ
サガット「……ん?」
実況「おっと……! 起き上がったサガットに対して……ケンのあの構えは……!?」
ケン「行くぜっ! 竜巻旋風脚!」ズガァッ
サガット「何……!? うおおぉぉっ……」
キャー、キャーキャー!
実況「決まったぁ! ケンの竜巻旋風脚っ!」
元「いいですよ。サガット君、吹っ飛びましたね」
ケン「……オイ、ヤムチャ!」
ヤムチャ(やべぇ、怒られんのかな……俺……)
実況「そして、ここでケンはダウンしているヤムチャへと声をかけますっ!」
ケン「早く起き上がれっ! そしたら、俺とタイミングを合わせて、トラースキックを打つんだ! わかったな!?」
ヤムチャ「えっ……? トラースキック……?」
ケン「タイミングは俺が指示する! 最後ぐらい、いい所見せて交代しやがれ
……ほら、起きろっ!」
ヤムチャ「う、うっす……!」ムクッ
ケン「おらっ、サガット……起きろっ……!」
サガット「……ううっ」ヨロッ
実況「さぁ、ここでケンがサガットを引きずり起こし……」
ケン「ロープに行ってこいっ! オラぁ!」ブンッ
サガット「う、うおおっ……」
実況「そして、ロープに振ったぁ! カウンター攻撃を狙っているっ!」
ケン「よし、ヤムチャ! おめぇは、その位置だ!」
ヤムチャ「……う、うっす!」
ケン「抜かるんじゃねぇぞ……俺も協力してやるんだからよぉ……」
ヤムチャ「う、うっす……! わかってます……!」
実況「おっとおっと、これはこれは……!?」
元「何かケン君とヤムチャ君……連携攻撃を狙ってるんじゃないですかね!?」
サガット(フッ、ケンの奴……珍しい事を……面白い、受けてやる……どれ程お客さんが沸くか見ものだな……)
実況「さぁさぁ、ロープから返ってきたサガットに対して……ケンとヤムチャが構えたぁ!」
ケン「いくぞ、ヤムチャっ……! いち……にの……さんっ……! うおおぉぉっ……!」
ヤムチャ(今回はしくじってたまるかっ……! 絶対に成功させてやるっ……!)
ケン「うるぁっ! ダブルっ!」
ヤムチャ「トラース……キックだぁ……!」
サガット「……何っ!?」
スパーンッ
サガット「……ぐわあああぁぁっ!」バターンッ
実況「決まったぁ! 空手軍団の合体技、ダブルトラースキック! タイミングを合わせて、完璧にサガットにぶち当てたぁ!」
元「いい連携攻撃技ですね。いいですよ」
ケン「……よしっ!」
ヤムチャ(ど、どうだっ……!? 今度は、どうだ……!?)
イイゾー! カラテグンダンー!
ヤムチャ(や、やった……! やっと、声援がもらえた……技を打って……お客さんに声援をもらえたぞ……!)
ケン「よし、ここからは俺に任せろ! ヤムチャ……交代だ……!」
実況「さぁ、ここでケンは一度コーナーに戻り……そのまま、ヤムチャに手を差し出します!」
ヤムチャ「ケンさん……お願いします……」
ケン「あぁ、後一回だ……次こそは、しっかりしろよ……?」
実況「そして、ここでタッチが成立! 試合権はケンへと移りました! ケンがリングインし、ヤムチャはコーナーへと戻ります!」
元「ヤムチャ君も、よく頑張ったね」
ケン「よっしゃよっしゃ! そろそろとどめを刺しちまうぜ!」パンパン
イケー! ケーン!
実況「さぁさぁ、ケンが大きく手を叩き、お客さんにアピールしていますっ! ここから、どう仕掛けるかっ!?」
ダン「え~っと、タッチは成立したんだな……? 試合権は……ケン、おめぇが今持ってるんだよな……」
実況「さぁさぁ……ようやく、ここでレフェリーがリング上に戻って来ました」
元「……バイソン君も、自軍のコーナーの方に戻って行ってるね」
バイソン「くそっ、サガット、大丈夫か……とりあえず、コーナーですぐ行けるように構えておくか……」
実況「バイソンも場外戦で随分とダメージを受けてしまったのでしょうか!? 表情からは、疲れが見えます!」
元「まぁ、このまま大人しくしておいてもらえると、有難いんだけどね……」
ケン「よっしゃ、サガット、行くぜっ……! とどめを刺してやるっ!」
サガット「……う、ううっ」
ケン「よし、先ずは……こいつを起こして、っと……」
サガット「……ううっ」ヨロッ
実況「さぁ、ケンがサガットの身体を引き起こして……」
ケン「相変わらず、でけぇ奴だな……でも、そんな奴には……」
サガット「……ん?」
ケン「うるぁっ……! 下から……喰らえっ……!」ゴスッ
サガット「うおっ……! ゴッ……!」
実況「ここで、カチ上げ式のエルボーバット! 下から、サガットの顎に肘をお見舞いしますっ!」
元「なる程、大きい相手に……上手く、下から責めてますね……」
ケン「オラァっ! もう一発っ……!」ゴスッ
サガット「ゴッ……! くそっ……」
実況「さぁさぁ、エルボーバット二連発っ! 流石に、アッパー気味のエルボーを顎に打ち込まれたら……サガットも苦しいか!?」
ケン「結構効いてるみたいだな……へへっ、もう一発……いくぜ……?」グルグル
サガット「ううっ、くそっ……こんなチビに……」
イケー! ケーン! ヤッチマエー!
実況「さぁ、そして……ケンを腕をぐるぐると回して、タメを作っての……」
ケン「うおおぉぉっ……! うるぁっ……!」ゴスッ
サガット「ゴッ……! ぐわっ……!」ヨロッ
実況「三発目をぶち当てたっ! おっと、サガットの身体が大きくふらついたぞ!?」
ケン「よし、ここがチャンスだ……行くぜっ……!」ダダッ
実況「そのまま、ケンはロープへと走るっ! ロープの反動をつけて、サガットに向かう!」
サガット「くそっ……この豆チビ野郎め……」
ケン「行くぜっ……うおおぉぉっ……!」
サガット「……ぬっ!?」
ケン「うるああぁっ……! ランニングドロップキックだっ!」ズガアァッ
実況「そして、そのまま正面からドロップキック! 勢いをつけて、正面からサガットに突っ込んだぁ!」
サガット「……ぐわあああぁぁっ!」バターンッ
実況「これには、流石のサガットもダーウン!」
元「いいですよ、ケン君……頑丈なサガット君相手に、打撃攻撃で上手く責めていますね」
実況「そこは、天下の空手軍団っ! 打撃攻撃なら、お手の物だっ!」
ケン「よしっ、とどめにしてやるっ……! 行くぜっ……!」
実況「さぁ、そして、ケンそのままコーナーポストに向かいます!」
元「ミサイル竜巻旋風脚、狙ってるね」
イケー! ケーン!
実況「場内が湧きますっ! ケン……ここでサガットを仕留めてしまうのかっ!?」
ケン「……」チラッ
ヤムチャ「……ん?」
ケン「よし、とっととコーナーポストに登らねぇとな……サガットが起き上がっちまうと、マズいからな……」
ヤムチャ(今、ケンさんが……一瞬、俺の方を見た……? なんだろ……?)
ケン「よし……後は、サガットの起き上がるタイミングに合わせて……」
サガット「……ううっ」
実況「さぁ、今、ケンがコーナーポストの上で様子を見ている! サガットの動きを、ジッと観察している……」
ヤムチャ(ケンさんが俺を見た……なんだろ……? さっきのバックドロップの事か……? いや、それなら交代の時に何か言うか……)
ケン(俺はサガット達みてぇに優しくねぇ……スパルタだ……)
ヤムチャ(俺、何もしてねぇぞ……? ずっと、コーナーで待機しているだけだ……何も、怒られるような事してねぇぞ……)
ケン(この後、何が起こるか……それを自分で考えて、行動してみやがれ……別に、おめぇが動かなくても、試合展開には問題はねぇからよ……)
ヤムチャ(何もしてないのに、俺の方を見た……いや、待てっ……! これは、『何かしろ』って合図を送ってるんじゃねぇのかっ……!?)
ケン(へへ、早くしねぇと、サガットが起き上がっちまうぜ……? まぁ、頑張って考えな……何も考えねぇバカなら、そこまでだよ……)
ヤムチャ(考えろ……何をすればいいか、考えるんだ……!)
サガット「く、くそっ……ケンの野郎……」モゾモゾ
ケン「……よし、そろそろだな」
ヤムチャ(ここで俺がリングに入って……いや、違うな……)
ザワ……ザワ……
実況「さぁさぁ、サガットが今、立ち上がろうとしています……そして、ケンはコーナーポストの上から静かに様子を見ているっ!」
ヤムチャ(お客さんは、あそこからのケンさんの攻撃を期待している……だから、ケンさんがあそこから攻撃をするのは確定だ……俺が邪魔しちゃいけない……前の試合で怒られた事だしな……)
サガット「くそっ、ケンの野郎……舐めやがって……」ムクッ
ケン「よし、起きたな……! 行くぜっ……!」
ヤムチャ(起き上がったサガットさんに攻撃仕掛けたら……多分、サガットさんはダウンするだろ……? ん、またダウン……? なんで、もう一回ダウンさせるんだ……?)
サガット「ん……? ケンは、何処に行ったんだ……?」キョロキョロ
ケン「……後ろだ! サガットっ!」
ヤムチャ(もう一度サガットさんをダウンさせたら、ケンさんはどうするつもりなんだろ……? また、引き起こす……? 関節技……? それとも、フォール……?)
サガット「……何、後ろだと!?」クルッ
ケン「へへ、行くぜ……うおおおぉぉっ……!」
ヤムチャ(待て、 コレ、フォールじゃねぇのか……!? 大技仕掛けて、フォールに行く気じゃないのか……!?)
実況「さぁ、ケンが跳んだぁ!」
ヤムチャ(フォールに行ったとしたら……俺がするべき行動は……サガットさんは多分、カウント2で自分で返すよな……? だったら……)
ケン「うるああぁっ! ミサイル竜巻旋風脚っ!」ズガアアァァッ
サガット「……ぐわあああぁぁっ!」バターンッ
キャー、キャーキャー
実況「決まったぁ! ミサイル竜巻旋風脚っ! コーナーポストからの竜巻旋風脚をぶち当てたぁ! これには、サガットも大きくダーウン!
元「いいですねぇ! 決めちゃいましょうっ!」
ケン「よっしゃっ! レフェリー、フォールに行くぜ!」
ダン「よっしゃっ! 任せろっ!」
ヤムチャ(やっぱり、フォールに行こうとしてる……! だったら、ここは……!)
実況「おっと、そしてヤムチャがここでリングインしたぁ!」
ヤムチャ「……うるああぁぁっ!」ダダッ
バイソン「く、くそっ……! 何だよ、出遅れちまった……!」
ヤムチャ(バイソンさんの存在……バイソンさんの存在が邪魔だ……だから、ここは俺がバイソンさんを食い止めて、ケンさんの行動をサポートしなきゃ……!)
実況「ヤムチャは、そのままバイソンに一直線っ! 分担作戦だっ!」
元「いい動きしてましたね。さぁ、これで……ケン君も邪魔される事なく、フォールに入れます」
ヤムチャ「うおおぉぉっ……!」グイッ
バイソン「くそっ、こんな所で掴みかかってくるんじゃねぇよ……! サガットの所に行けねぇじゃねぇか!」
実況「さぁ、ヤムチャがバイソン食い止めているっ! そして、レフェリーが今、カウントに入ったぁ!」
ダン「よっしゃ、カウント行くぜっ!」
ケン「おう、 頼むぜ!」
サガット「う、うぅ……」
ダン「ワンっ……!」
オー、オーオー
ダン「ツーっ……!」
イケー! キメチマエー!
ダン「……スリ」
サガット「……うおおぉぉっ!」グイッ
ケン「……何っ!?」
ダン「カウントはツーだっ! カウントツー!」
ザワ……ザワ……
実況「お~っと、これは驚きです! サガットがなんとか返していきました。カウント2.85といった所でしょうか!?」
元「サガット君、やるねぇ……」
実況「サガットの底力に場内が騒めいております!」
ヤムチャ「うおおぉぉっ……!」ググッ
バイソン「くそっ……この野郎……」
ダン「おい、ヤムチャ……いつまでリングにいるんだよ……もういいだろ……?」
ヤムチャ「……ん?」
ダン「フォールのサポートする為の行動なら、目を瞑ってやるが……サガットは自力で返したんだ……」
ヤムチャ(よかった……やっぱり、サガットさんは自力で返してくれたんだな……)
ダン「このタイミングで、試合権を持ってねぇおめぇがリング上にいるのは、乱入行為……つまり、反則行為だ……」
ヤムチャ(……えっ、反則!?)
ダン「反則負けにされたくねぇだろ……? ほれ、わかったらとっととコーナーに戻りな……」
ヤムチャ(あっ、コレ……コーナーに戻れって教えてくれてんだな……)
ダン「……ん、どうした? 何か文句あるのか?」
ヤムチャ「いえ、わかりました……じゃあ、コーナーに戻ります……」
実況「さぁ、ここでヤムチャも自軍のコーナーへと引き下がります」
サガット(ヤムチャ君は自己判断で、バイソンを止めに行ったのか……? やるじゃないか……?)
ヤムチャ(ふぅ、行動の一つ一つが怖いな……プロレスって、おっかねぇ……)
ケン「……おい、ヤムチャ」ボソッ
サガット(……ん?)
ヤムチャ「あっ……はいっ……!」
ケン「……ナ~イス」ボソッ
ヤムチャ「!」
ケン「……まぁ、早くコーナーに戻りな。気を抜くんじゃねぇぞ、また指示するかもしれねぇからよぉ?」ボソッ
ヤムチャ「う、うっす……! わかりました……!」
サガット(そうか、ケンの指示だったのか……ケンもやるじゃないか……)
サガット「ううっ……くそっ、やるじゃないか……ケン……」ムクッ
ケン「おめぇも、なかなかやるじゃねぇか……」
実況「さぁ、ここでサガットがゆっくりと起き上がります!」
ケン「だが、これで終わりだっ……! 行くぜっ……!」
サガット「……ぬっ?」
ケン「オラオラっ! 喰らいやがれっ……!」ガスガス
サガット「ぐっ、ぐぐっ……!」
実況「さぁ、ここでケンが仕掛けるっ! 得意の蹴りを……一発……! そして、二連発っ……!」
元「ここで、ケン君一気に攻めたいですね」
ケン「ガードが間に合ってねぇぜ……? 結構、動きが鈍くなってきたみてぇだな……」
サガット「くそっ……くそっ……こんな奴に、この帝王が……」
ケン「だったら、ちっと強くいかせてもらうぜ……? うおおぉぉ……!」
サガット「……ぬっ?」
ケン「オラっ! ローリングソバットだっ!」ガスッ
サガット「うおっ……! ぐっ……!」
実況「おっと、ここでローリングソバットっ! 身体をクルッと一回転させて、そのまま蹴りを打ち込んだぁ!」
ケン「もう一丁っ……! うるあぁぁっ……!」ガスッ
サガット「……うおぉっ」ヨロッ
実況「そして、連続でもう一発っ! おっと、ここでサガットが少しフラついたか!?」
ケン「ここがチャンスだ……行くぜっ……!」ダダッ
実況「さぁさぁ、そしてここがチャンスだとばかりに、ケンがロープに走るっ!」
サガット「くそっ……くそっ……ケンの奴め……」
ケン「行くぜ、サガット……大人しくダウンしてな……」
実況「さぁさぁ、ロープの反動で勢いをつけたケンが返ってきたぞ……! そしてそしてそして……!」
ケン「うらぁっ、フライングニールキックだっ……! 寝てな! サガットっ!」ガスッ
サガット「……う、うぐっ!」
実況「フライングニールキックっ! 身体を旋回させての、回し蹴りを打ち込むっ! サガットの頭部に命中したか!?」
サガット「くそっ……ちょこまかちょこまかと……」フラッ
ケン「へへ、大人しく眠りな……サガット……」
実況「さぁ、これには流石のサガットもフラついて……大きくダウン……」
サガット「うおおぉぉっ……! 舐めるな、この餓鬼がぁっ……!」ググッ
ケン「……何っ!?」
実況「い、いやっ……! サガットが、堪えたっ! なんとか踏ん張って……サガットはダウンしないっ!」
元「おぉ……いいの決まったと思ったのに、よく耐えましたねぇ……」
サガット「そんなサーカス芸みたいな蹴りで、やられるとでも思ってんのか!? 舐めてんじゃねぇよ!」
ケン「サーカス芸だと……? この野郎、言ってくれるじゃねぇか……」
実況「おっと、そしてサガットが吠えるっ! ケンに向かって、吠えているっ!」
ケン「サーカス芸の蹴りの恐ろしさ……思い知らせてやるよっ……!」ダダッ
サガット「来い、ケン……そんな蹴りなど……効かんわ……」
実況「ここで、ケンは再びロープに向かうっ! ロープの反動を利用しての攻撃だっ!」
ケン「うらぁっ! もう一発っ! フライングニールキックだっ!」ガスッ
サガット「……うぐっ!」ヨロッ
実況「そして、ロープの反動の利用してのフライングニールキックっ! またも、サガットの頭部にお見舞いしたぁっ! サガットは大きくフラつくっ!」
ケン「……どうだっ!?」
サガット「……うおおおぉぉっ!」ググッ
実況「だがサガット、またこれを耐えるっ! なんとか、踏ん張って……堪えているっ……!」
元「いいの入ってると思うんですが……サガット君、耐えますねぇ……」
ケン「なんだよ、こいつ……なんでダウンしねぇんだよ……化け物か……」
サガット「はぁ、はぁ……どうした、ケン……? そんなものか……?」
ケン「くそっ……!だったら……!」ガシッ
サガット「……ぬ?」
実況「おっと、ここでケンがサガットを掴んだっ! サガットに組みにかかるっ!」
元「ブレーンバスター狙いに行きましたね」
ケン「直接、ぶん投げて……ダウンさせてやるぜ……うおおぉぉっ……!」ググッ
サガット「俺を投げる気か……だが、しかし……!」
実況「さぁさぁ、ケンがサガットにスープレックスを仕掛けようと、踏ん張るっ!」
ケン「……うおおおぉぉっ!」ググッ
サガット「……うおおおぉぉっ!」
実況「さぁ、ケンがサガットを持ち上げようと踏ん張るっ! だがしかし、サガットも踏ん張って、これを耐えるっ!」
ケン「くそっ、巨体め……」ググッ
サガット「お褒めの言葉……有難う……」
ケン「褒めてねぇよ……このウド大木が……重てぇんだよ……」
サガット「ウドの大木でも構わんさ……それに比べて……お前は軽いなぁ、ケン……?」
ケン「……あぁ?」
サガット「ほら、簡単に持ち上がるぞ……?」グイッ
ケン「う、うおおっ……!」
実況「おっと……! ここで、サガットが逆にケンの身体を持ち上げ……!」
ケン「うおっ、うおっ……させるかっ……!」ジタバタ
サガット「……おぉっと」
実況「おっと……ここでケンが懸命に?いて、なんとか担ぎ上げられれそうになった所を堪えました!」
ケン「うおっ……危なかったぜ……」
サガット「……まぁ、寿命が少しばかり伸びただけにすぎんさ」
ケン「……何だって?」
サガット「もう一度仕掛けるぞ……! うおおおぉぉっ……!」グイッ
ケン「うおぉ……うおおぉぉっ……!」ジタバタ
実況「さぁ、もう一度サガットがケンを担ぎ上げようと仕掛けますが……ケンは懸命に?いてこれを耐えますっ!」
サガット「なかなか、頑張るじゃないか……なぁ、ケン……?」
ケン「ち、ちくしょう……こいつ、なんて力だ……」
サガット「スープレックス技なんかに行かずに……得意の打撃で攻めた方がよかったんじゃないかな……?」
ケン「……じゃあ、そうさせてもらおうかな?」
サガット「……ぬ?」
実況「おっと! ここで、ケンが!」
ケン「オラオラっ、脇腹が空いてるぜ……! サガットっ……!」ガスガス
サガット「……う、うおっと!」
実況「組み合った状態のまま、サガットの脇腹にボディブローだっ! サガットに打ち込むっ!」
ケン「うるぁっ……! うるぁっ……! おめぇをぶん投げるのは……痛めつけてからでも遅くはなさそうだなっ……!」
サガット「……なぁ、ケンよ?」
ケン「……あぁ?」
サガット「お前は、こんな組み合った状態で……力の入ったボディブロー打てるのか……?」
ケン「……何っ!?」
サガット「痛めつける……? 笑わせるな……こんな攻撃、痛くもかゆくもないわ……」
ケン「く、くそっ……! こいつ……効いてねぇ……!」
サガット「待たせて悪かったな……今、楽にしてやるよ……うおおぉぉっ……!」グイッ
ケン「何だと……!?」
実況「お~っと、だがしかし、ここでサガットがケンを高々と持ち上げたぁ!」
サガット「ブレーンバスターを仕掛けられたのは、お前になったようだな! 喰らえっ!」
ケン「く、くそっ……! うわああぁぁっ……!」
ケン「……ぐっ!」ドシーンッ
キャー、ケーン
実況「さぁ、逆にケンがブレーンバスター食らってしまいましたぁ! 背中からマットに叩きつけられますっ!」
サガット「ふぅ、少し、苦しめられてしまったな……自分のペースで、戦わなければな……」
ケン「くそっ……この怪力バカめ……」
サガット「とにかく、こいつにもダメージ与えなくては……コーナーから、いいのをもらってしまったしな……よしっ……!」
実況「ここで、サガットはダウンしている、ケンにゆっくりと近づいて……」
サガット「……フンっ!」ドスッ
ケン「……ぐっ!」
実況「先ずは、ギロチンドロップ! ダウンしているケンに追い打ちを仕掛けます!」
サガット「よし、次は……起きろ、ケンっ……!」
ケン「く、くそっ……」ヨロッ
実況「さぁ、そしてサガットはケンを引き起こし……」
サガット「フンっ……! コーナーへ走りな……!」ブンッ
ケン「う、うおぉっ……!」
実況「そのままコーナーへ振り投げていったぁ!」
ケン「……ぐっ!」ドスッ
サガット「よしっ……行くぞっ……!」
実況「ケンの身体をがコーナーマットに突き刺さるっ! そして……サガットはそのケンに対して狙いを定めているぞ!?」
サガット「行くぞ、ケンっ……! うおおぉぉっ……!」ダダッ
ケン「!」
実況「行ったっ! そのままサガットがケンに突っ込んで行ったっ!」
サガット「逃げ場のないコーナーで喰らいなっ……! うおおぉぉっ! タイガーニーだっ!」ドスッ
ケン「……ぐ、ぐはっ」
実況「そして串刺しのタイガーニーっ! 膝をぶつけていったぁ! コーナーマットと膝との強烈なサンドイッチ!」
サガット「フッ、上手く土手っ腹に刺さったな……苦しむがいい……」
ケン「ぐっ……ううっ、くそっ……」
サガット「そして、これで終わりではない……! まだまだだっ……!」
ケン「……ん?」
サガット「……うおおぉぉっ!」グイッ
ケン「う、うおっ……!」
実況「さぁ、サガットはケンの身体を担ぎ上げ、そのままコーナーポストの上へと持っていったぁ!」
元「雪崩式攻撃……狙ってますねぇ……」
サガット「そこから投げて……リングに叩きつけてやるっ……!」
ケン「お、おい……こりゃ、ちっとマズいぞ……? なんとかしねぇと……」
実況「さぁ、サガットが今……セカンドロープに足を掛け……」
サガット「行くぞ……ケン……」グイッ
ケン「……くそっ!」
実況「いやっ、トップロープまで登ったぞ! そして、ケンに組みかかったっ! そこから投げる気なのか、サガット!?」
サガット「よし……いくぞ……」
ケン「く、くそっ……! させてたまるかよっ……!」
サガット「……ぬ?」
ケン「ここは不安定な足場なんだ……だったら……オラァ……!」ガスッ
実況「さぁさぁ、これにはケンも抵抗していく! サガットの脇腹にボディブローを打ち込み……投げられまいと、必死に抵抗するっ!」
ケン「オラっ……! オラっ……! やられてたまるかよ……! とっとと落ちやがれ……!」
サガット「フン、またボディブローか……? こんな体勢で打って……俺にダメージを与える事が出来るとでも思っているのか……?」
ケン「てめぇのバランス崩すぐらいだったら、十分だゴラァっ……! とっとと離せや、このクソ野郎っ……!」ガスガス
サガット「……う、うおっと」グラッ
実況「おっと……! ここで、サガットが少しバランスを崩したかぁ!?」
ケン「よ、よしっ……!」
サガット「おっと、危ない危ない……危うくバランスを崩して落ちる所だったよ……これは、あまり悠長に構えてる暇はなさそうだなぁ……?」
ケン「く、くそっ……! こいつ……堪えやがったっ……!」
実況「だがしかし、サガットはこれを堪えるっ! 上手くバランスを取り戻したぁ!」
サガット「覚悟を決めろっ……! 行くぞ、ケンっ……!」
ケン「!」
サガット「うおおおぉぉっ!」ググッ
実況「そして、サガットが持ち上げたぁ! トップロープの最上段で、高々とケンを持ち上げるっ!」
サガット「マットに、眠りな……! うおおおぉぉっ……!」
ケン「う、うわああぁぁっ……!」
実況「そして仕掛けたっ! トップロープ最上段からの、雪崩式ブレーンバスター!」
サガット「……うるああぁっ!」
ケン「……ぐっ、ぐわああぁぁっ!」ドシーンッ
キャー、ケーン
実況「ケンの身体をがマットに突き刺さったぁ! 場内からは、悲鳴が聞こえるぞっ!」
サガット「よし……ここままフォールに……」
ケン「う、うぅ……」
サガット「……いや、念には念にを入れておくか。こいつらはに限って、痛めつけすぎるという事はないだろう」
実況「おっと……ここで、サガットはコーナーの方へ移動して……」
サガット「さっきミサイル竜巻旋風脚の仕返しだ……俺も、あそこからタイガーニーを仕掛けてやろう……」
ケン「うぅ、くそっ……ここで終わって……たまるかよっ……!」
サガット「フンっ……フンっ……!」
実況「さぁ、今、サガットがゆっくりとコーナーポストに昇り……」
元「ミサイルタイガーニーですかね……? 狙ってますね……」
ケーン! オキテー!
ケン「……うぅ」
ケーン! サガットガ、ネラッテルヨー!
サガット(ん……? もしや、この流れは……)
ケ・ン! ケ・ン!
実況「ここで、場内からはケンコールだっ! ケン……頼むっ! 立ってくれ、立ち上がるんだっ!」
元「これだけお客さんに応援されてるんだからね……ここはケン君、意地みせないといけませんよ」
サガット(しまったな……俺がもたもたコーナーに昇っているせいで、ケンコールが始まってしまったぞ……)
ケ・ン! ケ・ン!
サガット(大柄な体格だと、こういう時の動作は素早く出来んからなぁ……まぁ、便利な部分もあるし、一長一短か……)
ケン(サガット、コーナーに昇るの遅ぇんだよ……でけぇのはわかるけど……もっと、テキパキやらねぇとさぁ……?)
サガット(ケン、悪いが、なんとかしてくれ……というか、これはお前への声援なんだ……ベビーなんだから、そこはなんとかしろ……)
ケ・ン! ケ・ン!
ヤムチャ「お、おう……俺が煽ってねぇのに、コールが始まっちまったぞ……俺はどうすっかねぇ……?」
ヤムチャ「ケンさん、立って下さいっ! コーナーからサガットの野郎が狙ってますよっ!」
ケン(……ん?)
サガット(……ん?)
実況「さぁ、コーナーのヤムチャも必死にケンに声を掛けるっ! ケンに危機を伝えているっ!」
ヤムチャ(こりゃ、不可抗力だろ……だって、お客さんがケンさんの事、声掛けて応援してるのに……仲間の俺が声掛けないなんて……どう考えてもおかしいだろ……!?)
バイソン「うるせぇ、ビーチクパーチク騒ぎやがってっ! どうせだったら、バイソンコールをしろっ! サガット……もう、跳んじまえ!」
実況「おっと、ここでバイソンも騒ぎ立てております! 会場熱気はもう、マックスだぁ!」
ケン(ったく、ヤムチャもバイソンも……皆、揃って好き放題に騒ぎやがってよぉ……?)
ケン(……でも)
ケ・ン! ケ・ン!
ヤムチャ「ケンさん、立って下さい! このままじゃ、やられちまいますよ!?」
ケン(お客さんもヤムチャも……これだけ、俺の事応援してくれてんだ……)
サガット(……さぁ、どうする?)
実況「さぁ、サガットの足は、今セカンドロープにかかったっ!」
ケン(それは、ここでサガットの技を喰らっちまう、弱いケンを見たくないって事だろ……? ここで、格好良く立ち上がる強いケンを見たいって事だ……だがら……)
サガット「……」
ケン(だったら、俺は……格上相手のサガット相手だろうが、強くならなきゃいけねぇだろっ……! うおおおぉぉっ……!) ムクッ
サガット(さぁ、ケン……ここから、どうやって反撃する……!? 俺は、お前に任せるぞ……!)
実況「おっとおっと! ここで会場の声援が伝わったのか!? ケンが立ち上がったぞ!」
ケン「うおおっ……! サガットっ……!おめぇの動きは見えてたんだよぉ!」ダダッ
サガット「ぐっ……! くそっ、トップロープに登りきってねぇのに、もう起きやがった……!」
実況「さぁ、ケンはそのままコーナーポストでモタついている、サガットの元へと突っ込んでいくっ!」
元「いいタイミングで、ケン君起き上がりました。いいですよ!」
ケン「うるぁっ……! サガット、喰らえっ……!」ドスッ
サガット「……ぐっ!」
実況「そして、コーナー最上段にいるサガットに対してドロップキック!」
元「おぉっ! 今、物凄く跳びましたね!」
サガット「う、うおっ……! あぶねぇ……」
ケン「よし、ここがチャンスだ……行くぜっ……!」
実況「サガットは、トップロープを掴み、場外へ落ちないようになんとか堪えますが、かなり体勢が崩れていますっ!」
ケーン! イイゾー!
ケン「おうっ! このまま、仕留めてやるぜ!」
サガット「う、うぅ……くそっ……」
実況「さぁ、ケンはそのまま、素早い動きでトップロープに昇ったぁ!」
元「これは……ケン君、狙ってますね……」
ケン「いくぜっ……! うるあぁ……!」シュッ
サガット「ぬ……? う、うおっ……!」
実況「そして、サガットに跳びつき、頭部を両足でロックっ……! そしてそのまま……!」
ケン「うるあぁっ! 雪崩式フランケンシュタイナーだあぁぁっ!」
サガット「ぐ、ぐおおぉぉっ……!」ドスッ
実況「バク宙の要領でサガットの頭部をリングに叩きつけるっ! 雪崩式フランケンシュタイナーだぁ!」
キャー! キャーキャー!
ケン「よし、後はこいつに止めを刺して……」
サガット「ぐっ、うぅ……」
実況「さぁさぁ、サガットはリングの中央で大の字ですっ! これは効いたか!?」
元「……あっ、バイソン君が!」
バイソン「うおおぉぉっ……! ケン、させるかよっ……!」ダダッ
ダン「おい、バイソン! おめぇは、試合権を持ってねぇんだから、入ってくんなよ!」
実況「おっと、ここでバイソンがリングインして、サガットのピンチに駆けつけます!」
ヤムチャ(おっ……? バイソンさんが、ケンさんに何かするのかな……? だったら、俺はここでは出ない方がいいかな……?)
バイソン「サガット、今助けてやるぜ……! うおおぉぉっ……! ケン……バイソン式アックスボンバーだっ!」
ケン「……甘ぇんだよぉ!」ヒョイッ
バイソン「……何っ!?」
実況「おっと、だがしかし、ケンは突っ込んできたバイソンの攻撃を上手く屈んで避けたぁ!」
元「いいですね。ケン君、よく見えてます」
ケン「雑魚は……どいてな……!」
バイソン「く、くそっ……この野郎っ……!」クルッ
ケン「うるぁ……! 邪魔だ、バイソンっ……!」スパーンッ
バイソン「ぐ、ぐわぁっ……!」
実況「そして、振り向き様のバイソンに向かってトラースキックを仕掛けるっ! カウンター気味にぶち当てたぁ!」
ヤムチャ(あ、あれ……?)
バイソン「くそっ、くそっ……! ケンの野郎っ……!」ゴロゴロ
実況「さぁ、この攻撃にはたまらずバイソンもダウンし……そのまま場外へとエスケープします!」
元「上手く邪魔者を蹴散らせましたね。ここが、大チャンスです」
ヤムチャ(バイソンさん、何もせずリング外に行っちまったぞ……? これって、ひょっとして俺が何かしなきゃいけなかったのか……?)
ケン「よし、 これで邪魔者はいねぇ……サガット、止めにしてやるぜっ!」
ヤムチャ(リング上には、ダメージを受けているサガットさん……バイソンさんは、場外で戦闘不能……あれ……? これって俺達、勝っちゃうんじゃねぇの?)
ケン「よしっ、終わりにしてやるっ! 起きろ、サガットっ……!」
サガット「う、うぅ……」ヨロヨロ
実況「さぁ、ここでケンがサガットを引き起こし……」
ケン「止めは昇竜拳だっ! 行くぜ、オラァっ!」ブンッ
サガット「ぐっ……! う、うおっ……!」
実況「サガットをロープに振ったぁ!」
元「ここで昇竜拳で決めちゃいたいですね」
ケン「行くぜ……カウンターでぶち当ててやるっ……!」ダダッ
サガット「くそっ、くそっ……こうなれば、自爆覚悟で……」
実況「そして、ケンも逆側のロープへと走ったぁ! 自身もロープの反動で勢いをつけて、サガットを迎え討つ!」
バイソン「くそっ、くそっ……! ケンの奴、舐めやがって……!」ムクッ
バイソン、ザマーネーナー!
バイソン「こうなりゃ、試合なんて関係なしだ……! あいつは、反則技を使ってでもぶち殺すっ……!」
バイソン、ダセェゾー!
バイソン「うるせぇっ……! おい、そこのお前っ……! 椅子寄こせや!」
観客「え、えっ……?」
バイソン「いいから、椅子貸せってんだよ! 暫く立ち見してな! オラ、早く寄こせ!」
観客「あっ、はい……わかりました……ど、どうぞ……」
バイソン「よし、ケン……このバイソン様を舐めやがって……思い知らせてやるっ……!」
ケン「さぁ、行くぜ……サガットっ……!」
サガット「俺を甘く見るなよ……? こうなりゃ、自爆覚悟で貴様にぶつかってやる……!」
実況「さぁ、今、ケンがロープの反動を利用し、さらに勢いつけ……」
元「……あっ! バイソン君が!」
実況「……ん?」
バイソン「……おらああぁぁっ! 死にやがれえええぇぇっ!」
ケン「……ん?」
バイソン「背中に味わいなっ! パイプ椅子攻撃だっ!」バッチーンッ
実況「おっと、バイソンが……! ここでバイソンが、ロープの反動を利用しに行ったケンの背中に、場外からパイプ椅子攻撃を打ち込みましたっ!」
バイソン「ガハハ、どうだっ! バイソン様の力を思い知ったかっ!」
ケン「うおっ……くそっ、油断した……」ヨロヨロ
ブー、ブーブー
実況「ケンの身体が激しくフラつく! 場内からはブーイングの嵐だっ!」
元「……サガット君が突っ込んできてます。マズいですよ」
サガット「フハハ、いいぞバイソン……よくぞ、やってくれたぞバイソン……」ダダッ
ケン「ぐっ……や、やべぇ……サガットが……」フラフラ
サガット「自爆する必要はなくなったな……喰らうのはお前一人だ、ケン……」
実況「おっと、そしてサガットがケンに向かっているっ! 向かっているぞ!」
サガット「うおおぉぉっ! 死ねえええぇぇっ!」
ケン「!」
サガット「タイガーアッパーカットだあぁぁっ!」ズガアアァァ
ケン「……ぐわああぁぁっ!」
実況「そしてここでタイガーアッパーカットっ! ロープの反動で勢いつけたタイガーアッパーカットをケンに打ち込んだぁ!」
バイソン「サガット、ナイスだぜっ!」
サガット「あぁ、お前もよくやってくれたぞ、バイソン……」
ケン「く、くそっ……こいつら……」バターンッ
実況「これにはケンも大きくダーウンっ! 強烈な一撃を喰らってしまったぁ!」
サガット「ふう、なんとか返す事が出来たが……」フラッ
実況「さぁ、ケンにダメージを与えたサガットですが……自身もかなりダメージを受けているんでしょうか? かなり、フラついております!」
サガット「バイソンに交代したいがな……くそっ……!」チラッ
ダン「おい、バイソンっ! おめぇ、何してんだよっ! 今、パイプ椅子使ったよなっ!?」
バイソン「何言ってるんすか、ダンさん!? 俺がそんな汚い手段を使うような人間に見えますか!?」
ダン「おめぇ、汚ねぇ手段しか使ってねぇだろが!」
サガット「くそっ、バイソンが捕まってるな……仕方ない、コーナーに戻ってくるまで、ここで休むか……」ガクッ
実況「セカンドロープに手を掛け、片膝をついて動けません! リングに背を向けて、休んでおります!」
ヤムチャ(な、なんだよ……今のバイソンさんの動き……)
ケン「サガットがフォール来ねぇって事は……多分、あいつも疲れてんだろうな……」
ヤムチャ(乱入して、あっさりやられて場外に行ったと思ったら……すぐ、パイプ椅子使ってケンさんに攻撃しやがった……)
ケン「くそっ……ここで、サガット逃すわけにはいかねぇ……! だから……!」ズルッ
ヤムチャ(それで今はダンさんと揉めてるだろ……? 試合権を持ってない人間なのに……あんなに、試合展開を動かす事が出来るのかよ……)
ケン「ここは、ヤムチャに交代するしかねぇ……! くそっ、踏ん張るんだっ……! 最後の力を振り絞るんだっ……!」ズルズル
実況「おっと、ここでケンが身体を引きずったまま、コーナーに控えているヤムチャに近づきますっ!」
元「……おっ? サガット君もバイソン君も気づいてませんねぇ」
ケン「くっ……! ヤムチャ……今、そっちに行くぜ……後はお前に託すっ……!」ズルズル
ヤムチャ(うおっ、ケンさんが近づいて来てるぞ……! って事は、俺の出番か……!)
ヤムチャ(そうか……サガットさんが今、背を向けて休んでいるのも……バイソンさんがダンさんと揉めているのも……俺に交代するタイミングを作ってくれているのか……)
ケン「うおおぉぉっ……! 後、少しだっ……!」ズルズル
実況「さぁ、ケンが這いずってコーナーに近づく! その距離、残り10センチっ!」
ケン「……休んでいる、サガットに不意打ち仕掛けて、後はずっとやられてろ」ボソッ
ヤムチャ「……えっ?」
ケン「もう、難しい事は考えるな……最後に狼牙風風拳見せれば、全部チャラだっ……!」
ヤムチャ「……」
ケン「お前が、狼牙風風拳を仕掛ける時が、試合終了の合図だ……難しい事は考えないで、それだけに集中して、後はやられてろ……! それが一番、上手くいく……!」
ヤムチャ「うっす……! わかりました……!」
実況「そしてここでタッチが成立っ! ケン、何とか窮地を凌ぎました!
ヤムチャ「……よしっ!」
実況「さぁ、試合権はヤムチャに移りました! 今、ヤムチャがリングイン!」
サガット「……ふぅ」
ヤムチャ(サガットさんは、まだこっちに背を向けてるな……ここで、飛び蹴りでも仕掛けて……後は、ずっとやられておくか……)
実況「さぁ、サガットはまだリングに背を向けている! これは大チャンスか!?」
ヤムチャ(いや、待てよ……リュウさんに、正義の味方が卑怯な攻撃をするなって怒られたよな……)
サガット「……」
ヤムチャ(それにダンさんも、どうせ相手は攻撃を受けてくれるから、バレにくい攻撃をする必要もない……なんて言ってたな……)
サガット「……」
ヤムチャ(だったら、ここは……攻撃するチャンスは、もうここしか残ってねぇし……試してみる価値はありそうだな……!)
ヤムチャ「おいコラ、眼帯野郎っ! 何時までも休んでるんじゃねぇ! いくぞっ!」
実況「おっと、ここでヤムチャが声を張り上げたぁ! 気合を入れたぁ!」
サガット「……何!? し、しまった!」
ヤムチャ「うおおぉぉっ……! 行くぜっ……!」ダダッ
サガット「し、しまった……! バイソンを待ってる隙に……ケンはコイツに交代したのか……!?」ムクッ
実況「さぁ、サガットは慌てて立ち上がるが……ヤムチャは、突っ込んでいるっ! サガット目掛け、もう一直線に突っ込んでいるっ!」
ヤムチャ「……うるあぁぁぁ! ショルダータックルだっ!」ドスッ
サガット「ぐっ……! う、うおっ……!」ヨロッ
実況「そして、そのままショルダータックルっ! サガット巨体が大きくグラついたぞ!」
ヤムチャ(ほら、やっぱりサガットさん、攻撃喰らってくれるじゃん……不意打ち汚ねぇ手段、使う必要はねぇって事だな……)
ヤムチャ(サガットさんは、まだ反撃する素振りを見せてないな……フラついているみたいだし、まだ俺が攻撃をしなくちゃいけねぇみたいだな……だが……!)
サガット「くそっ……この野郎……」フラフラ
ヤムチャ(もう、難しい事を考えるのは抜きだ……! バイソンさんみたいに、打撃の連続攻撃を仕掛け……それを徐々に大振りにしていくっ……!)
サガット「……舐めやがって!」
ヤムチャ「うるぁっ! いくぞっ……!」シュッ
サガット「何っ……! ぐっ……!」
実況「そのままヤムチャが仕掛けるっ! 先ずはサガットにローキックっ!」
ヤムチャ(サガットさんだったら……きっと、大振りで打てば避けて反撃してくれるだろう……俺が出来たんだ、サガットだったら当然出来るはず……!)
サガット(素早い蹴りをヤムチャ君は打ち込んでくるなぁ……? 確かに見栄えはいいけど……この蹴り、俺に対処出来るかな……?)
ヤムチャ「オラ、もう一発っ!」シュッ
サガット「ぐ、ぐおっ……!」
実況「そして、お次はミドルキックっ! サガットの脇腹に突き刺さる!」
ヤムチャ「まだまだっ! オラオラ、行くぜっ!」シュッ
サガット「……ぐっ!」ヨロッ
実況「さぁ、ヤムチャの蹴り蹴り蹴りィ! 怒涛の連続攻撃っ!」
元「サガット君も、これまでの戦いでスタミナをかなり消費してますからね……ここで、押し切りたいですね……」
ヤムチャ「よっしゃ、相手はフラついてるぜ! ここで決めちまうぞ!」
サガット「うぅ……くそっ……」
実況「さぁ、ここでヤムチャが大声を張り上げ、お客さんを煽ったぁ!」
イケー! ヤムチャー!
ヤムチャ「よっしゃっ……! オラっ……!」シュッ
サガット「ぬ……? ぐ、ぐおっ……!」
実況「さぁ、ヤムチャの攻撃はまだ続くっ! サガットをここまま押し切れるか!?」
サガット(今の蹴りは……俺でも見えたぞ……? と、いう事は……)
ヤムチャ「……よっしゃっ! もう一発行くぜっ!」
サガット(なるほど、蹴りを大振りにするだけではなく……一撃一撃の間に、お客さんを煽って、間を作ってくれているな……)
ヤムチャ「……うるあぁぁっ!」シュッ
サガット「……ぐっ!」
実況「そして、またもミドルキック! サガットの脇腹に突き刺さる!」
サガット(そこまでせんでも、俺はわかるよ……まぁ、折角ヤムチャ君が教えてくれているんだ……望み通り、次の蹴りで止めにしてやろう……)
ヤムチャ「どうしたどうした!? 体格と態度はでけぇが、大した事ねぇじゃねぇか! なぁ!?」
ヤムチャ「オラっ! 脇腹に喰らえっ……!」シュッ
実況「さぁさぁ、ヤムチャの連続攻撃が止まらないっ! またもサガットに攻撃を仕掛ける!」
サガット「甘いぞ、ヤムチャ! 最初は戸惑ったが……流石にもう、目が慣れたぞ!」ガシッ
ヤムチャ「ん……? う、うおっ……!」
実況「おっとおっと……!? だがしかし、ここでサガットがヤムチャの蹴りを捉えたぞ!? ヤムチャの足を掴んだぁ!?」
元「あら……足、取られちゃいましたね……?」
サガット「手間取らせやがって……覚悟出来るんだろなぁ……?」
ヤムチャ(よし……! 後は、狼牙風風拳のタイミングを、待つだけだ……! 難しい事なんて、何も残ってねぇ……!)
実況「足を取られたヤムチャは、片脚立ちの状態のままサガットと向かいあっています……! これは、少しばかりマズい状況か!?」
サガット「……お前ら、空手軍団の弱点は足だ」
ヤムチャ「お、おい……離せよ……」
サガット「鋭い蹴りに、飛び跳ねるバネ……フットワークなんかもそうだな……全て、足を基準に行動している……」
ヤムチャ「く、くそっ……」
サガット「……だから、こうやって足を捉えられると何も出来ん」ニヤリ
ヤムチャ「くそっ……! こんな状況で、てめぇの冷静な分析なんてこっちは聞きたくねぇんだよ……!」
サガット「それもそうだな……何時までも、こんな体勢のままじゃ可哀想だ……よし、望み通り止めにしてやるとしよう!」
ヤムチャ「……えっ?」
サガット「うおおぉぉっ……! このまま、喉元に打ち込んでやるっ……! ラリアットだあぁぁっ!」ガスッ
ヤムチャ「ぐ、ぐわああぁぁっ……!」
実況「そしてそのまま、サガットはヤムチャの喉元にラリアットを打ち込むっ! 巨体がヤムチャに打ち込んだぁ!」
元「危ない体勢で打つねぇ……? 強引すぎるよ、サガット君……」
ヤムチャ「ぐわああぁぁっ……!」バターン
実況「これにはヤムチャも大きくダーウン! リングの中央で大の字だ!」
サガット(偶然か……? それとも、位置を調整してくれたのか……? ヤムチャ君が上手く、リングの中央に倒れてくれたな……)
ヤムチャ(よし、後は……やられ続けて……狼牙風風拳っと……)
サガット(まぁ、これを利用しない手はないか……よし、コーナーポストに昇ろう……) ダッ
実況「さぁ、そして……ダウンしているヤムチャを尻目に、サガットはそのままコーナーポストへ!
サガット(ヤムチャ君が起き上がれば、ミサイルタイガーニー……寝たままなら、ダイビングギロチンドロップ……俺は、どちらでもいいさ……)
ケン「サガットも試合を締めにいってやがるな……だったら、俺も動くか……」
実況「さぁ、今サガットがセカンドロープに足を掛け……」
ケン「うおおおぉぉっ……! くそっ、させるかよっ!」
サガット「……ぬっ?」
キャー、ケーン!
実況「おっと、ここでケンがコーナーにいる、サガットの元へと近づいたぁ!」
ケン「うらぁっ……! うらぁっ……! 落ちやがれ、サガットっ……!」ガスガス
サガット「フン、ダメージを受けて疲労困憊のお前のエルボーなど効かんよ……」
ケン「うるせぇ……! おめぇらに好き放題やられてたまるかってんだよっ……!」ガスガス
サガット「五月蝿い奴だ……仕方ない……」
実況「さぁ、ケンもヤムチャを救う為に懸命にサガットにエルボーを打ち込むっ!」
サガット「オイ、バイソンっ! 邪魔なコイツを止めろっ! 今すぐにだっ……!」
バイソン「アイアイサーっと……よし、行くぜっ……!」
実況「おっと、ここでサガットがバイソンに指示をして……バイソンがリングイン!」
バイソン「うおおぉぉっ! ケン、行くぜぇ!」ダダッ
ケン「くそっ……! バイソンが来やがったっ……!」
バイソン「バイソン、いっきまぁ~すっ! うるあぁぁ!」ドゴオォッ
ケン「……ぐわああぁぁっ!」
実況「そして、そこままケンまで突っ込んで行き、一撃浴びせてケンを場外に落としたぁ!」
バイソン「サガット、俺は場外でケンの野郎を止めておく! 後は、任せるぜ!」
サガット「あぁ、しっかりと抑えておいてくれよ……しっかりとな……」
実況「バイソンはそのまま、ケンを追いかけ場外へと行ったぁ! これでリング上には、サガットとダウンしているヤムチャのみ!」
元「……なんとかヤムチャ君、立ち上がってくれませんかねぇ?」
サガット(ヤムチャ君は、まだダウンしたままか……という事は、ダイビングギロチンドロップだな……)
ヤムチャ(おうおう、ケンさんとバイソンさん、場外に行っちまったな……二人共、いいタイミングで去ってくれるもんだな……)
サガット「さぁ、ヤムチャ……これで終わりにしてやろう……」
ザワ……ザワ……
実況「さぁさぁ、今サガットの巨体がコーナーポストの上に立つ! 場内がザワめく!」
サガット「うおおおぉぉっ! 止めだあぁぁっ! 死ねええぇぇっ……!」
実況「そして、サガットが跳んだぁ! トップロープからのダイビングギロチンドロップだぁ!」
ズドーンッ
ヤムチャ「……ガ、ガッ!」
実況「さぁ、トップロープから巨体が振ってきてヤムチャの身体を押し潰したぁ!」
元「……これは、痛いのもらっちゃいましたね」
サガット「……さぁ、後はスリーカウントをとって終わりにするだけだ」
ヤムチャ「……うぅ」
サガット「これは……予告スリーカウントと、いうわけだ……」スーッ
実況「おっと、ここでサガットが首を掻っ切るポーズをして、フィニッシュ宣言! フィニッシュ宣言です!」
サガット「……持ち上げて落とすから、上手く着地してくれ」ボソッ
ヤムチャ「……えっ?」
実況「そして、サガットはゆっくりとヤムチャ近づき、引き起こします!」
サガット「……フンっ!」
ヤムチャ(持ち上げて、落とすから着地しろって何だ……? 何か、そういう投げ技があるのか……?)
実況「そして、サガットは股の下のヤムチャの頭を抱え……これはパワーボムの体勢だぁ!」
サガット「いくぞっ……!」
ヤムチャ(わかんねぇけど……わかんねぇけど……とにかく、準備をしておこう……! 準備って何か、わかんねぇけど……!)
サガット「うおおおっ……!」ググッ
ヤムチャ(来たっ……! 持ち上げられたっ……!)
実況「そしてサガットが持ち上げたぁ! ヤムチャを頭上まで抱え上げるっ!」
ストンッ
実況「い、いやっ……! おっと、おぉ~っと!」
ヤムチャ「う、うおっと……! 危ねぇ……!
サガット「……何っ!?」
実況「ここで、ヤムチャが切り返したっ! パワーボムの体勢で持ち上げられた所を上手く切り返し、サガットの間の前に着地したっ!」
元「いいです! 上手いですよ!」
ヤムチャ(な、なんだコレ……サガットさんに持ち上げられたと思ったら……そのまま、ストンって落とされて、サガットさんの目の前に、真っ直ぐ着地させられてる……)
サガット「……何っ!?」
ヤムチャ(目の間には、棒立ちのサガットさん……なんだよ、コレ……って、驚いてる場合じゃねぇ……)
サガット「くそっ……! 切り返されたか……!」
ヤムチャ(俺に反撃するチャンスをくれる為に何かしてくれたんだな……よくわかんなかったけど……もう、ここで終わりなんだ……だったら、気合入れてやってやるぜ……!) シュッ
実況「おぉ~っと! ここで、ヤムチャが構えたぁ! あの構えは……!」
元「狼牙風風拳ですね。ヤムチャ君、狙ってましたね」
ヤムチャ「狼牙風風拳だっ! いくぞっ……!」
ヤムチャ「ハイッ!」
サガット「何ィ……!? ぐっ……!」
ヤムチャ「ハイッ!」
サガット「ぐおっ……! うぐっ……!」
ヤムチャ「ハイッ! ハイッ! ハイッ!」
サガット「うおおっ……! くそっ、くそっ……! しくじったっ……!」
イケー! ヤムチャー! キメチマエー!
実況「ここで仕掛けたぁ! ヤムチャの狼牙風風拳っ!」
元「ヤムチャ君、勝負かけてきました!」
実況「激しい打撃の連続攻撃でサガットを滅多打ちだぁ! このまま仕留めてしまえ!」
ヤムチャ(ここが俺の最後の攻撃チャンスだ……! だから、だからっ……!)
ヤ・ム・チャ! ヤ・ム・チャ!
実況「場内からは大ヤムチャコールっ! さぁ、ヤムチャ! サガットをここで仕留めてしまえ!」
バイソン「……ヤムチャコールだと? どうなってるんだ?」クルッ
ヤムチャ「ハイッ! ハイッ! ハイッハイッハイッ!」
サガット「ガッ……グッ……!」フラフラ
バイソン「何で、サガットがやられてんだよ……? ち、ちくしょうっ……! 助けに行かねぇと……! 今、行くぜ……!」
ケン「おい、待てよ、バイソン……俺を放っておいて、何処へ行く気だ……?」ググッ
バイソン「邪魔だ、ケン……! 離しやがれ! 今は、てめぇに構ってる暇はねぇんだよ!」
ケン「連れねぇ事言うんじゃねぇよ……試合権のない者同士……場外で仲良くしようぜ……? おらぁっ!」ガスッ
バイソン「……ぐっ!」
ヤムチャ「ハイッ! ハイッ! ハイッハイッハイッ!」
サガット「くそっ……! この帝王が……こんな奴に……こんな奴などに……!」
実況「さぁ、止まらない止まらない止まらないっ! ヤムチャの攻撃は止まらないっ!」
イケー! ヤムチャー!
ヤムチャ「ハイッ! ハイッ! ハイッハイッハイッ!」
サガット「くそっ、舐めやがって……舐めやがって……この野郎……!」
ヤムチャ「これで……フィニッシュだっ……!」ググッ
サガット「そうはさせるかぁ! ツメが甘いぞ……ヤムチャァ……!」
ヤムチャ「……何っ!?」
サガット「足元がお留守なんだよぉ……! その足に打ち込んでやるっ……! うおおおぉぉっ……!」ズガアァッ
ヤムチャ(お客さんの声援も貰えたし……今日の試合……反省点はあるけど、心残りはもうねぇ……)
サガット「はぁっ……はぁっ……危なかったぜ……」
ヤムチャ(後は、崩れ落ちて……やられるだけだ……) ガクッ
実況「おぉ~っと、だがしかし、足元がお留守だった! サガットの鋭いローキックを喰らい、ヤムチャはガクっと崩れ落ちてしまった!」
元「サガット君、アンクルロックに、STF……ヤムチャ君の足を痛めつける攻撃を長時間していたからね……ヤムチャ君の足にも疲労がきていたんでしょう……」
ヤムチャ「うぅ、くそっ……後、少しだったのに……!」
サガット「こいつらの底力を甘く見てはいかんようだな……もう油断はせんっ……! 例えコイツが空手軍団のナンバースリーだろうが、全力で止めを指すっ……!」ダダッ
実況「さぁ、そしてサガットは片膝をついているヤムチャを尻目に、ロープへと走ったぁ!」
元「サガット君も、ここで決めに行くんじゃないですか? もう、サガット君にも余裕はありませんからね」
サガット「さぁ、止めだ……ヤムチャっ……!」ダダッ
ヤムチャ「ちくしょう……ちくしょうっ……!」
サガット「うおおおぉぉっ……! タイガージェノサイドっ……!」
ヤムチャ「!」
実況「さぁ、ロープの反動を利用して勢いをつけて返ってきたサガットが……!」
サガット「……オラァっ!」ドゴォッ
ヤムチャ「……ゴ、ゴホっ」
実況「先ずはタイガーニー! 膝を土手っ腹に打ち込むっ! ヤムチャの身体が『く』の字に折れ曲がる!」
サガット「次は、顎だ……うおおぉぉっ……!」ズガァッ
ヤムチャ「……ガ、ガハッ!」
実況「そして、ショートレンジのタイガーアッパーカットをヤムチャの顎に打ち込む! あまりの衝撃にヤムチャの身体が、クルリと一回転したぁ!」
ヤムチャ「……うぅっ」ヨロッ
サガット「フン……待ってたぜ、ヤムチャ……」ググッ
実況「そして、ヤムチャの目の前には体勢低くして構えたサガットが待っていたぁっ! 狙っている! 狙っているぞっ!」
サガット「これで、終わりだっ……! うおおおぉぉっ……!」ズガアァァッ
ヤムチャ「ぐ、ぐわああぁぁっ……!」
実況「そして、そこにタイミングを合わせて、タイガーアッパーカットっ! ヤムチャの顎に打ち込んだぁ!」
元「……サガット君も、決めにきましたね」
実況「これはサガットのタイガージェノサイド! この連続攻撃には……!」
サガット「……フン、手こずらせやがって」
ヤムチャ「うぅ……ち、ちくしょう……」バターンッ
実況「やはり、ヤムチャも耐えられない! 大きくダーウンっ!」
バイソン「やったぜ、サガット……! ナイスだっ……!」
ケン「くそっ、サガットの野郎……後、少しだったのに……!」
サガット「よし、レフェリー……フォールにいくから、カウントをしろ……」
ダン「おう!」
実況「そして、サガットはフォールに入りますっ!」
ケン「くっ……! 流石にあの技喰らっちまったら、返せねぇだろ……! ここは俺が助けに行かねぇと……!」
バイソン「おい待てよ、ケンっ! 何処行くんだよ! 場外で仲良くしようぜ!」ガシッ
ケン「くそ、 離せっ……離しやがれ、バイソンっ……!」
バイソン「試合権を持ってねぇ人間は、場外で仲良くしてねぇといけねぇんじゃなかったか? 教えてくれたのは、おめぇだろ……なぁ、ケン……?」ニヤニヤ
ケン「くそっ……くそっ……!」ジタバタ
実況「場外ではバイソンがケンにしがみつき、リングインを妨害しているっ……! そして、ここでカウントが取られます!」
元「なんとか……ヤムチャ君が、返してくれれば……!」
ダン「ワンっ……!」
ヤムチャー! タテー!
ダン「ツーっ……!」
ケーン! タスケニイッテー!
ダン「……スリーっ!」
実況「ここで、スリーカウントっ……! ついに決まってしまったぁ!」
サガット「……よし」
実況「30分近い死闘の結末は……! シャドルーに軍配が上がりましたぁ!」
バイソン「へへ、やったぜ……流石、サガット……」
ケン「くそっ……決まっちまったか……」ガクッ
バイソン「まぁ、勝者はリング上で勝ち名乗りを挙げさせてもらうぜ……負け犬お前は、そこで大人しくしてな……」
ケン「……くそっ」
実況「さぁ、ここでバイソンがリングにサガットと合流します!」
バイソン「ヘーイっ! サガット、ナーイス!」パシッ
サガット「……うむ」パシッ
実況「そして、リング上でサガットとハイタッチ! 今、勝ち名乗りが挙げられます! 第五試合の勝者は、サガット・バイソン組! シャドルーの勝利です!」
バイソン「へへ、サガットどうする……? この負け犬を、もっとここでボコボコにしちまうか……?」
ヤムチャ「……うぅ」
サガット「お前は好きだな……だが、今日の試合は長くて疲れた……俺はもう休みたい……」
バイソン「あら……? サガットちゃん、お疲れなの……?」
サガット「ボコボコにするならお前一人でやってくれ……俺は先に退場させてもらうよ……」フラフラ
バイソン「あっ、待ってくれよ……! サガットが帰るんだったら、俺も帰るよ! お~い……待ってくれよ~!」
実況「さぁ、そしてここでシャドルー軍団は退場します」
元「おっと……今日は試合が終わった後に、暴れたりはしないんだね……?」
実況「退場しているサガットの足取りが、少しフラついてるようも見えますが……」
元「まぁ、30分近く闘ってたからね? 流石にあの人達も、もう元気は残ってないか?」
ケン「ヤムチャ……! 大丈夫か……!?」
ヤムチャ「うぅ……」
実況「さぁ、そしてここでケンがリングインして、倒れているヤムチャに駆け寄ります!」
ケン「起きろっ……! 起きろっ……! ヤムチャっ……!」
ヤムチャ(おっ……? もう、起きてもいいのかな……?)
ケン「……今日は、下手なマイクアピールする訳にもいかねぇからよぉ? 起きたら、そのまま帰るぞ?」ボソッ
ヤムチャ(……マイクアピールなし?)
ケン「とりあえず、起きて……俺に軽く頭を下げろ……そしたら、退場だ……」
ヤムチャ(どういう事だろ……? まぁ、とりあえず……今は従っておいて……わかんなかったら、後で聞けばいいか……)
ヤムチャ「……うぅっ」ムクッ
ケン「おぉ、ヤムチャ……! 大丈夫だったか……!」
実況「おっと、ここでようやくヤムチャが起き上がります!」
ヤムチャ「え~っと……ケンさん、すいませんでした……」ペコッ
ケン「……」
実況「おっと……そして、ここでヤムチャがケンに頭を下げたぞ……?」
元「まぁ、自分が決められちゃったからね……ヤムチャ君も反省してるんじゃないかな……?」
ヤムチャ(これで……よかったのかね……?)
ケン「……」
実況「さぁ、これに兄弟子のケンは、どう応える……どう応えるのか……?」
ケン「……ヤムチャ」
ヤムチャ「……ん?」
ケン「気にすんなや! 次に次に繋げればいいからよ、次に!」ポンポン
ケーン! カッコイイー!
実況「おっと、ここでケンがヤムチャの肩をポンポンと叩き……気にする事はないとでも言ってるんでしょうかねぇ!?」
元「まぁ、そうでしょうねぇ。そういう事だと思います」
ヤムチャ(あ~、これ……俺が足を引っ張って負けたって理由作ってんのか……)
ケン「よし、ヤムチャ……退場だ……行くぞ……」
ヤムチャ(嫌な役割だな、俺……まぁ、俺にはそういう風な事を求められるのも、仕方ない事なのかもねぇ……)
実況「そして、空手軍団の二人が、今退場します!」
ヤムチャ(まぁ、でも……今日の試合は色々と勉強になったな……良い意味でも……悪い意味でも……)
ヤムチャ「プーアル!俺はプロレス団体に就職して頑張るぞ!」【後半】
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ヤムチャ「プーアル!俺はプロレス団体に就職して頑張るぞ!」
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