ケンシロウ「いよいよ明日はキャンプか」
199X年
世界は核の炎に包まれた!
海は枯れ、地は裂け
あらゆる生命体が絶滅したかに見えた
だが……
『では、県内の気象情報です』
トキ「お、県内全域晴れマークだ」
ジャギ「せっかく休みを取ったんだ、晴れてくれなくては困る。」
ラオウ「この拳王のキャンプで空も興奮しておる!」
ジャギ「ランタンよし。テントとペグ、プラスチックハンマー、食器……」
トキ「ジャギ、カレーの食材の準備はできているのか」
ジャギ「ああ、昨日ラオウ兄者が買ってきてくれた。薪もケンシロウがチョップで割ってたし」
トキ「フフ……二人ともよっぽど楽しみなんだな」
ラオウ「ジャギ!!」ガラッ
ジャギ「兄者……なんだその格好は」
ラオウ「一番大きなサイズの寝袋を買ったのに下半身までしか入らぬ!」ギュウギュウ
トキ「Oh……」
ラオウ「ぬぅぅ……!?」ミチミチ…
ジャギ「無理に入ろうとしなくていいって! 寝袋二つ繋いでリフォームしてやるから、もう一つ寝袋買ってきてくれ」
ラオウ「おお、すまぬ弟よ」
ジャギ「さて……ミシンどこにしまったっけな」
トキ「ケンシロウ、荷造りはもう済んだか?」
ケンシロウ「ああ、万全だが、どうかしたのか?」
トキ「いや、さっき判明したのだが、ラオウに対して寝袋が小さかったんだ」
ケンシロウ「無駄にデカいからな」
トキ「寝袋は問題ないだろうが、今一度忘れ物がないか確認しておいてくれ」
ケンシロウ「わかった」
トキ「あとこれ、ジャギから」
ケンシロウ「【たびのしおり】……だと」
トキ「相変わらずの几帳面だろ」
ケンシロウ「あの外見でことり文字フォントを使うのは止めて欲しいんだが……」ペラッ
ケンシロウ「む、近場に温泉もあるのか」
トキ「ケンシロウは聞いてなかったのか? 帰りに寄っていくと言っていたぞ」
ケンシロウ「口頭でいいから連絡して欲しいものだな。危うくお風呂セットを持っていかないところだった」
トキ「もしかしたらラオウも聞いていないかも知れないな。私ちょっと確認してくる」
ケンシロウ「ああ、頼んだ」
…………
トキ「ごちそうさまでした」
ジャギ「みんな順番に風呂入ってちゃっちゃと寝ろよ」
ラオウ「一番風呂はこのラオウがもらってやるわ!!」
ケンシロウ「トキ、ラオウがあがるまでテラリアでもやらないか」
ジャギ「早く寝ろって言ったろ。テラリアはやめろ」
ケンシロウ「む……」
翌日
ジャギ「みんなリュックは持ったな」
ケンシロウ「ああ」
ジャギ「キャンプセットの載せ忘れはないな」
トキ「大丈夫だ。安心するがいい」
ジャギ「……兄者、本当に黒王で行くのか?」
ラオウ「くどい! 黒王号で行くと言ったら行くのだ!」
ジャギ「わ、わかったって」
トキ(兜にマントにリュックサック……)
ブロロロロ…
ジャギ「兄者と黒王はついてきてるか?」
トキ「今のところは」
ケンシロウ「それにしても、黒王とラオウの組み合わせは車高高すぎじゃないか?」
ジャギ「まあ確かに乗用車よりか高いけどよ、トラックと同じくらいだろ? 問題ないんじゃないか」
ポーン
『次の信号、左よ!』
ケンシロウ「……そういえば、ラオウが黒王に乗って公道を走っているのを見るのは初めてだな」
トキ「言われて見ると確かに……」
ケンシロウ「……黒王にウィンカーって付いてたか?」
ジャギ「……付いてないな」
ケンシロウ「じゃあどうやって曲がるん…………っ!?」
ラオウ「……」スッ
ラオウ「……」ビシィッ
ケンシロウ「あ、あれはまさしく左折の構え!?」
ジャギ「ただの手信号だろ」
……
ジャギ「到着だー」バタンッ
トキ「ジャギ、お疲れ様」
ジャギ「兄者こそ、酔い止めの薬が効いて良かったな」
バカラッバカラッバカラッバカラッ
ジャギ「む、ラオウ兄者も来よったか」
ズズゥゥン…
ラオウ「ぬぁーっはっはっは!! 心地良い風であったわ!」
ジャギ「40キロ順行で風を感じられたなら何よりだ」
ケンシロウ「ラオウ」ザッ
ラオウ「ケンシロウ……バドミントン、はじめるか!」ゴゴゴ…
ケンシロウ「ハァァァ……」
ラオウ「ぬううぅぅ……!」
ケンシロウ「アタァッッ!!」ペインッ
ラオウ「ジョイヤッ!」ペインッ
ケンシロウ「ホアタッ!」ペインッ
ラオウ「俺のシャトルいつまで受けきれるかな!」ペインッ
トキ「二人ともテンション高いな」
ジャギ「俺らで荷物動かすするか」
ジャギ「よいせっ、この辺りが見晴らしもいいしテント張るのに丁度良いかな」
ジャギ「にしても、ケンシロウのリュック、やけに重たいな……何入れてんだよ」ゴソ
ジャギ「雀牌にPS3本体……あいつバカだろ……」
トキ「ジャギ」
ジャギ「なんだ兄者」
トキ「ここをキャンプ地とする」
ジャギ「お、おう」
ジャギ(トキ兄者もかなりはしゃいでるな。それだけ楽しみにしてくれていたかと思うと嬉しいな)
ジャギ「兄者、せっかくだし俺達もバドミントンに混ざるか? 荷物はブルーシートに仮置きしたしさ」
トキ「ううむ……」
ジャギ「どうした、気乗りしないのか」
トキ「いや、バドミントンも楽しいだろうが……」チラッ
ラオウ「砕いてみせよう! このシャトルに我が生涯の全てを込めて!!」ゴゴゴ…
ケンシロウ「ハァァ……天破の構えッ」ビシィッ
トキ「あのテンションに混ざるのはちょっと」
ジャギ「ああ……」
トキ「戻ってこれなくなりそうで」
ジャギ「わかる」
ジャギ(トキ兄者もかなりはしゃいでるな。それだけ楽しみにしてくれていたかと思うと嬉しいな)
ジャギ「兄者、せっかくだし俺達もバドミントンに混ざるか? 荷物はブルーシートに仮置きしたしさ」
トキ「ううむ……」
ジャギ「どうした、気乗りしないのか」
トキ「いや、バドミントンも楽しいだろうが……」チラッ
ラオウ「砕いてみせよう! このシャトルに我が生涯の全てを込めて!!」ゴゴゴ…
ケンシロウ「ハァァ……天破の構えッ」ビシィッ
トキ「あのテンションに混ざるのはちょっと」
ジャギ「ああ……」
トキ「戻ってこれなくなりそうで」
ジャギ「わかる」
トキ「私カメラ持ってきたからみんなのスナップ写真を撮るよ」
ジャギ「お、いいなそれ。しかもポラロイドカメラか、さすがトキ兄者、趣がある。思い出が写真に残るのはいいな」
トキ「早速二人のバドミントンを」パシャ
ウィィ…
『世紀末救世主vs世紀末覇者!! いままさに宿命に終止符が打たれる!! 』
ジャギ「……とか煽りが入りそうな写真だな」
トキ「うむ……」
ラオウ「我が生涯に一片の悔いなし!!」ドゴーンッ
ケンシロウ「ふう、いい汗かいた」
ジャギ「一区切りついたか? そしたら向こうの川行こうぜ。魚を放流してるらしいから、そいつを釣って焼き魚で昼飯だ」
トキ「今朝作ってきたおにぎりもあるからな」
ラオウ「むう、素晴らしい段取り。見事だ弟よ」
ジャギ「へへ、今日はとことん楽しむからな」
ジャギ「竿と餌を借りてきたぜ」
ケンシロウ「でかした」
トキ「ここも素晴らしい景観だな。釣り堀にしておくのが惜しいくらいだ」パシャ
ラオウ「ぬう……うまくブドウ虫が針につけられぬ」チマチマ
ジャギ「ネリエもあるぞ」
トキ「ジャギ、ここは何が釣れるんだ?」
ジャギ「イワナとヤマメだと。釣った魚は持っていけば捌いてもらえて、あそこの七輪で焼いて食う」
ラオウ「……」グー
ケンシロウ「よし、絶滅するくらい釣りまくってやろう」
……
ジャギ「ヒャッハー! また釣れたぞ!」パチャ
トキ「調子いいなジャギ。……っと私も」パチャ
ジャギ「ふうー、この合わせの瞬間がたまらないな」
トキ「ああ。じっと待っている……静水の時間の中にふと訪れる一瞬の勝負、実に趣深い」
ジャギ「……と、もう昼前か。おーい、そっちの調子はどうだー?」
ラオウ「ぬぅ……」
ケンシロウ「……」
ジャギ「おっと、まだ釣れてないのか」
トキ「釣り堀なだけあって、向こうは割と入れ食いだったのだがな」
ラオウ「なに、そうなのか」
ジャギ「ああ。場所変えてやったらどうだ?」
ケンシロウ「そうしよう」
トキ「私達は先に捌いてもらっているよ」
……
…………
ラオウ「我が頭上に死兆星が……」グー
ケンシロウ「すまぬ……北斗の先人達よ…………」グー
トキ「まだ釣れないのか」ムシャムシャ
ケンシロウ「ぬおぉぉ……トキィ……ッ!」
ジャギ「俺らの釣った魚食ったらどうだ。イライラしてたら釣れるもんも釣れないぞ」
ラオウ「拳王は決して施しは受けぬ! 他人の釣った魚で腹を満たすなど恥辱!!」
ジャギ(無職のくせにどうして変なところだけこんなにプライドが高いんだ)
ケンシロウ「しかしこのままでは餓死してしまう……」
ケンシロウ「あれを……あれをやるしかないのか……!」
ラオウ「ケンシロウ……」
ケンシロウ「……」ザッ
ケンシロウ「ハアアァァァ……ッ!!」ゴゴゴ…
ケンシロウ「ホォォォアタァッッ!!!!」ガッ
北 斗 真 剣 漁
ほくと がちんこりょう
ドゴァァァアッッ―――
北斗真剣漁とは!
己の闘気の全てを拳にのせ、川岸や海岸の岩盤に渾身の一撃を加える事で水中に衝撃波を伝播させ、魚を気絶させる北斗神拳の奥義である!
本編中でケンシロウがジャギとの対決中、ヘリポートで誤用した事はあまりにも有名である!
ケンシロウ「よし! 魚が浮いてきたぞ」
ジャギ「よしじゃねーよ! 何やってんだ!」
ラオウ「よし、次は我が拳で」
ジャギ「だからよしじゃねーよ! やめろバカ!!」
モヒカン「当店ガチンコ漁と北斗神拳禁止となっておりますが」
ジャギ「すみません! すみません!」
トキ「よく言い聞かせておきます!」
ジャギ「おい」
ケンシロウ「はい」
ジャギ「ちっぽけなプライドの為に禁じ手を使うのが伝承者のやり方なのか?」
ケンシロウ「反省しています」
ジャギ「みんなに迷惑がかかるんだぞ。はしゃぎすぎに気をつけろ」
ケンシロウ「はい」
トキ「ラオウも止めなければ駄目ではないか。もう少しで出禁ものだ」
ジャギ「そうだぞ。場所を借りているからにはルールを守って遊ばなきゃならんだろ」
ラオウ「俺は誰の命令も受けぬ! たとえ神の命令でもな!」
ジャギ「筐体壊して津田沼のゲーセン出禁になったの忘れたのか! 少しは反省しろ!」
ケンシロウ「そうだぞ」
ジャギ「お前が言うな!」
ケンシロウ「はい」
ラオウ「うぬの所為で俺まで怒られたではないか」
ケンシロウ「貴様も真剣漁をやるつもりだったろう」
トキ「二人とも言い争いしてないでこっちにきなさい。ほら、魚が焼けるぞ」
ラオウ「むう……いい匂いが」
ケンシロウ「ジャギ、その新聞紙は?」
ジャギ「新聞紙とかでこうやって囲いを作ると熱が逃げないから旨く焼けるんだぜ」
ケンシロウ「まだそんな物に頼っているのか」
ジャギ「なにをう? いいから食ってみろ」
ケンシロウ「あむ……むっ!? これは!」
ラオウ「うまいではないか!」
トキ「腹をすかせていたんだ。余計うまく感じるだろう」
ケンシロウ「しっかりと中まで熱が通っている……うまい」
ジャギ「どうだ悔しいか! アハハハハー!!」
ケンシロウ「……」
ジャギ「悔しいかケンシロウ? おにぎりもあるぞ? いっしょに食べたいか言ってみろ!!」
ラオウ「魚が上手に焼けただけで鬼の首を取った騒ぎだな」
トキ「今日くらい許してあげよう」
ジャギ「魚ども~! 俺の顔より醜く焼け爛れろ!!」
ケンシロウ「爛れた魚なんか食べたくないぞ」
トキ「ケンシロウ、そっとしとおいてあげてくれ」
ケンシロウ「うむ……」
トキ「さて、腹拵えして少し休憩したらテントを張ろう。荷物はあそこのブルーシートのところだ」
ラオウ「ジャギが梨を持ってきていたな。川で冷やすか」
トキ「それがいい。クーラーボックスでは味気ないからな」
ケンシロウ「ラオウもたまにはいいことを言うではないか」
……
ケンシロウ「他の客もこの辺りで冷やしているみたいだな」
トキ「この時期なのにスイカもあるな。ハウス栽培かな」
ラオウ「クーラーボックスもあるが、ビールを冷やすのもいいな」
トキ「クーラーボックスよりはぬるくなるかも知れないがね」
ラオウ「うむ」
ズルッ
ラオウ「ぬおっ!?」
ドボーンッ
ケンシロウ「何をしているんだラオウ」
リハク「巨星墜つ、か」
ケンシロウ「誰だお前」
ジャギ「おーい、そっちおさえてくれ!」
トキ「よしきた」グッ
ケンシロウ「随分デカいテントを買ったんだな」
ジャギ「大人10人用だからな。ラオウ兄者がいるしこれぐらいで丁度良いだろ」
ラオウ「……ぬう」
ジャギ「どうした、兄者?」
ラオウ「もしや、俺の体格でかすぎ……?」
ジャギ「えっ」
トキ(今更だ……)
ジャギ(何を今更……)
ケンシロウ「今更すぎるだろ」
ケンシロウ「完成だな」
トキ「いいなテント、キャンプ感が違うな」パシャ
ジャギ「こいつらがあった方がもっとキャンプ感出るぜ~!」カチャカチャ
カチッ
ケンシロウ「おお、ランタンいいな」
トキ「いい」
ラオウ「いい」
ジャギ「だろ!?」
北斗さん一行がイイネ!しました
ジャギ「無事テントも設置できたし、遊ぶか?」
ラオウ「釜戸は作らないのか」
ジャギ「向こうに炊事場があるけど、せっかくだから石集めて作るか?」
ケンシロウ「作ろう。キャンプ感が違う」
ジャギ「お、おう」
ジャギ(そのやる気を少しでも実生活で発揮して欲しい……ってのは野暮か)
ジャギ「じゃあカレー用と飯盒用に釜戸を二つ頼めるか? 釜戸用の石はあの辺に散らばってるみたいだ」
ラオウ「うむ!」
ケンシロウ「いいだろう!」
ジャギ(すげーやる気だな。確かに釜戸作り楽しいけどよ)
ジャギ「トキ兄者、俺らはコーヒーでも飲んでるか」
トキ「そうだな。青空の下で飲むコーヒーも旨いだろう」パシャ
ジャギ「ガスコンロでお湯沸かすからちょっと待っててくれ」シュボッ
トキ「お、それもまたキャンプっぽい」パシャ
ジャギ「俺は凝り性なんだよ」
コポポポ…
ジャギ「ほい、兄者」コト
トキ「ありがとう。ん……良い香りだ」
チチチ…
チュンチュン
トキ「……長閑だなぁ」
ジャギ「ん」
ケンシロウ「なんだ二人して、良いものを飲んでいるじゃないか」
ラオウ「この拳王にも一杯入れぬか」
ジャギ「はいはい。釜戸はもうできたのか」
ラオウ「無論だ。見よ! このラオウ無敵の釜戸を!!」
子供「んーデュクシッ!」ゲシッ
グシャ
ラオウ「」
ジャギ「あ」
トキ「あ」
ケンシロウ「w」
ラオウ「」ブルブル
ジャギ「兄者! ビークール!ビークール!」
トキ「子供の悪戯だ! 大人として笑って許そう! な?」
ラオウ「フーッ! フーッ!」ブルブル
ケンシロウ「作りが甘いから子供の蹴りで壊れるんだぞ、ラオウ」
ラオウ「何ぃ!?」
ジャギ「バカ! 煽るなケンシロウ!」
ケンシロウ「その点、俺の釜戸は粘度の高い土を練り込んだ本格志向の釜戸だ。石を積み重ねて作っただけのお前の釜戸とは強度が違う!」
子供「んんん~デュクシッ!」メリッ
グシャァァ
ケンシロウ「」
ジャギ「あ」
トキ「あーあ」
ラオウ「本格志向(苦笑)」
ケンシロウ「おいジャギ、あいつから殺していいのか」
ジャギ「やめろ馬鹿。発言だけで出禁になるレベルだぞそれ」
ケンシロウ「あのガキに今日を生きる資格はねぇ!!」ダッ
ジャギ「走り出すな!! 抑えろ! 抑えろ! トキ兄者も見てないで手伝ってくれ!」ガシッ
トキ「北斗神拳の真髄は怒り……」
ジャギ「今真髄関係ねぇだろ!」
……
ジャギ「はぁ……焦ったわ」
ケンシロウ「すまん、取り乱した」
ジャギ「取り乱しすぎだバカタレ」
トキ「まあ、それだけ一生懸命作ってたって事だ。あまりケンシロウを責めるな」
ジャギ「む……」
ラオウ「……」
ケンシロウ「そういえば、ラオウは嫌に静かだな。競って釜戸作りをしていた筈だが」
ラオウ「……」
トキ「……ラオウ?」
ラオウ「……俺も」
トキ「?」
ラオウ「……この俺も哀しみを背負うことができた」
ジャギ「どんだけダメージ受けてんだよ。メンタル弱過ぎだろ」
ラオウ「ちょっと作り直してくる」
ケンシロウ「俺も」
トキ「私達も手伝おう。な、ジャギ」
ジャギ「おう。ちゃちゃっと作って遊ぼうぜ。俺とトキ兄者はまだ釣りしかしてないからな」
ラオウ「……そうであったな。うむ、いつまでもクヨクヨしてはおられんな」
トキ「そうとも。楽しまなくては損だぞ」
ラオウ「うむ。我は拳王! あるのは前進勝利のみ!! 者共、さっさと片付けるぞ!」
…………
ケンシロウ「む、もうだいぶ日が傾いてきたな」
ジャギ「ヘイパスヘイパース……ってあら、もうそんな時間か。晩飯作らなきゃな」
ラオウ「トキ、起きろ。いつまで寝ておる」
トキ「」☆
ケンシロウ「ラオウがキラーパスの意味を履き違えるから……」
ラオウ「ぬぅ……」
ケンシロウ「トキ、おいトキ、目を覚ませ」ペシペシ
トキ「ぅ……アルシンド……!?」ビクッ
トキ「は……っ!? 夢…………か」
ケンシロウ「どんな夢だよ」
ジャギ「なんで若干残念そうなんだ」
ジャギ「野菜は皮は剥いておいたのを持ってきたからな。いらんゴミ出したくないし。適当に切って使ってくれ」
ケンシロウ「うむ」
トキ「ううん……なんだか首が痛い」
ラオウ「寝違えたのではないか?」
ジャギ「俺は火を熾して飯盒炊爨の準備しているからカレーは頼んだぞ」
ラオウ「任せろ。天をも握る最強のカレーを作ってやろう」
ジャギ「ふーっ! ふーっ! っふ!? ゲホッゲホッ!?」
パシャ
ラオウ「ぬぐっ!? タマネギ……っ!? き、効かぬぞ!」
パシャ
ケンシロウ「アタタタタタタタタッ!! 北斗百裂拳!!」ビシッ
豚肉「ひでぶっ」ボシュッ
パシャ
トキ「ふふ。皆良い表情をしている」
……
ケンシロウ「よし、蓋を開けるぞ」グッ
カパッ
ホカァ…
トキ「おおお」パシャ
ラオウ「いい」
ケンシロウ「すごくいい」
ジャギ「やべぇ超うまそうじゃねぇか!」
グー
ジャギ「おっと」
トキ「はは、じゃあ早速ごはんを盛ろうか」
ジャギ「みんなカレーと飲み物は行き渡ったな?」
ラオウ「いただきますの挨拶はこのラオウが音頭を取ってやるわ!」ガタッ
ケンシロウ「よっ! 待ってました!」
トキ「北斗の長兄!」パシャ
ラオウ「では皆の者、手を合わせて」パンッ
北 斗 天 帰 掌
ラオウ「いただきますッ!!」
『いただきます!!』
『イエーッ! 乾杯ー!!』
ジャギ「あむ……なんだこれ超うめぇ!!」
トキ「ジャギ、かつて師夫が言っていただろう」
ジャギ「あん?」
『キャンプ最強のものはカレー
しかしカレーはまた無力
――キャンプより転じてカレーを拾う――
それが北斗神拳究極奥義……』
ジャギ「いや、親父はそんな事言ってない」
ケンシロウ「親父、ついに病が脳に……」
ラオウ「ただキャンプに行きたかっただけであろう」
トキ「ん、間違ったかな?」
ラオウ「グビッグビッ、ぶぁーっはっは!! 楽しい!実に楽しいな!」
ジャギ「兄者ぁ、もっと飲めよ~」トクトク…
ラオウ「おうっとっと! ぬあっはっは!!」
ジャギ「トキ兄者も飲んでるか~?」
トキ「ああ、もちろんだとも」
ジャギ「にしちゃあ静かだな~? ちゃんと楽しんでっか?」
トキ「ああ。ただ、ほら、あんまりにも星空が綺麗でさ」
ジャギ「空ぁ?」
ジャギ「おお……」
ケンシロウ「確かに、今夜は特に星が綺麗だな」
トキ「そうだろう」
ラオウ「満天の星が酒の肴とは、粋なものだ」
ジャギ「ようし、乾杯だ乾杯! 星空が綺麗なことを祝してっ乾杯ぃー!」
ケンシロウ「ジャギのやつ、ベロベロだな」
トキ「よほど楽しかったのだろう。よーし、私も飲むぞ」パシャ
ラオウ「ケンシロウ! 飲みが足りないのではないか!? こっちに来て付き合え!」
ケンシロウ「わかったわかった」
…………
ラオウ「ぐごー! ぐごー!」
ジャギ「けんしろう! まだビールはあるかぁ!?」
ケンシロウ「もう全部飲んだよ」
ジャギ「しょ、しょんなバカなぁ~!?」
トキ「ジャギ、これ以上飲むのはやめておけ。明日がつらくなるぞ」
ジャギ「あい」
トキ「宴もたけなわだな。軽く片付けて寝るか」
ケンシロウ「そうだな。ラオウ、風邪をひくぞ。ほらテントに移れ」ペシペシ
ラオウ「んぬぅ……」
…………
ジャギ「ういー……おはよう」ボリボリ
トキ「おはよう」
ラオウ「うぬが最後だ。さっさと顔を洗ってこい」
ジャギ「うむ……あー、飲み過ぎた……」フラフラ
ケンシロウ「もう帰るだけとなると、やはり寂しいものがあるな」
トキ「そうだな。一晩とはいえ、このテントも間違いなく私達の家だったということだ」パシャ
ジャギ「顔洗ったらサッパリしたわ。まあこれからもっとサッパリしに行くんだけどな」
ジャギ「ありゃ? どうしたみんな。残悔拳食らったような顔して」
トキ「いや、もう帰ると思うとやはり寂しくてな」
ジャギ「何言ってんだ。また来りゃあいいだろ」
ケンシロウ「まあ、そうなんだけどな」
ジャギ「キャンプはまた来りゃあいい。勝負は何を使っても勝ちゃあいい。そうだろ?」
ケンシロウ「いや、その理屈はおかしい」
ジャギ「あらっ!?」
ラオウ「ふ……しかしジャギがおちゃらけてくれたおかげで少し気が晴れたな」
ヒヒーンッ バカラッバカラッバカラッバカラッ
ラオウ「さあ者共、締めに温泉に入りに行くぞ! グズグズするな!」バッ
ジャギ「待てよ! まだ全然片付けしてねぇだろ! あ、ケンシロウ、テントパーツはちゃんと拭いてからしまえよ」
トキ「ラオウ、丁度よく黒王に乗っているんだ。このゴミ袋を集積場に出してきてくれ」
ラオウ「ぬ……」
トキ「管理センターの脇にあるからな、頼んだぞ」
こうしてケンシロウ達のキャンプは幕を下ろした!
キャンプ、それは自然とのふれあい
キャンプ、それは人と人との繋がり
ちょっとしたハプニングがあったものの、日程は極めて順調に消化され、四兄弟は温泉に浸かりながら思い出話や次への反省を語り合うのだった!
ユリア「……え、キャンプに行ったの?」
ケンシロウ「うん」
ユリア「私、聞いてない」
ケンシロウ「超楽しかった」
ユリア「……」
ケンシロウ「次はユリアも一緒に行こう。俺、カレー作るの超うまいし」
ユリア「行かない」
ケンシロウ「……え」
ユリア「行かない」
おしまい
転載元
ケンシロウ「いよいよ明日はキャンプか」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1399780904/
ケンシロウ「いよいよ明日はキャンプか」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1399780904/
「Amazon」カテゴリのおすすめ
「SS」カテゴリのおすすめ
コメント一覧 (30)
-
- 2014年12月08日 16:22
- DDで再生されてしまうッ!
-
- 2014年12月08日 16:29
- 北斗の拳のSSは、大抵ジャギが世話焼きのいい人やな。
-
- 2014年12月08日 16:37
- 不思議と脳内再生出来る
-
- 2014年12月08日 16:53
- イチゴ味感
-
- 2014年12月08日 17:12
- この釜戸を壊した子供はきっとターバンを巻いているだろうね
-
- 2014年12月08日 17:22
- なんでユリアは行かないんだ
-
- 2014年12月08日 17:42
- やさしい世界
-
- 2014年12月08日 17:55
- 津田沼のゲーセンww
-
- 2014年12月08日 18:03
- アスファルト陥没しそう
-
- 2014年12月08日 19:02
- 津田沼はヤベェ~
何処からともなくレンジャーが…
-
- 2014年12月08日 19:26
- イチゴ味かな?
-
- 2014年12月08日 19:48
- 北斗天帰掌wwww
先人達泣くぞwwwwww
-
- 2014年12月08日 20:12
- しっかり者のジャギに草
これがやりたかっただけだろシリーズ
天帰掌
-
- 2014年12月08日 20:51
- トキ「ここをキャンプ地とする」
ジャギ「お、おう」
ここが死ぬかと思ったw
-
- 2014年12月08日 20:56
- 天帰掌くそワロタ センス良すぎだわ
こういうの書く人って本当に原作好きなんだなって思う
-
- 2014年12月08日 21:01
- このシリーズ?好きだわww
しかしなんか物足りんと思ったらアミバが出てない
-
- 2014年12月08日 21:11
- リス
-
- 2014年12月08日 21:21
- 米6
恋人にレジャーの予定を伝えておかないと後あとめんどくさいことになるぞ!
それがたとえ家族レジャーだとしても、だ。
-
- 2014年12月08日 21:46
- むしろ>>66で明かされたケンシロウとジャギ様の決闘後の話であるという事実。
あの後でこのホスト力。SSのジャギ様マジぐう聖。
-
- 2014年12月08日 21:53
- ※16
>119のラストでこっそり出てるぞ
-
- 2014年12月09日 00:04
- このシリーズ久々だな
-
- 2014年12月09日 01:26
- ※6
野郎だけで気兼なくってのがいいんだろうがよぉ!
-
- 2014年12月09日 02:09
- やはり北斗四兄弟が仲良くしてると和むなあ~。
-
- 2014年12月09日 03:40
- ※2
苦労人というか常識人ポジを押し付けられてる
長兄 自由人
次兄 常識人 病人
末っ子 わがまま
-
- 2014年12月09日 04:12
- ※6
多分すねてるんだろうな
-
- 2014年12月09日 12:46
- いちご味の南斗のメンバーなら本当にやりそうなんだよなあ。
-
- 2014年12月09日 15:36
- イチゴ味のせいですんなり受け入れられてしまう
-
- 2014年12月09日 18:54
- このシリーズ大好き
俺もこの人に憧れてSS始めたんだったなぁ…
-
- 2014年12月10日 19:59
- 台詞回しが好き
あと、ビークール!がピークール!に見えて刃牙を思い出した
-
- 2019年11月09日 19:32
- カーナビがパチスロ北斗の拳で草