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女「……お名前を伺ってもよろしいでしょうか」

1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 17:32:44.70 ID:VCS3HJ5DQ

男「え?」

女「すいません。何分、声とお名前を聞かなくては誰だかわかりませんので」

男「……あ、男って言います。カウンセリングに来ました」

女「男さん……ですね。わかりました。それで、手術のことでしょうか?」

男「うん。視力、戻る可能性もあるんでしょ?」

女「そう聞いております」




2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 17:37:46.46 ID:VCS3HJ5DQ

男「じゃあさ、手術してみたら?」

女「……嫌です。情けない話ですが、怖くて……」

男「そうか……じゃあ仕方ないか」

女「…………はい?」

男「え?いや、じゃあ仕方ないかなーって」

女「あの……普通カウンセラーの方は励ましたり、慰めの言葉をかけたり……」

男「そうなんだけどね。でも、それは他のカウンセラーの方がやったでしょ?」

女「はい……まあ……」

男「だったら、僕がやっても意味は無いんじゃないかな」

女「……はあ……変な方ですね、貴方……」

男「そうかな」

女「ええ。少なくともカウンセラーには向いていないかと」

男「さりげなく酷いな」




3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 17:40:49.07 ID:VCS3HJ5DQ

男「そんな訳でさ。……女ちゃん、退屈じゃない?」

女「ええ。退屈しています」

男「話し相手くらいにはなれると思うよ。……面白いトークかは別として」

女「…………そうですね」

女(まず友達になって……ですか。カウンセラーの常套手段ですね)

男「あはは。じゃあ、よろしく」

女「はい。よろしくお願いいたします」




4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 17:44:04.36 ID:VCS3HJ5DQ

男「こんにちはー、男です」

女「ああ、男さん。こんにちは」

男「女ちゃんさ、中庭に出てみない?」

女「中庭……ですか?」

男「うん。正直な話、病室の空気って得意じゃないんだ」

女「……そこは『部屋に閉じこもってばかりじゃ体に悪いよ』とでも言うべきでは……」

男「え?あー……そうだね。じゃあそれで」

女「よくカウンセラーになれましたね……男さん……」




5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 17:47:18.25 ID:VCS3HJ5DQ

男「はい」

女「……何ですか?」

男「手、握って」

女「え?……し、しかし……会って二日でそのような……ことは……」

男「だってそうしないと外に出れないでしょ?」

女「それは……そうですが……」

男「じゃあ仕方ないんじゃないかな」

女「わ、わかりました。ただし、『仕方なく』ということを忘れないでください」

男「はいはい、わかってますよー」




7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 17:50:16.02 ID:VCS3HJ5DQ

女「……何だか、太陽の光を浴びたのも久しぶりな気がします」

男「まあ、たまには気分転換もいいよねー。いつも仕事ばっかりだったし」

女「え?真面目に仕事をしてらっしゃるんですか?」

男「いやいやいや、毎日カウンセラーとして頑張ってますよ」

女「どうですかね」

男「……会って二日で早くも信用無くしてるよね……」

女「信用は失ってませんが、カウンセラーとしての尊厳は失ってそうです」




10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 17:54:10.89 ID:VCS3HJ5DQ

女「……………」

男「どうしたの?」

女「いえ……私は、男さんに連れられて中庭まで来たじゃないですか」

男「うん」

女「……男さんが居なくなってしまったら病室に戻れなくなってしまいます」

男「そりゃまあ……そうだね」

女「……少し、不安なので……手を握っていてもいいですか?」

男「え、あ、う……うん」

女「ただし『仕方なく』だということを忘れないでください」

男「やっぱりですか」




12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 17:58:30.82 ID:VCS3HJ5DQ

男「気持ちいいね……」

女「夏なのに、春のような優しい暖かさですね……」

男「…………」

女「……男さん?」

男「……………」

女(ま、まさか私を置いて……でも、ちゃんと手を繋いでますし……)

女「…………もしかして……」

男「………グー………」

女「…………寝てるんですか、この人……一応勤務中でしょうに……」




13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 18:01:54.16 ID:VCS3HJ5DQ

女「……男さん。起きてください」

男「……………」

女「もう……カウンセラーとしての自覚はあるんでしょうか……」

女(でも……裏を返せば、カウンセラーとしてではなく、私と……)

女「……………」

女「…………少しだけ、ですからね」

男「……グー……」

女(こうして寄り添っていれば、離れることも無いでしょうし……)




16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 18:13:17.62 ID:VCS3HJ5DQ

>>14修正

男「男です。女ちゃん、調子は……」

女「む?むぐ……す、少し待ってくだ…………ふぅ。こんにちは、男さん」

男「あ、ごめん。食事中だった?」

女「いえ。ちょうど終わったところですので、お気になさらず」

男「……ここの病院の食事ってどう?」

女「マズイです。……そろそろ父に抗議しようかと思っています」

男「……父……?」




15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 18:11:26.44 ID:VCS3HJ5DQ

女「……まさかご存知無い訳じゃありませんよね?私の父、ここの院長です」

男「………………」

女「知らなかったんですか……」

男「い、いやあ、院長さん適当だから」

女「適当なのは男さんの頭の作りでしょう……」

男「……さりげなく毒舌だよね……女ちゃん……」




18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 18:16:42.68 ID:VCS3HJ5DQ

男「ところで、女ちゃん」

女「はい?何でしょう」

男「……彼氏とか居ないの?」

女「かっ……!?そ、そんなもの、居る訳ないじゃないですか」

男「でも、結構モテるって聞いたんだけど」

女「……と、とにかく!彼氏なんて居ません!変なこと聞かないでください」

男「あー、うん。……それにしても暑いね」

女「それはまあ……夏休みですから……」

男(……やっぱり寂しいのかな……)




19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 18:21:30.79 ID:VCS3HJ5DQ

男「……やっぱり、手術した方が……」

女「……いいんです。事故にあったのは不運でしたが、不幸ではありませんから」

男「え?」

女「私は赤も、緑も、黄色も、海の青も、空の青も、雲の白も知っています」

男「……………」

女「生まれつき目が見えない方だって居るのですし……私は寧ろ、恵まれています」

男「……女ちゃん……」

女「だから、いいんです。……手術、怖いですから」




21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 18:25:27.61 ID:VCS3HJ5DQ

男「……そっか。わかった」

女「すいません。私のことを…………」

男「え?」

女「……いえ、何でもないです」

女(心配……してくれている訳じゃ、ありませんよね)

男「?」

女(……男さんは、それが仕事だから言っているだけで……)

女「………気にしないでください」




22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 18:29:46.36 ID:VCS3HJ5DQ

男「じゃあ、僕はこれで」

女「はい。それでは、また」

男「……………」

女「……ど、どうかしましたか?」

男「い、いや。……じゃあね」

女「………」

男(今まで『はい。それでは、さようなら』だったのが……『また』になってたな…)

男(偶然かもしれないけど、ちょっと嬉しい)

女「……ふぅ………」

女「何故、この程度のことで緊張しなくてはいけないのでしょう……」




24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 18:34:58.12 ID:VCS3HJ5DQ

女「……父様ですか?」

父「ああ、ちょっとした報告があってな」

女「報告……?」

父「今日、あの男は来れないらしい。……それだけだ」

女「……そうですか、わかりました」

女「…………はあ……」

女「……あ、あれ?どうして、私は溜め息を……」

女「ね、寝ましょう。こんなのは、ただの気の迷いです!」

女「……きっと……そうですよね……」




27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 18:40:20.08 ID:VCS3HJ5DQ

女(……眠れませんね……)

看護師「女さーん、お食事でーす」

女「あ、はい……いつもすみません」

看護師「いえいえ。……今日、彼氏さんは来れないんですって?」

女「か……彼氏……?」

看護師「あら?違うのかしら?」

女「ち、違いますよ。ただの、カウン……」

看護師「カウン?」

女「……いえ……その、知り合いです」

女(カウンセラー、でいいのに……何故私は言い換えてしまったのでしょうか……)




29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 18:46:06.51 ID:VCS3HJ5DQ

看護師「知り合い……。じゃあその知り合いさんのこと」

女「いただきます」

看護師「あはは。つれないわねぇ、女ちゃん」

女「ええ、まあ……あまりにも馬鹿馬鹿しいお話でしたので」

看護師「照れてるのね?」

女「……照れてません」

看護師「それじゃ、またね」

女「はい」

女「……馬鹿馬鹿しい……です……」




31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 18:50:40.47 ID:VCS3HJ5DQ

女「……ありがとうございました」

食事係「いえいえ、それでは」

女「…………不便、ではありますね……」

女「……あれ……」

女「……私、いつも一人の時は何をしていたのでしょう……」

女「……………」

女(………早く、明日に……)




32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 18:55:42.74 ID:VCS3HJ5DQ

男「こんにちはー、男です」

女「……こんにちは」

男「あ……あれ?何か怒ってる?」

女「……別に怒ってませんよ。ご安心ください」

男「あ……もしかして昨日来られなかったから?」

女「っ!?そ、そんな訳無いじゃないですか!別に、そんなことどうでも……」

男「……じゃあ、また明日」

女「えっ?!」

男「嘘嘘。今日は時間あるから大丈夫だよ」

女「………もう。驚かせないでください」




34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 19:03:03.20 ID:VCS3HJ5DQ

男「……じゃ、今日も中庭に行く?」

女「そうですね。では、手を」

男「あ、うん」

男「あの……」

女「何ですか?」

男「凄い力が篭ってるような気が……」

女「気のせいです」

男「いたたたたた!!!痛い痛い痛いって!!」

女「気のせいです」




36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 19:08:32.47 ID:VCS3HJ5DQ

女「……………また……」

男「どうしたの?」

女「……最近、妙な音が聞こえるんです」

男「妙な音……?」

女「ええ。石と石をぶつけるような」

男「んー……俺には聞こえないけど……」

女「……気のせいかもしれませんので、気にしないでください」

男「了解ー」




38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 19:12:35.37 ID:VCS3HJ5DQ

男「やっぱり、散歩してるだけでも気分転換になる?」

女「……そうですね。ずっと、病室に居るよりは」

男「それはよかった」

女「こうして、歩いているだけで幸せです」

男「それはちょっと大袈裟じゃない?」

女「いえ……本音ですから」

女(…………こうして、二人で歩いているだけで………幸せ……)




41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 19:17:06.00 ID:VCS3HJ5DQ

女「欲しいもの……ですか」

男「うん。買ってきてあげるよ」

女「そうですね、特に…………あ」

男「ん?」

女「えっと、その……では、一つだけ……」

男「うん」

女「ちょ、ちょこれーとを……買ってきていただけませんか……」

男「……チョコレート?」

女「似合いませんか……私がチョコレートを好きなのは……」

男「い、いや、に、似合って……」

女「声が震えてますよ」

男「痛い痛い痛い痛い!!」

女「気のせいです」




44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 19:21:36.28 ID:VCS3HJ5DQ

老人「こんにちは」

女「あ、こんにちは」

老人「いい天気だのぅ」

女「そうですね」

男「……女ちゃん、患者さんと仲いいんだってね」

女「え?ああ……ここには幼い頃から通ってましたので」

男「勝手にナース服着てみたらそれが大好評だったとか……」

女「誰に聞きました?」

男「え?」

女「その話………誰に聞きました?」

男「え、えっと……看護師さんに……」

女「そうですか。……それでは、今度ナイフを買ってきていただけますか?」

男「共犯にする気満々だよね」




46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 19:25:08.42 ID:VCS3HJ5DQ

女「アレは、その……若気の至り、と言いますか……」

男「いてて……」

女「ナース服に憧れていて…………ちょっと着てみただけなんです」

男「でも患者さんの十人に一人はその写真を持っているとか……」

女「え!?……それは初耳です……」

男「何でも看護師さんがくれたとか……」

女「変更です。ナイフではなく日本刀を」

男「だから買わないってば」




47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 19:29:54.22 ID:VCS3HJ5DQ

女「……趣味、ですか……」

男「うんうん」

女「読書は……趣味だったかもしれませんね。今は出来ませんが」

男「あ……ご、ごめん」

女「構いませんよ。……それに、今は色々な噂話を聞いてみたりしています」

男「噂話?」

女「ええ。植物が人間になったり、だとか」

男「そりゃまた……信憑性の無い……」

女「まあ、噂話ですから。そんな物でしょう」




49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 19:33:41.61 ID:VCS3HJ5DQ

男「じゃあ、そろそろ戻ろうか」

女「……そうですね。風も冷たくなってきました」

女「……もうお帰りですか?」

男「うん。それじゃあまたね」

女「はい。それでは、また」

女「……はあ……」

女(まだまだ……話したいことが沢山あったのに……)




50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 19:38:06.43 ID:VCS3HJ5DQ

男『もしもし?』

女「あ、あの……私です。女です」

男『……女ちゃん?どうしたの?』

女「その……えっと…………た、退屈凌ぎです」

看護師「素直じゃないなあ」

女「黙っててください」

看護師「なっ!?人が電話繋いであげたって言うのに!」

男『もしもーし』

女「あ、すいません。何でもないです」

看護師「ちぇー……つまんないの」




52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 19:40:58.27 ID:VCS3HJ5DQ

男『……いきなりだから驚いたよ』

女「あ……ご迷惑、でしたか?」

男『ううん。迷惑どころか、嬉しいよ』

女「……嬉しい……?」

男『まだまだ、話したいことが沢山あったからさ』

女「……わ、私も。私もです……」

看護師「私もお話したいなー」

女「だから黙っててください」




55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 19:44:41.47 ID:VCS3HJ5DQ

男「はい、チョコレート」

女「あ……ありがとうございます」

男「いやいや、これくらいならいつでも言ってよ」

女「…………はい」

男「……女ちゃん、少し話があるんだけど……」

女「え?」

男「仮に、だけど。誰かに……付き合ってくれ、って頼まれたらどうする?」

女「えっ!?あ、その、それは、つまり、えっと!?」

女「ど……どういう意味でしょう……?」




56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 19:48:37.51 ID:VCS3HJ5DQ

男「いや……特に意味は無いけど」

女「そ、そうですね。相手にもよりますが、お慕いしている方ならば……」

女「…………でも、無理でしょう」

男「え?」

女「私は……目が見えませんから」

男「…………」

女「映画館に行っても、水族館に行っても……楽しむことは出来ません」

女「お料理も出来ませんし、一人で満足に動くことも出来ません」

女「そんな私を……誰が好きになると言うのですか」

男「…………女ちゃん……」




59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 19:53:50.30 ID:VCS3HJ5DQ

男「……大丈夫だよ。目が見えなくたって、きっと……」

女「誰が好き好んで目が不自由な女性と付き合いたがるんですか?」

男「……………」

女「……目が見えないだけで、ハンデがありすぎるんですよ」

男「……ごめん……そんなつもりじゃ……」

女「…………いえ。私の方こそ……すいませんでした」




61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 20:00:49.31 ID:VCS3HJ5DQ

男「……手術、しない?」

女「言ったはずですよ。……怖いから嫌です、と……」

男「手術が怖いのはわかるよ。でも……」

女「……怖いのは……手術じゃありません」

男「…………え?」

女「もう二度と私の目は見えないんだ、ってわかってしまうのが……怖いだけです」

男「……………」




63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 20:05:40.71 ID:VCS3HJ5DQ

女「もう、この話は止めにしませんか?」

男「……そうだね」

女(……ごめんなさい、男さん……)

男「えーっと……あ、そうそう……さっき看護師さんが」

女「え?」

男「『昨日の電話、熱々でしたね☆』って言って来たんだけど……」

女「……………」

男「そして患者さんに言い触らしてるみたいだけど……」

女「……ナイフ、買ってきていただけました?」

男「今度、買ってきてもいいかな……って気になってきたよ……」




66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 20:10:43.29 ID:VCS3HJ5DQ

看護師「……髪を切って欲しいの?」

女「ええ。そろそろ欝陶しくなってきたので」

看護師「そう。じゃあ、ちょっと待っててね」

女(……男さんは、気付いてくれるでしょうか……)

女(鈍いから、気付かないでしょうけどね……)

看護師「切るよー」

女「はい。切りすぎないでくださいね」




69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 20:16:29.53 ID:VCS3HJ5DQ

男「男です」

女「あ……お待ちしてました」

男(ん、今日は何かご機嫌……?)

女(……気付いて……くれるでしょうか……)

男(……あ、そうか)

男「女ちゃん」

女「は、はい!何でしょう!?」

男「ちゃんとチョコレートは買ってきたからね!安心していいよ」

女「…………………」




72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 20:21:40.50 ID:VCS3HJ5DQ

女「……………」

男「あ、あれ……何で黙ってるのかな……女ちゃん……」

女「……はぁ……」

男「……?」

女「……髪を切ったんです」

男「え?あ……ああー!うん、そうか!髪をね!うん!気付いてた気付いてた!」

女「…………本当は?」

男「すいません……気付いてませんでした……」




75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 20:26:50.38 ID:VCS3HJ5DQ

女「……まあ、いいですけど……女性と付き合った時、困ると思いますよ」

男「うーん……大丈夫。その時もまた、こんな風に許してもらうから」

女「……誰もが私みたいに許すとは限らないのでは?」

男「え?……いや、だから……」

女「?」

男「…………何でもないよ……」

女「……いつも変ですけど、今日は一段と変ですね……」




76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 20:31:26.93 ID:VCS3HJ5DQ

女「……美味しいです……」

男「本当にチョコレート好きなんだね……」

女「ええ、まあ……お一つ、食べますか?」

男「え?ああ、うん……じゃあもらおうかな」

女「……これが唇ですよね?」

男「う、うん……」

女「では……どうぞ」

男「…………渡してくれれば自分で食べるのに……」

女「折角ですから。……唇、柔らかいですね」

男「……褒めてるの?」

女「ええ、勿論」




78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 20:36:15.42 ID:VCS3HJ5DQ

男「じゃあね、女ちゃん」

女「ええ。また明日。……いえ、今日の夜……電話してもよろしいですか?」

男「……うん。いいよ」

女「ありがとうございます。……それでは」

男(……このままでいい……訳ないよな……)

男(明日……もう一度ちゃんと話そう)

男(……それが原因で嫌われるかもしれない)

男(……………それでも……説得する)




79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 20:40:52.76 ID:VCS3HJ5DQ

女「……………」

男「……だから、手術を……」

女「止めてください」

男「……え?」

女「その話はしたくないと……言ったはずです」

男「でも、女ちゃんだって目が治ってほしいって……」

女「治ってほしいですよ。……だから怖いんです」

男「怖いのはわかる、わかるけど……可能性がある限り諦めてほしくない」

女「……止めてくださいって言ってるじゃないですか!!その話は!!」




81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 20:44:40.61 ID:VCS3HJ5DQ

男「悪いけど、今日は退かない」

女「…………もういいです」

男「…………」

女「帰って……くれませんか」

男「……女ちゃん……」

女「帰ってください……そして……」

女「もう二度と……ここに来ないでください……」

男「………………」




83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 20:49:32.71 ID:VCS3HJ5DQ

男「……わかった」

女「……………」

男「今までありがとう。……ごめんね」

女「…………っ……」

女(何も……悲しむ必要なんてありません……)

女(男さんは結局……仕事でここに来ていただけなんですから……)

女(それなのに……私は…………馬鹿みたいに喜んで、期待して……)

女(…………………)




99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 21:18:32.60 ID:VCS3HJ5DQ

父「……女……彼は帰ったのか?」

女「……ええ。そして二度と……ここには来ません……」

父「…………そうか」

女「もう、カウンセラーを雇わなくても結構です。……無駄ですから」

父「そのつもりだ。そうでなければ、既に新しいカウンセラーを雇っている」

女「……? ついさっきまでは、男さんが私のカウンセラー……」

父「……何を言っている?彼は、初日にこの仕事を降りたぞ」

女「…………え?」




100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 21:23:13.43 ID:VCS3HJ5DQ

父「……何だ、知らなかったのか」

女「……意味が、よく……わかりません……」

父「明日からはカウンセラーとしてではなく、女ちゃんの話し相手として来ます」

父「確か……そんなことを言っていたか」

女「そんな…………そんなの……知らない……」

父「あえて……言わなかったんだろう」

女「……………」




105:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 21:29:03.58 ID:VCS3HJ5DQ

女(私……私は……)

父「しかし……そうか、駄目だったか……」

女「…………」

父「彼ならば、もしや……と思ったんだが……」

女「………何故、そう思ったのですか」

父「……これは伏せておいてくれ、と言われたんだが」

女「……………」

父「男君は……生まれつき、目が見えないんだ」




109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 21:34:20.05 ID:VCS3HJ5DQ

女「な……何を言い出すのですか!?男さんは、そんなこと一言も……!!」

父「…………」

女「それに、いつも私と手を繋いで中庭に……!!」

父「ああ、知っているよ。片手にお前の手を。片手に……杖を握って」

女「――!!」

『……最近、妙な音が聞こえるんです』

『妙な音……?』

『ええ。石と石をぶつけるような――』

女「…………あ……」




115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 21:39:49.90 ID:VCS3HJ5DQ

女「……嘘……」

父「心辺りは……あるだろう?」

女「…………」

『……髪を切ったんです』

『すいません……気付いてませんでした……』

女「……あります……」

父「…………しかし、それが彼の望みだったんだろう」

女「…………」

父「同じ境遇としてではなく……『一人の話し相手』として……それが望み……」




121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 21:45:43.15 ID:VCS3HJ5DQ

父「ああ、私はもう行かなくては」

女「…………はい」

女「……………」

『映画館に行っても、水族館に行っても……楽しむことは出来ません』

『お料理も出来ませんし、一人で満足に動くことも出来ません』

『……目が見えないだけで、ハンデがありすぎるんですよ』

女「……どんな気持ちで……」

『怖いのはわかる、わかるけど……可能性がある限り諦めてほしくない』

女「貴方はどんな気持ちで私の言葉を聞き………その言葉を告げたのですか……」

女「…………男さん……」




124:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 21:50:32.12 ID:VCS3HJ5DQ

女「……父様……」

父「どうした、女」

女「男さんの住所は……わかりますね?」

父「ああ、わかる。………何だ、彼を呼び戻してほしいのか?」

女「……いいえ。私は、『もうここに来るな』と言ってしまいましたから」

父「…………」

女「もう一度男さんに会う為には……私が自らの足で、男さんの元に行かなくては」

父「……そうだな」

女「父様。……手術をお願い出来ますでしょうか」

父「…………無論だ」




128:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 21:55:41.05 ID:VCS3HJ5DQ

看護師「……よし、頑張ろうね」

女「……はい」

看護師「私は頼りないかもしれないけど……院長が居るから」

女「大丈夫ですよ。……自信を持ってください」

看護師「う、うん。頑張る……って、これじゃあ立場が逆よね」

女「……そういえばそうですね」

看護師「あはは。……じゃあ、行こうか」

女「……………はい」




129:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 22:00:37.16 ID:VCS3HJ5DQ

女(……男さん)

女(私……気付いたんです)

女(手術して、駄目だった時のことを考えると……凄く怖い)

女(…………だけど、それよりも……)

女(貴方に会えなくなることの方が、ずっと怖いってことに……)

女(だから……待っていてくださいね。男さん……)




134:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 22:07:47.00 ID:VCS3HJ5DQ

看護師「……今日であの手術から一週間。……落ち着いてきた?」

女「はい。……もう、殆どバッチリです」

看護師「手術後直ぐに動き回れるってもんじゃないからね」

女「そうですね……」

看護師「……そろそろ、いいんじゃない?」

女「私……実はこの一週間、行こうと思えば男さんの元へ行けました」

看護師「…………」

女「でも……嫌われていたら、とか、まず何て謝ろう、とか……色々考えてしまって……」

看護師「うん。無理もないね」

女「でも……もう行きます」

看護師「……覚悟が決まったの?」

女「いいえ。怖くて仕方ないですが……もう我慢出来ないんです」

女「……早く……男さんに会いたくて」




138:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 22:12:57.68 ID:VCS3HJ5DQ

女「はあ、はあ、……はあ……っ」

女(息が苦しい……)

女(肺が苦しくて……倒れてしまいそうで……)

女「はぁ、はあっ……」

女(それでも足が止まらないのは……)

女(肺以上に……胸が苦しいからなんでしょうか……)

女「…………ここ、ですね……」

女「男さんのお家は……」




142:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 22:16:19.57 ID:VCS3HJ5DQ

男「…………どなたですか?」

女「私です……女です」

男「女ちゃん?……待ってて、今開けるから」

男「どうやって……ここまで……」

女「……………」

男「……女ちゃん?」

女「……あはは。私……馬鹿みたいです……」

男「え?」




144:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 22:20:22.70 ID:VCS3HJ5DQ

女「貴方に会いたくて……手術をして……目が見えるようになりました」

男「……そっか。良かった……安心したよ」

女「なのに……肝心の貴方の姿が見えないんです……」

男「え?」

女「……涙で、ぼやけて……見えないです……」

男「……あはは」




149:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 22:25:32.43 ID:VCS3HJ5DQ

女「だから……もっと近づいていいですか……?」

男「……うん」

女「………………」

男「どう?見えた?」

女「まだ……まだハッキリと見えないです……」

女「もっと……もっと顔を近づけないと――」

男「じゃあ……こうしようか」

女「……はい……」

女「……ん………」

男「……………」

女「ふふ……やっぱり……唇が柔らかいですね……」




151:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 22:30:35.24 ID:VCS3HJ5DQ

男「でも……いいの?」

女「……何がですか?」

男「……僕は目が見えない。女ちゃんの言う通り……面白みの無い人間だよ」

女「はぁ……何を言ってるんですか……」

男「え?」

女「そんなの関係ありません。……貴方が傍に居てくれるなら」

男「…………」

女「それにこうして抱き着いてしまえば……いくらでもお互いを感じられるじゃないですか」

男「……ありがとう」




155:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 22:35:09.16 ID:VCS3HJ5DQ

女「……ふぁ……朝ですか……」

男「ああ、起きた?女ちゃん」

女「はい……」

男「ぐっすり寝てたね」

女「そ、それは……今までずっと病院に居たのに激しい運動をしたから……疲れたんですよ」

男「ああ、走ってここまで来てくれたんだっけ」

女「ええ、まあ……朝ごはん、作りましょうか?」

男「……うん。是非」




162:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/27(土) 22:42:51.75 ID:VCS3HJ5DQ

女「えーっと……メニューはどうしましょうかね……」

男「ああ、その前に……一つだけいい?」

女「……何ですか?」

男「…………今日の空の色は、どんな色?」

女「……今日の、空の色は……」

女「澄み切った――青です」







転載元
女「……お名前を伺ってもよろしいでしょうか」
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1246091564/
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         コメント一覧 (14)

          • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年12月06日 19:45
          • 名無し君と申します。今回、ナショナルクラブから休暇通達を受けて、参りました。
          • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年12月06日 19:58
          • 目の見えない彼女に手術を勧めて治った結果、不細工がバレて振られた男の話を思い出した
          • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年12月06日 20:02
          • いいはなしだ(;ω;)gj
          • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年12月06日 20:09
          • 5 目が見えたら男が不細工とかアザゼルさんのみたいな変態だったとか構えたけどいい話だった
            ちゃんと伏線とかのネタ考えて書いてる話は読む人を意識してて読みやすくていいね
          • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年12月06日 20:55
          • めっちゃいい話やん
            涙出たわ
          • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年12月06日 22:04
          • 俺もなんだか目の前がぼやけてきたよ‥‥

            あれ、なんでだ、目から汗が止まらないや
          • 7. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年12月06日 22:07
          • 途中で話の終わりがわかったけど面白かった!
          • 8. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年12月06日 23:12
          • 5 最初は目が見えない女が抱いていた幻かな?って思って終盤で一番身構えたけど良い終わりかたで超感動した…gj
          • 9. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年12月06日 23:56
          • イイハナシダナー(´;ω;`)
            いやまじで
          • 10. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年12月07日 00:23
          • 前に読んだ気がすると思ったら五年前かよ
          • 11. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年12月07日 01:14
          • 4 うーん、惜しいな
            もうちょい練り込んでくれたら泣いてたな
            少し短く感じたよ

            まあ、このくらいがちょうどいいって人も多いと思うけどね
            いい話だったよ
          • 12. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年12月07日 19:07
          • 5 2とおんなじ落ちを想像したがいい話だった
          • 13. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年12月07日 21:19
          • おんなじ落ち
            がおちん⚪︎ちんに見えた、俺はもうダメだ
          • 14. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年12月08日 02:01
          • 5 良かった( ノД`)…実に良かった(ノ_<。)
            良いと思います。。。良いですな。、。
            ・゜・(つД`)・゜・

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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