エステル「ユーリと随分仲が良いですね」フレン「幼馴染ですから」
エステル「幼馴染だから、ですか。羨ましいですね……本当に」ザワ
フレン「エステリーゼ様?」
エステル「あ、いえなんでもありません」
フレン(今、何か黒い靄みたいなものが……)
エステル「良ければ昔のユーリのことを聞かせてもらえませんか」
フレン(いや、気のせいだろう、エステリーゼ様に限って)
フレン「ええ、構いませんよ」
エステル「ユーリは昔からああだったのですか?」
フレン「そうですね、堅苦しいルールに囚われるのは昔から嫌いでしたね」
フレン「考えるよりも先に手が動く、というような」
エステル「ああ……」
フレン「ユーリは昔から勘や物覚えは良いんですよ、センスも悪くない」
フレン「でも型に嵌ることを良く思わなくて反復練習などを嫌がるんです」
フレン「そこから結局自分流にアレンジしてしまうので、何かを成し遂げる、ということにはあまり向いていませんでしたね。でも」
エステル「そこがユーリの良いところです?」
フレン「はい。型にとらわれない分僕よりも視野は広かった」
フレン「それにユーリはああ見えて何事も器用にこなせるんですよ」
エステル「そういえば前にサンドイッチを作ってくれたことがありました」
フレン「ユーリらしい。自分流にしてしまいますが、なんでもこなせてしまうのはあいつの凄いところです」
フレン「そういえばこんなこともありました」
エステル「どんなことです?」
フレン「あれはまだ騎士になりたてで、ユーリと一緒に宿舎にいたころなのですが」
フレン「同僚の女騎士が上司の騎士に訓練と言われ酷い仕打ちを受けていたのを目撃したのです」
エステル「女騎士……」ピクッ
フレン(……あれ? 今エステリーゼ様の様子が)
エステル「それでどうなったんです?」
フレン「え? ああはい。僕らが通りかかって、ユーリが自分にも稽古をつけてくれって上司の兵士に突っかかったんです」
フレン「僕らはまだ新米でしたからたいした腕もないと見込んでいたのでしょう。その兵士はユーリの主張を認めユーリに剣を向けたのですが」
エステル「逆にコテンパンにされたんです?」
フレン「ええまあ。当時は今ほど強くありませんでしたから一方的とはいきませんでしたが」
エステル「……その女騎士はどうなったんです?」
フレン「面白かったのはそこからなんですよ」
フレン「丁度僕らはその日に初級回復魔術、ファーストエイドの講義を受けたばかりでしてね」
フレン「その子は怪我もしていたのでファーストエイドで治療しようという話になったのですが」
フレン「何とか教科書を見ながらユーリがファーストエイドを唱えるのですが中々うまくいかなくて」
フレン「ようやく治療し終えたときには二人ともグッタリしていましたよ」
フレン「終わった後は二人とも笑っていましたけどね」
エステル「今の話だとフレンは見ているだけだったんです?」
フレン「え? ええまぁ」
エステル「……何故フレンがファーストエイドを使わなかったんです?」
フレン「え? それはユーリが自分でやるからいいと言ったので。ユーリはそういうのが苦手なので良い練習になればと思い……」
エステル「……」
フレン「エステリーゼ様?」
エステル「あ、ごめんなさいなんでもないです」
エステル「でもユーリも魔術が使えたんですね」
エステル「使ってるところを見たことなかったので知らなかったです」
フレン「ああいえ、実戦レベルとは言えないものだと自分でも言っていましたよ」
フレン「それに最近は練習さえしていないから既に使い方すら忘れた、と」
フレン「だったら僕が教えてあげようかとも言ったんですが、そういうのはお前に任せた、って言われてしまって」
エステル「ユーリらしいですね」クス
フレン「本当に」
エステル「ところでフレン」
フレン「はい、なんでしょう」
エステル「フレンとユーリはお友達ですよね?」
フレン「? はい、もちろん」
エステル「それ以上でも以下でもない、です?」
フレン「? ええまあ」
エステル「本当に?」ジッ
フレン「エステリーゼ様?」
エステル「フレンはユーリと仲が良すぎる気がしたので」
エステル「そうですよね、そんなわけないですよね」
エステル「良かったです」
エステル「もし万が一のことがあったら……私何をするかわからなかったです」ニコ
フレン(何故だ……とてもいい笑顔なのにその、すごく)
フレン(怖い)
ユーリ「おーい、そろそろ行くぞー」
エステル「あ、はーい! 今行きまーす!」
フレン(エステリーゼ様の様子が柔らかくなられた……ユーリの力なのか?)
ユーリ「どうしたんだフレン?」
フレン「あ、ああいやなんでもないんだ、なんでも」
ユーリ「おかしなヤツだな、まさか疲れたのか?」
フレン「まさか。この程度の疲労、疲労のうちに入らないよ」
ユーリ「頼もしいねえ、んじゃ戦闘は頼んだぜ」ガッ
フレン「任せてくれ」ガッ
エステル「<●><●>」
フレン(エステリーゼ様の視線が痛い)
ジュディス「ユーリ、ちょっといいかしら?」
ユーリ「どうしたジュディ」
ジュディス「バウルのことなのだけれど」
ユーリ「バウルがどうかしたのか?」
ジュディス「実は頭頂部の髪が少し伸びすぎてしまって斬ってもらいたいそうなの」
ユーリ「へえ、始祖の隷長も身だしなみを気にしたりするのか?」
ジュディス「少なくともあなたよりは繊細なのよ、彼って」
ユーリ「ま、いいぜ。そういうことならお安い御用だ」
ジュディス「助かるわ。バウル!」
バウル「■■■■ー!」
ユーリ「バウルの背中に直接乗っていいのか?」
バウル「■■■■ー!」
ジュディス「ええ、良いそうよ」
フレン(ジュディスにユーリが連れていかれた)
パキッ
フレン「ん? 何の音だ?」
フレン「???」キョロキョロ
エステル「……」
ユーリ「ほっと」トン
ジュディス「あら頼もしい。この高さを一足で飛び乗れるなんて」
ユーリ「馬鹿いってんな、ほら」つ
ジュディス「あら? 私がいても邪魔にならないのかしら?」
ユーリ「変に斬られてもバウルが可愛そうだろ?」
ジュディス「それもそうね、はっ!」ピョン つ ガシッ
ユーリ「よっと」ヒュッ ダキッ
ジュディス「ありがと」
パキッ
フレン(またこの音だ、何か物が壊れるような)
ユーリ「こんなものでどうだ?」
バウル「■■■■ー!」
ジュディス「気に入ったみたい」
ユーリ「そいつは良かった。バウルにはいつも世話になってるからな」
ジュディス「貴方髪を切るの上手だったのね」
ユーリ「どうなんだろうね、今回のは参考にならない気がするんだが」
ジュディス「貴方の髪もこれだけ長いのに綺麗だし」サラ
ユーリ「おい勝手に触んな」
パキッ
ジュディス「今度私も切ってもらおうかしら?」
ユーリ「やめとけ。女の髪なんざ怖くて切れねえよ」
ジュディス「あらそう? 私は構わないのだけれど。それにしても本当にサラサラ」
ユーリ「だからあんまり髪弄るなって」
パキッ
フレン(ん? 今エステリーゼ様の方から……)
エステル「」ミシミシ
フレン(!?)
フレン「エ、エステリーゼ様……?」
エステル「なんです? フレン」ニッコリ
フレン「い、いえあのお持ちのロッドが……」
エステル「ああこれですか?」ボロッ
エステル「丁度ガタがきていたんです」
フレン「でもそれ確か昨日買ったばかりでは……」
エステル「ちょっとシャープネスの練習も兼ねていたので」
フレン「でも術式詠唱なんて聞こえなかっ」
エステル「シャープネスです」
フレン「い、いやしかし詠しょ」
エステル「シャープネスです」
フレン「その」
エステル「シャープネスです」
フレン「……」
エステル「です」
フレン「さ、流石はエステリーゼ様! 術の練習を怠らないばかりか威力も上がっておいでなのですね!」
エステル「そんなことありませんよ」
エステル「私なんてまだまだです♪」ニコ
フレン「は、ははは……」
フレン(何故だ、胃が痛い……)
ユーリ「はあっ! 爪竜連牙!」
フレン「またユーリはそうやって勝手に技名を簡略化して……」
ユーリ「いーんだよ、別に技名なんてどうだっていいだろ?」
フレン「よくはないさ、それが技を生み出した先人たちへの礼儀だろう」
エステル「二人ともお疲れ様です」
エステル「あ、ユーリ怪我を……今治します!」
エステル「天の使いの姫君よ、その壮麗たる抱擁の力を」
エステル「ナイチンゲール!」パアア
ユーリ「お、サンキュなエステル」
フレン「ありがとうございますエステリーゼ様」
フレン(今日のエステリーゼ様はいつも通りだな、この前のは何かの間違いだったのだろう)
パティ「ユーリィ~!」
エステル「」ピクッ
フレン「……」
パティ「ユーリは強いのお! 今日もうちはメロメロじゃ!」ダキッ
ユーリ「おい、人の手をつかむな」
パティ「良いではないか」
ユーリ「いや、良くはねえよ、なんなんだよいきなり」
パティ「実はユーリに頼みがあってきたのじゃ」
ユーリ「頼み?」
パティ「うむ、少しアーセルム号に用があっての、良かったらうちについてきて欲しいのじゃ」
パティ「もちろん無理にとは言わんが」
ユーリ「今やあの船は魔物の巣窟でもあるからな……ってそういやあの魔物たちは」
パティ「いんや、それは違う。同胞達はサイファーがきちんと弔ってくれておった」
パティ「じゃから今いる魔物は負の気に寄せ集められ、そこを棲み家として居つき繁殖していった者共じゃ」
ユーリ「そりゃ容赦なく斬っていいと解釈していいのか?」
パティ「のじゃ」
ユーリ「しかし繁殖、ねえ。それじゃアーセルム号はずっと魔物の巣窟ってことなのか?」
パティ「うむ、あの量ともなると一掃するには相当の人員が必要になるの」
ユーリ「結構でかい船だったしな」
パティ「うちの人徳故じゃな」
ユーリ「はいはい」
パティ「むぅユーリ、信じておらんな?」
ユーリ「いや、信じてるさ。そうでもなけりゃあのサイファーって奴も浮かばれねえ」
パティ「……のじゃ」
ユーリ「うし、んじゃ行くか、アーセルム号」
パティ「出発進行なのじゃ!」
ユーリ「っつーわけでわりぃけどちょっと行ってくる。フレン、後は任せた」
フレン「ああ、かまわな」
エステル「私もご一緒にしていいですか?」
フレン「……」
フレン(嫌な汗が出てきた)
ユーリ「エステル? 俺は構わねえけどお前あそこ怖がってなかったか?」
エステル「大丈夫です」
ユーリ「パティ、問題ないか?」
パティ「んーユーリと二人っきりが良かったんじゃがのー」
エステル「お願いします」ニコニコ
フレン(何故だろう、エステリーゼ様の笑顔が怖い)
パティ「まあ良いかの、付いてきてくれる人数は多い方が心強いのじゃ!」
ユーリ「おいおい、俺だけじゃ不服だったのか?」
エステル「………………」ゴゴゴ
フレン(ユーリ、頼むから変なことは口走らないでくれ、エステリーゼ様の顔が尊顔出来ないほどになってしまっている)
パティ「そんなことはないのじゃ!」
ユーリ「ははは、冗談だよ」
エステル「ですよねー」
フレン(エステリーゼ様の切り返しが普段より0.2秒速い……まだ落ち着かれていないようだ)
ユーリ「で、アーセルム号まで来たわけだが」
パティ「用があるのは船長室じゃ」
フレン「これは……なんというか、凄いね」
ユーリ「お前まで付いてくるなんてな」
フレン「いや、僕も少し興味があったんだ」
フレン(流石に今の状態のエステリーゼ様が心配とは言えないな)
パティ「良いのじゃ良いのじゃ旅は道連れじゃ、人数が多ければ多いほど海の中のサンゴよりも賑わい豊かになるのじゃ」
フレン「そう言ってもらえるとうれしいよ」
エステル「ひっ!」パキッ
ユーリ「お、気を付けろよエステル」
パティ「アーセルム号も老朽化が進んでいるからの、足元にも油断したらいかんのじゃ」
エステル「は、はい」ビクビク
ユーリ「しかしいつ来てもここは雰囲気たっぷりだな」
パティ「正真正銘の幽霊船になっておったからの」
エステル「ゆ、幽霊なんていないってリタが言っていましたよ!」
ユーリ「なんだエステル、怖いのか?」
フレン「大丈夫ですよエステリーゼ様」
ユーリ「夜にトイレに行けなくなったら騎士様が付き添ってくれるってさ」
フレン「ユーリ! 君はまったく……」
エステル「ね、寝られなくなったらどうするんですか!」
ユーリ「んじゃその時は俺が添い寝でもしてやるよ」
エステル「や、約束ですよユーリ!」
パティ「えー、うちもユーリと添い寝したいのじゃー」
フレン「ユーリ?」ユラリ
ユーリ「冗談だから剣を抜くなフレン」
エステル「約束ですからね! 約束しましたからね!」
ユーリ「エステルも煽るな」
パティ「んしょ、んしょっと」ガサゴソ
ユーリ「あったかパティ?」
パティ「ん~、確かこの辺に……あ、あったのじゃ!」
ユーリ「一体何を探しに来たんだ?」
パティ「知りたいのかの?」
ユーリ「少しな」
パティ「ん~~~秘密じゃ!」
ユーリ「おい、ここまで付き合わせといてそれかよ」
パティ「乙女の秘密なのじゃ」
ユーリ「乙女の、ねえ」
フレン「そう言うのなら無理に聞くのはよくないよユーリ」
ユーリ「わかってるっての」
エステル「それじゃもう帰るです?」
パティ「そうじゃの、用は終わったのじゃ」
ユーリ「んじゃ帰りますか」
フレン「そうしましょう」
エステル「約束守ってくださいねユーリ!」
ユーリ「まだ言ってんのかこのお姫様は」
パティ「それじゃうちも一緒するのじゃ!」
エステル「パティは遠慮してください! 三人ではベッドから落ちちゃうじゃないですか!」
ユーリ「いやもうお前らが二人で寝れば解決するだろ」
エステル「約束です!」
パティ「なのじゃ!」
ユーリ「いやそもそも約束した覚えはねーよ」
フレン「ユーリ……」カチャ
ユーリ「だからお前は剣の柄に手をかけるな、怖いから」
ユーリ「ふぃぃ~」
レイヴン「おっ、戻ってきたね」
ユーリ「おうおっさん」
フレン「ただ今戻りました」
レイヴン「お疲れさん」
ユーリ「なんか戦闘するより疲れたな」
フレン「ユーリが変な約束をするから」
ユーリ「だからしてねーって」
レイヴン「何々? 何の話?」
ユーリ「エステルが夜怖くて一人で寝られないって話さ」
フレン「ユーリ!」
レイヴン「そうなの!? それじゃおっさんが添い寝して……!」
フレン「レイヴンさん?」ユラ
レイヴン「じょ、冗談だってば。おっさんの小粋なジョークよ」
レイヴン「しっかし嬢ちゃんて案外怖がりなんだねえ、意外」
ユーリ「確かにな、肝が据わってるほうだと思ってたんだが」
フレン「エステリーゼ様に限らず、幽霊などの類を女性は怖がるものだよ」
レイヴン「でもジュディスちゃんが幽霊におびえる姿は想像できんなあ」
ユーリ「確かに」
フレン「失礼だよ二人とも」
レイヴン「パティちゃんもそういうのは結構タフだよね、リタっちは」
リタ「あん? 何よ?」
レイヴン「リタっち幽霊とかどう思う?」
リタ「ゆ、ゆゆゆ、幽霊!? い、いるわけないじゃないそんなの!」
リタ「非科学的にも程があるわ。何、幽霊なんて信じてるの? 馬鹿っぽい」
レイヴン「めっちゃ怯えてるじゃない」
リタ「お、怯えてないわよ!」
ホーウホーウ
フレン「ん……?」
フレン「夜中に目が覚めてしまったか」
フレン「少し散歩に出て訓練でもしみようかな」スタスタ
フレン「ん? あれは?」
リタ「~~~っ」
フレン「リタだね、どうしたんだろう?」
リタ「」キョロキョロ
リタ「」ビクビク
ガサ
リタ「ひっ」
ユーリ「あ? リタ、何やってんだこんな時間に」
リタ「あ、あんた驚かさないでよ!」
フレン(あ、やっぱり怖かったんだ)
リタ「それにそういうあんたこそ何やってるわけ!?」
ユーリ「ちょっと眠れなくてな、体動かしてきた」
リタ「はあ? こんな時間に? 本当脳筋なのねアンタって」
ユーリ「そこまでじゃねえよ」
リタ「んでそれは終わったの?」
ユーリ「まあな、これから部屋に戻って休もうかと思ってる」
リタ「そ、そう」
ユーリ「それじゃあな」
リタ「あ、ま、待ちなさいよ!」
ユーリ「なんだ?」
リタ「ちょ、ちょっと付き合いなさいよ」
ユーリ「そりゃ構わんが寝ないと明日に響くぞ」
リタ「す、すぐ済むから!」
ユーリ「ならいいか」
ユーリ「で、何処にいくんだ?」
リタ「うっさい! いーからあんたは黙ってついてきてればいいの」
ユーリ「へいへい」
リタ「……」
ユーリ「……」
リタ「……ちょっと」
ユーリ「ん?」
リタ「何か話しなさいよ」
ユーリ「何かってなんだよ?」
リタ「なんでもいいわよ! 馬鹿!」
ユーリ「理不尽すぎるだろ……」
フレン(………ふふふ)
リタ「ここでちょっと待ってて」
ユーリ「ここって……厠? なんだトイレに行きたかったのか」
リタ「うっさい!」
ユーリ「お前まさか」
リタ「黙れそれ以上言うな、燃やすわよ」
ユーリ「……」
リタ「じゃ」バタン
ユーリ「……やれやれ」
リタ「……ね、ねえ、そこにいる?」
ユーリ「いるよ、ふわぁ……」ネムネム
リタ「……」
ユーリ「……」ウツラウツラ
リタ「ね、ねえ、まだちゃんといる?」
ユーリ「……」ウツラウツラ
リタ「……!? ね、ねえってば!」ドンドン
ユーリ「……zzz」
リタ「ちょ、なんで返事しないのよ!」
フレン(ユーリ、寝ちゃったのか、仕方ない)
フレン「リ」
リタ「いやぁぁぁああ!!」バタン
ユーリ「うおっ!?」
リタ「な、何よあんたいるじゃない!」
リタ「いるならいるって返事くらいしなさいよ!」ウルウル
ユーリ「わ、悪い眠ってたみたいだ……ってお前な! 下ちゃんと穿け!」
リタ「え? あ、あ、あ、きゃああああああああ~~~っ!!!!!」
リタ「馬鹿! 変態! 死ね!」
ユーリ「わかったからさっさと穿け! こら! こんな時間にそんなでかい魔術使うな! 声のトーン落とせ!」
フレン(……まあ今回のは不可抗力だからね、僕もみなかったことに……ん?)
<●><●>
フレン(視線が……あれは、エステリーゼ様!?)
<●><●>
フレン(あ、今目が合っ……)ゾク
フレン()ブルブルブルブル
フレン(なんだ今の恐ろしく昏い視線は)
フレン(あれは本当にエステリーゼ様なのか!?)
フレン「……」ソーッ
フレン「あれ、いない……?」
エステル「フレン」
フレン「わああああ!?」
エステル「お話があるのですが」ニコ
フレン(目が、目が怖い)
エステル「なんで今リタとユーリは一緒にいるんです?
フレン「そ、それは偶然でして」
エステル「なんで下半身を露出したリタはユーリを押し倒しているんです?」
フレン「あ、あれは不慮の事故のようでして」
エステル「不慮の事故、です?」
フレン「え、ええ」
エステル「じゃあ私も不慮の事故なら問題ないです?」
フレン「いやそうやって言ってしまってる時点でそれはもう不慮の事故では」
エステル「フレン?」
フレン「」ビク
エステル「そういえば私は今日誰のせいでユーリと寝られなくなったんです?」
フレン「それ、は……」
エステル「誰のせいです?」<●><●>
フレン「いえ、しかしそれは」
エステル「誰のせいです?」<●><●>
フレン「私が注意したからですがそれは」
エステル「フレンのせいです?」<●><●>
フレン「ですからそれは」
エステル「フレンのせいです?」<●><●>
フレン「あ、あの」
エステル「フレンのせいです」<●><●>
フレン「申し訳ございませんでした」
エステル「どう責任とるんです?」<●><●>
フレン(結局あの後エステリーゼ様とユーリを二人きりにすることを約束させられてしまった)
フレン(これでいいのだろうか)
フレン(エステリーゼ様は皇族だ、何か間違いがあったら)
フレン(しかし昨晩のエステリーゼ様は怖かった……)
フレン(何か逆らえない威圧感を放っていた)
フレン(だが冷静になった今となってはやはりそういったことに手を貸すのは騎士として)
エステル「おはようございますフレン」
フレン「あ、おはようございますエステリーゼ様」
フレン(良かった、いつもどおりd)
エステル「頼みましたよ」<●><●>
フレン(ああ……だめだこれは)
フレン(とにかく約束ははたさねば)
フレン(あ、そうだ、ユーリの方に釘を刺して……いや、何を考えているんだ僕は)
フレン(これは僕なんかが関わっていい問題じゃない)
フレン(もし本当にエステリーゼ様がユーリに好意を抱いていて行動するのならそれを僕が止めるのはおかしい話だ)
フレン(たとえ身分違いだったとしても、それをエステリーゼ様が望み、ユーリが受け入れるならそれでいいじゃないか)
フレン(まああのユーリが素直にそういった感情を受け止めるとは思えないけど)
フレン(少し意識誘導するくらいなら、よし!)
フレン「ユーリ、ちょっといいかい?」
ユーリ「フレンか? どうした」
ラピード「ワン!」
フレン「実は折り入って相談があってね」
ユーリ「なんだ?」
フレン「エステリーゼ様のことなんだけど」
ユーリ「エステル?」
フレン「剣の稽古をつけてあげてほしいんだ」
ユーリ「エステルに俺がか? お前の方がいいだろフレン」
フレン「僕では手加減してしまいそうでね」
ユーリ「おいおい、それで俺が手加減なしにやって騎士団やお前からお咎めもらえってか?」
フレン「ああ、いやそういうつもりじゃないんだ」
フレン「大丈夫、僕は何も言わないよ。ただまあ少し気遣ってもらえると助かるけど」
ユーリ「どっちなんだよ、まったく」
フレン「それは了承と見ていいのかな」
ユーリ「いやなんでだよ、そもそもなんで俺なんだ」
フレン「エステリーゼ様たっての希望でね」
ユーリ「エステルの? それならエステルが直接俺のとこにくりゃ良い話じゃねえか」
フレン「ああ、いやえっとそうじゃないんだ」
フレン(まずいな、ユーリは何か疑い初めてしまっている)
ユーリ「なーんか引っかかるんだよな、お前隠し事向いてないんだからさっさとゲロっちまったらどうだ?」
ラピード「ワン!」
フレン「い、いやただ僕は彼女の師匠に最近師事されていないから誰かに師事してもらいたいらしくてね」
フレン「さっきも言った通り僕では手加減しすぎてしまいそうで、でもそれじゃ意味がないだろう?」
ユーリ「それで普段から戦い方にケチつける相手を推薦ってのがどうも解せないんだが」
フレン「うっ、それは」
ラピード「クゥ~ン」
エステル「それで?」
フレン「申し訳ありません……」
エステル「失敗したんです?」
フレン「な、何故か変に勘ぐられてしまって」
エステル「失敗したんです?」
フレン「あ、あのその」
エステル「どうするんです?」
フレン「え? いやだって」
エステル「どうするんです?」
フレン「ど、どうすると言われても」
エステル「です?」
フレン「えっと……」
エステル「DEATH?」
フレン「ひえっ……」
ソディア「隊長~!」
フレン(天の助け!)
フレン「どうしたんだいソディア!」
ソディア「実は厄介な犯罪者がおりまして」
フレン「それは大変だ詳しく話を聞こう」キリッ
ソディア「え? あ、ありがとうございます」
フレン「じゃあ僕は会議場を用意してくる。それまでエステリーゼ様を頼む」
ソディア「はい」
エステル「……逃げましたね」ボソ
ソディア「???」
ソディア「あ、あのエステリーゼ様」
エステル「なんです?」
ソディア「少し、お聞きしてもよろしいでしょうか」
エステル「いいですよ、どんなことですか?」
ソディア「ユーリ・ローウェルのことなのですが」
エステル「ユーリのこと……です?」ピクッ
ソディア「はい。あの、彼はどんな人物なのでしょうか」
エステル「ソディアはユーリのことが気になるんです?」
ソディア「気になるというか、少し知っておきたいというか」
エステル「……ユーリは守りたいものの為に己が悪と呼ばれることを厭わない人です」
エステル「恨まれようと、法に触れようと守りたい者のためなら必要悪に自らなる……そんな人なんです」
ソディア「そう、ですか……あ、そういえば脇腹の刺し傷はもう良いのでしょうか」
エステル「脇腹の刺し傷?」
ソディア「あっ!?」
エステル「それは確かザウデ不落宮でユーリが行方不明になった際に負った傷」
エステル「何故それをあなたが知ってるんです?」
エステル「それを知ってるのは私とラピードだけのはずです」
ソディア「……」
エステル「……」
ソディア「……実は、あの時、私が、ユーリ・ローウェルを誅殺しようとしたんです」
エステル「……そうですか」
ソディア「……」
エステル「……」
ソディア「……? あの、エステリー……」
エステル「アナタダッタノデスカ」<●><●>
ソディア「ひっ!?」
────────
フレン「お待たせソディア、準備が……あれ? ソディアは……」
エステル「彼女なら帰られましたよ」
フレン「えっ?」
エステル「なんでもやはり自分たちでなんとかすると」
フレン「しかし、彼女が僕に一言もかけずに帰るなんて」
エステル「彼女も忙しいんじゃないです?」
フレン「そう、かもしれません、今騎士団に余剰戦力はありませんから」
エステル「気にしても仕方ないです」
フレン「わかりました」
フレン「しかし犯罪者か……」
エステル「きになるです?」
フレン「ええ。確か名前はザ……」
ザギ「ユゥゥーリィィーーーー!!!!!」
ザギ「ヒャッハァァァ!!! ユゥゥリィ・ロォォォーウェェェェルゥゥゥ!!」
ザギ「お前だ、ユーリィ、俺にはお前しかいねえ、お前もそうなんだろオォォォォォ!?」
ザギ「いいぜ、いいねぇ、ユゥゥリィィィ! お前は俺のモンだぁぁぁああああ!!!」
フレン「あいつ……!」
エステル「ユーリがアナタノモノ……デス?」
ザギ「あ?」
エステル「フォトン」パァァァ
ザギ「ぎゃっ!?」バァン
ザギ「てめ──」
エステル「フォトン」パァァァ
ザギ「ぐぎっ!?」バァン
エステル「フォトン」パァァァ
エステル「フォトン」パァァァ
エステル「フォトン」パァァァ
エステル「フォトン」パァァァ
エステル「フォトン」パァァァ
ザギ「ぐぎゃっ、ぎゃふっ、へぶっ!?」バァンバァンバァンバァン
エステル「次は何処がいいです? どこを吹き飛ばしてほしいです?」
フレン(オーバーリミッツ……えげつない!)
ザギ「おの、れェ……!」
ザギ(もうすぐオーバーリミッツは切れる、そこを……)
エステル「」ゴクゴク
つリミッツボトル
ザギ「な!?」
エステル「オーバーリミッツ」
ザギ「ちょ」
エステル「フォトン」パァァァ
エステル「フォトン」パァァァ
エステル「フォトン」パァァァ
エステル「フォトン」パァァァ
エステル「フォトン」パァァァ
ザギ「ぎゃあああああああああああああ!?」バァンバァンバァンバァン
フレン「」
エステル「ホーリーランス」
ドスッドスッドスッ
ザギ「」チーン
フレン(あ、おわっ──)
エステル「からの」
フレン「え」
エステル「アルティメットエレメンツ」ドゴゴゴゴゴ
ザギ「ユゥゥゥリィィィイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」ドーン
ザギ「」バタリ
フレン(敵ながらかわいそうになってきた)
フレン(そういや出番なかったな)
カロル「大変大変大変だよ!」
ユーリ「どうしたんだカロル?」
カロル「この前エステルが買った香水! あれ変な副作用があるんだって」
ユーリ「なんだって!?」
カロル「今解毒作用があるハーブをもらってきたんだ!」
ユーリ「よくやったカロル!」
ユーリ「おーいエステルー!」
エステル「なんです?」ヒョコッ
フレン「……」
ユーリ「実は……ってどうしたフレン?」
フレン「……いや」
カロル「エステル! この前の王城から取り寄せたっていう香水は変な副作用があるんだって!」
エステル「そうなんです?」
カロル「はやくこのハーブを食べるといいよ!」
エステル「じゃあユーリ、食べさせてください」
ユーリ「俺がか?」
フレン「……僕からも頼む、ユーリ」
フレン(万一彼女の機嫌を損ねてユーリがザギみたいな目にあったら……)ブルブル
ユーリ「ったく、しょーがねえなー、ほらよ」
エステル「えへへ……ん」コクッ
エステル「……」
エステル「……?」
エステル「……!」
フレン「エステリーゼ様?」
ユーリ「どうだ?」
エステル「わ、私……///」ボッ
エステル「ご、ごめんなさぁい!」スタタタ
ユーリ「どうやら効いたみたいだな」
フレン「そのようだね」
ユーリ「でも結局副作用ってなんだったんだろうな」
フレン「……!」
フレン(そうか、最近のエステリーゼ様はそのせいで変になっておられたんだ!)
フレン(そうにちがいない! 良かった……)
ユーリ「おーいフレン、どうしたー?」
フレン「ふぅ、なんだか安心したら力が抜けたな」
フレン「今のうちにみんなの荷物整理でもしてしまおう」
フレン「これはリタのかな? 魔導器の専門書が乱雑になってる」
フレン「こっちはカロルかな、工具類が少し散乱している」
フレン「よし、これで大丈夫、と」
フレン「ん、これは……香水?」
フレン「これが諸悪の根源だったわけか」
フレン「全く、これにはずいぶんと振り回され、た……え?」
フレン「これ、包装が解かれていない……まだ、未使用のままだ……!」
フレン「そんな、だって……」
エステル「うふふふふふ、フレン? 何を知ってしまったんです?」
フレン「うわあああああああ!?」
おわり
ウィチル「ソディア遅いなあ」
転載元
エステル「ユーリと随分仲が良いですね」フレン「幼馴染ですから」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1402387360/
エステル「ユーリと随分仲が良いですね」フレン「幼馴染ですから」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1402387360/
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コメント一覧 (48)
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- 2014年12月01日 21:21
- やっぱりユリリタがNo.1!ユリリタがNo.わ・・・(フォトン)
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- 2014年12月01日 21:28
- その後、※1の行方を知るものは誰もいなかった……
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- 2014年12月01日 21:51
- アイエエエ...
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- 2014年12月01日 22:00
- いやユーリにはジュディスの方がお似合(文はここで途切れている
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- 2014年12月01日 22:01
- いやいやパティとのくみあわs(フォトン
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- 2014年12月01日 22:24
- これを言ったら闇に葬られるとしても!それでも言わずにはおれぬ!
ユリリタが最高にして至高!最高にs…(セイクリッドブレイム)
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- 2014年12月01日 22:28
- ひぇっ・・・
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- 2014年12月01日 22:52
- いやここは意表をついてユリフレry(アルティメットエレメンツ)
-
- 2014年12月01日 22:56
- なんてこった
皆死んじまいやがった・・・
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- 2014年12月01日 23:02
- エステルって見て有機化合物スレかと思ったのに
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- 2014年12月01日 23:22
- なんてことだ……なんてことだ……
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- 2014年12月01日 23:26
- どいつもこいつも分かってねーな
ユーリの相棒は昔から一匹だけだろ?
そうラピードさんだ
ユリラピこれはケモナー界に激震が走るr(フォトン
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- 2014年12月01日 23:31
- その後、彼らの行方を知るものは誰もいなかった。
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- 2014年12月01日 23:32
- エステルってブログの看板キャラでしょ?
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- 2014年12月02日 00:02
- いや技を編み出した先人への礼儀云々言うなら技名省略云々以前にユーリ式爪竜連牙斬をやめさせろよwwwアレンジしすぎて完全に別の技だろあれwww
あ、エスリタばんざ(グランシャリオ
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- 2014年12月02日 00:07
- エスリタが一番だって公式でも言われ(ホーリーランス
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- 2014年12月02日 00:13
- これはよい
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- 2014年12月02日 00:14
- ゆーりはあいされてるとおもいましたまる
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- 2014年12月02日 00:25
- ユーリがはっきりしなかったのが悪い(責任転嫁)
しかしフレンェ……
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- 2014年12月02日 00:39
- このエステルまいたけ団長から自力で逃げてきてそう。
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- 2014年12月02日 00:46
- ガッシュのザケル連打を思い出した
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- 2014年12月02日 03:11
- ソディアは何発のホーリーランスとアルティメットエレメンツをくらったのだろうか
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- 2014年12月02日 03:16
- このコメ欄のヤツらはどいつもこいつも良い顔で逝ってやがる…
南無
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- 2014年12月02日 04:43
- お前ら仲いいなww
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- 2014年12月02日 05:27
- レイズデッドが必要かな?
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- 2014年12月02日 06:46
- あったかパティ……
何だろう、妙に惹かれる
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- 2014年12月02日 08:08
- そういや、ユーリとレイブンがベットで絡み合っ(エクストリームスターズ
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- 2014年12月02日 10:10
- 4コマ漫画「テイルズV」のエステルはだいたいこんな感じだったな
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- 2014年12月02日 14:19
- このコメ欄しにすぎwww
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- 2014年12月02日 14:24
- ※28
ているずV結構好きだったんだが、出なそうで悲しいな
あのエステルはヤンデレではなかったけれども
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- 2014年12月02日 14:29
- だから昔からユリリタが至高って言われt(フォトン
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- 2014年12月02日 14:34
- 一瞬、ジルオールかと思った。
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- 2014年12月02日 14:36
- おおもう…
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- 2014年12月02日 15:03
- カロル「あのー僕は…」
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- 2014年12月02日 18:02
- 少年はナンでも食べてなさい byおっさん
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- 2014年12月02日 18:11
- 流石メインヒロインさんやでー・・・(白目
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- 2014年12月02日 20:42
- ユリリタはナンバー1!(ホーリーランス&アルティメットエレメンツ
ロニ「なんだと!」
ユリジュディでもいい!(フォトン&セイクリッドブレイム
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- 2014年12月02日 20:54
- カロナンの俺は傍聴者
と思っていたのかね
ユリリタの俺はマイソロでエステルに秋沙雨を連発してやる
フォトン!
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- 2014年12月03日 23:51
- ちょっと皆さん死にすぎやしませんかねぇ…
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- 2014年12月13日 18:23
- ユリリタがヴェスペリアカップリングを制す!
ユリエスはでてk(エクストリームスターズ
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- 2015年01月01日 13:24
- ユリザギが好きです(真顔)
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- 2015年01月28日 07:57
- ※41
はちみつだぁ...//
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- 2015年02月25日 21:19
- その後、ソディアの行方を知る者は誰も居なかった...
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- 2015年03月02日 23:03
- 俺氏はマイソロ3にて女あたま×ユーリで(アルティメットエレメンツ
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- 2016年04月25日 01:12
- ソディアは塵になったんだな...
アーメン
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- 2016年09月01日 09:49
- 死屍累々とはこのことか
あ、テイルズ20周年おめでとう(遅い)
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- 2016年10月24日 06:43
- 時代はユリエスだろ!(アスティオン! バリアー! レジスト! シャープネス!)
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- 2019年06月12日 12:03
- あれ?パティって誰だ?
オレが覚えてる限りそんなやついなかったぞ