「トイレットペーパー抱えてた寮の女の子に声をかけた話」
- 2014年08月18日 09:10
- SS、神話・民話・不思議な話
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- 1 :
- 2 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)20:09:07 ID:R0oLLA6h7
- 生まれてはじめて見たんだよな。
女の子がトイレットペーパー(12ロール)を抱えて歩いてるところ。
「女の子ってトイレットペーパー、買うんだ」ってなんか興奮した。
だから、話しかけちゃったんだよね。
トイレットペーパーを抱えたその子に。 - 5 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)20:12:27 ID:R0oLLA6h7
- はじめて話しかけたのは、寮のロビーだった。
「トイレットペーパー、買ったんだ」
こんな感じで話しかけたら、意外なことに立ちどまってくれた。
「むしろトイレットペーパーしか買わないですよ」
「え? ティッシュは?」
「これがティッシュじゃないですか」
「いや、これはトイレットペーパーでしょ」
「我が家では、これを『丸いティッシュ』って呼んでます」
この会話でわかると思うけど、この子はけっこう変わってた。
あと、喋り方が渡部陽一に似てる。 - 9 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)20:16:37 ID:R0oLLA6h7
- 「ティッシュがいりますか?」
「いるでしょ」
「でも、トイレットペーパーがあれば必要ないですよね」
「……トイレットペーパーをなにに使ってるの?」
「わざわざ聞く必要ありますか」
「ごめん」とオレはそこであやまった。
さすがに女子に聞くことじゃなかった。
あと、なんかすげえ眠そうで半目だった。 - 11 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)20:18:47 ID:R0oLLA6h7
- ちなみに名前を聞いたら、こんなふうに返してきた。
「好きなように呼んでくれていいですよ」
「そっかあ。って、本名を知らないんだけど」
「だから、好きに呼んでくれていいですよ」
「いいの?」
「いいです」
「じゃあ『トイちゃん』で」
「なんで、わたしのみょうじを知ってるんですか?」
トイちゃんが目を見開いた。
意外と大きい目をしてた。 - 12 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)20:20:35 ID:R0oLLA6h7
- 「いや、当てずっぽうなんだけど」
「へぇーほぉー」
「……」
なぜか、急に顔をジロジロ見てくるようになった。
けっこう真剣に感心してるっぽい。
『トイちゃん』って名づけたのは、
トイレットペーパーの『トイ』をとっただけなのになあ。 - 17 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)20:23:48 ID:R0oLLA6h7
- うちの寮は、男女共同。
だからトイちゃんとは、ときどきいっしょにご飯を食べた。
「トイちゃんって、なんで敬語を使うの?」
「変ですか?」
「一年生どうしなんだから使う必要なくない?」
「それには深い理由があるんですよ」
「と、言いますと?」
「わたし。タメ口で話すとなまっちゃうんです」
「それで、戦場カメラマンみたいな話し方してるの?」
トイちゃんはうつむいて、納豆をすげえ勢いでこねはじめた。
もしかすると、ショックを受けたのかもしれない。 - 19 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)20:25:46 ID:R0oLLA6h7
- 「鹿児島出身なんですよ、わたし」
「へえ。鹿児島ってなまりつよいの?」
「『自分ではよくわかんないんだけどねえ』。こんな感じです」
「なんかイントネーションがへんだね」
「地元の友達にも、よく言われます」
……地元の友達にも言われちゃうんだあ。 - 22 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)20:29:32 ID:R0oLLA6h7
- 朝は食堂で女子のすっぴんが見れたりする。
トイちゃんのすっぴんも拝めた。
「なんか体調、わるそうだね」
「なんでそう思うんですか?」
「だって顔色ヤバイよ」
「すっぴんだとだいたいこんな感じです」
早朝のトイちゃんは泥人形みたいだった。 - 25 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)20:35:27 ID:R0oLLA6h7
- トイちゃんがバイトをはじめたらしい。
「へえ。なんのバイトはじめたの?」
「誰にも言わないでくださいよ」
めずらしく、トイちゃんの目が開いていた。
「ちなみに、オレはレジ打ちとかやってるのかと思った」
「残念。ちがいます」
「じゃあなんなの?」
- 28 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)20:40:48 ID:R0oLLA6h7
- 「アパレルです」
「アパレル!?」
「はい。アパレルです」
「……なんかイメージとちがうなあ」
「友達からは、とっても似合ってるって言われますよ」
「ちなみに店は?」
「西松屋」
「ああ、うん。似合ってるわ」
ていうか、西松屋ってアパレルって言うのか。 - 30 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)20:45:25 ID:R0oLLA6h7
- トイちゃんに趣味を聞かれたので、聞き返してみた。
「わたしの趣味ですか?」
「うん。なんかないの?」
「あります」
「なあに?」
目を細めるトイちゃん。
トイちゃんは、考え事をするとき必ず目を細めるのであった。
「ホテル巡りです」
「ホテル巡り?」 - 31 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)20:49:46 ID:R0oLLA6h7
- 「ブティックホテルの中を見るのが好きなんです」
「泊まらないの?」
「寮がありますし」
そう言ったあとで、トイちゃんは
「変な意味じゃないからね」と慌ててつけ足した。
変わった趣味をもった人間がいるんだなあ、とため息が出た。
ブティックホテルがなんのかわからなかった。
あとで調べてみたら、もっとため息が出た。 - 32 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)20:55:22 ID:R0oLLA6h7
- ある日、ベランダで布団を干していると。
上からバスタオルが降ってきた。
ちなみにうちの寮は、六階建てなんだけど。
男子が住んでるのが、1階から4階。
女子が住んでるのが5階と6階。
そして俺が住んでるのは4階。
つまり上から降ってきたバスタオルは、女子のものである。
届けようかと思ったけど、女子の階には男子は行ってはいけない。
それでめんどくさくなって、自分の部屋で干しとくことにした。
……っていう話をトイちゃんにした。 - 34 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)21:07:01 ID:R0oLLA6h7
- 「それでまだ、タオルはもってるんですか?」
「まあ、いちおう」
「早く返したほうがいいですよ」
「オレの代わりに返してほしい」
「じゃあ、あとでもってきてください」
食堂で話し合って、一度解散することにした。
部屋に戻ったらトイちゃんから、寮の部屋の内線で連絡がきた。
内線は部屋の番号を押すだけで、勝手につながるんだけど。
教えてないのに、
どうしてオレの部屋の番号知ってたんだろ?
- 39 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)21:23:15 ID:R0oLLA6h7
- トイちゃんにほかに趣味がないのか聞いてみた。
「ありますよ、もうひとつ」
「それはいったい?」
「お酒。芋焼酎とか飲むの好きです」
「トイちゃんって未成年飲酒とかしちゃう人なんだ……」
「未成年じゃないですよ」
「まだオレたち、一年生じゃん」
「わたし、浪人してるんで」
トイちゃん、まさかの年上だった。 - 40 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)21:34:07 ID:R0oLLA6h7
- トイちゃん、どうやらコーヒーは豆から挽いて飲む人らしい。
「コーヒーは飲みますか?」
「めっちゃ飲むし、めっちゃ好き」
本当はコーヒーは好きじゃない。
けど、トイちゃんと話したかったからそう言った。
「じゃあ甘いものは好きですか?」
「あんまり好きじゃないけど、なんで?」
「甘いものはコーヒーのおいしさを引き立てるんですよ」 - 41 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)21:38:39 ID:R0oLLA6h7
- 「もったいないなあ」
「そうなの?」
「甘いものと飲むコーヒーのほうが、100倍おいしいのに」
「そっか」
「甘いものと、飲みません?」
「飲み方はなんでもいいよ。
べつにそんなにコーヒー好きじゃないし」
「え?」
「うん?」
なんだかんだコーヒーを飲ませてくれたトイちゃんだった。
- 43 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)21:45:53 ID:R0oLLA6h7
- 食欲の秋ってことで、
トイちゃんといっしょに食堂でカレーの大食いチャレンジをした。
ちなみにオレは誘われたがわ。
トイちゃんはちっこい。
それにどちらかと言えば、ほそい。
てっきりすぐ音をあげるかと思ったら、完食しやがった。
「じゃあ、別腹で喫茶店行きましょうか」
ラグビー部のヤツでさえ、
食べたその日は動けなくなるんだけどなあ。
トイちゃんは、パンパンになったお腹をさすって満足そうにしてた。 - 44 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)21:58:06 ID:R0oLLA6h7
- 冬はトイちゃんとは会わなかった。
コタツから出れないんだそうだ。
暖房つけろよって内線で言ったら、
「喉が痛くなります」ってキレられた。
なんか知らないけど、六時間ぐらい電話越しにケンカした。
さすがに眠くなって、電話を切った。
内線はお金がかからないから、ついつい長電話してしまう。 - 45 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)22:01:54 ID:R0oLLA6h7
- 冬は鼻水がとまらなくなる。
オレはいつも鼻をすすってた。
そんなあるとき、
トイちゃんが寮を出ていくという話を聞いた。
いつもどおり、内線で連絡してみた。
「今部屋がゴミ屋敷なんで、あとにしてください」
それだけ言って、内線を切られた。 - 47 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)22:09:50 ID:R0oLLA6h7
- 春が近づいて来ると、今度は花粉症がおそってきた。
鼻水はあいかわらずとまらない。
オレはなんとなく、ロビーで読書していた。
そこで台車に荷物をたくさんのせた、トイちゃんがやってきた。
「あー、ひさしぶりです」
「引越しの日?」
「そうです。巣立ちの日です」 - 48 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)22:14:28 ID:R0oLLA6h7
- 「そっかあ。さみしくなっちゃうね」
「べつに大学はいっしょのままですよ」
「いや、まあそうなんだけど」
「あ、そうだ。
トラックに詰めこみきれない荷物が、あります」
「くれるの?」
「あげます」
トイちゃんは、そう言って台車の一番うえにのってた
トイレットペーパーをわたしてきた。 - 49 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)22:18:05 ID:R0oLLA6h7
- 「トイレットペーパーかあ」
「ティッシュがいりますか?」
「いるでしょ」
「でも、トイレットペーパーがあれば必要ないですよね」
「……トイレットペーパーはなにに使ってるんだっけ?」
「はじめて会ったときも、聞いてきましたよね」
オレは目を見開いてしまった。
トイちゃんがオレと会ったことを覚えてるなんて。
- 51 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)22:23:51 ID:R0oLLA6h7
- 「逆に聞きますけど、トイレットペーパーってなにに使いますか?」
オレはふくろをあけて、
その中からトイレットペーパーを1ロールとりだした。
そして、はなを思いっきりかんだ。
耳がキーンとした。
「こうやって使うんだよ」
「なるほどー」
トイちゃんは眠そうな目をいつもより開いて、
パチパチと拍手する。 - 52 :名無しさん@おーぷん 2014/07/01(火)22:28:49 ID:R0oLLA6h7
- これがオレとトイちゃんの寮での最後の会話。
あれから二ヶ月が経ったけど、
トイちゃんの部屋はすっかりゴミ屋敷になっちゃったらしい。
だから今度、トイちゃんの家に掃除に行くことになった。
ホコリだらけらしいし、オレの花粉症はまだ続いてるから、
トイレットペーパーをもっていったほうがいいかもしれない。
ちょっとだけ楽しみ。それだけ。
おしまい
転載元
「トイレットペーパー抱えてた寮の女の子に声をかけた話」
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1404212947/
「トイレットペーパー抱えてた寮の女の子に声をかけた話」
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1404212947/
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コメント一覧 (13)
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- 2014年08月18日 09:44
- なつかしい
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- 2014年08月18日 10:28
- これはじめて見たんだけど意味がわかると怖い話系のやつ?
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- 2014年08月18日 10:33
- だいぶ前に見たな
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- 2014年08月18日 10:34
- トイトイ
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- 2014年08月18日 10:43
- 懐かしいな、最初は~した結果的なやつかと思って意味分からなかったわ
まあ今も意味わからんけど。そもそも面白くないし
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- 2014年08月18日 10:49
- 雰囲気を感じる話だろ
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- 2014年08月18日 11:03
- げんふうけいの偽物
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- 2014年08月18日 11:37
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ブティックホテル=ラブホ
西松屋=子供服等販売
これから導いてって深読みしすぎかw
良くもなく悪くもなく
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- 2014年08月18日 12:11
- ノンフィクション?
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- 2014年08月18日 12:17
- ※7げんふうけいとかwww数ある書き手の中でも全く大したことねえのに持ち上げすぎて寒いわ
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- 2014年08月18日 12:51
- トイレの花子さんが出て行ってしまって廃墟化するって話だろ?
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- 2014年08月18日 12:55
- 雰囲気はいいね
トイレットペーパーのように柔らかくてふんわりした感じがする
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- 2014年08月18日 20:23
- きめええええ