【ラブライブ】 「雨のちビー玉時々しゃぼん玉」

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:29:47.24 ID:BBbto8+Ro

昨日の朝から降り続いていた天気雨
綿あめみたいな雲から溶けだす
霧雨はきっと砂糖の結晶



3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:32:02.48 ID:BBbto8+Ro

雲の隙間から射す日差しに
漂っている結晶たちが
キラキラ綺麗に煌めきだして
ただの日差しがあっという間に
七色の光を纏ったスポットライト
見ているだけで心が踊り
頭の中の音楽隊が陽気なメロディ奏でます



4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:33:00.74 ID:BBbto8+Ro



そんな自然の悪戯で
造り出された甘い夢のステージは
たった一日で嘘みたいに
姿を変えて





5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:33:43.61 ID:BBbto8+Ro

見上げる限り隙間なく
一面灰色の空から落ちてくる
雨粒はまるで透明なビー玉



6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:34:25.71 ID:BBbto8+Ro

その硝子の表面に
近くにあるもの見えるもの
形振り構わず巻き込んで
自分の重さに耐えきれず
何かにぶつかり自分勝手に
当たって砕けて弾け飛ぶ



7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:34:55.33 ID:BBbto8+Ro

街に 街灯に 木々に 落葉に
家に 傘に 人に 地面に
いろんな音を掻き消して
たくさん散らして音になる
聞くに耐えない歪んだ音は
全てを介して届きます
見聞きし触れた全てのものに





8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:36:11.44 ID:BBbto8+Ro

――

宛ら騒音まがいの雨粒と屋根の不快なセッションによって私は目を覚まさせられた



9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:37:07.73 ID:BBbto8+Ro

「…、雨…ね、いくら梅雨入りしたからって盛大に降りすぎなのよ、ちょっとは遠慮しなさいっての」



10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:38:00.91 ID:BBbto8+Ro


まだ布団に引きずり込まれる様な感覚を振り払いながら体を起こす
目覚まし時計の短針は8を指す手前



11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:38:52.90 ID:BBbto8+Ro

「そういや、土曜日か。
目覚ましは忘れてたけど、習慣の賜物ってやつかしらね」



13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:41:42.83 ID:BBbto8+Ro

まだ眠りの足りないという身体を無理矢理動かす
いつもより1時間ほど遅いが朝食の仕度をしなくてはならない
自分だけなら正直食べなくてもいい
布団の中でもう数時間
自堕落に微睡みと戯れていた方が幾分か幸せだ



14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:44:22.85 ID:BBbto8+Ro


成長期の時期に朝ごはん抜くなんてだめよ、と中学の時に母に言われた事もあり、朝は抜かないようにしていたが
正直、今後の私の身体的成長はもう見込めないと思っている



15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:45:54.87 ID:BBbto8+Ro

小学1年から6年できっちり年間1センチで単位で身長が6センチも伸びた
だが悲しいことに中学1年から高校1年の今まで3年と少しで身長は僅かに2センチ
女性の象徴と言われるバストに至っては1センチしか成長していない



16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:47:12.14 ID:BBbto8+Ro

これを成長と呼んでもいいものかと思わせる程の微々たるものである
おまけに女性の成長は男性に比べて軒並み早く成熟するらしい




17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:47:53.44 ID:BBbto8+Ro


「うん、もういいや、考えるだけで虚しくなってきたわ。
さっさと食事の準備しましょ」



18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:48:39.64 ID:BBbto8+Ro


洗面台に向かう
梅雨の所為かいつもより部屋の中が蒸し暑い気がする




19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:49:14.21 ID:BBbto8+Ro




『―――なんて言うかさ、熱すぎるのよね、矢澤さん』

『―嫌って訳じゃあないよ?
あの、私たちと理想が違うって言うか、その





20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:50:09.86 ID:BBbto8+Ro

「…、…暑い…。
早いとこ顔洗ってすっきりしよ」



21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:50:49.49 ID:BBbto8+Ro


洗い終えて顔を拭いたタオルを首にたらんとぶら下げたまま冷蔵庫を開ける
心地好い冷気が寝起きでまだ軽く火照っている上半身を軽く冷ます




22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:51:25.23 ID:BBbto8+Ro


『――なんであんたらそんなに冷めてんのよ!?
アイドルやりたいんじゃあなかったの!?』


『―…だって、…その…』



23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:53:27.51 ID:BBbto8+Ro

『―――冷めてるんじゃないの、冷静なだけ
ほんの少し冷静になって考えてみてよ?矢澤さん
私達は楽しくアイドルを少しやってみたいと思ってたの、女の子ならだれでも一度は憧れれるアイドルを部活で楽しくやれる
そう、ただ楽しくね』



24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:54:31.37 ID:BBbto8+Ro


『―――矢澤さんはどう?
確かに楽しくってのも言ってくれてたわよね
実際一緒に色々な練習やって私達も楽しかったし
でも、それより何より
本気だったでしょう?アイドルに』



25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:55:13.76 ID:BBbto8+Ro


『――本気で…何が悪いってのよ?
私はね、アイドルが大好きなの
みんなの前で歌って、ダンスして、みんなと一緒に盛り上がって
また明日から頑張ろうって
そういう気持ちにできるアイドルが、私は大好きなの!
そんな好きなことを、好きでいることを絶対に諦めたくないの!
それができるチャンスがこんなに近くにあるのに、本気にならないでどうしろってのよ!?』




26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:56:25.59 ID:BBbto8+Ro


両頬をパシっと軽く叩くと
少し湿った音が響いた




27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:57:03.22 ID:BBbto8+Ro

「…まだ引きずってんのか、私。
…卵もハムもあるしハムエッグにしようかな。
昨日作ったポテトサラダも残ってるし、
レタスも少しあるからそれをサラダに1枚じゃあ多いからトーストを半分に切って、これだけあればあの子らも満足でしょ」



28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:57:52.79 ID:BBbto8+Ro


冷蔵庫から食材を取りだし手際よく準備をする
これだけなら20分も掛からないだろう
レタスを一口大に千切り、40℃前後のぬるま湯に10秒ほどさらす
そのあとに冷水に数分浸しておく
これだけでレタスが口の中で軽快な音をたてて、さながら取れたてのようになる



29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:58:24.38 ID:BBbto8+Ro


この間にハムエッグを作ってしまおう
ほんのり焼き色がつくまでハムの両面を軽くやく
半分にくるっと畳んでお皿に盛り付ける
次は目玉焼き
あの子たちは固めの黄身が好きじゃない
半熟の方がいいらしい
しっかり火を通た方が美味しいのに
ま、もうちょっとしたら好みも変わるかもね



30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 01:58:59.90 ID:BBbto8+Ro


油をひいて熱し終え、軽く白い煙がたちはじめたフライパンの上に卵を落とす
ひとつ、ふたつ、みっつ

小さなクラッカーが何度も弾けるような音の後にジューっと響く音
軽く蒸して火を通しやすくする為に蓋をする



31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:00:02.77 ID:BBbto8+Ro

「こうしないと上手く半熟にもならないしねっ。
よしっ、チビたちの分は固くなりすぎないようにちゃんと見とかないと。
このコンロ火力だけは強いからあっという間に焦げちゃうのよね、弱いよりはいいんだけど調整つまみ弄ってもラグがあるのが偶にキズね」







32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:00:50.65 ID:BBbto8+Ro


『―――そういうところよ
ごめんなさい、矢澤さん
そういうことだから、私達
あなたと一緒にスクールアイドルはできないわ』




33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:01:35.35 ID:BBbto8+Ro


『――…っざげんじゃないわよ!
もっと納得する理由説明しなさいよ!?
1か月後には講堂の使用許可も貰ってライブだってしようと思ってたのに!
二人とも練習だって頑張ってきたじゃない、そうでしょ?』



34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:02:19.93 ID:BBbto8+Ro


『―それに関しては、本当に…ごめんなさい…
でもね、二人で話し合った結果なの…
それで今日は、…矢澤さんにもちゃんとお話しなきゃって…思って』


『―――もういいわ、行きましょ
言うことは言い切ったし、私たちは退部届けも先生に提出した
元々は部活動なんだからそんなに気にすることでもないわ』



35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:03:23.84 ID:BBbto8+Ro


『―――珍しくない話でしょう?
思ってた風と違って合ってないと思ったから
そこから離れていく
それって当たり前で
至って懸命な判断だと思わない矢澤さん?』



36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:04:42.03 ID:BBbto8+Ro


『――…
わかったわ、そこまで言うのなら止めない…
ただ、私ね…現在進行で虫の居所が物凄く悪くなっていってんの
そりゃもう目に入るもの全てに手当たり次第八つ当たりしちゃうんじゃないかって位にね…』



37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:05:23.92 ID:BBbto8+Ro


『―矢澤さん、あの、その、』

『―――行くわよ』

『―っで、でも!』

『―――



38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:06:27.22 ID:BBbto8+Ro



香ばしい食欲をそそる筈の香りが
鼻孔を刺激し出す臭いに変わりようやく
自分が調理中にも関わらず呆けていたことを思い知らされる



39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:07:17.25 ID:BBbto8+Ro


「あちゃー、少し焦げちゃったじゃない…、
黄身もカチカチ…」

フライ返しで恐る恐る焦げ具合を確かめる



40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:08:33.04 ID:BBbto8+Ro

「食べれない…ことはないわね。
はぁ…、しょうがないチビたちには我慢して貰いましょ」



41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:09:16.10 ID:BBbto8+Ro


ハムを乗せていた皿に目玉焼きを盛り付ける
端が焦げてしまった目玉焼きはお世辞にも美味しそうには見えなかった
綺麗な焼き色がついたハムが不恰好な目玉焼きをより一層惨めに映らせる



42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:10:01.89 ID:BBbto8+Ro



『―――でもじゃないの、帰るわよ
…後、矢澤さん
忠告に聞こえちゃうかもしれないけど最後に1つだけ』



43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:11:18.30 ID:BBbto8+Ro


『熱すぎるものは制御出来ないと自分も周りも焦がすものよ』

『―――それだけ、じゃあ…さようなら』




44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:13:36.42 ID:BBbto8+Ro


気付くと私は歯を食い縛り
握った拳でテーブルを軋ませていた

大きな音に目を覚ましたのか妹がひょこっと現れた



45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:17:04.27 ID:BBbto8+Ro


「お姉さま、大きな音がしたけど、何かあった んですか…?」

起こしてしまったのは双子の姉こころだけだったらしい



46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:19:23.47 ID:BBbto8+Ro


「あー、こころごめんね、起こしちゃったね。
ちょ~っと考え事してたら自分の足に引っ掛かっちゃって。
そのまま転んじゃいそうだったからテーブルに思わず手をついちゃったのよ」

決して間違いではない
嘘を含んではいるが



47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:21:31.71 ID:BBbto8+Ro


「そう、ですか…よかった」

まだ寝足りないのか目を擦りながら安堵の声が漏れる




48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:22:21.53 ID:BBbto8+Ro

「よしっ、もうちょっとで朝ごはんできるからら、ここあも起こして歯磨きして、手洗ってきなさい」

「はいっ、わかりました!」

小さな歩幅で妹の名を呼びながら寝室へ向かう



49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:28:09.34 ID:BBbto8+Ro

少し騒がしい洗面台を背中に感じ
盛り付けを終える

「…この子たちのお陰で気は少しだけ紛れるわね、ありがとね、にこの妹でいてくれて」



50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:31:48.07 ID:BBbto8+Ro

柄にもなく少しセンチになる

「ママもありがと、にこを二人のお姉ちゃんにしてくれて…」



51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:34:25.96 ID:BBbto8+Ro


小さく呟いた後に大きな声


「ねー、にこにー!きてー!」
「お姉さまー」



52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:35:05.82 ID:BBbto8+Ro

二人の呼び出しにパタパタと早歩きで洗面台に向かう

私が洗面台に着いた途端、口火を切ったのは妹のここあだ



53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:38:01.57 ID:BBbto8+Ro

「にこにー、キレイキレイのアワのやつなくなっちゃってるよー」

「あちゃー、すっかり忘れてた…無くなりそうだから買ってこなきゃと思ってたのに…」

ここあがポンプの頭を小さな手のひらで何度も押している
押す度に軽そうな手応えと乾いた音がシュッとするだけだった



54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:39:38.05 ID:BBbto8+Ro

「にこにーおっちょこちょーい!にこっ!」

「こらーっ!ここあ!お姉さまをバカにしないのっ!だれだっていそがしくてわすれちゃうことだってあるんだから!」



55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:41:27.21 ID:BBbto8+Ro


こころが直ぐに私を庇ってくれた
この子は真面目で本当に優しい
普段はあまり口数は多い方じゃあないけれど、自分の意思をしっかり持っていて、それを頭ごなしに否定されたり馬鹿にされたりするとちゃんと言葉にして対話ができる
ただその事になるとほんの少し熱くなり過ぎちゃって、回りが見えなくなることもあるけど

それでいてちょっと泣き虫さん



58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:50:32.53 ID:BBbto8+Ro

「いいのよ、こころ。
今回はお姉ちゃんが気付いてたのに忘れちゃってたんだから」

「う~、お姉さまがそう言うなら…。
…っでも、ここあ!お姉さまにはちゃんとあやまって!」

困り顔から思い出したように真剣な表情に変わり妹に言う



59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:51:25.23 ID:BBbto8+Ro

「え~、にこにーだっていいって言ってるからいいじゃ~ん?ね、にこにー?」

ここあが首をかしげて私の方を向いてもう一度確めるように聞いてくる



60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:54:33.85 ID:BBbto8+Ro


この子は本当に素直だ
どんなことも真っ直ぐ受け止められる
そして何事にも臆さず真っ直ぐに自分の気持ちも伝えられる
真っ直ぐ前ばっかり見てるから
たまにぶつかったり、転んだりもするけど
自分の信じたものに素直に進んでいける

そういう勇気も持っている
ちょっといたずらっ子な気もあるけど
そういうところを差し引いたら、お姉ちゃんのこころより大物なのかもしれない



61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:55:53.22 ID:BBbto8+Ro

「うーん、そうねぇ」

「ねえ、ここあ。
さっきはにこを馬鹿にしたわけじゃあないのよね?」



62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:56:58.97 ID:BBbto8+Ro

きっとこの子は私のことを

「うん!そうだよ!
にこにーしっぱいしたけど気にしないで元気だしてね!
って思って言ったんだ~」

ふふっ
ほらやっぱり、励ましてくれてたのね



63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 02:58:15.07 ID:BBbto8+Ro

膝を曲げてここあと目線を合わして話しかける

「ありがとね~、ここあ。
でもね、にこはここあとと一緒にずっといるからちゃーんと分かるんだけど、ああいう言い方だと他の人からはここあがにこを馬鹿にしてる様に見えちゃうこともあるの」



64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:00:01.54 ID:BBbto8+Ro

「えー!!そんなことないのにぃ!!」

さっきまでのにこにこ笑顔はどこへやら
こころの頬は小さな風船のように膨れあがっている
怒ってるのに我が妹ながらその姿も中々どうして愛らしい



65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:01:18.34 ID:BBbto8+Ro

でもさっきはそれでこころも勘違いして怒らせちゃったでしょ?こころだってここあとずっと一緒なのにあれなんだもん、きっと他の人もこころみたいになっちゃうんじゃあないかしら」

「うん」

真面目な顔で小さく頷く



66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:02:42.83 ID:BBbto8+Ro

「だからね、ここあ。
少し言い方を変えてあげればいいの。
今はちょーっとだけイタズラして遊びたいって気持ちが強いかもしれないど、そこはグッと我慢。
素直なのがここあのいいとこなんだから、
思ったことをそのまま伝えてあければいいの。
でもね、みんな同じ気持ちって訳じゃないから、たまに言い合いや喧嘩になっちゃうこともあるかもしれないけど、その後はそのままにしにないで向き合って話し合ってちゃんと仲直りしなきゃダメよ?」



67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:03:35.97 ID:BBbto8+Ro

「うん!わかったよ!
にこにーもごめんね、こんどから気をつけるから!」

うん、やっぱり笑顔の方が最高だ

「よし!
それじゃあ、こころに謝んなきゃね」



68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:05:04.30 ID:BBbto8+Ro


あっという間に笑顔を取り戻したここあとは対照的にこころは俯いてしまって表情が見えない

「こころー、ごめんね。
つぎからは気をつけておはなしするようにがんばるから!」



69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:06:21.47 ID:BBbto8+Ro

こころは俯いたままだ

「…うん」

「こころー?」

心配そうな顔で下からここあが覗き込む



70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:07:47.42 ID:BBbto8+Ro


「だいじょうぶ…何でもない…
わたしもごめんね、きゅうにおこったりして…」

小さな体がもっと小さく見えるくらい
こころは縮こまってしまっている



71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:09:18.89 ID:BBbto8+Ro

「んーん!いいよ!
ここあはイタズラしておこられることおおいから、このくらいへっちゃらだし!」

「こーらっ、自慢する事じゃあないでしょ?」

軽く頭をコツンとたたく



72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:10:04.86 ID:BBbto8+Ro


「へへー、ごめんなさーいっ」

舌をピッとだしてイタズラな笑み

こんなやり取りをしている最中もこころは俯いたまま
まあ、大体考えてることは分かっている
でもこんな時こそアフターケアが一番大切だ



73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:14:07.08 ID:BBbto8+Ro

「こーころ、どしたの?」

さっきよりは顔は上がっている
膝を抱えて軽く下から覗き込んでみるような体勢になって話しかけてみた
やはり瞳が少し潤んでいる

「…お姉さま…」



74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:14:49.58 ID:BBbto8+Ro

「わたしは…わたしはまちがってたんでしょうか…?」

「んー、何でそう思うの?」



75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:19:21.42 ID:BBbto8+Ro

「ここあはお姉さまを元気づけるために、はげましてくれていたのに、わたしはここあをどなってしまいました…。
わたしは…、じぶんかってに、ここあのことを分かってたつもりで…、ここあのきもちを知ろうともせずにきめつけて…、いっぽうてきにおこってしまって…、そのせいで、ここあも…お姉さまも…、いやな気分にさせてっ、しまいました…」

肩を震わせ小さな瞳から零れ落ちそうなの涙



76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:21:58.60 ID:BBbto8+Ro

「うん。
こころ、でも、もう大丈夫よ。
私ももここあも怒ってないし、そんなに気にしてないわ。
それに、あの言い方だったらきっと誰だって勘違いしちゃうもん、ここあにも言ってたでしょ?」

ゆっくり、優しく語りかける



77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:22:28.36 ID:BBbto8+Ro

「それに、間違いを間違いだって言えることって凄く大事な事なのよ?こころ。
まあ、今回はちょっとだけ早とちりしちゃったけど、あれは殆どここあの所為みたいなもんだし、そんなに気に病まないのっ」

頭をそっと撫でる



78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:23:12.02 ID:BBbto8+Ro

「さっき私が失敗したときに、こころも言ってくれたでしょ?
誰だって忘れちゃうこともあるーって。
それと同じ。誰だって失敗しちゃう時ってあると思うの。
全部のことを完璧にー、なんてできっこないんだから、頑張り過ぎちゃって自分一人で気負い過ぎたら駄目なの。
それでこころが悲しい思いや辛い思いをしちやったら、私はずっとずっと悲しくなるわ、勿論ママもここあも」

小さな頬を涙が伝う



79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:23:49.61 ID:BBbto8+Ro

「だからね、こころ。
今回みたいにちゃんと誰かにお話して頼ってみて?
きっとこれから、こころもここあも数え切れないくらい沢山の事を体験をするわ。
知らないこと、分からないことにどんどん触れていく。
だからその度に失敗だってしちゃうと思う。
私も初めて料理した時は大失敗だったしね!
味は滅茶苦茶、見た目は最悪で散々だったわ!」

小さな瞳は潤みながらも
私を真っ直ぐとらえている



80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:24:30.09 ID:BBbto8+Ro


「まー、その失敗を一人で解決できることもあると思うわ。
でもね、一人じゃあどうしようもならない事もいっぱいあるの。そんな時はそこで一人でがむしゃらになったり、意地を張ったりしないで、素直に間違いを受け止めて周りの人に頼ったらいいの。
それでその時助けてくれた人達が困ってる時がきたら、今度はこころの番。
その人達をちゃんーと手助けしてあげなさい、勿論、藪から棒に手伝ってあげる!
なーんて、でしゃばったりしたらダメよ?
頼られたときにちゃんと手を差し伸べられることが大事なの。相手の気持ちを理解しようとする想いが大切なの。
…それも中々難しいんだけどね、大きくなると。
まあ、こころも私くらいの歳になったら色々と分かってくると思うわ。
…ちょーっと長くなっちゃったけど、
分かってくれた、こころ?」



81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:25:09.07 ID:BBbto8+Ro


大粒の涙をエプロンでぬぐい
小さな体をキュッと抱き寄せる

「はい…ちょっと、むずかしいとこもありましたが、
お姉さまのあたたかさは、いっぱいいっぱい伝わってきました…」



82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:25:39.14 ID:BBbto8+Ro

またポロポロと涙が溢れ出す

「あははっ…、ダメですねわたし、
うれしいのに、お姉さまにギュッてされてとっても、とってもうれしいのに…、なみだが…止まってくれません…」



83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:26:06.93 ID:BBbto8+Ro


この子の涙は決して安くない

「いいのよー、こころ。
それは嬉し涙っていって、嬉しすぎて出ちゃう涙なの。」



84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:26:36.47 ID:BBbto8+Ro


泣き虫なのは誰よりも
人を、何かを
想う気持ちが強いからだ
何にも恥ずかしくなんかない

そう父から教わった



85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:27:05.57 ID:BBbto8+Ro


「泣きたいときに我慢しちゃだめ。自分の気持ちに蓋をしてもだめ。今は特にね。
そういう気持ちの我慢や整理の仕方はもうちょっと大ききなったら自然と分かってくるわ、ね?」

女は泣いたら負けよ!なんて母が言っていたこともあったけど
父のこの言葉の方が私にはなんだかしっくり来ている



86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:27:39.41 ID:BBbto8+Ro


ただ、とんでもなく負けず嫌いの私は
常日頃は母の言葉を借りて人と接している
そして父の言葉はもっと大事な奥の方に

2つの想いを持ってたって良いよね
だって大好きなママとパパの想いで
その大好きなパパとママの子供なんだし



87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:28:23.95 ID:BBbto8+Ro


「はいっ…、ふふっ…。
やっぱり、お姉さまはすごいです。
わたしのかなしいなみだを、うれしいなみだにかえてくれましたっ。
なんだかまほう使いみたいです!」

そして泣いたあとはいっぱいいっぱい



88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:29:37.41 ID:BBbto8+Ro

「ふふっ、そしたらその嬉しさを笑顔に変える魔法の呪文、唱えなきゃね!」


その涙に負けないくらいの最高の笑顔に



89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:30:25.87 ID:BBbto8+Ro


「にっこにっこにー・」


私がまだ小さい頃に
父が何度も笑顔で歌ってくれた歌
すごく単調で簡単な歌だったけど
なぜだかとっても
とっても嬉しくなる歌とこのフレーズ



90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:32:32.19 ID:BBbto8+Ro


「ほら、こころも一緒にやるのよ~?」

「はいっ!」

父からもらったこの歌と笑顔があったから

「せーのっ」



91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:33:53.39 ID:BBbto8+Ro


「「にっこにっこにー!」」

私は今日も笑顔でいられる

「あーっ!ふたりだけでずるいー!!ここあもいっしょにするー!!!」

今日も二人を笑顔にできる



92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:34:29.01 ID:BBbto8+Ro


「ごめんごめん!それじゃあここあもこころも最後に三人一緒にやるわよ~!」

「せーのっ」

私はそんな笑顔の魔法を世界中の人達に



93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:35:17.47 ID:BBbto8+Ro




「「「にっこにっこにー!」」」



届けられるアイドルに

絶対なってみせるよ、パパ、ママ。




94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:36:51.22 ID:BBbto8+Ro


――――――――――


「さぁ、こころもここあもパパっと手を洗って!
朝ごはんにしましょ、早くしないと冷めちゃうわ!」

「だからにこにー!」
「お姉さま…」



95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:37:46.47 ID:BBbto8+Ro


「とっと、そうだった…なくなっちゃったんだったわね、キレイキレイ」

取り敢えず洗面台の下の収納扉を漁ってみる

「何かの間違いで買い置きしてるのを忘れてる!…なんてことはないわね、はぁ…」



96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:38:25.81 ID:BBbto8+Ro


軽く落胆しているとここあが扉のなかを漁りだした

「ねー、にこにー、これはー?
せっけんってかいてあるよ?」



97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:38:58.05 ID:BBbto8+Ro

取り出したのは懐かしい見覚えのある

「うわー、懐かしいわね。ママが
『この方がチビふたりも手洗い楽しくできるんじゃない!?』って言って
キレイキレイ見つけてくるまでは私も二人ともコレ使ってたのよ?」



98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:39:26.79 ID:BBbto8+Ro


「んー、おぼえてるような、おぼえてないよーなー?」

「わたしは何となくですが、みおぼえありますっ」

赤基調のパッケージの固形石鹸



99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:40:44.94 ID:BBbto8+Ro


「まあ二人とも幼稚園入る前くらいの歳だったし覚えてないかもね。ところで、これまだ使えんのかしら?」

おもむろに橙色の石鹸を取り出し
水にさらして泡立ててみる



100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:41:13.76 ID:BBbto8+Ro


「わー!すごーい!!
キレイキレイよりいっぱいあわ出てるー!!」

意外といけるもんなのね
固形石鹸恐るべし



101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:41:45.81 ID:BBbto8+Ro


「ふふっ、これだとこんなことも出来るのよ?」

石鹸まみれの右手の人差し指と親指で
OKサインを作る
その輪にそっと何度か息を吹きかける



102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:42:36.67 ID:BBbto8+Ro


「シャボンだま!」
「きれいですー!」

「ふふっ、こんなことも出来るのよ?」



104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:44:26.10 ID:BBbto8+Ro


「シャボンだま!」
「きれいですー!」

ふわふわと落ちてくるシャボン玉



105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:45:05.35 ID:BBbto8+Ro


「いち、に、さーん、よん、」

透明な筈なのに
それぞれ別々の色に光って見える



106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:45:57.27 ID:BBbto8+Ro


「ごー、ろく、なな、はち、」

それをここあとこころがちょんと指で弾いて割っていく



107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:46:32.44 ID:BBbto8+Ro


「「きゅう!」」

最後のひとつを一緒に割ったとき



108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:47:36.67 ID:BBbto8+Ro


「へへーっ、ぜんぶわれたよ!にこにー!」
「お姉さま!こんどはわたしがシャボンだま作っていいですか!?」

二人の笑顔も弾けだした



109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:48:26.94 ID:BBbto8+Ro


「今は手を洗ってご飯食べるのが先ね。
遊ぶのはその後にしましょ?」

「「はーい!」」




110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:48:57.08 ID:BBbto8+Ro


なんだか懐かしい石鹸の香りに
私も思わず笑顔になる

「これから家の手洗い当番は当分キミになるみたい。よろしく頼むわね」



112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:50:34.66 ID:BBbto8+Ro




独り言を言った後
人差し指でピンと石鹸を弾いて
爪に少しだけ着いた石鹸の香りは
なんだか不思議と
とっても優しい香りがした



113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/22(火) 03:51:11.31 ID:BBbto8+Ro

終。



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 09:47:41.02 ID:TqFmN44yo

―――Epilogue to side ―――



「主人公(その他)」


―――――――――――――――――――――――



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 09:49:12.24 ID:TqFmN44yo

「…ねぇ…」

「ん、何?」

「何もあんな言い方…、なかったと思うんだけど…
何かもっと他に優しく伝える方法なかったのかなぁ…って」



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 09:50:07.40 ID:TqFmN44yo

「じゃあ言ってみて?何かあった?
他に上手く伝えられる方法」

「それは…」



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 09:51:56.84 ID:TqFmN44yo

「まあ…、私も言い方は悪かったと思ってるよ。
不器用なりに色々考えたんだけど、その度に自分の中でもやもやしてさ。
でも、結果的にだけどあれで良かったと思ってる」

「矢澤さん…、怒らせちゃったのに…?」



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 09:52:45.36 ID:TqFmN44yo

「ほんの数ヵ月一緒に居ただけだけどさ、わかったんだ。
矢澤さん、スッゴい意地っ張りで負けず嫌い。
妙に自信家で見栄っ張りだしプライドも決して低いわけじゃあなかった。
それでいて皆よりちょっと身長低いからなんだか生意気に見えちゃって。
初めは、私達のリーダーこんなで大丈夫なのかなって疑問にも思ったわ」



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 09:53:38.75 ID:TqFmN44yo

「でもね、そんな疑問はあっという間に吹き飛んでいった。」



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 09:54:34.86 ID:TqFmN44yo

「私ね、一月前位に部室に教科書忘れて帰ってたのよ。帰ってから気付いたんだけど、すぐに必要な物でもないから明日、朝少しだけ早めに家を出てパッと部室に取りに行こうと思ったわけ。
んで、次の日、学校について職員室に部室の鍵取りに行ったら鍵がないのよ。」



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 09:55:17.66 ID:TqFmN44yo

「先生に聞いたら今日は二人で掃除かー?
なんて茶化してくるの。最初は意味がわからなかったけど、もしかしてと思って部室を窓から覗いたら居たのよ、矢澤さん。」



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 09:56:18.69 ID:TqFmN44yo

「すっごく嬉しそうに掃除してた。
それでね、なんだか分かんないけど入り辛くてずーっと眺めてたら流石に目が合っちゃってね。
矢澤さん、凄く驚いてたわ。
私達に言わずに掃除なんかしてるんだもん、見つかりっこないと思ってたんでしょうね。
でも、見つけちゃったし見つかった。
別にお互い悪いことしてる訳じゃないのにすっごく変な気分。」



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 09:56:53.61 ID:TqFmN44yo

「でも、ここで目を逸らして逃げる理由もないし、部室に入ったの。教科書もあるしね。
で、私から声を掛けたわ、おはようって。
多分、恥ずかしいとこ見ちゃったお詫びにとでも思ってたのかしらね。
そしたら勿論、矢澤さんも返事をくれた。
でもその後面白い位会話が続かないの」



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 09:57:35.71 ID:TqFmN44yo

「同じ学年だけど違うクラス。
同じ部活の部長と部員だけど、
特別仲がいい訳でもない、ただそれだけ。
私がそんな風に思っちゃってたからでしょうね。
妙な空気の部室にから早く抜け出したいから、教科書だけど持ってさっさと教室に行こうと思った。
でも、ほんの少し気になったから聞いてみたの




14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 09:58:21.35 ID:TqFmN44yo

「いつも朝早く来て部室掃除してるの?って。
そしたら恥ずかしそうに目を逸らして矢澤さん、皆が集まる大事な場所だからいつでも綺麗にしときたいのよ。って」



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 09:59:41.93 ID:TqFmN44yo

「その時は素直に凄いなって思ったの。
好きなことの為にそこまでなれるものなんだって。
それで、なんだかこっちも恥ずかしくなって、また放課後に、って言って部室を出たわ」

「そんなこと…あったんだ…」



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:00:13.44 ID:TqFmN44yo

「そんな事があったからその後気になってね、放課後、矢澤さんを尾行してみたの」

「?…なんで?」



17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:00:56.97 ID:TqFmN44yo

「私達、矢澤さんとはクラスも違うし、放課後部室に行くのもいつも放課のチャイム鳴った3、40分後でしょ?
帰るのもガッコの指定時間だし」

「朝、あんなことしてるんだから放課後もなんかしてるんじゃないかなーって思ってね」



18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:01:32.26 ID:TqFmN44yo

「それ、別に隠れなくてもよかったんじゃないかな…?」

「…、なんか…、恥ずかしいだろ…」



19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:02:04.16 ID:TqFmN44yo

「見つかったときのこと考えたら、そっちの方が方がよっぽど恥ずかしいよ…」

「っさい!結果、見つかんなかったからいいんだよ!」

「ならいいんだけど…」



20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:02:36.52 ID:TqFmN44yo

「話、戻すよ?」

「うん」



21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:03:08.84 ID:TqFmN44yo

「でね、なんと言うか、やっぱりと言うか、
色々準備してた。
何回か活動の前後をつけてみたんだけど、
部室で何かする時は色んなアイドルの雑誌だとかDVD、
体育館使える時は使用前後の清掃、
アイドルには休暇も必要なの、今日はリラックスする為に活動はお休み!
なんて言った日は、私達が帰ったのを見計らって、一人で振り付けやステップの練習をやってたわ」

「…矢澤さん、やっぱり凄いね…」



22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:03:39.69 ID:TqFmN44yo

「うん、凄い。
…凄い意地っ張り。
妙に自信家で見栄っ張りだしプライドだって人一倍。おまけにめちゃくちゃ負けず嫌い」



23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:04:08.38 ID:TqFmN44yo

「…でも、
そのくせ何倍も、何十倍も努力家で。
好きなことに物怖じせず、真っ直ぐ進んでいけて。
それで、何だかんだで結構回りが見えてて、優しくて。
自分の為にも、私達の為にも頑張れちゃうくらい意思が強くて。
ちょっと生意気だけど、そんなとこも格好よく見えてきて」



24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:04:46.68 ID:TqFmN44yo

「…だから…、辞めなきゃって思った」



25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:05:23.89 ID:TqFmN44yo

「このまま本気の矢澤さんと一緒にいて、
中途半端で適当な気持ちの、飯事気分の私達が一緒にいたらこの人が輝けないと思った。
同じ舞台に立っちゃいけないと思った。
この人の輝きがくすんでしまう、そんな気がしたの」

「…―――ちゃん…」



26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:06:42.73 ID:TqFmN44yo

「…って、なんてのは建前の綺麗事で…。
きっと、嫉妬しちゃってたんだと思う。
何事にも本気になれない、これといって大切なものなんてのもパッと思い付かない。
皆から竹を割ったような性格だとか、クールだとか言われてるけど、要するに執着がない、諦めが早い、拘りのひとつも持てないだけなんだよね。
そんなんだから、いつまでたっても全てがごっこ遊びみたいな」



27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:07:53.92 ID:TqFmN44yo

「そんな私の前にみたいに現れた矢澤さん。
今までこんな人に出会えたことなんてなかった。太陽みたいに眩しくって、熱い人だと思った。
この人の近くなら、こんな私も少しは変われるかと思った」



28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:08:33.14 ID:TqFmN44yo

「…こんな私って自分でも分かってた筈なのに。
その時きっと、目の前の輝きに目が眩んで、自分が光ってるって錯覚しちゃったんでしょうね。
太陽に近付きすぎればどうなるかなんて、小学生でも知ってるのにね」



29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:10:34.41 ID:TqFmN44yo

「端から見聞きすりゃあ、まだ高校生なりたての糞ガキがなにぶってんだ、なんて嘲笑されるかもしんないけど、多分この先も、私はこのままな気がする」

「…あのっ」



30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:11:23.80 ID:TqFmN44yo

「だからさっ、こんなこと考える前のちっさい頃からの付き合いの――には感謝してんだよ?
今でも一緒にこうやって腹割って話せんの――位だしね」

「ごめんね…さっきは…。
…―――ちゃんの方がいっぱい、
矢澤さんからは悪者に見えてたと思う。
なのに、…全然、フォロー出来なかった…」



31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:12:14.50 ID:TqFmN44yo

「終わったことは気にしないの。
それに、人生ってのには嫌われ役や引き立て役が必要なのよ。
じゃないと、正義の味方や凄い人が格好つかなくなっちゃうでしょ?」



32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:13:35.13 ID:TqFmN44yo

「誰しも自分が舞台の主人公って思い込みたい。
だけど主演を担えるのは世界中の人の中でもほんの、ほんの一握り。
残りの9割9分の人間は自分に嘘ついてでも、
脇役人生終わらせなきゃなんないのさ。
そんなもんだよ、人生ってきっと」



33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:14:18.58 ID:TqFmN44yo

「…さっ、また天気悪くなりそうだし、
走って帰るか、駅まで競争な?
勿論、負けたら明日はジュース奢りっ」

「ええー!?んもう!
―――ちゃん!フライングだよ~!
私が足遅いの知ってる癖にぃ!」



34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:20:42.84 ID:TqFmN44yo

ほんの少しだけ遅れた分を取り戻すように走り出す

噛み締める奥歯位じゃあ隠しきれない感情は

私の心にどんより滲み

心臓から全身に送り出されて

巡りめぐって涙腺から溶けだした



35:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:21:57.97 ID:TqFmN44yo

久し振りに転んで靴紐がほどけて

忘れていた想いがぶり返す



36:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:22:35.51 ID:TqFmN44yo

私は私を守るため

今夜も想いを忘れます

今夜も嘘を創ります

嘘を身体に染み込ませる為の窮屈な夜

少しだけ馴染んだ頃に目を覚ます鬱陶しい朝



37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:25:13.41 ID:TqFmN44yo

私のベッドのまわりには

ずっとずっとずっと前から

いくつもいくつもはみ出した

嘘や想いが転がり回っている

何の役にもたちはしないただのガラクタの山

棄てられないから駄目なのか

棄てたその日から駄目になったのか

いつになったらこの嘘にまみれた身体は

本当を纏って目覚められるのだろうか



38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:26:10.32 ID:TqFmN44yo

――

これでもう何度目になるのかな

そんなこともう覚えてられないよ

繋がって初めて温もりをもらったあの日から

私はずっと弱いまま



39:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:26:44.41 ID:TqFmN44yo

あなたはこれから後何度

私に触れてくれるのかな?

私はこれから後何度

あなたの傷と涙を癒せるんだろう?



40:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:27:20.93 ID:TqFmN44yo

あなたが眠る前に零した

何処にも響かないメロディを

紡いで終えられる場所があれば

それは決してここじゃなくても

きっと私は笑っていられるよ



41:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:28:04.83 ID:TqFmN44yo

限られた温もりを数えたい弱い私に

届かない日のあなたと私の距離は

どれだけ経っても戻らないけど

これからは二人手が触れる位置で

それが当たり前だって位に

嘘みたいに笑っていられたらいいのにな



42:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:32:39.48 ID:TqFmN44yo

――――――――――――――――――――――――



43:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:37:39.71 ID:TqFmN44yo

珍しく朝から雪が降った東京 秋葉原

こんな公共交通機関も麻痺してしまうような日に

うちの学校も入学生説明会なんて運が悪い



44:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:39:27.11 ID:TqFmN44yo

そして

こんな日に今巷で大人気らしいスクールアイドルの甲子園とか言われてる大会の最終予選があるなんて本当に運が悪い
神様もなかなか酷なことをするもんだ



45:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:42:40.50 ID:TqFmN44yo

コートを着込んでても震えてくる寒い日に外で歌って踊ってパフォーマンスなんて馬鹿みたいでやってらんないわね

こんな日にそのアイドルを見に行くなんてもっとバカなことやる人も居るけど



46:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:44:13.51 ID:TqFmN44yo

でも、きっと

そのアイドルの中の一人と2年前関わった事があって
ずっと気になってて
素直な気持ちでごめんも言えずに
別れてしまったことを後悔してる私は


ここにいる誰よりもバカなことは間違いない



47:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:44:53.86 ID:TqFmN44yo

9人のメンバーの想いが繋がってできたっていう
うちの学校のスクールアイドル
最初に名前を聴けば誰もが石鹸?だなんて聞き返すこと受け合いな名前
本当は北欧神話の9人の歌の女神からとったらしい
中々どうしてハイカラな考えをする人がうちの学校にもいたもんだ



48:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:45:48.58 ID:TqFmN44yo

でも今はそれがしっくりくるくらい
舞台の彼女たちは眩しくて



49:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:46:32.22 ID:TqFmN44yo

灰色の空の下 粉雪が降ってきた
ステージの青白い証明に
雪が透き通ってぼやけて光って見える



50:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:47:08.69 ID:TqFmN44yo

ライブ前の微妙なざわつき
アーティストやバンドのライブで何度か体感したことがあるアレとは
何だか心地が違って感じるのは私の今の気持ちのせいだろう



51:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:57:06.53 ID:TqFmN44yo

もう少しで始まるのだろう
メンバーが手を繋いだ
客席は静まり返る



52:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:57:47.79 ID:TqFmN44yo

メンバーのリーダーの妹さんがお姉ちゃんと、お母さんがリーダーの名前を呼ぶ
それに呼応するように他のメンバーの名前が呼ばれていく



53:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 10:58:35.90 ID:TqFmN44yo

静かな所為か 冬の所為か ステージの所為か
声が思ったよりも通る
そんな中で
私は奇しくも2年前に関わったあの子の名前を呼ぶことになった



54:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 11:08:08.07 ID:TqFmN44yo

ほんの30分ほど前
ちょうど近くにいた妹さんたちと話してたウチの生徒が居てこんなことになったらしい
その時私の友人も近くにいて話しに食い付いて
なんというか、半ば巻き添えのような感じで参加している

じゃんけんで言う順番を決めたから完全に運任せだったのだけど
神様のいたずらと言うか
偶然と言う名の必然と言うか
だけど思ったより嫌な気分はしなかった



55:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 11:09:08.45 ID:TqFmN44yo

4人、5人と名前が呼ばれて
私の番が近付いてくる
そして私は最後に
普段の何倍もの声で
彼女の名前を大声で叫んだ

「―――!」



56:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 11:09:39.07 ID:TqFmN44yo

つもりだったのに
彼女自身から聞いたちょっとへんてこなアダ名の方を呼んでいた



57:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 11:10:23.81 ID:TqFmN44yo

時その子が自信満々でやってみせたパフォーマンスと一緒に呼んでたアダ名とフレーズ
初めてみた時は
正直バカっぽいしなんかちょっと痛いし
なによりあの子がやると何だかあざとく見えちゃって



58:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 11:11:08.51 ID:TqFmN44yo

だけど何でかな、その時私達3人は
への字眉毛の困り顔にちょっと小馬鹿にしたような顔
そして真ん中の太陽みたいな眩しい笑顔
みんなちょっとずつ気持ちは違った筈なのに
みんな笑顔になってた



59:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 11:11:46.98 ID:TqFmN44yo

言葉の響きというか雰囲気というか
ちっちゃい子供のおまじないみたいだったからなのかは
未だによくわからないけど



60:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 11:12:23.00 ID:TqFmN44yo

そのアダ名に反応したのか
私の声を覚えていてそれに反応したのかは分からないが
その子がキョロキョロと客席を見回しだす
左右アシンメトリーの前髪が左右に揺られツインテールが軽く跳ねる



61:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 11:13:11.22 ID:TqFmN44yo

私は見付かりたくなかった筈だったのに
ステージに背を向け客席の後ろ側に下がった
誰もがステージの彼女達のこれからのパフォーマンスを心待ちにし、視線を、期待を向けている最中
誰も見ているはずがない
客席の一番後ろの真ん中辺りにやって来た



62:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 11:13:58.66 ID:TqFmN44yo

今私が見えるのは舞台上の9人だけ

私は後ろを向いたまま片手を真っ直ぐ空に上げ

開いた手の指の中指と薬指だけを折り曲げた

そのまま少し目を瞑ったら

誰にも聞こえない声で小さく

あのフレーズを呟いた



63:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 11:14:36.10 ID:TqFmN44yo

「…なんだ、やっぱりバカっぽいし
なによりめちゃくちゃ恥ずかしいじゃんか…
誰も見てないのにさ」



64:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 11:15:27.67 ID:TqFmN44yo

その時私は

「やっぱりあの時、辞めて正解だったわね。
私、こんなのみんなの前で出来っこないもの。」

自分勝手に救われた



65:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 11:16:02.77 ID:TqFmN44yo

優しいピアノの旋律が聞こえてきた
ステージを背に振り向かずに歩く



66:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 11:16:53.48 ID:TqFmN44yo

私がもし
あの日からあの子と一緒にいたなら
こんな今日も無かったんだろう
あの子がステージに立つことも許されなかっただろう



67:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 11:17:42.35 ID:TqFmN44yo

だから、私はここでいい
スポットライトなんて浴びない
平々凡々な毎日を愛し続ける



68:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 11:18:17.49 ID:TqFmN44yo

あの子はあそこで輝ける
スポットライトなんて目じゃないくらい
あの子自身が眩しくて
沢山の人に愛され続ける
沢山の人を笑顔にできる



69:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 11:18:49.45 ID:TqFmN44yo

そんな奇跡みたいなことを実現できる
必然の様に集まった9人
端から見てる私でもわかる
あの9人じゃなきゃ駄目なんだって
あの9人だからここまで来たんだって
あの9人だから
あんなに笑顔になれるんだって



70:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 11:19:41.86 ID:TqFmN44yo

「…ありがと、…矢澤さん」



71:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 11:20:08.24 ID:TqFmN44yo

どこからか知らぬ間に溢れた言葉は
誰にも気付かれないまま
真っ白な雪に混ざって溶けていった



72:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/07/25(金) 11:20:42.16 ID:TqFmN44yo

終。



転載元
【ラブライブ】 雨のちビー玉時々しゃぼん玉
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1405960009/
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         コメント一覧 (2)

          • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年07月26日 16:10
          • よかった
            矢澤さんかわいいです
          • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年07月26日 22:19
          • メンヘラのポエムか?

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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