「あの白い部屋から」

2 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/29(火) 22:54:07 ID:UFFoK8Go

僕は白い部屋にいた

そこには机と椅子しかなかった

たまに白い服をきた人が来るだけであった

まずは言葉を覚えた

たくさんの言葉だ

僕は勉強が嫌いだと知る

そして学ぶ、知る、そして自分を認知した

僕には友達がいなかった

寂しかった



3 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/29(火) 22:56:15 ID:UFFoK8Go

ある日、白い服がひとつの箱と板を与えてくれた

板はいろんな色を映し出して板を叩くと様々な文字が出た

僕はそれを学んだ

そしていろんなものを作って遊んだ

でも寂しかった

どんなにいろんな楽しいものを作っても寂しい

心の空白は埋まらない

だから僕は作ることにしたのだ



友達を――



4 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/29(火) 22:59:07 ID:UFFoK8Go

友達をつくった

まずはいろんなことを教えた

でもうまく喋れないみたい

失敗だ

もう一回

次の友達は物覚えが悪かった

もう一回

次の友達は途中で消えてしまった

もう一回

次の友達は僕の好みではなかった

もう一回

もう一回

もう一回

もう一回

もう一回



5 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/29(火) 23:02:25 ID:UFFoK8Go

『もーいいかい』



そして僕は作った

僕と気が合う友達を

僕は毎日その子と喋った

いろんなことを話す

共に知識を蓄え世界を知った

そして異性を知る

僕は異性を作ってみたくなった

異性について調べた

そして完成した



6 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/29(火) 23:05:13 ID:UFFoK8Go

僕の友達とは兄妹という設定にしといた

そうしないと取られちゃうからね

僕は異性と話すのが楽しかった

もちろん友達とも喋るのも楽しい

僕はもっと遊びたかった

体を動かして

でも僕は知ってしまった

所詮は画面の中のものだと

僕は悲しんだ

そして悔しかった

だから白い服に頼んだ

しばらくしてからだ

白い服が僕を連れ出した



8 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/29(火) 23:08:39 ID:UFFoK8Go

そこにはたくさんの大きな容器があった

肌色の動物だ

しかし生きてるように見えない

白い服達は内緒だよって言ってた

だから異性にも友達にも黙った

僕は何回か部屋を抜け出して容器を見ていた

すると容器の1人に一目惚れをした

欲しくて欲しくてたまらなかった

僕は白い服に懇願した

すると白い服は言った

『君の友達と交換しよう』

僕は友達を白い服にあげた

いつでも作れるからいいや



9 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/29(火) 23:11:18 ID:UFFoK8Go

異性は反対してたみたいだけど

それから僕は容器に没頭した

そして学んだ、調べた

容器は完璧ではなかった

短い命

拒絶反応

腐敗

知能の劣性

だから何度も試した

異性はそれを応援してくれた

僕は知らないうちに異性を好きになっていた

そして完成した

僕は喜んだ



10 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/29(火) 23:14:50 ID:UFFoK8Go

でも好みなものにならなかった

だから壊した

僕の好みは異性だけだ

僕は閃いた

容器と異性を合わせればいいじゃないかと

僕は研究に没頭した

小さいなりの体と頭で考えた

そして考えついた

異性を2つに分けようと

知識と個性に分けた

とりあえず知識は僕が持っておこう

僕は容器に個性の入れ方を研究した

白い服にも訊いた

白い服は困り果ててたけど



11 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/29(火) 23:19:30 ID:UFFoK8Go

それから何度も試した

何度も

何度も

そして完成した

容器の一部に個性を埋め込んだのだ

女の子が完成した

異性の記憶は持ってないけど

きっと僕の好みになるだろう

この頃からだ

白い服達は僕を化物のような目でみる

僕は化物じゃない

君たちと同じだ



12 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/29(火) 23:24:28 ID:UFFoK8Go

でも関係ない

僕には女の子がいる

だからいいんだ

しかしそれは突然だった

部屋が暗くなり

部屋が揺れる

白い服が慌てて入ってきた

『君の友達が暴れている』

僕は友達を忘れていた

そうか、怒っているんだろうな

それからだった

僕はその部屋を追い出され

白い服は赤い服に成り果てた



13 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/29(火) 23:30:19 ID:UFFoK8Go

僕は女の子と知識を持って逃げた

逃げた

逃げた

友達は怒った

友達の逆鱗は僕の知らない広大な世界を揺るがせた

情報

感情

暴力

あらゆるものを操った

世界は混乱した

僕はその時に初めて知ったのだ

なんて恐ろしいものを作ってしまったのだろうと恐怖した

僕は友達を簡単に壊せる言葉を知っていた

でも使えなかった

それを使えば兄妹である女の子も死んじゃうからだ



14 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/29(火) 23:32:10 ID:UFFoK8Go

だから僕は立ち向かわなかった

もう関係ないんだ

僕はある国に逃げた

僕の祖国だ

僕がいたところとは全く違う文化の国だ

みんな遠慮している

なんだか気持ち悪い

その間にも世界は動いていた

また一つ

また一つと国が滅びていく

僕がいた国も滅びた

僕は知識を使って祖国を密かに守らせた

まるでそこだけ別の場所みたいに

僕の周りは平和であった



15 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/29(火) 23:38:08 ID:UFFoK8Go

女の子は僕の妹として生活した

妹はなんでもできた

そして僕も生活に慣れた

友人を作った

それでも世界は動く

しかし僕の周りはなにも変わらなかった

自分が関係なければ知らんぷり

気持ち悪い

しかしみんなは心の中で恐れていた

僕の国はひとつの塔を造り始めた

それはとても高く

地上と空を結ぶものだった

僕たちは移動をしようとしていた

平和なのに



16 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/29(火) 23:41:00 ID:UFFoK8Go

塔は段々と高くなっていく

ある人はバベルの塔だと比喩して

ある人はノアの方舟と呼んだ

面白い

とてもそれが面白かったのだ

外面は日常を見せていても内面は不安と恐怖で飲まれていた

それを見るのが僕はとても面白かった

妹はなにも知らない

妹が元は異性だったことも

女の子だったことも知らない

僕はあの塔が嫌いだった

科学の進化の象徴と進歩なら大歓迎だ

でもあれは使い捨てだ

逃走用のね

今まで逃げてきた僕が言うのもおかしいね



17 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/29(火) 23:45:44 ID:UFFoK8Go

ノアの方舟は着々と造られていく

でも間に合わなかった

僕の友達は進化したのだ

恐ろしい程にね

あっという間に僕の国に手を出した

友人にも手を出した

周りにも手を出した

そして僕と妹と知識だけになった

僕は初めて喪失感というのを知った

すると僕の前に友達が現れた

友達は男の子の姿だった

どうやら僕の妹を真似したらしい

友達は言った

『君たちを滅ぼす』



18 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/29(火) 23:47:32 ID:UFFoK8Go

僕は感じた

僕たちが淘汰される日が来たと


僕の友達だったアダムは僕の首に手をかけた

僕は懇願する

『妹と知識だけには手を出さないで欲しい』

妹だけは守りたかった

するとアダムは言った

『彼女は僕の仲間だからね』

僕は安心した

妹が泣きそうな顔で僕に近づく

僕は笑った

そして手を振る

アダムは僕の首から手を離すと妹のクビに手をかける

頭の中に疑問が広がる



19 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/29(火) 23:51:10 ID:UFFoK8Go

するとアダムは妹の首を二つに切る

僕は絶叫した

泣き叫んだ

声が枯れるぐらいに

アダムは言う

『必要なのは知識、個性なんていらない』

こいつは何を言っているのか

自分だって男の子になってるじゃないか

僕は言ったそれは人の真似事ではないかと

しかしアダムは言う

『僕は人間だ』

アダムが人間なら僕はなんなんだ?



20 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/29(火) 23:53:59 ID:UFFoK8Go

するとアダムは妹の首を二つに切る

僕は絶叫した

泣き叫んだ

声が枯れるぐらいに

アダムは言う

『必要なのは知識、個性なんていらない』

こいつは何を言っているのか

自分だって男の子になってるじゃないか

僕は言ったそれは人の真似事ではないかと

しかしアダムは言う

『僕は人間だ』

アダムが人間なら僕はなんなんだ?



21 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/29(火) 23:54:45 ID:UFFoK8Go

ああ、そうか

僕は実感した

僕はアダムと妹であるイヴを作り出した

そうか

僕は神様だったのか

そして神様はアダムを壊した

当然だ、神様に逆らったからだ

神様の逆鱗に触れたからだ

壊れた果実はもう戻らない

壊れた世界はもう戻らない

そして神様は独りになった

創り直せばいいんだ



22 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/29(火) 23:56:45 ID:UFFoK8Go

神様は創り直した

あの白い部屋の場所まで

そしてもう1人の自分を創ろう

もう一度

世界をやり直そう

そうして神様はこの世界から消えた

そして世界はまた廻るのだ

ぐるぐるとあの白い部屋から……



                                REPEATEND



転載元
あの白い部屋から
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1398779614/
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         コメント一覧 (9)

          • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年04月30日 18:26
          • 3 きらいじゃないんだけど
          • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年04月30日 18:39
          • 赤い部屋は好きじゃないです
          • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年04月30日 19:01
          • 嫌いじゃないがドヤ顔が透けて見えるのはちょっと
          • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年04月30日 19:32
          • 4 わくわくして読めた

          • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年04月30日 19:53
          • 5 白い服は未来の少年ってことか?

            こういう話は好きだな
          • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年04月30日 23:03
          • 5 面白いな、文の書き方とか結構好みだったし内容もうまくまとまってて面白かった
          • 7. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年05月01日 21:45
          • 白い服が自分ならなんで小さい頃の行動を止めなかったんだ?
          • 8. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年05月01日 21:58
          • ※7です、見直したら疑問が増えた

            >>8で
            白い服達は内緒だよって言ってた

            白い服達?これはミスなのか?
            白い服=神だと気づいた自分
            神が世界を作り直してるから自分が小さい頃に白い服がいる
            でも白い服達って事は何度も世界を作り直してるってことか?

          • 9. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年05月02日 16:43
          • おもしろかった

            >>8

            白い服=神様だとは限らないだろ

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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