騎士長「王宮をクビになってしまった」【後半】
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…ガラガラッ!!
エルフ「この倉庫の中。見てみな」
黒髪幼女「…何これ?」
アサシン「何だこれ…」
騎士長「…なんなんだこれは」
エルフ「まだ表舞台には出てない、カラクリ製品の最先端の技術の結晶さ」
騎士長「一体何なんだ?」
エルフ「"飛行機"だ」
騎士長「…飛行機?」
エルフ「空を自由に飛べるという、夢のようなカラクリだ」
騎士長「そんなものが、可能なのか…。冗談だろ?」
エルフ「一人で長い事いると、色々と暇でな。ついつい、昔の癖で開発しちまうんだ」ハハハ
騎士長「昔の癖って…あんた一体何者なんだ」
エルフ「元カラクリ開発部の管理職さ。今はもう隠遁してるけどな」
騎士長「…!」
エルフ「とりあえず、これを使えば王都まではあっという間に着くだろう。だが…」
騎士長「た、頼む!」ガバッ
エルフ「ごほっ…!く、苦しいっての!話は最後まで聞け!」
騎士長「あ…すまん」パッ
エルフ「全く。…実は、この飛行機を完成させる為にある物が必要だったんだが…」
騎士長「それを採ってきてほしいってか?」
エルフ「いや、それはある」
騎士長「あるのかい!」
エルフ「だから落ち着いて最後まで話は聞け」
エルフ「その必要だったのが、カラクリを動かす為に必要な"風の魔石"なんだが…」
エルフ「どうも、どこが間違ってるのか動力として働かなかったんだ」
騎士長「それで?」
エルフ「かなり複雑な設計で、雷の魔石と風の魔石を組み合わせて動かすから失敗も起きる」
エルフ「そこで調べた結果…組み込むのに必要な魔石の部分がデカすぎる事が分かったんだ」
騎士長「なるほど」
エルフ「それを削る為に必要な…アダマンタイトのナイフが必要だ」
騎士長「アダマンタイトのナイフ!?」
エルフ「…」
騎士長「バカいうなよ、普通のナイフで何とかなるもんなんじゃないのか?」
エルフ「普通はな。だが、柔らかく削って形を整えるのにはアダマンタイトのナイフがいるんだよ」
騎士長「いや、さすがにそれは…」
アサシン「ん~?なぁなぁ、アダマンタイトって聞いた事ないぞ。なんだ?」
騎士長「大陸でもっとも高価で、貴重だと言われる鉱石だ」
アサシン「へぇ、どのくらいの値段なんだ?」
騎士長「俺の知ってる時は、0,3gで16万ゴールドだ」
アサシン「へぇ、0.3gで16万ねぇ。16万…。16…16万!?」
騎士長「だから、0,3g16万」
アサシン「ば…ばっかじゃないの!?」
騎士長「おい!女声に戻ってる!」ボソボソ
アサシン「あっ…そ、そうか」ボソボソ
騎士長「ごほんっ、えっとな…」
騎士長「アダマンタイトは不思議な鉱石でな、物理的威力に反発する力を持ってるんだよ」
アサシン「反発する力?」
騎士長「どんな小さな欠片でも、叩き割ろうとしたり、押し込んだりすると弾こうとして動かなくなるんだ」
アサシン「どういうことだ?」
騎士長「簡単にいえば、磁石みたいなもんさ。なんでそうなるかは解明されてないんだが」
エルフ「そう。逆に魔石には吸い付くようにして切り込めるっつー不思議な石なんだよな。よく知ってるな」
騎士長「俺ら王都の軍に配布される証のロケットとかにはアダマンタイトが埋めてあるんだ。それでちょっとな」
アサシン「あ~…アレか。っていうか、そんな高いもの使ってるのか?」
騎士長「まぁお守りみたいなもんさ。貴重な鉱石には守り神がいるっつーし」
アサシン「へぇ…それで、ナイフはいくら位するんだ?」
エルフ「ま…ナイフだと今の値段は1000万はくだらないだろうな」
アサシン「ぶーっ!」
騎士長「無理に決まってるだろうが!」
エルフ「…普通はな。だけど、俺は持ってたんだ」
騎士長「何?」
エルフ「それを盗まれちまって。俺が留守の隙にな」
騎士長「…」
エルフ「犯人の目星はついてるんだがねぇ…」
騎士長「ほう?」
エルフ「どうにもこうにも、取り戻せる相手じゃないんだよ」ハァ
騎士長「相手ってのは?」
エルフ「少し離れにある廃墟に拠点を置いた賊がいてな。そいつらだ」
エルフ「俺が隠遁してわざわざココに作ったっつーのになぁ。迷惑な話だ」ボリボリ
騎士長「ふむ」
エルフ「元、奴隷狩りをしていた面子らしいが…なんで来たのかは分からん」
騎士長「!」
黒髪幼女「!」
アサシン「!」
エルフ「傭兵だのもいるらしいが、何でこんな辺境に何で住み着いたのか分からんよ」
騎士長「…」
エルフ「だが、アラクネを簡単に倒したようなアンタらならー…と思ってね」
エルフ「俺はナイフを取り戻せる。あんたらは王都に簡単に行けるっていう取引でさ」
騎士長「…」
エルフ「やっぱり、無理だろうな。変な事を言った…忘れてくれ」
騎士長「いや、いい」
エルフ「うん?」
騎士長「やってやるよ。俺がナイフを取り戻してやるよ」
エルフ「いや、だが…下手したら死ぬぞ?」
騎士長「あんたが思ってる以上に、俺は強いぞ。任せてくれ」
エルフ「そりゃ、任せられるなら任せたいが…」
騎士長「大丈夫だ。ただ、絶対に王都へ行けると約束してくれるか?」
エルフ「あ、あぁ!そりゃもちろん!」
騎士長「だってよ、面倒なことになったが早く行ける可能性があるなら俺たちでー…」クルッ
アサシン「…っ」ブルッ
騎士長「!」
黒髪幼女「ど、どうしたの!」
エルフ「ど、どうしたんだ?」
騎士長「…ちょっと外に連れてく。黒髪幼女も来てくれ」
黒髪幼女「う、うん」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ブルブル…
アサシン「…くっ!」
騎士長「…」
黒髪幼女「どうしたのお姉ちゃん…」
アサシン「な、何でもないよ心配しなくても大丈夫だ」ニコッ
黒髪幼女「で…でも…」
騎士長「…」ハァ
アサシン「騎士長までどうしたんだよ、そんな顔して!大丈夫だって」アハハ
騎士長「無理するなよ」
アサシン「無理なんか!」
騎士長「傷の土地、知らぬ土地。そして奴隷狩り…。恐怖を思い出さないほうがおかしいんだ」
アサシン「…っ」ブルブル
騎士長「幸い、話をしてわかるとは思うがココのエルフは信用できそうな人物だ」
騎士長「お前たちはココに残って、ナイフの奪還は俺に任せてくれ」
アサシン「だ、だけど…相手は一人じゃないんだろ!?」
騎士長「そうらしいな」
アサシン「私の実力は、アンタだって知ってるだろう…大丈夫だから、な?」
騎士長「…」
アサシン「一緒に戦わせてくれ…一網打尽にする機会なんか、滅多にないじゃないか…」アハハ…
騎士長「断らせてもらう」
アサシン「なっ…なんでっ…」
騎士長「足手まといだ」
アサシン「…っ」
騎士長「…」
アサシン「…」
騎士長「…分かってくれないか?この眼で」
アサシン「…」
騎士長「…」
アサシン「分かってる。分かってるよ気持ちは…」
騎士長「俺だってお前の気持ちは分かるから…頼む」
アサシン「…」
アサシン「負けだ…。わかった…私は黒髪幼女とここに残るよ」
騎士長「ありがとう」
アサシン「ただし…無事に戻ってきてくれよ」
騎士長「当たり前だ」
黒髪幼女「騎士長、本当に、大丈夫なの…?」
騎士長「俺を誰だと思ってる。天下の王都の元エース"騎士長"だと何と言えばわかる!」ハッハッハ
黒髪幼女「…うん」
騎士長「心配するな。お前も、アサシンと一緒に俺の帰りを待っててくれ」
騎士長「それだけで…俺の力になるからよ」ニカッ
黒髪幼女「騎士長ぅ…」ギュウッ
アサシン「黒髪幼女…私と一緒に騎士長の帰りを待ってような」
黒髪幼女「…騎士長、気を付けてね。無事で戻ってきてね」
騎士長「当たり前だろうが!」
トコトコトコ…
騎士長「エルフさん、話はまとまったぜ。俺が取りに行く」
エルフ「…本当にいいのか?」
騎士長「あんただって、少しの希望を持ったから俺に飛行機を見せたんだろう?」
エルフ「む…むぅ…」
騎士長「ただし、話も聞こえてたと思うが…この二人を頼まれてほしい」
エルフ「…わかった。ただ、俺は戦いもできないし…」
エルフ「いざとなっても、本当に何もできないぞ?」
騎士長「ここへ二人を隠してくれてるだけで充分さ」
エルフ「…わかった。責任をもって預かろう」
騎士長「アサシンも…黒髪幼女を頼む。お前だから信頼するんだ」
アサシン「うん、任せてくれよ」
黒髪幼女「本当に…気を付けてね」
騎士長「わかってるって!で、エルフさんよ。そういや今更だが、名前を聞いてなかったな」
アルフ「"アールヴヘイム"。アルフって呼んでくれ」
騎士長「エルフ族の楽園の名、か。よろしく、アルフ」
騎士長「俺は騎士長だ」
アサシン「我はアサシン。宜しく頼む」
黒髪幼女「え、えっと…私は黒髪幼女」
アルフ「アサシンさんに、黒髪幼女ちゃんか。よろしくな」
騎士長「…さて、善は急げというし…早速、相手の場所を知りたいんだが」ポキポキ
アルフ「この倉庫の方角に、真っ直ぐ行くと森の中に、昔使っていた街道がある」
アルフ「あとはそのまま…道なりに進んでいけば廃墟になった屋敷が見るはずだ」
騎士長「わかった。人数がどれくらいとかはあるか?」
アルフ「俺が見た限りでは最低でも6,7人だ」
騎士長「…中にまだいたりしたとしたら、もっと多いな」
アルフ「やはり、危険すぎる。他の方法なら、俺も考えてやるし止めてもいいんだぞ…?」
騎士長「そんな賊程度に俺が負けるというなら、今までやってきた事が無駄になるな!」
騎士長「それに、俺が攻め込む理由が出来ちまったからさ」ニカッ
アルフ「…」
騎士長「んじゃ、ちょっくら行ってくる」チャキッ
黒髪幼女「…行ってらっしゃい」
アサシン「必ず無事で」
アルフ「恩に着るよ…」
騎士長「おうっ!」ダッ
ザッザッザッザッザッ…
………
……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――――【 屋 敷 】
ガサガサッ…
騎士長「ぺっぺっ!アラクネ異常繁殖とはいえ、旧街道ですら蜘蛛の巣だらけかよ」
騎士長「くっそ…この辺だって言ってたはずなんだが…」キョロキョロ
騎士長「えーと、こっちか?」
ガサガサッ…パァッ…!!
騎士長「あ、あった!あれが、廃墟の屋敷だな…」
騎士長「なるほどでけぇな…。だけどあれが奴隷狩の巣って証拠が…」キョロキョロ
ザッザッザッザッ…ガラガラガラッ!
奴隷の馬車『ヒヒーン!』
ゴソゴソ…スタッ
商人「今回もご苦労」
傭兵「お疲れ様でした」
ガチャッ…バタンッ…
騎士長「俺には幸運の女神がいるのかねぇ…いいタイミング。ビンゴか」
騎士長「さてと、どうするべきか。いきなり正面突破も難しいだろうし…」ウーン
騎士長「…お?」
ガチャッ…
商人「危ない危ない。今回のリストの忘れ物しちまったよ…」
タッタッタッタ…
騎士長「…へへ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ガチャッ…ギィィ…
騎士長「失礼しまーす…」
騎士長(商人の気絶させて服を奪って、侵入侵入♪)
騎士長(ま…気絶も長くないだろうし、さっさとナイフとこの屋敷の状況を把握して…)
傭兵「あ、おかえりなさ…って、誰だお前!」
騎士長「!」
騎士長(確か、こいつはこの商人の雇われ傭兵っぽかった奴だったな…よし)
騎士長「あ…いや、その、商人さんにココへ行けと…」
傭兵「何ィ…?」
騎士長「そ、その証拠にほら!今回の奴隷にした先のリストも預かってますし!」ペラッ
傭兵「…ふむ」
騎士長「ちょっと一回、用事があるから渡してくれと」
騎士長「僕は新人で、あの商人さんにココを案内されたんです」
傭兵「ちょっと、リストを見せてみろ」グイッ…ペラッ
騎士長「…」
傭兵「…」ペラペラ…
騎士長「ど、どうですか?」ヘヘ
傭兵「…確かに今回のものだ。しかし、俺ぁお前なんか聞いてないぞ?」
騎士長「え、えーとそれは…」
傭兵「個別の直接任務で来たのか?」
騎士長「へっ?」
傭兵「あれ、違うのか?」
騎士長(直接任務…?なんだそりゃ)
傭兵「じゃあ単純に秘密にしてただけか。あの人、結構そういうところがあるからなぁ」
騎士長「ちょ、ちょっといいですか?」
傭兵「なんだ」
騎士長「直接任務って何でしょうか」
騎士長「僕はアシスタントで着いてきてほしいと言われただけでしたので」
傭兵「知らぬ者が気にする必要はない」
騎士長「教えていただけませんか?」
傭兵「ダメだ」
騎士長「…これでは?」スッ
傭兵「…金貨か」ピクッ
騎士長(引っかかれ!おまえだって欲しいはずだ!)
傭兵「…」
傭兵「…言えぬことは言えぬ」
騎士長(断っただと…?金貨を捨てるほどに、恐ろしい取引相手ってことなのか?)
傭兵「…と、いうより。それを知らぬとは、本当にアシスタントなのかぁ?」ジロジロ
騎士長「あ…あははは!嫌ですよ、旦那ぁ。商人たるもの、金になる匂いには敏感なだけですよ!」
傭兵「そうかぁ…?」
騎士長「こ、これは迷惑をかけたお詫び!とっといてくださいな♪」スッ
傭兵「…そうか。なら有り難く頂くぜ」
騎士長「…」フゥ
傭兵「そういえば、アイツはいつ戻ると?」
騎士長「商人さんですか?」
傭兵「そうだ」
騎士長「い、一旦遠くまで離れるから、分からないことがあったら雇った傭兵に聞いてくれと言われました」
傭兵「はぁ…あの人にも困ったものだ。これから大事な会議だというのに」
騎士長「会議ですか?」
傭兵「定例会議だ。お前も出席しろ、仕方ない。俺が紹介してやる」
騎士長「は、はい」
騎士長(ここはただの巣じゃねえのか?一体…)
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――――【 大広間 】
…ザワザワ…ガヤガヤ…
騎士長「な…」
商人A「今回はさぁ…」
商人B「ははは!お前だって」
商人C「…」ゴクゴク
傭兵A「…」
傭兵B「…」
傭兵C「…」
騎士長「商人と傭兵が沢山…」
傭兵「お前さ…本当に何も聞いてないんだな」
騎士長「へへ、旦那…すいません」
ザワザワ…ガヤガヤ…
黒商人「ははは…ん?お前、新顔か?」
騎士長「ど、どうも初めまして…」
黒商人「って、お前…剛傭兵連れてるじゃねえか。いつもの銀商人はどうした?」
剛傭兵「あ、黒商人さんじゃないですか」
騎士長(こいつは剛傭兵っつうのか。ってか、色で呼び合ってるのは意味があるのか?)
剛傭兵「銀商人はちょっと用事があるそうで。こいつが代わりに」
黒商人「新人に任せるなんざ、変わってる奴やなぁ」
剛傭兵「はは、いつも困ったものです」
黒商人「もうすぐ、金商人様がいらっしゃる。仕方ない…銀商人の席についておけ」
騎士長「は、はい。ここですね」
トコトコトコ…ストンッ
騎士長(成る程。色での取り決めは、コードネームとランクなのか)
騎士長(…ここでの一件、話を聞く価値がありそうだな)
騎士長(ナイフを探すのは、それからでもよさそうだ)
ガチャッ…ギィィ…!!
ザワザワ…ピタッ、シーン…
騎士長「ん?ど、どうして急に静かに……」
剛傭兵「おっ、金商人様がいらっしゃったのだ。静かにしておけよ」
騎士長(金商人ねぇ…どんな顔してんだか…)
カツ…カツ…カツ…
奴隷商人「…待たせた」ガタンッ
騎士長「ぶーーっ!!」ブボッ
剛傭兵「ど、どうした!?」
騎士長「ごほっ、ごほごほ!お茶が喉に詰まってしまいまして!」ゴホゴホ
剛傭兵「あぁ?仕方ねえなあ!」
奴隷商人「粗相がないな。まぁいい、今回の会議を始めるぞ」
騎士長(どどど…どういうことだ!!)
騎士長(あいつは確かに、王都で俺が捕まえた奴隷商人のはず!!)
騎士長(脱獄しやがったのか!?)
騎士長(いや、王都の牢は地下深く。そう逃げられるものではないはず…)
剛傭兵「おい、大丈夫か…?いつまで下を向いているんだ」
騎士長(…ま、まさかとは思うが…まさか…)
奴隷商人「ごほんっ、えー…銀商人がいないようだが、先ずは共通の話からだ」
奴隷商人「今回も"王都"より任務が出ている」
騎士長「――…!」
奴隷商人「前回、ようやく見つけた"黒髪幼女"だったが…王都で逃げられたのは知っているな」
奴隷商人「俺の失敗だ。すまない」
奴隷商人「情報によれば、王都の元騎士長…くそっ!名前を見ただけでムカムカする」
奴隷商人「その元騎士長とともに、砂漠地方へと向かったらしい」
騎士長「…!」
奴隷商人「この情報は、彼の行きつけだった酒場の店主の情報。間違いないだろう」
奴隷商人「残念ながらそこからの足取りは掴めていない」
奴隷商人「王都の直属警備隊が砂漠地方村へ捜索しに行ったが、どうやら訪れた痕跡はなかったそうだ」
騎士長(おい…おいおいおい…)
奴隷商人「情報は発見次第、報告せよとの事だが…」
奴隷商人「俺たちは相変わらず仕事を続けて良いそうだ。今回の報告はまずそれだけになる」
騎士長(待てよ…。冗談だろ…。俺は本当はどこかで…まだ…)ドクン
奴隷商人「ちなみに地下に閉じ込めてある女子供の奴隷は、引き取り先がー…」
騎士長(王都が本当に絡んでるなんて思いたくなくて…)ドクンドクン
奴隷商人「ん…おいおい、そこ。いつまで顔を下げてるんだ」
奴隷商人「会議が始まってるんだぞ!いい加減…顔をあげたらどうだ!」
騎士長(まさか…俺が追いかけてきた…この全ては…)ドクンドクン
奴隷商人「この…いい加減に…」
ガチャガチャ…バァンッ!!!
奴隷商人「なんだっ!?」
銀商人「はぁ、はぁ…」ゼェゼエ
奴隷商人「銀商人!?な、なんで裸なんだ!」
銀商人「突然、後ろから殴られて…気づいたら裸だった。誰かが、忍び込んでるかもしれん!」
奴隷商人「何だと!?」
…ザワザワ!!
騎士長(ナイフどころの話じゃない…俺は…)ブツブツ
剛傭兵「…まさか、貴様…」
奴隷商人「お前、さっきから頭を上げないのは…」
銀商人「そ、そいつだ!!そいつに殴られたんだ!!」
剛傭兵「…顔をあげろ、コラァ!」グイッ
騎士長「うっ…」
奴隷商人「!!」
騎士長「ひ、久しぶりだな…奴隷商人…」ニタッ
奴隷商人「き…騎士長!!なぜ貴様がここにいる!!」
剛傭兵「…何だって!?」
…ザワザワッ!
奴隷商人「剛傭兵、そいつを捕まえろ!!」
剛傭兵「はっ!」
グイッ!…ガシッ!!
騎士長「!」
剛傭兵「動けまい…俺の力は相当なもんだぜ…?」グググッ
騎士長(ぐ…な、何て力だこいつ…!)
奴隷商人「良くやった」
奴隷商人「さて、騎士長…。貴様、なぜここにいる?」
奴隷商人「まさか俺たちに探りをいれたのか!?」
騎士長「…まぁちょっとな。別に…そんな話を聞くつもりはなかったんだが」
奴隷商人「はぁ~。まぁ、聞く気があろうがなかろうが別に良い」
奴隷商人「聞いちゃいけない話を聞いちまったのは一緒だからな」ギロッ
騎士長「ばーか…。俺だって、そんな話聞きたくなかったよ…」
剛傭兵「口を慎め!」
ブンッ…ゴツッ!!
騎士長「ぬあっ!」
奴隷商人「いや、まぁいい。そのまま抑えておいてくれ」
剛傭兵「はい」
奴隷商人「これは逆に好都合だ。黒髪幼女の居場所を吐かせれば、王も喜ぶだろう」
騎士長「…」
奴隷商人「早速だが、黒髪幼女の居場所を教えろ。教えなかったら…分かってるな?」
騎士長「…言うと思うか?」
奴隷商人「剛傭兵、いいぞ」
剛傭兵「ふんっ!」ブンッ
…グシャッ!!…ポタポタ…
騎士長「ぐ…」
奴隷商人「もう1度聞くぞ。どこにいる」
騎士長「わ…分かった。教える…」
奴隷商人「それでいいんだ」ニコッ
騎士長「だ、だけど…俺からも聞きたいことがある…」
奴隷商人「ふむ?なんだ?」
剛傭兵「…金商人殿、話に耳を貸すことなど」
奴隷商人「どうせ、このまま殺す。冥土の土産話よ」
剛傭兵「あなたがいいのなら、いいのですが…」
騎士長「…ありがとうよ。なぜ、奴隷狩りのお前らが…王都に絡んでいるんだ…?」
奴隷商人「王の命令さ。奴隷狩りが禁止されて、宙ぶらりんだった俺たちに仕事をくれたんだ」
騎士長「そ、その内容とは…」
奴隷商人「"お主らが自由に奴隷を狩る事を内密に支援する"」
奴隷商人「"代わりにある奴を見つけて欲しい"…さ」
騎士長「…そいつとは、まさか…」
奴隷商人「"黒髪幼女"だ」
騎士長「…!」
奴隷商人「さすがに、何故…あんな子を探していたのかは知らん」
奴隷商人「それに奴隷の一部を献上するうちに、王自身、その魅力にハマったらしく毎回献上を求められるわ」ハハハ
騎士長「…お前、王都で俺に言ったよな。村で協力してくれた人間がいたと…あれはウソか?」
奴隷商人「あぁ、酒場で出会った時の話のか。ありゃ本当だ」
騎士長「わけがわからん…」
奴隷商人「俺が情報を集めてた時、黒髪幼女の住む村をようやく見つけてな」
奴隷商人「いつも通り、傭兵を雇って向かおうとした矢先…その村の男から手伝ってほしいと言われた」
奴隷商人「俺はそれにイエスと答えたまでってことだ」
騎士長「…」
奴隷商人「…お前の質問はここまで。あとは俺の番だ」
騎士長「…」
奴隷商人「黒髪幼女はどこにいるんだ?んん?」
騎士長「…」
奴隷商人「…言わないというなら、何度でも痛めつけるが」
騎士長「…」
奴隷商人「いや…貴様を奴隷にするのも面白いかもしれん…ひひ…」
騎士長「お前の性根は本当に腐ってやがるんだな」ギリッ
奴隷商人「若い頃より奴隷を扱ってきた俺にとって、人はただの物にすぎん」ククク
騎士長「…」
奴隷商人「それにしても、お前も無駄な人生を過ごしてきたんだな。そこは同情するよ」ハァ
騎士長「何だと…?」
奴隷商人「王都に何年も仕えたんだろう?賊を倒す為に、王都を守る為に…おぉ泣けるねぇ!」
騎士長「…!」ギリッ
奴隷商人「それの実態が、王はただの奴隷好きの変態!」
奴隷商人「欲望のために金を使い、国の財政は崩壊寸前!」
奴隷商人「そんな王都に本気で仕えてたお前!」
騎士長「…ッッ!!」
奴隷商人「ぶ…ぶわぁっはっはっはっは!!!」
奴隷商人「はーっはっははははは!ひ~!!涙が出るほど面白いな!」バンバン
騎士長「き…貴様…!」ググッ
奴隷商人「は~…面白いなぁ本当に…」
奴隷商人「…まぁとにかく、今は黒髪幼女の場所を話して貰おうか」
騎士長「…どんな拷問ですら、俺は何も話す気はない」
騎士長「俺がどれだけ騎士長に誇りを持ち、本気だったか…今の俺を見てわからないか!!」
奴隷商人「あぁ、そう。じゃあ殺せ」
剛傭兵「御意」ニヤッ
騎士長「なっ!?」
奴隷商人「…いちいち殺さなくて済むと思ったんだがな。まあどのみち、吐いても殺すつもりだったが」
騎士長「今、俺を殺せば黒髪幼女の場所は分からなくなるぞ!拷問にかけるんじゃなかったのか!」
騎士長(俺が拷問の間、黒髪幼女は少しでも生き延びられる。アサシンなら、この意味もわかるはず…!)
奴隷商人「ふん。あんな子供を連れて、ココへ来る訳ないのは分かってるさ」
奴隷商人「大体そうだな…例えば。ここの近くにある…」
奴隷商人「エルフ族がすんでいたあの家に…預けてきたとかかだろう?」ククッ
騎士長「!!」ビクッ
奴隷商人「図星か…?くははっ!」
騎士長「…っ」
奴隷商人「自分から答えを言ってくれるとは有り難い。適当に言ったつもりだったんだがなぁ?」
騎士長「く…貴様ぁ…」
奴隷商人「お前が騎士道で戦士の戦いなら、俺は商人としての道」
奴隷商人「人を揺さぶって、人を騙すのは得意なんでね…」ニタッ
騎士長「く…くそがあぁぁっ!!」ガタガタ
奴隷商人「もういい、本当に殺せ。あの世から、黒髪幼女の行く末でも見守っていろ」
騎士長「黒髪幼女は一体どうなるんだっ!!」
奴隷商人「さぁ~…王様、幹部にでも遊ばれるのか…」
奴隷商人「意地でも探していたようだし、一体何されるのか。地獄のような日々は間違いないだろうな」
奴隷商人「それに俺はアイツとお前に振り回されたし…」
奴隷商人「俺もおこぼれがあれば…、どんな事になるか、あの世から見てるがいい」ニタリッ…
騎士長「…」
騎士長「…」ブチッ
奴隷商人「剛傭兵、もう話も疲れた。そいつを殺して会議の続きだ」
剛傭兵「わかりました…ここに忍び込んだのが運の尽きだったなぁぁ!」ブンッ
…ガシッ!!
剛傭兵「むっ」
騎士長「…」
剛傭兵「…腕を離せ!」ググッ
騎士長「…」
剛傭兵「この、離せと言ってる…!!」
騎士長「ぬぅあああっ!!!」ゴォォ!
ググッ…バキバキッ!!!ブチィ!
剛傭兵「ぎ…ぎぃやあぁぁぁっっ!!」
剛傭兵「お、おっ…おおお、俺の腕がぁぁ!!と、とと、とれ…」
奴隷商人「なっ…何だと!!」
騎士長「お前だけは、お前らだけは…絶対に許さん…」
奴隷商人「…!」
騎士長「骨も残らないと思え…人を喰う…化け物どもが…!!」
奴隷商人「な、何を言っているんだ!?ははは!」
奴隷商人「ここには何人の傭兵たちがいると思っている!…おい!」
ザザザザッ!!
傭兵達「…」チャキッ
奴隷商人「いくら貴様でも、この数の傭兵…相手に出来るまい!」
騎士長「奴隷商人…いや、金商人か…」
奴隷商人「ん~…なんだ?」
騎士長「ここまで人を殺したいと思ったのは…初めてだ…」
騎士長「覚悟しろよ…」チャキッ
奴隷商人「…っ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コポコポ…カチャカチャ
アルフ「付近でとれるハーブのお茶と、手製のクッキーをどうぞ」
アサシン「ありがとう」ゴクッ
黒髪幼女「ありがとう~」クピッ
アサシン「さっきも飲んだけど…やっぱり、優しい味で美味しいね」
アルフ「ありがとう」
黒髪幼女「クッキーもおいしい」パクパク
アルフ「そんな慌てて食べなくても、作り置きはあるから持ってくるよ」ハハハ
黒髪幼女「~♪」モグモグ
アサシン「…はぁ、騎士長のやつ無事だといいんだが」
アルフ「ん~む…心配だな」
アサシン「アルフ、だったか。あんたは何故ここに?」
アルフ「それはさっき言った通り、隠遁だ」
アサシン「隠遁…ねぇ」
アルフ「一人でのんびり自給自足して、好き勝手に生きたくなっただけだ」
アサシン「なるほどね」
アルフ「ようやく生活も安定してきたと思った矢先に、あの屋敷の廃墟が分かってさ」
アルフ「下手に発明品に目をつけられなかっただけマシだが…」
アサシン「ま…そうだな」
アルフ「あんたら、なぜ一緒に旅をしてるんだ?」
アサシン「成り行きだな」
アルフ「ふーむ。あんた女だろ?今は黒装束で隠してるが」
アサシン「!」
アルフ「今はそんな窮屈なのは取っておきなよ。いちいちマスクだけ外すのもダルいだろ?」
アサシン「…」
シュルシュル…パサッ
アルフ「…へぇ」
アサシン「バレてたなら、お言葉に甘えるよ」
黒髪幼女「…お姉ちゃんがお姉ちゃんになった!」
アサシン「ふふ」
アルフ「…思った以上にイイ女だな、アンタ」
アサシン「はははっ」
アルフ「…砂漠地方の美女と女の子。それと男の旅…か」
アサシン「まぁ色々あってね」
アルフ「何やら急いでいる旅なのか?」
アサシン「深い考えは騎士長が持ってるみたいでね。私は分からないよ」
アルフ「へぇ…」
黒髪幼女「私のお父さんを探してくれてるんだ」
アルフ「お父さん?」
黒髪幼女「うん」
アルフ「行方不明になったのか?」
黒髪幼女「うん…」シュン
アルフ「本当にわけありって感じだな。なら、これ以上は聞かねえよ」
アサシン「そうしてもらうと助かるかな」
アルフ「分かった。今回は俺が依頼者、あんたらが請負人」
アルフ「イエスかノーかっての仲程度でいいさ」ハハハ
アサシン「ありがとう」
アルフ「いやなに」
アサシン「…」
アルフ「…」
黒髪幼女「…」モグモグ
アサシン「…はぁ、騎士長のやつ…本当に無事だといいんだけど」
黒髪幼女「…」パクパク
アサシン「黒髪幼女も、意外と神経が太いっていうか…騎士長は心配じゃないのか?」
アサシン「パクパクとよくクッキー食べるね」
黒髪幼女「心配だよ…。でも…騎士長だよ。私をいっつも守ってくれたし…」
黒髪幼女「きっと大丈夫だよ!」
アサシン「…そうだね。黒髪幼女がここまで信じてるのに、私も信じないと恥だね」
黒髪幼女「うん」
アサシン「私にもクッキー1枚くれるか。あ~ん」
黒髪幼女「はいっ」
パクッ…モグモグ…
アサシン(こんな子一人残して、変な事するんじゃないからな…騎士長)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
…ドスッ!!!…ポタッ、ポタッ…
傭兵F「がぁっ!!」ゴボッ
騎士長「はぁ~…、はぁ~…!」ゼェゼェ
傭兵B「こ、この…」
騎士長「槍突っ!!!」ビュッ
ドスッ…!!!ズバァンッ!!
傭兵E「ぬがっ…!」
…ドサアッ
騎士長「あと…何人だ…」ギロッ
奴隷商人「そ、そそ、そんなバカな…!」
騎士長「お…?もう、いねえんじゃねえのか?へ、へへ…」
奴隷商人「あ、あの数の腕利きを…倒しきるなんて…!」
騎士長「この数だ…、峰打ちなんかに手加減はできなかったぞ…」ハァハァ
奴隷商人「ぐ…!」
騎士長「あとは、お前だけだ…だらぁぁぁっ!!!」ブンッ!
奴隷商人「ひっ…」
…ゴキィッ!!パラパラ…
騎士長「おっと外したか…。頭を一撃で粉砕しようとしたんだがな…へへ…」
奴隷商人「ひ…、ひぃぃ…!」
騎士長「っちくしょう、左腕がうまく上がらん…。血を流しすぎたか…」ブルブル
奴隷商人「た、助けてくれ!さっきまでのは謝る!!」
騎士長「…」
奴隷商人「金ならやる、何でもする!だから頼む…!」
騎士長「…お前、さっき…地下に奴隷がいるって言ってたなぁ…?」
奴隷商人「あ…、あぁ!ここは砂漠との中継地点だから、奴隷を一時的に閉じ込めるんだ!」
騎士長「ふ~む…」
奴隷商人「奴隷が欲しいのか?な、ならやるぞ!鍵だって渡す!」
騎士長「着いてこい…、地下に案内しろ」グイッ
…ズリズリ
奴隷商人「あ、あいだだだ!髪の毛が抜けますから!やめでぇぇ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
…ピチョーン、ピチョーン
ザワザワ…
奴隷商人「…髪の毛が抜けると思った」ハァハァ
騎士長「…」
奴隷商人「き、騎士長さん…黙ってどうしましたか?」
騎士長「ここにいるの…全員が奴隷狩に連れてこられたのか…?」
子供「うあああん…!」
母親「静かにして…お願いだから…」
女性「…寒い」
傷だらけの女「もう嫌だ…嫌…」ガクガク
………
……
奴隷商人「今回のリストも合わせて十数人前後ですね」
騎士長「こんな地下で、服も着せず…狭い場所に…貴様…ら…」
奴隷商人「へ、へへ…」
騎士長「このダボがぁぁ!」ブンッ
奴隷商人「えぎぃ!!」バキィッ!!
ズザザザァ…
騎士長「鍵をよこせ」
奴隷商人「へっ…ま、まさか」
騎士長「全員逃がす。表の馬車を使えば逃がせるだろう」
奴隷商人「そ、そんな事をしたら王への報告と、俺たちの生活が!」
騎士長「…」ギロッ
奴隷商人「あ、開けますよ…」
トコトコトコ…ガチャッ…ギィィィ…
…ザワザワッ!!!
奴隷たち「きゃあああっ!」
奴隷たち「や、やだぁぁ!」
騎士長「何だ!?」
奴隷商人「いつものことです」
騎士長「どういうことだ!」グイッ
奴隷商人「奴隷にするために、いつも調教を施してるんですね…」ヘヘ
奴隷商人「ですので、自分がその番だと思ってるんですよ」
奴隷商人「まぁ趣味で度々世話にはなりますが、そんな理由です」
騎士長「…っ」
奴隷商人「さしずめ、あなたの事も"金持ち"で、誰かを飼いに来たと思われてるんです」
騎士長「な…」チラッ
奴隷たち「ひぃぃ…!こっちを見たぁぁ…!!」
奴隷たち「私は嫌だ。嫌だ。嫌だ…」
奴隷たち「もうあんなのは…いやぁぁ…」
騎士長「…」
奴隷商人「収集つきませんぜ」
騎士長「…」
トコトコ…グイッ
奴隷商人「いでで…何をするつもりで!」
騎士長「…」スゥゥ
騎士長「聞け!!落ち着け!!砂漠の人々よ!!!」
奴隷商人「!」ビリビリ
騎士長「私は王宮都市に仕え、今は旅をしている騎士長という者だ!!」
騎士長「風の噂で、ここの地下にお主たちの話を聞き、助けに来た!!」
奴隷たち「…え?」ザワッ
騎士長「私の服の血は、この屋敷に巣食っていた賊を討伐したからだ!!」
騎士長「うぐ…ご…ごほっ…!」ゴボッ
騎士長「こ、ここに捕まえているのは奴隷狩の首謀者である金商人である…!!」ゴホッ…
奴隷商人「…!!」
騎士長「表の馬車で、砂漠側へ逃げ、海沿いにある村に助けを求めればよい!」
騎士長「その証明に…この奴隷商人をそこの手錠にとらえよう!」
トコトコトコ…ガチャンッ!!
奴隷商人「ちょ、ちょっとぉおお!?」
奴隷たち「…!」
騎士長「あとは…ソイツも…お前らも自由にしていい…」ハァッ…ハァ…
騎士長「ごほっ…」フラフラ
奴隷商人「は、離してください!止めてください!」ガチャガチャ
奴隷たち「ほ、本当なの…?」
奴隷たち「き…きっと希望を持たせてどん底に落とすつもりだ…」ガタガタ
奴隷たち「騙されないから…!」
騎士長(だ…だめか…?)
奴隷少女「…」ギュッ
奴隷母親「少女ちゃん…どうしたの?」
奴隷少女「…!」ダッ
奴隷少女「あっ、行っちゃだめ!」
タッタッタッタ…
奴隷少女「あ、あの…」
騎士長「ん?」
奴隷少女「た、助けてくれたんです…か…?」
騎士長「これ以上の面倒は見きれないが、今この時点で…」
騎士長「この屋敷にお前らを捕まえようとする人間は一人残らず…倒れてるはずだ…」
奴隷少女「…!」
騎士長「…」ニコッ
奴隷少女「本当に…か、帰れるんですね!?」
騎士長「ウソだと思うなら、上へ行き…その惨状を見るがいい」
騎士長「外の光を自由に浴びればいい。お前たちは…自由になったんだ…」
奴隷少女「み…みんな…、この人なら…きっと信じられると、そんな気がする…!!」
ワ…ワァァァァッ!!!
傷だらけの女性「家族に…会えるの…?」ポロポロ
母親「本当なんですか…!」
騎士長(名も知らぬ少女よ、ありがとう)
騎士長(…こんな支部がまだどこかにあるはず。洒落にならねえな…)
ヨロヨロ…
騎士長「うくっ…。あの傭兵ども…口先だけじゃなかったなぁぁ…くそ…」ポタポタ
奴隷商人「ぐ、ぐぅぅぅ!!」ガチャガチャ
奴隷商人「覚えてろよ…騎士長!!」
騎士長「そりゃお前がここから生きて出られただろ。ほら、よく見ろ」
…チャキッ
奴隷「…許さない、お前たちだけは」
奴隷「生き地獄を貴方にも見せてあげる…」
奴隷「殺す…絶対に…」
奴隷商人「ひ…」
奴隷商人「ひいあああああっ!!」
ザクザクザクッ…
騎士長(…因果応報、か)
トコ…トコトコトコ…ヨロッ…
騎士長(俺も早く、戻らないとヤバイかもしれん…。傷だらけで怒るだろうなぁ…)
奴隷少女「あ、待ってください!」
騎士長「うん?」
奴隷少女「あと一人…奥の部屋に男の人がいるはずなんです」
騎士長「男?」
奴隷少女「はい。度々、食事を持っていくのを見ていたんですが…」
騎士長「情報ありがとう。いってみるよ」
騎士長「君らも早くここから逃げるんだ。服はどこかにあるはずだろうから」
奴隷少女「…はいっ。本当にありがとうございました」ペコッ
タッタッタッタッ…
騎士長(薄暗くて、俺の傷が見えなかったんだろうけど…)
騎士長(任されたらやるしかねぇよなぁ…はは…)
………
……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ガチャッ…ギィィ…
騎士長「…っ」
カツ…カツ…
騎士長(な、何て臭いだ。カビか…?こんな場所に人間がいるのか?)ツン
騎士長(長居はできん…。俺の傷に障って、本当に死にかねない…!)
フラフラ…
騎士長「…」キョロキョロ
騎士長「…」
騎士長「…人の様子もない、が…」
騎士長「少女の見間違えか?なら、早く戻らねばー…」クルッ
…モゾッ…ゴソゴソッ…
騎士長「!」ハッ
???「う…。ま、また来たのか…?」
???「飯の時間にはちぃっと早いんじゃないかね…」ムクッ
騎士長「だ、誰だ!」
???「…あら…?いつもの商人さんじゃない…のか?」
騎士長「違う…お前を助けに来たんだ…。あんたは一体?なぜ…こんな深くにいるんだ」
???「ドジふんじまってなぁ…。殺されると思ったが、閉じ込められて放置されてたよ…」ハハ…ハ…
騎士長「生き殺し?…ごほごほっ!」ベチャッ
???「あらら、あんたも死にかけてるじゃないの…俺と一緒かな…」ゴホゴホ
騎士長「…お前は一体…」
???「もう…俺も死ぬだろうし…名乗っても大丈夫かねぇ…」
騎士長「…」
王子「俺は王子…。王都の先代の王の息子さ…」ハハ…
騎士長「な…何だって…!?」
王子「あら…信じてない声だねぇ」
騎士長「し、信じられるわけないだろう。何でここに王子がいる!?」
騎士長「いや、そもそも先代に息子がいたなんて!」
騎士長「うっ…!ごほごほっ!!」
王子「そう声を上げたらアカンでしょ…。あんた、傷がひどいんじゃないの?」
騎士長「声を上げずにどうしろと…!」
王子「はは…確かにそうだ。驚かないほうが不思議だものなぁ…」
騎士長「…俺は元、王都騎士団の騎士長だ。この槍を見てくれ」チャキッ
王子「薄暗くて見えねぇよ…。というか…王都の騎士だと…?」
騎士長「元、だ。今は…わけあって…奴隷解放やら…、義賊的な位置にいる」
王子「…」
騎士長「上の奴隷狩りの商人は…倒した。だから死に掛けてるんだよ…」フラフラ
王子「…」
騎士長「信じてくれ…」
王子「まぁ…信じるよ…」
騎士長「ありがとう。聞きたいのだが…なぜ王子のお前がここにいるんだ…?」ゴホッ!!
王子「話をしてもいいが、その前にお前…死んじゃうんじゃないの…?」
王子「それと…俺はまだしも、こんな状態の俺を王子と信じるなんてねぇ」
騎士長「…俺はお前が王子だと信じて話を聞く。俺を王都の犬ではないと信じてくれたし…」
騎士長「それに今は疑う以上に、あんたがココにいるツジツマが合いそうだから信じるっ…」ゴホゴホ
王子「仕方ねぇっなぁ…ちょっとこい…」
騎士長「ん…」
王子「…」ボソボソ
…パァァ!!
騎士長「!」
王子「ちょっとしたヒーリングよ。血を止めるだけだからな…」
騎士長「ち、血が…。助かる!」
王子「さて…んじゃ、何から話をしたものか」
騎士長「待ってくれ。その前に、お前の鎖を外したい」
王子「はっはっは…いいよ。そんな力出したら、血を噴出して…お前が死んじゃうよ」
騎士長「いやしかし…」
王子「そのヒーリングは一時的なもの。いいから黙って話を聞け」
王子「どうせ…俺はもうすぐ死ぬ…。その前に、お前との出会いも運命だと…思う…」
騎士長「だ、だが…!」
王子「…」
騎士長「…っ」
王子「頼む。聞いてくれ。最期の話くらい、俺にさせてくれないか」
騎士長「…」
騎士長「…わかった」
…ストンッ
王子「礼を言う。まず何から話すか…。お前は今の王を知っているかい?」
騎士長「あぁ…酷い王様だと有名だからな」
王子「そうだな。しかし、先代に息子がいたのは知らなかったようだな。まぁ俺なんだが…」
騎士長「…そうだ。俺は聞いたことがないぞ。どういうことなんだ?」
王子「まぁまぁ…落ち着いて聞きなさいよ…」
騎士長「…あ、あぁ」
王子「先代が亡くなった後、俺は今の王と覇権の争いをすることになった」
王子「当然、先代を慕っていた面子は俺に付いた」
騎士長「当たり前だな」
王子「しかしな…。ヤツは、裏の顔を持っていた」
王子「裏社会とでも言おうか。ソレを取り仕切る、いうなれば裏社会の王のような奴だった」
騎士長「…」
王子「その顔を使い、買収…脅し…何でもやったそうだ」
王子「気が付けば俺は一人になっていた。今の幹部らは命を捨ててまで、俺に着く道理はないと思ったんだろう」
王子「そして、当代は俺を殺そうと目論んだ。だが俺は、命を取られまいと…逃げたんだ」
騎士長「どこへだ?」
王子「…"砂漠地方"」
騎士長「!」
王子「丁度、政府が新政策で奴隷禁止だの…村や街作りの発展のために人手を募集していた」
騎士長「…」
王子「そこで、砂漠地方の地方…。そこで自分の居場所を作ろうと考えた」
王子「まず何をすべきか。俺は、新政策に逆らっていた賊共に連れられた、奴隷馬車を襲った」
騎士長「…奴隷馬車を?」
王子「そう。そして…それを繰り返し。やがて俺は一つの村を作ったんだ」
王子「元奴隷達による、"俺の居場所"さ」
王子「俺を慕ってくれたそいつらは、俺の本当の姿を知っても迎え入れてくれた。嬉しかった」
騎士長「…」
王子「まぁ、オープンじゃない村だなんても他の面子に言われたりしてたがねぇ」ハハハ
騎士長「…えっ!?」ガタッ
王子「ん?」
騎士長「ま、待ってくれ。オープンじゃない村…だと?」
王子「うむ、そうだが」
騎士長「…まさか、砂漠地方村か!?」
王子「なんでその名前を?」
騎士長「…っ!!」
王子「…?」
騎士長「し…知っているか?その村は…今…」
王子「燃やされた…か」
騎士長「!」
王子「…」
騎士長「…あなたも被害者だったのか」
王子「…いや、違う」
騎士長「え?」
王子「俺が…あの村を奴隷に襲わせた本人だからな」
騎士長「!!」
王子「…」
騎士長「な…」
王子「…」
騎士長「何だと…コラァァ!!」バッ!!
…ボキッ…ブチブチィ!!
騎士長「ぐ…がっ…!?」
騎士長「げほっ…!」ベチャッ
王子「あらら…興奮するから折角止めた血が…。一体どうしたんだ?」
騎士長「き、貴様さえいなければ…」ブルブル
王子「…何のことを言っているのか分からないが」
王子「まぁ、それをしたのには、大きな理由があった」
騎士長「言ってみろぉ!!」
王子「…村の民を守るためだ」
騎士長「…んだと!?」
王子「俺を王子と分かった上で、受け入れてくれた民」
王子「だが、俺を追って王都の軍が調べていることがわかった」
騎士長「…」
王子「それから村人を逃す為に、一度…奴隷狩に頼み…売ってもらおうとしたのだ」
騎士長「その村の、トラウマを掘り起こしても…危険な道を選んでもか!?」
王子「…死罪になるよりはマシだろう」
騎士長「何だと…?」
王子「仮にも当代の王は闇の王でもある。俺をかくまった民は、捕まれば死罪を免れないだろう」
騎士長「だけどなぁ…それはな、死ぬより…ひどい思いをするってことなんだろうがっ!!」
王子「…だから、多額の金を支払って、俺の知っている身内に売ってくれと頼んだんだ」
王子「それならば、奴隷として扱うこともなかったからな…」
騎士長「…だ、だがそれはっ!」
王子「言うな…分かっている。頼んだ商人は既に王都の手下で…裏切られたんだ。俺が愚かだった」
王子「追い詰められ、俺もヤキが回っていた…」
騎士長「…」
王子「その後…俺は逃げていた所を、再びそいつ…奴隷商人に見つかった」
王子「最初に捕まえなかったのは、どうやら俺の顔を知らなかったからだったようだが…」
王子「結果的に捕まった俺だったが、奴らは俺を王に突き出さずにココへと閉じ込めたのよ」
王子「…俺を突き出せば、奴隷狩の自由と、王からの報酬がなくなるからな」
騎士長「…」
王子「だが、俺はうれしかった」
騎士長「…嬉しかっただと?」
王子「そうだ。こうして、死ぬ道があることが」
騎士長「…っ」
王子「こうして、死ぬ事で、奴隷に売られた…俺が裏切った村人たちも…」
王子「きっと"裏切り者が死んで良かった"って思うだろうしなぁ…」ハハハ
騎士長「て…てめぇ、何言ってんだ!!」ガシャアン!!
王子「…」
騎士長「死ぬことで、村人が喜ぶ?良かったと思う?んなわけないだろうが!!」
王子「…」
騎士長「く…くそ…」
…ゲホッ
騎士長「…!」
騎士長「…ゲホッ!ゲホゲホゲホッ!」
騎士長「あ゛…」フラッ
…ドサッ…
王子「やれ限界か。まぁ…俺も…限界なんだが…」フラッ
…ドサッ
王子「…はは、最後に誰かに話せたことを…嬉しく思うぞ…」
騎士長「ふ…ふざけ…」ググッ
王子「せめて最後に…娘に会いたかったなぁ…」
騎士長「!」
王子「本当にそれだけは…一緒に逃げなくて良かったと思う…」
王子「俺と一緒だったら、こうして捕まっていただろうし…」
王子「今、捕まってなければ…良いのだがな…ふふ…」ゴホゴホ
騎士長「…く、黒髪…幼女…」
王子「…!?」
騎士長「王都出身の村で…裏切り者の親父…。奴隷狩…全部繋がった…ぜ…」
王子「し、知っているのか…俺の娘を…」
騎士長「道理で…当代の王が血眼になって探していたはず…だ…」
騎士長「王家の娘…だったの…か…!!」
王子「…ど、どこにいるんだ?無事なのか…!?」
騎士長「俺が…助け出して…今は…、すぐそこの…エルフの家にいる…」
王子「な…っ」
騎士長「…ダメだ…眼が…霞む…」クラッ
王子「何という日だ…。最後の最後に…娘を…知るとは…!こんな近くに…いるとは…」
騎士長「なら…お前だけでも生きて…。あの子に会ってやれよ…!」
騎士長「俺は、旅に…出た…と…伝えて…く…」
騎士長「れ…」
騎士長「…」ガクッ
王子「…お、おい…!」
騎士長「…」
王子「…騎士長と言ったか。本当に…ご苦労だった…な…」
…グググッ…ムクッ…
王子「だが…俺が延命しても…、どうせ檻を破る力はなく…ココから出れぬ…」
王子「せ、せめて…俺の命と代えても…!」
王子「ヒールッ…!!」パァァッ…
騎士長「…」
騎士長「…」ピクッ
王子「…あとは、全てを頼んだ…」
王子「勝手に…希望にさせてもらうぞ…ははっ…」
王子「それと…これ…を…」ポイッ
…チャリンチャリンッ…!
王子「…」
…ドシャアッ
騎士長「…」
王子「…」
騎士長「…」
王子「…」
…ガチャッ!!…ギィィ…
ザワッ…ガヤガヤ…
「本当にここに…?」
「うん…さっきのお兄ちゃんが…」
カツ…カツ…ピタッ
「…誰か倒れてる!」
「あっ…!!」
…………
………
……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
騎士長「…」
騎士長「…ん」モゾッ
騎士長「…む、こ、ここは…」ハッ
アサシン「…気が付いたか」
騎士長「アサシン!?」ガバッ
アサシン「おっと動くな。隣を見てみなよ」
騎士長「隣?」チラッ
黒髪幼女「…」スヤスヤ
騎士長「黒髪幼女…。ここは一体…?」
アサシン「アルフの寝室さ。あんたが担ぎ込まれてきたとき…びっくりしたよ」
アサシン「あんたの傍から離れないで看病するって、そのまま黒髪幼女は寝ちゃったみたいだけどね」
アサシン「数日寝てると思ったけど、運ばれてすぐに目を覚ますとは、凄い気力だ」ハハハ
騎士長「俺が運ばれた…?誰に?」
アサシン「捕まってた奴隷たちさ。裸で来るんだもの…アルフのやつ、目回してたよ」ハッハッハ
騎士長「あいつらが…」
アサシン「彼女らの中にたまたま近くにアルフの小屋を見かけた人がいて、ココへ助けを求めたらしい」
騎士長「…彼女たちは?」
アサシン「アルフが服や布を渡して、砂漠地方へ戻る道は私が教えた」
アサシン「一応、途中までだけど…帰り道は私が着いてった。アラクネが出たら困るからね」
騎士長「そっか…。よかった」
アサシン「私だって良かった。あんた…本当に血だらけで…死んでるのかと…」グスッ
騎士長「…」
アサシン「と、とりあえず良かった。ナイフとかはどうしたんだ?持ってきたんだろう?」
騎士長「あっー!!」
アサシン「だから静かにしろって!」
騎士長「あ、あぁすまん…」ボソボソ
アサシン「目的のナイフだとかはどうしたんだって話!」ボソボソ
騎士長「…ナイフは忘れた」
アサシン「何だって?じゃあ何で傷だらけになってまで…奴隷の解放を?」
騎士長「…少し、話がある」
……
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アサシン「…!」
騎士長「信じられないと思うが、その檻の中の王子という話…」
騎士長「これで全てのつじつまが合うんだ。夢物語だが…、信じるしかない」
アサシン「…」
騎士長「そういえば、王子はどうしたんだ?俺は助かったが…」
アサシン「まさか、王子だったなんてね…」タハハ
騎士長「ん?」
アサシン「死んでたってよ…檻の中の人は。あんたを助けた彼女たちの話だ」
騎士長「!!」
アサシン「あんたにヒールがかかってたらしい。命を懸けて助けてくれたんじゃないのか」
騎士長「…っ」
アサシン「それにしても、まさか…黒髪幼女の親父さんが亡くなったなんて…」
騎士長「皮肉にも、これで俺の依頼は一応…」
アサシン「果たした…か。だけどね…」
騎士長「分かってる」
アサシン「…」
騎士長「…」
騎士長「はぁ、とりあえず水でも飲みに起きてっと…」ガタッ
ズズッ…カツーン…チャリンチャリンッ
騎士長「…ん?」
アサシン「なんだ?」
騎士長「なんか俺のポケットから落ちたぞ…」
…キラッ
騎士長「え、何だこれ…ブローチ?」チャリッ
アサシン「…ん~?」
騎士長「俺、こんなの知らないぞ」
アサシン「…なんか見た事あるような…。ちょっと見せてくれる?」
騎士長「うん?ほれ」ポイッ
…パシッ!
アサシン「…」
アサシン「…」
アサシン「…」
アサシン「…あっ!!!」
騎士長「ど、どうした?」ビクッ
アサシン「…どこでこれを!!」
騎士長「だから分からないって!」
アサシン「逃げた奴隷の中に…まさか…?」
騎士長「本当にどうしたんだよ」
アサシン「…私の話、覚えてるか?今までの成り行きとか全部」
騎士長「あ、あぁ覚えてるぞ」
アサシン「…あっ、あぁぁ!!」
騎士長「ん?今度はどうした!」
アサシン「あぁぁ…そ…そういう…こと…」
アサシン「だったのか…」フラッ
騎士長「…危ない!」ダッ
…ガバッ!!
アサシン「…」
騎士長「一体どうしたんだ。話が見えてこないぞ!」
騎士長「そのブローチは何なんだ?聞かせてくれ!」
アサシン「…ここじゃ話にくくなった。こっちにきてくれ…」
トコトコトコ…
騎士長「…?」
アサシン「…」
騎士長「…」
アサシン「…」
トコトコ…ピタッ…
アサシン「…」
騎士長「ここでいいんだな。一体何だ?」
アサシン「…」スゥゥ
アサシン「…はぁ」
騎士長「…」
アサシン「…このブローチはな、元々私のものなんだよ」
騎士長「ん?じゃあ、俺のポケットに間違って入れてたのか?」
アサシン「…違う、そういうことじゃない」
騎士長「ん~?」
アサシン「これはね…、私がかつて愛した男…」
アサシン「前に話をした、私の子と共に別れた夫に渡したものなんだ」
騎士長「…!?」
アサシン「…」
騎士長「ま、待てよ。それじゃ…逃げた奴隷の中に男が混じってたってか?」
アサシン「…違う」
騎士長「…?」
アサシン「よく考えてくれ!!」
騎士長「…」
騎士長「…!!」ハッ
騎士長「ま、まさか…」
アサシン「王子が助けていた奴隷の話…」
アサシン「母親の知らぬ子…。そしてこのブローチ…」
騎士長「…じょ、冗談だろ?」
アサシン「…」
騎士長「…王子の愛した女はお前だって…ことか…」
アサシン「…」コクン
騎士長「…じゃ…じゃあ…」
アサシン「…っ」
騎士長「お前は…黒髪幼女の…!!」
アサシン「…母親ってことに…なるね…」
騎士長「…~~っ!!!」
アサシン「ど、どうしよう…。どうしたらいいんだ…」ブルブル
騎士長「お、俺だってわからねえよ!」
アサシン「…打ち明けるべきなの…だろうか…」
騎士長「ま、待て待て落ち着け。その前に…」
アサシン「…」
騎士長「お前の…愛した男は…。王子は…」
アサシン「…死んだ…ね…」
騎士長「…っ!!」
騎士長「…くっ、くそぉぉぉ!!」ゴンゴン!!
アサシン「な、何してるんだ!」
騎士長「こ…こんな事なら…こんな事なら…!」
騎士長「"俺が死ぬべき"だった!!!」
アサシン「!!」
騎士長「俺を助けなければ、黒髪幼女は…幸せを取り戻せたのかもしれないのに!!」
アサシン「…ッ!!」
アサシン「ばっ…」ブルッ
騎士長「…?」
アサシン「バカなこと言うなぁぁっっ!!」ブンッ
…パァンッ!!
騎士長「いっ…!」
アサシン「に、二度とそんな事いうな!死んでいいなんて…二度と…!」
騎士長「だが俺は…!」
アサシン「過去は過去…そんな事を言うヤツは…嫌いだ!」
騎士長「…っ」
アサシン「黒髪幼女や、私の為に?二度と…そういう事も言うな…!」
騎士長「…」
アサシン「はぁっ、はぁっ…!」
騎士長「…す、すまなかった…」ソッ
アサシン「…触るな」パシッ
騎士長「…」
アサシン「今は一人にしてくれ。色々考えたいんだ」
騎士長「…分かった」
アサシン「…」クルッ
タッタッタッタッタッ…バタンッ…
騎士長「…」
騎士長「…」
騎士長「…俺の逃げ場は、どこかにないものか」
騎士長「一体俺は…何の為に…」クルッ
トコトコトコ…
騎士長「一人で始めた事。責任は俺。良かれとして思った事も無駄」
騎士長「…中途半端な正義のようなものだから、なのか」
騎士長「…一体俺は、何を言ってるんだろうな。偽善かな…」ハハハ
コトンッ…
騎士長「…ん?」
騎士長「何か…音がしたような…。気のせいかね…」
トコ…トコ…トコ…
騎士長「なんか、疲れた…」
…………
………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜・アルフの寝室 】
ホウ…ホウ…
黒髪幼女「…」スヤスヤ
騎士長(本当に子どもってのはよく寝るな)
騎士長(お前の親父はもう…いないんだと。どうして言えようか…)
騎士長(また、その寝顔を奪う事になるんだろう?俺のせいさ…)
…ゴトンッ!!
騎士長「ん…アルフが置いてってくれたのか?…酒か」
騎士長「夜風と酒。久々に…全てを忘れるくらい飲もう」
ガチャッ…バタンッ…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 テラス 】
サァァァ…
騎士長「…」グビッ
騎士長「月が綺麗だ」
…グビッ
騎士長「海が近いからか…潮風と…遠くに見える砂漠の砂煙…」
騎士長「大きな月が浮かびつつも、横を見れば森がある…」
騎士長「随分と遠くまで来てしまったなぁ、俺も」グビッ
トクトクトク…
騎士長「…すまない。ごめん」
騎士長「何て言えば許してくれる?俺はこれからどうしたらいい?」
騎士長「偶然が偶然を生む、運命か」
…グビッ
騎士長「だとしたら、これも運命か」
騎士長「重過ぎるよ…神様…」
カツ…カツ…カツ…
騎士長「ん…」ヒック
アサシン「…何、一人でぶつぶつ言ってるんだ」
騎士長「…アサシン」
アサシン「…」
騎士長「あ、あの…」
アサシン「いや、何も言わなくていい。それより…一緒に飲ませてくれないか」
騎士長「…グラスを持ってくるよ」
アサシン「持ってきてるよ」スッ
騎士長「準備がいいようで…注ぐよ」
…トクトクトク
アサシン「ありがとう。…んっ…」グビッ
騎士長「…」
アサシン「…ふぅ、美味しいね」
騎士長「…」
騎士長「アサシン…あのよ…昼間はゴメンな」
アサシン「私も、昼間はすまなかった。殴ったり…触るなとか…」
騎士長「いいさ。俺も悪かった」
アサシン「肩、貸してくれ。砂漠と違って…よく冷えるねここらの夜は」トン
騎士長「そうだな…」
…サァァァ…
アサシン「…」
騎士長「…」
アサシン「あんたは…これからどうするつもりだ?」
騎士長「親父探しの旅は終わった。…今はそれしか思い浮かばない」
アサシン「王子の事、親父の事は…言うつもりか?」
騎士長「決めてないな…」
アサシン「そうか。私も…母親と言おうか迷ってるんだ」
騎士長「…」
アサシン「一人の時間、ありがとう。おかげで落ち着けたよ」
騎士長「…追いかけても、言葉が見つからなかったからだ」
アサシン「ふふ…本当に素直でいい男だねアンタは…」
…カランッ…グビッ…
騎士長「別に…。俺は、いつも思った通りに走ってきて、今もこうしてしゃべってるだけだ」
アサシン「…それでいいと思うよ」
騎士長「…」
騎士長「…アサシン」
アサシン「何だ?」
騎士長「改めて謝りたい。お前の…愛した男を…」
アサシン「…」スッ
騎士長「…むぐっ…」
アサシン「…それ以上は、言わなくてもいい」
騎士長「…」
アサシン「過去は過去。確かに今日の事はショックだった。けどね…」
騎士長「…」
アサシン「後ろを振り向いていても仕方がないのは、あんただって分かってるはずだよ」
騎士長「アサシン…」
アサシン「…ひどい女だよね」
騎士長「…」
アサシン「傷ついた私を助けてくれて、ずっと黒髪幼女を育ててくれて…」
アサシン「アイツもさ…こんなくだらないブローチをずっと持ってて…!」
アサシン「久々に話を聞いたら、傍にいたのにもう死んじゃってて…」
騎士長「…うん」
アサシン「それなのに、私は過去を振り返らないとか言ってさ」
アサシン「あの王子も…嫌な女に引っかかっちゃったねぇ!」アハハ
騎士長「…そうかもな」
アサシン「あはは…は…」
騎士長「…」
アサシン「…う、うぅ…」グスッ
騎士長「…」
アサシン「うぅぅ…う~…!」ポロポロ
騎士長「…」ギュッ
アサシン「うぅぅ…うあぁ…」グスグス
騎士長「…」
アサシン「…ひっく…うう…」
騎士長「…」
アサシン「うぅ…騎士長…っ」
騎士長「いいさ。泣けばいい」
アサシン「ありがとう…」
騎士長「今宵は…飲もう。いつまでも付き合うからな」
アサシン「うん…」
………
……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日・居間 】
騎士長「…」パクパク
黒髪幼女「…」モグモグ
アルフ「…」グビッ
アサシン「…」ゴクンッ
4人「…ご馳走様でしたっ」パンッ
アルフ「片付けはやるよ。団欒な食事は何だかんだで楽しいもんだな」
黒髪幼女「私も手伝うっ」
アルフ「お?そうか、じゃあお皿持ってきてくれるかな~」
黒髪幼女「うん♪」
トテテテ…
騎士長「アサシン、ちょっと」
アサシン「うん」
トコトコトコ…ストン
騎士長「…一晩寝て、じっくり考えたんだ」
騎士長「俺は決めた。黒髪幼女に伝える」
アサシン「…いいのか」
騎士長「ずっと行方不明にする手も考えた。だが、真実を教えたほうがいいと思ったんだ」
アサシン「…」
騎士長「今日、改めてナイフの回収と遺体を見せたい」
騎士長「お前は…どうする」
アサシン「…」
騎士長「酷なことだとは分かってる。どれが正解かすらも俺は分からない」
騎士長「だけど、俺は俺の道を行く。そう言ったはず…、俺は黙っていることなんて出来ない」
アサシン「じゃあひとつ聞くよ。あの子はどうするつもりだ?」
騎士長「え?」
アサシン「もう親父がいない世界で、頼れるのは誰だ?」
騎士長「…」
アサシン「あんただ。短い間かもしれないけど、誰よりも今は、騎士長を信頼している」
騎士長「…」
アサシン「面倒を見れるのか?その責任は出来るのか?」
騎士長「だ、だけど…黙っていてもその間の面倒は俺が見るだろう」
アサシン「そういうことじゃない。親父がいなくなったという世界を知って、その面倒も見切れるかということだ」
騎士長「…あ」
アサシン「確かに、生活という面倒は見れるだろう。幸い、金にも不自由しない男だ」
アサシン「もし伝えたら、それは"人生の面倒"も見る事になるんだよ?」
アサシン「あの子の依頼の"殺して"は、本当の思いじゃないこと…騎士長も分かってるだろう」
騎士長「…じゃあ逆に聞きたい。お前は、母親としてどうするつもりだ」
アサシン「…わ、私か」
騎士長「…」
アサシン「…」
アサシン「え、偉そうなこと言ったけど…ゴメン。それは分からないよ…」
騎士長「なぁ…アサシン。親を一生見れないまま過ごしてきた俺にとってさ…」
騎士長「親の最後を見届けさせてやりたいと思う。必ず、大人になって"最後に見れて良かった"と思うんだ」
アサシン「…」
騎士長「親のいない俺にとって、そう思うだけだから…どうにもこうにもだがな」
アサシン「…あの、さ」
騎士長「ん?」
アサシン「もし…私が、あの子の母親だって言って…」
アサシン「受け入れられると思うか…?」
騎士長「受け入れられるか…か」
アサシン「…あの子はまだ幼い子供だ」
アサシン「父親が死に、目の前に急に現れた母親。壊れてしまいそうで…怖い」
騎士長「…」
アサシン「私だって本当は言いたい。だけど、だけど…!」
騎士長「…」
アサシン「まだ決心はつかないんだよ…」
騎士長「お前は…自分の決心がつくまで、言わないほうがいいと思うよ」
アサシン「…かもね」
騎士長「それと…前も言ったが話はいくらでも聞く」
騎士長「黒髪幼女が壊れることも…、お前が壊れてしまうことも…」
騎士長「今の俺にとって、どっちも"大事な人"なんだ」
アサシン「騎士長…」
騎士長「とにかく、俺は親父と伝える。だが、今は王子だったとは伝える気はない」
アサシン「王子とは伝えないのか?」
騎士長「王家の人間だというのは、さすがに重いと思うんだ」
アサシン「…」
騎士長「それは刻が来たら、伝えるべきだと思う」
アサシン「そうだね…」
トテテテテ…
黒髪幼女「騎士長、皿洗い終わったよ!」
アルフ「3枚ほど割られたけどね…」トホホ
騎士長「はっはっは、サービスみたいなもんだ。こんな可愛い子と皿洗いできる、それだけで金払いモンだろ!」
アルフ「ははは!そうかもな!」
騎士長「さて…、冗談はさておき。全員がそろったところで、話がある」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 屋 敷 】
ゴォォォ…サァァ…
アサシン「…本当にでかい屋敷だね。廃墟とは思えないよ」
騎士長「昨日までアジトだったわけだしな、廃墟とはいえないな」
黒髪幼女「大きい~!私も来てよかったの?」
騎士長「もう敵はいないし、ちょっと付いてきてほしくてな」
黒髪幼女「ん~?わかった」
アサシン「…」
騎士長「さてとアルフ、どこかにナイフはあるはずだから…」
騎士長「すまないが探索は一人で頼むよ。俺らはすることがあるんだ」
アルフ「わかった。面白いものもありそうだし、調べてみる」
騎士長「ナイフがあったり、探索が終わったら、地下へ頼む」
アルフ「了解した」
騎士長「…アサシン、黒髪幼女。こっちだ」クイッ
アサシン「う、うん」
黒髪幼女「?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 地下室 】
騎士長「二人とも、マスクだ」スッ
黒髪幼女「ありがとう」
アサシン「ひどい臭いだ…。薄暗くて…湿っぽい…」ゴホゴホッ
騎士長「ここの牢に、何人もの奴隷がつめられてた」
騎士長「…助け出せて、本当に良かったと思う」
アサシン「その人たちに代わって、私がお礼を言うよ。ありがとう」
騎士長「いいさ」
トコ…トコトコトコ…
アサシン「…」
騎士長「…」
黒髪幼女「…」
トコトコトコ…ピタッ
騎士長「ここだ」
黒髪幼女「わっ、また扉」
アサシン「ここに…いるのか…」
黒髪幼女「…??」
騎士長「さ、あけるぞ…」
ガチャッ…ギィィィィ…
騎士長「この奥の牢にいる」
アサシン「…」
黒髪幼女「何がいるの?」
カツカツカツ…カツカツ…カツンッ…
騎士長「…ここだ」
アサシン「…っ」
黒髪幼女「ここに何かあるの?」
黒髪幼女「あっ…誰か倒れてるよ!?」ダッ
騎士長「…」
アサシン「…」
黒髪幼女「…助けてあげようよ!騎士長!」
騎士長「黒髪幼女…」
黒髪幼女「この牢、開かないの?騎士長、助けてあげてよ!」
騎士長「…っ」
アサシン「…こ、この目で見るまでは信じられなかった」
アサシン「信じたくなかった。で、でも…紛れもない…よ。分かるんだ…暗くても…」ブルッ
騎士長「アサシン…」
黒髪幼女「騎士長、どうしたの?…騎士長!助けないと!」
騎士長「すまん…すまん…。黒髪幼女…」ドクン
黒髪幼女「騎士長?どうして謝るの?」
騎士長「…っ」
ドクン…ドクン…ドクン…
アサシン「い…いえないなら…私が代わりに…」
騎士長「いや、ダメだ。この依頼は俺が受けたから…俺が言う」ドクンドクン
アサシン「…」
黒髪幼女「…?」
騎士長「…っ」
ドクンドクンドクンドクンドクン…ッ!!
黒髪幼女「…騎士長…?」
騎士長「そ、そこにいるのはな…」
ドクッドクッドクッドクッドクッ…!
騎士長「黒髪幼女。お、お前の…」
黒髪幼女「うん」
ドクンッ…
騎士長「お父さんだ…っ」
騎士長「もう…生きては…いない…!!」
黒髪幼女「――…!」
騎士長「す…すまない…っ!!」
騎士長「本当にすまない…すまない…!」ガクッ
騎士長「お前のお父さんは、俺の代わりに、俺を助けて…死んだんだ…!」
騎士長「俺を殴ってもいい。殺してもいい!!」
アサシン(騎士長の心が…零れた…!)
騎士長「確かにお前の依頼は、親父を殺してほしい事だった。だけど、それは…」
騎士長「分かってる!!分かってたんだ!!くそぉぉぉ…!!」グスッ
黒髪幼女「…」
騎士長「何が大人の責任だ、偉いことを言っても…これだ!」
騎士長「こうやって大声で、涙を流して、自分に言い訳をしている!!」
騎士長「ごめん、何度謝れば許して貰えるか、心の奥底できっと考えてるんだ!」
騎士長「こんな状況でも、俺は俺のことしかー…!!」ポロポロ
黒髪幼女「…」
トコ…
トコトコ…トコトコ…ギュウッ
騎士長「…っ」
黒髪幼女「騎士長…泣かないでよ…」
騎士長「えっ…?」
黒髪幼女「いいの、いいのから…」
騎士長「く…黒髪幼女…?」
黒髪幼女「どこかで…私、こんな気がしてた…。それだけだけ…」
騎士長「…~~!!」
黒髪幼女「今はね…騎士長がね…。泣く事はないんだよ…」ヒクッ
黒髪幼女「ごめんなさい…私のせいで…。私が悪いんだよぉ…」グスッ
騎士長「違う…!お前は悪くない…!」
黒髪幼女「うぅぅ…っ。大丈夫だから私は…だからぁ…」ポロポロ
騎士長「…っ」グイッ
ギュウウウッ…
黒髪幼女「ひくっ…うっ…」
騎士長「うぅぅ~…!」
アサシン「…っ」ポロポロ
…………
………
……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
黒髪幼女「…でね、また騎士長に助けてもらったの」
黒髪幼女「怖かったけど、騎士長を見たら安心しちゃった。洋服も買ってもらったんだ!」
黒髪幼女「でね、それでね…お父さん、私ね…」
王子「…」
騎士長「…」
アサシン「…」
騎士長「俺が…思っていたより、ずっとずっと黒髪幼女は大人だったってことなのかな…」
アサシン「それは違うと思うよ」
騎士長「え?」
アサシン「この旅の中で、黒髪幼女も成長してきたんだ」
アサシン「子供の成長ってのは…驚くほど早いんだって。そうなんじゃないかな」
騎士長「…」
アサシン「もう、幼くなんかない。立派な少女だよ」
騎士長「…」
騎士長「黒髪少女、か」
アサシン「こうして大人になっていくんだ…。実感はないけど、親として…喜ぶべきなんだろうね」
騎士長「そうだな…」
トコトコ…
黒髪幼女「…騎士長」
騎士長「…終わったか?」
黒髪幼女「うん。ありがとう…教えてくれて。言いたい事、全部伝えたよ」
騎士長「あぁ…」
黒髪幼女「でも…、私、これからどうしたらいいのかな」
騎士長「…」
黒髪幼女「お父さんはいなくなって、お母さんもいなくて…。一人で生きていけるのかな」
騎士長「…」
アサシン「…っ」
黒髪幼女「騎士長、教えて…。私、どうすればいいんだろう」
騎士長「…全てが終わったら、お前に話がある」
黒髪幼女「え?」
騎士長「それまでは待ってくれ。まだ、全てが終わったわけじゃないんだ」
黒髪幼女「…うん」
カツンカツンカツン…ガチャッ!!
アルフ「おーい!あ、いたいた」
騎士長「アルフ…」
アルフ「ナイフは見つけたんだが、それ以外にめぼしいものはなかったよ」
アルフ「まぁナイフだけでも無事に取り戻せてよかったよ」
騎士長「それで、飛行機は動くんだな?」
アルフ「問題ない。時間だけ貰えれば、夕方には動くぞ!」
騎士長「よし…」
アサシン「…」
騎士長「…王都の中枢を潰さねば、黒髪幼女…いや」
騎士長「"黒髪少女"と砂漠の民に、明日はない…決めた。俺は王都を潰す…」
騎士長「それが俺に課せられた使命なんだと、そう思う!」
黒髪少女「え、今…私のことを何て?黒髪…少女…?」
騎士長「ん…あぁそうさ。もう、お前は幼くはない。大人への一歩を踏んだと思う」
黒髪少女「…!」
騎士長「これからは"黒髪少女"だ。勝手につけたが…どうだろうか」ハハ
タタタッ…ダキッ!!
騎士長「うおっ」
黒髪少女「ありがとうっ、騎士長っ…」
騎士長「ははっ…気に入ってくれたなら嬉しいよ」ナデナデ
黒髪少女「…うんっ」
アサシン「最終決戦に向けてはいいんだが…」
アサシン「私たちがココを離れるとすると、遺体は…どうするんだ…?」
騎士長「あぁ、それに関してなんだが…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ボォォォッ…ボォンッ!!パチパチ…
バキバキッ、モクモク…ゴォォォ…!!!
騎士長「この屋敷には、呪いがある」
騎士長「全てを無に返して、空高く供養してやりたいと思っていた」
アサシン「それがいいね…賛成だよ。束縛された魂も、炎と一緒に消えると思う」
アルフ「…」
黒髪少女「…」
騎士長「王子…。あとは俺たちがやる。あんたは…見守っててくれ」
黒髪少女「お父さん…。また、会おうね…」
アルフ「俺には分からないが、ただ黙祷を捧げるよ」スッ
アサシン(…あの世で会えたら、また抱きしめてやるよ)フフ
ボォォォ…ゴゴゴ…
バキバキッ…ゴォォ
ボォォ……
……
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 アルフのカラクリ倉庫 】
ガラガラッ!!
アルフ「さて、ナイフは本当にご苦労だった。あとは俺の仕事だ!」
騎士長「任せるぞ」
アルフ「恩としてしっかり返すさ、待っててくれよ」カチャカチャ
騎士長「わかった。じゃあ俺たちはどうするかなぁ」
アサシン「なぁアルフ、この近くなら…敵も出ないのか?」
アルフ「そこまでは出ないはずだ」
アサシン「じゃあキッチンを借りる。あと、丘とかないかな?」
アルフ「丘?」
アサシン「あぁ。例えば、砂漠地方が見渡せるとか」
アルフ「それなら旧街道の曲がり道があったと思うが、そっち側にいけばある」
アルフ「度々行くが、綺麗な場所だぞ」
アサシン「ありがとう」クルッ
騎士長「何するつもりだ?」
アサシン「まぁまぁ。あんたも手伝って…黒髪少女もちょっと来て!」
黒髪少女「どうしたの?」
アサシン「まぁいいから!」グイッ
黒髪少女「わわっ」
騎士長「うおっ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 キッチン 】
アサシン「~♪」
黒髪少女「何するの?」
アサシン「ふんふん♪黒髪少女にプレゼントー!」スッ
黒髪少女「なぁにこれ?」
アサシン「私が作ったエプロンだよ。私とおそろいなんだ、ほらっ!」
黒髪少女「!」
アサシン「き、気に入るといいんだけど…」
黒髪少女「可愛い…、ありがとうっ」
アサシン「…良かった」ニコッ
騎士長「で、本当になにするんだ?」
アサシン「保存食とか、余ってたのあるし。時間もあるだろう?」
騎士長「まぁ」
アサシン「お弁当作って、ちょっとした休息しに丘に行こうよっ」
騎士長「…」
アサシン「…だめか?」
騎士長「楽しそうじゃねえか!俺も混ぜろよ!」
アサシン「あ、当たり前だろう!」
黒髪少女「お姉ちゃん、お料理できるの!?」
アサシン「なんだいその意外そうな顔は」
黒髪少女「そ、それはその~…」
アサシン「…私の華麗な腕裁きをよーく見るんだね。黒髪少女に、料理を教えてあげるよ」
黒髪少女「!」
アサシン「ほら騎士長、男はさっさと食材運ぶ!洗う!」バンッ
騎士長「ひ、人使いが荒いぞこの!」
アサシン「はっはっは、ほらほら!」
騎士長「ひ~っ!」
タッタッタッタッ…ドタドタ…
アサシン「黒髪少女、まずは手を洗う。包丁は切れやすいから気をつけるんだよ」
黒髪少女「う、うん」ゴシゴシ
アサシン「ふふっ」
黒髪少女「お姉ちゃん…私に料理、少しでいいから教えてほしい」
アサシン「だから教えるって。改まってどうしたんだ?」
黒髪少女「いっつも騎士長に守られて、お世話になってるのに…」
黒髪少女「何もお返しできてないから。せめて、少しでもお返ししたい」
黒髪少女「勿論、お姉ちゃんにもっ!」
アサシン「~っ…」ブルッ
アサシン「いい子だなぁぁ黒髪少女ぉぉ~!」ダキッ
黒髪少女「わわっ」テレッ
ドタドタドタ…ドンッ!!
騎士長「ほら食材だ!!」
アサシン「うるさいな…今、黒髪少女との愛をはぐくんでいたんだから!」
騎士長「ぐ…この…」ブルブル
アサシン「何か文句があるのかな?」キラッ
騎士長「ほ、包丁はずりぃぞ!くっそ~、覚えてろ!」ダッ
タッタッタッタッタ…
アサシン「あっはっはっは!」
黒髪少女「…」クスッ
アサシン「…!」
黒髪少女「…あっ」
アサシン「今、笑ったね」
黒髪少女「う…うん…」
アサシン「可愛いよ。あんたの笑顔」ポンッ
黒髪少女「…」
アサシン「今度は、そんな小さな笑みだけじゃなくて…もっと全力で笑ってみなよ」
黒髪少女「…」
アサシン「でも私にじゃない。誰よりも、あんたの笑顔を待ってるのは…騎士長だからね!」
黒髪少女「…うんっ」
アサシン「さ、騎士長のために料理を教えるよ!」
黒髪少女「が…がんばるっ」
アサシン「まーずは簡単な、お弁当の定番の卵焼きから…」
………
……
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 付近の丘 】
ザッザッザッザ…ガサガサッ
ガサ…ガサガサ…バッ!!
アサシン「ふぅ、やっと街道を抜けたね。この辺が丘になってるはずだけど…」
騎士長「お…おぉ…!」
アサシン「ん?何か見えたか?」ヒョイッ
騎士長「…前、見ろよ!」
アサシン「お~!」
黒髪少女「わぁ…!」
バサッバサッ…チチチ…
サァァ……!!
黒髪少女「すごい…綺麗…!」
アサシン「何て素晴らしいんだ…」
騎士長「なぁ…黒髪少女、覚えてるか?」
黒髪少女「何を?」
騎士長「俺が前に言った、世界は広いんだってこと。見ろ…これでも世界の1%にもならないんだぞ…」
黒髪少女「…っ!」
騎士長「すげえだろ…ワクワクするだろ!?」
黒髪少女「うん!」
アサシン「ほいほい、景色に感動してるところ申し訳ないですけど」パンパン
アサシン「お弁当を作ってきたので、ここで食べましょう~」
騎士長「おっ、そうだ。アサシンと黒髪少女が作ったんだっけ?」
アサシン「今開けてあげるよ」ゴソゴソ
…パカッ
騎士長「!」
黒髪少女「…」ドキドキ
騎士長「お~美味そうだ!」
アサシン「これは2段重ねになってて、1段目は、おにぎりだけど…」
騎士長「2段目に、おかずか」
アサシン「そういうこと。ほらっ!」パカッ
黒髪少女「…」ワクワク
騎士長「うお~!こっちも美味そうだ!」
アサシン「それでね…ほら、黒髪少女」ポンッ
黒髪少女「う、うん」
騎士長「どしたの?」
黒髪少女「こ、これね、私が作った卵焼き。騎士長に…」
騎士長「俺にか!?」
黒髪少女「う…うんっ。初めてだから分かんなかったけど、お姉ちゃんが教えてくれたの」
騎士長「…」チラッ
アサシン「大丈夫だよ!私が見てたから味も保障する」ボソボソ
騎士長「そうか」ボソボソ
黒髪少女「?」
騎士長「さ、んじゃ…黒髪少女。食べさせてくれ」アーン
黒髪少女「!?」
騎士長「…」アーン
黒髪少女「え、えっと…」オロオロ
騎士長「…」アーン
黒髪少女「え、えいっ!」グイッ
騎士長「もがっ!」
アサシン「…」プッ
黒髪少女「お、美味しい…?」
騎士長「…」モグモグ
…ジャリッ
騎士長「!?」
黒髪少女「…」ドキドキ
騎士長(し、塩の塊が…!アサシン…だ、騙したな…!!)ギロッ
アサシン「…ぷ…くく…」ブルブル
黒髪少女「騎士長?」
騎士長「うん…すっげぇ塩味効いてて美味いぞ!どうやって作ったんだこれ!?」
黒髪少女「よかったぁ」ホッ
騎士長「それと、す…少し喉が乾いたな。歩いてきたからかなー?お、お茶もくれるかな」
黒髪少女「あ、うんっ」
クルクルクル…キュポンッ、トクトクトク…
騎士長「…」ヒョイッ、グビグビ
騎士長「ぷはぁっ…!」
騎士長「うん、黒髪少女…おいしいぞ、もう1個もらおうかなー…って」ハッ
黒髪少女「そうだ…私も自分で作ったの食べてみようかな」ヒョイッ
騎士長「!」
アサシン「!」
黒髪少女「…」アーン…
騎士長「ストップゥゥ!!」ビシッ!!
黒髪少女「?」ピタッ
騎士長「アサシンがすっごい食べたいって顔で見てるぞ!食べさせてあげようぜ!」
騎士長「もう1個は俺が食べたいな~?なぁ~?」
黒髪少女「そうなんだっ!じゃあ…はいっ!」スッ
アサシン「え゛っ」
騎士長「よかったなぁ、アサシン」ニコッ
アサシン(き~し~ちょ~う~!!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 しばらくして 】
プハァッ!!カチャカチャ…
騎士長「あ~…満腹…」ゴロン
アサシン「お粗末さまでした」
黒髪少女「うん…おなかいっぱい…」ゴロンッ
騎士長「いい天気だな~…」
チチチ…サァァ…
黒髪少女「…うん」
アサシン「こーら、二人して…食べてすぐに横にならない!」
騎士長「でもよ~、美味しいモン食って…いい天気で…、草のいい匂いで…」
騎士長「横になるなってほうがおかしいだろう~」
アサシン「子供かアンタは!」
騎士長「もー今は子供でもいい~」
ゴロゴロゴロ…
アサシン「あ、そっちは黒髪少女が…」
…ゴチンッ!!
騎士長「あいたぁあ~!」
黒髪少女「~~~っ!」
アサシン「言わんこっちゃない…」ハァ
騎士長「すまん…、だ、大丈夫か!」
黒髪少女「…」
騎士長「お、怒った?顔あげてくれないかな~…」
黒髪少女「…」プイッ
騎士長「泣いてる?怒ってる?黒髪少女さ~ん…」
アサシン「あ~あ、しーらない」
騎士長「ぐぬ…、黒髪少女さーん!本当にすいませんでしたぁ!」バッ
黒髪少女「…」
騎士長「…?」
…ソッ
黒髪少女「騎士長…」
騎士長「…?」
騎士長「…」
騎士長「…!!」
黒髪少女「騎士長って、本当にドジだね…」
黒髪少女「でも、いつも助けてくれて…ありがとうっ…」ニコッ
騎士長「…お、おぉ…」
アサシン「…ふふっ」
騎士長「黒髪少女…お前…」
黒髪少女「…えへへ」
騎士長「…」
アサシン「騎士長、何とか言ってあげたら」
騎士長「よ…良かった…」
黒髪少女「…」
騎士長「お前の…笑顔…。本当に可愛いよ…黒髪少女…っ」グイッ
ギュッ…ギュウウッ…
黒髪少女「騎士長、痛いよ…でも、あったかい…」
騎士長「…っ」
アサシン「良かったね、騎士長」
騎士長「あぁ…良かったよ…!本当に…!」
………
……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夕方・アルフの倉庫 】
グイッ…ブルンッ!!ブルンブルンッ!!!
…ガオォオォオオ!!!ビュウウウウウゥゥッ!!!
騎士長「うるせええ!」
黒髪少女「うっぷ…凄い風…!」
アサシン「完成したんだね!?」
アルフ「あぁ、完成した!お前たちのおかげだ…ありがとう!」
騎士長「これが飛行機か…」
アルフ「動力部分のカラクリの生み出すエネルギーは計り知れず、空へと浮遊する際に…」
アルフ「そのパワーは、魔石に組み込まれたユニット部分が導線部分で接触し…」
騎士長「わけわかんねぇけど!!これで王都までいけるんだな!」
アルフ「そ…その通りだ」
騎士長「…山を越え、海を越え、砂漠を駆け抜けて森へ迷い込み…」
騎士長「俺と黒髪少女の旅はついに…空まで来たかぁ!!」ハッハッハ
アルフ「どうするんだ?もう発進は出来るが」
騎士長「明日の早朝に出発したい。出来れば日の出前に」
アルフ「いいが…、今じゃなくてもいいのか」
騎士長「日の出前にこっそりと王都へ戻りたい。目立つことはしたくないんだ」
アルフ「なるほどな」
アサシン「じゃあ今日は、アルフの家でまた一泊か?」
騎士長「最後の晩餐にならなきゃいいんだが…、お世話になるぜ、アルフ」
アルフ「構わん。俺も…お前らといれて楽しかった」
騎士長「ははっ、そう言ってもらえるとありがたいよ」
アサシン「じゃあ今日は、出発前のお祭りといこうか!?」
騎士長「いいね!」
黒髪少女「お祭り!?」ウキッ
アルフ「楽しそうだ」フッ
アサシン「美味しい物、また私も腕によりをかけて作るよ!」
アルフ「じゃあ俺は森の幸を使った、美味しい物を用意しよう!」
黒髪少女「私も手伝う~!」
騎士長「俺は待ってる!酒飲みながら!!」ワーイ
ゴツッ…ドサッ!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜 】
騎士長「それじゃあ…明日の無事を祈って…」ズキズキ
アサシン「かんぱーい!」
アルフ「かんぱーい!」
黒髪少女「かんぱあーい!!」
騎士長「乾杯!!」
…カァンッ!
騎士長「…さぁて食べるぞぉ!」
アルフ「俺の特製サラダだ。美味いぞ、香料が決め手だ」
黒髪少女「美味しいよ、アルフのおじちゃん」モグモグ
アルフ「可愛いなぁぁ黒髪少女は!」
騎士長「はは…」
アサシン「騎士長、私のも食べてよ!」
騎士長「わかったわかった!」
アルフ「こっちの飲み物は?」グビグビ
アルフ「…うめぇ!」プハッ
アサシン「それはシャイさ。それに酒を加えてみたんだ」
騎士長「シャイ?お前シャイじゃないじゃん」
アサシン「そういうことじゃないっての。シャイっていうのは紅茶のことだよ」
騎士長「ああ!じゃあ、紅茶酒って感じか」
アサシン「そうそう。美味しいよ」グビッ
騎士長「それ俺も飲む!」
アサシン「ふふ…はいはい。慌てないの、私のあげるから」スッ
騎士長「んむ…」グビグビ
黒髪少女「アルフのおじちゃん、この甘いジュースはなに?」グビグビ
アルフ「森で採れる、妖精の蜜を煮込んで作ったジュースだよ」
黒髪少女「美味しいっ」プハッ
アルフ「妖精の蜜は中々見つからないんだがね、今日は特別サービスさ」ハハ
黒髪少女「うん、ありがとう」ニコッ
アルフ「可愛いなぁぁ!」
…モグモグ
騎士長「これ本当に干し肉か?すっげー美味いんだけど」
アサシン「肉々しい感じだろ?秘伝のレシピさ」
騎士長「すっげー表現だな、肉々しいって」
アサシン「美味いんだからいいだろ!」
騎士長「まぁそうだけど。ほら、コップ出せ…俺の酒、注いでやる」スッ
アサシン「ありがとっ」
トクトクトク…
アサシン「うん、美味しい…」グビグビ
騎士長「…」モグモグ
アサシン「…ふふっ」
騎士長「どうした?」
アサシン「見てみなよ、黒髪少女。きっと、本心から楽しんでる」
黒髪少女「おじちゃん、騎士長にもあげようよ」
アルフ「参ったなぁ、あとは俺の分だったんだけど…。待ってろ!」
ワイワイ…カチャカチャ…モグモグ…
騎士長「…うん、楽しそうだ」
アサシン「私の娘…か」
騎士長「そうだぜ。誰よりも、可愛い娘だ」
アサシン「ふふ…。その時が来たら、必ず打ち明けるよ…」
騎士長「んっ。当然だ」
アサシン「…今は、この幸せの時間に浸っていたい。我侭だね」
騎士長「人間、そのくらいの我侭でいいと思うけどな」グビグビ
騎士長「俺なんて、どんなにカッコイイ事言っても…所詮は欲望に勝てない」
騎士長「流されるし、中途半端だし、弱い。だけど…」
アサシン「…」
騎士長「どんな中途半端でも、偽善だといわれても…」
騎士長「人を助けたいとか、守りたいって気持ちがあるほうが重要だと思ってる」
騎士長「って、俺の話になってるな。わるいわるい」
アサシン「ふふ、いいさ。その通りだ」
アサシン「だけど、そんなおアンタに救われてる人間がいるんだから…自信もちなよ」ドンッ
騎士長「…ありがとよ」ハハ
…タタタタッ
黒髪少女「騎士長、妖精蜜のジュースだよ」
騎士長「おぉ!ありがとう、美味しく頂くよ」
黒髪少女「♪」
アサシン「幸せかぁ…」
………
……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜明け前 】
ガルン…ガルン…グオォォォン!!!!
アルフ「よし、これで準備は終わった」
騎士長「これで飛べるのか?」
アルフ「いつでも大丈夫だ。先頭には俺が乗って、操縦全般は任せてもらう」
騎士長「当たり前だ。俺らじゃ無理だろう」
アルフ「前に2人、後ろに2人。順番は任せる」
騎士長「黒髪少女はアルフと前方がいいな。じ…事故とか危ないだろう」
アルフ「人の設計を信じろよ」
騎士長「未だに空を飛べるなんて深くは信じられないがな…」
アルフ「まぁいいさ。飛んでから驚けばいい、黒髪少女は俺の後ろに座ってくれ」
黒髪少女「うんっ!」
アルフ「可愛いなぁぁ!」
騎士長「んじゃ俺とアサシンは後ろ。俺が一番後ろでいいよ」
アサシン「わかった」
トコトコ…ストン
騎士長「なんかすっげー怖いんだけど」
アルフ「信じろっつーの!」
ブルン…ブルンブルン!!!
騎士長「…」ビクビク
黒髪少女「…」ドキドキ
アサシン「…」ワクワク
アルフ「発進!!」グイッ
ガォン…ガォンガォンガォン…ガォォォオオォォン!!!!
ギュウウウンッ…!!
騎士長「おっ、走り始め…って、おいっ!」
アサシン「うわっ!」
騎士長「頭さげろぉ!!」
黒髪少女「きゃああっ!」
ガオオオオォォォオオォォッ…!!!!!
ガサガサガサ!!!バキバキッ!!
騎士長「いででで!!お前、なんで森ん中突っ走ってるんだよ!!!あだだぁ!!」バサバサ!!
アルフ「このまま森を突き抜けて、向こう側の丘から飛びたつぞぉぉ!」
騎士長「聞いてねぇぞちくしょぉぉ!」
アルフ「短距離でも、もっと瞬時に空へ飛びたつカラクリがあればいいんだがな~」
バサッ…バキッ、バサバサバサッ!!
騎士長「悠長なこと言ってる場合かよ!!」
アルフ「あ、そうか。地面に瞬時にスピードを出すカラクリを入れて…カタパルトと名づけて…」ブツブツ
騎士長「うおおおい!話聞けコラァァ!本当に大丈夫なんだろうな!」
アルフ「安心しろ!もうすぐ森を抜けて、丘から飛びたつぞ!」
騎士長「ぐぐっ…!」
バサバサバサッ…!!
……パァ…ッ!!!
騎士長「おっ…!」
アルフ「抜けた!ここでカラクリパワー全開!!」グイッ!!
ブルブルブルブルッ…ガオオオオォォォッッッ!!!!
アルフ「飛べーーーっ!!」
ガオォォォオオオ…バァンッ!!!
騎士長「と…飛んだ…?」
アサシン「とんだの…?」
黒髪少女「…!」
…ヒュッ、ヒュウウウウッ!!!
騎士長「飛んでねえええ!」
アサシン「おっ、落ちてるぅぅ~~っ!!」
アルフ「翼の向きを調整!パワーを微調整!レバーオン!」
ブルンブルンブルンッ…ブオオオオオォォン!!
騎士長「おっ…?」フワッ
アサシン「えっ、今なんか体が…浮いたような…」
黒髪少女「ち、違う…本当に浮いてる!!」
ブォォォオオオン…!!!ギュウウウゥゥン!!
アルフ「はっはああーーー!!どうだこんちくしょーー!!」
騎士長「すげえ…アルフ、空、飛んでるぞ!!!」
アサシン「し…信じられない…」
黒髪少女「凄い!!」
騎士長「まじかよ…、本当に…」
アルフ「はっはっはっはっ!当たり前だぁぁ!」
騎士長「やるじゃねえかアルフ、本気で見直したぞ!!」
アルフ「なんだ見直すって」
騎士長「まぁいいじゃねえか!」
アルフ「ふっ、じゃあ…目指すは雲!高度上昇だぁ!!」ググッ
…ブゥウウオオオォォォン!!!!
騎士長「うおおっ、あがってく!」
黒髪少女「雲が…近づいてくる!」
アサシン「雲をこんな目の前に…っ!」
騎士長「って、このままだと…く、雲にぶつかー…!」
…ブワッ!!!
騎士長「うぷっ!」
アルフ「どうだ、雲を触ったのは俺らが世界で最初だぞ!」
騎士長「真っ白で何も見えねぇよ!つーかなんか冷たい!!」ビチャビチャ
黒髪少女「フワフワしてると思ったけど、霧みたいだね…!」
アサシン「なんだこれ、水!?」
アルフ「そう、雲は水の塊みたいなもんなんだって話を聞いたことはあった!」
アルフ「こいつが重くなると、やがて雨になる。俺らがこうしたことで、研究も進むかもしれんな!」
騎士長「すげえ…すげぇよ…」
アルフ「どのルートを通る!?」
騎士長「この飛行機はいつまで飛べるんだ?」
アルフ「魔石の魔力が続く限りいくらでも飛べる!後ろの袋にたんまり積んであるから安心しろ!」
騎士長「じゃあ、日が明ける前に王都の手前の街道まで向かってくれ!ルートは任せる!」
騎士長「王都に直接突っ込むのは不味い、さすがに噂になっちまう!」
アルフ「了解した!…旋回する、捕まってろ!」
ガオォォォッ!!!グウウゥゥゥン…
騎士長「ぬぐぐ…」
アサシン「きゃーっ、きゃーっ!!」
黒髪少女「お、落ちる~!」
アルフ「大丈夫だっつーの!さあさあ、カラクリ全開!!」グイッ!!!
ガオオオオォォォッ!!!!!グウウオオオオォォオオオン!!!!!
ビュウウウウゥゥ……!!!!
ウゥゥッ………!!!
………!
……
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数時間後 】
ガオォォオン…
アルフ「王都の前の、街道が見えた!」
騎士長「な、何て早さだよ…」
アルフ「もう日明けか…、その前に着陸するぞ!」
騎士長「着陸はどうするんだ!?」
アルフ「このまま高度を下げて、街道を使って滑り止まる!」
騎士長「ば…バラバラにならないだろうな」
アルフ「大丈夫だ、俺の腕を信じろ!」
騎士長「お前の腕って、お前も今日初めて運転したんじゃねーか!!」
アルフ「男のくせに、ビクビクしすぎだぁ!」グイッ
騎士長「ばっ…」
グウウウオォォオオオン!!!!
騎士長「ひぃぃいいいぃぃ!!!!」
アルフ「無事を祈れよ!!」
黒髪少女「…大丈夫、きっと大丈夫…」
アサシン「きゃああああ~!!」
グオオォォォ…!!
アルフ「着陸するぞぉぉ!衝撃に備えろ!!」
アサシン「…っ」
騎士長「…くっ」
黒髪少女「~~っ!」
ブゥゥゥン…ガツッ!!!ズザッ…ズザザザザザザァ…!!!
アルフ「と~ま~れ~っ!!!」
騎士長「ぬぐぐぐっ…!」
ズザザザザッ…ザザッ…、ザザザァァ……ザザ…
……ブルンッ、ブルン……ピタッ…
アルフ「はぁ、はぁ~…!」
アルフ「ちゃ、着地成功…全員無事か!」バッ
騎士長「」
アサシン「」
黒髪少女「」
アルフ「…あら」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ザッザッザッザッ…フラフラ…
騎士長「おえぇ…」
黒髪少女「騎士長、大丈夫?」
騎士長「大丈夫…。見慣れてる街道なのに景色が回る…」グルグル
アサシン「ここが王都前の街道か。随分キレイなんだね」
騎士長「そりゃそうさ。王都が誇るフラワーロード。レンガ造りの朱色の道さ」
アサシン「へぇ~…」
アルフ「これからどうするんだ?」
騎士長「…ちょっと行きたい所があるんだ。王都自体は人も多いし、入ってもバレる事は少ないだろ」
アルフ「ふむ」
騎士長「奴隷商人のやつが、俺の友人に俺らの居場所を吐かせたとか言っててな」
騎士長「その友達のやってる酒場へ行きたい」
黒髪少女「ジュースのおじさん?」
騎士長「そうだ。お前が最初に来た酒場のおじちゃんだ」
黒髪少女「…」
騎士長「無事だといいんだが…」
アサシン「あんたの友達なら、しぶとそうだよ」
騎士長「あいつに限っては大丈夫だと思うんだが」ハハ…
アサシン「そこへ向かった後はどうする?」
騎士長「俺の家は、危険な可能性がある。だけど、木を隠すなら森…。近くで宿を取ろう」
アサシン「なるほどね」
騎士長「…久しぶりの王都だ。黒髪少女、気分はどうだ」
黒髪少女「大丈夫」
騎士長「そうか。なら、行くぞ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 王都の酒場 】
グイッ…ガチャガチャッ!!!
騎士長「…あら」
アルフ「…」
黒髪少女「…開かないね」
アサシン「…」
…コンコンコン
騎士長「…開かないし、反応もない」
黒髪少女「いないの…かな?」
騎士長「…おかしいな、休みなんか滅多にないはずなんだが」
アルフ「…」
アサシン「…」
騎士長「…まさかとは、思うが」
黒髪少女「…」
騎士長「…ん~と、この辺かな」
…ゴソゴソ
騎士長「あった」チャリッ
アサシン「それは?」
騎士長「この酒場の鍵。あいつさ、鍵をなくした時用に合鍵をココに隠してるんだよ」
アサシン「それを知ってるって、嫌な客だね…」
騎士長「はっはっは」
ガチャガチャッ…ガチャッ!!!
騎士長「よっしゃ、いないふりとかしてんじゃねーぞ店主のやつ」
ギィィィ…
騎士長「おーい、店主~…」
…モワッ、ベチャッ!
騎士長「うっ…!」
黒髪少女「はっくしょん!」
アサシン「ほ、埃…っ!それに泥だらけじゃないか…」
騎士長「…ごほごほっ!」
アルフ「大丈夫か?マスクを」スッ
黒髪少女「あ、ありがとう」
騎士長「すまん…」
アサシン「私は今は一応装束のマスクだから大丈夫」
黒髪少女「ごほごほっ…」
騎士長「ひどいな…埃と床は泥だらけだ。掃除してないのか?」
アサシン「き、騎士長それは…」
騎士長「…わかってるよ」
アサシン「…」
騎士長「わかってる…」
黒髪少女「おじさん、どこいったんだろう…」
騎士長「恐らく、王都の警備隊か何かに俺らの情報の為、連れて行かれたな」
黒髪少女「!」
騎士長「…」
アサシン「どうする…?」
騎士長「…」
黒髪少女「おじさん…」
騎士長「余計なことに巻き込んじまったな…。無事でいてくれればいんだが…な」
黒髪少女「…」
アルフ「…」キョロキョロ
騎士長「仕方ない…ここは一旦、宿をとって体制をしっかりしよう」
アルフ「…」
トコトコトコ…ペラッ
アルフ「へぇ~…ここは依頼も受けてた酒場なのか」
騎士長「そうそう。まぁ猫探しとか、ドブさらいとか…まともなのなかったがな」ハハ
アルフ「ふ~ん」
ペラッ…ペラッ…ペラッ…
騎士長「ほらアルフ、ここにいても仕方ないし行くぞ」
アルフ「…ふむ」ペラペラ
騎士長「ん?」
アルフ「…なぁ」
騎士長「どうしたよ」
アルフ「ここじゃ、いちいち店主自身の依頼も紙に書くのか?」
騎士長「…何?」
アルフ「ほれっ」ポイッ
…パシッ
騎士長「…」ペラッ
騎士長「…!」
アルフ「それ、お前への依頼じゃないのか」
騎士長「…っ!」
アサシン「どうしたんだ?何て書いてある?」
黒髪少女「騎士長?」
騎士長「あいつ…連れて行かれる前に、俺がここに戻る事を予測してたのか…?」
騎士長「店主の家を使って欲しい事とか…」
騎士長「自分がいなかった時の為のメッセージだ…」
黒髪少女「!」
アサシン「!」
騎士長「…家の鍵は酒場と一緒の植木鉢の中にあるらしい」
騎士長「確かに、これ以上ない隠れ家だ…。是非使わせてもらう!」
黒髪少女「おじさん…どうなったの?」
騎士長「なぁにアイツのことだ、きっと大丈夫だって言ったろ」ポンッ
黒髪少女「うん…」
アサシン「…」
アサシン「騎士長、あのさ…」
騎士長「ん?」
アサシン「勢いだけでココまで来たに近いと思うんだけど…」
騎士長「まぁそうだな」
アサシン「敵の本拠地へいざ来て…、どうやってこの奴隷狩をやめさせるつもりだ?」
アサシン「どうやって今までのを暴露させる?」
アサシン「あんたが味方だと思ってた王都の軍のほとんどが、敵だった。そうだろう?」
騎士長「…」
アサシン「この状況をひっくり返すには、相当な転機がないと厳しいと思うんだ」
アサシン「その策が…、騎士長にはあるのか?」
騎士長「その辺も含めて、店主の家で話し合おうと思う」
騎士長「…まぁ、これはどの道あとで言おうとしてた事だが…今言わせてもらうな」
騎士長「これ以上は本当に危険になる。最悪、ここまで着いてきてくれただけで嬉しい」
アサシン「…」
騎士長「ここからは下手すると…死ぬだろうよ」
騎士長「いや、死よりも酷い結末になるかもしれない。どうする?ここが運命の分かれ道だと思うんだ…」
アサシン「いまさら何を…。最後まで付き合う。そのつもりでココまで来たんだからね」
アルフ「勢いってのは怖いな。このまま着いて行くのも悪くないと思う。俺は最後まで勢いのまま行ってもいいさ」
黒髪少女「私もだよ、騎士長。私が…お願いしたから始まったことなんだから…!」
騎士長「みんな…ありがとう」
アサシン「…」コクン
アルフ「おう」
黒髪少女「うんっ!」
騎士長「まずは、店主の家を借りに行こう。話はそこで改めてする」
………
……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 店主の家 】
コポコポ…
騎士長「やっぱり紅茶、良いモンしまってたな~」
アサシン「勝手に色々使っていいのか?私にも珈琲ね」
アルフ「クッキー見つけた。ほらほら、黒髪少女、一緒に食べよう」
黒髪少女「うん」
騎士長「お前ら…」
アサシン「それで…作戦はあるの?」グビグビ
騎士長「…賭けになると思う」
アサシン「というと?」
騎士長「俺は…誰だ?」
アサシン「バカになったか?」
騎士長「ちげえよ!」
アサシン「うん?」
騎士長「俺は、誰だっていう話だよ!!」
アサシン「バカか…?」
騎士長「ちげぇっつってんのに!」
黒髪少女「…」
黒髪少女「騎士長は、騎士長」
騎士長「うぅぅ~、黒髪少女は本当にいい子だなぁぁ…」
アサシン「おバカさん、いいから話の続きを。あっ、クッキー美味しい」モグモグ
騎士長「…」
騎士長「ごほん。まぁ俺は元とはいえ、王宮都市の騎士団の騎士長を務めていた男だとは知ってるよな」
アサシン「まぁね」
騎士長「王都の軍と呼べる部隊はおおよそ三つ存在している」
アサシン「三つ?」
騎士長「そうだ」
アサシン「王宮騎士団、王宮警備隊は知ってるが…あとは?」
騎士長「王宮直属部隊。細かい事を言うと、俺は騎士長であって直属部隊に所属していた」
アサシン「ん…どういうこと?」
騎士長「騎士団は、騎士長、副長、副長補佐、曹長、軍曹」
騎士長「警備隊は、隊長、副隊長、同じく補佐、曹長、軍曹の階級に分かれている」
アサシン「ふむ」
騎士長「その上位4人、合計8人で王の命令で直接的に動くのが俺ら、直属部隊だった」
アサシン「なるほど」
騎士長「騎士団は騎士団だが、兵士やら剣士やらごっちゃだったが…まぁその辺は気にするな」
アサシン「わかった、それで?」
騎士長「警備隊は恐らく真っ黒。それこそ今回の黒幕で活動してるから敵になる」
騎士長「だが…俺のいた騎士団。それは俺が見る限り…黒に近い、目立った活動はしてなかったんだ」
アサシン「ふむふむ…」
騎士長「そして、俺を慕っていた面子がほとんどだった」
騎士長「今回の事を伝えれば、正義感も強かったうちの騎士団は、必ず立ち上がってくれると思う」
アサシン「騎士長の騎士団が、黒じゃないという根拠は?」
騎士長「さっき言った通り、基本的な活動は王宮周りの守護。騎士団の活動は俺の監視下だった」
騎士長「警備隊の動きが分からなかったのは、俺が警備隊との係わり合いがほとんどなかったからさ」
アサシン「…ふむ」
騎士長「今はどんな活動しているかは知らないんだが、賭ける価値はあると思うんだ」
アサシン「具体的にはどうするつもりだ?」
騎士長「副長の家はここから近く、あいつは家で昼飯を食うのが日課でな。もうすぐ昼過ぎだろ?」
騎士長「そこを拘束させてもらう。話を聞いてもらおう」
アサシン「既に…王の手先だったら」
騎士長「すまないが…敵だという以上容赦はしないつもりだ」
アサシン「分かった。現実的な作戦ではあると思うし、賛成するよ」
アルフ「…作戦自体はいいけどさ、俺は何をすればいいとかあるか?」
騎士長「自由にしていい。所持してるカラクリの事情が分からんから、アルフ自身がいいと思った事を頼むよ」
アルフ「いやいや、そこまで大味だと。せめて何して欲しいとかないのか?」
騎士長「ん~…、しばらくは着いてきて、その場その場で対応した事を言う感じでどうだろうか」
アルフ「何とも大雑把な役目…。まぁ任された」
黒髪少女「なんか騎士長、かっこいい…」
アサシン「いつもキリっとしてるいいんだけどね」ハハ
騎士長「無駄話もする暇があったら、まずは副長の家へ張り付こう」ヒクッ
アサシン「かっこつけてるけど、褒められて鼻の穴開いてるぞ」
騎士長「…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 副長の家の茂み 】
コソコソッ…
騎士長「そろそろのはずだ」
アサシン「どうやって捕まえるつもりだ?」
騎士長「実力行使だ。一発で決めれば、あとは店主の家に引きずり込むだけだし」
アサシン「…いいね、その強気姿勢」
黒髪少女「…」ドキドキ
騎士長「お…来たぞ!」
ザッザッザッザッ…
副長「…」
カチャカチャ…
騎士長「行って来る」ダッ
アサシン「気をつけて」
ダダダダッ…ヒュッ
騎士長(よしっ!首に一撃!)
副長「何かの気配っ!」クルッ
騎士長「げっ!」
…ガシィン!!!
副長「ぐっ、あ…危ねぇ!!な、何者だっ!!」
騎士長(不味ったぁぁぁ!!!)
副長「貴様、この俺が騎士団の人間だと分かっての狼藉…って、え?」
騎士長「…や、やぁ」
副長「きしちょ…!」
ゴツッ!!!…ドサッ
副長「」
騎士長「あれ…倒れた…?」
アサシン「私の石の投擲だよ!…やっぱり準備しててよかった」フゥッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
…バシャッ!!
副長「…!」
騎士長「よう、目が覚めたか?」
副長「ここは…、なぜ俺が縛られて…!?っていうか、なんで騎士長が!」
騎士長「ここは店主の家。昔、一緒に飲みに行っただろう」
副長「そ、そうでしたね…。って、それより何で!もう色々と!」
騎士長「…まぁ、聞きたい事があるんだよ」
副長「そんな事より騎士長さん、大変ですよ!あなた指名手配で…!」
騎士長「ちょっと黙れ!!お前、昔と変わってなさすぎだ!!」
副長「は、はい…」
騎士長「いいか、先ずはこっちから聞きたい事があるんだ。答えてくれ」
副長「な…何でしょうか」
騎士長「警備隊がやってること、今の王都の本当の顔…知ってるか」
副長「…」
副長「…い、いえ。何のことでしょうか」
騎士長「本当か」
副長「は、はい。騎士長がクビになってからも、変わらず周辺の守護にあたってるだけです」
騎士長(と、なると…やはり絡んでいるのは警備隊側ってことか?)
副長「っていうか!!それよりも、大変なんですってば!!」
騎士長「何だよ…」
副長「騎士長、指名手配ですよ!!王都の専属の商人の邪魔をしたっていう罪で!」
騎士長「…」ハァ
副長「俺らの周辺の仕事も、あなたが来ないか見張る事も含まれてたんですよ!?」
副長「いつの間に王都に入り込んだんですか…」
騎士長「…まぁそれはいい。俺の話を、落ち着いて聞け」
副長「な、何でしょうか」
騎士長「えっとな…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
騎士長「…っていうわけだ。黒髪少女、アサシン、それとアルフ」
騎士長「これが俺のしてきた旅で一緒になった仲間たち…と、冒険録。信じてくれるか?」
副長「王都が、奴隷狩の主軸で…、王様が裏社会の王…!?」
騎士長「これが真実。王都の顔だ。やはり知らなかったか」
副長「あ…当たり前ですよ…」
騎士長「俺がクビになったのも、その関係で理由があると思うんだ」
副長「そうじゃなかったら、王都に生涯をかけてきた貴方がクビになるわけないじゃないですか!」
騎士長「はは…ありがとう。それで、ここで本題だ」
副長「何でしょう」
騎士長「いいか、簡単な話。俺らに協力するかどうかだ」
副長「…」
騎士長「協力して欲しい事は1つだけ。騎士団を再び俺のために動かして欲しい」
騎士長「ただ、その場合…王都と警備隊との戦線になる可能性が高い」
騎士長「敗北すれば裏切りになって、どうなるかは分からない。」
騎士長「だが…お前らと協力すれば絶対に勝てると信じている。俺に力を貸してほしい」
副長「…」
副長「そ、そんなの…協力する以外ないじゃないですか」
騎士長「…」
副長「人の為に動くことを教えてくれたのは、騎士長でしょう」
副長「いつも貴方とは一緒だった…、俺が断る理由なんかありませんよ」
騎士長「…そうか、ありがとう。その言葉を聞けて、本当に嬉しいよ」
副長「当たり前ですよ」
アルフ「…」
副長「それで、これから俺はどうすれば?」
騎士長「決行は明日の夜。それまでに、味方になりそうな団員を召集してほしい」
副長「わかりました」
騎士長「夜、王宮へ騎士団の面子で奇襲し、王を拘束する」
騎士長「実力的には俺らが有利だ。拘束まで行けば俺らの勝ちになる」
騎士長「拘束後、王を別の国へ送り飛ばす。関与した幹部とともにな」
騎士長「…そうか、ありがとう。その言葉を聞けて、本当に嬉しいよ」
副長「当たり前ですよ」
アルフ「…」
副長「それで、これから俺はどうすれば?」
騎士長「決行は明日の夜。それまでに、味方になりそうな団員を召集してほしい」
副長「わかりました」
騎士長「夜、王宮へ騎士団の面子で奇襲し、王を拘束する」
騎士長「実力的には俺らが有利だ。拘束まで行けば俺らの勝ちになる」
騎士長「拘束後、王を別の国へ送り飛ばす。関与した幹部とともにな」
副長「それで解決するでしょうか」
騎士長「奴隷狩は重罪であり、裏社会の王という存在…。その悪行もすぐにバレるはずだ」
騎士長「どでかい仕事になるが…頼むぞ」
副長「…」コクン
騎士長「…縄を外す。頼むぞ、副長」シュルシュル
副長「えぇ分かりました。それと、情報なのですが…いいでしょうか」
騎士長「なんだ?」
副長「もし、これから他の面子に聞きまわるのでしたら…止めたほうがいいと思います」
騎士長「軍曹までは話を聞こうと思っていたが…どうしてだ?」
副長「一部、警備隊に抜かれた者達がいるんです」
副長「今日の話を聞いて納得しました、警備隊の強化の為にしてたんでしょうね」
騎士長「…」
副長「俺はまだしも、他の面子では内部で情報漏れする可能性があるので…止めた方がいいと思いますよ」
騎士長「情報、感謝する」
副長「いえ…。それでは、今日の夜から信頼できそうな人間に回ります」
副長「明日の夜…改めてココへ訪れるのでお待ちください」ペコッ
騎士長「頼むぞ」
副長「はいっ」ビシッ
ガチャッ…バタンッ…
アルフ「…」
アサシン「信用できそうな奴ではあったね。昔なじみなのか?」
騎士長「俺の後輩だからな」
アサシン「あんたらが難しい話をしてるから…ほら」
黒髪少女「…」スゥスゥ
騎士長「はは…」
アサシン「それにしても明日の夜、か。いよいよだね」
騎士長「作戦は聞いてたろう?これで上手くいくと思う」
アルフ「…」
騎士長「長かった。だけどこれでやっと…」
アサシン「うん…」
騎士長「俺らで全てを崩す。その算段は整った。あとは…実行のみ」
アサシン「…がんばろうね」
騎士長「当たり前だ」
アルフ「なぁ…悪いんだが…」
アルフ「ちょっと、やりたい事を見つけたんで一旦外に行ってくる」
騎士長「え?」
アルフ「最初に言われた通り、俺はやれるように自由に動くとするよ」
騎士長「…急にどうした?」
アルフ「だからやりたい事を見つけたんだよ!」ダッ
ガチャッ…バタンッ…
騎士長「お、おい!…行っちまった」
アサシン「急にどうしたんだ…」
騎士長「あいつの考えがあってのこと、だとは思うんだが…」
アサシン「うーん、まぁ任せるしかないね」
騎士長「ん~む…」
モゾモゾ…パチッ
黒髪少女「お話…終わった?」
騎士長「起こしちゃったか。お話は終わったぞ」
黒髪少女「あれ?アルフのおじちゃんは?」
騎士長「用事があるらしくて、外に行ったよ。すぐに戻ってくるとは思うけどね」
黒髪少女「そっか」
騎士長「…黒髪少女、明日の夜」
黒髪少女「?」
騎士長「きっと、この長かった旅の最後になる。全部が終わるはずだ」
黒髪少女「…」
騎士長「…最後まで、信じて着いてきてくれるな」
黒髪少女「うん」
騎士長「ありがとう…。それと、今から明日の夜までは外出は控えるようにしよう」
騎士長「少し辛いかもしれないが、2日後の朝には俺らは自由の身…そう信じて、頑張ろうな」ニコッ
黒髪少女「…うんっ」
アサシン「…暗くしていても、いい結果は見えてこないよ!」」
アサシン「冷蔵庫やら何やら漁って、店主の家を探索しようかね~♪」ガサガサ
騎士長「あさっちまえ!好きなの食おう!」
アサシン「消費期限が切れてるのは注意しないとね。これはダメだ、これは大丈夫」ポイポイ
騎士長「はっはっは、このところ…何だかんだで毎日パーティだな」
黒髪少女「また私、卵焼き作るー!」
アサシン「さすがに卵はダメになってるから、お姉ちゃんと一緒に別なの作ろうか♪」
黒髪少女「うんっ!」
騎士長(…)
騎士長(最終決戦…か)
………
……
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日…夜 】
ホウ…ホウ…
騎士長「…」
アサシン「…」
黒髪少女「…」
騎士長「…遅い」イライラ
アサシン「もう、20時だよ。二人とも何してんだろうか」
騎士長「仕事あがりは18時まで、準備をしていても19時までに来てもいいはず」
アサシン「アルフも来ないし…」ハァ
黒髪少女「…どうしたんだろう、アルフのおじちゃん」
騎士長「…」
アサシン「…」
黒髪少女「…」
…コンコン
アサシン「!」
騎士長「待て…。誰だ!」
副長「副長です。準備出来ましたので、ご報告に参りました!」
騎士長「入っていいぞ」
…ガチャッ
副長「失礼します。騎士団の召集が完了しました」
騎士長「ありがとう。どれくらいが集まった?」
副長「3分の2になります。それ以外は、どうにも信頼におけませんでしたので」
騎士長「十分だ。俺が指揮していた騎士団…それだけでも十分だ」
副長「騎士長、外へどうぞ。皆さんが久々に挨拶したいと。補佐、曹長、軍曹が揃っていますよ」
騎士長「おぉ、久々に会う面子じゃないか」
副長「あと何人かの待機はしてあります。是非、久々の点呼などいかがでしょうか」
騎士長「ははは、懐かしいな。挨拶がてら、顔合わせといこうか」
副長「こちらです」
トコトコトコ…ピタッ
副長「あちらに」
騎士長「…!」
副長補佐「…」ビシッ
曹長「…」ビシッ
軍曹「…」ビシッ
騎士長「み、みんな…久しぶりだ…!」
副長「話をしたところ、是非ということで集まっていただきました」ペコッ
騎士長「本当に感謝するぞ、副長」
副長「いえ!」
騎士長「作戦のほうは伝えてあるのか」
副長「…作戦ですか。作戦は、既に始まっているんです」
騎士長「ん?もう始めてるのか?」
副長「いえ、貴方が俺たちと接触した時点で…」
騎士長「それはどういう…」
副長補佐「久々に会えたのですが、こんな形になるとは思いませんでした」ヒュッ
…ゴツッ!!!
騎士長「っ!」
…ドサッ…
黒髪少女「騎士長!?」
アサシン「なっ…!」
副長「おい、そこの二人も捕らえろ!一緒に連れて行く!」
副長補佐「はっ!」
曹長「了解しました!」
軍曹「はいっ!」
ダダダダッ…!!
アサシン「…な、何のマネだ!!副長!!」チャキッ
副長「すみませんね…」
副長「騎士長、相変わらず打たれ弱い部分ありますね。上手くいってよかったです」
アサシン「黒髪少女、後ろに隠れな!」
黒髪少女「…っ」
軍曹「おとなしく捕まってくださいよ!」ダッ
アサシン「はぁっ!」ブンッ
…ガキィンッ!!
アサシン「…っ!」ググッ
軍曹「くっ…」ググッ
アサシン「下蹴りっ!」バッ
…ゲシッ!!
軍曹「うおっ!」
グルンッ!!ドサッ
アサシン「はっ!!」
ブンッ…グシャッ!!
軍曹「がっ…!」
…ガクッ
アサシン「…黒髪少女は渡さない!」バッ
黒髪少女「お姉ちゃん…!」
副長「…大人しく捕まってくれませんか」
アサシン「どうしてだ!なぜこんなことを!すでに手先だったのか…」ギリッ
副長「…仕方ないことです」
アサシン「わけの分からない事を…」
副長「それ以上暴れるなら、こちらにも考えがありますが」
アサシン「何だ!」
副長「…」チャキッ
グイッ…スッ
騎士長「…」
副長「動かないでください。これ以上暴れるなら、騎士長がどうなるか…分かりますよね」
アサシン「…ちっ」
副長「お願いします」
アサシン「…」パッ
…カランカランッ!!
副長「分かっていただけるようで、良かった」
アサシン「…私らをどうするつもりだ」
副長「王様へ届けます。あとは分かりませんが、俺らの仕事はそこまでです」
アサシン「…騎士長は」
副長「三人一緒に届けますよ」
アサシン「…大人しく着いて行く。だから、黒髪少女と騎士長は私から離れないようにしていいか」
副長「構いません」
アサシン「…」
副長「それでは、参りましょう」クルッ
スタスタスタスタ…
……
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 王宮都市・王宮 】
カツカツカツカツ…ピタッ
副長「失礼します、王様」バッ
王様「…待っていたぞ」
副長「いえ」ペコッ
アサシン(こいつが…今の王であり、奴隷狩の首謀者であり…裏社会の王…!)
黒髪少女(お父さんを殺した人…!)
王様「お前達は一旦下がっていい」
副長「はっ」
カツカツカツ…バタンッ…
王様「さて…少し紹介をしよう。横にいるのは側近」
側近「お見知りおきを」ニコッ
王様「左から順に、財政大臣、総務大臣、外務大臣だ」
大臣達「…」
アサシン「…」
黒髪少女「…」
王様「先ずはそうだな…よく来てくれた。歓迎しよう」
アサシン「あんたが連れてきたんじゃないか!」
側近「貴様、その口を控えろ!」
王様「いい、構わん」
側近「そ…そうですか」
アサシン「ふん…私らを一体どうするつもりだ」
王様「お前は…、アサシンだったか」
アサシン「…」
王様「砂漠地方の義賊、隠密集団…そのリーダーだったな。女とは恐れ入った」
アサシン「…そこまで知っているのかい」
王様「男と聞いていたが、その美しさで噂の強さとはな」
アサシン「…」
王様「よくもまぁ、邪魔してくれた。配下の奴隷狩の商人を度々使い物にならなくしてくれて…」ハァ
アサシン「何を言ってる…あんたのせいで、どれだけの同族が不幸になったと思っている!!」
騎士長「…」ピクッ
王様「…恨むなら、ワシではなく王子を恨む事だな。あいつが砂漠地方に逃げなければ良かっただけのこと」
アサシン「戯言を!!」
王様「それに、砂漠の女を度々楽しめたワシとしては感謝もしているがな」
アサシン「貴様ぁぁぁっ!!」ググッ
側近「控えろと言っている!!貴様らの命は王が握っている事を忘れるな!!」
アサシン「くっ…!」
王様「まぁ、そうだな。ワシが本当に用事があるのは黒髪幼女だ」
黒髪少女「…」
王様「ところで、王子の行方は知らぬか?それと、我が配下の商人達の行方も分からぬのだが」
アサシン「ふ…ふふっ…」
王様「む?」
アサシン「あんたの配下の商人たちは、ほとんどいないよ。砂漠前のアジトを潰したからね…!」
王様「何だと…?」
アサシン「ついでに王子はもういない。あんたの目論み通り、もうこの世にはいない…よ…」
王様「死んだのか」
アサシン「…」プイッ
王様「ふっ…そうか。王家の血筋を引くものは、黒髪幼女、ただ一人ということか」
アサシン「…」
黒髪少女「…?」
王様「さて…どうしたものか。この者たちの処遇、いい案はないか?」
側近「案ですか。ふーむ…大臣たち、いい案はないだろうか」
財政大臣「そうですね…、どの道生きていられては困る面子。ここは王都の未来に役立ってもらうのはどうでしょう」
王様「王都の未来に?」
財政大臣「騎士長は指名手配犯、その仲間たちということで公開処刑などいかがでしょうか」
王様「ふむ」
財政大臣「そうすれば、王の人気も集まるでしょうに。どうでしょう総務大臣」
総務大臣「いや、全員を奴隷狩を命令してた裏の顔として扱うのはどうでしょうか。どうでしょう外務大臣」
外務大臣「それはいいかもしれません。他の国にも王の良き話が伝わることでしょう。側近殿、決まりです」
側近「王、決まりました。ご報告致します」ニコッ
アサシン「…っ!」
黒髪少女「私たち…どうなるの…?」
アサシン「大丈夫だよ…」ギュッ
黒髪少女「…っ」
王様「確かに…それはいい案だ」
側近「早速準備をさせましょう」
王様「そうだな、善は急げという」
側近「そうですな、準備をさせましょう。警備隊、入れ!」パチンッ
ガチャッ…ザザザザッ…
警備隊「…」
警備隊「…」
警備隊「…」
アサシン「…!」
側近「奴らを縛り上げるんだ!」
警備隊「はっ!」ビシッ
アサシン「そう簡単にやらせると思うか…」チャキッ
側近「…歯向かうようなら、女だろうが容赦しなくていい。好きにしろ」
警備隊「…」ニタッ
アサシン「…!」ゾクッ
黒髪少女「騎士長、騎士長!!起きてよ、私たち殺されちゃうよ!!」ユサユサ
騎士長「…」
黒髪少女「騎士長っ…!」
アサシン「…私たちに触るなあ!!」ブンッ
…ガキィン!!
警備隊「むっ!」
アサシン「私は強いよ…死にたい奴からかかってきな!!」
警備隊長「…おい」クイッ
警備隊員たち「はぁっ!」
ダダダッ…タァンッ!
アサシン「なっ…全員一斉に…!?」
…ドォン!
アサシン「うあっ!」
警備隊長「…大人しくしろ!武器を取り上げ、縛り上げろ!」
警備隊長「他に武器がないか、全て切り裂け!俺たちに逆らった事を恥辱で知らしめてやれ!」
ビリッ…ビリビリビリッ!!!
アサシン「や…やめ…!!」
警備隊「…」
アサシン「ひ…」ドクン
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アサシン「嫌ぁぁ、やめてよぉぉ!」ビリビリ
奴隷狩り「俺たちから先に味を知っとくべきだもんなぁ!」
アサシン「誰か、助け…!」
奴隷狩り「逃がすかよ…」ガシッ
奴隷狩り「後がつかえてる、さっさと終わらせようぜ」ハハハ!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アサシン「い…嫌あぁぁぁっ!!」
ビリビリッ…グイッ…
アサシン「…あぁぁぁっ!!!」
警備隊「うへへ…うひひっ!」
警備隊長「ふん…」
警備隊長「残っている者は、黒髪幼女を縛り上げるんだ!さっさとしろ!」
警備隊「はっ!」ダッ
タタタタッ…ガバッ
黒髪少女「や、嫌っ!」
警備隊「もう逃げても無駄なんだ、大人しく捕まれ!」
黒髪少女「…!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
傭兵「…ほぉら、痛くしないから…おいで…」
商人「そこにも誰かいるぞ!捕まえろ!!」
黒髪幼女「…あっ!」
…ガバッ
傭兵「ははは、お友達の最期も目の前で見せてやるよ!」
傭兵「お前は今日から、奴隷生活だ!」
黒髪幼女「や…っ!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
黒髪少女「嫌だぁぁぁっ!!嫌ぁぁ、離してぇぇ!!!」
警備隊「大人しくしろ!!」
警備隊「はーっはっはっは!」
アサシン「あ…」
警備隊「つーかまえた…」ガシッ
黒髪少女「…離してぇぇ…っ!」
王様「…ふっ」
側近「くくく…」
黒髪少女「き…騎士長…助けて…」
騎士長「…」
黒髪少女「騎士長、起きてよ。騎士長…!」
騎士長「…」
黒髪少女「騎士長っ…、助けてよぉぉぉっっ!!!」
騎士長「…!」ハッ
ピカッ…!
ドゴォォン!!!グラグラグラ…ッ!!
王様「!?」
側近「な、何だ!?地震か!?」
王様「どうした!」
ガチャッ!!
タタタタタッ…ビシッ!!
警備隊「報告します!王宮に、謎の爆発が起きています!」
側近「魔法か!?」
警備隊「分かりません…魔法とは異なるようです!…どこから攻撃してるのか分かりません!」
側近「えぇい…爆発の位置に警備隊を向かわせ、早急に対処しろ!」
警備隊「わかりました!」
王様「警備隊、拘束役を残し、二人から一旦離れよ!」
警備隊長「離れろ!!」
警備隊「はっ!」
ザザザッ…
アサシン「…」
黒髪少女「…」
王様「お前ら…何かしたのか?お前ら以外に誰か、仲間がいるのか?」
アサシン「…」
王様「口も開かぬか。いや、開けぬのか?無様な姿だな」
アサシン「…」
王様「すぐに状況を把握したい。お前たちの仲間がある可能性がある限り…」
王様「今ここで吐き出してもらう。仲間かどうかは関係なしに拷問しろ。警備隊長」パチンッ
警備隊長「はっ!」
黒髪少女「拷問…?」
アサシン「…」
警備隊長「それぞれの指を一本ずつ切り落とせ。吐くまで。それ以外は自由にしていいぞ」
黒髪少女「!」
警備隊「はっ!」
警備隊「くくく…俺に任せてください。俺はアサシンを」グイッ
警備隊「なら俺は黒髪少女を」グイッ
黒髪少女「ひっ…!」
アサシン「…」
警備隊「まずは…一本目から…!」
黒髪少女「…っ!」
警備隊「いっせーの…」ブンッ!!
黒髪少女「…ッッ」ギュッ
ヒュッ!!!…クルクル…ザシュッ!!!
警備隊「いっ…てぇぇぇ!」
黒髪少女「えっ?」パチッ
警備隊「何か手に刺さった…!」ズキズキ
黒髪少女「な、何…?」ハッ
騎士長「そ…そいつらに触るんじゃねぇ…!!」
黒髪少女「騎士長っ!!」
警備隊長「騎士長…!全員、一回離れろ!」
警備隊「はっ!」
ザザザッ…!!
王様「…!」
側近「騎士長、気がついたのか!」
騎士長「遠くから黒髪少女の声が聞こえてた…」
騎士長「それと…何かの爆発音で、完全に目が覚めたぞ」コキコキ
騎士長「副長のやつ、長年付き添ってだけあって俺の打たれ弱さを知ってやがった」ハァ
アサシン「…」
黒髪少女「…き…騎士長…」
騎士長「な、何だこりゃ…。アサシン…黒髪少女…!!」
王様「お前が寝ている間にな。…それより、久しぶりだな騎士長」
騎士長「王…っ!」
王様「…」
騎士長「…アサシンたちに何をしやがった!!」
王様「久々のワシに対する言葉がそれか。お前も思った程の脅威ではなくて安心したぞ」
騎士長「何だと…?」
王様「実力が高いのは知っていたが、弱点を知ってるとはいえ、後輩の一撃に気絶するとはな」
騎士長「…っ」
王様「元騎士団時代には、貴様の実力を知っていたからこそ脅威だったのだが…」
王様「この王都を離れている間に、実力も衰えたか?」
騎士長「ぐっ…!それよりもアサシン達に何もしていないだろうな!!」
王様「やれやれ…王の話よりも他人の心配か。自分で確かめたらどうだ…?」
騎士長「…ちっ!」ダッ
タッタッタッタ…ソッ
騎士長「…アサシン、大丈夫か」
アサシン「…」
騎士長「…俺の上着を貸してやる。今は…横になっておいてくれ…」
アサシン「…」
騎士長「お前ら、絶対に許さねぇぞ…!!」
王様「お前一人で何が出来ると?」
王様「気絶していた者が、粋がったところでどうにもならんぞ?」ハハハ
警備隊「…くくく」
警備隊「へへ…」
警備隊長「俺らはいくらでも相手になるぞ…?」
騎士長「…」チャキッ
側近「その状態でやる気とはな…恐れ入った」
側近「警備隊、全員…武器を構えよ!騎士長を迎撃するのだっ!」バッ
警備隊「…」チャキッ
警備隊長「…」スチャッ
騎士長(警備隊長…実力は均衡する自身がある。だが、この数…)
騎士長(いや、負けるわけにはいかない!ここまで来て…あと少しで全てが終わるところで…!)チラッ
黒髪少女「騎士長…」
アサシン「…」
騎士長「しゃあねえ、背水の陣とでもいうのか…?」
騎士長「行くぞ…うらぁぁぁっ!!」ダッ
警備隊長「くるか…!」
ゴゴ…ミシミシ…
騎士長「とと…!じ、地震か…?」
警備隊長「な、なんだ?」
王様「…王宮が揺れている?」
ゴゴゴゴッ…ドゴォォン!!!!
パラパラパラ…
騎士長「!?」
警備隊長「な…なんだぁ!?」
側近「て、天井に穴が開いた!?」
グゥゥオオオオン…ブルブルブル…
アルフ"「え~聞こえますか騎士長さん、騎士長さん。声を拡大するカラクリでお話しております」"
騎士長「アルフ!?」
アルフ"「今、私は空から王宮に攻撃を行っております」"
アルフ"「適当にバラまきますので、注意してくださいな~」"
ブゥォオオオン…
騎士長「あいつめ、ずっといないと思ったら…」クク
騎士長「…空からの攻撃とは、味のある事してくれるじゃねえか!」
警備隊長「空を飛ぶ不思議なカラクリ…なんと面妖な…!」
騎士長「自慢の仲間だよ!」ダッ
警備隊長「…!」
ガガキィン!!!カキィン!!!
騎士長「…」ググッ
警備隊長「…」ググッ
ガキィンッ!!ズザザザァ…
騎士長「隙を狙ったつもりだったんだがな…」
警備隊長「子供だましだ!」
黒髪少女「騎士長、頑張って…」
黒髪少女「…」ハッ
黒髪少女「そ、そうだ…お姉ちゃん!」ダッ
タッタッタッタ…
アサシン「…」
黒髪少女「お姉ちゃん…ねぇ、お姉ちゃん…!」
…ユサユサ
アサシン「…」
黒髪少女「騎士長が起きて戦ってるよ…どうしたの…、お姉ちゃんっ…!!」
アサシン「…」
黒髪少女「お姉ちゃんっ…!!」
…カツ、カツ…チャキンッ
警備隊「おぉ?どうしたのかなー…お嬢ちゃん…」ニタッ
黒髪少女「!」
警備隊「このチャンス…俺が二人のクビを弾けば評価も上がるだろう…」ジリッ
黒髪少女「こ…こないで…」
警備隊「うひひ…その前に別の場所で遊ぶのもいいなぁ…」
警備隊「ほーら、おいで…」ググッ
黒髪少女「お姉ちゃん、お姉ちゃん!!危ないよ、お姉ちゃん!!」
アサシン「…」
黒髪少女「…っ」ゴクッ
アサシン「…」
黒髪少女「…」
黒髪少女「お…」
黒髪少女「"お母さんっ!!!"」
黒髪少女「起きてよ、お母さん!!」
騎士長「…っ!!」クルッ
騎士長「い、今…黒髪少女…!お前、アサシンを…お母さんと…」
…ザワザワ!!
王様「な…何だと!?」
側近「今、何て言った…あのガキ!」
大臣たち「な…なんと…!」
警備隊「母親だと…!?」
黒髪少女「お母さん…お母さんなんでしょ!!お母さん!!」
アサシン「…」
黒髪少女「おかあさん…っ!起きてよぉ!!」
アサシン「…」
騎士長「…アサシンッッ!!!お前の娘が、呼んでるぞ!!」
アサシン「――…!」ハッ
…ムクッ
アサシン「く…黒髪少女…?」
黒髪少女「お母さんっ!!!」ダキッ
アサシン「あ、あんた…私を…お母さんって…」
黒髪少女「ごめんなさい…私、本当はアルフのおじちゃんの家で…聞いてたの…!」
アサシン「…!」
騎士長「まさか、あの時か!?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コトンッ…
騎士長「…ん?」
騎士長「何か…音がしたような…。気のせいか…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
黒髪少女「うん…!」
黒髪少女「で、でも…言えなかったの。お母さんも苦しんでて…」
黒髪少女「本当はお母さんって呼びたかったのに…!!」
アサシン「黒髪少女…っ」
黒髪少女「ごめんなさい…本当はお母さんも我慢してたって分かってたのに!」ダキッ!
黒髪少女「こんな所で…私が…言っちゃった…」
アサシン「いいよ…いいんだ…」ギュウッ!!
王様「なっ…なななっ…!!」
側近「間接的にだろうが、王家の血を紡ぐ者がまた一人…!」ギリッ
王様「警備隊長!警備隊!!もういい、さっさとその場で二人を先に殺せぇぇ!」
警備隊長「…御意」ダッ
警備隊「勿体ねえが、王様の命令とあらばっ!」ダッ
警備隊「はぁぁっ!」ダッ
ダダダダダダッ…
騎士長「いかん、間に合わない!!」ダッ
アサシン「黒髪少女だけは…守るっ!」ギュッ
黒髪少女「お母さん…騎士長~~っ!!!」
…ガキィン!!
キキキン、ガキィンッ!!!ザシュッ…!!
警備隊「がっ…!」
警備隊「…なっ…」
ドサドサッ…
アサシン「…」
アサシン「…え?」ハッ
副長「はぁ~…間に合いましたねぇ」トントン
騎士長「副長!?」
副長「殴って申し訳ありませんでした。騎士長率いる騎士団、一部を除き…全員が集合しましたよ!」
ザザザザッ!!
王宮騎士「久しぶりですね、騎士長!!」
王宮兵士「駆けつけましたよ」
王宮戦士「…王の話は聞きました。覚悟してもらいましょう」
騎士長「お…お前たち…」
王様「き…貴様ら…!」
側近「貴様らを引き取ってやった我らを裏切るつもりか!!」
アサシン「ど、どういうことだ…。お前たちは騎士長を裏切ったのではないのか?」
副長「そうせざる得ない理由がありました。あんな事…本当に申し訳ありません…」
王様「貴様ら、裏切るつもりなら…家族の命はないと思え!!」
騎士長「…!」
アサシン「なるほどね」
副長「警備隊を近くに置かれ、家族を人質にとられ…行動をとらざるを得なかった」
副長「貴方がクビになった理由は、あまりにも王宮に固執し…人質や握る弱みがなかったからです」
副長「騎士長は今の王都にとって脅威になると思われたんでしょうね」
騎士長「そういう事だったのか…」ギリッ
アサシン「で、でも…こうしてアンタらも裏切ったら、家族の命が…」
副長「あぁ、それはですね…」チョイチョイ
アサシン「上?」
ブゥゥゥン…バラバラバラ…
アルフ"「俺が、怪しいと思った副長を追いかけて、逆に警備隊の家に仕掛けをしてやったんだ」"
アルフ"「お前ら警備隊が手を出したら、逆に俺が警備隊の家族を失う事になるってね」"
アルフ"「目には目を、強引だったが仕方ないだろう。はっはっはっはっ!」"
騎士長「あ、アルフ…お前ってやつは…!」
副長「先程ようやく、騎士団の人質を捕られている全員の解放を終わりました」
副長「ここから、反撃の時ですよ!」スチャッ
騎士長「お前ら…」
副長「…さぁ、騎士長…」
騎士長「…」
アサシン「…騎士長!」
黒髪少女「騎士長っ!」
アルフ"「騎士長!」"
副長「騎士長!」
曹長「…騎士長っ」
軍曹「き…騎士長…!」
騎士団員たち「騎士長さんっ!!」
騎士長「…分かってる」コクン
騎士長「今こそ、全てをやり直す時。新たな時代を迎える時だ!覚悟しろ…王!!」チャキン!!
王様「…っ!」
王様「ぬ…ぬぐぐぐ…」ブルブル
側近「お、王様…」
大臣たち「わ、私たちはどうすれば!?」
警備隊「…正面きって騎士団に勝てる自信はないですよ、隊長!!」
警備隊長「…くっ!」
騎士長「降参しろ。命までは取る気はない…ただ、国流しはするがな」
側近「ばかなっ!それでは殺されるのと一緒だ!」
騎士長「てめぇらが今までやってきた事と比べれば、生ぬるいだろうが…この、ダボがぁぁ!!!」ビリビリ
側近「ひっ…」
騎士長「…どうするんだ、王様よぉ!」
王様「…ぐっ!」
騎士長「正面きって、俺らと戦うか!?強いぜぇ…俺の指揮する騎士団は!」
王様「え…えぇい!警備隊長!何をしている…早く戦えぇ!!」
警備隊長「…っ」
王様「…何をしてる!!」
警備隊長「で、ですが…あの騎士団相手にしては…、俺の部下を殺すようなもの!」
王様「そんなもの知った事じゃない!ワシを守るのが役目であろう!」
警備隊長「…ッ」ギリッ
側近「命令に背くのか、貴様!」
警備隊長「!」ビクッ
側近「それでもいいんだぞ…?」
王様「は、ははは!そうだ、お前が命令に背くというのなら…」
王様「わかっているんだろうな…!」
王様「何をしてるんだ、早く!!」
警備隊長「うっ…」
王様「早く、早く!!」
警備隊長「う…ぐ…」ブルブル
王様「早く、しろぉぉっっ!!」
警備隊長「う…うるせぇぇ!!」
ビュッ…ズバッ…
王様「なっ…!」
ポタッ…ポタポタッ…
王様「な、何を…」ゲボッ
王様「する…ん…」
…ドシャアッ…
王様「か…かはっ…」
警備隊長「はぁー…はぁー…!」
側近「お…王様ぁぁ!!」
大臣たち「…!!」
騎士長「あらら…王様、倒しちゃったよ」
警備隊長「…このクソ爺が!もう、お前には従えねえ!!」
カツカツカツ…
警備隊長「てめぇもだ、側近」チャキンッ
側近「ひっ…、ま、待て…!お前の妹の命は…我らが預かって…」
警備隊長「最初からこうするべきだった」ヒュッ
…ズバァッ!!!
側近「あ゛っ…」
ドシャアッ…
警備隊長「おい、お前ら…大臣たちも全員殺せ!!同罪だぁぁ!!」
警備隊「…は、はいっ!」ダッ
大臣たち「う、うわあああっ!!」
キキン!!…ズバズバズバァッ!!!
アサシン「見るんじゃない、黒髪少女!」バッ
黒髪少女「…っ」
警備隊長「はぁ…はぁ…!」
騎士長「全員殺したのか…。それよりお前、妹が人質と…」
警備隊長「うるせえ…うるせえ…!」
騎士長「…っ」
警備隊長「確かに妹は人質だったさ。最初はみんな、王のやり方に反発していたからな!」
警備隊長「だが、王は俺らの扱いが上手かった…」
警備隊長「奴隷の味、悪行の道…!一人、また一人と仲間は快楽に落ちていった!」
騎士長「…」
警備隊長「だが、俺は人の道を外す事は断った」
警備隊長「統率としない警備隊は役にたたない。それを知った幹部らは妹を人質にしやがった…」
騎士長「…」
警備隊長「仕方なかった…身内の命には変えられなかった…」
騎士長「…」
警備隊長「だが、この瞬間!!王がいなくなって、大臣も側近もいねえ!」
警備隊長「騎士長、てめぇはもう王宮の人間じゃねえ!実質のトップは…俺だ…」ギロッ
騎士長「だから…どうした」
警備隊長「俺が今後、この王都を支えるリーダーになってやる…」ニタッ
…ザワザワッ!!
騎士団「なんだって…」
騎士団「あいつが…!?」
警備隊「隊長が…王様になるのか…?」
警備隊「…確かに、今の状態では一理あるかもしれんが…」
騎士長「…はは」
警備隊長「何が可笑しい」
騎士長「今のお前では無理なんじゃないの?」ハハハ
警備隊長「何だと…」
騎士長「俺が言えた義理じゃないだろうがよ」
騎士長「人質がいたとはいえ…無関係な人々を切り刻み…」
騎士長「多くの人々の涙と血に塗れた剣に、付いてくる人間はいるのか…?」
ポタッ…ポタッ…
警備隊長「…ッ」ギリッ
警備隊長「そ、それがどうしたぁ!」
騎士長「…」
警備隊長「…そうだ。お前、あの女をよこせ…黒髪少女といったか今は…?」
騎士長「…何するつもりだ」
警備隊長「次期の王として、王の血を引く子…。国民も納得するだろうよぉ…」
騎士長「…」
黒髪少女「王の血って…何…?」
アサシン「気にしなくていいんだよ…」ギュッ
警備隊長「さぁ、そいつを寄越せ…こっちに…」
騎士長「出来ない相談だな。あの子は守ると決めたんだ」
警備隊長「なら、無理やりにでも奪うまでよ!」クワッ
ザワザワッ…!!
騎士団「…」チャキッ
警備隊「…」チャキッ
騎士長「お前ら、手を出すな!!」
騎士団「!」
警備隊長「ほぉ…分かってるじゃねえか。お前らも手ぇ出すなよ!!」
警備隊「…」
アサシン「新たな時代が訪れる…瞬間か」
黒髪少女「どうなるの…?騎士長、大丈夫だよね…」
アサシン「きっと、騎士長が勝つさ…!」
黒髪少女「うんっ…」
騎士長「…」チャキッ
警備隊長「…」スチャッ
ゴォォォ…!
騎士長「…」
警備隊長「…」
騎士長「…ぬあぁぁあ!!」ダッ
警備隊長「!」
騎士長「槍突っ!!!」ビュッ
警備隊長「そんなものに当たるかよ!」ヒュンッ
騎士長「避けた!?早い!」
警備隊長「お前が遅いだけだ!!剣斬っ!」ブンッ
騎士長「くっ!」
…ガキィィンッ!!!
騎士長「…っ」ギリギリ
警備隊長「はぁぁっ…」ググッ
騎士長「つ…くっ…」
警備隊長「どうした、元騎士長さんよ!?押し負けてるぞ!」
騎士長「うらぁぁっ!」ビュッ
警備隊長「ぬあっ!蹴りだと!」バキィッ!!
ズザザザァ…
騎士長「はぁ、はぁ…」
警備隊長「ふぅ、ふぅ…」
騎士長「…引いてくれないか」
警備隊長「出来ぬ相談だ。俺は、もっとより良い時代を作る…」
警備隊長「例えお前が言うように、俺の剣がどんなに汚れていてもだ!!」ダッ
騎士長「くそっ!!」ダッ
ガガガキィン…
…ガキィンッ!!!バキィッ!!
警備隊「な、なんて戦いだ…」
騎士団「騎士長…」
アサシン「き…騎士長…」
黒髪少女「騎士長…!」
ダダダッ…ガキィン!!!
警備隊長「ほぉ…やるな」
騎士長「実力は均衡してると思っていたが…これはちょっと不味いかもな」ハハ…
警備隊長「時代は俺が開くっ!!」ブンッ!
騎士長「お前にさせるわけにはいかないっ!!」ブンッ
ギキィンッ…!!
騎士長「…ぐっ!」ビリビリ
警備隊長「ちっ…」ビリビリ
騎士長「はぁ…はぁ…」
警備隊長「ふぅ…ふぅ…」
ジリ…ジリ…
騎士団「二人が間合いを詰めていく…」
警備隊「次で…決まるのか…」
ダッ…ダダダダッ!!!
騎士長「…ぬあああっ!」ブンッ!
警備隊長「…ぬおおおっ!」ブンッ!
ズッ…ズバァンッ!!!
騎士団「攻撃が…入った!!」
警備隊「ど、どっちが!?」
騎士長「がっ…」
…ポタッ…ポタッ…
警備隊長「…俺の、勝ちだ」
騎士長「…参ったね、肩に思いっきり剣が刺さってるじゃないか…」ゼェゼェ
警備隊長「ふはは…俺の時代が始まるってことだ」ニタッ
アサシン「…っ」
黒髪少女「き…騎士長…!!」
騎士長「へ…へへ…」ハァハァ
警備隊長「何故また笑う。これも運命と受け入れたか?」
騎士長「はは…運命、ね」
騎士長「…運命ってのは常にどっちを向くか分からないんだぜ…?」ハァハァ
警備隊長「戯言を…お前の負けだ!このまま胴体を切り裂いてやる!」
騎士長「やってみろよ…」ゴホッ
警備隊長「よかろう…さらばだ、同じ王都に仕えた男!!」ググッ!
騎士長「…っ」
グググッ…ググッ…グッ…!!
警備隊長「むっ…!」
騎士長「…」ニタッ
警備隊長「剣が…入っていかん…!」グッグッ…
騎士長「…お前も、皮肉なものだよな…」
警備隊長「ど、どういうことだ!」
騎士長「うらぁぁっ!!」ブンッ
…ズブッ…
警備隊長「はぐっ…!」
騎士長「…悪いな」
警備隊長「な、なぜ…!」ゴボッ
騎士長「…皮肉の意味はさ、これさ…」ゴソゴソ
…チャリッ
警備隊長「そ、それは…!お…俺らの…」ハァハァ
騎士長「そう。警備隊のロケット…これに使われている、"アダマンタイト"さ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
騎士長「ごほんっ、えっとな…」
騎士長「アダマンタイトは不思議な鉱石でな、物理的威力に反発する力を持ってるんだよ」
アサシン「反発する力?」
騎士長「どんな小さな欠片でも、叩き割ろうとしたり、押し込んだりすると弾こうとして動かなくなるんだ」
アサシン「どういうことだ?」
騎士長「簡単にいえば、磁石みたいなもんさ。なんでそうなるかは解明されてないんだが」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
警備隊長「ぐ…!そ、そんなバカな…!」
騎士長「これが偶然だと思うか?いや…運命だろうよ」
騎士長「お前が時代を開くことは…出来ないんだ」
警備隊長「くそ…が…」フラッ
…ドサッ…ドバァァ…
警備隊「た、隊長が…」
警備隊「負けた…!!」
騎士団「き、騎士長が…」
騎士団「勝ったぁぁあ!!!」
ワッ…ワァァァァッ!!!!
アサシン「冷や冷やさせやがって、バカが…」ハァ
黒髪少女「騎士長が勝ったよ…お母さん…!」
アサシン「黒髪少女…。本当に…私を母親だって認めてくれるのか…?」
黒髪少女「お母さんはお母さんだよ…っ」
アサシン「黒髪少女っ…!!」ギュウウッ
副長「警備隊、武器を捨てよ!お前らの負けだ!」
警備隊「…っ」
ガランッ、ガランガランッ!!ガシャガシャッ…
騎士長「こ、これで…時代は変わる…」ハァハァ
騎士長「全てとは言わないが…王都の穢れだった王は死んだ…」
騎士長「次の時代は…もっと笑顔で、幸せで…」ゴホッ…
騎士長「そして…見てるか、王子。これで満足してくれるか…!」
カツ…カツ…カツ…
騎士長「ん…」
アサシン「…騎士長、ありがとう。心からお礼を言うよ」
黒髪少女「これで全部終わったんだね。もう、私みたいな人は出ないんだよね」
騎士長「あぁ…終わったよ…」ニコッ
フラッ…
アサシン「おっと!」ダキッ
騎士長「お、おいおい。血で塗れちゃうよ…」
アサシン「気にするものか。一緒に歩こうじゃないか。肩を貸すよ」
騎士長「ふっ…」
黒髪少女「私も、一緒に歩く。私は左肩っ」ギュッ
騎士長「…幸せもんだな俺は。こんな可愛くて、美しい二人に肩を支えられるんだから」
アサシン「ばーか、何言ってるんだか…」
タッタッタッタッタッ…ビシッ!!
副長「騎士長…改めて、ご苦労様でした」
騎士長「ん…別にいい」
副長「これから、どうすればいいでしょうか。王を含む幹部が亡くなり、警備隊長は負けました」
副長「実質、これからのリーダーは貴方なんです」
騎士長「何言ってやがる。俺は元、騎士長だ」
副長「しかし…、この王都に頼れる人は貴方以外にいないのですよ。騎士長」
騎士長「そうは言ってもな…、俺は人の上に立つ器じゃ…」
副長「もう元ではありません。"騎士長"ですよ、貴方は」
騎士長「…」
アサシン「今は、まだ考えられる時じゃないだろう。少しだけ時間をやってくれないかな」
副長「そ、そうですよね…」
騎士長「…悪いな」
副長「いえ…。では、この場の収拾だけどうすればいいか、お願いしてもよろしいでしょうか」
騎士長「仕方ねえな…。まず…、王が死んだ事は表に出すな…。まだ早すぎる」
騎士長「それと警備隊はまだ、地下牢へ閉じ込めておけ。一人一人の尋問は後日だ」
騎士長「警備隊長は厳重警戒にしろ…。だが、全員に拷問などはナシだ。きちんと三食与えろ」
副長「はいっ」
騎士長「アルフが撒いた爆発は好都合…、謎の輩の仕業に仕立てる等の策はできる…」
騎士長「とにかく今は、1日でもいいから…休ませてくれ」
副長「わかりました。おい、全員聞いていたな!」
騎士団「はっ!」ビシッ
副長「警備隊全員、素直に従え!従わねば、即刻斬る!」
警備隊員たち「…わかりました。従います」
騎士長「あ、そうだ…。地下牢にあの酒場の店主がいないか探してくれ…」
騎士長「もしいなければ、どこかにいないか全力で探すんだ。俺の家で待ってると…伝えてくれ」
副長「…行方不明なんでしたね。分かりました、捜索しておきます」ペコッ
騎士長「さて、帰ろうかね…俺の家に。案内するぜ…」
アサシン「あんたの家かぁ、楽しみだねぇ」
黒髪少女「すっごい大きいんだよ、騎士長の家!」
アサシン「なんだとぉ、この金持ちめぇ!」
ワイワイ…ガチャッ、バタンッ…
副長「行ったか…」
副長「…相変わらず、尊敬できる人だ。殴ったこと、後で改めて謝らねば…」
タッタッタッタッ、ビシッ!
騎士団「報告します!」
副長「なんだ?」
騎士団「警備隊を牢に入れようと開いた際、詰められた奴隷たちが沢山いまして…」
副長「…恐らく、怖がっているだろう。温かい食べ物と服を着せ、保護するんだ」
副長「それぞれの国、村に戻してやろう」
騎士団「それがいいですね。あと…」
副長「まだあるのか?」
騎士団「実は、その奴隷の中に…店主と名乗る人物が…」
副長「…ふむ」
………
……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
やがてこの戦いは公になると、"新時代の革命"として歴史に名を刻む事となった。
旧王政の実態が表へ出ると、砂漠地方は当然怒りをあらわにし、
戦争が勃発する寸前まで互いの国家は緊迫した。
一触即発の事態だったが、そこで活躍したのは"砂漠の英雄"であるアサシンだった。
彼女は自らが砂漠地方の政治へと立ち、率先して王都との関係を修復しようと活動した。
英雄であった彼女に賛同する者は多く、
時間がたつと共に落ち着いていったのだった。
そして―――……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数年後・王都 】
ガヤガヤ…ワイワイ…
側近(副長)「…王様。今日は祝賀会の日です。早く準備をしてください」
王様「分かってるよ。未だにこういうのは慣れないんだ」
側近「…はぁ、相変わらずですよねえ」
王様「俺さ、考えたんだ」
側近「何をですか?」
王様「今日の"革命の日"の祝賀会が終わったら…王様を引退する」
側近「はっ!?」
王様「あとはお前に頼むよ」
側近「そ、そんなバカなこと言わないでくださいよ!」
王様「ここまで国を立ちなおした、それだけで充分じゃないか?」
側近「確かに、あの日から比べれば素晴らしい成長です。ですが、まだ安定したとはいえない…」
王様「…これも運命だっていうのか?」
側近「あの日、あの時!あなたを皮肉にも守った"敵のロケット"…」
側近「あなた自信が、運命だと言ったのですから」
王様(騎士長)「…わかってるが」
側近「貴方は素晴らしい人だ。運命ですよ」
側近「気がつけば周りに貴方より力を持つ人がいなかった…。そうなった意味を考えてください」
王様「…」
側近「ほら、行きますよ」
王様「わかったよ…」
カツ…カツ…カツ…
王様「…」
……
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
騎士長「…良かったな、黒髪少女」
黒髪少女「うん」
アサシン「私は、一旦砂漠地方に戻る。また来るよ」
騎士長「…行っちまうのか?」
アサシン「王都と砂漠地方を戦争にする訳にはいかない」
アサシン「私なら、全員を抑えて納得させる自信があるから」
騎士長「…そうか」
アサシン「なーにしみったれた顔してんだ!永久の別れでもあるまいし!」バンッ
騎士長「…そ、そうだよな」ハハ
アサシン「それと…黒髪少女」
黒髪少女「…?」
アサシン「今更だけどさ、一緒に、家族としての道を歩みたいんだ・・」
黒髪少女「…!」
アサシン「一緒に来てくれないか。あんたが嫌なら私はあきらめる」
黒髪少女「…」
騎士長「…黒髪少女。家族ってのは大事にするもんだぜ」
黒髪少女「で…でも…」
騎士長「どうしたよ?」
黒髪少女「…騎士長も、一緒に…」
騎士長「…シー」ソッ
黒髪少女「うむっ…」
騎士長「…分かってる。俺だって気持ちは一緒だ」
騎士長「だけど、俺にはやるべきことがある。アサシンにも、アサシンにしか出来ない事がある」
騎士長「だから…その言葉はまた今度に取っておいてくれ…な?」
黒髪少女「…」
アサシン「…騎士長」
騎士長「なぁアサシン、もし国が立ち直って…お互い平和を取り戻してさ…」
騎士長「そしたら…胸張って顔を合わせたい。そして、言いたい事がある」
騎士長「本当はもう言うつもりだったが、こんな状況じゃ言うこともできん」ハハ
アサシン「…」
黒髪少女「…」
騎士長「それまでは、待ってくれ。お前が良ければ…だが」
アサシン「…私に惚れたのか?」クスッ
騎士長「ははっ、さぁな。黒髪少女…また、会おうな」
黒髪少女「騎士長…っ!」
アサシン「…」
騎士長「それじゃあな。俺は仕事があるんだ!」クルッ
黒髪少女「あっ…!」
アサシン「…本当にありがとう…」
黒髪少女「あ…ありがとう…騎士長…っ!絶対、また来るから…絶対…!!」
カツ…カツ…カツ…カツ…
騎士長「ばっかやろう…」グスッ…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 パーティ会場 】
王様「はぁ…」
王様(男らしくかっこよくと思ったものの、あれから4年、いや5年になるのか…?)
王様(国の立て直しに時間を置きすぎた。俺がずっと想ってても…女々しいだけというか…)
王様(もっと素直になれば良かった…。後悔だけだ…)ハァ
側近「ちょ…ちょっと…この日に、そんな顔を見せないでくださいよ」
王様「…分かってるよ」
側近「もうすぐ、各国の首脳達が集まるんですから!」
王様「分かってるよ!」
…コンコン
側近「って言ってる傍から、ほら来ましたよ!!」
ガチャッ、ギィィィ…
王様「へいへい、いらっしゃーい」
側近「もー!!そんな顔して!!」
王様「へんっ」フン
タッタッタッタッ…!!
???「おい、そこの王様!」
王様「あん?なんだ口のわりぃ首脳だな…」
???「この…バカがっ!」
ゴツッ!!…ドサッ…
王様「」
???「何してるんだ、そんなしみったれた顔をして!」
???「それでも一国を背負う主か?しばらく会わない間に、そんな腑抜けになったのか!」
王様「こ、この懐かしい痛みは…」ハッ
アサシン「久しぶり。騎士長!」
王様「…アサシン!」
アサシン「お互い、国に帰ってから忙しくて…会えなかったけど、また顔を見れて嬉しいよ」
王様「…っ」
アサシン「…」
王様「バカやろう…。突然すぎるだろ…どんな顔すればいいんだよ…」
アサシン「…」
王様「お前は頑張ってるな。話は聞いてるし、スゲェよな。俺なんてこんなんで王だぜ」
アサシン「まぁね」
王様「俺は嫌気がさしてな…。どうしてこんな事になっちまったんだろうなって」
アサシン「確かに、人の上に立つ技量はあるけど気持ちが着いていかないもんね、アンタ」
王様「やかましいわっ!」
アサシン「はっはっはっ!」
王様「…黒髪少女は元気か」
アサシン「…元気だよ」
王様「そうか。俺のこととか、話たりするのか?ボーイフレンドは出来たのか?何か変わったか?」
アサシン「お、おいおい。そんな一辺に話されても」
王様「そ、そうか…」
アサシン「…」
王様「…はぁ」
アサシン「あのさ、そんなに気になるなら…自分で聞けば?」
王様「あん?」
アサシン「入りなよ、黒髪少女!」
ガチャッ…ギィィ…
王様「…!」
黒髪少女「…」ペコッ
王様「く…黒髪少女…?」
黒髪少女「久しぶりだね…騎士長」
王様「…っ」
黒髪少女「…」
アサシン「何か声かけてやりなよ。お互い緊張してどうするんだ!」
王様「そ、そうか。そうだな…黒髪少女、すっかり…大人になって…」
黒髪少女「え、えへへ…」
王様「また会えるなんて思ってもいなかった…嬉しいよ…」
黒髪少女「…うんっ」
アサシン「それでね、久々なんだけど…黒髪少女が話しをしたい事があるんだって」
黒髪少女「…」
王様「なんだ?」
黒髪少女「そ、そっちに行っていい…かな」
王様「当たり前だ。…抱きついてくるか?なーんてな」ハハハ
黒髪少女「…っ!」ダッ
タッタッタッタッタッタッ…ダキッ…
王様「!」
黒髪少女「会いたかった…騎士長…。ちっとも変わってなくて、安心したっ…」ギュウウ
王様「立派な王様の立場にはなっちまったがな」ハハ
黒髪少女「ううん、変わってない。騎士長は騎士長だもん」
王様「…そうかもな」ニコッ
黒髪少女「うんっ…」
王様「で、話をしたい事があるんだって?」
黒髪少女「…」チラッ
アサシン「うん、いいよ」
黒髪少女「…」スゥゥ
黒髪少女「…」ハァァ
王様「?」
側近「…」フフッ
黒髪少女「私の…、お父さんになってくれませんか…?」
王様「何だそんな事か。そんなの当たり前だ…」
王様「って、今なんて言った!?」
黒髪少女「…ダメ、かな」
王様「え…えぇぇっ!?」
アサシン「うるっさ!」
王様「だ、だってお父さんって、どういうこと!?」
アサシン「…ダメか?もう、こんな歳の離れた私じゃ、受け入れてもらえないかな」
王様「そ、それってどういうことーっ!?」
アサシン「そのまんまだよ。だから、実はさ私、政府をやめてきたんだ。もう、自由な立場さ」
王様「なっ…」
黒髪少女「騎士長と離れて、もっともっと寂しくなって…。お父さんになってほしくなって…!」
王様「い、いや…ちょっ、混乱してるんだよ!」
側近「あ~あ。砂漠の英雄が政府を止めてまで本気の求愛、これは断る理由がないですねぇ?」
王様「はっ?」
側近「残念ですが、あー非常に残念ですが、王様は今日でやめるしかないですねー」
側近「あなたの意思は私が継ぐから安心してくださいー」
王様「すっげー棒読みだなおい。いつから作戦が始まってたんだコラ」ピクピク
側近「さ、さぁ~?」タハハ
黒髪少女「…」ニコッ
アサシン「…いい、かな。こんな私でもさ」
王様「…そ、それは…」
側近「素直になりましょうよ。毎日、黒髪少女さんとアサシンさんの写真を見てため息ついて…」
王様「て、てめぇコラ!!」
側近「はいはーい、王冠は没収!」グイッ
王様「あっ、俺の王冠を!」
側近「それと…はいっ!入ってどうぞ~」
ガチャッ…ギィィ
王様「今度は誰だよ!」
トコトコ…
アルフ「や~久しぶり!」
王様「アルフ!!」
アルフ「覚えてたの嬉しいねぇ。でさ、新作のカラクリが発明したんだ」
王様「久々に会ってそれかよ!一体なんだよ!」
アルフ「ほいっ」パチンッ!!
…ボワッ!!モクモク…
王様「うっぷ!何だこの煙…!」
アルフ「俺からの、最高のカラクリの贈り物さ。それもう一回」パチンッ
モクモク…ヒュウウッ…!!
王様「ごほごほ…。今度は風か!?だけどこれで煙が晴れてー……」
王様「…!」
アサシン「…」キラキラ
王様「お前、その格好…」
アサシン「わ、私は反対したんだよ!?こんなの似合わないって!」カァァ
王様「い、いや…すげぇ…ドレス、似合ってるよ…」
アルフ「はいはーい。次はこれ」パチンッ
ガァァァッ…!!ゴゴゴゴ…
王様「か、壁が割れてく!?」
ゴゴゴゴ…ゴゴ…
王様「…って、はい?」
街人「うおおおっ!おめでとおお!」
街人「おめでとうございまーす!!」
街人「きゃーキレーイ!!」
ワイワイ…ガヤガヤ…!!
王様「…っ」ヒクッ
アサシン「…あはは」
黒髪少女「えへへ!」
側近「さぁさ、その王様のお召し物も脱いで!これで、貴方はもう王様ではありませんよ!」グイッ
アサシン「…騎士長」
黒髪少女「騎士長♪」
騎士長(王様)「…ま、まじでいつからコレを計画してたんだお前ら…」ピクピク
アルフ「ささ、そんな事より最後のカラクリ!」パチンッ
ボワンッ!!
側近「えーごほんっ、これより…騎士長とアサシンさんの式を始めたいと思います」
騎士長「こ、今度はお前が神父の格好か。どこまでも楽しませてくれるな…オイ」
アサシン「待って、その前に」
側近「何でしょうか」
アサシン「貴方の本当の気持ち、聞いてない。それじゃ納得がいかない!」
騎士長「…」
アサシン「気持ちをきかせて。こんな私を、受け入れてくれますか…?」
騎士長「…」
騎士長「それは断る」
側近「!?」
アサシン「えっ…」
黒髪少女「えっ、き…騎士長…?」
騎士長「…前に言ったはずだ」
アサシン「…?」
騎士長「俺は、女に主導権を握られるのは好きじゃないってな!!」ニカッ
アサシン「…っ!」ハッ
黒髪少女「騎士長っ!」
騎士長「こんな中途半端な格好で、告白もくそもあるか!」
騎士長「アルフ、準備はあるんだろ!俺に正装、着せろや!」
アルフ「そう言うと思って!」パチンッ
…ボワンッ!!
騎士長「ほぉ、どういう仕組みか知らないが…いい服だ」
アルフ「ははっ!」
騎士長「…いいぜ、どうせ踊り子も控えてるんだろ?もっと激しく行こうぜ!」
騎士長「音楽隊、鳴らしていけ!踊れ!国民たち…もっと声をあげてくれ!!」
ウオオオッ!!!!
ジャジャジャー!!♪
騎士長「それでいい、俺は俺らしく、楽しく行こうぜ!」
アサシン「…!」
騎士長「こんな騒がしい俺だけどな…アサシン、話を聞いてくれるか」
アサシン「…はいっ」
騎士長「…」
騎士長「俺は、傷だとか、過去とか、関係ないと思ってる。そういや昔、お前とそれでケンカしたっけなあ」ハハ
アサシン「…」
騎士長「分かってると思うけど、今は勢いだけに任せたあの頃と違う」
騎士長「この数年、悩んでいたし…忘れられなかった。お前の言った、男女が分かり合うのは一瞬で充分だって言葉も」
アサシン「…うん」
騎士長「だから…俺から言わせてくれ」
騎士長「お前と、生涯を歩みたい。これからも一緒に生きていきたいっ!!」
騎士長「俺はバカだから、心に響く言葉は言えないし、軽い言葉に感じるかもしれない」
騎士長「だけど…こんな俺でもいいなら…お願いします」スッ
アサシン「…」
アサシン「…はいっ」ニコッ
黒髪少女「…!!」
側近「やれやれ、王様の仕事は大変そうですが…二人が幸せなら嬉しいですよ」
アルフ「おめでとう、二人とも」
街人たち「おめでとう!!」
ワァァァァッ!!!!
黒髪少女「"お父さん"」
黒髪少女「"お母さん"」
黒髪少女「…おめでとう♪」
…ニコッ
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昔々、ある国に悪いことをたくらむ王様がおりました。
王様は、自分のやぼうのために、
ざんにんで、ひどいことをたくさんしていたのです。
ひとびとは、王様はわるいやつだ!といいました。
ですが、王様は「王様だから、じゆうでいいんだ!」と
言って、人々のことを無視しました。
そんな時です。
王様に、はむかう一人の騎士がいました。
王様は、自分にはむかうやつはいらん!といって、クビにしてしまいました。
そしてその騎士は、おちこみました。
ですが、そのときです。騎士はある女の子とであいました。
その女の子は、ゆくえふめいになったお父さんを探していました。
騎士と出会った女の子はおねがいをします。「お父さんを探して」、と。
それをきいた騎士は、いっしょにお父さんを探す旅をすることにしました。
のをこえ、やまをこえ、うみをこえ…
そんな旅のとちゅうで、騎士と女の子に、
さばくのえいゆうと、もりのはつめいかが仲間になりました。
そして、騎士は仲間をつれていくうちに、悪い王様が世界にえいきょうを与えてるとわかります。
騎士はそれをゆるせなくなり、わるい王様を倒すけついをします。
「ひとびとのために!たたかうんだ!」と。
国へもどった騎士は、わるい王様を仲間といっしょにたおしました。
するとどうでしょう、女の子のまえに、探していたお父さんがあらわれたのです。
女の子は泣いてよろこびました。
わるい王様がいなくなったことで、その国のみんなも、喜びましたとさ…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
…パタンッ
黒髪聖女「これで、お話はおしまい。もう遅いから早く寝るのよ?」
男の子「え~!もっと!」
女の子「次のお話はどんなのー?」
黒髪聖女「それはまた明日のお楽しみ♪」
男の子「でもすっごいなー!騎士って、かっこいいな!」
女の子「うんうん!」
黒髪聖女「私は明日の、他の子のご飯の準備もあるんだから忙しいの!」
男の子「っちぇー、おやすみなさーい」
ガチャッ、バタンッ…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
トコトコトコ…
黒髪聖女「明日は、久しぶりに卵焼きでもいいかな~…」ブツブツ
…ポンッ
黒髪聖女「きゃっ!」
院長「おっとすまん、驚かせてしまったか」
黒髪聖女「院長…お父さん!」
院長「いつもご苦労様。本当に助かるよ」
黒髪聖女「ううん、私じゃこれくらいしか出来ないから」
院長「はっはっはっ、何を言ってるんだか」
黒髪聖女「ふふっ」
院長「しかしなぁ、お前もいい歳なんだからもっと自由でもいいんだぞ?」
黒髪聖女「そんな…、私、お父さんの夢を聞いた時からずっとこうしたかったの」
院長「夢?あぁ…砂漠の時の…」
黒髪聖女「だから、私は幸せ。お父さんは気にしなくていいの!」ニコッ
院長「…それならいいんだが」
黒髪聖女「…なるようになったから、そうなった。そうでしょ?」
院長「…!」
院長「はは…そうだな。その通りだ」
黒髪聖女「ねっ♪」
院長「しかし…この孤児院も、随分と大きくなったもんだ」
院長「もうすぐ、また新しい子供が増える予定なんだ」
黒髪聖女「またっ!?いや、いいんだけど…これ以上は3人で面倒見切れるかなあ?」
院長「お手伝いさんも来るんだよ」
黒髪聖女「お手伝いさん?」
院長「騎士団の引退した人が数人と、砂漠剣士の奴だ」
黒髪聖女「本当に!?」
院長「あぁ。お母さんにはまだ内緒だぞ?」
黒髪聖女「わかった!」
院長「それじゃこっちにおいで。いつものお礼に、用意したものがあるんだ」
黒髪聖女「…?」
カツカツカツ…ガチャッ
院長「…ほら、テーブルの上だ」
黒髪聖女「あっ!」
院長「懐かしいだろう?」
黒髪聖女「チョコレートパフェ…!」
院長「それと、椅子の上を見てくれ。気に入るかは分からないんだが…」
黒髪聖女「え、これって…」パサッ
院長「お前の昔着ていた服を、新しいサイズで探したんだ。今、流行が回ってきたとかなんとか…」ブツブツ
黒髪聖女「嬉しい!で、でもなんで急に…」
黒髪聖女「…」
黒髪聖女「あっ!」
院長「わかったか?今日は…」
黒髪聖女「私たちが、出会った日なんだ!」
院長「そうさ。改めて…お前と会えて良かった思う。ありがとうな」
黒髪聖女「…私こそっ!」
…ダキッ!!!
院長「ぬおっ!…はっはっはっ!」
コソコソ…
アサシン「…」クスッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
【 E N D 】
■あとがき
これで終了となります。恐らく、1つで見れば自分の作品の中で最も長い作品になったのではないかと思います。
全く新しい世界観に、謎が謎だったり、展開的に遅いところや直球的なものもありましたが、
多くの感想・意見等嬉しかったです。
いつもなら後日談を載せるのですが、
今回は後日談も一緒にまとめた形にしましたのでこれで終了となります。
また、本来なら修正分をアップ致しますが、残りスレが少ないこと・目に見える抜けがない事、
多重投稿をしていたくらいなので、このまま終了とさせていただきます。
本当にありがとうございました。
転載元
騎士長「王宮をクビになってしまった」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1393667841/
騎士長「王宮をクビになってしまった」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1393667841/
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コメント一覧 (64)
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- 2014年03月18日 07:34
- 久々に酷いものを見た
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- 2014年03月18日 07:51
- 騎士物の王道?でシンプルで面白い
読みやすくキャラの個性が立っていたのでサクサクと読めました
騎士物をよく読んでいる人は「あぁ、いつものパターンか」と思ってしまうかも知れませんが私的にはおすすめです
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- 2014年03月18日 08:56
- 見てて小っ恥ずかしくなる
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- 2014年03月18日 08:56
- これたしかほかにも同じ世界観でいろんなキャラに視点あてて書いてるんよな。今回は珍しくほかのきゃらでなかったな
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- 2014年03月18日 11:42
- 王道をメインに書いてる人だろこの人。
俺は面白いと思うよ。
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- 2014年03月18日 11:46
- 王道とテンプレはちがう
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- 2014年03月18日 12:13
- いいね
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- 2014年03月18日 12:22
- >側近「気がつけば周りに貴方より力を持つ人がいなかった
百万石の酒かな?
おもしろかった、乙
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- 2014年03月18日 12:39
- 面白いでしょ
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- 2014年03月18日 12:44
- なかなかよかったよ
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- 2014年03月18日 12:57
- 面白かった
これが臭いって言うならSSなんか全部臭いぞ
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- 2014年03月18日 12:58
- 面白かったよ
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- 2014年03月18日 13:06
- 難しいことは分からんが楽しめたよ
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- 2014年03月18日 13:09
- 子持ちアラサーヒロインなんて…思い切ったのう
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- 2014年03月18日 13:21
- 所々おかしい日本語があるな
特に「味のある事しやがって(キリッ」
食材かw
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- 2014年03月18日 13:32
- >>16
味のある「気の利いたこと、派手ではないが趣のあることをすること、相場が動くこと」
日本人か?w
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- 2014年03月18日 14:19
- ※16
お前・・・・
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- 2014年03月18日 14:57
- ※16 嘘だろ…
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- 2014年03月18日 14:58
- 旅をしてるって気持ちにさせてくれる素晴らしいssだったわ
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- 2014年03月18日 14:58
- 王道じゃなくてテンプレね・・
面白くない
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- 2014年03月18日 18:40
- 面白くないっていう人に面白い作品を書いてほしいな〜|д゚)チラッ
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- 2014年03月18日 20:40
- 頭の悪い作者には頭の悪い読者がつくと※22が証明してくれたな
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- 2014年03月18日 21:10
- 価値観はそれぞれなんだから好きにすればいいさ。
価値観の数だけコンテンツがあるんだから
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- 2014年03月18日 21:14
- 面白いの書けとはいわんが、じゃあお前らが面白いと思ったのはどんなのなんだとは聞きたい
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- 2014年03月18日 22:45
- これでええねん
質より量で
剣士シリーズ好き
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- 2014年03月18日 23:05
- アサシンが幼女のかーちゃんだとは薄々感じてた
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- 2014年03月19日 00:49
- ※16が怖い
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- 2014年03月19日 01:04
- 面白かった
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- 2014年03月19日 01:33
- ※16
お前最高やな!
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- 2014年03月19日 02:34
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長くて楽しめた 内容に関しては※7が既に書いてた
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- 2014年03月19日 04:30
- 確かにテンプレではあるが、それを長いながらにまとめる能力は素直に評価できるだろ
特に最近なんかそのテンプレですらまともに書けないやつばっかだし
ただ、途中からしれっとアルフが仲間入りして、挙げ句に便利キャラとして使われたのに違和感
途中までゆっくり丁寧に話進めてたのに森にはいった辺りから展開急ぎすぎな印象を受けたな
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- 2014年03月19日 09:52
- ※16が愛されてて何よりです(爆)
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- 2014年03月19日 12:03
- アルフさんマジ有能
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- 2014年03月19日 13:42
- 面白かったよ
※16が更に笑わせてくれて笑顔だわ
この人の他のSSも読みたいね
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- 2014年03月20日 09:46
- ※16が散々な言われようだけど、「味のある事をする」ではなく「味な事をする」だと思うんだけどな。
まぁそれは置いといて面白かった。ベタな展開、とても良いと思います。
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- 2014年03月20日 21:45
- 16
人気に嫉妬
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- 2014年03月21日 01:29
- 普通に、ゲームの脚本として書いた感じだね。
移動マップや展開がFF4くらいの時代のRPGを彷彿とさせるし、このシーンはゲームだったらこんな演出になるだろうなというのが目に浮かぶ。
話の臭さがまた、FF4の時代のRPG っぽい。
ヒロインがアラサーなのはともかく、この手のヒロインはもっと戦力にさせた方がいいし、王都に戻ってきてからの話が雑なのが残念。
でも掲載されてる他のSSと比較するならば、充分面白い。
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- 2014年03月21日 02:48
- いつものパターンだからこそ楽しめました!
面白かったです。でも必ず、絵本だかを読む場面が必ずあるんですね(笑
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- 2014年03月21日 03:57
- んー?
王宮つきの兵士長がド田舎に飛ばされて一から街を作り上げ+ハーレム完成させるSSってあったよね?
なんか記事リスト見てて思い出したけど別物だったわ。
未更新作品の掘り出しも面白いけど、過去掲載した面白い物もまた見たいなー
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- 2014年03月22日 01:28
- ※16がしたかったことって※36のことだよな??
それなのに※16のこと笑ってる人って…
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- 2014年03月22日 20:35
- ※41馬鹿しかいないんだろ
このssもいかにも高校生が書いたって感じの内容だし
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- 2014年03月22日 22:19
- やっぱハッピーエンドは読後感がイイね!
騎士長カッコよす!
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- 2014年04月06日 02:14
- 酒屋の最高の一杯を回収してたら、もうちょっと満足したかなぁ。
伏線はちゃんと書き切ってくれなきゃもどかしいわ。
すごく楽しく読めたけどね。
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- 2014年04月06日 18:09
- そもそも味な事じゃなくて味な真似だろ
この作者所々日本語おかしすぎてその度に冷めたわ
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- 2014年05月31日 10:14
- 全体的に見れば面白いけど終盤の展開は正直ダメだったわ。
副長が主人公差し置いて活躍したせいで主人公の名目丸つぶれになって
これじゃいかんとばかりに警備隊長との一騎打ちをテコ入れしたり・・・。
この人の話好きなんだけど今回は一番つまらなかったかな・・・。
次回に期待するか。
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- 2014年06月30日 00:10
- 米45 味の意味調べたら? 君も相当恥ずかしいよ
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- 2014年08月11日 08:26
- 味の事で争い過ぎやろお前らwww
それはともかくこのss読むの二回目やったけど、楽しめた
この作者のssやったら錬金術師のやつが面白いよー
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- 2015年06月16日 08:09
- 久しぶりにいい作品に出会えた。
途中アルフがアルブになってたw
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- 2015年06月18日 23:51
- 普通に面白いやろ。
ベタベタの王道だけどそこがまたイイ!
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- 2015年11月15日 01:14
- この話の始め方って作者誰だっけか…何の作品の人だっけ?誰か解る人おります?
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- 2015年12月02日 01:11
- 終わり際の騎士長と警備隊長との一騎打ちは
どう取り繕ってもテコ入れでしかない
副長いらんかったやろこれ
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- 2016年03月25日 03:28
- うーん
前編は面白かった
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- 2016年04月26日 00:22
- まぁ、だいたい王様を倒さなきゃいかん系は王か、直属の部下との一騎討ちが基本だからなぁ。
でも、面白かった。
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- 2016年05月26日 06:02
- 面白かったですよ!
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- 2017年02月22日 19:59
- ええやん
実によい
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- 2017年07月02日 00:57
- 前篇まではよかった
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- 2017年07月03日 13:59
- グレート
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- 2017年07月19日 01:03
- とっても面白かったです(´・∀・`)受験生なのに最後まで読んじゃいました>_<
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- 2017年08月06日 23:23
- いいお話だった騎士長かっけぇ
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- 2017年10月24日 01:42
- 今日は早く寝ようと思ったのに全部読んじまった・・・
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- 2018年03月11日 00:49
- よかったぞ!
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- 2018年06月26日 11:58
- こういうのでいいんだよ
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- 2018年07月21日 09:45
- 面白かったんだけど、ニカッてのやめてほしかった
これだけ長いのはいいんだけど新鮮味があるわけじゃないし
ほめるところがない