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槍兵「竜騎士になりたいんです」 役所「無理です」

1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/16(日) 01:43:04.10 ID:I3+cbe760

槍兵「・・・・・・え?」

役所「申請期限が過ぎています」

槍兵「し、申請期限? そんなの・・・・・・あ、ありましたっけ?」

役所「竜騎士をご希望とのことでしたので、ご存じかとは思いますが・・・・・・」

槍兵「は、はい・・・・・・あ、いえ」

役所「竜騎士となるには、竜の加護を得るために特定の場所に行き、対象となる竜と契約しなければなりません」

槍兵「それは知ってます。 使役する竜もそこで手に入れることも・・・・・・」

役所「さようでございますか」

役所「しかし、近年では竜の個体数が減少傾向にあり、竜騎士への転向希望者をこちらで厳選させていただいているのです」

槍兵「え、ええ?」

役所「竜は元々、番いを作りにくく、繁殖は数十年に一度、または、数百年に一度など珍しくありません。 ですので、竜騎士となれるものは、その希少性に値するだけの実力者であること、そして、竜の個体数が契約出来るだけ増えた場合に限り、竜騎士への転向を許されるのです」

槍兵「は、初耳なんですけど・・・・・・いつ決まったんですか?」

役所「今月の王国会議で可決されました。 議題自体は二年前より出ていました」

槍兵「それも初めて知ったな・・・・・・」

役所「さようでございますか」

役所「城下の中央広場に設置されている掲示板に、告知として明記してあったはずですが・・・・・・」

槍兵「えっと、その、次の竜騎士転向期間っていうのは・・・・・・」

役所「決まっておりません。 コレばかりは、竜の個体数に依存するので」

槍兵「で、ですよね・・・・・・」



2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/16(日) 01:50:02.52 ID:I3+cbe760

―――酒場



槍兵「そんな規約があるなんて全然知らなかった」

技師「ぶはははは!! ありえねぇぇぇwww」

槍兵「笑い事かよ技師! ようやく憧れの竜騎士になれると思ったのに、こんなのあんまりだ」

技師「んなこと言ったって、そういう決まりが出来ちまったんじゃ、くっくっww、しょうがねぇだろww」

竜騎士「俺の時はそんな規則はなかったがな。 確かに、竜の個体数は近年減少傾向にある。 俺が竜騎士となった時には右にも左もも竜騎士がいたものだが・・・・・・]

竜騎士「これも時代だと思って受け止めておけ」

槍兵「先輩はいいですよね。 自他共に認める有名な竜騎士になってるんですから」

竜騎士「そう恨み言を言うな。 こうやって、お前のヤケ酒に付き合ってやってるんだからな」

技師「そうだぞ。 俺だって親友の窮地に、急ぎの仕事を抜け出して駆けつけたっていうのに」

槍兵「お前はサボる理由が出来たから喜び勇んで駆けつけただけだろ」

技師「おおっと、名推理だな兄弟」

槍兵「序章で犯人が分かるくらい簡単だ」

竜騎士「・・・・・・しかし、そうなるとお前も現状に甘んじている場合では無くなったぞ」

槍兵「え・・・・・・と、言いますと?」

竜騎士「竜騎士を希望する者が誰でもなれる今までとは違い、役所が厳選すると言うんだから、それなりの実力を持っていないと、選考さえされないということだ」

技師「ちなみに、槍兵が竜騎士の選考基準になる可能性は・・・・・・」

竜騎士「現時点では難しいな。 まだまだ強さのランクとしては上がいるわけだから」

槍兵「そんなぁ・・・・・・」

技師「oh・・・・・・ご愁傷様」

槍兵「はぁ・・・・・・」

竜騎士「気を落とすのはまだ早いだろう。 直ぐに竜騎士選抜が始まるってわけじゃないんだ」

槍兵「ええ、まぁ・・・・・・」

竜騎士「逆に考えてみろ。 今のうちに実力をつけて、その時が来たらチャンスをモノにすればいいんだ。 幸運の女神には前髪しかないっていうだろ?」

槍兵「出来ることならロングヘアーの時に出会いたかった」



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/16(日) 01:57:10.88 ID:I3+cbe760

―――城内 会食の間



竜騎士「お久しぶりです、陛下、姫様」

国王「うむ。 こうして食事を共にするのも、ふた月ぶりか」

竜騎士「はい」

国王「しかし、相変わらず堅いな。 私と娘の前でくらい、もう少しその厳格さを崩しても構わんと言うのに」

竜騎士「いえ、コレばかりは・・・・・・。 平静を装ってはいますが。 大隊の指揮を執る時以上に緊張しているのですから」

国王「それは、私の前だからか? それとも、娘の前だから?」

姫「お、お父様!!」///

竜騎士「お戯れを・・・・・・。 もちろん、両方でございます」

国王「はっはっは。 本当に、変わらんな貴殿は」

竜騎士「王族との会食の席なら、コレが普通ではないでしょうか?」

国王「ふむ、そうは言うがな。 息子になるかもしれない男が、そうも他人行儀ではなぁ」

竜騎士「へ、陛下・・・・・・っ!?」

国王「まったく。 戦の腕は確かで、頭も切れる。 それなのに、色恋には奥手か・・・・・・」

姫「お父様!?」

国王「このくらい調べさせるまでもない。 お前達が隠れて逢い引きしていることも、文を交換していることも分かっておるわ」

竜騎士「そ、そうでしたか・・・・・・」

姫「い、いつから・・・・・・」

国王「さて、いつからかのう・・・・・・」

竜騎士「流石は陛下。 その見識眼なら、この国の未来も安泰でありましょう」

姫「竜騎士様、こういうのは目ざといというのです」

国王「つまりだ。 親公認。 いや、国王公認となったのだから、そうコソコソ会おうとせずともよい」

竜騎士「で、ですが・・・・・・」

姫「・・・・・・っ」///

国王「はぁ。 お前達が奥手過ぎるとこっちがやきもきする。 これでは、孫の顔を見るのはまだまだ先か・・・・・・」

竜騎士「・・・・・・」///

姫「・・・・・・」///

国王「まあよい。 せっかくの料理が冷めてしまう。 まずは、料理長の腕を振るった料理を頂くとしようじゃないか」

竜騎士「はい」

国王「それとな」

竜騎士「?」

国王「司令が貴殿に話があるといっていた。 後で顔を出してくれ」

竜騎士「司令が? ・・・・・・分かりました」



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/16(日) 02:01:12.34 ID:I3+cbe760

―――城内 司令私室



竜騎士「資源調査……でありますか?」

司令「うむ。 君も知っての通り、我が国の経済基盤は鉄鋼業だ。 近年の採掘量の減少を鑑み、調査団を結成し、現地へ赴いてもらいたい」

竜騎士「その様な重要な任務、私に務まりましょうか? こと、戦においては何人にもひけはとらないと自負していますが……」

司令「そう思うのも無理はない。 私としても、無理を言っている自覚はある」

竜騎士「はい……」

司令「しかし、魔王が死に、平和へと向けた軍縮が進んでいる今、調査隊にもあまり兵を割けんのだ」

司令「もちろん、専門家の補佐も付ける。 君には、万が一調査隊に危険が及んだ時に、力を貸してほしいのだ。 調査団の向かう島は、若干数の魔物が確認されている。 それらの脅威から調査団を守るのが、君の主な任務だ。 何かあったときには、君が皆を守ってやってくれ」

竜騎士「そういう事ならば、よろこんで引き受けましょう。 国の繁栄のため、民の幸せのために、私の力が役に立つというのであれば」

司令「期待している。 この国一番の……いや、世界一の竜騎士よ」

竜騎士「はっ」

司令「それに、だ」

竜騎士「はい?」

司令「日がな竜を駆り飛び回るよりは、一箇所に落ち着ける任務の方が、多少なり気も休まるだろう」

竜騎士「ご配慮頂き、恐悦至極」



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/16(日) 02:06:44.45 ID:I3+cbe760

―――王城 正門前




槍兵「先輩! 調査団の隊長に任命されたって、本当ですか!?」

竜騎士「・・・・・・どこで聞いたんだ?」

槍兵「戦では情報戦が命ですから」

竜騎士「(誰と戦っているんだ?)」

槍兵「まぁ、本当は竜の個体数を調べている部署に今の状況を聞きに行ったんですが、それが司令直轄の部署でして・・・・・・」

竜騎士「それで?」

槍兵「どうしても教えてくれないって言うんで、不貞腐れてトイレの壁でもブチ抜いてやろうと思った時に、調査団の事を話している者たちの事を個室の中で聞きまして・・・・・・」

竜騎士「はぁ・・・・・・」

竜騎士「そんな暇があるなら、槍の腕を磨くか、戦闘の勉強をしろ。 そんなんじゃいつまでたっても竜騎士にはなれないぞ」

槍兵「いや、まぁそうなんですけどね。 で、どうなんです。 本当なんですか?」

竜騎士「……機密事項だ」

槍兵「僕にさえ伝わっちゃう情報に、機密性なんてありませんよ」

竜騎士「お前、それはそれで問題だぞ」

槍兵「いいじゃないですか。 どうせ本当なら、数日後には国を挙げて見送ることになるんですから」

竜騎士「そういう問題じゃ……はぁ。 もういい。 お前の言う通り、三日後に出発だ」

槍兵「やっぱり!! 凄いじゃないですか!! 流石ですね、先輩」

竜騎士「凄いかどうかはともかく、光栄なことには変わりないな。 この身が国のために役に立つというのだから」

槍兵「先輩がこの国に来て、もう三年でしたっけ……」

竜騎士「そうだな。 初めは、少しでも人々の役に立ちたいと思い、この地に身を置いたが・・・・・・」

槍兵「置いたが……?」

竜騎士「今の私は、地位を頂き、役職もあり、敬われるようになってしまった。 これでは・・・・・・な。 私はただ、皆のために動ける存在であればよかったというのに」

槍兵「仕方ないですよそれは。 竜騎士というだけでも、人々が憧れる尊敬の対象なんですから。 竜を従え、竜の加護を受け、その力も精神も最高峰の騎士! あぁ、僕もなりたいなぁ」

竜騎士「だったら、今以上に鍛錬に励むことだ。 速さだけなら、お前は見所がある」

槍兵「え・・・・・・?」

竜騎士「身のこなしも槍さばきも、俺が今まで見てきた兵の中ではいい線いってると思うぞ」

槍兵「ほ、本当ですか?」

竜騎士「嘘なんかついてどうする。 まぁ、速さだけだがな」

槍兵「じゃあ、この調子でいけば、僕も竜騎士になれますかね?」

竜騎士「ふん、それはどうだろうな」



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/16(日) 02:14:45.10 ID:I3+cbe760

槍兵「え~!?」

竜騎士「そう簡単になれるようなものなら、世界は竜騎士で飽和状態だろう。 ま、今は役所が取り仕切っているがな」

槍兵「それは、そうですけど……」

竜騎士「・・・・・・前にも思ったが、お前はまだ若いんだ。 焦る必要なんかないだろう」

槍兵「けど、僕は……」

竜騎士「まぁ、早くなりたいという気持ちも、解らなくもない。 昔は俺もそうだった」

槍兵「先輩も?」

竜騎士「ああ。 だが、結局のところ、竜騎士とは騎士の延長線上でしかない。 その力量も、精神も、今研鑽していることを続けていけばいい。 時が経ち、その成果が出ていれば、きっとなれるだろう」

槍兵「そう、でしょうか……」

竜騎士「槍兵、お前にとって、騎士とは何だ?」

槍兵「それは、騎士道のことですか?」

竜騎士「もちろんそれもある。 しかし、そんな建前を聞きたいんじゃない」

槍兵「……騎士、とは……」

竜騎士「別に、あるならあるで言わなくてもいい。 しかし、まだないのなら、何でもいい。 自分の中にある、絶対に譲れないものを一つ持っておけ」

槍兵「絶対に、譲れないものですか」

竜騎士「いつかそれが、お前を支える力となるだろう」

槍兵「先輩には、あるんですか?」

竜騎士「もちろんだ。 今も昔も、それがあるから戦えるんだ」

槍兵「竜騎士になる前から?」

竜騎士「騎士を志した時からな」



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/16(日) 02:25:15.14 ID:I3+cbe760

―――城下 市場


薬師「あれ、槍兵さん?」

槍兵「ん? ああ、こんにちは、薬師」

薬師「どうしたんです? 道端でぼおっとしてるなんて・・・・・・」

槍兵「う、うん・・・・・・。 いや、別に大したことじゃないんだ。 薬師は何か買い出し?」

薬師「あ、はい。 今日の晩ご飯で使う食材を買おうと思って」

槍兵「なら、荷物持ちになるよ。 ちょうど時間が空いてたところだし」

薬師「本当ですか! 嬉しいです! あ、よかったら、その後一緒にウチでご飯を食べていきませんか?」

槍兵「いいの?」

薬師「もちろんですよ」

槍兵「じゃあ、お言葉に甘えようかな」

薬師「ええ、うるさい兄がいつもお世話になってるんですから、これくらいはさせてください」

槍兵「流石、できた妹は言うことが違うね。 技師はまだ仕事中なのかな?」

薬師「はい。 まぁ夕飯時には帰ってくると思いますよ」

槍兵「そうか。 じゃあ、早速行こうか」

薬師「そうですね。 それじゃあ最初は・・・・・・」



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/16(日) 02:33:55.57 ID:I3+cbe760

―――薬師&技師の家


技師「ただいま~っと・・・・・・お、槍兵じゃん」

槍兵「お邪魔してるよ」

薬師「お帰りなさい兄さん。 今ちょうど御飯の用意が出来たところだから、早く手を洗ってきて」

技師「へいへい」

技師「(薬師)」ヒソヒソ

薬師「(な、何?)」ヒソヒソ

技師「(別に、俺は外で済ましてきてもいいんだぜ。 せっかく槍兵が来てるんだからよ)」ヒソヒソ

薬師「(い、いいから早く席に着いてよ兄さん!)」ヒソヒソ

槍兵「どうかしたのか二人とも」

薬師「な、何でもないです。 さぁ、食べましょうか」

三人は食卓を囲み、薬師の作った料理に舌鼓を打つ。 そして、話は竜騎士の話題へ・・・・・・。

技師「へぇ、遠征ねぇ・・・・・・」

薬師「凄い・・・・・・いつ出発なさるんですか?」

槍兵「三日後だって言ってたな。 きっと、見送るための式典とかが催されるんだとは思うけど・・・・・・」

技師「なら、その前にウチらはまた別に祝ってやるとするか」

薬師「いい考えだとは思うけど、お忙しい身なのに、時間を割けるのかしら」

槍兵「来れなかったらそれはそれで仕方ないさ。 僕らは先輩の旅立ちを勝手に祝うとしようか」

薬師「・・・・・・そうですね。 喜ばしいことには変わりないんですから」

技師「よし、そうと決まればちょっとマスターの所に行って、色々準備の段取りを決めてこようぜ。 祝うってなれば、結局あそこを使うんだしな」

槍兵「そうだね」

槍兵「薬師、ごちそうさま。 凄くおいしかったよ」

薬師「ふふ。 こんなものでよければ、いつでも食べに来てくださいね」

技師「じゃあちょっと行ってくる」

槍兵「またね」

薬師「はい。 行ってらっしゃい、兄さん。 槍兵さん」



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/16(日) 02:45:24.77 ID:I3+cbe760

―――酒場



技師と槍兵は酒場に到着次第、マスターに祝いの準備を提案し、大体の目処がついたところで、カウンターに座った。

技師「なぁ、家で飯食ってるときから思ってたんだが・・・・・・」

槍兵「・・・・・・え?」

技師「どうしたんだよ? いつにもまして暗いなお前」

槍兵「・・・・・・普段の僕のイメージってどういうの?」

技師「決まってるだろ? 何にも考えてない、能天気なイメージだよ」

槍兵「そ、そんな事ないだろ?」

技師「いいや、お前はずっとそんな感じだよ。 それが今日に限っては、まるでこれから牧師に会いに行ってきますって面してるぞ。 なぁマスター?」

マスター「確かに、いつもの調子ではなさそうですね」

槍兵「マスターにもそう見える?」

マスター「ええ。 まぁだとしても、人が胸の内を話したくなるのは、牧師かバーテンダーと相場が決まっていますから」

技師「だな。 ほら、なにやらかしたんだ? さっさと吐いて楽になっちまえよ」

槍兵「別に、罪の告白をしたいわけじゃないんだけど……」

技師「だったら何なんだよ。 女にフられたか?」

技師「(だとしたら、ウチの妹的には大問題だが・・・・・・)」

槍兵「違うって。 今日、先輩に聞かれたことで、ちょっとね・・・・・・」

技師「聞かれたこと?」



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/16(日) 02:50:57.42 ID:I3+cbe760

槍兵は技師とマスターに竜騎士から言われたことを話した。


槍兵「騎士とは何だ・・・・・・そう聞かれたんだ」

マスター「騎士とは……ですか」

槍兵「マスターは、バーテンダーとは何かって、考えたことある?」

マスター「もちろんですよ。 私の場合は、その事を常に自分に問いかけ続けています」

技師「真面目だね~」

槍兵「技師は?」

技師「俺か? 俺は……どうだかな。 そんな事、考えたこともねぇや」

槍兵「参考にならない奴だなぁ」

技師「そもそも畑が違いすぎるだろうがっ」

マスター「きっと、無い方はもっと別の部分で大事なものを持っているのでしょう」

技師「お、いい事言うねマスター! そうだぞ槍兵!! 大体な、俺達みたいなのは、考えるよりもまず体が動いちまうもんなんだよ」

槍兵「そう……か……」

マスター「見つけようと思っても、中々見つからない物かもしれませんよ。 研鑽の果てに気づくもの、時が経たなければ、気づけぬものかもしれませんし」

技師「そうだぜブラザー。 思いつめてりゃ見つかるもんでもないだろ」

槍兵「……かもな」

技師「おうよ! そういうのは、騎士になった時に考えても、遅くはねぇって」

槍兵「ああ。 焦りすぎて、おかしな答えが浮かんできても困るしな」

技師「そういうこった。 そんじゃマスター!!」

マスター「はい。 未来の騎士に、特別な一杯をお作りしましょう」



19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/17(月) 20:43:52.16 ID:6CL/DRn00

―――城内 庭園




姫「竜騎士様、調査団の隊長に任命されたと聞きました。 おめでとうございます」

竜騎士「ありがとうございます、姫様。 見事成果を上げ、国の更なる発展に貢献できるよう努めます」

姫「ええ。 竜騎士様ならきっとやり遂げると信じております。 お早いお帰りを・・・・・・無事をお祈りしています」

竜騎士「・・・・・・いかがなされました?」

姫「・・・・・・え?」

竜騎士「表情に、陰りが見て取れます。 お声も、いつもの姫様とは違い沈んだご様子。 何か、お悩みが?」

姫「・・・・・・竜騎士様は、時々ではありますが、普段では想像も出来ないほど、私の機微に気づかれますね」

竜騎士「手厳しいですね。 本当のことであるのがお恥ずかしいことではありますが。 しかし、姫様の事は常に考えていますよ」

姫「ふふっ。 お上手ですね」

竜騎士「本心です」

姫「ええ。 承知しています。 でなければ、私もここまで惹かれることもなかったでしょう」

竜騎士「ならば、この時々にしか発揮しない鋭さと口上に磨きをかけなくてはなりませんね」

姫「恋路に鋭すぎる竜騎士様というのも、想像できません。 竜騎士様は、竜騎士様のままでいて下さいませ」

竜騎士「はい。 私もその様な自分は想像できません」

姫「ふふっ」

竜騎士「とはいえ、このまま姫様の悩みを知らずに国を離れては、任務に支障がでることでしょう」

姫「ご冗談がお上手ですね」

竜騎士「姫様」

姫「・・・・・・」

姫「・・・・・・竜騎士様は、最強の騎士。 これまでも、これからも、戦場に身を置かれるのでしょうね」

竜騎士「それが、竜騎士の宿命ですから。 竜と契約を交わしたときから、この身は戦いの場にかり出されることは必然となりました」

竜騎士「象徴性としても、能力としても、遊ばせておく理由など無いのですから。 しかし、後悔はしていません。 この力で、魔物達から多くの民を救うことが出来たのです」

姫「きっと、そう仰られると思いました。 いえ、存じていました」



20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/17(月) 21:10:36.56 ID:6CL/DRn00

姫「ですが、私はその宿命が、竜騎士様の身を業火のごとく焼き続けているのではないかと・・・・・・思うことがあります」

姫「竜騎士とは、皆その強さにばかり目を捕らわれがちですが、竜という神性の高い生き物を従える為には、その志を竜に認めさせる必要があります」

姫「今、こうして貴方が竜の加護を受けてここにいるという事は、あの竜に・・・・・・それも本来気性の激しい火竜を従えたとなれば・・・・・・」

姫「その心は、疑いようのない程に純真な方」

姫「故に誰よりも、誰かが傷つくことに耐えられない方・・・・・・」

竜騎士「姫様・・・・・・」

姫「私は、あなたのその優しい心が傷つくのが怖いのです」

姫「竜騎士様も、人の子です。 皆は、輝かしい功績を前にその事を忘れてしまいますが・・・・・・。 ですが、他の誰も気づくことがなくとも・・・・・・私は、あなたが傷ついた時に、すぐ近くに寄り添えない事がもどかしくあります」

竜騎士「・・・・・・」

竜騎士「それ程までに私のことを思って頂けるとは、最上の喜びです」

竜騎士「姫様がそう思っていただけるならば、私は何の憂いもなく遠征に出ることが出来ます」

姫「竜騎士様・・・・・・」

竜騎士「姫様の思いに守られている限り、私は決して、膝を折ることはありません。 それが、騎士ならばなおの事」

姫「・・・・・・どこまでも、愚直な方ですね」

竜騎士「・・・・・・それに」

姫「・・・・・・?」

竜騎士「幼少の頃は、姫をお守りする騎士というのに、誰もが憧れたものです」

姫「それは、竜騎士様も?」

竜騎士「無論、私もです。 男子なら、誰もが一度は夢見ることではないでしょうか」

姫「え・・・・・・」

竜騎士「・・・・・・ゴホン。 私も、この国に身を置いて大分経ちました」

竜騎士「調査団の遠征から戻りましたら、少しばかり、お暇を頂戴してもよい頃です」

姫「そ、それは・・・・・・つまり・・・・・・」

竜騎士「優秀な後輩も育ってきております」

竜騎士「この機会に、僅かな間ではございますが、姫様のお側付きになるのも、悪くありません」

姫「でしたら・・・・・・でしたら私も、竜騎士様が遠征に出ている間に、守られるに値するだけの女になるよう、日々修練します」

竜騎士「姫様はもう十分すぎるほどです。 だからこそ、私はあなたに心惹かれたのですから」



21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/17(月) 21:37:50.94 ID:6CL/DRn00

―――城内 パーティー会場




貴族「竜騎士様、この度、調査隊隊長の拝命おめでとうございます」

竜騎士「ありがとうございます。 これもひとえに、あなた方貴族達が国を支えて下さるからですよ」

貴族「いえいえ、もはや我らなどは建前だけの・・・・・・形ばかりの貴族でしかありません。 今となっては財の方も、あってないようなもの。 何かにすがらねば生きていけないのは、むしろ平民よりも我々のような者達です」

竜騎士「戦時中は、その財に助けられた部分も多い。 国の財政も安定してきた今なら、当時の功労に補償が働くでしょう」

貴族「はっは・・・・・・。 そうだとよいのですがね。 徐々にではありますが、国も大きく変わろうとしてきている。 期待したいところではあるのですが・・・・・・」

竜騎士「・・・・・・」

貴族「そういえば、竜騎士様はもうお聞きになりましたか? 魔法部隊のことを?」

竜騎士「・・・・・・いいえ。 どういったお話でしょう?」

貴族「どうやら、財政の建て直しをはかるいったんで、魔法部隊の軍縮が決定したらしいのです」

竜騎士「魔法部隊の軍縮、ですか・・・・・・」

貴族「ええ。 最近では魔法部隊の働きもめざましく、まるで疲れも知らず、魔力の枯渇すら感じられないほど活躍されていた部隊ですが、やはり財政難の煽りを受けてしまったようですね」

竜騎士「そうでしたか・・・・・・。 我が国の誇る部隊が・・・・・・」

貴族「まぁ、これまでが少し大きすぎるくらいの部隊だったものですが、竜騎士様は個人の活躍で大隊規模の働きをなされているのです。 総合的な面を見て、余剰戦力を調整したと考えれば、妥当なところなのではないでしょうか」

竜騎士「・・・・・・」

貴族「確かに、我が国の戦力を支えてきた部隊が縮小されるのは哀愁を誘うものがございます。 なれど、これも国のため、ひいては、平和へと歩み始めた結果と考えれば、前向きにとらえることも出来ましょう」

竜騎士「そうですね。 その通りだと、思います」

貴族「ただ、もしかしたら、そのことをよく思わない者達が出てくることがあるかもしれません。 しかし、そんな時こそ、古き考えに縛られ、時代の変革についてこれない膿を出し切るよい機会となるでしょう」

竜騎士「そのおっしゃりよう、随分と乱暴な意見にも聞こえますが」

貴族「政とはそういうものでございます。 より良き国、より良い未来のために、誰もが当事者となる。 今の時代、誰一人として、政に関わらないものなどいないのですよ」

竜騎士「・・・・・・」

と、竜騎士と貴族が話しているところに、司令が近づいてきた。

司令「竜騎士、少しいいか?」

竜騎士「司令? はい、大丈夫です」

貴族「竜騎士様、調査隊の無事をお祈りしています」

竜騎士「はい。 では・・・・・・」



22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/17(月) 21:49:54.49 ID:6CL/DRn00

―――城内 司令私室



司令「君には、本当にすまないと思っている」

竜騎士「急に、どうなされました?」

司令「私たちは・・・・・・国は、君に重荷を背負わせてばかりで、何も返すことが出来ない。 情けない限りだ」

竜騎士「もったいなきお言葉です。 しかし、私は代償や見返りを求めて身を動かしているわけではありません。 すべては、国のため、民のため・・・・・・」

司令「そんな君だからこそ、我らも何とかしたいと思っているのだ」

竜騎士「・・・・・・」

司令「もう、耳には入っているとは思うが・・・・・・」

竜騎士「はい」

司令「我が魔法部隊の、縮小が決まった」

竜騎士「財政難の影響で、以前から議題には上がっていたんだが、それが、可決されてな」

司令「余計に、君の負担が増すばかりとなってしまった・・・・・・」

司令「私も、何とか部隊数の維持につとめようと手を尽くしてきたのだが、力及ばず・・・・・・」

竜騎士「司令・・・・・・」

司令「我々は、君に依存しきっている。 その現状だけでも、変えようと思っているのだが、うまくかないものだ」

竜騎士「そのお気持ちだけでも、十分すぎる思いです」

司令「・・・・・・つくづく、まっすぐな男だ」

竜騎士「これが、性分ですので」

司令「そうか・・・・・・。 なら、私もその意気に劣らぬ気概を持たねばならないな」

竜騎士「すでにお持ちではないでしょうか?」

司令「それ以上にさ。 私は、理想のためなら、何だってやってみせる」

竜騎士「及ばずながら、ご健闘をお祈りしております」

司令「ありがとう。 君がそう言ってくれると心強いよ」



23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/17(月) 22:02:59.65 ID:6CL/DRn00

―――酒場




技師「結局、俺達だけでやることになったな、拝命祝い」

槍兵「かもしれないけど、別にそれでもいいさ。 もし来れたらって伝えてあったし」

薬師「私たちで竜騎士さんをお祝いすることに、変わりはありませんからね」

槍兵「うん。 こういうのは気分の問題だよ。 それに、お城では“家族ぐるみで”祝ってるかもしれないしさ」

技師「・・・・・・だな。 あの人もいい加減、姫さんとくっついちまえばいいのによ」

薬師「意外と、そういう方面には奥手なんですね」

槍兵「というか、真面目すぎるんだよな、先輩は・・・・・・」

薬師「確かに、竜騎士さんほど実直な人はそうそういませんよね」

技師「それが色恋にも反映されていると・・・・・・」

薬師「そうじゃないんですか?」

技師「そのわりに、自分では気づいてないのか、俺と槍兵の前でポロっと口にするんだぜ、姫さんのこと」

槍兵「あれは、相談なのか惚気なのか判断に困るよな」

技師「しかも、本人に全くの自覚なし」

薬師「世間に広まったら、それはそれで一大事ですからね」

マスター「それだけ、お二人のことを信頼しているのでしょう」

技師「いや、あれは意外と天然という可能性も・・・・・・」

槍兵「いっそうタチが悪いよ」



竜騎士「ほう、いったい誰のタチが悪いって?」



槍兵 技師 薬師「「「・・・・・・っ!?」」」



24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/17(月) 22:18:36.52 ID:6CL/DRn00

遅れてやって来た竜騎士が合流し、全員グラスを片手に乾杯を済ませ、各々次々と運ばれてくる食事に舌づつみをうつ。


槍兵「びっくりしましたよ。 色んな意味で」

技師「城の催事から抜け出してきたんですか? ずいぶん早いっすね」

竜騎士「ああ。 どうせ貴族達の話を聞いて社交辞令を口にするだけだからな。 早々に退散してきたんだよ」

薬師「だ、大丈夫なんですか?」

竜騎士「もちろんだ。 というより、俺が途中で抜け出すのは、もはや恒例化してるからな。 皆、半ばあきらめているのさ」

槍兵「竜騎士特有の跳躍力が、逃げ足につかわれているとは・・・・・・」

技師「さすがっすね。 持ちうるものは何でも使うと」

薬師「もう、槍兵さん! 兄さんも!」

竜騎士「まったく、言ってくれるな」


「「「「ははははは」」」」」


技師「しっかし、本当にすごいよな。 今回に限らず、何度も重要な役職を任されるなんてのはさ」

槍兵「だな。 もうこのままだと歴史の教科書に載っちゃうんじゃないですか?」

竜騎士「俺なんかよりも、この国にはそれにふさわしい人たちが沢山いる。 俺なんてまだまださ」

薬師「相変わらず謙虚ですね」

技師「本当だよ。 もう少し欲を持ったほうがいいんじゃないっすか?」

竜騎士「十分すぎるくらい俺は欲張りだよ。 だから、毎度毎度、広げすぎた風呂敷に苦労するんだ」

技師「一人で誰もかれも救おうっていうには、この国は広すぎますからねぇ」

槍兵「まぁ、僕はそのおかげで助かったわけだけどね」

竜騎士「そうか・・・・・・。 あれから大分経つな。 ちょうど、俺がこの国に来た頃だったか・・・・・・」

槍兵「はい・・・・・・。 三年前、まだ魔王が存在して、僕が魔物の軍勢と戦っている時でした」



25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/17(月) 22:40:06.08 ID:6CL/DRn00

―――三年前



当時、魔王がまだこの世を支配しようと世界中にその魔の手を伸ばしていた頃。

国境付近の防衛任務についていた槍兵は、まさに窮地という表現が生ぬるいような危機的状況下にあった。

我が国に攻め入ろうとしていた魔物の軍勢との衝突により、当初は戦況が膠着していたものの、徐々に勢いに押され、やがて、止めきれない雪崩のように王国軍、槍兵の部隊を飲み込んでいった」

耳に入ってくるのは既に剣戟の音ではなく、肉を裂き、骨が砕け、次々と地に伏していく地獄の連弾であり、それに伴うように響く怒声や悲鳴だった。

軍団長「引くな!! 増援の到着まで、なんとしてももたせるのだ!!」

その指示の裏側にある、軍団長も撤退の指示を出したいという思いが、誰の頭にも理解できた。だが、ここで部隊を鼓舞しなければ、一瞬にして瓦解する。 最悪、追撃というかたちをとられ、背後から蹂躙されるのは目に見えていた。

いつ来るかも分からない増援を支えに戦うには、余りに状況は芳しくなく、誰もが、己の死に場所を理解し、手にした武器を振るい、声を張り上げた。

時間は戦場にいるものに等しく流れ、一秒後には離れたところにいた仲間が死に、十秒後には目に入った仲間の首が飛び、気づいたときには隣にいた仲間が地に伏していた。

恐怖のせいで硬直しそうな体を絶叫を張り上げることで無理矢理駆動させ、さながら、自分の身がマリオネットになったかのように空っぽのまま武器を振るい続けた。

武器を手にし、ただ目の前の驚異から身を守ることだけを考えた。

生きるために、ただそれだけのために、手にした槍を振るい、全面に構えた盾を突き出した。

槍兵「ぐぁっ・・・・・・!?」

それでも、圧倒的物量と種族の違いからくる攻撃力はどうしようもない。

身に纏った鎧は菓子を包む薄紙のように剥げ、突き破り、その下の脆い肉体は度々ダメージを追う。

槍兵「・・・・・・っ」

気力を振り絞ったところで、血を流しすぎた体が言うことを聞いてくれる事はなく、震えた脚は力を込めること叶わず膝をつく。

その瞬間に頭を掠めた敵の攻撃は、よろめかなかったら間違いなく槍兵の首をはねていただろう。

しかし、僅かに自分の死が先送りなったところで、迫りくる人生の終着が遠ざかることはない。

よくここまでもったものだ。 あの魔王軍の大軍勢相手に・・・・・・。

視界は霞み、戦場のざわめきも、耳から遠ざかっていく。

部隊は・・・・・・。

故郷は・・・・・・。

友人は・・・・・・。

そんなことばかりが頭に浮かび、それさえも気泡のように消えていこうとした。



26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/17(月) 22:57:30.31 ID:6CL/DRn00

その時だった・・・・・・。

何かの影響で、大気と大地が振動したことが、肌を通して理解できた。

目線を上げて、霞んだ目で正面を見れば、現実とは思えない不思議な光景がそこにはあった。

まるで、風で吹き上げられる木の葉のように、次々と敵の魔物たちがきりもみしながら宙を舞っていたのだ。

何が起きているのか理解する間もなく、王国軍に対して勢いを増していた魔物達が、次々と吹き飛んでいく。

そして、そればかりか、太陽を遮るように曇っていた空からは咆哮の後にその口から火球を放つ大翼を広げた漆黒の竜まで現れた。

大空から降り注ぐ火球は空を飛ぶ魔物も、地を進む魔物も、区別無く燃やし尽くし、炭化させ、風化していく。

これは、死に瀕した己の抱いた幻想か・・・・・・。

もしくは、黄泉の国に片足を踏み込んだが故に見る死の世界か・・・・・・。

左目には頭から流れた血が入り、もはや視界も朧気な状態となっていた槍兵には、すでに何が現実で、何がそうでないかが分からなくなっていた。



ただ、これだけは覚えている。



眼前の魔物がより密集している場が、突然爆ぜた。 その爆音で一瞬戦場は静まり返る。

その中心にクレーターが出来上がり、さながら、劇場舞台に一人佇むように、その男は立っていた。

遙か天空より飛来し、手にした槍を狙った標的へとその体ごと武器と成して落下攻撃を行う彼の者が持つ特有の技術。

忘れもしない。 まさに、竜騎士という名の英雄が大地に光臨した瞬間だった。



27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/17(月) 23:17:55.21 ID:6CL/DRn00

―――酒場



竜騎士「今となっては、懐かしむことが出来る記憶か」

槍兵「ですね」

技師「ていうか、これだけ活躍してると、他から目をつけられたりしないんすか?」

技師「城の中も一枚岩じゃないんでしょ? 上の連中も下の奴らも、あんまり面白くないって思ってるやからも、少なからず出て来るんじゃないっすか?」

竜騎士「まぁ、技師の言ってることもあながち間違ってはいないが、ありがたいことに、今のところ俺に実害は来てないよ」

竜騎士「それに、最近司令の部隊が目覚ましい活躍をみせている。 だから、俺ばかりが日の目にあたっているわけじゃない」

技師「司令殿か・・・・・・」

竜騎士「あの方は他者をどうこう言う前に、己の力を磨くような人だ。 他の者がどうかは知らないが、あの人に限っては、妬み嫉みを考える前に自分を鼓舞し、理想を実現する。 もちろん、私も応援しているしな」

槍兵「司令とはまるで知己の仲の様に話されていますしね」

薬師「司令さんの部隊といえば、最近ではまるで、疲れを知らない様に僻地の魔物を討伐し、民の暮らしを安寧に保っていると噂になっていますね」

竜騎士「ああ。 私は一人しかいないが、あの方の部隊は、国中を広い視野と行動力で守っている。 あの方こそ、真に王国の守護者と言えるだろう」

竜騎士「(それでも、軍縮の煽りを受けてしまう。 もしかしたら、私があまり動かない方が、むしろ国のためになったのではないか・・・・・・)」

槍兵「・・・・・・先輩?」

竜騎士「あ、いや、なんでもない。 大丈夫だ。 少し、城で飲みすぎたかな」

薬師「竜騎士さんにしては、珍しいですね」

竜騎士「そうだな。 たまには、な」

技師「ま、どの道その二人がいる俺達の故郷は、何があっても安心だな」

槍兵「ああ。 それこそ、再び魔王が復活しない限り、そう易易と落とされはしないだろうさ」

竜騎士「おいおい、縁起でもないことを言わないでくれよ」

槍兵「大丈夫ですよ。 その時には、僕ももっともっと強くなっていますから」

技師「そこに、俺のサポートが入れば完璧っすよ」

竜騎士「まったく、こいつらは頼もしいのかそうでないのか・・・・・・」

薬師「ふふ。 でも、こんな調子でも最後は結局二人で何でもこなしてしまうんですよね」

竜騎士「そうか・・・・・・。 なら、いつか俺が困った時、ちゃんと助けにきてくれよ」

槍兵「任してください!!」

技師「了解っす!!」



28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/17(月) 23:43:33.95 ID:6CL/DRn00

それからも四人は話に花を咲かせ、日を跨ぐ頃には槍兵と技師がテーブルに突っ伏して眠ってしまった。


竜騎士「こいつら、酔い潰れる早さは相変わらずだな」

薬師「ええ。 でも、いつもよりは頑張っていましたよ?」

技師「う、うぅ・・・・・・」

槍兵「・・・・・・zzz」

竜騎士「薬師は大丈夫か」

薬師「もちろんですよ。 それこそ、“百薬の長”である私が、酔いつぶれるなんてありえません」

竜騎士「しっかりしているな。 薬師は」

薬師「しっかりしないと、この二人を面倒見る人がいなくなってしまいますから」

竜騎士「ははっ。 違いない」

薬師「もう、本当に・・・・・・あんまり心配かけないで欲しいんですけどね」

竜騎士「こいつらはじっとしていられるようなタマじゃないさ」

薬師「まぁ、そうですね。 それが分かっているから、余計に疲れるんですけど・・・・・・」

竜騎士「・・・・・・さて、そろそろおひらきにしようか」

薬師「ですね。 この二人も、もう目覚めそうにもないですし。 まぁ、私の特製気付け薬なら跳ね起きますけど」

竜騎士「いや、それで後々小言をグチられるのも面倒だ。 ここは寝かせておいてやろう。 大丈夫かなマスター?」

マスター「それこそ、いつものことですよ。 ご心配には及びません」

竜騎士「ありがとう。 まぁ、それでも閉店までには何とかしないとな」

薬師「分かりました。 じゃあ、二人のことは私に任せてください」

竜騎士「ああ、薬師に任せておけば、何の心配もない。 すまないが、よろしく頼むよ」

薬師「はい。 竜騎士さんも、今日はお忙しい中ありがとうございました。 二人とも・・・・・・特に槍兵さんは凄く喜んでましたよ」

竜騎士「ああ。 俺も楽しかった。 城のパーティーで飲む酒なんかより、マスターの出す酒を皆で飲むほうが断然美味いしな」

マスター「ありがとうございます」

薬師「調査隊の遠征任務、お気をつけて行って来てくださいね」

竜騎士「ああ。 ありがとう。 薬師も、俺がいない間こいつらのこと頼んだぞ」

薬師「はい。 その点は抜かりなく」

竜騎士「・・・・・・槍兵と、うまくいくといいな」

薬師「・・・・・・っ!?」

薬師「は、はい・・・・・・」///


こうして、竜騎士の調査隊隊長拝命祝いの場は、静かに締めくくられた。

・・・・・・その後。

槍兵「・・・・・・うっぷ」

技師「オエェ・・・・・・」

薬師「・・・・・・はぁ」

槍兵と技師は薬師に解放されながら、家路についた。



32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/19(水) 01:43:35.82 ID:WaCfZRul0

―――城内 玉座の間





国王「長きに渡る魔族との戦争も終わり、今日まで続いてきた復興も、ようや戦いの傷跡が見えなくなり、節目としての目処がついてきた」

国王「過去の精算を民たちは乗り切り、緩やかではあるが、安寧の時を刻み始めたのだ」

国王「ならば、今以上に未来へ向けた足がかりを、指導者たる我らが作らねばならぬ」

国王「この度、栄えある精鋭たちが、国益の為に長き遠征へと旅立つこととなった」

国王「我が国の先進技術である鉄鋼業は、自国のみならず、他国の発展にも大いに役立つ」

国王「諸君の働きは、後に世界を支える功績となるだろうと、私は確信している」

国王「竜騎士よ・・・・・・」

竜騎士「はっ」

国王「貴殿は、何度となく我が国の助けとなってくれた。 また、これからもそうであることを望む」

竜騎士「お任せ下さい」

国王は竜騎士の前に歩み寄る。

国王「これは、守護の呪術を刻んだ魔石だ。 民を思う貴殿が倒れては、それこそ多くの民が悲しむ。 これは、そんな貴殿への餞別だ」

竜騎士「ありがとうございます。 謹んで頂戴いたします」

国王「(我が娘も頂戴せぬか?)」 ヒソヒソ

竜騎士「(お戯れを)」 ヒソヒソ



そして、竜騎士を含めた調査隊は多くの民に見送られ、晴天広がる青空の下、港より出た船で王国を後にした。

家族を見送る者、同僚を見送る者、出港していく船、背中に憧れを抱く者・・・・・・。

皆、調査隊の船へと手を振り、無事を祈り、大きく手を振って、声を上げて口々に壮行の言葉を口にして見送った。








それが、国民が“竜騎士”を見た最後の姿となった。



33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/19(水) 02:06:02.91 ID:WaCfZRul0

―――薬師&技師 家






薬師「あら、こんにちは槍兵さん」

槍兵「こんにちは薬師。 ・・・・・・技師は一緒じゃないのか?」

薬師「兄さんなら、もう工房に出ていきましたよ」

槍兵「時々、あいつがワーカーホリックなんじゃないかと疑いたくなるよ」

薬師「ふふ、私もです。 あればっかりは、万能薬でも治せそうにありません」

槍兵「違いない」

薬師「兄さんに用事があったんですか?」

槍兵「いや、傷薬を切らしちゃってね。 評判のいい店で新しいものを買おうと思って」

薬師「いつもありがとうございます。 それじゃあ、ご贔屓にしてくれる槍兵さんには、サービスしておきますね」

槍兵「助かるよ。 最近カツカツで・・・・・・」

薬師「大変なんですか?」

槍兵「大変・・・・・・ていうことでもないかな。自分で望んでやっていることだし」

薬師「差し支えなければ、聞いても・・・・・・」

槍兵「あ、うん。 本当に大したことじゃないんだ。 ちょっと自主訓練の為に自分自身に投資したんだ」

薬師「自主訓練、ですか」

槍兵「まぁ、今のままじゃダメだと思ってね。 全部竜騎士になるための必要経費ってやつだよ。 家の裏にトレーニング場を作ったり、装備品を見直したり・・・・・・技師にも、色々協力してもらったりさ」

薬師「兄さんに?」

槍兵「ああ。 この間作ってくれた鎧はよかったなぁ。 筋肉の動きを抑制して、出せる力を半減させるなんて、トレーニングにはピッタリだ。 その分なかなかいい値段を請求されたけどね」

薬師「もう、兄さんたら・・・・・・」

そこへ、仕事帰りの技師が帰ってきた。

技師「当然の報酬だろ。 こっちだって遊びでやってるんじゃないんだ」

槍兵「よっ、お邪魔してるよ技師」

薬師「お帰りなさい兄さん。 けど、親友の槍兵さんからの注文なら、もう少しサービスしてあげたらいいじゃない」

技師「あれでも破格の値だったんだけどな。 前々から研究してた素材も使ったし、儲けを度外視して作った代物だ」

槍兵「ああ。 あんな自分の首を絞めるだけの鎧を作ってくれる奴なんて、お前くらいだよ」

技師「だろうとも。 また何か入り用になったら言ってくれ。 俺の気が向いたら作ってやるからよ」

薬師「気が向かなくても作ってあげるくせに」

技師「そりゃ、こいつの要求する物は変わり物ばかりだからな。 興味がわかないって方が無理な話だ」



34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/19(水) 02:31:45.72 ID:WaCfZRul0

―――遠方の地 






竜騎士「調査隊と積み荷が船から下り次第、予定されたキャンプ地に向かおう。 この調子だと、一雨来そうだ。 早めにテントを張った方がいい」

副官「了解しました。 調査自体は、計画通り明朝からでよろしいですか?」

竜騎士「そうしよう。 しかし、先見隊に準備だけはさせておけ。 天候によっては、先に出てもらう」

副官「隊長は、この地に詳しいのですか?」

竜騎士「昔はここに竜のコロニーがあった。 調査報告では、この地で生きていた竜もその数を減らし、今となってはコロニーの跡があるだけらしいが・・・・・・」

副官「なるほど。 もしかして隊長はここで、自身の従える火竜と出会ったのではないですか?」

竜騎士「・・・・・・その通りだ。 だから、そういった一面も、俺が調査隊の隊長を任命された理由だろう」

副官「では、この地に誰よりも詳しいということですね」

竜騎士「詳しいと言っても、当時と今とでは生態系も変わっているかもしれない。 食物連鎖の頂点がいなくなってしまってるからな。 注意するに越したことはない」

副官「確かに、仰る通りです」

竜騎士「それでも、この度選出された調査隊は精鋭揃いだ。 自分の身ぐらいは自分で守れるだろう」

副官「はい。 それに、こちらには隊長がいますからね。 期待しています」

竜騎士「期待してくれるのは大いに構わないが、私の出番が無いのが一番だろう」

副官「ごもっともです。 それと・・・・・・」

竜騎士「何だ?」

副官「こちらに、司令からの封書と厳重保管されたケースが届いています」

竜騎士「・・・・・・司令から?」

竜騎士「(あの司令が、私に直接ではなく・・・・・・人伝に、か。 初めてのことだな)」

竜騎士「・・・・・・」

副官「どうぞ、封書です」

竜騎士「ああ」



35:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/19(水) 02:42:56.64 ID:WaCfZRul0

―――竜騎士へ


此度の調査において、君の役にたてばと思い、我が魔術部隊で研究していたアイテムを送る。

君が国王より賜った品には劣るが、それでも、魔を退ける力を付与した首飾りだ。

全部隊分とはいかないが、危険な地帯を調査する兵達に渡してくれれば、それだけ君の心労も減り、きっと助けとなるだろう。

調査の成功と、無事の帰還を祈っている。





竜騎士「・・・・・・」

副官「隊長、司令はなんと?」

竜騎士「調査隊のために、司令の魔術部隊で作成したアイテムをお送り頂いた。 退魔の力が備わった首飾りだそうだ」

副官「なんと!? それは凄い・・・・・・」

竜騎士「調査ポイントと状況を見て、兵に配るようにしよう」

副官「了解しました」



調査隊の上陸作業は滞りなく終わり、主任務である資源調査が開始された。



先見隊「鉱山を調査するとなると、やはり、竜の巣穴跡がやりやすそうですね。 既にある程度深さがあり、横穴も広がっていますから」

竜騎士「やはりそうなるな。 ただ、奥に行けば行くほど、大型の魔物が住処として利用しているかもしれない」

先見隊「しかし最深部には、貴重な鉱石が存在する可能性があります」

副官「・・・・・・確かに。 では、グループを三つに分けます。 一つは戦闘経験の豊富な者を中心に、巣穴跡深部へと進む部隊。 次に竜の巣穴中部で鉱石の調査をするグループ。 最後に残るは、入口付近で地質調査」

竜騎士「キャンプ地には私と副官、連絡要員だけ要ればいい。 これから皆が向かう先は、主が居なくなったとはいえ、元々竜の住処だったところだ。 油断だけはするな」

副官「最深部に向かう部隊だけは、違和感やおかしな空気を感じたら、それ以上は決して進むな。 隊長か私の到着まで、その場で待機だ。 入口付近まで引き返しても構わん」

竜騎士「皆の働きが国の更なる発展、そして愛する民達の生活と安心を守る事になる。 だが、これだけは言ってく。 決して、無理だけはするな。 これは戦ではない。 身の安全を第一に行動し、何かあればすぐに知らせろ。 お前達の後ろには、最強の騎士が控えているんだ」


「「「「「「はっ!」」」」」」


竜騎士「あまり気張りすぎるな。 少しは隊長の仕事を残しておいてやろう位でも構わない。 とにかく、第一は自分の命だ。 それだけは、決して忘れるな」



「「「「「「はっ!」」」」」」



そして、竜騎士が遠征に旅立ってから数週間が経った・・・・・・。



36:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/19(水) 03:14:28.13 ID:WaCfZRul0

―――槍兵の家 裏庭



槍兵「ふっ、はっ、・・・・・・やぁっ!!」

技師「精が出るな」

薬師「こんにちは槍兵さん」

槍兵「技師、薬師・・・・・・こんにちは」

技師「即席の訓練場を、よくもまあこんな短期間でシゴき抜いてるもんだな。 もうどの的も木人もボロボロじゃねぇか」

槍兵「うん、まぁ、時間があればとにかく槍を振るっているからね。 今度、槍も新調しないと・・・・・・」

技師「はぁ・・・・・・。 特訓するのはいいにしても、適度に休憩を挟めよ。 オーバーワークは逆効果だからな」

槍兵「わかってるよ」

薬師「あの、私、パイを焼いてきたんです。 よろしければ、お茶にしませんか?」

槍兵「うん。 一区切りついたし、よろこんでいただくよ」

技師「あと、パイを食いながらでもいいから、訓練道具の見積書を確認しといてくれよ」

槍兵「わかった」

薬師「じゃあ、私準備してますね」

槍兵「ありがとう。 茶器とかはいつものところに置いてあるから」

薬師「はい、わかりました」

技師「勝手知ったるなんとやらか」

槍兵「茶器なんて、家にあるだけで薬師しか触らないからね」

技師「だな。 俺達の食事事情は、ほとんどあいつが主導権持ってるようなもんだし」

槍兵「昔からね」

薬師「二人とも~。 早く手を洗ってきて」



37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/19(水) 03:29:17.67 ID:WaCfZRul0

―――遠方の地



調査兵「隊長!! 副官殿!!」

副官「どうした?」

調査兵「竜の巣穴の深部を探索していた者から通達がありました」

副官「その通達とは?」

調査兵「はい。 見たこともない鉱石を発見したとのことです」

竜騎士「鉄鋼石の類ではない。 ということか・・・・・・」

調査兵「はい。 鉱石に詳しい者も、全く解析出来ないと・・・・・・」

竜騎士「となると、隊の中で一番鉱石に詳しい副官が行く必要があるな」

副官「そうですね」

調査兵「そうして頂けると助かります。 そのポイントは最深部に近く、大型の魔物が潜んでいる可能性もあります。 我々の戦力だけでは、少々・・・・・・」

副官「確かに・・・・・・そろそろ警戒してもいい頃ですね」

竜騎士「これまでに被害は出ていないな?」

調査兵「はい。 現在は魔物の数も質も、我々が手こずるようなことはありませんでしたので」

竜騎士「・・・・・・では、そろそろ私が出よう。万全を期すに越したことはない。 それに、皆に給料泥棒などと、陰口を叩かれたくはないからな」

調査兵「そ、そんなことを口にする者は我が隊・・・・・・いえ、我が国には存在しません!」

副官「ははは。 慕われていますね、隊長」

竜騎士「ありがたいことだ。 ならば、なおさらその信頼に応えねばならないだろう」



38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/19(水) 03:36:06.29 ID:WaCfZRul0

先見隊「お話のところ失礼します。 隊長、副官殿」

調査兵「ああ、彼らです。 その鉱石発見したというのは」

竜騎士「何? 先見隊の君たちが?」

副官「確か、作戦計画書では、上陸後の調査が済み次第、本国への帰還となっていたはずですが・・・・・・」

竜騎士「ああ。 私も姿が見えなかったから、既に帰還したものかとばかり思っていた」

副官「まさか、これまでずっと調査を?」

先見隊「はい。 我々も調査団の一員として、此度の任務に貢献したかったのです。 上陸してそうそうに引き上げては、我らを推奨してくださった、司令の面目も立ちません」」

竜騎士「気持ちはありがたいが、それならそれで、報告のひとつも寄越してくれないと困る。 我々は部隊で動いているのだから。 それに、そう言った心意気なら、私から本国に知らせを送るなり考えたものを・・・・・・」

先見隊「もちろん、我々も本国への調査報告義務がございますから、部隊のほとんどは帰らせました。 残っているのは、私を含めたごく少数です。 食料や拠点も、自分たちで確保していました」

副官「城には、お前たちの行うべき仕事が残っているのではないのか? 今はどれだけ人手があっても足りないはずだ。 こちらの遠征は、あらかじめ決められた人数で行うことになっているのだから」

先見隊「お叱りはごもっともでございます。 しかし、我ら先見隊一同、此度の遠征に赴いた兵たち同様、民のため、国の為を思うことに変わりはなく。 どうか、寛大なご処置を」

調査兵「隊長、私からもお願いいたします。 彼らは率先して洞窟内部の探索を行い、我らに被害が及ばぬよう、先行部隊としての役をにない、尽力してくれました。 その成果もあり、先ほど報告した鉱石を発見できたのです」

竜騎士「もちろんだ。 君たちのその思い、功績は、必ず私から司令、そして国王陛下に報告しよう。 本当にご苦労だった」

先見隊「ありがとうございます。 隊長」

竜騎士「君達のような兵がいる限り、我が国も安泰だな」

先見隊「・・・・・・ありがとうございます」

副官「では、お前たちはどうする? そうそう働き詰めだと、体が持たないだろう?」

先見隊「・・・・・・はい。 我々も、残留したことに区切りがつきましたので、先に帰国した隊の後を追い、帰還いたします」

竜騎士「そうだな。 それもいいだろう。 もとより、当初はその予定だったのだ」

副官「もうたつか? それとも、休息をとってからにするか?」

先見隊「いえ、手前勝手にこの地に残った身です。 早々に引き上げようと思います」

竜騎士「そうか・・・・・・。 皆、よくやってくれたな。 重ねて、礼を言うぞ」

先見隊「敬礼!!」

竜騎士「では、本国であおう」




先見隊「はい。 隊長、また本国でお会いしましょう・・・・・・」



42:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/20(木) 01:11:57.92 ID:DffO6RnA0

―――槍兵の家



技師「なぁ槍兵、お前大長槍の特訓ばかりで、ランスの特訓はやらないのか?」

槍兵「・・・・・・うん」

薬師「ランスって、普通の槍とは違うんですか?」

技師「いや、同じ長物ってのは同じなんだけどな」

槍兵「そうか、薬師は馬上槍試合とか見たことないか」

薬師「はい。 どういうものかは知っていますが、見たことは一度も」

技師「槍兵が言ったように、馬上や乗り物の上で使う、突くことに特化した長い槍だ」

槍兵「その馬の突破力をあわせて、相手の鎧や防御手段を力技で貫く。 それがランスの持ち味かな」

薬師「馬上・・・・・・それじゃあ、馬が必要なんですか?」

槍兵「・・・・・・いや、確かにランスはその重量、長さ、対象を貫けるだけの突破力の必要性から馬が必要だし、乱戦にも向かない。 ただ、その常識は竜騎士には関係ない」

技師「竜騎士の桁外れな跳躍力を生む脚で地を駆ければ馬なんて目じゃないし、従える竜に乗れば、それこそ馬以上の突破力を得ることが出来る」

槍兵「ああ。 竜騎士なら、な・・・・・・」

槍兵「今の僕はただの槍兵だ。 竜騎士候補の選抜をくぐり抜けるには、まだまだ先は長い」

薬師「槍兵さん・・・・・・」

槍兵「先輩はいつか来るチャンスのために自分を高めておけっていったけど、それは竜騎士になった時の準備じゃなくて、竜騎士になれるだけの実力を付けておけって事だと思うんだ」

槍兵「僕は・・・・・・槍兵だ。 槍の扱いなら、誰よりも長けてる。 なら、僕はその名に恥じぬよう、一本の槍を誰よりも極める。 結果、それが竜騎士になるための近道だと信じてる」

技師「・・・・・・そうだな。 槍兵の装備は槍が基本だ。 いいんじゃないか、それで」

薬師「ええ。 私も素晴らしい考えだと思います」

槍兵「ありがとう。 二人にそう言ってもらえると、やる気がでるよ」

技師「槍兵も特訓に熱が入ってるみたいだし、俺もそろそろ“あれ”の制作に本腰を入れようかな」

槍兵「“あれ”の制作? 何か作ってたのか?」

技師「おうよ。 自分で言うのもなんだが、時々自分の才能が恐ろしくなるぜ」

槍兵「それは耳にたこが出来るくらい聞いたよ」

薬師「兄さんの口癖じゃないですか」

技師「まぁ、それだけ自信がある代物だって事だ。 なんなら、ちょっと見に来るか? ぶったまげるぜ」



43:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/20(木) 01:31:41.80 ID:DffO6RnA0

―――工房



槍兵、薬師、技師の前には、馬車並に大きな鳥を模した模型が“二台”並べて置かれていた。


薬師「え、これって・・・・・・」

槍兵「確かに、これはぶったまげた・・・・・・」

技師「だろ? もう作るのが楽しくってよ~。 気づいたら朝チュンとかザラだぜ」

薬師「それのせいで寝坊ばっかりして、兄さんの同僚が涙を流してばかりいるんですよ」

技師「いやいや。 優秀な部下達がいるから、おれはこうして趣味に興じていられるんだ」

槍兵「これが、俗に言うブラック企業というやつか」

薬師「絶対に持ちたくない上司ですね」

技師「まぁまぁ。 ゆくゆくはこれが量産されて人々の役に立つ・・・・・・かどうかは解らないが、発明品ていうのはそういうものだ。 大目に見ろよ」

槍兵「・・・・・・で、何なんだこれは? 大きな鳥の模型?」

技師「・・・・・・ま、まぁ初見で分かれっていう方が無理だよな」

槍兵「いや、大きさには驚いたけど。 馬車みたいにでかいな・・・・・・」

技師「うむ。 簡単に言えば、これは空を飛ぶための乗り物だ」

槍兵「空を・・・・・・」

薬師「飛ぶ・・・・・・?」

技師「って言われても、いまいちピンとはこないだろうな。 今まで存在しなかった技術だからな」

槍兵「飛ぶって・・・・・・これがか・・・・・・?」

薬師「信じられない・・・・・・。 どんな魔法なんですか」

技師「これは魔法じゃねぇよ」

槍兵「魔法じゃない・・・・・・?」

技師「ふふん。 しかたない、ではもう少しだけ詳しく説明しよう。 想像力乏しき民達よ」

槍兵「こいつ・・・・・・」



44:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/20(木) 01:50:32.71 ID:DffO6RnA0

技師は乗り物の正面に歩いていく。


技師「一つはグライダー(滑空機)だ」

薬師「グライダー?」

技師「初めは風力を観測するカイト(凧)を見て思いついたんだ。 槍兵も、凧上げで遊んだことあるだろ」

槍兵「ああ。 散々お前のおかしな凧で糸を切られまくったけどな」

技師「ふっ。 懐かしいな・・・・・・」

槍兵「いや、俺の中じゃ苦い思い出なんだけど」

技師「・・・・・・で、だ。 このグライダーは、凧上げの要領で空に飛ばして、滑空しながら空を飛ぶんだ。 凧上げは糸だけど、このグライダーには鉄製のワイヤーを使う」

槍兵「それ、誰が引っ張るんだ? 馬にでも引かせるのか?」

技師「それもいいんだけどな。 俺は馬が苦手だ。 だから、ちゃんとワイヤーを巻き上げる為の装置も用意してある」

槍兵「へぇ。 で、実際飛んでみたのか?」

技師「いや、まだだ。 もう少し調整が必要だからな。 もうちょいってところだ」

薬師「その隣にあるのは、やっぱり同じ物なの?」

技師「同じってわけじゃないが、おおまかにはそうだ。 ただ、こっちは完成にはまだまだかかりそうだな」

槍兵「どう違うんだ? 僕にはさっぱり分からない」

薬師「私も・・・・・・」

技師「もう一つはな、オーニソプター(羽ばたき機)っていうタイプで、まぁ、鳥みたいに翼を羽ばたかせて空を飛ぶんだ」

槍兵「なんか、飛ぶって言うイメージだとそっちの方がしっくりくるな」

薬師「作るのもこちらの方が簡単そうね」

技師「バカ言え。 グライダーよりも遙かに作るのが面倒くさいんだ。 大きければ大きいほど作りにくい。 そもそも、グライダーと違って、動力が必要だからな」

槍兵「まぁ、難しいことはよくわからないけど、聞けば聞くほど大変なんだなってのはわかる」

技師「いや、ぶっちゃけそれが面白いんだけどな」

薬師「でも、兄さんにしては凄い発明品じゃない。 空を飛べる乗り物だなんて」

技師「ロマン溢れるだろ? まぁ、槍兵は将来竜騎士になるかもしれないから、必要ないけどな」

槍兵「そんなことないよ。 凄く乗ってみたいと思うし、人が個人で空を飛べる乗り物なんて、僕には考えたこともなかった。 本当に、凄い発明だ」

技師「だろ? でも、あんまり騒がれると作業しにくくなる。 まだお前達二人にしか公開してない代物だし、このことはなるべく内密にな。 あ、竜騎士の旦那には言ってもいいぜ」

槍兵「ああ。 きっと先輩も驚くに違いない」

薬師「ええ、そうですね」

技師「さて、そろそろいい時間だ。 マスターのところで飯でも食おうぜ」

槍兵「うん、それもいいかな」

薬師「あ、ごめんなさい。 私はまだやらなきゃいけないことがあるから、先に行っててください」

技師「あいよ」

槍兵「うん、また後でね、薬師」



45:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/20(木) 02:11:21.66 ID:DffO6RnA0

―――遠方の地 竜の巣穴跡



副官「ふむ、これは私も見たことのない鉱石ですね。 いえ、結晶というべきでしょうか・・・・・・」

竜騎士「これは・・・・・・」

副官「隊長?」

竜騎士「(どうしてこのような物が・・・・・・)」

副官「隊長は、これが何かご存じなのですか?」

竜騎士「ああ。 だが・・・・・・」

副官「驚きました。 隊長は鉱物にも詳しいのですね」

竜騎士「・・・・・・それは違う。 我が国に、君以上に鉱物に詳しい物なんていない」

副官「え、ですが・・・・・・」

竜騎士「これは、鉱物ではない。 心臓だ」

副官「・・・・・・心、臓?」

竜騎士「そうだ。 ただ正確には、心臓だったものだ」

副官「これが、ですか?」

副官「にわかには信じがたいことです・・・・・・」

竜騎士「そうだろうとも。 私でさえ、未だに信じられない。 だが、私が見間違うはずもない」

副官「・・・・・・隊長、何故この結晶が、心臓だとご存じなのですか? 」

竜騎士「それは、私が竜騎士だからだ」

副官「・・・・・・!? まさか、では、これは・・・・・・」

竜騎士「ああ、間違いない。 これは“竜の心臓”だ」

副官「これが・・・・・・」

竜騎士「しかし、竜達は生涯を終える時にその命を結晶化させ、次代の竜達はその結晶化された竜の心臓から魔力を引き継ぎ、代々それが受け継がせられる。 だから、このような形でここに竜の心臓があることがそもそもおかしいんだ」

副官「・・・・・・そういえば、昔聞いたことがあります。 竜の心臓という名のアイテムのことを」



46:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/20(木) 02:30:20.73 ID:DffO6RnA0

竜騎士「そう。 竜の心臓とは、希少価値の高いアイテムとしてその道では知られている。 何しろ、膨大な生命エネルギーが、魔力として封じ込められているわけだからな。 滅多に見れるものじゃない」

竜騎士「消費された後の結晶も、魔力をため込むことが出来るという特異性から、その存在は重宝されているが、現存する数は少ない」

副官「では、これが司令の言っていた・・・・・・」

竜騎士「いや、それはないだろう。 我々が調査目的でここへ来たのは、鉄鋼業に使える資源を探しに来るためだ。 これは、見ようによっては鉱石と言えるかもしれないが・・・・・・」

副官「そう、でしたね」

竜騎士「しかし、これは異常だ」

竜騎士の手に持つ竜の心臓は、淡い光を時折放ち、微かな熱も帯びていた。

竜騎士「魔力が、消費されずに存在しているなど・・・・・・」

竜騎士「よくぞ今まで何もなかったものだ。 これでは何かの拍子で衝撃が加わったら、指向性を持たない竜の心臓に蓄えられた純粋な魔力が暴走するぞ」

副官「さしずめ、破裂寸前の風船と言ったところでしょうか」

竜騎士「そんなものじゃない。 一歩間違えれば何もかも吹き飛ばす。 ・・・・・・言うなれば、噴火秒読みの活火山だ」

副官「それは、不味いですね」

竜騎士「ああ。 今は封じられた魔力も安定しているようだが、何らかの形で魔力の影響を受けたら・・・・・・。 衝撃など加えずとも、最悪、この洞窟ごと半径数十キロは吹き飛ぶ。 それほど、扱いの難しい危険な代物だ」

副官「なんと・・・・・・。 衝撃にも、魔力にも敏感とは・・・・・・。 確かに、危険極まりないシロモノですね」

竜騎士「だが、それを欲する者がこの世界にいないと言い切れないのが、これをアイテムと呼ぶようになってしまった原因なんだがな」

副官「・・・・・・では、急いで待避しましょう。 このことは、おって司令に報告を」

竜騎士「そうだな・・・・・・」



47:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/20(木) 02:51:54.73 ID:DffO6RnA0

―――何かあったときには、君が皆を―――



―――隊長、我々はこれで・・・・・・―――



―――しかし最深部には、貴重な鉱石が存在する可能性があります―――



竜騎士「・・・・・・」

副官「隊長?」

竜騎士「副官、このポイントを初めに見つけ、すでに本国へと帰還した先見隊。 あれは本来、どこの所属なんだ」

副官「先見隊ですか? 確か、司令直属の部隊だったと思いますが」

竜騎士「・・・・・・魔法部隊の?」

副官「魔力感知が得意な者達と聞いています」



―――最近、司令の部隊が目覚ましい活躍をみせている。



―――まるで、疲れを知らない様に・・・・・・



竜騎士「・・・・・・馬鹿な。 そんなはず、あるわけがない」

竜騎士「魔法部隊なら、竜の心臓がどの様なものか、知らないはずが・・・・・・ない」



―――先月の王国会議では、魔法部隊の数を縮小しようとの―――



―――建国以来続いてきた司令殿の部隊ですが―――



―――これも、竜騎士殿の―――





―――ていうか、これだけ活躍してると、他から目をつけられたりしないんすか?―――




竜騎士「・・・・・・」



―――私は、理想のためなら、何だってやってみせる。



竜騎士「ま、まさか・・・・・・違う。 そんなはず、ない」



48:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/20(木) 03:35:36.27 ID:DffO6RnA0

その時、周囲の兵達がざわめいた。


「お、おいそれ・・・・・・」

「お前のもか? 俺のも・・・・・・」

「え、あ、自分も一緒だ・・・・・・」


副官「どうした?」

調査兵「あ、はい。 ここに入る前に装備した、司令より頂いた魔を退ける首飾りが・・・・・・」

副官「首飾りがどうしたと・・・・・・ん?」


「お前のも胸元から出してみろよ」

「お、おう。 あ、俺のも皆と同じだ」


副官「輝いている・・・・・・?」

調査兵「先程から、徐々に熱を帯びて輝きだしたのですが・・・・・・。 中には、形状が大きく変化しているものも・・・・・・」

副官「魔物に反応している・・・・・・いや、だがそのような気配は微塵も・・・・・・」

調査兵「念のため、警戒態勢を・・・・・・」

そして、この時深く考え事をしていた竜騎士は僅かなざわめきに意識を現実へと戻し、ふと顔を上げた。

瞬間、その光景に驚愕し、声を張り上げる。

竜騎士「・・・・・・!? それが、司令のアイテムだと!?」

調査兵「え? そうですが・・・・・・」

副官「どうやら、魔物に反応して形状を変えたようなのです」

竜騎士「魔物に反応して形状を・・・・・・!? 違う!! それは退魔のアイテムではない!!」

竜騎士「(あの形は、以前魔王軍の敵が装備していた、特攻用自爆アイテムにそっくり・・・・・・いや、そのものじゃないか・・・・・・っ)」

副官「ど、どうされました隊長?」

竜騎士「全員そのアイテムを手放し、全速力で洞窟から待避しろ!!」

調査兵「え、はい?」

副官「い、一体何を・・・・・・」

竜騎士「説明している暇はない!! 死にたくなければ全力で・・・・・・っ!?」



洞窟内に突如反響した轟音。



突然部隊背後より響いたその崩落音に皆振り向き、咄嗟に身を屈める。

退路は崩落によって塞がれた。

竜騎士の発した命令の声は、その崩落と振動、加えて吹き上げてきた土煙と一緒に消えていった。



52:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/20(木) 15:50:14.87 ID:6wSbWNwj0

―――酒場





マスター「おや、これはまた珍しいお客さんだ」

槍兵「久しぶりだねマスター」

技師「今日はご無沙汰だったレアキャラを引っ張ってきたぜ」

マスター「技師さんも変わりなく。 槍兵さん、お元気でしたか?」

槍兵「うん。 最近は鍛錬に時間をとられてて、なかなか顔を出せなかったね」

マスター「いえいえ、自分を高めるのはよいことですよ」

技師「俺なんて高まりまくって、いつ名実共にゴッドハンドを持つ技師って感じの称号を手にしてしまうかと思うと・・・・・・」

槍兵「マスターは元気だった?」

マスター「私は、お客様からいつも元気を頂いていますから」

技師「HEY!! スルーはやめてくれよ!!」


槍兵と技師は運ばれてきた料理と酒を口に満足気に運び、この場でしか味わえない開放感に浸る。


技師「そう言えば、槍兵は聞いたか? 魔法部隊の話」

槍兵「ん? どんな話?」

技師「いや、城に勤めてるお前なら知ってると思ったんだけど・・・・・・」

槍兵「魔法部隊のことを? ・・・・・・ああ、もしかして、規模を拡張するっていうやつ? 周りが噂してたかな・・・・・・」

技師「ああ、やっぱり本当なのか」

槍兵「全然違う部署だけど、話だけなら耳にしたよ。 ていうか、そもそもあそこは秘匿性の高い部隊だから、そうそう詳しい情報は漏れてこないんだよ」

技師「けど、由緒ある部隊なんだろ? 魔王がいたころはもちろん、その前の時代から魔法部隊の活躍で、国は魔物達から人々を救ったって・・・・・・」

槍兵「そうだよ。 本当に強かったらしい。 ただ、最近までは魔法の研究や術者の確保、教育に維持費と、何かと大金の動く部隊だったから、むしろ縮小する話まで出てた位なのに・・・・・・」

槍兵「初めは、先輩が調査遠征に出ている間くらいだと思ってたけど、そんな事もないみたいだし」

技師「マスターは何か聞いたりした? 客たちの会話とかでさ」

マスター「私もそれほど詳しくはありませんが・・・・・・。 やはり、竜騎士の数が少なくなってきていることも、原因の一つではないでしょうか。 今ではその殆どが、他国への出向や、探求の旅に出ていたりもしますし。 この国に永続して残っているのは、あの方くらいなものですから」

技師「う~ん、あり得ない話ではないけど、そこまでの戦力低下とは思えないけどな~」

槍兵「うん、確かに一騎当千の竜騎士とは比べるまでもない戦力だけど、かといって、魔法部隊一人一人の練度は相当なものだ」

マスター「もちろん、代々王国を守ってきた方々の実力を疑ってなどいません」

技師「じゃあどういう・・・・・・」



マスター「・・・・・・未来を見据えるのも人ならば、思い出に浸るのも人」



53:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/20(木) 15:51:23.87 ID:6wSbWNwj0

槍兵「・・・・・・かつての栄光、ですか」

技師「・・・・・・!? おいおい、まさかっ」

マスター「ええ、私たちは憶測で語っているだけです」

槍兵「けど、あながち間違ってもいないんじゃないかな」

技師「・・・・・・魔法部隊が、竜騎士に張り合うみたいな真似をするってのかよ」

マスター「たった一人に、数百人規模の部隊がと、普通なら考えるところです」

槍兵「うん、普通ならそうだね・・・・・・」

技師「・・・・・・そうだったな」

槍兵「先輩は、最強の騎士。 天駆ける火竜を従えた・・・・・・あの当代きっての竜騎士なんだ」

技師「あの人も、おかしなところで苦労を背負い込むなぁ~」

マスター「ええ、本当に・・・・・・」

技師「それじゃあ、今度はうちらがやけ酒にでも付き合ってやるか」

槍兵「とか言って、本当はまた仕事をさぼる口実が欲しいだけだろ」

技師「もちろんだ」

槍兵「即答かよ・・・・・・っ!?」




その時、店内が僅かにぐらついた。 周りから、グラスや食器の接触する音が鳴り響く。



54:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/20(木) 16:34:03.12 ID:6wSbWNwj0

槍兵「な、なんだ・・・・・・!?」

技師「地震か!?」

マスター「地面が揺れたというより、店自体が押されたような感じでしたね。 揺れも、即座に収まりましたし・・・・・・ん?」

店の外から人々のざわめきが聞こえてくる。 徐々に大きくなっていく声は、よりはっきりと聞こえてくるようになる。




「うぉ!? すげぇ・・・・・・っ」

「何だあれ!?」

「空が、昼間になった!?」




マスター「外が騒がしいようです」

技師「槍兵」

槍兵「うん。 行ってみよう」


槍兵と技師は酒場の両開きドアを抜けて外に出た。

そこには、目を疑うような光景が待っていた。

時間も遅く、先程までは満天の星空が目の前にあったはずの空は、まるで昼間のように明るく、黒一色の本来あるべき姿をどこかに追いやっていた。


槍兵「あ、明るい・・・・・・」

技師「おいおい、さっきの地震でお日様が飛び起きちまったんじゃないのか?」

槍兵「そんな事あるわけ・・・・・・」

槍兵が技師の冗談を切り捨てようとするも、その空の明るさは、もしかしたらと思わせてしまうくらいの光量だった。



「何が起こったんだ」

「まさか、魔王が・・・・・・」

「馬鹿なこと言うなよ」

「け、けどよぉ・・・・・・」



技師「槍兵、あれ、見てみろ・・・・・・」

槍兵「あれ?」

技師の指差す方向。 地平線の向こうから、よく見れば光の柱が僅かに立ち昇っていているようにも見えた。

技師「この光・・・・・・あっちの方角から広がってるんじゃないか?」

槍兵「・・・・・・かも、しれない。 けど、水平線を越えてまで光量が落ちないなんて」

技師「爆光・・・・・・いや、魔術的な光・・・・・・。 何にしろ、ただ事じゃないぜ」


―――いつか俺が困った時、ちゃんと助けにきてくれよ―――


槍兵「・・・・・・っ!? この方角は」

マスター「皆さん、津波の恐れがあります。 念のため、早く高台に避難して下さい」

技師「そ、そうだな。 おい槍兵、俺たちも早く・・・・・・」

槍兵「技師、頼みがあるんだ・・・・・・」

技師「・・・・・・槍兵?」



55:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/20(木) 16:50:30.00 ID:6wSbWNwj0

―――工房



技師「だから、まだ調整がすんでないって言ってるだろう!!」

槍兵「そこを押して頼む!! 飛ぶだけなら出きるって言ってたじゃないか」

技師「そりゃ言ったけどよ。 計器類だって・・・・・・」

槍兵「・・・・・・先輩が、いるかもしれないんだ」

技師「なに?」

槍兵「先輩が向かった調査隊の遠征先、さっき、光っていた方角だったんだ」

技師「え、遠征?」

槍兵「あんなの、普通じゃない。 地震も、夜を昼間に変えてしまえるだけの光も、絶対に何かあったんだ」

技師「槍兵・・・・・・」

槍兵「先輩のことだから、大丈夫だとは思う」

槍兵「無事に帰ってくるに決まってるんだ」

槍兵「けど・・・・・・分からないけど、凄く、いやな予感がするんだよ」

技師「・・・・・・」

槍兵「こんな事、頼めるのはお前しかいないんだ。 だから・・・・・・」

技師「お前・・・・・・」

槍兵「頼む!!」

技師「・・・・・・一つだけ」

槍兵「ん?」

技師「無茶を押して飛ばせっていうんだから、これだけは覚えておけ」

槍兵「・・・・・・な、なんだ?」

技師「・・・・・・帰りは遠泳も覚悟しとけよ」

技師は柱に備え付けられていたレバーを両手を使って下げる。

工房全体が低い唸り声をあげ、工房の正面ゲートが開き、ワイヤーを牽引する装置がせり上がる。

槍兵「技師・・・・・・」

薬師「別に、お前のむちゃくちゃな注文は今に始まったことじゃねぇしな。 おら、さっさと乗り込め!!」

技師と槍兵はグライダーのハッチを開け、操縦席に乗り込む。



56:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/20(木) 18:06:13.41 ID:6wSbWNwj0

槍兵「の、乗り込んでみたはいいけど・・・・・・」

技師「何だ?」

槍兵「き、緊張するな・・・・・・。 空を飛ぶ乗り物っていうのは・・・・・・。 だって、魔法じゃないんだよな」

技師「ふ、安心しろ。 ・・・・・・俺も初めてだ」

槍兵「・・・・・・え?」

技師「ワイヤーの牽引機準備・・・・・・よし、射出の方角・・・・・・よし」

槍兵「お、お前も、初めてなのか?」

技師「調整も済んでない機体に、有人でテストするわけないだろう」

槍兵「・・・・・・だ、だよな」

技師「お前から言い出したんだから、腹括れよ」

槍兵「よ、よし。 分かった」

技師「よし・・・・・・行くぞ、舌噛むなよ」

槍兵「・・・・・・っ」

技師「・・・・・・俺だって、ちょっとビビってんだぜ」

槍兵「・・・・・・ありがとう、技師」

技師「・・・・・・ふぅ。 ・・・・・・行けっ!!」



技師が操縦席にあるレバーを手前に引く。

ガクンという衝撃のあと、工房のずっと先に設置された装置によって高速でワイヤーは巻き取られていき、凧揚げの要領でグライダーは一気に上昇していく。



57:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/20(木) 18:59:50.67 ID:6wSbWNwj0

槍兵「っぐ・・・・・・」

技師「ちゃんと捕まってろよ・・・・・・っ」


技師は一度引いていたレバーをさらに引き込む。

つながれていたワイヤーが外れ、グライダーは王国の大空に解き放たれた。

槍兵「・・・・・・す、凄い。 ほ、本当に、飛んでる」

技師「計器類が全然足りねぇし、大体夜間にこいつを飛ばそうだなんて自殺行為だぜ。 まぁ、今は昼夜逆転してるけどよ」

技師「深夜を真昼間に変えちまうだけの明かりがなかったら、こんな無茶はしねぇぞ」

槍兵「ありがとう技師・・・・・・」

技師「まぁ、俺も気になるっちゃあ気になるからな。  さぁ、上昇気流を捕まえながら、気張っていくとするか」


昼と夜が反転した大空を、槍兵と技師を乗せた大鳥が飛んでいく。
周りには草木も山もなく、あるのは雲海と静寂だけ。

二人はその光景からくる高揚感と、多少の不安、そして、竜騎士の安否を思い、まっすぐ地平の彼方へとグライダーを飛ばしていく。

全てが遠く、真新しい感覚を体験しながら・・・・・・。



58:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/20(木) 19:27:14.13 ID:6wSbWNwj0

―――遠方の地


やがて、光の柱が立ち昇る目的の島が見えてくると、二人は操縦席の窓に顔を押し付けて、その様子を見下ろした。


技師「・・・・・・地形が、おかしな事になってねぇか? 抉れるように所々変わっちまってるぞ」

槍兵「そんな・・・・・・山岳地帯が、まるまる吹き飛んでるなんて」

技師「どう、なっちまってるんだ? 一体、何があったら山が丸ごと無くなっちまうんだよ」

槍兵「分からないけど、地震もこの影響だったのかも・・・・・・」

技師「あ、光が・・・・・・」

槍兵「き、消えていく・・・・・・!?」

明るかった空が、目前の光の柱が小さくなっていくにつれて暗くなっていく。

技師「ちょ、ちょっとまて! 今真っ暗になられたらヤバイ・・・・・・っ」

槍兵「技師、急いでくれ!!」

技師「そういう事が出来る乗り物じゃねぇんだって!!」


技師はゆっくりと旋回しながら着陸ポイントを探し、徐々に高度を下げていく。

大地に近づくにつれ、その惨状の酷さがありありと目に飛び込んでくる。

抉れた岩塊、吹き飛んだ草木、ボロボロになったテント。

そして、微動だにしない倒れた調査隊達。

五体満足でいる者もいれば、体の一部、半分以上が欠損している者もいる。


技師「ひでぇ・・・・・・」

槍兵「いったい、ここで何があったんだ・・・・・・」

技師「よし、着陸態勢に入る。 ちゃんと捕まってろよ」

槍兵「・・・・・・っ!?」

その時、眼下を見下ろしていた槍兵の目に飛び込んできたのは、燻る煙をその身から出しながら、両翼で全身を包むように鎮座していた火竜の姿だった。

槍兵「あれは、火竜・・・・・・っ!? 先輩!!」

技師「お、おい待てよ槍兵!!」

槍兵は低空に位置したグライダーからハッチを開けて飛び出した。

大地に着地し、躓きながらも火竜に向かって駆け出す。

しかしその前に、火竜はぐらりとその大躯をふらつかせ、大きな音を立てて倒れふした。

その影に、一人の人間が倒れていた。

副官「・・・・・・っぐ」

槍兵「っ!?」

副官「わ、私は・・・・・・」

槍兵「先輩じゃ、ない・・・・・・?」

副官「ここ、は・・・・・・」

槍兵「あ、あなたは、火竜と一緒に倒れていたんです」

副官「た、倒れ、て・・・・・・? た、隊長、は・・・・・・調査隊は・・・・・・」

槍兵「調査隊の方ですね!? 先輩・・・・・・いや、竜騎士が一緒にいたはずです・・・・・・ご存知ありませんか!? 一体ここで何が・・・・・・!?」

副官「竜騎士・・・・・・っ。 隊長・・・・・・隊長は、あの時・・・・・・」



59:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/20(木) 19:57:56.19 ID:6wSbWNwj0

―――数刻前 遠方の地


竜騎士「っち・・・・・・っ!! 火竜よ!!」

その声は崩壊しつつある洞窟内に反響し、その波紋は魔方陣を中空に描き、爆炎と黒煙を伴い、その中心より竜騎士の従える火竜が現れる。
そして火竜は両翼を大きく広げ、天井より崩れてくる石や岩から兵達を守る。

副官「これが、火竜・・・・・・」

竜騎士「崩れてくる内壁や岩塊に注意しろ!!」

調査兵「ふ、副官殿!!」

副官「どうした!!」

調査兵「く、首飾りが・・・・・・外れません!!」

副官「何!?」

調査兵「そ、それどころか、どんどん熱くなって・・・・・・っぐ、がぁぁ!!」


「この、首飾り・・・・・・は、外れない!?」

「熱い・・・・・・っ、これ、何でこんなに!?」

「外れないんです!! くそ、何で・・・・・・っ!!」

「嘘だろっ!? こんなの嘘だろ!?」

「嫌だ!! 嫌だ嫌だ嫌だ!! 熱いっ!! 熱い!!」



竜騎士「(崩落の衝撃が竜の心臓に影響を与えずとも、自爆アイテムに込められた魔力が、竜の心臓に込められた魔力を暴走させてしまう・・・・・・)」

竜騎士「・・・・・・っく」

竜騎士「(ここにいる皆は・・・・・・救えない・・・・・・)」

竜騎士「(だが、ここで全てを諦めることもしない!!)」

竜騎士は国王より授けられた守護の魔石を握り締め、王国にいるであろう知人達の事を思い浮かべる。

竜騎士「(槍兵・・・・・・技師・・・・・・薬師・・・・・・皆・・・・・・)」



――――――姫様・・・・・・。



竜騎士「・・・・・・副官。 命令だ」

副官「!? はい! 如何様な命令でも!!」

竜騎士「(今ここで司令の首飾りを装備していないのは、私と副官だけか・・・・・・)」

副官「・・・・・・隊長?」

竜騎士「・・・・・・生きろ」

副官「え・・・・・・?」



火竜は大翼を広げ、副官の前に降り立つとその翼で副官を包み込む。

副官「隊長!? 一体何を・・・・・・っ」

副官の叫びが竜騎士の耳に届く瞬間、視界は目が眩むほどの強烈な閃光と聴覚を麻痺させるだけの爆音が調査隊を・・・・・・洞窟を、そして島を飲み込んだ。


副官「―――――――――――――――っ!!!!」



60:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/20(木) 20:12:17.81 ID:6wSbWNwj0

―――遠方の地


槍兵「な、なら・・・・・・先輩は・・・・・・」

副官「・・・・・・」

技師「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・ったく、先に行きやがって。 って、あんたは・・・・・・」

槍兵「・・・・・・嘘だ」

技師「・・・・・・槍兵?」

槍兵「嘘だ、嘘だ・・・・・・嘘だ・・・・・・」

技師「お、おい槍兵!!」

槍兵「ありえない!! 絶対に!! そんなの嘘だ!! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!」

技師「槍兵!!」


―――そう恨み言を言うな。 こうやって、お前のヤケ酒に付き合ってやってるんだからな―――


―――そんな暇があるなら、槍の腕を磨くか、戦闘の勉強をしろ。 そんなんじゃいつまでたっても竜騎士にはなれないぞ―――


―――だったら、今以上に鍛錬に励むことだ。 速さだけなら、お前は見所がある―――


―――十分すぎるくらい俺は欲張りだよ。 だから、毎度毎度、広げすぎた風呂敷に苦労するんだ―――







―――そうか・・・・・・。 なら、いつか俺が困った時、ちゃんと助けにきてくれよ―――






槍兵「嘘だぁぁぁぁぁぁぁ!!」



61:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/20(木) 20:33:51.44 ID:6wSbWNwj0

―――その日、王国は歴史を刻んだ。


調査隊の赴いた島は七割が消失し、爆発の際に生じた衝撃波は、周辺諸国にまで影響を与え、地平線の向こう側でさえ観測された。

未帰還者数は当時上陸していた人数の9割以上に上り、救助された者も、その殆どが治療中に命を落とした。

多くの犠牲者、亡骸無き兵達の為に、王国と爆心地となった島には慰霊碑が作られた。




そして、大掛かりな捜索を長期にわたって行なった王国だったが・・・・・・。







竜騎士の亡骸の発見には、ついに至らなかった。







鎮魂の儀は国を挙げて行われ、国民は、深い悲しみにつつまれた。

誰もが調査隊として赴いた人々の、そして竜騎士の死に涙した。



しかし、時はそれでも流れていく・・・・・・。



大きな損失を生んだこの出来事は、再び城内の動きを慌ただしいものにした。

王国は竜騎士を失ったことによる戦力低下を魔法部隊増強という形の手段で処理し、引き続き統括者に司令が選ばれた。

国民たちも、悲しみを振り払うかのように、日々を強く生きていこうと自らの足と手を動かす。

それは、各々の時を刻むことでもある。

ある者は、さらなる高見を目指すため、日々鍛錬をこなし。

ある者は、己の技能を開拓するために遠方へと足を運ぶ。

ある者は、見聞を広めるために新しい道を見聞する。


それぞれの道は違うが、しかし、胸の内に負った傷は大小あれど、皆同じだった。

失ったモノが大きければ大きいほど、その思いを振り払うかのように、皆、己の本文を全うしようと日々前に進み続けたのだった。





―――そして、三年の月日が流れた。



62:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/20(木) 20:37:15.65 ID:6wSbWNwj0

―――城内 玉座の間


国王「“槍兵”よ、今日までよくぞ国のために尽くしてくれた。 魔を退け、民を助け、その働きは誰もが知るところとなり、その精神は尊く気高いものと誰もが感じている」

国王「今では貴君は王国になくてはならぬ存在になった。 故に、貴君の働きを称え、本日を持ってその身に纏いし鎧に因み、“銀騎士”の称号を授ける」




銀騎士「・・・・・・光栄です。 銀騎士の称号、有り難く頂戴致します」




―――その日、王国に新たな騎士が誕生した。



68:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/21(金) 16:24:05.36 ID:PY//4P3u0

―――酒場



技師「お? 今日は城で称号授与の後に、盛大なパーティーがあったんじゃなかったのか?」

銀騎士「まさか。 いちいちそんなことの度にパーティーなんて開いてたら、この国は財政破綻しちゃうよ」

銀騎士「それに・・・・・・」

技師「ん?」

銀騎士「僕は、場で酔いたいんだ。  マスターの出してくれる酒が飲める、ここでね」

マスター「ありがとうございます。 昇進祝いに、今日は奢りです」

技師「マスター、俺は?」

マスター「ツケを払っていただけたら、かまいませんよ?」

技師「はっはっは!! いや~、本当にめでたい日だな兄弟!!」

銀騎士「まったく・・・・・・。 ああ、お前といるといつでも宴をひらいてるみたいなもんだよ」

技師「しっかし、あの槍兵が銀騎士にね~」

銀騎士「僕が一番驚いてるよ」

マスター「研鑽を重ね、魔物の討伐でも、多大なる成果を上げているとお客さん達もよく話していますよ。 頑張っている姿というのは、必ず誰かが見ているものです」

銀騎士「そう、だね・・・・・・」

技師「おうよ。 あの人も、きっと喜んでるさ」

銀騎士「うん。 そうなら、うれしいよ」

技師「本当なら、もう竜騎士になっていてもおかしくない実力だっていうのにな・・・・・・」

銀騎士「いっこうに竜騎士転向の試練どころか・・・・・・役所からは選考の話すらあがってこない」

技師「このままじゃ、あと数年で竜騎士って称号すら無くなりそうだな」

マスター「・・・・・・まるで、あの方の存在を忘れてしまいたいかのようです」

技師「実際そういうことなんだろう。 魔法部隊の地位はあのころと比べて大きく変わった。 今では、この国を代表する程の力を持っているわけだし」

銀騎士「それを率いているのが、あの司令だしね」

マスター「しかし、本当なのでしょうか・・・・・・。 司令が調査隊を意図的に壊滅へとおいやったというのは」

技師「俺たちが助けた調査隊の副官は、確かにそう言ってた。 司令から渡された首飾りが、最後の引き金を引いたんだって」

銀騎士「崩落のタイミング、先見隊として動いていた魔法部隊の不可解な動き・・・・・・」

技師「ま、表向きは公表されていないことだらけで、確かな確証はないんだけどな」



69:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/21(金) 16:44:26.56 ID:PY//4P3u0

マスター「悲しいことです。 あの方は、誰よりも国のことを思い、魔物との戦いに赴く際には、戦陣を切って戦いの中に身をおいていたというのに」

銀騎士「僕も信じられない。 信じたくない。 国を思い、民のために戦ってきた人達が、殺しあうなんて。 だけど・・・・・・」

技師「俺たちは、そこで終わりにはしない。 絶対に」

銀騎士「今の平穏が、先輩の犠牲の上にあるというのなら、なおさら僕らはその真実をつかんでみせる」

技師「納得できないままっていうのは、我慢できないからな」

マスター「そう、ですね。 ですが、これはいうなれば、国の暗部にふれることですよ」

技師「やろうとしてるのが綱渡りだってのは十分承知してるさ」

銀騎士「普通に調べてただけじゃ、まず到達できないだろうからね」

技師「もちろん危険なことだって承知してるよ。 でもなマスター。 俺たちはこの三年間、何もしてなかったわけじゃないんだぜ」

銀騎士「今日こうしてマスターに話してるのは、行動に移せる準備ができたからなんだよ」

マスター「・・・・・・っ!? おやおや」



その時、酒場の両開きのドアを開けて入ってくる二人が、店内を見渡しながら銀騎士と技師のもとへと歩み寄ってきた。



副官「いいお店ですね。 長く王国にいますが、初めて来ましたよ」

薬師「私達はよくここを利用するんです。 ご飯もお酒も美味しいから、何かあればいつもここに来てますね」



70:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/21(金) 16:57:17.83 ID:PY//4P3u0

技師「ゲストの登場だな」

薬師「お待たせしました。 副官さんは何を飲みます?」

副官「では、オススメがあればそれを」


薬師と副官が席に着き、飲み物が運ばれてきたところで乾杯を済ませ、話は本題へと進む。


副官「調査の結果、あの日の少し前に、調査区域近くで他国との共同模擬演習が行われていたのは確かなようだ」

副官「詳細が不明瞭なのは、当時の我が国にあった訓練記録や日誌が無くなっているか、改竄された痕跡があるからなんだ」

技師「随分手が凝ってますね・・・・・・」

副官「当時記録係を担当していた者も、人伝に遡って調べようとしたが・・・・・・」

銀騎士「・・・・・・したが?」

副官「あの日の一月以内に死亡しているのが判明した」

技師「・・・・・・消された?」

副官「その可能性は否定できないが、断定するには証拠不足だ」

薬師「それだけじゃないんです。 これも噂なんですが、その訓練で行軍訓練中に体調不良になった人も・・・・・・」

銀騎士「・・・・・・」

技師「死んだのか?」

副官「もしくは、行方不明になったかだな」

銀騎士「だが、その体調不良になった人達ってのは、今の話にどう関係があるんだ?」

副官「訓練記録にはその者達の事は書いてなかった。 だから、もしかしたら医療班として当時同伴していた城下の医者数人から調書とった。 いや、取ろうとした」

技師「取ろうとした?」

副官「・・・・・・医者が覚えてないんだ。 いや、そうじゃないな。 体調不良によって運ばれたものは確認していない。 と、いうことらしい」

銀騎士「確認していない・・・・・・。 運び込まれてないっていうこと?」

副官「正直に考えたらそうなる。 だが、大勢の人間が、体調不良となった兵を見てるんだ」

薬師「部隊からは離れた・・・・・・。 でも、医療テントには、誰一人として向かわなかった」

副官「途中までは向かったかもしれない。 ただ、部隊内の訓練記録などが改ざんされているところを見ると、協力者が皆無だったとは、言い切れない」

技師「随分といい加減なんだな軍隊の管理って」

副官「魔王も居なくなって、軍縮も進んでいた時期だし。 気が緩んでいたと言われても仕方がないのかもしれない」

副官「それに、綿密に練られた上での行動となれば、よほどの警戒心を持たなければ、気づくことなんて出来ないものだ」



71:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/21(金) 17:10:46.69 ID:PY//4P3u0

銀騎士「じゃあ、そのいなくなった体調不良者達は・・・・・・」

副官「あの洞窟に向かったのかもしれない。 確証がないのは残念だけどな」

副官「それに、あの時に見た竜の心臓。 あれがどのようにして運び込まれたのか・・・・・・」

薬師「・・・・・・運び込まれたわけじゃ、ないのかもしれません」

銀騎士「運び込まれたんじゃないんだったら、元からあったってこと?」

技師「んなことがあるのかよ。 竜の心臓ってのは、竜が死ぬ時に生まれる希少アイテムなんだろうが。 元々竜のコロニーだったかなんか知らねぇが、道端の石ころみたいに転がっている代物でもないんだろ」

副官「まず、ありえないでしょう。 竜の心臓は発見次第、国が回収して厳重管理し、持ち出しや使用にはいくつもの許可が必要なんです」

技師「だろうよ。 なら、やっぱり運び込まれたって方が真実味としては硬いだろう」

銀騎士「ああ。 司令が絡んでれば、出来ないこともないだろ。 軍の最高司令官だからね」

薬師「私もはじめはそう思っていました。 ですが、頭の回る司令が、そんな書類ごとの多いことに手を出して、足跡の残る危険性を冒してまで竜の心臓を持ち出すのでしょうか?」

技師「・・・・・・それこそ、職権が活きてくるんじゃないか?」

薬師「いくら司令でもそこまでおおっぴらに動けば、痕跡の一つでも残しそうなものですけど・・・・・・」

銀騎士「薬師は、何か別の考えがあるの?」

薬師「・・・・・・」

薬師「魔法部隊の中でも、攻撃専門の部隊は、戦闘に出る時も、魔法を使用する時も、いろんな制限がつくんです」

技師「・・・・・・それで?」

薬師「それは、強力な魔法を有事の際以外には使わないようにするための決まりであり、国が管理する上での最重要項目に属されます」

薬師「魔法部隊の、その中でも攻撃専門部隊は、どちらかといえば、国の有する兵器に近い存在なんです」

薬師「私、その部署にいる人と話す機会があって・・・・・・」

銀騎士「・・・・・・魔法部隊の人間が、簡単に情報を漏らしたの?」

薬師「そこは、女ならではの裏技です」

技師「(・・・・・・薬か?)」

槍兵「(・・・・・・裏技?)」

副官「(・・・・・・女体の神秘か?)」

薬師「禁呪法に近い魔法を研究したり、失われた魔法の復元を試みたりもしてるって」

薬師「その中には、各生物に特化した魔法も・・・・・・研究してるって言ってました」

副官「生物・・・・・・」

薬師「海洋生物から森の動物たち、魔界の生き物・・・・・・異相から生まれ出るもの。 そして、竜」

技師「マジかよ」

銀騎士「竜を倒せるだけの魔法を・・・・・・魔法部隊は有しているって事?」

薬師「そういう事みたいです。 詳細な効果はわかりませんが、きっと完成している魔法なんだと思います」

薬師「それに、皆さん覚えていますか? 竜の個体数管理は、司令の直轄部署が行っているんですよ」

技師「て、ことは・・・・・・」

副官「模擬演習の時にはまだ・・・・・・」

銀騎士「竜は、あの地で生きていた・・・・・・?」



72:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/21(金) 17:56:38.16 ID:PY//4P3u0

薬師「竜の洞窟には、当時、間違いなく竜が存在していた。 コロニーを形成していたというくらいですから、少なく見積もっても三体以上は・・・・・・」

技師「そこに、魔法部隊が対竜種の秘策を引っさげて、演習中に離脱」

副官「・・・・・・洞窟内でどのような攻防があったかは分からない。 演習中に誰も気がつかなかったくらいだから、攻防という名のやりとりがあったかすら不明瞭だが・・・・・・」

銀騎士「確実に・・・・・・何体かの竜は、その場で倒された」

薬師「そして、その場で結晶化された竜の心臓をその場に残す」

技師「誰にも干渉されないように魔法で竜の巣穴付近の場を整える」

副官「・・・・・・そうか、三年前に調査隊が発見する前に先見隊が動いていたのは、もしかしたら先に発見されないように施していた幻術かそれらの類の魔法を解呪するためだったのか・・・・・・」

薬師「体調不良の名目で演習時に抜け出していた者たちは、何食わぬ顔で、演習終了後に合流」

銀騎士「時が経ち、資源調査で再び訪れた先輩達を、何食わぬ顔で竜の巣穴最深部に誘い込む」

副官「崩落のタイミングも、首飾りが竜の心臓に近づき反応を示すタイミングで始まるように仕組まれたものだろうな」

銀騎士「竜の心臓が暴走する頃には、先見隊は王国に向けての帰路についていた。 もしかしたら、船を使うまでもなく、転送魔法で暴走前には安全圏に退避していたかもしれない」

副官「確かにな・・・・・・」

技師「ともかく、大筋としてはこんなところか」

薬師「今持ちうる情報からだと、ここまでが限界ですね」



77:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/22(土) 01:43:13.50 ID:cZ+j4HZq0

副官「ただ、今私たちが議論していたことは仮定でしかない。 証拠は、何一つない」

薬師「・・・・・・はい」

技師「いや、何も分からなかった頃に比べたら、雲泥の差だぜ」

銀騎士「うん。 本当にありがとうございます、副官さん。 薬師も、潜入調査なんて危ない真似をさせて、ごめんね」

薬師「い、いいんですよ。 私も、片手間でやってた治癒魔法の勉強はとても参考になりましたし・・・・・・」

技師「ま、勉強だけならな~。 魔法の才能は関係ないからな、お前」

薬師「もう、兄さん!!」

銀騎士「大丈夫だよ。 薬師の処方する薬に、治癒魔法の知識が加わるんだから。 無駄になるなんてことは、絶対にないさ」

薬師「槍兵さん・・・・・・ありがとうございます」

技師「おいおい、今は銀騎士だろ」

薬師「そ、そうでしたね。 あ、しょ、称号授与おめでとうございます! ごめんなさい、言うのが遅れちゃって・・・・・・」

銀騎士「ありがとう。 別に、呼び方はどちらでもいいよ。 好きなように呼んでくれて構わないから」

技師「で、だ。 これからどうするよ。 もうちょっと深いところに踏み込んでみるか?」

銀騎士「・・・・・・そうだね。 これで終わる僕たちじゃない」

技師「だな」


副官「もちろんだ。 そこで、ウズウズしている君たちに朗報がある」


銀騎士「さすがですね」

技師「あの人の副官をやってただけはあるな」

マスター「皆さん、料理が出来ましたよ」

技師「おお! そんじゃ、料理でも食いながらその朗報っていうのを聞きましょうかね」



78:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/22(土) 02:11:29.83 ID:cZ+j4HZq0

副官「突破口となるのは、やはり竜騎士制度という問題だ。 竜の個体数を管理し、国で取り決められた竜騎士の選抜制度。 ここに、勝負をかけるポイントがある」

技師「その制度も、今となっちゃあってないようなもんですけどね」

副官「まぁそうだな。 だが、これはある意味君にとっても重要な問題だ。 銀騎士」

銀騎士「僕、ですか・・・・・・」

副官「・・・・・・これから言う作戦は、一番銀騎士に負担がかかる。 最悪の事態も考慮しなくてはいけない」

技師「・・・・・・随分ともったいぶるんすね」

銀騎士「僕たちはこの問題に立ち向かうと決めた時から、危険とは隣り合わせだと覚悟していました。 今更ですよ」

薬師「・・・・・・」

副官「そう言ってくれるだろうと思ったよ。 私も危ない橋を渡った甲斐がある」

技師「で、渡った先にはどんなネタが待ってたんすか?」

副官「うむ・・・・・・」

銀騎士「副官さん?」

副官「・・・・・・銀騎士。 実は一体だけだが、個体数管理に登録されていない竜の存在が確認された」

銀騎士「・・・・・・っ!?」

技師「マジっすか!?」

副官「ああ。 厳重にその情報は管理されていたけど、何とか調べることができた」

銀騎士「・・・・・・それで、その竜はどこに?」

副官「場所もわかってる。 どうやら、長いこと住処を変えず、動いていないようなんだ」

銀騎士「・・・・・・国の管理体制は?」

副官「二日前に所在が確認されたばかりなんだが・・・・・・恐らく、近日中には厳重な管理が始まるだろう。 その島への渡航も制限されるはずだ」

技師「・・・・・・すげぇな。 相変わらずの仕事の早さだ」

薬師「それだけ、竜の管理に目を光らせているってことですね」

銀騎士「・・・・・・副官さん、もしかして」



副官「そうだ。 君が、この竜に会いにいくことが、作戦の要だ」



79:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/22(土) 02:38:13.06 ID:cZ+j4HZq0

薬師「え、でも、許可なくそんなことをしたら、重罪・・・・・・」

副官「そうだ。 そこで、国の出方次第で真相に近づける」

薬師「どういう、ことですか?」

銀騎士「・・・・・・囮、ですか」

副官「ああ。 銀騎士の称号を持つ君は、現在この国で一番竜騎士になる可能性を持っている」

副官「そんな君が、竜との接触を図ろうとしているとなれば、司令も軍を動かさざるを得ない」

副官「現場で遭遇し、もし、私たちが話していた通りの部隊だった場合・・・・・・」

副官「君を捉えようとするのではなく、その場での抹消を試みてくるだろう」

銀騎士「抹消・・・・・・」

薬師「そんな・・・・・・」

副官「現在、我が国には竜騎士がいない。 しかし、世論は竜騎士を望んでいる。 そして、その期待は銀騎士、君にかかっているといっても過言ではない」

副官「最近では竜を管理するという名目で竜騎士を誕生させない国への不満も募ってきた。 そこに来て、もし竜騎士になろうとする君を国が止めようとしてきたら、民からの反発は避けられない」

副官「連行してからの裁判ともなれば、なおさらです。 優秀な騎士と竜を引き合わせない国に不信感も出てくるはず」

副官「筋書きとしては、何らかの事故として処理されるでしょう」

副官「だが、君の今の実力は誰もが知るように、この国一番の騎士だ」

銀騎士「ありがとう、ございます」

副官「そんな君を相手取るとなると、相応の人数と実力者が必要となる」

技師「司令の魔法部隊。 その精鋭部隊ですか」

副官「その通りだ」

副官「まず間違いなく、精鋭部隊は君が竜と接触を図ろうとする時に城を空けるだろう」

副官「そしてその間、精鋭部隊が出払っている隙をついて、我々は城内の地下牢へと潜入する」

薬師「潜入、ですか?」

技師「誰か、面白いやつが捕まってるんすか?」

副官「ああ、そうだな。 なかなか興味深い人物だ」

副官「私と隊長が資源調査に赴いた時の、先見隊を任されていた元魔法部隊の人間だ」

銀騎士「元・・・・・・?」

副官「退役し、離れた村で、農村を営んでいた者なんだが・・・・・・」

技師「どうして捕まってるんすか? 納税を怠ったとか?」

副官「それくらいでは、城の地下牢には入れられないよ」

副官「収監者の記録には、精神的錯乱者の隔離となっていたが、これもおかしい。 外部から医者の訪問なんて、入城記録には記載されていないからね。 もちろん、カウンセラーも」

銀騎士「・・・・・・なるほど。 その男なら、司令とのつながりがあるかもしれないから、情報を聞き出すにはうってつけのというわけですね」

副官「その通りだ。 本当に精神が錯乱しているのなら、むしろ望むところだ。 ポロっと欲しい情報を吐露してもらう。 ただ・・・・・・」

技師「ただ?」

副官「その男は、怯えるように同じ言葉ばかりを呟いているそうなんだ」

薬師「それは、何と?」




副官「竜が、復讐しに来ると」



80:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/22(土) 02:50:01.03 ID:cZ+j4HZq0

―――工房



薬師「本当に、行くんですか?」

銀騎士「作戦だからっていうのもあるけど、竜騎士になれるチャンスかもって思えば、行かない理由はないよ」

薬師「でも・・・・・・」

銀騎士「大丈夫だよ。 これでも、少し前までは“最速の槍兵”って言われてたんだ。 逃げ足だけは自信がある」

薬師「銀騎士さんの実力は疑っていません。 私は、銀騎士さんの頑張りを、一番近くで見てきましたから」

銀騎士「そうだね。 いつも、薬師と技師には助けてもらった」

薬師「だけど・・・・・・それでも・・・・・・」

銀騎士「はは、本当に心配症だな薬師は」

薬師「と、当然じゃないですか!!」

銀騎士「・・・・・・ありがとう。 でも、本当に大丈夫だよ」

銀騎士「それに、技師の作ってくれたこの鎧もある。 僕の称号の由来となった、この白銀の鎧がね」

薬師「はい。 けど、もしかしたら魔法の攻撃専門部隊が現れるかもしれませんよ?」

銀騎士「その時はその時さ。 あらゆる可能性を考慮した上での作戦だからね」

銀騎士「この鎧は、いつか司令の魔法部隊と戦うことを想定して、技師と一緒に何度も試行錯誤をして作ってある。 対魔法防御に特化した装備も備わってるしね」

薬師「・・・・・・なんだか、銀騎士さんが一番落ち着いてるみたいですね」

銀騎士「どうかな・・・・・・。 でも、楽しみじゃないと言えば、嘘になるね」

銀騎士「帰ってくるときは、竜と共に帰ってくるかもしれないんだから」

薬師「はぁ・・・・・・。 本当に、とことん前向きなんですから・・・・・・」



81:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/22(土) 03:04:01.45 ID:cZ+j4HZq0

技師「さてさて、準備はもういいのか?」

銀騎士「ああ。 大丈夫だよ」

技師「まぁ、普通に海路で行こうものなら、港で手続きをするとき、余裕で足がつくからな」

銀騎士「分かってはいたけど、またこれに乗るのか・・・・・・」

銀騎士、技師、薬師は目の前の“大鳥”に目を向ける。

技師「前回と違うのは、グライダーが整備中だからオーニソプターを使ってもらうことかな」

銀騎士「おお、ついに完成したのか」

技師「まぁな。 ただ、動力機関が中々小型化できなくて、搭乗スペースを確保できなかった」

銀騎士「・・・・・・え、それじゃあ僕はどこにのるんだ?」

技師「そりゃ、中に乗れないなら上しかないだろう」

銀騎士「それって、大丈夫なのか?」

技師「もちろんだ。 理論上はな」

銀騎士「理論上・・・・・・」

技師「心配するな。 俺が作った乗り物が、そうそう簡単に落ちてたまるか。 と、思いたい」

薬師「思いたい・・・・・・」

技師「多少グライダーよりも扱いにくいが、小回りはこちらの方が利く。 航続距離はほとんど同等だ。 多分」

銀騎士「・・・・・・」

薬師「・・・・・・」

銀騎士「って、んなことばっかり言ってても、結局は行くしかねぇんだ。 ほら、操作方法を教えるから、ちょっと来い」


そして、技師から操作説明を受けた銀騎士はおっかなびっくりにオーニソプターの上に乗る。


薬師「忘れ物はありませんか?」

銀騎士「長居するつもりはないからね。 着の身着のままで行ってくるよ」

薬師「ふふっ」

銀騎士「ははっ」

技師「地図は頭に叩き込んだか?」

銀騎士「もちろん」

技師「目立たないように夜間飛行を選んだわけだが、今日は月明かりが明るい。 雲も無いから、たぶん大丈夫だろう」

銀騎士「うん、この明るさなら、そんなに怖くないかな」

薬師「行ってらっしゃい、銀騎士さん」

銀騎士「うん、行ってきます」

技師「おし! 行ってこい!! 吉報を期待して待ってるぞ!!」

銀騎士「ああ!! お前も、しくじるんじゃないぞ!!」




オーニソプターに搭載された動力に火が入り、両翼の羽ばたきは徐々に大きく、早くなる。
巻き上がる風はゆっくりと銀騎士とオーニソプター自身を浮き上がらせ、懇親の一羽ばたきは、大きくオーニソプターを上昇させた。




技師「さて、俺と副官どのも、動くとするか」



82:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/22(土) 03:25:43.30 ID:cZ+j4HZq0

―――深淵の洞窟



オーニソプターに乗った銀騎士が降り立ったのは、深い深い暗闇がどこまでも続いているかのように見える洞窟の入口。

大きく口を開けた入口の奥からは時折強い風が流れ、銀騎士は目を細める。

銀騎士「ここに、副官さんに教えてもらった竜が・・・・・・“風竜”がいる」

意を決して歩を進める銀騎士。

道中は光源など無いはずなのに、入って数分は不思議と暗過ぎず、歩みを進める度に石や壁面が淡く光り、進むべき道を照らし出していた。

しかしそれも、奥へ奥へと進むにつれ、上下左右の方向感覚が曖昧になる暗さになっていく。

だが、銀騎士は歩みを止めない。 それどころか、自然と足取りは軽かった。

竜に対する恐れも、好奇心も、自分を取り巻く役割や感情なども、自然と希薄になっていく、不思議な感覚をもたらす空間だった。

銀騎士「・・・・・・」

そして、かすかな気配を感じて足を止めた時、徐々に周囲が明るく照らし出された。






現れたのは、竜騎士の使役していた火竜と同じ位の大きさをもった竜。

火竜と違うのは、鱗というよりも極め細かい純白の毛に身を包んだという印象の姿だった。

銀騎士はその姿から一瞬で高貴さ、美しさ、儚さを全身で感じ、息を飲んだ。





銀騎士「・・・・・・あなたが、風竜」

風竜「いかにも。 貴公は?」

銀騎士「僕は・・・・・・私は、銀騎士と言います。 お初にお目にかかり、光栄です。 風竜よ」

風竜「うむ。 銀騎士よ、この様な深淵の洞窟にいかようで参ったのだ?」

銀騎士「・・・・・・あなたと、契約を結びたい」

風竜「ほう、竜の力を欲するか、銀騎士よ」


銀騎士は自分の言葉が、考えている事とは全く違う形で口から出ていくことに若干の戸惑いを覚えていた。

口から出るのは、嘘や建前などではなく、すべてが本心。

自動的とも言えるくらい、淡々とした口調で、銀騎士は胸の内を明かしていく。

それが、竜と契約する際の制約なのか、決まりなのか、呪術や魔法といった類で縛られたルールなのかは分からない。

だが、この時銀騎士は、そのルールを自然と受け入れた。



83:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/22(土) 03:42:02.93 ID:cZ+j4HZq0

銀騎士「そうです。 私は、力が欲しい。 非力な自分では、現実に直面した苦難に対して、数多の手段も、選択肢も選ぶことが出来ない」

銀騎士「初めは栄誉が欲しかった。 手に入れることで、注目されたかった。 目立ちたかったんです。 大空を駆ける力で、先輩と・・・・・・慕う竜騎士と共に」

銀騎士「でも、今は純粋に、戦うための力が欲しい。 圧倒的な力に・・・・・・権力に対抗できるだけの力が欲しい」

風竜「力、か・・・・・・」

銀騎士「風竜よ。 あたたは別に、幻滅も失望もしないでしょう。 もとより、こんな私に興味など微塵も無いはずだ。 ただ、力を欲する為だけに、契約を結ぼうとする者など」

風竜「ふむ。 月日を重ね、自らの力のみで手に入れた技量では、不服なのか?」

銀騎士「はい。 目的に届かぬ力では、意味がないのです」

風竜「ならば、さらなる研鑽をつめばよかろう」

銀騎士「時の流れがそれを許してくれるのであれば、私も無心になりて槍を振るい続けるでしょう。 しかし、時間がないのです。 人々の思いが風化してしまう前に。 悲劇の爪痕が・・・・・・英雄だった竜騎士の記憶が無くなってしまう前に力が欲しいのです」

風竜「・・・・・・貴公を見ればその実力は直ぐに把握できた。 だが、人の身でそれ程の実力を有してもなお、足りぬと申すか」

銀騎士「力を得るためだけに、余所から借り受けるように、力を手にしようとする者なんかに、あなたは契約など結ばないでしょう・・・・・・」

銀騎士「だが、それでも私は契約を望む。 あなたの力を借りたい。 その力と翼が欲しい!!」

銀騎士「その為ならば、私はいかような代償でも払いましょう」

全てが嘘偽りのない、胸の内にある言葉だった。

とても、竜との契約を望むような会話ではなかったかもしれない。

だが、銀騎士にとっては、それが全てだった。 

今語ったことが、ここまで積み上げてきた自分の全てだった。

風竜「・・・・・・若き白銀の騎士よ。 その誠実さは尊いものだ。 貴公の今日までの研鑽も、眼を合わせれば感じ取ることができる」

銀騎士「・・・・・・」





風竜「故に、残念だ。 私は、貴公の力にはなれぬ」



84:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/22(土) 04:01:37.96 ID:cZ+j4HZq0

銀騎士「・・・・・・そう、ですか」

銀騎士「(覚悟していたことだ。 僕みたいな者に、誇り高き竜が契約などしてくれるはずもない)」

銀騎士「(けど、それでも)」

銀騎士「・・・・・・っ」



銀騎士「(ちょっとだけ、悲しいかな・・・・・・)」



風竜「銀騎士よ。 我は貴公を認めないから、契約を結ばぬのではない。 そう悲観にくれるでない」

銀騎士「・・・・・・え?」

風竜「出来ることなら、我も貴公の力となり、共に空を飛び回りたい。 我は火竜ほどの力も無ければ、水竜のように雨や海を操ることはできぬ」

風竜「しかし、風の力を操り、風の化身となり、他の竜よりも・・・・・・いや、この世のどんな“命”よりも早く空を飛行できる」

風竜「その我が認めているのだ。 誇るが良い。 この風竜は、例え契約を結べぬとも、そなたを我が盟友と認めよう」

その言葉で、銀騎士の心は容易く決壊した。

両目からは堰を切ったように涙がとめどなく流れてくる。

銀騎士「・・・・・・っ。 ありがとう、ございますっ」

風竜「ふっ、涙するほどのことか」

銀騎士「お恥ずかしながら、騎士を志した時より、憧れていたものでしたので」

風竜「ほう。 そうであったか・・・・・・」

銀騎士「万感、こみ上げる思いです」

風竜「・・・・・・それほどであったか。 誠に、申し訳ないことをしたな」

銀騎士「いえ、僕には・・・・・・私には、身に余るお言葉です」





風竜「・・・・・・私はな、もうそれほど長くはないのだ」



85:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/22(土) 04:20:09.57 ID:cZ+j4HZq0

銀騎士「・・・・・・え」

風竜「そうおかしなことではない。 森羅万象、あらゆる生には終が来る。 それは我ら竜とて例外ではない」

風竜「もはや、いつ命が尽きてもおかしくはないのだ。 寿命というやつだな」

風竜「同胞がいれば、この力を分け与える事もできたのだが、近年ではその姿を見ることも少なってきた」

風竜「なれば、独り静かに朽ちていくのも悪くはないと思っていたのだ」

風竜「・・・・・・しかし、今際の際に貴公のような男に会えたことを、神に感謝せねばならぬな」

銀騎士「・・・・・・っ」

風竜「はっは。 本当に、涙もろい男だ」

銀騎士「も、申し訳・・・・・・っ」

風竜「・・・・・・そなたならば、申し分ない。 契約はならなかったが、盟友となった者への、最初で最後の贈り物だ」

風竜「我が風の結晶、そなたに託そう」

風竜「我は、常にそなたと共にある。 銀の騎士よ」

銀騎士「風竜・・・・・・」

風竜「そなたの道に、闇を払う神風あれ・・・・・・」

その言葉を残し、風竜は両翼でその身を包み、全身が洞窟内を隈なく照らし出す程の強烈な発光を見せる。

続いて突風が銀騎士の身を通り抜け、やがて僅かに暖かいそよ風が頬を撫でた時・・・・・・。

銀騎士「・・・・・・これは」

銀騎士の正面に浮かぶ緑光の結晶体。

それは、まさしく風竜の心臓。

風竜の生きてきた生涯を、盟友である銀騎士に託した証だった。

銀騎士「風竜・・・・・・っ」

銀騎士は、その結晶を手にし、ただただ涙した。

竜との契約はならなかった。 憧れていた竜騎士にはなれなかった。

しかし・・・・・・。

銀騎士「・・・・・・っ、っぐ・・・・・・ぐすっ・・・・・・」

溢れ出る涙が、これでよかったのだと、これ以上の結果はないのだと教えてくれる。

盟友と呼んでくれた風竜が認めてくれた騎士として、何ら恥じることはないのだと。

きっと、竜騎士になる以上の価値が、あった事なのだと。

銀騎士「っぐ、ぅ・・・・・・っぐす・・・・・・ぅ」



竜騎士にならずとも、自分が自分を認めることの出来る、胸を張れる騎士になったのだと・・・・・・。



86:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/22(土) 04:25:27.96 ID:cZ+j4HZq0

静まり返る洞窟。

数刻前まで、巨躯を構えた風竜がいたとは思えないほど、今は何も感じるものはない。

暗い洞窟内に一人佇む銀騎士。

身に纏う白銀の鎧に映るものは闇と、淡い緑色の光。

両手の内にある物は風竜の心臓。

その温もりが、確かにここで、自分は竜といたのだと実感させてくれる。

銀騎士「・・・・・・」



徐々に近づいてくる、複数の気配が訪れるまでは・・・・・・。



91:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/24(月) 00:21:13.52 ID:3rg9ek970

陽炎のように一人、二人と増えていくローブの人影。

その気配を察して、腰の道具入れに風竜の心臓をしまい込む。

銀騎士「(司令直轄の精鋭部隊・・・・・・)」

銀騎士「なかなかの大所帯ですね。 皆さんでピクニックですか?」

魔術師「竜との契約は国の許可無く行えば重罪となります」

魔術師「銀騎士の称号を与えられたあなたが、知らないはずがない。 さぁ、我々と共に帰還いたしましょう。 司令も、こ度の件は不問として下さるでしょう」

銀騎士「やっぱり、あんた達は司令に言われてきたんだね」

銀騎士「・・・・・・いつから、僕達のことを?」

魔術師「その質問にお答えする権限を私は持っていません」

銀騎士「・・・・・・不問も何も、どうせ見ていたんじゃないですか? 風竜から竜の心臓を受け取った僕が、そうそう見逃されるなんてことはないと思うけど」

魔術師「過ぎたことは仕方ありません。 それに、心臓なら明け渡して下されば、こちらとしては問題ありません」

銀騎士「素直に渡すと?」

魔術師「思いません。 しかし、そうして頂ければ、事は穏便に済ませることができます」

銀騎士「・・・・・・また、三年前の焼き直しをしようっていうのか? 先輩・・・・・・竜騎士の時と同じようにっ」

魔術師「悲劇は繰り返させません。 そのために、我々はあなたの元に現れたのです」

銀騎士「・・・・・・もし、竜の心臓を渡す事も、一緒に帰る事も拒んだら?」

魔術師「多少の怪我は覚悟していただきます」

銀騎士「大した自信だね」

魔術師「数的有利はこちらにあります」

銀騎士「それじゃあ、魔法が僕の持っている竜の心臓に直撃して、暴走するとは考えないんですか?」

魔術師「全盛期の竜ならいざ知らず、老いた竜の魔力程度では、大した影響はありません。 それでも、我々人間にとっては膨大な魔力量を保持しているでしょうが・・・・・・」

銀騎士「・・・・・・」

魔術師「それに、あなたにとって大切な心臓なら、それこそ“身を挺してでも守って下さいますよね?”」

銀騎士「・・・・・・っ」

銀騎士「(確かに、言う通りだ・・・・・・。 結果、この体に魔法攻撃を受けることになろうとも・・・・・・)」

魔術師「いかがいたしますか? どう考えても、状況的には銀騎士様が不利だと思いますが」

銀騎士「・・・・・・そうだろうけど、僕だって、いつかこうなることを覚悟して行動してきたんだ。 何の準備もないまま、この場に立ってるわけじゃない」

銀騎士は装備している鎧の背部にマウントされていたシールドを取り外し、腕に構える。

魔術師「魔力を遮断するシールドですか」

銀騎士「あんた達にとっては天敵でしょ?」

魔術師「もちろんです。 ですが、我々とてバカではありません。 何の対抗策も持たないまま、長年魔法部隊を名乗っているわけではないのです。 対魔法防御手段を持つ相手の戦闘は、初めてではありませんよ」

銀騎士「・・・・・・」

魔術師「・・・・・・」



洞窟内の壁から、一欠片、小石程度の土塊が欠け落ちた。

それが、戦闘開始の合図となった。

魔術師たちの眼前には魔法陣が展開し、銀騎士は左手に構えた魔法防御のシールドを展開し、右手の大長槍を半身で隠す様に低く構える。



92:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/24(月) 01:05:21.94 ID:3rg9ek970

魔術師「手加減など考えるな!! 銀騎士様の鎧は魔法防御に特化していると聞く。 あの盾だけが防御の要じゃないぞ!!」

銀騎士「とっくに調査済みか・・・・・・。 そういう事なら、こっちも手加減してる余裕はなさそうだ」

魔術師達の手から連続して紫電が走り、瞬きする間もないほどの速度で銀騎士の元へと収束し、着弾する。

土塊と土煙が巻き上がり、銀騎士の姿がそれによって隠れる。



魔術師「・・・・・・上だ!!」



魔術師たちの直上、洞窟の天井に両足を着け、銀騎士の眼光は魔術師を捉えている。

銀騎士「いくぞ!!」

銀騎士は直下にいる魔術師の一人に向かって天井を蹴り、シールドを前面に出しながら懐に飛び込む。

叩きつけるようにして繰り出した銀騎士のシールドバッシュが直撃した・・・・・・かのように見えた。

銀騎士「何!?」

霧のように銀騎士の目の前から実体が消えた。

銀騎士「(ダミー!?)」

それに一瞬で気がついた時、銀騎士の足元で既にトラップとして設置されていた魔法陣が発動していた。

起動したその効果により、青白い光が稲光の様に銀騎士の全体を包む。

魔術師「対象を拘束する為の術式を用いてあります。 目には見えないだけで、あたり一面この魔法陣を設置してありますよ」

銀騎士「(相対した時に、既に呪文を唱えていたのかっ)」

魔術師「雷系統の式を利用していますから、筋肉が痙攣して身動き一つ取れないでしょう。 本来であれば、大型の魔獣相手に使うようなものですからね」

銀騎士「・・・・・・どうかな?」

魔術師「むっ!?」

銀騎士が本来であれば動けないはずの足を膝の高さまで上げ、踏みつけるようにして魔法陣へとその足を叩きつける。

ガラスの割れるような音を立てて、容易く魔法陣の束縛から脱した銀騎士。

銀騎士「そうとうお粗末な魔法なんですね。 足踏みだけで壊れちゃうなんて」

魔術師「・・・・・・その鎧、並みの抗魔力ではありませんね」

銀騎士「腕のいい職人がいるんですよ。 最高の相棒がね」

銀騎士「(それでも、若干手足の痺れは残るか・・・・・・流石精鋭部隊の魔法だ。 やはり、極力シールドで魔法を受けるのが賢明だな」

魔術師「・・・・・・流石は、王国一の騎士です。 どうやら、戦闘能力をここできちんと改めないと、こちらが早々に壊滅してしまいそうですね」

銀騎士「引くという選択肢はないんですか?」

魔術師「それは、勝算の無い状況に陥った時のみ考慮されます」

銀騎士「・・・・・・言ってくれますね」

魔術師「これでも、精鋭部隊で通っていますので」



93:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/24(月) 01:31:16.23 ID:3rg9ek970

―――城内 水路



技師「いや~。 城内潜入って、なかなかスリルがありますね。 特に、見つかったら極刑ってところに・・・・・・」

副官「ああ。 だから、綿密な巡回スケジュールや、適切な潜入ルート、もしもの時の対応策の準備が要となる」

技師「一応、小細工程度のアイテムは用意しましたけど、それを使わないようにしていきたいですね」

副官「全くだ。 そんな事態には、陥りたくないものだ」

技師「・・・・・・俺達も、頑張らなきゃな」

副官「銀騎士のことか。 そうだな。 彼は彼で、我らのために時間を稼いでくれていることだろう。 城内に司令の精鋭部隊がいないことが、何よりの証拠だ」

技師「それに、もしかしたら念願かなって、竜騎士になってるかもしれないっすからね」

副官「技師と銀騎士の仲は、随分と長いようだが・・・・・・」

技師「ええ、まぁ。 ガキの頃からずっと一緒でしたからね。 どこに行くにしても、何をするにも・・・・・・あいつと一緒だった」

副官「なるほど、兄弟のように、常に共にあったというわけだな」

技師「兄弟か・・・・・・そうっすね。 確かに、言われてみればそうかもしれない。 ただ、銀騎士とは上下関係なんて無く、常に同じ立場、同じ関係で、本当で気の合うやつってのはあいつ以外にいないっすね」

副官「羨ましい限りだ。 そんな君がいたから、彼も銀騎士という称号を得ることができたのかもしれないな」

技師「いやいや、それは違いますよ」

技師「あいつが銀騎士になれたのは、あいつの頑張りがほとんど。 俺の手助けがなくたって、いずれ立派な騎士になっていたでしょう」

副官「・・・・・・」

技師「それも・・・・・・。 竜騎士の旦那がいなくなってからは、病的だったんですよ。 オーバーワークでぶっ倒れるまで槍を振ってた時もあるし、俺や、妹の言うことも聞かずに満身創痍のまま魔物の討伐に出かけようとしたり。 まるで、強迫観念に取り憑かれたように、自分を顧みずに、ただ己を高めようとしていた」

技師「それが落ち着くのも、大体一年くらい経った後だったかな」

技師「それからだったなぁ、俺があいつに鎧を作ってやろうと思ったのは・・・・・・」

副官「ん? それまでにも、色々と作ってあげていたんじゃなかったか?」

技師「今の鎧は、妹の調合した薬剤を、戦闘中にダメージや精神状態に応じて自動的に投与できる新型も新型。 魔法防御の能力なんて、正直オマケみたいなものなんですよ」

副官「そうだったのか・・・・・・」

技師「もちろん、抗魔力に対して手を抜いたってわけじゃないんで、魔法を使ってくる相手にも有効な鎧なんですけどね。 それこそ、シールドは完全に魔法防御に特化してます」

副官「(・・・・・・恵まれてるな、銀騎士は)」 ボソ

技師「え、何か言いました?」

副官「いや、独り言だ。 気にするな」

副官「・・・・・・ところで」

技師「はい?」

副官「その、薬師は・・・・・・銀騎士と・・・・・・その・・・・・・」

技師「薬師?」

副官「いや・・・・・・何でもない。 忘れてくれ」 ///

技師「ニヤァ・・・・・・」

技師「副官殿・・・・・・もしかして・・・・・・」

副官「な、何でもないんだ。 本当にっ」

技師「はいはい。 先は長そうですし、じっくり聞きましょう」

技師「(あいつ、なんだかんだで結構モテるからなぁ)」

技師「(まぁ、結局は銀騎士のことだけしか見てないだろうけど・・・・・・)」



94:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/24(月) 03:06:16.22 ID:3rg9ek970

―――深淵の洞窟


銀騎士「(個々の能力も然ることながら、連携の取り方が抜群に上手いっ)」

銀騎士「(こちらの一挙手一投足を見極め、先読みして適時的確な魔法を放ってくるとは・・・・・・)」

銀騎士「薬師の作ってくれた回復薬と状態異常を治す薬の残量をきっちり把握しながら戦わないと・・・・・・」

魔術師「これ程やりにくい御方とは思いませんでした。 その身体能力、鎧の性能・・・・・・驚愕に値します」

魔術師「このままでは決着がつくのは相当先になってしまいますね」

銀騎士「確かに・・・・・・」

魔術師「(間違いなく、場を乱すことの出来る技の一つや二つは持っているはず)」

銀騎士「(それを、どちらが先に仕掛けるか・・・・・・)」

魔術師「(勝算で言えばまだこちらに分がある。 数的有利を確保しているうちに、畳み掛けるのが得策か)」

銀騎士「(今作戦、自分の役目はあくまで時間稼ぎ。 なら、まだここで自分から大きく動くのは早いか・・・・・・)」



薄暗い洞窟内、互の心意を探り戦闘の主導権をどのようにして動かしていくかを模索している時、まったく感知していなかった方角から心臓を鷲掴みされるような殺気を二人は感じた。




―――ぐああああああ!!

   ぐはぁっ!!




魔術師「何だ!?」

銀騎士「・・・・・・っ!?」

突然洞窟内に響く叫び声。 重複して聞こえてくるのは魔法を発動した時の独特な音。

魔術師「誰だ、何者だ!?」



―――「何者だと・・・・・・? この個体を知らないとは、貴様モグリか?」



薄らと、徐々に二人の方へと歩み寄ってくるその人影に、魔術師は警戒心を高める。

魔術師「何?」

銀騎士「・・・・・・ぇ」





その声色を最後に聴いたのはいつのことだったか・・・・・・。





銀騎士「そんな・・・・・・馬鹿な・・・・・・」

銀騎士「(この声は・・・・・・いや、そんなはずがない!!)」

魔術師「銀騎士様、ご存知なのですか!?」

―――「ほう。 どうやら、勘違いではなさそうだ」

銀騎士「・・・・・・!?」

銀騎士「(やっぱり、この声・・・・・・っ)」



100:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/24(月) 16:24:41.94 ID:MKJGFZlh0

―――城内 地下牢 特別房


副官と技師は地下牢に辿り着き、牢のカギを技師のピッキングツールで難なく開ける。

その先にいたのは、一人頭を抱え、蹲っている男。 鎖に繋がれているといった様子はない。

技師「こいつが・・・・・・そうなんですか?」

副官「そうだ。 調査隊の先見隊として島に上陸した内の一人。 しかし・・・・・・」

技師「しかし?」

副官「上陸者名簿には、こいつの名前は無いんだ」

技師「偽名を使った・・・・・・」

副官「その可能性はある。 だが、今問題なのは、こいつが一体誰の指示でそんな事をしたのかだ・・・・・・」

囚人「・・・・・・」

副官「おい、起きろ」

囚人「・・・・・・ぅ、・・・・・・ぁ」

副官「さっさと目を醒ませ。 溶かした鉛を喉に流し込まれたいか」

技師「(キャラ変わってるぜ)」

副官「技師さん、薬師の作ってくれた精神安定剤を」

技師「お、おう」

技師は肩から下げた道具入れから薬を取り出し、囚人に投与する。

囚人「あん、たは・・・・・・」

副官「それを知る必要は貴様にはない。 私の質問にだけ答えろ。 いいな」

囚人「お、俺は何も知らない。 本当だ、知らないんだ」

副官「聞こえなかったのか? 私の質問だけに答えろ。 それ以外は口を開くな」

囚人「本当に・・・・・・知らないんだ。 助けてくれ、嘘じゃないんだ」

副官「・・・・・・」

技師「まだ若干錯乱してるな。 もう一本いっときます?」

副官「いえ、これ以上の投与はもう少し様子を見てからにしましょう」



101:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/24(月) 16:26:35.10 ID:MKJGFZlh0

技師「ういっす」

囚人「・・・・・・知らないんだ。 ・・・・・・知らないんだよ」

副官「・・・・・・竜を恐れているようだな? それは何故だ」

囚人「復讐しに来たんだ。 間違いない。 けど、知らないんだ。 本当に」

技師「復讐・・・・・・」

副官「・・・・・・よし、質問を変える。 お前は、何を知らないんだ? 知らないことで、何を恐れているんだ?」

囚人「教えないと、焼かれる。 いや、焼かれた・・・・・・。 家も、家畜も・・・・・・。 けど、知らないんだよ」

副官「・・・・・・竜に焼かれるのか?」

囚人「あの竜が、黒い竜なんだよ・・・・・・全部だ、全部焼いていった」

副官「黒い竜・・・・・・」

囚人「死んだと聞いていたのに・・・・・・」

囚人「どうして、今になって・・・・・・なんで・・・・・・っ」

副官「仕方ない、もう一本安定剤を打ちましょう」

技師「わかった」

狼狽え始めた囚人の首筋に精神安定剤を打ち込む。 すると、直ぐに囚人は落ち着きを見せた。

副官「二年前、調査隊消失事件の際、お前は誰の指示で、何をしに洞窟に行ったんだ? なぜ先見隊は巣穴の調査を率先して行っていた?」

囚人「・・・・・・あの時、私は、魔法陣を解呪しに・・・・・・」

副官「何の魔法陣だ?」

囚人「・・・・・・風景を歪める、幻術・・・・・・」」

副官「やはり、前もってカモフラージュ用の準備がなされていたか・・・・・・」

技師「用意周到だな」

副官「一体、誰の指示でやったんだ。 お前にその命令を下した者の名を言え」

囚人「それは・・・・・・」




司令「それ以上は、私から説明しましょうか。 お二方」



102:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/24(月) 17:20:37.89 ID:MKJGFZlh0

―――深淵の洞窟


淡い光が灯る中、その人影が振るっている“長物”のシルエットが微かに見て取れた。

魔術師「・・・・・・まさか!?」

魔術師「っく、もうこの場所を嗅ぎつけてきたというのかっ!!」

銀騎士「え?」

魔術師「全員!! 銀騎士様を守れ!!」

銀騎士「な、に!?」

魔術師「拘束魔法陣展開!! まずは距離を取れ!!」

銀騎士「(なぜ、魔術師達が僕を守ろうとする!?)」

魔術師「銀騎士様、説明は後で!! この場は・・・・・・がはっ!?」

目の前で魔術師達の体が木の葉の様に舞い上がり・・・・・・吹き飛んでいく。

そして、光源の少ない洞窟内に、ようやくその姿を現した人物。

銀騎士「・・・・・・」

有機的な鎧をまとい、身の丈ほどの槍を構える救国の英雄。

それは・・・・・・。




竜騎士「槍兵、久しぶりだな」




三年前に死んだと言われていた、竜騎士その人だった。

だが、銀騎士は喜びに打ち震える精神を歯を食いしばりながら自制して、警戒心を強める。

目の前の男が本当に自分の知っている竜騎士ならば、自国の人間を傷つけるような真似をしないからだ。

しかし、それでも・・・・・・。

銀騎士「僕が槍兵だった頃を知ってる。 あなたは本当に、あの先輩なんですか?」

竜騎士「先輩? ・・・・・・ふむ。 まぁ、そうだな。 確かに、そう呼ばれていたようだが・・・・・・」

銀騎士「・・・・・・?」

竜騎士「それは正解であって、見当違いでもある。 私は、竜騎士という器に集った集団的無意識に浮上した、指向性をもった存在だ」

銀騎士「(集団的無意識・・・・・・? 指向性?)」

銀騎士「・・・・・・何を、言ってるんです? どうしちゃったんですか先輩!! それより、どうして生きていたなら知らせてくれなかったんですか!! 皆、皆先輩の事を・・・・・・っ」

竜騎士「知らせる? なぜ、その必要がある」

銀騎士「なっ!? なぜって、何ふざけた事言ってるんですか!! いい加減にしてくださいよ!!」

銀騎士「(おかしい、何かが絶対におかしい。 けど、それが何なのかが分からないっ)」

竜騎士「ふざけてなどいない。 いや、それも無理な話か・・・・・・」

銀騎士「・・・・・・っ」

竜騎士「初めにはっきりさせておこう。 お前の知っている竜騎士という男は、既にいない」

銀騎士「・・・・・・言ってる意味が分かりません。 現に、あなたは僕の目の前にいるじゃないですか」

竜騎士「確かに、そう見えるかもしれない。 だが、ここにあるのは竜騎士という名の器に過ぎない」

銀騎士「う、器?」

竜騎士「そうだ。 肉体こそ竜騎士そのものだが、精神は既に全くの別物だ」



103:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/24(月) 17:47:26.02 ID:MKJGFZlh0

竜騎士「・・・・・・三年前」

竜騎士「あの洞窟で起こった、竜の心臓による魔力の暴走の瞬間、爆発の中心部にいた竜騎士という個人は、多数の人間が消滅していく際に生まれた負の感情、精神を、“竜の心臓を持つ者”として吸収していった」

銀騎士「精神を、吸収・・・・・・? いや、それよりも、竜の心臓を持つ物って・・・・・・」

竜騎士「竜騎士とはな。 契約の際、己の身をも竜の化身とする事で、超人的な身体能力を得ることができる。 その不可に耐えられるだけの心臓も、また然り」

竜騎士「そして、精神力とは魔力に最も近い存在であり、相互関係にあるエネルギーでもある」

銀騎士「(それは知っている。 時に、魔力は精神状態によっても左右されるってことは)」

竜騎士「洞窟が崩落する最中、竜騎士は竜を召喚した。 竜ほどの存在を即座に召喚するだけの魔力をどこに用意しておくか・・・・・・。 それは、自分の心臓にほかならない。 召喚した時点で、自分の心臓の魔力貯蓄料は激減した。 加えて、副官であった男を守るために、竜へと精神力を注ぎ込んだ竜騎士の心臓の魔力貯蓄料はゼロ。 まさにその瞬間、竜の心臓は暴走し、ブランクの出来た竜騎士の心臓は、その場で消失していく精神達を受け入れるのに、他とない器となっていた」

銀騎士「そんな・・・・・・そんな話が・・・・・・」

竜騎士「信じられないか? だがこれが事実だ。 多少でも魔力が残っていたら、違った結果が待っていただろうがな」

竜騎士「そして、あの爆発からは竜騎士としての身体能力、身につけていた伝説級の装備品、王より授かった守護の魔石が竜騎士という個人の肉体を守り抜いた」

竜騎士「竜騎士個人の精神は集団で入ってきた意識に上書きされ、埋もれていった・・・・・・」

竜騎士「集団的無意識は、竜騎士の記憶にわずかに残っていた国への、司令という男への不信に触れ、その瞬間、何百もの意識が報復という指向性の元に収束され、集合意識体としての、私が生まれた」

銀騎士「・・・・・・嘘だ。 そんなの、嘘に決まってる!! 全部デタラメだ!! いや、仮に本当だったとしても、どうして今、魔術師たちを手にかけた!?」

竜騎士「私の行動理由は、復讐にある。 消滅させられた命、我々の意志は、そのためだけに行動している。 それ以外にはない」

銀騎士「復讐・・・・・・」

竜騎士「ここにいたのは、司令直属の魔法部隊。 当時不信を抱いた竜騎士同様、調査兵たちも、司令への疑惑、疑念があったのだ。 ならば、その矛先を、自分を殺した者たちに向けるのは、当然の帰結」

銀騎士「だ、だからって、この人達が直接関係があったかなんて・・・・・・」

竜騎士「その点は、些細なことだ。 なにせ、“我々”とて理不尽に殺されたのだ。 理不尽な点には、目を瞑ってもらう」

竜騎士「器となった竜騎士という男は、理不尽を許さない男だ。 そこに、脈絡無く何百もの命が奪われた。 私の中の意志に、竜騎士の本心が含まれていない・・・・・などということはない」

銀騎士「先輩が、人の命を奪うことを、良しとしているというのか!?」

竜騎士「そうだとも。 何なら、まだ息のあるものを、即座に絶命させてみようか。 竜騎士の意識が残っているのなら、私の手も、多少はぶれるはずだ・・・・・・」


竜騎士は手に持った槍を、体を引きずり立ち上がろうとしていた魔術師の一人に向け・・・・・・。

背中から腹にかけて一瞬で貫いた。


銀騎士「やめて下さい先輩!! あなたがこんな事・・・・・・っ」

竜騎士「言っただろう。 これは、私の中にある精神達の総意なんだと」

銀騎士「先輩は違う!! あの人がこんな事望んでいるはずはない」

竜騎士「だとしても、だ。 もはや、個人の意志決定権など、マジョリティの中でささやく赤子のぐずりに等しい。 あきらめろ」

銀騎士「っ、そんなこと、出きるわけないだろ!!」

その瞬間、銀騎士の中でカチリと意識が切り替わった。

それは、一種の覚悟だった。

積み上げてきた戦闘経験からくる、戦わなければならないという、覚悟だった。

竜騎士「ならばここで死ぬか?」

銀騎士「・・・・・・それこそ、御免だ」



104:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/24(月) 18:05:25.69 ID:MKJGFZlh0

―――城内 司令私室


副官「随分と高待遇なのですね。 私室に招かれるとは思いませんでした」

司令「ここなら盗聴の危険性も無い。 私にとっても君たちにとっても都合がいいだろう」

技師「いいんですかねぇ。 護衛の一人でもつけておいたほうがいいんじゃないですか?」

司令「ご忠告はありがたいが、こう見えても昔は武官だったんだ。 君たち二人を相手にしても、早々ひけはとらないよ」

技師「まじっすか・・・・・・」

副官「本当だ。 司令の実力は、隣国からも恐れられるほどだ」

技師「oh・・・・・・」

司令「先も言ったとおり、君たちにはあの話の続きをするために招いたんだ。 身構える必要は無い。 自分の部屋だと思って寛いでくれて構わない」

技師「(無理に決まってるだろ……)」

司令「さて、どこから話したものか・・・・・・」

司令「いや、これもいい機会だ。 はじめから説明しようか」

技師「その前に、どうして俺たちのことを?」

司令「君たちは竜騎士に、そして銀騎士に近しい者たちだからな」

技師「……? それが理由?」

司令「ああ。 そのことも含めて、これから説明しよう」

司令は二人をソファーに座るように手振りで促し、技師と副官はそれに従って腰掛ける。

司令「魔王が勇者によって倒された六年前当時、国の経済状況は表だって見えるものよりも深刻の一途を辿っていた。 国の基盤である鉄鋼業は資源不足、魔物討伐による兵達への給金、遺族への手当。 復興途上の市町村への援助金。 数え出したらきりがない」

司令「魔王は倒れ、平和が訪れたはずの我が国は、戦いの残り火に焼き殺されようとしていたのだ」

司令「王はその事実を出来うる限り秘匿した。 これからを生きようとする民達の未来へと向かおうとする活力を、その様なことを知らせることで失うわけにはいかなかったからだ」

司令「仕事はある。 復興していくだけの財力も国は有していると民達に喧伝し、戦いに疲れきっていた国民は安心することが出来た」

司令「しかし、実際には国の財務官達は寝る暇がないほど・・・・・・いや、城にいる者は皆、寝る間を惜しんで、残り火と戦っていたのだ」

司令「そんな時だった。 一人の男が、城に訪れたのは」

司令「彼の者はこう言った。 “理不尽なまでに奪われた人々の生活を、私にも守らせて欲しい”と」

技師「それが……」

司令「ああ。 それが、あの竜騎士だった」



105:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/24(月) 18:30:32.76 ID:MKJGFZlh0

司令「彼は強かった。 その槍は何百もの敵を屠り、従える竜の火炎は幾千もの敵を焼き付くす」

司令「味方や村が危機に陥った時、竜に跨り颯爽と現れるその姿は、まさに救世主であり、勇者と呼ばれるものと同義の存在だった」

司令「彼の働きは軍団規模の戦力に相当し、機動力も申し分なかった。 国民は彼を英雄視した」

司令「時が経つにつれ、国は次第に彼を頼りとすることも多くなり、彼はその期待通りの・・・・・・いや、期待以上の働きでそれに応えた」

司令「やがて、隣国にまでその噂が広がった頃。 国の抱える一つの議題が上がった」

技師「問題・・・・・・?」

副官「・・・・・・軍隊、ですか?」

司令「そうだ。 軍隊とは、存在しているだけで資金を飲み込んでいく底なしの釜だ。 遠征、食料、訓練、給金・・・・・・。 しかし、それは国を守る存在として機能するために必要不可欠なものだ」

司令「ただ、国の経済状況と竜騎士の存在を机上に並べたとき、軍縮という話が持ち上がるのは必然だった」

司令「もはや、軍に求められていたのは戦闘能力ではなく、復興支援という形での派遣要員だった」

技師「・・・・・・」

司令「それでも構わなかった。 人々の生活を守るという点に関しては何の不満もない。 もとより進んで行うべき事だ」

司令「私が危惧していたのは、たった一人に国の戦闘能力を期待してしまうことだった」

司令「個人に国の保全を期待する事の危険性は十分に承知している。 しかし時は魔王の倒れた新時代。 大規模の軍が必要でないのもまた事実」

司令「大会議で連日連夜、その議題は話し合われた」

副官「・・・・・・」

司令「本来、冷静にならねばならない上層部たちも、国の財政が脳裏を掠めるたび、冷静な判断ができなくなっていたのかもしれない」

司令「竜騎士は強い。 その能力も人格も申し分ない。 だが、それでも彼は人間だ」

司令「彼の一生は戦いばかりではない。 悩むこともあれば葛藤することもある。 絶対に負傷しない、何て事はありえない」

司令「それを支えているものが、君達技師や銀騎士だということも分かっていた。 竜騎士を心身共に癒していたことだろう」

司令「だが、それでも・・・・・・個人に託すには、あまりにも大きるぎる問題」

司令「竜騎士のあまりの強さに、皆その事実から目をそらしていた」

司令「結果、議題は可決され、国の各所で自警団を結成させ、軍隊の規模は大きく縮小し、王国の軍隊に関する話には、一応の決着を見た」

司令「・・・・・・かに見えた」



106:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/24(月) 19:32:24.29 ID:MKJGFZlh0

技師「え?」

司令「技師、君の生きがいは、物造りで間違いないか?」

技師「え、あ、はぁ・・・・・・。 そう、ですね。 何です、いきなり?」

司令「ならば、分かるだろう。 人は皆、拠所を持って生きているのだ。 それが商いであったり、遊びであったり、趣味であったり、酒であったり・・・・・・」

司令「中には当然、戦うことでしか、自分を表現できず、また生活できない者もいる」

司令「大幅な軍縮の煽りを受け、生き甲斐を失くした者たち・・・・・・。 そう時をおかずして、彼らの心に濁りが出来始めるのは時間の問題だった」

司令「竜という存在を魔に属するものとして、それを糾弾するもの。 国の政策そのものに不満を持ち、職務を結託して放棄し始めるもの。 傭兵部隊を独自に結成し、自ら野に下って行くもの・・・・・・」

司令「軍隊に所属していた者に関しては私の管轄であったが、事は、徐々にではあるが私の手から放れつつあった」

技師「何が起こったんですか?」

副官「・・・・・・まさか」

司令「ああ。 そして、事は起こってしまった。 軍内部の反動勢力と、傭兵達とが秘密裏に結託し、竜騎士を含めた調査隊を陥れる作戦を敢行した・・・・・・」

技師「・・・・・・!?」

副官「・・・・・・!?」

司令「合同訓練中の不可解な兵の離脱。 私の名を語った調査隊への支給物資。 先見隊による特殊工作」

司令「結果、我が国は尊い兵たちの命と、一人の英雄を失った」

技師「(それじゃあ、三年前の事件は・・・・・・)」

副官「(この人が画策したことではなかったというのか!?)」

司令「反乱に加担した者達の処理は素早く、しかし迅速に行われ、事が世間に露見する前に手を打つことは出来た。 この事に、王は嘆き悲しんでいたよ」

技師「な、なら、どうして俺達を見張ってたんですか!? それに、竜騎士制度はどうなってるんです!?」

司令「・・・・・・順を追って説明しよう」

司令「謀略という手段をとった者達の処理は確かに、そして確実に行われた。 名を変えようと、野に降ろうと、隠れ潜もうとしても、必ず見つけ出し・・・・・・処刑した」

技師「・・・・・・っ」

司令「ただ、全ての反動勢力を駆逐出来たかは判断できなかった。 だから、二度と同じような過ちが起きないように、私と王は竜騎士という職を無くすように、政治的に動かしたのだ」

副官「・・・・・・」

司令「奴らは竜騎士という存在に対して過敏な反応を見せるからな。 しかし、世論とのバランスも考慮しなくてはならず、中々思うように政策は進まなかったが・・・・・・」

技師「そう、だったんですか・・・・・・」

司令「同時に、竜騎士と関わり合いがあったものに危害が及ばぬように監視を付け、銀騎士には、さらに厳重な監視をつけた」

司令「第二の竜騎士候補ともなれば、隠れ潜んでいる反動勢力が動く可能性があったからな」

技師「それで俺たちに監視がついていたんですね・・・・・・」

司令「そして、話は今地下牢に捉えている男に絡んでくる」



107:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/24(月) 20:06:40.85 ID:MKJGFZlh0

―――深淵の洞窟



瞬きした瞬間、竜騎士の姿は銀騎士の視界から消えた。

銀騎士「っく!?」

僅かな空気の変化と直感を頼りに銀騎士は槍を右に振り仰ぐ。

硬質な音を響かせ、何かに接触した衝撃が掌にはしる。

竜騎士「今のを防ぐか。 腕を上げたようだ」

銀騎士「今のあんたに、そんなこと言われてもうれしくない!」

既に銀騎士の槍が届く範囲に竜騎士の姿はなく、薄暗い洞窟には竜騎士の声だけが響く。

竜騎士「そうか。 そうだろうな。 だが、今の賞賛は、竜騎士の思いが幾分乗っている。 素直に受け取るがいい」

銀騎士「・・・・・・っ。 うるさい!! 大体、あんたはなんでここに来た!! みんなの待つ国ではなく、この洞窟に!!」

竜騎士「活動自体なら、もうかなり前から悟られぬようにしていた。 ここ最近は少々派手に動き回っていたがな。 ここに来たのは、風竜に用があったからだ」

銀騎士「風竜に? ・・・・・・っ!?」

洞窟内に爆音が轟いた。 しかしそれは、爆弾などが炸裂した類ではなく、竜騎士が渾身の脚力を発揮したものだと、銀騎士は刹那に悟った。

銀騎士「ランスっ!?」

竜騎士の持つ武器は伝説の竜槍。
間合いや用途に合わせ、即座に形状を変化させることが出来る、有機的な物質で構成されている。
近接戦には長槍。 突進、騎乗時にはランス。

国王より竜騎士に授けられた世界に二つと無い神器。

銀騎士「(盾で軌道をそらし、すれ違いざまに攻撃を・・・・・・)」

大弓の矢の速度が霞む程の突進で、銀騎士に肉薄する竜騎士。
傾斜をつけて構える銀騎士の盾と、大気の壁を突き破る勢いで繰り出される竜騎士の槍が接触した。


―――瞬間


バキン!!


銀騎士の盾は、高質な音をたてて砕けた。

銀騎士「ぐあぁ!?」

チャリオットに弾き飛ばされるかのように銀騎士の体はきりもみしながら洞窟の壁に激突した。

銀騎士「っぐ、っく・・・・・・」

竜騎士「竜騎士のランスを、その程度の盾でどうにか出来ると思ったか」

銀騎士「(魔力特化の盾とは言っても、物理攻撃に対する防御力だってそこいらの盾よりは何倍もあるのに・・・・・・っ)」

銀騎士「なんて、威力だ・・・・・・がはっ」

竜騎士「ちょうどいい。 先ほどの話の続きだ」

竜騎士「この洞窟には風竜の心臓を貰い受けるつもりできたのだが、どうやら、一足遅かったようだな」

銀騎士「・・・・・・?」

竜騎士「お前が心臓を所持しているのは、先ほどやりとりの最中に確認した。 老いた竜といえど、あふれでる魔力の気配は隠せないからな」

銀騎士「一体、どうする、つもりだ・・・・・・?」



竜騎士「火竜に食わせるのさ」



110:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/25(火) 01:32:57.34 ID:kl7ZZeFx0

―――城内 司令私室



司令「先に教えておくが、三年前に行方不明となり、死亡扱いとなっていた竜騎士が、六日前に姿を現した」

副官「なっ・・・・・・!?」

技師「い、生きてたんですか!?」

司令「生きていた・・・・・・か。 ああ。 確かに彼は生きていた」

副官「な、ならば何故お戻りになられないのですか?」

技師「大爆発の影響で、やばい傷を負ったとか・・・・・・」

司令「いや、報告では五体満足らしい」

技師「よ、よかった・・・・・・」

副官「では、なぜ・・・・・・」

司令「・・・・・・彼は、昔の彼ではない。 自らを陥れた者たちへの復讐を行っているらしいのだ」

技師「ふ、復讐・・・・・・!?」

副官「あの方が・・・・・・」

司令「どこから聞き出したのか、退役し、軍を離れた者たち。 元魔法部隊だった者、そして関係する村を、火竜と共に蹂躙して回っていると報告があり、我々が救助に向かった」

技師「嘘でしょ・・・・・・」

司令「そして、見つけたのがあの錯乱した男だった」

技師「その男は、処刑しなかったんですか? 話じゃ、魔法部隊の先見隊だった男みたいですけど」

司令「唯一竜騎士と相対して生き残っていた男だからな。 詳細な情報を引き出そうと連れてきたわけだ」

司令「地下牢に入れたのは、竜騎士によって襲われたという風潮を流されるわけにはいかなかったからだ」

副官「確かに、あの竜騎士が生きていたという情報だけでも大事なのに、その竜騎士が人を襲っているなど・・・・・・」

技師「正直、信じられないっすね」

司令「私も信じたくはない。 しかし、現実に起きた出来事だ」

技師「・・・・・・こんなこと、銀騎士の奴が知ったら・・・・・・」

司令「だが、ことはそれだけでは終わらなかった。 その事は始まりに過ぎなかったのだ」

技師「どういうことです?」

司令「竜騎士は、我々が管理していた竜を、次々と殺し始めたのだ」



111:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/25(火) 01:55:49.66 ID:kl7ZZeFx0

―――深淵の洞窟




銀騎士「食わせる・・・・・・」

竜騎士「正確には違うが、意味合いとしては同じことだ。 心臓に込められた魔力を、火竜に吸収させる。 だが、竜から竜への魔力継承は、どちらかの竜が死んだときにしか行われない。 一度結晶化してしまうと、それも難しくなってしまう。 心臓は、単なる魔力をため込んだ燃料とかわらなくなるからな」

銀騎士「なん、だと?」

竜騎士「竜騎士の知識は本当に素晴らしい。 次にどう動けば効率がいいのか、直ぐに答えが出せる」

竜騎士「しかし、そうか・・・・・・まさか、そう易々と風竜が自らの心臓を結晶化してしまうとはな。 予想外だった。 それだけ、お前に竜を納得させるだけの何かがあったのか。 それとも、ただのふぬけた竜に成り下がっていたのか・・・・・・」

その竜騎士の言葉に、銀騎士は自分を盟友と言ってくれた・・・・・・誇り高き風竜を侮辱されたことで、激しい怒りが全身を駆け巡り、ボロボロの体を突き動かした。

銀騎士「き、貴様ぁーー!!」

銀騎士は大長槍を突き出すようにして竜騎士に向かって行く。

竜騎士「・・・・・・」 ガキン!!

竜騎士の持っていたランスは瞬く間に槍へと姿を変え、銀騎士の槍を押さえ込む。

銀騎士「・・・・・・っく」

竜騎士「いい突きだ。 悪くない」

銀騎士「火竜は死んだはずだ。 なのに、今更そんなことをして何になる!?」

竜騎士「死んだ? 火竜が? なるほど、どうやら、お前は思い違いをしているようだ」

銀騎士「思い違いだと?」



112:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/25(火) 02:02:56.73 ID:kl7ZZeFx0

―――城内 司令 私室



司令「銀騎士を監視していたもうひとつの理由はそこにある」

司令「初めは反動勢力に狙われないようにと監視していた我々だが、もし万が一、銀騎士が竜に近づいたタイミングで今の竜騎士と相対してしまった場合、最悪殺されてしまう可能性があった」

司令「銀騎士は竜騎士のことを慕っていたと聞いている。 だから、竜騎士に対して戦闘行動を行えず、最悪何もできないまま殺られてしまうと思ったのだ。 竜騎士は銀騎士のことを可愛がっていたようだが、今の彼ならばなんの躊躇もなく、銀騎士の命を奪うだろうからな」



113:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/25(火) 02:12:22.36 ID:kl7ZZeFx0

―――深淵の洞窟



竜騎士「火竜は死んでなどいない。 ずいぶん前から、他の竜からの魔力の供給を受け、今ではその体に国一つ簡単に吹き飛ばせるだけの力を蓄えている」

銀騎士「そんな・・・・・・」

竜騎士「火竜は一時的な仮死状態にあったにすぎない。 瀕死には変わりなかったが、あの程度の爆発で消滅してしまうなら、誰も竜を最強の種族とは思わない。 中でも戦闘能力最強と言われた火竜だぞ。 もちろん、例外はあるが・・・・・・」

銀騎士「(例外・・・・・・魔法部隊の対竜攻撃魔法のことか)」

銀騎士「・・・・・・一体、その火竜で何をするつもりだ」

竜騎士「言っただろう。 我々は、復讐が行動原理だと。 それ以上でも、それ以下でもない。 我々をこのような状況に追いやった事象全てに復讐を果たす」

銀騎士「全て・・・・・・」

竜騎士「すなわち、司令という男を生み出したのは国であり、民であり、時代であり、環境である」

銀騎士「・・・・・・」

竜騎士「ならば、その全てが許せぬとあらば・・・・・・」

銀騎士「まさか・・・・・・」

竜騎士「その全てを、一瞬にして消し飛ばすまで」

銀騎士「火竜で、国を焼くというのか・・・・・・っ!!」

竜騎士「その程度で済ますつもりなら、他の竜を狩り殺して火竜に魔力を充足させたりなどしない」

竜騎士「火竜の身ですら許容を上回るほどの魔力を宿らせ、国の中心部で暴走させる。 その際に生じるエネルギーは、我々が身に受けた・・・・・・洞窟を吹き飛ばした時とは比べるまでもない。 水平線の彼方まで、塵芥残さず無と還るだろう」

銀騎士「(あの時以上の惨状が・・・・・・っ?)」

銀騎士「絶対に、絶対にそんなことはさせない!!」



114:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/25(火) 02:19:39.40 ID:kl7ZZeFx0

銀騎士「はぁっ!!」

銀騎士は大長槍を竜騎士に向けて突き出し、薙ぎ払い、掬い上げ、叩きつけるようにして猛攻する。

それを竜騎士は紙一重で避け、槍で逸らし、距離をとって躱す。

竜騎士「無駄だ。 お前が一番よくわかっているはず。 ただの人間にすぎない身には、竜の加護を受けた竜騎士には決して勝てないことを」

銀騎士「分かっているからって、簡単に受け入れられるか!!」

銀騎士「魔王もいなくなって、やっと前に進み始めた人々の思いが・・・・・・何の罪もない人々が、どうして殺されなくちゃいけないんだ!! 馬鹿げてる。 馬鹿げてる!! それこそ理不尽極まり無いじゃないか!!」

竜騎士「どうして? 理不尽・・・・・・?」

竜騎士「最初に理不尽な行為を始めたのがどちらだ? 理不尽に竜騎士は謀殺されそうになり、その巻き添えで何千人もの我々が死んだ。 ならば、司令が守ろうとしている国や民が理不尽に標的になっても、それは因果応報。 当然の報いとは思えないか?」

竜騎士「同じだけの苦しみを与えるのに、これ以上の方法があるか?」

銀騎士「あんた達の言い分は分かった。 理解も出来た。 けど納得は出来ない! まだ国民は生きていて、計画を俺が耳にした以上、黙って見過ごすなんてこと、出来るわけがない!!」

銀騎士「(こんなの、先輩じゃない!! 俺が憧れ、国民が愛した竜騎士じゃ・・・・・・)」

竜騎士「そうか・・・・・・なら・・・・・・」

銀騎士「・・・・・・っ」

竜騎士「死ね」

攻勢が一気に逆転し、線と点でしか知覚できない竜騎士の攻撃が銀騎士に襲い掛かる。

銀騎士「(くそ、この鎧じゃあ防御力はあってもスピードがっ)」

竜騎士「思案する時間があるのか?」

銀騎士「なっ!?」

竜騎士「胴ががら空きだぞ!!」

銀騎士「しまっ・・・・・・!?」

竜騎士の神速の突きは吸い込まれるようにして銀騎士の胴体に向けられ・・・・・・直前で脇の下を通過した。



115:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/25(火) 02:23:37.74 ID:kl7ZZeFx0

銀騎士「な、なぜ矛先を・・・・・・っ」

竜騎士「・・・・・・単一の意識が、まだ干渉してくるだけの力を持っているのか」

銀騎士「な、に・・・・・・」

竜騎士「存外しぶといものだ。 竜騎士というものは・・・・・・」

銀騎士「まさか、先輩が・・・・・・」

竜騎士「はっ!!」

竜騎士の高速で繰り出された槍が銀騎士の肩を貫く。

銀騎士「がっ! あ、ああ・・・・・・」

竜騎士「ふっ!!」

続けて放たれた竜騎士の回し蹴りが銀騎士の体を横薙ぎに吹き飛ばした。

竜騎士「さぁ、勝負は着いたぞ」

銀騎士「ぐ、ぐあっ・・・・・・」

銀騎士「(先輩が・・・・・・先輩の意識が、まだ・・・・・・)」

竜騎士「終わりだ。 ・・・・・・っ?」


薄暗い洞窟内に、一閃の雷が奔る。


魔術師「・・・・・・逃げて、下さい!!」

竜騎士「まだ息があったか」

魔術師「銀騎士、様!!」

竜騎士「一騎打ちの最中に横槍とは。 野暮な真似をするな」

魔術師「ふっ!!」

魔術師の指先が青白く光り、同時に、銀騎士足元に魔法陣が浮かび上がる。

銀騎士「こ、これは・・・・・・」

魔術師「転送魔法であなたを、ここから逃がします・・・・・・っ」

竜騎士「む!?」

銀騎士「そんな、それじゃああなたも一緒にっ!!」

魔術師「・・・・・・もうこの傷では、私は助かりません」

銀騎士「待て、待ってくれ!!」

竜騎士「そうはさせん!!」

竜騎士は低空を跳躍し、魔術師に向かって槍を向ける。

銀騎士「だ、駄目だ・・・・・・。 そんなの駄目だ!!」

魔術師「後は、頼みますっ」

銀騎士「駄目だぁぁぁぁ!!」

銀騎士の体は青白い光に包まれ、魔法陣を中心に光の柱が立ち昇る。

次の瞬間、その場から銀騎士の姿は消えていた。



116:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/25(火) 02:32:20.84 ID:kl7ZZeFx0

―――郊外の森



銀騎士「こ、ここは・・・・・・」

銀騎士「一体、どうなってしまったんだ・・・・・・」

銀騎士「先輩・・・・・・。 教えて下さいよ。 何が起こってるんですか・・・・・・?」

銀騎士「僕には、もう、何がなんだか・・・・・・」

銀騎士「でも、こうしちゃいられない。 早く、みんなに知らせないと・・・・・・」


竜騎士との戦闘でボロボロになった体を引きずりながら、銀騎士は槍を支えにして森の中をひたすら歩く。


銀騎士「(ここは、一体どこなんだろう・・・・・・)」

銀騎士「(魔術師は、僕を一体どこに転送したんだ・・・・・・?)」

銀騎士「(もしかして、僕を転送している最中に・・・・・・先輩に・・・・・・。 だから、転送座標が・・・・・・)」

銀騎士「っく・・・・・・考えるな。 命懸けで逃がしてくれた事に報いるために、絶対に生きて・・・・・・?」

霞みはじめた視線の先には、幾つかの建物が密集し、煙突から僅かではあるが煙が出ていることが見て取れた。

銀騎士「あ、あれは・・・・・・村・・・・・・か・・・・・・?」

銀騎士「よ、よかっ・・・・・・」

銀騎士「・・・・・・」

肩の傷から血を流しながら、銀騎士はうつ伏せに倒れ、そのまま意識を失った。



117:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/25(火) 03:03:48.31 ID:kl7ZZeFx0

―――城内 医務室。


銀騎士「・・・・・・っ」

薬師「!?」

銀騎士「う、うう・・・・・・」

薬師「銀騎士さん、私が分かりますか?」

銀騎士「・・・・・・薬師、か?」

薬師「はい」

銀騎士「ここは・・・・・・」

薬師「銀騎士さんは、ここから遠く離れた村の外れで発見されて、その後、お城に運ばれたんです」

銀騎士「そう、なんだ・・・・・・」

銀騎士「(村を見つけて、気が抜けたのか・・・・・・その後気絶したのかな」

銀騎士「薬師が看てくれたのか?」

薬師「出きる範囲で、ですけど。 本当に無事で良かった。 満身創痍で運ばれたのを見た時には、心臓が止まるかと思いましたよ」

銀騎士「ははっ、大げさだな」

薬師「大げさじゃありません! 本当に、目の前が真っ暗になりました・・・・・・」

銀騎士「・・・・・・ごめん」

銀騎士「僕も、心臓が止まるかと思ったよ」

銀騎士「竜に会いに行って、いろんなことがあって、現実は濁流のように、僕の理解を待ってくれない」

銀騎士「こうして横になっている今でも、あれが白昼夢だったんじゃないかと、本気で疑いたくなる」



銀騎士「間違いなく、逃れようのない現実だったとしても」



と、銀騎士と薬師が話しているところへ、医務室の扉を開けて技師が入ってきた。

技師「よう、起きたか」

銀騎士「ああ。 なんだか、随分と久しぶりにお前の顔を見た気がするよ」

技師「どうやら、頭もはっきりしているみたいだな。 一時はどうなることかと思ったが・・・・・・」

銀騎士「・・・・・・僕はどれくらい寝ていたんだ?」

技師「三日だ」

銀騎士「三日も・・・・・・」

技師「ああ。 その三日間で、この国が置かれている状況はかなりぶっ飛んだことになってる。 俺たちが探ろうとしてた司令の件も、複雑に絡んでな」

技師「これから、国の関係者を集めて会議を開く。 成り行きで、俺も副官殿も関係者になっちまったから出席する」

銀騎士「・・・・・・僕も行こう」

技師「言うと思ったぜ」

薬師「そんな、今ようやく目が覚めたばかりなのに」

銀騎士「行かなきゃいけないんだ。 あそこで見たことを・・・・・・風竜のいた深淵の洞窟で見たことを、みんなに伝えないと」

薬師「・・・・・・なら、私も付き添います」

技師「(本当なら、あの場に入れるのはまずいだろうけど、三日三晩銀騎士の傍を離れなかったこいつにここで言っても聞かないだろうしな・・・・・・)」

技師「・・・・・・まぁ、一人じゃ危なっかしいしな。 頼むぞ」

薬師「はい」



123:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/09/26(水) 03:02:06.44 ID:OSqaIg9D0

―――城内 会議室


「現在、竜騎士は三年前に爆発を起こした島に駐留しているようです」

「その後に動きはないということか」

「はい。 これまでとはうって変わり、その場を動く気配がありません」

扉の向こうで既に会議は始まっていた。

薬師「銀騎士さん、司令さんの事は・・・・・・」

銀騎士「うん、わかってる」

銀騎士は薬師と技師から、自分達が追っていた司令の件が、誤解だったことを聞いていた。

銀騎士「(だけど、それなら先輩は・・・・・・竜騎士は何のためにっ)」

技師「じゃあ、大丈夫だな」

銀騎士「・・・・・・ああ」

銀騎士は薬師の肩を借りつつ、その扉を押した。

司令「む? 銀騎士・・・・・・起きても大丈夫なのか?」

銀騎士「大丈夫です。 それよりも、私も会議のお話を聞いてもよろしいでしょうか?」

司令「もちろんだ。 何か進言したいことがあったら、遠慮なく言ってくれ。 君は、竜騎士と相対して生き残った当事者なのだから」

銀騎士「・・・・・・はい」

司令「ちなみに、君が竜騎士と出会った時、何か言っていたか?」

銀騎士「・・・・・・言っていました、竜を殺し、魔力を火竜に吸わせ終わったら、国を消し飛ばすと」

司令「国を・・・・・・」

副官「消し飛ばす・・・・・・」

技師「もう、何が何だか・・・・・・」

副官「驚くことが多すぎて、感覚が麻痺してきましたね」

司令「復讐に取り憑かれたが故に導き出した結論、と言ったところか。 その矛先が私だったというのが、やりきれないな」

銀騎士「知って、いたのですか?」

司令「ああ・・・・・・」

副官「魔法部隊の一人が、深淵の洞窟から生還したんだ・・・・・・」

銀騎士「・・・・・・!?」

副官「事切れる前に、君と竜騎士の会話内容を伝えてくれた・・・・・・」

銀騎士「・・・・・・そんな」

司令「・・・・・・」

銀騎士「でも、初めはそうかもしれませんが、それが誤解だったというのが悲しいです」

技師「いや、うちらもガチで疑ってたからな。 なんにも言えないわ」

副官「はい・・・・・・」

銀騎士「う・・・・・・」

司令「そして、今の標的は、国か・・・・・・」

技師「つまりだ。 竜の心臓・・・・・・というより、魔力をめちゃくちゃため込んだ火竜を何とかしないと、あの時の繰り返しになるっていうのか?」

銀騎士「そう、言ってたな。 たぶん、今度はあの時の比じゃないと思う。 何せ、何十体もの竜を狩り続けてため込んだ魔力なんだから・・・・・・」

司令「もしも国の中心で解放などされたら、城が消し飛ぶどころか、国ごと消滅してしまうだろうな」

副官「かといって、あの空を自由自在に動き回る竜の進行を止める手段なんて・・・・・・」



124:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/09/26(水) 03:21:49.11 ID:OSqaIg9D0

一同は溜息をつく。


技師「ま、それはこっちでなんとかしてみるわ」

司令「何か、秘策でもあるのか?」

技師「今はないです。 だが、あてがないわけじゃないんっすよ。 任せてください」

司令「ふむ・・・・・・」

銀騎士「こいつはいい加減に見えて、やることはきっちりこなす男です」

技師「おいおい、いい加減は余計だろ」

司令「そうか・・・・・・。 だが、君一人に全てを任せる訳にもいくまい」

技師「っていうと?」

司令「・・・・・・竜騎士が現在根城にしている場所はわかっているんだ。 ならば、守衛に回るばかりでなく、こちらからうってでることも出来る。 我が軍の総力を挙げて、止めなくてはならないだろう」

銀騎士「・・・・・・っ」

司令「我々が不甲斐ないばかりに今回の不幸は起こってしまった。 悔やんでも悔やみきれん。 しかし、それを野放しにして、なにも知らぬ民が危険にさらされるなど、あってはならないのだ」

司令「私は、司令という職について以来、これほど苦しい決断は初めてだ」

司令「だが、やらねばならぬ事ははっきりしている。 ここで決断を下せぬようであっては、司令である意味がない」


「しかし、魔法部隊の精鋭でさえ太刀打ちできなかったのです。 国中の戦力を回したところで、彼に勝てるかどうか・・・・・・」

「加えて、人に対する手心や加減が一切無い。 我々を魔物と同等に相手取るはず」

「竜騎士相手に戦力を回しすぎては、火竜に対する備えも・・・・・・」


会議室に集まった各々が意見を出し合い、話し合いは進む。


銀騎士「・・・・・・っ」

薬師「銀騎士さん、大丈夫ですか?」

銀騎士「う、うん・・・・・・」

銀騎士「(本当に、先輩を倒す話をしているんだ)」

銀騎士「(救国の英雄を倒す作戦を、僕たちが・・・・・・)」

銀騎士「少し、席を外します」

司令「ああ、君はまだ病み上がりなんだ。 ゆっくりと体を休めるといい」

銀騎士「はい・・・・・・」



125:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/09/26(水) 03:45:07.70 ID:OSqaIg9D0

長く続いた国の命運を決める大会議。竜騎士討伐と国土防衛の問題を前にして、出席者の多くが苦悶の表情をのぞかせていた。

あの竜騎士を本当に倒すのか? 倒せるのか?

竜の中でもっとも攻勢に秀でた火竜を討てるのか?

他国からの援軍を期待してはどうか?



その話し合いは、銀騎士が退出してからも・・・・・・一昼夜続いた・・・・・・。



そして、竜騎士の討伐には船による海上輸送の手段がとられた。

歩兵10000人

騎兵6000人

魔法部隊・・・・・・3000人の、対竜騎士戦装備、及び魔法を備えた混成部隊。

魔法部隊に至っては、竜騎士にも効果が期待できる、対竜種用の魔法を備えている。


現在、火竜が王国へと侵攻する前に、竜騎士の元にたどり着けるか着けないかのタイミング。 部隊が完全に整い次第、かつては王国の英雄であり、国民の希望である竜騎士を打ち倒す部隊は進撃する。


あるものは傷ついた体を休め、あるものは己の本分を果たすために体を動かす。




そして時は流れ、大会議の日から三日が過ぎた・・・・・・。



126:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/09/26(水) 04:22:45.55 ID:OSqaIg9D0

―――工房


技師は銀騎士の体に新しく開発した鎧を装着させながら、新装備の説明をしていた。

そこに、薬師がふらりと現れる。

薬師「兄さん、銀騎士さん・・・・・・」

銀騎士「薬師?」

技師「よう、どうした?」

薬師「何してるんですか?」

技師「ん? 何って・・・・・・。 こいつの新しい装備を調整してるんだが?」

薬師「空飛ぶ乗り物も?」

銀騎士と技師はその時、あまりにも淡々と話す薬師に若干違和感を持っていた。

技師「お、おう。 そっちは、新しいタイプの試作品だな。 鎧にもそれにも、銀騎士が持ってきた“とっておき”を組み込むんだ」

銀騎士「技師、ちょっとここの説明頼む」

技師「おう。 ちょっとまってろ」

薬師「・・・・・・どうして、今そんな鎧が必要なんですか?」

その言葉に、銀騎士と技師の動きが止まる。

銀騎士「・・・・・・」

技師「薬師」

薬師「司令の軍隊が、竜騎士さんを倒しに行くんじゃないんですか? 国から大勢の人を出して、戦いに行くんですよね」

技師「ああ、そうだ」

銀騎士「会議の決定内容は、まだ公表されてなかったはずだけど、誰から聞いたの・・・・・・?」

薬師「副官さんです」

技師「あの人は・・・・・・ったく」

薬師「兄さん?」

技師「いや、あれだぞ。 あとでお前にも教えようとしたんだぞ?」

銀騎士「う、うん。 そうなんだよ。 みんなでマスターのところに集まった時に・・・・・・」

薬師「本当ですか?」

銀騎士「も、もちろん」

技師「あったりまえだろうが」

薬師「それじゃあ、兄さん」

技師「ん?」

薬師「この調合書の書置きは何?」

薬師は一枚の紙切れを取り出す。



127:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/09/26(水) 04:35:16.80 ID:OSqaIg9D0

技師「そ、それは・・・・・・だな」

薬師「この配合で私に作れってこと?」

技師「・・・・・・」

薬師「こんな劇薬にも等しい薬、一体何に使うの? 誰が使うの?」

銀騎士「それは、ね、薬師・・・・・・」



薬師「こんな物、どうしようっていうのよ!?」



その悲鳴にも似た薬師の叫びが、工房内で響いた。


薬師「・・・・・・戦いに行くんですか?」

銀騎士「・・・・・・うん」

薬師「司令さんに任せるだけじゃ、ダメなんですか?」

技師「・・・・・・」

薬師「どうして、竜騎士さんと、銀騎士さんが戦わなきゃいけないんですか?」

薬師「おかしいですよ。 こんなの。 だって、どうして・・・・・・」

薬師「家族みたいに、みんなずっと一緒にいて、マスターのお店でご飯を食べて、竜騎士さんと銀騎士さんが切磋琢磨して、兄さんがおバカなことをして・・・・・・」

薬師「亡くなったって知った時、私たちも、国中の人も、みんな悲しんで・・・・・・」

薬師「生きていると分かったら、今度はこの国の敵になってしまって・・・・・・」

薬師「何なんですか・・・・・・これ、なんなんですか・・・・・・」


次第に涙声になっていく薬師に、銀騎士が口を開く。


銀騎士「僕だって、今の状況が信じられないよ」

銀騎士「あの洞窟で再開して、槍を交えて、本気で僕を殺そうとしてきた」

銀騎士「国を守ることを誇っていた先輩が、あの声と顔で、国を滅ぼそうと言うんだ」

銀騎士「精神はあの人じゃないって分かっていても、そう簡単に割り切れるもんじゃない」

銀騎士「今でも、あの人に貫かれた肩が疼く。 回復魔法と薬師のおかげで、傷口は塞がったはずなのにね」

薬師「・・・・・・」

銀騎士「きっと、魔法部隊や歩兵、騎兵じゃ、勝てないだろう」

薬師「・・・・・・え」

銀騎士「僕には分かる。 あの人の強さや、魔力を吸収した火竜の強さは、もう規格外と言っていいだろう」

銀騎士「司令もわかっているはずなんだ。 僕と同じくらい、先輩のことを理解している人だから」

銀騎士「でも、国を守るのは司令や軍人の仕事だから。 退くことなんて許されない。 もとより、引ける場所なんてないんだ」

銀騎士「それこそ、勇者と呼ばれるほどの存在でなければ・・・・・・先輩を、希代の竜騎士を打倒することなんて、不可能だよ」

薬師「銀騎士さん・・・・・・」



銀騎士「でも、だから、僕が行くんだ」



128:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/09/26(水) 04:52:35.85 ID:OSqaIg9D0

銀騎士「別に、自分の力量を過大評価しているわけじゃない。 けど、今この国であの人を止めることができるのは、僕たちしかいない。 それだけは、確信してる」

銀騎士「それに、僕は一人で戦いに行くんじゃない。 僕と、技師の鎧と、僕を盟友と呼んでくれた風竜の力で戦いに行くんだ」

銀騎士「先輩を、大量殺人者なんかにはさせない。 あの人は、今だって国の英雄なんだ・・・・・・」

銀騎士「だから国はこの戦いが竜騎士に端を発するものだとは口外してないし、火竜の事も、ほとんど触れないまま、国民には避難勧告を出して、遠くに避難させたんだ」

銀騎士「・・・・・・きっとあの人に勝てる可能性は、限りなく低い。 二年の歳月で、僕の力量は上がったけど・・・・・・戦ってみて、実力差がよくわかった」

薬師「・・・・・・」

銀騎士「お願いだ薬師」

薬師「・・・・・・っ」

銀騎士「薬師の作ってくれる薬があれば、薬師の力が加われば、もしかしたら、あの人を乗り越えられるかもしれない」

銀騎士「向こうには何人もの精神が宿っているだろうけど、それが、僕たちの絆より力を生むとは限らない」



銀騎士「なにせ、向こうは即席の意思共有体。 こっちは、生まれた時から運命共同体だ」



薬師「・・・・・・分かり、ました」



薬師「薬は・・・・・・作ります」

銀騎士「薬師・・・・・・ありがとう」

薬師「けど、約束してください」

薬師「絶対、生きて帰ってきてください」

銀騎士「・・・・・・うん。 分かった」

技師「・・・・・・」



129:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/09/26(水) 04:56:48.60 ID:OSqaIg9D0

―――薬師&技師 家




薬師「・・・・・・」

薬師「・・・・・・っ」

薬師「・・・・・・グスっ。 ・・・・・・っ・・・・・・ぅ・・・・・・」

薬草をすりつぶし、薬液を調合しながら薬師は涙を流す。

今、自分の作っている薬は絶大な回復効果を肉体にもたらすが、副作用の反動も回復量に比例してとても危険なシロモノだと、誰よりも理解している。

薬師といえど、簡単に万能薬など作れない。 何の代償もなく、傷を瞬間的に癒すことなど、高位魔法か霊薬でもない限りありえない。

仮にそんな霊薬があったとしても、今手元になければ意味がないし、人の身でそのような物を簡単に作れる高みに到達できるわけもない。


だが、今だけはその高みにすら到れない自分の身が、薬師は情けなかった。


この薬があれば、銀騎士は生きて帰ってくれるかもしれない。

この薬を使えば、銀騎士は帰らぬ人になるかもしれない。

それでも、銀騎士が必要だというのならば手を動かそう。

薬師は止まらぬ涙を拭うことなく、ただ銀騎士のために薬を作る。




皆と同じように戦場に立てない・・・・・・戦うことが出来ない薬師の戦場は、今まさに、己の中にあった。




そして夜が明け、各々が戦いに向けての最終確認を済ませ、戦いの火蓋が切って下ろされようとした頃には、再び世界は夜の闇に包まれようとしていた。




ただ、今宵の月は万物を明るく照らす、今年一番の満月であった。



136:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/26(水) 22:33:20.34 ID:aSWxmIqn0

―――遠方の地 爆心地



   本当に 復讐したいのか

   誰一人 帰ってはこないぞ

   最後には 何も残らない

   全てが終わった後 後には 何も残らない それでも


   それでも 我々は止まらない

   もとより 我々にはもう何もない

   全てが終わっても 我々には何もない。
   
   始めることも これからのことも これまでのことも
   
   全てが終わった我々には 考える必要がない
   

   君たちには この行いに 一点の曇りもないのか
   
   命の尊さは 君たちが一番よく分かっているはずじゃないのか
   
   家族 隣人 友人 恋人のことは顧みないのか
   
   大切な人たちじゃないのか
   
   
   我々は死人だ

   天に昇ることも

   地獄に堕ちることも出来ず

   煉獄にとどまるしかない我々に

   もはや 関わりのあるものなど存在しない

   だが・・・・・・

   器たる竜騎士には まだ常世に未練があると見える

   行動規範は復讐という絶対の位置にあるが 意識だけならば 表層に近く存在してもいいだろう

   耐えられるか 人々への攻勢の姿勢は変わらないまま 個人の精神を維持するなど



   俺は 君たちと精神を共有した

   だから その憤慨も 憎しみも 悲しみも あらゆる負の感情を理解できる

   だが それさえも境界が曖昧なこの身には 対岸で話している世間話を聞くようなものだ

   何も変わらない

   それでも あいつはきっと俺を止めに来る

   その時 あいつの事を 見ていたい

   どれだけ成長したのか

   どうやって俺を倒そうとするのかを
  


   絶対的な実力差を知りながら 再び立ちふさがるというのか



   ああ あいつは来るさ

   俺に似て 一度決めたことを曲げない奴だから



137:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/26(水) 22:53:51.55 ID:aSWxmIqn0

―――工房


技師「新しい鎧は、対魔法防御用の装甲と装備は外してある。 相手はあの人だからな。 魔法を使われるわけじゃないし、結局はデッドウェイトになっちまう」

銀騎士「確かに。 先輩に対抗するなら、速さは重要だ。 無視できない要素だね」

技師「とは言っても、強度を落とすわけにはいかないからな。 厳選した素材と、装甲の組み合わせ方で、既存の鎧よりは断然防御力は上だ」

銀騎士「そうでなきゃ困るってば」

技師「へへ、そうだな」

技師「それと、少し前に遠方の国で知り合った、片腕が義手の鍛冶屋に教授してもらった技術も組み込んでおいた」

銀騎士「へぇ、その人は有名な人なの?」

技師「鍛冶屋としては超一流。 まぁ、俺が教えてもらったのは鍛冶とかそっち方面じゃなくて、義手に使われてた技術だ」

銀騎士「その言いようだと、ただの義手じゃないんだな」

技師「まぁな。 なにせ、発揮できる出力が半端じゃない。 常人の何倍もの力を出せるっていうすげぇ代物だった」

技師「その時に見て聞いて、得た技術を若干アレンジして、鎧の内部フレームに似たような仕組みを組み込んである」

銀騎士「つまり、着るだけで出せる力がアップする鎧ってこと?」

技師「簡単に言えばそうだが。 そう単純なものでもない。 パワーに振り回されたら逆に足かせにしかならないからな」

銀騎士「そうか。 確かにその通りかもしれないね」

技師「まぁ、お前なら大丈夫だろ」

銀騎士「その根拠は?」

技師「なんとなくだ」

銀騎士「だと思ったよ。 にしても、よくそんな技術的な事を、鍛冶屋さんが教えてくれたね」

技師「・・・・・・ああ」

技師「(俺も、お前の役にたちたかったからな・・・・・・。 拝みこんださ)」

銀騎士「・・・・・・技師?」

技師「あ、いや、まあそれと、お前の希望通り、風竜の心臓を鎧に組み込んであるぞ」

銀騎士「ああ、この胸の中心で淡く光ってる部分だね」

銀騎士は鎧の胸部をコンコンと手でノックする。 そこには、風竜より授かった竜の心臓が組み込まれていた。

淡い緑色の光を呼吸するように発しながら、鎧に彫られた溝を通して、全体に魔力を供給している。

技師「そうだ」
 
銀騎士「ありがとう。 託されたのはいいけど、僕だけじゃ、使い道が見つからなかったからね」

技師「ふふん。 当然それだけじゃない。 きっちり、その力が反映されるように作ってある。 まぁ、殆どが魔法部隊からの情報提供を参考にしてるんだけどな。 魔法関係は門外漢だったからよ」

技師「というか、こっちがこの鎧の要だ」

銀騎士「要?」

技師「きっちり、竜騎士の旦那に対抗出来るだけの機能を組み込んでおいたぜ」

銀騎士「え、それって・・・・・・どういう事?」

技師「へへ、まぁ、魔法の要は、“開けゴマ”ってことさ」



138:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/26(水) 23:20:28.62 ID:aSWxmIqn0

技師「魔法が使えないやつでも、呪文さえ唱えれば、仕掛けが動く。 そんな術的仕組みがあるだろ?」

銀騎士「ああ、言ってることは分かるけど」

技師「だから、そんな感じで簡単に作動する術的ギミックが、この鎧には備わってるんだよ」

銀騎士「そ、そうなの? すごいな・・・・・・」

技師「難しくはないから、きっちり覚えろよ」

銀騎士「お、おう」

技師「それと・・・・・・」



技師は新しい技術を組み込んだ鎧と装備の説明を詳しく、しかし簡潔に済ませ、銀騎士に復唱させた。

そして、銀騎士と技師が会話しているところに、遠くから、警笛と遠雷のような砲撃の音が聞こえてきた。


銀騎士「きた・・・・・・」

技師「ああ。 それじゃ、俺は一足先に行ってるぜ。 お前は最終確認して、合図を出したら出撃してくれ」

銀騎士「分かった。 無理はするなよ」

技師「いやいや、どうせ俺にとっては一生に一度あるかないかの見せ所なんだ。 気張ってくるさ」

銀騎士「そうか・・・・・・薬師は?」

技師「あいつは病院で怪我人が出た時のために待機してるってよ」

銀騎士「薬師も、戦っているんだな」

技師「おう。 きっちり薬も作ってくれたようだし。 ちゃんと報いてやらないとな」

銀騎士「その薬、この鎧に・・・・・・」

技師「当然、組み込んでおいた。 この世に二つと無い、銀騎士専用の鎧だ」

銀騎士「そっか・・・・・・。 お前と薬師、そして風竜が力を貸してくれるなら、もう怖いもの無しだな」

技師「・・・・・・頑張れよ、相棒!!」

銀騎士「・・・・・・ああ!!」



139:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/26(水) 23:50:01.93 ID:aSWxmIqn0

―――王国 港



月明かりが照らす海上、それでも尚漆黒にも近い海面状をスレスレに、闇よりも深い体躯の火竜が大翼を広げ、港に高速で飛行してくる。

観測手「火竜急速で接近! 距離、三千!!」

司令「魔法部隊は詠唱開始!! 竜の速さを甘く見るな、すぐに頭上まで来るぞ!!」

技師「遅れました。 状況は?」

副官「見ての通り、目視で確認できる」

司令「低空からの進行か・・・・・・」

副官「対空手段として海上上空に張り巡らせた結界魔法に感づいているのでしょうか・・・・・・」

司令「かもしれん。 一筋縄では行かないと思っていたが、これはこれで好都合だ」

技師「大砲の射程に関係しますからね」

司令「うむ。 よし、各部隊、砲撃開始!!」

副官「砲撃開始!!」

陸戦隊「砲撃開始!! 撃て撃てぇ!!」

技師「よっしゃあ!! いけぇ!!」

海上から高速で接近してくる火竜に向けて、沿岸に配置された大砲が連続して火を噴く。

司令「竜の心臓はあの硬質な鱗の鎧に守られている限り、物理的な衝撃ではまず暴走は起こさない」

司令「まずは火竜を牽制し、可能ならばダメージを蓄積させ、動きを制限させろ!!」

陸戦隊「技師殿!! この大砲はすごいですね!! 今までの大砲とは段違いの射程距離だ!!」

技師「おうよ!! 突貫で作った割にはなかなかだな。 まぁ耐久性に難はあるけど。 それでも、この場を凌ぎきるくらいなら申し分ないだろうさ」

火竜は砲弾の猛攻を意にも介さず直進を続け、砲弾が当たったとしても飛行状態を継続し、速度も維持したまま飛行を続けている。

陸戦隊「な・・・・・・なに!?」

技師「っ!? おいおい、直撃でも駄目か・・・・・・」

その場にいたほとんどの者が驚愕の声を上げる中、技師が声を張り上げる

技師「司令殿!! 普通の砲弾じゃ攻撃は通らねぇ!! プランBだ!!」

司令「うむ! 広域魔法陣展開!!」

司令「同時に耐火結界発動!!」


司令のその声で、城下を含めた城の周りに巨大魔法陣が形成され、頭上数百メートル、広範囲を覆うように防御膜が出現した。


技師「急拵えの拡散弾は十分な弾数が確保できてない。 うまく使ってくださいよ」

副官「任せろ」

副官「定められた砲術師は砲弾を拡散弾に切り替え、通常弾とのタイミングを合わせ、火竜に発射せよ!!」


弾頭を換装したことにより、砲撃の面制圧能力は若干の向上を見せたものの、依然火竜の進行速度に変化はない。



140:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/27(木) 00:00:32.10 ID:ehWE+6VM0

司令「出港した竜騎士討伐部隊はどうなっている」

副官「そ、それが・・・・・・」

司令「どうした?」


一際強い風が、副官と司令の間を通り過ぎた。


副官「全艦、航行不能・・・・・・と」

司令「何!?」

副官「先ほど生還し、報告に来た魔法部隊の一人から連絡が入りました」

司令「続けてくれ」

副官「はい。 竜騎士討伐部隊は航行中に火竜と遭遇。 接敵当初は、甲板からの遠距離攻撃で応戦していたのですが、それをものともせず、火竜は全艦を相手取り・・・・・・」

司令「損害は?」

副官「負傷者は多数でましたが、幸いにも死者は出ませんでした。 ですが、戦闘をした殆どの艦がマストを破壊され、補助動力機関も損傷し、身動きが取れなくなりました」

司令「我が軍の艦艇には、今街を覆いっているようなレベルの強固な防御結界が備わっていたはず。 それも、こ度の戦闘に向け、より強固な術式で組んだものが。 それが易々と突破されたというのか」

副官「防御結界は正常に作用していたようなのですが、あまりに火竜の攻撃力が高すぎたもようです。 現在、乗組員は転送魔法、及び備え付けられていた小型艇で脱出し、帰還を開始しています」

司令「そうか。 死者が出なかったのは結界のおかげか、それとも運が良かったか・・・・・・」

副官「・・・・・・」

司令「ならば、今は火竜の動きに注視する。 帰還を果たした魔法部隊には、こちらの戦列に加わるように手配しろ」

副官「了解しました」



141:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/27(木) 00:05:53.26 ID:ehWE+6VM0

―――王国 港 船上



副船長「船長!! 沖合に出たほとんどが吹き飛んじまいましたよ!!」

船長「構わん!! 残った戦力だけでも船に載せろ!!」

副船長「・・・・・・!? せ、船長!! 海上が・・・・・・」

船長「何!?」

急速に港付近まで接近した火竜の吐く火炎は、港を覆うように海上に火柱の壁を作り上げた。

副船長「これじゃあ、一隻も港から出られませんぜ」

船長「っく・・・・・・討伐部隊の救出も増援も、沖に出ることさえ出来ねぇじゃねぇかっ」



142:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/27(木) 00:19:26.12 ID:ehWE+6VM0

―――王国 広場




副官「司令、上を!!」

副官の声と同時に、王国を照らしていた月明かりが僅かに陰り、続いて吹き荒れる突風が、何を意味しているものかを瞬時に司令は悟る。

司令「着たか、火竜よ・・・・・・」

数々の苦難を竜騎士と共に救ってくれた火竜が、今宵は魔王を凌ぐほどの驚異となって、王国をはるか上空より見下ろしている。

上空に現れた火竜は一度大きく咆哮をあげ、聴く者の腹の底まで震わせ、まさしく恐怖の象徴としてその場に停滞していた。

数々の砲弾をものともせず、対竜攻撃魔法は暴走を誘発するおそれから使うことは出来ない。

火竜は高みからアギトの内に蓄えた火球を連続して地に向けて放ち始める。

防御結界が効果を薄めているとしても、その威力は着弾時に余裕で家屋を吹き飛ばすものだった。

技師「やっぱり、一筋縄じゃいかないな」

技師「まずは、動きを止めねぇと・・・・・・っ」

司令や技師たちがいる付近に火球が着弾し、地面を抉り、瓦礫が宙を舞う。

技師「司令!! 閃光魔法だ!!」

司令「む、行けるのか!?」

技師「もちろんだ!! こっちの最高戦力のお披露目と行きましょうぜ!!」

司令「よし! 閃光魔法、上空に向けて放て!!」

司令が指示を飛ばす。 魔法部隊が上空に連続して閃光魔法を打ち上げ、月の光が霞むほどに空を照らし上げる。

上空を旋回していた火竜もそのせいで若干挙動がブレるが、即座に立て直した。

しかし、それは火竜への牽制などではなく。





まさに、出撃への発光信号だった。



143:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/27(木) 02:45:04.08 ID:ehWE+6VM0

―――工房 数分前



技師「いいか銀騎士。 これはグライダーとオーニソプターの複合機だ。 グライダー形態の時は、お前がこの機体と接触している時に限り、風竜の魔力が流入して、機体各所のノズルから風の魔法を発生させ、高速飛行形態になる」

技師「そうじゃない時は、基本オーニソプター形態だ。 自前の動力だと、それで精一杯でな」

技師「つまりだ。 こいつはお前にしか扱えない。 お前とこの機体が一体になった時だけ、最高のスぺックを引き出せる」

技師「こいつは、お前だけの乗り物。 お前にしか扱えないハリボテの竜だ」



―――工房



銀騎士は機体の背に乗り、突き出したグリップを掴む。

すると、鎧の溝、エネルギーラインを通して魔力が機体に流れ込み、充填されていく。


銀騎士「(ハリボテだなんて、ひどい愛称だ)」

銀騎士「(まぁ、でも何か逆に、愛着があるか・・・・・・)」

銀騎士「さぁ。行こう、ハリボテ」


ハリボテと呼ばれた機械仕掛けの竜は各部を稼働させ、その軋みがまるで鳴き声のように、工房内に響いた。


銀騎士「(あの人も・・・・・・先輩も、きっと自分と戦ってるんだ」

銀騎士「(もしも、先輩が本気で国を潰そうと考えていたら、今頃出航していた船は壊され、国の中心に到達した竜は間髪を入れずに魔力を暴走させていたはず。 そうじゃないってことは、やっぱり、精神を上書きしようとしている集合体の枷が外れ掛かっているのかもしれない)」

銀騎士「(薄々は感じていた。 あの洞窟での戦闘だって、もしも先輩が本気で相手をしていたら、今頃僕は生きてはいなかった)」

銀騎士「(あの槍は、僕の胸を貫いていただろうし・・・・・・)」

銀騎士「(今、魔力の暴走によって吹き飛んでしまった島にいるというのも、克服されつつある精神体が、その地に竜騎士の器(肉体)を置くこととで、未だに彷徨う残留思念を取り込み、支配を強めるためではないか・・・・・・)」

銀騎士「(しかし、その残留思念でも無限に存在するわけじゃない)」

銀騎士「(吸収できる量に限りが見え始めたから、竜騎士本体の精神である先輩の意思がある程度利いて、竜を押さえてくれくているんだと、そう思いたい」

銀騎士「(真意の程はわからない。 けど、そう思いたい)」

銀騎士「(あの人の意思は、簡単に飲み込まれてしまうほど、やわじゃないって・・・・・・)」


工房の正面ゲートが開き、工房内には機体の翼から発生する突風が吹き荒れる。

同時に、空が一面閃光に覆い尽くされた。




銀騎士「・・・・・・飛べ!!」



144:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/27(木) 02:54:16.75 ID:ehWE+6VM0

その日の月明かりが一段と明るかったことを、人々は覚えている。

破壊をもたらす漆黒の竜を照らし、瓦礫が空高く舞い上がる深夜。

家族を守るため、隣人を守るため、国民を守るため、国民の財産を守るため、人々は魔王軍が闊歩していた時代の様に、今一度団結し、己が本分を全うしようと動き続ける。

その時、空が昼間のように明るくなる。

魔法部隊の閃光魔法だということを知らない人々は、驚き、戸惑う。

竜に動きがあったのか、それとも、三年前のような悲劇が起こったのか・・・・・・。

人々は手を止め、足を止め、一瞬だけ空を仰ぎみた。

そして、その時誰もが竜を目撃した。



漆黒の竜と対をなす、白銀の竜の姿を。



145:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/27(木) 03:06:29.00 ID:ehWE+6VM0

閃光によって一瞬怯んだ火竜は銀騎士の姿を視界に収め、岩塊程もある大きさの火球を連続して吐き出す。

銀騎士は白銀の竜に継続して魔力を送り、呼応して白銀の翼から強烈な風の魔力が推進力として発生し、迫りくる火球を振り切る。

火竜はその場で停滞したまま銀騎士の様子を探る。

その姿、警戒していることは誰の目にも明らかだった。

銀騎士は火竜を中心にして大回りに旋回し、背の高い時計塔が火竜との間に入り、火竜の視界から一瞬だけ隠れた。




そして、次に時計塔の影から姿を現した時、銀騎士の姿は白銀の竜の背中から消えていた。




銀騎士「いっ・・・・・・」

火竜が即座に銀騎士の姿を捉えた時、銀騎士は時計塔の上に立ち、火竜をその目で射抜くように睨みつけていた。

銀騎士の手には白銀の大長槍。

鎧に組み込まれた風竜の心臓からエネルギーラインを通して槍に魔力が注ぎ込まれる。

片手に槍を持ち、上半身を弓の様に引き絞り、体は投擲体勢に入る。

銀騎士「けぇぇーーー!!!!」

渾身の力で投擲された槍は一直線に火竜に向かって飛んでいく。

火竜がその脅威を察して回避行動をとろうとした。 瞬間、大長槍に込められた魔力が風の魔法となって石突から間欠泉の如く吹き荒れ、刹那の時をおかずしてその速度は音速を超えた。

槍は速度を保ったまま火竜の翼を突き抜け、わずかにその動きがブレた。




その一瞬の動きを、司令は見逃さなかった。



司令「捕縛術式弾頭! ってぇぇぇ!!」

命令が下った瞬間、町中に用意されていた特殊砲台、技師謹製魔法投射装置が起動した。



146:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/27(木) 03:17:32.67 ID:ehWE+6VM0

間断なくほぼ同時に放たれる捕縛魔法の込められた魔石弾頭の砲弾の数、延べ77発。

月明かり光る大空を多い尽くす程のその攻勢。

されど、彼の竜騎士に仕えた火竜の実力はさらにその上をいく。

技師「(昔、旅先で出会った魔法使いの持っていた魔法を放つクロスボウを参考に作ったが・・・・・・)」

技師「(あれに比べたら全然サイズは大きくなっちまったが、今はこれで機能してるんだから、良しとするぜ!)」

技師は上空を睨みつけるようにして見る。

ほとんど躱すスペースなど無いかのように見えた砲弾の暴風雨を、翼や尻尾の反動で巧みに宙を泳ぎ、紙一重でかわしていく。

だが、神業の如く躱しつづけたその巨躯が貫かれた翼を動かした一瞬、体勢を崩した。

そして、火竜の足首に砲弾の一発が命中し、雷の鎖が発射した砲口と竜をつなぎ止める。

司令「よし! 防御結界魔法陣停止!! 魔力を温存しろ!!」

動きを急激に制限された火竜の身に砲弾は次々と着弾し、瞬く間に火竜の全身に拘束魔法が掛かる。

司令「続いて凍結魔法詠唱開始!! 砲術士は凍結魔法弾に換装!!」

指示が飛んでいる最中にも、拘束していた火竜の体から光が漏れ始める。

副官「(暴走が始まる・・・・・・っ!?)」

司令「合図を待つ必要はない! 各々、準備が出来次第撃て!!」

次々と放たれる極低温魔法の嵐。

並の生物なら、生命活動が鈍るどころか停止してしまうほどの波状攻撃。

しかし、相手は炎の化身である火竜。 表皮に接触した瞬間相殺して消滅するばかりの凍結魔法は焼け石に水のように見えた。

司令「怯むな!! 攻撃の手を休めるな!!魔力を大量に取り込んだ火竜といえど、世の理を超越していることなどありえない」

司令「万物、低温の環境下では生命活動は鈍り、あらゆる運動は停滞する。 それは火竜と言えど例外ではない!! それは、魔力も然り!!」

司令「暴走することによって破壊をもたらすプラスのエネルギーに唯一干渉せず、効果を発揮できるマイナスのエネルギーを持つ凍結魔法ならば、暴走を促す恐れはない!!」

司令「魔法部隊よ、お前達は国防の要である!! その命、民を守るため、民の財産たる家を守るため、民を基盤とする国を守るため、今こそ本分を果たす時ぞ!!」

攻勢の勢いは司令の鼓舞によってさらに増し、徐々にではあるが、火竜の表皮に効果が及び始める。

翼の表面には霜の次にガラスのような氷が張り始め、続いて鞭のようにしなる尾が凍結していく。

咆哮と轟火を吐き出していたアギトも動きが鈍くなり、炎の熱が失われた瞬間、頭部を覆うようにして幾重もの氷塊が生まれ、完全に密閉される。

僅かに光を放っていた胴体部も集中的な魔法と砲弾の集中攻撃によって氷結していく。

やがて、町中から聞こえていた魔法の発生音と砲撃音が鳴り止む。

場の空気が文字通り凍り付くほどの静寂が訪れた。




巨大な氷によって封じられた火竜を目の前にして・・・・・・。



147:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/27(木) 03:27:00.94 ID:ehWE+6VM0

司令「これより、火竜の封印作業を始める。 魔法部隊は陣型を組み直し、所定の位置に」

技師「・・・・・・やりましたね」

司令「うむ。 これも、君や銀騎士がいてくれたおかげだ。 私たちは、ただ整えられた環境で作戦通りに動いたにすぎない」

技師「いやいや。 それが出来る立場にあるのも、寸分違わぬタイミングで指揮をするのも、あなただから出来たことですよ」

技師「それに、俺も銀騎士も、自分出来ることをやったまで。 ここで戦っている皆と、何ら代わりはないっすよ」

司令「・・・・・・そうか。 そうだな」

司令「銀騎士は?」

技師「あいつならもう行きましたよ」

司令「・・・・・・結局、我々は彼に頼ってしまうことになるのか。 これでは、竜騎士の時に犯してしまった愚考の繰り返しだ。 彼一人に希望を託し、心身を疲弊させてしまう」

技師「・・・・・・けど、今度は大丈夫でしょう」

司令「・・・・・・」

技師「あいつはちゃんと、自分に出来る事と出来ないことを弁えてます。 それに・・・・・・」

司令「それに?」

技師「あいつは、国のため云々というより、一人の男として・・・・・・友として戦いに行ったんです」

司令「一人の男として・・・・・・か」

技師「俺たちは、俺たちに出来る事をやりましょう」



148:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/27(木) 03:36:08.83 ID:ehWE+6VM0

―――遠方の地 爆心地



銀騎士は眼下の草原に突き出ていた小岩に腰掛けていた竜騎士を見つけ、白銀の竜から飛び降りた。




銀騎士「・・・・・・先輩」

竜騎士「その竜は・・・・・・そうか、技師の発明品か」

銀騎士「はい。 あれが、僕の竜です」

竜騎士「・・・・・・見事なものだ。 技師の作か。 やはり、あいつは天才だったな」

銀騎士「この鎧も、槍もそうです。 銀騎士という称号も、元はと言えば、あいつが作った銀色の鎧があったからこそです」

竜騎士「お前たちは、相変わらずいいコンビだな」

銀騎士「ええ。 自慢の相棒です」

竜騎士「・・・・・・そうか」

銀騎士「もう、戻れないんですか?」

竜騎士「・・・・・・ああ。 無理だ」

銀騎士「けど、あなたは確かにそこにいるじゃないですか」

銀騎士「それは、自分を取り戻し始めているからじゃないんですか?」

竜騎士「よく、解ったな」

銀騎士「っ!? なら・・・・・・っ!!」

竜騎士「・・・・・・だた、未だに自分の中の境界が曖昧なんだ」

銀騎士「・・・・・・」

竜騎士「善悪の区別も、意識の境目も・・・・・・感情の起伏も・・・・・・何もかも・・・・・・」

竜騎士「何が正しいのか、自分が何をしてるのかさえも、大きなうねりの中に飲み込まれていく」

竜騎士「笑ってくれ。 意志の強さが俺の自慢だったんだが、この様だ」

銀騎士「何人もの意識を吸収してしまえば、仕方がないですよ・・・・・・」

竜騎士「はは。 まぁ、実はもう同化しつつある。 いや、もはや同一の個体だといっても、過言ではないかもしれない」

竜騎士「今こうして竜騎士として話していられるのも、元となった器が、竜騎士のモノだからだと思う」

銀騎士「そう、ですか・・・・・・」

竜騎士「もしかしたら、それは今だけで、この先再び俺の意思が霞のように消えていくかもしれない」

竜騎士「本当に、今の俺は危うい天秤の上に自分の精神と、俺の体に宿る集合意識達を乗せているんだ」

竜騎士「だから、こうしてお前と話せてよかった。 ひょっとしたら、それももう出来なくなるかもしれないからな」

銀騎士「先輩・・・・・・」

竜騎士「なぁ、姫様は、お元気か?」

銀騎士「・・・・・・はい。 先輩が三年前に行方不明となってからずっと・・・・・・。 帰りを、ずっと待ってますよ」

銀騎士「先輩が死んだと知らされた当初は、心労に倒れ、床に伏していたと聞きます」

銀騎士「しかし、今ではお心を強く持ち、あなたが守ってきた国を守るために、日夜努力していると聞きます」

銀騎士「常に口にするそうです。 “殿方に守られるに値するだけの女になる為、日々修練です”と」

竜騎士「そうか・・・・・・本当に、申し訳ないことをした」

銀騎士「本当ですよ。 あんな美人をほったらかして・・・・・・」

竜騎士「・・・・・・だな」



149:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/27(木) 03:47:39.02 ID:ehWE+6VM0

竜騎士「さぁ、もうそろそろはじめよう。 お互い、その為にこの場にいるんだ」

竜騎士「俺を止めてくれるのは、お前だって、信じてるよ」


竜騎士は手にした槍をくるりと回し、銀騎士にその矛先を向ける。


銀騎士「(先輩・・・・・・竜騎士相手に、様子見や出し惜しみなんて必要ない)」

銀騎士「(そんな余裕はないんだ。 それに、この人の戦闘技術は、身近で嫌というほど見てきたんだ)」

銀騎士「(最初から全力で。 持ちうる手は、全て使う)」

銀騎士「(僕が・・・・・・僕たちが勝つには、それしかないんだから)」


草原に立つ二人を月明かりが照らし出す。


銀騎士「行きます!!」

竜騎士「来い!!」

銀騎士「(出し惜しみはしない・・・・・・っ!!)」

銀騎士「我が盟友、風竜よ。 その力、今ここで借り受ける!!」

竜騎士「な、に・・・・・・っく!?」


銀騎士の鎧の各所から、膨大な量の風が巻き起こる。 それは旋風の比ではなく、暴風圏内の台風並みの風量だった。




―――技師「いいか、この鎧に俺が新たに組み込んだ仕掛けは二つ。 一つは――――――」




銀騎士「ブースト!!」

竜騎士「っく!?」

銀騎士の鎧の背部が稼動し、一瞬にして溜め込まれた風の魔法が爆発的に放出され、銀騎士の体を急加速させる。

瞬く間に竜騎士へと隣接した銀騎士は竜騎士の体を一歩分だけ追い越し、地に足を付け、勢いを利用したまま反転し、槍を横薙ぎに払う。

その攻撃を、竜騎士は槍を縦に構えて防いだ。

竜騎士「・・・・・・初めから刺突を繰り出していれば、俺の心臓を吹き飛ばしていたんじゃないか?」

銀騎士「かもしれません。 ただ、僕も初めて使ったんです。 正直、これほどとは思っていませんでした」

銀騎士「勢い余って、すれ違ってしまったんですよ」

竜騎士「圧縮した風を放出しての緊急加速。 風竜の力か・・・・・・」

銀騎士「・・・・・・っ」

竜騎士「しかし、肉体にも相当な負荷をかけるようだな」

銀騎士「みたいですね。 たった一度の発動で、体中が軋みますよ」

銀騎士「・・・・・・でも、その程度でよかった。 我慢できないほどじゃ、ありませんから」

竜騎士「そうか・・・・・・」


竜騎士は槍を振り払い、大きく距離をとった。


竜騎士「なら、次は俺の番だな」

竜騎士「竜騎士の力。 お前が憧れた力、その目に焼き付けろ」

銀騎士「(何言ってるんですか、焼きついてますよ。 ずっと、ずっと前から・・・・・・)」



150:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/27(木) 04:04:38.85 ID:ehWE+6VM0

地を抉るような脚力で接近してきた竜騎士の攻撃を銀騎士は紙一重で捌く。

連撃は止まらず、その手数は槍の扱いに長けた銀騎士の手をもってしても、僅かに押され続けていた。

銀騎士「っく、目では追えるのに・・・・・・っ」

竜騎士「反応速度が遅いぞ!!」

竜騎士は銀騎士とすれ違いざまに距離を取り、槍をランスに一瞬で変形させ、急速に突進してきた。

銀騎士「ぐ、っく・・・・・・!!」

銀騎士の鎧から強烈な風圧が竜騎士の突き出すランスを押しのけるように干渉する。

竜騎士「む!?」

竜騎士は銀騎士の横を轍を残しながら擦れ違い、若干の距離をとって停止する。

竜騎士「風でランスの軌道を空したか・・・・・・自動的防御まで働くとは、ますます見事」

銀騎士「ええ。 それでも、あまり関係ないようでしたが」

銀騎士の腕部を覆っていた装甲に僅かなヒビが入る。

銀騎士「(今のは、技師の付けてくれた機能というより、鎧自体が勝手に反応した・・・・・・まさか!?)」

銀騎士は胸部にある風竜の心臓に手を添える。

銀騎士「(風竜・・・・・・ありがとう)」

銀騎士「さすが、竜騎士の脚力から生み出される突進力は、馬上のそれよりも凄まじいです・・・・・・」

竜騎士「その攻撃を捌いてみせたじゃないか。 そうそう出来る者はいないぞ。 本当に、強くなったな」

銀騎士「ええ。 なにせ、目標が高すぎるもので・・・・・・」

竜騎士「フッ・・・・・・そうだな」


竜騎士が呟いた刹那、その姿が消えた。


銀騎士「速い・・・・・・っ!?」

竜騎士「はっ!!」

銀騎士「な、蹴り!? ・・・・・・っが!?」

回し蹴りを近距離で受けた銀騎士の体が吹き飛び、大岩に激突する。

竜騎士「ギリギリで後ろに飛んだようだが、多少は威力が半減したか」



銀騎士「ええ、それでも、大砲を近距離から撃ち込まれたみたいです・・・・・・がはっ」



銀騎士の口から、僅かに血が滴った。



151:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/27(木) 04:23:56.20 ID:ehWE+6VM0

銀騎士「(強い。 分かっていたことだけど、本当に強い)」

銀騎士「(槍も・・・・・・ランスの扱いも・・・・・・)」

竜騎士「どうした? 槍の扱いには、私は一目置いていたんだぞ?」

銀騎士「・・・・・・まだまだ、ですよ。 まだ、これからです」

竜騎士「そうこなくては・・・・・・な」


銀騎士は身を起こし、再び槍を構える。


銀騎士「何度でも、何度でも立ちますよ!!」

銀騎士「ブースト!!」

竜騎士「・・・・・・っ」

銀騎士「突進速度だけなら、こっちも負けてないでしょうからね!!」


銀騎士の槍が竜騎士に当たる直前、再び竜騎士はその姿を消す。


しかし、僅かにその瞬間の動きは銀騎士に見えていた。


銀騎士「上!!」


竜騎士の代名詞とも言える、上空からの落下攻撃。

銀騎士が空を見上げた時には、既にその態勢に入っていた。

銀騎士「ブースト!!」

緊急加速でその場から離れようとした瞬間、その隙を狙った竜騎士の攻撃が銀騎士の頭上へと繰り出された。

その攻撃をギリギリで回避した銀騎士だったが、落下時の衝撃で大きく吹き飛ばされた。

銀騎士「っぐあっ!!」

竜騎士「高高度からの落下攻撃が、竜騎士の真骨頂だ」

銀騎士「はっ、はっ、っぐ・・・・・・もちろん、知ってますよ」

銀騎士「(それを傍から見ているのと、実際に自分が喰らうのとでは全く違うな)」

銀騎士「(一瞬で視界から消え、こちらの動きを補足したまま、上空から自由に起動を変えて落下してくる・・・・・・)」

銀騎士「・・・・・・が、は」

銀騎士「(落下時の衝撃波だけで、このざまか・・・・・・)」

銀騎士「直撃したら、ただじゃすまないな・・・・・・」

竜騎士「しかし、さすがだな。 本当なら、今の一撃で勝負は終わっていた。 間違いなく、全身を破壊したと思ったが・・・・・・」

銀騎士「今も、体がバラバラになるくらい痛いですよ・・・・・・」

竜騎士「減らず口がたたけるなら、まだまだ余裕だな・・・・・・」

銀騎士「もちろん、ですよ」

銀騎士「(正直、こんなのを何度も躱し続けられるとは思えない・・・・・・)」

銀騎士「(緊急加速は使わなくても、四肢の動きに鎧と風竜のパワーアシストがあってこそ、ここまで渡り合えたんだ)」

銀騎士「(それも、体の方がこの後ももてばの話だけど・・・・・・)」

銀騎士「・・・・・・なんて、ね」

竜騎士「?」

銀騎士「(弱音なんて吐いてられない。 みんな、自分の戦場で戦っているんだっ)」

銀騎士「いきます・・・・・・っ!!」



152:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/27(木) 04:45:34.61 ID:ehWE+6VM0

銀騎士は風竜の力を使った緊急加速を連続して使い、その急激な切り返しを利用して高速の連続攻撃を仕掛ける。

槍の扱いに長けた銀騎士の槍さばきと動きは、鎧に組み込まれたパワーアシストと、風竜の力を利用した身のこなしで、常人では目で追うことさえ不可能な攻勢を実現していた。

その負担は確実に、それも秒単位で銀騎士の体を蝕んでいくが、ここにきて銀騎士はそんな事は一切気にもとめていなかった。


尽くせる手は全て尽くす。 その先に、自分がどうなっていようとも・・・・・・。


その攻撃を竜騎士は紙一重の動きで槍で受け、類希なる戦闘センスと動体視力で見極め、竜の加護を受けた身体能力で捌いていく。

銀騎士の行うすべての動作に対して集中し、最善最良の動きを実現させていく。

もはや、傍から見ているものには残像を追うことすら難しい攻防が、そこで繰り広げられていた。

しかし、それも長くは続かない。

僅かに体制を崩された銀騎士の体に、竜騎士の回し蹴りが炸裂した。

銀騎士「ぐ、っく・・・・・・」

竜騎士「終わりにするぞ!! 銀騎士!!」

吹き飛ばされた銀騎士を尻目に、竜騎士は一瞬にしてはるか上空まで飛び上がる。

そして、竜騎士はその身を炎で包む。

竜騎士「火竜と契約した者のみが使える竜騎士の奥義、その身で受けよ!!」



153:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/27(木) 05:06:48.16 ID:ehWE+6VM0

その光景を見て、銀騎士は意識を一瞬で切り替えた。


銀騎士「(ここだ!! 決めに行くなら、ここしかない!!)」

銀騎士「(竜騎士のジャンプはその威力と性質上、落着した際に、一瞬の隙ができるはず)」

銀騎士「(例え片腕を失ってでも、初撃を躱し、着地時の硬直を狙う)」

銀騎士「(そこに、勝機を見出すしかない!!)」

銀騎士「来い!!」

銀騎士「(上空で軌道修正出来る以上、直前まで引きつけて、ギリギリで・・・・・・)」

銀騎士「(いや、それは衝撃波をモロに喰らう・・・・・・)」

銀騎士「(・・・・・・違う。どの道、躱すってなれば紙一重でしか無理なんだ)」

銀騎士「(・・・・・・喰らって、耐える。 耐え切って・・・・・・ここで勝負を決める!!)」


銀騎士「風竜よ、白銀の鎧よ!! 俺に、女神の前髪を掴ませてくれ!!」


竜騎士が炎を纏い急速に落下する。

銀騎士は緊急加速を小刻みに使い、竜騎士の攻撃から僅かな距離を保って直撃をかわした。

隕石が落着するかのような衝撃波と爆音が周囲に広がり、その中心地にいた銀騎士はそれだけで、大きなダメージを負う。

風の守りと堅牢な装甲を持つ鎧を強引に押し通してきた衝撃に、銀騎士は一瞬意識を手放す。

・・・・・・が、その目が落着を捉えた瞬間、即座に我に返った。

銀騎士「・・・・・・が、あぁ、ぎっ」

銀騎士「(い、いっけぇぇぇぇ!!)」

銀騎士は槍を爆煙と土煙が舞い上がる落下地点に向けて突き出した。

そして、銀騎士の鎧が風を噴出し、場に残り続ける煙を吹き飛ばす。

そこには、竜騎士の姿はなかった。

銀騎士「い、いない!?」

銀騎士「(どこだ!?)」

竜騎士「残念だったな。 銀騎士よ」

銀騎士「な・・・・・・っ」



その時、頭上から聞こえた声に、銀騎士は戦慄した。


竜騎士「終わりだ」


銀騎士の体を図ることの出来ない程の強大な衝撃が突き抜けた。

銀騎士の体が、遥か上空に吹き飛ばされ・・・・・・大地に落下した。

銀騎士「・・・・・・ぅ、ぁ、ぁ」

竜騎士「竜騎士のジャンプが、連続して行えないなどという通りはない」

銀騎士「・・・・・・そ、ん、な」

竜騎士「何回でも、何十回でも連続で行えるからこそ、他の追随を許さぬ強さを誇っているんだ」

銀騎士「・・・・・・ぐ、っく、ぅ」

竜騎士「本当に、よくやった。 ここまで私と戦えるものなど、人間界問わず、魔界にすらそうはいないだろう」

竜騎士「お前は強かった。 我が生涯潰えるその時まで、覚えておこう」



154:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/27(木) 05:20:54.79 ID:ehWE+6VM0

―――王国 広場




司令「・・・・・・」

技師「どうしたんすか司令殿?」

司令「封印魔法の進行が、想定よりも遅れている。 ・・・・・・いや、停滞し始めている」

技師「なんですって!?」

司令「想像以上に火竜が魔力を内包しているせいもあるが、火竜の封印魔法に対する抵抗力が強すぎる」

技師「け、けどよ・・・・・・封印作業自体は進んでるんだよな? 魔法使い達だって、玉の汗をかきながらずっと魔力を流し続けてるんだから」

司令「・・・・・・」

技師「今、封印作業の行程は何割くらいなんすか?」

司令「・・・・・・2割だ」


技師「・・・・・・っ!?」


技師「そ、それじゃあもっと凍結弾を打ち込んで時間を・・・・・・」

副官「もう・・・・・・すべて撃ち尽くした。 弾数的にも、ギリギリのところだったのだ」

技師「じゃ、じゃあ魔法部隊でもういっちょ凍結魔法を放てばっ!」

司令「それも平行してやっている。 現在、我が軍の殆どの魔法使いが、全力で凍結魔法を放ち、封印術式を組んでいる」

副官「それで、この進行度なんだ」

技師「ま、まじっすか」

副官「我々も、何重に作戦を練ったはずだった。 自身に取り付いた氷を融解させるために現在も火竜は魔力を消費し続けている」

副官「そうやって徐々に火竜の魔力を減衰させ、封印作業を進める作戦だったが、あまりにも蓄えられた魔力が多すぎる」

技師「・・・・・・くそっ」

司令「・・・・・・だが、だからといって手を止めるわけにはいかない」

司令「彼も・・・・・・銀騎士も、一人戦っているのだから」



155:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/27(木) 05:32:55.88 ID:ehWE+6VM0

副官「そして、我々は今もなお、命を賭して国を守ろうとしている兵達の指揮をとっている」

司令「うむ。己を顧みず闘う者たちのために、我々も、覚悟を決める時だ」

技師「覚、悟・・・・・・?」

司令「副官」

副官「はっ」

司令「周囲に展開している歩兵、魔法投射装置についていた砲術師、その他騎兵、弓兵を広場に集めろ」

副官「了解です。 技師、君はここから離れていろ」

技師「な、何をはじめるんですか?」

司令「・・・・・・消費してしまった魔力というのは既にどうしようもない。 ならば、他所から補充するしかない」

司令「これから行うのは、その魔力を得るために、魔術師でない者たちから、魔力を吸収するための魔法陣を組む作戦だ」

副官「先程まで展開していた防御結界の術式を組み換え、魔力を吸収し、魔術師たちへと供給する魔法陣にするんだ」

技師「そ、それって大丈夫なんですか? 普通の人の魔力量なんてたかが知れてますし、無理に吸い出そうとすれば、昏倒して倒れちまうんじゃ・・・・・・」

副官「・・・・・・火竜との戦いは、最終的には魔力の消耗戦になると分かっていた」

副官「その時、魔法部隊以外の人間が出来ることはほとんどない。 精々が、逃げ遅れた民の避難誘導くらいだ」

技師「た、確かに、現状を見ればそうかもしれないっすね」

司令「これは、そんな者達からの志願もあったからこそ実行に移せる作戦だ」

技師「志願・・・・・・」

副官「皆、この国を守るために、自分に出来ることをやろうとしているのだ」

副官「魔法陣の効果範囲は局所的だ。 効果範囲外にいれば、その影響は受けない」

技師「・・・・・・いやいや、そういう事なら、俺もここに残りますよ」

司令「魔力を持たないものが吸収される時の負荷は相当きついぞ」

技師「そんなの、みんな同じでしょう。 俺が出来ることは、もうほとんど終わりましたからね」

技師「だから、出来ることをやるって言うなら、次はその作戦に参加させてもらうことっすよ」

司令「・・・・・・技師」

技師「さぁ、いっちょ気張っていきましょうぜ」

技師「(お前も頑張ってるんだ。 俺だって、戦い続けるぞ、銀騎士・・・・・・)」



161:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/27(木) 21:30:04.50 ID:sJd03S/50

―――遠方の地 爆心地





竜騎士「・・・・・・む?」

銀騎士の首筋に、パスンという音と共に、アンプルが注入される。

銀騎士「(・・・・・・薬師、ありがとう)」

ビクンと仰向けに倒れていた銀騎士の体が跳ねる。

銀騎士「ぎ、ち、ぎぎ・・・・・・っ!!」

痙攣するように四肢が動き、捻れた四肢が筋肉が無理やり正常な方向に動かし、折れた骨を無理やりつないでいく。

竜騎士「何をしている・・・・・・勝負はすでに・・・・・・っ!?」

銀騎士「あ、あ゛あ゛あ゛ああああ」

ダメージを負った内蔵、神経、筋繊維、骨が、時間を逆回しにしたかのように元に戻っていく。

竜騎士「・・・・・・な、傷が!?」

銀騎士「・・・・・・が、はぁはぁはぁ。 っぐ・・・・・・」

竜騎士「治癒魔法まで備わっていたのか、その鎧は」

銀騎士「・・・・・・ち、違います。 これは、薬師に調合して、はぁ、はぁ、もらった・・・・・・回復薬です。 直接、体に投与したんですよ」

竜騎士「馬鹿な。 伝説クラスの霊薬でもなければ、その回復力は・・・・・・」

銀騎士「そ、その通りです。 っぐ、当然、代償を払った上での、回復力です」

銀騎士「(頭の内側で金槌が踊り狂っているかのような頭痛だ)」

銀騎士「(体の中も、筋肉や内蔵が万力で押しつぶされるくらいに固定されたところを無理やり捩じ切ろうとしてくるかのようだ・・・・・・)」

銀騎士「(傷は癒えたというのに、さっき以上の激痛が精神まで狂わせようとしてくるっ)」

銀騎士「・・・・・・けど、そのおかげで、僕はまだ、戦える。 まだ、立ち上がれる」

竜騎士「・・・・・・そうまでする意味が、お前にあるのか?」

銀騎士「今更じゃないですか。 そうでなきゃ、ここまで来ませんよ。 先輩」

竜騎士「・・・・・・おかしいな。 感情の起伏なんてもう無いはずなのに・・・・・・。 お前の姿を、偲びないと感じてしまう」


銀騎士と竜騎士は互の槍を、相手の喉元に切先を向け、月光の照らす草原の真ん中で、再び向かい合う。

次が最後だと、互いに覚悟を決めながら。




竜騎士「銀騎士、これで最後だ。 これが、私からの手向けだ。 お前の憧れた竜騎士の、最強の技で・・・・・・深き眠りにつくがいい!!」




爆発するかのような脚力で大地を蹴り、竜騎士は遥か高く、先ほどよりもさらに高く天空へと駆け上がり、満月を背にして先程と同じく、獄炎の炎を身にまとった。


竜騎士の奥義、“必殺”の技を繰り出すために。



162:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/27(木) 22:35:01.89 ID:sJd03S/50

銀騎士「・・・・・・先輩」

銀騎士「やっぱり、先輩に勝つには、その技にしか、攻略法はない」

銀騎士「けど、迎え撃つのは・・・・・・得策じゃ、なさそうです」

銀騎士「・・・・・・っぐ」

修復された肉体は、副作用の影響で体中の神経が悲鳴を上げ、頭の中では警笛の様な頭痛が鳴り続ける。

フラつく体を両足を広げて踏ん張らせ、頭上の炎を纏った竜騎士を視界の中心に収める

銀騎士「あと、一回だけ・・・・・・もってくれ、僕の体」



―――そよ風が銀騎士の周りに吹き始める。



銀騎士「僕は、先輩のように、強くはないかもしれない」

銀騎士「でも・・・・・・」

銀騎士「僕は、一人で戦ってるわけじゃ、ないんですよ」

銀騎士「それに・・・・・・」

銀騎士「まだ、あなたには、あの時の問いの答えを伝えてませんでしたね・・・・・・」

銀騎士「騎士とは・・・・・・何なのか・・・・・・」




銀騎士「僕の答えは・・・・・・騎士とは、誓いを守る者です」



銀騎士「騎士とは、約束を違わず、必ず果たす者です」






―――そうか・・・・・・。 なら、いつか俺が困ったとき、ちゃんと助けにきてくれよ。





銀騎士「だから、僕は・・・・・・あなたを助ける。 これ以上罪を犯させないために、先輩の気高い志、誇り・・・・・・生き様を助けてみせる!!」



鎧の胸部にある風竜の心臓が一段と強い輝きを放ち、銀騎士の周囲が一瞬にして暴風圏内へと様変わりした。



銀騎士は逆手に持った槍を、竜騎士に向けて構える。

エネルギーラインから槍に魔力が伝わり、石突からは煙の様に魔力が流出する。



銀騎士「いっけぇぇぇぇぇ!!」



全身のバネを使い、投擲砲台と化した銀騎士の手から、白銀の大長槍が放たれる。

そして、手から離れた瞬間、石突から爆発的な魔力が放出され、音速を超えて竜騎士のもとへ直進していく渾身の一投。

銀騎士の目は、投擲した後も、竜騎士を捉え続ける。


鎧に組み込まれた、最後のギミックを思い出しながら・・・・・・。



163:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/27(木) 23:25:52.99 ID:sJd03S/50

―――いいか、銀騎士。 このギミックは、耐久性の問題と装備者の負担から、一回だけしか使えない。 だから、これは本当に最後の最後。 後がないって時の最終手段として使ってくれ。



銀騎士「(ああ、今がその時だ)」



―――たった一度。 一回だけなら、お前はこの世界の誰よりも、どんな竜騎士よりも高く空を駆け上がることが出来る。



銀騎士「(これが、ラストチャンス!!)」



銀騎士が装備している鎧、その脚部と背部にエネルギーラインを通して膨大な魔力が収束していく。

足を覆っていたアーマーが可変し、背部からはスタビライザーが迫り出す。

眩い発光を続ける風竜の心臓、その光と共に銀騎士の周囲を強い風が吹き荒れる。




―――託された風竜の心臓と、俺と薬師が作った鎧。 そして、お前自身の力があれば・・・・・・。




そして、一瞬静寂が戻る。




全ての準備は整った。




銀騎士は、開放の言葉(呪文)を口にした。





銀騎士「――――――ジャンプ!!」




―――幸運の女神だって、振り向かざるをえないだろうさ。



164:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/28(金) 00:30:30.63 ID:iBmbLGJC0

竜騎士「そんな投擲で倒せると思ったか!! 火竜の目を通して、その槍の秘密は解っているぞ!!」

音速で迫る大長槍を、槍と全身の筋肉を使った荷重移動で空中を舞い、胴の横ギリギリで躱す竜騎士。

竜騎士「っぐ・・・・・・」

通り過ぎる際に生じた衝撃波で僅かに体勢を崩すも、即座に空中でバランスをとりなおす。

その一瞬・・・・・・。

竜騎士は地上にいたはずの銀騎士から目を離していた。

竜騎士「(消えた・・・・・・)」

木の陰、岩の陰、稜線の陰、茂みの中・・・・・・。

眼下を見渡す竜騎士の目に、銀騎士は映らない。

竜騎士「どこだ!?」

僅かに月の光が陰ることを、竜騎士は背中越しに感じた。

竜騎士「・・・・・・!?」

反転して大空に輝く月を正面に捉える。

竜騎士「・・・・・・なん、だと?」

その中心では、月光を照らし返す銀色の鎧を纏いし者が宙を舞っていた。

銀騎士「・・・・・・戻れ」

その囁くほどの呟きに、銀騎士が投擲した大長槍はそのさらに遥か上空で反転し、銀騎士の手に収まった。



竜騎士は跳躍によって制空権を得た。 しかし、空を舞うことはできない。



それが跳躍である以上、頂点まで到達した時点で、一旦の滞空停滞時間を得た後に、落下するしかない。



そして、空という環境に絶対的優位性を持っていたが故に、さらに上を取られるという事は、まずありえない。



ましてや、それが人間相手ならば尚更に・・・・・・。



銀騎士「・・・・・・ブースト!!」


銀騎士の背中から圧縮された魔力が解き放たれた。

己の身を、引き絞られ・・・・・・解き放たれた矢の如く加速させ、竜騎士の落下攻撃の様に、一直線に空を駆ける。


銀騎士「銀騎士ぃぃ!!」


竜騎士は槍を一瞬でランスに変形させ、両手で構え、銀騎士を迎え撃つ姿勢をとる。


銀騎士「うあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


竜騎士「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」



165:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/28(金) 00:36:57.97 ID:iBmbLGJC0

リーチの差は歴然。



竜騎士のランスは突進してくる銀騎士の大長槍を砕き、そして兜を吹き飛ばす。



竜騎士「・・・・・・っ!?」



しかし、砕けた兜の先にあった銀騎士の目は、死んではいなかった。



止まることなく突き進んだ銀騎士が突き出した折れた大長槍は、竜騎士の鎧を突き抜け、胸に突き刺さった。



竜騎士「ぐぁ・・・・・・っ!?」



銀騎士の鎧はその瞬間、最後の加速をかける。



銀騎士「だあぁぁぁぁぁぁ!!!!」



落下スピードはさらに増し、二人は組合いながら衝撃波と衝突音、土塊を巻き上げて、大草原に巨大なクレーターを作って落着した。



167:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/28(金) 00:48:31.05 ID:iBmbLGJC0

銀騎士「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」

竜騎士「・・・・・・がはっ」


銀騎士の槍は僅かに、竜騎士の心臓を掠めた。

そこに落下の衝撃が槍を通して直に加わり、竜の心臓を持つ竜騎士の肉体をもってしてもそう長くはない事を、“互いに一瞬で理解し覚悟した”。



銀騎士「せん、ぱい・・・・・・」



銀騎士が見下ろす竜騎士の表情、しかし、そこには何か違和感があった。



竜騎士「・・・・・・私は」

竜騎士「私達は、俺は、私は、僕は・・・・・・どうして死ななくちゃいけなかったんだ」

竜騎士「やりたいこともあった。 思い出があったんです。 悲しいこともあったんだ。 楽しいこともあったよ」」

竜騎士「家族が待っていた。 結婚の約束があった。 友達に会いたかった。 皆が称えてくれた」

竜騎士「・・・・・・一瞬だった」

竜騎士「痛いと思う暇も、悲しいと思う時間も、怖いと思う瞬間も、無かった・・・・・・」

竜騎士「気づけば、我々は一つだった」


はたして、竜騎士の口から出る言葉は、肉体に宿る精神達のものか・・・・・・。

一言一言口調や調子が変わって、まるで別人が次々と話している様であった。


竜騎士「何が、いけないんだよ」

竜騎士「唐突に奪われたんだ。 理不尽に殺されたんだ」

竜騎士「復讐して、報復して、何がいけないんだ」

竜騎士「当然の報いだ。 殺されて当然じゃないか」

竜騎士「止めないでくれよ。 あと少しなんだよ」

竜騎士「お前に、貴様に、君に、あんたに」





竜騎士「何がわかるんだよ。 何も知らないくせに」




竜騎士「生きてる人に、何がわかるんだよ・・・・・・」



168:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/28(金) 01:15:02.84 ID:iBmbLGJC0

銀騎士「・・・・・・」

片目を血で塞がれた銀騎士は、名も知らぬ精神達に語りかける。

銀騎士「・・・・・・僕には、あなた達の悲しみは分かりません」

銀騎士「想像することしかできない。 けど、きっとそれこそおこがましい事なんだ。 だって、それこそが傲慢な考え方だから」

銀騎士「あなた達の事を止めた僕には、かける言葉はありません」

銀騎士「僕は、自分のエゴで、あなた達を止めに来ました。 身近な人達に傷ついて欲しくなくて、大切な人にこれ以上、人殺しをさせたくなくて・・・・・・」

銀騎士「だから、後悔は・・・・・・ありません」

銀騎士「あなたの胸に、あなた達に槍を突き立てた事に、迷いはありません」

銀騎士「そんな事では、きっと勝てなかったでしょうから・・・・・・」


銀騎士と竜騎士の間を、やわらかい風が吹き抜けていく。


竜騎士「終わってしまった。 もう、復讐が出来ない・・・・・・」

竜騎士「悔しい・・・・・・悔しい・・・・・・悔しい・・・・・・」

銀騎士「・・・・・・」

竜騎士「お前さえいなければ・・・・・・お前さえ・・・・・・」


ゆっくりと竜騎士の手は銀騎士の首に向かって伸びていく。


竜騎士「お前さえ・・・・・・お前さえ・・・・・・」


その動きは緩慢で、戦っている時の竜騎士からは考えられないほど、弱々しいものだった。


竜騎士の手が首に触れ、しかし頬をなぞりつつ通り過ぎ・・・・・・銀騎士の頭をそっと撫でた。







竜騎士「・・・・・・ありがとう」






銀騎士の目から、一筋の涙がこぼれた。




竜騎士はゆっくりと息を吐き、体を弛緩させた。




その瞬間、竜騎士の肉体から、金色に輝く粉雪のような物が宙へと舞い上がる。

銀騎士「これは、意識の集合体か・・・・・・」

竜騎士の肉体が機能停止したことで、目的を果たせなくなった精神達が離れていったのか・・・・・・。



それは、すなわち・・・・・・。



竜騎士がたった今、息を引き取ったことにほかならない。



170:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/28(金) 02:01:47.17 ID:iBmbLGJC0

銀騎士「先、輩・・・・・・」




それでも・・・・・・。




先輩には、竜騎士には、帰りを待っている人がいるんだ。




あなたは、帰ってこなきゃいけない人だ。




銀騎士は腰部のアーマー内に組み込まれていた薬師の作った薬を、装甲を外して強引に取り外す。



銀騎士「これで、先輩が帰ってくるかは分かりません」



銀騎士「でも、それでも・・・・・・。 出来ることは、全てやっておきますよ、先輩」



銀騎士は突き刺した槍に、風竜の心臓から鎧を通して魔力を竜騎士の心臓に送る。



銀騎士「・・・・・・」



そして槍を引き抜き、傷口に薬師の薬を流し込む。


竜騎士にしか試すことができない、荒療治とも言える蘇生方法。


成功する保証などない。


確かな自信なんて、微塵も持ち合わせていない。


この行いの全てが希望的観測にすぎない。


だが、銀騎士は迷う事なく実行に移した。



銀騎士「もし・・・・・・」



銀騎士「もし、帰ってきてくれたら、ちゃんと姫様に謝りに行ってくださいよ」



銀騎士のもとに、白銀の竜が降り立つ。



銀騎士「じゃあ、行きます。 先輩」



銀騎士「僕達の国で、待ってますよ」



171:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/28(金) 02:39:08.96 ID:iBmbLGJC0

―――王国 広場




司令「むっ!?」

副官「竜の様子が・・・・・・」

司令「胴体より発していた光が、収まっていく・・・・・・」

副官「もしや、竜騎士が!?」

司令「・・・・・・」



その時、上空に一陣の風と共に銀騎士が現れ、広場に着地する。



銀騎士「状況は!?」

技師「銀騎士!?」

司令「・・・・・・竜騎士は?」

銀騎士「・・・・・・倒しました。 もう、あの人が罪を犯す事はないでしょう」

司令「そうか。 よかった。 本当に」

副官「よくやってくれた、銀騎士」

司令「辛い役目を、よくぞ果たしてくれた」

司令「感謝するぞ、銀騎士」

銀騎士「・・・・・・ありがとう、ございます」

銀騎士「・・・・・・で、火竜は? 封印作業はどうなっていますか?」

技師「あんまり、よくないな。 少し前までは、結構やばかった」

司令「火竜に魔力を消費させることは何とか出来たが、封印するには未だ至っていない」

副官「一般兵からの魔力供給も、すでに限界だ」

技師「・・・・・・あ、ああ。 確かに中々、キツかった」

司令「しかし、後少しというところまでは来ている。 海上に出ていた兵達も、間もなくここに集い始めるだろう。 そこで、魔力の吸収を再度行い、ラストスパートをかける」

銀騎士「では・・・・・・」

副官「ギリギリといったところだが、勝算はある。 これも、君たちが頑張ってくれたおかげだ」

技師「はは・・・・・・。 そう言ってもらえると」

銀騎士「うん、頑張った甲斐があるね」

司令「本当にありがとう。 君たちの活躍は、後世まで語り継がれることだろう」

技師「い、いや、そこまでしなくても」

司令「ふっ。 私がそうしなくても、周りが放っておかないさ」

技師「まいったな・・・・・・」

緊張の連続だった空気が少しだけ穏やかになり、疲れた表情の中に皆笑顔が生まれた。

銀騎士「・・・・・・ん?」

技師「どうした?」

銀騎士「いや、あれ・・・・・・」

と、その時。

氷塊に包まれた火竜に、銀騎士が先ほど見た金色の粉雪が入り込んでいった。



172:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/28(金) 03:14:48.47 ID:iBmbLGJC0

銀騎士「ま、まさか・・・・・・」

銀騎士が驚愕の表情で氷塊を睨みつけると同時に、火竜の体から光が漏れ始める。

司令「な、何が起こっている!?」

銀騎士「・・・・・・先輩の心臓に入っていた精神達か」

副官「何!?」

銀騎士「恐らく、先輩にとり憑いていた精神達が、火竜に入り込んだんです」

銀騎士「精神力とは魔力に最も近く、相互関係にあるエネルギーでもあると、先輩は言っていましたし、間違いないかと」

技師「ちょ、ちょっと、皆・・・・・・」

技師の指差す先、火竜を凍らせている氷塊が、みるみるうちに溶け出していく。

司令「魔力として火竜に乗り移った、というわけか・・・・・・っ」

副官「なんという・・・・・・」

技師「や、やばいんじゃないっすか・・・・・・?」

銀騎士「・・・・・・っ」

司令「・・・・・・退避は、もう間に合わないだろう」

技師「・・・・・・え!?」

司令「魔法部隊の行っている封印作業を直ちに中断。 魔力をこれ以上消耗させるな」

副官「司令・・・・・・」

司令「うむ、魔法部隊は、非戦闘員を退避させるため、転送魔法の準備を」

司令「現時刻をもって、作戦を中断。 首都を放棄する」

銀騎士「その転送魔法、全員分間に合うんですか?」

司令「・・・・・・恐らく、いや、現存する魔力量では無理だろう」

司令「だが、事ここに至ってはこれ以外に方法がない。 最後の最後で、詰めを誤った、私の責任だ」

銀騎士「そんな、あなたの責任じゃ・・・・・・」

副官「今できることは、それしかない・・・・・・」

技師「そんな、マジかよ。 ここまで来て、こんなのありかよ・・・・・・っ!!」

銀騎士「(っく、僕の鎧に備え付けられた風竜の心臓さえ使えれば・・・・・・)」

銀騎士「(けど、僕にしか風竜の心臓は反応しない以上、どうにも・・・・・・っ)」

技師「あ、そ、そうだ!! 転送魔法、転送魔法でなんとかならないんすか!? ほら、これだけの魔法の使い手がいるんだから、こっから遥か彼方に転送させてしまうとか!!」

副官「それが出来るものなら、はじめからやっているさ」

司令「火竜の魔力が高すぎて、転送魔法の術がうまく発揮しないんだ。 これは封印魔法と同じだ。 除外される条件としては、対象者が術を受け入れる事なのだが」

銀騎士「今の火竜には・・・・・・無理か・・・・・・」

銀騎士「・・・・・・」

銀騎士「暴走までの、タイムリミットは・・・・・・?」

司令「このまま何も処置を施さなければ・・・・・・二十分。 いや、十五分といったところか」

銀騎士「・・・・・・なぁ、技師」

技師「何だ?」

銀騎士「グライダーを飛ばす時に使ったワイヤーを巻き上げる装置、あれ・・・・・・ワイヤーだけ直ぐに取り外しとか出来る?」

技師「お、おう? まぁ、出来るには出来るが・・・・・・」



銀騎士「ちょっと一緒に来てくれ」



173:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/28(金) 03:29:34.44 ID:iBmbLGJC0

―――工房




技師「お前正気かよ!! 何の為にワイヤーを使うかと思ったら、そんな事を・・・・・・っ」

銀騎士「けど、これしかもう方法はないだろう」

銀騎士「火竜を氷塊ごとワイヤーで縛って、ハリボテで運ぶ」

銀騎士「これが、今僕たちに出来る最善の方法じゃないか」

技師「かもしれねぇけど!! けど、けどよ・・・・・・!!」

銀騎士「・・・・・・僕は、よかったと思ってるよ」

技師「な、何がだよ・・・・・・っ」

銀騎士「まだ、僕には出来ることがあるんだ」

銀騎士「諦めるには、まだ早いんだ」

技師「・・・・・・っ」

銀騎士「それにさ」


銀騎士はまるで、それが何でもない事かの様に笑った。


銀騎士「皆を守るために覚悟を決めるなんて、騎士冥利に尽きるじゃないか」

技師「銀騎士・・・・・・」

銀騎士「ありがとう、技師。 お前のおかげで、皆を守る事が出来る」

銀騎士「・・・・・・皆がいたから、この国を救うことができるんだ」

技師「・・・・・・っ」

銀騎士「・・・・・・急ごう。 時間がない」



174:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/28(金) 04:09:10.94 ID:iBmbLGJC0

―――王国 広場


副官「言われた通り、氷塊に包まれた火竜と、銀騎士が使っていた乗り物をワイヤーで繋いだぞ」

銀騎士「ありがとうございます」

司令「・・・・・・本当に、いいのか?」

銀騎士「はい。 今、この国を救うための、最善最良の方法です」

技師「このハリボテは、銀騎士が搭乗した時だけ、風の魔法を利用した飛行が可能です。 火竜をワイヤーで繋いだとしても、巡行速度にそれほど変化はないでしょう。 ほとんど意に介さず、高速で飛行出来るはずです」

銀騎士「本当に、凄いじゃじゃ馬だったよ、こいつは」

技師「言っただろう、お前にしか乗りこなせないってな」

銀騎士「はは、そうだったな・・・・・・」


司令が銀騎士に歩み寄り、両肩を叩く。


司令「我々は、君を誇りに思う」

司令「君こそ、救国の英雄だ」


銀騎士はその言葉に、笑顔で答えた。


そして、銀騎士がハリボテの機体に向かって跳躍し、その背に乗る。

鎧に組み込まれた風竜の心臓から魔力が伝達され、両翼から風が放出し始めた。


銀騎士「・・・・・・行きます。 遠方の無人地を選ぶつもりですが、念のため、衝撃には備えていてください」

司令「わかった。 皆に伝えよう」


銀騎士「風竜の力もどこまで通用するかわかりませんが、僕が壁となって、少しでも威力を抑えられるかもしれません。 試してみます」


司令「・・・・・・分かった」

技師「銀騎士」

銀騎士「ん?」

技師「マスターの酒場で、祝杯を用意して待ってるぜ」

銀騎士「ああ。 薬師のパイも用意しておいてくれよ」

技師「任しとけ。 だから、絶対に、帰ってこいよ!!」

銀騎士「・・・・・・ありがとう。 技師」



銀騎士「・・・・・・飛べ!!」



銀騎士を乗せた白銀の竜は、一度大きく羽ばたいた後両翼から猛烈な風が噴出し、氷塊に包まれた火竜を繋いだまま、その重さをものともせず、瞬く間に大空へと飛び立っていった。






司令「ありがとう、白銀の竜騎士よ」



180:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/29(土) 22:46:26.07 ID:3sEw09eN0

―――深淵の洞窟


銀騎士が向かったのは、以前風竜と出会った洞窟だった。

暴走した魔力が少しでも押さえられるように、最深部へと・・・・・・。

そして、飛行中にも融解していた氷が殆ど溶け、ワイヤーから解放した頃には、すでに氷の一片も火竜には残っていなかった。

銀騎士「ありがとう、ハリボテ。 外に出ていろ」

白銀の竜はワイヤーを切り離し、ゆっくりと羽ばたきながら洞窟の外へと飛んでいく。

銀騎士「ここなら、周囲に人もいない。 町や村も存在しない」

火竜「そうだな。 間違いない」

銀騎士「!?」

振り返ったその先には、鋭い眼光で銀騎士と相対する火竜がいた。

火竜「この一帯には、人の気配は全く無い。 その判断は間違ってはいない」

銀騎士「火竜・・・・・・」

火竜「白銀の騎士よ・・・・・・」

銀騎士「はい」

火竜「感謝するぞ」

銀騎士「感謝・・・・・・ですか」

火竜「我が主は、己の意思ではどうにもならぬ状況に置かれ、手の打ちようがなかった」

火竜「あのままでは、いずれ大河の如き意思の流れに自我ごと押し流され、完全に他の精神達と同化し、己を消失するところであった・・・・・・」

火竜「だが、そんな主を貴公が救ってくれたのだからな」

銀騎士「あなたに入り込んだ精神達の影響は、大丈夫なんですか? 操られたりは・・・・・・」

火竜「我は竜だ。 人間の精神が多少入り込んだところで、何も感じない」

銀騎士「そう、ですか」

火竜「しかし・・・・・・」

銀騎士「しかし?」

火竜「我が心臓は王国に到達した時点で限界を超え、いつ崩壊してもおかしくなかった。 魔力として心臓に入り込んできた以上、もはや、私の意思では暴走を止めることは出来ない。 本来なら我が心臓に入り込むなどありえないのだが・・・・・・これも、人の執念か」

銀騎士「では、今は精神達に操られているわけではなく、あなたの意思がしっかりと反映されているのですね」

火竜「もちろんだ。 ただ、それが契約者となった主を介した時だけは別だ」

火竜「契約を結んだ主の意思が、我ら竜を動かす。 その思いが強ければ強いほど、行動に力が加わる。 それは、我が意思とは無関係なのだ」

火竜「多くの精神達に意思を奪われていた際の主命も、主の精神が含まれていたが故に、抗う事は叶わなかった・・・・・・」

火竜「そして、あの日も・・・・・・」

火竜は三年前、遠方の地で起こった出来事を思い出す。

火竜「我は何よりも主を守ろうとした。 しかし、主は副官という男を救ってくれと我に命じた」

火竜「あの時の主命ほど、辛いものはなかった・・・・・・」

銀騎士「火竜・・・・・・」

火竜「白銀の騎士よ、我に宿った多くの精神達は、この火竜が連れて行こう。 こやつらには既に自我と呼べるものはないが、常世にいるよりは、心安まるであろう」

銀騎士「ありがとうございます」

銀騎士「(彼らも被害者なんだ・・・・・・。 そうする事が、きっと彼らを救うことになるのだと、今だけは信じたい)」

火竜「礼などいらぬ。 此度の騒動に、貴公を巻き込んでしまっているのは、我々だからな」



181:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/29(土) 23:15:41.22 ID:3sEw09eN0

銀騎士「望んで役目を申し出たのです。 あなたが、気にすることではありませんよ」

火竜「そうか・・・・・・」

火竜「・・・・・・白銀の騎士よ」

銀騎士「はい」

火竜「暴走する心臓の魔力を押さえ込もうとしているのならやめておけ。 ほとんど、焼け石に水だ」

銀騎士「そう、ですか・・・・・・」

火竜「だが、風竜の心臓に蓄えられた魔力を全て、己の身の防御に転換すれば、もしかしたら生き延びられるかもしれない」

火竜「決して、諦め、る、な・・・・・・」

その言葉を最後に、火竜の体がガクンと脈動した。


恐らく、暴走一歩手前。


どれほどの爆発規模か、想像も出来ない。

吹き飛ぶのはこの洞窟で済むのか、それとも周囲一帯か、この島ごとか・・・・・・。

銀騎士「(どのみち、爆心地にいる自分はただでは済まないだろう)」

いかにこの鎧が最高の技術で作られ、風竜の守りが働いて自分を守護していたとしても、どれほど守られるものか・・・・・・。



銀騎士「でも・・・・・・それでも・・・・・・っ」



銀騎士「最後の最後まで、諦めることはしない!!」



銀騎士の装備する白銀の鎧から膨大な量の風が放出され、形成される魔力と風の障壁が前面に展開する。



風竜の心臓は銀騎士の精神に呼応するように一段と輝く。



火竜の体が膨大な光量を放った。







その瞬間。







銀騎士の視界が真っ白に染まる。


僅かにそよぐ風が頬を撫でた気がした刹那、五感の全てが消失した。


前後左右上下の方向的感覚もなくなり、思考する意思すら、閃光の彼方に消えていった。



182:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/29(土) 23:30:11.37 ID:3sEw09eN0

稲光の奔る音が轟き、空は再び昼夜逆転するほどの明かりに包まれ、天空の雲を突き抜ける光の柱が現れた。



その光景を見て、何が起こったのかを悟る者達や。



三年前と同じく、何事かと空を仰ぎみる者達。



そして、一人の騎士が、国を救った事に感謝し、涙する者がいた。









その日、王国は再び歴史を生んだ。






一人の英雄によって王国は救われたのだ。



183:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/29(土) 23:38:07.52 ID:3sEw09eN0

僕は、生きているのか・・・・・・。





手足の感覚が朧ろげだ。





何も聞こえないどころか、視界に至っては、1センチ先にあるものすら把握できない。






まるで・・・・・・。






“心だけになったかのようだ”。





血を流しすぎたのか・・・・・・それとも・・・・・・。






・・・・・・そこにいるのは、ハリボテか?






迎えに来てくれたのか?




ありがとう。





―――さぁ、帰ろう。 
           皆の待つ、僕らの国に・・・・・・。







白銀の竜は大きく羽ばたき、日の出を迎えた大空を舞う。





その白銀の体は、世界中のどんな生き物よりも生命力に溢れ、太陽を照り返し、光り輝いていた。



184:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/29(土) 23:54:47.52 ID:3sEw09eN0

エピローグ





―――酒場



技師「マスター、とりあえず三人分飲み物頼むよ」

マスター「いつものでよろしいですか?」

副官「ああ、私は構わない」

薬師「食べ物は後で頼みますね」


マスター「かしこまりました」
         

技師「もうあのドタバタの日から一年か・・・・・・」

薬師「なんだか、いろんな事があっと言う間に過ぎていきますね・・・・・・」

副官「それだけ、国民の心が強かったという事なのだろうな」

技師「お城勤めはどうっすか? 正式な司令の秘書官になったんですよね」

副官「元々あの方は一人で何でもこなされてしまうからな。 仕事を取られないように立ち回る毎日さ」

技師「まぁ、司令がって言うより、上の人たちみんな有能すぎるんだよな。 王様はもちろん、姫様だってそうだし」

副官「ああ、そういえば・・・・・・」

副官「司令と姫様の元に手紙が届くようなんだ。 一月に一、二通ほど」

技師「手紙っすか?」

副官「随分と親しい人からのようでね。 最近の姫様は笑顔が増えたし、司令もどこか穏やかな調子なんだ」

技師「へぇ~。 一体誰からの手紙なんすか?」

副官「詳しくは教えていただけないんだが、ただ、友人とだけしか・・・・・・」

技師「友人、ね~」

副官「どうやら、その友人が城に来訪する日取りが決まったようでね。 私も、今からどんな方なのか興味が尽きないよ」

技師「なんかおもしろそうっすね。 俺もどんな人なのか見てみたいな」

副官「ああ、長く滞在するみたいだから、この店にも足を運んでもらえるかもしれないぞ。 それと、司令から技師と薬師の空いてる日取りを聞いておいてくれとも言われたな」

薬師「空いてる日取り、ですか・・・・・・?」

技師「どうしてまた?」

副官「私も詳しくは聞いていないんだ」

薬師「別にかまいませんよ。 というより、私の場合は自由業ですから、いつでも空いてるみたいなものです」

技師「俺もスケジュールを確認したら伝えますよ」

副官「ありがとう」



185:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/30(日) 00:09:13.20 ID:wPKbStt20

副官「しかし、薬師は自由業とは言っても、最近は忙しいんじゃないか?」

薬師「え、どうしてですか?」

副官「城内に足を運ぶ回数も増えいるようだし、加えて、薬師の評価が凄く上がっていると聞いたが・・・・・・」

薬師「えぇ!? そ、そんなことないと、思いますけど・・・・・・」

技師「そんなことあるだろ。 しょっちゅう城からお呼びが掛かってるじゃねえか」

薬師「それは、まぁ・・・・・・」

副官「治癒魔法を研究している部署や医療部から随分と声が掛かっているのだろう?」

薬師「は、はい。 私の薬学の知識を、色々な分野に役立てて頂けるとの事で・・・・・・有難いことです」

薬師「私もお城の書庫を閲覧する許可を頂けたので、勉強させてもらってますし、とてもお世話になってます」

技師「勉強ね~。 俺もまた遠出してインスピレーション刺激してこようかな~」

副官「技師には魔法投射装置を量産してほしいんだがな・・・・・・」

技師「いやいや、あれはもう作る気はありませんよ。 あの兵器はちょっと強力すぎる。 俺の身には余るものでした。 というより、人の身には余る代物っす」




三人のいるテーブルに、店の入口からそよ風が流れ込んだ。




技師「それに、俺達にはそんなモノ、もう必要ないっすよ」



副官「・・・・・・そうだな。 技師の言う通りだ」



薬師「ええ、そうですよ」



マスター「技師さん、次は何にしますか?」



技師「あ~っと、そうだな・・・・・・。 俺はあいつが来てからにするよ。 もうそろそろのはずだし」



薬師「兄さん相変わらずお酒弱いものね~」



技師「毎日毎日仕事漬けだと回るのも早いんだよっ」



薬師「サボってる日だってあんまり変わらないじゃない」



技師「マスター、あいつも直ぐに酔っぱらうように、強めの酒を使ってくれ」



186:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/30(日) 00:19:31.87 ID:wPKbStt20

今日も晴天の青空に白銀の竜が舞う。 まるで、王国を守護するかのように風に乗り、大空を飛び続ける。





薬師「もう、結局最後は私が面倒見るんですからね」





優しい風は平和を取り戻した町を、幸せな人々の笑顔の間を吹き抜ける。





マスター「そこだけは、いつまでたっても変わらない光景ですね」





時に強く意思を示し、時に優しく背中を押してくれる目に見えない力は、いつまでも王国を、人々を守り続ける。





技師「ほら、噂をすれば、なんとやらだ」





白銀の竜を使役する騎士。





マスター「いらっしゃいませ」





銀騎士の称号を持つ英雄がいる限り。





                  FIN



187:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/30(日) 00:20:23.33 ID:wPKbStt20

以上で完結となります。

ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございました。



188:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/09/30(日) 00:27:43.88 ID:EC0Ave3Z0

乙です



190:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県):2012/09/30(日) 00:29:18.58 ID:QOx0mURGo

良い終わり方だ乙



199:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/09/30(日) 05:43:59.87 ID:+UMcqWGP0

乙です!
爽やかな終わり方でよかった
素晴らしい…



転載元
槍兵「竜騎士になりたいんです」 役所「無理です」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1347727383/
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        コメント一覧

          • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月15日 21:56
          • 5 1get
            長いけど読みふけてしまった
            面白かった
          • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月15日 22:26
          • おもしろかった!乙です☆
          • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月15日 23:22
          • 乙!
          • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月15日 23:26
          • こういう穏やかで淡々として、それでいて格好いい厨二ってステキ
          • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月15日 23:55
          • うん、こういうの読みたかったんだよ 最初「長えな」とか思うけど終わってみると短く感じてしまう作品
          • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月15日 23:59
          • 竜騎士ってあれだろ、ジャンプしてる間に戦闘が終わるかわいそうなやつだろ。
          • 7. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 00:14
          • たまにあなたが誤字であたたになってる
            ケンシロウかっ!
          • 8. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 00:28
          • 5 良かった
          • 9. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 00:33
          • 5 文句なく王道だったよ
          • 10. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 00:35
          • とりあえず槍を銃に持ちかえるんだ
          • 11. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 01:09
          • これがbad endの場合は文明が滅んでモンハンの世界になると妄想すると夢が広がるな
          • 12. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 01:16

          • 久しぶりの良SSだった
          • 13. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 01:26
          • 5 ブーンがアルファベットで戦うやつを思い出した

            乙です
          • 14. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 02:10
          • 5 大作
          • 15. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 02:21
          • 5 大作だわ…面白かった
          • 16. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 02:32
          • 5 すごく面白かった。
            大作ってやつだと思う。
            寝る前に読むもんじゃないなwww
          • 17. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 02:43
          • クロマティ高校思い出した
          • 18. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 02:50
          • このSS書いた人ってひょっとして騎士「私のために剣を作れ」 鍛冶屋「いやだ」. のSS書いた人かな・・・
            義手持ちの鍛冶屋の言葉があったから・・・・・・
            いいSSでした。
          • 19. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 03:33
          • 読了。
            ハリボテで竜騎士になる所は燃えたね
            相変わらず構成が綺麗だ
            SSに留まらず本物の物書きとしてデビューすれば良いのに

            ※18
            奇遇だな、俺もそれ思い浮かべた
          • 20. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 04:58
          • 内容は王道だけど設定や装備の詳細が練られてて良かった。

            でもキャラに個性無いのが残念。
          • 21. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 05:13
          • 5 寝る前に読んでしまって、こんな時間ww
            いいSSだった。
          • 22. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 05:37
          • 5 風龍とのやりとりで不覚にも涙ぐんでしまった
          • 23. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 06:43
          • 5 こんなにガチな大作だとは思わなかった
          • 24. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 09:51
          • やはり風属性はかっこいいな
          • 25. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 09:52
          • 5 GJ!!(・∀・)
          • 26. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 10:05
          • 感動した
            ここまで上手く書けるんならぜひプロになって欲しい
            最高のSSでした
          • 27. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 15:19
          • 話の見せ方がとてもうまくて楽しかった
          • 28. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 15:50
          • 5 長さに見合った、素晴らしいお話だった。風竜とのシーンとハリボテのシーンは特に素晴らしい。
            文句なしのハピエン!
          • 29. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 16:14
          • 5 よかったけど・・・時間がなぁ・・・
          • 30. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 17:13
          • 作家「竜騎士07になりたいんですけど」
          • 31. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 17:24
          • 5 わぁい
          • 32. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 17:26
          • 5 すげぇよかった。 転載元に、騎士「私のために剣を作れ」 鍛冶屋「いやだ」と、勇者「お前が勇者をやってみろ」 魔王「どうしてそうなる?」を 書いた人だって出てるな。

            次回作期待
          • 33. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 18:07
          • 槍買ってくるわ
          • 34. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 20:47
          • 発言者の誤記がちと多かったけど、内容自体は素晴らしいものだった
          • 35. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 21:04
          • むしろ長くて良かった
            設定や構成がしっかりしてて面白い

            電車の中で携帯片手に泣きそうになってるやつがいたらそれは俺だ
          • 36. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 21:14
          • 5 白銀の竜騎士かぁ

            こいつぁいいもんだ
          • 37. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 21:29
          • こんなレベルでプロとかあり得ない。お前らラノベしか読んでないの?
          • 38. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 21:39
          • 5 題名でギャグかと思ったが、内容は真面目なのでびっくりした

            ※37 SSでムキになってんじゃねえよ
          • 39. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 23:20
          • 5 良かった
          • 40. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月16日 23:42
          • 5 最高でした
          • 41. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月17日 01:34
          • ※37(SSの)プロ
          • 42. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月17日 12:40
          • 5 いい年したおっさんだがワクワクして読めた。良かったです。
          • 43. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月17日 17:28
          • 5 やっぱり王道ものはいいね!素晴らしい
          • 44. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月17日 23:33
          • 5 うん。面白かった。

            作者は違うと思うけど100年後勇者とか、昔やってたジェミニのシリーズとか思い出した。
          • 45. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月18日 00:24
          • 銀騎士「銀騎士ぃ!」という間違えでわろた
          • 46. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月18日 16:01
          • かっけええ
          • 47. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月18日 16:35
          • 5 下手な小説よりも面白いとおもう。誤字や誤用がちらほらあるけど、すでに引き込まれているので脳内カバーできる範囲。セリフ回しにセンスを感じるので、いつか、他の作品も読んでみたいな。
          • 48. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月18日 18:20
          • 5 最初長いかな、と思ったけど
            その分話が練られててとても良かった
          • 49. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月19日 01:54
          • 懐かしいラノベを読んだ気分だな
            ロードスとかが出始めてた頃の
          • 50. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月19日 23:26
          • 確かに、なんか昔懐かしい中二病の頃を思い出すなw
            あの頃は毎日がファンタジーだった・・・
          • 51. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月20日 20:44
          • 乙!
          • 52. John F.K
          • 2012年11月22日 00:15
          • 5 本物だわ
            映画化してください。

            しかし技師が凄すぎる
          • 53. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月22日 13:57
          • 風竜の場面と竜騎士倒してからの会話の場面が好きだな
          • 54. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月23日 00:49
          • うみねこのなく頃に
          • 55. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月23日 15:09
          • 魔法を放つクロスボウを参考にしたってのは、魔王が勇者をやるSSと著者さん同じなのか参考にしたのか
          • 56. 以下、VIPと見せかけてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月24日 15:43
          • 4 相変わらずの誤字多しww
            それがなければ星5なんだが・・でも
            この作品は素晴らしかった。
            この作者の作品好きだw

            >>55
            作者同じだよ。
            クロスボウは勇者と魔王のSSで、
            義手の技術は騎士と鍛冶屋のSSに
            それぞれ出てきた。
          • 57. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月30日 16:44
          • なんか惜しいというかなんというか・・・あと、最後らへんはカッコつけすぎというか狙いすぎというかなんというか
          • 58. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年12月02日 15:43
          • 凄く良かった。
            けどかたや竜なのにその竜と人工物で飛んで戦ってるのを想像すると笑えた。

            あとハリボテは人工知能でも搭載してるの?
          • 59. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年12月03日 21:44
          • 5 不意のパロディに吹いてしまったw
            作者同じかw
            …こういうのもいいよな、最初らへんの会話がほぼ伏線だとは
          • 60. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年12月15日 13:14
          • すごい面白かったw
            感動した!
          • 61. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年12月29日 14:27
          • 5 がっつり中二なのに全然気にならない…むしろめちゃめちゃ面白かった!

            久しぶりに話に引き込まれたわ
          • 62. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2013年01月02日 12:02
          • 風邪の熱のせいか、槍兵が横浜に見えた
          • 63. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2013年02月14日 18:20
          • くっそおもろい
            前回、とは違うが鍛冶屋の話なんかを組み込んであったり小ネタも充実しててたまらないね
            …誤字はもう気にならなくなった
          • 64. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2013年02月16日 22:56
          • 基本的に性格悪い悪人がほとんど出ない作品は好きだ
          • 65. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2013年03月01日 20:11
          • 色々説明が長いわりに抜けている箇所があってちゃんと理解できなかった
          • 66. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2013年10月01日 01:41
          • 5
            風のような爽やかな終わり方だったな・・・大作ですよコレは・・・

            作者さんお疲れ様です!

            俺もいつかこういうのを書けるようになりたいな
          • 67. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2013年10月21日 04:09
          • 5 紛れもない良作
          • 68. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2013年11月20日 05:30
          • 5 名作だね!
          • 69. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2013年12月15日 02:39
          • キメラっぽい

            …あと、てっきり最後の最後は
            すっかりそのままになってた『養成ギプス』を解放する展開だと思ってた
          • 70. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年03月05日 11:40
          • 5 竜騎士帰って来るんだな
            とても良いSSだった

            あとラブロマンスでほっこりさせて欲しい…
          • 71. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2015年02月14日 22:00
          • 5 続編期待
          • 72. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2015年04月21日 14:23
          • なんか寒い
          • 73. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2015年04月22日 20:40
          • 書き物としての演出の仕方が優秀だな。
            少なくとも、学生の舞台の脚本とするには十分な内容だ
          • 74. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2015年08月29日 17:33
          • 5 最高でした!
          • 75. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2016年06月21日 19:13
          • この人の書いたSSはどれも雑なうえに単調でつまらん
          • 76. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2016年12月04日 22:28
          • アニメや漫画じゃねぇんだからちょくちょく別場面に切り替えたり一部分だけ地の分入れるから兎に角テンポが悪い
          • 77. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年02月06日 18:03
          • 終盤の何でも有り感が酷くて萎えた。死闘の直後なのに平然としてるのは超回復だから?
            結局魔法で解決できるなら技師が技師である必要も無く、薬師が薬師である必要も無かった。
          • 78. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年02月23日 10:53
          • >>76
            >>77
            こいつらはSSに何を求めてるんだ?
          • 79. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月05日 16:15
          • セリフがくさい

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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