式子内親王「寒い~。絶対布団から出ないからねっ」

参考リンク:式子内親王 - Wikipedia
1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 18:50:55.80 ID:1u90rza50

式子内親王「そう結うわけで、
 身の回りの世話は貴方の役目っ」もそもそ

男「何で俺がそんなことやら無きゃいけないの」
式子内親王「わたし皇族なんだよ?」
男「だから?」

式子内親王「貴方、日本人じゃないの!?」
男「日本人だよ」

式子内親王「だったらとっとと奉仕する」
男「……」

式子内親王「早く早く! 急に寒くなったなぁ、もう」


式子内親王私抄: 清冽・ほのかな美の世界



3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 18:52:47.13 ID:1u90rza50

男「おーい。ないしんのー」
式子内親王「なによ」

男「お前まだ布団かぶってんの?」
式子内親王「体温低いのよ」

男「ホットチョコ缶買って来たぞ」
式子内親王「感心な態度ね」
男「コンビニついでだからな」

式子内親王「褒めて取らすわ」
男「気にすんな。……飲んでいいんだぞ?」

式子内親王「プルトップあけなさい」
男「?」

式子内親王「手を出すと寒いでしょっ。
 気が効かない庶民ねっ。いいからあけなさい」

男「お前、飲まなくて良いや」



5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 18:56:56.08 ID:1u90rza50

式子内親王「む。むぅ」
男「なんだよ」

式子内親王「そこの漫画とって」
男「あいよ」

式子内親王「ぷくくく」

男「ないしんのー。いい加減布団から出ろよ」
式子内親王「やぁよ。暖かいんだし」
男「重いだろ」

式子内親王「あたしは皇族なのよ。十二単で鍛えられた
 ハイスペックボディなのよ?
 これくらいの布団なんかなんでもないわ」

男「ハイスペックなら寒さは我慢しろ」

式子内親王「やーめーてーっ!? 布団は取らないで~!」



6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 19:01:54.42 ID:1u90rza50

式子内親王「むー」
男「どうした、ないしんのー」

式子内親王「漫画読んじゃった」
男「そか」

式子内親王「他には無いの?」
男「無い」

式子内親王「飽きたー。何か出してー。すっごいの」
男「無いよ」
式子内親王「貴方それでも未来人なの」

男「ここはその未来で俺の部屋だ。お前が過去人間なんだ」
式子内親王「わたし皇族なのよ!?」
男「訳わかんねぇ」

式子内親王「なんかだしてー。遊んでーっ」
男「……むぅ。ほら、携帯だ。
 これでテキストサイトでも読んでろよ」

式子内親王「おおっ! 小さい箱琴!」



8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 19:05:56.90 ID:1u90rza50

男「おーい、ないしんのー」
式子内親王「なにー?」

男「メシができたぞ」
式子内親王「食べるー。むぅ、むぅ」

男「お前、結局一日中布団装備かよ」
式子内親王「暖かいのよ」

男「まったくだ。お前の脳みそがな」

式子内親王「いつでも駆け出せるようにアップは万全よ」
男「どこへでもいっちまえ」

式子内親王「で、ご飯は?」
男「チキンシチューライス」

式子内親王「おお! 未来食事。流動食! NASA的!」
男「お前本当に過去人間かよ」

式子内親王「もぐもぐ。そうよ? 才媛よ?」
男「才媛は布団かぶってシチュー食ったりしねぇ」



9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 19:10:37.71 ID:1u90rza50

式子内親王「ご馳走様でした」
男「おそまつさん」

式子内親王「いえいえ。お粗末なんてとんでもない。
 大変美味でした。この味なら一日六回食べても飽きないわ」
男「そういうもんか?」

式子内親王「認めたくないけれど未来はさすがに未来ね。
 貴方みたいな庶民がこんなに美味しいものを食べているとは」

男「いやそっちじゃなくて」
式子内親王「?」

男「一日六回も食事すんのかって話しだよ」

式子内親王「わたし皇族なのよ?」
男「だから何だよ」

式子内親王「む! ほら、昨日の冷たいのだしなさい!!」
男「麦茶かよ。判ったよ」

式子内親王「……四回くらいがはしたなくないのかしらね」



10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 19:16:28.75 ID:1u90rza50

式子内親王「ぷくくく」
男「機嫌よいのか?」

式子内親王「いや、なんかすっごいのよ。恋空とかいって。
 この時代の歌人ってなんかダラダラダラダラ長く書くのねー」

男「ケータイ小説だろ」
式子内親王「なにそれ?」

男「携帯電話……わかんねーか。
 どこでも読める軽い文章のことだよ」

式子内親王「鴨長明がやってるよーなやつね」
男「?」

式子内親王「男に顔見せちゃうような恥知らずな女が
 恋の歌詠んじゃったりして、なんか面白すぎる~」

男(褒めてんだかけなしてるんだかわからねぇ)



13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 19:21:06.61 ID:1u90rza50

男「つか、さっきぐぐったけど。
 ないしんのーも色々書く人じゃねぇの?」

式子内親王「そーよ。えっへんよ。才媛だからね。
 恋の歌の達人よ。つまり恋の達人よ」
男「そうなんか?」

式子内親王「悩める子羊の救済者よ」
男「うさんくせぇな」
式子内親王「新三十六歌仙なのよ?」

男「でも三十六って多すぎねぇ?」
式子内親王「……」
男「それも『新』ってとこがさ。あれだよ。
 『新四天王』とかもう登場時から雑魚くせぇじゃん?
 ヤラレフラグっていうか」

式子内親王「わたし皇族なのよっ!?」
男「うわっ。怒るなよ」

式子内親王「不敬罪を適用するわよ。
 貴方が靴下買うとき右側は黄色しか
 売っちゃいけないって布告出すわよ」
男「地味な嫌がらせだなおい」



14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 19:25:47.96 ID:1u90rza50

男「まぁいいや。どうでも」

式子内親王「恐れ入ればいいのよ」

男「恋愛マエストロのないしんのーは、あれなの?
 元の時代へ戻ればやっぱラブなステディとかいるの?」

式子内親王「いないわよ?」

男「今はフリーなの?」
式子内親王「なに云ってるの。最初から居ないわよ」
男「へ?」

式子内親王「そこらの端女のように恥知らずじゃないのよ。
 恋ってのは生涯一度くらいで十分なのよ。
 で、後は夫に仕えて暮らすわけ」
男「おいおい。恋愛マスターじゃねぇのかよ」

式子内親王「マスターよ。達人クラスよ。
 ジェダイでいえばヨーダよ。すごい勢いでライトセイバーよ」
男「でも恋愛経験は無しと」

式子内親王「歌とか小話なんて妄想で書くのよっ。
 憧れが臨界ぶっちぎりで半端なリアルを蹴飛ばしたとき
 はじめて脳汁でるような妄想が書けんのよっ」

男「うわやべ。こいつ腐だ」



15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 19:28:55.53 ID:mRlGmdDj0

たまの緒よ 絶えねば絶えね ながらえば しのぶることの よわりもぞする
だったかな


式子内親王(89番) 『新古今集』恋一・1034



18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 19:42:15.89 ID:1u90rza50

>>15
それのひと。
この限りなくマイナーなキャラに対して
一方的に萌えてやるのがこのスレの意義。



16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 19:32:06.45 ID:1u90rza50

式子内親王「あ。男性は別だからね?
 やっぱある程度場数踏んでスマートな態度身につけないとね」

男「へー」
式子内親王「藤原俊成おじさまみたいにねっ!」
男「よく判らんな」

式子内親王「まー。そういうカッチョ良いひとがいたのよ」
男「へー」

式子内親王「カッチョ良いだけなんだけどね」
男「ほー」

式子内親王「だから貴方も相聞歌でも学んでおきなさいね」
男「へーへー。あ?」
式子内親王「?」

男「男には顔も見せないって、ないしんのー。
 俺はいいのかよ? ずっと見まくりだぞ?」

式子内親王「庶民は数に入んないのよ」
男「……」

式子内親王「わたし皇族なのよっ!?」

男(なんかすげーダメ女だ。こいつ)



17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 19:36:24.12 ID:1u90rza50

神無月四日

せっかく未来に来たのだから日記を書いてみようと思う。
清少納言も書いたというあれですよ。

彼女は冬は早朝が良いなどといってるけど、
それは嘘っぱちです。
もう全然嘘。
寒い。
とりあえず寒い。

目がさめると足の先が冷たい。
でもびっくりですよ。男の家にはお風呂があるのです。
湯殿ですよ。庶民の家に温泉が!!
しかも、いつでもはいれる! 温泉だからねっ。

ちょっと気に入りました。
湯治はよいものです!



19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 19:47:14.33 ID:1u90rza50

式子内親王「男ー。男」
男「なんだよ」

式子内親王「湯浴みがしたい」
男「はいれば? すぐそこのドアだよ」

式子内親王「お湯張って」
男「へいへい」

式子内親王「あんまり熱くしちゃだめだからね」
男「ぬるめがいいのね」
式子内親王「そうよ。む、これはなに?」
男「シャンプーだよ」
式子内親王「ああ。髪を洗うのね」

男「あー。おまえ布団引きずって風呂覗き込むなよ」
式子内親王「なによ」
男「濡れたら大変だろ」

式子内親王「むぅ。寒いのよ」
男「早く風呂入ってあったまっとけ」



21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 19:52:00.01 ID:1u90rza50

式子内親王「~♪ 良い湯ね~。さすが未来ね。
 庶民の家にも湯治場がつくりつけとはねぇ」

式子内親王「部屋は一個だけど。まぁ、いいわよね。
 狭いほうが落ち着くしね。生意気な供回りが一人だけど」

ちゃぷーん

式子内親王「髪の毛洗わないと。
 なんだっけ。そうそうしゃんぷね。どれどれ。
 こうかな」

びゅーるーびゅるー

式子内親王「おお。なんか出た」

びゅーるーびゅるーびゅーるーびゅるー

式子内親王「面白いわね」

びゅーるーびゅるーびゅーるーびゅるーびゅーるーびゅるー

式子内親王「無闇にいっぱい出るわね。楽しいわ」



22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 19:56:15.31 ID:1u90rza50

男「あいつ本当に家事しねぇな。生活能力皆無だな。
 一つ屋根の下ストーリーって
 もっとこう甘酸っぱくねぇか? 常識で考えて」

男「漫画ちらかしやがってまぁ。
 ほんと手間のかかるばか女だよまったく」

式子内親王「おとこーっ! おとこーっ!!」

男「どうしたっ!!」

式子内親王「お風呂が泡だらけにっ!」

ぽかっ

男「おめぇシャンプー使い切ってんじゃねぇよっ!!」
式子内親王「ぐっ。なによ! わたし皇族なのよっ!」

男「いいから掃除してから出て来い、あほ」
式子内親王「ふ、不敬罪なんだからねっ!」

男「メシ抜くぞ」

式子内親王「ばかーあほーっ。お前が卵を買うときに
 可愛くてとても食べられないようなカエルの顔を
 卵に落書きするように布告出すからねっ」



24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 20:00:50.90 ID:1u90rza50

男「正真正銘のアホか……」

式子内親王「ばかーあほー」

男「風呂場ででかい声だすな、響く」
式子内親王「むぅむぅ」
男「それでいい」


式子内親王「……」
男「……」

式子内親王「おーい」
男「……」

式子内親王「おーい。男ー。日本国民」
男「なんだよ」

式子内親王「着るもの」
男「あー」

式子内親王「着るものと布団」
男「布団は必須なのかよっ」



27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 20:09:49.54 ID:1u90rza50

式子内親王「むぅ。良い湯だったわ」
男「髪の毛くらいちゃんと拭けよ」

式子内親王「貴方がやりなさい」
男「なんで?」

式子内親王「日本国民でしょ。皇族を敬いなさいっ」
男「敬ってるから自分でやれ」
式子内親王「敬ってるならいいのよ」ふきふき

男「……」
式子内親王「~♪」ふきふき

男「……」
式子内親王「~♪」ふきふき

男「あははは。Vipおもしれーっ」
式子内親王「……。……? ……っ!!」

男「どした?」
式子内親王「何で私が自分で拭いてるのよっ!
 わたし皇族なのよっ!!」

男「麦茶飲むか?」
式子内親王「ええ。ちゃんとお砂糖を入れたのだからねっ」



28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 20:14:28.75 ID:1u90rza50

男「なー」
式子内親王「なによ? むぅ。
 ちゃんと掃除したわよ。お風呂」

男「びちゃびちゃじゃねぇか」
式子内親王「なによっ。文句あるのっ?」
男「いや、まぁいいや」

式子内親王「それでいいのよ。貴方は庶民なんですからねっ」
男「芋ようかん食べるか?」
式子内親王「食べるっ!」

男「……」
式子内親王「もぎゅもぎゅ♪」

男「なー」
式子内親王「なに? あげないわよ?」
男「じゃなくてさ」
式子内親王「なによ」

男「お前腕細いな」
式子内親王「女らしいのよ」
男「いや、細すぎね?」



30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 20:18:40.30 ID:1u90rza50

式子内親王「私くらいの上級者になると腕細いのよ。
 清楚で儚げな深窓の美少女内親王とはわたしのことなわけ」
男「口は相当にあれだな」

式子内親王「黙りなさい。もきゅもきゅ♪」
男「……」

式子内親王「なによなによ。そんな目で見て」
男「別に?」

式子内親王「私、斎院なのよ」
男「斎院ってなにさ」

式子内親王「未来人もモノ知らないわね。
 神社で託宣したり舞ったりする美少女のことよ」

男「ああ、巫女さんか」
式子内親王「うん、それね」

男「巫女は萌えだな」
式子内親王「萌えってなに?」
男「可愛くて素敵な有様のことだ」

式子内親王「内親王である私にとっては当然の賛辞ねっ」
男「いや、巫女とお前は別だから」



31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 20:22:57.56 ID:1u90rza50

式子内親王「まぁ、とにかく斎院っていうのは
 なかなか大変なのよ」

男「なんで? ああ。修行とかか? 舞の練習とか」

式子内親王「それもあるけどね。物忌みとかねー」
男「物忌みってなに?」

式子内親王「んー。まぁ、部屋に閉じこもって断食するのよ」
男「なんでまた!?」
式子内親王「穢れを避けるわけよ。神に仕える身だからね」

男「……ふむ」
式子内親王「このようかん美味しいわね~♪」

男「おまえ皇族なんだし。
 そういう辛い役目は他のやつにやらせればいいんじゃね?」

式子内親王「ばっかじゃない。斎院ってのは皇族しかなれないの」
男「ああ」

式子内親王「しかもとびっきりの美少女しかなれないのよ。
 わたしのような才女こそが相応しいのよっ」



32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 20:27:28.17 ID:1u90rza50

男「でもなー。痩せてまでやることも無いんじゃね?」

式子内親王「いいのいいの。気にしないで。
 皇族なんて別にほかに仕事も能も無いんだから。
 戦いもしないわ畑にも出ないわで
 ご飯食べて贅沢してるんだからこれくらいしないとねー」

男「そういうもんかな」

式子内親王「そういうもんよ。四季を愛でて、漢書を整理して、
 政をやって、たまーに歌を詠んで暮らすのよ。
 やっぱ少年よね。少年の肉のついてない胸板を細く撫でるような
 禁断の少年愛と相聞よっ」

男「おまえって頭わるいのな」

式子内親王「わたしは才媛の誉れ高い皇族なのよっ」

男「シチューライス好きか?」

式子内親王「あれは美味しいわね。
 さすがの皇族もびっくりだわ」

男「んじゃ、今日もそれな」
式子内親王「望むところよっ」



33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 20:32:26.19 ID:1u90rza50

神無月五日

私は痩せているのだそうで、
肉が足りてない、と男が言うわけですよ。
この男は庶民でありながら現在私の家主。無愛想で口が悪いです。

だけど男の作るシチューライスなる物は
すこぶる美味であると記さなくてはなりません。
あれはびっくりグルメです。

思い出しただけでもおなかが減ります。

とにもかくにもこの口の悪い家主は
皇族である私を思うが侭に愚弄する。

もちろん私とて黙っているわけにはいかない。当たり前でしょ。
皇族である誇りに賭けてしかるべき報いを受けさせてやってる。
例えばこのように。



34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 20:37:59.63 ID:1u90rza50

男「つべてっ!?」

式子内親王「すーっ。すーっ」

男「……。おい」

式子内親王「すーっ。すーっ」

男「寝てるのかよ」

式子内親王「すーっ。すーっ」

男「ちっ。冷たい足先を布団に突っ込むなっての。
 お前にはおまえ自身が不当に占領した布団があるだろうが。
 もどしなさいよ、っと」

式子内親王「すーっ。すーっ」

男「まだ早いな。もう一眠り。……ふわぁ、おやすみ」

式子内親王「すーっ。すーっ」

男「冷っ!? お、おまえっ」



36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 20:42:42.04 ID:1u90rza50

式子内親王「すやすや」

男「寝てるのか?」

式子内親王「すーっ。すーっ」

男「寝てるなら鶯のマネを」

式子内親王「ほけきょ」

男「……」

式子内親王「すやすや」

男「お前な。このあほないしんのー」

式子内親王「むぅむぅ。まだ暗いじゃない」

男「なら起こすなよっ!」

式子内親王「足の先が冷たいんだもん」
男「お前は肉が足りないんだよ」

式子内親王「くっ。皇族に対して言いたい放題ね」
男「皇族らしい振る舞いを身につけろっての」



37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 20:47:08.07 ID:1u90rza50

式子内親王「足の先っちょ冷たい」
男「……」

式子内親王「冷ーたーいー冷ーたーいー」
男「どうしろと?」

式子内親王「お布団とっかえて」
男「同じ布団じゃねぇか」

式子内親王「そっちのほうが暖かい」
男「なんで」
式子内親王「体温が違う」
男「そうか」

式子内親王「足の先っちょ冷ーたーいー」
男「わかったよ」
式子内親王「やった!」

男「うっわ、ほんと布団冷たいっ」
式子内親王「私は暖かい」

男「納得いかねっ」
式子内親王「もう寝る。静かにしてね」

男「酷っ」
式子内親王「ぬくーいっ」



38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 20:51:51.94 ID:1u90rza50

神無月六日

昼にはあさりシチューライスを食べました。
あさりシチューはクラムチャウダーという名前らしいですが
私にはアサリの入ったシチューだとしか判りません。

今日始めて知ったのですが、このシチューという食べ物は
未来の倭国の発明ではなく異国からの入れ知恵なのだとか。
どこの誰だかわからないがなんて美味しいものを考えるのだろう。
父に頼んで太子の号を下賜すべきだと思います。

男が帰ってきたので早速からかって遊ぶことにします。



39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 20:57:59.14 ID:1u90rza50

男「ただいまー」
式子内親王「おみやげ」

男「おかえりなさい、はないのかよ」
式子内親王「はいって。遠慮しないで」
男「しねーよ。俺の家だよ」

式子内親王「むぅむぅ」

男「相変わらず布団かよ」
式子内親王「これが落ち着くのよ。この確かな重みと暖かさが。
 十二単に慣れたこの高貴な身体に安心感を与えるの」

男「ヴィジュアル的には着替えるのも不精な
 引きこもりの腐女子にしか見えないぞ」

式子内親王「腐女子萌えね」

男「お前はなにを学習してるんだ」
式子内親王「ちがうの?」

男「まー。そういう性癖のバカも世界には存在するが」

式子内親王「またまたぁ。照れちゃってこのこの」
男「なんだかなぁ」



40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 21:03:06.45 ID:1u90rza50

式子内親王「まあそれはそれとして」
男「なんだー?」

式子内親王「暇。遊びたい」
男「む。漫画は?」

式子内親王「もうハンターXハンター読みおわった」
男「そか」
式子内親王「キルアの新しい能力がすごくてね」
男「黙れ」

ぽかっ

式子内親王「くっ! わたし皇族なのよっ!?」
男「皇族だろうがなんだろうが読んでない漫画のねたはばらすな」
式子内親王「むぅむぅ」

男「ごめんなさいしろ」
式子内親王「すー。すーっ」

男「都合悪くなると布団に隠れて寝るのやめろっ」
式子内親王「口うるさい家主だわ」

男「ないしんのーっ」
式子内親王「判った。云わないわよ」



41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 21:07:20.61 ID:1u90rza50

男「で?」
式子内親王「暇なのデス。なんかして楽しませて」
男「なにを?」

式子内親王「蹴鞠とか」
男「よりによって蹴鞠かよ」

式子内親王「蹴鞠出来ないの?」
男「ああ」
式子内親王「管弦は?」
男「楽器は口笛以外出来ない。そして口笛は下手だ」

式子内親王「うっわ、雅が一切無いわね」
男「ほうっておけよ」

式子内親王「趣味とかなにも無いわけ?」
男「Vipかな」

式子内親王「びぷ?」
男「詮索無用だ」

式子内親王「なにしてるのよ、普段」
男「改めて聞かれると困るな」



42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 21:11:22.82 ID:1u90rza50

式子内親王「この部屋、貝合わせの道具も無いんだもんね」
男「そんなこといわれてもね」

式子内親王「むぅむぅ」
男「スマブラでもやりますか」
式子内親王「あれは男がホームラン攻撃しかしないからいや」
男「さいですか」

式子内親王「むぅむぅ」
男「仕方ないな。管弦は出来ないけど、なんかMP3でもかけてやるよ」
式子内親王「なにそれ」
男「音楽だよ」

~♪

式子内親王「おお!」
男「これでいいか?」
式子内親王「うんっ。風情だよね。やっぱり笙だよねっ」
男「たぶんサックス」

式子内親王「鳴り物だよねっ」
男「それはバスドラ」

式子内親王「鼓と馬頭琴だよねっ」
男「スネアとギター」

式子内親王「ビートルズはいいねっ!」
男「知ってるんじゃねぇか!」



44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 21:16:48.68 ID:1u90rza50

式子内親王「やっぱり暮れかけね。
 こうして楽の音に身を浸しながら見る夕焼けは格別ね」
男「そうかー?」

式子内親王「この部屋、夕焼け綺麗だもの」
男「西日が当たるきっつい部屋なわけですが」

式子内親王「黒い鳥の帰るのが二羽三羽、
 夕日にかかるって風情があってとても良いわー。
 というのには同意するわ」
男「なんだそりゃ」

式子内親王「清少納言よ」
男「聞かなかったことにしよう」

式子内親王「清少納言知らないの!? 有名人なのに」
男「いやそうらしいデツネ。ないしんのーも有名人らしいでつよ」
式子内親王「?」

男「いいんだよ、気にしないで。もうここはこの時代なんだから」
式子内親王「よく判らないわ」
男「馬鹿だからな」

式子内親王「っ! わたしは皇族なのよっ!」
男「はいはい」



47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 21:21:06.71 ID:1u90rza50

神無月九日

男はバイトなるものに毎日出かけます。
仕事だそうです。話を聞いても今ひとつ判りにくいのですが
民草の間にある食事処で給仕のような仕事をしているそうです。
膳の司のようなものらしい。

そういう仕事をしているから、
こんなに美味しいシチューが作れるのかと尋ねたら
すごく嫌そうな顔で教わったのだといいました。
なにがいけなかったのかな?

男のことはよく判りません。
未来人というのは複雑怪奇です。



50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 21:25:30.65 ID:1u90rza50

男「ただいまーっと」
式子内親王「おかえり」

男「おう」
式子内親王「それ、なに?」
男「梨だよ」
式子内親王「おおおーっ!」

男「食ったことあるのか?」
式子内親王「あったりまえよ! 梨っていえば
 日本書紀のも登場する重要な果物なのよ」
男「へー」

式子内親王「はやく、はやくっ」
男「おー。切ってやるよ」

式子内親王「わくわくだね」
男「お前は子供かよ」

式子内親王「未来の梨だよ!? すごいかもよ! 例えばさ!」
男「なに?」

式子内親王「勝手に自分で皮がむけて割れて皿に乗るとか!」
男「……」

式子内親王「で『食ベテ良イヨー』って鳴くのっ!」
男「怖ぇぇぇー」



56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 21:35:03.19 ID:1u90rza50

式子内親王「しゃくしゃく♪」
男「もぐもぐ」

式子内親王「しゃくしゃく♪」
男「どうよ」

式子内親王「これは相当にすごいわね。瑞々しくて
 甘いわ、びっくりよ!」
男「良かった」

式子内親王「ふっ。私もまだまだ甘いわね」
男「なにが」

式子内親王「さすが未来! かってに皮がむけるのも
 捨てがたい魅力だけど、味を進化させたのねっ!
 うかつにもその方向性は想像しなかったわっ」
男「しろよ」

式子内親王「しゃく♪ 美味しいわね~」
男「だなぁ。美味いな」

式子内親王「いつもこんなの食べてるの?」



58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 21:40:50.75 ID:1u90rza50

男「いやぁ、こんなのはめったに食べないな」
式子内親王「あら。もしかしてすごく高価なの?」

男「そういうわけじゃないんだけど」
式子内親王「?」

男「男の一人暮らしだと、
 どうしても果物とかは中々食べないな」
式子内親王「ふぅん」

男「経済的な貧しさというより、
 精神的な貧しさに起因するような気がするな」

式子内親王「雅が足りてないのね」
男「そうなるな」

式子内親王「私がきたから雅やか濃度が上がって
 梨が発生して食べられるようになったわけねっ」
男「まぁ、そうとも云えなくは……ないのか?」

式子内親王「感謝することねっ!」
男「へいへい」

式子内親王「美味しいわぁ。梨大好き!」



59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 21:44:56.64 ID:1u90rza50

神無月十一日

男に臨時収入があったらしいです。
よく判らないがFXで売り抜け大成功などといっていました。
余りにも喜んでいたので、おめでとうね、と云ったら
びっくりした顔をしていました。
礼もいえないと思われていたらしい。屈辱です。

臨時収入でえび入りのシチューライスを作ってもらいました。
びっくりした。
美味しいを越えている。
冬の夜空にひらめく稲妻のように、
一瞬のきらめきの後、遅れるようにして感動が広がる。

なんて素晴らしいご馳走だろう。
えび入りのシチューライス。私の人生に刻まれた。



61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 21:49:47.72 ID:1u90rza50

男「どうした」
式子内親王「感動してるの。美味しぃ~」
男「そんなに好きか」

式子内親王「うん、うんっ!」
男「いっぱい食え」

式子内親王「いいのかな、こんなに美味しくて」
男「たいしたものじゃない」

式子内親王「そんなこと無いよ?
 えびとたまねぎは甘くて美味しいよ?」
男「そりゃ良かった」

式子内親王「うはーん。ご馳走様でしたっ!」
男「お粗末さまでした」

式子内親王「うわぁ、美味しかったよ。私は満足だよっ」
男「そうか」
式子内親王「だいたい清盛とおなじくらいヘブン状態だよっ」
男「Vip用語覚えるのだけはどうにかならんかな」

式子内親王「言葉は文化だもの。覚えちゃうものだよ」



62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 21:54:57.87 ID:1u90rza50

男「もう十日か」
式子内親王「うん?」
男「ちったぁ肉ついたか」
式子内親王「まぁね。多少は。……なによ。
美味しいものにはちゃんと感謝してるんだからねっ」

男「よし、週末出かけるぞ」
式子内親王「えーっ。いやだ。パス」
男「なんでだよ」

式子内親王「高貴な人間は陽の光に当たらないのよ。
 どうしてもというのなら牛車用意してくれる?」
男「この時代のどこに牛車あるんだよっ」
式子内親王「ぇー」
男「えー、じゃねぇよひきこもり」
式子内親王「だって私ニートだもん」
男「胸はるなよ」

式子内親王「別に外出たくないよ。おうちでVipしてるよ」
男「ほんと腐れだな」

式子内親王「む。それでいいのっ」
男「せっかく未来に来たんだしよ」

式子内親王「だって」
男「だって?」

式子内親王「……」



63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 21:59:43.41 ID:1u90rza50

式子内親王「それにさ。ほら、十二単も、
 最初の夜でビリビリになっちゃったしっ!」
男「ぐちゃぐちゃだわな」

式子内親王「着て行くものも無いしさ。
 焚き染める伽羅も無いしさ。扇さえ持ってないしさっ」

式子内親王「えーっと寒いしさ!
 お布団に包まっていたほうが良いと思うよ。
 そうだ! そうしよー! やっぱ休みは家でVipでしょ!」

男「ふーん」
式子内親王「あっ。なんか馬鹿にしてない?
 馬鹿にしてるね。その視線。むぅ。庶民の癖にっ!!
 私は皇族なんだからねっ!!」

男「皇族ならびびんなよ」
式子内親王「怯えてなんかないわよっ」

男「服スレ読んでるとか?」

式子内親王「あそこ読むとマジで外に出て行けなくなるのよ」
男「あー」

式子内親王「生まれてきてごめんなさいな気分」
男「あー」



65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 22:04:23.35 ID:1u90rza50

男「近場回るだけなら、俺の服でも大丈夫だろう」
式子内親王「だって男の服でしょ」

男「そうだよ」
式子内親王「わたし女なんだよ」

男「未来世界では、区別は緩めなんだよ」
式子内親王「男装?」
男「んー。まぁ、そう、なのかな」

式子内親王「男装か……。それって白拍子?
 男装の美少女? うわ、なんか良いかも。タブーにふれる
 ゾクゾク感かもしれない。新しい地平に目覚めそうっ」

男「こいつ脳を開いたほうが良い気がするんだよな」

式子内親王「うーん」
男「行く気になったか?」
式子内親王「……うん」
男「そか。週末な。臨時収入はいったしな」

式子内親王「仕方ないから、皇族のわたしが
 庶民の生活というものをこの眼で確かめてあげる。
 貴方はその随行としてついてくる事を許可するんだからねっ」
男「俺がついていくのか?」

式子内親王「うん」
男「どうにかならんのかなぁ、こいつの言動」



66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/09(木) 22:07:20.83 ID:1u90rza50

神無月十二日

今日は男と遊んだ。オセロというゲームをやった。
楽しい。

最初に4回半ほど負けたが、そのあと学習しましたよ。
16回連続で男を負かしたところで泣いて謝ってきたので
謝罪を受け入れてあげた。
ふふん。皇族には度量も必要なのだね。

そのあと、男の作ったシチューライスを食べた。
今日はかりふらわという野菜が入っているのだという。
ほろほろとくずれてなんとも不思議な味わいだ。

大変美味かったので美味いと伝えると
そりゃ良かったな、といわれた。うむ、良い事だ。



87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 00:53:21.05 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「おなかがいっぱいになった!」
男「おう」
式子内親王「いっぱい!」
男「おう」

式子内親王「他に何かいうことはないのっ?」
男「お前の腹だろうが」

式子内親王「むぅ」もそもそ
男「いい加減布団かぶるのやめたら?」

式子内親王「やだ」
男「さいですか」

式子内親王「……」
男「……」

式子内親王「暇ねー」
男「そうなん? 携帯小説とかは?」
式子内親王「おなかいっぱいでそういう気分じゃない」
男「そっか」

式子内親王「貴方、ちょっと座りなさい」



90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 01:03:42.18 ID:1IBD/bxU0

男「へいへい、なんですか」
式子内親王「頭をこっちに。髪の毛を梳きます」
男「なんで?」

式子内親王「梳きたいから」
男「……」
式子内親王「文句ある?」
男「えー」

式子内親王「わたし皇族なのよっ!」
男「へいへい」

式子内親王「む。頭の位置が低いわよっ」
男「そうか? こうか?」

式子内親王「今度は高すぎよっ」
男「ぐぐ、なんかすげぇ不自然な姿勢だな。
 なんか腰の角度が……っパなくキツイんすけど」

式子内親王「惰弱な意見ね。普段の修練のほどが知れるわ」

男「屈辱ポーズの練習なんかしてねぇよ」

式子内親王「むー。だらしないわね。ここに来なさいっ」

 ぎゅむっ

男「……」



92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 01:08:42.75 ID:1IBD/bxU0

しゅるん、しゅるん♪

式子内親王「ふんふん♪」
男「……」

式子内親王「おお。しゅるん♪」

男「えっと。なんだ。楽しそうな」

式子内親王「黙りなさい平民。あなた、これはかなり
 光栄なことなのよ。感謝のあまり失禁しないように
 気をつけたほうが良いくらいよっ」

男「そうかなぁ」

しゅるん、しゅるん♪

式子内親王「髪を梳くなんて楽しいわ」
男「そうなんか」

式子内親王「指の間をするすると抜けていくの。
 ひんやりして小川の小魚のよう」
男「そんなたいした髪じゃない」

式子内親王「歌人ってのは主観的な心理領域の住人なのよ」



93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 01:13:00.06 ID:1IBD/bxU0

男「なんか、くすぐってー」

式子内親王「我慢なさい」

しゅるん、しゅるん♪

式子内親王「ふんふん♪」
男「むー」

式子内親王「ん。出来た」
男「変な髪形になったりして無いだろうな?」

式子内親王「失礼ね。梳いただけよ」
男「そっか。何の意味があるんだ?」

式子内親王「意味?」



94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 01:17:04.75 ID:1IBD/bxU0

男「髪型変えるんじゃなければなんだ?
 整えたのか? 洗髪的な発想か?」

式子内親王「意味なんて無いわよ?」
男「そうなのか」

式子内親王「ただの遊びよ」
男「まぁ、いいけど」

式子内親王「?」

男「くすぐったかったけど、気持ちよかった。
 髪の毛触られるのって悪くないなー」

式子内親王「うっ」

男「なんかお前が来て始めて癒された気がする」

式子内親王「わたし皇族なのよっ!
 庶民としてもっと敬いの気持ちを持ちなさいっ」



95:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 01:22:02.31 ID:1IBD/bxU0

神無月十二日

男の髪を梳いてしまった。
楽しかった。

困ったことにちょっと気持ちよかった。



96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 01:26:03.82 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「……むーっ、Webも目が疲れたわね
 おとこー、おとこー。麦茶のみたーい」

しーん

式子内親王「そだった。男は出仕……じゃなくて
 バイトいってるんだった。自分で入れなきゃね」

いそいそ

式子内親王「んきゅっ。んきゅっ」

式子内親王「それにしても……。850年だもんねー。
 そりゃ倭国も様がわりだわっ。全然さっぱり判らないし。
 歴史とかもあり過ぎでよく判らない。
 異国に負けるのはともかく西域じゃなくてそのもっと
 向うと戦争するとはね~」



97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 01:30:12.69 ID:1IBD/bxU0

くりっく、くりっく。

式子内親王「なんか色々変わっちゃってまぁ。
 変わってないのは月と四季と山々くらいのものね。
 ――なんだ。じゃ問題ないじゃないね」

式子内親王「……」

式子内親王「いやいやぁ。乙女の身だしなみも基準も
 大変更でつよ。もう偉いことでつよ」


式子内親王「だいたいねっ」

どんっ!

式子内親王「戦争に負けたからミニスカートが
 流行るってのはどういう了見ですかね」

式子内親王「あんなはしたない衣装が流行って……。
 っていうか、衣装じゃないよねっ。
 むしろ衣装の欠如だよねっ!!」

式子内親王「む、わたしいま良いこといった? いった?」



98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 01:34:15.64 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「とにかく、あんなのが流行るとは
 我が神国日本も大没落ですよ!
 別雷命のサンダガですよ。皇族として看過できない
 重大な事態ですよっ。それになんですかっ。
 おっぱいまで半分だしちゃってまぁ! 護国の危機ですよっ」

しーん

式子内親王「……」

式子内親王「やっぱ時代時代の服装ってのはあるわけだし
 時代時代の美醜の感覚ってのもね……」

式子内親王「えーい! そういうとこまで負けてどうするのよっ
 えいっえいっ。このえっちっちフォルダめっ!」

くりっく、くりっく。

式子内親王「こっちは国産4祈祷エンジンなのよっ。
 祈りの力よ神風よっ。無駄な肉がないっ。
 空力特性に優れたシンメトリカルデザインなのよっ。
 高速巡航時の安定性に優れた貧乳よっ。
 だいたい貧しいって文字がいけないわ。
 清貧よ。いやむしろ積極的な入寂思想よっ。
 エコロジーっ! それは地球に優しくわたしに優しくないッ。
 ふーっ。ふーっ」

式子内親王「うわぁ。でかけたくないー。ひきこもってたいーっ」



99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 01:39:10.54 ID:1IBD/bxU0

神無月十四日の一

審判の日が来てしまった。
朝早く目が覚めたので男に内緒でお風呂の準備をする。
正直気が重くてしょうがないのです。
外になんか出かけたくない。
きっとわたしは過去人間として
未来人の中で笑いものになるのでしょう。
余りにも気が重くて腹が立ったので、
男の枕をそっと抜いてやった。首が痛くなると良いのに。

そんな悪戯はさておき、あれでもいまは家主です。
好意を持って外に連れ出してくれるというのだから
恥をかかせるわけにもいきません。
湯浴みを済ませなければ。
今日は布団をかぶっているわけにも行かないのです。

ああ! 雷とかふらないでしょうか!!



101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 01:43:12.34 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「こ、こうかな?」
男「おう、いんじゃね?」

式子内親王「どっかおかしくない?」
男「平気だよ」

式子内親王「ちゃんと見なさいよっ」
男「見たってば。シャツもいい感じだし、いんじゃね?」
式子内親王「むぅむぅ」

男「なんだ? 布団がないと不安なのか?」
式子内親王「そんなことないわよっ。
 わたしは皇族なんだからねっ! 臆病で惰弱な
 態度とは無縁の世界の王者よ。ヘラクレスオオカブトよっ」
男「んじゃいくか」

式子内親王「ちょっと、まっ! あ、あのっ」
男「なんだよ」

式子内親王「顔を隠す扇がないよ……?」
男「未来ではそういうのは使わないんでーっス」

式子内親王「ううう。何で皇族たる私が下賎の
 女のような恥辱をっ」

男「ほら。いくぞー」



103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 01:47:49.70 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「街だ……」

男「お前、初めて空中から現れたときは
 夜中だったもんな~。昼間の街は初めてじゃね?」

式子内親王「うん」

男「緊張してるな」
式子内親王「う、うるさいっ。多少は仕方ないのっ」

男「まぁな」

式子内親王「な、なんか。目立ってない?
 あたし、じろじろ見られてないっ!?」
男「あー」

式子内親王「や、やっぱり何か変かな!?
 未来人のコスプレしてるのがばれたかなっ」
男「せめて変装って云えよ」

式子内親王「隠しきれない皇族のオーラが
 高貴な波動となって私に注目の熱い視線を
 注がせてるのかなっ」
男「あー」

式子内親王「ど、どうしよっか!? おうちに戻ろうかっ。
 そ、そ、それとも戦りますかっ。おめおめと
 虜囚の憂き目はみないんだからねっ」



104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 01:52:09.06 ID:1IBD/bxU0

男「おちつけ」ぽかっ
式子内親王「むうっ」

男「別にとって食われりゃしないよ」
式子内親王「判らないわよっ。850年もたてばっ」

男「つまりな。お前の髪の毛が長くてだな」
式子内親王「へ?」

男「この時代には、そんな腰まであるような
 ロングのストレートの立派な黒髪ってのは少ないんだよ」
式子内親王「へ? あ。そういえば、見ないわね……」

男「だから見てるんだよ」
式子内親王「髪は女の命よ」
男「そうな」

式子内親王「いいの? 隠さなくて?」
男「別に、珍しいだけで悪い事してるわけじゃないんだよ。
 それに……。あんまりその髪が綺麗ですごいから
 みんな見とれてるだけだ」

式子内親王「……綺麗かな」
男「ああ、綺麗だぞ。ちょっと見ないくらいな」

式子内親王「そか……。ま、まぁねっ! わたし皇族だからねっ」
男「やれやれ」



105:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 01:56:35.05 ID:1IBD/bxU0

男「とりあえずここだ」
式子内親王「ここは?」

男「あー。服を買うところだ」
式子内親王「ふむふむ」

男「ないしんのーの今着てる服は俺のなので」
式子内親王「そうよ?」

男「ここでもうちょっと女向きのに変える」
式子内親王「十二単とか?」
男「ねーよっ」

式子内親王「ううう。よく判らないから任せるわ」
男「俺だって男だから判らねぇよ」

式子内親王「……」
男「……」

式子内親王「じゃぁどうすんのよっ! 役立たずっ!」
男「とにかく入るぞっ」

店員「いらっしゃいませ~」

式子内親王「う、うかがい、まし、ました」
男「そういうのは云わなくていいの」



106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 02:02:19.71 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「(小声)じゃ、ど、どうすんのよっ」
男「(小声)任せろ」
式子内親王「(小声)う、うんっ」

店員「どうされましたー? お見立てしましょうかぁ?」

男「あー。うん」
式子内親王 びくびく

男「こいつ、帰国子女なんです。服がないから適当に見繕って
 くれません? えーっと、予算は、これ、こんなもんで。
 ものとしては上下一式に、下着は四セットくらいと、
 シャツかワンピか二枚くらいで。
 ――で、いいよな?」

式子内親王 びくっ。こくこく。

店員「判りましたぁ。あの、日本語のほうは……」

男「あー。文法とか単語とか怪しいけど、大体はー」

式子内親王「(小声)何いってるのよ。あんた達のほうが
 大和言葉が乱れきってるでしょっ!!」
男「(小声)だーっ。今はあわせておけよっ」

店員「判りました~。あらあら、美人なお嬢様ですね!
 こちらへどうぞー。採寸だけ先にしますね~」



108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 02:06:46.60 ID:1IBD/bxU0

神無月十四日の二

正直かなりいっぱいいっぱいでした。
斎院になるための修行の日々がなければ
心を砕かれてしまっいましたよ。まったくもう。

あの店員のうるさいこと!
もちろんそういう女房(※1)はあの頃もいたわけだけど、
耳元でかしましいこと、この上ありません。
何度口の中に冬瓜を突っ込んでやろうかと思ったか!

結局、黒と白の服を選んでもらいました。
とにもかくにも露出の少ないものをという
希望を出した末にぐるぐる回り道をしての洗濯です。

この時代の服はどれも布地が少なすぎ軽量すぎます。
そしてなにより、肌の露出が多すぎます。
それはそれで時代の特徴だと思うので尊重しますが
皇族の私が慎みのないような装束を着るわけにもいかないのです。

男に奇異の目で見られなければ良いけど。


※女房:女性の使用人。和風宮廷メイド。



109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 02:12:13.18 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「むぅ」
男「どうした」
式子内親王「疲れた」

男「そっか。……そこ、座るか」
式子内親王「うん」

男「なんか飲むか?」
式子内親王「いらない」
男「固くなるなよ。少しは慣れたか?」
式子内親王「少しはね」

男「服はどうだ?」
式子内親王「やっぱり十二単に比べると軽くて頼りないわね」
男「ふむ」

式子内親王「でも、この服は好きかな。だって脚も黒くて
 露出が全然ないし! 軽くて頼りないのは一緒だけど
 布地は多いしね。それになにより、歩きやすいわね。
 それだけは認めなくっちゃ」

男「女も出歩く時代だからな」



110:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 02:16:17.56 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「おとこっ」
男「なに?」

式子内親王「えーっと。それで、どうなのよっ」
男「何が?」

式子内親王「この衣装よっ」
男「あー。うん、いい値段だったな」

式子内親王「えっと、ありがとね。
 いつもお世話になって服まで買ってもらって
 この服も気に入っていて嬉しいです。はい。
 私もあなたに奉仕されて感謝しています
 ってそういうことじゃなくてッ!」
男「ふむ?」

式子内親王「どっか変なところはない? ってことよ」
男「ないよ」
式子内親王「む、むぅ」

男「だいたい買ったばっかりで変だったら不良品だろ」

式子内親王「馬鹿じゃないっむーっ」ぽかっ

男「う、ううっ」
式子内親王「そうじゃなくっ」

男「うー?」



111:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 02:21:23.98 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「もういいわ。んで、次は何?」

男「いや。服も買ったし、昼飯食って、散歩したし。
 海も見えたしな、遠くにだけど」

式子内親王「ええ。そうねっ。あれは綺麗だった♪」

男「海は見たことあるのか」
式子内親王「まぁね、沢山じゃないけど」

男「夜ご飯なんだけど、どうする? 何か希望があるか?
 食べてみたいものとか。ネットばっかりやってるから
 いろいろ知ってるんだろう?」

式子内親王「ホットドッグは中々美味だったわね」
男「そうかそうか」
式子内親王「でもやっぱりご飯が食べたくなっちゃうところが
 日本民族なのよね。〆にはそれって云うか」

男「夜はご飯にするか?」
式子内親王「男のシチューライスがいい」
男「いいのか? なんか外食奢るぞ?」
式子内親王「ううん。それがいい」

男「そっか、んじゃ。帰るかっ」
式子内親王「うんっ!」

男「……あーっと。服さ。似合ってるぞ?」



112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 02:27:07.95 ID:1IBD/bxU0

神無月十四日の三

夜は家に帰ってシチューを食べました。

男の作るこの料理にはいわく云いがたい
摩訶不思議な成分が含まれていて恥ずかしながら
皇族のわたしとしてもその魅力には抗し難いのです。

本日のシチューには牡蠣が入っていました。
有明のですよ。
未来でも中々のご馳走なのだと、男が言っていました。
一緒に買い物に行ったので、梨もかってきたのです。

未来の食生活はワンダフルです。
びば! 未来!
びば! シチューライス! フォーエバー!



113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 02:34:47.21 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「ごちそうさまっ!」
男「お粗末さまでした」

式子内親王「やっぱりシチューは神の食べ物ね」
男「そうかなぁ」

式子内親王「そうよそうよ。あなたもVipのみんなも
 シチューに対する評価が低いと云わざるを得ないわね」

男「スレ立てたのかよ」

式子内親王「もう学習したのよ。美少女斎院はこの程度の
 技術はあっというまに習得できるわけ」
男「なんかダメ人間化がすすんでるような」

式子内親王「いいのいいの。ああ、美味しかったぁ」
男「うわ。食ってすぐごろごろし始めたっ」

式子内親王「心地よいのよ」
男「っていうか、せっかく買ってやったのに
 帰ったら速攻で脱いで布団装着かよ」

式子内親王「これが落ち着くんだもの」
男「なんだかなぁ」

式子内親王「暖かいし重いし隠れられるし最強よ」
男「こいつ変な皇族だ」



114:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 02:40:01.52 ID:1IBD/bxU0

男「あーそうだ」
式子内親王「なに?」

男「これやるよ」ぽいっ
式子内親王「?」

男「香水だよ」
式子内親王「香水? 香を水に移したものだったよね」
男「うん」

ふわっ

式子内親王「あ。これ……」
男「うん」
式子内親王「伽羅だ」
男「そう」

式子内親王「あ、あなたっ。こ、こ、これどうしたのよっ!
 はや、はやっ」
男「え? え?」

式子内親王「どこから盗んできたのよ、こんな高価なものっ!
 正倉院の宝物庫からでも盗んできたの!? まさか殺し
 までしたんじゃないでしょうねっ!!」

男「違うっての!」



115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 02:44:31.52 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「そ、そっか。この時代じゃそこまで高価で
 貴重な宝物でもないわけね?」

男「まぁそうだな」

式子内親王「でも……。うん、ありがとうね。
 懐かしい。沈香なんてかっこいい贈り物だよっ」
男「お、素直に感謝された」

式子内親王「失礼なっ。わたし皇族なのよっ!
 しかるべき時に謝意を示す言葉くらい覚えてるわっ」
男「気に入ってくれりゃいいよ」

式子内親王「……」
男「……」

式子内親王「ちょっと、つけてみよかな」
男「うん、いんじゃね?」

式子内親王「う、うん。じゃ……」
男「……」

式子内親王「……こうかな」
男「ちょこっとで良いらしいぜ?」

式子内親王「ん。判った」



116:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 02:49:30.62 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「どうかな? 甘くて落ち着く匂いだよねっ!」
男「えーと」

式子内親王「わっかんないかなぁ」
男「面目ない」

式子内親王「んー。もっとこっちこっち」
男「いや、良いから」
式子内親王「いいから、じゃないよ。確認しなきゃっ。
 ほら、ここのね、首筋にね。いま髪かきあげるからね?」

ふわり。

男「っ!」
式子内親王「判った?」
男「お、おう」

式子内親王「すごいよね。有難うねっ!」
男「おう」

式子内親王「?」
男「なんでもない」

式子内親王「いやいや。見直しましたよ、男を!
 こんなさりげない必殺プレゼントを持っているとは
 まるで殺人ウィルスのように危険だよねっ」
男「どんなだよっ!」



121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 03:24:58.73 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「これはさすがに何かお返しをしないとね」
男「いや、いーから」

式子内親王「むー。なによ。
 わたしの好意がいやだというの?」
男「ないしんのーの好意は
 たいてい迷惑な結果を生むからなー」

式子内親王「失礼な男ね。なにが欲しいの? 地位? 金?」
男「お前持ってるのかよ」

式子内親王「……えー」
男「だから気にするなって」

式子内親王「そういうわけには行かないわ。
 これでもわたしは皇族なのよっ」
男「まったく無駄にプライドが高いんだから」

式子内親王「とは云ってもねぇ。あっちの時代なら
 金子でも衣冠でも授けてあげられるんだけど……」

男「だからいいっての」

式子内親王「む!」
男「?」

式子内親王「む。来たっ。これよっ!!」



123:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 03:30:14.04 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「閃きましたっ。私の財産! それはこの
 美貌と才気、そして鍛え抜かれた知性」
男「どうかなぁ」

式子内親王「そして恋愛マエストロとしての高名!」
男「あー」

式子内親王「わたし自らが恋愛相談に乗ってあげるわっ」
男「いらね」

式子内親王「うりうり。どうなの? 気になる娘の
 一人でも二人でも三人でもいないの?
 私に相談すればどんな悩みでも一発撃沈よ?」

男「恋愛経験皆無じゃねぇか、お前」

式子内親王「気になるスイートハニーがいないなら
 将来の彼女のために時代を超えたアドバイスを送るわよ?
 男だって年頃もいいとこなんだから。むしろそろそろ
 結婚してて当たり前でしょ?」
男「850年前と一緒にすんなよ」

式子内親王「男は素材は悪くないんだから、
 もうちょっと磨くところを磨けばイイ線いくよ?」

男「……」



124:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 03:34:59.62 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「ふふふふ。さくっと白状しちゃって
 この恋愛☆天使まじぇすてぃっく内親王に
 どかんと白紙委任しちゃいなさいっ」
男「怖っ」

式子内親王「なになに? 大体年齢は12歳くらいで
 つるんとした幼女が良いの? おうけーおうけー。
 平安じゃむしろ当たり前だからっ!」

男「うっさい」

式子内親王「……っ。そんなこといわないでさっ。
 そんなに怖い顔しないで。内親王に相談してみなさいよ。
 インド人だってびっくりよ」
男「余計なお世話」

式子内親王「余計なお世話ってことないでしょっ。
 せっかく私が恩返ししようとしてるのにっ」
男「それが余計なお世話なんだよ。誰も頼んで無いだろっ」

式子内親王「……」
男「……」

式子内親王「あ、あのねっ」
男「うるさいっ。この話題終了っ」

式子内親王「……」
男「いまから寝ます。準備しなさい」



126:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 03:39:37.47 ID:1IBD/bxU0

――。
――――。

式子内親王「……」
男「……」

式子内親王「寝ちゃった?」
男「……まだ」

式子内親王「……」
男「……」

式子内親王「あのね、さっきのはね」
男「だいたいさ」
式子内親王「うん……」
男「俺がそんなにがっついて見えるのかよ」

式子内親王「……」
男「……」

式子内親王「そんなの判かんないよ。
 ……男の人と付き合ったことないんだもの」

男「恋愛のプロフェッショナル、迷える子羊の導き手じゃ
 なかったのかよ。ないしんのー」

式子内親王「うー」



128:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 03:44:15.26 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「じゃさ。じゃさっ」
男「暗い中で騒ぐなって」

式子内親王「後朝の歌はどうなのよ?」
男「きぬ、ぎぬの、うた?」

式子内親王「そうよ。重要でしょ。男の器量が問われるわよ」
男「なんだそれ。そんなの知らないぞ」

式子内親王「なにって。あるでしょ? 後朝の朝に」
男「きぬぎぬのあさ、ってなんだよ」

式子内親王「それは、そのぅっ。ほら、あれよ。
 男の人が……。その、好きな女の人のトコにね。
 夜にね。その……尋ねていってね……。んっと」

男「ああ。夜のデートか」
式子内親王「そうそう! 夜のデートよっ!」

男「夜這いだろ、つまり。えろえろか」
式子内親王「っ! なんであなたはそういうことに
 剛速球なのよっ。馬鹿っ。あほあほっ!」

男「蹴るなよ。暴れ動物っ」
式子内親王「ふーっ。ふーっ」

男「で、何の話なんだ?」



130:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 03:50:14.57 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「えっと、だから、ちょっと特別な
 『夜のデート』を終えた朝が後朝の朝なのよ。
 で、その朝に男が女に送る和歌が、後朝の歌よっ」
男「ふむ」

式子内親王「これの出来が男のランクを表すわけよっ。
 腕の中に抱きしめた愛しい女性っ!
 ついに溶け合った二人の体温っ。
 紫雲たなびく桃源の野に遊んだ二人を引き裂く朝の光っ。
 夜の帳で交わしたとろける蜜のような睦言。
 その余韻醒めやらぬ前の追撃安価よ!!」

男「最後の行で台無しだぞ、お前」

式子内親王「それがつまり、後朝の歌なの」
男「判った判った」

式子内親王「判った? んじゃ作って」
男「へ?」

式子内親王「作・る・のっ。じゃなきゃ採点できないでしょっ」
男「何でそんなもん作るんだよっ」

式子内親王「男は和歌作る経験がないから、
 後朝の歌で苦労するでしょ?
 今のうちに作っておけば安心じゃない」



131:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 03:54:34.97 ID:1IBD/bxU0

男「あんな。そもそもそんな習慣は現代にはないの」
式子内親王「……そんなの」
男「?」

式子内親王「そんなの、知ってるわよっ。馬鹿っ。
 でもしょうがないでしょっ。今のわたしには
 他に出来そうな恩返しがないんだからっ」
男「……」

式子内親王「こんなことしか出来ないんだから
 あなたも付き合うくらいはしなさいよっ」
男「ったく。はぁ~」

式子内親王「……」
男「だいたいさ、それって好きな女を抱いて
 嬉しい気持ちを歌うんだろ?」

式子内親王「そうね。もう一度会いたい、とか。
 夢のような時間でした、とか。
 そういうのがメインテーマね」

男「百歩ゆずって、いまは無いような習慣の和歌を
 作るってのはいいよ。でもさ、好きな相手もいないのに
 そういうの作るって違くねぇか?」



132:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 03:59:32.36 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「君待つと閨へもいらぬ真木の戸に
 いたくなふけそ山の端の月――」

式子内親王「ううう」

式子内親王「自分の心臓の音がばれちゃいそう」
男「……そだな」

式子内親王「こんなに緊張したのは宮入り以来よ」
男「俺も同じだ」

式子内親王「覚悟完了?」
男「うん」

式子内親王「判ったの?」
男「判った」

式子内親王「本当に判ったのっ?」

男「俺も内親王の事、好きだ。後朝の歌、作らせてくれ」

式子内親王「内親王じゃない。式子って呼ぶことっ」
男「了解」



134:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 04:05:34.16 ID:1IBD/bxU0

ごそごそ、ごそ。

式子内親王「んぅ。ふふふっ。男のお布団侵入!」
男「うわ、ひゃっこい。」

式子内親王「ごめんね。体温低いのよ。わたし」
男「まぁなぁ。最初っからだもんな」

式子内親王「うん。自分でもちょっと困る。
 えっと……だから。あのさ」

男「なんだ?」ぎゅっ

式子内親王「あ……」
男「どした?」

式子内親王「ううん。こうされたかっただけ」
男「そっか」

式子内親王「男……。背中、なでなでしてる」
男「うん。してるよ」

式子内親王「手つきがやらしい」

男「あんなっ。こういうのは仕方ないだろっ」
式子内親王「ふふふふ」



135:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 04:09:41.16 ID:1IBD/bxU0

男「えっとさ。……今更云うのもあれだけど」
式子内親王「なに?」

男「いいのか? お前。ほらさ、曲がりなりにも
 斎院っていうのとか、それに……皇族なんだろ」
式子内親王「うん」
男「……」

式子内親王「でも良い。やめる」
男「そんなあっさりと」

式子内親王「男のものになりたいの。
 神様のものだった身体も、父様のものだった名前も、
 皆のものだったこの心も。
 全部、
 ぜんぶ男のものになりたい」
男「――」

式子内親王「男に抱きしめられて、男を抱きしめて。
 押し広げられて、持ち上げられて、波にさらわれて
 風に打ち上げられて、月まで、星まで届きたい」

男「……。うん」

式子内親王「大好き」
男「大好きだ」



136:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 04:14:10.90 ID:1IBD/bxU0

神無月十五日 未明

やってしまった。
やってしまいました。
それだけは絶対してはいけないと思ってたこと。
でもどうしてもどうしてもしてみたかったこと。

男と肌を重ねてしまいましたっ。

好きだったです。
隠してきたけど、八つ当たりしてきたけれど。
一番大好きになってしまっていました。
一緒にいたくて、じゃれたくて、我慢できなくて。
どうしようもないほど破裂して、触れてしまいました。

困ってます。大ピンチです。斎院としても皇族としても
抹消措置レベルの大失態。絶対やってはいけないことなのに。

なのに、幸せです。
幸せすぎておかしくなりそうです。
恥ずかしくて、嬉しくて、からだの中全部が
甘い蜂蜜で満たされたみたいにじんわりと幸せで
こうして日記を書いていても、にやにや笑いが止まりません。
困ったなぁ。
全然困った気分になれなくて困ったなぁ。



138:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 04:18:15.06 ID:1IBD/bxU0

男「たっだいまっと」
式子内親王「おかえり~っ」
男「ん? なんだ?」

式子内親王「おかえりなさいっ」
男「うん」

式子内親王「……」ぽむぽむ
男「……」

式子内親王「……んっ」ぽむっ
男「それ、なに?」

式子内親王「ここに来なさいってこと」
男「ふむ? まぁ、行くけどさ」

式子内親王「うぇ~いっ!」だきっ
男「なにすんだ。おまっ」
式子内親王「うへへへへ」ぎゅむっぎゅむっ

男「布団お化けかっ。お前はっ」
式子内親王「おーばーけーだーぞーっ」ぎゅーっ



141:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 04:28:08.30 ID:1IBD/bxU0

男「ないしんのーは子供ですかっ」
式子内親王「だってこうしたかった」じぃっ
男「う゛」

式子内親王「それにですねっ」
男「なんだよ」
式子内親王「今なら特別サービスで、布団お化けの
 布団の中をこっそり見せるよ?」
男「え?」

式子内親王「(小声)見たい?」
男「……えーっと。うん」

式子内親王「えちぃよ?」
男「う、うん」

式子内親王「ふーふーふーっ」
男「……うう」

式子内親王「ちらりっ♪」
男「うっわ。……ないしんのー。それ犯罪だろ」

式子内親王「ふえ?」



142:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 04:32:48.70 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「そかな。こないだ買ってもらった
 下着なんだけどな。かなり可愛い気がするんだけど」
男「いや、その……黒髪が絡み付いて、えろい」

式子内親王「……」
男「……」

式子内親王「あはっ。あは」
男「あはは」

式子内親王「……」
男「……」

式子内親王「いや、ごめんね」
男「こちらこそ」

式子内親王「こほんこほん。おーばーけーだーぞーっ」
男「布団お化けかっ。お前は~っ」
式子内親王「うへへへ」ぎゅーっぎゅーっ
男「君は子供ですかっ」

式子内親王「……後でもっとしてもいい?」
男「こほんこほんっ」
式子内親王「お化け、えちぃこと要求する」
男「えっと、うん。……します」

式子内親王「うぇ~いっ!」だきっ
男「~っ!」



144:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 04:37:23.10 ID:1IBD/bxU0

神無月十八日

ゆらゆらと揺れる天秤の上のような気分で毎日が続きます。
とても困ったこと。とてもまずい事をしている。
絶対に秘密にしなくてはいけないのだけど
こっそりと逢引を重ねているのが幸せでたまらないのです。

男がバイトに行っている間も男の事を想うのです。
自分の中にこんなに憧れに似た強い気持ちがあるのが驚き。

このままでは馬鹿になってしまう!!
確かに道に外れる恋をしているかもしれないが
わたしはこれでも才女で鳴らした式子内親王なのだ。

あまり馬鹿になるわけにはいかない。
馬鹿になったら男にだって嫌われてしまうのです。
これからはクールな知的女性でいくのだ!!



146:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 04:41:55.82 ID:1IBD/bxU0

男「ないしんのー」
式子内親王「つーん」
男「?」

式子内親王「つーん」
男「熱出たのか?」
式子内親王「違っ」

男「ふむ? まぁいいか。梨むけたぞ」

式子内親王「っ! ぅぅ。ぅ。つ、つーん」
男「なんだよそれ」

式子内親王「クールな才女皇族っ」
男「そうなのか?」

式子内親王「そうなのよ」
男「判ったから、梨を食うぞ」

式子内親王「わたし才女?」
男「うん、才女、才女」

式子内親王「じゃ食べる」
男「おう」



148:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 04:46:33.74 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「しゃくしゃく♪」
男「もぐもぐ」

式子内親王「甘くて瑞々しくて、美味しいっ」
男「お前梨好きだもんな」

式子内親王「うん、大好きっ」
男「……」にこっ

式子内親王「はっ! ま、ま、まずい。これではわたしの
 知的才女のイメージがっ。食べ物をもらって喜ぶ
 腹ペコキャラだと誤解されかねないわっ!」
男「理解だろ」

式子内親王「うう、こんな梨なんて。梨なんてーっ」
男「おいおい」
式子内親王「しゃく♪ 美味しいわ~っ」
男「……」

式子内親王「でも美味しいのは男と一緒に食べるから!」
男「そっか。んなら……嬉しいけどよ」

式子内親王「やっぱ男の一人もいない恋愛歌人は
 役立たずねっ。妄想だけでは出会えないこのリアルさよっ」
男「腐はなおらないんだなー」



160:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 09:23:59.63 ID:1IBD/bxU0

神無月二十日

玉の緒よ絶えねば絶えね長らへば 忍ぶることの弱まりもぞする



161:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 09:29:33.02 ID:1IBD/bxU0

男「うっわ。最悪だな」

ぴかっ!!……ゴゴーン

男「近いし、全身びしょびしょだ。
 10月になっても台風とはね~まいるねこれは」

がちゃん

男「ただいまー。ないしんのー」
式子内親王「おかえりなさい」

男「やられたー。途中で降られたよ~」
式子内親王「雨でびっしょりだー」

男「うん。お風呂はいる。スイッチ入れて」
式子内親王「うん」

とてとてとて

男「おーい、ないしんのー」
式子内親王「なーにー」

男「からだ冷えてる。このままはいるー」
式子内親王「わかったー」



162:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 09:33:53.27 ID:1IBD/bxU0

じゃぷーん。

男「うっわ、暖まるな。生き返る~」

男「ふぅ~」

男「あったけぇー」

男「んー。あいつとももう二十日かー。
 最初はどうなることかと思ったけど、このごろは
 なんか……いいよな」

男「今日はなに作ってやろうかな。部屋の掃除してるかな?
 まぁ、いっか。してやれば。あいつ寒がりだからなぁ。
 今日なんか布団の中でずっと寝てたんじゃないかな」

男「にんじんとたまねぎと……。今日はベーコンで
 作るかな。こんどラヴィオリ入りのもつくるか」

ざざーん。きゅっきゅ。

男「あいつ、本当に美味そうにくうからな。
 皇族なのですよっ。なんていってもスプーン完全装備だし」

男「ま。その辺が愛しいんだけどな」



163:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 09:39:26.62 ID:1IBD/bxU0

神無月二十二日

今日は男と一緒にシチューを作った。
男は別に良いよ、座ってて、といったのだが
あれはどうもわたしを軽んじているきらいがあるのです。

たとえ男の恋人になったとはいえわたしは内親王!
卑しくも皇族です。
シチューライスのひとつくらい作れないでどうするのですか。

このあいだVipをよんでたら
「料理の出来な女は死ねばいいと思うやつの数→」
なんてスレが立っていたことはこの際一切関係がなく
わたしのプライドの問題であると言い切れます。



164:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 09:45:20.35 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「わ。わわっ」
男「ころころ転がさないで」

式子内親王「ジャガイモが逃げたのよっ」
男「本当に不器用な」

式子内親王「……屈辱的だわっ」

男「包丁は危ないから、こっちのピーラー使って」
式子内親王「ぴらー?」

男「皮むきだよ。こうやって持って」
式子内親王「ふむふむ」

しゃぁー。

男「こすると皮がむける」
式子内親王「おーっ!」

男「理解?」
式子内親王「うんうんっ。わたしにもやらせなさいっ」
男「ほい」

しゃぁー。

式子内親王「おお、剥けた!」
男「その調子」



165:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 09:49:27.84 ID:1IBD/bxU0

男「じゃこのにんじんの皮剥いて」
式子内親王「わかったわ。この美少女内親王に任せなさいっ」
男「俺はこっちのジャガイモ剥くからな」

しゃー。

式子内親王「おっ」

しゃー。

式子内親王「おおっ」

しゃー。

男「どうだ」
式子内親王「絶好調ね」

しゃー。

式子内親王「楽しい~。無駄にいっぱい剥ける!」

男「あほですか」 ぽかりっ
式子内親王「むぅむぅっ! なんでぶつのよっ!」
男「君の食べてきたシチューにはこんな薄膜作りの
 にんじんが入ってましたかっ」

式子内親王「うう。全部やっちゃった……」



166:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 09:53:51.89 ID:1IBD/bxU0

男「で、肉を炒めながら入れて」
式子内親王「海老とか?」

男「魚介は火を通しすぎると身が固くなることが
 多いので、後入れでやる」
式子内親王「勉強になるわね」

男「んで、野菜も一緒に入れる、と」
式子内親王「野菜も。ほほう」

男「ここで弱火に」
式子内親王「弱火に」

男「コンソメの元投入」
式子内親王「こそめね。わかった」

男「で、お湯を入れる」
式子内親王「お湯ね。じゅる」

男「悪を取りつつ牛乳もいれる」
式子内親王「牛乳。じゅる」

男「そんでシチューのもと」
式子内親王「じゅるじゅる」

男「いいからよだれを拭け」
式子内親王「はっ!?」



168:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 10:00:27.59 ID:1IBD/bxU0

神無月二十五日

本日は男がおやすみだった。
ので!
いっしょに二人でDVDを見まくることにっ。

男とくっついているのは、好きです。
かなり好きです。
シチューとどちらか選ぶとすると迷うくらいです。

体全部が暖かい海になって、男に触れたところから
こぼれて流れ込んで行きます。
潮騒というのは好きな人に触れたときの心臓の名です。

うわぁー。
なんかとても恥ずかしく、やるせなく、まどろっこしい。
この気持ちをそのまま取り出して
男に見せられればいいのにっ。

わたしばかりめろめろで困ってしまいます。



170:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 10:09:34.77 ID:1IBD/bxU0

男「なーなー」
式子内親王「はい?」

男「えっと」
式子内親王「わたしは気持ちいいよ?」

男「むー」
式子内親王「男に膝抱っこされて布団に包まって
 しがみついてるのは幸せっ」にぱっ

男「うー」
式子内親王「なによ? わたしが重いというのですか」
男「いや、そうじゃないけど」
式子内親王「じゃなによ」

男「お前、布団の中はいつも下着なの?」
式子内親王「うん」
男「……」

式子内親王「やなの?」
男「えっと」

式子内親王「ふーん」すりすり
男「~っ!?」

式子内親王「わたしは男に抱っこされるの好き。
 抱っこしてくれてるなら、ずっと恩返しする」
男「え、えっと」



171:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 10:14:17.58 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「♪」すりすりっ
男「あの」

式子内親王「なに?」すりっ

男「式子さん」
式子内親王「はい」

男「DVDがみれません」
式子内親王「そうだった!」

男「そういうのは、えー。暗くなってからしましょう」
式子内親王「やです」
男「うわー」
式子内親王「わたし皇族なのよっ。庶民として
 わ、わ……わたしの彼としてすりすりさせなさいっ」
男「ううう」

式子内親王「♪すりすりっ」
男「うー」
式子内親王「だって男、暖かくて大きな湯たんぽみたいで
 気持ちよいんだもん」
男「ないしんのー」

式子内親王「えへへへ~」むぎゅーっ



173:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 10:19:05.82 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「ん~。わう」すりすり

式子内親王「えへへへ~」むぎゅーっ
男「……」

式子内親王「ふふふーん」すりすり。かぷっ
男「うー」

式子内親王「あったかーいっ」
男「えーっと。ないしんのー?」

式子内親王「なに」
男「そんなことしてると、さわり倒すよ?」

式子内親王「ダメです」
男「え?」

式子内親王「男は触っちゃダメ。わたしが一方的に
 すりすりするのです」
男「なんで?」

式子内親王「わたしが皇族で男は庶民だからっ」
男「……」

式子内親王「やっほー。ぱわーいずじゃすてぃすっ!」すりっ



174:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 10:24:21.11 ID:1IBD/bxU0

男「ううー。一方的にずるいぞっ」
式子内親王「いいのです。……すりすり気持ちよいから」

男「だから、俺にも分け与えろって」
式子内親王「ダメ……。ダメだからね、絶対」
男「うー」

式子内親王「だぁめ。――触わっちゃ、だめ」すりすりっ
男「……くぅ」

式子内親王「男のくびすじ発見♪」かぷっ
男「ないしんのうっ」

式子内親王「かぷかぷっ♪」
男「触るからなっ」

式子内親王「だぁめ。禁止。……勅命だからねっ」
男「うー」

式子内親王「でも香り吸い込んでいいよ。
 ――もらった伽羅の香りだよ? わたしが男の
 ものだって云う、証拠だよ?」
男「ううー」

式子内親王「沢山ぎゅーってしてあげる」すりすりっ
男「うわぁーっ。何か腹立つーっ」

式子内親王「これでいいのですっ!」むぎゅっ



176:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 10:28:32.67 ID:1IBD/bxU0

男「すぅーっ。すぅーっ」
式子内親王「男は、寝ちゃったかな」

男「……Zzzz」
式子内親王「寝ちゃったか」

男「……Zzzz」
式子内親王「寝顔は可愛いな。おっきな犬みたいで」

男「んぅ……」
式子内親王「ぷくくくくっ。可愛い~DVD途中なのにっ」

――。
――――。

式子内親王「雨も強くなってきたけど、男とお布団で
 丸くなって……幸せだな」
男「……Zzzz」

――お料理は得意よ、専門にやれるくらい。
 お裁縫もお掃除も習ったのよ。
 ただ……人にしてあげる機会がなくて

式子内親王「この娘は、料理できるんだなぁ。いいなぁ
 わたしも出来ないわけじゃないけど、わたしの育った
 ところは、ガスコンロなんてなかったもんね」



177:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 10:33:37.59 ID:1IBD/bxU0

男「……Zzzz」
式子内親王「ん」なでなで

――Life isn't always what one likes.Is it?

男「んぅ……」
式子内親王「それはね。そうだよね。そんなものだよ」

男「……Zzzz」

式子内親王「なにごとも思うに任せぬやるせなさ
 我が手にゆわうかみかたちさえ」

式子内親王「……」
男「すぅーっ。すぅーっ」

――ローマです! 無論ローマです。
 今回の訪問は永遠に~

男「すぅーっ。すぅーっ」
式子内親王「……」なで、なで

男「んぅぅ。……Zzzz」

式子内親王「わたしはこのひとが大好きだな」にこ



178:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 10:38:36.26 ID:1IBD/bxU0

神無月二十八日

雨です。
今週はずっと降るらしいです。
お外にお出かけとかはしないので、今日は
家の中で男と一緒に本を読みました。

昨日図書館で借りてきた本です。
いや、それにしても図書館はびっくりです。
父様の書庫にも匹敵します。
そんな書庫が自転車でいける範囲に四つもあるそうです。
未来、恐るべし。

皇族や貴族だけじゃなくて
男も女も子供も含めた庶民がみんな読み書きが出来て
漢字も平仮名も判って、自由に操れて、書物に
接することが出来るのです。

ここは本当に自由な世界です。

そりゃね。シチューなんて素晴らしいものも
発見されるに決まってますっ!



180:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 10:44:46.80 ID:1IBD/bxU0

男「アイリッシュ・シチュー。
 羊の国・アイルランドの、マトンとじゃがいものシチュー。
 気候条件のきびしいアイルランドに生きた
 先人達が生み出した料理」

式子内親王「お、美味しいのかなっ?」
男「写真が載ってるぞ」

式子内親王「すごいね。この黄色いのはジャガイモかな?」
男「ジャガイモを鍋に敷き詰めるみたいだな」

式子内親王「ほくほくするかな?」
男「うん、しそうだ」

式子内親王「むぅー」
男「羊は使ったことがないけれど、見る限り、
 相当柔らかくなるまで煮込むみたいだな」

式子内親王「美味しそう!」
男「だなー」

ぺらりっ。



195:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 12:36:54.54 ID:1IBD/bxU0

男「ワーテルゾーイ。
 ベルギー北西部ヘント地方の伝統的家庭料理で、
 若どりを煮込んで、煮汁に卵黄入りの生クリームを
 加えてとろみをつけるシチュー」

式子内親王「ベルギーってどこ?」
男「オランダの横」
式子内親王「横かー。これ作って届けてくれないかなぁ」
男「ちょと遠いんじゃね?」

式子内親王「これも美味しそうだよ?」
男「ああ、うまそうな。卵黄いりってところがそそる」

式子内親王「男は作れるの?」
男「横にレシピのってるしな」
式子内親王「うわーい」むきゅっ

男「侮れないな『世界シチュー大全』っ」
式子内親王「侮れないねっ異国の文化侵略だねっ」

男「侵略されてますか」
式子内親王「うん。主におなかが」

男「……」
式子内親王「……」

男「だよね」
式子内親王「ですよねー」



196:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 12:43:23.31 ID:1IBD/bxU0

ぺらりっ。

男「チリコンカルネ。
 おお、チリコンカルネかっ。
 牛肉と豆をチリパウダーで煮込んだ、
 代表的なアメリカの料理の一つ。かつてメキシコ領だった
 アメリカ南西部の料理で、料理名もスペイン語」

式子内親王「食べたことあるの?」
男「これはあるぞ。比較的有名だしな」
式子内親王「ど、どんなのっ?」

男「ピリッとした味の豆入り煮込み料理だ」
式子内親王「うわぁ……」

男「赤茶色のスープでマメがどっさり入ってる」
式子内親王「美味しそうだな。美味しいよね?」
男「美味いな」

式子内親王「うっわぁ。うらやましいな。
 ねたましいな。これは不敬罪にあたるわねっ!
 投獄するしか……」

男「目がまじだ」
式子内親王「食べたい、食べたい、たべたーいっ」
男「わーったわーた。そのうちなっ」

式子内親王「ん。今度ね。約束だっ!」



197:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 12:48:28.68 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「ふぅっ」
男「堪能したか?」

式子内親王「堪能した! すごいよ。『世界シチュー大全』っ」
男「うむ。まさかこれほどの破壊力を有するとは……」

式子内親王「おとこーおとこーっ」
男「どうした?」

式子内親王「大変だよ。我が日本の空腹艦隊が壊滅だよっ」
男「なに!?」

式子内親王「世界全土からの一斉射撃で全ての艦艇が
 大破、もしくは撃沈よっ。もう戦闘能力は皆無なの。
 このままゆっくり飢え死にしそうな気分だよぅ」
男「戦力差は?」
式子内親王「一対四万八千くらいっ」

男「泣きそうじゃね?」
式子内親王「遅いね。わたしなんかもう泣いてるしっ」

男「さすが皇族」
式子内親王「えへん。電光石火です!」

男「食べちゃうか?」
式子内親王「食べちゃおう!」



199:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 12:53:25.26 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「しちゅーっしちゅーっ」
男「じゃん!」

ふわぁっ。

式子内親王「良い匂い! 本日は?」
男「白菜と鶏のクリーム煮でございます」

式子内親王「ごはーんっ!」
男「ははーっ」
式子内親王「苦しぅないぞ。よそってよそって!」
男「任せろ」

式子内親王「いっただきまーっす!」
男「どうぞ&いただきます」

式子内親王「美味しい♪」
男「おう」

式子内親王「もっきゅもっきゅ」
男「もぐもぐ」

式子内親王「もっきゅもっきゅ♪」
男「もぐもぐ」

式子内親王「美味しいよぅ」
男「いや。涙ぐむほどじゃない」



200:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 12:57:46.63 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「あのさ、おとこー」
男「もぐもぐ。なに?」

式子内親王「えへへへ~」にぱ
男「うわ。だらしない顔」

式子内親王「なにを云うのよっ。わたしは
 凛々しい美少女皇族☆リリカルエンペラーよ」
男「エンプレスじゃねぇの?」
式子内親王「……そうとも言うかしらね」

男「で、なによ」
式子内親王「なんでもない。えへへ」

男「へんなやつ」
式子内親王「ごちそうさま♪」
男「おそまつさまでしたっ」

式子内親王「男。男っ」
男「なに?」

式子内親王「今晩は手をつないで眠るっ」
男「なんでまた」
式子内親王「だってソレはやったことないし」
男「……またなんか携帯小説とかに影響受けてね?」

式子内親王「えへへ~」
男「それくらいなら、いつでも引き受けるんだけどさ」



202:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 13:04:13.64 ID:1IBD/bxU0

神無月 末日

うかうかと幸せになってしまいました。
うっかりと幸せになってしまいました。

男とくっついていると暖かくて優しくて憧れて
触れたくて確かめたくて確かめてもらいたくて
とてもじゃないけれど抵抗できませんでした。

楽しい食事、幸せな日々、溢れるような書物、新しい知識。
いつもとぼけてる表情で、優しくしてくれる男。
自由な、世界。
どこにでもいける、なんにでもなれる、世界。

ごめんなさい。
どう詫びても足りません。
なにを捧げてもいいから謝りたい。
でも、それでも。
触れてもらいたかったのです。

――もう、神無月が残って、いません。



203:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 13:08:26.13 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「えっと……」

式子内親王「そーっと。そーっと」

男「ZZZzzz……」

式子内親王「荷物はまとめてあるし。
 他は何かあったっけ。パンツも入れた。
 服も入れた。香水も入れた。おとこにもらったもの……。
 あ、そだ。熊のほうの歯ブラシも」

こそこそ

男「ZZZzzz……」

式子内親王「これで、いいかな。いいよね。
 ……雷、近づいてきちゃったかな。
 まだ、かな」

男「すぅーっ。すぅーっ」

式子内親王「うっわ、男可愛いなぁ! 可愛いなぁ!
 むぅーって顔してるなぁ。いいなぁ。いいなぁ
 ずっと
 ――ずっと見ていたいなぁ」

男「んぅ……」



205:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 13:13:44.52 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「ごめんね……」なで

男「ZZZzzz……」

式子内親王「いや、その。ほら、最初はさ。
 皇族パワーでひれ伏せさせて突っ走る予定でさ。
 それこそ『玉の緒よ絶えねば絶えね』の精神で、
 もう内緒で秘密で完璧隠蔽でさー」

男「すぅー……」

式子内親王「そういう。なんての?
 うん。……自分ひとりの気持ちで持って帰る
 つもりだったんだけどさっ」

男「ん。……くふぅ。ZZZzzz……」

式子内親王「面目ない。いや、わたしはあれなの。
 正規の才媛として上手い具合にバランス取ってる
 つもりだったんだけど、気持ちのほうがね。
 ちょっとね。
 わがままでさ。触れたくてさ」

男「すぅー……」



206:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 13:18:44.37 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「いやもう。だって触れちゃったら
 告白したいじゃない。させちゃったけどさ。
 気持ちが確認できたらちゅーとかもしたいでしょ。
 ちゅーしたらもっと好きになっちゃうじゃない。
 うん。
 こまってたのだ。
 ごめんね。
 わたし酷いよね。ほんとうに、ごめ
 んなっ
 ごめんな、さいっ」

ぽたぽた

男「…………」

式子内親王「ごめんなさい。ごめんなさい」

ぽたぽた

男「それはさすがに聞き捨てならないな」

式子内親王「おとこ……」

男「しかも黙っていくつもりかよ。ひでぇなー」
式子内親王「ごめっ……さいっ」

ぽたぽた



207:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 13:24:56.31 ID:1IBD/bxU0

男「……」

式子内親王「ひどいよねっ。うん、酷い。
 わたしだったら許さない。八つ裂きにして、串刺しにして
 黄泉ツ平坂まで追っていくかもしれない。
 だから、男に何されても良い。
 ううん、ほんとは……。
 男の手にかかれば帰らなくてもすむかも、とか。
 そういう。
 酷いことも考えてる」

男「どうしても帰らなきゃダメなのか?」
式子内親王「……うん」

男「こっちはイヤか?」
式子内親王「……ちがうっ」
男「じゃぁさ」

式子内親王「もう、神無月が終るから。
 あのね。
 加茂の賀茂別雷命が出雲から帰ってくるの。
 わたしは斎院だったけれど、幼くて、好奇心でいっぱいで
 いつもいつも憧れて、憧れて……
 どうしても院の外、世界の外が見たくて
 ……賀茂別雷命の雷鳴に飛び乗ったの」

男「……」



208:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 13:31:19.04 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「賀茂別雷命が加茂に帰るから、
 私もここにはいられない。たぶん、来たときみたいに
 消えて、飛ばされるの」

男「……」

ピカッ! ――――ごごーん

男「っ!」
式子内親王「ね。……あれがお迎え」

男「お前……」
式子内親王「いや。ごめんねっ。ほんとうにっ。
 いっぱい色んなものをもらって優しくされたのに
 何のお返しも出来ないダメな居候でした。
 その……。まぁ皇族なんてこんなものなのよっ。
 でも庶民なんだからその辺は手加減して許して。
 じゃなくて、許しなさいっ。勅命ですっ」

男「式子」
式子内親王「何か本当に夢見たいな毎日で
 かなり幸せだったわよ。恋愛マエストロとしてのわたしの
 美貌とテクニックも格段の進歩を遂げたこと」

男「あほ式子」
式子内親王「なによ、ばかっ」

男「無理やりな勢いつけんな」



210:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 13:37:25.62 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「~~っ!」
男「つけんな」

式子内親王「くっ。……うぐっ」
男「……」
式子内親王「うぐっ……。うっ……ううっ」
男「……」

ピカッ! ――――ごごーん

式子内親王「ううぅーっ。うぅーっ。
 うぅーっ。ううううっ。……ず、ずるい。
 いやだよ。
 ほんとはおとこといたいっ。
 辛いよぅ。怖いよぅ。
 こんなのやだぁ。うーっ。ううっ」

男「……」

式子内親王「だって、まだ、なんにもっ。
 いっぱい、いっぱい約束っしたのにっ。
 ずるいよぅ。そんなのずるいよぅ」

男「……」



211:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 13:45:36.54 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「だって、まだ何にもしてないっ。
 おとこと一緒にお風呂に入ってないよっ
 夕焼けの散歩もしてないよっ
 雪見だって、花見だってしてないっ
 花火ってなんなのよっ向日葵なんて見てないよっ
 アイリッシュシチューもワーテルゾーイも食べてないよっ」
男「……っ」

ピカッ! ――――ごごーん

式子内親王「まだ。まだ、後朝の歌だってもらってないよ」
男「……うん」

ピカッ! ――――ごごーん

式子内親王「好き」
男「大好き」

式子内親王「ずっと想ってても、いい?」
男「こっちは勝手にそうさせてもらうから」

式子内親王「ずっと歌う。ずっと、ずっとっ!!」

ピカッ! ズ、ドンッ!!

男「あほ親王っ! 馬鹿っこの勝手者っ。
 一人で、一人で勝手にっ。なんだよ、こんなのっ」



212:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 13:49:52.39 ID:1IBD/bxU0

式子内親王(のりこ(しょくし・しきし)ないしんのう)
1149~1201

平安時代末期の皇族。女流歌人。後白河天皇の第三皇女。
賀茂斎院。萱斎院、大炊御門斎院などとも呼ばれた。
法号承如法。新三十六歌仙の一。

艶麗でありながら閑寂さをも併せもつ独自の歌の世界を持つ
新古今和歌集の代表的な歌人の一人。

四季の歌と特に恋歌に秀作が多く、自らを内に閉じこめるような
深沈とした憂愁のさまや、夢と現実との狭間にある曖昧な様子や
感傷的な追憶を詠んだ優れた歌を多く残した。

運命に対して弱い自分を守ろうとする
凛乎とした強さが歌のうちにあることなどから、
その生涯や恋愛についてさまざまな推測が成されるが、
いずれも推測のうちを出ない。

四千首もの歌を残し、彼女の歌は百人一首などで現代でも愛されている。

その優美な恋の歌とはうらはらに
 その生涯で一度も結婚はしなかった。



218:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 14:11:33.49 ID:1IBD/bxU0

――補稿

尋ぬべき道こそなけれ人しれず心は慣れて行きかへれども
(あの人のもとへ訪ねてゆける道はないのだ。
 誰にも知られぬまま、私の心だけは何度も行き来して、
 通い慣れてしまったのだけれども……)

式子内親王「……あ」

ちゅんちゅんっ

式子内親王「うわぁ。かっこわるっ。
 また泣いてますよ、わたしっ。だっさー。
 なんですかね。男のこと思い出してさ。
 ずっとめそめそしちゃってさ。うわ、ださっ。
 それでも皇族ですかってのねっ!」

ちゅんちゅんっ

式子内親王「それでも……さ。明け方の薄い夢にはさ
 おとこの暖かい体温とか残っててさ。
 うわぁ、我ながらもう嫌になっちゃうよ。
 なんでこんなに好きかな。
 何で夢の中だと、毎回毎回、あんなに悲しいかな~」



221:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 14:15:58.35 ID:1IBD/bxU0

式子内親王「なんかめそめそしてさぁ。おとこ……。
もう貰った伽羅の香だって薄れちゃったよ……。忘れたくないよ……」

男「あんなんでよければまた買ってやるぞ?」
式子内親王「……へ?」

男「よぅ」
式子内親王「……」

男「シチュー食うか? 色々作れるようになったぞ」
式子内親王「な、な、な、なっ」

男「お前、また雷の音と一緒にぶったおれてたんだ」
式子内親王「ど、ど、ど、どっ」

男「また神無月になったからじゃね?」
式子内親王「わ、わた、わたし皇族なのよっ!?」
男「知ってる」

式子内親王「賀茂神社のアイドル斎院なのよっ!?」
男「パニック状態だな」

式子内親王「う。ううっ。おとこだっ! おとこだぁっ!!」
男「そうだよ。叩くなよっ。馬鹿だなっ
 いいか、ちゃんと後朝の歌だって考えた。
 賀茂神社にそれで追撃かましてやったんだぜ。
 聞けよ? あー。それはなっ……」

おわりっ。



222:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 14:19:36.09 ID:0FfSbj0xO

>>1乙すぎる



223:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 14:20:41.28 ID:Ups2HsNMO

後日談とか読みたいでござる

このスレここで終わらせるのはもったいないでござる



224:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 14:21:31.86 ID:cdSgonVJO

>>1乙すぎてなでなでしたい

そして甘すぎる。誰か渋い茶をくれ



226:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 14:30:53.05 ID:1IBD/bxU0

あんがとなー。保守とか、支援とか。
今回ばかりは本当に乙が目にしみるぜ。
ドマイナでいった報いか、途中で心が折れそうだったぜw
いいんだよっおれが内親王好きだからっ。

尚侍(ないしのかみ)によるエロ家庭教師モノと
どっちにしようか迷ったってのは内親王には内緒だ。

次やるならもっと気楽なのやりてぇっす。
じゃねー。皆にママレードサンドの祝福を!



237:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 16:22:30.05 ID:eWR1ZxfZ0

>>1乙 素晴らしかった



239:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 16:43:41.46 ID:kdkXKU2SO

>>1乙!
面白かった



240:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 16:44:03.17 ID:LtPvuhMKO

>>1の才能に嫉妬

マジで乙
久々にいいもん見たわ(´・ω・`)



243:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 17:38:45.77 ID:THsWe8JN0

かんどうした。ありがとう。



244:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 17:56:10.68 ID:at0jiUei0

>>1のおかげで家の外に出る勇気を持てました!



245:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/10(金) 18:28:38.96 ID:oZBnrVV/0

このラブラブっぷりは良かった
久しぶりに癒された



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         コメント一覧 (23)

          • 1. 名無し
          • 2012年02月24日 22:59
          • 5 かわいい
          • 2. 名無し
          • 2012年02月24日 23:00
          • >>15で急激に寒くなった…一瞬で全て醒めた。もう無理
          • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年02月24日 23:36
          • 話の内容は別にして
            皇族をネタにしちゃだめだと思うんだ
          • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年02月24日 23:41
          • ※3
            こういうのを通じて皇族や古典なんかに興味持ってもらえたらそれはそれでいいと思うけどなww
          • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年02月24日 23:41
          • うお、随分となつかしいものを
          • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年02月25日 00:44
          • また懐かしいものを

            ※2許してやれよ
          • 7. 名無し
          • 2012年02月25日 00:48
          • 久しぶりに「なんて素敵にジャパネスク」読みたくなった
          • 8. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年02月25日 00:48
          • 楽しかったですよ
          • 9. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年02月25日 01:45
          • 面白かったわ。けっこう古いスレなんだな。
          • 10. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年02月25日 02:29
          • なんだかなぁ
            リアルでいてた人だからあんまり
          • 11. 名無し
          • 2012年02月25日 02:56
          • 小中高生向けの教材でも結構コミカルにかかれてたりするし
            歴史物のテレビ番組でもこういうノリだから
            別にいいんじゃないかなーと俺は思うよ
          • 12. 名無し
          • 2012年02月25日 03:01
          • 良かった

            ※2
            知らんがな
          • 13. 名無し
          • 2012年02月25日 03:37
          • ※2は何を言ってんだ?
          • 14. 名無し
          • 2012年02月25日 04:18
          • ※2はきっと国語が苦手
          • 15.  
          • 2012年02月25日 06:59
          • このSSずっと探してたんだ
            感謝感謝
          • 16. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年02月25日 09:08
          • 誰だよ
          • 17. 774
          • 2012年02月25日 09:13
          • 清少納言のを書いた人が書いたやつ?

            違うの(´・ω・`)?
          • 18. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年02月25日 18:41
          • 俺この人のSS好きだな
            まおゆうも面白かったし、黒髪も良かった
          • 19. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年02月25日 18:50
          • 内親王、現代に馴染みすぎだろw
          • 20. トラ猫侍
          • 2012年02月25日 22:54
          • なんだ、ままれさんか、この人の書くキャラクターは揃って魅力的だから困る
          • 21. ゴ(;゚д゚)
          • 2012年03月01日 20:18
          • 5 式子内親王なんてコアなキャラ出てくるからどうなるかと思ったけど、いやたいしたもんだ。後を引く終わり方も良し!
          • 22. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2013年12月10日 16:47
          • ママレにしては純粋に甘々っすね
          • 23. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2015年12月23日 17:01
          • いやー素晴らしかったよ!
            内親王クラスでぎゃーぎゃー言うとか(笑)
            今時の少女マンガは少女天皇と侍従の近代宮廷ラブロマンスとかやってるから!(笑)
            時代設定は明治大正ね。

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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