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カニ「“バカとハサミは使いよう”!」 猿「なに!?」

1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 21:09:26.19 ID:r7aWzPPA0

柿欲しさにカニの母親の命を奪った猿は、カニの子と仲間たちによって成敗された。

ウス「終わったでごわすな……」

蜂「カニ、コイツの死体はどうするんだ?
  お前にはそのハサミでバラバラに切り刻むくらいの権利はあるぜ」

カニ「……いや。彼はぼくが責任を持って丁重に葬るよ。復讐はもう終わっている。
   ここから先は、もう恨みが入り込む余地はない」

栗「カニ! やっぱおめェいい男だぜ、クゥ~ッ!」

牛フン「……カニらしい答えだ」


答えが運ばれてくるまでに



2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 21:12:08.20 ID:r7aWzPPA0

カニは猿が住んでいた家の横に墓を建てた。

カニ「安らかに眠ってくれ……」

カニ「みんな、ありがとう。おかげで母さんの仇が取れたよ」

蜂「甘すぎるぜ、お前は。俺だったら全身針で刺して川に捨てるくらいはするぜ」

ウス「……いや、おいどんたちが協力したのは、復讐鬼のカニどんではなく、
   母想いのカニどんに、でごわす。これでよかったんでごわす」

蜂「ふん、どいつもこいつも……」

栗「クゥ~ッ! まったくカニってやつはホント最ッ高ォだぜ!
  まったく体が熱いったらねぇや!」

牛フン(さっきまでお前、囲炉裏に入ってたからな)



6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 21:14:26.71 ID:r7aWzPPA0

カニ「じゃあ皆さん、さようなら」

ウス「またなにかあったら、呼ぶでごわすよ」

蜂「ふん、せっかく俺たちが出向いてお袋の仇を討ってやったんだ。
  せいぜい長生きするんだな。俺たちの労力を無駄にすんなよ」

栗「あばよッ! 俺たちゃもう切っても切れない親友(マブダチ)だぜ!
  おっかさんと育てた柿の木、大事にしろよなッ!」

牛フン「またな」

カニ「うん……」

カニは争いの火種となった柿の木を見て、少し涙した。



8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 21:17:07.61 ID:r7aWzPPA0

復讐から三日後──

山奥にある猿だけが暮らす村。

猿A「大変だ、大変だ!」

猿B「どうしたんだ?」

猿A「山向こうにある村に住んでる猿が、殺されたんだってよ!」

猿B「な、なんだと!?」

猿A「こんなこと、許せんよな!」

猿B「あたぼうよ! 大将に復讐してもらおう!」

猿A「おう!」



9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 21:20:12.72 ID:r7aWzPPA0

サル「どうした、みんな血相変えて」

猿A「山向こうの村の猿が殺された! この村の出身者だ!」

猿B「同族を殺されて、黙ってはいられない! 大将、どうか仇討ちを!」

猿C「このまま殺されたままじゃ、腹の虫がおさまりません!」

サル「うむ……(元々アイツは悪辣な性格で、この村にいた時も評判が悪かった)」

サル(今回の件も、アイツの自業自得な可能性が高いが……。
   同族を殺されたコイツらの怒りは収まりそうもない)

サル(仇討ちをするか否か、あの人に相談してみるか……)



11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 21:22:56.98 ID:r7aWzPPA0

サルは都にある大きな屋敷に向かった。

桃太郎「──なるほど。だいたい話は分かった」

サル「はい……。桃太郎さんとの手柄があって、今では俺が大将ですが……
   仇を討たないことには、どうにも収まりそうもなくて」

サル「……すいません。桃太郎さんも鬼の残存勢力の調査で忙しいというのに、
   こんなしょうもない身内の相談なんか……」

桃太郎「とにかくその猿がいた村に、行ってみよう」

サル「えっ!? い、いや、桃太郎さんに迷惑かけるわけには」

桃太郎「猿が殺された、というのは事実なんだろう?
    相手がかなりの武力を持った悪党集団という可能性もある」

サル「だったら、なおさら──」

桃太郎「三年前、お前たちはきび団子一つであの恐ろしい鬼ヶ島に行ってくれた。
    それに比べれば、どうということはないさ」

サル「も、桃太郎さん……!」

ザッ



12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 21:25:35.99 ID:r7aWzPPA0

イヌ「──話は聞かせてもらったワン」

キジ「水臭いじゃないか。ウォータースメル!」

サル「……な、なんでお前ら」

イヌ「ボクの情報網をナメたらいかんワン! この辺一帯の野犬は皆ボクの手下ワン!
   まして猿の大将が単独で都に入ったなんて、すぐ耳に入るワン」

キジ「そしてミーもイヌに呼ばれてコールされて、はせ参じたというわけさ」

サル「くっ……! ありがとう……! でもキジ、なんか喋り方変じゃないか?」

キジ「つい最近まで、この羽根で南蛮まで旅行というトラベルをしててね。
   そこでイングリッシュという言語を学んだのさ」

サル(いんぐりっしゅ……? きっと南蛮で変なもん拾い食いしたんだな)

桃太郎「ふふ、久々に鬼退治組が揃ったな。さっそく向かうとしよう」



13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 21:27:32.93 ID:r7aWzPPA0

桃太郎といえば、希代の英雄である。
彼がお供三匹を連れて、山向こうの村に向かうという情報は、すぐに広まった。

むろん、カニも家でその知らせを聞いていた。

カニ(おそらくぼくの件だ……。猿は同族の死に対して非常に敏感だ。
   大将であるサルさんに伝わり、彼が桃太郎さんに伝える。
   よくよく考えれば、これは当然の流れだ)

バタバタバタッ!

ウス「カニどん!」
蜂「カニ!」
栗「カニィッ!」
牛フン「カニ」

復讐を手伝った四人が押しかけてきた。

カニ「……みんな」



15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 21:29:20.04 ID:r7aWzPPA0

蜂「桃太郎がこの村に来るそうだな。やっぱあの件か?」

カニ「間違いないだろう」

ウス「くっ、うかつでごわしたな。まさか桃太郎さんが出てくるとは……」

蜂「いわんこっちゃない、墓なんか建てるからだ。
  きっちり証拠隠滅してりゃ、行方不明でカタがついてただろうぜ」

栗「蜂ィ! 今更ンなこといってもしょうがねェだろうがよッ!
  こうなりゃ、どうにかして逃げるか、戦うか……」

牛フン「どちらも無理だな」

栗「なんでだよッ!」

牛フン「かつてあの鬼ヶ島を制圧した一行に、戦闘に勝つのは不可能だ。
   といって、彼らの情報網から逃げ切るのもまた至難」



16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 21:31:35.70 ID:r7aWzPPA0

栗「戦おうぜ! 逃げるくらいなら、戦ってくたばった方がマシだッ!」

ウス「おいどんも賛成でごわす! 桃太郎さんに斬られて薪にされても
   悔いはないでごわす!」

蜂「いや、逃げた方が賢いだろ。牛フンも至難、っていってるしな。
  不可能ではないってことだろ?」

牛フン「ああ。この村を捨てて、逃げた方が我々の生存確率は高まるだろう」

カニ「……いや戦うことも逃げることもないよ」

栗「えっ! ンな方法あるのかよ!?」

カニ「いい方法があるんだ。ちょっと準備するから、君たちはここで待っててくれ」

蜂「ふん。大口叩いておいて、失望させるなよ」



17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 21:35:32.10 ID:r7aWzPPA0

まもなく、桃太郎一行がカニたちが住む村に到着した。

桃太郎「ここか、山向こうの村は……」

サル「あそこが殺された猿の家とのことです」

イヌ「ん? だれかいるワン」

猿の家には、カニが一匹だけ立っていた。

キジ「カニのチャイルドが、こんなプレイスで何をしてるんだい?」

カニ「桃太郎さん、サルさん、イヌさん、キジさん。あなた方の用件は分かっています。
   ここの猿を殺した犯人探しと仇討ちに来たのでしょう」

キジ「おおっ! ミーのクエスチョンがスルーされた! HAHAHA!」

桃太郎「君は殺人……じゃない殺猿事件について、何か知ってるのか?」

カニ「知っているもなにも、ぼくが猿を殺した犯人です」



18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 21:37:56.85 ID:r7aWzPPA0

イヌ「証拠はあるのかワン?」

カニ「家のそばに墓があるでしょう。あれにぼくのハサミの跡がいっぱいあります」

サル「しかし、カニに猿を倒せるとは思えんがな……」

カニ「罠にハメました。よく焼いた石を投げて、針で刺し、つまずかせたところに
   屋根の上から岩を落として殺しました。
   埋まった死体を調べれば、証明できると思います」

キジ「なかなかクレバーな殺し方だねェ」

桃太郎「……分かった。とにかく我々にも事情があるんだ。
    君には我々と一緒に来てもらうことになるが、いいか?」

カニ「はい」
  (よし……これで他の四人に害は及ばない)

 「ちょっと待ったァッ!」



19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 21:38:31.75 ID:r7aWzPPA0

カニ「な、なんで……」

栗「カニィッ! てめェ、俺たちは親友(ダチ)じゃなかったのかよォッ!」

ウス「やっぱり、こういうことだったでごわすか……」

蜂「いったはずだ。俺たちの労力を無駄にすることは許さん、と」

牛フン「我々は共犯だ」

四人は桃太郎たちに突っ込んでいく。

ドドドドッ

イヌ「な、なんだワン!?」

桃太郎「イヌ、サル、キジ。相手してやれ」

イヌ「分かったワン」
サル「了解です」
キジ「イエッサー!」

カニ「まっ……待って下さい! 彼らはなんの関係も──」



20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 21:42:51.15 ID:r7aWzPPA0

ウス「行くでごわす!」ドガッ

サル「いい体当たりだったぞ。だが、長年の戦いで鍛えた俺には到底及ばん」

サルは軽々とウスを投げ飛ばした。

ウス「うわぁ~っ!」ドシン!


蜂「あのウスがあっさりと……!(速さでかき乱してやる!)」

キジ「飛行スピードでミーに勝つなんて、インポッシブルさ!」バシッ

キジの羽で蜂は叩き落とされた。

蜂「ぐぁっ……!」



21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 21:44:48.61 ID:r7aWzPPA0

栗「ウスッ! 蜂ッ! ちくしょオオオオッ!」

イヌ「勇敢な突撃だワン。でもわざわざ突っ込んできてくれて助かるワン」パクッ

イヌの歯で栗は噛まれた。

栗「ぐわあぁッ!」


牛フン(やはりこうなるか……。ならば勝てずとも、奴らの口に入ってクソの味を
   思い知らせてから死んでやる)ダッ

キジ「あいにく、ミーにスカト○ジーな趣味はなくてねェ」ビュオッ

羽で風を起こし、牛フンを吹き飛ばす。

イヌ「こうしてやるワン!」ザザザッ

砂をかけて、牛フンを埋める。

サル「終わりだ」ドンッ

埋めた個所に大きめの石を置き、牛フンを完全に封印した。

牛フン「~~~!」



22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 21:47:00.15 ID:r7aWzPPA0

カニ「あ、あ、あ……。みんなァ~!」

桃太郎「安心しろ。四人とも死んではいないよ」

サル「ウスと蜂は気絶してるだけだ」

イヌ「栗も甘噛みにしといたから、生きてるワン(危うく食うところだったけど)」

キジ「牛フン君も大地にドレインされる前に、掘り起こしてやればライフは助かるよ」

カニ(よ、よかった……!)

桃太郎「さてカニ君。今回の殺猿事件について、知ってることを
    全て偽りなく話してもらおうか」

桃太郎「嘘を感じた場合はたとえ善意でついた嘘であろうと──斬る」

桃太郎は抜刀し、切っ先をカニに突きつけた。

カニ「分かりました……。全てお話しします……!」



24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 21:49:51.39 ID:r7aWzPPA0

カニは全てを話した。

サル「くっ……! あの猿のツラ汚しめ! 悪いのはこっちじゃないか!
   しかも墓まで建ててもらって、むしろ謝りたいくらいだ」

桃太郎「どうする? サル」

サル「なんとか村の連中を説得するしかありません。
   ここでこのカニを討てば、それこそ桃太郎さんの名誉にまで傷がつく」

カニ「あの……ぼくをその村に連れて行ってくれませんか」

サル「!」

カニ「サルさんに大将として説得して頂いても、納得しない人は大勢出るはず。
   おそらく無視してぼくを狙いに来る者も出るでしょう。ならばいっそ──」

桃太郎「仮に私刑となっても、私は止めないが、いいのか?」

カニ「覚悟の上です」



25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 21:51:40.13 ID:r7aWzPPA0

やられた四人が目を覚ました。

栗「あだだ……ッ!」
ウス「痛かったでごわす……」
蜂(ここまで力の差があったとは……)
牛フン「……不覚だった」

カニ「みんな、ぼくはこれから復讐の単独犯として、サルさんの山村に行く」

四人「!」

カニ「たとえぼくが殺されることになっても、ぼくはこの件は今日で幕引きにしたい。
   もし友としてぼくの最期を見届けてくれるなら、ついてきてくれるかい?」

牛フン「(カニが殺されても復讐は無し、ということか……)分かった。俺は行こう」
ウス「おいどんも行くでごわす!」
栗「見届けさせてもらうぜ……親友(ダチ)としてな……ッ!」
蜂「行ってやるよ。殻とハサミは拾ってやる」

カニ「みんな、ありがとう」



27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 21:53:45.55 ID:r7aWzPPA0

桃太郎とカニたちは猿の村に到着した。

猿A「おお、大将! お帰りなさいませ!
   ……おお、桃太郎さんたちまで! ようこそいらっしゃいました!」

猿B「──と、妙な連中もいるようですが、彼らはいったい?」

サル「このカニが……今回山向こうの村の猿を殺した犯人だ」

猿A「なっ……!?」
猿B「え!?」
猿C「ど、どういうことです!? なぜ連れてきたんです!」

サル「今すぐ村の猿を全員集めてくれ」

カニ「………」



29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 21:56:29.39 ID:r7aWzPPA0

キジ「モンキーたち、殺気立ってるねェ……」
イヌ「当然だワン。同族を殺した犯人が、堂々と村に乗り込んできたわけだし」

サル「カニ君。お手数だが、我々にした話をもう一度してくれ」

カニ「……分かりました」



カニは全てを話した。
ただしカニの意志で、実行犯である四人の名は伏せられ、全ての罪をカニが背負った。
四人もまたカニの強い意志を汲み、事前にやむなく了承していた。

カニ「──以上、です」

サル「俺はこの話を聞き、殺されたアイツにも非があったと判断し、
   カニをその場で討つことはしなかった」

サル「この村で皆と話したいといったのも、他ならぬカニの意志だ。
   これを踏まえて、みんなで彼をどうするか決めてくれ」



30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 21:58:37.64 ID:r7aWzPPA0

 「ふざけんなッ!」

猿A「ひどいですぜ大将、なんで殺してくれなかったんですか!」

猿B「母親を殺した猿を、そいつは殺した。なら、俺たちにも復讐の権利があるッ!」

猿C「そうだそうだ! 血祭りに上げろッ!」

怒号が村中に響き渡る。

サル(くっ……やはりとても抑えられるものではない)

桃太郎「………」

栗「くっ……!」
ウス「や、やはり……ダメでごわすか」
蜂(こうなることは分かってたんだ! カニ、お前は愚直すぎるんだよ……!)
牛フン「ここまでか……」

カニ(母さん、やるべきことはやりました。息子に悔いはありません。
   すぐ会うことになってしまいますが、どうかお許しを)



31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:00:19.15 ID:r7aWzPPA0

カニ「分かりました。ぼくが彼を殺したように、あなた方にも復讐する権利はあります」

カニは猿Aの前にやってきた。

カニ「どうぞ、カニ鍋にして下さい。
   しがないサワガニですが、悪い味ではないはずです」

猿A「な……!」

カニ「どうぞ」

猿A「(このカニ……なんて目をしてやがる)い、いや俺は」

カニ「では、そちらの方。どうぞ」

猿B「え!? え……と」

カニ「では、そちらの方」

猿C「うわっ! 俺もちょっと……」



32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:01:59.23 ID:r7aWzPPA0

カニはほぼ全員の前を回ったが、猿たちは誰も手出しができなかった。

桃太郎(カニ君の愚直すぎる行動が、逆に猿たちの穴をみごとに突いたようだな)

桃太郎(殺された猿は同族とはいえ、この村を出ていた他人も同然……。
    猿たちは集団心理で盛り上がってたとはいえ実のところ、
    ひとりひとりの行動意欲はそこまで高くなかった)

桃太郎(なおかつ、殺された猿に明らかな非があったという話を聞かされた直後、
    この大勢の前で死刑執行者として振る舞うというのは、なかなか難しい。
    みんな『大将、もしくは他の誰かがやる』と思っていただろうからな)

桃太郎(……カニ君の勝利、か)

ジャキッ!

桃太郎が刀を抜き、天に掲げる。

桃太郎「猿たち!」

猿たち「は、はいっ!」

桃太郎「このカニの処遇については、この私、桃太郎が預かりたいと思う!
    異存がある者はあるか!?」



34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:04:18.31 ID:r7aWzPPA0

猿A「い、いや桃太郎さんがそうおっしゃるなら……なぁ?」
猿B「うん、俺たちはなにも……」
猿C「ま、まぁ任せていいんじゃないか? ……桃太郎さんなら」

桃太郎「かたじけない」チャッ

こうしてカニは私刑を免れた。

サル(す、すごい……! カニが作った真空状態をうまくまとめ上げた。
   やはり桃太郎さんには上に立つ者としての天性の素質がある)

キジ「さっすがミーたちのリーダーだねぇ」
イヌ「見事だワン」

栗「カニの奴、助かったのか……!?」
牛フン「そのようだな」
ウス「よ、よかったでごわす!」
蜂「悪運の強いヤロウだぜ、まったく」

カニ(ぼくは助かった……のか……?)



35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:07:53.79 ID:r7aWzPPA0

カニたちは桃太郎の屋敷に招待された。

カニ「本当にありがとうございました」

桃太郎「私は何もしていないよ。君のまっすぐな行動が、猿たちに届いただけの話さ」

栗「今日は最高だぜッ! 酒がうまいッ!」

ウス「いや~よかったでごわすなぁ~うんうん。メシもうまいでごわす、うんうん」

蜂「ふん。あの猿ども、とんだ烏合の衆だったな」

牛フン「──ところで、桃太郎さん。
   カニを助けたのは、単なる正義感や同情心から、というわけではないでしょう?」

桃太郎「ニオイも鋭いが、頭も鋭いな、君は」

桃太郎「……実は、君たちを見込んで頼みたいことがあるんだ」

桃太郎「あ、あと牛フン君。この中に入ってもらっていいかな? やっぱりニオイが……」

牛フン「あ、すいません」

牛フンは臭いを遮断する箱の中に入った。



37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:11:03.18 ID:r7aWzPPA0

桃太郎「単刀直入にいおう。鬼退治を手伝ってくれないか?」

カニ「鬼」
蜂「退」
栗「治」
牛フン「で」
ウス「ごわすか!?」

桃太郎「私のお供との戦いや、これまでのやり取りを見ていて、
    君たちは鬼に対抗できる逸材だと感じられた」

蜂「ちょっと待てよ。鬼はあんたらが退治したんじゃなかったのか?」

桃太郎「ああ。三年前、私はイヌ、サル、キジを連れて鬼ヶ島に攻め込んだ。
    彼らは降伏し、大部分は改心して世を苦しめるようなことはなくなった」

桃太郎「だが……」

牛フン「一部、まだ過激な鬼たちが残っていた、と……」

桃太郎「うむ。派手に暴れて攻め込まれたことを反省してか、水面下で活動しており
    なかなか尻尾を見せない。私も手を尽くして根城を調査させているが
    どこにあるかすら分かっていない」



38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:12:18.79 ID:r7aWzPPA0

桃太郎「しかも、彼らはどうやら鬼以外の力も集めているらしく、
    おそらくは三年前よりも強大な軍勢になっているはずだ」

桃太郎「いたずらに戦力を増やせば、無駄に犠牲者を増やすばかりだろう。
    だから三年前のように数名程度の少数精鋭で臨みたい」

桃太郎「君たちならば、私とお供三名で鍛えれば、短期間のうちに
    立派な戦力になると踏んだ。
    ──いかがだろうか」

カニたちは一瞬お互いに顔を見合わせると、同時に返事をした。

カニ「やります」
栗「やってやらァッ!」
蜂「やるぜ」
ウス「やるでごわす!」
牛フン「引き受けましょう」



39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:14:52.19 ID:r7aWzPPA0

翌日から、カニたちの厳しい特訓が始まった。
師匠には、それぞれの適正にあった者がつくことになった。

空中戦タイプの蜂の師匠は、キジ。

キジ「力で飛ぶんじゃない! もっとウインドに乗らなければ!」

蜂(ういんど、って何……?)


俊敏さが長所の栗の師匠は、イヌ。

イヌ「速いだけではダメワン! 攻撃に緩急をつけてこそ速さが生きるワン!」

栗「うおおおおッ! 緩急つけるってすっげェ難しいぜェッ!」


肉弾戦が得意なウスは、サル。

サル「生まれながらの体格に頼りすぎだ! 技を身につけるのだ!」

ウス「うっす!」



40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:16:24.01 ID:r7aWzPPA0

特殊タイプの牛フンは、おじいさんとおばあさん。

おじいさん「さてと、始めようか。ばあさんや」
おばあさん「そうだねえ、おじいさん」

牛フン「……ゴクリ(いったい何が始まるんだ!?)」


そしてカニは直々に桃太郎が鍛えることになった。

桃太郎「君の最大の武器は、そのハサミだ。さぁ遠慮なくかかってこい」

カニ「はいっ!」

ガキン! ガキン!

桃太郎「甘いっ! ──胴ッ!」

ドゴッ!

カニ「ぐぁっ!」



42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:18:40.26 ID:r7aWzPPA0

こうして瞬く間に一ヶ月が過ぎた。

桃太郎「……今日、奴らの根城が見つかった」

カニ「本当ですか!? ──ついに戦いですね」

桃太郎「君はこの一ヶ月よく頑張った。本当に強くなったよ。
    だが君を連れていくかどうかは、今から行う試験で決める」

カニ「試験?」

桃太郎「これから君に本気で打ち込む。むろん、真剣でな」

カニ(真剣……!)

桃太郎「これを防げれば合格だ。心の準備はいいか?」

カニ「はい!」

桃太郎「行くぞッ!」

ビュオッ!



44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:20:41.50 ID:r7aWzPPA0

翌日、桃太郎の家に全員が集合した。

桃太郎「みんな、連絡した通り新しい鬼ヶ島の場所が分かった。
    出発は明朝だ。各自今日一日で思い残すことのないよう準備してくれ」

サル「三年前の戦いを思い出すよ」

キジ「久々に、ミーのソウルがバーニングしてきたねェ」

イヌ「今度こそやっつけてやるワン!」

栗「燃えてきたぜェッ!」

ウス「おいどんを見込んでくれたみなさんのためにも、絶対勝つでごわす!」

蜂「鬼どもがいると、色々面倒だしな」

牛フン「カワニセンタク……ヤマニシバカリ……」

カニ「明日か……」
  (一度、村に戻っておこうかな)



45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:23:35.26 ID:r7aWzPPA0

カニたちは身辺整理のため、山向こうの村に戻った。
そして、村では奇妙なことが起こっていた。

カニ「猿の家に建てた墓が掘り返されて、埋めていた死体がなくなってる!」

牛フン「ドンブラコ……ドンブラコ……」

蜂「なんだと? どういうことだよ」

カニ「分からない……。でも、なんだか嫌な予感がする」

栗「ハッハッハ、気にしすぎじゃねぇのか?
  おおかた猿村の連中が、別の場所に弔うとかしたんだろうぜ」

カニ「……ならいいんだけど」

ウス「心配いらんでごわすよ!」

牛フン「不可解ではあるが、今は鬼退治に意識を集中すべきだな」

カニ「(あ、戻った)うん……」



47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:26:29.91 ID:r7aWzPPA0

こうして一抹の不安を抱えつつ、翌日となった。

おばあさん「桃太郎、みんな、これを持っておゆき」

きび団子を受け取る桃太郎。

桃太郎「ありがとう、おばあさん。行ってきます!」

おばあさん「無理するんじゃないよ。危なくなったらお逃げ」
おじいさん「気をつけるんじゃぞ、みんな」

桃太郎一行の旅は、順調に続いた。



48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:29:31.12 ID:r7aWzPPA0

三日後、鬼のアジトに最も近い海岸に到着した。

桃太郎「あれが新しい鬼ヶ島だ。ほとんど人気のない地域なので発見が遅れた。
     これから小舟で乗り込むが、きび団子を食べて力を蓄えよう」

蜂「これから暴れるってのに、食べて大丈夫か?」

桃太郎「心配いらない。すぐ腹ごなしすることになるさ。
     栄養も味も抜群だから、食べておいた方がいい」

パクパクモグモグ

イヌ「やっぱりきび団子は最高ワン!」

栗「ンめえエエエエッ! こんな美味い団子始めてだッ!」

ウス「うまいでごわす! たまらんでごわす!」

蜂「ま、悪くはないな(美味すぎる……!)」

キジ「う~ん、デェ~リシャスだねェ」

サル「おばあさんの腕は全く衰えてないな。むしろ上がってるくらいだ」

カニ「柿にも負けないくらい美味しいや……。ところで牛フンは食べないの?」

牛フン「クソが食事をしてどうする」



51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:32:55.15 ID:r7aWzPPA0

一方、新鬼ヶ島では──

赤鬼「桃太郎どもが、舟でこちらに向かってきやす!」

鬼大将「くくく、ついにここを突きとめたか。桃太郎!」

鬼大将「知らぬお供もいるようだが、こちらにも新戦力がいるのだ!
    桃太郎に敗れ、地獄に逃げ帰った時に見つけた強力な戦士が四人もな。
    名づけて“地獄四天王”!」

赤鬼「(うわっ、安易……)ではあっしは青鬼とともに奴らを迎え討ちます」

鬼大将「うむ、頼んだぞ! ガッハッハ!」



52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:34:46.60 ID:r7aWzPPA0

鬼大将「さて地獄四天王の諸君、待たせたな。出番だ!」

???「泥船に乗った気でいてくれよ。おっと大船だったか、ケケケッ」

????「あたしが味わった恐怖を奴らにも味わわせてやるよ」

?「東洋の奴らは小さくて喰い甲斐がないらしいから、全部喰い尽くしてやる」

?「協力するのは今回限りだぜ。桃太郎なんかよりよほど殺したい奴がいるからな」

鬼大将「さあ来い、桃太郎。この新鬼ヶ島が貴様の墓場となるのだ!」



53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:38:25.22 ID:r7aWzPPA0

桃太郎たちは新鬼ヶ島に上陸した。
岩でできた城めがけ、桃太郎を先頭に突撃する。

桃太郎「行くぞっ!」

すると城の左右から大軍勢が現れた。鬼と地獄の亡者の混成軍団である。

ザザザッ!

赤鬼「待っていたぞ、桃太郎!」
青鬼「ここが貴様らの死に場所じゃい!」

イヌ「最高幹部のはずのこいつらが、もう出てくるのかワン!?」

キジ「しかもエネミーもすっごい数だねェ。スリー年前より多くないかい?」

サル「どうやら地獄でだいぶ兵力を増強したようだな」

戦いが始まった。



54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:40:41.10 ID:r7aWzPPA0

桃太郎「君たち、この一ヶ月の成果を見せてもらおうか」

栗「まずは俺からだァァァッ!」ノロ~

ザコ鬼A(な、なんだ……? デケェ声のわりにノロイじゃねーか)
    「金棒で叩きつぶしてやる!」

栗「油断しやがったなァァァァァッ! 燃えろォォォォ!」

栗の全身が真っ赤に燃え上がる。

パチィン!

ザコ鬼A「なっ、急に速くッ!?」

ザコ鬼Aの眉間に、栗が命中。

ザコ鬼A「ぐはぁっ……!」

赤鬼「栗如きの体当たりで、鬼がやられるだと!? バカな!」

栗「ヘッ、自分で発火してハジければ、俺だって弾丸並の威力になるんだぜッ!
  俺の必殺技“火中の栗を拾う”だ!」

イヌ(ふふふ、成長したワンね)



55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:43:27.15 ID:r7aWzPPA0

蜂「喰らえッ!」ザクッ! ドシュッ!
ザコ鬼B「ギャアアアアッ!」

顔面を刺して鬼が泣いたところに、トドメの二撃目を入れる。

キジ「蜂君! その技はミーが“泣きっ面に蜂(フェイスニードル)”と
   ネーミングしてあげたじゃないか! ちゃんと叫ばないと!」
蜂(絶対イヤだ)


ウス「この中に入るでごわす!」ヒョイッ!
ザコ鬼C「うわっ!?」

ウスの中に鬼を入れて、きねで叩きまくる大技。

ウス「どすこーい! どすこーい! どすこーい!」
サル「見事に使いこなしているな……奥義“餅は餅屋”を!」


牛フン「牛フンはクソの中でも高位に属する。ゆえに他人の目クソや鼻クソを操れるようになった」
ザコ鬼D「鼻の中と目の中がいてええええっ!」

ズバシュッ!

ザコ鬼D「めくそぉっ!」
牛フン「“目クソ鼻クソを笑う”……。
   目や鼻を清潔にしてない者は、俺に向かってこない方が賢明だ」



56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:45:39.35 ID:r7aWzPPA0

ザコ鬼E「てやんでえ、あのカニを潰してカニ鍋にしてやる!」

カニ(来た!)

ザコ鬼E「ちっぽけなハサミごと、この金棒で潰してやるよ!」

カニ「受け止めるッ!」

ガキィン!

ザコ鬼E「ハサミが巨大化しやがった!」

カニ「“バカとハサミは使いよう”ということだ、覚悟ッ!」

ザシュッ!

ザコ鬼E「つ、強ぇ……!」

桃太郎(みんな期待以上だ。これなら勝てるぞ!)



59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:47:51.37 ID:r7aWzPPA0

大軍勢を相手に奮闘する桃太郎たち。
しかし、兵は減るどころか、どんどん増えている。

キジ「う~ん、おかしいねェ。ちっともエネミーが減らないよ」

サル「おそらく、島のどこかに地獄と通じてる穴があって、どんどん鬼や亡者が
   補充されているんだろう。十中八九、鬼どもの首領の仕業だろうな」

イヌ「きっと鬼の大将を倒さないとキリがないワン!
   仕方ないワン、桃太郎さんとカニたちは奴らの城に入るワン!」

カニ「それならイヌさんたちが行った方が──」

イヌ「君たちはまだまだ複数相手の戦闘が経験不足だワン……。
   ここはボクたちに任せて、桃太郎さんたちは中へ行くワン!」

桃太郎「うむ、分かった。私とカニ君たちで鬼大将を目指そう。死ぬなよ!」

イヌ「はいワン!」
サル「もちろん!」
キジ「シーユーアゲン!」



60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:50:19.10 ID:r7aWzPPA0

城内では──

鬼大将「ふふふ、想定通りだ。厄介なイヌ、サル、キジを分断できた。
    あとはワシと貴様らで桃太郎どもを殺せば奴らは総崩れだ!
    ──配置につけッ!」

???「背中の火傷がうずく、うずくねェ……」

????「あたしの相手は切り裂いてあげるよ、ひっひっひ」

?「あ~腹が減ったぜ。噛み砕いて喰ってやる」

?(ん? なんだか懐かしいニオイがするな……)



62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:53:38.40 ID:r7aWzPPA0

ほとんど手下もいない城を進む桃太郎たち。

蜂「あそこ、扉が四つもあるぜ」

ウス「どうするでごわすか?」

桃太郎「おそらくこの中のどれか一つが鬼の大将に通じているはずだ。
    もちろん戦力は分散させない方がいいが──」

牛フン「もし罠の部屋に全員が飛びこんだら、一巻の終わりだ……」

桃太郎「うむ」

栗「ならバラけようぜッ! 大丈夫、俺たちゃそんなにヤワくねェさ!」

桃太郎「……そうだな。多少危険だが、それが一番だろう」



63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:54:18.97 ID:r7aWzPPA0

桃太郎たちは、以下のように分かれて扉に入った。

・桃太郎、カニ
・牛フン、栗
・ウス
・蜂

桃太郎とカニが入った部屋で待っていたのは──

カニ「お前は……!」

猿「なんでてめえが──!」

桃太郎「あの猿、知り合いか?」

カニ「先日の殺猿事件の被害者、です……」

桃太郎「!」

猿「なんか懐かしいニオイがすると思ったら、まさかお前が来るとはな。
  お前らには復讐するつもりだったからな。嬉しいぜ……!」

カニの母親を殺し、カニたちに殺された猿であった。



64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 22:58:40.20 ID:r7aWzPPA0

フンと栗を待ち受けていたのは、タヌキだった。

タヌキ「やっと来たか、待ちくたびれちまったよ」

栗「てめぇ、なにもんだッ!?」
牛フン「タヌキだろ」

タヌキ「ふむふむ、小さくすばしっこい栗と、色々な特殊能力を使う牛フンか。
    ま、“取らぬ狸の皮算用”だがね」

栗「な、なんで……ッ!」
牛フン(初対面なのに、一瞬でこちらの性質を見切られた……)

タヌキ「安心しろよ、俺の“取らぬ狸の皮算用”は敵の性質を見切る能力だが、
    十割正しいわけでもない。ま、参考程度だ」

タヌキ「俺の真の能力は“火のないところに煙はたたぬ”」

カチカチ… ジュ~…… プスプス……

栗「なんだァ!? 奴の背中に火がつきやがった!」
 (俺の能力とはケタが違う……!)

タヌキ「ウサギのヤロウに焼かれ沈められ、地獄で身につけたこの能力……!
    お前ら焼き栗とヤケクソにしてやるぜ……」



65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:00:52.39 ID:r7aWzPPA0

タヌキの背中から出た炎が、巨大な火柱となり、栗と牛フンに襲いかかる。

ゴオオオッ!

タヌキ「どうした!? 逃げてばかりじゃ勝負にならんぜ!」

栗「くそっ、こんなもん喰らったら焼き栗どころか、炭になっちまう!」

牛フン(これでは“目クソ鼻クソを笑う”の射程に入れないな)

牛フン「栗、俺の中に入れ!」

栗「お、おい冗談だろ!? ホントにヤケクソにでもなったか!?」

牛フン「勝つためだ」

栗「……どうやら本気(マジ)みたいだな」

タヌキ「こそこそと何を話してやがる! 焼き尽くせ、俺のカチカチ炎!」

ゴオオッッッ!

栗「──バカなッ! んなことしたら、お前が死ぬぞ!」

牛フン「いいから入れ、勝つにはこれしかない」



67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:01:59.21 ID:r7aWzPPA0

栗は牛フンの中に入った。

タヌキ「うわ、きったねぇ! もうあの栗は食えねーな、ギャハハハハハッ!
    よし二匹まとめて焼却処分だ!」

栗が入っている牛フンに、ありったけの炎が叩きつけられる。

牛フン(翁との修業で身につけた“隣の芝は青い”で体に芝を生やし、防御すれば、
   少しの間なら炎に耐えられるはず)

牛フン(体内の熱をひたすら高め……栗のハジける速度を極限まで高める!)

タヌキ(あの牛フン、なかなか燃え尽きないな……どういうことだ!?)

牛フン「行けっ!」

パチィッ ズドンッ!

高熱を宿した栗が、牛フンから超高速で飛び出した。

タヌキ「なんだとッ!?」

牛フン(たの……ん、だ……ぞ……)



69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:03:11.00 ID:r7aWzPPA0

ギュオオオオオッ!

栗「牛フン、お前がくれた熱、無駄にはしねェッ!」

流星にも匹敵する速力で、栗がタヌキめがけて飛んでいく。

タヌキ「速い──かわせん!」

タヌキ(だが所詮は栗! 防御すれば耐えられる!)

栗「武装“いが栗も内から割れる”!」

栗の全身が、鋭利な針を持つ鎧に包まれた。

タヌキ「げえっ!?」

栗「喰らえェッ!」

ドグサッ!

いが栗の体当たりが、タヌキの胸に突き刺さった。

タヌキ「がは……バカ、な……!」



70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:04:47.89 ID:r7aWzPPA0

栗「ぐっ……! や、やった……あっ、牛フン、大丈夫かッ!?」

牛フン「なんとかな……」

体の大部分が焼け死に、小さくなった牛フンがいた。

栗「ずいぶん小さくなっちまったな」

牛フン「また牛小屋に戻って、補充すればすぐ元通りだ。
   それよりすまなかったな、作戦とはいえクソ(おれ)の中に入らせて……」

栗「親友(ダチ)だろ、気にすんなって。それにいずれ俺もクソになる身さ」

牛フン「将来、お前を食べる奴は気の毒だな」

栗「まったくだぜ」

牛フン「フフフ……」
栗「ハッハッハ……!」

二人は笑い合った。

地獄四天王の一角、タヌキ撃破──



71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:07:25.41 ID:r7aWzPPA0

蜂が入った部屋には、老婆が待っていた。

舌切り婆「おやおや、小さなお客さんだねぇ」

蜂「婆さん、鬼の手下か?」

舌切り婆「手下というか、協力者だがねぇ。ひゃおおおっ!」

ヒュバッ!

蜂(速い……なんつう脚力だ。武器はハサミ、だな)

舌切り婆「あたしに楯つく奴は、どいつもこいつも切り裂いてやるよ。
     この舌切りバサミでねぇ」

蜂「やってみな」

舌切り婆「いくよぉっ! ひゃっほうっ!」



72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:08:47.31 ID:r7aWzPPA0

舌切り婆「ほぉっ! ひょおっ! きええええいっ!」

舌切り婆が老婆とは思えぬフットワークで、蜂に切りかかる。

蜂「大したハサミ捌きだ。だが、もっとすごいハサミ使いを知ってるぜ!」

舌切り婆「ぬぅっ!?」

蜂「“泣きっ面に蜂(フェイスニードル)”!」

グササッ!

舌切り婆さんの顔面を二度刺しする。

蜂(しまった、つい技名叫んじまった)

舌切り婆「ひいっひっひ。この程度かい? あんたの技は!?」

蜂「なにっ!?」

舌切り婆「じゃあ、そろそろ本気を出すかねぇ……」



74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:10:10.82 ID:r7aWzPPA0

舌切り婆「少し昔話をしようかい」

舌切り婆「あたしゃ、とあるクソスズメの舌をぶった切ってねェ。
     その後スズメの宿で大きいつづらをもらったら、中からお化けがわんさかさ。
     それに驚いてポックリ逝っちまったんだが──」

舌切り婆「その時身につけたのが第一の能力“大は小をかねる”さ!」ボンッ!

蜂(婆さんの筋肉が倍加しやがった!)

舌切り婆「そして第二の能力“幽霊の正体見たり枯れ尾花”!」

ボワンッ!

蜂「うわああああっ!」

舌切り婆は、この世のものとは思えない怪物に変身した。

舌切り婆(所詮まやかしの術だが、このあたしの姿を見て正気を保てる奴はいないよ!)

蜂(こんなバケモノ、敵うわけねェ! 鬼よりずっとヤベェ!)
 「うわああああっ!」



76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:12:15.00 ID:r7aWzPPA0

舌切り婆「ほぉれいっ!」バチィッ!

舌切り婆のビンタで床に叩きつけられる蜂。

蜂「ぐほぁっ!(鍛える前の俺だったら即死だったな……!)」

蜂(今の感触、普通の人間の手だった。──そうか、婆さんのあの姿は幻覚か!)

蜂「なら、恐怖心を払拭してやらぁ!」グサッ

蜂は自分を刺し、痛みで正気を取り戻した。

舌切り婆「ほう、なかなかやるねェ。だが、あんたの攻撃は一切通用しないよぉ!
     この体のどこを刺すってんだい!?」

蜂「決まってるじゃねえか──そこだ! “泣きっ面に蜂(フェイスニードル)”!」

ザクッ! ザクッ!

舌切り婆「ひぎゃああああっ!」

蜂「ありったけの毒を注入してやったぜ、お前のベロにな!」

舌切り婆「いでええええ、いでええええ!」ベリッ!

舌を刺された舌切り婆は腫れあがった舌を自分で引きちぎってしまい、
さらなる激痛で悶絶してしまった。

蜂「恐ろしい婆さんだったぜ……」



77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:14:23.29 ID:r7aWzPPA0

ウスが入った部屋には、老婆がベッドで横になっていた。

ウス(おばあさん、でごわすな……。鬼に捕らわれてたでごわすか?)

老婆「もう少しこっちに寄ってくれないかねぇ。耳が悪いんだよ、あたしゃ」

ウス「分かったでごわす」

ウス「!」

ウス「おばあさん、なんでそんなに口がでかいでごわすか?」

老婆「決まってるだろ? それは──」老婆が変装を解く。

狼「お前を噛み砕くためさァ!」ガバッ!

メキメキッ!

ウスの体の一部を食いちぎり、木片を吐き捨てる狼。

狼「ペッ、ウスなんか喰えねーじゃんか。
  地獄から蘇ったばかりで、すげえ腹が減ってんだ。
  テメェもウスなら餅でも作ってくれよ」

ウス(この雰囲気、どうやら外国の者でごわすな)
  「お前に食わす餅はねえでごわす!」



78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:16:19.59 ID:r7aWzPPA0

ドガッ! バゴッ! ガスッ!

持ち前の瞬発力と怪力を生かした突きと蹴りで、ウスを滅多打ちにする狼。

ウス「ぐぅっ! ごふっ!(この力と速さ……サルさん以上でごわす!)」

狼「ウスノロが! このままなぶり殺しにしてやるぜ!」

ウス(だが、サルさんの変幻自在な動きとちがって単純でごわす!)
  「どすこーい!」

ドスッ!

ウスのぶちかましが、狼を吹き飛ばした。

狼「こ、このヤロウ……!」

ウス「本気で来いでごわす!」

狼「いい気になりやがって。“狼少年(エイプリルフール)”!」ウオオ~ン

狼(この鳴き声を聞いた者は自分が信じられなくなる!
  かつて羊飼いの少年を見殺しにした大人どものようにな!
  くくく、あの時のガキと羊は美味かったぜ……)



80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:17:55.90 ID:r7aWzPPA0

頭を抱え、膝をつくウス。

ウス「おいどんは……おいどんの戦いは正しいでごわすか……」

狼「(さっそく技が効いてきたな……へっへっへ)さてと、この技でトドメだ!」

狼「“狼と七匹の子ヤギ(グレートファング)”!」

子ヤギ七匹をまとめて噛み砕けるほどに、狼の牙が強化された。

ガリッ! メキッ! ムシャッ!

ウス「ぐわぁぁ~!」

狼「牙で穴だらけにしてやるぜ、ウスノロ!」

ウス(おいどんは弱いでごわす! ……おいどんはクズでごわす!)

ウス(でもみんなは、こんなおいどんを信じてくれた!
   たとえおいどん自身を信じられなくとも、カニどんたちならば信じられる!)

ガシッ!

狼「うわっ!(バカな、こいつは自信を喪失しているはずだ!)」

ウス「“餅は餅屋”!」

ウスは自分の中に狼を入れ、きねで叩きまくった。



81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:19:48.82 ID:r7aWzPPA0

ペッタン! ペッタン!

狼「ぐっ……!(だがこの程度の威力なら耐えられる!)」

狼(すぐ脱出して噛み殺し──!?)

狼「な、なんだ俺の体に白いのがまとわりついてる!」

ウス「望み通りもち米を混ぜておいたでごわす。さぁたっぷり喰うでごんす!」

狼「うわっ、餅が体中に──もごっ……もごっ……!」

ウス「トドメでごわすっ!」

ドゴッ!

窒息したところをきねで強打されては、さすがの狼もひとたまりもなかった。

ウス「ふぅ、ふぅ、強敵だったでごわす……」

ウスも満身創痍であった。
勝利の喜びに一瞬だけ浸ると、すぐさま崩れ落ちてしまった。



82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:21:18.97 ID:r7aWzPPA0

場面は、カニと猿の因縁の再会に戻る。

カニ「お前は死んで……たしかにぼくが埋葬したはずなのに……」

猿「地獄にいた俺の憎悪に、鬼の大将が目をつけ、蘇らせてくれたのさ。
  打倒桃太郎に協力するという条件付きでな」

桃太郎(そういうことだったか……)

猿「ちなみにここは正解の扉だった。この先に鬼の大将は待っている。
  ただし俺を倒さないと、道は開けないがな……」

カニ「桃太郎さん」

桃太郎「ん?」

カニ「彼はぼくが倒します」

桃太郎「……分かった」

猿「カニ、今度は俺がお前を母親のもとに送ってやるよ!」

カニ「こちらこそ、今度こそこの手で母さんの仇を討つ!」



83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:23:26.58 ID:r7aWzPPA0

カニ「“バカとハサミは使いよう”!」

猿「なに!?」

シャキーン!

カニの両ハサミが巨大化する。ザコ鬼を倒した時よりさらに大きい。

猿「ふん、こけおどしだ!」

カニと猿の一進一退の攻防が続く。

ガキッ! ババババッ! ドガッ! ズガガガッ! シャッ! ドゴッ!

猿「“桃栗三年柿八年”!」

猿は青柿を、自分の右手に生み出した。

猿「母親と同じ死に方をさせてやるよ。死ねぇッ!」シュッ!

カニ「なんのッ!」ガキッ!

桃太郎(──うまい! 投げつけられた柿をハサミで弾き飛ばした。
    今のところカニ君が完全に上をいっている!
    ……だが、なぜだ。猿の力は衰えるどころか、どんどん上がっている……?)



84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:27:25.44 ID:r7aWzPPA0

猿「柿はまだまだあるぞォッ!」ブンッ

カニ「くっ、くそっ!」ガッ

猿「こんなもんか!? 柿でくたばったお前のバカな母親が、あの世で応援してるぞ!
  もっと頑張らないと成仏できねーぞォ!」

カニ「なんだとッ!?」

桃太郎(カニ君らしくもない! 挑発に乗ってサバキが雑になっている!
    いや無理もない。母親の仇が目の前にいるのだから……)

猿「どうしたどうしたァ!」

桃太郎(やはりだ。猿の柿を投げる速度がどんどん増している!
    今まで手加減していたようには見えなかったが……)

カニ「ぐっ……! くっ!」ガギッ!

猿(くくく、カニの俺への憎悪がヒシヒシと体に伝わってくるぜ。
  いいぞ、憎め! 俺を母親の仇だと恨め! 殺意を抱け!)

猿(俺が地獄で身につけた能力“憎まれっ子世にはばかる”は、
  相手に憎まれたり恨まれたりするほど、俺自身が強くなるのだ!)



85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:29:29.26 ID:r7aWzPPA0

猿「ほらよっ!」ビュッ!

カニ「ぐぁっ! くっ……猿めぇ!」ガキンッ!

猿「(防御が崩れた!)もらったッ!」

ドギャッ!

猿の投げた柿が、ついにカニにクリーンヒット。

カニ「ガハァッ!」

桃太郎(……ここまでか)

猿「トドメだ」
 (カニを殺せば、その瞬間カニの憎悪は最大級になり俺の力はますます高まる!
  そうなれば桃太郎とて俺の敵ではない! ……ククク。
  その後は鬼どもを屈服させ、俺が首領になることすら可能かもしれん)

カニ(これが、母さんも味わった痛み……)

カニ(意識が遠のく……死が近いってことか……)

自分にぶつけられた青柿を見つめるカニ。

カニ「柿……」



86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:31:06.18 ID:r7aWzPPA0

柿なんかのために、ぼくの母さんは死んだ。

いや、柿“なんか”ではない。

生き物は食べなければ死ぬのだから、食糧の確保は生きる上での最重要課題の一つだ。

それは猿も同じこと。

木を登れないカニを無視し、柿を独占する──

もしぼくが、あいつの立場ならやらずにいたか? 恥ずかしながら断言はできない。

やり口は非道だが、猿の行動は決して理解できないものではない。

その後、ぼくは母さんを殺された恨みで猿を殺した。

そして今、あいつはぼくに殺された恨みでここに蘇った。

だが、ぼくはそうではない。今は、桃太郎さんに力量を見込まれてここにいる。

ぼくの戦いは、食糧確保とか、復讐とか、それらより高みになければならない。

母さん、ごめん……。

でもぼくは恨みや憎しみを克服して、さらなる一歩を踏み出さなければならないんだ!



88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:32:45.22 ID:r7aWzPPA0

猿(な、なんだ急に力が抜け……)

トドメ、と放った猿の柿はえらく気の抜けた一投となった。

カニ「ふんっ!」カキッ!

当然、あっさりハサミでハジかれる。

猿「ち、力が……抜けていく……!」

猿(バ、バカな……。こいつ俺に恨みがまったくないというのか!?
  は、母親を殺されて、自分も殺されかけて──何故!?)

猿「なぜだッ! カニッ! お前は俺が憎くないのか!?」

カニ「憎くないわけないだろ? でも、ぼくのお前に対する復讐はすでに終わっている。
   だからもう筋違いの戦いはしない……」

カニ「ここから先は、桃太郎さんのお供として鬼退治の──
   生死という自然の摂理から外れたお前を地獄に帰すための戦いだ!」

猿「くっ、そ! ……うおおおおおっ!」

ダダダッ!

桃太郎(柿は通用しないと悟ってか、猿が特攻に出た! 次で決まる!)



89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:35:02.07 ID:r7aWzPPA0

  ガ キ ン ッ


カニ「ぐっ……!」

カニの右ハサミが砕けた。

猿「あっ、あははははっ! カニ……お前の」

猿「勝ちだ……」

ドサッ

カニ渾身の強打が、猿の腹部を直撃した。
衝撃に耐えられずハサミは砕けてしまったが、文句なくカニの勝利である。

桃太郎「見事……!」

桃太郎も思わず唸る一撃であった。



91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:36:26.07 ID:r7aWzPPA0

カニが猿を倒したため、壁が崩れ、鬼大将への道が出来上がった。

カニ「桃太郎さん、あとは──」

桃太郎「あぁ、任せておけ。よくやった」

桃太郎は最終決戦に挑む。

カニ「やったよ、母さん……」

カニ「母さんを殺された恨み、ではなく、桃太郎さんのお供として……」

カニ「天国で見ててくれたかな……?」



92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:38:38.13 ID:r7aWzPPA0

まもなく、桃太郎は鬼大将の部屋にたどり着いた。

鬼大将「くっ、まさか四天王を倒すとは……さすがは桃太郎!」

桃太郎「倒したのは私ではない。だが、おかげで力を温存することができた。
    さあ、観念するんだな」

鬼大将「ほっ、ほざけぇっ!」

鬼大将「“鬼に金棒”!」

鬼大将の右手に、超巨大な金棒が生み出される。

桃太郎「金棒か……」

鬼大将「これだけではないぞッ!
    ワシは貴様を倒すために、地獄でいくつもの能力を身につけた!
    “鬼の目にも涙”! “鬼の居ぬ間に洗濯”!」

鬼の目から出た大量の涙が、衣服を洗うどころか破りそうな激流となって
桃太郎に襲いかかる。

ズゴオオオオッ!

鬼大将「フハハハッ! 
    激流で身動きが取れなくなったところを、金棒で殴り殺してやる!
    いかに貴様とて、これほどに多彩な技は持ってはいまいて!」



93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:40:11.31 ID:r7aWzPPA0

桃太郎「私に技は一つで十分だ」

鬼「!?」

桃太郎「“快刀乱麻を断つ”」

スパッ

鬼大将(う、うそ……一振りで水が斬れ──)

鬼大将(あれ、ワシも斬れて──)

鬼大将「うぎゃあああっ!」

一瞬で、鬼大将の胸が一文字に切り裂かれた。

桃太郎「鬼の大将よ。はっきりいって三年前の方がずっと強かったな……。
    お前の敗因は技におぼれ、故郷である地獄に頼り、
    肝心の自分自身を磨かなかったことだ……!」

桃太郎「無断で死人を蘇らせたり、亡者を兵にしたり、閻魔大王もさぞご立腹だろう。
    地獄に戻ってたっぷり灸をすえてもらうがいい!」

鬼大将「む、無念……」ドサッ



95:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:43:20.65 ID:r7aWzPPA0

鬼大将が倒れたため、城外の無限増援も途絶えた。

キジ「どうやら、エネミーが増えなくなったようだねェ」

サル「桃太郎さんたちが上手くやったようだな……。この戦、勝ったぞ」

赤鬼「ほざけ! これだけの大軍を相手に戦い、貴様らも限界に近いはず!」
青鬼「ええい、一気に押し潰せぇっ!」

イヌ「分かってないワンねぇ。これでようやく力を温存せず、戦えるワン!」

キジ「“キジも鳴かずば撃たれまい(ビューティフルソング)”!」

キジの鳴き声が、音速の砲撃となって鬼や亡者を打ち倒す。
キジの奥の手である。

イヌ「久々に連携でもやるか、ワン」
サル「おう。“犬猿の仲”!」

桃太郎のお供であるイヌとサルは、“犬猿の仲”を発動すると、
互いの力を高め合うことができる。
体にかかる負担が大きいため長時間は使えない切り札だ。

赤鬼「うわあああああっ!」
青鬼「ひいいいいいいっ!」

外の戦いは、イヌ、サル、キジの圧勝に終わった。



96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:46:36.32 ID:r7aWzPPA0

新鬼ヶ島は制圧された。

鬼大将や地獄四天王(猿、舌切り婆、タヌキ、狼)、亡者たちは地獄に送り返され、
残る鬼たちも全面降伏したのだった。

後日、桃太郎の家で祝賀会が行われた。
酒と料理ときび団子がたっぷり振る舞われる。

桃太郎「みんなのおかげで再び鬼を退治できた! ありがとう!」

おじいさん「いやぁ、めでたい。桃太郎、みんな、ようやった」
おばあさん「きび団子もいっぱい作ったから、どんどん食べておくれよ」



98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:48:29.86 ID:r7aWzPPA0

イヌ「ま、ボクらが本気出せばこんなもんワン!」

キジ「HAHAHA! いやぁ~やっぱりウィンの美酒は最高だねェ!」

サル「おいおい、あまり飲みすぎるなよ。うぃ~……ヒック」

栗「牛フン、お前は食べないのか?」

牛フン「だからクソが食事しても──」

栗「いいから食えッ! 美味いぞ!」グイッ

牛フン「モグモグ……(美味しい……)」

ウス「栗どんと牛フンどん、なんか仲良くなったでごわすな」

蜂「なんでもタヌキを二人で倒したんだとよ。ふん、俺なんて一対一だったぜ」

カニ「でもみんな無事で何よりだよ」



100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 23:50:28.82 ID:r7aWzPPA0

翌日──

桃太郎「本当にいいのか?」

カニ「ええ、ぼくらはやっぱり村暮らしが性に合っていますから。それに……」

カニ「ぼくと母さんで育てた柿の木も寂しいと思うので」

桃太郎「──分かった。ならば、これ以上は引き止めまい」

桃太郎「また会おう」
イヌ「じゃあなワン!」
サル「さらばだ!」
キジ「グッドラック!」

栗「ウオオオッ! さようならァッ!」
ウス「ありがとうでごわす!」
蜂「ちっ、目から汗が……」
牛フン「さようなら」

カニ「また会いましょう! みなさん!」



104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/04(水) 23:53:35.29 ID:r7aWzPPA0

カニ一行は桃太郎の家に高い給金で仕えるという話を断り、村に戻った。

やがて季節は秋になり、あの柿の木に柿が実った。

カニ「“バカとハサミは使いよう”」

残った左ハサミをフックのような形に変え、器用に木を登るカニ。

カニ「どれどれ……」

パクッ モシャモシャ

カニ「うんっ、去年より美味い!」

カニ「あとで栗たちにもおすそ分けしよう」

カニ「あっ、そうだ。桃太郎さんの家にも持っていこう! 喜んでくれるといいなぁ」

ふと、カニは天を仰いだ。
秋の高い空の上で、カニの母が優しく微笑んでくれたような気がした。


                                          ~おわり~



105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/04(水) 23:54:40.03 ID:tjzMXStP0

乙!



106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/04(水) 23:57:35.86 ID:q2fWgZ5b0



ペースも速かったし、面白かった




108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/04(水) 23:58:07.95 ID:4cvWHal4O

面白かった、乙!




109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/05(木) 00:02:20.28 ID:oKH4vtWa0

まれに見る面白ssだった。また書いてくれよ



112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/05(木) 00:09:17.77 ID:JWbwaF4Y0




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        コメント一覧

          • 1. あ
          • 2012年01月05日 02:29
          • 感動した
          • 2. 名無し
          • 2012年01月05日 07:50
          • これは確かに盛り上がる!
          • 3. あ
          • 2012年01月05日 08:36
          • 月光条例の執行者はまだかーw
          • 4. す
          • 2012年01月05日 09:16
          • 楽しい~
          • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年01月05日 09:30
          • おもしろかった
            2chの創作が苦手な自分にも読めた
          • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年01月05日 10:56
          • 面白いな。いろんな昔話を混ぜた話は新鮮だ
            さるかに合戦のカニが主役なのもいい
          • 7. 名無し
          • 2012年01月05日 11:07


          • スゴい完成された文章だった。笑えるとこもあったし全然長いと感じなかった。
            また読みたい。
          • 8. 名無し
          • 2012年01月05日 14:28
          • これは良作
          • 9. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年01月05日 15:58
          • これは素晴らしく熱いSS
            それぞれの必殺技のネーミングも実に秀逸だった
            漫画で読みたいレベル
          • 10. ななし
          • 2012年01月05日 17:02
          • とにかく普通に面白かった
            こういうのは貴重だな
          • 11. 以下、名無しに代わりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年01月05日 22:28
          • 5 引き締まっている良作だった
          • 12. ななし
          • 2012年01月06日 03:40
          • >>月光条例の執行者はまだかーw

            桃太郎でたとこで同じこと思ったww
          • 13. 名無し
          • 2012年01月06日 20:46
          • 5 ことわざの使い方がうまいな

            久々に感動した
          • 14. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年01月11日 14:59
          • 5 戦闘の部分で盛り上がれて面白かったし
            なかなか熱くてよかった
          • 15. もしもし
          • 2012年01月13日 11:27
          • 熱い少年マンガだった。キジの喋り方が桃太郎伝説のエゲレス帰りのミコみたい
          • 16. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年01月28日 22:06
          • 5 動物を使ったことわざ・慣用句のバラエティに驚いた
            かっこいい
          • 17. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年10月05日 00:11
          • 国語大戦の人?
          • 18. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2013年02月01日 22:59
          • 5 面白かった

            吉田戦車のさるかにを思い出したのは俺だけじゃないはず

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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