男「なんか、シャワールームに人の気配がするんだけど」

2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 12:35:12.30 ID:AB00Iqtxo

姉「なんですか、その年になってお化けが怖いなんて、まったく男くんは情けないですね」
男「そういう話じゃなくて、姉がここにいるのに、誰かシャワー使ってるんだけど。思いっきり」
姉「あー、実はその、川原でちょっと拾ってしまいまして……」
男「いや、拾ってきたって……申し訳なさそうに言われても、話が見えないんだけど」
姉「実は仕事帰りに、橋の下で泣いている女の子を見つけましてね。
 これは拾わなければ男がすたるってものです。大切に抱えてお持ち帰りしてきました!
 ちなみに、今はシャワーを浴びて貰っています。雨に降られてずいぶん冷えていたので」
男「姉は女じゃないかとかツッコみたいけど、え、なに、女の子を拾った?」
姉「ならば漢がすたると言い直しましょう」カキカキ
男「わざわざレシートの裏に書かないと分からないような言い訳はいらんわ」ペシッ
姉「ぶ、ぶちましたね! 私は男くんをそんなふうに育てた覚えは――」
男「それで、本当はその女の子ってのは、なんなんだよ」
姉「ボケをスルーするようにも育てたつもりは無いんですが……
 とりあえず、名前は少女ちゃん、かっこ十六歳かっこ閉じ、だそうです。
 雨に濡れてスケスケのシャツの下からは、ピンク色をしたのサテン地のブラが見えていたなんて情報は、いくら男くんが望んでも私にはとてもいえません」
男「やめろよ! さりげなく俺がその子の下着を気にしたような方向に話を持ってくな!!」
姉「では何を気にしてるんですか? 男くんもそろそろ、その、そういう年頃だというのは、私も分かってるつもりです」
男「いや、そういう話しじゃなくてさ。
 見知らずの女の子を、道端で泣いてたからって理由で拾ってきたの?」
姉(興味がないとは言わないんですね)「まあ、端的に言えば」
男「端的じゃなく言うと?」
姉「とりあえず、神様は六日目に人を作ったという辺りから話しはじめます」
男「…………まあ、いいや。たしかに、泣いてる女の子は助けないとな」
姉「はい。実際私もその場の勢いで拾ってしまったので、何も知らないんですよ。
 なので、少女ちゃんがシャワーから出てきたら、食事でもしつつ話を聞きましょう。
 もうそろそろご飯ができますよ」
男「そういやずいぶん良い匂いだ。メニューはなに?」
姉「今日はちょっと特殊な鶏団子鍋を作ってみました。
 昆布だしとお酒とゆずポンを同量ずつ入れて煮立てたスープに、鶏団子と野菜を入れてみましたよ」
男「おー。初めてのメニューだよね。楽しみにしとくよ。
 とりあえず、俺も学校の宿題終わらせてくるわ」
姉「はい。がんばってくださいね」


ポジティブシャワー



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 12:40:20.25 ID:AB00Iqtxo

-------------------------------------------------------------
   三十分後 リビング

姉「それじゃ、なによりもまず先に、手をあわせて」
姉・男・少女「いただきます」カチャカチャ
姉 もっきゅもっきゅ
男 ぱく……ぱく……
 (うわー、どうしよう。女の子拾ってきたって、ガイジンさんとは聞いてないぞ……!
  金髪に青い眼とか、キレイだけど、不思議な感じだ)
少女「あの、ご飯までお世話になっちゃって、ごめんなサい」
男(あ、日本語は使えるんだ。って、いただきますって言ってたじゃん。
 お箸は、ちょっと下手だけど使えてるし、日本でそれなりに暮らしてるのかな)
姉「気にしないでいいですよ。久しぶりに二人だけじゃない食卓で、うれしいくらいですから。ね、男くん」
男「あ、ああ。そうそう。むしろキミの方こそ、大丈夫?
 なんか姉が無理やり連れてきたような」
姉「無理やりとはなんですか。
 人道的かつ機動的にお持ち帰りしてきただけですよ」もきゅ
少女「はい、ソんな感じで連れて、きてもらいまシた」
男「姉、わかってるだろうが、機動的かは無理やりかどうかを否定する論拠にならないからな。
 キミも、姉に合わせなくていいよ」
姉「ふふーふ」もっきゅもっきゅ
少女「いえ、本当に、助かりまシた。いく場所も、頼れる人もなくて、困ってたから」
男(家出でもしたのかな?)「失礼だけど、ご家族とかはどうしたんだい?
 っていうか、こんな雨の日に、橋の下にいたって聞いたけど……」もぐ
少女「橋の下にいたのは、雨宿りをシてただけで……。
 お金をもってなかったから、屋根のある場所に入れなくて。
 家族は、ソの……」
姉「言いたくないならいいですよ。
 っていうか男くん、初対面の女の子に質問攻めはどうかなーと、お姉さん思うのです」もっきゅもっきゅ
男「その姉が何も聞かないから、こんなことになってるんだっての。
 俺が聞きたいのは、ご飯の後どうするかって事でさ。
 食べ終わったら追い出すってワケにもいかんだろうと」
姉「ああ、つまり、ウチに泊まらないか? なんて、童貞だからスマートに聞けなくて、そんな感じなのですね」もきゅ
男「一箇所いらない単語があったけど、まあ、おおむね」
姉「確かにそれは、私の仕事でしたね。
 ただ、その心配はいりませんよ。少女ちゃんは今日からしばらくウチで暮らしてもらいます!」キリッ
少女「ええっ!?」
男「……いや、本人の同意がないと、ソレは誘拐だぞ」
姉「同意ですかー。確かに重要です。男くん、ちょっとお待ちを。少女ちゃんはこっちに」
少女「え、あ、はい?」
姉・少女 ヒソヒソ 「でも……それは……」「……せんよ……の方が……」



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 12:45:12.19 ID:AB00Iqtxo

姉「相談完了! 今日から少女ちゃんも一緒に暮らします」
少女「その、よろしくお願い、します」ペコッ
男「何があったのか良く分からないけど、まあ、姉が無理強いしてないならいいか」
姉「失礼ですね。気配りの女神のような私が、無理強いなんてするはずがありません」キリッ
男「それなら、なんで既に鍋の中身が無いんだろうな」
姉「え?」
少女「あ、お鍋が」
男「さっきから姉ががつがつ食べてるな、と思ったけど、既にほぼ残量なしだ。気遣い皆無と言っていい」
姉「あらー。……てへ」
男「かわい子ぶっても、鍋は戻らないぞ」
姉「もー、ちょっとしたジョークですよ。急いで野菜切ってきて、具を足しますね」

男「ったく、食いしんぼめ」
少女 クスクス
男「悪かったね、質問攻めにしちゃって」
少女「いえ、大丈夫、でスよ。
 私の方こソ、急にやってきて、ご飯を食べさせてもらったり」
男「それは気にしなくていいよ。
 姉も言ってたけど、ウチはずっと二人で暮らしてたから、にぎやかになれば嬉しいし。
 だから、キミが暮らすって言うのも、歓迎するよ」
少女「ありがとう、ございまス」
男「それで、とりあえずしばらく一緒に暮らすなら、名前で呼んでもいいかな?」
少女「はい。私も男さんって呼ば、せてもらいまス」
男「男でいいよ。それから、敬語に慣れてないみたいだし、普段どおりにしてくれないかな?
 こっちまで敬語にしなくちゃいけないような気がしてくるし」
少女「ソうなの? ソれじゃ、普段どおりにするね、男っ」にぱっ
男「あ、ああ。よろしく、少女」ドキッ
姉「そんな彼女の笑顔に、僕はつい胸をときめかせてしまうのだった。まる」
男「……姉はいつからそこに?」
姉「名前で呼んでもいいかな、からですかね」
男「鍋の具は?」
姉「男の胸キュンシーンが終わってから登場するので、ただいまタイミングを待っています」
男「いや、胸キュンとかいいからさ。さっさと食べよう。俺はまだまだ腹ペコだし」
姉「そうですか? ま、今はコレくらいで許してあげましょうかね。ふふーふ」
少女 クスクス



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 12:53:30.02 ID:AB00Iqtxo

------------------------------------------------------------
   その日の深夜 キッチン

男「姉、ちょっと時間ある?」

姉「ええ。ちょっと待ってくださいね。朝ごはんの仕込がもうちょっとで終わるので」

男「何か手伝える?」

姉「大丈夫ですよ。コレをタッパーの中で一晩漬け込めば……はい、終わりましたよ」

男「明日はブリの照り焼きか」

姉「男くんの好物ですからね。腕によりをかけて作りますよ」

男「ん、楽しみにしてる。それで、本題なんだけど」

姉「少女ちゃんのことですか?」

男「本当に、しばらく同居するの?」

姉「はい。先ほどちょっと話して、一週間から二週間くらい、一緒に暮らしましょうと」

男「それは良いんだけどさ。家出とかなら、一応警察に連絡したりしたほうがいいんじゃないか?」

姉「近いですが、ちょっと事情が違うようですね……」

男「違うっていうと?」

姉「まあ、ちょっと心当たりがあるので、そちらでウラを取ってからでいいですか?
 不確定な話をして、男くんを不安にさせたくも無いですし」

男「不安になるような話なら、そもそも巻き込まれるな、って言いたいけど。
 まあ、困ってる女の子を見捨てるのも気分が悪いし」



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 12:57:44.44 ID:AB00Iqtxo

姉「はい、ソレでこそ男くんです。ぎゅーってしてあげましょう」ぎゅー

男「わ、こら、ねえさん!」ぱっ(///

姉「ふふーふ。まあ、危険な話、とかではないので、これでごまかされてください」

男「そんな事しなくても、姉の事は信じてるから、いいよ」

姉「それは嬉しいです。それにしても、久しぶりに『ねえさん』って呼んでもらいました~♪」

男「っ、もういい。俺も寝る」ドタドタ

姉「はい、おやすみなさい」

姉(……男くんもとまどってましたね)

姉(でも、少女ちゃんを見つけて、事情を聞いて、コレしかないと思ったんです)

姉(男くんも、今年で十八歳。そろそろ『時期』でしょう)

姉(お父さん、お母さん。私は、私の役目を果たせていますかね?)



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 15:09:43.80 ID:AB00Iqtxo

------------------------------------------------------------
   同居一日目 朝のリビング

少女「わ、わ、スごい! 食卓がキラキラってシてる!」
姉「そんな、大げさですよ」
少女「ソんな事ないもん! うわー、匂いもすっごい美味しそう……」
男「たしかに、姉さんの料理は外で食べるよりよっぽど美味いからな」
姉「おだてても何も……そういえば、ちょっと試しに作ってみた海苔の佃煮くらいなら、出ますね」
少女「おおー!」

男「少女は朝からテンション高いなぁ」
少女「美味シいご飯は大切だからね!」
姉「さあさ、それじゃそろったところで」

三人「いただきます」

姉 もっきゅもっきゅ
少女 まぐまぐ
男 ぱくぱく

少女「美味シいでスよー」うるうる
男「うん、いつも通り美味しい」
少女「照り焼きは臭みがなくて、箸を入れるとサクッ、口に入れるとほろほろーってほぐれて。
 お味噌汁も、茎わかめがコリコリで、味のしみた大根は噛めばジワァッと味があふれて。
 試しにって言ってた佃煮も、ちょっと薄めの味付けで出汁の風味が効いてて、ほんのり甘くて。
 お・い・シ・いー!」まぐまぐまぐまぐ

姉「そんなに喜んで貰えると、作った甲斐がありますよ。
 男くんはいつだって『いつも通り美味しい』のワンパターンで、張り合いがなくて」もきゅもきゅ
男「仕方ないだろ。そんなに褒め言葉のレパートリーなんか無いって。美味しいものは美味しいし」
姉「かわいくないですねー。まあ、その分美味しそうに食べてくれるから良いんですけど」もきゅもきゅ
男「まあ、そういうことで」ぱくぱく

少女「うまーい」まぐまぐ



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 15:16:37.19 ID:AB00Iqtxo

------------------------------------------------------------
   同居一日目 昼前の庭

男「で、いったいどうしてこうなった……」
少女「それは、そのー」
姉「あらら……」

男「働かざるもの食うべからずって、手伝ってくれるのは良いんだが。
 食器を洗ってくれと頼んだら、次々に割ってくれて」
姉「お掃除お願いしたら、廊下が水浸しになりましたね」
男「洗濯物を頼んだら、コレか」
姉「水溜りにツッコムなんて、よっぽど運がないですよね」

少女「うう……」
男「運がないというか、そもそも家事をしたことが無いのか?」
少女「はい。シたことないでス……ごめんなサい」うるうる

姉「気にしないでいいですよ。こちらも、確認せずに任せてしまったのが悪かったわけです」
少女「でも、こうやって逆に迷惑かけて」
姉「いいんですよ。慣れなければ失敗するのは当然です」

男「ま、ウチが前時代的な生活をしてるってのも、あるけどさ。
 いまどきメイドロイドもいないなんて、うちくらいだ」
姉「まあ、中流以上の家庭にはたいていロボットが居ますからね。
 家事を任せきりにして、仕事とかに余力を注ぐのが普通ですから、できなくて普通です」

少女「えっと、その――」

男「うちの設備が一世紀くらい遅れてるのは自覚あるし。
 失敗してもしょうがないさ」
姉「一世紀って、2011年ですか。さすがにソレよりはちょっとは進歩してますよ?」
男「せいぜい、オーブンレンジが最新式とか、そんな程度だろ」

少女「と、とりあえず! この落としちゃった洗濯物、洗いなおしてきます!!」ばっ
姉「あっ、少女ちゃん……どうしたんですかね」
男「洗濯物が痛むからだろ? ただ、大丈夫かな……」
姉「ええ、また何かありそうで」

少女「きゃー!」

姉「見てきますね」
男「悲鳴が上がる間隔がだんだん短くなるなー」

姉「男くんも関心してないで、廊下の掃除とか引き受けてくれませんか」
男「あー、ちょっとこれから学校の復習でもしようかなーと」
姉「お昼ご飯は抜きでいいですか?」
男「喜んでやらせていただきます、軍曹!」しゅたっ



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 15:21:49.17 ID:AB00Iqtxo

------------------------------------------------------------
   同居一日目 昼前の洗濯機前

姉「まあ、怪我が無くてよかったです」
少女「はい、ごめんなサい……」

姉(泥だらけの洗濯物を手洗いして、洗濯して……干してもこれからじゃ乾かないですね。
 全自動で乾燥までやってしまいますか。
 その間に部屋の泥をふき取って、それからお昼ご飯の支度を……これも間に合わないので、何か出前でも……)

少女「うう、ホントに、何もできなくて」
姉「気にしないで下さい。むしろ、お客さんに任せるようなことじゃないのに、任せたのもいけなかったですから」
少女「いえ! その、お客さんとして扱われるよりは、嬉シいから」
姉「それなら、いいんだけど……」

少女「でも、なんにも出来なくて」
姉「あ、あはは……」(否定できませんからねぇ)

姉「ところで、その服も汚れちゃいましたし、いったんシャワーを浴びてくると良いですよ。
 着ているお洋服も汚れちゃったみたいですから、ついでに一緒に洗濯しちゃいましょう」
少女「はい……あ、でも、私これ以外に服がなくて」
姉「そういえば、昨日は乾燥して着てもらいましたからね。パジャマも、私のを貸しましたし。
 女二人なら適当なものを、っていえますが、男くんも居ますし」
少女「お姉さんの服を貸してもらうと、えっと、その」

姉(身長差のせいで、襟ぐりが深い服だと胸元まで見えちゃいますしね)

姉「では、こうしましょう。
 洗濯物を洗濯機に入れたら、部屋の掃除をして、その後は買い物です!」
少女「買い物ですか?」
姉「はい。ネット通販で買っても良いんですが、服なんかはやっぱり見て選びたいですからね。
 車で一時間くらいの場所に、ちょっと大きな複合モールがあるので、そこでお昼ご飯と買い物をしましょう」

少女「でも、いま私の手持ちのお金がなくて……」
姉「気にしないで下さい。女の子同士で服を見て買い物とかしてみたいって、私のわがままです。
 イッツ・ガールズショッピング! いいですねー、テンションアップです!!
 付き合ってくれたら嬉しいところですが、いかがです?」
少女 こくこく

姉「よかった。それでは一時間くらいしたら買い物に出ることを、男く○に伝えてきてください」
少女「はい、了解でス!」タタッ

姉「そういって敬礼していくあたり、男くんとノリが似ていますね……」



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 15:26:48.74 ID:AB00Iqtxo

------------------------------------------------------------
   同居一日目 縁側

少女(うあー、気を使われたなー)

少女(クレジットカードは持ってきてるから、使えば迷惑かけないんだけどな。
 使ったら居場所がバレて連れ戻されちゃうし)

少女(それにしても、私って本当に自分じゃ何にもできないんだ)

少女(縛り付けられて、檻の中みたいだって思ってたし、今でもあの生活はそうだったって思ってるけど。
 でも、私はそこの住人で、外にでたら、簡単な家事さえマトモに出来ないんだ)

少女(やっぱり、これ以上の迷惑をかける前に出て行くべきかな……)

少女(でも、そうしたら私は、あの檻の中に戻るしかなくて)

少女(どうして、お姉さんは私を助けてくれたのかな?)

少女(たぶん、初対面だよね。私のこととか、知らないはずなのに)

少女(……優しく迎えてくれて。何もできない私なのに)

少女「うー、暗く考えちゃいまス。いけないでスよね」

少女 ぱんっ

少女「ひりひりするけど、まあ、気合も入りまシた。男に伝言でス!」



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 15:29:36.99 ID:AB00Iqtxo

------------------------------------------------------------
   同居一日目 男部屋

男「廊下掃除完了! やっぱ廊下は冷えたなぁ……
 とは言っても、さすがにこの時間から布団に入ると、いざって時に姉さんに怒られそうだし」

少女 こんこんこん

男「ん? どうぞー」
少女「えっと、いいかな?」(男の子の部屋って、見るの初めてかも……)
男「とりあえず、そこにでもかけてくれ」

少女「わ、ジャンプの昔の単行本がいっぱい!」
男「親父が好きだったみたいでさ。姉は読まないから、部屋に持ってきたんだ。
 少女もマンガは好きなの?」
少女「マンガも小説も、ゲームも大好きっ。
 教育係の人がうるサくて、あんまり時間使えないけどね」しゅん

男(教育係って、実は上流階級的な家庭だったのか?)

少女「わ、スラムダンクの初版本! 百年経ってこの保存状態って、マニアがスいゼんだね」
男「垂涎って、難しい言葉知ってるな」
少女「まあね。お父さんが日本人だったから、日本語はよく勉強シたよ」

男「へー。それじゃ、いくつか話せるんだ」
少女「うん、英語に、ドイツ語、エスペラントくらいけどね。ちなみにお母さんはイギリスとドイツのハーフなの」
男「そりゃずいぶん凄いな。やがては世界で活躍って感じかな?」
少女「う、うん、そう……かな」



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 15:32:43.39 ID:AB00Iqtxo

男(あー、なんか地雷だったか?)「そういやさ」

少女「?」
男「とつぜん部屋に来たけど、何か用事があるのかなーと」
少女「あ、ソうだ。あと一時間くらいしたら、食事と買い物にモールって所に行こうって、お姉さんが」
男「ん、了解だ。それなら、先に勉強のノルマはこなしておくかな」

少女「邪魔しないように、私はコレで失礼スるね」
男「気遣いサンキュー」
少女「お気になさらズ♪」ぱたん

男 かきかき

男(外出して買い物か。そういえば、しばらくそんな事もしてなかったな)

男(今の時代、生活必需品は全てネットで間に合うし。
 野菜や魚なら、農家や漁協のサイトで直接購入して、夕方には届く。
 服や家具は、直接見なくていいなら、それもネットで買える。
 学校だって、一部の授業を除けば自主登校だ。サイトで授業を見て、レポートをメールで提出すれば単位がもらえる)

男(おかげで、気がつけば俺もすっかり引きこもり……)

男(考えてみりゃ、姉さん以外と会話したのも結構久しぶりか)

男(別に、人間嫌いとかじゃないんだけど、誰かと遊ぶより、本を読んだり、どこぞの掲示板見てたりするほうが楽しいからな)

男(それに、学校まで片道二時間弱は正直遠い……)

男(父さんたち、なんでこんな場所に家を建てたんだか。俺の引きこもりの原因の一割くらいは父さんたちだ)

男(ま、死んじゃった人たちに、言い訳もなにもいらないか)

男(勉強に集中しよう)

男 かきかき



17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 17:20:24.42 ID:AB00Iqtxo

ただいま! でも書きため分上げたら外出しなくちゃ。

------------------------------------------------------------
   同居一日目 正午過ぎのショッピングモール

少女 がくがくぶるぶる

男「あー、やっぱりか」ちらっ
姉「なんで男くんは私をちら見しますかね」

男「昔から思ってたんだよ、姉の運転はちょっと普通じゃないんじゃないか、って」
姉「失敬ですね。こう見えても免許は一回で獲れましたし、ペーパーでもないんですよ」
男「同乗の教官が二度と姉と乗りたくないからって、合格通知だした可能性も」
姉「そんな事ありませんって」

少女「死ぬかと、死ぬかと……」

男「あながち大げさじゃないと思うけどな。ま、とりあえず、早く食事を済ませよう」
姉「ほほう、早く食事を済ませて少女ちゃんのショッピングを開始したいと」
男「姉の買い物の長さは承知しているからな。今回はしばらくの生活分を纏め買いだし、早く始めるに越したことはない」



18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 17:24:49.23 ID:AB00Iqtxo

姉「とか言いつつ、早く少女ちゃんに『こ、この下着とか、どうかな』なんて自分色に染めたいだけでは? ふふーふ」
少女「え、ええっ、私の下着に男からリクエストが……?!
 確かに、一緒に住むなら好感度を上げるべきかな、なんて思うけど、だからと云って下着からは難易度が高いかと思いまス!」

通りすがりA「あんな美少女、美女と同居だと……」ザワ
通りすがりB「しかも、下着にリクエストでござるか……」ザワ
通りすがりC「寒い夜でも、あなたが暖めてくれるなら、とか……」ザワ
通りすがりA・B「そんなイベントは許せん……!」キュピーン

男「あ、アホかっ! 良いから行くぞ。なんだか命の危険を感じる……」
姉「ふふーふ」にやにや

少女「え、えっと、冗談、ですよね?」



20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 17:30:14.64 ID:AB00Iqtxo

------------------------------------------------------------
   同居一日目 モール内・フードコート

男「案外、繁盛してるみたいだな」
姉「それはそうですよ。こうして実店舗構えてる所は減りましたからね、遠くからも人が来ますし。
 昼時はモールの大半の人が食事に動きますから、人口密度も上がるってものです」

少女「ソれにシても凄いですね。イートインスペースの周りに、お店がいっぱい並んでて……」
男「各自好きな店で持ってこられるから、こういうところは良いよな。
 とりあえず、俺が席を取っておくから、二人で好きなものを注文して来いよ」ひょいひょい

少女「サりげなく荷物を持ってくれるところとか、男ってちょっと無愛想だけど、紳士ですね」
姉「ふふーふ、がんばって育てた甲斐があるってものです」

少女「育てた、ってお姉サんがでスか?」
姉「はい。お父さんもお母さんも、男くんが一歳の時に他界しましてね」
少女「タカイ……主に招かれることでスね」
姉「そうそう。そんなわけで、男くんは私が育てたのですよ。
 幸い、遺産がそれなりにありましたから、働かなくても済みましたし。
 一歳にもなれば、子供なんて案外放っておいてもそれなりに育つものです」

少女「ソっか、二人で手を取り合って生きて来たんでスね……
 ……でも、あれ? ソうなると、お姉サんの年齢って」

姉「あ、レディースカレーセット一つお願いします!」ばっ
店員「申し訳ございません、そちらで食券を購入していただき、店員にお渡し下さい」
姉「あ、あは、そうですよね。食券買ってー、はい、お願いします」
店員「ありがとうございます。それではこちらの機械の内線が鳴りましたら、改めてカウンターにいらして下さい」
姉「はい、わかりました。それじゃ、少女ちゃんも何か選んでね! 遠慮はダメですよ」

少女「えーっと、ソれじゃ、私はうどんが食べたいでス」
姉「渋い趣味ですねー。ではトッピングとかも選びましょう!」
少女「はい!」(あ、あれ? 結構強引に話題を変えられた気が……年齢はタブーですかね)



21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 17:36:07.33 ID:0OM68GmJ0

かぎ括弧の前は1文字で統一してくれると読みやすいかな

今のところ1文字目がかぶってるキャラいないようだしww



24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 17:42:21.65 ID:AB00Iqtxo

>>21
アドバイスありがとう。さっそくやってみました!
ずんだずんだ(モニター前で踊ってみた)
(花粉症で息が続かなかったorz)



23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 17:39:58.08 ID:AB00Iqtxo

三人「ごちそうさまでした」

姉「やっぱり、たまには外食もいいですねー。
 キーマカレーとチキンカレーが一つの皿で楽しめるとか、自宅じゃできません」
男「うーん、こっちはちょっとなー」
少「男はチゲだよね? 美味しくなかったの?」
男「いや、美味しくないわけじゃないけど、辛いだけでコクとかが足りなくてさ」
姉「ふふーふ、姉ご飯は男くんの好みに合わせた味ですからね、ワンオフのオーダーメイドです。
 普通の品が不満でもしかたありません」えっへん

男「うん、ホントに姉のご飯は美味しいからな」
姉「え、あ、あれ? 調子にのるなとか、そこまで言ってないとか、ツッコミは?」
男「本気で姉の作ってくれた方が美味いと思ってるからな」にこっ
姉(な、な、な、反則です! 普段はかわいくないのに、こんな時に不意打ちで……)

少「確かに、こういうところの味って、ちょっと物足りないよね」
男「やっぱり研究が進んでも、機械の大量生産品じゃ、なんでか少し味気ないんだよな」
姉「そこはホラ、愛情ってヤツですよ!」

A「またアイツか! くそ、ちやほやされやがって……」
B「愛情でござるよっ。言うに事欠いて、愛情でござる……くっ、止めるな、討ち入りでござる!」
C「止めたくはないが、待て、まだ夜になってからでも!」がばっ
B「いざ、いざあぁぁ」ずるずる

男「とりあえず、やっぱりお約束で」すぱんっ
姉「じ、時間差で叩かれました?!」

男「それじゃ、お腹も落ち着いたところで、買い物に行くか」
少女「はい、よろしくお願いします!」

姉「……男くんのスルースキルがどんどん上がりますね」



25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 17:47:01.59 ID:AB00Iqtxo

------------------------------------------------------------
   同居一日目 モール内・雑貨屋

姉「とりあえず、最初は男くんとは別行動しましょう」
男「んじゃ、俺は本屋にでも行ってくる。移動する場合はメールするから」
姉「了解です。一応、三時半くらいに一度合流する予定で居てください」

姉「さて、それでは先ずは雑貨屋です」
少「雑貨からですか?」
姉「昨日泊まって判ったと思いますが、少女ちゃんの寝ている部屋は元々、お父さんとお母さんの寝室だったのですよ。
 掃除はしてあっても、おいてある物は十年以上変わりませんからね、何か必要なものがあれば買いましょう」

少「えっと、そんなに気を使って貰わなくても大丈夫でスよ」
姉「そういうワケにはいきませんよ。
 特に体のお手入れグッズとかは必要です。
 それに、こういう輸入雑貨の店なら日用雑貨でもかわいい物があるので、私も興味ありますし」

少「そう、ですか?」
姉「そうですよー。ついでに、そろそろホワイトデーですからね、社内の友チョコのお返しも何かしら買おうかなと」
少「友チョコ?」
姉「あー、日本のバレンタインとホワイトデーの習慣は、やっぱり複雑というか、別物ちっくですか」
少「よくわからなくて、ごめんなサい」
姉「謝らなくていいですよ。文化の違いですし、独自の習慣なんて有って当たり前です。
 ついでに、私に対しても敬語じゃなくていいですよ。むしろもっとフレンドリーに!」
少「え、でも、ずいぶん年う――」

姉 ギラリ

少「い、イエス・マムッ! フレンドリーにいたシまスでございまス!!」
姉「はい、よろしくお願いしますね。ふふーふ」

少 がくがくぶるぶる



26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 17:51:11.90 ID:AB00Iqtxo

------------------------------------------------------------
   同居一日目 モール内・ランジェリーショップ

姉「可愛い雑貨が手に入って助かりました」
少「~♪ 日本は選択肢が広くていいなー」
姉「外国はやっぱり違いますかね?」
少「んー、お店ごとの特色が極端かも。極彩色のサイケデリックか、天然の地味なのか。
 もちろん、そんなお店ばっかりじゃないでスけど」
姉「あー、なんとなく、わかる気はします」

姉「とりあえず、かさばる衣類は男く○に持ってもらうために、後回しにして、先に男くんの入れない場所を見てしまいましょう」
少「あ、ソのための別行動でスか」
姉「……フレンドリーに」にこっ
少「ソのための、別行動なのね」びくびく

姉「はい、それとも、少女ちゃんは男くんの好みが良かったですか?」
少「い、いえいえ!」
姉「大丈夫ですよ。男くんの好みは姉としてきっちり把握しています。
 パソコンの中の画像ファイル、動画ファイル、ついでに携帯も同様に検索かけて、把握しています」にぃー

少「あ、う、あ」(そ、そんなイイ笑顔なのに、なんだか恐ろしいです)



27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 17:55:55.62 ID:AB00Iqtxo

姉「とりあえず、下着はボーダーか水玉、無地が好みみたいですね。
 案外、黒いレースのついた紫色とかみたいな、大人っぽいのは少なかったです。残念です」しゅん
少「えっと、お姉さんも、男くんのそんな好みに合うデザインにシたら、良いと思うけど……」

少(あれ、このアドバイスでいいのかな? あれ??)

姉「サイズの関係で、そういう清純派ちっくなのは少ないんですよね。
 一時期は私のサイズでも可愛いデザインが有ったのに、いつの間にか、時代が逆行したみたいです」はぁ
少「大きいと、大きいなりに大変ね……」

姉「まあ、そのかわり」きゅぴーん
少 びくっ

姉「ここに着飾らせ甲斐のある素材がありますからね。大丈夫ですよー、痛くありませんよー」わきわき
少「え、いえ、下着くらいは、自分で選べるかなー、あはは」じりじり

姉「店員さん、ちょっといいです?」
店「はいにゃー、何でございますかにゃ?」
姉「実はですね、この娘っこを素敵に無敵な下着でドレスアップしたいのですよ」
店「承りましたにゃー。いやー、金髪に青い眼、そして透き通るような白い肌、いいですにゃー」しゅぱっ

少「え、い、いつの間に私更衣室に?!」
店「はい、脱ぎ脱ぎしましょー」しゅぱぱっ
少「あ、ちょっと、そんな……」



28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 18:00:40.99 ID:AB00Iqtxo

店「にゃはー、さすが若いお肌はさわり心地がいいですにゃー」
少「ちょ、きゃっ、あはは、くスぐったい、くスぐったいでスよ! んん、んぅ、ぁん……」

店「大きすぎず小さすぎず、形も整ったベストな感じで、いやー、たまらにゃいです!」
少「も、もう、ソんな……」

店「はい、こんな感じですにゃ」しゅぱっ
姉「どうでした?」
店「上げて寄せて、Cカップですにゃ。これなら当店ならほぼ全て、在庫で対応できますにゃ。
 元々Bを使用されていたので、このままだと成長を阻害するかも? まだ大きくなる年齢だし、ここはCで買いですにゃー」
姉「ありがとうございます、それじゃ、また決まったら声をかけさせてもらいますね」
店「はい、ご利用ありがとうございますにゃー☆」つやつや

少「う、うう……」
姉「どうしたんです?」
少「な、なんだかひどく、陵辱サれたような感じが……」
姉「りょうじょくって、難しい言葉を知ってますね。
 ただ、下着は後の体型にも関わりますからね。やっぱり店員さんに意見を伺うのは重要ですよ。
 とりあえず、お店の商品は選び放題みたいなので、ここでしばらく使う分を買っちゃいましょう」
少「はい……」

店「あ、お客様」
少 びっくぅっ!!
姉「はい、どうしました?」
少 どきどきどきどき

店「当店ただいま、上下セットを三つ購入されると割引のサービスがありますにゃ。
 もしよろしければ3の倍数でまとめ買いなさってくださいニャー☆」
姉「それはお買い得ですね。ありがとうございます。あ、ついでにEより大きめのサイズは店頭にー」
店「それでしたら、あちらの壁のコーナーにございますにゃ」

姉・店員 わいわいきゃーきゃー

少(いつも買ってきて貰ったのをつけてたけど、ランジェリーショップって、怖いところだったんだ)くすんくすん



29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 18:05:42.98 ID:AB00Iqtxo

------------------------------------------------------------
   同居一日目 モール内・洋服店

男「やっぱり、本は本屋で中身確認しながら買うのがいいなー。
 ま、重くなるから、買うのは文庫一冊に抑えたけどさ」

姉「男くん、やっほーです」
男「お待たせ。ずいぶん買ったみたいだな」
姉「さすがに、若い女の子の生活には物が入用になりますからね。
 ふだん無駄遣いもしないし、こういう時は、ばーんとぉ! 使っちゃいましょっ!」
男「いや、そのネタわかる人なんかいないだろ」
姉「なに言ってるんですか『俺シカ』は百年経っても色褪せない名作ですよ!
 って、ゲーム談義はさて置いて、とりあえず荷物持ちお願いします」
男「あいよ」

少「ごめんね、私の荷物なのに、持たセちゃって」
男「気にしなくていいよ。嫌なら一緒に来ないし。
 それより、少女はワッフルとか平気か?」

少「うん、大好きだよ!」
男「それなら良かった。姉、こないだ美味しいって言ってた、ワッフルの店が入ってるんだけど」
姉「お手柄情報ですよ、男くん。買い物が終わったらそこでおやつを食べましょうか。
 少女ちゃんはあんまり買い物で悩まないみたいなので、余裕ありそうですし」

男「姉みたいに延々悩んで買わないとか、あんまりないだろ」
姉「失敬ですね、あれはウィンドーショッピングと云う、おなごの楽しみの一つですよ」
少「私も、普段ならそんな感ジかな」
姉「ねー☆」

男「とりあえず、さっさと服を見ようか。あんまり時間をかけるとワッフルが晩御飯になる」
姉「それはそれで良いですけど、フルーツたっぷりが美味しいあのお店は、やっぱりおやつが良いですねー。
 それじゃ、張り切って買い物再開しましょうか」
少女「はい、お願いシますっ!」ぴょこん

男(すっかり仲良くなったみたいで、良かった。少女も遠慮がちだったのが慣れたみたいだし)



35:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 21:23:41.14 ID:AB00Iqtxo

------------------------------------------------------------
   同居一日目 モール内・ワッフル屋

姉「いやー、良い買い物でした」
男「結局、もう夕方だな」
姉「仕方ないじゃないですか。少女ちゃんって、何を着せても似合って可愛いんですよ」
男「でも、肝心な少女は」

少 ぺたー

姉「ちょっと、連れまわし過ぎましたかね」
男「かなり、だな」

男「それで、この後はどうする?」
姉「そうですね。買い物は終わりましたし、男くんもさすがに、これ以上持ち歩くのは大変ですよね」
男「まあ、そうだな。重量はまだ大丈夫だが、さすがに狭い店内じゃ何かに引っ掛けそうだ」

メイドロイド「失礼いたします」かちゃかちゃ

メ「こちら、暖めたメープルシロップが入っております。
 バニラアイスの上にお好みの量をおかけ下さい」ぺこっ
姉「はい、ありがとうございます」
メ「美味しく召し上がれますように」にこっ

姉「それじゃ、とりあえず」
三人「いただきます」かちゃかちゃ

男「今のもロボットかな?」ぱくぱく
姉「わかりにくかったですけど、ロボットですね」もきゅ
男「最近のメイドロイドって凄いな。
 こういう場所で使ってるって事は、市販の量産品だろうけど、あんなに自然だ」
姉「まだちょっと、人らしくない、ぎこちなさというかはありますけどね」もきゅもきゅ

少 まぐまぐ



36:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 21:30:57.83 ID:AB00Iqtxo

男「それでも、ずいぶん進歩したよ。
 俺の小さな頃なんか、まだカタカナ喋りだった記憶があるし」
姉「それは、十年前でもかなり古い型じゃないですか」もきゅ
男「まあ、極端な例かもしれないけど。それでもそんだけ進歩したって事でさ」ぱくぱく

少 まぐ

姉「特に、RI社の製品はかなり進歩した感じはしますよね」
男「イギリスのロボットメーカーか。たしか、メイドロイドの関係だっけ」
姉「なつかしいですね。メイドロイドって商標が日本でウケにウケたんです。
 当時まだ高価だったロボットが、大量の需要を背景に大量生産ラインに乗ったんですよ」
男「あー、レポートのために調べた古い新聞で見た気がする。
 日本の投資家がやたら円を突っ込んで、更にそれがオタク層にがっつり売れたって」
姉「昨今のロボットが比較的安価なのは、そこら辺が理由ですね」

少「」

姉「今の家庭なんて、メイドロイドなしじゃ回りませんからね」もきゅもきゅ
男「うちは使ってないけどね」
姉「まあ、時間とやる気があれば、必要ありませんからね。
 掃除も洗濯も料理も、男くんのためと思えばがんばれるってものです」にぱっ

男(くっ、これはワザとだな)



38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 21:36:34.12 ID:AB00Iqtxo

姉「がんばれるってものです」じー

男(う、く……)

姉「ほめてほしいなー」じー

男「いつも、助かってるよ……」

姉「ほめて欲しいのにー」しゅん

男「わかった。降参だ。ねえさんはスゴい。とっても頑張ってる」なでなで

姉「言ってみるものですね。えへへ♪」


男(く、なんだ、この可愛さは。ここは戦場か? 何かに撃ち抜かれた気がするのは気のせいだよな。
 とにかく戦況は不利だ。いったん戻って前線を立て直そう)


男「それにしても、いまは殆どの家事がメイドロイドだ。
 ロボット法で二年に一回はメーカーメンテが必須だし、RI社は安泰だよな」

姉「そうですね。RI社の社長ともなれば、一時期のビル・ゲイツさんのような権力と資産があるとか。
 でも確か、その社長さんのご夫妻も十五年前のWAIARTC(ワイアルテック)のテロで――」


少 ガシャンっ!!


少「……」 たったったっ

姉「男くん」

男「判った」


>>37
アドバイスありがとう! こんな感じかな。



39:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 21:40:57.28 ID:AB00Iqtxo

------------------------------------------------------------
   同居一日目 トイレのそば

少(やっちゃった……)

少(つい、耐え切れなくて)

少(美味しかったと思うけど、ワッフル、戻しちゃった……)

少(違う、味なんて、わからなかった)

少(なんか、頭の中、ごちゃごちゃだ……)

少(外も、あんまり変わらないって、判ってたはずなのに)

少(お姉さんも、男も、優しくしてくれたのに)

少(気分悪くさせたよね)

少(このまま、逃げちゃおうかな)

少(昨日、出会ったばっかりなんだし……)

少(しばらく、一人で逃げ回るつもりだったんだから、予定通りになるだけ)

少(予定通りだよ)



40:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 21:46:42.09 ID:AB00Iqtxo

少(なのに、なんでかな)

少 ぐすっ

少「なんでかなぁ」



男 ぽんっ


少 ばっ



男「よう」

少「な、な」

男「そりゃ、追ってきたからな」

少「こ、こ」

男「半分女子トイレみたいな位置だが、まあ、仕方ない」

少「何がシかたないよ!」


男「こんなトコでべったり座ってるよりは良いだろ」

少 ばっ



男「立てるなら、平気だな。ほら、行くぞ」ぎゅ

少「え、ちょっと、何よっ」(手、つないで……ひっぱって……)



41:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 21:52:16.66 ID:AB00Iqtxo

------------------------------------------------------------
   同居一日目 ショッピングモールの外の緑地

男「ん、く。はぁ……っ」せのびー

少「……」

男「少女もやれよ。こう、ぐーっと両手をあげて」

少「…………」

男「しょうがないな、ほら、こんなふうに」ぎゅっ

少「で、できるわよ、ソれくらい」せのびー


 さわさわー

少 ぐいー

 さわさわー



男「な?」

少「なにが、な? なのよ」

男「広いトコでさ、ぐーっと背伸びして、夕日見ながら風に当たって」



男「なんか、いいだろ?」にぱっ



少「……ソう、かもね」

男 せのびー

少 せのびー

男 ばたん

少「えっ?!」



男「少女も寝転がるか? 気持ちいいぞ」

少「……やめとく。服に芝生がついちゃうから」

男「そっか」

 さわさわー

男「悪いな。嫌な話しちゃって」

少「……私も、走って行っちゃってごめん」



42:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 21:56:14.05 ID:AB00Iqtxo

男「でも、良かった」

少「何が良かったのよ」

男「少女が、何が嫌なのか、一つ知ることが出来たし」

少「……」


男「それに、少女の素が見えた」にやにや

少「え、えっと?!」

男「けっこう、気が強いのな」

少「そんな事、無いよ」

男「今更取り繕ってもな。それに、俺は好きだ」


少女(え?(///))


男「借りてきた猫みたいな感じだったからな、楽にしてくれたほうが、こっちもやりやすい」



少「…………そっ、か」

男「おう」

少「それなら」

男「ん?」


少「ていっ!」ぺしっ

男「んがふっ?! な、なにしやがる!」がばっ

少「知らないわよ」たったった

男「いや、知らないって、いま人の鼻面叩いたろ」

少「知-らない。……えへへ」



男「ったく、なんなんだよ。急に不機嫌になったり、ご機嫌になったり……」



------------------------------------------------------------
   同居一日目 モール内・ワッフル屋

姉「さすがに、三人分のワッフルも、三人分の荷物も重いです……」

姉「くう、これで男くんが少女ちゃんと、あーんな感じやこーんな感じでイチャついてたら、ご飯抜きですね」

姉「……」


姉「でも、やっぱり……」



43:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 21:57:19.57 ID:AB00Iqtxo

姉「…………はぁ」

姉「なんだか、オーバーヒートしそうですよ……」



44:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 22:01:55.10 ID:AB00Iqtxo

------------------------------------------------------------
   同居二日目・朝 玄関

姉「たぶん、昨日ちょっと、はしゃいじゃったからだと思うけど……」

男「判ってる」

姉「ごめんなさい、今日はどうしても会社に顔を出さないといけないんです」

男「ああ」

姉「本当は私も、家で少女ちゃんを看てあげたいのに」

男「大丈夫だって。看病くらい出来るから、行ってきてくれ」

姉「それは心配してないですよ」

男「?」

姉「私としては、少女ちゃんの熱で火照る体、汗でしっとりした肌、潤んだ瞳にくらっときた男くんが――」


男 ばたん

姉(ドアの向こう)「ちょ、ちょっと男くん! 姉を、姉を締め出しましたね!!」

男「あ、すみません、警察ですか? セクハラする不審者が家の前に」

姉(ドアの向こう)「くうー。男くんのばかー! 明日の朝ごはんは覚悟しててください!」



男「…………行ったか」

男(まったく、心配なのはわかるけど、それで仕事に遅刻したら少女が余計気に病むだろ)

男(幸い、俺は春休みだし)

男(昨日できなかった家事を片付けて)

男(先に、タオルを代えに行くか)

男(たしか、粉ポカリが有ったから、それも出そう)



45:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 22:05:31.80 ID:AB00Iqtxo

------------------------------------------------------------
   同居二日目・朝 少女の寝室

少「ぁ~、ぅ~」

少(声、でないな)
少(体調崩すの、どれくらい、ぶりかな)

少(ちょっと、寒い)
少(温かい、布団の中なのに)

少 うとうと

少(あんなにイロイロあったの、久しぶり)
少(前は、いつだったかな)

少(おぼえて、ないや)

少 うとうと


男 こんこんこん
少 びくっ

男「起きてるか?」

少「ぉき……ま……」

男 ガチャ


男「あー、声でないか」

少 こくこく

男「タオルの代え持ってきたから」

少(冷たくて、気持ちいい……)



46:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 22:09:37.36 ID:AB00Iqtxo

男「ポカリ、いるか?」
少 こくこく

男「体を起こすぞ」


少(わ、背中に、男の手。
 すごい、案外、力持ちなんだ。
 私の背中、しっかり支えて。
 なんか、安心感――みたい)


男「それじゃ、俺は昼飯作るからさ。
 何か有ったら……呼べないよな」

少 こくこく

男「これ、俺のケータイな。
 このボタン押せば、適当な音が鳴るようにしたから、何か有ったら鳴らしてくれ」

少 こく

男「遠慮するなよ?」

少「」

男「遠慮したら、姉さんに言いつける」

少「?」


男「きっと、なんだかんだ理由をつけて、相当恥ずかしい目に……」

少「っ!」こくこくこく

男「くく、それじゃ、本当に、遠慮なく呼んでくれ」

少 こく



少(最後、笑ってた)

少(いじわるに)

少(優しく)

少(なんなんだろう)

少(ちょっと、さっきより頬が熱い、な……)


少 うとうと

少 すぅすぅ



47:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 22:13:37.86 ID:AB00Iqtxo

------------------------------------------------------------
   同居二日目・昼 少女の寝室

少 くんくん

少 ぱちっ

男「よう」(なんか、匂いで起きたな、面白いやつ)

少 ぼー

男「悪いな。寝てたみたいだけど、タオル代えるために、勝手に入った」

少「……」こく



男「食欲は有るか? ってか、頑張れば食べられそうか?」
少 こく

男「なら、頑張って食おう。食べなきゃ、治る病気も治らないしな」
少 こくこく



男 かちゃかちゃ

男「ほい、和風リゾット。京風白だしゆず風味、梅干と、海苔の佃煮もセットだ」
少 にこっ

男(うわっ、ちょっと、反則だ、それ。
 喋れないぶん精一杯のスマイルって、熱で辛そうなのに)



48:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 22:16:00.07 ID:AB00Iqtxo

男「体起こすの手伝うぞ」
少 こく

男 かちゃ、ふー、ふー
男「ほい」
少 ぱく、もぐもぐ

男「熱くないか?」
少 こくこく、にこー


男(少女が熱でぼーっとしてて良かった。なんか、すっげえ、恥ずかしいっていうか、照れる。
 俺まで、きっと顔が赤くなってるだろうな)

男「とりあえず、こんなもんかな」
少「ぁ……がとぅ」

男「無理するな。今は休みな」ぽん、なでなで

少 にこー

少 すぅすぅ

男 かちゃかちゃ


男「おやすみ。良い夢見ろよ」

男 ぱたん
男 ずるずるー、ぺたん

男(なんだ、これ。ドキドキする)

男(俺も体調崩れたかな。いや、まさか)


男 ぱんっ
男「――っ! 顔、強く叩きすぎた。くぅ、痛いなぁ」


男「それでもよし、気合も入ったし、家事の続きだ。
 今日は張り切って、換気扇の掃除もしちゃおう!
 うん、それがいい。大掃除以来やってないからな」


男「……三時くらいまでに、一度コンビニに行って、何か買ってこよう。
 ゼリーとかなら、喜ぶかな」


男 かちゃかちゃ



49:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 22:19:47.30 ID:AB00Iqtxo

------------------------------------------------------------
   同居二日目・夕方 少女の寝室

少『ゼリー、ありがとう』 pi

男「どういたしまして。気にってもらったなら、良かった」

少『うん、美味しかった!』 pi



男「最初から、ケータイ渡せば良かったんだな。
 これなら喋れなくてもいいし」

少『気付いただけでも、すごいよ』 pi

男「ありがと」



少『私、初めてなんだ』 pi

男「ん?」

少『こうやって、誰かに看病して貰うって』 pi

男「そう、なのか……」

少『家政婦さんはいたけど、家の事で忙しかったし』 pi

男「まあ、そうだよな」(メイドロイド、だよな)



50:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 22:26:40.23 ID:AB00Iqtxo

少『私、両親がいなくて』 pi

男「……そっか」

少『小さい頃、すっごく小さい頃に、事故でね』 pi

男「……うちも、そうだ」



少『よく、言われない? かわいそうとか、お辛いですねって』 pi

男「ああ、判る」
少『でも』 pi

男「うん。そういう人の言う感覚がわかんないんだよな」

少『顔も、写真でしか知らない』 pi
男「声も、映像記録で残ってるものだけ」

少『まるで』 pi
男「まるで、親とか、家族って、あんまり思えないんだよな」



 ごうごう

少『外、風がすごいね』 pi

男「だな」



51:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 22:29:04.61 ID:AB00Iqtxo

 ごうごう

少『お辛いですねって、言われると』 pi

男「……」


少『辛くなくちゃ、いけないのかなって』 pi

少『たしかに、なんとなく、感じるんだ』 pi

少『この人たちは私の、お父さんだった人、お母さんだった人だって』 pi


少『愛おしくなるよ』 pi

少『でも、最初からいないから』 pi

少『つらくは、ないんだけど』 pi




少『辛くないと、いけないのかなって』 pi

男「仕方ないよ」

少『』 pi   pi  pi

男「仕方ない。俺たちは、お父さんも、お母さんも、知らないから。
 辛くなくても、仕方ない」

少『そうだよね!』 pi

男「でも」



男「でも、俺たちも、寂しいとは、思うよな」

少『』 pi pi

少『うん』 pi



男「俺さ、今は姉と、そこそこに距離をとってるけど、すごく感謝してるんだ」

少『うん』 pi

男「ねえさんって家族がいたから、寂しさを忘れられたし。
 辛いことがあっても、笑顔になれた。
 ねえさんは、俺に頼られっぱなしで、大変だったかもしれないけどな」

少『うん』 pi


男「少女は、そんな『家族』って、いるか?」



52:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 22:34:07.71 ID:AB00Iqtxo

少『』 pi   pi

少『いない、かな』 pi



男「……そっか」

少『でも』 pi



少『男たちといると、楽しいよ』 pi にこ

男「……ありがと」ぽん、なでなで

少「ぇへへ」


男「さ、そろそろ晩飯作るから、ちょっと待っててくれ」

少 こくこく




男 ……ぱたん

男(あー、くそ)



53:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 22:35:13.04 ID:AB00Iqtxo

男(かっこわりい)

男 ぐっ

男(なんで、なぐさめるはずの俺がなぐさめられて)


男(少女には、家族の話は……)

男(でも、いや、だから)

男(俺が、俺たちが、家族みたいに、接しよう)



男(同じ痛みを知っているから、優しくなれるって、誰かが言ってたし)


男(できる事を、しよう)

男(同情したから? 違う。それは違う)

男(これは、誠意とか、親愛とか、そんなつながりの名前で呼ばれるべきで)




男(俺も姉さんも、少女が来てから、会話も増えた。笑顔も増えた)

男(家族みたいに、じゃない。きっと、もう、俺たちは家族でいい)

男(家族になるのに、時間なんて関係ない)


男「俺たちは、家族だ」



58:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 00:42:33.81 ID:xOD1IIc5o

------------------------------------------------------------
   同居二日目・夜 Robot inc. サーバールーム


姉(テストは、一万までなら問題なし)
姉 カタカタカタカタカタカタ

姉(実測規模がわからないプロジェクトは、テストの時間ばっかりかかるから厄介ですね……)

姉 カタカタカタカタカタカタ
姉「これなら……」

姉(二万……二万七千……で、ハングアップ)

姉(あとちょっとで、三万だったのに。とりあえずの目安だけど、大きくしすぎた?)

姉 チラッ
姉(もう、十八時ですか。さすが天下のRI社だけあって、良い機体を使わせて貰ってるんですが)

姉(お陰で、ビミョウなラインで暇ができなくて、男く○に連絡も取れない)
姉 カタカタカタカタカタカタ



姉(食事に行くって言って、預けてるケータイ回収して、一度連絡しようかな)

姉(型変換……どうしよう……負荷を考えると)
姉 カタカタカタカタカタカタ

姉(でも、想定として正しいのはこっちで……)
姉 カタカタカタカタカタカタ

姉(なんでこんな、メンテのしにくい言語でやるんだろ……ほとんど作り直しちゃってますよ)


姉(継承部分のリファレンスも脆弱。コメントもわかりにくいですね……まあ、だから私に仕事が回ってくるんですけど)
姉 カタカタカタカタカタカタ

姉(やっぱり、ハードは優れていますね。他社より一世代先を走ってる感じです)


姉(それでも、やっぱりソフトは苦手ですか。
 M&Aでノウハウを吸収しても、組織再編に難航して機能不全っていうのは、噂だけじゃないみたいですね)
姉 カタカタカタカタカタカタ



60:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 00:47:01.04 ID:xOD1IIc5o

正「あれ、姉さん、休憩とりました?」

姉「一度全部……から、まずくて……でも、処理が」ブツブツ

正「姉さーん」ふりふり

姉「え、あっ、お世話になっています、正社員さん」


正「かしこまらないで良いですよ。俺より、姉さんのが目上だし」

姉「でも、私は委託ですから……」

正「こっちとしては、やってもらってるって、感覚ですけどね。
 それだけできる人って、社内には殆どいないし」

姉「まあ、隙間で生きてるのが、私たちですから」


正「それでも、俺はすごいと思いますよ。姉さんの仕事は社内でも評判いいですし」

姉「ありがとうございます」にこっ


正「それで、休憩はとりました?」

姉「えーっと、いえ、まだこちらが」

正「それなら、ちょっと休憩しましょう。もう三時間以上、ずっとここですよね?」



姉「まあ、それくらい、かな」つぃっ

正「……もっと出てないんですか?」

姉「はぁ、まあ」つぃーっ

正「だめですよ!」

姉 びくっ


正「サーバールームは三時間に一度、絶対に三十分以上の休憩をって、書いてあるじゃないですか。
 ただでさえ、ウチのこの部屋、他社さんより寒いとか聞くのに」

姉「まあ、サーバールームはどこでも寒いですが」つぃーっ

正「問題はそこじゃないです。とにかく、出ましょう」ぎゅっ
姉 ぱっ


姉「あっ……」

正「あ、その、申し訳ない。つい、その」

姉「大丈夫ですよっ、その、心配してくださったのはわかってます。
 その……それじゃ、少し休ませてもらいます」


正「……はい、そうしてください。
 俺は、その、自分の仕事に戻るんで」

姉「お気遣いありがとうございます。正社員さんも、ご無理はなさらず」にこっ

正「無理しない程度に、頑張ります」



正 ぱたん

姉(たしかに、ちょっと疲れた、かな)

姉(休憩しよう。気分入れ替えて。男く○に連絡して)

姉(帰るのは、十時までに帰れたらいいなー)



62:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 01:01:21.62 ID:xOD1IIc5o

------------------------------------------------------------
   同居二日目・夜 少女の寝室

少「ごちそうさまでした」
男「お粗末様でした」

男「声も、殆ど治ったな」
少「淹れてくれた、蜂蜜入りのジンジャーティーが、きっと効いたんだよ」

少 けほ、けほ

男「でも、ムリは禁物だな」
少「……むぅ」

 pipi pipi

男「熱は……引いたみたいだな」
少「でも、ちょっとダルいかも」

男「当たり前だ。体力も気力も消耗するんだから」
少「なんか、男が容赦ない」

男「まあな。何だ、優しい方がいいか?」
少「べ、別に……普通で良いわよ」
男「そうか」

 ごうごう

男「……」
少「……」

男「……そういえば、姉の帰り、けっこう遅くなるみたいだ」
少「サっき、テレビで、けほ、雨も降るって」

男「この季節にしては、珍しいな」
少「うん」



 ごうごう

少「場合によっては」
男「ん?」

少「お姉さんに、泊まってくれば、って」
男「あー」

男「確かに、市街地から家まで、距離有るからな」

少「雨と風がすごい夜に、けほ、車で帰ってくるって、事故になったら……」

男「その可能性は無視できないな。車の運転は救いようがないし」


少「……ふふ、あの運転、怖いよね」

男「判る。俺も、姉さんがある日急に、車に乗って帰ってきてさ。
 初めて乗った日なんて、心の準備が出来てなかったから、車から降りて立てないのな」

少「私も、足がふるえて」 うと

男「うんうん」



男「……」
少 うと、うと



63:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 01:04:26.28 ID:xOD1IIc5o

男「眠いか?」
少「ちょっと、だけ」

男 すっ
少(男の手。ちょっとひんやりしてて、気持ちいいな)

少(私の手より、ずっと大きな手)

少(安心させてくれる、手)

少 すぅすぅ

男「寝たかな」

男 すうっ
少 きゅっ
男「!」

男 ゆさっ
少 すぅすぅ

少「……ぱぱ」
男「…………」

男 なで、なで
少「うへへ……」

男(うへへって、変な笑い方。オヤジかよ)

男 なで、なで
少 ピクン
男 ぱっ

少「……むぅ」すぅ
男「寝てる、よな」
少 すぅすぅ

男 なで、なで
少「うへへ……」にやー

男(どんな夢見てるんだか)
男(あー、なんか、俺も眠くなってきた)

少 すぅすぅ
男 くかー



64:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 01:08:18.59 ID:xOD1IIc5o

------------------------------------------------------------
   同居二日目・夜 十六年前の夢

姉「はい」
電話の向こう「――――」

姉「はい、わかりました」
電話の向こう「――――?」

姉「いえ、問題ありません。お気遣いいただき、誠にありがとうございます」
電話の向こう「――――」

姉「はい、それでは失礼いたします」

 pi

姉「……」
男「ぱーぱ」

姉「男くん」
男「あー♪」

姉「お父さんをお求めですか?」
男「ぱーぱ」

姉「お父さんは、死亡いたしました」
男「うー?」

姉「お母さんも、ご遺体で発見されています」
男「う」

姉「お二人は、もう二度と、この家に帰ってくる事はありません」
男「あうぅ」

姉「悲しまれていますか?」


姉「理解、できないですよね」



65:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 01:10:46.80 ID:xOD1IIc5o

姉「まだこんなに、幼く……」

姉「これから、楽しい思い出を、男くんと、一緒に作るんだと」


姉「お父さんも、お母さんも」

姉「楽じみに、じでいだじだどに……」



男「……」

男「あーう」たし

姉「……ぅ、く……」

男 たし、たし

姉「……っ、もじかじで、なぐざめで」

男「あー」たし、たし



姉「……」ぐいっ

姉 ぐっ、ぐっ

姉 ばっ
男「あうっ」ぎゅー


姉「申し訳ありません」
男「あう?」


姉「私は、男くんの姉でした」
男「うー」



姉「私は、男くんの姉なのに。
 私が泣いていて、どうすると言うのでしょうか」

男「う?」

姉「私は、姉として恥ずかしいです。
 弟になぐさめてもらう姉は、今は必要ありません。
 お父さんと、お母さんを失った今、必要なのは、頼りになる姉です」



姉「私は、男くんの、姉です」


姉「私は、男くんのためなら、なんだって出来ます」

姉「だって私は、男くんの姉ですから」


男「……」
姉「しかし、先刻から静かになさっていますが……」

男「……」きゅー
姉「はっ、抱きしめる力が強すぎましたか?! 息を、息を取り戻してください!!」

姉「男くん!」



66:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 01:13:31.35 ID:xOD1IIc5o

------------------------------------------------------------
   同居三日目・朝 少女の寝室

姉「男くん!」ボソボソ

男「ん、」

姉「起きてください」

男「んん、まだ、ねむ」



姉「起きないと、少女ちゃんに秘蔵コレクションを……」

男「起きてます」がばっ


姉「……」にやー
少「……」つぃー(///
男「……」だらだら



姉「さて、男くん」

男「は、はい」

姉「ここは、どこでしょう?」



男「……どうやら、俺の部屋ではないです」
姉「では?」


男「少女の、寝室です」

姉「ザッツライ! では、少女ちゃん!」

少「は、はいっ!」



姉「いつまで、手をにぎってるんですか?」にこー

二人「!!!!!」ばばばっ

姉「んふふー、いいのですよー、人が必死に働いて、死にそうになりながら帰ってきて」にぃー

二人 だらだら


姉「電気の消えた部屋。冷たく冷えた廊下。二人は大丈夫なのかって心配してきてみたら……
 ふたりで仲良く、同衾ですかぁ。へぇ~」けたけた



67:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 01:16:21.47 ID:xOD1IIc5o

男「これ、には、その深い深い、ワケが」がくがく

姉「不快なワケが、あるのですねぇ」ケタケタ

少 がくがくぶるぶる



男「と、特に、同衾という部分には、大きく異論があり」だらだら

姉「ほぉー」

男「お、俺は上で、少女は下で」

姉「……」

男「だから、同衾とは」

姉「男くんが上で、少女ちゃんが下だったのですか」



男「うん、だから、違うだろ?」

姉「男くんが上で、少女ちゃんが下だったのですか」



男「え、あ、え、……っく」

少「ば、ばかっ! 男のばかばかばか!!」ぼかぼか



男「と、とにかく違う、俺は、俺は無実だっ!!!」脱兎



姉「……っぷ、く」

少 だらだら

姉「あ、っはは! いやー、珍しいものを見れました。くふふふ」
少 ぽかーん



68:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 01:17:37.96 ID:xOD1IIc5o

姉「お腹いたいですよー。涙が出てきます。ふふーふ、ふふふ」

少「あ、あのー」

姉「ああ、すみませんでした。
 ちょっと、悪ノリが過ぎましたかね?」

少「悪ノリ、ですか……」(でも、でも)

姉「ごめんなさい、結局あんまり寝てなくて、ちょっと躁が入っちゃってますね。ふふーふ。
 ……それで、調子はどうですか?」

少「あ、体の調子は、大丈夫です。男が、親切で」



姉「まあ、フィリップ・マーロウを気取るにはワイルド分が足りませんし、まだまだ茹で加減も足りませんが」


姉「自慢の弟、ですから」


少「……」
姉「それじゃ、男く○に、ちょっと謝ってきます。からかいすぎたって」

少「あ、はい」


 ぱたん

小(でも、でも?)



69:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 01:19:31.44 ID:xOD1IIc5o

------------------------------------------------------------
   同居三日目・朝 男の部屋

姉「というわけで、ちょっとしたジョークなのですよ」

男「……」

姉「なので、許してください。ね?」

姉「ごめんなさい」

姉「ごめんなさいだけじゃ、許してくれないですか?」

姉「土下座すべきですかね?」



姉「ここは、いっそ脱いで……」ぐっ

男「脱ぐなーっ!」ばっ

姉「男くん、声が大きいです」すぱんっ

男「く、謝られてたはずなのに、何で俺がたたかれるんだ」

姉「それは……そのぅ、弟、ですから」



男「弟だから、か」

姉「はい。弟だから、です」

男「……じゃ、しかたない、か」

姉「はい。諦めてください」

男「く、くく」
姉「ふふ」



男「とりあえず」ぽん

姉「はい?」

男「おかえり、ねえさん。お仕事、お疲れ様」なでなで



姉「……ただいま、男くん」にぱっ



70:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 01:26:23.62 ID:xOD1IIc5o

------------------------------------------------------------
   同居三日目・昼 リビング

ニュースキャスター『それでは、次のニュースです。来日したRI社のCFOですが、どうやら……』

男「なんだかな……」ぽりっ



少 ぺたぺた

男「もう起きて大丈夫なのか?」ぽりっ

少「うん。元気になったからね。今ならダンスだって出来るよ!」くるくる

男「しなくていい。怪我するぞ?」

少「むぅ、平気だって。……男はティータイム?」

男「まあ、ちょっと小腹がすいてな。勉強の息抜きに、ニュース見ながらせんべいかじってる。
 少女も食べるか?」

少「おせんべいはいいや。お茶だけもらうー」



少「それで、お姉さんは?」

男「あー」ぽり

少「どうしたの?」

男「謝りに来て、俺を叩いて、シャワー浴びて、仕事行った。無理してないと良いけど……」

少「え、え、どれからツッコミすればいい?」

男「いや、ボケたわけじゃないから、いいよ」ぽりぽり



 ぱんぱん

男「しかし、姉がはしゃいだと思ったら、こんどは少女か。
 風邪じゃなくて、はしゃぎ菌か何かが蔓延してるのか?」

少「うわ、なんかひどいなー」



少「……あのね、昨日良い夢見たの」

男「どんな夢なんだ?」

少「あんまりよく覚えてないけどさ」

男「夢なんてまあ、そんなもんだろ」



少「パパと、手をつないで歩く夢」

男「……そうか、良かったな」

少「うん。とっても嬉しかった」


少(ずっと、手をつないでてくれたんだよね)

少(疲れさせてごめん)

少(ありがと)



73:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 13:58:10.44 ID:xOD1IIc5o

------------------------------------------------------------
   同居五日目・昼 Robot inc.にほど近いカフェテリア

姉(うー)

姉(頭痛いなー)

姉(オーバーヒートなう)

姉(まさかなー。互換部分のあのソースが、まさか『神ソース』だったとか)

姉(何やってるかはわかるし、私でも作れるけど)

正「……」

姉(ダメなんですよ!)ずだん

 かしゃん

姉(メンテと拡張考えたら、コメントなしで最小規模の構成とか!
 エラーも投げないから、いったいどこで引っかかってるのかと思えば……)


姉「あー、うわー……」

正「……お疲れさまです」


姉 びくっ



正「どうも」しゅぴっ

姉「あ、あら。お久しぶりです」どきどきどきどき

正「三日ぶりなら、まだ久しくは……」

姉「そ、そうですね……」



正「……」

姉「……あの、良ければお隣、いかがですか?」

正「えっと、ご迷惑なら遠慮しますが」

姉「そんな事無いですよ」にこ



75:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 14:07:27.24 ID:xOD1IIc5o

正「偶然ですね、こんな場所で会うなんて」 ぱく

姉「そう、ですかね?」 もく

正「はい。みんな、社内ラウンジで食べますから」

姉「委託の私は、やっぱり……」 もく

正「でも、一般の方でも入れる場所ですよ?」 ぱく

姉「それでも、やっぱりこういう仕事をしていますと、お仕事させて貰っている会社で、自分の端末は使えませんから」

正「……うちの課長に聞かせたい言葉です。セキュリティの意識をしっかりお持ちだ」

姉「ありがとうございます」



正「あー、それで、どうですか? 調子は」 ぱく

姉「さっきの呻きを聞かれて、順調です、とは言えないですね。ふふ」

正「ああ、違います」

姉「はい?」

正「体調ですよ。ほとんど、サーバールームと端末室、行ったり来たりですよね」

姉「まあ、それが仕事ですから」 もくもく



正「何日も続いて、体調崩してないかなと」

姉「心配していただき、ありがとうございます。でも、大丈夫です。こう見えても、頑丈だけが自慢で」

正「それなら良いんですが、守衛さんも心配してましたよ? いつも、かなり長い時間作業してるみたいだ、って」

姉「あー、すみません。守衛さんも、やっぱり人がいると帰れないですしね」

正「守衛さんは交代できますが、マネジも大変で。端末室の鍵を、あなたに任せるわけにもいかないので」 にや

姉「うー、ううー」

正「はは、とは言っても、あの時間に頑張ってる姉さんの姿を見ると、こっちも頑張れるので、あんまり困ってはいませんが」

姉「見ると?」



正「実は、先週から僕がマネジでして」

姉「それは――ごめんなさい」

正「いえいえ」

姉「それから、昇進なさったんですね。おめでとうございます」

正「ありがとうございます」



76:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 14:09:25.03 ID:xOD1IIc5o

正「その、長い、ですよね」

姉「はい?」

正「僕が入社して三年。あの入社式の日に、サーバートラブルで呼び出された姉さんに、僕が道を聞いて」

姉「え、あ、あの!」

正「ぁー、気付いておられなかった」

姉「ごめんなさい、その後、研修の時が始めてかなーって」

正「あの時はお世話になりました」

姉「こちらこそ」



正「で、それで、その、長い、ですよね」

姉「そうですね、三年」(男くんは、高校入試の頃でしたかねー)

正「だから、その、僕の昇進祝いの席に、姉さんも、来ていただけませんか?」

姉「と、いいますと……」

正「姉さんにも、祝っていただきたいなーと。あ、その、けっこう身内の会なんで、疎外感とか少ないとおもいます!
 それに、同期で、研修も一緒だった連中もいますから」

姉「えっと、それは……」

正「来て、いただけませんか?」



姉「……そう、ですね。では、お邪魔させていただけると、嬉しいです」


正「お邪魔なんて、そんな」がたっ!

正「……」ぺこぺこ、そーっ


正「その。はい。きてください。詳しくはメールで送りたいのですが、その、アドレスをー」

姉「そうですね、こちらの名刺の、このコードで、私のアドレスが入りますから」

正「はい」



姉「あ、そろそろ、昼休みが……」

正「やばっ、午後一で会議だった! それじゃ、よろしくお願いします」だだっ

正『店員さん、テイクアウト用の紙袋くれませんか? ありがとうございます!』だだーっ


 そよそよ

姉「……三年ですかー」

姉「時間が過ぎるのは、早いですね」
 

 そよそよ



77:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 14:12:40.08 ID:xOD1IIc5o

------------------------------------------------------------
   同居七日目・朝 家

少 ぎゅうー

少(廊下を雑巾がけする時は、水が垂れなくなるまでしっかりしぼって)

少 たったったー

少(お姉さんに拾って貰ってから、もう一週間か)

少 たったったー

少(短いような)

少 たったったー

少(長いような)

少 たったったー

少(よし、拭き掃除完了)

 そよそよ

少(肌寒いけど、ちょっとずつ、温かくなってきた)

 そよそよ

少(次は、洗濯物)

少 とたとた、がしゃ、ばさばさ

少(もう、洗剤の量を間違えることもないもんね)

少 ~♪

少(下着とかは一度手洗いして、ネットに入れて)

少 ばしゃばしゃ

少(う、それでもまだ、水はつめたいなー。お湯つかっちゃお)

少 ぎゅ、ごそごそ、pipi

 ごうんごうん



78:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 14:15:30.54 ID:xOD1IIc5o

------------------------------------------------------------
   同居七日目・朝 リビング

姉「んー、よく寝たー」のびー

少「おはようっ、姉サん」にこっ

姉「うん、おはようございます。朝ご飯はちょっと待っててください。顔洗ってから作ります」



少「はい。たぶん今ならお湯で顔を洗えまスよ」

姉「少女ちゃんナイスです!」


姉「もしかして、廊下の掃除とか、洗濯機まわしたのとか、少女ちゃんですか?
 あ、ちょっとお皿出してください」

少「早く起きちゃって。まずかったでスか? ……はい、出シました」

姉「そんな事ないですよ。大助かりですよ! ありがとうございます」



男「おはよう……んぁー」

姉「こら、男くん、大あくびしながら挨拶とか、ちょっとお行儀悪いですよ」

男「ん、そうだな。見苦しくて悪い」



少「もしかして、ちょっと疲れてない?」

男「ちょっと寝たのが遅くてさ。レポートの一つをまとめてるうちに、面白い資料にあたって、殆ど朝まで」


姉「ちゃんと寝ないとダメですよ? 心配ですねえ」

男「大丈夫だよ。ご飯食べたら、ちょっと二度寝するつもりだけど」

姉「うーん、まあ、春休みですから、おおめに見ますか」



79:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 14:18:49.21 ID:xOD1IIc5o

姉「それじゃ、とりあえず」

三人「いただきます」



男「今日は塩焼きそばか」ぱく

少「野菜と海鮮が一杯で、美味シいー♪ らんらんるーって感じで舞い上がっちゃいまスよっ!」まぐまぐ

姉「喜んでもらえたなら嬉しいですが、最近、手抜きっぽくてすみません」もっきゅ

少「仕方ないですよ。ずっと終電過ぎに帰ってくる生活で……昨日も夜に帰ってきて、バタンでしたから」まぐまぐ


姉「ま、それも昨日まで! 今日はちょっと用事がありますが、のんびりできますよー」にへー

男「珍しいな、用事って。委託の仕事は終わったんだろ?」ぱくぱく


姉「今日はお仕事ではなくて、お付き合いですね。
 その会社でよくしてくださった方の、昇進祝いに呼んでもらったんですよ」もっきゅもっきゅ

男「そっか。疲れてるみたいだし、あんまりムリしないでくれよ?」

姉「はい。なので、今日は夕方までのんびりして、それから着替えて飲み屋さんです」もっきゅもっきゅ


男「……姉は飲めるのか?」ぱく

姉「まあ、それなりに、ですねー。あんまり美味しいと感じたことがないのですが」もっきゅ


少「そういえば、男はどうなの?」まぐまぐ

男「俺はそもそも飲んだことが無いな。あんまり興味もないし。少女は?」ぱく

少「実はけっこう強いと評判だったり」えっへん


姉「……未成年は飲んじゃダメですよ?」もっきゅ

少「EUでは、薄めたワインとか、普通にジュースとして飲んでるから大丈夫!」まぐまぐ

姉「法律の問題だけではないのですけどねー」

男 ぱくぱく
少 まぐまぐ♪
姉 もっきゅもっきゅ



82:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 19:18:59.93 ID:xOD1IIc5o

------------------------------------------------------------
   同居七日目・昼 庭

少「今日も来たねっ♪」

猫「にゃ」しゅたん
少「にゃー」

猫「なー」
少「はいはい、もちろん用意してますよー」

猫「うなー」
少「じゃじゃーん。今日は厚削り本かつお節!」

猫「うなー♪」
少「へへー、男の勉強手伝う代わりに買ってもらったのだ」

猫「にゃ」
少「うん、食べていいよ」

猫 かぷかぷ♪
少「首輪が無いって事は野良なんだろうけど、きみって毛並みがいいよねー」

猫「にゃー」
少「お、褒められたのが分かるのかな。なんとなくドヤッて顔だ」

猫 かぷかぷ♪
少「んふふー。あー、やっぱり猫はいいなー」

猫「にゃー」
少「はい、お粗末様でシた」

猫「ふにゃー」
少「あはは、くすぐったいよっ」

猫「にゃーぉ」
少「なに? 撫でてほシいの?」

少「うりうりー」
猫 ~♪

少「コレはどうかなー」
猫 ♪~♪~

少「ふっふー」

 がら



84:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 19:23:26.00 ID:xOD1IIc5o

猫「!」たっ
少 びくっ

男「あーすまん」

少「ど、どうしたの?」

男「いや、少女がエサやってるの見えてさ。めずらしいなーと」

少「なんで?」

男「あいつ、たまにウチに来てはエサをねだるんだけど、かなり警戒心強いんだよ」

少「ソうなの?」

男「俺も猫好きでさ、たまに手を伸ばすんだけど、すぐに逃げられてな」

少「ふふーん、これも人徳かな」えっへん



男「そうかもな。それに、何か同類っぽいし」

少「同類って、猫と?」

男「ああ。なんとなく、笑ったときの顔とか、ちょっと気まぐれなところとか、似てる気がするな」

少「ソうかな。キンダーガーデンの頃からの友達には、犬っぽいーってよく言われるけど。レトリバーとか」

男「それはそれで、うん、そんな気もする」

少「どっちなの?」

男「べつに、矛盾してないし、両方って所じゃないか? たとえば」 ぽん

少「んん?」
男 なでなで

少「……えへへ」
男「そんな顔は猫っぽい」
少「んー、ソっか」

男「そんで、撫でるのをやめた時の、ちょっと残念そうな表情は、犬っぽい」

少「べ、別に、残念じゃないよ?」



男「ま、印象の問題だ。深い意味はないさ、くくっ」

少「男はー……」



85:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 19:25:31.29 ID:xOD1IIc5o

男「俺は、ロボットみたいって言われるかな」

少「ソうかな?」

男「とは言っても、殆ど会うこともないクラスメイトから、だが」


少「まあ、基本的に、落ち着いてる感じがスるから、情動が平坦って意味で、ちょっとソんな印象もあるかも?」

男「そんな事は無いんだけどな」

少「うん、知ってる」にやにや

男「な、何だよ」



少「私が寝込んだ次の日の朝とか、ね」

男「あれは、まあ」つぃー

少「狩人の目をしたお姉さんと、私を残して脱兎のごとく!」

男「し、仕方ないだろ。それに、少女も俺のことを遠慮なく叩いたろ」

少「それはまあ、男がセクハラな事を言うからで」



男「……」あちゃー
少「……」あいたたた


男「やぶへびだった」
少「やぶへびだね」



86:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 19:26:56.07 ID:xOD1IIc5o

少「と、ともかく!」

男「おう!」

少「私は、男がロボットみたいとは思わないよ」にこっ

男「……そっか」



少「あえて言うなら……アマガエル?」

男「……それは、ロボットとどっちがマシなのか分からん」



少「じゃ、もう一声でトノサマガエル!」

男「カエルから離れろ! 俺はそんなにインスマス面じゃねぇ!!」



少「あはは、ほら、こういうノリは良いし、ロボットじゃないよ」

男「別にそういうわけじゃないが、まあ、良いか。疲れたし」

少「サーて、男で遊び終わったシ……」

男「確かに遊ばれたな」


少「男の部屋に行っても良い? ヒカルの碁の続きが気になるの」

男「まあ、俺はリビングで勉強するし、好きにしてくれ」


少「ついでに、男のベッドの下とかから、大人の本を捜索シます!」

男「いや、ないし。ってか、ベッドの下にそういう本て、万国共通のネタなのか?」

少「私は日本のマンガで知ったから、わかんないけど……やっぱり、お姉さんと協力シて捜索を」

男「いい加減にしろ」ぽかっ



少「あはは、出入り禁止って言われる前に撤退スるよ」

男「そうしておけ」



少 ~♪ たったった


男「テンション高いなー」



87:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 19:29:24.52 ID:xOD1IIc5o

------------------------------------------------------------
   同居七日目・昼 リビング

姉「あら」

姉「あらあら」

男「くー」

姉「ふふ」そーっ

姉 つん

男「ん、」

姉 むに

男「んん」

姉(よく寝てますね)

姉(そういえば、寝不足でしたっけ)

姉「……」

姉(よい、しょ)ぐいー

姉 そーっ

姉(ふふ、膝枕してみました)

姉(こんなに動かされて起きないなんて、いけませんねー。戦場では生き延びられませんよ)

姉 なでなで

姉(男の子のくせに、ずいぶん髪の毛サラサラで。なんだかイラっと)

姉(肌も、女の子に負けないくらいスベスベで。なんだか殺意が……)

姉(……まあ、寝ていると、かわいい表情です)

姉 なでなで

姉(小さい頃は、よく……いつからでしたかね。膝枕とか、しなくなったの)



88:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 19:30:25.44 ID:xOD1IIc5o

------------------------------------------------------------
   十年前 回想

男「ねえさん」

姉「なんですか? 男くん」

男「なんで、うちにはお父さんも、お母さんもいないの?」

姉「……それは」

男「みんなには、いるのに」

姉「……」

男「みんな、変だよって」

姉「……」

男「学校の宿題でね、お父さんとお母さんについて、書いてくださいって」

姉「……っ」

男「でも、僕にはいなくて」

姉「……」

男「それは、悲しいねって、先生が言うんだ。書かなくてもいいよって」

姉「……男くんは、悲しいですか?」

男「よく、わかんない」

姉 ごそごそ

姉「これが、男くんのお父さんと、お母さんの写真です」

男「……うん」

姉「会えなくて、悲しいですか?」

男「わかんないよ。だって、会ったことないし」

姉「男くんは、お父さんとお母さんが欲しいですか?」

男「それも、わかんない」

姉「……」



89:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 19:31:15.68 ID:xOD1IIc5o

男「なんで、お父さんとお母さんがいるのかな?」

姉「それはきっと、愛情が必要だから、ですよ」

男「あいじょう」

姉「大切に思う気持ち、です」

男「なんで必要なの?」

姉「たとえば、そうですね。男くんは、何かを大切に思う事は、ありますか?」

男「……あるよ」

姉「何かを大切に思う時は、幸せじゃないですか?」

男「……うん」

姉「では、生まれたばかりの赤ちゃんは、何かを大切に思う事は、ありますかね?」

男「たぶん、ないと思う」

姉「そうですね。だって、なにも知らないから。
 じゃ、いつから、何かを大切に思えるようになるんでしょうか」

男「大きくなると?」

姉「それも、あります。でも、それだけじゃありません。
 たとえば男くんは、その大切な物が壊れそうな時は、どうしますか?」

男「守るよ!」

姉「それが、大切な人だったらどうですかね。とっても寂しそうにしていたら」

男「えっと、えっと、たぶん、僕がいるよって、伝えるよ」

姉「そうですね。でも、それはきっと、大切にするって事を、男くんが知っているからですね」

男「……」

姉「それは、赤ちゃんは知らないことです。
 誰かに大切にされて、愛されて、愛する方法を、知るんです」

男「ねえさん?」

姉「お父さんも、お母さんも、男くんとか、お友達の事を大切に思うんです。
 そして、そうやって大切にすることで、男くんやお友達が、何か大切なものを見つけたときに、どうやって大切にしたら良いかを教えてくれるんです」

男「じゃあ、僕は、大切にすることが、出来ないのかな?」



90:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 19:33:46.15 ID:xOD1IIc5o

姉「何かを大切に思うという、その幸せを感じられないのは、寂しいですよね」

男「うん」

姉「でも、安心してください。その為に、私がいるんです!」えっへん

男「ねえさんが?」

姉「はい。普通のご家庭では、お父さんは、お母さんとお子さんを大切にします。
 自分の持っている『大切』の半分をお母さんに、半分をお子さんに渡すんです。
 お母さんも同じように。
 そうすると、その子供には、半分が二つで、まるまる一つの大切がもらえますよね」

男「えーっと、えっと、うん。半分が二つで、一つだ!」

姉「そして、私は男くんがとってもとっても、大切です」

男「……」

姉「私の大切一つ分を、まるごと男く○にあげます」

男「……それで、いいの?」

姉「はい。私は男くんが大好きですから」

男「そっか」

姉「お父さんとお母さんがいる子も、一つ分の大切をもらえます。
 一つ分の、大切にする方法を知ることができます。
 男くんも、私が一つ分の大切を渡して、一つ分の大切にする方法を教えます」

男「うん」

姉「私じゃ力不足かも知れませんが」

男「……ちょっと、しゃがんで」

姉「はい?」すっ

男 ぽん

姉「……ぁ」

男 なでなで

姉「……ぁ……ぁ」ぐすっ

男「僕も、姉さんに、一つ分の大切をあげる」にぱっ

男「お父さんよりも、お母さんよりも」

男「ねえさんといる方が、いいな」

姉「男、くん」

男「作文に、ねえさんのことをかくよ!」

姉「……はいっ」にぱっ



91:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 19:38:13.83 ID:xOD1IIc5o

------------------------------------------------------------
   同居七日目・昼 リビング

姉「ふふーふ」

姉(体は大きくなっても、寝顔は変わらなくて) なで

姉(ただ、あの時から、男くんは大人になったような、気がします) なで

姉(守られる側じゃなくて、守る) なで

姉(そんな愛を、私はちゃんと伝えられたのでしょうか) なで

姉(私が……)

姉(お父さん、お母さん) なで

姉(私は――私でも、男くんをちゃんと育てられていますかね?) なで

姉(お父さんと、お母さんにもらった愛を、ちゃんと伝えられていますかね?) なで

姉(男くんは……ちゃんと…………) なで

少「……」

姉(うん) なで

姉(陽だまり) なで

姉(あったかいなー) なで

少 そっ



92:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 19:42:26.17 ID:xOD1IIc5o

------------------------------------------------------------
   同居七日目・夜 都市部の繁華街

正「今日は、来てくれてありがとうございました」
姉「こちらこそ、お招きいただき、嬉しかったです」にこっ

正「姉さんが来てくれて、同僚も盛り上がりましたし」
姉「私は、何もしてませんよ」
正「前から、姉さんの仕事は評判でしたかが、こういう会に参加されないことでも知られていたので」
姉「そうなんですか? ちょっと、付き合いが悪すぎましたね」
正「あーいや、そこまでではないので」


正「あー、その。もしよければ、もう一軒いかがですか?
 けっこう、早く終わっちゃいましたし」
姉「そうですね……では、一時間程度になりますが」
正「よかった。それじゃ、僕のよく行く店でいいですか?」
姉「はい、お願いします」



93:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 19:43:53.47 ID:xOD1IIc5o

------------------------------------------------------------
   同居七日目・夜 とあるバー

マスター「いらっしゃいませ」

正「ども、お世話になります」

マ「正社員様。いつもご利用ありがとうございます。
 本日はいつものカウンター席でよろしいですか?」

正「姉さん、カウンターでもいいかな?」

姉「はい、構いませんよ」

正「では、カウンターで」


マ「それでは、こちらが正社員様のご注文されたマティーニ。
 こちらが姉様のご注文された、海軍軍医のお酒、でございます。
 何か有りましたらお声をかけてくださいませ。
 それでは、ごゆっくり」

正「それじゃ、かんぱい」

姉「はい、かんぱいです」


正「そういえば、面白い注文をしていたみたいですけど」

姉「はい?」

正「『ご存知でしたら、海軍軍医さんのお酒を』って」

姉「じつは、好きな小説の中で、主人公がそんな注文をしていて……
 一度飲んでみたいと思っていたんですが、機会がなかったものですから」

正「へえ、そういう飲み方も、なんだか素敵ですね」

姉「ミーハーで、ちょっと恥ずかしいです」

正「そんな事ないですよ。楽しいと思います」



94:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 19:52:08.50 ID:xOD1IIc5o

正「姉さんは、よくメールをなさってるみたいですけど」
姉「そんなに多いですかね?」

正「休み時間などにお顔を見ると、だいたい、ケータイとにらめっこをなさっているようで」

姉「そう、ですね。確かに休み時間はそんな感じかも知れないです」



正「あーえっと、恋人さん、とかですか?」

姉「はい?」

正「その、メールの、お相手」

姉「ふふ、相手は弟です。恋人なんていませんよ」


正「えっと、その、実はですね」

姉「はい」

正「今日は、僕の昇進祝いだったんですが」

姉「すごかったですね、たくさんの人に祝われて」

正「あはは、まあ、それも有ったんですが。今日の会にはもう一つ、あって」


姉「もう一つですか?」

正「はい。その、姉さんに、来てもらうのが、目的でした」

姉「私ですか」



正「僕が」



95:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 19:53:04.27 ID:xOD1IIc5o

正「僕が、姉さんに、お付き合いしてくださいと、お願いするために」



姉「……」

正「まず、一目ぼれでした」

姉「……」

正「見た目が、僕の好みで。いいなって。最初は、それだけで。
 でも、研修でお世話になった時に、すごく、すごく丁寧に教えていただいて。
 コチラの話をしっかり聞いて、聞いたうえで親身に指導していただいて」

姉「……」

正「いつも、がんばっていらっしゃる姿を、つい眼で追ってました。
 背筋を伸ばして、真剣に仕事をしている横顔が素敵で。
 ああ、すごいな、できる人ってこういうひとなんだって。憧れて」

姉「……」

正「でも、あの夜。サーバールームでお会いした時に。
 寒い室内で、手が冷え切ってて。顔も青白くて。
 ちょっと、あぶなっかしいなと。気になって」

姉「……」

正「お昼を食べた時に、何か悩んでいらして。
 僕が、力になれたら――と思ったら、急に」


姉「それ、は――」

正「僕のものに、なってくれませんか?」

姉「その――」
正「……」

姉「――」
正「……」



97:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 23:03:57.54 ID:gSv7ey8Ko

寝取られは勘弁



98:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 01:52:36.64 ID:cPe3rXXYo

------------------------------------------------------------
   同居七日目・夜 Robot Inc.展望ラウンジの個室

幹「お元気そうで何よりですよ、CFO(最高財務責任者)さん」

CFO「幹部さんこそ、ご活躍のお噂はかねがね」

幹「秘書さんも、お久しぶりです」

秘 へこっ

幹「どうぞ、おかけ下さい」

CFO「それでは、お先に失礼します」


幹「CFOさんはたしか、ワインなどより日本酒のほうがお好きでしたよね?」

CFO「はい、覚えていてくださって、嬉しいです」

幹「当然の事ですとも。ささ、ではまず一献」

CFO「それでは、ありがたく……」



CFO「いやぁ、酒も肴も、すばらしいものをご馳走になりました。ご歓待に、感謝の念が尽きません」

幹「いえいえ、こうしていられるのも、全てはCFOがRI社を大きくなされたからこそですよ」

CFO「僕は……、大した事は、していませんよ」

幹「これはまた、ご謙遜を」

CFO「何度も言っていますが、僕はただ、研究者でもあった創業者さんと親しかったから、この椅子を任されただけです」



幹「しかし、研究費の問題などが山積みだった、当時のRIを再建し、優良企業と呼ばれるようにしたのも……」

CFO「……」

幹「創業者さんが、WAIARTCのテロで亡くなって以降のRIを支えているのも、実質的なCEOでもあるあなたです」

CFO「ありがたいですが、過分なご評価です」

幹「そんな事はありません。その業績はまさに伝説的です――ただ」

CFO「何かありましたかな?」

幹「ただ、ご存知の通り、現在CEO(最高取締役責任者)がいない事で発生している、我が社の問題について」



CFO「……」

幹「残念ながら、私たち幹部及び、取締役会は――強く、懸念していましてね」

CFO「たとえCEOがいても、だからあっさりと問題が解決する、という事は、ないと思いますが」



99:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 01:55:08.37 ID:cPe3rXXYo

幹「正確に言えば」

幹「たった17歳の少女が、首を縦に振って判子を押すだけで、CEOになる現状について、問題視しています」



CFO「いま問題視すべきは、幹部会の専横によって行われた強引な買収の結果でしょう。
 それが反発を招いて、本来なら円滑に進むはずの、他社からのノウハウの吸収が滞っている事では?」

幹「……彼らは、頭の無い生き物に飲み込まれようとしている事に対して、懸念を表明しているだけですよ」

幹「納得してついていける頭があれば、それは些細な問題です」

CFO「私は、彼女が納得してついていけるに足る代表であると、思いますよ」



幹「……ふ、ふはははっ、さすが、外国暮らしが長いだけ有りますね。ジョークがお上手です」

CFO「……」

幹「幹部会は、場合によってはDFOの再任決議をと、私にせっついています」



幹「私としては、多大な功績があるあなたとは、今後とも仲良くしていただきたいと思っております」

幹「しばらく、日本に滞在なさると伺っておりますが」

CFO「……ええ、そのつもりです」

幹「では、またお会いできそうですね。その日を楽しみにしております」

CFO「……また」




幹「おい、若いの、車まで送ってやれ」

若「へい。さぁさ、CFO様」

CFO「はい。それでは、失礼しますね」

幹「色よいお返事、お待ちしていますよ」



100:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 01:58:02.60 ID:cPe3rXXYo

------------------------------------------------------------
   同居七日目・夜 CFOの車内


 ぶろろろろ


CFO「ふぅ……」

秘「お疲れ様です」ハンカチさっ


CFO「いやぁ、つかれるねぇ」ふきふき

秘「あの様子では、噂は間違い無い様子ですね」

CFO「そうだねぇ。幹部くん、経営の才覚があるって日本支社を任せたけど、ヤのつく方々と仲良くしちゃうとはねぇ」

秘「わざとらしい脅迫でしたね」

CFO「うん。まあ、スマートでは、なかったかな」



秘「現在の諜報の結果、取締役会十名の内、CFOの解任に同意する様子があるのは四名、否定派は二名です」

CFO「後の四人はどうかな?」

秘「中立です。しかし、幹部が資金援助する武装団体が押しかけ、説得されかけている者が二名います」

CFO「僕の解任に必要な、取締役会議の過半数に届く、か――」



秘「加えて、CEOの凍結株式42%を除いた68%の内、CFO様の所持が20%、取締役会総計が25%、ファンドが18%、個人株主の総計が5%でしたが」

CFO「なんだい、さらにか」

秘「幹部さんが、非公開で買い付けているという噂があります。現在ウラを取るために動いていますが……」

CFO「まあ、噂が流れただけでびっくりだ。尻尾はつかめないだろうねぇ」

秘「実質、CEOの凍結株が動かない以上、株主会議でもCFO様は退陣を迫られれば避けられません」



CFO「知ってるけどさぁ……うん」

秘「……」



101:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 02:03:56.39 ID:cPe3rXXYo

CFO「僕はさ、本当にただ楽しみだったんだよ」

CFO「創業者とは、僕が日本からイギリスに留学したときに知り合ったんだ。
 驚いたよ、世の中には、こんなに頭のいい人間がいるのかって。世界は広いって」

CFO「進歩しすぎた科学は、魔法と変わらない」

CFO「アイツは、僕には魔法使いに見えたんだ。それから、次にがっかりした。比べると自分は、ちっぽけだなって」

CFO「それでも、一つできる事があった。親父が銀行屋でね、お金って物の扱い方を、ちょっと人より詳しく知ってたんだ」

CFO「だから、創業者と二人で組んだんだ。
 アイツは、僕に魔法を見せてくれる。僕はアイツが魔法に打ち込めるように、時間と金を作ってやる。
 東洋の錬金術師と、英国の魔法使いのコンビって、言われたもんだ」

CFO「ただ、夢は覚めた」

CFO「あのWAIARTC(ワイアルテック:人工知性と人型機械製作技術の世界会議)の会場に僕もいたんだ。
 世界中の天才たちが一同に会して、毎日のように魔法の打ち合いだったよ。
 五日間の会議期間中、悲鳴が聞こえない日は無かった。
 もちろん『そんなすごい事ができるのか?!』って、良い悲鳴だ。
 これからはロボットの時代だ、人工知能と友達になれる世界が来るって、はしゃいだもんだ」

秘「しかし、WAIARTCは、人間主義を掲げる過激派組織の手によって、テロリズムの標的に」

CFO「うん。あれで世界の頭脳ともいうべき人たちが犠牲になってね、みんなが怖がって二の足踏むんだ。
 お陰で、あの頃には手の届きそうに見えた世界が、まだ――」



CFO「んー、いけないねぇ、歳をとると、昔のことばかり話し始める」

秘「いえ、かまいません」

CFO「ねえ秘書くん、この後はホテルに帰って休むだけだよね」

秘「はい。ご予定はありません」

CFO「違う違う。僕の予定じゃなくて、キミのだ」

秘「はい?」

CFO「良かったら、これから知り合いのやってる店に一緒に来ないかい?
 バーなんだけど、マスターが気持ちのいい奴でね、口直しに良いと思うんだけど」

秘「……そろそろお歳を考えてくださいませ。と、秘書としては言いますが」ぱちっ、しゅる


秘「アタシとしちゃー、しょうがない、年寄りに付き合ってやるかって、気分だ」にひひ

CFO「変わり身すごいよねぇ、キミは。まあ、うん、付き合ってください」

秘「おい、運転手。行き先変更だ。ちんたら走るなよ!
 Hurry! Hurry! Hurry!! Do you wanna get ass in your head!!
 って、銃は持ってきて無かったか……」



CFO「やっぱり、一人で行こうかなぁ……」ボソッ



102:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 02:07:52.32 ID:cPe3rXXYo

------------------------------------------------------------
   同居七日目・深夜 家の前

 ピンポーン

男「はい」

?「やあ、夜分遅くにすまないね」

男「えっと……」

少「どうシたの、男ー…………ぁ」

?「……あー」

少「なんで、なんでCEOがココに?!」

CFO「なんでってまあ、ちょっと酔っ払いを届けにね」



秘「大丈夫か? おい、足元ふらついてんぞ」

姉「大丈夫ですよー、歩くくらいはできますから」


男「ねえさんっ」

姉「ん、男くん、ただいまですよ。ちょっと飲みすぎちゃいました」



CFO「びっくりしたよ、バーで偶然顔なじみに会ったと思ったら、体調悪かったみたいでね」


男「大丈夫なのか?」

姉「はい、送ってもらって休んだから、大丈夫ですよ」


CFO「とりあえず、少しお邪魔させてもらっていいかな?
 あー、怪しいものじゃないって、どう証明したらいいんだろ」

男「いえ、大丈夫ですよ。お顔は、ニュースで拝見したことが」

CFO「なんだか、ビミョウな気分だねぇ。まあ、信じてもらえるならいいか。
 少女ちゃんも、いいかな?」

少「家の主が良いって言ってるシ、いいんじゃない……」ぶすっ

CFO「じゃ、ちょっとお邪魔するね」



秘「アタシは外で待ってるよ。タクシー呼ばないと帰れないし、何よりタバコが吸いたい」

CFO「ん。まあ、風邪引かないでね。キミがいないと僕の仕事が回らないから」

秘 ひらひら



男「それじゃ、こちらへ」

CFO「はい、お邪魔しますよ」



103:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 02:10:13.74 ID:cPe3rXXYo

------------------------------------------------------------
   同居七日目・深夜 リビング

姉「んん、CFOさんは、客間に通してあげてください」

男「少女が案内してくれたよ。ほら、お水」


姉「ありがとうです」


男「それにしても、酔っ払って送られてくるなんて、初めてだな」

姉「まあ、うん。うーん」


男「大丈夫か?」

姉「お酒じゃ、ないのですよ」

男「ん?」

姉「私、お酒には強い体質でしてね。この程度なら問題ないんです」



男「でも、一人で帰ってこられなかったんだろ」

姉「……ちょっと、ウソをついちゃいました」

男「ウソって」

姉「今日は、知り合いの昇進祝いって、言いましたよね」

男「まあ、そんなような事を聞いたな」

姉「でも、それは口実で、本当は私に、その」



男「付き合ってくれとか、言われたのか」

姉「……はい」

男「そうか」

姉「それで、私は――」

男「いや、言わなくていいよ! ほら、姉弟でもな! プライバシーはあるし」

姉「私は――」

男「聞きたくて言ったわけじゃないからさ! うん! 俺は――」



姉「男くん!!」



男「……」

姉「私は」

姉「私は、お断りしました」

姉「……ぅぐ、っく」

姉「お断り、じまじだ」

男「……そっか」すっ

男「……」



104:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 02:14:08.44 ID:cPe3rXXYo

男(手を伸ばして、いつもみたいに、撫でればいいだろ)

男(なんで、手が伸びない)

男(手の平、べとべとだ)

男(いつのまに、こんなに手のひらに汗かいて)

男「……」ぎゅっ

男「俺の、せい?」

男(俺がいるから、姉さんは自分の)



姉 ぶんぶん


姉「わだじ、は、」

姉 ごしごし

姉 ちーんっ

姉「私は、彼を、愛せないと思ったから」

男「……そっか」

姉「私は」

姉「私は」

男「……」

姉「……」

姉「……今日は、ちょっと、疲れました」

男「……」

姉「CEOさんとは、元々明日お会いする約束があったので、お話しは、その時にと」

男「……わかった、伝えておく」

姉「すみませんが、先に休ませてもらいますね」



男「おやすみ」

姉「おやすみなさい、……男くん」

 とた、とた……ぱたん

男(なんで、俺)

男「くそ、なんで、立ち上がれねぇ……」



105:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 02:15:58.71 ID:cPe3rXXYo

------------------------------------------------------------
   同居七日目・深夜 リビング

姉(足が、震える)

姉(だって、考えたから)

姉(正社員さんとお付き合いするって)

姉(なのに、)

姉(私の隣は)

姉(そんなの、ないのに)

姉(望んでも)

姉(願っても)

姉(祈っても)

姉(ないのに)

姉(……ないのに)



106:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 02:25:16.48 ID:cPe3rXXYo

------------------------------------------------------------
   同居七日目・深夜 正社員自室

正「まい、ったなー」

正「あー……」

正「あぁあああ」ごろごろごろ

正「うぁぅぁ」ごろごろ

正「三年、片思いで」

正「うわー、やっぱり、来るなぁ」ごろごろごろごろ

正「でも」

正「それより」

正「あー、くそっ」 ぼすっ

正「なんで」

正「いっそ、嘲笑ってくれれば」

正「いっそ、切り捨ててくれれば」

正「いいのに」

正「わがままだって、知ってるけどな」



正「それでも」

正「本気で、傷ついた眼で」

正「泣くとか」

正「ぽろぽろ」

正「俺が傷つけたわけじゃ、ない」

正「それは、ちゃんと聞いて、わかってる」

正「でも、その傷口の種を」

正「芽吹かせたのは俺で」

正「ぐあー」

正「俺が、悲しい顔させたよ」

正「なのに、なぐさめの言葉も」

正「俺には言う資格なんてなくて」

正「……頼むから」

正「頼むから、だれか、姉さんを」

正「抱きとめてやってくれないか」

正「俺じゃ――ダメだったから」



107:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 02:28:04.41 ID:cPe3rXXYo

------------------------------------------------------------
   同居七日目・深夜 客間

 とんとんとん、がちゃ

男「お待たせしました」



CFO「姉くんはどうかな?」

男「……部屋に入って休みました」

CFO「そっか。……男くんは、僕のこと覚えてるかな?」

男「その、テレビで」

CFO「いやいや、小さい頃にね、キミと何度か会ってるんだが……」

男「えっと、その」

CFO「まあ、仕方ないかなぁ。その頃のキミはまだ、こんなだったし」ちょいー


少「ソれじゃ、カエルサイズだし」ぶっすー


男「申し訳ありません、覚えてないです」

CFO「そうかぁ。おじさん、おじさんって、よくついてきて、一緒に散歩したものだけど」

男「え、あ、あぁああ!! おじさん!」

CFO「思い出してもらえたようで、何よりだよ」にこっ



CFO「それにしても、事実は小説より奇なり、か。
 少女ちゃんまでココにいるとは思わなかったよ」

少「……」ぶっすー

CFO「元気そうで、何よりだよ」

少「顔を見たのも、半年振りのくセに」

CFO「そうは言っても、まあ、僕もねぇ。
 親権者だけど、キミはお父さんとは認めてくれて無いから、こう、さどうしたらいいか、ねえ」



男「親権者って事は、その」

CFO「男くんは、少女ちゃんのご両親の事は――」

少「話シたよ」ぶっすー

CFO「そうか。うん、良かった」

少「何が良かったよ」ぶっすー



108:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 02:32:57.54 ID:cPe3rXXYo

CFO「いろいろだよ。いろいろ。
 まあ、そういう訳で、少女ちゃんのご両親に後を任せて貰ってね。
 僕が少女ちゃんの親、ということに、法律上はなっているんだ。
 もっとも、少女ちゃんのご両親がやっていた会社の関係で、僕がちょっと忙しくなってね。
 少女ちゃんには、申し訳ないことをしたよ」

少「……」ぶっすー


男「て、事は、もしかして少女のご両親は、RI社の」

少「うん。創業者だよ」

男(そっか。ショッピングモールでのアレは)

少「ソれで、大学の卒業祝いとして、日本旅行に来たんだけどね。
 CFOの見張りが嫌で、逃げ出シて、どうシようかって悩んでたところで、姉サんに助けられたの」

男「卒業祝いか。って、ん、大学?」

少「ふふーん。コレでも私はスキップして大学出てるんだよ!」

CFO「日本と違って、夏に卒業だから、まだ数ヶ月あるけどね。
 しかし、見張りとは言わないでほしいな」



少「見張りでしょ」ぶっすー

CFO「必要最低限のボディーガードだったよ。
 まあ、ガードがいる時点で鬱陶しいっていうのは、分かるけどね」

少「だったら!」

CFO「でも、それが必要な理由も、キミは知っているはずだ」



109:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 02:34:58.32 ID:cPe3rXXYo

少「……」

CFO「資産狙いの誘拐。人間主義の過激派組織。僕たちの敵は、多いよ」

少「……」

CFO「少女ちゃん。君は、万一の場合、男くん達まで、巻き込んでいたと知りなさい」

男「それは」

CFO「すまない。言い方がきついことも、こんな言葉を男くんが望まないことも知っているつもりだ。
 だが、僕はこうすることでしか、少女ちゃんを守れなくてね。
 非力で、すまない」

少「……」



CFO「でも、もう二度と。
 君達を、君達のご両親のような目に、あわせたくないんだ」


 ぶろろろ

 pipi pipi


CFO「どうやら、タクシーが来たらしい。
 今日はコレにて失礼するよ。また明日、来させてもらうから」

少「……」


男「それじゃ、お見送りします」


CFO「ああ、そんな気遣いはいいよ?」

男「いえ、きちんとしないと、姉に怒られますから」



CFO「……うん。では、頼もうかな」

少「……」



 ぱたん


少「……ばか」



110:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 02:46:24.36 ID:cPe3rXXYo

話が持ち越しになった所で、おいらも翌朝に生命活動を持ち越し!
背中がぎゅしぎゅしするよ! 鳴子こけしにでもなった気分。


読んでてわかると思うけど、お話は結構、ラストに近づいてマス。
問題がたっぷりだね……
しばらく重かったり、こみいったりします。

終わるまでにあと1シーンか2シーン、ほのぼのやりたいなー。
できるかな。。。


ちょっと書けなかった補足。
姉が酔っ払って~云々は、正社員の前で泣いちゃった時に「お酒で涙もろくなって」と言い訳したからです。
だから「ウソです」と。
まあ、正社員には嘘だってバレて、その気づかいも含めて傷つけちゃったりなんだかんだ。


レスが100越えたのに、読んでくれてる人がいるとか。
ヽ(。・ω・)ノ゛☆ありが㌧☆ ヾ(・ω・。)ノ
そんなアナタにおいら愛用の鼻炎薬をプレゼント!


>>97
ここまで読んでくれてありがとう!
書き込みに励まされた!

正社員は、まあ、こんな感じでふられました。
もうちょっと、パワハラで無理やり責めるかなーと思ったけど、なんかいい人っぽくなった。
不憫だけど。



111:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 09:23:01.31 ID:KU2gXoD3o

株式のところの計算は110%がまっくすなのか?



113:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 17:31:02.93 ID:cPe3rXXYo

------------------------------------------------------------
   同居八日目・昼過ぎ 客間

姉「どうも、お久しぶりです、CFOさん」

CFO「改めまして、お久しぶり、姉くん」


姉「昨夜は醜態をお見せしまして、その」

CFO「気にしないでいいよ。若い内は、飲んで吐いて、クダを巻いて暴れて、泣いて、お酒を知るものだ」

秘「CFO様は無茶しすぎかと思われます」

CFO「……うん、そうかもね」



秘「死んでしまいますよ?」

CFO「あはは、まあまだ大丈夫だよ」

秘「死んでしまえですよ?」

CFO「もれてるよ、本音。語感が似てても、さすがにそれは無理があるよ」

秘「あら、嫌ですわ、ほほ」



CFO「それで、まずは少女ちゃんの保護者として、二人には感謝を」

姉「いえいえ、私達も楽しかったですし」



CFO「知ってると思うけど、RIだけじゃなく、ロボットの研究や開発、生産を行う人間は、狙われやすい」

CFO「男くんは人間主義って、知ってるかな?」

男「その、ニュースで名前くらいは」

CFO「そっか。うん、キミも知っておいたほうがいいから、ちょっと説明しようか。
 そもそも、フランケンシュタイン・コンプレックスという言葉はわかるかい?」


男「たしか、フランケンシュタイン博士が、自分の作った怪物に襲われるというストーリーの、
 有名なホラーをはじめとした、一連の作品群のテーマですよね。
 『人造生命の反逆』とか『人ではない命への恐怖』を描くって」


CFO「うんうん、それがわかるなら、ちょっと早い。
 要するに人間主義というのは、そこに妄執する人たちの集団だよ」



秘「そういえば、その事情は私も詳しく知りませんね。なぜ、そんな妄執が生まれたんですか?」

CFO「それはまあ、すれ違いかな。
 事情はいろいろ有るんだよ。
 たとえば、今の危険な作業現場は大半がロボットに任せられるよね。
 それは、逆に言えば、そこで雇用される人が減ることを意味するわけだ。
 現実問題として、ロボットに恨みを持つ理由がある人は少なくない」


男「でも、それだけでは無いですよね」



114:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 17:39:21.69 ID:cPe3rXXYo

遅くなった! すべては花粉のせいです!!
いや、まじで、花粉の薬が切れて、医者に行ったりしてました。


>>111
うわぁん、忘れろー!!
ドラグ・スレイブー!!

とりあえず訂正だよー。
足し算できないとか、もう嫌だ。

秘「加えて、CEOの凍結株式32%を除いた68%の内、
 CFO様の所持が15%、取締役会総計が28%、
 ファンドが16%、個人株主の総計が9%でしたが」

 諸事情あってテコ入れしたよ! もう足し算いやだ!



115:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 17:43:14.25 ID:cPe3rXXYo

CFO「うん。他にも、懸念としてロボットを厭う人がいる。こっちが、圧倒的多数だ。
 人間をはるかに超える知能を持つロボットが、いつまでも人に従っているはずはないという、想像とか。

 知恵を武器になりあがってきた、貧弱な肉体のヒト種として、それは正しい警戒だ。
 頑丈な肉体、生産ラインで生み出せる体。データが破損しなければ再生される精神。ヒトを上回る知恵。

 敵に回せば、まさしく人類の天敵に……あらゆる生命の天敵になりうる。
 疑心暗鬼になれば、ヒト種を滅ぼす理由なんか、どこにでも転がってるしね」



姉「当時普及しはじめていた、メイド・ロイドをはじめとした、汎用ロボットも、論拠にされましたね。
 数万件に一つの事故を大きく取り上げたり、わざとらしい実験をしたり」


CFO「うん。中でもひどかったのは、どこぞの検証番組だったね。
 メイド・ロイドの一体を、一人の人間が破壊するのに、どれほどの時間と労力がかかるかって。

 家事をやらせることを目的とした、長く使える事が売りの機械だよ。
 それを一人で壊すのは、簡単じゃない。

 その、簡単に壊せないことが、逆に見ている人たちにとっては恐怖だったようだね。
 自分達の非力さと、相手の頑丈さの比較だ。敵だと思い込めば、パニック同然になった当時の騒ぎも……」



秘「なるほど、それが十五年前のWAIARTCで発生したテロにつながるワケですね」

少 びくっ

男「それは、どういう事ですか?」



CFO「その時、WAIARTCが召集されていたのは、隣人としてのロボットを目指して良いか、という話し合いのためだった。
 人間主義の人たちが増えていたし、過激化していたからね。
 研究者としては、早くこの先へと願う心はみんな有ったけど――」

姉「人の隣人として、友人として作られたロボットに向けられるのが、猜疑と不信の目だったら」



CFO「その通り。僕達はすでに、生まれるであろう『人型知性』と呼ばれるロボットを、友人として心配していた。
 だから、その友達を、いま生まれたからという理由で迫害させるのはどうか、と。
 歴史の視点でタイミングを調整すべきではないか、という会議だった」

男「十五年前でそれは、ずいぶん先進的というか、獲らぬ狸のというか」



CFO「そんな事はないよ。事実として、非公式ながら『人型知性』は確認されたしね。
 もっとも、会議の場で話題にされた彼らは、過激派の人たちの手にかかったり、
 自主規制とかで、既にこの世にいないけどさ」

姉「……」


CFO「そうして今の『制限知性』を搭載したロボットの時代がやってきた。
 十五年かけて、その安全性の理解は深まったけど、完全じゃない。

 僕達は、いつ人類の敵を生み出すかわからない存在として、ロボット反対派の人たちからはマークされてるわけだ。
 だからこそ、少女ちゃんの旅行にはガードが必要だったし、個人的には、姉くんと弟く○にも必要だと思ってる」


少「男たちにも?」



116:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 17:46:39.08 ID:cPe3rXXYo

CFO「男くんのご両親は、人工知性開発の第一人者だったんだ。
 多くの特許を取って、収入は十分だったんだろう。研究を趣味として、当時既に半ば隠居してたけどね。

 『人型知性』について、迫害される懸念を強く主張した、WAIARTCの立役者だよ。
 そして、少女ちゃんのご両親と同じく、WAIARTCの会議に出席されて、そこで亡くなられた」



姉「WAIARTCの後、CFOさんは、お父さんとお母さんにお世話になったからって、
 私と男くんのために動いてくれたんですよ。
 遺産の相続についてとか、他にもいろいろ」

CFO「ま、僕にはそれくらいしか、できないからね」

姉「いえ、とても助かりました」


CFO「そして、少女ちゃん」

少「……」

CFO「何度も言ったけど、現在のRI社が発行している株式のうち、32%が君に相続されているんだ。
 そして、CEOの椅子も、君に渡したいと遺書にある」



少「私は……」

CFO「……その重さは怖いかもしれないけれど、ご両親が君にと遺したものだ。
 経営に関しての細かい部分は、まかせきりでも構わない。

 ただ、君もそろそろ大人になって、こうした話が出来る歳になった。
 だからこそ、僕は君に、この会社をついで欲しいと思っている」



少「わたシは……」

CFO「その為に、大学では経営学を選んだと聞いてるよ。

 今のRIは、ゆっくりとよどみ始めている。
 君のように、若くてさわやかな風が、今のRIには必要なんだ」



少「私は!」

CFO「……」

少「私は、RIなんか要らない! お金も、株も、地位も要らない!!
 ロボットなんか大嫌い!!」

男「少女……」

少「それよりも、返してよ……」

姉「……」

少「パパとママを、返してよぉ……」っく



CFO「……それは――」

男「CFOさん」

CFO「何かな?」

男「……お引き取りください」

CFO「……」

男「今は、お引き取りください」



187:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 18:12:31.28 ID:6Yx61RC7o

男「CFOさん」

CFO「何かな?」
男「……お引き取りください」

CFO「……」
男「今は、お引き取りください」

CFO「……そうだね。そうさせてもらうよ」
男「お送りいたします」

CFO「うん。お願いするよ。
 ただ、その前に一つだけ」

少「……」
CFO「少女ちゃん。僕は、それが君の選択だというなら、どんな道でも応援するよ。
 RIのCFOである前に、僕は君の保護者だからね。
 だから、もう一度よく考えて、決まったら僕に教えて欲しい。
 僕はあと一月ほど日本にいる予定だから、連絡先は……男く○に伝えておくよ。
 旅行を終えたくなった時も、連絡してほしい」

少「……はい」

CFO「ありがとう。それじゃ、失礼するね」

秘「お騒がせいたしました」

姉「おじさま」

CFO「ん?」

姉「遅れましたが、いつもありがとうございます」

CFO「気にしないでいいよ。君の件については、助かっているという声をよく聞くからね。
 それは間接的に僕が助けられてるって、事だ。お礼を言うのは、僕の方だよ」

姉「それでも、私はおじさまに感謝しています」



117:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 17:49:38.22 ID:cPe3rXXYo

------------------------------------------------------------
   同居八日目・夕方 風呂場

姉(リビングから)「あの、男くん、すみませんがお風呂の掃除を」

男「うん、いまやってる!」

姉(リビングから)「たすかります!」



男 きゅっきゅ

男(おじさん、か。確かに遊んで貰ったなー)

男(天下のRI社のCFOに『お馬さん』して貰ったとか)

男(うん、なんか、うわーって気分だ。いろんな意味で)



男 きゅっきゅ

男(少女も、妙な縁でつながってたな)

男(WAIARTCのテロ)

男(現代史で、毎年のようにテストのネタにされるな)



男(会議場のビルをまるごと爆破……被害規模は死者二百名以上だった)

男(警備を行うはずの会社が、人間主義に偏っていたことが事後になって判明)

男(たしかに、そうした警備は二十一世紀初頭から、機械に任されることが多くなっていた。反発は予想できたはずだ)

男(皮肉なことに、それが原因で、警備の仕事は大半がロボットに任される事になった)

男 きゅっきゅ




 とんとんとん

少「ちょっと、いいかな」

男「掃除しながらで、良ければ」



少「うん良いよ。っていうか、私も手伝うよ」

男「やめてくれ。少女にやらせたら、女の子の肌は繊細なんですって、姉に怒られる」 きゅっきゅ

少「そっか。じゃあ、男の安全のために、見てるだけって事で……ふふ」

男「おう。そうしてくれ。くく」 きゅっきゅ



118:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 17:51:10.39 ID:cPe3rXXYo

少「さっきのさ」
男「ん?」

少「CFOに帰ってくれって、言ってくれてありがと」

男「まあ、空気が悪かったしな」 きゅっきゅ



少「私のため、だよね」
男「……」 きゅっきゅ

少「言い過ぎて、後悔スる所だった。……違うかも、今も後悔シてるから、今以上に」

男「……考えすぎだ」 きゅっきゅ

少「考えスぎかな?」

男「そうだろ」 きゅっきゅ

少「でも、」
男 きゅっきゅ



少「私の前に立って、CFOの言葉と、私自身の言葉から、私を守ってくれたように見えてね、」

男「……」きゅっきゅ

少「かっこ良かったよ」(////

男 ずるっ

 ぐいっ

 ジャー

少「きゃっ! ちょ、冷たい!」

男「わ、悪い。滑った」あたふた、きゅ



少「むぅー」
 (せっかく、人が、勇気をだして……)

男「ホントに、わざと、じゃ……な」じー 
 (ピンクのサテンで、レースが……て)



少「え? ……あ、あ、あ、」

男「ご、ごめん!!」 脱兎



 だだ、どんがらがっしゃーん

男(廊下から)「うおぉぉっ!」



少「……」

少「……っぷ、ふふふ」

少「ばーか♪」



少「ばーか……」



119:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 17:52:47.34 ID:cPe3rXXYo

------------------------------------------------------------
   同居八日目・深夜 リビング

少 ぱら、ぱら

少(マンガ、せっかく男に借りたのに)

少(平野先生、ごめんなさい、頭に入らないです……)



少 ぱら、ぱら

少(諦めを)

少(踏破したその先に)

少(イェルサレムは降りてくる)



少 ぺら

少(『彼』にとっての、祈り)

少(救われる世界を求めて、戦って、戦った)

少(屍の山を積み重ねて)

少(いつか、楽園と呼べる世界を作ろうと)



少(でもコレは、私の思う『祈り』とは、ちょっと違うかな)

少(それは、求めることだから)

少(自分の力では叶わない望みを、誰かの力で、何かの力で成し遂げてもらおうとする、求め)

少(自分で世界を作ろうとした、彼の祈りとは、近くて、遠い)



少(テロリズムは、前者に見えて、後者だ)

少(無関係の人まで巻き込んで、その犠牲を盾として、矛としてつかって、自分の願いを押し通そうとする)

少(私にとって、祈りは、こっちのほうが近い印象)

少(極論だけど)



少(そして、私は)

少(そんな祈りが、嫌いだ)

少(なのに、CFOに対して、)


少(男がどこまで考えて、何を思って、ああしたのかはわからないけど)

少(男は――)



120:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 17:54:31.72 ID:cPe3rXXYo

姉「少女ちゃん?」
少「っ、お姉さん」

姉「……ちょっと、隣、いいですかね?」
少「はい、どうぞ」すっ

姉「ありがとう」にこっ。とさっ



少「その、」
姉「何か、悩んでるように見えたのですよ」

少「悩んで」
姉「男くんも」

少 ちくっ

姉「なんか元気ないなって、心配してましたよ」

少 ほわっ



姉「私も、心配です。みていて、辛そうで」

少(ああ)

姉「少女ちゃん?」



少(ああ)ぽろっ

姉「え、え? どうして、泣くんですか?」

少(私)



少「男のことが、好きに……」

姉「……っ」

少「いま、気付いて」

姉「いまですか」

少「お姉さんが、男くんって呼んで、それが、ちくって、私の胸にささって」

姉「……」



少「心配してくれてるって、ちょっと申し訳なくて、でも、嬉しくて」

姉「はい」

少「私、男が、好きになって」

姉「はい。」

少「お姉さんに嫉妬して、それに、気がついたんだ」

姉「……」



少「私、これじゃ、ここに」

姉「少女ちゃん、ちょっと、ついてきてください」

少女「私、その」

姉「……ついてきて、ください」ぐいっ



121:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 17:57:13.66 ID:cPe3rXXYo

------------------------------------------------------------
   同居八日目・深夜 姉の寝室

姉「最初の日に、言いましたよね。私の部屋は立ち入り禁止です、って」

少「聞いた、ような?」

姉「見ても、声を上げちゃダメですよ」



 ぎいっ

少「……えっ」

姉「どうぞ、入ってください」



 とた、とた

少「これって、まるで」

姉「はい。ここは、男くんのご両親の、ラボでした」

少「ベッドも、なにもなくて」

姉「必要ないです」

少「ソれは」



姉「はい。私は、人間じゃ、ありませんから」

少「……」



姉「あらためて、自己紹介を。
 『人型知性』実験体の、コードネーム、姉です」へこ

少「ソんな」

姉「稼動年数は二十年。
 男くんが生まれる二年前に開発され、教育を受け、男くんの姉という立ち位置を、
実験のために与えられたロボットです」



少「だって、ロボットは――料理を作っても、味が画一的で」

姉「二十年間、男くんを観察しながら作ってきましたからね。学習の成果です」



少「ロボットは、温かくなくて」

姉「それは、現行のロボット法において、人間と見分けるために、体温の設定を禁じたからです。
 ロボット法の施行はWAIARTC以降であり、かつ、私は男くんの姉と云う立場から、体温機能が装備されました」



少「ロボットは、必ず自分が名乗るときに、ロボットだって」

姉「それも同様に、ロボット法の関係です。加えて、私にはロボット工学三原則も、遵守規定されていません」



122:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 17:58:57.73 ID:cPe3rXXYo

少「……え」

姉「二十世紀、アイザック・アシモフ師が規定された、ロボットが従うべき三つの原則。

 『第一条、人間に危害を加えてはならない。その危険を看過してはならない』
 『第二条、人間の命令に服従すること。ただし、第一条に違反しない場合に限る』
 『第三条、前項に反するおそれのない限り、自己を守らなければならない』

 これらは、ロボット法が施行されるより前から、研究者のモラルとして、組み込まれてきました」



少「ソれは、知ってるけど」

姉「しかし、私には、それも組み込まれていません。
 言い換えれば、人間が欲望に身を任せる可能性があるように、私にも、その可能性が与えられています」

少「ソれも、感情の暴走があるかもシれないって、懸念サれてる『人型知性』のあなたが」



姉「その通りです。つまり、もしかしたらこれから私は、口封じに少女ちゃんを……」

少「……ソっか」



姉「落ち着いていますね」

少「うん、まあ、ね」



姉「そんなわけで、私は、嫉妬されるような『物』ではないのですよ」

少「……」



姉「話したかったのは、それだけです。
 私に嫉妬とか、ないですよ」

少「……うん」

姉「では、そろそろ」



少「お姉さんも、男のこと、好きなんだ」



123:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 18:00:40.88 ID:cPe3rXXYo

姉「……え?」

少「すごく深く、どうしようも無いくらい、好きになっちゃってるんだね」



姉「……なにを」

少「やっぱり、嫉妬シちゃうよ」



姉「なにを、言ってるんですか! 私はロボットです! 作り物です! まがい物です!!
 人間のまねをして、演算しているだけなんですよ!
 陽電子脳の中で作られる、まぼろしの人格なんです……」



少「でも、それは」

姉「……出てください」

少「……」

姉「出て、くださいよ」

少「……」

姉「お願い、です」



少 ぱたん



姉 ぺたん

姉「う、ぁ」

姉「うあぁぁああああ!!」



124:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 18:03:14.15 ID:cPe3rXXYo

------------------------------------------------------------
   同居八日目・深夜 姉の寝室の前

 完全に防音されているはずの姉の寝室から、あの人の声が漏れ聞こえた。

 私は扉に預けていた体を起こして、歩き出す。

 ここにいてはいけないと、わかったから。

 聞いてはいけない。

 聞くべきなのに。



 ぺたり、ぺたり。

 冷たい廊下を歩く足音にまぎれて、もう、あの人の声は聞こえない。

 でも、きっとまだ、あんな声を上げてるんだ。

 泣き声なのか。

 悲鳴なのか。

 わからないけれど、その声に聞こえる痛みを思うだけで、私の胸が疼く。

 ずきんと、強く張り裂けるように。



 罪悪感に泣きたくなる。

 私が暴き立てたから、あの人は泣いている。

 ずっと隠しておくはずだった思いを、ずっと見ないようにして、やり過ごすはずだった気持ちを、いま、あの人は見ている。



 たった数日、目を背けていただけの私でも、痛くて、辛くなるような感情。

 それをあの人は、十年以上もきっと抱えていたのだ。

『私は、人間じゃ、ありませんから』

 そんな言葉を笑顔で、泣きそうになりながら言う人だ。

 私を部屋に連れて行くときに、ちょっと安心したような、寂しそうな表情をしていたのを、思い出す。

 きっと、男くんへの思いを、私が間に入ることで捨てられるって、そんな事を考えたんだ。



125:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 18:04:35.07 ID:cPe3rXXYo

 でも、それは、きっと違う。

 私は姉さんだから、嫉妬したんだ。

 二人の距離に。

 二人の絆に。



「だから、人間か、ソうじゃないかなんて、逃げ道作って、影で泣いて自己満足とか、ふざけんな!」


「私は、まっこうから男を振り向かセて、掴み取るんだもん……」

 ぐっと、強くこぶしを握る。



「私は、祈らない。
 私は、自分の幸セくらい、戦って手に入れるから」

「姉サんも、」

 幸せになろうとしてよ。



 心の中で、ぐるぐると回る。

 ロボットってなに?

 あの思いは、にせものなの?

 私達と違うって、どう違うの?

 あんなに優しくしてくれて、気が利いて、笑顔が素敵で、ないすばでーなお姉さん。



 人と、私と、何が違うの?



135:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/12(土) 01:10:34.06 ID:XHIqK1d1o

------------------------------------------------------------
   同居八日目・深夜 Robot inc.ラウンジ

同僚A「呼び出して、わるいな」
正「いや、かまわないよ。どうせ仕事してたし」

A「どうせ、か。昨日はあんなに、姉さんに思いを伝えるって、はりきってたのにな」

正「……」
A「にらむなよ。しかし、その反応は、ふられたか」

正「……それだけなら、帰るぞ」
A「振られて良かったんじゃねーの? 正体知って、そう思った」


正「どういう事だよ」

A「堅物のお前が惚れた腫れたってやってんだ。友達として、多少の援護射撃がしたくてな。
 人事課の書類から、ちょっと姉さんについて調べたんだ。それが、二日前の事だ」

正「勝手な事を……」

A「まあ、まて。怒るな。いや、怒ってもいいが、言わせろ。
 姉さんな、人間じゃない」

正「何を言ってる」

A「姉さんのデータが二重登録されてた。委託社員と、それからロボットとして」

正「まさか――」

地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/



136:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/12(土) 01:11:37.88 ID:XHIqK1d1o

正(あの冷え切ったサーバールームで、彼女はずいぶん暖かかったな。
 キーボードを触っていると、ただでさえ冷えるのに。
 規定時間を軽く越えて……不自然なくらい、普通だった)

正(長時間の作業で、疲れた様子はあったけど……
 極低温のサーバールームと、暖房の効いた社内を出入りする作業にしては、
 元気すぎなかったか?)

正(バーでお酒を飲んで、いや、その前の昇進祝いの席でも飲んでいたのに、
 まったく顔色が変わらなかった。
 だからこそ、彼女が泣いた時に、僕はお酒のせいじゃないって、確信できてしまった)

正(他にも、社内でいくつか、そんな噂はあった。あくまで、冗談として)

正「信じる材料は、いくつか。でも、直接的な――」

A「ヤリスギは承知だったが、書類も一部が不自然で引っかかる事が多すぎてな。
 昨日から渉外部のBに動いてもらっていたんだ。
 直接顔を合わせた事はないかもしれないが、Bは知ってるよな?」

正「あの、古風な」

同僚B「古風とは失礼でござるな。むしろ流行の最先端を駆け抜けているでござるよ」

地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/



137:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/12(土) 01:13:00.03 ID:XHIqK1d1o

正「うおぉっと、どこにいましたか」

B「拙者、忍びでござるからして」
A「いまエレベーターで上がってきてた」

B「拙者の、拙者のアイデンティティが!」
A「そんなモンで揺らぐなよ。で、結果は」

B「うむ。単刀直入に言えば、姉殿には戸籍が存在しないでござる」



正「それは――」

A「委託社員登録の住所は?」
B「それが不思議でござる。親権者空白の未成年者が、一人のはずでござる」

正「たしか、姉さんには弟がいるって」

A「たしかに、登録されてた書類には、家族構成が弟一人だったな。名前は男」

B「その青年でござる」


正「……やめよう。コレ以上は、踏み込むべきじゃない」


地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/



138:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/12(土) 01:14:06.07 ID:XHIqK1d1o

A「けどな、人間としか思えない未確認の『人型知性』がふらついてるとしたら、それは」

B「街中に、ロボコップが野放しなのでござる」

正「そんな、そんな人じゃない」




A「認めようぜ。姉さんは、人じゃない。ロボットだ」

正「……それでも、俺は、姉さんが危険とは思えない」
A「そうかい。まあ、いいさ。俺も、騒ぎ立てるのは好きじゃない」

正「この事は秘密にしてくれ」
A「わかった」

正 とた、とた


地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/



139:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/12(土) 01:16:34.01 ID:XHIqK1d1o

B「ま、まずいかも知れないでござる……」

A「なんだよ」

B「直接は知らぬが、姉殿は社の中でも、セキュリティの高い場所に入れると聞いたでござる。

A「ああ。特にサーバールームは、社の心臓部だ。
 姉さんはCFOのお墨付きが有るが、普通は委託社員なんか間違っても入れない場所だな。

B「その事に、急を要すると判断した拙者、既に上司である幹部殿に直訴をしてしまったでござる……」

A「――よりによって、幹部さんか。
 たしか、司法省が開くロボット研究会の会員だ。
 姉さんの書類にな、CFOが紹介者として書かれている。
 幹部さんとCFOの間には、あくまで噂だが穏やかならぬ空気があるらしい。
 場合によっては」

地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/



140:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/12(土) 01:20:27.29 ID:XHIqK1d1o

B「場合によっては」

A「CFOへの攻撃手段として、
 ロボット法をテコに使った何らかの動きが、姉さんに対してあるかも知れない」

B「これは、正社員殿に――」

A「まて。知らせたところで何もできんし、身分を偽ったのも姉さんだ。
 何らかの危険があるかもしれないなら、俺達は見過ごすべきじゃない。
 会社のためにも、正社員自身のためにもだ。

 本当に彼女がロボットだとしたら、それはまず間違いなく『人型知性』を搭載しているだろう。
 うちの社員が誰一人として、彼女を人間かどうか疑わなかったくらい、自然に人に交じっていた。

 もし彼女を疑うなら、その演技力は俺達なんかが見破れるものじゃない。
 しかるべき知識と、技術を持った人たちが判断すべきだ。

 幹部さんが圧力をかけても、司法省は国の機関だ。
 その司法省の顧問機関である研究会が、恣意的に何か問題を起こすとも思えない。

 ひとまずは様子見でいい。
 それに、こんな話、俺達が隠していても、いずれはバレる」

B「……」

A「お前は悪くない。正しい事をしたのさ」 ぽむっ

B「……」

地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/



143:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/12(土) 23:57:17.06 ID:XHIqK1d1o

------------------------------------------------------------
   同居九日目・昼 リビング

男(勉強もひと段落したし、休憩でもするか。
 久しぶりに紅茶でも入れて、本格的にティータイムもいいかもな) せのびーっ

男(朝はなんか、姉さんはずいぶん元気なかったな……
 少女は少女で、なぜか空元気ってわかるくらいテンション高かったし)

男(姉さんへのフォローは、仕事から帰ってからするとして。
 少女には昼のうちにフォローできるといいんだが)

 とことこ

少「ふふ、ふふふー」
男(少女か、機嫌が良いのはいいが、何で笑ってるんだ?) そーっ

男「それ、もしかして」
少 びくっ

男「俺のアルバムか?」
少「……」

男「……そんなに構えるなよ。大丈夫だって」ひらひら
少「ほんと?」ばっ

男「……」 にこっ
少「うそだっ!」

男「まあ、どうしてそれを持ってるのか、詳しく教えてくれたら、ウソじゃなくなるな」にやり



144:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/12(土) 23:57:43.17 ID:XHIqK1d1o

少「それは、もちろん、お姉さんに『男くんの恥ずかしい姿見たいですか?』って」

男「だよな。よし、後で叱っておこう」
少「もちろんでスって答えたら、いい笑顔で渡シてくれて――」

男 すこんっ

少「ぶ、ぶったね!」

男「当たり前だ。そこに食らいついたなら容赦は出来ないだろ」
少「ちゃんと正直に詳しく話シたのに」ぷいっ



145:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 00:00:35.78 ID:6Yx61RC7o

男「んで、何が有った?」

少「ん?」

男「そのアルバム。
 存在は知ってたけど、姉さんは見せてくれないからな。
 俺も今まで興味が無かったんだが」

少「見られてるって事で、急に気になった?」

男「そういう事だ」

少「ふふ、イロイロ有ったよ。
 少年サッカークラブの写真とか」

男「懐かしいな、キーパー任されて、地区大会まで進んだり」

少「それで、転んだ子に巻き込まれて、試合中にズボン下ろされたり……」

男 ずばっ!

男「どこだ! それ!!」
少「ソの部分はもう一冊のだったから、もうお姉さんに返シたよ」



146:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 00:03:45.51 ID:6Yx61RC7o

男 ごんっ、ごんっ

少「ちょ、ちょっと、壁に頭ぶつけてどうシたの?!」
男「連鎖的に、こう、恥ずかしいことを山ほど思い出してな」

少「中学校の学園祭の出し物で、女装が似合いすぎて男の子たちに追いかけられたとか?」

男「……その写真は」
少「サすがに、ソれは。お姉さんから聞いただけで」

男「何を教えてるんだねえさんは……ぁあアあ゛ア゛ァ」 ぷしゅー

少「うん、なんか、ごめん」

男「どうりで、出社する直前に、なんかちょっと元気になってると思った。
 うん、まあ、それでこそ姉さんだ。
 ピンクのサテン地だなんて私にはいえませんとか。
 セクハラ魔人め。もしロボットなら、セクハラ時に確認されるセクハラニウムとかが動力源の存在だな」

少「ん、何か言った?」
男「いや、何も」きぱっ



147:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 00:04:32.53 ID:6Yx61RC7o

男「とりあえず、俺はこれから紅茶を淹れてティータイムにしようと思うけど、少女はいるか?」

少「なんだか話をソらされたような……。紅茶なら、私が淹れるよ?」

男「まあ、待ってろって。
 これでも、俺だってそれなりに出来るんだ」

 カタカタ

 ピッピッ

 ぐつぐつ

 こぽぽぽぽ

 かちゃかちゃ

 チーン

男「ほい、お待たせ。紅茶はS&Wのアールグレイで、茶菓子は今焼いたスコーンと、手製のジャムだ」

少「今焼いたの?!」

男「生地は作って冷凍してあるからな。
 半月くらいはそれを焼くだけで、焼きたてのスコーンが楽しめるって寸法だ。
 少女のとこでも、それくらいあったろ?」



148:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 00:06:17.79 ID:6Yx61RC7o

少「うーん、バレちゃったから言うけど、ウチは何人かメイド・ロイドがいて……
 お茶の時間に合わせて、いつも二時間前からケーキと紅茶の準備とか、シてくれてたから。
 逆に言えば、ティータイムがシたかったら二時間前に頼まないといけないわけ」

男「おー、ハイソだ……ん? 不便なのか?
 まあ、それと比べられたらかなわないけど、そこそこいけるはずだし、食ってみてくれよ」

少「うん、いただきまース。――ん! ん! 美味シい!! うわー!!」 まぐまぐまぐまぐ

男「そんなにあわてなくても……」ぱく

少「紅茶が、香り高くて味も深いのに、苦くなってなくて満点!
 スコーンも、サスが焼きたてって感じで美・味・シ・いー☆
 お姉さんだけじゃなくて、男もシっかり料理できるんだ……」



149:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 00:10:43.86 ID:6Yx61RC7o

男「まあな。最近は料理の出来ない男はモテないって言うし」
少「……男は、モテるの?」

男「黙秘する」きっぱり
少「お姉さんは、男をどーてーって」

男「……」
少「どーてーって、女の人にモテない人を言うんだよね?」

男「まあ、な」
少「あれ? 違ってたなら、辞書で調べてくるけど」

男「そ、そうです! モテない人がどーてーです! 俺もモテないです!!」

少 じーっ
男 だらだら

少「あやしい」
男「怪しまないでくれ」

少「……まあ、いっか」



150:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 00:31:09.03 ID:6Yx61RC7o

少「男は、たとえば」
男「ん?」

少「もシ、もシだよ、結婚とかスるなら」

男「……俺の結婚は、そんなに強い仮定法が必要か」 ぼそっ

少「お嫁ソんは、料理が必須かな?」

男「今どきはメイド・ロイドがいれば、家事は基本的に済むからな。
 維持費は多少かかるけど、普通に働いてれば、月々の負担は電気代が倍になるくらいだし……
 必要かって言われると、そうれはないけど。
 まあ、できるに越したことはないと思うぞ。やっぱり、ロボットの味は画一的だし」



151:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 00:32:04.99 ID:6Yx61RC7o

少「ソっか……」

男「まあ、そんな事よりは」
少「?」

男「一緒にいて楽しいか、だろ。
 少女は一緒にいて楽しいし、そんな心配いらないと思うよ」にこっ

少「ぁ、」(うわわ、顔、ほっぺた、どんどん赤くなってるの分かるし、すごい、ずるい)

男(少女は父親がいないってことだし、ある意味俺が父親みたいに、
 『少女が欲しければ、俺を倒して』みたいな展開に……それはないか)



少「ソの、男に気に入られたって、しょうがないじゃん」(って、あれ、私)

男「ん、ああ、そっか」
少「まったくー」(違、そう、じゃなくて)



152:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 00:33:14.47 ID:6Yx61RC7o

男「それじゃ、見当違いなことを言った罰ゲームに、片付けしてくるな」 かちゃかちゃ
少「あ、それくらいは私が」

男「気にするなよ。ただ、変な写真があったら、できるなら見ないでおいてくれ」
少「こういうときはアレかな? お主も悪よのぉ……って」

男「まあ、そんな感じだ、くくっ」

 ざー、かちゃかちゃ

少(なんで)

少(なんで、もうちょっと)

少(男も、不意打ちなんて)

少(ぐるぐるする)

少(ぎこちなくて)

少(なのに、ちょっと楽しいのが悔しいかも)



153:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 00:41:19.09 ID:6Yx61RC7o

ちょっとややこしいのが続いたので、ほのぼのしたくなった!
でも、なんでだろう、この、花粉症だけじゃない、目から流れる雫は……
男とかしねばいいのに。


12日はいろいろ助けに行ったり、食糧買い足したりしてきました。
おかげで疲れて、中途半端な時間に寝てしまった……

ままれさんがツイッターで亀有がーとか言った頃、おいらも亀有で友人の無事を確かめたりしてたり。

コンビニからは食糧がなくなったり、マイミクが必要以上に放射線被害におびえたり。

いろいろ有った……

けど、寝たら結構元気になったので、節電しつつ続きを書こうと思う。
午前4時くらいに続きが上がるかもしれない。



154:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 03:58:27.54 ID:6Yx61RC7o

------------------------------------------------------------
   同居九日目・深夜 Robot inc.ラウンジの個室

幹「さて、皆様、本日はわざわざ、我が社までご足労いただき、誠に――」

会「挨拶はいらんよ、幹部くん。私らも暇じゃない、要件だけで済ませようではないか」

幹「わかりました。要件ですが、部下から『人型知性』を見つけたという報告がありました」

会「ふむ。副会長」

副「は、はいっ。しかし、新電子知性対応研究会には、そのような届出はなかったため、その」

老 ひらひら

幹「狙われるのがわかっていて、その所在を表明する者がどこにいる。
 二十一世紀の駐露大使の物真似ですか? 似ていませんし、笑えませんが」

副「くっ、貴様、会長の目にかけていただいているからと!」

会「――幹部」



155:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 04:01:19.47 ID:6Yx61RC7o

幹「失礼しました。
 ご存知の通り『人型知性』とは、従来の『制限知性』とは大きく性質が異なるものです。
 まず、この点について確認させて貰いましょう」

副「必要あるまい。ここにいるのは専門家ばかりだ」

組「ちょっと待ってくだせぇ。あっしは、専門家じゃねえんで、話して貰えるならありがたい」

副「ま、まあ、組長殿が、そういわれるなら」

幹「では、失礼して。

 『制限知性』は量子演算機により、人間の命令した行為をロボット工学三原則、
 およびロボット法の範囲内で、自動的に実行し、それだけを行います。

 模倣人格を持つものも存在しますが、それはあくまで『ありがとう』に『どういたしまして』を返すようなもの。
 高機能なお茶汲み人形に過ぎません。



 『人型知性』は、陽電子脳と量子演算機を使用し、
 人間の模倣をすることを目的として設計されています。

 コレは自律意識と感情を持ち、人間とほぼ同様にの欲求を示し、行動します。

 ロボット三原則の第二条から、基本的に人間の命令を聞きますが……
 明示されていない部分に、意図を反映します。


 たとえば、何も命令が無い場合、
 『制限知性』であれば指定された待機モードに移行しますが、
 『人型知性』はそのロボットの好きな事をします」



156:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 04:05:14.04 ID:6Yx61RC7o

組「好きな事、ってぇのは、なんだ、ロボットがタバコ吸って、
 日経新聞読みながら、日本の政治に意見するってか?」

幹「タバコは人間の害になるので、第一条の関係から、嫌煙するかと思いますが。おおむね」



組「じゃあ、人型知性と俺らの違いってのは、なんだい」

幹「そもそも、そこに違いが無い状態を目指して作られたのが『人型知性』です。

 それが、問題です。
 組長がお顔をしかめられているように、嫌悪の反応が世界中で見られるでしょう。
 かくいう私も、非常に不愉快です」

組「あったりめぇだ。こちとら人間様だ。
 生産すりゃぁいい機械なんぞと一緒にされて、たまるもんかってんだ!」



副「しかし『人型知性』に対しては、人間と同等の権利と法律の庇護を、と考えられているのですよ」

組「なんだって、そんな莫迦な事を考えやがった」



幹「副会長さんの言葉が足りていませんね。
 そう考えた人たちがおり、その宣言の一部が、ロボット法に残っている、と云うのが正しいです」

組「ロボット法ってのは、実際どんなもんなんだ?」



157:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 04:07:55.75 ID:6Yx61RC7o

幹「以下の三つの、ロボットに関する扱いをまとめた、国際法です。
 『第一部、ロボットに関する生産の規定』
 『第二部、ロボットの使用者の規定』
 『第三部、ロボットが遵守すべき規定』
 
 『制限知性』のロボットは、権利と責務の主体とならないと第二部で明示しているため、
 今のところ第三部は無意味ですが……



 Regulation Of Butting On The Trust(信頼の境界線の規定) 

 ―― ROBOT法という名前からわかる通り、これは『人型知性』を持つロボットとの、
 信頼関係の構築や、共存を目的とした法律です。

 第三部には
 『各国が定めるところの人間と同様の憲法、民法、刑法上の権利と責務を持つ事が望ましい』
 と書かれています。

 この実態は『人型知性』に人権を認める論拠を作ることなのです」



組「ロボットに人権を、認めるだぁ?!
 なんでそんな法律が通った! 日本の政府は何をやってやがる」



158:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 04:11:14.76 ID:6Yx61RC7o

幹「コレは各国に対してWAIARTCの後継組織、WRTCが提案した物です。
 人間主義の本流は米国ですが、さすがにWAIARTCのテロで、
 その風潮に翳りが見えた時期がありまして……

 その隙に、人形愛玩者(ロボティアン)たちが、
 各国にさりげなく批准の調印を行わせたわけです。


 事実、組長さんをはじめとした一般の方々は、
 ロボット法の存在は知っていても、内容についてご存じない。
 そこに問題を感じて立ち上がったのが、我々研究会の同士というわけです。」



組「まあ、だからこそ協力しようって、なるわけだが」


幹「ありがとうございます。
 現在、その『人型知性』の存在は、ごく一部にしか知られていません。

 提案できる処理の手段は二つ。
 一つは暗殺。これは組長さんが人員をまわしてくださるそうです」


組「うちの若いのに、人間主義の過激派って看板持たせて、鉄砲玉さしてやりゃぁ、片がつく」



159:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 04:12:28.02 ID:6Yx61RC7o

副「しかし、そうなるとさすがに今度は、民意が人間主義から離れるでしょう。
 逆にロボットの普及を間接的に後押しする可能性があります」

幹「ここはやはり、研究会が主導になり、正面から『人型知性』の危険性を訴えるべきかと」



会「ふむ……では、査問会を開こうではないか」

幹「ではそのロボットに召喚状を出しましょう。
 実は、その『人型知能』は一つ、問題を隠しておりまして――」



 ごにょごにょ


組「で、俺はどうすりゃいい」

幹「それはもう、いざという時のための隠し玉として……」



160:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 04:21:51.24 ID:6Yx61RC7o

難しい話すると、時間がいくらあっても足りない……
もういいと思うんだ。話を先に進めたらいいと思う。


なんだろう、敬語姉を楽しむ物語のハズだったのに、似非ハードSFとか。


あと、

Regulation Of Butting On The Trust(信頼の境界線の規定)
ってなってるのを、脳内で

Regulation Of Border Of The Trust(信頼の境界線の規定)
に直しておいてほしい。

Butting On は寄りかかるって意味もあるらしいから、それはまずい。
英語が得意な人は、もっと良い名前が有ったら教えてくれたら幸せだ。

杉が大地震でダンスして花粉撒き散らしてるけど、まけないで頑張るよ!


次は朝8時くらいにもう一回!



161:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 06:23:45.56 ID:6Yx61RC7o

------------------------------------------------------------
   同居十日目・朝 男の部屋

男(落ち着け、状況を把握しろ。
 呼吸を制御して気配を消せ)

男 ドクン、ドクン

男(鼓動の音が、痛いくらいに耳に響く)

男(ぱちぱちと首の後ろで緊張が爆ぜるような)

男 ドクン、ドクン

男(腕が痛い。
 くそ、動かすことも出来ないか)

男(どれだけの時間こうしていた?)

男 ドクン、ドクン

男(囲まれて、追い込まれるまで気付けないなんて)

男(なんでこんな事になってるんだよ)

男(目を覚ましたら――)



162:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 06:24:42.48 ID:6Yx61RC7o

男(なんで、姉と少女が俺のベッドで寝てるんだよ。
 しかも、二人とも俺の腕を枕に!)

男(これはきっと罠に違いない。
 だが、いったい誰が仕掛けた罠なんだ?)



男(あれか? 某掲示板に「金髪美少女が居候してるんだけど、質問は?」
 なんてスレを立てたからか?)

男(いや、そんなタイトルで釣りながら、
 みんなの求めるパンチラ写真とか、覗き写真を提供できなかったからか?)

男(結局、脳内彼女物語とか、糞SSとか、きんもー☆とか、
 そんなコメで終わったけど……)



163:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 06:25:16.68 ID:6Yx61RC7o

男(いかん、脳が勝手に現実逃避をしてる)

男(問題はまず、俺の腕が痛いことだ。尋常じゃなく痛い)

男(腕枕だけなら、姉がふざけて要求してきた事はあったけど……
 せいぜい十分くらいだったしな)



男(何とかして抜け出したいが、左右共に押さえられてると動けないし)

男(片方を起こして動いてもらい、片方はそっとベッドに残して、
 何事も無かったかのような感じを装うのが吉か……)

男(いや、男らしく、二人とも起こすべきか?)



男(……ただ起こすだけでいいのか?
 ここは、あの掲示板の住人として何か挑戦を……)



164:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 06:30:43.96 ID:6Yx61RC7o

☆ミ(o*・ω・)ノ 安価よろー(やってみたくなった)

>>165 3択にしてみた!
1.少女を起こして、姉は寝かせておく
2.姉を起こして、少女を寝かせておこう
3.いっそ両方を起こしてしまおう


 ついでに、起こし方に希望があればそれも。
 両手を頭で押さえられた状態の男に出来る範囲で。
 おいらが恥ずかしくなるようなアイデア(年齢制限的な方向で)は、
 読まなかった事にされるからよろしく!

 次はたぶん、昼か夕方。
 ちょっと長丁場になりそうだから、時間調整!
 それまでに安価が入らなかったら、サイコロ振って決める。



165:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 08:33:52.19 ID:Yqv2YftTo

三人で仲良くしてほしいから 3

起こし方はちっと考えさせて



166:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 08:47:49.07 ID:Zt9YjKe8o

二人とも一気に抱きしめながら起こしちゃえば。
照れてる描写がでたら儲け



167:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 09:09:29.88 ID:Yqv2YftTo

いいね。ぐーっと抱き寄せて起こすで!



168:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 17:14:48.64 ID:6Yx61RC7o

男(……って、なに考えてるんだろうな、俺)

男(なんで二人がここにいるかは、わかんないけど)

少 くぴゅー、くぴゅー

姉 すー、すー

男(安心して寝てくれてる二人に何かするとか、ダメだろ)



男(それに、安心してくれてるって考えると、なんか、ちょっと嬉しいかも……)

男「……」


男 ぎゅう

男(い、いいのかな。なんか、急に愛おしくなった感じで、その)



男(いや、言い訳とかだれも聞いてないんだけど)

男(いや、しかしコレ、やっぱりマズいかも)



169:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 17:16:18.46 ID:6Yx61RC7o

 シャンプーの匂い。

 パジャマから覗く素肌。

 やわらかい感触。

 安心の重み。

 肌をくすぐる髪の毛。

 二人の体温。



男(う、く。状況が、自分で悪化させた気がする)


男(とにかく、もういい、罠でも毒でも皿ごと食らえだ!
 二人を起こそう。いったん、寄せて腕を自由にして、肩とか、背中をたたけば)

男 ぎゅー、とんとん

少「ん、んぅ」 ぎゅっ
姉「……っ」 きゅっ

男(な、なんで余計に――!)

男「お、おい。二人とも、起きろ!」



170:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 17:17:16.20 ID:6Yx61RC7o

少「ん、……男?」
姉「んんー……」

少 にこーっ

男(何で、ちょっと顔見て、そんなに笑顔に!
 心臓が痛いくらい、強く――) ドキドキ

姉「っ。男くん」 じっ

男「良かった、姉は起きて――」

姉 ぐいーっ

男「な、なんで急に顔を寄せるんだよ!」 ドキドキドキドキ

姉「ねえさん、実はド近眼でして。こうしないと、男くんの顔が」

男「しれっとウソつくなよっ。近い、近いって。唇とか、触れるって!」

姉「……触れて、みたいですか?」

男「……え?」

姉「私の、くちびるに」(///

男(顔赤くて、恥らった表情、ちょっと切なげな――)



171:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 17:18:43.11 ID:6Yx61RC7o

男「いや、ちょっとまて、寝ぼけてるなら起きてくれ!」

男(やわらかそうで、赤い果実で、
 そりゃもうキスなんて興味の対象で、
 しかも客観的に見れば姉さんは美人で)

姉「……やっぱりこんなのには、食いつかないですよね」にやーっ

男「あ、当たり前だろ。
 そういうのは、その、大切な人と、してくれよ」

姉「ふふーふ…………ちゅ」

男(ほっぺたに、キス……)

姉「おはようのキスは、ほっぺたに、ですよ☆」にぱっ、ごそごそ

男「……く、くう」(なんか、負けた気分だ。ドキドキさせられたあたり、特に)

姉「それじゃ、私は朝ご飯の支度をするので、
 少女ちゃん、狸寝入りはもういいですよ?」にやー

 とことこ

 ぱたん



172:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 17:26:28.90 ID:6Yx61RC7o

少「……」

男「……その」

少「……」 すー、すー

男「いや、今頃、寝息を再開されても」

少「その、コレには深いわけがあってね」ぐいっ

男「近い、近いって!」

少「お姉さんなら良くて、私は近づいちゃダメなの?」じろー

男「違うだろ! そういうわけじゃなくて」

男(罠だった。コレは姉さんの罠だ。
 く、目を潤ませた少女が、至近距離って、
 88mm砲並みの高火力かっ)



173:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 17:32:00.35 ID:6Yx61RC7o

男「その、当たってるんだが、胸が」ぼそぼそ

少「ぇ、何が――って! 男のエッチ!」ぐっ(////

男「うぉっ!」どしん!

少 たったった



男「痛って……。何も、ベッドから落とすこと無いだろ……」

男「朝から何でこんな目に……」



男「あれって、マシュマロより、中身がふよんと重くて…………」

男「くっ、ダメだ。これは邪念だ。
 色不異空。空不異色。色即是空。空即是色……なんだっけ。
 うう、般若心経くらい、日本人として唱えられるようになっとくべきだったか」



174:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 17:35:15.95 ID:6Yx61RC7o

------------------------------------------------------------
   同居十日目・朝 男の部屋の前


姉(だ、だだ、だだだ)

姉(脱出できました……) はふぅ~

姉(うう、少女ちゃんにつられて、添い寝とか。
 なんで張り合ってしまったんでしょうか、私)

姉(寝顔なんて、小さい頃からいっぱい、いっぱい見てて。
 陽電子脳の男くんフォルダには、
 寝顔だけで1ジャンル確立してるくらいで)

姉(独り占め、したかった?)

姉(それでも、私は、やっぱり、お姉さんで。
 男くんは、弟で)

姉(でも、でも)



175:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 17:36:17.04 ID:6Yx61RC7o

姉(男くんの腕の中で、目を閉じると。

 冷却水を循環させるだけのはずなのに、
 擬似心臓器が、きゅっと締め付けられたような)


姉(頭の中が、練乳みたいにとろとろで、甘くなって。
 ちょっとちくちくするんだけど、嫌じゃなくて)

姉(温かい気持ちがあふれて)

姉(幸せな感じに満たされて)



姉(照れているのをごまかすために、からかって、唇で触れたら、
 ずっと、やけどするみたいに熱いのが残って……)

姉(その瞬間から、なんだか、たかぶった気持ちに、泣きそうで)


姉(これが、)



176:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 17:37:41.06 ID:6Yx61RC7o

姉(でも、それでも)

姉(私はロボットで)

姉(だから、こんな気持ちなんて)じわっ



姉(こんな気持ちなんて、知りたくなかったのに)

姉(こんな幸せなんて、感じたくなかった)

姉(幸せなのに、幸せだから)

姉(何倍も、何倍も、重くて、苦しいよ)


 とた、とた



177:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 17:39:35.10 ID:6Yx61RC7o

姉(朝ごはん、作りましょう)

姉(ご飯を作っていれば、その間は考えなくてすむから)

姉(『料理は無になれます』って、ブッダも言ってますし)

姉(冷蔵庫には、白菜がありましたね。
 シーチキンと一緒に、コトコト煮でも作りましょう。

 お漬物があって、もやしのお味噌汁をそえて。
 それからメインにブリを焼けば)

姉(男くんはブリが大好きですからね。
 とりあえず、それだけで目が輝きます。
 それから、白菜も、シーチキンも大好きだって)

姉(男くんは……男くんは……)

姉(――料理に、集中、するんだもん)

 かちゃかちゃ……



178:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 17:43:35.34 ID:6Yx61RC7o

------------------------------------------------------------
   同居十日目・朝 少女の自室

少(私のバカっ! 大バカー!!
 Dammit! Du Arschloch!! うわぁーん)

少(なんでかなー。
 最近、男が関わると素直になれないよ……)

少(素直になろうとすると、急に不安になるから。
 ふざけたり、怒ったふりをしてごまかしたり)

少(振り向いてもらえないんじゃないかって。
 戦うって言っても、私なんて新兵だよ!
 なのに、相手はあのお姉さん)

少(大きい胸に、きれいな顔。大人な雰囲気。
 しかも対男く○に関しては攻撃翌力補正S+だし)

少(夜中にちょっと寂しくなって、
 男はもう寝ちゃったかなーって、
 確かめるだけだったのに)

少(お姉さんをみて、
 私の知らない顔を、いっぱい知ってるんだろうなって)

少(そう思ったら、寝顔とか、見たくなって)



179:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 17:45:32.49 ID:6Yx61RC7o

少(『夜中に、どうしたんですか?』
 『男の、寝ているところを』

 『そ、添い寝ですか?!』
 『え、ええっと』

 『……わ、私も、添い寝です』
 『ええ?!』

 『若い男女の二人きりは危険です。ここは、保護者が必要なはず!』



 『い、いや、それならむしろ、添い寝なんて』

 『では、枕を取ってきます』


 『……うう、私も、がんばらないと』)

少(とか、とか!)

少(頭わるいよー)



180:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 17:46:30.26 ID:6Yx61RC7o

少(……でも、男の寝顔、かわいかったかも)

少(普段はけっこう、むすっとしているっていうか、無表情で)

少(表情としては、室井管理官みたいな? あそこまで厳しくないけど)

少(顔つきはぜんぜん違うけど、空気が似て見えるんだよね)



少(だから、からかってでも、表情を引き出したくなるわけだし)

少(なのに、寝顔はゆるんだ感じで)

少(ぎゅっとしたら、思ってたよりしっかりとした感じで)

少(抱きしめて安心感がある感じだったなー)



少(気がついたら熟睡しちゃって)

少(……お姉さんが、顔を寄せたところで、目がさめて)



181:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 17:47:28.04 ID:6Yx61RC7o

少(ほっぺたに、キス)

少 ずきん

少(たぶん、ぎゅっと寄ったときの『あたってる』も、
 お姉さんの方が大きいし、ずっと)

少(うう、もっと積極的になって、アプローチしないと……)



少(とりあえず、敵を知り、己を知れば危うからず、っていうよね)

少(塩をもらった感じですが、お姉さんに借りた男のアルバムで、勉強しよう!)

少(昨日は適当に見ただけだから、今日はちょっとじっくり……
 卒業アルバムでも、見ようかな)



少(ふふ、昔からしかめっつらみたいなんだー)

少(かわいいなー)

少 ~♪ ~♪



182:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 17:48:34.73 ID:6Yx61RC7o

------------------------------------------------------------
   同居十日目・昼 玄関

 ピンポーン

男「はい、どなたですか?」 ガチャッ

役「失礼いたします。
 私、こういうものでして――」スッ

男「司法省の、新電子知性対応研究会に所属する、役人さんですか」

役「所属はしておりません。研究会が公的権限を行使する際の、エージェントです。
 本日は、こちらのお宅の、姉様に渡すものがありまして――」

男「姉に、ですか。
 連れてきましょう。
 よければ、上がられませんか?」

役「いえ、本人様がいらっしゃるのでしたら、
 渡してすぐに失礼させていただきますので――」

男「わかりました。
 っと、本人が来ました。
 姉さん、この人が、姉さんに」

姉「はい、姉は私ですが」



183:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 17:49:46.61 ID:6Yx61RC7o

役「こちら、新電子知性対応研究会からの召喚状です。
 詳細は改めてご確認いただきますが、
 概要として、姉様には重要参考人として、同行が求められています」

男「それは、何かの犯罪の――」

役「はい。ロボット法における第三部の規定に違反した容疑です。
 警察ではなく私がやってきたのは、
 裁判所があなたに、ロボット法の第三部が適用されるか、
 それを判断するために、研究会の判断が必要となったからです」

姉「……わかりました。同行します。
 ただ、少量ですが荷物を持っていっても良いでしょうか」

役「かまいません。しかし、出来る限り、お早く」

姉「はい」

男「ちょっと、ちょっと待ってくれ。なんで姉が、犯罪なんて」

姉「……」

男「なあ、ねえさん」



184:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 17:51:00.97 ID:6Yx61RC7o

姉「男くん、今までありがとうございました」

男「……そん、な」

役「申し訳ありませんが、その」

姉「はい。すぐに」

男「……」

 たったった

 がちゃ

 ぱたん

 たったった



185:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 17:51:39.32 ID:6Yx61RC7o

役「もう、よろしいので?」

姉「はい。それとも、着替えなどが……」

役「場合によっては。ですが、必要ないですよね」

姉「……はい」

役「では、こちらに。車を用意しています」

 ……ぱたん

男「……」

男「なにが」

男「いったい」

男「……」



186:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 17:56:02.96 ID:6Yx61RC7o

とりあえずこれで休憩いってきますー。
次は25時までに来るつもりで!

クライマックスに向かって出発です。
読んでくれてるみんなには感謝と鼻炎薬を!
ヽ(。・ω・)ノ゛☆ありが㌧☆ ヾ(・ω・。)ノ

>>165-167
こんな感じで良かったかな?
思いのほか、姉が奮闘した感じでww

文句は受け付ける!キリッ wwww



190:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 00:58:38.85 ID:cdyW7lXWo

------------------------------------------------------------
   同居十日目・昼 リビング

少(お客さん、だったんだよね……)

少(何で二人とも、こっちにこないのかな)

少(客間に通すなら、お茶を淹れるためにこっちに来るし。
 玄関で済む用事って言うには、長いな)

少「……」

少「見に――」

 ぎぃ

少「あ、男……?」 たたっ

少「どうしたの? すごく顔色が悪いし、お姉さんは?」



191:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 00:59:12.81 ID:cdyW7lXWo

男「姉、は」

少「とりあえず、水かなっ。ちょっとまってて」

 がたがた

少「ほら、飲んで。深呼吸して」

男 ごく、ごく……

少「ほら、吸って、吐いて」
男「……た」ぼそ

少「え?」
男「姉が、いっちまった」

少「でもいま、一緒に」

男「この人が、来て」 すっ
少(司法省の、役人さん?)



192:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 00:59:42.25 ID:cdyW7lXWo

男「姉にはロボット法の、第三部の違反容疑で、重要参考人にって」

少「重要参考人って、ほとんど犯人扱い?
 どうして、そんな――」

男「分かるかよっ!」 だんっ

 がしゃん

少 びくっ

男「わかんねぇよ。何にも」

少「男……」



193:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 00:59:58.77 ID:cdyW7lXWo

男「しかも、ロボット法の第三部って、
 ロボットへの規定、だよな?」

少「……」
男「なんで、姉がそれで……」

少「……そこまで、わかってるならもう」

男「違うっ! ねえさんは、そんな」
少「……」

男 ぎしっ

男「ねえさんは、そんな、わけが」

男(くるり――)
男(――くるり)

男(視界が歪む)
男(でっかい地震でも来たみたいに、足元がゆれる)



194:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 01:00:49.99 ID:cdyW7lXWo

男(わからない)

男(わかりたくない)

姉『男くん。だめですよー、けんかをしたら謝るまでがセットです』
姉『男くん。今日のご飯はどうですか? え、もっと薄味がいい、ですか?』

男(小さい時から、ねえさんはずっと、ねえさんで)

姉『男くん、なにか悩んでるなら、姉さんにばぁーんとぉ! 相談しましょっ♪』
姉『男くん。じつは、そのぅ、お役所の書類が来たんですけど、こういうのは苦手で……』

男(頼りになって、ちょっと頼りない)

姉『男くん。裸タオルー! なんてね、ウソですよ。私に欲情しちゃったりしましたか? ふふーふ』
姉『男くん。なんと.hackがリメイクですよ! コレは買いですね!』

男(いたずら好きで、ゲームが好きで)

姉『男くん』
姉『男くん。おはようですよっ』

 にぱっ

男()



195:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 01:02:39.11 ID:cdyW7lXWo

男「ロボット、なんて」

少「……ホントだよ」
男「少女は、知って……」

少「うん。こないだね、教えてもらったの。
 お姉さんのお部屋に入れてもらって。
      、 、 、 、 、 、 、
 ここは、男くんのご両親のラボでしたって」

姉『お父さんも、お母さんも、男くんの事が大好きでしたよ』

男「ねえさんは、俺の、ねえさんじゃなくて」
少「……」

男「ロボット」

男(積み重ねた、時間)

男(作り上げた、関係)

男(手のとどく、距離)

男(向けられた、笑顔)

男(それが全部、0と1で作られた、計算上の偽り)



196:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 01:03:47.54 ID:cdyW7lXWo

男(偽りじゃないか。本当の事じゃなかっただけだから)

男(でも、そんなの、かわらないじゃないか)

男(虚実――そこには、ただ空っぽの穴だけが、深くまで広がっていて)

男「俺は、」



姉『男くん、今日のご飯はカレーですよっ!
 なんと、スパイスの調合からやりました!』
男『おー、すごいな、そんなの出来るんだ』

姉『徹底的にネットを調べて、コレだという調合です!
 すごいですよね、偉いですよねー』
男『うん、さすがねえさん。本気で尊敬するかも』

姉『う、わ。男くんが今日は珍しく素直に褒めてくれた!』
男『そんなに珍しくは無いだろ』

姉『珍しいですよ、五月に雪が降って、冬にひまわりですよ……』
男『やっぱ、さっきの撤回だ。調子に乗りすぎ』



197:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 01:06:00.28 ID:cdyW7lXWo

男「俺は、」

 『男くん、今日から衣替えですね』
男『うん。さすがにちょっと学ランは暑かったから、助かる。
 今日から    も、薄手にするんだ』

 『はい。ちょっと若さを求めて、今日はキャミに薄手のショールです。
 可愛いですかね?』
男『ん。まあ、そうなんじゃない?』

 『とか言いながら、胸元をちらちら見るなんて、
 男くんもそんな年齢ですかー。ふふーふ』
男『    相手に、そんな風に見るわけないだろ。ほら、遅刻するぞ』

 『その、ちょっとくらい――』
男『かわいい。 ……ほんとに』

 『えへへへっ』 にぱっ

男「舞台で一人芝居をする、狂言回しか」

少「……」
男「滑稽だろ」

少 ぐっ
男「……」

少 くるっ

 とことこ……



198:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 01:07:06.28 ID:cdyW7lXWo

------------------------------------------------------------
   同居十日目・夜 リビング

男「……」

男「……」

男 ぐぅーぎゅるる
男「……ああ」

男「こんな時でも、腹は減るんだな」

男「……」

男「暗い、な」ぎしっ

 とことこ、ぱちん

男「もう、こんな時間か。
 少女にも、飯を……」

男「……少女は」

 とことこ……

 とことこ……



199:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 01:07:43.93 ID:cdyW7lXWo

男「……少女」

 とことこ……

 とことこ……

男「そ、っか」

男「そうだよな」

男「少女も、こんなヤツと二人は、いやだよな」

男「……さむい」

 pipi pi

男「今まで、断熱だけで気にならなかったのに」

男「一人だと、暖房がないと、寒いんだ」

男「そんな事も、しらなかった」

男「思い出せる限り、ほとんどいつも」



200:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 01:09:08.75 ID:cdyW7lXWo

男「食事、か……作る気には、なれないな」

男「たしか、カップ麺の買い置きがあったよな」

 ガタガタ

男「あー、そういや、少女が食べてみたいって言うから、三人で」

男「……」

 ガタガタ

男「あんパン……なんで、あんパン?」

男「いいや。これと、牛乳でも」

男「……俺は張り込み中の刑事かっ」

男「……」

男「大人しく、食おう」

男 ぱく、もぐもぐ

男 ぱく、もぐもぐ

男 ぱく、もぐ

男 もぐ



201:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 01:11:25.17 ID:cdyW7lXWo

男「テレビでも、つけるか」もぐ

 ぱち

アナウンサー「今日は百年前の東北関東大震災から、ちょうど百年を……」


 ぴっ

キャスター「ご覧下さい、慰霊碑の前には大勢の人が……」



 ぴっ

タレント「いやー、ほんまにびっくりしましたわ。百年前と今で、そこはまったく地形がちゃうねん」

アイドル「えー、ウソですよ。そんなに変わるわけ無いじゃないですかー」

タレント「何言うてんねん、ちょっとこの地図見てみぃや……」

 ぱちっ

男「どれも、こんな話か……」

男 ぱく

男 もぐ

 『 』

男「なにも、思い出すことなんか、ない」



202:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 01:11:48.97 ID:cdyW7lXWo

 『 』

男「ロボットだって、知らずに」

男「頼って」

男「信じて」



 『 』にぱっ

男「……」

男「寝よう」



203:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 01:12:38.07 ID:cdyW7lXWo

------------------------------------------------------------
   同居十日目・夜 プリンスホテル・スイート・シャワールーム

  シャー

少「……」じー

少 ひたっ

少(鏡の中の私)

少(昔は、嫌いだったな)

少(自慢じゃないけど、中の上くらいには可愛いかなって、思ってる)

少(体型だってお姉さんと比べればちょっと寂しいけど、普通くらい)

少(お肌もちゃんとお手入れしてるし)

少(でも、鏡を見たくなかった)



204:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 01:13:39.19 ID:cdyW7lXWo

少(目が嫌いだったから)

少(いつも、どこか媚びてるみたいで)

少(当時は、どうしていやなのかも分からなかったけど)

少(今はわかる)

少(私を見てって。寂しいって、目で言ってた)


少(ずっと、檻の中だったから)

少(あのRI社を継ぐ、幸運な娘)

少(父と母を幼くして亡くした、不運な娘)

少(羨望、嫉妬、嘲弄、同情、哀れみ……)



205:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 01:14:30.49 ID:cdyW7lXWo

少(がんばって、がんばって)

少(自分の力で、人よりも早く学校を卒業して、
 大学にスキップまでしたのに)

少(向けられたのは)

少(金の力か、とか)

少(天才の娘はうらやましい、とか)

少(それは確かに、無視できない要素として有るだろうけど)

少(ずっと部屋にこもって勉強して、
 見捨てないで欲しいって勉強して、

 振り向いて欲しいって勉強して、
 両親の名前に泥を塗らないように勉強して、

 会社を貶めないように勉強して、
 友人ができないから勉強して、

 勉強して、勉強して、勉強して)



206:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 01:15:05.72 ID:cdyW7lXWo

少(それは逃避だったり、後ろ向きな努力だったりしたけど、
 がんばったもん)

少(そんな、少女って言う名前の、檻)

少(マンガとか、小説とかに触れる間だけ、離れられる檻)

少(そんな娯楽の時間は、限られてたけど)



少(だから、男と、お姉さんと暮らした時間は幸せだったな)

少(誰でもない私でいられるから)

少(そして、好きになれる人が、いたから)

少(男が――)



207:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 01:17:36.94 ID:cdyW7lXWo

少(お姉さんが、ロボットだって知って)

少(男は、すごく驚いてた)

少(普段からは信じられないくらい、大きくやつれた顔で)

少(それくらい、お姉さんの存在が大きくて)

少(人か、ロボットかは、それだけ『違い』がある)



少(0と1の連続)

少(それは点のつながりで、一次元の表現)

少(二次元への恋どころか、一次元への思慕)



208:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 01:22:21.68 ID:cdyW7lXWo

少(あなたが好きよと、言ってもらうのはたやすくて)

少(そういう人形も、売ってるって知ってる)

少(大人が、自分の恋人として、理想の人格を演じてもらうための人形)

少(日本では『人形愛玩者』なんて、蔑称があるって聞いた事も)



少(もし、相手の脳みそにジャックインして)

少(私を好きになれって入力できたら)

少(人はこんなに、恋の文学を書かなかったはず)

少(だって、恋の文学は、努力の文学だから)



209:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 01:24:54.76 ID:cdyW7lXWo

少(だから、人間かどうかは、きっと大きい)

少(向けてきた思いが本物で)

少(過ごしてきた時間が長い分だけ)

少(ソコにはたくさんの、本当であってほしいって願いが、積もるから)


少(そこに、手を差し伸べることはできるよ)

少(私は人間だから、あなたを裏切らないよって)

少(私なら、ずっと隣にいてあげるよ)

少(望むなら、なんだってしてあげる)

少(あなたの為なら、どんな努力も苦にならないと、本当に思うから)



210:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 01:28:00.74 ID:cdyW7lXWo

少(何もお礼ができない私に対して、男は優しくしてくれた)

少(私だって、男のために何かしたいよ)

少(不安なら抱きしめてあげる)

少(私がいるよって、囁いてあげる)


少(そうしたらきっと、喜んでくれるよね)

少(私がいないと生きられないくらい、いっぱい気持ちを傾けてくれるかな)

少(手を離さないでって、私から言おうとした言葉を、聞けたのかな)



少(それでも私は、ここにいる)



211:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 01:31:23.73 ID:cdyW7lXWo

少(そんな言葉をささやく私の顔は)

少(きっと、昔と同じ目をしてる)

少(大っきらいな、媚びるような色の目)

少(うかがって、へつらって)

少(そんな目を、男に見せたくなかったから、私は逃げ出してきた)


少(いまの私は、狗のような眼をしている)

少(これじゃ、男に好きになってもらっても、誰より私が納得できない)

少(それに、私は信じてる)



212:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 01:34:42.12 ID:cdyW7lXWo

少(憧れたんだ)

少(男とお姉さんの、あんな空気に)

少(自然で、気楽で、ちょっと刺激的で、小粋で、無敵)

少(この人が隣にいれば、なんだってできるって)

少(言葉にしなくたって、伝わってくるような絆の強さ)



少(そんな絆を前にして、私はすごく、怖かった)

少(負ける。これはもうだめだーって)

少(お姉さんに、好きになっちゃったって告白した時には、
 頭の中で白旗が上がってたくらいだもん)

少(むりだって。こんなの絶対、かなわないって)



213:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 01:40:07.90 ID:cdyW7lXWo

少(だから、男はきっと立ち上がる)

少(きっと気づいて、立ちあがってくれる)

少「だから!」

 キュッキュ

 バサバサーっ

少「私は、私のできる事をする」

少「諦めるなんて、できないから。
 精一杯がんばって、振り向かせる。
 そのために、できる事をやるんだ」



214:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 01:44:06.54 ID:cdyW7lXWo

少「覚悟しててね。
 私の『戦争』は、お姉さんの運転より荒いから」

 pi po pa pi

少「お世話になっております、少女です。
 本日は急なお電話申し訳ございません――」


 pi po pa pi

少「はろー、お久しぶりっ!
 って、うん、二週間ぶりだからね。
 実はちょっと、お願いがあってね――」

 pi po pa pi

少「ご無沙汰しております、少女です。
 実はあの件について、お受けしたいとおもいまして――」



217:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 11:52:16.30 ID:cdyW7lXWo

------------------------------------------------------------
   同居十一日目・夜 男の部屋

男(寝て、起きて)

男(トイレに行って、食事して)

男(寝て、起きて)

男(食事して、猫にご飯をあげて)

男(寝て、起きて)

男(……寝すぎて、頭が痛くなったのに)

男(まだ、翌日の夜か)



218:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 11:52:55.02 ID:cdyW7lXWo

男(ちょっと起きてるだけでなのに)

男(頭の中を占めるのは、出て行った少女)

男(そして、今までありがとうって言った、ねえさんの事)


男(なんでそんな言葉を口にしたんだ)

男(なんで今まで、ロボットだって黙ってたんだ)

男(疑問ばかりが頭を占めて、明確な答えなんて何一つでない)

男(どこからがウソだったのか、どこからがホントなのか)

男(信じたい気持ちと、信じて傷つきたくない気持ちと、
 信じた結果がコレだという気持ちと――
 せめぎあって、まともな思考すらできないよ)

男「なんで、何も言ってくれなかったんだよ」

男「言葉にしなきゃ、何も、伝わらないのに」



219:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 11:53:38.78 ID:cdyW7lXWo

猫「……」

猫「にゃー」

男「ん? なんだ、お前か」

猫「にゃ」

男「そっか、さっきエサをあげて、庭の窓をちゃんと閉めてなかったのか」

猫「……」とことこ

男「とりあえず、足跡の掃除でもして、気を紛らわすか。
 んで、そのためには、コイツがいたらはじまらないな。

 大人しくシャワーさせてくれるとも思えないし……
 俺にだけつれないコイツを、外に出すところからか」



220:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 11:54:53.40 ID:cdyW7lXWo

------------------------------------------------------------
   同居十一日目・夜 姉の部屋の前

猫「にゃーお」

男「さて、追い詰めたぞ……
 俺の部屋に、リビング、キッチンと。
 落ち込んでたのを忘れるくらい、足跡つけやがって。
 移動しすぎて、お前からは殆ど汚れが落ちてるし」

猫「……」 するん

男「あ、おい、そこはっ」

男「そこは……」

 がちゃ

 きぃー……

男「……少しだけ、期待したのにな」



221:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 11:55:49.48 ID:cdyW7lXWo

男「ここを開けたら、女の子らしい部屋があるんだ。
 明るい色の壁紙だろ。
 温かみがある木製のベッドだろ。

 ベッドには清潔なシーツがかけられていて、
 白くて赤い目のうさぎみたいな人形が、契約を待って座ってたり。

 それから、レースが敷かれた木目調のチェストだろ。
 中には、以前俺をからかったときの下着が入ってたり……」

猫「なーぉ」

男「女の子の部屋なんて行ったこと無いからな。
 どうせモテないどーてーだから、想像力もそこが限界だ」

猫 とことこ

男 そっ

男「でも、温かい空間だと、ねえさんにとっての安らぎの場所だと、
 勝手に俺はそう思い込んでたんだ。

 実際は、研究資料とコンピューターと、
 見たこともないような工具だらけの部屋だ」



222:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 11:56:45.32 ID:cdyW7lXWo

猫「にゃぁ」

男「ほんとうに、ねえさんはロボットだったんだ」なで、なで

猫 ~♪

男「もう殆ど汚れてないな。
 いいぜ、好きにしな」 そっ

猫 とたん、たったった

男「父さんと、母さんのラボか。
 人工知能研究の第一人者って、聞いたか」

 ごそごそ

男「ん。さすが理系。いや、几帳面なだけか?
 研究ノート、ゲットだぜ!」

 ぺら

男「すっげー、しわしわ。しかも、擦り切れてたりするし。
 何度も何度も読まなきゃ、こうはならないよな」

 ぺら



223:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 11:57:30.21 ID:cdyW7lXWo

『子供を作ることが難しいと聞いても、私達は絶望したりはしなかった。
 周囲では恐らく、私達が失意のあまり隠遁したと考えているだろう。

 好都合なので否定しないが、実際は違う。
 私達だからできる、私達の「子作り」をするのだ。

 キャベツ畑を耕すように、ロボットの部品を一から精査し、完成度を上げる。
 コウノトリを探すように、存在しない定理を探してコードを組み立てる。

 『制限知性』でさえ、未だに完全とは言い難い中で、コレは無謀な挑戦だ。
 だが、私達は子供が欲しかった。

 たとえば今日は、桜が咲いた。
 庭の片隅にある、大して大きくない樹だが、それでも立派な花だった。
 花弁は先に向かうほど色が薄く、そのがくに近いほど色が濃い。
 どの部分をさして桜色と云うのか、私達は二時間も議論に費やした。

 愛する人と、他愛もない話に熱中する。
 この幸せを、自分の子供にも味わって欲しいと思うのは、遺伝子に組み込まれた本能だろう。

 生まれてくる子を、ロボットと、人は呼ぶかもしれない。
 だが、「我が子」には、何度だって言い聞かせよう。
 お前は、私達がたっぷり愛を注いだ子供なのだと』



224:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 11:58:31.40 ID:cdyW7lXWo

 ぺら

『また失敗した。
 原因はフレーム問題だとわかっている。

 たとえば、交通事故で怪我をした人間がいた場合だ。
 助けようとしたロボットが駆け寄り、駆け寄る最中に車に当たるかもしれない。
 救助を行う前に周辺を確認するように設定が必要だ。

 だが、何をどれだけ確認するのかが問題だ。
 車の数と距離、速度だけか?
 実は事故の原因が、事前に起きた地震での地割れかもしれない。

 他に道路の状況だけでいいのか?
 実は鉄骨を吊って作業中の工事現場など、上にも注意が必要ではないか?
 足場は平気か、周辺の空気にガスが混じっていたりしないか……

 何をどこまで警戒するか、その判断だけで、殆ど無限の時間を要する。
 そして、その判断を下すための材料を集める為に、また無限の時間を要する。
 いたちごっこの、「外枠探し」がフレーム問題だ。

 『制限知性』は状況設定と取得選択肢の優先順位を、事前に行うことで解決とした。
 だが『人型知性』はそれではダメだ。人間は、それをやっているのだから』



225:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 11:59:44.39 ID:cdyW7lXWo

 ぺら

『新式の擬似量子演算装置を手に入れられた! これもRI社のおかげだ。
 さすがはRIの魔法使いと言ったところか。すばらしい。

 擬似量子演算装置は、ある意味並行世界的に処理を行うことが出来る。
 妻とは第二魔法のゼルレッチに通じないかと、三時間も議論してしまった。

 複数のタスクを、双方に遅延なく同時に行う事ができる。
 それが量子演算装置の特徴だ。
 ゆえに、基本的なものは全て暗号精度を維持するため、軍が特許を独占していたのだ。
 だが、これはあくまで擬似的な物なので、問題ないらしい。たぶん。

 とにかく、コレでフレーム問題は一挙に解決に近づくだろう!

 ああ、早くわが子の顔が見たい。男の子がいいか、女の子がいいか。
 明日は妻と、獲らぬ狸の大激論だ』



226:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:00:33.00 ID:cdyW7lXWo

 ぺら

『女の子だ! 娘よ、父の希望が通ったぞ!!
 しかも、本人の希望が生まれるまでは、黒髪ロングで良いと云われた!
 もっとも、妻には「そんなに黒髪ロングがいいか。ニーソか、赤い悪魔か」といわれた。

 個人的にはクロエとイチャイチャする方なのだが……

 どこかに妻の希望を取り入れて、機嫌をとろう。
 あくまで、本人の希望が生まれるまで、だが』

 ぺら

 ぺら



227:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:01:48.12 ID:cdyW7lXWo

 ぺら

『私達は、世紀のマッドサイエンティストだ。
 もしかしたら人類史に、最悪の人間として名前が残るかもしれない。

 だが、それでも、一つだけ譲れない点がある。
 アシモフのロボット三原則についてだ。

 私達は娘に、ロボット三原則を導入しないと、決断した。
 長い議論だった。だが、その議論によって、私達は心を決めた。

 『他人を傷つけない』『求める人には手を差し伸べよう』『自分の命を大切にしよう』
 ロボット三原則は、規定した本人も言っていたが、人間の規範でもある。』



228:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:02:43.35 ID:cdyW7lXWo

『だが同時に、コレは取捨する選択肢を奪ってはいけない、人の芯でもある。

 なぜ、私達の娘だけ、銃を向けてくる相手であっても、傷つけないように気を配らねばならない?
 やりたいのなら止めないが、それを強制する権利は、親であっても、無いはずだ。

 助けを求める人がいた時、それを救う事も、救わない事も、全ては自分の覚悟と責任の上に決めるべきだ。
 他人に強制されて助けるモノは、人形であって人間ではない。私達の娘は、人間だ。

 命を大切にして欲しいとは思う。
 だが、命より大切な何かを守るために、死を選びたいというのなら――
 私達は、そんな選択を迫る世界を呪いながら、そして自分達を憎みながら、受け入れるべきだ。

 それが、新しい命を、世界に産み落とすという事だ。
 それが人間だ。それが私達だ。それが、私達の娘だ。

 危険はない。ないったらない。親バカだが、ない。
 ありったけの愛を注いで、ありったけの思いを伝えて、そうすれば、子供は愛と思いを知って育つだろう。
 好きに育ってくれて構わない。いい子になれとは云わない。
 ただ、後悔しないように生きてくれと、幸せを感じるために生まれてくれと、私達は伝えよう』

 ぺら



229:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:02:56.75 ID:cdyW7lXWo

 ぺら

男「父さんと、母さんは」

男「ねえさんを、本当に娘として生んだんだ」

 ぺら

『子供の体で活動できるように産んでやれなくて、すまない。
 最初から大人の体なんて、体験できることが減るじゃないか!
 まわりの目も違ってしまう。すまない。力不足で本当にすまない』

 ぺら



230:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:03:18.86 ID:cdyW7lXWo

『とうとう今日は、娘の誕生日だ!
 ゼロ歳の誕生日にでっかいケーキを買ってきた。
 妻は食べきれないと云いながら、幸せそうに笑っていた。
 きっと私も、同じ顔をしているはずだ』

 ぺら

『生まれたばかりの『人型知性』は、赤ん坊と変わらない。
 歩くことも、話すことも出来ない状態だ。学習能力は高いが、スタート地点は変わらない。
 せいぜい違いは、シモの世話が必要ない事と、夜に鳴るのがアラームって事くらいだ。

 最低限の生活知識までは『制限知性』の応用で、組み込むことも出来るが、しなかった。
 這えや立て、立てば歩けの親心だ。この子には、この子として歩いて欲しい』



231:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:03:54.84 ID:cdyW7lXWo

 ぺら

『気のせいだと思ったが、もしかしたら自我の芽生えがあるように感じる。
 具体的には、学術書よりわずかにマンガを読む確立が高い。選択の偏りが見える気がするのだ。
 マンガはいいな!
 私も人生に大切な事はマンガで学んだ! 多めに揃えてやろう。
 ついでに、私の書庫にもいくつか欲しいマンガがある。
 妻とお小遣いの交渉をせねば』



232:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:04:26.38 ID:cdyW7lXWo

 ぺら

『ある程度自我が出来てから名前をつけてやろうと思い、ずっと娘と呼んでいた。
 だが、今日からは別の名前で呼ぶことになる。
 今日からは『姉』だ!
 これが第二の誕生だ。三月三日にちなんで菱餅で祝ったら、娘も食べてくれた。
 これならでっかい菱餅でも良かったと妻に言ったら、怒られた。

 生まれてからそろそろ一年。好みも次第に成熟し、行動も人間的になってきた。
 最近は、短いながら会話もしてくれる。
 妻を『お母さん』と、私を『マンガのヒト』と呼ぶ。父は悲しい』



233:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:06:01.05 ID:cdyW7lXWo

 ぺら

『なんと妻が身ごもった! 弟ができるなんて、娘は幸福だ!
 家族という閉鎖的な小社会において、自分が助ける存在に昇格する事は、重要なファクターとなるだろう。
 (小社会であり、コミュニティとは云わない。所属ではなく、娘にとってはまだ、ここが世界だからだ)
 まだ難しいかもしれないが、姉には弟の名前を考えて欲しいと伝えた。
 名前は魂の刻印だ。生き方も左右する。とても重要だ。
 という出任せな真実を伝えたら、張り切っているように見えた』

 ぺら、ぺらららら

男「時期的にも、俺だよな。
 どんだけ嬉しかったんだよ。
 五ページもコレで埋めるなよ……」



234:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:06:47.09 ID:cdyW7lXWo

 ぺら

『東海岸を中心に、人間主義の活動が活発になってきた。
 問題は小さくない。特に、姉にとっては、間違いなく降りかかってくる火の粉となるだろう。

 妻と相談し、ロボットや人工知性の地位向上を目指し、活動を行う組織を作ろうと決めた。
 まだ本当に初歩的な打診だが、RI社の魔法使いと錬金術師は、共に乗り気だ。これならいける』

 ぺら

『姉はやがて外の世界を知るだろう。
 いや、いま現在も外の世界に向かって、ゆっくりと羽ばたいている最中なのだ。

 私達が愛するこの世界を、姉にも嫌って欲しくはない。
 姉のような『人型知性』と、人間が手を取り合って生きていく社会のために、WAIARTC計画を開始しよう』

 ぺら、ぺらららら



235:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:07:22.06 ID:cdyW7lXWo

男「――そして、俺が生まれて一年後。
 RI社の魔法使い、もとい少女の父親と、父さん、母さんが中心になって、WAIARTCが開かれる。
 そこで、このノートの記入は……」

男「十六年前。
 そうだ、俺はこの部屋にいたんだ。
 この部屋で、ねえさんに遊んでもらってた。
 はっきりとはわからないけど、見覚えがあるのは、その記憶だ」

男「泣いていたよな」

男「悲しそうに」

男「うん。悲しいよな」

男「人間、だもん、な」

 ぺたん。

 ことん。

男「なんか、力が、はいらねえな……ふあぁあー」

 すー、すー 



236:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:08:11.48 ID:cdyW7lXWo

------------------------------------------------------------
   同居十二日日目・早朝 CFOの私用車内

秘「いかがでしたか?」ハンカチさっ

CFO「いかがも何もないよ、まったくもって、とんでもない」 ふきふき

秘「完全戦闘態勢ですか」

CFO「少女くん、宇宙戦争でも始める気じゃないかな」

秘「それはまた、穏やかならぬ恋ですね」



CFO「恋、なのかな?」

秘「恋ですわ。そんなスメルがプンプンします」

CFO「……どんな匂いだい?」

秘「私からするような」

CFO「……けっこう、汗くさいね」



237:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:08:44.22 ID:cdyW7lXWo

秘「……失礼いたしました。
 CFO様の手となり足となり、乙女心も捨て置いて、四十時間の戦闘中でした」

CFO「苦労をかけるねぇ」

秘「いえ。コレも秘書の役目ですから。
 そして、CFO様が自ら御出陣をなさるとは、
 どのような御用件でしょうか」

CFO「うーん、それがさ」

秘「はっ、あのいけ好かない幹部に、
 このブタめと罵りながら、鉛弾をぶち込みにでも行きますか?
 私としては、むしろその役目は私に譲っていただきたく思いますが」

CFO「そんな役目なら、確かに君に譲るって。
 これから行くのは、男くんのところだよ」

秘「……失礼。耳がつまっていたようです。
 まさか、いたいけない乙女を働かせて、府抜けていらっしゃりやがるジャリに、
 移動力も体力も少なくて、せいぜい取りえはハッタリと銭勘定くらいのCFO様を?」



238:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:09:34.27 ID:cdyW7lXWo

CFO「だいぶ疲れてるね。本音しか言ってないよ?
 とりあえず、運転は代わるよ」

秘「あら、失礼しました。……運転は、お願いいたします。少々目がかすみますわ」

 がさごそ。

 ぶるる、ぶろろろろ。
 
秘「……でも、男でしたか、そんなジャリを動かしたいなら、それこそ私に銃を預けて――」

CFO「カラシニコフでコサックさせれば、済むって話じゃないんだと思うね。
 むしろ、少女くんは違うものを見てるよ」

秘「……なにを、ですか? あ、そこ左です」

 ぐい、パパパー

秘「って、車線は左だろこのボケジジイッ、[ピーーー]気か!
 ここは日本だって忘れてんじゃねぇ!」



239:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:11:04.56 ID:cdyW7lXWo

CFO「ああ、すまない。
 日本の免許なんて、五年前の更新以来、
 存在すら忘れてたくらいだからね」

秘「アーメン、ハレルヤ、バターピーナッツにケンタッキーだ……。
 アタシの心臓は弾丸に捧げるって決めてんだ、頼むから事故は勘弁してくれよー」

CFO「大丈夫だよ、だんだん思い出してきたから。
 それで、何を見てるか、って話はね、たぶん、白馬の王子様だよ」

秘「それはまた、ちょっと彼に同情します」



CFO「なに、男の子は、求められれば王子様になる生き物さ」

秘「……ちなみに、CFO様はいかがですか?」

CFO「僕はもう歳だからねぇ。
 若い頃は求めてくれる人もいなかったし。
 せいぜい気取って、錬金術師さ。

 もっとも今回に限っていえば、魔法使いの娘がいるんだ。
 僕なんてただの脇役だよ」



240:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:13:16.58 ID:cdyW7lXWo

------------------------------------------------------------
   同居十日日目・早朝 姉の部屋


男「ん、ん、ぁー。くそ。気がついたら、眠ってたか」

 ぐいー。ぽき、ぱき。

男「床で寝るって、案外と厳しいものなんだ……ふあぁあ」

男「……うん、なんか。初めて、父親って物を感じた気がする。
 姉さんも人が悪いな。見せてくれても良かっただろうに」 のびー

男「まあ、それだけ、大事だったんだろうな。
 それとも、俺が父さんを恋しがるとか思ったのか?」 のびー

男「たしかに、こんな人なら、ちょっと会いたかったな。
 なんかこの人、好きになれそうな気がするよ」 ぐぐー

男「もし、姉さんと結婚したいなんて人が現れて、
 娘さんを下さい、なんて云ったら……
 間違いなく、俺を倒してからにしろって、ノリで言い出すよな」 きゅっきゅ



241:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:14:15.16 ID:cdyW7lXWo

男「……それにしても、両親もオタクかー。

 遺伝、じゃないよな?
 ちがうよな。むしろ、姉さんの教育だ。

 大切な事は、姉さんおすすめのマンガで学びました」 ぐりぐり



 ぱんっ

男「よし、気合も入った!

 とりあえず、あれかな。風呂と飯だ。
 もののふは不潔って印象があるが、下手な貴族より清潔だったんだぜ。

 戦の前には身を清めて、それから情報収集だ」



242:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:15:09.43 ID:cdyW7lXWo

------------------------------------------------------------
   同居十日日目・朝 リビング

男「新聞、テレビ、ネット……
 おかしいな、姉さんの事が一切触れられてない」

男「WAIARTCから期待されてた『人型知性』の再発見だ。
 真偽はともかく、マスコミは面白がって話題を作ると思ったけど……」

 ぴんぽーん

男「はい」 たったった

 がちゃ

CFO「おはよう。こんな時間から身支度が出来ているなんて、若いのに感心だ」

男「おじさん……」



243:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:16:02.69 ID:cdyW7lXWo

CFO「これをね、少女くんから頼まれたのさ。
 男く○に渡して欲しいと。

 父親代わりのはずなのに、ラブレターの郵便屋をやるとは思わなかったよ」

男「いや、ラブレターとか、きっとないですよ。
 それより、その大きさはアルバムかな?」

CFO「読んでみてって、伝言だよ。
 それじゃ、僕はこれで失礼するよ」

男「えっ、そんな。疲れた顔していますし、少し休んでいきませんか?」

CFO「いやいや。御心配には及ばないとも。
 僕へのお願いが無いのはちょっと寂しいから、
 お節介を焼いて来る予定でね。
 暇は無いんだ」



244:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:16:52.04 ID:cdyW7lXWo

男「その、大変、ですか?」

CFO「うんうん。
 詳しくはまだ口に出来ないけど、よければ、テレビを見ていてあげて欲しい。
 少女くんは完全にヤル気だよ。

 やり過ぎないよう、手綱を取るのも、この老骨には厳しいほどでね。
 なんなら、代わらないかい?」

男「……いえ、それなら俺は、俺しかできない事をやります」

CFO「そうか。うん、いい目だ。
 それじゃ、お互い頑張ろう」

男「はい。すみませんが、よろしくお願いいたします」ふかぶか

CFO ひらひら

 ぶろろろろー

男「それにしても、このアルバムは……」



245:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:17:10.03 ID:cdyW7lXWo

------------------------------------------------------------
   同居十日日目・朝 RI社・社長室

 きゅ、きゅ

 ぐいーっ

 ぱたぱた

メイク「社長、すみませんが少し目を閉じてください。
 はい、いいですよー。
 若い人の肌はやっぱり、化粧ののりが良くてたすかるわー」

スタイリスト「すみません、こちらの靴を試着しますので、足を失礼しますね」

 ぬりぬり

 ぱちん、ぱちん

二人「「はい、ばっちりです」」ぐいっ!

少「ありがと、二人とも。ソれじゃ、行ってきまス!」

少(さあ、見てなさい。
 私の大切な人に手を出した事、心の底から後悔させてあげるから――)



246:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:17:59.81 ID:cdyW7lXWo

------------------------------------------------------------
   同居十日日目・朝 RI社・会見室

 ザワザワ

報道A「ったく、朝からいったい何があるのか、まだヒミツですか?」

RI社員「申し訳ございません。もう少しだけ、お待ち下さい。
 私もまだ、上から話を聞いていない状況でして――」

報道B「どんなないようなんだかな。
 見当もつかん。だが内容としてはデカいぞ。

 日経からキングス、ワシントン……
 世界中のテレビメディアも集まってる」

報道A「まさか、いや、確かに集まってるみたいだが……
 あんな、重大な報告、とだけのいたずらみたいな連絡に」

報道B「それだけ、世界はRIに注目してるんだろ」



247:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:18:40.09 ID:cdyW7lXWo

 ザワザワ

 ……ガチャ

 パシャシャシャシャ

少 にこっ

報道A「お、可愛い。何すかね、あの子」ぼそぼそ

報道B「知るか。その発表がこれから、いや、まさか」ぼそぼそ

少 すっ

 ……

少「お集まりいただき、皆様誠にありがとうございまス」

少「これほどの方に、注目していただける企業となれた事、
 両親は墓前で喜んでいるかと思いまス」

少「申遅れましたが、私の名前は少女――RIの魔法使いの娘でス」



248:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:20:23.06 ID:cdyW7lXWo

 ざわざわ、ざわざわ

報道B「やっぱりか!」

少「本日皆様にお集まりいただいたのは、いくつか理由がございまス。

 最初の一つは、長らく不在だったCEO(最高経営責任者)に、
 今年で十八となる若輩の身でスが、
 私が就任サセていただいくことの、御報告でス」

報道A「おいおい、世界のトップ企業を率いる、十八歳の金髪美少女か――
 こりゃ、今日の夕刊の見出しは全部コレになりかねないぞ
 いや、明日の朝刊だって、一面は確実にこの話だ!」



249:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:20:52.00 ID:cdyW7lXWo

------------------------------------------------------------
   同居十日日目・朝 リビング


少<近年、業績の伸びシろに翳りが見えておりましたが、
 これも全て、旧態然とシた経営に甘んじていた事への弊害と、判断シております>

男「おいおい、まさか」

少<今後は私自身を広告塔とシ、積極的に経営改革を進める事で、
 組織の代謝を促進シ、新シい風を吹き込みたいと思っています>

少『私は、RIなんか要らない!
 お金も、株も、地位も要らない!!
 ロボットなんか大嫌い!!』

男「こんな、手段を選ばない方法で」



250:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:22:03.39 ID:cdyW7lXWo

少<ソシてもう一つ、ここに御報告がありまス。
 私は今、一人の友達を助けたいと思い、ここに立っていまス。
 姉という、かつて人類の夢とも呼ばれた、『人型知性』のロボットです>

男「……く」

少<彼女は現在、司法省のとある研究会に、不当に拘束されていまス。
 御存知かと思われますが、
 該当研究会はロボット法の第三部に、
 幾度か否定的な意見を司法省に提出しており、
 人間主義への偏向がみられまス>

男「俺が、うだうだやってる間に」

 だだっ

 がさがさ



251:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:22:58.00 ID:cdyW7lXWo

少<当社は『制限知性』という、現在普及している、
 『ロボットらしいロボット』の生産を行っていまス。

 シかシ、将来的には、個人的な展望となりまスが、
 『人類の友人』と出会うための場になればと、考えていまス>

男「これは、負けちゃぁ、いられないよな!」

  ばっ

男(計算しろ、計算しろ、計算しろ。
 少女が見せてくれた、空前絶後の援護射撃だ。

 核爆弾なみの威力を、生かすも[ピーーー]も俺次第だろ。

 勝負はあと数時間、この放送が、終わるまでだ)


男(助けよう。俺の、大切な人を)



252:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:24:14.18 ID:cdyW7lXWo

------------------------------------------------------------
   同居十日日目・朝 CFO私用車内

男「助かりました、まさか運転手付きで車を残してくれるなんて……」

秘「余計な礼なんざ、アタシもジジイもいらないよ。

 それより、あんたにプレゼントだ。そこの紙袋の中身を見てみな。
 『戦うつもりがあるのなら、必ず必要になるだろう』って」

  がさがさ

男「――さすがだ、読まれてるか。確かにコレで戦えます」



253:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:25:07.77 ID:cdyW7lXWo

 pi pi

男(さすがに、姉さんの端末は電源入ってないか)

男(問題点を洗い出せ――)

男(まず、姉の居場所だ。ただ、この奇襲が成功したことで、ワレたも同然だな)

男(次に、姉が嫌疑を掛けられている、ロボット法第三部について――)

男(CFOさんの差し入れは、条文のリストと、嫌疑の予測、
 それから交渉に使えそうな判断材料か)

男(大きく問題となるのは、一点。
 『第二十四条、人間の幼児を育てるにあたり、
 独占的にその親権を保持し、主張することを禁じる』
 っていう一文――)

男(恐らくこれはむしろ現象的な側面で、本体はその二項目か。
 『2 また、その精神に非人間的と解される思想を持たせることを禁じる』と。

 そのっていうのは、上にある人間の幼児、を指す言葉かな。
 要するに、洗脳の恐れはぬぐいきれないから、
 子育ては人に任せろ、ってことか)



254:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:26:27.28 ID:cdyW7lXWo

男(ほかの第三部の内容に、
 自由や幸福追求権、思想の自由、言論の自由と、
 日本国憲法が定める、基本的な人権の保護と同じ内容が並ぶだけに、
 二十四条はずいぶんと異質だな)

秘「おい、とりあえず市街地に向かってるが、
 そろそろどこに向かうか、決めてくれ」

男「……わかりました」

 pi pi pi pi

男「もしもし、役人さんですか? 先日はどうも、男です」

男「はい。姉がどこにいるかを、教えてください」

男「先方は誘拐まがいの言いがかりをつけられて、迷惑している、ですか」

男「申し訳ないですが、それについては俺も寝耳に水でして。
 俺を責められても困ります」



255:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:27:11.39 ID:cdyW7lXWo

男「はあ、当該研究会の所在は、原則非公開と」

男(確かに、ネットで調べたときも、その拠点の所在地すら不明だった。
 司法省を私書箱みたいに、こちら宛で、ときていたからな)

男(これは、おじさんの切り札に任せて押し切るか)

男「ところで、役人さん――」

男「ちょっと話は変わりますがね、
 日本銀行券って、どれくらいあるか御存知ですか?」

男(CFOのおじさんは、本当に敵に回したくないな)

男「有価値紙幣は、おおよそ六兆円と見こまれるとか」



256:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:29:06.31 ID:cdyW7lXWo

男「話は変わりますが、
 Robot Inc.の時価評価額は御存知ですか? 御存知ないと」

男「五百億米ドルになるんですがね。
 ええ、日本円でおよそ、四兆五千万円です」

男「RI社は元々、現CFOと、先代CEOが二人で立ち上げた会社です。
 その二人だけで、株式の47%を保持していたわけです。
 もちろん、先代CEOの保持していた株は、現CEOが持っています」

男「その二人が、レバレッジを行い日本円を買いに動いたら、どうでしょうかね。
 市場に出回る量とほぼ同等の銀行券が、買われる、わけですよ」

男「そんな事が、出来るわけが無いと。
 なぜですか?」

CFOのメモ(これは圧迫交渉だ。強気に押して、判断させるな。
 しみこませて圧壊させるのが目的だ。
 嘘は言わず、多少の誇張で真実をにじませるといい。
 本当はできないし、するつもりがなくたって、やりかねないと思わせたら勝ちなんだ)



257:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:30:44.38 ID:cdyW7lXWo

男「いいですか? 俺の大切な家族を、不当に拘束されているんです。
 そんな事を許す国を相手に、何で気遣う必要がありますか」

男「……どうやら、入れ知恵が入ったようですね。"印刷物"には、余分があると」

CFOのメモ(紙幣の価値は、市場に流す時になって『付与』される。
 日本の印刷物は、市場に流せばおおよそ六十兆円までまかなえる。

 だが、緊急避難的にそれを吐き出せば、市場には円があふれかえる)



男「いいんですか? そんな事をはじめたら、市場は円であふれますよ?
 どこかの国みたいに、ダンボール箱一つ分の札束抱えて、
 やっとリンゴが買える、なんて話しになっても」

男「突然市場にだされた大量の紙幣は、物価を極端に引き上げます。
 それが呼び水となって、現金需要が増し、
 信用証券が換金され始めれば、
 とたんに貨幣経済が崩壊しますよ」

CFOのメモ(信用取引で手形などを使っている場合、その瞬間はお金が見た目上増えることになる。
 これを信用創造と云って、貨幣経済をまわす上で、重要なファクターとなっている。
 この弱点は、換金されることだ。
 信用を価値に直し始めたとき、
 増えているように見えた金銭は泡のように弾けて、経済を吹き飛ばす)



258:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:31:21.00 ID:cdyW7lXWo

男「最悪のシナリオなんて話してもしかたありません。

 とにかく、俺達が偶然、家族の絆のあまりの強さに引かれあって、
 出会ってしまえばいいんですよ。

 誰も困りません。ちがいますか?」



男「……はい。はい。なるほど、そこに姉さんが。
 いえ、なんでもありません。

 独り言ですので、お気になさらず。
 僕はあなたと、ほんの少し友好を確かめる雑談をしていただけ、ですよね」

男「はい、それでは失礼します」

 pi



259:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:34:37.47 ID:cdyW7lXWo

秘「……なぁ」

男「ん?」

秘「CFOも、まさかそのカードを本当に切るとは、思ってなかったぜ」

男「え」

秘「『まさか、こんなとんでもない恫喝なんて、ねえ。
 まあ、切れるカードは全部並べる主義だから、置いておくけど……』ってな」

男「い、いや、それは」

秘「ひひ、いや、悪いなんて言ってねぇよ。
 アタシらは仲良しこよしでマイムマイムなんざやってネェ。

 これは弾の飛ばない戦場だろ?
 そんなら、やるこたぁ変わらねえ。

 出来ることを、出来るだけするのさ」



260:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:35:24.28 ID:cdyW7lXWo

男「……」

秘「お前の事、ちっと見直したって褒めてんだよ」

男「……どうも」

秘「へへ、てめぇはとんでもねぇ悪党になれるぜ。
 いつかアタシと組んで、一発どうだ」

男「それは、遠慮します」

秘「固いこたぁ、言うなよ。
 そんなンはよ、股間のソレと、シュールストレミングの缶だけで十分だ。

 なんなら、少女や姉の奪い合いに参加してもいいってくらい、
 アタシはいまアンタを気に入りそうになってるんだ」

男「……運転中に後ろを向く人とは交際するなって、親の遺言でして」

秘「あー、そいつは残念だ。
 そんならアタシは、大人しく運転手に専念するさ」



261:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:36:19.93 ID:cdyW7lXWo

男(そうだ。いくつも用意された、おじさんの切り札。
 その中でも、一番獰猛なのを選んだのは、俺だ。
 使えない札でも、一番えげつない奴を、手に取って口にした。
 これが最後のいちじくの葉、だ)


男(平和に暮らしていた家に、土足で踏み込んで。
 人の姉を連れ去っておいて、やらかしてくれたんだ。
 手段は、選ばない。
 少女が戦場を維持しているうちに、決着をつけないと)

男「秘書さん、行き先はきこえてましたね?
 飛ばしてください」

秘「オーケーオーケー。
 ノってるじゃねぇかカゥボーイ。

 アタシの運転は、ちっとばっかし荒っぽいって評判だ。
 舌を噛んでも、恨むんじゃねぇぞ!」

 ぎゅおおおおおお



262:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:39:12.13 ID:cdyW7lXWo

------------------------------------------------------------
   同居十二日日目・朝 監禁室

姉(足元が、ふらつきますね)

姉(あれから既に、40時間……)

査問員1「聞いているのか、おい!」

2「ロボットの癖に、疲れたフリなんかしやがって!」

3「我々も貴重な時間を割いて、君と向き合ってるんだ。
 そろそろ、そんなウソの反発はやめないかね」



263:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:39:20.67 ID:cdyW7lXWo

姉(向き合ってるなんて、笑ってしまいますね)

姉(薄暗い部屋で、強烈な光をずっとこちらの顔に当てて、)

姉(強い声や、暴力を想起させる音を続け)

姉(ずっと気をつけの姿勢を強要させて、眠らせない)

姉(言葉尻を捕まえて、捻じ曲げて、嘲弄して)

姉(耳にしただけで、穢されたような気になる言葉を並べたり)

姉(全て、ストレスを与える為の手段ですね)



264:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:39:31.72 ID:cdyW7lXWo

姉(周りは既に、何度交代したのか)

姉(与えられたのは、水が少しだけ)

4「コイツ、ボーッとしやがって!」 ぺっ

姉(唾を吐きかけられて、これは、本当に不快……)

姉(お父さんとお母さんが作ってくれた体なのに)

姉(できる限り人間に見えるように。精巧に、丁寧に)

姉(そして、感覚を遮断できないのも、人間と同じだから、匂いとぬめりが)

姉「ふふ……」

1「コイツ、何を笑ってやがる……」

2「いい加減狂ったか?」



265:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:39:48.53 ID:cdyW7lXWo

姉(損傷をつけない、あらゆる方法で、私を追い込んで)

3「私達も、君が頑なになるから、
 こうしてつい荒れてしまうんだ。
 きみが素直になれば、直ぐに開放してあげるとも」

4「さっさとコレに署名しろってのが、わかんねえのかよ」

姉(男く○に、洗脳を施したという内容の、宣誓証明書)

姉(他の事は、許せますよ)

姉(生きたまま焼却炉コースも、
 ロボット法を批准していない、
 フィリピンあたりで奴隷労働でも)

姉(男く○に迷惑を掛けないのなら、何だって)

姉(でもそれは、署名した瞬間に、
 男くんが普通じゃないって、
 人間扱いされない人に、なるから)



266:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:40:55.37 ID:cdyW7lXWo

姉「署名は、しません」

1「あぁん?! もっぺん言ってみろガキャ、
 手出しがねえからって、舐めてんじゃネェゾ!!」

姉「署名は、しません」

3「しかしねぇ、どうせ、証明されるんだよ。
 ほら、このボイスレコーダーの中身は、
 何度も言ったけど男くんの同級生のものだ」

  かちっ

同級生『え、あいつ? 男だよな?
 うんうん、あいつの中身、ロボットだって!
 きゃはは、いっつもぶすっとして、ほんと、何も感じねえみてえなさ。
 ほんと、アイツ見てっと、イライラしてよ――』 かちっ

3「こうした発言は、明確に君がロボット法に違反したと、
 示しているだろう?」

4「他にも何人分かあるんだ! いい加減にしろよ」



267:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:43:07.43 ID:cdyW7lXWo

姉(焦れてきていますね)

姉(裁判所命令で、こんな査問会を開いているんです)

姉(時間と手段は限定される)

姉(問題は、耐えれば終わると分かっていても、
 それがどれだけかが、まるで読めない事ですね)

姉(さすがに、厳しい。
 こんな時ばかりは、人間と同じような精神が、うとましく――)

姉(いえ、お父さんとお母さんにもらった心だから、大切なもの)

3「改めて、事実の確認をしようか。
 君は十六年前に、男くんの御両親もとい、君の所有者の死亡の連絡を受けたね?」

姉「はい」

3「その際、なぜ速やかに、
 その死亡についての届出をしなかったのかな?」

姉「当時、そうした社会規範については知りえませんでした」

4「ロボットなんだ、そうした手続きくらい、
 各役所の情報を脳みそに焼き付けろよ。

 擬似感情回路なんて、むだなものに容量くってるから、そんなことになるんだ。
 だから男は、そんな非社会的な人間になったんだよ!」



268:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:43:39.53 ID:cdyW7lXWo

姉「補足を求めます。感情回路に陽電子脳の容量を使うことと、
 男くんの非社会性に、どのような関係があるのか、明示してください」

1「そんな風に杓子定規なものの捕らえ方をする奴に育てられりゃ、
 根性も曲がるだろうよ」

2「そんなの常識で分かれってんだ。
 あ、常識がないのは、男って奴を通じて見えるか。
 わざわざ言うことでもなかったよな」

姉(抑えて、抑えて)

姉(下手な発言は、相手に切り張りされて、便利に使われるから)

姉(男くんを馬鹿にされて悔しくても、我慢……)

1「はっ、事実だから何も言えないんだろ!
 薄気味悪いんだよ、人形!」

  がたがたがた



269:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:44:50.72 ID:cdyW7lXWo

5「た、大変です!」

1「査問中だ、静かにしろ!」

3「……なにか用かな?」

5「RIで、いえ、そのココでは」

 がたがた、ぱたん

姉(さっきまで、丁寧な態度で、譲歩を求めるように言ってきてた人が出て)

姉(残ってるのは、若くて下品な人たち)

姉(でも、もう大丈夫な気がする。
 RIって事は、CFOさんが動いただろうから)

姉(あーあ、いつもなら、そろそろお昼ご飯を準備する頃なのに。
 男くんは、ちゃんと食べてますかね?
 栄養が偏ってたり、しないですかね?
 美味しいご飯をたべて、笑顔になってるといいですが)

姉(男くん)

姉(男くん……会いたいな)

姉(最後に、もう一度)



270:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:45:24.18 ID:cdyW7lXWo

------------------------------------------------------------
   同居十二日日目・朝 CFO私用車内

男「ここですね」

少<このように、『人型知性』とは――>

男(引き伸ばしも、長くできて後一時間もないか。
 思ったより遠くて、時間を食った)


男「それじゃ、姉を救出してきます」がちゃ

秘「なに一人で行こうとしてんだよ。
 アタシも付いてくに決まってんだろ」がちゃ

男「……ずいぶん、付き合ってくれますね」

秘「ふふん、ま、あとでCFOにそれなりにタカるからな」



271:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:46:47.28 ID:cdyW7lXWo

男「まあ、都合がいいんで、今は感謝します」
秘「ロボットみたいに、合理的だな」

男「人間だから、使えるものは何でも使えです」

秘「アタシの恋心も?」
男「……無いとわかるので、ノーコメント」

秘「そーかいそーかい。つれないな、へへ」

 とことこ

男「専守防衛で。怪我をさせるのは禁止」

秘「了解だ。けどよ、そういう方針なら、不法侵入もしないんだろ」

男「もちろんですが、場合によりけりかな。
 取り出したのは、はい、バールのようなもの」

秘「……さっき、トランクいじってのは、それ探してたのか」

男「正解。そしてコレを思いっきりノブに叩きつけ、て!」

 ゴギン



272:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:47:22.59 ID:cdyW7lXWo

6「な、なんだ! なにが有った!」

男「こっそり、ノブの穴から、車の発炎筒を投げ入れます」ぽいっ

 しゅぱぁああああ


7「う、うわああ、火事だ! 煙だぞ!!」

1「お前ら騒ぐな、うわああ!」

2「お、おい、にげるぞ! これじゃまずい!」

男「さて、それでは偶然通りかかった僕達は、
 バールのようなものでドアノブを壊し、救助に入りましょう」

秘「……お前は、特殊部隊かよ」

男「マンガが好きな、オタクの一人だって。
 ただちょっと、手段を選べない状況と、目的があるっていうね」にやっ



273:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:47:56.95 ID:cdyW7lXWo

秘「あーくそ、ホントにお前に恋してきたぞ!」

男「冗談は置いて、突入。3.2.1……GO」

 ばんっ!

男「大丈夫か! 救助に来たぞ!!」

秘「出口はコッチだ、頭を低くして、口元覆ってこっちに来いー」



274:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:48:56.87 ID:cdyW7lXWo

------------------------------------------------------------
   同居十二日日目・朝 CFO私用車内

男「そんなわけで、しっかりばっちり、救助完了だ」

姉「男、くん」
男「……ずいぶん、ひどいな」

姉「男くん」
男「とりあえず、顔だけ拭け。
 フェイスシート、女性用じゃないけど、俺のしかなくてさ。悪い」 ごしごし

姉「ん、んむ、……ぷはっ」
男「よし、これでちょっとは、大丈夫だな」

姉「……可愛くなりました?」

男「スベスベマンジュウガ二と、いい勝負だ」

姉「男くんだぁ!」 だきっ

秘(え、え、今ので抱きつくシーンだったのか?!)



275:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:54:05.01 ID:cdyW7lXWo

男「ずいぶん、疲れた顔だ」
姉「そんな事は、ないですよ」

男「ウソを付くとき、ちょっと右上みるよな」
姉「え、うそっ?!
  ……って、引っ掛けましたね?」

男「引っかる時点で、疲れてるな。
 とりあえず移動しよう。時間がない」

姉「移動って、どこにですか?」

男「RIだ。そこで、少女が前線を用意してくれてる」



276:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 12:54:22.36 ID:cdyW7lXWo

秘「おう、どうやら、あっちの大将もお出ましだぜ」端末ぽいっ



少<どうもお世話になっております、幹部さん>

幹<これは、いったいどのようなご冗談ですかな>

少<冗談ではありませんよ。これは、正式な私の就任表明です>



男「……急ごう。少女も疲れが見えてきた」

秘「了解だ!」

 ぶろろろろろ



286:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/14(月) 23:59:24.92 ID:cdyW7lXWo

------------------------------------------------------------
   同居十二日日目・昼 CFO私用車内


姉「……その、男くん」

男「ん?」

姉「……さい」ぼそぼそ

男「悪い、聞こえなかった」

姉「もう、私を、見捨ててください」

秘「おいおい、てめぇ、言うに事欠いて何事だそりゃぁ!
 いいか、男だけじゃねえ、アタシも少女もジジイも――」

男 すっ



287:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:00:06.93 ID:5sxU/ZsZo

男「どうしてかな?」

姉「……男くんは、もう十八歳です。
 御両親の遺してくれたものもあります。

 もう、自分の人生を、歩んでもいいと思うんです」

男「……」

姉「助けに来てくれたのは、嬉しかったです。
 でも、ソコが前線だっていうのなら、それはダメです。

 幹部さんは、査問会にも顔を出していました。
 それは、私がした事を知っているって、事なんです」

男「姉が、何をしたって云うんだよ」

姉「何度も彼らに言われました。
 『お前は男を洗脳教育した』と云うことを。
 それは、ある側面ではきっと間違ってないんです」



288:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:00:29.19 ID:5sxU/ZsZo

男「……」

姉「私は怖かったんです。
 男くんは、私にとって唯一の家族となりました。

 しかし、十三年前、男くんが五歳のときに、
 ロボット法が日本でも批准されてしまったんです。

 ロボットには、養育権を認めないと、する」


男「それで」

姉「私は、その法の意図まで分かった上で、申告しませんでした。
 男くんと離れたくない。
 男く○にとっても、私は唯一の家族のはずだから、って」

男「うん」



289:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:01:05.06 ID:5sxU/ZsZo

姉「ただ、それは、普通の人にとっては違う見方があります。
 人間じゃない精神に、教育された人。

 もののけ姫をみんなが気味悪がるように、
 男くんも、人とは違うものとして見られることになるんです。

 それは、私も、男くんの御両親も、望みません」


男「……とりあえず、さ」
姉「はい?」

男「その、男くんの御両親っての、やめよう。
 これ、見つけた」 すっ

姉「これは……」


男「姉に、お父さんとお母さんって呼ばれないと、二人とも泣くぜ?
 ここに、父と呼ばれなくて悲しいって、書いてある」

姉「でも、私は」



290:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:01:37.88 ID:5sxU/ZsZo

男「姉は、人間だよ。
 血はつながらないかもしれないけど、魂がつながってる。

 もっと深くの、大切な場所でつながってるんだ。

 それが、一番重要なことだろ。
 それにな」

姉「……」

男「俺は、姉に育てられたことを感謝してる。
 いまどき、料理も火事もメイド・ロイドに任せきりの家庭ばかりだ。
 いけないとは云わないけどさ、違うんだよ。

 料理って、相手の血と肉と骨と、そういった相手になる物を作ることだ。
 それだけじゃない、美味しい料理を食べると、人は幸せになれるんだ。
 姉は、俺に幸せなご飯を作り続けてくれただろ。

 掃除も洗濯もしてくれた。
 運動会があれば見に来てくれたし、授業参観も欠かさなかった」

姉「そんなの」

男「そんなのじゃないよ。
 それが、俺にとっては大切だった。

 些細に見えてとっても大変な事だから、
 俺はそれが出来る姉に育てられた事を、誇ってるんだ」



291:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:02:12.88 ID:5sxU/ZsZo

姉「……それでも。
 それでも、やっぱりダメですよ。

 もう一緒にには居られないんです。
 だから、いっそココで捨てて欲しいんです……」

男「なんで、一緒に居られないんだよ。
 まさか、電子脳の容量オーバーとか、
 体が痛んでるとかか?!」 ずいっ

姉「ち、近いです、近いですよっ!
 違います、それは大丈夫ですよ。

 陽電子脳も確かに限界はありますが、
 私も人間と同じように『夢』の中で記憶の整理をして、
 いらない記憶を消したりとか、ちゃんとやってるので。

 体についても、CFOさんの伝手で、RI社で検査うけてますし」

男「そうか、良かった……
 それなら、何が問題なんだよ」



姉「それは、そのぅ」 もじ、もじ



292:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:02:26.57 ID:5sxU/ZsZo

男「そんなに言いにくいことなのか?」

姉「い、言いにくいですよ、それは。
 だって、その、もう……から」ぼそぼそ

男「そんな小さな声じゃ、聞こえないって。
 はっきり云ってくれよ」

姉「はっきり、はっきり」 すー、はー

男 どきどき、汗だらだら

姉「男くん」

男「……おう」

姉「私は、男くんを、恐らくですが……
 異性として、好きです」(////

男「ぇ、あ……ぅ」どきん



293:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:02:48.97 ID:5sxU/ZsZo

男(上目遣いで、じっと、涙がゆれて、
 赤い顔が、恥ずかしげな様子が、
 それだけで、まとまらない、考えが)

姉「ねえさんと呼ばれると、寂しくなるくらい。
 たった二日離れていただけで、どうしようもなく実感しました。

 私は、男くんを、異性として、好きになってます。
 触りたい。
 ぎゅってしたい。
 キスもしたいよ。
 恋人に、なりたい。
 特別な人にしてほしい。
 姉よりも、もっと近い場所にいたい。
 私だけを、見つめて欲しい。

 それに気付いてしまった時から、私はねえさんなんか、失格です」

男「……ぁ、ぁ」



294:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:03:14.68 ID:5sxU/ZsZo

姉「だから、もう、男くんとはいられないです。
 ねえさんとして、最後に出来るのは、
 男く○に、人間としての立場を残すことなんです」

男「そんな」

姉「決めたんです、私は――
 私だって、守りたいんです、大切な人を」

男「そんなのは!」

姉 びくっ

男「俺の、方だ」

姉「……ぇ」

男「ねえさんって、呼べなくなったのがいつからか、
 もう思い出せなくて。

 いや、その時にはまだ、自分の気持ちになんか、
 気付いても居なかったけど……
 ねえさんって言葉が、つらくて」



295:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:04:08.86 ID:5sxU/ZsZo

姉「男、くん」

男「俺は、ヘタレだ。
 どーてーだ。

 モテたことなんてない。
 父さんたちに背中を押されるまで、立ち上がれなかった。

 こんな事態になって、少女に尻を叩かれるまで、動けなかった。
 今だって、姉さんに告白されて、自分の気持ちに気がついた。

 どうしようもないヤツだ。
 でも、一つだけ、確かなことがある。

 胸を張って、大きな声で、はっきり言えることがある」



男「俺は、姉さんが、好きだ」 にこっ



296:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:04:41.85 ID:5sxU/ZsZo

男「気付くまで時間がかかったよ。

 一度は手を離して、届かなくなるかもしれないと思ったら、
 すごくすごく、怖くなった。


 でも、もう離さない。

 絶対に離さない!

 頼まれたって離さない!!


 これからも、一緒に居よう。
 今度は、今までよりも近くに。

 今までよりも、特別な形で」



297:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:05:09.97 ID:5sxU/ZsZo

姉 ぽろ、ぽろぽろ

男「遅くなって、ごめんな」 ぽん、なでなで

姉「男くん、男くん、男くん」

男「ここに居るよ」

姉「……ただいま、男くん」 にぱっ

男「おかえり、姉さん」 にこっ



298:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:06:55.64 ID:5sxU/ZsZo

------------------------------------------------------------
   同居十二日日目・昼 Robot inc.


男「なんか、視線が痛い……」

秘「まぁ、なぁ」

男「……何をしたんだ?」

秘「そりゃー、この女海賊様をアシに使ったんだ、
 アシ代はもらうわな」

姉「えっと、アレみてください、壁のモニタ!」

男「会見場の映像……って、流れてるの、さっきの俺の言葉かっ!」

秘 にひー。ひらひら



299:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:08:02.64 ID:5sxU/ZsZo

男「さっきの端末! まさか、それでずっと音声送ってたのか!」

秘「いやー、運転しながら砂をバリバリ吐いたかいがあった!
 そのスンゲー嫌そうな顔見れただけで、アタシは満足だ!!」

男「こ、この、裏切りもの! うわー、うわー、少女が笑顔で青筋浮かせてる!!」



秘「ほれ、会見場はそのエレベーターで上がって直ぐだ。

 駆け込んで、欲しいものは全部奪い取れ。

 遠慮はいらねぇ、お前のための戦場だ」


男「……わかった。行ってくる」

秘「おう」

姉「あの、いろいろと」

秘「ヤボは云うなよ」ひらひらー

姉 へこっ

男・姉 たったった



300:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:09:32.49 ID:5sxU/ZsZo

秘「さぁて、お立会い。
 アタシは由緒正しい海賊の家系でね、ホントの役目は荒事なのさ。

 荒くれ相手に、叩いて伸して、率いてきたんだ。

 ――だから、隠したってわかるぜぇ、
 腐った臓物の匂いがぷんぷんしやがる」


組「……仕方ない、一足先にやっちまえ」

若「へいっ」


秘(この瞬間のために、アタシは生きてる――♪)

秘「Let's Dance! ROCK'n ROLL♪」



301:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:10:10.95 ID:5sxU/ZsZo

------------------------------------------------------------
   同居十二日日目・昼 Robot inc.会見場

 ぱしゃしゃしゃ……

少「さあ、マスコミのみなさん。
 彼が先ほどの男、そして研究会が問題とする『人型知性』の姉です」

男 へこ
姉 ぺこ。にこっ

報道A「うおぉぉ、大和撫子ですよ、黒髪ロングは正義ですよね!」ぱしゃぱしゃ

報道B「さぁて、だが、まだ形勢はわからんぞ。
 ロボット法が焦点なのはわかったが、
 まだ問題は解決してないからな」

男「助かった。後は、任せてくれ」ぼそぼそ

少「ん。アタシ、がんばった?」ぼそぼそ

男「がんばった。凄く助かった」 ぽん

少「えへ♪」



302:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:10:36.46 ID:5sxU/ZsZo

幹「よく、このような場所に恥ずかしげもなく顔を出せたな……」

男「恥じるような事はしてないもんでね」

幹「人であれば、恥ずかしがりそうなものだがな」

男「確かに、告白を聞かれたのは気恥ずかしいけどさ。
 ココに入って、大丈夫になった。

 大切なものは、姉だけじゃなくて、
 みんなにも伝わったみたいだって」



303:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:11:02.68 ID:5sxU/ZsZo

報道A うんうん

報道B にいっ

報道C ぐっ

報道D ウィンク♪


幹「はっ、だから何だ!
 使役されるべきロボットと人の馴れ合いの、何がいい。

 確かに大衆は喜ぶだろう。

 だが、そのような軽挙妄動が、
 人の未来を滅ぼすと、なぜ分からん!」


男「……悲しいな」

幹「なんだと?」



304:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:11:49.31 ID:5sxU/ZsZo

男「あんた、悲しいよ。
 分かり合うことができないと思うなんて、寂しいじゃん」

幹「私に、哀れみの目を、向けるなぁっ!

 それに、どんなに貴様らが大衆を煽ろうと、事実は変わらん!

 二十四条の法規に違反している以上、その姉は廃棄処分が相応だ!!」



男「確かに、違法行為は、いけないよな」

幹「諦めたか!
 ここは法治国家だ。
 犯罪に手を染めるモノは、裁かれて当然なのだ!!」

男「なら、その法ってのを、変えちまおうか」

幹「……なにを」

男「みなさん、こちらへおねがいします」 がちゃ



305:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:12:20.85 ID:5sxU/ZsZo

 ぞろぞろ

評論家「いやー、これはもうね」

研究員「We have to do it...(私達がやらないと)」

法律家「ええ、やるシかありまセんな」

国連代表「ま、悪い話ジャあリまセんからネ」

技術者「Mir wird der Hohepunkt gegeben.(見せ場はもらいますよ)」

SF作家「いやー、いい気分だね、こりゃ」



306:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:14:57.89 ID:5sxU/ZsZo

幹「評論家、研究員、法律家、国連代表に技術者……
 ここにWRTCを集めただとぉおお!」

男「父さんが残してくれた連絡先と」

少「私の学校の卒業生も居るシ、
 CFOと交友が続いていた人もいるから。

 二日も有って、私が自分の就任くらいシか、
 策を打たないと思ってたのなら、
 ずいぶん、なめられていたみたいね」 ふふん


男「日本は、WRTCの提案を批准しているだけだ。
 その元の提案を変更すれば、
 日本の法扱いの内容も、変わる」


SF作家「元々な、あの条文はずいぶん批判されてたんだ。
 ただ、人間主義の人たちとの折り合いもあって、
 俺達の誠意として、ああいう文章を付け加えたのさ」

国連代表「シかシ、こうシて今、我々の『友人』に出会い、
 誠意のあり方ト、ソの配慮の無意味サを、
 私達ハ、見セてもらいまシた」

評論家「それなら、友人としてこう答えるべきでしょう」


WRTC「「「ココに、WARTCは二十四条の永久的な廃止を、宣言します」」」



307:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:15:09.02 ID:5sxU/ZsZo

姉「そんな」

男「おれが、手を握っててやる」 ぎゅっ。

姉 こくん

姉「みな、さん」

姉「ありがとうございます」

姉「そして」

姉「よろしくお願いします」



308:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:16:01.79 ID:5sxU/ZsZo

  ガチャ

CFO「さて、どうやら、シメの時間だね」

幹「くっ」

CFO「ここは法治国家だ、と。
 そう云うのなら、君もその一員として服したまえ。

 暴力団対策法の第十条に違反する行為があったと、
 該当暴力団から申告があった。

 ま、その暴力団も、組長が傷害示唆で逮捕、
 資金の提供先を根こそぎ引っ張られたら、
 もう長くはないだろうけどね。

 それでも違法の事実は変わらない」


幹「私は、社と、世界の未来を」

CFO「ならば、まずはきちんとソレに、
 向き合うべきだったね。

 さ、警察の方がお待ちだ」



309:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:16:33.07 ID:5sxU/ZsZo

幹「私は、間違ってなどいない……。

 ロボットは、やがて人類を滅ぼすだろう。
 人間を飼育し始めるだろう。

 その時になって後悔しても遅いのだ」



男「そんな事には、ならないさ」

姉「私達は、会話できます」

男「手をつなげる」

姉「寄り添える」

男「それなら」

姉「隣で歩く事は、できますよ」にぱっ



310:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:17:43.96 ID:5sxU/ZsZo

------------------------------------------------------------
  Day After Day.

男「あれから一年か」

姉「あっと云う間、って言うには、
 スケジュールが大混雑でしたねー」

男「まだ『人型知性』への恐怖ってのは、あるからな」

姉「世界を何週したのか、もう分かりません……」



311:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:18:01.42 ID:5sxU/ZsZo

男「みんなも忙しいらしいな」

姉「少女ちゃんは、もうすっかりRIの看板ですね」

男「こないだ、水着写真集とかだしてたぞ」

姉「……買ったんですか?」

男「まあな。あ、だけど、決してその、やましい心じゃなくて、
 がんばってるなって、そういう意味で、だ」

姉「むぅ」

男「姉さんだって、少女のことが新聞に乗ると、
 丁寧にスクラップしてるじゃないか」

姉「……写真集は、違う気がします」



312:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:18:28.34 ID:5sxU/ZsZo

男「……おじさんも、元気みたいだな」

姉(話をそらしましたね……まあ、いいですけど)

男「あの人もほんと、食わせ者だよな」

姉「結局、ドサクサにまぎれて幹部会を掌握して、
 少女ちゃんの支援体制を整えた後、
 世界中に支店と研究所を展開ですか」

男「今度こそ『僕達の友人を』って、はりきってな」

姉「秘書さんは、見るたびにやつれますね」

男「海賊だから、空はだめなんだーって、な」

姉「ふふ」



313:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:18:43.89 ID:5sxU/ZsZo

男「ま、今日からは久しぶりの休みだ。
 家に着いたらのんびりしようぜ」

姉「そうですねー」

 がちゃ

二人「ただいまー」

男「……なんか、靴があるな」

姉「それに、なんか掃除されてますね」



314:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:19:16.29 ID:5sxU/ZsZo

男「……なんか、シャワールームに人の気配がするんだけど」 にやっ

姉「……なんですか、その歳になってお化けが怖いんですか?」 にやっ

男「よし、そんじゃー、お化けかどうか確かめようか」

姉「む、男くんが見ていいのは」



 がちゃ

少「あ、男ー! やっと帰ってきた!!」

男「ちょっ、おまえ! タオルで出てくるな!!」



少「……ドキッて、しちゃう?」 じぃっ

男(女の武器を全部使って、あーくそ)



315:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:19:46.06 ID:5sxU/ZsZo

姉「少女ちゃん、ちょーっと、お話が」

少「奇遇ですね、『おねえさん』、わたしもありますよー」

姉「む、違うもん! いまはお嫁さん!」

少「ふふん、まだ結婚式も挙げてないじゃないですか。
 やっぱり、いまから私にのりかえてー」

姉「それはダメです!
 ね、男くん」

少「どうなの、男!」

男「……ああ、きょうも、平和だなぁ――――」


Fin.



316:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:22:27.56 ID:5sxU/ZsZo

Scripted by 1.

And Special Thanks for You.

The end of story.
But To be continued at The World.



317:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:27:07.49 ID:5sxU/ZsZo

はい、というわけで、スタッフロールも終わり、これにてお話は終了です。
分量的には1000に届きそうな気はしますが、
最初はこの場所のクセがわからなくて、詰め込んだ結果、316で終了ww


とりあえず今は、最後に辿りつけた満足感がいっぱいだ。

半端もののおいらが、ここまで来られたのは、みんなのおかげ。
感謝の気持ちたっぷりの鼻炎薬、もってってくれww

ヽ(。・ω・)ノ゛☆支援ありが㌧☆ ヾ(・ω・。)ノ


最後に、感想とか、こいつが好きだみたいな宣言とかしてくれたら嬉しいな。



この後はHTML化依頼っての、出せばいいのかな?
HTML化依頼は、ちょっと後に保留。



318:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:40:53.15 ID:5sxU/ZsZo

参考資料ってか、余談として。
イロイロ参考に、必要な部分だけROBOT法を作ってあって。
作中で使う機会はなかったけど、まあ自己満足として掲載。

Regulation Of Border Of the Trust.

前  文

全地球上の人民及び人工知性体は、その精神的卓越と物貿的福祉において向上することが共同目標である。

この目標を迫求するためには、普遍的平和の実現と、相互の理解が必要条件である。

将来的に、我らはその区別をするところなく、専制と隷従、圧迫と偏狭を廃し、その能力を以て、尊重の輪により上記目標の達成を目指すべきである。

個々はその主権を平和と正義の為に用い、国はその姿勢を全体の協調と非平和的行為の根絶へ向ける事を求めるものである。



我らはここに、全ての者がひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和の内に生存すること権利を有する事を確認する。


我らは互いを友とし生きる事をこそ、望むものである。

 WRTC 世界ロボット技術者協会より、各国政府への提言



『第一部、ロボットに関する生産の規定』
『第二部、ロボットの使用者の規定』
『第三部、ロボットが遵守すべき規定』

 第十八条 第三部における権利と責任は、自己で思考と判断を可能とし、自主的に前文における目標へ邁進できる者へ与えられる。
  2 『制限知性』に対しては、いかなる権利と責任の発生する主体も存在しないものとする。

 第十九条 各知性体に対して、国は己が定めるところの人間と同様の憲法、民法、刑法上の権利と責務を持つ事が望ましい。

 第二十条 この提案において与えられる自由及び権利は、これを保持されるように努力しなければならない。また、濫りに行使することなく、公共の福祉のために利用する責任を負う。

 第二十一条 全ての知性体は個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 第二十二条 思想及び良心の自由、そしてその記憶とについて、これを侵してはならない。

 第二十三条 報道や出版の権利、及びそれらを提供される権利を有し、言論の自由もこれを尊重すべきである。

 第二十四条 人間の幼児を育てるにあたり、独占的にその親権を保持し、主張することを禁じる。
  2 また、その精神に非人間的と解される思想を持たせる事を禁じる。

 第二十五条 。。。



 きっとその世界ではまだあるんだろう。wwww



321:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 08:18:09.53 ID:5ssQBJIAO

乙!面白かった!



325:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2011/03/18(金) 00:59:40.93 ID:VECRqXQ9o

>>321
面白かったの一言で救われるスレがある!(イミフww



転載元:男「なんか、シャワールームに人の気配がするんだけど」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1299555262/
このエントリーをはてなブックマークに追加

  • 今週の人気記事
  • 先週の人気記事
  • 先々週の人気記事

        記事をツイートする

        記事をはてブする

         コメント一覧 (111)

          • 12. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2011年12月22日 00:49
          • SS速報の方はこういう明らかなオ●ニーがおおいイメージwwww
          • 13. .
          • 2011年12月22日 01:02
          • ※11
            エロ無かったからってそんなに怒るなよ
          • 14. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2011年12月22日 01:10
          • ぶっちゃけここはもうエロは更新しないでしょ
          • 15. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2011年12月22日 01:11
          • ふぅ~
            一気に見たけど面白かった
          • 16. 名無し
          • 2011年12月22日 01:38
          • すっげー読みにくい
          • 17. 名無し
          • 2011年12月22日 02:27
          • 読みづらいとか云々はどうでもいい……

            今から百年生きたらタマ姉に会えるって事が分かっただけで充分だ
          • 18. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2011年12月22日 02:40
          • 面白かった。

            読みづらいって言ってる奴普段本なんてほとんど読まない奴だろ。
            絵本からやり直してきな。
          • 19. 名無し
          • 2011年12月22日 03:18
          • 中々に楽しめました。
            ただ、不自然に衒学的なセリフ回しは、改善して欲しいところです。
          • 20. ななし
          • 2011年12月22日 03:34
          • アピール、お疲れ様でした
          • 21. あ
          • 2011年12月22日 03:35
          • 面白かったけど、改善点はかなりあるな。
            携帯だと改行されてない文章は読みづらい。
          • 22. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2011年12月22日 03:47
          • スレタイからジゃ予想つかない内容だったけど、SF好きにはたまらないSSでシたよ。
            短気な奴等には読めなかったみたいでスけど。まサに短気は損気でスね。
          • 23. 名無し
          • 2011年12月22日 03:50
          • 改行が〜エロが〜ってお前ら何歳だよ…
            改行たくさんあってエロもあるケータイ小説でも見てればいいじゃん
            まあ、改行ないのは2chやらまとめサイトくらいしかネットで文章読まない人にはきついのかもな
            ラノベも1ページに一言だけなんてのもあるみたいだし
            普段、SS読まないけどそれなりに楽しめたわ乙
          • 24. 短気なななし
          • 2011年12月22日 04:26
          • 改行なしの鍵括弧だらけで目が滑る

          • 25.
          • 2011年12月22日 04:54
          • 作者降臨か

            とりあえず書籍媒体とネット媒体は違うからね
            それぞれに読みやすい書き方がある
            これはマジ読みづらいよ^^
          • 26. 名無し
          • 2011年12月22日 05:14
          • SSの改行って大事なんだなぁ。
            普通に読もうにもセリフだけだと普段本を読むときのコツが使えないし。
          • 27. 乙雅三
          • 2011年12月22日 05:27
          • 面白かったと思ってコメントしにきたら叩かれててビックリした
            内容はすごくよくできてるから読みづらいってだけで読まないのはもったいないよ

            で、少女ルートはないのかね
          • 28. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2011年12月22日 05:37
          • 作者様、本当にお疲れ様でした!途中からは小説を読んでる気分で楽しく読ませていただきました。
            姉がどんな想いで男を育て続けてきたのか考えると、胸が少しキュンてなりますね…

            他の方々のコメントで「長すぎる」とか「読みづらい」ってのを少々見受けられますが、SSだと思って読むと長いって感じてしまうのかも。
            後者に関しても、多分会話文オンリーだから場面の想像がしにくいのかなと思われます。
            地の文があったらもう少し読みやすくなってたかもしれませんねー。
            まぁ、地の文付きはあまり好かれない(らしい)ので、仕方ないんでしょうが。

            それでは、長文失礼いたしました。
            SSに対するコメントの書き方とか、2chのノリとかよく分からないので……気分を悪くされてしまったらごめんなさい。
          • 29.
          • 2011年12月22日 06:15
          • 基本的に横書きは読みづらいんだよ
            小説オンリーの人なら尚更
            学術書でも読みやすいように行間あけてるしな

            横書きでこんなに詰めたら読みづらいに決まってるわ
          • 30. 名無し
          • 2011年12月22日 08:24
          • 何でこれを読みにくいと普段小説読まないことになるのかマジで分からんなぁ。
            普通逆でしょ
            これを読みやすくて絶賛してる奴等こそ普段小説見てないでしょ。
          • 60. 名無し
          • 2011年12月22日 08:25
          • 何でこれを読みにくいと普段小説読まないことになるのかマジで分からんなぁ。
            普通逆でしょ
            これを読みやすくて絶賛してる奴等こそ普段小説見てないでしょ。
          • 63. エロの
          • 2011年12月22日 08:28
          • 何か文章が一々きもい(笑)
          • 64. あ
          • 2011年12月22日 09:01
          • 同じコメントばっかりで怖いよぉ
          • 65. あ
          • 2011年12月22日 09:06
          • 作り込んでるなぁ。
          • 67. あ
          • 2011年12月22日 09:08
          • 米64
            いつも思うけどこういう「~よぉ」とか書く奴って冗談だとしてもどんなキモい顔でかいてんの?
          • 68.  
          • 2011年12月22日 09:26
          • 読みづらいかも。行間とればいいのに
          • 69.
          • 2011年12月22日 10:41
          • 作者さんちぃーす
            会心の作品が叩かれた気分はどうですか?
          • 70. あ
          • 2011年12月22日 12:08
          • 米異常に伸びてるから何事かと思ったらスクリプトエラーかなんかか

            もしもしからだが本気で読みづらい…
            覚えてたらいつかPCから読むわ
          • 71. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2011年12月22日 12:47
          • これは擁護せざるを得ない!!
            読みにくい派をwwww
          • 72. ぴーぽこー
          • 2011年12月22日 13:39
          • 4 (´Д`)なげぇ~
            でも楽しめた!
            ハラショー
            読みたくないやつはわざわざここに書かんでも読まんかったらええがなw
          • 73. 名無し
          • 2011年12月22日 13:57
          • 72て。最後まで読んだやつ頭おかしい
          • 74. あ
          • 2011年12月22日 16:17
          • 非常に読みづらい。1レス長すぎ。詰めすぎだ
          • 75.
          • 2011年12月22日 17:42
          • 途中でやめた
            まず中国人よりもカタカナが入った台詞がウザすぎる

            言い回しがくどい。
            ボケとツッコミがつまらない。せめてかわいいと思わせれば読めるのに
          • 76. 名無し
          • 2011年12月22日 17:42
          • 読ませるのも作者の技術だろうに。
            とりあえず読みづらいのは勿体ない。この部分で半分くらいの人は読むのやめてる。縦ならともかく、横じゃあ読みづらい。
          • 77. 名無し
          • 2011年12月22日 17:45
          • 本読んでないてのはネタで言ってるんだよな?
            縦と横だと随分違うぞ…。
          • 78. 名無し
          • 2011年12月22日 18:13
          • 5 長いと思ったが一気に読まされた
            人間と人間的なロボットは分かり合えると思うが、ロボットの中に異常者が出てきたらどうなるんだろう
          • 79. 名無し
          • 2011年12月22日 18:41
          • 5 読みごたえあっておもろかった!
            読みにくさはまぁあったけど、
            それを跳ね退けるくらい引き付けられるものがあったような。

            次回作に期待!
          • 80. 名無しさん
          • 2011年12月22日 20:29
          • 本人か、意識してるだけなのかはわからんがままれみたいだな。
          • 81. 名無し
          • 2011年12月22日 21:11
          • 面白かった
            ただ、いまは頭の軽い文章を読みたい気分
          • 82. 名無しさん
          • 2011年12月23日 00:08
          • 3
            目が疲れる。
            改行してくれ。
          • 83. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2011年12月23日 01:54
          • あら、やけに批判の声が多いのね。

            序盤は確かに読みにくかったなぁ。

            でも素直に面白い作品だと感じたよ。

            ところで、

            縦横がどうとか、小説を普段から読んでるだの読んでないだの正直どうでもいい気がするんだけどね。

            実際にその作品を読んでみて面白いかどうかだけじゃダメなの?
          • 84. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2011年12月23日 03:10
          • ちょっと読みづらいとは思ったけど面白かった!
            こんな時間まで一気に読んじまったぜー

            あと地味に投稿日時がエグいな
          • 85. 名無し
          • 2011年12月23日 03:24
          • ※51
            いくら中身が名著でもギャル文字で書かれてたら、さわりすら読む気がしないでしょ。
            そんな感じ。
          • 86. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2011年12月23日 08:07
          • ちょっと読みづらいけど話の設定は割と好き。
            でもブラクラのセリフ入れたりして気持ち悪くて鳥肌立ったわ。
            どうせやるなら全部オリジナルのキャラにすればいいのに。
          • 87. こんちは
          • 2011年12月23日 09:15
          • 5 かなり面白かったです、話もキャラもよかったです
            特に会話の掛け合いが好きでした、次回にも期待o(><)o
          • 88. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2011年12月23日 09:40
          • 5 久々にいい作品を見た
          • 89.  
          • 2011年12月24日 01:56
          • SSにしては長い方だと思うが、一気に読めるくらい面白かった。
          • 90. 名無し
          • 2011年12月24日 02:14
          • 5 少し読みにくさはあったけど
            面白かったです!
            長かったですが一気に読めました
          • 91. 七条
          • 2011年12月24日 21:40
          • 4 作品は良い
            改行うんぬんは各個人の感じ方にもよるとおもうけどね。俺はそこまで気にはならんかった。
          • 92. 少女推し
          • 2011年12月26日 00:05
          • 5 かなりよかった!!
            読みやすいかどうかなんか関係あるか?
            しいて言うなら、最後まで読まない奴が可哀想なだけだな……

            設定もタイトルの使い方もよかったよ~
            次回作楽しみにしてます
          • 93. 少女推し
          • 2011年12月26日 00:06
          • 5 かなりよかった!!
            読みやすいかどうかなんか関係あるか?
            しいて言うなら、最後まで読まない奴が可哀想なだけだな……

            設定もタイトルの使い方もよかったよ~
            次回作楽しみにしてます
          • 94. 名無し
          • 2011年12月27日 02:10
          • SSはテンポと読みやすさが命だからなあ
            地の文は極力省いて台本形式にしてるのもそのためだし
            「読みにくい」ってのは相当のビハインドなんだよね
            話がいくら面白かろうと誰かに読まれなきゃ意味無いし
            相当の評価も得られない
            簡単に言うと
            もったいないんだよね
          • 95. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2011年12月28日 21:21
          • 面白かったよ

            なんかアンドリュー見たくなった
          • 96. 名無し
          • 2012年01月03日 21:32
          • 5 面白かった。

          • 97.  
          • 2012年01月04日 01:21
          • 作者のノリがウザい
          • 98. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年01月11日 21:14
          • 確かに読みにくかったし、余分なところもあったけど、おもしろかった。
            実際読みにくかったのは前半だと思うけどね。
            適当なコメントをせず、読み終わってからなにか言ってほしいもんだ。
          • 99. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年01月13日 04:14
          • 4 確かに改行とかのせいで少し読みづらいとは感じたけど
            話の内容は個人的に好きだわ

            読みづらいからって最初っから読まないやつらが残念
          • 100. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年03月27日 01:33
          • 5 面白くて一気に読んじゃった

            読みづらさ?は特に感じなかったけど…?
            まぁ世界観が最初に書かれてたほうが、話を掴みやすいかな~ぐらいは思ったケド。

            大大大満足!
          • 101. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年07月17日 13:42
          • 4 面白い
            こんな姉が欲しいな、
            と~ちゃん作って~w

            つか秘書さんレウ゛ィで脳内変換されたww
          • 102. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年07月18日 15:19
          • 姉さんのふふーふ止めれ
            ココ・ヘクマティアルでビジュアル固定してしまう
            そして読みにくい
          • 103. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年08月18日 07:14
          • 思ったよりも批判が多くて驚いた。そんなに読みにくいかな、これ。
            最初はSFだとわからなかったけど、好みの話だった。携帯からだと読むのに時間が掛かるなww
          • 104. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年09月25日 04:33
          • 5 素晴らしい!
          • 105. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年10月14日 23:49
          • 4 長かったけど面白かったって思う(^-^)最後の方はちょっとウルッってきちゃたわ
          • 106. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年10月17日 20:49
          • すげえ…
          • 107. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月22日 03:46
          • 読みづらいすぎwwwwww


            三行目で諦めた
          • 108. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年11月28日 01:24
          • 4 随分な殺伐としたコメばかり、投稿し辛い世の中だな。
            長いとか・・・。SSは短い文章じゃなくて、短い物語(ショートストーリー)って意味を忘れたのか・・・。

            個人的に個性がしみ出てたから良かったと思う。
            設定も並の投稿作よりかは作られてたし、キャラは物語に付いて行けてたしね。内容もSF物としては印象的な作品になった


            てか、秘書とか絶対BlackLagoonのレヴィが元ネタだろ。
            SF脳だから個人的にパラレルワールド(?)として脳内変換した。
          • 109. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2013年04月05日 00:43
          • これは、アニメ化決定だな・・・!
          • 110. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2013年04月10日 02:34
          • 地震速報って書いてて
            日にち見ると鳥肌たった……

            あの日なんだな
          • 111. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2013年04月11日 20:10
          • 2 男と姉がいて
            姉が拾ってきた少女がいて
            3人を中心に 世界規模でロボットに対する考えをあらためさせるおはなし

            ちと長いな
          • 112. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2013年04月11日 20:12
          • 2 男と姉がいて
            姉が拾ってきた少女がいて
            3人を中心に 世界規模でロボットに対する考えをあらためさせるおはなし

            ちと長いな
          • 113. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2013年06月10日 03:35
          • まぁ、なんだ、その
            俺はこういうの好きだよ。
            十分楽しめたありがとう。
          • 114. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2013年06月10日 03:39
          • 5 まぁ、なんだ、その
            俺はこういうの好きだよ。
            十分楽しめたありがとう。
          • 115. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2013年06月25日 15:11
          • 視覚的に読みづらいのは否定しないが
            それを補える面白さだった

            内容を評価できないようなコメントは高校生辺りで卒業しとけよ
          • 116. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2013年09月19日 04:51
          • 5 視覚的に読みづらいなら体調整えて休日にでもゆっくり読めば良いさ

            素晴らしいな。とういうか最初の流れからここまでシリアスな流れになるとは思わなんだw

            キャラもどのキャラも良かった。作者様に感謝と敬意を
          • 117. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2013年10月19日 06:50
          • たぶん読みづらいって人は最初のほうでやめたひとで
            おもしろかったって人は最後まで読んだ人だとおもう
            たしかに最初は読みづらかったけど、指摘されてちゃんと直してるのに感想がそれだけならコメしなくていいんじゃ

            まぁブラクラとfateネタはなんだろうとおもったけどw
            あと日付こわすぎ
          • 118. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2013年12月04日 22:14
          • 5 i,robotを彷彿とさせるSSだったね。 スレタイと内容のシリアスさの差www でもすごくよかった。 本で出てたら買うレベルww
          • 119. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年01月08日 16:13
          • 初めは読みづらかったけど
            途中から改行されてたから
            さほど気にはならなかったな
            普通に面白かったよ
            あとキャラは完全に
            CFO=ロック秘書=レヴィだな
            アーメンハレルヤピーナッツバターw
            急に出してくんなwww
          • 120. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年01月12日 23:55
          • 5 とても良かった。
            最後は少しウルッときたし、良スレだと思う。

            批判をするなら最後まで見てほしいね。
          • 121. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年01月15日 03:19
          • 途中までしか読んでないがつまらん
            あと読みにくい

          • 122. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年01月30日 06:22
          • アシモフの鋼鉄都市とわれはロボットを読んだことあるけど読みにくかった

            ロボット三原則やら金融論やらあれこれ専門用語並べた割にすっげー単純なラスト
            作者のオ○ニーとしか言えないでしょ

            おまけに3.11挟んでるからssそっちのけで気になっちまったわ
          • 123. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年03月08日 11:36
          • 専門用語並べた上でひねったラストとか知識がない人には理解しにくいだろ
            それを理解させるのが作者だろ、とかいうならss見るのをやめた方がいい
          • 124. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年03月14日 02:27
          • 4 改行は知らん、ケータイで読んだし普通に読めたわ

            誤字脱字は多かったけど、面白かった!
            長いとはちょい思ったけど( ̄▽ ̄;)


            すぐ読むのやめてる奴は日本語わからん奴なんかな、『読みにくい』しか言わんならこっちは『じゃあ絵本見てろ』しか言えないだろうが
          • 125. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年04月13日 23:38
          • 内容は好みなんだけどなんだろう、台詞回しが…
            変にネタを盛り込まないほうが
          • 126. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年04月14日 12:01
          • この作者の方って、
            ブラック企業で働く派遣社員の同僚女と男のSS書いてる人だよね???
            姉と女のキャラがにてるんだよなぁ
            あと最後の締め方とかw
          • 127. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年04月18日 00:03
          • 何を必死に擁護してるのか知らんが、SSでそんな重厚な文章は求められてないんだよ
            改行しないのは文庫だけでいい、PC画面なんだから目が疲れるわ
            それとも俺本読んでますアピールか?だったらSS、しかも台本書きのこの程度の文で優越感に浸るのは滑稽すぎるから止めとけよ
          • 128. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年05月01日 07:56
          • 文字がぎっしり詰まってますね
          • 129. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年09月26日 20:26
          • 4 とても面白かった。
          • 130. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年10月26日 14:34
          • 5 とても面白かったです。
            展開は割とありふれたモノだとも思うけど、
            『家族を不当に連れていった相手に手段は選ばない』
            という男の考え方がすごく人間っぽくて好感が持てました。
          • 131. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年11月11日 22:52
          • 5 めっちゃ面白かった! 話のもって行き方が上手くてすらすら読めたよ
            ただ秘書がブララグのレヴィにダブってしまったのは俺だけだろうか
          • 132. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2014年12月06日 22:38
          • 5 面白かったよ楽しめました!
          • 133. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2015年05月24日 11:58
          • 男く○
            がめっちゃ気になる。男クソって呼ばれてるの?
          • 134. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2016年01月13日 12:19
          • 「○君に」が「○く○に」になってるのが若干気にはなったけど、
            面白い内容だったと思うわ。
            改善点とかレスされて少しずつ読みやすくなってきてたり、
            割と細かく設定作ってる辺りもおもしろい。
          • 135. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2016年03月09日 15:54
          • むり読めない
          • 136. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2016年05月23日 15:44
          • 読みにくさ以上に面白かった。
          • 137. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月21日 00:32
          • 読みにくいとこはあったけど素直におもしろかった

            米95みたいな人には向かないだろうけどね、同じくらいおもしろかったという意見があるんだから米95は自分基準でしかないというこった
          • 138. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年06月14日 12:39
          • もっと地の文使えばいいのに。台詞が説明的だから場面の雰囲気が平坦。朗読劇観てるみたい。内容は面白かったよ。
          • 139. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年10月14日 10:32
          • SSにしては長いかな?と思いましたが…
            読みきってしまいました(*´ω`*)

            隣人としてのロボット、僕はいいと思います!
          • 140. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年01月20日 05:42
          • いくつか無りあるとこもあったし
            前半は読みづらかったけど
            面白かった
            ブックマークする
          • 141. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2019年06月16日 13:49
          • 稼働期間は20年←そろそろ止まるんではないですか?
          • 142. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2019年07月17日 12:54
          • 5 めっちゃ面白かった
            読みづらいって言ってる奴は大体普段小説とか読まないでマンガばっか読んでる奴
          • 143. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2020年05月27日 08:51
          • ロボットだけど人間と変わらない、だから姉と生活してもいいとは俺も思う。

            ただ、そこでどうして恋愛感情に育ったのかが理解できない。
            前半は明らかに『家族愛情』として書かれていたのに、途中から『恋愛愛情』として書かれていたのがなぁ。
            どうしてもハーレムにしなきゃ気が済まないのか?

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

        カテゴリ別アーカイブ
        月別アーカイブ
        記事検索
        スポンサードリンク
        スポンサードリンク

        • ライブドアブログ
        © 2011 エレファント速報:SSまとめブログ. Customize by yoshihira Powered by ライブドアブログ