犬「こんにちワン!」少年「こ、こんにちわ」
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1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 21:19:49.61 ID:a3q/QF6/0
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犬「こんな所でどうしたの?」
少年「うん、ここがどこだか分からないんだ」
犬「ふーん、どこから来たの?」
少年「・・・あれ?どこだろう?」
犬「分からないの?」
少年「・・・うん」
犬「そっかぁ、じゃあ一緒に探してあげるよ!」
少年「いいの?」
犬「うん、もちろん!」
少年「あ、ありがとう!」
兎「ありがとウサギ~」ポポ~ン
少年「わっ!だ、誰!?」
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2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 21:21:16.23 ID:3OEGL7Ml0
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ほう
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3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 21:21:50.09 ID:a3q/QF6/0
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犬「ありがとウサギ、僕の仲間なんだ!」
少年「そうなんだ、こんにちわ!」
兎「こんにちワン!何してるの?」
犬「この子のお家を探してあげるところなんだ」
兎「へぇ~、そうなんだぁ」
少年「でも、家がどこだか分からなくって・・・」
兎「う~ん、そっかぁ」
兎「あ、じゃあさ!ひとまず、私達のテントにおいでよ!」
少年「テント?」
犬「あ、それがいいね!」
少年「二人はテントにすんでるの?」
犬「それは着いてのおたのしみ!さ、行こう!」
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4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 21:23:50.69 ID:a3q/QF6/0
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少年「うわぁ~、おっきいテントだね~」
犬「ほら、ここから中に入りなよ!」
兎「入ったら、一番前の席に座ってね!」
少年「席?」
犬「入ればわかるよ!それじゃあ、僕らはあっちからだから!」
兎「楽しんでねぇ~!」
少年「あ!待って!・・・行っちゃった」
少年「ここから入ってって行ってたっけ」
少年「お、おじゃましま~す・・・」
少年「わぁ!」
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6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 21:25:51.17 ID:a3q/QF6/0
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少年が中に入ると、目の前には大きなステージとずらりと並んだイスがありました
そう、ここは、動物サーカスのテントだったのです
少年「すごいなぁ!」
少年はなんだかワクワクしてきて、言われたとおりに一番前の席に座りました
すると、突然あたりがまぶしいくらいに明るくなり
楽しげな音楽が流れてきたのです
少年「何がはじまるんだろう?」
少年がキラキラと目を見開いて、ステージを見つめていると
大きなシンバルの音と共に、さっきの犬が飛び出てきました
それと同時に、反対側から大きなボールが転がってきます
犬はそれに、ピョーンと勢いよく飛び乗ると
うまく前足を使いながら、コロコロ、コロコロと玉乗りを始めました
ステージをぐるりと回ると、今度は玉の上で飛んだり跳ねたり
宙返りをしてみたりしました
少年はすっかり夢中です
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8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 21:27:51.70 ID:a3q/QF6/0
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そうしているうちに、音楽が変わり、ゆっくりとしたワルツが流れ始めました
そして今度は、兎がつま先立ちで、トコトコと現れました
兎はとてもきれいなダンスを踊りました
ピョン、と跳ねて、クルクルと回って
まるで風になったかのように、フワリフワリと踊ります
少年「すごい、きれいなだぁ!」
少年はまたしても、キラキラとした目を見開いて
ステージに釘付けになってしまいました
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9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 21:29:52.15 ID:a3q/QF6/0
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その後も、火の輪くぐりや手品、おもしろいお芝居など
楽しい曲芸がくりひろげられて行きました
少年は、動物達が飛んだり跳ねたりするたびに
それはもう、大きな拍手をおくりました
楽しい時間はあっと言う間に過ぎ
動物達がずらりと並んで、おじぎをすると
キラキラした花火がステージから噴水のようにあがり
サーカスはおしまいになりました
少年は、ずっと拍手をしていたので、手がヒリヒリしていました
でもそんな事は忘れ、サーカスが終わっても
拍手をおくり続けました
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10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 21:31:52.83 ID:a3q/QF6/0
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テントがふっと明るくなり、犬がトコトコと出てきました
犬「僕達のサーカス、どうだった?」
少年「すっごく楽しかったよ!皆すごいね!」
犬「ありがとウサギ!僕も楽しんでもらえてうれしいよ!」
少年「こんなに楽しいのに、ほかにお客さんはいないの?」
犬「うん、僕らのサーカスは、お客さんが一人でも居れば、いつでもやるんだよ」
少年「じゃあ、今日は僕だけのサーカスだったんだね!すごいや!」
少年はうれしくてうれしくて、おおきくバンザイをしました
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13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 21:33:53.31 ID:a3q/QF6/0
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犬「ねえ、せっかくだから、皆に会っていかない?」
少年「いいの!?」
犬「もちろんさ!今日は君だけのサーカスだからね!」
少年「わぁ!じゃあ皆に会いたい!」
犬「よかった!じゃあこっちにおいでよ!」
犬はステージから飛び降りると、少年の手をひいて
ステージの奥の方へと案内しました
奥にあった幕をくぐると
さっきの動物達が拍手で出迎えてくれました
動物達「魔法の国の動物サーカスへようこそ!!」
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15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 21:35:53.68 ID:a3q/QF6/0
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ライオン「サーカスはおもしろかった?」
少年「とってもおもしろかったよ!」
ウナギ「ホホッ、うれしいねぇ」
鼠の子「ねぇねぇ!僕のつなわたりはどうだった!?」
少年「うん!すごかったよ!」
鼠の子「うわぁい!ほめられちゃった!」
鼠の母「コラ!そんなにはしゃがないの!」
スカンク「そうだぞ!悪い子にはプーッってしちゃうぞ!」
鼠の子「わぁー、いやだー!」
その後も、皆、少年をやさしく出迎えてくれました
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17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 21:37:54.07 ID:a3q/QF6/0
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犬「ねえ皆!ちょっと手伝って欲しいことがあるんだ!」
動物達は、いっせいに犬の方を見ました
犬「あのね、この子、自分のお家に帰りたいんだって」
犬「だから、お家を探すのを手伝って欲しいんだ!」
「もちろんさ!」「いいとも!」
動物達はすぐさま賛成してくれました
マンボウ「じゃあ~そのまえに~、君の事をおしえてほしいなぁ~」
少年「僕のこと?」
ワニ「そうそう!せっかくだから仲良くなった方が、探すのも楽しいダロ?」
少年「うん、そうだね!僕も皆と仲良くなりたいな!」
スカンク「よっし!決まりジャン!」
そうして、少年は動物達とお話を始めました
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21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 21:39:54.51 ID:a3q/QF6/0
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犬「ねえ、君はいつも『こんにちわ』って言ってる?」
少年「うん!ちゃんと言ってるよ!」
犬「そっか!じゃあ君には、仲のいい友達がいるんだね!」
少年「うん!いっぱい居るんだ!」
犬「そうかぁ!今度会いたいなぁ!」
少年「お家に帰ったら、皆をつれてくるよ!」
犬「うん!ぜひ見に来てね!」
少年は、友達とここへ来ることを想像して、ワクワクしました
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23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 21:41:55.09 ID:a3q/QF6/0
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兎「ねえ、じゃあさ、『ありがとう』は言ってる?」
少年「うん!もちろんだよ!」
兎「よかった!じゃああなたを助けてくれる子がいるんだね!」
少年「うん!たくさんいるよ・・・でも・・・」
兎「でも?」
少年「・・・あれ?でも、何だろう?」
少年は、不思議と胸がしめつけられる感じがしました
兎「もしかして、ありがとうって言ってない人がいるのかな?」
少年「・・・そんなことはないと思うんだけどなぁ」
やっぱり、胸がしめつけられる感じは消えません
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26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 21:43:56.24 ID:a3q/QF6/0
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ワニ「『こんばんわ』は?もちろん言ってるダロ?」
少年「うん、言ってるよ」
ワニ「夜になっても、君に会いに来てくれる人がいるのはいいことジャないか!」
少年「そうだね、皆優しいんだ!」
ウナギ「ホホッ!それなら『おはよう』もかな?」
少年「もちろん!」
ウナギ「ホホホッ!では、朝も君を待ってる人がいるのだねぇ」
少年「お父さんやお母さん、友達も、みんなそうなんだね!」
少年「そっかぁ、うれしいなぁ!」
少年は、お父さんやお母さん、友達、皆が恋しくなりました
-
27: 忍法帖【Lv=32,xxxPT】 :2011/05/19(木) 21:44:27.35 ID:O8Ci+gh00
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なんだこの童話……
-
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 21:45:56.65 ID:a3q/QF6/0
-
サイ「・・・『おやすみ』はぁ?」
少年「毎日忘れずに言ってるよ!」
サイ「・・・じゃあ、君は寝るまでぇ、一人ぼっちじゃないんだぁねぇ」
少年「そうだね、そうなんだぁ」
少年はなぜか、だんだんとさびしい気持ちになってきました
ライオン「じゃあ『さよなら』はどう?」
少年「言ってるよ・・・でも、何か忘れてるような・・・」
ライオン「それならきっと、さよならを言いたい人がいるんじゃない?」
少年「う~ん・・・誰だろう?」
少年のさびしい気持ちは、どんどんふくらんでいきました
-
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 21:47:57.00 ID:a3q/QF6/0
-
少年がなんだかさびそうな顔をしていたので
動物達は少年を心配して、楽しい話をはじめました
でも少年は、何かを忘れているような気がして、楽しめませんでした
すると突然、犬が大きな声で言いました
犬「そうだ!あの歌をみんなで歌おうよ!」
「そうだ!」「それがいいね!」「やろうやろう!」
動物達はうれしそうにそう言いました
少年「あの歌?」
犬「うん、僕達の新しい出し物なんだ!君も一緒に歌おうよ!」
少年「僕も?」
犬「そうさ!歌えばきっと、たのしい気持ちになるはずだよ!」
犬はそういうと、動物達に合図をしました
動物達はオルガンをひっぱりだし
そして一列にならびました
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34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 21:49:58.13 ID:a3q/QF6/0
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犬「それじゃあ、まずは僕達で歌うから、覚えて一緒にうたってね!」
犬「それでは、皆、行くよ!『魔法のことば』!」
犬の合図で伴奏がはじまりました
動物達の顔はもう楽しそうです
少年は、動物達の歌を、だまって聞いていました
動物達は、かわるがわる歌います
少年は歌をきいているうちに、だんだんと楽しい気持ちになってきました
そして、何かを思い出しそうな、そんな気もしました
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38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 21:51:58.58 ID:a3q/QF6/0
-
動物達の歌がおわると、今度は少年も一緒に歌う事になりました
簡単な歌だったので、少年もすぐに覚えました
皆で歌って、いっしょに踊りも考えました
そして、新しい出し物が完成しました
少年「あっ!」
犬「どうしたの?」
少年「・・・僕、お家に帰らなきゃいけないんだった」
犬「あっ!そうだった!」
兎「楽しくてすっかりわすれちゃってた!」
きっと皆が心配しているだろうな
そんな気がして、少年は思わず声をあげてしまったのでした
するとその時
ステージの方が、ふっと暗くなりました
-
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 21:53:58.98 ID:a3q/QF6/0
-
犬「あ、お客さんが来たみたいだ!」
ワニ「ジャあ、サーカスの開幕ダナ!」
鼠の子「がんばるぞー!」
マンボウ「でもぉ~お家さがしはぁ~?」
ライオン「そうだね、どうしようか」
少年「じゃあ僕、終わるまで待ってるよ」
兎「でも、けっこう長いよ?」
少年「大丈夫だよ!だって、皆のサーカスを待ってるお客さんもいるし」
犬「それなら、君も一緒に、サーカスにでようよ!」
少年「えっ!?」
犬の提案に、少年はびっくりしました
-
42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 21:55:59.34 ID:a3q/QF6/0
-
犬「ほら、さっきの歌があるでしょ?あれに君も一緒にでるんだよ!」
サイ「・・・それならぁ、君もぉ楽しいかもぉ」
少年「で、でも」
兎「大丈夫!さっきも歌ったでしょ!」
ウナギ「ホホッ!新しい仲間の誕生だな!」
少年「でもぉ・・・」
犬「大丈夫だよ、歌はサーカスの最後にしておくから」
犬「その間に、準備しておこう!僕らだって、仲間は多いほうが楽しいんだ!」
少年「・・・うん、わかった。がんばるよ!」
兎「やったぁ!」
少年は、はじめてのサーカスに
なんだかはずかしいような、こわいような
そんな気持ちになりました
-
46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 21:57:59.74 ID:a3q/QF6/0
-
そうしてサーカスの幕はあがり
少年がさっき見たように、動物達はいろんな芸を披露していきます
少年は、やっぱり動物達の芸に夢中になって
もうはずかしいような、こわいような
そんな気持ちは忘れてしまっていました
それどころか、皆と一緒に歌を歌うのが
楽しみにさえなっていたのです
そして、一度、ステージが暗くなり
ついに最後の出し物の番がやってきました
-
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 22:00:00.19 ID:a3q/QF6/0
-
犬「さぁ、こっちだよ!」
こちら側に来たときのように犬に手を引かれ
少年はステージの真ん中にやってきました
客席は暗くてよく見えません
でも、サーカスを楽しんでいるお客さんがいるのを思うと
少年はワクワクしてきました
オルガンの伴奏が始まり
ステージの照明がパッと明るくなりました
最後の出し物
『魔法のことば』の始まりです
-
49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 22:02:00.61 ID:a3q/QF6/0
-
少年「こんにちわ」
犬「こんにちワン!」
まずは犬が玉乗りをして登場です
少年「ありがとう」
兎「ありがとウサギ!」
次に兎がクルクル回りながら登場しました
少年「こんばんわ」
ワニ「こんばんワニ!」
その次はワニです
おどけたワニがステッキを振りかざして登場しました
少年「さよなら」
ライオン「さよなライオン!」
ライオンはたてがみを大きく広げて、手を振るしぐさをしました
-
53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 22:04:01.07 ID:a3q/QF6/0
-
歌いながら、少年は、だんだんと思い出してきました
それは、ここに来る前の事でした
___________
「ねぇー、風邪、大丈夫?」
「うん、なんとかね・・・ックシュン!」
「ほら、ちゃんと布団かぶって寝てなきゃー」
女の人が、自分を看病していました
薄着をして寝てしまった為、自分は風邪をひいていたのです
「春って言ったって、夜はまだ冷えるんだからね?」
「分かってるよ」
女の人はまるで母親のように、自分に言い聞かせました
「お前、母親じゃないんだからさ、そんな小言いうなって」
「何それー、ひどーい」
そう言いながら、女の人は笑いました
-
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 22:06:03.45 ID:a3q/QF6/0
-
女の人は、自分が風邪気味だと連絡すると、すぐにやって来ました
その手には飲み物と食べ物が沢山入った、スーパーの袋を提げていました
「風邪ひくと、寂しくなるでしょ?今日は看病してあげるからさ」
女の人は、やれやれ、というように
テキパキと袋の中身を冷蔵庫に移し変えています
「なんか、悪いな」
「もう、気にしないでよ。いつもの事だし、慣れてるよ」
女の人は、自分が小さい頃から、何かと世話を焼いてくれるのでした
小学校の頃に、39度の熱を出して寝込んだ時も
中学校の頃に、部活で無茶をして骨折した時も
高校の頃に、勉強について行けず、悩んでいた時も
女の人は、いつも心配してやって来てくれたのでした
-
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 22:08:03.80 ID:a3q/QF6/0
-
「あのさ・・・」
「んー?なぁに?」
「・・・いや、何でもない」
「何よー、途中で言うの止めるの、悪い癖だよ?」
自分は、たまには感謝の声をかけようと思うのですが
言おうとすると、途端に気恥ずかしくなって
つい、言うのを止めるのでした
「ま、長い付き合いだし、いいけどさ!」
そうするといつも、同じ台詞で、女の人は笑うのでした
-
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 22:10:05.39 ID:a3q/QF6/0
-
「じゃあ、ちょっと夕飯の買い物、行ってくるから」
「ああ、すまん・・・ックシュン!」
「いいのいいの!ほら、夕飯出来るまで寝てなさいって!」
「それじゃあ行って来るねー!」
「ああー、頼むー・・・」
女の人は、自分が夕飯も作れないと知って、買い物に出かけました
自分は女の人を送り出した後、すぐに眠ってしまいました
そして、買い物の帰り道
女の人は、スピードを出しすぎて止まれなかったトラックに轢かれ
死んでしまいました
-
64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 22:11:13.63 ID:E1hoeHFT0
-
ああ・・・
-
65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 22:12:05.86 ID:a3q/QF6/0
-
自分は、とても後悔しました
いつも助けて貰ってばかりだった事
ろくに相手をしてやれなかった事
言おうと思った事を、言うのを止めた事
しかし、全ては手遅れでした
風邪はその夜から酷くなり、次の日、悲報を聞かされた事もあって
自分は一週間、何も出来ず
ただ、布団の中で、泣いていました
それしか出来ませんでした
______________
そして、気がつくと
子供の頃の姿まま、ここに居たのです
-
70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 22:14:06.54 ID:a3q/QF6/0
-
四匹の動物達と一列にならんで
皆そろって歌を歌うところにさしかかりました
少年・動物達「魔法のことばでー」
少年はその時、不思議な感じがして、自分の横に目をやりました
すると、そこには
あの懐かしい、子供の姿のままの
女の人がいたのです
-
72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 22:16:10.69 ID:a3q/QF6/0
-
少年は目を疑いました
さっきまでそこに居なかったのに
急に光の中から女の人が、しかも自分と同じ、子供の頃の姿で
自分の隣に現れたからです
少年少女・動物達「たのし~い 仲間~が」
ポポポポ~ン
隠れていた動物達が、いっせいに飛び出しました
少女はうれしそうに笑っています
少年はそれを見て、やっぱりうれしそうに笑いました
-
75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 22:18:11.15 ID:a3q/QF6/0
-
少年・少女「おはよう」
ウナギ「おはよウナギ!」
ウナギは得意の手品を披露します
少年・少女「いただきます」
鼠の母「いただきマウス!」
鼠の母は、ご飯をたべる時のように手を合わせ、お辞儀をします
少年・少女「いってきます」
スカンク「いってきまスカンク!」
スカンクは陽気に手を上げ、おどけたようにおならをしました
-
77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 22:19:53.11 ID:/4rFcP030
-
おいもうあいさつの魔法まともにみれねぇよ…
-
78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 22:20:11.90 ID:a3q/QF6/0
-
少年・少女「ただいま」
マンボウ「ただいマンボウ!」
マンボウはトコトコとコミカルに横歩きして
プクプクとシャボン玉のように泡をとばしました
少年・少女「ごちそうさま」
鼠の子「ごちそうさマウス!」
鼠の子も、鼠の母を真似て、手を合わせてお辞儀をします
少年・少女「おやすみなさい」
サイ「おやすみなサイ」
サイは何故か寝巻き姿で、コックリコックリしています
-
79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 22:22:33.00 ID:a3q/QF6/0
-
少年少女・動物達「すてきなことばで」
動物達も、少女も、もちろん少年も、同じように手を大きく広げます
少年少女・動物達「ゆかい~な 仲間~が」
少年はとても楽しくなって、少女の方を見ました
少女も同じように、少年の方を見ました
そして、二人は
ポポポポ~ン!と、嬉しそうに歌いながら
両手を、ポーンと、合わせました
-
80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 22:24:43.95 ID:a3q/QF6/0
-
いよいよ、歌も終わりです
動物達も少年と少女を見て笑っています
少年「こんにちわ!」
犬「こんにちワン!」
そして少年は、あの時言えなかった、言うのを止めた言葉を言おうと
少女の方を振り向きました
しかしその時、急に寂しくなって、悲しくなって
その言葉が、のどに詰まりました
それを見た少女は、ヤレヤレ、という風に笑いながら
少年のかわりに、歌いました
少女「ありがとう!」
兎「ありがとウサギ!」
最後の出し物は大成功で終わりました
-
82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 22:26:53.07 ID:a3q/QF6/0
-
ステージに向かって、皆で最後のあいさつに手を振ります
すると、あたりは急にまぶしくなって
客席の方から、こんなにお客さんが居たのかと思うほど
おおきな、おおきな拍手がおこりました
少年は、まぶしい光の中、少女を探しました
しかし、目の前が真っ白で何も見えません
少年は、どうしても少女に伝えたかった言葉を、光の向こうに叫びました
少年「ありがとう!!!・・・さよならぁーーーー!!!」
するとどこからか、かすかに声が聞こえました
「ま、長い付き合いだし、言わなくても分かってるよ」
光の向こうで、女の人が笑ったような気がしました
- 終わり -
-
86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 22:29:13.01 ID:a3q/QF6/0
-
あいさつの魔法だったな、まちがった
脳内で差し替えておいて
ごめんねグロ展開じゃなくて
みんな氏ね
-
93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/19(木) 22:32:26.05 ID:8KVDi6Ppi
-
マジ泣けるタヒね
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コメント一覧 (18)
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- 2011年05月20日 00:16
- どうでもいいけどありがとウサギがくそみそウサギに見えた
-
- 2011年05月20日 00:46
- 良くネタ素材をここまで昇華できるもんだ
-
- 2011年05月20日 01:21
- あのCMがこのSSのラストシーンだと考えてみるともうね
-
- 2011年05月20日 02:19
- これは良い童話
-
- 2011年05月20日 12:22
- 米1
お前のせいで台無しだよ
-
- 2011年05月20日 14:24
- 文章力がちょっと残念な気がするけど、発想で大勝利してるな
-
- 2011年05月20日 15:23
- ※1氏ねよ
コメント欄でもコテハンきめえな
-
- 2011年05月21日 08:07
- 感動した
マジキチ物だと思ったら全然そんなことなかったな
それにしても相変わらずここの※欄は残念な奴が多いね
-
- 2011年05月21日 12:47
- ※8
残念なのは※1だけだろ
SSスレに書き手と同じくらいレスしてるやつと同じ臭がする
-
- 2011年05月22日 02:17
- こういう話弱いんだよ・・・
CM最近見なくなったけど、見たら思い出してウルウルしそうだなぁ
-
- 2011年05月22日 02:26
- あのCMをここまで膨らませて綺麗にまとめられるってすごい。
素直に感動した。
-
- 2011年05月28日 06:30
- なんだかザワザワする。
なんていうか・・・そうアレだ、狂気みたいな、でも優しい狂い方みたいな・・・何が言いたいかよくわからなくなったな
-
- 2011年06月03日 09:28
- この発想は無かった
鳥肌立ったわ
-
- 2013年01月24日 10:18
- なんという発想
絵本みたいな雰囲気だけど少し違う、いいSSだ
-
- 2013年11月19日 06:50
- ホントにいい話だな。
目から汗が出るよ…。゚(゚´Д`゚)゚。
-
- 2016年02月15日 21:12
- もうあのCM素直に見れねぇ
-
- 2016年07月11日 22:24
- みなさんのお涙ちょうだいいたしましょう
-
- 2017年03月10日 15:01
- ネットの ss でうるっと来るなんて……
しかもこの短いので……