絹旗「私の処女膜は決して貫…け…!?」軍覇「うおお~~ッッッッ」

1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/06(日) 13:25:24.99 ID:lJfouGRE0

 


2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/06(日) 13:25:51.21 ID:hP1y0R8i0

空白は甘え


3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/06(日) 13:28:45.93 ID:xd75w0KA0

誰か書いてくれ


8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/06(日) 15:52:18.68 ID:wQmglLFI0

その日、絹旗最愛は珍しく『アイテム』の4人と行動を共にせず、一人で町をうろついていた。特に理由は無いがたまには出かけよう、そう考えて出かけた訳だったのだが…。
「なぁ、良い所知ってんだよ。一緒に行こうぜ?」
この超能力の町である学園都市にいる底辺集団(と、絹旗は考えている)スキルアウトども3人に絡まれてしまった。
しかし、自分よりはるかに大きい男3人に囲まれているこの状況の中でも彼女は特に臆することも無く、超不幸ですね、と心中で呟く。
その余裕は彼女の能力―――レベル4の『窒素装甲』―――から生まれるものであり、当然無能力者集団のスキルアウトになど遅れを取るはずが無いという絶対の自信の表れでもあった。
ニタニタと下品なニヤケ面をぶら下げながら自分の行く手を阻む連中につかまる事早5分。
こんな裏路地に入った自分に過失が無いとも言い切れないし、超軽くぶっ飛ばす程度にしてあげましょうか、と彼女が考え始めたところにその声は響いた。

「―――よう、随分と根性の足りねー事やってんなぁ」


12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/06(日) 16:13:22.47 ID:il1mhse+0

>>8
早く書くんだ


14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/06(日) 16:26:07.60 ID:wQmglLFI0

声のした方を振り向けば、何というか、時代に取り残されたような風貌の男が腕を組みながら立っていた。
真っ白の学生服に身を包むも、上着は肩に引っ掛けてあるだけ。インナーは日本晴れをイメージした紅白のシャツのみでワイシャツも着ていない。そして極めつけは額に巻かれた、これまた純白のハチマキ。
一体何年代の人なんでしょうか、と絹旗は正直に思った。
男は続ける。
「大の男が3人も揃ってそんないたいけな少女を囲むとは何事だ!色々と言いたい事はあるが、まぁまずはにお前ら自分の年を考えてみろよ。どう考えてもお前らロリコ―――」

パン。

と、彼の言葉は乾いた音にかき消された。男が後ろに倒れこむ。
絹旗最愛という人間は、その職業柄この音の正体を知っている。立ち込めてきた独特の臭いも含めて。
「ったく。邪魔すんなっつーの」
右手に構えた拳銃をおろすと、スキルアウトの一人が気だるげに言った。どうやらこの男、人殺しにはそれなりに慣れているらしい。他の2人も動揺しないところをみるに自分と同じような身の上なのかもしれない。
「ささ、邪魔が入っちゃったけどさ。…一緒に、来るよね?」
拳銃を懐にしまいながら男は言う。自分が拒否したらこの男はアレを見せる算段だったのだろうな、と絹旗は結論付ける。
まぁ、拳銃ごとき超余裕ですけど、撃たれた男も気になるしそろそろ超本気出しましょうか、と考えたところで彼女は視界の端に驚愕の光景を見た。

「―――なんだよ。最近の不良ってぇのは、拳銃で不意打ちがスタンダードなのか?」

学ラン男が、立ち上がっていた。


15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/06(日) 16:46:40.67 ID:wQmglLFI0

「…あぁ?」
驚いたのはスキルアウトも同じらしい。当然のことだろう。
避けるなら空間移動のレベル2くらいでも可能だ。しかし、撃たれておいて起き上がるというのは何がしかの能力者…それも、高レベルな人間である可能性が高い。
自分と同じ系統の能力者だろうか…しかし、あの計画に含まれた人間の中に彼の顔は無かったと思う。
「…驚くってこたぁアレか!?お前ら本気で俺のこと撃ち殺すつもりだったんだのか!?実際結構痛ぇんだから気をつけろ!」
超何に気をつければいいのでしょう、と絹旗は思った。
「いいか、お前らみたいな人の痛みが―――痛っ!?てめ、人がしゃべって痛い痛い撃つな撃つな!くっそオートマかよ根性なしが!」
台詞だけ見たら随分とコミカルだが、現実はそんなものではない。3人の男に拳銃で何発も撃たれているというのに、男は『痛い』というだけでまともなダメージにすらなっていない。
―――異常。能力の発動も見られないのに弾丸をものともしない、まさしく『異常』な光景。
カチカチ、と弾丸が尽きたのかシリンダーが空回りしていた。
「お、ようやく弾切れか。よし、じゃあ話の続―――いってえ!だからコラナイフで刺すな痛い痛い!しかも後ろからとはホント根性なしだなお前ら―――!」
彼の背後に回った男がナイフで刺したのをきっかけに、他の連中も次々とナイフを構え学ラン男へと突撃する。
私のことはもう超どうでもいいんですかね、と露土しながらも、彼女はその光景を見つめていた。


17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/06(日) 17:16:18.09 ID:wQmglLFI0

学ラン男がもみくちゃにされること数十秒。

「だっしゃーーーーーーーーーー!!」

という掛け声とともに突然爆発が起きた。何故か黄色い爆煙つきで。
「いい加減にしろお前ら!さっきから身中線ばかりをグサグサと!さっきの話の続きだがなぁ、人の痛みがわからないやつは皆すべからく根性なしだ!人を傷つけることがカッコイイと勘違いしている根性の曲がったヤツもいるけどな、それは間違ってるんだよ!」
爆発の影響でとっくに伸びているスキルアウトどもに学ラン男は説教をたれていた。
「…超とっくにその人たち超気絶してますから、何言っても超無意味ですよ」
「何だと?」
このままでは日が暮れるまで説教をしてそうなので絹旗はそう言った。
「この程度で気絶するとは…本当に根性無しだな。モツ鍋の根性を見習って欲しいもんだ」
うんうん、と一人頭を縦に振る学ラン男。
モツ鍋に根性があるとは聞いたことがないが、絹旗は深く突っ込まないことにした。


18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/06(日) 17:43:38.10 ID:wQmglLFI0

色々と言いたいこと、聞きたいことはあるものの、彼女はまず学ラン男の姿に違和感を覚えた。あれだけの人数に袋にされていたというのに、彼の衣服や肌は綺麗なままなのだ。
(…やはり、私のような超空気操作系の能力で防壁を作っていたんでしょうか)
しかしそれだとあの爆発の説明が付かない。空力使い(エアロハンド)にしても、自分のような窒素装甲(オフェンスアーマー)にしても、あのような爆発を起こすことは不可能だ。
(すると一体、この男の能力は…?)
そんな疑問を抱えていると、学ラン男は自分に話しかけてきた。
「そういえば絡まれてたが、大丈夫だったか?」
非常識な光景に気を奪われ自分も失念していたが、そういえばこの男が戦っていたのは自分を助けるためだ。…まぁ、超余計なお世話ですけど。
「いえ、特に超乱暴もされていませんし…超ありがとうございました」
そう言って改めて学ラン男を見る。風貌はかなり怪しいが、まぁ、カッコイイと呼べる部類の顔立ちをしていた。ハチマキはどうかと思うが。
「ん。ならいい。最近はあぁいう根性無しが多くなってきてるからな。お前も気をつけたほうがいいぞ」
その発言に絹旗はムッとする。多分、本人に悪意は無いのだろうけど、気になってしまったものは仕方が無い。
「…ご忠告感謝しますが、超初対面の女性に『お前』呼ばわりは超どうかと思います」
彼女にしては珍しく、随分と子供っぽい不満だった。
「…それは悪かった。確かに、根性と配慮が足りてなかったな。スマン」
学ラン男は言うと共に軽く頭を下げた。
「そうですよ。私には絹旗最愛っていう世界で一番超チャーミングな名前があるんですから」
腕を組みつつ、絹旗はそう言った。


19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/06(日) 17:58:16.24 ID:wQmglLFI0

「なるほど。絹旗最愛、さいあい、…最愛か。最も愛する、で最愛、という訳だな。いい名前だな」
かみ締めるように自分の名前を繰り返し、最後にひとつかぶりを振って男はそう言った。
…さっきからこの男は一つ一つがオーバーリアクションだ。
「では最愛。これから出かける予定なんだろうが、さっきみたいな根性無しに気をつけろよ」
じゃあな、と右手を軽く上げ、彼は走りだした。
「あ、ちょ、ちょっと!」
慌ててそう言うも、彼は振り返ることも無く、真っ白の上着をはためかせながら路地を突き進んでいった。
「…超なんだったんでしょう、一体」
突如風のように現れて、そしてまた風のように去ってしまった。裏路地にひとりポツンと残されながら絹旗は思う。
とりあえず何かと疑問も残る。彼の能力もそうだし、何故こんなところにいたのかとか。
でもまぁ、ひとまずは。
(…イキナリ名前呼びってのも超どうかと思います)
そう考えながら、絹旗は路地裏を抜け、明るい大通りを歩いていった。


20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/06(日) 18:02:49.12 ID:wQmglLFI0

見てる人いる?


22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/06(日) 18:03:49.40 ID:zEXtnlmk0

超見てますが


28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/06(日) 18:48:33.78 ID:wQmglLFI0

いて下さるならがんばる。


「…と、いう事が超昨日あったんですが」
翌日、『アイテム』のメンバーといつものファミレスに集合した絹旗は自身の体験したことを打ち明けた。
ここでいうメンバーとは、麦野沈利、滝壺理后、フレンダ、そして浜面仕上のことである。
「もう超わっけわかんねーって感じなんですけどどう思いますか滝壺さんを膝に乗せてる浜面死ね」
「最終的に悪口になってるっ!?」
突っ込みを入れたのは元スキルアウトのリーダー、浜面である。滝壺理后を膝の上に乗せ(というか乗られたのだが)、まったくうらやましい限りである。
「でもまぁ、不思議な話ではあるよな。弾丸を食らっても生きてて、かつ爆発を起こす能力なんて聞いたことねぇからな。…そういえば、そいつの名前とか聞かなかったのか?」
「あ、私超パフェ食べたいです」
「話題振っといてガン無視っ!?」
会話のキャッチボールって言葉知ってんのか!?と浜面は嘆く。
「だいじょうぶ。絹旗にガン無視されてるそんな浜面がわたしは好きだから」
膝上に乗った滝壺は首だけ振り向いてそう言った。
「滝壺…」
「浜面超死ね」
「会話のデッドボールしか飛んでこねぇぞチクショウ!」
「ま、なんにしてもさ」
目の前に置かれたジュースをストローでくるくるとかき混ぜながら麦野が言う。
「ハチマキと、そんな曖昧な情報だけじゃ何にも言えやしないわよ。せめて名前がわかんないと」
「…まぁーそうですけど」
同じくストローをいじりつつ、絹旗はそういった。



※アレ?滝壺と浜面くっついてんならフレ/ンダかつデレのんじゃねぇの?という突っ込みはナシで。


29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/06(日) 19:08:52.66 ID:wQmglLFI0

「結局収穫は超ナシ…ですか」
『アイテム』のメンバーとしばらく話し合いを続けるも、彼を知っている人物も、それらしい人の候補すらも挙がらなかった。フレンダが後でバンクを洗ってくれると言っていたが、服装の特徴などでヒットするとはとても思えない。
結局超望み薄ですね、と結論付けるが、ふと思う。
(…仮に素性がわかったとして…一体それで超どうなるというのでしょう?)
伝えたいことがあるわけでもないし、話すことすらおそらくは無い。今突然目の前に現れたって、何をどうしようと決まっているわけでもない。
―――では、何故。
何故こんなにも自分は彼のことを探しているのだろう。
(………)
考えても考えても答えは出ない。一体自分は…。
「…なーんて。考えたって超仕方ないですよねー」
わからないことは放棄して、まだ昼過ぎですしこれから超何しましょうかと考える。
昨日も出かけたが、昨日とは違う方へ出かけようか。昨日は中高生向けの第7学区でしたから、今日はオトナに第5学区あたりにでも…。


ドカーーーーン!

「……は?」
突如おきた爆発音。しかも自分はこの音に聞き覚えがある。
最近のことだったはず。いや、最近どころか…!
「昨日の爆発…!」
絹旗は踵を返すと、爆発音のした路地へと駆け出


30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/06(日) 19:10:57.73 ID:wQmglLFI0

ごめん、ミス。
一番最後の行、

絹旗は踵を返すと、爆発音のした路地へと駆け出した。


でお願いします。


32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/06(日) 19:21:59.65 ID:5KB4GedDO

ふむふむ


33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/06(日) 19:24:22.55 ID:ixUV9ZBq0

支援


34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/06(日) 19:25:44.75 ID:yT9hs7Vi0

しえン


38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/06(日) 20:01:31.65 ID:wQmglLFI0

飯食ってました。すみません。
支援ありがとうございます。


路地を進むごとに、風が強くなっていた。まるで風がその路地に向かって向きこんでいるような感覚を覚える。
「…この風は一体…?」
轟々と吹く風が吹き込む方へ進んでいく。そしてある角を曲がったところで、開けた場所に出た。開けたといっても薄暗く、人がいることは視認できるが、顔は見えない。雰囲気的に気づかれたら不味そうだと絹旗は感じ、角に引き返して様子を伺うことにした。
(ここは…?)
と、思った瞬間。突然目の前に火柱が上がった。
(発火能力者〈パイロキネシス〉…レベルは3程度ですかね)
火柱のおかげで視界もはっきりしてきた。どうやら6人の男が火柱を囲むようにしているようだ。全員が手を水平に伸ばしているのを見ると、どうやら全員であの火柱を構成しているらしい。その割りに高さを出さないところをみると、炎の密度を上げているということだろう。
と、冷静な判断ができたのもそこまでで、ある声が彼女の意識を引いた。

「ごあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

それはひどい叫び声だった。まるで声帯の機能を無視した声だった。
だが、声の種類なんかこの際どうでもいい。
問題なのは、その声がどこから上がっていて、そして誰のものであるかって事だった。
自分はこの声を、叫び声ではなかったが、聞いたことがある。だが、何故だ。

何故、昨日の男の声が、火柱の中から聞こえてくる?


44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/06(日) 20:54:49.79 ID:wQmglLFI0

削板軍覇はその日、ただ町を歩いていただけだった。
カツアゲをされている少年を助けることも無く、また不良に絡まれている少女を助けることも無く。おおよそ『日常』と呼べる一日を過ごしていた。
そんな彼の日常をぶち壊したのは一本の電話だった。
ブー、ブー、とケータイが振るえ、着信を伝える。
「ん?」
画面を見るも、通話相手は『非通知』となっていた。かといって無視するわけにもいかない。
「はい」
「いよぅ、削板クン。ひっさし振りだなぁ、オイィ?」
はて、と削板は首を傾げた。久しぶりと言われようにも通話相手の声に覚えが無い。また、口調にも覚えは無い。
「今お前はおそらく俺の正体が判らず首を傾げている事だろう。フン、まぁ無理も無い。だがこの機会に覚えておけぇ。俺の名前は―――」
「すいません屁が出ました」
「―――だぁ。ってお前真面目に聞く気ぃないだろぅ!?」
彼としては電話相手などどうでもいい相手だった。とりあえず名前も聞きそびれたし、ミスターXとでもしておこう。
Xは続ける。
「まぁ、いい。いいとしよう。そうでなくてはお前を相手取っている気分にならないからなぁ」
「はぁ」
どうでもいいがこの電話相手は中々本件に入ろうとしない。じれったい事この上ないが、特に予定もないし、このまま聞いてやろう。腹が減るまで位は。


50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/06(日) 22:35:22.78 ID:wQmglLFI0

すみません。わけあって今日はもう掛けそうにないです。・
他の方が書かれてください。
戻ってこれたときにまだ残ってればそのときは不躾ながら書きたいと思います。
ほんとうにすみません


54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/06(日) 23:50:59.62 ID:xd75w0KA0

保守


56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 00:25:06.34 ID:ssGaLzbU0

誰も書かないようなら書いてみてもいいかな?

ていうか誰か今いる?


57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 00:26:36.26 ID:o1HyfOml0

>>56
お願いします


59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 00:27:18.85 ID:TIuaR0yY0

IDがssだからか


60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 00:29:34.76 ID:ssGaLzbU0

>>59
マジだwww
ただSSかくの初めてだからミスとかは大目に見てください。


「で?こんな場所で一体何を始めようってんだ?」
削板軍覇はとある路地の奥の開けた場所で、ガラの悪い六人の男たちに囲まれながらも憮然としてそう言ってのけた。
結局あの後Xは、挑発のような侮蔑のような言葉を所々にはさみながら長々と話続けたのだが、要約すると、『今から指定した場所に来い』といった内容のものであった。
不気味な笑い声と共に切れた電話からもれるツー、ツーという音を聞きながら、彼は少し考え、そしてくるりと進行の向きを変え、指定された場所へ足を運ぶことにした。
そんな怪しい呼び出しに応じては危険だなどという一般人の考えは彼の頭の中にはなく、かといってやることもないからとりあえず行ってみるかというような軽いノリで向かったわけでもなかった。
理由の一つとしては、電話の向こうの相手から彼が毎度相手している『根性なし共』と同じにおいがしたから、というのがある。
下品な笑い方に言葉遣いの悪さ、路地裏への誘導。どう考えても典型的な不良のやることであったし、何が目的かは知らないが、もし根性がなってないような奴であったなら自分が叩き直してやろうと思っていた。
そしてもう一つには、Xが『お前の言う根性とやらを試させてもらおうか』といった旨の発言をしていたことだ。
俺の根性を試す・・・?面白い。ならば俺の根性をテメェにみせつけて、その後でテメェの根性もはかってやる。
向こうから根性について持ち出されたのが初めてである削板軍覇は、いつになく瞳に闘志を燃やし、肩で風を切りながらどんどん目的地へ近づいて行った。
つまり、不良の安い挑発にまんまと乗っかって来てみれば、いつのまにか六人の男に囲まれていて、現在に至るというわけだ。


61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 00:31:44.40 ID:ssGaLzbU0

「別にぃ、電話でも言ったろうが。お前の言う根性とやらを、俺たちで試してやるってなぁ」

そういって、丁度彼の目の前にいた男がひひひと不揃いな歯をちらつかせながら笑う。
どうやらこいつが先ほどの電話の相手、ミスターXらしい。
ミスターXは何やら削板の上から下までジロジロと視線を移してから、いらついたのかやや大きめに舌打ちをした。

「にしてもよ、何度見ても笑えるっつーか、いらつく奴だなぁお前は。ホント、いつの時代からやってきたんですかぁ?」
「おいおい。何が始まるかと思えばまた悪態のオンパレードか?口を開けば悪口ばかり・・・根性がたりてねぇぞ兄ちゃん。何なら今かr」
「まーてまてまて。そう早まるなって」

Xはニヤリと笑いながら目の前で手をひらひらさせ、それに呼応するようにほかの五人の男たちからクスクスと、やはり下品な笑い声が漏れた。
こいつら俺をおちょくるためにつれてきたのか?
削板がそう思いながらジロリと周りの男達を見まわしていると、Xが急に手をパンとならした。


62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 00:36:55.46 ID:ssGaLzbU0

「おいおい、お前と話してるのは俺だよ、俺。こっちむけや。それでよぉナンバーセブン」

ならした手と手の平をすりすりとこすりあわせ、いやらしい目でこちらを見るその仕草はさながらねちっこいセールスマンのようだった。
やっと本題に入るのかと鼻を鳴らしつつ、削板はXを真正面からキッと見据える。

「お前はアレだよな。いつもいつも事あるごとに根性、根性。とんだ根性バカだよなぁ?
 でよ、お前にボコられた覚えのある俺たちは、そんなお前の根性を見込んでちょっくら試してみたいことがあるんだけどよ」

考えるに、どうやらここに集まっている男たちは、以前削板に根性を鍛えなおされたはずの者たちらしい。
根性を叩き直せていなかったのかと思うと軽くショックだったが、それならばまた鍛えなおせばいいだけだと思い、再び目の前の男の言葉に耳を傾ける。

「お前が言うには、根性があれば銃弾もきかないんだったよな?」
「そうだ!!確かに詳しく言えば俺がレベル5のナンバーセブンであることもあるが、しかしそんなことは些細なことで、問題なのh」
「とりあえず根性があればいいと?」
「そうだ!!だからお前たち今からでも俺の話を聞k」
「要するに根性が全てなんだな?」
「そうだ!!ていうかお前は人の話をk」
「よーしわかった!わかったぞぉ!!」

Xはそこで豪快に手をパンパンとならし、会話を無理やり中断させた。


63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 00:42:59.68 ID:TIuaR0yY0

スレタイとまったく関係ないけどうまく動かすのか?


64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 00:48:19.93 ID:ssGaLzbU0

>>63
何とかもっていけたらと思ってる
でもエロは期待しないでください(><)
とりあえず書けるとこまでかくつもり

削板はことごとく発言のタイミングをつぶされ口をパクパクしていたが、
こんなことに屈してはいけないとぎゅっと口を結び、腕をがっしりとくんでズンとその場に仁王立ちする。
周りからは、『あいつマジでいってんの?』『あれが脳筋ってやつか・・・』『頭おかしいんじゃね?』などという発言が聞こえてきたが、
削板はあえて無視し、代わりにXにむけて威勢よく言葉を放った。

「それで!!何がわかったって?」
「ん~。オーケー。まぁ要するに俺たちがやりたいのは、そこまで根性について豪語するお前自身が、どれほどの根性の持ち主かってことを調べることなんだよ」
「言い分はわかった!いいぜ、漢なら拳でおs」
「つってもてめぇの根性ってのは随分とまぁぶっとんでるらしいからなぁ、ちょっとやそっとじゃはかりきれねぇと思ってな・・・」
「そんなことはない!これからたっぷりt」
「だからこれだけの人数を集めたってわけだ。つまりはお前の根性試し、もとい我慢比べ?いや、別に比べるわけじゃねぇんだが」
「こ、このしゃべる隙のなさ・・・」
「俺たちは全員発火能力者(パイロキネシス)だ。俺たちが今からお前に能力で攻撃をしかける。・・・おっといっとくが戦おうってんじゃねぇ。
 お前なら、炎ぐらいなんとかなるんだろう?ホラ、お得意の根性とやらでよ?ひひひ。
 安心しろ、最初は弱めに、徐々に強くしていってやる。銃弾もきかねぇお前のことだ、こんくらい、根性で、わけねぇハズだよなぁ?」


65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 00:54:13.32 ID:7PmASA7rO

女ほどスケベな生き物はいないぞ


66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 00:54:55.38 ID:ssGaLzbU0

普通ならば、こんなふざけた提案にのるバカはいないだろう。
いくら学園都市に七人しかいないレベル5のナンバーセブンであろうとも、発火能力者六人から同時に攻撃を仕掛けられ、
しかもそれをそのままうけとめるなどということをしたら無事ではすまないことは明白である。
しかし、その時の削板軍覇は、自分の根性を試すという言葉に燃えており、
なおかつ自分の根性をこいつらに見せつけることで同時にこいつらの根性を鍛えなおしてやるという考えに支配されていた。
ナンバーセブンはんっふっふと不敵な笑みを浮かべながらギランと目を輝かせると、なぜだか彼の背後がドバーン!!と爆発し、同時に彼は咆哮した。


「いいだろうっ!!俺の根性がみてぇってんなら見せてやるっ!遠慮はいらねぇ、この俺の熱く、燃えたぎる根性をぉおおおオオァアアアアア!!?」


見せてやるぜ!という言葉を彼が言う前に、彼を中心にして巨大な火柱が出現した。
徐々に強くする、などというのは当然嘘っぱちであり、その場にいた六人の最大火力で生み出された火柱が、轟々と熱気を放ってナンバーセブンを包んでいた。
Xはバカかこいつ?というような目で削板を見ながら、腕を前につきだして高らかに笑っていた――――――。


68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 01:07:00.08 ID:ssGaLzbU0

(と、とりあえず、これは超やばそうですね)

数刻前にそんなアホなやり取りがあったことを知りもしない絹旗は、尋常ではないその場の雰囲気に圧倒されていた。
しかしとにかく、あの火柱の中には昨日のあの男がいるのは間違いない。
こんな形の再会は望んでいなかったが、早く助けなければいくら銃弾がきかなかった男とはいえ死にいたる可能性がある。
こうしている今でも火柱の中からは身を裂くような叫び声が聞こえてくるのだから、一刻を争う事態に違いない。
迷う暇などない、そう思って絹旗がその場に飛び出す――――
「あなたたち超待ってください!今すぐその男の人を――――」


「うぉおおおおおおおお!!こんなもんかぁああああああああ!!?」


「え?」
「え?」

絹旗と六人の男たちが素っ頓狂な声をあげたのはほぼ同時だった。
先ほどまで断末魔のような叫び声だったはずのナンバーセブンの声色は、いつの間にだか熱血少年の叫ぶそれになっていたのだ。


69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 01:14:54.28 ID:ssGaLzbU0

「てめぇらぁああああああああ!!こんなチンケな炎でッ!このッ!俺のッ!根性をッ!!測りきれるとでも思ってんのかぁあああああああああああああ!!」

もはや心の叫びなのか悲鳴なのかも区別がつかないほどだった。
あまりにも予想外の出来事。六人の男達、とりわけXの顔に明らかな動揺の表情が浮かぶ。
Xは歯を食いしばり、そして火柱に向かって叫び声にもにた声をあげる。

「い、いやおかしいだろ!?六人だぞ!?いくら俺たちのレベルがそんなに高くないからって、ていうか酸素だって満足に吸えるはずがッ!?」
「根性ッだぁああああああああ!!」
「んなアホなぁあああああああ!!」

と、Xはひとしきり叫んでから、目の前の火柱がみるみる縮んでいっていることに気付いた。
まずい、と、Xの頬を冷や汗が一筋流れ落ちる。このまま火柱が消えてなくなれば、中にいるナンバーセブンに何をされたかわかったものではない。
とっさに周りの仲間に「お前ら何気ぃぬいてんだ!根性だせやぁああああ!!」と叫ぼうとあたりを見回す。が、飛び込んできたのは思わぬ光景だった。


70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 01:23:47.99 ID:ssGaLzbU0

「まったく・・・この私を超無視するとは、ほかの奴らといいアナタといい、まぁ超いい度胸してますね」

そこにいたのは、小柄な少女。
そしてそのさらに後ろにはもはや火柱とは言えない、文字通り空前の灯となっている炎の中に佇む一人の男。
その周りには完全にのびている五人の男達。

「あ・・・いや・・・その・・・あはははー・・・」

もうXの表情には苦笑いしか残っていなかった。
ジリ、と、少女と男がこちらに間をつめてくる。
少女はその年齢には不相応な悪意の籠った目つきでXを見据え、後ろの男は全身から白い煙をもくもくと漂わせながらも、力強くこちらに歩みを進めてくる。

「く、くるんじゃねぇっ!この女ぶち殺すぞっ!!」

もうヤケになったXは胸から拳銃を取り出したかと思うと、削板より手前にいた正体不明の少女にむける。
なぜここにいるかは知らないが、おとりをとればナンバーセブンも手はだせないだろうという、追い詰められた人間の浅はかな考えだった。
しかし絹旗の窒素装甲(オフェンスアーマー)は拳銃などもろともしないため、彼女自身はXににじり寄るのも、睨みつけるのもやめようとはしなかった。

「ここにきて人質をとろうとするとは。完全に超小物のやることじゃないですか。残念ですがこの私にそんな物は」
「ここまで根性みせても何も感じねぇってことか・・・」


72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 01:30:38.43 ID:ssGaLzbU0

絹旗がXに向けるのを悪意の視線から哀れな生き物を見る冷淡な視線へとシフトさせているさなかに、後ろの男が低く唸るような声でつぶやいた。
ていうか、彼は本当に大丈夫なのだろうか?なんだか全身からもくもくと煙が立ち上っていてよくわからないが、
とりあえず動いたりしゃべったりするうえで問題はなさそうだが・・・。
と、男の声を聞いて絹旗は少し後ろが気になった。

(・・・いや、やっぱり超大丈夫じゃないでしょう!?いくらなんでも・・・)

絹旗は完全にXから視線を外し、後ろの男を振り向く。


――――その時、パァンと、缶尺玉のような音が路地にこだました。


73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 01:37:53.93 ID:ssGaLzbU0

銃声は無論Xが絹旗に向けて放った物だった。
しかし、その銃弾は絹旗には着弾していない。
かといって絹旗の窒素装甲(オフェンスアーマー)が防いだわけでもない。
代わりに絹旗の目の前には、学園都市に七人しかいないレベル5、ナンバーセブン削板軍覇が絹旗をかばうようにして立っていた。
だが、Xが発砲するまでの間に、削板がさっきまでいた場所から絹旗の前に出ることなどは到底不可能である。
しかし、もし彼が、音速の二倍の速度で彼女の前に躍り出たとしたならば、それはいともたやすいことだった。

「やっぱり俺が拳で教えてやらなきゃいけねぇみてぇだなッ・・・!!」

今、何が起こった?
Xだけではなく絹旗も口をあんぐりとあけて目の前の男を凝視していた。
二人から見たら、まるで目の前に彼がワープしてきたかのように見えたのだ。
しかしそんなことはおかまいなしに、ナンバーセブンはギチギチと力強く拳を握る。
それに気付いたのか、Xの顔が一気にひきつる。
「ひ、いや、簡便しt」
「すごいパーンチ」
「ビブルチ!?」
絹旗とXの間も結構空いていたのだがそんなことすらお構いなしに、彼のパンチはXにクリーンヒットし、Xはそのままはるか後方へスライディングしていった。


75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 01:49:31.68 ID:ssGaLzbU0

(あちゃー、流石にこの地面にこすり付けられるのは超いたそうですね)

絹旗は路地を滑走していった男に冷ややかな目を向けながらそう思った。
男は数秒間地面を滑走してから、突き当りの壁に衝突してのびていた。どうやらこの路地は袋小路になっていたようだ。
それにしても本当に、目の前のこの男はいったい何者なのだろうか?と、絹旗は不思議そうに目の前の男をみつめる。
炎の中から出てきた時から、体中から白い煙が立ち上って、というより噴出されているのだが、一体どういう原理なのだろう?
彼の能力に関係があるのだろうか?

「ったく、本当に最近の若者は根性がなってねェ。せっかく俺が漢の根性を・・・」

目の前の男もやはり飛んで行った男をみながら、なにやらブツブツつぶやいている。
その男を前にして、絹旗は感じたことのない奇妙な感覚にとらわれていた。
・・・確かにさっきまでは、この男を探していた。
わざわざ『アイテム』のメンバーに話題を振ってまで、さらにそれで収穫がなかったことに多少落胆したりもした。
しかし・・・会ったからといって何をしようだとか、何を話そうだとかいう考えは全くもってなかったのだ。

(な、何て言えばいいんでしょう・・・あ、とりあえず超かばってくれたわけですから、超お礼をいわないt)


77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 01:59:33.34 ID:ssGaLzbU0

「ん?あぁ、お前は最愛じゃないか!奇遇だな」

気付いた削板は片手をあげて気さくに挨拶をかます。
しかし彼女の思考は既に停止していた。
それは目の前の男がブツブツ何かを言うのをやめ、絹旗に気付いたからではない。
彼が昨日会った自分の名前を憶えていたからでもない。
目の前の男、削板軍覇。学園都市に七人しかいないレベル5のナンバーセブン。
彼は銃弾でもナイフでももろともせず、さらに今回は炎にまかれても平然としているような屈強な体の持ち主である。
先ほどまで黙々と全身から煙を漂わせていたためにほとんど影しか見えていなかった彼の姿は、いつのまにだか煙は収まり、すっかり白日の下にさらされていた。
――――そう。
いくら本人の体が平気でも、身にまとう衣類がそれについていけるということには当然ならず――――

「―――――ッッ!!」

屈強な男の体は生まれたままの状態でその場にさらされていた。
絹旗は一糸まとわぬ男の裸体をまじまじと見たことなどない割とピュアな女の子である。
彼女の顔はみるみるうちにかぁっと赤くそまっていった。
「あ」
削板が気付いた時には時既に遅し。絹旗最愛は無意識のうちに窒素装甲で目の前の男をふきとばし、彼は結構前の謎の金髪との衝突以来、久しぶりに気絶というものをすることになる。
絹旗最愛の能力窒素装甲(オフェンスアーマー)。レベル4の能力者である彼女は窒素を操り、銃弾をもろともしない装甲を生み出し、
時には圧縮し窒素の塊を操って大きなものを動かしたりもできる。
さすがに彼といえど、男の急所をそんな能力で狙われてはひとたまりもないということなのである。


78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 02:08:04.71 ID:ssGaLzbU0

「にしても、服は超燃えつきてるのに、髪は超大丈夫って一体どういうことなんでしょう?」

絹旗最愛はため息交じりに呟いた。
不良共は別段どうでもよかったが、自分を庇ってくれた男をそのまま(裸体のまま)路地に放置していくわけにもいかず、
とりあえず上着だけでも周りの奴の者をはいで削板にきせようと試みていた。

(超意識するな超意識するな超意識するな超意識するな)

しかし、先ほどから手がやけに汗ばみ、うまくきせることができない。
目の前の男を直視することもままならないため手探りの作業となっており、大変な苦痛を強いられているところだった。

(は、早くしないと・・・こんなところ人に見られでもしたら超面倒なことに!!それだけは避けないと!!特に『アイテム』の面々と遭遇するのは超危険です!!)

仕事仲間にこんなシーンを一眼でも見られようものなら、これから先の仕事が全て苦痛に変わること請け合いである。
しかし頭では分かっているのだが、体はロボットのようにカチコチになっていてやはりうまくきせることができない。
今やっと右そでに腕を通し終わったところだった。

「ていうかあなたはいつまで超寝てるんですか!?そろそろ起きて自分で超どうにかできないんですか!?」

耳まで真っ赤に染めながら、それでも眼だけは固く閉じ続ける絹旗は、先ほど目の前の男の急所を窒素装甲でどついた女性のものとは思えないような発言をする。
そんなこんなでやっとの思いでどうにか上着だけでも着せたところで、絹旗は深く深呼吸した。


79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 02:11:07.13 ID:ssGaLzbU0

(超どうしたっていうんでしょう、一体・・・)

考えれば、そこまで焦ることでもないのだ。男の半裸など、彼女の趣味であるB級映画鑑賞じゃ結構目にすることだし(流石に全裸はないが)、
下半身にあらかじめほかの奴らの上着でもなんでもかけておけば何の問題もなかったではないか。
絹旗は自分のばかさ加減に嫌気がさしてまたふぅっとまた軽く息を吐いた。

(しかし・・・流石にズボンを履かせるのは超抵抗がありますね)

絹旗は顔をわずかに紅潮させながら、チラッチラッと上着だけを来たこの状態ではそのまま警備員(アンチスキル)に連行されてもおかしくない男を見ながら考える。
いや、少し、いや超冷静になりましょう。
ズボンを履かせるなんて上着に比べたら超簡単じゃありませんか?ほかの奴らから脱がせても下着ははいてるでしょうし、
履かせる時だって二本の足に二つの穴をスルリと通せばそれだけで超おしまいじゃないですか!!何それ超カンタンじゃないですか!!
超何も超問題はありませんッッ!!そもそも超私らしくないじゃないですか、超こんなことで超動揺するなんて超ッ!!

「・・・よし」

ゴクリ、とのどをならして、絹旗が(自分なりに)結構綿密に脳内シミュレートしたことを実行に移そうとした時のことだった。

「本当にここら辺ですの?」
「!!?」


81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 02:18:49.50 ID:ssGaLzbU0

(ち、ち、超ピンチですッ!?)

近くから人の声がする。しかも、どんどんこちらへ向かってきているようだった。

「おかしいですね。確かにここら辺って通報があったんですけど・・・」
「急に爆発音だなんて・・・またどこぞの能力者が不用意に能力を使用したに違いありませんの」
「向こう側の路地には誰もいませんでしたから、たぶんこの路地の奥ですよ」

通報?声からして子供のようだし、たぶん風紀委員(ジャッジメント)であろうと絹旗は冷静に推測している―――
――――場合ではなかった。

(と、とにかく超隠れないと!?しかし下半身を超露出したままの彼をおいていくわけには・・・ていうか私も超逃げ場ないじゃないですか!?)

もはや自分の顔のほてりが焦りからきているのか恥ずかしさからきているのかもわからず、絹旗はおろおろと体を揺らしていた。
場所は路地の袋小路。二つ分の足音がこつこつと、決して早くはないが遅くもないスピードで迫ってきている。
このままではあと数秒もたたないうちに女子中学生と下半身を露出させた根性男とくたばっている数人の男達に真っ黒な地面の焦げ跡という、
第三者が見たら訳が分からな過ぎて思わずその場から逃げ出してしまうようなシュールな光景が約二名(しかも女子)にさらされてしまうことになる。
絹旗は削板のように音速の二倍の速さで行動できるはずもないため、見つかる前にズボンをほかの奴から脱がしてさらに半裸の男にはかせるなどという芸当はできない。
ここは袋小路であるため逃げ道もなければ、隠れられるようなもの影すらここには存在しない。
完全に、手詰まりであった。

(うぅうううううううううッッッ!!)


82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 02:26:00.08 ID:ssGaLzbU0

すいません、眠気が・・・(´・ω・`;)
区切りがいいので、また明日の朝続きを書くということではだめでしょうか・・・
もしかしたら前の方が戻ってきているかもしれませんし・・・
ちなみに書き溜めなどしていないので勢いで物語が進んでいますがご了承ください


83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 02:30:15.83 ID:d6ctQiS/0

まだまだいけるだろ? ん?


85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 02:32:23.48 ID:ssGaLzbU0

ちなみに、今見てくださってる方はどれくらいいらっしゃるんでしょうか
需要がけっこうあるならまだ書きたいと思います


88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 02:44:00.27 ID:TIuaR0yY0

根性が足らんな


90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 02:48:43.64 ID:ssGaLzbU0

では根性いれてもうちょっと頑張ってみます
突然消えるかもしれませんがいけるところまで




「うがぁあああああッッ!!」

ドゴォンドゴォンドゴォン!!

「ぬっふぇ!?」
「な、なんですの!?」

風紀委員(ジャッジメント)である初春飾利と白井黒子は、謎の爆発音の通報を受けこの近辺を捜索している途中だった。
大通りで何かが爆発した形跡はなかったため、それならば路地裏が怪しいのではないかとそこら辺の路地裏を調査していて、
初春が言うにはここが怪しいという路地を調査しに入った途中である。
しかし、丁度路地の奥の角を曲がろうとしたところで、何やらけだもののような叫び声と何かが壊されるような音が聞こえ、そして軽い地響きが起こった。
黒子は反射的に初春を自分の後ろに回し、勢いよく角から飛び出す。

「風紀委員(ジャッジメント)ですの!!おとなしく・・・!・・・?」
「どうかしました?白井s・・・うわぁ。なんです?コレ」
「わ、わけがわかりませんの・・・」


93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 02:58:47.89 ID:ssGaLzbU0

二人の少女達の目の前に広がっていたのは、あまりにも非日常的な光景だった。
まず、そこら中でのびている六人の男達。うち一人は突き当りの壁にまるで地面を滑走していったかのように衝突している。
そして、中央に残る、まだ新しい様子の大きな円状の焼け跡。発火能力者(パイロキネシス)によるものだろうが、なぜこんなものがこんな場所にあるのだろうか。
最後にもっとも奇怪なのは・・・・。

「こんな大きな穴が三つも・・・」

突き当りの壁。そしてその壁を挟む左右の壁。それぞれに大きな穴があけられていたのだ。建物の中は丸見えになっているが、幸い誰かが巻き込まれたような様子はなかった。
あまりにもきれいにポッカリとあいた穴が三つ、さらに地面に円状の焼け跡と、何やら宗教めいたものを感じさせる構図に仕上がっていた。
初春はびくびくしながらその光景をみつめる。

「あ、あそこから逃走したのでしょうか・・・。逃走経路をわからなくするために三つもあけた。ってことですよね?それ以外の意味はありませんよね?」
「何があったのかはわかりませんが、これは何やら大きな事件のにおいがしますの・・・初春、あなたは警備員(アンチスキル)に応援要請を!
 あなたの言うとおり、あれはおそらく逃走経路・・・。私は犯人を追いますの!何を考えてるかわかりませんから、周辺の民間人に注意を呼び掛けておいてくれます?」
「は、はい、わかりました!白井さん、気を付けてくださいね・・・・!」
「わかってますの・・・ッ!!」

黒子は力強くそういうと、風を切るような音とともにその場から消えた。
彼女の能力、空間移動(テレポート)である。


94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 03:04:37.96 ID:ssGaLzbU0

絹旗最愛はホテルの一室で一息ついていた所だった。
初春飾利の予想通り、彼女は逃げ道を強制的に三つ作り出すことによって追跡されにくいようにしたのだ。
ちなみに彼女がとびこんだのは左の穴で、その建物が何やらホテルであったらしく、
いまだに気絶したままの削板軍覇をトイレにぶちこんだのちなんとかホテルの一室を借りたというわけである。
途中で風紀委員(ジャッジメント)の腕章をつけたツインテールとすれ違ったが、
見た目はごく普通の女の子である絹旗が関係しているとは思われなかったのか、どうやらばれてはいないようだ。
ちなみのそのツインテール、白井黒子は右の建物から順番に不審者を探していたので、
絹旗が削板をトイレにぶち込む場面は見られずに済んだのだった。
ホテルの中からでてきてホテルの部屋を借りるというのもおかしな話なので、
カウンターの目を盗んで外に出てからまた入り部屋を借りるなどという面倒なことをするハメにはなったが、
なんとか逃げ切れたようで今は安堵の息が漏れるばかりだった。

「・・・で、この男性はいまだに超下半身露出中なんですが・・・。もう恥ずかしがるのも超アホらしくなってきました」

安堵とは別のハァという息をもらしながらベッドの上で体操座りをする。
とりあえず彼には布団をかぶせてあるが、風紀委員(ジャッジメント)から逃れたとはいえこのままではまずい。
ていうか本当超目をさましませんねこの男性は。


95:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 03:25:54.30 ID:ssGaLzbU0

本来ならば。
いくら助けてくれたとはいえ、こんな見知らぬ男のためにここまでする必要はなかったのかもしれない。
絹旗最愛は見た目こそ中学生程度の少女ではあるが、これでも学園都市の暗部、『アイテム』の一員なのだ。

金のために簡単に人を殺す。
命令があれば敵をつぶす。
何の感慨もなく後悔もなく、目の前に現れる障害を瞬時に即座に簡単にいくらでも殴殺できる。
義理と人情なんて言葉からは程遠い学園都市の闇の一員である。

そんな彼女が、いくら一人の男が全裸で路地裏で倒れているからと言って、
いくらそれが自分を助けた男だからと言って、だからその男を助けるなどという思考にはもしかしたら直結しないのかもしれない。
少なくとも麦野だったらそのまま放ってどこへなりと消えていただろう、と絹旗は思う。

『ん?あぁ、お前は最愛じゃないか!奇遇だな』

それに、彼は別に自分のために立ち向かったわけではないのだ。確かに自分のためではあったが、絹旗最愛個人のためではないのだ。


96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 03:28:26.86 ID:ssGaLzbU0

(別に、絹旗最愛を超心配してもらいたかったってわけじゃ超ありませんけど。超ありませんけどッ!)

けど・・・と、絹旗は思考をいったん止める。
体育座りのまま、顔を腕の中に意味もなく埋める。
自分の考えていることがよくわからなかった。
まぁ私自身、いくら超暗部の一員だとはいえ、人間としての感情も普通に、ていうか超もってるとは思いますけどね。
フレンダだったらどうしたんでしょう?滝壺は?浜面・・・は、いいや・・・。
そもそもなんでそんなことに思いをはせているのだろう?
この男を助けた理由なんてどうでもいいんじゃないか?
なんでそんなに悩む必要がある?

それでも超気になるんですよね・・・。なんだか、大切な理由が、『ココ』に超ある気がするんですよね・・・。

絹旗は小さな手でぎゅっと胸のあたりをつかむ。
そしてベッドに横たわる男の顔を見る。
いまだに名前も知らない男。自分を助けてくれた男。時代錯誤の根性バカだけど、まっすぐな瞳をもった男。

すっと。

体育座りをといて。

のそのそと男に近づいてみる。


97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 03:30:29.02 ID:ssGaLzbU0

すいません限界です
四時間後くらいにまだ残ってたら超きます
すいませんすいません申し訳ありません

それではみなさんおやすみなさい
(´・ω・`;)


99: 忍法帖【Lv=2,xxxP】 :2011/03/07(月) 03:33:56.73 ID:E1Fu3ZvV0

おまえら、保守は任せた


104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 08:17:26.77 ID:etOxOX2g0

ほっしゅ


106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 08:49:04.19 ID:ssGaLzbU0

こうしてみると男は気絶しているというより、まるで眠っているかのようだった。
まじまじと顔を見てみると、根性を出しているときの表情とのギャップからか、通常よりもイケメンに見えるのは気のせいだろうか。

(まぁ私としては超イケメンよりも、このくらいのB級イケメンの方が超タイプなんですけどね・・・)

真上から改めてまじまじと男の顔を眺めながら絹旗は考える。

(いや、超勘違いしないでくださいね。B級映画にでる男優の好みの話をしてるんですからね?)
「・・・・」
「・・・もうちょっと近くで見ないと超よくわかりませんね」

自分でも何がわからないのか疑問を抱きながらも少しずつ男の顔に迫っていく絹旗最愛。
ただ別にこのままキスしてしまおうとかそういう淫らな考えがあったわけではなく、
彼女は純粋に自分の中にある気持ちの正体を探っているに過ぎない。
本当はわかりきっているはずなのに、尚も彼女は男の変わらない表情をひたすらに見つめていた。
昨日助けてくれたこと。
今日また自分の前に躍り出てくれたこと。
「・・・私は」

コンコン


107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 08:53:12.39 ID:ssGaLzbU0

「・・・・・・」

コンコン

「・・・・」

コンコン

「・・・」

コンコン

「だぁーーッ!?まったく超空気読めませんね!?今超いいとこr・・・でも超ありませんでしたけどね!」
絹旗はピョンと小動物のように飛び跳ねて男から離れ、そして綺麗に着地した。
正体不明の不満と憎悪が自分の中で渦巻いているのがわかった。ただひたすらに気分が悪い。
それにしてもいったい誰が訪ねてくるというのだろうか。部屋を間違っていたら一発どついてやってもいいかもしれない。
などと考えながら絹旗が右手をぐーにしながらズンズン扉に進んでいくと、

「ごめんくださいですの」


111:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 09:43:48.46 ID:ssGaLzbU0


(ですの・・・?)
なんだかどこかで聞いたような、などというあいまいな記憶が、扉を開けると同時に一気に鮮明に思い起こされた。
(こ、こいつは・・・風紀委員(ジャッジメント)の超ツインテール・・・ッ!?)
絹旗の目の前にはなぜかにっこりとほほ笑む白井黒子が佇んでいた。
そもそも、扉に出る前に向こうにいる人物がだれなのかくらい警戒しておくべきだったと、絹旗は本日何度目になるかもわからない後悔をする。
こんなにも直情的に行動を起こしてしまうのは、絹旗にしては珍しいことだった。
(まったく、自分のことを百発超ぐらい超ぶんなぐってやりたい気分です・・・)
しかしそんな絹旗の心情とは裏腹に、目の前のツインテールは気味の悪いほどにこやかな、いわゆる営業スマイルを展開していた。

「風紀委員(ジャッジメント)ですの。実は先ほど起こった事件について調べている所でして、今こうやって各部屋を回って聞き込みを行っているというわけですの」
「はぁ。それは超ご苦労様ですね」

『先ほど起こった事件』か・・・。
この娘、もしかしなくても私に超カマかけようとしてますね?ここはボロがでないように、超慎重にいかないと・・・。

「それでさっそくですけれど、先ほど起こった事件について何か知っていることなどはありません?」
「はぁ?何言ってるのか超わかりかねますね。先ほど起こった事件ってだけじゃ、私には何の事件だか超サッパリ・・・」
「あらまぁ」

ツインテールは大げさに目を見開いて口に手をあてた。


108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 09:21:07.25 ID:ssGaLzbU0

なんだ、この反応は?絹旗の中ではボロをださなかった自分に賞賛の拍手を送ってやりたいくらいなのだが。

「何超驚いているんです?」
「いえいえこれは失礼しましたわ。何せ、アナタ以外の人は全員、『先ほど起こった事件』というと、『あぁ、さっきのあの音のことですか?』とおっしゃったのに、
 あなただけ何の事件だかわからないご様子でしたので」
「ッッ!!?」(こいつ・・・)

一瞬心臓がビクンと飛び跳ねた絹旗だったが、すぐに頭を切り替え冷静な判断をしようと試みる。
このやけにしゃべり方がイラつかせるツインテールの言っていることが嘘という可能性もあった。
いくら大きな音が出たとはいえ、それを『先ほどの事件』と言われたときに全員がそこに関連性を見出すことなどあるだろうか。
一人くらい、え?なんのこと?なんていう奴がいてもおかしくない。
そして逆に言えば、その一人が別に絹旗自身でもなんら不思議はないということだ。
よって、絹旗はちょっと何かを考えるようにして黙ってから、こういった。

「ん~?あぁ、あの超すごい音のことでしたか。すいません、超頭から抜けてました。でも、それでも私が何も知らないことには超変わりありませんし」


109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 09:31:26.43 ID:ssGaLzbU0

こういってしまえば何も問題はないと思った。
しかし目の前のツインテールのにこやかな表情は不気味なくらい変わらない。

「そうでしたの。まぁ誰にだって度忘れのようなものはありますわ」
(な、なんかこいつ超気持ち悪いですね。こっちはあの男性を超早くどうにかして帰りたいというのに・・・)

もはやさっきまで彼や自分自身に抱いていた興味など遠くへ行ってしまっていて、絹旗はこれまた本日何度目かわからないため息をつく。

(何というか、今日は超不幸ですね・・・)
「では、大きな音があった時のことの詳細をお尋ねしたいと思いますの。こちらのお部屋は揺れたりしましたの?」
「いえ・・・ていうか、私が超大きな音を聞いたのはこのホテルに入る超前です。ですからこのホテルで音を聞いたわけではないので、そんなことは超わかりませんね」
「そうでしたの・・・」

ツインテールの表情に若干の陰りが浮かんだ。
しかし絹旗自身は内心相当焦って心臓がのどからとびでるかと思った。揺れたのかどうかきかれた瞬間、え?いや私壊した本人で、外にいたからどの程度の揺れとか超わかりませんよ!?
ん?外にいたから・・・?といった風に、直後に自分が穴をあけた後にホテルに入ったことになっていることを思い出したのだ。
そして、焦りとともに多少の安堵もあった。
こうなってしまえばもうそろそろ聞くこともないだろう。ホテル内にいなかった彼女からこれ以上事件について言及することはないはずだ。
やっと解放されるなどと思いながらツインテールの言葉を待っていると、独り言のようにポツリと、目の前の少女がつぶやいた。

「・・・おかしいですわね」


112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 09:46:18.25 ID:ssGaLzbU0

「は?」

おかしいことなど超何もないと思うんですが。と絹旗が言おうとすると、

「だってアナタ聞くところによれば、ホテルの中から出てきて、いったん外に出てからまた中に入って部屋を借りたそうじゃありませんの」
「!?」

これはさすがに絹旗の顔に明らかな動揺が走った。
しかし。

(超ハッタリですね。私は超絶対にバレないように行動してましたし)

そう思い直すが、動揺しきった表情を覆うことはできない。
白井黒子は「どうかしましたの?顔色が悪いですわよ」とニタニタしている。
相手が相手ならば既に愉快な肉のオブジェにしているところだが、さすがにそれはまずいとふみとどまる絹旗。
彼女が殺気を押し殺しながら必死にどうすればいいか思案しているその時に、もう一つのトラブルが発生した。

「う・・・、少女の一撃で気絶とは。どうやら俺もまだまだ根性がたりてねぇみてぇだ。・・・鍛えなおすか」

「・・・本日二度目の超ピンチですね」


113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 10:06:59.29 ID:ssGaLzbU0

「? 奥にだれかいらっしゃいますの?といいますか、あなたのようなお子様が一人で外泊などというのもおかしな話ですが」
「それを言うならあなただって超お子様じゃないですか」

お子様という言葉にカチンときた絹旗はキッと黒子を睨むが、黒子の意識はすでに部屋の奥に向けられていて絹旗の視線に気づく気配はない。

「殿方の声ですの?ハッ!まさかこんな真昼間から二人d」
「あなたの考えてるようなことは超ありませんので心配してもらわなくても超結構ですッッ!!」

にしてもこれはいよいよ困ったことになったと、絹旗の頬には余裕のない冷や汗が一筋流れる。
あの男がこの場をうまく取り繕ってくれるとは思えなかった。むしろ何から何まで正直に話してしまいそうだ。
そして正直に話したところで簡単に信じてもらえるわけもない。
ていうか、理由はどうあれ絹旗が建物の壁を三枚ほどぶちぬいたのは事実であるのでそれが知られるのは非常にまずい。

「ん?何か服が違・・・うぉっ!?ズボンがねぇ!?パンツもないっ!?クソッ、俺の根性が足りねぇばっかりに!!」
「」
「」

二人の少女は言葉を失っていた。
絹旗は体をふるふる震わせながら思う。
起きたら下半身が無防備状態なのに驚くのは超わかります。
しかしなぜそれをそんな超大声で超高らかに宣言する必要があるのでしょう?

そしてカチャリ、と。

なにやら手錠のようなものの音がした。


116:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 10:37:16.04 ID:ssGaLzbU0

考えながら書いてるので遅筆です、申し訳ない



「・・・でないわね」

削板軍覇が学園都市に七人しかいないレベル5のうちのナンバーセブンであるのに対し、第四位の『原子崩し』の能力を持つ女性、
麦野沈利はいつまでもコール音が鳴りっぱなしの携帯電話を訝しげに見つめながらつぶやいた。

「絹旗のことだし、結局どっかの映画館でケータイの電源切って映画に没頭してるに違いないって訳よ」
「絹旗、さっきちょっと怒ってたみたいだったけど・・・」
「心配すんなよ滝壺。あの怒りは俺に対して限定だったみたいだしな。お前のせいじゃねぇよ」

絹旗最愛を除く『アイテム』のメンバーは、いつものファミレスに再集合しているところだった。
麦野はプチっと携帯を切ってから、まぁいっかと何やら開き直った様子で携帯をしまう。

「で、結局もう日も暮れだしたこの時間にどんなお仕事をするワケよ?今日はせっかくサバ缶天国ブツブツ・・・」

フレンダがブツブツと文句を言うのを気にも留めず、麦野は全員にむかって言葉を放つ。
「私だってやりたかないわよ。でもまぁ仕事内容見た限りじゃ簡単に終わりそうだし、絹旗がいなくても支障はないでしょ」
「で?その内容っていうのは何なんだ?」
「それはね、はーまづらぁ、あんたならちょっと詳しいかもしれないわね」
「俺が・・・?」
浜面仕上は無能力者、レベル0の男である。
もともとはスキルアウトを束ねるリーダーだったのが、見知らぬツンツン頭の少年にぶん殴られて気付いたら暗部の組織、『アイテム』の主に雑用を担う位置に落ち着いてしまっていた。
そんな浜面に詳しい話題などというものがはたしてあるのか、ましてや『アイテム』の仕事内容にかかわってくるとは到底思えなかった。

「キャパシティダウンって、知ってる?」


117:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 10:52:04.93 ID:ssGaLzbU0

キャパシティダウンとは。
その名の通り能力者の能力を低下させる効果をもつもので、特殊な音で能力者の演算能力を狂わせるものだ。
スキルアウトは能力者を目の敵にしているため、一時期彼らの間でソレが流行っていたのだが、いつの間にか名前も聞かなくなっていたので、
浜面はあぁそんなもんもあったっけと記憶の隅を刺激された。

「聞いたことぐらいはあるが・・・俺は使ったこともなければ見たこともねーな。それが今回の仕事内容に関係してるのか?」
「チッ。情報ゼロかよ。ここまで使えない男だとは思わなかったわ」
「あれ?今なんかすごいひどいこと言われた気がするよ?」
「大丈夫、私は麦野にさげすまれるそんな浜面を応援してる」
「それで結局、そのキャパシティなんちゃらってのは何なの?」
「まー簡単に言うなら、能力者の演算能力を狂わせる音を出す機械のことなんだけど、以前凍結したはずのソレについての研究が某所で再開したらしいのね。
 そして『改良版』・・・いえ、むしろ『改悪版』がスキルアウト共に出回りつつあるらしいんだけど・・・」
「『改悪版』?」
「そ。何でも以前のものは無能力者には聞かなかったんだけど、今出回ってるのは人間の脳内の処理を意図的に妨害しちゃうらしいわ」
「そ、それって、すごいっつーか何つーか、やばいんじゃないのか・・・?」


118:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 11:07:28.49 ID:ssGaLzbU0

人間の脳内の処理の妨害。
浜面にはよくわからなかったが、とにかく人間が普通に歩けなくなったり、立っていられなくなったり、言葉を喋れなくなったりするということだろうか?
何にせよ、非常に危険な代物であるということだけはひしひしと伝わってくる。
しかしそんな緊張した面持ちの浜面を見ながら、麦野はつまらなそうにフンと鼻をならす。

「とりあえずその研究がすすめられ、かつそんなものが出回ると困る『お偉方』がいるってコト。
 能力者達の脳みそこねくり回した野郎どもが、今度はほかの奴らに脳みそ傷つけられるのが怖いってとこかしらね」
「あー、でも、それってわざわざ『アイテム』に頼んでくるようなことじゃ・・・普通に警備員(アンチスキル)とか・・・」
「知らないわよ!クッソ!!何で私たちが研究者共のしりぬぐいをしなきゃならないんだか・・・ッ!上の○○○○どものせいで私の貴重な時間が・・・!」

麦野の言葉に怒気がこもり口調と顔色が一気に悪くなる。
「あれ?余計なこと言っちゃった?」という顔をしているフレンダを横目に、浜面は苦笑いを浮かべるしかない。
下手に今の麦野を刺激すると上半身と下半身がさよならしそうだ。


119:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 11:22:31.66 ID:ssGaLzbU0

「ま、仕事内容は研究所の壊滅っていうより、研究の存在自体の抹消だから、そこらへんに意味があるのかもしれないけどねぇ・・・」
「つまり、殲滅戦ってこと?」
滝壺さん。おとなしそうな顔してそんな怖いワードをだすのはやめてください。と、浜面はひきつっていた顔をさらにひきつらせる。
「とにかく、研究所の方は私が一人でヤるから・・・雑魚どもの処理よろしくね☆」

深いため息をついてからゆらりと立ち上がった麦野の顔はとても見れたものじゃなかった。

(結局八つ当たりしたいだけなワケよ・・・)
(八つ当たりしに行くんだな・・・)
(八つ当たりだね・・・)



何はともあれ、かくして若干一名を欠いた『アイテム』の仕事が開始された。


121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 11:37:23.87 ID:ssGaLzbU0


「・・・はぁ。超疲れました」

絹旗最愛は夕焼け色に染まり人もまばらになった第五学区の大通りを一人トボトボと歩いていた。
結局あの後手錠はかけられたものの、即座にとんだ絹旗の手刀のクリーンヒットによりツインテールは昏倒。
手錠はいとも簡単に外すことに成功(力技)。
件の男をなんとか部屋に留まらせて近くの店で適当にズボンを買って部屋に戻り、
「パンツがn」
「根性で超なんとかしてください」
「心得たッ!!」ドバーン!!
などという会話の押収を終えて、先ほどやっと彼と別れ解放されたわけだが、もはやショッピングはもちろん映画一本見る体力すら残ってはいなかった。
(・・・あ、遂に名前も超聞きそびれてしまいましたね・・・)
向こうは別れ際に「すまなねぇ!俺の根性が足りないばっかりに!!」とか、「またな最愛!この恩はいつか必ず返す!」などと言っていたが、
それらの言葉をあしらうのが精いっぱいで名前を聞くタイミングも心の余裕も持ち合わせていなかったのだ。
でも、

「またな・・・ですか」

また、会うことになるんだろうか。
『この恩はいつか必ず返す!!』
あの根性バカの彼が、一体どのような形で恩をかえすというのだろう?
若干の興味と、そしてよくわからないが温くてふんわりとしたものが胸にこみ上げるのがわかり、自然と口元が緩んだ。

「・・・ま、超期待しないで待ってるとしますかね」


120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 11:35:19.71 ID:ssGaLzbU0

もう今日はまっすぐ家に帰ろうとしていると、ふと路地裏の方から声が聞こえた。

「おいにーちゃん、もってんだろ?」
「早く出した方が身のためだぜ?」
「か、簡便してくださいッ・・・!」
「いーじゃねぇか財布の一つや二つぅ」

・・・こういう輩は本当に超後を絶ちませんね。
何やらだれかが不良に絡まれているらしい。
能力などを使っている様子はないので、不良たちはおそらくスキルアウトだろうと推測できる。
普段の絹旗ならば、こんなことに首をつっこむようなことはしない。
(超運が悪かったですね。超ご愁傷様です)
とでも思いながら歩くスピードを緩めることもなくスルーして一刻も早く家に帰ろうとするはずだ。
しかしその時の絹旗はなぜか足をとめ、下品な笑い声と恐怖に怯えた声が交互に響いてくる暗い路地裏の向こうを見据えた。

『―――よう、随分と根性の足りねー事やってんなぁ』

彼ならばこんな時、どうするだろうか。
こんな根性なしの奴らの声を聞いたなら、彼はいったいどんな行動をとるだろうか。

――――そんなの超わかりきっているじゃないですか。

そんな回答を思い浮かべる前に、すでに絹旗の足は路地の闇に向かって進み始めていた。


122:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 11:44:30.88 ID:ssGaLzbU0

絹旗はあの男のように根性についての持論を持ち合わせてなどいない。
かといって弱気を助け強きをくじくヒーローでもない。
だったらなぜこの足はこんな路地の闇へ迷いもなくズカズカとふみこんでいくのだろうか?
そんなことは知らない。
そんなことはわからない。
ただ、唐突に、彼と同じことをやってみたかっただけだ。
彼と同じことをすれば、彼と同じものが見えて、彼と同じ気持ちが得られるのではないかと、
そんなありもしない可能性に、自分でもよくわからないままにすがってみただけのことだ。
「あ?なんだてめぇは」

「―――随分と、超根性の足りない事やってますね」

絹旗は憮然とする。
目の前にいる男は四人で、三人が不良、一人はメガネをかけたモヤシ男だった。
加えてこのくらい路地裏、どう見ても典型的なカツアゲのパターンだ。


124:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 11:54:33.51 ID:ssGaLzbU0

「根性だぁ?なにいってんだこいつ?」
「口の悪いガキだなぁこいつぁ。躾が必要か?ヒヒヒ」
「・・・その余裕、もしかして能力者か?」

絹旗最愛は答えない。
ただ養豚場の豚でも見るような冷ややかな視線を男たちに浴びせるだけだ。
その反応から男たちは彼女が能力者であると確信したのか、互いに何度か視線をかわす。
そこら辺のスキルアウトであったなら、そこで逃げ出すか、襲ってくるかの二択に分かれるだろう。
しかし彼らはそのどちらでもなかった。
彼らは高らかに声を出して笑い始めたのだ。

「・・・何がそんなに超おかしいんですか?」
「・・・いけよ」
「・・・え?え?」

さらにスキルアウト達は、絹旗の予想外の行動をとった。
カツアゲをしていたモヤシを逃がすといい始めたのだ。
モヤシはしばらくその場にへたりこんでキョロキョロとあたりを見回してからから、
何かに気付いたかのようにヒィッと奇怪な声をあげて、仁王立ちする絹旗のよこを抜けすたこらサッサと逃げ出した。

「・・・超どういうつもりですか?」


125:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 12:01:51.74 ID:ssGaLzbU0

「アイツを助けに来たんだろ?解放してやったからよ、お前も逃げたら?」
「・・・言ってる意味が超わかりませんが。なぜ私があなたたちから超逃げないといけないんですか?」
「あーあーやだやだ!強者の余裕ってやつかぁ?お前みてぇなガキでもバケモンみてぇな能力持った奴はココにゃぁゴロゴロころがってるからなぁ。
 あームカツク。ホンットムカツク」
男たちは言いながら、三人で三角形に絹旗を囲み始める。
何を考えているのかまったくよめなかった。なにか能力者相手の秘策でもあるのかもしれない。
ならば早々に終わらせて悪いことはないだろう、と、絹旗が拳をふりあげようとしたときだった。
「まてよまてよお嬢ちゃん。そんなカッカしないで、お兄ちゃんたちとゆっくり語り合おうぜぇ――――」

その時絹旗最愛は見た。
彼らがよくわからない耳あてのようなものをつけはじめているのを。
彼らのうちの一人がやけにごついラジカセのようなものを手にしているのを。


そして――――



「―――音楽でも聞いて、サッ?」



キィイイイイインと、頭に割れるような痛みを感じて。




絹旗最愛は糸の切れた操り人形のように、その場に崩れ落ちた。


126:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 12:18:09.53 ID:ssGaLzbU0

「結局、あっさりしすぎて仕事をしたって気にすらなれないワケよ」

フレンダがそういいながら、積み上げられたスキルアウトの山のてっぺんに腰を下ろしていた。
場所はどこにでもありそうな路地裏。スキルアウトたちは死んではいないものの、全員軽傷の火傷を負っていてとても痛々しい様となっていた。
浜面仕上はそんなフレンダとスキルアウト達を少し離れた場所から苦虫をかみつぶしたような顔で見つめていた。

「・・・はまづら」
「滝壺・・・いや、俺のことは気にするな」

浜面仕上。元スキルアウトを束ねるリーダー。まさか暗部におちて『アイテム』とからんでから、
自分が元リーダーを務めていた奴らと仕事の中で真っ向から向き合うことになろうとは想像もしていなかった。
流石に気が進まず、現在の浜面はいつもとちがって全く覇気というものがない。
滝壺は先ほどからそんな浜面の顔を心配そうにのぞきこんでいる。
ちなみに今回仕事をしているのはフレンダだけといっても過言ではない。
浜面はいつになく口数が減っているうえにやはり手をだそうとしないし、滝壺の能力は無能力者に対してはほとんど無力と言っていい。
(麦野に頼んでギャラの分配考え直してもらおうかな)
フレンダはそんなことをのんきに考えながら麦野に渡された書類を見つめている。
麦野は今頃研究所を嬉々として壊しつくしているころだろう。
(それにくらべこっちは地道にこんなことを・・・もうやんなっちゃう訳よ。・・・さて)
フレンダのもう片方の手に握られているのはやけにごついラジカセのようなもの。
今回の問題となっているキャパシティーダウンの『改悪型』。
(ついさっき研究所に行った麦野からの情報によると、流出した個数は十一個。う~ん・・・)
フレンダはしかめっ面をしながら指を一本ずつ折っていって、最後にがっくりと肩を落とした。

「どう数えても、結局後一個たりないって訳よ。ハァ・・・」

フレンダは赤から黒へ変色し始めた空を見上げながら息を吐いた。


127:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 12:20:51.13 ID:ssGaLzbU0

>>126ミスしました

ついさっき研究所にいった麦野からの情報

とありますが

研究所に行った麦野からついさっききた情報

と読み直してください


128:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 12:27:29.80 ID:ssGaLzbU0

「そろそろ本格的に暗くなってきたなぁ、よぉ?能力者?」
「く・・・ひょうなんだっていうんてすか、この、音ふぁ・・・!?」

絹旗最愛は床に腕をつきながら懸命に立ち上がろうとするが、ひざが地面から浮くたびにふらりと上体が思いもしない方向へ傾き、倒れてしまう。
さっきから流れている音のせいだろうか。うごくことはできる。しゃべることはできる。
ただ、それらを正常に行うことができない。

「おいおいぃ!こいつぁすげぇ!!手も足も出ないってのはまさにこのことだなぁ!」
「ひひひ・・・よく見たら結構かわいいじゃねぇか」
「すげぇぜ・・・こいつがありゃぁ相手がレベル5だろうと負けやしねぇんじゃねぇか?」

男たちが話す声は正常に聞こえるし、男たちの話し方も正常だ。
どうやらやつらが耳にしている耳あてのようなものはこの音が耳に入るのを防ぐ役割を担っているらしい。

「うっし、それじゃぁ・・・報復でも開始すっかぁ?」
「ひっ・・・!?」

ひとりの男の腕が、絹旗の細い腕のがっしりとつかんだ。


129:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 12:33:40.15 ID:ssGaLzbU0

窒素装甲が解除されている・・・!?
彼女の窒素装甲は、彼女の意識していない場所から銃弾を撃ち込まれても防ぐことができる窒素の鎧のようなものだ。
しかし、能力の演算自体を乱されてしまえば・・・それは意味をなさない。

「ち、超はなして、くださいッッ!」
「んあ?なんだよ普通に話せんじゃねぇか。まぁいい。とりあえず大人の階段のぼっちゃゥウウウ?」
「おいおい、こいつ中学生くらいじゃね?ロリコンかよ」
「とかいいつつお前も乗り気じゃねぇか」

下品な会話だ。
絹旗は吐き気を催した。そんな馬鹿な。嘘。こんなところで?このまま?こんな奴らに?
超殺す。殺す殺すコロスコロスコロス・・・・

「ひゃっ!!?」

絹旗の悪意が中断される。
一人の男の腕が絹旗の胸に触れた。

「おいおい、結構エロいからだしてんじゃねぇか」

三匹のケダモノの目が、闇の中に引かっているように見えた。


130:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 12:39:28.88 ID:ssGaLzbU0

ただただ気色が悪かった。

「こいつ本当に抵抗しねぇな」

殺意も悪意も敵意も憎悪も一緒くたに混ざり合っていった。

「しねぇんじゃねぇだろ、できねぇんだろ」

自分の胸がもまれている感覚がした。
しりをなでられている感覚がした。
気持ち悪い。

「いやいや、ひょっとするとこの年で結構な淫乱なのかも・・・」

そういいながら男たちの手は止まらない。
感じるかって?
気色悪さだけなら超感じますよ。
だから今すぐ超やめてください。

やめろ

やめ

やめて

「・・・そろそろ本番いくかぁ?」

びくっと絹旗の体が震えた。
本番?それってつまり、超どういうことですか?
私にこれ以上超何をしようっていうんですか?


133:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 13:14:54.45 ID:ssGaLzbU0

「やめ、や、超やめてくださいッ!!そ、それだけは・・・超だめなんですからッッ!!」

「うっせぇよ能力者ッ!!よくもまぁ今まで散々コケにしてくれやがって・・・タダですますとでもおもってんのか?」

絹旗はもう目を開けてこれ以上自分の痴態を目視することに耐えられなかった。
男たちはそんな絹旗の様子を楽しんでいるのか、笑い転げていた。

「ほ、本当に、超お願いですから、それ以外なら超なんでも許しますからッ・・・!!」

「はいはい、それじゃいくぜぇ・・・・ッッ!!」

「――――ッッ!!」

男が勢いよく腰を前に突き出す、が―――――




「・・・ぁ?なんだこれ。はいっていかねえんだけど」
「はぁ?」


135:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 13:20:02.39 ID:ssGaLzbU0

「・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・」

謎の音のせいでいまだに頭はぐわんぐわんするが、それでも絹旗はなんどもなんども頭の中で演算式を組みなおしていた。
幾度とない恥辱に耐えながらも懸命に、目の前の男達を一掃するために、何度も何度もくみなおしていた。
なぜかわからないが最初よりは頭痛もひどくなくなっていたため、かろうじて自分の能力、『窒素装甲』を、ほんとに少しだが用いることができたのだ。
まさかこんな場面で自身の貞操守るために能力を使う日が来るとは思いもしなかったが。

「・・・能力が戻ってるのか?それともこういう体質?」

「んなわけねぇだろ」

「チッ・・・萎えんなぁ。おい、音量あげろ」


「はぁ、はぁ・・・・ち、超無駄です・・・・」


絹旗は目に涙を浮かべながら男たちを睨む。

どこか挑戦するように。
どこか歎願するように。

「私の処女膜は決して貫・・・け・・・!?」



再びひどい頭痛が絹旗を襲っ


136:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 13:24:04.99 ID:ssGaLzbU0

>>135ラスト

再びひどい頭痛が絹旗を襲った。

ですorz


137:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 13:26:04.37 ID:i6BtP2Ue0

かーらーの?


138:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 13:26:34.58 ID:ssGaLzbU0

自分で処女膜とかいっちゃってるよ!頭おかしいんじゃねぇの?
奪ってほしいんじゃね?安心しろよ、今すぐうばってやるからよぉ!ゲラゲラゲラ


(・・・・・超頭がぼぅっとしてきました)


もう何もかもがどうでもよくなっていた。別にいいじゃないか貞操の一つや二つ。
どちらにしろ私にはもうほとんど普通の女の子として暮らすような道は残っていないのだから。
学園都市の暗部に落ちた時点で、純情でピュアな女の子なんてもう二度と名乗れるはずなどなかったのだから。

人助けなんて慣れないことしたのがいけなかったのか?
それとも暗部に堕ちた時点でいつかはこうなる運命だったのかもしれない。

・・・と、以前の絹旗最愛ならばそんなことは考えなかった。

そんな、自分が闇に堕ちたことを後悔するような旨の考えなんて微塵もなかったことだろう。
ところが今日一日で彼女の中で暗部が、『アイテム』が何かの重しのようなものにかわってしまっていた。


彼は根性がたりないといった。
そんな彼が、私が暗部の仕事をしているところをみたらどう思うのだろう。どう思い、なんて言うのだろう。
彼と別れてからどれだけ考えてもその答えは見つからなかった。
彼はまっすぐな信念を持っている。そんな彼なら、きっとどんな場面に立ってもズバリと何かを言うのだろう。

では私は彼に何を言われるのだろうか?
根性なしといわれるのだろうか?
それとも、それともそれとも――――――。

―――――どうしてこんな超緊急事態に、彼の顔が超頭にうかぶんでしょう・・・。


139:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 13:28:38.57 ID:ssGaLzbU0

もう十分だ。と思った。
これ以上彼のことについて考えることはやめよう。
また会ってその時はまたなんていう希望を持つことはやめよう。
太陽のようなまぶしい光をはなつ彼に、闇に堕ちた私が釣り合うはずもないんだから・・・・。

・・・つりあう?

つりあうって超どういうことですか?

別につりあう必要なんて超ないじゃないですか?

別に私は彼のことなんて気にもとめていないんですから。
助けられたことに感謝もしてないし、助けられたとすら思っていないんですから。

時代錯誤で、学ランで、ハチマキで、根性で、気合で、まっすぐで。

そんな彼のことなんて―――――

――――――。

―――――あぁ、そうなんですね。もう超だめなんですね。

本当、絹旗最愛は超どうしようもない女の子なんですね。


140:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 13:34:06.96 ID:ssGaLzbU0

もう自分をだますのはやめよう、と思った。
彼と別れるまで高鳴っていた胸の早鐘の理由を、自分に教えてやろうと思った。

認めてしまうのは何よりも楽なのに、認めた後に否定しなければいけないのが何よりも怖くて。
結局すべて終わってしまうのなら、うやむやのままどこまでも幻想を追い続けた方がいい気がして。
でもそれじゃ超だめなんですよね。超超超だめなんですよね。超きちんと向き合うべきなんですよね。
このままじゃ、『アイテム』にも。麦野にも、フレンダにも、滝壺さんにも、浜面にだって超顔向けできませんよね。
認めて否定していまえばもう彼のことを考える必要も、光と闇の境界線について、光と闇の住人について悩まなくても超オッケーなんですよね。

「はいそれじゃぁあらためていくよぉ~お嬢ちゃん?」
ゲラゲラゲラゲラッッ!!

そうでした。

私絹旗最愛は―――――

―――――そんな時代錯誤の格好でハチマキで根性バカだけど、まっすぐな瞳をもったあなたのことが



――――超大好きなのでした。




「うおお~~ッッッッ」


142:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 13:41:44.25 ID:ssGaLzbU0

ドッゴォオオオオオオンッッッ!!

どこからともなく低いうなり声が聞こえてきたかと思うと、路地の一角を担う建物のうちの一つが七色の閃光を放って爆発した。
男たちはいずれもビクリと体を震わせ即座に後ろを振り向いた。
どうやら建物は今は使われていない廃墟のようで、中から人の悲鳴などは聞こえない。
代わりに、ガラガラと崩れる建物のがれきの向こうから現れたのは――――――


「おまえら、自分にたりてねぇモンが一体何なのか、わかるか――――?」


絹旗の手の届かない場所にいったはずの少年。
絹旗が今自分から遠のけたはずの少年。
その少年は――――


「どいつもこいつも腑抜けた面しやがってッッ!!
 足りねぇ足りねぇ足りねぇ全ッ然足りてねぇッッ!
 心の底からたぎるような、てめぇのしみったれた迷いも、悩みも、悪意さえも燃やしつくしちまうような・・・
 根性が足りてねぇんだよぉおおおおおッッッ!!」


――――絹旗最愛が最も愛した少年、削板軍覇がそこにいた。


146:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 13:50:47.27 ID:ssGaLzbU0

男たちは動揺していた。
もう絹旗には目もくれず、必死に服を着て今すぐにでも逃げようとしていた。
しかし、
「い、いやまてまて!俺たちには『コレ』があんだろうがッッ!!」
「そ、そうだっ!!最大音量で――――!!」
「よし、いけっ!!野郎なんだかしらねぇがぶっ殺してやる!!」

途端に、路地裏に金切声のような音がこだました。
周囲の窓ガラスガタガタと騒がしく振動をはじめ、絹旗はまるで大地震に見舞われたかのような感覚に襲われていた。
それでも、かろうじて意識を保つ。絹旗はもはや泣いていた。
なぜ泣いているのかはわからない。
絶望の淵までおいつめられたからなのか、それとも彼が駆けつけてくれたからなのか。
しかしその意識の中にあるのは、一つの不安。

彼は――――彼は―――――!!?

すると、流石に耳あてで防ぎきれなかったのか、目の前にいた男たちも次々とひざをつく。
「お、おいバカ、やりすぎだッ・・・!!」
「わ、悪いいま音量を・・・ッ!!」


「うるせぇえええええええええッッ!!」


ドッガァアアアアアアン!!


「「「はぁああああああああ!?」」」


148:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 13:59:35.48 ID:ssGaLzbU0

路地裏に響くキャパシティダウン『改悪版』。
能力者だけでなく無能力者であるスキルアウト達でさえ、さらに耳あてをつけていた男たちでさえその場に倒れてしまうような、
そんな出力で音をはなっていた『それ』は・・・少年の叫びと共に、無残にも粉々に砕け散った。
一瞬にして静まり返る路地裏に佇むのは、半ば放心状態の男三人と、涙を流す少女。
そして少女の最も愛する少年だった。
少年は絹旗を見た。
絹旗はとっさに彼から背を向け、体を隠そうとする。
(・・・超恥ずかしいです・・・)
自分のみじめな姿を見られてしまった。ほとんど半裸の状態の自分の姿を彼に見られてしまった。
一度はあきらめ、ここにいるケダモノ達に身をゆだねようとした自分の姿を、見られてしまった。

涙が、止まらない。

涙の理由は、しらない。

涙の理由が、わからない。

ただ、目頭は確かに暑いのに、頬をつたう涙は頬をそのまま引き裂いてしまうかのように冷たかった。
うれしくて、悲しくて、そして惨めだった。
ここから消えてなくなりたい。
彼が来てくれたのにもかかわらず、来なくてもよかったと一瞬でも思ってしまった、そんな自分が憎らしい。
――――その時だった。

「・・・最愛」

「・・・え」

一声。
少年が少女の名を呼んだ。


150:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 14:11:41.38 ID:ssGaLzbU0

「お前を助けに来た」

何いってるんですか?
そんなの、超わかりきってることじゃないですか。

「・・・さっきいってた。恩を返すってやつですか?それはどうも、超ありがとうございます」

私ったら、超何いっちゃってるんですか?
そんなことがいいたいわけじゃないのに。
お礼をもっとちゃんというべきなのに。
こんな、背中をむけたままじゃなくて、つぶやくような小声じゃなくて。

「それもある」
「そうですか。・・・じゃぁこれで貸し借りなしですね」

超違いますよ!
本当にどうしちゃったっていうんですか?
私は。私は。私は彼に――――。

「でもそんなのは些細なことだ。重要なのは、俺が最愛、お前を助けに来たってことだ」
「だからなんですか?」

私―――。

私がふと後ろを向くと、彼は拳を前に突き出して、私をまっすぐ見据えていた。
「だから、そんな顔するなよ。もっと根性しっかりもって、安心してどっしり構えてろ。何度でも言う――――

 ―――――今からお前を助けるぞッッ!最愛ッッ!!」


153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 14:17:42.79 ID:ssGaLzbU0

やっぱりこんな時まで超根性なんですね、あなたは。
あなたなりの超勇気づけってやつですか?
本当にあなたは――――

「――――ありがとう、ございます・・・ッッ!」

ぼろぼろと情けなく涙をこぼしながらそういう絹旗を見た少年、削板軍覇はニヤリと笑う。
もう何も迷うことはなく、悩むことも苦しむこともない。負い目も何も感じない。
彼によって何もかもが解決したようだった。
まさしく彼の言う根性とやらで、すべて解決してしまったようだった。

どうやら私の中の迷いや不安なんていう些細な問題は―――

―――――彼のたぎる根性に呑まれてしまったようだった。



「く、ぉ、の、くそ野郎がぁああああああ!!」


三人の男たちが咆哮した。
それを聞いた削板の目つきがとたんに鋭くなって、ケダモノ達を睨みつける。


154:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 14:24:38.55 ID:ssGaLzbU0

「・・・おまえらみたいなやつには、根性は教えてやれねぇ」
「あぁ!?」
「んだこらぁ!?」
男たちはもうヤケになったらしく、さっきまでとは打って変わってただの頭の悪いチンピラと化していた。
対する削板軍覇は何やら周りに赤い大気の渦のようなものをまとわせながら、相も変わらずそこに立っている。
ただ、ケダモノ達とは種類の違う、鋭く、なおかつ燃える闘志をやどらせた眼光を放ちながら、ただただそこに立っていた。

「いくら語ってもわからねぇ。どんなに説明しても聞く耳をもたねぇ。
 そして何より、お前らは最愛の体を、心を傷つけたッ!!」

男たちが一斉に駆け出す。

「拳で教えるわけでもないッ!!体の根幹奥深くまで、俺の根性直接ねじ込んでやるから覚悟しろッッ!!」


「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」



「超すごいパァアアアアアアアアンチッッッッ!!」



ドガガガガガガガガガァアアアアアアッ!!!


155:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 14:33:30.46 ID:ssGaLzbU0

「・・・確かに、超すごいですね」
とはいうものの、正直何が起こったのか絹旗最愛にはさっぱりわからなかった。
ただわかることは、あのパンチを放つ直前、彼の周りに渦巻いていた赤い大気が彼の右手に吸い込まれるように集中し、
急に光輝いたかと思うと、同時に数百発の爆弾が爆発したようなとんでもない音が響き渡ったということ。
そしてたぶんその一撃で、三人の男たちはからだにはそれぞれ数十発以上の殴られた跡ができていて、そのまま昏倒してしまったということだけだった。
対して本人、削板軍覇はどうかというと、いたってケロっとしていた。

「あ、あの、」
「ん?大丈夫か最愛!?」
「え?あ、まぁとりあえず貞操はまm・・・か、体は超なんともないですけどねッッ!?」
「そうか。ならよかった」
「あ・・・」
「ん?」

彼がこんなに素直に笑ったのは、初めて見た。
いや、初めてといっても昨日会ったばかりなのだが、それでも初めて見た。
絹旗は思わず削板の顔をじっとみつめてしまう。

「・・・俺の顔に何か?」
「へ!?い、いえ!超なんでもありません!超大丈夫です!あ、えっと・・・」
「今度は何だ?」
「あの、まだお名前を超きいていませんでしたから・・・」
「なんだそんなことか、俺の名前は・・・」


「またあの時と同じような爆発ですの!?」


156:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 14:42:47.38 ID:ssGaLzbU0

「ちょ、またあの超ツインテールですか!?なんなんですか!?本当超空気読めないんですか!?超死ぬんですかッッ!?」
「? なんだ?知り合いか?」
「ええもうなんか本日だけは超酷い縁で結ばれてるとしか説明できませんねッッ!とりあえずここは逃げ・・・!!」

絹旗が状況をのみこめていない削板の背中を押しながら逃げようとしていた、丁度その時だった。

「あ、ちょっとごめん、ごめんよ~」

「・・・?」
聞き覚えのあるような声がした。
どうやら路地の入口であのツインテールを止めてくれたらしい。
はっはっはと愛想よく笑う声の主を、やはり絹旗は知っていた。
「結局、事件でもなんでもないってわけよ!!」
「はぁ?あなた何なんですの?先ほど近隣の市民から、この路地からとんでもない轟音が聞こえてきたと通報がありましたの。
 風紀委員(ジャッジメント)として見過ごすわけには・・・」
「あー、すいません、それ俺らのせいなんですよー」(なぜ俺がこんなことを・・・)
「ですよー」

(フレンダ・・・?それに超浜面に、滝壺さんまでッ!?どうしてここに!?)
「おい」
「は、はぅぃっっ!?」
「いや、逃げるんじゃなかったのか」
「え?あ?は、はい!超そうでしたね!はい!超逃げましょう!!ほら超はやくっ!!」
なぜ彼女たち(+α)がここにいるのかはわからないが、今のうちににげる以外手はない。
絹旗は削板の手を引いて、削板の壊したビルの瓦礫の向こうへと、路地裏を後にした。


158:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 14:53:15.29 ID:ssGaLzbU0

「な、なによコレ・・・」
「俺に聞くなよ・・・」
「・・・南南西から信号がきてる」
滝壺さん、現実逃避はやめましょう。
浜面は隣であさっての方向を向いている滝壺に目をやる。
にしても、誰がやったかわからないが、とりあえずそうとうハデに暴れたらしい。
なぜか建物が一つ崩壊している。
そして、お目当てのキャパシティダウン『改悪版』は粉々で、使用していたのであろうスキルアウト達も数十ッ発の殴られた跡と共にのびている。
それは別にかまわない。キャパシティダウンはそもそも回収したら破壊せよというお達しだった。
ただ・・・
「これじゃ、キャパシティダウン『改悪版』をおおっぴらにしないために風紀委員(ジャッジメント)を追い返した意味がないんじゃ・・・」
「だーー!!そんなことはわかってるわよバカ面!!見た!?あのツインテールの人を小ばかにした目つき!!
 くっそーー誰なのよこんなことしやがったのはーーー!」
「現物が回収されないだけよかったよそしたら仕事失敗だもん」
「はぁ。でもま、結局これで今日の仕事はおしまいって訳よ!うあーー!!さて、滝壺、一緒にご飯でも食べに行かない?」
「うん、いいよ」
「お、景気がいいな」
「結局、浜面にはまだキャパシティダウンの残骸一つ残さず回収というだーいじな仕事が残ってるってわけよッ!!」
ビシッ!!浜面に指を向けるフレンダと、同時に泣き顔になる浜面。
「も、もちろんまってて、」
「いこ、滝壺♪」
「・・・ですよねー」
「大丈夫、私はそんなはまづらを応援してる」
「くそっ・・・くそぉっっ!!何かしらんが、これはまさしくッ!!不幸だあああああああああああ!!」
むなしい男の叫びが、すでに星の瞬く学園都市の夜空に消えていった。


159:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 15:00:08.93 ID:ssGaLzbU0

学園都市の夜空の下。
少年と少女は手をつないで歩いていた。
「・・・なぁ」
「ち、超なんですか!?」
「どこまで逃げるんだ?」
「さ、さぁ・・・」
「・・・いつまで手をにg」
「さあッ!?私には超わかりませんねッッ!!」

絹旗最愛と削板軍覇を追う者は誰もいなかった。
あたりも静まり返り、人もほとんど見当たらない。
夜空には一面の星空が広がっている。

「・・・その」
「ん?」
「時間、とか、超だいじょうぶなんですか?」
「いや、それはこっちのセリフだ。最愛を夜道に放り出していくわけにはいかないからな、男として」
「・・・そうですか」
このままどこへ向かうというのだろう。
ふと気になって隣へ視線を移す。
どちらが先へ行くわけでなく、隣を見ると、彼がいる。
何を考えているのかはわからなかった。その顔に浮かぶ表情を、夜の闇のせいなのか、絹旗は認識することができなかった。

「・・・ちょっと」
「ん?あぁ、公園か」
とりあえず公園のベンチに座るよう促す。

いや、超無計画なんですが、私は一体何しているのでしょうか・・・。


160:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 15:04:46.01 ID:ssGaLzbU0

「・・・一つ聞いてもいいですか?」

「なんだ?」

二人は夜空を見上げていた。
最初はただ座っていたのが、絹旗が隣をみると彼が空をみあげていたので、絹旗もつられて夜空を見上げた。

「なんで、私を助けにこれたんですか?」
「どういうことだ?」
「だって、あの後真逆の方向に分かれたじゃないですか。
 私は声も上げられない状態だったのに、どうしてあんな場所に・・・しかも意味もなく建物をふきとばして」
その通りだ。彼に気付ける要素など、万に一つだって存在しなかった。
それなのに、彼は来た。
最愛を助ける、そういって彼はいつの間にか立っていた。
「んー。俺にもわからん」
「ち、超意味が分かりませんが・・・」
「いや、根性だッ!」
「やっぱり超そうなりますか!?」
「・・・」
彼が、少し黙った。
「・・・最愛の声が聞こえた」
「え?」


161:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 15:08:19.98 ID:ssGaLzbU0

「本当だ。幻聴とかじゃない。原理は俺にもわからん」
「でも、わたし何も・・・」
「・・・」
「・・・」
まさかとは思うが。
あの場所で放っていた言葉が。
あの男たちに放っていた言葉が。
彼に・・・聞こえていたとでもいうのだろうか。

それはそれで、なんというか・・・。

絹旗と削板に、ギクシャクとした空気が流れる。

「・・・まぁなんであれ、助けに来てくれて超ありがとうございました!」
「当たり前だ!友達だからな!」
「はは、友達、ですか・・・」
友達。と彼は言った。


162:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 15:11:29.94 ID:ssGaLzbU0

なぜここへ来たのだろう。
お礼が言いたかったから?
彼の言葉が聞きたかったから?

「・・・」

そうじゃなかった。

『今からお前を助けるぞッッ!最愛ッッッ!!』

彼をつきはなした次の瞬間、彼に引き寄せられたとき。
光だろうが闇だろうが関係ないと。
表だろうが裏だろうがお構いないと。

「・・・あの」

私は根性をすえて、あのときしっかり決めたのだ。


163:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 15:20:41.46 ID:ssGaLzbU0

「削板軍覇だ」
「え?」
「名前、いいそびれたからな」
「え?あ、あぁ。削板さん・・・っていうんですね」

やっと聞けた名前は。
絹旗最愛の中に。
彼という少年を。
一つのカタチとして。
一つの記憶として。
しっかりと刻み込むための楔となる。

――――もう何も必要ない。

「では、削板さん・・・」
「ん?」
「超目をつぶってください」
「あ?お、おぉ」
「超ですよッ!超ド根性ですよッ!」
「お、おぅっ!!根性ならまかせr・・・・ッッ」


164:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 15:24:13.93 ID:ssGaLzbU0

同時に流れ星が空をかけて。

学園都市の暗い夜は、今はまだ暗くとも、しかし確かに輝く朝へ向かって、いまはひっそりとふけてゆく。

たとえば闇の中の一人の少女が。
全ての闇を受け入れて、その上で光への歩みを始めるように。

たとえば光の中の一人の少年が。
闇だろうが何だろうが、そのたぎる心にすべてを受け入れていくように。


今はまだ遠いかもしれない。

今はまだ届かないかもしれない。

ただその少女の小さな一歩は。

その少女の小さな思いは。

いつの日か、最も愛する少年に。

いつの日か、光の中の少年に。

そのたぎる心の中に、遍く受け入れられることだろう。



―おわり―


165:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 15:27:50.73 ID:YPjlT+Fq0

とりあえずお前は寒い中むき出しになってる俺の息子さんにごめんなさいしようか


168:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 15:41:29.09 ID:ssGaLzbU0

おわりですw
スレタイからは想像もできない内容になって今しましたが、
いかがだったでしょうか?

初投稿で至らない点もあるとは思いますが、楽しんでいただけたら幸いです

あと、>>165,167さんのようにそういうシーンを期待してくださった方、本当にごめんなさい(><)
私にはそういうシーンを書く技量も勇気もないのです

後日談も書きたいのですが、訳あって今夜以降しばらくPCが使えなくなることもあるので、
書きません
ていうか書けません
もし来週の月曜日まで残っていたら書けるかもしれませんがw
ていうかぜひ誰か書いてください!

中々楽しく、あまり手がとまることもなく一気に書き上げることもできたのは、
偏に所々のみなさんのレスのおかげです

ではでは、本当に楽しい時間をありがとうございました
ここらへんで超失礼します



麦野「あれ?私の出番あれだけ?」


166:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 15:32:22.09 ID:Wg3vaUgKO

乙!


171:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 15:58:56.73 ID:aGHGNR8XO

乙華麗
軍覇はそげぶのひとよりヒーロー向きだよな


172:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/07(月) 16:42:50.61 ID:lBg0Wzp30

乙 おもしろかった


実録生映像 処女膜を破られた少女
新約 とある魔術の禁書目録
とある少女の淫手目録 <いんてックス>
とある淫靡なエロ書目録
とある卑猥な超淫靡砲
このエントリーをはてなブックマークに追加

  • 今週の人気記事
  • 先週の人気記事
  • 先々週の人気記事

        記事をツイートする

        記事をはてブする

         コメント一覧 (10)

          • 1. もしもし
          • 2011年03月08日 01:22
          • いつもみてるよー
            応援してる~
          • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2011年03月08日 01:25
          • おお、更新再開されてた!
          • 3. あ
          • 2011年03月08日 04:22
          • 二人目のが読みにくいので途中退場
          • 4. あ
          • 2011年03月08日 06:01
          • 面白い設定だったが二人目のが読みづらくて流し読みした
            残念すぎ
          • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2011年03月08日 07:59
          • 一人目の人がずっと書いてくれてれば、とただひたすらに思うわけよ
          • 6. 、
          • 2011年03月08日 10:41
          • エレ速は今日も平常運行です
          • 7. ななし
          • 2011年03月08日 12:08
          • 二人目はおまけくらいに思えばいいんじゃないのw
          • 8. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2011年04月06日 20:19
          • かっこよすぎワロタwwww
          • 9. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2013年09月04日 14:43
          • 楽しかったぜ!!!
          • 10. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2016年02月26日 09:30
          • 超面白かった!

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

        カテゴリ別アーカイブ
        月別アーカイブ
        記事検索
        スポンサードリンク
        スポンサードリンク

        • ライブドアブログ
        © 2011 エレファント速報:SSまとめブログ. Customize by yoshihira Powered by ライブドアブログ