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咲「ボールを相手のゴールにシュゥゥゥーッ!!」【後編】

528:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 09:09:02.62 ID:SNqXtlOg0

ゆみ「死体探しに行くだと!?」

それは蒲原の何気ない一言から始まった。

蒲原「ワハハー、正確に言うとちょっと違うなー。今この学校で噂になってる、消える死体だよ」

ゆみ「なんだそれは」

蒲原「知らないのかゆみちん? 他のみんなはもちろん知ってるよなー?」

妹尾「うん。私たち二年生の間でも噂になってましたよ」

ゆみ「どんな噂なんだ?」

睦月「はい。先日、ここの生徒が学校裏の森に行ったそうなんですが……」



529:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 09:17:53.86 ID:SNqXtlOg0

睦月「彼女が森を散策していると、茂みの中から人の足がはみ出しているのを見つけたそうで……」

ゆみ「ああ…それで……?」

睦月「それで、誰か倒れてるんじゃないかと思って近付いてみたら……」

ゆみ「………」ゴクッ

睦月「そこには、女性の死体が……」

モモ「きゃああああああああああっす!!」ガタッ

全員「うわあああっ!?」ビクッ



530:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 09:22:31.55 ID:SNqXtlOg0

ゆみ「と、突然現れるなよモモ……びっくりしたぞ」

モモ「驚く先輩も可愛いっすよ」

蒲原「驚くのはまだ早いって……ここからが肝心なんだぞ?」

ゆみ「まだ続きがあるのか?」

睦月「驚いた彼女は、警察に通報しようとしたらしいんですけど……」

妹尾「死体は、彼女の目の前で煙のように消えてしまったらしいんです」



532:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 09:30:34.79 ID:SNqXtlOg0

モモ「うーん……ミステリーっすねー」

全員(お前がそれを言うのか…?)

ゆみ「なるほど、それで消える死体か。いかにも作り話っぽいな」

睦月「死体っていうより、幽霊なんじゃないんですか?」

妹尾「ひゃあぁっ? この学校の近くに幽霊が出るっていうんですか?」

ゆみ「そんな話は聞いたことないが…」

蒲原「というわけで、それを確かめに行くぞ―!」



533:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 09:36:38.33 ID:SNqXtlOg0

次の日

ゆみ「なあ蒲原…なにも夏休み初日からこんなことしなくても……」

蒲原「ワハハ、今年の夏はうんざりするくらい遊ぼうって言っただろー?
……よっこいしょっと」ドサッ

モモ「けっこうな荷物の量っすね」

蒲原「暇なら車への積み込み手伝ってくれよ―」

睦月「けっこう本格的ですね…」

蒲原「ワハハ、ちょっとした探検隊気分だな―」



534:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 09:41:04.80 ID:SNqXtlOg0

ブロロロロロロロ……キィィィ

蒲原「森の入口まで着いたぞ―。ここからは歩きだー」

ザザザザザザー

妹尾「うわー、なんだか不気味ですね―」

ゆみ「気のせいだろう。本当に幽霊なんて出るのか?」

蒲原「さーさー、まずはこの荷物を手分けして持ってくれ」ドサッ

睦月「……重っ」



535:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 09:44:44.79 ID:SNqXtlOg0

森の中

蒲原「みんなー、茂みが濃いところとかを重点的に探すんだ―」ガサガサ

妹尾「そんなこと言われても……」

睦月「ロクな手がかりもなく、ただ漠然と探しているだけではらちが明きませんよ?」

蒲原「ワハハ―、そこらへんはテキトーでいいんだ。今この時を楽しめ―」ガサガサ

ゆみ「やれやれ……相変わらずアバウトなやつだ」

トントン

モモ「先輩、何か見つけましたか?」



536:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 09:48:44.81 ID:SNqXtlOg0

ゆみ「いや……こんな不効率なやり方じゃ、見つかるものも見つからないさ」

モモ「私はせんぱ……みんなとこうしているだけで楽しいっすけどね」

ゆみ「ああ……」

ゆみ(案外蒲原もそうなのかも知れないな……)

死体だか幽霊探しはただの口実――私たち三年は、この三人と遊ぶきっかけを欲していた。



545:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 13:58:18.35 ID:SNqXtlOg0

蒲原「ここらにはいないみたいだなー。よし、もっと奥へ行くぞー!」

妹尾「ここの森は案外深いから、あんまり奥まで行きすぎると迷っちゃいますよ?」

蒲原「ワハハ―、なんとかなるさー」

そう言って蒲原は森の奥へずんずん進み始めた。慌てて二年生の二人が後を追う。

ゆみ「……まったく人の忠告を聞かないやつだな」

モモ「先輩、私たちも置いてかれないうちに行くっすよ」



546:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 14:05:18.81 ID:SNqXtlOg0

モモ「先輩は……卒業したらどうするんすか?」

ゆみ「えっ……?」

歩き始めてからしばらくして、モモが唐突に切りだしてきた。

モモ「先輩なら大学行くと思いますが……どこの大学へ?」

ゆみ「……っ、それは……」



547:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 14:13:06.10 ID:SNqXtlOg0

蒲原「ワハハー、それでさー」

前方から、蒲原の能天気な笑い声が聞こえてくる。

ゆみ(蒲原……あいつは気楽でいいよな……)

蒲原は地元のA大学を受けるらしい。私の偏差値なら楽勝すぎるレベルの大学だ。
それに、失敗しても実家の家業を継ぐらしい。

ゆみ(どちらにしろ、ここに残れるんだ……あいつは)



548:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 14:21:47.55 ID:SNqXtlOg0

モモ「先輩…ごめんなさいっす」

ゆみ「えっ?」

モモがすまなそうな顔をしてこちらを見ていた。

モモ「受験生に、こんなデリケートな質問するべきじゃないっすよね…」

ゆみ「い、いやそんなことはない……受ける大学はもう決めてある」

モモ「えっ……そ、それはどこっすか?」

ゆみ「それは……」



549:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 14:31:35.36 ID:SNqXtlOg0

ゆみ「蒲原と同じ、A大学だ…」

モモ「………」

ゆみ「ほら、あそこなら余裕だし、ここからも近い。みんなとも遊べるぞ」

モモ「………」

ゆみ「……モモ?」

モモ「……先輩、それはダメっす」



550:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 14:41:54.65 ID:SNqXtlOg0

ゆみ「!?」

モモ「それは…先輩が本当に行きたい大学じゃないっすよね?」

ゆみ「い、いやそれは…」

ゆみ(お前がそう言うなんて……私はお前と…みんなと一緒にいたくて……)

モモ「先輩が何を考えてるかは分かるっす……でも、私たちとずっと一緒にいたいがために、
自分の将来の可能性まで狭めてしまうのはよくないっすよ」

ゆみ「モモ……」



551:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 14:49:07.14 ID:SNqXtlOg0

モモ「私は信じてるっす。私の好きな先輩は、そんなに弱くないはずだって」

ゆみ(………!!)

モモ「それに、遠方の大学に行ったって、休みになったら帰ってこれるっす。
いやむしろ、私の方から会いに行くっすよ!!」

ゆみ「モモ……すまなかった、私は……」

蒲原「二人とも何してるんだー? おいてくぞー」



552:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 15:01:39.39 ID:SNqXtlOg0

睦月「おーい」

妹尾「二人とも―、 こっちですよー」

気が付けば、ずいぶん三人から引き離されてしまったようだった。

モモ「はーい! 今行くっすよー!」

モモ「さ、行きましょう先輩」サッ

そう言ってモモは私の手をとった。

ゆみ「ああ、行こう」

ゆみ(モモ……まさかお前に気付かされるなんてな……)

私たちは大急ぎで、三人の元まで走って行った。



553:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 15:14:14.94 ID:SNqXtlOg0

数時間後

蒲原「見つからないなー」ガサガサ

モモ「だんだん日が暮れてきたっすね」

睦月「ここらで引き返したほうがいいのでは?」

ゆみ「私も賛成だ。暗くなる前に帰った方がいい」

蒲原「いやもうちょい……」

ガサガサッ



554:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 15:20:27.44 ID:SNqXtlOg0

全員「!?」

妹尾「今何か物音が……」

ガサガサッ

睦月「まただ……結構大きいですよ」

モモ「誰かいるんすか?」

シーン

蒲原「おいおい、これはもしかして……幽霊か!?」



555:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 15:34:48.30 ID:SNqXtlOg0

睦月
「まさか……まだ夜になってませんよ?」

蒲原「昼間に出るやつもいるって話だぞ―? それとも例の死体が起き上がって徘徊してるとか……」

妹尾「やだ……気味悪いこと言わないでよ智美ちゃん」

蒲原「ワハハー」

ゆみ「しっ! 静かに……何かこっちに来るぞ」

ガサガサッ…ザザッ!

『グゥ…?』



557:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 15:45:14.79 ID:SNqXtlOg0

ゆみ「あっ……」

私たち全員がその場に凍りついた。
茂みの奥から飛び出してきたのは、体長一メートルほどの小グマだった。

クマ『グゥ……』

妹尾「く……クマさん?」

睦月「や、やばいですよ…」

ゆみ「お、落ち着け……こういうときは下手に刺激せずにだな……」

モモ「目を合わたまま、ゆっくり後ろに下がるってテレビで言ってたっす…」

ゆみ「だったらこのまま……」

クマ『グワッ!』



559:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 15:55:49.11 ID:SNqXtlOg0

その小グマは二本足で仁王立ちすると、両腕を振り上げて私たちを威嚇した。

クマ『グワッ! グワッ! グワッ!』

睦月「うわっ…」

ゆみ「に、逃げろっ!!」

妹尾「きゃぁぁぁっ!!」

私たちは小グマに背を向け、一目散に走り出した。

モモ「逃げるってどこにっすかー!?」

ゆみ「とにかく走れ!」

蒲原「ワハハー!」

ダッダッダッダッダッダッ……



560:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 16:17:13.12 ID:SNqXtlOg0

ゆみ「ハァ……ハァ……」

睦月「荷物が重いせいで余計疲れた……」

妹尾「もう……追ってこないですよね?」

蒲原「最初から追ってきてないんじゃないかー?」

モモ「っていうか、子グマ相手にどんだけビビってるんですか私たち……」



561:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 16:27:16.23 ID:SNqXtlOg0

ゆみ「それも……そうだな」

睦月「ふふ…」

蒲原「ワッハッハッハー」

自然と笑みがこぼれ、気が付けば全員で笑っていた。

睦月「あの状況で、佳織が『クマさん…』とか……思い出しただけでもお腹痛い……」

妹尾「だって可愛らしかったじゃないですかー。きっと、あっちも私たちが怖かったんですよ」



562:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 16:38:21.04 ID:SNqXtlOg0

モモ「っていうかあの時はびっくりしたっすよ。私、自分がステルスできることまで忘れてたっす」

蒲原「一番ビビってたのはゆみちんだなー。冷静なフリしててもバレバレだぞ―」

ゆみ「なっ……違うぞ! 私は決して……」

モモ「子グマに怯えちゃう先輩可愛いっすー!」

ゆみ「モ、モモ……」

蒲原「ワハハ」


楽しい――圧倒的に楽しい時間。これが永遠に続けばいいのにと思った。



563:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 17:00:56.76 ID:SNqXtlOg0

ゆみ「おい、ところでこれからどうする?」

睦月「もうすぐ日が落ちますね……というかここどこです?」

モモ「無我夢中で走ったから……森のかなり奥深くまできちゃったすね」

妹尾「車のところまでは、帰れそうにありませんね」

睦月「ひょっとして、野宿? でも、ロクに食料もないのに……」

蒲原「ワハハ―、それなら持ってきた荷物を開けるんだなー」



564:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 17:07:49.02 ID:SNqXtlOg0

ドサッ

モモ「これは…」

妹尾「キャンプセット一式ですか?」

睦月「テントまで入ってる……どうりで重かったわけだ」

蒲原「ワハハ、まあ、こんなことになるんじゃないかと思ってなー」

ゆみ「用意がいいというか……いや、お前にはめられたと言うべきか」

蒲原「ワハハ、いいだろー? たまにはこういうのも」



565:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 17:26:43.46 ID:SNqXtlOg0

その後

蒲原「ふっー、食った食ったー」

睦月「カレーおいしかったです。蒲原先輩、料理上手いんですね」

蒲原「ワハハー、昔からキャンプの真似ごとみたいなことはしてたからな―。
それにキャンプの醍醐味は、みんなで協力して料理を作ることにあるんだぞ?」

モモ「みんなで共同作業するのは楽しいっす!」

妹尾「私、こういうの初めてだけど、とってもワクワクして楽しいですね」



566:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 17:38:18.39 ID:SNqXtlOg0

ゆみ「さて、ご飯も食べたしそろそろテントの中に入るか」

蒲原「ならトランプやろーや。もちろん、ビリには罰ゲームだぞワハハ」

睦月「えーっ、あんまり変なのはよしてくださいよー」

蒲原「そうだなー。ここは定番で、好きな人を言うとか……」

モモ「それだと私が負けたら……きゃーっ!恥ずかしいーっす!」

妹尾「も、桃子さん……」

ワイワイ キャッキャッ

ゆみ(もう死体とかどうでもよくなってるな……まあ楽しいからいいか)



567:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 17:54:28.72 ID:SNqXtlOg0

『グワオオオーーーン!!』

全員「!?」

突如として夜の森に、動物のものと思わしき鳴き声が響き渡った。

『グワオオオーーーン!!』

妹尾「な、なんですかこの声……」

蒲原「オオカミでもいるのかー?」

睦月「絶滅してますよ」

モモ「もしかして……」



568:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 18:10:57.70 ID:SNqXtlOg0

『グワッ! グワッ! グワッ!』

ゆみ「多分…昼のクマだと思う……」

モモ「子グマがいるなら親もいるはずっす」

蒲原「ワハッ…」

睦月「今からでも移動しますか? もしここまで来たら…」

ゆみ「もうかなり暗いから移動は危険だ。ここを動かない方がいい」

睦月「じゃあどうするんです?」



569:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 18:24:46.34 ID:SNqXtlOg0

ゆみ「明かりを消して今日はもう寝よう。その代わり、常に一人が見張りに立つ。これでどうだ?」

妹尾「いい考えだと思います。それで順番はどうしますか?」

蒲原「まあ一番目は佳織で決まりだとして、次からはじゃんけんだなー」

妹尾「どうして私が一番目なの?」

蒲原「ワハハ―、だって一番体力なさそうだし」

妹尾「そんな…」


結局じゃんけんの結果、佳織、睦月、蒲原、私、モモの順番となった。



570:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 18:40:53.29 ID:SNqXtlOg0

二時間後

妹尾「津山さん、起きて」トントン

睦月「起きてるよ……蒲原先輩の寝像が悪すぎてちっとも眠れない…」

蒲原「スピー……ワハハー」

妹尾「ふふ、相変わらずだな智美ちゃん」

睦月「まったく、最初はとんでもない先輩だと思ってたけど……この部に入って今まで楽しかったよ」

妹尾「私も半ば強引だったけど……それでも入って良かったなって思ってるよ」

睦月「来年からは三人だけになるけど……お互い頑張ってこの部を盛り上げていこう」

妹尾「うん」



571:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 18:59:29.57 ID:SNqXtlOg0

さらに二時間後

睦月「蒲原先輩、蒲原先輩……起きてくださいよもう」ユサユサ

蒲原「…んぁ? なんだもう朝か―?」

睦月「寝ぼけてないでくださいよ……交代の時間です」

蒲原「……ああー、そういえばそうだったなー」

睦月「しっかりしてくださいよー。私たちの命がかかってるんですから…」

蒲原「ワハハー、すまんすまん」

睦月「じゃあ私は寝るんで…」

蒲原「なあむっきー」

睦月「……なんですか?」

蒲原「頑張れよ新部長……私たちも時々遊びに行くからさ」

睦月「……はい!」



573:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 19:05:22.19 ID:SNqXtlOg0

夢を見ていた。これは部活の夢か?
私を含め五人が、とても楽しそうな顔をして部室で騒いでいた。

蒲原がふざけて、私がそれに突っ込み、佳織がフォローをいれる。
睦月はそれを見てウムとうなずき、モモはとにかく私に抱きつこうとする。
いつもの日常風景だ。

まるでガラスが割れるように――その風景が粉々になった。

ゆみ「あっ……」

私は必死で散らばった破片を拾い集めようとする。
しかし、砂粒のようなサイズにまで砕け散ってしまったそれはもう元には――

『ゆみちん、ゆみちん!』



574:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 19:08:48.54 ID:SNqXtlOg0

ゆみ「はっ……!」

蒲原「どうしたんだー? すごくうなされてたぞ?」

ゆみ「悪い…悪い夢を見ていた……」

蒲原「もう交代の時間だけど、大丈夫か? なんなら休んでても…」

ゆみ「いや、大丈夫だ……心配するな」

こういう時の蒲原の気遣いが、私は好きだった。



575:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 19:31:10.30 ID:SNqXtlOg0

蒲原「もうさすがにクマは出ないだろー。見張りやめてもいいんじゃないか?」

ゆみ「一応念のためだ。それにみんなもやったんだし、私もやるさ」

蒲原「そっか。じゃあ私はテントに戻るぞ―」

ゆみ「ああ、そうしろ」

蒲原「ゆみちん」

ゆみ「ん? まだ何かあるのか?」

蒲原「思いっきり楽しもうなー。今も、これからも」

ゆみ「もちろんだ」



576:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 19:42:43.65 ID:SNqXtlOg0

―――――――

ゆみ「モモ、モモ…」ポンポン

モモ「ふぁ……先輩?」

ゆみ「交代の時間だ……といっても、夜明けまでもうすぐだがな」

モモ「そうっすか……でも私しっかり見張るっすよ」

ゆみ「どうせなら、私も一緒にいていいか? 一緒に夜明けを見よう」

モモ「もちろん大歓迎っすよ!!」



577:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 19:49:53.54 ID:SNqXtlOg0

ゆみ「ふぅ……それにしても、昨日は楽しかったな」

モモ「私は先輩といればどこでも楽しいっす! ……でも、この五人で活動するのも
同じくらい楽しいし、好きな時間っす」

ゆみ「ああ…この時間がいつまでも続けば……」

そこで私は、またあの夢を思い出した。

ゆみ「……っ」

モモ「どうしたっすか?」

ゆみ「いや、なんでも…」



578:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 19:58:32.87 ID:SNqXtlOg0

モモ「私、先輩に見つけてもらうまでは、他人とのコミュニケーションを半ば諦めてたっす。
でも先輩に見つてもらえたおかげで、そのための時間も悪くないってことに気付いったすよ」

ゆみ(なんとなくそうだろうとは思っていたが……モモの口から直接聞くのは初めてだな)

モモ「今じゃ麻雀部以外にも少しずつ友達が出来てきて……」

ゆみ「それはよかった。大切にしろよ? 部活以外の友達も重要だ」

モモ「それでも一番は先輩っす!」

ゆみ「モモ……」

モモ「私にとって、先輩は暗い所にいる私に手を差し伸べてくれた……白馬の王子様っすよ!」



579:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 20:05:11.59 ID:SNqXtlOg0

ゆみ「あっ…そのだな……」

モモ「///」

ゆみ(て、照れるな……何て言ったらいいものか……)

モモ「……あっ! 先輩、日の出っす!」

ゆみ「あ……本当だ」

私たち二人は赤面したまま、美しい日の出を眺めていた。

モモ「きれいっすね…」

ゆみ「ああ…」

ゆみ(そうだ……この素晴らしい時間を終わらせてなるものか)



580:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 20:12:21.68 ID:SNqXtlOg0

モモ「はっー。楽しかったひと時も、もう終わりっすか」

妹尾「名残惜しいですよねー」

蒲原「ワハハー、まだ私たちの夏休みは始まったばかりだぞー」

ゆみ「受験勉強にも精を出せよ。さあ帰ろうか」

睦月「帰る途中でまたクマに会わないといいんですが…」



581:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 20:23:22.46 ID:SNqXtlOg0

ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…

蒲原「いやー、それにしても楽しかった」

ゆみ「そんなに中身のあることはしてないぞ?」

睦月「森に入って、子グマから逃げて、テントを張って、カレー作って、見張りをして…」

妹尾「ホントだ。あんまり大したことしてませんね」

蒲原「ワハハー、おっかしいなー? 予定ではもっと大冒険になるハズだったのになー」

ゆみ「だいたい当初の目的は……」

モモ「あっー!!」



583:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 20:26:40.98 ID:SNqXtlOg0

蒲原「なんだー、どうしたんだモモ?」

睦月「まさかクマ? 勘弁してくださいよ…」

モモ「あ…あの茂みを見るっす……」

全員「!?」

睦月「あ……あそこから何か突き出てる……」

ゆみ(茂みから突き出した両足……まさか)

蒲原「死体…?」



584:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 20:32:05.31 ID:SNqXtlOg0

妹尾「ま…まさか本当だったなんて……」

睦月「ど…どうします?」

蒲原「き、決まってるさー。まずは救急車を……ってあれ?」

ゆみ「………」ザザッ…

蒲原「ゆゆゆ、ゆみちん近付いちゃだめだ」

睦月「そうですよ……もし、ふ、腐敗でもしてたら……」

ゆみ「……死体の靴を見てみろ」



585:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 20:37:50.69 ID:Jn65bHCD0

い、池田…?



586:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 20:38:41.61 ID:SNqXtlOg0

妹尾「靴って……あっ!」

睦月「あの靴は学校指定の…」

モモ「ってことは、鶴賀学園の生徒?」

ゆみ「そうだ……あの死体をこのまま放っておくわけにはいかない」

蒲原「……分かったゆみちん。全員で近付こう」



587:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 20:44:20.78 ID:SNqXtlOg0

ザッ…ザッ…ザッ…

私たち五人は、恐る恐る死体へと近付いた。

ゆみ(まだそんなに腐敗はしてないみたいだ。死んで日が浅いんだろう…)

ゆみ「いいか…? 顔を見るぞ…」

全員「………」ドキドキ

ゆみ「……」バッ

私は勢いよく茂みをかき分けた。



588:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 20:48:41.59 ID:cAK+sBsj0

ゴクリ・・・



589:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 20:49:29.63 ID:SNqXtlOg0

睦月「……は?」

蒲原「えっ…? でもそんな……」

妹尾「どうしてこんな……どうなってるんですか?」

ゆみ「バカな……こんなことが……」



モモ「……これ、私っすか……?」



590:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 20:52:22.15 ID:SNqXtlOg0

茂みの中に横たわり、虚ろな眼をして宙を仰いでいる少女の死体。
それはモモそのものだった。

妹尾「桃子さんはここにるのに……どうして?」

睦月「わけが分からない……頭が…」クラッ

ゆみ(何故……他人の空似? しかし鶴賀の制服を着ている……)

妹尾「!! 桃子さん、足が……」



591:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 20:58:33.93 ID:SNqXtlOg0

スーッ

ゆみ「モモ、お前足が消えて…」

モモ「………」シュゥゥゥゥ

ゆみ(か、影まで消えていってる……いつものステルスじゃないのか?)

モモ「……私、考えてみれば二日前の記憶があいまいっす」

蒲原「えっ?」

モモ「部活が終わって、学校を出て……そこで記憶が途切れてるっす。
気が付いたら次の日の朝だったっすよ」



592:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 21:02:55.17 ID:SNqXtlOg0

ゆみ「モモ…」

モモ「先輩……どうして私、幽霊になっちゃったんすかね」シュゥゥゥゥ

ゆみ「その先は言うな……言わないでくれ」

モモの体は既に半分ほど消失していた。

モモ「もしかしたら、みんなに見つけてほしくて…」シュゥゥゥゥ

ゆみ「いやだ……いかないでくれ、モモ…」

モモ「……先輩……見つけてくれて、ありがとう…」

スーッ



593:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 21:06:57.86 ID:SNqXtlOg0

全員「………」

蒲原(消えた……)

ゆみ「………」

蒲原「ゆみちん…」

ゆみ「……モモを連れて帰るぞ」



594:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 21:13:19.28 ID:SNqXtlOg0

妹尾「えっ…」

ゆみ「みんな木で担架を作るんだ……モモを連れて帰る」

睦月「ム、ムチャですよ」

ゆみ「いや、やるんだ!」キッ

睦月「うっ…」

蒲原「ゆみちん!」ガシッ

ゆみ「……!」

蒲原「それはムリだよ。警察に電話しよう……」



595:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 21:19:55.33 ID:SNqXtlOg0

私たちは警察へ電話をかけた。
死体は発見された。

その後の事情聴取やらなんやらで、かなりの長時間拘束された。
私たちは警察に、今回のことをどう話したらよいのか、まるで分からなかった。

まず第一に、あの噂の出所自体が不明だった。
私はひそかに、幽霊となったモモが無意識のうちに流したのではないか――
そう考えていたが、こんな話を警察が信じるわけがない。

結局、四人が解放されたのは、死体発見の翌日の朝だった。



596:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 21:23:47.77 ID:ksuG3MDK0

モモが死んだ…だと…?



597:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 21:26:38.86 ID:SNqXtlOg0

妹尾「ぐすっ…ぐすっ……うえええっ」

蒲原「佳織…」ポンポン

ゆみ「大丈夫か…?」

蒲原「私は佳織と一緒に帰るよ。それじゃあ…」

トコトコトコトコ…



598:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 21:31:11.86 ID:SNqXtlOg0

睦月「わ、私も帰ります…」

ゆみ「ああ……」

睦月「それでは…」ペコッ

ゆみ「……睦月」

睦月「は、はい。なんでしょうか…?」

ゆみ「……いや、やっぱり何でもない」

睦月「……?」


ゆみ(また学校で……なんて、言えるわけないじゃないか……っ)



599:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 21:39:07.85 ID:SNqXtlOg0

夏休みが終わり、学校が始まって――
私と蒲原は、麻雀部に顔を出さなくなった。

受験に集中していたのもあるが、実際はあの事件のせいだ。
お互いに気まずく、もう四人だけで楽しもうという気にはなれなかった。

佳織と睦月とは、学校の廊下ですれちがった時に軽く会釈を交わす――そんな仲になった。
友達はでき、また離れていく。仕方のないことだ。


そして私は鶴賀学園を卒業し、大学に入り、やがて社会に出た。



600:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 21:49:53.87 ID:SNqXtlOg0

大人になってからも、私は蒲原とは定期的に連絡を取り合っていた。

蒲原の話では、佳織は大学を出た後に結婚し、
今では家事と育児の両方に追われる日々を送っているらしい。

蒲原はというと、なんとか大学に受かり、卒業後は企業に就職したにも関わらず、
自分に合わないという理由で数年で退社、そのまま実家に戻って家業を継いでしまった。

睦月に関しては、卒業後の動向は全く分からなかった。
しかしついこの前、私が何気なくめくった麻雀雑誌の片隅に、彼女の写真が載っていた。
驚いたことに、睦月はプロ雀士としてデビューを果たしていたのだ。


全くもって、人の行く末というのは分からないものである。



603:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 21:59:06.69 ID:wQQY8muFP

モモのはステルスじゃなくて光学迷彩だよね



605:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 22:00:54.80 ID:SNqXtlOg0

プルルルルル…ガチャッ

蒲原『ワハハ、久しぶりだなゆみちん』

ゆみ「……そっちも相変わらずのようだな。それで、何かあったのか?」

蒲原『あー……それなんだけどさ……』

ゆみ「どうした? 何か言いにくいことなのか?」

蒲原『ニュースは見ただろ? 殺人事件の時効が廃止されたっていう…』

ゆみ「当然知っている」

蒲原『これでゆみちんにもチャンスが出来た……今からでも間に合うよな?』

ゆみ「ああ……今の仕事を続けていれば、きっとな……」



606:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 22:08:48.99 ID:SNqXtlOg0

私?

私は大学の法学部を卒業後、法科大学院へと進んだ。

今では一人の法曹として、日々の激務に忙殺される毎日だ。


蒲原『じゃあまた。忙しいのは分かるけど、たまには会おうや』

ゆみ「そうだな……考えておく」

ピッ



607:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 22:24:44.85 ID:SNqXtlOg0

それでも、毎年夏になると彼女のことを思い出す。
ほのかに漂ってくる桃の香りと共に――


ゆみ(ひょっとしたら、見えないだけで近くにいるのかもしれないな)


ふと、そんなことを考えてしまうのだ。


     ステルス・バイ・ミー  完

次回  京太郎「はいてないってどんな感じなんだ?」



610:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 22:32:59.63 ID:cAK+sBsj0

乙乙
切ないはなしだったな…



620:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 01:21:49.43 ID:R7wShVDc0

京太郎「はいてないて、どんな感じなんだ?」

咲「えっ?」

京太郎「だからパンツはいてないってどんな感じなんだ?」

咲「ど、どんな感じって言われても……これがフツーだし」

京太郎「なんかスースーしてて寒そうだよな」

咲「今夏だし、涼しくていいけど」

京太郎「冬とかヤバくないか?」



621:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 01:31:50.80 ID:R7wShVDc0

咲「確かにそれはあるね」

京太郎「どうしてんの?」

咲「冬はタオルとか持ってきて、椅子に敷く人多いよ。
あとは……ふんどしとかあるけど、さすがにそれはねぇ」

京太郎「だよな、さすがに高校生にもなって、ふんどしはねぇよな。 ハハハハハ……」

咲「あははっ」



623:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 01:40:28.70 ID:R7wShVDc0

京太郎「ハハ……いやぁ昔から気になってたことが聞けてよかったよ。
今ちょうど咲と俺しか部室にいなかったからさ」

咲「そうだったんだー。急に変な事聞いてくるからびっくりしたよ」

京太郎「悪い悪い、みんながいる所じゃ言えないだろ」

咲「そーだ、今の話聞いて思い出したんだけどさぁ…」

京太郎「なんだ?」

咲「聞いてよ、優希ちゃんのことなんだけど……」



624:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 01:50:06.43 ID:R7wShVDc0

一ヶ月前 咲の教室

教師「―――であるからして、このxとyが……」

咲(あーあ、数学の授業退屈だなぁ)

咲(なんか面白いことないかな……あれっ?前の席の優希ちゃんが震えてる?)

優希「………」フルフル

咲(なんか不自然に体ねじったり、姿勢変えたりしてるし……どうしたんだろう?)

咲は教師の目を盗んで、優希に話しかけた。

咲「ねえ、優希ちゃん。どうしたの?」ヒソヒソ

優希「さ、咲ちゃん……な、なんでもないじぇ」フルフル

そう答えたものの、優希は相変わらず体を曲げたり、
貧乏ゆすりを始めたりと落ち着きがなかった。



625:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 02:02:04.58 ID:R7wShVDc0

咲「ねえねえ優希ちゃんホントに大丈夫?」ヒソヒソ

優希「だ、大丈夫……だじぇ。できれば咲ちゃん、私にあんまりさわらないで……」

教師「おい片岡、お前さっきから挙動不審だぞ。どうしたんだ?」

優希「すい…ません……なんでも、ない、です……」プルプル

教師「そうか? ならいいが……で、これによって、のどパイあーる三乗となるわけだ」

和「SOA」

全員「ハハハハハ」

優希「………」プルプルプル

咲「……もう見てられないよ。優希ちゃん、どっか具合悪いんじゃないの? 一緒に保健室に……」グイッ

優希「あ、触っちゃ……あっ!」

ブブブブオォォォン!!!



627:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 02:09:00.10 ID:R7wShVDc0

京太郎「あははははっ!! 優希のヤツ、オナラを我慢してたわけかよっ」

咲「それだけじゃないよ。その後すぐ教室飛び出してさぁ……
なんかオシッコとウンチも両方我慢してたみたいなんだよね」

京太郎「アハハハハハ、マジかよ笑い死ぬ……」

咲「もー大変だったよ。こっちはそれを至近距離で受けたんだよ。
タコスばっか食ってるせいで、もの凄い臭さだったし」

京太郎「はいてないって大変なんだな」

咲「そうだよー、あははははっ」

ギィ……バタン

京太郎「あれ? 今扉開く音しなかった?」

咲「誰かいたのかな?」



628:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 02:18:27.63 ID:R7wShVDc0

優希「グスン…グスン…」

片岡優希は泣いていた。今まで感じたことのないような絶望を胸に。

優希「ヒック…ヒック…どうして……」

優希(いつも通り部室に行ったら、咲ちゃんと京太郎の声がして……)

優希(何話してるのかと思って聞いてみたら、咲ちゃんがあのことを……
秘密にしてって頼んだのにっ……)

友達だと思っていた咲が、よりにもよって京太郎にあのことを話したという
二つの事実が、優希にはこの上なく辛かった。



629:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 02:28:00.93 ID:R7wShVDc0

優希「ハァ…部活ズル休みしちゃったじぇ。でも、明日からも行きたくない…」

トコトコトコ……

福路「あら、あなたは…」

優希「じょ? 風越のキャプテンさん!」

福路「こんな所で会うなんて奇遇ね……それより、何かあったの?」

優希「い、いや何でもないじぇ」

福路「泣いてたみたいだけど…」

優希「………」

福路「私でよければ相談に乗るわ」ニコッ

優希「ううっ…おねーさーん!」



630:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 02:37:06.39 ID:R7wShVDc0

―――――――

福路「そう…そんな事があったの」

優希「もう部活行きたくないじぇ…」

福路「麻雀をやめるの?」

優希「麻雀はやめたくないけど……もうあの場所には……」

福路「…………」

優希「私、部の中では麻雀強い方じゃないんだじぇ。それなのに威勢だけはよくて……
咲ちゃんから見たら、そーいうのウザかったのかも…」



632:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 02:50:12.04 ID:R7wShVDc0

福路「………私ね」

優希「?」

福路「あなたによく似た人を知ってるの。その人は、あなたと同じようにちっちゃくて、
胸も無くて、たいして強くないのにウザくて、いつも陰口叩かれてたわ」

優希「………」

福路「でもね、その人はそんな状況にもめげずに……むしろ全然気にしなくて、
ウザい自分を貫き通して、ついには風越の大将になったの。(負けたけど…)」

福路「だからあなたも、今は辛くても、いつかきっといいことがあるって信じて頑張り続けてほしいわ」

優希「おねーさん……」ジーン

優希「うん…そうだじぇ。私、辛くても部活は辞めない!」



634:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 02:57:15.87 ID:R7wShVDc0

優希「ありがとう。おえーさんに勇気づけられたじぇ」

福路「よかった、これで安心ね……そうだ、いい物があるわ」

そう言って福路は、持っていた重箱を差し出した。

優希「なんなのだ、これは?」ガチャ

優希が蓋を開けるとそこには、優希の大好物であるタコスがぎっしりと詰められていた。

優希「こ、これは…タコスだじぇ!」キラキラ



635:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 03:01:13.61 ID:R7wShVDc0

福路「部の皆にごちそうするつもりだったんだけど、あなたにあげるわ。
タコス、好きなんでしょう?」

優希「大好きだじぇ! でも、いいのか?」

福路「ふふ、あなたが元気になったお祝いよ。たくさんあるから、
御家族や友達にも分けてあげてね。じゃあ私はそろそろ行かないと」スッ

優希「ありがとーおねーさん。この恩は忘れないじぇー」

福路「ふふ…さようなら」



636:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 03:13:30.84 ID:R7wShVDc0

翌日 麻雀部部室

咲「それでーそのオナラがブブゼラの音にそっくりでー」

久「アハハハ、そんな事があったのー?」

咲「絶対あれ、みの方も出てましたよー」

和「み…宮永さん…下品ですよ…」プルプル

京太郎「そーいう和だって、必死に笑い堪えてるじゃないか」

和「ち、ちが…」

久「ブブブブオォォォン!!! ブオォォォォォォ!!」←ブブゼラ吹く真似

和「ぶふっ!!」

京太郎「そーいやタコスのやつ、今日学校こなかったよな」

咲「またタコス食べすぎて下痢ピーとかかな?」

京太郎「ははっ、ありえるかも」


ガッチャ…ギィィ…



646:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 09:20:50.10 ID:R7wShVDc0

久「扉が開いた?」

咲「まだ来てない人いたっけ?」

京太郎「今日はタコスが休みで、それ以外は全員ここにいるぞ」

久「じゃあ誰…なの…?」


扉を開けた人物がゆっくりと部室の中に入って来た。
その人物とは―――


和「…って、ゆーき?」



647:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 09:29:57.06 ID:R7wShVDc0

優希「……」

和「ゆーき、今日学校休んだハズじゃ」

優希「……」

久「こらー、学校サボって部活だけ来るのはズルいわよー」

優希「……」

咲「優希ちゃん今日どうしたの? 心配したんだよ」

優希「……」

京太郎「おいタコス、何とか言えよ」



優希「……あータコス食べたいじぇ」


一同「!?」



648:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 09:35:49.23 ID:R7wShVDc0

京太郎「ぷっ、学校サボって部室来て、まず第一声がそれかよ。お前ホント、タコス好きだなー」

久「でもあいにく今タコス切らしてるのよねー」

優希「あータコス食べたいじぇ」

京太郎「まあ今回は俺が買ってきてもいいぜ」

優希「あータコス食べたい」

京太郎「ってオイ、聞いてるのか?」

優希「おっ? きょーたろー、お前うまそうなタコスだな―」

京太郎「はっ? お前何言って…」

優希「食わせろ―」ダダッ


ガブッ

京太郎「ぎゃぁぁぁぁぁっ!」ブシュゥゥゥゥゥゥ



649:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 09:45:42.41 ID:R7wShVDc0

和「す…須賀く……」ヘナヘナ…

咲「きゃああああああああ!! いやああああああああああ!!」

久「ちょ…優希、アンタなにやってんの!」

優希「うぇぇぇ不味い、こんなのタコスじゃないじぇ…」ペッ

和「ゆ、ゆーき…あなた何言って……」

優希「あっ、のどちゃんだー。のどちゃん、胸に大きなタコスを二つもぶら下げてるじぇ」

和(ゾクッ……!)



654:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 13:39:30.67 ID:R7wShVDc0

優希「おいしそーだじぇー、口直しに食わせてくれー」

和(腰が抜けて……動けない……)

優希「いただきまぁす」ガパッ

和「ひっ」

ドンッ…ガシャァァァァン!


和「!?」

久「立って和! 逃げるわよ!」



655:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 13:45:28.91 ID:R7wShVDc0

部長に突き飛ばされた優希は、麻雀卓に突っ込み転倒した。
しかし、すぐに起き上がろうともがいている。

久「ほら咲も立って!」

咲「部長…京ちゃんは……京ちゃんも一緒に…」

久「須賀君は…あのケガじゃもう……」



656:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 13:47:34.58 ID:R7wShVDc0

京太郎「……あー痛ってえなぁもう」ムクッ

久「!!」

咲「京ちゃん! よかった生きてた……」

久「そんな…あの出血で起き上がれるなんて……」

咲「大丈夫京ちゃん? 一緒に逃げようよ!」

京太郎「あータコス食いてえ」

咲「!!」



657:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 14:08:20.19 ID:R7wShVDc0

なんとか立ち上がれた和と、放心状態の咲を引きずって、久は外に出た。
そこで三人は目撃することになる―――

和「こ、これは…」

阿鼻叫喚の地獄絵図とはこのことだろう。
人が人を襲い、手当たり次第にかぶりつく。
噛みつかれて死んだ人間も、しばらくすると起き上がり、同じように人に噛みつくようになる。

さっき部室で見たのと同じ光景が、そこにはあった。


久「優希がここに来るまでに、大分派手にやったみたいね」

和「とにかく父に電話を……携帯が通じない!?」

久「しかも、事態はこの学校だけじゃなく外部にまで拡大してるみたいね。
携帯が通じなくなるなんて、ただ事じゃないわ…!」

和「これからどうすれば…?」

久「わからない……とりあえず、今はここを出るのが先決よ」



658:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 14:17:33.98 ID:R7wShVDc0

それから三人はあてどなく市内を彷徨った。

町は、あちこちが警察によって封鎖されていたり、感染者(と、呼ぶことにした)の
群れがいたりして、その度に三人は進路を変えざるを得なかった。

そうこうしているうちに夜―――
 
和「結局学校の近くに戻ってきてしまいましたね……」

久「ここなら周りは田んぼばっかりだし、町中よりは見通しが利いて安全よ」

咲「うう…おうち帰りたいよう…」

久「ごめんね、咲。でも仕方ないわ。町は危険すぎて、徒歩じゃ突破できそうもないもの」



659:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 14:41:29.03 ID:R7wShVDc0

咲「グスン…京ちゃん、なんで死んじゃったの?
子供の時約束したじゃない……こういう時は私を守ってくれるって」グスグス

和「宮永さん…」スッ

咲「……原村さん?」

和「須賀君のことはとても残念です……でも、彼に代わって私があなたを守ってみせます…
だから心配しないで……泣かないで……」ギュウウ

咲「原村さん…ありがとう……」ギュッ



660:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 14:44:49.83 ID:R7wShVDc0

久「あのー感動的なシーンの最中で悪いんだけど、そろそろ本格的にヤバいわよ」

和「確かに……どこか泊まれる場所を探さないと。夜になっても外を歩くのは自殺行為ですね」

咲「あ…あそこに誰か倒れてるよ」

久(警官の制服?)



661:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 14:52:21.75 ID:R7wShVDc0

久「死んでる…」

咲「うっ…おええええええっ」

和「大丈夫ですか、宮永さん」スリスリ…

咲「もう嫌だよう、こんなの…」

久(もう死体に慣れちゃった自分が怖い……)

ガサゴソ

久「……あった、拳銃だわ」

和「窃盗に銃刀法違反ですよ」

久「そんなこと言ってられる状況じゃないでしょ」



662:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 15:01:33.25 ID:R7wShVDc0

久「さて、武器が手に入ったけど扱えるか分からないし、全然安心できないわね」

パパーン

咲「あっ、部長! 向こうに車が…」

和「あの車、こっちに向かって来ますね」

ブォーン

久「……咲、和、下がって」チャキ

咲「ぶ、部長!? どうして銃を抜くんですか?」

久「生きてる人間全員が、私たちに好意的とは限らないわ。警戒は怠れない……」

和「う…撃てるんですか?」

久「分からない。でも脅しくらいにはなるかも」


キキィッ…ウィーン

「お前…久じゃないか?」

久「あなたは…」



663:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 15:07:57.24 ID:R7wShVDc0

ブロロロロロロロロ…

蒲原「いや~奇遇だなぁ。町から出ようとしたら、こんな拾い物をするなんて」ワハハ

ゆみ「おい、その言い方は失礼だろ」

久「いいのよゆみ。その通りなんだから」

妹尾「私はうれしいです。知ってる人に出会えて」

和「あの、ところで鶴賀って確かあと二人…」

モモ「私もいるっすよー」ユラ~

和「……あと一人いらっしゃいませんでしたっけ」



666:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 15:15:08.70 ID:R7wShVDc0

妹尾「………」

蒲原「むっきーのことか…」

ゆみ「彼女は……置いてきてしまった。私たちも逃げるのに必死で……
くそっ、すまない睦月……」

久「みんな自分が生き残るのにも精一杯なのよ。あなたは自分を責めなくていいわ。
私たちも二人死んじゃって……今じゃこの三人しか……」

妹尾(……あれ? 清澄高校ってもう一人いたような?)



667:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 15:19:16.02 ID:R7wShVDc0

一時間後

咲&和「すう…すう…」

モモ「ぐー…むにゃむにゃ…」

久「みんな疲れがたまってたのね」

ゆみ「蒲原、ラジオ付けてみろ」

蒲原「あいよ」パチッ

ラジオ『――この現象は全国に拡大しつつあり、空港や港では検疫ゲートを設け……』


ラジオ『――信じがたいことですが、彼らは人間を食料と認識しているようです。
彼らには、絶対に近付かないでください。繰り返します……』

久「……」



668:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 15:25:30.64 ID:R7wShVDc0

ラジオ『――自衛隊が各地に救助活動の名目で派遣されています。
しかし、緊急時の武力行使を許可するかどうかに対しては意見が分かれており……』


ラジオ『――今回の暴動に乗じて、各地で略奪行為や人間同士の暴力事件が多発している模様です。
このラジオをお聞きの皆様は、秩序を保ち、決してそのようなことのないよう……』


ラジオ『――各地に緊急避難所が開設されています。住民の皆様は、
最寄りの避難所に直ちに避難してください』


妹尾「これからどうなるんでしょうか?」

久「さぁ? まだ始まって一日も経ってないのに、このザマよ。
最終的にどうなるかなんて……考えたくもないわ」

ゆみ「とにかく、今はラジオで言ってる避難所とやらを目指そう」

蒲原「ワハハー、もう休憩させてくれよ―」



669:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 15:39:12.28 ID:R7wShVDc0

翌朝

久「ってワケで、避難所を目指すコトにしたわ」

和「でもここから一番近い避難所でも、かなりの距離がありますね」

蒲原「ここは田舎だしなー」

ゆみ「そうすると何回給油が必要になることか……食料も補充しないとな」

久「事態もどんどん悪化してきてるみたいだし、急いだ方がいいわ」

蒲原「まかせろー、ぶっちぎるぞー!」



670:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 15:51:45.02 ID:R7wShVDc0

市街地

ブォーン

蒲原「車があちこちで事故ってるなー。まあ渋滞するよりマシか」

アア…アアア……

久「オマケにあちこちに感染者がうろついてるときた。こりゃガス欠になったら終りね」

モモ「あっ、あれ見るっす!」



671:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 15:56:30.34 ID:R7wShVDc0

感染者「アア……」

バキィッ!

暴徒A「オラァ!死にやがれこのっ…」ドカッ、バキッ、グシャ

ガシャァァァァン

暴徒B「よっしゃあ! プラズマテレビゲットォォ!」

暴徒C「これで全国地デジ化しても安心だなぁ、ひゃははははっ!」

ワーワー キャー



672:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 16:06:36.39 ID:R7wShVDc0

久「……世も末ね」

和(狂ってる……!)

咲(こ…怖い……)ガタガタ

モモ「あっ、あいつら、こっちに石投げてきたっすよ!」

暴徒A「オラァ! 俺も乗せやがれ!」ブンッ

暴徒C「ひゃははははっ」ブンブン

ゴンッ

蒲原「あー!私の車に傷を…」

ゆみ「気にするな。あいつらは車に追い付けん」

蒲原「買ったばかりなのに…」ブツブツ



673:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 16:16:18.05 ID:R7wShVDc0

妹尾「あ、あそこにガソリンスタンドありますよー」

蒲原「やっと給油できるな―」キキィッ

ゆみ「注意しろ。さっきみたいのがいたら厄介だ」

久「私が周りを警戒するわ。いざとなったらこれで…」チャキッ

ゆみ「ああ頼む。妹尾とモモも周囲を見ててくれ」

妹尾「はい」

モモ「了解っすー」



674:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 16:31:24.10 ID:R7wShVDc0

ガソリンスタンド

蒲原「ダメだゆみちん。このタンクも空っぽだ―」

ゆみ「みな私たちと同じことを考えていたようだ。出遅れたな……」

蒲原「おっ、このタンクは少し残ってるぞー」ガチャガチャ

ゆみ「給油しててくれ。私はスタンド内を見てくる」

蒲原「まかせろー」



675:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 16:37:12.28 ID:R7wShVDc0

スタンド内

和「誰もいませんね」

咲「荒らされてるけど……食べ物まだ残ってるよ」

和「それは売り物ですよ」

ギィ…バタン!

ゆみ「どうだ? 何かあったか?」

咲「うわ、びっくりした」



676:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 16:44:49.40 ID:R7wShVDc0

ゆみ「食料がまだ残っていたか……よし、手分けして持ち出そう」

和「いいんですか? 売り物を勝手に……」

ゆみ「この非常時だ。やむを得まい」

咲「……て、手伝います」

ガサゴソ…ガサゴソ…

和「…………」

和「お金、置いていきますね……」スッ



678:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 16:54:04.94 ID:R7wShVDc0

久「なんとかガソリンと食料が手に入ったわねー」

ゆみ「しかし、給油できたのは僅かだ。このままではもたない」

妹尾「他のスタンドに行けば…」

ゆみ「どこも同じようなものだろう。満足にガソリンが残ってるとは期待できない」

咲「そんな…それじゃあ避難所にたどり着けない……」

ゆみ「なにか別の手も考える必要があるな」

モモ「あっ、あれを見るっすよ―!」



680:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 16:59:09.45 ID:R7wShVDc0

ゆみ「どうした、また暴徒か?」

モモ「いや、なんかこっちに手を振ってるっす」

オーイ、コッチダシー

和「見たところ学生ですかね? 五人ぐらいいて、一人が手を振ってますが…」

オーイ、タスケテクレダシー シニタクナイシー

咲「なんかあの人見たことあるような…」

オーイ、ムシスルナダシー カナチャンガミエナイノカー

妹尾「あれってもしかして…」

久「風越女子?」



681:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 17:09:15.25 ID:R7wShVDc0

蒲原「ワハハ、昨日といい今日といい、知ってる顔によく会うなあ」

久「あなた達は、どうしてこんなところで歩いていたの?」

福路「はい、私たちは部員全員でバスに乗って避難してたのですが……」

未春「どうも部員の中に、噛まれた子がいたらしくて。バスの中で発症して…」

深堀「………」

文堂「私たち五人は、なんとか逃げれたのですが…」

池田「グスッ…コーチが身を挺して守ってくれたおかげだしっ…」



682:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 17:16:46.93 ID:R7wShVDc0

久「そう…大変だったのね」

蒲原「しかし困ったぞー。このワーゲンバスは7人乗りなんだ」

久「……ねえ、あなた達の乗って来たバスってどこにあるの?」

福路「この先にありますけど?」

ゆみ「なるほど、そのバスに乗り換えるということだな」

蒲原「えっ?」

ゆみ「そういうことだ蒲原、運転はまた任せるぞ」

蒲原「ちょ…待っ……」

久「さっそく案内してくれるかしら」

福路「はい、こっちです」

ゆみ「おーい、急げ蒲原。置いてくぞ―」

蒲原「ワハハ……私の…買ったばかりのワーゲン…」



683:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 17:23:43.03 ID:R7wShVDc0

しばらくして――

ゆみ「あれか」

アアアア……

妹尾「まだバスの中に感染者が残ってますね」

福路「私にいい考えがあるわ」

ポンッ

池田「へ?」

福路「陽動は任せたわよ華菜。大声で彼らの注意を引き付けてくれるかしら?」



684:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 17:31:17.80 ID:R7wShVDc0

池田「えっ…キャ、キャプテン…それはちょっと…」

福路「…ダメかしら?」ウルッ

池田「い、いえ! キャプテンのお願いとあらばっ!やってやりますよー」キリッ

福路「ありがとう…華菜」

和(これが死亡フラグというやつですか)



686:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 17:36:38.15 ID:R7wShVDc0

池田「やーい、やーい。お前ら、この風越校内ランキング2位の華菜ちゃんが相手だし!
かかってこいだし!」

感染者「ウ…ウガァァァッ」

福路「凄いわ華菜……感染者たちが、一斉に華菜の方に…!」

久「今よっ!」

ダッダッダッダッダッダッ…



688:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 17:42:56.63 ID:R7wShVDc0

ブォォォォォン!

蒲原「エンジン始動! いつでもいけるぞー」

ゆみ「全員乗ったな? 蒲原、出してくれ!」

蒲原「あいよー」プシュー

池田「うぉぉぉぉぉい、待つし! まだ華菜ちゃん乗ってないし!」

蒲原「ありゃりゃ、素で忘れてたよ」プシュー



690:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 17:51:54.61 ID:R7wShVDc0

バス内

ガタガタガタガタガタガタ

咲「うおぇぇぇぇぇ」

和「これは…うぇっぷ…揺れすぎで…」

蒲原「ワハハ―、すまんなー。バスなんて初めてで…」ダラダラ

妹尾「智美ちゃん……笑うと…おえっ…口の端から漏れてる…うっぷ」

モモ「きゃああああ先輩、ゆれるっすよぉ~おぇあああああ」

ゆみ「や、やめろ抱きつくなぁ~ ゲロがかかるぅぅぅ」

文堂「………」

深堀「………」ドバドバ

未春(文堂さんは目を見開いたまま気絶して…深堀さんは無言のままリバースしてる…)

池田「うおぇあああああああああああ」ゲロゲロゲロゲロ

福路(華菜のリバース……!!) ゾクゾクッ

久「どうしてこうなった」



694:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 18:07:10.76 ID:R7wShVDc0

ブロロロロロロロ

蒲原「ワハハ、大分慣れてきたぞー」

ゆみ「頼むぞ。さっきみたいのはもうご免だからな」

モモ「でもこのバスも、燃料があまりないみたいっすね」

ゆみ「遠くまではいけないか…」

久「別に、避難所にこだわらなくてもいいんじゃない?」

一同「えっ?」



696:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 18:20:29.29 ID:R7wShVDc0

久「実際人が多い場所に行くのもどうかと思うのよ。あなたたちも見たでしょ?
この状況、知らない人間は信用できない」

久「だから避難所でなくとも、十分に食料があって、頑丈で、ライフラインが
しっかりしてるような、そんな場所があればそこに立て篭もればいいわ」

和「ですが…そんな要塞みたいな場所が都合よくあるわけが…」

モモ「あっ、あれを見るっすよ!」

久「……ショッピングモールね」ニヤリ



697:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 18:25:19.82 ID:R7wShVDc0

ゆみ「ホントに行くのか?」

久「このまま不確かな希望に身を委ねるよりいいと思わない?……突っ込んで!」

蒲原「あいあいさー」

久たちを乗せたバスは、感染者の群がる駐車場に突っ込んでいった。

ドン! ドツドツドツドツ…

ゆみ「おい蒲原! 人をはねてるぞ!」

蒲原「そんなこと言っても…数が多すぎて避けられないぞ」ドツドツ

咲「くっ…」

和「目を覆ってください宮永さんっ!」

未春「もう人間じゃないもう人間じゃないもう人間じゃない…」ブツブツブツ



700:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 18:55:51.41 ID:R7wShVDc0

キキイッ! プシュー

久「降りて、さあ速く!」

ゆみ「正面の入口に向かって走れ!」

ダッダッダッダッダ…

池田「入り口にとうーちゃーく! 一番乗りだし! …って開かない?」ガチャガチャ

ゆみ「なんだと…?」



701:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 19:03:14.33 ID:R7wShVDc0

久「ご丁寧に施錠されてるなんて、なんて運の悪い…」

ゆみ「止むをえまい。ここは破壊するしか…」

福路「そういうことなら、深堀さんお願い!」

深堀「ふんっ…!」メキメキ

和(素手で壊した!?)

久「さあ、カギが開いたわ! みんな入って!」

ダッダッダッダッ…

咲「ふう、助かっ……ってあれ…?」



704:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 19:10:32.61 ID:R7wShVDc0

アアアアア…アアアア…アアアア…

文堂「何ですか…この数は……?」

和「完全に囲まれてますっ!このままじゃ…… 」

感染者「アア…タコスくれー」

久「袋のネズミってワケか……」

ゆみ「どうする、久?」

久「……私が注意を引き付けるから、その隙にみんな逃げて」チャキ

ゆみ「何言ってるんだ、そんなことは出来ない!」

久「こうなったのも私の責任だわ。お願いだから言う通りにして」



705:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 19:19:06.57 ID:R7wShVDc0

感染者「アア…タコス…タコス…」

久「と、止まりなさい。止まらないと撃つわよ…」ガチャ

感染者「アア…アア…」

久「くっ…」

パーン!

感染者「ウッ…」バタッ

久(………倒した?)

感染者「ウガァッ!」

久「きゃあっ!?」



707:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 19:23:48.79 ID:R7wShVDc0

久「そんな…心臓を撃ったのに生きてる…?」

感染者「ウガァァァッ!クワセロー!」

ゆみ「久!」

咲「きゃあああー部長!!」

久(ダメだ…殺される…)

久が死を覚悟したその時――


「そいつらは頭が弱点じゃ!」

ヒュッ― グシャァァ!

久「えっ?」

どこからか飛来した麻雀牌が、感染者の後頭部にめり込んだ。



711:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 19:31:37.37 ID:R7wShVDc0

「うむ、私なりに精一杯」


ゆみ「この声、まさか…」

モモ「むっちゃん先輩っす!」

睦月「うむ」

咲「それに…」


「遅れてすまんのう」


和「あなたは……!」

まこ「これからはわしらの時代じゃあ!」バッ

妹尾(あ…清澄のメガネ枠の人……やっと思い出した)



713:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 19:35:51.22 ID:R7wShVDc0

まこ「行くぞ、津山さん!」

睦月「うむ!」

まこ「染谷流古武術を受けてみんしゃい!」バキッ ドカッ

睦月「うむっ…うむっ…」ヒュッ ヒュッ

文堂「凄い…牌を投げて的確に頭部にめり込ませるなんて…」

未春「まさかあれが伝説の投牌?」

まこ「今のうちに二階に逃げるんじゃ!」



715:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 19:45:15.39 ID:R7wShVDc0

ショピングモール 二階

まこ「ここなら連中の数も少ない」

久「さっきはホントに助かったわ。ありがとう」

まこ「いやぁ、わしのほうこそ、部活に行くのが遅れてなければ一緒に逃げられたのにのぅ」

久(完全に忘れてたなんて言えない……)

ゆみ「津山、置いていってすまなかった」

睦月「いえ、私の方こそ合流できなくてすいません」

ゆみ「よく一人で無事だったな」

睦月「はい、普段から牌投げを練習していたおかげです」

まこ「逃げてる途中で津山さんに会ってな。一緒にここに逃げ込んだわけじゃが」

睦月「まさか先輩たちも逃げ込んでくるとは」

まこ「ま、ここも安全というわけではないし、わしらの隠れ家に案内しようか」



716:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 19:54:21.81 ID:R7wShVDc0

ショッピングモール 三階 守衛室

まこ「どうじゃ? ここなら連中の行動も監視出来て安心じゃろ?」

久「確かに、ここなら隠れ家にはうってつけね」

まこ「長旅で疲れたじゃろ、今日は休みんしゃい。監視はわしと津山さんでやる」

ゆみ「ありがたい、感謝する」

池田「おおっ、ここテレビがあるしっ! しかも液晶だし! これでヘキサゴン観れるし!」

まこ「そりゃ今朝苦労して下の売り場から運んできたんじゃが……もうあんまし役にたたんかもしれんの」

久「どうして?」


ザーザー ザー

池田「ほとんどの局が映らないし…」ガーン



719:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 20:02:28.28 ID:R7wShVDc0

テレビ『ここで、スタジオにお招きした有識者の方々にお話を伺ってみましょう』


久「こんな状況でも放送してるなんて、さすがはテレ東ね」


司会者『ええーと、今回お招きしたのはプロ雀士の…』

藤田『藤田だ……てかなんで私がこんな所に呼ばれるんだ?』

司会者『こっちが聞きたいくらいですよ』

藤田『むっ、お前よく見たら、県予選の時の解説者じゃないか。お前こそどうしてこんな所に?』

司会者『はぁ…どうも人手不足が深刻らしくて』

藤田『私が呼ばれた理由もそんなトコか』



720:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 20:09:30.83 ID:R7wShVDc0

司会者『えー、気を取り直して……今回の事件、暴動を起こしてる者たちは皆一様に
人間がタコスに見えるという奇病にかかっているそうなのですが…』

藤田『突拍子もない話だ……まるでゾンビだな』

司会者『この件に関して藤田プロはどう思われますか?』

藤田『まあ、よっぽどタコスが好きなのだろうな。私がカツ丼好きなように』

司会者『彼らからの被害を防ぐには、どうしたらいいのでしょうか?』

藤田『そんなに好きならくれてやればいいじゃないか……タコスを』

司会者『はい、既にその方法は試されています。しかし彼らはいくら食べても満腹にはならないようで…』

藤田『贅沢な奴らだな』



721:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 20:14:15.12 ID:R7wShVDc0

司会者『結局のところ、頭部に強い衝撃を与えて脳を破壊し、活動を停止させることが
確実な解決策なのですが、いかんせん数が多すぎて対処しきれていません』

司会者『また、彼らはある程度は人語を解するようで……生前の記憶が残っているようです』

藤田『へぇ…それなら私が噛まれたら、タコスじゃなくてカツ丼を求めるようになるのか?』

司会者『さ…さぁ? どうなんでしょう?(この人ならありえるな……)』

藤田『まあいいや。それよりカツ丼おかわり』モグモグ

司会者(ホント何しに来たんだこの人…)

司会者『えープロ雀士の藤田さんでした。続きまして…』



724:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 20:37:39.21 ID:R7wShVDc0

―――――――――

ゆみ「なあ、今何時だ?」

久「……八時半よ」

ゆみ「いい加減寝たらどうだ? ここに来てまだ一睡もしてないだろ?」

久「あなたもね」

ゆみ「さっきから何か考え事をしているようだが…」

久「別に……」

ゆみ「嘘を付け。一体何を考えている?」

久「…………」

久「ねえ……ここを私たちだけのものにできたら素敵だと思わない?」



725:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 20:43:12.23 ID:R7wShVDc0

ゆみ「……本気で言ってるのか?」

久「折角この場所を選んで逃げ込んだのに、守衛室でゴロゴロしてるだけなんて勿体ないじゃない」

ゆみ「だが下には連中がウヨウヨしているぞ」

久「それについては考えがあるわ。ここにいる全員で協力すれば、連中を追っ払えるかも」

ゆみ「だが、他の皆が賛同するだろうか?」

久「そうね……明日になったらみんなに相談してみましょ」



726:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 20:52:15.39 ID:R7wShVDc0

翌朝

一同「えーっ? ここを占拠する!?」

久「ダメかしら?」

和「ダメっていうか……そもそも現実に可能なんですか!?」

久「だーかーらー、それについては考えがあるって」

福路「私は素敵な案だと思いますが…」

咲「で、でも…やっぱり危険なんじゃ」

久「下には何でもあるのよ? タダでショッピングし放題なんて、女の子の夢じゃない」

池田「な…何でも……」ゴクッ…


ざわ…ざわ… 



727:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 21:00:27.56 ID:R7wShVDc0

久「――で、作戦なんだけど、まずは感染者のこれ以上の侵入を防ぐことが先決ね」

このショッピングモールは出入り口が4箇所、搬入口が1箇所あり、
外部からの侵入を防ぐには、その全てを封鎖する必要があった。


久「搬入口は守衛室からコンピュータ操作で閉鎖出来たし、
他の出入り口も手動でカギを掛けるとして……」

ゆみ「問題は我々が入ってくる時に壊した入り口だな」

文堂「カギごと破壊したから、補修はまず無理ですね」

深堀「……申し訳ない」

久「気にしないで。あの入り口には、乗ってきたバスを使いましょう」



728:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 21:08:54.78 ID:R7wShVDc0

未春「それはつまり……」

久「入り口にバスを横付けして塞ぐのよ」

蒲原「ワハハ、また私の出番か」

妹尾「でも智美ちゃん一人に任せるのはちょっと…」

久「そうね、彼女だけを危険に晒すわけにはいかない…だからみんなで行きましょう」

ゆみ「全員が囮役と陽動を兼ねるわけか」

久「そういうこと。陽動にはこれを使うわ」スッ

一同「タコスを!?」

久「やつらのタコスに群がる性質を逆に利用してやるのよ」ニヤリ



731:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 21:22:45.13 ID:R7wShVDc0

久「二階のタコス売り場でタコスを仕入れて、それを使ってやつらを陽動しながら外に出る。
そして入り口を塞いだ後は、同じ手順で中に戻るのよ」

久「中に戻るときは搬入口を使うわ。だから誰かここに残って、操作してくれる人が必要ね」

久「その人には監視カメラと無線機を使って、私たちが安全にいけるよう、指示を出してほしいんだけど…」

久「誰かやってくれる人、いる?」

一同「……」シーン

ゆみ(みんなの生死に関わる重要な役割……安請け合いは出来ないが…)

福路「あのう…」 オズオズ

福路「私でよければ。複数のものを同時に見るのには慣れてますし」

久「じゃあ、お願いするわ。頼んだわよ」



732:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 21:31:23.28 ID:R7wShVDc0

ショッピングモール 一階

久「さて、準備はいいかしら?」

一同『………』コクッ

久「全員、無線機のスイッチをオンにして」

ピー ピー ガー

福路『上埜さん聞こえますか? 今なら搬入口付近には敵がほとんどいません。
よって、今から搬入口を開けます』

久「了解…… 聞こえたみんな? 今から外に出るわよ!!」

一同「おうっ!!」



734:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 21:41:07.05 ID:R7wShVDc0

感染者「ウガァァァッ!」

咲「わっ、思ったより数が多いよ!」

久「みんな、タコスを投げて!!」

久たちは、持ってきたタコスを床にばら撒いた。
地面に落ちたタコスに感染者たちが次々群がっていった。

ゆみ「今だ、駆け抜けろ!!」ダッ



735:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 21:45:10.66 ID:R7wShVDc0

ショピングモール 駐車場

アアアアアアアア……

妹尾「バスの周りにもたくさんいますよ」

ゆみ「さっきと同じ作戦でいくぞ」

モモ「でも…もうタコスがないすっよ」

ゆみ「何!?」

池田「さっき調子のって投げすぎたし!」

まこ「意味無っ!」ガーン

久「もうこうなったら正面突破するわよっ!」



737:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 21:56:34.47 ID:R7wShVDc0

まこ「染谷二―ドロップ!」バキッ!

睦月「うむっ…うむっ!」ヒュン ヒュン

深堀「……フンッぬらばっ!」ドカッ!

感染者「ギャァッ!」

まこたちの攻撃によって、感染者が次々なぎ倒されていく。

モモ「みんな凄いっす!」

久「これならいけそうね」

池田(よーし、華菜ちゃんも負けてられないし)

池田「受けてみろだし!華菜ちゃんパーンチ!!」ポス…

感染者「グハッ…」ドサッ

池田(なんだ…こいつら思ったよりも弱いし)



738:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 21:59:56.42 ID:QpFyccmG0

これは池田やばいぞwwwww



739:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 22:04:08.77 ID:R7wShVDc0

蒲原「ワハハ、バスに乗れたぞー」

ゆみ「よし、みんなもう十分だ! 次の場所行くぞ!!」

池田「おりゃあ! 猫パンチだし!!」ポカポカポカポカ…

文堂「池田せんぱーい!! もう十分です!! 早く移動しましょー!!」

池田「どうだ、思い知ったか! 華菜ちゃんの強さを!!」ポカポカ…

久「池田さーん! はーやーくー!!」

池田「ふっ…トドメは差さないでおいてやる」キリッ

ゆみ(駄目だこいつ…早くなんとかしないと…)



741:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 22:08:18.08 ID:R7wShVDc0

池田(コイツら弱すぎだし! 恐れることなんてないし!)

コーチ「イケダァ!!」

池田「ひっ! すいませんコーチ、調子乗りすぎましたっ!」ビシッ

池田「……ってアレ? コーチはもう死んだハズ……」

未春「カナちゃーん! 逃げてぇ!!」

池田「にゃっ!?」

コーチ「イケダァ!!」

ガブッ…



742:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 22:09:44.79 ID:QpFyccmG0

池田オワタwww



743:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 22:11:44.89 ID:R7wShVDc0

ブシュウウウウウウウウ……

池田「くっ…は……コー…チ……」バタン


未春「華菜ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

ゆみ「くそっ、だからあれほど調子に乗るなと……」

ピー ピー ピー

ゆみ「蒲原からの通信?」

蒲原『ゆみちんか? 入り口は塞いだけど、外に連中がたくさんいて、
バスから出れないんだ。助けてくれー』

ゆみ「わかった、今助けに行くぞ!」



744:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 22:21:59.76 ID:R7wShVDc0

まこ「染谷バスター!!」 ドガァッ

睦月「うむァ!!」 ビュン ビュン

深堀「どっせいっ!!」ドギャァァァン

感染者「グワァァ…」ドサッ


モモ「あの三人異常に強いっすね…」

久(別の意味で全国狙えたかも…)

蒲原「お陰で助かったけどなー」ワハハ

ゆみ「蒲原も無事だったことだし、早くモール内に戻るぞ!」


ダッダッダッダッ…

咲「うわっ……!」バターンッ

和「宮永さんっ!?」



748:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 22:27:21.21 ID:R7wShVDc0

久「咲がこけた!?」

まこ「こんな時までドジっ娘かい!!」


咲「みんなー、置いてかないでよぅー」


和「今助けますっ!」ダッ

まこ「のどかー! 戻ると危険じゃぞ―!!」

和「宮永さんは私が守るって約束したんですっ!!」

久「……だったらこれ使って!!」

ヒュー パスッ

和(これは…部長の拳銃……)



749:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 22:37:51.57 ID:R7wShVDc0

咲(足、くじいちゃったみたい)ズキズキ

アアア…

咲「!?」

京太郎「アアア……」

咲「きょ…京ちゃん…」

京太郎「ハラヘッタ…タコスクイタイ…」

咲「ウソだよね…? ねえ、京ちゃん私だよ…」

京太郎「アアア…クワセロー!!」

咲「きゃあああああああ!!」

ガブッ!!



750:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 22:41:51.80 ID:R7wShVDc0

咲「………」

咲「………?」

ポタポタ…

和「……っ…」

咲「は…原村さ…!」

京太郎「グォォォォ…」ガブガブ

和「宮永さんは……痛っ……絶対守りますっ!!」チャキッ

パーン!



752:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 22:45:14.23 ID:R7wShVDc0

京太郎「グハッ……」

バタンッ

咲「原村さん…その腕……私をかばって……」

和「はぁ…はぁ……大…丈夫ですっ…」ズキズキ

咲「う…う…グスッ…ごめんね……私がドンくさいばっかりに…」

和「いいんです……ほら、私の肩につかまってください」

咲「グスッ…グスッ……ヒック…」

和「絶対生き残りましょうね」

咲「グスッ…うん……」



753:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 22:51:12.79 ID:R7wShVDc0

ショッピングモール 搬入口前

まこ「はひーっ、ようやく辿り着いたわー」

久「こちら久よ。福路さん、今すぐゲートを開いて!!」

ガガッ ピーピー ガガガッ

久「無線が通じない!?」

蒲原「ワハハ……ってええっ!?」

まこ「おいっ、カメラで見えてるハズじゃろっ!? ここを開けてくれんか!!」ガンガンガン!!

ゆみ「風越の部長は何をやっているんだ……?」

妹尾「あわわわっ…あれを見てください!」



755:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 22:56:48.18 ID:R7wShVDc0

久「あれは和と…咲?」

まこ「和のやつケガしちょるみたいじゃが…」

妹尾「二人の後ろです!!」

アアアアアアアアアアア……

久「感染者が……」

ゆみ「あんなに…大勢……!」

和は足をくじいた咲に肩をかしているため、のろのろと歩くことしかできず、
感染者に追い付かれるかどうかというスピードで移動していた。

――結果、感染者の群れを引き連れてくることとなったのだ



756:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 23:00:14.69 ID:R7wShVDc0

咲「ハァ…ハァ…足が痛い……もう限界だよぅ」ヨロヨロ…

和「頑張ってください……入り口まであと少しですから…」ヨタヨタ…

感染者「ウガァァァ!」

咲「もう、すぐ後ろに迫ってるよ……私を置いてって」

和「ダメですっ! 私は諦めませんから!!」

感染者「ガァァァッ!!」

咲(ダメ…追い付かれる…!)



758:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 23:05:01.32 ID:R7wShVDc0

バギャアン!

感染者「ギャァァッ!」

深堀「………」ヌッ

咲「……深堀…さん?」

深堀「……ここは私が食い止める……行って」

和「………」コクッ

感染者「クワセロー!クワセロー!」

深堀「ふんっ……」メキメキメキ…

ドカッ バキッ ゴキッ ドシャッ…



761:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 23:16:20.79 ID:R7wShVDc0

和「ハァ…ハァ…遅くなりました」ドサッ

まこ「和…よく頑張ったのぅ」

和「どうして…中に入らないんですか…?」

久「搬入口が開かないのよ!! さっきから無線に呼び掛けてるけど、応答が…」

文堂「ああっ…!深堀先輩が……!!」


感染者「アアア…」

感染者の群れは風越のドムこと深堀を飲み込むと、じりじりと彼女たちに迫ってくる。

ゆみ「もう…ダメなのか…?」



762:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 23:20:18.38 ID:R7wShVDc0

ブーッ! ブーッ!

一同「!!」

アナウンス『今から搬入口が開きます。ご注意ください…』

久「扉が…」

まこ「開いていく!」

ゆみ「よしっ! 早く開いてくれっ!!」

感染者「ウガァァァァ!」ダッ

ゆみ「!」

バキッ!!

モモ「先輩には指一本触れさせないっす!!」



763:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 23:30:41.80 ID:R7wShVDc0

モモ「こぉんのおおおお」ドカッ バキ

睦月「うむっ…うむっ…」ヒュン ヒュン

感染者「ゴハッ!」グシャ

睦月「くっ…もう牌がない…」

睦月「かくなるうえは……うおぉぉぉぉぉ!!」ドカッ

ゆみ「睦月!!」

睦月(みんな…私が押さえ込むから…そのスキに……っ!)



766:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 23:35:26.67 ID:R7wShVDc0

ガシッ!

睦月「!?」

文堂(開眼)「……お供しますよ」

睦月「文堂さん…」

文堂(開眼)「プロ麻雀せんべいのお礼……まだしてなかったですから」

睦月「!!」

睦月「うむ…私はいい友達をもったみたいだ…」



768:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 23:38:06.44 ID:c4v1m6XG0

(開眼)ワロタ



769:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 23:41:39.41 ID:R7wShVDc0

ショッピングモール 一階 搬入口前

アナウンス『扉が閉まります。ご注意ください…』

ゴゥン ゴゥン ゴウン ゴゥン…ピシャッ


一同『ハァ…ハァ…』


未春「カナちゃん…カナちゃん…」ブツブツ

ゆみ「くそっ! 四人も犠牲になるなんて……」

久「……四人? ちょっと待って、一人足りなくない?」

ピー ピー ガガッ

モモ『……聞こえるっすか、先輩』

ゆみ「モモ……!?」



770:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 23:44:46.31 ID:R7wShVDc0

ゆみ「モモ! さっきから姿が見えないと思ったらお前どこに…」

モモ『……すいません。でも、みんなに迷惑はかけられないっすから…』

ゆみ「はっ?」

モモ『さっきの戦闘で噛まれちゃいました……もうそっちにはいられないっす』

ゆみ『なっ……待て、お前今外にいるのか?』

モモ『……最後に……ザザッ……が言いたくて…』

ゆみ「ちょっと待っ…」

モモ『今まで……ガガッ…ありが…っす………ブチッ』

ゆみ「モモ……モモ……モモぉぉぉぉぉぉ!!」



771:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 23:48:58.88 ID:R7wShVDc0

ショピングモール 三階 守衛室

福路「ごめんなさい…ごめんなさい…私のせいで……」ポロポロ

一同「………」

福路「私が…機械オンチなのに……ここに残るって言ったから……」ボロボロ

普段はまるで聖母のような笑顔を見せる福路が、激しく取り乱しながら泣き崩れる姿を前すると、
一体このやるせない気持ちをどこにぶつけたらいいのか、皆は分からなくなってしまった。

福路「もう私……死んで償うしか……」スッ

そう言って福路は懐から包丁を取り出すと、自分めがけて思い切り振りあげた―――



773:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 23:52:25.76 ID:R7wShVDc0

久「やめてっ!!」

パシッ

福路「上埜さん…」

久「もう……仲間が目の前で死ぬのはご免よ」

一同「………」

久「元々穴だらけの作戦だったのよ。責めるなら私を責めて」

ゆみ「いや、それに従った我々もどうかしていた。眼前の欲望に目がくらんでいたんだ」

妹尾「確かに…」

蒲原「ワハ…」


和「ゴフッ!」ビチャッ



774:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 00:08:41.74 ID:RUQzi06L0

咲「原村さん、しっかり!!」

まこ「吐血じゃと? 腕を噛まれただけなのに!?」

和「ハァ…ハァ…どうやら私、死ぬみたいですね…」

咲「そんなっ…原村さん、死んじゃ嫌っ!!」ガシッ

和「ハァ…ハァ…みや…ながさん……これを…」スッ



775:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 00:14:18.89 ID:RUQzi06L0

咲「そんな…嫌だ……ダメだよ、そんなの…」

和「私が甦ったら…その銃で……」

咲「出来ない…出来ないよそんなのっ!!」

和「わたしは……よみがえりたく…な…」

咲「ダメぇ!死んじゃダメぇ!!」

和「あなたになら……わたしは……」ガクッ

咲「原村さ……」



776:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 00:18:57.68 ID:RUQzi06L0

まこ「脈がない…」

咲「そんな…ウソ…」

スッ

久「咲……やるのよ」

咲「………嫌……」

久「あなたがやらないなら私がやるわ。これ以上犠牲は増やせない…」

咲「………」

久「和は最後にあなたに撃ってほしいと願った……この意味分かる?」

咲「………」



778:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 00:24:45.72 ID:RUQzi06L0

ガチャ…

咲「原村さん……」

咲「ダメ…やっぱり私できない」

ガシッ

咲「!?」

久「ほら…私が一緒に引き金を引いてあげるから……」

咲「嫌…嫌っ!」

久「早く! もう甦るかもしれない!!」

和「…………ピクッ」

久「撃って! 撃つのよ!!」

咲「いやあぁぁぁぁぁっ!!」

ズドン!



779:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 00:28:38.37 ID:NQXm+doM0

死んだwwwwwwwwwww



780:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 00:31:04.51 ID:Rf0ohSmc0

これは辛い…



781:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 00:31:25.07 ID:RUQzi06L0

ショピングモール 二階

久「はぁ……作戦は大失敗、モールの中は見下ろす限り、感染者で大混雑…」

ゆみ「最悪の結果だな。こうも数が多いと脱出も難しい」

久「はぁ……こんなハズじゃなかったのになぁ…」


ギュオンギュオン!!

久「……何の音?」

ゆみ「これは…チェーンソーの駆動音か!?」


未春「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ」ギュインギュイーン



783:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 00:37:40.12 ID:RUQzi06L0

感染者「グァッ」

ズバッ ズバッ ブシュゥゥゥゥ……

未春「みんな死んじゃえみんな死んじゃえ! カナちゃんを殺した地獄の悪魔どもっ…!」

ギュオーン ギュオーン グシャァァァァ……

久「吉留さんが一人で暴れてる…?」


バリバリバリバリバリバリ……

ゆみ「いや、それだけじゃない……」


咲「あは、あははっ♪」バリバリバリバリバリバリ



786:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 00:43:07.47 ID:RUQzi06L0

久「ちょ…咲…それ芝刈り機……」

咲「あはは、部長も手伝ってくださいよ。このスーパー雑草が多くて…」バリバリバリバリバリバリ

感染者「ギャァァァァァァァ」グシャグシャグシャ


ブォォォォォォン!

感染者「ギャァ!」ドカッ

妹尾「智美ちゃん、右にもいるよ! 早く轢き殺して!」

蒲原「ワハッ…ワハハ…」ドカドカドカドカッ

久「車が何でこんなトコ走ってんの?」

ゆみ(蒲原…あいつ展示用の車を使ったのか?)



787:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 00:46:25.92 ID:RUQzi06L0

ギュオオオオオン ズバッ グシャッ バリバリバリバリバリ……

久「みんな…みんな急にどうしちゃったっていうのよ?」

咲「あはははは、部長知ってますか?」

久「!?」

咲「本で読んだんですけど…人間って、身の回りにあるほとんどの物で殺せるんですよ。
あははははっ!」

久「………」ゾクッ

ゆみ(とうとうネジがとんだか…?)

ブロロロロロロロロロ ドカッ グシャッ ドドドドドドドドド……



788:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 00:52:52.05 ID:RUQzi06L0

咲「ふぅ、これでよしっ……と」

全ての出入り口を施錠し、散乱していた死体を処理すると、
いまやモールは楽園へと生まれ変わった。

咲「うわーぃ、本が万引きし放題だよ!」

福路「このスーパー、食材がたくさんあってより取り見取りね」

未春「あ……これ、カナちゃんが好きだった缶詰だ」

まこ「丁度メガネを新調したかったところじゃ」

妹尾「ああ、この服欲しかったんですよー」

蒲原「ワハハ、ここ映画館もあるのかー」

ワイワイ キャッキャッ



789:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 00:57:32.38 ID:RUQzi06L0

ショピングモール 二階 レストラン

咲「ではー、モール占領を記念して……カンパーイ!」

一同「カンパーイ!!」

ワイワイ キャッキャッ


ゆみ「はぁ……あんなことがあったのに、よくはしゃげるな」

久「無理もないわ……人間、こんな状況じゃ狂った方が楽だもの…」

ゆみ「………」



790:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:03:01.16 ID:RUQzi06L0

久「東横さんのことは…残念だったわ」

ゆみ「………」

久「でも私は、あなたにまでおかしくなって欲しくないのよ」

ゆみ「心配してくれてありがとう……」

久「だから今は嘘でもいいから勝利の美酒に酔いましょう……嫌な事は忘れて……」

ゆみ「そうだな…それがいいのかもしれない……」



791:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:09:46.88 ID:RUQzi06L0

それから、全員は心の傷を埋め合わせるかの如く物欲の海に溺れた。


久「これとこれと……あ、この服も可愛いわねー」

ゆみ(この服、着たらモモが喜んだろうな)

久「ねえ、ゆみー。これとこれ、どっちが似合ってるかしら?」

ゆみ「ここじゃ全部タダだし、どっちも着ればいいじゃないか」

久「むー、そういう意味で聞いたんじゃないのにー」



793:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:16:43.53 ID:RUQzi06L0

蒲原「ワハハー、念願のWiiを手に入れたぞ―」

まこ「後でみんなでスマブラでもやるかの」

蒲原「ゲーセンもタダでやりたい放題だなー」

まこ「いっちょ、わしと対戦するか?」

蒲原「クレーンゲームで勝負だー」

咲(あ、エトペンのぬいぐるみだ。取れたら原村さん喜ぶかなぁ…)

ガシャァァァァン!

蒲原「わっ、なんだなんだ―!?」

咲「私、クレーンゲームって苦手だから……こうすれば取り放題ですよね!」

まこ「だからって壊すことなかろうに…」



794:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:22:47.59 ID:RUQzi06L0

未春「………」ギュイイイイイイイイン

妹尾「何してるんですか?」

未春「あ、私日曜大工始めたんです。ここ資材たくさんあるから」

妹尾「素敵ですね……今作ってるのは犬小屋ですか?」

未春「カナちゃんのおうちですよ。カナちゃん寒がりだから、これからの冬に備えないと」

妹尾「えっ…」

未春「それにしてもカナちゃんどこ行っちゃったのかな? さっきから見当たらないんですけど…」

妹尾「わ、私はこれで失礼しますね!」タッタッタッ…

未春「カナちゃん…カナちゃん…カナちゃん…」ブツブツブツ



795:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:30:41.03 ID:RUQzi06L0

咲「ロン、11600です」

まこ「あちゃー、これで手持ちの金が無くなってしもうた」

咲「まだまだ奥の金庫にたっぷりありますよ」

久「こうやって現金賭けてやってるとヤクザみたいよねー」


福路「みんなー、夕食が出来ましたよー」

まこ「お、もうそんな時間か。あの人の作る料理は最高じゃ」

ブォーン!

蒲原「ワハハー、かっとばすぜー」

妹尾「智美ちゃん、ここで車を走らすのはやめてー!」

ゆみ「やれやれ…」


そんなこんなで、あっという間に月日は過ぎて行った―――



796:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:43:26.03 ID:RUQzi06L0

三ヶ月後

咲(………飽きちゃった)

咲(読みたい本は読みつくしたし、雑誌は新しいの入荷しないし…)

蒲原(ゲームも同じのばっかで、さすがにやり飽きたな―)

まこ(賭け麻雀も…金なんて今や紙切れじゃしのー)

妹尾(さすがにショッピングにも新鮮味がなくなりましたね…)

未春(やることやりつくしちゃった感があるなぁ)

福路(かといって外には出れないし……)


一同(ああ…退屈だ……)



797:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 01:52:00.45 ID:RUQzi06L0

久「暇ねー」

ゆみ「退屈だな」

久「こうもすることがないとねー」ゴロゴロ

ゆみ「だからといって昼間からベッドでゴロゴロするなよ…」

久「不健康なのはお互い様でしょー」ゴロゴロ

ゆみ「まずは服を着ろ。だらしないの前に風邪ひくぞ」



798:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:01:37.97 ID:RUQzi06L0

タッタッタッ…

まこ「おーい部長!」

久「まこ?」

まこ「加治木さんとおったか……どうじゃろ、これからミントンでもせえへんか?
どうも最近体がなまってのぅ…」

ゆみ「まぁ気分転換にはもってこいだな」

久「じゃあそうしましょうか」



799:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:09:40.77 ID:RUQzi06L0

ショッピングモール 屋上

まこ「それにしても……日に日に増えとるの―」

久「なに? ひょっとして体重だったりして」

ゆみ「連中のことだろう。ほら、下の…」

アアアアアアア……

まこ「ヤツらは一体何者なんじゃろう? どうにかして全滅させられないかの…」

久「出来たらとっくにやってるでしょうね……でもあの日からもう三ヶ月よ」

ゆみ「テレビは全チャンネル砂嵐だし、私たち以外に生存者がいるかどうかも微妙だな…」

久「少なくとも、もうこの辺にはいないんじゃないかしら?」



透華「屋上に人影発見……ですわっ!」



800:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:11:38.69 ID:RUQzi06L0

純「どうした透華、獲物でもいたか?」

透華「ええ。あのショッピングモール……私たちの次の別荘におあつらえ向きですわ!」

一「でも先客がいるんでしょ? 侵入は難しいんじゃないかなー? 抵抗してきたら厄介だし」

透華「ふむふむ、はじめの言うことにも一理ありますわね」

衣「衣はあそこが気に入ったぞっ!」ピョン!

透華「わっ、衣」



803:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:16:30.90 ID:RUQzi06L0

衣「眺望絶佳! あの屋上からの眺めはさぞや壮観なのだろう」

純「たったそれだけの理由でかよ」

衣「それだけじゃないっ! あそこは恐らく衣の好きなタルタルがある!!」

一「そういえばもう二日もろくに食事してないよね」

透華「しかしリスクのことを考えると…うーん」

衣「ダメなのか…?」ウルウルッ

透華「衣…泣き顔は卑怯でしてよ?」

智紀「泣く子と衣には…」

透華「あーもう、決まりですわ!! 今夜あそこを襲撃しますわよ!!」

衣「やたっ!」パァァ



804:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:20:38.00 ID:RUQzi06L0

ショピングセンター 三階 守衛室

未春「――それで、カナちゃんたら今日二回も倍満に振り込んだんですよー
もう可笑しくて可笑しくて……」

蒲原「ワハハー」

咲「原村さん、今日誕生日だったんで、プレゼントにぬいぐるみあげたら
とっても喜んでくれたんですよー」

蒲原「ワハハー」

妹尾「あはは…(ああ、いつまで壊れた人たちの相手をしなきゃいけないんだろう…)」

蒲原「ワハハー」

妹尾「智美ちゃん、さっきから笑ってばっかりだね…」

蒲原「ワハハー」

妹尾「………」


ブチッ

一同「!!」



805:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:25:22.18 ID:RUQzi06L0

久「停電?」

ゆみ「待て…今に非常電源に切り替わるはずだ」

パッ

まこ「おお意外と早いな―。よかったよかった……ありゃ?」

久「どうしたの?」

ザー ザー

まこ「監視カメラが故障したらしい……どのカメラも映らなくなってしもうた」


カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ……

智紀「………ハッキング成功」ニヤリ



806:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:28:39.88 ID:RUQzi06L0

透華『ザザッ……あー…聞こえますかしら、庶民の皆様方?』

突然、守衛室のスピーカーから、聞き覚えのある女性の声が流れてきた。

まこ「なんじゃあ、この声は?」

ゆみ「……誰かが無線をこっちに飛ばしているのだろう」

透華『よく聞いてくださいまし…ザザッ…そこは元々龍門渕グループ傘下の店…ガー…
つまり、この龍門渕透華に所有権がありますの!』

久「龍門渕…ですって…?」

透華『つきましては……あなた方には至急、荷物をまとめて出て行ってもらいたいのですわ。
もし抵抗するというのなら、そちらの命の保証はできなくってよ』

福路「そんな…横暴すぎるわ」

透華『十分だけ待ちますから、その間に建物から退去してくださいまし。それではごきげんよう!』ブチッ



807:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:32:53.79 ID:RUQzi06L0

妹尾「ど、どうすればいんでしょう…」オロオロ…

ゆみ「落ち着け、冷静になるんだ」

蒲原「ワハハー」

福路「何とか向こうに呼び掛けられないかしら?
こちらが知り合いだと分かれば、彼らも態度を変えるかも…」

ゆみ「どうだろう? ここまで一方的な連中に話が通じるだろうか?」

咲「そうですよー、あっちがその気なら、こっちも戦えばいいじゃないですか。
そのほうが簡単ですし」

まこ「またコイツは無茶苦茶言いよる…」

未春「カナちゃん…カナちゃん…」ブツブツ


久「みんないいかげんにしてっ!」ドンッ



808:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:38:52.50 ID:RUQzi06L0

一同「………」シーン

久「戦闘は絶対にダメ! また誰かが傷付くのよ? もうそんなのはうんざり……
それより話し合いで決着を付けましょう」

ゆみ「だが相手が聞く耳を持たなかったらどうする?」

久「その時はここをくれてやればいいわ。そろそろ潮時なのよ、この場所にいるのも」

一同「………」

久「今から全員荷物をまとめて1階に降りましょう。無線機を忘れないでね」



809:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 02:42:35.49 ID:RUQzi06L0

ショピングモール 一階 

ゆみ「あれから十分以上たったが……何の変化もないな」

福路「無線機にも何の呼びかけもな…」ピーピー


透華『どうやら交渉は決裂みたいですわね』

一同「!!」

透華『よろしい、では実力行使といきますわ!』

久「待って! 私たちは…」


ブーッ! ブーッ!

アナウンス『今から搬入口が開きます。ご注意ください…』

まこ「なん…じゃと…?」



811:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 03:06:12.44 ID:RUQzi06L0

カタカタカタカタカタカタカタカタカタ…

智紀「この程度…私の手にかかれば楽勝……」

透華「おーほほほほほっ!! ともきーは使える子ですわ!!」

搬入口が開くと同時に、6つの人影が店内に走り込んできた。


まこ「くっ…ヤツら入ってきおった!」

ゆみ「あの群れの中を突破してきたのか!? 信じられない…」

透華「さあさあ、逆らうものは皆殺しにして差し上げますわ!!」

久「待って!」

透華「おや…どこかで見たことある顔だと思ったら、
あなたたちは清澄に風越……鶴賀の方もいらっしゃるようね」



812:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 03:12:36.12 ID:RUQzi06L0

透華「私たちに歯向かうというのなら、たとえ知り合いでも容赦しませんわよ」

久「違うわ、私たちはあなた達と争う気なんてない!」

透華「ならさっさと出て行ってくれないかしら?」

久「どうしてそうなるのよ? 生き残った者同士、協力しようって考えはないの?」

透華「協力……ですの?」

久「そうよ……私たち、一緒に合宿までした仲じゃない」

透華「まぁ、そこまで言うなら……条件しだいでは講和というのも…」


咲「うらぁあああああっ!!!」ビュッ!



814:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 03:17:38.46 ID:RUQzi06L0

透華「!!」

ハギヨシ「危ない!」

バシッ!

一「萩原さんナイスキャッチ!」

純「投げナイフを素手で受け止めるとか…人間技かよ」

透華(あ、危なかったですわ…)ホッ

透華「……って、いきなり何してくれるんですの!? 危うく死にかけましたわ!!」

久「ちが…今のは咲が勝手に…」



815:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 03:24:17.90 ID:RUQzi06L0

透華「なるほど。 話し合いに持ち込むと見せかけて、
相手の不意をつく……それがあなたちのやり方……」ビキビキ

久「ご、誤解よ!! 彼女は今、情緒不安定で…」

透華「この龍門渕透華、今回ばかりは堪忍袋の緒が切れ…」

衣「なぁ、トーカ、トーカ!!」

透華「何ですの!? 今真剣な場面でしてよっ?」

衣「衣たちが入って来た扉、閉めなくていいのか?」

一同「……えっ?」



817:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 03:30:55.55 ID:RUQzi06L0

全員の視線が搬入口へと向けられた。

ウガァァァァァ!!!

開け放たれた入口付近で、店内に入ろうと感染者たちがもがいている。
そして押し合いへし合いの末、少しずつだが彼らは店内に侵入してきていた。


透華「何で扉が閉まってないんですの!?」

まこ「コラァ! うちらがどんだけ苦労してここを占拠したと思っとるんじゃ!!」

ゆみ「はやく入り口を閉じるんだ!!」

純「あの扉って智紀のパソコンでハッキングしたんだよな……アイツどこいったんだ?」



819:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 03:42:33.10 ID:RUQzi06L0

透華「ともきー、ともきーはどこですの!? はやくゲートを閉じないと…」

咲「それってコレのこと? もう死んじゃってるけど」ズズ

智紀「」ダラダラダラ…

透華「と、ともきー!」

咲「重たいなあ…これだから巨乳は嫌いなんだよ」ドサッ

透華「ともきぃぃぃぃぃぃぃ!!」



820:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 03:48:47.82 ID:RUQzi06L0

透華「もーあったまに来ましたわ! こうなったら全面戦争ですのっ!」

久「そんな…待って!」

透華「問答無用! 撃ち方始めっ!」

ズドドドドドドドドドドドド

妹尾「きゃっ!」

久「みんな隠れて!」

スダダダダダダダダダダ

感染者「アアア…」

まこ「くそっ、感染者たちもどんどん入ってきちょる…」

ゆみ「このままじゃ挟み撃ちにされるぞ! 2階に逃げるんだ!」

透華「逃がしません…ですわ!」ダダダダダダダダ



822:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 03:57:24.88 ID:Q2rVSEFa0





830:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 08:30:20.15 ID:RUQzi06L0

純「ハハハッー、俺の爆弾の餌食になりたいやつは出てこい!」ヒュン

ドォォォン ドォォォン

妹尾「うう…どうしよう…動けないよう…」

蒲原「ワハハー、まかせろーワハハ」

妹尾「!……智美ちゃん、今……」

蒲原「ワハハー」



831:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 08:33:36.49 ID:RUQzi06L0

純「おっ…早速獲物が出てきたか」

蒲原「ワハハ」スッ

純「なんだ? そんなナイフ一本で俺と闘おうってか?」

蒲原「ワハハ」

純「へらへらしやがって……くらえ!」ヒュン

ドォォォン ドォォォン

蒲原「ワハハー」

純「避けたか…ちょっとはやるみたいだな」

純「だが…この数はどうだっ!?」ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン

蒲原「ワハ?」

ズドォォン ズドォォン ズドォォン ズドォォン



832:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 08:41:06.68 ID:RUQzi06L0

純「やったか…?」

シュウウウウウウウウウ…

蒲原「ワッハッハー」ボタボタボタ…

純「生きてやがったか。しかし、あのケガじゃ動けな…」

蒲原「……ワハハー!」ダッ

純(なっ……まだ向かってくるだと? 体が半分ズタボロなんだぞ?)

蒲原「ワハハ」

純「!!」ゾクッ

純(何だあの目は……何で笑ってられるんだ?)

蒲原「ワハッ!」ダッダッ

純(しまった! 接近されちゃ爆弾が使えな…)


グサッ…



833:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 08:43:43.76 ID:RUQzi06L0

ポタポタ…

蒲原「ワッハッハッハー」

純「チッ…俺の負けか……」ガクッ

蒲原「ワハハ」

純「だがタダじゃ死なねえ……お前も道連れだ」ガシッ

蒲原「ワハ…」

純「へっ、死ぬ間際まで笑ってるとは……大したやつだぜ…」ピッ

ドオォォォォォォン



834:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 08:47:27.13 ID:RUQzi06L0

衣「自爆した!?」

衣「純……大義であった」

妹尾「いやああああああっ!!」

衣「ぬっ?」

妹尾「よくも…よくも智美ちゃんを殺したなぁ!」ブンッ

衣「ふっ…塵芥ごときが、衣に素手で挑もうというのか?」

妹尾「殺してやる殺してやる殺してやる」

衣「いいだろう……根堅州国に送ってやる!」ズドドドドドド

妹尾「」スッスッスッ

衣「なにっ、弾が当たらない?」ドドドドドド

妹尾「智美ちゃん返せよオラァ!」

バキィッ

衣「ぐぁっ…」



835:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 08:50:14.61 ID:RUQzi06L0

妹尾「貧乳のくせにバカにしやがってよぉぉぉ!!」ギリギリギリ

衣(く、首が…しまって…)

妹尾「なにがハイテイラオユエだよ、はいてないゆえの間違いだろォ?」ギリギリギリ

衣(意識が…途切れっ…)

妹尾「あやまれ! 死んであの世で智美ちゃんにあやまれ!
まだ大した活躍もしてないのに死んでいった智美ちゃんに……ぐはっ!」

衣「?」



836:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 08:53:17.27 ID:RUQzi06L0

妹尾「………」ヘナヘナ~

衣「なんだ? 急に力が抜けて…」

ドシャッ…

衣「死んだ…」

シュタッ

ハギヨシ「衣様、御無事ですか?」

衣「おお、ハギヨシであったか。危ないところだった。感謝するぞ」

ハギヨシ「いえいえ、衣様が無事で何より」

未春「よくもやったな…」

衣「!?」

未春「また私の仲間を殺したな……お前らみんな殺してやるっ!!」ブォーンブォーン



837:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 08:55:18.55 ID:RUQzi06L0

ショッピングモール 二階 ゲームセンター

ゆみ「なんてことだ。まさか殺し合いが始まるなんて」

スダダダダダダ… ワーワー キャー


ゆみ「下は地獄そのものだ……でもここならまだ…」

一「敵がいないとでも?」チャッ

ゆみ「くっ…」クルッ

一「おっと、動いたら撃つよ。それに僕が用があるのは、君の後ろにいる人さ」

ゆみ「なにっ?」

一「さあ、隠れてないで出てきたら?」


スッ

咲「あはっ、やっぱりバレちゃった?」



838:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 08:57:12.99 ID:RUQzi06L0

ゆみ「宮永…咲……」

一「さっきはうちのともきーが世話になったね。たっぷりお礼をさせてもらうよ」

咲「あはは、その銃で私を撃つの?」

一「僕は殺し合いなんて野蛮な事は趣味じゃない。
それより、もっと僕等らしいやり方で決着をつけない?」

ゆみ「まさか…」

一「そう、麻雀だよ」



839:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 08:59:21.42 ID:RUQzi06L0

一「ルールは普通の麻雀となんら変わらない。
一つ違うのは、勝者は敗者を好きなように出来るってトコかな」

咲「いいよ、そのルールで。さっさと始めようよ」

ジャラ ジャラ ジャラ ジャラ…

ゆみ(この麻雀、絶対に何かあるはず……何かが…)

一「さーて、配牌も終わったし僕の親番から……って、あれぇ?」ピタッ

ゆみ「何だ、どうしたんだ?」

一「ふふふ……悪いねぇ、もう上がってるんだ」

バタッ

ゆみ「バカな……天和だと!?」

咲「………」



840:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 09:06:03.60 ID:RUQzi06L0

一(どうだい? 僕のすり替え、全然見えなかっただろう?)

一(この三ヶ月、生き残るのに必死だった……生き残るための技を磨くのに必死だった!)

一(こんな所でぬくぬくとしていた君らとは、気構えが圧倒的に違う!)

ゆみ(くそっ、イカサマか? しかし現場を押さえれなければ……)

一「ははっ、僕の麻雀は君らの打ってきた生ぬるい麻雀とは違うんだよ!
このままなぶり殺しにしてあげるよ!」

咲「………」



841:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 09:08:07.44 ID:RUQzi06L0

ジャラ ジャラ ジャラ ジャラ…

一「また僕の親だね」カチャ…パシ

ゆみ(今回は天和ではなかったか…)ホッ…

一「………ニヤリ」

一「リーチ」クイッ

ゆみ「親のダブリーだと…?」

一(ふふ、次で終わりだ……)

咲「……それカン」バタッ

一「へっ?」



842:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 09:15:06.62 ID:RUQzi06L0

咲「カン…カン…もいっこカン」バタッバタッバタッ

ゆみ「なっ…」

咲「ツモ……嶺上開花、大四喜、四槓子、字一色」

一「そっ…」

咲「はい、私の勝ち。麻雀って楽しいよねーありがとーございましたー」

一「あ……あ……」ガタガタ

咲「……さて、勝者は敗者を……」チラッ

一「ひっ…」



843:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 09:21:29.51 ID:RUQzi06L0

―――――――――

咲「んんー、すっきりした。麻雀って楽しいね」

ゆみ「…………」

咲「さて、私はもう行くよ。まだまだたくさん殺さないといけないし…」

咲「加治木さんも殺されないように気をつけてねー」

タッタッタッタッ…

ゆみ「…………」

ゆみ(宮永咲…お前は…)

ゆみ「……本当にこれでいいのか?」



844:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 09:25:36.59 ID:RUQzi06L0

ショッピングモール 一階

未春「死ねえぁぁぁぁぁ!!」ギュイーン

ハギヨシ「………」フッ

未春「ちっ…またかわされた…」

ハギヨシ「チェーンソーは強力ですが、小回りが利かないので接近戦では不利かと」

未春「うるさいっ!」ブォーン

ハギヨシ「あなたには何の恨みもありませんが…」スッ

未春「うおおぁぁぁぁ」ギュイーン

ハギヨシ「これも透華お嬢様や衣様のため……」スッスッ

未春「ああああああああ!!」

ハギヨシ「………お許しください」

バシッ



846:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 09:32:17.34 ID:RUQzi06L0

未春「うわっ」ドターン

ハギヨシの付きだした足につまずき、未春は自ら振りかぶったチェンソーの刃に突っ込んだ。

ギュイイイイイイイイイイイン…グシャ メキャ ゴキャ

未春「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」グシャグシャグシャグシャ

ハギヨシ(……………)

未春「…ゴロズ…ゴロズ…ガナヂャン、ガナヂャン……」グシャグシャグシャグシャ…

キュイイイイン……

刃の回転が止まるとともに、彼女の心臓の鼓動も止まった。



847:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 09:38:04.66 ID:RUQzi06L0

ハギヨシ(なんと惨い……)

ハギヨシ「可哀想に……こんなことさえ起きなければ…」

グサッ

ハギヨシ「な…に…」

ハギヨシ「背中に…ナイフが……透華お嬢様…お許しください……」

バタン

福路「ふふふ…」

福路「ありがとう吉留さん。あなたのお陰で、一番手強そうな人を倒せたわ」



848:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 09:45:31.05 ID:RUQzi06L0

透華「いらっしゃいましっ!」ジャキッ

ズダダダダダダダダ

久「マシンガンを二丁も撃ってくるなんて……」

まこ「くっ、部長! なんとかヤツを怯ませられんかのう? 接近さえできれば、わしの古武術で…」

久「そんなこと言われても……火力が違いすぎる!」パーン パーン

透華「おーほっほっほっ、近付けるものなら近付いてみなさいですわ!」ズダダダダダダ



849:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 09:52:42.67 ID:RUQzi06L0

バスッ!

久「きゃあ!」

まこ「部長、大丈夫か!?」

久「くっ…腕を撃たれたみたい…」

まこ「はやく止血せんと……ここはわしに任せて逃げぃ!」

久「そんな…」

まこ「そのケガじゃもう戦力にはならん。それにリーダーのあんたに死なれては困るんじゃ!」

久「……わかった」

タッタッタッ…


まこ「部長、あんたは死なんでくれや…」



851:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 09:55:02.98 ID:RUQzi06L0

ズダダダダダダダダダダ…

まこ「くそっ、ヤツに近付くためにはどうすりゃいいんじゃ…」

ダダダダダダダダダダダ…

まこ「ええぃ、こうなったら一か八かじゃ!」

透華「ん? あれは…」

まこ「うおりゃああああ」ダッダッダッ

透華「あの女、死体を盾に…」ズダダダダダ

まこ「おりゃあああああああああ!!」バスバスバス

透華「くっ…弾が」カチカチ

まこ(よし、 勝機は我にありじゃ!)

まこ「くらえ染谷流古武術、魔手刀閃!」

ゴォォォォォッ!



852:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 10:00:53.45 ID:RUQzi06L0

透華「おっと、危ないですわ」スッ

まこ「なっ、見切られた?」

透華「この私をそこら辺の雑魚と一緒にしないでほしいですわね!」チャキ

ズドンッ


まこ「うぐっ…」バタッ

透華「ふうー、一丁上がりですわね」

<オーイ

透華「ん?」

<トーカー トーカー

透華「おや、あんな所に衣が……おーい、こっちで」

グシャッ



853:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 10:07:24.06 ID:RUQzi06L0

透華「…す、わ?」フラ~

バタンッ


まこ「へへ…油断大敵じゃ……」ハァハァ

まこ「…出血がひどい…どうやらここまでのようじゃな…」


まこ「我が生涯に一片の悔いなし……」バタッ



854:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 10:15:00.88 ID:RUQzi06L0

衣「トーカ、トーカ!」ユサユサ

透華「」

衣「……逝ったか」


シーン

衣「死屍累々だな……」

衣「衣は……衣はまた独りぼっちになってしまった…」

衣「……後に続く者がいないのは寂しいものだな」

ガタッ

ゆみ「まだだ、まだ私が残っているぞ……天江衣っ!」

衣「!?」



855:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 10:21:19.51 ID:RUQzi06L0

衣「鶴賀の大将か……その刀で私と勝負する気か?」

ゆみ「そうだ……さぁ来い、天江……銃なんか捨ててかかって来いっ!」チャキ

衣「一騎打ちを所望するか。古典的だが……その心意気やよし!」スチャ

ゆみ「行くぞ!うおおおおおおおおおおおっ」ダッ

衣「来いっ!」



856:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 10:29:45.14 ID:RUQzi06L0

咲「みぃーつけた」

優希「…ジョ?」

今やモール内を埋め尽くさんばかりになだれ込んでくる感染者の群れ。
その中に、咲はかつての友人の姿を発見した。


咲「やっぱりいたんだー優希ちゃん。私だよ、覚えてる?」

優希「ジョ…」

咲「ミ・ヤ・ナ・ガ・サ・キ、忘れちゃったの?」

優希「ミヤナガ…サキ……ウガァァァッ!」


咲「この…タコス野郎ォォォ!」

ドガァッ!



859:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 11:10:53.11 ID:RUQzi06L0

優希「グハッ…」ズザァァァ

咲「お前さえ…お前さえいなければこんなととには…」ドカッ バキッ

優希「グハッ、ケハッ」

咲「ふぅ…簡単には殺さないよ……まずは四肢を一本ずつ切断する」

咲「それから腹をかっさばいて、そのタコス臭いはらわたを引きずり出す……
あははっ……頭は最後まで壊さないよ……」

優希「ヤ…ヤメ…」

咲「まずは右腕から!」

グシャ!

優希「ギャァァ!!」



861:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 11:16:10.92 ID:RUQzi06L0

咲「あははっ、これは京ちゃんの分だよ……そして次は……」

優希「ウ…」

咲「原村さんの分!!」

グシャ!!

優希「グワァッ!!」

咲「あれ、切断しきれなかったよ……力ずくで引きちぎってあげるね」

メリメリメリメリ…ブチィ!!

優希「ギャァァァァァ!!」



862:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 11:25:01.92 ID:RUQzi06L0

咲「ふぅ…ふぅ…意外に力がいるんだ……ちょっと疲れたよ」

優希「イタイ…イタイ…イタイ…」シクシク

咲「……痛い?」

ドカッ!バキッ!

咲「てめえ何様のつもりだよ!? 京ちゃんや原村さんを殺したお前らに……
お前たち化け物に人権なんてないんだよ!!」 ドカッ バキッ

優希「……ソッチコソ…ナニサマダ…」

咲「なに…?」



863:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 11:27:44.05 ID:RUQzi06L0

優希「ドッチガ、バケモノダ……コンナニワタシヲ…イタブッテ……」

咲「それはお前が……」

優希「ワタシハシッテイル……フダンカラ、オマエラハ、ワタシヲバカニシテイタ……」

咲「………」

優希「アノヒダッテ…モトハトイエバ、オマエラガ……」

咲「!!」

優希「イ…イチバン、コワイノハ…」


優希「ニンゲン…ダ…ジェ…」



864:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 11:33:15.89 ID:RUQzi06L0

ゆみ「うおおぁぁっ!」

ガァァン!ガァァン!

衣「この…塵芥めがっ!」

ガァァン!ガァァン!

衣(くっ、こいつ…強い…!)

ゆみ「何故だ、何故なんだ? お前たちは…どうしてこんなことを!?」

衣(そ…それは…)

衣(衣は…衣は怖かったんだ…)



865:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 11:36:57.46 ID:RUQzi06L0

衣(秩序が崩壊していく中で……元から友達の少なかった衣は……
さらに他人が信用できなくなっていったんだ)

衣(トーカやみんなは、そんな衣を守ってやるって言ってくれて…それで…それで…!)

ゆみ「どうしてお互い協力しようと思わなかったんだ? 私たちは…争うつもりなんて…」ガキィン!

衣(………)

ゆみ「私たちは……一緒に合宿までした仲じゃなかったのか?
……友達じゃなかったのか!?」

衣(……!!)



866:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 11:42:46.03 ID:RUQzi06L0

衣「……そうか…お前たちは最初から……」スッ

ゆみ(自ら剣を!?)

激しい切り合いの最中、突如として衣は剣をおろした。

ノーガードとなった衣の身体を、加治木の刀が切り裂いた。

ズバッ! ブシュゥゥゥゥゥ……

衣「もっと……もっと早くお前たちと出会えていれば……」ガクッ



867:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 11:46:40.08 ID:RUQzi06L0

福路「ふふふ、どうやら龍門渕は全滅のようね…」

福路「さて、私もそろそろ安全なところに……」

ガブッ!


福路(っ……噛まれた?)

池田「キャプテーン ココニイタシー」

福路「華菜……あなたまだいたの?」

池田「キャプテーン、アタマナデテホシイシ…」

福路「華菜……安らかに眠ってちょうだい…」ブンッ

グシャァァァァァァァァ!



868:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 11:50:35.40 ID:RUQzi06L0

福路(さて、傷は浅かったけど……どうしよう、噛まれてしまった)

福路「……なーんてね」

福路「自分で作ったタコスですもの。ワクチンぐらい用意してあるわ」スッ

福路「これを打てば……」

咲「へえ…そうだったんですか」

福路「!?」



869:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 11:54:09.84 ID:RUQzi06L0

福路「宮永さん…これはね…」

咲「詳しく聞かせてもらえますか?」

福路「………」

福路「確かに今回の事の発端は私だわ。私が人間をタコス中毒者に変えるタコスを作ったの」

咲「どうしてそんなものを作ったんですか?」

福路「さあ? タコスを作ってたら、たまたまそういうのが出来上がったの」

咲「……そんな話、信じられませんよ」



870:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:01:52.77 ID:RUQzi06L0

福路「分かってるわ。こんな荒唐無稽な話、信じろってほうが無理よね」

咲「………」

福路「諦めてちょうだい……ただ、今回はこういう筋書きだったってだけの話だから」

咲「……あなたの言ってる意味が分かりません」

福路「今は分からなくてもいいわ」

咲「…?」



871:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:05:43.60 ID:RUQzi06L0

咲「じゃあどうして、それをばら撒こうとしたんです?」

福路「……今回みたいに、たまにあり得ないくらい酷いことが起きたりするでしょ?」

そう言って、福路はあの聖母のような笑みを浮かべた。

福路「その度にみんなが泣いたり、ヘコんだりするところを見るとゾクゾクするの…」

咲「……よくわかりました」チャキ

福路「私を殺すの…?」

咲「安心してください…もう人を苦しませて死なすようなことはしませんから」

福路「あらあら…」

ダァーン! ダァーン!



872:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:11:30.22 ID:RUQzi06L0

咲「じゃあどうして、それをばら撒こうとしたんです?」

福路「……今回みたいに、たまにあり得ないくらい酷いことが起きたりするでしょ?」

そう言って、福路はあの聖母のような笑みを浮かべた。

福路「その度にみんなが泣いたり、ヘコんだりするところを見るとゾクゾクするの…」

咲「……よくわかりました」チャキ

福路「私を殺すの…?」

咲「安心してください…もう人を苦しませて死なすようなことはしませんから」

福路「あらあら…」

ダァーン! ダァーン!



874:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:16:21.81 ID:RUQzi06L0

ショッピングモール 一階 エレベーター付近

久「リーダーのくせに傷を負って敗走……我ながら無様ね」

ポタポタ…

久「――痛っ…ダメだ、血が止まらない……」ズキズキ

久「このエレベーターで、隠れ家まで逃げるか……でもその前に…」

ピッ ピッ

久「聞こえる? こちら竹井久よ、聞こえたら誰か返事して!」



875:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:21:18.28 ID:RUQzi06L0

ゆみ『……久か? こちら加治木、聞こえてるぞ!』

久「よかった、生きてたのね。そっちの…1階の状況はどうなってるの?」

ゆみ『天江は倒した。だが私も今降りて来たばかりで……他の皆がどうなっているかさっぱりなんだ』

久「わかったわ…今から隠れ家に集合しましょう。他のみんなにも呼び掛けてみるから」

ゆみ『了解……死ぬなよ?』

久「ええっ、約束する…必ず戻るわ…!」

ピッ

久「さてと…他の皆にも伝えなきゃ…」



876:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:27:52.00 ID:RUQzi06L0

咲「………」スッ

咲は無言で、福路の死体の傍にひざまずいた。

咲(京ちゃん…原村さん…仇はとったよ……)

咲(そして……)

咲「ごめんね優希ちゃん…」

咲(確かに優希ちゃんの言う通り、化け物は私の方だった…)

咲(この事態が起きてから…いやそれ以前から、私は化け物だったのかもしれない)



877:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:33:57.38 ID:RUQzi06L0

チャキ

咲は自分のこめかみに拳銃を突きつけた。

咲(こうするのが一番だよね…私がしてきたことを償うには…)

咲(さようなら…みんなっ…)ググッ

―――てください

咲(えっ?)

―――てください――きてください 宮永さん――

咲(頭の中に声が聞こえる? これは……)

―――生きてください! 宮永さん!

咲(原村さんの―――!)



880:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:46:53.84 ID:RUQzi06L0

咲「ハッ!」

久『――聞こえる? 誰かこの通信を聞いていたら答えて!』

咲「部長の声…無線機から…」

ピー ピー ガー

咲「無線機が壊れてる?返事が出来ない……」

久『――いい? 全員今から隠れ家に集合よ! 絶対生きて帰るのよ!』

咲「………」



881:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:51:28.42 ID:RUQzi06L0

久「はぁ…はぁ…これでよしっと…」ピッ

久「あとはエレベーターを待って…」

ゴゥンゴゥンゴゥン

久「みんな…生きててちょうだい…」ハァハァ

チーン

久「………」ドキドキ

ゴゴゴゴゴゴゴ

エレベーターの扉が開く。そこには誰も乗っていなかった。

久(ふう……感染者が乗っていたらどうしようかと思ったわ)



883:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 12:55:50.56 ID:RUQzi06L0

久「あとはこれに乗って…」

ガシッ

久「えっ…」

ガブッ !

久「痛っ…」

久(…バカな…誰も乗っていなかったハズじゃ…)


モモ「アア……」ユラッ

久(ステルス……能力……)

モモ「アア…センパ…」

久「東横さん…許して…」


久は桃子の頭部に照準すると、引き金を引いた。



884:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:01:27.70 ID:RUQzi06L0

ショッピングモール 三階 守衛室

ギィ…バタンッ

ゆみ「誰もいない…一番乗りか……」

ゆみ「私としたことが…ここに来る途中で噛まれるとは……しくじったな……」

ゆみ「はぁ…はぁ…モモ……今そっちに行くからな…」

ヒュッ パスッ

ゆみ「!?」

咲「……それ」

ゆみ「宮永…これは…?」

咲「ワクチンです……使ってください」

ゆみ「ワクチン? なんだってそんなものが…」



885:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:06:43.56 ID:RUQzi06L0

――――――――――

ゆみ「そうだったのか。風越の部長が……」

咲「………」

ゆみ「だがお陰で助かった。これからどうする?」

咲「ここで、部長たちを待ちます」

ゆみ「ああ、そうすることにしよう…」



886:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:13:07.27 ID:RUQzi06L0

数時間後

ゆみ「………」

咲「…………」

ゆみ「…なぁ」

咲「…なんですか?」

ゆみ「もう何時間も待った……それでも来ないということは……」

咲「…………」

ゆみ「……言いにくいことだが……みんなはもう……」

ゆみ「……死んでしまったのかもしれない」

咲「…………」



889:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:20:05.37 ID:RUQzi06L0

ゆみ「もうすぐ夜が明けるぞ」

咲「そうですか…」

ゆみ「もう脱出しないか?」

咲「……加治木さん一人で逃げてもいいですよ」

ゆみ「そんなことは……」

咲「………」ガチャ

咲「拳銃の弾は…あと一発……」

ゆみ(こいつ…死ぬ気か…?)



890:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:25:08.18 ID:RUQzi06L0

ピンポーン

咲「!?」

ゆみ「エレベーターが作動している?」

チーン ゴゴゴゴゴゴゴゴ

咲「……ドアの開く音」

ゆみ(誰か乗っていたのか…?)

コツ…コツ…コツ…コツ

ゆみ(足音が…こっちの部屋に向かってる…)

コツ…コツ…コツ…ピタッ

咲「来る…!」



891:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:30:10.65 ID:RUQzi06L0

ギィ…バタンッ

咲「!!」

ゆみ「!!」

久「………」

咲「部長……」

ゆみ「久…お前……」

久「…アア……」



893:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:34:32.50 ID:RUQzi06L0

感染者となった久は、見るも無残な姿だった。
腕を撃ち抜かれ、首筋は噛みちぎられている。

ゆみ「お前……こんな姿になってもまだ…約束を果たそうとして……」

咲「部長」

ゆみ「?」

咲「おかえりなさい…」チャキ

久「アア…」

ダァーン!



895:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:36:26.87 ID:RUQzi06L0

ゆみ「………」

咲「加治木さん……いきましょう」

ゆみ「ああ」

二人はエレベーターで地下駐車場に降りた。既にそこにも感染者が群れを成していた。
二人は手早く、脱出用の車に乗り込んだ。

咲「運転できるんですか?」

ゆみ「ああ、蒲原に教えてもらたよ。 時間はたっぷりあったからな!」ギュォォォォ

二人の乗った車は、感染者を次々跳ね飛ばしながらモールの外へと脱出した。



897:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:41:13.06 ID:RUQzi06L0

ブロロロロロロ…

咲「………」

車の窓から見えるショッピングモールが、みるみる遠ざかっていった。

ゆみ「まいったな。練習で使ったせいで、ガソリンが残り少ない…」

咲「なんとかなりますよ」

つとめて明るい声で、咲は答えた。

咲(原村さん……私、決めたから。 絶対生き延びてやるって。
もう、狂気に負けたりしないから―――)


狂乱の一夜は明け、夜明けの光が車内の二人を包みこんでいた――


     ドーン・オブ・ザ・タコス  完

次回  京太郎「地獄で会うぜ、ベイビー」



899:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 13:43:30.62 ID:RUQzi06L0

やっべえ残りで足りるかな
暗いのをダラダラと続けるのはもうやめよう



900:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 14:00:16.53 ID:RUQzi06L0

20××年 東京

福与『決ィまったァァァッ!!! 麻雀界を巻き込んだ注目の一戦、
因縁の姉妹対決を制したのは、妹の宮永咲だァァァッ!!」


照「私が……負けた……?」

咲「お姉ちゃん、やっと決着が付いたね……私たちの長きにわたる戦いに」

照「う、嘘だっ…」

咲(昔は麻雀を通してお姉ちゃんと仲直りするのが夢だった。でも、それはもう……)

照「う…うわあああああああっ!!!」



901:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 14:05:31.89 ID:RUQzi06L0

200×年 東京 インターハイ会場

福与『決ィまったァァァッ!!! 清澄高校竹井久、副将にまわすことなく一回戦突破だ―ッ!!』


京太郎「すっげーな、うちの部長は」

咲「うん、でもちょっと残念だな。私も打ちたかっ…」ブルッ

京太郎「どした?」

咲「ちょっとおトイレに…」

京太郎「あ、俺も行こう」



902:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 14:10:17.84 ID:RUQzi06L0

トコトコトコトコ…

京太郎「なあ咲……もうお姉さんには会ったのか?」

咲「いや、まだ会ってないけど」

京太郎「今白糸台の試合やってるけど…見に行かなくていいのか?」

咲「いいの。お姉ちゃんとは、決勝に行くまで会わない」

京太郎「何故だ? 昔はあんなに仲が良かったのに……」

咲「前会った時も一言も口きいてくれなかったもん。きっとお姉ちゃんは私のこと嫌ってるんだと思う」



903:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 14:17:41.30 ID:RUQzi06L0

京太郎(そんな……二人の間に一体なにがあったんだ?)

咲「私、麻雀を通してならお姉ちゃんと話せる気がするんだ」

京太郎「咲…」

咲「だからそれまではお姉ちゃんに……」

ザッ…ザッ…ザッ…

京太郎「!! お、おいアレって……」

照「………」

咲「お姉ちゃん?」



904:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 14:23:53.60 ID:RUQzi06L0

京太郎(何でこんなところに? 白糸台は今試合中のはずだろ?)

照「………」

咲「あっ……えっと…」

照「…咲」

咲「は…はいっ!」

照「やっと見つけた…」



905:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 14:30:50.21 ID:RUQzi06L0

咲「えっ?」

照「私はお前に会いたかった…」

咲「えっ…ホ、ホントに? お姉ちゃん…」

照「さあ、こっちへいらっしゃい…」

咲「お姉ちゃん…」ジワッ

京太郎「何だかよく分からないけど……ともかく良かったな、咲!」

咲「う、うん!」

照「……」ニヤリ



906:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 14:38:57.51 ID:RUQzi06L0

バァァァァン!

咲「!?」

京太郎「ぐふっ…」

照「………」ガチャッ

咲「お、お姉ちゃん……なんで鉄砲なんか持ってるの……」

京太郎「照さん…どうして…」

ドシャッ

咲「京ちゃん!」



907:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 14:44:11.03 ID:RUQzi06L0

咲「どうして…どうして…」

照「あははははははっ!!!」

咲「!!」

照「嘘だよ!! お前と仲直りなんてするわけないだろ!?」

咲「そんな…」

照「お前を許すもんか……私をこんな体にしやがって…」

咲「な、何を言ってるの…?」

照「死ね」ジャキッ

咲(ひっ……殺される)


「伏せろ!」



908:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 14:52:44.24 ID:RUQzi06L0

ズドォォォン!

照「ぐがっ?」

咲「!?」

ズドォォン! ズドォォン!

照「ぐふっ…ぐはっ…」

ズドォォン! ズドォォン! ズドォォン!

照「ぐぁぁっ!」

ドサッ

咲「だ、誰…?」

咲は後ろを振り返った。


京太郎「大丈夫か?」

そこにはショットガンを構えた京太郎が仁王立ちしていた――全裸で。



909:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 14:57:52.79 ID:RUQzi06L0

咲(京ちゃん?というかなんで服着てないの?)

京太郎「何とか間に合ったみたいだな。立てるか?」

咲「あれ…でも…」

相変わらず全裸で直立不動の京太郎の横には、先程照に射殺された京太郎が
血まみれで横たわっていた。


咲「京ちゃんが……二人?」

京太郎「話はあとだ。逃げるぞ」



910:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 15:01:40.65 ID:RUQzi06L0

咲「逃げるってどこに…」

照「あーびっくりした」ムクッ

咲「!!」

照「しかし全然痛くないな…」

京太郎に撃たれたはずの照はゆっくりと起き上がると、
そのまま咲の方へと向かってきた。

咲「なんで生きてるの…? あんなに撃たれたのに…」

京太郎「会場の外まで走れ! 俺が足止めする」



911:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 15:10:49.18 ID:RUQzi06L0

駐車場

タッタッタッタッ…

咲「ハァ…ハァ…さっきのは一体…」

京太郎「おーい、咲!」

会場の入り口から、京太郎が下半身をぶらぶらさせながら走ってきた。

咲「京ちゃん、いいかげん服着てよ!」カァァ

京太郎「今はそんな暇はない」

言うなり、京太郎は近くに停めてあった車の窓ガラスを素手でぶち破った。

京太郎「乗れ」



912:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 15:17:00.93 ID:RUQzi06L0

ブロロロロロ…

京太郎「それで、何か聞きたいことはあるか?」

咲「山ほどあるよ。多すぎて、どれから聞けばいいのか分からないくらい」

京太郎「では順を追って話そう。どうしてこんなことになったのかを」

咲「」コクッ

京太郎「今から数年後、麻雀界に怪物が誕生する。名前は宮永照、お前の姉だ」



913:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 15:22:56.14 ID:RUQzi06L0

京太郎「宮永照は圧倒的な強さを誇った。誰も彼女に勝てない。
このままでは麻雀界のバランスが崩れてしまうところだった」

京太郎「そこでプロ団体の理事たちは一つの策を思いついた。
毒を持って毒を制す。宮永照に、妹である咲をぶつけることだった」

咲「………」

京太郎「理事たちは二人を対決させるため、あらゆる手を尽くした。
いたずらに確執を煽り立て、互いに憎しみ合うよう仕向けた。
元々関係が良好でなかった二人は、対立を深めていった」

咲「そんな…そんなことって…」



914:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 15:30:34.60 ID:RUQzi06L0

京太郎「理事たちの思惑通り、二人は激突した。そして咲、お前が勝った」

京太郎「しかしそこで皆が気付いた。咲は、宮永照をさらに上回る怪物だったことに」

京太郎「今度は咲を止められる者がいなくなった。
途方に暮れた理事たちは、とうとう手段を選ばなくなった。それは…」

咲「もしかして……タイムマシン?」

京太郎「ご名答。過去に戻って、まだ有名になる前の咲を殺す計画だ」



915:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 15:37:08.11 ID:RUQzi06L0

咲「それで、私を殺す役をお姉ちゃんが引き受けたの?」

京太郎「宮永照はお前に敗れた後、自殺未遂をしていた。
一命は取り留めたものの体はボロボロで、一生寝たきりになるのは確実だった」

京太郎「そこで宮永照は体を改造され、サイボーグとして生まれ変わった。
あれは宮永照の形をした化け物だ」

咲「ひどい……そんな安っぽいSFみたいな話が……」

京太郎「事実は小説よりも奇なり。俺もサイボーグだ」



916:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 15:42:22.29 ID:RUQzi06L0

咲「あっ…そういえば京ちゃんは……」

京太郎「そう。俺は今日確かに死んだ。だが未来で改造手術を受け、新しい命を吹き込まれた」

咲「えっ…」

京太郎「お前を殺すことに反対する一派もいるってことだ。俺の使命はお前の護衛だ」

咲「そう……なんだ」

京太郎「さすが文学少女。飲み込みが早くて助かる」

咲「なんか…ごめんなさい。私たち姉妹の争いに巻き込んじゃって…」

京太郎「いや、気にするな」



917:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 15:51:01.02 ID:RUQzi06L0

京太郎「さて、長ったらしい説明タイムは以上だ。そろそろ退屈してきたトコだろう?
今度は咲の方から質問したいことはあるか?」

咲「じゃあさ……なんで全裸?」

京太郎「タイムマシンは生身しか転送できない。ゆえに、来るときは裸だ」

咲「理屈は分かったけど、私一応女の子なんだからね? 少しは気を使ってよ!」

京太郎「何故だ? 俺と咲は幼馴染だ。俺に内蔵されたwikiによれば、
幼馴染というのはお互い気の置けない間柄だと……」

咲「もう!サイボーグになってからの京ちゃん変だよ。 恥ずかしくないの?」

京太郎「俺には感情がない」

咲「………」



918:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 15:56:47.94 ID:RUQzi06L0

咲「……あれっ? でもお姉ちゃんは、私に敵意むき出しで襲ってきたよね?」

京太郎「やつは生きたまま改造されたからな。一方、俺は死者だ。その違いだろう」

咲「でも、昔の記憶は残ってるんでしょ?」

京太郎「ああ。咲がトイレに行った回数から和のスリーサイズまで、全て記憶している」

咲「えっちいことばっかじゃん……」

京太郎「それだけではない。優希が食ったタコスの数、部長のシワの本数から、
染谷先輩がみんなに無視された回数まで……」

咲「もういいです」



920:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 16:00:04.52 ID:RUQzi06L0

ファンファン ファンファン

咲「!?」

パトカー『そこの車両、止まりなさい。その車は盗難届が出ている』

咲「あっ、マズイよ京ちゃん。ここはいったん止めて…」

京太郎「」グッ

ブォォォォォォォン!

咲「ちょ…止まるどころか加速するなんて……警察にも追われるよ!?」

バァァァァン!

咲「きゃっ…」



921:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 16:08:50.00 ID:RUQzi06L0

咲「いきなり撃ってきた!?」

京太郎「運転席をよく見ろ」

咲「えっ……あ!」

パトカーからは、満面の笑みを浮かべた照が、ショットガンでこちらを狙っていた。

照「さーきーちゃん、あっそびましょー」ガチャッ

バァァァン! バァァァン!

咲「ひぅ…」

京太郎「運転を代われ」



923:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 16:12:52.72 ID:RUQzi06L0

咲「えっ、ちょっ…ムリだよぅ…」

京太郎「ハンドルを握ってるだけでいい」

そう言って京太郎はショットガンを構え、車の窓から身を乗り出した。

照「銃撃戦か…おもしろい」

バァァァン! バァァァン!

京太郎「食らえ」

ズドォォン! ズドォォン! ズドォォン!

照「ひゃははははっ!!!」



925:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 16:18:30.55 ID:RUQzi06L0

ズドォォン! ズドォォン!

京太郎(お互い銃弾ごときでは死なない身体……しかしこちらには咲がいる)

京太郎「咲、ブレーキを踏め」

咲「ええっ、どうして?」

京太郎「戦いは攻める方が有利だ。ならばこちらから仕掛ける」

咲「でも…危険だよ!」

京太郎「どけっ、俺がやる」ガサッ

咲「きゃっ、変なモノあてないで!」

京太郎「」グィッ

キキィィィィィィ!!



927:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 16:22:01.44 ID:RUQzi06L0

照「!!」

ガシャァァァァン!!

咲「きゃああっ!」

京太郎「今だ、アクセルを踏み込め」

グィッ

ブォォォォォォン!!

咲「ハァ…ハァ…」ドキドキ

京太郎「このまま加速して振り切るぞ」



928:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 16:30:12.95 ID:RUQzi06L0

一時間後

咲「もう…追ってこないかな?」

京太郎「恐らくやつはこちらを見失っただろう」

ブロロロロロロ…

咲「車がガタガタだよ。なんか変な音してるし」

京太郎「この車は捨てるか……それに今夜泊まるところを探さないとな。
お前は人間だ。色々と疲れただろう」

咲「あっ…うん。でもまずはその格好をなんとかしないと…」

京太郎「むぅ……では多少荒っぽい方法になるが…」



929:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 16:36:03.08 ID:RUQzi06L0

京太郎「おい、そこのお前」

池田「にゃっ!?」

京太郎「お前の服をよこせ。今すぐに」

池田「きゃあああっ!! ここにフルチンの変態がいるし!! おまわりさーん!!」

京太郎「黙れ」ドゴォ

池田「ぐぼぉっ…」ガクッ

――――――――

京太郎「どうだ?」

咲「着替え直して! 一秒でも早く!!」



930:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 16:41:35.58 ID:RUQzi06L0

京太郎「君の着ている服と靴と車が欲しい」

ホスト「ああっ? 舐めたコト言ってんじゃねえぞガキが…」

ドガッ バキィ

――――――――

京太郎「どうだ?」

咲(わっ……スーツ姿の京ちゃんってカッコいい……)

咲「う、うん……けっこう似合ってると思うよ…」ドキドキ


京太郎「ではお姫様。どうぞお乗りください」ガチャッ

咲「………」

京太郎「昔の記憶を頼りに言ってみたが、気に障ったか?」

咲「いや、なんだか昔の京ちゃんみたいだなって思ってね」

京太郎「このままホテルに行くぞ」



931:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 16:46:23.75 ID:RUQzi06L0

ホテル

咲「ふー、疲れた」ドサッ

京太郎「咲、寝転がる前にちょっと手伝ってくれないか?」

咲「何を?」

京太郎「」バサッ

咲「きゃっ…いきなり脱ぐなんて何考えてるの京ちゃん!」カァァ

京太郎「お前こそ何を考えてるんだ。ここを見てくれ」



933:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 16:50:40.47 ID:RUQzi06L0

咲「お姉ちゃんに撃たれたところ…?」

京太郎「俺は二つの水素電池を動力源にしている。さっきの戦闘で一個が故障した」

プシュゥゥゥゥ

咲「お腹が開いた…」

京太郎「壊れてる方ほうを取り出してくれ…慎重にな」

咲「これはどういうものなの?」

京太郎「見た目は小さいが、膨大なエネルギーを蓄積している。
不安定なると爆発するんだ。この部屋くらいなら、軽く吹っ飛ばせるぞ」

咲「そ、そんなに危険なの?」

京太郎「もう手を触れるなよ。これは俺が管理しておく」



934:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 17:00:16.80 ID:RUQzi06L0

京太郎「あとは撃たれたところの治療をする」

咲「痛むの?」

京太郎「痛みはないが、血を流しっぱなしはマズイ。手伝ってくれ」

咲「う、うん…」

咲は京太郎が自分の身体を治療するのを手伝った。
彼の身体は無数の弾痕だらけだった。

咲「京ちゃん…こんなになるまで私のことを……」ジワッ

京太郎「さっきも言った通り、お前は気にしなくていい」

咲「で、でも……」グスッ

京太郎「お前は昔から本当に泣き虫だな……」

咲「う…うぅ……グスッ」

京太郎「俺は何があってもお前のことを守る」

咲「京ちゃん……///」



936:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 17:05:20.41 ID:RUQzi06L0

ぐぅぅぅぅぅ~

咲「あっ……」

京太郎「腹が減ったのか。仕方ない、俺が何か買ってくる」

咲「私も行くよ」

京太郎「ダメだ、お前はこの部屋から出るな」

咲「むぅ…」

京太郎「すぐ戻る」

ガチャッ…バタン

咲「……シャワーでも浴びようかな」



938:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 17:10:47.06 ID:RUQzi06L0

咲「ふぅ……やっと一息つけたよ」

ブー ブー

咲「!!」

咲(部長から非常用に渡されたケータイが鳴ってる…)

ピッ

咲「はい、もしもし…」

『咲? よかった、無事なのね』

咲「部長ですか?」

『もうどこ行ってたのよ? 会場で須賀君が殺されて、あなたまで行方不明になって……
とっても心配したんだからね?』



939:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 17:16:04.40 ID:RUQzi06L0

咲「すいません心配かけて……でも私は大丈夫ですから」

『一体何があったの? あなた今どこにいるのよ?』

咲「それはちょっと言えないんです…」

『……なんか怪しいわね。ひょっとして、何かやっかい事に巻き込まれてるんじゃない?』

咲「ち、違いますってば! 全然問題ないですよ」

『もう夜中なのに、あなた家に帰ってないそうじゃない。どこに泊まる気よ』

咲「今、○○ホテルに……あっ、もちろん一人でですよ!?」

『ふーん…』

咲「?」



照『それを聞いて安心したわ。またね、咲』ガチャッ



940:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 17:23:14.99 ID:RUQzi06L0

ガチャッ

京太郎「戻ったぞ」

咲「あ、お帰り…」

京太郎「俺がいない間に何か変わったことはなかったか?」

咲「えっと…そういえば部長から電話があったんだけど…」

ブー ブー

咲「…また電話?」

京太郎「待て、俺が出る」

ピッ

京太郎『はい、宮永咲です』

『もしもし、私てるてる。今、ホテルのフロントにいるの』

京太郎「……」ピッ

京太郎「やつに居場所がばれた」



942:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 17:30:13.71 ID:RUQzi06L0

咲「そんな…どうして?」

京太郎「今して見せたように、俺たちサイボーグは声帯模写が出来る。お前は騙されたんだ」

ブー ブー

京太郎「」ピッ

『もしもし、私てるてる。今、エレベーターに乗ってるの』

京太郎「マズイな…」



943:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 17:35:34.27 ID:RUQzi06L0

ブー ブー

『もしもし、私てるてる。今、扉の前に…』

京太郎「さっさと失せろ、ベイビー」

ズドォォン!

照「うぐぉぉっ!」ドカッ

至近距離から撃たれて、照は部屋のドアごと吹っ飛んだ。

京太郎「さ、今のうちだ。逃げるぞ」

咲「う、うん…」



944:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 17:41:47.28 ID:RUQzi06L0

駐車場

京太郎「早く乗れ!」

咲「は、はい」ガチャッ

ブォォォン!

京太郎「いいか? 出発するぞ…」

ズドドドドドドドッ!

咲「きゃっ!」

照「まぁ~て~」チャキッ

京太郎「出すぞ!」グィッ

キキィィィィ…ブロロロロロロ…



945:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 17:47:52.20 ID:RUQzi06L0

ブォォォォォン…

京太郎「ケガはないか?」

咲「うん、大丈夫だよ」

京太郎「後ろを見ろ。車が追いかけてきてないか?」

咲「ううん…」

京太郎「妙だな」

ブー ブー

京太郎「また電話か…」

ピッ

『もしもし、私てるてる。今お空を飛んでるの』

咲「!!」

バラバラバラバラバラバラ…

京太郎「上か!」



947:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 18:00:13.18 ID:RUQzi06L0

咲たちを乗せた車の上空にヘリが飛来した。
操縦席にはもちろん、邪悪な笑みを浮かべた照の姿が――

咲「まさか…ヘリまで使って追ってくるなんて……」

『咲…今からとっておきのプレゼントあげる……』

咲「えっ?」

ヒュルルルルルル……ドゴォォォン!

咲「うわぁっ!!」ガタガタッ

京太郎「爆弾だと…? どこで手に入れたか知らんが、やっかいな……」



948:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 18:06:16.30 ID:RUQzi06L0

咲「きょ…京ちゃん、どうしよう?」

京太郎「落ち着け、なんとか回避してみる」

京太郎(とは言ったものの、車とヘリではこちらが圧倒的に不利だ…)

照『あはははははははっ!!!』

ヒュルルルルルル……ドゴォォン! ドゴォォン!

京太郎「くっ…」

京太郎(こうして避け続けるのにも限界がある……なんとかしなければ)



949:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 18:13:46.15 ID:RUQzi06L0

京太郎(爆弾……そうだ、いい手がある……)

京太郎「咲、運転を代われ」

咲「またっ? 一体何する気なの!?」

京太郎「やつが爆弾を落としてくるところを狙い撃つ」ガチャッ

京太郎はショットガンを引っ掴み、窓から身を乗り出した

その瞬間――

ドゴォォォン!

京太郎「うぉっ!?」

車の至近距離で爆発が起きた。

咲「!! 京ちゃん! 大丈夫!?」

京太郎「くそっ…身体のあちこちをやられた……」

照『あっははははははっ!!! バーカ、最初からこれを狙ってたんだよ!!』



951:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 18:19:04.21 ID:RUQzi06L0

バラバラバラバラバラ……

咲「!?」

ヘリのローター音がさっきより近付いてきている。
見ればヘリはみるみる高度を落とし、車の真横に接近してきていた。

照『もう反撃を恐れる必要もない……今殺しに行くからね咲……』

咲「ひっ…」

そして、とうとう車とヘリが横並びになった。

照「バイバイ咲」チャキッ

ヘリの窓から突き出された銃口が鈍く光った。

咲「……っ」



952:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 18:25:17.86 ID:RUQzi06L0

京太郎「伏せてろ」ガバッ

咲「えっ?」

ヒュッ

京太郎がヘリに向かって何かを投げつけた、次の瞬間――

ズドォォォォォォン!!!

咲「きゃああっ!!」

京太郎「ぐっ!!」

今までにない猛烈な衝撃が二人を襲った。



953:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 18:31:03.71 ID:RUQzi06L0

シュゥゥゥゥゥゥ…

咲「う…うぅ……」

京太郎「…大…丈夫か…?」

咲「う……痛ッ…!」ズキッ

京太郎「足に金属の破片が刺さってる。あまり動かさない方がいい」

咲「い…一体何がどうなったの…?」

京太郎「やつを油断させ、こっちに接近させるのが俺の狙いだった。
そしてやつに、水素電池をプレゼントしてやったのだが……」

咲と京太郎は、横転した車の中にいた。

京太郎「威力が強すぎて、俺たちも巻き添えを食らってしまった」

咲「お姉ちゃんは…」

京太郎「とりあえずここから這い出せ」



954:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 18:39:32.29 ID:RUQzi06L0

咲「うぅ、足が痛いよぅ……」ズルズル

苦労して車から這い出ると、墜落して炎上しているヘリの残骸が目に入った。

咲「お姉ちゃん…」

京太郎「どうやら倒せたみたいだな…」ガクッ

咲「京ちゃん、しっかりして!」

京太郎「さっきので大分派手にやられたようだ…」

バキン!



955:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 18:45:38.51 ID:RUQzi06L0

京太郎「!!」

咲「なに、今の音?」

京太郎「あいつだ…」


照「さぁぁぁきぃぃぃぃ…」

ヘリの残骸を押しのけ、照が姿を現した。
身体のあちこちの皮膚が削げ落ち、金属骨格のフレームがむき出しになっている。

照「殺す殺す殺す殺すコロス…」



956:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 18:52:01.36 ID:RUQzi06L0

咲「い、いや…」

京太郎「……咲、お前は一人で逃げろ」

咲「そんな…一緒じゃなきゃ嫌だよ!」

京太郎「俺にお前を守る力は残されてない。ただ…」

プシュゥゥゥ…

京太郎「水素電池はもう一個ある。これで俺もろともやつを…」

咲「ダメだよ! 京ちゃんが死ぬなんてそんな…」

京太郎「咲、俺は機械だ。人間だった須賀京太郎はもう死んだ」

咲「………」

京太郎「だが、俺はお前を死なせたくない。これは俺の本心だ」

咲「京ちゃん…」



957:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 18:57:08.83 ID:RUQzi06L0

京太郎「咲、最後に一つだけ言っておく」

咲「…なに? 京ちゃん…」

京太郎「恐れるな。未来は変えられる」

咲「!!」

京太郎「行け!」



958:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 19:00:27.86 ID:RUQzi06L0

咲「……うん」

タッタッタッタッ…

咲は痛む足を引きずりながら精一杯走った。

照「逃がすか…」

京太郎「おっと、お前はこっちだ」

ガシッ

照「!!」

京太郎「ふん……」メキメキメキ…

照「くそっ…離せえええええええ、モガッ…」

京太郎は照の口に水素電池を突っ込んだ。

京太郎「アイルビーバック…」


ズドォォォォォォォォォン!!!



959:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 19:06:57.95 ID:RUQzi06L0

20××年

咲「京ちゃん…」

あれから数年後、私は京ちゃんのお墓を訪れていた。
もちろん、ここに眠ってるのはインターハイの日に、未来のお姉ちゃんに殺された方の京ちゃんだ。

咲「京ちゃん……私ね、今日お姉ちゃんと仲直り出来たんだ」

私は冷たい墓石を優しくなぞった。

咲「あの日から…少しずつ、ゆっくり時間をかけて」

咲「私、もう麻雀を通してしかお姉ちゃんと話せないと思ってたけど、そんなことはなかったよ…」



961:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 19:12:18.80 ID:RUQzi06L0

咲「未来は変えられる……京ちゃんの言った通りだったよ」

私はとっくに、競技麻雀の表舞台からは去っていた。
姉もこの仲直りを機に、引退を考えているらしい。

咲「これで、もうあんな悲劇は起きずに済むんだよ……」

咲「だから、安心して眠ってね……」グスッ


「咲、何でなにもないところに向かって喋ってんだ?」



963:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 19:18:01.79 ID:RUQzi06L0

咲「えっ?」

ついさっきまで私の目の前にあったはずの墓石が消失していた。

いや――それよりも驚いたのは、背後から聞こえた懐かしい声。

咲「京ちゃん?」

京太郎「よっ」

振り向くとそこにはあの人が立っていた。
まるで何事もなかったかのように、けろっとした様子で。

京太郎「戻ってくるって言っただろ?まあ、お前のおかげなんだけどな」

咲「京ちゃん!」


私はあの人の胸に飛び込んだ――大好きなあの人に

そう、未来は変わったんだ――


     ターミ姉ちゃん  完

ラスト  咲「声が聞こえる…」



965:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 19:23:41.05 ID:RUQzi06L0

和「宮永さーん!」

咲「あっ…原村さん。奇遇だね、こんな所で会うなんて」

和「本当に偶然ですね…今暇なんですか?」

咲「あ、うん。ちょっと本を買いにいこうかと思って」

和「よろしければ、私もご一緒していいですか?」

咲「うん!いいよ」


――しかし、この時の咲は知る由もない。
これが偶然を装った、和の作戦だったということに。


咲「…えっ?」

咲(なに…? この声……)



966:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 19:30:26.59 ID:RUQzi06L0

和「すみませんね、こんな所に誘って」

咲「ううん、いいよ。どうせ暇だったし」


――咲が本を買った後、和は彼女をカフェへと誘った。
もちろん、これも和の作戦の内である。


咲「う…うぅ……」

和「宮永さん、どうかしましたか?」

咲「な、なんでもないよ…」

咲(言えるわけないよ……頭の中に、私たちを描写する声が聞こえるなんて…)



967:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 19:38:09.35 ID:RUQzi06L0

和(……ああ、宮永さん……)


――和は恍惚の表情で咲を見つめた。
彼女の胸の内には、すでに抑えがたい情欲がこみ上げてきていたのだ。

咲「くぅぅ…」

咲(何なの? さっきから聞こえてくるこの声は一体…?)

和「……宮永さん、本当にどこか具合が悪いのでは?
よければうちに来ませんか? 私が手当てしてあげます…」


――ここぞとばかりに、和は咲を自宅に誘った。よこしまな感情に支配されながら……


咲「原村さん、ごめん!!」ダッ



968:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 19:44:10.58 ID:RUQzi06L0

タッタッタッタッタッ…

咲「ハァ…ハァ…」


――咲はひと気のない場所まで、息を切らして走った。


咲「ねえ…もういいでしょ?」


――咲はぜえぜえ云いながら、呟いた。


咲「もういいかげん出てきてよ!」


――誰もいないにもかかわらず、咲は大声で叫んだ。


咲「あなただよ! 私の行動を描写してる人!」



969:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 19:49:42.95 ID:RUQzi06L0

――咲が文句を言っている。どうやら、この解説が気に食わないらしい。


咲「あなたは一体何なの? 説明してくれるまで、私何もしないからね!」


――咲はそう言うと、棒立ちしたまま動かなくなった。


咲「………」


――本当に、動かないままだった。


咲「………」


――このままでは話が進まない。



970:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 19:56:02.61 ID:RUQzi06L0

ゆみ「おーい」

タッタッタッタッ…

咲「……加治木さん? どうしてここに?」

ゆみ「いや、私は加治木ゆみではない」

咲「?」

ゆみ「この話の作者だ」

咲「ええっ!?」



972:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 20:00:22.63 ID:RUQzi06L0

咲「作者って一体…」

ゆみ「分かりやすく言えば、この世界の神だ。 書こうと思ったことを何でも実現できる。
例えば私が今、この場に戦車を走らせようと思ったとする。すると…」

ドドドドドドドドド…

咲「!!」

キュラキュラキュラキュラ…

ゆみ「ほらな、戦車が走っていっただろ?」

咲「うそ…」

ゆみ「お前は私に、どうなってるのか説明しろと言ってきただろ?
だがナレーターは原則、登場人物と会話できない」



974:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 20:05:28.14 ID:RUQzi06L0

ゆみ「そこで、こうして登場人物の体を借りたわけだ。
あくまで登場人物が会話しているということで、私の意思をお前に伝えることが出来るようになった」

咲「そんな…」

ゆみ「これで分かっただろ? ここは作られた世界だ。
お前は物語の登場人物なんだよ」

咲「……!!」

ゆみ「これで説明は終わりだ。私はもう戻るぞ。
元々は和が咲を家に連れ込んで×××しちゃうような話を書く予定だったんだ…」

咲「待って!」ガシッ



975:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 20:10:29.83 ID:RUQzi06L0

ゆみ「なんだ?」

咲「私、そんな展開望んでないよ! お願いだからやめて!」

ゆみ「……この文章を書いてるのも私だ。
その気になれば、無理やり話を進めることだって出来るんだぞ?」

咲「だったら私、抗うよ!」



976:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 20:17:04.75 ID:RUQzi06L0

ゆみ「……抗うだと? 神に抵抗できるとでも?」

咲「やってやるよ! 神だか何だか分からないけど、
人の人生を玩具みたいに好き勝手にいじるなんて、許せないよ!」

ゆみ「……だから、この文を書いてるのも私だって………あれ…?
じゃあ何で私は書くのをやめないんだ…?」

咲「?」

ゆみ「咲を黙らせるのは簡単だ……書かなきゃいいんだから。
でも何故だろう……書くのをやめられない……」

咲(この人、さっきからどうしちゃったの?)



977:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 20:23:34.61 ID:RUQzi06L0

ゆみ「はは……そうか。書いてるうちに、キャラがひとりでに動き出すとはこのことか…」

咲「あのー、大丈夫ですか?」

ゆみ「ああ…すまない、相当疲れてるみたいだ……
もう自分が何を書きたいのかよく分からなくなってきた」

咲「だったら…」

ゆみ「降参だ……もう変な話を書くのはやめにする」



978:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 20:30:01.80 ID:RUQzi06L0

ゆみ「で、これからどうする?」

咲「どうするって?」

ゆみ「私はこの世界の神だ。物語の行く末を自由に決められる。お前はどんな結末を望む?」

咲「それは……」

ゆみ「お前を誰とでもカップルにしてやれる。清澄を全国優勝させるのも簡単だ。
姉を仲直りすることも出来るぞ。さあ、お前はどうしたい?」

咲「私は…」



979:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 20:35:52.17 ID:RUQzi06L0

咲「私は……まだ終わりたくないよ!」

ゆみ「?」

咲「私はまだまだ麻雀を打ちたいし、みんなと楽しみたい。
このまま、安易なハッピーエンドへ直行するのはごめんだよ…」

ゆみ「そうか、お前はまだまだ続けたいんだな? この物語を…自分の人生を…」

咲「」コクッ

ゆみ「とは言っても、私はもう物語を書くのに疲れた……
もう長く続けられる力は残ってない。さて、どうするか…」



980:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 20:41:23.69 ID:RUQzi06L0

ゆみ「そうだ。私にしてやれる精一杯のことといったら、これだろう…」

咲「……何をするの?」

ゆみ「お前を生みの親の元に帰してやる」

咲「えっ!?」

ゆみ「さっきお前は私の物語の登場人物だと言ったな。
だが、お前の生みの親は私ではない。お前は借りものなんだ」

咲「言っている意味がよく分らないよ……」

ゆみ「では一から説明してやろう。まず、小林立という漫画家が描いた
『咲-Saki-』というマンガがあって……」



982:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 20:46:31.32 ID:RUQzi06L0

咲「じゃあ、私はそのマンガの主人公だっていうの…?」

ゆみ「つい忘れられがちなことだが、事実だ」

咲「私が…主人公……」ポカーン

ゆみ「そのマンガは未だに継続中だ。今からこの話を原作のインターハイ編に繋げてやるから…」


ゆみ「お前はその世界で生き続けろ」



983:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 20:51:43.92 ID:RUQzi06L0

ゆみ「この世界に残っていても、待っているのはバットエンドか、
ご都合主義なハッピーエンドのどちらかだ……それよりはマシな結果になるだろう」

咲「そう…なの…?」

ゆみ「私も書く側から一読者に戻るよ。お前の活躍を楽しみにしている」

咲「……うん、わかった」

ゆみ「……まあ、気が向いたらまた書くかもしれんがな」

咲「ええー」

ゆみ「そう言うなよ、神は気まぐれなんだ」



984:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:00:16.74 ID:RUQzi06L0

ゆみ「色々辛い目にあわせて悪かったな」

咲「うーん……あんま覚えてないや」

ゆみ「それがいい。ロクなことがなかったからな」

咲「そんなに酷かったの?」

ゆみ「まあな……じゃあ私はもう行く」

咲「うん、わかったよ」

ゆみ「じゃあな」



987:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:04:18.96 ID:RUQzi06L0

8月 東京

咲(うわっ…一気に話が飛んだよ……)

久「さあ、着いたわ。ここが私たちの宿泊する施設よ」

優希「大きいじょ!」

和「…ですね」

まこ「明日に備えて、今日はゆっくり休みんしゃい」


咲(……もう、あの声は聞こえないんだ…)



989:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:06:45.54 ID:RUQzi06L0

久「今から明日の開会式までは自由時間にしましょう。
各自ハメを外さず、疲れない程度にね」

優希「おー」

まこ「そんなんでええんか?」

久「うん、まずはここの生活に慣れないと……決勝までは長いわ…」


咲「そうだよ…」


咲(私たちの物語は、これからも続いていくんだ…)
   


   「主人公は私だった」  完


 ゴールデン咲-Saki-劇場  終



990:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:09:03.59 ID:WMjQNZI10


よく書き切ったな。全編ハズレ無しで面白かったよ



991:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:09:10.84 ID:RUQzi06L0

元ネタにした映画の数々

フェイス/オフ 
フルメタル・ジャケット 
星の王子ニューヨークへ行く
ランボー シリーズ 
エクソシスト 
ザ・ワン 
猿の惑星 シリーズ 
スタンド・バイ・ミー
ゾンビ/ゾーン・オブ・ザ・デッド 
ターミネーター
主人公は僕だった



994:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:11:34.51 ID:Rf0ohSmc0

面白かったよ
ほんとお疲れ様でした!



995:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:11:44.96 ID:RUQzi06L0

なんとか終わらせることができた
裂の人をリスペクトしてこの形式にしてみたが、やってみると本当にきつかった
最後の方とか話がひどい
見てくれた人保守してくれた人みんなみんな本当に感謝
咲SSがもっと増えますように



996:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:11:56.88 ID:6/+umEjg0





998:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:13:40.41 ID:voKWNxMC0

乙!

1スレでいくつも短編読んだのは初めてだったけど面白かった



999:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:13:49.13 ID:sLP1JvpN0

DAWN OF THE DEADがあったのがよかった



1000:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/27(金) 21:14:15.09 ID:yY4JYWL00

すごくよかった、乙
にしても主人公は僕だったとはマニアックだな



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         コメント一覧 (4)

          • 1. 名無し
          • 2011年06月17日 14:41
          • 面白かった。読むのに三日もかかってしまったけど。
          • 2. 名無し
          • 2012年01月07日 17:53
          • 面白かった!けど照さんの扱いが......
          • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年06月05日 23:05
          • とりあえず投牌練習しとけば生き残れそうだ
          • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年09月23日 02:08
          • 今更になって見つけて読んでみたけど・・・面白かった!

            最後にタイトルを持ってくるのが特に上手かったなあ。元ネタ知ってるとそこで笑えるwww

            久々に才能ってもんを感じたよ、本当に今更だけど、ありがとう!

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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