キョン「バレンタイン……だな………」

anime20ch65406
1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 14:21:34.91 ID:w6iKQGaD0

\\  もうおこったぞう
  \\            もうおこったぞう   //
       もうおこったぞう           //

    (⌒⌒⌒)        どかーん! (⌒⌒⌒)
     || どかーん!          ||
                 どかーん!
   / ̄ ̄\      (⌒⌒⌒)     / ̄ ̄\
(( | ・ U  |       ||      | U ・  |
 匚| |ι    \             /     J| |コ
   U 匚    ヽ  ̄ ̄ ̄ ̄\    /    コ U
    \     )    U ・  | ⊂     /
      \  入ヽ ))     .J| | (     ! ̄| ))
       ||  ´ | ̄ ̄||U  ||"~ ̄



6: ◆7SHIicilOU :2009/02/23(月) 14:32:55.04 ID:8ysY19qpO

どないせっちゅうねん



7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 14:34:05.58 ID:w6iKQGaD0

できれば完結を求みます



8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 14:34:55.02 ID:rcHMIxPNO

書けっちゅうねん

いや、マジ続き書いてください



14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 14:45:53.14 ID:8ysY19qpO

 佐々木の常時発生している黄のかかった閉鎖空間。
そこでハルヒを連れて行き、俺が一対一でハルヒと会話を行う。
その先のことはわからんが俺の役割はそれだけだった。

 一体なんと言ってハルヒを連れてくるつもりなのか?
そもそもあいつらがハルヒに接触できるのか、そんな余念がつらつらと、
……少し早い晩飯にしよう。



30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 15:19:27.36 ID:8ysY19qpO

――

 次の日、俺は学校を休もうかと思ったが。
しかしこれ以上ハルヒのフラストレーションを溜める訳にはいかず、
多分ハルヒ自体が来てないんじゃないかと思いながらも一応登校した。

 この鬱々の頂点の中、それでも救われるのはハルヒ以外はクラスが違う事か、
古泉に言われるまでも無く部室には行かずじまいになるだろう。



34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 15:32:25.06 ID:8ysY19qpO

 やたら重い教室の扉をあける。

「……はぁ」

 予想通り、窓際最後尾の席は空っぽだった。
出鼻を挫かれた気分だ。
俺は少しその場で立ち止まり、自席に向かい腰を下ろす。
話す相手がいないと時間をもてあますな。



45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 16:40:58.95 ID:8ysY19qpO

 自分でも知らない内に早足にでもなったのか、いつもより時間が多く余ってる。
一時間目の授業の用意をするにはまだ早いし…と、いないハルヒの代わりに
俺が肘をついて窓の外をなにくれとなく眺めていると、珍しい人物に声を掛けられた。

「今日は涼宮さん休み?キョン君が退屈そうなのはその所為なの?」
「……坂中か、ハルヒは多分休みで間違いないな」

 何時かの犬事件で親しくなったクラスメートの女子、
間延びした喋り方が可愛らしい少女だが、俺単体に声を掛けてくるとは思わなかった。

「えと、迷惑だったかな?」
「いや、ハルヒとは別の次元ではあるが退屈なのは事実だ。
まぁ席も空いてるし座ったらどうだ?」



49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 17:05:33.80 ID:8ysY19qpO

「ん、いいのかな?」
「持ち主不在だからな、どうしてもってんなら俺が許可するよ」

 俺の言葉を聞いて、坂中は微笑をたたえてハルヒの座席に遠慮がちに座った。
俺はいつもハルヒと会話してるときにするように、窓に寄り掛かり後ろに顔を向ける。

「あっ」
「どうした?」

 じっとこっちを見て来たかと思ったら、急に声をあげる坂中。

「えと、いまさらだけどおはようキョン君」
「……おはよう」

 どこかテンポがずれてるのだ坂中と言う少女は、
またそれが余計に可愛らしいと思うのは坂中に対する男子の共通認識だったりする。

「キョン君と二人で話すの実は初めてだよね」
「そうだっかな、いつも騒がしいのがいたからな。今日は鬼の撹乱だ」



62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 17:52:07.88 ID:8ysY19qpO

 クスクスと微笑み続ける阪中にささくれだつ精神を癒しながら、
たまにはこうやってクラスメートと普通に交流することがこんなに楽しいのかとも思った。
いままで俺はクラスメートとはあまり接して無かったが、これを期にもう少し交友を広げるか。

「なぁ阪中」
「? なにかなキョン君」
「そういや携帯のアドレスハルヒしか知って無いし、交換しないか?」

 いまクラスでアドレス帳に乗ってるのはハルヒと谷口と国木田だけだったりする。
切ないなあ。

「いいよ、じゃあ赤外線で送るのね~」
「応」

 こうして、携帯の電話帳に記名されてる名前が一人増え、
俺から阪中にメールを返すと同時に担任のご登場となった。



79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 19:11:17.34 ID:8ysY19qpO

――

 昼休みは、ハルヒも不在。文芸部室にもいけないということで
久し振りに国木田、谷口と机を寄せて弁当を食べた。
谷口の馬鹿の話しに突っ込みを入れ、国木田と苦笑をして飯を終え。

 午後の授業もつつがなくこなし、ホームルームが終わればクラスメートとしばらく雑談し別れる。
そのうちこれがデフォルトと化すのかと思うと少々寂しく、多少切なかったが。
それは多大な愉悦がかき消した。

 これは、これでいいと思えた。



83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 19:21:19.85 ID:8ysY19qpO

 教室から部室に寄らずに直接下駄箱に向かうのは一体どれだけぶりになるだろうか?
昨日に続いて早い時間に帰宅した俺に妹はさてなんと言って来るかね。

 明日は金曜で休日、次いで土日と3連休。
橘はその間に力の移行を行うと言っていた。土曜は佐々木とでかける予定だし、
充実した休みになりそうだ。



88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 19:48:35.23 ID:8ysY19qpO

 自分のために時間を使い、自分のやりたいことを好きにやるなんてのも
やはりいつ振りになるだろう。バイトでもしようか、
基本的に俺はあまり金を使わないから奢らされなければ金もたまるだろうし。

 そしたら最近ご無沙汰だったゲームや漫画を買い集めようか、
谷口達と遊びに行くのも良い、カラオケとかボーリングをやったり。

「……やりたいこと多いな俺」

 つまりそれはいままでやってこれなかった、我慢してたと言う事なのか。
SOS団の活動は確かに楽しんでいた、昨日橘と話してた時に言った。
戻れることなら戻りたいと言う気持ちも仲直りしたいという思いも嘘じゃない。

 なのに一日行かないだけで思いではこんなにも色褪せて見えるのはなぜだろう。
たった一日で、こんなにもSOS団から気持ちが離れてる。



91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 20:00:29.21 ID:8ysY19qpO

 腹筋に力を入れて玄関をあける、俺にも学習能力がある。

「……おや?」

 しかしいくら待っても妹は飛んでこなかった。
訝しみながらもとりあえず靴を脱ぐ、と見慣れた我が家のでは無い靴があった。
なるほど、そう言う事なら妹が特攻してこなかった訳を把握できる。

「キョン君おかえりー!」
「お帰りなさいお兄さん」
「あぁ、ただいま。…久し振りだなミヨキチ」
「はい」



92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 20:01:46.94 ID:BECsuZKxO

ミヨキチ…だと…?



93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 20:02:06.30 ID:eJjHFyQB0

ミヨキチ・・・だと・・・



97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 20:09:17.88 ID:X8iX72a1O

フラグ回収大変だこりゃww



99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 20:19:40.82 ID:8ysY19qpO

 今日は久し振りばかりだな。
妹の横に立つミヨキチは本当に同級生なのかと不思議になる程大人びていた。
「キョン君今日は昨日よりも早いねー」などと言ってる幼い妹とは比べられん。

「いまミヨキチとUNOやってたのー」
「お兄さんも如何ですか?」
「ん~、そうだな久し振りにミヨキチと遊ぶのも――」

 ピリリと携帯が鳴る。
手を翳して、待ってくれとジェスチャーをして電話にでる。
一瞥した画面には佐々木の名前、でないわけにはいかない。



100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 20:20:21.64 ID:YWbBuSfj0

よくわかる解説

ミヨキチ

・「涼宮ハルヒ」シリーズの登場キャラクター
 キョンの妹の同級生で小学五年生(「分裂」より小学六年生)、年齢より幼く見える
キョンの妹とは逆で、とても小学生には見えないほど大人びた容貌の美少女であるらしい。
 挿絵が現在のところ一切無く、容貌に関しては想像するしかない。
 アニメ版「憂鬱」でキョンの妹を呼びに来ていた友人二名のどちらかでないかとも噂されるが、
小柄で幼い感じであったので別人と思われる。

 「編集長一直線」でキョンの書いた小説内小説で初登場し、キョンと共に映画を
見に行ったエピソードが書かれる、また「分裂」でも回想に登場しキョンに賞賛されていた。

 これらのエピソードを見る限り、キョンに対して少なからぬ好意を持っているようである、
また純情で奥手な性格であるようだ。



103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 20:37:20.08 ID:b7kVpnZOO

>>100
サンクス



112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 21:06:22.27 ID:8ysY19qpO

『もしもし?』
「なんだ突然」
『いや、昨日は橘さんが邪魔したようで、色々とすまなかったね』

 長くなりそうな上内容がややこしくなりそうなので、断りを入れて二階にあがる。

「その事か…あぁ、気にするな。突然で驚きはしたが、
大して気にして無いぞ。用件はそれだけか?」
『まったくせっかちだな君は、まぁそれだけじゃないよ。
土曜の予定を明日に繰り上げたいと思ってね』
「…別に構わないが、何故だ?」
『橘さんから、昨日キョンと彼女の会話の内容はすでに聞いた。
そして土曜、だそうだよ。決行の日は』





115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 21:18:29.30 ID:8ysY19qpO

 早いな、まぁ不必要に時間をかける方が確執は広がり、
そしてその状態で固定される。
俺とハルヒはすれ違ったって話すことも無くなるだろう。
閉鎖空間で面と向かって会話を行うのが条件なその辺りがタイミングが良いのだろう。

『キョン、どうかしたかい?』
「…いや、わかった明日だな」
『無理を言ってごめんよ』
「気にするな、愛する恋人のためならへでもない」
『馬鹿』



120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 21:35:42.41 ID:8ysY19qpO

 通話終了を意味する電子音が流れる。
それを三回まで聞いてから、ポケットに携帯をしまう。
バレンタインを皮切りに怒濤の展開だ、ついていけない。

「お兄さん?」
「おぅ、どうしたミヨキチ。妹が暴れてるのか?」
「いえそうじゃありません」

 二階の廊下、自室のドアの前で。朝比奈さんと並べば同い年と言えそうな美少女は
暗い表情を顔に張り付けて立っている。

「えっと、……なんでもないです」
「…そっか」
「はい」

 なんでもある表情のまま頷いて、階下に戻ろうとするミヨキチに

「ミヨキチ」
「なんでしょう?」
「笑った方が可愛いから、笑っとけ」

 そう言い捨てて俺は部屋に戻った。
明日はどんな服を着ていくか、ね。



133:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 22:14:04.12 ID:8ysY19qpO

―――

「すまん佐々木、待たせた」
「いや、今来た所だよ。……と言えば恋人同士らしいかな?」
「恋人同士らしいかはわからないが、佐々木らしくはあるな」

 短いスカートをはいて、ウエーブをかけた新鮮な佐々木と言葉を交わす。

「そもそも、さっきのは男であるキョンが先にいた場合の会話だろう?」
「まだ待ち合わせ時間の前なんだけどな…」

 対して俺は赤のカットソーに黒のジャケットを羽織っている。
一応髪も普段使わない整髪剤を使って整えて、それなりに外見に気をつけたが。
いまの佐々木と並ぶと若干気後れするのは仕方なかろう。

「ほらキョン行こうか」
「あぁ…」



141:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 22:37:28.13 ID:8ysY19qpO

 デートの内容は至って普通。
ハルヒが言った飽き飽きする程まともで代わり映えの無いルート。
映画館に美術館、ファーストフードで食事をとり見て回った場所の感想を言い合う。

「ねぇキョン、僕は一つだけ解せない事があるんだ」

 店内最奥の席、食事中に佐々木はそう語り始める。

「橘さんから又聞いた話でどうこう言うのも嫌だけれど
しかし君が彼女に協力する理由がわからない、橘さんが君に言った事は確かに一理あるが、
しかし君がそれに言いくるめられた訳じゃないだろう」

 デート中になんとも色気の無い話だ。
まぁなにもかも忘れて楽しむなんてのは無茶難題だが。



143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 22:47:25.18 ID:8ysY19qpO

「橘さんは協力さえしてくれれば意図はなんでもいい訳だから
大して気にしてないみたいだけど、僕は君の恋人だからね。正直な所が聞きたいんだ」

 照れるくらいならわざわざ恋人と言わなければ言いのに、
まったく可愛い奴だ。
紙コップのコーヒーを飲み時間稼ぎをしながらそう思う。
正直な所……か、いま思ったことを正直に言ったら佐々木はどんな反応を見せてくれるだろう?
想像するだけで顔が緩む。

「なんとなく…かな」
「なんとなくかい?」
「あぁ、それじゃ駄目かな?」

 佐々木は怪訝そうにこちらを伺う。
俺は続ける。

「佐々木は自分のことをちっぽけな存在だと思ったことがあるか?」



153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 23:12:04.28 ID:8ysY19qpO

 佐々木はイチゴシェイクを置いて俺の話しに耳を傾ける姿勢を作る。
話上手に聞き上手が佐々木のアビリティには備わってる。

「これはいつかハルヒに言われた台詞だ」

 踏切前で淡々と自身の過去の記憶を語るハルヒに俺は「そうか」としか返せなかった。

「だがな佐々木、この数日で俺はわかった。俺はちっぽけだ。
ハルヒのおまけとして周囲の注目を集め、いつの間にか巻き込まれて選んだ場所は
超能力者や宇宙人に未来人に神様の集まり、俺自身にはなにもないのにハルヒの前の席で
つい話しかけた結果、俺は神に気に入られて。
気に入られた所為で知らなくていい事実を知らされ、右往左往させられて、
対処する力も無いのに、気に入られてしまった所為でいつも超常の中心で苦労して。
知ってるだけで理解はしてないのに、選ばれたからハルヒに付き合って、振り回されて、
挙げ句には自身の我が儘を一つ通した結果、散々振り回して来た異能者には切り捨てられ用済み扱い。
世界のためだとハルヒのご機嫌を取り続け、一度嫌われれば世界のためだとハルヒに近付くな我々に近付くなと言う。
……佐々木、俺は疲れたんだよ」



163:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 23:38:41.61 ID:8ysY19qpO

 佐々木と向かいあっていた筈の俺はいつの間にか両腕を机について俯いていた。
指先が白くなるほど拳を握り締めて、言いたい事を言ったあとに残ったのは後悔だった。
佐々木に、もしこれで佐々木に拒絶されたらどうしようかと、俺は恐怖していた。
だから顔をあげて佐々木を見る事ができず、俺は佐々木がなにかを言い出すのを待っていた。

 ガタッと佐々木が立ち上がる音に、肩が竦んだ気がした。
佐々木がこのままどこかへ行き、取り残される錯覚を見た。
でも佐々木はどこに行く訳でも無く、
ただそっと俺の傍らに立ち、そっと抱き締めてくれた。

「大丈夫だよキョン、僕は君の事が好きだ。心から愛している。
辛かったね、苦しかったね。僕が全部受け止めるよ。
僕が君を必要としてるのは君が君だから、それだけだよ?
見捨てない、愛してるよキョン」

 俺は、恥も外聞も無く、佐々木の胸に抱かれて何年ぶりかはわからない涙を流した。



170:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 23:50:15.14 ID:UqeZJoaRO

佐々木って植物が好きなんだよね



175:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 00:01:57.12 ID:pYrSCIO9O

―――

「じゃあまた明日キョン」
「…あぁ」

 恥も外聞も無く、等と言ってもことが終わり冷静になればあんなもの恥以外の何物でも無く、
俺は気恥ずかしさから佐々木の目を見れないでいた。

「ねぇ、キョン」
「…なんだ?」

 腰に手を当てて少し頬を膨らませる佐々木。
動作は可愛らしいが、まともに見れないことに変わりはない。

「別れ際なのに君は顔も見せてくれないのかい?」
「…悪い」

 呼吸を整えて、佐々木を正面から見る。
佐々木は悪戯っぽく笑いそんな俺を見つめてくる。穴が開きそうだ。

「それじゃキョン、今度こそバイバイ」
「あぁ」

 別れの挨拶、をしてからもまだ佐々木は動かず。
やがて意を決したのか、一歩俺に接近し、一瞬のキスをした。



178:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 00:04:06.00 ID:pYrSCIO9O

唇が軽く触れ合う短いキス、なのに佐々木は暗がりの中でも分かる程酷く紅くなり、
照れた様にはにかんでみせた。その表情は、俺の心を強く打って―。

「あはは、いまのは僕のファーストキスだったりするんだよね」

 頬を掻き、そう言う佐々木に、

「……"俺もだよ"」

 そう答えていた。

「ありがとう佐々木、お前のおかげで少しは吹っ切れた」
「ふふっ、気にしなくていいよ、僕達は恋人同士だからね」

 ウインクしてみせるご機嫌な佐々木に、今度は俺から、
先程よりも少し長いキスをして、




「俺もお前を愛してるよ佐々木」

 佐々木の耳元でそう囁いた。



189:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 00:22:45.60 ID:pYrSCIO9O

―――

 頭が痛い。
 えっといまは何時だ?
 身体がやけに重い、全身に倦怠感が…。

 あれ、ここはどこだ?
 ベットも自分のじゃない。
 見慣れない部屋。
 頭に霧か靄がかかってる。
 状況の認識が円滑に行われない。



199:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 00:38:28.22 ID:pYrSCIO9O

「うぅ…ん」

 声がして、自分の身体にかかっていた布団がもってかれた。
見れば、俺が現在最も愛してる人が全裸で布団に包まれて寝息を立てていた。

「あぁ…」

 刺激的な物を見たおかげか思考が一気にクリアになる。
霧は晴れて、明瞭だ。
見慣れない部屋で当然、ここは俺の部屋でも佐々木宅でもない、
一人暮らしでない学生の恋人達が愛を語らう場所だ。

 俺は離れた位置に置かれた携帯をとり時間を確認する。
まだ朝早い、寝た時間を考えれば早すぎる時間だ。頭が痛くなってもやむかたなしだ。
頭を振り頭痛を払いシャワーを浴びに立ち上がる、チェックアウトするにはまだ早い。

「ふぁ…、キョン?」
「あぁすまん、起こしちまったか?」
「ん~、眠い」
「もう少し寝てていいぞ? まだ早いからな」
「……いや、起きる」

 起き上がり、かかっていた布団が落ちて上半身を露出させるも寝ぼけてる佐々木は気付かない。
絵画のようなその光景をこのまま眺めていてもよかったが、朝から疲れるのも
なんというか、アレなので早々に目を逸してシャワールームに入る。



210:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 00:56:26.42 ID:pYrSCIO9O

 熱いお湯が頭の天辺から足先までを流れ落ちる。
全身の毛穴が開いて、身体中の悪い物を流してくれるような感覚が、好きだ。

「今日の正午、か」

 橘との口頭約束など守る必要性はないが、
これからも佐々木と共にいたいから、俺は、ハルヒを常人に戻す。
そう決めると気が軽くなった。ただひたすら高揚感が溢れる。

 蛇口を閉める、シャワーが止まる。
ガラス戸を開いて身体を拭いてバスローブに羽織る。
佐々木は裸のままだった。

「お前もシャワー浴びとけ」
「うん、そうさせてもらおうかな」

 てくてくと入れ違いにシャワールームに入る佐々木を見送って、ベットの縁に座る。
見れば携帯が緑の光を発していた、メールの受信を知らせる物だ。

 BGMに流れる水音を聞きながら携帯に手を伸ばす。
『古泉一樹』

 パチン。
俺は読まずに消した。



215: ◆7SHIicilOU :2009/02/24(火) 01:09:40.47 ID:pYrSCIO9O

 …閉じた携帯を再度開き、メールを打つ。宛先は橘。
『今日は大丈夫なのか?』とだけ送る。
シャワーの音は続く、女の子はシャワーが長いのは一般常識。

 ピリリとすぐに返事が来る。
以下内容、
『苦労しましたけど涼宮さんを捕獲しました、現在は薬で眠ってますから安心してください。
予定通り今日の正午から作戦開始です。…と言ってもそこからはキョンさんの手腕しだいですけど。
一応私達も万一に備えて、即刻涼宮さんを抑えられる様に待機してますけどね。
では後ほど。


PS. 佐々木さんと幸せになれるといいですね♪』

 以上。



222:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 01:23:22.94 ID:pYrSCIO9O

 捕獲とは少々不穏な響きを持っているものの、状況は把握できた。
このメールに返信する必要はなし、なので携帯はまた机に畳んで置かれる。

 現在時刻は七時半、佐々木がシャワーから上がって一息ついたらここをでて、
朝飯でものんびり食ってれば大体時間は潰せるな。


 キュッと蛇口を捻る音がしてシャワールーム佐々木がでてくる。
バスタオルで頭を拭きながらそのままこちらに歩いてくる佐々木に俺の方が恥ずかしくて顔を逸す。



223:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 01:28:52.34 ID:MmkCpgoc0

この展開……
佐々木の能力でキョンがSOS団に愛想つかすやつを書いた人か



233:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 01:39:44.70 ID:0p44zEIhO

>>223
同じ題材で同じような展開にして何の意味があるんだ



240:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 01:51:48.49 ID:pYrSCIO9O

>>233
同じ題材、同じような展開
何の意味があるんだよ



俺死ぬね



244:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 01:57:34.29 ID:Ipae0xGc0

>>240
それは書き手が同じ場合だ



224:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 01:30:47.76 ID:pYrSCIO9O

 くっくっくっと笑い声が聞こえてから衣擦れの音。
服を着てるのは即座にわかったので逸した目線はずっと壁を行き来する。

「キョー、ン」

 俺の名を甘えたような声で呼びながら、
唐突にに後ろから抱き付いてくる佐々木。昨日からやたらとスキンシップをとってくる。
…決して嫌じゃないが、最初は少し驚いたのも事実。

「なんだ?」
「少し君と触れ合いたくて」
「……そっか、気の済むまでくっついてていいぞ」
「勿論そうするよ」

 ぎゅうと胴に回された腕に力が籠る。



238:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 01:49:32.68 ID:pYrSCIO9O

 しばらく、会話もなくそのままの体勢でお互いじっとしていた。
佐々木が触れてる所だけが、凄く暖かくて、心地よかった。

「キョンは、怖くないの?」

 沈黙を破ったのは、やはりと言うか佐々木だった。
…しかし怖い? 意味がわからないな。

「僕が涼宮さんの力を受け取った後のことについて」

 …どういうことだ?

「僕は力を認識してる、だから力をコントロールできてる。
涼宮さんの力が加算された僕は完全な意味で全知全能になれる、
意識的にその圧倒的な力を扱えるようになる。怖くないの?」

 なにを言ってるんだ、怖い訳がないじゃないか。

「なんで? 僕は怖いよ、君を強く想う気持ちが君の嫌う拘束になりはしいかと不安でしょうかない。
意識的に力を扱えることが無意識に力を使わないと言う訳じゃないんだ」

 佐々木の腕が微かに震えてるのを感じる。
昨日と立場が逆だな。

「そんな事いったら俺だってお前を束縛するぞ? ずっと一緒に居て欲しい、俺だけを見て欲しい、
それは結局普通の恋人が思う感情とそう居ない物だ佐々木」



255:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 02:56:49.44 ID:pYrSCIO9O

 振り向き頭を撫でる。

「…それに、そうやって不安になれる佐々木なら大丈夫だ」
「…だといいね」
「大丈夫だ、…腹減ったな。飯食いに行こうぜ」
「そうだね、…とりあえずキョンには服をきてもらわなくちゃだけど」
「そういえば……」





257:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 03:12:32.61 ID:pYrSCIO9O

―――

 二度目の佐々木の閉鎖空間訪問。
橘に手を引かれて俺は薄ぼんやりと発光するその空間にインした。
橘は、ハルヒを捕まえる際の抗争が原因なのか所々に包帯やらガーゼやらが巻かれて居て。
少し、消毒液の匂いがした。

「この先の広場に眠っている涼宮さんがいますから、行って彼女を起こしてきてくださいね」
「……お前は?」
「ここで有事の際に備えて待機なんですよ」

 繋いだ手を離し、背中を軽く押されて俺は歩き出す。
三日ぶりのハルヒの顔を拝むために。

「すぅー…」

 一人で歩いたのは50メートル程度。
一つのベンチにハルヒは横たわっていた。
最後に見た時より少し痩せた様に見える。



259:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 03:22:54.88 ID:pYrSCIO9O

 如何なる理由か、肌は青いまでに白く。痩身と相俟って、呼吸してなければ
死体とも見紛う程だった。
数秒逡巡してから、ハルヒの肩を揺らす。

「おいハルヒ、起きろ馬鹿者。風邪を引くぞ」

 起きる気配は無し。
ため息してから、頬をたたく。
二度三度、さらに続けて何度もたたく。

「ん~、なによ一体」

 久しいハルヒの声、やっと起きたか…。

「キョン? ………キョン!?」

 そうだが声量を落とせ。お前の声で鼓膜がやばい。
大体起きて早々なんて元気なんだ。

「あんたなんで、……てかここどこよ?」
「さてね」

 ハルヒと会話をしろ、と言われたが。一体どうしたらいいんだろう?
なにか特定のワードを言わせるのか? それともこの環境がキーで俺は時間稼ぎか?
イマニほど状況を把握してない、不親切だ。



261:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 03:30:46.26 ID:pYrSCIO9O

「前にも似た様なことがあった気が…」
「ほぅ」

 と言うか、この異常事態(ハルヒ的)でのんびりと談笑する流れにはならないだろ。
どうすんだよ?

「…あー、ハルヒとりあえず落ち着け。そこに座ってくれ」
「なによあんた、馴々しいわね。あんたはもうSOS団員じゃないんだから
私に話しかけないで頂戴」

 いいつつも、一応さっきまで横になっていたベンチの端に座るハルヒ。
俺は反対の端に腰掛けて少し黙る。
さて、どうしようね?



335:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 13:24:30.66 ID:pYrSCIO9O

 意外や意外、この無言の時間を破ったのはハルヒで、
思ってたよりも穏やかな口調で話しかけてきたのだった。

「ねぇあんたさぁ」

 そっぽを向いて、視線をキョロキョロとあちこちに巡らせながら独り言のようにしゃべる。
まぁ相手をみないでしゃべるのはいつも通りか。
「これって、また夢なのかしら…? どう思う?」

 夢、そういえばいつかハルヒの暴走により世界が作り替えられようとした時、
あれも俺とハルヒの二人で閉鎖空間にい。それは最終的に夢だと言う事になったが、
ハルヒは似た様なこの状況も夢だと思ってるのだろうか? なら好都合だが。

「さて、ただの登場人物Aにはわかりかねるな。ただこれが現実でないのはわかるが」

 現実の確執を一時的に排除して話し合うには、ご都合主義の通る夢幻としたほうが楽だ。

「……そっか」

 ハルヒもこの環境を調査するよりも、俺とのいざこざを見ない振りをする方を選んだのか、
質問責めにしたりするわけでもなく、すんなりと俺の言葉を受け入れた。

「これが夢か、なら色々あんたと話したかったのよね。良い機会」
「話したい事?」
「市内探索を休んだ理由は? その予定ってなんだったのよ」



351:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 14:41:34.05 ID:pYrSCIO9O

 前言撤回、どうやら忘れるのではなく解決、ないし追求するのに都合が良いと
どうやらハルヒは考えた様だった。

「ムカつくけど、それだけじゃダメじゃない。あんたの用事もキチンと聞いて
納得させてみなさいよね…」
「あ~…」

 どうすっか、なにも考えていなかった。
と言うより今日がその市内探索の日なのだが、ハルヒの中での時系列はどうなってるのやら?



356:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 15:13:07.45 ID:pYrSCIO9O

「そのだな、妹と田舎に行くんだよ…」

 咄嗟に嘘をつく、嘘の上塗りだ。
だがどうすればいい、なにもない、ただ行きたくなかっただけと言うか?
そんな訳には行かない、佐々木と遊ぶ予定の事は?
考えるまでもない、アウトだ。

「ふぅん…、なんで最初からそう言わなかったの? 家族での用事に私が口出しするとでも?」
「いや、忘れててさ」
「………き」
「…は?」

 ボソボソとして聞こえないぞ。

「嘘つき」



363:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 15:30:26.09 ID:pYrSCIO9O

 …え?
ハルヒがなにを言ってるのかわからなかった訳じゃない。
たがおかしい、ハルヒはだってこの世界を夢と認識…。いや、気付いてるのか?
だが都合いいから見て見ぬ振りをしてた、そうだ俺もさっきそう判断した。
しかし、ハルヒはなぜ嘘だと? ハルヒを拒絶した日に佐々木と遊んでるのは知られてる。
だが今日の事は知られてるはずが…。

「2月18日土曜日」

 ハルヒは憤怒の表情でこちらを睨む。

「昨日の10時からあんた今日の朝まで家に帰ってなかったでしょ」

 なんだ、どういう事だ? 橘達はなにも言ってなかった。
情報はどこから? またハルヒが俺達を見掛けて?
いや、それは理由にならない。時間の把握はできない筈だ。じゃあ尾行でもされてたのか?
そんなまさか、だったらわかる。なら、どうやって? 古泉達が吹聴するとも思えん。

「私ね、昨日あんたと話そうと思ってあんたの家行ったの。
私も悪い部分あったし、内容によっては明日は市内探索なしにするからって言おうと思って。
そしたらあんたのお母さんが出かけてるって、仕方ないからその日は帰って、
次の日、今日の朝また行ったの。そしたらまだ帰ってないって言われたわ」



366:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 15:42:32.79 ID:pYrSCIO9O

 ハルヒの追求を交わす事がいまの俺にはできない。
こんな会話で本当に大丈夫なのか? 世界の寿命が果てない加速度で削れてる気がする。
だが、周りからの干渉も慌てる様子もないから大丈夫なんだろう。
俺は大丈夫でないが。

「あんた、あの佐々木って子と付き合ってるの?」
「……あぁ」

 他に言い様がなかった。
はいかいいえの二者択一の質問をいなせる程詐欺には向いてない。



375:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 16:04:31.09 ID:pYrSCIO9O

「やっぱりそうなんだ…、あんたは気付いてないだろうけど。あの日あんたが
あの子と公園で会って喫茶店に向かうのも見てたのよね。あれからもしかしてと思ってたけど…。
昨日からでかけてたのも?」
「お察しの通りだよ…」

 そして沈黙、この佐々木の閉鎖空間の外でハルヒの閉鎖空間が出没してないかを
心配する権利はきっといまの俺にはない。

「ねぇキョン聞いて、私、あんたのことが、多分…」
「ハルヒ」

 続きが予想できたので遮る。

「お前はいつだったか俺に自分のちっぽけさを語ったな」
「…うん」
「俺も感じた事ある。感じ続けてる、いつもいつも俺の周りで流れてく物語に俺は毎度取り残されてた。
古泉に長門に朝比奈さんにお前、たまたま紛れた文芸部室だけじゃない。
中学時代のクラスメートの一人は古泉のお仲間でたった一人の親友はお前と同じ神様で…」
「あんたなにを言ってんの?」
「聞けハルヒ、世界は辛辣だ楽しくあってもその裏は痛みだらけだ。
俺もお前の事は結構好きだったんだ、だがお前は明るすぎたんだ。太陽は与えない、欲しい物は与えない。
ただ善も悪もない良も不もなく全てを一方的に放つだけなんだよハルヒ。
ただの一般人な俺は沈まぬ太陽の下じゃ生きられないんだ。
そうわかっているのに、俺はたまたま太陽に好かれたから、太陽が機嫌を損ねて落ちない様に自ら太陽を持ち上げてた。
古泉達超能力者の、与えられた蝋の羽根すら持たない俺が太陽の一番近くにいるなんてそもそも無理だったんだよハルヒ。
……俺は月が見たかったんだ、それだけなんだ」



379:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 16:12:20.08 ID:pYrSCIO9O

 長々と喋った言葉を、
ハルヒはなんどかこちらと地面を見ながらゆっくりと理解して、聞く。

「つまり、どういうこと?」
「俺と佐々木は恋人同士でお前とは友達同士ってことだハルヒ」

 そう言った時のハルヒはこれまで見たどんな表情よりも悲痛で沈痛で切なかった。

「なんで、よ」
「悪いがハルヒ、俺はお前とは仲良し以上になれない」
「どうして、よ」
「どうしてもだ」
「嫌だよ、キョン、もうこんなじゃ一緒に話すのもできない。
こんな気持ちを抱えてあんたと仲良くなんかできるわけない!」



386:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 16:23:21.96 ID:pYrSCIO9O

 ぶわっと全身の毛が逆立つかと思った。
この感覚を俺は知ってる、ハルヒによる世界の再構成が、行われようとしてる。

「おいハルヒ! 落ち着け馬鹿!」
「………………」

 ハルヒは立ったまま動かず、目を見開いて小さくなにかを呟いている。
ハルヒを中心に風がふき、閉鎖空間の壁面がちらつき明度が変わる。

 どうしたら、これでいいのか? それとも橘達はもう消されたのか?
作戦は失敗なのか? 俺は俺は、……だから無力は嫌なんだ。

「――情報構成力―――解析終了、分解――再構成を―――行う」

 声が聞こえて、ハルヒがその場に崩れ落ちる。
駆け寄りはしない、振り向き俺のすぐ後方にいる橘と周防を見る。

「ご協力ありがとうございます、キョンさん」
「―――」

 …説明しろ。



394:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 16:35:57.07 ID:pYrSCIO9O

「つまりですね、あなたと涼宮さんを会話させる。
その結果彼女はかなりの規模の閉鎖空間とさらに情報操作による世界の改変を行いました。
我々はそれを観察し、周防さんと協力して分析、解析して彼女からその能力を分解し排出、
そして涼宮さんの体外で力を物質として再構成した訳です。
あっ、キョンさんはコーヒーのおかわりは? あっじゃあ両方お願いします。
…まぁ最後のタイミングはかなりギリギリでしたけどね」

 以上が橘による今回の事の説明。
ことを行った周防は黙って橘の奢りのアイスティーを飲んでいる。

「…で、これが神様の元か」

 俺の手の平には一錠の薬剤、現実に再構成されたハルヒの力の塊がある。
これを飲めば、望めば叶う神様の力を即日ゲット。どんな違法な薬物通販だよ。

「でもそれは実物で真実神の元ですよ、だからそれを佐々木さんに飲ませればオールコンプリートです」
「そうかい…」



397:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 16:42:52.82 ID:pYrSCIO9O

 青白い一粒の錠剤に姿を変えたハルヒの迷惑超パワー、
なんとも感慨深いじゃないか。

「これで涼宮ハルヒはただの人間となりました。…満足ですか?」
「実感がわかないな、あっさりし過ぎてる。が、それなりに満足なんじゃないかね」
「なら、よかったです」
 砂糖もミルクも入れないコーヒーを飲む橘。
俺はまた手の平に視線を戻して、ため息をつく。
佐々木に連絡を取らなくちゃな。



403:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 16:54:25.81 ID:pYrSCIO9O

―――

 公園の時計の下、青天の空を見上げながら俺は佐々木を待つ。
前は待たせてしまったからな、今日は相当早く家をでた。
佐々木の編んでくれたマフラーに顔を埋めて息を吐く。春遠からず、けれども今日も寒い。

「やぁキョン待たせたね」
「いや今来た所だ」
「嘘つき、こんなに冷えてるじゃないか」

 頬を柔らかい手のひらで包まれて俺は困った様に笑う。
相変わらず佐々木には嘘がつけない、二秒でバレる。

「ねぇキョン、来週はどうするの?」
「ん、来週は市内探索だな。また佐々木も来いよ、ハルヒも歓迎するぞ」
「ふふっそうだね、SOS団、佐々木団合同探索も最近してないしね」
「佐々木の所は土曜も授業あったりするしな」



406:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 17:02:06.58 ID:pYrSCIO9O

 手を当たり前のように繋いで、いつもの喫茶店に向かう。
カランと涼やかなベルがなってクラシックの流れる店内に入ると店員がにこやかにやってきて、
即座に座席に案内してくれる。俺と佐々木は珈琲と紅茶をそれぞれ頼む。

「それで学校はどうだい?」
「最近は大した事はないな、男女合同の体育でハルヒに思いっきり負けたのが悔しかったが」
「ははっ、相変わらず涼宮さんはバワフルだね」
「パワフルすぎる、セーブする事を知って欲しい」
「ふふっ」



414:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 17:19:35.06 ID:pYrSCIO9O

 あの日から、約一年が経った。
俺と佐々木は仲睦まじく恋人を続けている。

 ハルヒは橘の言った通りあれからただの人間になり、
昔の佐々木のようにいまの俺の親友みたいな感じで同じクラスで過ごしている。
席は、まぁ窓際の後ろ二つではないけれど。

 古泉達も力は消えてただの人としてこの世界で生きてる。朝比奈さんも含めて。
SOS団は毎週のように今も市内探索をしたりと活動してる。

 佐々木団も、同じく活動してる。
やはり力を無くした橘と周防と一応藤原も合わせてな。
この二つの団はたまに合同で活動したりもする。市内探索とは名ばかりで電車使ってあちこちに言ったり、
よく遊び惚けて居る。

 しかしなぜ橘達も能力が無くなったのか? ハルヒと関係のない佐々木団が能力を無くしたのは
佐々木もまた力を無くしたからだ。

 何故か? 俺が望んだからだ。
全ての異能力者がいなくなるように、俺が望んだからだ。

 今日も俺は佐々木と共にこの事も無き世界を歩いている。



418: ◆7SHIicilOU :2009/02/24(火) 17:23:45.54 ID:pYrSCIO9O

というお話だったのさ
終わりって事で一つ



421:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 17:24:48.82 ID:ptrlJ58l0

乙!
これはいいハッピーエンド



422:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 17:24:55.73 ID:XEIXc1Ou0





425:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 17:26:03.47 ID:7sa0u9WrO

乙。面白かった。

エヴァまだー?



436:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 17:33:58.54 ID:pYrSCIO9O

>>425
また暇になったら書くよ



447:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 17:56:37.22 ID:CfCoSq6H0

乙!楽しませてもらったよ



450:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 18:08:19.29 ID:Ext5aWo9O

おつ。
佐々木いい…心が洗われる



451:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/24(火) 18:17:14.64 ID:0Zz+uEfcO


素敵な佐々木をありがとう



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         コメント一覧 (11)

          • 1. あ
          • 2010年10月29日 18:04
          • ハルヒSSは正義!
          • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2010年10月29日 22:20
          • あぁ…最高だな
            クリスマスどうしよう
          • 3. 名無し
          • 2010年10月29日 23:13
          • ※2
            クリスマスなら去年やったじゃないか
          • 4. あ
          • 2010年10月29日 23:46
          • 何だ佐々木か
          • 5. 名無し
          • 2010年10月31日 05:52
          • ハルキョン派だが……

            これは良いSSだった
          • 6.
          • 2010年11月03日 01:03
          • おい俺は古泉との仲直りパートで涙する予定だったんだが
          • 7. ながもん
          • 2010年12月02日 14:29
          • キョンが神になったんかい……
          • 8. 名無し
          • 2011年01月21日 12:01
          • 4 最後もうちょい詳しく書いて欲しかった
          • 9. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年02月07日 16:37
          • 4 原作キャラとの微妙な差異を感じつつも、最後まで通して読めた
            このSS作者の別の作品もあるなら読みたいな
          • 10. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年04月29日 22:35
          • 4 うーん。ハッピーエンド、か?
            俺としてはハルヒが能力を持ったまま佐々キョンして欲しかったな。
            でもいい話!
          • 11. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年08月04日 00:12
          • ※10
            だよな
            ハッピーエンドじゃないよな
            面白いんだけどな笑

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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