紬「江戸時代の私達」【その2】







紬「江戸時代の私達」の【その2】です。






183:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 02:24:48.80 ID:OlK5fEC4O

【第五話:過去】

一年前、私が三味線を弾いていると明るい声の女と出会った。

明るい女の名は律。
彼女とはすぐに意気投合し私達はお互い友人同士となった。

幼い頃から目が見えない私にとって彼女は私の光だった。

律「おーい澪ー!団子食いに行こうぜー!」

澪「また、団子を食うのか律?」



186:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 02:28:48.68 ID:OlK5fEC4O

律「えー!いいじゃんいいじゃん団子食おうぜー」

澪「嫌だ私は魚が食いたい。何処かで食いに行くのなら私はめし屋がいい」

律「めし屋に団子ってあるか?」

澪「無い」

律「じゃあ団子屋に行こうぜー!」

澪「どうしてそうなる」



189:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 02:33:41.84 ID:OlK5fEC4O

律「あー団子が食いてーよー」

澪「こう言うのはどうだ?めし屋に行った後に団子屋に行く」

律「却下だねー私は団子を腹いっぱい喰いたい」

澪「もういい。私はここで待つから律は一人で団子を食いに行けばいい」

律「もう仕方ねぇなぁ……そいじゃ行ってくるよ」

澪「気をつけてな」

律「わかったー」



190:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 02:44:03.12 ID:OlK5fEC4O

私と律は同性だ。
同じ性別……私は彼女に恋をしていた。

流石に出会って間もなくはそんな感情は微塵も無かったが月日が経つにすれ彼女に淡い感情を抱くようになっていた。

目が見えなく人の姿形を見る事が出来ない私でもそんな感情は抱く。

律は私の事をどう思っているのだろうか?



191:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 02:52:58.83 ID:OlK5fEC4O

彼女に私の気持ちを聞いてみたいがそれはとても勇気がいる事だ。

澪「律……」

それに私と律は同じ性。
もし、聞いてみて律が怪訝な態度をとれば二度と私の前には現れなくなってしまうかもしれない。

気持ちが悪いと言われてしまうかもしれない。



194:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 03:09:54.11 ID:OlK5fEC4O

律「たっだいまーっ!あー食った食った」

澪「おかえり律」

律「ほら土産に団子持って来たぞ食え」

澪「あぁ、後からいただくよ」

律「んだよー今食えよー美味いのに味が落ちるだろォ!」

澪「仕方ないな……じゃあ今食べるよ」

律「それでよろしい!」



195:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 03:15:16.30 ID:OlK5fEC4O

澪「ん……やっぱり純さんの所の団子は美味いな」

律「だろ?私もあそこは好きなんだ」

澪「ふぅん……なぁ律知っるか?あそこら辺の近くにある神社には変わった姉妹がいるらしい」

律「変わった姉妹?」

澪「犬を姉と呼んでいる姉妹があの神社にはいると聞いた。何故、犬を姉と呼んでいるのか興味は無いか?」

律「えー…無いよ。澪そういうの好きだよな」

澪「そういうのとは?」

律「不思議って言うのか?好きだよな澪」

澪「まぁな」



196:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 03:24:47.39 ID:OlK5fEC4O

律「何で好きなんだ?」

澪「私は目が見えない。だから色んな事に興味がある」

律「あぁ、成る程!じゃあ私の顔にも興味があるのか?」

澪「親しい友人の顔を知らないんだ。興味が無い方がおかしい」

律「私も澪には興味があるぞ」

澪「私に興味がある?」

律「なーんて洒落だよ洒落」

澪「何だ洒落か」

驚いたではないか。



197:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 03:32:13.78 ID:OlK5fEC4O

律「アハハハハッ澪の顔赤いぞー」

澪「そうか赤いか」

律「随分と反応が薄いんだな」

澪「驚いている」

律「あ、耳まで赤いぞ!まるで猿の尻みたいに赤い」

澪「失礼な猿の尻とは何だ」

律「アハハすまんすまん。あ、今日は澪の家に泊まっていいか?」

澪「あぁ、別に構わないよ」



198:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 03:42:59.31 ID:OlK5fEC4O

律「あ、それともう一つ……澪私の事好きか?」

澪「な……何?」

律「好きかって聞いているんだよ」

澪「それは……友人としてでは無く……恋仲としと言う事か?」

律「あぁ、それ以外に何がある?」

私が言えずにいる事を律は随分とサラリと言うものだ。

怖いと言う感情は彼女には無いのか?

律「で、どう何だ?」



200:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 03:53:05.79 ID:OlK5fEC4O

澪「それは……好きだよ。友達としても恋仲としても」

律「やっぱりな何となくそんな気がしていたんだ。いきなりでごめんな」

澪「…………あぁ」

律「私……明日見合いに行くんだ」

澪「見合い?」

律「あぁ……親が勝手に決めちゃって……最後にお前に気持ちを伝えようと思ってさ」

澪「…………本当か?」

律「嘘を言うんだったらもうバラしてるさ」

今日、律と団子屋に行っていればよかった。



201:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 04:01:11.83 ID:OlK5fEC4O

澪「律が見合い何て……そんな」

律「まぁそんなに気を落とすなって……会えない分けじゃないんだから」

澪「…………」

律「アハハ……もっと早く言おうとは思ったんだけど中々言い出せなくて」

澪「なぁ、律……頼みがある」

律「ん?何だ?」

澪「お前が見合いに行って嫁入りする前に、お前と一夜の思い出が欲しい」

律「は、はぁ?」



202:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 04:13:36.85 ID:OlK5fEC4O

律「一夜の思い出って交合うって事か……?」

澪「あぁ……」

律「大胆な事を言うな澪……」

澪「すまない」

律「いいよ。私を抱け……処女をお前に捧げるよ」

澪「本当か?本当にいいのか?」

律「あぁ、お前と交じる事が出来たら私も本望だ」



203:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 04:17:40.96 ID:OlK5fEC4O

澪「律……!」

私は律の手を握った。
律の手は汗で湿っていたがそれは私も同じだ。

律「澪……」

私の手を手繰りよせ律は私に抱きついた。

そして、唇に柔らかく湿っぽい感触。
律の唇だ。



206:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 04:31:32.28 ID:OlK5fEC4O

澪「んんっ……はぁっ」

律は私の口の中で舌をウネウネと動かしている。

団子を喰ったからか彼女の舌は甘かった。

律「むふぅっ…………っはぁ」

唇に柔らかい感触が無くなり今度は私の胸に律の手の感触。

律「脱がして……いいか?」

澪「あぁ……」

律の吐息が耳に吹き付けられ身震いをした。

着物が律の手によって脱がされる。まだ誰にも見せた事がない私の肌を律にさらけ出す事は……とっても恥ずかしかった。



208:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 04:37:11.41 ID:OlK5fEC4O

背中に柔らかい物が当たる……ほんのちょっと固い物も当たった。

澪「んんっ……はぁっ……」

私の後ろで律は抱きしめるように私の胸を揉んでは首筋で舌を這わせていた。

律も着物は全て脱いだのだろう律の柔らかく滑りの良い肌がとても気持ち良い。

律「澪……ずっとこうしたかった」

澪「はぁっはぁっ私もだ……律……」



209:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 04:49:26.29 ID:OlK5fEC4O

下腹部が熱くなって来ている。
それに、何だか湿り気を帯びている。

律「指……入れるぞ」

耳元で律が囁いた。
私はただ黙ってコクリと頷き律に身を任せた。

澪「あぁぁっ!」

陰部に何かが入って来る。

澪「り、律ぅっ!あぁっ……!」

律は左手で私の胸を強く掴み。
右手で私の陰部を探った。

息が上手く吸えない。

澪「律……律!あぁっんんっ」



211:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 04:57:42.99 ID:OlK5fEC4O

律「澪……私のにも指を入れてくれ……」

澪「はぁっはぁっわ、わかった」

手探りで探るが律の陰部が何処にあるのか分からない。

ふっと律が私の手を掴んだ。
そして、そのまま自らの陰部に私の手を当てた。

律の陰部は湿っており軽く触れただけでもヒクヒクと動いていれのが感触でわかった。

澪「はぁっはぁっ……入れていいか?」

律「あ、あぁ……」



213:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 05:06:27.81 ID:OlK5fEC4O

律の陰部に指を入れる。
陰部の中は何だかゴリゴリしていた。

それに、熱い。
陰部がまるで私の中指を飲み込むよう吸い付いている。

ゆっくりと中指を動かしてみる。

律「んんっ……!」

声を押し殺した律のあえぎ声が部屋に響く。

澪「痛くないか?」

律「だ、はぁっ大丈夫っ……」



214:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 05:12:29.38 ID:OlK5fEC4O

少しだけ早く動かしてみると律は大きな声を出した。

陰部が更に強く私の中指を締め付ける。

律「澪ぉっ……気持ち良い……気持ち良いよっ!」

律は私の背中に爪を立てながらそう言った。
凄く興奮してるのだろう痛みは感じなかった。

今度は中指を上下に早く動かしてみる。

律「あふぅぅぅんっ!」



215:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 05:20:12.09 ID:OlK5fEC4O

澪「はぁっはぁっはぁっはぁっ」

律「あぁんっ……澪ぉ澪ぉおっ!」

不意に私の顔に何かが掛かった。
水のようだか少し粘りを帯びている。

律「ご、ごめん……」

澪「イったのか?」

律「あ、あぁ……はぁー気持ち良かった」

澪「私も気持ち良かったよ律」



217:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 05:38:40.75 ID:OlK5fEC4O

律「……なぁ、澪」

澪「どうした?」

律「今度、見合いをする相手に……断るよ」

澪「ほ、本当か?」

律「あぁ……だからさ澪……今度からは二人で一緒にいよう」

澪「うん……でも、大丈夫なのか?見合いを断ったりなんかして」

律「きっと大丈夫だろ。無理矢理、婚約させられそうになったら逃げるしな」

澪「そうか……」



218:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 05:44:48.34 ID:OlK5fEC4O

律「お前とは交じり合えたしお互いの事をもっと知る事が出来た……ありがとう澪」

澪「礼を言いたいのは私の方だ。ありがとう律」

この後、二人で長い時間話し合い朝を迎えた。

さようならと言う律の声はとっても明るかった。

私は目が見えない。
暗闇しか知らない律は私に光を教えてくれた。


第五話
おわり



221:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 06:08:30.59 ID:OlK5fEC4O

【第六話:心中】

梓「団子だぁ!団子だぁっ!」

紬「喉に詰まらせないように食べるのよ?」

梓「三日振りの飯だぁ!」

団子を手当たり次第に食べる食べる。

梓「美味しい……美味しいです!」

純「そりゃあ私が作った団子だもんマズイ分けがない」

美味しい……本当に美味しい……。

梓「美味しいです……美味……ぐむっ!」



223:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 06:13:21.24 ID:OlK5fEC4O

梓「ぐむむむっ!」

純「梓?梓!?」

い、息が出来ない……。
団子が喉に喉に……。

純「ほ、ほら水!」

純から水を受け取り一気に飲み干す。

梓「ぷ、ぷっはぁーっ死ぬかと思いました……」

紬「だから最初に忠告しておいたのに……」

梓「だって三日振りの飯なんですもん……」



224:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 06:16:50.62 ID:OlK5fEC4O

純「団子屋の私が言うのも何だけど団子は飯じゃない。菓子よ!」

梓「腹に入れば何でも飯ですよ」

紬「食いしん坊ねー」

違うただ死にそうなぐらい腹が減っているだけだ。

純「あ、そう言えば二人共知ってる?心中があったんだよ」

紬「へぇ~心中があったのね~」

梓「し、心中……」



225:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 06:24:58.96 ID:OlK5fEC4O

純「ほら、ここからすぐ近くに蕎麦屋があるでしょう?その近くで男女が心中してみたい」

紬「何だ男女なのね」

心中したのが男女と言う事に何か不満があるのかこの人は……。

純「男の指が切り落とされ……ハメたまま死んだらしいよ」

梓「ハ、ハメたまま…………」

紬「ふぅん」

梓「でも、良くその男女は心中しようと思いましたね」



227:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 06:33:37.65 ID:OlK5fEC4O

純「本当……私ならいくら愛する人でもそれだけは無理」

本来、心中の意味は『真心』と同じで男女の『二心たき処を表す印』を指す。

その行為は誓紙・爪はぎ・入れ墨に指切・貫肉そして行き着く先が心中死。

真心の死である。

それに心中は大罪だ。



228:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 06:42:59.94 ID:OlK5fEC4O

心中死は大罪……心中死をした者を弔ってはいけない。
一方が残った場合主犯とし斬首。

双方が残った場合、三日間日本橋に全裸で晒され公民権を剥奪。

若い娘が全裸で晒され手荒な仕打ちを受ける事もある。

梓「怖いなぁ……」

純「怖いね……」

心中があった事を話しておいて何が怖いね……だせっかくの団子がまずくなったじゃないか。



229:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 06:51:31.96 ID:OlK5fEC4O

紬「心中なんてやるもんじゃないわね~」

梓「そうですよね……」

紬「日本橋に晒され男達に無理矢理犯されるだなんて嫌だわ~」

この人は恐ろしい事を随分と涼しい顔で言う。

梓「そう言えば紬さん今日仕事は?」

紬「休みよ~梓ちゃんは絵を書かなくていいの?」

梓「書いたって売れないですもん……」

純「元気だしなよ。団子一つやるから」

梓「本当ですかぁっ!いただきます!」



231:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 06:57:14.96 ID:OlK5fEC4O

梓「はぁ~……久しぶりに水以外でお腹いっぱいになりました!紬さんと純さん奢ってくれてありがとうございます」

紬「いいのよ~じゃあお金かえして?」

梓「……へ?」

紬「冗談よ~びっくりした?」

梓「あ、当たり前ですよ!」

紬「それじゃわ私達はもう行くわね。純ちゃんさようなら」

梓「さようならー」

純「また来るんだよ~」

梓「お金があったらね……」



233:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 07:07:24.83 ID:OlK5fEC4O

梓「ふわぁ~……お腹いっぱいになったら眠たくなって来ましたよ」

紬「太るわよ~」

梓「ううっ……あれ?この蕎麦屋……」

紬「純ちゃんがあった心中があった場所ね~」

遺体は回収されたらしい。
地面には血が太陽の光りに照らされ渇いていた。

梓「何か……怖いですね。早く行きましょう」

紬「そうね~あら?あそこにいる人って……」

紬さんが指を指した方向を見てみると澪さんが立っていた。



234:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 07:15:27.82 ID:OlK5fEC4O

紬「澪ちゃん?」

澪「紬さん……ですか?」

紬「そうよ~」

彼女は目が見えない。
だから、声で人を判断しなくちゃならない。

私はあまりこの人とは話した事はないから喋べらない方がいいだろう。

紬「そこの蕎麦屋で心中があったらしいわね~」

澪「えぇ知ってます。誰が話してるのを聞きました」



235:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 07:24:58.91 ID:OlK5fEC4O

紬「物騒よね~」

澪「はい……」

何だか澪さんは悲しそうな顔をしている。

澪「心中……あの、私帰りますね」

紬「えぇ、今日は三味線は弾かないの?」

澪「すみません……そう言う気分じゃないので」

紬「そう、なら仕方ないわね」

澪「じゃあ私はこれで……さようなら」

紬「さようなら澪ちゃん」



236:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 07:33:35.82 ID:OlK5fEC4O

梓「何であんな悲しそうな顔をしていたんですかね?」

紬「分からないわ。気になるけど触れないようにしなきゃ」

梓「え?どうしてですか?何があったか聞けばいいじゃないですか」

紬「知る事を欲くばってたら人間関係がおかしくなっちゃうわ」

梓「そうなんですか?」

紬「そうよ。それに澪ちゃんは何か困ってる事があれば私に相談するわ。それまでは無理に聞きたくはないの!」



237:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 07:41:19.73 ID:OlK5fEC4O

どうやら澪さんと紬さんは仲が良いらしい。
仲が良さそうには見えないけど。

紬「それじゃあ私そろそろ帰るわね~」

梓「あ、はい!気をつけて下さいね」

紬「わかってるわよ~それじゃあまたね」

梓「はい、また……」

私も帰るか……。
久しぶりにお腹もパンパンだし今日はいい夢を見れそうだ。


第六話
おわり



242:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 08:14:34.07 ID:OlK5fEC4O

【第七:過去2】

律と交合った日から一ヶ月が経った。

あの日から私は律とは会っていない。

目が見えないから律の家へ行く事も出来ずに私はただ彼女を待ち続けた。

あの日……律は見合いを断ると言っていた。
もしかして親と何かあったのだろうか?



243:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 08:21:47.95 ID:OlK5fEC4O

思えば律と出会ってから毎日のように彼女と会っていた。

律が私の部屋に来て私を外へ連れ出して……辺りの風景や花の名前を教えてくれる。

そんな日々が一ヶ月も無い。

私には律と一ヶ月会っていないだけで拷問のように感じる。
早く律と会いたい。

また彼女に辺りの風景や花の名前を教えてもらいたい。



244:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 08:27:20.17 ID:OlK5fEC4O

この日も律が私の家へ来る事は無いだろう。

そう思い床に着いて寝ようとした時に律は来た。

一ヶ月振りに聞く彼女の声はとても新鮮だった。

律「澪、またせてごめんな」

澪「り、律か?」

律「あぁ……私だ」

今まで何をしていたんだ。ずっと待っていたんだぞ……とは言えなかった。

彼女が泣き始めたからだ。



245:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 08:34:28.75 ID:OlK5fEC4O

律「澪ぉっ……私無理矢理……無理矢理っ!」

澪「どうしたんだ?」

彼女が泣く声は始めて聞いた。
ヒグラシが鳴く声よりも悲しい声だ。

律「無理矢理、婚約させられたっ……!」

澪「無理矢理?」

律「だから……逃げて来たんだ……なぁどうすりゃいい?」

澪「…………私の家に住めばいい」



247:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 08:38:47.01 ID:OlK5fEC4O

律「ダメだ……私が毎日お前の家に行っている事は親にバレている」

澪「律の親が訪ねて来ても嘘を付けばいいじゃないか!」

律「嘘はいずれバレもんだ……その場凌ぎにしかならないさ」

澪「じゃあ……どうする?」

律「…………」

澪「とにかく今日は此処に泊まれ親が来ても私が嘘を付いて追い払うから」

律「あぁ…………」



249:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 08:45:08.79 ID:OlK5fEC4O

幸いこの日は律の親は来なかった。

後で聞いた話だと律と見合いをした相手は有名な歌舞伎役者で金を腐る程に持っているらしい。

だから、無理矢理。婚約させられたのか……律が不敏で仕方が無かった。

好きでも無い者と契りを交わす。

私の想像以上に彼女は深く傷付いただろう。

今は疲れて寝息をたてている律を手探りで探す。

手が頭に触れ彼女の頭をそっと撫でた。



250:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 08:51:56.96 ID:OlK5fEC4O

私も寝よう……そう思い彼女の横に寝転んだ時にトントンっと家の戸をを叩く音が聞こえた。

体を起こし耳を澄ましてみる。
トントントントン。

澪「来た……か」

律を踏まないように慎重に立ち上がり戸を開けてみる。

聡「姉ちゃん……いますよね?」

幼い少年の声が聞こえた。



251:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 09:01:17.23 ID:OlK5fEC4O

そう言えば律は弟がいると言っていた。
こんな夜中に小さな弟を私の家へ差し向けるとは……何と言う親だ。

澪「……いないよ」

律の弟には悪いが帰って貰おう。

聡「嘘……ですよね?姉ちゃんが行きそうな所って此処以外に無いですもん」

澪「だからいない……悪いが帰ってくれ」



252:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 09:09:18.95 ID:OlK5fEC4O

聡「姉ちゃんと合わせて下さいよ!」

澪「何度も言わせるな律はいない」

聡「…………」

律「聡……か?」

いつの間にか律が私の後ろに立っていた。

今出て来たら連れ戻されるのに……何を考えているんだ。

律「澪、聡は大丈夫だよ。私が逃げられたのは聡のおかげなんだ」

澪「……え?」



254:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 09:19:33.00 ID:OlK5fEC4O

話しを聞いた。
親に見張られ逃げ出せない律を救ったのは弟らしい。

律「こんな夜中に外を出歩いたら危ないだろ!」

聡「姉ちゃんごめん……でも、心配だったから」

律「心配するのは私だって……」

澪「とりあえず。朝まで此処に止まるといいよ」

聡「ありがとうございます……」

律「全く……」

心配して来たのにその言い草は無いだろう。
そう言いたかったがこの状況だ彼女を攻める事は出来ない。



255:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 09:24:55.90 ID:OlK5fEC4O

律「聡、今日もう寝ろ」

聡「うん……あ、母ちゃん達には言わないから」

律「当たり前だ」

聡「それじゃあ……おやすみ」

律「あぁ……おやすみ」

澪「良い弟さんじゃないか」

律「……そうか?」

澪「あぁとても姉思いの弟さんだ」

律「やめろよ……聡が聞いてるだろ……ってもう寝てる」

澪「疲れたんだろう。ゆっくり休ませてやろう」



257:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 09:30:22.07 ID:OlK5fEC4O

律「なぁ……澪?」

澪「どうしたんだ?」

律「私、夢を見たんだ」

澪「寝てる時なら誰だって夢ぐらいみるさ」

律「違う……何か現実的な夢だったんだ。怖くて目が覚めたら聡がいるんだもんびっくりしたよ」

よっぽど怖かったのだろう。
律の額には汗が光っていた。



258:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 09:34:54.74 ID:OlK5fEC4O

澪「どんな夢を見たんだ?」

律「私がお前を殺す夢……恐ろしいかった」

澪「大丈夫ただの夢だ安心しろ」

律「あ、あぁ……」

澪「そろそろ私達も寝るか……」

律「そうだな……おやすみ澪」

澪「おやすみ律」



259:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 09:44:24.26 ID:OlK5fEC4O

ドンドンドンドンドンドンドンドン。
五月蝿い……。

戸が激しく叩き付けられている。

律「来た……」

聡「姉ちゃんどうするの?」

澪「二人共隠れてて私が何とかするから」

律「わ、わかった……聡隠れるぞ」

聡「うん……」

戸を開けた瞬間、誰かが私の肩を力強く掴んだ。



260:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 09:53:04.35 ID:OlK5fEC4O

「律は律は何処なの!?」

肩を揺さぶられながら甲高い女の声が聞こえた。

「ここにいるんだろ!出せ!」

次に野太い男の声……律の両親だ。

澪「律はここにはいません。律に何かあったのですか?」

「ここにいるのは分かってるの!早く律を出して頂戴」

澪「だからいません!帰って下さい」

「早く出せ!」

私の言葉を聞く耳を持っていない……か。
どうやって追い返そう?



262:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 10:05:18.91 ID:OlK5fEC4O

澪「だからいないって言ってますよね!帰って下さいよ」

「もういい!退け!」

体が強く押され尻餅を付く。

「律!此処にいるんだろ?相手は金持ちなんだ!無理矢理にでもお前を結婚させるぞ」

驚いた……この両親。
律を金持ちと結婚させて自分達だけ楽をするつもりか……。

澪「いくら探してもいないって言ってるだろ!早く帰れ!」

「五月蝿いわ!目が見えない癖に生意気な小娘ね」

左頬に鋭い痛みが走った。

澪「うぅっ……」



264:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 10:17:19.46 ID:OlK5fEC4O

律「澪に手はだすなよ!」

澪「り、律……」

今、出て来たら連れ戻されるぞ。

「見付けた……」

「ほら、帰るわよ!」

律「嫌だ!私は……私は絶対帰らない」

「五月蝿いんだよ!だから、コイツを岡場所か吉原に稼ぎを送らせればよかったんだ!」

澪「…………」

腹の底から……黒い感情が巻き上がって来る。



266:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 10:26:23.36 ID:OlK5fEC4O

「男なら俺の仕事の跡を継げるが男じゃない……対して金も稼ぐ事すら出来ない!ただ婚約するだけで金持ちになれるんだ早く来い!」

律「絶対に……嫌だ!」

「いいから早く来なさい!」

私は手探りで探していた。
確かここら辺に私の杖があったはずだ。

澪「……あった」

手に硬い感触。
紛れも無い私の杖だ。



268:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 10:38:38.73 ID:OlK5fEC4O

杖を持ち立ち上がる。

言い争う声で分かる……律の両親が居る場所。

声がする方向に私は杖を振りかざす。

律「み、澪……?」

力強く……杖を振ると硬い物が何かに当たった。

「ぐぅっ……」

見事に当たったようだ……。

澪「律!早く逃げろ!」

律「あ、あぁ……!お前も一緒に来い!」

律は私の手を取り走り出した。
そして、私達は疲れなど忘れてひたすら走り続けた。



269:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 10:46:31.39 ID:OlK5fEC4O

律「はぁっはぁっはぁっはぁっ」

澪「はぁっはぁっはぁっはぁっ」

律「あは……あははははこんなに走ったのは久しぶりだな澪!」

澪「はぁっはぁっ……そうだな」

律「お前の三味線が取られた時もこんなにいっぱい走ったよな」

澪「そんな事もあったな……」

律「あぁ、あの時の澪の顔と来たらもう傑作だったよ!」



270:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 10:57:26.25 ID:OlK5fEC4O

澪「………………」

律「まるでさ!猿のような顔をしてさ私の商売道具がー!商売道具がーってさ叫んでてさ!」

澪「………………」

律「三味線を澪から奪った男をさ……二人で走って追い掛けて……楽しかった」

澪「………………」

律「あの時が1番楽しかった……もう、あの頃には戻れないのかな?」

澪「………………」

律「何か言ってくれよ……なぁ澪!」



272:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 11:08:40.38 ID:OlK5fEC4O

澪「分からない……ごめん分からないよ律」

律「……だよな。私はこれからどうしよう」

澪「私の家で一緒に住もう!」

律「ダメだ……また私の親が来る。何よりお前に迷惑が掛かるし……」

澪「……じゃあ二人で何処か遠くに行こう」

律「もうお前に迷惑は掛けたくないんだ……澪」

澪「掛けていい!沢山掛けていいから……」

律「…………結構ツライんだよ」

澪「ツライ……?」



273:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 11:16:51.22 ID:OlK5fEC4O

律「好きな奴に迷惑を掛けるのってツライんだ」

澪「律…………」

律「なぁ澪?私の最後の頼みを聞いてくれるか?」

澪「あぁ……何でも聞くよ」

律「……一緒に心中しよう」


第七話
おわり



276:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 11:49:44.70 ID:OlK5fEC4O

【第八話:過去3】

私は小さい頃から親に虐待をされていた。

茶をこぼしたら殴られ夜遅くまで起きていたら全裸で家の外に出されたりした。

弟の方は私と比べてみると親の対応が違くもの凄く可愛いがられていた。

憎くは無かった。
ただ、羨ましかった。

私には見せた事は無い母親笑顔を聡は毎日のように見ていたんだから。



278:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 11:54:23.19 ID:OlK5fEC4O

私が十八才を過ぎた頃……街を歩いていると三味線の音色が聞こえた。

綺麗な音色だ……そう思って三味線の音色の方へ無意識に足が動きだしていた。

三味線を弾いている人は綺麗な人だった。
長い黒髪に細く白い指。

私は三味線の音色と彼女の美しさに目を奪われ、ただ三味線を弾く彼女をジッと見詰めていた。



279:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 11:59:49.61 ID:OlK5fEC4O

彼女は三味線を弾き終わり、しゃがんで地面に何かの絵を書いていた。

いいや、絵を書いているんじゃない。
小銭が入った椀を手探りで探していた。

彼女は目が見えていない。
そうわかった瞬間、私は椀を拾いあげ彼女にソッと手渡した。

ありがとう。
最初に聞いた彼女のこの言葉を今でも鮮明に思い出せる。



280:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 12:08:50.40 ID:OlK5fEC4O

それから、私達は日が落ちるまで話し続けた。

親近感……そんな物を感じたのは私の方では無かったと思う。

この日から私は澪と友人となった。

家に招待され夜が明けるまで狂ったように話続けた。

喜怒哀楽をあまり人に見せない人間なんだろう。
澪はあまり笑わない。

笑う時は愛らしい笑顔を見せるのだけど。



281:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 12:19:23.21 ID:OlK5fEC4O

月日が経つにつれて私達は更に仲が良くなった。

笑顔も当たり前のように私に見せてくれた。

喜怒哀楽の感情も全て私に見せてくれた。

喜んだ時は子供のようにあどけなく怒った時は凄く怖い。

悲しんでいる時は私まで悲しくなり楽しんでいる時は私まで楽しい気分になる。

澪は私の光だ。



282:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 12:30:54.72 ID:OlK5fEC4O

澪「……心中か」

長い沈黙を破り彼女はポツリと呟いた。

家族からも見捨てられた……だけど私は一人では生きてはいけない。

このまま澪と暮らすのは悪くは無いが彼女にまた迷惑は掛けたく無い。

いや、一緒に心中死をする事も彼女にとっては大きな迷惑だ。

本当に我が儘な頼みだ。
私は何て馬鹿なんだろう……さっきの話は無しにしよう……そう言おうとした瞬間、澪がまた沈黙を破った。

澪「心中者は死後の世で結ばれると言われている」



284:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 12:37:48.77 ID:OlK5fEC4O

律「……え?」

澪「死後……来世に至ってまで変わらぬ己変わらぬ愛を誓う」

律「なぁ澪?……さっきの話しは……」

澪「お前と心中するのも……悪くは無いかもな」

律「…………澪」

澪「お前と心中し……死後の世界でも私達は結ばれる。来世でも結ばれる……何故、心中死は大罪扱いされるんだろうな律」

律「…………」



286:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 12:49:34.19 ID:OlK5fEC4O

澪「私は律となら心中をしても良いよ」

律「死ぬのが怖くないのか?」

澪「怖いよ。だけど、お前のこれから先の人生を考えるともっと怖い」

律「……………」

澪「心中をしよう律……死んだ後も極楽浄土で同じ蓮華の上で生まれよう」

律「本当に……いいのか?」

澪「あぁ、来世ではお前の顔が見られるかも知れないしな」



287:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 13:02:14.41 ID:OlK5fEC4O

私達は二人で川へと向かった。

近くに止めてあった船から縄を調達しお互いの体に巻き付けた。

律「……本当にいいのか?」

澪「あぁ……」

澪の生唾を飲み込む音が聞こえた。

律「やっぱり私……親の元に帰り婚約するよ」

澪「それだけは駄目だ!……駄目だ。嫌なんだ律が他の人の物になるのは……お前が悲しい思いをするのも嫌なんだ」



288:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 13:11:08.79 ID:OlK5fEC4O

律「…………もし、生きてたらどうする?」

澪「その事は考えないようにしよう……良い事だけを考えながら死のう」

律「……そうだな」

澪「じゃあ……行こうか……」

律「……うん」

私達は川の中へと歩を進めた。
冷たい水が気持ち良い。



289:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 13:20:17.66 ID:OlK5fEC4O

律「また来世で会えるかな?」

澪「会えるさ必ず……」

律「………………」

川が急に深くなり私達は足を取られ沈んだ。

死ぬと言う恐怖の中、私達はお互いに抱き締め合い接吻を交わした。

二人の体が水の中へ沈んで行く。
段々と意識が薄くなる……。

目をうっすらと開いて澪を見た。
彼女は最初に私に見せたあの笑顔を私に見せてくれた……。

死んだ後も……極楽浄土で……同じ蓮華の上で生まれよう。



291:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 13:28:03.64 ID:OlK5fEC4O

・・・・・・・・

犬……の声が聞こえる。

澪「ん……ふぅ……」

何も見えないは目が見えないから当たり前か……。

そうだ、もし私が死んだのなら律がいるはずだ。
音を頼りに彼女を探してみるが犬の声以外、何も聞こえない。

和「あ、やっと目を覚ましたみたいね」

知らない声が聞こえた。
この声の主は神様なんだろうか?



293:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 13:37:48.60 ID:OlK5fEC4O

澪「アナタは神様ですか?律は何処にいるんですか?」

和「え……違うし知らないわよ。それより大丈夫なの?アナタ川の浅瀬で倒れていたのよ?」

澪「……え?」

和「見付けた時は顔が青白かったの。最初は死んでいると思ったけど……生きててよかったわ」

生きてて……生きててよかった?

澪「ここは極楽浄土では無いんですか?」

和「いいえ。違うわよ」



294:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 13:49:52.69 ID:OlK5fEC4O

澪「嘘だ…私は死んでいるんですよね?」

和「何処からどう見ても生きてるわよ?」

じゃあ私は……私達は。

澪「律は?律は何処にいるんですか!?川で私を見付けたんですよね?女がもう一人いませんでしたか?」

和「いなかったわね……」

私達は……心中を失敗した。

澪「律、律……ううっ……」



297:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 13:58:52.95 ID:OlK5fEC4O

律はあのまま川の底へと沈んだのだろうか?
それとも、流されたのだろうか?

もしかしたら……もしかしたら律は生きているのかも知れない。

唯「ワン!」

さっきよりも近くで犬の声が聞こえた。

憂「あ!お姉ちゃん!」

足に何かが這い身震いをした。

唯「クゥーン……クゥーン……」

多分、犬が私の足を舐めているのだろう。



299:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 14:02:08.52 ID:OlK5fEC4O

憂「ご、ごめんなさい……」

澪「………………」

唯「クゥーン……」

律を……律を探さなきゃ。
立ち上がり歩くが何かにぶつかる。

澪「痛っ……」

憂「だ、大丈夫ですか?」

和「……貴女、もしかして目が見えないの?」



301:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 14:08:54.87 ID:OlK5fEC4O

澪「……はい」

和「やっぱり……最初、私と話す時、人の目を見て話さないから人見知りだと思っていたけど……憂、彼女の体を支えてあげて」

憂「はい!」

憂と呼ばれた女が私の肩を掴んだ。
足元には犬がいるのだろう毛が私の足をくすぐっている。

和「ねぇ?よかったらでいいんだけど何で川で倒れていたのか教えてくれない?」

澪「…………誰にも言わないと約束してくれますか?」

和「勿論、約束するわ」



302:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 14:15:04.64 ID:OlK5fEC4O

澪「心中したんです……最愛の女性と……」

憂「し、心中!?」

澪「お互いの体を縄で縛って……川で心中をしようとしたんですけど……」

和「そう……辛いだろうからそれ以上は話さなくていいわ……見付けたのが私でよかったわね」

澪「……ありがとうございます」

もし見付かったのがこの人では無かったら……今頃、私は酷い仕打ちを受けていただろう。



303:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 14:25:54.15 ID:OlK5fEC4O

澪「律を……律を探さなきゃ」

和「その律と言う人は一緒に心中をした人?」

澪「……はい、今も何処かで私を待っているかも知れません……だから探さないと」

和「でも、貴女以外の人は川にいなかったわ……その律と言う人はもう……」

澪「……川に連れて行って下さい。律はまだ生きています……」

根拠は無かった……。
だけど、律がまだ生きている……そう思わなければ救われ無かった。



306:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 14:38:23.06 ID:OlK5fEC4O

和「わかったわ……じゃあ憂この人を川まで連れて行ってあげて」

憂「あ、はい!分かりました」

澪「……ありがとうございます」

憂「いえ……それじゃあ行きましょっか!お姉ちゃん行くよ」

唯「ワン!」

今、この人は犬に向かってお姉ちゃんと呼んでいたのか?

もし、そうだとしたら……犬をお姉ちゃんと呼んでいる人はこの人だったのか。



308:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 14:47:37.13 ID:OlK5fEC4O

憂「着きましたよ!」

唯「ワン!」

澪「……誰か人はいないですか?」

憂「私達、以外は誰もいませんね」

澪「そうですか……」

その場に座り込む。
涼しい風が心地良い。

澪「今日は私……ここにいます。付き合わせる分けにもいきませんし……帰っていいですよ」

憂「え?で、でも…………」

澪「お願いします……一人になりたいんです」



309:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 14:57:05.72 ID:OlK5fEC4O

憂「分かりました……それじゃあ私達はこれで……行くよお姉ちゃん」

唯「ワン!」

澪「…………わざわざ送って貰いありがとうございます」

憂「いえ……いいんですよ……あの、死んじゃ駄目ですよ!」

澪「はい……律を見付けるまでは死ねません」

憂「……律さん見付かると良いですね!じゃあさようなら」

唯「ワンワーン!」

澪「さようなら……」



310:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 15:09:25.82 ID:OlK5fEC4O

いくら待っても律は私の目の前には現れなかった。

少し肌寒い。
鈴虫の鳴く声がちらほらと聞こえる。

澪「律……まだかな」

寂しさを紛らしたくて一人言を呟いてみた。

誰も返事はしてくれない。
余計に寂しくなるだけだった。

澪「律……何処にいるんだろう?」

ジャリ……背後で足音がした。

澪「まさか……律?」



311:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 15:20:59.09 ID:OlK5fEC4O

紬「ごめんなさい。人違いだわ」

澪「…………」

律じゃ無かった……。

紬「こんな夜に一人でずっと座ってるわね~気になって来ちゃったわぁ~」

澪「ほっといて下さい……」

紬「ほっとけ無いわよ!」

お節介な人だな。
私にあまり関わって欲しくない。

紬「貴女、探し物があるんじゃない?」

澪「……え?」



312:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 15:33:20.00 ID:OlK5fEC4O

紬「何かを無くしたからこんな所でずっと座っているんでしょう?」

澪「…………」

紬「もしよかったら私も貴女が無くした物を探すのを手伝うわ」

澪「簡単に見付かる物じゃないですよ……」

紬「そうなの?それじゃあ一人で探すのは不安よね~どう?私と一緒に貴女が無くした物を探してみない?」

澪「…………」

紬「私は探し屋と言う仕事をやっているの。私にまかせれば貴女の探し物すぐに見付かるわ!」


第八話
おわり



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         コメント一覧 (2)

          • 1.  
          • 2010年10月11日 03:34
          • 1 糞つまんね
          • 2.
          • 2010年10月11日 09:23
          • 元ネタのもこんななのか?
            好みなので読みたくなった
            江戸時代の勉強になるわー俺頭悪いから

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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