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澪「恐怖、ヤッテヤルデス」

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6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 22:21:05.19 ID:zgxjQaqD0


― しんや!


誰もいなくなった桜高。その音楽室。

トンちゃんの水槽の水音だけが響いている。


ドアが開くと、そこを照らし出す懐中電灯の光。警備員だ。

「異常なし」

老いた警備員は部屋を一通り見渡すと、隅の鍵箱を開いてパトロールレコーダーに鍵を挿し込む。

カチリという動作音とパイロットランプを確認し、再び彼は外へ出て行った。


それを見計らったように部屋の片隅から出てくるモノがいた。


一見するとツインテールをした少女の頭の形状を持つ生首である。

しかしその生首はツインテールを使い自立していた。

もみ上げとなる部分も30センチほどの長さを持ち、それは手の役割を果たしているのだろうか、

そして窓枠によじ登ると難なくその「髪腕」で窓を開き、夜の闇へ消えていった。






7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 22:23:43.29 ID:zgxjQaqD0


真っ暗だ…。

…ここはどこだろう?


『よし!ゴキブリ殺せ』

『死ねぇぇええええええ!!!!!ゴキブリィイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

『ゴキブリをやっちまえば解決だろ』『ゴキブリ』

『ごきにゃん死ね』『ごきにゃん』

『あずにゃんぺろぺろ』 『ゴキブリ死ね』

『ツインテールが触覚みたい』『ツインテール片方切ったら死ぬ』

『唯に近づくな』『ごきにゃんうざい』『あずにゃん人気ないな』


真っ暗な世界に突然響いていくる声。男女ともつかない異様な声。

それは全部私を指しているらしかった。







8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 22:26:54.60 ID:zgxjQaqD0


…誰?どうして…?

…私のこと?

左右を見ても闇は広がり、何も見えない…。

声のトーンは強くなり、どんどんその人数も増えてくる。

「や…やめて…」

思わず耳を塞ぐ。

それでもその声は容赦なく飛び込んでくる。

「やめて!」

その途端、無数の声は沈黙した。







9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 22:29:43.07 ID:zgxjQaqD0


恐る恐る私は目を開けると、もう声はしなかった。

まるで朝日が射しこむように世界が白くなっていく。

そして現れた真っ白い世界は清潔そのものを感じさせるようだった。


「ヤッテヤルデス」

変な声が背後からした。


「な、何コイツ…」

驚いて振り返った私の目の前には自分と同じ顔をした生首があった。

生首のくせになんか言ってる、そう思った時、そのまま唐突に世界は停電したかのように真っ暗になった。







11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 22:40:14.24 ID:zgxjQaqD0


「あっ…夢か…」


次に梓の視界が開けた時には見飽きた自室の天井があった。

「…ひどい夢」

梓は小さな溜息をつくともう一度眠りに落ちた。


夜明けはもう近く、透き通った秋の空はうっすらと青みを帯び始めていた。






12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 22:41:56.17 ID:zgxjQaqD0


― あさ!

「ふぅ…」

和はいつものように見慣れた通学路を歩いていた。

たった数分早かっただけなのに通学路を歩く人はまばらだ。

ふと脇のブロック塀を見ると黒い生き物が歩いている。

それを視界の隅で捉えつつ今日の授業についてを考えようとした時だった。

その黒い生き物は振り向いた。

和が猫かカラス程度だと考えていたそれは能面のような顔をした梓だった。

違う、梓ちゃんじゃない。生首だ。

和がワンテンポ遅くその事実に気づいた時、既にそれは家の影に消えていた。






13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 22:43:08.50 ID:zgxjQaqD0


― がっこう!


二時間目の休み時間。あまりに不気味な光景を目にして以来貧血のごとく気分が悪くなった和は机に俯せていた。

唯「あれ?和ちゃん具合悪いの?」

和「え…?そう?」

唯の心配そうな問いかけに和は体を起こして外していたメガネを掛けながら答える。


梓「唯先輩!」

その時だった。梓が教室を覗き込んだ。


和「ひっ!」

和は思わず悲鳴を上げて仰け反る。






14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 22:44:11.67 ID:zgxjQaqD0


梓「…和先輩?」

唯「和ちゃんどうしたの?」

和「な…なんでもない!なんでもないから!」

和は唯を振りほどくようにしてそっぽを向いた。

梓「唯先輩。さっき私に携帯渡したまま忘れてたんですか?」

梓はそれを気にしつつ唯に携帯を手渡す。

唯「あっ~忘れてたよ!あずにゃんありがとう!」

梓は思いもしない和の拒絶が少し心に引っかかりながら自分の教室へ向かって行った。






15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 22:47:13.03 ID:zgxjQaqD0


― ほうかご!


澪「う…」

澪は部室のドアノブを回そうとした瞬間、不吉な予感に襲われ手を離した。

これを開けるとなにか良くないことが起きる。そんな感じだ。

律「あれ?澪?何してんだ?」

澪がドアの前で逡巡していると、後ろから律がお構いなしにいきなりドアを開けた。

澪「っ!」

澪は思わず律の後ろに隠れる。

律「なんだよー?部室の中になんかいるのか?」

律は部室に躊躇いなく入った。






16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 22:48:55.63 ID:zgxjQaqD0


澪も続いて恐る恐る足を踏み込む。

光が差し込む部室の中は何の異常もなく、いつもの状態だった。

トンちゃんは水槽でふわふわと泳ぎ回っている。

澪「は…は…」

拍子抜けしたように澪は近くにあった椅子に座り込んだ。


すぐにムギと梓が現れる。

澪「…あぁ、ムギ…梓」

梓「あれ?澪先輩。顔色悪いですよ?大丈夫ですか?」

紬「さっき、和ちゃんもなんか具合悪そうだったわ―」






17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 22:54:51.16 ID:zgxjQaqD0


携帯と机が烏龍茶浸しになったのでしばらくお待ち下さい







18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 22:57:02.15 ID:QF5S63NoP


>>17
何したんだよ







19:話し終わった携帯をそのままコップに突っ込んでコップもろとも転覆せしめて自滅したバカがお送りします:2010/09/13(月) 23:02:38.39 ID:zgxjQaqD0


ムギが最後まで言い終わらない内に部室のドアが勢い良く開く。

そこに立っているのは純だった。

梓「あれ?純?何―」

梓が怪訝そうに近づこうとすると純はそのままガクガクとまるでマリオネットのように梓の方へ歩みだした。

そして突然ガクッと項垂れた純の後頭部には更に頭がくっついていた。

梓「え?」

澪「ひいい!」

澪は転びつ律の方に逃げる。

律「ん?」

あさっての方を向いて全く気づいていなかった律がゆっくりと振り返る。






20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 23:04:18.30 ID:zgxjQaqD0


律「ぎゃあああああああああああ」

頭は突然立ち上がり、折りたたまれていた真っ黒い脚が伸びる。

そのまま純の肩に登ると、純を打ち捨てて澪に飛びかかる。

純はそのまま頭から机に倒れこんだ。

紬「!」

澪「ひいっ」

澪が飛びかかるのをなんとか避けると、頭はそのまま床に突っ込む。

それは地面に激突すると痛みのあまりかのたうちまわり始める。

律「澪!」

律は咄嗟にスティックを地を這うそれに突き立てた。






21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 23:05:02.31 ID:zgxjQaqD0


律の手には発泡スチロールかウレタンを突き抜いたような不気味な感触が走り、

やがて芯となる何かに当たったのかスティックの沈み込みが止まる。

スティックが刺さったままもがくようにのたうちまわる異生物。

黒い足のようなものはバタバタと床に叩きつけられる。

澪「り、りつううう!」

澪は律にしがみつく。

もう生涯、見ることのないような不気味な光景が広がる。

梓「…」

紬「みんなどけて!」

ムギの怒鳴り声がその沈黙を破った。

ムギは細かく痙攣する異生物に消火器を叩きつけた。

ペキョ、といった奇妙な音を立て異生物はABC消火器に潰れた。






23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 23:09:44.82 ID:zgxjQaqD0


紬「な、なんなの…これ…」

澪「…」

律「と、とりあえずさわちゃん呼んでこよう…」

梓「ちょっと待ってください純が!」

梓は慌てて机に突っ込んだまま動かない純に駆け寄った。

梓「純!起きて!純!起きろ!」

半ばパニックになってしまったのか梓はめちゃめちゃに純を揺さぶる。

律「お、おい梓!やめろ!危ない!」

紬「ダメ!そんな乱暴なことしちゃ!」

澪「せ、先生呼んでくる!」

律と紬は梓を押さえ込み、澪は急を知らせに職員室へ走った。






25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 23:11:25.85 ID:zgxjQaqD0


間もなく数人の先生とともにさわちゃんが駆け込んでくる。

さわ子「みんなケガはないの!?」

澪「全員無事…いや、あっ、あれ純ちゃんが!」

さわ子「!?」

さわちゃんは真っ先に慌てて倒れたままになっている純を抱き起こした。

さわ子「…い、息は!?」

さわ子「生きてる…」

さわちゃんは安心したようにため息をついた。

純「あ…」

さわ子「あっ!す、鈴木さん!大丈夫?」






26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 23:16:31.22 ID:zgxjQaqD0


純はしばらく呆然とさわ子の顔を見つめた後、その胸に顔を埋めた。

「うわああああ!!!!先生ぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

純の泣き声が響き渡る。それも当然であろう。

訳のわからない生物にしがみつかれたその心情は察して余る。


律「あ、あの…ところで…それが…」

律が転がった異生物を指さした。

さわ子も純を抱いたままその指の先を見る

さわ子「な…なにこれ」

先生1「きゅ、救急車呼んできます!」

ここであっけに取られていた先生のひとりが駆け出していった。

「な、なんですかねこれ…」

梓が傍にあったマイクスタンドを掴むと、その脚でまだ痙攣している異生物をつついた。

「あ、おい。やめろって…」






27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 23:24:24.24 ID:zgxjQaqD0


律が制止する以前の問題であった。

異生物は女子高生ごときに刺されたヒッコリー材のドラムスティックの貫通と、

総重量たかだか4.9キロのABC粉末消火器10型の直撃を問題になどハナからしてはいなかったのだ。

消火器を払い除け、そのツインテールもとい、髪腕とでも呼ぶべきであろう毛髪製の腕でスティックを引っこ抜いた。


澪「ひ!」

紬「あ…梓ちゃん…」

梓「えっ!?」

律「嘘だろ…」

さわ子「…」

一同がその不気味な景色と、その異生物の顔とでも言うべき部位の造形に凍りつく中、異生物は外に軽やかに飛び出していった。






29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 23:28:27.87 ID:zgxjQaqD0


― よんふんにじゅうびょうご!


3年2組の教室では唯を含め掃除当番が教室掃除の真っ最中だった。

唯「あ、ゴミ捨ててくるね」

唯がゴミ箱を抱えて廊下へ出て行く。

そして間もなく響き渡るごみ箱の転がる音。

(唯、コケた?)

唯の存在が最近気になって仕方ない姫子は微笑ましいなぁなどと思いつつ、

その様子を見ようと自在ほうきを片手に廊下を覗き込んだ。


しかし、姫子の目に入ったのはのたうちまわる唯と髪の長い生首だった

「え!ちょっ、ウソっ!?」

姫子はほうきを放り出して駆け寄ると生首を引きはがしに掛かる。

しかし恐るべき馬鹿力で唯にしがみつく生首はびくともしない上に唯の抵抗が弱まってくる。






30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 23:32:15.64 ID:zgxjQaqD0


「誰か!」

姫子の声でクラスメートが数人飛び出してくるが、あまりの光景に硬直する。

「あ゛っ…かはっ…!」

唯の声が苦しげになる。生首の髪の毛は唯の首を絞めるかのごとくその首にまとわりついていた。


「っ!」

姫子は転がっていた自在ほうきを逆さまに掴むと、思い切り柄をフルスイングで生首に打ち込んだ。


姫子は柄が折れる音と不気味な感触を感じた。

生首は吹き飛び、そのまま窓に激突して学校用ガラスを粉砕し外に落下していった。

「あ゛……ひ…ひめごぢゃん…あ゛りがど…」

唯が頭を起こして弱々しく姫子に礼を述べた。






34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 23:37:18.49 ID:zgxjQaqD0


唯が頭を起こして弱々しく姫子に礼を述べる。

その顔は赤を通り越し、紫色すら帯びている。唇も切ったのか血が付いている。

姫子は唯を抱き抱えて呆然と見ているだけのクラスメートに叫んだ。

「早く先生を!」

「な、なにあれ!?」

「おい!どうした!」

「センセイ!」

「ぎゃー今のって何あれ!」

この騒ぎを発端に廊下は大混乱に陥り、ほとんどの生徒が理由もわからないまま、

地震を察知したネズミの如く帰り支度もそこそこに学校から逃げ出し始めていた。






35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 23:47:35.37 ID:zgxjQaqD0


― ごふんじゅうろくびょうご!

堀込「こ、この野郎!よくもうちの生徒を」

刺股片手に駆けつけた堀込先生以下男性教諭陣が窓の下で異生物を敵討ちと言わんばかりに

凶器片手に袋叩きにしている頃、恐怖の現場となった廊下ではようやく唯が担架で保健室へ連れて行かれるところだった。

さわ子「立花さん!」

遅れて知らせを受けたさわ子がその現場に到着すると、ガラスが割れ、ゴミ箱とその中身が散乱した

異様な光景が広がっていた。

「唯が…」

その中心で姫子が放心したように立ち尽くしながら、さわ子の顔を見て呟いた。

「ようし!警察が来るまで覆っておきましょう」

その声を聞き、すっかり風通しの良くなった窓に駆け寄ったさわ子は、

窓の下で堀込先生のサスマタに押さえこまれ、今まさに重し付きドラム缶で覆われるモノを見た。






37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 00:06:22.96 ID:6KPSG3Jc0


―ほけんしつ!


唯が保健室に運び込まれると、既に軽音部の4人が揃っていた。

律「唯!」

梓「唯先輩…」

澪「大丈夫なのか?!」

紬「ゆ…唯ちゃん…」

唯がベッドに座ると、背後のカーテンが開けて純が顔を出した。

純「ゆ…唯先輩も襲われたんですか?」

唯「うん。そうなんだ…ゴミ捨てに行ったらガバーッシャーッだよ!」

唯は心配掛けまいと普段の調子を取り繕おうと精一杯振舞っていた。

しかし、振り上げた腕は弱々しく下がり、唯の目からは涙がとめどなく流れ落ちた。






38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 00:14:10.18 ID:6KPSG3Jc0


「こ…怖かったよぉ…」

唯の髪はめちゃめちゃに乱れ、ブラウスには切った時の血が生々しく残っている。

そしてその白い頚にははっきりと異様な痣が残されていた。

それは確実に唯が生命の危険にさらされた事の紛れもない証拠でもあった。

唯はそのまま泣きじゃくり、紬は歩み出ると唯を優しく抱きしめた。

「唯ちゃん…怖かったよね…もう大丈夫…」

唯の涙は紬のブラウスとブレザーを黒く濡らしていく。

紬はその体温を感じながら、その恐怖を再認識はじめていた。

そこへドアが開き、さわ子が駆けこんでくる。

「唯ちゃん!?」

「さ、さわちゃああああああああああん!!!!!」






39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 00:20:56.84 ID:6KPSG3Jc0


「さ、さわちゃああああああああああん!!!!!」

唯は更に声を上げて泣いた。その声はその場にいる全員の胸を抉るように響いた。

「良かった…唯ちゃん…」

しばらく紬に変わって唯を抱きしめていたさわ子は唯を優しく離すと再び立ち上がった。

「もう大丈夫だから…安心してね…」

さわ子はそう言いながら、内心恐怖心を全く拭い去れていなかった。

警察官要請は既に他の教師たちが済ませたようだが、救急車も警察もまだ到着してはいない。

ましてあの生物を封じ込めているのはたかだがドラム缶である。

もしも、もしもということばかりがさわ子の頭の中を走っていた。






40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 00:27:24.44 ID:6KPSG3Jc0


ごめん今の俺じゃキチガイグロ路線しか書けんかった
いっそ落としてくださいさわちゃんは俺の嫁ごめんなさい寝るごめんさない






41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 00:30:13.01 ID:hQWrawwQ0


キチガイグロ路線いいじゃない






42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 00:30:39.59 ID:QeZtCGCR0


ちょwwおやすみー乙!






43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 00:39:12.99 ID:occ8z9ZV0


残念だな






44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 01:44:14.49 ID:hQWrawwQ0


とりあえず保守。






50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 07:50:11.58 ID:6KPSG3Jc0


ごめん、空ける…
さすがにその間に書きためてくるわ






51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 08:54:06.21 ID:93YWu6bT0


まってる






72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 22:20:47.95 ID:6KPSG3Jc0


てs






73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 22:22:57.74 ID:3l7Qv9hj0


キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!






74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 22:24:46.71 ID:hQWrawwQ0


ktkr。






75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 22:26:51.04 ID:6KPSG3Jc0


>残業だったごめん重いごめん許して勘弁して


さわ子は警察官要請の有無を確認していたわけではなかった。

事態が事態なだけに勝手に警察官要請はなされただろうという思い込みはさわ子以外の教員にも広がっており、

混乱時にありがちな思い込みが生じていた。

実際には発生後唯一電話機に触っていた養護教諭は救急車要請しか行なっておらず、その電話している光景を見て

各々は勝手に警察にも電話しただろうと思っていただけに過ぎなかった。

その養護教諭は防災訓練では教頭が通報を行なっていたことを踏まえて、気を利かせたつもりで警察には電話していなかった。

誰かが警察を呼べと叫び、そのあと何人かがその場から姿を消していれば警察を呼びに行ったと思い込んでも確かに仕方はない。

そして近隣の消防署と消防分署からは養護教諭による「動物に襲われ生徒二人がケガ」という情報で救急車が出動した。






76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 22:27:36.99 ID:6KPSG3Jc0


ガツン、という音が保健室に響き渡ったのはそれから数秒後の事であった。

保健室にいた全員が何事かとその音の方向を見ると、音の出所は窓だった。

ガラス窓には梓の顔、もといさっきの頭が張り付き、執拗にその額と思われる部分をガラスに打ち付けていた。

唯「ひいいっ!?」

唯の悲鳴で我に返ったさわ子は片手で思わず乱暴に唯を引っ張り寄せた。

律「さわちゃん!」

純「いやあああ」

純が裸足で真っ先に保健室を飛び出していった。

梓「あっ、純!」

澪「せ、先生逃げよう!」

澪の声でようやく全員は保健室を飛び出した。






77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 22:28:59.87 ID:6KPSG3Jc0


幸いにも保健室のサッシは断熱型に交換されており、厚さ5ミリのフロート強化ガラスが入っていた。

熱処理によって強度を上げてあるそれは、バレーボールや硬球の直撃程度ではまず破損しない。

それは頭が今まさにやっている額による攻撃も同様であった。

頭はガラスの向こうの5人が居なくなるのを見てから、窓から窓へと飛び移り再び移動を開始した。


どこへ逃げればいいのかわからない。

飛び出した瞬間さわ子はそう思った。それでも逃げるしかない。

この子達の命が懸かっているという一心で必死に考える。

外線電話に掛けられるのは職員室、防犯用の刺股も職員室。ドアのガラスと鍵が交換されているのも職員室。

「職員室よ!」

ヒートアップする思考の中、結論をたたき出したさわ子は即座に全員を引き連れ職員室へ走った。






79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 22:32:59.71 ID:6KPSG3Jc0


年代物の木製ドアを壊れんばかりに蹴り開け、全員が職員室に入ったことを確認するとさわ子はドアを閉めて鍵を掛けた。

カチリという動作音で思わずため息が漏れる。

「せ、先生…」

だが、恐怖に怯えた紬の声でさわ子は再び地獄に突き落とされた。

紬が指差す先には全開になっている窓が目に入った。

開け放たれた大型窓は涼し気な秋の風を職員室に招き入れ、汗ばんださわ子以下5名を冷やした。

「…あ、開いてる」

さわ子は愕然とした面持ちで呟いた。そして窓際のデスクには蠢く物体がいた。

頭だ、最悪だ。さわ子がそう思ったときには頭が恐ろしい跳躍能力でこちらへジャンプしていた。






81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 22:43:30.57 ID:6KPSG3Jc0


「逃げて!」

さわ子が叫ばずとも全員が一斉に職員室内に散った。

頭は机を足場のように使い、運悪く手近で標的となった律を追いかけ回す。

「今度は私かよっ!」

律が叫びながら職員室内を逃げまわる。

素早い律と頭の追跡劇でゴミ箱は吹っ飛び、電話機は落ち、書類が散らばっていく。

梓はその隙にドアのカギを開けるとそのまま開け放った。

「律先輩!ドアへ!早く!」

律が最後に脱出したところで梓がドアを閉めたものの、

頭はあろうことかドアのステンド張りのガラスをぶち割って外に転がりでてきた。

頭上を飛んだ頭と目が合った梓は腰が抜けてそのままへたり込む。






82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 22:50:47.12 ID:6KPSG3Jc0


「ぎゃあああああああ」

悲鳴を上げた梓を気にしたさわ子はそのまま段差に引っかかって転んだ。

膝を打ったさわ子が立ち上がりながら、後ろを振り向くと頭はもう1メートルほどの距離まで迫っていた。

「ひっ」

小さく悲鳴を上げたさわ子の脳裏には走馬灯のように記憶が蘇る。

だが最後には私が死んだらこの子達はどうなるんだろう、そう考えて反撃を選ぼうとしたさわ子は教師の鑑だった。

ところが頭はさわ子を無視して飛び越し律達を追った。

「あっ、く…っちょっと!」さわ子は立ち上がると靴を脱ぎ捨てその後を追った。






83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 22:51:21.17 ID:6KPSG3Jc0


律を先頭に生徒玄関から飛び出そうとしたところに、刺股を片手に堀込先生が現れた。

「先生!あれ!」

「頭が!」

「襲ってきます!」

律、唯、紬の順番で堀込先生とすれ違う。

その堀込先生はというと何が何だか理解できず、そのまま廊下を覗き込んだ。

その目に映ったのは凄まじい勢いで黒い脚のような何かを動かしこっちに突っ込んでくる頭だった。

「お!?うわ!?頭!」






85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 23:03:07.41 ID:6KPSG3Jc0


さっきの袋叩きが生々しいタイミングでその主導者と遭遇した頭はあの恐ろしい痛みを想起させられたのか急停止する。

堀込先生がそのまま飛びかかったものの、頭はそのまま今度は猛烈な勢いで後退し、壁とスチーム配管を足場に

標的を梓に切り替え、さわ子の頭上を過ごして取り残されていた梓に頭上から襲いかかった。

そもそも刺股というのは対人用の武器であり、使用側が人数的にも優位かつ、複数使用する場合にその効力を最大発揮するものである。

さっきの袋叩きにおいて使用するならば問題はなかったであろうが、飛来している標的を叩き落すには些か不適当な武器である上、

いい加減いい歳行ってしまった堀込先生に機敏な動きを要求することも相俟って酷な話でもあった。

生徒を守ろうと刺股を振った堀込先生は見事に突っ転び、刺股は廊下を滑っていく。






87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 23:04:46.75 ID:6KPSG3Jc0


片や頭は梓に馬乗りになる形になっており、すでに急迫した情勢であった。

足元に滑った刺股を拾い上げさわ子はそのまま駆け出し、梓に張り付く頭に刺股を振り上げた。

ちなみに刺股の使用方法は殴打武器ではなく動きを封じ込めるためのものである。

「おりゃあああ」

さわ子の雄叫びと共に天誅のごとく下った刺股攻撃はクリティカルヒットし、頭は電撃が走ったかのように梓から飛び退き、

その脚でヒョコヒョコとこちらを向いたまま更に後ずさった。

梓はその間に立ち上がりさわ子に駆け寄る。

更にいつの間にか戻ってきた紬がトドメを刺すかのようにABC粉末消火器を噴射した。

ブシュウという音とともに、数秒で凄まじい白い煙が立ち込め始める。

思わぬ反撃にヤッテヤルデスはそのまま5メートル程飛び退いていた。






88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 23:06:30.34 ID:6KPSG3Jc0


それを見逃さなかったさわ子は壁に設置してあった防火シャッターの手動閉鎖装置の赤いプラ板を押し込む。

防火シャッターは自重で金属音を立てながらギシギシと落下し始める。

頭は慌ててシャッターの隙間を潜り抜けようとしたものの、間一髪で防火シャッターはさわ子とヤッテヤルデスを隔てた。

廊下にはシャッターに頭がその身をぶつける音が何度も響き渡る。


「みんなは…?」

とりあえずの安全を確認したさわ子が振り返ると、そこにはけいおん部全員が揃っていた。

「先生…」

紬と梓はうっすらと涙を浮かべてさわ子を見ている。

「あっ、大丈夫ですか」

「山中!大丈夫か!?」

その後ろでは律に助け起こされて、堀込先生がようやく立ち上がった。






91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 23:15:27.10 ID:6KPSG3Jc0


「早く警察を!」

さわ子は誰にともなく怒鳴った。

その直後どこで何をしていたのかようやく教員たちが玄関や廊下の奥から集まって来る。

さわ子はそのまま糸が切れたように壁にもたれかかり、紬と律がそれを支えた。

「おい!向こう側から来るかも知れんぞ!」

「火災報知器鳴らして防火扉閉めろ!」

ざわめきを打ち破った誰かの怒鳴り声の後、頭がシャッターに体当りする音に加え、学校中にけたたましいベルの音が響き渡った。

『―校舎内に残っている生徒は西側階段及び、西側非常階段を使用して至急校舎外へ避難してください』

手遅れ感の拭えない避難指示の放送はようやく全校に響き渡り、やがてこの大騒ぎのさなか一体どこで何をしていたのか残っていた生徒達が

ぞろぞろと玄関前に集結し始めた。






92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 23:22:05.82 ID:6KPSG3Jc0


その騒ぎのさなか、ようやくサイレンを響かせ玄関前も構わず救急車が滑りこむ。

生徒を掻き分け駆けこんできた救急隊員は「けが人はどこですか」とそのへんの教員に声をかけ、

その教員は養護教諭を探し出し、養護教諭はさわ子にくっついていた唯を見つけるてさわ子の所にいた唯を救急隊員の元へ連れて行った。

続いてどこから来たのか徒歩で警察官も現れる。

「何があったんですか?」

どういう通報を受けたのか、はたまた自発的な登場なのかはわからないが、

その警察官はのんきな調子で靴も履かず、埃まみれになったさわ子に声を掛けた。






93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 23:27:57.82 ID:6KPSG3Jc0


生徒を体を張って守ったさわ子に対しての無礼な調子を見兼ねたのか堀込先生がそこに割って入って警察官を引き離す。

さっきの警察官が携行する無線機に何事か吹き込んでいる横で、さわ子は改めて無事だったけいおん部の面々を見て生還を噛み締めた。

「先生…カッコよかったですよ」

「さわちゃんすげぇよ!かっこよかった!」

「先生…」

紬の褒め言葉を皮切りに、律と澪が続く。

生徒達を守りぬいた達成感と久々のちょっとしたヒーロー扱いっぷりにさわ子もまんざらではなく、思わずニヤけていた。

「…あれ?」

そんな中梓は重大な何かが見落とされている気がして辺りを見回した。

唯がハッチを開けたままの救急車の中で手当を受けているのが目に入る。

その横にはもう一台救急車が並んで停車し、LED赤色警告灯の赤い光を辺りにまき散らしている。






94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 23:32:22.71 ID:6KPSG3Jc0


そこへひとりの救急隊員が駆け寄ってきてさわ子に尋ねる。

「あの、もう一人の生徒さんはどちらに」

一瞬で場の空気はどん底へ落ち込んだ。純が戻ってはいなかった。

事態に配慮が足りなかったとさわ子に責任を問うことは簡単ではあろうが、

この状況で真っ先に飛び出してしまった純をさわ子がどうにか出来るかといえば全くもって無茶であり、

そもそも最も生徒や教員が散り散りになる時間帯である放課後という襲撃タイミングも事態に拍車をかけていた。


最初に居残っていた生徒達を手始めに片っ端から安否確認がスタートしたものの、

同じクラスでも誰も携帯の番号を知らないという生徒や

携帯を所持していない上に自宅にも連絡がつかないという生徒が現れ始める。






96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 23:35:16.81 ID:6KPSG3Jc0


教員達総出の安否確認の一方、この混乱の原因である「頭」の捜索が警察官により開始された。

それは状況がわからないまま捜索範囲を広げることを嫌った警察の判断で敷地内のみに留められたが、

純が講堂へ繋がる渡り廊下の出入口前で転倒し気を失っているのが発見された。

これで最低頭を3度は打ったということで純は即座に市立病院へと救急車で搬送された。

3時間掛けて校舎内を捜索したものの「頭」が発見されなかったために、警察はさわ子以下目撃者全員の証言を一蹴し

イノシシやニホンザルの類による犯行だと片付けて引き上げた。

なお、全員の安否の確認が取れたのは深夜2時であったが、幸いにもこの日、犠牲者はなかったことも判明した。






97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 23:43:50.79 ID:6KPSG3Jc0


― ちょっともどって ごご7じ40ぷん!


「なーにが白昼夢よ!バカじゃないの!?人をバカにしてんじゃないわよ!」

ハンドルを握るさわ子の機嫌は非常に悪かった。

「挙げ句の果てにはヤク中扱い?ヤク中で教師やれると思ってんの!?じゃあ尿検査でもなんでもやればいいじゃない!」

「こちとら可愛い教え子が殺されかけてんのよ!ナメてんのか!」

時々ハンドルをエアバッグが作動しかねないような勢いで思い切り殴りつける。

「さ、さわちゃん…」

律が弱々しく声をかける。

「ねぇ!?どう見ても見たわよね!アレ明らかに生首が暴れてたじゃない!?」

さわ子は自分自身の発言でより一層頭に血が登ったのかアクセルを思い切り踏み込む。






98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 23:45:01.80 ID:6KPSG3Jc0


「は、はい…」

660ccのエンジンが甲高く唸る中澪が更に弱々しく返事をした。

さわ子や堀込先生など、「頭」と接触した教員達は全員所轄警察署で事情聴取を受けた。

しかしその処遇は非常に悪く、教員達は全員漏れなく屈辱にまみれざるを得なかった。


さわ子は堀込先生と並んで最も最悪な部類だったらしく、どういう訳か迎えが来た紬を除いて

不幸にもさわ子のクルマに乗ることになった律、澪、梓の3人はなんとか宥めようとしたものの、さわ子の機嫌は直らなかった。






99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 23:50:15.80 ID:6KPSG3Jc0


― みおのいえ!


澪がさわ子の車で帰宅して一息ついた時には午後8時半を回っていた。

数時間前に経験した悪夢はベットリと澪の脳裏に張り付き、瞼を閉じるたびに

あの能面のような梓の顔をした頭の姿が蘇った。

悪夢を洗い流したい一心でシャワーを浴び、リビングに戻ってきたところでテーブルに置いてあった携帯が鳴った。

「律?」

何だろうという思いを抱きつつ、澪は携帯を取った。

「もしもし?」

『あ…澪か!?ちょ、ちょっと今から行くから!』

律の声は上ずり、どちらかと言えば何か良くないことがあったような調子だった。

「え?ちょっと!おい!」

そして澪の声に耳を貸さず律は一方的に電話を切った。






100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/14(火) 23:55:42.04 ID:6KPSG3Jc0


澪は慌てて部屋着に着替え、ドライヤーで髪を乾かした。

電話から10分、呼び鈴が鳴った。

息を切らせ玄関に立っていた律の小脇には丸めた経年を感じる画用紙があり、

クレヨンの粉が点々とつき、たいなかりつと名前が平仮名で書いてあるのが見えた。

「急にどうしたんだよ」

律は澪の問いかけに構わず玄関マットにその画用紙を広げた。

澪はその様子を黙ってそのまま目で追った。

広がった画用紙には顔に脚が直接生えた人間が描かれていた。

黒いクレヨンで描かれたそれは普段なら幼児の描いたただのクレヨン絵で済まされるところであろう。

だがそれはあまりにも「頭」に似すぎていた。

澪は言葉を失い、思わず律の表情を伺った。






101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 00:01:02.21 ID:6KPSG3Jc0


「な…なぁ…聞いてくれよ澪…」

その沈黙を破った律の声は震えている。

「私じゃないよな…?私のせいじゃないんだよな…?」

震える声で問いかける律の目には涙が浮かんでいた。

「当たり前だろ…」

律の描いた絵はあくまで幼児が描いた絵に過ぎない、いくら似ていると言っても

こんなような絵は幼児には当たり前だしちょっと探せばいくらでも出てくる。

澪はそう言いたかった。しかしその言葉は乾いた喉に張り付くばかりで一向に言語化されなかった。






103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 00:24:42.08 ID:j7w0wo4C0


「わかってる」

長い空白の末、澪はなんとか一言搾り出した。

それでも一見おおよそ噛み合ってないようなその言葉は、律が抱いた恐怖をぬぐい去るには十分なものであった。

澪はその絵を律から取り上げると、再び丸めて小脇に抱えた。

「家まで送る」

澪はそう言ってサンダルを突っ掛け、律の手を取った。






104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 00:25:40.63 ID:j7w0wo4C0


外に出ると夜の空気は澄み切り、虫の声が軽やかに響いていた。

涼しい夜風が吹く中を二人は歩いていく。

どんどん歩いていく澪とそれに黙って付いていく律。

幼い頃律が澪を引っ張っていた道で今、澪が律を引っ張っていた。

やがて川にかかる橋の上に辿りつくと、二人は欄干に並ぶ。

時々通り過ぎた車のヘッドライトが二人を照らしだした。






105:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 00:26:21.68 ID:j7w0wo4C0


路線バスがディーゼルの煙を残して通り過ぎた直後、澪は躊躇いなく画用紙を真っ二つに引き裂いた。

さらにそれを細かくビリビリと破ると、そのまま橋の上からばらまいた。

白い破片は街灯と月明かりに照らされながら静かに桜吹雪のように舞い散り、

やがて流れへと落ちて彼方へと消えていった。

「行こう」

「うん」

澪と律はまた歩き出した。






106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 00:29:04.58 ID:j7w0wo4C0


律の家がそう遠くない角を曲がった時だった。

その住宅地にある何の変哲もない生活道路に静寂は広がっていた。

「あれ?」

最初に異変に気づいたのは律だった。

「静かだ…」

耳を澄ますと人工的な室外機の音や遠くのサイレンや列車の警笛は聞こえてくる。

だがそこに何かが欠けていた。

「虫が鳴いてない…」

欠けたものに気づいた澪が呟いた。






107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 00:29:58.86 ID:j7w0wo4C0


「…歌声?」

さらに律が辺りを見回しながら不安そうに呟いた。

「え?」

その声は最初聞き間違いかと思われるほど小さかったが、二人が耳をそばだてているうちに

緊急車両が近づくかのようにその声ははっきりと聞こえるようになっていた。

「な…なんだ?」

「あ…アイツだ」

律が指さした無落雪屋根の上には満月、そしてあの忌々しい「頭」のシルエットがあった。

「歌ってる…」






108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 00:31:00.73 ID:j7w0wo4C0


その歌声はあの所業に対してに、天使のように美しい声だった。

澪がそのシルエットを呆然と見つめていると雲が隠れ、一瞬真っ暗になる。

すぐに月明かりは戻ってきたものの、その一瞬で頭はそこから消えていた。

そしてより一層澪たちに近くなり、鮮明かつ力強くなる歌声。

「どこだ…どこにいるんだ…」

澪はあたりを見回すが、声の発生源はわからない。

電柱、塀、駐車車両、家の軒下、自動販売機、ありとあらゆる物が敵に感じられてくる。


― 今まさに歌いながら虎視眈々とアイツはこっちを狙っている。


そして歌声はピタリと止んだ。






110:さるった?:2010/09/15(水) 01:03:03.71 ID:j7w0wo4C0


今起きうるケースで一番最悪なのはなんだろう、どういう訳か澪は冷静に考えた。

それは背後を取られること、結論はあっさりと出た。

そして澪は振り返る。

「やっぱり…」

澪は勝ち誇ったように呟いた。

背後のブロック塀の上で頭がこちらを見つめていた。

「逃げよう」

そう言った律の顔は妙に冷静で、澪自身もどこかに冷めたものを感じていた。

それでも澪と律は次の瞬間には全力で走りだしていた。






112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 01:12:02.15 ID:j7w0wo4C0


ようやく律の家が見えてきたとき、澪は意を決して振り返った。

街灯に照らされた道路はいつものままで、虫の声はまた軽やかに響いている。

「り、律!」

澪は律の肩を掴むと、律は後ろにのけ反ってバランスを崩してよろめいた。

「な、なんだよっ!」

律がなかなか恐ろしい形相で振り返った。

「もう…いない…」

澪は息も絶え絶えで律に答えた。






113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 01:19:06.06 ID:j7w0wo4C0


― むぎちゃんのいえ!


「髪行類?」

紬は思わず身を乗り出した。

「敢えて呼称するならばそんな感じではと考えた次第です」

斎藤は遠近両用メガネを外しながら答えた。

「ツインテールと見せかけて脚とは中々不気味な生物ですね。

それを退治なさったお嬢様はお見事です」

「やめて」






115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 01:22:55.36 ID:j7w0wo4C0


紬は不快そうにそれを制した。

「失礼致しました」

「これ、本当に生物なのかしら」

紬は「頭」のスケッチが描かれた便箋をひらひらと振った。

「生物ではないのかも知れませんよ。例えば思念の塊であったり」

「思念の塊?」

紬は眉をひそめる。

「ええ。中野さんそっくりですから、中野さんへの執着心が塊になったとか」







136:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 20:32:31.69 ID:j7w0wo4C0


>>115続き

「執着心?」

「まぁこれは、科学的根拠なんてものも全くないあくまで私の戯言に過ぎません」

斎藤はそう言って立ち上がり、すっかり冷めた紅茶が沈むティーカップを片付け始める。

紬はそれ以上斎藤を追求せず、黙って便箋を見つめていた。







137:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 20:33:31.80 ID:j7w0wo4C0


― たいなかけ!

「頭」はやはり存在していたのだ。

汗だくでリビングのソファーに倒れこんだ澪も律もそれで頭がいっぱいだった。

だがその存在を確認したところでどこに知らせればいいのか全く検討もつかない。

聡は予期しない来客でテスト勉強もそぞろに右往左往し、律の母親は何が何だかわからないという表情を

浮かべながら二人に麦茶とタオルを出して様子を見守っていた。

「なぁ…律…」

「ホントにいたな…」

「ああ…夢じゃなかった…」



20分後、汗だくになった二人はシャワーを浴びて律の部屋でようやく落ち着いた。

「と、取りあえず誰かに知らせよう」

「え、えーとこういう場合はアレだ…ムギだ」

律はそれがどういう根拠かも曖昧なまま、ムギに電話をした。






139:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 20:42:00.48 ID:j7w0wo4C0


『あ、りっちゃん?』

電話に出た瞬間の紬は至って普段の紬だった。

しかし律がさっき降りかかった事態を伝えるうちに紬はそれを聞いて何か考えているのか

「うん」や「そうなの」という相槌ばかりを打ち、どんどん反応が上の空といった調子になっていった。

律の懸命な説明はほとんど空回りとなり、最後には『ちょっと思いついたことがあるの』と言って紬から電話を切ってしまった

「なんか切られた…」

律は携帯を片手に唖然とした表情で澪の方を向いた。

続いて律は唯に知らせようとしたものの、澪はそれを制し梓へ電話することとなった。






141:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 21:00:26.27 ID:j7w0wo4C0


― しんや!

唯の動く気配を感じて憂は目を覚ました。

ベッドの方を振り返ると、唯は体を起こしていた。

「お姉ちゃん?」

憂が立ち上がって横に座ると、唯は憂を見つめた。

「なんか変な夢見ちゃった。誰かがずっと私の事バカにしてくるんだ」

寝ぼけているのだろう、ぼんやりした調子で話している。

「嫌な夢見ちゃったの?大丈夫。誰もお姉ちゃんをバカにしないし、私はお姉ちゃんの味方だよ」

憂は唯の髪を優しく撫でた。

甘いシャンプーの香りと、極めて上質な絹のような艶々としてしなやかな感触が憂の指先に感じられた。

やがて安心したかのように唯はまた布団にゆっくりと身を沈め目を閉じた。

憂は寝息を立て始めたのを見届け、ベッド脇に敷かれた布団へ潜り込んだ。


月明かりは窓から射し込み、そんな二人を優しく照らしていた。






143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 21:01:16.69 ID:j7w0wo4C0





暗い…。

気づくとまた私は真っ暗な世界にいた。

今日は声はしないようだ。


やがて目の前がスポットライトが当たったように丸く白色に切り取られた。

瞬きしてから改めて見ると今度は「頭」がそこにいた。

「ヤッテヤルデスハ、ヤッテヤルデス」

頭は能面のような口を動かしてそう言った。

コイツをどこで見かけたのだろう、私は頭を見ながら考えた。






145:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 21:01:55.85 ID:j7w0wo4C0


そうだ、学校だ。

昨日純と唯先輩を襲ったバケモノだ。

思わず後ずさりする。足の裏には冷たいタイルのような感触があった。


「ヤッテヤルデスハ、アズサトイッショ」

え?コイツは今何を?

「ジャマヲスルノハユルサナイ」

「ヤッテヤルデスハアズサガイテヤッテヤルデス」

感情などおよそ込もっていないような声で頭は確かにそう言った。






146:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 21:03:21.62 ID:j7w0wo4C0


イントネーションも全くない言葉の意味を咀嚼しながら改めて考える。

最初にどこでコイツを見かけたのか。


夢だ。


そう思ったところで世界はテレビを消したようにブチッと途切れて真っ暗になった。

夢から醒めたらしい。

重い瞼を開くとまたそこは見慣れたクロス張の天井だった。手探りで探し当てた目覚まし時計を確かめると

夜光塗料の緑色は午前3時を指している。私は目覚ましを放り出すと再び瞼を閉じた。






147:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 21:05:05.83 ID:j7w0wo4C0


― あさ!


午前7時、緊急連絡網は今日の臨時休校を伝えた。

一方で桜高の職員室にはその時点で職員全員が集結し、ありとあらゆる対応に当たる態勢を整えた。


しかしこの臨時休校からして危機管理マニュアルによる台風接近時の項目にあるものをそのままなぞったに過ぎず、

もちろんそのマニュアルに異生物の襲撃という項目は用意されていなかった。

まして昨日の記憶は誰もが対処要綱の策定を嫌がることにつながり、遂に大人達の責任逃れの火蓋が切って落とされた。

その責任逃れは後の自由登校解禁に繋がっていった。

時を同じくして紬は臨時休校の報を聞くやいなや全員に連絡を取り始めていた。






148:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 21:15:06.08 ID:j7w0wo4C0


― えきまえ!


朝の涼しい空気の中、忙しない乗降客が行き交う駅前広場に律と澪は立っていた。

「ムギ、何をするつもりなんだ?」

「さぁなぁ?」

二人がボソボソと話していると唯が憂とともに現れた。

「おはようございます」

「澪ちゃん、りっちゃんおはよう!」

首元にマフラーを巻いているのはあの痣をごまかす為なのだろう。

しかし甲斐甲斐しく尽くした憂のおかげか、唯の調子は一見完全に戻っていた。

それとも天然に見えてどこかに芯には強い部分があるのだろうか、澪と律はその光景に安心した。

「おはよう」

最後にムギが現れた。

「あれ?全員じゃないのか?」

「これからみんなで梓ちゃんの家にお邪魔させてもらうのよ~」

澪が尋ねると紬は笑顔で答えた。






160:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 22:57:44.83 ID:j7w0wo4C0


ちょっと修正したら全部狂ってしまった


― なかのけ!

「ねぇ、梓ちゃんってあれについて何か知っていることはないの?」

初っ端からムギの口調は厳しく、部屋の空気は一気に重くなった。

「確かにあれって梓の顔そっくりだよな」

律がそれに追従した。しかし律は直後にそれが失言だったと悔やんだ。

しかし今まで口には誰も出してはいなかったが、その見解だけは一致していた。

「頭」は梓そっくりなのだ。

「ちょ、ちょっと待って下さい!私があれとなんか関係あるって言いたいんですか!?」

朝っぱらから家に揃って押しかけられた上にいきなり諸悪の根源扱いではいくらなんでもたまったものではない。

さすがの梓も声を荒らげて叫んだ。






161:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 22:58:31.91 ID:j7w0wo4C0


「そうじゃないわ」

紬が落ち着いた口調でそれを宥めた。

「ねぇ…梓ちゃん…何か、何か思い当たることはないの?」

「…夢」

「夢?」

澪が訊き返した。

「思い出した…夢…夢に…出たんです。あれ…」

その梓の声はかすれていた。

「ヤッテヤルデス…」

「やってやるです?」

唯が繰り返した。






162:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 22:59:01.05 ID:j7w0wo4C0


「あの頭…ヤッテヤルデスは…私と一緒って…夢で…」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。話がわからない」

澪が呆気に取られながら誰でもいいからと言った感じで説明を求めた。

「夢よ。ただの夢。梓ちゃんは関係ない。」

澪への回答なのか、梓への言葉なのかはたまた自分自身へ向けたものなのか、紬自身もわからなかった。

梓は今や目に涙を浮かべ、律と憂はこの状況をどうすればいいのか考えあぐねていた。

「どういう理由で生まれたかなんて私達にはわからない…でも。

一歩間違えたら梓ちゃんだけじゃない、私達の姿をしたものも生まれるかもしれない…他人事じゃないのかも」

憂がそう呟いたところで澪はすかさず割って入る。

「梓。夢のなかでそいつ他に何を言ってた!?」

梓が怯えたように澪の方を向いた。






163:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 22:59:35.08 ID:j7w0wo4C0


「え、えっと…」

一瞬考え込んでから梓が答える。

「多分ですが、邪魔をするのは許さない…、ヤッテヤルデスは梓がいてヤッテヤルデス…」

「なぁ、ヤッテヤルデスってのは名前か?」

律が聞き直す。

「ヤッテヤルデス…名前かはわからないですけど…」

梓は鼻水を啜りながら弱々しく答えた。

「あいつ、ヤッテヤルデスって言うのか…」

「呼びづらいね」

唯がそれに相槌を打った。






164:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 23:01:35.27 ID:j7w0wo4C0


「…ねぇ、あれの目的って何かしら?」

「あー…」

紬の言葉でどういう訳か澪は梓の頭を齧る「ヤッテヤルデス」の姿が浮かべた。

「うわわっ!」

澪はとりあえず叫んで慌てて不気味な思考を払いのけた。

「どうしたの?」

紬が怪訝そうに尋ねたが澪はそれを黙った。

「梓じゃないのか」

律は澪の沈黙をを無に帰した。

「あずにゃんが危ない!?」






165:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 23:10:02.30 ID:j7w0wo4C0


「ちょっと待て。じゃあなんで唯や純ちゃんが襲われたんだよ」

澪が割って入る。

「そうよね…」

「あの…もしかして私達全員が標的なんでは…」

梓が不安そうな面持ちで見回すと思わず全員が黙りこんだ。

それぞれ思い返してみても、昨日の時点で全員が標的と言っても過言ではなかった。

廊下で襲われた唯、職員室で律と梓、夜道で澪。

紬はまだ直接襲われてこそいないものの、どう考えてもこの状況であれば標的と考えて差し支えないだろう。

「…なら私達であれをどうにかできるかも知れない」

澪が口を開こうとしたとき、律が突然呟いた。






166:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 23:23:50.08 ID:j7w0wo4C0


「ど、どうやって!?」

唯が尋ねる。

「あー、ほら。私達で講堂とかに誘き出せばあとは先生たちが…」

「おおっ、りっちゃんすごい!」

それにどう乗せられてしまったのか唯が拍手する。

「武器さえあれば可能かも。例えば剣道の防具を着こんだり」

紬がそれに応じた。

律の主張によれば「人間は首が一番弱い。ヤッテヤルデスはそこを標的としているので

首さえ守れればヤッテヤルデスと対等に対峙することも可能」ということだ。

昨日のヤッテヤルデスの攻撃は直接的な首絞めが多かった。

更にヤッテヤルデスを事実上さわ子と紬が一度撃退しているだけに、

その提案は軽音部の5人と憂にとって比較的現実味を帯びて感じられた。

「殺れるぞ…殺ってやるです」

律が広角を歪めながら呟いた。






168:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 23:25:29.64 ID:j7w0wo4C0


紬が笑っていいのか悪いのかを見極めようと言わんばかりに全員の表情を伺っていると澪の携帯電話が鳴った。

「あ、もしもし」

澪が部屋を出て行ったが、すぐに戻ってきた。

「今日は自由登校になったらしいぞ」

澪の言葉を聞いた途端、唯が律の方を見てニヤっと笑った。

「早速ですなりっちゃん隊長」

「ああ。唯隊員」


「じゃあ、まず制服に着替えて学校に集合だ!」

律を隊長に据え、かくして桜高軽音部によるヤッテヤルデス掃討作戦は開始された。






170:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 23:33:46.53 ID:j7w0wo4C0


午前11時、桜が丘高等学校では自由登校が始まった。

危険への注意を促す呼びかけに対して当事者意識をしっかりと持てるという人間は意外にも少ない。

そして情報には量と正確性が重要だと言われるが、その両方が欠けているのが今の桜高の生徒達だった。

生徒達は本格的な事態が始まる前に流されるままに帰った者が大半であったために、昨日の事件について深く考えている者は皆無だった。

自由登校の始まった昇降口には教員が立哨し、生徒に一人ひとり登校目的を聞き、内容いかんによっては下校させるという措置も取られた。

にも関わらず掃討作戦の装備品をどっさりと携行した軽音部の5人は音出しで練習を口実にした結果あっさり校舎内に立ち入ることが出来た。

ちなみに何も知らない和は高文連の壮行会の準備を理由に、憂は唯の付き添いであっさりと立ち入りが許可された。

そもそも、臨時休校のあとに打ち出された自由登校ならば大半の生徒は休みを一日享受する方を選ぶ。

軽音部や生徒会関係者以外に登校してくる生徒はほとんど現れなかった。






173:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 00:11:53.64 ID:3ZvK4buE0


その頃、閑散とした校舎内をさわ子は刺股片手に図書室へ向かっていた。

自由登校の実施にあたっては校舎内を常時教員が巡回するという警戒措置を取っていた。

東西と1、2階に別れて4人態勢で行う1回目の巡回、その1階西にはさわ子が充てられた。

さわ子は昨日の教訓から今日は身軽さを最重視したジャージに運動靴という出で立ちで臨んでいる。


さわ子は職員室前を出発し、やがて渡り廊下を進み図書館の前に到着すると閉ざされたドアの施錠を確認する。

ところが真鍮色の取手は普通に回り、ドアはガチャリと開いた。






174:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 00:13:52.02 ID:3ZvK4buE0


「あら?」

図書館は手が回り切らず、警戒が疎かになるという理由から危険とされて施錠されているはずだった。

にも関わらず、そのドアは開いた。

ドアを開けたその先、光の中には人影があった。

逆光で良く見えないもののどうやら窓際に1つポツンと置かれた椅子に座っているらしい。

そのツインテールの生徒はこちらに気づかないのか、向こうを向いたままだ。

「ちょっと…あなた…今日図書館は閉鎖よ。出なさーい」

だが、声を掛けてもその生徒は振り返ろうとしない。

「ちょっと、聞いてるの?」

さわ子は仕方なく刺股をドアの脇に置いて中に足を踏み入れた。

静まり返って空気の淀んだ図書館の中にはいつもより強く独特の匂いがこもり、さわ子の鼻をくすぐる。

光が宙を舞う埃を神秘的に照らし出している中、さわ子は生徒に近づいていくと突然生徒が振り返った。






175:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 00:15:33.63 ID:3ZvK4buE0


…あ、首が360度回って後ろを向いたんだ。

…違う。首だけ、頭だけが立っている。

これ、椅子に上着が掛かってただけで…。

…騙された!頭だ!

さわ子がそれに気づいたときにはもう手遅れだった。


ヤッテヤルデスは昨日の復讐を果たすべく憎き山中さわ子めがけて跳躍していた。






176:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 00:17:18.12 ID:3ZvK4buE0


堀込先生と教諭4人が戻ってこないさわ子を捜索に行ったのは15分後のことだった。

5人が渡り廊下に差しかかると、倒れたさわ子の姿があった。

「山中先生?」

「山中!」

駆け寄った堀込先生たちはまず水たまりに踏み入ったような感触を足裏に感じ、次に目にしたのは血の海に沈んださわ子だった。

壊れた眼鏡、転がった刺股。

紺色のジャージは今や赤色に染まり、飛び散った血は白塗りの壁を赤く染め、血の臭いは鼻を突いた。

ヤッテヤルデスはさわ子の頚部を食いちぎって復讐を果たしたのだった。

さわ子の抵抗は頑強だったのか、整った顔には生々しい引っかき傷、ジャージには何箇所も裂けたあとがあり

その右手には長い髪の毛が握られていた。






179:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 00:18:22.30 ID:3ZvK4buE0


そして堀込先生をはじめ、呆然と立ち尽くす教諭達を古いつり下げ型非常誘導灯の上から見つめているものは他ならぬヤッテヤルデスだった。

復讐劇はさわ子殺害を皮切りに、自らを袋叩きにした堀込先生らを血の海に沈めるところからスタートした。

ヤッテヤルデスは昨日の教訓として待つことを覚えていた。

肉食動物のごとくじっと息を潜め、獲物がやって来るのを待ち続ける。

以前のように多数を相手にすることは己の死に繋がると学んだヤッテヤルデスはある程度の戦闘手段も心得え、

ひとりずつ確実に制していけば、より目的を達成が近づいてくるということも学んでいた。

その最初の標的として選ばれたのが最もヤッテヤルデスにとって最も脅威かつ強力な敵と判断されたさわ子だった。






180:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 00:25:10.13 ID:3ZvK4buE0


― せいとかいしつ!


ただならぬ怒号と悲鳴に驚いた和と生徒会書記の1年生と放送局局員の2年生3人が廊下に顔を出すと、

教頭と校長が消火器やモップを片手に走って渡り廊下へ曲がっていくところが目に入った。

「何ですか?」

「わからないわ」

和は背後からの問いかけに振り向かず答えた。

後輩達は和の落ち着いた様子に安心感を覚え、再び会議机に戻っていく。

しかし当の和本人は足元から沸き上がってくる不吉な予感を感じていた。






181:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 00:28:06.52 ID:3ZvK4buE0


― けいおんぶぶしつ!


高校生の年頃といえばなんとも全能感のようなものが存在している。

未来は明るい、根拠もなくそう思えたりするものである。

例え具体的な対処方法がすっぽ抜けていたとしても、今やッテヤルデスなど大した事のない敵に感じられていた。

全員でかかればどうにかなる、それが全てであり、それ以上でもそれ以下でもなかった。


自分の人生が終わる訳ない、死など有り得ないという保証はどこにも存在してはいないにも関わらずだ。

とはいえ20年生きていない高校生にして誰が人生の終焉を考えられるというのであろうか。






183:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 00:29:06.36 ID:3ZvK4buE0


1階西でヤッテヤルデスが教員を制圧し尽くした頃、軽音部では掃討作戦に伴なう防御装備装着の真っ最中であった。

当然と言えば当然だが、完全武装で立哨の教師に音出し練習を主張したところで全く説得力はない。

それを嫌った結果、装備はすべて部室で装着した上でヤッテヤルデスを捜索するとという方針となった。

ただ、軽音部の部室は校舎中央の3階であり、篭城戦においては高所という地の利から十分な抗甚性を持ち合わせるものの、

奇襲攻撃を受けた場合、脱出場所の無い軽音部室は攻め込まれてしまえば即座に制圧されてしまう。

残念ながら部室という慣れたスペースは油断を招き、律達は全く防御措置を取っていなかった。

無論、最初の敵を制圧したヤッテヤルデスはそこを奇襲した。






187:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 01:04:12.27 ID:3ZvK4buE0


ヤッテヤルデスは手すりをジャンプ台に部室のステンドガラスを割って突入した。

砕け散るステンドガラスを見たとき、5人は全く状況を理解できなかった。

「逃げろ!」

真っ先に響いた律の声で6人はようやく一斉に逃げる態勢に入った。

しかし持ち込まれた防御装備はその役割を果すどころか狭い部室の中で散乱し、各所で障害物と化して6人の自由を奪う。

「いや!」

憂の悲鳴に近い叫び声が響き渡る。

椅子に引っかかって転んだ唯はヤッテヤルデスに手近だった澪に代わって襲撃対象として認識された。

紬はその光景を横目に捉えて転がる硬球用金属バットを拾い上げ、ヤッテヤルデスへ向かう。

「近づかないで!」

その金属バットのフルスイングは今まさに唯に飛びかからんとしていたヤッテヤルデスに命中し、

軟球ばりに思い切り打たれたヤッテヤルデスはトンちゃんの水槽を粉砕した。

「トンちゃ…」

砕け散るガラスの音で振り向いた梓が言いかけた時には、床でのた打ち回るトンちゃんを立ち上がったヤッテヤルデスが踏みつぶしていた。






188:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 01:05:25.97 ID:3ZvK4buE0


紬の金属バットはヤッテヤルデスを牽制し、ヤッテヤルデスが反攻に移る前には全員が転がり出すように外へ飛び出した。

最後に飛び出した梓はドアを押して逃げたために、ヤッテヤルデスは閉まりかけたドアに衝突した。

衝突音を背後に聞きながら階段を駆け下りると、全く申し合わせなどしていなかった6人は3手に別れてしまった。

紬はそのまま1階へ駆け下り、唯と憂は2階の西側へ。澪と律、梓は東側へとそれぞれ走った。

ほとんど同時に別れた直後に上からそのまま飛び降りてきたヤッテヤルデスは左右を窺うと、

まだ廊下を曲がっていく姿を確認できた律達を追った。






189:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 01:07:21.68 ID:3ZvK4buE0


― わたりろうか!

走る律、澪、梓の3人。

そしてそれを嘲笑うかのような甲高い笑い声が背後から迫って来る。

まだ階段上らしいものの、その笑い声は確実に迫ってきていた。

厳密に言えば笑い声とは限らないが、少なくとも3人はそれを笑い声以外の何かとして考えることは無理であった。

すぐに背後で何かが落下する音に続き、独特のこするような足音が響き始める。

甲高い、まるでアルミ板の角をこすり合わせるような薄気味悪い笑い声は確実に3人の精神を蝕んだ。

真正面の職員玄関は閉ざされており、律と澪、梓の3人は講堂の渡り廊下へと追い込まれる。

さらに講堂の扉は運悪く開放状態で固定されていた。






191:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 01:08:38.02 ID:3ZvK4buE0


― こうどう!

広い講堂。その広さは今の3人にとっては迷惑なのかそれともチャンスなのか。

そして思い出深きステージ横にあるドアは片側、放送室側のみが開け放たれていた。

3人は横に広がって一路ドアを目指す。

「あと少しだ!」

澪が叫んだ瞬間、背後でバタンという音が響いた。

澪が音の方を振り返ると、そこには転んだ律の姿があった。

そして更に真後ろを振り返った澪は、まるで合成か何かのように白い能面じみたヤッテヤルデスが

暗い渡り廊下に浮かび上がって迫って来る所を目にした。






193:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 01:11:16.06 ID:3ZvK4buE0


「律!」

澪は叫びながら最後の数メートルを一気に走り抜けて、走り幅跳びのように放送室に駆け込む。

振り返った先の律はというと転倒した際に足を挫いたのかその歩みは遅い。

懸命にこちらへ近づいてくる律。

しかし片やヤッテヤルデスは恐るべし勢いで律へ向かって突進し、ほとんどその距離はなくなっていた。

澪は梓を振り返ってから律を一瞬見て、そのままドアを閉めた。

澪にとってドアが閉まるバタン、という音はまるで絞首台の踏み板が落下したように聞こえた。






194:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 01:12:17.40 ID:3ZvK4buE0


「助けてくれ!澪!」

ドアの向こうからは律の悲痛な叫び声が聞こえてくる。

そして床を打つ音。

一体何が起きているのか、それは想像に堪えない。

頼りなげな木製のドアを押さえる澪の体にその振動は確かに伝わってくる。

だが、澪はそれに耳を塞ぐしかない。見殺しにするしかないのだ。

今開ければ梓までもが餌食になるのは明らかだった。

放送機材とパイプ椅子くらいしかないこの部屋に押し込まれれば間違いなく全滅する。






195:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 01:13:35.81 ID:3ZvK4buE0


「澪!」

一際悲痛な律の声が響き渡った。

それは講堂の中に反響し、澪の耳に焼き付いた。

「律先輩…律センパイ…」

床に伏せって声を押し殺して泣いている梓。

澪も泣きたかった。


やがてその悲鳴が途切れ、ドアの向こうからは床で何かが擦れる音とや律の妙な声が時々聞こえた。

そして律の声も気配も、ヤッテヤルデスの足音も気配も消えた。






197:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 01:17:30.78 ID:3ZvK4buE0


澪がドアを開けた時、最初に異様な臭気が鼻を突いた。

それはまさに血の匂いだった。そして律は講堂の中央で仰向けになっている。

あたりを見回すと無理に引きずり回されたのか、ブレザーが脱げて向こうの隅に落ちていた。

講堂の床には赤いラインが増えて、そのラインは律のところで途切れている。

澪は律へ向かっていく。

一歩一歩踏みしめるように向かっていく。

律の表情は今までに見たことのないような物だった。

絶望、恐怖、想像できないほどの何かが起きたのだろう。

もう澪がいくら声をかけても律は薄目で虚空を見つめるだけであった。






202:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 01:25:04.40 ID:3ZvK4buE0


梓は屈み込んで律を見つめる澪に恐る恐る声を掛ける。

「澪先輩…」

「梓。行こう」

澪は立ち上がって梓を振り返る。その頬には涙が伝い落ちていた

澪は自分が着ていたブレザーを律に被せた。

「律…私はもう…臆病な澪じゃない」

そう律に声をかける澪の声には強い意志が感じられた。







217:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 10:37:45.69 ID:Lmm/2icA0


― 3ねん2くみのきょうしつ!


唯と憂は3手に別れて以降3年2組の教室で息を潜めていた。

明らかに危険な選択である教室へはどちらかと言えば唯が主導した形であった。

あまりの事態にパニックを起こしかけていた唯は、避難先に慣れた場所である

3年2組の教室を咄嗟にチョイスしてしまったのである。

廊下側に設置された窓は教室の中を簡単に伺うことができる為に、唯は憂を掃除用具入れに押し込み、教壇の下に隠れていた。






218:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 10:39:19.83 ID:Lmm/2icA0


時を同じくしてヤッテヤルデスは再び2階へ向かっていた。

講堂にて追撃戦で全員が揃って行動していないことは把握し、階段で3手に別れたのだろうと読んだヤッテヤルデスは

篭城を決め込んだであろう澪と梓を後に回し、先に2階に逃げたであろう標的を屠ることを選んでいた。

中央階段に差し掛かると駆け上がってくるひとりの2年生がいた。

ヤッテヤルデスにとっては見覚えのない顔。

思わぬ遭遇に驚いたように最上段に足を掛けたまま立ち止まる生徒。

生徒が口を開く間もない内にヤッテヤルデスはその生徒を踊り場の方へ髪腕で突き飛ばす。

髪腕に足元を薙ぎ払われた生徒は驚愕の表情を浮かべたまま宙を舞ってそのまま踊り場の壁にぶつかり墜ちていき、動かなくなった。






219:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 10:41:01.17 ID:yk9uT5PJ0


>>1なのかどうかはっきりしろ






220:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 10:41:04.58 ID:Lmm/2icA0


掃除用具入れの憂と教壇下の唯の吐息以外は物音一つせず、静寂に包まれる教室。

その静寂を破り、階段の方ではまるで重い何かが落ちたような物音が響いた。

何…?

唯はその音で身を竦める。

こわいよ…りっちゃん…みおちゃん…。

物音はまたしなくなり、再び自分の息遣いの音だけが小さく聞こえてくる。

心臓は破裂しそうにバクバクと鳴り、この音でヤッテヤルデスに場所がバレやしないかとすら唯は不安になり始めていた。

様子を見よう…、そう思い唯は恐る恐る教壇から顔を出す。

教室の中には相変わらず誰もいなかった。しかし廊下のガラス窓には貼りついてこちらを見つめるヤッテヤルデスの顔があった。

「ひっ!」

その光のない視線はしっかりと唯を見ていた。唯が後退りした時にはヤッテヤルデスはガラスから消えて代わりにドアが開いていた。






221:本人です:2010/09/16(木) 10:44:35.61 ID:Lmm/2icA0


ヤッテヤルデスがゆっくりと教室に入ると迷わず掃除用具入れを開いた。


中にいた憂は一瞬で白日のもとに晒され、抵抗する間もなく掃除用具ともに引き摺り出される。

掃除用具もバラバラと倒れて床に散らばった。

「や、やあっ!」

悲鳴を上げた憂の首をそのままヤッテヤルデスは一気に髪腕で締め上げ始めた。

憂は軽々と持ち上げられて15センチは宙に浮き、首吊り状態にされる。

喉を潰されてみるみる顔色が悪くなっていく憂。

「いやああああああああ!!!!うい!!!!うい!!!!」

唯の叫びながら唯は教壇から飛び出すとそのままヤッテヤルデスに背後から飛びつき腕を掴む。

しかしなんなくそれは払い除けられ、唯は机に思い切り突っ込んだ。






222:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 10:45:18.26 ID:Lmm/2icA0


それでも立ち上がる唯の足元には倒れた自在ぼうきがあった。

唯はそれを引っ掴んで握り直して渾身の力で自在ぼうきをヤッテヤルデスに振り下ろした。

「憂を離せ!」

自在ぼうきの木製柄はあっさりとその一発で二つに折れ、その切っ先は尖ってそれぞれ転がった。

唯はそのまま後ろに倒れて尻餅をついた。

ヤッテヤルデスは唯の反撃に対してその能面のような表情を変えないまま、唯の方を一瞥すると憂を黒板に突き飛ばし、

空いた方の手で床に落ちた自在ほうきの残骸を拾い上げた。

「う…お、お姉ちゃん…」黒板にぶつけられて痛みをこらえながらようやくふらふらと立ち上がる憂。

ようやく立ち上がった唯が近づく間もなくヤッテヤルデスはその憂に自在ぼうきの切っ先を突き立てた。

「いやあああああっ!」

唯の悲鳴が響き渡る。






223:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 10:46:54.22 ID:Lmm/2icA0


「あっ…あ゛あ゛…お姉ちゃん…お姉ちゃん…」憂の呻くような声がそれに続く。

憂の唯を心配させたくないという一心は痛みを我慢させ、悲鳴を押し殺した。

だが、木切れという全く切れ味の悪いものによって刺された痛みは一気に憂を蝕む。

更にヤッテヤルデスは容赦なくそれを引き抜いた。

そのまま憂が腹部を押さえながら崩れて膝をつく。

ヤッテヤルデスはその憂の髪を掴んで引っ張り、苦渋に歪んだ憂の顔を上げさせた。

「ああああっ!」

遂に痛みに耐え兼ねた憂の悲鳴が響き渡る。

見る間に憂の周りには血溜まりが出来上がり、そのままうつ伏せに血溜まりの床へ倒れた。

動けなくなった憂を尻目にヤッテヤルデスは改めて唯に向き直る。






224:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 10:48:49.29 ID:Lmm/2icA0


唯は後ずさっていき、片やヤッテヤルデスはまるでその距離を詰めることを楽しむかのようにじわじわと近づく。


そして唯が壁まで後1メートル程まで追い詰められたところで、ヤッテヤルデスは飛び掛かった。

唯はそのままヤッテヤルデスにより後頭部を壁に打ち付けられて倒れ込む。

そこをヤッテヤルデスは髪腕で肩を掴み引き起こすと執拗に唯の頭を腰板に叩き付け始めた。

教室内には異様な衝撃音と唯の悲鳴が響き渡る。

「やめて…お願いします…やめて下さい…」

薄れ行く意識の中振り絞る憂の嘆願も虚しく、やがて唯の悲鳴は消えて耳から血を流し始め目は虚ろになり、小刻みに痙攣を始める。

そこを見るやいなやヤッテヤルデスは唯の喉を掴んで一気に締め上げた。






226:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 10:49:38.46 ID:Lmm/2icA0


一般的に人間が行えうる絞殺法ではまず5秒渾身の力を込めることで対象の抵抗を削ぎ、更に20秒程度加えることで

対象を気絶させることが出来るとされる。しかし殺害となるとその所要時間は3分を要すると言われる。

しかし、ヤッテヤルデスの恐るべき膂力は僅かそれを1分で完結させた。

なんとも言えない不気味な声をあげたのを最後に唯は動かなくなる。失禁したのか唯の周りには水溜まりが出来ていた。

動かなくなった唯を確認するとヤッテヤルデスは唯に向かって赤い線を引きながら這っていた憂の背中に思い切り飛び乗り、

憂に思い切り悲鳴を出させて、十分復讐劇を堪能したかのようにまたドアから廊下へ消えていった。

憂は寒気と薄れる意識の中、机に掴まり立ち上がる。

腹の傷は力をいれるたびに血を吹き、憂は自分が助からないことを悟りながらフラフラと唯の横に座り込んだ。

そして唯を抱き寄せると前夜、やったように優しく髪の毛を撫でた。


「…お姉ちゃん」

見開いた目を撫でて瞼を閉じさせると憂は最後の力を振り絞り、唯を抱きしめてそのまま事切れた。






233:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 12:38:44.77 ID:Lmm/2icA0


― せいとかいしつ!


校内のあちこちで惨劇が起きる中、生徒会室では壮行会の打ち合わせが続けられていた。

火災報知機がけたたましく鳴っている訳でも誰も異常を知らせに駆け込んでくるわけでもないこの状況では、

事態を知らない人間としてある意味それも当然の行動であった。

和は一応打ち合わせの実施にあたっては担任のさわ子に事態の概要を問い合わせていたが、「来ない方がいいわよ」と色よい返事を貰えなかった。

しかし一方で壮行会を仕切る書記の1年生は非常に張り切り、渋る和に打ち合わせの日程通りの実施を懇願した。

和はその熱意に折れ、登校を嫌がる放送局長に頼み込み打ち合わせを開いたために容易に散会とさせることを躊躇っていた。

軽音部によるヤッテヤルデス掃討作戦についてに至っては知らせを受けてはいなかった。

しかしそれは律達なりに生徒会会長という和の立場を慮ってのことであったが、

この場合律達がやるべきことはむしろ関係ない人間を極力学校から遠ざけることであった。和への配慮は今、完全に裏目に出ていた。

唯も心配掛けまいと救急車で搬送された理由を純と共に階段から落ちたと説明していたためにそれも和は追求してはいなかった。






234:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 12:39:36.04 ID:Lmm/2icA0


それでも和はさっきの慌しい様子から一転として訪れた静寂に違和感を感じていたところだった。

大した事ではないだろうという高を括ってはいたものの今度は遠くで悲鳴が立て続けに響き渡り、

しかも聞き覚えのあるその声にいよいよ和も落ち着いては居られなくなった。

「…ちょっと様子を見てくるわね」

そう言って立ち上がり、鞄からは念のために携帯電話を取り出してブレザーのポケットへ放り込む。

部屋を出て行く和を後輩達は頼れる前生徒会長といった表情で送り出した。






235:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 12:40:14.89 ID:Lmm/2icA0


生徒会室を出てすぐ、職員室前の中央階段を上がったところの踊り場。

そこにはひとりの生徒が倒れていた。

あいにく誰かはわからないがブラウスのその赤いリボンが2年生だということを示している。

しかしその生徒の表情はまるで恐ろしい何かを見たような形相で凍り付いていた。

和はどこかでこれは大変な自体だとは理解しているつもりなのだが、どうにも目の前に倒れているのがまるでマネキンのように感じられてならない。

結局和はそのまま彼女を無視して階段を登ることにした。






236:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 12:41:23.31 ID:Lmm/2icA0


2階の廊下は静まり返り、人の気配は皆無だった。和は左右を見回してからとりあえずと自分の教室を覗き込む。

そこには隅の壁にもたれた憂が唯を抱いている姿があった。

「あら?」

いくら人気が無いからと言って二人揃って学校でお昼寝なのか姉妹愛の確認なのか。

ちょっと。さすがにそれはないでしょう…。

和は顔が火照ってくるのを感じながら教室に足を踏み入れた。






237:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 12:42:15.43 ID:Lmm/2icA0


机の間を進み、和は二人にに近づいていく。

壁にもたれた憂の足元は真っ赤に染まり、そここに夥しい量の血溜まりと合わせてその惨事を語っていた。

背を向けた唯の表情は伺えないものの、背中の汚れや乱れた髪型が異常を端的に表している。

「ねぇ…憂?」

和は憂のところに屈み込む。

少し俯いた憂は眠っているようだったがその顔に生気はなく、白い肌が際立って見える。

唯も眠っているような表情だったが、その耳からは細く生々しい赤いものが垂れていた。

同時に必死に目を逸らし続けてきた現実が和にまるで豪雨のように降りかかってきた。

唯も憂も死んでいる。さっきの生徒も死んでいた。

憂は恐らく最後の力を振り絞って唯を抱きしめながら息絶えたのだろうと和は悟った。






238:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 12:43:11.82 ID:Lmm/2icA0


「ねぇ…唯…憂…どうしちゃったの…」

搾り出した問いかけに答えるものはなく、立ち上がるとそのまま足は震え出し、どうしようもない恐怖感が爪先から一気に駆け上がってくる。

和はそのままフラフラと廊下に出ると携帯電話をポケットから取り出す。

110番をプッシュして電話を耳に当てる。

普段なら簡単に出来そうな行動が全く上手く行かず、和は携帯を取り落としそうになりながらなんとか携帯を耳に当てた。

『警察です。どうしましたか?』

コール音もなく通信指令室の女性警察官の声が飛び込んできた。

「もしもし」

その声は震え、みぞおち辺りからは熱い何かが込み上げてくる。

『事件ですか?事故ですか?』

和は直感的に理解していた。

あの頭だ。あの頭が今、全ての事態を招いたのだと。そして最初にあれを目撃したのは恐らく自分自身であろうということも。






239:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 12:44:23.22 ID:Lmm/2icA0


だが、相手はあんな変な生き物では誰もまともに取り合わない。このままじゃ犠牲は増える。

「刃物を持った男が生徒を…桜が丘女子高です…」

事実ではないことを話している。そんな自覚はあった。しかし敢えて刃物を持った男が押し入ったと言えば

警察は万全の備えでここにやってくる。そうすればもう誰も傷つくことはない。そう考えたのである。


警察官は何事かまだ話しているようだったが、和にとってはもうそれだけが精一杯であった。

膝がガクガクと笑い手は震え、和は携帯を取り落としてそのままへたり込む。

開放ったドアの向こうを振り返ると永遠にもう目を覚まさないであろう眠りに落ちた憂と唯がいた。


それを見ながら和は這って壁に辿りつくと、窓枠を支えに立ち上がった。

壁にかけられた消火器を震える手で持ち上げ、すぐ側の窓に消火器を叩きつける。

フロート強化ガラスもその質量と衝撃にさすがに割れて、粒状の破片が飛び散った。

窓枠にまだ残る破片を消火器で払いのけると窓枠を押し開く。


不要になった消火器は廊下に放り投げ、和は狭い窓枠に体を押しこみそのまま飛び降りた。

身を宙に投げ出す瞬間、和はまた唯と憂とともに過ごしたいと考えていた。






240:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 12:45:01.88 ID:Lmm/2icA0


気づくと和は柔らかい花壇の土の上に落ちていた。

メガネはどこかへ行ってしまったようだが、痛みはそんなに感じられなかった。

しかしゆっくりと起き上がると右足に電撃のような痛みが走った。

「…ああっ!」

右足首というより足の甲を痛めたのだろうか、と思った。

それでも痛む足を引きずりながら和は門までなんとかたどり着く。

昇降口の方を振り返ると人気は全くなく、まるで日曜日のように静まり返っていた。

そしてサイレンの音はハーモニーを奏でながらどんどん近づいてくる。

「く…」

和が門柱にもたれ掛かったと同時に、近くの交差点の角からは警察車両が赤い回転灯の光とサイレンをばら撒きながら続々と現れた。






259:帰ってきた:2010/09/16(木) 19:34:21.30 ID:jVx/fvqU0


― しょくいんしつ!


和が2階から飛び降りた同じ頃、桜高の職員室では動く者は誰もいなくなった。

自分の机で女性教諭は110番した受話器を握ったまま事切れ、床には竹刀を片手の男性教諭と緑のリボンの1年生が転がっていた。

いずれもその視線の先は不安定にあさっての方向を向いている。

そしてその中心には顔に血糊をつけたヤッテヤルデスが立っていた。


三人を一瞥すると教頭のデスクによじ登り、散乱した書類やファイルを踏みながら、完全に手中へと収めた職員室を改めて見回した。

そして勝どきのように鳴き始めた。

その声は力強く、そして美しかった。人気のなくなった廊下にもそのソプラノが響き渡っていった。


ヤッテヤルデスはあとに控える標的はムギ、澪、梓の三人だと把握し、既に己の勝利を確信し始めるところに差し掛かっていた。

教員や生徒達を屠った結果、人間は思うほど強くはなく、脆弱で愚かな存在であるということを感じ始めていた。

ひとしきり声を出して気が済んだヤッテヤルデスは今度は三人をどうやって殺害するかを考え始めた。

そして1つのプランを思いつくと軽やかに廊下へと消えていった。






260:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 19:36:32.44 ID:jVx/fvqU0


― いっかいのろうか!


紬は1年2組の掃除用具入れの中にいた。歌声ははっきりと紬の耳にも届いてそれは恐怖を倍増させる。

あのヤッテヤルデスに怯え暗く埃臭い掃除用具入れにずっと立てこもった所で、自分にも他のみんなにもなんの利益もないというのは

紬も重々承知ではあった。しかしそれ以上に困るのは出たはいいが自分が餌食になってしまうことである。

しかし最初は勇敢にヤッテヤルデスと対峙していた紬自身もじわじわと迫って来る死への恐怖をはっきりと感じ始めていた。

もし私が死んでしまったら誰を助けられなくなってしまう、改めて自己弁護のように紬は自分に言い聞かせた。

そんな所で歌声が止んだ。恐る恐る掃除用具入れのドアに耳を当てるが、特段何の音も気配も感じられない。

慎重に掃除用具入れのドアの取っ手を回すと、片手で押さえながら細く開ける。

ガラス窓には反射して廊下側の窓が映り込んでいるが、そこには誰もいない廊下が映っている。

しかし、次の瞬間紬が耳にしたのは明らかにドアが開閉する音であった。

その躊躇いのないドアの音は明らかに追い込まれた者達のものとは考えられず紬は再び掃除用具入れを閉ざして脱出するタイミングを伺い直すことにした。






261:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 19:41:56.46 ID:jVx/fvqU0


― にかい!


律の死に最初は気丈に振舞おうとした澪だったが、

自分の判断によって律が死んだという事実はじわじわと梓の気づかぬ所で澪の精神を蝕みつつあった。



紬が一階で掃除用具入れから脱出できなくなっていた頃、澪と梓は、階段で別れて未だ二階にいると思われる唯達との合流を目指して東側階段を登っていた。

梓が角に張り付いてに廊下の状況を確認すると、二人は角にぶら下がる消火器を取ってゆっくりと前進していく。

今や床板はギシギシと音を立てて軋み、どこからともなく冷たい風が吹き抜ける廊下は真昼にも関わらず二人の恐怖心を掻き立て、

見慣れた廊下はまるでお化け屋敷の迷路のごとく非常に不気味に感じられる。






263:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 19:43:34.38 ID:jVx/fvqU0


しかし次の瞬間にはヤッテヤルデスがぶら下げていたものに二人共視線が釘付けとなる。

その髪腕の片側にはお土産と言わんばかりに髪の毛を掴まれた形の律をぶら下げていた。

「あ…り、律…」

逃げる態勢にすぐさま移った梓に対して澪はそのまま消火器を力なく落としてそこに立ち尽くす。

ぶら下がっている律の頭部を片手にヤッテヤルデスはこちらへ向かってゆっくりと近づいてくる。

「逃げましょう!」

しかし澪が梓の声を聞いている様子はまるでない。

「澪先輩!早く!」






264:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 19:44:10.73 ID:jVx/fvqU0


梓は力いっぱい澪の手を引っ張るが、澪はそれを振り払った。

思わぬ行動に面食らいバランスを崩した梓はそのまま尻餅を付いた。

「いたい…」

梓が顔を上げると、澪がゆっくりとヤッテヤルデスに近づいていくところだった。

「澪先輩!行っちゃダメです!行かないで!澪先輩!」

梓の叫びも虚しく、澪はどんどん歩いていく。

そしてヤッテヤルデスはその無表情さを保ったまま、片手のそれをどういう訳か床に置くとそのままこちらに背を向けて廊下の奥へと走り去って行った。

澪は残された律の頭をそっと抱き上げると梓の方を向く。

「梓…ちょっと先に行っててくれ…」

振り返った澪の顔はまるで眠る赤子を見つめる母のように穏やかに微笑んでいた。

その微笑みで梓は澪の精神が崩壊したのだと悟った。

これで私達に完全に勝ち目は無くなった。いや、律先輩が殺された時点でもうだめだったのかも知れない。

梓は一瞬そんな事を考えたが、まだ他の先輩たちや憂の安否も何も分かっていないことを思い出す。

澪がそのまま廊下に座り込もうとするのをなんとか制して「隠れてて下さい」と言い残すと、梓は助けを求めるべくその場を後にした。






265:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 19:45:49.71 ID:jVx/fvqU0


― にかい!


時を同じくしてようやく掃除用具入れから脱出した紬が恐る恐る中央階段を上がっていた。

見慣れた階段はまるでいつ猛獣が飛び出してきてもおかしくはない熱帯雨林に感じられ、

全神経を集中させて辺りを警戒しつつ一段一段を踏みしめる。

「律…起きてくれよ…」

そこへ階段をまだ全部上がりきらぬうちに響いた声。

あまりの驚きにムギは全身が総毛立って心臓が口から飛び出しそうになったように感じられた。

恐る恐る階段から廊下を覗き込むと澪が何かを抱えて廊下の隅に座っているのが目に入った。

しかしその様子はあまりにもおかしかった。






267:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 19:46:40.51 ID:jVx/fvqU0


ムギは恐る恐る近づいていくとそれはボールのように見える。

「み、澪ちゃん…?」

「あ、ムギ…律が目を覚まさないんだ…」

澪はムギの声で顔を上げると、まるでぬいぐるみでも見せるかのようにムギに抱えるそれを見せた。

ムギはそれを見て思わず目を逸らした。

りっちゃんだ。りっちゃんの頭…。

目の前に大事な友人の変わり果てた姿を突きつけられたムギは一瞬そのまま意識が遠くなったが何とか踏ん張った。

「りっちゃんは…」

ムギは一瞬躊躇った。例え事実を告げた所で澪に変化はないだろう。






268:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 19:48:20.22 ID:jVx/fvqU0


「律は?」

「まだ寝てるのだね…お寝坊さんなんだ…」

ムギはまるで幼稚園児にでも答えるような口調で答えを濁すと再び歩き出す。

「律?なぁ…あっ、涎なんか垂らしたらダメだぞ」

澪はブラウスの袖で律の唇を拭う。涎というそれは明らかに違うものであった。

その光景に耐えられなくなったムギは歩き出す。

背後から澪の声が聞こえてくる。その声は穏やかで、まるで赤ちゃんをあやす母親のようだった。

「―律、大好きだよ」

一歩一歩進む紬の目からはとめどもなく涙が溢れ始めていた。






269:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 19:51:14.42 ID:jVx/fvqU0


― せいもんまえ!


パトカーの電子サイレンアンプから発音される4秒周期のサイレンはそれぞれの50Wスピーカーからごちゃごちゃと鳴り響いて

緊迫感と混乱に拍車をかけ、そこら中に緊急事態の発生を告げて回る。

わらわらとやってきたパトカーの1台は和の前で停車し、助手席から飛び出してきた警察官が傷だらけの和に駆け寄って助け起こした。

白黒パトカーはそのまま学校の前の通りに並ぶものと、そのままタイヤを鳴らしながら一路正門から昇降口前まで突っ込むものに別れる。

紺色の合服の下に対刃防護衣を着込んだ警察官達はパトカーのトランクから慌ただしく警杖やポリカーボネート盾や刺股を準備し、態勢を整え始める。

やがて何台かの救急車と共に、ルーフに着脱式の赤色灯を載せてサンバイザー取り付け型補助灯を煌々と点滅させた隊長車のティアナを先頭に

県警機動捜査隊の覆面パトカーが続々と現われて正門前の広場に進入してぞろぞろと並ぶ。

降車した機動捜査隊員達はめいめい覆面パトカーのトランクからそれぞれ耐刃防護板を取り出して黒いメッシュの多目的ベストの下に着込み始めた。







273:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 20:22:52.00 ID:jVx/fvqU0


>>269-


この時、警察には和以外の生徒や教員からも通報が入っていた。

通信指令室の警察官は錯綜する情報を総合した結果、刃物を持った者が学校へ侵入し、生徒や教員を切りつけていると判断してパトカーや警察官に指令を出していた。

しかし今や通報者は和を除き全員の安否がわからなくなっていた。

警察官達はまくし立てる無線で聞いたその凶悪な犯罪者への怒りを秘め、透明なポリカーボネート盾を構えた4人を先頭に昇降口へとなだれ込む。

下駄箱が並ぶ昇降口を駆け抜けると盾を構えた警察官は左右に別れる。続いて後列の刺股や警杖を装備した者が後衛を務める。

なだれ込んだ自動車警ら隊と所轄署の警察官達は左右をぎょろぎょろと見回しながらゆっくりと廊下を進みだす。

最初の検索地点は職員室とされ、両側のドアから一斉に警察官が職員室へ足を踏み入れた。







274:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 20:23:45.45 ID:jVx/fvqU0


先頭を切った警察官は異様な匂いの立ち込める職員室にぎょっとして立ち止まる。

穏やかな日差しが差し込む職員室には表現しがたい「死臭」が立ち込めていた。

デスクに臥せった教員やぐちゃぐちゃになった室内は警察官にすら一抹の不安を覚えさせる。

警察官は盾を突き出したまま、左右を確認して前進する。

後衛の警察官が倒れたままの生徒と教員に駆け寄り、何名か分散しては室内をどんどん調べていく。

「誰もいません!」誰かの声は室内に響き渡った。






275:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 20:26:26.37 ID:jVx/fvqU0


一方のヤッテヤルデスは紺色を纏った集団の闖入に驚きを隠せなかった。

闖入者は今まで相手にしてきた教員達とは比べものにならない人数かつ、同じような風体をしていた。

さらにヤッテヤルデスにとって未知の物を所持している。

生徒も制服姿という同じような風体を全員していたが大した反撃をしてくるわけでもなく脅威にはならなかった。

しかし今回は似たような風体を持つ集団にもかかわらず、漂ってくる気配にはただならぬものがあることがヤッテヤルデスにはっきりと感じられた。

今までの相手とはレベルが違う、そう判断したヤッテヤルデスは未知の敵に対して攻撃を行ってその反応を伺うことを決意した。

勝利のためにはリスクも必要であるということをうすうす理解し、威力偵察を考案するヤッテヤルデスは確実にその知性を高めていた。






277:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 20:28:00.56 ID:jVx/fvqU0


威力偵察を決め込んだヤッテヤルデスが襲撃した時警官隊は生徒会室と相談室の検索の最中だった。

ヤッテヤルデスは集団の中で一番手前かつ、離れた場所に立っていた警察官を右上45度の角度から急襲した。

「うわっ!」

標的となった警察官の声が響きわたり、周りの警察官の視線は一斉に集まった。

まず上からのヤッテヤルデスの体当たりは思いのほか踏ん張った警察官に対して強い効力を発揮できずに終わった。

払われた活動帽が地面に落ちるなか、一度飛び退いて体制を立て直すと今度は飛びかかる。

怯ませてから再度飛びかかる、ケタ違いの素早さを持つヤッテヤルデスだからこそ出来る芸当。

この攻撃で大半の人間を制圧してきたヤッテヤルデスはある程度この戦法に自信があった。






278:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 20:29:25.48 ID:jVx/fvqU0


「この野郎!」

しかしヤッテヤルデスは警察官の顔面に飛びつく前に強化アルミ製の伸縮警棒によって強力な一撃を受けて床に叩きつけられた。

「なんだこれ!」

「おい!こいつ血がついてるぞ!」

警察官の怒号が立て続けに響き渡った。ヤッテヤルデスは威力偵察を中断し、逃走態勢に入る。

人間に負けてしまうことを屈辱として考えていたヤッテヤルデスだったが、

今背後から迫ってくる警官隊相手では明らかにこちらが劣勢である事を感じさせた。

警棒で受けたダメージもあり、この不完全な状況で反撃は危険と判断して撤退を選ぶと窓枠や取っ掛かり伝いに天井を使って一気に二階へと逃走した。






292:ちくしょう:2010/09/16(木) 22:45:38.68 ID:jVx/fvqU0


― むぎ!


時は少しさかのぼって2階の廊下。

澪の崩壊は今まで頑張り続けていた紬にも大きな影響を与えていた。

思い切り突きつけられた友人の「死」は今まで張り詰めていた紬の精神状態を一気にギリギリまで追い詰める。

止まらない涙。そして止まらない震え。

廊下をふらふらと進むムギは無意識のうちに見慣れた自分の教室のドアを開けて中に踏み入った。

そこで目にしたのは唯と憂の姿だった。

「唯ちゃん!憂ちゃん!」

紬は思わず2人に駆け寄った。

2人は仲睦まじく抱き合っていた。

眠っているのだろうか、全く紬に気づく様子はない。

その光景は射し込むうららかな光に照らし出されて、美しい光景に感じられてくる。






293:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 22:46:15.47 ID:jVx/fvqU0


「仲よしっていいわね・・・」

紬も二人の横に並んで座ろうと屈みこむ。

地面に紬のお尻がついた瞬間だった。冷たい感触、そして全身に走る悪寒。

「あら?」

思わず床に触れると指先には赤黒い液体が付着していた。

太陽が雲に隠れたのか急に差し込む日は弱まり室内は薄暗くなる。

紬は唯と憂の方をもう一度見た。

そこには仲睦まじく抱き合って眠っている2人ではなく、恐怖の果てに死という永遠の眠りについた2人がいた。

紬は思わず飛びのくように立ち上がる。

改めて見た2人の周りにはまるで絨毯のように赤黒い血溜りが広がっていた。

「いやああああああっ!唯ちゃん!憂ちゃん!」

紬の悲鳴が校内に響き渡った。






294:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 22:46:55.47 ID:jVx/fvqU0


― あずさ!
 

紬が澪に出会った頃、完全に壊れた澪の姿に泣きそうになりながら梓は西側階段をゆっくりと下っていた。

西側の昇降口から一気に外へ脱出し、外部に異常を知らせた方がどこから襲いかかってくるかわからない

ヤッテヤルデスに怯えながら、電話機を捜すより遥かに安全かつ確実と踏んだのである。


梓は例えヤッテヤルデスが飛び掛ってこようとも避ける気概で臨んでいたが、

恐怖感は進むにつれて増大していった。






295:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 22:47:47.86 ID:jVx/fvqU0


しかし1階に辿り付くと、渡り廊下の向こう、ちょうど出入り口辺りで何事かしている白い顔を捉えた。

ヤッテヤルデスだ!

梓は思わず階段脇にあったロッカーの中に駆け込んだ。

ヤッテヤルデスは気づかない、そんな感じの根拠のない自信が薄っすらとあった。

ロッカーの扉を鍵の部分を掴んで内側から閉める使い古しの黄色いモップが数本ぶら下がるロッカーの中は非常に狭く、臭かった。

未知の暗闇を引き金に湧き上がった恐怖心で心臓はバクバクバクと鳴り、息が詰まりそうになる。

息を潜めひたすら待ち続けると、ヤッテヤルデスの足音は2階に進んでいって聞こえなくなった。

そして代わりに聞こえてきたのはサイレンの音だった。


梓がロッカーに飛び込んだ行動はどちらかと言えば直感的ではあった。しかし今の梓にはヤッテヤルデスの思考が薄っすらながら予測できた気がしていた。

事実ヤッテヤルデスは階段を登って行き、脇にあったロッカーは見逃したのである。

しかし梓はため息をついてからそれよりも重大かつ恐ろしい事実に愕然とした。2階にはまだぶっ壊れた澪先輩がいるのである。






296:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 22:48:37.04 ID:jVx/fvqU0


― みお!


「りつ、今日のお昼は何食べようか・・・オムライスかな・・・?」

梓がいなくなり1人になっても相変わらず澪はもう物言わぬ律とのおしゃべりに夢中だった。

それは恐怖心や見殺しにした事への強い悔恨、そして律の死が一気に澪に押しかけた末の結果だった。

もはや澪の頭の中にヤッテヤルデスの事はなく、ただ、目の前の律と遊ぶ事だけを考えていた。

「タノシイ」

澪がその声に気づいて顔を上げると目の前にはヤッテヤルデスがいた。






297:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 22:50:28.68 ID:jVx/fvqU0


澪にとってそれは単に律を自分の手から奪いに来た敵としてのみ感じられた。

「く、来るな!」

澪は慌てて立ち上がり、律をかばう様に背中へ隠して後ずさりして行く。

ヤッテヤルデスは澪の行動に不可解なものを感じつつ、その間合いを詰める。

「律は私のものだ!お前なんかにやんない!」

澪は叫びながら威嚇するように腕を振りつつ後ずさりしていく。






298:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 22:51:01.60 ID:jVx/fvqU0


ヤッテヤルデスはそんな澪に飛び掛り、その鋭利な犬歯で一気に澪の頚を食いちぎった。

ちぎられた頚動脈からは赤い血がごぼごぼと噴き出し血溜りを作っていく。

やがて膝をついた澪の手からは律の頭が離れて静かに赤い床に転がる。

その直後、澪もまるで律と見つめ合うようにその横に静かに倒れこんだ。

ヤッテヤルデスはその光景をしばらく見つめた後、血の海を踏みしめながら再びどこかへ去っていった。






303:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 23:37:06.39 ID:jVx/fvqU0


― あずさ!


「み・・・澪センパイ・・・」

全力疾走で駆け上がった梓はそのまま血溜りの中に座り込んだ。その横たわる澪と律。澪の頚にはぼっかりと裂け目が出来ていた。

どうすればいいのかわからない。梓はそれを最後にそのまま呆然とし、思考がストップした。


しばらくの間あまりのショックで停滞していた感覚の処理は急に回復し、梓の耳にはいきなりサイレンの音が耳に流れ込んできた。

梓はそれをきっかけに血まみれのまま立ち上がると、ふらふらと窓の外を覗き込んだ。

広場にはパトカーが集結し、回転灯のリフレクターはきらきらと輝いている。

警察官があわただしく走り回る光景を梓はぼんやりと見つめる内、梓の思考は唐突に回復した。






304:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 23:38:08.83 ID:jVx/fvqU0


警察・・・!?助かる!生き残れるかも知れない!

その事実が梓に再び活を入れる。

しかし、足元に倒れる澪と律を目にすると、梓の不安定な精神状態に行方もわからない紬と唯、憂の存在が一気にのしかかった。

「探さなきゃ…」

それは一度は回復しかけた梓の思考を再び鈍らせ、梓はうわ言のようにつぶやくと血溜まりを踏み越え、

夢遊病者のように唯の教室である3年2組へと向かっていった。






305:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 23:40:07.89 ID:jVx/fvqU0


― むぎ!


目が覚めると、ムギは教室の血溜まりの中に倒れていた。

ゆっくりと起き上がると目の前には唯と憂の姿があった。

外からはサイレンの音や喧騒が聞こえてくる。

この失神というインターバルは限界だった紬にワンクッション与え、紬の思考を完全に回復させた。

「夢じゃなかった…」

紬は呟くと背中に冷たさと所々の生乾きのゴワゴワした感触を感じながら立ち上がる。

恐らく血の臭いがこの部屋には充満しているのだろうが、完全に匂いに慣れた今、何も感じることはなかった。

そして沸き上がってくるのはあの生物への憎悪だけになっていた。全ての悲しみは今だけ封印する。

そう紬は決め、気合を入れるように自分の頬を叩いた。






306:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 23:41:00.17 ID:jVx/fvqU0


ならばやることはただ一つ。ヤッテヤルデスの存在を世間に知らしめ、ヤッテヤルデスを追い詰め、葬り去る。

もう十分手遅れだという自覚はあった。しかしこうなった今、紬は自身が果たせる責任がこれしかないと考えていた。

素早い脱出方法は何か、紬は改めて廊下側から死角になるよう廊下窓の真下に座り込み、それを考え始める。

当然ながら教室の窓から飛び降りるというのが真っ先に浮かぶ。

だが下手をすれば無意味な自殺になるかも知れない。

しかし廊下は昨日とは比べものにならないほど凶暴なヤッテヤルデスが闊歩し、その目を掻い潜って脱出することは一種の賭けだった。

他に手段がないのか考えようとした時だった。

黒板側のドアがガチャリと開いた。

この瞬間紬は詰んだと悟った。

刺し違えるくらいしてやろうという覚悟を決め、どういう悪あがきをしてやろうかと必死に考え始めた。

「あ…むぎせんぱい…」

しかしそのムギの気合に反して現れたのはスカートまで血まみれの梓だった。






309:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 00:09:41.87 ID:IQ9Q2RK/0


「あ…梓ちゃん…」

紬は思わず立ち上がりそうになるが、はやる気持ちを押さえ、ジャスチャーで梓に姿勢を低くさせ、ドアを閉めさせた。

「紬先輩…生きてたんですか…」

「梓ちゃんも…よかった…」

梓の精神状態はこれを契機に平静へ戻りつつあった。

「どうやって外に出ようかしら」

「もう警察が来てます。そのまま玄関からじゃ無理ですか?」

「とにかく生存を知らせたいわね…」

「電気点けるとか…」

「ダメよ。ここにいるのがヤッテヤルデスにもバレちゃうかも」

二人は頭を抱え込んだ。






310:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 00:11:30.68 ID:IQ9Q2RK/0


― けいさつ!

話は梓がふらふらと歩いていた数分前に遡る。

校舎の向かいに建つ民家のベランダには双眼鏡で遠距離監視を担った所轄の刑事課員が二人陣取っていた。

その警察官の双眼鏡は二階を歩く梓の姿をはっきりと捉え、警察官は大慌てで隊内無線のハンドマイクを取った。


その一報は多重通信指揮車に伝えられ、県警本部からようやく辿り着いた警備部長を筆頭に担当幹部達を沸かせた。

しかし県警は人質救出部隊を有しておらず、4人しか在籍ぜず看板倒れしかけている特殊班と人質救出対処要員として指定されてあった機動捜査隊員が組み込まれ、

臨時編成で人質救出部隊を編成することとなった。装備は覆面パトカーに積みっぱなしの灰色の県警型防弾ヘルメット、突入型防弾衣、

耐刃グローブに肘と膝にパッドとを装備しただけの急ごしらえとはいえ、警棒で撃退される生物相手ならば充分な能力を持ちうるだろうと判断した。

腰が引けるということは熟練された警察官でも有り得ない話ではない。実際に訓練時は好成績をたたき出し、いざ実戦になると全く身動きが取れなくなる者は存在する。

人間は必ず潜在意識に恐怖心というものを持ち合わせており、襲撃に立ち向かったさわ子や律、ムギは非常に勇敢だと言っても過言ではなかった。






311:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 00:16:33.04 ID:xsu8zzicP


アズにゃんが間違われて撃たれそうだけど、あの短時間の乱戦で頭の顔をよく覚えられたなw







312:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 00:30:32.80 ID:an/VDqdN0


>>311
おっと黙ってたほうがよさそうだぜ







313:>>311 お?:2010/09/17(金) 00:54:47.36 ID:IQ9Q2RK/0


一階を徘徊していたヤッテヤルデスはガラス窓越しに慌しく動きまわる警察の動きを見て、再び闖入者たちの襲撃が行われることを察知すると、

待ち伏せにてそれを迎え撃つべくヒョコヒョコと昇降口へ向かった。

前回の屈辱を晴らす事に燃えていたヤッテヤルデスは己が敗北を喫した奇襲攻撃を選び、それに伴う準備を整えて救出部隊を待ち受けた。



ほとんど図面確認と異生物の容姿が人の頭そっくりであるという事実を確認するだけのブリーフィングが終わると

広場には12人の救出部隊員達が整列した。隊長を務めることになった機動捜査隊の班長が号令をかける。

「安全外せ!」

一斉に自動けん銃P230のセーフティを解除する。それを確認した隊長はハンドマイクのプレストークを押しこみ最終確認を取った。

「救出イチ、準備完了」

『了解、受傷事故に注意し速やかに行動せよ!』

警備部長自らのお返事を受けると、隊長はハンドマイクを引っ掛けた。

「行くぞ!」

この号令一下、救出部隊は昇降口に入っていった。






315:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 00:55:42.43 ID:IQ9Q2RK/0


ヤッテヤルデスが息を潜めて陣取る中、救出部隊は遂に昇降口へ足を踏み入れた。

先鋒を担った機動捜査隊の巡査がドアを背にしたまま中に右足から入っていく。

その後ろで隊員達は中へ銃口を向ける。

いざ入ってみるとアイボリーの下駄箱が並ぶ昇降口は思ったよりも薄暗く感じられ、下駄箱もその上に並べられた物も不気味に感じられた。

隊員達は構えの射撃即応体制を取ったまま、小刻みに全身で銃口を上下左右へ向けながら一歩一歩進んでいく。

ひとりの隊員が下駄箱上で蠢いたものに気づいたのは部隊が全員昇降口に足を踏み入れた時だった。

下駄箱上に並べられた段ボールやバケツが一斉に落下する。

真上から襲いかかってくるガラクタに混じってヤッテヤルデスも一緒に飛び降り、

ヤッテヤルデスはまず真下の隊員の頸をその髪腕にて挟み折った。

首の防護はさすがにされておらず、一撃で隊員がヤッテヤルデスの前に倒れる。






317:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 01:01:30.67 ID:IQ9Q2RK/0


救出部隊は頭上からの落下物と共にやってきたいきなりの洗礼に大混乱に陥った。

思い込みや油断は禁物とはいえ、まさか昇降口から本格的な襲撃が起きるとは思っていなかった隊員達は右往左往する。

事前に遭遇した先発の地域課員達から情報を得た上でブリーフィングを行なってはいたものの、隊員達が思い描いていた

標的はもっと大きいものであり、人の頭大の物体が縦横無尽に襲いかかってくるとは夢にも思ってはいなかった。

その隊員達の首を片っ端から髪腕で一気に左下に捻って屠っていく。

そして4人目の隊員の頚椎を叩き折った際、ヤッテヤルデスはさすがにジャンプを繰り返せなくなり咄嗟に床へ着地した。

そこにようやく何人かのP230が火を噴いた。

その9ミリパラベラム弾はそれは凄まじい速度で避ける間もなくヤッテヤルデスの頬を貫いた。

初めて受けた攻撃。ヤッテヤルデスは今までとは別種の武器を持った敵でもあることを認識した。

今までの相手とは敏捷性も攻撃力も違う、そう悟ったヤッテヤルデスは直接攻撃をやめ、ステップを踏むように後退を始める。

隊員達は追い打ちをかけようと更に中へと踏み込もうとするがそれを隊長は制した。


救出部隊はわずか5分弱で4名の殉職者を出して撤退し、結果的にヤッテヤルデスの勝利となった。

ヤッテヤルデスによるワンサイドゲームはこの瞬間、終焉を迎えたのである。






318:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 01:02:57.07 ID:IQ9Q2RK/0


>ヤッテヤルデスによるワンサイドゲームはこの瞬間、終焉を迎えたのである。

の冒頭にしかし、とか、だがって足しておいてくださいな。

なぜか欠けている






331:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:40:49.38 ID:z8xuRt6D0


おっはー!!!!!
www_dotup_org1149488







332:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:42:04.00 ID:o1obH7qA0


>>331
こえーよ







350:ながら:2010/09/17(金) 11:08:46.64 ID:EhE1ifGx0


― あずさとむぎ!

教室で頭を抱えていた二人は立て続けに響いた銃声で慌てて床に伏せた。

「な、なんですか!?」

「じゅ、銃声よ!」

この時の二人は銃への恐怖感や流れ弾への恐怖など全く感じず、

逆に銃声が福音か何かのように聞こえ、二人は警察が突入したという事実に嬉しさを覚えていた。

もうすぐ助かる。そんな思いでいっぱいになった。

しかし、待ちわびる二人のもとに警察官が現れる様子は一向になく、外側の騒々しさのみが拡大していった。






351:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 11:10:30.36 ID:EhE1ifGx0


― けいさつ!


救出部隊の勇姿を固唾を飲んで見守っていた幹部たちは昇降口へ消えていって間もなくの発砲音に

多重通信指揮車のスモーク張りの窓へへばりついた。

外周ではジュラルミン盾片手に校舎の周りを固める警察官達が大慌てで身を低くして走りまわる。

警棒程度で撃退できる相手のはずが、拳銃使用にまで追い込まれた事態に幹部は大混乱に陥った。

『至急至急!救出イチよりゲンポン!救出イチ、村田、杉田、高島、片山が死亡!後退する!』

そこにほとんど絶叫に近い隊長の声が飛び込み、死亡というワードにいよいよ幹部たちは血色を失った。


ぞろぞろと後退してくる救出部隊を盾を構えた同僚たちが周りを取り囲むように固め、

正門前に待機した救急車へ運びこむと、サイレンを高らかに救急車が4台、桜高前を出発した。


幹部たちは早々と錯綜していた情報を根拠に現地本部へノコノコと出て来るのをあと2時間遅らせればよかったと後悔しながら

それでものろい思考で前代未聞の重大事案だということをようやく理解しつつあった。


カラーコーンから防弾警備車の果てまで全てかき集められるだけかき集めた県警機動隊が到着したのはそれから50分後のことで、

ガス漏れを口実に100メートル件の住人を極力追い払うべく、桜高の周辺に機動隊員による阻止線が張られた。






352:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 11:11:40.89 ID:EhE1ifGx0


― あずさとむぎ!

警察が失敗について責任のなすり合いを繰返しているころ

救出という一瞬見えた希望をあっさり裏切られた二人は限界に近づいていた。

時間の感覚は徐々に狂っていき、ずっと壁にもたれまま息を殺して続ける圧迫は正常な思考を少しずつ削いで行く。

外でサイレンと怒号は飛び交っているものの、一向に二人の元へ助けが来る様子もない。

「もう四時半ですね」

梓はすっかり忘れていた壁掛け時計を見てから紬に話しかけた。

「ねぇ…梓ちゃん」

「…はい」






353:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 11:12:11.53 ID:EhE1ifGx0


「あれからどの位経ったのかしら…?」

「わかりません…」

梓がかすれた声で答えた。

二人は逃げ惑っていた間時計を気にする余裕などなく、今初めて時間というものを意識した。

しかしその意識の有無に関わらず、刻々と時間は冷たい床に座る梓と紬の行動力も減らしていた。

「もう…そこから飛び降りようか」

紬は呟いた。梓もそうすればいいのではないかと思った。

窓の外の空は大分秋らしく赤く染まってきていた。






354:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 11:14:48.59 ID:EhE1ifGx0


― ヤッテヤルデス


その頃、死屍累々の1階廊下を歩き回っていたヤッテヤルデスは頬に受けた銃弾が自分に回復しがたいダメージを受けたことを知り、

初めて「恐怖」という感情が芽生えかけていた。

触れた頬には穴が空いている。しかもスティックを刺された時と同じ感覚が全身に走ったことを感じ取っていた。

今までの攻撃はすべて殴打であり、ヤッテヤルデスの強靭な表皮においてはそれらは深いダメージを与えていなかった。

初日にはまだ不完全だったその表皮へは律がスティックを突き立てることも出来たが、今のヤッテヤルデスにとってヒッコリー材ごときは問題なくなっていた。

そんな所に現れたその武器。ヤッテヤルデスの自信は新しく現れた敵によってゆっくりと揺らぎ始めていた。






355:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 11:16:28.77 ID:EhE1ifGx0


― じゅうろくじごじゅっぷん!


暗くなっていく空の中、二人はさっきから強烈な睡魔に襲われ始めていた。

連続した緊張状態を維持させる事は精神力をザクザクと削り、もう今や積極的に動こうとする気力は二人から失せかけていた。

時計をみる気力もなく、ただ暗くなっていく教室で黙っている。

おまけに隅には憂と唯の姿があり、どうしても視界に入るそれが死への恐怖も倍増させていく。

それでも少しくらい眠っても…という思いと眠ったまま死にたくはないという思いの狭間を二人は揺れながらも耐えていた。

梓と紬はお互いに身を寄せ合って冷たさを少しでも和らげつつ、手を握り合いその感触で何とか気力を確保しようと必死だった。






358:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 11:18:34.45 ID:EhE1ifGx0


『クセノン、照射!』

暗くなっていく空の下、赤色回転灯の光は綺麗に映える。

そんな中指揮車のラウドスピーカーが叫ぶと、並んだクセノン投光車によって校舎が白く浮き上がった。

その白い光は廊下にも一斉に射し込み、暗い廊下は昼間のように照らし出された。

『こちらは○○県警察です!これから救出部隊が進入します!生存者の皆さんもう少しです!』

指揮車のバスケットによじ登っていた機動隊員はそれに加えて気を利かせたつもりで突入のお知らせも付け足した。






359:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 11:21:16.45 ID:EhE1ifGx0


二人の朦朧とした意識は真っ白い光と飛び込んできた声で一気に鮮明となった。

紬と梓は思わず立ち上がって廊下を覗き込む。

窓の向こうにはクセノン投光器が立ち並び、こちらを照らしている。

続いて飛び込んだ救出という言葉でそのまま二人は抱き合った。


その頃、音楽室の窓から外を伺っていたヤッテヤルデスはいきなり1000カンデラを誇るクセノン投光器の光をもろに受け、その視力を大幅に低下させた。

― 敵が再び来る、そう悟ったヤッテヤルデスはそのまま転げるように窓枠から飛び降りると、大慌てで二階へと駆け下りた。






361:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 11:21:52.21 ID:EhE1ifGx0


短く響き渡るサイレンに正門前を塞ぐように停車したパトカーが後退すると、

茂みの影からは厳つい警察車両達が現れた。

明るい水色のカラーリングに反して特型警備車と呼ばれるこの車両は耐弾耐爆性能がある程度確保され、

銃座と銃眼も設置されてあり、警察向けの軽装甲車といっても過言ではない。

続いて後衛のようにガラスを穴の空いた防護板で覆った青色の常駐警備車が現れる。

両脇から集まってくる防弾盾を掲げた機動隊員を両側に伴って赤色回転灯を消し、車幅灯のみでじわじわと進むそれらは非日常性を不気味に強調した。

広場中央の花壇前に警備車が停車し、車両後部にある観音扉が開くと、黒ずくめの防弾装備に身を包んだ完全武装の銃器対策部隊員たちがアルミステップを踏みしめて降車した。

配備されたばかりの真新しい「高性能機関けん銃」ことMP5Jをその手に携えて、それぞれ別れて校舎内に進入していった。






369:さるってたんだよぅ:2010/09/17(金) 12:28:38.85 ID:EhE1ifGx0


― じゅうきたいさくぶたい!


『現本より各班、これより状況を開始する』

県警発足史上初の大規模オペレーションがこの通話で幕を開けた。

その通話と同時に再びクセノン投光車へは消灯指示が飛び、一斉に投光車が消灯して校舎は再び暗闇に沈む。

その暗転した隙に降車していた制圧第一班が講堂渡り廊下入口に小走りで向かう。

施錠されていたドアのガラスはさっきの救出部隊の生き残りからなる支援班が

ガラスクラッシャーでたたき割り、手を突っ込んで鍵を解錠する。






370:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 12:30:48.04 ID:EhE1ifGx0


ドアを押し開けて廊下に侵入すると、それぞれは壁に張りついてフラッシュライトを消し、

それぞれ真新しいナイトビジョンゴーグルを暗順応し始めていた目に当てる。

班長が手で前進の合図を送ると、一斉には渡り廊下を進みだした。

グリップを握る手は汗ばみ、心臓の鼓動は早く、目は忙しくギロギロ左右を窺う。

―生きていてくれ。

そんな思いを抱きながら銃器対策部隊制圧第一班の隊員達は廊下を踏みしめていく。

僅かな距離の昇降口までに2分近くかけて進み、ようやく昇降口側より進入した制圧第二班と合流した。






372:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 12:34:14.10 ID:EhE1ifGx0


制圧第三班は図書館側より進入し、血溜まりの異臭の中を進んでいく。

先頭の隊員が慎重に角に張りつくと様子を伺う。ナイトビジョンゴーグルの緑色の視界には何も映ってはいない。

廊下の奥には昇降口から入ってくる制圧二班の姿があった。

安全を確認した隊員は手で前進合図を送り、制圧第三班は二階への階段を登り始めた。

二階へ上がりきると、四人が一斉に左右に銃口を向ける。緑色の視界には無人の廊下が映し出されていた。



だが次の瞬間理科室のステンドガラスは砕け散り、そこからヤッテヤルデスが飛びだしていた。

最初にヤッテヤルデスに遭遇したのは制圧第三班となり、ヤッテヤルデスはそのまま目の前の隊員に組み付いた。






373:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 12:38:15.56 ID:EhE1ifGx0


「うわ!」

不意を突かれた隊員はそのままよろめいて壁にぶつかった。

だが隊員の装着していた新型ボディーアーマーは予想以上に固く、襟が首を守ってヤッテヤルデスは頚動脈に歯を突き立てることすらままならない上、

今まで相手にしてきた教員や生徒達とは比べものにならない腕力で振り払おうとしてくる隊員に苦戦を強いられた。

「この野郎おおおおっ!」

組み付かれた隊員は叫びながら邪魔になったMP5Jを放り落とし、レッグホルスターからS&M3913を抜くとそのままヤッテヤルデスの頭に押し当てた。

逆に組み敷かれかけたヤッテヤルデスが離れようしたときにはもう遅く、

隊員がM3913の乾いた音と手に反動を感じ取り、床で空薬莢が転がる小さな音がした時には

ヤッテヤルデスは沈黙し、廊下の床に転がり落ちていた。






374:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 12:40:02.02 ID:EhE1ifGx0


「クソ!」

ようやく自由になった隊員は吐き捨てるようにヤッテヤルデスを一瞥した。

「おい大丈夫か?」

「あ…ああ…」

隊員は恐る恐る床に転がるヤッテヤルデスをコンバットブーツのつま先でつついてみる。

「なんだよ死んでるぜ」

「おい、油断するなよ」

その発言に根拠はなかった。そもそもヤッテヤルデスの生死の判断法など隊員達には知るすべもなかった。

判断に使える情報は動くか動かないか、それだけであった。

班長はリップマイクで現本と連絡を取り始める

「ゲンポン、こちら制圧3。生物を制圧した」






376:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 12:45:41.77 ID:EhE1ifGx0


その声は多重通信指揮車に届き、指揮車内には一気に安堵の溜息が広がった。

カサカサに渇いていた喉にそれぞれ配られたペットボトル緑茶を流しこみ始める。

ようやく余裕が生まれた幹部たちにはもはや笑みすら浮かびはじめていた。

「ゲンポンより制圧3、了解した」

銃器対策部隊の隊長はマイクに返事を吹きこむと大きなため息を付き、そのまま硬いシートに座り込んだ。

「岡部くん。ご苦労さん」

警備部長は隊長の苦労を労う意味と感謝を込めて肩を軽く叩いた。






378:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 12:48:35.26 ID:EhE1ifGx0


ヤッテヤルデスを制圧したという名誉を担った制圧第三班の隊員達も余裕が生まれ始めていた。

銃口はまだヤッテヤルデスに向けてはいたものの班長は片手のMP5Jのセレクターレバーをセーフティに戻すべく親指を掛けた。

だがその瞬間、押し黙り、目を見開いて転がっていたヤッテヤルデスは飛び上がり班長の頭に組み付いた。

「うわっ!」

恐るべし膂力は不意を突かれた班長の頚椎をそのまま一発で後ろにへし折り、崩れていく班長を踏み台に隊員に跳びつく。

油断してたところへの未知の生物による反撃でパニックになった隊員はMP5の引き金を引いた。

狂った銃口は白い漆喰壁やドアには弾痕が空き、さらに周りの同僚達をも撃ちぬいていった。


その銃声は外に響き渡り、油断しきっていた指揮車の幹部たちは口にしていたペットボトル緑茶を軒並み吹き出すか気管に流し込んだ。






379:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 12:49:27.53 ID:EhE1ifGx0


『2階東側にて制圧3にアタックあり!全班急行せよ!』

隊内通信系は大混乱に陥り、怒号が飛び交う。

西側階段前ホールに展開していた制圧第二班と第一班は中央階段と西側階段に分かれて救援に走る。

校内の美しく磨きあげられた廊下には出動靴の足音が響き渡り、白い足跡が増えていく。


硝煙の匂いが立ち込める中、中央階段下に到着した制圧第一班の班長は発砲を最低限などという悠長なことをしていれば確実に殺られると確信し、

セレクターを三点に切り替える。

踊り場まで前進し、一旦タイミングを伺おうと壁に張り付いて覗き込もうとした隊員は我が目を疑った。

廊下に倒れこむ制圧第三班。

『制圧3がやられてます!』

押し殺すように隊員がリップマイクに吹き込む。隊員はベストからフラッシュバンを取り出していた。






381:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 12:51:31.19 ID:EhE1ifGx0


「何が何だかわからない」に陥れて混乱させ怯ませるという状況を利用するのはヤッテヤルデスだけではなかった。


ヤッテヤルデスがその外見と戦法で相手をそう翻弄するならば、警察は「フラッシュバン」などと呼称される閃光弾にその役割を求めた。

ヤッテヤルデスが振り返ったときには、ピンを抜かれたフラッシュバンが廊下の床に転がっていた。

間もなくその雷管が破裂してオレンジの凄まじい閃光と爆発音を立てて炸裂する。

視界が晴れた瞬間、そこに転がり込んだ4人は一斉にフルバーストモードに切り替えたMP5Jを構えた。

廊下の真ん中で驚愕したように立ち尽くしているであろうヤッテヤルデスを掃射すべく一斉に9ミリ弾を叩き込んだ。

連射音が響いてしっくい塗りの壁は砕け散り、磨きあげられた木の床は穴だらけになっていく。

弧を描いて空薬莢は宙を舞い、白い硝煙が立ち込める。






382:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 12:57:15.16 ID:EhE1ifGx0


しかし硝煙が晴れてくると、弾痕だらけになった廊下の中心にはヤッテヤルデスが立っていた。

何発かは確実に命中しているはずの敵は健在であり、その事態に驚きは隠せず、隊員達に恐怖が湧き上がる。

「!?」

思わず後ずさる隊員達。

そこへ9ミリ弾を浴びせかけられたとは思えぬような軽快なステップでヤルデスは襲いかかり、

白い壁や窓ガラスに鮮血が飛び散っていった。


『制圧1が襲撃された!各班2階へ向かえ!』

無線機ががなり立てる中、控えとして待機していた制圧第四班が校舎内に突入し、

西側階段下の踊り場で支援態勢を整えていた第一班隊員達は大慌てで2階に駆け上がっていく。

しかしヤッテヤルデスはそれを西側階段の頭上の手すりで既に待ち受け、隊員達を真上から殲滅しはじめた。






445:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 01:01:55.45 ID:en/YDVMs0


皆が呪い呪い言ってるがこの前読んだ紬の拷問SSのおかげで全く怖くない不思議wwww






446:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 01:02:35.36 ID:4UNeGgKMP


なんぞそれ?







448:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 01:28:43.32 ID:en/YDVMs0


>>446
紬「私、みんなを苦しめるのが夢だったの~」
http://elephant.2chblog.jp/archives/51561824.html
まとめてあるから見て来い
リアルタイムで見てたがグロいとかそういうレベルじゃなかった







453:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 03:04:22.06 ID:Q+UmOhSW0


>>448
途中で見るのやめたわこれ
最終的にどうなったの?







447:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 01:17:28.81 ID:HajbXhCG0


紬「私みんなを傷つけるのが夢だったの~」
これいろんなところに貼られまくってたけど気持ち悪い






450:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 01:45:26.63 ID:stKcjD4d0


そういうまとめサイトで使ってる画像ってちゃんと使用許可得てるんだろうか?






451:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 02:23:53.83 ID:lgPIU7Zu0


お前って・・いやなんでもない






454:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 03:09:39.77 ID:EUkMaRbJ0


唯以外死亡、ムギは海外へ逃亡し唯はムギが主催する拷問ショーの見世物の一つとなっておしまい


めでたしめでたし







455:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 03:14:09.28 ID:Q+UmOhSW0


>>454
最悪じゃねーか







493:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 19:02:00.32 ID:nAsjYEeC0


― あずさとつむぎ!


息を潜め、じっと警察を待ち詫びる二人を驚かせたのはガラスの音だった。

日本警察が得意とするサイレントエントリーは梓と紬にその開始を悟らせなかった。

しかし、ヤッテヤルデスの襲撃でそれはあっさりと崩れた。

襲撃された隊員の怒号、そして紬達の鼓膜を揺さぶるように銃声が響き渡った。

すぐ近くでの銃声にさすがの二人も頭を抱えて床に伏せる。


やがて銃声が止み、ボソボソとした声が聞こえ始める。

「…た、助かるのかしら?」

「そ、そうみたいですね」

紬と梓が立ち上がり、廊下の方を伺おうと恐る恐るドアの方に向かった瞬間だった。

悲鳴と共に今度は激しい銃声が響き渡り、梓と紬は驚きのあまり今度は床に転げた。






494:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 19:02:55.46 ID:nAsjYEeC0


― じゅうきたいさくぶたい!


精神的な混乱は緊迫した現場で大きな影響を与える。

銃器対策部隊は制圧班を二班一気に喪った上に真上からの襲撃を受け、三個班を失いかけていた。

だが、制圧第二班が不意打ちの動揺で階段の踊り場までにも至れずに屠られ尽くされたところに、後衛の制圧第四班が班長の号令以下果敢に突っ込んで乱戦が始まった。

隊員達は校舎が壊れようと構うまいとM3913を乱射し、フラッシュバンを立て続けに炸裂させて閃光と轟音がホールに響き渡る。

続いて前回突入して壊滅した救出部隊の生き残りだった機動捜査隊員5人が復讐を果すべくP230と中盾片手になだれ込み、いよいよ正面衝突となった。

ヤッテヤルデスは左右から躊躇うことなくなだれ込み集結した警察官達の一斉射撃を受けて一気に階段まで押し込まれる。






495:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 19:04:18.66 ID:nAsjYEeC0


しっくい壁は32.ACP弾や9ミリパラベラム弾を受けて粉々に砕け、床や手すり、ロッカーには弾痕ができ、ポスターはちぎれ飛んだ。

さすがに押されて後ずさっていくヤッテヤルデスは何発もの弾を顔面に一気に受けて、

その俊敏な動きを作り出す髪腕と髪足は何箇所も切り裂かれてヤッテヤルデスの膂力を蝕んだ。

警察官達は弾切れになるか、撤退を決め込んだヤッテヤルデスが階段をよじ登って視界から消えることになるまで誰かが撃ち続けた。

『制圧4からゲンポン!生物は二階へ逃走!』

制圧第四班の班長はリップマイクで報告しながら何人かの隊員がそのまま後を追いかけようとするのを制した。

今追撃すれば再びこちらは劣勢に転じる、そう踏んだのである。だが、班長は一階を完全に制圧したという感触を得ていた。






496:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 19:04:51.06 ID:nAsjYEeC0


― むぎあず!


凄まじい銃撃音とガラスの音に怒号、しまいには爆発音。

あまりの騒ぎに紬と梓は床に張り付いたまま全く身動きが取れなかった。

だが、そんな二人の下に静寂は戻ってきた。

さらに再び投光器が一斉点灯し、廊下は白く照らし出された。

「あ…梓ちゃん…大丈夫?」

「は、はい…」

それをきっかけに恐る恐る顔を上げるて辺りを見回すが、教室の中には特に異変がなかった。

今度こそと中腰姿勢でドアを慎重に開ける。

見回した廊下は薄く硝煙の煙が残り、それは廊下にぼんやりとした白いフィルターを掛けて見せた。

「唯ちゃん…憂ちゃん…さよなら」

紬は名残惜しそうに振り返ると、そのままドアを閉めた。






497:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 19:05:36.59 ID:nAsjYEeC0


窓の外からは慌ただしい怒号が聞こえてくる。

しかし廊下にいる二人にはそれがどこか遠くの音に聞こえた。

そして床には澪や律の亡骸もそのままに、更に人が倒れている。

そこに二人はゆっくりと近づいていく。

その時、二人はヤッテヤルデスへの恐怖心が薄れつつあるのを感じていた。

感覚が麻痺してきたのかと紬は一瞬考えたがすぐにやめた。






498:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 19:06:36.38 ID:nAsjYEeC0


そこにはうつ伏せに警察官が倒れていた。

ヘルメットをかぶった物々しい姿に一瞬兵隊かと思ったものの、背中にあるPOLICEと書かれたワッペンで警察官と解った。

紬にはどういう理由でこの警察官が倒れているのかは簡単にわかった。そしてこの警察官はもう生きていないことも。

そばに転がった拳銃。警察官のものだろう。

ムギはそれを躊躇なく拾い上げた。

手のひらにはずっしりとした重みを感じ、うっすら機械油のような匂いが鼻をくすぐった気がした。

「…ムギ先輩?」

「梓ちゃん…。頼みがあるの」

ムギが梓に背を向けたまま言った。






499:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 19:07:10.26 ID:nAsjYEeC0


「なんですか?」

「ここで別れましょう」

そこでようやくムギは梓は振り返った。

「い、嫌です!もう…もう…誰も…」

梓は予想外のムギの発言に動揺し、途中からその声はかすれた。

「お願いします…置いてかないで…」

梓が涙を浮かべる中、立ち上がった紬は梓の肩に手を置くと、その目を見据える。

「梓ちゃん。私は必ず戻ってくる」

「ムギ先輩―」






500:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 19:07:47.36 ID:nAsjYEeC0


梓が口を開きかけたとき、ムギと梓の目の前に再びヤッテヤルデスは現れた。

「梓ちゃん!」

紬は叫ぶやいなや、その銃口をヤッテヤルデスに向けていた。

それは全くもってヤッテヤルデスも想像だにしていない事態だった。

ヤッテヤルデスが最も今不得手とする武器を標的が手にしていたのである。

それは今まさにあの忌々しい武器でダメージを受けたヤッテヤルデスに躊躇いを覚えさせ、梓が逃げる隙を与えた。

梓はそのまま転がるように中央階段を駆け下りていった。






504:メイン不調でサブ機投入:2010/09/18(土) 20:00:07.35 ID:nAsjYEeC0


「あなたの相手は私!」

紬が今まで銃と無縁であったかといえば嘘であり、父親が射撃場で的を撃ち抜く姿を小学生の時に確かに目にしていた。

その時のおぼろげな記憶だけを頼りに見慣れた部室への階段を駆け上がった。

紬は部室に飛び込むやいなやドアの真横に張り付き、ヤッテヤルデスが飛び込んでくるのを待ち受ける。

目の前に広がる思い出のいっぱいつまった部室はもう見る影もなく荒らされぐちゃぐちゃになっていた。

砕け散った水槽のガラスは紬の下で踏み砕かれてジャリジャリと鳴る。

次の瞬間、ヤッテヤルデスが転がり込んでくる。そのまま器用に回転しつつムギの方に向きなおって立ち上がった。

安全装置の有無など全く考える余地もないまま、ムギは震える手で狙いをつける。






505:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 20:01:03.37 ID:nAsjYEeC0


そんなムギを嘲笑うかのようにヤッテヤルデスは声を上げた。

「ウテナイヨ!」

ヤッテヤルデスが喋ったことで紬の集中力は一瞬で途切れそうになる。

しかしその驚きより紬の執念が優っていた。

「憂ちゃんの分」

小さく呟くとムギは引き金を引いた。

乾いた音が響き、硝煙の匂いが立ち込める。

「ギギ!」

紬は問題なく弾が出て命中したことにまず驚いた。






506:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 20:01:43.03 ID:nAsjYEeC0


かたや完全に油断していたヤッテヤルデスも思わぬ反撃に目を剥いていた。

フラフラと髪腕を使ってトンちゃんの水槽が載っていた台によじ登る。

「澪ちゃんの分」

紬は再び引き金を引くが、今度は外れて後ろにあった窓ガラスを粉々にした。

ヤッテヤルデスは自分に迫る危険を感じ、机から割れた窓枠に飛び退く。

「…許さない」

再び引き金を引いて乾いた音が響き、漆喰の壁に穴を開ける。

足元では空薬莢が小さく金属の音を立てて落ちていた。






507:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 20:02:28.56 ID:nAsjYEeC0


「りっちゃんを返せ」

その気迫はヤッテヤルデスにとっても鬼気迫るものであり、思わず気圧されてジリジリと後ずさった。

見たことはあっても銃の撃ち方を習ったわけではない。

だが、単純かつ徹底的に機能性を追求したものは恐ろしいことに一度見ただけのムギにも容易に取り扱うことが出来るシンプルさを持ち合わせていた。

「唯ちゃんを返して!」

狙いを定めた紬の声に続いて再びパンという乾いた音が響く。今度はヤッテヤルデスの白い額に黒い穴を空けた。

その一発はヤッテヤルデスの何かを壊してその視界を一気に狭め、ヤッテヤルデスに大きな痛手を与えた。

そして脆弱で弱い標的に己が不死身でないことも悟らされた。

己の全てを揺らがされたヤッテヤルデスはまるで何が起きたかわからない、驚愕した表情でムギを見つめていた。

しかし、ようやく事態に気づいたのか、背を向けるとそのまま割れた窓から飛び出した。


「…あ…お、終わった…」

ムギは銃を落とすと、そのまま脱力したように床にへたり込んだ。






508:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 20:03:22.40 ID:nAsjYEeC0


― いっかい!


梓が階段を駆け下りたとき一階中央階段では管区機動隊員達がヤッテヤルデスを封じ込めるべく、

ジュラルミン製大盾と移動式の防弾盾を並べて階段にバリケードを構築しようとしていた。

「助けてください!」

その甲高い声で機動隊員達は一斉に見上げる。

そこには階段の踊り場から今まさにこちらへ向かってくる少女。

警戒中の機動隊員達が防弾盾を片手に、まるでサインを求めるファンのごとく一斉にその少女目がけて集まった。






509:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 20:03:53.89 ID:nAsjYEeC0


― こうしゃしょうめん!


梓を防弾盾で囲い込んだ機動隊員達が外に飛び出したとき、いきなり銃声が響き渡った。

機動隊員達は大慌てで梓の上にも防弾盾を掲げてストップする。

「なんだ!?」

機動隊員や警察官達が右往左往する中、梓は防弾盾で見えない校舎の方を振り返った。

「…ムギ先輩」

立て続けに響いた銃声が止む。

警察官たちはハッとしたように揃って校舎を見上げた。

視線が集まる中、校舎の窓ガラスを破って破片と共に何かが飛び出して地面に転がり、

並んだ探索灯とキセノンランプは一斉にそれを照らし出した。

ヤッテヤルデスだった。






510:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 20:05:41.00 ID:nAsjYEeC0


「至急至急!防護7からゲンポン!外!出現!出現!」

その横でマイクをひっ掴み絶叫する警察官。

『撃て!止めろ!』

ラウドスピーカーの怒号で制服警察官がホルスターから一斉にけん銃を抜いて前進し、梓を追って向かってくるヤッテヤルデスに引き金を引いた。

続いて後列の警察官はパトカーを盾代わりに一斉に発砲し立て続けに銃声が響き渡り、白々とした硝煙が立ち込め始める。

続いてヘルメットを被った制服警察官達が両脇から挟みこむ形で防弾盾片手に一斉射撃を始める。

ヤッテヤルデスはその警官隊に跳びかかり、警察官のひとりがヤッテヤルデスの前に倒れた。

しかし倒れた警察官は特段負傷したわけでもなく再び立ち上がり、逆に進んでいくヤッテヤルデスの後頭部に至近距離で発砲した。






512:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 20:15:19.01 ID:nAsjYEeC0


もうヤッテヤルデスからは既に最初の敏捷さはもう感じられなくなっていた。

だが、黙々と歩むことを止めず、クセノン投光器の白い光りに照らされた凄惨な容姿からは更に鬼気迫るものが立ち込めていた。

幹部満載の多重通信指揮車は大慌てで校舎から離れ、入れ替わりに滑り込んだ防弾警備車の三つの銃眼からは

停車するやいなやMP5A5の銃口が突き出されて火を噴いた。

スムージングされた常駐警備車は後退を始めて校舎外への脱出阻止線を構築し始める。

ヤッテヤルデスは校舎内での戦いで既に30発近くの弾を受けたこともあり、既に己に限界を感じていた。

梓はもう近くだとは感じていたが、人間の抵抗は激しさを増していく。ヤッテヤルデスはもはや梓まで辿りつくことは叶わぬと察した。






513:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 20:16:03.42 ID:nAsjYEeC0


そこに機動隊員が立ち塞がって、ヤッテヤルデスに向け一斉にガス筒発射器という名のグレネードランチャーを真正面から水平射撃した。

弾頭はガス弾とはいえ、過去に重大傷害を与えるとして直接照準を禁じられたその装備はヤッテヤルデスに直撃し、炸裂したガス弾が確実にダメージを与えた。


その光景を梓は機動隊員たちの構える防弾盾の隙間から目にした。

ヤッテヤルデスはガス弾の直撃を受け、仰向けに倒れこんだ。

投光器は全てそこへ向けられ、真っ白い光の中警察官達は盾を先頭に、ヤッテヤルデスを囲み始める。






515:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 20:19:29.45 ID:nAsjYEeC0


それをきっかけに屈強な管区機動隊員達が梓を大事に取り囲む壁も崩れた。

その瞬間を見逃さなかった梓はそこを縫ってヤッテヤルデスに向かって走った。

足がもつれ、敷かれたタイルには何度も躓きそうになりつつも走っていく。

「おい!」

「駄目だ!行くな!」

警察官の絶叫が響き、一斉に機動隊員たちは自殺を始めんばかりの梓を抑えようと動き出す。

仰向けに転がったヤッテヤルデスは梓の接近にフラフラと立ち上がる。


一斉に警察官達が銃口をヤッテヤルデスに向けた音の後、月明かりに照らされた静寂が広がった。






520:さるは何故ノッてくると来るんだよ:2010/09/18(土) 21:02:15.64 ID:nAsjYEeC0


目の前に立ちはだかった梓。それはヤッテヤルデスにとって狩りの対象であった。

目の前で立ち上がったヤッテヤルデス。それは梓にとって憎むべき敵であった。


ヤッテヤルデスは光のない眼で梓を見つめていたが、やがてその血で染まる黒く小さな手を梓に向けて伸ばした。


梓はその光景を他人事のように見ながら考えていた。

この生き物は何故現れたのだろう。私の大事な人達を奪っていった。

すごく憎い…憎くて仕方ない。

なぜ…。なぜ私たちを…?

どうして?

その問いは喉元まで出かけた。

だが、それより先に梓はヤッテヤルデスの指先に触れていた。






521:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 21:07:15.12 ID:nAsjYEeC0


県警機動隊第一中隊特殊銃班の狙撃手は向かいに建つ民家のベランダからヤッテヤルデスを特殊銃?型の高性能スコープに捉える。

狙撃手にとって梓は身を挺して敵を誘き出した勇敢な女子高生であった。

最初で最後かも知れぬこの制圧のチャンスを逃すまいと狙撃手はリップマイクに叫ぶ。

『捉えました!』

「やれ!」

多重通信車の中で県警警備部長が顔を紅潮させてマイクに怒鳴った。

隊員は特殊銃?型とは名ばかりなボルトアクション式ライフル、豊和ゴールデンベアの引き金を引いた。


「アズサ。ヤッテヤルデスハ―」



梓の目の前でヤッテヤルデスの頭部は半分程吹き飛び、梓にその破片と飛沫が吹きかかった。






522:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 21:13:46.21 ID:nAsjYEeC0


― いっかげつご…!


久々の高気圧が日本列島を覆い、青空に蓋をするように蔓延っていた鉛色の雲が消えた日、

県庁所在都市の中心部を走る幹線である県庁通りに建つ煉瓦色の市民会館、

その周囲の道路には朝から物々しい機動隊の姿があちこちに目についた。

黒い喪服姿や見慣れた制服姿でごった返す市民会館の入口には

「桜が丘女子高等学校爆破事件犠牲者合同追悼式」という長ったらしい看板が掲げられていた。


その市民会館が有する1500席の大ホールの客席の中では合同追悼式が執り行なわれ、

満席となった参列席の中には梓、紬、和の三人の姿もあった。






524:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 21:16:03.14 ID:nAsjYEeC0


57名の遺影はステージいっぱいに組み上げられた祭壇に白菊とともに並べられ、観客席を見つめている。

「犠牲となられた方々とそのご遺族に対し、謹んで哀悼の意を表します―」

それを背に、時の内閣総理大臣は2分25秒、文字換算にして780字の式辞を述べた。

果たしてこの57人をあの忌まわしき生物と勇敢に戦い散っていった人々だとこの中の何人が知っているのだろうか。

その真実はテロリズムの犠牲者というベールに覆われ、時間という埃に覆い隠され、やがてその存在すら忘れられて行くに違いない。



1時間20分の追悼式が終わると、多くの参列者の流れと共に帰り道につく。

その人垣の向こうではマスコミの放列をSPが蹴散らし、白バイが甲高いサイレンを響かせて黒塗りの車列が発進していた。

警笛が遠ざかる中、三人は無言で顔を見合わせた。






525:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 21:18:23.28 ID:nAsjYEeC0


律、澪、唯、憂、さわ子はもういない。

あの日が残していったものは「無力」という目の反らしようもない事実だけであった。

結果的に紬と梓は大いに忌々しい生物の制圧に貢献していた。

だが、それが逆に自分たちの見通しが大いに甘く、そして純粋無垢で愚かな女子高生であることを思い知らせた。

彼女たちは自分から死という恐ろしい敵に無意味に立ち向かい、そして返り討ちにあったのである。






526:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 21:21:02.84 ID:nAsjYEeC0


すっかり葉の落ちた並木を三人は歩いていく。ほっと吐いた息は白く、頬をひんやりと刺す寒さは冬をはっきりと感じさせた。

「寒いですね」

頬を赤くした梓が無言を破った

「うん…」

「寒いわね」

それに応じて和と紬も口を開く。

「ご飯食べに行かない?」

和が思いついたように言い出した時、梓達の前に流動警戒中の警察官が現れる。

警察官達は和達を気に止める様子もなく、そのまま生垣を確認しながらすれ違っていく。

しかしその姿は三人にあの忌ま忌ましい記憶の影を呼び覚まそうとした。

「あ、いいですね!私、この前テレビでやってたイタリアンのお店に行きたいんですが―」






527:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 21:23:54.83 ID:nAsjYEeC0


喋りながら斜めを振り返った梓はそのまま道路を挟んで向かい側、雑居ビルの間に消えていく何かを見て釘付けになった。

「どうしたの?」

「…梓ちゃん?」

突然固まった梓に和と紬も怪訝そうにその視線の先を振り返った。


視線の先には薄暗い路地を蠢く影があった。

雑居ビルの間の細い路地、その片隅にあるゴミバケツとハイゼットの横には黒い塊がいた。

それはあの忌まわしき日の記憶を梓にフラッシュバックさせた。

梓は生垣を飛び越えて、車の途切れた道路を渡りだす。

それに気づいた塊は慌てて駆け出し、紬と和も信号と共に現れた短い車群をやり過ごしてから慌てて走った。






528:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 21:27:11.93 ID:nAsjYEeC0


「猫…」

路地に飛び込んだ梓は拍子抜けして立ち尽くした。

太った黒猫はその鈍重そうな見かけに相反して俊敏に花壇へ飛び上がり、枯れ枝が目立つ植え込みの中に消えていった。

「よかった…猫ね…」

「あんな太ってても俊敏なものなんだ…」

響いた足音とともに背後からは和と紬の声がした。






529:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 21:31:51.95 ID:44F/Sgvm0


支援







530:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 21:32:58.22 ID:nAsjYEeC0


遅い昼食を終えた三人は駅に向かって歩いていた。

幹線道路と幹線道路が交わる交差点。

三人が人の流れと共に横断歩道へまで差し掛かったとき、歩行者信号が点滅を始める。

「あっ、信号変わっちゃいますよ」

紬を引っ張るようにして駆け込むが、和はそれをためらって立ち止まる。

点滅を終えた歩行者信号は赤に変わって和だけをそこに遮った。

「あー!和センパイ!」

「和ちゃんエラいわぁ。渡らなかったのね」

向こう岸では紬と梓が残念そうに振り向いていた。






536:最後の最後でさるうううううううう:2010/09/18(土) 22:03:37.62 ID:nAsjYEeC0


そんな二人に和が視線の焦点を合わせようとしたその時、横断歩道の向こう岸で

こちらを見つめる顔の中に和は頭1つ抜きん出てこちらを見る自分の顔を見た気がした。

「…え?」

小さくつぶやきが漏れたときには無意識の瞬きが視界をリセットし、次に戻った時にはスタートした車が一斉に流れこんでいた。

やがて、歩行者信号が青になると和の周りの人々が一斉に横断歩道へ流れ込み始める。

和がその中をいくら見回しても、そこにはもう土曜日の午後の街の姿しか残されてはいなかった。

「和ちゃん!」

雑踏の中から梓の呼ぶ声が聞こえてくる。

まさかね…。

そう思いながら和は梓達に追い付くべく、まばらになり始めた雑踏を駆け出した。




澪「恐怖、ヤッテヤルデス」 ― おわり!






537:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 22:05:32.23 ID:PrsUfpK60









538:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 22:06:15.36 ID:XM6wD+Uo0


ホラー映画風の終わり方だな






542:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 22:08:44.84 ID:/K/56fig0


面白かった 最後までご苦労さん






543:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 22:09:37.03 ID:2S5Kj6jC0


結局ヤッテヤルデスってなんだったの?
伏線らしきもの散りばめられてるから






544:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 22:10:43.18 ID:f54SoLwH0


和先輩じゃなくて和ちゃんと呼ぶという事はつまり・・・ごくり







545:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 22:13:07.45 ID:IdI6YxMp0


>>544
やめろ、そこには触れるな…
消されるぞ…>>1







546:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 22:14:30.91 ID:nAsjYEeC0


構想のみ、書き溜めゼロスタートなんて二度とやらないwwww
あっちこっち誤字脱字から抜けたレスまであって見ててひどくて全部直したいわwwwww


そして爺ちゃん心配してくれた人本当にありがとう







553:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 22:27:49.33 ID:nAsjYEeC0


>>546でまた抜けてたwwwwもう恥ずかしいww
戻りたくなかったwwwwwwヤッテヤルデス様にかじられるデスwww

本当に長い間お付き合い頂きましてありがとうございました。

それでホントにさようならデス







554:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 22:29:18.25 ID:lMAbXalhO


>>553


また何か書いてね







549:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 22:23:05.01 ID:o6bY4fqO0


ヤッテヤルデスはなんだったの






560:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/19(日) 00:18:10.23 ID:FLTQzTj20


乙 毎日張りついてみてたよ
ヤッテヤルデスは実は悪いやつじゃないんじゃないかと思ってしまう






561:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/19(日) 00:21:07.58 ID:DncQGjdcP


「ワタシセイトカイイクデス」







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        コメント一覧

          • 1. あ
          • 2010年09月19日 10:25
          • 最初でワロタ。髪腕ェ・・・
          • 2. ななし
          • 2010年09月19日 10:26
          • なかなかの良作
            アニメ化してほしいくらい
          • 3. 774
          • 2010年09月19日 11:02
          • どんなに頑張って想像しても、ヤッテヤルデスはゆっくり梓に変換される…
          • 4. 名無し
          • 2010年09月19日 12:10
          • こんなシリアスになるとは思わなかった
          • 5. あ
          • 2010年09月19日 13:03
          • ゲロ澪思い出した
          • 6. 774
          • 2010年09月19日 13:11
          • 情景の描き方がうまいためか、凄惨なはずなんだけどグロくなくて、
            引き込まれてサクサク読んでしまった。

            結局、ヤッテヤルデスの正体が判然としないのが謎めいてるな。
          • 7. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2010年09月19日 14:04
          • これは…スゴいな
          • 8.
          • 2010年09月19日 14:21
          • 1 なんかなー
            死ぬSSばっか続くな
            こんなん書いてて楽しいんか?
            ん?
            キャラに愛着無いんか?
            ん?
          • 9. 名無し
          • 2010年09月19日 15:07
          • 地文ありでも一文が短くて簡潔だから読みやすいね。

            でも「バイハザ」SSみたいに、何だかんだでキャラは死なない作品の方が好きだけど……。
          • 10. 名無し
          • 2010年09月19日 15:30
          • このムギちゃんヒロイン補正入ってるな
          • 11. m1911a1
          • 2010年09月19日 16:23
          • 警察のやりとりがリアルっぽくていいね
            想像力がかきたてられて面白かった
          • 12. 774の15
          • 2010年09月19日 18:05
          • 基本こういうのは荒れるなw
          • 13. あ
          • 2010年09月19日 18:13
          • 5 久しぶりに面白いSSだった。引き込まれたな
          • 14. ないです
          • 2010年09月19日 19:15
          • 4 この類のSSは最終的に琴吹家の力で制圧というパターンが多いと思うのですが、飽くまで警察による解決というストーリーが良いです。
            その為でしょうか、正統派ヒロインのムギちゃんというのも珍しいかも、しかし彼女の性格を惟ると違和感もなく自然な気もします。
          • 15. あ
          • 2010年09月19日 22:14
          • ヒルコだろwwwwww
            増殖はしないけど
          • 16. VIPPER
          • 2010年09月19日 23:22
          • 作者出てこい

            このSSでのヤッテヤルデスって結局なんだったんだ
          • 17. 梨
          • 2010年09月19日 23:31
          • 4 死ぬ死なないの内容はともかく、いろんな意味で作者よくやったくれた




            こんなん書くなバカ
          • 18. 774
          • 2010年09月20日 01:11
          • なんかなー
            頭の悪いコメばっか続くな
            こんなん書いてて楽しいんか?
            ん?
            SSに愛着無いんか?
            ん?
          • 19. 学名ナナシ
          • 2010年09月20日 03:12
          • しかし自分語りの多い>>1だな…

            もしかしてここにも…
          • 20.
          • 2010年09月20日 05:10
          • >>SSに愛着無いんか?
            >>ん?
            殺人SSに愛着なんぞあってたまるか!
          • 21. ななし
          • 2010年09月20日 06:39
          • 妖怪ハンターヒルコを彷彿とさせたよ
          • 22. ななし
          • 2010年09月20日 08:06
          • 3 ムギ拷問SSの後にこれとかどんだけグロ続くんだよ
            そして煽りで荒れるコメ欄www
          • 23. 名無し
          • 2010年09月20日 16:36
          • すげぇ面白かった!
            ただ20ページ超えの作品は分けて掲載して欲しいなっ
          • 24. 名無しさん
          • 2010年09月20日 20:07
          • ヤッテヤルデスの正体書けよクソが…
          • 25. 学名ナナシ
          • 2010年09月20日 22:53
          • 何様米多すぎるだろ最近
            まとめは品評会会場ですか?www
          • 26.
          • 2010年09月21日 00:06
          • >まとめは品評会会場ですか?www
            いろんな人が読んで感想や意見書く訳だから
            結果的にはそうなっちゃうわな
          • 27. 名無し
          • 2010年09月22日 04:57
          • 2 これ見てる時に誰も触ってないハンガーが落ちるは晴れてたのに雷が落ちるはで怖かった… 夜だから特に。
          • 28. ななし
          • 2010年09月24日 19:06
          • 律「ていう小説を読んだんだよ」
            唯「怖いねー」
            澪「見えない聞こえない」
            梓「・・・」
            紬「あれ?梓ちゃんずっと黙って
              どうしたの?」
            梓「・・・」ぐるり


             「ヤッテヤルデス」
          • 29. 学名ナナシ
          • 2010年10月02日 19:33
          • 愛着?愛してるからこそいたぶれるンだろうが
            勘違いしてんじゃねーぞ
          • 30. 名無し
          • 2010年10月06日 01:21
          • 虐待厨は死ね
          • 31. あ
          • 2010年10月09日 02:15
          • 5 いやー面白かったわw
            和ちゃんにも何か原因があったのかな?
          • 32. あ
          • 2010年10月17日 01:09
          • とりあえずキャラ惨殺しとけば怖くなるだろ、全体通してそんな感じ
            その上、伏線は投げっぱなしジャーマンときた
          • 33. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2010年11月27日 12:25
          • 細かいことで申し訳ないが、執事さんの名前は斎藤じゃなくて斉藤だ。
          • 34. ただのガンオタ警察オタク
          • 2011年03月23日 03:45
          • 銃の描写とか警察の動きとかがリアルだった。  
            だけど最初のところでP230が9mmになってたのがちょっと・・・・  
            32ACPなんだよねSIGP230Jは
          • 35. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2011年08月13日 06:26
          • フルバーストで萎えた
          • 36. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2011年11月26日 06:12
          • そこそこ面白かった。仕方ないけど登場人物がアホばっかりでワロタw
          • 37. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年03月10日 02:21
          • 死人が出ない前半は面白かった
            怪談新耳袋観たいだった

            後半どうしてこうなった

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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