唯「あずにゃん・・・私ね、アイドルにスカウトされたの」

uproda122581

2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 01:09:18.83 ID:cTXoW7VdO
先生「はい、それでは夏休みの間は体調を崩さずに過ごしてくださいね。」

先生の号令と共に、教室は喧騒に包まれた。

梓「はぁ・・・」

高校生活最後の夏休み。特に予定も無い私は、どうも浮かれることが出来なかった。

梓「先輩たちが卒業して、もう三ヶ月くらいかぁ・・・」
けいおん部は結局部員が集まらず廃部になってしまった。

昔は飽きるほどギターを触っていたのに、今では時々暇なときにいじるくらいだ。

一緒に演奏できる人がいないと、こうもモチベーションが違うものか。

梓「久しぶりに先輩たちに会いたいなぁ・・・」




3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 01:11:55.08 ID:cTXoW7VdO
先輩たちはそれぞれ大学に進学した。

私は卒業して以来、先輩たちとは一度も会っていない。

大学生はいろいろ忙しいだろうし、メールでもやり取りは出来るから。

憂「梓ちゃん、帰ろっ」

梓「うん、そうだね」

それに、唯先輩の話はいつも憂がしてくれる。

だから、最近まで、寂しいと思ったことはあまりなかった。



7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 01:15:48.70 ID:cTXoW7VdO
憂「それでね、その時お姉ちゃんがね――ー」

憂が唯先輩の話をしているときは本当に生き生きしている。

唯先輩のパワーを分けてもらっているみたいだ。

憂「あ、そうだ。最近お姉ちゃん、何か隠し事してるみたいなの」

梓「隠し事?」

憂「そう。何だかそわそわして、こっそり誰かに電話してたり、考え事してたりするの」

梓「もしかして・・・彼氏とか?」

憂「えーっ!お姉ちゃんに彼氏ぃー!?」

唯先輩に彼氏・・・。もし本当だったら面白い。

でも、唯先輩は可愛いし、本当に彼氏なのかも・・・。

そんなことを考えつつ、憂とお喋りをしながら帰った。



8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 01:18:45.20 ID:cTXoW7VdO
家に帰って何気なく携帯を見ると、メールが来ていた。

律先輩からだ。

メールを開くと、次のように書いてあった。

『久しぶりに皆で集まらないか?』

なんというタイミングだ。

私はメールを返すことすらじれったく感じ、電話帳から直接律先輩に電話した。

・・・、・・・

律「おー、梓ー。久しぶりだなー。元気してたかー?」

梓「お久しぶりです。律先輩」



9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 01:21:30.98 ID:cTXoW7VdO
先輩は早速、皆で会う話を切り出した。

律「まぁ卒業してしばらく経ったしさ、一度皆で集まりたいかなーって思ってさぁ」

梓「私もちょうど先輩たちと久々に会いたいと思ってたところです」

律「お?なになに?梓ちゃんは寂しかったのかなぁ~?」

梓「ち、違いますっ!ただ、久々に顔を合わせたいと思っただけで・・・」

律「ははは。まぁ、実は唯のことでちょっとあってさ、みんなに相談したくてさ」

梓「唯先輩のこと・・・?」

律先輩までなんだろう。やっぱり唯先輩に彼氏ができたのかな・・・。



11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 01:25:33.17 ID:cTXoW7VdO
数日後


紬「皆さんお久しぶりね。変わってないようで何よりです」

律「このメンバーで集まるのも久しぶりだなー」

澪「私と律は同じ大学だからしょっちゅう顔を合わせてるけどな」

唯「あずにゃ~ん、久しぶり~」

梓「わっ、いきなりくっつかないで下さいよ」

皆相変わらずだ。

先輩たちはまだ楽器を続けているのだろうか。

まだ、あの、去年の学園祭の盛り上がりを覚えているのだろうか。

何も変わらない先輩たちを見て、私は少し胸が痛んだ。



13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 01:28:37.29 ID:cTXoW7VdO
喫茶店で一息ついたところで、律先輩が切り出した。

律「まぁ、改めてになるけど、実は唯のことで相談があるんだ」

律「とは言っても澪とムギにはもう伝えてあるし、知らないのは梓だけか」

梓「私だけ・・・ですか?」

唯「いいよ、りっちゃん。私が言うから」

いつになく真面目な口調で、唯先輩が口を開いた。



唯「あずにゃん・・・私ね、アイドルにスカウトされたの」



14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 01:32:42.56 ID:cTXoW7VdO
梓「えっ・・・」

私は何も言えなかった。

だって、唯先輩に彼氏が出来たとか、そういう話が来ることばかり考えてたのに。

梓「・・・スカウトって、音楽でってわけではないんですか・・・?」

唯「うん。道を歩いてたら突然声をかけられたんだよ」

梓「それってすごく怪しいような・・・」

律「それが、声をかけたのが琴吹プロダクションの人だったんだよ。本当に偶然だったみたいだけど」

紬「私も確認したから間違いないわ。唯ちゃんを一目見てスカウトを決めたんだって」

澪「唯を一目見てって・・・にわかには信じがたいな・・・」



15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 01:36:04.54 ID:cTXoW7VdO
梓「それで、何て返事したんですか?」

唯「それがね、まだ、迷ってるの」

唯先輩が真剣に悩んでる。

将来のこととなると、さすがに唯先輩でも悩むんだなぁ。

律「まぁアイドルでやってけるかどうかもわからんしな。それでみんなの意見が聞きたくてさ」

紬「私は大賛成よ。唯ちゃんなら可愛いからきっと成功すると思うわ♪」

澪「私は反対だな。唯がテレビに出るなんて、何を言い出すかわからないしな」

律「私も一応反対派かな。わざわざアイドルなんてバクチに出る必要もないだろ」

唯「・・・あずにゃんはどう思う?」

梓「・・・・・・・・・私は・・・」



16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 01:38:09.91 ID:amGt7mst0
ダウト
最初は憂に相談します



17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 01:38:47.44 ID:cTXoW7VdO
梓「・・・私は・・・アイドルの唯先輩を、見てみたいです」

唯「あずにゃん・・・」

何言ってるんだろう私。

私が本当に見たいのは、あの学園祭で一番輝いていた―――

唯「あずにゃんがそういうなら・・・私、頑張ってみるよ!」

律「ま、唯がそういうなら、仕方ないな」

紬「頑張ってね、唯ちゃん」

澪「何かあったら、すぐ私たちに連絡しろよ」

唯「うん、ありがとう!みんな!」



18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 01:42:08.97 ID:cTXoW7VdO
その後、喫茶店で他愛もない話をして、解散となった。

先輩たちに、まだ楽器をやっているのかを聞こうとしたけれど、

唯先輩のアイドル話で盛り上がったので、水を差すのは悪いと思いやめた。

梓「唯先輩、大丈夫かな・・・」

せっかく先輩たち皆と会ったのに、頭の中は唯先輩のことでいっぱいだった。

アイドルってどんなことをするんだろう。

水着になったりするのかな。歌も歌ったりするのかな。

ギターを弾いたりは・・・・・・するのかな。

そんなことを考えながら、私は眠りについた。



19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 01:46:39.26 ID:cTXoW7VdO
数ヵ月後


『今日のゲストは平沢唯さんでーす』


唯先輩がデビューしてから三ヶ月が経った。

今や唯先輩は売れっ子アイドルだ。

ちょっと天然だけど、お茶の間に元気をくれると評判である。

梓「すごいなぁ・・・・・・」

たった数ヶ月でテレビに引っ張りだこ、ポスターや雑誌の表紙も飾るほどだった。

梓「やっぱり唯先輩はすごい・・・」

今もテレビで唯先輩の特集をやっている。

司会『唯ちゃんの特技は・・・ギターということですが、弾けるの?』

梓「・・・!!」

思わず私は身を乗り出した。



20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 01:49:50.88 ID:cTXoW7VdO
唯『はい~、え~っと、高校のときはバンドも組んでたんですよ~』

司会『へぇ~、じゃあ今日はギターを持ってきたので、弾いてもらいましょう』

唯『えっ!?ここでですかっ?恥ずかしいなぁ~』

うわ・・・唯先輩ギター触るの久しぶりじゃ・・・?

しかもこれ、生放送だし・・・。

司会『それでは軽く演奏してもらいましょう』



21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 01:52:11.65 ID:UZ7DNeqj0
琴吹プロダクションパネエ



22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 01:52:38.72 ID:cTXoW7VdO
・・・・・・
・・・・
・・


司会『ほぉ~、素晴らしい腕前ですなぁ』

唯『えへへぇ~、どうもぉ~』

私は唖然とした。

唯先輩は間違いなく今もギターの練習をしている。

むしろ高校時代より上手くなってるかもしれない。

唯先輩が頑張ってるのに、私は一人で現状を不満に思って・・・。


私は、何もしてない自分に対し憤りを感じた。

それと同時に、唯先輩のことを、羨ましくも思った・・・。

梓「私も、唯先輩みたいになりたい・・・」



23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/08/20(金) 01:53:19.42 ID:HXAVQlym0
唯ってギー太じゃないギター弾けたっけ?



25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 01:56:31.80 ID:cTXoW7VdO
数週間後


先生「中野さん、本当にそれでいいの?」

梓「はい。もう決めたことです」

卒業後の進路相談で、私は先生に音楽の道を歩むことを伝えた。

もちろん反対されたが、私の決意は固かった。

先生「そう・・・なら山中先生にも話しておきなさい。軽音部の時お世話になったでしょう」

梓「分かりました。ありがとうございます」

私が本気で音楽を続ければ、きっと先輩たちと、また一緒に・・・。

これからどんな辛いことがあっても、私は、唯先輩に追いつくまで、諦めない。



28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 02:04:53.09 ID:cTXoW7VdO
数年後


唯先輩がデビューしてから数年。

唯先輩はギターの腕や歌唱力も買われ、歌えて演奏できるトップアイドルになっていた。


私はというと、未だに路上でギターを鳴らす日々を送っていた。

 ジャジャーン

梓「ありがとうございましたー」

この数年いろんなことをした。

トレーニングも欠かさずに行った。歌も上手くなったと思う。

インディーズでCDも出した。レコード会社を回ったりもした。

それでも、プロへの道は果てしなく険しいものだった。



32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 02:08:43.36 ID:cTXoW7VdO
梓「唯先輩は・・・もう私のこと忘れてるかな・・・」

唯先輩がアイドルになったあの日から、私は先輩たちとは一度も会ってない。

次に会うのは、私がもっと一人前になってからだ。

今の私は情けなさすぎて、先輩たちにあわす顔も無い。


憂には今の私の状況を黙ってもらっている。

私が唯先輩に憧れて、この道を選んだことがばれてしまったら

唯先輩に負担をかけてしまうかもしれない。

それだけは避けたかった。



33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 02:11:54.16 ID:cTXoW7VdO
梓「はぁ・・・やっぱりあそこに行くしかないのかな・・・」

実は一度私にファンがついた時があった。

秋葉原で路上演奏をしていた時だ。

でも、あそこに集まった人たちは、私の演奏は聴いてなかった気がした。

なんとなくだけど、アイドルの気持ちが分かったような気分になった。

唯先輩もこんな気持ちだったのかな。

アイドルって、楽しいのかな・・・。



35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 02:14:25.48 ID:cTXoW7VdO
梓「片付けよっと・・・・・・」

いつも以上にアンニュイな気分になってしまったので

私はわざとらしく独り言をつぶやき、撤収作業に入った。

今日もいつもどおり収穫ゼロ。

足踏みしたままの一日が、今日も終わろうとしていた。

ギターアンプを持ち上げようとしたその時、突如懐かしい声が耳に響いた。


 「梓・・・だろ?」



37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 02:17:15.74 ID:cTXoW7VdO
梓「っ!?・・・・・・」

振り返ると、そこには、律先輩が立っていた。

数年前より少し雰囲気が変わっただろうか。大人っぽい感じがする。

トレードマークのカチューシャも付けておらず、それだけで月日の流れを実感できた。

律「久しぶり・・・だな。何年ぶりだ?」

梓「えっ・・・あ・・・・・あの・・・・」

数年ぶりに見る律先輩を前にして、私は何も言えなかった。

混乱してどうしていいか分からない私に対し、律先輩は静かに口を開いた。

律「・・・とりあえずそこの喫茶店行こうぜ。時間あるだろ?」



39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 02:21:23.59 ID:cTXoW7VdO
コーヒーを飲み、私が少し落ち着くまで、律先輩は黙ったままだった。


梓「・・・・・・・・・・あの、律先輩」

律「ん?」

梓「偶然、私を見つけたんですか・・・?」

律「まぁ半分偶然半分狙ったかなぁ」

梓「・・・どういうことです?」

律「お前がどういう状況だったかは前に憂ちゃんから聞いてたんだよ。だから、路上で歌ってる奴らの顔をチェックするのは癖になってたしなぁ」

なんだ、憂がとっくに言っちゃってたんだ。なら、もう唯先輩にも・・・。



律「・・・なぁ梓、お前、一体いつになったら帰ってくるんだ?」



40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 02:24:44.02 ID:cTXoW7VdO
梓「えっ・・・?」

律「お前、私達が卒業してからさ、どっか行っちまったよ。・・・私達の、何がいけなかったんだよ」

違う。

私はどこにも行っていない。先へ行ったのは先輩達のほうだ。

私はどこにも行けず、ただ思い出に縛られているだけ。

もう学校も卒業したのに、私はけいおん部を卒業できてない。

私の中で、放課後ティータイムは、まだ放課後なんだ・・・。



42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 02:28:48.07 ID:cTXoW7VdO
梓「・・・・・・唯先輩がアイドルとして活躍し始めた頃・・・」

梓「私は、テレビに映る唯先輩を見て、正直憧れました」

梓「あの、学園祭の時の唯先輩みたいな輝きを、感じたんです」

梓「それで私も唯先輩みたいになりたいと思い、音楽の道を歩むことを決めたんです」

梓「私はアイドルにはなれないけど、音楽を極めれば、唯先輩に追いつけるって思ったんです」

梓「遠くに行ってしまった唯先輩に追いつければ、また皆さんと演奏ができると思って・・・」

梓「でも、私は・・・・・・それを言い訳にして、現実から逃げてるだけなんです・・・」

梓「もう、放課後ティータイムは、終わってしまったのに・・・」



45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 02:32:24.27 ID:cTXoW7VdO
律「・・・梓、今の唯、楽しそうに見えるか?」

梓「・・・」

律「さすがに今じゃ唯と会う機会はめっきり減っちまったよ。それでも、テレビ越しに見て、唯が心の底から笑ってるの、見たことあるか?」

梓「・・・唯先輩・・・」

律「・・・何で唯が未だにアイドルを続けてるかわかるか?」



49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 02:37:12.04 ID:cTXoW7VdO
律「・・・お前が、アイドルの唯を見たいって言ったからだよ」

梓「・・・」

律「唯がアイドルを始めてしばらくして、お前は私達と連絡しなくなった。憂ちゃんから無事ってことだけは聞かされてたが、それでも唯は相当ショックを受けてたんだぜ」

律「アイツはなんだかんだ責任感が強いからな。『あずにゃんが元気出すまで頑張るー』とか言っちゃってさ」


律「もう、終わりにしようぜ、梓。・・・・・・・・・頼む・・・」

ああ、私ってとことん自己中だ。

知らない間に、こんなにも多くの人を傷つけてしまっていた。

私の頭の中は、後悔しかなかった。

梓「・・・うっ・・・うっ・・・・・・律せんぱぁい・・・・・・・・う・・・うわぁぁぁああああーん!!!」



51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 02:41:29.44 ID:cTXoW7VdO
梓「ううっ、律先輩、ごめんなさいっ 私っ 私っ・・・」

律「おいおい、謝るなら先に唯だろうがよ。私に謝っても何も出ないぞ」

梓「唯先輩・・・すみませんでした・・・ひっく」

律「だから私に言ってもしょうがないだろー。よし、明日皆集めるぞ」

梓「え・・・明日・・・ですか・・・?」

律「なーに、『中野梓完全復活!』とでもメール回せばすぐに集まるって」



52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 02:45:47.33 ID:cTXoW7VdO
翌日


本当に次の日に皆が集まることになった。

待ち合わせ場所には、律先輩、ムギ先輩、澪先輩の三人がいた。

澪「梓、久しぶりだな。少し身長伸びたか?」

紬「梓ちゃん久しぶり~♪」

梓「皆さん本当にご迷惑をおかけしました!!」

私は開口一番頭を下げ、誠心誠意謝罪した。

澪「お・・・おいおい、こんな街中でいきなり頭下げるなよ・・・」

紬「梓ちゃん、私達全然怒ってなんかないわよ」

梓「でも・・・やっぱり謝っても謝りきれないですっ」

律「はいはーい、謝罪タイムは一旦しゅーりょー。まず肝心の唯がまだ来てないしね」



55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 02:48:42.21 ID:cTXoW7VdO
律「さすがに昨日の今日じゃ、唯は時間通りは無理だったかー。ま、先にテキトーにお茶でも飲んでよーぜぃ」

澪「律、なんだか今日はご機嫌だな」

紬「うふふ♪」

唯先輩に会ったら、何て言おう。

その前に、まず、何て言われるだろう。私は、唯先輩の人生を狂わせてしまったから。

考えれば考えるほど自己嫌悪に陥るのに、悪いことを考えずにはいられなかった。



57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 02:52:01.44 ID:cTXoW7VdO
数時間後


カランカラーン

唯「お、お待たせ、しましたぁ!平沢唯、ただいま、参りましたっ!」

律「おー!唯ー!やっと来たかー!久しぶりー!」

唯先輩は走ってきたみたいで、息を切らして店にやってきた。

梓「あっ・・・」

唯先輩と目が合う。

唯「・・・あ・・・・・・あぁ・・・・・・」

唯「あーーーーーーーずにゃーーーーーーーん!!」

梓「うわっ!!」



58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 02:55:11.61 ID:cTXoW7VdO
私が何かを言う前に、唯先輩は私に抱きついてきた。

ただでさえ目立つのに、さっき自分の名前をフルネームで叫んだもんだから、周囲の視線が・・・。

唯「あずにゃぁぁぁん!寂しかったよぉぉぉぉ!!」

律「あのー、感動の再会のところ申し訳ないんですが、ギャラリーが少々騒がしく・・・」

唯「ほぇ!?あ、ど、どうもぉ~」

気づくと周りのお客さんが携帯で写真を撮ったりしている。

あの「平沢唯」が叫びながら店で暴れればそりゃそうか・・・。

澪「場所・・・変えるか」

紬「ええ・・・」



59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 02:58:44.29 ID:cTXoW7VdO
店を変え、落ち着いたところで、私は唯先輩に頭を下げた。

梓「唯先輩!本当に、本当にすみませんでした!」

梓「私・・・唯先輩に心配かけて・・・無理までさせちゃって・・・!」

唯「あずにゃん・・・」

梓「私、学園祭の唯先輩に、憧れてたんです。あんな風に輝きたいなって」

梓「皆さんが卒業して、けいおん部が廃部になったあとも、ずっとそのことばかり考えてて、いつの間にか憧れが未練になって・・・」

梓「でも、唯先輩がテレビで輝いてるのを見て、私も唯先輩みたいになりたいって思ったんです。アイドルが無理でも、せめて音楽ならって・・・」



60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 03:03:06.90 ID:cTXoW7VdO
梓「でも、独りでギターを弾いても、何も楽しくなかった。やっぱり私は、ただ、先輩たちと音楽が出来なくなってしまったことが、受け入れられなかっただけで・・・」

ああ、また私は自分のことばかりだ。

唯先輩に謝ってるはずなのに、気づいたら自分の愚痴を言ってる。

唯先輩は、私の何倍も苦しかっただろうに。

唯「あずにゃん・・・」


一呼吸置いて、唯先輩はこう言った。

唯「あずにゃん・・・私、もうアイドルやめるよ」



62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 03:05:58.84 ID:cTXoW7VdO
梓「唯・・・先輩・・・」

唯「あずにゃんが本当の気持ちを言ってくれたから、もう私がアイドルやる理由もないしね。それに・・・」

唯「・・・私ね、本気で音楽やってみたいの」

唯「アイドルってことでギターを弾かせてもらったり、歌わせてもらってたけど、やっぱり寂しいよ」

唯「あずにゃんの言うとおり、独りでやっても、面白くない。・・・仲間と、演奏したいよ」

梓「・・・」

唯「あずにゃん、一緒に・・・コンビ組まない?」



63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 03:08:53.11 ID:cTXoW7VdO
梓「・・・私なんかで・・・いいんですか?」

唯「あずにゃんとじゃないと、楽しくできないよ。あずにゃんとがいい」

梓「・・・唯先輩っ」

私は泣きながら唯先輩に抱きついた。

やっぱり唯先輩は優しくて強くて―――すごい人だ。

澪「なんだかいつもと逆だな」

紬「お二人ともラブラブね~♪」

律「ようやくこれで、一件落着かな」



64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 03:11:45.08 ID:cTXoW7VdO
・・・・・・
・・・・
・・


澪「しかし本気で音楽やるって、具体的にはどうするんだ?」

唯「えっとね、まずは音楽の専門学校に入ろうと思うの。ギターのコードとか全然わかんないし・・・」

律「うぉーい!高校の知識のままプロ活動やってたのかい!」

紬「唯ちゃん昔から全部感覚でやってたもんねぇ」

唯「えへへぇ、どういたしまして」

梓「褒めてないですよ、唯先輩」

ようやくいつものやり取りができるようになってきた。

もし私が、数年間このやり取りを台無しにしていたのなら、また謝らなくちゃいけないな。



65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 03:14:42.49 ID:cTXoW7VdO
唯「だからね、あずにゃん。誘ったところ悪いけど、もう二年くらい待っててくれない?それまでにあずにゃんの足を引っ張らないように勉強するから」

梓「・・・私も入学しますよ。どうせ学校行ってないですし」

唯「えぇっ!そうなの!?」

なんだ、このことは憂は言ってなかったのか。

唯「じゃあ一緒の学校だね。よろしくあずにゃん♪」

学費はどうしよう・・・。また親に迷惑かけちゃうかな。

出来るだけバイトするようにしよう。



66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 03:17:58.17 ID:cTXoW7VdO
数週間後



マスコミが平沢唯の電撃引退を報じ、ほとぼりが冷めてきた頃、私達はまた集まっていた。

澪「よしっ、これで全員だな」

紬「今日はみんな時間通り集まれたわね」

唯「平沢唯、無職です!えへへ」

律「一番の金持ちが何言ってんだ」

梓「一番お金持ちはムギ先輩ですよ」

律「ぐぁ、そうだった」

私たちは、くだらないお喋りをしながら目的地へと向かった。



68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 03:20:34.83 ID:cTXoW7VdO
律「おー久しぶりだなーこの感じ」

澪「前にここに来たとき、お茶飲んでたら時間来ちゃったときあったよな」

唯「あれはムギちゃんのお茶が美味しかったからだよ~」

紬「あらあら、それは光栄ね」

私たちは貸しスタジオにやってきた。

言いだしっぺは私。

目的は――――放課後ティータイムの解散ライブだ。



69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 03:23:03.82 ID:cTXoW7VdO
それぞれがセッティングを終えたところで、律先輩が口を開いた。

律「えー、それでは、放課後ティータイムの解散ライブを始めまーす」

もちろんお客さんなんていない。

でも、これで、HTTは終わりだ。

律「・・・と言いたいところですが」

律「放課後ティータイムは、解散なんてしません!」

梓「えっ・・・?」

律「何故なら、放課後ティータイムは・・・いつまでも、放課後だからです!」



70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 03:25:47.51 ID:cTXoW7VdO
梓「ちょっ・・・律先輩・・・?何言って・・・」

律「じゃあ今日は何のためのライブでしょう・・・それは!」

律「中野梓ちゅわんの卒業ライブだぁぁぁぁああ!!!」

梓「えっ?えっ・・・?」

どういうこと?私の卒業ライブ?

唯「あずにゃんおめでと~!」

紬「梓ちゃん、おめでとう♪」

澪「梓、卒業おめでとう!」

なんだ、最初から仕組まれてたのか・・・



71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 03:28:39.17 ID:cTXoW7VdO
梓「皆さん・・・ありがとうございます!」

私は深々と頭を下げた。ここんとこ頭を下げてばっかだ。

律「はいはい、時間ないからさっさといくよー。梓は何演奏したい?」

梓「えっと・・・何でもいいんですか・・・?」

律「今日のためにみんな必死で練習してきたんだぜ。あたしのドラムは埃かぶってて大変だったけどなー。あはー」

梓「・・・・・・じゃあ・・・・・・ごはんはおかずで」



73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 03:31:37.19 ID:cTXoW7VdO
律「よりによって何でそれを・・・」

梓「あの学園祭で、最初にやった曲だからです」

律「む、なるほど・・・それじゃみんな準備はいーい?」

これで、卒業か。

紬「いつでも大丈夫よ♪」

私は、最高の先輩達とバンドが組めたんだな。

澪「久しぶりで緊張するな・・・」

律先輩、ムギ先輩、澪先輩・・・

唯「いっくよ~あずにゃん!」

そして、唯先輩、本当に・・・ありがとうございます!



律「ワン、ツー、スリー、フォー!!」





終わり。


82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 03:50:58.95 ID:cTXoW7VdO
もしもしからの投稿で時間がかかってしまって申し訳ないです。
けいおんはアニメから入った新参なんで、細かい設定ミスがあっても勘弁。
やっぱSSは難しいス

75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 03:35:58.67 ID:s7/asWTFO




76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 03:37:09.44 ID:0z5PuovRO
おつ



79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 03:43:53.52 ID:pKmtrvwLO
いいENDだった



87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2010/08/20(金) 10:20:18.68 ID:j/2thcxZP


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         コメント一覧 (19)

          • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTが(ry
          • 2010年08月20日 20:48
          • なんか雰囲気いいな





            ゆいちゃんはやっぱり非処女なんだろうか
          • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2010年08月20日 21:19
          • 蛸壷屋の同人に影響受けたけど、陰鬱にはしたくないって感じのSSだな
          • 3. 名無し
          • 2010年08月20日 21:51
          • 丁度昨日元ネタ?の同人誌読んだとこだったからハッピーエンドで良かったわ
          • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2010年08月20日 21:52
          • 米2に激しく同意
          • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2010年08月20日 22:09
          • 確かに米2に激しく同意
          • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2010年08月20日 22:18
          • あずにゃんが路上活動はじめたところでバッドエンドしか思い浮かばなかったww
            ハッピーエンドでよかったよ
          • 7. 名無し
          • 2010年08月20日 22:31
          • 蛸壷厨はどこにでも沸くな

            誰もが蛸壷読んでるわけじゃねえよ
            こういう卒業を題材にしたSSは最近流行ってるだけだろ
          • 8. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2010年08月20日 23:37
          • イイハナシダナー
          • 9. 名無し
          • 2010年08月21日 00:09
          • 1、2、3、4、5はーん!!
          • 10. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2010年08月21日 00:37
          • 20話を見るとあずにゃんだけ軽音部の終わりを実感できていない印象を受けるから、その延長線上にある話って感じじゃないかね。
          • 11. 聡
          • 2010年08月21日 21:34
          • 同人と被りすぎる内容なんだが…気のせいだよね。
          • 12. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2010年08月21日 22:54
          • ※2同意
            あれはあれで面白かったけど
          • 13. ななし
          • 2010年08月22日 13:19
          • 蛸壷知ってんのかなぁこの人
            もしそれを元ネタにしてるならもう少し違った感じになると思うけど
          • 14.  
          • 2010年08月24日 16:46
          • アイドルに 枕営業 付き物だ
          • 15. 名無しさん
          • 2010年08月29日 14:55
          • それにしてもこのりっちゃん、イケメンである
          • 16. 通りすがりすがり
          • 2010年09月01日 20:17
          • 5 普通に感動してしまった俺って。。。
          • 17.  
          • 2010年09月02日 19:51
          • 別に普通に感動するだろ
          • 18. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2012年08月14日 02:52
          • 5 あ、別にみんなでバンドやるわけではないのね...。
          • 19. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年12月25日 22:48
          • ※18
            いやまあ確かにそれは完全なる理想だけど、今まで音楽とは外れた自身の人生を歩んだ律、澪、ムギに全てを捨てて音楽の道を進ませるのはあまりに現実的ではないだろう

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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