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キョン「長門有希を、俺は知っている」1

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 01:04:10.50 ID:NtlgGgbZ0
『プロローグ』


 やらなかった後悔よりやってする後悔の方がマシ、というのは二年ほど前に
朝倉が言っていたことであり、確かに一理ある意見だと俺は思っている。
しかしながら、この摩訶不思議世界にはやらなかったときよりさらに後悔する場合があり、
それこそ俺が今回の不用意な発言をもって思い知ったことに違いない。
 それが何かって?
 簡単さ。やってしまった後悔、だ。

 二月も半ば、卒業式を間近に控えた俺たちは、相も変わらず文芸部室に屯っていた。
それもそのはず、二月といえば受験シーズン真っ只中であり、
受験生である俺たちは落ち着くというただそれだけの理由で部室で勉強していたのである。
 もっとも、俺は私立大学志望であったため二月初旬をもって受験を終了しており、
ハルヒと古泉は推薦という優等生特権を存分に行使したおかげで年を越す前に
進路が確定していたから、現在受験生であるのは某国立を志望する長門のみであるが、
こと勉学に関して長門に憂慮すべき要素など皆無であり、
したがって、もはや参考書を開いている団員は誰一人としていない。

なのに何故未だに部室に集合しているのか。
勿論、ハルヒに呼び出されたからである。

「ライブをやりましょう!」

 ホワイトボードの寿命が心配になるほどの破裂音が聞こえたかと思えば、
それはハルヒがホワイトボードを引っ叩いた音であり、こういった形で
会議が始まるのは(正確には会議ではなくハルヒが一方的に喋るだけである)実に久しぶりだった。

キョン「長門有希を、俺は知っている」1
キョン「長門有希を、俺は知っている」2
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 01:06:22.09 ID:NtlgGgbZ0
「ライブだと?」

 ここで復唱するのはやはり俺しかいない。

「そう、卒業ライブよ。高校卒業という重大イベントを前にして何もしないのは、
 世の不思議を追及する我がSOS団として許されざることだわ」

 卒業ならば卒業式というイベントが当然用意されており、
また卒業ライブがいったい世の不思議と何の関係があるのかということなど
ツッコミどころ満載であるが、俺は何も言わなかった。
 その理由なんてもういいだろ?

「なるほど、それは素晴らしいアイデアですね。また対バンですか?」
「いいえ、今回はワンマンでやるわよ!」

 そう、実はライブをやるのは今回が初めてではない。二年生の文化祭以来、
俺たちは何度か定期的に演奏をしてきた。
ENOZと一緒であったり、時にはまったく知らない誰かとやったこともある。
 しかし、ワンマンをやるのは今回が初めてであった。

「無茶言うな、演奏のレパートリーもそれほどないし、
 だいたい俺はもう何ヶ月も楽器に触れてないんだぞ」

 ワンマンとなれば最低10曲は覚えなければならんが、とても無理だ。

「その点については僕も同意しかねます。日程は決まっているのですか?」
「まだよ。でも遅くても三月半ばまでにはやりたいわね。
 卒業の雰囲気が抜けちゃう前にやりたいと思ってるわ」


6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 01:08:47.06 ID:NtlgGgbZ0
 その後、ハルヒがごちゃごちゃと捲し立てる時間が数分続いたが、要約するとこういうことだ。

 日時、未定。
 場所、未定。
 演奏時間、約2時間。
 メンバー、SOS団(朝比奈さん含む)。
 パート、ボーカル&ギター=ハルヒ、セカンドギター=長門、
      ベース=俺、ドラム=古泉、そしてキーボード(ボーカル)=朝比奈さん。
 以上。

 ふざけてるのか。
 しかしハルヒが全然ふざけてなどいないなんてことは、この三年間で身に染みてわかっている。
だいたいこれまでのライブだって、詳細を決めたのは主に俺であり、めんどくさい雑用や
手続をこなしたのも主に俺であり、そのための機材や箱を用意したのは主に古泉(機関)である。
 さらに言えば、ハルヒが宣言したということはすなわち決定事項であり、
何を言おうともそれが覆りはしないのである。
 故に、俺は前述の情報をもって、現実にワンマンライブが出来る状態を作り上げなければならんのだ。

「パートについては、まぁ、いい。これまでと同じだからな。日程についてもまぁいいだろう。
 場所も、これまでのツテを回れば恐らく見つかる。だが、本気でワンマンをやる気なのか?」
「もちろん。高校生活最後のライブ、SOS団の存在を世に知らしめる絶好のチャンスじゃない。
 それが他人と一緒じゃ意味ないわ」

 あぁわかってる、確認しただけだ。ハルヒはSOS団どころかこの世界で絶対的権力を持つ
まさに神であり、しがない平団員に過ぎない俺の意見が通るわけがないのである。

「しかし、場所か……」



7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 01:11:11.08 ID:NtlgGgbZ0
 機関が用意した箱でもいいし、なんなら体育館を貸切ることも出来るだろう。
手段を選ばなければ武道館だって使えるかもしれない。
何せ宇宙人のバックアップがあるんだからな。事実上不可能などない。
 そう、穏便に事を進める方法はいくらでもあったのだ。なのに俺は何を思ったか、
卒業までの日々を全身全霊で後悔する発言を溢してしまったのである。
あぁ、口は災いの元とはよく言ったものだ。まったく、思いつきで喋るもんじゃないと思ったね。
 俺がポツリと呟いたのはこんな台詞だった。

「卒業式を乗っ取ったらどうだ?」

 しまった、と思った時には既に遅く。部室には一瞬の静寂が流れた後、
ハルヒの嬉々とした声が木霊し、古泉は「お前は何を言っているんだ」という色を存分に
込めた目で俺を見つめており、長門は黙々と本を読んでいた。

「ちょっとキョン! いいじゃない、それ! 卒業を締めくくるに相応しい演出よ、
 あんたもたまには役に立つじゃない!」

 年に1回くらいしかハルヒが俺を褒めることはなく、故に今年はもう褒められることがないのだが、
どういうわけか全然嬉しくないどころか、俺の胸中では後悔の念が浮かんでは消えを繰り返していた。

「今の生徒会長は容易く言い包められそうな優男だし、教師陣なんかどうとでもなるわ。
 あとはあたしたちの練習次第ね。忙しくなるわよ、みんな覚悟しなさい!」


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 01:12:27.42 ID:9hzdI6UD0


10 :支援ありがとう:2010/02/13(土) 01:13:23.93 ID:NtlgGgbZ0
 生徒会はともかくとして教師陣を説得するのは骨が折れそうだが、
卒業式を乗っ取るという構図は既にハルヒの中で決定事項となってしまったらしい。
頼む古泉、そんなに見ないでくれ。あとで謝るから。
 ここで救いの女神長門様が本を閉じる音が聞こえたため、本日の団活は終了となった。

「じゃ、今日は解散ね。曲目はあたしが明日までに決めておくから、
 キョンは雑用やっとくのよ。また明日! 戸締りよろしくね!」

 ドアを開きながらハルヒはだいたいこんな感じのことを捲し立て、一人颯爽と
帰路についてしまった。まぁこっちとしては好都合なんだが、相変わらず騒がしい奴だ。
 足音が聞こえなくなった頃を見計らって、古泉が身体ごとこちらを向いた。
 尋問タイムの始まりである。

「さて、釈明の言葉はございますか?」
「……すまん。まったく軽率な発言だったと思っている」
「涼宮さんを退屈にさせないという点では良いアイデアだと思いますし、
 勿論閉鎖空間が発生するわけはありません。
 しかし、それにしたって他に何かやり方があると思います」
「……すまん」

 それから数分間、古泉による小姑みたいなネチネチとした回りくどい非難が
俺のガラスのハートを砕き続けた。一方の俺は唯只管に謝っていただけだ。
まったく申し開きの言葉もない。

11 :書き溜めしてあるから:2010/02/13(土) 01:16:04.53 ID:NtlgGgbZ0
「――とはいえ。卒業ライブ、ですか。しかも卒業式を乗っ取る。
 まるで漫画かドラマのような展開ですが、
 理性とは裏腹に心が躍ってしまうのは僕が男だからでしょうか」
「そうというわけではない」

 ここで、今まで一言も口を開かなかった長門がポツリと呟いた。

「私も期待している」
「そうですね。スケジュール的な厳しさや非現実的な説得作業はともかくとして、
 楽しみであることは否定できません」

 ……お前ら。

「必ず成功させましょう。曲が覚えられない、なんて泣き言は無しですよ?」
「――あぁ。絶対、成功させよう」


12 :今日中に終わるはず:2010/02/13(土) 01:18:14.30 ID:NtlgGgbZ0
『第一章』


 と、意気込んだのはいいがそれからの数日間はまさに猫の手も借りたい忙しさだった。
実際にシャミセンを連れてこようと思ったくらいだ。もしかしたらまた喋りだして
何か小難しい哲学的なアドバイスをくれるやもしれん、なんて淡い期待を少しだけ抱いたりもした。
そのくらい忙しかったのさ。
 言うが早いかその日の晩に、ハルヒは宣言どおりセットリストをメールで送ってきた。
何とかワンマンがやれる程度の全10曲、うち過半数はこの一年半で何度も演奏している曲だった。
もしかしたらあいつなりに気遣ってくれたのかもしれん。

 で、翌日。

「練習用スタジオなんだがな、古泉」
「既に手配済みです、今これからでも練習できますよ」
「さすがの早さだな、助かるぜ」

 特に早朝から重たいベースを担いで山登りをする必要はなかったのだが、
なんとなくはやる気持ちが俺を妹のタックルより先に目覚めさせてくれたおかげで、
まだ8時前にもかかわらず俺は部室に到着した。

 しかし、間違いなく一番乗りだと思っていた矢先、扉の前で佇む古泉を発見した次第である。
つまり今の俺は、朝比奈さんの着替えを待ちつつ部室のドアの前で古泉とプチ作戦会議中ということだ。

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 01:20:42.97 ID:NtlgGgbZ0
「お待たせしましたぁ、どうぞー」

 数分後、一段と磨きが掛かった朝比奈さんの甘い声が俺たちを部室内へと導く。
定位置に着席すると、これまた一段と磨きが掛かった
朝比奈さんのお茶が俺の目の前に置かれた。あぁ、美味い。
ふと窓際を見ると長門も定位置で本を読みながらお茶を飲んでいた。
 なんだ、結局俺は4番目ということか。

「あの、キョンくん……」
「はい、なんでしょう」
「ライブっていつやるんですか?」

 朝比奈さんにもハルヒからメールが行っているだろうからライブの事実を知っているのは
当然としても、あのメール文から察するにセットリスト以外の一切を知らされていないのだろう。
 しかし、この質問には何とも答えづらかった。

「あー、実はですね……」
「3月2日、ですよ。彼の提案で、我々の卒業式を乗っ取ってね」

 古泉が俺の言葉を引き継いだが、言わなくて良いことまで追加しやがった。

「……え?」

 その大きな瞳がさらに大きく開かれ、なおかつ俺を見つめていた。
普段なら天使もひれ伏す可愛さに身悶えるところなのだが、理由が理由だけに目を合わせ難い。


15 :>>13 SSスレは二回目:2010/02/13(土) 01:23:16.16 ID:NtlgGgbZ0
「と、いうわけであと二週間弱しかありません。既存の曲が7曲、
 涼宮さん作詞・作曲と思われる新曲が3曲、ですか。
 なかなかにハードスケジュールとなりそうですね」

 ええい俺を見るな、昨日終わった話だろう。
 その時、誰かが殺人事件の発生でも知らせにきたかのような勢いで部室のドアが開かれた。
もちろんその主はご存知、涼宮ハルヒ団長である。

「みんな来てるわね! みくるちゃんも久しぶり!
 早速だけどキョン、スタジオの準備は整ってるでしょうね?」

 この時間から集合するようになど知らされていないのはいつものことであり、
にもかかわらず全員が揃っているということは知らされていないのは俺だけなのだろうが、
それもやはりいつものことである。
 今朝やけに早起きしてしまったのはこいつの力のせいじゃないと信じたい。

「あぁ、それについては古泉が手配済みだそうだ」
「さすが副団長ね、あんたも見習いなさい。じゃ、今から早速練習開始よ!
 休んでる暇なんてないんだから!」


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 01:25:57.44 ID:NtlgGgbZ0
 五日後、練習終わりのファミレスにて。

「……」
「……」
「……」
「…………」

 3点リーダーの山が築かれているが、うち平常通りなのは4番目の長門のみであり、
残り3人分の無言が練習の過酷さを物語っていた。いや、
長門の表情検定一級保持者である俺の目から見て、こいつも疲弊しきっているな。
3点リーダーが人一倍多いし。

 初日こそ古泉からネチネチと小言を投げかけられていたが、もはやその気力もないらしい。
御馴染みのニヤケスマイルさえ地平線の彼方である。無論、
対応する俺側としても間違いなくスルーすることだろう。ちなみに、朝比奈さんは水を左手に
持ったままテーブルに突っ伏してて危険なのだが、誰一人指摘しようとしないというやるせなさである。

 ちなみにのちなみに、ハルヒは今日も元気に「じゃ、また明日も同じ時間ね!」と叫びながら一人
先に帰宅してしまった。同じだけの練習をこなしているというのに、
あいつの無尽蔵のスタミナは何処からきているというのだろうか。実は光合成でも出来るんじゃないか。

「……あなたに伝えたいことがある」

 沈黙を打ち破ったのは長門である。
 何だ。


17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 01:28:05.51 ID:NtlgGgbZ0
「思念体に、朝倉涼子の再構成を申請したい。許可を」

 その言葉を受けて、後悔から後悔の海を遊泳していた俺の意識が現実に戻ってきた。
 朝倉涼子。長門と同じ対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェイスであり、
俺とハルヒのクラスメートだったのだが、現在はカナダに転校したことになっている。
勿論それは嘘で、実際には派閥争いの末長門に亡き者にされた殺人未遂犯。

 俺を二度も刺し殺そうとした奴で、一度はマジで死んだと思った。
 その朝倉を再構成するだと。何故だ。

「私の役目は観測。しかし、著しく能力の行使を制限した現在のこの個体では、
 バンドの練習とそれを両立するのは非常に困難。
 故に、一時的に観測を代替させるバックアップが必要と判断した」

 つまり、あれか。疲れたって事か。

「そう」
「しかしだな……」
「私が私の権限において再構成するため、その後の彼女は急進派ではなく我々
 主流派に属することになる。危険性はない。また、情報操作により朝倉涼子は最初から
 転校していなかったということにするから、涼宮ハルヒに何らの影響を及ぼすこともない」


18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 01:30:24.05 ID:NtlgGgbZ0
 わかってる、長門がわざわざ言ってくるってことは全て織り込み済みということだろう。
お前の頼みは聞いてやりたいし、しかもあの冬の約束を守った上での発言だ。
拒否するのは俺の望むところではない。だが、なんというかだなぁ。

「そもそもそれ、俺の許可が必要か? 記憶を書き換えるんだったら、
 言っても言わなくても問題ないだろう。パトロンから言われたのか?」
「……あなたに決めて欲しい、そう思った。これは私個人の意思であって、思念体は無関係」

 どういう意味だろうか。
 確かに長門が色々言ってくれることはありがたいしほっとするんだが、逆に一抹の不安を覚えなくもない。

「あなたのトラウマでしょうからね」

 古泉が先週同日比30%減くらいの笑顔で口を挟んだ。

「だから長門さんも、あなたに進言したのでしょう。」
「…………」
「……なるほどね。長門の保障があるんだ。本当に危険性は皆無なんだろう。
 わかった。やっていいぞ、長門。お前だって休まないとな」


19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 01:32:35.98 ID:NtlgGgbZ0
 長門は一分ほど逡巡し、やはりこう言った。

「…………そう」

 あぁそれから長門、俺の記憶はいじらないでくれ。これまでの経験則から言って、
記憶の改竄が行われた場合でもだいたい何らかの違和感ないしは既視感を覚えるものであって、
修羅場が続く中これ以上精神的負担を増やしたくない。

「そうですね、僕としてもご遠慮願いたいです。
 この三年間の記憶は、出来るだけ本物であって欲しいですし、ね」
「私も、このままで……」

 古泉、そして朝比奈さんも消え入るような声で俺に続いた。

「みんな何だかんだで、この高校生活を大切に思っているんだ。お前だってそうだろう?」

 長門は数秒間俺と見詰め合った後、か細く、だが力強く呟いた。
その時の長門の表情を、嬉しくも寂しそうで、なのに感情を上手く表現できないもどかしさを
貼り付けたその表情を、俺は生涯忘れないと誓った。

「……了解した」


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 01:34:45.89 ID:NtlgGgbZ0
 3月を目前にして徐々に暖かくなってくるとはいえ、やはりまだまだ夜の風は堪える。
長時間の練習のせいでYシャツが汗を多分に吸い込んでいるということもあり、
油断していると風邪を引いてしまいそうだ。マフラーと手袋をしてきてよかった。

 帰り道、自転車を押しながら俺は一本の電話をかけていた。料理を一人分作るのも二人分作るのも同じ。
これ以上後悔を重ねてもきっと同じことだ。だから俺は、迷うことなくある思い付きを電話相手に告げていた。

 高校三年間。その記憶。ファミレスでの会話が、耳に張り付いて仕方なかった。
ふざけた属性を持つ奴らがこれまたふざけた属性を持つ女に集められ、
ふざけた行動で世の注目を浴び続けた高校生活。見ず知らずの誰かに謝るために走り回った数は
両の指どころか足を含めてもとても足りず、ともすれば世界崩壊の危機に陥ったり、
猫が喋る世界が常識になりそうだったなんてこともあった。

 だが、それでも俺は――俺たちは、楽しかったんだ。かけがえのない日々なんだ。

「……らしくないな。卒業を控えてナイーブになってんのか?」

それでも今、実感していた。


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 01:36:59.69 ID:NtlgGgbZ0
「おはよう、キョンくん」

 卒業式の練習ということで、翌日は三年生といえども登校日だった。
ベースを部室に置いてから教室に向かった俺を待ち受けていたのは、
懐かしくも若干の戦慄を覚えざるを得ない人物であった。

「久しぶりね。そんなに構えないでよ、もうあなたを狙ったりしないわ」

 喧騒の教室内で俺だけに聞こえるように小さく囁く。
 以前の記憶は残っているんだな。

「もちろん。思念体は情報の集合体。インターフェイスとしての個体を消されても、
 それが蓄積した情報ともども無に帰すわけじゃないわ。
 ただ、あれ以降も『私がこの世界にいた』記憶はやっぱり存在しないから、
 馴染むのにちょっと時間かかりそう」
「そうか。だが、あくまで一時的なんだろう?」
「え……あぁ、そうね。でもその言い方は随分じゃない?
 さっさと消えて欲しいって言ってるように聞こえるわ」

 怒ったように頬を膨らませる朝倉。同じインターフェイスなのに、
長門と違って表情豊かなことだ。思念体はどんな意図で差異を設けたんだろうか。

「すまんな、そんなつもりじゃなかったんだが」

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 01:39:32.84 ID:NtlgGgbZ0
 覚悟も納得もしておいたはずなんだが、やはりどうしてもトゲトゲしい反応になってしまう。
 精進が足りんな。

「しょうがないな、お昼奢ってくれたら許してあげるっ」

 イタズラ好きな年上の幼馴染みたいな顔をして朝倉は言った。不思議探索のおかげで
日常的に空っぽな俺の財布が悲鳴を上げそうな申し出だが、謝罪の意もあるし色々と聞きたいこともある。

「なら昼休みにまた言ってくれ。どうせハルヒはいないから問題もないだろう」
「あら、私とお昼一緒するのに涼宮さんを気にするわけ?」

 俺自身口喧嘩が弱い方だとは思わないのだが、どうしてこう周囲に口が上手い奴ばかりが集まるのだろうか。
 いつもこんな切り替えしばかりだ。

「いいから、また後でな」

 朝倉は「わかってるのよ」とでも言いたげな顔を残したまま、女子の輪の中に入っていった。
やはり同級生たちの記憶は改竄されているらしく、朝倉がいることに誰一人として
驚嘆することはない。むしろこのクラスの中心人物であるかのように続々と人が集まってくるし、
応答する朝倉も終始笑顔を絶やそうとしない。

 本当に。どうして、こんなに違うんだろうな。




24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 01:42:00.49 ID:NtlgGgbZ0
「おいキョン、弁当箱抱えてどこ行くんだ?」

 昼休み、久しぶりに会ったアホが声をかけてきた。
何故こいつはこう余計なことばかり言うのだろうか、空気を読むって言葉を知らんのか。

「ゴメンね谷口くん、今日は借りてもいい?」

 何と言い返そうと考えていると、後ろから朝倉が口を挟んできた。
ありがたいが、後々また谷口からめんどくさい事言われるんだろうなぁ。
 その谷口は絶望感たっぷりの演技をしつつ、

「キョン……お前には涼宮がいるじゃないか……」
「まぁまぁ谷口、多分SOS団の話し合いか何かだよ」

 何?

「そういうこと。もうすぐ面白いことやるから、楽しみにしててねっ。
 じゃあキョンくん、行きましょ」

 いったいどういうことだ、と国木田に問い質す間もなく、俺は朝倉に連行された。
 向かう先は購買。昼時すぐに行かないとロクなものが残ってないんだが、
とにかくまずは先程の事情を聞かねばならん。この際歩きながらでもいいだろう。

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 01:44:11.18 ID:NtlgGgbZ0
 しかし、俺が口を開く前に朝倉からその説明が開始された。

「私もSOS団に所属していることになってるの」

 何故だ。

「その方が観測に便利だから。今回は完全に長門さんのバックアップとして再生されたから、
 長門さんと同等の観測をしなければならないってこと。派閥が異なっていた前回とは違うのよ」

 ……なるほどね。確かに、長門は常にSOS団の内側という最もハルヒに近い
位置からその役目をこなしていた。ならば代替する朝倉も、同じ位置に立たなければならない。
理に適っているな。

 と、朝倉が急に購買とは逆方向に曲がった。おい何処に行くつもりだ。

「実はお弁当持ってきてるのよね。だから奢ってもらうのはまた今度。
 それより、やらなきゃいけないことがあるでしょう?」
「何だ」
「生徒会と、先生方の説得よ」


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 01:47:11.57 ID:NtlgGgbZ0
 SOS団はここ北高、特に教師や生徒会といった学校の秩序を守るべき団体において
タブーとなる存在であり、説得が容易にいくとはハルヒ以外誰一人考えていなかった。
 おまけに現在の生徒会長は機関の息がかかっている人物ではないので、
古泉を交えた出来レースをすることも出来ない。

 と思っていたのだが、これが思いのほか簡単に許可が下りた。所要時間として計10分もかかっていない。
 それは何故か。説得に来たのが朝倉だったからである。

「優等生っていう肩書きはこういう時役に立つものよ」

 屋上で自作らしき弁当をつまみつつ、朝倉が言った。

「確かにな。これが俺単独だったら多分無理だっただろうよ。
 同情はされても黙認すらしてもらえんだろう」

 最悪古泉を通じて機関に金を積んでもらおうとさえ考えていたくらいだ。
 とにかく、これで少なくとも本番で演奏できるということは確定した。ひとつの関門をクリアしたと言えるだろう。
もっとも、演奏時間は1時間に短縮されたけどな。こればっかりは式の都合上どうしようもない。

 ――そういえば。

「お前は何処のパートなんだ?」

 SOS団に所属していることになっているのならば、こいつだって何らかの楽器を弾かなければならないはずだ。



28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 01:49:47.30 ID:NtlgGgbZ0
「私は演出・音響を中心とした裏方業務全般の担当よ。今回の説得もそのひとつ。
 私まで演奏に参加しちゃ、わざわざ長門さんがバックアップを創った意味がないじゃないの。
 まぁ私は長門さんと違って能力に制限を課していないから、出来なくはないんでしょうけど」

 なるほど、それはもっともだ。しかしどうせ朝倉にその辺を一任するなら、
俺の雑用という役割も今回は外して欲しかったぜ。二人もいらんだろう。

「それはそれ、これはこれ。頑張ってね、キョンくんっ」

 冬の終わりに早めの桜が咲いたかのような笑顔で朝倉は言った。
……やはり、何処か違和感があるな。そう、俺にはこの笑顔がかつての朝倉と同じとは
とても思えない。まるで人間と相違ない。

「あぁそれは、」

 一呼吸置いて、朝倉が続ける。

「私を再構成したのが長門さんだからよ」
「どういうことだ?」
「長門さんには、この三年間の――そうね、有機生命体でいうところの思い出があるわ。
 あなたたちと過ごした思い出よ。そのおかげで彼女は、まぁまだちょっと不器用だけど、
 内面はもうほとんど人間と変わりない。そんな長門さんが創った私には、
 長門さんの想いが不可避的に込められてる」

 だから、朝倉には人間の感情といったものが多少なりとも内在している。
 そういうことか。



29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 01:51:59.63 ID:NtlgGgbZ0
「そういうことよ」

 そうか、だから……だから、俺は朝倉に過剰な拒絶反応をしなくても済むのか。
古泉は言った、俺のトラウマだと。それは自覚していた。にもかかわらず、俺は暢気に朝倉と昼を共にしている。
 それは、きっと。長門が無意識に注いだ"人間らしさ"のおかげなんだ。

「長門さんに感謝しなさいよ?」

 しかし朝倉の言葉は耳を素通りし、一方の俺は先程思ったことを恥じていた。
長門と朝倉を比較した自分を恥じていた。そう、朝倉の言うとおり、あいつはただ少し
不器用なだけなのかもしれない。自己表現が下手なだけなのかもしれない。
 何度も、何度もそう思ったはずなのに。

「……どうやら、俺はお前だけじゃなく長門にも飯を奢らなきゃならんようだ」
「それ、自己満足よ。でもいいわね、財布が本当に空っぽになるでしょうけど。
 今日にでも誘いなさいよ。謝罪じゃなく、感謝の意を込めて、ね」

 全てを見透かしているかのように、朝倉はクスクスと笑った。女の子の笑い方だ。
ちょうど朝、クラスメートと談笑していた時と同じく。
きっとその時、周囲に完璧に溶け込んでいてまるで違和感ひとつなかったことか、俺の違和感の正体だったんだろう。

 昼食を食べ終えた頃には、俺はもはや朝倉に対して苦手意識や嫌悪感を覚えることはなかった。

 だが後にして思えば、それもすべて計算の上だったのかもしれん。
 この時点ではまだ、見抜くことが出来なかったんだ。


30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 01:54:36.11 ID:NtlgGgbZ0
『第二章』



 その日は午前授業だということを完全に失念していた俺は、部室に入る早々ハルヒに怒鳴り散らされた。

「ちょっとキョン、遅いわよ! どこほっつき歩いてたの!」

 しかし、俺に続いて入ってくる朝倉が目に入った瞬間、ハルヒの怒りは沸点から氷点下へと一気に下落した。
 何だよ。

「あんた達、何で一緒にいるのよ」

 何だそんな事か。睨むな古泉、今日の言い訳は完璧だ。

「その事で話がある。生徒会と教師からの許可が下りたぞ。演奏時間は1時間に短縮されたがな。
 俺だけじゃ無理だと思って朝倉に同伴してくれるよう頼んだんだ」

 俺の報告を聞いて、古泉はホッとしたあるいは物足りないような複雑な表情をしたかのように感じたが、
生憎俺はハルヒの顔しか見てなかったせいで正確にはわからない。あくまで視界の隅での話だ。
 しかし、一方のハルヒも同じような顔をしていた。

「そっ。確かにあんたみたいな粗忽者一人じゃ無理だろうし、涼子を連れて行ったのは正解ね。
 1時間しかないってのがちょっと不満だけど、あんたにしては及第点ってところかしら」

 こいつはそろそろ素直に人を褒めることを覚えた方がいい。優秀な上司は部下を褒めて伸ばすものらしいぜ。


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 01:56:58.22 ID:NtlgGgbZ0
 ……そういえば、ハルヒは朝倉のことを涼子と呼ぶんだな。こいつが名前で呼ぶ同姓は
俺の知る限りで数少なく、SOS団員を除けば本当に一人二人だ。あぁ、去年辺りから阪中のことも
時々名前で呼んでいた気がする。

 いずれにせよ、つまりそれは、ハルヒにとって朝倉が近しい人物であるということになる。

「で、今日は何時まで練習だ?」
「そうね。ここ数日みんな頑張ったおかげでかなり形になってきてるし、
 今日は6時までにしておきましょう。疲れを取る時間も与えなきゃね」

 それなら長門を飯に誘う時間くらいありそうだな。

「ならさっさと行こうぜ。ここからスタジオまで結構時間かかるし」
「ちょっと何仕切ってるのよ、元はといえばあんた達が来るのを待ってたから
 出発が遅れたんじゃない! もう、行くわよっ!」



34 :>>31 前日に曲が増えるとかあるよね:2010/02/13(土) 02:00:07.27 ID:NtlgGgbZ0
 慣れというのは恐ろしいもので、5時間ほどの練習がやけに短く感じたし、体力にも
多少余裕があった。学校に行ったことが良いリフレッシュになったようだ。
あと、演奏曲が減って精神的負担がだいぶ取り除かれた事もひとつの理由かもしれん。

 ちなみに、リハまで特に練習する必要がない朝倉は参加せず、あの後一人帰宅していった。
どうせ情報操作をするんだろうから本当に練習する必要がない。羨ましいやら何やら。

「じゃ、今日は解散! あとキョン、後でちゃんと連絡しなさいよ!」

 例によって嵐の如くハルヒは去っていった。思うに、あいつの台詞にはビックリマークが多すぎるな。
 もう少し落ち着くべきだ。

「それが涼宮さんの涼宮さんらしさですよ。ところで何のご連絡ですか?」
「俺がそれを常に知っていれば苦労もない。恐らく生徒会等について、事の顛末を聞きたいんだろう」

 古泉の笑顔が先週比10%減程度に戻っていた。こいつも今日は余裕がありそうだ。
だが小言を聞くつもりもないし、構っている暇もない。お前は早めに帰って休んでろ。

「長門」

 練習時間が相対的に短くなってもやはりヘトヘトな朝比奈さんを憎たらしいほど完璧にエスコートしつつ
古泉がスタジオを後にしたところで、俺は平常の無表情を携えて佇んでいた長門に声をかけた。

「これから飯でも食いに行かないか」

35 :>>33 ありすぎて困る:2010/02/13(土) 02:02:45.82 ID:NtlgGgbZ0
「……何故?」

 なぁに、日頃の感謝を返す機会かと思ってな。
 それとも疲れてるか?

「そうでもない」
「なら、どうだ。金の心配ならいらんぞ。今日は俺の奢りだ、好きなものを好きなだけ食え」

 ひと欠片の濁りすら見当たらない瞳が、俺を見つめていた。
長門と会話を試みるとよくあることなんだが、もしかしたらこれは、
"人間として"適切な言葉を探している時間なのかもしれん。

「……鍋」
「鍋が食いたいのか?」
「そう」
「そうか。この時期はまだ寒いしな、暖まりそうでいい。行こう」


36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 02:05:03.13 ID:NtlgGgbZ0
 場所は移って、SOS団が時々利用する某鍋専門店。古泉の紹介なだけあって味に文句はなく、
何よりも良いのは鍋であるにもかかわらず食べ放題プランが存在するということだ。大見得切ったとはいえ
やはり実際のところ財布はデレてくれないから、長門がここを指定してくれた時俺は心底胸を撫で下ろした。

 熱々のもつ鍋から湯気が上がる。ここは酒を飲むべきなのかもしれんが、
あの夏の孤島以来SOS団の飲酒は禁止だし、そもそも俺たちは未成年である。烏龍茶で我慢しておくとしよう。

「飲みたい?」

 思考回路を読まれた。

「その程度の情報操作なら今の私でも問題ない」
「しかしなぁ……」

 と、そこで俺は思った。いつもの長門らしくない。世界改変や危機に関わる問題で
助言なり静止なりをかけてくることはあるが、それらと凡そ無関係な今回のようなプライベートで、
こいつが積極的に何かを推してくることはまずなかった。
 ならば、これは。

「……もしかして、飲みたいのか?」

 "長門が"酒を飲みたいのではないだろうか。



37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 02:07:30.77 ID:NtlgGgbZ0
「必ずしもそうというわけではない。しかし、卒業を間近に控えた高校生の男女が
 こういった場を設けるときは、そうするのが一般的だと本に書いてあった」

 なんの本だそれは。高校生が酒を飲むことが一般的な世の中なんて、さすがのハルヒだって望まないだろう。
婉曲な言い回しではあるが、要約すると飲みたいということらしい。
ところでこれは長門に感謝を伝えるために設定した席であって、その要望を断るなんて神が許しても俺が許さん。
 だから、

「一般的なら仕方ないな。情報操作を頼んでもいいか?」
「任せて」

 俺が「情報操作を」と言った辺りで応じたところを鑑ると、よほど飲みたかったらしい。
 何か心境の変化でもあったのかね。朝倉を復活させたのが原因だろうか。あいつは優等生の仮面を被ってるが、
いや実際優等生であることに間違いはないけれど、やることはわりと突拍子もない。
情報爆発とやらのために俺を殺そうなんて発想からしてそうだ。その辺はハルヒに似ているのかもしれんな。

「完了した。ここで我々がアルコール類を頼んでも誰も何も不自然に思わないようになっている」

 俺がモノローグを展開している間に、長門は作業を終えていたらしい。相変わらず仕事が速いやつだ。



38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 02:10:35.81 ID:NtlgGgbZ0
 食べ飲み放題への変更は可能かを店員に聞いたところ了承を得たので、
鍋をつつきだす前に俺たちはアルコールを頼んでおいた。するとここの店員も仕事が速い人種らしく、
ものの一分もしないうちに注文が届けられた。

「じゃあ、まだ何も終わってないが、前夜祭ってことで。乾杯」
「乾杯」

 湯気と交差しつつグラス同士がぶつかり合う。
 アルコールに限らずこの音がすると心躍るのは何故なんだろうな。

「ほら、鍋も食えよ……ってぇ、もう半分くらいないし!」
「遠慮するなと言ったのはあなた」

 長門の取り皿を見ると、チョモランマの如き高さを誇って肉やら野菜やらが積み重ねられていた。
焼肉は戦争と聞いたことはあるが鍋もそうだったのか。
嗚呼、どうでもいいこと考えている間に見る見る無くなっていく。

「早く食べた方がいい」

 無表情は無表情だが、心なしか長門は楽しそうに見えた。ニヤついていると言ってもいい。
 何だこれは、ハルヒの影響か。

「言われなくともっ。すいませーん! 店員さん、鍋の具、おかわりで!」


39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 02:12:49.58 ID:NtlgGgbZ0
 1時間半後。食ったし、飲んだ。一緒にいる相手がやたらと食う奴だとこちらも
許容限界を超えて食べ続けてしまうのは何故だろうか。おかげで腹がパンパンである。
これが食べ飲み放題じゃなければ途方も無い金額になっていたことは間違いなく、
その場合格好つけておいて長門に土下座するハメになっていたことも間違いない。

「もう終わり?」

 5回目のおかわりを店員に注文したところで、長門はそう問いかけてきた。

「……俺の負けでいいから勘弁してくれ。酔いも回ってきてるしもう限界だ」
「そう」

 具材を運んでくる店員の目が段々と訝しげなものになってきたけれども、こいつは一向に箸を止めようとしない。
 相変わらず底知らずな胃袋をしてやがる。

「美味いか?」
「あなたのその問いはこれで4回目」

 ……これはどうやら相当酔っているらしい。
まぁ自分が酔っ払っている自覚がある酔っ払いなんていないしな、記憶を飛ばさない程度にしておこう。

「酔っ払っても、構わない」
「ん?」
「私は今日好きなだけ食べる。あなたも、遠慮せず飲み続けて構わない。
 だいじょうぶ、この個体がアルコールの影響を受けることはない」

 しかし、お前はもう殆ど人間と変わらないんじゃないのか。


40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 02:15:28.96 ID:NtlgGgbZ0
「それは情報操作等の能力的な話。あくまで私という個体の性質はそのままであり、
 有機生命体のような身体的変化を受けることはない。肉体的成長もしない」

 随分変わったように思っていたが、確かに見た目だけ言えば三年前から何一つ
変化していない気がする。そういや、復活した朝倉も見た目だけなら消える以前のままだったな。

「……まぁ、お前がそんなに言うなら。良いか」
「良い」

 長門はコクリと頷いて、また黙々と鍋をつつき始めた。
 ――長門は変わった。長門だけじゃなく、古泉や朝比奈さん、勿論ハルヒも。あの三人の
転機となったのが何だったのかはわからないが、長門のそれはきっとあの消失事件だったはずだ。

 もしも消失世界でのこいつの姿が、その願望によるところであったとしたら。こいつは今でも
そうなりたいと思っているのだろうか。俺にわかるはずもない。
その上真相は現時空に塗り替えられてしまったし、聞いても答えてはくれないだろう。

 でも、願わくば。

 願わくば、"今の長門有希"を選んでくれたら。
 俺のしてきたことにも、少しは意味があったように思える。


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 02:17:37.30 ID:NtlgGgbZ0
 精算を終えた俺の財布は、何とか紙幣を一枚残すに留まってくれた。
これで明日の昼飯くらいはなんとかなる。しかし俺の意識はというと見覚えのない世界を彷徨い、
足はフラフラ、呂律は回らず、視界は深い霧がかかっているかの如くはっきりしなかった。

 有り体に言えば酷く酔っ払ったということである。

「ながとぉ、だいじょうぶかぁぁ」
「それは私が言うべき台詞。だいじょうぶ、情報操作で許容限界を超過したアルコール分を抽出する。
 すぐに良くなる」

 長門のマンションへ向かいながら、一方的な会話を試みる。
 もはやこいつが何を言っているのかも聞き取れずにいた。

「ながとぉ」
「何」
「たのしかったか? おれはおまえに、すこしでも恩をかえせたか……」

 一瞬の沈黙の後、細く繊細な指先が俺の頬に触れた気がした。

「あなたに……」

 抑揚の薄い声が、耳を通り過ぎていく。

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 02:20:04.50 ID:NtlgGgbZ0
「感謝すべきは、私の方」
「なんだって?」

 音が途切れ途切れに聞こえる。

「有機生命体が過剰にアルコールを摂取すると、神経が麻痺し記憶が曖昧になることがある。
 解毒作用が追いつかなくなるため。その程度は個々の体質にもよるけれど、
 ……あなたがこれに該当する人物だということは三年前から知っていた」

 どんな話をしているのだろう。長門の口が動いているのは認識できるのだが、
如何せん脳みそ以下すべての器官が役立たずであるので、会話を成立させることは出来そうもない。

「だから、私がこれから言う事を、あなたが覚えている可能性は限りなく低い」
「おれはよっぱらってないぞぉ」

 もう一方の手が、俺の掌を包み込む。

「――きっと、これは"楽しかった"という感情。
 思い残すことは、もう、何もない」

 そこで俺の意識はブラックアウトした。

47 :バレた…だと…:2010/02/13(土) 02:22:18.83 ID:NtlgGgbZ0
「うぉ!?」

 目を開くと真っ暗な闇が広がっていた。いや、ところどころに儚げな輝きが見えないこともない。
部分的に灰色がかっているようにも思える。赤と緑に点滅する飛行物体が翔けているのも見えた。
 つまり、空。これは夜空。

 したがって現在俺は、少なくとも寝そべっていることは間違いない。
 ここが何処かはわからないが。

「公園」
「……長門?」

 目線を斜め左に向けると小動物みたいな顔がそこにあった。
なんとなく後頭部が暖かい気もする。背中は多少痛むが。
 段々現状を理解してきたぞ。まず第一に、ここは長門が住むマンション近くの公園である。変態どものメッカだな。
第二に、俺はその公園のベンチに寝そべっている。そして第三に、俺は長門に膝枕されている。

 ……膝枕だとっ!

「突然起き上がっては危険」
「あ、すまん」

48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 02:24:59.76 ID:NtlgGgbZ0
 しまった、慣れないことに驚いてつい起き上がってしまった。くそ、
もう少し長門の膝を堪能しておきたかったのに。だがまぁ、目が覚めたのにそのままでいるのも変か。
 それでも惜しいことしてしまったと悔やむのは男の性だろうか。

「あなたの携帯電話に何度か着信があった。涼宮ハルヒから」
「……長門、今何時だ?」
「21時14分39秒。あなたは約30分眠っていたことになるけれど、
 情報操作で周囲の温度を調整していたので風邪を引く心配はない」

 それは大変ありがたい話だ。ありがたついでに起こして欲しかったぜ。

「慌しくてすまんが長門。俺はそろそろ帰ろうと思う」
「わかっている。一刻も早く涼宮ハルヒに連絡すべき」

 そうだな、ほっとくと閉鎖空間が発生して古泉が過労死しかねん。この時期だと冗談にならないから困る。
 あぁそれと、もうひとつだけ。

「何」
「楽しかったか?」

 俺の問いかけに、長門はゆっくりと、深く頷いた。



49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 02:27:25.93 ID:NtlgGgbZ0
『キョン! 団長からの電話に出ないなんて雑用として有るまじき行為よ!』
「すまん、ちょっと寝入ってた。疲れが溜まってたんだよ、勘弁してくれ」

 嘘をつく時は多少なりとも真実を混ぜるといい。特に、自分がそれほど
利口ではないと自覚しているのであれば尚更だ。矛盾が発生する可能性を減らせるからな。

『……ふんっ! まぁいいわ。それより、自分で言い出したこと、忘れてないでしょうね?』

 あぁ覚えている、大丈夫だ。
 ――覚えている、といえば、鍋をつつき始めてから目が覚めるまでの記憶が殆どない。
最後に見た覚えがあるのは溢れんばかりに積み上げられた長門の取り皿と、
無表情の中にイタズラ心を混ぜ合わせた長門の顔だ。

 今日の長門は良い意味で長門らしくなかったな。朝比奈さんや古泉もそうだが、
出会った当初に比べてみんな随分遊び心を身に着けてきたような気がして、
あぁどう考えてもハルヒの影響だなと思うと嬉しいやら溜息が出るやら。
面白さを追求するハルヒの行動力や積極性が他人に流れ込むと、どうやらあんな感じになるみたいだな。

『それならちゃっちゃと、予定通り動きなさい!』

 右から左へ鼓膜を貫通するほどの大声が聞こえたかと思うと、
ブツンという電波が切れる音が響き渡り、ツーツーという寂寥感を醸したてる音だけが残存した。やれやれ。

「……寒いなぁ」

 風が身に染み入る冬の終わり。今日は何時に帰れるだろうか、と思いつつ、俺は歩を進め始めた。
 アルコールは、まったく残っていなかった。


50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 02:29:50.44 ID:NtlgGgbZ0
『第三章』



 忙しい時ほど時間というものは主観的に速く流れるおかげで、気付けばもう卒業式前日である。
バンドの出来自体はそう悪くなく、いやむしろこの短期間でよくぞここまで完成度を上げたと
自画自賛したいくらいだ。ただし、それが式典の出席者に受け入れられるか否かは話が別である。

「そこは考慮する必要もないでしょう」

 女性4人組(さすがに今日は朝倉もいる)は休憩がてら買出しに行っているため、
現在スタジオにいるのは俺と古泉だけである。こいつとツーショットで何が嬉しいやら。

「お言葉ですが、僕としてもそれは女性と組みたいものです」
「当たり前だ」

 残念です、なんて言われたら今すぐ全て放棄して逃げ出していたところだ。

「その点についても同意しておきましょう。と、話が逸れましたね」

 こいつと話しているといつも脱線していくのは何故なんだ。
 まぁいい。それで、どういうことだ。

「今まで何度かライブを行ってきましたが、その時我々を見に来て下さった方々は殆ど北高の生徒ですよ。
 三年生から一年生まで幅広く。そして、SOS団が卒業に向けてまた何かやろうとしている、
 という噂が真しやかに流れています。よって、突然卒業式で演奏しだしても、
 生徒の皆さんはむしろ納得するでしょうね」


52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 02:32:10.98 ID:NtlgGgbZ0
 そんな噂が流れていたなんて初耳だな。俺たちが殆ど学校に行っていないせいもあるだろうが。
 ……しかし、やはり何処からか漏れてしまうのか。

「生徒会や教師の方々は知っていますからね、隠し通すのは無理というものです。
 それに、あなたと朝倉さんの会話もありましたから」

 あぁ、そうだった。俺たちが何かやろうとしているってことを、少なくとも国木田と谷口は知っているし、
教室にいた何人かにも聞こえていただろうな。仮にその中に噂話が好きそうな
女子達が含まれていたとしたら、伝達していかない方がむしろ不自然といったところか。

「その通りです――ところで、不自然といえば」
「何だ?」
「最近の長門さん、少し妙だと思いませんか。それから涼宮さんも」

 長門? まぁ確かに以前よりさらに喋らなくなったような気がするが、
声をかければ応えてくれるし、ただ単に疲れているだけじゃないのか。

「観測という役目から一時的とはいえ解放されている長門さんが、我々と同等程度の練習量で
 表に出るほど疲れるとはとても思えません。
 疲弊している、というより心ここに在らずといったように見えます」


53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 02:35:13.07 ID:NtlgGgbZ0
 思案顔をしながら、古泉が捲くし立てる。

「考えすぎじゃないか? 何かあったら、今の長門なら団員の誰かに言ってくるだろう。
 それから、ハルヒについてはお前が心配すべきことは一切ない」
「何かご存知なので?」
「あぁ。だが、禁則事項だ」

 その時、下の階から姦しい話し声が聞こえてきた。
 どうやら戻ってきたらしいな。

「ま、心配するな。それより練習に集中しないと、また団長の怒号が響き渡るぞ」
「……ふむ。では、あなたに一任しましょう。
 長門さんのことも、涼宮さんのお怒りを買う役目もね」

 それは丁重に断らせてもらおう。というか、たまにはお前も買っとけ。

「僕では求める金額に届きませんよ。涼宮さんは、ただ怒りたいわけではないのですから」

 嗚呼、本当に。
 あぁ言えばこう言う奴だよ。


54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 02:38:21.08 ID:NtlgGgbZ0
 長門がギターソロを掻き鳴らしたところで、最後の練習は終了した。
 時刻は午後7時。夕闇といえば夕闇に見える空である。

「みんな、明日に備えて今日は早く寝るのよ! 緊張して寝付けなかったなんて許さないんだからね!」

 おいおい、遠足前の小学生じゃあるまいし。
 お前こそ興奮しすぎて寝れない、なんてことにならんよう気をつけろよ。

「わかってるわよっ。それから、キョン」

 少し声のトーンを落としつつ、ハルヒが俺だけに話しかけてきた。

「それこそ、わかっているさ」
「ならいいわ。じゃあねっ!」

 足早に去っていくハルヒを見ていると、今にも足が砕けそうな自分が情けなくなってくるな。

「二人きりで密談、ですか」
「気色悪い言い方をするんじゃないっ」
「それが禁則事項とやらで?」

 さぁ、どうだろうか。

「ふふっ。まぁ一任すると言った以上、野暮な詮索はやめておきましょう。では、我々も帰るとしましょうか」


55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 02:40:32.84 ID:NtlgGgbZ0
 その言葉を合図にそれぞれがそれぞれの帰路につく。
 しかし数時間後、俺が駅前で自分の自転車を探していたところ、
意外な人物が視界に入った。しかも意外な組み合わせで。

「キョンくんっ」
「どうも朝比奈さん、さっきぶりですね。朝倉と二人とは珍しい。
 長門は一緒じゃないんですか?」

 言い忘れていたが、朝倉は以前のまま例のマンションの例の部屋に住んでいる。
その後あの部屋に誰か住み着いたかどうか聞いたことはなかったが、仮にそうだとしても
どうせ情報操作で何とかしたんだろう。というか、
一時的な復活なら長門と一緒に住めばよかったんじゃないのか。
 俺の問い掛けには朝倉が答えた。

「私たちだけ。ちょっと相談があったから、そこの喫茶店に行ってたのよ」

 相談? 朝倉が? 朝比奈さんに?
 逆ならまだしも、その構図がまるで思い浮かばない。

「あら、朝比奈さんってSOS団女性陣の相談役なのよ?」
「初耳だ」

56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 02:43:16.08 ID:NtlgGgbZ0
 確かに、ハルヒが何かと朝比奈さんに話しかけているのはよく見たが、
ちょっかい出されているだけかと思っていた。長門との組み合わせ――あぁ、
そういえば誘拐事件の直前に、二人きりで一夜を過ごしたこともあったな。
もしかしたらその後も似たような事があったのかもしれん。

「でも上手く答えられているかわからなくて……」

 慌てふためく朝比奈さん。やっぱり可愛い。

「相談って言っても、本当はただ聞いて欲しいだけです。
 その点朝比奈さんはとても真剣に聞いてくれるから、私たちとしても話しやすいんですよ」

 朝倉はよく出来る後輩みたいな口調で朝比奈さんを持ち上げる。
みんなにとって、朝比奈さんはお姉さんみたいな存在らしい。
まぁ実際のところどうかは知らんが朝比奈さんは建前上先輩だし、
長門の実年齢はあのエンドレスサマーを考慮しなければ6歳くらいである。
朝倉なんか3歳と数週間だ。

「私たちインターフェイスに有機生命体としての年齢はあんまり関係ないけどね。
 とにかく、そういうこと」
「なるほどね。で、何の相談だったんだ?」

 俺の台詞に、朝倉はやれやれといった古泉よろしくのジェスチャーで肩をすくめ、
朝比奈さんは本当にお姉さんみたいな目つきで俺を睨んだ。


57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/13(土) 02:45:33.66 ID:NtlgGgbZ0
「キョンくん……」
「あなた、3年経ってもデリカシー無いままなのね……」

 ええい、何で俺が責められているような図になっているんだ。ただ聞いただけだろう?

「……まぁ、いいわ。でも、キョンくんには言えないわよ」
「その言い方だとまるで俺だけには言えないという風に聞こえるんだが」
「あら、その辺りは鋭いのね。それなら肝心な部分も、もうちょっと何とかならないのかしら」

 トゲが多い上に話を逸らすな、どういうことだよ。

「あのあのっ!」

 睨み合いになりそうだった俺と朝倉の間に朝比奈さんが割って入った。
 よく見ると少し目が赤いように思える。

「喧嘩はダメですよう……」

 ――その瞬間、朝比奈さんが何故みんなの相談役なのか、わかった気がした。
この人は他人の気持ちの変化に人一倍敏感で、それ故共感してくれるんだ。以前、
朝比奈さんが同時空に二人いたあの時、長門に不誠実な態度をとった俺を叱った事がある。
あれもきっと、長門の気持ちを汲んで、いや、長門の気持ちになってのことだったんだろう。

※続きます。

キョン「長門有希を、俺は知っている」2


Figma 涼宮ハルヒの憂鬱 長門有希 悪い魔法使いVer.


涼宮ハルヒの憂鬱 超月刊長門 (NEWTYPE HARUHI COLLECTION)
長門有希ちゃんの消失 (1) (角川コミックス・エース 203-5)
公式ガイドブック 涼宮ハルヒの消失
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         コメント一覧 (1)

          • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2013年02月27日 16:08
          • 1げと

            ……まぁ面白い、面白くないに関わらず長いな……

            ネタバレになるので感想は後編に。

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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