唯「じょうもんせいかつ!」【転】
その瞬間、すぐ横の竹林からくそデカイ猪が山に向かって猛ダッシュしていった
呆然とする自分、自転車から転げ落ちる友人、「熊!?熊!?」と必死な形相の友人
あれがこっちに向かって来ていたらと思うと、ちょっとヒヤッとする
何が言いたいかって、りっちゃん死なないで
ttp://www.youtube.com/watch?v=fGfKXq2rbVg
イノシシTUEEEE
再開します。
さわ子「うーん…りっちゃん?」
律「おうよ!」
さわ子「勝手にやりなさい。」
澪「せんせい!!」
さわ子(澪ちゃん、たしかにイノシシに遭遇してもあんたらじゃ
傷一つ付けることはできないでしょうね。)
さわ子(逆に大怪我負うわ。)
さわ子(譬えるなら、dq6で本物のムドーに貧弱なレベルで挑むのと同じ。)
さわ子(ちょっと怖い目見たほうが今後のためよ。)
さわ子(そんときはあんたが上手く誘導して、皆を逃走させなさい。)
澪(そ、そんな無責任な…)
さわ子「そういうことでがんばってねー。」
澪「おっ鬼!!」
ここでイノシシ狩りに臨む唯たちの装備を見てみよう。
唯「ドキドキするねー!」
・右手→鹿角のヤス
・左手→なし
・頭→なし
・上半身→縄文人の服
・下半身→縄文人の半ズボン
・その他→小型の投槍
憂のまもり(憂から渡されたお守り)
イグサのポシェット(イグサを編んで作ったポシェット、食料入り)
・右手→竹製の弓
・左手→なし
・上半身→縄文人の服
・下半身→縄文人の半ズボン
・その他→黒曜石の矢×10
黒曜石の石包丁
イグサの矢筒(イグサを編んで作った矢筒)
・右手→石製のハンドアックス(石の部分は20cm×4cm×2cm)
・左手→なし
・頭→なし
・上半身→縄文人の服
・下半身→縄文人の半ズボン
・その他→イグサのポシェット(食料・修理器具・小型石器入り)
小型の投槍
・右手→黒曜石の大型槍
・左手→黒曜石の大型槍
・頭→なし
・上半身→縄文人の服
・下半身→縄文人の半ズボン
・その他→ハンドアックス(律のものと同じ)×2
大型縄文土器のバックパック(蔓をつかって背に背負えるようにしたもの
中身には食料、総量10kg)
たくあん眉毛
・右手→小型の投槍
・左手→なし
・頭→なし
・上半身→縄文人の服
・下半身→縄文人の半ズボン
・その他→いぐさのポシェット(食料・つぶて石入り)
竹製の水筒×2
※つぶて石…投げて対象に打撃を与える石ころ。
律「あっ、いつもの湧き水についたな。
水分補給しとくか。」
澪「水筒は二つしかないし、ここを拠点にするか、
遠くの水場を探すか…」
律「どうにかなるだろ、まー。」
澪「な!?適当すぎるぞお前!!」
澪「はぁ…本当に…
あ、みんな、体を動かして大量に汗をかくかもしれないし、
灰塩を食べて水を十分にとっておけよ。」
唯「おーけい!」
澪(帰り道をちゃんと覚えておかないと…
でも方向感覚がぜんぜんつかめない…)
律(ぜーんぜん、出て来ねえなあ…)
梓「ムギ先輩、そんなにもって重くないんですか?」
紬「もっと持てるわよー?」
このあと、ほぼ半日、一行は歩き回ることになる。
糞や足跡、イノシシが地面を掘り返したと見られるあとは見つかったが、
イノシシ自体に遭遇することは無かった。
そのときである!
唯「あっ!あそこっ!」
律「どうした唯?」
唯「なんか、変な動物がいるよ!!」
律「なにっ!?」
律(よし、こっからは声を抑えていくぞ!)
紬(あれは…雉(きじ)よ!)
律(キジか…まあシシ鍋じゃなく焼き鳥にランクダウンしとくか…)
律(よし!目標前方2時の方向のキジ!
フォーメーショーンDだ!)
唯(ふぉーめーしょん?そんなのあったっけ??)
律(こういうのは気分なんだよ気分!それで士気が上がるんだって!!)
梓(変な鳴声ですね…それに、狩るのはちょっと可哀想…)
律(梓、変なヒューマニズムに惑わされるな!)
律(澪、後方から援護を頼む。
唯、私とギリギリまで近づいて投槍でしとめるぞ。)
澪(りょ、了解…)
唯(らじゃー!)
紬(ドキドキ)
唯(え!?ど、どっちなの!?)
律(カンだカン!自分の感性を信じるんだ!)
ジリジリ…
キジ「アホーアホー」
律「いまだ唯!」
唯「応(おう)!」
唯「えいっ!!」
キジから8mほどの距離から投槍を投げる!
キジ「アホー」
そして全く命中しない!
律「あ、あり??」
唯「ハズしたぁーー!!」
あと、飛んでいくスピードでも劣ってる…これじゃ威力も…
鳥、というか素早い動物を狩るには不向きだわ。)
律「くっ…み、みお頼む!」
澪「ああ!」
矢をつがえ、弓を引き絞る澪。
澪(!)
ヒュン!
澪が放った矢はキジのほんの少し側面をかすめて外れる。
澪「くっ…」
キジ「アンタラバカー」
パサパサッツ…パサッ…
キジは優雅に空中へ舞い上がると、唯達の頭上を軽く旋回して
どこかへ飛んでいってしまった。
地団駄を踏んで悔しがる律。
梓(でも、殺さなくて、ほんとによかった…)
紬「あ、あのねりっちゃん…」
律「あっ!?なんだ!?」グワッ
紬「ヒッ!な、なんでもないわ…」
魚喰っといて殺さなくて良かったなんて
流石梓偽善者汚いな偽善者きたない
それに武器の選択も間違ってた。」
律「ああ!そう!そうだよな!くそっ…」
唯(りっちゃん荒れてるね…)
紬(アレがはじまっちゃったのかしら?)
それから小一時間周囲を探索したが、いかなる動物にも遭遇することは無かった。
唯たちは協議の上、途中で新しく見つけた湧水の近くまで引き返し、
そこで一晩明かすことに決めたのだった。
闇の中、かがり火がうごめき煌く。
律「…」
律は口数少ないまま、食事をそうそうに切り上げ、
横になって目を瞑る。
唯「クッキーおいしいね♪」モグモグ
梓「はい…」
梓は曖昧に相槌を打つ。
唯は食料として持ってきたどんぐりクッキー(灰塩味)を
大そう気に入っているようだ。
澪は時々、律の方に視線をやりながら、弓の"つる"の調整をしている。
紬(りっちゃん、それにみんなも…疲れがたまってるのかな…)
紬は、ぼんやりと、皆の方を心配そうに見やる。
始めた頃は、非日常の中に突然入り込んだ日常感覚、が生まれた。
しかし時間が経つにつれ、この二つは溶け合い、
まったく別の、はじめて経験する感覚へと、唯達を晒す。
彼女達も身をもって、それを覚えはじめている。
こうしてまた一日、日が過ぎていった。
大体一時間半ほどかかるだろうか?
澪がかろうじて方向と目印を覚えていたため、何とか帰りつけそうだ。
律は今日もほとど喋らない。
いや、他の皆も。
唯「ふぁーー…」
紬「眠いの、唯ちゃん?」
唯「んーちょっとねー。」
ドン!!!
唯「!!??」
澪「な、なんだ…!?」
それは突然に訪れる。背後で大きな音がする。
重量のある何かが、何かに衝突したかのような…
律「いの…シシ!?」
梓(よりによって…皆さんのテンションが最悪なときに…)
イノシシ「フ…フー…」
イノシシは唯達に気付くと体躯を彼女達のほうに向ける。
本来なら臆病な動物のはず。何かに気がたっているのだろうか?
梓「こっち向いて…に、にじり寄って…きます!?」
律「いーや狩る!!」
澪「ば、馬鹿っ!!昨日のキジとは違うんだぞ!?」
イノシシはゆっくり、ゆっくりと、相撲取りのように寄りきり進み、
体躯を前方に屈める。
紬「来るわっ!!」
唯「うん!」
イノシシ「フーーーーー!!!」
ドッドッドッ!!!
イノシシが突進し始める。
標的は…梓!
梓「あっ…!?」
律「早いっ!!」
紬「あぶないっ!!」
紬は覆いかぶさるようにして、梓をイノシシから庇う。
ドンッ!!!
イノシシはその横を突進し、そのまま別の大木に衝突する。
梓「あ…あ…」
梓「ハッ!ムギ先輩大丈夫ですか!?」
梓は紬のほうに顔を向ける。
紬はすでに、槍を構えて起ち上がっている。
紬「ぜんぜん!」ニコッ!
梓「よかった…!」ジワ
澪「いや、気を抜くな!!」
律「!」
律「ああ!ゆい、あいつに目掛けて槍を投げるぞ!
澪も頼む!」
唯「うん…!」
澪「ああ!」
唯「あずにゃんを睨んでるみたい!!」
梓「ヒッ…」
紬「また来るわ!」
律「澪、距離をとってあたし等の背後から狙え!ムギ、お前の長槍一本貸せ!」
紬「うん!」
紬は律のすぐ目前へ槍を放る。
律はすぐさま片手で掴みあげる。
いや、おそらくは梓に向って、だ。
澪はイノシシの側面に再び矢を射掛ける。
ヒュン!
わき腹に突き刺さりはしたがイノシシは動きを止めず、再び前かがみに。
律「あきらめるな!何度も射掛けろ!!」
律「ムギ!イノシシ挟んであたしの反対側にいけ!両側から仕掛ける!
唯は梓を庇いつつ逃げて引き付けろ!」
唯「うん!」
イノシシが突進する。
律の長槍がイノシシの首の辺りを傷つけ、反動で律は背後に倒れる。
長槍は突き刺さりこそしなかったが、イノシシの動きを止めた。
紬(今!!)
紬は一直線にイノシシに突進する。
紬「はぁぁっ!!!!」
ズっ!ググ…
紬(嫌な…感触…)
紬の長槍はイノシシの下腹深く突き刺さる。
イノシシ「フーーーーーーーーーーー!!!!」
苦しげな声をあげ、打ち倒れるイノシシ。
澪「律、ムギ!怪我ないか!?」
律の背後から澪が声をかける。
律「大丈夫だ!」
紬「私も!」
澪は律に近づこうとするが、
その刹那―
そして律のほうへ…
最後の力で、律を道連れにしようとするかのように。
律「あっ…」
律とイノシシの距離で今突撃されれば…
律「や、ばっ…」
澪「くっそーー!!!」
ヒュン!
澪はすぐさま弓を引き絞り射掛ける。
が、澪の放った矢は外れてしまった、ように見え…
ヒュン!
外れたように見えた矢は、なぜかイノシシの眉間から深々と突き立っていた。
ゆっくりと、横臥するように倒れるイノシシ。
律「あ、あぶ、あぶなか…」
澪「りつーーー!!」
澪「よ、よかっだ…よかっだぁーー!!」ヒッヒック…
律「へへっ…////」
紬(心のビデオカメラ起動開始。高画質モードon)ハァハァ
少し離れた木陰
?「たく、世話をやかせてくれるわね…」
梓を除いた四人がかりで背負い、竪穴住居へと帰路についたのだった。
けれど…逆さまに木に括り付けられ、
次第に体温を失っていくイノシシを、横目に見て…
梓「…」
梓(気が落ち着いてみたら、やっぱり、生き物を殺すのって…)
梓(それに、なんだかわからないけれど、このイノシシ、
何かに取り憑かれてるようだった…)
律「ただいまー!」
澪「重かった…百キロ近くあるぞコイツ…」
唯「さわちゃん!見てーーーー!!」
さわ子「あー?何よ昼間ッから…ヒック」
梓「またお酒飲んでる…」
さわ子「へーやったわね!どらどら…」
さわ子「…」
さわ子(ふむ、コイツは…やっぱりね。)
さわ子「まずまずの大きさね!お昼ごはん食べたら解体しましょうか!」
梓「か、かいたい!?」
さわ子「肉片にしないと食べられないでしょうが…」
梓「う…」
さわ子「穴を掘って、それに木組みを立てて、
イノシシを吊るす土台を作りましょう。」
唯「はーい!」
さわ子「コイツの重みに耐えれるのを作らないといけないから
太くて頑丈なやつを持ってくるのよ。」
-土台作成中-
さわ子「えっとりっちゃんは確か、イノシシの解体を見たことあるって言ってたわね?」
律「うん、田舎のじいちゃんちに行った時に何回かね。」
さわ子「解体プロセスもわかってる?」
律「もち!」
さわ子「じゃ、りっちゃんは補助お願いね。
あんたらの腕じゃ無理だろうから私がメインでやります。」
イノシシ狩りに参加しといてなんですが。
律(ずっと気になってたんだけど、
なんで先生はこの手のことに詳しいんだ?)
紬(サバイバル好きの彼氏でも居たのかしら?)
さわ子「んっ!?なんか言った!!??」
律「な、なーにもー…」
紬「言ってないです…」アセアセ
さわ子「あずさちゃん、怖いなら、
澪ちゃんみたいに竪穴住居に帰ってて良いのよ?」
梓「だ、大丈夫です…」
さわ子「じゃ、はじめますか。
まず、イノシシのお尻の穴に布を入れておきます。」
唯「なんでー?」
律「ウンコで肉が汚れることがあるからなんだってさ。」
唯「ほー。」
イノシシに向って手を合わせる律。
さわ子「ずいぶんと信心なことじゃない。」
律「じいちゃんに、こうしろって言われてるんだ。」
そして、さわ子と律は石包丁でイノシシの皮を剥いでいく。
唯「…」
紬「…」
さわ子(この子たちよく頑張ってるわね…)
さわ子(さて…)
-皮剥ぎ完了-
唯「…」ガクガク
唯と梓は身を寄せ合って震えている。
紬「あんまり脂肪がついてないですね?」
紬はもう慣れたようだ。
さわ子「まあ、そりゃそうよ。夏場だもの。
冬篭り前が一番おいしいんでしょうけど。」
さわ子(フフ…)
さわ子「じゃ、りっちゃん、はじめの一刀はまかせるわ。
下半身のこの辺、一番膨らんでるとこに
切れ込みを入れてちょうだい。」
律「あれ?先に頭は落とさないの??」
梓「ア、アタマ、オト…」ガクガクガクガク
さわ子「今日は特別工程よ。」
律は言われるまま、皮膚に切り込みを入れていく。
さわ子「そう?この黒曜石の切れ味も中々のものよ。」
律は10cm程度の切れ込みを入れる。
イノシシの内臓が傍目にもよくわかる。
梓「…」ガクガクガクガクカ
唯「…」ガクガクガク
そう言うとさわ子は、内臓のうちの、ひときわ大きな袋のようなものに
切れ込みを入れ始める。
律「!?」
さわ子(りっちゃんは気付いたかしら?)
紬「それ、胃ですか?」
パンツ脱いで待ってます
律「さ、さわちゃん、そ、れ…」
さわ子が入れた切れ込みから赤紫色のような物体が見える。
律「あ…」
さわ子「これ、何だと思う?」
唯「え?え…?」
さわ子「これはね、イノシシの子宮、このなかに入っている赤紫の物体は…」
さわ子「イノシシの胎児よ。」
梓「え…」
梓はまじまじと赤紫の物体を凝視する。
そして、意識を手放した。
よく考えてみるとかなりグロいな…今やってること。
梓「ん…」
「!」
梓「んん…」
「あずにゃん!」
梓「ゆ、い、せんぱい?」
唯「よかった!あずにゃん!!やっと目をさましたよー!」ギュ
梓「あ…」
唯「うん、もう夜だよ。」
梓「他のみなさんは?」
唯「外で火をおこしてご飯食べてる。」
梓「ご、はん…」
フラッシュバックするように、梓はイノシシの解体の場面を思い出す。
梓「あ、あ、」
唯「あ、あずにゃ…」
下呂シーン期待はまだかなー?
澪「どうしたんだっ!!」
澪たちが飛び込んでくる。
梓「うあああああーーーーーーーー!!!」
律「あ、ずさ…」
さわ子「やっぱりね…」
梓「せんせい!!!せんぱい!!!」
梓「最低です!!!!!!!」
梓「あの子、もう少ししたら生まれてこれたかもしれなかった…
なのに…なのに!!!」
澪「先生!!いくらなんでもやりすぎですよ!!
梓にも…生き物の解体なんて耐えられるはず無かったんだ!」
何を見て梓が気を失ったかについては、澪には伏せられている。
流石に先生やりすぎだよな…
律「肉食べてるのに、解体工程に文句言うやつはどうのこうのって、
よく言うけど…」
律「さわちゃんはやり過ぎた。それに、事前に私に断っとくべきだった。」
さわ子「そうしたら、りっちゃんは私を止めた?」
律「ああ。」
さわ子「はぁ…」
偽善者/偽悪者ぶるつもりはないんだけどね…」
澪「結果も、多分、動機も…両方最悪ですよ!とくに結果!!梓には、やっぱり…!」
梓「…」プル…プル…
唯「あず、にゃん??」
梓「もう…」
梓「もういやああああああーーーー!!!!!」
梓は竪穴住居を飛び出す。
澪「あずさっ!!」
唯「大丈夫!!私にまかせて!!」
梓「酸だああああああーーーー!!!!!」
ごめんなさい
___ ∥ヾ ハ
/ ヽ ∥::::|l ∥:||.
/ 聞 え | ||:::::::|| ||:::||
| こ ? | |{:::::∥. . .||:::||
| え | _」ゝ/'--―- 、|{::ノ!
| な 何 | / ヽ
| い ? ! / |ヽ
ヽ / ./ / /| | ト、
` ー―< ./ / / .| / | ヽ
,/ / /ーナ  ̄ |/'| / ! | ヽ
. |/| | ,' .--、、 | /\| | ヽ
. / /^V |( `-' | |/_ | / ヽ
/ { v^| |\_/ /、_, レ i\|
/ Y`i | 、i ! / /
レ'1 i | | '┌- ____ `- '/ /
レ^i | | | |、-v、/ / |
ヽ| .| |\| ιヽ / .人 |
/ V:\ `υ/ |/
__ - ' | `ヽ- ' レヽ |
- '´ ヽ _ | / V
 ̄  ̄ ̄` ヽ - `-、__
 ̄ ` \
Y ヽ \
| \ |
澪「先生!!どれだけ無神経なんですか!?」
さわ子「じゃあ、あのイノシシの骨の前で、泣きながらひたすら
許しを乞えっていいたいの?」
澪「な…!?」
さわ子「今日調理したものは内臓。土の中に埋めた部位と違って、
早く食べないと傷んでしまうわ。」※
澪「話にならない…!」
※土中に埋めて熟成を促す過程
よくも肉を口に出来たなっ!」
紬「…」
律「なっ!?お前だって食べてたじゃないか!!」
澪「わ、わたしは…!」
さわ子「先に戻ってるわよ。」
そういうとさわ子は、火のほうへと戻っていく。
紬「…」
紬も無言でさわ子に続く。
澪「ムギ…!?」
紬「…」ヨリヨリ
さわ子「…」ゴクゴクゴク
さわ子は猪の内臓の煮物をビールで流し込むように食べている。
紬は時々、煮物を口にしながら、植物の繊維のようなもの―
イラクサを縒(よ)る作業を行っている。
さわ子「余計なお世話。」モグモグ
さわ子「ムギちゃんもなに作ってんのよ?」
紬「これですか?ジ○ンちゃんの本に書いてあったんです。
この縄文生活でも、楽器を作って演奏ができないかなって思って。」
紬「ええ。それに、あの子の毛皮も骨も牙も腱も楽器の材料にできますし。」
さわ子「そう…」
紬(楽器を作って、演奏ができるようになれば、みんなも…)
澪「…」
律「ふぅ…」
律と澪が戻ってくる。
律は無言で自分の土器茶碗を手に取ると、煮物を口にし始める。
澪は、煮炊き用の大型土器―臓物の煮物が入っている―を少見つめた後、
黙って土器茶碗を手に取り、律にならう。
チョロチョロチョロチョロ…
湧水の流れる音。
ジー…ジー…ジー…
ホー…ホー…
生き物の鳴き声。
梓「ぅ…ぅ゛ぅ…」
そして少女の、啜り泣く声。
梓「…」ヒック
周りは暗く、誰もいない。
けれど。
「あずにゃん。」
梓「!」
唯「隣り、座っていい?」
梓「…」
梓「はい…」
唯は梓の隣に座る。
唯は何も口にしなかった。
梓も同じく。
ただ、時間と人間以外の出す音のみが、ゆっくりと背後を流れてゆき。
どのくらいたっただろうか?
ふと、唯の目にほんのりとした灯りが目に入る。
黄金のような淡い翠のような、うっすらとした輝き。
唯「あれ?」
梓「せんぱい?」
唯「あれ見て。」
唯は輝きのほうを指差す。
梓「なん、だろう…?」
湧水からは小さな小川が流れ出しており、
唯の見つけた輝きはその小川の流れの先にある。
唯「…」
唯「あずにゃん、いってみよう?」
梓「え?」
下るにつれ、灯りが散在するように輝いているのがわかる。
そして、それは小さな光が群れ集まって、舞うように、輝いているのがわかる。
梓「あ…」
そして唯と梓は、光の大群のすぐ目の前まで近づく。
唯「ホタル、だね。」
梓「はい。」
梓「キレイ…」
唯「うん。」
唯「…」
梓「…」
梓「せんぱい?」
唯「うん?」
唯「そうなんだ?」
梓「はい。」
それから二人は言葉を交わさずに、ホタルの群れの中、
その輝きをぼんやりと、見つめていた。
梓「ただいま…です…」
澪「おかえり。」
梓「はい…」
紬「梓ちゃんお腹すいたでしょう?果物を絞ったジュースとクッキーがあるから。」
梓「あ、あの、せんせい、せんぱい、いきなり飛び出してすいませんでした…」
さわ子「ええ…」
さわ子(私も謝…)
さわ子(いえ、まだね。)
さわ子(最後の…)
軽音部の面々も、表面上はしこりを残すことなく、和気藹々とやっているように見えた。
そして、縄文生活開始から、ちょうど三週間後。
紬「できた!できたわ!!」
律「へー上手いもんだな…」
さわ子「ウクレレみたいな形してるわね。」
紬は、木片や猪の骨、イラクサを組み合わせて、
ウクレレに似た楽器を二つ作り上げていた。
唯「いいよいいよ!澪ちゃんとあずにゃんが使ってちょうだい。」
梓「いいんですか??」
唯「うん!私はボーカルだけでいくから。」
澪「なんかそれも悪いな…」
紬「あ…」
律「ムギ、どうした?」
イラクサで作るとすぐ弦が切れちゃうから、もう少し予備の弦が欲しいなって。」
唯「じゃあ、私がとってくるよ!」
紬「いいの?」
唯「うん。水場の近くに生えてたよね?
今日は私がお水汲む係だし、そのついでに。」
紬「ありがとう、お願いするわ♪」
唯「よいしょっと。」
唯「お水も汲んだし。イラクサもたくさんとったし!」
唯「…」
唯「あ、採りすぎちゃった…」
?「持ちますよ?」
唯「え、ありがとう!」
声のした方へ振り向く唯。
唯「!!」
唯「な、なんで…」
唯「なんで君がここにいる…の!?」
―竪穴住居―
律「おい!どうだ??見つかったか!?」
梓「どこにもいません…」
紬「唯ちゃん…」
澪「立ち寄りそうなところはあらかた探したんだが…」
そのまま迷子になったとか…?」
梓「ありそうだから怖いです…」
さわ子「まだ見つからないの?」
律「ああ…って、さわちゃんも探すの手伝えよ!
緊急事態なんだぞ!?」
さわ子「ええ…」
さわ子(そろそろ来るかしらね。)
紬「あ、あれ!!なに!?」
律「どうしたムギ!?」
紬「あっち!変な灯りが近づいてくるわ!!」
澪「炎…??」
澪「たいまつか!!」
さわ子(やっと来たようね。)
たいまつを持った何者かが、竪穴住居に近づいてくる。
律「斉藤さんか?」
紬「たいまつを使うわけがないし、そんな悪ふざけだって…」
紬「あ!」
紬「先生!何か知ってますね!?」
さわ子「ぜーんぜん。」
梓(知ってる目です…)
律たちと非常に親しい人物であった。
律「あっ!!」
澪「えっ!?」
紬「なんでここにいるの…」
梓「それに…その格好…」
「「「「憂(ちゃん)!!!」」」」
しかし奇妙なのはその格好である。
長袖の、白いローブのような服を着込み、その上から黒色の、
美しい光沢を放つ鎧を着込んでいる。おそらくは木製で漆を塗ったもの。
剣道の胴を厚手かつ縦に引き伸ばしたような形をしている
いわゆるブレストアーマーの一種か。
よく見れば表面に、凹凸上の幾何学文様が彫りこまれている。
腰にはいびつな形の、銅色にかがやく剣を二本、両腰に佩き、
背中には鎧と同じ色、光沢の縦長の盾を背負っている。
そして首からは、緑色のガラス管を糸にとおした首飾り。
律「!!」ゾクッ
憂「唯のいるところまで…」
憂の声は底知れず冷たく、
その目からは何の感情も読み取れない。
梓「うい…」
梓の問いかけに対し、憂は何も答えない。
憂は、なおも促す。
律(なんかすげーやばい雰囲気だぞ…)
梓(でもついていかないことには…)
澪「憂ちゃん、唯はいったいどこにいるんだ?」
憂「…」
一瞬、間が空き、憂は答える。
憂「"わがきみ"の御許(おもと)にいます。」
澪「わが…きみ?」
律「憂ちゃん、そこまでどんぐらいかかるんだ?」
憂は答えない。
律(すっごくやりづらい…)
澪「先生もついてくるんですね?」
さわ子「ま、私のことは気にしないように。」
律たちは少し開けた、小高い丘のような場所に出た。
紬「あれ!あそこ!」
そこには何棟かの木製の住居らしきものがあった。
粗末な社(やしろ)とでもいったような形をしている。
梓「どっかで見たことがありますね…」
澪「高床式の建物だな。」
紬「弥生時代に現れたっていう?」
澪「ああ。」