唯「ギコギコギコギコギコ」 【第五部&エピローグ】
583 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 13:52:59.76 ID:gXrQNFyw0
今起きた。保守ありがとう。
最後は第5部+エピローグって形でいきます
584 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/20(火) 14:04:17.95 ID:mzQQltlf0
待ってました!
585 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 14:04:25.90 ID:eMPe2BtKO
きたぁぁぁあああ
586 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 14:04:41.38 ID:NHnzcQiCO
キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
587 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 14:07:38.41 ID:gXrQNFyw0
クリスマスと言えど、住宅街に人通りは殆ど無かった。
恐らくもっと栄えた場所(例えば駅前とか)に繰り出すか、家の中でパーティーをする等して、思い思いのクリスマスを過ごしているのだろう。
唯「さむい…」
パジャマに上着に手袋。12月末の寒さに、私は無防備すぎた。
私は足早にコンビニへと向かった。
少し広い通りに出ると、ようやく街行く人々を見る事が出来た。
コンビニの灯りは、ツリーの電飾よりもぎらぎらしていて、私は夏の虫の様にその光に吸い寄せられていった。
店内に入ると、暖房のおかげで、先程までの刺す様な寒さは柔らいだ。
店員が売れ残ったクリスマスケーキの叩き売りをしている。飽食の国らしい光景だ。
ホールケーキが千円という破格の値段で売られていたが、憂の料理で満腹感を得ていたので、誘惑に負ける事なく、シャンプーを探す事にした。
589 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/20(火) 14:09:59.16 ID:/Uotw3hH0
きたきたきた
590 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 14:16:33.13 ID:gXrQNFyw0
店内に人はまばらだった。
ドリンクコーナーで何か嬉しそうに喋っているカップル、漫画を立ち読みしている若い男の人。
後はサラリーマンらしき人が何人かいる。
商品棚には、憂に頼まれたシャンプーが置いてあった。
甘ったるそうなピンクのパッケージとは裏腹に、柑橘系のさっぱりした匂いのするシャンプー。
私はそれではなく、その横に置いてある白いパッケージに青い文字が書かれたシャンプーを手にとった。
唯「これでいいや…」
私はそれを持ってレジに向かった。
サンタクロースの格好をした店員が、シャンプーを受け取り、「493円になります」と言った。
私は「クリスマスイブは昨日なのに、サンタの格好をしてるのはおかしい」と思いながら、ポケットから憂の財布を取り出した。
592 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 14:22:35.58 ID:gXrQNFyw0
他人の財布というのは、使い慣れていないせいか、勝手がわからない。
手袋をはめていた事もあり、私は小銭を取り出すのにえらく手間取った。
私が財布をごそごそ探っていると、後ろに人の列が出来ていった。
早くしなきゃ。
私が焦りながら小銭を取り出そうとすると、手元から財布は落ち、中身がレジ前にぶちまけられた。
唯「あっ…す、すいません…」
サンタの格好をした男の店員が、「大丈夫ですか?」と尋ねてくる。
唯「大丈夫です、すいません…」
私は床に散らばったレシートを急いでポケットに突っ込み、カード類を財布にしまって、会計を済ませた。
595 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 14:31:55.74 ID:gXrQNFyw0
さっきのカップルがじろじろと私を見ている。
その恥ずかしさから、私はシャンプーの入った袋を右手に携えながら、さっさと店から出る事にした。
店員「ありがとうございました。またお越し下さいませ」
全く有難そうに聞こえない店員の言葉に、軽く会釈をしてから自動ドアへ向かった。
ドアが開くと、外は相変わらずの寒さだった。
私はサンダルをぺたぺた鳴らしながら、憂が待つ家へと急いだ。
ふと、民家の庭先にあるクリスマスツリーの電飾に私は目を奪われた。
ちかちか光るそれを眺めながら、私は思いを馳せた。
結局、憂はどこまで気づいていたんだろう。
私は憂を疑い始めた時の事を、改めて考えてみる事にした。
600 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 14:41:32.72 ID:gXrQNFyw0
卒業ライブを建前に音楽室を使わせてもらえる事になった私達は、早速あずにゃんを食器棚の下部に移した。
カギを取り付け、これで誰かに開けられる心配もない。
私の頭の中では相変わらず、ノコギリの骨を削る音が響いていて、あずにゃんに対する罪悪感も消えたわけではなかった。
それでも、「バンドを復活させる」という目標が、私達を都合よく正当化させてくれた。
音楽室で卒業ライブに向けて私達は練習を再開した。
澪ちゃんもムギちゃんも、進路は二の次にして、練習に精を出した。
私達が青春を取り戻し始め、練習を終えた後に、澪ちゃんがりっちゃんをたしなめた。
澪「律?ドラムに勢いがなくない?ジョン・ボーナムが目標とは思えないんだけど…。また風邪か?」
601 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 14:43:36.84 ID:FEU30R3MO
支援
602 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 14:46:25.18 ID:gXrQNFyw0
りっちゃんは少し黙ってから口を開いた。
律「…あの事でちょっと話しておきたい事があるんだけど」
あの事とは間違いなくあずにゃんの事だ。
今更何があるのだろうと訝りながら、私はりっちゃんの言葉を待った。
律「話していい?」
澪「いいよ。私も丁度それについて話したい事があったし」
紬「うん。私も言わなきゃいけない事があるの」
何だろう。
私には話すべき事などなかったが、みんなは違ったようだ。
練習後の「ティータイム」が始まった。
603 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 14:51:43.81 ID:gXrQNFyw0
律「実はさ、昨日憂ちゃんがウチに来たんだ。梓の事を聞きに」
思いがけない名前がりっちゃんの口から飛び出した。
澪「え?私の家にも来たぞ…?私もそれを話そうと思ってたんだけど…」
紬「わ…私の家にも来たわ…」
憂からそんな話は聞いていない。
だが、そう言えば昨日は珍しく憂の帰りが遅かったような気がする。
律「マジかよ。て事は私達全員の家を回ったって事か?」
澪「…これは、あまり良くなさそうだな」
紬「もしかして、梓ちゃんの事で私達を疑っているのかしら?」
606 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 14:58:06.31 ID:gXrQNFyw0
律「でも、昨日はそんなに突っ込んだ事は聞かれなかったぜ?梓を心配してるだけに見えたし。演技かも知れないけどさ」
澪「私達全員の家を回るのは明らかにおかしい。憂ちゃんはきっと何か感付いたんだ」
紬「迂闊だったね…。和ちゃんが唯ちゃんの様子がおかしいって気づいたんだもの。憂ちゃんがそう思ったっておかしくないわ」
暫しの沈黙が訪れた後、澪ちゃんが話し始めた。
澪「どうする?早めに手を打たないとまずいかもしれない」
律「て言っても梓はあそこなんだし…」
そう言いながらりっちゃんは食器棚のほうに視線を向けた。
律「確かに憂ちゃんに怪しまれてるかも知れないけど、バレる事はないんじゃないの?」
609 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 15:05:31.75 ID:gXrQNFyw0
紬「駄目よ。疑われている以上、早めに何とかしないと、何がきっかけでバレるかわからないわ」
澪「うん。危険の種は芽吹く前に取り除くべきだ。用心するに越した事はないんだから」
律「…わかった。で、どうすんの?」
紬「全員の家を回るっていう行動に出たくらいだし、憂ちゃんの疑念はほぼ確信に近いのかも…」
澪「そうだな。憂ちゃんは去年のライブの時に唯に変装してくるような子だ。行動力は人一倍ある。…もっと早くから警戒しておくべきだった」
紬「唯ちゃん。家の中での憂ちゃんの様子はどう?」
唯「うーん…特にいつもと変わった感じはしなかったけど…」
610 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 15:08:39.24 ID:L/VoSuSbO
>>1大丈夫?凄く面白いけど無理しないでね。
611 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 15:11:53.04 ID:gXrQNFyw0
律「まぁ、あの子はボロを出さないだろうな…」
澪「うん…。どうしたものか…」
紬「…」
重い沈黙。
いつの間にか、私は拳をぎゅっと握っていた。
手のひらは汗でぐっしょりしている。
嫌な予感がした。
憂はかなりのところまで気づいている。
その憂への対処に、今みんなが何を考えているのか想像した私は恐ろしくなった。
私の心中を察したのか、ムギちゃんが私の肩に手を置いて優しく言った。
紬「大丈夫よ唯ちゃん。憂ちゃんを手にかけたりなんてしないから」
612 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 15:19:07.13 ID:+s5p364KO
こわすぐる
613 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 15:21:32.19 ID:gXrQNFyw0
澪「うん。それは絶対駄目だ。そんな事をしたら、もう隠し切れない」
律「梓一人でもこれだからな…。さすがにそれはないわな」
唯「う、うん…。良かった…」
澪「それに、仮に憂ちゃんが全部知っていたとしても、口封じの方法はいくらでも…」
そこで澪ちゃんは言葉を濁らせた。
みんな、澪ちゃんが何を言わんとしているか理解していた。
私達は4人で、憂は一人。
おまけに私達は殺人者だ。
最悪、4人で憂を脅す事もできる。
良心の呵責はあったはずだが、それは少し浮かんだだけで、すぐに無意識の澱の中へ沈んでいった。
私達は、来るところまで来てしまったのだ。
614 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/20(火) 15:27:00.77 ID:JcQ9gR22i
これで、唯「やっぱり…皆さんが…」とか言い出したら俺もう心臓止まるわ
615 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 15:27:26.38 ID:TSNzwxhuO
人殺しても脅しはNoNoNo
616 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 15:31:29.63 ID:gXrQNFyw0
澪「でも、まずは憂ちゃんがどこまで知っているか、確かめておく必要があるな。それと、何から私達を疑い始めたかも考えないと」
紬「うん。…和ちゃんの時みたいに、唯ちゃんの泣き落としは憂ちゃんには効かなさそうね」
澪「憂ちゃんは既に確信めいたものを持っている。和は疑念の域を出ていなかったから何とかなっただけだ」
唯「…私にはあれ以上の策なんて思いつかないよ…」
紬「ここは様子見するしかなさそうね…」
澪「うん。多分憂ちゃんは、今後また何か行動を起こすはずだ。それまでみんなでじっくり策を考えておこう」
律「そうだね。わかった」
唯「わかったよ」
澪「…今は私達に出来る精一杯の事をやろう」
澪ちゃんのその言葉がシメとなり、その日私達は解散した。
618 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 15:40:15.10 ID:gXrQNFyw0
しかし、それから憂が目立った行動を起こす事はなかった。
アテが外れた澪ちゃんとムギちゃんも、それには頭を悩ませていた。
りっちゃんは、
律「私達一人一人に話を聞いて疑いは晴れたんじゃないの?」
と言っていたが、澪ちゃんとムギちゃんの警戒が解かれる事はなかった。
私は憂すらも疑いの対象になってしまった事で、家にいても全く落ち着くことができなくなっていた。
一向に動きを見せない憂に、私達は神経をすり減らしていった。
そのまま何事もなく時は流れていった。
――それは私がいつもの様に、鳴り止まないノコギリの音に耐えながら、ベッドの上で目を閉じた時の事だった。
621 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 15:45:20.66 ID:9FysdOSsO
((:゚Д゚))こえぇ
622 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 15:46:24.55 ID:gXrQNFyw0
私の頭の中で、ギコギコというノコギリの音が鳴り続けている。
私は必死にそれに耐えて目を閉じた。
今までは何とかそれで眠りにつく事ができた。
しかしその日は、ノコギリの音がどんどん大きくなっていき、恐れをなした睡魔も退散していった。
ギコギコギコギコ
どんどん大きくなるノコギリの音。
ギコギコギコギコ
それはまるで管弦楽団の奏でる壮大なオーケストラの様に、私の鼓膜を揺らしている。
ギコギコギコギコ
唯「嫌…やめて…お願い…」
私は懇願した。
626 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/20(火) 15:50:30.61 ID:5w3Ah0dyO
まじで面白いな
それに文章をストレスなく読める
SSでこういうレベルはなかなかお目にかかれないぜ
627 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 15:52:12.61 ID:gXrQNFyw0
ギコギコギコギコ
いつもよりいっそう大きく、現実感を伴ってノコギリの音は聞こえてくる。
唯「やめて…やめて…!」
恐怖が臨界に達した私は、とうとう音に抗う事を諦めた。
音に身を委ね、同化する事で、このどうにもならない恐怖から逃れる事にした。
唯「ギコギコギコギコ」
私は鳴り響く音に合わせて、歌でも歌うように声を出した。
唯「ギコギコギコギコ」
私の声とノコギリの音は重なり、そのユニゾンが恐怖をやわらげた。
私は繰り返し、声を出し続けた。
唯「ギコギコギコギコギコ」
629 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 15:54:04.75 ID:PPQ9QfM+0
ぐわあ
こええ
633 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 15:55:27.27 ID:+s5p364KO
えっ
なにこれマジに怖くなってきた
634 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 15:56:45.79 ID:WrdIn/ZJO
スレタイ来た…
636 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 15:59:32.21 ID:oGVg/1/oi
ホラーかよ...
637 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 16:00:19.85 ID:gXrQNFyw0
私は一晩中、声を出し続けた。
朝になり、制服に着替え、部屋を出て、階段を降りた。
段の一つ一つを、踏み外さないようにゆっくりと。
私はとっくに道を踏み外していたが。
憂「あ、お姉ちゃんおはよう」
唯「おはよう」
憂「ご飯食べる?」
唯「いらない…」
憂「そう…。あんまりムリしないでね?」
私は憂の労いの言葉に答えず、通学バッグを肩にかけて玄関へ向かった。
唯「憂、私先に行くね」
靴を履きながらそう言うと、憂が答えた。
憂「あ…うん。でもその前に…あの…お姉ちゃん、ちょっといい?」
638 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 16:00:54.63 ID:8nrYd4uSO
コロンボや古畑然り、こういう殺人者目線のミステリー?は面白いな
犯人の内面が描かれてるのがいい
639 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/20(火) 16:02:32.99 ID:goRE/tYk0
これは非常に面白い
ドキドキする
640 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/20(火) 16:04:30.55 ID:goRE/tYk0
ゲロ以来のワクワク感だ
644 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 16:08:20.46 ID:gXrQNFyw0
警戒しながら、私は振り向いて、憂に尋ねた。
唯「何?」
憂「今年のクリスマス、どうする?」
クリスマス?
あぁ、そう言えばもうそんな時期か。
憂「あのね、最近お姉ちゃんも軽音部のみなさんも元気ないから…」
私はじっと憂を見つめたまま話を聞いていた。
憂「準備とか全部私がするから、ウチでパーティーしよう?私、落ち込んでるお姉ちゃんなんて見ていられないよ…」
私はその提案の意味を考えた。
ついに憂は行動を始めたのだろうか?
一睡もしていない、私のぼやけた頭の中を泳ぐ鈍った思考では、とても理解できそうにない。
私はみんなに相談してから決める事にした。
唯「うん。考えておくね。ありがとう。行って来ます」
646 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 16:15:43.97 ID:gXrQNFyw0
放課後、私はみんなに今朝の事を話した。
唯「どう思う…?」
澪「わからない。…けど、憂ちゃんが動き出した可能性は高いな」
紬「うん。でも…今の段階では憂ちゃんの意図は読めないね…」
律「…断るか?クリスマスの話」
しばらく目を閉じて考えてから、澪ちゃんが答えた。
澪「いや、行こう。憂ちゃんの出方を見る最後のチャンスかもしれない」
紬「ここを乗り切れば、もう全て終わりよ。頭を抱えながら過ごす事もなくなるわ。大丈夫…私達なら…」
律「…わかった。これで最後だ。頑張ろうぜ」
唯「うん」
648 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/20(火) 16:17:07.16 ID:z8M48D4T0
疑心暗鬼スパイラル
651 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 16:25:01.18 ID:fjHg5Gak0
これ、本当にドキドキするな。
支援
652 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 16:25:15.37 ID:gXrQNFyw0
私達は、クリスマスパーティーに向けて、作戦を練った。
当日はメールで相談しながら憂を探る。
私は憂とみんなを気遣うフリをする。
結局これだけの作戦だったが、憂の真意が全く読めない以上、その場で臨機応変に対応するしかなかった。
私とりっちゃんはボロを出さないよう、あまり大胆には動かない事にした。
クリスマス当日まで、私は毎晩、あのノコギリの音に合わせて声をあげていた。
精神はとっくに限界を越えていたが、私はなんとか人間らしさを失わずにいる事ができた。
何度も「ティータイム」を繰り返し、打ち合わせをして、とうとう私達は12月25日を迎えた。
653 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 16:27:12.08 ID:qGiSRgHMO
姉ちゃんの部屋から一晩中ギコギコ言ってる声が聞こえてきたら気持ち悪いよな
654 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 16:32:25.36 ID:gXrQNFyw0
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・
他人の家の庭先にあるクリスマスツリーを眺めていた私は、はぁっ息を吐いた。
先程と同じように拡散する吐息を目で追って、私は曇天を見上げた。
結局、今日は憂の考えがわからなかった。
明日も「ティータイム」は開かれるだろう。そこで今後について、また話し合わなければいけない。
唯「あ、そうだ…」
私はポケットからケータイを取り出した。
澪ちゃんとムギちゃんの、80件以上に及ぶ、メールでの話し合いを削除しなくては。
私はそれらを消す前に、二人のメールを読んでみる事にした。
655 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/20(火) 16:33:41.98 ID:HcY7IdKiO
俺もあずにゃんとティータイムしたいにゃん
656 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 16:38:15.61 ID:gXrQNFyw0
ムギちゃん
澪ちゃん
ムギちゃん
澪ちゃん
ムギちゃん
メール一覧に、交互に二人の名前が並んでいた。
私は最初からそれらを読み返した。
メールの文章は、「音楽」「ギター」「新曲」「ライブ」といった音楽用語で構成されていた。
何も知らない人には、音楽が好きな女子高生二人が、熱心に語り合っているだけのメールに見えるだろう。
だが私には、それがどれほど残酷な文章であるかが、容易にわかった。
全く、二人の頭の回転の速さには恐れ入る。
私はメールを読み進めた。
658 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 16:41:25.78 ID:c1q+zGLY0
隠語を使わなくなってるよな
659 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 16:42:37.46 ID:gXrQNFyw0
どうやら、二人も憂には攻めあぐねていたらしく、メールの内容はどうどう巡りだった。
澪ちゃん
ムギちゃん
澪ちゃん
ムギちゃん
私はメールを読み進める。
30件目あたりまで読み進めたあたりで、画面をスクロールさせるためにケータイのキーを押していた、私の指が止まった。
画面に表示されたその文字を、私は凝視した。
ムギちゃん
澪ちゃん
ムギちゃん
澪ちゃん
ムギちゃん
憂
660 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/20(火) 16:43:22.68 ID:goRE/tYk0
ひいいいいいいいいいい
661 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 16:43:30.07 ID:Y+uIpVmV0
ごくり…
663 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/20(火) 16:44:04.69 ID:IFcLELWL0
こわい・・・
664 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 16:44:15.10 ID:OnjNrPP2O
!?
665 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/20(火) 16:44:24.99 ID:IQRPzP6N0
こえぇよwwwww
671 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 16:46:37.96 ID:zZCvrRfMO
なんかしらんがビクッとなって足つったwwwwww
672 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/20(火) 16:49:06.23 ID:cU0Xq0c/0
こわあぁぁぁおおおおおいいい
673 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 16:49:12.88 ID:xIBUoUGv0
この>>1は天才
676 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 16:50:32.66 ID:gXrQNFyw0
ケータイを持つ手が震えた。
憂は、パーティーの最中に私にメールをしていたのだ。
私達は、憂の挙動に細心の注意を払っていた。
だが、憂がメールを打つ様子などなかった。
憂はこっそりとメールを打ったのだ。
私達のように。
こたつの中で。
なぜ憂はそんな事を?
決まっている。
憂は私達の動きに気づいていたのだ。
膝ががくがくと震え始める。
憂からのメールを開く事なく、私はケータイを閉じた。
落ち着かなきゃ。落ち着かなきゃ。
私は咄嗟に、さっきコンビニで落としてポケットにしまったレシートを取り出した。
その無感情な文字を読んで、私は気持ちを落ち着かせる事にした。
678 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 16:53:10.52 ID:oSONMruJO
さあ盛り上がってまいりました
679 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/20(火) 16:53:24.33 ID:goRE/tYk0
スレタイでどうせアホなノリの糞スレだろうと思ったらこれだよ…
680 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 16:53:44.49 ID:OnjNrPP2O
レシート気になってたけど、やっぱなんかあるのかよ…
681 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 16:53:56.19 ID:qGiSRgHMO
もう駄目だ…おしまいだ…みんな捕まるんだ…隠せる訳ないよ…
686 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/20(火) 16:58:17.64 ID:NslkWj6QO
第1部で
風呂場には黒い髪の毛が落ちてたんだぜ…
687 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 16:58:41.64 ID:WrdIn/ZJO
何を買ってたのか…
693 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:02:07.24 ID:gXrQNFyw0
くしゃくしゃに丸められたレシートは4枚。
レシートを財布の中にしまっていたのは、几帳面な憂らしかった。
1枚目。
書店のレシートだ。漫画本を2冊買ったようだ。計720円。今度私にも読ませてもらおう。
2枚目。
スーパーのレシート。スピリタスウォッカ96%500ml。計1490円。恐らくお酒だろう。料理にでも使ったのだろうか。
3枚目。
コンビニ。薬用シャンプー。493円。あのシャンプーだ。これは私が捨てた。
4枚目。
ホームセンター。鋸(八寸目)。1710円。
私は右手に持っていたコンビニの袋をどさっとコンクリートの地面に落とした。
何で憂はこんなものを買ったのだろう。
全身ががたがたと震えた。私の頭の中で様々な記憶が交錯する。
694 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:03:49.95 ID:OnjNrPP2O
うわあああああああぁ!!
わかった気がする……
695 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:04:02.92 ID:gzFSC/u/0
もう意味わかんねwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
697 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:05:37.27 ID:HvRJsJ2s0
怖す
698 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:05:48.36 ID:MCiJjhbb0
やめてー
699 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:05:56.48 ID:uAigaPFcO
>いつもよりいっそう大きく、現実感を伴ってノコギリの音は聞こえてくる。
これは憂いが…
700 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:06:05.15 ID:ct5E7swS0
お酒は消毒用?
701 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/20(火) 17:07:00.96 ID:LIoyuAB20
それでも憂は味方に違いない
704 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:10:04.59 ID:gXrQNFyw0
私は寒空の下、落とした袋も拾わずに、憂の待つ自宅へ駆けていった。
もう冬の寒さなど感じなかった。それよりも遥かに底冷えのする不気味な…圧倒的な寒さが、私の内側からじわじわと全身に広がっていった。
家に着き、照明が点いたままの玄関を通る。
私は廊下を進み、恐る恐る浴室の気配を探った。
どうやら憂はまだお風呂に浸かっているらしい。
私は台所に向かった。
流し台には、下げられた食器が乱雑に置かれている。
流し台の下の、鍋やフライパンを入れるスペース…その戸には憂が愛用しているキッチンミトンがかけられている。
706 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/20(火) 17:10:57.88 ID:QGynf784O
まさかの展開だでwww
怖いでww
707 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:12:26.86 ID:TzTBMzAx0
ちょっと待ってそのメールってのはチャット形式にでもしてるの?
それとも一斉送信なの?
711 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/20(火) 17:16:19.68 ID:e79aXSdk0
展開がわかったとしても、4人に食わせた意図がまだよくわからんよな
憂にヤミっぷりからだとしたら、これでみんなまた一緒ってことだろうか・・・
やり口から、罪滅ぼしさせるつもりではなさそうだし
712 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:16:34.55 ID:uDVVaYgmO
うあああああああ
恐くておといれ行けないよおおおおおお
713 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:16:38.10 ID:gXrQNFyw0
私はごくりと唾を飲んだ。
いや、口の中は乾ききっていたので、唾など口内にはない。
私は喉を鳴らしただけだった。
私は憂のキッチンミトンを戸から除け、ゆっくりと引いた。
あった。
それはそこにあった。
刃が磨り減ったノコギリ。
私は全身の力が抜けていくのを感じた。
手も足も腰も背中も、骨格を持たない軟体動物のようになり、私はぺたんとその場に座り込んでしまった。
目を大きく見開き、口をだらしなく半開きにした私は、今日起こった事、今まで起こった事の全てを理解していた。
715 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:17:11.45 ID:oRFf8zYyO
おい唯しっかりしろwwww
緊張させんなwwww
716 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:18:18.42 ID:WrdIn/ZJO
!?
あふぅ…
717 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/20(火) 17:18:57.90 ID:goRE/tYk0
まさか…
718 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:20:24.08 ID:nefXZZ8eO
もうやめて!
唯のライフポイントはとっくに0よ!
721 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:24:01.98 ID:gXrQNFyw0
食卓に並んだ料理。
風呂場の髪の毛。
私を悩ませた深夜のノコギリ音。
馬鹿な。憂はあずにゃんの居場所を知らない。
あれは音楽室の食器棚に保管したはずだ。
いや、違う。
音楽室に置く事を提案したのは、他でもない、憂だ。
もはや、この常軌を逸した現実を否定する言い訳が、私には思い浮かばなかった。
恐らく憂は、私の部屋の掃除でもしようと思ったのだ。
その時にクローゼットを開けた憂は、見慣れないギターケースを見つけた。
不審に思った憂は、その無骨なチャックに手かけた。
そしてあずにゃんを見つけたのだ。
726 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:27:09.66 ID:GSSSh7Sx0
続きが気になって他の事が手につかねー
727 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:27:16.53 ID:nEareYm50
俺「シコシコシコシコ」
734 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:31:33.95 ID:gXrQNFyw0
その時憂は、私達が結託してそれを隠しているのだと気づいた。
和ちゃんがクローゼットを開けた時、腐臭はしなかった。
恐らくあれは、憂がアルコール度の高い酒を使って、簡易消毒をしていたからだ。
私達は隠し場所に困っていた。そこで憂は音楽室を勧めた。
そして憂は全員の家を訪ねた。私達がグルである事の確証を得るために。
いや、しかし、ギターケースの中身は、あの時既に音楽室の食器棚の中だ。
憂がみんなの目を盗んで部屋の中を物色しても、あれが見つかる事はない。
にも関わらず、憂は私達が一蓮托生の誓いを立てた事を確信した。
なぜ?
そうだ。私達の部屋には、ギターケースの中身以外にも、共有している物がある。
ラベンダーのアロマオイルが。
737 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:40:18.55 ID:gXrQNFyw0
消臭用のそれだと気づいた憂は、私達がグルである事を確信した。
音楽室の食器棚。
あそこに隠すのも、私達が高校を卒業するまでの間だ。
その後の事は考えていなかった。ライブが私達を盲目にさせた。
だから憂は、最も確実な隠し場所を考えた。
そして私達をクリスマスパーティーに誘った。
音楽室の食器棚のカギを壊し、あずにゃんを取り出した憂は、それをこの家へ持ち帰った。
ここ最近、私を苦しめていたノコギリの音。
あれは幻聴ではなかった。
憂は風呂場で、夜な夜なクリスマスの準備をしていたのだ。
私がさっき風呂場で見た髪の毛は、私と憂のではない。お母さんやお父さんのものでもなかったのだ。
739 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:44:09.54 ID:rnRbvM5kO
おいおいさっきから鳥肌止まんねぇんだけど
なによこれ
740 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:44:15.99 ID:lyOb3xFBO
なんで食わせたんだ…
742 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:46:45.06 ID:paRxIvgFO
憂は唯達に協力しようとしてるんだろ?
死体の処理とか。
743 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:47:19.66 ID:gXrQNFyw0
そして今日、食卓にソレは並べられた。
憂はソレを私達が全て平らげたのを確認すると、こたつの中で私にメールを送ったのだ。
私は風呂場の音に耳を澄ませた。
シャワーの流れる音がする。
今、憂は念入りに、晩餐の後片付けをしているのだ。
私の手は、骨も筋肉も失ったようだった。
それでも私は、なんとかポケットからケータイを取り出し、澪ちゃんとムギちゃんの名前に挟まれた、憂のメールを開いた。
そこには、こう書かれていた。
憂[お姉ちゃん、もう大丈夫だよ]
第5部 完
744 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:47:56.99 ID:pCiCRlex0
うわあああああああああああああああああ
745 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:48:29.00 ID:xIBUoUGv0
殺したのが8月としてクリスマスは12月
4~5ヶ月くらいの時間が経ってることを考えると
いくら処理したとはいえ腐敗具合は相当だろうな・・・
それにもかかわらず,美味しいあずにゃんフルコースを作るとは憂おそるべし・・・
746 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/20(火) 17:48:36.32 ID:ZM1wuqxm0
憂は優しいなぁ
748 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:49:16.34 ID:zAL4nX3P0
味は・・・
う、うわああああああああああああああああああああああああああああああああああ
749 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:49:20.91 ID:H6nvWyNR0
もはや原作を超えている
753 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:49:49.40 ID:9l+jKU1D0
伏線の張り方がすごいなぁ……
755 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:50:10.98 ID:okr5ELfM0
うあああうわあああ!!!(゚ω゚;)
756 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:50:23.60 ID:xIBUoUGv0
最高におもしろかたよ
乙です
757 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:50:43.76 ID:zZCvrRfMO
すげぇ…
761 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:52:55.61 ID:gXrQNFyw0
エピローグ
私は、親友の唯に会うべく受付を済ませると、無機質な部屋に案内され、そこに置かれたパイプ椅子に腰掛けた。
程なくして、分厚いガラスの向こう側に唯が現れた。
食事が全く喉を通らないのだろう。
目は大きく窪み、頬骨は突き出し、丸かった顎も今では尖っている。
和「…唯、久しぶり」
横におかれたマイクを通して、私は唯に月並みな言葉をかけた。
唯「…」
唯は何も答えずに、椅子に座った。
怯えた猫のような目で、唯は私を見つめた。
763 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:54:54.75 ID:xIBUoUGv0
自首したのか・・・
769 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:59:04.12 ID:oRFf8zYyO
展開は読めていたが、素晴らしいスリルだった…
770 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:59:31.12 ID:zZCvrRfMO
エピローグもくれよー
771 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 17:59:38.44 ID:HvRJsJ2s0
狂気だなー
776 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 18:02:01.15 ID:dsvbEH5/O
憂はお姉ちゃん思いだなあ
777 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 18:05:22.80 ID:gXrQNFyw0
12月27日、唯達軽音部は自首した。
梓を殺害したと自供したのだ。
報道がほとんど無かった事から察するに、社会的な影響を考慮して、事件の内容は殆ど伏せられたのだろう。
私も詳しい話は聞けなかったが、それほど凄惨な事を彼女達は梓にしたのだという事は容易にわかった。
自首をする前日、私は唯に呼び出され、梓を殺したと告白された。
唯はただ、
唯「私はあずにゃんを殺した。だから自首する」
としか言わなかったので、今までどうやって事実を隠していたのかは、私にはわからなかったし、私もそれを問いただす事はしなかった。
出頭する直前、唯は私に言った。
唯「私は人間でいたい…。でももうその資格はない…。このままだと、私はもっとおかしくなる…」
心身共に衰弱しきった唯達は、これから暗く閉ざされる自分の将来や世間体よりも、自分達自身を恐れているようだった。
そのために彼女達は、自分達自身を、まるでギターケースの様に閉ざされた世界に閉じ込める事にしたように私には思えた。
782 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 18:09:48.74 ID:gXrQNFyw0
和「これ、差し入れよ」
私は言葉を発しない唯に、綺麗に包装された、菓子の入った箱を見せた。
唯「…」
唯は何も答えなかった。
菓子の箱に目を向ける事もなく、唯はじっと私を見据えている。
和「…じゃあ、今日はもう帰るね。また来るから」
私は席を立ち、菓子の箱を持ってその無機質な部屋を出た。
789 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 18:14:04.80 ID:d6OkqkMui
>>782
これがまさしく和菓子ってかwwwwwwww
792 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/20(火) 18:16:10.59 ID:C8lK1sOn0
>>789
貴方のおかげで今日から和菓子がすごくおいしくなりそうです、ありがとうございます
793 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 18:17:18.27 ID:GmlCvyPy0
>>789
おれはお前のことが好きだよ
794 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 18:18:31.17 ID:dW0yg71cO
和菓子でも買ってくるか
798 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 18:20:12.18 ID:gXrQNFyw0
外に出ると、2月の澄んだ空気と共に、意地悪く寒さを運ぶ風が吹いた。
私は身体を震わせ、バス亭のベンチに座り、イヤホンを耳にはめると、志望大学の赤本を開いた。
唯の衰弱ぶりは明らかに異常だった。
このまま何も食べなければ、私が高校を卒業する前に、もう二度と彼女に会う事はできなくなるだろう。
恐らく律も澪も紬も、同じ状態なのだろう。それが彼女達の選択だった。
平穏無事な世界で生きる私には、彼女達の心が理解できない。
その私に、彼女達の選択を咎める事はできなかった。生きていればこそ…などと甘ったれた事は言えなかった。
しばらくして、市営のバスが到着した。
私はそれに乗り込み、イヤホンから流れる音楽に耳を傾ける一方で、気持ちを落ち着かせるために、赤本の数式を解く事に意識を集中させた。
完
800 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 18:21:01.69 ID:Ttzj4LHy0
>>789
これは評価されるべき
801 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 18:21:14.39 ID:PG50eSTc0
乙
802 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/20(火) 18:21:50.53 ID:ZM1wuqxm0
乙
おもしろかったぜー
803 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 18:21:56.44 ID:IQRPzP6N0
乙!
面白かった
804 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 18:22:28.60 ID:c1q+zGLY0
おつかれさまあああああああああああああ
面白かった!乙!
805 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/20(火) 18:22:33.20 ID:C8lK1sOn0
超乙
806 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 18:22:39.32 ID:DLKC1HjV0
乙
わちゃんが聞いてる曲はふわふわ時間
807 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 18:22:43.18 ID:zZCvrRfMO
超乙!面白かった
808 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 18:22:56.16 ID:gXrQNFyw0
これで終わりです。
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。
もうマジキチ系はしんどいので、今後はほのぼのギャグでスレ立てする事にするわw
保守&支援サンクス
816 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 18:26:03.25 ID:c1q+zGLY0
何が素晴らしいかって
責任持って1スレでしっかり完結したことだ。
武道館行こうが何しようが良スレだった。
終わらせてくれたことに感謝。
817 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 18:26:06.99 ID:uDVVaYgmO
乙乙!
818 :補足[]:2009/10/20(火) 18:26:17.38 ID:gXrQNFyw0
あ、ちなみに憂は捕まってません。
唯達は自分達が食ったとだけ供述しました。
では
819 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/20(火) 18:26:33.52 ID:ct5E7swS0
>>1乙
楽しかったよー
958 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/21(水) 03:17:43.95 ID:MKw78HWkO
改めて第1部読むと、>>1の秀逸さがよくわかる
誰かに見せたくなるくらい素晴らしいわ